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腸内細菌の医療への応用

過去10年間で急速な発展を遂げてきた腸内細菌叢領域。健康や疾患との関連性も明らかになってきており、医学・医療分野での注目度も高まっている。そのようななか、腸内細菌叢解析のビジネス化にいち早く着目したのが株式会社サイキンソーだ。サイキンソー代表取締役 沢井悠氏に、腸内細菌叢の解析が医療にもたらす可能性について聞いた。インタビュイー腸内細菌叢が注目されるようになった背景や、サイキンソーが提供する腸内細菌叢検査サービスについて教えていただけますか?ゲノム解析技術の革新を背景に、2010年台前半から世界的に腸内細菌叢研究が活発化するようになりました。そのようななか、サイキンソーは2014年に創業しました。創業当時は、腸内細菌叢に対する認知度はそれほど高くありませんでしたが、その後メディアが取り上げたことがきっかけで一気に認知が広がり、一般の方も関心を持たれるようになりました。私どもの提供する個人向け腸内細菌叢検査サービス「マイキンソー(Mykinso)」も、そうした背景から注目されるようになりました。マイキンソーは、生活習慣に関する問診票に回答し、専用のキットを使って採取した糞便サンプルを郵送するだけの、手軽な腸内細菌叢検査サービスです。キットを返送いただいてから約4週間で結果が出ます。個人向けとして展開していましたが、医師から問い合わせをいただくことが増えたため、現在は医療機関にもサービスを提供しています。検査では、ビフィズス菌や乳酸菌、酪酸菌、エクオール産生菌などの主要な細菌の割合、腸内細菌の多様性、細菌の構成比率などがわかります。医療機関向けには、問診票に書かれた悩みや症状に関連する細菌の解析結果などをまとめた「腸内フローラカルテ」を作成しています。腸内フローラカルテには、患者さん一人ひとりに管理栄養士から具体的な生活習慣のアドバイスがあり、検査後の患者指導にも役立てられると思います。腸内フローラカルテの一例画像を拡大する画像を拡大する検査サービスを利用いただく方は30~50代が中心で、医療機関を通して検査を受けるのは60~70代の方が多い傾向にあります(図)。特に、20代や60歳以上では症状や体調の悩みが強い方が多く、投薬やプレバイオティクス・プロバイオティクスなど、症状改善のためにすでに色々なことを試しているケースが多く見受けられます。(図)腸内細菌叢検査「マイキンソー」の利用者属性画像を拡大する医療機関ではどのように活用されているのでしょうか?マイキンソーは、北海道から沖縄まで、幅広い地域の医療機関に採用いただいています。診療科別では消化器内科が多く、産婦人科や整形外科での導入実績もあります。便秘や下痢などの症状が従来の検査・治療ではなかなか改善しない患者さんに対し、腸内細菌叢の検査を勧めるという流れで活用されることが一般的です。全国に先駆けて腸内細菌外来を設置した愛知県一宮市の山下病院では、従来の検査で原因が特定できず、投薬でも便秘や下痢が改善しない患者さんに対し、腸内細菌叢検査の結果を基にした生活指導を行っています。指導は医師が行うだけでなく、看護師や管理栄養士もフォローアップをしているそうです。機能性の消化管障害の場合、治療をしても満足のいく改善効果が得られないケースが一定数ありますが、腸内細菌叢検査を活用することで、そうしたケースでも適切な指導が行えるようになったと伺っています。これまでに蓄積した解析データから、機能性の消化管障害を有する人では健常な人と比べて腸内細菌叢のバランスが崩れており、検出される菌叢が大きく異なることがわかっています。具体的には、短鎖脂肪酸を産生する細菌が少ない、細菌の多様性を示すスコアが低い、ファーミキューテス門菌とバクテロイデーテス門菌の比率(FB比)が高いなどの違いが見つかります。菌叢のバランスが崩れている場合、プレバイオティクスやプロバイオティクスを取り入れてバランスを整えていくことで症状の改善につながることも期待できるようです。将来的に、腸内細菌叢検査は医療にどのような影響をもたらすと期待されますか?腸内細菌叢との関連に関する研究が最も進んでいるのは、炎症性腸疾患(IBD)や過敏性腸症候群(IBS)、便秘、下痢などの下部消化管の疾患・症状です。そのほかに、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)などの肝臓の疾患や関節リウマチなどの自己免疫疾患との関連も多く調べられています。エビデンスの集積が進めば、疾患の治療戦略の検討や予防を目的として、腸内細菌叢を解析するようになっていくものと期待されます。腸内細菌叢は、抗菌薬をはじめとするさまざまな薬の影響を受けると考えられています。また逆に、腸内細菌叢のバランスが崩れていると、薬の効果や副作用の発現が減弱・増強される可能性があることもわかってきています。将来的に、投薬のベースとして腸内細菌叢を整えることが重要視されるようになれば、腸内細菌叢を解析する意義がより明確になるものと考えられます。米国では、日本より先んじて臨床での腸内細菌叢検査の活用が広がっています。細菌叢検査領域のベンチャー企業の代表格である米国uBiomeでは、IBDやIBSなどの疾患と関連する腸内細菌を検出する腸内細菌叢検査サービス「SmartGut」を展開していますが、この検査は大多数の健康保険会社で保険償還されています。近い将来、日本でも腸内細菌叢検査が評価され、血液検査のように日常診療で実施されるようになることを期待しています。

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添付文書改訂:タミフル/スタチンとフィブラート併用の原則禁忌解除/リンゼス錠【下平博士のDIノート】第13回

タミフルカプセル75、タミフルドライシロップ3%画像を拡大する<Shimo's eyes>2007年に、オセルタミビルを服用した10代の患者が転落して死傷する事例が相次いで報告されたことから、緊急安全性情報の発出や添付文書の警告欄の新設によって、10代の未成年患者への使用は原則として差し控えられていました。しかし、2018年8月に、厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課長通知にて、オセルタミビル服用と異常行動について、明確な因果関係は不明という調査結果が報告され、インフルエンザ罹患時には、抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無または種類にかかわらず、異常行動が発現する可能性があることが明記されました。そして、オセルタミビルを含めたすべての抗インフルエンザウイルス薬について、異常行動に対する注意喚起の記載が統一されました。今年は経口抗インフルエンザ薬のラインアップに変化が生じており、2018年3月には新規作用機序であり、1回の経口投与で治療が可能なバロキサビル錠(商品名:ゾフルーザ)が発売され、同年9月には顆粒製剤が承認されています。同じく9月には、オセルタミビルの後発医薬品も発売されています。患者さんに合わせて処方薬が使い分けられるようになりますが、どのような薬剤が処方されていたとしても、異常行動の可能性があることを念頭に、小児・未成年者を1人にしないことや住居が高層階の場合は施錠を徹底することなどを指導しましょう。スタチン系とフィブラート系併用の原則禁忌が解除画像を拡大する<Shimo's eyes>2018年10月に、腎機能低下患者へのフィブラートとスタチンの併用が添付文書の原則禁忌から削除され、「重要な基本的注意」の項で、腎機能に関する検査値に異常が認められる場合、両剤は治療上やむを得ないと判断する場合のみ併用することという旨の注意喚起が追記されました。欧米では腎機能が低下している患者でもスタチンとフィブラートの併用が可能であること、わが国においても併用治療のニーズがあることなどから、日本動脈硬化学会より2018年4月に添付文書改訂の要望書が提出されていました。さらに、2019年4月に施行される予定の医療用医薬品の添付文書記載要領の改訂において、「原則禁忌」および「原則併用禁忌」が廃止されることを踏まえた対応と考えられます。なお、原則禁忌が解除されたとはいえ、腎機能が低下している患者では、スタチンとフィブラートの併用による横紋筋融解症のリスクについて、引き続き十分な注意を払う必要があるでしょう。リンゼス錠0.25mg画像を拡大する<使用上の注意>治療の基本である食事指導および生活指導を行ったうえで、症状の改善が得られない患者に対して本剤の適用を考慮します。重度の下痢が現れるおそれがあるので、症状の経過を十分に観察し、漫然と投与しないよう、定期的に本剤の投与継続の必要性を検討します。<用法・用量>通常、成人にはリナクロチドとして0.5mgを1日1回、食前に経口投与します。なお、症状により0.25mgに減量します。<Shimo's eyes>慢性便秘症は高齢者に多いため、超高齢社会となったわが国では、近年便秘治療薬の領域が活気を帯びています。従来、慢性便秘症の薬物治療には、酸化マグネシウムやセンノシドなどが主に使われてきましたが、近年新薬が相次いで発売されています。便秘は「本来、体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義され、腸そのものの病変(腫瘍や炎症、狭窄など)によって起こる「器質性便秘」と、消化器官の機能低下によって起こる「機能性便秘」に分類されます。「慢性便秘症」は機能性便秘のうち、便秘の状態が日常的に続くものです。リナクロチドは、2017年3月に「便秘型過敏性腸症候群」の適応で発売されましたが、今回「慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)」が追加されました。同適応を有するものとしてすでに、ルビプロストンカプセル(商品名:アミティーザ)、エロビキシバット錠(同:グーフィス)が発売されており、さらに2018年9月にはマクロゴール含有製剤(同:モビコール)、ラクツロースゼリー(同:ラグノスNF)が承認されました。なお、食後投与の薬剤や食前投与の薬剤、服用時点の定めのない薬剤があるため、監査・服薬指導の際には注意が必要です。

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肩腰膝の痛みをとる Dr.究のあなたもできるトリガーポイント注射

第1回 トリガーポイントとは何か? 第2回 トリガーポイントを見つける 診察の基本 第3回 肩痛で触るべき筋肉 第4回 腰痛は、ヘルニアを探すよりも筋肉を触る 第5回 膝痛では大腿から下腿まで触る 第6回 頭痛のトリガーポイント 第7回 胸痛・腹痛のトリガーポイント 慢性的な痛みを訴える患者さんに出会うのは日常茶飯事。根本的な解決にはならないけれど、唯一の選択肢として鎮痛薬や貼付剤を処方していませんか?整形外科領域の疾患やレッドフラッグを除外しても続く痛みの原因の多くは実は筋肉にあります。 トリガーポイント注射は、これにアプローチする、新しい治療方法です。 なぜ筋肉が原因で身体のあちこちに痛みが生じるのか?そのメカニズムは、実にシンプル。筋肉に痛い箇所がひとつあれば、それを代償するように体を使い、さらに痛みが連続していくのです。遭遇頻度の高い肩痛、腰痛、膝痛、そして、ときに筋肉が原因となっている腹痛や頭痛について、それぞれ診察、触診、注射のポイントを伝授します。第1回 トリガーポイントとは何か? 腰や膝の痛みを訴える患者さんに、鎮痛薬や貼付剤を処方するだけ?これからはトリガーポイント注射も選択肢に入れてください!”筋肉”が原因で慢性的な疼痛が生じるのはしばしばあること。トリガーポイント注射は、筋肉が原因の痛みにアプローチする、新しい治療方法です。 普段、筋骨格系の診察をしない先生でも、明日から実践できるよう、筋肉の位置や名称は3DCGでわかりやすく提示。トリガーポイント注射を第一線で実践する斉藤先生が、診察と注射のノウハウを実技で伝授します。第2回 トリガーポイントを見つける 診察の基本 痛みの原因になっている筋肉はどこなのか。注目すべきは、「痛みがある箇所よりも、つっぱりを感じるところ」。筋肉が短縮しているところにトリガーポイントがあります。今回は、視診、動作、触診とトリガーポイントを特定するための診察ノウハウを伝授。もちろん、見つけたトリガーポイントにどうやって安全に注射をしていくか、そのコツをお伝えします。第3回 肩痛で触るべき筋肉 肩痛で見るべきは、筋肉は3つ。どの筋肉にTPがあるかで、痛みの場所が違います。原因になる筋肉を特定する診察の方法、トリガーポイントを探す触診まで実技でわかりやすく解説します。第4回 腰痛は、ヘルニアを探すよりも筋肉を触る 腰痛の原因は椎間板ヘルニア?もちろんそういう場合は多いですが、神経所見をとると痛みやしびれの原因がヘルニアでないことはよくあります。ヘルニアがあってもなくても、一度トリガーポイントを探索してみましょう。今回は、腰痛を訴える場合に触るべき脊柱起立筋群、殿筋群の診察ノウハウを解説します。さらに、意外な部位にある腰痛の原因も紹介します。第5回 膝痛では大腿から下腿まで触る 膝関節だけに注目しても、痛みが取れない原因は、膝痛には大腿から下腿までの筋肉がかかわっているから。大腿から下腿まで、確認すべき筋肉を、CG、触診、超音波を駆使して立体的に解説します。膝の前面か後面か、痛む部位に応じたトリガーポイントを見つけるコツを詰め込みました。第6回 頭痛のトリガーポイント 緊張性頭痛や片頭痛といった頭痛には肩、首、顔、頭の筋肉が関与している可能性があります。レッドフラッグを除外しても、鎮痛薬を処方しても、継続する頭痛に、トリガーポイントを取り入れることで苦痛を和らげられる可能性が大きく広がります。触るべき筋肉の位置とトリガーポイント、触診のコツを押さえましょう。第7回 胸痛・腹痛のトリガーポイント 筋肉があれば、そこにはトリガーポイントが形成される可能性があります。人間は全身筋肉に覆われているので、どの部位であってもトリガーポイントによる痛みが生じるとも言えます。胸部のトリガーポイントでは狭心症と見まがう痛みを生じることがあります。腹部では逆流性食道炎や過敏性腸症候群、胃潰瘍など消化器疾患と似た症状がでることも。いずれも触るべき筋肉の解剖と触診、超音波像で診察のポイントを解説します。

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続々と選択肢増、慢性便秘症治療の最新事情

 相次いで新薬が登場している慢性便秘症治療で、各治療薬はどのように使い分けていけばよいのか。9月11日、都内で慢性便秘症治療の最新事情をテーマとしたプレスセミナーが開催された(主催:アステラス製薬株式会社)。演者として登壇した三輪 洋人氏(兵庫医科大学 内科学消化管科 主任教授)は、「便秘は治療満足度に対する医師と患者側のギャップが大きい。単純に排便回数を改善するだけでなく、症状を改善していく治療が求められている」と話し、便秘治療の考え方や各治療薬の特徴について解説した。慢性便秘症の診断で医師は排便回数の減少を、患者は腹部の膨満感を重視 慢性便秘症の診療を行っている医師400人と、症状が6ヵ月以上あり通院あるいは市販薬を服用している患者700人を対象とした2017年の調査1)で、医師が慢性便秘症の診断にあたり重視する項目は多い順に、「排便回数の減少」「便の硬さ」「排便困難」であった。一方、患者側は「腹部の膨満感」「排便回数の減少」「便の硬さ」の順に回答が多く、特に腹部症状を改善したいと感じていることが明らかになった。 また、慢性便秘症治療の各薬剤(上皮機能変容薬は含まれていない)について満足度を尋ねたところ、浸透圧性下剤で80%以上など医師の満足度がおおむね高かったのに対し、患者側では全薬剤で50%以下となり、医師と比較すると圧倒的に低い傾向がみられた。 三輪氏は、「われわれはつい、“週2回だった排便が4回になりましたか、よかったですね”と排便回数を慢性便秘症治療の目安としてしまいがちだが、患者さん側は症状を改善したいと感じている。漫然と治療を続けるのではなく、どうしたら症状がとれるのかという観点からも治療を考えていかなければいけない」と話した。慢性便秘症の薬物療法、ガイドラインでの推奨は? 慢性便秘症の薬物療法について、まず前提として、骨盤底筋の機能障害に起因する便排出障害型の便秘には効果がなく、リハビリ療法の一種であるバイオフィードバック療法の有効性が確立されていることに三輪氏は言及。「2時間以上もトイレにこもる、手でかき出さないと出せないなど、排便の困難感が極度に強い患者さんは、便排出障害型の可能性がある」と話した。 2017年10月発行の「慢性便秘症診療ガイドライン2017」では、複数ある薬剤の中で、浸透圧性下剤(酸化マグネシウム、ラクツロース、ソルビトールなど)と上皮機能変容薬(ルビプロストン、リナクロチドなど)に、「強い推奨(1)」と「最も高いエビデンスレベル(A)」が示されている。 しかし、兵庫医科大学の関連病院で2017年10月~2018年2月にかけて薬剤の使用状況を調べたところ、酸化マグネシウムと刺激性下剤の使用が90%以上を占めており、上皮機能変容薬の使用は数%に留まっていた。「市販薬や一部の漢方薬(“大黄”が含まれるもの)を含む刺激性下剤は、一時的な効果はあるが習慣性や依存性があるため、短期間の投与とすることがガイドラインでも推奨されている」と三輪氏。酸化マグネシウムについては、慢性便秘症治療において「今後も第一選択であることは変わらないだろう」としたうえで、副作用(高マグネシウム血症)が報告されており高齢者や腎機能低下患者では定期的な血清マグネシウム濃度の測定が求められていることから2)、「とくに高齢者などでは、慢性便秘症治療に漫然と酸化マグネシウムを投与するのではなく、効果や症状の改善がみられない場合は上皮機能変容薬に切り替えていくという考え方がいいのではないか」と話した。新薬と既存薬をどのように使い分けるか 2018年に入り、4月に胆汁酸トランスポーター阻害薬エロビキシバットが発売、8月には便秘型過敏性腸症候群の治療薬として発売されていたリナクロチドが慢性便秘症に適応拡大された。リナクロチドは2012年発売のルビプロストンと同じく、腸管上皮に直接作用して管腔内への水分分泌を促進する上皮機能変容薬だが、作用機序は異なる。 リナクロチドは腸管上皮に存在するグアニル酸シクラーゼC(GC-C)を活性化させ、サイクリックGMP(cGMP)を増加させることで、水分分泌を増加させる。このcGMPには求心性神経の痛覚過敏を抑制するはたらきがあり、便秘治療薬の中で唯一、大腸痛覚過敏改善作用が示されている。三輪氏は「上皮機能変容薬の使い分けは非常に難しいが、それぞれ特徴はある」と話し、「リナクロチドは薬物相互作用が比較的少ないため、他剤を併用している高齢者などでも使いやすく、また腹痛などの症状が強い人に向いているのではないかと考えている」と期待感を示した。 今後も新薬ラッシュは続く見込みで、ポリエチレングリコール(PEG)製剤が近く発売予定となっている。PEGは酸化マグネシウムと同じ浸透圧性下剤で、欧米では慢性便秘症治療の第一選択薬として広く使われている。「直接比較したデータはないのでどちらがいいと明言するのは難しいが、PEGは水に溶かして飲む形状なので、その点が日本の患者さんたちにどの程度受け入れられるかという部分もある」と話した。

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過敏性腸症候群は炎症性腸疾患よりもうつ病が重症化しやすい

 過敏性腸症候群(IBS)患者は炎症性腸疾患(IBD)患者と比べて併存しているうつ病や不安の重症度が高いことが、中国・中日友好医院のQin Geng氏らの研究によって明らかになった。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2018年5月4日号に掲載。過敏性腸症候群のうつ病は炎症性腸疾患と比べて重症度が高い IBSやIBDといった慢性胃腸疾患の患者では、うつ病が併存している割合が高いが、IBSとIBDで一貫性のある結果は認められていない。そのため、本研究では、IBSおよびIBD患者におけるうつ病の有病率や重症度について検討した。 PubMed、PsycINFO、Embase、Cochrane Library、Wan Fang、SinoMed、Chinese National Knowledge Infrastructureを使用して、2017年9月12日までのデータについて体系的な文献探索を行い、比較解析のためのIBS患者とIBD患者を抽出した。さらに、ランダム効果モデルによって併存したうつ病の標準化平均差(standardized mean difference:SMD)とオッズ比を算出したほか、今回の解析に用いた研究から併存した不安に関するデータを抽出し、メタ解析を行った。メタ解析の質の評価はNewcastle-Ottawa Scale(NOS)を用いて行った。 過敏性腸症候群患者と炎症性腸疾患患者のうつ病の有病率や重症度を検討した主な結果は以下のとおり。・IBS患者1,244名とIBD患者1,048名が22件の研究から抽出された。・うつ病の有病率は、IBS群とIBD群で有意差はなかった(研究数10件、OR=1.18、95%CI:0.87~1.60、p=0.29)。・IBS群は、IBD群と比べて、以下の症状の重症度が高かった。 うつ病(pooled SMD=0.18、95%CI:0.04~0.33、p=0.01) 不安(pooled SMD=0.31、95%CI:0.14~0.49、p=0.0006)・22件中16件の研究が、NOSにより「質が高い」と評価された。

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国内初の慢性便秘症診療ガイドライン発刊―便秘の定義や治療推奨明確に

 日本消化器病学会関連研究会 慢性便秘の診断・治療研究会は、今月『慢性便秘症診療ガイドライン』を発刊した。高齢者を中心に有症状者は増え続け、その数は1,000万人超といわれる慢性便秘だが、これまで本邦においては診断や治療に関する明瞭な指針がなかった。本ガイドラインでは、診療に当たる医師らのコンセンサスを図るべく、「便秘」を定義。治療についてはClinical Question(CQ)を設定し、ステートメントとともにエビデンスレベルと推奨度を示した。以下でその概略を紹介する。「状態名」としての便秘を改めて定義 排便習慣には個人差が大きく、患者が「便秘」という言葉で意味する内容もさまざまだが、本ガイドラインでは、「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状況」を便秘と定義。また、便秘症については、「便秘による症状が現れ、検査や治療を必要とする場合であり、その症状として排便回数減少によるもの(腹痛、腹部膨満感など)、硬便によるもの(排便困難、過度の怒責など)と便排出障害によるもの(軟便でも排便困難、過度の怒責、残便感とそのための頻回便など)がある」としている。 一方、何らかの理由で経口摂取量が不十分な場合は排便回数が減少するのは当然であり、この理由で排便の回数や量が少ないのは真の便秘ではない。また、残便感を訴える患者の中には強迫観念のために、「本来体外に排出すべき糞便」が直腸内に存在しないにもかかわらず、残便感(偽の便意)を訴え、過度に怒責したり、頻回にトイレに行ったりする排便強迫神経症も少なからず存在し、そのような患者も真の便秘症とはいえない、としている。治療法をエビデンスレベルと推奨度で評価 治療については、生活習慣の改善や薬物療法などの保存的治療に関するCQを11項目、順行性洗腸法や大腸切除術などの外科的治療に関するCQを3項目設定。それぞれにステートメントと、関連する文献エビデンスを評価したエビデンスレベル(A~D)と、推奨度(1:強い推奨、2:弱い推奨)を表記している。 このうち、浸透圧性下剤の使用については「慢性便秘症に対して有用であり使用することを推奨」している(推奨度1、エビデンスレベルA)。ただし高齢者については、腎機能が正常な場合も含めて、マグネシウムを含む塩類下剤は「慎重投与」とし、定期的に血清マグネシウム濃度を測定するよう注意を呼び掛けている。 上皮機能変容薬についても、本ガイドラインでは「有用であり、使用することを推奨する」としている(推奨度1、エビデンスレベルA)。ただし、ルビプロストンについては「妊婦には投与禁忌であり、若年女性に生じやすい悪心の副作用にも十分に注意する必要がある」としている。 一方、便秘型過敏性腸症候群の治療薬として本年、保険適応を取得したリナクロチドについては、「副作用として下痢がもっとも多く報告されており、腹痛、鼓腸なども報告されているが、深刻な副作用はこれまでに報告されていない」としたうえで、「日本では市販後間もないため、内服後の症状に注意して用いる必要がある」としている。■関連記事もはや「秘め事」ではない!? 患者1,000万人超の慢性便秘の考え方

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2017年度 総合内科専門医試験、直前対策ダイジェスト(後編)

【第1回】~【第6回】は こちら【第7回 消化器(消化管)】 全5問消化管領域で最も出題される可能性が高いのは、(1)相次ぐ新薬の上市、(2)胃がんガイドライン改訂に向けた動き、(3)消化器がんの化学療法、である。治療の進歩が著しい炎症性腸疾患、2016年にRome IV基準が発表された過敏性腸症候群と機能性胃腸症については、必ず押さえておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)上部消化管疾患に関する記述のうち正しいものはどれか?1つ選べ(a)食道粘膜傷害の内視鏡的重症度と自覚症状の間には相関を認める(b)食道アカラシアは高い非同期性収縮を認めることが多い(c)食道静脈瘤出血時にバソプレシン、テルリプレシン、オクトレオチドは有効であるが、ソマトスタチンは無効である(d)好酸球性胃腸炎の診断基準の1つに、「腹水が存在し腹水中に多数の好酸球が存在している」がある(e)ボノプラザンは、ヘリコバクター・ピロリ菌除菌治療には保険適用となっていない例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第8回 消化器(肝胆膵)】 全5問肝臓の領域では、B型肝炎をはじめ、体質性黄疸、肝膿瘍、自己免疫性肝炎などのマイナー疾患からの出題も予想される。膵臓では嚢胞腫瘍、自己免疫性膵炎、膵がんの化学療法などがポイントとなる。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)HBV感染に関する記述のうち正しいものはどれか?1つ選べ(a)B型慢性肝炎の治療対象は、HBe抗原の陽性・陰性にかかわらずALT 31U/L以上かつHBV DNA 2,000IU/mL以上である(b)本邦におけるB型肝硬変は、代償性/非代償性肝硬変にかかわらずIFN治療が第1選択となる(c)HBV持続感染者に対する抗ウイルス療法の長期目標は、ALT持続正常化・HBe抗原陰性かつHBe抗体陽性・HBV DNA増加抑制の3項目である(d)テノホビルの長期投与では、腎機能障害・高リン血症・骨密度低下に注意する必要があり、定期的に腎機能と血清リンの測定を行うことが推奨される(e)テノホビルアラフェミナド(TAF)はテノホビル(TFV)の新規プロドラッグであり、テノホビルジソプロキシル(TDF)に比べ少ない用量で同等の高い抗ウイルス効果を示すが、TDFと比較して腎機能障害および骨密度低下を来しやすいと報告されている例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第9回 血液】 全7問血液領域は、認定内科医試験では出題比率が低いものの、総合内科専門医試験では高い傾向がある。本試験の対策としては、個々の薬剤名とその適応をしっかり覚えることがポイントとなる。頻出テーマは、鉄過剰症、悪性リンパ腫の治療前感染症スクリーニング、特発性血小板減少性紫斑病など。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)貧血に関する記述のうち正しいものはどれか?1つ選べ(a)鉄欠乏性貧血では、生体内鉄制御を担う血中ヘプシジン増加を認めることが報告されている(b)鉄欠乏性貧血の原因として、ヘリコバクター・ピロリ菌感染が関与している可能性が指摘されている(c)鉄欠乏性貧血の診断基準は(1)ヘモグロビン12g/dL未満(2)血清鉄30µg/dL未満(3)血清フェリチン12ng/mL未満である(d)温式自己免疫性溶血性貧血(温式AIHA)は、全例直接クームス試験陽性である(e)特発性温式AIHAの治療は、副腎皮質ステロイドを第1選択とするが、ステロイド無効の場合にはリツキシマブ(ヒト化抗CD20モノクローナル抗体)が保険適用となっている例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第10回 神経】 全5問神経領域では、総合内科専門医試験特有のテーマとして、抗NMDA受容体抗体脳炎、多発性硬化症と神経脊髄炎との違い、筋強直性ジストロフィーがある。この3つのテーマは、毎年複数題出題されているので、確実に押さえておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)末梢神経障害に関する記述のうち正しいものはどれか?1つ選べ(a)膝蓋腱反射とアキレス腱反射の反射中枢は同じである(b)起床時に手首に力が入らず、垂れてしまう。これは睡眠中の尺骨神経麻痺が原因である(c)フローマンサイン陽性は、橈骨神経麻痺の診断に有用である(d)手根管症候群の診断に有用な所見として、ファレンテスト陽性・ティネル様サイン陽性がある(e)足を組んで寝ていたら、翌朝足首(足関節)と足の指(趾)が背屈できなくなり受診。診察所見で下垂足(drop foot)を認める。脛骨神経麻痺が原因である例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第11回 循環器】 全7問循環器領域では、心筋梗塞、心不全治療に加えて、心アミロイドーシス、心サルコイドーシス、大動脈炎症候群が、本試験における特徴的なテーマといえる。また、新しいデバイスが登場すると出題される傾向がある。今年要注意なのは、リードレスペースメーカー、最近適応拡大されたループレコーダーなど。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)心不全について正しいものはどれか?1つ選べ(a)NYHA分類I度は「軽度の身体活動の制限があるが、安静時には無症状」の状態である(b)NYHA分類II度はAHA/ACC心不全ステージBに相当する(c)クリニカルシナリオ(CS)は急性心不全患者の入院早期管理に用いられる指標で、CS4は右心不全、CS5は急性冠症候群に分類されている(d)NT-proBNP(N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド)は心筋細胞内のproBNPがBNPに分解される際に産生され、心不全診断の基準値はBNPと同じ値である(e)日本循環器学会/日本心不全学会のステートメント(心不全症例におけるASV適正使用に関するステートメント第2報)に、中枢型有意の睡眠時無呼吸を伴い、安定状態にある左室収縮機能低下に基づく心不全患者に対しては、ASVの導入・継続は禁忌ではないが、慎重を期する必要があると記載されている例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第12回 総合内科/救急】 全3問総合内科/救急の領域で確実に出題されるのは「意識レベル」。JCSとGCSについては、どちらも確実に解答できるようにしておきたい。また、JMECCに関する問題と脳死判定基準も出題のヤマとなると思われる。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)救急・脳死に関する記述のうち正しいものはどれか?1つ選べ(a)覚醒しているが、見当識障害を認めればJapan Coma Scale(JCS)は3とする(b)「痛み刺激で開眼・不適当な発語・指示には従えないが痛み刺激から逃避する」でGlasgow Coma Scale(GCS)は8点となる(c)病歴聴取で使用されるSAMPLE historyの「M」は「Meal(最終食事時間)」である(d)脳死判定基準の除外基準では、深昏睡および自発呼吸の消失が「低体温によるもの」「代謝/内分泌障害によるもの」とともに「急性薬物中毒によるもの」が含まれている(e)脳死判定基準の1つに「前庭反射の消失」があり、聴性脳幹誘発反応にて確認することとなっている例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第7回~第12回の解答】第7回:(d)、第8回:(a)、第9回:(b)、第10回:(d)、第11回:(e)、第12回:(d)【第1回】~【第6回】は こちら

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過敏性腸症候群に新たな光が(解説:内藤 正規 氏)-493

 過敏性腸症候群は、日本人の約10~15%に認められる頻度の高い疾患であり、消化器症状により受診する人の約3割を占めるといわれている。内視鏡検査や血液検査で明らかな異常がないにもかかわらず、腹痛や腹部不快感を伴う便秘や下痢が長く続き、多くの人々を悩ませている。そのような人々に光を差す可能性がある、下痢型の過敏性腸症候群に対しての新たな治療薬である混合型オピオイド作用を有する製剤eluxadolineの有効性を示す第III相試験の結果が、Anthony J Lembo氏らのグループにより報告された。 オピオイド受容体には、μ・κ・δの3種類のサブタイプがあり、主な発現部位や薬理作用が異なる。μ受容体の刺激は、鎮痛作用と消化管運動の抑制作用を発揮し、κ受容体の活性化は鎮痛・鎮静作用を発揮する。一方、δ受容体は、情動・神経伝達物質の制御や依存に関与する。eluxadolineは、μ・κ受容体のアゴニスト、δ受容体のアンタゴニストであり、鎮痛・鎮静作用と消化管運動の抑制作用を有し、依存性を回避できる薬といえる。 eluxadolineの投与により、腹痛の軽減、便性状の改善が得られた症例の割合は投与期間を問わず、プラセボ群、150mg/日を投与した群、200mg/日を投与した群の順に有意に高くなり、下痢型の過敏性腸症候群に対して量依存性に有効であった。一方、悪心・便秘・腹痛といった有害事象は、有意ではないものの量依存性にプラセボ群と比較して高い傾向にあり、少ないものの膵炎の発症も認めた。 本試験の結果から、過敏性腸症候群に対してeluxadolineが有効で安全であることが示された。下痢型の過敏性腸症候群の治療に新たな光を差す薬剤であると考えられるが、有害事象に対する医療者の注意も必要である。

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下痢型過敏性腸症候群、新規オピオイド受容体作動薬が有効/NEJM

 下痢型過敏性腸症候群(IBS)に対し、新規経口薬eluxadolineは男女を問わず下痢症状を軽減し新たな治療薬となりうることが、Anthony J. Lembo氏らによる2件の第III相試験(多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験)の結果、示された。100mgの1日2回投与で6ヵ月間の持続効果が確認された。eluxadolineは混合型オピオイド作用(μ/κオピオイド受容体アゴニストとδオピオイド受容体アンタゴニスト)を有する製剤。対プラセボの100mg、200mg用量(いずれも1日2回)の検討が行われた第II相試験では、200mg用量の効果に優位性はなく、むしろ有害事象が多かったことから、第III相試験では75mg、100mg用量について対プラセボの有効性(26週)、安全性(52週)を評価した。NEJM誌2016年1月21日号掲載の報告。eluxadoline75mgまたは100mg/1日2回とプラセボを比較 試験は2,427例の下痢型IBS成人患者を、eluxadoline(75mgまたは100mg)またはプラセボを1日2回投与する群に無作為に割り付けて、26週間(IBS-3002試験)または52週間(IBS-3001試験)の治療を行った。 主要エンドポイントは、腹痛の軽減(ベースライン平均スコアより30%以上軽減)、便性状の改善(便性状スコアが5未満)の両効果が同一日に確認された患者(レスポンスあり)の割合とした。レスポンスありの定義は、初期12週間(米国FDA規定のエンドポイント)、26週間(欧州医薬品庁[EMA]エンドポイント)のそれぞれの評価期間中50%以上(最低60日、110日)効果ありの記録日があった患者とした。12週間評価、26週間評価とも100mg群の効果が優れる 第1~12週では、eluxadoline(75mgまたは100mg)群のほうがプラセボ群よりも、主要エンドポイントを達成した患者の割合が多かった。IBS-3001試験被験者ではプラセボ群17.1%に対し、75mg群23.9%(p=0.01)、100mg群25.1%(p=0.004)。IBS-3002試験被験者ではプラセボ群16.2%に対し、75mg群28.9%(p<0.001)、100mg群29.6%(p<0.001)であった。 第1~26週の評価については、IBS-3001試験被験者ではプラセボ群19.0%に対し、75mg群23.4%(p=0.11)、100mg群29.3%(p<0.001)。IBS-3002試験被験者ではプラセボ群20.2%に対し、75mg群30.4%(p=0.001)、100mg群32.7%(p<0.001)であった。 安全性の評価(IBS-3002試験とIBS-3001試験の両被験者データ)では、プラセボ群と比較して75mg/100mg群で最も多く共通してみられた有害事象は、悪心(5.1% vs.8.1%/7.5%)、便秘(2.5% vs.7.4%/8.6%)、腹痛(4.1% vs.5.8%/7.2%)であった。膵炎の発症は、安全性評価集団(1,666例)中5例(0.3%)であった(75mg群2例、100mg群3例)であった。

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~プライマリ・ケアの疑問~  Dr.前野のスペシャリストにQ!【消化器編】

第1回 帰してはいけない腹痛の見分け方は? 第2回 専門医でもヒヤリとした腹痛の症例を教えてください! 第3回 腹痛の部位で疾患の鑑別はできる? 第4回 虫垂炎を見逃さないコツは? 第5回 ピロリ菌検査は何を使うのがよい? 第6回 ピロリ菌除菌後にすべきことはある? 第7回 胃潰瘍治療のベストな処方は? 第8回 PPIが効かないとき、プライマリ・ケア医はどうするべき? 第9回 便秘の治療、どうしたらいい? 第10回 便秘症状から重篤な疾患を疑うことはできる? 第11回 GERDの診断と治療について教えてください! 第12回 止瀉薬を出してはいけない下痢の見分け方は? 第13回 過敏性腸症候群、診断のコツは? 第14回 プライマリ・ケアで膵臓がんを早期発見するコツは? 腹痛や虫垂炎、胃潰瘍にGERD。日常臨床でよく遭遇する消化器疾患の診察・検査・治療に関する14の質問を、番組MCを務める総合診療医の前野哲博先生が経験豊富な消化器科専門医 西野徳之先生にぶつけます。プライマリケア医視点のまとめも加え、すぐに現場で役立つ知識を詰め込みました!第1回 帰してはいけない腹痛の見分け方は?プライマリケアで日常的にみるからこそ油断してはいけないのが腹痛。軽症の患者のなかに緊急手術が必要な患者が埋もれていることも。今回はズバリ、帰していい腹痛の条件・帰してはいけない症例をお教えいただきます。精度が高く、診療所でも使える診断ツールは必見です。第2回 専門医でもヒヤリとした腹痛の症例を教えてください!第1回の帰してはいけない腹痛の鑑別に続き、今回も腹痛を取り上げます。腹部の痛みは局在性に乏しいうえ、鑑別疾患も多種多様。専門医ですら重篤な症例を見逃しかけてヒヤっとしたことはあるといいます。今回は西野先生に症例を提示いただき、見逃さないコツを教わります。第3回 腹痛の部位で疾患の鑑別はできる? 腹痛の部位で疾患を鑑別する方法は複数知られていますが、局在性に乏しい腹部疾患では思っているほど役立たないことも。今回は実臨床で使えるひとつの考え方をレクチャーします。前野先生がこれなら研修医にもわかりやすい!と太鼓判を押したスペシャリスト西野先生のノウハウをお見逃しなく!第4回 虫垂炎を見逃さないコツは? この腹痛は虫垂炎?それとも?虫垂炎は決して見逃せない疾患ですが、典型的な症状をきたす患者ばかりでなく、鑑別に苦慮することも多いのではないでしょうか。今回は、確定診断でなくとも虫垂炎を見逃さないコツをズバリお教えいただきます。第5回 ピロリ菌検査は何を使うのがよい? ピロリ菌感染の検査には、呼気試験、血液、便などの様々な検査法があります。どのように検査法を選択し、結果を解釈すればよいのか?専門医が勧める検査方法、またピロリ菌についての最新トピックも交えて明日から使えるノウハウをお届けします。第6回 ピロリ菌除菌後にすべきことはある? ピロリ菌感染が明らかになった際に、何をどんな手順で行うべきか?除菌治療と治療後の注意点を簡潔にレクチャー。また除菌が成功しなかったとき、プライマリケアでどう対応すべきかも解説します。第7回 胃潰瘍治療のベストな処方は? 今回は胃潰瘍の治療がテーマです。胃潰瘍の治療には、主流であるPPIのほかに、H2ブロッカーや粘膜保護薬などの薬が使われています。それぞれの薬の使い分けや注意点はどのように考えればよいのか、薬剤選択についての疑問にズバリお答えします。第8回 PPIが効かないとき、プライマリ・ケア医はどうするべき?胃潰瘍のファーストチョイスとして使われるPPIですが、その効果がなかったとき、プライマリケア医はどのように考えればいいのでしょうか。今回は西野先生に症例を提示いただき、臨床に役立つヒントを見つけていきます。第9回 便秘の治療、どうしたらいい? 今回のテーマは便秘です。便秘は日常臨床で頻繁にみられる症状ですが、生活に支障のある「便秘症」の診断は実は難しいもの。プライマリケア医はどのように情報を集め、どう評価し、どのように治療方針を立てればよいでしょうか。診断、治療についてスペシャリストの知恵を伝授してもらいましょう!第10回 便秘症状から重篤な疾患を疑うことはできる? 実際は重篤な疾患でも、患者の自覚症状は「便秘」ということは往々にしてあります。今回は西野先生が遭遇した症例を例に、便秘を訴える患者の中から異常を見逃さないためのポイントを学びます。第11回 GERDの診断と治療について教えてください! 今回はGERDがテーマです。GERDはプライマリケアできわめてよく遭遇する疾患のひとつですが、どのように診断し、治療すればよいのでしょうか。診断の際に気を付けるべきことなどを解説します。第12回 止瀉薬を出してはいけない下痢の見分け方は? 今回は下痢の治療がテーマです。安易に下痢を止めてはいけないといわれますが、実際には患者さんは薬を希望することもよくあります。どんな条件ならば止瀉薬を出していいのか?処方するときの注意点は?日常診療で感じる疑問にズバリ回答します!第13回 過敏性腸症候群、診断のコツは?今回は過敏性腸症候群がテーマです。過敏性腸症候群は訴えが多彩で、コントロールに難渋することもしばしばある疾患。IBSを治療するうえで必ず除外したい疾患は?どの薬を初めに処方すべきか?コントロール不良の場合、どうやって薬剤を変更していくのか?様々な疑問に答えていきます。第14回 プライマリ・ケアで膵臓がんを早期発見するコツは?自覚症状が出にくく、早期発見が難しいといわれる膵臓がん。しかし発見する機会がないわけではなく、プライマリケアでこそ特に注意して疑ってほしいと西野先生は強調します。今回は異変に気付くためのポイントや考え方についてレクチャーします!

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CliPS -Clinical Presentation Stadium- @TOKYO2013

第1回「突然の片麻痺、構音障害」第2回「幸運にも彼女は肺炎になった」第3回「診断の目利きになる」第4回「Good Morning, NY!」第5回「不明熱」第6回「Ooops! I did it, again... 難しい呼吸困難の鑑別」第7回「Shock」第8回「外見の医療」第9回「What a good case!」第10回「首を動かすと電気が走る」第11回「木を診て森も診る」第12回「なぜキズを縫うのか」第13回「半年間にわたる間欠的な腹痛」第14回「高齢者高血圧管理におけるUnmet Medicak Needs: 『血圧変動』に対してどう考える?」第15回「患者満足度」第16回「ガイドラインって、そんなに大事ですか?」第17回「EBM or XBM?ーまれな疾患における診療方針決定の一例ー」第18回「原因不明を繰り返す発熱」第19回「脳卒中後の固定した麻痺 ―数年経過しても治療により改善するのか?―」第20回「眼科での恐怖の糖尿病」第21回「顔が赤くなるのは、すれてない証拠?」第22回「失神恐るるに足らず?」第23回「背部痛で救急搬送された82歳男性」第24回「免疫不全の患者さんが歩いてきた」第25回「初発痙攣にて搬送された 22歳女性  痙攣の鑑別に難渋した1例」【特典映像】魅せる!伝える!プレゼンの極意 『CliPS(Clinical Presentation Stadium)』は、限られた時間の中で、プレゼンター自身が経験した「とっておきの患者エピソード」や聞いた人が「きっと誰かに話したくなる」興味深い症例を「症例の面白さ(学び)」と「語りの妙(プレゼンスキル)」で魅せるプレゼンテーションの競演です。プレゼンターは、ケアネットでお馴染みの達人講師から若手医師・研修医まで。散りばめられたクリニカルパール。ツイストの効いたストーリー。ユーモアとウィットに富んだプレゼンの数々は、年齢、診療科にかかわりなく、医療者のハートをつかむことでしょう。あなたも『CliPS』の世界を楽しみ、学んで下さい!第1回「突然の片麻痺、構音障害」このタイトル『突然の片麻痺、構音障害』のような患者さんをみたとき、どのようなことを思い浮かべるでしょうか? おそらく診断は脳梗塞で良いだろうと。そして、治療計画、リハビリ、再発予防、介護状況など様々な側面にまで考えは及ぶでしょう。そういった様々な脳梗塞のマネージメントのうち、一番最初の診断のところでしていただきたい「あること」についてお話しします。患者さんの血液を採った時、一滴だけあることに使っていただきたいのです。第2回「幸運にも彼女は肺炎になった」近年、認知機能障害の患者さんに出会う機会は増えています。そして、その際にはしばしば「病歴のとりづらさ」や「診察への抵抗」に苦慮します。今回登場された伊藤先生も、正直言って、それらの患者さんには煩わしさや苦手意識を感じていたそうです。今回ご紹介する患者さんに出会うまでは・・・。治らないと思っていた病気が治るって素晴らしい!そんな症例です。第3回「診断の目利きになる」山中先生が日々の診断で気をつけていることはなんでしょうか?「はじめの1分間が何より大切」、「患者さんと眼の高さを合わせる」、「患者さんは本当のことを言ってくれない」、「キーワードから読み解く」、「診断の80%は問診による」、「典型的な症状をパッケージにして問う」など。診断の達人である山中先生の『攻める問診』メソッドの原点がここに表されています。患者さんの心をつかみ、効果的な病歴聴取や診察を行うためのさまざまなTIPSをご紹介いただきます。山中先生の話芸の素晴らしさにグイと引き込まれること必至です。第4回「Good Morning, NY!」岡田先生が、研修時代を過ごされたニューヨークでのお話。異国の病院で生き残るために、「日本人らしさ」と一貫した態度で信頼を勝ち得たそうです。2年目に出会った原因不明で発熱が続き、意識不明の患者さんとの感動的なエピソードを語っていただきます。第5回「不明熱」 不明熱をテーマに、膠原病科の岸本先生が、2ヶ月間も熱が下がらず、10kgの体重減、消化管に潰瘍、動脈瘤のある、36歳男性の症例をご紹介いただきます。学習的視点も踏まえた岸本先生の分かりやすいプレゼンテ-ションも必見です。第6回「Ooops! I did it, again... 難しい呼吸困難の鑑別」 呼吸困難をテーマに2つの症例を紹介いただきます。呼吸困難で典型的な疾患が心不全と肺炎。鑑別のキーポイントは、検査所見で十分でしょうか。一見ありふれた症例も、SOAPの順序を誤ると、、、非常に重要なメッセージが導き出されます。第7回「Shock」とびきり印象的なショックの症例を紹介します。イタリアンレストランに勤務されている61歳の男性。主訴は「気分が悪い」。ショック状態ですが、熱はなく、サチュレーションも正常。不思議なことに、毎年1回、同様の症状がでると。さて、この患者さんは?第8回「外見の医療」形成外科医の立場から人の「外見」という機能を語ります。顔の機能のうち「外見」という機能は、生命に直接関係ないものの、社会生活を営む上で需要な役割を果たしています。近い未来、「顔」の移植ということもあり得るのでしょうか?第9回「What a good case!」症例は29歳の女性。発熱と前胸部痛を主訴に見つかった肺多発結節影の症例。診断は?そして、採用された治療選択は?岡田先生の分かりやすいトークと意外性と重要な教訓に満ちたプレゼンテーションをお楽しみください。第10回「首を動かすと電気が走る」山中先生のかつて失敗して「痛い目」にあった症例です。60歳の男性で、主訴は「首を動かすと電気が走る」とのこと。しかし、発熱、耳が聞こえない、心雑音など異常箇所が増えていきます。せひ心に留めていただきたい教訓的なプレゼンテーションです。第11回「木を診て森も診る」46歳男性の糖尿病患者さん。 HbA1C が,この半年間で10.5%まで悪化。教育入院やインスリン導入を勧めるも、「それは出来ない」と強い拒絶。この背景にはいくつかの社会的・心理学的な要因があったのです。家庭医視点のプレゼンテーションです。第12回「なぜキズを縫うのか」なぜ傷を縫うのでしょうか? 額の傷を昨日縫合されたばかりの患者さんが紹介されてきたとき、菅原先生はすぐに抜糸をしてしまいました。なぜ?傷の治るメカニズムや、縫合のメリット/デメリットなどを形成外科のプロがわかりやすく解説します。第13回「半年間にわたる間欠的な腹痛」慢性的な下部腹痛の症例。半年前から明け方に臍周囲から下腹部の張るような痛みで覚醒するも、排便で症状は改善。内視鏡検査では大腸メラノーシスと痔を指摘されたのみで、身体所見も血液検査も異常なし。過敏性腸症候群?実際は・・・?第14回「高齢者高血圧管理におけるUnmet Medicak Needs: 『血圧変動』に対してどう考える?」高齢者の血圧の「日内変動」からいろいろなものが見えてくる。ある1ポイントの血圧だけでなく、幅広い視点からの血圧管理が必要。明日の高血圧治療にすぐに役立つプレゼンテーション!第15回「患者満足度」患者満足度にもっとも影響を与える因子は「医師」。その「医師」は患者満足度を上げるには、何をすればいいのでしょうか。岸本先生が研修医時代に学んだ心構えとは?第16回「ガイドラインって、そんなに大事ですか?」ガイドラインはどのくらい大切なのでしょうか。プラセボ効果の歴史を振り返りつつ、ガイドラインの背景にあるものに注目。第17回「EBM or XBM?ーまれな疾患における診療方針決定の一例ー」EBMだけでは対応できない稀なケースには、XBM(経験に基づく医療)で治療に臨まなければなりません。さて、今回の症例では?第18回「原因不明を繰り返す発熱」総合診療科の外来では「不明熱」の患者さんが多く訪れます。今回の「不明熱」に対して、記者出身の医師がしつこく問診を繰り返した結果、浮かび上がってきた答えは・・・。第19回「脳卒中後の固定した麻痺 ―数年経過しても治療により改善するのか?―」ボツリヌス療法と、経皮的電気刺激(TENS)とを併用して治療を行った症例についての報告です。さて、まったく動かすことのできなくなった患者さんの上肢には、どの程度の改善が見られたのでしょうか。第20回「眼科での恐怖の糖尿病」眼科医の視点から糖尿病を考えてみます。日本人の失明原因の第2位(1位の緑内障と僅差)が糖尿病網膜症となっています。内科医と眼科医の連携はまだまだ十分ではないと言えそうです。第21回「顔が赤くなるのは、すれてない証拠?」症例は70代男性の胸痛。1~2週間チクチクした鋭い痛みが一日中持続、緊急性は低そうです。検査をしても特徴的な所見に乏しく決め手に欠けました。さて、どんな疾患なのでしょう?実は大きなヒントがこの一見奇妙なタイトルに凝縮されているのです。第22回「失神恐るるに足らず?」患者が突然、目の前で意識を失って倒れたとします。まず一番最初に行うべきことは?「失神」は原因疾患によって予後が異なるため早期の正しい見極めが重要です。76歳女性の症例を題材に、日常臨床で遭遇する「失神」への対応を解説していただきます。第23回「背部痛で救急搬送された82歳男性」症例は82歳男性。背部痛を主訴に救急外来に搬送。しかしバイタルや検査では異常はなく痛み止めのみ処方。その一週間後に再び搬送された患者さんは激しい痛みを訴えているが、やはりバイタルは安定。ところが…。研修医時代の苦い経験を語ります。第24回「免疫不全の患者さんが歩いてきた」症例は59歳男性。悪性関節リウマチ、Caplan症候群という既往を持ち、強く免疫抑制をかけられている患者。発熱やだるさを主訴に歩いて外来受診。5日後、胸部CTで浸潤影があり入院。しかし肺炎を疑う呼吸器症状がありません。次に打つべき手とは?第25回「初発痙攣にて搬送された 22歳女性  痙攣の鑑別に難渋した1例」症例は22歳の女性。回転性めまいの後2分程度の初発痙攣があり救急搬送。診察・検査の結果、特記すべき所見はほぼ見あたらず、LAC5.1とやや上昇を認めるのみ。原因不明のまま「重篤な疾患はルールアウトされた」と判断。ところが全くの誤りでした。

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下痢と体重減少を過敏性腸症候群と診断し、膵臓がんを見逃したケース

消化器概要約3ヵ月間続く下痢と、5ヵ月間に約9kgの体重減少を主訴に総合病院内科を受診、注腸検査、上部消化管内視鏡検査が行われ、過敏性腸症候群と診断された。担当医は止痢薬を約10ヵ月間にわたり投与し続け、その間に新たな検査は行われなかった。初診から11ヵ月後に別の病院を受診し、閉塞性黄疸を伴う膵頭部がんと診断されたが、その2ヵ月後に死亡した。詳細な経過経過1982年4月末食欲不振、下痢、全身倦怠感、体重減少に気付いた。6月30日5kgの体重減少、空腹時腹痛を主訴として近医受診。消化管X線検査、超音波検査などが行われ、膵臓にやや腫脹がみられたため膵炎疑いと診断された(アミラーゼは正常)。8月21日慢性下痢、体重減少を主訴にA総合病院内科受診。注腸検査、上部消化管内視鏡検査が行われ、出血性胃炎の所見以外は著変なしと判断し、過敏性腸症候群と診断した。その結果、下痢止めを処方し経過観察となった。12月27日血液検査で異常がないことから、下痢止めの処方を継続した。1983年1983年はじめ20kgに及ぶ体重減少、背部痛が出現し、鍼灸院などで治療を受ける。6月20日A総合病院再診し、下痢止めの処方を受ける。7月11日発熱を主訴に近医受診、担当医師は内臓の病気を疑い、B病院に紹介入院、精査の結果、閉塞性黄疸を伴う膵頭部がんと診断され、肝臓そのほかへの転移もみられる末期がんと判断された。8月15日A総合病院に転院、根治的治療は不可能と判断され、経皮胆管ドレナージなどが行われたが、9月25日死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張下痢と体重減少を主訴とした患者に対し、胃・腸の形態的検査で異常がないという理由で過敏性腸症候群と診断した。アミラーゼが正常であったので膵がんあるいは膵疾患を疑わなかったということだが、胃・腸の形態的検査で異常がなければ膵疾患を疑うのは医学の常識である初診時に心窩部痛、全身倦怠感、食欲不振を申告したにもかかわらず、カルテにその記載がないのは問診が不十分である。さらに前医の超音波検査で膵炎疑いと診断されていながら、これを見過ごした上腹部超音波検査を行えば膵がん発見の可能性は高かった膵がんが早期に発見されていれば、延命、さらには助命の可能性があった。病院側(被告)の主張下痢と体重減少はみられたが、通院期間中疼痛(腹痛、背部痛)をはじめとして、膵がんを疑うべき特有な症状はみられなかった。便通異常は膵がんに特有な症状ではない問診では患者の協力が必要だが、当時の医師の問診に対して腹痛を否定するなど、患者の協力が得られなかった当時の医療水準(腹部超音波検査、腹部CT)で検出できるのは進行膵がんが中心であり、小膵がんを検出できるほどの技術は発達していなかったもし初診時に膵がんと診断しても、手術不能のStageIII以上であったものと推認され、延命は期待できなかった。裁判所の判断以下の過失を認定過敏性腸症候群との診断は結果的に誤診であった。顕著な体重減少、食欲不振の患者に対し、胃・大腸に著変なしとされたのであれば、腹痛・背部痛がなかったとしても胆嚢、胆道、膵臓などの腹部臓器の異変を疑うのが当然であり、患者の苦痛がない腹部超音波検査を実施するべきであったとくに見解は示さず小膵がんの発見は難しく、超音波検査は術者の技術に診断の結果が左右されるといわれているが、当時膵がんの発見が絶無とはいえない以上、病態解明のために考えうる手段をとることが期待されているので、債務不履行である初診時に膵がんと診断されていても、延命の可能性はきわめて低かった延命の可能性がまったくなかったわけではないのに、9ヵ月近く下痢止めの投薬を受けたのみで、膵がんに対する治療は何ら受けることなく推移したのであるから、患者の期待を裏切ったことになり、精神的損害賠償の対象となる。原告側合計7,768万円の請求に対し、慰謝料として200万円の判決考察本件では「体重減少」という、悪性腫瘍をまず除外しなければならない患者に対し、下痢症状に着目して消化管の検査だけを行いましたが、腹部超音波検査を行わず、約9ヵ月にわたって膵臓がんを診断できなかった点が「期待権侵害」と判断されました。もっとも、病院側に同情するべき点もいくつかはあります。おそらく、普段は多忙をきわめる内科外来においては一人の患者に割り当てられる時間が絶対的に少ないため、初診後一定の検査が終了して一つの診断に落ち着いた場合には、患者側からの申告が唯一の診断の拠り所となります。その際、「下痢と体重減少」という所見だけで腹痛の訴えがなく、さらに血液検査上も異常値がみられなかったのならば、過敏性腸症候群と考えて「しばらくは様子を見よう」と決めたのは自然な経過ともいえるように思います。さらに、止痢薬投与によってある程度下痢が改善している点も、あえて検査を追加しようという意思決定につながらなかったのかもしれません。しかしながら、慢性に下痢と体重減少に対して9ヵ月間も経過観察とした点は、注意が足らなかったいわれても仕方がないと思います。とくに、簡便にできる腹部超音波検査をあえて行わなかったことの理由を述べるのはかなり難しいと思います。裁判の判決額をみる限り、原告の請求よりも遙かに低い金額で解決したのは、膵臓がんという予後のきわめて悪い疾病を見落としたことに関連すると思います。もし、早期発見・早期治療によって予後が改善するような疾病であれば、当然賠償額も高額になったであろうと思います。消化器

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“心が痛い”と“身体が痛い”

心療内科が痛みを診る:その理由心療内科が「疼痛」を診ることについては、馴染みのない方もいるかもしれないが、われわれにとっては自然なことである。当科で疼痛患者さんを多く診るようになったのは、当科の歴史的背景に起因する。初代教授である池見酉次郎先生は、早くから心と身体の結びつきに着目し、1961年に九州大学で精神身体医学研究施設を設立、1963年に「心療内科」という診療科名が冠された。「心療内科」が正式な標榜科として認可されたのは1996年であるから、それより30年以上前の話である。当初は過敏性腸症候群や気管支喘息、蕁麻疹など、内科的な分野を中心に研究が始まった。その後、当科の先輩である中井吉英先生(関西医科大学名誉教授/日本心療内科学会理事長)が慢性膵炎の研究の中で、腹痛についても積極的に取り組まれることとなる。また、ペインクリニックとの連携によって全身の痛みを扱うようになり、症例を重ねるうちに、さまざまな痛みに対して心身医学的アプローチが応用できることがわかってきた。こうした経緯から、当科は摂食障害、病的疲労、睡眠障害、生活習慣病などとともに、内科系でありながら慢性疼痛をもつ症例一般を治療対象とするようになってきている。心療内科のアプローチは身体医学とは異なる部分も含んでいる。身体医学では、ある時点での情報を重要視するが、心療内科では、その人の考え方、動き方、生き方(生活様式)の流れやそのルーツを重要視する。今はこういう状態だが以前はどうだったのか、何故そうなったのか、周囲の人たちとのつながりはどうなのか、など生活背景や流れに注目し、その患者さんの水面下にある苦悩を患者さんと一緒に対話するなかで見つけていき苦悩・苦痛の緩和をともに創造していくのである。画像を拡大する難治の慢性疼痛患者さんの傾向当科には全国から重症の疼痛を持つ患者さんが集まってくる。当科を受診する難治性の慢性疼痛患者さんを分析したところ、興味深いことに、厳しい被養育経験がトラウマになっているケースが多いことがわかってきた。厳しい体罰などの身体的虐待、言葉による心理的虐待、性的トラウマもあれば、親の過干渉や愛着障害もある。また、こういった患者さんには、大変な環境に過剰適応していくうちに「失感情症」という自らの気持ちを言葉で表現しにくい心理特性を持っている方が多い。さらに、病院を転々とし、医療に対し不信感を抱いている患者さんも多いのも特徴であろう。■失感情症と慢性疼痛の関係性われわれは日々の臨床経験を通して、失感情症が痛みに大きく影響していることを実感している。なぜ、そのようなことが起こるのだろうか?痛みの伝達には感覚系経路と情動系経路があることが知られている。感覚系は痛みの強さや位置を伝達し、情動系は不快感を伝え警報を鳴らす役割である。どんな痛みもこの感覚系と情動系の信号がミックスされている。情動系は脳の前部帯状回、島皮質、扁桃体、前頭前野を活性化する。この部位はまた、社会的ストレスによっても活性化されること(社会的痛みの体験)が明らかになっている。社会的ストレスに晒され不快情動系が活性化されていると、患者さんの頭の中で常に警報が鳴っている状態になると考えられ、社会的疎外感を感じている「いじめられ体験」にも通じる現象と考えられる。一方、失感情症の方は最近の脳画像研究で前部帯状回、島皮質などの上記の部位に異常があることがわかってきている。そのため、社会的ストレスが蓄積されると、不快情動の成分をしっかり体験しながらも感覚成分のみに注目がいき、身体的疼痛の訴えが強調され、「とにかく痛い、なんとかして」という切迫した訴え(破局化)につながると考えられる。自分の感情を自然に表現できない環境に育った失感情症の方は、「(心理的に)大丈夫です」といいながら、身体の痛みでSOSを出しているともいえる。実際、痛みという表面的な訴えの背景には不安・抑うつなどの否定的感情、虐待歴、社会的疎外感による心の痛みなど、患者さんの深い苦悩が存在することが多い。もうひとつ、医療不信についてお話しする。医療不信の方と信頼関係を構築して心境をうかがっていくと、両親との関係性に問題のある人間不信の方が多いことがわかる。医療不信は、身体的疼痛やそれに伴う心の苦しみを医師がきちんと診てくれないという思いから、ドクターショッピングを繰り返し成り立っていく。これは、子どもの頃、両親に一人の人間として自身の存在を大切にしてもらえなかった、という彼らの被養育体験からくる長年の人間不信の思いと共通する症例もある。久山町疫学研究における慢性疼痛と失感情症の調査からみえてきたこと失感情症と慢性疼痛の関連性については国際的なエビデンスはあるが、日本人に適用できるかどうかはまだ検証されていなかった。そこで本邦の心身症患者さんを対象とした検討を続ける一方で、一般住民を対象に慢性疼痛に関する心身医学的な疫学研究を行った。福岡県久山町の定期検診の際、40歳以上の一般住民において失感情症の質問紙TAS20のスコアと疼痛の有無の関係を調べたものである。被験者927名のなかで慢性疼痛(6ヵ月以上続く痛み)を有する割合は、失感情症なし群46%に対し、失感情症あり群では67%と、失感情症あり群で有意に多かった。さらに失感情症の程度を4分位し、慢性疼痛罹患リスクを解析した。罹患リスクは失感情症スコアが中央値を超えて重症化するにつれ上昇し、もっとも高い群(TAS20スコア 55以上)では、2.0倍(全体から急性疼痛あり群を除くと2.8倍)にも増加していた。さらに、慢性疼痛はQOL低下を招き、そこに失感情症を合併するとさらにQOLが低下することがわかった。また、慢性疼痛を有していても、失感情症がない場合は失感情症がある場合よりも生活満足度が高いという結果が出ている。画像を拡大する画像を拡大するTAS-20:トロント アレキシサイミア(失感情症)スケール日本人には、「つらくても表に出さずに耐え忍ぶ」「弱音は吐かない」といった国民性がある。これは日本文化では美徳とされるが、心身医学的な観点から言えば、失感情症につながるものであり、心身の健康という点からは決して喜ばしいものではない。QOL向上につながる失感情症のケアについては、今後さらに注目していくべきであると考える。慢性疼痛患者さんの診療におけるdos and don'ts慢性疼痛では、身体の訴えの強さと比較して基本にある身体的疼痛がみえにくいケースがある。そのような場合でも、始まりは社会的ストレスに伴った筋肉痛や関節痛などの機能性痛みが合併していたが、経過のなかで改善し、心理的苦悩の成分が残存していることがある。■まずは信頼関係の構築を心療内科では患者さんと医療者との信頼関係構築のため、初診の診療に時間をかける。一般の先生はわれわれのように長い時間をかけることはできないかもしれないが、せめて5分くらいは患者さんの顔を見て本人に自由に話していただく時間をとってほしい。そして患部を丁寧に診察する時間をつくっていただきたい。それだけでも患者さんは安心するものである。すぐに患者さんから話を聞き出すことができなくても、診察のたびに顔をみて話しかけていけば、徐々に信頼関係は構築されていく。そうすると、いざというときに患者さんの変化からSOSに気づくことができるし、治療効果を高めることにもつながる。もし一時的に状態が悪くなる時期があっても、「苦しい今をしのいで一緒に乗り越えていきましょう」と言えるような関係づくりが大切だと考える。■「痛くないはず」と思い込まないこと患者さんが強い痛みを訴えていても、医学的原因が判明しないことも少なくないが、それだけで、「痛くないはず」と治療者が思いこまないことは大切である。その際に、社会的疎外感だけでも身体的痛みのときと同様の苦しみを感じさせるという近年の知見を医学的情報として知っていることで病態評価が展開することがある。つまり、身体の痛みと感じている患者の体験は、身体の機能的異常とともに何らかの社会的疎外感を感じて苦しみが悪化しているのではないだろうかと考えて、生活環境の変化について、質問をしてみるとよい。そして患者さんには「最近は痛みに伴う心理的な要因を考慮した痛みの対処法が進んでいるから、専門の医師に相談してみてはどうか」とポジティブな言葉で専門医への紹介受診を促していただきたい。そうすれば「心が弱いから痛みが起こる」という誤解をすることなく、「がんばっている人の身体の痛みを社会的ストレスがより不快にする」という理解のもとに、患者さんは生活環境に合ったオーダーメイドの治療ステップへと進むことができるのである。■薬をむやみに切り替えないこと効かないからとすぐに薬を変更することは避けたいものである。プラセボ効果の反対で「ノセボ効果」という現象がある。「効かないだろう」という思い込みによって、効くはずの薬が効きにくくなってしまうのである。A先生に出してもらった薬はよく効いたが、同じ薬をB先生が出すと全然効かないというようなケースもある。同じ薬でも処方する医師への期待値によって効き方が違ってくる。その根底には医療あるいは医師への不信感がある。処方医に対して不信感があると薬の効果が減退してしまうのである。要するに、患者さんとの信頼関係が築けていない状況下では、どんなに薬を切り替えても適切な効果は期待できない。効果が出ずに投与量だけ増えている、というような場合には、まず患者さんとの信頼関係や服用のコンプライアンスを見直すところから始めてみてほしい。信頼関係なくしてよい治療は成り立たない。患者さんが安心して自分の気持ちを出せる場を提供し、信頼関係が築けたうえでその人に合うだろうという薬を少量から始める。そうすると、過去に効かなかった薬ですら効果が出る、ということも少なくない。患者さんと医療者との信頼関係が治療や予後に大きく影響するため、われわれは患者さんが話しやすい場をつくり、患者さんの人間としての全体像を知るように努めている。慢性疼痛においては、身体的な痛みについては標準的なアプローチは継続しながらも、対人交流不全の苦悩や、生活環境などによる社会的痛みや実存的な苦しみ(自尊心の問題)をターゲットとすることが効果的なことも多い。良好な患者ー医療者関係を築きながら、感情をうまく言葉にできず葛藤場面で適切な自己主張ができない患者さんの心身を疲弊させ、苦しめているものが具体的に何かを患者さんと一緒に探していくのである。慢性疼痛の心身医学的アプローチにより得られる知見が、今後一般診療にもさらに生かされ、患者・医療者がともに創り出す痛み治療に対して双方の満足感が増えることを期待したい。

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複合性局所疼痛症候群患者では広範痛についても評価が必要

 複合性局所疼痛症候群(CRPS)患者では、10%を超える患者が広範痛(widespread pain)を有していることが明らかとなった。英国・エンツリー大学病院のThomas Birley氏らによる後ろ向き研究からの報告で、結果を踏まえて著者は、「CRPS患者の臨床評価においては日常的に、さらなる痛みについて問診をすることが支持される」とまとめている。Pain Practice誌オンライン版2013年6月24日号の掲載報告。 CRPS患者における広範痛の有病率を調べる目的で、2007年7月~2012年9月の間に第3次疼痛医療センターに紹介されブダペスト基準に従いCRPSと診断された連続症例について、紹介状や医療記録を後ろ向きに評価した。 対象は、CRPS患者190例(うち149例は女性)および特定不能のCRPS患者26例であった(平均年齢44歳、罹病期間中央値18ヵ月)。 主な結果は以下のとおり。・3分の1の患者は、CRPSに先行する事象が起こる前にすでに、現在CRPSに罹患した肢に日常的な痛みとは違う痛みを経験していた。・21例(11.1%)が広範痛の経験を有していたが、医療機関からの紹介状にはほとんど記載されていなかった。・CRPSの誘因となった外傷のタイプや、ブダペスト基準の他覚所見および自覚症状の頻度は、広範痛の有無による差がみられなかった。・すべての患者は広範痛を日常生活の質に影響を与える重要な要素と考えており、ほとんどの患者にとって広範痛の重症度はCRPSの痛みと同程度であった。・CRPSに併発する局所的な痛み(多くは頭痛/片頭痛、腰痛、過敏性腸症候群)を有する患者もいた。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・無視できない慢性腰痛の心理社会的要因…「BS-POP」とは?・「天気痛」とは?低気圧が来ると痛くなる…それ、患者さんの思い込みではないかも!?・腰椎圧迫骨折3ヵ月経過後も持続痛が拡大…オピオイド使用は本当に適切だったのか?  治療経過を解説

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【CASE REPORT】非器質的疼痛とオピオイド治療 症例経過

運動器慢性疼痛の分類通常、器質的な「痛み」は侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛に分類され、それ以外のものはしばしば心因性疼痛と分類される。心因性疼痛の定義は明確でなく、器質的疼痛でないものの中に機能性疼痛症候群、中枢機能障害性疼痛と心因性疼痛などが存在するという考え方を提唱するものもある(図1)。機能性疼痛症候群は、King's College LondonのSimon Wesselyが提唱した機能性身体症候群(Functional Somatic Syndrome :FSS)という概念に含まれるものである。FSSは諸検査で器質的あるいは特異的な病理所見を明らかにできない持続的で特徴的な身体愁訴を呈する症候群で、それを苦痛と感じて日常生活に支障を来しているために、さまざまな診療科を受診する。愁訴としては「さまざまな部位の痛み」「種々の臓器系の症状」「倦怠感や疲労感」が多く、代表例として過敏性腸症候群、慢性疲労症候群、線維筋痛症、脳脊髄液減少症、間質性膀胱炎、慢性骨盤痛などがある。FSSの病態のうち、不安、痛み、睡眠、食欲などの症状に脳内の神経伝達物質が関与していると考えられている。これらの中で中枢機能障害性疼痛(central dysfunctional pain)は痛みを主訴とするものであり、線維筋痛症はその代表例である。また整形外科で時々遭遇する術後疼痛症候群は、「痛み」の原因を特定することが難しい。痛みの機序には「侵害受容性疼痛」「神経障害性疼痛」「中枢機能障害性疼痛(機能性疼痛症候群)」のように分類されるが、ヒトの「痛み」はあくまで主観的なものであり、完全に分類することができるわけではない。さらに、ほとんどの痛みはこれらが複雑に絡み合った混合性疼痛であると考えられる。痛みに含まれるこれらの構成要素のバランスを考えることは、痛みの治療選択の大きな助けになる1)。画像を拡大する不適切なオピオイド処方例症例経過37歳女性 肩腱板断裂手術後難治性疼痛転倒し発症した肩腱板断裂に対して肩関節鏡視下に腱板縫合術が行われた。術後肩関節周囲部痛が出現し、肩の可動域訓練が行えなかった。再度、肩関節の手術が行われたが、疼痛は変わらなかった。その後CRPS(複合性局所疼痛症候群)を疑い、術後難治性疼痛と診断され、NSAIDsにて効果が無かったことからオピオイドであるププレノルフィン貼付薬(商品名:ノルスパンテープ)5mgの投与が開始された。しかし、効果が無かったことから同剤が20mgまで増量された。その後も鎮痛効果が認められないため、当科を紹介受診した。肩関節の専門医の診察でも肩関節周囲部痛を説明できる器質的疾患は認められなかった。また、本人の申告では患側の上肢はまったく使用できず、常に三角巾にて固定が必要ということであったが、筋萎縮、骨萎縮は認められず、交感神経の異常を示唆する皮膚温・発汗・皮膚のツルゴール・皮膚色の異常を認めなかった。骨シンチでも異常を認めなかった。厚生労働省CRPS判定指標2)では、CRPSの診断には至らなかった。当院では、「痛み」の原因が器質的疼痛(侵害受容性疼痛および神経障害性疼痛)ではなく、心因性疼痛、機能性疼痛、中枢機能障害性疼痛を含めた非器質的疼痛と判断した。よって、ププレノルフィン貼付薬は不適切と判断し、1週間毎に15mg、10mg、5mg、0mgと減量した。さらに、「痛み」を受容しながら運動療法を行うための認知行動療法的アプローチを行った。当院での診察の経過中に精神疾患罹患があることが判明した。ププレノルフィン貼付薬を減量しても疼痛は変化しなかったが、認知行動療法的アプローチを導入したことで運動療法、可動域訓練が行えるようになり、患側上肢が日常生活動作で使用できるようになり、肩関節の可動域もほぼ正常化した。参考文献1)三木健司ほか.Practice of Pain Management.2012;3: 240-247. 2)住谷昌彦ほか.Anesthesia 21 Century.2008;10: 1935-1940.症例解説へ >>

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明解!Dr.浅岡の楽しく漢方

冷え症や生理痛に悩んでいるの東洋医学の概念「気・血・水」。今回はこの中の「血」にスポットをあてます。「血」の異常、東洋医学では『お血』と『血虚』の2種に大別されます。お血とは血の巡りが悪くて、その結果様々な症状を引き起こすこと。血虚とは貧血、ではなくて血によって運ばれる栄養分が体のすみずみにまで配られないことによって現れる症状のこと。女性にとってとても辛い冷え症や生理痛・・・この症状でお悩みの方は少なくないはず。東洋医学では、こんな症状の治療にこの「血」の概念をあてはめて考えます。お腹が痛い ―お腹と心の深い関係―今回のテーマは腹部疾患。なかでも西洋医学的には解決が難しい『過敏性腸症候群』を中心に解説します。「断腸の思い」「ガッツ(腸)がある奴」の例えの通り、古来よりお腹と精神との関りは明白。ということは「お腹の調子が悪い=気持ちに問題がある」と考えられませんか?こんな時、漢方治療はとても効果的。下痢に下痢止め、便秘に下剤、ではなくて東洋医学的に患者さんの「状態」を踏まえて診断します。お腹が痛い患者さんに対し、気持ちや心の問題をよく考えることはとても大事なこと。“気”の概念を中心に、考えてみましょう。足腰に力が入らない東洋医学の概念の中で「五臓」という言葉があったのを覚えていますか?「心・肺・肝・脾・腎」でもこれは解剖学的な臓器のことではありませんでしたね。今回はその中から「腎」に効く処方をご紹介。腎臓疾患ではありませんのでお間違いなく!では一体何か? → 「腎」とは、生物が生まれつき持っている精気、つまりenergyのこと。「腎」の力が失われると、足腰に力が入らなくなったり、夜中におしっこが近くなったりする。こんな患者さんに優れた効果を発揮する漢方処方をお教えします。

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