サイト内検索|page:22

検索結果 合計:1210件 表示位置:421 - 440

421.

アスパラギナーゼ過敏症でも使用可能なALL治療薬「オンキャスパー点滴静注用3750」【最新!DI情報】第3回

アスパラギナーゼ過敏症でも使用可能なALL治療薬「オンキャスパー点滴静注用3750」今回は、抗悪性腫瘍酵素製剤「ペグアスパルガーゼ(商品名:オンキャスパー点滴静注用3750、製造販売元:日本セルヴィエ)」を紹介します。本剤はアスパラギナーゼ製剤に過敏症を示す患者でも使用可能な急性リンパ性白血病および悪性リンパ腫治療薬であり、2週間間隔の投与によって利便性の向上につながることが期待されています。<効能・効果>本剤は、急性リンパ性白血病および悪性リンパ腫の適応で、2023年6月26日に製造販売承認を取得し、10月2日より販売されています。<用法・用量>ほかの抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、ペグアスパルガーゼとして、22歳以上の患者では1回2,000国際単位/m2(体表面積)を2週間間隔で点滴静脈内投与します。21歳以下の患者では、体表面積0.6m2以上の場合は1回2,500国際単位/m2(体表面積)を、体表面積0.6m2未満の場合は1回82.5国際単位/kg(体重)を2週間間隔で点滴静脈内投与します。なお、投与の際は、調製後の希釈液を1~2時間かけて投与します。<安全性>国内第II相SHP674-201試験の第1パートおよび第2パートにおいて、26例中26例(100%)に副作用が認められ、主なものは血中フィブリノゲン減少19例(73.1%)、白血球数減少およびアンチトロンビンIII減少が各15例(57.7%)、血小板数減少14例(53.8%)、発熱性好中球減少症および貧血が各11例(42.3%)、嘔吐、低蛋白血症および脱毛症が各10例(38.5%)などでした。重大な副作用として、過敏症、膵炎、出血、血栓塞栓症、肝機能障害、骨髄抑制、感染症、脂質異常症、高血糖、中枢神経障害が設定されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、がん細胞の増殖に必要なアミノ酸を分解し、がん細胞のタンパク合成を阻害して増殖を抑えます。2.副作用を確認するため、使用前および使用中に血液検査を実施します。3.けいれん発作、失神などの中枢神経障害が現れることがあるので、この薬の使用中は、自動車の運転など危険を伴う機械を操作する際には注意してください。<ここがポイント!>急性リンパ性白血病(ALL)を含む一部の腫瘍細胞では、アスパラギンを合成できないため細胞外からの取り込みを必要とします。わが国でALL治療に使用されるL-アスパラギナーゼ(L-Asp)製剤は、細胞外のL-アスパラギンを分解し、アスパラギン要求性腫瘍細胞を栄養欠乏状態にして効果を発揮します。しかし、過敏症の発生頻度が高く、治療上の重要な問題になることがあります。本剤は、大腸菌由来L-Aspをポリエチレングリコール(PEG)で化学修飾して免疫原性を弱めた薬剤です。L-Asp製剤に過敏症を示す患者を救済することなどを背景に、厚生労働省による「未承認薬・適応外薬検討会議」で開発が必要な薬剤と判断されました。PEG化による半減期延長製剤で、2週間間隔の投与が可能です。2023年2月末時点で、世界70ヵ国で承認されており、多くの国でALLの標準治療薬として使用されています。未治療のB前駆細胞性急性リンパ性白血病患者23例(1~21歳)を対象としたSHP674-201試験第2パートにおいて、主要評価項目である初回投与14日後における血中アスパラギナーゼ活性値≧0.1 IU/mL達成率は100%でした。副次評価項目である1年無イベント生存率は100%で、1年全生存率も100%でした。探索的評価項目である寛解導入療法期終了後の完全寛解率は30.0%(6/20例)、奏効率は100%で、早期強化療法期終了後ではそれぞれ47.6%(10/21例)、100%でした。本剤により、アナフィラキシーを含む過敏症が現れることがあるので、過敏症を軽減するために、本剤の使用開始30~60分前に解熱鎮痛薬、抗ヒスタミン薬、副腎皮質ホルモン剤などを使用することがあります。

422.

小児がんの薬剤開発、何が進んだか、次に何をすべきか/日本小児血液・がん学会

 2022年11月に開催された前回の学術集会で、小児がんの薬剤開発に関する課題の共有や抜本的な制度改革への必要性が提言されて以降、さまざまな場で具体的な方策についての検討が行われてきた。その進捗について、第65回日本小児血液・がん学会学術集会の学会特別企画「『小児がんの薬剤開発を考える』何が進んだか、次に何をすべきか」にて、小川 千登世氏(国立がん研究センター中央病院 小児腫瘍科)と鹿野 真弓氏(東京理科大学 薬学部)から、それぞれ報告があった。国内における小児がんの薬剤開発のためには抜本的な制度改革が必要 日本における小児がんを対象とした臨床試験数は欧米と比較して圧倒的に少なく、その背景には小児に対する薬剤開発の義務化の有無が影響していると考えられている。小児がんの薬剤開発が進まない理由としては、1)市場規模が小さく、開発コストや法的義務の負担が大きいこと、2)小児治験を実施する環境が不十分であること、3)医師主導治験で開発を試みるも公的予算・研究費の確保が困難であること、4)対象患者が少なく被験者の確保も難しいといった問題等が挙げられる。 小川氏は、これらの問題解決のために「企業開発を可能とするための効果的なインセンティブや、医師主導治験に対する公的予算・研究費の十分な提供、継続的に実施できる体制強化といった抜本的な制度改革が必要である」と述べた。ゲノム医療における、小児がんドラッグラグ解消に向けた取り組み がん遺伝子パネル検査で治療候補薬が見つかった患児やその家族から、薬剤アクセス確保の要望が高まっている一方で、ゲノム医療において「小児がんドラッグラグ」の問題が「がん対策推進基本計画(第3期)」の課題として挙がっていた。この薬剤アクセス改善に向けて、治験の実施を促進する方策について検討するとともに、小児がん中央機関や拠点病院、関係学会だけでなく企業等と連携して研究開発を推進することが、第4期に取り組むべき施策として、がん対策推進基本計画(2023年3月28日に閣議決定)に明記されている。 これらの課題解決には、「小児がん治療開発コンソーシアム」を構築し、患児や家族、国内外の企業、海外アカデミアとの連携による治療薬開発促進や、小児がん患者の薬剤アクセス改善に向けた活動を目指すとしている。小川氏からは、国際共同企業治験の呼び込みとして、国際学会やACCELERATE Platformへの参加による情報収集や海外企業へのコンタクトの実施、薬剤アクセスの改善では、マスタープロトコルを用いた患者申出療養制度に基づく特定臨床試験(PARTNER試験)の実施などの紹介があった。ほかにもさまざまな検討会が立ち上げられ、小児がんのドラッグラグ解消に向けた施策が進行中である。小児がんの薬剤開発の推進には制度改革だけでなく、実施にむけた環境整備も必要 小児がんや小児の希少難治性疾患に対する薬剤開発の推進に向けて、鹿野氏から「小児がん及び小児稀少難治性疾患に係る医薬品開発の推進制度に資する調査研究」について報告があった。 欧米では、成人の医薬品開発過程における小児開発の検討が法律で義務化されて以降、小児臨床試験の割合は増加。その一方で、小児開発が免除(Waiver)または延期(Deferral)となる割合も2017年以降増加していた。米国におけるWaiverの適用理由として、小児患者が少なく治験の実施困難が全体の8割程度、Deferralの適用理由は非開示が多いものの、安全性・有効性に対する懸念、小児用製剤開発の必要性を理由とする事例が確認された。 製薬企業等を対象としたアンケート調査の結果では、欧米で小児適応を取得済み、または開発中の医薬品に対して、日本国内で小児適応に向けた具体的な開発計画がない品目があると回答した企業が半数近く存在した。その理由として、収益性や治験実施体制の整備、PMDAの審査・相談、欧米のような義務化といった問題が挙がっていた。医療機関を対象としたアンケート調査の結果でも、国内で開発が進まない理由として製薬企業の調査結果と同様の課題が挙がっていた。 この課題解決に向けて鹿野氏は、「解決に向けた取り組みは、いろいろなところで始まっている。これらが統合されて、小児がんの薬剤開発の推進を皆で盛り上げていくことが大切である」と述べた。小児がんの薬剤開発として、次に何をすべきか? 講演の後半では、今後の小児がんの薬剤開発についてパネルディスカッションが行われた。課題解決に向けて、「患者・家族の立場として、課題をもっと周知してもらうために、いろいろな場所で情報発信していく必要がある。そのためには患者リテラシーも向上していきたい」「薬剤開発の推進にはスピード・コスト・クオリティの3つのバランスが必要。日本はスピード・コストに課題があるため、この点をカバーするために現在行われている取り組み等に企業としても貢献していきたい」「インセンティブや治験の実施体制などの環境整備の問題等、課題を複合的に検討していく必要がある」など、さまざまな意見が出された。 最後に小川氏は、「昨年からの進捗状況として、いろいろなことが前進したと実感している。小児がんの薬剤開発を盛り上げていくために、患者さんの会、企業、行政と連携して、また1年後に進捗状況を共有していきたい」と締めくくった。

423.

英語で「理論的には同意、現実には反対」は?【1分★医療英語】第103回

第103回 英語で「理論的には同意、現実には反対」は?《例文1》It is not practical to do both surgeries at the same time.(両方の手術を同時にやることは現実的ではありません)《例文2》Logistically, it is impossible to use both drugs at the same time.(現実的には、両方の薬を併用することは不可能です)《解説》インターネット、SNSで情報が氾濫する昨今では、患者さんの側からさまざまな治療を提案されることも多く、その中には現実的でない案もあります。そんなときには、このフレーズが便利です。「理論的には=“in theory”」と「現実的には=“in reality”」を対比させることで、相手の意見を認めつつ、自分の意見を述べるための導入になります。類似表現として、“practical/practically”、“logistic/logistically”も、「現実的には」という意味合いで頻用します。“logistic”という単語は、英和辞書では「物流的な」という訳語が出てきますが、私の経験上では「(主に時間的・物理的な制限において)現実的な」という意味合いで頻用される単語です。講師紹介

425.

多がん早期検出血液検査は、がんスクリーニングで実行可能か/Lancet

 多がん早期検出(multicancer early detection:MCED)血液検査は、腫瘍から循環血中に排出された遊離DNA(cell-free DNA:cfDNA)のがん特異的DNAメチル化パターンを検出し、がんシグナルが確認された場合はその起源(cancer signal origin:CSO)を予測することから、1回の採血で50以上のがん種の検出が可能とされる。米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのDeb Schrag氏らは、「PATHFINDER研究」にてMCED血液検査を用いたがんスクリーニングは実行可能であることを確認し、今後、臨床的有用性を検証する研究を進める必要があることを示した。研究の成果は、Lancet誌2023年10月7日号で報告された。米国の前向きコホート研究 PATHFINDER研究は、がんスクリーニングにおけるMCED検査の実行可能性(feasibility)を調査する前向きコホート研究であり、米国の7つの医療ネットワークに属する腫瘍科およびプライマリケア外来施設が参加した(米国・GRAILの助成を受けた)。 対象は、年齢50歳以上、がんの徴候や症状がなく、MCED検査と1年間の電子健康記録の追跡調査に同意した集団であった。 参加者の血液を採取してcfDNAの解析を行い、結果を参加施設の医師に伝えた。がんを示唆するメチル化シグネチャーを検出した場合は、予測されるCSOを知らせた。 主要アウトカムは、MCED検査で陽性となった後、がんの有無を確定するのに要した時間と、確定診断までに行った検査の範囲であった。検査から確定診断までの期間は79日 2019年12月12日~2020年12月4日に6,621人を登録した。年齢中央値63.0歳(四分位範囲[IQR]:56.0~70.0)、女性63.5%、白人91.7%で、がん既往参加者は24.5%であった。 がんシグナルは6,621人のうち92人(1.4%)の参加者で検出した。このうち、がんと診断された真陽性は35人(38%)で、残りの57人(62%)はがんと診断されず偽陽性であった。 MCED検査の結果が出る前に診断のための評価が開始された2人を除くと、診断が確定するまでの期間中央値は79日(IQR:37~219)であった。偽陽性者の診断までの期間中央値は162日(44~248)である一方、真陽性者では57日(33~143)と短かった。 がんシグナルを検出した90人(上記の2人を除く)の多くが、診断が確定するまでに臨床検査(真陽性者79%[26/33人]、偽陽性者88%[50/57人])と画像検査(真陽性者91%[30/33人]、偽陽性者93%[53/57人])を受けていた。 また、処置(非外科的または外科的)を受けた参加者の割合は、真陽性者(82%[27/33人])に比べ偽陽性者(30%[17/57人])で低く、外科的処置を受けた参加者はほとんどいなかった(真陽性者3人、偽陽性者1人)。 著者は、「これらの知見は、がんスクリーニング戦略としてのMCED検査の安全性、有用性、臨床的有効性を調査するための大規模研究の基礎を築くものである」としている。

426.

英語で「注意を払う」は?【1分★医療英語】第102回

第102回 英語で「注意を払う」は?《例文1》医師ACan you put this patient on your radar?(この患者さんに注意を払ってもらえますか?)医師BSure, I can.(いいですよ)《例文2》医師I am sorry but this patient was not on my radar.(申し訳ないが、この患者のことは知りませんでした)看護師No worries, Dr.(大丈夫ですよ)《解説》“put(be) on one's radar”という表現は、医療現場以外でも使われる、知っておくと有用な表現の1つです。イメージとしては、直訳した「誰かのレーダーに映す」という表現から、「“何か”を“誰か”の意識下におく」といった意味になります。日本語としては「(誰かの)耳に入れる」「注意を払う」「知っておく」といった意味になります。医療現場では、気になる患者さんや情報を誰かと共有したい場合に、主に医師同士の会話で使うことが多いです。日本で学習する表現の中にはまず出てこないと思いますので、ぜひ覚えて使ってみてください。逆に、「意識下から外れている」、つまり「把握していない」と言いたいときには、“under the radar”という表現を使います。講師紹介

427.

金の話をする人間は卑しいのか?猫と暮らすQALYを考える【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第65回

費用対効果分析の意義世界的なインフレの波が日本にも押し寄せています。日本で物価が上がっていることを実感する機会が増えてきました。しかし、世界の先進国と比べると上昇率はまだ緩やかなのかもしれません。私は2023年8月末にオランダ・アムステルダムで開催された欧州心臓病学会(ESC2023)に参加しました。会場のキオスクで昼食を購入して驚きました。おいしくもないハンバーガーが、14.5ユーロでした。1ユーロが158円でしたので、日本円に換算すると2,291円となります。日本では500円ほど、絶対に1,000円を超えることはない質感でした。円安と日本の国力の低下を痛感しました。出費には、それに見合う対価が求められます。費用対効果、いわゆるコスパです。費用対効果分析は医療の現場でも意義を増し、この分野に特化した学問領域が進化しています。治療に掛かる費用は、安ければ良いというわけではありません。安価でも効かない薬や質の悪い医療では、「安物買いの銭失い」となります。一方で、効果が高くとも、法外に高額な治療では手が届かず、公的医療の枠組みを超えてしまいます。費用に見合う効果のバランスが取れていることが鍵となります。あらゆる疾患に共通する治療効果指標「QALY」医療における費用対効果を分析する場合に、効果をどのように測定するかが問題です。風邪を引いた場合には解熱することが求められ、がんの治療ならば再発せずに長生きすることが求められ、変形性膝関節症では痛みなく日常生活が可能となることが効果として求められます。風邪・がん・変形性膝関節症と、疾患ごとにバラバラの効果指標で費用対効果を算出すると、その解釈も疾患ごとにバラバラとなります。あらゆる疾患に共通する効果指標としてQALYが考案され国際的に活用されています。これは、Quality-Adjusted Life Yearの略語で、「クオリー」と呼ばれ日本語では「質調整生存年」と訳されます。瀕死の病の状態から、医療により同じ1年間を長生きすることができたとしても、思うままにできる元気な1年間と、寝たきりで身動きがとれない1年間では、多くの人は前者のほうが望ましいと考えます。生存期間で見ればどちらも1年ですが、前者は後者よりも質の高い状態なので、治療により得られる1年間の価値も大きくなります。このように、生存している期間に加えて質も同時に反映する評価指標がQALYです。QALYの値は、1(完全な健康)から0(死亡)までの値を取ります。完全な健康状態で過ごした1年間は1QALYであり、人がその年の価値の100%を得ることができたと解釈します。完全な健康状態ではない状態で生きた1年間は、価値の量が低下します。たとえば、効用が0.5の状態で1年間生きた場合、0.5QALYが得られます。この人は、その年に得られる最高の価値の量の50%しか得ていないという意味です。言い換えれば、0.5の健康状態で1年間を生きる価値の量は、完全な健康状態で半年間を生きることと同程度の価値の量があることを意味します。QALYは1QALY、2QALYと数えることができ、0.8の状態で10年間生存すれば0.8×10=8QALYとなります。ICER:1QALY延ばすために要するコスト従来からある標準的な治療と効果が高いと期待される新規治療と比べた場合に、QALYを1単位獲得するのにいくらコストが掛かるかを表す指標をICER(Incremental Cost-Effectiveness Ratio)と呼びます。要は、1QALYを延ばすために要するコストで、この値が医療行為を社会に導入する是非の基準となります。たとえば、新たな治療により比較対照と比べて500万円余分に掛かるけれども、2年間の延命が期待できれば、ICERは500万円/2年=250万円/年となります。これは、追加的に1年間生きるのにあと250万円のコストが掛かるということになります。イギリスでは、1QALY当たりに認めるコストの目安として2万~3万ポンドと設定しています。日本円に換算すると、1QALYを得るのに必要なコストは500万円程度までは容認されるという考えです。ICERが500万円/QALYを超える医薬品は、薬価の引き下げが検討されるなど医療政策に活用されています。今、議論に向き合わなければならないこのように医療の経済的な側面について考えることは、「金の話なんて、卑しいからするな」と感じる方もいるかもしれません。「人の命は地球よりも重い」という言葉がありますが、本当にそうでしょうか。医療費はだれかが負担しなければならないことは間違いありません。今を生きる私たちが費用を負担していないのであれば、いつか誰かがツケを支払わねばなりません。おそらく子や孫の世代です。一般の社会でも、支払い能力を考えずにただ金を使いまくる人間は愚か者と考えられています。国がなんとかしてくれると思考を放棄するのは「ドラ息子」の所業です。あえて目を背けたい事柄だからこそ、歯を食いしばって向き合う必要があります。今を生きる世代の人間は、次の世代や次の次の世代を巻き込むことは避けるべきであり、そのための議論を放棄してはならないと考えます。この困難な話題について原稿を書いていると、わが家の「ドラ息子」ともいえる愛猫の「レオ」が遊んでくれとやってきました。ゴロゴロいってスリスリしてきます。猫と暮らすことの費用対効果を考えてみます。猫の飼育コストには、食事、猫用品(トイレ、ベッド、おもちゃなど)、健康ケア(ワクチン、予防医療、獣医さんへの診療費)などが含まれます。遊んだり、トイレの世話をしたり、愛情を注いだりするために時間とエネルギーを費やすことも経費です。効果については、猫は癒しや楽しみを提供してくれます。彼らの愛らしい行動や一緒に過ごす時間は、ストレス軽減や幸福感向上に寄与します。猫と遊ぶことは、同居する人間にとってもアクティビティの機会になります。猫を飼うことは責任感を養う機会でもあります。猫と暮らす1年は2QALY、いや5QALY以上の価値があります。今回も結局は猫自慢の話になってしまいました。

428.

ICIによる心筋炎、現時点でわかっていること/日本腫瘍循環器学会

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は抗PD-1抗体のニボルマブが2014年に本邦で上市されて以来、抗PD-L1抗体や抗CTLA-4抗体も登場し、現在では臓器横断的に幅広いがん種に対し、単独投与のみならず併用投与も行われるようになった。しかし、その一方でさまざまな免疫関連有害事象(irAE)が報告されており、とくに循環器医も腫瘍医も恐れているirAEの1つに心筋炎がある。これは通常の心筋炎とは何が違い、どのように対処するべきなのだろうか―。9月30日~10月1日に開催された第6回日本腫瘍循環器学会学術集会のシンポジウム『免疫チェックポイント阻害薬関連有害事象として心筋炎の最新の理解と対応』において、3名の医師が心筋炎のメカニズムや病態、実臨床での事例やその対応について発表した。irAE心筋炎でわかっていること、わかっていないこと Onco-Cardiology教育に力を入れる田尻 和子氏(国立がん研究センター東病院 循環器科長)によると、あいにく現時点ではこの病態の解明には至っていないが、心筋炎を起こす免疫細胞の種類とその働き、免疫細胞を制御している分子・シグナル・液性因子、心臓のT細胞は何を敵だと思って攻撃しているのか、などの疑問が沸いている状況だという。同氏はこれらの疑問点を詳細に解説したうえで、「なぜICI投与患者の約1%だけが心筋炎を発症するのか、そして従来の心筋炎よりなぜ予後が悪いのか」と2つの疑問を挙げた。 前者については「ICI治療前に存在する患者固有の特徴によるのか、またはICI投与によって生じた何らかの事象に関連するのか」と問題提起。また、「心筋に特異的なタンパクであるαミオシンを免疫細胞が敵だと思いこみ自己免疫性心筋炎が発症することは明らかになっている1-4)ものの、心筋炎にならなかったICI投与患者の心筋にもαミオシン反応性T細胞が存在することから、なんらかのウイルス感染が引き起こしている可能性、根底にある遺伝的感受性や腸内細菌の関与も考えられる」とコメントした。 さらに後者の疑問に対しては「いわゆる一般的な心筋炎というのは治療介入しなくとも自然軽快していくが、irAE心筋炎はステロイド抵抗性であったり、免疫応答がより強力(マクロファージの比率が多い、より高密度のリンパ球浸潤)であったりするのではないか。T細胞がICIにより永久的にリプログラムされて抑制シグナルに耐性を持ち、ICI投与終了後数年にわたる可能性も否めない。さらに、ウイルス感染が原因であればそのウイルスを除去すれば終わりだが、irAE心筋炎のT細胞が認識する抗原が腫瘍や心筋だった場合はそれらが除去されないために炎症が収束しないのではないか」と、仮説を挙げた。心筋炎の発症頻度は1%超、致死率は25~40%の可能性 続いて発表した清田 尚臣氏(神戸大学医学部附属病院 腫瘍センター)はirAEの特徴と実際の発症頻度について解説。「当初の発症頻度は0.09%程度と言われていたが、現在のRCTメタ解析などによると最大で5.8%に上り、近年の報告の多くは1%を超えている。つまり、想定していたよりも頻度や致死率が非常に高く、発症までの期間中央値は30日前後であることが各種論文から明らかになってきた」と述べた。同氏の施設では年間290例(ICI延べ処方件数3,341件)がICI治療を行っているが、「irAEの発症頻度を3%、致死率を30%と想定した場合、当院では年間9人が発症し、約3人が死亡することになる」と、いかに発症を抑えることが重要かを示した。 同氏はオンコロジストとしてできることについて、JAVELIN Renal 101試験5)でのMACEの定義や頻度を示し、「ICIを使用する前には脂質異常症などの既往、ベースライン時点での心電図とトロポニン測定などを実施して評価をしておくことが必要。検査所見のみで無症状の場合もあるが、心筋炎を疑う症状(息切れ、胸痛、浮腫、動悸、ショック症状など)がみられたら躊躇せずに、心電図、トロポニンやBNPの測定、心エコーを実施してほしい」と述べ、「irAE心筋炎はCCU管理が必要になる場合もあるため、疑った時点で早期に循環器医にコンサルテーションすることも必要」と連携の重要性も説明した。心筋炎に遭遇、実臨床での適切な対応策 循環器医の立場で登壇した及川 雅啓氏(福島県立医科大学 循環器内科学講座)は、実際にirAE心筋炎に遭遇しており、その際の対処法としてのステロイドの有用性、irAE後のICI再投与について言及した。 同氏の施設ではICI外来を設置し、患者・医療者の双方に負担がない取り組みを行っている。概要は以下のとおり。<福島県立医科大学附属病院のICI外来>・ICI治療が予定される場合、がん治療を行う各科にてトロポニンI、心電図、心エコーのオーダーを行い、循環器内科ICI外来(カルテ診)へ紹介する。・検査結果をカルテにて確認し、ICI開始後約1ヵ月、3ヵ月、以後3ヵ月ごとにトロポニンI測定ならびに心電図検査を実施する。・問題が生じた場合には、各科主治医に連絡を取り、今後の方針を検討する。 上記のフォローアップを受けた全271例のうち、トロポニンIの上昇(>0.05ng/mL)を認めたのは15例(5.5%)で、そのうちirAE心筋炎と診断されたのは4例(1.4%)だったという。この4例に対しては「ESCガイドライン6)に基づく治療として、ICIを中止し、心電図モニターを行った後、メチルプレドニゾロン500~1,000mg/dayを最低3日間実施した。これで改善すれば経口プレドニゾロン1mg/kg/dayに切り替え、ステロイド抵抗性がみられた場合には2ndラインとして免疫抑制薬の投与に切り替えが必要となる。本症例ではステロイド治療が奏効したが、重篤化前の治療介入が非常に重要であることが明らかであった」。 また、irAE心筋炎を診断する際の検査値について、「トロポニンIの持続上昇は臨床的な心筋炎に至る可能性が高いため、綿密なフォローアップが必要である」と説明し、さらに「肝機能異常やCPK上昇を伴っていることも報告7)されているが、実際に当院の症例でも同様の傾向が見られた。このような検査値にも注意を払うことが診断精度向上につながる」と補足した。 ICI再投与についてはJAMA誌での報告8)を示し、「irAE発症者6,123例のうち452例(7.4%)に行われ、再投与により28.8%でirAEが再発している。irAE心筋炎を発症した3例に再投与が行われ再発は0例であったが、例数が少なく判断が難しい。この結果を見る限りでは、現時点で再投与を積極的に行うことは難しいのではないか」と個人的見解を示した。 なお、本シンポジウムでは発表後に症例検討のパネルディスカッションが行われ、会場からの質問や相談が尽きず、盛況に終わった。■参考文献日本腫瘍循環器学会1)Munz C, et al. Nat Rev Immunol. 2009;9:246-258.2)Tajiri K, et al. Int J Mol Sci. 2021;22:794.3)Won T, et al. Cell Rep. 2022;41:1116114)Axelrod ML, et al. Nature. 2022;611:818-826.5)Rini BI, et al. J Clin Oncol. 2022;40:1929-1938.6)Lyon AR, et al. Eur Heart J. 2022;44:4229-4361.7)Vasbinder A, et al. JACC CardioOncol. 2022;4:689-700.8)Dolladille C, et al. JAMA Oncol. 2020;6:865-871.

429.

医師の英語学習、どのくらいお金と時間をかけている?/1,000人アンケート

 英語で学会発表を行ったり、外国人患者を診療したりするために、英語は医師にとって欠かせないスキルとなっている。英語を学ぶ主な目的や学習方法といった医師の英語学習状況を把握するため、会員医師1,021人を対象に『医師の英語学習に関するアンケート』を9月21日に実施した。年代別の傾向をみるため、20~60代以上の各年代を約200人ずつ調査した。その結果、英語学習に最も費用と時間をかけているのは30代であることなどが明らかとなった。海外学会への参加頻度から、おすすめの英語系YouTubeチャンネルや語学学習アプリなど、学習に役立つツールまで、英語学習に関するさまざまな意見が寄せられた。医師全体の18%が海外学会に参加 「Q1. 2022~23年、どれくらい海外学会に参加しましたか?(参加形式は発表・聴講を問わない、オンラインでの参加も含む)」という設問では、年代別に海外学会への参加の実態を聞いた。全体で18%が1回以上参加していた。 年代別で1回以上の参加率が高い順に、30代(24%)、40代(23%)、20代(17%)、50代(14%)、60代以上(12%)であった。一方、20~50代では、期間中1回の参加の割合が最も多くを占めていたが、60代以上は、3回以上参加した割合が最も多かった(7%)。診療科別の海外学会参加率(1回以上)では、参加率が高い順に、皮膚科(39%)、血液内科(36%)、放射線科(30%)、腎臓内科(29%)、リハビリテーション科(27%)であった。医師が英語を学ぶ目的、年代が低いほど研究、高いほど臨床を重視 「Q2. 医療業務やキャリアアップに関わるもので、英語を学ぶ目的は?(当てはまるものを3つ選択)」の設問では9つの選択肢を設け、多い順に「医学論文を投稿するため」(39%)、僅差で「外国人患者を診療するため」(39%)、続いて「英語の学会発表を聴くため」(31%)、「外国人医療者とコミュニケーションを取るため」(26%)、「英語で学会発表を行うため」(26%)であった。 医師が英語を学ぶ目的については、年代別で傾向が分かれた。目的別で最も多い年代は、「医学論文を投稿するため」は20代、「英語で学会発表を行うため」は30代、「外国人患者を診療するため」は60代、「外国人医療者とコミュニケーションを取るため」は50代となり、年代が低いほど研究に関わる目的の割合が高く、年齢が高いほど臨床に関わる目的が高くなった。英語学習に最も時間とコストをかけている医師は30代 「Q3. 現在行っている英語学習法は?(当てはまるものすべて選択)」では、選択肢を12個設け、多い順に「英語論文を読む」(47%)、「YouTube、Podcast」(21%)、「勤務先の抄読会」(14%)、「市販のテキストやラジオ」(13%)、「英語のドラマや映画、小説」(12%)、「英語学習アプリ」(10%)となった。30代と40代では、「YouTube、Podcast」、「英語学習アプリ」の割合が多く、60代以上では、「市販のテキストやラジオ」、「英語の映画やドラマ、小説」が多かった。 「Q4. 英語学習に月間かける費用は?」の設問では、費用をかけていない医師の割合が71%と大半を占め、次いで「1円以上、5,000円未満」が20%であった。「Q5. 英語を学習する頻度は?」の設問では、英語を学習する習慣のある医師が60%であった。学習の頻度は、多い順に「週に1日」(26%)、「週に2、3日」(15%)、「毎日」(10%)、「週に4~6日」(9%)であった。30代が英語学習に費用をかけている割合が最も多く(33%)、学習する習慣のある医師も最も多かった(67%)。医師がおすすめする英語学習法 Q6では、自由回答として、おすすめの英語学習法やサービス名、そのほか英語学習に関する意見を聞いた。回答者から寄せられた意見、おすすめの学習法、英語系YouTubeチャンネル、語学学習アプリなどは以下のとおり。【YouTube】・あいうえおフォニックスは発音や英語表現を簡単にテンポよく解説してくれる。(総合診療科・30代)・英語学習系YouTuberのタロサック。(総合診療科・30代)・もりてつという塾講師のYouTubeが参考になる。(総合診療科・40代)・フレンズ英会話はおすすめです。(腫瘍科・50代)・Kevin's Englishは楽しいです。(産婦人科・60代)【アプリ・オンラインツール】・ChatGPTは活用している。(小児科・40代)・スピーク、ELSA、mikanというアプリがおすすめ。(放射線科・20代)・スタディサプリ。(消化器内科・30代)・NHKの語学講座アプリ。無料で複数回復習ができる。(小児科・40代)・Duolingo。(皮膚科・40代)・HiNative(ネイティブにチャットで質問できるアプリ)。(呼吸器内科・40代)・DMM英会話で毎日外国の人と話し、振り返りをしている。あとはアプリで単語を覚えたり、発音の練習などしている。(循環器内科・30代)【ニュース】・ワシントンポストやニューヨークタイムズの動画ニュースを聞く。(小児科・40代)・CNN English Express。(消化器外科・50代)・BBCのPodcast。(腎臓内科・30代)【論文・学会】・ひたすら論文を書いています。(総合診療科・30代)・英文抄録を読む。(内科・60代)・好きなジャンルの講演を聴く。(血液内科・40代)・NEJMやJAMAのPodcast。(循環器内科・60代)【その他、独自の工夫】・IELTSを受けている。(臨床研修医・20代)・駅で電車を待っている間や、外を歩いているときに英語で独り言を呟いてみる。(消化器内科・40代)・歌詞を覚えて歌う。(消化器外科・50代)・子供用アニメは英語がそれほど難しくなくとっつきやすい。(泌尿器科・50代)・医療系の英語ドラマで、英語の字幕を見ながら英語で聞いて、言葉を復唱する。海外留学の経験からも、これが一番の勉強法だと思います。(内科・50代)【英語が使えてよかったこと】・突然海外からの患者が来た時に、対応できるので信頼度が上がる。(小児科・20代)・英語論文を書く時間がかからない。(整形外科・30代)・外資系の産業医活動ができた。海外出張に参加できた。(精神科・50代)・日々の絶え間ない学習が有効とわかったのが良かった。(その他・60代)アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。医師の英語学習、おすすめの学習ツールは?/医師1,000人アンケート

430.

英語で「任せます」は?【1分★医療英語】第101回

第101回 英語で「任せます」は?《例文1》Please leave it to me.(私に任せてください)《例文2》I’ll leave it to you whether you start the medication today or not.(この薬を今日から飲み始めるかどうかは、あなたにお任せします)《解説》“leave”には「離れる」や「置いておく」といった意味がありますが、これに関連して「任せる」という意味もあります。同じく“leave”の動詞を使って「仕事を託す」といったイメージで、”I'll leave it to you.” または“I’ll leave it in your hands.”(あなたにお任せします)といったように使います。また、何か仕事を進めてもらうような状況では、“Please go ahead.”(どうぞ進めてください)という表現もよく使われます。また、「仕事を引き継いでもらう」といった状況では、“Over to you.”(よろしく)という表現もよく使われますが、目上の人にはやや失礼に当たるので注意しましょう。「任せる」という意味の表現には、“It’s up to you”というものもあります。これは「あなた次第です」と訳されることが多いですが、言い方によっては突き放した表現にも聞こえてしまうため、使う際には注意が必要です。上の表現にも出てきた“hand”を使って「仕事を託す」というイメージで、“It’s in your hands now.”(今からお任せします)という言い方も可能です。講師紹介

431.

血管内/外溶血を抑制する発作性夜間ヘモグロビン尿症薬「エムパベリ皮下注1080mg」【最新!DI情報】第2回

血管内/外溶血を抑制する発作性夜間ヘモグロビン尿症薬「エムパベリ皮下注1080mg」今回は、補体(C3)阻害薬「ペグセタコプラン(商品名:エムパベリ皮下注1080mg、製造販売元:Swedish Orphan Biovitrum Japan)」を紹介します。本剤は、発作性夜間ヘモグロビン尿症における世界初のC3阻害薬であり、血管内溶血および血管外溶血の抑制が期待されています。<効能・効果>発作性夜間ヘモグロビン尿症の適応で、2023年3月27日に製造販売承認を取得し、9月4日より販売されています。なお、本剤は、補体(C5)阻害薬による適切な治療を行っても、十分な効果が得られない場合に投与されます。<用法・用量>通常、成人には、ペグセタコプランとして1回1080mgを週2回皮下投与します。なお、十分な効果が得られない場合には、1回1080mgを3日に1回の間隔で皮下投与することができます。補体(C5)阻害薬から本剤に切り替える際は、補体(C5)阻害薬中止による溶血を抑えるため、本剤投与開始後4週間は補体(C5)阻害薬を併用します。<安全性>国際共同第III相試験(PEGASUS/APL2-302試験)の無作為化投与期間において多く認められた副作用は、注射部位紅斑14.6%、注射部位反応9.8%、注射部位硬結7.3%、注射部位腫脹7.3%などでした。なお、重大な副作用として、莢膜形成細菌による重篤な感染症(頻度不明)、髄膜炎菌感染症(頻度不明)、過敏症(2.5%)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、発作性夜間ヘモグロビン尿症に対して補体(C5)阻害薬による適切な治療を受けているにもかかわらず、効果が不十分な場合に投与される注射薬です。2.血管内の溶血を防ぐとともに、血管外の溶血も防ぎます。3.投与中および投与終了後2ヵ月は、「患者安全性カード」を常に携帯してください。4.主治医以外の医師の診察を受ける場合には「患者安全性カード」を掲示し、必ずこの薬を使用していることを医師および薬剤師に伝えてください。5.投与中に発熱や悪寒、頭痛など感染症を疑う症状が生じた場合は、たとえ軽度であっても主治医に連絡してください。<ここがポイント!>発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は溶血性貧血の一種であり、免疫機構の1つである補体によって赤血球が攻撃、破壊される病気です。現在のところ根本的な治療は造血幹細胞移植のみですが、補体(C5)阻害薬であるエクリズマブやラブリズマブによる治療を続けることで症状の進行を抑えることができます。しかし、補体(C5)阻害薬は効果が不十分となることがあり、また一部の患者では肝臓や脾臓などで溶血する「血管外溶血」がみられることがあります。本剤は、補体C3とC3bを特異的に阻害し、血管内溶血を防ぐとともにC5阻害薬で活性化されたC3bの血管外溶血も抑制することができます。エクリズマブ治療でHb値が10.5g/dL未満のPNH患者に対して、本剤を投与したときの有効性および安全性をエクリズマブ継続投与と比較した国際共同第III相試験(PEGASUS/APL2-302試験)において、主要評価項目である無作為化投与期間の16週時点のHb値のベースラインからの変化量は、本剤群は+2.37g/dL、エクリズマブ群は-1.47g/dL、群間差は3.84g/dL(95%信頼区間:2.33~5.34)であり、本剤はエクリズマブ群に比べてHb値を有意に改善しました。本剤は免疫系の一部を阻害するため、髄膜炎菌や肺炎球菌、インフルエンザ菌b型などによる重篤な感染症にかかる可能性が高まります。そのため、本剤を初めて使用する2週間前までに、これら3種のワクチンを接種する必要があります。なお、重篤な感染症を引き起こすリスクは投与終了後も数週間続くことがあるので、患者安全性カードを患者に携帯する必要があります。

433.

エフガルチギモド、一次性免疫性血小板減少症に有効/Lancet

 一次性免疫性血小板減少症(特発性血小板減少性紫斑病)は後天性の自己免疫疾患で、血小板抗原を標的とする自己抗体がその一部を媒介しており、ほかの疾患との明確な関連のない孤立性血小板減少症(血小板数<100×109/L)を特徴とする。患者は、出血イベント(まれに生命を脅かす)や疲労を呈し、QOLの低下を招く場合もある。米国・ジョージタウン大学のCatherine M. Broome氏らは「ADVANCE IV試験」において、ファーストインクラスの抗胎児性Fc受容体(FcRn)抗体フラグメント製剤エフガルチギモドが、プラセボと比較して、本症の慢性期の患者における血小板数の持続的臨床効果について有意に優れ、忍容性も良好で有害事象の多くは軽度~中等度であることを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年9月28日号に掲載された。アジア、欧米の71施設の無作為化プラセボ対照第III相試験 ADVANCE IV試験は、日本を含むアジア、欧州、北米の71施設が参加した24週間の二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年12月~2022年2月の期間に患者のスクリーニングを行った(argenxの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、平均血小板数が30×109/L未満で、過去に少なくとも1回の免疫性血小板減少症の治療が奏効し、ベースラインで同時併用療法を受けているか、過去に少なくとも2回の免疫性血小板減少症の治療を受けている、慢性(罹患期間>12ヵ月)または持続性(同3~12ヵ月)の一次性免疫性血小板減少症の患者であった。 これらの患者を、エフガルチギモド(10mg/kg)またはプラセボを静脈内投与する群に2対1の割合で無作為に割り付けた。最初の4週間は週1回の投与を行い、その後は担当医の裁量で、週1回投与を継続するか、血小板数≧100×109/Lの場合は2週に1回の投与に変更することが可能であった。 主要エンドポイントは、慢性の免疫性血小板減少症の集団における血小板数の持続的臨床効果(直近6週間のうち少なくとも4週で血小板数が≧50×109/L)とした。 131例(年齢中央値47.0歳[四分位範囲[IQR]:18~85]、女性54%)を登録し、86例をエフガルチギモド群に、45例をプラセボ群に割り付けた。これらの患者は、平均罹患期間が10.6年で、67%(88/131例)が少なくとも3回の免疫性血小板減少症の治療歴のある長期罹患者であった。131例のうち慢性の患者は118例(エフガルチギモド群78例、プラセボ群40例)だった。慢性だけでなく、全体でも有効 主要エンドポイントを達成した慢性期の患者の割合は、プラセボ群が5%(2/40例)であったのに対し、エフガルチギモド群は22%(17/78例)と有意に高かった(補正後群間差:16%、95%信頼区間[CI]:2.6~26.4、p=0.032)。 24週の治療期間のうち病勢コントロール(血小板数≧50×109/L)を達成した週数の中央値は、プラセボ群が0.0週(IQR:0.0~1.0)であったのに比べ、エフガルチギモド群は2.0週(0.0~11.0)であり有意に優れた(p=0.0009)。 全131例における主要エンドポイントを達成した患者の割合も、エフガルチギモド群で優れた(26% vs.7%、補正後群間差:19%、95%CI:5.7~29.6、p=0.011)。 安全性解析は全131例で行った。エフガルチギモド群は忍容性も良好で、試験薬投与中に発現した有害事象(TEAE)の重症度は多くが軽度~中等度であった。重篤なTEAEは、エフガルチギモド群が8%、プラセボ群は16%で、治療関連TEAEはそれぞれ17%、22%で発現した。注目すべきTEAEのうち、両群で最も頻度が高かったのは、頭痛(エフガルチギモド群16%、プラセボ群13%)、血尿(16%、16%)、点状出血(15%、27%)であった。 著者は、「本研究の結果は、一次性免疫性血小板減少症の慢性期の患者であっても、本症の病態生理においてはIgGが重要であることを示しており、とくに治療困難な患者の治療選択肢としてのIgG低下療法の適用可能性についての理解を深めるものである」とし、「このデータは、胎児性FcRnのIgG recyclingの阻害による病原性IgG抗体の減少が、複数の治療によっても病勢がコントロールされていない一次性免疫性血小板減少症の患者の治療において有効なアプローチとなることを示唆する」と指摘している。

434.

早期中絶後のRh検査、免疫グロブリン投与の必要性/JAMA

 妊娠第1期の人工妊娠中絶はRh感作のリスクではなく、妊娠12週より前の人工妊娠中絶後のケアとして、Rh検査および免疫グロブリンの投与は不要であることが、米国・ペンシルベニア州立大学のSarah Horvath氏らの検討で示された。研究の詳細は、JAMA誌2023年9月26日号で報告された。米国の前向きコホート研究 本研究は、妊娠12週0日以前に人工妊娠中絶(薬剤、手術)を受けた女性506例の中絶前後の血液サンプルを用いて、胎児性赤血球(fRBC)が検出されるかを検証する米国の多施設共同前向きコホート研究である(米国・Society of Family Planning Research Fundの助成を受けた)。 主要アウトカムは、妊娠第1期の人工妊娠中絶後に、fRBC数がRh感作の閾値(総赤血球数500万個当たりのfRBC数125個)を超えた女性の割合であった。 506例のうち、319例(63.0%)が薬剤による中絶、187例(37.0%)は手術による中絶を受けていた。平均年齢は27.4(SD 5.5)歳で、313例(61.9%)が黒人、123例(24.3%)は白人だった。中絶後fRBC数と関連するベースラインの背景因子はなかった 506例中3例は、ベースライン時にfRBC数がRh感作閾値を超えて上昇しており、このうち1例(0.2%、95%信頼区間[CI]:0~0.93)は中絶後に上昇していた。これ以外に、人工妊娠中絶後にfRBC数がRh感作閾値を超えて上昇した例はなかった。 fRBC数中央値は、薬剤による中絶では4.0個(最大58個)、手術による中絶では3.0個(最大32個)であり、fRBC数が閾値を超えて上昇した例の割合は、それぞれ0%(95%CI:0~1.4)、0%(0~1.6)であった。 最適化された測定法では、薬剤による中絶と手術による中絶で、中絶後のfRBC数の分布に統計学的な有意差は認めなかった。 ベースラインからのfRBC数の変化量中央値は0個であり、fRBC数の95パーセンタイル値は24個、99パーセンタイル値は35.6個であった。 また、中絶前と後のfRBC数には強い関連性(p<0.001)を認めたが、中絶後のfRBC数と有意な関連を示すベースラインの患者背景因子はなかった。 著者は、「これらの結果は、妊娠第1期の人口妊娠中絶後にRh検査や免疫グロブリン投与は不要であることを示唆している。このエビデンスは、妊娠第1期の人工妊娠中絶後のRh免疫グロブリン投与に関する国際的なガイドラインに、有益な情報をもたらす可能性がある」としている。

435.

アントラサイクリン系薬剤による心機能障害をアトルバスタチンは抑制したがプラセボとの差はわずかであった(解説:原田和昌氏)

 近年、Onco-cardiologyが注目されており、がん化学療法に伴う心毒性を抑制できる薬剤の探索が行われている。動物実験や小規模なランダム化比較試験では、アントラサイクリン系薬剤による左室駆出率(LVEF)低下に対する、アトルバスタチンの抑制作用が報告されていたが、乳がんを中心としたPREVENT試験では効果を示せなかった(ドキソルビシン換算の中央値、240mg/m2)。 リンパ腫患者においてアトルバスタチン(40mg/日)の投与はプラセボと比較して、アントラサイクリン系薬剤に関連する心機能障害を有意に抑制し、心不全の発生には有意な差がないことが、二重盲検無作為化プラセボ対照臨床試験であるSTOP-CA試験で示された(同、300mg/m2)。主要評価項目はLVEFが化学療法前後で絶対値において10%以上低下し、12ヵ月後に55%未満となった患者の割合で、プラセボ群22%対アトルバスタチン群9%であった(p=0.002)。しかし、群全体としてのEF低下幅はスタチン群4.1%で、プラセボ群5.4%との差は1.3%のみであった(p=0.029)。 がん化学療法の心毒性に対する抑制効果のメタ解析では、スピロノラクトン、エナラプリルが最も有効で、スタチン、β遮断薬がこれに続いた。また、アントラサイクリン系薬剤もしくはトラスツズマブ治療を受けた患者のコホート研究では、ACE阻害薬、β遮断薬の治療にて全死亡が少なかった。さらに、アントラサイクリン系薬剤治療に関するメタ解析では、β遮断薬によって心不全の発症が有意に低下した。 スタチンによる心保護作用についてはさまざまな機序が推定されており、その意味で本試験の結果は納得のいくものである。そもそも、最近のメタ解析によるとスタチンにはHFrEF患者の入院の抑制作用も示されている。しかし、EF低下幅の差1.3%で有意差を出すことができたのは、ひとえに試験デザインの秀逸さによるものと考えられる。

436.

国際学会発表に活用する【医療者のためのAI活用術】第6回

(1)学会発表原稿作成に使えるプロンプト英語がネックで国際学会での発表を躊躇している方がいらっしゃるかもしれません。しかし、英語の文章の生成が得意なChatGPTをここでも有効活用することができます。なお、学会によってはChatGPTの使用を禁止、もしくは使用した場合には使用したことの明示を求めている場合があるため、各学会の指針を確認してください。研究や症例報告などの論文化を前提に、国際学会で発表をするという方もいらっしゃると思います。その場合、論文の文章をもとに学会発表のための英語原稿を作成する必要が出てきますが、論文の文章をそのまま使用すると、話した時に違和感のある英語になってしまいます。論文の文章から発表用の原稿を作成したい場合、以下のようなプロンプトを使用することができます。#役割あなたは優秀な研究者です#命令書入力文の抄録を学会発表で話すための原稿に変更してください#制約条件出力は英語で行ってください難しい表現は避け、自然な英語にしてください#入力文(ここに抄録を入力)図1に抄録の一部をこのプロンプトを用いて書き換えた例を示しています。中には違和感のある表現もあり、すべてを採用するのは避けたほうがよいですが、伝わりやすい表現があれば参考にすることができます。(図1)論文の文章を発表用の原稿に書き換え画像を拡大する(2)学会発表の質疑応答に使えるプロンプトChatGPTを利用して、文章をもとに質問やコメントを考えてもらうことが可能です。たとえば国際学会での発表を控えていて、質疑応答に備えて想定質問とその回答をあらかじめ用意しておきたい状況があると思います。また、国際学会で座長を任された際に、事前に提出された抄録からコメントや質問を考えておきたいというシチュエーションもあるかもしれません。そのような場合、以下のようなプロンプトが有効です。#役割あなたは○○領域の権威ある教授で、学会の座長です#命令書抄録に対して質問5個とコメント2個考えてください#制約条件出力は英語で行ってください研究の本質をつくような鋭い質問をしてください将来の研究につながるような建設的なコメントをしてください質問とコメントは口語調にしてください#入力文(ここに抄録を入力)例として、ある論文の抄録を入力すると、図2のように指示どおり5つの想定質問を考えてくれます。これをもとに事前に回答を用意しておけば、質疑応答がスムーズに行えるようになるかもしれません。また、図3のように建設的なコメントも考えてくれるため、座長になった時にもコメントをするのに役立ちます。もちろん、ChatGPTが提案したものをすべて採用する必要はなく、妥当なものだけを抽出して採用すればよいと思います。なお、ここでは例として英語で出力していますが、日本語の抄録を入力したり、日本語で出力したりすることも可能です。(図2)ChatGPTが考えた想定質問画像を拡大する(図3)ChatGPTが考えた座長コメント画像を拡大する

437.

新クラスの血友病A治療薬「オルツビーオ」製造販売承認を取得/サノフィ

 サノフィは2023年9月25日付のプレスリリースで、高い血液凝固第VIII因子活性を長く維持するファースト・イン・クラスの高活性維持型血液凝固第VIII因子製剤オルツビーオ(一般名:エフアネソクトコグ アルファ[遺伝子組換え])の製造販売承認を取得したことを発表した。オルツビーオは世界初で唯一の血友病A治療薬 血友病Aは生涯続く希少疾患で、血液凝固因子の欠乏により血液が凝固する機能が損なわれ、関節における過度の出血や自然出血により関節障害や慢性疼痛が現れ、生活の質(QOL)が損なわれる恐れがある。血友病Aの重症度は血液中の凝固因子活性レベルで評価され、出血リスクと血液凝固因子活性レベルは逆相関の関係にある。 オルツビーオの効能・効果は「血液凝固第VIII因子欠乏患者における出血傾向の抑制」であり、本剤は、週1回の投与でその活性を週の大半にわたり正常~ほぼ正常範囲(40%超)に高く維持することができる、世界初で唯一の血友病A治療薬である。12歳以上の重症血友病A患者に対して、従来の血液凝固第VIII因子製剤による定期補充療法と比べ、有意に出血を減少させた。また、成人および小児の血友病Aにおける定期補充療法、出血時補充療法、ならびに周術期管理に使用できる。基本の用量は50IU/kgである(年齢や臨床状態、活動レベルによらず、あらゆる患者に対して適用)。 今回の承認は、NEJM誌に掲載された12歳以上の重症血友病A患者を対象としたピボタル第III相XTEND-1試験(結果)と、12歳未満の小児患者を対象としたXTEND-Kids試験(結果)を含む、重症血友病A患者から得られた良好な試験結果に基づく。 XTEND-1試験において、オルツビーオの週1回投与による定期補充療法は主要評価項目を達成し、重症血友病Aにおいて優れた出血抑制効果を示し、年間出血率(ABR)の平均値は0.71(95%CI:0.52~0.97)、ABRの中央値は0.00(Q1,Q3:0.00,1.04)であった。また、オルツビーオは重要な副次評価項目を達成し、前治療の既存の血液凝固第VIII因子製剤による定期補充療法との患者内比較でABRが77%減と有意な減少を示した(95%CI:58~87、p<0.001)。オルツビーオは血友病患者の生活のイメージを大きく変える新薬 小児を対象としたXTEND-Kids試験の最終結果では、オルツビーオの週1回投与を52週間受けた12歳未満の小児(73例)におけるABRの平均値は0.6(95%CI:0.4~0.9)、ABRの中央値は0(Q1,Q3:0.0,1.0)であった。XTEND-Kids試験の詳細な結果は、7月に開催された国際血栓止血学会(ISTH)年次総会で発表された。試験全体を通してオルツビーオの安全性プロファイルは確立されており、本剤の投与後に血液凝固第VIII因子に対するインヒビターの発現は認められず、発現頻度が10%以上の副作用は頭痛と関節痛であった。 サノフィの代表取締役社長である岩屋 孝彦氏は、「オルツビーオの承認取得は、血友病A患者にとって大きな前進となる。オルツビーオは、週1回の投与で1週間の大半にわたり血液凝固因子の高い活性レベルを維持できる医薬品であり、患者や医師が抱く血友病患者の生活のイメージが大きく変わる。サノフィは、オルツビーオをはじめとする革新的な数々の治療薬をさらに前進させ、世界中の希少血液疾患の患者の治療にパラダイムシフトを起こし、標準治療の変革をもたらせるよう尽力する」としている。 オルツビーオは、米国で2023年2月に承認されており、2017年8月にオーファンドラッグ、2021年2月にファストトラック、2022年5月には血液凝固第VIII因子製剤として初のブレークスルーセラピー(画期的治療薬)に指定されている。欧州では2019年6月にオーファンドラッグに指定され、2023年5月に承認申請している。

438.

Do not harm. 誰に処方すべきかよく考えてから。血友病におけるリバランス薬として初のローンチを控えるconcizumab(解説:長尾梓氏)

 血友病の治療の基本は長らく「不足した凝固因子を補充する」という原則にのっとって行われてきた。補充する薬剤は献血から遺伝子組み換え製剤に、半減期延長型から長半減期延長型へ都度進化はしてきたが、補充療法という原則は変わらなかった。5年前に初めて原則から外れる薬剤であるエミシズマブが発売されたが、それでもエミシズマブは第VIII因子を代替する薬剤であり、コンセプトは斬新なものの、専門医としては簡単に受け入れることができた。 今回データが発表されたconcizumabは、その原則とはまったく異なるコンセプトの薬剤である。俗に「リバランス薬」といわれるこの薬は、TFPIという体内で凝固を抑制する因子を抑制する抗体製剤である。凝固抑制因子を抑制することで、体内で出血傾向に傾いていたバランスを「リバランス」するというのが基本的な考え方である。リバランス薬は他にもantithrombinやProtein Cなどの凝固抑制因子を対象としてさまざまな製薬会社が開発に取り組んでいる。その中でもconcizumabは最も早期に発売が予定されている薬剤である。ちなみに、カナダではすでに発売されているが、血友病Bインヒビターのみが適応である。なぜ、血友病Bインヒビターだけが適応なのか?(日本とは承認条件が異なる可能性があるため、注意が必要です) 前述したエミシズマブはこれまで唯一の皮下注射剤であり、これまで頻回の静脈注射による治療で多くの苦労してきた血友病患者にとっては、ほぼ悲願であった。しかし、エミシズマブは血友病Aにしか使えない。血友病Bに使える皮下注射剤はこれまでなかった。加えて、エミシズマブはインヒビターの有無に関わらず使用できた。このため、これまで出血で非常に苦労してきた血友病Aインヒビター患者は完全に救われた。しかし、血友病Bインヒビター患者にはそのような夢の薬はなかった。 しかし、血友病Bでインヒビターのない患者には、超半減期延長型製剤といってもいい薬剤がすでに存在していた。最長3週間に1回の定期補充療法で出血抑制を抑制することが可能な状況で、出血回数も非常に良好にコントロールされることが臨床試験からも臨床上の経験からもわかっていた。つまり、血友病Bインヒビターの患者が取り残されていたのだ。 concizumabは血友病A/B、インヒビターの有無を問わず使用できる薬剤である。皮下注射薬であり、毎日の注射が必要なものの、発売元のNovo Nordiskは糖尿病のインスリン製剤での実績があり、非常に簡便なインジェクターを保有している。concizumabにもそれが使えるというわけである。 ただし、本論文に記載のあるとおりで、「進行中の臨床試験でconcizumabの投与を受けていた3例(本試験の1例を含む)に非致死的血栓塞栓イベントが発生したため、投与を中断し、用法を変更して再開した」経緯を持つ薬剤である。用法を変更して再開してからの事故は報告されていないものの、本来血栓を起こすリスクの低い血友病患者に、血栓を起こすことのないように。Do not harm.の原則を忘れずに、本当に必要な患者が誰なのか正確に特定し、適切に処方することが必要である。この記事がその検討に一助となれば幸いである。 血友病の治療はこれまで多くの進化を遂げてきたが、新たな薬剤が登場するたびに、治療法の選択やその使用方法についての認識を更新する必要がある。concizumabは、その新たな選択肢の1つとして、今後の治療の現場で大きな期待を持たれている。しかしながら、あらゆる治療には利点とリスクが存在する。患者の安全を最優先に、十分な情報と知識を持ったうえでの適切な判断が求められる。 医療従事者や関係者は、新たな治療法の導入や適用に関して、患者のニーズやリスクを総合的に評価し、最良の治療を提供するための研修や教育を受けることが重要である。また、患者自身やその家族にも、新しい治療法の利点やリスク、治療の手順や注意点などを十分に理解してもらうための教育や情報提供が必要である。

439.

9月15日 世界リンパ腫デー【今日は何の日?】

【9月15日 世界リンパ腫デー】〔由来〕世界50ヵ国、75の悪性リンパ腫患者会・関連支援団体で構成されている世界リンパ腫連合が、2004年よりこの日を「世界リンパ腫デー」として制定。安らぎと新たな命の息吹を表すライムグリーン色のリボンをシンボルに、世界的な疾患啓発活動を展開している。関連コンテンツASCO2023 レポート 血液腫瘍濾胞性リンパ腫フォーラム早期再発・難治性LBCL、axi-celでOS延長/NEJMホジキンリンパ腫初回治療、ニボルマブ+AVD療法がPFSを改善(SWOG S1826)/ASCO2023進行期皮膚T細胞リンパ腫への同種HSCT、PFSを有意に延長/Lancet

440.

ブラック教授選を戦い抜き、ホワイト医局をつくる

2021年に近畿大学医学部教授に着任した大塚 篤司氏。現職を含め計3回挑んだ教授選をテーマにしたコラムをWebで連載し、今年7月には”小説“として書籍『白い巨塔が真っ黒だった件』(幻冬舎)にまとめた。「Web連載のスタート時は医局改革について書くつもりだったのが、教授選について書いた回の反響があまりにも大きくて…。自分としてもきちんと振り返っておこうと本にまとめました」。執筆を終えての思いと、これからの展望について聞いた。理不尽さの前に立ち尽くす、日本の中堅層に読んでほしい――新著では、実力よりも政治力が問われる教授選の実態を、余すところなく描いています。波紋を呼びそうな内容の本書をまとめた原動力は?Web連載が始まると、「こんなところまで書いていいんですか?」と周囲からの反響が大きく、みんなそんなに教授選のことを知りたいのか、と感じました。反響の大きさから、書籍にまとめる話が進んだのですが、スキャンダラスな暴露本にはしたくなくて…。基本的に、連載もそれをベースにまとめた本書も“フィクション”です。主人公である僕の心情はリアルなものですが、ほかの登場人物や設定は架空のものです。物語としてまとめ直すことで、自分の書きたいことを縛りなく、書き切ることができました。僕はこれまで何冊も本を書きましたが、フィクションは初めて。編集の方に「小説の書き方」を手取り足取り教えてもらいました。おかげさまで、すらすら読めるエンタメ小説に仕上がったと思います。――教授選に2回破れ、精神的に追い詰められていく様子が描かれています。そこを乗り越え、3回目に挑まれた理由は?僕が医師になったのは2003年ですが、そのときは医師の働き方の多様性がありませんでした。医局に入るか、民間病院で部長になるか、開業するか、といったくらいの選択肢しかない。僕は研究をしたかったし、チームで仕事をしたかったので医局に入りましたが、入局したら「そのまま教授を目指す」のが既定路線であり、それをなぞってきた感はあります。そして、医局の中でいい経験もつらい経験もする中で、自分の理想とする医局をつくりたい、と思うようになりました。とはいえ、この20年間で医師のキャリアも多様化しました。僕はSNSの医療発信に力を入れており、それを契機に医療者以外の方とのつながりが増え、世界が広がりました。大学以外の場所でもチームで面白い仕事ができることを実感したのです。2回目の教授選の敗戦は精神的にこたえましたが、そのときにはそうした外とのつながりがあったので、「大学にいることにこだわらなくてもいいかな」と考えられました。そんなとき、今のポジションの話が来たのです。情報発信やマーケティングに熱心な大学だと聞いていたので自分と合うのでは、という気持ちがあったのと、「これでダメならもういいや」と割り切って挑むことができました。――本書を一番読んでほしい人は?Web連載は医療者向けのサイトで書いていたので、今回本にすることで一般の方にも届くといいなと思っています。以前の僕のように、硬直した組織の中で閉塞感を抱え、もっと本当はよくできるのに…と、モヤモヤした思いを抱えながら働いている、そんな中堅層の方でしょうか。僕も何度も組織に絶望し、夢を諦めそうになりました。でも、そのときに周囲や家族の助けがあって、いま一歩のところで踏みとどまってきました。不透明な意思決定などの理不尽な目に遭い、希望を失っている人が日本中にいます。そうした状況にいる人に「もう少し頑張れば、光が見える。一緒に頑張ろう」という励ましのメッセージを込めました。2年でここまで進めた医局改革――教授に着任されて2年、医局改革はどのように進めているのでしょうか?わかりやすいところでは、「教授の総回診」を廃止しました。小説『白い巨塔』で一般にも知られるようになった、医局のシンボル的な行事です。以前は教授の診察テクニックを若手が盗む、といった意味があったのだと思いますが、時代は変わり、若手が学べる場は増えました。若手の学びの場としては効率が悪く、患者さんからも「ぞろぞろ来られて、感じが悪い」というマイナスの声が上がるようになりました。もうそういう非効率的なことはやめよう、と決めたのです。病棟全体を把握する必要はあるので、週1回、僕と看護師長と病棟医長の3人で回診し、若手は相談があればそこに来てもらい、なければ自分の仕事をする、というスタイルにしました。――2024年からスタートする「医師の働き方改革」への対応は?皮膚科の特徴として、女性医師の比率がきわめて高いことがあります。僕の教室でも入局者の7~8割が女性で、彼女たちが希望を持ってキャリアを築ける環境づくりが必須です。子供のお迎えに間に合うよう、それまで就業時間後に始めていたカンファレンスを就業時間内に終わるよう改めたり、カンファレンスや勉強会を育児休業中の先生も見られるようにWeb配信して現場復帰をスムーズにしたり、といった工夫をしました。加えて、有給休暇をきちんと取れるように徹底しています。本書でも書いていますが、僕自身、過労とストレスで一度倒れたことがあります。また、スイスへの留学時は夏休みと冬休みをそれぞれ2週間ずつ取れる環境でした。それまで働き詰めだったので「そんなに休んだら成果が出ないだろう」と思っていたのですがそんなことはなく、しっかり休んだほうが、生産性が上がることを実感しました。そうした背景から、教授就任のタイミングで2週間連続して取得できる有給休暇を設定し、まずは自分から取るようにしています。女性の多い医局として、働き方改革の新たなモデルを率先してつくっていかなければと思っています。――医局は医師派遣など人事的な役割も大きいですが、個人の希望やキャリアとのバランスは?医局と人事は切っても切り離せない関係です。医師個人のキャリアや生活の満足度を上げつつ、地域の医療を守らなければなりません。近大は私立なので、国立大学とは地域医療において求められる役割が少し違いますが、それでも近県含め、医療が手薄な地域の方の健康を守る責任があります。本人が望まない人事は基本的にしませんが、まずは医局員とよく話すようにしています。たとえば、親の診療所を継ぐ予定のある人なら「地域の医療も知っておいたほうがいいかもしれないよ」とアドバイスするなど、視野を広げてキャリアを選べるように話し合っています。若手とたくさん話し、彼ら・彼女らの興味を知って、機会があれば外に連れ出したり、人を紹介したりしています。僕自身、大学から出て、外の世界の方とつながって、世界がぐっと広がった実感があります。希望を持ってキラキラした目で入局してきた若手が、狭い病院に閉じ込められ、疲弊してしまうのは避けたい。医師の仕事は忙しく、とくに若手の間は業務に忙殺されがちですが、無駄をなくし、時間を捻出し、外の世界とつなげて閉塞感を感じさせないようにする。そこはマネジメントの力量だと思います。――最近では医局に属さない若手医師も増えていますが、医局の魅力とは?批判的に語られることが多い医局ですが、その持つ力や価値は今でも大きいと思います。若手であれば、ロールモデルがたくさんいるのが良い所でしょう。「こんなキャリアがあるんだ」と参考にできる先輩がたくさんいます。そして、医師は個人でも働けますが、インパクトの大きな研究や、社会を動かす大きいプロジェクトはやはり組織でないとできません。ノーベル経済学賞を受賞した心理学・行動経済学者のダニエル・カーネマン博士が提唱している「ピーク・エンドの法則」というものを意識しています。これは「人間がいろいろな記憶を振り返ったときに、ピーク時とエンド時の記憶が印象を決める」という理論です。たとえば、ディズニーランドへ行ったとき、チケットが高かったとか行列に長時間並んだ、などのマイナスの経験をしても、アトラクションに乗ったときの楽しさと帰り際のパレードの素晴らしさ、つまりは「ピーク」と「エンド」の記憶が素晴らしいから、みんながまた行こうとするわけです。この理論を知ったとき、とても腑に落ちる感じがしました。医局がワクワクする「ピーク」を感じられる場となり、いつか離れる「エンド」には良い記憶として残ってほしいと思います。「チーム」としての実績を作りたい――今後の目標は?今後は「近畿大学皮膚科がやった仕事」を増やしたい。今はどうしても僕が前に出て、広告塔のようになっている面がありますが、研究でも臨床でも「ああ、近畿大学皮膚科っていい仕事をしてるよね」と認知されることを1つずつ作っていきたい。大学ですからもちろん研究業績ならいいですし、産学連携・ベンチャーなどもありうるでしょう。チームとしての実績を作り、認知されることが目標です。個人的な長期目標は、「老害」にならないこと(笑)。僕もこれまでやってきたことに対する自負があるので、年齢を重ねたとき、若手から批判されたら反発する気持ちは出ると思います。でも、だからといって「オレはすごい、まだまだやれる。批判するヤツは潰す」とやってしまったら、若い力が育たない。社会全体でそれをやって萎縮しているのが、今の日本でしょう。でも、権力を持つと人は簡単に変わってしまう。老害にならないためには、外とつながり続け、価値観をアップデートしていかねばなりません。幸い、周囲にいくつになっても最前線で活躍している方や若手を育てている方など、尊敬できる先輩方がいるので、そうした方たちの背中を見ながら、自分なりの働き方、生き方を追求したい。今回の執筆が大変ながらも楽しかったので、小説もまた書きたいですね。書籍タイトルの入ったオリジナルのネクタイは、高校生の娘さんのデザインによるもの。書籍情報『白い巨塔が真っ黒だった件』『白い巨塔が真っ黒だった件』著者大塚 篤司定価1,650円(税込)発行幻冬舎(2023年7月)(ケアネット 杉崎 真名)

検索結果 合計:1210件 表示位置:421 - 440