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医師が取り組むべき節税対策とは?上手な節税を考えてみよう!

年末調整に確定申告…。年末から春は税金を意識する機会が増えます。さらに、最近では定額減税や新NISAスタートなど、税金に関する話題も増えています。ケアネットの連載「医師のためのお金の話」執筆者が、「医師のための上手な節税」を解説します。せっかく稼いだお金だから、できるだけ手元に残しておきたい! とくに高収入の医師には切実な願いではないでしょうか。しかし現実は税金が高過ぎて、給料明細を見るたびにため息が出る…。そんな方が多いことでしょう。そんな医師の強い味方となりうるのは「節税」です。しかし一言で節税と言っても、たくさんの種類があります。「候補が多過ぎてさっぱりわからない」「制度が複雑すぎてわからない」このような悩みを抱える医師は、きっとあなただけではないはず。ケアネットで、会員医師の方々を対象にした 「節税」に関するアンケートが公開されています。職場では大っぴらにしにくい話題ですが、ほかの人がどのような節税をしているのかはとても興味深いものです。アンケート結果から浮かび上がったのは、一般的に有名なものから、少数ではあるものの医師特有の節税対策まで…。私自身もとても参考になりました。貴重なアンケート結果を基にして、医師のための上手な節税について考えてみましょう。節税の制度が大きく変わる! 新NISAは絶対に押さえよう節税に関する今年最大の話題は、何といっても2024年1月から始まる新NISAではないでしょうか。NISAとは2014年から始まった少額投資非課税制度で、株式や投資信託の利益が非課税になります。NISAはうってつけな節税対策に思えますが、大きな欠点があります。これまでのNISAは非課税保有限度額が少なく、しかも非課税保有期間がわずか5年しかない、という制約がありました。保有期間が終了すると自動的に課税口座に移管されてしまい、その時点で含み損があると将来的に値上がりしても余分な税金が課せられます。しかし、同じ「NISA」でも、新NISAはこれまでのNISAとは似ても似つかない、素晴らしい制度に生まれ変わりました。大きな変更点は、非課税枠の上限金額が大幅に増えたことと、非課税保有期間の縛りがなくなったことです。極論すれば、これまでのNISAは期間終了時に株価が上昇していることに賭ける投機だったといえます。私がやりたいのは“投資”であり“投機”ではない…。このため、私は世間の盛り上がりとは裏腹に、完全無視を決め込んでいました。ところが、新NISAはこれらのデメリットのかなりの部分が解消されました。新NISA最大のメリットは、非課税保有限度額が1人当たり1,800万円に拡大されたことでしょう。このおかげで、必要十分なレベルの資産を非課税で保有できるようになりました。そして、新NISAでは非課税保有期間が無制限となったことも特筆するべき点です。期間の縛りがなくなったメリットは計り知れません。これまでのNISAと異なり、長期にわたって腰を据えて投資可能となり、また非課税のメリットを受け続けられるようになりました。これまでのNISAはお世辞にも推奨できるようなシロモノではありませんでしたが、2024年1月から始まる新NISAは違います。投資余力の大きな医師にとっても、真剣に取り組む価値のある節税制度だといえるでしょう。ハードルは高いが取り組む価値の大きなものとは?新NISAは万人向けの節税対策ですが、医師だからこそ取り組むべき価値のあるものもあります。その代表格は不動産投資です。不動産投資というと節税のイメージが大きいものの、うさんくささやハードルの高さも意識せざるを得ません。ケアネットが先日行ったアンケートでも、不動産投資に取り組んでいる人はあまりいませんでした。確かに不動産は投資額が大きく、気軽に取り組めるとは言い難いものです。しかし、ポイントさえ外さなければ、大きな節税効果が期待できるのもまた事実です。多くの医師が取り組む価値があるのは、個人所得税の節税対策としての不動産投資でしょう。具体的には不動産投資で出た赤字を、医師としての給与所得と損益通算して節税を図る手法です。この節税対策として、最も有名なのは新築区分マンション投資だと思います。職場によくかかってくる不動産投資の勧誘電話ですね。しかし、新築区分マンション投資は絶対に取り組んではいけない不動産投資の筆頭です。節税どころか、本当に「損」してしまいますから。それでは、個人所得税の節税対策として、どのような不動産投資がお勧めなのでしょうか。これには節税の仕組みを読み解く必要があります。税務上で不動産投資が赤字にならなければ、個人所得税の節税になりません。しかし、新築区分マンション投資のように本当に損をしてしまうと、本末転倒です。ここで重要なのは、税務上の赤字と実際の赤字は異なる、という点です。この違いは「減価償却」で生まれてきます。減価償却とは、建物取得金額を法定耐用年数に応じて費用計上する会計処理です。減価償却では、実際にお金が出ていかないにもかかわらず、帳簿上で費用計上可能となります。一応、新築区分マンション投資でも減価償却をうたってはいますが、物件価格が割高過ぎるので利益はほとんど出ません。お勧めは築古木造戸建投資でしょう。築22年超の古い木造物件は4年で減価償却できます。新築区分マンション投資の法定耐用年数は47年なので、圧倒的な節税効果が見込めます。ただし、築古木造戸建投資を実行するには専門的な知識が必要です。必ず専門家のアドバイスを聞きましょう!ふるさと納税は誰でもノーリスクで安心して実践できる新NISAや不動産投資の節税効果はわかりましたが、もう少し簡単で気楽にできる節税対策はないものでしょうか。そのようなニーズに応える筆頭は、ふるさと納税でしょう。ケアネットが先日行ったアンケートでも、8割以上の医師がふるさと納税に取り組んでいました。2023年10月から還元率が改悪されましたが、ふるさと納税が始まる前は還元率ゼロだったことを考えれば、ほとんど誤差範囲内だと思います。世間では10月までに駆け込みでふるさと納税するべしという論調がありましたが、一般の医師は無視しても問題ないでしょう。一方で、ふるさと納税のチョイスに時間をかけ過ぎるのは禁物です。膨大な数の返礼品があるので、ついつい「お得さ」をとことんまで追求してしまいがちです。しかし、ふるさと納税の返礼品は“オマケ”みたいなもの。そこに貴重な時間を振り分けても得るものは少ないでしょう。私がいつも心掛けているのは、ふるさと納税をできるだけ自動化することです。理想は、自動的にふるさと納税の返礼品が送られてくる状態です。もちろんまったく時間をかけないわけにはいきませんが、工夫次第で半自動化することが可能です。ふるさと納税の自動化でお勧めの返礼品は、お米の定期便です。3~12ヵ月の間、おいしいお米が毎月送られてくるパターンが多いです。一度寄付すると、あとは自動的に送られてくるのは魅力的です。お米の定期便には、もうひとつのメリットがあります。お米は精米すると劣化が早まるため、長く家に置いておけません。とくに夏場はお米が傷みやすいので要注意です。私は何袋も一気に頼んで数ヵ月置いていたところ、まずくなって閉口した経験があります。こうしたことなく、定期的に新鮮なお米が手に入るわけです。ふるさと納税はお得な制度ではあるものの、永続性に疑問があり、真剣に注力する類のものではありません。節税に取り組むのであれば、新NISAなどのしっかりした枠組みの制度を、腰を据えて研究することをお勧めします。

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起立性低血圧の有無で、積極的な降圧治療における心血管疾患発症や総死亡の抑制効果に違いはあるのか?(解説:石川讓治氏)

 積極的な降圧が心血管疾患発症抑制に有用であることが、いくつかの大規模無作為割り付け介入試験で報告されている。しかし、これらの研究では起立性低血圧や起立時血圧が低値である患者が除外されていることが多く、これらを有する患者における心血管疾患発症に対する抑制効果に関しては不明であった。本研究は9つの臨床試験の結果の個別参加者データを統合して、起立性低血圧(座位→起立での血圧低下)と起立時低血圧の有無によって、積極的降圧群における心血管疾患発症または総死亡の抑制効果に違いがあるかどうかを検討したメタ解析である。その結果、起立性低血圧や起立時低血圧の有無では、積極的な降圧治療による心血管疾患の発症または総死亡の抑制効果に統計学的有意差は認められなかった。しかし、起立性低血圧を認める患者における積極的な降圧治療は、有意に心血管疾患発症を抑制していたが、総死亡抑制に関しては統計学的有意差が認められなかった。同様に、起立時低血圧を有する患者における積極的降圧治療においても、心血管疾患発症や総死亡低下効果に統計学的有意差は認められなかった。 本研究の解釈には注意が必要である。起立性血圧低下(変動)と起立時に血圧(レベル)が低いことは臨床的には少し異なるものである。起立時に血圧が低いこと自体は、座位においても血圧レベルが低いことの影響を大きく強く受けており、血圧の変動性よりはレベルの問題が大きいと思われる。さらに、起立性低血圧(変動)は、座位→立位の血圧変化では十分に評価をすることは困難である。起立性低血圧は、頭部と心臓の位置関係が変化する仰臥位から立位への変化で診断されるべきであり、座位から立位での血圧変化は下肢運動機能低下やフレイルによる影響を受けやすい。大規模臨床試験では、ヘッドアップティルト試験を全員に行うことが困難なため簡易的に座位→起立での血圧で測定しているが、臨床的に問題となる血圧調整機能障害や自律神経機能低下を反映した起立性低血圧は、座位→立位への変換や起立時の血圧では評価することは困難である。 起立性血圧低下や起立時低血圧の有無にかかわらず、積極的な降圧は平均血圧レベルを低下させ、心血管疾患の発生を抑制するが、起立性低血圧患者においては、生活の質が低下し、転倒骨折リスクが増加することのほうが、イベント抑制よりも問題となることも多い。しかし、このことに関しては本研究においてはまったく評価されていない。起立性低血圧の原因となる自律神経機能低下は、臨床前段階の認知症やパーキンソン病などを併存していることが多く、感染症、老衰、低栄養などによる死亡も多い。こういった患者の多くは大規模な無作為割り付け研究には参加困難であり、積極的降圧治療によっても総死亡の減少効果は少ない。 実臨床においては、起立性低血圧を有する患者の降圧治療は、積極的降圧による心血管疾患発症抑制と、生活の質を維持することのバランスを考えながら行う必要がある。降圧治療をする意義や目的を明確にしながら、降圧目標値を設定していく必要がある。

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破傷風の予防【いざというとき役立つ!救急処置おさらい帳】第8回

今回は、破傷風の予防についてです。外傷患者さんを診たとき、「傷が汚いから破傷風トキソイドを打とう」という発言をよく聞くことがありますが、「“汚い”とは何をもって“汚い”と言うのか?」と聞かれるとすぐに答えるのは難しいのではないでしょうか。前回紹介した毎日犬にかまれているおじいさんの症例をベースに、破傷風予防の必要性を考えていきましょう。<症例>72歳男性主訴飼い犬にかまれた高血圧、糖尿病で定期通院中。受診2時間前に飼い犬のマルチーズに手をかまれた。自宅にあった消毒液で消毒し、包帯を巻いた状態で定期受診。診察が終わったときに自分から「今日手をかまれて血が出て大変だったんだよ」と言い、犬咬傷が判明。既往歴糖尿病、高血圧アレルギー歴なしバイタル特記事項なし右前腕2ヵ所に1cm程度の創あり。発赤なし。破傷風の予防接種の有無を聞くと、「そのようなものは知らない」と答える。さて、この患者さんは破傷風トキソイドを打つ必要があると考えますか? 私は迷うことなく「Yes」だと思います。しかし、もし犬にかまれたのではなく、「自宅内で転倒して額に1cmの挫創を負った」「屋外で転倒して肘に擦過創ができた」であればYes/Noが分かれるかもしれません。もしくはこの患者さんが14歳だったとしたらどうでしょうか? 今回は日本の国立感染症研究所とアメリカのCenters for disease Control and Preventionの情報を基に解説します1,2)。治療に入る前に破傷風に関して復習しましょう。破傷風は、Clostridium tetani(破傷風菌)が産生する神経毒素による神経疾患です。破傷風菌は偏性嫌気性グラム陽性有芽胞桿菌で土壌などの環境に広く分布しており、ある程度どのような場所でも傷を負えば感染のリスクがあります。日本では年間100例程度が発症しており、そのうち9例程度が死亡する非常に重篤な疾患です2)。私も数例診ましたが、痙攣のコントロールに難渋するなど非常に治療が難しく、たとえ助かったとしても重篤な合併症を残してしまう危険な疾患と考えています。しかし、ワクチン接種により基礎免疫を獲得することで、ほぼゼロに近い確率まで破傷風の発症を防ぐことできます。ガイドラインでは「基本的には破傷風に対する基礎免疫を持っている状態」が望ましいとされ、「傷がきれいであったとしても、基礎免疫がないもしくはブースターが必要な場合は破傷風トキソイドの投与が推奨」されています。では症例に戻って系統立ててみていきましょう。(1)基礎免疫はあるかまず破傷風に対する基礎免疫があるかを確認しましょう。初回投与から決められた期間に2回破傷風トキソイドを投与することにより基礎免疫を獲得し、最終接種から10年ごとに再投与することで基礎免疫が維持されます。日本では1968年から百日せき・ジフテリア・破傷風の3種混合ワクチン(DPT)の定期接種が始まりましたが、全国一律で開始されたわけではないようです。国立感染症研究所の情報によると、1973年以前の出生の人では抗体保有率が低いものの、1973年より後の出生の人では基礎免疫を獲得していると考えられます。今回の患者さんは定期接種がなかった時代に出生しているため、基礎免疫がないと判断します。次いで患者さんが、破傷風トキソイドを打ったことがあるかどうかを確認しましょう。外傷を契機に破傷風トキソイドを打ったことがある人がいますが、「受傷したときに1回しか打っていない」「記憶があやふや」という人も多く、その場合も基礎免疫がないと考えます。この患者さんにトキソイドについて尋ねたところ「何それ?」と回答されたので基礎免疫はないと判断しました。(2)傷の「きれい」「汚い」破傷風を起こす可能性が高い創=汚い、破傷風を起こす可能性が低い創=きれい、と表現されることが多く、これをもって破傷風トキソイドを打つかどうか判断している医師もいると思います。しかしながら、表1のとおりガイドライン上は「汚い」「きれい」で変わるのは基礎免疫がない患者で抗破傷風免疫グロブリンを打つかどうかです。ここを注意してください。表1 破傷風トキソイド・抗破傷風免疫グロブリン(TIG)の投与基準画像を拡大するでは、きれい/汚いはどう区別するのでしょうか? これは私もかなり探してみたのですが、書籍や文献によってまちまちです。CDCでは「汚い」に関しては「土壌、汚物、糞便、または唾液(動物や人間のかみ傷など)で汚染された傷を“汚い”と判断する必要がある。また、刺し傷または貫通傷を汚染されたものとみなし、破傷風のリスクが高い傷と判断する。壊死組織(壊死性、壊疽性の傷)、凍傷、挫傷、脱臼骨折、火傷を含む傷は、破傷風菌の増殖に適しておりリスクが高い」とされています。Colombet氏らは自身の論文で「明確に破傷風リスクが低い/高い傷を定義するのは困難」と述べていて、傷の状態や性状だけで判断は難しいと思います3)。よって基礎免疫がない外傷患者に対して破傷風トキソイドの投与は必須として、抗破傷風免疫グロブリンを投与するかどうかは医師の判断になります。症例に戻りましょう。破傷風トキソイドは投与して、抗破傷風免疫グロブリンを投与するかどうかの判断が必要になります。この傷はガイドラインに沿えば、きれいな傷とはならないので抗破傷風免疫グロブリンの適応となります。私はこの傷であれば、手元に抗破傷風免疫グロブリンがあれば投与を検討しますが、すぐ投与するためにあえて高次機能病院に受診させることはありません。私が必ず抗破傷風免疫グロブリンを投与するのは、開放骨折やデグロービング損傷など重症度が高い傷で破傷風のリスクが高いと判断したときです。この患者さんは、破傷風トキソイドを投与し、基礎免疫を獲得するために1ヵ月後と半年後に予防接種を受けてもらうことにしました。今回は、破傷風の予防に関してお話ししました。救急外来では破傷風トキソイドが適切に投与されていないとの報告もあり、実際に私も「傷がきれい」という理由で破傷風トキソイドを打たれなかった症例を経験することがあります4)。そのようなこともあり破傷風の予防には思い入れがありますので、参考になれば幸いです。破傷風の豆知識(1)破傷風トキソイドと抗破傷風免疫グロブリンは受傷後いつまでに打てばよい?UpToDateの「Wound management and tetanus prophylaxis」を参考にすると5)、「なるべく早く」が答えです。ただし、その場で投与できなかったとしても破傷風の発症は受傷から3~21日後ですので、可能であれば3日以内、最長で21日まで破傷風トキソイドと抗破傷風免疫グロブリンを破傷風感染予防目的に投与することは推奨されると記載されています。ただし、破傷風トキソイドに関しては基礎免疫を獲得していることが望ましいので、21日を過ぎて、もともと基礎免疫がない患者、もしくは基礎免疫があっても最終接種からの年数と傷の状態からブースト接種が必要な場合は破傷風トキソイドの投与を勧めるべきと考えます。つまり気が付いたときにはいつでも破傷風トキソイド投与を勧める必要があります。何らかの傷を負ったときの破傷風トキソイドは傷からの破傷風予防として保険適用です。(2)基礎免疫があれば破傷風のリスクが高い傷に抗破傷風免疫グロブリンを打たなくてもよい?表1を見てもらいたいのですが、基礎免疫がある人は抗破傷風免疫グロブリンの適応になりません。では1973年より後に生まれた人はたとえ破傷風のリスクが高い傷でも抗破傷風免疫グロブリンを打たなくてよいのでしょうか? 私は必要と考えています。なぜなら本当に基礎免疫があるかどうか確認できないことが多いからです。赤ちゃんのときのワクチン接種に関しては母子手帳に記載がありますが、患者は持ち歩いておらず、本人に聞いてもわからないことがほとんどです。そのため、私は基礎免疫があると確証が持てない場合で破傷風のリスクが高い傷の場合は抗破傷風免疫グロブリンを投与しています。将来的に、ワクチン接種歴がマイナンバーで管理されてすぐに接種歴がわかるようになれば、ほとんどの症例で抗破傷風免疫グロブリンの投与はしなくなるのかなと思います。1)CDC:Tetanus2)国立感染症研究所:破傷風とは3)Colombet I, et al. Clin Diagn Lab Immunol. 2005;12:1057-1062. 4)Liu Y, et al. Hum Vaccin Immunother. 2020;16:349-357.5)UpToDate:Wound management and tetanus prophylaxis

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運動するのも緩和ケア?【非専門医のための緩和ケアTips】第61回

第61回 運動するのも緩和ケア?緩和ケアの専門家として、時々聞かれるのが「運動療法ってどんなことをするのですか?」というトピックです。確かに緩和ケアの教科書を見ると書いてありますからね。今回は緩和ケアにおける運動療法を考えてみましょう。今回の質問外来で診ているがん患者さん。痛みなどの身体症状は抑えられているのですが、不眠があり、気分も晴れないとのことです。こういった方に運動を勧めることをどう思われますか?外来通院されている患者さんに、少しでもできることがないかと考える姿勢が非常に伝わってくる質問ですね。まず、緩和ケア領域における運動療法についての一般論を共有します。がん患者への運動療法は世界的に議論され、研究領域の1つでもあります。その効果としては、倦怠感などの苦痛症状の緩和、身体機能やQOLの向上などが期待されています。運動の内容としては、日本緩和医療学会の編集による『がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)』(金原出版)に、これまでのエビデンスをまとめた推奨事項が記載されています。これによると「一般に成人(18~64歳)に対して、中等度の身体活動を週150分、高強度の有酸素運動を週75分、中~高強度の抵抗運動を週2回以上、行うことが推奨されている」(学会サイトから無料で閲覧可)。このように、緩和ケア領域における運動療法には一定の効果が期待できるわけですが、実践するうえでの注意点は何でしょう?それは、「適応」と「安全」です。「適応」としては、運動療法を検討している患者さんの症状や苦痛に対するアセスメントが重要です。今回の相談のケースでは、患者さんの気分の落ち込みがうつ病の症状かを考慮する必要があるでしょう。また、不眠も運動による改善が期待できますが、そもそもの不眠の原因を取り除くことも必要です。次に「安全」についてです。健康な人も同様ですが、がん患者であればなおさら過度な運動は禁物です。高齢の患者さんには持病のある人も多く、さらに安全に配慮する必要があります。骨転移のあるがん患者さんが転倒して骨折する、というのはよくあるケースですが、運動療法中に骨折すれば管理上の問題にもなります。そのほか、化学療法中の患者さんであれば、発熱や吐き気といった副作用が出ている時期や、骨髄抑制の期間中の運動は避けたほうがよいでしょう。以上、緩和ケア領域における運動療法を検討しました。「適応」と「安全」をしっかり考えながら、ケアに運動を取り込みましょう。今回のTips今回のTips緩和ケア領域の運動療法は、「適応」と「安全」を考えるのがポイント!

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身長低下が20代から4cm以上、椎体骨折を疑う/日本整形外科学会

 日本整形外科学会(日整会)は、10月8日の「骨と関節の日」にちなみメディア向けセミナーを都内で開催した。「骨と関節の日」は、ホネのホは十と八に分かれること、「体育の日」に近く、骨の健康にふさわしい季節であることから1994年に日整会が制定し、全国で記念日に関連してさまざまなイベントなどが開催されている。 セミナーでは、日整会の今後の取り組みや骨粗鬆症による椎体骨折についての講演などが行われた。2026年の設立100周年、2027年の総会第100回に向けて はじめに同学会理事長の中島 康晴氏(九州大学整形外科 教授)が、学会活動の概要と今後の展望を説明した。 整形外科は、運動器障害の予防と診療に携わり、加齢による変性疾患、骨折などの外傷、骨・軟部腫瘍、骨粗鬆症、関節リウマチなどを診療領域としている。とくに運動器の障害は、要介護・要支援の原因の約25%を占め、超高齢社会のわが国では喫緊の課題となっている。そこで日整会では、「ロコモティブシンドローム(ロコモ)の概念」を提唱し、運動器障害のリスクを訴えてきた。その結果「健康日本21(第3次)」では「生活機能の維持・向上」に「ロコモの減少」「骨粗鬆症健診受診率の向上」が盛り込まれるようになった。 また、日整会では、2020年4月より「日整会症例レジストリー(JOANR)」という運動器疾患の手術に関する大規模データベースを構築。わが国の運動器疾患手術数、種類などを解析する事業も行っており、2021年の取りまとめとして、97万2,525例の手術のうち、1番多かった手術は「大腿骨近位部骨接合」(10万6,326例)、次に「人工膝関節」(7万7,675例)、次に「人工股関節」(6万6,219例)だったと報告した。 日整会は、2026年に学会創立100年を、27年には第100回総会を迎えることからプロモーション動画と特別のロゴを紹介。中島氏はこれからもさまざまな活動を続けていくと述べた。約5人に1人が椎体骨折の患者 講演では「骨粗鬆症による脆弱性脊椎骨折とロコモ~整形外科医の役割~」をテーマに宮腰 尚久氏(秋田大学大学院整形外科学講座 教授)が、骨粗鬆症による椎体骨折についてレクチャーを行った。 わが国の骨粗鬆症患者は1,590万例とされ、生じやすい部位として上腕骨、脊椎、手首、大腿骨頸部などが知られている。 骨粗鬆症は代謝性骨疾患であり、運動器疾患を招く。同様に運動器疾患を招くものとして「ロコモ」がある。 ロコモは、運動器障害のために移動機能が低下した状態をいう。近年の健康な人と骨減少症・骨粗鬆症における筋量サルコペニアの有病率を調べた研究報告によれば骨粗鬆症とサルコペニアは合併しやすいことが判明し、骨粗鬆症とサルコぺニアを合わせた「オステオサルコペニア」という概念も生まれている1)。 骨粗鬆症と生命予後の関連について調べた研究では、大腿骨の骨折のほかに椎体骨折も生命予後に影響することがわかっている2)。 多くの椎体に骨折が生じると脊柱後弯変形が生じ身長が低下する。これにより、胃食道逆流症、腰背部痛、身体機能の低下、バランス障害による易転倒などが起こり、永続的なQOLの低下を引き起こす。 椎体骨折は男女ともに骨粗鬆症でもっとも頻発する骨折であり、その発生率は80歳の女性で10万人当たり3,000例(年3%程度)といわれている3)。 椎体骨折の有病率について、わが国の男女(40歳以上)で21.8%、欧州の男女(50歳以上)で20%、カナダ・アメリカで20~23%と報告され、わが国では約5人に1人が椎体骨折を有するとされる。身長低下が20代から4cm以上の場合は椎体骨折を疑う 椎体骨折の診断で簡易に推定できる方法として、壁を背に立って壁と後頭部にすき間があれば骨折の可能性があること、肋骨最下端と骨盤の間に2横指以下であれば骨折の可能性があることを紹介。また、若いとき(25歳くらい)からの身長が4cm以上、閉経後3年間の身長低下が2cm以上あった場合も骨折の可能性があることを説明した。 治療では装具療法、外科的手術(例:椎体形成術や後方固定術やその両方など)が行われている。 椎体骨折の予防では2つの療法を示し、はじめに薬物療法として、活性型ビタミンD3薬、ビスホスホネート薬、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、副甲状腺ホルモン薬、副甲状腺ホルモン関連蛋白薬、抗RANKL抗体薬、抗スクレロスチン抗体薬があり、次の骨折へつなげないためにもまず薬物治療を開始することが大切だと指摘した。もう1つの骨折予防としては、運動療法があり、うつぶせ寝による等尺性背筋運動(関節を動かさずに筋肉に力を入れる運動)などが勧められ、その効果はメタアナリスでも改善効果が示されている4)。ただ、脊柱後弯変形やうつ伏せになれない人などには禁忌となるので注意が必要である。 また、高齢者の転倒防止のためにはロコモの予防も重要であり、日整会が勧めている片脚立ちやスクワットなども日々の暮らしの中で取り入れてもらいたいと語った。そのほか、日常生活でも注意が必要であり、椎体は屈曲時に潰される可能性があるので高齢女性では、家事労働や雪国ならば雪かきなどで体の態勢に気を付けることが重要であり、普段から意識して背筋を伸ばし、よい姿勢を保つことが大切だと指摘する。骨粗鬆症健診率の向上が課題 終わりに骨粗鬆症における整形外科の役割にも触れ、女性は40代で1次予防を、50代で2次予防のために検診し、きちんとしたその時々の対応をすることが必要と述べた。しかし、わが国の骨粗鬆症健診率は2020年で4.5%と低く、いかに社会的に周知・啓発をしていくかが今後の課題となっている。日整会では、ポスター掲示などで社会に対して働きかけを行っていくと展望を語り、レクチャーを終えた。

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第31回 施設入所中の高齢者の失神、原因は?【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)失神では食事との関連を意識しよう!2)高齢者の失神では食後低血圧も疑い、再発を防止しよう!【症例】82歳男性。施設入所中。午前9時半頃に椅子に座った状態で反応が乏しく救急要請。救急隊到着時にはほぼ普段通りの状態へと改善していた。●来院時のバイタルサイン意識清明血圧118/68mmHg脈拍72回/分(整)呼吸18回/分SpO297%(RA)体温36.3℃瞳孔3/3 +/+失神の原因失神の原因は大きく心血管性失神(心原性失神)、起立性低血圧、反射性失神の3つに大別されます。そのうち、心血管性失神、出血に伴う起立性低血圧は常に意識し、対応する必要があります。心血管性失神の代表的なものは“HEARTS”と覚えるのでしたね。この辺りは「第13回 頭部外傷 その原因は?」で取り上げているのでそちらを参考にしてください。今回は頻度の高い反射性失神を取り上げます。緊急度、重症度の高い心血管性失神を常に意識して失神患者を対応することは大切ですが、やはり頻度が高い原因をきちんと意識して、対応することも合わせて行わなければ的確な診療はできません。意外に多い食後低血圧反射性失神のうち最も頻度が高いのは排尿失神ですが、食事関連の失神をご存じでしょうか?正確な機序は明らかでない部分もありますが、食事を摂取することによって内臓血流の増加、インスリンや胃腸管ペプチドによる血管拡張に加え、交感神経の適切な代償が行われないことなどが影響していると考えられています1)。食後2時間以内に収縮期血圧が20mmHg以上低下するか、普段から100mmHg以上ある血圧が90mmHg未満となる場合に食後低血圧と定義されます。高齢者における食後低血圧の頻度は高く、たとえば、施設入所者の高齢者の3~4人に1人は食後低血圧を認めることが報告されています2,3)。しかし、食後低血圧は軽視されていることが多く、失神の原因として意識するようにしましょう4)。食後低血圧の診断食後低血圧は前述の通り食後の血圧の程度を診て判断するわけですが、実際にはどのように評価するのでしょうか?食前に1回、食後2時間内は15分毎に1回の計9回の測定をして評価することとなっていますが、これは大変ですよね5)。そのため、食前に1回、食後75分後に測定を行い、収縮期血圧が10mmHg以上低下するかをまずは確認するのがオススメです(感度82%、特異度91%)6)。まずは疑い、そして簡便な方法でチェックし、疑わしければ詳細な評価を行うとよいでしょう。高齢者、とくに糖尿病、パーキンソン病などの基礎疾患のある方、利尿薬など多数の薬剤を内服している方では頻度が高いため、そのような患者さんでは積極的に疑い評価しましょう。食後低血圧と外傷60歳以上(平均80歳)の高齢者において、食後の収縮期血圧が20mmHg以上低下する方では失神や転倒の頻度が有意に高くなります7)。食後にフッと気を失うだけであればよいですが、それによって外傷を伴い、大腿骨近位部骨折や頭部や頸部の外傷を伴ってしまっては大変です。そのようなことが起こらないために、食後の意識消失を軽視しないようにしましょう。さいごに失神の鑑別として食後低血圧も意識しておきましょう。起立性低血圧との合併も珍しくなく、原因を1つみつけて安心してはいけません。高齢者では常に食事との関連も気にかけてくださいね。1)Son JT, et al. J Clin Nurs. 2015;24:2277-2285.2)Aronow WS, et al. J Am Geriatr Soc. 1994;42:930-932.3)Vaitkevicius PV, et al. Ann Intern Med. 1991;115:865-870.4)Luciano GL, et al. Am J Med. 2010;123:281.5)Jansen RW, et al. Ann Intern Med. 1995;122:286-295.6)Abbas R, et al. J Frailty Aging. 2018;7:28-33.7)Puisieux F, et al. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2000;55:M535-540.

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MR認定試験が2段階に?それって誰のため?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第118回

MR認定試験が2段階に?それって誰のため?MRの登竜門であるMR認定試験。そのMRの認定制度の変更内容が少しずつ見えてきました。ただ、何のため・誰のための変更なのかは疑問が残ります。MR認定センターは26年度から新たなMR認定制度を打ち出す。医薬品の適正使用に当たる資質を評価する資格試験を経て、製薬企業による専門的な教育を受けたあとにMRとして認定される2段階方式にする方針だ。26年度以降に入社する社員が対象となる見込みで、近澤洋平専務理事/事務局長は本紙取材に「今後はMRとしての入り口の試験になる」と説明。資格試験に合格できなかった場合は、MRとしての「活動はできない」と語った。(2023年9月15日付け RISFAX)現在、MR認定試験は毎年12月に年1回実施されています。以前は製薬会社で一定期間の導入研修を受けることが受験資格となっていましたが、2009年度からは医薬品卸のMS、2021年度からは学生も受験資格が得られるようになり門戸は広がりました。10年ほど前は5,000人を超える受験者がいましたが、現在は減少の一途をたどっていて、とくに直近の3年間はコロナ禍の医療機関の出入り禁止も影響したのか受験者は激減し、2022年度は1,232人まで落ち込んでいます。そのような中、MR認定センターは2026年度にMR認定試験を抜本改革し、2段階方式にする方針を示しています。第1段階の基礎教育終了試験は、医薬品の適正使用に当たるための「資質」を評価する試験とされています。医薬品の適正使用のために知っておくべきことなどを問うのでしょう。またMRだけを対象とするのではなく、MSL(メディカルサイエンスリエゾン)や安全管理部門、くすりの相談窓口といった職種の人も広く受け入れる方針です。そして第2段階として製薬企業による専門的な教育を受け、実務教育終了ドリルをクリアして認定を受けることでMR認定証が交付されます。これまでは認定試験に不合格でも、導入教育さえ修了してそれが認定されるとMR活動はできていましたが、今後は試験の合格をもって導入教育における基礎教育が修了したと認定します。そのため、万が一試験に不合格だと導入教育が修了したとは認定されず、MR活動を行えなくなります。今後は年に複数回受けられるようにすることも提案されていますが、合格するまで仕事ができない…というのは会社で肩身が狭いだろうなと思います。なお、大学生が就職活動の一環として受検し、就職先の製薬企業がより専門的に教育する流れを想定する、なども盛り込まれています。この制度の変更については、今年の10月から厚生労働省も交えた有識者会議で本格的に議論を開始し、来年1月にMR認定センターの理事会で決定する予定とのことです。第1段階の資格はいったい何のため? 製薬会社や医療機関はそれを求めているのか? 誰にメリットがあるのか? など、個人的には前途多難な気配がします。2段階方式やほかの職種も取り込むなどの複雑な制度作りよりも、MRがどのような役割や責任を負うのか、どう医療に貢献するのか、ということをより明確にすることが先ではないかと思います。MRの試験なんて関係ないし興味もないという人が多いと思いますが、なんだかこれって薬局や薬剤師の資格と少し似ている気がします。健康サポート薬局や地域連携薬局、かかりつけ薬局や認定薬剤師など、われわれの業界にもさまざまな資格がありますが、患者さんにその役割やメリットを感じてもらえているのかなと疑問に思います。新しい制度を作ることが目的になってしまって、医療にどう貢献をするのかという一番大事なことが伝わっていないのであれば本末転倒です。MR認定制度の例を見ながら反省しつつ、足元を見つめ直そうと思った次第です。

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「デルマクイック爪白癬」は技術や検査時間も不問で誤診も防ぐ

 昨年6月にイムノクロマト法を用いた白癬菌抗原キット「デルマクイック爪白癬」が発売されたことを契機に、以前に比べ、内科医でも爪白癬の診断に対応できるようになったのをご存じだろうか。今回、常深 祐一郎氏(埼玉医科大学医学部皮膚科 教授)が『本邦初の白癬菌抗原検査キットによる爪水虫診断と正しい治療法~爪水虫診療は新たなステージへ~』と題し、今年4月に発表された爪白癬の治療実態調査の結果、新たな抗原キットなどについて説明した(佐藤製薬・マルホ共催メディアセミナー)。爪白癬は外用薬で治せる、という誤解 日本人の10人に1人は爪白癬に罹患しており、その多くが高齢者である。高齢者では足の爪白癬が転倒リスク1)やロコモティブシンドローム、フレイルの原因になるほか、糖尿病などの合併症を有する患者においては白癬病変から細菌感染症を発症し、蜂窩織炎や時には壊死性筋膜炎を発症するなど命を脅かす存在になる場合もあるため、完全治癒=臨床的治癒(爪甲混濁部の消失)+真菌学的治癒(直接鏡検における皮膚糸状菌が陰性)を目指す必要がある。 爪白癬の治療は診断さえついてしまえば、外用薬を処方して継続を促せば…と思われることが多いのだが、その安易な判断が「治療の長期化につながり、結局治癒に至らない」と常深氏は指摘した。外用薬は白癬菌が爪の表面に存在する表在性白色爪真菌症(SWO)には効果が高いが、その他の病型では経口抗真菌薬が優れているという。また、「遠位側縁爪甲下爪真菌症(DLSO)の軽症であれば外用薬でも治せると考えられているが、治癒まで時間を要し、その間に次に述べるように脱落が多くなってしまうことから、軽症の間に経口薬で治癒させることが望ましい。もちろんDLSOの中等症以上では経口薬が必要であるし、近位爪甲下爪真菌症(PSO)、全異栄養性爪真菌症(TDO)では経口薬による治療が推奨される」と、病態ごとの剤型の使い分けが重要であることに触れた。「デルマクイック爪白癬」で視診による誤診予防も そうはいっても、とくに高齢者への経口薬処方は、ポリファーマシーの観点や肝機能への影響から敬遠される傾向にある。これに対し、同氏は治療継続率のデータを引用2)し、「経口薬のほうが外用薬より治療継続率が高く、脱落しにくいことが明らかになっている。外用薬の場合は投与開始から1ヵ月時点ですでに4割強が脱落してしまう。一方で、経口薬は投与開始3ヵ月時点でも6割の人が継続している。爪白癬治療に年齢は関係ない」と説明した。 上述のように、治癒率や患者の治療継続率からも爪白癬への経口薬処方が有効であることは明確だが、診断に自信がないと、外用薬で様子を見てしまうということが多そうだ。また、皮膚科専門医は顕微鏡を用いたKOH直接鏡検法で診断することができるが、他科の医師においては視診で判断していることが多いのが実情である。この点について、「皮膚科医であっても視診のみで診断を行うと30%程度は誤った判断をするため3)、やはり検査は必要。爪甲鉤弯症などが爪白癬と誤診されることもある4)」と述べたうえで、「経口薬は外用薬と比較して検査で確定診断がつかないと処方しづらく、“本当に薬を処方していいのか”という不安が処方医に生じる」と医療者側の問題点を挙げた。<爪白癬と誤診されやすい疾患>・掌蹠膿疱症の爪病変・緑色爪(green nail)・黄色爪症候群(yellow nail syndrome)・爪甲鉤弯症・厚硬爪甲 昨年に上市された白癬菌抗原キット「デルマクイック爪白癬」の検査法『イムノクロマト法』は迅速および簡便で感度が高く、皮膚科専門医が行うKOH直接鏡検法や真菌培養法に比べ、技術や検査時間も不問であることから視診による誤診も防ぐことが可能である。同氏は「鏡検できる医師がいない場合、顕微鏡がない施設や往診先での検査に適しており、また、鏡検での見落としを防ぐために検査を併用するのも有用」と述べ、皮膚科専門医ならびに一般内科医に向けて、「精度の高い検査を患者に提供して確定診断が得られた後に適切な薬剤を処方する、という正しい診断フローに沿った治療にもつながる」とコメントした。 最後に同氏はクリニカル・イナーシャ(clinical inertia)5)という言葉に触れ、「これは直訳すると“臨床的な惰性or慣性”。患者が治療目標に達していないにも関わらず治療が適切に強化されていない状態を意味する」と定義を説明し、「患者側がクリニカル・イナーシャに陥る要因は、治療効果の正しい知識不足や経口薬による副作用への懸念、飲み合わせへの懸念などが漠然とある。一方、医師側の要因には完治が必要であるとの認識不足、治癒への熱意や責任感不足などがあり、両者のクリニカル・イナーシャが相乗的に負の方向に働き、外用薬が漫然と使用されてしまう。しかし、爪白癬の治療意義、新たな検査法や経口薬の有用性を理解していけば解決できる」と締めくくった。

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アスピリンは健康な高齢者ではむしろ副作用のリスク増

 低用量アスピリンは脳卒中の予防に広く用いられているが、高齢者においては脳卒中の有意な減少は認められず、むしろ頭蓋内出血が有意に増加したという結果が示された。オーストラリア・メルボルンのモナシュ大学のGeoffrey C. Cloud氏らによる本研究の結果は、JAMA Network Open誌2023年7月26日号に掲載された。高齢者に対してはアスピリン使用の副作用にとくに配慮する必要 この報告は、高齢者における低用量アスピリンの副作用リスクとベネフィットのバランスを検討した無作為化二重盲検プラセボ対照試験Aspirin in Reducing Events in the Elderly(ASPREE)の2次解析の結果である。参加者は米国とオーストラリア在住の心血管疾患の既往のない70歳以上の高齢者で、募集は2010~14年に行われた。追跡期間中央値は4.7(四分位範囲[IQR]:3.6~5.7)年で、本解析は2021年8月~2023年3月に行われた。 本試験における主要評価項目は、無障害生存期間(身体障害および認知症のない生存期間と定義)で、アスピリン群とプラセボ群で差はなかったことがすでに報告されている1)。今回報告された脳卒中および出血性イベントはあらかじめ設定された副次評価項目で、転帰は医療記録のレビューにより評価した。 高齢者における低用量アスピリンの副作用リスクとベネフィットのバランスを検討した主な結果は以下のとおり。・1万9,114例が登録され、女性1万782例(56.4%)、年齢中央値74(IQR:71.6~77.7)歳がアスピリン投与群(毎日100mg・9,525例)とプラセボ群(9,589例)に1対1で割り付けられた。・脳卒中を含む頭蓋内イベントの発生率は低く、追跡期間1,000人年あたり5.8人であった。・虚血性脳卒中は、アスピリン群146例(1.5%)、プラセボ群166例(1.7%)で発生し、両群のリスクに統計学的有意差はなかった(ハザード比[HR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.71~1.11)。・出血性脳卒中は、アスピリン群49例(0.5%)、プラセボ群は37例(0.4%)で発生し、こちらも有意差は見られなかった(HR:1.33、95%CI:0.87~2.04)。・出血性脳卒中を含む頭蓋内出血の合計は、アスピリン群はプラセボ群より有意に増加していた(108例[1.1%]vs.79例[0.8%]、HR:1.38、95%CI:1.03~1.84)。 研究者らは「低用量アスピリンの連日投与による虚血性脳卒中の有意な減少は認められない一方で、頭蓋内出血は有意に増加していた。これらの所見は、転倒などで頭蓋内出血を発症しやすい高齢者に対しては、アスピリン使用にとくに配慮する必要があることを示すものだ」としている。

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第52回 「電動キックボード外傷」が急増しませんか?

電動キックボード解禁Unsplashより使用7月1日から改正道路交通法が施行され、最高時速20km以下で一定の要件を満たす電動キックボードに関して新制度がスタートしました。これまでは電動キックボードは「原動機付自転車」(原付バイク)の位置付けでしたが、今回から「特定小型原動機付自転車」となり、自転車と同じ交通ルールが適用されるようになります(図)。図.電動キックボード新ルール(政府広報オンライン)図.電動キックボード新ルール(政府広報オンライン)つまり、運転免許は不要で、車道を走行し、自転車と同じようにヘルメット着用については努力義務扱いとなっています。街中を走る電動キックボードがノーヘルで走ることになり、自転車が逆走してもよい一方通行も逆走可能になります。要は時速20kmが出る原付が、自転車と同じ扱いになる点が懸念材料とされており、世間は賛否両論です。私個人としては電動キックボードを車で轢きそうになったことがあるので、解禁する方向へ動くのは、どちらかといえば反対なんですよね。いや私見で申し訳ないんですが。外傷リスク上記の速度で歩道を走ることはできず、最高時速を6km以下に設定し、緑色のライトを点滅させれば走行可能です。でも現時点で歩道をビュンビュン走っている電動キックボードが多いので、無法地帯になるのではと懸念しています。電動キックボードはタイヤが小径です。段差などの衝撃の影響は自転車よりもはるかに受けやすく、転倒リスクが高いです。自転車が乗れなくなった高齢者が電動キックボードを利用するようにならないか不安もあります。「今後高齢者の足として電動キックボードを利用してみたらどうか」という声もありますが、自転車に乗れなくなった人がスケボーに乗れるはずがないので、外傷リスクが増すだけだと思います。そして、電動キックボードで頭頚部外傷を起こした症例の2~3割は飲酒運転とされており1,2)、これが一番懸念されることかなと思っています。自転車も当然飲酒運転はダメなのですが、「まいっか」みたいな風潮がどこかにあります。参考文献・参考サイト1)Clough RA, et al. Major trauma among E-Scooter and bicycle users: a nationwide cohort study. Inj Prev. 2023 Apr;29(2):121-125.2)Kowalczewska J, et al. Characteristics of E-Scooter-Related Maxillofacial Injuries over 2019-2022-Retrospective Study from Poznan, Poland. J Clin Med. 2023 May 26;12(11):3690.

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日本における抗認知症薬に関連する有害事象プロファイル

 抗認知症薬であるアセチルコリンエステラーゼ阻害薬に関連する有害事象(ADE)の発生率は、5~20%と推定されており、さまざまな症状が認められる。しかし、各抗認知症薬のADEプロファイルの違いを検討した報告は、これまでなかった。帝京大学の小瀬 英司氏らは、抗認知症薬とADEプロファイルに違いがあるかを検討した。Die Pharmazie誌2023年5月1日号の報告。 医薬品副作用データベース(JADER)に基づき、データを収集した。2004年4月~2021年10月のADEデータを分析するため、レポートオッズ比(ROR)を用いた。対象薬剤は、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチンとした。最も発生頻度の高い有害事象の上位10件(徐脈、食欲不振、意識喪失、発作、変性意識状態、転倒、せん妄、嘔吐、失神、横紋筋融解症)を選択した。主要アウトカムはRORとし、副次的アウトカムは抗認知症薬に関連するADEの発現年齢および発生までの期間とした。 主な結果は以下のとおり。・70万5,294件のレポートを分析した。・ドネペジルでRORが最も高かったのは、横紋筋融解症(ROR:2.40、95%信頼区間[CI]:2.031~2.825)であり、次いで食欲不振(ROR:2.01、95%CI:1.770~2.285)、発作(ROR:1.54、95%CI:1.345~1.765)、徐脈(ROR:1.53、95%CI:1.367~1.716)、失神(ROR:1.33、95%CI:1.137~1.562)であった。・ガランタミンでRORが最も高かったのは、意識喪失(ROR:1.89、95%CI:1.643~2.183)であり、次いで徐脈(ROR:1.50、95%CI:1.321~1.713)であった。・リバスチグミンでRORが最も高かったのは、嘔吐(ROR:2.01、95%CI:1.733~2.323)であり、次いでせん妄(ROR:1.63、95%CI:1.407~1.900)、転倒(ROR:1.42、95%CI:1.219~1.647)であった。・メマンチンでRORが最も高かったのは、意識喪失(ROR:3.03、95%CI:2.634~3.480)であり、次いで転倒(ROR:3.01、95%CI:2.593~3.495)、変性意識状態(ROR:2.13、95%CI:1.823~2.480)、失神(ROR:2.05、95%CI:1.710~2.452)、発作(ROR:1.81、95%CI:1.542~2.113)、横紋筋融解症(ROR:1.68、95%CI:1.385~2.033)であった。・薬剤ごとに有害事象は発生率に違いが認められた。・徐脈、意識喪失、転倒、失神の発生率に有意な違いが認められた。・カプランマイヤーによる累積ADE発生率では、ドネペジルは発生までの時間が最も遅く、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチンは、ほぼ同様であることが確認された。

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併存症のある患者での注意点~高齢者糖尿病診療ガイドライン2023/糖尿病学会

 5月11日~13日に城山ホテル鹿児島をメイン会場に第66回 日本糖尿病学会年次学術集会(会長:西尾 善彦氏[鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 糖尿病・内分泌内科学 教授])が「糖尿病学維新-つなぐ医療 拓く未来-」をテーマに開催された。 高齢者の糖尿病患者では、糖尿病とは別に併存症があるケースが多い。では、糖尿病以外の疾病もある高齢者の糖尿病患者の診療はどうあるべきであろう。 本稿では、「シンポジウム10 より良い高齢糖尿病ケアを目指して」より「高齢者糖尿病の合併症と併存症」(杉本 研氏 [川崎医科大学総合老年医学])の口演をお届けする。 2023年5月に『高齢者糖尿病診療ガイドライン 2023』(以下「ガイドライン」と略す)が上梓され、今回の口演は、このガイドラインの内容を踏まえて構成されている。 今回のガイドラインの改訂では、合併症と併存症につき、「併存症」が独立して章立てされた。また、併存症の予防・管理が、健康寿命の延伸には重要となることが改めて確認され、引き続き、高齢の糖尿病患者の診療では、平均余命の減少と低血糖の高リスクをどのように防止するかが重要とされている。 とくに杉本氏は「高齢者の併存疾患で注意したいのが、動脈硬化性疾患であり、高齢者のADLとQOLを大きく損ない健康寿命などに影響を与える」と診療での注意点を強調した。 続いて先のガイドライン中で「高齢者の併存疾患」を取り上げ、重要なポイントを説明した。 なお、ガイドラインでは、「CQ」と「Q」に分けて、「CQ」は「推奨度(推奨グレード)を問う疑問として回答が可能な臨床的疑問」を、「Q」は「CQ以外の臨床的疑問(推奨グレードは付さない)」について記述している。■高齢者の糖尿病治療が認知機能などの低下抑制になるかは不明 CQ V-3「高齢者糖尿病における(厳格な)血糖コントロールは認知機能低下・認知症発症の抑制に有効か?」というCQでは「血糖コントロールが認知機能低下、認知症発症予防に有効であるかについては、結論が出ていない」(推奨グレードU:推奨するだけの明確根拠がない)、「糖尿病治療薬による治療が認知機能低下、認知症発症予防に有効であるかについては、結論が出ていない」(推奨グレードU)として研究の余地を残している。 Q V-4「高齢者糖尿病の高血糖はフレイル、サルコペニアの危険因子か?」というQでは「高齢者糖尿病または高血糖は、フレイル、サルコペニアの危険因子である」とされ、これについて杉本氏は「8つのメタ解析から糖尿病はフレイルの危険因子となり(オッズ比1.48)1)、サルコぺニアはBMI25以下で増加する」と説明した。 同様にQ V-5「高齢者糖尿病のHbA1c低値または低血糖はフレイル、サルコペニアの危険因子か?」というQでは「高齢者糖尿病のHbA1c低値または低血糖はフレイル、サルコぺニアに危険因子である」としている。 Q V-6「高齢者糖尿病における血糖コントロールは筋量や筋力の維持に有効か?」というQでは「高齢者糖尿病の血糖コントロールが筋量や筋力の維持に有効かは明らかではない」としている。ただ、HbA1cとサルコぺニアの関係では、いくつかの論文で弱い相関を示唆するものもあり、今後研究が待たれる。また、薬物治療の影響については、フレイルとSGLT2阻害薬との関係は「現状では『明らかでない』としか言えない」と杉本氏は説明した。 Q V-8「高齢者糖尿病の高血糖または低血糖は転倒の危険因子か?」というQでは「高齢者糖尿病の高血糖または低血糖は転倒の危険因子であり、インスリン使用者ではとくに注意を要する」と転倒への注意を記載している。 Q V-9「高齢者糖尿病における血糖コントロールは転倒の予防に有用か?」というQでは「高齢者糖尿病における血糖コントロール状態は転倒に影響するが、厳格な血糖コントロールの影響は明らかではない」、「高齢者糖尿病における血糖コントロールの改善が転倒の予防に有用であるかは不明である」と研究の余地を残している。■高齢者糖尿病の心不全の予防・改善に糖尿病治療薬は有効か 悪性腫瘍や心不全、multimorbidity(多疾患罹患)についても触れ、とくに心不全、multimorbidityでは次の3つのQについて説明を行った。 Q V-16「高齢者糖尿病において糖尿病治療薬は心不全の予防・改善に有効か?」というQでは、「高齢者糖尿病においてSGLT2阻害薬は心不全の予防・改善に有効な可能性がある」とする一方で「高齢者糖尿病においてDPP-4阻害薬が心不全リスクに及ぼす影響は明らかではない」と記載している。 そして、このQに関して杉本氏は、SGLT2阻害薬による心不全への影響は70歳以上でより良かったとする報告2)がある一方で、有意なBNPの低下がなかったとする報告もある3)ことを述べ、自験例としながらもSGLT2阻害薬で左室心筋重量係数(LVMI)の低下がみられたことを報告した。 Q V-18「高齢者糖尿病はmultimorbidityとなりやすいか?」というQでは、「高齢者糖尿病はmultimorbidityとなりやすい」と記載している。 また、Q V-19「高齢者糖尿病のmultimorbidityではどのような点に注意すべきか?」というQでは「高齢者糖尿病のmultimorbidityにどのような対応を行うべきかのエビデンスは不足しているが、低血糖に注意し、多職種で患者・家族の意思決定の支援をしながら目標を設定していくことが望ましい」と記載している。 今回のガイドラインを受け杉本氏は75歳以上では4つ以上の疾患の合併割合が多くなること、とくに認知症、腎機能不全、骨折が多くなることを指摘するとともに、「重症低血糖では、糖尿病治療薬もインスリンやSU薬など3剤以上の併用も多くなり、ポリファーマシーへの配慮も必要」と述べ、口演を終えた。■参考文献1)Hanlon P, et al. Lancet Healthy Longev. 2020 Dec;1:e106-e116.2)Martinez FA, et al. Circulation. 2020;141:100-111.3)Tamaki S, et al. Circ Heart Fail. 2021;14:e007048.

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患者情報から治療期間を評価して、漫然投与薬の中止を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第54回

 今回は、長期服用薬の治療期間を疑問に思い、患者情報を収集し直して漫然投与となりがちな薬剤の必要性を再考した症例を紹介します。副作用などの問題がなくても、治療の適応があるのかどうかを定期的に考える機会は必要です。急性疾患で処方された薬剤がいつまで必要なのか、慢性疾患であれば処方時点と現在で治療内容が妥当であるのか否かを、薬剤師の視点で評価しましょう。患者情報85歳、女性(施設入居)基礎疾患アルツハイマー型認知症介護度要介護2服薬管理施設職員が管理処方内容1.カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム錠30mg 3錠 分3 毎食後2.トラネキサム酸錠250mg 3錠 分3 毎食後3.五苓散エキス顆粒 3包 分3 毎食後4.クエン酸第一鉄ナトリウム錠50mg 3錠 分3 毎食後本症例のポイントこの患者さんは半年前の施設入居時から上記の処方薬を服用していました。処方監査を実施していた薬剤師が、採血結果もなく、病歴も認知症のみなのになぜ止血剤および鉄剤を飲んでいるのか不明であったため、基礎疾患や治療経過を収集する治療計画(Care plan)を立案しました。当然、出血既往があると予測はつきますし、そのための貧血治療と考えるのが妥当ですが、いつ・どこの・どの程度の出血なのか明確でないことに違和感がありました。担当薬剤師へ情報を引き継ぎ、担当薬剤師が施設訪問時に看護師と入居前に入院していた病院の看護サマリーと診療情報提供書を確認しました。すると、繰り返す転倒から慢性硬膜下血腫が生じ、1年前に穿頭血腫ドレナージ術を施行していたことがわかりました。術後の再出血予防および血腫サイズの縮小などを目的に現行の治療薬が処方され、クエン酸第一鉄もそのときの採血結果をもとに追加されていました。そこで現在の主治医が外科医であることから現行薬の必要性を相談することにしました。医師への相談と経過主治医に電話で、長期的に現行薬を服用していて服薬アドヒアランスは維持されていることを伝えたうえで、病歴の聴取、今後の脳外科受診などの予定について確認しました。また、今後の治療方針も確認しました。主治医は病歴を把握していたものの、現行薬を今後どうするかについては保留中だったそうで、前回の術後頭部CT画像の確認から現行薬の必要性はないだろうという返答がありました。また、貧血治療も採血予定(Hb、フェリチン、TIBC、MCVなど)を組んだので、そこで鉄剤の中止を検討するとのことでした。最後に医師より、長期服用薬の評価は緊急性がなければ後回しになってしまうことが多いので、こういうアシストはとても助かるとお礼がありました。患者さんは現在も施設で転倒もなく、出血イベントも起きずに生活しています。鉄剤もその後の採血結果で異常所見はなく、治療は終了となりました。薬が終了したことで本人の服薬負担も看護師の与薬負担も減らすことができました。このように、病歴確認と見直しを行い、漫然投与となりがちな薬剤について今一度治療の適応があるのかどうか考える機会は必要です。治療継続の必要可否について確認する薬剤師のアプローチも多剤併用を予防するポジティブアクションに繋がると実感しました。

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軽症頭部外傷【いざというとき役立つ!救急処置おさらい帳】第3回

今回は軽症頭部外傷の治療についてです。軽症頭部外傷で悩むことが多いのが、「頭部CTを撮るべきかどうか」ではないでしょうか? しかし、救急の教科書にはどういった場合に頭部CTを撮影することが推奨されるかという記載は充実していますが、CTがない施設や患者が撮りに行けない場合の対応に関する記載はあまりありません。今回は、私が在宅や診療所で困ったケースの対応を紹介します。まず、軽症頭部外傷は「Minimum head injury」と「Minor head injury」の2つに分かれます。この2つを表現する適切な日本語は難しいですが、Minimum head injuryは受傷機転(外傷を負った原因・経緯)が失神でなく、受傷後の意識障害を伴わないものを指します。Minor head injuryは受診時のグラスゴー・コーマ・スケール(Glasgow Coma Scale:GCS)が13~15点で、(1)受傷機転が失神、(2)健忘を伴う、(3)意識障害を伴う、のいずれかを満たすものを指します。軽症頭部外傷でCTを撮影するかどうかの判断でよく使われるのが、カナダ頭部CTルール(Canadian CT Head Rule:CCHR)です1,2)。カナダ頭部CTルール画像を拡大するカナダ頭部CTルールを使うときに、よく若手医師は65歳以上の軽症頭部外傷患者全員のCTを撮ろうとします(私もそうでした…)。しかし、カナダ頭部CTルールの選択基準はMinor head injuryであり、Minimum head injuryではありません。Minor head injuryでカナダ頭部CTルールを1つでも満たす場合はCT撮影を考慮します。こう考えるとCT撮影がやや減るのではないでしょうか。しかし、認知症がある高齢者ではそもそも受傷時のことを覚えていない場合もあり、MinorかMinimumかを鑑別することは困難です。カナダ頭部CTルールは「医学的介入(受傷7日以内に頭蓋内疾患による死亡、もしくは受傷7日以内に、開頭手術、頭蓋整復術、頭蓋内圧モニタリング)が必要な頭蓋内損傷」の否定を目的としているため、神経学的介入の必要がない脳出血は除外できないという問題もあります。また、高齢者は慢性硬膜下血腫のリスクがあり、たとえきちんと説明していたとしてもトラブルになることがあります。「軽く頭をぶつけただけなのでCTを撮影しなかった。2ヵ月後に慢性硬膜下血腫となり、家族になぜ前回の受診時にCTを撮らなかったのか文句を言われている」という経験を数例聞いたことがあります。頭部外傷で救急外来に来る患者の多くは、不安を解消するために来院します。被爆のことを考えるとなるべく撮りたくない気持ちもありますが、CTが普及している日本ではそこまでCTを回避する必要はないのかもしれません。ちなみに、CTを撮影しても頭蓋内に異常がないことがほとんどであり、帰宅後の注意点を説明して帰宅とします。CTを撮っても撮らなくてもマネジメントは同じとなることが多いです。では、すぐにCTを撮ることができない場合はどうでしょうか?<症例1>80歳、男性、施設入居中既往症:パーキンソン病、認知症訪問診療で訪れたところ、患者の右眼がパンパンに腫れあがっていて目が開けらない状態であった。話を聞くと、前日の夜に車椅子から落ちて顔面を受傷したが、すぐに反応があり、ぶつけたところを痛がるのみで異常がないため経過観察となっていた。朝には右目が腫れていたが、患者からとくに訴えはない。バイタル:Stable GCS E4V4M6(受傷前と同等)右目を何とか開いてみたところ、眼球運動に障害なし。視力も問題なし、その他の神経所見も異常なし。患者が病院に受診するには家族に来てもらわなければならないが、息子は「症状がないなら様子をみてほしい」とのこと。皆さんはこの患者さんにどう対応しますか? きっと答えはないと思います。この患者さんには認知症があり、そもそも受傷時の出来事を覚えていません。そのためOver triageして受傷時に健忘があったとみなしてカナダ頭部CTルールに組み込みました。受傷後のGCSは15点未満ですが、これは受傷前と変化がないため項目として採用しませんでしたが、「パンダの眼サイン」と「65歳以上」が当てはまり、頭部CTの考慮対象となります。とくにパンダの目徴候が出ているため、頭蓋内出血に加えて顔面骨骨折を伴っている可能性が高いです。顔面骨骨折で忘れてはいけないのが吹き抜け骨折で、外眼筋が陥頓してしまい眼球運動障害が生じます。幸い、視力障害や眼球運動障害はなかったため、やや緊急度は落ちると考えました。ちなみに、もしこの患者さんに受傷時の記憶があり、Minimum head injuryと判断してカナダ頭部CTルールに組み込まなくても、パンダの眼サインがある時点で私はCTを撮っていたでしょう。総合的に考えて、救急車を呼ぶほどの緊急性はないものの、なるべく早い受診が必要と判断しました。そこで、息子さんに電話で説明して明日の午前中に来てもらうことになり、施設職員には何か変化があればすぐに連絡するように伝えました。翌日、近くの脳神経外科を受診したところ、頭蓋内は問題なく、眼科内側壁に骨折がありましたが保存的加療となりました。2週間後の診察では若干腫れが引いていて、とくに問題なく生活することができていました。次にこの患者さんはどうでしょうか?<症例2>72歳、女性、夫と自宅で2人暮らし既往歴:認知症患者が認知症の夫の面倒をみていたが、次第に患者本人も認知症が進み、通院が困難となったため2人とも訪問診療を受けている。診察当日の朝5時ごろ、トイレに行こうと畳の上の布団から立ち上がった際に転倒。頭を机の角にぶつけて出血し、ティッシュペーパーで圧迫して止血した。日中にケアマネジャーが血まみれの患者を見つけ、緊急往診を依頼した。患者は夫を置いて病院に行くことができないので受診したくないと言っている。バイタル:Stable GCS E4V5M6後頭部に1cmくらいの挫創があるが止血済み。瞳孔は3mm 3mm ++、神経所見に異常なし。受傷機転もしっかりと覚えていて、ぶつけた先が机の角であったため出血していますが、強いエネルギーは加わっていないと考えられます。よってMinimum head injuryとなります。この場合明確にCTを撮る・撮らないという臨床予測ツールはありませんので、患者の状況とリスクを兼ね合い判断します。今回は、頭蓋内出血のリスクは低いと考え、本人も病院受診をしたくないことを加味して経過観察の方針としました。頭部の挫創は本人が注射嫌いとのことで毛髪縫合を施行しました3)。髪質によっては、合成皮膚表面接着剤(ダーマボンドなど)で縫合部を固めますが、往診セットになく、患者の髪で比較的強固に縫合できたのでその日はそのまま縫合し、髪は洗わずに翌日以降の洗浄を指示しました。1週間後に診察したところ創部はきれいで、毛髪縫合もほどけていなかったので、伸びてきた髪の根元を切りました。今回はCTを撮影することが困難な環境での軽症頭部外傷の治療を紹介しました。日本の人口当たりのCT台数は世界一であり、私はCTがない総合病院で働いたことはありません。被爆のことを考えるとなるべく撮りたくない一方で、その手軽さからCTを撮ることに年々悩まなくなっているところもあります。しかし、CTがない施設や患者が撮りに行けない場合も多々あります。「これが正しい」というものはないかもしれませんが、ご参考までに。1)Stiell IG,et al. Lancet. 2001;357:1391-1396.2)Smits M, et al. JAMA. 2005;294:1519-1525.3)Hock MOE, et al. Ann Emerg Med. 2002;40:19-26.

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経口difelikefalin、CKD患者のかゆみの軽減に有望

 そう痒症は、後期慢性腎臓病(CKD)患者において多く認められるが、中等度~重度のそう痒症を伴うCKD(ステージ3~5)患者において、経口の選択的κオピオイド受容体作動薬difelikefalin(本邦では静脈注射用製剤が申請中)が、そう痒を大幅に軽減し、その状態を維持することが示された。米国・University of Miami Miller School of MedicineのGil Yosipovitch氏らが、第II相二重盲検無作為化プラセボ対照用量設定試験の結果を報告した。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2023年4月12日号掲載の報告。 研究グループは、非透析CKD患者と透析治療を受けるCKD患者のかゆみの軽減について、経口difelikefalinの有効性と安全性を評価した。 本試験の対象は、中等度~重度のそう痒症を伴うCKD(ステージ3~5)の非透析患者および透析治療を受ける患者であった。対象患者を経口difelikefalin(0.25mg、0.5mg、1.0mg)各用量群またはプラセボ群へ無作為に均等に割り付け、1日1回12週間投与した。 主要エンドポイントは、12週時の週平均Worst Itch Numeric Rating Scale(WI-NRS)スコアの変化であった。 主な結果は以下のとおり。・269例が無作為化され、ベースライン時のWI-NRSスコア(平均値±標準偏差)は7.1±1.2であった。・経口difelikefalin 1.0mg群はプラセボ群と比較して、2週時から週平均WI-NRSスコアが有意に減少し(p<0.05)、12週時においても有意に減少していた(最小二乗平均差:-1.1、p=0.018)。経口difelikefalin 0.25mg群および0.5mg群においても、週平均WI-NRSスコアの数値的な減少が観察された。・12週時において、経口difelikefalin 1.0mg群では38.6%が完全奏効(WI-NRSスコア0~1)を達成した。一方、プラセボ群の達成率は14.4%であった。・経口difelikefalin 1.0mg群はプラセボ群と比較して、そう痒に関するQOL尺度のベースラインからの変化が、20%程度数値的に改善した。・治療下で発現した有害事象のうち、最も多くみられた事象は、めまい、転倒、便秘、下痢、胃食道逆流性疾患、疲労、高カリウム血症、高血圧、尿路感染であった。

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軽度熱傷【いざというとき役立つ!救急処置おさらい帳】第1回

はじめまして!聖マリアンナ医科大学病院 救急医学の沼田と申します。主に救急科で勤務しながら、総合診療医、小児救急、集中治療を勉強してきました。最近は緩和ケアを勉強しています。オフ・ザ・ジョブトレーニングでは、外科系救急初期診療を学ぶ「T&Aマイナーエマージェンシーコース」のコアメンバーとして活動しています。このコラムでは、かかりつけ医が診る機会の多い軽症救急疾患の治療を、救急医の視点でわかりやすく解説していきます。初回は熱傷の中でもI、II度の軽度熱傷の治療についてです。熱傷にはさまざまな原因がありますよね。天ぷらを揚げていた、子供が電気ケトルを倒した、カセットコンロが爆発した…など。熱傷の加療の方向性はほぼ同一ですが、医師によって使用する薬剤や被覆材にはばらつきがあると感じています。大まかな治療に関してはAmerican family physicianの「Outpatient burns: prevention and care」と日本熱傷学会の「熱傷診療ガイドライン(改訂第3版)」を基に、私の経験も交えながらポイントを解説します1,2)。22歳男性。夜間にカップラーメンを食べようとして、カップに熱湯を入れて移動した際に転倒し、熱湯が両腕にかかり受診。既往歴なし、内服歴なし、アレルギー歴なし、バイタル特記事項なし。右前腕に5cm程度の発赤、左前腕に3cm程度の発赤と水疱が2ヵ所ある。水疱の1つは1cm程度、もう1つは3cm程度で破れている。これは、私が近くに皮膚科がない地方の内科外来で働いていたときに経験した症例です。熱傷の治療は、ステップを踏んで診察をしていくことが重要ですので、今回はこの症例を基にどういう判断や対応を行ったかお話しします。1. すぐに入院が必要かどうかの判断(1)受傷部位私の専門が救急であり、火災などによる熱傷に遭遇することもありますが、その場合に最も警戒するのは気道熱傷です。火災が関連している熱傷では、顔面熱傷がないかどうかを確認し、気道熱傷がある場合は人工呼吸管理を行うため入院が必要です。今回の症例は、両腕に熱湯がかかったことによる熱傷ですので気道熱傷はありません。(2)熱傷面積熱傷の面積によっては病院や熱傷センターなどへの搬送が必要になりますので、熱傷の範囲を把握します。よく使われるのが「9の法則」です。頭部、右上肢、左上肢をそれぞれ9%、体幹部の前面、後面をそれぞれ18%、右下肢、左下肢をそれぞれ18%、陰部を1%として熱傷面積を推定します。画像を拡大するまた、熱傷面積が小さく、散在しているときは「手掌法」を用います。これは、手のひらの大きさを体表面積の1%と換算して熱傷面積を推定します。患者の入院の必要性を判断するにあたっては、「Artzの基準」がよく用いられます。II度熱傷の面積が15~30%、III度熱傷の面積が2~10%で一般病院での入院加療が必要とされています。逆に言えば、この面積以下であれば外来通院でよいでしょう。今回の症例の熱傷範囲は1~2%程度ですので、外来通院としました。2. 後日専門医への相談が必要かどうかの判断(1)受傷部位受傷部位で専門的な加療が必要かどうか変わってきます。顔面、手指、肛門、陰部の熱傷や、大関節(肩、膝、股関節)を超える熱傷は、美容や機能予後に影響を与えるので、可能であればなるべく早く専門医に診察してもらいましょう。(2)深達度熱傷には、I度、II度、III度があります。I度は発赤のみ、II度(浅達)は水疱を形成して水疱底の真皮が赤色、II度(深達)は水疱を形成して水疱底の真皮が白色、III度は白色皮革様もしくは褐色皮革様で感覚が消失します。III度熱傷は、適切に治療したとしても拘縮して植皮が必要になる可能性が高いため、専門医に紹介するべきです。II度の浅達か深達かの判別は専門医でなくては困難ですが、治療もとくに変わらないので必ずしも判別する必要性はないと考えます。この患者は、右前腕は発赤のみでI度、左前腕は水疱を形成していてII度熱傷となります。3. 治療(1)冷水での洗浄ここからは、症例のような軽症熱傷を通院加療する流れを記載します。どこで受傷したとしてもまず推奨されるのが冷水での洗浄です。実は強いエビデンスはないと言われていますが、熱傷を負った人の治療で「水で洗う vs.水で洗わない」の検証は倫理的に問題があり行えないため、実際の効果を検証することは困難です。どこでも、すぐに、安価にできるので、受傷後なるべく早く10分程度洗ってもらいましょう。ただし、20分以上の冷水での洗浄や氷水の使用は組織障害や低体温を起こすことがあるため控えます。●右腕(I度)右腕のI度熱傷の治療は、基本的には適切な鎮痛薬の内服のみで完了します。しかし、熱傷は時間とともに進行することがあり、今日はI度であったとしても翌日には水疱を形成してII度に進行していることはしばしば経験するので、進行する可能性があることをしっかりと説明しましょう。進行した場合はII度として治療を行います。●左腕(II度)II 度熱傷の場合は、まずは水疱が保たれているかどうかを確認しましょう。水疱内は清潔ですので、破れていなければ基本的には保存的に加療します。American Family physicianでは水疱のサイズが6mmを超える場合は破膜するよう指導されていますが、私は2~3cmでも保存的に加療しています。重要なのは、患者自身が水疱を保護できるかどうかで、難しいようであれば破膜します。保存的に加療する場合は、ガーゼをかぶせて保護し、もし破れてしまった場合は受診するよう指導します。この症例では、3cmの大きいほうの水疱が破れていました。水疱が破けている場合や、水疱を破膜した場合の治療はどうでしょうか? 私はまずリドカイン塩酸塩ゼリー(商品名:キシロカインゼリー)を塗布してから創部を洗浄しています。その後、破れた水疱の膜を残しておくと感染のリスクがあるため除去します。なお、アルコールやポビドンヨード液などによる消毒は組織障害が生じるため、参考文献2つはいずれも推奨していません。私も創部がよほど汚染されていない限り使用はしません。(2)創部の被覆被覆材にはさまざまなものがあります。メディカルオンラインで「創傷・熱傷被覆材(ドレッシング材)」と検索すると、サイズや用途はさまざまですが130個ほど出てきます。これらの有意性に関する報告は限られていますが、元々熱傷にはスルファジアジン銀が使用されており、それに対する非劣性や有意性を示した論文はあるため、どれを選択しても大きくは変わらないと考えます。その中で、私は基本的には白色ワセリン+ガーゼを使用しています。理由はどこの施設でも置いていて、安価で簡便だからです。患者には、ワセリンをたっぷりと塗って、最低1日1回交換するよう指導して帰宅とします。私がインストラクターとして参加しているT&Aマイナーエマージェンシーコースでは、ガーゼ1枚の範囲を覆う場合、約20gの白色ワセリンの使用を推奨しています。画像のとおり「ぷにゅっとする」くらい厚塗りします。画像を拡大する熱傷の範囲に合わせて調節しますが、熱傷の初期は浸出液が多く、頻回にガーゼ交換が必要ですので、私は患者に白色ワセリンを最低100g渡しています。以前、とある外来で、軟膏がすぐになくなったのでガーゼのみを張って、乾燥して創部に引っ付いてしまった患者がいて、剥ぐのに苦労したことがありました。必ず「軟膏なしでガーゼのみを張るのは控えましょう」と伝えてください。ちなみに、白色ワセリンはドラッグストアでも販売しているので、必ずしも病院を受診して受け取る必要はありません。(4)ステロイド軟膏ステロイド軟膏は、有用性を示すエビデンスに乏しく、安易に使用するべきではないという意見がある一方で、局所の炎症兆候に対して推奨する意見もあるのが現状です。American Family physicianでは使用を推奨せず、本邦の熱傷診療ガイドラインでは「専門医が抗炎症効果を期待して使用する際は、ステロイドの副作用に十分注意しながら、受傷早期(2日間程度)に使用することが望ましい」とされているので、非専門医である私は原則使用しません。(5)外来フォロー推奨された通院間隔はなく、あくまで私のプラクティスを紹介させていただきます。I度熱傷であれば通院の必要はなく、鎮痛薬の処方で終診です。しかし、II度へ移行した場合は再診するよう指導しています。II度熱傷は状況により通院間隔が異なります。その見極めは自力で被覆交換ができるかどうかです。自力で被覆交換が可能であれば、患者の症状に合わせて3~7日程度のサイクルで通院してもらいます。自力での被覆交換が難しい場合は1~3日ごとに通院してもらいます。被覆終了のタイミングは、「ガーゼに浸出液が付かなくなったとき」と伝えています。フォロー中に患者からよく訴えられる症状は、疼痛と掻痒感です。疼痛は初期から生じますので、私は初めからNSAIDsかアセトアミノフェンで対応しています。ただし、数日経って急激に痛みが増悪する、創部に熱感が生じる場合は感染した可能性があるため受診するよう指導します。かゆみが出た場合は抗ヒスタミン薬の有効性が示されているため処方します。今回は、軽度熱傷の症例を例に挙げながら、どういう判断や対応を行ったかお話ししました。軽度熱傷はかかりつけ医が診る機会がありますが、美容や機能予後に影響を与えることも多々あるので、重症度や受傷部位によっては専門医へ相談しましょう。これから定期的に非専門医向けの軽症救急処置のコラムを連載いたします。可能な限り根拠に基づきながら、自身の経験を織り交ぜていこうと思いますのでどうぞよろしくお願いします!1)Lanham JS, et al. Am Fam Physician. 2020;101:463-470.2)日本熱傷学会編. 熱傷診療ガイドライン(改訂第3版).2021.

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オールシングスマストパス~高齢者の抗うつ薬の選択についての研究の難しさ(解説:岡村毅氏)

 従来のRCTの論文とはずいぶん違う印象だ。無常(All Things Must Pass)を感じたのは私だけだろうか。この論文、老年医学を専門とする研究者には、突っ込みどころ満載のように思える。とはいえ現実世界で大規模研究をすることは大変であることもわかっている。 順に説明していこう。2種類の抗うつ薬に反応しないものを治療抵抗性うつ病という。こういう場合、臨床的には「他の薬を追加する増強療法」(augmentation)か「他の種類の薬剤への変更」(switch)のどちらを選択するべきかというのは臨床的難問だ。これに対して、うつ病一般においてはSTAR*Dなどの大規模な研究が行われてきた。本研究はOPTIMUM研究と名付けられ、やはりNIH主導で大規模に行われた。 結果であるが、アリピプラゾールの増強療法が比較的優れた効果を示した。とはいえ、ステップ1で比較されているbupropionは本邦未承認であるから日本の臨床家への示唆はあまりない。なおステップ2で比較対象となっているのはリチウムの増強療法とノルトリプチリンへの変更であるが、これらは本邦でも使用できる。 以下は、この論文を批判的に眺めた感想である。 第1にプロトコルがまったく安定していない。途中までステップ2への直接参加が可能になっているが、途中から禁じられた。参加基準も当初PHQ-9で6点以上であったのが、途中から10点以上になっている。さまざまな横やりがあったことが推測される。 第2に参加者は普通に薬局で薬をもらっているので、増強(追加)されているのか変更されているのかがわかってしまう。単純化すると、前者は錠剤が1錠増えるし、後者は増えない。プラセボで良くなる高齢者が多いから、この点は重要だ。 第3に認知機能の検査は一応しているが(supplementaryの隅まで読んでようやく書いてあったが、これは最も重要な点ではないか?)、Short blessed testで10点以上はダメというあまりにも粗い基準だ。さまざまな認知機能の人が含まれているに違いない。 第4に脳梗塞に伴う治療抵抗性うつ病も含まれているはずだが、これはdepression-executive dysfunctionともいい、高齢期のうつ病の難問の一つである。生活障害が大きく、むしろ非薬物治療が効果的とされる。この群は何をやっても変わらないだろうが、期間中に良いデイケアに行き始めたら劇的に回復することだろう。この議論が抜け落ちている。 第5に、アウトカムは「健やかさ」(wellbeing)になっている。これは当事者団体の意見等を反映させたということである。「症状は外から見ると減ったようです、でも本人は苦しいです」というのでは意味がないのだから良いことともいえる。薬剤の効果を症状だけで見るのは「古い」医学者であり、リカバリーのようなより主観的なものが現在好まれる。しかし薬剤の効果をwellbeingで見ることは、拡大した医療化であり、危険をはらんでいると個人的には思っている。というのは、高齢者ではとくにそうだが、さまざまな出来事(人間関係、出会いと別れ、とくに死別、体調、他の疾患の状態など)によりwellbeingは大きく影響を受けるのだ。公平を期すために、この研究でも「社会参加」も測定されていることは述べておく。 第6に、結果的には、bupropion変更組とリチウム増強組では、きちんと定められた分量までいって寛解している者は10%もいないとのことであり、とても低いところで比較しているというのは否めまい。 第7に転倒が多い。対照がないので、高齢者とはそういうものだと言われればそれまでだが、良い結果の治療でも3人に1人は転倒しているし、最も悪い群は55%が転倒している。この研究は増強vs.変更を比較しているので、これを言ってしまうとちゃぶ台返しになってしまうが…「この人はうつ病で、薬で治すべし」という大前提がここでは間違っているんじゃないか。この際、漢方薬に変えて、生活も変えてみてはどうかと提案する(たとえば地域の集まりや運動に行くとか、それこそお寺に行ってみるとか)というのが日本の小慣れた臨床医の対応ではないだろうか。 第8に…これくらいでやめておこう。 僕らはRCTで少しでも科学的に妥当な知見を手に入れて、患者さんにより妥当な治療を提案し、結果的に多くの患者さんを幸せにしたいという根源的な欲求がある。しかし高齢者を対象にしたこの論文を読むと、さまざまな現実のノイズにより、非常に読みにくく、苦しい印象を受けた。RCT、メタアナリシス、さらにネットワークメタアナリシスに心躍らされた時代はもしかしたら、長い歴史の中のそよ風なのかもしれず(Times They Are A-Changin)、無常(All Things Must Pass)を感じる。一方で、批判だけするつもりはない。医療者の主観や勘に頼った時代に戻ってよいわけはない。なんか苦しいなあと思いながら、批判的に読み、そしてこのような大規模研究を苦しみながら遂行した仲間に最大の敬意を払いつつも、この知見が目の前の患者さんに適応できるかどうかを考え続けるしかないのではないか。 考えてみれば、この薬が一番いいですという単純な世界(うつ病ですか、じゃあエスシタロプラムかゾロフトでしょうみたいな)なら、医師なんていらないではないか。目の前の患者さんが、医療の対象にするべきことが何割で、医療が対象にしてはいけないことが何割かを判断する必要があるし、どの見方を採用するか(たとえば高齢者の抑うつ症状なら、感情障害、認知機能障害、脳血管障害といったさまざまな次元がある)を常に選択する必要がある。患者の高齢化に伴い、臨床はより頭を使う仕事になってきたように感じる。

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高齢者へのDOAC、本当に減量・中止すべき患者とは/日本循環器学会

 高齢者の心房細動治療において、つい抗凝固薬を減量してしまいがちだが、それは本当に正しいのだろうか。今回、小田倉 弘典氏(土橋内科医院)が『心房細動抗凝固薬(アブレーションを望まない高齢のPAFなど)』と題し、第87回日本循環器学会学術集会のセッション「クリニックで選択されるべき循環器治療薬~Beyond guideline~」にて、高齢者心房細動の薬物療法における注意点を発表した。 小田倉氏はまず、以下の高齢者の症例を提示し、実際に直接経口抗凝固薬(DOAC)を処方するかどうか、またその際に減量するか否かについて問題提起した。高齢者へのDOAC減量と出血リスクの管理<症例>●年齢・性別:82歳・男性、体重:64kg、クレアチニンクリアランス(CCr):52 mL/min(血清クレアチニン[Cr]:1.0mg/dL)●主訴:ある日、脈をとったら不整で、心電図で心房細動と診断された。●服用歴:降圧薬、認知症治療薬、前立腺肥大症治療薬など6種類●患者背景:要介護2。トイレ歩行は可能だが受診時は車いす。転倒歴あり。長男夫婦と3人暮らしだが、日中は1人のことが多い。●CHADS2スコア:3点、HAS-BLEDスコア:1点 上記の高齢者の症例について、「DOAC各薬剤の添付文書にある減量基準、たとえば、アピキサバンは(1)80歳以上、(2)60kg以下、(3)Cr 1.5mg/dL以上のうち2つ以上が、エドキサバンは(1)60kg以下、(2)CCr 15~50、(3)P糖蛋白阻害薬服用のうち1つ以上が該当する場合にそれに当たるが、いずれにも該当していないので、この患者の場合、該当項目を見る限りでは処方可能であり、減量する必要もない」とコメント。 しかし、実際には高齢というだけでDOACの減量基準を満たさずとも減量する例が散見される。クリニックの患者が主体となった日本の高齢者心房細動に対する抗凝固薬療法に関する2つの試験からもその状況が見て取れる。・ANAFIEレジストリ1):3万2,275例(平均年齢81.5歳[85歳以上が26.1%]、経口抗凝固薬の服用:92.4%、ワルファリンTTR :75.5%、発作性心房細動:42%、認知症:7.8%[通院・在宅患者])ではunder-doseが16.8%、未承認低用量が3.7%。 ・GENERAL研究2):5,717例(平均年齢73.9歳、経口抗凝固薬の服用:100%、フレイル[要介護]:12.1%、認知症治療薬の併用:5.9%)ではunder-doseが27.3%。 では、実臨床で高齢者(75歳以上)に対しDOACをunder-doseする理由とは何か。35.8%でunder-doseを認め、脳卒中/全身性塞栓症が有意に多かったXAPASS study3)の結果によると「処方医は通常用量による出血リスクを最も懸念し、続いて高齢、腎機能低下を意識していた。一方、低体重や併用薬剤を選んだ者は少なかった」とコメント。 ところが、75歳以上の日本人で非弁膜症性心房細動患者を対象としたJ-ELD AF試験4)によれば、アピキサバン5mg/日(低用量)群と同薬10mg/日(通常用量)群に割り付け、脳卒中または全身性塞栓症、入院を要する出血について評価したところ、いずれの発生率も有意差が得られなかった。ただし、サブ解析で出血イベントの発生とアピキサバンの血中濃度の関係性を調べたところ、低用量群では血中濃度が高い(トラフ中央値:86ng/dL)群で出血性イベントが有意に多かった。その原因は明らかではないが、「減量基準以外のunknown factorsの存在が示唆される」と同氏は指摘した。DOAC減量基準を満たした患者の出血リスクに注力を これらの報告を踏まえ、同氏は「DOACの減量基準に該当しなければ用量を守り、減量基準を満たす患者は減量したうえで、いかに出血の関連リスクを減らせるかを考えることが重要」と述べ、「その関連リスクはDOAC減量基準やHAS-BLEDスコアに記載がないものにも注意を払う必要があり、改善可能なソフトプロブレム(上記unknown factorsにおおむね相当)と改善困難なハードプロブレムに分類できる。前者にはポリファーマシー(抗凝固薬と併用注意の薬剤を確認)、フレイル(転倒頻度や低体重を考慮)、認知症(服薬アドヒアランスを確認)、高血圧(外来での血圧130/80mmHg目標)が該当し、後者には腎機能低下や出血の既往があるだろう。後者では低用量投与を前提とし、2020年改訂版不整脈薬物治療ガイドライン5)に従い、腎機能チェックの採血をCCr<60mL/minの患者では少なくともXヵ月(X=CCr/10)に1回実施すれば、リスク回避につながる」と対策を講じた。DOACの中止を考えるタイミング また、とくに高齢者ではDOAC中止を考える場面は多いが、具体的には以下が挙げられた。・出血したとき →出血の制御ができないような大腸憩室炎、蜂窩織炎などの既往歴がある場合 →生活面に支障を来すような重い後遺症が残る可能性のある場合・出血以外の副作用が出たとき・腎機能が低下してきたとき・アドヒアランス不良のとき・フレイル(要介護度)が進行した(寝たきりになった)とき 最後に同氏は「併存疾患の有無や身体機能レベルが個々で大きく異なるにもかかわらず、そもそも高齢者を1つのカテゴリーとして捉えることは不可能であり、多様な視点からのカテゴライズが必要となる。言うならば、“科学”と“生活”の両面からのアプローチが必要なのであり、それにはゴールはないため、考え続けることが重要である」と締めくくった。

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抗精神病薬とプロラクチンレベル上昇が骨折リスクに及ぼす影響

 抗精神病薬による治療が必要な患者は、骨粗鬆症関連の脆弱性骨折を含む骨折リスクが高いといわれている。これには、人口統計学的、疾患関連、治療関連の因子が関連していると考えられる。インド・National Institute of Mental Health and NeurosciencesのChittaranjan Andrade氏は、抗精神病薬治療と骨折リスクとの関連を調査し、プロラクチンレベルが骨折リスクに及ぼす影響について、検討を行った。The Journal of Clinical Psychiatry誌2023年1月30日号掲載の報告。 主な結果は以下のとおり。・たとえば、認知症患者では、認知機能低下や精神運動興奮により転倒リスクが高く、統合失調症患者では、身体的に落ち着きがない、身体攻撃に関連する外傷リスクが高く、抗精神病薬服用患者では鎮静、精神運動興奮、動作緩慢、起立性低血圧に関連する転倒リスクが高くなる。・抗精神病薬は、長期にわたる高プロラクチン血症により生じる骨粗鬆症に関連する骨折リスクを高める可能性がある。・高齢者中心で実施された36件の観察研究のメタ解析では、抗精神病薬の使用が大腿骨近位部骨折リスクおよび骨折リスクの増加と関連していることが示唆された。この結果は、ほぼすべてのサブグループ解析でも同様であった。・適応疾患と疾患重症度の交絡因子で調整した観察研究では、統合失調症患者の脆弱性骨折は、1日投与量および累積投与量が多く、治療期間が長い場合に見られ、プロラクチンレベルを維持する抗精神病薬よりも、上昇させる抗精神病薬を使用した場合との関連が認められた。また、プロラクチンレベル上昇リスクの高い抗精神病薬を使用している患者では、アリピプラゾール併用により保護的に作用することが示唆された。・骨折の絶対リスクは不明だが、患者の年齢、性別、抗精神病薬の使用目的、抗精神病薬の特徴(鎮静、精神運動興奮、動作緩慢、起立性低血圧に関連するリスク)、1日投与量、抗精神病薬治療期間、ベースライン時の骨折リスク、その他のリスク因子により異なると考えられる。・社会人口統計学的、臨床的、治療に関連するリスク因子に関連する転倒および骨折リスクは、患者個々に評価し、リスクが特定された場合には、リスク軽減策を検討する必要がある。・プロラクチンレベルの上昇リスクの高い抗精神病薬による長期的な治療が必要な場合、プロラクチンレベルをモニタリングし、必要に応じてプロラクチンレベルを低下させる治療を検討する必要がある。・骨粗鬆症が認められた場合には、脆弱性骨折を予防するための調査やマネジメントが求められる。

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認知症になってから何年生きられるのか?【外来で役立つ!認知症Topics】第3回

認知症臨床の場において、「あるある質問」として代表的なものには、筆者の場合、3つある。まずアルツハイマー病と認知症が同じか否かというもの。次に遺伝性の有無と、では自分は?という質問。そして今回のテーマ、「認知症になってから何年生きられるか?」という質問である。長年この問題に関して、正解とまでは言わずとも、エビデンスがしっかりした答えを知りたいと思ってきた。またこの質問の意図はそう単純ではない。長生きを望む人もあれば、逆に…という場合もありうる。今さらではあるが、2021年にLancet Healthy Longevity誌1)で優れたメタアナリシスが報告されていることを知り、丁寧に読んだ。その概要を臨床の場を鑑みながら解説する。メタアナリシスでの認知症平均余命まずメタアナリシスの素材となったのは、78の研究である。ここでは6.3万人余りの認知症があった人、15.2万人余りの認知症がなかった人のコントロールデータが扱われた。なお原因疾患はアルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体型認知症と前頭側頭葉変性症である。アウトカムとして、まずあらゆる原因による「死亡率:mortality rate」、すなわち一定期間における死亡者数を総人口で割った値が用いられた。次に、認知症の診断もしくは発症から亡くなるまでの年数も用いられた。まず認知症全体としての死亡率は、認知症のない者に比べて5.9倍も高い。また全体では、発症の平均年齢が68.1±7.0歳、診断された年齢は72.7±5.9歳、初発から死亡までが7.3±2.3年。さらに診断から死亡までが4.8±2.0年となされている。全体の3分の2を占めるアルツハイマー病では、初発から死亡まで7.6±2.1年、診断から死亡までが5.8±2.0年になっている。つまりアルツハイマー病の診断がついた患者さんやその家族から「余命は何年か?」の質問を受けたなら、4~8年程度と答えることになる。もっとも本論文の対象は、われわれが対応する患者さんの年齢より、少し若いかなという印象がある。最も生命予後が良い/悪い認知症性疾患は?さて注目すべきは、4つの認知症性疾患の中でアルツハイマー病の生命予後が一番良いという結果である。逆にレビー小体型認知症(パーキンソン病に伴う認知症を含む)では、認知症のなかったコントロールに比べて、死亡率は17.88倍も高く、4つの認知症性疾患の中で最悪である。アルツハイマー病に比べても余命は1.12年も短い。その理由として以下に述べられている。1つには幻覚や妄想などの精神症状を伴うことである。それにより危険行為や衝動性に結び付きやすいことをよく経験する。また従来のデータでも示されてきたように、認知症性疾患のなかで、認知機能の低下率が大きく、合併疾患の割合が高く、QOLも悪いとされる。こうしたものが高い死亡率に結び付いているのではと考察している。確かにと納得できる。次に血管性認知症は、アルツハイマー病に比べて、死亡率が1.26倍高く、余命は1.33年短い。恐らくは心血管系の問題が大きく寄与していると考えられている。さらに前頭側頭葉変性症も生命予後は良くない。その理由として、運動障害に注目した面白い報告がある。近年よく知られるようになったが、前頭側頭型認知症では、パーキンソニズム、錐体外路徴候などによる運動障害を示す例が少なくない。さらにジストニアや失行も見られる。筆者はこれらによる転倒・転落を経験してきた。一方で、ある程度以上進むと、いわゆる早食いや詰め込み食いも見られることがある。こうしたことによる窒息や誤嚥性肺炎が死亡率を高めていると考察されている。自分の臨床経験では、このような突然死の多くは、盗んだり隠れたりして食べていたのである。治療のためにも早期受診が不可欠以上について、論文の著者らは注目していないが、いくつか感想がある。まず初発から診断までに、4年余りかかっているという結果である。疾患修復薬が前駆期・早期なら有用かと期待されるようになった今日、これでは治療の好機を逃してしまう。早期受診の重要性を再度認識する。次に自分が対応するアルツハイマー病の患者さんに限っても、何年経ってもほとんど変わらない人もいるが、1年以内に急速に悪化してしまう人もいる。こうしたケースはrapidly progressive Alzheimer diseaseと呼ばれることもあり、認知機能のみならず生命予後も不良である。そして現場では、主治医である筆者がその責任を厳しく問われることもある。けれども遺伝子、併存疾患、または症候学等からみて、この急速悪化群の関連因子はまだ定まっていない。こうしたsubtypeの予想も臨床的には不可欠な観点だろう。終わりに。アルツハイマー病以外の認知症性疾患に対しては、今のところこれという薬物治療法はない。それだけにこれらの疾患のある人に対する治療の場では、上に示した余命を短縮させてしまう因子に注意を払い、少しでもQOLが高く健やかな生活を実現する努力がこれまで以上に望まれる。参考1)Liang CS, et al. Mortality rates in Alzheimer's disease and non-Alzheimer's dementias: a systematic review and meta-analysis. Lancet Healthy Longev. 2021;2:e479-e488.

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