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降圧療法を強化してもCKD進行に影響は認められず:AASK試験

黒人CKD合併高血圧患者を対象に行われた、降圧療法の強化のCKD進展に対する影響を検討した試験の結果、130/80mmHg未満目標の強化血圧コントロールを行っても、腎疾患進行に与える影響は認められなかったことが報告された。ただし、基線での蛋白尿があるかないかで、効果に差がある可能性が示されたとも結論している。報告は、「AASK(African American Study of Kidney Disease and Hypertension)」共同研究グループによるもので、NEJM誌2010年9月2日号で掲載された。1,094例を130/80mmHg未満目標群か標準群かに無作為し追跡試験は、試験相(trial phase)期間に強化血圧コントロールか標準血圧コントロールを受けた1,094例のCKD合併高血圧の黒人患者を、無作為化し行われた。試験相(trial phase)期間を完了した被験者は、コホート相(cohort phase)への登録を促され、強化血圧コントロール群(130/80mmHg未満目標)か標準血圧コントロール群(140/90mmHg目標)に割り付けられ、血清クレアチニン値の倍増、末期腎不全診断、死亡を含むCKDの進行を主要臨床転帰とし追跡された。追跡期間は、8.8~12.2年にわたった。基線で蛋白/クレアチニン比が0.22超の患者にはベネフィットあり?試験相(trial phase)期間の被験者の平均血圧は、強化血圧コントロール群130/78mmHg、標準血圧コントロール群141/86mmHgだった。コホート相(cohort phase)期間の平均血圧は、強化血圧コントロール群131/78mmHg、標準血圧コントロール群134/78mmHgだった。両相の期間とも、群間で、主要臨床転帰リスクの有意差は認められなかった(強化血圧コントロール群のハザード比:0.91、P=0.27)。しかし、蛋白尿の基線値によって効果は異なり(相互作用のP=0.02)、蛋白/クレアチニン比が0.22超の患者にはベネフィットがある可能性が示された(ハザード比:0.73、P=0.01)。(武藤まき:医療ライター)

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服薬量の自己調節+遠隔モニタリングで、良好な血圧コントロールを達成

高血圧患者自身による服薬量の自己調節と血圧の遠隔モニタリングにより、プライマリ・ケアにおいて良好な血圧コントロールが達成可能なことが、イギリスBirmingham大学プライマリ・ケア臨床科学部のRichard J McManus氏らが行った無作為化試験で示された。血圧のコントロールは心血管疾患の予防の要であるが、ライフスタイルへの介入や薬物療法の進歩にもかかわらず、現在の推奨治療で良好な血圧コントロールが得られる高血圧患者は約半数にすぎない。それゆえ、特に降圧治療の主たる現場であるプラマリ・ケアにおける新たな介入法の開発が必要とされており、患者自身による自己管理はその有望なアプローチだという。Lancet誌2010年7月17日号(オンライン版2010年7月8日号)掲載の報告。血圧コントロールが不良な高血圧患者で、自己管理と通常ケアを比較TASMINH2の研究グループは、コントロール不良な高血圧患者による自己管理が、通常のケアに比し良好な血圧コントロールをもたらすか否かについて検討する無作為化対照比較試験を実施した。イギリス国内の24のプライマリ・ケア施設が参加した。対象は、降圧治療を行っても血圧が140/90mmHg以上に達し、自己管理に同意した35~85歳の高血圧患者であった。これらの患者が、血圧を自己測定して降圧薬の服薬量を自分で調節し、家庭血圧の測定値の遠隔モニタリングを行う群あるいは通常ケア群に1対1の割合になるよう無作為に割り付けられた。治療の割り付け情報は患者にも担当医師にも知らされなかった。主要評価項目は、治療6ヵ月および12ヵ月の時点におけるベースラインからの平均収縮期血圧の変化とした。欠測したデータの補完は行わず、無作為割り付けの対象となり6ヵ月、12ヵ月に受診して評価項目のデータが得られたすべての患者が解析に含まれた。治療6ヵ月の血圧低下:自己管理群12.9、対照群9.2mmHg、12ヵ月:17.6、12.2mmHg527例が登録され自己管理群に263例が、対照群に264例が割り付けられた。主要評価項目の解析が可能であったのは480例(91%)で、自己管理群234例、対照群246例であった。治療6ヵ月における自己管理群の平均収縮期血圧はベースラインに比べ12.9mmHg(95%信頼区間:10.4~15.5)低下したのに対し、対照群では9.2mmHg(同:6.7~11.8)低下し、その差3.7mmHg(同:0.8~6.6)は統計学的に有意であった(p=0.013)。治療12ヵ月では、自己管理群における平均収縮期血圧のベースラインからの低下が17.6mmHg(95%信頼区間:14.9~20.3)であったのに対し、対照群の低下は12.2mmHg(同:9.5~14.9)と5.4mmHg(同:2.4~8.5)の差がみられ、有意差を認めた(p=0.0004)。下肢のむくみが自己管理群で32%(74/234例)と対照群の22%(55/246例)に比べ有意に多くみられたが、これ以外の一般的な有害事象の頻度は両群間に差を認めなかった。著者は、「患者による高血圧の自己管理と血圧測定の遠隔モニタリングを併用するアプローチは、プライマリ・ケアにおける高血圧のコントロールの新たな治療選択肢として重要であることが示された」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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脳卒中の90%は、10のリスク因子に起因:INTERSTROKE試験

脳卒中リスクの約90%が10のリスク因子に起因し、降圧や喫煙制限の実施、身体活動や健康的な食事の推奨といった介入により、脳卒中の世界的負担は実質的に低減しうることが、カナダMcMaster大学地域健康調査研究所のMartin J O’Donnell氏らが実施した症例対照研究で示された。脳卒中は世界第2位の死亡原因であり、ほとんどの地域では成人の後天性身体障害の主要原因である。一方、脳卒中の世界的負担に対して種々のリスク因子がどの程度寄与しているかは不明であり、特に低~中収入国における調査が遅れているという。Lancet誌2010年7月10日号(オンライン版2010年6月18日号)掲載の報告。リスク因子と脳卒中との関連、疾病負担への寄与の程度などを評価INTERSTROKE試験の研究グループは、既知の緊急を要するリスク因子と脳卒中の主なサブタイプの関連を明らかにし、これらのリスク因子が脳卒中の負担にどの程度寄与するかを評価し、さらに脳卒中と心筋梗塞のリスク因子の違いを探索的に検討することを目的に、大規模な標準化症例対照研究を実施した。2007年3月1日~2010年4月23日までに、低~中収入国を中心とする22ヵ国84施設から初回急性脳卒中(症状発現後5日以内、入院後72時間以内)の症例および年齢と性別をマッチさせた脳卒中の既往歴のない対照が登録された。すべての参加者が質問票に回答して身体検査を受け、ほとんどが血液および尿のサンプルを提供した。脳卒中、虚血性脳卒中、出血性脳卒中と個々のリスク因子の関連の指標として、オッズ比(OR)および人口寄与リスク(PAR)を算出した。虚血性脳卒中は10項目すべてが、出血性脳卒中は5項目が有意なリスク因子試験開始からの累積症例数が3,000例[虚血性脳卒中2,337例(78%)、出血性脳卒中663例(22%)]となった時点で、対照3,000人とともに解析を行ったところ、有意差を認めた脳卒中のリスク因子は以下の10項目であった。(1)高血圧の既往歴[OR:2.64、99% 信頼区間(CI):2.26~3.08、PAR:34.6%、99% CI:30.4~39.1](2)喫煙(OR:2.09、99% CI:1.75~2.51、PAR:18.9%、99% CI:15.3~23.1)(3)ウエスト/ヒップ比(三分位の最低値に対する最高値のOR:1.65、99% CI:1.36~1.99、PAR:26.5%、99% CI:18.8~36.0)(4)脳卒中に関連する食事のリスクスコア(三分位の最低値に対する最高値のOR:1.35、99% CI:1.11~1.64、PAR:18.8%、99% CI:11.2~29.7)(5)規則的な身体活動(OR:0.69、99% CI:0.53~0.90、PAR:28.5%、99% CI:14.5~48.5)(6)糖尿病(OR:1.36、99% CI:1.10~1.68、PAR:5.0%、99% CI:2.6~9.5)(7)アルコール摂取[月に30杯以上飲酒する者あるいは大酒飲み(月に1回以上、5杯以上飲酒する日がある者)のOR:1.51、99% CI:1.18~1.92、PAR:3.8%、99% CI:0.9~14.4](8)社会心理的ストレス(OR:1.30、99% CI:1.06~1.60、PAR:4.6%、99% CI:2.1~9.6)およびうつ病(OR:1.35、99% CI:1.10~1.66、PAR:5.2%、99% CI:2.7~9.8)(9)心臓の原因(OR:2.38、99% CI:1.77~3.20、PAR:6.7%、99% CI:4.8~9.1)(10)アポリポ蛋白B/A1比(三分位の最低値に対する最高値のOR:1.89、99% CI:1.49~2.40、PAR:24.9%、99% CI:15.7~37.1)これらのリスク因子を合わせると、全脳卒中のPARの88.1%(99% CI:82.3~92.2)を占めた。高血圧の定義を「高血圧の既往歴あるいは>160/90mmHg」に変更すると、全体のPARは全脳卒中の90.3%(99%CI:85.3~93.7)に達した。虚血性脳卒中ではこれら10項目がいずれも有意なリスク因子であったのに対し、出血性脳卒中の有意なリスク因子は高血圧、喫煙、ウエスト/ヒップ比、食事、アルコール摂取の5つであった。これらのデータをふまえ、著者は「脳卒中リスクの約90%が、10のリスク因子によって起こることが示唆される。降圧や喫煙制限の実施、身体活動や健康的な食事の推奨といった介入により、脳卒中の負担は実質的に低減する可能性がある」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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糖尿病とCAD有する患者への厳格血圧コントロール、心血管アウトカム改善認められず

高血圧治療ガイドラインでは、糖尿病患者の降圧目標は収縮期血圧130mmHg未満とする治療を行うことを提唱しているが、推奨値に関するデータは限られており、特に増大する冠動脈疾患(CAD)を有する糖尿病患者に関するデータは十分ではない。米国フロリダ大学のRhonda M. Cooper-DeHoff氏らは、糖尿病とCADを有する患者コホートにおいて、収縮期血圧コントロール達成と有害心血管アウトカムとの関連を評価することを目的に、「INVEST」試験参加者の観察サブグループ解析を行った。JAMA誌2010年7月7日号掲載より。厳格、通常、非コントロール群の有害心血管アウトカムを評価観察サブグループ解析が行われたのは、「INVEST」試験(International Verapamil SR-Trandolapril Study)参加者2万2,576人のうちの6,400人で、糖尿病とCADを有する50歳以上の人だった。参加者は、14ヵ国862施設から1997年9月~2000年12月の間に集められ、2003年3月まで追跡された。米国からの参加者の追跡評価は、全米死亡統計によって2008年8月まで行われた。INVEST参加者は、収縮期血圧130mmHg未満、拡張期血圧85mmHg未満を目標に、降圧薬治療の第一選択薬はCa拮抗薬あるいはβ遮断薬を用い、併用薬として、ACE阻害薬か利尿薬または両剤を服用した。Cooper-DeHoff氏らは、被験者を、血圧コントロールが130mmHg未満を保持している場合は厳格コントロール群に、130~140mmHg未満の場合は通常コントロール群に、140mmHg以上だった場合は非コントロール群に分類し、全死因死亡、非致死的心筋梗塞または非致死的脳卒中の初発を含む、有害心血管アウトカムを主要評価項目に検討した。主要アウトカム、通常群12.6%、厳格群12.7%、補正後ハザード比1.111万6,893患者・年の追跡調査の間、主要アウトカムイベントを呈した患者は、厳格コントロール群286人(12.7%)、通常コントロール群249人(12.6%)、非コントロール群431例(19.8%)だった。通常コントロール群 vs. 非コントロール群の心血管イベント発生率は、12.6%対19.8%だった(補正後ハザード比:1.46、95%信頼区間:1.25~1.71、P<0.001)。一方、通常コントロール群 vs. 厳格コントロール群は、12.6%対12.7%(同:1.11、0.93~1.32、P=0.24)で、ほとんど違いは存在しなかった。全死因死亡率については、厳格コントロール群は11.0%、通常コントロール群は10.2%(同:1.20、0.99~1.45、P=0.06)。延長追跡評価を含むと、同22.8%、21.8%(同:1.15、1.01~1.32、P=0.04)だった。上記結果から、「糖尿病とCADを有する患者における収縮期血圧の厳格なコントロールは、通常のコントロールと比べて心血管アウトカムの改善には関連が認められなかった」と結論した。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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主任教授 森田峰人先生の答え

子宮内膜症と低用量ピルについて子宮内膜症の治療で低用量ピルを使用することもあるかと思いますが、副作用の発現はどうでしょうか?私自身は内膜症を診るわけではないのですが、患者さんから相談を受けることがあるので、症例数が多いであろう大学病院臨床現場での状況を知りたいです。宜しくお願いします。OC(ピル)はエストロゲン+プロゲストーゲンの配合剤であることはご存じと思います。これらのホルモン依存性に副作用が発生すると考えられます。一般的にエストロゲンとしてエチニルエストラジオールが、プロゲストーゲンとしてノルエチステロン、デソゲストレル、レボノルゲストレルがあり、OCの種類によってこれらの組み合わせや1相性、2相性、3相性が存在します。一般的にエストロゲン依存性の副作用としては、悪心・嘔吐、頭痛、水分貯留、帯下増加などが、プロゲストーゲン依存性の副作用としては、倦怠感、抑うつ感、乳房緊満感などが、アンドロゲン依存性(プロゲストーゲンには男性ホルモン活性があります)の副作用として、体重増加、ニキビ、食欲亢進、性欲亢進、男性化兆候などがあります。これらの副作用発現率は各種プロゲストーゲンの種類により異なるとは思いますが、全体的な副作用発現率として、悪心・嘔吐は1.2~29.2%、頭痛は3.4~15.7%、体重増加は0.8~2.2%、乳房緊満感は0.1~20%等となっており、これらのマイナートラブルは、通常、3か月以内で消失するともいわれています。子宮内膜症患者さんの月経痛改善のための効果ですが、ほとんどの場合効果はあると感じています。しかしながら、OCの各種副作用の発現により、継続しての服用が困難になる場合もあります。そのような場合には、OCの種類を変更することで継続服用が可能になる場合が多々あり、1種類のOCがダメであってもあきらめる必要はありません。子宮頸がんワクチンの効果・副反応について最近、子宮頸がんワクチン接種に関して助成金が出るとか出さないとか、何かと話題になっていますが、そもそもこのワクチン、実際の効果は如何なものなのでしょうか?「日本人には合わない」などおっしゃっている先生もいるようです。また、副反応についても現場の見解を知りたいと思っています。差し支えない範囲で結構ですのでご教授お願いします。現在使われているワクチンはHPVの遺伝子型が16と18に対するものです。日本人の子宮頸がんに関連するHPV遺伝子型が16と18であるものは58.8%(16型44.8%+18型14.0%)と報告されています。海外の報告では16/18が70.7%(16型53.5%+18型17.2%)で、その他31,33,35,51,52,53,56,58,59,68の10の型が31.2%に検出され、その他の型が9.0%であったとなっています。日本人の統計で、このワクチンでHPV16/18型の感染による子宮頸がんの発生を予防できる全体に占める割合は60%弱ということになります。よって、16/18による子宮頸がん発生を100%抑制できるとして、ハイリスクHPV感染者の0.15%ががんになるのを防げる場合の、費用対効果がどうなるのかは現在のところはっきりしていません。さらに大切な事として、日本における子宮頸がん検診率は23%程度であり、この健診率を先進国並みの60~82%に持って行く方法を考える必要があると思います。副反応に関しましては、全てのワクチンに言えることですが、何らかの重篤な合併症が引き起こされる可能性は否定できません。一般的な副反応として、局所の疼痛や発赤は90%程度に認められておりますが、当院での接種に際しては、幸いなことに重篤な副反応には遭遇しておりません。今後、これらの副反応に関しましても日本におけるデータが集積されてくるものと思います。研修について産婦人科医を目指している医学生です。産婦人科医になるにあたり、小児科(NICU)を経験した方が良いと聞きます。また、病院によっては一定期間NICUへ行かせてくれるところもあると聞きます。大森病院さんでも、このように小児科(NICU)のことを勉強したり、経験したりする機会はあるのでしょうか?ホームページを拝見しましたが、その辺の情報がなかったので教えて頂ければと思います。東邦大学医療センター大森病院でも小児科(NICU)のことを勉強したり、経験したりすることになります。産婦人科のホームページで「入局希望の方へ」を見て頂くと「後期研修プログラム」として1年目に「産科・周産期」と記載してありますが、この期間に3か月間、新生児科(NICU/GCU)の研修を行うことになります。また、後期研修期間中に、「腫瘍」「生殖内分泌」を専門医レベルまで習得してもらうために、2年目「腫瘍」、3年目「生殖内分泌」を主な研修期間としてトータルで3年間での研修計画をたてています。その後に、さらに新生児科での研修を希望される場合には、適時相談により、更に高度な新生児科での研修を行うことも可能です。産科婦人科の専門領域について初期研修中の者です。最近、産婦人科医に興味を持つようになりました。産婦人科の専門領域を大きく分けると、周産期、婦人科腫瘍、生殖医学の3つと教わりましたが、どれを専門にするのか?を決めるのは、通常どの位のタイミングなのでしょうか?また、森田先生はいつ頃、どんな理由で今の専門(婦人科腫瘍でしょうか?)に決めたのでしょうか?場違いな質問でしたら申し訳ありません。宜しくお願いします。後期研修として産婦人科に進んだ場合、まず目指していただくのは産婦人科専門医です。当院でもまずはそれを第1目標にしています。通常、後期研修3年間(初期研修2年とあわせて卒後5年)が終了した時点で専門医の受験資格ができます。それまでは、「周産期」「腫瘍」「生殖内分泌」の3本の柱をしっかりと研修し、専門医取得を目指します。通常は、その後に専門性のあるサブスペシャリティの各種指導医や認定医取得、および研究などを行うことになります。自分自身の場合は、卒業が27年前ですので、現在のような初期研修、後期研修制度はなく、卒業して直ちに医局に入局し、2年間の研修医、その後2年間の関連病院での研修の後に、卒後5年目に大学に帰局して研究を始めるとともに、当時、黎明期であった婦人科内視鏡に興味を持ち、臨床では生殖医療や関連する子宮内膜症、子宮筋腫などの診療に携わってきました。自身のおかれている環境によっても、これら専門領域選択に適切な時期や場所が大きく異なる可能性もあります。まずは、興味を持ち、かつ、その領域にすすむ事ができる環境にあるかどうかの見極めは大切なことでないかと思います。また、産婦人科としてのジェネラリストを目指すという道もあります。妊娠糖尿病患者を診るときに気をつけること妊娠糖尿病患者を診るときに気をつけていることがありましたらご教授下さい。特に糖尿病専門医との連携方法で気をつけていることや、こうすると上手く行く!といったノウハウをお聞きしたいと思っております。私の病院には糖尿を診れる医師はいないため、いつも他院の先生方との連携になってしまいます。どのように連携するのが良いのか毎日模索している日々です。ご教授お願いします。ご質問いただきました内容に関して、的確にお応えできる回答を持ち合わせておりませんが、他院の先生と連携をとって妊娠糖尿病患者を診ておられるご苦労は大変かと思います。ご存じの対応であるとは思いますが、妊娠糖尿病患者に対しては、食事指導、運動療法からはじまり、妊娠中の運動療法は比較的制限を受けることから、食事療法のみで血糖コントロールが目標に到達しない場合には、迷うことなくインスリン療法を開始する、ということに尽きると思います。男性産婦人科医が気をつけること産婦人科は、女性医師と違って男性医師は色々と気を遣わないといけない科だと思います。先生が男性産婦人科医として気をつけている点を教えてください。産婦人科の診察対象は女性生殖器であることから、最近は、女性医師の診察を希望する患者さんも増加しています。まず、大切なことは、不安を抱いている患者さんに対して、出来るだけその不安を取り除き、適切な診療ができる環境を作り出すことにあります。一言で言い表すのは難しいですが、常に、そのような気持ちで患者さんと接するよう心がけています。また、男性医師は、診察の場面では必ず女性の看護師を同席させることも忘れてはならない事です。日本の産婦人科領域の臨床研究レベルについて海外に比べた時、日本の産婦人科領域の臨床研究はどの位の位置にいるのでしょうか?また、海外への留学は必要なのでしょうか?僕はまだ医学生なのですが、将来は先生のように研究も臨床もでき、多くの患者さんのライフスタイルにあった治療提案ができるドクターになりたいと思っています。日本の産婦人科領域の臨床研究レベルは決して諸外国に劣っているとは思いません。しかし、日本人であるが故の不利な点があります。世界で研究に対する評価を得るためには英文論文の執筆は不可欠です。しかしながら、日本ではやはり主に日本語による論文執筆が先になり、英文は後回しになる傾向があるように思えます。もちろん、英文の論文を多数輩出している優れた日本人研究者もたくさんいらっしゃいますが、大変な努力が必要であることは事実です。海外への留学に関する事ですが、この留学は研究留学のことと理解してコメントします。留学には、研究留学と臨床留学がありますが、現在、大多数を占めるのは大学医局からの研究留学です。しかし、研究留学は目的意識を高く持たないと得るものは少ないと思われます。必ずしも留学が必要である理由は存在しないと思います。臨床遺伝について大森病院さんのホームページで、臨床遺伝についての記載がありますがもう少し教えて頂けないでしょうか?今大学病院では、具体的にどんな研究や取り組みが行われているのか?どのような成果を上げているのか興味あります。是非宜しくお願いします。近年、疾患に限らず生命現象ほとんどが遺伝子によって制御されていることが解明され、注目を浴びています。臨床遺伝学は、基礎遺伝学(いわゆる遺伝学)と臨床をつなぐ重要な分野として発展してきています。さらに最近では、生活習慣病などの多因子疾患も、遺伝子が関与している事が判明しています。しかし、遺伝学的検査を行うときに、十分な説明がなされず、施行されたり、結果を適切に判断することが出来ず、誤った説明などがなされ、時に、患者、その家族に誤解を招く場合があります。大森病院には、日本人類遺伝学会、遺伝カウンセリング学会認定の、臨床遺伝専門医が2名(いすれも産婦人科医)がおり、専門医研修施設に認定されています。産婦人科領域、生殖遺伝(挙児希望、習慣流産など)、周産期遺伝(出生前診断、高齢妊娠など)を中心に、火曜日午後、遺伝相談外来として対応しています。また、内科、外科など他科の担当医と協力し、横断的に、遺伝学的検査施行時、結果説明時など患者、その家族と話し合う機会を設けています。窓口は、産婦人科外来となっており、電話にて担当医と受診の予約についてお話しいただけます。妊娠を控えている慢性腎臓病実臨床にて妊娠を控えている慢性腎臓病の患者に対してどのような降圧剤を選択するのがベストか、臨床研究などの結果があれば教えていただければ幸いです.まず、慢性腎臓病合併妊婦では早期に妊娠高血圧症候群をおこして、母児共に予後が悪い事はよく知られております。したがいまして、妊娠前に十分に腎機能検査を行い、GFR 50ml/分以下、血清クレアチニン1.5mg/dl以上、血清尿酸値6.0ng/ml以上、降圧剤投与での血圧160/110mmHg以上、あるいは腎生検にて活動性病変のある者には妊娠を許可すべきではありません。これらの条件をクリアして、血圧の管理を行い、拡張期血圧を90~100mmHgの範囲に、収縮期血圧155~160mmHgを超えない事を目標に、妊娠が成立しても継続して投与が可能な薬剤を選択する事が望まれます。第1選択はヒドララジンもしくはメチルドパになります。また、妊婦に対してはACE阻害剤、アンギオテンシン受容体拮抗薬は禁忌であり、妊娠前にこれらの薬剤によりコントロールされている場合には薬剤の変更が必要になります。したがいまして、妊娠を目指して降圧剤を使用する場合にはヒドララジンもしくはメチルドパによる良好なコントロールがその後の管理が行いやすい状況にすると思われます。月経か否か性器出血が主訴の患者さんで性成熟期で子宮がある場合、どれが月経なのか不正性器出血なのか分からないと言われます。まず頚部・内膜の細胞診はとり、経膣エコーを見るかと思いますが、産婦人科として出血が月経かどうかを判断する術はあるでしょうか。産後の不正出血などでも(明らかな遺残ではなく)それが月経なのか何なのか判断に迷うことがあります。お教えいただけないでしょうか。 性器出血の様子だけから判断することは困難です。出血の様子に加え経腟超音波所見は重要で、特に子宮内膜の状態は評価に大きく役立ちます。患者さんのもともとの月経周期や体型なども判断材料になる機会は少なくありません。総合的に評価することとなります。総括たくさんの、また様々な内容のご質問をいただきありがとうございました。産婦人科の3本柱は、「周産期」「腫瘍」「生殖内分泌」であり、まだまだ伝えきれないほどの魅力ある診療および研究分野がたくさんあります。少しでも興味を持って、産婦人科の世界に入ってきてくれる人たちが増えてくれることを願っています。主任教授 森田峰人先生「産科婦人科最先端治療は患者個々への対応が決め手」

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米国過去20年で血圧コントロール割合27.3%→50.1%に

米国では、1988~2008年にかけて、血圧がコントロールされている人の割合が、27.3%から50.1%にまで改善したことが明らかになった。特に1999~2000年から2007~2008年にかけては、同割合は18.6ポイント増加していた。米国サウスカロライナ大学のBrent M. Egan氏らが、4万人超の18歳以上について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年5月26日号で発表した。全米の健康政策「Healthy People 2010」の中で、血圧コントロール率の目標は50%となっていた。血圧コントロールの定義は140/90mmHg未満同氏らは、1988~1994年と1999~2008年のNational Health and Nutrition Examination Survey(NHANES)データを用い、18歳以上の4万2,856人について、2年ごとの血圧コントロールなどに関するデータを分析した。高血圧の定義は、「平均収縮期血圧140mmHg以上、平均拡張期血圧90mmHg以上」、「降圧薬の服用」のいずれかだった。血圧コントロールの定義は、収縮期血圧140mmHg未満/拡張期血圧90mmHg未満だった。患者の認識の割合、降圧薬服用の割合も増大その結果、高血圧の罹患率は、1988~1994年の23.9%から、1999~2000年には28.5%へと増加していた。ただし2007~2008年は29.0%で、2000年以降の間の有意な変化はなかった。一方、高血圧コントロールについては、1988~1994年の27.3%から、2007~2008年は50.1%へと、大幅に改善した(p=0.006)。同期間の高血圧患者の血圧も、143.0/80.4mmHgから135.2/74.1mmHgへと、有意に低下していた(p=0.02/p

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併用脂質低下療法の心血管イベント抑制効果:ACCORD

心血管イベントリスクの高い2型糖尿病患者に対するスタチン療法で、併用療法を行っても単独療法と比べて、イベント抑制効果は認められないことが、ACCORD試験から報告された。本論は、3月に行われた米国心臓病学会ACCで発表、NEJM誌2010年4月29日号(オンライン版2010年3月14日号)に掲載された。5,500例を、併用群・単独群に無作為化し4.7年追跡ACCORD(Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes)試験は、心血管イベントリスクの高い2型糖尿病患者10,251例が参加する、厳格な降圧管理あるいは脂質管理が及ぼす影響を検討するために行われている試験。本論は、厳格な脂質管理の検討(ACCORD lipid trial:ACCORD Lipid)について報告したもので、5,518例が参加した。試験登録は、2001年1月~2005年10月に行われた。被験者は、オープンラベル2×2で無作為に、シンバスタチン(商品名:リポバスなど)+fenofibrateの併用療法群(2,765例)か、シンバスタチン+プラセボの単独療法群(2,753例)に割り付けられ追跡された。主要転帰は、非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中・心血管系死亡の複合。平均追跡期間は、4.7年だった。両群にイベント発生の有意差認められず被験者平均年齢は62歳、女性が31%、37%が心血管イベントの既往があり、約60%が試験登録以前からスタチンを服用していた。結果、主要転帰の年間発生率は、併用群2.2%、単独群2.4%で、有意差は認められなかった(ハザード比:0.92、95%信頼区間:0.79~1.08、P=0.32)。また、副次転帰(主要転帰+うっ血性心不全による入院等、主要な心血管イベント、脳卒中など)も両群で有意差は認められなかった。年間死亡率も、併用群1.5%、単独群1.6%(ハザード比:0.91、95%信頼区間:0.75~1.10、P=0.33)だった。交互作用の可能性はある事前規定のサブグループ解析の結果、脂質低下の強化療法は、男性には有益だが、女性にはかえって有害となるかもしれない結果が示された。主要評価項目について、男性は併用群11.2% vs. 単独群13.3%だったが、女性では同9.1% vs.6.6%と逆転していた(交互作用P=0.01)。また脂質による交互作用の可能性も示され、基線でトリグリセリド値が高く(≧204mg/dL)・HDLコレステロール値が低かった(≦34mg/dL)患者は他のいずれの脂質群とも比べて併用療法が有益であることが示された。研究グループは、「シンバスタチン単独療法と比較して、シンバスタチン+fenofibrateの組合せによる併用療法が、致死的心血管イベント、非致死的心筋梗塞・脳卒中のイベントを抑制することは認められなかった。この結果は、心血管イベントリスクの高い2型糖尿病患者に対し、ルーチンで併用療法を用いることを支持しないものである」と結論している。(医療ライター:武藤まき)

628.

強化血圧コントロールの心血管イベント抑制効果:ACCORD

心血管イベントリスクの高い2型糖尿病患者に対する降圧療法の目標値を、135~140mmHg未満とする無作為化試験のエビデンスは、まだない。そこで正常収縮期血圧値(120mmHg未満)を目標とする強化血圧コントロール(強化降圧療法)を行ったが、イベント抑制効果は認められなかったことが、ACCORD試験から報告された。本論は、3月に行われた米国心臓病学会ACCで発表、NEJM誌2010年4月29日号(オンライン版2010年3月14日号)に掲載された。4,733例を、血圧目標値120mmHg未満群と140mmHg未満群に無作為化し追跡ACCORD blood pressure trial(ACCORD BP)には、心血管イベントリスクの高い2型糖尿病患者4,733例が参加。収縮期血圧120mmHg未満を目標とする強化降圧療法群(2,362例)か、140mmHg未満を目標とする標準降圧療法群(2,371例)に無作為化され追跡された。主要転帰は、非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中・心血管系死亡の複合。平均追跡期間は、4.7年だった。追跡1年時点の平均収縮期血圧は、それぞれ強化療法群119.3mmHg、標準療法群133.5mmHgだった。120mmHg未満としても、主要心血管イベントの発生率を低下しない主要転帰の年間発生率は、強化療法群1.87%、標準療法群2.09%で、強化療法群のハザード比:0.88(95%信頼区間:0.73~1.06、P=0.20)だった。しかし1年間の全死因死亡率は、強化療法群1.28%、標準療法群1.19%で、強化療法による低下は認められなかった(ハザード比:1.07、95%信頼区間:0.85~1.35、P=0.55)。事前規定の副次転帰である脳卒中の年間発生率は、強化療法群0.32%、標準療法群0.53%だった(ハザード比:0.59、0.39~0.89、P=0.01)。高血圧治療に起因する重篤な有害事象の発生は、強化療法群2,362例中77例(3.3%)、標準療法群2,371例中30例(1.3%)だった(P<0.001)。研究グループは、「120mmHg未満を目標値として強化血圧コントロールを行っても、140mmHg未満を目標とする血圧コントロールと比べて、致死的・非致死的主要心血管イベントの複合転帰の発生率は低下しなかった」と結論している。(医療ライター:武藤まき)

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高血圧診断・管理には日中自由行動下血圧

軽度高血圧の診断に24時間自由行動下血圧が基準値とされているが、その治療や、あるいは中等度~重度の高血圧診断には用いられていない。オーストラリアのベーカーIDI心臓・糖尿病研究所のGeoffrey A Head氏らは、高血圧の診断と治療のための、年齢・性別24時間自由行動下血圧基準値作成を、診察室血圧値と検討しながら試みた。BMJ誌2010年4月17日号(オンライン版2010年4月14日号)掲載の報告。8,529件分の24時間自由行動下血圧測定データを照合Head氏らは、オーストラリア6州、11の医療センターから、熟練スタッフにより測定された24時間自由行動下血圧のデータを有する8,529件分のデータを照合し、診察室血圧との比較検討が行われた。診察室血圧の評価では、被験者のうち医師測定データを有する1,593件分との比較検討も行われた。被験者8,529例は、4626例(54%)は女性、平均年齢56歳(SD:15)、BMIは28.9(同5.5)、診察室血圧(収縮期/拡張期)142/82mmHg(同19/12)だった。医師測定の診察室血圧は高すぎて、診断・管理指標として不適当熟練スタッフ測定の診察室血圧の平均血圧は、日中(7~23時)自由行動下血圧より6/3mmHg高く、また24時間自由行動下血圧より10/5mmHg高かった。一方で、医師測定の診察室血圧よりは9/7mmHg低かった。熟練スタッフ測定の日中自由行動下血圧は、診察室血圧の基準値140/90mmHgより4/3mmHg低くⅠ度(軽度)高血圧の基準値を下回り、正常血圧上限値130/80mmHgよりも2/2mmHg低く、蛋白尿を伴う場合の降圧目標値125/75mmHg値より1/1mmHg低かった。また自由行動下血圧は、男性よりも女性の方が1/2mmHg低く、若い人より65歳以上の高齢の人の方が3/1mmHg低かった。Head氏は「我々が行った試験の結果、日中自由行動下血圧の方が診察室血圧より有意に低かった。医師測定の診察室血圧は、その他熟練スタッフ測定の同値と比べて、かなり高値で、基準値として採用するのはふさわしくなかった」と述べ、「これら結果は、高血圧の診断や管理には、日中自由行動下血圧を用いることが適切であることを示すものである」と結論している。

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降圧薬+スタチンの降圧効果:PHYLLIS試験の2次解析

スタチンは、血清コレステロールの低減、また特異的(多面的)と思われる保護作用で心血管予防に寄与する。一方でいくつかの試験で、降圧効果も発揮するとの報告があるが、付加的防御機構として公表するには、試験に方法論的な限界があるともされている。そこでイタリア・Milano-Bicocca大学臨床・予防医学部門のGiuseppe Mancia氏ら研究グループは、以前に報告したスタチン併用による頸動脈の内膜-中膜厚の進行抑制を検討した試験PHYLLISから、24時間自由行動下血圧を基にした2次解析を行い、スタチンに付加的な降圧効果が認められるかを検討した。BMJ誌2010年4月17日号(オンライン版2010年3月25日号)掲載より。高血圧と脂質異常症を有する508例を対象に、無作為化プラセボ対照二重盲検試験PHYLLIS(Plaque Hypertension Lipid-Lowering Italian Study)は、無作為化プラセボ対照二重盲検試験で、イタリアの13病院から軽度高血圧と脂質異常症を有する、45~70歳の患者508例が参加し行われた。被験者は、降圧治療にスタチンを追加し併用投与する群(スタチン併用群)、また追加投与しない群(降圧薬単独群)に無作為化された。降圧療法は、ヒドロクロロチアジド(商品名:ニュートライド)25mgを1日1回、もしくはfosinopril 20mgを1日1回にて、スタチン追加併用投与はプラバスタチン(同:メバロチン)40mgを1日1回で行われた。被験者の平均治療期間は2.6年。本解析では、その間の年1回の診察室血圧、自由行動下血圧を主要評価項目とした。スタチン併用にさらなる降圧効果認められず結果、降圧薬単独群(254例、総コレステロールの低下はわずかだった)、スタチン併用群(253例、総コレステロールとLDLコレステロールは顕著に持続的に減少)の両群とも、診察血圧はクリアカットに持続的に収縮期および拡張期とも降圧が図られていた。24時間血圧、日中・夜間血圧についても同様だった。降圧はスタチン併用群の方が、やや劣った。しかし期間中の両群間の差は、1.9mmHg(95%信頼区間:-0.6~4.3、P=0.13)を上回ることはなかった。Mancia氏は「24時間自由行動下血圧を基に解析した結果、スタチン追加併用に、さらなる降圧効果は認められなかった」と結論している。

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ACE阻害薬+Ca拮抗薬、高リスク高血圧におけるCKD抑制効果が明らかに:ACCOMPLISH試験2次解析

 ACE阻害薬ベナゼプリル(商品名:チバセンなど)とCa拮抗薬アムロジピン(同:ノルバスク、アムロジンなど)の併用は、心血管疾患のリスクが高い高血圧患者において慢性腎臓病(CKD)の進行の抑制効果が高いことが、アメリカChicago 大学Pritzker医学校のGeorge L Bakris氏らが実施したACCOMPLISH試験の2次解析で明らかとなった。本試験は、主解析でベナゼプリルとアムロジピンの併用が、ベナゼプリルと利尿薬ヒドロクロロチアジド(同:ニュートライドなど)の併用よりも心血管疾患罹患率および死亡率の改善効果が優れることが示されたため、平均フォローアップ期間2.9年の時点で早期中止となっている。進行期腎症ではRA系抑制薬と利尿薬の併用で降圧効果が得られることが多くの試験で示されているが、CKDの進行に対する固定用量による降圧薬併用の効果を検討した試験はないという。Lancet誌2010年4月3日号(オンライン版2010年2月18日号)掲載の報告。CKDの進行を評価する事前に規定された2次解析 ACCOMPLISH試験は高リスク高血圧患者を対象としたプロスペクティブな二重盲検無作為化試験。今回、研究グループは、本試験の事前に規定された2次解析として固定用量のベナゼプリル+アムロジピンとベナゼプリル+ヒドロクロロチアジドのCKD抑制効果について評価した。 2003年10月~2005年5月までに、5ヵ国(アメリカ、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、フィンランド)から心血管イベントのリスクが高い55歳以上の高血圧患者11,506例が登録された。これらの患者が、ベナゼプリル(20mg/日)+アムロジピン群(5mg/日)群(5,744例)あるいはベナゼプリル(20mg/日)+ヒドロクロロチアジド(12.5mg/日)群(5,762例)に無作為に割り付けられた。 用量は、推奨目標血圧を達成するように、無作為割り付け後1ヵ月が経過して以降は個々の患者の病態に応じて漸増した。事前に規定されたエンドポイントであるCKDの進行は、血清クレアチニン値の2倍化あるいは末期腎不全の発症(推定糸球体濾過率<15mL/分/1.73m2あるいは要透析の診断)と定義した。ACE阻害薬+Ca拮抗薬でCKDの進行が48%抑制 試験終了時点で、143例(1%)のフォローアップが完遂できなかった(ベナゼプリル+アムロジピン群70例、ベナゼプリル+ヒドロクロロチアジド群73例)。無作為割り付けされたすべての症例がintention-to-treat解析の対象となった。 CKDの進行がみられたのは、ベナゼプリル+アムロジピン群が113例(2.0%)と、ベナゼプリル+ヒドロクロロチアジド群の215例(3.7%)に比べ有意に低下した(ハザード比:0.52、p<0.0001)。 CKD患者で最も高頻度にみられた有害事象は、末梢浮腫[ベナゼプリル+アムロジピン群33.7%(189/561例)、ベナゼプリル+ヒドロクロロチアジド群16.0%(85/532例)、p<0.0001]であった。CKD患者における血管浮腫の頻度は、ベナゼプリル+アムロジピン群の方が高かった(1.6% vs. 0.4%、p=0.04)。 非CKD患者では、ベナゼプリル+ヒドロクロロチアジド群でめまい(20.3% vs. 25.5%、p<0.0001)、低カリウム血症(0.1% vs. 0.3%、p=0.003)、低血圧(2.3% vs. 3.4%、p=0.0005)の頻度が高かった。 著者は、「ベナゼプリル+アムロジピン併用療法は、腎症の進行をより遅らせるため、ベナゼプリル+ヒドロクロロチアジド併用療法よりも優先的に考慮すべきである」と結論し、「これらの併用降圧治療のCKD抑制効果の優劣を確立するには、さらに進行した腎症を対象としたプロスペクティブ試験を行う必要がある」としている。

632.

急性胸痛でICU治療、入室時の仰臥位収縮期血圧が高いほど1年死亡リスクは低い

急性胸痛により集中治療室(ICU)で治療を受けた患者のうち、入室時の仰臥位収縮期血圧が高い人ほど、1年後の死亡リスクは低下するようだ。スウェーデンLinkoping大学医学健康科学部門のUlf Stenestrand氏らが、約12万人の患者について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年3月24/31日合併号で発表した。ICU入室時仰臥位収縮期血圧を四分位範囲に分類Stenestrand氏らは、1997~2007年にかけて、急性胸痛によりICUで治療を受けた11万9,151人について、入室時の仰臥位収縮期血圧を調べた。研究グループは被験者を同血圧の測定値によって、「Q1:128mmHg未満」「Q2:128~144mmHg」「Q3:145~162mmHg」「Q4:163mmHg以上」の四分位範囲に分類し、1年後死亡率との関係について分析した。追跡期間の平均値は、2.47年(標準偏差:1.5年、範囲:1~10年)だった。「163mmHg以上」群の1年死亡リスクは、「128~144mmHg」群の0.76倍補正は、年齢、性別、喫煙、拡張期血圧値、入・退院時の降圧薬の服用、退院時の高脂血症薬と抗血小板薬の服用について行った。その結果、入室時の仰臥位収縮期血圧「Q4:163mmHg以上」が、1年死亡リスクが最も低く、「Q2:128~144mmHg」群に対するハザード比は0.76(95%信頼区間:0.72~0.80)だった。Q2群に対するハザード比は、「Q1:128mmHg未満」群では1.46(同:1.39~1.52)、「Q3:145~162mmHg」群は0.83(同:0.79~0.87)だった。Q2群と比べた1年死亡絶対リスクは、Q4群が21.7%、Q3群が15.2%それぞれ低かった一方、Q1群は40.3%高かった。Q4群と比較したQ2群の予後悪化の独立因子は、BMI、前歴にあり、狭心症、急性心筋梗塞に患者を限定した場合も、Q2群と比べたQ4群の1年死亡絶対リスクのハザード比は、0.75(同:0.71~0.80)と低かった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

633.

1日1gの減塩は降圧薬を上回るか?

減塩への取り組みがもたらす健康へのベネフィットはいったいどれぐらいなのか? 米国カリフォルニア大学医学部疫学・生物統計学部門のKirsten Bibbins-Domingo氏らは、米国35~84歳の冠動脈疾患(CHD)政策モデルを使って、1日1~3gの減塩でもたらされる健康へのベネフィット(心血管イベント、全死因死亡、医療費など)を、コンピュータシミュレーションした。日本やイギリスなど多くの国では、食品業界を巻き込んでの、加工食品への塩分量表示や公衆教育を通じた減塩に対する意識喚起が行われている。一方、米国では塩分摂取量が年々上昇しており(2005~2006年:目標5.8g未満に対し男性10.4g、女性7.3g)、その約8割が加工食品からの摂取で、研究グループは公衆衛生改善を提起するため本研究を行った。NEJM誌2010年2月18日号(オンライン版2010年1月20日号)掲載より。1日3gの減塩で年間最大CHDは12万件減、脳卒中6.6万件減、心筋梗塞9.9万件減Bibbins-Domingo氏らは、1日最高3g(ナトリウム換算1,200mg)減塩することによりもたらされるであろうベネフィットを、CHD政策モデルを用いて算出した。年齢、性、人種別ごとの心血管疾患の発生率およびそれにかかる医療費を推計し、減塩への取り組みとその他の心血管疾患リスクを低減するための介入との効果を比較。また、減塩への取り組みと降圧薬療法との費用対効果の評価も行った。結果、1日3gの減塩によって、CHDの年間新規発症件数は6万~12万件、脳卒中は3万2,000~6万6,000件、心筋梗塞は5万4,000~9万9,000件それぞれ減少することが予測された。全死因死亡数は年間で4万4,000~9万2,000件の減少が予測された。1日3gの減塩で毎年医療費約1~2兆円削減可能減塩への取り組みによるベネフィットは全国民が受けることが示されたが、特に黒人で高く、また女性は脳卒中減を、高齢者はCHDイベント減を、若い人は死亡率低下というベネフィットをより受けるであろうことが示された。減塩がもたらす心血管イベントへのベネフィットは、喫煙、肥満、コレステロール減を国民レベルで広めることのベネフィットと同等だった。また、1日3g減塩達成を推進することによって、19万4,000~39万2,000 QALYs(質調整生存年数)を蓄えることが、また医療費は毎年100億~240億ドル(約9,000億~2.2兆円)節約できることが示された。さらに、減塩量がたとえわずか1日1gで、2010年から始めて10年かかったとしても段階的に達成できさえすれば、すべての高血圧患者への降圧薬療法よりも費用対効果は大きいことも予想されたという。Bibbins-Domingo氏は、「減塩できた量がわずかでもあっても、心血管イベントおよび医療費を大幅に減らすことに結びつく可能性がある。わずかな目標であってもこれを公衆衛生の目標とし、早急にアクションを起こすべき必要がある」と強調している。(医療ライター:武藤まき)

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利尿薬ベースの降圧療法、セカンドライン選択は?:住民ベースの症例対照研究

米国ワシントン大学心血管ヘルス研究ユニットのInbal Boger-Megiddo氏らは、利尿薬を第一選択薬とし降圧療法を受けている高血圧患者の、併用療法移行時の選択薬は、β遮断薬、Ca拮抗薬、RA系阻害薬いずれが至適かを明らかにするため、心筋梗塞および脳卒中の発生率を主要評価項目に、住民ベースの症例対照研究を行った。結果、Ca拮抗薬追加群の心筋梗塞発生リスクが、他の2群よりも高いことが明らかになったという。BMJ誌2010年2月6日号(オンライン版2010年1月25日号)より。症例群353例、対照群952例で検討研究グループは本研究を実施した背景について、「ALLHAT試験で、低用量利尿薬が第一選択薬としてCa拮抗薬やRA系阻害薬よりも優れていることが示唆され、そのエビデンスを踏まえたガイドラインが米英で作成されている。一方で、降圧療法を受ける高血圧患者の半数は併用療法を要する。だが利尿薬ベースの患者の心血管疾患予防を見据えたセカンドラインの選択薬はどれが至適か明らかになっておらず、米国NHLBI(National Heart, Lung, and Blood Institute)は、試験実施の勧告を出しているが、いまだ実施されていない」と述べている。試験は、ワシントン州シアトル市に拠点を置くヘルスケアシステム「Group Health Cooperative」の加入者データから、症例群353例、対照群952例の被験者を選定し行われた。症例群は、30~79歳の降圧療法を受けていた高血圧患者で、1989~2005年に致死性または非致死性の初回の心筋梗塞か脳卒中を発症したと診断記録があった人だった。対照群は、降圧療法を受けていた高血圧患者が無作為にGroup Health Cooperative加入者から選ばれた。なお、心不全、冠動脈疾患、糖尿病、慢性腎不全患者は除外された。+Ca拮抗薬は心筋梗塞リスクを増大する結果、心筋梗塞リスクについて、利尿薬+Ca拮抗薬群が、+RA系阻害薬群、+β遮断薬群よりも高いことが認められた。+β遮断薬群を基準とした、+Ca拮抗薬群の心筋梗塞リスクの補正後(年齢、性、服薬期間、喫煙、飲酒)オッズ比は、1.98(95%信頼区間:1.37~2.87)だった。脳卒中リスクについては、増大は認められず、オッズ比は1.02(同:0.63~1.64)だった。一方、+RA系阻害薬群の心筋梗塞および脳卒中リスクは、ともに有意ではなかったものの低く、心筋梗塞リスクの同オッズ比は0.76(同:0.52~1.11)、脳卒中は0.71(同:0.46~1.10)だった。研究グループは結果を踏まえ、「低リスクの高血圧患者を対象とした本試験で、セカンドラインにCa拮抗薬を選択することは、他の薬剤を選択するよりも心筋梗塞リスクが高いことが明らかになった。この結果はNIHCE(National Institute for Health and Clinical Excellence)ガイドラインを支持するもので、米国NHLBIが勧告する大規模試験を行うべきであろう」とまとめている。

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塩分の摂り過ぎで脳卒中と心血管疾患リスクが増大、メタ解析で明らかに

過去40年に実施されたプロスペクティブ試験のメタ解析の結果、塩分摂取量が多いと、少ない場合に比べ脳血管および心血管イベントの発生リスクが増大することが確認された。実験的研究、疫学調査、そして介入試験によっても、習慣的な塩分摂取量と血圧の間の因果関係が示され、減塩により高血圧患者だけでなく正常血圧者においても有意な降圧が得られることが報告されている。しかし、これらのうち十分な統計学的なパワーを持つ臨床試験はほとんどなく、また現状では同様の臨床試験を行うには大きな困難が伴うという。そこで、イタリア・ナポリ大学医学部臨床・実験医学科のPasquale Strazzullo氏らは過去の臨床試験のメタ解析を行い、BMJ誌2009年12月5日号(オンライン版2009年11月24日号)で報告した。塩分摂取量の多寡と脳卒中、心血管疾患リスクの関連を検討した前向き試験のメタ解析研究グループは、習慣的な塩分摂取と脳卒中、心血管疾患のアウトカムの関連について評価するために、プロスペクティブ試験に関する系統的なレビューを行い、メタ解析を実施した。1966~2008年までの医学関連データベースを検索した。適格基準を満たした論文から相対リスクおよび95%信頼区間(95%CI)を抽出し、分散逆数で重み付けした変量効果モデルを用いてプールした。不均一性および出版バイアスを評価し、サブグループ解析、メタ回帰解析を行った。適格基準には、1)成人を対象としたプロスペクティブな試験、2)ベースラインにおける塩分摂取の評価、3)アウトカムとしての脳卒中あるいは心血管疾患の評価、4)少なくとも3年以上のフォローアップ、5)個々の塩分摂取量別の対象人数およびイベント発生数の記述があることなどが含まれた。1日の塩分摂取量が5g多いと脳卒中が23%、心血管疾患が17%増える13の試験から19の独立コホートのサンプルが得られ、17万7,025人が解析の対象となった。フォローアップ期間は3.5~19年、脳血管および心血管のイベント数は1万1,000件以上にのぼった。塩分摂取量が多い群は、少ない群よりも脳卒中のリスクが有意に高く(相対リスク:1.23、95%CI:1.06~1.43、p=0.007)、心血管疾患リスクは有意差はないものの高い傾向が見られた(相対リスク:1.14、95%CI:0.99~1.32、p=0.07)。有意な出版バイアスは認めなかった。心血管疾患について感受性解析を行ったところ、1つの試験を除外するとプールされた相対リスクの推定値が1.17(95%CI:1.02~1.34)となり、有意な差が示された(p=0.02)。これら関連性は、塩分摂取量の差が大きくなるほど、またフォローアップ期間が長くなるにしたがって増強した。本試験における塩分摂取量の多い群と少ない群の摂取量の差の平均値は約5g/日(小さじ1杯分)であった。西欧諸国の習慣的な1日塩分摂取量は約10gである(東欧やアジア諸国はさらに多い)が、この5g分を減塩するとWHOの推奨摂取量である5g/日となる。著者は、「塩分摂取量が多いと、脳卒中および心血管疾患のリスクが有意に増大し、このリスクは摂取量依存性に上昇することが示された」と結論し、「塩分摂取量の測定の不正確さゆえに、効果量(effect size)が過小評価されている可能性がある」としたうえで、「心血管疾患を予防するには、一般人口における実質的な減塩の役割が大きいことが示唆される」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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高血圧症治療薬「COZAAR」の高用量投与により総死亡および心不全による入院リスクが減少する

米国メルク社は、11月にオーランドで開催された第82回米国心臓協会(AHA: American Heart Association)学術集会において、高血圧症治療薬「COZAAR(一般名:ロサルタンカリウム錠)」の高用量投与による試験「HEAAL(Heart failure Endpoint evaluation of the A-II-Antagonist Losartan)」の結果を発表した。日本法人である万有製薬株式会社が2日に公表した。HEAAL試験の結果は11月17日(現地時間)、第82回米国心臓協会学術集会のレイトブレイキングセッションで発表された。HEAAL試験は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬に忍容性のない心不全患者を対象に、COZAAR(日本販売名:ニューロタン錠/一般名:ロサルタンカリウム)の2種類の用量(50mg、150mg)における安全性および有効性について、30ヵ国255施設で実施されたもの。この試験の結果、150mgの1日1回投与は、同錠50mgを1日1回投与した場合に比べ、総死亡または心不全による入院リスクを有意に減少させたという。COZAARは、米国では慢性心不全患者の治療に適応を有していない。HEAAL試験で用いられた150mgの服用はいかなる適応に対しても承認されていないが、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(AIIA)、心血管系治療薬として、「高血圧症の単剤治療または利尿薬を含む他の降圧剤との併用治療」「左室肥大を伴う高血圧患者の脳卒中リスク低減。但しこの効果は黒人患者に対しては適用されない」「2型糖尿病および高血圧患者における血清クレアチニンの上昇及び蛋白尿(尿中アルブミン/クレアチニン比300mg/g以上)を伴う糖尿病性腎症の治療。この治療において、COZAARは、血清クレアチニン値倍増または末期腎不全(透析あるいは腎移植の必要性)をエンドポイントとして、腎機能低下率を低減させる」3つの適応が承認されている。詳細はプレスリリースへhttp://www.banyu.co.jp/content/corporate/newsroom/2009/merck_1202.html

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新規GLP-1アナログ製剤liraglutide、肥満者の体重が減少、糖尿病前症の抑制効果も

新たなグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)アナログ製剤であるliraglutideは、肥満者の体重を減少させて肥満関連リスク因子を改善し、糖尿病前症を低減することが、デンマークCopenhagen大学生命科学部のArne Astrup氏らNN8022-1807 Study Groupが実施した無作為化試験で明らかとなった。ヨーロッパでは過去20年間で肥満者が3倍に増え、成人の約半数が過体重だという。liraglutideはヒトGLP-1と97%の構造的相同性を持つアナログ製剤で、半減期が約13時間と長いため1日1回皮下注で治療が可能。用量依存性に体重を減少させ、HbA1cの低減作用を持ち、膵β細胞機能および収縮期血圧を改善することが確認されており、2型糖尿病と肥満の治療薬として期待されている。Lancet誌2009年11月7日(オンライン版2009年10月23日号)掲載の報告。4種類の用量群、プラセボ群、orlistat群の6群を比較する二重盲検試験NN8022-1807 Study Groupは、liraglutideが2型糖尿病を有さない肥満者の体重に及ぼす影響および耐用性について検討する二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施した。2007年1~9月までに、ヨーロッパの8ヵ国19施設から18~65歳の肥満者(BMI 30~40kg/m2)564人が登録された。これらの肥満者が、liraglutideの4種類の用量を1日1回皮下注する群[1.2mg群(95人)、1.8mg群(90人)、2.4mg群(93人)、3.0mg群(93人)]、プラセボ群(98人、1日1回皮下注)あるいは承認済みの抗肥満薬である消化管リパーゼ阻害薬orlistat 120mgを投与する群(95人、1日3回経口投与)のいずれかに無作為に割り付けられた。被験者は、2週間のrun-in期間と20週の試験期間中は1日500kcalの低エネルギー食を摂り、身体活動の増強の指導を受けた。主要エンドポイントはintention-to-treat解析による体重の変化とした。試験完遂者は引き続き84週のオープンラベル試験に登録された。用量依存性に体重が減少、高用量ではorlistatと有意差が、降圧作用や糖尿病前症抑制効果もプラセボ群に比べ、liraglutide 1.2mg群(p=0.003)およびliraglutide 1.8~3.0mg群(p<0.0001)は有意に体重が減少し、orlistat群との比較でもliraglutide 2.4mg群(p=0.003)およびliraglutide 3.0mg群(p<0.0001)の体重減少は有意差が認められた。減少した体重の平均値は、liraglutide 1.2mg群が4.8kg、1.8mg群が5.5kg、2.4mg群が6.3kg、3.0mg群が7.2kgであったのに対し、プラセボ群は2.8kg、orlistat群は4.1kgであった。liraglutide群はプラセボ群よりも体重が2.1~4.4kg減少した。体重が5%以上減少した被験者の割合は、liraglutide3.0mg群が76%(70人)であったのに対し、プラセボ群は30%(29人)、orlistat群は44%(42人)であった。liraglutide群はすべての用量で血圧が低下し、1.8~3.0mg群では糖尿病前症が84~96%低減した。liraglutide群はプラセボ群に比べ悪心・嘔吐の頻度が高かったが、有害事象の多くは一過性で治療中止に至るものはまれであった。著者は、「肥満者に対する20週にわたるliraglutide治療は、耐用性が良好で体重を減少させ、一定の肥満関連リスク因子の改善効果や糖尿病前症の抑制効果を認めた」と結論し、「liraglutideは既存薬とは異なる作用機序を有し、減量効果も高く、肥満の糖尿病前症で有効な可能性が示唆される。一方、体重減少そのものよりも心血管イベントとの臨床的関連が強いと考えられるリスク因子の改善効果が示されたものの、長期的なリスク-ベネフィットのプロフィールや体重維持能が確立されたわけではない」と考察している。(菅野守:医学ライター)

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新規の血管拡張薬darusentan、治療抵抗性高血圧における降圧効果を確認

新規の選択的エンドセリンA受容体拮抗薬darusentanは、3剤以上の降圧薬を用いても降圧目標を達成できない治療抵抗性の高血圧患者にさらなる降圧をもたらすことが、アメリカNew York州立大学のMichael A Weber氏らが実施した無作為化試験で示された。治療抵抗性高血圧とは、利尿薬を含む3剤以上を推奨用量の上限または患者が耐用可能な最大用量まで使用しても降圧目標に到達しない場合と定義される。高血圧や糖尿病の患者の循環血中ではエンドセリン1が増加しており、その受容体を遮断するアプローチは治療抵抗性高血圧に有効な可能性があるという。Lancet誌2009年10月24日号(オンライン版2009年9月14日号)掲載の報告。117施設から登録された379例を3種の用量とプラセボに割り付け研究グループは、治療抵抗性高血圧患者における新たな血管拡張薬darusentanの降圧作用の評価を目的に、二重盲検プラセボ対照無作為化試験を行った。北米、南米、ヨーロッパ、ニュージーランド、オーストラリアの117施設から、利尿薬を含む3剤以上を上限量または最大耐用量まで投与しても収縮期血圧が≧140mmHg[糖尿病あるいは慢性腎臓病(CKD)がある場合は≧130mmHg]の患者379例が登録された。これらの患者が、darusentan 50mg(81例)、100mg(81例)、300mmHg(85例)、プラセボ(132例)をそれぞれ1日1回、14週間投与する群に無作為に割り付けられた。患者とすべての研究者には治療割り付け情報は知らされなかった。主要評価項目は、坐位の血圧(収縮期/拡張期)の変化とした。利尿薬との併用療法が新たな有効な治療戦略となる可能性も無作為割り付けされた全例が解析の対象となった。治療前後における診察室血圧の低下の平均値は、darusentan 50mg群が17/10、100mg群が18/10、300mg群が18/11、プラセボ群は9/5mmHgであり、プラセボに比べdarusentanの有意な降圧効果が認められた(p<0.0001)。主な有害事象は体液貯留に関連するもので、浮腫あるいは体液うっ滞の発現率がプラセボ群の14%に比べdarusentanは27%と高頻度であった。プラセボ群の1例が心突然死をきたし、3つのdarusentan群を合わせて5例に心臓関連の重篤な有害事象が見られた。著者は、「3剤以上の降圧薬を用いても目標血圧に至らない患者において、darusentanはさらなる降圧をもたらす」と結論し、「darusentanに、体液貯留対策を兼ねて有効な利尿薬を併用するアプローチは、治療抵抗性高血圧に対する新たな治療戦略として有効な可能性がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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CKD患児、ramipril高用量服用の血圧コントロール強化群に大きなベネフィットが

慢性腎疾患(CKD)は成人でも小児でも、末期腎不全へと進行する傾向があり、臨床的に重大な問題である。腎不全は高血圧と糸球体の過剰ろ過によって進行するが、成人患者において、レニン・アンジオテンシン(RA)系を阻害する降圧薬服用が、腎機能を保護し腎不全の進行を遅らせることが明らかとなった。しかし、目標とすべき血圧値についてはなお議論の的となっている。欧州の33の小児腎臓病学部門が共同参画するESCAPE Trial Groupは、ACE阻害薬ramiprilを高用量服用する小児CKD患者(約50%が高血圧症を有するといわれる)を無作為に2群に分け、一方の血圧コントロール目標値を厳しく設定し、その長期的な腎保護作用の評価を行った。NEJM誌2009年10月22日号掲載より。24時間動脈圧目標値通常群と強化群に無作為化し、5年間追跡試験は、1998年4月~2001年12月の間に、3~18歳のCKD患者(糸球体濾過量15~80mL/分/1.73m2体表面積)385例が参加し行われた。被験者はramiprilを、試験導入(6ヵ月間)後に1日6mg/m2体表面積で投与され、通常の血圧コントロール群(目標値:24時間平均動脈圧50~95パーセンタイル)と、目標値を厳しく設定した血圧コントロール群(目標値:同50パーセンタイル未満)の2群に無作為に割り付けられ、5年間追跡された。ramiprilだけで目標値が達成できない場合は、RA系をターゲットとしない降圧薬を併用した。1次エンドポイントは、糸球体濾過量50%低下に要した時間または末期腎不全への進行までの期間とした。副次エンドポイントには、血圧、糸球体濾過量、蛋白尿の変化を含んだ。腎不全への進行等、通常群41.7%に対し強化群29.9%にとどまる5年間での1次エンドポイント達成は、通常群は41.7%だったが、強化群は29.9%にとどまった(ハザード比:0.65、95%信頼区間:0.44~0.94、P = 0.02)。有害事象の種類や発生率に両群に有意差はなく、試験からの累積脱落率(通常群26.5%対厳格群28.0%)も有意差はなかった。また、血圧コントロールが良好に維持されている一方で、蛋白尿は当初50%以下になった後、ACE阻害薬継続服用中に徐々にリバウンドし、目標血圧値達成と蛋白尿減少はそれぞれ、腎疾患進行を遅らせる独立した有意の予測因子であることが認められた。なお、この蛋白尿の再出現は、長期にわたるACE阻害薬服用患児に共通して見られ、研究グループは、「血圧コントロールの目標値を通常より厳しくすることは、小児CKD患者の腎機能に多大なベネフィットを与える」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

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「テルミサルタン」と「アムロジピン」の新規配合錠をFDAが承認

 ドイツ・ベーリンガーインゲルハイム社は19日、同社の開発したテルミサルタン(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)とアムロジピン(カルシウム拮抗薬)の新規配合錠が、米国食品医薬品局(FDA)から承認されたと発表した。米国での製品名は、TWYNSTA。高血圧治療を適応として、単独あるいは他の降圧剤との併用にて、目標血圧を達成するための初期治療として用いられる。 新たな配合錠のベネフィットは、アンジオテンシンII受容体およびカルシウムチャネルの長時間の拮抗・遮断という作用機序を相補的に発揮することにあるという。24時間にわたる降圧および血圧コントロールにきわめて有効で、テルミサルタンとアムロジピンでそれぞれ既に実証されている心血管保護での有用性を併せ持つという。テルミサルタンは降圧効果に加え、心血管イベント高リスク患者での心筋梗塞、脳卒中、心血管死のリスク減少の有用性が実証された唯一のアンジオテンシンII受容体拮抗薬となり、米国で19日、ACE阻害薬を服用することができない高リスク患者での心血管イベント減少を適応として承認を受けた。 テルミサルタンとアムロジピンの配合錠は、現在日本と欧州で承認申請されており、引き続きその他の国々でも申請される予定。詳細はプレスリリースへhttp://www.boehringer-ingelheim.co.jp/com/Home/Newscentre/pressrelease/news_detail.jsp?paramOid=9804

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