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長期使用中の外用ステロイドの塗布部位を確認して中止提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第38回

 外用ステロイドは皮膚の炎症性病変において汎用性が高い薬ですが、その使いやすさゆえに治療期限なく使用されるケースも散見されます。今回は、使用意図が明確でないまま、漫然と介護士や看護師から処方依頼が続いていた症例を紹介します。患者情報80歳、女性(施設入居)基礎疾患混合型認知症介護度要介護4服薬管理施設職員が管理障害自立度C認知症自立度IIIa処方内容1.ドネペジル錠5mg 1錠 分1 朝食後2.フロセミド錠10mg 1錠 分1 朝食後3.酸化マグネシウム原末1g 分2 朝夕食後4.ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル軟膏 50g Rp5と混合 1日2回 体に塗布5.ヘパリン類似物質油性クリーム 50g Rp4と混合 1日2回 体に塗布本症例のポイントこの患者さんは、背部と腹部の皮膚炎のため、ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル軟膏とヘパリン類似物質油性クリームの混合軟膏を使用していました。訪問時に薬歴を確認したところ、処方が1年以上継続しており、ステロイドのランクダウンや塗布部位の変更もなく長期的に使用していることに疑問を持ちました。そこで患者さんの病状を確認すると、発赤や隆起した皮膚の様子もなく、治療内容と現状がマッチしていない印象を受けました。施設の介護スタッフに状況を確認すると、時折背中や腹部をかいている様子があるため、現行の軟膏の塗布を継続しているとのことでした。また、軟膏が少なくなったら医師の訪問診療前に連絡して処方を依頼しており、医師はその依頼どおりに処方していることも判明しました。処方提案と経過訪問診療に同行し、医師に患者さんの軟膏塗布部位を直接診察してもらうことにしました。その際に、長期的に外用ステロイドを使用しているものの皮膚の状態は安定しており、むしろ長期使用に伴う細菌・真菌感染の誘発やざ瘡・毛細血管の拡張、皮膚萎縮などの副作用の懸念があることを伝えました。また、病状が安定しているのであれば、ステロイドを中止あるいはランクダウンしてから中止し、皮膚の保湿のみでコントロールできないか相談しました。医師より、病状は安定しているため、もはやステロイド適応ではなく、皮膚乾燥部位の保湿剤の塗布と保湿ケアを介護士に指示すると回答を頂きました。外用ステロイドを中止して保湿剤のみのコントロールに変更しても皮膚炎の再燃はなく経過しています。薬物治療の効果や副作用判定をする際は施設の介護士や看護師から情報を収集することも重要ですが、実際に自分の目で患者さんの症状を確認したことで、医師への処方提案に深みが増した症例でした。

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中国のコロナワクチン2種、初の第III相試験中間解析/JAMA

 中国で開発された新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)不活化ワクチン2種の、第III相二重盲検無作為化試験の事前規定中間解析の結果が、アラブ首長国連邦・Abu Dhabi Health Services CompanyのNawal Al Kaabi氏らによって発表された。試験は中国Sinopharmの子会社であるChina National Biotec Group(CNBG)に属する武漢生物製品研究所と北京生物製品研究所がデザインし、中東4ヵ国で被験者を集めて行われた。中間解析にはうち2ヵ国(アラブ首長国連邦とバーレーン)の被験者4万例超のデータが包含された。ワクチンの症候性COVID-19に対する予防効果はプラセボ接種の対照群と比較し72.8~78.1%であり、重篤な有害事象発生率は0.4~0.5%で対照群と同等だったという。JAMA誌オンライン版2021年5月26日号掲載の報告。SARS-CoV-2・WIV04株/HB02株からの不活化ワクチンを投与 試験に用いられたワクチンは、中国・武漢の金銀潭医院(Jinyintan Hospital)の2人の患者からそれぞれ採取されたSARS-CoV-2分離株(WIV04株とHB02株)を基に開発されたものである。 研究グループは、SARS-CoV-2等への感染歴がない18歳以上を無作為に3群に分け、WIV04株から作った不活化ワクチン(5μg/回)、HB02株から作った不活化ワクチン(4μg/回)、および水酸化アルミニウム(対照群)を、それぞれ2回、21日間隔で投与した。 主要アウトカムは、無作為化時にSARS-CoV-2感染が認められなかった被験者における、ワクチン2回投与から14日以降の症候性COVID-19(検査により確認)に対する有効性だった。副次アウトカムは、重症COVID-19に対する有効性とした。 有害事象・副反応に関するデータは、1回以上投与した被験者を対象に集計した。重症COVID-19、対照群で2人に対しワクチン群では0人 ワクチンまたはプラセボ1回以上投与を受けたアラブ首長国連邦とバーレーンの被験者は計4万382例(WIV04群1万3,459例、HB02群1万3,465例、対照群1万3,458例)で、平均年齢は36.1歳、男性が84.4%だった。このうち2回投与を受け、2回投与後14日以降に1回以上のフォローアップを実施し、また試験開始時に、RT-PCR検査でSARS-CoV-2感染が陰性だった3万8,206例(94.6%)を対象に分析を行った。 追跡期間中央値77日(範囲:1~121)において、症候性COVID-19が確認されたのは、WIV04群26例(12.1/1,000人年)、HB02群21例(9.8/1,000人年)であり、対照群は95例(44.7/1,000人年)だった。対照群と比較したワクチンの有効性は、WIV04群72.8%(95%信頼区間[CI]:58.1~82.4)、HB02群78.1%(64.8~86.3)だった(いずれもp<0.001)。 重症COVID-19の発生は、対照群で2例報告されたが、不活化ワクチン群では発生しなかった。 接種後7日間の副反応の報告は、WIV04群44.2%、HB02群41.7%、対照群46.5%だった。重篤な有害事象はまれで、WIV04群64例(0.5%)、HB02群59例(0.4%)、対照群78例(0.6%)と3群で同等だった。 なお、最終解析では、さらにエジプトとヨルダンの被験者データも包含して分析する予定となっているが、両国からの被験者数が3,469例であったことから結果が大幅に変わる可能性は低いなどとして、最終解析のためのデータ収集については未確定だとしている。

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服薬・介護負担軽減のための課題抽出と用法の調整【うまくいく!処方提案プラクティス】第36回

 今回は、服用が複数回で服薬・介護負担が多いケースで、どのように改善策を立てて実行したのかを紹介します。単純に回数を減らすのではなく、現場における問題点から最善策を考え、薬剤師ならではの目線で医師に提案しましょう。患者情報80歳、女性(施設入居)基礎疾患混合型認知症、高血圧症、心房細動、慢性便秘症介護度要介護3服薬管理施設職員が管理障害自立度B-2、認知症自立度:IIIa処方内容 ※嚥下困難のため粉砕指示あり。1.ボノプラザン錠10mg 1錠 分1 昼食後2.アムロジピン錠5mg 1錠 分1 昼食後3.エドキサバン錠30mg 1錠 分1 昼食後4.エスゾピクロン錠2mg 1錠 分1 就寝前5.酸化マグネシウム錠500mg 2錠 分2 朝夕食後6.ガランタミン錠8mg 2錠 分2 朝夕食後7.ウラピジル徐放カプセル 1カプセル 分1 朝食後(本剤のみそのまま服用)本症例のポイントこの患者さんは、施設に入居する前から現在に至るまで上記の薬剤を服用しており、便秘症やBPSDの悪化などもなく経過は安定していました。しかし、1日の服用回数が4回と多いため、服薬管理上の問題が3点ありました。(1)この患者さんには嚥下困難があり、服薬をストレスに感じている。(2)食事と服薬に時間がかかるため、服薬介助の負担が大きい。(3)ほかの施設入居患者さんの薬のセットも増加しているため、服用当日の用法ごとに薬をセットする手間が増加している。そこで、患者さんの服薬負担や看護師の介護負担を減らすために服薬のタイミングをまとめる提案をすることにしました。また、その際に、現在服用している薬の投与継続の妥当性についても評価することにしました。【提案前の整理内容】(a)用法の調整介助の負担が集中する昼食後の薬と夕食後の薬のセットを減らしたいという話を看護師から聴取したため、昼食後の薬剤を朝食後に、夕食後の薬剤を就寝前に変更することを提案することにしました。(b)ボノプラザンの中止消化性潰瘍や逆流性食道炎の既往もないことから、投与継続の必要性は低く、むしろ胃酸分泌低下による腸管感染症、高ガストリン血症、吸収障害などが懸念されるため中止を提案することにしました。(c)低用量ウラピジル徐放カプセルの中止現在の排尿障害などの評価から中止が可能か検討しようと思いましたが、看護師との話し合いの中で、中止に伴う症状再燃などからの不穏の懸念があるため、中止提案はしないことにしました。処方提案と経過回診前のカンファレンスで医師に上記(a)と(b)の提案を伝えたところ、(a)の用法調整の件はその場で承認を得ることができました。(b)のボノプラザンの中止については、医師とカルテ情報を閲覧し、抗凝固薬服用に伴う消化管出血予防が目的だと推察しました。しかし、過去に消化性潰瘍や逆流性食道炎はなく、医師の見解としてエドキサバンはアスピリンなどと比較して潰瘍リスクは低いため、食事摂取や生活への悪影響を考慮して中止となりました。その後、施設看護師の服薬管理の負担が軽減し、患者さんも服用の回数が減ったことで心理的な負担が減って楽になったと聞き取りました。また、ボノプラザン中止後の胃部不快感や胃痛などの症状もなく経過しています。

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内服薬に嫌悪感がある患者の疼痛コントロールの秘策【うまくいく!処方提案プラクティス】第33回

 今回は、エスフルルビプロフェン・ハッカ油貼付薬(以下エスフルルビプロフェン)を用いた疼痛コントロールの事例を紹介します。エスフルルビプロフェンは、フルルビプロフェンの活性本体(光学異性体:S体)であり、最大2枚を貼付することで薬物の全身曝露量に相当するAUC(時間曲線下面積)が経口フルルビプロフェンの通常用量とほぼ同等となります。その作用動態を活かすことで、内服薬に嫌悪感がある患者さんでも抵抗なく、効果的な疼痛コントロールを行うことができます。患者情報90歳、女性(施設入居)基礎疾患変形性関節症、高血圧症、便秘症、骨粗鬆症既往歴消化性潰瘍の既往なし訪問診療の間隔月2回処方内容1.アムロジピン錠2.5mg 1錠 分1 朝食後2.カンデサルタン シレキセチル錠4mg 1錠 分1 朝食後3.酸化マグネシウム錠500mg 2錠 分2 朝夕食後4.エルデカルシトールカプセル0.75μg 1カプセル 分1 朝食後5.レバミピド錠100mg 2錠 分2 朝夕食後6.硝酸イソソルビドテープ40mg 1枚 18時に貼付本症例のポイント施設入居の患者さんの初回の訪問診療にケアマネジャーと同行させてもらうこととなりました。その際、患者さんより、両膝が痛くて市販の貼付薬を使っているがあまり良くならず、寝返りも打てないほど腰も痛いので何とかできないかという相談がありました。しかし、過去に友人が鎮痛薬で胃潰瘍を起こした経験があり、鎮痛薬の内服には嫌悪感といえるほど抵抗がありました。医師は、COX-2選択的阻害薬とプロトンポンプ阻害薬を用いて、胃粘膜への影響をできる限り最小限にして治療するのはどうかと提案しました。それでも患者さんは、これ以上内服薬を増やすのは体に毒だからと言って抵抗を示しました。処方提案と経過医師より、薬剤師としての薬学的な意見を聞きたいが、何か有用な手段はあるかと相談を受けました。そこで、内服薬への抵抗感が強いので、内服薬と同等の効果が得られるエスフルルビプロフェンを両膝に2枚貼付するのはどうか提案しました。エスフルルビプロフェンは外用薬なので内服薬の数は増えませんが、内服薬とほぼ同等のAUCを得ることで全身的な治療効果が期待できます。私見ではありますが、嚥下困難や重度の認知症など内服が困難な患者さんにおける疼痛コントロール(とくに痛みの箇所が複数ある場合)では、このエスフルルビプロフェンは有効な選択肢であると考えています。しかし、外用薬とはいえ、胃粘膜への影響は内服薬に相当します。胃粘膜への影響は懸念事項であり、慎重に検討する必要があると考えました。そこで、現行のレバミピド錠(朝夕)をランソプラゾールOD錠(朝のみ)に変更できないか提案しました。医師からは、内服薬を増やさずにむしろ服用錠数を減らすことができると評価していただき、承認を得ることができました。患者さんからも、直接膝に貼る鎮痛薬なので安心で、胃潰瘍に対する心配をくみ取って胃薬も変えてくれたと喜んでもらえました。患者さんと介護スタッフには、エスフルルビプロフェンは最大貼付枚数2枚を超えないように、腰には貼付せずに基本的には両膝にそれぞれ1枚貼付するように指導しました。エスフルルビプロフェン開始後、両膝痛に加えて腰痛も改善しました。14日間は連日貼付していましたが、その後の状態も安定していたため、疼痛時のみの使用に切り替えました。その後も疼痛の悪化はなく、患者さんの調子に合わせてエスフルルビプロフェンを継続しています。ロコアテープ インタビューフォーム

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簡易懸濁法に適した整腸剤へ変更して介護負担を軽減【うまくいく!処方提案プラクティス】第31回

 今回は、処方頻度の高い整腸剤に関する処方提案を紹介します。乳酸菌製剤と酪酸菌製剤では、高温条件で簡易懸濁した場合、形状に差があることがあります。その特性を利用し、介護者の負担を軽減することができました。患者情報94歳、女性(長女と同居)基礎疾患認知症、便秘症、胆石症(10年前に手術)、繰り返す尿路感染症介護度要介護2訪問診療の間隔2週間に1回処方内容1.耐性乳酸菌製剤散 3g 分3 朝昼夕食後2.酸化マグネシウム錠330mg 3錠 分3 朝昼夕食後3.スルファメトキサゾール・トリメトプリム錠 1錠 分1 朝食後4.グリセリン浣腸60mL 便秘時 1個使用本症例のポイントこの患者さんは、排便コントロールがあまり良好ではなく、時折宿便のような状態になって浣腸が必要になるため、介護負担が大きいということを同居の長女から相談されました。また、錠剤を噛み砕いてしまうことが多いため、長女が簡易懸濁法を用いて服薬させていましたが、懸濁すると薬剤がのり状になり、本人が口中の不快感を訴えて服用させづらいという話も伺いました。排便コントロールの改善のため、酸化マグネシウムの増量や刺激性下剤の追加などを検討しようと考えましたが、長女は長年服用している薬なので、できるだけ今の治療に近いまま調整してほしいという意向でした。そこで、本人および長女の服用・介護負担軽減のため、まず耐性乳酸菌製剤散に焦点を当てて検討することにしました。耐性乳酸菌製剤散は、賦形剤としてデンプンが含有されているため、高温条件下ではのり状になって固まりやすく、懸濁しにくい薬剤です。また、薬効への影響はないとされていますが、懸濁時の温度によって含有されている乳酸菌数が減少することも知られています1,2)。<耐性乳酸菌製剤を50℃温湯と常温に入れて自然放置した時の耐性乳酸菌数の比較>(参考文献2より改変)これらのことから、芽胞形成菌である酪酸菌が含有された酪酸菌製剤錠のほうが適しているのではないかと考えました。芽胞形成菌はその名のとおり芽胞を形成することで、高温条件下でも菌数が減少しにくく、人為的な抗菌薬耐性を付与しなくても抗菌薬の影響を受けにくいという特徴があります3)。そこで、耐性乳酸菌製剤から酪酸菌製剤への変更を提案することにしました。処方提案と経過事前に医療機関に、長女とのやりとりと上記の文献データをトレーシングレポートとしてFAX送信しました。そのうえで医師に電話で疑義照会し、酪酸菌製剤 3錠 分3 毎食後への変更を提案しました。医師は、すでにトレーシングレポートの内容を把握しており、薬剤的な懸念があり介護者の負担も大きいので、提案どおりに変更してみようと承認を得ることができました。処方内容の変更後、長女からは、のり状になることもなく服薬させることができるようになり、排便コントロールも良好になったため浣腸を使用することは減ったと話を伺うことができました。その後も、時折グリセリン浣腸を使用することはありましたが、排便コントロールが悪化することなく経過しています。1)ビオフェルミン製薬 学術部門開発部資料2)藤島一郎監修, 倉田なおみ編集. 内服薬 経管投与ハンドブック 〜簡易懸濁法可能医薬品一覧〜 第4版. じほう;2020.3)江頭かの子ほか. 週刊日本医事新報. 2014;4706:67.

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女性化乳房患者の原因を探って長期フォローを実施【うまくいく!処方提案プラクティス】第27回

 今回は、女性化乳房の原因薬を作用機序から判断して中止提案を行った事例を紹介します。女性化乳房は症状消失までに数ヵ月かかることもあるため、患者さんに説明しながら長期フォローを行う必要があります。患者情報80歳、男性(施設入居)基礎疾患機能性ディスペプシア、身体表現性障害、高血圧、レストレスレッグス症候群既往歴2年前に加齢黄斑変性、白内障を手術訪問診療の間隔2週間に1回服薬管理看護師が管理処方内容1.アコチアミド塩酸塩水和物錠100mg 3錠 分3 朝昼夕食前2.酸化マグネシウム錠330mg 3錠 分3 朝昼夕食後3.プラミペキソール塩酸塩OD錠0.125mg 1錠 分1 就寝前4.クロナゼパム錠0.5mg 1錠 分1 就寝前5.センナ・センナ実顆粒 1g 分1 就寝前6.ペルフェナジンマレイン酸塩錠2mg 1錠 分1 就寝前本症例のポイントこの患者さんは、施設に入居する前に、抑うつの診断からミルタザピン、エチゾラム、ガランタミン、フェキソフェナジン、エソメプラゾールなど多数の薬剤を服用していました。入居後は体調が安定したため、医師と相談しながら薬剤数を段階的に減らして現在の服用薬に落ち着けることができました。体調が安定して数ヵ月が経過したところで、訪問診療中に本人より「乳房が張って痛みがある。痛みを減らす軟膏を処方してほしい」と相談がありました。医師とともに患者さんの胸の症状を確認したところ、女性化乳房であることが発覚しました。そこで、対応を考えるために下記のように思考を整理しました。女性化乳房の原因と薬剤間の相互作用をチェック女性化乳房を引き起こす薬剤としては抗アルドステロン薬のスピロノラクトンが有名ですが、ドパミン受容体拮抗薬でも生じることがあります。ペルフェナジンなどのフェノチアジン系抗精神病薬は、ドパミンD2受容体に拮抗し、ドパミンのプロラクチン分泌阻害活性を消失させて高プロラクチン血症となり、女性化乳房・乳房痛へ至る可能性があります。今回の女性化乳房でも長期間服用しているペルフェナジンによる抗ドパミン作用の影響が少なからずあるのではないかと疑いました。ペルフェナジンの処方理由を探ったところ、機能性ディスペプシアや身体表現性障害による周辺症状に対してだと思われましたが明確な理由は不明で、現状は状態が安定して低用量の服用であることから中止が可能と考えました。また、レストレスレッグス症候群のためプラミペキソールも服用中でしたが、ペルフェナジンもプラミペキソールもドパミン作動性で拮抗薬となっていることからも中止するのが妥当と考えました。処方提案と経過今回の女性化乳房の原因としてペルフェナジンによる可能性を医師に伝え、現在服用中のプラミペキソールへの拮抗作用もあることからペルフェナジンの中止を提案しました。新規に薬を追加することよりも、薬剤数を減らすことで改善できるのであれば賛同できると医師に承認を得ることができました。ペルフェナジンを服用中止して2週間経過したところ、悪心・嘔気などの胃部不快感や不眠などの影響はありませんでした。肝心の乳房痛は改善がありませんでしたが、女性化乳房は原因薬の中止から症状消失までに約2ヵ月程度かかるという報告もあることから、経過を根気強くフォローすることにしました。その2週間後には、前ほど気にならなくなったと患者さんより聴取しました。さらにもう2週間経過したところで症状がずいぶん軽くなったと自覚できるまで改善し、最終的には消失しました。なお、レストレスレッグス症候群の病状に改善も悪化もなく安定した状態が続いています。ピーゼットシー錠2mg/4mg/8mg インタビューフォーム抗精神病薬による高プロラクチン血症に関するレビュー

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血圧コントロール不良を契機に漫然投与のNSAIDsを卒業【うまくいく!処方提案プラクティス】第25回

 今回は、血圧上昇を理由にNSAIDsの中止を提案したケースを紹介します。高齢者では、骨折や転倒などによる受傷、手術を契機にNSAIDsが開始となり、そのまま漫然と投薬を続けていることは少なくありません。薬剤師は服薬開始日や理由を薬歴などに記録し、長期的に服用を続ける必要があるかどうかを医師と共同モニタリングしましょう。患者情報80歳、男性(施設入居)基礎疾患高血圧症、不眠症既往歴75歳時に大腿骨頸部骨折、60歳時に鼠径ヘルニア手術訪問診療の間隔2週間に1回服薬管理施設看護師が管理処方内容1.アムロジピン錠5mg 1錠 分1 朝食後2.エナラプリル錠5mg 1錠 分1 朝食後3.酸化マグネシウム錠 500mg 2錠 分2 朝夕食後4.セレコキシブ錠100mg 2錠 分2 朝夕食後5.レバミピド錠100mg 2錠 分2 朝夕食後6.ピコスルファートナトリウム錠2.5mg 1錠 分1 夕食後本症例のポイントこの患者さんは、普段から穏やかでおとなしい性格で、訪問診療時の血圧は140〜150/80〜90くらいで推移していました。セレコキシブが処方されていますが、日中や夜間の疼痛の訴えはなく、疼痛コントロールは安定していました。長期的にNSAIDsを服用すると、腎機能低下や胃潰瘍などのリスクがあるため、いつからセレコキシブを服用していて、いつまで服用しなければならないのか気になっていました。そのさなか、訪問診療時に血圧が158/96と高めの日があり、医師より降圧薬を追加するのはどうかと相談がありました。そこで、いくつか懸念事項があったので下記のように考えをまとめました。血圧上昇のアセスメント降圧薬を単に追加するのではなく、現行の治療薬で何か血圧に影響しているものはないかを検証することが先決です。そこで、真っ先にNSAIDsであるセレコキシブによる影響を考えました。セレコキシブは、過去の骨折の際に処方が開始となり、変更なくそのまま服用していることをお薬手帳や施設看護師から情報収集しました。通常、NSAIDsはアラキドン酸からプロスタグランジンへの産生を抑制し、水やNaの貯留と血管拡張抑制による影響から血圧を上昇させる可能性があります。血圧への影響や長期的な腎機能障害への影響については、COX-2選択的阻害薬でも非選択的NSAIDsと効果は同等といわれています。さらに、セレコキシブは長期間にわたって酸化マグネシウムと併用されていますが、AUCこそ変動はないものの、併用によってCmaxが低下するため、薬効低下が生じて十分な治療効果が得られていない可能性もあります。そこで、現在疼痛コントロールも安定していることと、血圧上昇の影響も考慮して、セレコキシブを中止する提案をすることにしました。処方提案と経過医師より降圧薬追加の相談を受けて、セレコキシブを中止することで血圧が安定する可能性があることを上記の考察を添えて回答しました。医師が長期間使っていた治療薬を中止することで患者さんの状態が変化することを懸念したため、セレコキシブを中止する代わりにアセトアミノフェン錠500mg 1錠/回 疼痛時の頓用を提案し、承認を得ることができました。セレコキシブと胃粘膜障害を防ぐために併用されていたレバミピドを中止した後も疼痛増悪はなく、アセトアミノフェン錠を服用することなく経過しました。血圧も130〜140/70〜80で落ち着いて推移しているため、その後も降圧薬を追加することなく患者さんは安定した状態を維持しています。1)セレコックス錠100mg/200mg 添付文書2)北村和雄. 宮崎医学会誌. 2008;32:1-5.

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不安感増悪の原因がデュロキセチンかプロピベリンか見極めて変更提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第24回

 複数の薬剤を服薬している患者さんでは、有害事象の原因薬剤の特定が困難なことが多くあります。しかし、症状や時期を聴取し原因を推論することで、必要な薬剤が削除されたり、不要な薬剤が追加されたりすることが回避できることがあります。今回は、有害事象を早期に察知して、影響の少ない薬剤に変更したケースを紹介します。患者情報90歳、男性(在宅)基礎疾患:高血圧症、過活動膀胱訪問診療の間隔:1週間に1回服薬管理:お薬カレンダーで管理し、訪問スタッフが声掛け処方内容1.アムロジピン5mg 1錠 分1 朝食後2.テプレノンカプセル50mg 1カプセル 分1 朝食後3.酸化マグネシウム錠250mg 1錠 分1 朝食後4.プロピベリン塩酸塩錠10mg 2錠 分1 朝食後5.デュロキセチン塩酸塩カプセル20mg 1カプセル 分1 朝食後6.ピコスルファートナトリウム錠2.5mg 1錠 便秘時7.経腸成分栄養剤(2−2)液 250mL 分1 朝食後本症例のポイントこの患者さんは5年前に奥様が亡くなってから独居で生活されていて、家族との交流はほとんどありません。日常的に不安感が強く、うつ病の診断でデュロキセチンが開始されると同時に、薬剤師の訪問介入が開始となりました。その際、服薬アドヒアランスは不良で、ほとんど薬に手を付けていない状況でした。認知機能は改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)で 25点と正常であったものの、薬剤と服薬回数の多さを負担に感じていたようです。そこで、当初は朝と夕に服用する薬剤が処方されていましたが、服薬を確実に行うことを優先して朝1回の服用に用法をまとめることを提案し、今回から上記の処方となりました。薬剤はカレンダーに1週間分をセットし、毎日の訪問スタッフ(訪問介護員、訪問看護師、訪問薬剤師、ケアマネジャー)が協力して声掛けを行うことで服薬アドヒアランスが安定しました。しかし、1週間後に口渇と不安感が増強したため、医師より新規開始薬のデュロキセチンが影響している可能性はないかという電話相談がありました。ここで、私が考えたアセスメントについてまとめると下記のようになります。服薬アドヒアランスが良好になったことによる有害事象アドヒアランスが安定することで初めて薬剤の本来の治療効果が生じることは多くありますが、今回は効果よりも有害事象が現れたのではないかと考えました。口渇および不安感増強で評価すべきポイントは、(1)新規開始薬のデュロキセチンによる影響、(2)プロピベリンの抗コリン作用による影響の2点です。デュロキセチンなどのセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬は、投与開始2週間以内や増量後に賦活症候群1)2)が生じやすいことが知られています。この患者さんはアドヒアランスが安定したことで同じような状態になり、不安や焦燥感が増悪したとも考えられました。しかし、賦活症候群の診断基準は曖昧であり、ほかの代表的な症状である不眠や攻撃性、易刺激性、アカシジアなどはなく、口渇が同時期に出ていることから可能性は低いと考えました。むしろ、口渇こそが患者さんに苦痛を与えており、これが不安につながっていると考えるのが自然だと感じました。そこで、アドヒアランスが改善したことで、プロピベリンの抗コリン作用の影響が強く出てしまっているのではないかと考えました。現在の排尿障害について患者さんに確認すると、昼間の頻尿はなく、夜間の尿意で起きることは1〜2回/日であり、それほど苦痛には感じていないとのことでした(過活動膀胱スコア[OABSS]3)は3点と軽症)。それよりも、「とにかく喉が渇いてしょうがない、口の中が気持ち悪い、変な病気になったんじゃないかと不安」と聴取し、プロピベリンがきっかけとなっていることがうかがえました。また、抗コリン薬は長期的には認知機能低下や便秘、嚥下機能低下、転倒4)などの懸念があり、変更が望ましいと考えました。処方提案と経過医師に電話で折り返し、患者さんとの上記のやりとりを含めて報告し、今回の不安感増大はプロピベリンによる口渇が原因となっている可能性を伝え、過活動膀胱治療薬をミラベグロン錠25mg 1錠へ変更することを提案しました。提案根拠としては、ミラベグロンは膀胱のβ3受容体刺激作用から蓄尿期のノルアドレナリンによる膀胱弛緩作用を増強することで膀胱容量を増大させるという蓄尿作用を示しますが、抗コリン作用がないからです。その結果、医師よりプロピベリンを中止し、ミラベグロンを開始するよう指示がありました。また、患者さんが服用錠数の多さを負担に感じていましたが、胃炎や胃潰瘍などの明白な病歴や症状を聴取できなかったため、テプレノンの必要性を医師に確認したところ、飲み切り終了の指示もありました。その後、ミラベグロンへの変更から7日目には口渇は消失し、不安や焦燥感も軽減していました。また排尿障害もOABSSは3点と変動はなく、代替薬への変更が奏効しました。1)浦部晶夫ほか編集. 今日の治療薬2020. 南江堂;2020.2)サインバルタカプセル20mg/30mg インタビューフォーム3)日本老年医学会ほか編集. 高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015;2015.4)日本排尿機能学会 過活動膀胱診療ガイドライン作成委員会編集. 過活動膀胱診療ガイドライン第2版;2015.

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入院を契機にADLが低下した患者の処方薬見直し【うまくいく!処方提案プラクティス】第22回

 今回は、入院を契機にADLが低下し、それまでの服用薬を見直した事例を紹介します。患者さんの生活様式が変わることでそれまで必要だった薬剤が不要になるケースもありますので、処方薬を点検して、現在の状態と処方薬の必要性が合致しているかを確認しましょう。患者情報90歳、女性(施設入居)基礎疾患:心房細動、高血圧、骨粗鬆症訪問診療の間隔:2週間に1回副作用歴:エドキサバン服用による歯茎と鼻出血のため服用中止処方内容1.エルデカルシトールカプセル0.75μg 1カプセル 分1 朝食後2.テルミサルタン錠40mg 1錠 分1 朝食後3.アムロジピン錠5mg 1錠 分1 朝食後4.アレンドロン酸錠35mg 1錠 分1 起床時 週1回土曜日5.スボレキサント錠15mg 1錠 分1 夕食後6.酸化マグネシウム錠330mg 1錠 分1 夕食後7.経腸成分栄養剤(2−2)液 750mL 分3 朝昼夕食後(入院中の新規開始薬)本症例のポイント患者さんは施設入居中に急性巣状腎炎と細菌性誤嚥性肺炎を発症し、入院することになりました。入院前は車いすで生活していたものの、トイレや食事も自分で行っていましたが、入院中はほぼベッド上で過ごし、トイレや食事介助が必要になるなどADLが低下しました。また、食事摂取が進まず、嚥下機能も低下したため、末梢静脈栄養が行われましたが、退院に向けた内服への切り替えとして経腸成分栄養剤(2−2)液が開始されました。退院後の訪問診療の同行の際に気になる点がいくつかあったため、まとめることにしました。1.嚥下機能低下により錠剤の服用が困難嚥下機能が低下し、錠剤の服用が困難となりました。とくにアレンドロン酸錠を起床時に上体を起こして飲むことが難しく、無理な服用から食道潰瘍のリスクにもつながる懸念がありました。注射薬への変更、もしくは骨折リスクが低いようであれば中止を提案することにしました。なお、ビスホスホネート製剤を中止した場合、活性型ビタミンD3製剤単独での治療効果も限定的であることから両剤とも中止が望ましいと考えました。2.降圧薬の服用により低血圧に入院前の血圧は、おおむね収縮期/拡張期:130〜140/70〜80で推移していましたが、ADL低下に伴い食事摂取がほとんどなくなり、血圧の低下がありました。このまま服用を続けると低血圧を起こして転倒のリスクもあるため、降圧薬の中止が妥当と判断しました。3.日中の傾眠からスボレキサントを変更スボレキサントは湿度と光の影響を受けるため粉砕不可ですので、代替薬を考えることにしました。また、看護師より日中の傾眠が強くて食事摂取が安定しないので、もう少しマイルドな薬に変更できないかという相談もありました。そこで、睡眠−覚醒リズムの改善と昼夜のメリハリ、夜間睡眠に加えて朝や日中の症状改善効果のあるラメルテオン錠を粉砕して対応することを検討しました。処方提案と経過訪問診療同行時に、医師に上記3点について口頭で相談したところ、内服薬を少なくすることで誤嚥のリスクも減らすことができるから夕食後の薬のみにまとめよう、と了承を得ました。降圧薬に関しては、食事摂取量が安定してきたところで再度血圧評価をして、再開についてはそこで再検討することになりました。内服薬変更後の血圧推移は、収縮期/拡張期:120〜130/70〜80の幅で推移しており、夜間の中途覚醒や入眠障害などもなく経過しました。食事摂取量は、経腸成分栄養剤(2−2)液を70〜80%ほど摂れるようになってきました。現在、引き続き食事摂取量や血圧推移、内服薬の服用状況をモニタリングしています。Avenell A, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2014;2014:CD000227.Reid IR, et al. Lancet. 2014;383:146-155. 矢吹拓 編. 薬の上手な出し方&やめ方. 医学書院;2020.

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高齢者特有のリスクを考慮した抗ヒスタミン薬の提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第20回

 今回は、抗ヒスタミン薬の追加提案について紹介します。高齢者で抗ヒスタミン薬を選択する際には、鎮静やせん妄などのリスクを十分に考慮する必要があります。経過をフォローすることで、漫然投与も防ぎましょう。患者情報75歳、男性(施設入居)基礎疾患:高血圧症、便秘症訪問診療の間隔:2週間に1回処方内容1.オルメサルタン錠20mg 1錠 分1 朝食後2.酸化マグネシウム錠500mg 2錠 分2 朝夕食後3.センノシド錠12mg 1錠 分1 夕食後4.d-クロルフェニラミンマレイン酸塩錠2mg 3錠 分3 朝昼夕食後(今回追加)5.ヘパリン類似物質油性クリーム 50g 1日2回 全身に塗布(今回追加)6.ジフルプレドナート軟膏 10g 1日2回 体幹部位に塗布(今回追加)本症例のポイントこの患者さんは、全身の乾燥と体幹部に強い痒みを伴う湿疹があり、夜間も痒くて眠れないので飲み薬も出してほしい、という訴えを訪問診療の同行時に聴取しました。そこで医師より、しっかりとした作用が必要なのでd-クロルフェニラミンマレイン酸塩錠2mgを1日3回でどうかという相談がありました。ここでの処方薬のポイントは3点あります。1.高齢者における第1世代抗ヒスタミン薬のリスク第1世代の抗ヒスタミン薬は、中枢神経を抑制して鎮静作用が強く生じることがあります。この患者さんが眠れないと訴えたことから、鎮静作用を期待している可能性もありますが、抗コリン作用などに伴う口渇や便秘、認知機能低下、せん妄があり、高齢者ではリスクが大きいと懸念されます。2.第2世代抗ヒスタミン薬の代謝と排泄経路、鎮静作用代替薬として、よりH1受容体に選択的に作用する第2世代抗ヒスタミン薬を検討しました。多くの薬剤が発売されていますが、高齢者では肝・腎機能などの低下を考慮して、安全に使用できる薬剤が望ましいです。また、鎮静の強さも各薬剤で違いがありますので、鎮静作用が比較的弱いフェキソフェナジン、ロラタジン、エピナスチンが適切と考えました。3.併用薬との相互作用相互作用の面では、現在服用中の酸化マグネシウムとフェキソフェナジンは併用注意です。酸化マグネシウムがフェキソフェナジンの作用を減弱させるため候補から外れました。服用回数の少なさも薬剤選択の大きなポイントですが、ロラタジンもエピナスチンも1日1回ですので、今回は腎臓への負担の少ないエピナスチンが妥当と考え、医師に提案しました。処方提案と経過医師には、冒頭の処方内容では、鎮静が強く生じて転倒するリスクがあり、口渇や便秘、認知機能低下、せん妄リスクもあることを伝えました。代替薬として、エピナスチン錠20mg(後発品)を提示し、服用薬との薬物相互作用もなく、腎機能への影響も少なく、服用回数も1回で済むことを紹介しました。医師からは、高齢者での第1世代抗ヒスタミン薬のリスクを軽視するわけにはいかないと返答があり、提案のとおりに変更されました。患者さんはエピナスチン錠を服用開始した翌日の夜には掻痒感が改善し、よく眠れたと聴取することができました。2週間後には皮疹もきれいに治っていたことから、エピナスチン錠を中止し、保湿剤によるスキンケアのみを継続することを医師に提案しました。この提案も採用され、保湿剤のみとなりましたが現在も経過は良好です。抗ヒスタミン薬は漫然と飲み続けているケースも多く見受けられますが、継続的にフォローして、治療終了を判断することも重要と考えます。画像を拡大する※2020年5月時点の薬価※肝・腎:肝機能低下、腎機能低下でそれぞれ血中濃度上昇の可能性あり1)各薬剤のインタビューフォーム2)「透析患者に対する投薬ガイドライン」, 白鷺病院.3)谷内一彦ほか. 日耳鼻. 2009;112:99-103.

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施設看護師から腎機能を聴取し抗菌薬の適正用量を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第17回

 今回は、患者さんの腎機能を考慮した処方提案についてです。腎排泄型の薬剤の投与量を提案するためには腎機能を評価する必要があります。しかし、その腎機能を評価するための検査値や体重、処方薬の追加の理由は処方箋からのみでは把握できません。今回は処方提案に至るまでの情報収集や連携方法について紹介します。患者情報80歳、女性(施設入居)基礎疾患:高血圧症、便秘症既 往 歴:とくになし処方内容<往診医からの処方>1.アムロジピン錠2.5mg 1錠 分1 朝食後2.酸化マグネシウム錠500mg 1錠 分1 朝食後3.酪酸菌配合錠 4錠 分2 朝夕食後<初めて受診した病院からの新規処方>1.レボフロキサシン錠500mg 1錠 分1 朝食後※病院からの処方箋には、検査値や体重・身長などの情報はなし。本症例のポイントある日の午前、施設スタッフより抗菌薬を本日中に配薬してほしいと電話連絡があり、レボフロキサシン錠500mg 1錠 分1 7日分の処方箋FAXが届いていました。第一印象として、高齢者に対する処方としてはレボフロキサシンの用量が多く、そもそもどこの感染なのかなども含めて情報が不足しているため注意が必要と感じました。そこで、この施設では日中は看護師が常勤していて、病院受診の際は看護師が同行していることを知っていたため、担当看護師に状況を確認することにしました。看護師に確認したのは、採血結果の腎機能に関わる項目(血清クレアチニン、BUN)と直近の身体測定の結果、今回の受診契機と診察時の状況です。その結果、昨夜から発熱、頻尿、倦怠感が強く生じて継続したため、本人および家族から病院受診の希望があり受診したとのことでした。複雑性膀胱炎が疑われ、本来であれば入院加療が必要な状態でしたが、本人と家族は施設に戻って治療することを希望したため、今回の処方薬になったそうです。また、受診時の採血と直近の身体測定の結果は、血清クレアチニン:0.8mg/dL、BUN:13.6mg/dL、身長:148cm、体重:45kgであったという情報も得ることができました。以前紹介した推算CCrの計算方法で腎機能を評価したところ、推算CCr:39.84mL/minと年齢相応に腎機能が低下していました。レボフロキサシンの腎機能に合わせた推奨用量処方提案と経過今回の処方用量では過剰投与になり、中毒症状であるめまいや痙攣などの神経症状、アキレス腱炎、低血糖などが懸念されることから減量が望ましいと判断し、医師に相談することにしました。また、この患者さんは便秘症にて酸化マグネシウムを朝食後に服用していたことから、効果減弱の相互作用を考慮して服用時点を昼食後で調整してよいかどうかも併せて確認することにしました。電話で、「患者さんのレボフロキサシンの用量について確認があります。維持用量を250mgに減量してはいかがでしょうか。80歳と高齢で、本日の採血結果を基に腎機能を評価したところ、推算CCrは50mL/min未満と年齢相応の低下がありました。現在の500mgを維持用量として継続した場合、中毒症状が出現する恐れもあるので減量が望ましいと考えます。初回負荷投与量500mg、維持用量250mgでいかがでしょうか。また、朝食後に施設の往診医から処方されている酸化マグネシウムを服用しているので、レボフロキサシンの効果減弱を避けるため、レボフロキサシンの服用時点を昼食後に変更してもよろしいでしょうか」と相談しました。医師からは、「症状がやや重めなのでFull Doseがいいかと思いましたが、腎機能をそこまで調べていませんでした。初回500mg、以降250mgに調整しましょう。用法は昼食後でよいです。初診なので酸化マグネシウムを服用していたことを把握できていませんでした。情報提供ありがとうございます」というお返事をいただきました。そこで、施設看護師にレボフロキサシンを減量かつ昼食後服用へ変更することをフィードバックし、同日中に配薬しました。患者さんにもその旨を説明し、レボフロキサシンを開始したところ、翌日には解熱して倦怠感や頻尿も改善していきました。また、レボフロキサシン服用期間中および終了後も下痢などの消化器症状、めまいなどの神経症状もなく経過しました。1)「透析患者に対する投薬ガイドライン」,白鷺病院.2)クラビット錠添付文書

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漫然投与薬に依存している患者の提案成功例【うまくいく!処方提案プラクティス】第13回

 すでに生じている症状の改善目的以外にも、予防目的で薬がどんどん増えていくことがあります。害が予想される場合は処方薬の整理をしたいところですが、患者さんの依存度が高い場合は中止が難しくなります。今回は、そのような場合の中止アルゴリズムについて紹介します。患者情報90歳、女性(個人在宅)、長男と同居中基礎疾患:認知症、脳出血内服管理:簡易懸濁法で経管投与(長男が管理)訪問看護:週3回処方内容(介入時)1.エレンタール®配合内用剤 3包 分3 毎食後2.ドンペリドン錠10mg 3錠 分3 毎食後3.酸化マグネシウム錠250mg 3錠 分3 毎食後 適宜調節4.ピコスルファートナトリウム内用液 便秘時 5〜8滴 適宜調節5.グリセリン浣腸 1個 便秘時本症例のポイントこの患者さんは、長期間上記の薬を継続していました。息子さんが熱心に服薬管理をしているため飲み忘れはなく、簡易懸濁の手技なども問題なく行えていました。しかし、1つ気になっていたのは、消化管運動の改善目的でドパミンD2受容体遮断薬であるドンペリドンを長期間服用していたことです。ドパミンD2受容体遮断薬は、上部消化管にあるドパミン受容体に作用することでアセチルコリンの遊離を促して運動機能を改善しますが、長期間服用するとアカシジア、ジスキネジアなどの錐体外路症状が生じることがあります。ドンペリドンは血液脳関門を通過しにくいため、比較的安全性は高いと考えられますが、長期間服用することで錐体外路症状の発現リスクはあると考えました。認知症の影響から身体機能低下は進行していましたが、もしこの錐体外路症状が生じるとさらに身体機能は低下し、本人および息子さんの負担が増加する可能性があります。そこで、服用契機をたどってみると、デイサービス利用時の移動で嘔吐したことがあり、それ以来ドンペリドンを定期服用しているとのことでした。経管投与に伴う逆流や便秘のコントロール不良も原因の1つと考えられるため、手技や投与量を検討することでドンペリドンを中止することも可能なのではないかと考えました。しかし、ご本人と息子さんがドンペリドンをやめることで嘔気をぶり返すのが怖いと訴えたため、単純な中止の提案ではなく、代替薬などを提案して不安にさせないようにする必要がありました。処方提案と経過訪問報告書を用いて、以下の処方提案をしました。「患者さんは、長期的にドパミンD2受容体遮断薬を服用しており、錐体外路症状が発現した場合にはさらなる身体機能の低下からご本人やご家族の負担が増大する懸念があります。服用契機は、デイサービス移動時の嘔吐と伺っていますので、定期服用ではなくデイサービス当日の移動前の頓服に切り替えるのはいかがでしょうか。あるいは、便秘や経管投与による胃食道逆流の症状から来る嘔気のコントロールであれば、消化管運動機能改善薬のモサプリドを同様の用法で服用するのはいかがでしょうか」。医師より、これまでドンペリドンが有効であったため他剤への切り替えではなく、有症状時の頓服にしようと承認を得ることができました。頓服に切り替え後、患者さんはドンペリドンを使うことなく経過しました。息子さんに薬を使わなくても症状がなくて安心してもらえたタイミングで、医師に今後の処方は中止することを提案したところ、承認を得ることができました。患者さんは、その後も嘔気の症状はなく、ドンペリドンを使わなくても安定した状態を保っています。

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高出血リスク重症例への予防的PPI・H2RAは有用か/BMJ

 出血リスクの高い成人重症患者において、プロトンポンプ阻害薬(PPI)およびH2受容体拮抗薬(H2RA)の予防的投与は非投与群と比較して、消化管出血について臨床的に意味のある減少をもたらす可能性が示された。中国・首都医科大学のYing Wang氏らがシステマティックレビューとメタ解析を行い明らかにしたもので、リスクの低い患者ではPPIおよびH2RAの予防的投与による出血の減少は意味のないものであり、また、これらの予防的投与は、死亡率や集中治療室(ICU)滞在期間、入院日数などのアウトカムとの関連は認められなかった一方、肺炎を増加する可能性が示されたという。消化管出血リスクの高い患者の大半が、ICU入室中は胃酸抑制薬を投与されるが、消化管出血予防処置(多くの場合ストレス性潰瘍の予防とされる)については議論の的となっている。BMJ誌2020年1月6日号掲載の報告。システマティックレビューとメタ解析、GRADEシステムでエビデンスの質も評価 研究グループは、重症患者に対するPPI、H2RA、スクラルファートの投与、または消化管出血予防(あるいはストレス潰瘍予防)未実施のアウトカムへの相対的影響を患者にとって重要であるか否かの観点から明らかにするため、Medline、PubMed、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、試験レジスタおよび灰色文献を2019年3月時点で検索し、システマティックレビューとメタ解析を行った。 成人重症患者に対し、PPI、H2RA、スクラルファートあるいはプラセボまたは予防的投与未実施による消化管出血予防について比較検討した無作為化試験を適格とした。2人のレビュアーがそれぞれ適格性について試験をスクリーニングし、データの抽出とバイアスリスクの評価を行った。また、パラレルガイドライン委員会(BMJ Rapid Recommendation)がシステマティックレビューの監視を行い、患者にとって重要なアウトカムを同定するなどした。 ランダム効果ペアワイズ/ネットワークメタ解析を行い、GRADEシステムを用いて、各アウトカムに関するエビデンスの質を評価。バイアスリスクが低い試験と高い試験の間で結果が異なった場合は、前者を最善の推定であるとした。高出血リスク群では、患者に恩恵をもたらす? 72試験、被験者合計1万2,660例が適格として解析に組み込まれた。 出血リスクが最高リスク(8%超)の患者と高リスク(4~8%)の患者については、PPIおよびH2RAの予防的投与は、プラセボまたは非予防的投与に比べて、臨床的に意味のある消化管出血を減少する可能性が示された。PPIのオッズ比(OR)は0.61(95%信頼区間[CI]:0.42~0.89)で、最高リスク患者では同リスクは3.3%減少、高リスク患者では2.3%減少した(確実性・中)。また、H2RAのORは0.46(0.27~0.79)で、最高リスク患者では4.6%減少、高リスク患者では3.1%減少した(確実性・中)。 一方でPPI、H2RA投与はいずれも、非予防的投与と比べて肺炎リスクを増加する可能性が示された(PPIのOR:1.39[95%CI:0.98~2.10]、5.0%増加)(H2RAのOR:1.26[0.89~1.85]、3.4%増加)(いずれも確実性・低)。また、死亡率との関連は認められないと考えられた(PPIのOR:1.06[0.90~1.28]、1.3%増加)(H2RAのOR:0.96[0.79~1.19]、0.9%減少)(いずれも確実性・中)。 そのほか予防的投与による、死亡率、クロストリジウム・ディフィシル感染症、ICU滞在期間、入院日数、人工呼吸器装着期間への影響を支持する結果は、エビデンスがばらついており示されなかった。

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第3世代セフェムを愛用する医師への処方提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第11回

 今回は、蜂窩織炎に対する抗菌薬の処方提案を紹介します。広域抗菌薬はカバーが広くて使いやすいのですが、薬剤耐性菌が世界的に懸念されている昨今ではターゲットを絞って適正な抗菌薬を適正量用いることが求められています。薬剤師も医師の治療方針を確認しつつ、積極的に処方設計に参画して適正使用を推進しましょう。患者情報70歳、女性(施設入居)体  重:42kg基礎疾患:高血圧症、鉄欠乏性貧血、慢性便秘症、骨粗鬆症、足白癬既 往 歴:68歳時に腰椎圧迫骨折(手術)主  訴:左下肢腫脹、痛みあり直近の採血結果: 血清クレアチニン0.8mg/dL処方内容1.アムロジピン錠5mg 1錠 分1 朝食後2.アルファカルシドール錠0.5μg 1錠 分1 朝食後3.酪酸菌配合錠 3錠 分3 毎食後4.酸化マグネシウム錠330mg 3錠 分3 毎食後5.リセドロン酸17.5mg 1錠 起床時 毎週月曜日6.クエン酸第一鉄ナトリウム錠 2錠 分2 朝夕食後本症例のポイント施設の担当看護師さんから、患者さんが左下肢の腫脹と痛みを訴えたため、臨時往診が行われたという電話連絡がありました。その際、「蜂窩織炎を発症しているようで、医師が抗菌薬をどうするか迷っている」という話を聞きました。そこで、すぐに医師に電話すると、「左下肢の蜂窩織炎を疑っているけれど、セフジニル100mg 3錠 分3でいいかな?」と相談されました。抗菌薬の処方提案においては、(1)感染臓器、(2)想定される起炎菌(ターゲット)、(3)感受性良好な抗菌薬の理解が必要不可欠です。蜂窩織炎は、真皮〜皮下組織を感染部位とした皮膚軟部組織感染症で、想定される起炎菌はβ溶血性連鎖球菌(A、B、C、G群)と黄色ブドウ球菌(メチシリン感受性:MSSA)です。医師が処方を検討しているセフジニルは第3世代セフェム系抗菌薬で、一部の口腔内連鎖球菌や大腸菌、肺炎桿菌もカバーする広域スペクトラムの抗菌薬です。本症例において、セフジニルも選択肢として挙げることは可能ですが、広域抗菌薬のため耐性菌産生の懸念があり、ターゲットを絞って治療を開始することが望まれます。また、バイオアベイラビリティーが25%程度と低く、この患者さんの場合は服用中のクエン酸第一鉄ナトリウムとの相互作用により、キレートが形成されて吸収が著しく低下することから、有効抗菌薬量としては高用量が必要なため適切ではないと判断しました。皮膚への移行性と起炎菌を考慮すると、アモキシシリンかセファレキシンが有効かつ適正と考え、処方提案することにしました。また、患者さんの腎機能がCCr:43.4mL/minと低下していることから、処方設計も併せてお伝えすることにしました。処方提案と経過医師に重症度や想定している起炎菌を確認したところ、軽症の蜂窩織炎で溶連菌群をカバーして治療したいという希望を聞き取りました。そこで、アモキシシリン250mg 6錠 分3 毎食後の内服を提案しました。しかし、セフェム系でなんとかできないかとの返答がありました。この医師は、普段は広域をカバーして安全性も高いと考える第3世代セフェムをよく処方しており、経口ペニシリン系の治療経験が少なくて不安だったようです。次に、患者さんの腎機能低下を考慮して、第1世代セフェムであるセファレキシン錠250mg 4錠 分2 朝夕食後の処方を提案し、承認を得ることができました。その後、患者さんは10日間の服薬を終了し、蜂窩織炎は軽快しました。1)Gilbert DNほか編. 菊池賢ほか日本語版監修. <日本語版>サンフォード 感染症治療ガイド2019. 第49版. ライフサイエンス出版; 2019年.2)セフゾンカプセルインタビューフォーム

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甘草の重複から偽アルドステロン症を疑い、ただちに医師に電話【うまくいく!処方提案プラクティス】第9回

 今回は、整形外科領域で処方頻度の高い芍薬甘草湯による副作用の初期徴候と経過を把握することがキーとなった症例を紹介します。普段から症状や併用薬を確認することが副作用の早期発見に功を奏しました。処方提案後には、副作用が軽減したかモニタリングすることも重要です。患者情報80歳、女性(外来)、体重:70kg基礎疾患:腰部脊柱管狭窄症、高血圧症、脂質異常症血  圧:おおよそ130/70台を推移月1回整形外科を受診しており、薬剤は薬袋で自己管理している。処方内容(すべて継続処方薬)1.アムロジピン錠5mg 1錠 分1 朝食後2.フロセミド錠20mg 1錠 分1 朝食後3.リマプロストアルファデクス錠5μg 3錠 分3 毎食後4.メコバラミン錠500μg 3錠 分3 毎食後5.芍薬甘草湯7.5g 分3 毎食後6.ロスバスタチン錠5mg 1錠 分1 夕食後7.酸化マグネシウム錠500mg 2錠 分2 朝夕食後本症例のポイントこの患者さんは、腰部脊柱管狭窄症による下肢の痛みや冷えのため芍薬甘草湯が処方されていました。投薬対応中に普段と何か変わったことはないか確認したところ、「最近、手足がだるくて、筋肉痛やこむら返りが起きる。市販薬を購入して服用しているけれど、むしろひどくなっている気がする」と聴取しました。市販薬の内容を確認すると、こむら返りや筋肉の痙攣に良いと聞いて購入した芍薬甘草湯エキス2.4g(商品名:コムレケア)であり、処方されている芍薬甘草湯と重複(甘草として12.0g/日)していました。市販薬の名称からは同じ漢方薬であるとは思わなかったようです。処方薬の芍薬甘草湯を服用中に手足のだるさや筋肉痛、こむら返りなどの症状が生じていることから偽アルドステロン症の可能性が疑われ、さらに市販薬を追加服用したことで症状の増悪に至ったと考察しました。さらに、双方の芍薬甘草湯によって降圧コントロールで服用しているフロセミドによる低カリウム血症が生じて、筋力低下や筋肉痛が生じている可能性もあると考え、医師への連絡が必要と考えました。<偽アルドステロンの注意点>偽アルドステロン症は甘草に含まれるグリチルリチンの活性代謝物であるグリチルリチン酸が、ナトリウム貯留や血圧上昇などのミネラルコルチコイド様作用を発揮することにより生じる。主な初期徴候は、手足のだるさ、しびれ、ツッパリ感、こわばり、筋肉痛、四肢脱力など。甘草2.5g/日以上、グリチルリチン100mg以上で発生リスクが高まるが、それ未満でもリスクはあるので注意が必要。利尿薬(とくにカリウム排泄型)が投与されている場合には、低カリウム血症を生じやすく、重篤化しやすい。処方提案とその後の経過患者さんに事情を話して投薬対応を一旦待っていただき、医師へ電話連絡することにしました。継続処方されている芍薬甘草湯による偽アルドステロン症の可能性があり、市販薬の芍薬甘草湯を購入して服用したことでさらに症状を助長させている可能性について報告し、今後の対応を相談しました。また、フロセミド服用で低カリウム血症が生じている可能性も考えられるため、血清カリウムの採血も提案しました。その結果、医師より処方薬と市販薬の芍薬甘草湯を中止するよう指示があったうえで、患者さんはすぐに再診となり、血清カリウムの評価のため採血検査が行われました。その2週間後に診察フォローがありましたが、予想どおり血清カリウム値が2.6mEq/Lと低カリウム血症でした。血圧推移は安定しており、浮腫もないことからフロセミドも中止となりました。今回問題となった手足のだるさや筋肉痛、こむら返りについては、芍薬甘草湯を中止して症状は改善し、再燃なく経過しています。ポケット医薬品集2019年版重篤副作用疾患別対応マニュアル 偽アルドステロン症

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ビスホスホネート製剤を噛み続ける患者の中止提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第6回

 服用状況を確認すると、意外な薬の飲み方をしているケースがしばしばあります。今回は、施設職員向けの勉強会を契機に副作用リスクを発見できた症例を紹介します。患者情報施設入居(5年目)、80歳、女性現病歴:骨粗鬆症、高血圧症、便秘症、アルツハイマー型認知症血圧推移:140/70台既往歴:大腿骨頸部骨折(78歳時)2週間に1回の往診あり(薬剤師も同行)処方内容1.アムロジピン錠5mg 1錠 分1 朝食後2.オルメサルタン錠20mg 1錠 分1 朝食後3.エルデカルシトールカプセル0.75μg 1錠 分1 夕食後4.酸化マグネシウム錠330mg 2錠 分2 朝夕食後5.アレンドロン酸錠35mg 1錠 分1 起床時 毎週土曜日症例のポイントこの患者さんは、アルツハイマー型認知症のため短期記憶が乏しく、入居時より施設職員が内服薬を管理していました。2年前に転倒、大腿骨頸部骨折のため入院し、骨粗鬆症が指摘されたためエルデカルシトールとアレンドロン酸の内服が開始となりました。しかし、その入院を契機に認知機能低下がさらに進行し、食事や排泄は全介助が必要になり、自立歩行も困難で臥床の時間が長くなったと施設職員から情報提供がありました。ある日、施設職員に向けて粉砕不可の薬についての勉強会を薬剤師主導で実施したところ、「この患者さんは内服薬を口にするとすべて噛み砕いてしまうが問題ないか」という相談がありました。アレンドロン酸などのビスホスホネート内服薬は、粉砕や分割することで口腔粘膜や食道に付着し、潰瘍などの刺激性症状を引き起こす可能性が知られており、薬剤の中止や剤形の変更が必要と考えました。患者は服用時に薬を噛み砕くことが習慣になっており、このままアレンドロン酸を継続すると、潰瘍発生の可能性がある。また、臥床の時間が長く、週1回の内服とはいえ、アレンドロン酸を服用するために起床直後に上体を起こしてその後30分間維持することは、患者、施設職員ともに負担に感じていた。アレンドロン酸の代替薬として、ビスホスホネート製剤の注射薬(月1回投与)があるが、ADLを考えると積極的な適応をどこまで優先させるか検討が必要である。エルデカルシトールは内容物が液状であり、脱カプセルや噛み砕くのに不適であるため、粉砕不可薬であり、服用しやすい剤形としてアルファカルシドールへの変更も検討したい。処方提案と経過その後の往診にて、患者さんがアレンドロン酸を含むすべての薬剤を服用時に噛み砕いていることや30分以上上体を起こしていることが負担となっていることを、医師に報告しました。リスク回避を目的にアレンドロン酸の処方中止または注射薬への変更と、エルデカルシトールをアルファカルシドールに変更することを提案したところ、ビスホスホネート製剤の積極的な治療適応ではないため、アレンドロン酸は中止となりました。エルデカルシトールはアルファカルシドールに変更したうえで、定期服用薬は本人が服用しやすいよう粉砕調剤の指示を受けました。現在、患者さんは服用薬によるむせ込みもなく施設で生活を続けています。

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Ca拮抗薬からの処方カスケードを看破【うまくいく!処方提案プラクティス】第5回

 今回は、薬剤の副作用対策のために次々と薬剤が追加されていった処方カスケードの症例を紹介します。処方の経緯をたどることによって、処方カスケードを発見できる可能性が高まります。患者情報外来患者、72歳、女性現病歴:高血圧症、便秘症血圧は130/70台を推移両下肢足背に浮腫+処方内容1.アムロジピン錠10mg 1錠 分1 朝食後2.フロセミド錠20mg 1錠 分1 朝食後3.プロピベリン錠10mg 1錠 分1 夕食後4.酸化マグネシウム錠500mg 2錠 分2 朝夕食後症例のポイントある日、高血圧症にて近医を受診継続中の患者さんから、浮腫がひどくて足がだるいという相談を受けました。症状や処方薬を確認して、まず気になったのはアムロジピンが10mgという高用量で投与されていることでした。Ca拮抗薬は高用量であるほど、投与期間が長いほど浮腫の生じる可能性が高いことが知られています。そのため、高血圧症以外の特記すべき現病歴や既往歴がなく、心不全や甲状腺機能低下症、腎機能・肝機能低下などの指摘もないことから薬剤性の浮腫を疑いました。Ca拮抗薬が高用量で投与されるようになった理由を探るため、処方された順番をたどってみることにしました。処方は、(1)10年前、便秘症にて酸化マグネシウム錠660mg /日開始、(2)5年前、高血圧症にてアムロジピン錠5mg開始、(3)1年前、血圧が高くなったためアムロジピン錠10mgに増量、(4)下腿浮腫のためフロセミド錠20mg開始、(5)頻尿のためプロピベリン錠10mg開始、(6)便秘症の悪化のため酸化マグネシウム1,000mg/日に増量、という経緯であったことが確認できました。Ca拮抗薬が高用量となったタイミングで下腿浮腫が生じているため、やはり薬剤性の浮腫の可能性が高く、その浮腫を改善する目的でフロセミドが処方されたものと考えられます。アムロジピンはL型Caチャネル遮断を主作用として細動脈の強い拡張効果を示すが、細静脈は拡張しないことから浮腫を生じやすいと考えられる。また、浮腫は高用量服用群で報告例が多い。一方で、L/N型Caチャネル遮断作用を有するシルニジピンは、細静脈を拡張させるため下腿浮腫の報告は少ない。本症例は、アムロジピンによる浮腫→フロセミドの追加→フロセミドの利尿作用による頻尿および患者QOL低下→過活動膀胱薬の追加→過活動膀胱薬の抗コリン作用による便秘の悪化→酸化マグネシウムの増量、という処方カスケードの典型症例であると考えられる。処方提案と経過そこで、下肢浮腫はCa拮抗薬が原因である可能性があり、Ca拮抗薬を減量することで改善するのではないか、ということを医師にトレーシングレポートを用いて処方提案しました。トレーシングレポートには、アムロジピンの添付文書の副作用欄に記載されている、高用量(10mg)投与群を含む第III相試験および長期投与試験の結果である「高用量(10mg)投与時に浮腫が高い頻度で認められ、5mg群で0.65%、10mg群で3.31%であった」というエビデンスを引用しました。後日、トレーシングレポートの内容を確認した医師より電話がありました。Ca拮抗薬の副作用に浮腫があることを把握していなかったとのことで、血圧に変動がないことからアムロジピンを5mgに減量して様子をみることになりました。1ヵ月後の来局時に、足背の浮腫の改善がみられ、血圧も130/70台と変わりがないことが確認できたため、浮腫のために処方されていたフロセミドの中止を提案し、採用されました。さらに1ヵ月後も足背の浮腫や血圧の悪化はなく経過しました。プロピベリンも中止して差し障りはないと思いましたが、中止することで排尿トラブルが生じることを患者さんが心配したため、そのまま経過をみることになりました。今後、排便・排尿状況を確認しながら、プロピベリンの継続意向に変わりがないかどうかを確認していきたいと考えています。

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腎機能を考慮したファモチジンの変更提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第1回

 千葉県柏市にある在宅医療特化型薬局「つなぐ薬局」の鈴木です。私は現在、施設往診同行や在宅訪問などで積極的に医師とコミュニケーションを取り、処方提案を行っています。これまの学びを処方提案という形でアウトプットすることで、薬剤師の立場と視点による薬物治療の適正化を推進し、患者さんがより良い状態になっていくことを実感しています。このコラムでは、薬学的管理の質を向上させる処方提案の重要性とともに、薬局薬剤師の視点での提案のコツをお伝えしたいと思います。処方提案する際には、ご家族からの訴えが重要な手掛かりとなることがあります。認知症様の症状が生じていると聞き取り、検査値や処方薬を見直したところ、高齢者では注意が必要な薬剤がありました。今回は腎機能を起点に処方提案した症例についてご紹介します。患者情報75歳、女性、身長:140cm、体重:45kg現病歴:脳梗塞、認知症同居の家族から、最近話が通じにくいことが多いと訴えあり。処方内容アスピリン腸溶錠100mg 1錠 分1 朝食後マニジピン錠10mg 1錠 分1 朝食後プラバスタチン錠10mg 1錠 分1 朝食後ファモチジン錠20mg 2錠 分2 朝夕食後酸化マグネシウム錠330mg 2錠 分2 朝夕食後メマンチン錠20mg 1錠 分1 夕食後前月の検査値(L/D)Scr:1.02mg/dL、eGFR:40.63mL/min/1.73m2、Mg:2.0mg/dLHDL:45mg/dL、LDL:118mg/dL本症例の着眼点この患者さんは、脳梗塞の2次予防のために低用量アスピリンを服用継続していて、その消化性潰瘍予防のためファモチジンを服用していました。処方箋の受付時に家族から聴取した「会話のつじつまが合わないことが多い」という訴えは、認知症に伴う周辺症状の可能性もありますが、ファモチジンによるせん妄や意識障害の可能性も示唆されます。腎機能が低下している場合、腎排泄型のH2受容体拮抗薬であるファモチジンの血中濃度が持続して過量投与となることがあります。『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015』において、「すべてのH2受容体拮抗薬は可能な限り投与を控える。とくに入院患者や腎機能低下患者では、必要最小限の使用にとどめる」ということが記載されています。腎機能を正しく評価して薬剤投与設計を行うために、下記の評価を行いました。腎機能の評価Cockcroft-Gaultの式を用いて推算CCrを算出することができます。計算するために必要なパラメータはScr(血清クレアチニン)、年齢、体重、性別で、女性は筋肉量が少ないため、係数の0.85を乗じます。<Cockcroft-Gaultの式>男性:CCr(mL/min)=(140-年齢)×体重(kg)/(72×Scr)女性:CCr(mL/min)=(140-年齢)×体重(kg)/(72×Scr)×0.85通常は上記の簡易式が用いられるが、身長が考慮されていないので、肥満患者では腎機能を過大評価してしまう可能性がある。そのため、実体重ではなく標準体重や理想体重を用いて計算することもある。<標準体重(男女共通)>身長(m)×身長(m)×22(係数)<理想体重>男性=50+{2.3×(身長-152.4)}/2.54女性=45+{2.3×(身長-152.4)}/2.54今回の患者さんの場合、CCr(Cockcroft-Gaultの式にて推算):33.9mL/min、体重未補正eGFR:30.5mL/minであり、60mL/min>CCr>30mL/minの場合のファモチジンの推奨投与量は、20mg 1日1回あるいは10mg 1日2回となります。本症例において、ファモチジンは過量投与です。なお、腎機能が低下している場合、マグネシウムの蓄積に伴う高Mg血症を評価することも重要ですが、検査結果は基準値内であり、自覚症状の面からも高Mg血症は否定的です。処方提案と経過腎機能を評価したところ、ファモチジンが過量投与となっており、減量が望ましいと判断しました。また、せん妄のような症状も現れており、H2受容体拮抗薬が影響していることも考えられます。そこで、処方医に電話で、ファモチジンを1日1回に減量あるいは肝代謝型のPPI(プロトンポンプ阻害薬)に変更してみるのはどうか提案しました。その結果、ファモチジンは中止となり、ランソプラゾールOD錠15mgが開始となりました。後日家族に確認したところ、会話のつじつまが合わないということは減ったと聴取しました。本症例のポイント・定期的に血液検査の結果と身長・体重を聴取する。・薬物投与設計のための腎機能評価を正しく理解する。・H2受容体拮抗薬は腎排泄型薬剤が主であり、高齢者においてはせん妄や意識障害のリスク因子となる。「透析患者に対する投薬ガイドライン」, 白鷺病院,(参照:2019年6月24日)日本老年医学会ほか 編. 高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015. メジカルレビュー社;2015.

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ナルデメジンのわが国におけるオピオイド誘発性便秘に対する効果と安全性/ASCO2019

 オピオイド誘発性便秘(OIC)はオピオイド治療において頻度の高い有害事象の1つであり、ナルデメジン(商品名:スインプロイク)はOIC治療に承認されている末梢性μオピオイド受容体拮抗薬である。わが国の実臨床におけるナルデメジンのOIC患者に対する安全性と有効性を調査したPhase-R OIC試験の結果が、国立がん研究センター中央病院 清水 正樹氏、ガラシア病院 前田 一石氏らにより米国臨床腫瘍学会年次総会ASCO2019で発表された。ナルデメジン初回投与後71.6%が24時間以内に自発的排便 Phase-R OIC試験は、わが国の14施設の緩和ケアチーム・病棟によるリアルワールドレジストリ研究。ナルデメジンを投与したOIC合併がん患者を観察した。主要評価項目はナルデメジン初回投与後24時間以内の自発的排便([spontaneous bowel movement、以下[SBM])。副次評価項目はナルデメジン初回投与7日間のSBM回数と有害事象である。 ナルデメジンを投与したOIC合併がん患者の主な観察結果は以下のとおり。・2018年4月~12月に204例の患者が研究に登録され、ナルデメジン0.2mg/日の投与を7日間受け、184例(90.2%)が7日間の治療を完遂した。・患者の平均年齢は63歳、50.5%が男性、主ながん原発部位は肺(23.5%)、消化管(13.7%)、泌尿器(9.3%)であった。・オピオイド投与量の中央値は経口モルヒネ換算で30mg/日であった。・患者の76.0%が緩下剤を日常的に併用しており、頻度の高いものは酸化マグネシウム(65.2%)、センナ(17.2%)であった。・ナルデメジン初回投与後24時間以内にSBMが観察された患者は71.6%(146例)で、であった・患者の62.8%(128例)が、ナルデメジン初回投与後1週間でSBM回数が増加した(1段階改善41.7%[85例]、2段階改善21.1%[43例])。・頻度の高いナルデメジンの有害事象は、下痢(Grade1〜2:35例、Grade3:1例)および腹痛(Grade1〜2:10例、Grade3:1例)であった。

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こんなにある子供の便秘サイン

 2018年3月18日、EAファーマ株式会社は、「大人が知らない『子供の慢性便秘症』の実態と世界標準へと歩み出した最新治療~便秘難民ゼロを目指して~」をテーマに、都内でプレスセミナーを開催した。 セミナーでは、子供が抱える「言うに言えない便秘の悩み」に大人がどう気付き、診療へ導くのか解説された。子供の5人に1人は便秘 セミナーでは、十河 剛氏(済生会横浜市東部病院小児肝臓消化器科)を講師に迎え、小児の便秘症について詳しくレクチャーを行った。 はじめに横浜市鶴見区で行われた調査報告を紹介。 3~8歳の子供3,595人に食事と排便に関するアンケート調査を行ったところ、718人(約20%)に慢性便秘症(ROMEIII診断基準による)がみられたという(全国平均では約15%)。とくに便秘の子供では、「便を我慢する姿勢や過度の自発的便の貯留の既往」「痛みを伴う便通の既往」「少なくとも週1回の便失禁」が散見されると報告した1)。 子供の便秘に関しては保護者の関心も高い一方で、しつけや教育の問題とされたり、周囲に相談できる人がいなかったり、かかりつけの医師に相談しても対症的な治療だけだったりと不安を訴える。また、子供たちは、友達から「臭い」と言われたり、恥ずかしくて言えなかったりと自尊心が傷つき行き場のない子供を診療で救う必要性があると同氏は問題を指摘する。気付きたい「便秘症」の症状 「便秘」について、その定義、診療はどのようにされるべきか。「小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン」(2014年)によれば、「便秘とは、便が滞った、または便がでにくい状態」と定義され、とくに小児では、排便時に肛門が痛く泣いたり、いきんでも排便ができない状態がみられる。ただ注意すべきは、「便秘」の認識は、個々人で異なるため排便の回数などで判断せず、同時に家族の状況も確認した方がよいと語る。 そして、便秘の症状として「腹痛、裂肛、直腸脱、便失禁、肛門周囲の付着便や皮膚びらん、嘔吐・嘔気、胃食道逆流・げっぷ・口臭、集中力低下、夜尿・遺尿」があり、いかに医療者が気付き、診療介入できるかが重要だと指摘する。 具体的に10歳・女児の症例を紹介。この症例では、「口臭、げっぷ、嘔吐、排便時間30分超」の症状がみられ、他科診療の折に同氏の診療科を受診、便秘症の診療にいたったという。X線検査では、直腸に便塞栓が観察され、大腸に大量の便が貯留していた。慢性便秘症と胃食道逆流症の診断後、プロトンポンプ阻害薬とポリエチレングリコール(PEG)製剤で治療を開始。19日後には、排便時間が10分以内になり、当初の症状も消失したという。 小児の便秘症を疑うポイントとして、前記便秘症状の中でも触れているが、溜まった便で膀胱が圧迫されることによる夜尿やおもらしが多く、便塞栓のために液便による便漏れやこれらに伴う肛門部のびらんなどがみられ、診断の手助けになると語った。小児にも適用できるようになったPEG製剤 小児が便秘症を発症しやすい時期として、「食事の移行期(離乳食から普通食など)」「トイレットトレーニング」「通学の開始」の3期があり、排便への恐れが子供にできないように、環境を整えることも重要と指摘する。 また、便秘症の「便塞栓」について詳説し、本症を疑うポイントとして、「少量の硬い便」「肛門周囲や下着への便の付着」「便がでにくいのに下痢便」「1週間近く排便がない」などが見られたら治療介入し、便秘症の悪循環を断ち切る必要があると強調する。 便秘症治療の三大原則としては、「便塞栓があればその除去の後で、薬剤、食事、生活習慣改善などの治療を行う」「外したフタ(便塞栓)は外したままにする」「便を我慢せず出しきる習慣を身に付ける」ことを説明。とくに排便習慣については、直腸の排便へのセンサーを正常化させることが大事で、また、排便の姿勢についても、自然に排便できるように洋式便座では踏み台などの設置も効果的という。 そして、これら治療を補助するために治療薬があり、「浣腸だけでなく新しい経口治療薬も小児には適用できるようになった」と説明する。現在、わが国では、乳児・幼児に対してラクツロース、酸化マグネシウムなどの浸透圧性下剤、グリセリン、ビサコジルなどの刺激性下剤が便秘に多用されている。また、2018年11月からようやくわが国でもPEG製剤(商品名:モビコール)が、2歳以上の小児に使用できるようになったこともあり、便秘薬の選択肢は増えつつあるという(参考までに、海外では便塞栓除去に浣腸だけでなく経口治療薬も選択肢に入っており、イギリスではPEG製剤が第一選択薬となっている2))。 臨床上、成人の便秘症は治療に難渋することがあるが、子供の便秘症では薬剤療法が奏功することもあり、早く介入することが重要と語る。治療の目標は、便秘ではない状態の維持であり、そのためには3~4年近く必要という。 最後に同氏は、子供のトイレ指導のコツについて、「25%できたら褒める」「小さいことから少しずつ」「できた行動に着目する」「具体的な指示をする」「一度に一つだけ指示をする」などを挙げ、「便秘難民がゼロ」になることを期待すると講演を締めた。■参考EAファーマ株式会社 イーベンnavi

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