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1.

植物ベースの食事、内容で骨折リスクは変わるか?

 これまでの研究で、植物性食品を多く摂取し、動物性食品を少なく、あるいはまったく摂取しないヴィーガン食は、骨密度の低下や骨折リスクの上昇に関連する可能性が示唆されている。しかし、植物性食品の質については区別されていなかった。スペイン・マドリード自治大学のMercedes Sotos-Prieto氏らは、閉経後の女性において、植物性食品の質と股関節骨折リスクとの関連を検討した。JAMA Network Open誌2024年2月29日号掲載の報告。 研究者らは、1984~2014年に米国のNurses' Health Studyに参加した7万285例の閉経後女性を対象に、植物性食品(菜食主義とは限らず雑食主義も含む)の質と股関節骨折リスクとの関連を検討した。データは2023年1月1日~7月31日に解析された。 股関節骨折は2年ごとのアンケートで自己報告、食事内容は調査票を用いて4年ごとに評価した。食事の質は「健康的な植物性食品」(全粒穀物、果物、野菜、ナッツ、豆類、植物油、茶/コーヒー)、「健康的でない植物性食品」(ジュース、甘味飲料、精製穀物、イモ類、菓子/デザート)、「動物性食品」に分類したうえでPlant-Based Diet Indexスコアに換算して最高五分位から最低五分位までを算出し、それぞれの股関節骨折リスクのハザード比(HR)を求めた。 主な結果は以下のとおり。・7万285例の参加者は、ベースライン時の平均年齢54.92(SD 4.48)歳、全員が白人女性だった。研究期間中および最長30年間の追跡期間中に2,038例の股関節骨折が報告された。・「健康的な植物性食品」摂取が最も多い群と少ない群の比較(HR:0.97、95%信頼区間[CI]:0.83~1.14)、「健康的でない植物性食品」摂取が最も多い群と少ない群の比較(HR:1.02、95%CI:0.87~1.20)のいずれも、股関節骨折リスクとは関連しなかった。・一方、最近の食事に絞って検討すると「健康的な植物性食品」摂取は股関節骨折リスクの21%低下(HR:0.79、95%CI:0.68~0.92)と、「健康的でない植物性食品」は28%上昇(HR:1.28、95%CI:1.09~1.51)と関連した。 研究者らは「本コホート研究の結果より、長期的に摂取された植物ベースの食事の内容は、股関節骨折リスクとは関連しないことが示された。最近の食事摂取で観察された関連が、これらの食事パターンの短期的な影響によるものかは、今後の研究で明らかにすべきである」としている。

2.

ASCO2023 レポート 消化器がん

レポーター紹介本年も世界最大級の腫瘍学学会の1つであるASCO2023が、6月2日から6日に現地米国シカゴとオンラインのハイブリッドで開催された。消化器がんの注目演題について、いくつか取り上げていきたい。ATTRACTION-5: A phase 3 study of nivolumab plus chemotherapy as postoperative adjuvant treatment for pathological stage III (pStage III) gastric or gastroesophageal junction (G/GEJ) cancer. #4000本試験は胃切除術+D2郭清以上の手術を受けたStageIIIの胃がんもしくは食道胃接合部がんに対する術後治療として、化学療法に対するニボルマブの上乗せを検証した第III相試験であり、本邦の静岡県立がんセンターの寺島先生より報告された。主要評価項目は中央判定の無再発生存期間、副次評価項目は研究者判定の無再発生存期間、全生存期間(OS)および安全性であった。日本、韓国、台湾、中国の東アジアの4ヵ国から755例が登録され、377例が化学療法+ニボルマブ群に、378例が化学療法群に登録された。患者背景は65歳以上が約40%、男性が約70%、PS0が約80%、StageIIIA〜Cが3分の1ずつ、胃全摘が43%、病理diffuse typeが56%、日本からの登録が48%あった。化学療法の内訳はS-1が35%でcapeOXが65%、PD-L1発現(腫瘍における発現)は1%以上が10%程度で、両群の患者背景に偏りは認められなかった。主要評価項目である中央判定の3年無再発生存率は、化学療法+ニボルマブ群で68.4%、化学療法群で65.3%と統計学的な有意差を認めなかった(HR:0.90、95%CI:0.69〜1.18、p=0.4363)。サブグループ解析ではニボルマブの上乗せ効果はPS0、食道胃接合部/噴門部、StageIIIA/IIIB、intestinal typeおよびS-1群で乏しい傾向があった。副次評価項目である研究者判定の3年無再発生存率は64.9% vs.59.3%(HR:0.87、95%CI:0.69〜1.11)、3年生存率が81.5%vs.78.0%(HR:0.88、95%CI:0.66〜1.17)であった。新規の有害事象は認められなかった。Perioperative PD-1 antibody toripalimab plus SOX or XELOX chemotherapy versus SOX or XELOX alone for locally advanced gastric or gastro-oesophageal junction cancer: Results from a prospective, randomized, open-label, phase II trial.  #4001前述のATTRACTION-5試験に続き、中国から周術期化学療法における抗PD-1抗体薬の上乗せを探索したランダム化第II相試験が報告された。本研究ではcT3a-4aでN因子陽性かつM0の胃がんおよび食道胃接合部がんを対象にして、SOXもしくはcapeOXに抗PD-1抗体薬であるtoripalimabを上乗せする試験であった。通常治療群は術前治療としてcapeOX/SOXを3コース、術後にcapeOX/SOXを5コース行った。試験治療群は周術期capeOX/SOXにtoripalimabを上乗せした後に、6ヵ月間toripalimab単剤が継続された。主要評価項目はtumor regression grade rate(TRG rate)でTRG0(腫瘍細胞なし)もしくはTRG1(1細胞もしくは小グループの腫瘍細胞残存)の割合であり、副次評価項目は原発巣の病理学的完全奏効率、完全切除率、無再発生存率、event free survival、全生存期間および安全性であった。各群54例、108例が登録され、今回、主要評価項目のTRG rateと安全性が報告された。化学療法+toripalimab群と化学療法群の割合は、食道胃接合部がんでは31%と37%、diffuse typeでは33%と37%、cT3では39%と31%、cN3では22%と11%、SOX治療群では61%と46%であった。TRG rateは試験治療群44%、通常治療群20%であり、試験治療群で統計学的に有意な改善を認めた(p=0.01)。また、化学療法+toripalimab群でのTRG rateの上乗せは、腫瘍部位や病理Lauren分類にかかわらず認められた。術後の病理学的評価を見ると、ypT0~2の割合は、化学療法+toripalimab群46%、化学療法群22%と、化学療法+toripalimab群で良い傾向を認めたが、yp0~1の割合は57% vs.59%と大きな差は認められなかった。周術期合併症や治療強度は両群に有意差はなかった。有害事象について見ると、免疫関連有害事象は化学療法群に比べ、化学療法+toripalimab群で多く認めたが(全Gradeでは13% vs.2%、Grade3以上では2% vs.0%)、重篤な治療関連有害事象に関しては大きな差がなかった(Grade3/4で36% vs.30%)。胃がんにおける今学会の注目演題は周術期の試験である。ATTRACTION-5は胃がんにおいて最も注目されていた発表だったが、StageIII胃がんにおける術後化学療法へのニボルマブの上乗せ効果は認められなかった。現在、周術期の免疫チェックポイント阻害薬の併用療法は多数行われている。この試験では、術前化学療法への免疫チェックポイント阻害薬toripalimabの上乗せによって、TRG rateは改善を認めた。しかし本研究はまだ観察期間が短く、無再発生存期間や全生存期間のデータはない。欧米では周術期のFLOT療法にアテゾリズマブの上乗せを検証するDANTE試験、FLOT療法にデュルバルマブの上乗せを検証するMATTERHORN試験などが行われている。DANTE試験は2022年のASCOで中間解析が報告され、副次評価項目であるTRG rateはPD-L1がCPSで高値の群やMSI-High集団で、アテゾリズマブの上乗せ効果が強く認められた。またMSI-Highの胃がんの術前治療としてイピリムマブ+ニボルマブの有効性を探索した第II相試験(GERCOR NEONIPIGA)も行われており、pCR率58.6%、TRG1は73%で認められている。今回の両研究ではバイオマーカー解析の結果はないため、今後の解析が待たれる。また、周術期化学療法へのペムブロリズマブの上乗せ効果を検証するKEYNOTE-585試験において、病理学的完全奏効率は有意に改善したものの、主要評価項目であるevent free survivalは統計学的有意な改善が示されなかったことが、MSD社のプレスリリースで報告された。現在進行中の試験も、いまだ全生存期間や無再発生存期間のデータはないため、今後、周術期治療の免疫チェックポイント阻害薬が胃がん患者の本当の予後改善につながるのかも含め、いずれの試験においても慎重な検討が必要であると考えられる。Liposomal irinotecan + 5-fluorouracil/leucovorin + oxaliplatin (NALIRIFOX) versus nab-paclitaxel + gemcitabine in treatment-naive patients with metastatic pancreatic ductal adenocarcinoma (mPDAC): 12- and 18-month survival rates from the phase 3 NAPOLI 3 trial. #40062023年のASCO-GI で発表されたNAPOLI-3試験において、リポソーマルイリノテカン+5-FU+レボホリナート療法のNALIRIFOX療法は、主要評価項目の全生存期間中央値11.1ヵ月vs.9.2ヵ月と、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル(GnP)療法に対する統計学的に有意な改善が報告された。今回、追加解析の結果がASCO2023で報告された。主要評価項目である全生存期間は11.1ヵ月vs.9.2ヵ月(HR:0.83、p=0.04)であり、12ヵ月生存率は45.6% vs.39.5%、18ヵ月生存率は26.2% vs.19.3%と、いずれもNALIRIFOX群で良好な結果であった。事前に設定されたサブグループ解析結果も報告され、PS、肝転移の有無、年齢にかかわらず無増悪生存期間と全生存期間の双方でNALIRIFOX療法の有効性が示された。重篤な有害事象については骨髄抑制には大きな差はないものの、Grade3/4の有害事象で下痢(20.3% vs.4.5%)、嘔気(11.9% vs.2.6%)、低K血症(15.1% vs.4.0%)などがNALIRIFOX群で多い傾向であった。本研究よりNALIRIFOX療法はGnP療法への優越性が示されているが、ディスカッサントも触れていたように、有効性はFOLFIRINOX療法の第III相PRODIGE/ACCORD試験と同等で(全生存期間11.1ヵ月、12ヵ月生存率48.4%および18ヵ月生存率18.6%)、下痢はNALIRIFOXでより高率であった。NALIRIFOX療法の有効性と安全性に関する本邦のデータはないが、使用対象は全身状態良好な症例になると思われる。本邦における現状を考えると、全身状態の良好な膵がん症例にはGnP療法およびFOLFIRINOX療法(もしくはリポソーマルイリノテカン+5-FU+レボホリナート)を使い切る戦略を考慮することが肝要と考える。NALIRIFOX療法については、今後、QOLやバイオマーカー解析の結果も待たれる。Tucatinib and trastuzumab for previously treated HER2-positive metastatic biliary tract cancer (SGNTUC-019): A phase 2 basket study.  #4007Results from the pivotal phase (Ph) 2b HERIZON-BTC-01 study: Zanidatamab in previously-treated HER2-amplified biliary tract cancer (BTC).  #4008今回、HER2陽性の胆道がんに対して2つの研究が発表された。1つ目のSGNTUC-019試験は、国立がん研究センター東病院の中村先生より報告された。本研究は、HER2陽性例に対するHER2 チロシンキナーゼ高選択的経口阻害薬であるtucatinibとトラスツズマブの併用療法の有効性を探索する、臓器横断的なバスケット試験(第II相試験)における胆道がんコホートの報告である。対象は、抗HER2療法の既往がない1レジメン以上の全身化学療法を受けた、病理組織でIHC/FISHでHER2陽性症例もしくは組織か血液におけるNGS検査でHER2増幅を認めた症例であり、30例が登録された。奏効率は46.7%、病勢制御率は76.7%、無増悪生存期間中央値は5.5ヵ月で、全生存期間中央値は15.5ヵ月であった。主なGrade3以上の有害事象は嘔気、食欲不振および胆管炎であった。zanidatamabはHER2タンパクの細胞外ドメインであるECD2とECD4の2ヵ所に結合するbispecific antibodyで、前臨床研究ではトラスツズマブとペムブロリズマブの併用療法よりも期待される有効性を示した。HERIZON-BTC-01試験はゲムシタビンを含むレジメンに不応となり、中央判定で組織学的にHER2陽性と判定された胆管がんを対象にzanidatamabの有用性を探索した第II相試験である。80例が登録され、奏効率は41.3%、病勢制御率は68.8%、無増悪生存期間中央値は5.5ヵ月であった。主なGrade3以上の有害事象は下痢、心機能低下および貧血であった。HER2高発現の胆道がんは5~30%程度といわれており、注目される治療標的の1つである。バスケット型試験であるMyPathway試験のHER2陽性胆道がんコホートでは、ペルツズマブ+トラスツズマブで奏効率が23.1%と報告されている。また、昨年のASCO2022では、本邦からトラスツズマブ デルクステカンの第II相試験(HERB試験)も報告され、奏効率は36.4%であった。今回の新たな2つの治療もHER2陽性例に対し有用性を示したことから、胆道がんにおける抗HER2療法の一日も早い臨床導入が期待される。PROSPECT: A randomized phase III trial of neoadjuvant chemoradiation versus neoadjuvant FOLFOX chemotherapy with selective use of chemoradiation, followed by total mesorectal excision (TME) for treatment of locally advanced rectal cancer (LARC) (Alliance N1048). #LBA2ASCO2023消化器がんにおける、唯一のplenary session発表である。欧米では遠隔転移を伴わない進行直腸がんに対する標準治療は、術前化学放射線療法、Total Mesorectal Excision(TME:直腸間膜全切除)を伴う手術、そして術後補助化学療法である。しかし、術前化学放射線療法に伴う晩期毒性(腸管・膀胱・性機能障害、骨盤骨折、2次発がんなど)も問題となっていた。今回、cT2でN因子陽性もしくはcT3の直腸がんに対する術前治療として、骨盤内化学放射線療法(50.4Gy)群に対するFOLFOX±選択的化学放射線療法群の非劣性を検証するランダム化第III相試験(PROSPECT試験)が報告された。主要評価項目は無再発生存期間、副次評価項目は局所再発率、全生存期間、R0切除率、病理学的完全奏効率、PROによる毒性、QOLであった。非劣性マージンは片側α0.049、power85%で、1.29と設定された。対象群では術前化学放射線療法後に手術と術後補助化学療法が施行された。試験治療群では、FOLFOX6サイクル施行後20%以上の腫瘍縮小が得られた症例には、手術と術後化学療法が、腫瘍縮小20%未満およびFOLFOX不耐例には、術前化学放射線療法が施行され、その後手術と術後補助化学療法が行われた。FOLFOX±選択的化学放射線療法群に585例、化学放射線療法群に543例が登録された。患者背景に大きな偏りはなく、術前MRI施行例は84%、cT3N(+)症例が約50%、肛門縁から腫瘍までの距離は中央値で8cmであった。5年無再発生存率はFOLFOX±選択的化学放射線療法群で80.8%、化学放射線療法群で78.6%であり、非劣性マージンの1.29を95%信頼区間の上限が超えず、統計学的有意に非劣性が証明された(HR:0.92、95%CI:0.74〜1.14)。また、年齢とN因子の有無で調整しても同様に非劣性が証明された。局所再発なしに5年生存した症例の割合は、FOLFOX±選択的化学放射線療法群で98.2%、化学放射線療法群で98.4%、5年生存率は89.5%と90.2%であった。病理学的完全奏効率はFOLFOX±選択的化学放射線療法群で22%、術前化学放射線療法群で24%であった。術後化学療法も両群とも約80%で施行された。また、FOLFOX±選択的化学放射線療法で化学放射線療法を受けた症例は9%であった。術前治療における毒性は、FOLFOX±選択的化学放射線療法群で倦怠、嘔気、食欲不振などが多く、化学放射線療法群では下痢が多かった。QOLに関する有意差はなく、腸管機能や性機能に関してはFOLFOX±選択的化学放射線療法群で良好であった。以上の結果より、cT2N(+)、cT3N(-)、cT3N(+)症例に対してFOLFOX±選択的化学放射線療法は治療選択肢の1つとなりうると報告された。今回の報告では、FOLFOX±選択的化学放射線療法群では、約90%の症例で術前化学放射線療法を回避できた。腸管機能や性機能への影響も軽減されている。本研究の適格基準を満たす直腸がんの術前治療として、FOLFOX±選択的化学放射線療法は治療選択肢となりうる。ただ、cT4症例、リンパ節転移が本試験の基準より高度であるなど、さらに進行した局所直腸がんでの有効性は明らかではない。より進行した局所進行直腸がんに対しては放射線療法も含めたTotal Neoadjuvant Therapy(TNT)が注目されている。本邦でも、T3〜4/N(-)もしくはTanyN(+)の局所進行直腸がんに対して、short courseの放射線治療(5Gy×5回)からcapeOXを行う群とcapeOXIRIを行う群を比較するランダム化第III相試験(ENSEMBLE試験)が進行している。TNTでは、化学療法と放射線療法を組み合わせて行うことにより手術を避けるNon Operative Management(NOM)も注目されており、局所進行直腸がんに対する、さらなる治療開発が期待される。Efficacy of panitumumab in patients with left-sided disease, MSS/MSI-L, and RAS/BRAF WT: A biomarker study of the phase III PARADIGM trial. #3508最後に、本邦で行われたPARADIGM試験のバイオマーカー解析について報告する。RAS/BRAFのみならずMSIのステータスも含めて解析された結果であり、より実臨床に近い対象に絞った報告であった。MSI-HighもしくはRAS/BRAF変異を認める症例は、左側で10.3%、右側で43.2%と、右側で多く認められ、治療開始前のctDNAのBRAF V600E変異も左側4.3%、右側31.3%と、右側で多く認められた。左側のMSSかつRAS/BRAF変異野生型の全生存期間は、FOLFOX+パニツムマブ群40.6ヵ月に対しFOLFOX+ベバシズマブ群34.8ヵ月と、パニツムマブ群で良好であったが、MSI-HighもしくはRAS/BRAF変異型では15.4ヵ月 vs.25.2ヵ月と、ベバシズマブ群で良好であった。右側でもMSSかつRAS/BRAF野生型では全生存期間37.9ヵ月 vs.30.9ヵ月および奏効率70.7% vs.63.6%とパニツムマブ群で良好であったが、MSI-HighもしくはRAS/BRAF変異型では全生存期間13.7ヵ月 vs.17.9ヵ月および奏効率37.8% vs.69.4%と、ベバシズマブ群で良好であった。PFSも左側、右側にかかわらず、MSI-HighもしくはRAS/BRAF変異型ではベバシズマブ群で良好な傾向があった。奏効率もMSI-HighもしくはRAS/BRAF変異型では左側、右側にかかわらず、ベバシズマブ群で統計学的有意に高かった。本結果より、抗EGFR抗体薬を使用する前にRAS/BRAF変異のみならずMSIを測定することが重要であることが示唆される。また本研究を含め複数の研究で、組織検査のRASは野生型であっても、ctDNAでRAS変異を認める症例が10%程度存在することが示唆され、このような症例では抗EGFR抗体薬の効果が乏しいことが、PARADIGM試験を含め報告されている。将来的には組織だけでなく、ctDNAによるゲノム検査が治療前に行えるようになることが期待される。

3.

統合失調症患者の併存疾患~リアルワールドデータ分析

 米国において統合失調症の影響は320万人超に及ぶとされる。しかし、統合失調症の併存疾患パターンは、リアルワールドでシステマティックに検証されていない。米国・ハーバード大学のChenyue Lu氏らはこの課題を解決するため、米国の健康保険データセットの8,600万例の患者コホートを用いた観察研究を実施した。その結果、統合失調症患者の既知の併存疾患だけでなく、これまであまり知られていなかった併存疾患パターンも特定された。Translational Psychiatry誌2022年4月11日号の報告。統合失調症患者の併存疾患の初期兆候に臨床医が注意を払う 統合失調症患者と非統合失調症患者を年齢、性別、居住地(郵便番号の最初の3桁)でマッチさせた。統合失調症患者とマッチした非統合失調症患者の疾患ごとの有病率を比較し、年齢、性別で層別化したサブグループ分析を行った。 統合失調症の併存疾患パターンを観察研究した主な結果は以下のとおり。・青年および若年成人では、統合失調症診断前に、不安症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、薬物乱用が認められることが多かった。・60歳以上の統合失調症患者の併存疾患として、せん妄、アルコール依存症、認知症、骨盤骨折、骨髄炎の発症リスクが高かった。・統合失調症診断前の女性では、2型糖尿病、睡眠時無呼吸症候群、摂食障害が認められることが多く、男性では、急性腎不全、横紋筋融解症、発達遅延が多かった。・統合失調感情障害患者では、他の統合失調症患者と比較し、不安症状や肥満の頻度が高かった。 著者らは「これらの併存疾患プロファイルは、同時に発生する疾患の初期兆候に臨床医が注意を払うよう導いてくれるだろう」としている。

4.

「骨粗鬆症」予防にはリスク認識が有効

 骨粗鬆症は日本において公衆衛生上の大きな問題となっている疾患である。しかし、そのリスクは過小評価され、患者はきちんとした治療を受けていない場合も多い。 骨粗鬆症を予防するためには、骨粗鬆症に対するリスクをしっかりと認識する必要がある。日本イーライリリーの佐藤氏らは、骨折の既往歴と、“自分が骨粗鬆症になる危険性がある”という認識(リスク認識)との関係を明らかにするため、日本の50歳以上の女性を対象に大規模年次調査を行った。その結果、想定されていたよりもリスク認識が低いことがわかった。Archives of osteoporosis誌2014年12月号(オンライン版2014年11月13日号)の掲載報告。 本研究は、日本のNational Health and Wellness Survey(NHWS)のデータを基に解析した。対象は骨粗鬆症と診断されていない50歳以上の女性で、50歳までの骨折歴と骨粗鬆症のリスク認識の有無で4つの群に分類された。社会人口学的特性と健康状態特性の群間比較には二変量解析が用いられ、健康アウトカムは一般化線形モデルで比較された。 主な結果は、以下のとおり。・調査には1万6,801人の女性(50~93歳)が参加し、平均年齢60歳であった。・参加者の大半(76.2%、n=1万2,798)は、骨折歴がなく、骨粗鬆症のリスクを感じていなかった。・12.9%(n=2,170)は骨折歴がないが、骨粗鬆症のリスクがあると感じていた。・8.7%(n=1,455)は骨折歴があったが、骨粗鬆症のリスクを感じていなかった。・2.2%(n=378)は骨折歴があり、骨粗鬆症のリスクがあると自覚していた。・リスク認識は、骨折歴がある人でわずかに高かった(骨折歴あり:20.6%、なし:14.5%、p<0.001)。・骨粗鬆症の家族歴がある人ほど、リスク認識が高かった。 今回の調査から、50歳以上の日本人女性の約15%が将来、自身が骨粗鬆症になるリスクを認識していることがわかったが、この数字は疫学研究者の想定よりもはるかに低い数字であった。さらに、このリスク認識と疫学的リスクである骨折との関連性は弱いものでしかなく、患者教育の必要性が示唆された。

5.

出血性ショックに対する輸血方法が不適切と判断されたケース

救急医療最終判決判例タイムズ 834号181-199頁概要大型トラックに右腰部を轢過された38歳女性。来院当初、意識は清明で血圧120/60mmHg、骨盤骨折の診断で入院となった。ところが、救急搬入されてから1時間15分後に血圧測定不能となり、大量の輸液・代用血漿を投与したが血圧を維持できず、腹腔内出血の診断で緊急手術となった。合計2,800mLの輸血を行うが効果はなく、受傷から9時間後に死亡した。詳細な経過患者情報とくに既往症のない38歳女性経過1982年9月2日13:50自転車に乗って交差点を直進中、左折しようとしていた大型トラックのバンパーと接触・転倒し、トラックの左前輪に右腰部を轢過された。14:00救急病院に到着。意識は清明で、轢かれた部分の痛みを訴えていた。血圧120/60mmHg、脈拍72/分。14:10X線室に移動し、腰部を中心としたX線撮影施行。X線室で測定した血圧は初診時と変化なし。14:25整形外科診察室前まで移動。14:35別患者のギプス巻きをしていた整形外科担当医が診察室の中でX線写真を読影。右仙腸関節・右恥骨上下枝(マルゲーヌ骨折)・左腸骨・左腸骨下枝・尾骨の骨折を確認し、直接本人を診察しないまま家族に以下の状況を説明した。骨盤が6箇所折れている膀胱か輸尿管がやられているかもしれない内臓損傷はX線では写らず検査が必要なので即時入院とする15:004階の入院病棟に到着。担当医の指示でハンモックベッドを用いた骨盤垂直牽引を行おうとしたが、ハンモックベッドの組立作業がうまくできなかった。15:15やむなく普通ベッドに寝かせバイタルサインをチェックしたところ、血圧測定不能。ただちに担当医師に連絡し、血管確保、輸液・代用血漿の急速注入を行うとともに、輸血用血液10単位を指示。15:20Hb 9.7g/dL、Ht 31%腹腔内出血による出血性ショックを疑い、外科医師の応援を要請、腹腔穿刺を行ったが出血はなく、後腹膜腔内の出血と診断した。15:35約20分間で輸液500mL、代用血漿2,000mL、昇圧剤の投与などを行ったがショック状態からの離脱できなかったので、開腹手術をすることにし、家族に説明した。15:45手術室入室。15:50輸血10単位が到着(輸血要請から35分後:この病院には輸血を常備しておらず、必要に応じて近くの輸血センターから取り寄せていた)、ただちに輸血の交差試験を行った。16:15輸血開始。16:20~18:30手術開始。単純X線写真では診断できなかった右仙腸関節一帯の粉砕骨折、下大静脈から左総腸骨静脈の分岐部に20mmの亀裂が確認された。腹腔内の大量の血腫を除去すると、腸管膜が一部裂けていたが新たな出血はなく、静脈亀裂部を縫合・結紮して手術を終了した。総出血量は3,210mL。手術中の輸血量1,800mL、輸液200mL、代用血漿1,500mLを併用するとともに、昇圧剤も使用したが、血圧上昇は得られなかった。19:00病室に戻るが、すでに瞳孔散大状態。さらに1,000mLの輸血が追加された。23:04各種治療の効果なく死亡確認。当事者の主張患者側(原告)の主張1.救急車で来院した患者をまったく診察せず1時間も放置し、診断が遅れた2.輸血の手配とその開始時間が遅れ、しかも輸血速度が遅すぎたために致命的となった3.手術中の止血措置がまずかった病院側(被告)の主張1.救急車で来院後、バイタルサインのチェック、X線撮影などをきちんと行っていて、患者を放置したなどということはない。来院当時担当医師は別患者のギプス巻きを行っていたので、それを放棄してまで(容態急変前の)患者につき沿うのは無理である。容態急変後はただちに血液の手配をしている。そして、地域の特殊性から血液はすべて予約注文制であり、院内には常備できないという事情がった(実際に輸血20単位注文したにもかかわらず、入手できたのは14単位であった)2.また輸血前には輸液1,000mLと代用血漿2,000mLの急速注入を行っているため、さらに失血した血液量と等量の急速輸血は循環血液量を過剰に増大させ、うっ血性心不全を起こしたり出血を助長したりする危険があるので、当時の判断は適切である3.手術所見では左総腸静脈の亀裂部、骨盤静脈叢および仙骨静脈叢からの湧き出すような多発性出血であり、血腫を除去すると新たな出血はみられなかったため、静脈縫合後は血腫によるタンポナーデ効果を期待するほかはなかった。このような多発性骨盤腔内出血の確実な止血方法は発見されていない裁判所の判断1.診断の遅れX線写真を読影して骨盤骨折が確認された時点で、きちんと患者を診察して直ぐに腹腔穿刺をしていれば、腹腔内出血と診断して直ぐに手術の準備ができたはずである(注:14:00救急来院、14:35X線読影、この時点で意識は清明で血圧120/60→このような状況で腹腔穿刺をするはずがない!!しかものちに行われた腹腔内穿刺では出血は確認されていない)2.血圧測定不能時の輸血速度は、30分間に2,000mLという基準があるのに、30分間に500mLしか輸血しなかったのは一般的な臨床水準を下回る医療行為である以上、早期診断義務違反、輸血速度確保義務違反によって死亡した可能性が高く、交通事故9割、医療過誤1割による死亡である(手術方法については臨床医学水準に背くものとはいえない)。原告側6,590万円の請求に対し、1,225万円の判決考察この事件は、腰部を大型トラックに轢過された骨盤骨折の患者さんが、来院直後は(腹腔内出血量が少なかったので)意識清明であったのに、次第に出血量が増えたため来院から1時間15分後にショック状態となり、さまざまな処置を講じたけれども救命できなかった、という概要です。担当医師はその場その場で適切な指示を出しているのがわかりますし、総腸骨静脈が裂けていたり、骨盤内には粉砕骨折があって完璧な止血はきわめて困難であったと思われますので、たとえどのような処置を講じていようとも救命は不可能であった可能性が高いと思います。本来であれば、交通事故の加害者に重大な責任があるというものなのに、ご遺族の不満がなぜ病院側に向いてしまったのか、非常に理解に苦しみます。「病院に行きさえすればどのような怪我でも治してくれるはずだ」、という過度の期待が背景にあるのかもしれません。そして、何よりも憤りを感じるのが、裁判官がまったく的外れの判決文を書いてしまっている点です。経過をご覧になった先生はすでにおわかりかと思いますが、もう一度この事件を時系列的に振り返ってみると、14:00救急病院に到着。意識清明、血圧120/60mmHg、脈拍72/分。14:10X線室に移動。撮影終了後の血圧は初診時と変化なし。14:25整形外科診察室前まで移動。14:35担当医師が読影し、家族に入院の説明。15:004階の入院病棟に到着(意識清明)。15:15血圧測定不能。15:20腹腔穿刺で出血は確認できず。後腹膜腔内の出血と判断。となっています。つまりこの裁判官は、意識障害のない、血圧低下のない、14:35の(=X線写真で骨盤骨折が確認された)状況からすぐさま、「骨盤骨折があるのならばただちに腹腔穿刺をするべきだ。そうすれば腹腔内出血と診断できるはずだ!」という判断を下しているのです。おそらく、法学部出身の優秀な法律家が、断片的な情報をつぎたして、医療現場の実態を知らずに空想の世界で作文をしてしまった、ということなのでしょう(この事件は控訴されていますので、このミスジャッジはぜひとも修正されなければなりません)。ただ医師側も反省すべきなのは、担当医師は患者を診察することなくX線写真だけで診断し、取り急ぎ家族へは入院の説明をしただけで病棟へ移送してしまったという点です。この時担当医師は、別患者のギプス巻きをわざわざ中断してまで、救急患者のフィルム読影と家族への説明を行ったという状況を考えれば、超多忙な外来業務中(それ以外にも数人のギプス巻き患者がいた)でやむを得なかったという見方もできます。しかし、裁判へと発展した理由の一つに「患者の診察もしないでX線だけで判断した」という家族の不満が背景にあります。そして、もしかすると、初期の段階で患者との会話、顔色や皮膚の様子、骨折部の視診などにより、ショックの前兆を捉えることができたのかもしれません(この約45分後に血圧測定不能となっている)。したがって、多忙ななかでも救急車で運ばれた重症患者はきちんと診察するという姿勢が大事だと思います。次に問題となるのが輸血速度です。このケースの来院から死亡するまでの出血や水分量を計算すると、 手術前手術中14:1014:10輸液500mL2,000mL1,000mL3,500mL代用血漿2,000mL1,500mL500mL4,000mL輸血 1,800mL1,000mL2,800mL出血量 3,210mL57mL3,267mLとなっています。この裁判で医療過誤と認定されたのは、輸血がセンターから到着してからの投与方法でした。輸血を開始したのは手術室に入室してから30分後、執刀の5分前であり、おそらく輸血の点滴ラインを全開にして急速輸血が行われていたと思います。そして、結果的には、約30分間の間に500mL(2.5パック)入りましたので、このくらいでよいだろう、十分ではないか、と多くの先生方がお考えになると思います。ところが資料にもあるように、出血性ショックに対する輸血速度としては、「血圧測定不能時=2,000mLを30分以内に急速輸血」と記載した文献があります。本件のような出血性ショックの緊急時には、血圧を維持するように50mLの注射器を用いてpumpingするケースもあると思いますが、その際にはとにかく早く輸血をするという意識が先に働くため、30分以内に2,000mL(10単位分)を輸血する、という明確な目標を設定するのは難しいのではないでしょうか。しかも緊急の開腹手術を行っている最中であり、輸血以外にもさまざまな配慮が必要ですから、あれもこれもというわけにはいかないと思います。しかし、裁判官が判決文を書く際の臨床医学水準というのは、論文や医学書に記載された内容を最優先しますので、本件のように出血性ショックで血圧測定不能例には30分に2,000mLの輸血をするという目安があるにもかかわらず、500mLの輸血しか行われていないことがわかると、「教科書通りにやっていないのでけしからん」という判断につながるのです。この点について病院側の、「輸血前には輸液500mLと代用血漿2,000mLの急速注入を行っているため、さらに失血した血液量と等量の急速輸血は循環血液量を過剰に増大させ、うっ血性心不全を起こしたり終結を助長したりする危険があるので、当時の判断は適切である」という論理展開は至極ごもっともなのですが、「あらゆる危険を考えて意図的に少な目の輸血をした」というのならなだしも、「輸血速度に配慮せず結果的に少量となった」というのでは、「大事な輸血という治療において配慮が足りないではないか」ということにつながります。この輸血速度や輸血量については、どの施設でも各担当医師によってまちまちであり、輸血後に問題が生じることさえなければ紛争には発展しません。ところがひとたび予測しない事態になると、あとから輸血に対する科学的根拠(なぜ輸血するのか、輸血量を決定した際の根拠、HbやHtなど輸血後に目標とする数値など)を求められる可能性が、かなり高くなりました。そこで輸血にあたっては、なるべく輸血ガイドラインを再確認しておくとともに、輸血という治療行為の根拠をしっかりとカルテに記載しておく必要があると思います。救急医療

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Dr.林の笑劇的救急問答8【外傷診療編】

第3回 「腹部外傷のABC」第4回 「骨盤外傷のABC」 第3回 「腹部外傷のABC」患者に頭部出血があったり意識混濁や意識レベルの低下がみられると、ついつい頭部の外傷ばかりに目がいってしまいます。しかしショックバイタルがあったら先ず腹部を疑うのが大原則です。腹部の外傷は受傷後長時間の経過観察が必要です。出血と腹膜炎に注意して、視診・聴診・触診・打診に加えてFAST検査を再度、反復して実施するとともに、必要に応じてX線、CT検査を行ないます。また小児の腹部外傷は、成人とは異なる特徴がありポイントを抑えることが出来ます。ドラマで再現した症例でポイントを理解しましょう。【症例1】50代男性。酔っ払って歩行中に側溝に転落。脈拍:100/m、血圧:120/80mmHg、SpO2:98%。患者は頭部の疼痛を訴え出血も多く意識も混濁している。胸部および骨盤X線では重篤な症状が見られず、頭部CTを行ったところ検査途中から意識レベルが低下、、、慌てる研修医たちにDr.林は「ショックの原因検索」が大事と諭します。【症例2】10歳男児.自転車走行中に交差点で自動車との接触事故に遭った.血圧:100/80mmHg,脈拍:90/m,SpO2:99%(15ℓリザーバー投与時),意識はクリア.交通事故外傷の診察に研修医は意欲を燃やすが患児は注射を嫌がって暴れ、ライン確保すら巧くできない.腹部にハンドル痕があるが疼痛(−)/FAST(−)のため研修医は「問題なし」として帰宅させたいが・・・。第4回「骨盤外傷のABC」防ぎ得る外傷死の頻度ナンバーワンは実は骨盤骨折と言われています。骨盤骨折を順序よく診断し治療出来なくてはなりません。整形外科や放射線科医との連携が必要になってくる場合もあり、Primary survey,secondary surveyのポイントをよく確認しておく事がとても大切です。骨盤外傷を正しく診断し治療する為の戦略について解説します。【症例1】45歳男性.歩行中に自動車にはねられた。意識は清明、脈拍:98/m、SpO2:99%(リザーバー10ℓ投与下),来院時血圧:100/70mmHg.PrimarysurveyではX線/FASTともに重篤な出血や骨折が見つからない。しかし徐々にショック指数が高まり患者の容態も悪くなってゆく。Dr.林は検査所見にこだわる研修医に触診も大事であることを諭す。【症例2】30代男性。バイクで走行中に滑って転倒した。意識レベル:JCSⅠI-10、血圧:80/50mmHg、脈拍:110/m、SpO2:99%(リザーバー10l投与下)。呼びかけに対しては反応するが意識は混濁しており話の内容は混乱している。全身の疼痛を訴える。初回FASTは陰性だが骨盤X線造影で不安定骨折と見られる所見あり。研修医はサムスリングを使用しようとするが・・・。

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Dr.林の笑劇的救急問答8【外傷診療編】

第1回 「外傷基本のABC」第2回 「胸部外傷のABC」 第1回 「外傷基本のABC」重傷外傷患者は日常診療でそう多く遭遇するものではありません。いざ気管挿管、あるいはもっと重度の気道閉塞である場合に、輪状甲状靭帯穿刺や輪状甲状靭帯切開といった手技が必要になったとき、自信をもって行う事ができるかどうか?気道緊急は即、命に繋がる待ったなしの状況ですから普段から手技を学習し人形等で練習をしておきたいものです。【症例1】30歳男性。自動車運転中スピードの出し過ぎでカーブを曲がり切れずガードレールに激突。シートベルトなく、頭部および顔面をフロントガラスに強打した.研修医は必死で血液の吸引を行うが気道が閉塞していて拉致があかない。気管挿管もうまくいかずSpO2は下がり続ける・・・。基本操作(ABC)後編では、外傷性の出血性ショックに対する処置の方法を学びます。【症例2】ロシア人男性。港に寄港している船の船員で港での作業中に高さ約6mから転落した。バイタルサインは血圧100/80mmHg,脈拍100/m,SpO2は酸素投与下で92%。エコーでは腹腔内出血(+),肺挫傷(+),不安定骨盤骨折(ー)。研修医は2Lから輸液をはじめようとするが、Dr.林は早期の濃厚赤血球と凍結血漿の使用を指示する。第2回 「胸部外傷のABC」第2回のお題は胸部外傷の基本操作(ABC)。覚えなければならないことがたくさんある胸部外傷。基本的なことを押さえてチェックリストを作れば怖くありません。【症例1】30歳男性。高速道路を運転中にスリップして横転。エアバッグは開いておらずガラス破片が身体中に付着、救急隊が除去。胸部外傷との闘い方その2。ショック状態で来院するが原因が分からない患者の症例です。【症例2】40代男性。自動車走行中、高速道路から降りたところでカーブを曲がり切れずに電柱に衝突した。ブレーキ痕なくショック状態。血圧:70/40mmHgで救急隊員はLoad&Goを宣言。患者は不穏が強く痛がって研修医に悪態をつく。詳細なPrimary surveyでは異常所見が見つからないが患者の容態は徐々に悪化して・・・

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