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非定型抗精神病薬による体重増加・脂質異常のメカニズム解明か

 先行研究で、小胞体の4つのタンパク質複合体(ステロール調節配列結合タンパク[SREBP]、SREBP-cleavage-activating protein[SCAP]、インスリン誘導遺伝子[INSIG]、プロゲステロン受容体膜成分-1[PGRMC1])が、非定型抗精神病薬による脂質異常の重要な調節因子であることが示唆されている。今回、中国・中南大学湘雅二医院のHua-Lin Cai氏らは、ラットの肝臓を用い、定型および非定型抗精神病薬ならびにグルココルチコイド受容体拮抗薬mifepristoneの、PGRMC1/INSIG/SCAP/SREBP経路に対する作用および脂質への影響を調べた。その結果、非定型抗精神病薬による脂質異常は、体重増加が出現する前の初期段階で生じる可能性があることが示唆されたという。結果を踏まえ、著者らは「非定型抗精神病薬による脂質異常は、PGRMC1経路を増強するmifepristoneの追加投与により改善できる可能性があることを示すもので、PGRMC1/INSIG-2シグナル伝達が非定型抗精神病薬による体重増加治療のターゲットになりうる」と報告している。Translational Psychiatry誌2015年10月20日号の掲載報告。 研究グループは、ラットに各種薬剤を投与し、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)と、ウエスタンブロット解析を用いて肝臓のPGRMC1/INSIG/SCAP/SREBP経路への作用を調べるとともに、血清中のトリアシルグリセロール、総コレステロール、遊離脂肪酸および各種ホルモン(プロゲステロン、コルチコステロン、インスリン)も同時に測定した。 主な結果は以下のとおり。・クロザピン、リスペリドンを投与したラットでは、PGRMC1/INSIG-2の阻害およびSCAP/SREBP発現の活性化を介した脂質生成およびコレステロール生成の増加を認めた。・これらの代謝異常は、アリピプラゾール、ハロペリドールを投与したラットでは認められなかった。・mifepristoneの併用投与は、PGRMC1/INSIG-2発現の上方制御とそれに続くSCAP/SREBPの下方制御を介して、非定型抗精神病薬により誘発された脂質異常を改善する効果を示した。関連医療ニュース 抗精神病薬誘発性の体重増加に関連するオレキシン受容体 どのような精神疾患患者でメタボリスクが高いのか 抗精神病薬、日本人の脂質異常症リスク比較:PMDA  担当者へのご意見箱はこちら

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医師・患者双方への成功報酬で、LDL値が有意に改善/JAMA

 プライマリケア診療でのLDLコレステロール(LDL-C)値コントロールに関して、目標値を達成した場合にプライマリケア医と患者の双方に対して金銭的成功報酬を与えると効果があることが示された。米国・ペンシルベニア大学のDavid A. Asch氏らが、医師340人と患者1,503人を対象に行った4群クラスター無作為化試験の結果で、医師のみ、または患者のみへの成功報酬では、成功報酬がない場合と比べて有意な差は示されなかったという。JAMA誌2015年11月10日号掲載の報告より。医師340人、患者1,503人を対象に試験 研究グループは2011~14年にかけて、米国3ヵ所のプライマリケア診療所を対象に、12ヵ月間の検討を行った。被験者の患者は年齢18~80歳、10年フラミンガム・リスクスコアが20%以上、LDL-C値120mg超で冠動脈疾患歴あり、またはスコア10~20%でLDL-C値140mg/dL超の1,503例だった。 研究グループは、被験者のプライマリケア医340人を無作為に4つの群に分け、患者がLDL-C目標値を達成した場合に、(1)医師のみに患者1人当たり最大1,024ドルを(医師のみ成功報酬群)、(2)患者のみに最大1,024ドルを(患者のみ成功報酬群)、(3)医師と患者に分配報酬を(成功報酬分配群)、(4)アウトカム報酬は両者に与えないが患者のみに参加報酬を355ドル(対照群)、それぞれ与えた。 主要評価項目は、12ヵ月間のLDL-C値の変化量だった。成功報酬分配群のLDL-C年間変化量、対照群との差は8.5mg/dL 結果、各群のベースラインから12ヵ月時点へのLDL-C値は、成功報酬分配群160.1mg/dLから126.4mg/dL、医師のみ群159.9mg/dLから132.0mg/dLへ、患者のみ群160.6mg/dLから135.5mg/dLへ、対照群161.5mg/dLから136.4mg/dLへ減少。それぞれの平均変化値は、成功報酬分配群33.6mg/dL(95%信頼区間[CI]:30.1~37.1)、医師のみ群27.9mg/dL(同:24.9~31.0)、患者のみ群25.1mg/dL(同:21.6~28.5)、対照群25.1mg/dL(同:21.7~28.5)で、いずれも有意な変化が認められた(4群ともp<0.001)。 対照群と比較してLDL-C低下の統計的有意差が認められたのは、成功報酬分配群のみで、その差は8.5mg/dL(95%CI:3.8~13.3、p=0.002)だった。 今回の結果について著者は、「低下の差はわずかで、成功報酬というやり方に価値があるのかどうか、さらなる検証が必要だ」と述べている。

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球脊髄性筋萎縮症〔SBMA : Spinal and Bulbar Muscular Atrophy〕

1 疾患概要■ 概念・定義緩徐進行性の筋力低下・筋萎縮や球麻痺を示す成人発症の遺伝性運動ニューロン疾患である。単一遺伝子疾患であり、発症者には後述する原因遺伝子の異常を必ず認める。本疾患の病態にはテストステロンが深く関与しており、男性のみに発症する。国際名称はSpinal and Bulbar Muscular Atrophy(SBMA)であるが、報告者の名前からKennedy diseaseとも呼ばれる1)。わが国ではKennedy-Alter-Sung症候群と呼ばれることも多いが、本症は単一疾患であるため、症候群という表現は適切ではないとの意見もある。■ 疫学有病率は10万人あたり2人程度で、わが国の患者数は2,000~3,000人程度と推定されている。人種や地域による有病率の差は明らかではない。■ 病因X染色体上にあるアンドロゲン受容体(AR)遺伝子のCAG繰り返し配列の異常延長が原因である。正常では36以下の繰り返し数が、SBMA患者では38以上に延長している。このCAG繰り返し数が多いほど、早く発症する傾向が認められる。CAG繰り返しの異常延長の結果、構造異常を有する変異ARが生じる。この変異ARは男性ホルモン(テストステロン)依存性に下位運動ニューロンなどの核内に集積し、最終的には神経細胞死に至る。同様の遺伝子変異はハンチントン病や脊髄小脳変性症などの疾患でも認められ、CAGはグルタミンに翻訳されることから、これらの疾患はポリグルタミン病と総称される。SBMAでは他のポリグルタミン病とは異なり、世代を経るに従って発症が早くなる表現促進現象は軽度である。■ 症状1)神経症状初発症状として手指の振戦を自覚することが多く、しばしば筋力低下に先行する。四肢の筋力低下は30~60代で自覚され、下肢から始まることが多い。同じ時期に有痛性筋痙攣を認めることも多い。脳神経症状として代表的なものは、嚥下障害や構音障害などの球麻痺である。むせなどの嚥下障害の自覚がなくても、嚥下造影などで評価すると潜在的な嚥下障害を認めることが多い。喉頭痙攣による短時間の呼吸困難を自覚することもある。その他の脳神経症状として、顔面筋や舌の筋力低下・線維束性収縮を認める。線維束性収縮は安静時には軽度であるが、筋収縮時に著明となり、contraction fasciculationと呼ばれる。顔面や舌のほか、四肢近位部でも認められる。眼球運動障害は認めない。感覚系では下肢遠位部で振動覚の低下を認めることがある。腱反射は低下、消失し、Babinski徴候は一般に陰性である。小脳機能には異常を認めない。高次機能は保たれることが多いが、一部障害を認めるとした報告もある。2)随伴症状代表的な随伴症状として、女性化乳房を半数以上に認める。また、肝機能障害、耐糖能異常、高脂血症、高血圧症などをしばしば合併する。女性様皮膚変化、睾丸萎縮などを認めることもある。■ 分類とくに分類はされていない。同じ運動ニューロン疾患である筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis: ALS)は、球麻痺型など発症部位で分類することもあるが、SBMAでは一般的に行われていない。■ 予後四肢の筋力低下は緩徐に進行し、筋力低下の発症からおよそ15~20年の経過で、歩行に杖を必要としたり、車いすでの移動になったりすることが多い2)。進行に伴い球麻痺も高度となり、誤嚥性肺炎などの呼吸器感染が死因の大半を占める。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)厚生労働省の神経変性疾患に関する調査研究班が作成した診断基準を表に示す。家族歴がない症例の場合、特徴的な症状から臨床的な診断は可能だが、特定疾患の申請には遺伝子検査が必要となる。血液検査では、血清CKが異常高値を示す。また、血清クレアチニンは異常低値となることが多い。随伴症状に伴い、血液検査でもALT(GOT)やAST(GPT)、グルコース、HbA1c、総コレステロールの上昇などがしばしば認められる。髄液検査は正常である。筋電図では高振幅電位、interferenceの減少など神経原性変化を認める。感覚神経伝導検査において、活動電位の低下や誘発不能がみられることが多い3)。SBMA患者の約10%においてBrugada型心電図異常を認める報告がある4)。特に、失神の既往歴や突然死の家族歴がある症例では、検出率を上げるため右側胸部誘導を一肋間上げて、心電図を測定することが推奨される。病理学的には、下位運動ニューロンである脊髄の前角細胞および脳幹の神経核の神経細胞が変性・脱落するとともに5)、残存する神経細胞には核内封入体を認める6)。CAG繰り返しの異常延長によって生じる変異ARが、この核内封入体の主要構成成分である。筋生検では、小角化線維や群集萎縮といった神経原性変化が主体であるが、中心核の存在など筋原性変化も認める。鑑別診断として、ALSや脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy: SMA)の軽症型であるKugelberg-Welander病、多発性筋炎などがあげられる。とくに、進行性筋萎縮症(progressive muscular atrophy: PMA)と呼ばれる成人発症の下位運動ニューロン障害型の運動ニューロン疾患は、ALSよりも進行がやや遅いことがあり、SBMAとの鑑別が重要である。本症の臨床診断は、遺伝歴が明確で、本疾患に特徴的な身体所見を呈していれば比較的容易であるが、これらが不明瞭で鑑別診断が困難な症例では、遺伝子検査が有用である。現在、遺伝子検査は保険適用となっている。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)かつては男性ホルモンの補充療法や蛋白同化ステロイド投与、TRH療法などが試みられたこともあるが、これらの治療の有効性は確認されていない。現在のところ有効な治療法はなく、耐糖能異常や高脂血症などの合併症に対する対症療法が中心である。また、四肢の筋力低下に対する対症療法として、筋力維持のためのリハビリテーションを行うことも多い。球麻痺に対し、嚥下リハビリを行うこともある。これらのリハビリの具体的内容に関するエビデンスは確立されていない。重度の嚥下障害がある場合、胃瘻を造設するなどして経管栄養を導入する。呼吸障害が進行した症例では、NIPPVや気管切開を行ったうえでの人工呼吸管理が必要となるが、患者本人や家族に対するインフォームド・コンセントが重要となる。SBMAのモデルマウスを用いた研究によって、変異ARが下位運動ニューロンの核内に集積する病態が、男性ホルモン(テストステロン)依存性であることが解明された。テストステロンの分泌を抑制する目的でオスのSBMAモデルマウスに対して去勢術を施行したところ、核内に集積する変異ARの量は著しく減少し、運動障害などの神経症状が劇的に改善した。この治療効果は、黄体形成ホルモン刺激ホルモン(LHRH)アゴニストであるリュープロレリン酢酸塩(商品名:リュープリンほか)の投与による薬剤的去勢でも再現された7)。リュープロレリン酢酸塩は前立腺がんなどの治療薬として、すでに保険適用となっている薬剤であるため、SBMA患者で薬剤の有効性と安全性を検討するフェーズII試験が行われ、さらにフェーズIII試験に相当する医師主導治験(JASMITT)が実施された。その結果、リュープロレリン酢酸塩がSBMAの病態を反映するバイオマーカーとして重要な陰嚢皮膚における変異ARの核内集積を抑制するとともに、血清CKも低下させることが判明した8)。また、有意差は認めなかったものの嚥下機能の改善を示唆する結果が得られたため、追加の治験も実施され、今後の承認申請を目指している。リュープロレリン酢酸塩とは作用機序は異なるものの、男性ホルモン抑制作用をもつ5α還元酵素阻害薬であるデュタステリド(同:アボルブ)の臨床応用を目指した第II相試験が、アメリカで実施された。この試験でも嚥下機能などで改善傾向が示されるなど、前述したリュープロレリン酢酸塩の治験に近似した結果が得られたが、これも承認には至っていない9)。4 今後の展望最近では、SBMA患者からもiPS細胞が樹立され10)、治療薬のスクリーニングやSBMAの病態解明に寄与することが期待されている。また、マイクロRNAや片頭痛の治療に用いられるナラトリプタンもSBMAモデルマウスの表現型を改善することが報告されており、今後の臨床応用が期待されているが、具体的な臨床試験の計画には至っていない。5 主たる診療科神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究情報難病情報センター 球脊髄性筋萎縮症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報SBMAの会(患者とその家族向けのまとまった情報)1)Kennedy WR, et al. Neurology.1968;18:671-680.2)Atsuta N, et al. Brain.2006;129:1446-1455.3)Suzuki K, et al. Brain.2008;131:229-239.4)Araki A, et al. Neurology.2014;82:1813-1821.5)Sobue G, et al. Brain.1989;112:209-232.6)Adachi H, et al. Brain.2005;128:659-670.7)Katsuno M, et al. Nat Med.2003;9:768-773.8)Katsuno M, et al. Lancet Neurol.2010;9:875-884.9)Fernandez-Rhodes LE, et al. Lancet Neurol.2011;10:140-147.10)Nihei Y, et al. J Biol Chem.2013;288:8043-8052.公開履歴初回2013年04月25日更新2015年11月17日

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食道がんと糖尿病の関連、肥満には依存しない?

 食道および胃噴門部腺がんは糖尿病と関連しており、この関連性は肥満とは独立している可能性があることを、米国セントラル・テキサス退役軍人ヘルスケアシステムのJ.L.Dixon氏らが明らかにした。Diseases of the Esophagus誌オンライン版2015年10月12日号の掲載報告。 過去30年間、米国では食道腺がん(EAC)の発症率が、ほかのどのがんよりも急速に増加しており、同様に、肥満や糖尿病の有病率も急激に増加している。そこで著者らは、肥満や糖尿病とEACの潜在的な関連性について検討を行った。 2005~09年度の管理データベースをレトロスペクティブに照合することによって、2つのコホートを同定した。遠位食道および胃噴門部腺がんの患者をがんコホートと定義し、胃食道逆流症(GERD)患者(噴門形成術の処置コードを伴う診断)を対照コホートとした。人口統計学的データや、肥満、糖尿病、脂質異常症、アルコール乱用、ニコチン依存の診断を含む患者データを分析し、ロジスティック回帰モデルにより、EAC発症の危険因子を同定した。 主な結果は以下のとおり。・対象は、噴門形成術を受けたGERD患者1,132例、もしくはEAC患者1,704例のいずれかであった(計2,836例)。・肥満者の割合は対照コホートでわずかに高かった。一方、糖尿病の割合は、がんコホートのほうが高かった(30.8% vs.14.8%、カイ二乗:94.5、p<0.0001)。・併存疾患やライフスタイル因子を調節したロジスティック回帰分析の結果、糖尿病の診断は、GERDではなく、食道がんと有意に関連していた(OR:2.2、95%信頼区間[CI]:1.7~2.8)。・ニコチン依存もまたEACの危険因子として同定された(OR:1.7、95%CI:1.4~2.0)。

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TG値1,000mg/dL以上を示す患者の臨床的特徴

 金沢大学附属病院で過去10年間に1,000mg/dL以上の高トリグリセリド(TG)値を示した215例の調査によると、全体の7.9%に冠動脈疾患の既往、5.6%に膵炎の既往があり、55.3%に脂肪肝が認められたことがわかった。また、多くが何らかの2次的要因によるTG上昇であることがわかった。深刻な高TG血症は、さまざまな状況により引き起こされる可能性があるため、潜在的な2次的要因を探ることの重要性が示唆された。Journal of clinical lipidology誌7・8月号掲載、金沢大学附属病院 多田 隼人氏らの報告。 日本人において1,000mg/dL以上の高TG値を示す患者の臨床的特徴についてのデータは少ない。 そこで著者らは、2004年4月~2014年3月までに金沢大学附属病院において、何らかの理由で血清TG値を測定された日本人7万368例のうち、空腹時血清TG値が1,000mg/dL以上を示した例の冠動脈疾患の存在、膵炎の既往、脂肪肝の存在、高TG値の潜在的要因について調査した。 主な結果は以下のとおり。・空腹時血清TG値が1,000mg/dL以上を示したのは215例(0.31%)であった(平均年齢46歳、男性170例、平均BMI 25kg/m2)。・WHOの表現型分類(フレドリクソン分類)では、I型4例(1.9%)、IV型97例(45.1%)、V型114例(53.0%)であった。・116例(54.0%)がアルコールを摂取しており、58例(27.0%)がエタノール換算60g/日以上の大量摂取をしていた。・糖尿病は64例(29.8%)に認められた。・一過性の重症高TG血症を59例(27.4%)に認めた。原因は副腎皮質ホルモン投与(19例)、抗うつ薬投与(18例)、急性リンパ性白血病の治療としてL-アスパラギナーゼおよびステロイド投与(15例)、乳がんのホルモン補充療法(9例)、βブロッカー投与(5例)、甲状腺機能低下症(4例)、妊娠(4例)、汎下垂体機能低下症(2例)であった。・脂肪肝は119例(55.3%)に認められた。・膵炎の既往は12例(5.6%)、冠動脈疾患の既往は17例(7.9%)に認められた。

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高齢者の服薬、併存疾患の組み合わせの確認を/BMJ

 米国・イェール大学医学部のMary E Tinetti氏らは複数の慢性疾患を有する高齢者の、ガイドラインに基づく服薬と死亡の関連を調べた。その結果、とくに心血管薬の生存への影響は、無作為化試験の報告と類似していたが、β遮断薬とワルファリンについて併存疾患によりばらつきがみられたことを報告した。また、クロピドグレル、メトホルミン、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)は、生存ベネフィットとの関連がみられなかったという。結果を踏まえて著者は、「併存疾患の組み合わせによる治療効果を明らかにすることが、複数慢性疾患を有する患者の処方せんガイドになるだろう」とまとめている。BMJ誌オンライン版2015年10月2日号掲載の報告より。頻度の高い4疾患併存の高齢者の服薬と死亡の関連を調査 研究グループは、65歳以上の代表的サンプルを全米から集約した住民ベースコホート研究Medicare Current Beneficiary Surveyで、複数慢性疾患を有する高齢者のガイドライン推奨による服薬と死亡を調べる検討を行った。 被験者は、2つ以上の慢性疾患(心房細動、冠動脈疾患、慢性腎臓病、うつ病、糖尿病、心不全、脂質異常症、高血圧症、血栓塞栓症)を有する高齢者8,578例で、2005~2009年に登録、2011年まで追跡した。 被験者は、β遮断薬、Ca拮抗薬、クロピドグレル、メトホルミン、RAS系阻害薬、SSRI、SNRI、スタチン薬、サイアザイド系利尿薬、ワルファリンを服用していた。 主要評価項目は、疾患を有しガイドライン推奨薬を服用していた患者の、非服用患者と比較した死亡に関する補正後ハザード比で、頻度の高い4疾患を有していた患者における死亡補正後ハザード比とした。単疾患では抑制効果が高くても4併存疾患では減弱があることを確認 全体で、各疾患を有する患者の50%以上が、併存疾患にかかわらずガイドライン推奨薬を服用していた。 3年間の追跡期間中の死亡例は、1,287/8,578例(15%)であった。 心血管薬では、β遮断薬、Ca拮抗薬、RAS系阻害薬、スタチンは、対象疾患に関する死亡を抑制することが認められた。たとえば、β遮断薬の補正後ハザード比は、心房細動を有する患者では0.59(95%信頼区間[CI]:0.48~0.72)、心不全患者では0.68(同0.57~0.81)であった。 これら心血管薬の補正後ハザード比は、4つの併存疾患を有する被験者でも類似した値がみられたが、β遮断薬は4併存疾患の組み合わせによりばらつきがみられた。0.48(心房細動/冠動脈疾患/脂質異常症/高血圧)から、0.88(うつ病/冠動脈疾患/脂質異常症/高血圧)にわたっていた。 一方、クロピドグレル、メトホルミン、SSRI、SNRIでは、死亡の抑制効果はみられなかった。 また、ワルファリンは、心房細動(補正ハザード比:0.69、95%CI:0.56~0.85)、血栓塞栓症(0.44、0.30~0.62)を有する患者で、死亡リスクの抑制が認められたが、頻度の高い4併存疾患患者では、その抑制効果が減弱することが確認された。0.85(心房細動/冠動脈疾患/脂質異常症/高血圧)から、0.98(心房細動/うつ病/脂質異常症/高血圧)の範囲にみられた。

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事例75 ピタバスタチンカルシウム(商品名:リバロ)錠1mgの査定【斬らレセプト】

解説事例では、高脂血症の患者に対してピタバスタチンカルシウム(リバロ®)錠1mgを処方したところ、A事由(医学的に適応と認められないもの)にて査定となった。同錠の添付文書をみてみると、効能・効果には「高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症」とある。使用上の注意には、「適用の前に十分な検査を実施し、高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症であることを確認した上で、本剤の適用を考慮すること」と記載されていた。傷病名欄の高脂血症と効能・効果に記載された傷病名との不一致と判断されたことが査定事由であった。コンピューター審査では、効能・効果に記載された傷病名そのものが記載されていないと、原則として査定対象となる。明らかに医学的に対象であると判断しての投与であっても、レセプト上で妥当性の判断ができないと機械的に査定となる。効能・効果と不一致の場合の対策としては、あらかじめ医学的必要性を記載して、人の目の点検に委ねることが必要である。

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トマトジュースは更年期女性の健康改善に有効

 トマトジュースの摂取は、更年期女性の不安などの更年期症状を緩和し、安静時エネルギー消費量・心拍数を増加させ、高トリグリセリド(TG)例(150mg/dL以上)の血清TG値を低下させることが、東京医科歯科大学の廣瀬 明日香氏らの研究により明らかになった。Nutrition journal誌2015年4月号の報告。 トマトベースの食品は健康増進と疾病防止効果があるといわれている。また、トマトジュースの成分には、更年期症状および心血管疾患を持つ女性を含む中年女性にとって、健康上のベネフィットを有するものがあると考えられている。そのため、著者らは、少なくとも1つ以上の更年期症状を持つ40~60歳の女性95人を対象に、健康パラメータに対するトマトジュース摂取の正味の効果を調査するため、非盲検単アーム試験を行った。 参加者は、試験開始前の2週間および試験期間中(トマトジュースを摂取する8週間)はトマトが豊富な食品や飲料の摂取を控えた。試験開始後、無塩のトマトジュース200mLを1日2回、8週間摂取した。更年期症状は、更年期症状スケール(MSS)、Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)、アテネ不眠尺度(AIS)を用いて、ベースラインおよび試験開始4週時、8週時点に評価した。それらと同じタイミングで、BMIや体脂肪率などの体組成、血圧、心拍数、安静時のエネルギー消費量、トリグリセリド、コレステロール、血糖値、HbA1cを測定した。 主な結果は以下のとおり。・93人の女性(98%)が試験を完了した。・以下のパラメータは、ベースラインと比較して4週時、8週時に有意な変化を示した(平均値±標準偏差;ベースライン、4週時、8週時、検定法)。(1)MSSスコアが有意に改善(9.9±5.2、8.5±5.0、8.3±5.0、p<0.0001、ANOVA検定)(2)HADSの不安サブスケールが有意に改善(5.3±2.7、4.8±2.4、4.9±2.9、p=0.041、フリードマン検定)(3)心拍数が有意に増加(62.6±9.4bpm、64.4±8.6bpm、63.8±8.2bpm、p=0.028、フリードマン検定)(4)安静時エネルギー消費量が有意に増加(1,980±368kcal/日、2,108±440kcal/日、2,149±470kcal/日、p=0.0030、反復測定ANOVA)(5)ベースラインに高TG(150mg/dL以上)であったサブグループ(n=22)で血清TG値が有意に低下(237.8±88.9 mg/dL、166.7±86.1mg/dL、170.9±109.7mg/dL、p=0.0002、フリードマン検定)

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片頭痛の頻度と強度、血清脂質と有意に相関

 片頭痛は心血管疾患、とくに脂質異常症のリスク増加と関連していることが報告されているが、これまで片頭痛の重症度と血清脂質との関係を調べた研究はなかった。イタリア・G.D'Annunzio UniversityのClaudio Tana氏らは、小規模な後ろ向き研究において、総コレステロールおよびLDL-コレステロール値が、片頭痛の頻度および強度と有意な正の関連があることを明らかにした。また、片頭痛予防薬による治療後に、これら血清脂質値が有意に減少していることを初めて明らかにした。著者は「本研究は予備的研究であり、今後は前向き比較試験によって確認されなければならない」とまとめている。Pain Practice誌2015年9月号(オンライン版2014年7月10日号)の掲載報告。片頭痛発作の頻度および強度とコレステロールには直接的な線形相関 研究グループは、片頭痛患者52例(前兆あり17例、前兆なし36例)を対象に、片頭痛予防薬による3ヵ月間の治療前後の、片頭痛重症度と血清脂質との関連について評価した。 コレステロールと片頭痛の関連についての主な研究結果は以下のとおり。・片頭痛発作が月8回以上の高頻度群(HF群)および強度が数値的評価スケール(NRS)で5以上の重度群(HI群)では、月8回未満の低頻度群(LF群)およびNRSが5未満の軽度群(LI群)と比較して、総コレステロールおよびLDL-コレステロールがいずれも有意に高値であった[総コレステロール:HF群 vs.LF群(p<0.0001)、HI群 vs.LI群(p<0.0001)/LDL-コレステロール:どちらもp<0.0001]。・治療による片頭痛発作の頻度および強度の有意な低下は、総コレステロールおよび LDL-コレステロールの有意な減少と関連していた(p<0.001)。・片頭痛発作の頻度および強度と、血清脂質との間には、直接的な線形相関が認められた(総コレステロールと頻度、総コレステロールと強度、LDL-コレステロールと頻度、およびLDL-コレステロールと強度との相関はいずれもp<0.0001)。・前兆の有無では、評価パラメータに差はなかった。

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正常眼圧緑内障の乳頭出血、血小板機能低下で発見されやすい?

 正常眼圧緑内障にみられる乳頭出血は、血小板機能の低下と関連していることが、韓国・成均館大学のSeong Hee Shim氏らの前向き横断研究によって明らかになった。著者は「乳頭出血を有する正常眼圧緑内障患者では、血小板凝集が遅れて出血が長引き吸収が遅延するため、乳頭出血が検出されやすい可能性がある」とまとめている。American Journal of Ophthalmology誌オンライン版2015年9月14日号の掲載報告。 研究グループは、正常眼圧緑内障と乳頭出血を有する患者(NTG・DH+群)120例、乳頭出血のない正常眼圧緑内障患者(NTG・DH-群)75例、および健常者(対照群)120例、合計315例を対象に、視野検査、カラー眼底写真撮影、光干渉断層計(OCT)検査を行うとともに、血小板機能アナライザー(PFA-100システム)を用いてコラーゲン/エピネフリン閉塞時間を測定した。 主な結果は以下のとおり。・コラーゲン/エピネフリン閉塞時間は、NTG・DH+群141.92±53.44秒、NTG・DH-群124.60±46.72秒、対照群114.84±34.84秒で、NTG・DH+群が他の群と比較して約14~24%長かった(一元配置分散分析、p<0.001)。・NTG・DH+群の活性化部分トロンボプラスチン時間も、対照群より長かった。・ステップワイズ多重ロジスティック回帰分析の結果、コラーゲン/エピネフリン閉塞時間の延長のみが独立して乳頭出血と関連していることが明らかとなった(年齢、性別、プロトロンビン時間、活性化部分トロンボプラスチン時間、糖尿病、高血圧、低血圧、心疾患、甲状腺機能低下症、片頭痛、脳卒中、脂質異常症で調整したオッズ比=2.94、95%信頼区間:1.40~6.17)。・血小板機能を年齢別に3群で比較したときも同様の傾向が観察された。

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EMPA-REG OUTCOME試験:それでも安易な処方は禁物(解説:桑島 巌 氏)-428

 この結果をみて真っ先に連想したのは、高血圧治療薬で、利尿薬がCa拮抗薬、ACE阻害薬、α遮断薬などよりも優れた心血管合併症予防効果を証明したALLHAT試験である。利尿作用が心不全悪化を防いだために全体を有利に導き、心疾患合併症例における利尿薬の強さをみせた試験であった。 EMPA-REG試験でも、利尿作用を有するSGLT2阻害薬が虚血性心疾患で心機能が低下した症例での心不全死を抑制したと考えやすい。しかし、心血管死の内訳をみると必ずしもそうではないようである。心不全の悪化による死亡は10%前後にすぎず、心臓突然死や心原性ショックも広い意味での心不全死と捉えると40%を占めることになり、本剤の利尿作用の貢献も考えられる。しかし、「その他の心血管死」とはどのような内容なのかが明らかでない限り、エンパグリフロジンがどのような機序で心血管死を減らしたのかを推定するのは難しい。 しかし、本試験で重要なことは、致死的、非致死的を含めた心筋梗塞と脳卒中発症はいずれも抑制されていないことである。不安定狭心症は急性心筋梗塞と同等の病態であり、なぜこれを3エンドポイントから外したか不明だが、これを加えた4エンドポイントとすると有意性は消失する。したがって、本試験はSGLT2阻害薬の優位性を証明できなかったという解釈もできる。本試験の対象は、すでに高度な冠動脈疾患、脳血管障害、ASOを有していて循環器専門医に治療を受けているような糖尿病患者であり、実質的には2次予防効果を検証した試験での結果である。試験開始時に、すでにACE阻害薬/ARBが80%、β遮断薬が65%、利尿薬が43%、Ca拮抗薬が33%に処方されている。糖尿病治療にしてもメトホルミンが74%、インスリン治療が48%、SU薬も42%が処方されており、さらにスタチン薬81%、アスピリンが82%にも処方されており、かつ高度肥満という、専門病院レベルの合併症を持つ高度な治療抵抗性の患者を対象にしている。 このことから、一般診療で診る、単に高血圧や高脂血症などを合併した糖尿病症例に対する有用性が示されたわけではない。 本試験における、エンパグリフロジンの主要エンドポイント抑制効果は、利尿作用に加えて、HbA1cを平均7.5~8.1%に下げた血糖降下作用、そして体重減少、血圧降下利尿作用というSGLT2阻害薬が有する薬理学的な利点が、肥満を伴う超高リスク糖尿病例で理想的に反映された結果として、心血管死を予防したと考えるほうが自然であろうと考える。臨床試験という究極の適正使用だからこそ、本剤の特性がメリットに作用したのであろう。 本試験を日常診療に活用する点で注意しておくことは、1.本試験はすでに冠動脈疾患、脳血管障害の既往があり、近々心不全や突然死が発症する可能性が高い、きわめて超高リスクの糖尿病例を対象としており、診療所やクリニックでは診療する一般の糖尿病患者とは異なる点。2.本試験の結果は、臨床試験という究極の適正使用の診療下で行われた結果である点。3.心筋梗塞、脳卒中の再発予防には効果がなく、不安定狭心症を主要エンドポイントに追加すると有意性は消失してしまう点。したがって、従来の糖尿病治療薬同様、血糖降下治療に大血管疾患の発症予防効果は期待できないという結果を皮肉にも支持する結果となっている。 本試験が、高度の心血管合併症をすでに有している肥満の治療抵抗性の糖尿病症例の治療にとって、福音となるエビデンスであることは否定しないが、この結果を十分に批判的吟味することなく、一般臨床医に喧伝されることは大きな危険性をはらんでいるといえよう。本薬の基本的な抗糖尿病効果は利尿という点にあり、とくに口渇を訴えにくい高齢者では、脱水という重大な副作用と表裏一体であることは常に念頭に置くべきである。企業の節度ある適正な広報を願うばかりである。関連コメントEMPA-REG OUTCOME試験の概要とその結果が投げかけるもの(解説:吉岡 成人 氏)リンゴのもたらした福音~EMPA-REG OUTCOME試験~(解説:住谷 哲 氏)EMPA-REG OUTCOME試験:SGLT2阻害薬はこれまでの糖尿病治療薬と何が違うのか?(解説:小川 大輔 氏)

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糖尿病黄斑浮腫と脂質異常症との関連、その真偽は?

 糖尿病黄斑浮腫(DME)は糖尿病患者の視力障害を引き起こすが、その発症・進展のリスク因子として、脂質異常症が知られている。アイルランド・クィーンズ大学のRadha Das氏らは、DMEと脂質異常症との関連を調べる目的でシステマティックレビューを行った。その結果、症例対照研究のメタ解析では血清脂質とDMEの強い関連を示唆するエビデンスが得られたものの、前向き無作為化比較試験のみのメタ解析ではその関連が確認されなかったことを明らかにした。著者は、「血清脂質とDMEとの関連は重要な問題であり、今後さらなる研究を要する」とまとめている。Ophthalmology誌2015年9月号(オンライン版2015年7月3日号)の掲載報告。 研究グループは、血清脂質とDMEとの関連を調べた無作為化比較試験、コホート研究、症例対照研究および横断研究について、2014年9月までに発表された論文をMEDLINE、PubMedおよびEmbaseにて検索した。 症例対照研究、横断研究およびコホート研究については、研究の質をNewcastle-Ottawaスケールで評価した。また、無作為化比較試験に関してはCochraneバイアスリスクツールで評価した。 主な結果は以下のとおり。・レビューには、21件(横断研究5件、コホート研究5件、症例対照研究7件および無作為化比較試験4件)が組み込まれた。・症例対照研究のメタ解析では、非DME患者と比較しDME患者で血清総コレステロール(TC)、LDLおよび血清トリグリセライド(TG)の平均値が有意に高かった(TC:30.08、95%信頼区間[CI]:21.14~39.02、p<0.001/ LDL:18.62、95%CI:5.80~31.43、p<0.05/ TG:24.82、95%CI:9.21~40.42、p<0.05)。・無作為化試験のメタ解析では、プラセボ群と脂質低下群とで硬性白斑の増悪およびDME重症度のリスクに有意差はみられなかった(硬性白斑の相対リスク1.00、95%CI:0.47~2.11、p=1.00/ DMEの相対リスク1.18、95%CI:0.75~1.86、p=0.48)。

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EMPA-REG OUTCOME試験:SGLT2阻害薬はこれまでの糖尿病治療薬と何が違うのか?(解説:小川 大輔 氏)-423

 2015年9月14日から、ストックホルムで開催された欧州糖尿病学会(EASD)に参加した。今大会でEMPA-REG OUTCOME試験の結果が発表されるとあって、世界中から集まった糖尿病の臨床医や研究者の注目を集めていた。私も当日、発表会場に足を運んだが、超満員でスクリーンの文字がよく見えない位置に座るしかなかった。しかし、EMPA-REG OUTCOME試験の結果は同日論文に掲載されたため、内容を確認することができた1)。 2008年以降、米食品医薬品局(FDA)は新規の糖尿病治療薬に対し、心血管系イベントに対する安全性を評価する、ランダム化プラセボ対照比較試験の実施を義務付けている。そして、SGLT2阻害薬ではエンパグリフロジン、カナグリフロジン、ダパグリフロジンで心血管系の安全性試験が行われている。この3製剤の中で、エンパグリフロジンの試験(EMPA-REG OUTCOME)が最も早く終了し、今回の発表となった。 この試験は、心筋梗塞・脳梗塞の既往や心不全などのある、心血管イベントの発症リスクの高い2型糖尿病患者を対象に、SGLT2阻害薬エンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス)10mgあるいは25mgを投与し、プラセボと比較して心血管イベントに対する影響を検討した研究である。主要アウトカムは、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞のいずれかの初回発現までの期間で、結果の解析はエンパグリフロジン群(10mg群と25mg群をプールしたもの)のプラセボ群に対する非劣性を検定した後に優越性を検定する、とデザインペーパーに記載されている2)。 日本を含む世界42ヵ国、約7,000人がこの試験に参加し、追跡期間の中央値は3.1年であった。主要エンドポイントは、エンパグリフロジン群(10mgと25mgの合計)がプラセボ群より有意に低かった(hazar ratio:0.86、95%CI:0.74~0.99)。また、非致死的心筋梗塞と非致死的脳梗塞では有意差が付かなかったが、心血管死は有意に低下していた(3.7% vs.5.9%、Hazard ratio:0.62、95%CI:0.49~0.77)。また、全死亡も有意に低下しており(5.7% vs.8.3%、Hazard ratio:0.68、95%CI:0.57~0.82)、生命予後を改善することが示唆された。 おそらく多くの方々がこの結果を評価するであろう。これまでの糖尿病治療薬でこれほど心血管イベントを抑制した薬剤はなく、世界中の医療関係者を驚かせた。また、高血圧症や脂質異常症の標準治療をされたうえでも心血管死を減少したというのは特筆すべき結果である。 本稿ではあえて気になった点を列記する。(1)主要エンドポイントはエンパグリフロジン10mg群および25mg群ではいずれも有意差が付いていない。おそらく症例数が少ないことによるものであろう。(2)心血管死の発症は著明に抑制されていたが、一方で心筋梗塞や脳梗塞の発症は抑制されておらず、とくに脳梗塞は、むしろ増加する傾向を認めている点には注意が必要である。(3)心血管死や心不全による入院は試験開始直後から減少しているが、この点をどう解釈するか。これほど早く薬剤の臨床効果が出現するものだろうか。 また、なぜSGLT2阻害薬エンパグリフロジンを投与すると、試験開始早期より心血管死を抑制できたのであろうか。HbA1cはプラセボ群よりたかだか0.5%程度しか低下していない。これまでに行われた糖尿病治療薬の試験でも今回のような効果は認められたことはなく、血糖コントロールの改善が寄与したとは考えにくい。また、血圧に関しても収縮期血圧はおよそ4mmHgの低下を認めるが、血圧低下だけでは十分に説明できない。脂質に関しても、HDLコレステロールの増加はわずか2mg/dL程度であり、むしろLDLコレステロール値は上昇している。1つの機序としては、心血管死と心不全に対する効果が早くかつ大きいことや、これまでの心不全に関する試験においても今回と同様の結果が認められることから、SGLT2阻害薬の利尿作用が関係している可能性がある。また、別の機序として、複数の治療目標を同時に積極介入したSteno-2試験の結果に類似することから、SGLT2阻害薬が血糖のみならず血圧、脂質、肥満などをトータルに改善したことが結果につながったのかもしれない。いずれにしても、この心血管イベント抑制のメカニズムは推測の域を超えない。 この効果がエンパグリフロジンだけに認められる結果なのか、それともほかのSGLT2阻害薬でも認められるのか。今後のカナグリフロジン(CANVAS試験)やダパグリフロジン(DECLARE-TIMI58試験)の結果を待たなければ断言できないが、現時点ではクラスエフェクトと考えるほうが妥当であろう、そうEASDで発表者の一人が質疑応答で返答していた。 EMPA-REG OUTCOME試験により、SGLT2阻害薬の心血管イベントに対する効果のみならず、さらに興味深い結果が得られた。これまで日本では、「若くて肥満のある患者が良い適応だ」とうたわれてきた。しかし、主要アウトカムのサブグループ解析で、高齢者(65歳以上)や非肥満者(BMI 30以下)のほうが、むしろ効果が高いという結果をみると、SGLT2阻害薬の対象となる患者の範囲は案外広いのかもしれない。また、「利尿薬との併用はしてはいけない」ともいわれてきたが、この研究では実に約43%の症例で利尿薬が併用されていたにもかかわらず、体液減少による有害事象の増加は認められなかった。EMPA-REG OUTCOME試験はこれまでの常識を覆す、インパクトのある試験であることは間違いない。参考文献はこちら1)Zinman B, et al. N Engl J Med. 2015 Sep 17. [Epub ahead of print]2)Zinman B, et al. Cardiovasc Diabetol. 2014;13:102.関連コメントEMPA-REG OUTCOME試験:試験の概要とその結果が投げかけるもの(解説:吉岡 成人 氏)EMPA-REG OUTCOME試験:リンゴのもたらした福音(解説:住谷 哲 氏)EMPA-REG OUTCOME試験:それでも安易な処方は禁物(解説:桑島 巌 氏)

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TEAAM試験:テストステロン低値の高齢者へのテストステロンの補充は、動脈硬化を抑制しない(解説:佐田 政隆 氏)-417

 男性ホルモンであるテストステロンの血中濃度は、10代後半から20代にかけてピークとなり、それ以降、加齢とともに低下する。しかし、個人差もあり、低テストステロン値は、糖尿病、メタボリックシンドローム、脂質異常症、心血管病罹患率、死亡率と関連することが報告されている。 一方、テストステロンは、血管内皮機能の改善、動脈硬化の抑制、虚血肢への側副血行路の発達促進などの血管保護作用を示すことが、動物実験などで報告されている。そこで、男性ホルモン低下が易疲労感、意欲の低下、体脂肪率の増加、認知機能の低下、骨量低下、筋肉量の低下の原因であると信じられている。したがって、抗加齢ドックなどではテストステロンの血中濃度を測定し、低値であるとテストステロンの補充が自由診療で行われている。米国においても、この10年間で、男性ホルモンの売り上げが著明に増加しているという。しかし、男性ホルモン補充療法が、はたして心血管イベントを抑制するのか、生活の質(Quality of Life)を改善するのかという科学的エビデンスがないのが現状である。 そこで本研究では、動脈硬化のサロゲートとして、総頸動脈の内膜-中膜複合体肥厚(IMT)を二重盲検法で3年間追った。60歳以上の中高齢の男性で、朝のテストステロンレベルが100~400ng/dLと低値である人が対象となった。平均年齢は67.6歳の306例がランダム化された。テストステロン75mg/日または偽薬が投与され、テストステロン群においては、途中でテストステロン濃度を測定して、500ng/dL未満であれば100mg/日に増量され、900ng/dLより多ければ50mg/日に減量された。 偽薬群で、IMTが0.010mm/年で増加したのに対して、テストステロン群においては0.012mm/年で有意差はなかった。また、IMTの変化率とテストステロンレベルに相関はなかった。冠動脈のカルシウムスコアにおいても両群間で有意差はなかった。 本研究においては、テストステロンの性機能やQOLへの効果も検討されているが、セックス願望、勃起機能、性機能全般のスコア、パートナーとの親密度、健康関連のQOLに違いがなかった。テストステロン群で有意にヘマトクリットとPSAが高値であった。 マスコミなどで、科学的根拠に乏しい健康法やサプリメントがまことしやかに報道されているのには、非常に違和感を覚える。効果がないだけならまだ良いが、時に健康に重大な害を及ぼすこともありうる。実際に、本研究よりリスクの高い症例を対象にして、テストステロンの効果を評価したTOM試験では、テストステロン群で偽薬より心血管イベントが多く早期に試験が中止になっている1)。 スタチンやピオグリタゾンのようにIMTの進行を抑制し、心血管イベントの抑制効果が証明されている薬物と違って、今回、テストステロンの抗動脈硬化効果が示せなかった。昨今、抗加齢医学が大きく注目されているが、今後末永く普及するためには、その作用機序がしっかりとした科学的根拠に基づき、信頼される臨床研究によりエビデンスが構築されていることが、きわめて重要と思われる。

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肥満症治療におけるGLP-1受容体作動薬(リラグルチド)の可能性(解説:小川 大輔 氏)-412

 肥満症は糖尿病のみならず、高血圧症、脂質異常症や睡眠時無呼吸症候群、さらに心血管イベントを引き起こすことが知られている。これらの合併症はQOLの低下や死亡率の増加に繋がるため、肥満症の治療が臨床上重要であることはよく認識されているが、その一方で、肥満の治療が実際には困難であることも経験するところである。最近、欧米では数種類の抗肥満薬(Belviq、Qsymiaなど)が上市されているが、これらの薬剤はわが国では承認されていない。 今回、JAMA誌に掲載された論文は、肥満(BMI 27以上)の2型糖尿病患者を対象とし、GLP-1受容体作動薬リラグルチド(商品名:ビクトーザ)3.0mgあるいは1.8mgを1日1回皮下注射し、プラセボと比較して有効性および安全性を検討した研究である。56週間の対プラセボ群の体重減少量は、リラグルチド3.0mg群が約4.3kg、リラグルチド1.8mg群が約3.0kgであり、優位な体重減少効果が認められた。また、5%または10%超の減量達成者の割合もリラグルチド3.0mg群およびリラグルチド1.8mg群とも優位に多かったことが示された。 ただ、この論文を解釈するうえで注意しなければならないのは、この試験ではリラグルチド3.0mgと1.8mgの2用量が投与されているが、わが国で承認されている投与量の0.9mgよりどちらも多いという点である。現時点において、日本人の肥満症患者を対象としたリラグルチドの治験が行われるかについては不明であるが、肥満症に対して効果的な治療薬がない現状を考えると、個人的にはぜひ治験を行ってほしいと考える。【参考文献】Bakris GL, et al. JAMA. 2015;314:884-894.Sweetwyne MT, et al. Diabetes. 2015 Aug 20. [Epub ahead of print]You YH, et al. J Am Soc Nephrol. 2015 Jul 22.[Epub ahead of print]Rhee EP. J Am Soc Nephrol. 2015 Jul 22.[Epub ahead of print] Michel MC, et al. Naunyn Schmiedebergs Arch Pharmacol. 2015;388:801-816.Matthaei S, et al. Diabetes Care. 2015 Aug 31.[Epub ahead of print]

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アポ蛋白C3のアンチセンス療法による難治性高トリグリセライド血症治療の新たな可能性(解説:山下 静也 氏)-407

 血清アポリポ蛋白(アポ)C3は、トリグリセライド(TG)リッチリポ蛋白、とくに動脈硬化惹起性の強いレムナントリポ蛋白の構成成分の1つで、主に肝臓で合成される。カイロミクロン、VLDLなどに含まれるTGは、リポ蛋白リパーゼ(LPL)により分解され、遊離脂肪酸を放出してレムナントリポ蛋白となる。この過程はアポC2により活性化されるが、逆にアポC3はLPLによる分解を阻害し、血清TG値を上昇させる1)。また、中間比重リポ蛋白(IDL)をLDLに変換する肝性リパーゼ(HL)の活性やHDLのremodelingを、高濃度のアポC3が抑制する2)。さらに、アポC3はTGリッチレムナントリポ蛋白の肝臓での取り込みを抑制することも報告されており3)、アポC3の過剰は高TG血症、高レムナント血症、食後高脂血症を引き起こす。さらに、アポC3は細胞内でTG合成を促進し、肝臓でのVLDLの合成と分泌を増加させる4)。したがって、アポC3濃度の上昇はTGリッチリポ蛋白の分解のみならず、血中からのクリアランスの抑制を惹起し、動脈硬化惹起性であるVLDLやカイロミクロンレムナントの血中蓄積を引き起こす。 APOC3遺伝子欠損マウスでは、血清TGが低下し、食後高脂血症が防御される5)。ヒトではLancaster Amish の約5%がAPOC3遺伝子の欠失変異であるR19Xのヘテロ接合体であり、これらではアポC3濃度が半減し、空腹時および食後のTG値が有意に低く、冠動脈石灰化の頻度が60%も低い6)。Jorgensen氏らは、デンマークの2つの地域住民を対象とした前向き調査である、Copenhagen City Heart StudyとCopenhagen General Population Studyに参加した7万5,725例のデータを前向きに解析し、APOC3遺伝子変異を保因するため生涯にわたりTGが低値の集団において虚血性心血管疾患のリスクが低いか否かを検討した7)。その結果、虚血性血管疾患および虚血性心疾患のリスクは、ベースラインの非空腹時TG値の低下に伴って減少し、<90mg/dLの被験者は≧350mg/dLの場合に比べ、発症率が有意に低かった。また、APOC3遺伝子の3つのヘテロ接合体の機能欠失変異(R19X、IVS2+1G→A、A43T)の保有者では、変異のない被験者よりも非空腹時TGが平均44%低値であり、虚血性血管疾患および虚血性心疾患の発症は有意に少なかった。したがって、APOC3遺伝子の機能欠失型変異はTG値の低下、虚血性血管疾患のリスク減少と関連し、APOC3は心血管リスクの低減を目的とする薬剤の有望な新たな標的と考えられた。APOC3遺伝子の変異に関する同様の論文も発表されている8)。 このように、動脈硬化性疾患の発症抑制を目指したアポC3の制御による高TG血症の治療は、最近のトピックスとなっている。一方、家族性LPL欠損症等に起因する1,000mg/dLを超える高カイロミクロン血症は、難治性膵炎、発疹性黄色腫の原因となり、厳重な脂肪摂取の制限が必須である。しかしながら、治療にはきわめて抵抗性であり、フィブラート、ニコチン酸誘導体、ω3脂肪酸製剤を併用しても治療効果が十分ではなく、新たな治療法の開発が模索されていた。その中で、海外ではAAVベクターを用いたLPL遺伝子治療が試みられてきたが、膵炎の頻度は減らせるものの、TG値の顕著な低下は認められていない9)。 今回のアポC3アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた試験では、空腹時TG値が350~2,000mg/dL(単独療法群)、225~2,000mg/dL(フィブラート併用群)の患者に対して、APOC3遺伝子の発現を新規アンチセンスオリゴヌクレオチド製剤(ISIS 304801)の週1回投与で抑制し、用量依存性にアポC3とTG値の有意な低下が認められた。副作用についても、顕著なものは認められていない。ISIS 304801は第2世代のアンチセンスオリゴヌクレオチド製剤で、ヒトAPOC3 mRNAと選択的に結合し、ribonuclease H を介したmRNA分解により、APOC3 mRNA を減少させることで血中アポC3濃度を低下させる。すでに健常volunteerの第I相および家族性LPL欠損症の少数例での成績10)が報告されている。本報告は、さらにこれを発展させて、単独投与群、フィブラート併用群の2群において、用量についても検討した無作為、プラセボ対照、用量変更した第II相試験で、一部LPL欠損症ヘテロ接合体が含まれている。ISIS 304801投与により、アポC3が低下し、TGも顕著に低下したことは、本アンチセンス療法の有望性を示唆している。高カイロミクロン血症における膵炎の予防だけでなく、中等度高TG血症の症例では心血管イベント抑制につながる可能性もある11)。興味ある成果は、高TG血症の改善に伴ってHDL-C値が増加し、またLDL-C値も増加したことである。LPL抑制状態ではカイロミクロン由来の脂質のHDLへの転送が障害されており、HDL-C増加はC3減少によるLPL活性増加を反映していると考えられる。LDL-Cの増加は、おそらくVLDL→IDL→LDLへ変換が促進された結果であろうが、これが長期的に心血管イベントリスクの増悪につながるか否かは注意深く観察する必要があろう。また、アポC3の低下がLPL活性の増加につながったのか、あるいはTGの低下がTGリッチリポ蛋白の肝臓でのクリアランスの増加によるものなのか、あるいはアポC3アンチセンスオリゴヌクレオチドによるアポC3合成の減少が、肝細胞内でVLDLの分泌値低下を起こしたのかは、本研究では明らかにされていない。さらに、アンチセンスオリゴヌクレオチドの注射による局所の変化以外に、長期的な副作用について、今後慎重な解析が必要であろう。【参考文献】1)Ginsberg HN, et al. J Clin Invest. 1986;78:1287-1295. 2)Kinnunen PK, et al. FEBS Lett. 1976;65:354-357. 3)Windler E, et al. J Lipid Res. 1985;26:556-565. 4)Qin W, et al. J Biol Chem. 2011;286:27769-27780. 5)Maeda N, et al. J Biol Chem. 1994;269:23610-23616. 6)Pollin TI, et al. Science. 2008;322:1702-1705. 7)Jorgensen AB, et al. N Engl J Med. 2014;371:32-41. 8)TG and HDL Working Group of the Exome Sequencing Project, National Heart, Lung, and Blood Institute, et al. N Engl J Med. 2014;371:22-31.9)Burnett JR, et al. Curr Opin Mol Ther. 2009;11:681-691. 10)Gaudet D, et al. N Engl J Med. 2014;371:2200-2206. 11)Christian JB, et al. Am J Med. 2014;127:36-44.e1.

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FDA、2番目のPCSK9阻害薬evolocumabを承認

 米国食品医薬品局(FDA)は2015年8月27日、現在の治療オプションで低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)をコントロールすることができない一部の患者のためにevolocumab(商品名:Repatha、Amgen)注射薬を承認した。 evolocumabは、サブチリシン・ケキシン9型(PCSK9)阻害剤として第2の承認薬となる。ヘテロ接合型家族性高コレステロール血症(HeFH)、ホモ接合型家族性高コレステロール血症(hoFHを)、または心発作や脳卒中などアテローム性動脈硬化性心血管疾患を有しLDLコレステロールの低下の追加を必要とする成人患者に対する、食事療法と最大耐容性のスタチン療法への追加療法として承認された。 evolocumabの有効性と安全性は、1つの52週間プラセボ対照試験と、8つの12週間プラセボ対照試験で評価された。そのうち2つの試験はとくにHeFHを、1つの試験はHoFH患者を登録したものであった。12週間の試験の1つは、スタチン療法にも関わらず、さらなるLDLコレステロール低下を必要とするHeFHの被験者329例を、evolocumabまたはプラセボに無作為に割り付けたものである。その結果、evolocumab治療群はプラセボ群と比較して、約60%LDL-C平均値が減少した。  evolocumabの一般的な副作用は鼻咽頭炎、上気道感染症、インフルエンザ、背部痛、および注射部位の発赤、痛み、あざなどであった。evolocumabの使用による、発疹やじんましんなどのアレルギー反応も報告されている。FDAのプレスリリースはこちら。

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FDAが初のPCSK9阻害薬alirocumabを承認

 FDAは2015年7月24日、サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害薬alicocumab(商品名:Praluent、Sanofi-Aventis/Regeneron)注射薬を承認した。 alirocumabは成人のヘテロ接合型家族性高コレステロール血症(HeFH)または心発作や脳卒中といったアテローム動脈硬化性心血管疾患を有しLDL-C低下の追加治療が必要な患者に対し、食事療法と最大耐用量のスタチン療法への追加治療として承認された。 alirocumabは5つのプラセボ対象試験(被験者数2,476例)において、36~59%のLDL-Cの低下が認められている。FDAのプレスリリースはこちら。

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脳卒中リスク、日本でも居住地の経済状況が影響

 地区の社会経済状況の水準を指標化したものを、地理的剥奪指標(areal deprivation index)という。これまで欧米の多くの研究で、この地理的剥奪が循環器疾患リスクに影響する因子であることが示されている。しかし、アジアにおける検討はこれまでなかった。今回、国立がん研究センターによる多目的コホート研究(JPHC研究)で、地理的剥奪指標と脳卒中死亡および発症リスクとの関連が前向き研究で検討された。その結果、居住地の剥奪指標が脳卒中の発症に影響することが明らかになった。著者らは「地区の社会経済状況は脳卒中リスクを減少する公衆衛生介入の潜在的なターゲットになりうる」としている。Journal of epidemiology誌オンライン版2015年3月5日号掲載の報告。 対象となったのは、JPHC研究に参加した40~69歳の日本人男女9万843人。地理的剥奪指標に応じて、脳卒中の死亡率(平均追跡期間16.4年)、および発症率(同15.4年)の調整ハザード比を推定した。共用frailtyモデルを用いたCox比例ハザード回帰モデルを適用した。 主な結果は以下のとおり。・個人の社会経済的状況で調整後、脳卒中発症の調整ハザード比(95%CI)は剥奪指標の最低群(最も裕福な地区)を基準として、 低い順に1.16(1.04~1.29)、1.12(1.00~1.26)、1.18(1.02~1.35)、1.19(1.01~1.41)(最高群:最も貧しい地区)であった。・この関連性は、行動および心理社会的な因子(喫煙、飲酒量、身体活動、ストレス、婚姻状況)で減弱したものの、依然、有意であった。さらに、生物学的な心血管リスク因子(過体重、高血圧・糖尿病・高脂血症の既往歴)で調整することにより、この関連性は有意ではなくなった。・居住地の剥奪指標と脳卒中の死亡率には有意な関連性は認められなかった。

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高TG血症の新規治療薬、アポリポ蛋白C-IIIを有意に低下/NEJM

 高トリグリセリド血症治療薬として新規開発中のISIS 304801は、トリグリセリド値の有意な低下と関連することが報告された。ベースラインのトリグリセリド値が異なる85例を対象に、カナダ・モントリオール大学のDaniel Gaudet氏らが行った第II相無作為化二重盲検プラセボ対照用量設定試験の結果、示された。ISIS 304801は、血漿トリグリセリド値の主要な調節因子であるアポリポ蛋白C-III(APOC3)合成の第2世代アンチセンス阻害薬である。NEJM誌2015年7月30日号掲載の報告より。ベースライン値が異なる患者に単独、併用、各種用量を投与し検討 試験は、空腹時トリグリセリド値が350mg/dL(4.0mmol/L)~2,000mg/dL(22.6mmol/L)の未治療患者でISIS 304801を評価すること(ISIS 304801単剤投与コホート)、同様に同225mg/dL(2.5mmol/L)~2,000mg/dLの固定用量のフィブラート系薬を併用する患者でISIS 304801を評価すること(ISIS 304801+フィブラート系薬併用コホート)を目的とした。 各患者は、ISIS 304801(100~300mgの設定用量)またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。投与は週1回、13週間だった。 主要アウトカムは、血漿APOC3値のベースラインからの変化の割合(%)とした。単独、併用を問わず、用量依存的かつ長期にわたる低下の効果を確認 ISIS 304801単剤投与コホートで治療を受けたのは計57例(ISIS 304801投与41例、プラセボ投与16例)、ISIS 304801+フィブラート系薬併用コホートは計28例(同20例、8例)だった。年齢範囲は28~81歳、71%が男性。BMI値は境界型肥満を示すものだった。ベースラインでの両群の血漿トリグリセリド値は、単独群が581±291mg/dL、併用群は376±188mg/dLだった。 結果、ISIS 304801投与は、単独、併用を問わず、用量依存的かつ長期にわたって血漿APOC3値を低下した。 低下変化の割合は、単独群では、プラセボ群4.2±41.7%に対し、100mg投与群40.0±32.0%、200mg群63.8±22.3%、300mg群79.6±9.3%。併用群はプラセボ群2.2±25.2%に対し、200mg群60.2±12.5%、300mg群70.9±13.0%だった。 同様の一致した低下が、トリグリセリド値にもみられた(31.3~70.9%)。 安全性に対する懸念は、今回の短期試験では確認されていない。

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