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第67回 がん患者にmRNAワクチン有効/米国のCOVID-19死亡例の接種状況/ワクチン開発に役立つ発見

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの効果を裏付ける2つの報告と次世代のCOVID-19ワクチン開発で参考になりそうな研究成果を紹介します。がん患者の94%がCOVID-19のmRNAワクチンに応答Pfizer/BioNTech社やModerna社のmRNAワクチン・BNT162b2やmRNA-1273が投与されたがん患者のほとんどが新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)への抗体を幸いにも発現しました1)。2回目の接種を済ませたがん患者123人中116人(94%)にSARS-CoV-2への抗体が認められました。ただし、先立つ6ヵ月間に抗CD20抗体リツキシマブ治療経験がある4人にはSARS-CoV-2への抗体が認められませんでした。また、骨髄腫やホジキンリンパ腫などの血液がん患者の抗体発現率は77%であり、固形がん患者の98%に比べて低めでした。血液がん患者は抗体活性も低めでした。今後の課題として、そのような不安要素がある患者へのがん治療後の3回目の接種の検討などが必要です2)。米国では今やワクチン接種済みのCOVID-19死亡例は1%に満たないAP通信社が米国疾病予防管理センター(CDC)の5月のデータを独自に調べた結果によると同国のCOVID-19死亡のほぼすべてはワクチン接種が済んでいない人でした3)。5月のおよそ11万のCOVID-19入院患者にワクチン接種が済んだ人はほとんどおらず僅か約1.1%の1,200人足らずでした。また、5月にCOVID-19で死亡した1万8,000人超にもワクチン接種が済んでいる人はほとんどおらず1%にも満たない(およそ0.8%)約150人のみでした。好中球の投網でCOVID-19を一網打尽?Pfizer/BioNTechのmRNAワクチン接種でも発現4)しうることが知られるIgA抗体は粘膜表面に豊富でウイルス病原体の防御で重要な役割を担います。IgA抗体はウイルスに直接取り付いて細胞感染を阻止することに加え、免疫細胞表面にあるFc受容体と協力して抗菌活性を促しうることが知られています。Fc受容体を介したIgA抗体のウイルス感染への作用はこれまでよく分かっていませんでしたが、PNAS誌に掲載された新たな研究の結果5)、IgA抗体-ウイルス複合体は好中球のFc受容体に結びついてクモの巣状の仕掛け・NET(好中球細胞外トラップ)を投網の如く好中球に分泌させると分かりました。好中球が破裂(NETosis)して放たれるNETはウイルスを捉えて不活性化することも確認され、その抗ウイルス機能が裏付けられました。他の免疫活性がそうであるようにNETは有益である一方で行き過ぎると害をもたらします。IgA抗体が感染前に豊富に備わっていればNETは感染防御を担うでしょう。しかし感染でIgA抗体がたくさん作られてしまうとNETは炎症を引き起こしてむしろ病状を悪化させてしまう恐れがあります6)。SARS-CoV-2やインフルエンザウイルスなどに対抗するIgA抗体をあらかじめ備えておくための次世代のワクチン開発に今回の成果は参考になるでしょう。参考1)Addeo A, et al.Cancer Cell. 2021 Jun 18:S1535-6108,00330-5.2)94% of patients with cancer respond well to COVID-19 vaccines / Eurekalert3)Nearly all COVID deaths in US are now among unvaccinated / AP4)Turner JS, et al.Nature. 2021 Jun 28. [Epub ahead of print]5)Stacey HD, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2021 Jul 6;118.6)Researchers discover unique 'spider web' mechanism that traps, kills viruses / Eurekalert

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ASCO2021 レポート 血液腫瘍

レポーター紹介ASCOの年次総会は毎年6月に米国・シカゴで開催されてきましたが、COVID-19の影響で、昨年のASCO 2020は初のWEB開催となりました。本年のASCO 2021も引き続きWEB開催でした。血液内科を専門領域としている私は、6月の同時期に欧州血液学会(EHA)や国際悪性リンパ腫会議(ICML)が開催されるため、それらの学会に参加することが多く、これまでASCOの会員ではあるもののASCOには参加したことがありませんでした。しかし、ASCO 2020がWEB開催となったため、昨年、初めてASCOに参加しました(WEBでの聴講参加を行いました)。そこで感じたのは、ASCOでは種々のがんに対する最新の臨床試験の結果の中でも、クオリティーが高く、今後の治療体系を変えていくような大規模臨床試験の結果や、新規の治療薬の第I/II相試験の結果が発表されているということでした。私の専門領域の血液腫瘍領域からの採択演題数はそう多くなかったのですが、逆に、そこで発表される演題は注目度の高いものばかりでありました。今年のASCO 2021もCOVID-19の影響でWEB開催されることとなったため、米国まで行かずに通常の病院業務をしながら、業務の合間に時差も気にせず、オンデマンドで注目演題を聴講したり発表スライドを閲覧したりすることができました。それらの演題の中から10演題を選んで、発表内容をレポートしたいと思います。血液腫瘍領域でOralやPoster Discussionに選ばれているAbstractを見ますと、その多くが、分子標的薬や抗体薬による治療や、あるいはCAR-T細胞治療の臨床試験の結果でした。最近のトレンドであるChemo-freeレジメンによる治療にシフトしていっていることを強く感じました。以下に、白血病関連3演題、悪性リンパ腫(慢性リンパ性白血病含む)関連4演題、多発性骨髄腫関連3演題を紹介します。白血病関連Combination of ponatinib and blinatumomab in Philadelphia chromosome-positive acute lymphoblastic leukemia: Early results from a phase II study. (Abstract #195835)初発および再発・難治のフィラデルフィア染色体陽性ALLおよびCMLのALL転化(CML-LBC)に対する、ポナチニブとブリナツモマブ併用による治療の第II相試験の結果が報告された。ポナチニブは30mg内服、ブリナツモマブは持続点滴による通常の投与法であった。初発患者20例、再発・難治患者10例、CML-LBC患者5例が対象となった。CR/CRp率は、全体で96%(初発:100%、再発・難治:89%、CML-LBC:100%)であり、CMR(完全分子寛解)も全体で79%であった。また、初発の患者のうち19例は同種移植を受けず生存中であった。フォローアップ期間の中央値12ヵ月時点で、1年OSは93%、1年EFSは76%であり、初発の患者に限ると1年OS、EFSはともに93%であった。本Chemo-freeレジメンは、とくに初発Ph陽性ALL患者に対し、非常に有望な治療法であると思われた。OPTIC primary analysis: A dose-optimization study of 3 starting doses of ponatinib (PON). (Abstract #195828)ポナチニブは、第3世代のチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)であり、第2世代TKIに抵抗性/不耐容となったCML患者、あるいはT315I変異を有するCML患者に対し、有効性を示す。しかし、心血管障害の副作用が問題となり、至適な投与量については、議論の余地があった。本試験では、2種類以上のTKIに抵抗性/不耐容となった、あるいはT315I変異を有するCML-CP患者283例を3群に分け、45mg、30mg、15mgの量で開始し、45mg、30mgの群はIS-PCRが1%以下となった時点で15mgに減量するという投与法を比較している。主要評価項目の12ヵ月時点でのIS-PCR 1%以下の達成率は、45mg開始群が最も高かった。とくにT315I変異を認める症例には明らかな差を認めている。心血管の副作用の割合も45mg開始群でやや多かったが、有効性と安全性の差を比較すると45mg開始群の優位性が示された。45mgから開始し、効果に応じて減量する治療法は有用と思われた。Effect of olutasidenib (FT-2102) on complete remissions in patients with relapsed/refractory (R/R) mIDH1 acute myeloid leukemia (AML): Results from a planned interim analysis of a phase 2 clinical trial. (Abstract #195811)変異IDH1の選択的阻害薬のolutasidenib単剤による、再発・難治のIDH1変異を有するAML患者に対する第II相試験の結果が報告されている。153例の患者が本試験に参加している。olutasidenib 150mgを1日2回内服する治療である。治療期間の中央値は4.7ヵ月で、43例が治療継続中であり、110例が治療中止した(主な中止理由は、病勢進行:31%、副作用:14%、死亡:10%、移植:8%であった)。有効性の評価可能例123例において、主要評価項目のCR+CRhは33%であった。CR+CRhの患者では、治療奏効期間の中央値は未達であり、18ヵ月時点のOSは87%であった。G3/4の副作用は主に血球減少であり、IDH1分化症候群は14%にみられた。olutasidenibはIDH1変異を有する再発・難治AMLに対し、有効と思われる薬剤である。悪性リンパ腫(慢性リンパ性白血病含む)関連First results of a head-to-head trial of acalabrutinib versus ibrutinib in previously treated chronic lymphocytic leukemia. (Abstract #201554)再発・難治性CLL(del(17p)かdel(11q)の異常を有する症例のみ)に対するBTK阻害薬のイブルチニブとアカラブルチニブのHead to headの比較試験(ELEVATE-RR試験)の結果が報告された。有効性については、PFSの中央値が両者とも38.4ヵ月で差を認めず、安全性については、心房細動の頻度が有意にアカラブルチニブで少ないという結果であった。さらに、高血圧、関節痛、出血、下痢の副作用もアカラブルチニブで少なく、一方、頭痛と咳はアカラブルチニブで多かった。副作用中止の割合は、イブルチニブで21.3%に対して、アカラブルチニブでは14.7%と少なかった。本試験の結果、OFF-ターゲット効果の少ないアカラブルチニブはイブルチニブと比較して、有効性は変わらず、副作用が少ないことが示された。Fixed-duration (FD) first-line treatment (tx) with ibrutinib (I) plus venetoclax (V) for chronic lymphocytic leukemia (CLL)/small lymphocytic lymphoma (SLL): Primary analysis of the FD cohort of the phase 2 captivate study. (Abstract #201560)初発CLL患者に、イブルチニブとベネトクラクスを併用したCAPTIVATE試験(第II相)の結果が示された。イブルチニブ420mgを3サイクル投与した後、ベネトクラクスを400mgまで増量し、12サイクル併用している。159例の患者が参加し、主要評価項目はdel(17p)を有さない患者のCR率であった。ハイリスク症例は、del(17p)/TP53変異:17%、del(11q):18%、複雑核型:19%、IGHV未変異:56%であった。92%の患者が予定治療を完遂できた。del(17p)を有さない患者のCR率は56%(95%CI:48~64%)であった。ハイリスク症例でも同様であった。MRD陰性は、末梢血で77%、骨髄で60%にみられた。腫瘍崩壊症候群は1例も認められなかった。初発CLLに対し、イブルチニブとベネトクラクスによる固定期間の治療も1つの有望な治療選択肢となりうる。Efficacy and safety of tisagenlecleucel (Tisa-cel) in adult patients (Pts) with relapsed/refractory follicular lymphoma (r/r FL): Primary analysis of the phase 2 Elara trial. (Abstract #196296)再発・難治の濾胞性リンパ腫(R/R FL)に対するtisa-cel(商品名:キムリア)の効果をみたELARA試験(第II相)の結果が報告された。2レジメン以上の前治療歴のあるR/R FL患者98例がエントリーされ、97例にキムリアが投与されている。本試験の対象となった患者の年齢中央値は57歳、60%がFLIPI 3点以上、65%がBulky massを有しており、前治療のレジメン数の中央値は4レジメン(2-13)であった。78%の患者が最終治療に抵抗性があり、60%の患者が抗CD20抗体を含む最初の治療から2年以内に再発(POD24に該当)していた。このような患者コホートに対し、CR率は66%、全奏効率は86%であった。6ヵ月時点のPFSは76%であった。G3/4の有害事象は76%にみられ、CRSは49%(G3以上は0%)にみられた。R/R FLに対する3レジメン以降の治療として、キムリアは1つの選択肢となりうることが示された。The combination of venetoclax, lenalidomide, and rituximab in patients with newly diagnosed mantle cell lymphoma induces high response rates and MRD undetectability. (Abstract #201563)初発マントル細胞リンパ腫に対するリツキシマブ、レナリドミド(R2)に、ベネトクラクス(Ven)を併用した治療の第Ib相試験の結果が報告された。レナリドミドは20mgをDay1~21に服用し、ベネトクラクスはサイクル1(C1)Day8から開始し、4週間かけて400mgまで増量する。リツキシマブは、C1では毎週投与し、以降は8週ごとに投与した。12サイクル、寛解導入治療を行った後は、維持療法として、レナリドミド10mgを24ヵ月間、ベネトクラクスを12ヵ月間、リツキシマブを36ヵ月間、投与する予定である。DLT評価期間は、C1D8から42日間とされた。28例が試験に参加し、全例、ベネトクラクスを400mgまで増量できた。DLTは認められなかった。治療開始後3ヵ月時点のORRは96%、CR/CRuは67%、MRD陰性は63%であり、Chemo-freeレジメンのR2+Venは、安全性に問題なく、有効性が期待できるレジメンの可能性が示された。多発性骨髄腫関連Carfilzomib-based induction/consolidation with or without autologous transplant (ASCT) followed by lenalidomide (R) or carfilzomib-lenalidomide (KR) maintenance: Efficacy in high-risk patients. (Abstract #196624)初発多発性骨髄腫(MM)患者に対し、KRD(4サイクル)+Auto+KRD(4)とKCD(4)+Auto+KCD(4)、KRD(12)(Autoなし)の寛解導入療法を比較し、さらにその後、維持療法をKR vs.R単剤で比較するFORTE試験のハイリスク染色体異常の有無での解析結果が報告されている。標準リスク、ハイリスクともに、KRD+Auto+KRDによる寛解導入治療が、KCD+Auto+KCD、KRD(12)より有意に治療成績が良いことが示された。ただし、1q増幅(amp(1q))の患者の予後はすべての治療で最も悪かった。また、維持療法についても、KRがR単剤と比較し、標準リスク、ハイリスクともに、有意にPFSを延長したが、1q増幅では差がなく、最も短かった。ハイリスク患者のKRD+Autoの4年PFSは62%であり、KRによる維持療法の3年PFS(維持療法開始後)は69%であった。KRD+Auto+KRD→KR維持療法は、ハイリスク染色体異常を有するMM患者に対する1つの治療戦略と考えられた。Daratumumab (DARA) maintenance or observation (OBS) after treatment with bortezomib, thalidomide and dexamethasone (VTd) with or without DARA and autologous stem cell transplant (ASCT) in patients (pts) with newly diagnosed multiple myeloma (NDMM): CASSIOPEIA Part 2. (Abstract #195428)移植適応の初発MM患者に対するDara-VTDとVTDを比較したCASSIOPEIA試験のパート2部分の、Daraによる維持療法の意義を検証した中間解析結果が報告されている。寛解導入治療でPR以上が得られた患者を対象に、Dara投与群(8週に1回の投与、最長2年間)と無治療群にランダム化されている。886例が、Dara群442例と無治療群444例に分けられ、PDとなるまでDaraの投与は行われた。全体では、有意に(HR:0.53、95%CI:0.42~0.68)Dara維持療法群でPFSの延長がみられているが、Dara-VTDによる寛解導入が行われた患者では、Dara維持療法によるPFSの延長はみられなかった。Dara-VTDによる寛解導入が行われた患者でのDara維持療法の意義については、観察期間を延長し、PFS2やOSの評価が必要であると思われる。Updated phase 1 results of teclistamab, a B-cell maturation antigen (BCMA) × CD3 bispecific antibody, in relapsed/refractory multiple myeloma (MM). (Abstract #195433)CD3とBCMAに対するバイスペシフィック抗体(バイト抗体)薬のteclistamabの再発・難治MM患者に対する第I相試験の結果が報告されている。この試験では、投与量および投与方法が検討され、第II相試験の推奨用量が、1,500μg/kgの週1回の皮下注投与に決定されている。また、本投与量・投与法で治療を受けた40例は、前治療のレジメン数の中央値が5レジメン(2-11であり、トリプルクラス抵抗性が83%、5薬抵抗性が35%)のHeavily treated患者であった。全奏効率は65%(58%がVGPR以上、40%がCR以上)であった。有害事象は、CRSが70%(G3以上は0)、G3/4の好中球減少が40%、神経毒は1例のみ(G1で自然軽快)であった。既存の治療に抵抗性のMM患者に対する新たな治療薬として期待される結果であったと思われる。おわりに以上、ASCO2021で発表された血液腫瘍領域の演題の中から10演題を紹介しました。どの演題も今後の治療を変えていくような結果であるように思いました。来年以降、ASCOが現地開催となると、私は6月にASCOに参加することは難しくなります。できれば、COVID-19が収束しても、現地開催に加えてWEB開催を継続してもらいたいと思いました。

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マントル細胞リンパ腫1次治療、ベネトクラクス+レナリドミド+リツキシマブが有望/ASCO2021

 未治療のマントル細胞リンパ腫(MCL)患者に対し、レナリドミド+リツキシマブ(R2療法)とベネトクラクスの併用は、用量制限毒性(DLT)を認めず忍容性は良好で、高リスク患者の治療に有望であることが示された。米国・ミシガン大学 Rogel Cancer CenterのTycel Jovelle Phillips氏が、第Ib相試験の中間解析結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。・対象:未治療MCL成人患者(ECOG PS 0~2)28例・介入:[導入期](1サイクルを28日間として、12サイクル)ベネトクラクス(1サイクル目は50mgから200mgに漸増、2サイクル目以降は400m/日)+レナリドミド(1サイクル目は10mgから20mgに禅僧、2~12サイクルは20mg/日をDay 1~21に投与)+リツキシマブ(1サイクル目375mg/m2/日Day 1、8、15、22、その後は偶数サイクルのDay 1投与)。[維持期](3年間)ベネトクラクス(400mg/日を最低12ヵ月間)+レナリドミド(10mg/日または導入期最終投与量の半量を24ヵ月)+リツキシマブ(375mg/m2/を日8週間ごと36ヵ月投与)※導入期に完全奏効(CR)、MRD陰性を認めた患者、非病勢進行(PD)患者、移植不適格/拒否患者は維持期へ移行。・評価項目:[主要評価項目]1サイクル目のDay 8から42日間におけるDLT[副次評価項目]CR(CR/不完全奏効[CRu])、奏効率(ORR)(CR/CRu+部分奏効[PR]) 主な結果は以下のとおり。・30例が登録され、28例が治療を受けた。28例中、23例(82%)が治療継続中(導入期5例、維持期18例)、3例(11%)はPDで中止、2例(7%)は他の医学的問題のために中止となった。・28例の患者背景は、男性18例(64%)、女性10例(36%)、年齢中央値65歳、全例Ann Arbor StageIIIまたはIVで、MCL国際予後指数(MIPI)スコアは中間リスク群が10例(6%)、高リスク群が18例(88%)であった。また、芽球性サブタイプ4例、多形性サブタイプ2例、Ki-67陽性細胞割合≧30%が19例、p53欠失2例、p53変異5例であった。・治療期間は中央値308日、投与サイクル数中央値は11サイクルで、投与量が減量されたのは10例(ベネトクラクス8例、レナリドミド5例、両方3例)であった。・有効性については、3ヵ月時(28例)のCRが67%、ORRは96%、6ヵ月時(27例)はそれぞれ78%、97%、9ヵ月時(16例)はCR94%、12ヵ月時(12例)はCR100%であった。・MRD陰性率は、3ヵ月時(27例)63%、6ヵ月時(25例)77%、9ヵ月時(16例)94%、12ヵ月時(12例)92%であった。・無増悪生存率(2021年4月30日時点)は、3ヵ月時96.4%、12ヵ月時85.5%であった。・DLT評価期間中にDLTは認められず、全例が1日400mgまで増量可能であった。・治療との関連が疑われるGrade3以上の有害事象は、主に好中球減少症、血小板減少症などであった。・MRD陰性例で再発した患者はおらず、PDで中止となった3例はp53変異を有していた。 Phillips氏は、「未治療MCL患者において、ベネトクラクス+リツキシマブ+レナリドミド併用療法は安全で、高いORRとMRD陰性率が得られることが示された。初期データではあるが、本併用療法はMIPIスコア高リスク、芽球性および多形性サブタイプなど高リスクの特徴を有する患者に有効と考えられ、今後、臨床試験を拡大する予定である」と結んだ。

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再発/難治性濾胞性リンパ腫、CAR-T(tisa-cel)は有望(ELARA)/ASCO2021

 複数回治療を受けた再発/難治性濾胞性リンパ腫(r/r FL)における抗CD19 CAR-T細胞療法薬tisagenlecleucel(tisa-cel)の有効性と安全性を評価した国際単群第II相試験「ELARA試験」の主要解析の結果を、米国・ペンシルベニア大学のStephen J. Schuster氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。高い奏効率と良好な安全性プロフィールが示され、r/r FL患者にとって有望な治療であることを報告した。 FL患者の約20%は初回治療後2年以内に再発し、治療ラインが増えるに従いアウトカムは不良となっていくことから、新たな治療が切望されている。tisa-celは、難治性大細胞型B細胞リンパ腫の成人患者において持続的奏効や良好な安全性プロファイルが示されていた。・対象:18歳以上r/r FL(Grade1-3A)、2レジメン以上の前治療に抵抗性または自家幹細胞移植後再発患者98例・介入: tisa-cel(0.6-6×108 CAR+ viable T細胞)投与、ブリッジング治療可・評価項目:[主要評価項目]Lugano分類(2014)による完全奏効率(CRR)[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性、細胞動態 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ日(2020年9月28日)での投与例は97例(年齢中央値57.0歳)。前治療回数中央値は4で、5回以上が27.8%(27例)を占めた。・追跡期間中央値は10.6ヵ月であった。・安全性評価(97例)において、治療関連有害事象疑いは75例(77.3%)、Grade3/4は44例(45.4%)であった。死亡は3例であった。・投与後8週以内のとくに注目すべき有害事象(AESI)において、神経毒性の発生は全Gradeで9.3%であり、重篤な神経毒性症候群(ICANS)は1例のみであった。・同様にサイトカイン放出症候群(CRS)の発生は、全Gradeで48.5%、Grade3以上は報告されなかった。・有効性の評価(94例)において、主要評価項目のCRRは66%(95%信頼区間[CI]:56~75)、ORRは86%(95%CI:78~92)だった。・PFS、OSはいずれも未到達であった。6ヵ月時点のPFSは76%(95%CI:65~84)であった。 Schuster氏は、「tisa-celは、r/r FL患者の2レジメン以降の治療としてメリットがあると思われる」と報告した。

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Ph陽性ALLへのポナチニブ・ブリナツモマブ併用療法は有望/ASCO2021

 新規診断または再発/難治性のフィラデルフィア染色体(Ph)陽性急性リンパ性白血病(ALL)に対し、BCR-ABL1チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)ポナチニブ+二重特異性T細胞誘導抗体ブリナツモマブ併用の有効性と安全性を評価した第II相単群試験の結果を、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのNicholas J. Short氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。忍容性は良好で、ほとんどの患者で化学療法および自家造血幹細胞移植(AHSCT)を必要とせず、とくに初発患者に有望な治療であることを報告した。 初発Ph陽性ALLにおいて標準療法とされる化学療法+第1・第2世代TKIの5年全生存率(OS)は30~50%であり、T315I変異例では最大75%で再発を認める。一方で、ポナチニブおよびブリナツモマブは、それぞれ高い奏効が報告されており、ポナチニブ+ブリナツモマブ併用の評価が行われた。・対象:18歳以上、新規診断または再発/難治性のPh陽性ALL患者、リンパ性移行期または急性転化期の慢性骨髄性白血病(CML-LBC)患者、PS≦2、35例・介入:[導入期:5サイクル]ブリナツモマブ(標準用量、4週投与2週休薬)+ポナチニブ(1サイクル目 30mgx1/1、2サイクル目以降はCMR達成後15mgに減量)[維持期]ポナチニブ15mgを少なくとも5年間、予防的髄腔内化学療法(メトトレキサート/シタラビン)12回・評価項目:[主要評価項目]初発患者:CMR、再発/難治性患者:ORR(完全奏効/不完全奏効[CR/CRp])[副次評価項目]無イベント生存率(EFS)、OS、安全性 主な結果は以下のとおり。・治療を受けた35例(年齢中央値59歳、66%でBCR-ABL1転写産物p190確認)の内訳は、初発患者20例(62歳、77%)、再発/難治性患者10例(36歳、90%)、CML-LBC患者5例(70歳、0%)であった。・CR/CRp率は、全患者96%、初発患者100%、再発/難治性患者89%、CML-LBC患者100%であった。・CMRは、全患者79%、初発患者86%、再発/難治性患者88%、CML-LBC患者40%であった。・観察期間中央値12ヵ月における1年EFS率は、全患者で76%、初発患者93%、再発/難治性患者61%、CML-LBC患者60%であった。2年EFS率は、それぞれ70%、93%、41%、60%であった。・1年OS率は、93%、93%、80%、100%、2年OS率は80%、93%、53%、100%であった。・忍容性は良好で、ほとんどの有害事象はGrade1/2であった。Grade3の治療関連有害事象は、ポナチニブ関連ではリパーゼ上昇が2例(6%)、ALT情報、脳虚血、高血圧、膵炎、深部静脈血栓症がそれぞれ1例(3%)であり、ブリナツモマブ関連では脳症1例(3%)であった。 Short氏は、「Ph陽性ALLに対するポナチニブ+ブリナツモマブ併用療法の安全性、有効性が示された。化学療法やAHSCTを必要としないレジメンとして有望である」とまとめた。

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「サビーン」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第57回

第57回 「サビーン」の名称の由来は?販売名サビーン®点滴静注用500mg一般名(和名[命名法])デクスラゾキサン(JAN)効能又は効果アントラサイクリン系抗悪性腫瘍剤の血管外漏出用法及び用量通常、成人には、デクスラゾキサンとして、1日1回、投与1日目及び2日目は1000mg/m2(体表面積)、3日目は500mg/m2を1〜2時間かけて3日間連続で静脈内投与する。なお、血管外漏出後6時間以内に可能な限り速やかに投与を開始し、投与2日目及び3日目は投与1日目と同時刻に投与を開始する。また、用量は、投与1日目及び2日目は各2000mg、3日目は1000mgを上限とする。 中等度及び高度の腎機能障害のある患者(クレアチニンクリアラン ス:40mL/min未満)では投与量を通常の半量とする。警告内容とその理由該当しない禁忌内容とその理由(原則禁忌を含む)禁忌(次の患者には投与しないこと)1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者2.妊婦又は妊娠している可能性のある婦人※本内容は2021年6月23日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2020年3月(改訂第4版)医薬品インタビューフォーム「サビーン®点滴静注用500mg」2)キッセイ薬品:SAVENE®injectable500mg

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治療抵抗性/不耐容の慢性期CML、ポナチニブの最適レジメン(OPTIC)/ASCO2021

 BCR-ABL1チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)ポナチニブは、前治療に治療抵抗性または不耐容の慢性期(CP)の慢性骨髄性白血病(CML)に対し、1日45mgから投与を開始し、BCR-ABL1IS≦1%を達成した時点で15mgに減量する投与量調整レジメンが最適であることが、第II相「OPTIC試験」で示され、米国・オーガスタ大学ジョージアがんセンターのJorge Cortes氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。 第II相OPTIC試験は、ポナチニブの有効性と安全性の最適化を目的として、3用量(45mg、30mg、15mg)から投与を開始し奏効に基づき投与量を調整するレジメンをプロスペクティブに評価する無作為化非盲検試験である。中間解析で、1日45mgから投与を開始する投与量調整レジメンの有効性と安全性が示され、すでに昨年の米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で報告されていた。また、中間解析結果に基づき、FDAは治療抵抗性または不耐容のCP-CML患者への本投与量調整レジメンを承認している。今回は、観察期間中央値32ヵ月(最低12.8ヵ月)の主要解析結果が報告された。・対象:2種類以上のTKIによる前治療に抵抗性または不耐容を示す、またはBCR-ABL1 T315I変異陽性のCP-CML成人患者283例・試験群: ポナチニブ 1日45mg→1日15mg投与(45mg→15mg群)94例 ポナチニブ 1日30mg→1日15mg投与(30mg→15mg群)94例 ポナチニブ 1日15mg投与(15mg群)94例BCR-ABL1IS≦1%を達成した時点で15mgに減量・評価項目:[主要評価項目]12ヵ月時点でのBCR-ABL1IS≦1%達成[副次評価項目]12ヵ月および24ヵ月時点での分子遺伝学的大奏効(MMR)、12ヵ月までの細胞遺伝学的大奏効(MCyR)、MMRの期間、安全性 主な結果は以下のとおり。・データカットカットオフ日(2020年5月31日、追跡期間中央値32ヵ月)の時点で、45mg→15mg群は50例(53%)、30mg→15mg群は41例(43%)、15mg群は43例(46%)が治療を継続していた。・12ヵ月時点でのBCR-ABL1IS≦1%達成率は、45mg→15mg群44.1%(41/93例)、30mg→15mg群29.0%(27/93例)、15mg群23.1%(21/91例)で、45mg→15mg群が主要評価項目を達成した(p<0.017)。・24ヵ月時点までではそれぞれ55.9%、37.6%、33.0%であった。・BCR-ABL1IS≦1%達成後に15mgに減量した患者において、45mg→15mg群では73.3%(33/45例)、30mg→15mg群では78.6%(22/28例)の患者が奏効を維持していた。・T315I変異の有無別でみると、45mg→15mg群においてT315I変異陽性例、T315I変異以外の変異陽性例、変異陰性例のいずれにおいても、12ヵ月までにBCR-ABL1IS≦1%を達成した患者の割合が高かった(それぞれ60%、56%、46%。30mg→15mg群ではそれぞれ25%、40%、38%)。・Grade3以上の主な治療下で発現した有害事象(TEAE)は、血小板減少症27%、好中球減少症17%、高血圧8%、貧血7%等であった。・Grade3以上のTEAEの発現率は、45mg→15mg群68.1%、30mg→15mg群61.7%、15mg群63.8%、TEAEにより投与量を減量した患者の割合はそれぞれ45.7%、35.1%、31.9%であった。・動脈閉塞イベント(AOE)の発現率は、45mg→15mg群9.6%、30mg→15mg群5.3%、15mg群3.2%であった。 Cortes氏は、「2種類以上のTKIに抵抗性または不耐容のCP-CML患者に対し、奏効に基づきポナチニブの投与量を調整することでリスクとベネフィットを最適化でき、良好な生存に寄与するだろう」とまとめた。

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再発多発性骨髄腫、イサツキシマブ追加でPFS延長/Lancet

 既治療の再発・難治性多発性骨髄腫患者の治療において、抗CD38モノクローナル抗体イサツキシマブをカルフィルゾミブ+デキサメタゾンと併用すると、カルフィルゾミブ+デキサメタゾンと比較して、無増悪生存(PFS)期間が延長するとともに深い奏効の割合が改善し、新たな標準治療となる可能性があることが、フランス・University Hospital Hotel-DieuのPhilippe Moreau氏らが実施した「IKEMA試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年6月4日号で報告された。上乗せ効果を評価する非盲検無作為化第III相試験 本研究は、日本を含む16ヵ国69施設が参加した非盲検無作為化第III相試験であり、2017年11月~2019年3月の期間に患者登録が行われた(フランスSanofiの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、前治療ライン数が1~3の再発・難治性多発性骨髄腫で、血清または尿中のM蛋白(血清M蛋白≧0.5g/dL、尿中M蛋白≧200mg/24時間)の測定が可能な患者であった。 被験者は、イサツキシマブ+カルフィルゾミブ+デキサメタゾンの投与を受ける群(イサツキシマブ群)またはカルフィルゾミブ+デキサメタゾンの投与を受ける群(対照群)に、3対2の割合で無作為に割り付けられた。イサツキシマブは、10mg/kg/週を4週間静脈内投与し、その後は同用量が2週ごとに投与された。投与は、病勢進行または許容されない毒性が発現するまで継続された。 主要評価項目は、intention-to-treat集団における無増悪生存期間であった。VGPR以上、MRD陰性、奏効期間も良好 302例(年齢中央値64歳、女性44%、前治療レジメン数中央値2)が登録され、イサツキシマブ群に179例、対照群に123例が割り付けられた。 追跡期間中央値20.7ヵ月の時点で、独立審査委員会の判定による無増悪生存期間中央値は、イサツキシマブ群が未到達、対照群は19.15ヵ月であり、有意な差が認められた(ハザード比[HR]:0.53、99%信頼区間[CI]:0.32~0.89、片側検定のp=0.0007)。また、2年時の推定無増悪生存率は、イサツキシマブ群が68.9%、対照群は45.7%であった。 全奏効割合(国際骨髄腫作業部会[IMWG]の基準で、厳格な完全奏効[sCR]、完全奏効[CR]、最良部分奏効[VGPR]、部分奏効[PR]を達成した患者の合計)は、イサツキシマブ群が87%(155/179例)、対照群は83%(102/123例)と、両群間に有意な差はみられなかった(片側検定のp=0.19)ものの、VGPR以上の達成割合(73% vs.56%、p=0.0011)はイサツキシマブ群で良好であった。また、CR達成割合(sCR+CR)は、それぞれ40%および28%であった。微小残存病変(MRD)陰性の達成割合は、イサツキシマブ群が対照群の2倍以上だった(30% vs.13%、p=0.0004)。 奏効期間(HR:0.43、95%CI:0.27~0.67)および次の治療法への移行までの期間(HR:0.57、95%CI:0.38~0.84)はイサツキシマブ群で長かった。 Grade3以上の試験薬投与後に発現した有害事象(TEAE)は、イサツキシマブ群が77%(136/177例)、対照群は67%(82/122例)で認められ、重篤なTEAEはそれぞれ59%(105例)および57%(70例)、投与中止の原因となったTEAEは8%(15例)、14%(17例)にみられた。試験期間中に、致死的なTEAEはイサツキシマブ群3%(6例)、対照群3%(4例)で発生した。 著者は、「カルフィルゾミブ+デキサメタゾンへのイサツキシマブの追加は、免疫調節薬を含む1次治療施行後に増悪した患者や、免疫調節薬に抵抗性の患者の新たな治療選択肢となるだろう」としている。

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再発/難治性B-ALL、CAR-T細胞療法「KTE-X19」が有望/Lancet

 再発/難治性前駆B細胞急性リンパ性白血病(ALL)の患者に対する、自家抗CD19 CAR-T細胞療法「KTE-X19」の有効性と安全性を検討した第II相国際多施設共同非盲検単群試験「ZUMA-3試験」の結果を、米国・モーフィットがんセンターのBijal D. Shah氏らが報告した。完全寛解率または血液学的回復が不十分な完全寛解率は高率で、奏効した患者における全生存(OS)期間中央値は未到達であり、安全性プロファイルは管理可能であったという。新たな治療法や自家造血幹細胞移植(allo-SCT)の治療にもかかわらず、再発/難治性前駆B細胞ALL患者の転帰は依然として不良であり、より効果的な治療の開発が求められている。著者は、「今回の試験結果は、KTE-X19はそれらの患者に長期的な臨床的ベネフィットをもたらす可能性があることを示すものであった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2021年6月3日号掲載の報告。米国・カナダ・欧州25施設で行われたZUMA-3試験 ZUMA-3試験の被験者は、米国、カナダおよび欧州の25施設で登録され、18歳以上、ECOG 0/1、骨髄芽球5%超の再発/難治性前駆B細胞ALL患者が適格とされた。被験者は白血球除去療法および前処置化学療法を受けた後、KTE-X19の単回注入(1×106 CAR-T細胞/kg体重)を受けた。 主要評価項目は、中央評価による完全寛解(CR)率および血液学的回復が不十分な完全寛解(Cri)率であった。副次評価項目は、寛解期間(DOR)、無再発生存(RFS)期間、OS、微小残存病変(MRD)陰性率、allo-SCTを受けた患者の割合などであった。 有効性および安全性の解析は、治療を受けた患者集団を対象に行われた。主要評価項目達成は71%、奏効患者のOSは未到達 2018年10月1日~2019年10月9日の期間に、71例が登録され、白血球除去療法を受けた。KTE-X19の作製に成功したのは65例(92%)で、55例(77%)が投与を受けた。治療を受けた患者の年齢中央値は40歳(IQR:28~52)、追跡期間中央値は16.4ヵ月(13.8~19.6)であった。 CRまたは血液学的回復が不十分なCriを達成した患者は39例(71%、95%信頼区間[CI]:57~82、p<0.0001)であった。うちCR達成患者は31例(56%)であった。 DOR中央値は、12.8ヵ月(95%CI:8.7~評価不能[NE])であり、RFSは11.6ヵ月(2.7~15.5)、OS期間は18.2ヵ月(15.9~NE)であった。 奏効した患者において、OS中央値は未到達であり、38例(97%)がMRD陰性であった。KTE-X19投与後にallo-SCTを受けた患者は10例(18%)だった。 Grade3以上で最も頻度の高い有害事象は、貧血27例(49%)、発熱20例(36%)であった。Grade3以上の感染症を呈した患者は14例(25%)報告された。Grade5のKTE-X19関連事象は2例(脳ヘルニア、敗血性ショック)報告された。Grade3以上のサイトカイン放出症候群(CRS)は13例(24%)、Grade3以上の神経学的イベントは14例(25%)報告された。

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AML初回治療、シタラビンのプロドラッグBST-236の有用性/ASCO2021

 初発急性骨髄性白血病(AML)はシタラビンによる強力寛解導入療法が標準治療となるが、毒性が強く高齢者や合併症のある患者は不適となる。不適患者にはベネトクラクスと脱メチル化薬(HMA)の併用療法が推奨されるが、臨床応用ははじまったばかりでリアルワールドのデータは乏しい。 こうした状況において開発中のaspacytarabine(BST-236)はシタラビンのプロドラッグで、シタラビンの曝露量を減少させ、全身毒性を軽減する。このaspacytarabineの有用性をみた多施設共同シングルアーム第II相試験の中間解析結果を、ノースウェスタン大学Jessica K. Altman氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。・対象:標準化学療法不適の初発AML患者・介入:aspacytarabine 4.5g/m2/日(シタラビン3g/m2/日に相当)を6日間静脈内投与、寛解導入療法1~2コースと地固め療法1~3コース・評価項目:[主要評価項目]完全寛解(CR)率[副次評価項目]最小残存病変(CRMRD)陰性、全生存期間(OS)、奏効期間、安全性 主な結果は以下のとおり。・aspacytarabineの1~4コースを完了した46例が解析対象となった。年齢中央値75歳、ECOG PS 0~1が27例(59%)、2が19例(41%)だった。・26例(63%)がde novo AML、17例(37%)が二次性で、うち6例(13%)がHMAによる前治療を受けていた。・ベースライン時の骨髄芽球中央値は52%で、欧州白血病ネット(ELN)スコアが不利または中間の患者はそれぞれ54%と29%だった。・全CR率は39%、HMA±ベネトクラクス未治療群は45%、de novo AML群は52%、二次性群は18%だった。・完全寛解のうち、63%が最小残存病変(MRD)陰性だった。・20%以上の患者で発生した有害事象は、発熱性好中球減少症(57.4%)、低カリウム血症(44.7%)、末梢性浮腫(42.6%)などだった。Grade3以上の有害事象は、発熱性好中球減少症(48.9%)、血小板減少症(38.2%)、貧血(27.7%)などだった。 Altman氏はaspacytarabineの反復投与における安全性と忍容性が確認されたとしている。一方で本試験は奏効期間中央値12ヵ月、全生存期間中央値24ヵ月(フォローアップ終了時)にいずれも達しておらず、最終結果は今後の学会で発表される予定となっている。

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骨髄腫新薬、ダラツムマブ皮下注が患者負担を軽減/ヤンセンファーマ

 ヤンセンファーマは5月に多発性骨髄腫の治療薬としてヒト型抗CD38モノクローナル抗体「ダラツムマブ(以下、ダラツムマブ)」を配合した皮下投与製剤「ダラキューロ配合皮下注(以下、ダラキューロ)」を発売開始した。これに伴い6月3日にメディアセミナーを開催し、日本赤十字社医療センターの鈴木 憲史氏が、多発性骨髄腫の基礎知識と新薬が診療に与える影響について講演を行った。 多発性骨髄腫は血液がんの一種で、骨髄にある形式細胞ががん化する疾患。国内における新規罹患者数は7,000人/年程度で、人口10万人当たりでは5.4人となる。診断時の年齢中央値は66歳で罹患率・死亡率とも高齢になるほど増加する。 鈴木氏は「診療をはじめた40数年前、多発性骨髄腫は平均余命3年程度の厳しい疾患だった。それが画期的な新薬の登場で7年程度まで延びてきた」と紹介し、「高齢の患者さんが多く、薬剤は有効性だけでなくQOL維持も重要となる」とした。 ダラツムマブはCD38を標的とするヒトIgGκモノクローナル抗体で、CD38に結合することによりADCC活性(抗体依存性細胞傷害活性)、CDC活性(補体依存性細胞傷害活性)、ADCP活性(抗体依存性細胞貪食活性)などの免疫系活性を介して抗腫瘍効果を示す。移植非適応患者の1次治療として、ダラツムマブ+レナリドミド+デキサメタゾンの併用療法(DRd)等のレジメンが国内外で推奨治療とされている。 ただ、これまでの点滴薬のダラツムマブの場合、初回7時間、2回目以降4時間程度の投薬時間が必要で、診察等を含めると1日がかりとなり、治療開始時は週1回の投与が必要で患者と医療者の負担が大きかった。ダラキューロの場合、15mlを3~5分かけて皮下注することとなり、診察を含めても半日かからない程度まで短縮できるという。 ダラキューロのダラツブマブに対する非劣性はCOLUMBA試験※により示され、年齢や体重によっても有効性に差は生じず、新規の有害事象も認められなかった。補液量で懸念があった心機能低下患者やフレイルな患者にも投与の可能性が広がる。ただし、副作用が発現するまでの時間はダラキューロのほうが時間がかかる(1.5時間vs.3.6時間)ため、鈴木氏は「初回は入院治療が必要になるだろう」とした。 また、COLUMBA試験参加施設の医療従事者を対象とした追加調査では、点滴から皮下注となったことで医療従事者の関与時間も大幅に減ったとの結果も出ており、鈴木氏は「皮下注への切り替えは患者負担を減らすだけでなく、外来化学療法室の回転を上げ、医療スタッフ業務の効率化につながる可能性も高い」とした。

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CLL/SLL初回治療、イブルチニブ+ベネトクラクスは高リスク群でも高い有用性/ASCO2021

 慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)に対する1次治療として、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬イブルチニブとBCL-2阻害薬ベネトクラクスの併用療法の有用性をみた国際多施設共同第II相試験CAPTIVATEの追加解析結果について、イタリア・ビタ・サルート・サンラファエル大学のPaolo Ghia氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。 CAPTIVATE試験は、被験者を微小残存病変(MRD)コホートと治療期間を固定したFixed-duration(FD)コホートに分けて実施。MRDコホートの分析結果は2020年の米国血液学会(ASH)で既に報告されており、イブルチニブを3サイクル投与後、12サイクルのイブルチニブ(Ib)+ベネトクラクス(V)を投与したところ、3分の2以上が検出不能なMRD(uMRD)となり、さらにIb+V投与後にMRDの状態に基づいた無作為化治療を実施したところ、30ヵ月後の無増悪生存(PFS)率が95%以上と高い奏効を示した。 今回はFDコホートの分析結果が発表された。・対象:70歳以下で治療歴のない、ECOG PS 0~2のCLL/SLL患者・介入:Ib(420mg/日)を3サイクル投与後、Ib(同量)+V(最初の5週間で20mgから400mg/日まで増量)を12サイクル投与・評価項目:[主要評価項目]17p欠失のない患者における完全奏効(CR)および血球数が未回復な完全奏効(CRi)率[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間、uMRD率、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、腫瘍崩壊症候群(TLS)リスク低減、安全性 主な結果は以下のとおり。・159例(年齢中央値60歳)が登録され、Ibによる導入治療を完了して併用療法を開始したのは153例、12サイクルのIb+V療法を完了したのは147例(92%)、観察期間中央値は27.9(0.8~33.2)ヵ月だった。・高リスク要因は、IGHV(免疫グロブリン重鎖可変領域遺伝子)変異なしが56%、17p欠失/TP53変異が17%、17p欠失が13%、11q欠失が18%、複雑核型が19%だった。またリンパ節のサイズが5cm以上の患者は30%だった。・17p欠失なし(136例)におけるCR/CRi率は56%(95%信頼区間:48~64)、全患者では55%(48~63)となり、事前に設定された最小値37%を有意に超え(p

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CLLに対するBTK阻害薬、アカラブルチニブvs.イブルチニブ/ASCO2021

 2021年3月、再発・難治の慢性リンパ性白血病(CLL)治療に対して選択的ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬アカラブルチニブが国内承認された。アカラブルチニブの有用性を先行薬イブルチニブと比較した非盲検非劣性第III相無作為化比較試験ELEVATE-RRの結果について、オハイオ州立大学のJohn C. Byrd氏らが米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。BTK阻害薬比較でアカラブルチニブはイブルチニブより心毒性が少ない・対象:17p欠失または11q欠失判定、ECOG PS≦2で治療歴のあるCLL患者(17p欠失の有無、ECOG PS[2vs.≦1]、前治療の回数[1~3 vs.≧4]で層別化)・試験群:アカラブルチニブ群(Aca群:100mg 1日2回)・対照群:イブルチニブ群(Ib群:420mg 1日1回) いずれも無増悪または許容できない毒性が発現するまで経口投与・評価項目:[主要評価項目]無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]全Gradeの心房細動(AF)、Grade3以上の感染症、リヒター症候群、全生存期間(OS) BTK阻害薬を比較した主な結果は以下のとおり。・533例(Aca群:268例、Ib群:265例)は年齢中央値66歳、前治療歴中央値2回、17p欠失45.2%・11q欠失64.2%だった。・観察期間中央値40.9ヵ月時点での両群のPFS中央値は38.4ヵ月で、Aca群はIb群に対して非劣性を示した(HR:1.00、95%CI:0.79~1.27)。・AF発生率では、Aca群がIb群よりも統計的に優れていた(9.4%vs.16.0%、p=0.023)。・副次評価項目のうち、Grade3以上の感染症(Aca群:30.8%、Ib群:30.0%)およびリヒター症候群(Aca群:3.8%、Ib群:4.9%)の発生率は同等だった。・いずれかの群で20%以上の患者に発生した有害事象のうち、Aca群は高血圧(9.4%、23.2%)、関節痛(15.8%、22.8%)、下痢(34.6%、46.0%)の発生率が低かったが、頭痛(34.6%、20.2%)、咳(28.9%、21.3%)の発生率が高かった。・有害事象により治療を中止したのは、Aca群では14.7%、Ib投与群では21.3%だった。 Byrd氏は、アカラブルチニブはイブルチニブと比較して心毒性が少なく、有害事象による中止も少なく、PFSが非劣性であることが示された、とまとめている。

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総合内科専門医試験オールスターレクチャー 循環器

第1回 イントロダクション第2回 急性冠症候群第3回 安定狭心症第4回 末梢動脈疾患・大動脈疾患第5回 不整脈と心電図(1)第6回 不整脈と心電図(2)第7回 心不全・心筋症 総合内科専門医試験対策レクチャーの決定版登場!総合内科専門医試験の受験者が一番苦労するのは、自分の専門外の最新トピックス。そこでこのシリーズでは、CareNeTV等で評価の高い内科各領域のトップクラスの専門医を招聘。各科専門医の視点で“出そうなトピック”を抽出し、1講義約20分で丁寧に解説します。キャッチアップが大変な近年のガイドラインの改訂や新規薬剤をしっかりカバー。Up to date問題対策も万全です。循環器については、慶應義塾大学循環器内科の香坂俊先生が全7回のレクチャーをします。薬剤とカテーテルインターベンションのどちらも進歩がめざましい循環器。心電図で疾患を素早く見極めるだけでなく、適切な治療を選ぶ力が問われます。※「アップデート2022追加収録」はCareNeTVにてご視聴ください。第1回 イントロダクション香坂俊先生が解説する循環器。第1回はシリーズの導入として、問題を解く際に注目すべきキーワードや、2020年現在のタイムリーなトピックを紹介。「労作時に失神」「吸気時に増悪」など、具体的なシチュエーションから疾患のパターンを絞り込み。カテーテルの進歩によって治療できるようになった疾患も頻出です。エコーやCTなど画像から判断する問題の対策も万全に。静止画からイメージしにくい疾患について、動画で心臓の動きを確認します。第2回 急性冠症候群第2回では急性冠症候群(ACS)を取り上げます。まず基本はST上昇型の心筋梗塞。どの誘導のSTが上昇しているかで、心臓のどこに心筋梗塞が起きているかを判断。特徴的な心電図のパターンもよく狙われます。交互脈、PQ低下、巨大陰性T波、aVR誘導でのST上昇など、日常の診療であまり見られない心電図のパターンと、対応する疾患の組み合わせを確認します。薬剤の禁忌と、PCIの合併症の予防策も押さえます。第3回 安定狭心症第3回は、安定狭心症について解説します。治療選択において、バイパス手術かPCIのどちらを行うかの判断は、SYNTAX試験のスコアが決め手。安定狭心症は経過観察できる疾患なので、至適薬物療法(OMT)の導入も極めて重要です。近年、薬剤のエビデンスの蓄積により、投与期間短縮や、併用から単剤使用への変化が見られます。最新のトピックとして、薬剤による保存的治療と血行再建治療を比較したISCHEMIA試験の結果にも注目です。第4回 末梢動脈疾患・大動脈疾患第4回は、冠動脈以外の動脈硬化性疾患。以前は閉塞性動脈硬化症(ASO)と呼ばれていましたが、最近では、大動脈・頸動脈・腎動脈などを含む、心臓よりも末梢の動脈疾患を、末梢動脈疾患(PAD)と呼びます。冠動脈で行われてきたインターベンションが、ほかの血管にも応用できるようになりました。ただし、冠動脈の治療と微妙に違う部分に要注意。大動脈瘤、大動脈解離について、ステントグラフト内挿術の適応基準を押さえます。第5回 不整脈と心電図(1)循環器の試験で最大の山場となる不整脈。今回は頻脈性の上室性不整脈のポイントを押さえます。不整脈はマクロリエントリー型とミクロリエントリー型に分類。発作性上室性頻拍(PSVT)は薬でコントロール。ただし、WPW症候群合併時の対応は異なるので要注意。PSVTと心房粗動(AF)は、アブレーションの奏効率も非常に良好です。近年、新しい凝固薬が注目されている心房細動(AF)。凝固薬の適応判断はCHADS2スコアを使います。第6回 不整脈と心電図(2)第6回で取り上げるのは、徐脈性不整脈と心室性不整脈。徐脈性不整脈で肝心なのは、まずP波を見つけること。洞不全症候群(SSS)、房室ブロック(A-V block)などの特徴的な波形を確認します。失神や突然死につながる危険な心室性不整脈は、誘因となる所見の見分け方がよく問われます。QT延長、Brugada波形、J波症候群に要注意。心不全と関連する、心臓のイオンチャネルの変異によって起こるチャネル病についても確認しておきましょう。第7回 心不全・心筋症第7回は心不全と心筋症。試験では主に難治性の心筋症が問われる傾向があります。薬剤、手術、カテーテルそれぞれの治療法の適応基準を確認。心臓サルコイドーシスはPET検査による精度の高い診断で、より早期から治療可能に。慢性心不全は複数の薬剤の併用が課題です。左脚ブロックはペースメーカーによる再同期療法の適応となる数値をチェック。最後に循環器のセッションのまとめとして、香坂先生から試験攻略の秘訣をアドバイス。

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イキサゾミブ、幹細胞移植歴のない多発性骨髄腫の維持療法に適応追加/武田

 武田薬品工業は、2021年5月27日、イキサゾミブ(製品名:ニンラーロ)について、幹細胞移植歴のない多発性骨髄腫に対する初回治療後の維持療法の治療薬として、厚生労働省より多発性骨髄腫における維持療法の効能又は効果を追加する製造販売承認事項一部変更承認を取得した。 今回の承認は、主に無作為化プラセボ対照二重盲検多施設共同国際第III相試験であるTOURMALINE-MM4試験の結果に基づくものである。同試験では、幹細胞移植歴のない成人の多発性骨髄腫患者を対象に無増悪生存期間(PFS)を主要評価項目として、同剤がPFSを統計学的に有意に改善することが確認された。イキサゾミブの維持療法における安全性プロファイルは、単剤療法における既知の安全性プロファイルと同様であり、TOURMALINE-MM4試験で新たな懸念は確認されなかった。 イキサゾミブは、「再発又は難治性の多発性骨髄腫」の効能効果で、2017年3月に厚生労働省より製造販売承認を取得し2017年5月24日から発売。2020年3月25日に「多発性骨髄腫における自家造血幹細胞移植後の維持療法」に係る製造販売承認事項一部変更承認を取得している。

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DLBCL、研究・治療の最新状況を報告したNEJM論文をポイント解説【Oncologyインタビュー】第33回

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は悪性リンパ腫の一種であり、血液腫瘍の中で最も患者数が多い疾患である。2021年3月、NEJM誌に「Diffuse Large B-Cell Lymphoma」と題した、疾患名そのものをタイトルにした論文が掲載された。現在の初発・再発における治療戦略から今後の新薬の開発情報までがまとめられた、17ページにわたる本論文のポイントを、岡山大学病院 ゲノム医療総合推進センターの遠西 大輔氏(血液・腫瘍内科 准教授)が解説する。インタビューはzoom形式で行われたこの論文は、著者2人がいずれも臨床医です。臨床医目線で病態の分類変更の背景など、最新知識をコンパクトにまとめたところに、まずは大きな価値があるでしょう。血液疾患の臨床に当たっている方であれば既知の情報も多いので、関心あるところと新たな知見の部分を重点的に読むとよいと思います。重要なポイントについて、パートごとに内容を読み解いていきましょう。Pathological Features and Molecular Classification最初は分子遺伝学的なまとめです。最近の分子の詳細な解析によって新たなサブタイプが登場している状況を解説しており、この内容はFigure 1Cにまとまっているのでこれを見るだけでもよいと思います。Staging and Response Assessment今後の臨床面で注目すべきは、一行だけ触れられている「リキッドバイオプシー」でしょう。世界的にも、血液腫瘍に対するリキッドバイオプシーを用いた遺伝子検査は保険承認されていませんが、数年内には臨床で使われるようになると予想されます。固形がん同様に、血液がんでも遺伝子変異のタイプに応じて治療戦略を選択し、効く薬剤を予測して使い分けるようになるかもしれません。ここで引用されている論文1)は、あまたあるDLBCLとリキッドバイオプシーに関する論文の中でも代表的なものなので、関心がある方はこちらの著者グループに注目するとよいと思います。Prognostic Factorsここでは長らく使われてきた、国際予後指標(International Prognostic Index:IPI)が改良され「NCCN-IPI」となったことが紹介されています。こちらの要旨はTable 3にまとまっているのでそれを確認するだけでもよいでしょう。Primary Managementここから進行期と限局期に分けて治療の話題に入っていきます。進行期の最適なレジメンを決めるまでのこれまでの経緯がまとめられていますが、CHOP療法にリツキシマブを追加したR-CHOP療法を6回投与、というのが現状の結論です。それに加え、現在進んでいるR-CHOPに他の薬剤を追加する複数の試験内容が紹介されています。この部分はこれからのDLBCL治療を考えるうえで非常に重要なポイントなのでじっくり読んでみてください。Management of Relapsed or Refractory Diseaseここでは、再発・難治のDLBCLに対する治療戦略が述べられています。若年層の患者には自家造血幹細胞移植(ASCT)を試みることがありますが、あまり成績がよくないことが示されています。次いで、現在の臨床を大きく変えつつあるCAR-T療法が紹介されています。CAR-T療法は国内では2年前に再発または難治性のDLBCLに対して承認され、ここでは臨床試験からリアルワールドまで最新のデータが紹介されています。承認当初に懸念されていた副作用についても想定より抑えられていることが示されています。そして最後は新薬の開発状況です。日本で今年3月に承認を受けたばかりの抗CD79bを標的とする抗体薬物複合体・ポラツズマブ ベドチンに関する臨床試験のデータをはじめ、現在開発中の新薬が、ターゲットとする分子や現状までの臨床試験の結果と共にまとまっています。それなりの数がありますが、今後臨床に登場してきそうな有望なものが選別されているのはさすがです(Table 4)。個人的には次世代の免疫チェックポイント阻害薬といわれる、マクロファージを使う抗CD47抗体にとくに注目しています。最終ページのfigure 2には、現在のDLBCL治療の全体がまとまっています。病態分類から始まり、再発や自家移植で寛解する割合や、それぞれの段階で行う治療戦略と薬剤が見やすくまとめられており、全体を俯瞰するうえで非常によくできた1枚です。図 原著論文のfigureを基にCareNet.com編集部作成画像を拡大する上部左の「High-Grade B-Cell Lymphoma」はWHO分類変更によって新たに登場したものです。特定の遺伝子変異を認める予後不良のものをDLBCLと分け、異なる治療戦略をとることになりました。真ん中の限局期・進行期では治療戦略には大きな変化はないものの、治験等で新たなレジメンを選択できる状況を示しています。そして右下のこれまで治療の手段がなかった2次・3次治療においても、CAR-T療法や免疫療法等によって治療を継続できる可能性が生まれており、今後も治療戦略は大きく進化していくでしょう。原著論文Sehn LH, et al. N Engl J Med. 2021;384:842-858.参考1)Kurtz DM, et al. J Clin Oncol. 2018;36:2845-2853.

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ファイザー新型コロナワクチン、がん患者ではとくに2回接種を/Lancet Oncol

 がん患者に対する新型コロナワクチンBNT162b2(ファイザー)の安全性と免疫原性をがん患者における評価を目的とした前向き観察研究の結果が発表された。 対象は、2020年12月8日~2021年2月18日に、ロンドンの3つの病院でBNT162b2接種を受けたがん患者と健康成人(主に医療従事者)。複合主要評価項目は、がん患者におけるBNT162b2ワクチンの初回接種後のSARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質IgG陽性の割合、2回目(初回から21日後)接種後の同陽性例の割合であった。 主な結果は以下のとおり。・期間中に151例のがん患者(固形がん95例、血液がん56例)と健康成人54例が対照群として登録された。・2回目の接種を受けたのは対照群16例、固形がん患者25例、血液がん6例であった。・SARS-CoV-2に曝露された17例を除外した、ワクチン初回接種21日後のSARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質IgG陽性の割合は、対照群94%(34例中32例)、固形がん患者38%(56例中21例)、血液がん患者18%(44例中8例)であった。・2回目接種2週間後のSARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質IgG陽性の割合は、対照群100%(12例中12例)、固形がん患者95%(19例中18例)、血液がん患者60%(5例中3例)であった。・BNT162b2ワクチンの忍容性は良好で、初回接種後毒性がなかったものはがん患者では54%、対照群では38%、2回目の接種後毒性がなかったものはがん患者では71%、対照群では31%であった。・毒性は初回接種後7日以内の注射部位の痛みがもっとも多く、がん患者では35%、対照群では48%に発現した。ワクチン関連の死亡は報告されていない。 健康成人例に比べ、がん患者では1回接種でのBNT162b2ワクチンの効果は低いことが示された。一方、固形がん患者においては、2回目ブースト接種から2週間以内に免疫原性が有意に増加した。筆者は、これらのデータは、がん患者におけるBNT162b2ワクチン2回目接種の優先を支持するものだとしている。

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骨髄腫に、ダラツムマブの皮下注新発売/ヤンセンファーマ

 ヤンセンファーマは、2021年5月19日、抗CD38モノクローナル抗体ダラツムマブとボルヒアルロニダーゼ アルファを配合した皮下投与製剤ダラキューロ配合皮下注(以下、ダラキューロ)の販売を開始した。ダラキューロは、本年3月23日に多発性骨髄腫を効能又は効果として製造販売承認を取得している。 ダラツムマブの点滴静注製剤(以下、ダラツムマブ IV)は、多発性骨髄腫に対して、複数の治療レジメンで承認されており、国内外の各種ガイドラインでも推奨されている。一方で、infusion reaction(急性輸液反応)を予防するため、投与に際しては500~1,000mlの輸液が必要となり、約3〜7時間の投与時間を要する。今回製造販売承認を取得したダラキューロでは、皮下投与に要する時間が約3〜5分へと短縮され、また固定用量となるため薬剤調製手順が簡略化されることにより、医療従事者および患者の負担が軽減されることが期待されている。 ダラキューロについては、日本人を含む再発・難治性の多発性骨髄腫を対象とした国際共同第III相試験(MMY3012試験[COLUMBA試験])において、ダラツムマブ IVに対する非劣性が単剤療法にて示され、安全性が確認されている。また日本人集団における薬物動態および有効性は全体集団と一貫しており、安全性に明らかな差異は認められなかった。ダラキューロ配合皮下注製品概要・製品名:ダラキューロ配合皮下注・一般名:ダラツムマブ(遺伝子組換え)・ボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)・効能又は効果:多発性骨髄腫・用法及び用量:他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人には本剤1回15mL(ダラツムマブ(遺伝子組換え)として1,800mg及びボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)として30,000単位(2,000単位/mL))を、併用する抗悪性腫瘍剤の投与サイクルを考慮して、以下のA法又はB法の投与間隔で皮下投与する。 A法:1週間間隔、2週間間隔及び4週間間隔の順で投与する。 B法:1週間間隔、3週間間隔及び4週間間隔の順で投与する。・製造販売承認日:2021年3月23日・薬価基準収載日:2021年5月19日・発売日:2021年5月19日・薬価:15mL 1瓶 434,209円・製造販売元:ヤンセンファーマ株式会社

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第60回 昔なじみの抗うつ薬が抗がん免疫を助ける/持参のCOVID-19抗原検査で楽々帰国

昔なじみの抗うつ薬と抗PD-1薬の併用でいっそうの抗腫瘍効果抗うつ薬として昔なじみのモノアミン酸化酵素阻害薬(MAO阻害薬)が免疫細胞によるがん駆除を助ける働きを担い、PD-1阻害薬と併用すればそれら単独投与以上の腫瘍抑制効果を発揮することがマウス実験で示されました1,2)。ペムブロリズマブやニボルマブ等のPD-1阻害薬は腫瘍細胞が免疫攻撃から逃れるために利用するT細胞表面分子を阻止します。PD-1阻害薬はうまくいけば何年も腫瘍を食い止めますが誰にでも効くというわけではなく、その効果を補う薬の標的探しが続けられています。カリフォルニア大学ロサンゼルス校のがん免疫学者Lili Yang氏のチームもその一つで、抗腫瘍免疫との関わりがこれまで知られていなかったモノアミン酸化酵素(MAO)の一つ・MAO-A遺伝子が腫瘍のT細胞で意外にも発現していることを突き止め、どうやらPD-1阻害薬の併用薬の標的として有望なことを見出しました。MAO-Aはドパミンやセロトニンなどの気分向上神経伝達物質を分解します。MAO-A活性が低い男性と攻撃的な振る舞いの関連が示されていることからMAO-A遺伝子は戦士の遺伝子として知られます3)。Yang氏等の新たな研究によるとMAO-AはT細胞の戦士化にもどうやら寄与しているらしく、マウスのMAO-A遺伝子を封じたところT細胞の抗腫瘍免疫が強力となり、腫瘍増殖が抑制されました。MAO-A阻害薬フェネルジン(phenelzine)も同様の効果があり、マウスの腫瘍を増殖し難くしました。また、MAO阻害薬とPD-1阻害薬の併用はいっそうの抗腫瘍効果をもたらしました。T細胞はセロトニンを作って抗腫瘍免疫を底上げし、MAO-Aはそのセロトニンを分解することで腫瘍のT細胞回避を助けてしまうようです。その回避路を断つMOA阻害薬とPD-1阻害薬の併用が試験で検討されることをYang氏は望んでいます。安上がりでどこでも手に入るMAO阻害薬はあわよくばがん患者の抑うつもついでに取り去ってくれるかもしれません。そのような併用試験をするなら前立腺がんは候補の一つになりそうです。というのもMAO-A は前立腺がんで過剰発現し、がん細胞や腫瘍開始細胞(がん幹細胞)の増殖を促して前立腺がんの発生を促すことが示唆されているからです4)。ただしMAO-A は必ずがんに味方するというわけではなさそうで、肝細胞がん、胆管がん、褐色細胞腫、神経芽腫、腎細胞がん、肺腺がんなどでは逆にがんと敵対する腫瘍抑制因子として働くと示唆されています5)。MAO阻害薬の試験ではMAO-Aに備わるせっかくの腫瘍抑制効果を意図せず妨げることがないように注意する必要があるでしょう。ユナイテッド航空がアボット社のCOVID-19抗原検査で楽々帰国できるようにするユナイテッド航空がAbbott(アボット)社と手を組み、海外旅行者の米国帰還の際に必要な新型コロナウイルス感染(COVID-19)陰性証明をよりすんなり取得できる仕組みを提供します6)。ユナイテッド航空の乗客はアボット社の抗原検査BinaxNOW Home Testを携えて出国し、海外滞在中にわざわざ検査センターに赴かずともそれを使って検査することで米国に帰還可能かどうかを判断できるようになります。遠隔医療が使える環境で旅行者がBinaxNOW Home Testのような抗原検査を自ら実施し、海外から米国への飛行機に搭乗するのに必要な陰性証明にその検査結果を使うことを同国は最近許可しています。BinaxNOW Home Testは手帳ほどの大きさで軽量であり、バッグに場所を取らず収めることができます。どっちつかずの検査結果となってしまった場合に備えて1つきりではなく幾つか持っていった方が良いようです。参考1)Wang X, et al. Sci Immunol. 2021 May 14; 6:eabh2383.[Epub ahead of print]2)An old antidepressant helps the immune system fight tumors in mice / Science3)Mentis AA, et al.Transl Psychiatry. 2021 Feb 18;11:130.4)Liao CP, et al. Oncogene.2018 Sep;37:5175-5190.5)Huang Y, et al. Front Oncol. 2021 Mar 8;11:645821.6)United and Abbott Partner to Make Return to U.S. Worry Free for International Travelers with Home-Testing Kits / PRNewswire

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アントラサイクリン心筋症 見つかる時代から見つける時代へ【見落とさない!がんの心毒性】第2回

連載の第1回では、循環器医ががん医療に参画し始めた背景について向井先生が解説しました。第2回ではアントラサイクリン心筋症・心不全にも新たなアプローチが求められていることについて、大倉が解説します。重篤な心不全で見つかる時代から、そうなる前に見つける時代になったことを感じていただければ幸いです。アントラサイクリンによる心不全は3回予防できるドキソルビシンが1975年にわが国で使われ始めて、もうすぐ半世紀が経とうとしています。よく効くので、今尚がん医療の現場で広く使われています。心毒性があるため心機能異常またはその既往歴のある患者には禁忌です。とはいえ心臓病でもアントラサイクリンを使わざるを得ない状況は患者の高齢化とともに増加傾向にあります。献身的ながん医療の成果が10年生存率の改善(58.3%)という形で表れています。一方、一部のアントラサイクリン使用患者では、心毒性により化学療法を中断したり、QOL(生活の質)が損なわれたりしています。心不全で亡くなることもあります。循環器医は“アントラサイクリンによる心不全は早期発見で3回予防できる”と考えています。(1)心機能の低下予防 (2)心不全の発症予防 (3)慢性心不全の増悪予防の3回です(図)。実際のところ、がん医療の現場でこの考え方はあまり共有されていません。そのため1回も予防されずに重症化した心不全がん患者を診ることもあります。(図)心不全の進展ステージとアントラサイクリン心筋症の予防機会画像を拡大する2021年3月、“脳卒中と循環器病対策基本法”の行動計画の核心である脳卒中と循環器病克服第二次5ヵ年計画が公表されました1)。心不全は重要3疾患の1つに掲げられ、悪性腫瘍に合併する心不全の管理も重点項目として指定されました。“心不全は予防と早期発見”という考えが国民に向けて発信されることで、がん医療にも徐々に馴染んでゆくものと思われます。発生率と危険因子アントラサイクリンによる心機能障害は用量依存性に発生します。ドキソルビシン換算で累積投与量が 400 mg/m2で3~5%、550 mg/m2で7~26%、700 mg/m2で18~48%に起こります2)。累積投与量以外にも、65歳以上の高齢者、小児、胸部・縦隔への放射線照射、トラスツズマブなど心毒性を有する他の薬剤の使用、基礎心疾患の既往や合併、心血管リスク(喫煙、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、肥満)の合併などで、起こりやすくなるため注意が必要です。この段階で併存心疾患や心血管リスクを治療し心機能低下を予防します3)(図:1回目の予防)。近年、ゲノムワイド関連解析(GWAS:genome-wide association study)により、拡張型心筋症の原因となる遺伝子変異の一つで、サルコメア蛋白のタイチンをコードする遺伝子の切断型変異(Titin-truncating variants)があると、アントラサイクリンの心毒性に対して脆弱になることが報告されました4)。5ヵ年計画にはファーマコゲノミクス(PGx)の推進が盛り込まれており、抗がん薬の心毒性に関与する遺伝子を5年間に2個同定しようとしています。Onco-cardiologyの分野でもゲノム医療が始まろうとしています1)。心毒性の機序アントラサイクリンは一部の患者に不可逆的な心筋障害を起こします。失われた心筋細胞が復活することはありません。ミトコンドリアの鉄の蓄積と活性酸素の過剰な産生を惹起し、ミトコンドリアや細胞内小器官が障害されます。DNAの修復に欠かせないトポイソメラーゼIIβを阻害し、DNA二重鎖切断とアポトーシスを誘導します。心筋細胞の恒常性に欠かせない周囲の血管内皮細胞も障害され、後々の心筋細胞の適応性や生存性の低下に繋がります。心筋の線維芽細胞や前駆細胞も複雑に関与しています4)5)。経過・治療古典的には心毒性は急性、慢性早期、慢性晩期に分類されていました(表1)。(表1)アントラサイクリンによる心毒性の古典的な臨床分類画像を拡大する現在では、詳細な経過観察により、心筋細胞レベルの障害が最初に起きて、それが潜在進行性の心機能低下を惹起し、代償機転が破綻して心不全に至るという連続性が確認されています。心不全を起こす患者では、アントラサイクリン投与後に、血清トロポニンが一過性に上昇し、左室駆出率(LVEF)が低下します。心保護薬で治療すると、ほとんどの患者でLVEFは不完全ながら回復傾向を示しますが、一部の患者はLVEFが悪化して、心不全を発症します。Cardinaleらによれば、アントラサイクリン投与後に9%の患者に心毒性(LVEF50%未満への低下)が認められました。心毒性の98%は化学療法終了後1年以内(中央値3.5ヵ月)に現れました。エナラプリルとカルベジロールで治療をすると82%に回復傾向を認めました6)。無症候性心機能低下(図:ステージB)のうちに発見し、心保護薬で予防をすることで悪化を食い止め、心不全(図:ステージC)を予防できます(図:2回目の予防)。そのため、ここでの介入が最も効果的と考えられています。しかし、この予防機会を失えば、心不全を発症します。こうなると、非可逆的な心筋障害であるため、治療に難渋し、ステージDへの進行を防げない可能性があります。潜在患者の早期発見に有用な検査定期的に全員に心エコーをすれば早期発見は可能ですが、医療資源は限られているため、ハイリスク群を優先することが欧米の腫瘍学会でコンセンサスを得ています(表2)。(表2)最新ガイドラインに見るアントラサイクリン使用に関連した強い推奨[A、B]画像を拡大するリスクの層別化には、アントラサイクリン治療後のトロポニン測定に期待が寄せられています。上昇しない患者はその後の心不全が起きにくいことが分かっており、心エコーの頻度を減らすことができます7)。一方、上昇し、その後も上昇が持続する患者では、心不全が起きやすいため、心保護薬を開始したり、心エコーの頻度を増やしたりします。わが国の保険制度ではそのようなトロポニンの使われ方は認められておりません。採血のタイミングやカットオフ値の標準化については今なお研究段階です。アントラサイクリン治療を終えて数ヵ月以上経過している患者の心不全の早期発見は、危険因子による層別化や、BNPやNT-proBNPによる補助診断に頼ることになります。フラミンガムの一般住民を対象にした疫学調査によると、BNP はLVEF40%以下の心機能低下に対する感度は良好でしたが、LVEF50%前後に対してはよくありませんでした8)。ステージBの中でもCに近い患者の検出には使えそうです。BNP検査によるアントラサイクリン心筋症の早期発見については、小児やAYA世代のがんサバイバーでの有用性については否定的な報告があります9)。それでも特性を理解すれば、たいへん便利な検査ですので、BNP検査については正書や学会ホームページをご覧ください10)11)。心エコーでは、無症候性心機能低下(ステージB)の中で、更に早い段階の異常を捉えようとしています。スペックルトラッキング法を用いたGlobal longitudinal strain (GLS)は、薬剤性心筋障害をLVEFよりも早期に感度良く検出できるようです。欧米の腫瘍学会ガイドラインでも測定を推奨していますが、人間の感覚を超えた領域なので慣れるのに時間がかかりそうです12)。心機能低下はがん治療終了後1年以内に始まるので、半年後と1年後の心エコーを推奨していますが、異常を見落としたり、その後に異常が明らかになることもあるため、その後のフォローも欠かせないでしょう。フォローの内容や間隔については、危険因子が多いほど綿密にします。なぜ重症化してから見つかるのか?「患者や医師が、息切れ、むくみ、疲れ易さを、がんのせいと勘違いする」「医師や薬剤師が累積使用量の上限を超えなければ心不全は起きないだろうと油断もしくは勘違いする」「がん治療が済んで患者がフォローアップされなくなる」「フォローされてもクリニックの先生方と心不全への懸念が共有されない」などが原因で、発見が遅れ重症化の引き金になると考えられます。慢性晩期のアントラサイクリン心筋症には、認識不足や連携の脆弱さといった医療システムの問題が少なからず関係しています。心不全全般に言えることですが、脳卒中や心筋梗塞や糖尿病と比べ、心不全についての認知度が低いことは、かなり前から指摘されており世界共通の課題でした13)。アントラサイクリンで治療した患者に、心不全のセルフチェックを促すには、心不全についての知識の普及が肝要です。心不全発症に早めに気づいて治療することで重症化が予防できます(図:3回目の予防)。今、試されるチーム力最新のESMOガイドライン2020では“がんサバイバーから目を離すな”とうたっています。アントラサイクリンで治療した乳がん患者で薬剤性心筋障害を起こすのは、3~6%程度ですが、軽んずることなく解決への道を開けば、将来の患者の利益になります。院内ではがん診療科と多職種の連携が解決への糸口となり14)、晩期障害の早期発見にはクリニックの先生方の協力が不可欠です。地域医療への知識の普及には、大学や医師会の役割りが大きいです。システムの問題が心不全に関与しているのならば、システムを修正すれば良いのです。心不全についての知識は一般の方には伝わりにくいことが世界共通の課題ですが、“脳卒中と循環器病対策基本法”の下、行政による後押しで国民への啓蒙が始まろうとしています。高齢化に伴い、がん患者の心臓病が増加しています15)。がんと心不全の古くからの関係は新しい時代を迎えました。1)日本脳卒中学会・日本循環器学会編. 脳卒中と循環器病克服第二次5ヵ年計画 ストップCVD(脳心血管病)健康長寿を達成するために. 20212)Zamorano JL, et al. Eur Heart J. 2016;37:2768-2801.3)日本腫瘍循環器学会編集委員会編. 腫瘍循環器診療ハンドブック. メジカルビュー社;2020.p10-11.(赤澤 宏 心機能障害/心不全 アントラサイクリン系薬剤)4)Garcia-Pavia P, et al. Circulation. 2019;140:31-41.5)Kadowaki H, et al. Circ J. 2020;84:1446-1453.6)Cardinale D, et al. Circulation. 2015;131:1981-1988.7)Cardinale D, et al. 2004;109:2749-2754.8)Vasan RS, et al. JAMA. 2002; 288:1252-1259.9)Michel L, et al. ESC Heart Fail. 2020;7:423-433.10)猪又孝元ほか The Manual心不全のセット検査. メジカルビュー社;2019.11)日本心不全学会:血中BNPやNT-proBNP値を用いた心不全診療の留意点について12)日本心エコー図学会編.抗がん剤治療関連心筋障害の診療における心エコー図検査の手引13)Okura Y, et al. J Clin Epidemiol. 2004;57:1096-1103.14)日本腫瘍循環器学会編集委員会編. 腫瘍循環器診療ハンドブック. メジカルビュー社;2020.p.176-178.(大倉 裕二、吉野 真樹 腫瘍循環器診療における連携のコツと工夫 多職種連携)15)Okura Y, et al. Int J Clin Oncol. 2019;24:983-994.講師紹介

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