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ICIによる心筋炎、現時点でわかっていること/日本腫瘍循環器学会

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は抗PD-1抗体のニボルマブが2014年に本邦で上市されて以来、抗PD-L1抗体や抗CTLA-4抗体も登場し、現在では臓器横断的に幅広いがん種に対し、単独投与のみならず併用投与も行われるようになった。しかし、その一方でさまざまな免疫関連有害事象(irAE)が報告されており、とくに循環器医も腫瘍医も恐れているirAEの1つに心筋炎がある。これは通常の心筋炎とは何が違い、どのように対処するべきなのだろうか―。9月30日~10月1日に開催された第6回日本腫瘍循環器学会学術集会のシンポジウム『免疫チェックポイント阻害薬関連有害事象として心筋炎の最新の理解と対応』において、3名の医師が心筋炎のメカニズムや病態、実臨床での事例やその対応について発表した。irAE心筋炎でわかっていること、わかっていないこと Onco-Cardiology教育に力を入れる田尻 和子氏(国立がん研究センター東病院 循環器科長)によると、あいにく現時点ではこの病態の解明には至っていないが、心筋炎を起こす免疫細胞の種類とその働き、免疫細胞を制御している分子・シグナル・液性因子、心臓のT細胞は何を敵だと思って攻撃しているのか、などの疑問が沸いている状況だという。同氏はこれらの疑問点を詳細に解説したうえで、「なぜICI投与患者の約1%だけが心筋炎を発症するのか、そして従来の心筋炎よりなぜ予後が悪いのか」と2つの疑問を挙げた。 前者については「ICI治療前に存在する患者固有の特徴によるのか、またはICI投与によって生じた何らかの事象に関連するのか」と問題提起。また、「心筋に特異的なタンパクであるαミオシンを免疫細胞が敵だと思いこみ自己免疫性心筋炎が発症することは明らかになっている1-4)ものの、心筋炎にならなかったICI投与患者の心筋にもαミオシン反応性T細胞が存在することから、なんらかのウイルス感染が引き起こしている可能性、根底にある遺伝的感受性や腸内細菌の関与も考えられる」とコメントした。 さらに後者の疑問に対しては「いわゆる一般的な心筋炎というのは治療介入しなくとも自然軽快していくが、irAE心筋炎はステロイド抵抗性であったり、免疫応答がより強力(マクロファージの比率が多い、より高密度のリンパ球浸潤)であったりするのではないか。T細胞がICIにより永久的にリプログラムされて抑制シグナルに耐性を持ち、ICI投与終了後数年にわたる可能性も否めない。さらに、ウイルス感染が原因であればそのウイルスを除去すれば終わりだが、irAE心筋炎のT細胞が認識する抗原が腫瘍や心筋だった場合はそれらが除去されないために炎症が収束しないのではないか」と、仮説を挙げた。心筋炎の発症頻度は1%超、致死率は25~40%の可能性 続いて発表した清田 尚臣氏(神戸大学医学部附属病院 腫瘍センター)はirAEの特徴と実際の発症頻度について解説。「当初の発症頻度は0.09%程度と言われていたが、現在のRCTメタ解析などによると最大で5.8%に上り、近年の報告の多くは1%を超えている。つまり、想定していたよりも頻度や致死率が非常に高く、発症までの期間中央値は30日前後であることが各種論文から明らかになってきた」と述べた。同氏の施設では年間290例(ICI延べ処方件数3,341件)がICI治療を行っているが、「irAEの発症頻度を3%、致死率を30%と想定した場合、当院では年間9人が発症し、約3人が死亡することになる」と、いかに発症を抑えることが重要かを示した。 同氏はオンコロジストとしてできることについて、JAVELIN Renal 101試験5)でのMACEの定義や頻度を示し、「ICIを使用する前には脂質異常症などの既往、ベースライン時点での心電図とトロポニン測定などを実施して評価をしておくことが必要。検査所見のみで無症状の場合もあるが、心筋炎を疑う症状(息切れ、胸痛、浮腫、動悸、ショック症状など)がみられたら躊躇せずに、心電図、トロポニンやBNPの測定、心エコーを実施してほしい」と述べ、「irAE心筋炎はCCU管理が必要になる場合もあるため、疑った時点で早期に循環器医にコンサルテーションすることも必要」と連携の重要性も説明した。心筋炎に遭遇、実臨床での適切な対応策 循環器医の立場で登壇した及川 雅啓氏(福島県立医科大学 循環器内科学講座)は、実際にirAE心筋炎に遭遇しており、その際の対処法としてのステロイドの有用性、irAE後のICI再投与について言及した。 同氏の施設ではICI外来を設置し、患者・医療者の双方に負担がない取り組みを行っている。概要は以下のとおり。<福島県立医科大学附属病院のICI外来>・ICI治療が予定される場合、がん治療を行う各科にてトロポニンI、心電図、心エコーのオーダーを行い、循環器内科ICI外来(カルテ診)へ紹介する。・検査結果をカルテにて確認し、ICI開始後約1ヵ月、3ヵ月、以後3ヵ月ごとにトロポニンI測定ならびに心電図検査を実施する。・問題が生じた場合には、各科主治医に連絡を取り、今後の方針を検討する。 上記のフォローアップを受けた全271例のうち、トロポニンIの上昇(>0.05ng/mL)を認めたのは15例(5.5%)で、そのうちirAE心筋炎と診断されたのは4例(1.4%)だったという。この4例に対しては「ESCガイドライン6)に基づく治療として、ICIを中止し、心電図モニターを行った後、メチルプレドニゾロン500~1,000mg/dayを最低3日間実施した。これで改善すれば経口プレドニゾロン1mg/kg/dayに切り替え、ステロイド抵抗性がみられた場合には2ndラインとして免疫抑制薬の投与に切り替えが必要となる。本症例ではステロイド治療が奏効したが、重篤化前の治療介入が非常に重要であることが明らかであった」。 また、irAE心筋炎を診断する際の検査値について、「トロポニンIの持続上昇は臨床的な心筋炎に至る可能性が高いため、綿密なフォローアップが必要である」と説明し、さらに「肝機能異常やCPK上昇を伴っていることも報告7)されているが、実際に当院の症例でも同様の傾向が見られた。このような検査値にも注意を払うことが診断精度向上につながる」と補足した。 ICI再投与についてはJAMA誌での報告8)を示し、「irAE発症者6,123例のうち452例(7.4%)に行われ、再投与により28.8%でirAEが再発している。irAE心筋炎を発症した3例に再投与が行われ再発は0例であったが、例数が少なく判断が難しい。この結果を見る限りでは、現時点で再投与を積極的に行うことは難しいのではないか」と個人的見解を示した。 なお、本シンポジウムでは発表後に症例検討のパネルディスカッションが行われ、会場からの質問や相談が尽きず、盛況に終わった。■参考文献日本腫瘍循環器学会1)Munz C, et al. Nat Rev Immunol. 2009;9:246-258.2)Tajiri K, et al. Int J Mol Sci. 2021;22:794.3)Won T, et al. Cell Rep. 2022;41:1116114)Axelrod ML, et al. Nature. 2022;611:818-826.5)Rini BI, et al. J Clin Oncol. 2022;40:1929-1938.6)Lyon AR, et al. Eur Heart J. 2022;44:4229-4361.7)Vasbinder A, et al. JACC CardioOncol. 2022;4:689-700.8)Dolladille C, et al. JAMA Oncol. 2020;6:865-871.

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こむら返りの薬物療法【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q88

こむら返りの薬物療法Q88日直中の外来に、夜間の下腿の熱痙攣(Heat cramp)を主訴として、高血圧、脂質異常症既往の70代男性が受診した。日中の炎天下で農作業に従事しており、発汗過多がある。1日の仕事が終わり、夜寝ようとすると毎日発症しているようだ。予防のための生活指導をしたが、発症時に内服薬も飲みたいとの希望が強い。何を処方しようか。

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NSAIDなどを服用している高齢者、運転に注意

 認知機能が正常な高齢者の服用薬と、長期にわたる運転パフォーマンスとの関連を調査した前向きコホート研究の結果、抗うつ薬や睡眠導入薬、NSAIDsなどを服用していた高齢者は、非服用者と比べて時間の経過とともに運転パフォーマンスが有意に低下していたことを、米国・ワシントン大学のDavid B. Carr氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2023年9月29日号掲載の報告。 米国運輸省と米国道路交通安全局は、90種類以上の薬剤が高齢ドライバーの自動車事故と関連していることを報告している。しかし、自動車事故リスクの上昇が薬剤の副作用によるものなのか、治療中の疾患によるものなのか、ほかの薬剤や併存疾患によるものなのかを判断することは難しい。そこで研究グループは、認知機能が正常な高齢者において、特定の薬剤が路上試験における運転パフォーマンスと関連しているかどうかを前向きに調査した。 参加者は、有効な運転免許証を持ち、ベースライン時およびその後の来院時の臨床的認知症尺度のスコアが0(認知機能障害がない)で、臨床検査、神経心理学的検査、路上試験、投薬データが入手可能であった65歳以上の198人(平均年齢72.6[SD 4.6]歳、女性43.9%)であった。データは、2012年8月28日~2023年3月14日に収集され、2023年4月1~25日に分析された。 主要アウトカムは、Washington University Road Testによる路上試験の成績(合格または限界/不合格)であった。多変量Cox比例ハザードモデルを用いて、運転に支障を来す可能性のある薬剤の服用と、路上試験の成績との関連性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・平均追跡期間5.7(SD 2.45)年で、70人(35%)が路上試験で限界/不合格の評価を受けた。・非服用者と比べて、すべての抗うつ薬(調整ハザード比[aHR]:2.82、95%信頼区間[CI]:1.69~4.71)、SSRI/SNRI(aHR:2.68、95%CI:1.54~4.64)、鎮静薬/睡眠導入薬(aHR:2.72、95%CI:1.41~5.22)、NSAIDs/アセトアミノフェン(aHR:2.72、95%CI:1.31~5.63)の服用は、路上試験で限界/不合格となるリスクの増加と有意に関連していた。・脂質異常症治療薬を服用している参加者は、非服用者に比べて限界/不合格となるリスクが低かった。・抗コリン薬や抗ヒスタミン薬と成績不良との間に統計学的に有意な関連は認められなかった。 これらの結果より、研究グループは「この前向きコホート研究では、特定の薬剤の服用が経時的な路上試験の運転パフォーマンスの低下と関連していた。臨床医はこれらの薬剤を処方する際には、この情報を考慮して患者に適宜カウンセリングを行うべきである」とまとめた。

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抗コリン負荷の増大が、心血管イベントのリスクと関連/BMJ

 急性心血管イベントで入院した65歳以上の患者においては、抗コリン薬による抗コリン作用の総負荷(抗コリン負荷)が、最近増加した集団で急性心血管イベントのリスクが高く、負荷の増加の程度が大きいほどリスクがより高いことが、台湾・国立成功大学のWei-Ching Huang氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年9月27日号に掲載された。心血管イベントで入院した高齢患者の症例-症例-時間-対照研究 本研究は、台湾の全国的な健康保険研究データベースを用いた症例-症例-時間-対照研究(case-case-time-control[CCTC]study)であり、2011~18年に急性心血管イベントで入院した65歳以上の患者31万7,446例を対象とした(台湾・国家科学技術委員会などの助成を受けた)。 CCTCは、適応症による交絡および潜在的なprotopathic bias(因果の逆転)の克服を目指した研究デザインであり、2つの自己対照分析(症例クロスオーバー分析と、将来の症例からなる対照クロスオーバー分析)で構成される。急性心血管イベントには、心筋梗塞、脳卒中、不整脈、伝導障害、心血管死を含めた。 主要アウトカムは、抗コリン負荷(Anticholinergic Cognitive Burden Scaleによる個々の薬剤の抗コリン作用スコアの合計)とし、3つの段階(0点[抗コリン作用なし]、1[軽度抗コリン作用]~2点[高度抗コリン作用]、3点[高度抗コリン作用]以上)に分類した。 ハザード期(心血管イベント発生前の-1~-30日)の抗コリン負荷のレベルを、レファレンス期(-61~-180日)から無作為に選択した30日間(-61~-90日、-91~-120日、-121~-150日、-151~-180日の4つから1つを選択)と比較し、急性心血管イベントと抗コリン負荷の最近の増加との関連を評価した。感度分析でも主解析と同様の結果 クロスオーバー分析には24万8,579例を含めた。イベント発生の時点(指標日)での平均年齢は78.4(SD 0.01)歳、53.4%が男性だった。最も頻度の高い併存疾患は、高血圧症(62.2%)、糖尿病(32.3%)、脂質異常症(24.0%)であった。抗コリン作用を有する薬剤として最も多く処方されていたのは、抗ヒスタミン薬(68.9%)、胃腸鎮痙薬(40.9%)、利尿薬(33.8%)であった。 ハザード期とレファレンス期で抗コリン負荷のレベルが異なっていた患者では、レファレンス期よりもハザード期で、負荷レベルが高い患者が多かった。たとえば、抗コリン負荷がハザード期は1~2点、レファレンス期は0点の患者は1万7,603例であったのに対し、ハザード期は0点、レファレンス期は1~2点の患者は8,507例だった。 現状の抗コリン負荷が1~2点の場合の0点の場合と比較した(1~2点vs.0点)心血管イベント発生のオッズ比(OR)は、症例クロスオーバー分析では1.86(95%信頼区間[CI]:1.83~1.90)、対照クロスオーバー分析では1.35(95%CI:1.33~1.38)であり、CCTCのORは1.38(1.34~1.42)だった。 同様に、3点vs.0点のCCTCのORは2.03(95%CI:1.98~2.09)、3点vs.1~2点のCCTCのORは1.48(1.44~1.52)であり、現状の抗コリン負荷が大きいほど心血管イベントのリスクが高い傾向を認めた。 感度分析として、抗コリン負荷カテゴリーのカットオフ値の再定義をしたり、抗コリン負荷の測定に別のスケールを使用した評価を行ったが、一貫して主解析と同様の結果が得られた。 著者は、「これらの知見は、観察研究の結果を解釈する際には、protopathic biasを考慮する必要があることを強調するものである」としている。

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第66回 カットオフ値とは?【統計のそこが知りたい!】

第66回 カットオフ値とは?カットオフ値(Cutoff value)とは、定量データを区切るために用いる基準の値のことです。医療分野に絞っていえば、ある検査の陽性、陰性を分ける値のことで、「病態識別値」とも呼ばれています。検査結果によって、特定の疾患に罹患した患者と罹患していない患者を分ける境界値のことです。いくつかの事例で解説します。(1)肥満を判定するBMIのカットオフ値は30以上である。(2)大腸がんをスクリーニングする便潜血検査のカットオフ値は、約120ng/mLである。(3)日本動脈硬化学会では、LDLコレステロール値が140mg/dL以上である場合、HDLコレステロール値が40mg/dL未満である場合に脂質異常症を疑うこととしている。たとえば、(1)の肥満は健康に重大な悪影響を及ぼします。肥満指数(BMI)は体重(kg)を身長(m)の2乗で割って算出され、測定・計算が簡単で、肥満・痩せの指標として広く使われており、その水準が健康リスクや死亡率と深く関係していることが海外の多くの研究で報告されています。WHOでは国際的な基準(カットオフ値)として、BMIは25以上を過体重、30以上を肥満としています。BMI(kg/m2)=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)■真陽性、偽陽性、偽陰性、真陰性とは過体重であるかのカットオフ値は25ですが、ある生活習慣病をスクリーニングするBMIのカットオフ値は25とは限りません。そこで、ある生活習慣病のBMIのカットオフ値を算出するために、病院に来院した患者20人にこの検査をしました。表1~3にその結果をまとめます。画像を拡大する表1:BMIの検査結果およびある生活習慣病の疾病の有無(陽性、陰性)を調べたデータです。表2:表1のデータを陽性・陰性別にBMIを降順で並べ替えました。表3:表2のデータについて、陽性・陰性別BMI数値別に患者人数を集計したものです。このデータにおけるカットオフ値を求めることが課題ですが、とりあえず、カットオフ値を27とします。そこで表4にBMI27以上、27未満別の陽性・陰性別の患者人数を集計しました。表4 カットオフ値27以上とした場合の陽性・陰性別の人数表4の4つのセルの値は、表5に示す名前が付けられています。表5 真陽性、偽陽性、偽陰性、真陰性の定義真陽性(A)実際に疾患がある人が陽性と判断されること偽陽性(B)実際には疾患がない人が陽性と判断されること偽陰性(C)実際に疾患がある人が陰性と判断されること真陰性(D)実際には疾患がない人が陰性と判断されること■感度、特異度とは理想的なカットオフ値とは、検査陽性者(BMI検査で陽性と判定された患者)は皆疾患(疾病有無で陽性の患者)があり、検査陰性者は皆疾患がないと判定できる検査です。しかし、現実的にはどのようなカットオフ値を設定しても、疾患があるが陰性と判定(偽陰性)、疾患がないが陽性と判定(偽陽性)される患者が出現します。したがって、適正なカットオフ値は、偽陰性および偽陽性と判定される患者が少なくなるように定められる検査です。裏返せば真陽性および真陰性と判定される患者が多くなるカットオフ値が適正だということです。先ほどの表4における真陽性は3人、真陰性は13人です。真陽性が多いかの判断は、「疾患がある患者のうち検査陽性者がどれほどいるかの割合(真陽性者÷疾病有無陽性者)」で調べることができます。求められた値を「感度」と言います。表5の単語名を使って感度を求める式を示します。表4について感度を求めると、3÷(3+3)=0.5(50%)です。真陰性が多いかの判断は、「疾患がない患者のうち検査陰性者がどれほどいるかの割合(真陰性者÷疾病有無陰性者)」で調べることができます。求められた値を「特異度」と言います。表5の単語名を使って特異度を求める式を示します。表4について特異度を求めると、13÷(13+1)=0.929(92.9%)です。感度、特異度の両方が大きければ、設定したカットオフ値は良いといえます。このケースでは、特異度(92.9%)は大きいですが、感度(50%)は大きいといえません。そのため27以上に設定したカットオフ値は適正とはいえません。カットオフ値を26以上として、表3のデータについて、陽性・陰性別の患者人数を表6に集計しました。表6 カットオフ値を26以上とした場合の陽性・陰性別人数表6について感度と特異度を求めます。感度、特異度の両方が大きいので、設定したカットオフ値26以上は適正といえそうです。カットオフ値27以上と26以上について検討しましたが、その他のカットオフ値すべてについて感度、特異度を求め、どのカットオフ値が適正かを調べなければなりません。表7にその結果を示します。表7 感度、特異度感度、特異度どちらも高いのはBMI26以上で、この生活習慣病の疾病の有無を判定するBMIのカットオフ値は26以上であるといえます。カットオフ値を算出するための方法として、今まで述べてきた「感度・特異度最小値法」以外にも別の方法があります。次回はカットオフ値を算出するための他の方法を紹介します。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」第4回 ギモンを解決! 一問一答質問18 ロジスティック回帰分析とは?質問21 ロジスティック回帰分析の説明変数の選び方は?質問22 ロジスティック回帰分析の事例特別編 カットオフ値とROC解析

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リアルワールドにおける統合失調症ケアの実際と改善ポイント

 統合失調症患者の臨床転帰を改善するためには、日常診療における治療パターンを理解することが重要なステップとなる。フランス・エクス=マルセイユ大学のGuillaume Fond氏らは、リアルワールドにおける抗精神病薬で治療されている統合失調症患者の長期マネジメントを明らかにするため、本研究を実施した。その結果、統合失調症患者に対するケアにおいて、今後優先すべき事項が浮き彫りとなった。とくに、50歳以上の患者に対する代謝系疾患の予防や18~34歳の患者に対する自殺予防など、特定の集団にさらに焦点を当てる必要がある。また、抗精神病薬の治療継続率は依然として低く、精神科入院率も高いままであることを報告した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2023年7月21日号の報告。 2012~17年に3回以上の抗精神病薬処方を行った成人統合失調症患者を国民健康データシステムより抽出した。主要評価項目は、実際の処方パターン、患者の特徴、医療利用、併存疾患、死亡率とした。 主な結果は以下のとおり。・対象患者45万6,003例のうち、経口抗精神病薬が96%、第1世代抗精神病薬の長時間作用型注射剤(LAI)が17.5%、第2世代抗精神病薬LAIが16.1%に処方されていた。・治療開始24ヵ月後の治療継続率は、経口抗精神病薬で23.9%、第1世代抗精神病薬LAIで11.5%、第2世代抗精神病薬LAIで20.8%であった。・治療継続期間の中央値は、経口抗精神病薬で5.0ヵ月、第1世代抗精神病薬LAIで3.3ヵ月、第2世代抗精神病薬LAIで6.1ヵ月であった。・全体として、抗不安薬併用が62.1%、抗うつ薬併用が45.7%、抗けいれん薬併用が28.5%でみられ、これらの薬剤の併用は、女性および50歳以上の患者でより多かった。・脂質異常症は最も頻度の高い代謝系併存疾患であったが(16.2%)、脂質モニタリングは不十分であった。・代謝系併存疾患は、女性でより頻繁に認められた。・標準化患者死亡率は、2013~15年の間は高いままであり(フランス一般集団の3.3~3.7倍)、平均余命は、男性で17年、女性で8年短縮されていた。・主な死亡原因は、がん(20.2%)と心血管疾患(17.2%)であり、18~34歳の死亡の25.4%は自殺であった。

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アロマターゼ欠損症〔AD:Aromatase Deficiency〕

1 疾患概要■ 定義エストロゲン合成酵素(アロマターゼ)の活性欠損・低下により、エストロゲン欠乏とアンドロゲン過剰とによる症状を呈する遺伝性疾患である。染色体核型が女性型の場合は、性分化疾患(46,XX DSD)に分類される。生理的にエストロゲン合成が亢進する妊娠中と思春期~性成熟期に症状が顕性化する。女性患者と男性患者とで表現型が異なる。■ 疫学10万人に1人以下のまれな疾患である。これまでに30家系50人を超える患者が報告されている。当初はヨーロッパとヨーロッパからアメリカ大陸への移民者の報告が多かったが、最近ではアジア(中国やインド)からの報告も増えている。わが国からの報告はこれまでのところ1例のみである。■ 病因アロマターゼは、アンドロゲンを基質としてエストロゲンを産生する酵素である。アロマターゼ活性欠損により、エストロゲンが産生されずアンドロゲンが蓄積する。その結果、女性でエストロゲンの欠乏と男性ホルモンの過剰による症状が生じる。これに対し、男性ではエストロゲン欠乏による症状のみが生じる。■ 症状1)胎児ヒト胎児副腎は大量の副腎性アンドロゲン(dehydroepiandrosterone)を産生し、これが胎盤(胎児に由来する)のアロマターゼによりエストロゲンに転換される。胎児がアロマターゼ欠損症の場合には、アンドロゲンが蓄積して母体と胎児に男性化が生じる。胎児が女性の場合は、外性器が男性化する。母体では、妊娠中に男性化症状が増悪し、分娩後に軽快する。残存するアロマターゼ活性が1%を越えると、母体に男性化はみられないとされる。2)女性エストロゲンによって生じる二次性徴(初経や乳腺発育・女性型の皮下脂肪など)は欠如する。しかし、活性低下が軽い変異を有する症例では、初経発来や規則月経を呈することがある。エストロゲン補充が行われていない女性では、リモデリングの亢進を示す骨粗鬆症が認められる。女児では、外性器の男性化(Prader 分類II~IV/IV)が全例に認められる。ゴナドトロピンが上昇する前思春期頃から、卵巣に多房性嚢胞(一部は出血性)をみることがある。活性低下の強い症例(truncated type)では索状性腺をみることがある。3)男性男性患者では、出生時に症状はない。思春期に生理的な身長急伸を欠如するとともに、その後の伸長停止(骨端閉鎖)も欠如するのが特徴である。本来伸長が停止する16歳頃を過ぎても身長が伸び続け、高身長(時に2mを超える)・骨粗鬆症となって20歳台後半で診断される例が多い。しばしば、外反膝・類宦官症体型が認められる。肥満、内臓脂肪の増加、インスリン抵抗性、脂質異常症などの代謝異常を示すことも少なくない。また、巨精巣症・小精巣の報告もある。精子数減少を示唆する報告もあるが妊孕性の喪失はない。■ 分類初期の報告例は、アロマターゼ活性低下が高度でエストロゲンがほぼ欠損し、二次性徴を完全に欠如する症例(古典型)であった。その後、エストロゲン欠乏が軽度で、乳腺発育や月経発来といった二次性徴が部分的にみられる症例(非古典型)が報告された。遺伝子変異をtruncated variantsとnon-truncated variantとに分けて検討し、前者ではエストロゲン欠乏に関連する症状(原発性無月経や索状性腺)が強く、後者では症状が軽いとする報告もある。■ 予後本症の長期予後については不明であるが、これまでの情報を総合すると生命予後に直接影響を与えないと思われる。その一方で、エストロゲン低下に伴って生じる骨粗鬆症や脂質異常症などの代謝異常に対して、適切な管理を行い予防する必要がある。アロマターゼ活性低下の強い症例では、女性の妊孕能は低下する。活性低下の軽い症例の女性の妊孕性については不明である。男性患者では妊孕性の低下はみられない。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 臨床症状1)女性女性患者では、本症と診断されないまま無月経に対してエストロゲン投与が継続されていることがあり、その場合、臨床症状から本症を想定することは困難である。患児が本症に罹患している場合、妊娠中に母体の進行性男性化(活性低下の軽い例では欠如)と胎児外陰の男性化(全例にみられる)が診断の手掛かりになる。妊娠母体の男性化は、P450酸化還元酵素欠損症や妊娠黄体腫(母体卵巣)にもみられ鑑別が必要である。P450酸化還元酵素欠損症では、アロマターゼのほか複数のステロイド産生酵素の活性も低下し、性ステロイド以外のホルモンによる症状が出現する。2)男性妊娠母体の男性化症状とエストロゲン低値から胎児の罹患が疑われて、出生後早期に診断された男性患者も報告されているが、実際に出生時に診断される例は少ない。弟妹の女性発端者が手がかりとなって診断されることもある。思春期以降に身長の伸びが止まらず、高身長となって成人期に初めて診断されることが多い。思春期の身長急伸の欠如、成人期の骨端線閉鎖の欠如、高身長、骨粗鬆症が、本症を推定する手がかりとなる。肥満、内臓脂肪の増加、インスリン抵抗性、脂質異常症などの代謝異常の合併も診断の参考となる。■ ホルモン検査1)女性ゴナドトロピン値(FSH、LH)は成人に至るまで一貫して高値を示す。とくにFSH優位の高値を示すのが特徴である。一般に、出生後数週~6ヵ月頃にかけて、視床下部下垂体性腺系は生理的活性化(mini-puberty)を示し、ゴナドトロピンは一過性に上昇する。その後、視床下部下垂体性腺系は強く抑制される時期に入り、ゴナドトロピンは低値となる。前思春期に入ると抑制が徐々に解除され、ゴナドトロピンは上昇に転ずる。アロマターゼ欠損症のゴナドトロピンも同様の二相性変動を示すが、常に同年齢対照より高値を示す。アンドロゲン値も同年齢対照者より高く、同様の二相性の変動を示す。血中エストラジオールは一貫して同年齢対照より低値を示すが、基準域に近い値を示す症例もみられる。測定感度の問題もあり、エストラジオール単独での診断は難しい。FSH値の上昇は、エストロゲン欠乏や表現型の強さを反映し治療効果の指標になる可能性がある。2)男性FSHが高値を示す例は男性では60%で女性よりFSHの診断意義は低い。E2が測定感度以下となるのは男性患者の80%であり、除外診断には注意を要する。LHが高値を示す例は20%、Tが高値となるのは30%と少なく、除外診断には使いにくい。■ 遺伝子型本症の確定診断には、15q21.2にあるCYP19A1に活性喪失変異(loss-of-function mutation)を同定する。これまでに、1塩基置換によるミスセンス変異、ナンセンス変異、スプライシング異常の他、1〜数塩基の欠失や挿入などさまざまな変異が報告されている。ヘテロは無症状で、ホモまたは複合ヘテロで症状が認められ、常染色体潜性(劣性)遺伝を示す。変異は酵素活性に関連するエクソン9に比較的多く認められるが、エクソン2を除きすべてのエクソンにほぼ均等に認められる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)根本的な治療法はない。欠乏するエストロゲンによる諸症状・疾病の発生を予防するために長期のエストロゲン補充が行われる。■ 46,XX DSDほとんどが女性として育てられている。性自認は女性である。外陰形成術が施行される。性腺摘除が併施されることもある。二次性徴や骨量の獲得と維持を目的にエストロゲン(子宮を有する性成熟期女性ではプロゲスチンを併用)投与を行う。エストロゲン投与により、血清ゴナドトロピン値が正常化し、卵巣嚢胞は消失する。骨量も増加する。■ 46,XY最終身長の適正化と骨量増加・骨粗鬆症の予防を目的にエストロゲン投与を行う。思春期前からの治療では、少量のエストロゲン投与から開始し、漸増させて生理的時期での骨端閉鎖を促す。骨端閉鎖後は、経皮的にエストラジオール25μg/日を生涯にわたって投与する。思春期症例にエストロゲンを投与すると、身長の急伸、骨端閉鎖、骨量の増加といった生理的骨成長と同様の変化が認められる。成人では維持量の投与により、ゴナドトロピン値の正常化、脂質異常の改善、インスリン抵抗性の改善なども期待できる。4 今後の展望本症の発見は、骨におけるエストロゲンの生理的役割などの解明に大きく貢献した。エストロゲン補充により、症状の多くは軽減されるが、女性患者の妊孕性については回復が認められていない。本症の患者数は少なく、系統的な研究が困難である。5 主たる診療科内科、小児科、婦人科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報小児慢性特定疾病情報センター アンドロゲン過剰症(ゴナドトロピン依存性思春期早発症及びゴナドトロピン非依存性思春期早発症を除く)アロマターゼ欠損症は、小児慢性特定疾病対策事業においてアンドロゲン過剰症(ゴナドトロピン依存性思春期早発症およびゴナドトロピン非依存性思春期早発症を除く)の原因疾患の1つに包含されている。(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Shozu M, et al. J Clin Endocrinol Metab. 1991;72:560-566.2)Singhania P, et al. Bone Reports. 2022;17:101642.3)Stumper NA, et al. Clin Exp Rheumatol. 2023;41:1434-1442.4)Rochira V,et al. Nature Reviews Endocrinology 2009;5:559-568.公開履歴初回2023年8月29日

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静脈血栓塞栓症の治療に難渋した肺がんの一例(後編)【見落とさない!がんの心毒性】第24回

※本症例は、患者さんのプライバシーに配慮し一部改変を加えております。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。前回は、深部静脈血栓塞栓症に対する治療選択、がん関連血栓塞栓症のリスクとして注目すべき患者背景について解説を行いました。今回は同じ症例でのDVT治療継続における問題点を考えてみましょう。《今回の症例》年齢・性別30代・男性既往歴なし併存症健康診断で高血圧症、脂質異常症を指摘され経過観察喫煙歴なし現病歴発熱と咳嗽が出現し、かかりつけ医で吸入薬や経口ステロイド剤が処方されたが改善せず。腹痛が出現し、総合病院を紹介され受診した。胸部~骨盤部造影CTで右下葉に結節影と縦隔リンパ節腫大、肝臓に腫瘤影を認めた。肝生検の結果、原発性肺腺がんcT1cN3M1c(肝転移) stage IVB、ALK融合遺伝子陽性と診断した。右下肢の疼痛と浮腫があり下肢静脈エコーを実施したところ両側深部静脈血栓塞栓症(deep vein thrombosis:DVT)を認めた。肺がんに伴う咳嗽以外に呼吸器症状なし、胸部造影CTでも肺塞栓症(pulmonary embolism:PE)は認めなかった。体重65kg、肝・腎機能問題なし、血圧132/84 mmHg、脈拍数82回/min。肺がんに対する一次治療としてアレクチニブの投与を開始した。画像所見を図1に、採血データを表1に示す。(図1)中枢性DVT診断時の画像所見画像を拡大する(表1)診断時の血液検査所見画像を拡大するアレクチニブと直接作用型経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant:DOAC)の内服を継続したが、6ヵ月後に心膜播種・胸膜播種の出現と肝転移・縦隔リンパ節転移の増悪を認めた。ALK阻害薬の効果持続が短期間であったことから、がん治療について、ALK阻害薬から細胞傷害性抗がん薬への変更を提案したが本人が希望しなかった。よって、ALK阻害薬をアレクチニブからロルラチニブへ変更した。深部静脈血栓症(Venous Thromboembolism:VTE)に関しては悪化を認めなかったためDOACは変更せず内服を継続した。その後、肺がんの病勢は小康状態を保っていたが、1ヵ月後に胸部レントゲン写真で左下肺野にすりガラス陰影が出現し、造影CTを実施したところ新規に左下葉肺動脈のPEを認めた(図2)。(図2)PE発症時の画像所見画像を拡大する【問題】DOAC内服中にVTEが増悪した場合、どのような対応を行うか?1)Farge D, et al. Lancet Oncol. 2022;23:e334-e347.講師紹介

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寄せられた疑問に答える、脂質異常症診療ガイド2023発刊/日本動脈硬化学会

 『動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版』が6月30日に発刊された。動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイドは2018年版から5年ぶりの改訂となり、塚本 和久氏(帝京大学大学院医学研究科長、内科学講座 教授)が改訂点や本書の新たな取り組みについて、日本動脈硬化学会主催のプレスセミナーで解説した。動脈硬化関連の各種ガイドライン・指針に準拠 動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイドは脂質異常症に特化し、非専門医が困ったときに参考となる情報をコンパクトに記載したものである。日本動脈硬化学会では『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022度版』をはじめ、『スタチン不耐に関する診療指針2018』『PCSK9阻害薬の継続使用に関する指針』などのさまざまなガイドラインや指針を発刊しており、『動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版』はそれらの内容を網羅するかたちで作成されている。そのため、主な改訂点も『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022度版』に準じたものになっている。<脂質異常症診療ガイド2023の主な改訂内容>1.随時(非空腹時)のトリグリセライド(TG、中性脂肪)基準値(175mg/dL以上)を設定。2.脂質管理目標値設定のための動脈硬化性疾患の絶対リスク評価手法として、冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞を合わせた動脈硬化性疾患をエンドポイントとした久山町研究のスコアを採用。3.糖尿病がある場合のLDLコレステロールの管理目標値について、合併症がある場合の1次予防は100mg/dL未満、2次予防は70mg/dL未満に設定。4.2次予防の対象疾患として冠動脈疾患に加えてアテローム血栓性脳梗塞も追加。5.薬物療法において、スタチン不耐と判断する際の注意点を記載。6.原発性脂質異常症の項を拡充。 上記の『動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版』改訂内容1について、塚本氏は「脂質異常症の診断基準は“動脈硬化発症リスクを判断するためのスクリーニング値であり、治療開始のための基準値ではない”ことは、ぜひ理解しておいていただきたい」と述べ、改訂内容5については「スタチンは費用対効果も高く不必要な中止を避けたい。また、スタチン不耐と判断される患者の半数以上がスタチン不耐ではないとの報告1)もある。それゆえ、ノセボ効果には注意し、患者の筋関連症状とスタチンとの関連性をしっかり確認してほしい」と強調した。脂質異常症診療ガイド改訂でQ&Aを拡充 今回の動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド改訂では本文の内容の充実はもちろんのこと、Q&Aを拡充し、項目数を47から61に増やしている。この中には、予防ガイドラインでは詳述されなかったポイントや比較的よく質問される疑問点、そして日本動脈硬化学会広報啓発委員会が会員ページに掲載している症例(日常臨床で診断・治療に難渋する症例)を参考に作成したケースを取り上げている。たとえば、上述の『動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版』改訂内容2に関連する質問が寄せられ、それに対する回答が記載されている。―――Q25久山町スコアでは40歳未満の方は対象にはなりませんが、多くの危険因子を持つ若年の脂質異常症患者さんにはどのように対応すればよいでしょうか?A久山町スコアのアプリでは、絶対リスクとともに相対リスクも表示される。久山町スコアは40歳以上を対象としたものなので正確とは言えないが、40歳未満の対象者であっても年齢以外の因子を入力後、年齢の項を40歳と入力すれば、同世代の危険因子のない方と比べての相対リスクがわかるので、患者指導に用いると良い。――― このほかにもよく質問される疑問点として「Q21 吹田スコアで高リスクだった患者さんが久山町スコアでは中リスクとなりました。どのように対応すればよいでしょうか?」「Q22 管理目標値設定のフローチャートに記載されている『その他の脳梗塞』はどのような脳梗塞でしょうか? 心原性脳梗塞やラクナ梗塞も含まれるのでしょうか?」などが寄せられている。また、広報啓発委員会作成の会員マイページに掲載されている症例を参考とした症例としては「Q55 LDL-C 260mg/dLでアキレス腱肥厚もあったので、FHと考えスタチンで治療を始めましたが、LDL-C値はほとんど下がりません。どのように対応すればよいでしょうか?」(シトステロール血症の鑑別が必要)のようなQ&Aが作成されている。ぜひ『動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版』のQ&Aをご一読いただきたい。遺伝子検査項目の増加、指定難病の診断に 2022年4月に原発性脂質異常症の遺伝子検査項目が5つに増えた(家族性高コレステロール血症、原発性高カイロミクロン血症、無βリポタンパク血症、家族性低βリポタンパク血症1[ホモ接合体]、タンジール病)。これを受けて、『動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版』では低HDLコレステロール低値の際のフローチャートを追加し、解説疾患を増やすなど、原発性脂質異常症の項を拡充。遺伝子検査項目が増えるメリットには「指定難病の確定診断がつけば、患者の登録が進み、患者のbenefitにつながる」と述べた。脂質異常症診療ガイド2023にICT導入 今回の発刊に際し情報通信技術(ICT)を積極的に導入しており、『動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版』を購入した方はデジタルブックでも閲覧できる。また、掲載されているQRコードを読み込むことで代表的な臨床比較試験、診療指針、専門医リストなどが確認できるため、web検索する手間が省ける仕組みになっている。 最後に同氏は「以上の改訂点を踏まえ、医師や管理栄養士、臨床検査技師などをはじめとする多くの医療者に活用していただきたい」とコメントした。

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事例029 新医薬品エパデールEMの査定【斬らレセプト シーズン3】

解説事例では脂質異常症に対して同月内2回の来院それぞれに処方を行ったイコサペント酸エチル(商品名:エパデールEM、以下同)カプセル2gが査定となりました。査定事由は、D事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)でした。投与日数も当月内28日であり、病名なども添付文書に沿っています。査定の原因をつかむために調べてみました。カルテには、同月1回目の再診時に7日分処方、同月2回目の再診時に21日分処方の合計28日分が入力されていました。調べている途中で、エパデールEMは発売後1年経っていない新医薬品であり、2023年8月末までは、1回の処方に14日分限度の制限がかかっていることに気付きました。医師に尋ねると14日処方限度の新医薬品であることをご存知でした。1回目再診時に7日分を処方したのち、2回目に次回来院までに薬が不足しないよう、同月内1回処方当たりの投与日数内であれば認められるであろうと処方をされていました。現在のレセプトは、投与薬剤にも日付を紐付けて電子請求されます。そのデータを基にコンピュータ審査が行われます。表面上は算定要件を保っているようでも、日付ごとの審査が行われるために、事例のような査定が発生します。医師にはその仕組みを説明し、処方入力システムに処方制限が表示されるよう改修して査定対策としました。なお、年末年始などの長期休診の場合は、その日数を限度として1回当たりの処方日数を増やすことが可能です。ただし、総投与日数が30日を超えると認められないようですのでご留意ください。

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日本人アルツハイマー病患者の日常生活に影響を及ぼすリスク因子

 日常生活動作(ADL)を維持することは、アルツハイマー病(AD)患者およびその介護者にとって非常に重要な問題である。エーザイの赤田 圭史氏らは、日本人AD患者の診断時のADLレベルおよび長期(3年以内)治療中のADL低下と関連するリスク因子を明らかにするため、本検討を行った。その結果、低い体格指数(BMI)、脳卒中、骨折を伴う日本人AD患者では、ADL低下リスクが高いことから、これらリスク因子を有する患者では、ADLを維持するためのリハビリテーションなどの適切な介入が求められることを報告した。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2023年6月30日号の報告。 日本の健康保険請求データベースより、AD患者の医療記録をレトロスペクティブに分析し、ADLレベルおよびADL低下と関連するリスク因子を特定した。ADLの評価には、バーゼルインデックス(BI)を用いた。ADL低下のリスク因子は、年齢とBIによる傾向スコアマッチングを用いて、ADL維持群と低下群を比較することにより、性別ごとに分析した。 主な結果は以下のとおり。・対象は、日本人AD患者1万6,799例(診断時の平均年齢:83.6歳、女性の割合:61.5%)。・女性患者は、男性患者と比較し、高齢(84.6歳vs.81.9歳、p<0.001)、低BI(46.8 vs.57.6、p<0.001)、低BMI(21.0kg/m2 vs.21.7 kg/m2、p<0.001)であった。・BI60以下の障害は、80歳以上で増加がみられ、女性のほうが有意に高かった。・入浴および身だしなみにおける障害が最も頻繁に認められた。・男性のADL低下は、BMI21.5 kg/m2未満、脳卒中、大腿骨近位部骨折と有意に関連しており、高脂血症との逆相関が認められた。・女性のADL低下は、BMI21.5 kg/m2未満、椎体骨折、大腿骨近位部骨折と有意に関連しており、腰痛との逆相関が認められた。

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1日1回服用で脂質代謝を改善させる高脂血症薬「パルモディアXR錠0.2mg/同0.4mg」【下平博士のDIノート】第126回

1日1回服用で脂質代謝を改善させる高脂血症薬「パルモディアXR錠0.2mg/同0.4mg」今回は、高脂血症治療薬「ペマフィブラート徐放錠(商品名:パルモディアXR錠0.2mg/同0.4mg、製造販売元:興和)を紹介します。本剤は、既存のパルモディア錠0.1mgの徐放性製剤で、1日1回の服用で血中の中性脂肪(TG)を低下させるとともにHDL-コレステロール(HDL-C)を増加させることが期待されています。<効能・効果>高脂血症(家族性を含む)の適応で、2023年6月26日に製造販売承認を取得しました。なお、本剤はLDL-コレステロールのみが高い高脂血症に対する第一選択薬とすることはできません。<用法・用量>通常、成人にはペマフィブラートとして1回0.2mgを1日1回経口投与します。TG高値の程度により、1回0.4mgを1日1回まで増量することができます。<安全性>承認時までの国内臨床試験において、臨床検査値異常を含む副作用は358例中33例(9.2%)に発現しました。0.5%以上に生じた副作用はALT上昇、CK上昇、筋肉痛、発疹でした。なお、重大な副作用として、横紋筋融解症(頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.中性脂肪を低下させ、善玉コレステロールを増やす薬です。2.本剤は砕いたり、すりつぶしたりせずに、かまずにそのまま服用してください。3.足のしびれ・痙攣、脱力感、覚えのない筋肉痛など、いつもと違う症状が現れたらすぐに連絡してください。4.禁煙・運動・食生活など、生活習慣の改善も併せて行いましょう。<Shimo's eyes>2017年7月に1日2回投与の即放性製剤のペマフィブラート錠(商品名:パルモディア錠0.1mg、以下「IR錠」)が承認され、2018年6月より販売されています。今回、新たな製剤として、1日1回投与の徐放性(Extended Release)製剤のXR錠が承認されました。服用回数が多いと服薬アドヒアランスが問題となることがありますが、本剤は1日1回の服薬で治療効果が得られるため、良好な服薬アドヒアランスと脂質コントロールが可能になると期待されています。本剤は、フィブラート系薬に分類される高脂血症治療薬で、核内受容体であるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体PPARαに選択的に結合し、脂質代謝遺伝子の発現を調節することで、血中のTGを低下させるとともにHDL-Cを増加させる作用を有します。本剤は肝代謝型薬剤であるため、腎機能が低下している患者にも使用しやすいという利点がありますが、一方で肝機能が低下している患者では注意が必要です。IR錠の第III相臨床試験であるフェノフィブラートとの比較検証試験において、TGのベースラインからの減少率は、フェノフィブラート群と比べ有意な差があったという結果が得られています1)。本剤はマルチプルユニット型の徐放性製剤ですので、砕いたり、すりつぶしたりして服用すると、本剤の徐放性が損なわれ、薬物動態が変わる恐れがあります。服薬指導では、そのまま服用するように説明しましょう。参考1)Ishibashi S, et al. J Clin Lipidol. 2018;12:173-184.

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オズウイルス感染症に気をつけろッ! その1【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さん、こんにちは。大阪大学の忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。本日のテーマは「オズウイルス感染症」です。皆さんはすでにオズウイルス感染症についてのニュースはご覧になったでしょうか。2023年6月23日、国立感染症研究所から日本初、いやむしろ世界初となるオズウイルス感染症の症例が報告されました。世界で初めて報告されたオズウイルス感染症例症例の概要は以下の通りです。2022年初夏、高血圧症・脂質異常症を基礎疾患に持ち、海外渡航歴のない茨城県在住の70代女性に倦怠感、食欲低下、嘔吐、関節痛が出現し、39℃の発熱が確認された。肺炎の疑いで抗菌薬を処方されて在宅で経過を観察していたが、症状が増悪し、体動困難となったため再度受診し、その後、紹介転院となった。身体所見上は右鼠径部に皮下出血がみられたが皮疹はなかった。血液検査では、血小板減少(6.6万/µL)、肝障害、腎障害、炎症反応高値(CRP22.82mg/dL)、CK高値(2,049U/L、CK-MB14IU/L)、LDH高値(671U/L)、フェリチン高値(10,729ng/mL)が認められた。入院時、右鼠径部に飽血に近い状態のマダニの咬着が確認されたため、マダニ媒介感染症が疑われたが、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)やリケッチア症は陰性であった。入院後、心筋炎によるものと考えられる房室ブロックが出現し、ペースメーカーが留置され、心筋炎が疑われた。入院20日目には意識障害が出現し、多発脳梗塞が確認されたため抗凝固療法を開始した。治療継続中の入院26日目、突如心室細動が生じて死亡し、病理解剖が行われた。キーワード的には、「マダニ刺咬後の発熱」「血小板減少」「肝障害」「腎障害」「CK上昇」「フェリチン高値」「心筋炎」「凝固障害」などでしょうか。マダニ媒介感染症は流行地域も重要ですので、「茨城県」というのも大事な情報です。とくに心筋炎については、他のマダニ媒介感染症でもあまり報告がなく、オズウイルス感染症に特徴的なのかもしれません。とはいえ、まだ世界で1例ですので、オズウイルス感染症の典型的な経過なのかもよくわかっていません。オズウイルス肉眼で確認この症例は、原因不明でありましたが、茨城県衛生研究所において実施した次世代シーケンサー(NGS)によるメタゲノム解析とMePIC v2.0を用いた検索で、血液、尿などの検体からオズウイルスの遺伝子断片が検出され、国立感染症研究所でウイルスが分離され、遺伝子の配列が解析された結果、オズウイルスであることが確認されました(図1)。図1 患者検体から分離されたオズウイルス粒子の電子顕微鏡写真画像を拡大する(出典:国立感染症研究所.IASR.「初めて診断されたオズウイルス感染症患者」)本症例で初めてオズウイルスがみつかったわけではなく、実は以前からオズウイルスの存在は知られていました。ヒトで世界初の感染例なのに、その前からウイルスの存在が知られており、本症例ではそのオズウイルスの遺伝子断片を検出するためのRT-PCR検査まで行われています。これはなぜかと言うと、マダニからオズウイルスからみつかっており、「いつかこのようなオズウイルスによるヒト感染例が現れるのではないか」と予想され検査体制も整えられていたためです。ぶっちゃけ、マダニ媒介感染症の世界では、SFTSがみつかって以降、ヒトでの感染例が出る前から、マダニが持っているウイルスを先回りして調べるというのがトレンドとなっており、このオズウイルスも2018年に愛媛県のタカサゴキララマダニというマダニからオズウイルスがみつかっていました1)(なお、このオズウイルスは現時点では日本以外の国ではみつかっていません)。オズウイルスの正体とは、バーボンとの関係はオズウイルス(通は「OZV」と呼ぶ)は、オルソミクソウイルス科トゴトウイルス属に属するウイルスです。オルソミクスウイルス科と言えばインフルエンザウイルスが有名ですね。オルソミクスウイルスは、(1)Influenzavirus A、(2)Influenzavirus B、(3)Influenzavirus C、(4)Thogotovirus(トゴトウイルス)、(5)Isavirus(アイサウイルス)の5つの属に分類されます。トゴトウイルス属には他にもトゴトウイルス、ドーリウイルスなどがあり、とくにオズウイルスはアメリカで報告されている「バーボンウイルス」に近縁のウイルスです。えっ…バーボンウイルスを知らないッ!?バーボンウイルス感染症は、2014年にカンザス州東部のバーボン郡の住民が感染したとして初めて報告され2)、その後ミズーリ州でも観察されている感染症です。お酒のバーボンとは関係ありません。このバーボンウイルスも致死率の高い感染症であり、その類縁ウイルスということでオズウイルスもヒトが感染すれば重症度は高いのではないかと予想されていました。ではわが国で今後もオズウイルス感染症の症例が報告される可能性はあるのでしょうか?次回、その可能性を解説します!1)Ejiri H, et al. Virus Res. 2018;249:57-65.2)Kosoy OI, et al. Emerg Infect Dis. 2015;21:760-764.

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抗精神病薬誘発性メタボリックシンドローム~ナラティブレビュー

 重篤な精神疾患である統合失調症は、世界の障害の主な原因トップ10の1つであり、人口の約1%に影響を及ぼす。統合失調症に対する最良の治療選択肢として、抗精神病薬治療が挙げられるが、抗精神病薬治療では脂質異常症を含むメタボリックシンドロームリスクが増加する。実際に、統合失調症患者は、一般集団と比較し、メタボリックシンドロームリスクが高いといわれている。カナダ・マニトバ大学のPelumi Samuel Akinola氏らは、抗精神病薬誘発性メタボリックシンドロームの有病率、メカニズムおよび対処法について、まとめて報告した。Metabolic Syndrome and Related Disorders誌オンライン版2023年6月22日号の報告。 本研究は、ナラティブレビューとして実施した。PubMedを用いて電子データベースMedlineを検索し、抗精神病薬を使用した成人集団におけるメタボリックシンドロームの有病率および対処法を調査した研究を抽出した。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬で治療されている患者におけるメタボリックシンドロームの有病率は、37~63%の範囲であった。・抗精神病薬の影響には、体重増加、腹囲の増加、脂質異常症、インスリン抵抗性2型糖尿病、高血圧などが含まれた。・メタボリックシンドローム発症を促進する薬剤として、クロザピン、オランザピンが報告されている。・メタボリックシンドローム患者では、代謝系副作用リスクの低い抗精神病薬(ルラシドン、lumateperone、ziprasidone、アリピプラゾールなど)を優先して用いる必要がある。・抗精神病薬誘発性メタボリックシンドロームに対する非薬物療法として、有酸素運動、食事カウンセリングが有効であることが確認されている。・このような患者の体重増加に対して有効性が確認された薬物療法は、ほとんどなかった。・抗精神病薬誘発性メタボリックシンドロームは、リスクを早期に認識し、注意深くモニタリングすることが求められる。・メタボリックシンドロームまたは関連症状に対する1次および2次予防は、抗精神病薬使用患者の死亡リスクの減少に役立つ可能性がある。

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静脈血栓塞栓症の治療に難渋した肺がんの一例(前編)【見落とさない!がんの心毒性】第23回

※本症例は、患者さんのプライバシーに配慮し一部改変を加えております。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》年齢・性別30代・男性既往歴なし併存症健康診断で高血圧症、脂質異常症を指摘され経過観察喫煙歴なし現病歴発熱と咳嗽が出現し、かかりつけ医で吸入薬や経口ステロイド剤が処方されたが改善せず。腹痛が出現し、総合病院を紹介され受診した。胸部~骨盤部造影CTで右下葉に結節影と縦隔リンパ節腫大、肝臓に腫瘤影を認めた。肝生検の結果、原発性肺腺がんcT1cN3M1c(肝転移) stage IVB、ALK融合遺伝子陽性と診断した。右下肢の疼痛と浮腫があり下肢静脈エコーを実施したところ両側深部静脈血栓塞栓症(deep vein thrombosis:DVT)を認めた。肺がんに伴う咳嗽以外に呼吸器症状なし、胸部造影CTでも肺塞栓症(pulmonary embolism:PE)は認めなかった。体重65kg、肝・腎機能問題なし、血圧132/84 mmHg、脈拍数82回/min。肺がんに対する一次治療としてアレクチニブの投与を開始した。画像所見を図1に、採血データを表1に示す。(図1)中枢性DVT診断時の画像所見画像を拡大する(表1)診断時の血液検査所見画像を拡大する【問題1】DVTに対し、どのような治療が考えられるか?【問題2】筆者が本症例でがん関連血栓塞栓症のリスクとして注目した患者背景は何か?第24回(VTEの治療継続で生じた問題点とその対応)に続く。1)Dou F, et al. Thromb Res. 2020;186:36-41.2)Al-Samkari H, et al. J Thorac Oncol. 2020;15:1497-1506.3)Wang HY, et al. ESMO Open. 2022;7:100742.4)Qian X, et al. Front Oncol. 2021;11:680191.講師紹介

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スタチン、ゾコーバなど、重大な副作用追加で添付文書改訂/厚労省

 厚生労働省は7月20日、HMG-CoA還元酵素阻害薬を含有する医薬品(スタチン)、エンシトレルビルなどの添付文書について、使用上の注意改訂指示を発出した。HMG-CoA還元酵素阻害薬を含有する医薬品 国内副作用症例において、スタチンと重症筋無力症との因果関係が否定できない症例が認められた。また、公表文献において、スタチンの再投与で重症筋無力症の症状が再発した症例、スタチンの中止で重症筋無力症の症状が消失した症例など、スタチンと重症筋無力症との因果関係が否定できない症例が報告されていることを踏まえ、改訂が適切と判断された。<改訂点>1.「特定の背景を有する患者に関する注意」(新記載要領)または「慎重投与」(旧記載要領)の項に「重症筋無力症又はその既往歴のある患者」を追記2.「重大な副作用」の項に「重症筋無力症」を追記<該当医薬品>(1)アトルバスタチンカルシウム水和物(商品名:リピトール錠 ほか)(2)シンバスタチン(リポバス錠 ほか)(3)ピタバスタチンカルシウム水和物(リバロ錠 ほか)(4)プラバスタチンナトリウム(メバロチン錠 ほか)(5)フルバスタチンナトリウム(ローコール錠 ほか)(6)ロスバスタチンカルシウム(クレストール錠 ほか)(7)アムロジピンベシル酸塩・アトルバスタチンカルシウム水和物(カデュエット配合錠1~4番 ほか)(8)エゼチミブ・アトルバスタチンカルシウム水和物(アトーゼット配合錠LD/HD ほか)(9)エゼチミブ・ロスバスタチンカルシウム(ロスーゼット配合錠LD/HD)(10)ピタバスタチンカルシウム水和物・エゼチミブ(リバゼブ配合錠LD/HD)エンシトレルビル フマル酸(ゾコーバ錠) アナフィラキシー関連の国内症例として3例が報告されており、うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例は1例(死亡0例)であった。しかし、異物である本剤に対するアナフィラキシーの発現は潜在的リスクとして自明であり、緊急承認品目として遅滞ない安全対策措置が重要と、さらなる症例集積を待たずに改訂が判断された。<改訂点>「重大な副作用」の項に「アナフィラキシー」を追記 このほか、チルゼパチド(マンジャロ皮下注)の重大な副作用の項に「アナフィラキシー、血管性浮腫」が追加。ミノサイクリン(ミノマイシンカプセル ほか)の重大な副作用の項「全身性紅斑性狼瘡(SLE)様症状の増悪」を「ループス様症候群」へ変更し、長期投与例における当該事象の発現に関する注意喚起が追加された。

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