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九州大学医学部 第一内科(血液・腫瘍・心血管・膠原病・感染症)【大学医局紹介~がん診療編】

加藤 光次 氏(准教授)山内 拓司 氏(助教)大村 洋文 氏(助教)近藤 萌 氏(大学院生)講座の基本情報医局独自の取り組み、医師の育成方針私たちが目指す医療は、目の前の患者さんを助けること、そして将来の患者さんを救うことであり、深い洞察を伴う臨床と研究を通じて、この2つの役割を果たすことができる“Physician Scientist”の育成に、医局として力を入れています。九州大学医学部第一内科は、5つの診療研究グループ(血液・腫瘍・心血管・膠原病・感染症)で構成され、各医師が専門領域に精通しつつ、人・全身を総合的に診る力を重視しています。当科では、全体回診を継続するなど、グループや臓器別診療の垣根を越え、全人的に診療できる総合内科医の臨床力を自ずと身に付けることができる土壌が育まれています。さらに、当科の専門であるがんや免疫の領域では、奇跡的とも言える最近の基礎研究から臨床開発への応用を容易に目の当たりにすることができます。このことは、第一内科ならではの特徴で、基礎研究や臨床開発における成果を、専門性を越えて異なる視点やアプローチから学ぶことが可能です。すぐ近くに、自らの視野を広げてくれる環境が整っています。さまざまなグループの垣根を越えた組織の活力は「自由」から生まれ、第一内科開講以来100年以上もの間、それを大切にしてきました。第一内科に息づく「自分のやりたいことがやれる自由度の高さ、そしてそれを支える歴史と伝統」を引き継ぎ、臨床力・研究力・人間力のバランスが取れた“Physician Scientist”を目指す若い皆さまに是非教室にご参加いただき、それぞれがもつ夢を実現して欲しいと思います。全体回診を行い、グループの垣根を越えて診療力を入れている治療/研究テーマ九州大学病院血液内科では、移植推進拠点病院として年間約50件の造血幹細胞移植を実施しています。また、難治性悪性リンパ腫や多発性骨髄腫に対する新規治療であるCAR-T細胞療法も、いち早く導入され、年間50件以上の実施件数を誇っています。研究面では、白血病や悪性リンパ腫を中心とした基礎研究に加え、臨床現場での疑問点を出発点とした研究や、基礎研究から臨床応用を目指すトランスレーショナルリサーチも推進しています。たとえば、白血病幹細胞に発現するTIM3を世界に先駆けて発見し、これをターゲットとした治療薬の開発を進めています。医学生/初期研修医へのメッセージ当科では、細胞治療に関する豊富な臨床経験を積むことができるほか、臨床と研究の距離感が近い環境が整っています。血液がんは一般的に予後が不良な疾患ですが、その治療法は日進月歩で進展しており、新たな治療法の開発に取り組むことができるのが大きな魅力です。血液がんと診断された患者さんは、多大なショックや不安を抱えていますが、少しでも安心できる未来を目指し、共に治療を進めていきましょう。カンファレンスの様子同医局でのがん診療/研究のやりがい、魅力私たち腫瘍グループは、がん治療の最前線で、多職種や複数の診療科と連携し、患者さん一人ひとりに最適な治療を届けることを目指しています。消化器がん、軟部肉腫、原発不明がんなど、幅広いがん種に対し、最新のエビデンスに基づく薬物療法を実践しています。時には合併症で悩むこともありますが、他のグループの先生方にいつでも気軽に相談できるので、心強いサポートを感じています。このように臓器の枠組みを越えた連携が、「全人的に診る」総合内科としての第一内科の強みであり魅力でもあります。患者さんに寄り添い、時に笑い合い、悩みながらも一緒に歩んでいく―それがやりがいであり、私が第一内科に入局した理由でもあります。さらに、研究設備も非常に充実しており、関連病院の先生方と協力しながら存分に研究を行うことも可能ですし、学位取得のチャンスも広がっています。また日本臨床腫瘍学会の認定研修施設として、「がん薬物療法専門医」の資格取得を目指すための高度な教育環境が整っています。臨床、研究、教育のいずれも充実したこの環境で、私たちと一緒に最先端のがん医療に取り組んでみませんか?これまでの経歴山口大学を卒業後、九州大学第一内科(心血管グループ)に入局し、内科専門医・循環器専門医を取得しました。現在は腫瘍循環器診療を行うとともに、がん治療と心血管疾患に関する基礎・臨床研究に力を入れています。同医局を選んだ理由当科は血液、腫瘍、循環器、膠原病、感染症など多様な診療グループがあり、各診療グループ間の垣根がないため、内科医としての知識を幅広く学べる環境が整っています。指導医の先生方は豊富な知識を持ち、患者さんに真摯に向き合っており、その姿勢に惹かれて入局を決意しました。所属する先生方のキャリアは多様で、各々のニーズに応じた働き方やスキル習得が可能です。私もがんと循環器領域の両方に興味を持ち、入局後にがん診療に従事した後、心血管グループに所属しています。現在学んでいること現在は大学院で、がん治療に関連する心血管障害の基礎研究を進めつつ、造血器腫瘍と心血管有害事象、腫瘍循環器リハビリテーションの臨床研究も行っています。がん治療は日々進歩し続けており、その中で患者さんに少しでも良い診療を提供できるよう研鑽を重ねています。九州大学医学部 第一内科(血液・腫瘍・心血管・膠原病・感染症)住所〒812-858 福岡県福岡市東区馬出3-1-1問い合わせ先ikyoku1intmed1@gmail.com医局ホームページ九州大学医学部 第一内科(血液・腫瘍・心血管・膠原病・感染症)専門医取得実績のある学会日本内科学会、日本血液学会、日本輸血・細胞治療学会、日本移植学会、日本臨床腫瘍学会、日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会、日本循環器学会、日本心血管インターベンション治療学会、日本不整脈心電学会、日本アレルギー学会、日本リウマチ学会、日本感染症学会、日本臨床検査医学会、日本救急医学会、日本糖尿病学会 など研修プログラムの特徴(1)血液内科・腫瘍内科・心血管内科・膠原病内科・感染症内科と複数のグループが連携して診療にあたっており、充実したサポート体制のもとさまざまな分野の症例が経験できます。(2)治験や臨床試験をはじめ最先端の治療を実施しており、将来の治療開発に繋がる基礎研究にも精力的に取り組んでいます。希望があれば海外留学も支援します。(3)休日当番制を敷いて、ライフワークバランス実現に取り組んでいます。産休・育休から復帰した女性医師のキャリア支援にも力を入れています。詳細はこちら

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第124回 自己負担増か?「高額療養費制度」の見直し 

高額療養費制度が変わって10年…皆さんが診療している患者さんで「高額療養費制度」を導入されている方は多いと思います。抗がん剤などはその最たるものでしょう。この制度、ご存じのように収入が少ない世帯だと自己負担額が安く、収入が多い世帯だと自己負担額が高くなる仕組みです。平均的なサラリーマンで上限が月8~10万円※1、所得が多いドクターの皆さんは、25~28万円※2くらいになります。40代を超えてきて、「病気した」「入院した」という知り合いの医師が増えてきたのですが、耳にするのは自己負担額が高いという嘆きの声です※3。※1)8万100円+追加自己負担分、4回目からは多数該当が適用され3万5,700円減る。※2)25万2,600円+追加自己負担分、4回目からは多数該当が適用され11万2,500円減る。※3)健康組合や共済組合において、1ヵ月間の医療費の自己負担限度額を決め、限度額を超過した費用を払い戻す付加給付制度がある職場なら月2万円くらいで済むこともある。現在の上限額は、たとえば70歳未満だと5区分に分かれています。医師の平均年収は1,500万円くらいなので、おおむね最上位層に入ります。この層の自己負担額のベース上限額が25万円2,600円というヤバイ水準になったのが2015年です。「とはいえそんなに高額になることはないっしょ」と思っていたら、最近登場する薬剤の高いこと。アベノミクス以降、日本はデフレを脱却し、賃金と物価を増加させています。厚生労働省は、11月21日に開かれた社会保障審議会の医療保険部会において、自己負担額の上限額の引き上げが必要と言及しました1)。来た。ついに来た。本当に平等な自己負担になるのか?まだ具体案は示されていませんが、全体の上限額を7~16%上げて、その後所得に応じた区分をさらに細分化するというのが想定案です。所得の多い医師は、表の3.8%のところに入っていると思いますが、これ以上負担増はカンベンしてほしいところです。なんせ前回の改正で、この層は10万円も増えたんですよ。画像を拡大する表. 70歳未満における医療保険区分と自己負担上限額(筆者作成)「年間薬価300万円の認知症治療薬が、高齢者では月8,000円で済むこともある」というのがSNSで話題になりました。実は今回、11月21日の医療保険部会でもそのことに触れられています。確かに現在、高齢者や非課税世帯が高額な薬価の最高水準の医療を受けられるのに、社会に出たばかりの若者や子育て世代が高額な自己負担のために治療を辞退せざるを得ないという構図もあります。「高所得者は多く負担してもらうが少なく給付を出す」というのは公的医療保険の不平等です。高齢者の自己負担3割や安易な受診を抑制するといった、本来の医療政策でクリアされるべきで、セーフティネットになっている高額療養費制度を今以上にキツくしてほしくないですね。参考文献・参考サイト1)厚生労働省:第186回社会保障審議会医療保険部会【資料2】医療保険制度改革について(2024年11月21日)

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多発性骨髄腫の治療継続、医師と患者の認識にギャップ/J&J

 Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は、 2024年11月15日、2024年6月に実施した多発性骨髄腫患者と多発性骨髄腫を診療する医師を対象とする調査の結果を発表した。 調査の結果、半数の患者が、「通院などの身体的負担、治療費による負担、治療が続くことへの精神的な負担などから、治療を途中で休みたいと思ったことがある」と回答した。しかし実際には、患者全体の8割は治療を継続していた。医師の調査でも症状が軽快しても、約7割の患者は治療を継続している実態が示された。 前向きに治療を継続する上で必要なこととして、患者も医師も「主治医から、治療や副作用、治療期間に関する説明が十分にあること」、「主治医に治療や副作用、治療期間に関する不安や疑問などを相談できること」、「患者本人が、病気や治療、医療費制度に関する情報を得ること」を上位3つにあげ、主治医・患者間での対話や患者本人の情報入手が必要であると考えていることが示された。  どのような状況があれば治療を継続しやすくなると思うかとの問いに対し、約5割の医師が「身近で世話をする人(家族など)に、患者が治療や治療期間、副作用などに関する不安や疑問を相談できること」、「身近で世話をする人が病気や治療、医療費制度について情報を入手すること」が必要と回答した。

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血流感染症の抗菌薬治療、7日間vs.14日間/NEJM

 血流感染症の入院患者への抗菌薬治療について、7日間投与は14日間投与に対して非劣性であることが示された。カナダ・トロント大学のNick Daneman氏らBALANCE Investigatorsが、7ヵ国の74施設で実施した医師主導の無作為化非盲検比較試験「BALANCE試験」の結果を報告した。血流感染症は、罹患率と死亡率が高く、早期の適切な抗菌薬治療が重要であるが、治療期間については明確になっていなかった。NEJM誌オンライン版2024年11月20日号掲載の報告。重度の免疫抑制患者等を除く患者を対象、主要アウトカムは90日全死因死亡 研究グループは、血流感染症を発症した入院患者(集中治療室[ICU]の患者を含む)を抗菌薬の短期(7日間)治療群または長期(14日間)治療群に1対1の割合で無作為に割り付け、治療チームの裁量(抗菌薬の選択、投与量、投与経路)により治療を行った。 重度の免疫抑制状態にある(好中球減少症、固形臓器または造血幹細胞移植後の免疫抑制治療を受けている)患者、人工心臓弁または血管内グラフトを有する患者、長期治療を要する感染症(心内膜炎、骨髄炎、化膿性関節炎、未排膿の膿瘍、未除去の人工物関連感染)、血液培養で一般的な汚染菌(コアグラーゼ陰性ブドウ球菌など)が陽性、黄色ブドウ球菌またはS. lugdunensis菌血症、真菌血症などの患者は除外した。 主要アウトカムは血流感染症診断から90日以内の全死因死亡で、非劣性マージンは4%ポイントとした。診断後90日以内の全死因死亡率は7日群14.5%、14日群16.1% 2014年10月17日~2023年5月5日に、適格基準を満たした1万3,597例のうち3,608例が無作為化された(7日群1,814例、14日群1,794例)。登録時、1,986例(55.0%)はICUの患者であった。 血流感染症の発症は、市中感染75.4%、病棟内感染13.4%、ICU内感染11.2%であり、感染源は尿路42.2%、腹腔内または肝胆道系18.8%、肺13.0%、血管カテーテル6.3%、皮膚または軟部組織5.2%であった。 血流感染症診断後90日以内の全死因死亡は、7日群で261例(14.5%)、14日群で286例(16.1%)が報告された。群間差は-1.6%ポイント(95.7%信頼区間[CI]:-4.0~0.8)であり、7日群の14日群に対する非劣性が検証された。 7日群の23.1%、14日群の10.7%でプロトコール不順守(割り付けられた日数より2日超短縮または延長して抗菌薬が投与された)が認められたが、プロトコール順守患者のみを対象とした解析(per-protocol解析)においても主要アウトカムの非劣性が示された(群間差:-2.0%ポイント、95%CI:-4.5~0.6)。 これらの結果は、副次アウトカムや事前に規定されたサブグループ解析においても一貫していた。

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lymphoma(リンパ腫)【病名のルーツはどこから?英語で学ぶ医学用語】第16回

言葉の由来“lymphoma”(リンパ腫)という病名は、“lymph”と状態を表す接尾辞の“-oma”が組み合わさってできたものです。“lymph”はラテン語の“lympha”に由来し、これは「澄んだ水」を意味します。一方、“-oma”は「腫瘍」や「増殖」を示す接尾辞です。リンパ系組織に発生する腫瘍であることから、この名前が付けられました。悪性リンパ腫は1832年に英国の医師トーマス・ホジキンがリンパ節腫脹を特徴とした7例の症例を報告したのが最初とされています。当時は“Hodgkin’s disease”(ホジキン病)と呼ばれましたが、科学の進歩と共にリンパ腫の診断と分類が詳細化され、“Hodgkin’s lymphoma”や“non-Hodgkin’s lymphoma”と分類されるようになりました。併せて覚えよう! 周辺単語非ホジキンリンパ腫non-Hodgkin’s lymphoma悪性リンパ腫malignant lymphomaリンパ節腫脹lymphadenopathy脾腫splenomegaly盗汗night sweatsこの病気、英語で説明できますか?Lymphoma is a type of cancer that originates in the lymphatic system, which is part of the body's immune system. Symptoms may include swollen lymph nodes, fever, fatigue, and weight loss. Treatment often involves chemotherapy and radiation therapy.講師紹介

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重症βサラセミアへのbeti-cel、89%が輸血非依存性を達成/Lancet

 重症βサラセミアを引き起こす遺伝子型(β0/β0、β0/β+IVS-I-110、またはβ+IVS-I-110/β+IVS-I-110)を有する輸血依存性βサラセミア(TDT)患者において、betibeglogene autotemcel(beti-cel)の投与により約90%の患者が輸血非依存状態になったことが示された。米国・ペンシルベニア大学のJanet L. Kwiatkowski氏らが、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、英国、米国の8つの医療施設で実施した第III相非無作為化非盲検単群試験「HGB-212試験」の結果を報告した。TDTは、生涯にわたる輸血、鉄過剰症および関連合併症を伴う重篤な疾患である。beti-celによる遺伝子治療は、BB305レンチウイルスベクターで形質導入した自己造血幹細胞および前駆細胞を使用するもので、輸血非依存性を可能にする。著者は、「beti-celは、重症TDT患者においてほぼ正常なヘモグロビン値を達成する可能性があり、同種造血幹細胞移植のリスクや限界がなく、治癒を目指す治療選択肢になると考えられる」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年11月8日号掲載の報告。主要アウトカムは輸血非依存状態 HGB-212試験の対象は、β0/β0、β0/β+IVS-I-110、またはβ+IVS-I-110/β+IVS-I-110遺伝子型を有し、登録前2年間に100mL/kg/年以上の濃厚赤血球(pRBC)輸血歴または年間8回以上のpRBC輸血歴がある臨床的に安定した50歳以下のTDT患者であった。 HSPC動員ならびに用量調整ブスルファンを用いた骨髄破壊的前処置を行った後、beti-celを静脈内投与し、24ヵ月間追跡した。 主要アウトカムは、輸血非依存状態(pRBC輸血なしでHb濃度加重平均9g/dL以上が12ヵ月以上持続)の患者の割合で、beti-celの投与を受けたすべての患者(移植対象集団)を解析対象集団とした。安全性は、試験の治療を開始したすべての患者(ITT集団)を対象に評価した。89%が主要アウトカムを達成 2017年6月8日~2020年3月12日に、20例がスクリーニングされた。1例は進行性肝疾患を有しており適格基準を満たさず、1例はHSPC動員およびアフェレーシス後に試験同意を撤回したため、beti-cel投与患者は18例であった。 男性が10例(56%)、女性が8例(44%)で、同意取得時に18歳未満が13例(72%)、18歳以上が5例(28%)であった。また、β0/β0遺伝子型が12例(67%)、β0/β+IVS-I-110遺伝子型が3例(17%)、β+IVS-I-110/β+IVS-I-110遺伝子型が3例(17%)であった。 beti-celを投与された18例全例が、主要アウトカムの評価対象となった。2023年1月30日時点(追跡期間中央値47.9ヵ月[範囲:23.8~59.0])において、18例中16例(89%)が輸血非依存状態を達成した(推定効果量:89.9%[95%信頼区間:65.3~98.6])。 有害事象は、18例全例に認められたが、beti-celとの関連が疑われる重篤な有害事象は認められず、死亡例も報告されなかった。 全例が第III相試験を完了し、現在進行中の13年間の長期追跡試験「LTF-303試験」に登録された。

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腫瘍循環器学と不易流行【見落とさない!がんの心毒性】第30回(最終回)

連載終了にあたりある日、医療・医学情報サイトCareNet.comの編集者から腫瘍循環器学に関する連載をしませんかという企画をいただきました。そしてその内容はインターネット情報サイトを活用して、腫瘍循環器専門医のみならず一般の循環器医や腫瘍医の先生、メディカルスタッフの皆さんに腫瘍循環器学をわかりやすく理解していただくため、というものでした。この頃は、大阪府立成人病センター循環器内科において腫瘍循環器外来が開始して以来10年が経過した時点であり、日本腫瘍循環器学会が発足したばかりの時期でもありました。タイムリーな企画だなと考え、腫瘍循環器医として第一線で活躍されておられる大倉 裕二先生、草場 仁志先生、志賀 太郎先生をお誘いして本連載を開始することにいたしました。当初は2年間の予定でしたので、最初の1年は総論(第1回~第11回)、その後は症例中心に連載を行うことにいたしました(第12回~第28回)。途中CareNet.com読者の皆さまにアンケートを行う試みも行いました1,2)。症例報告については、当初の4名に加え多くのエキスパートの先生にご参加いただき、実際に先生方がご経験された症例などを元に原稿を作成していただきました。その結果、3年半、合計30回の連載企画になりました。今回は、最終回としてこれまでの3年間を振り返りながら腫瘍循環器学の現在と将来についてまとめさせていただきます。古くて新しいアントラサイクリン系抗がん剤まず取り上げたのは、最も古くから存在する抗がん剤の一つであるアントラサイクリン系抗がん剤でした。1970年代に報告されたアントラサイクリン心筋症こそが、腫瘍循環器領域で最初に報告された心血管合併症(心血管毒性)であり、大倉先生に第2回『見つかる時代から見つける時代へ』で執筆いただきました。それは「アントラサイクリン心不全は3回予防できる」と名言を残した素晴らしい内容でした。循環器医なら全員が知っているはずのアントラサイクリン心筋症ですが、その病態や管理については意外と知られておりません。第15回 化学療法中に心室期外収縮頻発!対応は?第17回 造血幹細胞移植後に心不全を発症した症例第21回 がん化学療法中に発症した肺塞栓症、がん治療医と循環器医が協力して行うべき適切な管理は?さらにアントラサイクリン系抗がん剤と同様に、以前から投与されている殺細胞性抗がん剤について、以下の回で取り上げられました。第22回 フッ化ピリミジン系薬剤投与による胸痛発作症例第25回 膵がん治療中に造影CTで偶然肺塞栓を発見!適切な対応は第26回 増加する化学療法患者-機転の利いた専攻医の検査オーダー第28回 膵がん患者に合併する静脈血栓塞栓症への対応法この古くて新しい抗がん剤については、第17回で取り上げましたように、がん治療が終了した後もがんサバイバーにおける晩期合併症としても大変注目されています。そして、乳がん領域で最も予後が不良であったトリプルネガティブ症例に対する最も新しい治療の一つとしてその有効性が明らかとなっています3)。腫瘍循環器学の始まりは分子標的薬から腫瘍循環器学は2000年になり登場した分子標的薬とそれに伴い出現する心血管毒性が報告されてから急激な発展を遂げています。第3回『HER2阻害薬の心毒性、そのリスク因子や管理は?』で取り上げたHER2阻害薬は、米国・MDアンダーソンがんセンターにおいて世界最初に開設されたOnco-Cardiology Unitのきっかけになったがん治療薬です。当時は副作用が少なく有効性の高い夢のような薬として登場いたしましたが、アントラサイクリンとの併用により高頻度で心毒性が出現(HERA試験)4)したことで、腫瘍循環器領域に注目が集まりました。HER2阻害薬は第3回で解説があるように、その可逆性には二面性があり腫瘍循環器的にも注意が必要な薬剤です。そして、現在最も多く投与されている分子標的薬である血管新生阻害薬について、以下の回で触れています。第4回 VEGFR-TKIの心毒性、注意すべきは治療開始○ヵ月第14回 深掘りしてみよう!ベバシズマブ併用化学療法このほか、第12回、第19回 と本連載でも多く取り上げられています。血管新生阻害薬は高血圧、心不全、血栓症など多くの心血管毒性に注意が必要な薬剤であり、Onco-Hypertension領域におけるがん治療関連高血圧の原因薬剤としても注目されています5)。古くて新しいがん関連血栓症がんと血栓症は、1800年代にトルーソー(Trousseau)らにより「がんと血栓症」が報告されて以来、トルーソー症候群という概念で古くから存在しています。そして現在は血管新生阻害薬などのがん治療薬の進歩に伴い、がん治療に伴う血栓症の頻度が急速に増加してきたことで、がん関連血栓症(CAT:cancer associated thrombosis)という新しい概念が生まれてきました(図1)6)。(図1)画像を拡大する本企画では第8回 がんと血栓症、好発するがん種とリスク因子は?第20回 静脈血栓塞栓症治療中の肺動脈塞栓を伴う右室内腫瘤の治療方針第21回 がん化学療法中に発症した肺塞栓症、がん治療医と循環器医が協力して行うべき適切な管理は?第23回 静脈血栓塞栓症の治療に難渋した肺がんの一例(前編)第24回 静脈血栓塞栓症の治療に難渋した肺がんの一例(後編)第25回 膵がん治療中に造影CTで偶然肺塞栓を発見!適切な対応は第28回 膵がん患者に合併する静脈血栓塞栓症への対応法で、症例クイズとして数多く取り上げています。また、本疾患概念などについては、第9回『不安に感じる心毒性とは?ー読者アンケートの結果から』や第26回『増加する化学療法患者-機転の利いた専攻医の検査オーダー』でも触れられています。そのほかのがん治療古くて新しいがん治療には、放射線療法そしてホルモン療法が挙げられます。第7回『進化する放射線治療に取り残されてる?new RTの心毒性対策とは』、そして第11回『免疫チェックポイント阻害薬、放射線治療の心毒性、どう回避する?』に放射線関連心機能障害(RACD:Radiation Associated Cardiovascular diseases)が取り上げられました。さらに、ホルモン療法は第16回 がん患者に出現した呼吸困難、見落としがちな疾患は?第27回 アンドロゲン遮断療法後に狭心症を発症した症例にて症例提示がなされています。一方、最も新しいがん治療である免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の登場はがん診療にパラダイムシフトを起こしています。ICIに関連した連載は、第5回 免疫チェックポイント阻害薬:“予後に影響大”の心筋炎を防ぐには?第11回 免疫チェックポイント阻害薬、放射線治療の心毒性、どう回避する?第18回 免疫チェックポイント阻害薬の開始後6日目に出現した全身倦怠感第29回 irAE心筋炎の原因の一つに新たな知見が!!と計4回に登場します。また、第6回『新治療が心臓にやさしいとは限らない~Onco-Cardiologyの一路平安~』には、副作用に関するコメントとして、心毒性と腫瘍循環器医が知っておかねばならない副作用情報の読み方がまとめられており、ぜひとも再読してみてください。今後の腫瘍循環器学ニッチな学際領域であった腫瘍循環器学はいまや世界的に多くの研究がなされるようになり、各学会でステートメントやガイドラインが作成されています。本邦では、本連載が始まった後Onco-Cardiologyガイドラインが作成され、現在もトランスレーショナルリサーチや臨床研究がなされており、多くのエビデンスが明らかとなってきています。このような背景の元で、2025年10月に大阪千里ライフサイエンスセンターにおいて第8回日本腫瘍循環器学会学術集会(大会長 向井 幹夫)が開催されます。テーマを「不易流行* がんと循環器:古くて新しい関係」としており、本連載をお読みになられた方にはぜひ学術集会にご参加いただき、一緒に討論いたしましょう。*精選版 日本国語大辞典 第二版より:蕉風俳諧の理念の一つ。新しみを求めてたえず変化する流行性にこそ永遠に変わることのない不易の本質があり、不易と流行とは根元において一つであるとし、それは風雅の誠に根ざすものだとする。芭蕉自身が説いた例は見られないが向井 去来、服部 土芳らの門人たちの俳論において展開された。今回、連載の編集にご協力いただきました3名の先生、そして連載をお願いした腫瘍循環器医の先生方に御礼申し上げます。そして、本連載を読んでいただきました読者の皆さまと共に更なるご発展を祈念いたします。最後にCareNet.com連載について最初から担当いただき、適切なアドバイスをいただきましたケアネット社ならびに担当された土井様に深謝いたします。監修向井 幹夫(大阪がん循環器病予防センター 副所長)編集大倉 裕二(新潟県立がんセンター腫瘍循環器科 部長)草場 仁志(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 腫瘍内科部長)志賀 太郎(がん研究会有明病院腫瘍循環器・循環器内科 部長)向井 幹夫著者大倉 裕二、加藤 浩、北原 康行、草場 仁志、塩山 渉、志賀 太郎、鈴木 崇仁、竹村 弘司、田尻 和子、田中 善宏、田辺 裕子、津端 由佳里、深田 光敬、藤野 晋、向井 幹夫、森山 祥平、吉野 真樹(50音順、敬称略)1)向井幹夫ほか. がん診療医が不安に感じる心毒性ーCareNet.comのアンケート調査よりー. 第5回日本腫瘍循環器学会学術集会.2)志賀太郎ほか. JOCS創設7年目の今、腫瘍医、循環器医、それぞれの意識は〜インターネットを用いた「余命期間と侵襲的循環器治療」に対するアンケート調査結果〜. 第7回日本腫瘍循環器学会学術集会.3)Schmid P, et al. N Engl J Med. 2022;386:556-567.4)Piccart-Gebhart MJ et al. N Engl J Med. 2005;353:1659-1672.5)Minegishi S et al. Hypertension 2023;80:e123-e124.6)Mukai M et al. J Cardiol. 2018;72:89-93.講師紹介

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急性白血病の発症時点でさまざまな眼科所見が観察される

 急性白血病の発症時点において、多彩な眼科所見が認められるとする、マンスーラ大学(エジプト)のDina N. Laimon氏らの論文が「Annals of Hematology」に7月10日掲載された。特に、網膜出血やロート斑が高頻度に認められるという。 白血病では、白血病細胞による眼組織の直接浸潤、血球減少や白血球増多などの血液学的異常、あるいは化学療法や免疫抑制療法により、眼球およびその付属器に多彩な所見が現れるが、そういった所見の出現率に関するデータは少ない。Laimon氏らは2022年1月~2023年2月に、急性骨髄性白血病(AML)または急性リンパ性白血病(ALL)と新規診断された患者の眼科所見の出現率を詳細に検討した。 解析対象患者数は222人で平均年齢が43.45±17.35歳、男性61.7%であり、AMLが144人(64.9%)、ALLが78人(35.1%)だった。研究登録以前から眼疾患のある患者は除外されている。 全体で96人(43.2%)に眼科所見が認められ、そのうち4人(1.8%)は視力を喪失していた。出現率の高い所見は網膜出血(19.8%)とロート斑(17.1%)であり、そのほかに、眼瞼腫脹(4.1%)、眼瞼の斑状出血(3.2%)、眼瞼下垂(1.8%)、兎眼(0.5%)、結膜下出血(5.9%)、結膜浮腫(0.9%)、網膜静脈のうっ血・蛇行(4.1%)、網膜前出血(3.2%)、硝子体出血(3.2%)、黄斑症(2.3%)、網膜浸潤(1.8%)、滲出性網膜剥離(1.8%)、軟性白斑(0.9%)、網膜静脈閉塞(0.5%)、乳頭浮腫(2.8%)、視神経乳頭浸潤(1.8%)、視神経乳頭蒼白(1.8%)、眼窩病変(3.2%)、眼球運動障害(1.4%)などが認められた。 AMLとALLを比較した場合、何らかの所見を有する割合はAMLの方が高く(50.0対30.8%〔P=0.028〕)、所見別に見ても、網膜出血(25.7対9.0%〔P=0.003〕)、ロート斑(20.8対10.3%〔P=0.046〕)の出現率に有意差があった。 眼科所見と血液学的パラメータとの関連を検討すると、網膜出血はヘモグロビン低値(P=0.021)や中枢神経浸潤発生率の低下(P=0.021)と関連しており、また予後リスクが中リスクまたは高リスクの患者が多かった(P=0.002)。眼瞼の斑状出血は中枢神経浸潤(P=0.045)と関連しており、網膜浸潤(P=0.006)や滲出性網膜剥離(P=0.001)は芽球割合が高いことと関連していた。その一方、眼瞼下垂は芽球割合の低さと関連していた(P=0.04)。 Laimon氏らは、「血液がん患者の眼病変の検出や管理において、眼科医と血液腫瘍医の協力が極めて重要である。また、これらの患者の予後、特に生命予後との関連を明らかにするため、より大規模なコホートでの研究が求められる」と述べている。

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「医療費が負担だった」8割、がん患者が感じている経済的不安/日本癌治療学会

 「いくらかかるかわからない」「費用が心配で高い治療を受け入れられない」。がん治療にかかる費用は病院の会計窓口で聞くまでわからないというケースも少なくないだろう。NPO法人キャンサーネットジャパンは、がん患者が感じている、がん治療への経済的負担についてのアンケート結果を第62回日本癌治療学会学術集会で発表した。 調査対象は20歳以上の日本のがん治療経験者、調査期間は2024年8月8日~9月1日で、1,117名から回答を得ている。事前に備えをしていても負担感が強い、がん医療費 61%の治療経験者はがんになる前から治療費の備えをしていた。それにもかかわらず、約8割(78%)が、がん治療中に医療費が負担だと感じていた。 また、がん治療にかかった医療費が「予想していたよりも多い」と回答したのは69%、負担感は同居人数が多くなるほど高くなる傾向が見られた。 がん治療中に「経済的負担が原因であきらめた事柄があるか」という質問に対して23%が「ある」と回答。なかには「治療費が払えないと思い、抗がん剤と放射線治療を断った」という意見もみられる。経済的な相談は看護師・医師ではなく、家族やソーシャルワーカーに 診断時や治療中に「経済的なことについて相談したい」と思った回答者は44%、そのうち実際に相談したのは52%で、半数は相談していない。 相談しなかった理由は「経済的なことなのでためらった」「誰に相談してよいのかわからなかった」が主なものであった。 一方、相談した相手は、家族・親族、ソーシャルワーカーが多く、看護師・医師は少なかった。医療者からの費用説明は3割にとどまる 医療者から費用について説明があったかを尋ねた。「あった」と回答したのは治療前では30%、治療中は23%にとどまる。 「説明は十分だったか」という質問に対して、治療前については56%、治療中については57%が「十分だった」と回答している。 検査・治療にかかる費用や治療期間の見通しに関する事前説明、相談しやすい環境の整備、医療費支援や制度など情報提供の充実、といったことが患者の不安を小さくし、治療への意欲向上につながると考えられる。

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多発性骨髄腫におけるCAR-T細胞の製造不良の要因/京都大学

 CAR-T細胞療法は、再発難治多発性骨髄腫の管理を大幅に改善した。しかしCAR-T細胞には、製造過程で一部に発生する細胞増殖不良による「製造不良」という問題がある。製造不良は治療の大きな遅れや、その間の病勢進行につながるため、治療計画に重大な影響を与える。製造不良の実態把握とリスク因子の同定が急務とされていた。 そのようななか、骨髄腫患者におけるCAR-T細胞製造不良リスクを特定するため、日本でide-cel(商品名:アベクマ)治療を受けた患者の全国コホート研究が実施された。対象はide-cel投与のための白血球アフェレーシスを受けた患者である。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は154例で、そのうち13例(8.4%)で製造不良が発生した。・製造不良例では成功例に比べ、診断時の17p欠失率が高く(38.5% vs.14.9%)、アフェレーシス前6ヵ月以内のアルキル化剤治療が多く(53.8% vs.23.4%)、またアフェレーシス前の化学療法ライン数が多かった(中央値6 vs.5)。・製造不良例では成功例に比べ、ヘモグロビン値(8.6 vs.10.0g/dL)、血小板数(5.9 vs.13.8x104/μL)、CD4/CD8比(0.169 vs.0.474)が有意に低かった。・アフェレーシス前6ヵ月以内のアルキル化剤使用は、血小板数とCD4/CD8比低下に関連していた。

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次世代のCAR-T細胞療法―治療効果を上げるための新たなアプローチ/日本血液学会

 2024年10月11~13日に第86回日本血液学会学術集会が開催され、13日のJSH-ASH Joint Symposiumでは、『次世代のCAR-T細胞療法』と題して、キメラ抗原受容体遺伝子改変T細胞(CAR-T細胞)療法の効果の毒性を最小限にとどめ、治療効果をより高めるための新たな標的の探索や、細胞工学を用いてキメラ抗原受容体(CAR)構造を強化した治療、およびoff the shelf therapyを目標としたiPS細胞由来次世代T細胞療法の試みなど、CAR-T細胞療法に関する国内外の最新の話題が紹介された。CAR-T細胞療法を最適化するための新しい標的の開発 CAR-T細胞療法はB細胞性悪性腫瘍や多発性骨髄腫(MM)などに対する効果が認められているが、毒性については解決すべき課題が残っている。ガイドラインでは主な合併症として、サイトカイン放出症候群(CRS)および免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)が取り上げられているが、CAR-T細胞療法による新たな、または、まれな合併症とその管理についての情報は少なく、新たな標的の検討とともに明らかにしていく必要がある。米国血液学会(ASH)のCAR-T細胞療法のワークショップでは、CAR-T細胞の病態生理の理解、まれな毒性についてのデータの蓄積、on-target off-toxicityを回避するための的確な標的となる抗原などが検討されている。 Fabiana Perna氏(Moffitt Cancer Center)らは腫瘍関連抗原(TAA)および腫瘍特異的抗原(TSA)、さらに腫瘍特異的細胞表面プロテオームの解析を行っている。同氏らはこれまで、急性骨髄性白血病(AML)におけるCAR-T細胞療法の標的を同定するために、プロテオームと遺伝子発現の同時解析を行い、26個の標的を同定した。このうち15個は臨床試験で用いられ、その多くがAMLの正常細胞上に高発現する蛋白であった。 MMに対してはB細胞成熟抗原(BCMA)を標的としたCAR-T(BCMA-CAR-T)細胞療法の成績は良好とはいえず、新たな標的抗原が必要である。Perna氏らはMM患者約900例のサンプル約4,700検体を用い細胞表面のプロテオームを解析し、RNAシーケンスを行い、腫瘍組織に高発現するBCAAを含む6個の標的を同定した。そのうちSEMA4Aは再発/難治性MM患者での高発現が認められた。BCMA-CAR-T細胞療法後の再発はBCMAの発現低下に関連し、CARの機能低下を惹起すると考えられ、的確な標的の探索が必要である。Perna氏らはSEMA4AがCAR-T細胞療法の標的となりうると考え、SEMA4A-CAR-T細胞療法を試みている。なお、MM患者の免疫療法に関しては第I相試験が予定されている。 また、Perna氏らはmRNAスプライシングに由来する白血病特異的抗原の解析パイプラインを開発中であり、AML患者サンプルからスプライスバリアントの異常発現を認めたことから、同氏は、疾患特異的スプライスバリアントを標的とした治療法につながることを期待していると述べた。CAR-T細胞療法抵抗性克服と新たな応用の探求 CAR-T細胞療法は、CD19およびBCMA抗原を標的として、B細胞性悪性腫瘍(リンパ腫、白血病)およびMMに対して行われている。BCMA-CAR-T細胞療法は初期治療の奏効率は高いが、長期寛解率は低くとどまっている。CAR-T細胞の機能不全は抗原逃避、T細胞欠損、腫瘍微小環境(TME)などにより惹起される。そこで、酒村 玲央奈氏(メイヨー・クリニック 血液内科)は、CAR-T細胞療法の治療抵抗性克服と新たなストラテジーを探求するうえで、重要な鍵となる免疫抑制細胞について検討した。 がん関連線維芽細胞(CAF)は、CAR-T細胞の機能不全を誘導するが、同時にMM患者の治療効果を高める可能性があると考えられている。これまでの酒村氏の検討でMM患者由来のCAFがTGF-βなど抑制性サイトカイン産生を増加させ、PD-1/PD-L1結合を介してCAR-T細胞を阻害し、FAS/FASリガンド経路を介してCAR-T細胞にアポトーシスを誘導、制御性T細胞(Treg)を動員することが示された。また、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)を標的としたCAR-T細胞はマウスの体重を有意に減少させ、off target効果による重篤な毒性を惹起すると考えられ、CAF表面上に発現するCS1およびBCMAの2つを標的としたCAR-T細胞は腫瘍細胞およびCAFを溶解することが示された。さらに、BCMA-CAR-T細胞療法施行患者由来の骨髄サンプルを用いたシングルセルRNAシーケンスを行い、non-responder由来のCAFが高頻度にデスリガンド(抗腫瘍性リガンド)を発現すること、non-responder由来のT細胞は慢性的に刺激され疲弊したphenotypeであることが明らかとなった。また、non-responder由来の骨髄サンプルではTMEを支配する腫瘍関連マクロファージ(TAM)とCAFの有意なクロストークの存在が示された。 間葉系幹細胞(MSC)は多能性細胞であり、免疫抑制および組織再生治療における効果が研究されている。そこで酒村氏は、MSCの免疫抑制効果を向上させるために、細胞工学技術を用い健康な人から得た脂肪由来のMSCにCARを搭載し、移植片対宿主病(GVHD)に対する治療戦略をマウスモデルで検討した。研究には、とくにGVHDをターゲットとしたE-cadherin(Ecad)特異的なCAR-MSC(EcCAR-MSC)を用いた。EcCAR-MSCの開発では、Ecad特異的な単鎖可変フラグメント(scFV)クローンが生成され、CAR-CD28ζ構造を設計し安定発現させてMSCの免疫抑制機能を強化したことが示された。 GVHDモデルにおいてEcCAR-MSCはマウスの体重減少を軽減し、GVHD症状を緩和し生存率を向上させた。また、Ecad陽性大腸組織へ特異的に移行し、T細胞活性を抑制し免疫調節機能効果を向上させた。また、シングルセルRNAシーケンスにより、抗原特異的刺激を受けたEcCAR-MSCにおいてIL-6、IL-10、NF-κBなどの免疫抑制シグナル経路の活性化が認められた。EcCAR-MSCのCD28ζシグナルドメインを含むCAR構造体はより強い免疫抑制効果を示した。 酒村氏は、CARを用いたMSCの免疫抑制機能を強化する新たな細胞治療とGVHDおよび腫瘍抑制における可能性を提示した。また、MSCの開発は免疫環境の調節を可能とし、炎症性腸疾患(IBD)、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)など自己免疫疾患の治療にも新たなアプローチを提供するものと考えると述べ、CAR-T細胞療法を進展させ、より多くの患者予後の改善を目指したいと結んだ。難治性腫瘍に対するiPS細胞由来次世代T細胞療法の開発 難治性NK細胞リンパ腫に対しては、L-アスパラギナーゼを含む抗がん剤治療や末梢血由来細胞傷害性T細胞(CTL)による細胞治療が試みられてきたが、治療効果は十分ではなかった。とくに末梢血由来T細胞は細胞治療後に疲弊し、長期的には腫瘍が増大することが知られている。そこで、安藤 美樹氏(順天堂大学大学院医学研究科血液内科学)はNK細胞リンパ腫患者の末梢血よりエプスタイン・バーウイルス(EBV)抗原特異的CTLを使用し、iPS細胞を作製後、再びT細胞に分化誘導し、iPS細胞由来若返りCTL(rejT)を作製し、NK細胞リンパ腫に対する抗腫瘍効果を検討した。その結果、rejTはNK細胞リンパ腫細胞株に対し強力な細胞傷害活性を示した。次いでNK細胞リンパ腫細胞株を腹腔内注射したマウスを用い、rejTおよび末梢血由来T細胞で治療し生体内での抗腫瘍効果を比較検討した結果、両群とも有意な腫瘍増大抑制効果が認められた。さらにrejTは末梢血由来T細胞に比べ有意な生存期間延長効果を示し、マウス体内でメモリーT細胞として長期間生存し、リンパ腫再増殖抑制効果が持続したことが示された。 次いで安藤氏は、末梢血EBV抗原LMP2特異的CTLからiPS細胞を作製し分化誘導後、iPS細胞由来若返りLMP2抗原特異的CTL(LMP2-rejT)がEBV関連リンパ腫に対し強い抗腫瘍効果を発揮することをマウスモデルで証明した。また、LMP2-rejTは生体内でメモリーT細胞として長期生存し、難治性リンパ腫の再発抑制を維持することを確認した。 安藤氏はこの手法を応用し、LMP2-rejTにCARを搭載することで、2つの受容体を有し、同時に2つの抗原(CD19、LMP2抗原)を標的にできるiPS細胞由来2抗原受容体T細胞(DRrejT)を作製した。マウスを用いた検討ではDRrejTは受容体を1つのみ有する従来のT細胞に比べ、難治性の悪性リンパ腫に対し強力な抗腫瘍効果と、生存期間延長効果を示し、メモリーT細胞として長期生存が示された。 また、安藤氏はiPS細胞に小細胞肺がん(SCLC)に高発現するGD2抗原標的キメラ抗原受容体(GD2-CAR)を遺伝子導入後、分化誘導したiPS細胞由来GD2-CART細胞(GD2-CARrejT)を作製し、SCLCに対する強い抗腫瘍効果を示した。さらに、GD2-CARrejTは末梢血由来のGD2-CART細胞に比べ、疲弊マーカーであるTIGITの発現がきわめて低いことを明らかにした。また、マウスの検討でGD2-CARrejTは末梢血由来LMP2-CTLに比べNK/T細胞リンパ腫を抑制することが示された。 さらに、安藤氏はiPS細胞由来ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原特異的CTL(HPV-rejT)を作製し、HPV-rejTは末梢血由来CTLと比較して子宮頸がんの増殖を強力に抑制することを確認した。子宮頸がん患者由来のCTL作製は時間とコストがかかり実用化には課題がある。一方、健康な人のCTLから作成した他家iPS細胞を用いた場合、これらの問題は解決するが、患者免疫細胞からの同種免疫反応により抗腫瘍効果が減弱する。そこでCRISPR/Cas9技術を用い、HLAクラスIをゲノム編集した健常人由来他家HPV-CTL(HLA-class I-edited HPV-rejT)を作製した。マウスを用いた検討で、HLA-class I-edited HPV-rejTは患者免疫細胞から拒絶されずに子宮頸がんを強力に抑制し、長期間の生存期間延長効果も認められた。また、末梢血由来HPV-CTLに比べ、細胞傷害活性に関するIFNG遺伝子や、組織レジデントメモリー細胞に関係するITGAE遺伝子などの発現レベルが有意に高く、組織レジデントメモリー細胞を豊富に含むことが示された。これらの機能解析により、HLA-class I-edited HPV-rejTはTGF-βシグナリングによりCD103発現レベルを上昇させ、その結果、抗原特異的細胞傷害活性が増強することが明らかとなった。現在、HLA-class I-edited HPV-rejTを用いた治療の安全性を評価する医師主導第I相試験が進行中である。 安藤氏はiPS細胞由来の抗原特異的、そしてHLA編集細胞が、off the shelfのT細胞療法に、持続可能で有望なアプローチを提供するものと期待されると締めくくった。

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造血器腫瘍も遺伝子パネル検査の時代へ/日本血液学会

 固形がんで遺伝子検査が普及しているなか、造血器腫瘍でも適切な診断・治療のために遺伝子情報は不可欠となりつつある。日本血液学会からは有用性の高い遺伝子異常と遺伝子検査の活用方針を示した「造血器腫瘍ゲノム検査ガイドライン」が発行された。第86回日本血液学会学術集会では、Special Symposiumとして遺伝子パネルの実臨床での活用状況が発表された。臨床現場で進む造血器腫瘍の遺伝子解析 造血器腫瘍では対象となる遺伝子異常が固形がんとは違う。また、遺伝子検査の目的も固形がんでは治療対象の探索だが、造血器腫瘍ではさらに診断、予後予測が加わる。そのため、造血器腫瘍専用の遺伝子プロファイル検査が必要とされている。 九州大学では398遺伝子を標的としたDISCAVar panelを開発、すでに1,500以上の症例に活用している。名古屋大学では急性骨髄性白血病(AML)に関連する58種類の遺伝子を対象とした次世代シークエンス(NGS)解析を行っている。AML250例を超える解析結果から、従来の染色体検査に遺伝子検査を加えることで、より精密な予後層別化が可能になることを明らかにした。承認された造血器腫瘍遺伝子パネル検査「ヘムサイト」 造血器腫瘍専用の遺伝子パネル検査の必要性が望まれるなか、国立がん研究センター、九州大学、京都大学、名古屋医療センター、東京大学医科学研究所、慶應義塾大学および大塚製薬が共同で開発した造血器腫瘍遺伝子パネル検査「ヘムサイト」が2024年9月に製造販売承認された。 ヘムサイトは一塩基置換や遺伝子の挿入・欠損、また融合遺伝子や構造異常を含む計452の遺伝子をDNAとRNAの解析によって同定する。 国立がん研究センター研究所ではプロトタイプ検査を用いた前向き試験を実施し、この検査の臨床的な有用性を評価した。176症例の188検体を解析し、296個の遺伝子に1,746個の異常を同定した。85%の症例でガイドラインで認められているエビデンスを有する異常が確認され、遺伝子パネル検査の臨床的有用性を示す結果となった。

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骨髄腫研究の最前線:新たな治療法開発への挑戦と期待/日本血液学会

 多発性骨髄腫(MM)は形質細胞の単クローン性増殖を特徴とする進行性かつ難治性の造血器腫瘍であるため、現時点では治癒困難とされる。しかし近年、新たな治療戦略によって長期生存が可能になりつつある。 2024年10月11~13日に開催された第86回日本血液学会学術集会では、『新たなアプローチが切り拓く骨髄腫の病態解析』と題したシンポジウムが行われた。座長の1人である黒田 純也氏(京都府立医科大学大学院医学研究科 血液内科学)は、「多発性骨髄腫の病因・病態のさらなる解明は、新規治療法の開発や個別化医療の推進につながると期待される。そこで、本シンポジウムでは4名の先生方に、最新研究に基づく知見や将来展望についてご講演いただきたい」とあいさつした。多発性骨髄腫の診断・治療における循環腫瘍細胞の役割と展望 MMの前がん病態であり、治療の対象とならないくすぶり型骨髄腫(SMM)患者を対象としたBruno Paiva氏(スペイン・ナバラ大学)らの検討から、治療対象となる症候性MMへの進展リスクを予測するうえで、末梢血中の循環腫瘍細胞(CTC)は骨髄形質細胞(BMPC)の代替となりうることが示唆されている。 また、SMM患者の無増悪期間にCTCの挙動が影響することも確認されたため、Paiva氏は「こうした低侵襲な検査による評価は頻回のリスク再評価を可能にし、予想能を向上させる可能性がある。さらに、わずかなCTCで評価可能な手法も開発されている状況を踏まえると、無症候段階にある患者での有用性が期待される」とした。 一方、新規診断(ND)MM患者におけるCTCの予後的価値に関しては、Paiva氏らの検討によりCTCの割合が高いほど無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)が有意に短縮し、これは標準リスク群、高リスク群に関係なく同様とされたことから、「CTCはNDMM患者における最も重要な予後因子の1つ」と報告している。 そして、「CTCは移植の適応やR-ISS(改訂国際病期分類)と共に、NDMM患者におけるPFSとOSの独立した予測因子であり、CTC不検出であれば完全寛解や骨髄中の微小残存病変(MRD)はPFSとOSに影響しないことを確認している」と付け加えた。 さらにPaiva氏らは、末梢血中の残存病変の予後的価値について検討する中で、CTCを検出する新たなフローサイトメトリー法“BloodFlow”と、免疫グロブリン・サブクラスを検出する質量分析法“QIP-MS”が予後予測能を補完的に向上させることを示し、「血液検査のみで骨髄検査と同等の情報が得られる」と述べた。 「MMの診断・治療には、骨髄検査と共に遺伝子検査やCTCなどを組み合わせたリスク層別化が必要である。また、治療過程では初期には骨髄検査が重要だが、維持期や観察期間中は画像検査も考慮しつつ、末梢血検査で代用できる可能性がある」と結論した。新たな解析技術による多発性骨髄腫の理解 MMの理解にはゲノミクス、トランスクリプトミクス、プロテオミクスなどの観点から腫瘍細胞の特性を捉える必要がある。また、骨髄中の腫瘍細胞の局在と他の細胞との関係性や、どのようなタイミングで臨床的に懸念される病態に至るかを解明することが重要とされる。しかし、「MMは細胞遺伝学的・分子生物学的に多様で不均一なため、従来の解析技術では骨髄腫細胞の詳細を明確にすることは難しい」と、Michael Slade氏(米国・セントルイス・ワシントン大学)は指摘する。 こうした中、Slade氏らのグループはシングルセル解析による新たな腫瘍関連マーカーの特定を試みている。これによると、MM患者41例の骨髄穿刺液53検体を用いたシングルセルRNAシーケンスにより、既知のBCMAのほか、FCRL5やSLAMF7を含む複数の治療標的候補となるタンパク質が特定された。また、これらタンパク質をコードする遺伝子は高い相関もしくは相互に排他的であり、バルクプロテオミクス/RNAシーケンスによる検証で、これらの治療標的候補としての妥当性が確認された。 なお、無症候性から症候性MMへの進行は腫瘍のみならず、その周囲の微小環境の変化が関与するため、治療においてはその影響を考慮すべきであることが認識されつつある。そこでSlade氏らのグループは、腫瘍免疫微小環境の構成をさらに詳しく理解するため、NDMM患者の治療前および治療後に採取した100万個以上のCD138陰性骨髄穿刺液検体をシングルセル解析により評価し、微小環境がMMの進行に関与することや、高リスクの細胞遺伝学的異常を有する患者では治療前から細胞傷害性T細胞や炎症性CD14陽性単球が豊富に存在するといった特有の免疫環境を認めることを明らかにした。 また近年、細胞の空間情報を維持しつつタンパク質・遺伝子の発現およびシグナル伝達を網羅的に評価する“空間マルチオミクス”技術が登場し、多数のプラットフォームが開発されている。たとえば、ドイツの研究グループは、難治性MM患者11例の皮膚や筋肉などの髄外病変を空間トランスクリプトミクスで解析し、細胞遺伝学的異常が空間的に不均一でないことを明らかにした。Slade氏は、「髄外病変は検体として扱いやすいが、骨髄自体の分析にはいくつかの課題がある。われわれはその克服に向け取り組んでいる」とし、「シングルセル解析と空間マルチオミクスの組み合わせがMMの生物学的理解をより深め、新しい発見をもたらすだろう。まだ発展途上だが、これらによる知見がMMの予防や治療法の開発につながるため、今後の期待は大きい」と結んだ。多発性骨髄腫の病態に関与する新たなエピゲノム制御機構の特定 細胞の増殖、分化、アポトーシスの転写制御因子であるMYCはMMをはじめ、多くのがん種で重要な役割を果たしている。そのため、MYCの転写共役因子の特定ならびに詳細なメカニズムの解明は、新規治療法の開発に不可欠と考えられる。 こうした中、転写活性化に関わるH3K4のヒストン脱メチル化酵素KDM5ファミリーは、MYC依存的な細胞増殖メカニズムの重要な制御因子であることが示されている。そして、KDM5ファミリーの中でもとくにKDM5Aは、H3K4メチル化サイクルを制御することでMYC標的遺伝子の転写活性化をサポートするため、MMをはじめとするがん種に対する有望な治療標的と示唆されている。 一方、がん細胞はその発生過程において、前駆細胞に組み込まれた増殖と生存のメカニズムに深く依存している。この“Lineage dependency”と呼ばれる概念はさまざまながん種において認識されているため、正常発達過程に関与する系統関連がん遺伝子を標的とすることは合理的と考えられる。 なかでもIL-6は、MMの発症や進行に重要な因子であることから、これに焦点を当てた系統関連がん遺伝子の特定が行われている。これらの研究に加え、現在、大口 裕人氏(熊本大学 生命資源研究・支援センター)らはIL-6/JAK/STAT3経路におけるMM細胞の増殖と生存を促進するB細胞系転写調節因子の同定を進めている。 「われわれの試みは、MMの病態には異なる2つのメカニズムが関与し、その両者にエピゲノム制御異常が深く関わっていることを支持するものである。このような新たなメカニズムの解明が、本疾患に対する新規治療法の開発につながる」と、大口氏は述べた。多発性骨髄腫の新規治療戦略の開発に向けた骨髄腫モデルマウスの解析 ヒストン脱メチル化酵素のUTX(KDM6A)はエピゲノム制御に関わる遺伝子であり、その変異や欠損を伴うMM患者の予後は不良なため、UTXはMMにおける腫瘍抑制因子とされる。また、RAS/RAF/MEK/ERKカスケードはNDMM患者において最も影響を受ける経路とされ、BRAF遺伝子の中でも活性型BrafV600E変異はとくに重要と考えられている。 こうした背景に基づき、三村 尚也氏(千葉大学医学部附属病院 輸血・細胞療法部)らはUtx欠損かつ活性型BrafV600E変異を有する新たなコンパウンドマウスを作製し、MMの病態解明を試みている。 まず、エピジェネティックな側面の検討から、Utx欠損と活性型BrafV600E変異は疾患の進行を相乗的に加速させ、生存期間の短縮を招くとともに、形質細胞新生物やB細胞リンパ腫、リンパ増殖性疾患といった成熟B細胞腫瘍を誘発した。なお、UTXの腫瘍抑制機能は脱メチル化酵素活性でなく、cIDR(天然変性領域のコアドメイン)が主にその機能を担っていた。さらに、Mycや細胞周期、リボソーム関連遺伝子が腫瘍細胞に多く含まれていることや、クロマチン構造の変化は発症前から始まり、長い時間をかけて徐々に転写が変化してMM発症に至ることが示唆された。 一方、PD-1やTim-3などの共抑制性受容体は疲弊したT細胞に発現し、MM患者ではCD8陽性・PD-1陽性・Tim-3陽性の疲弊T細胞が増加している。 そこで三村氏らは、抗腫瘍免疫応答に関する検討を行い、PD-1陽性・Tim-3陽性の疲弊T細胞は細胞傷害活性が強いものの、アポトーシスを誘導するために寿命が短く、PD-1陽性・Tim-3陰性の疲弊T細胞は抗腫瘍反応の維持に重要な役割を果たしていることを明らかにした。さらに、T細胞を疲弊させる転写因子のToxおよびNr4a2発現がリンパ節や脾臓で上昇していることを確認し、「T細胞の過剰な疲弊を防ぐことが、抗腫瘍免疫の活性・維持につながる」とした。 そして、「本モデルマウスはエピゲノム制御異常と免疫応答の役割を理解する有用なツールである。現在、MMの新規治療戦略について、小胞体ストレス応答、シグナル伝達、エピゲノム修飾、免疫応答に着目した研究を進めており、これらの展開を通してMMの根治を目指す」と結んだ。

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リネゾリド処方の際の5つの副作用【1分間で学べる感染症】第14回

画像を拡大するTake home messageリネゾリドを使用する際には、血小板減少症を中心として重要な5つのポイントを覚えておこう。抗MRSA薬の1つにリネゾリドがあります。頻度は少ないものの、重要な場面で使うことがある薬剤です。今回は、リネゾリドに関する5つの重要事項を学んでいきましょう。1)消化器系症状リネゾリドの副作用には、使用早期から現れる可能性があるものとして腹痛、嘔気、嘔吐などの消化器症状が挙げられます。最も頻度が高い副作用の1つですが、症例によっては対症療法のみで自然に改善する場合もあります。2)骨髄抑制次に押さえておくべき副作用は骨髄抑制です。とくに血小板減少症に対する注意が必要です。骨髄抑制の副作用は約2週間以上の使用で発現するとされ、短期間の使用は問題ないことが多いのですが、使用期間が2週間を超える疾患には使用しにくくなります。一般的には、使用中止後1~3週間で回復するとされています。3)セロトニン症候群リネゾリドを開始する際には、相互作用のチェックも重要です。リスクの程度差はあるものの、SSRI、SNRI、MAO阻害薬との併用はセロトニン症候群を引き起こす可能性があります。最近の報告によると、セロトニン症候群を引き起こす可能性のある薬剤のうち、SSRIの中でもエスシタロプラムやオピオイドのメサドンなどはとくに関与が強いと報告されています。発症は服用から数時間~数日以内に現れることが多く、中止すれば24時間以内に改善するといわれています。しかし、まれに横紋筋融解症や腎不全などを来すこともあるため、注意が必要です。開始する際には、薬剤師と連携を取りながら、慎重に併用薬を確認する必要があります。4)乳酸アシドーシスまれながら、乳酸アシドーシスの副作用も報告されています。これは2003年に初めて報告されましたが、発症までの期間は1~16週間と幅があります。致死率は25%にも上るとされており注意が必要です。リネゾリド使用中に乳酸アシドーシスを来した場合には、ほかの原因検索と共にリネゾリドの副作用を考慮することが重要です。5)末梢神経障害・視神経障害末梢神経障害・視神経障害は、ノカルジアや非結核性抗酸菌症、多剤耐性結核などに対する特殊な状況で、長期の投与が必要な際の副作用として報告されています。末梢神経障害は「手袋と靴下型」(手袋や靴下が覆うように手足の先端部分から徐々に症状が進行していく)で発症まで5~11ヵ月、視神経障害は視力低下や色覚異常を来すことが多いとされています。リネゾリドは長期で使用することは少ないため頻度は高くありませんが、頭の片隅に入れておきましょう。以上、有名な血小板減少症以外にも、リネゾリドのこれらの重要な副作用・相互作用に関して念頭に置き、使用する際には患者さんに、その有益性とリスクに関して十分に説明するようにしましょう。1)Apodaca AA, et al. N Engl J Med. 2003;348:86-87.2)Legout L, et al. Clin Infect Dis. 2004;38:767-768.3)Crass RL, et al. Antimicrob Agents Chemother. 2019;63:e00605-e00619.4)Gatti M, et al. Eur J Clin Pharmacol. 2021;77:233-239.5)Mao Y, et al. Medicine (Baltimore). 2018;97;e12114.6)Narita M, et al. Pharmacotherapy. 2007;27:1189-1197.

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レトロウイルス感染症-基礎研究・治療ストラテジーの最前線-/日本血液学会

 2024年10月11~13日に第86回日本血液学会学術集会が京都市で開催され、12日のPresidential Symposiumでは、Retrovirus infection and hematological diseasesに関し5つの講演が行われた。本プログラムでは、成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)の発がんメカニズムや、ATLの大規模全ゲノム解析の結果など、ATLの新たな治療ストラテジーにつながる研究や、ATLの病態解明に関して世界に先行し治療開発にも大きく貢献してきた日本における、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)関連疾患の撲滅といった今後の課題、AIDS関連リンパ腫に対する細胞治療や抗体療法の検討、HIVリザーバー細胞を標的としたHIV根治療法など、最新の話題が安永 純一朗氏(熊本大学大学院生命科学研究部 血液・膠原病・感染症内科学)、片岡 圭亮氏(慶應義塾大学医学部 血液内科)、石塚 賢治氏(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 人間環境学講座 血液・膠原病内科学分野)、岡田 誠治氏(熊本大学ヒトレトロウイルス学共同研究センター 造血・腫瘍制御学分野)、白川 康太郎氏(京都大学医学部附属病院 血液内科)より報告された。ATLの発がんメカニズムに関与するHTLV-1 bZIP factor(HBZ)およびTax HTLV-1はATLの原因レトロウイルスであり、細胞間感染で感染を起こす。主にCD4陽性Tリンパ球に感染し、感染細胞クローンを増殖させる。HTLV-1がコードするがん遺伝子にはTaxおよびHBZ遺伝子が含まれ、Taxはプラス鎖にコードされ一過性に発現する。一方、HBZはマイナス鎖にコードされ恒常的に発現する。これらの遺伝子の作用により、感染細胞ががん化すると考えられる。HBZはATL細胞を増殖させ、HBZトランスジェニックマウスではT細胞リンパ腫や炎症が惹起される。また、HBZタンパクをコードするだけでなく、RNAとしての機能など多彩な機能を有している。HBZトランスジェニックマウスではHBZが制御性Tリンパ球(Treg)に関連するFoxp3、CCR4、TIGITなどの分子の発現を誘導、TGF-β/Smad経路を活性化してFoxp3発現を誘導し、この経路の活性化を介し、HTLV-1感染細胞をTreg様に変換し、HTLV-1感染細胞、ATL細胞の免疫形質を決定していると考えられる。 ATL症例の検討では、TGF-β活性化により、HBZタンパク質は転写因子Smad3などを介しATL細胞核内に局在し、がん細胞の増殖が促進される。HBZ核内局在はATL発症において重要であり、TGF-β/Smad経路はATL治療ストラテジーの標的になりうると考えられる。Taxはウイルスの複製やさまざまな経路の活性化因子であり、宿主免疫の主な標的であり、ATL細胞ではほぼ検出されない。ATL細胞株のMT-1はHTLV-1抗原を発現するが、MT-1細胞ではTaxの発現は一過性である。また細胞発現解析では、Tax発現が抗アポトーシス遺伝子の発現増加と関連し、細胞増殖の維持に重要であることが示された。ATL症例では約半数にTaxの転写産物が検出され、Taxの発がんへの関与が考えられる。発がんメカニズムに関与するHBZおよびTax遺伝子の多彩な機能の解析がATLの治療ストラテジーの開発につながると考えられる。ATLの全ゲノム解析―遺伝子異常に基づく病態がより明らかに ATLは、HTLV-1感染症に関連する急速進行性末梢性T細胞リンパ腫(PTCL:peripheral T-cell lymphoma)であり、ATL発症時に重要な役割を果たす遺伝子異常について、全エクソン解析や低深度全ゲノム解析など網羅的解析が行われてきた。しかし、構造異常やタンパク非コード領域における異常など、ATLのゲノム全体における遺伝子異常の解明は十分ではなかった。 今回実施された、ATL150例を対象とした大規模全ゲノム解析は、腫瘍検体における異常の検出力がこれまでの解析より高い高深度全ゲノム解析(WGS)である。タンパクコード領域および非コード領域における変異、構造異常(SV)、コピー数異常(CNA)を解析した結果、56個のドライバー遺伝子が同定され、56個中CICなど11個の新規ドライバー遺伝子があり、このうちCIC遺伝子はATL患者の33%が機能喪失型の異常を認め、CIC遺伝子の長いアイソフォームに特異的な異常(CIC-L異常)であり、ATLにおいて腫瘍抑制遺伝子として機能していた。さらに、CIC遺伝子とATN1遺伝子異常の間には相互排他性が見られ、CIC-ATXN1複合体はATL発症に重要な役割を果たすと考えられた。また、CIC-LノックアウトマウスではFoxp3陽性T細胞数が増加しており、CIC-LがT細胞の分化・増殖を制御するうえで選択的に作用すると考えられた。 また、ATL新規ドライバー遺伝子RELは、遺伝子後半が欠損する異常をATL患者の13%に認め、遺伝子の構造異常はATL同様、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)でも高頻度に認められた。REL遺伝子の構造異常はREL発現上昇やNF-κB経路の活性化と関連し、腫瘍化を促進すると考えられた。 ATLにおけるタンパク非コード領域、とくにスプライス部位の変異の集積が免疫関連遺伝子を中心に繰り返し認められ、ATLのドライバーと考えられた。今回の解析で得られたドライバー遺伝子異常の情報をクラスタリングし、2つのグループに分子分類した結果、両群の臨床病型や予後が異なることが示された。全ゲノム解析研究はATLの新たな診断および治療薬の開発につながると考えられる。ATL治療の今後 ATLは、aggressive ATL(急性型、リンパ腫型、予後不良因子を有する慢性型)とindolent ATL(くすぶり型、予後不良因子を有さない慢性型)に分類され、それぞれ異なる治療戦略が取られる。aggressive ATLの標準治療(SOC)は多剤併用化学療法であり、VCAP-AMP-VECP(ビンクリスチン+シクロホスファミド+ドキソルビシン+プレドニゾロン―ドキソルビシン+ラニムスチン+プレドニゾロン―ビンデシン+エトポシド+カルボプラチン+プレドニゾロン)の導入により、最終的に生存期間中央値(MST)を1年以上に延長することが可能となった。同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)はHTLV-1キャリアの高齢化に伴い、全身状態が良好な70歳未満の患者におけるSOCとして施行される。2012年以降、日本ではモガムリズマブ、レナリドミド、ブレンツキシマブ ベドチン、ツシジノスタット、バレメトスタットの5剤が新規導入され、初発例に対するモガムリズマブおよびブレンツキシマブ ベドチン+抗悪性腫瘍薬の併用や、再発・難治例に対する単剤療法として使用されている。indolent ATLに対しては日本では無治療経過観察であるが、海外では有症候の場合IFN-αとジドブジン(IFN/AZT)の併用が選択される。しかし、いずれもエビデンス不足であり、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)は両群の治療効果を確認する第III相試験を進行中であり、結果は2026年に公表予定である。 日本の若年HTLV-1感染者は明らかに減少し、新規に診断されたATL患者は高齢化し、70歳以上と予測される。この動向は2011年から開始された母乳回避を推奨し、母子感染を抑止する全国的なプログラムによりさらに推進されると考えられる。今後は高齢ATL患者に対するより低毒性の治療法の確立と、全国プログラムの推進によるHTLV-1感染、およびATLなどHTLV-1関連疾患の撲滅が課題である。AIDS関連悪性リンパ腫の現状 リンパ腫はAIDSの初期症状であり、AIDS関連悪性リンパ腫はHIV感染により進展し、AIDS指標疾患として中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)および非ホジキンリンパ腫が含まれる。悪性腫瘍は多剤併用療法(cART)導入後もHIV感染者の生命を脅かす合併症であり、リンパ腫はHIV感染者の死因の最たるものである。HIV自体には腫瘍形成性はなく、悪性腫瘍の多くは腫瘍ウイルスの共感染によるものである。 エプスタイン・バーウイルス(EBV)およびカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)はAIDS関連リンパ腫の最も重要なリスクファクターであり、HIV感染による免疫不全、慢性炎症、加速老化、遺伝的安定性はリンパ腫形成を亢進すると考えられている。AIDS関連リンパ腫ではEBV潜伏感染が一般的に見られ、EBV感染はDLBCL発症と深く関連するが、予後不良な形質芽球性リンパ腫(PBL)、原発性滲出性リンパ腫(PEL)との関連は不明である。バーキットリンパ腫(BL)、およびPBLは最近増加している。BLおよびホジキンリンパ腫(HD)の治療成績と予後はおおむね良好である。 AIDS関連悪性リンパ腫の治療はこれまで抗腫瘍薬と、プロテアーゼインヒビター(PI)のCYP3A4代謝活性阻害による薬物相互作用の問題があった。近年、インテグラーゼ阻害薬(INSTI)の導入によりCYP3A4阻害が抑えられ、AIDS関連悪性リンパ腫患者の予後は非AIDS患者と同等になっている。 高度免疫不全マウスにヒトPEL細胞を移植したPELマウスモデルでは、PELにアポトーシスが誘導された。AIDS関連リンパ腫に対する細胞療法や抗体療法の効果が期待される。リザーバー細胞を標的としたHIV根治療法 抗レトロウイルス療法(ART)により、HIVは検出不可能なレベルにまで減少できるが、ART中止数週間後に、HIVは潜伏感染細胞(リザーバー)から複製を開始する。HIV根治達成には、HIVリザーバーの体内からの排除が必要である。 HIV根治例は2009年以来、現在まで世界で7例のみである。全例が白血病など悪性腫瘍を発症し、同種造血幹細胞移植(SCT)を受け、数年はARTなしにウイルス血症のない状態を維持した。最初のHIV根治例はCCR5Δ32アレルに関してホモ接合型(homozygous)であるドナーからSCTを受けた症例であり、5例がこのSCTを受けた。 キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法はHIV感染症領域への応用が期待されている。そこで、アルパカを免疫して作製したVHH抗体をもとに、より高効率にHIVに対する中和活性を示す抗HIV-1 Env VHH抗体を開発した。新たなHIV感染症の治療として、CAR-T療法への応用などを試みている。 HIVリザーバー細胞を標的として排除するアプローチとして、latency reversal agents(LRA)によるshock and killが提唱され、HIV根治のためのLRA活性を有するさまざまな薬剤の研究、開発が進められている。HIV潜伏感染細胞モデル(JGL)を用いたCRISPRスクリーニングにより、4つの新規潜伏感染関連遺伝子、PHB2、HSPA9、PAICS、TIMM23が同定され、これら遺伝子のノックアウトによりHIV転写の活性化が誘導され、潜伏感染細胞中にウイルスタンパクの発現が認められた。また、PHB2、HSPA9、TIMM23のノックアウトにより、ミトコンドリアのオートファジー(マイトファジー)が誘導された。Mitophagy activatorのウロリチンA(UA)およびその他のマイトファジー関連化学物質は、潜伏細胞実験モデルにおいてHIV転写を再活性することが示され、in vivoにおけるHIV再活性化の誘導についての臨床試験が検討されている。 ウイルス酵素をターゲットとする最近のART療法ではHIV根治は望めず、ウイルス産生が可能なリザーバー細胞を標的としたHIV根治療法が求められている。 本プログラムでは、ATLやAIDS関連リンパ腫などの病態解明や治療法について最新の話題が報告され、今後の治療ストラテジーの開発につながることが期待される。

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骨髄線維症に10年ぶりの新薬、貧血改善が特徴/GSK

 グラクソ・スミスクライン(GSK)は6月に日本における約10年ぶりとなる骨髄線維症の新薬モメロチニブ(商品名:オムジャラ)の承認を取得した。発売開始に合わせ、10月18日に行われたメディアセミナーでは、近畿大学 血液・膠原病内科 教授の松村 到氏が骨髄線維症の疾患特性や新薬の概要について講演を行った。 骨髄線維症は血液疾患で、骨髄増殖性腫瘍(MPN)のなかの古典的骨髄増殖性疾患に分類される。骨髄組織が線維化することが特徴で、これによって血球産生が障害され、貧血や髄外造血による脾腫、倦怠感などの全身症状を伴い、一部は急性骨髄性白血病(AML)に移行する。患者数は国内で年間約380人と希少疾患の部類に入り、高齢者に多く、生存期間中央値は3.9年(国内調査)と、MPNの中でも最も予後の悪い疾患だ。MPNに共通にみられるJAK2、CALR、MPL遺伝子変異が本疾患の発症と疾患進行にも関与する。 骨髄線維症の薬物療法におけるこれまでのキードラッグは、2014年に承認されたJAK阻害薬ルキソリチニブだ。JAK2経路を阻害することで脾腫を縮小し、全身症状を軽減する効果が見込める。一方で副作用として血小板減少症と貧血が問題となる。今回発売となったモメロチニブはJAK1・JAK2の阻害に加え、アクチビンA受容体1型(ACVR1)の阻害作用も持つ。これにより、鉄代謝を調整するホルモンであるヘプシジンの産生を抑制するため貧血の改善が期待できる。こうした特性により、ルキソリチニブの使用が難しい貧血を有する患者にも使用できる。 今回の承認は、第III相SIMPLIFY-1試験とMOMENTUM試験の結果に基づくもの。SIMPLIFY-1はJAK阻害薬治療歴のない患者を対象に、モメロチニブのルキソリチニブに対する非劣性を検証した試験。主要評価項目は24週時点での脾臓縮小(35%以上)した患者の割合で、モメロチニブ26.5%、ルキソリチニブ29.0%とほぼ同等の結果を示した。全体的な症状改善はルキソリチニブのほうが勝る一方、輸血非依存の割合はモメロチニブ群でより高かった。 MOMENTUMはJAK阻害薬治療歴のある患者を対象に、ダナゾール(貧血治療に用いられるステロイド薬)とモメロチニブを比較した試験。主要評価項目である全身症状の改善でモメロチニブは有意に優れた結果を示した(24週後、モメロチニブ群25% vs.ダナゾール群9%)。 両試験の結果を踏まえ、モメロチニブは未治療・既治療両方の骨髄線維症患者に対する適応を取得した。松村氏は「薬剤の使い分けは今後の議論となるが、貧血や血小板減少傾向のある患者に対してはモメロチニブを優先して使うことになるだろう。10年振りの新薬に期待している」とまとめた。

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重症の新型コロナ感染者の心臓リスクは心疾患既往者のリスクと同程度

 重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、心筋梗塞や脳卒中、全死亡などの主要心血管イベント(MACE)リスクを高め、その程度はCOVID-19に罹患していないが心疾患の既往歴がある人のリスクとほぼ同程度であることが、米クリーブランドクリニック・ラーナー研究所心血管代謝学部長のStanley Hazen氏らによる新たな研究から明らかになった。この研究ではまた、重症度にかかわらず、COVID-19罹患は、その後3年間のMACEリスクを2倍に高めることも示されたという。この研究結果は、「Arteriosclerosis, Thrombosis and Vascular Biology」に10月9日掲載された。 Hazen氏は、「この研究結果から、COVID-19は上気道感染症である一方で、さまざまな健康リスクを伴う疾患であり、心血管疾患の予防に関する計画や目標を策定する際には、COVID-19の既往歴を考慮すべきことを強く示したものだ」と述べている。 COVID-19パンデミックの初期には、新型コロナウイルスへの感染が血栓や心臓の問題のリスクを高めることが示されていた。しかし、このような高リスク状態がいつまで続くのか、どのような要因が影響するのかについては十分に解明されていないとHazen氏らは言う。 そこでHazen氏らは、2020年の2月1日から12月31日までの間に英国でCOVID-19の診断を受けた患者1万5人のデータを分析し、心血管の健康状態をCOVID-19に罹患していない21万7,730人と比較した。 その結果、COVID-19への罹患者では、重症度とは無関係に、1,003日の追跡期間にわたってMACEリスクが2倍以上に上昇することが明らかになった(ハザード比2.09、95%信頼区間1.94〜2.25、P<0.0005)。このようなリスク上昇は、COVID-19罹患により入院を要した人で顕著だった(同3.85、3.51〜4.24、P<0.0005)。また、心血管疾患の既往歴がないCOVID-19罹患者でのMACEリスクは、心血管疾患の既往はあるがCOVID-19罹患歴がない人よりも20%以上高かったことから(同1.21、1.08〜1.37、P<0.005)、COVID-19による入院が冠動脈疾患(CAD)と同等のリスク(CAD risk equivalent)をもたらすことが確認された。 さらにHazen氏らは、そのリスクの程度が血液型によって異なることも突き止めた。血液型がA型、B型、AB型の人では、O型の人と比べてCOVID-19による入院を経験した後の血栓イベント(心筋梗塞と脳卒中)のリスクが有意に高いことが示されたのだ。このことは、新型コロナウイルスへの感染後の心疾患リスクには、その人の遺伝的特徴が影響している可能性を示唆していると、Hazen氏らは指摘している。 論文の上席著者で、米南カリフォルニア大学ケック医学校ポピュレーションヘルス・公衆衛生科学および生化学・分子医学教授のHooman Allayee氏は、「われわれは、この結果を説明できる要因が他にあるかどうかを確認しようとしているところだが、実際に、特定の血液型では、生物学的な何らかのメカニズムが作用しているようだ」と話している。また同氏は、「われわれの観察の結果と、世界の人口の60%はO型以外の血液型である事実を踏まえると、われわれの研究は、個々の患者の遺伝的特徴を考慮した、より積極的な心血管リスク低減策を検討すべきかどうかという重要な問題を提起するものだ」と同大学のニュースリリースの中で付け加えている。 Allayee氏は、医師は新型コロナウイルスへの感染を全般的な心臓のリスクの一部としてとらえる必要があると主張する。同氏は、「現時点で疑問として残るのは、本研究結果と今後の研究結果により、心疾患の既往がない人に対する心臓の予防医療に関するガイドラインが、COVID-19の心臓への影響を考慮したものに変更されるのかということだ」と話している。

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第二の、はたまた初めての血友病B遺伝子治療fidanacogene elaparvovec(解説:長尾梓氏)

 このたび、NEJM誌にファイザーの血友病B遺伝子治療であるfidanacogene elaparvovecの第III相試験のデータが公表された。投与から最長15ヵ月まで安定した第IX因子活性の発現がみられた。同量を投与した第I/II相試験では、6年程度まで安定した第IX因子発現のデータが報告されている(学会発表のみ)。 fidanacogene elaparvovecは2023年12月にカナダ、2024年4月にFDA、同年7月にはEMAですでに承認を得ている。商品名はBeqvezだそう。元はSpark Therapeuticsによって開発が始まり、2014年にファイザーが権利を取得し開発を引き継いでいる。 血友病B遺伝子治療には、2022年11月にFDAで承認を得たのを皮切りにカナダ、EUでも承認されているetranacogene dezaparvovec(商品名:Hemgenix、製造販売:CSL Behring)があり、fidanacogene elaparvovecは世界的には第二の血友病B遺伝子治療といえる。日本では治験開始時期が異なるため、最初の遺伝子治療になる可能性が高い(「はたまた初めての」)。ちなみに、2つの遺伝子治療の値段は米国では同じだそうだ。 2つの遺伝子治療のFDAの適応症(indication)を調べてみた。fidanacogene elaparvovec:中等度~重度の血友病Bの成人において・現在、第IX因子の予防療法を使用している、または・現在、または過去に生命を脅かす出血を経験している、または・繰り返し、深刻な自然出血エピソードを経験している、かつアデノ随伴ウイルスAAVRh74varカプシドに対する中和抗体をFDA承認の検査で持っていない場合etranacogene dezaparvovec:血友病Bの成人において・現在、第IX因子の予防療法を使用している、または・現在、または過去に生命を脅かす出血を経験している、または・繰り返し深刻な自然出血エピソードを経験している場合 あくまでもFDAのindicationではあるが、AAV抗体の有無で適応が異なってくることに注意が必要である。日本人のAAV抗体陽性率は20~30%程度とされており、年齢が上がるにつれて陽性率も上がる(Kashiwakura Y, et al. Mol Ther Methods Clin Dev. 2022;27:404-414.)。これらを踏まえて、適応を検討することになるだろう。 血友病の遺伝子治療といえば、気になることとして「どれくらい持続するのか」「グルココルチコイドの使用(安全性も含む)」が挙がる。[どれくらい持続するのか] 投与後の第IX因子活性は期間などが違うので比較はできないが、参考までに提示しておくと以下のとおりとなる。「結構いい感じ」と言っても差し支えないだろう。fidanacogene elaparvovec:承認用量5×1011vg/kg投与15ヵ月時の平均FIX活性:26.9%(中央値:22.9%、範囲:1.9~119.0)etranacogene dezaparvovec:承認用量2×1013gc/kg投与3年後のFIX活性(平均±SD[中央値:範囲、症例数]):38.6 IU/dL±17.8(36.0:4.8~80.3、48)[グルココルチコイドの使用]fidanacogene elaparvovec:使用人数:45例中28例投与開始までの期間:中央値37.5日(範囲:11~123)投与期間:中央値95.0日(範囲:41~276)etranacogene dezaparvovec:使用人数:54例中9例投与開始までの期間:中央値6.1週(範囲:3.14~8.71週)投与期間:中央値74.0日(範囲:51〜130日) グルココルチコイドの使用については、実臨床において投与を受けた方の肝機能に最も注意すべき期間を示しているため、関係者は絶対に押さえておく必要がある。これを知らずに肝機能の悪化を見逃してしまうと、せっかく投与した遺伝子治療が水の泡となるかもしれず、患者負担、医療費など、さまざまな面でもったいないことになってしまう。 血友病の遺伝子治療は近々日本でも発売される見込みであるが、投与の体制がしっかり整っているとは言い難い状況である。学会を含め、全医療者で取り組む課題である。

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女性医師の未来を開くリーダー育成とキャリア展望/日本血液学会

 第86回日本血液学会学術集会では、10月12日(土)に『リーダーシップと女性のキャリア形成促進』と題して、女性医師キャリアシンポジウムが開催された。このシンポジウムは、三谷 絹子氏(獨協医科大学 内科学[血液・腫瘍])が女性初の会長を務めた2016年の第78回日本血液学会学術集会より続けられている。そうした背景もあり、現在、本学会における女性会員の比率は25%を超え、女性評議員が14%を占めるまでになっている。しかし一方で、「日本の女性は本来あるべき地位をいまだ得ていない」「管理職における男女格差は依然大きい」といった指摘もある。熱田 由子氏(日本造血細胞移植データセンター)は、「女性医師がいかにリーダーシップを発揮し、自身のキャリアを築き上げていくのかを、お招きした先生方にご教授賜りたい」と、本シンポジウムの開会を宣言した。女性活躍のこれからを考える―九州大学における取り組み 女性の活躍は、多様性(Diversity)、公平性(Equity)、包括性(Inclusion)の推進における重要な要素である。これは、第一次世界大戦時の労働力として注目されたことに始まり、第二次世界大戦やベトナム戦争での同様の動きが女性の参政権獲得や社会進出へとつながった。そして現在、SDGs(持続可能な開発目標)にジェンダー平等が重要なテーマとして盛り込まれ、さまざまな施策が進められている。 このような歴史的変遷をたどる中、赤司 浩一氏(九州大学医学部 第一内科)がかつて在籍していたハーバード大学・ダナ・ファーバーがん研究所では、女性のエンパワーメントに関する問題が報告された。これにより女性限定の研究助成プログラムが開始され、2016年には初の女性プレジデントLaurie H. Glimcher氏の取り組みによって、今では女性研究者が40%以上を占めるまでになっている。ただ、「各大学のSTEM(科学・技術・工学・数学)分野の女性教員比率は、日本はもとより米国においても依然として低水準」と、赤司氏は指摘する。 こうした問題解決の糸口を探るべく、九州大学では2007年より『女性活躍促進プロジェクト』が開始される。2009〜18年の「女性優遇ではなく、均等な機会を与える」との考え方に基づく独自事業によって女性教員は順調に増加するも、昇格による他大学への転出が早く、2016年以降の伸びは停滞に転じる。赤司氏は「女性研究者の上位職への早期登用の必要性を痛感した」という。 そこで2019年、ダイバーシティ・スーパーグローバル教員育成研修(SENTAN-Q)を開始。将来のリーダー候補となる多様で秀逸な女性および若手人材を対象に、2~3年以内の上位職登用ならびに学内ネットワーク形成やアンコンシャス・バイアスのない環境醸成といった組織改革を目指した研修やメンターシップ、海外研修などにより、着実な成果を生んでいるとのことである。 なお、女性比率の上昇は意思決定への影響やリーダーシップの可能性につながり、絶対数の増加は女性同士のサポートネットワーク形成やリーダーの持続的確保につながるという。そのため赤司氏は、「組織における女性の活躍は、短期的には比率を上げ、長期的には絶対数を増やすといった相乗効果で達成」され、「縦割り組織に起因する女性の孤立は当面の問題」としつつも、「組織改革による女性リーダーの育成は大学のみならず、病院単位でも必要」と強調した。順天堂大学 血液内科における女性リーダー育成に向けた取り組み リーダーシップには生まれつきの素質もあるが、学習と実践によって身に付けられるものでもある。また、リーダーシップの本質は、意思決定者として自分の信念を見極め、それに従って勇気を出して行動し、人のために価値を作り出そうと努力する“心構え”とされる。 ところが、わが国の国立大学医学部における女性教員の上位職比率は低く、職位が上がるにつれて低下傾向が認められる1)。安藤 美樹氏(順天堂大学 血液内科)は、「2023年度でも女性教授の比率は6.9%にすぎず、いまだ改善の余地がある」と指摘する。 また、女性研究者が少ない理由として、研究と家庭生活の両立の困難さ、男性中心の組織文化、アンコンシャス・バイアスという3つの要因が挙げられている。つまり、研究キャリアの重要な時期の出産・子育てといったライフイベント、家庭よりも仕事優先といった根強い考え方、それに自身の能力を過小評価する傾向が、女性研究者の活躍や上位職へのキャリアアップを阻んでいる。 安藤氏はこれらを踏まえ、「当科では当直の免除や柔軟な研修プログラムを採り入れることで、ワークライフバランスの確保と女性医師のキャリア支援に努めている。また、男性医師の意識改革と共に、女性医師には長期的なキャリア志向を促すことで、活躍の場を広げようとしている」と述べた。 「子育てしながらキャリアアップを図ることは難しい時期もあるが、ジレンマに苦しんでいる女性や将来に不安を感じている女性には私の米国での体験を伝え、どのような形でも常に復帰を意識し、積極的に上位職を目指してほしい。そして、ロールモデルとなる先輩医師の存在も、困難を乗り越えて活躍し続けるために重要」とした。 キャリアの継続には家族の理解と支援が欠かせない。また、システム整備や意識改革と共に、女性リーダーとしての明るさや強さ、公平な視野、優しさが大切で、時には組織を守るための厳しさも必要だ。安藤氏は、「聡明で患者や同僚に優しい医師を育てることが当科の目標」と結んだ。女性医師のキャリア形成とリーダーシップの在り方 キャリアとは生涯を通しての人間の生き方・表現である。厚生労働省の定義では「職業経験を通して職業能力を蓄積していく過程の概念」であり、キャリア形成とは「関連した職務経験の連鎖を通して職業能力を形成していく」こと、そしてそのプロセスは「職業を通して自己実現を図っていく」こととされる2)。また、人間は“自分が人生の中でやるべき仕事は何か”という目的意識に強く動機付けられ、そのために努力をし、結果として心理的・客観的成功を得ることができるという3)。 医師のキャリア形成について酒井 リカ氏(神奈川県立がんセンター 血液・腫瘍内科)は、「専門職の取得がまず思い浮かぶだろう。これは医師が高い専門性を持つ職能集団であり、プロフェッショナリズムの成熟をイメージすることが多いためである。しかし、“女性”という枕詞が付くと、仕事と家庭の両立、職業継続支援や復職支援といったテーマが重視される」とする。 そして、「女性医師がキャリア形成の中で、出産・子育てによりキャリアの中断を余儀なくされる背景には、アンコンシャス・バイアスやジェンダー・ステレオタイプといった考えが社会の中で刷り込まれていることが影響している。これらを常に意識し、自身の考えがゆがめられていないかどうかに注意を払う必要がある」とした。 なお、チーム全員がビジョンを持ち、全員がリーダーシップを執りながら互いに啓発し合い、知識・意見を交換するスタイルが、組織に最良の結果をもたらすとされる。酒井氏は、「自分のビジョンをしっかり持つことが、キャリア形成においても、リーダーシップにおいても重要」という。 1年半前に現職に就き、臨床の現場から管理職へと転身した酒井氏。「この35年間、多くの仕事仲間や家族に支えられながら臨床の道を歩んできた中で思うのは、わが国の医療の継続にはジェンダーを超えたプロフェッションとライフを考えながらのキャリア形成が必要であるということだ」と結論した。女性リーダーを増やすための本学会への提言 中高一貫校で男女分け隔てのない教育を受けた橋井 佳子氏(大阪国際がんセンター 小児科)は、医学部に入るとジェンダーの違いによる差別や偏見に悩まされ、自信を失いかけたという。 女性がリーダーを目指すものの、徐々にその意欲が低下する理由として、社会的要因の影響は大きい。つまり、リーダーに期待されるのは、タフさ、自立性、責任感、行動力であり、これは男性に求められる特性に近い。こうしたジェンダー・ステレオタイプにさらされ続けたことで、「不安や懸念が喚起されて従属的な立場に固定された結果、自信の低さや自己効力感の低下につながった」と、橋井氏は考える。 そのため、「女性がリーダーになるには覚悟と自己効力感の確立が必要」で、「リーダーシップに対する自信の低さは、リーダーシップ能力の欠如を意味するものではない」と付け加えた。そもそも女性と男性で能力に差はなく、リーダーとしての能力にも差はないのである。 橋井氏は、「小児がんに対する免疫療法というニッチな場所を見つけて自信を取り戻し、リーダーとしての地位を得ることができた。若い女性医師には思い切って“ファーストペンギン”になってほしい」という。 そして、本学会に期待したいこととして、ジェンダー・バイアスやステレオタイプに関するスキルトレーニング・セミナーの開催、リーダーシップ育成セミナーの開催、クォータ制を含めた女性活躍推進の検討を提言した。女性医師の活躍をこれからも後押しするために 最後に三谷氏は、「熱田先生が企画されたこのシンポジウムは、女性のリーダーシップを考えるものであり、これまでにない異色の試みであった。学会の各種委員会にさらに多くの女性を登用させることで多様な意見を反映させ、より成熟した社会を目指す改革が進むことに期待したい」と締めくくった。

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