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軽度~中等度パーキンソン病患者に太極拳が有益

軽度~中等度のパーキンソン病患者に対し太極拳トレーニングを行うと、平衡障害が軽減し、運動能力の向上および転倒の減少という付加的なベネフィットが得られることが報告された。米国・ウィラメット大学のFuzhong Li氏らが行った無作為化試験の結果による。パーキンソン病患者では平衡障害が著しく、運動能力の低下と転倒リスクの増加が知られる。医療提供者によって常に運動が推奨されてきたが、これまで効果が実証された運動プログラムはほとんどなかった。NEJM誌2012年2月9日号掲載報告より。可動域と方向制御についてベースラインからの変化を比較研究グループは、オーダーメードの太極拳プログラムが特発性パーキンソン病患者の姿勢制御能力を高めることができるかどうかを評価する無作為化対照試験を行った。ホーエン・ヤールの重症度分類(1~5の範囲で、数値が大きいほど重篤であることを示す)で病期1~4の患者195例を、太極拳群、筋力トレーニング群、ストレッチ群の3つのプログラム群に無作為に割り付け、24週間にわたり、毎週2回60分の運動セッションが行われた。主要評価項目は、安定性限界テスト結果(Limits-of-Stability Test、最大可動域と方向制御について、範囲:0~100%)のベースラインからの変化量とした。副次評価項目は、歩行(歩幅と速度)、筋力(膝の伸筋・屈筋)、FRT(Functional-Reach test)とTUG(Timed Up-and-Go)の評価スコア、パーキンソン病評価統一尺度における運動スコア、転倒回数などだった。太極拳、最大可動域と方向制御はストレッチ、筋トレより優れる結果、最大可動域と方向制御について、太極拳群が、筋力トレーニング群、ストレッチ群より一貫してよい成績が示された。ベースラインからの変化量の群間差は、最大可動域が、対筋力トレーニング群5.55ポイント(95%信頼区間:1.12~9.97)、対ストレッチ群11.98ポイント(同:7.21~16.74)、方向制御が、それぞれ10.45ポイント(同:3.89~17.00)、11.38ポイント(同:5.50~17.27)だった。また太極拳群は、すべての副次評価項目について、ストレッチ群より成績がよかった。歩幅とFRTについては、筋力トレーニング群よりも成績が上回っていた。転倒の発生率は、太極拳群は他の2群より低かった。その差はストレッチ群とは有意だったが、筋力トレーニング群とは有意差ではなかった。太極拳訓練の効果は介入後3ヵ月間持続し、重篤な有害事象は観察されなかった。(朝田哲明:医療ライター)

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戸田克広 先生の答え

麻薬の使用法治療としていわゆる麻薬はどのような状況、症状の時に使うべきなのでしょうか。また、投与中止はどのようにおこなうべきでしょうか。非癌性慢性痛に麻薬を使用することは依存を引き起こすのではないかと危惧する意見があります。しかし、痛みがある患者さんに適切に使用する限りは、依存は起こらないと考えられています。後者の仮説には明確なデータはないため麻薬の使用は慎重におこなうべきです。しかし、適切な治療を1年以上おこなっても鎮痛効果が不十分な場合や、初診時に激烈な痛みがあり、自殺の恐れがある場合には麻薬を使用してもよいと思います。喫煙者などの物質依存者や約束を守らない人格と判断される場合には麻薬を使用しないことが望ましいと思います。モルヒネには「天井効果がないため上限量はない」という考えもありますが、「200mg / 日を超える場合にはさらに十分な評価が必要」という意見もあります。ペインクリニック専門医ではない場合には200mg / 日を超えるモルヒネは査定される可能性が高いという非公式の制度があるため注意が必要です。ブプレノルフィン、ペンタゾシンは使用すべきではありません。トラマドール塩酸塩〔トラムセット〕またはコデイン、モルヒネ、フェンタニル〔デュロテップパッチ〕の順で使用することが一般的です。モルヒネは薬価が高いため、1回量が20mgになれば薬価の安い散剤にした方が良いと思います。麻薬が有効な場合、その他に有効な薬を見つけて麻薬を減量または中止する努力が必要です。減量とは1回量の減量であって、投与間隔を延長してはいけません。モルヒネであれば1回量を2-4週間ごとに10mgずつ減量し、痛みが悪化すれば再び増量することが望ましいと思います。※〔 〕内の名称は商品名です 中枢性過敏についてこの概念と定義はどなたが提唱したものなのでしょう。概念をもう少し詳しくお聞かせください。御多忙中とは存じますが、どうぞ宜しくお願いいたします。Woolfが中枢性過敏(central sensitization: CS)を提唱しました。CSにはさまざまな定義があります。Woolfは「侵害受容刺激により中枢の侵害受容経路のシナプス効果と興奮性が長期間ではあるが可逆的に増加すること」と定義していますが、国際疼痛学会は「正常あるいは閾値下の求心性入力に対する中枢神経系内の侵害受容ニューロンの反応性の増加」と定義しています。私は次のように考えています。侵害受容性疼痛や末梢性神経障害性疼痛という痛み刺激のみならず、精神的ストレスなどの刺激が繰り返し脳に送られ続けると、中枢神経に機能障害が起こってしまいます。機能障害ではなく器質的障害なのかもしれませんが、現時点の医学レベルではよくわかっていません。中枢神経に機能障害が起こるとさまざまな刺激に対して過敏になり、痛みを感じない程度の刺激が中枢神経に入っても痛みを感じさせてしまいます。また、中枢神経に起こった機能障害の部位そのものが痛みなどの症状の原因になる、つまり機能障害の部位から痛みなどの情報が流れてしまうと推測しています。一方、Yunusが中枢性過敏症候群(central sensitivity syndrome: CSS)を提唱しました。CSSの主な原因はCSと推測されています。CSは主に痛みに関する理論ですが、CSSには痛みを主訴とするFM以外にも、慢性疲労症候群、異常感覚を主訴とするむずむず脚症候群、化学物質過敏症、うつ病、外傷後ストレス障害なども含まれます。CSSの代表疾患の一つがFMなのです。CSは日本でも知られていますが、CSSはFM以上に日本では知られていません。CSSに含まれる疾患は定まっていません。不安障害、皮膚掻痒症、機能性胃腸障害、更年期障害、慢性広範痛症、慢性局所痛症などもCSSに含まれると私は考えています。(日本医事新報No4553, 84-88, 2011)FMの症状について口の中が痛くて、硬いものがかめない症状や、下肢痛があり車や電車に乗ると悪化するような症状はFMに該当するでしょうか?口の症状はFMの症状です。FMでは身体のどこにでもアロジニア(通常痛みを引き起こさない程度の刺激により痛みが起こること)が起こります。口腔内にそれが起これば、硬いものをかめない症状が生じます。口の症状のみがある場合には舌痛症と診断すべきかもしれませんが、舌痛症はFMの部分症状と考えることも可能です。自動車や電車に乗ると下肢痛が悪化すると訴えるFM患者を私は知りませんが、FMの症状と考えても矛盾はありません。FMでは、歩行時より下肢を動かさない状態の時に痛みが強い場合が多いからです。自動車や電車に乗ると下肢痛が悪化する場合には、むずむず脚症候群の可能性もあります。むずむず脚症候群では歩行時よりも安静時に下肢のむずむず感が強くなるため、自動車や電車に乗るとそれが強くなる場合があります。むずむず感などの違和感を痛みと表現する患者さんもいます。FMとむずむず脚症候群はしばしば合併するため注意が必要です。者の性差について患者で女性が8割を占める理由について病態の解明は進んでおりますでしょうか。現在わかっている範囲でお教えください。FMの原因は脳の機能障害という説が定説ですが、厳密にはわかっていません。そのため、女性が8割を占める理由も当然わかっていません。FMの原因解明が進めば、その理由もわかるのではないかと期待しています。FMを含むFMよりも広い概念の慢性広範痛症においては双子を用いた研究により半分が遺伝要因、半分が環境要因と報告されています。性ホルモンはFMに影響を及ぼす要因の一つと考えられています。ただし、性ホルモンは遺伝子により大きな影響を受けるため、性ホルモンの差と遺伝子の差を厳密に区別することは困難です。なお、FM患者の中で女性と男性でどちらの症状が強いかに関しては、男女差はないという報告、女性の症状が強いという報告、男性の症状が強いという報告があり、何ともいえません。治療選択について非薬物療法を患者さんが選択し、希望する場合、一番効果的なものはどれでしょうか。先生の私見でも結構ですのでご教示願えますか。非薬物療法の中では禁煙、有酸素運動、認知行動療法、温熱療法、減量、患者教育が有用です。激しい受動喫煙を含めた喫煙者では、禁煙が一番有効と考えていますが、非喫煙者では有酸素運動が一番有効と考えています。患者本人の喫煙継続は論外ですが、間接受動喫煙防止のため配偶者には禁煙、その他の家族には屋外喫煙が必要です。有酸素運動は、技術や人手が不要、安価で、誰でもできるという長所があるため、非喫煙者では最も有効と考えています。散歩や水中歩行のみならずヨガ、太極拳も有効です。歩行すると痛みが悪化する人では、深呼吸で代用も可能です。安静が有効な場合もありますが、これは痛みが起こらない程度の安静を保つことを意味するのであって、過度な安静は逆に有害です。痛みに対する認知行動療法は、論文上有効なのですが、実際に何をすれば良いのかよくわからないこと、適切な治療を行う施設が少ないこと、費用が高いことが欠点です。欧米を中心にしたインターネットによる調査では約8%の人しか認知行動療法を受けておらず、患者さんが自己評価した有効性もあまりよくありませんでした。温熱療法には、温泉療法、温水中の訓練、遠赤外線サウナ、近赤外線の照射などが含まれます。FMは心因性疼痛ではなく、恐らく脳の機能障害が原因であろうことの説明や痛いときには無理をしないことの説明などが患者教育です。星状神経節ブロックを含む交感神経ブロックが有効という根拠はありません。対照群のない研究では鍼は有効なのですが、適切な対照群のある研究では鍼の有効性が証明されていません。交感神経ブロックも鍼も、5回行って一時的な鎮痛効果しかなければ、それ以上継続しても一時的な効果しかないと私は考えています。トリガーポイントブロックの長期成績は不明です。非薬物治療は組み合わせて行うことが望ましく、さらに言えば、非薬物治療は薬物治療と併用することが望ましいと報告されています。線維筋痛症の患者とうつ病同症の患者では精神疾患(特にうつ病)を併発されている方も多いと聞きます。その場合のケアと薬剤の処方のポイントについてご教示ください。抑うつ症状あるいはうつ病に痛みが合併した場合、痛みはうつ病の一症状であるという理論は捨てる必要があります。痛みと、抑うつや不安症状は対等の症状と見なすことが重要です。FMとうつ病(または不安障害)が合併した場合、当初はより重症な症状のみを治療することをお勧めします。一方の症状がある程度軽減した後に、他方の症状を治療した方が治療は容易です。抗うつ作用がまったくない薬で痛みが軽減しても、抑うつ症状が軽減することはありふれたことです。しかし、両症状とも強い場合には、両方を同時に治療せざるを得ないこともあります。その場合には抑うつ症状に対する治療と、痛みに対する治療は分けた方がよいと思います。SSRIと短期間の抗不安薬を抑うつ症状に対する治療と考え、その他の薬は痛みに対する治療と考えた方がよいと思います。三環系抗うつ薬とSNRIは抑うつにも痛みにも有効ですが、痛みのみに有効と見なし、抑うつがついでに軽減すれば「儲け物」という程度に考えた方がよいと思います。なお、三環系抗うつ薬では鎮痛効果を発揮する投与量より抗うつ効果を発揮する投与量の方が多いのですが、SNRIでは両効果を発揮する投与量は同程度です。SSRIも痛みに対する薬も通常漸増する必要があります。それらを同日投与や同日増量すると副作用が生じた場合に、原因薬物の特定が困難になる場合があります。そのため、投与開始や増量は少なくとも中2日は空けたほうがよいと思います。抗不安薬は、SSRIが抗うつ効果や抗不安効果を発揮するまでの一時しのぎとして抗不安薬を使用すべきです。抗不安薬を半年以上投薬する場合には、転倒や骨折の増加、運動機能の低下、理解力の低下、認知機能の低下、抑うつ症状の悪化、新たな骨粗鬆症の発症、女性での死亡率の増加を説明する必要があります。抗不安薬を半年以上使用すると常用量依存が起こりやすく、その場合中止が困難になります。薬物療法とガイドライン解説の中で薬物療法について「ガイドラインでは科学的根拠がない」と記されていますが、近々に発表される、または欧米のものが翻訳される見込みはございますか。教えていただける範囲でお願いします。「線維筋痛症のガイドライン」は、アメリカ、ドイツ、ヨーロッパ、カナダ、スペインから発表されています。日本語に翻訳されて発表される見込みは現在不明です。日本のガイドラインの改訂版は今後発表される予定ですが、いつになるのか未定です。アメリカ、ドイツ、ヨーロッパのガイドラインは各治療方法の有効性のエビデンスを記載しています。カナダのガイドラインはエッセイ様式です。スペインと日本のガイドラインはサブグループに分けています。スペインのガイドラインは修正デルフィ法(参加者の匿名のアンケートとそれに対する評価を繰り返し一つの結論を出す方法)によりGieseckeらの分類方法を採用しています。日本のガイドラインの最大の特徴はFMをサブグループに分けて、サブグループごとに治療方法を変える点です。世界では、FMのサブグループ分けは多くの研究者により行われています。痛み、抑うつ状態などのさまざまな指標により得られたデータによりサブグループ分けが行われていますが、報告により異なるサブグループに分けられています。ただし、日本のガイドラインに含まれる「筋付着部炎型」は私が知る限り、報告された分類方法のどのサブグループにも存在しません。また、前回と今回の日本のガイドラインでは同じサブグループの推奨薬物が異なっていますが、その変更の根拠が記載されていません。「分類の根拠、およびサブグループごとに推奨する薬物が異なる根拠は論文化されていない」由が、今回のガイドラインに記載されています。日本のガイドラインでは各執筆者は自分自身の執筆した部分のみに責任を持つことも特徴の一つです。睡眠薬との関連痛みがひどくて眠れない患者さんに睡眠薬を処方することもあるかと思います。その場合、注意する点などご教示ください。FMに限らず、痛みのために不眠の患者さんの睡眠改善目的にまず処方する薬は、睡眠薬ではなく鎮痛薬です。もちろん非ステロイド性抗炎症薬ではなく神経障害性疼痛に対する鎮痛薬です。鎮痛薬が主で、睡眠薬は従の関係です。当初は睡眠薬を処方せず、鎮痛薬を私は処方しています。三環系抗うつ薬、ガバペンチン〔ガバペン〕、プレガバリン〔リリカ〕は鎮痛効果が強い上に、眠気の副作用が強いのでその副作用を睡眠改善に使用することも可能です。しかし、眠気の副作用がほとんどないワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液〔ノイロトロピン〕やデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物〔メジコン〕により痛みが改善すれば、結果的に睡眠が改善することもあります。FMの不眠に有効な睡眠薬はゾピクロン〔アモバン〕、ゾルピデム酒石酸塩〔マイスリー〕ですが、副作用報告の少ないゾピクロンを私は優先使用しています。FMの睡眠障害に対して抗不安薬を使用することは避けるべきです。常用量依存を作りやすいからです。特に、作用時間が短く抗不安作用が強いため常用量依存を作りやすいエチゾラム〔デパス〕を睡眠薬として使用することは避けるべきです。※〔 〕内の名称は商品名です。日本での患者数わが国における患者の推定数はどのくらい見積もられておりますでしょうか、また、欧米の患者数、人種差、性差なども合わせてお教え下さい。日本における地域住民の有病率は約1.7%と報告されていますが、その報告には調査人数や具体的な調査方法が記載されていません。今後、科学的根拠の高い日本人の有病率が世界に知られることを期待しています。日本の病院敷地内での女性就労者の2.0%、男性就労者の0.5%がFMと報告されています。アジア、欧米を中心とした報告によるとFMの有病率は約2%、そのグレーゾーンの有病率は約20%と推測されます。圧痛点の数は経時的に変動することや論文上の有病率は一時点の有病率であることを考えると、真の有病率は約2%、日本では250万人程度のFM患者がいると推測しています。中国での有病率は0.05%という報告がありますが、調査方法や診断能力に原因があるのかもしれません。同一の研究チームが異人種を調べた研究は3つあり、ブラジル(非白人2.65%と白人2.26%)とイラン(Caucasians0.6%とトルコ人0.7%)では人種差がなく、マレーシア(マレー系1.19%、インド系2.58%、中国系0.33%)では人種差がありました。そのため有病率に人種差があるのかどうかは不明です。FM患者の約8割は女性であり、性比には大きな人種差はないようです。医師以外の関与線維筋痛症について、ナースやコメディカルが介入できる余地はありますでしょうか。例えば理学療法士がストレッチを指導する、ナースが話を聞くなどで患者の日常生活から改善していくなどです。その際の保険点数など参考になるものがございましたらご教示お願いします。薬物治療以外では、コメディカルが介入できる余地がたくさんあります。ただし、FMという病名では保険点数はつきません。理学療法士や作業療法士は、有酸素運動、筋力増強訓練、ストレッチ、水中訓練などを指導できます。しかし、FMなどの痛みを引き起こす疾患では保険点数は取れません。関節の変性疾患、関節の炎症性疾患、運動器不安定症などが合併していれば運動器リハビリテーション料を請求することができます。ナースが患者の話を聞いたり、患者の痛みや生活の質を評価するアンケートの記載方法の説明を行うことができます。ただし、ナースが患者の話を聞いても保険点数を請求できません。うつ病に対する認知行動療法に対して、厳しい条件はあるものの2010年から保険点数が取れるようになりました。しかし、FMなどの痛みに対する認知行動療法では保険点数を請求できません。総括FMが知られていない日本医学は世界の標準医学から大きく乖離しています。FM以上に中枢性過敏症候群は、日本では知られていません。FMのみならず中枢性過敏症候群を認めて世界の標準医学に追いつく必要があります。FMの治療はFMのみならずそのグレーゾーン、つまり人口の約20%に有効です。グレーゾーンにもFMの治療を行うのですから、臨床の観点ではFMの診断は厳密に行う必要はありません。心因性疼痛、仮面うつ病、身体表現性障害(疼痛性障害、身体化障害)と診断するより、FMやそのグレーゾーンと診断する方が、有効な治療方法が多いためほぼ間違いなく治療成績が向上します。異なる医学理論が衝突した場合には、「脚気論争」と同様に治療成績がよい医学理論を採用すべきです。自分が長年信じていた医学理論を捨てることは困難ですが、臨床医は自分が信じる医学理論を守ることより、よりよい治療成績を求めるべきです。戸田克広先生「「正しい線維筋痛症の知識」の普及を目指して! - まず知ろう診療のポイント-」

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足痛を有する高齢者への多面的足治療が転倒リスクを低減

 足痛のある高齢者に対する足装具、靴の助言、自宅での足運動プログラム、転倒予防教育用の小冊子などから成る介入が転倒率を有意に低下させることが、オーストラリアLa Trobe大学のMartin J Spink氏らの検討で示された。高齢者の転倒は重大な公衆衛生学的な問題であり、毎年65歳以上の3人に1人が転倒を経験しているという。高齢者の転倒の原因として、視力障害、筋力低下、反応時間の遅延などが挙げられるが、最近、プライマリ・ケアでの診療機会も多い足の障害との関連が確認されている。足の障害に加え、不適切な履き物も身体バランスや歩行を損ない、転倒のリスクを増大させるという。BMJ誌2011年7月2日号(オンライン版2011年6月16日号)掲載の報告。多面的な足治療の転倒予防効果を評価 研究グループは、日常動作に支障を生じる足痛のある高齢者の転倒予防における多面的な足治療の有効性を検討するために、並行群間無作為化対照比較試験を実施した。 2008年7月~2009年9月までに、足痛があり転倒リスクが増大している高齢者305人[平均年齢73.9歳(SD 5.9)、女性211人、男性94人]が登録され、多面的足治療を受ける群(153人、介入群)あるいは通常の足治療を受ける群(152人、対照群)に無作為化に割り付けられた。 介入群には、足装具、靴の助言、靴の補助金、自宅での足運動プログラム、転倒予防教育用の小冊子、通常の足治療を行い、対照群には通常の足治療のみを施行した。治療期間は両群とも12ヵ月であった。 ベースラインから12ヵ月後までの転倒者率、複数回転倒者率(2回以上転倒した者の割合)、転倒率(転倒の発生率)、転倒によるけがの発生率を算出した。介入群で転倒率が36%有意に低下 試験期間中に264件(介入群103件、対照群161件)の転倒が発生した。12ヵ月の治療を完遂したのは296人で、介入群が147人(96%)、対照群は149人(98%)であった。介入のアドヒアランスは良好で、週3回の運動を75%以上実行した者は52%、装具をほぼ常時装着していたと報告した者は55%に達した。 12ヵ月後までの転倒率は、介入群が対照群よりも36%有意に低下した(発生率比:0.64、95%信頼区間:0.45~0.91、p=0.01)。転倒者率(相対リスク:0.85、95%信頼区間:0.66~1.08、p=0.19)および複数回転倒者率(同:0.63、0.38~1.04、p=0.07)は両群間に差を認めなかった。 骨折が介入群で1人、対照群では7人に発生した(相対リスク:95%信頼区間:0.02~1.15、p=0.07)。介入群では、対照群に比べ足関節の強度(足関節外反)、可動域(足関節背屈および内反/外反)、身体バランス(素足時の床上での身体動揺および靴を履いた状態での最大バランス範囲)が有意に改善された。 著者は、「多面的足治療による介入は、足痛のある高齢者の転倒率を有意に低下させた」と結論し、「介入の個々のコンポーネントは安価で施行法も相対的に簡便であり、ルーチンの足診療や集学的な転倒予防クリニックへの導入の可能性が示唆される」と指摘している。

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脳卒中後の体重免可トレッドミルトレーニングはPT訪問リハビリより有効か

米国で脳卒中後リハビリテーションとして取り入れられるようになっている、体重支持吊り下げ装置付きトレッドミル運動機器を用いた歩行訓練(体重免可トレッドミルトレーニング:BWSTT)の有効性について、理学療法士(PT)による訪問リハビリでの漸進的エクササイズとの比較での無作為化試験が行われた。米国NIHから助成金を受け脳卒中後リハビリの有効性、時期、強度、期間について調査研究をしているデューク大学地域・家庭医学部門のPamela W. Duncan氏らLEAPS(Locomotor Experience Applied Post-Stroke)研究グループが行った。BWSTTは、パイロット試験や小規模臨床試験で効果が示唆されている程度だが商業ベースに乗り導入が増えており、早急な無作為化試験の実施が求められていたという。NEJM誌2011年5月26日号掲載より。早期BWSTT群、後期BWSTT群、訪問リハ群に割り付け評価研究グループは、以下を仮定し第3相単盲検無作為化試験を行った。(1)標準的理学療法に加えてのBWSTTは、早期提供(脳卒中後2ヵ月)あるいは後期提供(同6ヵ月)とも1年時点の歩行機能レベルの高い患者の割合が、PTにより脳卒中後2ヵ月に行われる漸進的強度・バランス運動による割合よりも多い。(2)BWSTTの早期実施は同後期実施よりも歩行速度を改善(なぜならパイロット試験で早期の回復程度が最も大きいと示されているから)し、6ヵ月時点までに申し分ないものとなる。被験者は、脳卒中後2ヵ月未満の408例(62.0±12.7歳、男性54.9%、4,909例を2回のスクリーニングで絞り込んだ)で、歩行障害の程度に応じて中等度(0.4~0.8m/秒歩行可能、53.4%)か重度(<0.4m/秒、46.6%)に階層化し、3つのトレーニング群(早期BWSTT群:139例、後期BWSTT群:143例、訪問リハ群:126例)のいずれかに無作為に割り付けた。各群介入は90分のセッションを週3回、36回(12~16週の間に)行われた。主要アウトカムは、各群の1年時点の歩行機能改善者の割合とした。歩行機能改善について3群で有意差なし、歩行速度など改善同程度1年時点で歩行機能が改善したのは、被験者全体では52.0%だった。早期BWSTT群と訪問リハ群の改善について有意差はなかった(補正後オッズ比:0.83、95%信頼区間:0.50~1.39)。後期BWSTT群と訪問リハ群についても有意差はなかった(同:1.19、0.72~1.99)。3群の、歩行速度、運動機能回復、バランス感覚、機能状態、QOLの改善は同程度だった。また、BWSTT介入が遅いことや、初期の歩行障害が重度であることは、1年時点のアウトカムに影響はなかった。関連する重篤有害事象は10件報告された(早期BWSTT群2.2%、後期BWSTT群3.5%、訪問リハ群1.6%)。軽度有害事象は、訪問リハ群と比較して両BWSTT群で介入期間中、めまいや失神の発生頻度が高かった(P=0.008)。また歩行障害が重度の被験者において複数回転倒する人が、早期BWSTT群で他の2群よりみられた(P=0.02)。研究グループは「BWSTTが、PT訪問リハでの漸進的エクササイズよりも優れていることは立証されなかった」と結論。「訪問リハのほうがリスクが小さく、適しているといえるかもしれない。また重度歩行障害者に早期BWSTTを行った場合の複数回転倒の割合が高いことは、これら患者には歩行機能改善に加えてバランス感覚を改善するプログラムを組み込むべきであることを示唆するものである」と報告をまとめている。(武藤まき:医療ライター)

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高齢患者におけるレボチロキシン用量と骨折リスクとの関連

甲状腺ホルモン製剤レボチロキシン(商品名:レボチロキシンナトリウム、チラーヂン)で治療中の高齢患者は、以前に使用経験のある患者よりも骨折リスクが高く、高~中用量群の患者は低用量群に比べてリスクが上昇していることが、カナダ・トロント大学のMarci R Turner氏らの調査で示された。甲状腺機能低下症で長期にレボチロキシン投与中の高齢患者の中には、過剰治療の状態にある者がおり、これらの患者は医原性の甲状腺機能亢進症を来す可能性があるという。また、高用量のレボチロキシンや無症候性甲状腺機能亢進症によって骨密度が低下し、転倒や骨折のリスクが上昇することが示唆されている。BMJ誌2011年5月7日号(オンライン版2011年4月28日号)掲載の報告。レボチロキシン使用による骨折リスクを評価するコホート内症例対照試験研究グループは、レボチロキシンの用量が高齢者の骨折リスクに及ぼす影響を評価するコホート内症例対照試験(nested case-control study)を実施した。2002年4月1日~2007年3月31日までにレボチロキシンを処方された70歳以上の高齢患者について、2008年3月31日まで骨折のフォローアップが行われた。この間に骨折で入院した患者コホートを、骨折を起こしていないコホートから選ばれた最大5人の対照とマッチさせた。主要評価項目は、レボチロキシン使用(現在使用中、最近まで使用、以前に使用)による骨折(手首/前腕、肩/上腕、胸椎、腰椎/骨盤、股関節/大腿骨、下肢/足関節)とした。レボチロキシン使用中の群は、骨折前年の用量(高[>0.093mg/日]、中[0.044~0.093mg/日]、低[<0.044mg/日])で比較した。高~中用量群の骨折リスクは低用量群の2~3倍にレボチロキシン使用者21万3,511人(平均年齢82歳)のうち、平均フォローアップ期間3.8年の時点で2万2,236人(10.4%)が骨折を起こし、そのうち1万8,108人(88%)が女性であった。現在使用中の患者は2万514人(92.3%)で、このうち高用量群が6,521人(31.8%)、中用量群が1万907人(53.2%)、低用量群は3,071人(15.0%)であった。多数のリスク因子で調整しても、以前に使用経験のある者に比べ、最近まで使用していた者は骨折リスクが有意に高かった(調整オッズ比:1.88、95%信頼区間:1.71~2.05)。現在使用中の患者では、高用量および中用量の群は、低用量群に比べ骨折リスクが有意に上昇していた(それぞれ、調整オッズ比:3.45、95%信頼区間:3.27~3.65、同:2.62、2.50~2.76)。著者は、「現在レボチロキシン治療中の70歳以上の高齢患者では、強い用量-反応関係をもって骨折リスクが上昇していた」と結論し、「過剰治療を回避するには、治療中の用量のモニタリングが重要」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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外傷患者の3年死亡率は16%、病院から高度看護施設への退院で死亡リスク増大

米国の病院に外傷で入院した患者の3年死亡率は16%で、退院後に高度看護施設(skilled nursing facility)に入所した人においては、年齢にかかわらず死亡リスクが増大することが示されたという。米国・ワシントン大学外科部門Harborview外傷予防研究センターのGiana H. Davidson氏らが、12万超の成人外傷患者について行った後ろ向きコホート試験の結果、明らかにしたもので、JAMA誌2011年3月9日号で発表した。院内死亡率は約3ポイント減だが、長期死亡率は2.7ポイント増研究グループは、ワシントン州外傷患者レジストリを基に、1995年1月~2008年12月にかけて、州内78ヵ所の病院に外傷で入院した、18歳以上の患者12万4,421人について、後ろ向きにコホート試験を行った。Kaplan-Meier法とCox比例ハザードモデル法を使って、退院後の長期死亡率について分析を行った。被験者のうち男性は58.6%、平均年齢は53.2歳(標準偏差:23)だった。外傷重症度スコアの平均値は10.9(標準偏差:10)だった。結果、被験者のうち、入院中に死亡したのは7,243人、退院後に死亡したのは2万1,045人だった。外傷後3年の累積死亡率は16%(95%信頼区間:15.8~16.2)だった。院内死亡率については、調査期間の14年間で8%から4.9%へと減少したものの、長期死亡率は4.7%から7.4%へと増加していた。退院後に高度看護施設に入所した患者、長期死亡リスクが1.4~2.0倍に交絡因子について補正後、高齢で、退院後に高度看護施設に入所した人が、最も死亡リスクが高かった。また年齢を問わず退院後に高度看護施設に入所した人は死亡リスクが高く、入所しなかった人に対する補正後ハザード比は、18~30歳が1.41(95%信頼区間:0.72~2.76)、31~45歳が1.92(同:1.36~2.73)、46~55歳が2.02(同:1.39~2.93)、56~65歳が1.93(同:1.40~2.64)、66~75歳が1.49(同:1.14~1.94)、76~80歳が1.54(同:1.27~1.87)、80歳超が1.38(同:1.09~1.74)だった。その他、退院後死亡のリスク因子として有意であったのは、最大頭部外傷の略式傷害尺度(AIS)スコア(ハザード比:1.20、同:1.13~1.26)、傷害の原因が転倒によるもの(同:1.43、同:1.30~1.58)、またメディケア加入者(同:1.28、1.15~1.43)、政府系保険加入者(同:1.65、1.47~1.85)だった。一方、外傷重症度スコア(同:0.98、0.97~0.98)、機能的自立度評価表(FIM、同:0.89、0.88~0.91)なども有意な予測因子だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

387.

患者医療情報システムを活用した入院中転倒予防教育キット、転倒リスクを有意に減少

 患者医療情報システムを活用し、患者のリスクに見合った転倒予防教育キットを提供することで、入院中の転倒リスクが有意に減少することが報告された。米国ボストンを拠点とする病院経営共同体Partners HealthCare SystemのPatricia C. Dykes氏らが、1万人超の入院患者を対象に行った、多施設共同無作為化対照試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2010年11月3日号で発表した。入院中には、環境の変化や疾患・治療の影響などで、転倒リスクが増大することは知られている。一方で、医療情報技術を用いた転倒予防キットは、これが初めてのものだという。患者個別のポスターやパンフレット、ケアに関わる人への注意事項などを提供 研究グループは、2009年1月1日~6月30日にかけて、都市部4ヵ所の病院に入院した、1万264人を無作為に2群に分け、一方には医療情報システムを活用した転倒予防キット(fall prevention tool kit;FPTK)の提供を、もう一方には通常行われる転倒予防教育を行った。 FPTKでは、まず看護師による患者の転倒リスク評価を行い、それに基づきFPTKソフトウェアで、患者の転倒リスクに合わせた予防プログラムを作成する。その内容としては、ベッドサイドに貼るポスター、患者向けパンフレット、ケアプランや、その患者のケアに関わる主な担当者に対する患者個別の注意事項などが提供される仕組みとなっている。転倒率は1,000患者・日当たり約1人減、65歳以上では2人減 試験期間は6ヵ月、延べ入院日数は4万8,250患者・日だった。その間、転倒患者数は対照群が87人に対し、FPTK群では67人と、有意に少なかった(p=0.02)。 院内の入院部門特性で補正を行った後の転倒率は、対照群が4.18/1,000患者・日(95%信頼区間:3.45~5.06)だったのに対し、FPTK群では3.15/1,000患者・日(同:2.54~3.90)と、有意に低率だった(p=0.04)。 FPTKは特に65歳以上の患者に対して効果が高く、対照群とFPTK群との補正後、転倒率の差異は2.08/1000患者・日(同:0.61~3.56)だった(p=0.003)。 なお、転倒による怪我のリスクに関しては、両群で有意差はみられなかった。

388.

入院、転倒外傷は、虚弱高齢者をさらに弱らせる

高齢者のうち、特に虚弱であったり、内科疾患や外傷(いわゆるイベント)が、新規障害の発生や既存障害の悪化を大きく増大する可能性があることが、エール大学医学部内科部門のThomas M Gill氏らによる長期追跡試験の結果、報告された。これまで、イベントの障害度移行への影響については明らかになっていなかった。JAMA誌2010年11月3日号掲載より。10年にわたり、障害度間、死亡への移行状況を追跡研究グループは、1998年3月~2008年12月の間に、コネチカット州ニューヘブンに住む、70歳以上の754人を対象に前向きコホート研究を行った。被験者は基線で、4つの基本的なADL(入浴、着替え、歩行、移動動作)に障害を有していなかった。被験者は、イベント(内科疾患が外傷により入院または活動性の制限に至ったもの)の影響を確認するため、10年以上の間毎月、電話インタビューにより身体障害の評価が行われた。また、身体的な虚弱(10m往復歩行テストで10秒超かかると定義)は、18ヵ月ごとに108ヵ月間にわたって評価が行われた。主要評価項目は、毎月評価した、非身体障害、軽度身体障害、重度身体障害の各障害度間の移行状況と、各障害度から死亡への移行状況とした。入院、活動性の制限が、障害度の悪化に強く関連移行としてあり得る9つのパターンのうち8つと、入院との間に強い関連があることが認められた。入院により非身体障害から重度身体障害への移行は168倍増大することが認められた(多変量ハザード比:168、95%信頼区間:118~239)。一方で、軽度から非身体障害への移行は0.41倍と低かった(同:0.41、0.30~0.54)。活動性の制限も関連は強く、非身体障害から軽度身体障害へは2.59倍、重度身体障害へは8.03倍、移行を増大した。軽度から重度への移行は1.45倍で、軽度あるいは重度からの回復については関連が認められなかった。全9つの移行パターンについて、身体的虚弱があると、イベント関連を増大した。たとえば、入院後1ヵ月以内の非身体障害から軽度身体障害への移行の絶対リスクは、虚弱がある人は34.9%だったのに対し、虚弱でない人は4.9%だった。また、移行理由として考えられるパターンの中でも入院、転倒外傷が、新たな障害を引き起こしたり悪化している障害を進展させる可能性が最も高かった。(武藤まき:医療ライター)

389.

高齢者の転倒への恐れと生理学的転倒リスクはいずれも転倒予測因子

 高齢者によくみられる転倒への恐れは、転倒に関する重大な心理的要因であることが認められている。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のKim Delbaere氏らの研究グループは、転倒出現率を精査し高齢者の転倒への恐れの認識実態を把握すること、また転倒リスクを認識する要因および生理学的転倒リスクの要因を調査すること、さらに転倒リスクに対する認識と生理学的転倒リスクの、転倒発生への影響を調査することを目的として前向きコホート研究を行った。BMJ誌2010年8月28日号(オンライン版2010年8月20日号)より。転倒リスク認識、生理学的転倒リスクはそれぞれ転倒の原因となる 研究グループは、シドニー東部地域に住む、70~90歳の男女500例を対象に調査を行った。主要評価項目は、ベースラインにおける医学的、生理学的、神経心理学的尺度に基づく評価と、生理学的プロファイルを用いて推計した生理学的転倒リスク評価と、国際転倒有効性スケールを使って推計した高齢者の転倒リスクに対する認識とした。被験者は1年間にわたって、転倒について毎月追跡調査を受けた。 多変量ロジスティック回帰分析の結果、転倒リスク認識と生理学的転倒リスクはいずれも、将来の転倒の独立した予測因子であることが示された。転倒リスクの生理学的尺度および認識尺度の両方をリスク評価に含めるべき 次に分類ツリー解析法を用いて、転倒リスク認識と生理学的転倒リスクの差異で被験者を4群(活発群:生理学的リスクが低くリスク認識も低い、不安群:生理学的リスクは低いがリスク認識は高い、ストイック群:生理学的リスクは高いがリスク認識は低い、認識群:生理学的リスクが高くリスク認識も高い)に分類した。 転倒リスク認識と生理学的転倒リスクがマッチしていた活発群は144例(29%)、認識群は202例(40%)いた。 一方で、生理学的転倒リスクは低いが転倒リスクに対する認識が過度な不安群は54例(11%)いて、うつ症状(P=0.029)、神経症(P=0.026)、運動機能低下(P=0.010)が認められた。 生理学的転倒リスクは高いもののリスクを過小評価しているストイック群は100例(20%)いた。その人たちは、転倒に対し防御的で、余生に対して前向きで(P=0.001)、身体活動とコミュニティへの参加が維持されていた(P=0.048)。 研究グループは、「高齢者の多くに、転倒リスクを過小評価あるいは過大評価している人がみられた。転倒リスク認識と生理学的転倒リスクとの差異は、おもに心理学的尺度に関連していることが認められ、また差異が転倒可能性に強く影響していることも認められた」と述べ、「転倒リスクに対する生理学的尺度および認識尺度の両方を転倒リスクアセスメントに含めることが、高齢者の転倒予防介入を適切に見直すために必要だ」と結論している。

390.

女性高齢者への年1回、高用量ビタミンD投与、転倒リスクを増大

70歳以上の女性高齢者に対し、高用量ビタミンDを年1回投与することで、転倒リスクが増大してしまうようだ。また投与後3ヵ月間の転倒リスクは、約30%も増加したという。オーストラリアMelbourne大学臨床・生化学研究所のKerrie M. Sanders氏らが、2,200人超を対象に行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験で明らかにしたもので、JAMA誌2010年5月12日号で発表している。ビタミンD投与と転倒リスクについては、これまで発表された試験結果で議論が分かれていた。ビタミンD投与群の転倒リスクは1.15倍、骨折リスクは1.26倍に同研究グループは、2003年6月~2005年6月にかけて、地域に住む70歳以上の女性高齢者、合わせて2,256人について試験を行った。被験者を無作為に2群に分け、一方の群には毎年秋から冬にかけて3~5年間、ビタミンD(コレカルシフェロール50万IU)を年1回投与し、もう一方にはプラセボを投与。2008年まで追跡し、転倒や骨折の回数について調べた。追跡期間中の骨折件数は、ビタミンD群1,131人のうち171件に対し、プラセボ群1,125人のうち135件だった。総転倒件数は、ビタミンD群は837人で2,892回(83.4回/100人・年)、プラセボ群は769人で2,512回(72.7回/100人・年)だった(発生率比:1.15、95%信頼区間:1.02~1.30、p=0.03)。骨折に関するビタミンD群のプラセボ群に対する発生率比は、1.26(同:1.00~1.59、p=0.047)だった。ビタミンD投与後3ヵ月の転倒リスクは約1.3倍ビタミンD群の転倒については、特に投与後3ヵ月間にリスクが増大し、同期間のプラセボ群に対する発生率比は1.31に上ったのに対し、投与後3ヵ月以降の9ヵ月間の同発生率比は1.13だった(均一性検定、p=0.02)。なお、ビタミンD群の25-ヒドロキシコレカルシフェロール血中濃度は、投与1ヵ月後に約120nmol/Lまで上昇し、同3ヵ月後には約90nmol/L、その後も投与後12ヵ月間プラセボ群より高濃度だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

391.

慢性筋骨格痛が2ヵ所以上ある高齢者、転倒リスク約1.5倍

 >慢性筋骨格痛が2ヵ所以上ある高齢者は、転倒リスクがおよそ1.5倍に増大するようだ。米国ベス・イスラエル・ディーコネス医療センター総合内科・プライマリ・ケア部門のSuzanne G. Leveille氏らによる試験で明らかになった。高齢者の慢性痛と転倒リスクについての研究結果はこれまでほとんど見られていない。JAMA誌2009年11月25日号掲載より。日常生活自立の70歳以上、約750人を18ヵ月追跡 Leveille氏らは2005年9月~2008年1月にかけて、自宅で自立した生活をしている70歳以上高齢者749人について検討した試験「MOBILIZEボストンスタディ」を行った(MOBILIZE:Maintenance of Balance, Independent Living, Intellect, and Zest in the Elderly)。追跡期間は18ヵ月だった。 追跡期間中に発生した転倒件数は、1,029件だった。慢性筋骨格痛が2ヵ所以上ある300人の、年齢補正後の転倒率は、1.18件/人・年(95%信頼区間:1.13~1.23)だった。慢性骨格痛が1ヵ所のみの181人の同転倒率は、0.90件/人・年(同:0.87~0.92)だった。また、関節痛の全くない267人の同転倒率は、0.78件/人・年(同:0.74~0.81)だった。強い痛みのある人の転倒リスクも5割増に 転倒リスクが最も高かったのは、慢性筋骨格痛が2ヵ所以上ある群で、痛みが全くない群に比べて、転倒に関する補正後発生率は1.53倍(95%信頼区間:1.17~1.99)だった。 また、痛みの程度(3分位)と転倒発生との比較では、痛みが強い3分位群の補正後発生率が、低い3分位群に比べて1.53倍(同:1.12~2.08)だった。活動の妨げの程度(3分位群)で検討した場合も、強い群が低い群に比べ1.53倍(同:1.15~2.05)だった。

392.

脳卒中患者へのリハビリは、管理介入し続けないと効果はない?

脳卒中患者の身体活動度は、たとえいったんはリハビリでアップできても、その後自主性に任せるような方法では維持できないことが、デンマーク、コペンハーゲン大学附属Bispebjerg病院神経内科のGudrun Boysen氏らによって報告された。BMJ誌2009年8月1日号(オンライン版2009年7月22日号)より。言葉によるトレーニング教授の介入が、身体活動度を持続的に増大するのか試験身体活動と脳卒中については、リスクを軽減することが観察研究で知られているが、脳卒中を起こした患者にとって身体活動が、再発や他の心血管イベントを予防するのに効果があるのかは明らかにされていない。また、いくつかの小規模な研究で、脳卒中患者への集団指導で、運動・歩行能力が3~6ヵ月間は改善されたとの報告はある。Boysen氏らは、反復奨励と言葉による運動解説が、脳卒中患者の身体活動度を持続的に増大することができるのか、「ExStroke Pilot Trial」を行い評価を行った。介入による、身体活動、死亡率、再発率、心筋梗塞、転倒、骨折への有意な影響見られずExStroke Pilot Trialは、結果をマスキング評価して行う多国籍多施設共同無作為化臨床試験で、評価はPASE(physical activity scale for the elderly)の指標を用いて行われた。試験には、デンマーク、中国、ポーランド、エストニアから、40歳以上で歩行可能だった脳卒中患者314例が参加し、介入群(157例、平均年齢69.7歳)と対照群(157例、同69.4歳)に無作為化された。介入群の患者には、退院前に詳細なトレーニング方法が教授され、退院後24ヵ月の間に5回、外来受診してもらい追跡調査をした。対照群の患者にも同じ頻度で外来受診してもらい追跡調査をしたが、身体活動の指導は行われなかった。主要評価項目は、各回受診時のPASE評価の結果、副次評価項目は、臨床イベントとされた。結果、介入群のPASEスコアは69.1、対照群は64.1で、差は5.0(95%信頼区間:-5.8~15.9、P=0.36)。介入は身体活動の、有意な増加にはつながっていなかった。また、死亡率、再発率、心筋梗塞、転倒、骨折にも、有意な影響を与えていることは見受けられなかった。Boysen氏は、「虚血性脳卒中患者の身体活動を促進するには、もっと強い戦略が必要のようだ」と結論した。

393.

リハビリ介入は認知症患者には効果が乏しい

要介護高齢者へのリハビリプログラムの効果について、認知機能正常な場合はわずかだが効果は認められるが、認知機能低下が認められる高齢者にはベネフィットがないことが、オークランド大学(ニュージーランド)のNgaire Kerse氏らによって報告された。BMJ誌2008年10月18日号(オンライン版2008年10月9日号)より。41ヵ所の施設入所者対象に集団無作為化試験Kerse氏らは、長期療養施設に入所する要介護高齢者へのリハビリプログラム実施が、機能・QOL・転倒改善に効果があるかを、集団無作為化試験にて1年間追跡調査し検討した。対象としたのはニュージーランドにある41ヵ所の軽度要介護入所施設。試験参加者は65歳以上682例で、このうち330例は、老人看護専門看護師によって改善目標の設定と、個別ADL活動プログラムが提供され、日々の介入がヘルスケア・アシスタントによって提供された。352例は、施設介護を受け続けた。主要評価項目は、機能・QOL・転倒指標の変化について。機能は、LLFDI(生命機能低下と能力障害指標)、EMS(高齢者可動スケール:スコア16以下の割合)、FICSIT-4(平衡機能検査指標:直立10秒以上の割合)、TUG(timed up and go検査:秒)の変化を、QOLはLSI(生活満足度指標:判定スコア最大20)、EuroQol(判定スコア最大12)の変化を、転倒は12ヵ月の転倒回数の変化を評価した。副次評価項目は、抑うつ症状と入院とした。認知機能が正常な入所者にはわずかだがベネフィットがある試験を完了した入所者は437例(70%)だった。全体的にプログラム介入の影響は認められなかったが、介入群の中で、認知機能障害のある入所者と比べて認知機能が正常な入所者は全体的に機能の維持(LLFDIによる総合的な機能評価、P=0.024)、下肢機能の維持(LLFDIによる下肢機能評価、P=0.015)が認められた。また介入群で認知機能障害のある入所者では、うつ病の可能性が増大することが認められた。その他の転帰については両群間で差異はなかった。Kerse氏は、「施設に入所する要介護高齢者に対する機能改善のリハビリテーションプログラムは、認知機能が正常であれば多少なりとも影響はあるが、認知機能が低下した入所者にとってベネフィットはない」と結論している。

394.

乳幼児の骨折で原因が確認できない場合は虐待を疑うべき

子どもの骨折が虐待によるものなのか、骨折タイプから虐待の可能性を見極めることを目的とする骨折指標の同定作業が、公表論文のシステマティックレビューによって行われた。カーディフ大学(英国)ウェールズ・ヒースパーク大学病院臨床疫学学際研究グループ/ウェールズ児童保護システマティックレビューグループのAlison M Kemp氏らによる。研究報告は、BMJ誌2008年10月2日号に掲載された。システマティックレビューで異なる骨部位の骨折を比較研究レビューのデータソースは2007年5月までのMedline、Medline in Process、embase、Assia、Caredata、Child Data、CINAHL、ISI Proceedings、Sciences Citation、Social Science Citation Index、SIGLE、Scopus、TRIP、Social Care Onlineのオリジナル研究論文、参考文献、テキスト、要約を対象とし言語文献検索(32のキーワード)された。選択された研究は、異なる骨部位の骨折(身体的虐待によるもの、および18歳未満の子どもに起きたその他ケースを含む)を比較研究したもの。総説、専門家の意見、検死研究、成人対象の研究は除外された。各論文を2人ないしは議論の余地がある場合は3人の異なる専門家(小児科医、小児レントゲン技師、整形外科医、児童保護に任ぜられている看護師のいずれか)によってレビューし行われた。またレビューではNHS Reviews and Disseminationセンターのガイダンスをベースとするデータ抽出シート、評価査定用紙、エビデンスシートが用いられた。メタ解析は可能な限り行われ、研究間の異質性を説明するため変量効果モデルで適合を図った。部位、骨折タイプ、発育段階も含めて判断することが大切選択された研究は32。乳児(1歳未満)と幼児(1~3歳)で頻繁に、虐待から生じている骨折が全身にわたって見受けられた。共通して見られたのが多発性骨折だった。自動車事故、虐待の証拠があった外傷を除き、虐待によると思われる骨折の可能性の確率が最も高かったのが肋骨骨折だった(0.71、95%信頼区間0.42~0.91)。虐待の定義付けに基づき、上腕骨骨折が虐待による確率は0.48(0.06~0.94)と0.54(0.20~0.88)の間だった。骨折タイプの解析は、子どもが転倒などで負いやすい上腕骨顆上骨折によってうまくいきそうもなかった。虐待の定義付けに基づき、大腿骨骨折が虐待による確率は0.28(0.15~0.44)と0.43(0.32~0.54)の間にあった。そして小児の発育段階は重要な選定要因であることが示された。頭蓋骨折が虐待による確率は0.30(0.19~0.46)で、虐待による骨折で最もよく見られた。虐待と無関係な骨折は線状骨折であった。本研究では、虐待による骨折の可能性の確率を算出するには、他の骨折タイプのデータが不十分だった。Kemp氏は「乳児や幼児の骨折で原因が確認できない場合は、身体的な虐待があることを潜在原因として考えなければならない。骨折それ自体だけでは、虐待によるものなのかそうでないかは区別できない。個々の骨折の評価では、部位、骨折タイプ、発育段階が、虐待可能性の判定を助けてくれる」と結論。「この分野の質の高い比較研究は限られている。さらなる前向きな疫学研究の必要が示される」と提言している。

395.

概ね必要適格なケアを受けている:イギリス50歳以上成人

健康問題を有する人へのヘルスケア介入は効果的に行われているのか。イギリスの50歳以上成人を対象とする調査が、イーストアングリア大学医学部健康政策実践部門のNicholas Steel氏らにより行われた。BMJ誌2008年8月13日号より。32の臨床指標と7つの質問を用いて評価調査は、面談方式による全国統一のサーベイアンケートで、公的・私的を問わず提供されたケアの質の評価をカバーできる指標を有する。参加者は、全イングランドの世帯を対象とする経時的研究(English longitudinal study of ageing)の8,688人で、そのうち4,417人は13の健康問題(虚血性心疾患、うつ、糖尿病など)のうち1つ以上を有していた。主要転帰は、32の臨床指標と7つの質問を用いて、患者である参加者が受けていると回答した介入の適格性の割合と集計スコア。障害や虚弱問題の領域では不十分調査の結果、患者は1万9,082種類の必要適格なケアを受けていた。必要適格なケアを受けているかは、参加者の健康状況によって異なった。最も適格にケアを受けていたのは「虚血性心疾患」の問題を有する患者で83%、「難聴」79%、「疼痛マネジメント」78%、「糖尿病」74%、「禁煙」74%、「高血圧」72%、「脳卒中」65%、「うつ病」64%、「要介護」58%、「視覚障害」58%、「骨粗鬆症」53%、「尿失禁」51%、「転倒マネジメント」44%、「変形性関節症」29%と続き、「全体的に」62%だった。ケアの適格性は、老化に伴う問題(55%)よりも医学的問題(74%)に関するもののほうが高い。また、一般開業医の報酬対象となっている健康問題のほうが(75%)、対象外となっている健康問題(58%)よりも高かった。Steel氏は「推奨されているケアは、障害や虚弱問題の領域では十分に提供されていなかった。よりよい健康アウトカムを成し遂げるためのケア改善の努力は広範囲にわたり必要だが、特に高齢者のQOLに影響を及ぼす慢性疾患の問題で必要である」と結論している。

396.

エビデンスある高齢者の転倒防止対策を普及させよう

米国エール大学医学部のMary E. Tinetti氏らは、「転倒は高齢者によくみられる一般的な病的状態である。またその効果的な予防対策は明らかになっているにもかかわらず、十分に活用されていない」として、コネティカット州において、地域医療や看護・介護関係者に転倒防止対策を採るよう介入を行った。結果、転倒関連の外傷を減らすことができたと報告している。NEJM誌2008年7月17日号より。介入で投薬量減少やバランス・歩行訓練などを推奨調査は非無作為化デザインにより、プライマリ・ケア医師の臨床実践が変わるように介入した「介入地域」と、介入しなかった「通常ケア地域」で、転倒による外傷の発生率を比較した。介入の内容は、医師および在宅看護・外来リハビリテーション・高齢者施設に勤務するスタッフに対して、転倒予防の効果的リスクアセスメントと戦略(例えば投薬量の減少、バランス・歩行訓練)の採用を奨励することだった。転帰は、転倒による重症外傷(股関節等の骨折、頭部外傷、関節脱臼)の発生率と、70歳以上の転倒による医療サービス利用(千人年当たり)とした。介入は2001~2004年に行い、2004~2006年に評価した。重症外傷発生率、医療利用率比ともに低下介入前における、転倒による重症外傷の補正発生率(千人年当たり)は、「通常ケア地域」で31.2、「介入地域」では31.9だったが、評価期間中の補正発生率は、「通常ケア地域」の31.4から「介入地域」は28.6へ低下(補正率比0.91、95%ベイズ信用区間:0.88~0.94)。介入前と評価期間を比較すると、転倒関連の医療利用率(千人年当たり)は、「通常ケア地域」では68.1から83.3へ上昇したが、「介入地域」では70.7から74.2への上昇にとどまった(補正率比:0.89、95%信頼区間:0.86~0.92)。今回の試験で介入を受けた医師の比率は、62%(プライマリ・ケア診療所212ヵ所中131ヵ所)から100%(在宅医療機関26ヵ所すべて)まで幅があった。以上を踏まえTinetti氏は、「転倒防止に関するエビデンスの普及と、臨床実践を変える介入を組み合わせて行うことが、高齢者の転倒による外傷を減らすことを可能とする」と結論した。(武藤まき:医療ライター)

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16-17歳の献血は合併症リスクが高い

米国では輸血や製剤用の血液需要増加を背景に、献血年齢の引き下げを求める動きが高まっているが、「若年」「初回献血」は合併症のリスクが高いことが知られている。このため米国赤十字社のAnne F. Eder氏らが、16-17歳の献血者の合併症リスクを調査。「献血リスクは年長者より高く、ドナーの安全に対する適切な対策が必要」と報告した。JAMA誌2008年5月21日号より。巡回採血車で献血の高校生と18歳以上を比較米国赤十字社による若年者(16-17歳)の献血量は、すでに全献血量の約8%を占め、各地の高校を定期的に回る採血車で献血する若者のうち、16-17歳の提供者は80%に上る。Eder氏らの調査は、採血車を運行する米国内9ヵ所の地方血液センターから、標準的な採血手順と定義、報告様式に基づくデータを求め、16-17歳で全血献血した者の合併症を、年長者と比較して評価した。対象は、2006年に米国赤十字社が9センターで採血した全血献血者で、16-17歳が14万5,678例、18-19歳が11万3,307例、20歳以上は151万7,460例。主要評価項目はドナー1万人当たりの全身性(失神など)等の合併症発生率とした。献血後に失神・転倒して負傷するケースも各年齢層の合併症は、16-17歳が1万5,632例(10.7%)、18-19歳が9,359例(8.3%)、20歳以上は4万2,987例(2.8%)で、多変量ロジスティック回帰分析の結果、「若年」であることが合併症と最も強く関連(オッズ比:3.05、95%信頼区間:2.52~3.69、P<0.001)。次いで、「初回献血」(2.63、2.24~3.09、P<0.001)、「女性」(1.87、1.62~2.16、P<0.001)と続いた。失神して転倒、負傷するケースもあり、16-17歳群が86件(5.9件/万)と有意に多く、18-19歳群が27件(2.4件/万、オッズ比:2.48、95%信頼区間:1.61~3.82)、20歳以上群が62件(0.4件/万、14.46、10.43~20.04)の順だった。16歳の献血者で、軽度でも合併症を経験したグループが12ヵ月以内に再献血する割合は、問題のなかったグループより少なかった(52%対73%、オッズ比:0.40、95%信頼区間:0.36~0.44)。こうした結果からEder氏らは「16-17歳の若者が献血した場合、年長者より高い頻度で合併症と傷害が起こる。定期的に採血車が巡回する高校で、若い献血者を確保・維持するには、ドナーの安全に配慮する必要がある」としている。(朝田哲明:医療ライター)

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多因子転倒防止プログラムは短期入院では効果なし

高齢者転倒予防の多因子転倒防止プログラムの有効性について、入院期間が長期にわたる亜急性期およびリハビリテーション病棟での研究報告はあるが、入院期間が短い高齢者病棟においてもプログラムは有効なのか。シドニー大学のRobert G Cumming氏らが調査を行った。BMJオンライン版2008年3月10日付公表、本誌は2008年4月5日号で収載された。シドニーの12病院、平均入院期間7日、3,999例(平均年齢79歳)を対象本研究はクラスタ無作為化試験の手法で、シドニー(オーストラリア)にある12病院、24の高齢者介護病棟を対象に行われた。参加した患者は3,999例、平均年齢79歳、平均入院期間中央値は7日。介入病棟および対照病棟の転倒発生率および患者特性の基線値はほぼ同一である。介入病棟では看護師と理学療法士が転倒リスク評価、スタッフおよび患者指導、投与薬の評価、ベッド周りや病棟環境の改善、運動プログラムの提供、スタッフが必要と判断した患者にアラーム設置といった多因子の介入が提供された。介入量・期間は週25時間・計3ヵ月。主要評価項目は入院期間中に起きた転倒。介入病棟と対照病棟に転倒率の違い認められず全体として転倒は追跡期間中381件起きた。介入病棟と対照病棟との間に、転倒率の違いは認められなかった。発生減少率はそれぞれ、9.26/1,000ベッド日、9.20/1,000ベッド日(P=0.96)。個々の入院期間、過去の転倒率補正後のインシデント率は0.96(95%信頼区間:0.72~1.28)だった。このためCumming氏は、「多因子転倒防止プログラムは、比較的短期入院の高齢者病棟では効果的ではなかった」と結論づけた。

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麻薬メトカチノン常用者に特徴的なパーキンソン様症候群はマンガンの作用

東ヨーロッパとロシアでは、違法合成麻薬メトカチノン(エフェドロン、ロシアでは通称cat等で知られる)の静注常用者に特徴的な錐体外路症候群が観察されている。ラトビアにあるリガ・ストラディン大学のAinars Stepens氏らのグループは、平均(±SD)6.7(±5.1)年にわたってメトカチノンを常用、錐体外路症状を呈していたラトビア成人23例について調査を行った。対象者が用いていたメトカチノンは、エフェドリンまたは偽エフェドリンの過マンガン酸カリウム酸化作用を用いて、家内製造されたものだった。NEJM誌2008年3月6日号より。常用4~5年で全例が歩行障害、高率で発声不全を発症対象全員がC型肝炎ウイルス陽性で、さらに20例はヒト免疫不全ウイルス(HIV)が陽性だった。聞き取り調査によって神経症状(歩行障害20例と発声不全3例)が最初に発症したのは、メトカチノン使用開始から平均5.8±4.5年。神経学的評価を行ったところ、23例全例で歩行障害と後ろ向き歩行困難を呈し、11例は毎日転倒、そのうち1例は車椅子を使用していた。21例は歩行障害に加えて発声不全があり、そのうち1例は口がきけなかった。認知機能の低下が報告された例はなかった。神経障害に溶液中のマンガンが関与と結論MRI検査では、現在もメトカチノンを常用している全10例に、T1強調画像で淡蒼球、黒質、無名質に対称性の高信号域が認められた。元常用者13例(最後に使用して2~6年経過)では、信号変化のレベルはより小さかった。全血マンガン濃度(正常値<209nmol/L)は、現在もメトカチノンを常用している者は平均831nmol/L(範囲201~2,102)、元常用者が平均346nmol/L(範囲114~727)だった。なおメトカチノン使用を中止した後も神経障害は回復しなかった。これらから研究グループは、メトカチノン溶液中のマンガンが持続的な神経障害を引き起こしているのではないかと結論づけている。(武藤まき:医療ライター)

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高齢者に対する複合的介入が、安全で自立的な生活を可能にする

高齢者は、身体機能の低下によって自立性が失われることで、入院や介護施設での長期的なケアが必要となり、早期の死亡につながる。英国Bristol大学社会医学科のAndrew D Beswick氏らは、高齢者に対する身体的、機能的、社会的、心理学的な因子を考慮した複合的介入により安全で自立的な生活が可能となることを明らかにした。Lancet誌2008年3月1日号掲載の報告。地域ベースの複合的介入の効果を評価する系統的レビューとメタ解析研究グループは、高齢者における身体機能や自立性の維持を目的とした地域ベースの複合的介入の効果を評価するために、系統的なレビューを行い抽出されたデータについてメタ解析を実施した。解析の対象は、自宅で生活する高齢者(平均年齢65歳以上)に対し地域ベースの多因子的な介入を行い、少なくとも6ヵ月以上のフォローアップを実施した無作為化対照比較試験とした。評価項目は、自宅での生活、死亡、介護施設入所や病院入院、転倒、身体機能であった。自宅生活不能、介護施設入所、病院入院、転倒のリスクが低下89試験に登録された9万7,984人について解析した。多因子的な複合的介入により、自宅生活不能(相対リスク:0.95、95%信頼区間:0.93~0.97)、介護施設入所(同0.87、0.83~0.90)のリスクが有意に低下したが、死亡リスクには有意差は認めなかった(同1.00、0.97~1.02)。病院への入院(同0.94、0.91~0.97)および転倒(同0.90、0.86~0.95)のリスクも介入群で有意に低下し、身体機能も良好な傾向が見られた。介入法の特定のタイプや強度によるベネフィットの差は認めなかった。ただし、死亡率が増加した集団では、介入により介護施設入所率が低下していた。また、1993年以前に開始された試験で特にベネフィットが高いことが明らかとなった。Beswick氏は、「複合的介入は高齢者の安全で自立的な生活を支援できることが判明した。個々人の必要や好みに合わせたテーラーメイドな介入も可能かもしれない」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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