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第102回 サル痘にも有効な「天然痘ワクチン」、国内備蓄の活用を検討

<先週の動き>1.サル痘にも有効な「天然痘ワクチン」、国内備蓄の活用を検討2.来年度から「マイナ保険証」義務化、健康保険証は原則廃止/厚労省3.後期高齢者の所得確認にもマイナ活用、プラットフォーム創設4.サイバー攻撃対策強化、職員向けセキュリティ研修が義務に/厚労省5.検査キット販売や看護師・薬剤師のタスクシェアなど、規制緩和を検討へ6.大麻取締法の改正について議論開始、医療ニーズへ対応/厚労省1.サル痘にも有効な「天然痘ワクチン」、国内備蓄の活用を検討欧米を中心に感染報告が相次いでいる感染症「サル痘」について、有効とされる天然痘ワクチンに注目が集まっており、すでに各国が確保に動き出している。後藤 茂之厚生労働相は27日の閣議後の記者会見で、わが国では以前からテロ対策を目的に天然痘ワクチンの生産・備蓄が行われており、政府がワクチンの活用方法について検討を進めていると述べた。世界保健機関(WHO)や国立感染症研究所などによると、サル痘は主にアフリカで流行する感染症で、発疹や発熱などの症状が出る。天然痘ワクチンには、サル痘の発症予防効果が約85%あるとされ、英国では感染が疑われる人への接種が進められている。現時点で国内での感染例はなく、後藤氏は「人から人への感染はまれとされている。国内外の発生動向を監視しつつ、必要な対応を講じる」と話した。(参考)サル痘とは?(ケアネット 患者説明用スライド)天然痘ワクチン「国内で備蓄」 サル痘にも有効―後藤厚労相(時事通信)サル痘に有効とされる天然痘ワクチン 日本も備蓄、活用方法を検討(毎日新聞)2.来年度から「マイナ保険証」義務化、健康保険証は原則廃止/厚労省厚生労働省は25日の社会保障審議会にて、健康保険証を原則廃止とし、2023年度からすべての医療機関・調剤薬局でマイナンバーカードと健康保険証を一体化した「マイナ保険証」の導入を義務付けることを決定した。政府によれば、オンライン資格確認に必要な顔認証付きカードリーダーの申し込みは約6割(約13万)の施設が済ませているが、運用を開始している施設は19%であり、マイナンバーカードによる資格確認の迅速な導入が求められている。2022年度上半期には導入の加速化が図られるよう集中的な取り組みを行い、未対応の施設は遅くとも9月頃までに顔認証付きカードリーダーの申し込みが必要とし、働きかけを行っていく。(参考)保険証「原則廃止」へ マイナンバーカードに一本化 政府検討(朝日新聞)マイナ保険証、病院に義務化 患者負担軽減も視野 厚労省検討(日経新聞)資料 オンライン資格確認等システムについて(厚労省)3.後期高齢者の所得確認にもマイナ活用、プラットフォーム創設政府が本年6月に取りまとめる経済財政運営方針「骨太の方針」に、75歳以上の後期高齢者の保険料の見直しについて、株式や配当などの金融所得も含めて勘案するため、マイナンバーカードを活用することが盛り込まれる。これによって、後期高齢者の医療費を支える現役世代の負担を軽減できる可能性がある。今後、金融資産がある高齢者の負担は増える見込みだ。このほか、「全国医療情報プラットフォーム」の創設を行い、電子カルテの診療情報やワクチン接種歴などを医療機関や自治体が共有し、患者が最適な治療を受けられるような情報基盤を作ることが決定した。災害時など、かかりつけ外の医療機関でも患者情報を確認し必要な治療の継続が可能になるほか、救急搬送された意識障害患者等の手術や薬剤情報等を確認することで、より適切で迅速な検査、診断、治療等の実施が可能となる。なお医療機関・薬局への情報共有は、個別に同意を得る仕組みを構築した後に運用を開始するとされ、2023年5月が目途。(参考)75歳以上保険料決定に「マイナンバー」活用も ”骨太の方針”原案判明(FNNプライムオンライン)医療情報、デジタル化で共有 プラットフォーム創設 骨太方針に明記(産経新聞)全国の医療機関で診療情報(レセプト・電子カルテ)を共有する仕組み、社保審・医療保険部会でも細部了承(Gem Med)4.サイバー攻撃対策強化、職員向けセキュリティ研修が義務に/厚労省近年、病院への大規模なサイバー攻撃がわが国でも増加していることを踏まえ、厚労省は27日に医療機関でのサイバーセキュリティ対策の方針を明らかにした。平時の医療機関での情報共有基盤として、医療版のISAC(Information Sharing and Analysis Center)を立ち上げてサイバーセキュリティのリスクマネジメントを強化支援する仕組みを確立するほか、脆弱性が指摘されている機器のアップデートや、医療従事者へのセキュリティ対策研修の充実を図る。診療録管理体制加算を算定する400床以上の医療機関には、年1回程度以上の職員向け情報セキュリティ研修の実施が求められる。(参考)医療機関へのサイバー攻撃対策、「ISAC」設立へ 200床未満の施設に「お助け隊」活用促進(CB news)病院に相次ぐサイバー攻撃 遅れる医療の防衛、日経調査 大規模3病院に侵入 3分の2でパスワード漏れも(日経新聞)医療分野のサイバーセキュリティ対策について(厚労省)5.検査キット販売や看護師・薬剤師のタスクシェアなど、規制緩和を検討へ岸田内閣の諮問機関である規制改革推進会議は、27日、政府に答申を提出した。5つの重点分野のうち、医療・介護・感染症対策として、オンライン診療の拡充により、自宅で受診・健康管理から薬剤・医薬品受け取りまでを可能とする方策や、薬剤師による調剤業務の一部外部委託を可能とする検討のほか、薬局での抗原定性検査キット販売の完全解禁などを求めている。また今後、介護需要増加に伴い人手不足が見込まれる介護施設での人員配置基準の緩和や、薬剤師による看護業務のタスクシェアのほか、機械学習を行うプログラム医療機器(SaMD)のアップデート時の審査の省略・簡略化についても検討を求めている。(参考)オンライン診療拡充、抗原キット薬局販売…規制改革推進会議が答申取りまとめ(読売新聞)国承認コロナ検査キット ネットでなぜ買えない? 政府見直し議論へ(朝日新聞)医療改革、スピード不可欠 規制改革会議が答申 看護、薬剤師が分担/介護人員を変更(日経新聞)6.大麻取締法の改正について議論開始、医療ニーズへ対応/厚労省厚労省は、大麻の規制について検討する委員会を25日新たに立ち上げた。2021年6月に出された「大麻等の薬物対策のあり方検討会」の取りまとめを踏まえ、大麻取締法、麻薬及び向精神薬取締法改正に向けて、議論を開始する。米国やG7諸国で承認されている大麻から製造された難治性のてんかん治療薬の事例等を参考に、医療ニーズへの対応や適切な利用を推進するとともに、大麻事犯の検挙人員が7年連続で増加していることを鑑みて大麻使用罪を創設するなど、不適切な大麻利用・乱用に対しても対応していく。(参考)大麻の「使用罪」導入の方向で議論 厚労省の新たな小委員会がスタート(BuzzFeed)第1回 厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会大麻規制検討小委員会 資料

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オピオイドの換算表を見たことありますか?【非専門医のための緩和ケアTips】第28回

第28回 オピオイドの換算表を見たことありますか?投与経路を変更する際は、投与量の調整が必要になります。今回はオピオイドを調整する際の「山場」となる、この投与量変更について解説しましょう。今日の質問モルヒネを内服していたがん患者さんが、腸閉塞を起こして内服ができなくなってしまいました。オピオイドって急に投与中止するのは良くないですよね? そうなると投与経路を変更した方がいいと思うのですが、こうした場合、どう対応すればよいのでしょうか?緩和ケアを実践していくうえでは、腸閉塞や呼吸困難の増悪、看取りが近くなり意識の悪化がみられる…といったさまざまな理由で、オピオイドが内服できなることがあります。こうした場合には投与経路を変更する必要があります。今回の質問の状況では、モルヒネの内服が難しいとのことなので、投与経路だけの変更であれば、モルヒネの注射薬に変更する対応となります。注射薬は病院では持続静脈注射で投与することが多く、緩和ケア病棟や在宅では持続皮下投与が好まれます。注射薬に変更する際の投与量は注意が必要です。内服量をそのまま注射で投与すると、過剰投与になってしまいます。そこで必要になるのが換算表です。換算表とは、オピオイドの種類や投与経路を変更した際に、同じだけの効果を期待できる投与量を換算した表です。日本緩和医療学会が公開している「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版」では、たとえばモルヒネの場合、「静脈内投与・皮下投与であれば10~15mg、経口投与であれば30mg、直腸内投与であれば20mg」といったように薬剤ごとの換算表が示されています。「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版」/換算表は59頁換算表はインターネット上でも多く公開されているので、使いやすいものを探してみましょう。換算比はある程度幅があるため、換算表によって多少の違いがあります。さらに患者さんの体格や肝腎機能によっても適切な投与量は異なるので、換算表はあくまでも目安であることにも留意してください。今回の患者さんで、モルヒネを経口から静脈内投与もしくは皮下投与に変更する場合は、投与量をおよそ半分に減らす必要があります。このあたり、何度も対応していれば自然と慣れますが、慣れていない方は、きちんと換算表で確認することや薬剤師と相談することをお勧めします。以前、研修医に「この患者さん、経口投与ができなくなったとしたら、何を、どのくらいの量、どの投与経路に変更する?」と聞いたら、ずいぶん多い投与量の回答が返ってきました。確認すると、一桁間違って計算したせいで10倍の投与量になっていたのです。10倍量を投与するのはさすがに危険です。慣れていないとこうしたことが起こるので、慎重に対応しましょう。今回のTips今回のTipsオピオイドスイッチングの際は、換算表を使って丁寧に計算しましょう。

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オピオイドの投与量、どのくらいまで増やしてよい?【非専門医のための緩和ケアTips】第27回

第27回 オピオイドの投与量、どのくらいまで増やしてよい?基本原則を押さえれば、そんなに難しくないオピオイドの調整。といっても、やはり難しく感じる時はあります。どの分野も「その難しさを知って、やっと一人前」という側面はありますからね。今回はオピオイドの投与量についての質問をいただきました。今日の質問大学病院から紹介された頭頸部がんの患者さん、訪問診療で在宅緩和ケアを担当しています。難治性がん疼痛のようで、経口モルヒネ換算で1日に300mgもオピオイドを使っています。こんなに高用量のオピオイドが必要な患者さんを担当したことがないのですが、オピオイドはどのくらいの量まで使うものなのでしょうか。緩和ケアが診療の中心となった10年以上前、私も同じように感じたことがありました。経口モルヒネ換算で300mg/日というと、確かに多く感じますよね。それでも患者さんが痛みを訴える場合、どのくらいの量まで増やしてよいのでしょうか?緩和ケアを学び始めた頃に、驚いたことの1つが、「オピオイドには最大投与量がない」ということでした。通常の鎮痛剤であれば「NSAIDsなら1日3錠まで」といった具合に、1日の最大投与量があり、それ以上増やしても鎮痛効果は期待できません。このことを天井効果と呼びます。一方、オピオイドは「副作用で増量が難しい」といった状況でない限り、鎮痛効果が確認できる間は投与量を増量します。増量幅は患者さんごとに異なり、最大量はありません。これがオピオイドと非オピオイドの大きな違いです。びっくりしませんか? 当時、痛み止めといえばNSAIDsしか知らなかった私にとっては衝撃でした。では、患者さんが「痛い」と言う限り、とりあえずオピオイドを増量すればよいのでしょうか? 当然、そんな訳はありません。通常、多くの患者に鎮痛効果が期待できる量のオピオイドを使っても、痛みが残存する場合、それなりの理由があるはずです。本当にオピオイドが不十分という場合もあるでしょうが、気を付けなければならないのは「そのほかの原因」が潜んでいる場合です。例を挙げると、腸管閉塞などでオピオイドが吸収できていない急な痛み(突出痛)に対するレスキューがうまく調整できていない神経の痛みなど、オピオイドの効果が乏しいタイプの痛みであるこういった状況でオピオイドをどんどん増やすのは、ちょっとまずいのはわかりますよね。投与量の限界はないと言いながら、ある程度の量で効果がない時にはその原因をきちんと考える必要があります。では、どの程度の投与量から、この「見直し」作業が必要になるでしょうか? 目安となるのは緩和ケアの研修会で示されていたもので、ここでは「経口モルヒネ換算で120mg/日を超えたら、評価を見直すことや、専門家と相談すること」を勧めています。対応に困ったらがん拠点病院の緩和ケア担当部門に問い合わせしてみましょう。今回のTips今回のTipsオピオイドに最大投与量はないため、適切に増量しよう。増量しても鎮痛効果が不十分な時には原因を考え、評価を見直そう。

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新機序の難治性慢性咳嗽治療薬「リフヌア錠45mg」【下平博士のDIノート】第96回

新機序の難治性慢性咳嗽治療薬「リフヌア錠45mg」今回は、選択的P2X3受容体拮抗薬「ゲーファピキサントクエン酸塩錠(商品名:リフヌア錠45mg、製造販売元:MSD)」を紹介します。本剤は、P2X3受容体を標的とした非麻薬性の咳嗽治療薬で、難治性の慢性咳嗽への効果が期待されています。<効能・効果>本剤は、難治性の慢性咳嗽の適応で、2022年1月20日に承認されました。なお、効能または効果に関連する注意として「最新のガイドライン等を参考に、慢性咳嗽の原因となる病歴、職業、環境要因、臨床検査結果等を含めた包括的な診断に基づく十分な治療を行っても咳嗽が継続する場合に使用を考慮すること」、重要な基本的注意として「本剤による咳嗽の治療は原因療法ではなく対症療法であることから、漫然と投与しないこと」が記載されています。<用法・用量>通常、成人にはゲーファピキサントとして1回45mgを1日2回経口投与します。なお、重度腎機能障害(eGFR 30mL/min/1.73m2未満)で透析を必要としない患者には、本剤45mgを1日1回投与すること。<安全性>難治性の慢性咳嗽患者を対象とした国際共同第III相試験および海外第III相試験の併合データにおいて認められた主な副作用は、味覚不全(40.4%)、味覚消失、味覚減退、味覚障害、悪心、口内乾燥などでした。味覚に関連する副作用の大多数は軽度または中等度であったものの、投与を中止している症例も認められたことから、医薬品リスク管理計画書(RMP)において「味覚異常」が重要な特定されたリスクとされています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、気道の神経の伝達を遮断して感覚神経の活性化や咳嗽反射を鎮めることで、慢性の咳を緩和します。2.苦味、金属味、塩味などを感じて食事がおいしく感じられなくなることがあります。不快感が強く、食事が取れないなど日常生活に支障を来す場合はご相談ください。 <Shimo's eyes>咳嗽は、医療機関を受診する患者さんの主訴として最も頻度が高い症候で、持続期間が3週間未満の場合は「急性咳嗽」、3週間以上8週間未満は「遷延性咳嗽」、8週間以上は「慢性咳嗽」と分類されています。これまで使用されてきた咳嗽治療薬としては、コデイン類のような麻薬性鎮咳薬や、デキストロメトルファンのような非麻薬性の中枢性鎮咳薬などがありますが、慢性咳嗽患者の中には治療抵抗性を示す例や、原因がわからず改善が不十分な例があります。本剤は世界で初めて承認された選択的P2X3受容体拮抗薬であり、非麻薬性かつ末梢に作用する経口の慢性咳嗽治療薬です。咳嗽が1年以上継続している治療抵抗性または原因不明の慢性咳嗽患者を対象としたプラセボ対照国際共同第III相試験(027試験)および海外第III相試験(030試験)において、52週投与の結果、本剤45mg投与群はプラセボ群と比較して、4週時から24時間の咳嗽頻度の有意な減少がみられ、12週時もしくは24週時まで持続しました。副作用については、上記試験の併合データにおいて、味覚不全、味覚消失、味覚減退、味覚障害等の味覚関連の副作用が63.1%に発現しました。多数は投与開始後9日以内に発現し、軽度または中等度でしたが、味覚関連の有害事象により服用中止に至った症例も13.9%ありました。なお、味覚関連の副作用は曝露量依存的に増加する傾向が認められており、その多くは本剤の投与中または投与中止後に改善するとされています。相互作用については設定されていませんが、本剤の有効成分であるゲーファピキサントはスルホンアミド基を有するため、スルホンアミド系薬剤に過敏症の既往歴のある患者では交叉過敏症が現れる可能性があり、注意が必要です。本剤は腎排泄型であり、腎機能の低下が疑われる患者さんに投与する場合は定期的に腎機能検査値を確認しましょう。参考1)PMDA 添付文書 リフヌア錠45mg

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第106回 非オピオイド鎮痛薬の臨床試験で有望な効果あり

効果は間違いないものの呼吸抑制等の副作用や依存が厄介なオピオイドの代わりとなりうる経口薬が第II相試験2つで有望な急性痛治療効果を示し、承認申請前の大詰めの第III相試験に進むことが決まりました1,2)。第II相試験の1つは外反母趾手術、もう1つは腹部脂肪切除(腹壁形成)手術の患者を募って実施され、米国マサチューセッツ州ボストン拠点バイオテックVertex Pharmaceuticals社の経口薬VX-548高用量の術後痛治療効果がどちらの試験でもプラセボを有意に上回りました。効果は上々で副作用は大したことなく、オピオイドの代わりを見つける試みにはそれら試験の成功で大いに前進したとUniversity College Londonの神経生物学専門家John Wood氏は言っています2)。痛みに携わる神経細胞表面にあり、それら神経細胞に電気信号を放たせるナトリウム(Na)チャネルの研究を背景にVX-548は誕生しました。VX-548はそれらNaチャネルの1つNav1.8を選択的に阻害します。Nav1.8は全身の神経から脊髄への痛み信号の受け渡しに不可欠で、その働き過ぎは痛みをより発生させます。たとえばNav1.8を過活動にする遺伝子変異がある人は傷を負わずとも痛みを被りうることが10年ほど前の研究で判明しています3)。しかしNav1.8や他のNaチャネルNav1.7に限った阻害の鎮痛の実現は困難でした。困難の1つはそれらの構造が心臓、筋肉、脳の機能を担う他のNaチャネルとよく似ていることに端を発します。安全を期すにはそれら臓器の働きに不可欠なNaチャネルにちょっかいを出さすことなく目当てのNaチャネルのみを相手する化合物を仕立てる必要があります。Nav1.8だけを阻害する化合物の実現の困難さはVertex社のこれまでの開発の道のりからも見て取れます。Vertex社にとってVX-548は4度目の正直のようなもので、先立つ3つのNaV1.8阻害薬が臨床開発の道半ばで倒れています。その1つVX-150は3つの第II相試験で好成績を収めたにもかかわらず第III相試験に進んでいません。必要な用量が多すぎて実用には不向きというのがその開発頓挫の一因です。Vertex社はもっと働きが良い化合物を求め、とうとう今回の第II相試験2つの成功に漕ぎ着けました。その1つには外反母趾手術患者274人が参加し、VX-548、プラセボ、オピオイド(ヒドロコドン)含有薬のいずれかの投与群に割り振られ、VX-548高用量投与群の48時間の痛さがプラセボ群に比べて有意に少なく済みました。腹壁形成手術患者303人が参加したもう1つの第II相試験でもVX-548高用量は同様にプラセボに勝りました。VX-548高用量群の痛み減少はヒドロコドン含有薬群も見た目上回りましたが、今回の試験は取るに足る比較ができるほど大規模ではありませんでした2)。VX-548の低用量と中用量の効果は残念ながらプラセボを上回りませんでした。外反母趾手術患者が参加した第II相試験ではVX-548の用量が多いほど有効という傾向はなく、気がかりなことにVX-548中用量の効果はVX-548低用量もプラセボも一見下回っていました1,4)。ともあれVertex社は高用量の効果が認められたことで良しとし、重篤な有害事象は幸いにして生じず中~高用量群の患者の脱落がプラセボやヒドロコドン投与群より少なくて済んだVX-548の急な痛みの治療効果を調べる第III相試験を間もなく今年後半に始めるつもりです。糖尿病性神経障害の痛みや炎症による痛みなどの複雑な事態を含む慢性痛へのVX-548の効果は未知数です。しかし幸先が良いことに神経障害の幾つかや炎症性の痛みでVX-548の標的Nav1.8が重責を担うことがすでに分かっています2)。参考1)Vertex Announces Statistically Significant and Clinically Meaningful Results From Two Phase 2 Proof-of-Concept Studies of VX-548 for the Treatment of Acute Pain / BUSINESS WIRE2)Non-opioid pain pill shows promise in clinical trials / Science3)Gain-of-function Nav1.8 mutations in painful neuropathy. Proc Natl Acad Sci U S A. 2012 Nov 204)Vertex claims success with its fourth shot at acute pain / Evaluate

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経口困難になったがん末期患者のモルヒネを持続皮下注へ切り替え【うまくいく!処方提案プラクティス】第46回

 今回は、がん末期患者の服薬負担を考慮して、モルヒネの内服薬から持続皮下注へ切り替えた症例を紹介します。一度は疼痛および服薬負担が解消され、患者さんに安心していただくことができましたが…。患者情報70歳、男性(施設入居)基礎疾患咽頭がん(骨転移、肺内転移)、糖尿病、脊柱管狭窄症、末梢動脈硬化症服薬管理施設管理処方内容1.モルヒネ硫酸塩水和物徐放カプセル30mg 2カプセル 朝夕食後2.ベタメタゾン錠0.5mg 1錠 朝食後3.ランソプラゾール口腔内崩壊錠30mg 1錠 朝食後4.ジアゼパム錠2mg 3錠 毎食後5.酸化マグネシウム錠330mg 3錠 毎食後6.ナルデメジントシル酸塩錠0.2mg 1錠 夕食後7.エスゾピクロン錠1mg 1錠 就寝前8.モルヒネ塩酸塩水和物内服液10mg/5mL 疼痛時 1回1包本症例のポイントこの患者さんは、咽頭がんの進行に伴う突発的な疼痛と呼吸苦がありました。レスキュー薬としてモルヒネ塩酸塩水和物内服液を5〜6回/日服用していて、痛みはNRS(Numerical Rating Scale)6〜7から3程度まで改善していました。しかし、咽頭の閉塞による通過障害があり、内服薬を服用するのが心身共に苦しいという状態が続いていました。訪問診療の前日にこれらの訴えを本人からヒアリングし、現況の痛みも服薬の苦痛も緩和したい、そして施設で最期を迎えたいという希望を確認しました。訪問看護師やケアマネジャーと注射薬への切り替えも手ではないかと話し合い、現行のオピオイド内服薬から持続皮下注へのスイッチをどのように提案するかを検討しました。オピオイドの換算<現行>ベース薬モルヒネ硫酸塩水和物徐放カプセル 60mg/日レスキュー薬モルヒネ塩酸塩水和物内服液 50〜60mg/日1日オピオイド総量目安110〜120mg/日単純な等価換算では、モルヒネ注50〜60mg/日相当となりますが、この等価換算はあくまで目安です。切り替え後のコントロール目標や副作用の懸念、24時間サイクルでの投与設計の都合で約50mg/日を提案することとしました。<切り替え提案内容:モルヒネ塩酸塩注射液48mg/日>モルヒネ塩酸塩注射液200mg/5mL 2管 10mLモルヒネ塩酸塩注射液50mg/5mL 2管 10mL生理食塩液 28mL総量48mL 0.2mL/時間、LOT15分、レスキュー0.2mL/回、10日間相当*1日量4.8mL→モルヒネ約10mg/mL<切り替えタイミング>モルヒネ硫酸塩水和物徐放カプセル 夕方服用時刻から切り替え処方提案と経過翌日の訪問診療に同行し、患者は通過障害から内服が困難な状況にあり、心身共に苦痛があることを医師に共有しました。そこで、内服薬から持続皮下注への切り替えについて意向を確認しました。医師も介護士や訪問看護師の報告から切り替えを検討していたようですが、具体的に何をどの程度投与するのがよいか頭を悩ませていたところだったそうです。上記の処方提案を文書で提示したところ、選択薬剤、用量も含めて提案の内容で始めることになりました。また、内服薬に関してはすべて中止し、持続皮下注のモルヒネのみの管理とする指示もありました。すぐに訪問看護師とPCAポンプの手配と接続時間を確認し、当日の夕方から切り替えたところ、レスキューボタンの使用回数は平均4〜5回/日で、患者さんも内服時の苦痛がなくなり安心している様子でした。しかし、切り替えから1週間経過するとせん妄が強くなりました。PCAポンプの接続チューブを自己抜去するなどの危険行動があったため中止となり、外用薬での治療コントロールに切り替えることになりましたが、切り替えの翌日にお亡くなりになりました。一度は疼痛コントロールができ、服薬の負担も解消することができましたが、せん妄について十分な管理ができず、反省点の残る事例でした。日本緩和医療学会ガイドライン統括委員会編. がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン.金原出版株式会社;2020.

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オピオイドによる便秘に新たな薬が登場【非専門医のための緩和ケアTips】第24回

第24回 オピオイドによる便秘に新たな薬が登場オピオイドを服用している患者さんで頻発し、かつ対策が必要な副作用の代表例が便秘です。そんなオピオイドが原因の便秘に対し、新たな薬が登場しています。今日の質問がん疼痛がありオピオイドを処方している患者さんの中で、便秘に悩んでいる方がいます。マグネシウム製剤や大腸刺激性下剤などを処方してみるのですが、頑固な便秘に良い対策はありますか?オピオイドを使用している際の便秘は、オピオイド誘発性便秘症(OIC:opioid-induced constipation)と呼ばれます。オピオイドは、脊髄のμオピオイド受容体に作用することで痛みの伝達をブロックし、鎮痛効果を発揮します。このμオピオイド受容体は中枢神経だけでなく、末梢にも分布しています。消化管に分布する末梢μオピオイド受容体にオピオイドが作用することで、腸管蠕動が抑制され、便秘になってしまうのです。OICはオピオイドを服用している限り、改善することはありません。基本的には「オピオイド服用中はOICが生じる」と考えて対処する必要があります。従来、薬物療法としては、一般的な便秘薬であるマグネシウム製剤や大腸刺激性下剤が用いられてきました。それで症状が緩和されればよいのですが、それでも持続する頑固な便秘もあります。そんな悩みに対して2017年に登場した薬が、今回ご紹介するナルデメジン(商品名:スインプロイク)です。ナルデメジンは先ほど出てきた末梢のμオピオイド受容体と結合することで、オピオイドと拮抗し薬理効果を発揮します。緩下剤などの対症療法と比較して、OICの原因に直接的なアプローチをする薬剤であることがわかるかと思います。ここでふと、「あれ、μオピオイド受容体に結合することでオピオイドに拮抗するなら、鎮痛作用も発揮できなくなるのでは?」と感じた方がいるかもしれません。そこは心配無用で、ナルデメジンは中枢神経のμオピオイド受容体には作用しないため、鎮痛効果は保たれます。ナルデメジンは1日1回0.2mgを内服します。内服回数が少ないことも良い点ですね。腎機能が落ちていても服用できるので、マグネシウム製剤などが使用できない方には良い選択肢です。他の便秘薬同様、処方の際は消化管閉塞がないことの確認が必要です。OICに対する比較的新しい薬剤であるナルデメジンを紹介しました。もちろん、便秘解消には薬だけでなく、食事内容や水分摂取といった生活指導も併せて大切です。今回のTips今回のTipsナルデメジンはオピオイドの副作用による便秘に対する新しい薬。排泄ケアと併せて処方を検討しよう。

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英語で「違法薬物」は?【1分★医療英語】第19回

第19回 英語で「違法薬物」は?Do you use any recreational drugs?(娯楽目的の薬物を使っていますか?)I’ve never use them.(一度も使ったことがありません)《例文1》Do you take any medications or drugs for recreational purposes?(医薬品や薬物を娯楽目的で使用していますか?)《例文2》This patient has a history of recreational drug-induced seizure.(この患者は薬物使用によるてんかんの病歴があります)《解説》米国での臨床においては、すべての患者さんに、違法かどうかにかかわらず娯楽目的で医薬品や薬物を使用しているかを確認しています。その際、薬物の種類が限定的にならないよう、“For example, medications that have not been prescribed to you, or any street drugs.”(たとえば、処方されていない薬やストリート・ドラッグなどのことです)と付け加えます。私が住むカリフォルニア州では、娯楽用途のマリフアナ使用は認められているため、マリフアナについては処方薬や違法薬物とは別に「タバコを吸いますか?」という質問の流れで「マリフアナを吸ったり食べたりしますか?」と聞くようになりました。一方で、オピオイド中毒も深刻な問題となっており、「痛み止め等の薬を服用していますか?」という点も念入りに確認します。おまけの知識として、薬は“medication”や“drug”ですが、今回の会話例のように“drug”は使い方次第では、「違法・娯楽薬物」を連想させることがあります。日本語の場合も「薬」と「ドラッグ」では、ニュアンスが少し違いますよね。「~の薬を飲んでいる」という表現は、前置詞の“on”を使って、“I’m on antihypertensive medication.”(高血圧の薬を飲んでいます)となりますが、“What drug are you on?”(何の薬を飲んでいるのですか?)という表現にすると、“on”と“drug”の組み合わせによって、「何の(違法・娯楽)薬物を使っているの?」というニュアンスにも聞こえるので、私は仕事においては“drug”より“medication”を多く使います。ただ、医療現場では“drug”もよく使われており、多くの場合、問題は生じていません。講師紹介

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新型コロナウイルス感染症のメンタルヘルス関連の後遺症(解説:岡村毅氏)

 新型コロナウイルス感染症の後遺症としてメンタルヘルス関連の症状は多い。この論文によると精神疾患の診断を受ける可能性は約1.5倍に、精神疾患に対する処方を受ける可能性は約1.9倍に増える。 さらに、新型コロナウイルス感染症で入院した人に限ると、精神疾患の診断を受ける可能性は約3.4倍に、精神疾患に対する処方を受ける可能性は約5.0倍に増えるとのことだ。 認知機能低下も約1.8倍に増えている点も注目したい。 本研究では、新型コロナウイルスに感染した米国の退役軍人15万人強(平均年齢63歳、男性が90%)でコホートをつくり、これを新型コロナウイルスに感染していない同時代の退役軍人の対照群と比較している。さらに、この時代に生きる人は世界的パンデミックを体験しているが、われわれ皆がそうであるように人生観・世界観に大いに影響を受けている。そこでその影響を除くべく、新型コロナウイルス出現前の時代でも対照群をつくっている。さらにさらに、インフルエンザでの入院とも比較するという、用意周到なデザインである。 ちなみにインフルエンザでの入院に比べても精神疾患は明らかに多い。 なお、オピオイドについても処方は約1.7倍、依存は約1.3倍に増えている。オピオイドは先日のバイデン大統領の一般教書演説でも国家の4つの統一課題に挙げられていた。4つの課題とはオピオイド、メンタルヘルス、退役軍人支援、がんであるが、がん以外はこの論文にすべて含まれている! 現代米国を代表する論文であるかもしれない。オピオイド中毒死は「絶望死」といわれ現代米国社会の闇を体現しているようであり1)、わが国においても今後重要な課題になるかもしれない。 本研究の対象は、あくまで退役軍人であるため、男性が多く、比較的高齢である点は、押さえておくべきだろう。 また、ウイルス感染後に精神症状というと、何かとてつもない危機が人類に迫っているかのように報道されるかもしれない。しかし、そもそもウイルス感染後はギランバレー症候群や慢性疲労症候群などが起こるものである。医療関係者にとっては周知の事実だ。冷静に対応することも重要だ。 厚労省は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」の別冊として「罹患後症状のマネジメント」というものを出しており大変わかりやすいので一読をお勧めする2)。 新型コロナウイルス感染症は、おそらくすべての人に、この自分が死ぬ可能性を想起させたという点で、東日本大震災と同様に日本人の死生観に大きな影響を与えたことであろう。後遺症が、血栓症や炎症反応の影響が大きいのか、心理社会的影響が大きいのか、それは歴史が明らかにするだろう。

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新型コロナ感染、1年間の精神疾患リスクは?/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者は、同時期のSARS-CoV-2非感染者および歴史的対照者と比較して、さまざまな精神疾患(不安障害、うつ病性障害、ストレスおよび適応障害、オピオイド使用障害、オピオイド以外の物質使用障害、神経認知機能低下、睡眠障害など)のリスクが高いことが、米国・VAセントルイス・ヘルスケアシステムのYan Xie氏らによるコホート研究で明らかとなった。著者は、「COVID-19生存者のメンタルヘルス障害に対する取り組みは優先課題である」とまとめている。BMJ誌2022年2月16日号掲載の報告。SARS-CoV-2感染者と、同時期の非感染者ならびにCOVID-19流行以前の対照者を比較 研究グループは、米国退役軍人省のデータを用い、2020年3月1日~2021年1月15日の間に少なくとも1回、SARS-CoV-2のPCR検査が陽性であった人(16万9,240例)を特定し、このうち陽性確認から30日後に生存していた人(COVID-19群15万3,848例)の転帰を調べ(追跡期間終了日:2021年11月30日)、精神疾患の発症リスクを2つの対照群と比較した。対照群は、COVID-19群と同時期にSARS-CoV-2の感染が確認されていない同時期対照群(563万7,840例)と、COVID-19流行以前の歴史的対照群(585万9,251例)である。 COVID-19と精神疾患発症との関連は、事前に定義した共変量およびアルゴリズムで選択された高次の共変量の両方に関して調整した逆確率重み付け法により、追跡期間中のハザード比(HR)と、各群における1年推定発生率の差に基づく1,000人当たりの1年間の補正後リスク差ならびにその95%信頼区間(CI)を算出した。同時期非感染者と比べ、何らかの精神疾患の診断・処方を受けるリスクが60%増加 COVID-19群では同時期対照群と比較して、不安障害(HR:1.35[95%CI:1.30~1.39]、群間リスク差11.06[95%CI:9.64~12.53])、うつ病性障害(1.39[1.34~1.43]、15.12[13.38~16.91])、ストレスおよび適応障害(1.38[1.34~1.43]、13.29[11.71~14.92])、抗うつ薬使用(1.55[1.50~1.60]、21.59[19.63~23.60])、ベンゾジアゼピン系薬剤使用(1.65[1.58~1.72]、10.46[9.37~11.61])の発生リスクが増加した。また、オピオイド処方(1.76[1.71~1.81]、35.90[33.61~38.25])、オピオイド使用障害(1.34[1.21~1.48]、0.96[0.59~1.37])、その他(オピオイド以外)の物質使用障害(1.20[1.15~1.26]、4.34[3.22~5.51])の発生リスクも増加した。 さらに、COVID-19群では同時期対照群と比較して、神経認知機能低下(HR:1.80[95%CI:1.72~1.89]、群間リスク差:10.75[95%CI:9.65~11.91])、睡眠障害(1.41[1.38~1.45]、23.80[21.65~26.00])の発症リスクも増加し、精神疾患の診断や薬の処方を受けるリスクも増加が認められた(1.60[1.55~1.66]、64.38[58.90~70.01])。 評価したアウトカムのリスクは、入院していない人でも増加していたが、COVID-19急性期に入院した人で最も高かった。 これらの結果は、歴史的対照群との比較においても一致しており、COVID-19で入院していない人vs.季節性インフルエンザで入院していない人、COVID-19で入院した人vs.季節性インフルエンザで入院した人、COVID-19で入院した人vs.その他の原因で入院した人、いずれの比較においても一貫してCOVID-19群で精神疾患の発症リスクが高かった。

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急性ポルフィリン症〔acute porphyria〕

1 疾患概要■ 概念・定義ポルフィリン症とはヘム合成経路に関与する8つの酵素いずれかの先天異常が病因でヘム合成経路(すなわち、律速酵素である第1番目のデルタアミノレブリン酸(ALA)合成酵素(ALAS))が亢進し生じる疾患の総称。ポルフィリン代謝異常に基づく症候を呈し、ポルフィリンやその前駆物質が大量に生産され、体内に蓄積し、尿や糞便に多量に排泄される。ポルフィリン症は、病因論的には本経路の異常が生じる主たる臓器の違いにより肝型と骨髄型の2型に大別される(図1)。臨床的には急性腹症、神経症状、精神症状などの急性発作を起こす急性ポルフィリン症(ALA脱水酵素欠損ポルフィリン症〔ADP〕、急性間欠性ポルフィリン症〔AIP〕、遺伝性コプロポルフィリン症〔HCP〕、多様性ポルフィリン症〔VP〕)および、光線過敏症を呈する皮膚ポルフィリン症(先天性骨髄性ポルフィリン症〔CEP〕、晩発性皮膚ポルフィリン症〔PCT〕、肝性骨髄性ポルフィリン症〔HEP〕、骨髄性プロトポルフィリン症〔EPP〕および、間欠期のHCPとVP)とに分けられる。AIP以外の急性ポルフィリン症は皮膚症状も呈し、皮膚ポルフィリン症でもある。また、EPPの症例で病因遺伝子がフェロキラターゼでは無く、ALAS2遺伝子の機能獲得型変異やALAS2の安定性を制御する蛋白ClpXの遺伝子異常が病因となった症例も近年報告されており、病因遺伝子異常は2種類増えた。図1 ヘム合成経路と異常症画像を拡大する■ 疫学報告は、本症の知見が高まった1966~1985年の間になされたものが大半であり、ここ10年間の報告はむしろ減少している。次第にありふれた疾患として認識されるようになり、報告が減ったと考えられ、実際はこれよりはるかに多い症例があるものと思われる。急性ポルフィリン症の半数以上がAIPで、ついでHCP、VPと続く。ADPはきわめてまれである。1980~1984年の全国調査ではポルフィリン症の有病率は、人口10万人対0.38人とされているが、その10倍との報告もある。厚生労働省遺伝性ポルフィリン症研究班による2009年の調査では、1年間の受療者は35.5人と推定されているが、欧州の発症率(5.2人/100万人)と同等として計算すると648人となることにより、わが国では多くの未診断症例が埋もれている可能性が高いと思われる。■ 病因ヘムは、生体内においては、主に骨髄と肝臓で合成されている。約70~80%のヘムは、骨髄の赤血球系細胞で合成され、グロビンに供給されヘモグロビンを形成する。残りは主に肝臓で合成され、シトクロムP450などのヘム蛋白の配合族として利用されている。ヘム合成経路の律速酵素は、第1番目の酵素であるALASであり、本酵素活性の増減が細胞内ヘム蛋白量を調整している。ALAS酵素活性は、最終産物であるヘムにより、肝臓ではネガティブフィードバックを受けており、ヘムの量は一定に保たれる。ALASの酵素活性は、ヘム合成経路で最も低い(したがって律速酵素たりうる)。ポルフィリン症の病因は、それ以外のヘム合成系酵素の活性が遺伝子異常により低下し、ALAS活性より低くなることで、本経路の異常が生じることである。ウロポルフィリン(UP)、コプロポルフィリン(CP)、プロトポルフィリン(PP)などのポルフィリンの蓄積が光線過敏性皮膚炎の病因であることは確定しているが、後に述べる急性発作(神経系の機能異常が病因)を引き起こす機序は未確定である。上流の基質であるポルフォビリノーゲン(PBG)、およびALAの増加を病因とする神経毒性前駆物質説、ならびに、ヘム蛋白やヘム酵素の機能低下を病因とするヘム欠乏説があり、どちらが主であるかの決定的なデータはいまだみられない。なお、最終産物であるヘムの低下は、ネガティブフィードバック機序を介してALASの酵素活性を増加させ、異常酵素とALASの酵素活性の逆転状況をさらに助長させる。したがって、この酵素活性のバランスに影響を与える何らかの誘因(薬物など)により、異常酵素とALASの酵素活性の逆転状況がわずかに増強されただけで、悪循環の過程を経て、急性に病状の悪化(急性発作)を生じる。誘因としては、外傷、感染症、ストレス、甲状腺ホルモン、妊娠、あるいは飢餓など(狭義の誘因)、バルビタール、サルファ薬などの誘発薬剤、ヘム合成系酵素を直接障害し、ヘム合成能力をヘムの需要量以下に低下させる(発症剤)、セドルミッド、グリセオフルビンなどが挙げられる。薬剤については、下記のウェブサイトに記載されているので参照していただきたい。The American Porphyria Foundation(APF)European Porphyria Network(EPNET)■ 症状1)急性ポルフィリン発作腹部症状、精神症状、神経症状(三徴)。急性腹症を思わせる腹部症状が初期にみられ、後にヒステリーを思わせるような精神症状を呈し、最後には四肢麻痺、球麻痺などの神経症状を呈し、死に至ることもある急性発作がみられる。このときみられる腹部症状に対応する器質的な異常は認められず、機能的異常によるものと考えられている。このように、病状の進行に応じて多彩な症候を呈するので、種々の間違った診断の下に治療されるケースが多い。(1)腹部症状:腹痛、嘔気、嘔吐、便秘、下痢、腹部膨満など(2)精神症状:不眠、不安、ヒステリー、恐怖感、興奮、傾眠、昏睡など(3)神経症状:四肢脱力、知覚異常、言語障害、嚥下(飲み込み)障害、呼吸障害など2)光線過敏性皮膚炎HCPおよびVPでは、光線過敏性皮膚炎がみられることもある。3)非発作時(間欠期)無症状■ 予後いったん発症すれば、死亡率は20%を超え、予後不良と考えられていた。これは、診断がつかないまま、バルビタールなどの使用禁忌薬やほかの誘因が重なって、病状が悪化した症例が多いことも原因であり、診断がつき、適切な治療が行われた場合、大半は完全に回復する。繰り返し発症する症例では、発症に対する不安神経症を呈することもあり、発症早期から適切な治療をすることが望まれる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)ヘム合成経路の酵素活性の低下は、その酵素による反応部位より上流の基質の増加と最終産物であるヘムの低下を引き起こす。したがって、増加した基質(ALAおよびPBG)や基質の代謝産物であるUPおよびCPなどを測定することにより、酵素異常の部位がわかる。臨床症状、検査値などを含め総合的に診断することが必要だが、検査値で考えると下に示した図2のフローチャートに従って検査を進めることになる。本症では、病因となる遺伝子異常を持っているが、いまだ発症していない人(潜在者)が少なからずみられる。その発症前診断には、上記のような代謝産物の測定および酵素活性の測定では不十分なことがあり、遺伝子診断が必要となることが多い。図2 急性ポルフィリン症診断のフローチャート画像を拡大する■ 検査成績(ポルフィリン関連)血中および尿中のPBG、ALA、ポルフィリンなどの値は、各種ポルフィリン症の病型に応じて異なるが、急性ポルフィリン症に共通する(まれな病型であるADPを除く)所見として尿中PBGの増加がある(定性的に調べる検査であるWatson-Schwartz法で陽性)。また、尿中ポルフィリンも増加し、肉眼的には特有のぶどう酒色(ポルフィリン尿)を呈する(10~30%の症例でみられる)。しかし、ADPやAIPでは、尿中ポルフィリンはあまり増加せず褐色調に留まることが多い。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 急性発作の予防誘因を避けるように指導することが大切である。飢餓が誘因となるので、十分な摂食をさせる(ダイエットは禁)。また、医療機関での薬剤投与に注意が必要となる。患者には使用可能薬剤の一覧などの携帯を勧める。月経に伴い急性発作を起こす症例では、LH-RHアナログを用いて、月経を止めることも効果がある。■ 発症時の治療1)グルコースを中心とした補液詳細な機序は不明だが、ALASの酵素活性を抑制し、急性発作を改善させるといわれている。わが国で、最も一般的に行われている治療法。インスリンを併用するとさらに効果が増す。2)ヘム製剤本薬剤はヘム製剤で、細胞内ヘムの上昇を引き起こし、ALASの酵素活性を抑え(ネガティブフィードバックにて)、ヘム合成系の相対的亢進を緩和させる。ポルフィリン症の治療としては、病態に則した治療法であり、欧米では40年来使用されており第一選択療法と位置づけられている。わが国では、2013(平成25)年8月、ヘミン(商品名:ノーモサング)が発売され、使用できるようになった。3)シメチジン作用機序は不明だが、ALAおよびPBGを減少させる効果がある。4)対症療法ポルフィリン症にみられる各種症候に対しては、下記のような対症療法が行われる。ここで大切なことは、使用禁止薬剤(誘因となる薬剤)を絶対に使用しないことである。(1)疼痛、腹痛には、クロルプロマジンおよび麻薬(2)不安、神経症には、クロナゼパム、クロルプロマジン(3)高血圧、頻脈には、ベータ遮断薬(4)抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)には、補液による電解質の補充■ 発作が頻回に起こるときの発作予防薬ギボシラン(商品名:ギブラーリ):ALAS1を標的としたsiRNA。ALAs1の発現を抑制し、急性発作の発症を予防することを目的とした薬剤。2019年に米国で承認され、わが国でも2021年に承認された。4 今後の展望ヘム製剤やギボシランが治療に使えることとなり、国際標準に追いついたと言える。また、これら治療薬は高額だが、難病指定もなされ医療費補助もあり、治療は円滑に行える。しかし、確定診断の補助となる遺伝子解析が保険収載されておらず、これが認められると診断の精度が高まるので、現在、保険収載を要望中である。5 主たる診療科内科では代謝内科、消化器内科、神経内科。皮膚症状に対しては皮膚科。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報ポルフィリン症相談(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報全国ポルフィリン代謝障害友の会「さくら友の会」(患者と患者家族の会)1)大門 真.ポルフィリン症.In:矢崎義雄編.内科学.第11版.朝倉書店;2017. p.1815-1820.2)大門 真. ポルフィリン症の診断と分類. In: 岡庭 豊ほか編. year note 内科・外科等編 2010年版. 第19版. メディックメディア; 2009. p.719-729.3)難病情報センター ポルフィリン症(2022年1月17日アクセス)公開履歴初回2013年09月05日更新2022年01月20日

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継続の必要性を評価してトラマドールカスケードを解決【うまくいく!処方提案プラクティス】第44回

 今回は、トラマドールの漫然服用に疑問を持ち、情報収集やモニタリングを行い、減薬につなげた事例を紹介します。トラマドールは弱オピオイドとしてオピオイド受容体に作用するものの、医療用麻薬としての規制を受けないことから、強い鎮痛効果を期待して整形外科や歯科領域で汎用されています。長期継続されている場合もあるため、処方目的や治療効果などから薬剤師の視点でも継続の必要性を評価する必要があります。患者情報70歳、女性(施設入居)基礎疾患高血圧症、認知症、過活動膀胱介護度要介護2服薬管理施設職員処方内容1.トラマドール・アセトアミノフェン配合錠 3錠 分3 毎食後2.ドンペリドン錠10mg 3錠 分3 毎食後3.オルメサルタン錠20mg 1錠 分1 朝食後4.エルデカルシトールカプセル0.75μg 1C 分1 朝食後5.ソリフェナシン錠5mg 1錠 分1 朝食後6.ドネペジル錠5mg 1錠 分1 朝食後7.ゾルピデム錠5mg 1錠 分1 就寝前本症例のポイントこの患者さんは、施設入居前からトラマドール・アセトアミノフェン配合錠を服用していました。初回の訪問診療に同行した際、鎮痛効果の評価のため、どこが痛むのか確認しました。しかし、とくに痛みの訴えはなく、体動時や就寝中の痛みもないことから、トラマドール・アセトアミノフェン配合錠の継続の必要性に疑問が湧きました。施設看護師に確認しても、入居時の申し送りでは触れられなかったそうでわかりませんでした。一方で、患者さんも施設スタッフも服薬する錠数が多くて負担になっていることを聞き取ることができました。さらに気になったことは、制吐薬のドンペリドンも同様に継続されていることでした。トラマドール導入時に嘔気対策として追加されたと推測できますが、お薬手帳を見ると半年以上も処方されていました。トラマドールの副作用である嘔気は数日程度で耐性ができて軽減するため、多くの場合は1~2週間で減量・中止に至ります。また、このまま継続した場合、ドパミン受容体遮断作用の弊害である錐体外路症状(薬剤性パーキンソニズム)や内分泌調節異常などのリスクも懸念されます。そこで、処方契機を調べるため、施設で保管されている診療情報提供書や退院時サマリー、多職種情報共有シート(フェイスシート)などを調査しました。過去の診療情報提供書によれば、約1年前に腰椎圧迫骨折の既往があり、手術後の疼痛コントロールを目的としてトラマドール・アセトアミノフェン配合錠が開始され、退院後は近医でそのまま継続されていたことがわかりました。処方提案と経過手術は1年以上前で経過もよく、現時点では痛みの訴えもないことから、トラマドール・アセトアミノフェン配合錠の中止は可能ではないかと考え、後日の訪問診療後に、医師にトラマドール・アセトアミノフェン配合錠からアセトアミノフェン単剤(900mg/日)への切り替えを提案しました。それに合わせてドンペリドンの中止も相談したところ、両方とも承認を得ることができました。その後、処方変更後の疼痛悪化や嘔気はなく、不安や不眠などの退薬症候の出現などもありませんでした。そのため、アセトアミノフェンを600mg/日(分2、朝夕食後)→300mg/日(分1、朝食後)と徐々に減らし、最終的に中止することを提案して、そのように処方調整していくことになりました。疼痛の出現などの評価は施設看護師にお願いしましたが、とくに問題はなく、患者さんは鎮痛薬から卒業することができました。今回の事例ではうまく減薬ができましたが、長期継続薬を減薬する際は、治療効果や中止の可否を評価するために、薬剤師から医師および多職種への積極的な介入が必要だと感じました。

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患者さんへの経過説明に、使えるこのグラフ【非専門医のための緩和ケアTips】第19回

第19回 患者さんへの経過説明に、使えるこのグラフ今日の質問外来の進行がん患者さん。今のところ、内服オピオイドで疼痛を調整できていますが、徐々にADLが低下しています。いずれは在宅での緩和ケアも提供したいのですが、本人はもちろん、家族も今後の経過をイメージできていないようです。先行きを心配されているので、話し合いのよいタイミングだと思うのですが、どうすればうまく伝えられるでしょうか?今回頂いたご質問ですが、質問者の方が非常に丁寧に診療されていることが伝わりますね。おそらく、患者さんはもちろん、ご家族とも信頼関係を築けているからこそ、今が話し合いのタイミングだと判断されたのでしょう。緩和ケアの実践において、先行き予測と関係者との共有は大切です。将来の病状の変化に備えて、早めに準備することは大切ですからね。そのために必要な緩和ケア知識として、「病みの軌跡」を紹介しましょう。「病みの軌跡」は患者さんの疾患の進行に伴い、どのような時間経過で身体機能が低下するかを示したグラフです。2005年にBritish Medical Journal誌で発表された論文1)が基になっています。疾患ごとに経過は大きく異なりますが、今回の患者さんはがんの「病みの軌跡」が当てはまります。図:がんの「病みの軌跡」原著論文を基に筆者作成これを見ると、がん(悪性疾患)は初期から中期は比較的身体機能が保たれていますが、亡くなるタイミングが近づくにつれ、急激に身体機能が低下することがわかります。急な容態変化を経て寝たきりとなり、亡くなるがん患者さんを診た経験のある方も多いのではないでしょうか?私自身、診療の中で、患者さんやご家族にこのグラフを見せることがあります。もちろん、しっかり受け止められるコンディションと評価した相手に対し、伝え方にも配慮したうえでです。本人もご家族もゆっくり身体機能が低下する時期を経験しているので、そうした経過がずっと続くように感じています。そのため、私はよく「テレビで有名な方ががんで亡くなったとき、1ヵ月前くらいにテレビに出たりしているので突然亡くなったように感じますよね。でも、このグラフにあるように、がんは体力が落ちてから亡くなるまでの経過が早い病気なんです。だから、少し早めに感じるくらいのタイミングで先々の準備や心構えができるよう、お声掛けをさせてくださいね」といったように説明しています。イメージを共有する際、ビジュアルは非常に有効です。「病みの軌跡」を使って丁寧なコミュニケーションを図っていただければと思います。今回のTips今回のTips「病みの軌跡」のグラフを使うと、患者さんへの説明がラクになる。1)Murray SA, et al. BMJ. 2005;330:1007-1011.

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新型コロナの後遺症、入院患者と自宅療養者で違い/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症での一般診療医(GP)受診率について、COVID-19で入院を要した患者(入院患者)と入院を必要とせずコミュニティで療養した患者(コミュニティ療養者)で差があることを、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのHannah R. Whittaker氏らがイングランド住民を対象としたコホート研究で明らかにした。コミュニティ療養者では、時間の経過とともに受診率が低下する後遺症もあったが、不安や抑うつなど受診が継続している後遺症があり、ワクチン接種後に受診率の低下が認められる後遺症があることも明らかにされた。これまでいくつかの観察研究で、COVID-19回復後の持続的な症状および新たな臓器機能障害は報告されているが、それらは主に重篤症状の入院患者でみられたもので、コミュニティ療養者の長期アウトカムを比較した研究はごくわずかで、いずれも小規模で選択バイアスの掛かったものであった。また、大規模な住民ベースのコホート研究での経時的評価やCOVID-19ワクチン接種後のアウトカムの評価も行われていなかった。BMJ誌2021年12月29日号掲載の報告。イングランドのCOVID-19後遺症によるGP受診率を調査 研究グループは、COVID-19入院患者とコミュニティ療養者の急性期症状回復後の後遺症でのGP受診率を調べるとともに、コミュニティ療養者の受診率の経時的変化およびワクチン接種後の受診率の変化を調べた。データソースとして、イングランドのGP 1,392人が寄与する臨床診療研究データリンク(Clinical Practice Research Datalink Aurum[CPRD Aurum])を用いた。 対象者は、2020年8月1日~2021年2月14日にCOVID-19と診断された45万6,002例(男性44.7%、年齢中央値61歳)。診断後、2週間以内に入院した患者(1万8,059例)もしくはコミュニティ療養を受けた患者(43万7,943例)で、フォローアップ期間は最長9.2ヵ月であった。解析では、非COVID-19患者からなるネガティブ対照群(3万8,511例)と、パンデミック前のインフルエンザ患者のコホート群(2万1,803例)も設定し評価が行われた。 主要アウトカムは、新規の症状、疾患、処方および医療サービス利用を目的としたGP受診率で、入院患者vs.コミュニティ療養者、感染前vs.感染後とそれぞれ比較した。医療サービス利用についてはCox回帰法および負の二項回帰法を用いた。 解析は、ネガティブ対照群とインフルエンザ患者群と順次実施。コミュニティ療養者については、COVD-19診断後のアウトカムを経時的に記録し、さらに、負の二項回帰法を用いて、COVID-19後の症状を有した療養者についてワクチン接種前後の比較も行った。コミュニティ療養者は嗅覚・味覚障害が、入院患者は静脈血栓塞栓症が最も高頻度 ネガティブ対照群およびインフルエンザ患者群と比較して、コミュニティ療養者群、入院患者群ともに、複数の後遺症でのGP受診率が有意に高率であった。 コミュニティ療養者群のGP受診で、感染前の12ヵ月間と比べて最も頻度が高かったのは、嗅覚または味覚もしくは両方の障害(補正後ハザード比[HR]:5.28、95%信頼区間[CI]:3.89~7.17、p<0.001)、静脈血栓塞栓症(3.35、2.87~3.91、p<0.001)、肺線維症(2.41、1.37~4.25、p=0.002)、筋肉痛(1.89、1.63~2.20、p<0.001)。また、COVID-19診断後の医療サービス利用の増大も認められた(1.15、1.14~1.15、p<0.001)。COVID-19診断後4週以上で最も頻度の高かったアウトカム(絶対発生率)は、関節痛(2.5%)、不安症(1.2%)、そしてNSAIDの処方(1.2%)であった。 入院患者群のGP受診で、感染前の12ヵ月間と比べて最も頻度が高かったのは、静脈血栓塞栓症(補正後HR:16.21、95%CI:11.28~23.31、p<0.001)、悪心(4.64、2.24~9.21、p<0.001)、パラセタモールの処方(3.68、2.86~4.74、p<0.001)、腎不全(3.42、2.67~4.38、p<0.001)。また、COVID-19診断後の医療サービス利用の増大も認められた(発生率比:1.68、95%CI:1.64~1.73、p<0.001)。COVID-19診断後4週以上で最も頻度の高かったアウトカム(絶対発生率)は、静脈血栓塞栓症(3.5%)、関節痛(2.7%)、および息切れ(2.8%)であった。 コミュニティ療養者群では、不安や抑うつ、腹痛、下痢、全身疼痛、悪心、胸部圧迫感、耳鳴での受診が、フォローアップ期間中継続して認められた。また、コミュニティ療養者群ではワクチン接種前と比べて1回目のワクチン接種後に、神経障害性疼痛、認知障害、強オピオイドおよびパラセタモール使用を除き、すべての症状、処方、医療サービス利用についてGP受診率の低下が認められた。虚血性心疾患、喘息、胃・食道疾患についてもGP受診率の低下がみられた。

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英語で「痛みに強い」は?【1分★医療英語】第10回

第10回 英語で「痛みに強い」は?I see you are in pain.(痛みがありそうですね)Yes, it’s really bad. I have a high pain threshold.(はい、とてもひどい痛みです。痛みに強いほうなのですが)《例文1》He has a really high pain threshold.(彼は非常に痛みに強いです)《例文2》She said her pain was 20 out of 10. She may have a low pain threshold.(痛みは10点満点中20点だそうです。彼女は痛みに弱いのかもしれません)《解説》“threshold”は「閾値」を意味する単語で、“pain threshold”は「痛みの閾値」という意味になります。“high pain threshold”は「痛みの閾値が高い」、つまり「痛みに強い」という意味です。似た表現に“tolerance”というものもあり、同じく「閾値」を意味します。厳密には“threshold”は「痛みを感じ始める境界」を指し、“tolerance”は「何とか我慢できる痛みの境界」を指しますが、いずれも同じような文脈で使われます。「痛みの閾値」は人それぞれですが、米国では患者の人種的・文化的な背景がさまざまで、日本よりもさらに個人差が大きい印象です。日本では麻酔なしで行われる手技が全身麻酔で行われたり、オピオイドの処方のハードルが低かったりと、臨床現場では痛みに対するアプローチの違いが見受けられます。講師紹介

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第93回 サイケデリック薬による精神疾患治療の開発が去年大いに前進

いわゆる麻薬の類・サイケデリック薬のものの見方を変えさせる作用が精神疾患の治療に役立つのではないかと期待されてきましたが、その効果を示した説得力のある試験はここ最近までほとんどありませんでした1)。しかし昨春2021年5月に発表された第III相試験でエクスタシーとして知られるMDMAの心的外傷後ストレス障害(PTSD)治療効果が示され、サイケデリック薬による精神疾患治療の開発は昨年大いに前進しました。俳優の沢尻エリカ氏や押尾学氏の事件で広く報じられたMDMAは主に神経のシナプス前セロトニン輸送体への結合を介してセロトニン放出を誘発します2)。MDMAは恐怖記憶の解消を促して社交的な振る舞いを支えること等が動物実験で示されています。また、合計105人が参加した6つのプラセボ対照第II相試験をまとめて解析したところMDMAを利用した治療を受けた患者の半数超(54.2%)がPTSD診断基準を脱していました3)。そして去年発表された第III相試験では42人のうち7割近い28人(67%)がMDMA投与込みの治療でPTSD診断基準を脱していました2)。プラセボ投与群37人でのその割合はMDMA使用群の半分以下の32%(12人)でした。非常に有望な結果ですがその効果の判定には注意が必要なようです。MDMAの明確な向精神作用は患者の期待感に影響を及ぼすかもしれず、そういう期待感を治療の一部として受け入れるとするなら効果の評価を根本的に見直す必要があるだろうとの見解をトロント大学の精神/神経専門家は最近のNature Medicine誌に寄稿しています1,4)。ともあれMDMAやその他のサイケデリック薬によるうつ病、不安症、依存などの精神疾患治療の検討は企業でも研究機関でも盛んになっています。2ヵ月ほど前の昨年11月初めには、マジックマッシュルームの成分として有名なサイロシビン(シロシビン;psilocybin)のうつ病治療効果が被験者数233人の無作為化試験で示されたことを英国ロンドンの企業COMPASS Pathwaysが発表しています5)。同社はさらに大規模な試験を計画しています。また、PTSDへのMDMAのもう1つの第III相試験が進行中であり、開発を担う非営利組織Multidisciplinary Association for Psychedelic Studies(MAPS)は来年2023年にその治療が米国FDA承認に漕ぎ着けることを目指しています6)。参考1)A psychedelic PTSD remedy / Science2)Mitchell JM, et al. Nat Med. 2021 Jun;27:1025-1033.3)Mithoefer MC,et al.. Psychopharmacology.2019 Sep;236:2735-2745.4)Burke MJ, et al. Nat Med. 2021 Oct;27:1687-1688.5)COMPASS Pathways announces positive topline results from groundbreaking phase IIb trial of investigational COMP360 psilocybin therapy for treatment-resistant depression / globenewswire6)MAPS’ Phase 3 Trial of MDMA-Assisted Therapy for PTSD Achieves Successful Results for Patients with Severe, Chronic PTSD / MAP

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多くの医師が必要な「緩和ケア」、効率的に学ぶならこの動画!【非専門医のための緩和ケアTips】第17回

第17回 多くの医師が必要な「緩和ケア」、効率的に学ぶならこの動画!今日の質問私のクリニックでは高齢者が多く、自宅や施設への訪問診療も増えてきました。オピオイドなどの薬の使い方だけでなく、コミュニケーションや多職種アプローチなど、幅広く勉強する必要性を感じます。本などで勉強するべきなのでしょうが、忙しさが言い訳になってなかなか進みません。何か良い方法はないでしょうか?忙しい臨床業務の合間で勉強するのって、本当に大変ですよね。学生時代の「勉強し放題」の環境は二度と戻ってきません。失ってから気付く時間の大切さ…。でも打ちひしがれている時間はありません。過去を悔やまず、今を生きましょう(大げさ)。新しい医学領域である「緩和ケア」。多くの医師が関わる分野であるにもかかわらず、体系立てて学んだことのある方は限られています。若手や開業医の方にお勧めしたい、コスパの良い学習方法を紹介します。さまざまな学び方がある中で、近年はオンデマンド動画や音声でのインプット手段が増えています。とくに他のことをしながらでも活用できる「オーディオブック」は私も重宝しています。緩和ケア分野で最も会員数の多い学術団体に日本緩和医療学会があります。2021年11月1日時点で、1万2,177名の会員がいます。日本緩和医療学会では緩和ケアの教育機会の提供を目的としたセミナーが定期的に開催されています。その中の「教育セミナー」は緩和医療に関する能力の向上と生涯学習を目的に年2回開催され、学会員でなくても受講することができます。以前は各地で開催されていましたが、現在はオンライン開催となっており、費用は1回6,000円(非会員の場合)です。1回のセミナーで45分程度の講演が7本公開されます。執筆時点で直近となる「第31回教育セミナー」の内容は以下の通りでした。1)がん患者の不安・抑うつ・不眠2)緩和ケア病棟における臨床宗教師の活動3)がんゲノム医療における遺伝カウンセリング4)緩和医療における法的・倫理的問題へのアプロー5)ポリファーマシーとの上手な付き合い方6)難渋する痛み―私たちは評価者たりうるのか7)慢性呼吸器疾患の緩和ケアこうしてみると緩和ケアに関してかなり幅広い話題を取り扱っていることがおわかりいただけると思います。緩和ケアを深く学びたい方は、ぜひ学会員になりましょう。その理由は、会員は教育セミナーのアーカイブ動画を見ることができるからです! 私はお昼休憩に、食事をしながらこのアーカイブを見ています。時間的にも45分なのでちょうどいいんですよね。勉強のために新たな時間を捻出するのが難しい方も多いはずですが、こうした「ながら勉強」をうまく活用するのは、1つの方法だと思います。学会員になると年会費が必要ですが、緩和ケアの本を3、4冊買って自分で勉強することを思えば、意外とお得という考え方もできるかと思います。次回の教育セミナーは2022年1月30日(日)に開催予定です。オンラインで開催されますので、まだ参加したことのない方はぜひお試しください。今回のTips今回のTips非専門医が効率的に緩和ケアを学ぶには、日本緩和医療学会の「教育セミナー」がお勧め!

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非がん性疼痛に対するオピオイド処方、注射薬物使用との関連は?/BMJ

 非がん性疼痛に対し慢性的にオピオイド薬の処方を受けている人において、注射薬物の使用(injection drug use:IDU)を始める割合は全体ではまれであるが(5年以内で3~4%)、オピオイド未使用者と比較すると約8倍であった。カナダ・ブリティッシュコロンビア疾病管理センターのJames Wilton氏らが、カナダの行政データを用いた大規模後ろ向きコホート研究の解析結果を報告した。オピオイド処方と違法薬物または注射薬物の使用開始との関連性については、これまで観察研究などが数件あるが、大規模な追跡研究はほとんどなかった。著者は、「今回の研究で得られた知見は、IDUの開始やそれに伴う2次的な害を防止する戦略や政策に役立つと考えられるが、長期処方オピオイド治療の不適切な減量や中止の理由にしてはならない」とまとめている。BMJ誌2021年11月18日号掲載の報告。約170万人のデータから、オピオイド使用者を特定、注射薬物開始との関連を解析 研究グループは、British Columbia Hepatitis Testers Cohortとして知られている大規模な行政データ、Integrated Data and Evaluative Analytics(IDEAs)を用いてデータを解析した。IDEAsのコホートには、1992~2015年にブリティッシュコロンビア州でC型肝炎ウイルスまたはHIVの検査を受けた約170万人が含まれ、これらのデータは、医療機関の受診、入院、救急受診、がんの診断、死亡、および薬局での調剤のデータと連携している。 解析対象は、ベースライン時に物質使用歴(アルコールを除く)のない11~65歳の人で、2000~15年における非がん性疼痛に対する処方オピオイド使用の全エピソードを特定した。エピソードは、オピオイド処方の開始から終了までを、薬剤が提供されない期間が前後6ヵ月間ある場合と定義し、エピソード内の処方日数やその日数の割合によってエピソードを分類した(急性:エピソード期間<90日、一過性:エピソード期間が≧90日で処方日数が90日未満および/または処方日数の割合が50%未満、慢性:エピソード期間が≧90日で処方日数が90日以上および/または処方日数の割合が50%以上)。社会経済的変数に基づき、慢性、一過性、急性、およびオピオイド未使用者を1対1対1対1の割合でマッチングした。 IDU開始は、1年以内に、(1)注射薬物の使用に関連する問題(オピオイド、コカイン、アンフェタミンまたはベンゾジアゼピンに対する依存に関する診断コードなど)のエビデンスがある、(2)注射関連感染症の可能性の診断、の2つが認められた場合と定義し、特異性が高く妥当性のある管理アルゴリズムによって特定した。 オピオイド使用分類(慢性、一過性、急性、未使用)とIDU開始との関連性は、逆確率治療重み付け(IPTW)法によるCoxモデルを用いて評価した。解析対象は約6万人、慢性的なオピオイド処方は注射薬物使用のリスクが高い マッチングコホートには計5万9,804例(オピオイド使用分類それぞれ1万4,951例)が組み込まれた。追跡調査期間中央値5.8年において、1,149例でIDU開始が認められた。IDU開始の5年累積確率は、オピオイド使用分類が慢性(4.0%)で最も高く、次いで一過性(1.3%)、急性(0.7%)、オピオイド未使用(0.4%)の順であった。IDU開始リスクは、オピオイド使用分類が未使用に対して、慢性の場合、8.4倍上昇した(95%信頼区間[CI]:6.4~10.9)。 慢性疼痛歴のある人に限定した感度分析では、オピオイド使用分類が慢性の場合、IDU開始のリスクは主解析結果より低下したが(5年以内で3.4%)、相対リスクは低下しなかった(ハザード比:9.7、95%CI:6.5~14.5)。 IDU開始は、オピオイド投与量が多いほど、また、年齢が若いほど、高頻度であった。

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非がん性疼痛へのトラマドール、コデインより死亡リスク高い?/JAMA

 欧米では、非がん性慢性疼痛の治療にトラマドールが使用される機会が増えているが、安全性を他のオピオイドと比較した研究はほとんどないという。英国・オックスフォード大学のJunqing Xie氏らは、トラマドールの新規処方調剤はコデインと比較して、全死因死亡や心血管イベント、骨折のリスクを上昇させることを示した。便秘やせん妄、転倒、オピオイド乱用/依存、睡眠障害には両薬で差はなかった。研究の成果は、JAMA誌2021年10月19日号に掲載された。スペインの後ろ向きコホート研究 研究グループは、外来で使用されるトラマドールとコデインについて、死亡および他の有害なアウトカムの発生状況を比較する目的で、人口ベースの後ろ向きコホート研究を実施した(IDIAP Jordi Gol Foundationの助成を受けた)。 解析には、System for the Development of Research in Primary Care(SIDIAP)のデータが用いられた。SIDIAPは、スペイン・カタルーニャ地方(人口約600万人)の人口の80%以上を対象とし、匿名化したうえで日常的に収集される医療・調剤の記録が登録されたプライマリケアのデータベースである。 対象は、年齢18歳以上で、1年以上のデータがあり、2007~17年の期間にトラマドールまたはコデインが新規に調剤された患者であった。両薬が同じ日に調剤された患者は除外された。 評価項目は、初回調剤から1年以内の全死因死亡、心血管イベント(脳卒中、不整脈、心筋梗塞、心不全)、骨折(大腿骨近位部、脊椎、その他)、便秘、せん妄、転倒、オピオイド乱用/依存、睡眠障害とされた。解析の対象は、傾向スコアマッチング法で選出された。また、原因別Cox比例ハザード回帰モデルで、絶対発生率差(ARD)とハザード比(HR)、95%信頼区間(CI)が算出された。若年患者で死亡の、女性で心血管イベントのリスクが高い 109万3,064例が登録され、このうち32万6,921例がトラマドール群、76万2,492例がコデイン群であり、3,651例は両方の薬剤が調剤されていた。傾向スコアマッチング法で選出された36万8,960例(両群18万4,480例ずつ、平均年齢53.1歳、女性57.3%)が解析に含まれた。 トラマドール群はコデイン群に比べ、1年後の全死因死亡(発生率:13.00 vs.5.61/1,000人年、HR:2.31[95%CI:2.08~2.56]、ARD:7.37[95%CI:6.09~8.78]/1,000人年)、心血管イベント(10.03 vs.8.67/1,000人年、1.15[1.05~1.27]、1.36[0.45~2.36]/1,000人年)、骨折(12.26 vs.8.13/1,000人年、1.50[1.37~1.65]、4.10[3.02~5.29]/1,000人年)のリスクが有意に高かった。 便秘(発生率:6.98 vs.6.41/1,000人年)、せん妄(0.21 vs.0.20/1,000人年)、転倒(2.75 vs.2.32/1,000人年)、オピオイド乱用/依存(0.12 vs.0.06/1,000人年)、睡眠障害(2.22 vs.2.08/1,000人年)には両群に差はみられなかった。 トラマドールによる死亡リスクの上昇は、若年患者(18~39歳)が高齢患者(60歳以上)に比べて大きかった(HR:3.14[95%CI:1.82~5.41]vs.2.39[2.20~2.60]、pinteraction<0.001)。心血管イベントのリスク上昇は、女性が男性よりも大きかった(1.32[1.19~1.46]vs.1.03[0.93~1.13]、pinteraction<0.001)。また、併存疾患が最も多い患者(チャールソン併存疾患指数[CCI]≧3点)は最も少ない患者(CCI=0点)に比べ、骨折のリスクの上昇が大きかった(HR:2.20[95%CI:1.57~3.09]vs.1.47[1.35~1.59]、pinteraction=0.004)。 著者は、「未評価の交絡因子が残存している可能性があるため、これらの知見の解釈には注意を要する」としている。

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副作用の説明にこんな工夫【非専門医のための緩和ケアTips】第14回

第14回 副作用の説明にこんな工夫患者さんに新しい薬を処方するとき、いつも以上に慎重な説明が求められますよね。とくに副作用についてはしっかりと説明しておかないと、後から「聞いてなかった!」なんてクレームにもなりかねません。今回はそんな副作用の説明についてです。今日の質問外来でフォロー中の進行がん患者さん。腫瘍が増大傾向で現在の鎮痛薬では効果不十分と判断してオピオイドを勧めました。眠気、吐き気、便秘といった副作用を説明したところ顔を曇らせ、「そんなに副作用がある薬は飲みたくないです」と拒否されてしまいました。副作用を伝えないわけにはいかないと思いますが、どうすればよかったのでしょうか?今回のご質問も緩和ケアの実践ではよくあるテーマですね。まずはこういった病状の方の外来診療をしっかりされていることや、地域の診療所で緩和ケアが届けられるようご尽力いただいていることに感謝を申し上げたいと思います。さて、この「しっかり説明すると不安にさせてしまう」という問題、なかなか難しいのですが、工夫の余地はありそうです。人にはそれぞれ「バイアス」が存在します。何かをやった結果としての「良いこと」と「悪いこと」を比較すると、悪いことの影響のほうを大きく感じることが知られています。行動経済学ではこういった特性を「損失回避」という言葉で説明しています。「人は何かしたせいで良くないことが起きることを嫌う傾向が強い」というわけです。処方の時点で、医師としては使用するメリットが副作用のデメリットよりも大きいと判断しているわけです。医師側は自明と思いがちですが、その点をあらためて患者さんに伝えましょう。「メリット」と「デメリット」の説明量を同じにすると患者さんはデメリットのほうを強く感じます。まして、「後々にトラブルにならないよう、副作用についてしっかり説明した」といった説明量のバランスであれば、おそらく患者さんを「めちゃくちゃビビらせる」説明になっていることでしょう。ではどうすればよいか、具体例を少し考えてみましょう。「今の症状に対して、オピオイドを使用したほうがいいと思います(=明確に言い切る)。症状に悩まされる時間が少なくなるはずです(=メリットを先に)。人によっては眠気や吐き気といった症状が出ることがありますが(=デメリットを事実ベースで)、予防薬もあるので安心してください。便秘が続く場合も便秘薬を調整しながら経過を見ます(=デメリットにも対処できる)。今の症状を減らすことで、ご自宅でより過ごしやすく、夜も眠りやすくなると思うので、試してみませんか?(=再びメリットを伝えたうえで、最終判断は委ねるというトーン)」いかがでしょう? 私もまだまだ試行錯誤中なので、皆さんの工夫もぜひ教えていただければと思います。今回のTips今回のTips薬剤の説明はメリットを先に。副作用などのデメリットも共有しつつ、安心感が伝わるコミュニケーションを工夫しよう。

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