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日本人統合失調症患者に対するブロナンセリンとハロペリドールの二重盲検ランダム化比較試験

 以前、CNS薬理研究所の村崎 光邦氏が、統合失調症患者に対するブロナンセリンの有効性および安全性について、ハロペリドールとの比較を行った日本の多施設共同ランダム化二重盲検試験を日本語で発表した。米国・マイアミ大学のPhilip D. Harvey氏らは、以前報告されたプロトコルごとのデータセットの代わりに完全な分析データセットに基づく試験結果を提示し、統合失調症の薬理学的治療の最新知識に照らし合わせて、調査結果についての議論を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2019年4月30日号の報告。 対象患者265例は、ブロナンセリン(8~24mg/日)またはハロペリドール(4~12mg/日)の1日2回8週間投与に、ランダムに割り付けられた。有効性の評価には、臨床全般印象改善度(CGI-I)および陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・試験終了時のCGI-I改善率において、ブロナンセリンはハロペリドールに劣ることなく、10%のマージンを示した(60.5% vs.50.0%、p<0.001)。・PANSS合計スコアの減少については、両群間で差は認められなかった(-10.3 vs.-7.1)。・PANSS陰性症状スコアの減少は、ハロペリドールよりもブロナンセリンで有意に大きかった(p=0.006)。・ブロナンセリンは、忍容性が良好であった。・有害事象発生率は、両群間で同様であった。・錐体外路系有害事象、鎮静、低血圧、プロラクチン上昇の発生は、ハロペリドールよりもブロナンセリンで低かった。・臨床的に重要な体重増加は、認められなかった。 著者らは「統合失調症治療において、ブロナンセリンはハロペリドールと同様に効果的である。そして、ブロナンセリンは、ハロペリドールと比較し、錐体外路症状のリスクが低く、陰性症状に対してより効果的である」としている。

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女性へのゾルピデム使用リスク

 2013年、女性に対するゾルピデム就寝前投与は、昼間の鎮静リスクを上昇させ、運転技能の低下を来すことを示す新たなデータの存在をFDAが報告した。これには、女性では男性と比較し、ゾルピデムの代謝クリアランスの減少および朝の血中濃度の上昇が影響していると推定される。このことから、FDAは、女性へのゾルピデム推奨投与量を、男性の50%まで減量するよう指示した。しかし、世界的にどの規制当局においても同様な指示は出ていない。米国・睡眠障害研究センターのDavid J. Greenblatt氏らは、女性へのゾルピデム使用リスクについて、レビューおよび評価を行った。Journal of Clinical Psychopharmacology誌2019年5月号の報告。ゾルピデムの男女差は臨床試験では実証されていない ゾルピデムの薬物動態、薬力学、有害事象、臨床的有効性、運転能力に対する男女差の影響を評価するため、文献レビューとともにこれまでの研究データをさらに分析した。 ゾルピデムの薬物動態などに対する男女差の影響を評価した主な結果は以下のとおり。・女性では、男性と比較し、ゾルピデムの見かけのクリアランスが平均35%低いことが示唆された(236 vs.364mL/分、p<0.001)。・この違いは、体重による影響を受けていなかった。・いくつかの臨床試験において、同用量を服用している場合、男性よりも女性において機能障害が大きかったが、すべての研究において、経口投与8時間後における活性薬物は、プラセボ群と区分できなかった。・路上走行試験でも同様に、経口即時放出型ゾルピデム10mg投与8時間後において、男性および女性に運転障害があることは示されなかった。・ゾルピデムの臨床的有効性および有害事象における男女差は、臨床試験では実証されておらず、女性において特別なリスクがあることは示されなかった。 著者らは「女性に対するゾルピデム投与量減量は、入手可能な科学的根拠では裏付けられていない。過少投与が不適切な不眠症治療につながり、その結果として起こるリスクを上昇させる可能性がある」としている。■関連記事ゾルピデム処方と自動車事故リスク睡眠薬使用は自動車事故を増加させているのか日本人高齢者の不眠、男女間で異なる特徴:岡山大

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「働き方改革」一歩前進へ-ロボット麻酔システム-

 2019年4月16日、福井大学医学部の重見 研司氏(麻酔・蘇生学教授)、ならびに松木 悠佳氏(同、助教)とその共同研究者らは、全身麻酔の3要素である鎮静・鎮痛・筋弛緩薬をすべて自動的に制御する日本初のシステムについて厚生労働省で記者発表した。本会見には共同研究者の長田 理氏(国立国際医療研究センター麻酔科診療科長)、荻野 芳弘氏(日本光電工業株式会社 呼吸器・麻酔器事業本部専門部長)も同席し、実用化に向けた取り組みについて報告した。なぜ麻酔システムを開発したのか 近年、全身麻酔が必要な手術件数は全国的に年々増加傾向にある。他方で、医師の「働き方改革」が叫ばれているが、医師偏在など問題解決の糸口は未だ見えていない。これに対し、労働時間の削減とともに質の担保が不可欠と考える重見氏は、「血圧測定や人工呼吸は看護師による手助けを要する。しかし、容態安定時や、繰り返しになるような単純作業は、機械の助けを借りることで“ついうっかり”がなくなり、安全面にも貢献する」と述べ、「機械補助によって麻酔科医の業務負担が劇的に軽減される。働き方改革と医療の質のバランスをとるための技術が必要」と、開発の経緯を語った。機械化のメリットとは ロボット麻酔システムは、“ロボット”と銘打っているが、実は、制御用のソフトウェアのことを指す。このシステムは、脳波を用いて薬剤を自動調節するため、医療ビッグデータやAIに頼らずとも、麻酔薬を至適濃度に保つことができる。 このシステムは、1)バイタルサインを測定し、催眠レベルの数値、筋弛緩状態を出力するモニター、2)制御用コンピューター、3)麻酔薬3種を静脈に注入するシリンジポンプの3つで構成されている。また、重見氏によると「麻酔科医の生産性・患者QOL・医療経済性の向上、患者安全への寄与、さらには、“診断”を加味して“加療”するシステム」という点が特徴だという。 期待できる業務として、鎮痛・鎮静・筋弛緩薬の初回投与および投与調節、脳波による鎮静度評価、筋弛緩薬の投与調節があり、本システムは婦人科の腹腔鏡手術、甲状腺、腹部などの脳波モニターに影響を及ぼさない術野での使用が可能である。松木氏は「これらを活用することで、麻酔科医の時間的余裕が生まれ、容態急変時など患者の全身状態の看視に注力ができる」と、麻酔科医と患者の両者における有用性について語った。実用化までの道のり これまで、2017年より2つの予備研究を実施し100例近くのデータ収集を行うことで、自動制御に関するアルゴリズム改善に役立ててきた。今年3月より臨床研究法に則り、特定臨床研究として、ロボット麻酔システムを使用し、全身麻酔時に使用する静脈麻酔薬の自動投与調節の有効性と安全性の検討に関する対象無作為化並行群間比較試験を開始。目標症例数は福井大学と国立国際医療研究センターを併せて60例とし、2019年9月までを予定。現時点ですでに21例が登録を終えている。今後、治験などを経てシステム運用のための講習会の企画や2022年の発売を目指す。■関連記事ソーシャルロボットによる高齢者の認知機能検査の信頼性と受容性

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ICU重症例への心理学的介入、PTSD症状を改善するか/JAMA

 集中治療室(ICU)に入室した重症患者では、看護師主導による予防的な心理学的介入を行っても、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状は軽減しないとの研究結果が、英国・University College London Hospitals NHS Foundation TrustのDorothy M. Wade氏らが行ったPOPPI試験で示された。研究の詳細は、JAMA誌2019年2月19日号に掲載された。ICU退室後6ヵ月のアウトカムに関するメタ解析では、臨床的に重要なPTSD症状の有病率は25%とされる。ICU入室中の急性ストレスや恐怖体験(幻覚、偏執性妄想、悪夢)の記憶は、PTSD症状などの長期的な心理学的合併症の独立のリスク因子であり、その予防への取り組みは退室後では遅すぎ、ICUで行う必要があるという。外傷でICUに入室した患者では、ICUでの臨床心理士との面談で、PTSD症状の経験が減少するとの報告がある。24のICUが参加したクラスター無作為化試験 本研究は、ICUで開始された看護師主導による複合的な心理学的予防介入が、患者報告による6ヵ月後のPTSD症状の重症度を軽減するかを検討するクラスター無作為化試験である(英国国立健康研究所[NIHR]の助成による)。 英国の24のICUが登録され、介入群または対照群に12施設ずつが無作為に割り付けられた。試験参加者は、年齢18歳以上、ICU入室から48時間以上が経過し、この間にレベル3(intensive)の治療を受け、意思決定能力が回復した重症患者であった。 介入群のICUでは、ベースラインの期間中(1~5ヵ月)に通常治療を行った後、訓練を受けた看護師により高リスク(急性の強いストレス下にある)患者に対し、複合的な心理学的予防介入が実施された。介入は、ICUの治療環境に加え、3つのストレス支援のセッションと、リラクゼーション・リカバリー・プログラムの推進で構成された。対照群のICUでは、ベースライン期および介入期ともに通常治療が行われた。 主要臨床アウトカムは、PTSD症状スケール自己報告(PSS-SR)質問票による、6ヵ月時の生存者のPTSD症状の重症度とした。PSS-SR質問票は、0~51点でスコア化され、点数が高いほど症状の重症度が高い。臨床的に意義のある最小変化量は4.2点とされた。副次アウトカムも、全項目で有意差なし 2015年9月~2017年1月の期間に1,458例(平均年齢58[SD 16]歳、599例[41%]が女性)が登録され、試験を完遂した1,353例(93%)が最終的な解析に含まれた。 主要臨床アウトカムは達成されなかった。介入ICU群のPSS-SR質問票の平均スコアは、ベースライン期が11.8点であったのに対し、介入期は11.5点であった(差:-0.40、95%信頼区間[CI]:-2.46~1.67)。また、対照ICU群ではそれぞれ10.1点、10.2点(0.06、-1.74~1.85)だった。6ヵ月時のPTSD症状の重症度の両群間の差は有意ではなかった(推定治療効果[差分の差分]:-0.03、95%CI:-2.58~2.52、p=0.98)。 副次アウトカムも、2つの短期的アウトカム(30日までの非鎮静での生存日数、ICU入室日数)および4つの6ヵ月時のアウトカム(PSS-SR質問票スコアがその時点およびその後のPTSDを予測する閾値[18点]以上の患者の割合、Hospital Anxiety and Depression Scale[HADS]で評価した不安スコア、HADSによる抑うつスコア、EQ-5D-5Lで評価した健康関連QOL)のすべてにおいて、有意差のある結果は得られなかった。 また、事前に規定されたサブグループ(年齢、性別、重複剥奪指標、せん妄の発現日数、STAI-6で評価した不安、手術の種類など)のいずれにおいても、有意差のある結果は認めなかった。 著者は、有効性が示せなかった原因として、(1)ストレス支援セッション開始のタイミングが早すぎた、(2)3セッションすべてを受けたのは全例ではなかった、(3)ICU看護師は専門家ではないため目的どおりにセッションを行うのが困難だったなどの可能性を挙げている。

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ネコ型ロボット、せん妄に有効

 せん妄は入院患者に多く発症し、入院期間、死亡率、および長期的な認知の転帰など負の予測因子に強く一貫している。せん妄に関連する症状としては、集中力の低下、睡眠障害、精神運動興奮、および情緒障害が含まれる。また、せん妄による行動障害の管理は困難であり、せん妄の持続期間または重症度を軽減するために、初期の身体離床、方向転換、自然な睡眠パターンを高めるための試み、およびベッドサイドのシッターなどの非薬理学的手段が提唱されているが、それらを超える確立された治療は限られている。今回、米国・Albany Medical CenterのJoshua S-M氏らは、ペット型ロボットによるICUでのせん妄患者による行動障害軽減の可能性を明らかにした。The American Journal of Medicine誌2月7日号掲載の報告。 近年、ペット型ロボットの使用は、認知症の特別養護老人ホームに入居する患者の興奮抑制に役立つと報告されている。認知症はせん妄の主要な危険因子であるため、病院内でこれらが役立つかどうかが推測されている。研究者らは、せん妄を持つICU患者に対し、非薬理学的行動介入としてペット型ロボットの使用に関する実現の可能性を評価するために、パイロット試験を行った。 研究者らは、2017年7~12月に、当院のICUでせん妄治療を受けている20例に対し、ICUにおけるせん妄評価法(CAM-ICU)で評価を実施。患者の代理人は、書面による同意説明後、new Joy For All robotic cat(Hasbro、RI:ネコ型ロボット)を受け取った。このネコは電池式で、触るとゴロゴロ、ニャーなどの鳴き声を発する。患者、家族、そしてベッドサイドの看護師は、このネコの使用を勧められた。ICUへ入室3日目に、患者(可能なら)とその家族(すぐに可能なら)に対して、5つの質問を行い、体系化されていないフィードバックを求めた。同じ調査をすべてのICUの看護師、サポートスタッフ、および医師に電子メールで送信した(n=400)。調査の質問事項は、リッカート尺度を用いて5段階で評価した(1:強く反対~5:強く同意する)。 主な結果は以下のとおり。・患者/家族全体のうち23件、ICUサポートスタッフから70件の結果が報告された。・患者20例の年齢中央値は73歳(26~94歳)で、50%が女性だった。・ICUでの1次診断は65%が内科的、35%が外科的であった。・調査登録前に投与された薬は、鎮静薬:85%、ベンゾジアゼピン系:55%、抗精神病薬:30%だった。・ミトンは65%、拘束は40%の患者にされていた。・全体として、患者/家族および臨床スタッフそれぞれ65%が、ネコ型ロボットの使用によって落ち着いたと回答。また、回答者の70%以上が、ネコ型ロボットによる臨床ケアの妨害はなかったと回答した。・回答者の大多数は、ネコ型ロボットがICU患者へ将来的な役割を果たす可能性があることに同意した(患者/家族:95%、スタッフ:72%)。・介入は簡潔、目立たず、安全で低コストだった。・ペット型ロボットは一般的に患者、家族、そしてスタッフに好評だった。・主な不満や参加辞退の理由は、「イヌ型ロボットがなかった」というもので、最も多かったのは、「ネコ型同様にイヌ型ロボットを提供してほしい」という声だった(コメントの20%)。 本試験の見解は研究デザインとサンプルサイズによって制限されており、実現の可能性の探索研究であったため、対照群の登録はない。しかし、これはICU環境でのペット型ロボットによる初の研究で、この研究の終了以降、せん妄のある特定の患者へペット型ロボットの利用についてICUの看護師から問い合わせが増えている。 潜在的には、ペット型ロボットの使用および同様の介入は、患者および家族の経験を改善しながら、向精神薬の使用および拘束の必要性を減らすことができる。さらに、そのような装置はほかの入院患者(小児科、脳外傷など)、または重症度が低いユニットにおいてもいっそう役立つかもしれず、今後、より大規模な検証が求められる。

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脳波に基づく麻酔薬の調節、術後せん妄を抑制せず/JAMA

 大手術を受けた高齢患者の術後せん妄の予防において、脳電図(EEG)ガイド下麻酔薬投与は、通常治療と比較して有効ではないことが、米国・セントルイス・ワシントン大学のTroy S. Wildes氏らが行ったENGAGES試験で示された。研究の詳細は、JAMA誌2019年2月5日号に掲載された。術中EEGにおける脳波の平坦化(suppression)は過剰に深い全身麻酔を示唆することが多く、術後せん妄と関連するとされる。術後せん妄の抑制効果を検討する単施設無作為化試験 本研究は、EEGの脳波図に基づき麻酔薬の投与を調節するアプローチによる、術後せん妄の抑制効果の評価を目的に、単施設(米国、セントルイス市のBarnes-Jewish病院)で行われたプラグマティックな無作為化臨床試験である(米国国立衛生研究所[NIH]の助成による)。 患者登録は、2015年1月~2018年5月の期間に実施され、フォローアップは2018年7月まで行われた。対象は、年齢60歳以上、大手術を施行され、全身麻酔を受ける患者であった。被験者は、EEGガイド下麻酔薬投与または通常の麻酔治療を行う群に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、術後1~5日におけるせん妄の発症とした。せん妄の評価には、confusion assessment method(CAM)またはCAM for the intensive care unit(CAM-ICU)が用いられた。術中に、麻酔薬濃度、EEG suppression、低血圧の評価が行われた。せん妄発症率:26.0 vs.23.0%、最近のメタ解析と対照的な結果 1,232例(年齢中央値:69歳[範囲:60~95歳]、女性:563例[45.7%])が無作為割り付けの対象となり、このうち1,213例(98.5%、EEGガイド麻酔群:604例、通常麻酔治療群:609例)で主要アウトカムの評価が行われた。 術後1~5日におけるせん妄は、EEGガイド麻酔群では604例中157例(26.0%)、通常麻酔治療群では609例中140例(23.0%)に認められ、両群間に有意な差はなかった(差:3.0%、95%信頼区間[CI]:-2.0~8.0、p=0.22)。 呼気終末揮発性麻酔薬濃度(最小肺胞濃度[MAC])中央値は、EEGガイド麻酔群が通常麻酔治療群に比べ有意に低く(0.69 vs.0.80、差:-0.11、95%CI:-0.13~-0.10)、EEG suppressionの累積時間中央値(7 vs.13分、-6.0、-9.9~-2.1)およびバイスペクトラルインデックス(BIS、0~100、スコアが低いほど催眠[鎮静状態]が深い)<40の累積時間中央値(32 vs.60分、-28.0、-38.0~-18.0)もEEGガイド麻酔群で有意に短かった。平均動脈圧<60mmHgの累積時間中央値は、両群間に差はなかった(7 vs.7分、0.0、-1.7~1.7)。 術中の望ましくない体動は、EEGガイド麻酔群が137例(22.3%)と、通常麻酔治療群の95例(15.4%)よりも多く認められた(差:6.9%、95%CI:2.5~11.4、p=0.002)。術中の記憶をともなう覚醒は両群ともにみられなかった。術後の悪心・嘔吐は、それぞれ48例(7.8%)、55例(8.9%)で発現した(-1.1%、-4.3~2.1、p=0.49)。 重篤な有害事象の発症は、EEGガイド麻酔群が124例(20.2%)、通常麻酔治療群は130例(21.0%)と報告された(差:-0.8%、95%CI:-5.5~3.8、p=0.72)。術後30日以内に、EEGガイド麻酔群の4例(0.65%)、通常治麻酔療群の19例(3.07%)が死亡した(-2.42%、-4.3~-0.8、p=0.004)。 著者は、「これらの知見は、EEGガイドにより術後せん妄の発症が3分の1以上減少したとする最近のメタ解析と対照的な結果であるが、メタ解析に含まれた試験との方法論的な違い(麻酔技術、プロトコール順守、患者集団のリスクプロファイル、EEGガイドが麻酔管理に及ぼす影響、せん妄の確定の厳密さなど)が、この乖離をある程度説明できると考えられる」としている。

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統合失調症に対するブレクスピプラゾールのレビュー

 ブレクスピプラゾールは、日本、米国、EU(成人患者対象)など、各国において統合失調症治療薬として承認されている、経口非定型抗精神病薬である。ニュージーランド・SpringerのJames E. Frampton氏は、統合失調症に対するブレクスピプラゾールのレビューを行った。Drugs誌オンライン版2019年1月22日号の報告。 主なレビューは以下のとおり。・アリピプラゾールのように、ドパミンD2およびセロトニン5-HT1A受容体に対する部分アゴニスト作用と、セロトニン5-HT2A受容体に対するアンタゴニスト作用を有する薬剤である。・ブレクスピプラゾールはD2受容体への活性が低く、5-HT1A、5-HT2A、ノルアドレナリンα1B受容体への作用を併せ持つことで、アリピプラゾールよりも有害事象や錐体外路症状が少ないと推測される。・急性増悪を伴う統合失調症の成人患者に対するブレクスピプラゾール2~4mg/日での治療は、プラセボと比較し、全体の症状および心理社会的機能において、統計学的に有意かつ臨床的に意味のある改善が認められた。・維持療法におけるブレクスピプラゾール1~4mg/日での治療は、プラセボと比較し、再発までの時間を有意に遅らせ、症状および機能の安定化または継続的な改善が認められた。・ブレクスピプラゾールは、一般的に忍容性が高かった。有害事象プロファイルでは、賦活化および過鎮静の発現率が低く、QT間隔および代謝パラメータの変化はわずかで臨床的に有意ではなく、中程度の体重増加が認められた。 著者らは「これまでの臨床的エビデンスによると、ブレクスピプラゾールにより、統合失調症の治療選択肢がより良い方向へ広がることが示唆された」としている。■関連記事日本人統合失調症患者におけるブレクスピプラゾールの長期安全性・有効性に関する52週オープンラベル試験日本の急性期統合失調症患者に対するブレクスピプラゾールの有効性と安全性急性期統合失調症患者におけるブレクスピプラゾールの代謝パラメータや体重増加への影響

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不安や睡眠の質と飲酒との関係

 睡眠不足の人は、睡眠の質を高めるために不安を和らげようとするが、毎日の飲酒が不安や睡眠障害を緩和する要因であるかはよくわかっていない。台湾・輔仁大学のKe-Hsin Chueh氏らは、不安と睡眠の質との関連および毎日の飲酒が、睡眠不足の人の不安や睡眠の質に対し調整因子として働くかについて、検討を行った。The Journal of Nursing Research誌オンライン版2018年11月28日号の報告。 台湾北部で睡眠不足(ピッツバーグ睡眠質問票:5超)を報告した20~80歳の84例を対象に、横断研究を行った。毎日の飲酒を含む人口統計、不安のレベル、うつ病のレベル、睡眠の質を網羅した構造化された質問票を用いてデータを収集した。 主な結果は以下のとおり。・対象者は、女性の割合が高かった(72.6%)。・平均年齢は41.81歳(SD:12.62)であった。・不安の重症度の割合は、最小51.2%、軽度19.0%、中等度13.1%、重度14.3%であった。・重回帰分析を用いて睡眠の質に関連する因子で調整した結果、睡眠療法実施、毎日の飲酒、不安が睡眠の質不良の予測因子であった。・毎日の飲酒は、不安と睡眠の質との関連を緩和することが示唆された。 著者らは「睡眠不足の人は、睡眠の質不良や不安を自己治療するための誤った飲酒を避け、代わりに睡眠衛生教育とメンタルヘルスケアを利用するべきである。毎日の飲酒は、不安症状と睡眠の質との関係の調整因子となる可能性がある」としている。■関連記事不眠症とアルコール依存との関連入院患者の不眠症治療における催眠鎮静薬減量のための薬剤師介入睡眠薬使用で不眠症患者のQOLは改善するのか

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入院患者の不眠症治療における催眠鎮静薬減量のための薬剤師介入

 多くの患者において入院は不眠症の原因となり、通常は対症療法で治療が行われる。しかし、催眠鎮静薬の誤った使用は、とくに高齢入院患者において合併症と関連している。この合併症には、めまい、転倒、過鎮静が含まれる。このような潜在的な危険性のため、とくに高齢者においては、不眠症に対する催眠鎮静薬の広範な使用は、多くの病院で推奨されていない。サウジアラビア・King Abdulaziz University Faculty of PharmacyのAisha F. Badr氏らは、処方パターンの検討および評価を行い、地域病院における日々の薬剤師介入を通じた催眠鎮静薬の使用最適化について検討を行った。Saudi Pharmaceutical Journal誌2018年12月号の報告。 本研究は、前後比較研究として催眠鎮静薬の使用や合併症発症などについて、薬剤師による介入前と介入後で比較を行った。催眠鎮静薬の使用に関するデータを2ヵ月間レトロスペクティブに収集し、分析のために100例の患者サンプルをランダムに選択した。2ヵ月間のフォローアップでは、薬剤師1名が日々の処方を検討し、必要に応じて不要薬の中止や催眠鎮静薬の新規処方の勧告を行った。介入前後における結果は、患者の人口統計学的要因の違い、複数の催眠鎮静薬の処方、合併症の記録について比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・薬剤師の介入により、97例の患者の25%が催眠鎮静薬を中止した。・複数の催眠鎮静薬を投与されている患者数は、介入後のほうが介入前よりも有意に少なかった(15例 vs.34例、p=0.0026)。・合併症の発生率は、介入前後で有意な差は認められなかった(過鎮静:p=0.835、転倒:p=0.185、せん妄:p=0.697)。 著者らは「救命救急を除く入院患者において、催眠鎮静薬の使用は広まっている。また、多くの患者が複数の催眠鎮静薬を服用している可能性もあり、潜在的な問題が蓄積する可能性がある。薬剤師介入により、催眠鎮静薬を処方されている入院患者の25%が使用を中止し、複数の催眠鎮静薬使用患者も有意に減少した。入院患者に対する不必要な催眠鎮静薬の使用を避け、薬剤師によるモニタリングが最適化されるよう、さらなる努力を行うべきである」としている。■関連記事ベンゾジアゼピン系薬の中止戦略、ベストな方法は不眠症におけるデュアルオレキシン受容体拮抗薬とその潜在的な役割に関するアップデートメラトニン使用でベンゾジアゼピンを簡単に中止できるのか

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第13回 魚アレルギー患者はEPA/DHA製剤や魚油サプリを服用できる?【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 薬局で勤務していると、魚アレルギーを自認している患者さんに出会う機会があるかと思います。自認と書いたのは、魚アレルギーといっても、実際はアニサキスアレルギーや鮮度の落ちた魚中のヒスタミンによるアレルギー様食中毒である場合もあり、新鮮な魚を食べても起こる本当の魚アレルギーと区別が必要なこともあるためです。このため、自称・魚アレルギーの患者さんからEPA/DHA製剤や魚油サプリメントを摂取してよいかというご質問にはやや答えづらいと思っています。反射的にダメと言ってしまうこともありそうですが、本当に魚アレルギーとEPA/DHA製剤やサプリメントは関連があるのでしょうか。この辺りのエビデンスは豊富ではないようで、思ったようには見つかりませんでしたが、現状調べてみた情報を紹介しますので、参考にしていただければ幸いです。まず、EPA/DHA製剤であるイコサペント酸エチル(商品名:エパデール)とオメガ-3脂肪酸エチル(同:ロトリガ)の添付文書を参照すると、前者には魚アレルギー患者に投与禁忌との記載はなく、後者では「本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある患者は禁忌」という記載のみで、魚アレルギーとの関連について明示的な記載はありません。魚アレルギーの原因物質は皮に含まれる魚ゼラチンというタンパク質であるとの研究を紹介します1)。この研究では、魚アレルギーを有する小児の魚ゼラチン(1型コラーゲン)に対するIgE抗体の分析を行うため、血清サンプルを以下の3グループから採取しています。1.魚アレルギーを有し、魚肉に特異的IgEを有する10例2.魚肉とウシゼラチンの両方に対するアレルギーおよび特異的IgEを有する2例 3.アトピー性皮膚炎で魚肉に特異的IgEを有する15例 これらのグループの魚ゼラチンに対するIgE抗体をELISAおよびイムノブロッティングを用いて分析したところ、1の群では10例中3例、2の群では全例、3の群では15例中5例が魚ゼラチンに対する特異的IgEを有していました。このことから、魚ゼラチンは魚に過敏な患者さんのアレルゲンである可能性があるという結果が示唆されています。ただし、高純度の医薬品であれば、理論上魚ゼラチンなどの不純物は入らないはずですので、EPA/DHA製剤を服用したところでアレルゲンとなることは考えにくいのではないかと推察できます。明確な関連は不明だが、アレルギー症状が生じた事例も存在サプリメントの場合でも、魚アレルギーを持つ患者6例が、2種類の魚油サプリメントを1時間ごとに経口摂取して皮膚アレルギーテストを行ったところ、いずれも陰性だったという試験もあり2)、かなり関連性は薄いと考えられます。なお、総合医薬品データベースのLexicompにおけるOmega-3-acid ethyl esters(fish oil) の項目では、「Fish allergy: Use with caution in patients with known allergy or sensitivity to fish and/or shellfish.」と記載があり、注意レベルにとどまっています。ただし明確な根拠を示しているコメントではなさそうです。一方で、魚介類アレルギーがある女性の症例報告で、魚油カプセル服用開始4日後に息切れ、胸部圧迫感など重度のアレルギー症状を呈し、中止後5日以内に鎮静化したというケースも報告されています3)。一定の注意を払ってもよさそうですが、明確に関連を語れるほどの根拠とまでは言えず、即時型アレルギーを誘発していない方の服用をストップするほどではないかもしれません。これから服用を開始したいと考える方に関しては、冒頭で述べたように本当は魚アレルギーではない可能性もあるため、アレルギー検査をすすめたり、体内でEPA/DHAに変換されるαリノレン酸を多く含むえごま油やあまに油を提案したりするのもよいかもしれません。1)Sakaguchi M, et al. J Allergy Clin Immunol. 2000;106:579-584.2)Mark BJ, et al. Allergy Asthma Proc. 2008;29:528-529.3)Howard-Thompson A, et al. Int J Clin Pharm. 2014;36:1126-1129.

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過剰処方の解消に薬剤師が一役買った(解説:折笠秀樹氏)-964

 薬剤の過剰投与はポリファーマシーとも呼ばれ、日本でも社会問題になっている。とくに、高齢者で問題が大きい。なぜ問題かというと、過剰投与によってさまざまな有害事象が生じるからである。極論としては、薬剤の過剰投与が死因の上位にあるという意見も聞かれる。欧米では「ビアーズ(Beers)基準」が作られ、使用を避けるべき薬剤の一覧表が示されている。薬とお酒を掛けて「Beers」、ビール基準と洒落たのかとも思ったけど、実は「Beers」とは提唱した人の名前らしい。 今回、ランダム化比較試験を通じて、過剰処方の解消に薬剤師が一役買えることが立証できた。薬剤師が過剰処方の危険性について小冊子を患者に渡したり、薬剤師が担当医に薬を減らすよう進言した。薬剤師から医師に処方箋について進言することは、日本ではできないだろう。しかし、本研究の実施場所であるカナダ・ケベック州では、薬剤師に法律上認められた行為のようだ。もちろん、ただ単に進言するのではなく、きちんとしたエビデンスを伴う資料を付けて進言した。 こういった薬剤師の活動によって、過剰投与は43%も解消(中止)できた。通常群では12%しか解消できなかった。催眠鎮静薬(俗にいう睡眠薬)では43%中止でき(通常群では9%)、NSAIDでは58%も中止できた(通常群では22%)。 あと1点興味深かったことがある。薬剤師の活動にもかかわらず、過剰投与がなかなか解消しなかった高齢者は、長期投与例(5年以上)と複数投与例(10剤以上)であったことである。過剰投与の解消は、できるだけ初期に手を付けることが必要なのだろう。

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第7回 意識障害 その6 薬物中毒の具体的な対応は?【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)ABCの安定が最優先! 気管挿管の適応を正しく理解しよう!2)治療の選択は適切に! 胃洗浄、血液浄化の適応は限られる。3)検査の解釈は適切に! 病歴、バイタルサイン、身体所見を重視せよ!【症例】42歳女性の意識障害:これまたよく遭遇する症例42歳女性。自室のベッド上で倒れているところを、同居している母親が発見し、救急要請。ベッド脇には空のPTP(press through pack[薬のシート])が散在していた。救急隊接触時のバイタルサインは以下のとおり。どのようにアプローチするべきだろうか?●搬送時のバイタルサイン意識:200/JCS血圧:102/58mmHg 脈拍:118回/分(整) 呼吸:18回/分 SpO2:97%(RA)体温:36.9℃ 瞳孔:3/3mm +/+この症例、誰もが急性薬物中毒を考えると思います。患者の周りには薬のシートも落ちているし、おそらくは過量に内服したのだろうと考えたくなります。急性薬物中毒の多くは、経過観察で改善しますが、ピットフォールを理解し対応しなければ、痛い目に遭いかねません。「どうせoverdose(薬物過量内服)でしょ」と軽視せず、いちいち根拠をもって鑑別を進めていきましょう。重度の意識障害で意識することは?(表1)このコーナーの10's Ruleの「1)ABCの安定が最優先!」を覚えているでしょうか。重度の意識障害、ショックでは気管挿管を考慮する必要がありました。意識の程度が3桁(100~300/JCS)と重度の場合には、たとえ酸素化の低下や換気不良を認めない場合にも、確実な気道確保目的に気管挿管を考慮する必要があることを忘れてはいけません。薬物中毒に伴う重度の意識障害、出血性ショック(消化管出血、腹腔内出血など)症例が典型的です。考えずに管理をしていると、目を離した際に舌根沈下、誤嚥などを来し、状態の悪化を招いてしまうことが少なくありません。来院時の酸素化や換気が問題なくても、バイタルサインの推移は常に確認し、気管挿管の可能性を意識しておきましょう。●Rule1 ABCの安定が最優先!●Rule8 電解質異常、アルコール、肝性脳症、薬物、精神疾患による意識障害は除外診断!画像を拡大する薬物中毒のバイタルサイン内服した薬剤や飲酒の併用の有無によってバイタルサインは大きく異なります。覚醒剤やコカインなど興奮系の薬剤では、血圧や脈拍、体温は上昇します。それに対して、頻度の高いベンゾジアゼピン系薬に代表される鎮静薬ではすべて逆になります。飲酒もしている場合には、さらにその変化が顕著となります。瞳孔も重要です。興奮系では一般的に散瞳し、オピオイドでは縮瞳します。救急外来では明らかな縮瞳を認める場合には、脳幹病変以外にオピオイド、有機リン中毒を考えます。「目は口ほどにものを言う」ことがあります。自身で必ず瞳孔所見をとることを意識しましょう。薬物中毒の基本的な対応は?急性薬物中毒の場合には、意識障害が遷延することが少なくないため、内服内容、内服時間をきちんと確認しましょう。内服してすぐに来院した場合と、3時間経過してから来院した場合とでは対応が大きく異なります。薬物過量内服においても初療における基本的対応は常に一緒です。“Airway、Breathing、Circulation”のABCを徹底的に管理します。原因薬剤が判明している場合には、拮抗薬の有無、除染・排泄促進の適応を判断します。拮抗薬など特徴的な治療のある中毒は表2のとおりです。最低限これだけは覚えておきましょう。除染や排泄促進は、内服内容が不明なときにはルーチンに行うものではありません。ここでは胃洗浄の禁忌、血液透析の適応を押さえておきましょう。画像を拡大する胃洗浄の禁忌意識障害患者において、確実な気道確保を行うことなしに胃洗浄を行ってはいけません。誤嚥のリスクが非常に高いことは容易に想像がつくでしょう。また、酸やアルカリを内服した場合も腐食作用が強く、穿孔のリスクがあるため禁忌です。胃洗浄を行い、予後を悪くしてはいけません。意識状態が保たれ、内服内容が判明している場合に限って行うようにしましょう。もちろん薬物が吸収されてしまってからでは意味がないため、原則内服から1時間を経過している場合には適応はないと考えておいてよいでしょう。CTを撮影し薬塊などが胃内に貯留している場合には、胃洗浄が有効という報告もありますが、薬物中毒患者全例に胸腹部CTを撮影することは現実的ではありません1)。エコー検査で明らかに胃内に貯留物がある場合には、考慮してもよいかもしれません。活性炭の投与もルーチンに行う必要はありません。胃洗浄の適応症例には、洗浄後投与すると覚えておけばよいでしょう。血液透析の適応となる中毒体内に吸収されたものを、体外に除去する手段として血液透析が挙げられますが、これもまたルーチンに行うべきではありません。多くの薬物は血液透析では除去できません。判断する基準として、分布容積と蛋白結合率を意識しましょう。分布容積が小さく、蛋白結合率が低ければ透析で除去しえますが、そういったものは表3のような中毒に限られます。診療頻度の高いベンゾジアゼピン系薬や非ベンゾジアゼピン系薬(Z薬)、三環系抗うつ薬は適応になりません。ベンゾジアゼピン系薬、Z薬の過量内服は遭遇頻度が高いですが、それらのみの内服であれば過量に内服しても、きちんと気道を確保し管理すれば、一般的に予後は良好であり透析は不要なのです。画像を拡大する薬物中毒の検査は?1)心電図心電図は忘れずに行いましょう。QT延長症候群など、薬剤の影響による変化を確認することは重要です。内服時間や意識状態を加味し、経時的に心電図をフォローすることも忘れてはいけません。以前の心電図の記録が存在する場合には、必ず比較し新規の変化か否かを評価しましょう。2)血液ガス酸素化や換気の評価、電解質や血糖値の評価、そして中毒に伴う代謝性アシドーシスを認めるか否かを評価しましょう。3)尿中薬物検査キットトライエージDOAなどの尿中薬物検査キットが存在し、診療に役立ちますが、結果の解釈には注意しなければなりません。陽性だから中毒、陰性だから中毒ではないとはいえないことを覚えておきましょう。偽陽性、偽陰性が少なくないため、病歴と合わせ、根拠の1つとして施行し、結果の解釈を誤らないようにしましょう。薬物中毒疑い患者の実際の対応“10's Rule”にのっとり対応することに変わりはありません。Ruleの1~4)では、重度の意識障害であるため、気管挿管を意識しつつ、患者背景を意識した対応を取ります。薬物過量内服患者の多くは女性、とくに20~50代です。また、薬物過量内服は繰り返すことが多く、身体所見では利き手とは逆の手にリストカット痕を認めることがあります。意識しておくとよいでしょう。バイタルサインがおおむね安定していれば、低血糖を否定し、頭部CTを撮影します。この場合には、脳卒中の否定以上に外傷検索を行います。薬物中毒の患者は、アルコールとともに薬を内服していることもあり、転倒などに伴う外傷を併発する場合があるので注意しましょう。また、採血では圧挫に伴う横紋筋融解症*を認めることもあります。適切な輸液管理が必要となるため、CK値や電解質、腎機能は必ず確認しましょう。アルコールの関与を疑う場合には、浸透圧ギャップからアルコールの推定血中濃度を計算すると、診断の助けとなります。詳細は、次回以降に解説します。*急性中毒の3合併症:誤嚥性肺炎、異常体温、非外傷性圧挫症候群急性薬物中毒の多くは、特異的な治療をせずとも時間経過とともに改善します。また、繰り返すことが多く、再来した場合には軽視しがちです。そのため、確立したアプローチを持たなければ痛い目をみることが少なくないのです。外傷や痙攣、誤嚥性肺炎の合併を見逃す、アルコールとともに内服しており、症状が遷延するなどはよくあることです。根拠をもって確定、除外する意識を常に持ちながら対応しましょう。症例の経過本症例では空のPTPの存在や40代の女性という背景から、第一に薬物過量内服を疑いながら、Ruleにのっとり対応しました。母親から病歴を聴取すると、来院3時間前までは普段どおりであり、その後患者の携帯電話の記録を確認すると、付き合っている彼氏とのメールのやり取りから、来院2時間ほど前に衝動的に薬を飲んだことが判明しました。内服内容もベンゾジアゼピン系の薬を中心としたもので致死量には至らず、採血や頭部CTでも異常がないことが確認できたため、モニタリングをしながら、家族付き添いの下、入院管理としました。時間経過とともに症状は改善し、翌日には意識清明、独歩可能となり、かかりつけの精神科と連携を取り、退院となりました。本症例は典型的な薬物中毒症例であり、基本的なことを徹底すれば恐れることはありません。きちんと病歴や身体所見をとること、バイタルサインは興奮系か抑制系かを意識しながら解釈し、瞳孔径を忘れずに確認すればよいのです。次回は、アルコールによる意識障害のピットフォールを、典型的なケースから学びましょう。1)Benson BE, et al. ClinToxicol(Phila). 2013;51:140-146.

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薬剤師主導の介入で、高齢者への不適正処方が改善/JAMA

 薬剤師の主導による教育的介入により、高齢者への不適正処方が、通常治療に比べて抑制されるとの研究結果が、カナダ・モントリオール大学のPhilippe Martin氏らが実施したD-PRESCRIBE試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2018年11月13日号に掲載された。北米では、高齢の外来患者において、不適正処方率が高い状況が続いているという。不適正処方は、薬剤による有害事象、転倒、認知機能障害、緊急入院のリスクの増大を招く可能性がある。地域薬局の薬剤師主導介入を検討するクラスター無作為化試験 本研究は、不適正処方の防止に関して、薬剤師主導の介入の有効性を評価する目的で、カナダ・ケベック州で行われたプラグマティックなクラスター無作為化臨床試験である(カナダ保健研究機構[CIHR]の助成による)。 2014年2月~2017年9月の期間に、地域の薬局を登録し、介入群または対照群に無作為に割り付け、2018年2月までフォローアップを行った。 対象患者は、年齢65歳以上で、高齢者における潜在的に適正ではない医薬品を定めたビアーズ基準(Beers criteria)に含まれる4種の薬剤(催眠鎮静薬、第1世代抗ヒスタミン薬、glyburide(グリベンクラミド)、選択的非ステロイド性抗炎症薬)のうち1剤を処方された者とし、69の地域薬局で登録が行われた。 介入群の薬剤師は、患者には、薬剤の中止・減量に関する患者教育用の小冊子を送るよう奨励された。同時に、担当医には、薬剤の中止・減量の推奨に関するエビデンスに基づく薬学的見解が記された資料を送付することが勧められた。対照群の薬剤師は、通常治療を行った。 34の薬局が介入群(248例)に、35の薬局が対照群(241例)に割り付けられた。患者、担当医、薬剤師、評価者には、アウトカムのデータはブラインドされた。主要アウトカムは、6ヵ月時の不適正処方の中止とし、処方の更新は薬局の薬剤管理記録で確認した。不適正処方のリスクが31%低減 全体の患者の平均年齢は75歳、66%(322例)が女性であった。23%(113例)が80歳以上で、27%(132例)がフレイルの基準を満たした。437例(89%)が試験を完遂した(介入群:219例[88%]、対照群:218例[91%])。 6ヵ月時に、不適正処方に該当しなかった患者の割合は、介入群が42.7%(106/248例)と、対照群の12.0%(29/241例)に比べ良好であった(リスク差:31%、95%信頼区間[CI]:23~38%)。 各薬剤における不適正処方の中止の割合は、催眠鎮静薬では介入群が43.2%(63/146例)、対照群は9.0%(14/155例)(リスク差:34%、95%CI:25~43%)、glyburideではそれぞれ30.6%(19/62例)、13.8%(8/58例)(17%、2~31%)、非ステロイド性抗炎症薬では57.6%(19/33例)、21.7%(5/23例)(35%、10~55%)であった。薬剤クラスの交互作用検定では有意な差はなかった(p=0.09)。抗ヒスタミン薬は症例数(12例)が少なく解析不能だった。 介入群では、処方中止と患者の年齢、性別、健康状態、フレイル、処方期間、薬剤数などのサブグループに関連は認めなかった。 また、介入群で6ヵ月のフォローアップが完遂された219例のうち、担当医に薬学的見解の資料が届けられたのは145例(66.2%)で、この集団の処方中止率は47.6%(69/145例)であったのに対し、担当医に資料が送られていなかった74例の処方中止率は39.2%(29/74例)であり、両群間に差はみられなかった(リスク差:8%、95% CI:-6~22%)。資料を送らなかった理由は、「患者の要望」「患者がすでに薬剤を中止していた」「別の伝達法がよいと思った」などさまざまだった。 入院を要する有害事象は報告されなかったが、催眠鎮静薬の漸減を行った患者の37.7%(29/77例)に離脱症状がみられた。 著者は、「今後、これら知見の一般化可能性の検討が求められる」としている。

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かかりつけ医でうつ病の治療をする時代に気を付けたいこと(解説:岡村毅氏)-957

 今後のわが国の医療がどのように変化するかわからないが、「まずはプライマリケアあるいは総合診療医にかかり、重篤や難治なケースが専門医に紹介される」という方向におおむね進むと理解している。 精神医療はどうだろうか? 多くの国ではうつ病の治療もプライマリケアでまず行うとされる。わが国でも今後そうなるかもしれず、この論文の知見は興味深い。 うつ病が疑われる患者さんが来て、薬物治療が必要な場合まず何を使うか? これについては多くのガイドラインが明確には語れない状況にある。とはいえ、ここでもったいをつけていても仕方ないのでえいやっとまとめてみたい。つまり、ここから下は個人的見解である。 おそらく現代の大多数の専門医はファーストラインでSSRI(なかでもセルトラリンとエスシタロプラムが総合的に優れているとされる。信頼できるエビデンスがあるのだ)を使うことが多いと一致するのではないか。 十分量を十分期間使っても効果がない場合にどうするか(セカンドライン)が本論文で検証されている。他の抗うつ薬(とくに薬理的に異なるもの)への変更、一部の抗うつ薬の追加(この論文のまさに主題であるがミルタザピンが使われることが多い、多くの治療アルゴリズムでそうなっているのだ)、抗精神病薬の抗うつ作用の利用、気分安定薬の利用、などなどの選択肢がある。とはいえ人間というものは多様過ぎて、この段階ではどれが優れているとは言い難い。そしてこの論文が示したのは、セカンドラインでの「ミルタザピンの追加は効果がなかった」というものだ。 ところで、精神科医はうつ病の方が受診した場合は、どのように治療戦略を考えるのだろう? 私見だが、多くの精神科専門医が最も注意を払うのは「本当にうつ病か」という点ではないかと思う。現代社会はますます複雑化する一方で、余裕は失われている。多くの人が、多様な悩みや苦しみを抱いて精神科を受診する。うつ病ではない人を、質問票に惑わされて、間違ってうつ病治療の文脈に導いてしまうと、「うつ病が治らないのは治療が悪いからだ、今は良い治療をするべきで、他の問題解決をするべきではない」という偽りの平衡状態にしばらく陥ることになる。この平衡状態では、医師は責任を感じて焦燥するし、患者はよくならないことに焦燥する、という絶望的なゲームとなる。 個人的臨床経験では、中核的・古典的・単純なうつ病の場合は最初の抗うつ薬(それが何であれ)でほとんど軽快する。一方で、最初の抗うつ薬が効果不十分な場合(つまりこの論文の対象集団だ)は、他の抗うつ薬に変更しようが、何かを加えようがあまり効果はない。その場合、臨床医として私なら、場合によってはミルタザピンを処方はするかもしれないが―――ミルタザピンは鎮静系なので睡眠は改善するだろうし―――内心では「そもそもの見立てを再構築しよう」と焦り、「家族内の葛藤などの語られていない情報はないか」、あるいは「双極性が隠れていないか」と考え、どうやって情報を集めようかと考えはじめるだろう。 この論文を読んで、非専門家がファーストラインで治せないうつ病は抜本的に治療戦略を見直すべきであり、そこで拘泥することは患者・医師双方にとって悲劇であると感じた。そして、この論文はきわめてまっとうな結論(さっさと専門家に紹介だ)を暗に示しているように思われた。 最後に、個々の抗うつ薬についてはさまざまなエビデンスが集積されていますし、その医師にとって使い慣れた、知り尽くした抗うつ薬がある意味で最も安全といえます。筆者はミルタザピンをファーストラインで使用することもあり、決して効果がないと言っているのではありません。本コラムの内容はあくまで単純化した一般論であり、誤解なきようお願いします。また、薬物治療は、精神療法や環境調整と並ぶ治療の大きな柱ですが、すべてではありません。

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抗肥満薬であるlorcaserinは日本でも使用できるのだろうか(解説:吉岡成人氏)-942

抗肥満薬は臨床の現場に出てこない 肥満治療の基本は、食事療法と運動療法であり、非薬物療法を3ヵ月をめどに行ったうえでも、改善が認められない場合に薬物治療が考慮される。しかし、日本で使用が可能な薬剤はマジンドールしかない。米国では、膵リパーゼ阻害薬で腸管からの脂肪吸収を抑制する作用を持ったorlistatも発売されているが、日本での発売の予定はない。脳内で摂食亢進や快楽・報酬系に作動するカンナビノイド受容体の拮抗薬であるrimonabantは、自殺企図を含む重篤な精神疾患を引き起こすことから2008年に開発が中止となっている。また、ノルアドレナリンとセロトニンの再吸収取り込み阻害薬であるsibutramineは、血圧の上昇や心筋梗塞、脳卒中のリスク増加のため2010年に欧米の市場から撤退している。このように、抗肥満薬は開発・中断を繰り返しており、臨床の現場で応用されることがきわめて難しい薬剤となっている。lorcaserin 今回、抗肥満薬として期待されていたlorcaserinが、肥満2型糖尿病患者に対して有用である可能性を示す論文がLancet誌に報告された(Bohula EA, et al. Lancet. 2018 Oct 3. [Epub ahead of print])。lorcaserinはセロトニン5-HT(5-hydroxy-triptamine)2c受容体のアゴニストである。セロトニンは脳内に存在するモノアミンで、5-HT受容体を介して摂食抑制、睡眠、鎮静、疼痛閾値の調整、母性行動などに関与している。5-HT2c受容体は視床下部に発現し、食欲抑制に関与しており、そのノックアウトマウスでは過食や肥満をもたらすことが知られている。5-HT2c受容体への選択性が強いlorcaserinは、2010年に前臨床試験段階で乳腺腫瘍と星細胞腫の発生を増加させるリスクが懸念され、米国食品医薬品局(FDA)で認可されなかった。しかし、その後の第III相試験で腫瘍発生の増加がなかったため、2012年にFDAが認可した薬剤である。lorcaserinの心血管安全性 lorcaserinの心血管系に対する安全性を評価した二重盲検試験であるCAMELLIA(Cardiovascular and metabolic effects of lorcaserin in overweight and obese patients)-TIMI 61試験の結果が、2018年8月26日にNEJM誌電子版に掲載されている(Bohula EA, et al. N Engl J Med. 2018;379:1107-1117.)。 心血管死亡、心筋梗塞、脳卒中を合わせた複合イベントを主要評価項目とし、有効性については主要評価項目に不安定狭心症、心不全、冠動脈血行再建術を追加した複合イベントについて評価している。中央値3.3年間の追跡で、主要評価項目についてはlorcaserin群6.1%、プラセボ群6.2%(ハザード比:0.99、99%信頼区間:0.85~1.14)であり、安全性が確認された。有効性については、lorcaserin群11.8%、プラセボ群12.1%(ハザード比:0.97、99%信頼区間:0.87~1.9714)でプラセボに勝る心血管イベントの減少は示されなかった。lorcaserinは糖尿病治療にも有用 CAMELLIA-TIMI 61試験の副次評価項目である、2型糖尿病患者における血糖コントロール、糖尿病発症前から2型糖尿病への移行の遅延、糖尿病発症阻止の可能性を検討した詳細な結果が、今回Lancet誌に掲載された論文である。 アテローム動脈硬化性心疾患、または複数の心血管リスクを保有するBMI 27以上の肥満者を対象として、lorcaserinを投与した群では、1年時において糖尿病患者で平均107.6kgの体重がプラセボ群に比較して2.6kg(95%信頼区間:2.3~2.9)減少し、HbA1c 5.7~6.5%未満、空腹時血糖値100~125mg/dL未満の「前糖尿病」状態の対象者が糖尿病に移行するリスクも19%減少(8.5% vs.10.3%、ハザード比:0.81、95%信頼区間:0.66~0.99)し、糖尿病の発症予防に対するNNTは3年で56であると報告している。糖尿病患者においては、細小血管障害(網膜症、持続アルブミン尿、末梢神経障害)の発症も抑止された(10.1% vs.12.4%、ハザード比:0.79、95%信頼区間:0.69~0.92)という。代謝の改善と心血管イベント lorcaserinは従来の抗肥満薬と同様に、体重の減少と糖尿病の発症予防、糖尿病の病態の改善に有用であり、かつ、心血管安全性も確認されたといえる。しかし、減量に成功し、血糖コントロールが改善しても、3.3年の期間では心血管イベントの発症に好影響をもたらさなかった。 はたして日本でも市場に登場する薬剤となるのかどうか、今後の展開が注目される。

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日本の頭部外傷の現状は?/脳神経外科学会

 日本頭部外傷データバンクは、日本脳神経外傷学会のプロジェクトである。日本の頭部外傷診療の現状の把握を目的に、1996年に日本頭部外傷データバンク検討会が設立され、1998年より重症頭部外傷患者を対象とした間欠的に2年間の疫学研究を開始。現在まで、Project1998、2004、2009が行われ、このたび、Project2015の解析が開始された。その概要について、日本脳神経外科学会 第77回学術総会において、山口大学 脳神経外科 末廣 栄一氏が発表した。 登録対象症例は2015年4月1日~2017年3月31日に、搬入時あるいは受傷後48時間以内にGlasgow Coma Scale(GCS)8以下、あるいは脳神経外科手術を施行した頭部外傷症例(0歳を含む全年齢)。Project2015の参加施設は33施設、症例数は1,345例であった。 主な結果は以下のとおり。  ・患者の平均年齢は58.8歳で、70歳以上が以前に比べ著しく増加していた。  ・主な受傷機転は、交通事故が41.9%、転倒・転落が40.8%であった。  ・搬入時GCSスコアは7.3で、重症度は低下傾向であった。  ・外科的処置は67.4%の患者に施行されており、過去の2回に比べ、増加傾向に   あった。  ・頭蓋内圧センサーは36.7%に留置され、こちらも増加傾向であった。  ・鎮静・鎮痛、高浸透利尿薬、抗てんかん薬などの薬物療法施行率は66.5%で   あった。  ・退院時の転帰は、転帰良好30.3%、死亡35.8%であった。 プロジェクトごとに患者の高齢化は進行している。しかし、外科的治療も含めた積極性は向上し、前Projectに比べ、転帰は維持されていた。

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初回エピソード精神疾患患者に対する長時間作用型抗精神病薬の有効性

 長期アウトカムに影響を及ぼす初回エピソード精神疾患(FEP)患者の治療を最適化するうえで、非定型抗精神病薬の異なる有効性プロファイルは、重要なポイントとなる。スペイン・University Hospital Marques de ValdecillaのMarcos Gomez-Revuelta氏らは、FEPに対するアリピプラゾール、ziprasidone、クエチアピン治療の臨床効果について、3年間のフォローアップのうえ、比較検討を行った。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2018年9月12日号の報告。 本研究は、2005年10月~2011年1月にプロスペクティブランダム化オープンラベル試験として実施された。薬物治療ナイーブの初回エピソード患者202例を対象に、アリピプラゾール群(78例)、ziprasidone群(62例)、クエチアピン群(62例)にランダムに割り付け、3年間のフォローアップを行った。主要評価項目は、すべての原因による治療中止とした。臨床効果の分析は、intention-to-treat分析に基づき実施した。 主な結果は以下のとおり。・3年間のフォローアップ期間中の全体的な脱落率は、19.3%であった。・各群の治療中止率は、アリピプラゾール群73.08%、ziprasidone群79.03%、クエチアピン群95.16%であり、有意な差が認められた(χ2=11.680、p=0.001)。・効果不十分、アドヒアランス不良、副作用における統計学的に有意な差は、すべての原因による治療中止までの時間的有意差を判断するための3年間のフォローアップにおいて観察された(Log-Rank=32.260、p=0.001)。・眠気/鎮静(χ2=9.617、p=0.008)および睡眠持続時間(χ2=6.192、p=0.004)の増加において、各群に有意な差が認められた。・錐体外路症状のプロファイルに、有意な差は認められなかった。・アリピプラゾール群では、ベンゾジアゼピン使用率が高かった。 著者らは「FEP患者に対するクエチアピン治療は、非有効性のための治療中止率が高かった。治療中止パターンの違いを特定することは、FEP後の治療選択を最適化することに寄与すると考えられる」としている。■関連記事初回エピソード統合失調症患者における抗精神病薬治療中止に関する20年間のフォローアップ研究初回エピソード統合失調症患者における抗精神病薬中止後の長期的な影響初回エピソード統合失調症、LAIは経口薬より優る

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不眠症におけるデュアルオレキシン受容体拮抗薬とその潜在的な役割に関するアップデート

 現在の不眠症に対する薬物治療は、すべての不眠症患者のニーズを十分に満たしているわけではない。承認されている治療は、入眠および睡眠維持の改善において一貫して効果的とはいえず、安全性プロファイルも複雑である。これらのことからも、追加の薬物療法や治療戦略が求められている。初期研究において、一部の不眠症患者に対して、デュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA)が追加の薬物治療選択肢として有用であると示されている。米国・セント・トーマス大学のKayla Janto氏らは、DORAとその潜在的な役割について、既存の文献を調査しアップデートを行った。Journal of Clinical Sleep Medicine誌2018年8月15日号の報告。 DORAに関する既存の文献は、PubMedデータベースより、「オレキシン受容体拮抗薬」「almorexant」「filorexant」「lemborexant」「スボレキサント」の検索キーワードを用いて検索を行った。検索対象は、英語の主要な研究論文、臨床試験、レビューに限定した。 主な結果は以下のとおり。・不眠症治療においてオレキシン受容体系を標的とすることは、より一般的に用いられるGABA作動性催眠鎮静薬治療に対する追加および代替的な薬物治療である。・現在の文献において、その有効性が示唆されているものの、まだ十分に確立されていない。・前臨床報告では、アルツハイマー病と不眠症を合併した患者に対する治療の可能性が示唆されている。 著者らは「DORAは、不眠症に対する追加の治療選択肢として使用可能である。いくつかの不眠症サブタイプにおいて、その安全性および有効性をきちんと評価するために、より多くの臨床試験が必要とされる。不眠症に対する既存治療とのhead-to-head比較研究が求められている」としている。■関連記事日本人高齢不眠症患者に対するスボレキサントの費用対効果分析不眠症へのスボレキサント切り替えと追加併用を比較したレトロスペクティブ研究不眠症患者におけるスボレキサントの覚醒状態軽減効果に関する分析

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睡眠薬の長期使用に関する10年間のフォローアップ調査

 催眠鎮静薬の長期使用は、非常によく行われているが、ガイドラインでは推奨されていない。新規睡眠薬使用患者における長期使用への移行率は、十分に研究されているわけではなく、現時点では、有益だと考えられる推奨薬は不明である。イスラエル・テルアビブ大学のYochai Schonmann氏らは、新規睡眠薬使用患者における長期使用リスクを定量化し、睡眠薬の選択とその後の使用パターンとの関連性を検討した。European Journal of Clinical Pharmacology誌オンライン版2018年8月8日号の報告。 イスラエル最大のヘルスケアプロバイダーのデータベースを用い、検討を行った。2000~05年に催眠鎮静薬を新たに使用した患者23万6,597例を対象に、10年間フォローアップを行った。2年目、5年目、10年目の処方箋が記録された。初回の睡眠薬選択(ベンゾジアゼピン/Z薬[非ベンゾジアゼピン系])と長期使用との関連は、多変量ロジスティック回帰モデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・新規睡眠薬使用患者の平均年齢は、63.7歳(SD±16.4歳)であった。・女性の割合は、58.6%であった。・ベンゾジアゼピンは、15万4,929例(65.5%)に使用されていた。・ベンゾジアゼピン使用患者は、Z薬使用患者と比較し、より高齢であり、社会経済的状態もより低かった(p<0.001)。・10年目において、新規ベンゾジアゼピン使用患者の66.8%(10万3,912例)が30DDD(defined daily dose:規定1日用量)以下、20.4%(3万1,724例)が長期使用(180DDD/年以上)、0.5%(828例)が過量投与(720DDD/年以上)であった。・Z薬の使用は、長期使用リスクの増加と関連していた(p<0.0001)。 2年目:17.3% vs.12.4%、RR=1.40(1.37~1.43) 5年目:21.9% vs.13.9%、RR=1.58(1.55~1.61) 10年目:25. 1% vs.17.7%、RR=1.42(1.39~1.45)・Z薬使用患者における日常的投与および過量投与についても、同様の結果が観察された(p<0.001)。 著者らは「新規催眠鎮静薬使用患者のうち約20%が長期使用となっていた。また、過量投与は、0.5%に認められた。そして、Z薬の使用は、長期使用リスク増加と関連が認められた」としている。■関連記事ベンゾジアゼピン系薬の中止戦略、ベストな方法は高齢者へのZ薬と転倒・骨折リスクに関するメタ解析ベンゾジアゼピン依存に対するラメルテオンの影響

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陣痛緩和にレミフェンタニル自己調節鎮痛法が有用/Lancet

 陣痛時の疼痛緩和において、静脈内レミフェンタニル自己調節鎮痛法(PCA)は、ペチジンの筋肉内投与に比べ、硬膜外麻酔への変更を要する女性が少ないことが、英国・シェフィールド大学のMatthew J. A. Wilson氏らの検討「RESPITE試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2018年8月25日号に掲載された。陣痛の緩和のためにペチジン筋注を受けた女性の約3分の1が、その後に硬膜外麻酔を要し、良好な疼痛緩和が得られるものの、器械的経膣分娩のリスクが増加する。陣痛時のレミフェンタニルPCAはペチジンの代替法とされるが、十分には普及していないという。英国の14施設で401例を登録 本研究は、英国の14の産科病棟が参加した多施設共同非盲検無作為化対照比較試験(英国国立健康研究所[NIHR]の助成による)。 対象は、妊娠期間37週以上、胎児が単胎・頭位で陣痛がみられ、オピオイドによる疼痛緩和を希望する16歳以上の女性であった。被験者は、レミフェンタニルPCA(必要に応じて40μgをボーラス投与、次回投与までのロックアウト時間は2分)またはペチジン筋注(4時間ごとに100mgを投与、24時間で最大400mg)を行う群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、試験登録後に硬膜外麻酔を受けた女性の割合とした。また、視覚アナログスケール(VAS、0点:痛みなし、100点:最も強い痛み)を用いて、30分ごとに疼痛緩和効果を評価した。 2014年5月13日~2016年9月2日の期間に401例の女性が登録され、レミフェンタニルPCA群に201例、ペチジン筋注群には200例が割り付けられた。硬膜外麻酔への変更が半減、緩和効果も良好 実際に試験薬の投与を受けたのは、レミフェンタニルPCA群が186例(93%)、ペチジン筋注群は154例(77%)であった。投与を受けない主な理由は、投与が可能になる前に出産(レミフェンタニルPCA群12例、ペチジン筋注群17例)、無作為化直後のオピオイド投与前に、母親が硬膜外麻酔を要すると決断(ペチジン筋注群22例)などであった。同意を取り消したペチジン筋注群の1例を除く400例がintention-to-treat解析の対象となった。 無作為化時の平均年齢は、レミフェンタニルPCA群が29.4歳(SD 6.1)、ペチジン筋注群は29.3歳(6.1)、白人がそれぞれ73%、79%で、未経産婦が60%、59%だった。 硬膜外麻酔への変更の割合は、レミフェンタニルPCA群が19%(39/201例)と、ペチジン筋注群の41%(81/199例)に比べ有意に低かった(リスク比[RR]:0.48、95%信頼区間[CI]:0.34~0.66、p<0.0001)。 VAS疼痛スコア中央値は、レミフェンタニルPCA群がペチジン筋注群よりも13.91点(95%CI:-21.40~-6.43)低下し、有意な差が認められた(p=0.0003)。VAS疼痛スコアの最高点の差には、有意差はなかった(平均差:-4.44点、95%CI:-10.93~2.05、p=0.18)。 分娩様式には、両群間に有意な差が認められた(p=0.02)。鉗子、吸引による器械的分娩の割合は、レミフェンタニルPCA群が15%と、ペチジン筋注群の26%に比べ有意に低かった(RR:0.59、95%CI:0.40~0.88、p=0.008)。帝王切開の割合は両群とも21%だった。呼吸抑制および過鎮静は両群間に差はなく、いずれもまれだった。 新生児はすべて、出生後5分時のApgarスコアが4点以上であった。蘇生を要する新生児の割合にも差はみられなかった(レミフェンタニルPCA群:10%、ペチジン筋注群:11%)。 母親の満足度は、9項目中2項目でレミフェンタニルPCA群のほうが有意に良好で(「陣痛中の疼痛緩和は有効だった」:p=0.0003、「陣痛の疼痛緩和に満足した」:p=0.0003)、他の項目には差がなかった。また、試験薬に直接起因する重篤な有害事象や薬物反応は認めなかった。 著者は、「本試験で得られたエビデンスは、分娩時の女性の標準治療としてのペチジンに疑問を呈し、陣痛時のオピオイドベースの疼痛緩和に関して、根本的な再評価を迫るものである」と指摘している。

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