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高HDLコレステロール血症について【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q42

高HDLコレステロール血症についてQ42診断基準には含まれないが、「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」では高HDLコレステロール血症についてもひとこと言及された。リスクとなる可能性があるのは、HDLコレステロールがいくつ以上とされたか?

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第138回 コロナ薬発掘の明暗/コロナ再感染はより危険

COVID-19入院患者への抗IL-1薬anakinra使用を米国が認可既承認薬の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療効果発掘の取り組みが米国で結実し、スウェーデンを本拠とする製薬会社SobiのIL-1受容体遮断薬anakinra(アナキンラ、商品名:Kineret) によるCOVID-19入院患者治療が米国FDAに取り急ぎ認可されました1)。重度呼吸不全の恐れが大きいCOVID-19入院患者をsuPAR(可溶性ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体)血漿濃度上昇を頼りに選定したプラセボ対照第III相試験(SAVE-MORE)結果2,3)などに基づいてその試験とほぼ同様の用法が今回認可されました。COVID-19患者のsuPAR上昇は重度呼吸不全や死によりいっそう至りやすいことと関連し、C反応性タンパク質(CRP)・インターロイキン6(IL-6)・フェリチン・Dダイマーなどの他の生理指標に比べてCOVID-19進行のより早い段階で認められます。suPARが反映するのは危機を知らせる分子・カルプロテクチンやIL-1αの存在であり、カルプロテクチニンとIL-1αのどちらもCOVID-19の病的炎症の片棒をかつぐことで知られます。カルプロテクチニンは体内を巡る単球によるIL-1β異常生成を促し、IL-1αの阻害はCOVID-19マウスの強烈な炎症反応の発生を予防しました。anakinraはそれらIL-1αとIL-1βの両方の活性をIL-1受容体遮断により阻止します。そういった情報の集積に基づいてanakinraをsuPAR上昇患者に早めに投与し始めてCOVID-19を挫く治療が考案されました。その効果はまずは被験者130人の小規模な第II相試験で確認され4)、続く第III相試験SAVE-MORE2)で確立することになります。SAVE-MORE試験にはsuPAR血漿濃度6ng/mL以上のCOVID-19入院患者が参加し、anakinraは死亡や集中治療室(ICU)治療をプラセボ群に比べて少なくて済むようにしました。anakinra治療群の28日間の死亡率は約4%(3.9%)であり、プラセボ群の約9%(8.7%)の半分未満で済みました。またanakinra治療患者はより早く退院できました。FDAはSAVE-MORE試験の対象と同様の患者へのanakinra治療を取り急ぎ認めています。酸素投与を必要とする肺炎が認められ、重度呼吸不全に進展する恐れがあり、suPARが上昇しているらしい(likely to have an elevated)SARS-CoV-2検査陽性COVID-19入院患者に米国では同剤が使えます。Sobi社には宿題があります。suPAR検査販売の承認申請に必要なデータを準備し、2025年1月31日までにその申請を済ませる必要があります、また、suPAR検査に代わる患者同定手段を確立する必要があり、まずはその解析計画を来年2023年1月31日までにFDAに示し、その4ヵ月後の2023年5月31日までに解析結果を提出しなければなりません。COVID-19にコレステロール低下薬フェノフィブラート無効COVID-19へのanakinraの試験は先立つ研究の集大成として幸いにも成功を収めましたが、既存薬のCOVID-19治療効果発掘の取り組みは周知の通り必ずしも成功するとは限りません。脂質異常症の治療として世界で広く使われているコレステロール低下薬・フェノフィブラート(fenofibrate)はその1つで、国際的な無作為化試験で残念ながらCOVID-19に歯が立ちませんでした5,6)。先立つ細胞実験では試験結果とは対照的にフェノフィブラートの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染阻止効果が示唆されています。SARS-CoV-2感染した培養細胞やCOVID-19患者の肺組織では細胞内の過剰な脂肪生成が認められ、フェノフィブラートはSARS-CoV-2が引き起こす細胞代謝変化を解消し、細胞内でのSARS-CoV-2の複製を阻害することが細胞実験で確認されていました。また、フェノフィブラートの活性型であるフェノフィブリン酸はSARS-CoV-2スパイクタンパク質を不安定にしてその感染を減らすことも最近の細胞実験で示されています。COVID-19に有益そうな免疫調節効果も示唆されていました。期待した効果が惜しくも認められなかった無作為化試験はそれらの有望な前臨床実験結果に背中を押されて実施されました。試験に参加したCOVID-19患者の約半数の351人は発症から14日以内にフェノフィブラートを10日間服用しました。それらフェノフィブラート投与患者の重症度指標をプラセボ投与患者350人と比較したところ残念ながら有意差がありませんでした。死亡などの他の転帰も差がありませんでした。期待した効果が認められなかったとしてもなにがしかの有益な情報は得られるものです。今回の試験もそうで、安全性について重要な情報をもたらしました。フェノフィブラート群では胃腸有害事象が若干より多く認められたものの、大変な有害事象の過剰な発生は認められませんでした。よって脂質異常症などでフェノフィブラートを必要とするCOVID-19患者に同剤は安全に投与できるようです。すでに使っている患者は安心して使い続けられるでしょう。あいにくフェノフィブラートの効果は示せませんでしたが、細胞代謝経路を手入れする他の治療のCOVID-19への試験を引き続き実施する必要があると著者は言っています。コロナ再感染はより危険COVID-19治療薬発掘の取り組みが進むのは心強いですが、健康のために何よりも重要なのは感染しないようにすることかもしれません。COVID-19流行が始まってからおよそ3年が経ち、不運にも二度三度と感染する人もいます。米国の退役軍人医療データの解析によるとそのような再感染は脳や臓器の数々の不調をいっそう生じやすくし、はては死亡リスクも高めるようです7,8)。解析ではSARS-CoV-2感染経験がないおよそ533万人、SARS-CoV-2感染が1回の約43万人、SARS-CoV-2感染が2回以上の約4万人が比較されました。その結果、繰り返し感染した人は感染経験がない人に比べて約2倍多く死亡しており、3倍ほど多く入院していました。また、再感染した人は感染が1回の人に比べて肺、心臓、脳(神経)の不調をそれぞれ3.5倍、3倍、1.6倍生じやすいという結果が得られています。感染を繰り返すほどに健康不調の危険性は累積して上昇するようであり、すでに2回感染していたとしても3回目の回避に努めるに越したことはなく、3回感染している人も4回目をしないようにした方が無難なようです8)。参考1)FDAからSobi社への認可通知2)Kyriazopoulou E, et al. Nat Med. 2021;27:1752-1760. 3)Nature Medicine publishes phase 3 anakinra study results in patients with COVID-19 pneumonia / PRNewswire4)Kyriazopoulou E, et al.eLife.2021;10:e66125.5)Chirinos JA, et al. Nat Metab. 2022 Nov 7:1-11. [Epub ahead of print]6)After showing early potential, cholesterol medication fenofibrate fails to cut severe symptoms or death in COVID-19 patients / Eurekalert7)Bowe B, et al. Nat Med. 2022 Nov 10. [Epub ahead of print]8)Repeat COVID-19 infections increase risk of organ failure, death / Eurekalert

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真性多血症(真性赤血球増加症)〔PV:polycythemia vera〕

1 疾患概要■ 定義真性多血症(PV)は、造血幹細胞レベルで生じる遺伝子変異により汎血球増加、特に赤血球数の著増を来す骨髄増殖性腫瘍である。■ 疫学発症率は人口10万あたり年間約2人、発症年齢中央値は65歳、男女比は約1.5:1である。■ 病因エリスロポエチン(Epo)、トロンボポエチン、顆粒球コロニー刺激因子などのサイトカインのシグナル伝達に必須なJAK2の変異により、これらレセプターの下流のシグナル伝達経路が恒常的に活性化して生じる。JAK2変異は95%以上の例に検出されるが、それ以外に、TET2、DNMT3などのエピゲノム関連分子の変異がそれぞれ10~20%、5~10%にみられる。■ 症状頭痛、頭重感、赤ら顔(深紅色の口唇、鼻尖)、発熱,体重減少,倦怠感,掻痒,骨痛などがみられる。皮膚掻痒感は入浴後に悪化することが多い。血小板増加例では、四肢末端に非対称性の灼熱感を伴う発赤腫脹を来す肢端紅痛症がみられる。触知可能な脾腫が15~20%に認められる。■ 分類血栓症の発症リスクに応じて、低リスク群(年齢60未満、かつ血栓症の既往がない)と高リスク群(年齢60歳以上、血栓症の既往の、いずれか、あるいは両方を認める)に分類する。■ 予後生命予後は比較的良好であり、10年総生存率は約85%である。10年の血栓症を生じない生存率、出血を伴わない生存率は、それぞれ約90%である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)多血、骨髄生検所見、JAK2変異の大基準のうち3項目以上、あるいは大基準の多血と骨髄生検所見に加え、小基準である血清Epo値が低値を示すときにPVと診断する。多血はPVを最初に疑う所見である。PVの診断基準では、Hb値が男性>16.5g/dL、女性>16.0g/dL、ヘマトクリット(Ht)値が男性>49%、女性>48%、もしくは循環赤血球量が予測値の25%を超えて増加している場合を多血とする。赤血球数のみならず、PVでは好中球、血小板数も増加することが多い。PVの骨髄生検所見は過形成であり、赤芽球系、顆粒球系、巨核球系細胞の3系統の細胞の増生がみられる。ただし、3系統の細胞数の比は正常と比べてほぼ同等である。巨核球の分化障害も認めない。線維化はあってもごく軽度である。JAK2変異はPVの95%以上の例に認められる。大部分はV617F変異であり、少数例はexon12の変異を示す。大多数のPVにJAK2変異を認めるため、その存在はPV診断に有用であるものの、JAK2変異はPVに特有ではなく、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症の約50%の例にも検出されることに留意が必要である。つまり、JAK2変異を認めない場合のPV診断は慎重に進めるべきであるが、逆にJAK2変異を認めた場合、PV、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症のいずれかであると言ってよいものの、JAK2変異の存在だけでPVとは診断できない。血清Epoは低値を示すことが多い。PV診断においてEpo値の低下の特異度は高いものの、感度は中等度である。つまり、血清Epo値が低い場合はPVである可能性が高いが、Epoが高いからといってPVを否定できるわけではない。鑑別すべき主な疾患は、相対性赤血球増加症と2次性赤血球増加症である。相対性赤血球増加症は、循環赤血球量の増大は認めないものの、脱水などによりにHt値やHb値が上昇している場合をいう。嘔吐、下痢などの有無、利尿薬の服薬状況の確認が必要である。相対性赤血球増加症に分類されるストレス多血症は、中年の男性に好発し、喫煙者に多い。赤血球数やHb値、Ht値の上昇を認めるが、白血球数や血小板数は正常であり、脾腫も認めない。また、血清Epo値は上昇していることが多い。2次性赤血球増加症は、血清Epo濃度の上昇により生じる赤血球数の増加である。低酸素(高地や慢性閉塞性肺疾患、右左シャントを伴う心疾患など)が続くと、反応性に腎臓からのEpo産生が増加して、また腫瘍性にEpoが産生されると赤血球数増加を来す。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)生命予後は良好であり、治療の基本は血栓症の予防である(図)図 血栓症リスクに基づくPVの治療方針画像を拡大するはじめに心血管系合併症の危険因子(喫煙、肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症など)の評価を行い、該当する場合は禁煙指導、生活習慣の改善、生活習慣病の治療を行う。増加している赤血球体積を減少させるため、原則として全例に瀉血療法を行う。ヘマトクリット値0.45未満を目標に、血圧、脈拍などの循環動態をみながら1回200~400mLの瀉血を月に1~2度のペースで行う。高齢者や心血管障害を有する例では、循環動態の急激な変化がないように、少量(100~200mL)、頻回の瀉血が望ましい。また、瀉血後に同量の補液を行うと、血行動態の変化を抑えられるだけでなく、ヘマトクリット値が希釈により低下することも期待される。これに加えて、出血や消化器潰瘍症状などの禁忌がなければ低用量アスピリン(商品名:バイアスピリン)投与により血栓症の予防をはかる。血小板数の増加がある場合、von Willebrand 因子(vWF)活性が低下していることがあり(後天性のvWF症候群)、アスピリン投与により出血を来す可能性がある。そのためvWFが30%以下の場合にはアスピリンの投与は行わない。上記に加えて、血栓症の高リスク群(年齢60歳以上、あるいは血栓症の既往がある場合)では、細胞減少療法を行う。細胞減少療法の第1選択薬はヒドロキシカルバミド(同:ハイドレア)である。症例によりヒドロキシカルバミドの必要量は大きく異なるため、少量から開始し、Ht<0.45となるように調節する。個々の患者に応じた最大量のヒドロキシカルバミドを投与してもHt値0.45以下、白血球数10,000/μL以下、血小板数40万/μL以下にコントロールできない場合をヒドロキシカルバミド抵抗性と、ヒドロキシカルバミド投与によりHb<10g/dL、好中球数<1,000/μL、血小板数<10万/μLと血球減少が生じる場合、あるいはヒドロキシカルバミドによる下肢潰瘍などのためにヒドロキシカルバミド治療が継続できない場合を「ヒドロキシカルバミド不耐容」と呼ぶ。ヒドロキシカルバミド治療を開始された患者の20~40%はヒドロキシカルバミド抵抗性/不耐容となる。このような場合は、JAK1/2阻害剤であるルキソリチニブ(同:ジャカビ)投与により、血球数のコントロールのみならず、血栓症の減少も期待できる。真性多血症の3~6%は2次性の骨髄線維症へと、数%の例は急性骨髄性白血病へと病型進展する。治療が一定であるにもかかわらず経過中に血球数が減少する場合や、末梢血に芽球が出現する場合は、骨髄線維症、急性白血病への移行を疑い、骨髄生検を行う。4 今後の展望PVの生命予後は比較的良好なものの、約10~20%の例が血栓症、出血を合併する。現在用いられている血栓症のリスク分類は、細胞減少療法の適応を決めるためのものであり、標準的な治療法が選択された患者における血栓症、出血の発症リスクが明らかになることが望まれる。また、治療に関しては、ルキソリチニブ投与によりJAK2V617F allele burdenは減少するものの、たとえば慢性骨髄性白血病治療においてABLキナーゼ阻害剤によりBCR-ABLが指数関数的に減少するものと比べるとわずかである。PVにおいても腫瘍量が減少、消失するような治療法の開発が望まれている。5 主たる診療科血液内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。1)日本血液学会編. 造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版(第2版). 金原出版;2018. p.89-120.2)Thiele J, et al. WHO Classification of Tumours of Haematolopoetic and Lymphoid Tissues 4th edition. WHO;2017.pp39-43.公開履歴初回20221年11月10日

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動脈硬化症の身体所見【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q38

動脈硬化症の身体所見Q38動脈硬化症を評価する手段として、検査の他に身体所見もいくつか報告がみられている。発表されたのは1973年であるが、2000年頃から本邦でも全国的に認知され始めた、視診でとれる動脈硬化症を示唆する身体所見は?

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動脈硬化の評価(2)【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q37

動脈硬化の評価(2)Q37初診外来(or救急外来)の対応中に、誤嚥性肺炎を疑う病歴の高齢男性が受診された。胸部レントゲンでははっきりと陰影を指摘できず、両肺の過膨張程度であったため胸部単純CTまで施行した。せっかくCTを撮ったのだから、主目的の肺野評価以外に、一緒に評価できる動脈硬化を疑える所見は?

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手引き改訂で診断基準に変化、テストステロン補充療法/日本メンズヘルス医学会

 『加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)診療の手引き2022』が15年ぶりに改訂されるにあたり、9月17、18日にオンライン開催された第22回日本メンズヘルス医学会において、シンポジウム「LOHセッション」が開催された。本稿では検査値の改訂ポイントについて、伊藤 直樹氏(NTT東日本札幌病院泌尿器科 部長/外科診療部長)の発表内容からお伝えする(共催:株式会社コスミックコーポレーション)。 LOH症候群とは、“加齢あるいはストレスに伴うテストステロン値の低下による症候群”である。加齢に起因すると考えられる症状として大きく3つの項目があり、1)性腺機能症状(早期勃起の低下、性欲[リビドー]の低下、勃起障害など)、2)精神症状(うつ傾向、記憶力、集中力の低下、倦怠感・疲労感など)、3)身体症状(筋力の低下、骨塩量の減少、体脂肪の増加など)が挙げられる。見直された診断基準値、海外と違う理由 本手引きの改訂においてもっとも注目すべきは、主診断に用いる検査値が変わることである。2007年版の診断基準値では遊離テストステロン値(8.5pg/mL未満)のみが採用されていたが、2022年改訂版では総テストステロン値(250ng/dL未満)を主診断に用いることになる。その理由として、伊藤氏は「海外でのgold standardであること、総テストステロン値と臨床症状との関連性も認められること、健康男性のmean-2SD・海外ガイドラインも参考にしたこと」を挙げた。また、遊離テストステロン値は補助診断に用いることとし、LOH症候群が対象となり始める30~40歳代のmean-2SD値である7.5pg/mL未満とするに至った。これについて「RIA法の信頼性が問題視されていること、海外の値(欧州泌尿器学会では63.4pg/mLなど)と測定方法が異なり比較できないため」とコメントした。<LOH症候群の新たな診断基準>―――・総テストステロン値250ng/dL未満または・250ng/dL以上で遊離テストステロン値が7.5pg/mL未満※各測定値にかかわらず総合的に判断することが重要で、テストステロン補充の妥当性を考慮し、「妥当性あり」と判断すれば、LOH症候群と診断する●注意点(1)血中テストステロン分泌は午前9時頃にピークを迎え夜にかけて低下するため、午前7~11時の間に空腹で採血すること。(2)2回採血について、日本では保険適用の問題もあるため、海外で推奨されているも本手引きではコメントなし。――― また、測定時に注意すべきは、総テストステロンの4割強は性ホルモン結合グロブリン(SHBG:sex hormone brinding globulin)と強く結合しているため、SHBGに影響を与える疾患・状態にある患者の場合は値が左右される点である。同氏は「SHBGが増加する疾患として、甲状腺機能亢進症、肝硬変、体重減少などがある。一方で低下する疾患には、肥満、甲状腺機能低下症、インスリン抵抗性・糖尿病などがあるため、症状の原因となるようなリスクファクターの探索も重要であるとし、「メタボリックシンドローム(高血圧症、糖尿病、脂質異常症)から悪性腫瘍などの消耗性疾患、副腎皮質・甲状腺など内分泌疾患、そしてうつ病などの精神疾患などLOH症候群に疑わしい疾患は多岐にわたるため、すぐに断定することは危険」と強調。「自覚症状、他覚的所見を総合的に判断し、ほかの疾患の存在も常に疑うべき」と指摘した。 さらに、診断基準の“測定値にかかわらず総合的に判断する”という点について、「アンドロゲン受容体の活性効率に影響するN末端のCAGリピートがアジア人は長く、活性効率が低い可能性がある。そのため、テストステロン値が基準値以上でも補充療法が有効の可能性がある」と説明した。 測定値とは別に、症状からLOH症候群か否かを定量的に判定する方法の1つとしてAMS(Aging Males' Symptoms)スコア1)が広く用いられている。これについて、同氏は「感度は高いが特異度は低いため、スクリーニングには推奨されない」と話した。一方でホルモン補充療法による臨床効果の監視には有用という報告もあることから、「全体の合計点だけを見るのではなく、それぞれの症状をピックアップし、患者に合わせて対応することが大切」と説明した。 最後に、診断を確定する前にはLOH症候群が原発性か二次性かの確認も必要なことから、「最終的にはLHおよびFSHを測定し二次性性腺機能低下症の有無を確認するために、その原因疾患を把握し、確認して欲しい」と締めくくった。

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動脈硬化の評価(1)【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q36

動脈硬化の評価(1)Q36動脈硬化の評価について、「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」では以前から形態学的検査法と血管機能検査法が複数あげられている。検査のモダリティ、項目の追加はないが、「超音波検査」の中に評価するべき血管として追加されたのは?

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動脈硬化のリスク因子【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q35

動脈硬化のリスク因子Q35脂質異常症は動脈硬化のリスクの1つとして知られており、その管理について「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」で解説されている。2017年版から2022年版への改訂の際に追加となったリスクは?

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4種類の血糖降下薬、メトホルミン併用時の効果を比較/NEJM

 米国では、2型糖尿病患者の治療においてメトホルミンとの併用で使用される血糖降下薬の相対的有効性のデータは十分でないという。米国・マサチューセッツ総合病院のDavid M. Nathan氏らGRADE Study Research Groupは、「GRADE研究」において、メトホルミンと4種類の血糖降下薬の併用療法の効果を比較し、微小血管合併症や死亡の発生には4種類の薬剤で実質的な差はないが、心血管疾患の発生には群間差が存在する可能性があることを示した。研究の成果は、NEJM誌2022年9月22日号に掲載された。米国の無作為化並行群間比較試験 GRADE研究は、2型糖尿病患者の治療における4種類の血糖降下薬の相対的有効性の評価を目的とする無作為化並行群間比較試験であり、2013年7月~2017年8月の期間に、米国の36施設で参加者の登録が行われた(米国国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所[NIDDK]などの助成を受けた)。本論では、主に副次アウトカムの結果が報告され、主要アウトカムは別の論文で詳報された。 対象は、2型糖尿病の診断時の年齢が30歳以上(アメリカインディアンとアラスカ先住民は20歳以上)、診断からの経過期間が10年以内で、500mg/日以上のメトホルミンによる治療を受けており、糖化ヘモグロビン値が6.8~8.5%の患者であった。 被験者は、メトホルミンに加え、インスリン グラルギンU-100(以下、グラルギン)、グリメピリド、リラグルチド、シタグリプチンのうち1つの投与を受ける4つの群に無作為に割り付けられた。5,047例が登録され、このうちグラルギン群が1,263例、グリメピリド群が1,254例、リラグルチド群が1,262例、シタグリプチン群は1,268例だった。高血圧、脂質異常症、尿中アルブミン上昇にも、実質的な差はない ベースラインの全体の平均(±SD)年齢は57.2±10.0歳、41.5%が60歳以上で、63.6%が男性だった。糖尿病の平均罹病期間は4.2±2.7年、メトホルミンの平均1日投与量は1,994±205mgであり、平均BMIは34.3±6.8、平均糖化ヘモグロビン値は7.5±0.5%であった。平均追跡期間は5.0年。 目標血糖値の維持(代謝に関する主要アウトカム)については、グラルギン群とリラグルチド群の効果がグリメピリド群、シタグリプチン群よりも優れ、4年時の糖化ヘモグロビン値はグラルギン群とリラグルチド群が7.1%であったのに対し、グリメピリド群は7.3%、シタグリプチン群は7.2%であった。 高血圧、脂質異常症の発生、および微小血管アウトカムに関しては、4つの治療群で実質的な差はなかった。また、全体的な尿中アルブミンの中等度上昇の発生割合の平均値は、100人年当たり2.57、尿中アルブミンの高度上昇は1.08、腎障害は2.91で、いずれも治療群間で差はなく、試験終了時の累積発生率はそれぞれ約15%、8%、20%であった。同様に、糖尿病性末梢神経障害の発生割合は100人年当たり16.7であり、追跡期間の1年目の発生率は約20%、試験終了時には約70%に達した。 試験期間中の全心血管疾患の発生割合は100人年当たり1.79で、試験終了時には4つの治療群の発生率は10~15%に達した。治療群別の発生割合は、100人年当たりグラルギン群が1.87、グリメピリド群が1.92、リラグルチド群が1.36、シタグリプチン群は2.00であり、わずかな差が認められた。 また、全体的な主要有害心血管イベント(MACE)の発生割合は100人年当たり0.98、心不全による入院は0.40、心血管系の原因による死亡は0.27、全死因死亡は0.59であり、治療群間で差はなかった。 一方、1つの治療を、他の3つの治療を統合した結果と比較すると、全心血管疾患のハザード比は、グラルギン群が1.07(95%信頼区間[CI]:0.87~1.33)、グリメピリド群が1.12(0.90~1.39)、リラグルチド群が0.71(0.56~0.90)、シタグリプチン群は1.18(0.96~1.46)であった。 著者は、「2型糖尿病の治療薬を選択する際には、血糖値に対する効果とともに、微小血管合併症、心血管リスク因子、心血管アウトカムに及ぼすこれらの薬剤の異なる効果を考慮する必要があり、この試験の結果は、治療薬の選択において有益な情報をもたらすと考えられる」としている。

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男女別、心血管イベントのリスク因子は/Lancet

 脂質マーカーとうつ病は、女性より男性で心血管リスクとの関連が強く、食事は男性よりも女性で心血管リスクとの関連が強いことが、カナダ・マックマスター大学のMarjan Walli-Attaei氏らによる大規模前向きコホート研究「Prospective Urban Rural Epidemiological:PURE研究」の解析の結果、示された。ただし、他のリスク因子と心血管リスクとの関連は女性と男性で類似していたことから、著者は、「男性と女性で同様の心血管疾患予防戦略をとることが重要である」とまとめている。Lancet誌2022年9月10日号掲載の報告。35~70歳の約15万6,000例で、各種リスク因子と主要心血管イベントの関連を解析 研究グループは、現在進行中のPURE研究における、高所得国(11%)および低・中所得国(89%)を含む21ヵ国のデータを用いて解析した。 解析対象は、2005年1日5日~2021年9月13日に登録され、ベースラインで35~70歳の心血管疾患既往がなく、少なくとも1回の追跡調査(3年時)を受けた参加者15万5,724例であった。 主要評価項目は、主要心血管イベント(心血管死、心筋梗塞、脳卒中、心不全の複合)とした。代謝リスク因子(収縮期血圧、空腹時血糖値、ウエスト対ヒップ率、非HDLコレステロール)、血中脂質(総コレステロール、中性脂肪、LDLコレステロール、HDLコレステロール、総コレステロール/HDLコレステロール比、ApoA1、ApoB、ApoB/ApoA1比)、行動的リスク因子(喫煙、飲酒、身体活動、食事[PURE食事スコア])および心理社会的リスク因子(うつ症状、教育)と主要心血管イベントとの関連を男女別に解析し、ハザード比(HR)ならびに人口寄与割合(PAF)を算出した。脂質マーカーとうつ症状は、女性より男性で心血管リスク上昇 解析対象15万5,724例の内訳は、女性9万934例(58.4%)、男性6万4,790例(41.6%)、ベースラインの平均(±SD)年齢はそれぞれ49.8±9.7歳、男性50.8±9.8歳で、追跡期間中央値は10.1年(四分位範囲[IQR]:8.5~12.0)であった。 データカットオフ(2021年9月13日)時点で、主要心血管イベントは女性で4,280件(年齢調整罹患率は1,000人年当たり5.0件[95%信頼区間[CI]:4.9~5.2])、男性で4,911件(8.2件[8.0~8.4])発生した。男性と比較して、女性はとくに若年で心血管リスクプロファイルがより良好であった。 代謝リスク因子と主要心血管イベントとの関連は、非HDLコレステロールを除き、女性と男性で同様であった。非HDLコレステロール高値のHRは、女性で1.11(95%CI:1.01~1.21)、男性で1.28(1.19~1.39)であった。また、他の脂質マーカーも女性よりも男性のほうが一貫してHR値が高かった。 うつ症状と主要心血管イベントとの関連を示すHRは、女性で1.09(95%CI:0.98~1.21)、男性で1.42(1.25~1.60)であった。一方、PUREスコア(スコア範囲:0~8)が4以下の食事の摂取は、男性(HR:1.07[95%CI:0.99~1.15])よりも女性(1.17[1.08~1.26])で主要心血管イベントと関連していた。 主要心血管イベントに対する行動的および心理社会的リスク因子(合計)のPAFは、女性(8.4%)よりも男性(15.7%)で大きく、これは主に現在喫煙のPAFが男性で大きいためであった(女性1.3%[95%CI:0.5~2.1]、男性10.7%[95%CI:8.8~12.6])。

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日本人の脂質値の推移とコントロールの重要性(解説:三浦 伸一郎 氏)

 2022年8月23・30日号のJAMA誌に米国成人の脂質値の推移の研究が報告された。総コレステロール値は年齢調整後、2018年までの10年間で有意に改善していたが、注目されることはアジア人では改善を認めなかったことである。 日本人の脂質値の推移は、「健康日本21(第二次)」の計画の途中経過を見ると、2019年で血清総コレステロール値が240mg/dL以上の割合は男性12.9%、女性22.4%であった(「令和元年国民健康・栄養調査結果の概要」厚生労働省)。この10年間でみると、その割合は、男性で有意な変化はなかったが、女性では有意に増加していた。「健康日本21(第二次)」の脂質異常症(40~79歳)の減少目標は、総コレステロール240mg/dL以上の割合が男性10%、女性17%であり、かなり乖離があるのが現状である。 現在、脳心血管疾患の二次予防では、スタチンを中心とした脂質異常症治療薬による積極的脂質低下療法が実施されるようになってきたが、一次予防に対してはまだ議論の余地がある。JAMA誌の報告のもうひとつの要点は、スタチン服用者のコレステロールのコントロール率は10年間で有意な変化をもたらしていなかったことである。 日本では、2022年7月に日本動脈硬化学会より『動脈硬化性疾患予防ガイドライン』が発表され、久山町スコアによる予測される10年間の動脈硬化性疾患発症予測モデルが新たに作成されている。一次予防患者では、単にコレステロール値のみでなく、この予測モデルを利用し、個々人に合わせた脂質管理目標値を設定する必要がある。さらに、生活習慣の修正と共に、必要があれば、一次予防でも治療薬による積極的脂質低下療法を考慮すべきと考える。さらに、脂質値を考える場合、総コレステロール値やLDLコレステロール値のみでなく、トリグリセライド値やHDLコレステロール値も考慮に入れた脂質管理が必要である。

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英語で「問題ありません」は?【1分★医療英語】第46回

第46回 英語で「問題ありません」は?How was the test result?(検査の結果はどうでしたか?)Your diabetes is under control.(あなたの糖尿病は問題ありません)《例文1》Don’t worry. Everything is under control.(心配ありません、すべて順調です)《例文2》His drinking problem is not under control.(彼の飲酒癖は手に負えない状態です)《解説》“under control”の直訳は「支配下にある、コントロール下に置かれている」となりますが、「適切に管理されている」ということから派生して、日常会話では「うまくいっている、問題ない」という意味で使われます。医療現場では、糖尿病や脂質異常症などの慢性疾患が順調に管理されていることを“under control”と表すことができます。また、“get”を使うことで“I would like to get you diabetes under control.”(あなたの糖尿病をコントロールしたいのです)といった表現もできます。“under”は「下に」を表す前置詞ですが、“under construction”(建設中)、“under repair”(修理中)といったように、「~している最中である」という意味合いでも使われることも覚えておきましょう。講師紹介

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低BMIの蛋白尿リスクに“朝食抜き”が影響

 蛋白尿は心血管疾患と死亡率の重要な予測因子であり、いくつかの研究では、朝食を抜くことと蛋白尿の有病率との関連性が報告1)されている。また、朝食を抜くと肥満のリスクが高まることも明らかになっている。そこで、村津 淳氏(りんくう総合医療センター腎臓内科)らは蛋白尿が肥満の人でよく見られることに着目し、朝食を抜くことによる蛋白尿の有病率とBMIとの関連について調査を行った。その結果、蛋白尿は低BMIと関連性が見られ、低BMIの人の場合には、朝食を抜くことに注意する必要があることが示唆された。本研究結果はFront Endocrinol誌8月19日号に掲載された。. 本研究者らは、正常な腎機能者における朝食抜きと蛋白尿の有病率との関連に対するBMIの臨床的影響を評価することを目的に、2008年4月~2018年12月までの期間に市中病院で健康診断を受け、腎疾患の既往がなく、推定糸球体濾過量(eGFR)が60mL/min/1.73m2 以上であった2万6,888例 (男性:1万5,875例、女性:1万1,013例) を対象に横断研究を実施した。 本研究では、週3日以上朝食を食べていない者を「朝食抜き」と定義。そのほか、対象者には喫煙、アルコール多飲、運動不足、睡眠不足、間食の有無、深夜/夕食時の生活行動、既往歴(高血圧・糖尿病・脂質異常症・脳卒中・高尿酸血症・冠動脈疾患)についてアンケートを行った。また、朝食抜きと蛋白尿の有病率との関連性はBMI(kg/m2)を3つのサブグループ(男性:

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