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循環器医もがんを診る時代~がん血栓症診療~/日本動脈硬化学会

 がん患者に起こる“がん関連VTE(Venous Thromboembolism、静脈血栓塞栓症)”というと、腫瘍科のトピックであり、循環器診療とはかけ離れた印象を抱く方は多いのではないだろうか? 2019年7月11~12日に開催された、第51回日本動脈硬化学会総会・学術集会の日本腫瘍循環器病学会合同シンポジウム『がん関連血栓症の現状と未来』において、山下 侑吾氏(京都大学大学院医学研究科循環器内科)が「がん関連静脈血栓塞栓症の現状と課題~COMMAND VTE Registryより~」について講演し、循環器医らに対して、がん関連VTE診療の重要性を訴えた。なぜ循環器医にとって、がん関連VTEが重要なのか 循環器医は、虚血性心疾患、不整脈、および心不全などの循環器疾患を主に診療しているが、血栓症/塞栓症のような“血の固まる病気”への専門家として、わが国ではVTE診療における中心的な役割を担っている。VTEは循環器医にとって日常臨床で遭遇する機会の多い身近な疾患であり、山下氏は「VTE診療は循環器医にとって重要であるが、その中でもがん関連VTEの割合は高く、とくに重要である」と述べた。発症原因のはっきりしないVTEでは、がんに要注意! 「循環器医の立場としては、VTEの発症原因が不明で、なおかつVTEを再発するような患者では、後にがんが発見される可能性があり、日常臨床で経験する事もある」と述べた同氏は、VTE患者でのがん発見・発症割合1)を示し、VTEの原因としての“がん”の重要性を注意喚起した。さらに同氏は、所属する京都大学医学部附属病院で2010~2015年の5年間に、肺塞栓症やDVT(Deep Vein Thrombosis、深部静脈血栓症)の保険病名が付けられた診療科をまとめた資料を提示し、循環器内科を除外した場合には、産婦人科、呼吸器科、消化器科および血液内科などの腫瘍を多く扱う診療科でVTEの遭遇率が高かったことを説明した。 近年では、がん治療の進歩によりがんサバイバーが増加し、経過観察期間にVTEを発症する例が増えているという。がん患者と非がん患者でVTE発症率を調査した研究2)でも、がん患者のVTE発症率が経年的に増加している事が報告されており、VTE患者全体に占めるがん患者の割合は高く、循環器医にとって、「VTEの背景疾患として、がんは重要であり、日常臨床においては、循環器医と腫瘍医との連携・協調が何よりも重要」と同氏は強調した。がん関連VTEの日本の現状と課題 本病態が重要にも関わらず、現時点での日本における、がん関連VTEに関する報告は極めて少なく、その実態は不明点が多い状況であった。そこで同氏らは、国内29施設において急性症候性VTEと診断された3,027例を対象とした日本最大規模のVTEの多施設共同研究『COMMAND VTE Registry』を実施し、以下のような結果が明らかとなった。・活動性を有するがん患者は、VTE患者の中で23%(695例)存在した(がんの活動性:がん治療中[化学療法・放射線療法など]、がん手術が予定されている、他臓器への遠隔転移、終末期の状態を示す)。・がんの原発巣の内訳は、肺16.4%(114例)、大腸12.7%(88例)、造血器8.9%(62例)が多く、欧米では多い前立腺5.2%(36例)や乳房3.7%(26例)は比較的少数であった。・がん患者のVTE再発率は非常に高く、活動性を有するがん患者ではVTE診断後1年時点で11.8%再発し、なかでも遠隔転移を起こしている患者では22.1%と極めて高い再発率であった。・がん患者の総死亡率は極めて高く、とくに活動性を有するがん患者では49.6%がVTE診断後1年時点で亡くなっていた。・死亡した活動性を有するがん患者(464例)の死因は、がん死が81.7%(379例)で最多であったが、それに次いで、肺塞栓症4.3%(20例)、出血3.9%(18例)であった。 この結果を踏まえ、「再発率だけでなく、死亡率も高いがん関連VTE患者を、どこまでどのように介入するか、今後も解決しなければならない大きな問題である」とし、がん治療中のVTEマネジメントが腫瘍医および循環器医の双方にとって今後の課題であることを示した。 欧米でVTE治療に推奨されている低分子ヘパリンは、残念ながら日本では使用できず、ワルファリンやDOACが使用されている。しかし、ワルファリンは化学療法の薬物相互作用などによりINRの変動が激しく、用量コントロールにも難渋する。また、前述の研究の結果によると、活動性を有するがん患者ではワルファリンによる治療域達成度は低かった。このような患者に対し、VTE治療のガイドライン3)では抗凝固療法の長期継続を推奨しているが、「実際は中止率が高く、抗凝固療法の継続が難しい群であった」と現状との乖離について危惧し、「DOAC時代となった日本でも、がん関連VTEに対する最適な治療方針を探索する研究が必要であり、わが国から世界に向けた情報発信も期待される」と締めくくった。

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未治療骨髄腫に対するダラツムマブ、レナリドミド、デキサメタゾン併用療法に期待するモノ(解説:藤原弘氏)-1075

 新規治療薬開発が進み、QOLの改善と全生存率(OS)の延長が進む多発性骨髄腫(MM)だが、いまだに治癒(Cure)しない。そこで、次の治療戦略が微小残存病変(MRD)陰性完全寛解(CR)の達成から無増悪生存(PFS)の延長、その先に治癒を見据えるのは理にかなっている。Proteosome阻害剤(PIs)、iMIDsに加えて抗体製剤の登場が、その流れを加速させている。 最近、自己造血幹細胞移植適応のない未治療MMに対するダラツムマブ併用レナリドミド/デキサメタゾン(DLd)療法のLd療法に対する優位性を示す大規模な第III相臨床試験(MAIA試験)の結果が、Facon T.博士らのグループからNew England Journal of Medicine誌に掲載された(内容はすでに2018年、米国血液学会で報告されていたが)。その結果は、白血球減少と感染症リスクはあるが、ダラツムマブ併用で無増悪生存率(PFS)が有意差をもって延長し、CR+sCR達成率に加えて、Flow-cytometer法による微小残存病変陰性(105個細胞中1個以下)達成率も有意差をもって勝っていた。再発難治性(r/r)MMに対して、ダラツムマブ併用がPFS/OSの達成に優れていることはすでに他試験でも報告されている。この結果を受けて、本邦でもヤンセンファーマが未治療MMに対するDLd療法の適応追加をこの4月に申請しており、早晩、未治療MM治療にダラツムマブが使えるようになるだろう。 そして、このMAIA試験では両群間でOSに差がなかった。より強い治療強度で、total-cell-killを目指す治療戦略が必ずしも患者OSの改善に寄与しないことは、日々血液悪性腫瘍患者と向き合う中でわれわれが体感・共有している事実である。 いわゆるreal-world(日常診療)においては、未治療MM患者のおよそ2/3はさまざまな要因で移植適応がない。また、移植はしても再発抑制のために少なくとも数年は何らかの維持療法を続けている。移植ができてもできなくても、現実は、病勢を制御しOSの延長を目指して、MM増悪まで延々と何らかの治療を継続している状況にある。私自身も、移植適応のない未治療MM患者に対しては、ダラツムマブの保険適用の関係もあるが、外来でPIs+iMIDs+デキサメタゾンの3剤併用療法を開始し、治療効果を得て抗体治療を含む維持療法へ移行する方針で治療し、またおよそ対応できてはいる。 しかしながら、MAIA試験のこの後を含めた長期観察によって、より深い寛解の達成とPFSの延長が治癒へつながることが示されるのなら、より積極的にtherapy-offそして治癒を目指して自分の治療方針も再考すべきだろう。そのためには、MRDの評価基準の確立や臨床試験でのその意義の検証など課題もあるのだが、単純にDLd治療後すぐに再燃する例は次にどうしようか?とも思ってしまう。「リスクとベネフィットを考慮して」とは使い古された表現だが、主にフロントラインの病院で高齢患者様が大部分を占めるMM診療を行い、その主たる治療目標を患者QOLの維持とOSの延長に置いている私としては、もう少し、経過を見極めたいとも感じるのは、いささか“覇気”に欠けるだろうか。

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第9回 腰部の痛み【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第9回 腰部の痛み腰痛を訴える患者さんの外来受診は、よく見られます。誰もが一度や二度は経験する、なじみの痛みでもあります。「腰痛診療ガイドライン2019」によりますと、腰痛の定義は、痛みが体部後面の第12肋骨と臀部下端の間にあり、少なくとも1日以上継続する痛み、となっております。片側または両側の下肢に放散する痛みを伴う、あるいは伴わない場合も含まれます。中には生命を脅かす症例もあるため、迅速な診断と処置が必要となることもあります。今回は、この腰部の痛みを取り上げたいと思います。腰部の痛みは、大きく分けて急性腰痛・亜急性腰痛と慢性腰痛に分類されます。1)急性腰痛・亜急性腰痛発症から4週間未満の痛みを急性腰痛、4週間以上3ヵ月未満の場合は亜急性腰痛と言います。急性腰痛においては、感染性脊椎炎などの感染症も含まれますので気をつけなければなりません。また、高齢者に多い圧迫骨折には多発性骨髄腫や、悪性腫瘍の骨転移なども原因になることもありますので注意が必要です。通常の腰痛の原因としては、椎間板、椎間関節、腰椎を含むその周囲組織のさまざまな部位や腰背部の筋・筋膜に由来すると考えられ、そのものの局在性は不明確です。そのために、特異的な理学所見や画像所見も乏しいのが現状です。多くの腰痛は、3ヵ月経過する前に自然消失していきます。a)腰椎椎間関節性腰痛腰椎椎間関節性腰痛が全腰痛に占める頻度は、若年者で15%、高齢者で40%を占めております。高齢者に多いということは、椎間板が狭小になって前方部分が破綻し、椎間関節に過剰負担がかかり、変性することによって痛みが生じると考えられます。診断には、罹患関節に一致した傍脊柱部に限局した圧痛が認められます。腰椎を進展、捻転、後屈すると、痛みが増強することが多いと言われております。b)腰椎椎間板性腰痛腰椎椎間板性腰痛は、若年者から50歳までの若い年齢層で多くみられます。椎間板内に神経は存在しませんが、線維輪の断裂や椎間板の変性が生じると、椎間板内部のみならず、線維輪外層にまで神経線維が侵入してきます。線維輪に荷重がかかると、神経線維が刺激され、また、炎症症状などにより生じたサイトカインなどの関与によって痛みを感じると考えられております。この確定診断は、椎間板造影診断時に少量の造影剤を注入すると、疼痛が再現されることで得られます。座位や軽度の前屈によって椎間板内圧が増加すると、痛みが増強します。したがって、長時間の座位が取れないことが特徴です。2)慢性腰痛発症からの期間が3ヵ月以上に渡る場合、慢性腰痛と定義します。慢性腰痛の85%は、原因を明確にできない「非特異的腰痛」と言われるほど所見が乏しいと考えられます。椎間板性腰痛は、スポーツ選手や若年者では慢性腰痛の40%程度に関与しているとも言われております。慢性疼痛においては、筋肉への負荷のバランスが悪くなってきますし、筋肉の攣縮などによって、筋・筋膜性疼痛も生じてきます。長期間の疼痛によって精神的にも参ってきますと、身体を動かせないにことよって余計に痛みが増してきます。急性腰痛時に十分な治療を施し、疼痛が遷延しないようにすることが大切です。疼痛が長く持続すると慢性疼痛に移行し、その治療はますます難しくなって難治性慢性疼痛となります。そうなりますと、患者さんのみならず、医療者側も苦しむことになります。次回は下肢痛について述べます。1)腰痛診療ガイドライン2019改訂第2版 日本整形外科学会/日本腰痛学会監修 p7 20192)花岡一雄ほか監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014;143:S144-145

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ダラツムマブ併用で、多発性骨髄腫の厳格な完全奏効が改善/Lancet

 初発多発性骨髄腫の治療において、自家造血幹細胞移植の前後に、ボルテゾミブ+サリドマイド+デキサメタゾン(VTd)にダラツムマブ(商品名:ダラザレックス)を併用した薬物療法(D-VTd)を行うと、VTd単独と比較して、厳格な完全奏効(sCR)の割合が有意に改善し、毒性は許容範囲内であることが、フランス・University Hospital Hotel-DieuのPhilippe Moreau氏らが実施したCASSIOPEIA試験で示された。研究の成果はLancet誌オンライン版2019年6月3日号に掲載された。ダラツムマブは、CD38を標的とするIgG1κモノクローナル抗体。多発性骨髄腫の第III相試験において、ボルテゾミブ+デキサメタゾン、レナリドミド+デキサメタゾン、ボルテゾミブ+メルファラン+プレドニゾンに、それぞれダラツムマブを併用すると、病勢進行または死亡のリスクが、少なくとも50%低減し、微小残存病変陰性の割合が3倍になることが確認されている。ダラツムマブを併用したD-VTdまたはVTdを受ける群に割り付け 本研究は、欧州の111施設が参加した2部構成(寛解導入療法、維持療法)の非盲検無作為化第III相試験であり、2015年9月22日~2017年8月1日の期間に患者登録が行われた(Intergroupe Francophone du Myelomeと、Dutch-Belgian Cooperative Trial Group for Hematology Oncologyの助成による)。今回は、寛解導入療法の結果が報告された。 対象は、年齢18~65歳、全身状態(ECOG PS)0~2であり、移植適応の初発多発性骨髄腫の患者であった。被験者は、自家造血幹細胞移植前の寛解導入療法として4サイクル、および移植後の地固め療法として2サイクルのダラツムマブを併用したD-VTdまたはVTdを受ける群に無作為に割り付けられた。 第1部の主要評価項目は、移植後100日のsCRとした。 第2部として、移植後100日時に部分奏効(PR)以上を達成した患者が、ダラツムマブを8週ごとに投与する群または経過観察群に無作為に割り付けられ、病勢進行または最長2年までの治療が行われた。ダラツムマブ併用のD-VTd群がsCR+CR、微小残存病変陰性率、PFS期間も良好 1,085例が登録され、ダラツムマブを併用したD-VTd群に543例(年齢中央値59.0歳[範囲22~65]、男性58.2%)、VTd群には542例(58.0歳[26~65]、58.9%)が割り付けられた。全体の診断から無作為化までの期間中央値は0.9ヵ月(0.2~22.9)、フォローアップ期間中央値は18.8ヵ月(0.0~32.2)だった。 移植後100日時のsCRの発生率は、ダラツムマブ併用のD-VTd群が29%(157/543例)と、VTd群の20%(110/542例)に比べ有意に良好であった(オッズ比[OR]:1.60、95%信頼区間[CI]:1.21~2.12、p=0.0010)。 完全奏効(CR)以上(sCR+CR)の達成率(39% vs.26%、p<0.0001)および微小残存病変陰性率(64% vs.44%、p<0.0001)も、ダラツムマブ併用のD-VTd群がVTd群に比べ有意に優れた。また、初回の無作為化からの無増悪生存(PFS)期間中央値は、両群とも未到達であったが、D-VTd群がVTd群に比べ有意に改善された(HR:0.47、95%CI:0.33~0.67、p<0.0001)。 D-VTd群の14例、VTd群の32例が死亡した。2回目の無作為化の有無にかかわらず、初回の無作為化からのOS期間中央値には両群とも到達していなかったが、有意な差が認められた(HR:0.43、95%CI:0.23~0.80)。このデータは未成熟であり、長期のフォローアップを継続中である。 最も頻度の高いGrade3/4の有害事象は、好中球減少(D-VTd群28% vs.VTd群15%)、リンパ球減少(17% vs.10%)、口内炎(13% vs.16%)であった。ダラツムマブ関連のinfusion reactionが190例(35%)に認められ、このうちGrade3は17例(3%)、Grade4は2例(<1%)だった。 著者は、「CASSIOPEIAは、移植適応の初発多発性骨髄腫患者において、ダラツムマブ+標準治療の臨床的有益性を示した初めての試験である。これらのデータにより、ダラツムマブベースの併用療法は、多発性骨髄腫の疾患スペクトラム全体において治療の有益性を示したことになる」としている。

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ダラツムマブ追加で、多発性骨髄腫の無増悪生存が改善/NEJM

 自家造血幹細胞移植の適応がない新規診断の多発性骨髄腫患者の治療において、標準治療であるレナリドミド+デキサメタゾンにダラツムマブを併用すると、標準治療単独に比べ病勢進行または死亡のリスクが有意に低減することが、フランス・リール大学のThierry Facon氏らが行ったMAIA試験で示された。研究の詳細は、NEJM誌2019年5月30日号に掲載された。ダラツムマブは、CD38を標的とするヒトIgGκモノクローナル抗体であり、直接的な抗腫瘍活性と免疫調節活性を有する。多くの治療歴のある患者への単剤による有効性や、新規診断および再発・難治例への標準治療との併用による有効性が報告されている。多発性骨髄腫で年齢や副作用リスクで移植が適応外の患者が対象 本研究は、北米、欧州、中東、アジア太平洋地域の14ヵ国176施設が参加する非盲検無作為化第III相試験であり、2015年3月~2017年1月に患者登録が行われた(Janssen Research and Developmentの助成による)。 対象は、全身状態(ECOG PS)が0~2の新規に診断された多発性骨髄腫で、年齢(≧65歳)または許容できない副作用が発現する可能性が高い病態の併存により、大量化学療法+自家造血幹細胞移植が適応とならない患者であった。 被験者は、ダラツムマブ+レナリドミド+デキサメタゾン(ダラツムマブ群)またはレナリドミド+デキサメタゾン(対照群)を投与する群に無作為に割り付けられた。治療は、病勢進行または許容できない副作用が発現するまで継続することとした。 主要評価項目は、無増悪生存(無作為化から病勢進行または死亡までの期間)であった。ダラツムマブ群は無増悪生存が44%改善、CR以上が約2倍、MRD陰性が約3倍に 737例が登録され、ダラツムマブ群に368例、対照群には369例が割り付けられた。全体の年齢中央値は73歳(範囲:45~90)で、65歳未満は8例(両群4例[1.1%]ずつ)のみで、75歳以上が321例(160例[43.5%]、161例[43.6%])含まれた。診断からの経過期間中央値は0.9ヵ月(範囲:0~14.5)だった。 追跡期間中央値28.0ヵ月の時点で、240例が病勢進行または死亡した(ダラツムマブ群97/368例[26.4%]、対照群143/369例[38.8%])。30ヵ月時の無増悪生存率は、ダラツムマブ群が70.6%(95%信頼区間[CI]:65.0~75.4)、対照群は55.6%(49.5~61.3)であり、無増悪生存期間中央値はそれぞれ未到達、31.9ヵ月(28.9~未到達)であった。病勢進行または死亡のハザード比(HR)は0.56(0.43~0.73)であり、ダラツムマブ群で有意に優れた(p<0.001)。 完全奏効(CR)以上(CR+厳格な完全奏効[sCR])の割合は、ダラツムマブ群が47.6%と、対照群の24.9%に比べ有意に良好であった(p<0.001)。また、微小残存病変(MRD)が閾値(白血球105個当たり腫瘍細胞1個)を下回った患者の割合は、ダラツムマブ群が24.2%であり、対照群の7.3%に比し有意に高かった(p<0.001)。 最も頻度の高いGrade3/4の有害事象は、好中球減少(ダラツムマブ群50.0% vs.対照群35.3%)、貧血(11.8% vs.19.7%)、リンパ球減少(15.1% vs.10.7%)、肺炎(13.7% vs.7.9%)であった。 著者は、「これらの知見は、多発性骨髄腫の患者集団全体におけるダラツムマブベースのレジメンの使用を支持する臨床試験のリストに加えられる可能性がある」としている。「ダラツムマブ」関連記事ダラツムマブ併用で、多発性骨髄腫の厳格な完全奏効が改善/Lancet

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骨髄腫治療におけるCAR-T細胞療法が示す可能性とその問題点(解説:藤原弘氏)-1055

 この令和元年5月初めに、NCIのKochenderfer博士等のグループからB-cell maturation antigen(BCMA)を標的分子として難治性多発性骨髄腫を対象疾患とするCAR-T細胞の1つであるbb2121を用いた第I相臨床試験の有望な観察結果がNew England Journal of Medicine誌に報告された。 bb2121はBCMAを認識するマウス抗体の短鎖・長鎖可変領域を一本鎖とした細胞外ドメイン(scFv)と4-1BBとCD3ζを直列につないだ細胞内ドメインを持つ第2世代CAR-T細胞である。CD19 CAR-T細胞での経験と同様に、CD28型第2世代CAR-T細胞(Brudno JN, et al. J Clin Oncol. 2018;36:2267-2280. )に比較して、輸注細胞の体内生存期間の延長傾向が得られている。このCAR-T細胞はBlueBird Bio/Celgeneが開発を進め、2017年にはFDAのBreakthrough Therapy designationを受けるなど、難治性骨髄腫に対する画期的な治療薬として期待されてきた経緯がある。日本国内でも、Celgeneが第II相試験(JapicCTI-184195)を計画している。 この論文も含めて、bb2121が抱える問題点は、その“瞬発力の高い抗腫瘍効果”に比べて、“再発率が高いこと”である。現在、世界で行われている骨髄腫に対するCAR-T細胞療法臨床試験の8割以上がBCMAを治療標的分子としているが、再発を抑制する、すなわち長期的な抗腫瘍効果を得るという視点に立った時、CAR遺伝子構造の改良や分子標的薬との併用といった方法でそれが達成できるのか、あるいはBCMA以外により適した標的抗原を探す必要はないのか、など課題は今も未解決である。米国・中国を中心に、さまざまな抗BCMA CAR-T細胞の開発が進められている現状、それ自体が、難治性骨髄腫に対する抗BCMA CAR-T細胞療法が、現時点では“決め手に欠ける”状況にあると感じさせる。

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再発/難治性多発性骨髄腫でCAR-T療法が有望/NEJM

 再発または難治性多発性骨髄腫患者において、B細胞成熟抗原(BCMA)を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法であるbb2121の、安全性と抗腫瘍効果が確認された。米国・マサチューセッツ総合病院がんセンターのNoopur Raje氏らが、bb2121の第I相臨床試験(CRB-401試験)の結果を報告した。bb2121は、前臨床試験において、多発性骨髄腫の治療薬として有望であることが示されていた。NEJM誌2019年5月2日号掲載の報告。bb2121の安全性を33例で評価 研究グループは、2016年1月31日~2018年4月30日の期間に、プロテアソーム阻害薬および免疫調整薬を含む3レジメン以上の治療歴がある、または両方の薬剤に治療抵抗性の再発/難治性多発性骨髄腫患者を登録した。 患者の末梢血単核細胞を採取してCAR-T細胞bb2121を作製し、用量漸増期にはbb2121をCAR-T細胞数として50×106個、150×106個、450×106個または800×106個を、用量拡大期には150×106個、450×106個を単回注入した。主要評価項目は、安全性である。 36例が登録された。全例でbb2121の作製に成功したが、3例はbb2121注入前に疾患進行のため試験中止となり、33例がbb2121の注入を受けた。データカットオフ日は、最後の注入日から6.2ヵ月後であった。bb2121のGrade3以上の有害事象の発現率は97%、ORRは85%、CRは45% bb2121の注入を受けた33例中32例(97%)にGrade3以上の有害事象が発現した。Grade3以上の有害事象で最も頻度が高かったのは血液毒性で、発現率は好中球減少症85%、白血球減少症58%、貧血45%、血小板減少症45%などであった。25例(76%)にサイトカイン放出症候群が認められ、Grade1/2が23例(70%)、Grade3が2例(6%)であった。神経毒性は14例(42%)に発現し、うち13例(39%)はGrade1/2で、1例(3%)は可逆的なGrade4であった。 bb2121の奏効率(ORR)は85%で、完全奏効(CR/sCR)は15例(45%)で認められた。完全奏効が得られた15例のうち6例は再発した。無増悪生存期間中央値は、11.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:6.2~17.8)であった。 奏効(部分奏効以上)が得られ微小残存腫瘍(MRD)を評価しえた16例全例が、MRD陰性(有核細胞≦10-4個)であった。CAR-T細胞の増加は、奏効と関連しており、注入1年後まで持続していることが確認された。■「CAR-T療法」関連記事CAR-T療法が臨床へ、まずは2~3施設でスタート

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第5回 全身痛と関連痛【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第5回 全身痛と関連痛痛みは病気の兆候として最も多く、誰もが苦しむ原因となっています。そのために、患者さんは病院や診療所などを受診されます。血圧、脈拍、呼吸数、体温と共に、痛みは「第5のバイタルサイン」とも呼ばれております。近年、全身に痛みを訴えられる患者さんが増えておられます。全身痛と呼んでおりますが比較的若い患者さんが多くなってきたように感じられます。今回は、この全身痛を取り上げ、付随して関連痛を説明したいと思います。全身痛とは全身的に痛みを訴えられる患者さんの痛みを「全身痛」と呼んでいます。いろいろな部位に痛みを訴えられる患者さんや、全身にわたって痛みを訴えられる患者さんなど、その形態はさまざまです。また、重篤な身体疾患を持っていることもあるので注意が必要です。その中で全身痛から発見される疾患としては、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、皮膚筋炎・多発性筋炎、全身性強皮症、リウマチ性多発筋痛症などの膠原病があります。甲状腺機能低下症や有痛性糖尿病性ニューロパチーなどの内分泌疾患もあります。そのほか、ポストポリオ症候群や横紋筋融解症などの神経筋疾患も認められます。横紋筋融解症は、脂質異常症治療薬や抗神経病薬などによる薬剤性疾患によっても生じます。そして、悪性腫瘍では多発性骨髄腫、多発性転移、何より増して全身の骨関節痛、腰背部痛などが生じます。インフルエンザ、ウイルス性肝炎では全身の関節痛や筋肉痛、神経痛がみられます。うつ病、身体表現性疼痛(疼痛性障害、身体化障害など)、自律神経失調症などの精神・神経疾患でも全身痛を訴えます。とくにうつ病では、痛みの部位が変動するのが特徴です。その他、難治性疼痛疾患としての線維筋痛症(FM)(図1)や慢性疲労症候群(CFS)も現在、話題になっています。FMの診断では、(1)広範囲(右半身/左半身、上半身/下半身、体軸という身体の真ん中)の痛みが3ヵ月以上続いていること、(2)図1に示した18ヵ所(圧痛点といいます)を指で押して、11ヵ所以上で痛むことが条件となります。図1 FMの診断における18ヵ所の圧痛点画像を拡大する関連痛とは表層筋膜、アキレス腱、前脛骨筋腱、表在関節、靭帯、脛骨のような表在性の骨などの痛みは、局在性の痛みとして感じます。これに対してより深い部位にある腱、関節、骨などや筋肉内にあるような組織からの痛みは、遠く隔たった皮膚に投射されます。たとえば、上部胸椎の骨膜に刺激を受けた場合には、肩の上部にびまん性の痛みを感じます。また、内臓痛には関連痛が伴います。内臓痛そのものの局在性は不明確ですが、「関連痛」といって、同じ脊髄節支配の皮膚に投射されて痛む部位が明確に示されます。そして、この皮膚におきましては、疼痛過敏や異常知覚を伴ったり、筋肉の緊張、自律神経の異常興奮がみられることもあります(図2)。図2 内臓痛に伴い現れる関連痛の部位画像を拡大するいずれも痛みの部位と性質、随伴症状や検査所見などによって鑑別診断します。そして原疾患が疑われるようであれば、その治療を最重要として、それぞれの専門医に紹介します。原疾患が治癒しても痛みが持続する場合やとくに原疾患がない場合には、痛み治療が必要となります。次回は頭・頸部痛を取り上げます。1)花岡一雄ほか監修.日本医師会雑誌. 2014;143:120-121.2)山村秀夫ほか編. 痛みを診断する.有斐閣;1984.p.20-38.

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皮膚そう痒症、関連がん種の違いに人種が影響

 皮膚そう痒症とがんの関連は知られているが、皮膚そう痒症と関連があるがん種についてのデータは限られている。米国・ジョンズ・ホプキンス大学のValerie A. Larson氏らの研究の結果によると、皮膚そう痒症は肝臓、皮膚、造血器系の悪性腫瘍と最も強く関連していることが示された。ただし今回の研究は横断研究のため、皮膚そう痒症と悪性腫瘍における時間的制約があり、また単一施設で行われた研究であることに留意が必要だとしている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2018年9月11日号掲載の報告。 研究グループは、皮膚そう痒症とさまざまな種類のがんとの関連、ならびに人種による関連の違いについて調べ検討を行った。 2013~17年にジョンズ・ホプキンス・ヘルス・システムで診察を受けた18歳以上の患者を対象に横断研究を実施し、皮膚そう痒症患者と非皮膚そう痒症患者を比較するとともに人種別の層別解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は第3次医療センターの皮膚そう痒症患者1万6,925例だった。・皮膚そう痒症の患者は非皮膚そう痒症患者と比較し、悪性腫瘍を合併していることが多かった(オッズ比[OR]:5.76、95%信頼区間[CI]:5.53~6.00)。・皮膚そう痒症との関連が最も強かったのは、肝がん、胆嚢および胆管がん、造血器腫瘍および皮膚がんであった。・人種別では、白人と比較して黒人の皮膚そう痒症患者は、軟部組織、皮膚および血液の悪性腫瘍を有している頻度が高かった。・一方、白人の皮膚そう痒症患者は、肝臓、呼吸器、消化管および婦人科の悪性腫瘍が多かった。

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ASCO2018レポート 乳がん-2

レポーター紹介高齢者におけるトラスツズマブ単独治療の意義:RESPECT試験高齢のHER2陽性乳がん患者に対して術後補助療法として、トラスツズマブ単独または化学療法と併用した群とで比較した本邦からの無作為化第III相試験である。これは名古屋大学の澤木 正孝先生がPIとなって進めていた試験である。一般的に無作為化比較試験の対象から除外されている70歳以上(80歳以下)の方を対象としている点が特筆すべきポイントである。PSにもよるが高齢者ではやや化学療法を行いにくい、しかしHER2陽性乳がんは予後不良なためできるだけ治療は行いたいという臨床上のジレンマがある。もしトラスツズマブ単独でも化学療法併用と同等の効果があれば、わざわざ毒性の高い治療を選択しなくてもいいのではないかという思いは皆持っているかも知れない。また高齢化社会がますます進んでいく中で、70歳以上の割合は明らかに増加していくため、このような試験の立案はとても重要にみえる。本試験は優越性試験でも非劣性試験でもなく、主要評価項目の優劣の判定域を臨床医のアンケート結果に基づいて設定したという点もユニークである。統計学的有意性=臨床的有用性ではないことはどのような試験であっても理解しておかなければならないが、本試験ではまさに臨床上の実を取ったという訳である。計275例の患者が割り付けされ、StageIが43.6%、StageIIAが41.7%、リンパ節転移陰性が78.5%と比較的早期がんが多くを占めていた。HR陽性は45.9%とやや少なかった。3年のDFSはH+CT94.8%に対してH単独89.2%で有意差はなかった(HR:1.42、0.68~2.95、p=0.35)。いずれの群もイベント数が少なく予後良好であった。H単独でも十分な治療効果があったのか、もともと予後が良かったのかは明らかではないが、HER2陽性乳がんの性質を考えると、H単独でも高齢者において比較的良い予後改善効果があったというべきだろうか。QOLに関しては術後1年ではHのほうが良いが3年では差がなくなっていた。最近注目されているDe-escalationという考え方からすると非常に良い結果だったとは言える。PSの良い70代は、本来さらに生存が期待できるので、3年より長期の経過も知りたいところである。QOLは化学療法レジメンによっても多少異なる可能性があり、近年では3cm以下のn0では、個人的にはPTX+HER12サイクルのみのレジメンも積極的に用いていて、しびれがなければ高齢者でも比較的使いやすい印象がある。論文化されるのを待ちたいが、少なくとも早期HER2陽性乳がんの一部ではHRの状況にかかわらず、H単独のオプションを提示してもよいだろう。アントラサイクリンとタキサンの順序は重要か?局所進行HER2陰性乳がんに対してAとTの順序の違いを比較する第II相試験で、NeoSAMBA試験と呼ばれる。ブラジルからの報告である。FAC(500/50/500)3サイクルおよびドセタキセル(100)3サイクルを、A先行とT先行で比較するため118例の患者が無作為に割り付けられた。HR陽性が70%以上であった。結果は、中断、輸血、G使用は同等であったが、減量はT先行で少なかった。Grade3以上の有害事象は、T先行で急性過敏反応が多く、A先行で高血圧、感染、筋関節痛が多かった。pCRはT先行で高く、DFS(HR:0.34、1.8~0.64、p<0.001)、OS(HR:0.33、0.16~0.69、p=0.002)ともにT先行で良好であった。本試験は単施設の第II相試験であり、局所進行がんに限定されている。しかし、薬剤の送達やpCR率は、過去の試験でも一貫してT先行で良好であり、やはりT先行を術前術後の化学療法の標準と考えたほうが良さそうである。ただし、経験上注意点が1つある。増殖率のきわめて高いTNBCでは、ときにタキサンでまったく効果がなく、治療中に明らかな増大を示すものがある。そのため、T開始から1~2サイクルでそのような傾向がみられたら、ちゅうちょせずにAに変更することが勧められる。DC(ドセタキセル75/シクロホスファミド600)の有用性ドイツから、HER2陰性乳がんにおける2つの第III試験であるWSG Plan B試験(ECx4-Dx4 vs.DCx6)とSUCCESS C試験(FECx3-Dx3 vs.DCx6)の統合解析の結果が報告された。Aを含む群2,944例、DC群2,979例と大規模である。中央観察期間62ヵ月でDFSにまったく差はなかった。サブタイプ別にみても、Luminal A-like、Luminal B-like、Triple negativeともにまったく差は認められなかった。ただし、pN2/pN3ではAを含む群でDFSは良好であった(HR:0.69、0.48~0.98、p=0.04)。SABCS2016の報告で、DBCG07-READ試験(ECx3-Dx3 vs. DCx6)の結果を紹介したが、一貫したデータである。したがって、pN2/pN3以外では、もはやAは不要かもしれない。また、以前から述べていることだが、乳がん術後補助療法において、4サイクル以上行って優越性を示しているレジメンは今のところみられず、DCは4サイクルで十分なのではないかと考えている。6サイクルのTCは毒性の面からやはり相当大変だと思われる。パクリタキセル類似の微小管重合促進作用を持つutideloneの有用性アントラサイクリンとタキサン不応性の転移性乳がんに対してカペシタビン(CAP)のみとutidelone(UTD1)を追加した群を比較した中国における第III相試験で、OSの結果が報告された。utideloneはepothiloneのアナログで、微小管を安定させ、血管新生を阻害する薬剤である。UTD1+CAPがCAP単独に比べてPFS、ORRがを改善していることはすでに報告されている。対象としては化学療法レジメンが4つまでと規定している。UTD1+CAPではCAPは1,000mg/m2(CAPのみの群では1,250)であり、UTD1は30mg2を最初の5日間ivを行い3週を1サイクルとしていて、患者は2:1に割り付けられている(CAP+UTD1 270例、CAP 135例)。PFSはUTD1+CAPで著明に改善しており(HR:0.47、0.37~0.59、p<0.0001)、OSもUTD1+CAPで良好であった(HR:0.72、0.57~0.93、p<0.0093)。安全性に関してはグレード3以上の末梢神経障害の割合がUTD1+CAPで25。1%と高い(CAP0.8%)。すでにFDAで認可されているixabepiloneでは、治療終了後6週間で末梢神経障害は改善しているようだが、UTD1においてはどうだろうか。また、安全性プロファイルも限られた情報しか提示されていなかったため、もう少し詳細をみてみたい。しかし、これだけ少数例の検討にもかかわらず明確にOSに差が出ていたため紹介することとした。今後同薬剤がどのように使われていくのか見守りたい。未発症BRCA保有者における乳房MRIの重要性未発症のBRCA変異保有者に対して、乳房MRIによるサーベイランスがリスク低減手術に代わるオプションとなりうるかを検討した試験(トロントMRIスクリーニング試験)である。1997年7月~2009年6月までに乳がんや卵巣がん未発症のBRCA変異保有者380例が登録され、年1回のマンモグラフィとMRIが行われた。研究中40例(41腫瘍)に乳がんが発見された(BRCA1/2各20例、年齢中央値48[32~68]歳)。18例は以前に卵管・卵巣摘出術が行われていた。がん診断までの期間中央値は14(8~19)年であり、脱落例はなかった。発見契機はMRI 38例、マンモグラフィ6例、中間期1例でありTステージは大半が1cm以内の発見であった(2cm以上は1例のみ)。n+は4例に認められた。化学療法は13例に行われた。遠隔再発による死亡は2例、他がんによる死亡が4例(自殺1例、卵巣がん1例、腹膜がん2例)で、遠隔転移を来した2例の腫瘍の特徴はBRCA1/3cm/グレード2/ER+PR-HER2-/n1、およびBRCA2/0.7cm/グレード2/ER+PR-HER2-/n0であった。カプラン・マイヤー法による10年間の乳がん特異的生存率は94.6%と良好であり、乳房MRIスクリーニングはリスク低減手術に代わる重要なオプションであることが証明されたと結んでいる。この研究は、未発症のBRCA1/2保有者に今後の対策について話し合う際に非常に貴重な資料となる。Li-Fraumeni症候群における全身MRIによるがん早期発見の評価:LIFSCREEN試験フランスからの報告である。乳がんの約1%に認められることが知られているLi-Fraumeni症候群(TP53胚細胞変異)では、小児期からさまざまな悪性腫瘍を発症しやすく、有効なスクリーニングの手段が必要である。がん発症リスク上昇の懸念から被曝は極力避けたいため、以前から全身MRIの有用性が報告されているが、本研究は国を挙げての無作為化比較試験であり、実に素晴らしいと言わざるを得ない。アームAは身体所見、脳MRI、腹部-骨盤超音波検査、乳房MRI+乳房超音波、血算であり、アームBはアームAの検査に全身MRI(拡散強調画像)を加えたものである。計105例が無作為に割り付けられ、18歳以上が80%以上、女性が70%以上を占め、家族歴のない患者が約半数であった。少なくとも3年以上の経過観察が行われた。全身MRIでは肺がん3例、脈絡叢がん1例(肺転移)、副腎皮質がん1例(超音波でも同定)、乳がん3例(乳房MRIでも同定)、脊髄グリオーマ1例が発見され、一方、骨髄腫1例、顎の骨肉腫1例、乳がん1例が発見されなかった。3年という短期間では両群でOSに差はなかった。全身MRIではとくに肺がんの発見率が良いようである。フランスでは、本試験の結果を基に、全身MRIをスクリーニング手段としてガイドラインに追加している。しかし多くの放射線科医が全身MRIの読影に慣れていないという大きな問題が存在する。また、全身MRIのプロトコールはさまざまであり、放射線科医は見逃しを少しでも減らし疾患の鑑別をしたいがために、どうしても長い撮像時間のプロトコールを組みたがるが、腫瘍があることが前提の精密検査ではなくスクリーニングであることを十分認識し、受診者負担、撮影装置の占有時間を少しでも減らすため撮像時間を可能な限り短縮したいものである。本報告では具体的な撮像法がわからなかったため、論文化された時点で撮像法の詳細を確認したい。

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POEMS(クロウ-深瀬)症候群

1 疾患概要■ 概念・定義POEMS症候群の名称は、polyneuropathy、organomegaly、endocrinopathy、M-protein、skin changeの頭文字に由来する。「クロウ-深瀬症候群」、「高月病」とも呼ばれる。名称のとおり、多発ニューロパチーを中核症状とし、肝脾腫などの臓器腫大、内分泌異常、皮膚変化(色素沈着、剛毛、血管腫など)という多彩な症状を呈し、M蛋白を伴う全身性の疾患である。症状は多彩であるが、その病態基盤は形質細胞異常(plasma cell dyscrasia)とサイトカインである血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)の上昇であると考えられている。多発ニューロパチーが中核症状となることが多い一方で、plasma cell dyscrasia由来の疾患でもあり、神経内科または血液内科で診療することが多い。2015年1月に、新規に指定難病の1つとなった。■ 疫学わが国で行われた2003年の全国調査に基づく推定有病率は、10万人当たり0.3人であり、いわゆる希少疾病である。しかし、その多彩な症状ゆえに、診断が困難な例も少なくなく、実際の有病率はもう少し高い可能性がある。平均発症年齢は50代であるが、30代の発症もまれではない。男性に多い。■ 病因上述のごとく、POEMS症候群の病態の中心はplasma cell dyscrasiaとVEGFの上昇であると推定されている。VEGFは血管新生作用以外に強い血管透過性亢進作用を持ち、本症候群で特徴的に認められる浮腫、胸腹水などの所見とよく合致する。しかし、plasma cell dyscrasiaとVEGF上昇がどのように関連するかについては、現時点では不明である。また、多発ニューロパチー、内分泌異常、皮膚異常などの症状が生じるメカニズムについても明確になっていない。VEGF上昇とともに、TNFα、IL6、IL-12を含む複数の炎症性サイトカインの上昇も確認されており、複雑な病態に関与している可能性が高い。■ 症状POEMS症候群で認められる臨床症状として頻度が高いのは、多発ニューロパチー、浮腫、皮膚変化、リンパ節腫脹、女性化乳房である。典型的な多発ニューロパチーは、下肢優位の四肢遠位のしびれと筋力低下を呈する。重症度は症例により異なり、アキレス腱反射の低下のみの症例から重度の四肢麻痺の症例まで存在する。また、数ヵ月の経過で、歩行に介助が必要になるまで進行する例が多い。通常、浮腫は下腿以遠に目立つ。進行例では、明確な圧痕を残すほど顕著となり、腹部、上肢、顔面にも浮腫が出現する。皮膚変化は、色素沈着、剛毛の頻度が高い。色素沈着は独特のやや赤味を帯びた褐色を呈する(図)。剛毛は前腕や下腿に目立つ。画像を拡大する■ 予後POEMS症候群の機能・生命予後は、適切な治療が行われない場合、不良である。機能予後は、多発ニューロパチーの重症度に依存する。無治療では過半数の症例が、発症1年以内に杖歩行となる。また、1980年代は適切な治療が行われなかったため、平均生存期間は33ヵ月と報告されている。近年、疾患の認知度向上による診断技術の向上、ならびに骨髄腫治療の本症候群への応用による治療の進歩で、予後は大幅に改善しつつある。しかし、急速な悪化を認めうる疾患であり、また多臓器障害が生じることも少なくないので、治療方針検討や経過観察には、慎重を期す必要がある。低アルブミン血症、初回治療への反応性不良、高齢(50歳以上)、肺高血圧、胸水、腎機能障害などが、予後不良因子として挙げられている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)POEMS症候群の診断は診断基準に基づいて行われる。しかし、類似の診断基準が複数あり、いずれも感度・特異度について検討されていないのが、現在の問題点である。国際的に最も代表的な基準は、2012年のCochrane database systematic reviewで採用されているものである。しかし、わが国では、下表の診断基準が指定難病の認定に使用されている。本診断基準の特徴は、単クローン性形質細胞増殖が検出できない例であっても、積極的に診断できる点において優れている。そのため、日常診療で運用する上では、下表の診断基準を用いる方が、診断感度も高く、利便性にも優れる。表 POEMS症候群の診断基準●大基準多発ニューロパチー血清VEGF上昇(1,000 pg/mL以上)M蛋白(血清または尿中M蛋白陽性 [免疫固定法により確認] )●小基準骨硬化性病変、キャッスルマン病、臓器腫大、浮腫、胸水、腹水、心嚢水、内分泌異常*(副腎、甲状腺、下垂体、性腺、副甲状腺、膵臓機能)、皮膚異常(色素沈着、剛毛、血管腫、チアノーゼ、爪床蒼白)、乳頭浮腫、血小板増多(1)Definite:大基準3つ+小基準 少なくとも1つ(2)Probable:大基準2つ+小基準 少なくとも1つ*糖尿病と甲状腺機能異常は有病率が高いため、これのみでは本基準を満たさない。引用: Misawa S, et al. Clin Exp Neuroimmunol. 2013;4:318-325.以下に、検査、診断に際しての注意点を列記する。1)多発ニューロパチー明確な自覚症状を認めない場合もあり、神経伝導検査によるニューロパチーの有無の検索と性状の確認は必須である。原則は、本症候群のニューロパチーの性状は脱髄と二次的軸索変性である。非常に軽症例では、ごくわずかの異常しか認められない場合もある。2)単クローン性の形質細胞増殖血液・尿のM蛋白のスクリーニングにより、大部分の症例では検出可能である。しかし、POEMS症候群ではM蛋白の量は非常に微量のため、免疫固定法による確認が必須である。M蛋白のサブクラスの多くはIgGまたはIgAのλ型である。3)VEGF外注検査会社で測定可能である。VEGF値の測定は、診断確定、治療効果判定に非常に有用であるが、現時点では保険適用にないことが大きな問題点である。血清・血漿のいずれで測定すべきかの結論は出ていない。しかし、指定難病の認定は血清で行われている。外注検査会社に「血清で測定」の指示にて依頼する。4)骨病変硬化性変化が一般的である。しかし、溶骨性変化や混合性変化を認めることもある。胸腹水の検索目的で施行した胸腹骨盤部のCT検査の骨条件で胸骨、椎体、骨盤などの硬化性病変をスクリーニングすることが可能である。さらに精査を進める際には、PET検査が有用である。5)内分泌障害性腺機能異常、甲状腺機能異常、耐糖能異常、副腎機能異常などの頻度が高い。スクリーニング検査として、LH・FSH・E2(エストラジオール)・テストステロン・TSH・FT3・FT4・血糖・インスリン・ACTH・コルチゾールなどの検査を行う。鑑別診断として問題となりやすいのは、慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(chronic inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy:CIDP)、ALアミロイドーシスである。POEMS症候群の進行例では、浮腫・皮膚障害をはじめ、多彩な典型的症状を伴うため、鑑別が問題となることは少ない。しかし、発症初期で臨床症状や検査所見が揃わない場合には、ニューロパチーの臨床および神経伝導検査所見を詳細に比較することにより、鑑別が可能となる。CIDPの典型例の臨床症状は、左右対称性のしびれと近位筋を含む筋力低下であり、四肢遠位優位のしびれと筋力低下を呈するPOEMS症候群とは臨床症状が異なる。しかし、CIDP、POEMS症候群とも、神経伝導検査は脱髄所見を示すこと、CIDPのほうが有病率・認知度ともに高いことが影響し、POEMS症候群がCIDPと初期診断される確率は高い。典型的CIDPの多くの症例では、ステロイド、免疫グロブリン、血漿交換などの治療に反応する。したがって、治療抵抗例では診断の再考が必要な場合がある。ALアミロイドーシスは、POEMS症候群と同様、四肢遠位優位のしびれと筋力低下を呈する。しかし、神経伝導検査では軸索変性所見を呈するため、POEMS症候群とは異なる。その他、大量の胸水や腹水単独で発症する例もあり、原因が特定できない場合には、本症候群を鑑別疾患の1つとして挙げることも考慮する。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)POEMS症候群の症状は多彩であるが、治療のターゲットはplasma cell dyscrasiaである。そのため、近年は骨髄腫の治療法が本症候群に応用されている。治療方針の原則は、若年者では自家移植、高齢者では免疫調整薬が第1選択とされてきた。移植適応年齢の上限は、65歳から70歳へと、近年引き上げられつつある。自家移植に伴う関連死や再発のリスクが明確になりつつあることを考慮すると、若年軽症例、とくに30代の患者では、リスクとベネフィットおよび長期にわたる疾患コントロールの観点から、移植が第1選択とは必ずしもいい切れなくなってきている。そのような症例では、免疫調整薬が第1選択となる可能性がある。以下に、現在有効であると考えられている治療法について概説する。しかし、いずれも保険適用がないのが、問題点となっている。■ 自己末梢血幹細胞を伴う高用量化学療法通常、骨髄腫とほぼ同様の方法で行われている。自己末梢血幹細胞採取は、顆粒球コロニー刺激因子単独またはシクロホスファミド(商品名:エンドキサン)併用で行われる。続いて、高用量のメルファラン(同:アルケラン)による前処置後に幹細胞移植が行われる。最近では、移植前にサリドマイド(同:サレド)、レナリドミド(同:レブラミド)やボルテゾミブ(同:ベルケイド)などの前治療を行い、病勢をコントロールしてから、自家移植へ進むこともある。移植後、VEGF値は約1~3ヵ月で速やかに低下し、引き続き臨床症状全般の改善が生じる。移植後の再発に関する報告も増えつつあり、無増悪生存率は1年で98%、5年で75%とされる。再発後の治療の選択肢としては再移植、サリドマイドなどの免疫調整薬などが選択されることが多い。■ 免疫調整薬現時点における免疫調整薬の選択肢は、サリドマイド、レナリドミドである。サリドマイド、レナリドミドとも、やはり骨髄腫と同様の用法・用量で使用されており、デキサメタゾン(同:レナデックス、デカドロンなど)が通常併用される。ポマリドミド(同:ポマリスト)は、レナリドミドの次に開発された免疫調整薬であるが、本症候群への使用の報告はまだない。サリドマイドは、本症候群における有効性が、プラセボ対照二重盲検ランダム化群間比較試験で、唯一示されている薬剤である。前記試験は、わが国において医師主導治験として実施されており、適用取得に向けて準備中である。レナリドミドについても、単群オープン試験が報告されており、やはり有効性が示されている。副作用として、サリドマイドでは徐脈、末梢神経障害などに、レナリドミドでは骨髄抑制に、とくに注意が必要である。若年軽症例では、現時点では自家移植ではなく免疫調整薬を選択しても、将来的には自家移植の適応となる可能性がある。その際には、レナリドミドの長期使用により、幹細胞採取が困難となる可能性があるため、長期的な展望の下に、薬剤の選択と治療期間の検討を行う必要がある。■ プロテアソーム阻害薬骨髄腫治療薬として主要な位置付けとなっているプロテアソーム阻害薬も、POEMS症候群に有効な可能性がある。本症候群においては、ボルテゾミブの有効性についての症例報告が集積されつつある。臨床試験の報告はない。カルフィルゾミブ(同:カイプロリス)については、1例の報告のみで、神経症状の安定化が認められたとされる。イキサゾミブ(同:ニンラーロ)については、現在、米国で臨床試験が進行中である。用法・用量は、骨髄腫と同様に使用されることが多い。しかし、プロテアソーム阻害薬の注意すべき副作用として、末梢神経障害がある。そのため、投与中は末梢神経障害の発現に注意しつつ、投与間隔の延長や治療の中断を考慮する。ボルテゾミブに関しての報告が最も多く、効果の発現が免疫調整薬と比較し、速やかな可能性がある。亜急性進行を示す例において、選択肢の1つとなる可能性がある。4 今後の展望現在、骨髄腫治療薬は、早いスピードで開発が進んでいる。これまでの免疫調整薬・プロテアソーム阻害薬の本症候群における有効性を鑑みると、新規薬もおそらく有効である可能性が高い。そのため、本症候群に応用できる選択肢が、今後も引き続き増加することが予測される。現時点では、本症候群における新規治療の試みは、希少かつ重篤な疾患であるがゆえに、1~数例の報告が主体である。しかし、サリドマイドの本症候群への適応拡大のために行われたランダム化群間比較試験のように、今後は適切な臨床試験を可能な限り行い、エビデンスを積み重ね、治療戦略を構築する試みを継続すべきである。治療の進歩に伴い、本症候群の認知度は確実に向上しており、早期診断・治療の加速により、予後は明らかに改善しつつある。また、稀少疾病の新規治療開発を加速させる手段の1つとして、本症候群の症例登録システムも構築されている。全国に散在している症例の情報を集積し、新規治療の有効性や予後について明らかにすることが目的である。さらに、未来の新規治療薬の臨床試験においては、適応となりうる患者に迅速に情報を届けることも、もう1つの主要な目的である。一方で、診断・病勢のマーカーとなるVEGF測定や有効とされる新規治療が、いまだ1つも保険適用とされていないことが、すべての患者さんが、いずれの医療機関でも標準的な診療を受けることへの大きな障壁となっている。このような問題点に関しても、今後の解決が期待される。5 主たる診療科神経内科または血液内科 ※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター クロウ・深瀬症候群(一般利用者と医療者向けのまとまった情報)千葉大学大学院医学研究院 神経内科学 J-POST trial(医療者向けのまとまった情報)千葉大学大学院医学研究院 神経内科学 患者登録システム(一般利用者と医療者向けの症例登録の窓口)患者会情報POEMS症候群 サポートグループ(本症の患者および家族の会)1)Kuwabara S, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2012;6:CD006828.2)Misawa S, et al. Clin Exp Neuroimmunol. 2013;4:318-325.3)Dispenzieri A. Am J Hematol. 2014;89:214-223.4)Misawa S, et al. Lancet Neurol. 2016;15:1129-1137.5)Jaccard A. Hematol Oncol Clin North Am. 2018;32:141-151.6)Nozza A, et al. Br J Haematol. 2017;179:748-755.7)Mitsutake A, et al. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2018.[Epub ahead of print]公開履歴初回2015年07月28日更新2018年04月24日

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MGUS、M蛋白の違いで多発性骨髄腫などへの進行リスクに差/NEJM

 意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)において、IgM型MGUS患者と非IgM型MGUS患者では、進行リスクに大きな違いがあることが確認された。また、MGUS患者の全生存期間(OS)は、対照集団の予測OSより短いことも示された。米国・メイヨー・クリニックのRobert A. Kyle氏らが、中央値で約34年という長期にわたる追跡調査の結果を報告した。MGUSは50歳以上の約3%に生じ、患者の7~19%で5~10年後にがん化することが示唆されている。これまでの研究は症例数が少なく追跡期間も短期で、OSに関する情報は限定的であった。NEJM誌2018年1月18日号掲載の報告。MGUS患者約1,400例で多発性骨髄腫などへの進行を34年間追跡 研究グループは、1960~94年の間にメイヨー・クリニックでMGUSと診断された患者で、ミネソタ州南東部に在住の1,384例について、Rochester Epidemiology Projectの診療記録システムおよびメイヨー・クリニックの入院・外来患者診療記録を用いて調査した。 主要エンドポイントは、MGUSから多発性骨髄腫またはその他の形質細胞性/リンパ性疾患への進行であった。 1万4,130人年の追跡調査(追跡期間中央値34.1年、範囲0.0~43.6年)において、1,384例中1,300例(94%)の死亡が認められた。MGUS患者の11%が多発性骨髄腫等へ進行、IgM型で進行リスク大 追跡期間中に、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、ALアミロイドーシス、ワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症、慢性リンパ性白血病、形質細胞腫への進行が、MGUS患者147例(11%)で確認された。このリスクは、年齢および性別をマッチさせた対照集団より6.5倍(95%CI:5.5~7.7)高かった。また、これらの疾患への進行の累積リスク(他の原因による死亡を除く)は、10年時で10%、20年時で18%、30年時で28%、35年時で36%、40年時で36%であった。 IgM型MGUS患者では、血清遊離軽鎖比(κ/λ比)の異常および血清M蛋白量高値(1.5g/dL以上)の2つのリスク因子がある場合、20年時の進行リスクが55%であった。リスク因子が1つの場合は41%、どちらのリスク因子もない場合は19%であった。 また、非IgM型MGUS患者の20年時の進行リスクは同様に、それぞれ30%、20%および7%であった。 MGUS患者のOS中央値は8.1年で、対照集団の予測OS(中央値12.4年)より短かった(p<0.001)。

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多発性骨髄腫に新たな治療の選択肢

 11月8日、ヤンセンファーマ株式会社は、多発性骨髄腫治療薬のヒト抗CD38モノクロナール抗体ダラツムマブ(商品名:ダラザレックス点滴静注)が9月27日に製造販売の承認を取得したことを期し、多発性骨髄腫に関するメディアセミナーを都内で開催した。 ダラザレックスは、再発または難治性の多発性骨髄腫(以下「MM」と略す)の治療薬で、現在の適応条件では併用療法で使用される予定である。※本剤は11月22日に薬価収載(100mg5mL1瓶 5万1,312円、400mg20mL1瓶 18万4,552円)され、発売された。寛解と再発を繰り返す多発性骨髄腫 はじめに伊藤 博夫氏(同社オンコロジー事業本部 事業本部長)が、「ダラツムマブは、米国食品医薬品局(FDA)から画期的治療薬指定をもらった治療薬で、早いスピードで承認・発売された。日本でも使用できるようになったことで、今後も、迅速に患者さんに治療薬を届け、安全に使用できるよう副作用情報なども提供していきたい」と挨拶した。 続いて鈴木 憲史氏(日本赤十字社医療センター 血液内科・骨髄腫アミロイドーシスセンター長)を講師に迎え「多発性骨髄腫」をテーマに疾患の概要とダラツムマブの効果について説明が行われた。 MMは、骨髄の形質細胞ががん化し、正常な免疫グロブリンを作らず、異常な免疫グロブリンを過剰産生するために、貧血、腎障害、骨病変、高カルシウム血症などのさまざまな症状を引き起こす。2012年の推定罹患患者数は人口10万人あたり男性5.7人、女性5.1人(男女計5.4人)で、現在も年間7千人前後の患者が推定され、年々増加傾向にあるという。 主な症状としては、造血抑制を原因とする貧血、白血球・血小板減少、骨破壊を原因とする高カルシウム血症、病的・圧迫骨折、脊髄圧迫症状、M蛋白を原因とする免疫グロブリンの低下、腎障害などがみられる。外来診療の場で、「腰痛を訴え、こうした症状も同時に訴える患者がいたら本症を疑うべき」と同氏は言う。 MMの治療では、自家造血幹細胞移植のほか、初期治療として、ボルテゾミブ、レナリドミド、デキサメタゾンの3剤併用、レナリドミド、デキサメタゾンの2剤併用療法が行われている。治療薬もプロテアソーム阻害薬、免疫調整薬と増え、治療薬の増加に比例して患者の生存期間も延長している。しかし、MMでは、いったん寛解するものの、腫瘍細胞を完全になくすことは困難であり、再発することも多く、予後もよいとは言えないのが現在の状況であるという。多発性骨髄腫の治療に新戦力 MMの治療戦略として、いかに微小残存病変(MRD)を陰性にさせ、“Therapy off”にするかがポイントとなる。そのため、体内で多発する遺伝子転座の発生をいかに抑制するかが治療のカギとなる。 MMでは、CD38が免疫細胞の形質細胞に高発現し、有用な治療標的とされている。開発されたダラツムマブは、ヒトCD38に結合し、補体依存性細胞傷害活性、抗体依存性細胞傷害活性などの作用で腫瘍の増殖を抑制すると考えられ、CD8陽性細胞傷害性T細胞・CD4陽性ヘルパーT細胞、免疫抑制細胞に影響を及ぼすとされている。 「腫瘍をしっかりと減らし、免疫をつけることができるのがダラツムマブの特徴」と同氏は言う。また、免疫機構が働くことで、「予後の改善にも期待が持てる」と語る。 ダラツムマブでは、2つの臨床試験が行われ、POLLUX試験では、再発または難治性のMM患者(n=569)をDRd(ダラツムマブ、レナリドミド、デキサメタゾン)群とRd(レナリドミド、デキサメタゾン)に分け、無増悪生存期間を評価した。その結果、DRd群はRd群に比べ細胞増殖および死亡のリスクを59%低下させたほか、24ヵ月時点でMRD陰性もDRd群はRd群に比べ大幅に高かったことが示された。また、CASTOR試験では、再発または難治性のMM患者(n=498)をDVd(ダラツムマブ、ボルテゾミブ、デキサメタゾン)群とVd(ボルテゾミブ、デキサメタゾン)に分け、無増悪生存期間を評価した。その結果、DVd群はVd群に比べ細胞増殖リスクを69%低下させたほか、約19ヵ月時点でMRD陰性も先の試験同様にDVd群はVd群に比べ大幅に高かったことが示された。 副作用については、好中球減少症、貧血、血小板減少症、下痢、上気道感染症などが報告されたが重篤なものはなかったという。ただ、ダラツムマブ(ダラザレックス)が点滴薬のために「鼻水、せき、寒気などのアレルギー様の症状が現れる“インフュージョン・リアクション”と呼ばれる症状が現れることもあり、症状によっては注意が必要」と同氏は指摘する。 今後の治療の展望では、ダラツムマブの出現で臨床症状の改善、通院の利便性、服薬への安全性が改善され、患者ニーズをさらに満たしていくと説明するとともに同氏は、「生存期間の延長を現在の段階とすれば、次の段階では早期の新薬適応で治療を、次の段階でMMの寛解を、そして予防まで進めることを期待したい」と抱負を語り、セミナーを終えた。

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ペムブロリズマブの多発性骨髄腫、臨床試験の一部にFDAが実施保留命令

 Merck & Co., Inc.,は2017年7月5日、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)の多発性骨髄腫に対する3件の臨床試験(KEYNOTE-183試験、KEYNOTE-185試験、KEYNOTE-023試験)において、米国食品医薬品局(FDA)がクリニカル・ホールド(実施保留命令)とした旨を発表した。 この決定は、データ監視委員会によるデータの検討において、KEYNOTE-183試験およびKEYNOTE-185試験で、ペムブロリズマブ群により多くの死亡が認められ、新規患者の登録を保留したことを基に行われている。FDAは現段階のデータで、多発性骨髄腫患者に対するペムブロリズマブとポマリドミドまたはレナリドミドの併用のリスクが潜在的なベネフィットを上回ることが示されていると判断した。KEYNOTE-183試験およびKEYNOTE-185試験の全登録患者、並びにKEYNOTE-023試験におけるペムブロリズマブ・レナリドミド・デキサメタゾン併用コホートの患者は、ペムブロリズマブの治療を中止する。このクリニカル・ホールドはペムブロリズマブの他の臨床試験への影響はない。以下の臨床試験はクリニカル・ホールド •KEYNOTE-183試験:難治性または再発難治性多発性骨髄腫患者にペムブロリズマブ(MK-3475)とポマリドミド+低用量デキサメタゾンの3剤併用またはポマリドミド+低用量デキサメタゾンの2 剤併用で比較した第3相臨床試験(KEYNOTE-183 試験) • KEYNOTE-185試験:未治療の初発多発性骨髄腫患者にペムブロリズマブ(MK-3475)とレナリドミド+低用量のデキサメタゾンの3剤併用またはレナリドミド+低用量のデキサメタゾンの2剤併用で比較した第3相臨床試験(KEYNOTE -185試験)以下の臨床試験は部分的にクリニカル・ホールド •KEYNOTE-023試験コホート1:多発性骨髄腫患者に対するペムブロリズマブ(MK-3475)のバックボーン治療との併用マルチコホート第I相臨床試験(KEYNOTE-023試験)。KEYNOTE-023試験のコホート1では、多発性骨髄腫に対して免疫調節薬(IMiD)(レナリドミド、ポマリドミド、サリドマイド)の治療を受けたことのある患者に対するペムブロリズマブとレナリドミド+デキサメタゾンの併用を評価している。■参考MERCK(米国本社)プレスリリース

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肥満と関連の強い11のがん種/BMJ

 肥満は、消化器系や女性のホルモン関連悪性腫瘍など11のがん種の発生およびがん死と強い関連があることが、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのMaria Kyrgiou氏らの包括的な検討で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2017年2月28日号に掲載された。肥満といくつかのがん種の因果関係が、多くのメタ解析で示されているが、これらの関連を過大に評価する固有バイアスの影響が懸念されるという。このバイアスを回避するアプローチとして、近年、多くのメタ解析の全体に共通する主題のエビデンスを系統的に評価する包括的レビュー(umbrella review)が行われている。204件のメタ解析を包括的にレビュー 研究グループは、肥満と発がん・がん死リスクの関連のエビデンスの強度と妥当性を検証するために、系統的レビューとメタ解析の包括的レビューを行った(Genesis Research Trustなどの助成による)。 主解析は、肥満の連続測定値を用いたコホート研究を対象とした。これは、カテゴリカル測定値よりも、連続測定値を用いた研究のほうが、個々の試験の推定値の統合法の妥当性や標準化が優れると考えられるからである。 エビデンスは、ランダム効果を用いた要約推定量や、メタ解析の対象となった最大規模の研究などの統計的有意性から成る判定基準を適用し、4つのGrade(strong、highly suggestive、suggestive、weak)に分けた。エビデンスのGradeがstrongの場合に関連ありとした。 49編の論文に含まれた204件のメタ解析が解析の対象となった。これらのメタ解析は、507件の研究(コホート研究:371件[73.2%]、症例対照研究:134件[26.4%]、横断研究:2件[0.4%])を対象としていた。肥満の7つの指標(BMI、ウエスト周囲長、ヒップ周囲長、ウエスト-ヒップ比、体重、体重増加、肥満手術による体重減少)と、36の原発がんとそのサブタイプの発生、およびがん死との関連を解析した。リスク強度のエビデンスにより、個別化予防戦略の可能性 コホート研究を含み、肥満の測定に連続尺度を用いた95件のメタ解析のうち、がんとの関連のエビデンスがstrongと判定されたのは12件(13%)のみであった。10件がBMI、1件がウエスト-ヒップ比、1件が体重増加との関連を評価したものであった。 BMIの増加が、発症リスクの上昇と関連したがん種は、食道がん、男性の大腸がん(結腸、直腸)、胆道系および膵がん、閉経前女性の子宮内膜がん、腎がん、多発性骨髄腫の8種であった。また、体重増加およびウエスト-ヒップ比が発症リスクの上昇と関連したがん種は、ホルモン補充療法歴のない閉経後女性の乳がんおよび子宮内膜がんの2種であった。 BMIが5増加するごとの発がんリスクの上昇には、男性の大腸がんの9%(相対リスク[RR]:1.09、95%信頼区間[CI]:1.06~1.13)から胆道系がんの56%(1.56、1.34~1.81)までの幅がみられた。また、ホルモン補充療法歴のない閉経後女性の乳がんリスクは、体重増加5kgごとに11%上昇し(RR:1.11、95%CI:1.09~1.13)、子宮内膜がんのリスクは、ウエスト-ヒップ比が0.1増加するごとに21%上昇した(1.21、1.13~1.29)。 肥満の連続測定値に加え、カテゴリカル測定値を解析に含めると、体重増加と大腸がん、さらにBMIと胆嚢・胃噴門部・卵巣のがん、多発性骨髄腫による死亡との関連のエビデンスがstrongと判定された。したがって、全部で11のがん種が、肥満との関連のエビデンスがstrongであった。 一方、コホート研究だけでなく症例対照研究を含め、肥満の連続測定値とカテゴリカル測定値で評価すると、BMIは悪性黒色腫と髄膜腫との関連のエビデンスがstrongと判定されたが、コホート研究のみの評価によるエビデンスはweakであった。 著者は、「肥満は、世界的に公衆衛生の最も大きな問題の1つとされる。関連リスクの強度に関するエビデンスは、がんのリスクが高い集団を、高い精度で選択することを可能とし、これらの集団を対象とする個別化予防戦略の可能性も考えられる」と指摘している。

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抗PD-1抗体キイトルーダ発売:悪性黒色腫とNSCLCに

 根治切除不能な悪性黒色腫およびPD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんの効能・効果で承認を取得している抗PD-1抗体ペムブロリズマブの発売が2017年2月15日、MSD株式会社(本社:東京都千代田区、社長:ヤニー・ウェストハイゼン)から発表された。商品名はキイトルーダ点滴静注20mgおよびキイトルーダ点滴静注100mg。 この販売開始に伴い、MSDが薬価基準収載までの期間に限り実施していたペムブロリズマブの無償提供は終了する。肺がんにおけるペムブロリズマブ PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の未治療非小細胞肺がん患者を対象とした国際共同第III相臨床試験(KEYNOTE-024試験)および既治療非小細胞肺がん患者を対象とした国際共同第II/III相臨床試験(KEYNOTE-010試験)において、有効性および安全性が示された。PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに対する初回治療(PD-L1高発現)患者および既治療(PD-L1発現)患者に使用可能な抗PD-1抗体となる。悪性黒色腫におけるペムブロリズマブ 根治切除不能な悪性黒色腫患者を対象とした海外第II相試験(KEYNOTE-002試験)、海外第III相試験(KEYNOTE-006試験)および国内第I相試験(KEYNOTE-041試験)において、有効性および安全性が示された。 また、ペムブロリズマブの治療対象となる非小細胞肺がんのPD-L1高発現(TPS※≧50%)の未治療患者、および治療歴のあるPD-L1発現(TPS≧1%)患者を特定するコンパニオン診断薬 PD-L1 IHC 22C3 pharmDx「ダコ」は、2016年11月25日に本邦での承認を取得している。※TPS:Tumor Proportion Score 腫瘍細胞のうちPD-L1発現陽性細胞の割合 ペムブロリズマブは、米国を含む50ヵ国以上で承認を取得しており、世界では30を超えるがん種に対し約400の臨床試験が進行中。本邦では、2015年10月27日に、治癒切除不能な進行・再発の胃がんに対する効能・効果について、厚生労働省から先駆け審査指定制度の対象品目に指定されている。2016年12月22日には、再発または難治性の古典的ホジキンリンパ腫に対する効能・効果について製造販売承認事項一部変更承認申請を行っている。さらに、膀胱がん、乳がん、胃がん、頭頸部がん、肝がん、多発性骨髄腫、食道がん、腎細胞がん、大腸がん、卵巣がん、前立腺がんなどを対象とした後期臨床試験が進行中である。MSD株式会社のニュースリリースはこちら

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骨転移へのゾレドロン酸の投与間隔、4週 vs.12週/JAMA

 乳がん、前立腺がんの骨転移および多発性骨髄腫の骨病変の治療において、ゾレドロン酸の12週ごとの投与は、従来の4週ごと投与に比べて骨格イベントの2年リスクを増大させないことが、米国・Helen F Grahamがんセンター・研究所のAndrew L Himelstein氏らが行ったCALGB 70604(Alliance)試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2017年1月3日号に掲載された。第3世代ビスホスホネート製剤であるゾレドロン酸は、多発性骨髄腫や固形がん骨転移の疼痛や骨格関連事象を抑制し、忍容性も全般に良好であるが、顎骨壊死、腎毒性、低カルシウム血症などのリスク上昇が知られている。標準的な投与間隔は4週とされるが、これは経験的に定められたもので、さまざまな投与法の検討が進められているものの、至適な投与間隔は確立されていないという。間隔の長い投与法を非劣性試験で評価 CALGB 70604(Alliance)は、がん患者の骨転移の治療において、ゾレドロン酸の投与間隔を12週に延長した治療アプローチの、従来の4週間隔の投与法に対する非劣性を検証する非盲検無作為化第III相試験(米国国立がん研究所[NCI]などの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、1つ以上の骨転移を有する転移性乳がん、転移性前立腺がん、多発性骨髄腫で、全身状態(ECOG PS)0~2の患者であった。被験者は、ゾレドロン酸を12週ごとまたは4週ごとに静脈内投与する群に無作為化に割り付けられ、2年間の治療が行われた。主要評価項目は、2年時までの1つ以上の骨格関連事象の発生とし、群間の絶対差7%を非劣性マージンとした。 骨格関連事象は、臨床的骨折(有症状患者の評価時に同定された骨折、偶発的に見つかった骨折は除外)、脊髄圧迫(画像評価を要する神経学的障害、背部痛、これら双方)、骨への放射線照射(疼痛を伴う骨病変への緩和的照射、骨折や脊髄圧迫の治療または予防のための照射など)、骨関連手術(差し迫った骨折の予防や、病的骨折および脊髄圧迫の治療を目的とする外科的手技)と定義した。 2009年5月~2012年4月に、米国の269施設に1,822例が登録され、12週投与群に911例、4週投与群にも911例が割り付けられた。骨格関連事象の2年発生率:28.6 vs.29.5% ベースラインの全体の年齢中央値は65歳、女性が53.8%(980例)を占めた。乳がんが855例、前立腺がんが689例、多発性骨髄腫は278例で、795例が試験を完遂した。 2年時までに1つ以上の骨格関連事象を経験した患者の割合は、12週投与群が28.6%(253例)、4週投与群は29.5%(260例)であった。リスク差は-0.3%(95%信頼区間[CI]:-4~∞)であり、12週投与群の4週投与群に対する非劣性が確認された(非劣性検定p<0.001)。 3つの癌腫とも、両群間に骨格関連事象の発生率の差はみられなかった(乳がん 群間差:-0.02、99.9%CI:-0.13~0.09、p=0.50、前立腺がん:0.02、-0.10~0.14、p=0.59、多発性骨髄腫:0.06、-0.12~0.24、p=0.14)。 疼痛スコア(簡易疼痛調査票)、PS(ECOG)、顎骨壊死の発生(12週投与群:9件[1.0%]、4週投与群:18件[2.0%]、p=0.08)、腎機能障害についても、両群間に差を認めなかった。また、骨格罹患率(骨格関連事象の年間平均発生数)は両群とも同じであった(0.4、中央値:0、IQR:0~0.5)。  骨代謝回転のマーカーであるC末端テロペプチド値(553例、2,530サンプル)は、試験期間を通じて12週投与群のほうが高かった。 著者は、「ゾレドロン酸の投与間隔を12週に延長した治療アプローチは、がん患者の骨転移の治療選択肢として許容される可能性がある」と指摘している。

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多発性骨髄腫の1次治療、ボルテゾミブ追加で予後改善/Lancet

 新規診断多発性骨髄腫患者の治療において、プロテアソーム阻害薬(PI)と免疫調節薬(IM)を含む3剤併用療法は、従来の標準治療に比べ予後を改善し、リスクベネフィット・プロファイルも許容範囲内であることが、米国・Cedars-Sinai Samuel OschinがんセンターのBrian G M Durie氏らが実施したSWOG S0777試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2016年12月22日号に掲載された。米国の新規診断多発性骨髄腫の標準治療は、レナリドミド+デキサメタゾンである。PIであるボルテゾミブとIMであるレナリドミドは、異なる作用機序による相乗効果が確認され、デキサメタゾンとの3剤併用療法の第I/II相試験では、未治療の多発性骨髄腫患者において高い有効性と良好な耐用性が報告されている。ボルテゾミブの上乗せ効果を無作為化試験で評価 SWOG S0777は、自家造血幹細胞移植に同意していない未治療の多発性骨髄腫患者の治療において、標準治療へのボルテゾミブの上乗せ効果を評価する非盲検無作為化第III相試験(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、測定可能病変(血清遊離軽鎖の評価で測定)を有し、臓器障害(CRAB基準:高カルシウム血症、腎機能障害、貧血、骨病変)がみられ、全身状態(ECOG PS)が0~3、ヘモグロビン濃度≧9g/dL、好中球絶対数(ANC)≧1×103/mm3、血小板数≧8万/mm3の患者であった。 被験者は、初回治療としてボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン(VRd)を投与する群またはレナリドミド+デキサメタゾン(Rd)を投与する群に無作為に割り付けられた。VRd群は8サイクル(1サイクル21日)、Rd群は6サイクル(1サイクル28日)の治療が行われた。 2008年4月~2012年2月に、139施設に525例が登録され、VRd群に264例、Rd群には261例が割り付けられた。VRd群では有効性は242例、毒性は241例、奏効は216例で、Rd群ではそれぞれ229例、226例、214例で解析が可能であった。PFS、OSが有意に改善 ベースラインの背景因子は、Rd群で女性が多く(37 vs.47%)、年齢が高かった(65歳以上の割合:38 vs.48%)が、これら以外は両群でバランスがとれていた。 主要評価項目である無増悪生存(PFS)期間中央値は、VRd群が43ヵ月であり、Rd群の30ヵ月に比べ有意に優れた(層別化ハザード比[HR]:0.712、96%信頼区間[CI]:0.56~0.906、片側検定p=0.0018)。 副次評価項目である全生存(OS)期間中央値も、VRd群が75ヵ月と、Rd群の64ヵ月に比し有意に良好であった(HR:0.709、95%CI:0.524~0.959、両側検定p=0.025)。 全奏効率(部分奏効[PR]以上)は、VRd群が81.5%(176/216例)、Rd群は71.5%(153/214例)であった(p=0.02)。このうち完全奏効(CR)以上は、それぞれ15.7%(34/216例)、8.4%(18/214例)であった。奏効期間中央値は、VRd群が52ヵ月、Rd群は38ヵ月であった(HR:0.695、両側検定p=0.0133)。 Grade 3以上の有害事象の発現率は、VRd群が82%(198/241例)、Rd群は75%(169/226例)であった。予想されたとおり、Grade 3以上の神経毒性はVRd群のほうが高頻度であった(33 vs.11%、p<0.0001)。有害事象による治療中止の割合は、VRd群が23%(55例)、Rd群は10%(22例)であった。2次原発がんは、20例に認められた(両群10例ずつ)。治療関連死は両群ともみられなかった。 著者は、「これらの知見は、3剤併用療法による1次治療の意思決定に、重要な情報をもたらす可能性がある」としている。

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