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慢性腰痛患者におけるオピオイド療法の効果はうつや不安に影響される

 非がん性慢性疼痛患者ではしばしば、抑うつや不安といったネガティブ感情がみられる。こうしたネガティブ感情は疼痛の強さと関連しており、オピオイド治療が長期化する可能性が高い。米国・ハーバード大学ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のRobert N. Jamison氏らは、ヒドロモルフォン徐放性製剤のプラセボ対照二重盲検試験について2次分析を行い、ネガティブ感情はオピオイド療法のベネフィットを減弱させ、臨床試験においては脱落の予測因子となることを報告した。Pain Practice誌2013年3月号(オンライン版2012年1月11日号)の掲載報告。 慢性腰痛を有するオピオイド耐性患者を対象としたヒドロモルフォン徐放性製剤のプラセボ対照二重盲検試験の2次分析を行い、試験開始時のネガティブ感情のレベルが治療関連予後を予測できるかについて検証した。 2~4週間の用量調節/変更期に459例が参加し、このうち268例がヒドロモルフォン群またはプラセボ群に無作為化された(二重盲検期)。 試験開始時、病院不安およびうつ尺度(HADS)を用いて評価し、そのスコアに基づきネガティブ感情が低群(157例)、中群(155例)、高群(147例)の3群に均等に分け、試験期間中に自宅や病院で測定した疼痛スコア、ローランドモリス障害スコア、主観的オピオイド離脱症状スコア(SOWS)を分析した。 主な結果は以下のとおり。・二重盲検期を完了したのは268例中110例であった。・ネガティブ感情が中および高群は、低群と比較して用量調節/変更期に有害事象または無効のため脱落例がより多かった(p<0.05)。・ネガティブ感情が中および高群は、低群と比較して疼痛スコア(p<0.05)およびローランドモリス障害スコア(p<0.01)が有意に高く、SOWSで高頻度に禁断症状がみられた(p<0.05)。・ネガティブ感情のスコアの高さは、用量調節期における試験薬に対する好感度の低さも予測した(p<0.05)。・プラセボ群では、ネガティブ感情が高群で最も大きな疼痛改善が示された(p<0.05)。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート

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【CASE REPORT】腰椎圧迫骨折後の慢性腰痛症 症例経過

■症例:65歳 女性 腰椎圧迫骨折後の慢性腰痛症自転車で転倒して腰部を打撲した直後から、腰部の持続痛と体動時の激痛を自覚し臥床して過ごしていた。近医整形外科を受診したところ腰椎レントゲン検査によって第4腰椎圧迫骨折と診断され、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)を処方された。しかし疼痛、とくに体動時痛が非常に強いことから1%リン酸コデイン40mgを処方されたものの、疼痛に変化がなかった。そこで、転倒のエピソードから2週間目に塩酸モルヒネ散20mgを導入された。吐き気と便秘に対しては適切に制吐剤や緩下剤が使用されたため、オピオイド鎮痛薬による副作用はなかった。効果不十分のためモルヒネは30→50→60mgまで約2週間かけて漸増され、転倒から約1ヵ月後には持続痛と体動時痛のいずれも著明に改善し、日中も臥床して過ごしていた状態から体動時痛が増強しない程度に家事を行えるまでにADLは改善した。残存している痛みに対してモルヒネが漸増され、20~30mgずつ増量されると1~2週間程度は疼痛が緩和するが再び増悪することを繰り返すようになった。さらに、主治医から疼痛が増強しないように安静にするように指導されたことと、患者本人が体動時痛を過度に恐れることから、再び日中もほぼ臥床して過ごすようになりADLは低下していった。また、疼痛が増強した際の頓用薬には当初NSAIDsが処方されていたが、疼痛の増強の訴えに応じてモルヒネを頓用するように指導されていた。転倒から6ヵ月目にはモルヒネの服薬量は200mgになっていたが日中も臥床していることが多くなり家事のほとんどは夫が担当し、痛み以外に緩下剤に抵抗性の便秘や口渇、不眠も出現していた。モルヒネの頓用をしても鎮痛効果を実感していなかったが1日に数回はモルヒネの頓用を続けていた。転倒から約9ヵ月後、オピオイド鎮痛薬に抵抗性の難治性腰痛として当科を紹介され夫とともに受診した。当院受診時に下肢痛はなかったが、転倒当初の腰部に限局した疼痛ではなく腰背部全体の疼痛を訴え、痛みの増減は体動とは無関係であった。疼痛部位の感覚低下はなかった。また、両下肢の筋力低下は認められなかった。痛みの訴え以外には、不眠(入眠困難感と中途覚醒)を強く述べたが、夫から日中はしばしば傾眠傾向であることや夜間はいびきをかいて寝ていることが聴取された。患者本人は気分の落ち込みが強いが食欲はあり、夫が作った食事を食べておりADLの低下・不活動状態と相まって体重は増加していた。腰部MRIでは第4腰椎椎体に圧迫骨折所見があるが、新鮮な炎症所見や偽関節はなかった。現在の腰背部痛は、腰椎圧迫骨折に伴う侵害受容性疼痛ではなく、痛みの原因として妥当な器質的な障害を伴わない非特異的腰痛と診断した。オピオイド鎮痛薬の鎮痛効果を実感していないにもかかわらず、定期内服に加えて頓用を繰り返しており、オピオイド鎮痛薬の不適切使用(aberrant drug taking behavior)状態と評価した。モルヒネの頓用を禁止するとともに、1日量200mgから30mgずつ1週間毎に漸減し、夫にもモルヒネを中心とした鎮痛薬についての知識を教育しそれらの管理を患者と一緒に行うように指導した。加えて、痛みを理由とした行動制限を解除すること(具体的には、日中の臥床時間を減らすこと、積極的に家事に参加するようにすること)を指導し、ADLの改善とともに行動目標(散歩、ショッピング、家事全般)を段階的に増加させていった。当院初診から4ヵ月程度で腰痛は軽度残存しているが許容範囲内であり、不眠は解消した。モルヒネは漸減・中止でき、ADLおよびQOLは転倒前の状態に回復した。

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I型の複合性局所疼痛症候群の運動障害には筋痛覚が関与している

 I型の複合性局所疼痛症候群(CRPS)患者でよく観察される運動障害に、感覚処理障害がどのような役割を果たしているかは、現在のところ不明である。オランダ・ライデン大学病院のDiana E. van Rooijen氏らは、初めてCRPSにおける感覚機能と運動機能との関連について研究を行い、筋痛覚がCRPSにおける運動制御の障害に重要な役割を果たしている可能性があることを明らかにした。The Journal of Pain誌オンライン版2013年3月27日の掲載報告。 本研究は、CRPS患者における感覚機能と運動機能との関連を調査することが目的であった。 対象は、ジストニアを伴うCRPS患者、ジストニアを伴わないCRPS患者および健常者(対照群)で、定量的感覚検査(QST)および指タップ運動機能解析を行った。  主な結果は以下のとおり。・両CRPS群は、寒冷刺激ならびに温熱刺激に対する温度覚鈍麻と、寒冷刺激に対する痛覚過敏を示した。 ・両CRPS群で筋痛覚過敏を反映する圧痛閾値の減少が認められ、とくにジストニアを伴うCRPS群で顕著であった。 ・両CRPS群および対照群において、圧痛閾値のみが指タップ運動機能のパラメータと相関した。 ・ジストニアを伴うCRPS群は、対照群およびジストニアを伴わないCRPS群と比較して2点識別覚が増強していた。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート

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頸椎の軽度外傷による急性脊髄損傷のリスクはMRIで評価可能

 頸椎の軽度外傷後に急性脊髄損傷(SCI)を呈する患者が報告されているが、外傷の重症度と脊髄損傷の重症度が一致しない理由として脊柱管狭窄症の関与が考えられる。スイス・対麻痺センターのNikolaus Aebli氏らは、これまで脊柱管狭窄症の評価にはX線像における脊柱管/椎体比が用いられてきたが、椎間板レベルでの軟組織狭窄症や管狭窄を評価できないため、MRI画像におけるパラメータのほうが有用である可能性があることから、これを実証するためのレトロスペクティブな放射線学的研究を行った。その結果、椎間板レベルの脊柱管前後径カットオフ値を8mmとすることで、頸椎の軽度外傷後に急性SCIのリスクを有する患者を特定できることを報告した。The Spine Journal誌オンライン版2013年3月25日掲載の報告。 本研究の目的は、頸椎のMRIパラメータが軽度外傷後の急性SCIのリスクと重症度の予測に使用できるかを検討することであった。 対象は、連続する急性SCI患者52例(SCI群)および神経障害のない頸椎の軽度外傷患者131例(対照群)とした。 頸椎(C3~C7)のMRI矢状断面像(T2強調画像)にて、椎体前後径、頸椎中間位の脊柱管前後径、椎間板レベルでの脊柱管前後径および脊髄前後径を計測し脊柱管/椎体比、脊髄余裕空間、脊柱管/脊髄比を算出した。また、単純X線側面像にて椎体前後径と頸椎中間位での脊柱管前後径を計測し脊柱管/椎体比を算出し、SCIのリスク、重症度および経過を予測する各パラメータの分類精度を、ROC曲線を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・SCI群におけるすべてのMRIパラメータは、対照群と比較して有意に小さかった(p<0.001)。・椎間板レベルでの脊柱管前後径最小値が8.0mmをカットオフ値とした場合に、SCI予測に関する陽性予測値ならびに尤度比が最大となった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート

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脊椎大手術における硬膜外麻酔および持続硬膜外鎮痛の有用性

 硬膜外麻酔は、術後硬膜外鎮痛の有無にかかわらず手術侵襲反応を軽減する可能性があることが示唆されているが、脊椎大手術を受ける患者については十分な研究がされていなかった。今回、ロシア・Nizhny Novgorod Research Institute of Traumatology and OrthopedicsのAnna A.Ezhevskaya氏らによる前向き無作為化試験の結果、硬膜外麻酔/全身麻酔+術後硬膜外鎮痛の併用は、全身麻酔+麻薬性鎮痛薬の全身投与と比較して、疼痛をより良好にコントロールでき、出血量ならびに手術侵襲反応も少ないことが示された。Spine誌オンライン版2013年3月19日の掲載報告。 本研究の目的は、脊椎再建手術における臨床転帰と手術侵襲反応に対する麻酔ならびに鎮痛法の有効性を比較検討することであった。 85例が次の2群に無作為に割り付けられた。 ・E群(45例):セボフルラン(商品名:セボフレンほか)による硬膜外麻酔と気管内麻酔+術後ロピバカイン(同:アナペイン)、フェンタニル(同:フェンタニルほか)およびエピネフリン(同:ボスミンほか)による持続硬膜外鎮痛 ・G群(40例):セボフルランによる全身麻酔+術後フェンタニルおよびオピオイド全身投与 術中および術後にコルチゾール、グルコース、IL-1β、IL-6およびIL-10濃度を測定するとともに、術後の疼痛、悪心、運動性および満足度を評価した。 主な結果は以下のとおり。・E群ではG群と比較して、疼痛、悪心が有意に少なく、より早期に運動を開始することができ、満足度も有意に高かった。・E群は、術中および術後の出血量が有意に少なく、術後のグルコース、コルチゾール、IL-1β、IL-6およびIL-10濃度も低値であった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート

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整形外科医によるインプラントや器具の選択に影響するものは何か?

 整形外科領域のインプラントや器具の製造メーカーは、整形外科医がそれらを選択する際の意思決定に影響を与えるべく多くの資金をかけて資材を制作しているが、オンライン調査の結果、整形外科医はそのような資材より独立して査読された情報源を好むことがわかった。本調査を行ったドイツ・リューベック大学のArndt P. Schulz氏らは、マーケット活動に人員を割くより、論文審査の対象となる研究プロジェクトに資金を向けたほうがはるかに効果的ではないかとまとめている。BMC Musculoskeletal Disorders誌2013年3月14日の掲載報告。 Schulz氏らは、新しいインプラントまたは器具を導入する際に、整形外科医が選択の根拠とする情報源の主観的な有用性および利用について評価することを目的とした。 オンライン調査を行い、世界中の整形外科医1,174名(うち305名はその部門の責任者)から回答を得た。 アンケートは34項目からなり、質問形式は回答が一つのクローズ質問、または回答が複数あるセミオープン質問であった。回答期間は2週間で、1回のみ回答可とした。質問には回答者の背景として国、経験レベル、整形外科の専門分野が含まれた。 主な結果は以下のとおり。・治療の決定に最も影響を与えたのは、独立した科学的証拠であった。・一方、最も影響が少なかったのは、ニュースレター、白書あるいはワークショップなどメーカー主導の活動であった。・回答が多かった3ヵ国(ドイツ、イギリス、アメリカ)を比較すると、いくつかの大きな違いが認められた。・科学論文や学会は、すべての国の整形外科医が非常に重要視していた。なかでもアメリカでは、英国やドイツに比べ有意に重視する傾向が示された。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート

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むち打ち関連障害(外傷性頸部症候群)の治療、活動への恐怖心軽減が重要

 外傷性頸部症候群(whiplash-associated disorders:WAD)では、活動への恐怖と回避が障害を助長する一因となる可能性がある。米国・ワシントン大学のJames P. Robinson氏らは、WAD患者を対象に恐怖の役割について検討し、恐怖を軽減させることが治療効果に影響を及ぼすことを明らかにした。Pain誌2013年3月号(オンライン版2012年12月1日)の掲載報告。 Robinson氏らは、WAD後の恐怖の役割を検討するため、3つの治療法の有効性を評価した。 対象は約3ヵ月間症状を有するグレードI~IIのWAD患者191例で、次の3群のいずれかに無作為に割り付け、Neck Disability Index(NDI)等の質問票を用いて評価した。 IB群:WADおよび活動再開の重要性を解説している小冊子の提供 DD群:小冊子提供+医師による説明 ET群:小冊子提供+恐れている活動に対する想像および直接的な曝露療法 (DD群およびET群の患者は2時間の治療を3回受けた) 主な結果は以下のとおり。・NDIスコアの改善は予想どおりET群が最も大きかった(絶対値:ET群14.7、DD群11.9、IB群9.9)。・治療後の疼痛スコアは、ET群がIB群ならびにDD群と比較して有意に低かった(ET群vs IB群:1.5 vs 2.3、p<0.001/ET群vs DD群:1.5 vs 2.0、p=0.039)。・NDIスコアの改善における最も重要な予測因子は、恐怖心の軽減(β=0.30、p<0.001)で、次いで痛みの軽減(β=0.20、p=0.003)、うつ症状軽減(β=0.18、p=0.004)であった。・以上から、亜急性期の外傷性頸部症候群においては、曝露療法や教育的介入による恐怖への対処が重要であることが示唆された。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート

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慢性腰痛症の高齢者、体重が痛みや歩行時間と関連

 腰痛を有する高齢者で肥満者は過体重者より、歩行および階段昇段時の疼痛が強く腰椎の強度が低いことが、米国・フロリダ大学のHeather K. Vincent氏らの比較記述的研究で示された。腰椎伸展強化を含むリハビリテーション戦略は機能的な可動性と歩行時間を改善し、そのどちらも慢性腰痛症を有する肥満高齢者の体重管理に役立つ可能性がある、とまとめている。American Journal of Physical Medicine & Rehabilitation誌オンライン版2013年3月8日号掲載の報告。 対象は慢性腰痛を有する過体重以上の高齢者(60〜85歳)55人で、BMIに基づき過体重群(25~29.9kg/m2)、肥満群(30~34.9kg/m2))、高度肥満群(35kg/m2)以上)に分け、機能検査(歩行耐久、椅子立ち上がり、階段昇段、7日間の行動監視および歩行パラメータ)を行うとともに動作時の痛みの程度を評価した。  主な結果は以下のとおり。・歩行および階段昇段中の疼痛スコアは、高度肥満群が最も高く過体重群と比較して有意差を認めたが(p<0.05)、機能検査スコアにおいてはBMIによる有意差はみられなかった。・高度肥満群は、過体重群と比較して歩行時の支持基底面が36%多く(p<0.05)、片脚支持時間/両脚支持時間は3.1%~6.1%高値であった(p<0.05)。・女性は男性より椅子立ち上がりと階段昇段が緩徐で、歩行速度も遅かった。・毎日の歩数は、過体重群および肥満群と比較して高度肥満群が最も低かったが(1日当たり4,421歩 vs 3,511歩vs 2,971歩、p<0.05)、性別による差はみられなかった。・腰椎伸展、腹筋カールアップ、レッグプレスの強度は高度肥満群で最も低かった。また、3つのエクササイズすべてにおいて女性は男性より18%~34%低かった(p<0.05)。・腰椎伸展の強度は階段昇段、椅子立ち上がり、歩行耐久時間と関連していた。・BMIは、1日当たりの歩数ではなく歩行耐久時間の独立した予測因子であった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート

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100歳以上を理由に、股関節骨折手術の対象から除外すべきではない

 大腿骨近位部は骨粗鬆症により骨折しやすい部位である。米国では100歳以上の超高齢者における股関節骨折が増加しているが、こうした症例の機能的予後と死亡率に関する報告は少ない。米国・トーマス ジェファーソン大学病院のT. David Tarity氏らは、レトロスペクティブな調査を行い、100歳以上で手術した高齢者の死亡率は容認できるものであり、年齢を理由に股関節骨折手術の対象から除外すべきではないとの考えを示した。Orthopedics誌2013年3月1日号の掲載報告。 本研究の目的は、100歳以上の股関節骨折患者の死亡率を評価し、手術介入が安全で適切であるかどうかを検討することであった。 2003年~2010年に股関節骨折の治療を受けた100歳以上の高齢者23例(女性22例、男性1例)について調査した。死亡日の確認は、患者のカルテや社会保障死亡指数を使用した。  主な結果は以下のとおり。・23例中21例は手術治療を、2例は保存的治療を受けていた。 ・Charlson併存疾患指数平均値は2(範囲0~5)であった。 ・股関節骨折時の平均年齢は101.9歳、死亡時の平均年齢は102.8歳であった。・手術治療群において、累積入院日数が30日未満、30日~、90日~、6ヵ月~、12ヵ月~、2年~、3年~および6年~である患者の死亡率はそれぞれ15%、20%、30%、45%、60%、70%、90%、95%であった。 ・保存的治療群は2例全例が90日以内に死亡した。 ・手術治療群のうち1例は、術後6年が経過してもなお生存している。・術後合併症は9例(43%)にみられた。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート

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人工膝関節全置換術後の患膝の痛みは、対側膝の痛みと関連するか?

 人工膝関節全置換術(TKA)後の患膝の持続的な痛みは、反対側の膝の痛みにつながる可能性が示唆されている。しかし、英国・ブリストル大学のH.K. Smith氏らがKinemax Outcomes Studyのコホートで調査した結果、TKA術後3ヵ月における患膝の疼痛は術後2年までの対側膝の症状増悪と関連していなかった。著者は、対側膝に関しては、症状について問診する以外に追加の観察は必要なかったとまとめている。The Journal of Bone & Joint Surgery誌2013年2月20日号掲載の報告。 Kinemax型人工膝関節を用いて初回片側TKAを施行した変形性関節症患者772例(Kinemax Outcomes Studyのコホート)を対象に、患膝の術後疼痛が対側膝の痛みの自然経過と関連するかを検討した。 術前および術後3、12、24ヵ月に患膝と対側膝それぞれの痛みをWOMAC(Western Ontario McMaster University arthritis index)(100点満点、100点が最もよい状態)で評価した。 対側膝のWOMAC疼痛スコアの変化が、術後3ヵ月における患膝のWOMAC疼痛スコアと関連があるかどうかを、性別、年齢、国籍、BMIなどで調整し解析した。 主な結果は以下のとおり。・患膝および対側膝のいずれも、術前に比べ術後3ヵ月に疼痛が改善した。・対側膝のWOMAC疼痛スコアは3.5/年(標準偏差9.8/年)悪化した(p<0.001)。・しかし、術後3ヵ月における患膝のWOMAC疼痛スコアとの関連性は認められなかった(p>0.6)。・著者は、「対側膝に関しては、症状について問診する以外に追加の観察は必要なかった」と結論している。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケース解説

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「頻発する腰痛」と「頭痛」の関係

 頻発する腰痛と、慢性片頭痛ならびに慢性緊張型頭痛とは関連があることが、ドイツ・頭痛コンソーシアム研究において示された。腰痛と頭痛との関連についてドイツ・エッセン大学病院のMin-Suk Yoon氏らは、異常な全身痛の処理の一部という概念も含め複数の可能性が考えられるとまとめている。Pain誌2013年3月号(オンライン版2012年12月28日号)の掲載報告。 ドイツの一般住民を対象に、腰痛と慢性片頭痛ならびに慢性緊張型頭痛との関係を評価した。 頭痛は、国際頭痛分類第2版にしたがって診断し、頻度(発作性:1~14日/月、慢性:15日以上/月)と種類(片頭痛、緊張型頭痛)によって分類した。 腰痛は、自己報告により15日以上/月の場合を「頻発腰痛」と定義した。 主な結果は以下のとおり。・前年に頭痛があったと報告した回答者は5,605人で、255人(4.5%)は慢性であった。・5,605人中、片頭痛は2,933人、緊張型頭痛は1,253人で、そのうちそれぞれ182人(6.2%)および50人(4.0%)が慢性であった。・9,944人の回答者のうち腰痛があったと報告した回答者は6,030人で、そのうち1,267人(21.0%)が頻発腰痛であった。・頻発腰痛のオッズ比は、すべての頭痛サブタイプで頭痛なし群と比較し2.1(95%CI:1.7~2.6)~2.7倍(同:2.3~3.2)であった。・慢性頭痛の場合はさらに高く、すべてのサブタイプで13.7(同:7.4~25.3)~18.3倍(同:11.9~28.0)であった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケース解説

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腰痛患者の椎体骨折スクリーニングで“レッドフラッグ”の診断精度は低い

 各国の腰痛診療ガイドラインでは、椎体骨折など追加検査や特別な治療を要する病変を有している可能性が高い患者を特定するため“レッドフラッグ”の使用を勧告している。しかし、オーストラリア・シドニー大学のChristopher M Williams氏らによるシステマティックレビューの結果、ほとんどのレッドフラッグが椎体骨折のスクリーニングには役に立たないことが明らかとなった。レッドフラッグを複数組み合わせた場合は有用性が改善する可能性はあるものの、多くは偽陽性率が高く、レッドフラッグに基づいた腰痛の診療は医療費と治療成績に影響するだろうとまとめている。Cochrane database of systematic reviews 2013年1月31日掲載の報告。 腰痛患者における椎体骨折のスクリーニングに関する“レッドフラッグ”の診断精度を評価することを目的とした。 電子データベースから主要な研究論文ならびに被引用・引用論文を検索し(最も初期から2012年3月7日まで)、腰痛患者の既往歴や検査結果を参照基準(画像診断)の結果と比較した研究を2名のレビュアーが別々に選択した。 3名のレビュアーがそれぞれ、11項目からなる診断精度研究の質評価(QUADAS)ツールを用いてバイアスリスクを評価するとともに、研究デザインの特性、患者、指標検査および参照基準に関するデータを抽出して各検査に関する尤度比を算出し、臨床的有用性の指標とした。 主な結果は以下のとおり。・8件の研究(プライマリ・ケア4件、二次医療1件、三次医療[救命救急]3件)がレビューに組み込まれた。・バイアスリスクは中等度で、指標検査と参照基準の報告は不良であった。・椎体骨折の有病率は、プライマリ・ケアで0.7~4.5%、3次医療で6.5~11%であった。・指標検査は29種あったが、2件以上の研究で採用されたのは2種だけであった。・陽性尤度比が得られた“レッドフラッグ”は、プライマリ・ケアでは3項目あったものの大部分は不正確であった(著しい外傷、年齢[高齢]、ステロイド使用:尤度比推定値範囲はそれぞれ3.42~12.85、3.69~9.39、3.97~48.50)。一方、3次医療では1項目であった(挫傷/擦過傷:尤度比推定値31.09、95%CI:18.25~52.96)。・複数の“レッドフラッグ”の組み合わせは、陽性尤度比が大きく単独より有用と思われた。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケース解説

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パーキンソン病患者は骨折リスクが高い

 パーキンソン病(PD)患者は非PD患者と比べ骨折リスクが有意に高いことが、オランダ・ユトレヒト大学のS. Pouwels氏らが行った後向きコホート研究で明らかになった。PD患者では、一般的な骨折リスクとされる高齢者および女性のほかにも、最近の選択的セロトニン再取込み阻害薬または高用量抗精神病薬の使用歴、骨折歴、転倒、BMI低値、腎疾患がある場合は骨折リスクを評価することが望ましいと考えられる。Osteoporosis International誌オンライン版2013年2月22日掲載報告。 研究の目的は、新規発症PD患者の骨折リスクを治療、重症度、罹病期間および関連合併症で層別化し評価することであった。  英国のGeneral Practice Research Database(GPRD)を用い、1987年から2011年の間にPDと初めて診断された4,687例を同定し、年齢、性別、出生年および診療所をマッチさせた非PD患者(対照群)と比較した。 主な結果は以下のとおり。・PD患者は対照群と比較して全骨折、骨粗鬆症性骨折および股関節骨折のいずれも骨折リスクが有意に増加した(全骨折 補正ハザード比(AHR):1.89、95%CI:1.67~2.14/骨粗鬆症性骨折 AHR:1.99、95%CI:1.72~2.30/股関節骨折 AHR:3.08、95%CI:2.43~3.89)。・骨折リスクは、骨折歴、転倒、BMI低値、腎疾患、抗うつ薬の使用および抗精神病薬の高用量使用により増加した。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケース解説

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大腿骨転子部骨折に対するINTERTANの治療成績はsliding hip screwと類似

 大腿骨転子間・転子下骨折の治療では髄内釘またはsliding hip screwが用いられる。ノルウェー・ベルゲン大学ハウケランド病院のKjell Matre氏らは多施設前向き無作為化比較試験を行い、TRIGEN INTERTAN nail使用時の術後12ヵ月における疼痛、運動機能および再手術率はsliding hip screws使用時と類似していることを示した。The Journal of Bone & Joint Surgery誌2013年2月6日号の掲載報告。 本研究は、転子間・転子下骨折患者に対するTRIGEN INTERTAN nailの使用がsliding hip screw(SHS)使用時と比較して術後疼痛を軽減し、運動機能を改善させ、外科合併症の発生率を減少させるかどうかを評価することが目的であった。 転子間・転子下骨折高齢患者684例をINTERTAN群またはSHS群に無作為化し、入院中、術後3ヵ月および12ヵ月に疼痛(視覚アナログ尺度;VAS)、運動機能(Timed Up & Go Test)、股関節機能(Harris hip score)、QOL(EuroQol-5D;EQ-5D)を評価した。X線所見ならびに術中・術後合併症についても記録・分析した。 主な結果は以下のとおり。・INTERTAN群において術後早期の動作時疼痛VASスコアがわずかに低かったが(48対52、p = 0.042)、入院期間への影響はなく、術後3ヵ月および12ヵ月では両群に差はみられなかった。・骨折およびインプラントのタイプにかかわらず、術後3ヵ月および12ヵ月における運動機能、股関節機能、患者満足度およびQOLは、両群で類似していた。・術後の外科的合併症の発生は両群で同程度であった。(INTERTAN群32例、SHS群29例、p=0.67)。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケース解説

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患者評価の変形性関節症治療の疼痛改善報告、実臨床と臨床試験で異なる

 疼痛管理をより適切に行うため患者自身による治療効果評価(Patient-reported outcomes;PRO)尺度が開発されているが、フランス・INSERM/パリ第5大学のSerge Perrot氏らによる多施設前向きコホート研究の結果、患者が容認できる症状状態(patient acceptable symptom state:PASS)スコアならびに疼痛が改善したと報告した患者の疼痛スコアの変化の最小値(minimal clinically important improvement:MCII)は、実臨床と臨床試験とで異なっていることが明らかとなった。疼痛を伴う変形性関節症の治療効果は関節症の部位に左右される可能性があるという。個々の患者に応じた疼痛管理を行うため、治療効果の評価は患者の特性や日常生活に適したものでなければならない、とまとめている。Pain誌2013年2月号(オンライン版2012年10月30日号)の掲載報告。 変形性膝関節症または変形性股関節症に対する日常の疼痛管理におけるPASSおよびMCIIのカットオフ値を決めることが目的であった。 対象は、一般開業医を受診し7日以上治療を要した50歳以上の疼痛を有する変形性膝関節症または変形性股関節症患者2,414例である(男性50.2%、平均年齢67.3歳、BMI 27.9kg/m2、変形性股関節症33.5%)。 主な結果は以下のとおり。・治療7日後のPASSスコアは、変形性膝関節症患者および変形性股関節症患者のいずれも疼痛の数値評価スケール(以下、疼痛スケール)で安静時4ならびに動作時5と推定された。これは、臨床試験におけるPASSより高値であった。・PASSを得られやすかったのは、変形性膝関節症では男性、非高齢患者、治療開始時において安静時または動作時の疼痛スケールが低い非高齢者、特にスポーツ活動での疼痛の影響が最も大きかった患者、変形性股関節症では治療開始時の安静時疼痛スケールが低かった患者および非肥満患者であった。・治療7日後のMCIIは、変形性膝関節症患者および変形性股関節症患者のいずれも、安静時ならびに動作時ともに疼痛スケールで-1であった。この改善の度合いは、ランダム化比較試験で記録された値より小さかった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中! ・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる ・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート ・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケース解説

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腰椎椎間板切除術、日帰り手術により短期合併症が減少

 腰椎椎間板切除術は最も頻度の高い脊椎手術で、外来でも実施可能である。同外来手術は、低コストでより大きな患者満足度が得られ安全性に問題はないことがこれまで報告されていたが、今回、米国・アイオワ大学病院のAndrew J. Pugely氏らによる前向きコホート研究において、入院手術に比べ術後短期合併症が少ないことが確認された。腰椎椎間板切除術を行う場合、適切な症例には外来手術を考慮すべきであるとまとめている。Spine誌2月1日号の掲載報告。 本研究の目的は、単一レベル腰椎椎間板切除術後30日以内の合併症発生率を入院手術および外来手術で比較するとともに、合併症の独立した危険因子を同定することであった。 2005~2010年に、米国外科学会の外科手術質改善プログラム(NSQIP)データベースを用い医師診療行為用語(CPT)コードに基づいて初回単一レベル腰椎椎間板切除術を受ける患者4,310例を選出した。 術後30日以内の合併症発生率ならびに術前患者特性について検討した。統計解析は、傾向スコアマッチング法および多変量ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・4,310例中、2,658例(61.7%)が入院手術、1,652例(38.3%)が外来手術であった。・合併症発生率は、未調整時ならびに傾向スコアマッチング後のいずれも入院手術群が外来手術群より高率であった(未調整時6.5% vs 3.5%、p<0.0001/マッチング後5.4% vs 3.5%、p=0.0068)。・多変量ロジスティック回帰分析でも、入院手術で合併症発生率が有意に高率となることが示された(調整済みオッズ比:1.521、95%CI:1.048~2.206)。・年齢、糖尿病、術前創傷感染、輸血、手術時間および入院手術が術後短期合併症の独立した危険因子であった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケース解説

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神経障害性疼痛の実態をさぐる

神経障害性疼痛が見逃されているたとえば熱いものを触ったり、刃物で切れば痛みを感じる。そういう通常の痛みを「侵害受容性疼痛」といいます。末梢神経の終末にある侵害受容器が刺激されたときに感じる痛みです。侵害受容性疼痛の中には炎症に伴って起こる炎症性疼痛も含まれますが、これらを合わせて生体を守るための生理的な疼痛と呼んでいます。一方、「神経障害性疼痛」は、末梢神経から脊髄、さらに大脳に至るまでの神経系に何かの障害が起こったときに、エラーとして生じる痛みです。生体を守る意義はなく、病的な疼痛と考えられています。このように、神経障害性疼痛と炎症性疼痛は区別して考える事になっています。ただし、臨床的には炎症が遷延し持続的に痛みのシグナルが入力されるような状態では、神経系はエラーとしての過敏性を獲得するため、炎症性疼痛が続いた結果起こる痛みと神経障害性疼痛は明確に区別できないと考えられています。多くの神経障害性疼痛は痛みの重症度が高く、患者さんのQOLは著しく低下します。神経障害性疼痛は、まだまだ医療者に浸透していない痛みの概念です。神経障害性疼痛であることが疑われないで治療されているケースも多くみられ、神経障害性疼痛には特別なスクリーニングが必要だと考えます。神経障害性疼痛のスクリーニング痛みと一口にいっても、ナイフで刺された時の痛みと、炎や熱に手をかざした時の痛みは、おのずと性質が違ってきます。神経障害性疼痛の患者さんの多くは、「ヒリヒリと焼けるような痛み」「電気ショックのような痛み」「痺れたような痛み」「ピリピリする痛み」「針でチクチク刺されるような痛み」といった特徴的な性質の痛みを訴えます。一方、炎症性疼痛の患者さんでは、ズキズキする、ズキンズキンするといった、明らかに痛みの性質が異なった訴えをします。痛みの性質の違いは、痛みの発生メカニズムの違いを表していると考えられています。患者さんの自覚的な訴えから痛みの種類を鑑別するために、痛みの問診票が各国で開発されています。私たちはドイツでつくられた「PainDETECT」の日本語版を許可を得て開発し、その妥当性の検証試験を行っています。痛みの性質、重症度、場所、範囲、時間的変化を1つの質問用紙に記入する形のもので、臨床で使いやすい問診票になっています。侵害受容性疼痛なのか神経障害性疼痛なのか、あるいは両方が混合している疼痛なのかを分類することができます。画像を拡大する痛みの具体性を評価する痛みのスクリーニングにおいて、痛みの性質と共に痛みの具体性を評価することが重要です。たとえば捻挫をした患者さんにどこが痛いか聞くと、「足首のここが痛い、足首を伸ばすと痛い」と明確な答えが得られます。これは痛みの具体性が高いといえます。一方、器質的な異常を伴わない非特異的腰痛や、外傷後の頸部症候群(むち打ち症)では、「腰のあたりが全体的に痛い」とか、「何となく首の周りが痛い」といった部位を特定しにくい漠然とした痛みを訴えることがあります。そのような場合は痛みの具体性が低いと評価します。痛みの具体性が高いときには身体的な問題、器質的な異常があり、痛みの具体性が低い場合は器質的な異常がない(少ない)と判断し、心因性疼痛の要素の有無を考えます。器質的異常の有無は薬物療法の適応を考える際に重要なポイントになりますので、痛みの性質と共に具体性を聞くことは非常に有用です。神経障害性疼痛が合併しやすい疾患神経障害性疼痛が多く見られる疾患は、糖尿病性ニューロパチー、帯状疱疹後神経痛、脊柱管狭窄症です。たとえば帯状疱疹では、神経にウイルスが棲んでいて神経の炎症や障害が起きます。日本での大規模な調査研究で、これまで神経障害性疼痛ではないと考えられていた腰痛や膝関節症を含む多くの慢性疼痛患者さんの中にも、神経障害性疼痛が含まれていることがわかってきました。首から背中、腰の痛みを訴える患者さんの実に約8割が、神経障害性疼痛だろうと推察される報告もあります。手術後の痛みは意外に調べられていない領域です。傷が治れば痛くないと医療者が思っているので、患者さんが痛みを訴えにくい環境があるようです。開胸手術後は6~8割、乳腺の術後には5~6割、鼠径ヘルニアの術後では3~4割の患者さんが傷が治った後にも痛みを持っていることがわかっています。もちろん手術後に遷延する痛みの病態のすべてが神経障害性疼痛ではありません。術後遷延痛には、神経障害性疼痛とも炎症性疼痛ともいえない独特のメカニズムがありそうだ、ということが分子生物学的な病態研究によってわかってきています。薬物療法による神経障害性疼痛の治療神経障害性疼痛の治療は、侵害受容性疼痛とは治療戦略がまったく異なります。基本的に消炎鎮痛薬は効果がありません。神経障害性疼痛の第一選択薬はCa2+チャネルα2δリガンドであるプレガバリン(商品名:リリカ)と三環系抗うつ薬です。第二選択薬としては、抗うつ薬セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)のうちの一つであるデュロキセチン(商品名:サインバルタ)、ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液含有製剤(商品名:ノイロトロピン)、抗不整脈薬メキシレチン(商品名:メキシチールほか)です。第三選択薬は、麻薬性鎮痛薬(オピオイド鎮痛薬)です。まず初めにプレガバリンか三環系抗うつ薬を用います。効果が不十分であれば、いずれかに切り替えるか併用する。プレガバリンは添付文書では、朝と夕方に内服することになっていますが、私たちは就寝前の服用を勧めています。神経障害性疼痛の患者さんは痛みが強く不眠を訴える方が多いのですが、プレガバリンによる眠気の作用を逆に利用した服用方法です。プレガバリンの眠気は鎮静によって生じるものではなく、生理的な睡眠作用であることがわかっています。そのためか、患者さんもぐっすり眠れたという満足感を持つことが多いようです。そして第一選択薬で効果が不十分な場合は、第二選択薬への切り替え、あるいは第二選択薬との併用を行います。ただし三環系抗うつ薬とデュロキセチンの併用では、副作用として興奮・せん妄等のセロトニン症候群を起こす危険性があるので、三環系抗うつ薬とデュロキセチンは基本的に併用はしません。第二選択薬が無効な場合は、第三選択薬として麻薬性鎮痛薬(オピオイド鎮痛薬)を使います。非がん性の慢性疼痛に対して使えるオピオイド鎮痛薬は、トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合錠(商品名:トラムセット)とフェンタニル貼付剤(商品名:デュロテップMTパッチ)が主なものです。ブプレノルフィン貼付剤(商品名:ノルスパンテープ)は変形性関節症、腰痛症のみが保険適応となっています。オピオイドは最も高い鎮痛効果を期待できますが、長期間使った場合に便秘や吐き気、日中の眠気などの副作用が問題になります。オピオイド鎮痛薬に対して精神依存を起こす患者さんもまれにですがいます。そのため、第一選択薬、第二選択薬が無効な場合にのみ使うことが推奨されています。オピオイド鎮痛薬使用における注意点非がん性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬の使い方は、がん性疼痛とは異なります。がん性疼痛の場合は、上限を設けずに患者さんごとに投与量を設定し、痛みが続いている間は使い続けます。痛みが発作的に強まったときには頓用薬も用います。一方、非がん性の疼痛に対してオピオイド鎮痛薬を使用する場合は、経口のモルヒネ製剤換算で120mgを上限に設定することが推奨されています。オピオイド鎮痛薬の使用期間は極力最少期間にとどめ、痛みが強くなったときの頓用は推奨されていません。これらのオピオイド鎮痛薬の使用に制限を設けている理由は、すべて精神依存の発症リスクを抑えるためです。がん性疼痛と非がん性疼痛では、オピオイド鎮痛薬の使い方の原則が違うことをご理解いただきたいと思います。オピオイド鎮痛薬の精神依存は、器質的な痛みの患者さんでは基本的に発症しないことがわかっています。器質的ではない疼痛、すなわち痛みの具体性の低い患者さんでは精神依存を起こす可能性が高まるので、オピオイド鎮痛薬を積極的に使用すべきではないと考えています。うつ病や不安障害といった精神障害を合併している患者さんも、オピオイド鎮痛薬による精神依存を発症しやすいことがわかっています。最も強い鎮痛効果を求めるときは、われわれはオピオイド鎮痛薬とプレガバリンを併用しています。プレガバリンには抗不安作用があり、それがオピオイド鎮痛薬による吐き気の発生に対する予期不安を抑制し、制吐効果が期待できます。オピオイド鎮痛薬と三環系抗うつ薬の併用も強い鎮痛効果が期待できますが、吐き気、眠気、抗コリン作用による口渇などを相乗的に増強してしまうため推奨していません。

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長距離ランナーは、疼痛知覚が低い

 疼痛への感受性の違いが疼痛性障害の発症リスクと関わりがあるかもしれないことから、ドイツ・ウルム大学病院のWolfgang Freund氏らは、興味深い研究対象として「疼痛に高い耐性を示す人」について研究を行った。対象としたのは長距離ランナーで、その疼痛耐性および性格特性を調べた結果、健常対照者および慢性疼痛患者と異なっていることが明らかになったという。Pain Practice誌オンライン版2月1日の掲載報告。 本研究では、毎日休むことなく64日間、計4,487kmを走ることができるウルトラマラソン選手について、疼痛耐性と性格特性を対照者と比較した。 対象は、トランスヨーロッパフットレース2009の参加者(TEFR09群)11名、ならびに過去5年以内のマラソン経験がなくTEFR09群と年齢・性別・人種をマッチさせた健常対照者11名であった。 寒冷昇圧(CP)試験、特性的自己効力感(GSE)試験および240項目版性格検査(TCI)を行った。 主な結果は以下のとおり。・CP試験において、TEFR09群は健常対照群より寒冷疼痛耐性が有意に高かった(p=0.0002)。・GSE試験の結果は、両群で差は認められなかった。・TCIでは、TEFR09群は協調性と報酬依存が低かったが自己超越性が高かった。・CP試験における180秒での疼痛スコアが高ければ高いほど、TCIの報酬依存、依存、協調性、共感および純粋な良心のスコアが高く、両者には有意な正の相関関係がみられた。・以上の結果を踏まえて著者は、「TEFR参加の長距離ランナーの疼痛耐性プロファイルは、健常対照群とは異なっていた。また以前の試験に参加した慢性疼痛患者とも異なっていると思われた」と結論し、「疼痛知覚が低いことが、長距離ランナーになるために求められる素質である可能性がある。しかし、低疼痛知覚が継続的なトレーニングに起因するものか、あるいはその結果なのかは不明である」とまとめている。【おすすめコンテンツ】~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中! ・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート ・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケース解説

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長期療養施設の高齢者の多くは、本当は痛みに耐えている

 The Services and Health for Elderly in Long TERm care(SHELTER)研究において、ヨーロッパの長期療養施設の入所者は国によって差はあるものの疼痛有病率が高く、大部分の入所者は疼痛が適切にコントロールされていると自己評価しているが、実際にはまだ強い痛みを有している入所者が多いことが明らかとなった。ドイツ・ウルム大学Bethesda病院のAlbert Lukas氏らによる報告で、こうした結果の背景にある理由を分析することが、疼痛管理の改善に役立つ可能性があるとまとめている。Journal of the American Medical Directors Association誌オンライン版1月31日の掲載報告。 今回の研究は、長期療養施設の入所者における疼痛について評価し、国家間で比較することが目的であった。 対象はヨーロッパ7ヵ国およびイスラエルの長期療養施設の入所者計3,926人で、インターライの長期療養施設(Long Term Care Facility:LTCF)版を用い疼痛の有病率、頻度、強さなどを評価した。 患者関連特性と不適切な疼痛管理の相関を二変量および多変量ロジスティック回帰モデルにより解析した。 主な結果は以下のとおり。・疼痛を有していた入所者は1,900人(48.4%)であった。・疼痛有病率は、イスラエルの19.8%からフィンランドの73.0%まで、国によって大きく異なった。・疼痛は、性別(女性)、骨折、転倒、褥瘡、睡眠障害、不安定な健康状態、がん、うつ病および薬剤数と正の相関があり、一方で認知症と負の相関があった。・多変量ロジスティック回帰モデルにおいて、睡眠障害を除いたすべての因子が有意であることが示された。・疼痛は十分コントロールされていると自己評価した入所者は88.1%に上ったが、痛みがないまたは軽度であると回答したのは56.8%にすぎなかった。【おすすめコンテンツ】~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中! ・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート ・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケース解説

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術中脊髄モニタリングは術後の永続的神経障害の発生を有意に低下させる

 脊椎脊髄手術後の永続的神経障害の回避に術中モニタリング(IOM)が有効であることが、米国・Barnes-Jewish病院のBarry L. Raynor氏らによる、25年間にわたる計1万2,375例の後ろ向き研究で確認された。IOMを行いデータの著しい変化/消失が発生した時に対処することで、永続的神経障害の発生率は最悪のシナリオである3.1%(IOMデータの著しい変化/消失の発生率)から0.12%に有意に低下した(p<0.0001)という。Spine誌2013年1月15日号の掲載報告。 本研究の目的は、IOMデータの著しい変化または消失に関与する術中事象について調査することであった。 多元的IOMには、体性感覚誘発電位(SEP)、下行性神経誘発電位(DNEP)、神経原性運動誘発電位(n-MEP)、自発筋電図および誘発筋電図が含まれた。 1985年1月~2010年12月に脊椎脊髄手術を受けた計1万2,375例について後ろ向きに調査した(女性59.3%/男性40.7%、頸部29.7%、胸部・胸腰部45.4%、腰仙部24.9%、18歳以上72.7%/18歳未満27.3%、初回手術77.8%/再手術22.2%)。 主な結果は以下のとおり。・1万2,375例中、386例(3.1%)、406件のIOMデータ変化/消失が発生した。・データ悪化/消失の原因は、インストゥルメンテーション(131件)、ポジショニング(85件)、補正(56件)、全身性因子(49件)、不明(24件)、限局性脊髄圧迫(15件)などであった。・データ変化/消失は、初回手術(2.3%、219 / 9,633例)より再手術(6.1%、167 / 2,742例)で高頻度にみられた(p<0.0001)。・対処により88.7%(360 / 406件)はデータが改善したのに対して、11.3%(46 / 406件)は改善しなかった。・術後に永続的神経障害を呈した患者は15例(0.12%)で、このうち1例は対処によりデータが改善した患者であったのに対し、14例は改善しなかった患者であった(p<0.0001)。【おすすめコンテンツ】~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中! ・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート ・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケース解説

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