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第97回 COVID-19後遺症様の症状が稀にワクチン接種後にも生じうる

イスラエルでもワクチンのCOVID-19後遺症予防効果あり去年9月に発表された英国での試験1)と同様に、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン接種済みの人のSARS-CoV-2感染後の長引く症状(COVID-19後遺症)の主なものはどれも非接種の人に比べて少ないことがイスラエルでの試験でも示されました2,3)。もっと言うと、ワクチン接種済みの人のそれらの症状はSARS-CoV-2に感染したことのない人より多くもありませんでした。COVID-19後遺症全般についてはワクチンによる予防効果が認められなかった試験報告4)もありますが、エール大学の岩崎明子(Akiko Iwasaki)氏によれば今回のイスラエルでの試験や英国での試験結果はともあれ吉報です。「COVID-19後遺症は悲惨で、消耗を強いる。そうならないようにする手立ては何であれCOVID-19後遺症がこれ以上増えるのを防ぐのに必要であり、(その手立てを担いうるという)ワクチン接種理由がまた1つ増えた」と同氏は言っています2)。ワクチン接種後にも稀ながら生じうる後遺症ワクチンがCOVID-19後遺症を予防しうるとの期待がある一方で、その後遺症に似た症状がワクチン接種後に生じることが稀ながらあるようです5)。かつて幼稚園の先生をしていたBrianne Dressen氏は2020年11月にSARS-CoV-2ワクチンを接種し、その日の晩までに目がぼやけはじめました。また、貝殻を耳に当てているように音が変になりました。症状は急激に悪化し、やがては心拍異常や筋肉の脱力に見舞われ、電気ショックのような感覚を被るようになりました。Dressen氏はいまやそのほとんどの時間を暗い部屋で過ごし、歯を磨くことや幼い我が子に触れられるのさえ耐えることができません。医師がDressen氏を不安症と診断してからときが過ぎ、今から1年前の2021年1月になると米国国立衛生研究所(NIH)の研究者はDressen氏に降り掛かったような事態を把握し始め、Dressen氏や他の患者をNIH施設に招いて検査し、時には治療も施しました。しかし手がかりは少なく、Dressen氏が被ったような長く続く体調不良をワクチンが引き起こしたのかどうかは分からずじまいでした。NIHと患者のやり取りは昨年2021年の遅くまでに途絶えてしまいました。内々で研究は続いているとDressen氏等の調査を率いたNIHの研究者Avindra Nath氏は言うものの、唯一の頼みの綱であったNIHが手を引いたことに患者は困惑し、がっかりしています。NIHの研究は尻すぼみとなりましたが、ワクチン接種後の後遺症を理解することはそれらで悩む人の助けになるでしょうし、もしワクチンとの関連の仕組みが明らかになれば次世代のワクチン開発の参考になるに違いありません。また、そういう後遺症の恐れがある人を事前に同定可能になるかもしれません。カリフォルニア大学の免疫学者William Murphy氏はSARS-CoV-2スパイクタンパク質が誘発する自己免疫で感染後とワクチン接種後のどちらの長患いも説明できるかもしれないとの論説をNEJM誌に去年11月に発表しました6)。感染後やワクチン接種後の好ましい抗ウイルス効果と生じて欲しくない副作用の両方に免疫反応がどう寄与しているかをもっと基礎から調べる必要があります。Murphy氏はワクチン接種の支持者ですが、ワクチンを皆に安心して接種してもらうにはワクチン接種に安全性の心配はないと言って済ますのではなくワクチンについて隈なく調べ尽くすことが必要だと述べています5)。しかしMurphy氏の期待とは裏腹にNIHのNath氏が率いた患者研究は長続きしませんでした。NIHの研究には患者34人が参加し、そのうち14人がNIHで診られ、残り20人は血液検体、それに何人かは脳脊髄液(CSF)検体を提供しました。しばし治療も受けた患者もおり、たとえばステロイド高用量投与や免疫グロブリン静注(IVIG)が施されました。そのようにNIHは初めこそ患者を助けようとしていたにもかかわらずやがて患者との接触を断つようになりました。去年の9月のDressen氏の神経検査の予定は遠隔面談となり、12月になるとNath氏は患者を来させないようにしました。多くの患者を長期間治療するようにNIHは設えられておらず、患者の地元の担当医が手当てにあたるのが最良だとNath氏は言っています。しかしNath氏の言い分とは裏腹に医師には何もしてもらえないという患者もいますし、気のせいだと決めつけられることもあります。そうして表向きは梯子を外したNIHですが、エール大学の岩崎 明子氏はNIHのNath氏の協力を仰いでワクチン接種後の反応とCOVID-19後遺症がどう関連するかを調べることを計画しています。すでに患者との話が始まっており、血液や唾液などの検体を患者から集めるつもりです。また自己抗体を疑うドイツの研究者Harald Pruss氏はマウスへのSARS-CoV-2ワクチン接種後の自己抗体の特定に取り掛かっています。Pruss氏は感染後やワクチン接種後の患者の治療にもあたっており、患者の血液から抗体のほとんどを取り除く治療を調べる臨床試験を近々開始したいと考えています。自己抗体などの免疫系の関与は患者の体験でも示唆されており、ワクチン接種後に不調に陥った患者の何人かはScienceの取材に応じて免疫抑制剤でいくらか良くなったと言っています。NIHのNath氏も同様の効果を把握しており、免疫抑制/調節作用があるIVIGやステロイドによるCOVID-19後遺症治療を調べているNIH主催臨床試験結果がワクチン関連の合併症にも役立つことを期待しています。岩崎氏がワクチン開発にも着手COVID-19研究で何かと目に耳にすることが多いエール大学の岩崎氏の取り組みは今やワクチン開発にも及んでいます。先週26日にbioRxiv誌に発表された同氏率いるチームのマウス実験の結果、mRNAワクチン筋肉注射に続くSARS-CoV-2スパイクタンパク質やそのmRNAの点鼻投与で呼吸器粘膜の免疫を安全に底上げして感染や発病を防ぎうることが示されました7)。次の段階として、より大きな動物や臨床試験での安全性や有効性の検討が必要です8)。将来的には他の粘膜ウイルス病原体にも今回と似た手段が通用しそうであり、岩崎氏の活躍を見聞きすることは今後ますます多くなりそうです。参考1)Antonelli M,et al.Lancet Infect Dis. 2022 Jan;22:43-55. 2)Long-COVID symptoms less likely in vaccinated people, Israeli data say / Nature3)Association between vaccination status and reported incidence of post-acute COVID-19 symptoms in Israel: a cross-sectional study of patients tested between March 2020 and November 2021. medRxiv. January 17, 20224)Six-month sequelae of post-vaccination SARS-CoV-2 infection: a retrospective cohort study of 10,024 breakthrough infections. medRxiv. November 08, 20215)In rare cases, coronavirus vaccines may cause Long Covid-like symptoms. Science.6)Murphy WJ, et al. N Engl J Med. 2022 Jan 27;386:394-396. 7)Unadjuvanted intranasal spike vaccine booster elicits robust protective mucosal immunity against sarbecoviruses. bioRxiv. January 26, 20228)岩崎 明子氏のTwitter投稿(2022年1月27日)

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ブースター接種こそ感染対策の要 -コロナワクチンブースター接種がコロナ死亡を90%減らす-(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 現在、日本でも世界でもオミクロン株の猛威により急激な新型コロナウイルス感染症の感染者が増加しているような状況である。米国や欧州の一部では感染拡大のピークを越え、収束傾向になっている地域もあるようだが、2022年1月中旬現在においてWHO(世界保健機関)でも各国の警戒を呼び掛けているような緊迫した状況が続いている。 本邦のコロナワクチン接種は2022年1月20日の時点で2回目接種終了者が全国民の約79%にあたる9,963万人を超えている状況である。ただし2021年末から始まったコロナワクチンの3回目接種、いわゆるブースター接種は194万人(日本全国民の約1.5%)にとどまっており、2回目接種終了後から時間が経過した高齢者や基礎疾患を持つ者、新型コロナウイルスやCOVID-19症例と接触する機会の多い医療従事者はブースター接種を待ち望んでいるところである。 コロナワクチンの3回目の接種、いわゆるブースター接種が日本でも粛々と進められているところである。一般的にワクチンの有効性、コロナの発症予防効果はデルタ株に比べてオミクロン株は低いとされている。さらにワクチン2回接種後の期間が長くなるとさらに効果が低下することがいわれており、接種直後はオミクロン株に対して約60%程度の発症予防効果を認めていたところ、5~6ヵ月が経過すると約10%に低下してしまうことが示されている(United Kingdom Health Security Agency, UKHSA 2021.12.31)。イスラエルの医療従事者に対するBNT162b2によるブースター接種の効果を検討した報告では、約1ヵ月の短い追跡期間ではあるものの、ブースター接種群はブースター非接種群に比べ90%以上もコロナ感染リスクを低下させる結果が示された(Spitzer A, et ai. JAMA. 2022 Jan 10. [Epub ahead of print])。この報告では症例の観察期間が2021年8~9月で行われており、オミクロン株が感染拡大する前の状況であることは注意が必要である。また先に示した英国からの報告では、ファイザー製コロナワクチンBNT162b2やモデルナ製コロナワクチンmRNA-1273のブースター接種後のオミクロン株に対する効果についても検討されており、BNT162b2では約70%、mRNA-1273では約80%まで発症予防効果が回復するとされた(United Kingdom Health Security Agency, UKHSA 2021.12.31)。 米国からの中和抗体価を測定した研究ではコロナワクチン2回接種後3ヵ月以内では高い中和抗体価を示したが、6~12ヵ月経過すると大幅に低下してしまうことが示されている。またオミクロン株に対しては2回接種後3ヵ月以内でも50%以上の方で中和抗体が消失するような結果であり、野生株に対する中和抗体価と比較するとBNT162b2接種群で122倍低く、mRNA-1273接種群では43倍低い結果となった。この報告ではブースター接種での中和抗体価の上昇も検討されており、野生株やデルタ株のブースター接種による中和抗体価の上昇は1~9倍にとどまっていたのに対し、オミクロン株はBNT162b2接種群で27倍、mRNA-1273接種群で19倍中和抗体価が上昇することが示され(Garcia-Beltran WF, et al. Cell. 2022 Jan 6. [Epub ahead of print])、オミクロン株に対抗するためにブースター接種が極めて重要であることが示唆された。 本論評で取り上げたイスラエルのRonen Arbelらの論文(Arbel R, et al. N Engl J Med. 2021;385:2413-2420.)は、BNT162b2を2回接種した約84万人を対象にブースター接種の効果を検証した報告である。この研究の調査対象者は2021年8月調査開始時に年齢が50歳以上で、5ヵ月以上前に2回目接種を完了した方で、約2ヵ月間に3回目接種を受けたブースター接種群75万8,118例と非ブースター接種群8万5,090例で比較検討された。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死亡が主要評価項目とされ、ブースター接種群で65例(10万人あたり0.16人/日)、非ブースター接種群で137例(10万人あたり2.98人/日)という結果が示された。背景因子や併存症による調整を行った後の両群のCOVID-19による死亡ハザード比は0.10であり、ブースター接種群では死亡率が90%低かった。65歳で区切った年齢や男女別でもブースター接種群がCOVID-19による死亡率が低かった。また副次評価項目として規定された新型コロナ感染者もブースター接種群で2,888例、非ブースター接種群で1万1,108例であり、ブースター接種群で83%低かった。 過去にはブースター接種の有効性として発症予防効果や感染予防効果、そして中和抗体価を評価した報告が主であったが、本研究からはブースター接種が死亡率の低下を示すという心強い結果と捉えることができる。 ただし本研究は50歳以上に限定した報告であり、50歳未満の若年者に当てはめることはできないことは注意が必要である。また解析期間は2021年8~9月の約2ヵ月間という短い時間での検討であることや、その時期には現在世界でも日本でも猛威を振るっているオミクロン株ではなく、B.1.617.2系統、いわゆるデルタ株がメインであったことは差し引いて解釈する必要がある。そして多くの方が懸念しているコロナワクチンの有害事象についての検討はなされておらず、今後のデータの集積に期待したいというのは筆者のRonen Arbelらも懸念されているところである。 この研究に含まれる対象者は約84万例が全例ワクチン2回接種者ということになる。ワクチン接種完了者における新規感染を、ワクチン接種を突破して発生した感染であることから「ブレークスルー感染」と一般的に呼称しているが、本研究でのコロナ感染者は全例ブレークスルー感染の範疇であるものと考える。ブレークスルー感染を惹起したウイルスの種類は、その国や地域のその時点で流行している背景ウイルスに規定される(山口,田中. ケアネット論評1422)が、もはや3回目のブースター接種を行っているか否かで死亡率が大きく異なっている現状では、ブレークスルーかどうかは少し意味合いが薄れていると考えざるを得ない。本邦でも全国民の約8割が2回目を接種完了している状況においては、今後の新型コロナウイルスとの戦いに打ち勝つためには変異ウイルスの違いはあれど、ブースター接種をいかに早く推し進めるかどうかにかかっているのではないか。オミクロン株の感染拡大で多くの医療機関で厳しい状況を目の当たりにしていると思われるが、そのような大変な状況下でもできる限りワクチン接種体制を整備していくことが望まれる。

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ファイザー製ワクチン、ブースター接種で死亡リスク9割減/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)mRNAワクチンのBNT162b2(Pfizer/BioNTech製)の、2回接種から少なくとも5ヵ月後にブースター接種を受けた人は、ブースター接種を受けていない人と比較して、COVID-19による死亡リスクが90%低下した。イスラエル・Clalit Health ServicesのRonen Arbel氏らが、同国半数超の国民が加入する健康保険データを基に解析を行い報告した。SARS-CoV-2のデルタ(B.1.617.2)変異株の出現と、BNT162b2ワクチンの経時的な有効性の低下により、早期にワクチンを接種した集団においてCOVID-19の再流行が発生したことから、イスラエルの保健省は2021年7月30日にBNT162b2ワクチンの3回目接種(ブースター接種)を承認したが、ブースター接種でCOVID-19による死亡率が低下するかどうかのエビデンスが必要とされていた。NEJM誌オンライン版2021年12月8日号掲載の報告。ブースター群と非ブースター群の計84万例超でCOVID-19死を比較 研究グループは、イスラエル国民の半数以上が加入している同国最大の医療保険組織「Clalit Health Services」のデータを用い、ブースター接種が承認された7日後の2021年8月6日時点で50歳以上であり、少なくとも5ヵ月前にBNT162b2ワクチンの2回目の接種を受けた人を対象として、2021年9月29日までの間のブースター接種者(ブースター群)と非接種者(非ブースター群)のCOVID-19による死亡について検討した。試験終了日において、ブースター接種後7日までの人は、非ブースター群に含めた。 時間依存共変量を用いるCox比例ハザード回帰モデルにより社会人口統計学的要因と併存疾患を補正し、ブースター接種の有無と死亡との関連を解析した。 解析対象は、適格基準を満たした84万3,208例であった。ブースター接種で死亡リスクが90%低下 84万3,208例中75万8,118例(90%)が、54日間の試験期間中にブースター接種を受けた。 COVID-19による死亡は、ブースター群で65例(0.16/10万人/日)、非ブースター群で137例(2.98/10万人/日)に認められた。非ブースター群に対するブースター群のCOVID-19による死亡の補正後ハザード比は、0.10(95%信頼区間[CI]:0.07~0.14、p<0.001)であった。 なお、著者は試験期間が54日間と短期であること、高齢者(60歳以上)が若年者(60歳未満)より早くブースター接種を開始していることが生存率に影響している可能性があること、重篤な有害事象に関するデータが不足していること、BNT162b2ワクチンのみの結果であること、などを研究の限界として挙げている。

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抗TROP2抗体薬物複合体Dato-DXd、TN乳がんでの第I相試験最新データ(TROPION-PanTumor01)/SABCS2021

 抗TROP2抗体薬物複合体datopotamab deruxtecan(Dato-DXd、DS-1062)の固形がんを対象とした第I相TROPION-PanTumor01試験のうち、切除不能なトリプルネガティブ(TN)乳がんにおける安全性と有効性に関する最新データについて、米国・Dana-Farber Cancer InstituteのIan Krop氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS 2021)で発表した。本データから、Dato-DXdが管理可能な安全性プロファイルと有望な抗腫瘍活性を示すことが示唆された。 本試験は進行中の多施設非盲検第I相試験で、進行/転移乳がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、その他のがんを対象に安全性と有効性が評価されている。今回、TN乳がんコホートにおける更新結果を発表した。・対象:標準治療後に病勢進行した切除不能なTN乳がん(ECOG PS 0~1)44例・投与スケジュール:42例はDato-DXd 6mg/kgを3週間ごとに静脈内投与、2例は8mg/kgを投与・評価項目:[主要評価項目]安全性、忍容性[副次評価項目]有効性(盲検下独立中央評価[BICR]による奏効率)、薬物動態など 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ(2021年7月30日)時点で、44例中13例(30%)が治療を継続し、30例(68%)が病勢進行、1例(2%)が有害事象により治療を中止していた。・年齢中央値は53歳(範囲:32〜82歳)で、30例(68%)が前治療を2ライン以上受けていた。前治療は、19例(43%)が免疫療法、13例(30%)は別のトポイソメラーゼ阻害薬が結合した抗体薬物複合体(うち10例はsacituzumab govitecan)が投与されていた。・BICRによる奏効率は34%(確定したCR/PR:14例、確定前のCR/PR:1例)で、病勢コントロール率(DCR)は77%だった。・別のトポイソメラーゼI阻害薬が結合した抗体薬物複合体による治療歴のない27例のサブグループ解析において、奏効率は52%(確定したCR/PR:13例、確定前のCR/PR:1例)で、DCRは81%だった。・奏効期間中央値は未到達(範囲:2.7〜7.4+ヵ月)だった。・治療中の有害事象(TEAE)は、全Gradeが98%、Grade3以上が45%に発現し、治療関連TEAEは全Gradeが98%、Grade3以上が23%に発現した。重篤な治療関連TEAEは5%に発現し、死亡例はなかった。・発現の多かった有害事象は、悪心、口内炎、嘔吐、倦怠感、脱毛症で、血液毒性と下痢の頻度は低かった。薬物関連の間質性肺疾患は報告されていない。 なお、本試験におけるHR+/HER2-乳がんコホートについては登録が完了している。ほかにも、TN乳がんに対してDato-DXd+デュルバルマブの有効性と安全性を評価するBEGONIA試験が進行中である。また、HR+/HER2-乳がんに対する第III相TROPION-Breast01試験が開始されており、今後、TN乳がんに対する第III相試験も予定されている。

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サクビトリル・バルサルタン:ステージBにエビデンスが出なかったけど、日本だけはステージAから使えてしまう矛盾(解説:絹川弘一郎氏)

 サクビトリル・バルサルタンはとても良い心不全治療薬である。もう少し正確に言うと素晴らしい軽症心不全治療薬である。Paradigm-HFやLifeのデータを見てもNYHA 4度には効かないし、自分の臨床経験でもその通りである。サクビトリル・バルサルタンは重症テスターともいえ、この薬剤に忍容性がない(=血圧が下がりすぎる、ないしは腎機能が悪化する)場合、NYHA 4度と認定しても構わないのではとすら、最近思う。しかし、血行動態が安定しているNYHA 2度のHFrEFには実によく効くし、リバースリモデリングも大いに期待できる。 閑話休題(それはさておき)、Paradise-MIという試験が発表されて、急性心筋梗塞(AMI)後LVEFが低下したか(40%以下)、または肺うっ血所見のある患者に対してramipril 10mg/dayと比較してサクビトリル・バルサルタン400mg/dayが心血管死亡や心不全入院を減らすかどうかが検証された。 もともと、HFrEFの治療というのはAMI後の遠心性リモデリングから心不全に至る道筋における神経体液性因子の悪循環を阻止するという動物実験モデルがそのベーシックリサーチ的枠組みであり、その視点でいえば、HFrEFの予後を改善する薬剤はすべからくAMI後のリモデリング抑制(時にリバースリモデリングも)とイベント抑制がセットになるべきである。事実、ACE阻害薬の有効性はEFが低下したAMI症例においてSAVE試験(カプトプリル)で実証されており、その後TRACE試験(トランドラプリル)でも追試されている。EFは問わずAMI全般でACE阻害薬にリモデリング抑制とイベント抑制があるというGISSI-3試験(リシノプリル)もあるし、AIRE試験(ramipril)ではEFは問わず心不全を合併したAMI症例での有効性を示している。ARNIはその機序から考えても(例えば、カルペリチドのAMI直後の投与がイベントを減らすというJ-WINDのデータなどから)、ACE阻害薬以上のイベント抑制効果を急性心筋梗塞後の患者でもたらすと想像していた。 しかし、このParadise-MIの結果は否定的である。確かに全体のハザード比[HR]が0.90でカプランマイヤー曲線もずっとramipril群より下にあるし、PCIをしたAMIとか、血圧低めの患者とか、Killip II度以上の急性心不全患者とか、効きそうなサブグループもあるが、やはり有意差なしは有意差なしである。ramiprilは日本では導入されていなくて、使用経験はないが、評判では“最強の”ACE阻害薬と言われている。何をもって最強というのかよくわからんけど(おそらくは降圧効果であろう)、カプトプリルが“最弱の”ACE阻害薬でその対極に位置する。ARBにも“最弱”ロサルタンがあるし、“最強”ARBはカンデサルタンかテルミサルタンか。 この強弱については歴史的に臨床試験の結果である程度の推測がされている。一番弱いはずのカプトプリルにロサルタンはOPTIMAAL試験で勝てないばかりか負けかかっており(HR:1.15、95%信頼区間[CI]:0.99~1.28)、それこそRAS阻害薬中の最弱という位置付けである。そしてVALIANT試験でカプトプリルにようやく引き分けたバルサルタンはその次に弱い感じである。 On Target試験というテルミサルタンとramiprilをハイリスク高血圧患者に対して投与してイベント比較をした試験もあって、そこでは引き分けなので(厳密にはAMI後のEF低下例ではないので引用する意味はないかもしれないが)、イメージとしてARBとACE阻害薬の最強対決が引き分けたみたいに思っている。そこで、日本にramiprilがない上で、通常AMI後にはramiprilより少し弱そうなエナラプリルを投与するのであるから、そこをARNIにしたら血圧の忍容性が良ければもう少しメリットがあるかもしれないという想像は可能である。 とはいえ、テルミサルタンが強かろうと、そもそもOPTIMAALやValiantのせいでAMI後にARBは推奨されてないから強いARB入れましょうともならない。今回ARNIの相手に最強ACE阻害薬を選んだのが間違いというか、やや調子に乗ったというか、エナラプリル相手が無難であったと思われる。 いずれにしても、もうこれで再戦はないので、心筋梗塞後のステージBにおいてACE阻害薬をARNIに切り替える、または最初から投与することを支持するハードなエビデンスはありません、という状況がずっと続く。ただし、この試験では“最初の”心不全増悪と心血管死亡を主要エンドポイントとしており、差は認めなかったけれども、ごく最近になって心不全による“総入院回数”と心血管死をエンドポイントに設定するとARNIが入院回数を減らしたという論文が出た。さらにParadise-MIのプロトコル論文によるとエコーデータをサブ解析用に取得しているようなので、左室リモデリングの点でARNIの方がramiprilより優れているとなれば、やっぱり効果はあるかもと言い出すかもしれない。しかし、ここにも小規模ながら最近negativeなデータがあって、心筋梗塞後3ヵ月以上経過した(しかし無症状のEF40%以下)患者に対するMRIで検討した左室リモデリングやNT-proBNPに対する効果はバルサルタン320mgとの比較で差がないとなっており、相手を選べば勝てるともいえない(これはHFrEFの一歩手前でSOLVD-preventionと同じような患者層であり、HFrEFにおいてARNIによるプラスアルファのリバースリモデリングが実体験上ある中でむしろ差がないことはとても意外である)。とはいえ、日本は世界で唯一高血圧に対する適応症をARNIが取得しており、ステージAから投与可能となっているから、ステージBのエビデンスなどあってもなくてもどっちでも一緒である。

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mRNAワクチン後24週間の感染リスク、ワクチンで差はあるか/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のmRNAワクチン、「BNT162b2」(Pfizer-BioNTech製)または「mRNA-1273」(Moderna製)を接種後24週間の感染リスクは4.5~5.8件/1,000人と低率であることが、米国・ハーバード公衆衛生大学院のBarbra A. Dickerman氏らによる、ワクチン接種済み米国退役軍人約44万人のデータの解析で明らかにされた。リスクは、BNT162b2よりもmRNA-1273で低く、こうした情勢はアルファ変異株、デルタ変異株が優勢だった時期にかかわらず一貫していたという。mRNAワクチンはCOVID-19に対して90%以上の効果があることが示されていたが、多様な集団におけるさまざまなアウトカムについて有効性の比較は行われていなかった。NEJM誌オンライン版2021年12月1日号掲載の報告。リスク因子に応じ、各ワクチン接種者を1対1でマッチングし追跡評価 研究グループは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)B.1.1.7変異株(アルファ株)が猛威を振るっていた2021年1月4日~5月14日にかけて、「BNT162b2」または「mRNA-1273」の初回接種を受けた米国退役軍人を対象に、電子健康記録を基に分析を行った。 接種者のリスク因子に応じて、各ワクチン接種者を1対1でマッチングし追跡評価した。アウトカムは、記録されたSARS-CoV-2感染、症候性COVID-19、COVID-19による入院やICUへの入室および死亡で、Kaplan-Meier推定量を用いてリスクを推算した。 また、B.1.617.2変異株(デルタ株)の影響を評価するため、別途2021年7月1日~9月20日にワクチン接種を受けた退役軍人を対象に試験を行った。感染、発症、入院リスクはBNT162b2接種群よりmRNA-1273接種群で低い 「BNT162b2」または「mRNA-1273」の接種者それぞれ21万9,842人について分析を行った。 アルファ株流行期24週間の追跡期間中の確定感染の推定リスクは、BNT162b2群が5.75件/1,000人(95%信頼区間[CI]:5.39~6.23)、mRNA-1273群が4.52件/1,000人(4.17~4.84)だった。 同リスクはBNT162b2群がmRNA-1273群より高く、1,000人当たりの過剰イベント数は、確定感染が1.23件(95%CI:0.72~1.81)、症候性COVID-19が0.44件(0.25~0.70)、COVID-19による入院は0.55件(0.36~0.83)、同ICU入室は0.10件(0.00~0.26)、同死亡は0.02件(-0.06~0.12)だった。 なお、デルタ株流行期に注目した12週間の追跡調査において、確定感染に対する過剰リスク(BNT162b2 vs. mRNA-1273)は、6.54件/1,000人(95%CI:-2.58~11.82)だった(リスク比:1.58、95%CI:0.85~2.33)。 結果を踏まえて著者は、「これらのワクチンについて有効性と安全性のさらなる比較評価が必要である」とまとめている。

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LVEF40%超の心不全、サクビトリル・バルサルタンvs.RAS系阻害薬/JAMA

 心不全で左室駆出分画(LVEF)40%超の患者において、サクビトリル・バルサルタンは、レニン・アンジオテンシン(RAS)系阻害薬またはプラセボと比較して、12週後のN末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)値の低減効果は大きかったが、24週後の6分間歩行距離の改善について有意差はなかったことを、ドイツ・シャリテ大学医学部のBurkert Pieske氏らが、約2,600例を対象に行った無作為化比較試験で明らかにした。これまで、サクビトリル・バルサルタンとRAS系阻害薬を比較した有益性のエビデンスをサロゲートアウトカムマーカー、6分間歩行距離、およびQOLで検討した試験は限られていた。JAMA誌2021年11月16日号掲載の報告。対照群にはACE阻害薬、ARB、プラセボのいずれかを投与 研究グループは、2017年8月~2019年10月にかけて、32ヵ国、396ヵ所の医療機関を通じ、24週間の無作為化並行群間比較二重盲検試験を行った。被験者はLVEFが40%超、高値NT-proBNP、構造的心疾患があり、QOL低下が認められる患者で、4,632例をスクリーニングし、2,572例が被験者として組み込まれた。追跡は、2019年10月28日まで行った。 被験者を1対1の割合で無作為に2群に分け、一方にはサクビトリル・バルサルタンを投与し(1,286例)、もう一方には、患者のバックグラウンドにより、エナラプリル(標的投与量:10mg、ACE阻害薬)、バルサルタン(標的投与量:160mg、ARB)、プラセボのいずれかを投与した(対照群1,286例)。 主要エンドポイントは、12週時点のNT-proBNP値と、24週時点の6分間歩行距離の、それぞれベースラインからの変化だった。副次エンドポイントは、24週時点のQOLスコアとNYHAクラスの、それぞれベースラインからの変化だった。QOLスコアやNYHAクラスも有意差なし 無作為化した被験者2,572例の平均年齢は72.6歳(SD 8.5)、女性は50.7%で、試験を完了したのは87.1%(2,240例)だった。ベースラインのNT-proBNP値の中央値は、サクビトリル・バルサルタン群786pg/mL、対照群760pg/mLだった。 12週後のNT-proBNP値の減少幅はサクビトリル・バルサルタン群が対照群に比べ有意に大きく、ベースラインに対する補正後幾何平均比は、対照群0.98pg/mLに対しサクビトリル・バルサルタン群0.82pg/mLだった(補正後幾何平均比:0.84、95%信頼区間[CI]:0.80~0.88、p<0.001)。 ベースラインから24週時の6分間歩行距離の平均変化値は、サクビトリル・バルサルタン群9.7m延長、対照群12.2m延長と、有意差はなかった(補正後平均群間差:-2.5m、95%CI:-8.5~3.5、p=0.42)。カンザス市心筋症質問票‐臨床サマリースコア(KCCQ-CS)の平均変化値も、それぞれ12.3、11.8と、両群で有意差はなかった(平均群間差:0.52、-0.93~1.97)。NYHAクラスが改善した人の割合も、それぞれ23.6%、24.0%と、有意差は認められなかった(補正後オッズ比:0.98、95%CI:0.81~1.18)。 最も多く見られた有害イベントは、低血圧(サクビトリル・バルサルタン群14.1%、対照群5.5%)、アルブミン尿(12.3%、7.6%)、高カリウム血症(11.6%、10.9%)だった。

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2型DMの新規発症リスクを低下・増加させる降圧薬は?/Lancet

 降圧治療は2型糖尿病の新規発症予防に効果的な戦略であるが、その効果は降圧薬のクラスにより異なっており、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)およびアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)で良好な結果が得られることが、英国・オックスフォード大学のMilad Nazarzadeh氏らBlood Pressure Lowering Treatment Trialists' Collaboration(BPLTTC)のメタ解析で示された。降圧治療は、糖尿病の細小血管および大血管合併症を予防する戦略として確立されているが、糖尿病そのものの予防に寄与するかは不明であった。著者は、「降圧薬のクラスによる差はおそらくオフターゲット作用の違いによるものと考えられる。今回のエビデンスは、糖尿病発症予防のために降圧薬のクラスを選択する必要があることを支持するものであり、個々の臨床的な糖尿病リスクに応じた薬剤選択の改善に結び付くだろう」と述べている。Lancet誌2021年11月13日号掲載の報告。RCT 19件・約14万6千例をメタ解析 BPLTTC研究グループは、降圧治療が新規2型糖尿病の発症リスクに及ぼす影響を評価するとともに、5つの主要なクラスの降圧薬の新規2型糖尿病発症リスクに対する効果の違いを検討する目的で、無作為化試験の参加者個々のデータを用い、1段階法によるメタ解析ならびにネットワークメタ解析を行った。 対象は、1次予防および2次予防の効果について特定クラスの降圧薬とプラセボまたは他のクラスの降圧薬との比較を行い、各群1,000人年以上追跡した無作為化比較試験とした。ベースラインにおいて糖尿病と診断されている患者、および糖尿病既往の患者を対象とした試験はすべて除外した。 1段階法による個人データのメタ解析は層別Cox比例ハザードモデルを、個人データのネットワークメタ解析はロジスティック回帰モデルを用い、薬剤クラスの比較に関して相対リスク(RR)を算出した。 全体では、1973~2008年に実施された22件の臨床試験のデータが解析対象となった。1段階法による個人データのメタ解析には、このうち19件の無作為化比較試験から得られた14万5,939例(男性8万8,500例[60.6%]、女性5万7,429例[39.4%])が組み込まれ、個人データのネットワークメタ解析には全22試験が組み込まれた。全体では収縮期血圧5mmHg低下で2型DMの発症リスクが11%低下 追跡期間中央値4.5年(IQR:2.0)において、9,883例が新たに2型糖尿病と診断された。収縮期血圧が5mmHg低下した場合、追跡期間中の2型糖尿病の発症リスクは、全体で11%低下した(ハザード比:0.89、95%信頼区間[CI]:0.84~0.95)。 5つの主要なクラスの降圧薬の効果に関する検討では、プラセボと比較してACEI(RR:0.84、95%CI:0.76~0.93)、ARB(0.84、0.76~0.92)は、2型糖尿病の新規発症リスクを減少することが示された。一方、β遮断薬(1.48、1.27~1.72)、およびサイアザイド系利尿薬(1.20、1.07~1.35)は2型糖尿病の新規発症リスクを増加することが示され、カルシウム拮抗薬(1.02、0.92~1.13)についてはマテリアルな影響が見つからなかった。

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コロナワクチン3回接種、抗体はどのくらい増える?/JAMA

 新型コロナのファイザー製ワクチン(BNT162b2:以下、ワクチン)の60歳以上での抗体価の持続については、まだ不明瞭な点が多い。そこで今回、イスラエル・テルアビブ大学のNoa Eliakim-Raz氏らは、60歳以上を対象に3回目ワクチンの接種前後の抗体価を調査した。その結果、3回目接種が接種10~19日後のIgG抗体価の増加と有意に関連していることが明らかになった。JAMA誌オンライン版11月5日号のリサーチレターに掲載された。ワクチン3回目接種前と接種10~19日後のIgG抗体価をを測定 ワクチンを2回接種した人の免疫応答を年齢で見た場合、65~85歳では18~55歳よりも低いことが明らかになっている。さらに、2回目のワクチンを接種した4,868人の医療従事者でとくに65歳以上では、2回目接種から6ヵ月以内に液性免疫(IgG抗体、中和抗体)の有意な低下が観察されている。また、イスラエルのある研究1)で、3回目接種が新型コロナウイルス感染と重症者の発生率低下との関連性を示唆していたことから、本研究では60歳以上の3回目接種による免疫反応を見るために、血清学的検査データを評価項目として追加した。 イスラエルでのワクチン3回目接種が世界で初めて承認後、Rabin Medical Center(RMC)のワクチン接種センターで60歳以上の研究参加者を募集、97例が適格だった。除外基準は、新型コロナウイルス既感染者と活動性の悪性腫瘍を有する者だった。IgG抗体価を3回目の接種前(2021年8月4~12日)と接種10~19日後(2021年8月16〜24日)にSARS-CoV-2 IgG II Quant assayを用いて測定した。血清陽性は、50任意単位(AU:arbitrary units)/mL以上と定義された。 ワクチン3回目接種前と接種10~19日後の抗体価を調査した主な結果は以下のとおり。・97例の年齢中央値は70歳(四分位数[IQR]:67~74)で、61%が女性だった。・3回目の投与前(最初のワクチン接種後の中央値:221日、IQR:218~225)の段階で、94例(97%)が陽性だった。・IgG抗体価の中央値は、3回目接種後に有意に増加し、440AU/mL(IQR:294~923)から2万5,468AU/mL(IQR:1万4,203~3万6,618、p

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新しい作用機序で心血管イベントを抑制するHFrEF治療薬「ベリキューボ錠2.5mg/5mg/10mg」【下平博士のDIノート】第86回

新しい作用機序で心血管イベントを抑制するHFrEF治療薬「ベリキューボ錠2.5mg/5mg/10mg」今回は、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬「ベルイシグアト(商品名:ベリキューボ錠2.5mg/5mg/10mg、製造販売元:バイエル薬品)」を紹介します。本剤は、標準治療を受けている左室駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)患者に対して、新しい作用機序で心血管イベントリスクを低減させることが期待されています。<効能・効果>本剤は、慢性心不全(ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)の適応で、2021年6月23日に承認され、9月15日に発売されました。なお、左室駆出率の保たれた慢性心不全(HFpEF)における本剤の有効性および安全性は確立していません。<用法・用量>通常、成人にはベルイシグアトとして、1回2.5mgを1日1回食後経口投与から開始し、2週間間隔で1回投与量を5mgおよび10mgに段階的に増量します。なお、血圧など患者の状態に応じて適宜減量します。<安全性>国際共同第III相試験(VICTORIA、試験16493)において、副作用は本剤投与群2,519例中367例(14.6%)で報告されました。主な副作用は、低血圧172例(6.8%)、浮動性めまい37例(1.5%)、悪心19例(0.8%)、起立性低血圧、消化不良各14例(0.6%)、疲労11例(0.4%)、頭痛10例(0.4%)などでした。なお、重大な副作用として、低血圧(7.4%)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は心臓や血管の機能を調節し、慢性心不全が悪くなるのを抑えます。2.血管を拡張させる作用によって、めまい・ふらつきが現れることがあります。高い所での作業、自動車の運転や機械の操作には注意してください。3.(女性に対して)本剤を服用中および服用終了後一定期間は確実な方法で避妊してください。妊娠を希望する場合は医師に伝え、今後の方針について相談してください。<Shimo's eyes>本剤は、慢性心不全の適応で承認された初の可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬です。既存のsGC刺激薬としてはリオシグアト(商品名:アデムパス)が肺動脈性肺高血圧症などの適応で承認されています。慢性心不全の病態では、内皮細胞機能不全による一酸化窒素(NO)産生の低下やsGCの機能不全により、cGMPシグナルの低下が引き起こり、その結果として心筋および血管の機能不全の一因、さらには心不全の悪化に寄与していると考えられます。本剤は、NO受容体であるsGCを直接刺激する作用と、内因性NOに対するsGCの感受性を高める作用の2つの機序により、心血管系の重要なシグナル伝達経路であるNO-sGC-cGMP経路を活性化して、慢性心不全の進行を抑制します。日本人を含む国際共同第III相試験(VICTORIA、試験16493)では、慢性心不全の標準的な治療を受けているHFrEF患者に対して本剤またはプラセボが投与されました。前治療として、β遮断薬、ACE阻害薬またはARB、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)の3剤併用療法を受けていた患者が59.7%を占めていました。その結果、本剤群では、心血管死または心不全による初回入院の複合エンドポイント発現の相対リスクが10%減少しました(ハザード比[HR]:0.90、95%信頼区間[CI]:0.82~0.98)。本剤と既存のsGC刺激薬であるリオシグアトは、降圧作用を増強する恐れがあるため併用禁忌であり、シルデナフィルを含むPDE5阻害薬、一硝酸イソソルビドなどの硝酸剤およびNO供与剤も同様の理由から併用注意となっています。なお、本剤投与前の収縮期血圧が100mmHg未満の患者では過度の血圧低下が起こる恐れがあるため血圧の確認も必要です。近年、HFrEFに対する新しい治療薬として、HCNチャネル阻害薬のイバブラジン(商品名:コララン)、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)のサクビトリルバルサルタン(同:エンレスト)、SGLT2阻害薬のダパグリフロジン(同:フォシーガ)などが使用できるようになりました。本剤は既存の治療薬とは異なる作用機序であり、標準治療が効果不十分な患者であっても心血管イベントリスクが低減する可能性があります。参考1)PMDA 添付文書 ベリキューボ錠2.5mg/5mg/10mg

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原発性アルドステロン症〔PA:Primary aldosteronism〕

1 疾患概要原発性アルドステロン症(PA)は治癒可能な高血圧の代表的疾患である。副腎からアルドステロンが過剰に分泌される結果、腎尿細管からのナトリウム・水再吸収の増加による循環血漿量増加、高血圧を呈するととともに、腎からのカリウム排泄による低カリウム血症を示す。典型例では高血圧と低カリウム血症の組み合わせが特徴であるが、近年は、血清カリウムが正常な例も多く経験され、通常の診察のみでは本態性高血圧との区別がつかない。高血圧は頻度の高い生活習慣病であることから、日常診療において常にその診断に配慮する必要がある。頻度が高く、全高血圧の約3~10%を占めることが報告され、わが国の患者数は約100万人とも推計されている。典型例は片側の副腎腺腫が原因となる「アルドステロン産生腺腫」であるが、両側の副腎からアルドステロンが過剰に分泌される両側性の原発性アルドステロン症(「特発性アルドステロン症」と呼ばれてきた)もあり、最近では、前者より後者の経験数が増加している。腺腫による場合は病変側の副腎摘出により、高血圧、低カリウム血症が治癒可能で、治癒可能な二次性高血圧の代表的疾患である。一方、診断の遅れは治療抵抗性高血圧の原因となり、これに低カリウム血症、アルドステロンの臓器への直接作用が加わって、脳・心血管・腎などの重要臓器障害の原因となる。わが国の研究からも通常の高血圧より、脳卒中、心不全、心肥大、心房細動、慢性腎臓病の頻度が高いことが明らかにされていることから、早期診断と特異的治療が極めて重要である1)。腺腫によるPAでは、細胞膜のカリウムチャンネルの一種であるKCNJ5の遺伝子変異などいくつかの遺伝子異常が発見され、アルドステロンの過剰分泌の原因となることが明らかにされている。一方、両側性は肥満との関連が示唆2)されているが、病因は不明である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 自覚症状低カリウム血症がある場合は、四肢のしびれ、筋力低下、脱力感、四肢麻痺、多尿、多飲などを認める。正常カリウム血症の場合では、高血圧のみとなり、血圧の程度に応じて頭痛などを認めることもあるが、非特異的な症状であり、本態性高血圧との区別はつかない。■ どのようなケースで疑うか正常カリウム血症で特異的な症状を認めない場合は本態性高血圧症と鑑別が困難なことから、すべての高血圧患者でその可能性を疑う必要があるが、ガイドラインでは特にPAの頻度が高い高血圧患者を対象として積極的にスクリーニングすることを推奨している(表)3)。表 PAの頻度が高いため、特にスクリーニングが推奨される高血圧患者低カリウム血症合併(利尿薬投与例を含む)治療抵抗性高血圧40歳未満での高血圧発症未治療時150/100mmHg以上の高血圧副腎腫瘍合併若年での脳卒中発症睡眠時無呼吸症候群合併(文献3より引用)■ 一般検査所見代謝性アルカローシス(低カリウム血症がある場合)、心電図異常(U波、ST変化)を認めることがある。典型例では低カリウム血症を認めるが、正常カリウム血症の症例が多い。また、血清カリウム濃度は(1)食塩摂取量、(2)採血時の前腕の収縮・伸展、(3)溶血などのさまざまな要因で変動することから、適宜、再評価が必要である。■ スクリーニング検査血漿アルドステロン濃度(PAC)と血漿レニン活性(PRA)を測定し、両者の比率アルドステロン/レニン活性比(ARR)≧200以上かつPAC≧60pg/mLの場合に陽性と判定する。ARRは分母であるPRAに大きく依存することから、偽陽性を避けるためにPACが一定レベル以上であることを条件としている。従来、PACはラジオイムノアッセイにより測定されてきたが、本年4月から化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)に変更され、それに伴ってPAC測定値が大幅に低下した。このためARR100~200の境界域も暫定的に陽性とし、個々の例で患者ニーズと臨床所見を考慮して検査方針を判断することが推奨される。■ 機能確認検査スクリーニング陽性の場合、アルドステロンの自律性・過剰産生を確認するために機能確認検査を実施する。カプトプリル試験、生食負荷試験、フロセミド立位試験、経口食塩負荷試験がある。カプトプリル試験は外来でも実施可能である。フロセミド立位試験は起立に伴い低血圧を来すことがあるので、前2つの検査が実施困難な場合を除き、推奨されない。一検査が陽性の場合、機能的にPAと診断する。測定法の変更に伴い、陽性判定基準も見直されたため注意を要する。約25%にコルチゾール同時産生を認めるため、明確な副腎腫瘍を認める場合には、デキサメタゾン抑制試験(1mg)を実施する。降圧薬はレニン・アルドステロン測定値に影響するため、可能な限り、Ca拮抗薬、α遮断薬の単独あるいは併用が推奨されるが、血圧コントロールが不十分な場合は、血圧管理を優先し、ARBやACE阻害薬を併用する。ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の影響は比較的大きいが、高血圧や低カリウム血症の管理が困難な場合は、適宜使用する必要がある。■ 局在・病型診断病変が片側性か両側性か、片側性の場合、右副腎か左副腎かを明らかにする。副腎摘出術の希望がある場合に実施する。まず副腎腫瘍の有無を確認するため造影副腎CTを実施するが、PAの腺腫は小さいことから、約60%はCTで腫瘍を確認できない。一方、明確な腫瘍を認めても非機能性腺腫の可能性があり、腫瘍の機能評価はできない。このため、確実な局在・病型診断には副腎静脈サンプリングが最も推奨される。副腎静脈血中のアルドステロン濃度/コルチゾール濃度比の左右差(Lateralized ratio)にて病変側を判定する。侵襲的なカテーテル検査であり、技術に習熟が必要であることなどから、専門医療施設での実施が推奨される。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 主たる治療法副腎腫瘍を有する典型的な片側性PAでは腹腔鏡下副腎摘出術が第1選択、両側性や手術希望が無い場合は、MR拮抗薬を主とする薬物治療を行う。片側性PAでは手術による降圧効果が薬物治療より優れることが報告されている。通常の降圧薬のみで血圧コントロールが良好であっても、PAではアルドステロン過剰に対する特異的治療(手術、MR拮抗薬)による治療が推奨される。スクリーニング陽性であるが、機能確認検査を初めとする精査を実施しない場合、臨床所見の総合判断に基づき、MR拮抗薬投与の必要性を検討する。■ 診断と治療のアルゴリズム日本内分泌学会診療ガイドラインの診療アルゴリズムを図に示す3)。PAの頻度が高い高血圧患者でスクリーニングを行い、陽性の場合に機能確認検査を実施する。1種類の検査が陽性判定の場合に臨床的にPAとし、CT検査さらには、患者の手術希望に応じて副腎静脈サンプリングを実施する。機能確認検査以降の精査は、専門医療施設での実施が推奨される。局在・病型診断の結果に基づき、手術あるいは薬物治療を選択する。図 日本内分泌学会PAガイドラインにおける診療アルゴリズム3)画像を拡大する(文献3より引用)4 今後の展望局在・病型診断には副腎静脈サンプリングが標準的であるが、侵襲的検査であるため、代替えとなる各種バイオマーカー4)、PETを用いた非侵襲的画像診断法5)の開発が進められている。MR拮抗薬に変わる治療薬として、アルドステロン合成酵素の阻害薬の開発が進められている。PAの多くが両側性PAであることから、その病因解明、適切な診断、治療方針の確立が必要である。5 主たる診療科診断のスタートは高血圧の診療に従事する一般診療クリニック、市中病院の内科などである。スクリーニング陽性例は、内分泌代謝内科、高血圧内科などの専門外来に紹介する。副腎静脈サンプリングの実施が予想される場合は、それに習熟した専門医療施設への紹介が望ましい。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難治性副腎疾患プロジェクト(医療従事者向けのまとまった情報)「重症型原発性アルドステロン症の診療の質向上に資するエビデンス構築(JPAS)」研究班(研究開発代表者:成瀬光栄)(医療従事者向けのまとまった情報)「難治性副腎疾患の診療に直結するエビデンス創出(JRAS)」研究班(研究開発代表者:成瀬光栄)(医療従事者向けのまとまった情報)「難治性副腎腫瘍の疾患レジストリと診療実態に関する検討」研究班(主任研究者:田辺晶代)(医療従事者向けのまとまった情報)1)Ohno Y, et al. Hypertension. 2018;71:530-537.2)Ohno Y, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2018;103:4456-4464.3)日本内分泌学会「原発性アルドステロン症診療ガイドライン策定と診断水準向上」委員会 編集.原発性アルドステロン症診療ガイドライン2021.診断と治療社;2021.p.viii.4)Nakano Y, et al. Eur J Endocrinol. 2019;181:69-78.5)Abe T, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2016;101:1008-1015.公開履歴初回2021年11月11日

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細胞培養由来4価ワクチン、小児で良好なインフル予防効果/NEJM

 インフルエンザ流行期の健康な小児/青少年における感染予防では、細胞培養由来4価不活化インフルエンザワクチン(IIV4c、Flucelvax Quadrivalent、英国・Seqirus製)は非インフルエンザワクチンと比較して、インフルエンザワクチン接種歴の有無を問わず良好な有効性が認められ、有害事象の発現は両者でほぼ同様であることが、オーストラリア・メルボルン大学のTerence Nolan氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2021年10月14日号で報告された。3回の流行期、8ヵ国の無作為化第III/IV相試験 研究グループは、8ヵ国の小児/青少年において、Madin-Darbyイヌ腎臓(MDCK)細胞株を用いたIIV4c(A/H1N1、A/H3N2、B/Yamagata、B/Victoria)の有効性、免疫原性、安全性の、非インフルエンザワクチン(髄膜炎菌ACWY[A、C、W-135、Y群]ワクチン)との比較を目的に、観察者盲検化層別無作為化第III/IV相試験を行った(Seqirusの助成による)。 3回のインフルエンザ流行期に、8ヵ国(39施設)で参加者(2~<18歳)が募集された。各流行期の参加国は、シーズン1(2017年の南半球の流行期[~2017年12月31日])がオーストラリア、フィリピン、タイ、シーズン2(2017~18年の北半球の流行期[~2018年6月30日])がエストニアとフィンランドで、シーズン3(2018~19年の北半球の流行期[~2019年6月30日])はエストニア、フィンランド、リトアニア、ポーランド、スペインだった。 参加者は、IIV4cまたは髄膜炎菌ACWYワクチンの接種を受ける群(比較群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。全参加者が、試験ワクチンの1回目の接種を受けた。インフルエンザワクチン接種歴がなく、IIV4c群に割り付けられた2~<9歳の小児は、29日目に2回目の接種を受け、比較群に割り付けられた小児にはプラセボが接種された。有効性と安全性に関して、少なくとも180日間の追跡が行われた。 インフルエンザ様疾患に罹患した参加者は、鼻咽頭拭い液を採取され、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法およびウイルス培養でインフルエンザウイルスの有無が確定された。 主要エンドポイントは、2~<18歳の集団における、最終接種から14日以降、流行期最終日までに検査で確認されたA型またはB型インフルエンザの初回発生であった。有効率は、A/H1N1が80.7%、A/H3N2は42.1%、B型は47.6% 3回の流行期に4,514例(平均[SD]年齢8.8±4.1歳、女性48.5%)が登録され、IIV4c群に2,258例、比較群に2,256例が割り付けられた。全体の65.9%がインフルエンザワクチン接種歴を有し、50.7%が2~<9歳であった。 全体のインフルエンザウイルス感染者は、IIV4c群が7.8%(175/2,257例)、比較群は16.2%(364/2,252例)であり、IIV4c群の有効率は54.6%(95%信頼区間[CI]:45.7~62.1)であった。 A型インフルエンザのうちA/H1N1に対するIIV4c群の有効率は80.7%(95%CI:69.2~87.9)、A/H3N2に対する有効率は42.1%(20.3~57.9)であり、B型インフルエンザに対する有効率は47.6%(31.4~60.0)であった。年齢別、性別、人種別、インフルエンザワクチン接種歴の有無別のサブグループで、IIV4c群の有効性(有効率42.1~82.3%)が一貫して認められた。 免疫原性の評価には721例(2~<9歳、IIV4c群364例、比較群357例)が含まれた。IIV4c群における2つの流行期(シーズン2と3)のワクチン接種後の幾何平均抗体価(GMT)は、A/H1N1で283.5から380.7へ、B/Victoriaで45.3から66.8へ、B/Yamagataでは52.8から108.5へと、それぞれ増加した。比較群では、シーズン2と3で接種後のGMT増加は観察されなかった。 接種後6時間~7日までに非自発的に報告された有害事象の割合は、IIV4c群が51.4%、比較群は48.6%であった。発熱(体温≧38.0℃)は、IIV4c群が5.3%、比較群は4.5%にみられ、重度発熱(≧40.0℃)はそれぞれ0.3%および0.2%で発現した。また、重篤な有害事象は、1.1%および1.3%に認められた。担当医によってワクチン関連と判定された有害事象はなく、試験中止の原因となった有害事象もなかった。 著者は、「IIV4cは、卵を使用しないインフルエンザワクチン製造プラットフォームで作製されており、卵馴化変異の回避や、新型のインフルエンザウイルス発生時の対応に要する時間の短縮など、一定の利点を有する」と指摘している。

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コロナ感染による抗体持続、飲酒とARB服用で差/神奈川県内科医学会

 神奈川県内科医学会は、新型コロナウイルス感染後の抗体の有無について、無症候性感染者を対象として、抗体の獲得とその継続について調査を行った。2020年5月18日~6月24日に県内65施設において医師・看護師、通院患者、検診受診者など1,603例を対象に抗体検査を行い、検査結果が陽性かつ無症候性であった参加者を対象に、2、4、6ヵ月後に再度抗体検査を行った。 主な結果は以下のとおり。・1,603例中、無症候性感染が認められた33例が追跡調査の対象となった。抗体陽性継続者は、2ヵ月後11/32(34.4%)、4ヵ月後8/33(24.2%)、6ヵ月後8/33(24.2%)であり、これまでに報告されている症候性感染者の抗体継続率よりも低かった。・2、4ヵ月後に抗体陰性になった群、6ヵ月後も抗体陽性が継続した群に分け、背景情報を比較した結果、「飲酒習慣なし」「降圧剤アンジオテンシンII受容体阻害薬(ARB)服用歴あり」が、抗体継続の要因である可能性が示唆された。 今回の調査を中心となって行った神奈川県内科医学会の松葉 育郎氏らは、今回は無症候性感染者を対象としており抗体陽性判明後からの追跡となるため、これまでの症候性感の報告と単純な比較はできないとしつつ、無症候性感染者が短期間で抗体が検出されなくなった背景には症状の重篤度が関係していることが推察され、これまでも重症度の高い患者ほどサイトカイン・ケモカイン産生量が多いことも報告されていることから、無症候性ゆえに獲得した抗体価も小さいと考えられる、としている。 本調査の結果は、日本内科学会英文誌Internal Medicineに受理されており、追って掲載されるという。

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進化する放射線治療に取り残されてる?new RTの心毒性対策とは【見落とさない!がんの心毒性】第7回

今回のお話ひと昔前までの放射線治療(RT)では、がん病変に関連した広範囲を対象に照射していたため、ホジキンリンパ腫、乳がん、食道がん、肺がんなど胸部RTが必要ながん腫では心臓縦隔が広範囲に照射されてしまい、急性期および遠隔慢性期に放射線関連心血管合併症(RACD :Radiation Associated Cardiovascular diseases:)を発症していました。しかし、最近は心臓回避技術の向上、いわゆるRTのオーダーメイド治療が進化しRACDの発症頻度は減少しています。ゆえに一昔前と同様の考察でRACDに対峙していては時代遅れです。一方、放射線による組織障害、その結果として生じた心血管障害への対応には案外これまで通りのRACDへの理解が不可欠であり、RACDリスク管理として一般的心血管リスク因子の適正化が重要です。つまるところ、従来から循環器医が注力している診療要素がここでも大事なのは明らかで、結局は、臨床におけるRACDに対する急な理論武装は不要な様に思っています。もちろん、現代のRTに精通し、それによる新規RACDへの探究は極めて重要と考えますが、まずは基本に忠実な診療を施す事、そしてこれは放射線治療医の先生方へのお願いとなりますがRACDスクリーニングへも目を向ける重要性をお届けしたいと思います。そのほかにも、最新RTが不整脈治療に有効となる可能性!? なんていう話題についてもご紹介してみたいと思います。なお、RACDという表記について、別のRIHD(Radiation Induced Heart Disease)の表記も見かけます。この領域において、まだ統一表記になっていないと理解しています。今回は筆者が従来から使用し、また今回2021年第4回日本腫瘍循環器学会でも表記で利用されたRACDを本稿では使用します。RACDの基本の基:平均心臓照射量とのリニアな関係まずは2013年NEJM誌からの報告です。乳がん患者においてRT治療後5年目から冠動脈イベント頻度は高まりはじめ、少なくとも20年間はリスクが続き、平均心臓照射量が多ければ多いほど冠動脈イベントの増加に関連する事が示されました1)(図1)。(図1)心臓への平均照射量に応じた冠動脈イベントの割合1)画像を拡大する「線量依存性」かつ「慢性期発症」というのがRACDの基本の基です。多くはないものの急性発症もある事は申し添えておきます。RACDの発症は近年の技術革新により減少しています。しかし、がん患者、がんサバイバーが更に増加する昨今、そして、高齢化により心疾患を抱えたRT患者の増加も想像にたやすく、今後も臨床においてRACDを診療する機会はなくならないでしょう。別途、胸部以外の部位へのRTでも炎症やほかの機序により心血管障害を起こす可能性もあるのですが2)、混乱を来すのでここでは扱いません。RTの技術革新、New RACDは従来型とは違うのか次にホジキンリンパ腫に対するRTを例に技術革新を紹介します3)。(図2)ホジキンリンパ腫に対するRTの時代ごとの変遷画像を拡大する(A)時代ごとで分かるRT技術革新。拡大放射線療法であるマントル照射(B)以前の治療法(D)(B)に比較しIMRTを用いたinvolved-site RTでは(C)心臓を回避したより限局的治療を可能とし、DIBH(deep inspiration breath-hold、深吸気呼吸停止)法も適用し心臓部位への照射量は軒並み抑えられています3)(図2)を見ると心臓への照射量は劇的に減少しています。強度変調放射線治療(IMRT:intensity-modulated RT)、定位放射線治療(SRT:Stereotactic RT)のほか、粒子線治療といった高精度放射線療法の導入により、オーダーメイド放射線治療ができるようになった近年、一昔前のRTと現在のものとでは、もう同等比較はできません。心臓照射はより回避され、がん病変へのより限局的治療へと進化し、冠動脈、心筋、弁膜など心臓内の各重要部位が回避できるRTに進化を遂げています。この新時代RTいわゆるNew RACDは従来のものとは異なり、より限局的な心血管障害になるでしょうし、患者毎、がん病変毎で個々に異なるRACDの病態を呈する前提で行われていくでしょう。そういう意味で、New RACDとRACDは確実に異なります。問題点は…当の小生もですが、New RACDについて深く語れるほど循環器医がRTの進化に追いついておらず、New RACDの詳細を大して認識できていないという事です。ただし、New RACDの発症形態、特有の予後などまだ不明な点が多いものの、結果として生じた心血管系組織障害に対する臨床的対応はそれほど変わらないとも言えます。 結局、主治医がとるべき臨床的対応は、従来のRACDに対するものとさほど変わらないのではないかと思っています。よく知られているRACD前述した通り、New RACDはより限局的な心血管障害となり、発症形態は従来のRACDとは異なると推察されます。、その臨床的病型について、注意点はこれまでとさほど変わらないとし、まずはRACDの代表的な所をお示しします。RACDとしておさえておきたい病態を(図3)に示しました4),5)。RTにより心室では拘束性障害や収縮性障害をきたします。そのほか、冠動脈硬化、弁膜硬化、刺激伝導障害、自律神経機能障害、心膜疾患、心嚢水貯留、上行大動脈の全周性高度石灰化 (porcelain aorta)などが生じます。(図3)RACDとして挙げられる心臓関連病態4),5)画像を拡大するRACDの多くは遠隔慢性期に発症―RT後にも症例に応じたRACDスクリーニング計画、心血管リスク因子の適正化が重要RACDの特徴は急性期障害もあるものの、問題の多くが治療後遠隔期の慢性期障害となる事です。ゆえに、がん治療病院の管理から離れた後に発症する懸念から、いかにあらかじめの患者教育が大事かということになります。そして、RACDリスクが高い患者にはRT後の定期的なRACDスクリーニングの計画が推奨されます。(表1)にRACDのリスク因子を示しました。中には「心血管疾患リスク因子の保有」とあります。この心血管疾患リスク因子管理がRACDの進行回避において非常に重要なのです。そして、項目にある「コバルト線源」については近年における臨床現場ではあまり一般的治療ではないと聞いています。ただし、過去に治療歴がある患者の場合には注意すべきであり知っておくことは望ましいですよね。(表1)RACDのリスク因子4),7)RACDによる冠動脈病変は周囲組織を含め硬化が強くPCIでもバイパス手術でも成績が不良と言われます6)。これらを改善させるためにもスクリーニングによる早期検出で少しでも安全な治療が可能になる事に期待がもたれます。(図4)にはスクリーニングを含めたRACD管理アルゴリズムを示しました。(図4)RACD管理アルゴリズム5),8)画像を拡大する逆の発想!?心室性不整脈に対するRTの可能性RACDを起こす放射線障害ですが、その組織傷害性を利用したRTによる不整脈源性障害心筋への治療利用が考えられています。phase I/II ENCORE-VT(Electrophysiology-Guided Noninvasive Cardiac Radioablation for Ventricular Tachycardia) trialが行われ、難治性心室性頻拍に対してその有効性と安全性が報告されました9)。今後、そういう治療が主流になって行くのでしょうか、興味津々です。おわりに進化したRTによるRACD、いわゆるNew RACDについて、発症形態や予後など不明な点が多く、われわれはそれを明らかにすべく更なる探求が必要であると思います。しかし、その臨床的対応については、まずは従来のRACD対する対応と大きく変える必要は無いのではないでしょうか。重要なのは、治療後遠隔慢性期の発症形態をとるRACDの発見が遅れないよう、あらかじめ患者教育を施し、RACDリスク因子となる高血圧、糖尿病、脂質異常などのリスク管理、そしてRACDに対するスクリーニングの計画が検討される事、つまりRT後の患者が放置されない医療的アプローチが肝要であるのだと思います。循環器医も腫瘍科医も現段階ではRT新時代に取り残されているのかもしれませんが、これまでの知識や経験をもってNew RACDへ対応して行くことが先決でしょう。また、そんな状況だからこそ、腫瘍科医や放射線科医、そして循環器医が互いの強みを発揮しながらの協働が必要になってくるわけです。そして、当然、新世代RT特有のNew RACDの側面も今後明らかになってくることにも期待が高まります。最新の情報をアップデートしていきましょう。1)Darby SC, et al. N Engl J Med. 2013;368:987-998.2)Haugnes HS, et al. J Clin Oncol. 2010;28:4649-4657.3)Bergom C, et al. JACC CardioOnc. 2021;3:343-359.4)Desai MY, et al. J Am Coll Cardiol. 2019;74:905-927.5)志賀太郎編. 医学書院. 2021. 循環器ジャーナル.(II章, がん放射線療法に関連した心血管合併症[RACD])6)Reed GW, et al. Circ Cardiovasc Interv. 2016;9:e003483.7)Jaworski C, et al. J Am Coll Cardiol. 2013;61:2319-2328.8)Ganatra S, et al. J Am Coll Cardiol CardioOnc. 2020;2:655-660.9)Robinson C, et al. Circulation. 2019;139:313-321.講師紹介

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新型コロナでのECMO治療開始後の死亡率、流行初期より増加/Lancet

 体外式膜型人工肺(ECMO)治療の初期導入施設では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者におけるECMO治療開始後の死亡率が2020年に約15%上昇し、治療期間が約6日延長したことが、米国・ミシガン大学のRyan P. Barbaro氏らExtracorporeal Life Support Organization(ELSO)が世界41ヵ国で実施した調査で示された。研究の成果は、Lancet誌2021年10月2日号に掲載された。レジストリデータで3群を後ろ向きに比較解析 研究グループは、2020年5月1日以前にECMOによる治療を受けた患者と、これ以降にECMO治療を受けた患者で、ベースラインの患者特性やECMO治療を行った施設の特性、患者アウトカムなどを比較する目的で、ELSOレジストリのデータを後ろ向きに解析した(研究助成は受けていない)。 対象は、年齢16歳以上、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法で重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)陽性と診断され、2020年1月1日~12月31日の期間にECMO治療を受けた患者であった。 患者は、ECMO治療を開始した時期と施設で次の3つの群に分けられた。(1)初期導入施設(2020年1月1日~12月31日にECMO導入)で2020年1月1日~5月1日の期間にECMO治療を開始した患者(A1群)、(2)初期導入施設で2020年5月2日~12月31日の期間にECMO治療を開始した患者(A2群)、(3)後期導入施設(2020年5月2日~12月31日にECMO導入)でECMO治療を開始した患者(B群)。 主要アウトカムは、ECMO治療開始から90日後に生存時間(time-to-event)解析で評価した院内死亡率とされた。Cox比例ハザードモデルを用いて、3群間の補正後の相対的死亡リスクを患者および施設レベルで比較した。同じ5月2日以降でも、後期導入施設は死亡リスクが高い 2020年に、日本を含む41ヵ国349施設(初期導入236施設、後期導入113施設)でECMO治療を受けたCOVID-19患者4,812例が解析に含まれた。A1群が1,182例(年齢中央値50歳、男性74%)、A2群が2,824例(51歳、73%)、B群は806例(49歳、74%)であった。 ECMO治療開始後90日時の院内死亡の累積発生率は、A1群の36.9%(95%信頼区間[CI]:34.1~39.7)から、A2群では51.9%(50.0~53.8)へと15%増加した。また、B群の90日累積院内死亡率は58.9%(55.4~62.3)であり、同じ5月2日以降のECMO開始であったA2群よりも約7%高率だった。これらの差は、患者および施設レベルの背景因子で補正後にも認められた。 A1群はA2群に比べ、90日院内死亡の補正後相対リスクが低かった(ハザード比:0.82、95%CI:0.70~0.96)。一方、B群はA2群よりも、90日院内死亡の補正後相対リスクが高かった(1.42、1.17~1.73)。また、ECMO治療開始前の年齢(高齢になるほど高リスク)、がん・心停止の既往歴、および開始時の急性腎障害の存在は、死亡の相対リスクの上昇と関連していた。 A1群はA2群に比べ、自宅退院や急性期リハビリテーション施設への転院(32% vs.22%)および他院への転院(18% vs.11%)の割合が高かった(並べ替え検定のp=0.01)。また、ECMO治療期間中央値は、A1群では14.1日(IQR:7.9~24.1)であったが、A2群では20.0日(9.7~35.1)へと、約6日延長していた(p<0.001)。ECMO治療開始後の入院期間中央値は、A1群の27.1日(15.8~44.2)から、A2群では30.7日(17.6~50.7)へと延長した。 著者は、「COVID-19の世界的大流行の進行中にECMO治療を開始した患者の死亡率は悪化していることから、今後もECMOの転帰の継続的な監視が求められる。ECMOは限られた資源であり、COVID-19患者の25%が5週間以上のECMO治療を受けていることを考慮すると、各施設は資源が限定的な場合のECMOの倫理的な配分に関する自施設の指針の策定を検討する必要がある」と指摘している。

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新世代ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬finerenoneは2型糖尿病性腎臓病において心・腎イベントを軽減する(FIGARO-DKD研究)(解説:栗山哲氏)

ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は心血管リスクを軽減 心・腎臓障害の一因としてミネラルコルチコイド受容体(MR)の過剰発現が知られている。MR拮抗薬(MRA)が心血管系イベントを抑制し、生命予後を改善するとのエビデンスは、RALES(1999年、スピロノラクトン)やEPHESUS(2003年、エプレレノン)において示されている。そのため、実臨床においてもMRAは慢性心不全や高血圧症に標準的治療として適応症をとっている。 2型糖尿病は、長期に観察すると高頻度(約40%)に腎障害(Diabetic Kidney Disease:DKD)を合併し、生命予後を規定する。DKDに対しては、ACE阻害薬やARBなどのRAS阻害薬が第一選択であるが、この根拠はLewis研究、MARVAL、RENAAL、IDNT、IRMA2など、多くの検証により裏付けされている。一方、RAS阻害薬によっても尿アルブミン低減が十分でない症例も少なからずあり、より一層の腎保護効果、尿アルブミン低減効果を期待できる薬物療法が求められている。ステロイド型MRAであるスピロノラクトンやエプレレノンは、降圧効果だけでなく、ACE阻害薬やARBとの併用で一層の尿アルブミン低減効果が示唆されている。しかし、これらのMRAは、高K血症の誘発や推算糸球体濾過量(eGFR)の低下を引き起こすことが問題視されている。とくにエプレレノンは、DKDや中等度以上のCKDでは禁忌である。 最近、新世代の非ステロイド型選択的MRAとしてエサキセレノンやfinerenoneなどが開発され、本稿で紹介するFIGARO-DKDなどの臨床研究が進んでいる、しかし、はたしてこれら新規薬剤がDKDの心・腎保護において真に「新たな一手」となりうるかは現時点で必ずしも明確でない。FIGARO-DKDの概要 Finerenoneは、MR選択性が高い非ステロイド型選択的MRAである。2015年Bakrisらは、finerenoneの初めてのランダム化試験を行い、DKD患者において尿アルブミン低減効果を報告した(Bakris GL, et al. JAMA. 2015;314:884-894.)。FIGARO-DKDは、2021年8月に開催された欧州心臓病学会(ESC 2021)において米国・ミシガン大学のPittらにより、2型糖尿病と合併するCKD患者においてfinerenoneの上乗せ効果が発表された。本研究は、欧州、日本、中国、米国など48ヵ国が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化イベント主導型第III相試験である。対象は、18歳以上の2型糖尿病患者とDKD患者7,352例が登録され、finerenone群に3,686例、プラセボ群に3,666例が割り付けられた。対象患者は、最大用量のRAS阻害薬(ACE阻害薬あるいはARB)が受容された患者であり、実薬群でfinerenoneの上乗せ効果を観察した。腎機能からは、持続性アルブミン尿が中等度(尿アルブミン/クレアチニン比[ACR]:30~<300)でeGFRが25~90mL/min/1.73m2(ステージ2~4のCKD)、あるいは持続性アルブミン尿が高度(尿ACR:300~5,000)でeGFRが≧60mL/min/1.73m2(ステージ1~2のCKD)の群について解析された。開始時の血清K値は4.8mEq/L以下であった。 主要エンドポイント(EP)は、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全による入院の心血管複合アウトカムであり、副次EPとして、末期腎不全(ESRD)、eGFRの40%以上の持続的な低下、腎関連死など、腎複合アウトカムである。結果は、主要EPのイベントは、finerenone群が12.4%(458/3,686例)、プラセボ群は14.2%(519/3,666例)であり、前者で有意に良好であった(HR:0.87、95%CI:0.76~0.98、p=0.03)。その内訳は、心不全による入院(3.2% vs.4.4%、HR:0.71、95%CI:0.56~0.90)がfinerenone群で有意に低かった。一方、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中には差異はみられなかった。なお、収縮期血圧は、4ヵ月で-3.5mmHg、24ヵ月で-2.6mmHg低下した。副次EPは腎関連で、ESRDへの進展がfinerenone群(0.9%)でプラセボ群(1.3%)に比し有意に低値であった(HR:0.64、95%CI:0.41~0.995)。さらに、尿ACRは、finerenone群でプラセボ群に比し32%低下した(HR:0.68、95%CI:0.65~0.70)。腎複合アウトカムであるeGFRの基礎値からの57%低下と腎関連死の評価においても、finerenone群(2.9%)はプラセボ群(3.8%)より低値であった(HR:0.77、95%CI:0.60~0.99)。一方、高K血症(5.5mEq/L以上)の発現頻度は、finerenone群はプラセボ群の約2倍であった(10.8% vs.5.3%)。 以上の成績から、RAS阻害薬へのfinerenoneの上乗せ療法は、CKDステージ2~4で中等度のアルブミン尿を呈するDKD患者と、CKDステージ1~2で高度のアルブミン尿を呈するDKD患者の両者において、心血管アウトカムを改善すると結論された。FIGARO-DKDとFIDELIO-DKD FIGARO-DKDに先行し、2020年のNEJM誌に類似の研究FIDELIO-DKDが発表されている。両者の基本的な差異は、(1)主要EP:FIDELIO-DKDは腎複合、FIGARO-DKDは心血管複合、(2)平均eGFR:FIDELIOで44mL/min/1.73m2、FIGAROで68mL/min/1.73m2、(3)追跡期間中央値:FIDELIOで2.6年、FIGAROでは3.4年と、やや長い点である。 FIDELIO-DKDの結果、主要EPは腎複合アウトカムで18%低下、副次EPとして心血管複合アウトカムは14%低下した。このことから、finerenoneの上乗せ療法は、CKDの進展と心血管系イベントを抑制し、心・腎リスクを低下させることが示唆された。ただし、FIDELIO-DKDにおいて高K血症の発現頻度は、finerenone群でプラセボ群(21.7% vs.9.8%)より多く、これはFIGARO-DKDの頻度に比べて約2倍であった。 研究の患者背景や試験デザインに差異はあるものの、2021年のFIGARO-DKDは、2020年のFIDELIO-DKDと同様、finerenoneの心・腎保護作用を追従した結果であった。とくに、腎機能が正常なDKD患者でのFIGARO-DKDにおいて心血管系イベントの抑制効果が再現されたことは、MRAによる早期介入の重要性を示唆するものであり、臨床的意義はある。わが国の新規透析導入の原因疾患の第1位が糖尿病によるDKDであることから、新規非ステロイド型MRA、finerenoneによる薬物治療は一定の光明をもたらす期待がある。MRAの上乗せはDKD治療として生き残れるか? 振り返ると、2010年ごろまでの状況においては、2型糖尿病を合併するCKD患者では、RAS阻害薬とMRAを併用することが標準治療となる可能性が期待されていた。しかし、2015年から普及したSGLT2阻害薬は、DKD治療に劇的なインパクトを与えた。すなわち、2015年から2019年にかけてEMPA-REG OUTCOME、CANVAS、CREDENCE、DECLARE-TIMI 58でSGLT2阻害薬の心血管イベント改善や腎保護が次々に明らかにされた。さらに、2019年から2021年にはEMPEROR-Preserved、Emperor-Reduced、DAPA-HF、DAPA-CKDなどにより、糖尿病CKDに限らず、非糖尿病CKDの心・腎保護のエビデンスも集積されてきた。これらのSGLT2阻害薬の成績は、血糖降下療法に確実な心・腎保護のエビデンスの報告が少なかった時代を経験してきた著者ら腎臓・糖尿内科医にとっては、まさに青天の霹靂なる大きな驚きであった。GLP-1受容体アゴニスト(GLP-1 RA)についても、SUSTAIN、REWIND、LEADERなどで心血管リスクや腎保護が観察され、DKD治療学の根幹が大きく変わろうとしている。欧米のレスポンスは迅速で、「KDIGOガイドライン2020年版」においては、DKDに対する第一選択としてRAS阻害薬と共にメトホルミンとSGLT2阻害薬の併用が推奨されている。 MRAのDKD治療上の位置付けに関しては、「KDIGOガイドライン2020年版」では、DKD治療の難治例に限り使用が推奨されている。確かに、SGLT2阻害薬やGLP-1 RAがなかった時代を時系列で振り返ると、治療抵抗性DKDの腎保護に対してRAS阻害薬とMRAの2剤によるdual blockadeで腎保護を目指すのは、一戦略ではあった。しかし、上述したごとくSGLT2阻害薬とGLP-1 RAの登場と関連する多くの心・腎保護のエビデンス集積から、MRAを上乗せする選択枝に疑問が生じつつある。その最も大きな問題点は、やはり高K血症であろう。MR阻害によるアルドステロン作用の低下が、高K血症を招来させることは自明である。DKDの病態には、普遍的に低レニン性低アルドステロン症(Hyporeninemic hypoaldosteronism:HRHA)が存在する。HRHAの病態下では、アルドステロン作用の低下から高K血症を来しやすい。また、DKDによる腎機能低下は、Kクリアランス低下から高K血症を助長する。RAS抑制薬とMRAのdual blockadeが、DKDでは期待するほどのベネフィットはないと考えるのは、腎臓専門医の立場からの著者の独断と偏見ではないであろう。とはいうものの、DKD治療を離れ循環器専門医の立場から考えると、MRAの慢性心不全への心保護のメリットは決して否定されるものではない。 なお、2019年に日本で開発された非ステロイド型選択的MRA・エサキセレノンもRAS阻害薬との併用療法に期待が持たれている。2型糖尿病で微量アルブミン尿(ACR:45~<300)を呈するDKD患者449例を対象にした第III相ランダム化試験(ESAX-DN試験、Ito S, et al. Clin J Am Soc Nephrol. 2020;15:1715-1727.)において、プラセボに比べ尿ACRの低下は認めるものの、5.5mEq/L以上の高K血症出現率は4倍と高頻度であった。本剤の適応症は高血圧症のみであり、現時点でDKDや慢性心不全への適応拡大は未定である。

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添付文書改訂:フォシーガにCKD追加/エンレストに高血圧症追加/リンヴォックにJAK阻害薬初の間節症性乾癬追加/リオナに鉄欠乏性貧血追加/ロナセンに小児適応追加【下平博士のDIノート】第83回

フォシーガ:SGLT2阻害薬で初のCKD適応追加<対象薬剤>ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物(商品名:フォシーガ錠5mg/10mg、製造販売元:アストラゼネカ)<承認年月>2021年8月<改訂項目>[追加]効能・効果慢性腎臓病(CKD)ただし、末期腎不全または透析施行中の患者を除く。<Shimo's eyes>わが国では現在、本剤を含めて6種類のSGLT2阻害薬が発売されています。本剤はイプラグリフロジン(商品名:スーグラ錠25mg/50mg)と共に、2型糖尿病だけでなく1型糖尿病にも適応があります。2020年11月にはSGLT2阻害薬で初めて慢性心不全の適応を取得し、さらに2021年8月にCKDの適応も取得しました。NEJM誌に掲載された国際多施設共同無作為化二重盲検比較試験(第III相DAPA-CKD試験)の結果によると、本剤はプラセボと比較して、CKD患者の腎機能低下もしくは死亡などの複合リスクを有意に低下させました。これは、心不全の結果(DAPA-HF試験)と同様に、2型糖尿病合併の有無にかかわらず認められています。参考アストラゼネカ 医療関係者向けサイト フォシーガエンレスト:高血圧症の適応追加<対象薬剤>サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物(商品名:エンレスト錠100mg/200mg、製造販売元:ノバルティスファーマ)<承認年月>2021年9月<改訂項目>[追加]効能・効果高血圧症[追加]用法・用量通常、成人にはサクビトリルバルサルタンとして1回200mgを1日1回経口投与します。年齢、症状により適宜増減しますが、最大投与量は1日1回400mgです。なお、本剤の投与により過度な血圧低下の恐れなどがあり、原則、高血圧治療の第一選択薬としては使えません。<Shimo's eyes>2020年6月に承認された「慢性心不全」に対する適応に加えて、今回「高血圧症」が適応追加されました。本剤は、新しいクラスであるARNIに分類され、ネプリライシン(NEP)とARBであるバルサルタンを分子内に持つ薬剤です。海外では2021年6月時点で、高血圧症に係る適応ではロシアと中国で承認、慢性心不全に関連する適応では欧米を含む110以上の国・地域で承認されています。なお、慢性心不全とは異なり、同錠50mgは適応追加の対象外となっています。参考ノバルティスファーマ 医療関係者向けサイト エンレストリンヴォック:JAK阻害薬で初めて間節症性乾癬の適応追加<対象薬剤>ウパダシチニブ水和物(商品名:リンヴォック錠7.5mg/15mg/30mg、製造販売元:アッヴィ合同会社)<承認年月>2021年5月、8月、9月<改訂項目>[追加]効能・効果関節症性乾癬(5月)、アトピー性皮膚炎(8月)[追加]剤形30mg錠(9月)<Shimo's eyes>本剤は2020年1月に関節リウマチの適応を取得し、2021年5月に関節症性乾癬、8月にアトピー性皮膚炎の適応が承認されました。また、同年9月に承認された30mgはアトピー性皮膚炎のみの適応です。関節症性乾癬の治療薬としては、関節炎に対してはNSAIDsが第一選択となり、活動性が高い場合はメトトレキサートなどのDMARDsが追加されます。それでも効果が不十分の場合は生物学的製剤が検討されますが、既存薬では寛解または疾患コントロールの目標と考えられる最小疾患活動性が達成できていない患者も多くいます。今回の適応追加により、機能障害を予防・軽減し、QOLを改善する新たな治療選択肢となることが期待されています。参考アッヴィ 医療関係者向け情報サイト リンヴォックリオナ:鉄欠乏性貧血の適応追加<対象薬剤>クエン酸第二鉄水和物(商品名:リオナ錠250mg、製造販売元:日本たばこ産業)<承認年月>2021年3月<改訂項目>[追加]効能・効果鉄欠乏性貧血[追加]用法・用量通常、成人には、クエン酸第二鉄として1回500mgを1日1回食直後に経口投与する。患者の状態に応じて適宜増減するが、最高用量は1回500mgを1日2回までとする。<Shimo's eyes>鉄欠乏性貧血は、最も頻度の高い貧血であり、動悸、息切れなどの貧血症状のほか、異食症や易疲労感などが認められます。治療としては、鉄欠乏を来す原因疾患の治療とともに鉄剤の投与が行われます。貧血と高リン血症は慢性腎臓病(CKD)の主要な合併症です。本剤は透析を受けているCKD患者の高リン血症治療薬として2014年に発売され、今回、鉄欠乏性貧血治療薬としても承認されました。本剤は胃腸管で食事に含まれるリン酸塩に結合し、リン酸第二鉄として不溶性の沈殿を形成させることでリンの消化管吸収を抑制するリン吸着剤です。鉄の一部が吸収されるため、ヘモグロビン濃度の上昇につながることから、本剤の投与により貧血の改善も期待できます。参考鳥居薬品 医療関係者向けサイト リオナ錠250mgロナセン:統合失調症治療薬として初の小児適応<対象薬剤>ブロナンセリン(商品名:ロナセン錠2mg/4mg/8mg、ロナセン散2%、製造販売元:大日本住友製薬)<承認年月>2021年3月<改訂項目>[追加]用法・用量小児:通常、小児にはブロナンセリンとして1回2mg、1日2回食後経口投与より開始し、徐々に増量する。維持量として1日8~16mgを2回に分けて食後経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日量は16mgを超えないこと。<Shimo's eyes>本剤は統合失調症治療薬として2008年に発売され、2019年には世界で初めて統合失調症を適応としたテープ剤(経皮吸収型製剤)も発売されています。さらに今回、わが国で初めて統合失調症の小児適応が追加されました。統合失調症は18歳より前に発症すると、その後の重症度が高く、成人で発症した場合と比べて神経認知障害がより重度になることがあります。米国児童青年精神医学会の指針では、小児であっても成人と同様に薬物療法と心理社会的療法を併用することが治療の基本とされています。参考大日本住友製薬 医療関係者向けサイト ロナセン

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HR+/HER2+早期乳がん、de-escalateした術前補助療法に適した症例は?(ADAPT TP)/ESMO2021

 ホルモン受容体陽性HER2陽性(HR+/HER2+)早期乳がんに対するT-DM1(トラスツズマブ エムタンシン)でのde-escalateした術前補助療法において、治療前の腫瘍免疫原性が高いほど病理学的奏効(pCR)率が高く予後良好なことが、ドイツ・West German Study Group(WSG)によるADAPT triple positive(TP)試験で示された。WSGのNadia Harbeck氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表した。 ADAPT TP試験はWSGによる第II相試験で、ADAPTアンブレラ試験の一部である。すでに主要評価項目であるpCR率はT-DM1投与群で40%を超え、副次評価項目の生存アウトカムも良好だったことが報告されている。今回は、もう1つの副次評価項目であるトランスレーショナルリサーチについて、治療前の生検で分析されたバイオマーカーにより検討された。・対象:HR+/HER2+早期乳がん 375例・試験群A:T-DM1(3週ごと)12週 119例・試験群B:T-DM1(3週ごと)+内分泌療法12週 127例・試験群C:トラスツズマブ(3週ごと)+内分泌療法12週 129例術後または12週の生検後(pCRが得られない場合)は標準化学療法が推奨され、pCRが得られた場合は化学療法の省略が許容された。・評価項目[主要評価項目]pCR率(ypT0/is/ypN0)[副次評価項目]安全性、5年無浸潤疾患生存(iDFS)率、5年全生存率、トランスレーショナルリサーチ 早期奏効は、3週時点の生検でKi67が治療前の30%以上減少または低細胞密度(腫瘍細胞数が500個未満)の場合とした。腫瘍浸潤リンパ球とIHCの免疫マーカー(CD8、PD1、PDL1)、PIK3CA変異の有無、遺伝子(RNA)発現を治療前の検体で評価した。 主な結果は以下のとおり。・治療前におけるCD8発現やPD-L1発現が良好なpCRと関連し、また、良好なiDFSとより強い関連がみられた。iDFSのハザード比(HR)は、CD8A発現で0.61(95%信頼区間[CI]:0.36~1.01)、CD8 mRNA発現で0.66(95%CI:0.47~0.92)、免疫細胞PD-L1発現で0.32(95%CI:0.10~1.07)だった。・PIK3CA変異は16.32%に認められ、pCR率および5年iDFS率の低下と関連していた。すべての患者で予後が悪化したが、とくにT-DM1投与患者では5年iDFS率に22%の差があった(野生型90.2%、変異型68.4%、p=0.007)。・本試験における分子サブタイプは、luminal Aタイプが55.9%、luminal Bタイプが22.69%、HER2-enrichedタイプが21.3%、basal-likeタイプが0.93%であった。pCR率はHER2-enrichedタイプが最も高かったが、5年iDFS率はluminal Aタイプが89.8%と最も高く、HER2-enrichedタイプは80.9%と低かった。 Harbeck氏は、「HR+/HER2+早期乳がんにおいて、治療前における腫瘍免疫原性はde-escalateした術前補助治療後の高いpCR率と予後良好に関連していた。PIK3CA変異がある患者は、T-DM1を投与し術後に化学療法とトラスツズマブを投与しても予後不良であった。luminal Aタイプの患者は、HER2標的治療後にpCR率が低くても最も予後が良好だった」と結果をまとめ、「今後のde-escalation戦略については、luminal AタイプではpCR率と生存率、HER2-enrichedタイプではpCRによるアプローチが有望」とした。

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エンレストが「高血圧症」の効能追加の承認取得/ノバルティスファーマ

 ノバルティス ファーマは9月27日のプレスリリースで、同社の慢性心不全治療薬であるアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)の「エンレスト」(一般名:サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物)について、「高血圧症」の効能追加の承認を取得したと発表した。本剤は2021年2月にロシアで、同年6月に中国で高血圧症での承認を取得しているが、日本国内におけるANRIの高血圧症に対する承認取得は初めて。エンレストで高血圧症患者に有意な降圧効果 ARNIのエンレストは、ネプリライシン(NEP)とレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)を同時に阻害する新規作用機序を有する薬剤。日本人の軽症または中等症の本態性高血圧症患者を対象とした国内第III相試験(A1306試験)において、エンレストを1日1回200mg投与したところ、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)のオルメサルタンに対して有意な降圧効果を示した上、オルメサルタンを上回る24時間持続的な降圧効果を示した。安全性および忍容性については、臨床試験で既存のARBと同等であることが示されている。 エンレストを巡っては、2021年8月30 日に開催された厚労省・薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会において、「実質的にアンジオテンシンII受容体拮抗薬およびNEP阻害薬の配合剤とみなしても差し支えない品目であり、オルメサルタンの通常用量を上回る降圧効果が検証されていることなどから、既存の高血圧症治療の第1選択薬と同じ位置付けとすることは不適切」との指摘を踏まえ、継続審議となっていた。その後、添付文書の「効能または効果に関連する注意」の項に「過度な血圧低下のおそれ等があり、原則として本剤を高血圧治療の第1選択薬としないこと」と記載することなどにより、今回のエンレストの追加承認となった。

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー コクラン・ライブラリーの活用 その1【「実践的」臨床研究入門】第12回

コクラン共同計画とコクラン・ライブラリーコクラン共同計画は英国の国民保健サービス(National Health Service:NHS)の一環として1992年に開始された国際的な医療評価プロジェクトです。コクラン・ライブラリーはコクラン共同計画が提供する検索ツールで、コクラン・システマティック・レビュー(systematic review:SR)のデータベース(Cochrane Database of Systematic Reviews:CDSR)を中心として構成され、データは年4回更新されています。CDSRはフル・レビュー論文(Cochrane Reviews)と現在進行中のSRのプロトコール論文(Cochrane Protocols)から成ります。コクラン・ライブラリーには、ランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)をはじめとする個々の臨床試験の論文や学会抄録、また臨床試験登録情報などが収録されている文献情報データベース(Cochrane Central Register of Controlled Trials:CENTRAL)も含まれています。コクラン・ライブラリーを活用した関連研究レビューの実際コクラン・ライブラリーはボランティアにより、Abstract(抄録)や非医療従事者向けのまとめであるPlain language summaryの一般語訳など、一部に日本語化がなされていますが、検索は英語のキーワードを用いて行います。第3回で、RQのP(対象)とE(曝露要因)もしくはI(介入)の適切な英語検索ワードを選択することの重要性を説明しました。その際に、われわれのRQのEである「低たんぱく食」の英訳は”low protein diet”が該当することがわかりました。ここでは、この”low protein diet”という英語検索ワードを使用して、コクラン・ライブラリーでわれわれのRQに関連する先行SRの検索を行ってみます。コクラン・ライブラリーのホームページを開くと、右上方に検索窓があります。”Title Abstract Keyword”というデフォルトの検索設定はそのままに、”low protein diet”というキーワードを入力して検索してみます。すると、Cochrane ReviewsとしてデフォルトではRelevancy(関連度順)にフル・レビュー論文(Cochrane Reviews)のタイトル(和訳は筆者による意訳)が表示されます。 本稿執筆時点(2021年9月)では、下記の4編のフル・レビュー論文が検索結果としてリストアップされました。現在進行中のSRのプロトコール論文(Cochrane Protocols)はゼロ編と示されます。ちなみにCENTRALの検索結果では435編の臨床試験の書誌情報が検索結果として挙げられました。1.Low protein diets for non‐diabetic adults with chronic kidney disease(慢性腎臓病を有する非糖尿病成人のための低たんぱく食)2.Protein restriction for children with chronic kidney disease(慢性腎臓病の小児に対するたんぱく制限)3.Protein restriction for diabetic renal disease(糖尿病性腎疾患に対するたんぱく摂取制限)4.Correction of chronic metabolic acidosis for chronic kidney disease patients(慢性腎臓病患者の慢性代謝性アシドーシスの改善)われわれのRQのP(対象)は成人ですので、2は読み込まなくとも良さそうです。4はこのフル・レビュー論文のPICOの情報(”Show PICOsBETA”をクリックすると表示される)をみると、I(介入)は”low protein diet”ではなく、”sodium bicarbonate(炭酸水素ナトリウム)”という代謝性アシドーシスの治療薬なので、こちらもわれわれのRQの関連SRには該当しません。次回からは1と3の2編のフル・レビュー論文を読み込んで、われわれのRQをさらにブラッシュアップしたいと思います。

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