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Dr.林の笑劇的救急問答8【外傷診療編】

第3回 「腹部外傷のABC」第4回 「骨盤外傷のABC」 第3回 「腹部外傷のABC」患者に頭部出血があったり意識混濁や意識レベルの低下がみられると、ついつい頭部の外傷ばかりに目がいってしまいます。しかしショックバイタルがあったら先ず腹部を疑うのが大原則です。腹部の外傷は受傷後長時間の経過観察が必要です。出血と腹膜炎に注意して、視診・聴診・触診・打診に加えてFAST検査を再度、反復して実施するとともに、必要に応じてX線、CT検査を行ないます。また小児の腹部外傷は、成人とは異なる特徴がありポイントを抑えることが出来ます。ドラマで再現した症例でポイントを理解しましょう。【症例1】50代男性。酔っ払って歩行中に側溝に転落。脈拍:100/m、血圧:120/80mmHg、SpO2:98%。患者は頭部の疼痛を訴え出血も多く意識も混濁している。胸部および骨盤X線では重篤な症状が見られず、頭部CTを行ったところ検査途中から意識レベルが低下、、、慌てる研修医たちにDr.林は「ショックの原因検索」が大事と諭します。【症例2】10歳男児.自転車走行中に交差点で自動車との接触事故に遭った.血圧:100/80mmHg,脈拍:90/m,SpO2:99%(15ℓリザーバー投与時),意識はクリア.交通事故外傷の診察に研修医は意欲を燃やすが患児は注射を嫌がって暴れ、ライン確保すら巧くできない.腹部にハンドル痕があるが疼痛(−)/FAST(−)のため研修医は「問題なし」として帰宅させたいが・・・。第4回「骨盤外傷のABC」防ぎ得る外傷死の頻度ナンバーワンは実は骨盤骨折と言われています。骨盤骨折を順序よく診断し治療出来なくてはなりません。整形外科や放射線科医との連携が必要になってくる場合もあり、Primary survey,secondary surveyのポイントをよく確認しておく事がとても大切です。骨盤外傷を正しく診断し治療する為の戦略について解説します。【症例1】45歳男性.歩行中に自動車にはねられた。意識は清明、脈拍:98/m、SpO2:99%(リザーバー10ℓ投与下),来院時血圧:100/70mmHg.PrimarysurveyではX線/FASTともに重篤な出血や骨折が見つからない。しかし徐々にショック指数が高まり患者の容態も悪くなってゆく。Dr.林は検査所見にこだわる研修医に触診も大事であることを諭す。【症例2】30代男性。バイクで走行中に滑って転倒した。意識レベル:JCSⅠI-10、血圧:80/50mmHg、脈拍:110/m、SpO2:99%(リザーバー10l投与下)。呼びかけに対しては反応するが意識は混濁しており話の内容は混乱している。全身の疼痛を訴える。初回FASTは陰性だが骨盤X線造影で不安定骨折と見られる所見あり。研修医はサムスリングを使用しようとするが・・・。

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長期療養施設の高齢者の多くは、本当は痛みに耐えている

 The Services and Health for Elderly in Long TERm care(SHELTER)研究において、ヨーロッパの長期療養施設の入所者は国によって差はあるものの疼痛有病率が高く、大部分の入所者は疼痛が適切にコントロールされていると自己評価しているが、実際にはまだ強い痛みを有している入所者が多いことが明らかとなった。ドイツ・ウルム大学Bethesda病院のAlbert Lukas氏らによる報告で、こうした結果の背景にある理由を分析することが、疼痛管理の改善に役立つ可能性があるとまとめている。Journal of the American Medical Directors Association誌オンライン版1月31日の掲載報告。 今回の研究は、長期療養施設の入所者における疼痛について評価し、国家間で比較することが目的であった。 対象はヨーロッパ7ヵ国およびイスラエルの長期療養施設の入所者計3,926人で、インターライの長期療養施設(Long Term Care Facility:LTCF)版を用い疼痛の有病率、頻度、強さなどを評価した。 患者関連特性と不適切な疼痛管理の相関を二変量および多変量ロジスティック回帰モデルにより解析した。 主な結果は以下のとおり。・疼痛を有していた入所者は1,900人(48.4%)であった。・疼痛有病率は、イスラエルの19.8%からフィンランドの73.0%まで、国によって大きく異なった。・疼痛は、性別(女性)、骨折、転倒、褥瘡、睡眠障害、不安定な健康状態、がん、うつ病および薬剤数と正の相関があり、一方で認知症と負の相関があった。・多変量ロジスティック回帰モデルにおいて、睡眠障害を除いたすべての因子が有意であることが示された。・疼痛は十分コントロールされていると自己評価した入所者は88.1%に上ったが、痛みがないまたは軽度であると回答したのは56.8%にすぎなかった。【おすすめコンテンツ】~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中! ・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート ・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケース解説

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過去半年間にヒヤリ・ハットを経験した医師は60%以上

 昨年12月の日本医療機能評価機構の発表によると、同年7-9月の四半期に報告を受けた医療事故情報が2004年10月に分析を始めて以降、過去最多の814件だったという。ケアネットが行った、ケアネット・ドットコム会員の医師1,000人に対して行ったアンケート調査では、医師の約64%が半年以内にヒヤリ・ハットを経験していることがわかった。アンケート結果の詳細は、5日に報告した。 調査は2013年1月17日~18日に、インターネット上で実施したもの。有効回答数は1,000件。 日々の診療でのヒヤリ・ハットの経験頻度について尋ねたところ、『週に一度』(5.7%)『月に一度』(26.3%)を合わせ3人に1人が月に一度以上は何らかの形でヒヤリ・ハットに遭遇していると回答した。一方『なし』とした医師は全体の14.4%。内容別では『薬剤の処方・投与』『治療・処置』『転倒・転落』と続くが、「報告は形式的で成果が上がっていない。誤薬と転倒のみが表立っていて、もっと問題視すべき事象は表に出ないまま」「報告数を増やすため些細なものも報告している」などの他、「“報告すること”が目的化してしまい、有効な対策の検討にはつながっていない」といった声も挙がった。 さらに、ヒヤリ・ハットに遭遇した場合の報告の有無について尋ねると、全体の41.1%が『全て報告する』と回答。その他の医師の“報告しない理由”として、『レポート作成に手間がかかるため』46.0%、次いで『院内に報告の仕組みがないため』『報告しても事故予防に役立たないと思うため』と続く。『責任追及される、評価・懲罰に関わるため』とした医師は全体の2.2%。しかしその内訳は勤務施設によって異なり、診療所・クリニックにおいては『報告の仕組みがない』が約6割に上った。 また、報告が防止策につながっているのか、責任追及や懲罰についてなど、具体的なエピソードも、あわせて公開した。「ヒヤリ・ハット」、先生は報告してますか?記名or匿名?電子or紙?実態大公開http://www.carenet.com/enquete/dr1000/024.html

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「ヒヤリ・ハット」、先生は報告してますか?記名or匿名?電子or紙?実態大公開

診療中、検査中、手術中、「おっと危ない」と心のなかでつぶやいたこと、ありませんか?「ひょっとしてとんでもない事態になっていたかも」と大汗をかいても、喉元過ぎれば…でまた繰り返してしまったり。最近は「とにかく報告をあげろ」という病院も増えているようですが、果たして防止策につながっているのか?責任追及や懲罰は?具体的なエピソードと共に、一挙公開します!コメントはこちら結果概要3人に1人が月に一度以上ヒヤリ・ハットを経験、最も多いシーンは『薬剤の処方・投与』日々の診療でのヒヤリ・ハットの経験頻度について尋ねたところ、『週に一度』(5.7%)『月に一度』(26.3%)を合わせ3人に1人が月に一度以上は何らかの形でヒヤリ・ハットに遭遇していると回答。一方『なし』とした医師は全体の14.4%。内容別では『薬剤の処方・投与』『治療・処置』『転倒・転落』と続くが、「報告は形式的で成果が上がっていない。誤薬と転倒のみが表立っていて、もっと問題視すべき事象は表に出ないまま」「報告数を増やすため些細なものも報告している」などの他、「“報告すること”が目的化してしまい、有効な対策の検討にはつながっていない」といった声も挙がった。経験医師の約6割が『報告しないことがある』、最も多い理由は『レポート作成が手間』そうしたケースに遭遇した場合の報告の有無について尋ねると、全体の41.1%が『全て報告する』と回答。その他の医師の“報告しない理由”として、『レポート作成に手間がかかるため』46.0%、次いで『院内に報告の仕組みがないため』『報告しても事故予防に役立たないと思うため』と続く。『責任追及される、評価・懲罰に関わるため』とした医師は全体の2.2%。しかしその内訳は勤務施設によって異なり、診療所・クリニックにおいては『報告の仕組みがない』が約6割に上った。報告システムの電子化進むが、「かえって面倒」との声も施設の報告体制・安全対策として、4割近い医師が『スタッフ用マニュアル』『定期会議での検討・分析』『研修・セミナー』があると回答。当事者を明らかにするか否かについては、『記名式』35.5%、『匿名式』17.2%であった。報告手段については『紙ベース』44.9%、『電子化された報告システム』32.3%となったが、電子化システムの導入について施設別に見ると、一般の病院では26.5%だったのに対し、参加登録申請医療機関では60.2%、報告義務医療機関では70.1%となった。しかし前述の“報告しない理由”で『レポート作成が手間』とした医師は、報告義務医療機関では66.3%に上り「紙ベースの時のほうが報告しやすかった」「面倒なシステムだと、文化以前の段階で敬遠されてしまう」といった声も見られた。設問詳細ヒヤリ・ハットおよびその報告についてお尋ねします。昨年12月21日のCB医療介護ニュースによると、『日本医療機能評価機構は20日、今年7-9月の四半期に報告を受けた医療事故情報が、同機構が医療事故情報収集・分析・提供事業を始めた2004年10月以降で最多の814件だったことを明らかにした。(中略)同機構によると、9月末現在、報告が義務付けられている国立病院や特定機能病院など「報告義務対象医療機関」は273施設で、自主的に事業に参加している「参加登録申請医療機関」は637施設。7-9月は、157施設の報告義務対象医療機関から計726件、29施設の参加登録申請医療機関から計88件が報告された。同機構の担当者は、前年の報告数が約2800件に上ったことや、今回、四半期としての記録を更新したことから、「事故を報告する文化が定着しつつあるのではないか」と話している(略)』とのこと。医療事故につながる事例として「ヒヤリ・ハット」あるいは「インシデント」があります。日本医療機能評価機構による「ヒヤリ・ハット」の定義は以下です。(1)医療に誤りがあったが、患者に実施される前に発見された事例。(2)誤った医療が実施されたが、患者への影響が認められなかった事例または軽微な処置・治療を要した事例。ただし、軽微な処置・治療とは、消毒、湿布、鎮痛剤投与等とする。(3)誤った医療が実施されたが、患者への影響が不明な事例。そこで先生にお尋ねします。Q1.日々の診療におけるヒヤリ・ハットのご経験について過去1年間で最も近い頻度をお選び下さい。週に一度月に一度半年に一度年に一度なし(Q1で「なし」を選んだ方以外)Q2.どのような場面でヒヤリ・ハットを経験しましたか?当てはまること全てをお選び下さい。治療・処置薬剤の処方・投与ドレーン・チューブ類の使用転倒・転落検査医療機器の使用輸血その他(Q1で「なし」を選んだ方以外)Q3.経験したヒヤリ・ハットへの報告の有無についてお答え下さい。全て報告している報告しないことがある全く報告しない(Q3「全て報告している」を選んだ方以外)Q4.報告しない理由について最も当てはまるものをお選び下さい。レポート作成等に手間がかかるため責任追及されるあるいは評価・懲罰に関わるため報告しても事故予防に役立たないと思うため院内に報告の仕組みがないためその他Q5.ご勤務施設のヒヤリ・ハット報告体制、および医療安全対策について当てはまることを全てお選び下さい。電子化された報告システムを導入している報告書は紙ベースである報告は匿名式である報告は記名式である報告されたヒヤリ・ハットに関し定期的な会議にて検討・分析している報告件数・内容などが集計され院内に発表される医療安全に関わる研修・セミナーを実施しているスタッフ用医療安全マニュアルがある上記全て当てはまらないQ6. コメントをお願いします(具体的なエピソード、防止策、報告に関する勤務施設内での対応方針、報告したことによる評価・責任追及・懲罰の有無、その他ご意見など何でも結構です)F1. 先生が勤務されている施設を以下からお選び下さい。おわかりにならない先生は「上記以外」からお選び下さい。「報告義務医療機関」とは国立高度専門医療センター及び国立ハンセン病療養所独立行政法人国立病院機構の開設する病院学校教育法に基づく大学の付属施設である病院(病院分院を除く)特定機能病院「参加登録申請医療機関」とは上記以外で医療事故情報収集等事業の参加に希望する医療機関報告義務医療機関参加登録申請医療機関上記以外の病院(20床以上)上記以外の一般診療所・クリニック(19床以下)その他F2. 年代F3. 診療科2013年1月17日(木)~18日(金)実施有効回答数1,000件調査対象CareNet.com会員コメント抜粋(一部割愛、簡略化しておりますことをご了承下さい)「報告自体が医師の負荷を増しているのが悩ましい」(40代,内科,上記以外の病院)「同じような失敗が性懲りもなく繰り返されるが、対策を立てると減少する事例、患者サイドの要因が大きくなかなか減少しない事例がある。」(40代,脳神経外科,上記以外の病院)「報告システムはあるが形式的で結局なにも成果があがっていない。 誤薬と転倒のみが表立っていてもっと問題とするべき事項は表に出ないまま終わっている」(50代,神経内科,報告義務医療機関)「薬剤名の間違い(電子カルテで上下の段にある薬を誤って処方してしまう)がほとんど」(60代以上,耳鼻咽喉科,上記以外の一般診療所・クリニック)「他職種のヒヤリハットであっても、全て医師が患者や家族に説明する体制になっていてなんとなく腑に落ちないときがある」(40代,精神・神経科,上記以外の病院)「どの程度から報告したらよいか悩むことがある。今回、報告しなかったのは子どもが診察室の椅子で暴れて落ちそうになったことであり、ヒヤリハットの定義に当てはまらないと思われるが、転落してケガをしたら報告しなくてはならない。小児科であり、今回と同様のことをすべて報告していたらきりがない。以前の病院では、名前を伏せたレポートを冊子化しており、“こんなことが起こりうるのか”“このように注意したらよいのか”など参考になることがあった。レポートを提出することで注意されたり非難されたりしたことは一切なかったので、その環境はレポートを提出しやすくなるので大切」(60代以上,小児科,上記以外の病院)「ただ単に報告するだけでは、重大事故は防げないと思う。重大事故が既に過去に生じているから「ヒヤリ・ハット」と認識できるのであり、それだけでは新たな重大事故防止に不十分であると思うからです。報告することが目的のように勘違いされている風潮があります。重大事故を想像・想定する一歩進めたKYT(危険予知トレーニング)をもっと重視するべき」(50代,外科,上記以外の病院)「エピソードの報告があっても、原因・対応策の真剣な取り組みが見られないし、指導する者が居ない」(60代以上,内科,上記以外の一般診療所・クリニック)「医師は本来業務が煩雑で、ヒヤリ・ハットが多いが、忙しすぎていちいち報告できないのが現状」(40代,内科,上記以外の病院)「インシデント・アクシデントの報告は病院にとって宝であり、原則責任追及や懲罰はなく、特に発見者や対応策の提示者には表彰があります。」(40代,内科,上記以外の病院)「ピリン禁忌の患者にピリン系薬剤を処方し薬剤師より注意された。」(40代,内科,上記以外の一般診療所・クリニック)「電子カルテを最近導入したが,処方の際に小数点が落ちてしまったり,前回処方をコピーしようとして 前々回の処方をコピーしたりすることがある。電子カルテの操作性や,日付順に記載内容が表示されない など,電子カルテそのもののできが悪いとしか言いようがない。」(50代,小児科,報告義務医療機関)「昔なら問題にすらならないようなことまで、問題にされる傾向である。」(50代,内科,上記以外の一般診療所・クリニック)「事故を起こした個人の責任とせず、組織で再発防止を考える最近の流れに、大いに賛成しています。 昔は、ひどかった・・・。」(40代,内科,上記以外の一般診療所・クリニック)「ミスは誰にでもあるので、個人的な責任を問わないという姿勢も大事だとは思うが、明らかにミスを繰り返す傾向のある人もいる。その人に対して、どう対応すればいいのか?」(50代,小児科,上記以外の病院)「事故を報告する文化の醸成が重要、文化のないところにシステムを構築しても機能しないのではないかと思う。それと、報告システムの手間の軽減策、あまりに面倒なシステムだと、それが足かせとなって文化以前の段階で敬遠されてしまう。」(50代,消化器科,報告義務医療機関)「後日、重要なものについては医療安全管理室から事情聴取がある。」(60代以上,麻酔科,その他)「codeblueの館内放送が流れない部屋があったり、ブレーキの壊れた車椅子で院外に出た患者が危うく交通事故に合いそうになったりなど。」(60代以上,救急医療科,その他)「対策はしても責任追及はしない。あまりに報告が少ない部署は、むしろ要注意。」(50代,整形外科,上記以外の病院)「オカーレンスレポートを提出した事がありますが、某教授から退職するように強要されました。責任を追及しないなんて全くの嘘ですので。」(50代,循環器科,上記以外の一般診療所・クリニック)「責任追及ではないので、報告することで病院機能改善の方向に向かうと考えている。」(50代,耳鼻咽喉科,参加登録申請医療機関)「自身も含めインシデント・アクシデントの報告・連絡・相談は思うように行かない・・というのが実感」(40代,内科,上記以外の病院)「玄関前が凍結しており、患者が転倒することがあった。打撲程度であり、患者家族にも理解をしてもらえた。それ以後、翌朝凍結が予想されるときには診察終了時に玄関前に凍結防止剤(塩)を散布し、朝には湯をかけて凍結転倒しないよう配慮している。」(50代,内科,上記以外の一般診療所・クリニック)「報告件数・内容などが集計され院内に発表され対策会議にて再発予防策を策定しています。」(50代,泌尿器科,上記以外の病院)「自分自身、規格違いの内服薬の誤処方、静注薬の過量投与などを起こしたことがあるが、インシデントが起きたことを患者に説明すると、院長名の文書で具体的な改善策を求められ、患者側の意識が以前より高くなっていると感じる。当院ではレベル3b以上では、緊急に医療安全管理委員会が開かれて対応を協議している。報告は原則として安全管理システムの向上を目的としており、当事者の責任追及や懲罰はなされないのが通常の対応であるが、分析によって明らかに当事者個人の対応に問題があった場合はあり得る。」(50代,小児科,参加登録申請医療機関)「以前勤めていた病院で、手術中のエピソード(腰椎麻酔下での血圧低下と一過性の呼吸抑制のため一時術野から手をおろし対応)を報告したら、現場を知らない事務方に医療事故対応をとられる寸前のところだった。県立大野病院の事件の直後の頃である。ヒヤリ・ハットの報告も大事だが、関わるすべての人にきちんと責任をもってもらいたい。」(40代,産婦人科,上記以外の一般診療所・クリニック)「絶対ベッド上安静の患者(認知症なし)が勝手にベッドから降りようとして転倒した。 少ないスタッフでの看護にも限界あり。」(40代,整形外科,上記以外の病院)「外来での処方忘れや、看護師への細かい指示の行違い等、報告しているとキリがない。これらを無くすることは現実的には無理だと思う。 報告すべき事例と、しなくても良い事例の線引きが困難である。 」(40代,循環器科,報告義務医療機関)「ヒヤリハットの範囲が不明確である。処方での入力ミス(非危険薬):用法用量などがキーの入力ミスで 入力後気づく、あるいは薬剤師からの疑義解釈で気づくなどの場合、ヒヤリハットといえるか必ずしも明確でない(手書きでは起こらないことが電カルでは頻繁に起こる)。」(60代以上,リウマチ科,上記以外の病院)「電子カルテシルテムの様式が煩雑でハードルが高い」(50代,眼科,参加登録申請医療機関)「無床クリニックでの安全体制って、皆様いかが取り組んでいらっしゃるのか、知りたいところです。」(40代,内科,上記以外の一般診療所・クリニック)「研修医は直属の上司がはっきりしないため、報告システムが確立していない。」(30代以下,内科,報告義務医療機関)「よく似た名前の患者は、呼名で確認しても患者がハイと返事するので困った。番号で呼ぶのが良いかもしれない。」(50代,腎臓内科,上記以外の病院)「定期的に発信していかないと、報告数が減少してしまいます。報告者への責任や懲罰はありませんが、個別にはいろいろともめる原因になっているようです。」(40代,産婦人科,参加登録申請医療機関)「日常業務に差し支えのない程度の簡単な報告様式にするか、事務が書いてくれるなどしてくれるといいのだが。」(30代以下,産婦人科,報告義務医療機関)「外来処方時の日数間違えなどは登録していません。 入院中の点滴オーダー忘れや検査で有害事象が起きたときはすべて報告しています。」(30代以下,循環器科,その他)「当院では報告しても周囲に報告やお知らせなどせず、反映されていない」(40代,整形外科,報告義務医療機関)「もっと簡単なフォーマットになっていればいいと思います。」(40代,その他,報告義務医療機関)「うちの施設では、犯人探しになってしまうことが多い」(40代,呼吸器科,上記以外の病院)「電子カルテになって、電子化された報告システムになったが、紙ベースのときの方が報告しやすかった」(50代,外科,上記以外の病院)「懲罰はないが、あまりにひどい場合には依願退職した人もいる。」(60代以上,放射線科,参加登録申請医療機関)「報告による評価・責任追及・懲罰の有無はないとされているが、長期的に見た場合、全くヒヤリハット報告がない医師と、正直にすべて報告した医師とで、本当に評価の差が無いのか不安。」(30代以下,小児科,その他)「報告はある程度保存したあとは、残さないというルールでなければ報告は増えないと思います。」(40代,整形外科,上記以外の病院)「どこの病院でも医師からのインシデントレポート(ヒヤリ・ハット)は少ない。関係者が複数の場合、だれが報告を上げるかでも病院幹部の考え方が違っており統一されていない点が問題である。医療評価機構などが報告数を上げることを目的にしているように医師には思えてくるのではないか?真の医療の質の向上に結びついているという実感がないことが多いため報告しない可能性が高いと思う。」(50代,小児科,参加登録申請医療機関)「安全に対する対策費の増額が必要であるが、現状の医療環境の中で捻出が困難」(50代,消化器科,その他)「ワクチンの打ち間違えは痛かった。院長である以上、スタッフ全員に目を配らなければ。」(50代,小児科,上記以外の一般診療所・クリニック)「看護師による誤投薬で責任を取らされたことがあり腑に落ちない」(30代以下,呼吸器科,上記以外の病院)「処方箋の記入間違いがどうしても減らず困っています。」(50代,内科,参加登録申請医療機関)「医者は基本的にインシデント報告をしない人が多い気がします」(30代以下,精神・神経科,報告義務医療機関)「報告により責任追及は行われないことになっているが、誰が見ても防げる単純なミスなどはみっともないと思われるのは通常。どこまでを報告範囲とすべきか、決まっていないものもあり、手術時間の延長についても報告されない場合とされる場合がある」(40代,外科,報告義務医療機関)「MRM委員会と事例検討会が毎月開催されています。」(40代,呼吸器科,その他)「ヒューマンエラーは決してゼロにはならないとの観点から、ヒヤリハットの報告システムは重要と考える。しかし、報告したことや情報を収集したことで満足し、業務内容の改善等に生かされないのであれば意味がない。」(40代,血液内科,報告義務医療機関)「外来診察で高度の認知症のある別の患者が入室したことがあったが、診察終了までそれに気がつきませんでした。」(30代以下,皮膚科,報告義務医療機関)「病院首脳でヒヤリハット会議に出席しているメンバーに、ヒヤリハット事例の常連メンバーがおり、会議自体が形骸化している」(40代,内科,参加登録申請医療機関)「医師からの報告が少ないので、数字を増やすため、些細なものも報告している」(50代,内科,上記以外の一般診療所・クリニック)「報告しても、防ぐ手立てがないものが多い。今後、お互いに気をつけましょうで終わってしまう。」(50代,精神・神経科,上記以外の病院)

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【CASE REPORT】非器質的疼痛とオピオイド治療 症例経過

運動器慢性疼痛の分類通常、器質的な「痛み」は侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛に分類され、それ以外のものはしばしば心因性疼痛と分類される。心因性疼痛の定義は明確でなく、器質的疼痛でないものの中に機能性疼痛症候群、中枢機能障害性疼痛と心因性疼痛などが存在するという考え方を提唱するものもある(図1)。機能性疼痛症候群は、King's College LondonのSimon Wesselyが提唱した機能性身体症候群(Functional Somatic Syndrome :FSS)という概念に含まれるものである。FSSは諸検査で器質的あるいは特異的な病理所見を明らかにできない持続的で特徴的な身体愁訴を呈する症候群で、それを苦痛と感じて日常生活に支障を来しているために、さまざまな診療科を受診する。愁訴としては「さまざまな部位の痛み」「種々の臓器系の症状」「倦怠感や疲労感」が多く、代表例として過敏性腸症候群、慢性疲労症候群、線維筋痛症、脳脊髄液減少症、間質性膀胱炎、慢性骨盤痛などがある。FSSの病態のうち、不安、痛み、睡眠、食欲などの症状に脳内の神経伝達物質が関与していると考えられている。これらの中で中枢機能障害性疼痛(central dysfunctional pain)は痛みを主訴とするものであり、線維筋痛症はその代表例である。また整形外科で時々遭遇する術後疼痛症候群は、「痛み」の原因を特定することが難しい。痛みの機序には「侵害受容性疼痛」「神経障害性疼痛」「中枢機能障害性疼痛(機能性疼痛症候群)」のように分類されるが、ヒトの「痛み」はあくまで主観的なものであり、完全に分類することができるわけではない。さらに、ほとんどの痛みはこれらが複雑に絡み合った混合性疼痛であると考えられる。痛みに含まれるこれらの構成要素のバランスを考えることは、痛みの治療選択の大きな助けになる1)。画像を拡大する不適切なオピオイド処方例症例経過37歳女性 肩腱板断裂手術後難治性疼痛転倒し発症した肩腱板断裂に対して肩関節鏡視下に腱板縫合術が行われた。術後肩関節周囲部痛が出現し、肩の可動域訓練が行えなかった。再度、肩関節の手術が行われたが、疼痛は変わらなかった。その後CRPS(複合性局所疼痛症候群)を疑い、術後難治性疼痛と診断され、NSAIDsにて効果が無かったことからオピオイドであるププレノルフィン貼付薬(商品名:ノルスパンテープ)5mgの投与が開始された。しかし、効果が無かったことから同剤が20mgまで増量された。その後も鎮痛効果が認められないため、当科を紹介受診した。肩関節の専門医の診察でも肩関節周囲部痛を説明できる器質的疾患は認められなかった。また、本人の申告では患側の上肢はまったく使用できず、常に三角巾にて固定が必要ということであったが、筋萎縮、骨萎縮は認められず、交感神経の異常を示唆する皮膚温・発汗・皮膚のツルゴール・皮膚色の異常を認めなかった。骨シンチでも異常を認めなかった。厚生労働省CRPS判定指標2)では、CRPSの診断には至らなかった。当院では、「痛み」の原因が器質的疼痛(侵害受容性疼痛および神経障害性疼痛)ではなく、心因性疼痛、機能性疼痛、中枢機能障害性疼痛を含めた非器質的疼痛と判断した。よって、ププレノルフィン貼付薬は不適切と判断し、1週間毎に15mg、10mg、5mg、0mgと減量した。さらに、「痛み」を受容しながら運動療法を行うための認知行動療法的アプローチを行った。当院での診察の経過中に精神疾患罹患があることが判明した。ププレノルフィン貼付薬を減量しても疼痛は変化しなかったが、認知行動療法的アプローチを導入したことで運動療法、可動域訓練が行えるようになり、患側上肢が日常生活動作で使用できるようになり、肩関節の可動域もほぼ正常化した。参考文献1)三木健司ほか.Practice of Pain Management.2012;3: 240-247. 2)住谷昌彦ほか.Anesthesia 21 Century.2008;10: 1935-1940.症例解説へ >>

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長期ケア中の高齢者の転倒原因、現場ビデオ画像で解析/Lancet

 長期ケア中の高齢者の転倒原因として最も多いのは不適切な体重移動であり、前方歩行中の転倒が多いものの、既報に比べれば歩行中の転倒は少なかったとの調査結果が、カナダ・サイモンフレーザー大学のStephen N Robinovitch氏らによって報告された。高齢者の転倒は保健医療上の重大な負担であり、長期ケア環境ではとくに重要となるが、高齢者の転倒状況や原因に関するエビデンスはほとんどないという。Lancet誌2013年1月5日号(オンライン版2012年10月17日号)掲載の論考から。ビデオ画像の解析で転倒状況を評価する観察試験 研究グループは、高齢者の転倒に関するエビデンスの確立を目的とした観察試験として、長期的ケアを受けている高齢者の実生活における転倒現場を撮影したビデオ画像の解析を行った。 本試験は、2007年4月20日~2010年6月23日の間にカナダ・ブリティッシュコロンビア州の2施設(Delta View:312床、デルタ地区、New Vista:236床、バーナビー市)で実施された。 施設の共用部(食堂、休憩所、廊下)にデジタルビデオカメラを設置した。転倒が起きると施設職員が事故報告書を作成し、知らせを受けた研究チームがビデオ画像を回収した。 有効性が確証された質問票を用いて個々の転倒事例の画像をレビューし、転倒時の不安定性の原因や動作を精査した。引き続き、種々の原因別、動作別の転倒率を評価した。既報よりも歩行時の転倒は少ない 130人(平均年齢78歳)から227回の転倒画像が得られた。 最も高頻度の転倒原因は不適切な体重移動(41%、93件)で、次いでつまづき/よろめき(21%、48件)、衝突/ぶつかり(11%、25件)、支え物の喪失(11%、25件)、脆弱(11%、24件)の順であった。滑り転倒は3%(6件)のみだった。 最も転倒率が高かった動作は前方歩行(24%、54件)で、次いで静かな立ち上がり動作(13%、29件)、坐位動作(12%、28件)の順であった。 既報に比べると、立ち上がりや移動動作開始時の転倒が多く、歩行時の転倒は少なかった。すなわち、支持基底面(BOS)よりも身体質量中心(COM)の動揺に起因する転倒が多かった。 著者は、「今回の結果は、転倒原因に関するより深い洞察をもたらし、バランス評価におけるより適切で効果的なアプローチを導出し、長期ケア中の高齢者の転倒予防に寄与する可能性がある」としている。

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世界中で起きている障害を有する人の高齢化/Lancet

 1990~2010年の20年間の世界の障害生存年(years lived with disability:YLD)について、オーストラリア・School of Population HealthのTheo Vos氏らがGlobal Burden of Diseases Study 2010(GBD2010)の系統的解析を行い報告した。その結果、10万人当たりのYLD有病率は20年間でほぼ一定であったが、年齢に伴う着実な上昇が認められたという。背景には人口増加と平均年齢の上昇があった。またYLDの最も頻度の高い原因(メンタル問題、行動障害、筋骨格系障害など)の有病率は減少しておらず、著者は「各国のヘルスシステムは死亡率ではなく障害を有する人の増加について対処する必要があり、その上昇する負荷に対する効果的かつ可能な戦略が、世界中のヘルスシステムにとって優先すべきことだ」と提言した。Lancet誌2012年12月15/22/29日合併号掲載の報告。世界の289の疾患・外傷の1,160の後遺症について系統的な解析を実施 研究グループは、GBD2010のデータを基に、その291の疾患・外傷リストのうち、障害をもたらす289の疾患・外傷の1,160の後遺症について、有病率、発生率、軽快した割合、障害持続期間、超過死亡率について系統的解析を行った。データは、公表されている研究、報告症例、住民ベースがんレジストリ、その他疾患レジストリ、マタニティクリニック血清サーベイランス、退院データ、外来ケアデータ、世帯調査、その他サーベイおよびコホート研究から構成された。 YLDを、シミュレーション手法により共存症について補正し、年齢、性、国、年度レベルで算出した。主因は、メンタル問題、行動障害、筋骨格系障害、糖尿病や内分泌系疾患 解析の結果、2010年の全年齢統合の1,160の後遺症の世界的な有病率は、100万人当たり1例未満から35万例まで広範囲にわたった。有病率と健康損失をもたらす重症度との関連はわずかであった(相関係数:-0.37)。 2010年のあらゆるYLDの有病者は7億7,700万人で、1990年の5億8,300万人から増加していた。 YLDをもたらした主要な要因は、メンタル問題と行動障害、筋骨格系障害と糖尿病や内分泌系疾患であった。 YLDの主要な特異的要因は、1990年と2010年でほぼ同様であり、腰痛、大うつ病、鉄欠乏性貧血、頸痛、COPD、不安障害、偏頭痛、糖尿病、転倒であった。 年齢別YLD有病率は、全地域で年齢に伴う上昇がみられたが、1990年から2010年にかけてわずかだが減少していた。 10万人当たりのYLD有病率は20年間でほぼ一定であった。 YLDの主要な要因の地域別パターンは、早期死亡による生命損失年(YLL)とよく似ていた。サハラ以南のアフリカでは、熱帯病、HIV/AIDS、結核、マラリア、貧血がYLDの重大な要因であった。

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世界の死因は過去20年で大きく変化、心疾患やCOPD、肺がんなどが主因に/Lancet

 1990~2010年の20年間の世界の死因別死亡率の動向について、米国・Institute for Health Metrics and EvaluationのRafael Lozano氏らがGlobal Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study 2010(GBD2010)の系統的解析を行い報告した。Lancet誌2012年12月15/22/29日合併号掲載の報告。世界の死因で感染症などは大幅に減少 GBD2010において研究グループは、世界187ヵ国から入手可能な死因に関わるあらゆるデータ(人口動態、言語剖検、死亡率サーベイランス、国勢調査、各種サーベイ、病院統計、事件・事故統計、遺体安置・埋葬記録)を集め、1980~2010年の年間死亡率を235の死因に基づき、年齢・性別に不確定区間(UI)値とともに算出し、世界の死因別死亡率の推移を評価した。 その結果、2010年に世界で死亡した人は5,280万人であった。そのうち最大の統合死因別死亡率(感染症・母体性・新生児期・栄養的)は24.9%であったが、同値は1990年の34.1%(1,590万/4,650万人)と比べると大幅に減少していた。その減少に大きく寄与したのが、下痢性疾患(250万人→140万人)、下気道感染症(340万人→280万人)、新生児障害(310万人→220万人)、麻疹(63万人→13万人)、破傷風(27万人→6万人)の死亡率の低下であった。 HIV/AIDSによる死亡は、1990年の30万人から2010年は150万人に増加していた。ピークは2006年の170万人であった。 マラリアの死亡率も1990年から推定19.9%上昇し、2010年は117万人であった。 結核による2010年の死亡は120万人であった。2010年の世界の主要死因は、虚血性心疾患、脳卒中、COPD、下気道感染症、肺がん、HIV/AIDS 非感染症による死亡は、1990年と比べて2010年は800万人弱増加した。2010年の非感染症死者は3,450万人で、死亡3例のうち2例を占めるまでになっていた。 また2010年のがん死亡者は、20年前と比べて38%増加し、800万人であった。このうち150万人(19%)は気管、気管支および肺のがんであった。 虚血性心疾患と脳卒中の2010年の死亡は1,290万人で、1990年は世界の死亡5例に1例の割合であったが、4例に1例を占めるようになっていた。なお、糖尿病による死亡は130万人で、1990年のほぼ2倍になっていた。 外傷による世界の死亡率は、2010年は9.6%(510万人)で、20年前の8.8%と比べてわずかだが増加していた。その要因は、交通事故による死亡(2010年世界で130万人)が46%増加したことと、転倒からの死亡が増加したことが大きかった。 2010年の世界の主要な死因は、虚血性心疾患、脳卒中、COPD、下気道感染症、肺がん、HIV/AIDSであった。そして2010年の世界の早期死亡による生命損失年(years of life lost:YLL)に影響した主要な死因は、虚血性心疾患、下気道感染症、脳卒中、下痢性疾患、マラリア、HIV/AIDSであった。これは、HIV/AIDSと早期分娩合併症を除き1990年とほぼ同様であった。下気道感染症と下痢性疾患のYLLは1990年から45~54%減少していた一方で、虚血性心疾患、脳卒中は17~28%増加していた。 また、主要な死因の地域における格差がかなり大きかった。サハラ以南のアフリカでは2010年においても統合死因別死亡(感染症・母体性・新生児期・栄養的)が早期死亡要因の76%を占めていた。 標準年齢の死亡率は一部の鍵となる疾患(とくにHIV/AIDS、アルツハイマー病、糖尿病、CKD)で上昇したが、大半の疾患(重大血管系疾患、COPD、大半のがん、肝硬変、母体の障害など)は20年前より減少していた。その他の疾患、とくにマラリア、前立腺がん、外傷はほとんど変化がなかった。 著者は、「世界人口の増加、世界的な平均年齢の上昇、そして年齢特異的・性特異的・死因特異的死亡率の減少が組み合わさって、世界の死因が非感染症のものへとシフトしたことが認められた。一方で、サハラ以南のアフリカでは依然として従来死亡主因(感染症・母体性・新生児期・栄養的)が優位を占めている。このような疫学的な変化の陰で、多くの局地的な変化(たとえば、個人間の暴力事件、自殺、肝がん、糖尿病、肝硬変、シャーガス病、アフリカトリパノソーマ、メラノーマなど)が起きており、定期的な世界の疫学的な死因調査の重要性が強調される」とまとめている。

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整形外科領域にみる慢性疼痛

整形外科疼痛の特徴腰痛・関節痛といった整形外科領域の疼痛は慢性疼痛の3割以上を占め最も多い1)。なかでも腰痛が多く、肩および手足の関節痛がこれに続く2)。整形外科での痛みの発生頻度は年齢および性別により偏りがあるが、多くは変性疾患が原因となっていることから、50歳代頃から増加し60歳代、70歳代ではおよそ3割近くが痛みを訴える。高齢者においては、もはやコモンディジーズといっても過言ではないであろう。整形外科領域の痛みは慢性の経過をたどるものが多い。患者さんの訴えは「突然痛みが起こりました」と急性を疑わせるものが多いが、単純X線所見ではかなり時間経過した骨の変形が確認されることもしばしばであり、長期間にわたって徐々に進行し最終的に痛みが発症するケースが多いと考えられる。変性疾患の多くは荷重関節に生じ、加齢に伴い関節に痛みが起こる。日本人はO脚が多いため痛みは負荷がかかる膝関節に多くみられるのが特徴である。近年、食生活や生活習慣の変化に伴って肥満が多くなり、その傾向に拍車がかかっていることから、膝人工関節手術は年約10%の割合で増加している。また、肥満や運動不足との関係もあり、生活習慣病などの内科疾患との関連も深くなっている。一方、股関節の痛みは減少傾向である。出生時から足を真っすぐにしてオムツをしていた時代、日本人には臼蓋形成不全が多かったが、現在は紙おむつで足を開いている。その結果、臼蓋形成不全も先天性股関節脱臼も減少している。国民性の変化は整形外科治療に大きな影響をもたらしているといえるだろう。一昔前であれば、膝が曲がっていてもあきらめて治療を受けなかったが、今では膝が曲がっていると見た目も悪いし、痛いから手術したいという人が多くなっている。また、痛みがあれば家で寝ている人が多かったが、痛みを改善して運動や旅行をしたいなど積極的に治療を受ける患者さんが、多くなっている。慢性疼痛の病態慢性疼痛には、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、非器質性疼痛の三つの病態があるが、整形外科の患者さんでは約8割に侵害受容性疼痛の要素がみられる。疼痛の原因として多い変性疾患は軟骨の摩耗が原因であり、滑膜の炎症が併発して痛みを引き起こす。神経障害性疼痛も侵害受容性疼痛ほどではないが、整形外科領域でみられる痛みである。これは神経の損傷により起こる痛みであるが、以前はその詳細について十分に解明されておらず、また有効な治療薬がなかったため疼痛非専門医には治療が困難であった。しかし現在ではMRIなどの検査で診断可能であり、プレガバリンが末梢性神経障害性疼痛に効能・効果を取得したことにより、広く認知されてきた。侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛といった器質的疼痛のほかに機能性疼痛症候群がある。機能性疼痛症候群は諸検査で器質的所見や病理所見が明らかにできず、持続的な身体愁訴を特徴とする症候群である。その中には中枢機能障害性疼痛があり、線維筋痛症はその代表と考えられる。全身の筋肉、関節周囲などにわたる多様な痛みを主訴とし、種々の随伴症状を伴うが、その病態は明らかになっていない。治療アプローチ痛みの治療にあたっては、症状だけをみてに安易にNSAIDsで治療するのではなく、痛みの原因を明らかにすることが重要である。痛みの原因となるものには前述の変性疾患以外にも炎症性疾患や感染性疾患があるが、いずれによるものかを明らかにして、適切な評価と適切な原疾患の治療を行う。変性疾患の進行は緩徐であるため、極端にいえば治療を急がなくてもとくに大きな問題はない。炎症性疾患では、痛風やリウマチなど内科疾患の診断を行い、それぞれの適切な治療を速やかに行うことになる。感染性疾患は治療に緊急性を要し、中には緊急手術が必要となる場合もある。痛みの原因を調べる際には、危険信号を見逃さないようにする。関節疾患の多くは、触診、採血、単純X線検査などで診断がつき、内臓疾患との関連は少ないが、脊椎疾患では重大な疾患が潜在するケースがある。とくに、がんの脊椎転移は頻度が高く注意を要する。よって、高齢者で背中が痛いという訴えに遭遇した場合は、結核性脊椎炎などに加え、がんも念頭にておく必要がある。さらに、高齢者で特定の場所に痛みがあり、なおかつ継続している場合もがんである事が少なくない。また、感染性脊髄炎では、早期に診断し適切な治療を行わないと敗血症により死にいたることもある。このような背景から、1994年英国のガイドラインでred flags signというリスク因子の概念が提唱された。腰痛の場合、この危険信号をチェックしながら診療にあたることが肝要である3)。red flags sign発症年齢<20歳または>55歳時間や活動性に関係のない腰痛胸部痛癌、ステロイド治療、HIV感染の既往栄養不良体重減少広範囲に及ぶ神経症状構築性脊柱変形発熱腰痛診療ガイドライン2012より治療期間、治療目標、治療効果を意識すべし疼痛の治療期間は痛みの原因となる疾患によって異なる。たとえば変形性腰椎症など不可逆的な疾患では治療期間は一生といってもよく、急性の疾患であれば治療期間も週単位と短くなる。初診時にどのような治療がどれくらいの期間必要で、薬はどのくらい続けるかなどについて患者さんに説明し同意を得ておく必要がある。疼痛の診療にあたり、治療目標を設定することは非常に重要である。急性の場合は痛みゼロが治療目標だが、慢性の場合は痛みをゼロにするのは困難である。そのため、痛みの軽減、関節機能の維持、ADLの改善が治療目標となる。具体的には、自力で歩行できる、以前楽しんでいた趣味などが再開できる、買い物などの外出ができる、睡眠がよくとれる、仕事に復帰できる、などのようなものである。痛みは主観的なものであり、本人の感覚で弱く評価したり、疼痛(顕示)行動で強く訴えたりする。そのため、効果判定はADLの改善を指標として行う。患者さんへの聞き方として、少し歩けるようになったか、家事ができるようになったか、以前よりもどういう不自由さがなくなったかなどが具体的である。患者さんの痛みの訴えだけを聞いて治療しているとオーバードーズになりがちであるが、ADLの改善をチェックしていると薬剤用量と効果、副作用などのかね合いが判定できる。たとえば、痛みが少し残っていてもADLの改善が目標に達していれば、オーバートリートメントによる薬剤の副作用を防止できるわけである。痛みと寝たきりの関係寝たきり高齢者の医療費や介護費は一人年間300~400万といわれる。日本では寝たきりの高齢者が非常に多い。この高齢者の寝たきりの原因の第2位は痛みであることをご存じだろうか。痛みによりADLが落ち、寝たきり傾向になる。すると筋肉や関節機能が低下して痛みがより悪化し、重度の寝たきりになっていくという悪循環に陥る。寝たきりから自立するためには、痛みを減らして動いてもらうことが重要なのである。動くことで筋力がつき姿勢が矯正され痛みが改善する。バランスも良くなるので寝たきりの原因となる転倒も減るという好循環を生み出す。痛みの診療における運動の重要性は近年非常に注目されている。参考文献1)平成19年度国内基盤技術調査報告書2007;1-222)平成22年9月 厚生労働省「慢性の痛みに関する検討会」今後の慢性の痛み対策について(提言)3)矢吹省司:ガイドライン外来診療2012:P.243

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認知症のエキスパートドクターが先生方からの質問に回答!(Part2)

CareNet.comでは10月の認知症特集を配信するにあたって、事前に会員の先生より認知症診療に関する質問を募集しました。その中から、とくに多く寄せられた質問に対し、朝田 隆先生にご回答いただきました。今回は残りの5問について回答を掲載します。6 アルツハイマー病と血管性認知症を簡単に鑑別する方法はあるか? 血管性認知症の具体的な治療方法は?6 この鑑別方法は認知症医療の基本と言えるテーマですね。鑑別については、血管性認知症では片麻痺をはじめとする神経学的な所見があり、その発症と認知症の発症との間に時間的な密着性があることが基本かと思います。そのうえで、段階的な悪化や、障害される認知機能の不均等さ(斑認知症)などの有無が鑑別のポイントになるでしょう。ところで、かつてはわが国で最も多いのは血管性認知症で、これにアルツハイマー病が次ぐとされていました。ところが最近では、両者の順位が入れ替わったとされます。また実際には、両者が合併した混合型認知症が最も多いともいわれます。それだけに、この鑑別は二者択一の問題から、両者をどう攻めたら効率的かの方略を考えるうえでの基本、という新たな意味を持つようになったと思います。7 アルツハイマー病とてんかんとの鑑別点は?7 認知症もどきの「てんかん」は最近のトピックスになっていますね。てんかんはややもすると子どもの病気というイメージがありましたが、最近では初発年齢が高くなる傾向があり、患者数も高齢者に多いという事実が知られるようになりました。てんかんも、明らかなけいれんを伴うタイプであれば、認知症との鑑別は簡単です。ところが、けいれん発作がないタイプのてんかんもあります。とくに海馬付近に発作の焦点をもつケースでは、主症状が健忘ということが少なくありません。注意深く観ているとそのような人では、時に数秒から数分、「ぼーっ」として心ここにあらずという状態が生じがちです。これが家族や同僚など周囲の人に気づかれていることも少なくありません。本人にはこのような発作中のことは、ほぼ記憶に残りません。また傍目には普通に過ごしているように見える時であっても、本人はぼんやりとしか覚えていないことがあります。このような状態が、周囲の人には認知症ではないかと思われてしまうのです。8 薬物治療を開始する際、専門医にアルツハイマー病の診断をしてもらうべきか? また、精神科へ紹介すべきなのはどのようなケースか?8 これもまた悩ましい問題ですね。と言いますのは、すごく診断に迷うような例外的なケースは別ですが、最も多い認知症性疾患はアルツハイマー病ですから、普通の認知症と思われたら、即アルツハイマー病という診断になるかもしれません。それなのにいちいち専門医にアルツハイマー病の診断をしてもらうべきなのか?というのもごもっともなことです。しかし、時としてアルツハイマー病と誤診されるものに、たとえば意味性認知症や皮質基底核変性症など、各種の変性性認知症があります。あるいは正常圧水頭症も、最大の可逆性認知症に位置づけられるだけに要注意です。臨床経過、神経心理学的プロフィール、神経学的所見、脳画像所見などから、これらとの鑑別がついているという自信があれば、紹介は不要でしょう。逆に、何となくひっかかりを覚えたら、必ず専門医に相談するようにされていれば、後悔を生まないことでしょう。次に、精神科医であれば誰でも認知症が診られるというわけではありません。しかし、他科の医師との比較で精神科医が得意とするのは、幻覚妄想などの精神症状や攻撃性・不穏興奮などの行動異常(両者を併せてBPSD)への対応でしょう。とくに暴力が激しくなった認知症のケースでは自傷他害の危険性も高いですから、早めに対応設備のある精神科の専門医に依頼されるようにお勧めします。9 抗アルツハイマー病薬の使い分けは? また、増量、切り替え、追加のタイミングは?9 ここでは、現在わが国で流通している抗アルツハイマー病薬の特徴と処方の原則を述べます。これらの薬剤は、コリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬に二分されます。前者にはドネペジル(商品名:アリセプト)、ガランタミン(同:レミニール)、リバスチグミン(同:イクセロン、リバスタッチ)の3種類があります。後者はメマンチン(同:メマリー)です。前者について、どのようなタイプのアルツハイマー病患者にはどの薬が適切といったエビデンスレベルは今のところありません。総じて言えば、どれもそう変わらない、同レベルと言っても大きな間違いではないでしょう。たとえ専門医であっても、3つのうちのどれかで始めてみて、効果がないとか副作用で使いづらい場合に、次はこれでというパターンが一般的かもしれません。増量法は、それぞれ異なりますが、ガランタミン、リバスチグミンの場合は、副作用のために最大用量の24mg/日、18mg/日まで増量せずに中間用量を維持した方がよい場合もあります。適応については、ドネペジルは軽症から重症まですべての段階のアルツハイマー病に適応があります。野球のピッチャーにたとえるなら先発完投型と言えます。これに対してガランタミン、リバスチグミンは軽度と中等度例を適応としますので、先発ながら途中降板のピッチャーです。NMDA受容体拮抗薬であるメマンチンについては、中等度と高度の例が適応ですからリリーフ専門のピッチャーと言えるでしょう。使用上の特徴として、コリンエステラーゼ阻害薬は複数処方できませんが、コリンエステラーゼ阻害薬と本剤の併用は可能なことがあります。この薬は原則として1週間ごとに増量していきます。ところが、わが国では15~20mg/日の段階で、強い眩暈や眠気などの副作用を来す例が少なくないことがわかっています。この副作用を防止するために、2~4週間毎に増量する方法を勧める専門医もいらっしゃいます。10 BPSDに対する抗不安薬や気分安定薬などの上手な使い方は?10 BPSDに対する治療の基本は薬物治療ではなく、対応法の工夫・環境調整やデイケアも含めた非薬物療法にあります。薬物は、それらでだめな場合に使うセカンドチョイスと位置づけたほうがよいと思われます。その理由として、せん妄や幻覚・妄想など精神面のみならず、錐体外路症状そして転倒などの副作用があります。また高齢者では10種類以上の薬剤を服用していることも珍しくありませんから、処方薬を加えることでさまざまな副作用を生じるリスクは指数関数的に上昇します。そうは言っても薬物治療が求められるのは、暴言・暴力、不眠・夜間の興奮、幻覚・妄想などのBPSDが激しいケースでしょう。このような場合に向精神薬を処方するとしたら、とくに以下の点を考慮してください。筋弛緩・錐体外路症状などの易転倒性を惹起する可能性、それに意識障害を起こす危険性です。そうなると、ほとんどの抗精神病薬(メジャートランキライザー)、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬・睡眠薬は使えません。また三環系の抗うつ薬も同様です。そこで、あくまで私的な方法ですが、私は漢方薬を好んで使います。抑肝散、抑肝散加陳皮半夏などが主です。抗不安薬では、鎮静効果を狙って非ベンゾジアゼピン系のタンドスピロン、睡眠薬としてはむしろ睡眠・覚醒のリズム作りを狙ってラメルテオンを使うことがあります。こうした薬剤で無効なときには、バルプロ酸やカルバマゼピンといった抗てんかん薬も使います。どうにもならない激しい暴力・攻撃性には最後の手段として、スルトプリドをごくわずか(20~30mg/日)処方します。多くの場合、適応外使用ですから、このことをしっかり説明したうえで処方すべきでしょう。

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「認知症」診療に関するアンケート第3弾~身近な疾患としての認知症~

対象ケアネット会員の内科医師501名方法インターネット調査実施期間2012年10月11日~10月18日Q1.認知症の予防のため、先生ご自身が心がけていることや、患者さんに勧めていることはありますか?(複数回答可)Q2.もし、先生のご家族に認知症を疑った時、治療はどのようにしますか?(回答は1つ)先生がこれまでに診療に関わった認知症患者さんやそのご家族に関して、記憶に強く残っているエピソードがございましたらお教えください(自由記入、一部抜粋)<診断・治療に関して>55歳の若そうな、きれいで無口な女性が夫と共に来院。自宅での生活を聞くと、何も家事ができないという。外来の応対はあまり不自由がないが、長谷川式検査ではチェックできた。人は見かけではわからない。(勤務医・内科・70歳代)90歳を超えた男性。もともと認知症はあったが最近さらに増悪してきたと、長男が付き添い来院。当初、増悪進行と考えられたが、慢性硬膜下血腫の合併と診断した。 本人はもちろん、家族も転倒などには気付いておらず、脳神経外科で手術を受け、元来の病態ないし軽快となった。 認知症だからと決めつけてしまうのでは、本人はもとより、家族にまで不利益が生じてしまうことを留意して診療にあたらなくてはならないと思われた。(勤務医・内科・60歳代)ご主人が認知症だと毎回訴えてきた老夫婦が、実は2人とも認知症だった。(勤務医・内科・50歳代)やたら興奮するおばあさんだったが、精神科が処方していた薬剤を中止すると、つきものが落ちたようにおとなしくなった。(開業医・内科・40歳代)糖尿病による脳血管性認知症の患者さんが、糖尿病のコントロールが良好になったら、認知症の症状も軽減した。(開業医・内科・50歳代)2人暮らしの老夫婦が共に認知症で、診療をどうしようか悩むことが増えてきている。(勤務医・内科・50歳代)認知症じゃないかと疑っていた家族の方が認知症だった。(勤務医・内科・40歳代)夫が認知症のためアパシーの状態となっている。認知症の新薬を処方したところ効果があり、患者の方から妻に「ありがとう」と言葉かけがあり、「とてもうれしく感謝の念に堪えない」と妻から報告があった。臨床医として、患者の役に立てて非常に満足感を感じた。(勤務医・内科・60歳代)<介護に関して>介護の方々のスキルが上がって、不穏で困る方が減っているように感じる。(勤務医・内科・50歳代)「ショートステイにいくと調子が悪くなるのよね~」と、明るく介護していたお嫁さん。でも、肩肘張らずに上手にショートステイを使い、誤嚥性肺炎では時々入院も使い、 ご本人もニコニコとしているご家族がいた。 自分の家族が認知症になっても、絶対にできないなぁと思った。(勤務医・内科・50歳代)レビー小体病の女性と主介護者のご主人。 非常に熱心だったが、やはり男性高齢者に排泄の世話は難しく、結局うまくいかずに行き詰まり、救急車を要請して3次救急病院を受診してしまった。(勤務医・内科・40歳代)妻の認知症を受け入れているご主人(86歳)が、「妻は探し物のため家の中を動き回っている。しかし、これを止めると動かずに寝たきりになるかも知れない。外出するわけではないので、勝手にさせている」という言葉が印象的だった。(開業医・内科・50歳代)施設に入所した認知症患者に対し、毎日のように家族が訪問することで認知症の改善を認めたケースがあった。(開業医・内科・50歳代)睡眠障害があり、薬を山のように飲まされていたが、グループホームに入所し規則的な生活をされるようになって、薬もなく睡眠ができるようになった。(開業医・内科・60歳代)認知症患者との関わり方を患者家族に十分説明することにより、患者に対する家族の接し方が変わり、薬以上に認知症の進行を止めることが多い気がする。(勤務医・内科・50歳代)優しい態度、言葉遣いで接することによって不安が和らぎ、随伴症状が軽減することを日常診療で実感させられる。(勤務医・内科・60歳代)連れ合いが亡くなり1人暮らしとなって半年で認知症になったが、息子が引き取り、好きな趣味をさせるようになったら改善した。(勤務医・内科・70歳代)<その他>施設入所を嫌がる患者をどう納得させるか?にいつも苦労する。あるモダンなおばあちゃんの家族に対して、洒落たフランス料理店で話を切り出すことを勧めて成功した。(開業医・内科・60歳代)田舎の病院では、「よくこの状態で独居できていたなー」と感心するくらい認知症が進んだ人が入院することがある。(開業医・内科・50歳代)5年以上前、初めて当院で認知症と診断した患者さんは、当時、自ら認知症だと思うと受診された。読書が好きだったが、読書ができなくなってきたとのことであった。薬物治療を開始したが、デイケアなど介護サービスがあまり充実していなかったこともあり、少しずつ少しずつ認知機能が低下、昨年からグループホームに入られた。昨今話題の「できることをさせ、昔話をしてもらい、生き生きと暮らさせることで周辺症状なしに認知症のまま日常生活を送らせる」には、診療所の診療のみでは到底不可能であると思う。どのような連携が可能であるか、と外来の合間に思う。(開業医・内科・50歳代)認知症の夫を看ていた妻が急死し、成人後見制度を利用するに際し、後見人が得られず困ったことがある。(勤務医・内科・70歳代)「微笑をもう一度見られたら、と願うばかりです」と娘様が言ったことを忘れません。(開業医・内科・50歳代)徘徊が始まり、ある日突然消息不明となり探し回ったが見つからず、もちろん警察にも届けたが行方がわからず、1週間目にひょっこりと帰ってきた。外傷はなく、身なりも乱れていなかった。どなたか親切な方に世話になっていただろう、とのことであった。(開業医・内科・70歳代)

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理学療法士が足りない

相馬中央病院整形外科石井 武彰2012年10月2日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。 私は平成24年4月より相馬市にある相馬中央病院で整形外科医として勤務しています。初期臨床研修後に九州大学整形外科に入局し、3年間の関連病院での研修後、昨年は大学院で病理の仕事をしていました。震災後の川内村で行われた健康診断に参加したことより、福島県浜通りに関心を持っていたところ、相双地区で整形外科医が不足し求められているとの話を聞き、縁があって相馬中央病院で働く事となりました。 半年の診療を振り返ると、理学療法士不在によるもどかしさを強く感じます。相馬中央病院には理学療法士がいません。よく患者さんより「入院してちょっとリハビリさせてもらえないだろうか?」と聞かれます。他院で急性期の治療が終了して当院に転院する事を希望される方からは「相馬中央さんで、リハビリしてもう少し歩けるようになって(家に)帰りたい」との希望をうけます。入院をうけることはできても理学療法士による専門的なリハビリを提供する事はできません。看護師が看護業務の中から時間を捻出して、歩く練習、立つ練習を手伝ってもらっているのが現状です。ただでさえ病床あたりの看護師数が少ない地域です。患者さんのニーズを満たせているかはわかりません。 事務に聞いてみると募集はかけているが、なかなか理学療法士が見つからないとの事でした。関連施設から週に数回作業療法士が応援に来てくれます。ようやく見つかったリハビリスタッフとのことでした。調べてみて驚いたのですが日本理学療法士協会ホームページによると福島県(人口203万人)には理学療法士養成校が1校あります。一方、私の地元である福岡県(同507万人)には理学療法士養成が14校あるようです。相馬地区に理学療法士が不足しても無理はありません。実際に、東大国際保健の杉本さんのまとめをみると東北、東日本で理学療法士が少ないのが一目瞭然です。≪参照≫理学療法士数 人口1,000人あたり【県別】 http://expres.umin.jp/mric/mric.vol.603.jpg 言うまでもありませんが、リハビリスタッフも現在の医療には欠かす事のできない存在です。整形外科のように運動機能の落ちた方の治療だけにとどまらず、内科入院した方でも高齢者などの入院によるADL低下のリスクが高い方には理学療法士の介入が効果的です。体調に不安のある中、積極的に動こうという人は少なく、上げ膳据え膳でベッド上生活をすると、明らかに筋力が低下していきます。理学療法士が介入することで、少なくとも毎日20分程度は個別に訓練します。場合によっては1日数回訓練が行われます。看護師がリハビリのために捻出できる時間はあまりありません。患者さんの回復、ADL低下予防には大きな違いとなります。 他にも、理学療法士不在の病院には問題があります。入院中の患者さんが院内で転倒事故を起こすと、医療スタッフは責任を感じます。そのため、なんとかつたい歩きで移動していた方など歩行に不安のある方には、一人では歩かないようにお願いする事があります。しかし24時間一人の患者さんのそばにいる事は不可能です。結果として入院する事による活動度の制限が増えてしまいます。ここに理学療法士が介入できると、入院生活中に過度の活動制限を避ける事が出来るばかりか、退院後の自宅での生活について専門的なアドバイスをする事も出来ます。 最近、腰が痛くて動けないと入院を希望して受診してきた高齢の男性がいます。約3週間にわたって食事・排せつをベッド上で行う寝たきりの生活を送っていたそうです。レントゲンでは骨折はありませんでしたが、家族にも疲れがみられ、出来る限りのサポートをと思い入院して頂く事としました。話を聞くと仮設住宅暮らしで、つかまる所がなくて立つことができなかった、同じく高齢の奥さんとの二人暮らしで、奥さんに支えてもらう訳にもいかなかったとのことです。病院の環境で確認するとつかまり立ちは自立しており、歩行器歩行も可能でした。本人には動くきっかけと環境が必要だったのかもしれません。仮設住宅、そして地域には潜在的なリハビリ難民がいることが示唆されます。 仮設住宅から復興住宅に移る時に足腰が立たなくなっていては意味がありません。地域高齢者のADL維持を図るには明らかに運動器疾患をサポートする医療スタッフが不足していると感じられます。被災地にはこれらの人材も求められています。

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エキスパートに聞く!「高血圧」Q&A

CareNet.comでは9月の高血圧特集企画を行う中で、会員の先生より「高血圧」に関する質問を募集しました。その中から、特に多くいただいた質問に対し、下澤達雄先生にご回答いただきます。家庭血圧を用いる際の留意点について教えてください。昨年8月に発表された英国の高血圧ガイドラインでは、24時間血圧あるいは家庭血圧を高血圧の確定診断ならびに降圧治療の効果判定に用いることが強く推奨されました。わが国でも家庭血圧測定の指針が高血圧学会より出されており、実臨床でも多くの先生がお使いになっていることが、今回たくさんのご質問をいただいたことからも推察されます。そこで、家庭血圧を用いる際の留意点をいくつか挙げたいと思います。1.信頼性機械そのものの信頼性は診察室で同時に用手法と比較することで確認することができますが、血圧手帳を用いた自己申告による血圧値は必ずしも信頼できません。高知県で行われた調査では実測値と自己申告値には開きがあり、患者は低めに申告することが報告されています。よって、家庭血圧が低い場合でも臓器障害がある場合にはとくに診察室血圧を参考にした降圧治療が必要となります。あるいはメモリー機能をもった家庭血圧計を用い、実測値を医療側が把握できるようにする工夫が必要です。2.家庭血圧の測定方法血圧は複数回測れば必ず異なった値を示します。一般的には数回測ると徐々に低い値となります。高血圧学会の家庭血圧の指針では1日1回でよいと書かれていますが、これはまず患者に家庭血圧を測定させるために簡便な最低限の方法が記載されていると理解しています。すでに家庭血圧を日常的に測定できる患者においては複数回測定し、一番高い値と一番低い値、あるいは平均値を記載してもらうのがいいかと思います。測定時間は服薬直前が望ましいですが、日常生活にあわせてほぼ同じタイミングで測定できる時間を指導しています。3.夜間血圧を反映するか?何がわかるのか?残念ながら夜間血圧は夜間に測定する必要があり、家庭血圧では知ることができません。正しく測定でき、正直に申告された家庭血圧で白衣性高血圧、仮面高血圧がわかることはもちろんですが、曜日による血圧変動(週末ストレスがない場合に血圧が下がる)や睡眠状態との関連を知ることもできます。4.診察室血圧との乖離前述のように白衣性高血圧、仮面高血圧と診断されますが、臓器障害がある場合は高いほうの血圧を目安に治療を行うべきです。血圧変動について教えてください。外来診察毎の血圧変動が大きいと脳血管イベントが多くなることが報告されました。以来、糖尿病の際の血糖の変動が臓器障害と関連づけられています。動物実験でも交感神経を切除して血圧変動を大きくすると、レニン・アンジオテンシン系が亢進して臓器障害が進行することが報告されています。ヒトにおいては長期にわたる一拍ごとの血圧変動をみることは困難であり確立したエビデンスはありませんが、血圧変動は少なくする方が望ましいでしょう。血圧変動が大きい原因として自律神経障害、褐色細胞腫のような器質的な異常のほかに服薬アドヒアランス不良、精神的ストレス、不眠(睡眠時無呼吸)といった要因もあり、医師のみならず看護師、薬剤師などからの患者の病歴、生活歴聴取が必要となります。服薬は管理されているにもかかわらず認知症患者ではとくに血圧変動が大きいことが問題になりますが、多くの場合は多発性脳梗塞を合併している例です。転倒のリスクがなければ認知症の進行、脳梗塞の再発予防を考えて血圧は低い値にコントロールしたいところです。実際には服薬数を増やせないなどの制限があり、合剤を積極的に使ってのコントロールとなります。食塩感受性について教えてください。塩分摂取により血圧が上昇する食塩感受性患者は、上昇しない非感受性患者にくらべ血圧値が同等でも心血管イベントが多いことから、食塩感受性の診断についての質問を多くいただきました。しかし、食塩感受性を診断するには現在のところ入院にて食塩負荷、減塩食を食べさせ、その間の血圧を測定することのほかには確実な方法はないのが現状です。実臨床においては早朝第二尿のナトリウムとクレアチニンを測定することで食塩摂取量を知ることができる(「日本高血圧学会減塩ワーキンググループ報告」日本高血圧学会より入手可能)ので塩分摂取量が多い患者について経時的に観察したり減塩指導の動機付けとして用いることもできます。あるいはサイアザイド系利尿薬に対する血圧反応性も食塩感受性を知る一つの方法です。効果的な減塩指導について教えてください。日本の食文化はみそ、塩、しょうゆの上に成り立っているので、減塩指導はともすれば日本の食文化を否定することにもなりかねません。しかし、現在の一般的食生活を見てみると加工食品がふんだんに使われており、この点を改善指導することで減塩は可能となります。たとえばソーセージ100gに塩は約2g、プロセスチーズでは約3g含まれており、こういった加工食品を減らすことを指導できるでしょう。また、加齢に伴い味覚は低下するため減塩が難しくなります。そこはワサビ、生姜、茗荷、唐辛子、胡椒といったスパイスをうまく使うように指導します。そして、食卓に出された食材に塩、しょうゆを追加でかけないよう、食卓には塩、しょうゆを置かないなどの細かな指導が必要となります。男性患者の場合、食事を実際に作る配偶者への指導も重要で、医師だけでなく看護師、栄養士、薬剤師、検査技師、保健婦など患者に関わるすべての医療従事者の協力体制が有効です。塩分過剰摂取は血圧上昇のみならず血圧が上昇しない場合でも酸化ストレスを増加させ耐糖能異常につながることが動物実験では示されており、摂取量を6g/日程度まで下げることは高血圧の有無にかかわらず有用であると思われます。降圧薬の減量、中止方法について教えてください。血圧のコントロールが良好で、臓器障害がないような場合、また尿中ナトリウムも低めの場合は降圧薬を中止できることもあります。その場合、4~5月位に中止し、夏の暑い間を経過観察し、10~11月から冬の寒い間に血圧が再上昇しないことを確認します。その後も家庭血圧で血圧を経過観察し、年に一回の臓器障害の進展のチェックを行います。多剤併用しており血圧が良好なコントロールの場合、薬剤の減量が可能です。長期にβ遮断薬を使っている場合は心筋虚血のリスクがあるのでβ遮断薬は漸減します。便秘、浮腫、歯肉腫脹、起立性低血圧がある場合はカルシウム拮抗薬の副作用の可能性もあるためカルシウム拮抗薬から減量します。昨今の酷暑ではとくに高齢者や腎機能低下例においては、レニン・アンジオテンシン系抑制剤や利尿薬の減量が必要となる例があります。早朝高血圧の対処方法について教えてください。家庭血圧を測定あるいは24時間血圧にて早朝高血圧が明らかになった場合、最近の研究では夜間高血圧ほどのリスクはないとの報告もありますが、降圧薬の服用時間を調整することでコントロール可能となることがあります。レニン・アンジオテンシン系阻害薬は夕方服用に適した薬剤といえます。ただし、夜間の過度の降圧に注意して少量より開始するのが好ましいでしょう。α遮断薬も有効とする報告もありますが、α遮断薬自体の臓器保護効果が疑問視されており、α遮断薬を追加投与するよりは現在服用しているレニン・アンジオテンシン系阻害薬の服用時間をずらすことが適切と考えます。難治性高血圧の対処方法について教えてください。異なる三系統の降圧薬を十分量を内服しても血圧のコントロールがつかない場合、難治性高血圧と呼ばれます。このような例では服薬アドヒアランス、二次性高血圧の再評価、睡眠時無呼吸の評価をまず行います。服薬アドヒアランスが不良の場合は合剤を用いること、服薬の必要性を再教育すること、服薬想起の道具(ピルボックスなど)が有効といわれており、医師だけでなく薬剤師、看護師、保健婦の協力が必要となります。すでに薬剤を服用している場合、ホルモン検査は薬剤の影響を受けるので評価が難しくなります。実臨床では副腎のCTを先行させてもいいと思います。あるいは十分量の抗アルドステロン薬(スピロノラクトンで75~100mg)を投与し治療的診断を行うことも有用です。腎血管性高血圧についてはMR angiographyが有用でしょう。以上のような精査で問題がない場合、中枢性の降圧薬(レセルピン)を少量朝1回追加することが有用である例を経験しています。あるいはジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬をかんきつ類と一緒に服用させる、あるいはヘルベッサーと併用しジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬の血中濃度を高めることも有用でしょう。白衣性高血圧の対処方法について教えてください。イギリスのガイドラインでは診察室血圧と24時間血圧、あるいは家庭血圧を用いて高血圧の診断を行い、臓器障害がない場合は白衣性高血圧は薬物介入をせずに年に1回の経過観察をするとしています。24時間血圧を用いて病院来院時のみ高血圧でその他の日常生活の中では全くの正常血圧であり、アルブミン尿も含め臓器障害が認められず、糖尿病などのリスク因子がない場合は薬物介入は必要ないと考えます。しかし、経過観察は必要で、患者には日常生活の中で突然の来客などストレスがかかると血圧が上がっている可能性を話し、徐々に臓器障害が出てくる可能性を説明する必要があるでしょう。白衣性高血圧で患者が薬物介入を希望する場合、抗不安薬も有効です。また、臓器障害がある場合はJSH2009に則って合併する臓器障害に応じて薬物を選択します。その際、心拍数が上昇するといった副作用のない薬物をまず選択します。拡張期血圧の対処方法について教えてください。収縮期血圧が大動脈のコンプライアンスと心拍出量で規定されるのに対し、拡張期血圧は全身の末梢血管抵抗と心拍出量で規定されます。よって高齢者で大血管の硬化が明らかになると収縮期血圧が上昇し脈圧が増大します。心臓の仕事量は収縮期血圧と心拍数の積に比例するため、収縮期血圧が高くなると心筋酸素消費量が増え、心虚血と心不全のリスクが増えます。一方冠動脈は拡張期に灌流されるので、拡張期血圧を下げすぎると、冠血流が低下する危険があります。実際、大規模臨床試験をみても拡張期血圧と心血管イベントにはJカーブに近い現象が認められます。拡張期のみ高い例は若年者に多く認められますが、治療の第一歩は減塩にあります。また個人的経験ですが、10年ほど前にARBが発売された当初、カルシウム拮抗薬やACE阻害薬にくらべ拡張期血圧がよく下がる印象がありましたが、統計的処理はされていません。また当時は利尿薬の使用頻度が低かったというバイアスもあります。現状では拡張期血圧のみを下げるための有効な治療法は生活習慣の改善のほかには確立されていないといえます。合剤の有用性について教えてください。いかなる服薬介入治療もその効果は服薬アドヒアランスに依存することは明白です。それゆえ、われわれは服薬アドヒアランスをよくする努力は惜しむべきではありません。アドヒアランスに関わる因子は複数ありますが、処方する立場として最も簡便にできることは服薬数を減らすことであり、その点において合剤はきわめて有効といえます。現在降圧薬に限らずぜんそく薬、糖尿病薬、高脂血症薬の合剤が日本でも使用可能ですが、海外の現状をみるとまだまだ立ち遅れています。私は実臨床の中で合剤の併用も行いARBの最大容量を合剤として処方し、3種の薬剤を2錠ですませ、患者の経済的負担も軽減するよう努力しています。

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抗てんかん剤であるAMPA受容体拮抗剤Fycompa 欧州にて新発売

 エーザイ株式会社は13日、自社創製のファースト・イン・クラスの抗てんかん剤である、AMPA受容体拮抗剤「Fycompa(一般名:ペランパネル)」を、12歳以上のてんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する併用療法を適応として、世界に先駆けて欧州で新発売した。同日英国で発売するのを皮切りに、ドイツ、オーストリア、デンマークなど欧州各国で順次、発売予定。 Fycompaは、同社が創製した高選択的、非競合AMPA型グルタミン酸受容体拮抗剤。てんかん発作は神経伝達物質であるグルタミン酸により誘発されることが報告されており、同剤は、シナプス後AMPA受容体のグルタミン酸による活性化を阻害し、神経の過興奮を抑制することで、てんかん発作を抑制する。部分てんかん患者1,480人を対象とした、3つのグローバル、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、投与量漸増による臨床第III相試験において、Fycompaは、部分てんかん併用療法として一貫して優れた有用性を示したという。主な有害事象として、めまい、頭痛、眠気、神経過敏、けん怠感、転倒、および運動失調が報告されている。2012年7月に、FycompaはAMPA受容体拮抗作用を持つファースト・イン・クラスの抗てんかん剤として、欧州委員会から世界で初めて承認を取得している。 同剤は、米国では2011年12月に新薬申請を行っており、日本では臨床第III相試験を実施中である。また、全般性てんかんの適応については、臨床第III相試験を国際共同治験として実施している。詳細はプレスリリースへhttp://www.eisai.co.jp/news/news201266.html

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第6回 過失相殺:患者の過失はどこまで相殺できるか?

■今回のテーマのポイント1.医療従事者に過失があったとしても、患者自身の行為にも問題があり、その結果損害が生じた場合、または損害が拡大した場合には、過失相殺が適用され損害賠償額が減額される2.「法的な」療養指導義務の内容は、明確に示される必要がある3.されど、医療従事者には職業倫理上、「真摯(しんし)かつ丁寧な」説明、指導をする義務がある事件の概要患者(X)(72歳女性)は、2日前から左上下肢に脱力感があったため、平成13年5月7日にA病院を受診し、脳梗塞との診断にて、入院となりました。ただ、Xは、意識清明で、麻痺の程度も、MMT(徒手筋力テスト)上、左上下肢ともに“4”であり、独歩も可能でした。担当看護師は、入院時オリエンテーションを実施した際、転倒等による外傷の危険性があることを話し、トイレに行くときは必ずナースコールで看護師を呼ぶように注意しました。ところが、Xは、トイレに行く際、最初はナースコールを押していたものの、次第にナースコールをせずに一人でトイレに行くようになり、夜勤の担当看護師であるYが一人でトイレから帰るXを何回か目撃しました。Yは、その都度、トイレに行くときにはナースコールを押すよう指導しました。同月8日午前6時ごろ、Yが定時の見回りでXの病室に赴いたところ、Xがトイレに行くというのでトイレまで同行しましたが、トイレの前でXから「一人で帰れる。大丈夫」といわれたので、Yはトイレの前で別れ、別の患者の介護に向かいました。しかし、午前6時半頃、Yが定時の見回りでXの病室に赴いたところ、Xがベッドの脇で意識を消失し、倒れていました。Xは、急性硬膜下血腫にて緊急手術を行うも、意識が回復することなく、同月12日(入院6日目)に死亡しました。原審では、看護師Yに付き添いを怠った過失を認めつつも、当該過失とXの転倒に因果関係が認められないとして、Xの遺族の請求を棄却しました。これに対し、東京高裁は、看護師Yの不法行為の成立を認め、下記の通り判示しました。なぜそうなったのかは、事件の経過からご覧ください。事件の経過患者(X)(72歳女性)は、平成13年5月5日頃より左上下肢に脱力感が出現し、何とか家事はできたものの、体調がすぐれず、同月7日にA病院を受診しました。頭部CTを施行したところ、麻痺と一致する箇所に梗塞巣を認めたため、脳梗塞と診断されました。ただ、Xは、意識清明で、麻痺の程度も、MMT(徒手筋力テスト)上、左上下肢ともに“4”であり、独歩も可能であったことから、リハビリテーション目的にて14日の予定で同日入院となりました。担当看護師は、入院時オリエンテーションを実施した際、転倒等による外傷の危険性があることを話し、トイレに行くときは必ずナースコールで看護師を呼ぶように注意しました。A病院は2交代制を採っており、夜勤では、Xが入院したA病院2階の患者(約24名)を正看護師2名と准看護師2名の計4名で担当していました。同日の夜勤帯でXを担当する看護師Yは、同日午後6時、定時の見回りの際、「Xがトイレに行きたい」というので、病室から約15m離れたトイレに連れて行きました。午後7時、8日午前1時にもXよりナースコールがあったので、同様にYは、トイレまでの付添いをしました。しかし、午前3時にYが定時の見回りを行う際、Xが自力で歩行し、トイレから戻るところを発見しました。Yは、Xに対し、今後トイレに行くときにはナースコールを押すよう指導し、病室まで付き添いました。ところが、午前5時にもXが、トイレの前を自力歩行しているところをYは発見したため、同様の指導をしましたが、Xは「一人で何回か行っているので大丈夫」と答えました。午前6時頃、Yが定時の見回りでXの病室を訪れたところ、Xは起き上がろうとしており、トイレに行きたいといったため、Yは、トイレまで同行(直接介助はしていない)しました。そして、トイレの前でXから「一人で帰れる。大丈夫」といわれたため、Yは、Xとトイレの前で別れ、他の患者の介護に向いました。その後、午前6時半頃、Yが定時の見回りでXの病室を訪れたところ、Xがベッドの脇に倒れ、意識を消失しているのを発見しました。医師の指示で頭部CTを施行したところ、急性硬膜下血腫と診断され、同日緊急手術を行ったものの、同月12日(入院6日目)に死亡しました。事件の判決原審では、午前6時にXがトイレから帰室する際にYが付き添わなかったことに過失があるとしたものの、Xがいつ転倒したかは不明であり、当該帰室時に転倒したと認めることには、なお合理的な疑いがあるとして因果関係を否定しましたが、本判決では、因果関係を肯定し、Yの不法行為の成立を認めたうえで、下記のように判示し、過失相殺を適用して、損害額の8割を控除し、約470万円の損害賠償責任を認めました。「Xは、多発性脳梗塞により左上下肢に麻痺が認められ、医師及び看護師から、転倒等の危険性があるのでトイレに行く時は必ずナースコールで看護師を呼ぶよう再三指導されていたにもかかわらず、遅くとも平成13年5月8日の午前3時以降、その指導に従わずに何回か一人でトイレに行き来していた上、午前6時ころには、同行したY看護師に「一人で帰れる。大丈夫」といって付添いを断り、その後もナースコールはしなかったものであり、その結果、本件の転倒事故が発生して死亡するに至ったものである。Xがナースコールしなかった理由として、看護師への遠慮あるいは歩行能力の過信等も考えられるが、いずれにしてもナースコールをして看護師を呼ばない限り、看護師としては付き添うことはできない。Xは、老齢とはいえ、意識は清明であり、入院直前までは家族の中心ともいえる存在であったのであり、A病院の診断により多発性脳梗塞と診断され、医師らから転倒の危険性があることの説明を受けていたのであるから、自らも看護婦の介助、付添いによってのみ歩行するように心がけることが期待されていたというべきである。高齢者には、特に麻痺がある場合に限らず転倒事故が多いとされているが、こうした危険防止の具体策としては、まず、老人本人への指導・対応があげられている。・・・以上のほか、本件に顕れた一切の事情を勘案すると、被控訴人は損害額の2割の限度で損害賠償責任を負うものとするのが相当である」(東京高判平成15年9月29日判時1843号69頁)ポイント解説前回は、患者の疾病が損害発生(死亡等)に寄与していた場合、法的にどのように扱われるかについて説明しました。今回は、患者が医療従事者の指導に背く等患者の行為が損害の発生に寄与していた場合の法的取り扱いについて解説します。民法722条2項※1は過失相殺を定めております。すなわち、仮に不法行為が成立(加害者に過失が認められる等)した場合であっても、被害者にも結果発生または損害の拡大に対し因果関係を有する過失が存在した場合には、具体的な公平性をはかるために、それを斟酌して紛争の解決をはかることとなります。例えば、交通事故において、加害者にスピード超過の過失があったとしても、被害者にも信号無視という過失があった場合には、過失相殺を行い、被害者に生じた損害額の何割かを減額することとなります(図1)。したがって、医療者に不法行為責任が成立したとしても、患者にも問題行動があった場合には、過失相殺がなされ、損害額が減額されることとなります。人間は聖人君子ではありませんので、「わかってはいるけど」患者が医師の指示に従わないことが時々見られます。また、いわゆる問題患者もいます。しかし、交通事故と異なるのは、医師には患者に対する「療養指導義務」があり、医療機関には入院患者等院内にいる患者に対しては、転倒防止や入浴での事故を防止する等の「安全配慮義務」があることです。つまり、患者がしかるべき行動をとっていなかったとしても、それすなわち患者の過失となるのではなく、医師の療養指導義務や医療機関の安全配慮義務違反となることもあり得るのです。また、その一方で、あまりにも患者の行動に問題が強い場合には、「療養指導義務を尽くした(過失無)」または、「もはや医師が療養指導義務を尽くしても結果が発生していた」すなわち、因果関係がないということで不法行為責任が成立しないこともあります(図2~4)。図1画像を拡大する図2画像を拡大する図3画像を拡大する図4画像を拡大する本判決では、脳梗塞にて入院した日の深夜~早朝に付き添いをしなかった看護師に過失はあるものの、意識が清明な患者に対し、繰り返し指導していたにもかかわらず、独歩したことにも過失があるとして、看護師に不法行為の成立を認めた上で、過失相殺を適用し、2割の限度で看護師に賠償責任を負わせました(8割減額)。本事例以外で過失相殺に関する事例としては、(1)患者が頑なに腰椎穿刺検査の実施を拒絶したため、くも膜下出血の診断ができず死亡した事例においては、医師の検査に対する説明が足りなかったこと等を理由に過失相殺を適用しなかった判例(名古屋高判平成14年10月31日判タ1153号231頁)(2)帯状疱疹の患者に対し、持続硬膜外麻酔を行っていたところ、患者が外出時にカテーテル刺入部の被覆がはがれているにもかかわらず、医師の指示に反し、炎天下の中、肉体労働を行った結果、硬膜外膿瘍となった事例においては、医師の指導が十分ではなかったとして過失を認めつつも、患者にも自己管理に過失があるとして3割の過失相殺を認めた判例(高松地判平成8年4月22日判タ939号217頁)(3)アルコール性肝炎の患者が、医師の指導に従わず、通院も断続的で、飲酒を継続した結果、食道静脈瘤破裂及び肝硬変にて死亡した事例においては、医師の過失を認めつつも、8割の過失相殺を認めた判例(神戸地判平成6年3月24日判タ875号233頁)等があります。かつては、医師と患者の関係は、パターナリスティックな関係として捉えられていたこともあり、裁判所も患者の過失ある行動について、積極的に過失相殺を行ってきませんでした。しかし、インフォームド・コンセントの重要性が高まった現在、その当然の帰結として、医師から療養指導上の説明を受けた以上、その後、それに反する行動をとることは自己責任の問題であり、医師に「更なる(しばしば「真摯な」と表現される)」療養指導義務が課されることはないということになりますし、仮に医師に療養指導上の義務違反があったとしても、患者の行動に問題がある場合には、積極的に過失相殺を行うべきということとなります。医療従事者は、この結論に違和感を覚えるものと思われます。しかし、法的な理論構成だけでなく、法というツールを用いてインフォームド・コンセントや療養指導義務等を取り扱う場合には、誰から見ても明確な基準を持つことが必須となります。この10数年における萎縮医療・医療崩壊に司法が強く関与していることは、皆さんご存知の通りです。萎縮医療の原因は、一つには国際的にも異常なほど刑事責任を追及したことがあり、もう一つには、判例が変遷する上に、医療現場に不可能を強いるような基準で違法と断罪したことがあります。その結果、医療従事者が、目の前の患者に診療を行おうとするときに自らの行為が適法か違法かの判断ができないため、「疑わしきは回避」となり、萎縮医療、医療崩壊が生じたのです。法は万能のツールではありません。そればかりか、誤って使用すれば害悪となることは、歴史的にも、この10年をみれば明らかです。特に、すぐ後ろに刑事司法が控えているわが国においては、自らの行為が適法か違法か予見できることは必須といえます。したがって、あくまで「法的」に取り扱う場合においては、説明義務、療養指導義務の内容は「○○である」と明確に列挙されているべきであり、「そのことさえ患者に説明すれば後になってから違法と誹られることはない」ということが最も重要となるのです。そのうえで、医療従事者の職業倫理上の義務として、患者がしっかり理解できるまで懇切丁寧に、真摯に説明することが求められるのであり、この領域における不足は、あくまで、プロフェッション内における教育や自浄能力によって解決すべき問題であり、司法が介入するべき問題ではないのです。 ※1民法722条2項 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます(出現順)。なお本件の判決については、最高裁のサイトでまだ公開されておりません。リンクのある事件のみご覧いただけます。東京高等裁判所平成15年9月29日判時1843号69頁名古屋高判平成14年10月31日判タ1153号231頁高松地判平成8年4月22日判タ939号217頁神戸地判平成6年3月24日判タ875号233頁

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年間37%の認知症高齢者が転倒を経験!:浜松医大

 認知症は転倒原因のひとつである。しかし、認知症高齢者における転倒リスクの研究はまだ十分になされていない。浜松医科大学 鈴木氏らは介護老人保健施設に入所している認知症高齢者における転倒の発現率、リスクファクターの検証を試みた。Am J Alzheimers Dis Other Demen誌9月号(オンライン版8月7日号)の報告。 対象は、認知症高齢者135例。調査期間は、2008年4月から2009年5月までの1年間。調査開始前に、認知機能検査(MMSE:Mini-Mental State Examination)、日常生活動作能力(PSMS:Physical Self-Maintenance Scale)、転倒に関連する行動評価(fall-related behaviors)、その他因子に関して調査した。統計解析は、転倒の有無による比較を行うため、検定、ロジスティック回帰分析を用いた。主な結果は以下のとおり。・調査期間中、50例(37.04%)が転倒を経験した。・多重ロジスティック回帰分析の結果、転倒に関連する行動評価(fall-related behaviors)の総スコアは転倒との有意な関連性が示された。・11項目の転倒に関連する行動評価は、認知症高齢者の転倒リスクを予測する有効な指標であると考えられる。関連医療ニュース ・アルツハイマー病患者におけるパッチ剤切替のメリットは? ・「炭水化物」中心の食生活は認知症リスクを高める可能性あり ・アルツハイマーの予防にスタチン!?

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「痛み」の種類に応じた治療の重要性~全国47都道府県9,400人を対象とした実態調査~

 痛みとは本来、危険な外的刺激から身を守ったり、身体の異常を感知したりするなど、生命活動に必要なシグナルである。しかし、必要以上の痛みや原因のない痛みは防御機能として作用しないばかりか、健康や身体機能を損なう要因となるため、原因となる疾患の治療に加えて痛みのコントロールが必要となる。 ところが、日本では痛みに対する認識や治療の必要性が十分に知られていない。そのような実態を踏まえ、47都道府県9,400人を対象とした「長く続く痛みに関する実態調査」が実施され、その結果が2012年7月10日、近畿大学医学部奈良病院 整形外科・リウマチ科の宗圓 聰氏によって発表された。(プレスセミナー主催:ファイザー株式会社、エーザイ株式会社)●「痛み」とは 痛み(疼痛)はその病態メカニズムにより、怪我や火傷などの刺激により侵害受容器が持続的に刺激されて生じる「侵害受容性疼痛」、神経の損傷やそれに伴う機能異常によって生じる「神経障害性疼痛」、器質的病変はないものの、心理的な要因により生じる「心因性疼痛」の3つに大別される1)。 これらは疼痛の発生機序や性質が違うため治療法は異なるが、実際にはそれぞれの要因が複雑に絡み合っており、明確に分類することは困難である。とくに神経障害性疼痛は炎症が関与しないため、消炎鎮痛剤が効きにくく難治性であることが知られている。●神経障害性疼痛の特徴と診断 神経障害性疼痛は「知覚異常」、「痛みの質」、「痛みの強弱」、「痛みの発現する時間的パターン」という4つの臨床的な特徴がみられる1)。1.知覚異常: 自発痛と刺激で誘発される痛みの閾値低下(痛覚過敏など)2.痛みの質: 電撃痛、刺すような痛み、灼熱痛、鈍痛、うずく痛み、拍動痛など3.痛みの強弱: 弱いものから強いものまでさまざまである4.痛みの発現する時間的パターン: 自発性の持続痛、電撃痛など 神経障害性疼痛の診断アルゴリズムによると、疼痛の範囲が神経解剖学的に妥当、かつ体性感覚系の損傷あるいは神経疾患を示唆する場合に神経障害性疼痛を考慮する。そのうえで、神経解剖学的に妥当な疼痛範囲かどうか、検査により神経障害・疾患が存在するかどうかで診断を進める2)。●神経障害性疼痛の薬物治療 神経障害性疼痛の治療は薬物療法が中心となるが、痛みの軽減、身体機能とQOLの維持・改善を目的として神経ブロック療法、外科的療法、理学療法も用いられる。日本ペインクリニック学会の「神経障害性疼痛薬物治療ガイドライン」によると、以下の薬剤が選択されている2)。第1選択薬(複数の病態に対して有効性が確認されている薬物)・三環系抗うつ薬(TCA)  ノルトリプチン、アミトリプチン、イミプラミン・Caチャネルα2δリガンド  プレガバリン、ガバペンチン下記の病態に限り、TCA、Caチャネルα2δリガンドとともに第一選択として考慮する・帯状疱疹後神経痛―ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液含有製剤(ノイロトピン)・有痛性糖尿病性ニューロパチー―SNRI(デュロキセチン)、抗不整脈薬(メキシレチン)、アルドース還元酵素阻害薬(エパルレスタット)第2選択薬(1つの病態に対して有効性が確認されている薬物)・ノイロトピン・デュロキセチン・メキシレチン第3選択薬・麻薬性鎮痛薬  フェンタニル、モルヒネ、オキシコドン、トラマドール、ブプレノルフィン なお、三叉神経痛は特殊な薬物療法が必要となり、第1選択薬としてカルバマゼピン、第2選択薬としてラモトリギン、バクロフェンが選択されている。●47都道府県比較 長く続く痛みに対する意識実態調査 調査結果 各都道府県の慢性疼痛を抱える人の考えや行動を明らかにするために、「47都道府県比較 長く続く痛みに対する意識実態調査」が実施された。 対象は慢性疼痛の条件を満たした20歳以上の男女9,400人(各都道府県200人)で、インターネットを用いて調査が行われた。主な結果は以下のとおり。・「痛みがあってもある程度、自分も我慢するべき」と考える人は74.3%(6,981人)、「痛いということを簡単に他人に言うべきではない」と考える人は55.7%(5,240人)であった。・長く続く痛みへの対処で、病医院へ通院していない人は50.1%(4,707人)であり、そのうち31.2%(1,470人)が「病院へ行くほどでもないと思った」と回答した。・痛みがあってもある程度、自分も我慢するべきと考える割合や、過去5年以内に1回でも通院先を変更した経験があったり、3回以上通院先を変更したりしている人の割合については地域差がみられた。・神経障害性疼痛を判定するスクリーニングテストの結果、20.1%(1,888人)に神経障害性疼痛の疑いがあった。・72.9%(6,849人)が「長く続く痛みの種類」を知らず、76.6%(7,203人)が「長く続く痛みの治療法を知らない」と回答した。 これらの結果より、宗圓氏は、日本では痛みを我慢することが美徳とされてきたが、痛みを我慢するとさまざまな要因が加わって慢性化することがあるため、早めに医療機関を受診することが重要であると述べた。 そして、痛みが長期間続くと不眠、身体機能の低下やうつ症状を併発することもあるため、治療目標を設定し、痛みの種類や症状に合わせて薬物療法、理学療法や心理療法も取り入れ、適切に治療を行う必要があるとまとめた。●プレガバリン(商品名:リリカ)について プレガバリンは痛みを伝える神経伝達物質の過剰放出を抑えることで鎮痛作用を発揮する薬剤であり、従来の疼痛治療薬とは異なる新しい作用機序として期待されている薬剤である。また、現在120の国と地域で承認され、神経障害性疼痛の第一選択薬に推奨されている。 さらに、2012年6月にプレガバリンは「線維筋痛症に伴う疼痛」の効能を取得した。線維筋痛症は全身の広い範囲に慢性的な疼痛や圧痛が生じ、さらに疲労、倦怠感、睡眠障害や不安感などさまざまな症状を合併し、QOLに悪影響を与える疾患である。国内に約200万人の患者がいると推計されるが3)、日本において線維筋痛症の適応で承認を受けている薬剤はほかになく、国内唯一の薬剤となる。国内用量反応試験、国内長期投与試験、外国後期第Ⅱ相試験、外国第Ⅲ相試験および外国長期投与試験において、副作用は1,680例中1,084例(64.5%)に認められた。主な副作用は浮動性めまい393例(23.4%)、傾眠267例(15.9%)、浮腫179例(10.7%)であった。なお、めまい、傾眠、意識消失等の副作用が現れることがあるため、服薬中は自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように、また、高齢者では転倒から骨折に至る恐れがあるため注意が必要である。●疼痛治療の今後の期待 慢性疼痛は侵害刺激、神経障害に加え、心理的な要因が複雑に絡み合っている。さらに「長く続く痛みに関する実態調査」によって、疼痛を我慢して治療を受けていない患者の実態が明らかとなり、さまざまな要因が加わって疼痛が慢性化し、治療が難渋することが懸念される。 抗炎症鎮痛薬が効きにくいとされている神経障害性疼痛において、プレガバリンのような新しい作用機序の薬剤の登場により、痛みの種類に応じた薬剤選択が可能となった。患者と治療目標を設定し、適切な治療方法を選択することにより、今後の患者QOLの向上が期待される。

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高齢者介護施設での身体拘束、ガイドラインや行動理論による介入で減少

高齢者介護施設(nursing home)に対し、ガイドラインや行動理論による介入を行うことで、身体拘束を受ける入所者の割合が減少することが示された。ドイツLubeck大学のSascha Kopke氏らが、36ヵ所の高齢者介護施設について行った集団無作為化試験で明らかにしたもので、JAMA誌2012年5月23・30日合併号で発表した。ドイツでは、身体拘束は法的に規制されており、また身体拘束の有効性と安全性についてエビデンスがないにもかかわらず、多くの高齢者介護施設でいまなお行われている現状だという。また米国の高齢者介護施設では20%で身体拘束が行われているとの報告もあるという。入所者の2割以上が身体拘束を受ける、36施設について無作為化試験研究グループは、2009年2月~2010年4月にかけて、高齢者介護施設36ヵ所を無作為に2群に分け試験を行った。試験適格とされた施設では、入所者の2割以上が身体拘束を受けていた。対象施設の一方の群(18施設、入所者数2,283人)にはエビデンスに基づき作成されたガイドラインおよび計画的行動理論に基づく介入を行い、もう一方の群(18施設、同2,166人)は対照群として特別の介入は行わなかった。介入を行った施設に対しては、看護職員に対するグループセッション、一部の看護師に対する追加的訓練、看護師や入所者、親戚などに対する教育的資料の配布などを行った。対照群には、一般的な情報を提供した。身体拘束を受ける割合、介入群は対照群より6.5%ポイント低率主要アウトカムは、試験開始から6ヵ月時点の、ベッド両側柵、ベルト、固定テーブルの設置、その他自由な行動を規制する仕掛けを用いた身体拘束を受けている入所者の割合とした。評価は、覆面調査員による1日3回の直接的評価で行われた。調査を開始したすべての施設で調査は完遂し、被験者全員について追跡を完了することができた。調査開始時点で、身体拘束を受けていた入所者の割合は対照群が30.6%、介入群では31.5%と同等だった。6ヵ月時点の同割合は、対照群が29.1%に対し、介入群では22.6%と有意に低率で、絶対格差は6.5%だった(95%信頼区間:0.6~12.4、クラスター補正後オッズ比:0.71、同:0.52~0.97、p=0.03)。同割合は、3ヵ月時点から6ヵ月時点に安定的に推移していた。転倒転倒による骨折、向精神薬の処方率について、両群で有意差は認められなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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東日本大震災1年 透析患者移送その後の記録

財団法人ときわ会 常磐病院新村 浩明 2012年5月28日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 ※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。 東日本大震災からすでに1年以上が経過しました。以前、この場をお借りして東日本大震災時の透析患者移送に関して報告させていただきました。(Vol.404 東日本大震災透析患者移送体験記 http://medg.jp/mt/2012/02/vol404.html)震災から1年を経過したのを機に、ときわ会グループのうち、震災時に透析移送にかかわった4施設(いわき泌尿器科、常磐病院、泉中央病院、富岡クリニック)において透析されていた方々のこの1年の経過をまとめてみましたのでここに報告したいと思います。これら4施設において、この1年間で亡くなられた方は、津波による死亡が3名、震災の直接関係は不明ですが震災後1週以内に亡くなられた方が3名、震災1カ月以降、2012年3月までに亡くなられた方は50名いらっしゃいました。震災時の4施設の透析患者数は637名で、うち56名の死亡であったため、死亡率が8.8%となりました。これは、透析医学会から発表されている2010年の透析患者粗死亡率9.7%より低い数字でした。この結果は、東大日本大震災とういう激甚災害の苦難を乗り越えた患者集団としては十分満足できる数字であったと考えます。また、ややもすれば無謀とも非難されかねなかった透析患者集団移送が、適切な選択であったことが裏付けられたのではないかと考えています。●ときわ会グループと透析患者集団移送ときわ会グループは、いわき市を中心に透析と泌尿器疾患を中心に診療するグループで、1つの病院と6つの診療所、2つの介護老人保健施設からなっています。http://www.tokiwa.or.jp/震災発生後の福島第一原発の事故により、富岡クリニックの患者及びスタッフは、緊急避難を強いられ、一部は福島県中通り地方から会津地方へと避難し、一部はいわき市に避難しました。いわき市に避難した富岡クリニックの患者は、いわき泌尿器科と常磐病院にて透析を行いました。前回報告したように、原発事故発生以降、いわき市内ではスタッフや医療物資、ガソリンの不足と断水によって、透析継続が困難となり、3月17日に、ときわ会グループ(いわき泌尿器科、常磐病院、泉中央クリニック、富岡クリニック)を含めたいわき市内の透析患者を、東京、新潟、千葉へ移送し透析を受けることとなりました。●震災発生後の透析患者の行方震災時、上記4施設で、総数637名の透析患者がおり、うち外来通院患者が532名、入院患者が68名でした。これらの患者のうち不幸にも津波で亡くなられた方が3名いらっしゃいました。また、集団移送まで間に3名の方が亡くなられました。これらの方々は震災以前より体調が悪かった方々でしたが、震災の影響によって透析が不十分であったり入院ケアが不十分であったことが死期を早めた可能性は否定できません。3月17日に集団移送した患者が428名(東京229名、新潟154名、鴨川市45名)で、これとは別に後日、22名(東京2名、横浜6名、埼玉14名)の方を移送しています。この移送とは別に、個人的に避難された方が230名で、避難されずにいわき市に残られた方が21名いらっしゃいました。震災前より入院されていた方は、移送後も入院透析となりました。移送後、31名の方が新たに入院されました。その多くはADL低下による通院困難で入院となった方や震災前からの合併症の悪化による入院でした。移送後発生した疾病で入院となった例としては、1名が転倒により大腿骨骨折のため入院となり、1名は消化管出血のため入院となっています。3月後半になると、水道や物流が復旧し、自主避難していたスタッフも戻ってきたため、いわき市で通常の透析ができる環境が整いました。そのため移送した透析患者は3月26日より順次、いわき市に戻りました。移送先で入院を継続していた方を除けば、4月23日までにはほとんどの透析患者がいわきに戻りました。いわき市に戻ってからは、一部の患者で、特に富岡地区の方々は住居がないため、必要に応じて入院していただいたり、施設をお世話したりしました。自主避難した方で、2012年3月現在も、いわき市に戻らず他院で透析を受けてらっしゃる患者は183名(28.7%)でした。いわき市に戻られない方では、やはり富岡地区の透析患者が多く、郡山や会津地方に避難され透析を受けている場合が多いようでした。●粗死亡率集団移送後に現地で亡くなられた方は2名いらっしゃいました。移送後、いわきに戻ってきてから亡くなられた方が、現在までに30名いらっしゃいました。自主避難された方で亡くなられた方は14名、避難せず自宅より通院された方で亡くなられた方は4名でした。これらの死因のほとんどが、合併症が悪化し亡くなられたものでした。いわゆる震災関連による原因によって亡くなられた方はいらっしゃいませんでした。津波による死亡の3名、震災に直接関係は不明ですが震災1週以内に亡くなられた方の3名と合わせると、震災以降に亡くなられた方は計56名でした。震災時の4施設の透析患者数は637名で、うち56名の死亡となり、粗死亡率は8.8%となりました。この数字は、透析医学会から発表されている2010年の透析患者粗死亡率9.7%より低い値でした。http://docs.jsdt.or.jp/overview/pdf2011/p21.pdf●現在のときわ会グループ 常磐病院透析センター開所ご存知のように、福島県富岡町は福島第一原発事故の影響で警戒区域となっているため、同町にある富岡クリニックは現在も閉院したままです。同クリニックに通院していた透析患者は、県内のみならず様々な地域での避難生活を強いられており、その中でもいわき市に避難されている方々はときわ会グループの各施設で、透析を受けていただいています。常磐病院では震災前から計画されていた、最新設備を備えた新透析センターが昨年の7月にオープンしています。100床の透析ベッドを備え、オンラインHDFの装置や全自動透析装置を装備しています。これは震災前より将来の透析患者の増加を想定し昨年4月開所の予定で計画していましたが、震災の影響で7月開所となりました。現在のいわき市では、上記の富岡町を含めた警戒区域の方々が多く避難されています。こうした避難されている方々にはもちろん透析患者も含まれており、安心の透析医療を最新の透析センターで―提供していくことがときわ会グループの使命と考えています。●透析患者移送から1年を振り返り前述したように、この1年のときわ会グループでの粗死亡率は、震災以前の透析患者の粗死亡率の全国平均と比較して十分低い数字でした。これは震災時の透析施行困難な状況での患者移送が、適切な選択であったことの証明であると考えます。しかし、震災時のストレスや不十分な透析、満足できない食事は、決して透析患者の生命予後によい方向には働かなかったであろうと容易に推測されます。この1年を振り返り、あの時はこうすればよかったなどと反省する点は多々ありました。ときわ会グループとしてこの成績に決して満足することなく、一人でも多くの透析患者に安心安全な透析医療を提供できるように切磋琢磨したいと考えています。いわき市ではまだまだ余震が続き、原発事故の終息の時期も不明です。こうしたなか、いつ再び昨年の震災時と同じ状況が起こるとも限りません。さらに首都圏直下型大震災の発生が近い将来危惧されています。そこでときわ会グループの各透析施設では、災害に強いシステム作りに着手しており、また近隣地域の災害時には、透析患者を積極的に受け入れられるように常時準備していきたいと考えています。ときわ会グループでは、スローガンである『笑顔とまごころ、信頼の絆』を合言葉のもと、今後も、よりよい透析医療を提供できるよう努力していく所存です。皆様には、今後とも変わらぬご指導、ご支援を賜りますよう、心からお願い申し上げます。

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日本人の睡眠満足度は低い「より積極的な問診が必要」-日米仏3ヵ国睡眠調査より-

現代では24時間型の生活習慣による生活の乱れや、高齢化、ストレスに満ちた社会環境などにより、国民の約5人に1人は睡眠に悩んでいるといわれ、不眠症は誰にでも起こりうる現代病のひとつといえる。不眠は、集中力や気力、充実感といった日中パフォーマンスの低下を招くだけでなく、糖尿病や高血圧をはじめとする生活習慣病やうつ病のリスクともなる。現代社会における睡眠、不眠に対する意識や行動の実態を把握するため、睡眠専門医である林田 健一氏の監修のもと、アステラス製薬株式会社ならびにサノフィ・アベンティス株式会社は、日本・アメリカ・フランスの3ヵ国で約7,000人を対象に睡眠に関する意識と行動についてのインターネット調査を実施した。本調査結果は、2012年5月22日、アステラス製薬株式会社とサノフィ・アベンティス株式会社によるプレスセミナーにて発表された。日本人の睡眠時間は米仏と比べ、約0.5時間短い平日の平均睡眠時間は、日本は6.50時間で米国の7.01時間、仏国の7.07時間より約0.5時間短く、平均睡眠時間が6時間未満の割合は、日本が最も多く19.8%、米国12.5%、仏国10.2%であった。また、日本人は睡眠時間に対する満足度も最も低かった。日本人は睡眠の質に対する満足度も低く、日中パフォーマンスも低下睡眠の質への満足度調査では、「満足」と回答した割合は米国59.4%、仏国61.1%に対し、日本は44.7%であった。一方、「不満」と回答した日本人は36.0%と約3人に1人が睡眠の質に不満であることが明らかとなった。日中パフォーマンスとして評価した「集中力、気力・充実感の低下」および「眠気」を感じる人の割合は、日本はいずれの項目でも米仏より高い結果であった。とくに、「集中力がない」と回答した割合は、米仏(各4.5%、9.7%)に対して日本人は17.4%、「日中に眠気を感じる」が米仏(各56.0%、30.3%)に対して日本人70.9%、と米仏との間に大きな開きがあった。また、日本人では睡眠の質に対する満足度が低いほど日中パフォーマンスの低下が顕著にみられた。不眠の対処法-日本人は「寝酒」、米仏では「かかりつけ医に相談」-不眠症状のある人(アテネ不眠尺度6点以上)を対象に、不眠への対処を調査したところ、日本では「お酒を飲む」19.5%、「医師から処方された睡眠薬を飲む」13.7%、「何もしない」13.1%の順であった。米仏では「医師から処方された薬を飲む」(各19.2%、16.9%)、「医師の診察を受ける」(各18.6%、19.9%)の割合が多く、日本とは対照的な結果であった。次いで、不眠症状がある人が医療機関を受診した割合では、米国27.3%、仏国25.6%に対し、日本は15.7%と低い結果であった。また、不眠症状があるが受診経験のない人を対象に「不眠の改善に良いと思う診療科」を尋ねたところ、米仏では「かかりつけ医(内科)」(各49.8%、66.7%)の割合が多いが、日本では25.9% と低く、さらに31.4%が「わからない」と回答した。加えて、「かかりつけ医から睡眠について聞かれた経験がある」と回答した割合は、米仏(各29.8%、47.2%)と比べ、日本人では20.8%と低かった。求められる、かかりつけ医の役割「積極的な睡眠の問診と治療を」今回の調査結果から、日本人は睡眠時間や睡眠の質に関する悩みを抱えているものの、米仏と比べ医師に相談することも少なく、寝酒で不眠対処をする傾向 があることがわかった。林田氏は「不眠の予防、早期発見、治療は日本人の健康と安全を守るうえで重要であり、かかりつけ医には睡眠についてより積極的な問診を実施し治療を行うことが求められる」と語った。 【調査概要】 調査目的:睡眠、不眠に対する意識や行動の実態を把握する調査対象:日米仏の成人、計6,973人(30歳以上)     日本 3,282人(男性:49.8%、女性:50.2%)     米国 1,725人(男性:49.8%、女性:50.2%)     仏国 1,966人(男性:49.6%、女性:50.4%)調査手法:インターネット調査(2011年8月18日~24日) (ケアネット 鷹野 敦夫) 【関連コンテンツ】 転倒リスクを見据えた睡眠薬の選択http://mrp.carenet.com/project/269/c/120525 睡眠薬の分類と特徴からみたマイスリーの特性http://mrp.carenet.com/project/253/c/120525

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