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抗CD20/CD3二重特異性抗体モスネツズマブ、再発/難治濾胞性リンパ腫に承認/中外

 中外製薬は、抗CD20/CD3二重特異性抗体モスネツズマブ(商品名:ルンスミオ)について、過去に少なくとも2つの標準治療を受けたことのある再発又は難治性の濾胞性リンパ腫を適応として、2024年12月27日、厚生労働省より製造販売承認を取得したことを発表した。 モスネツズマブはCD20/CD3に対するT細胞誘導性二重特性抗体で、高い奏効割合と持続的な寛解が期待できる。治療期間は患者の治療効果に応じ、約半年または1年間と設定されている。 今回の承認は、過去に少なくとも2つの標準治療を受けたことのある再発/難治濾胞性リンパ腫患者を対象に実施した国内第I相臨床試験の拡大コホート(FLMOON-1試験)および、同患者集団を対象とした海外第I/II相臨床試験の成績に基づいている。 FLMOON-1試験は19例の日本人患者に対して行われた。主要評価項目である独立評価機関評価による完全奏効(CR)割合は68.4%を示し、主な副作用はリンパ球数減少、サイトカイン放出症候群、ALT増加、好中球数減少およびAST増加、インフージョンリアクションであった。海外第I/II相臨床試験は90例の患者に対して行われ、主要評価項目である独立評価機関評価によるCR割合57.8%を示し、主な副作用はサイトカイン放出症候群、発熱、疲労、そう痒症、好中球減少および低リン血症であった。

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「小児・AYA世代がん患者等の妊孕性温存に関する診療GL」第2版が発刊

 日本癌治療学会編『小児・AYA世代がん患者等の妊孕性温存に関する診療ガイドライン2024年12月改訂 第2版』が12月20日に発刊された。本書は、「小児、思春期・若年がん患者の妊孕性温存に関する診療ガイドライン 2017年版」をMinds診療ガイドライン作成マニュアル2020に準拠して、7年ぶりに全面改訂された。 2024年版は、女性生殖器、乳腺、泌尿器、小児、造血器、骨軟部、消化器、脳の8つの領域に、新たに肺、耳鼻咽喉・頭頸部、膠原病が加わり11領域をカバーしている。また、従来の性腺毒性分類は、2003年のASCOの分類表以降の国際的な報告を元に最新のJSCO分類として生まれ変わっている。小児・AYA世代のがんの現状と課題解決に向けて 厚生労働省は、小児・AYA世代がん患者等の経済的な負担軽減を目指して、国と自治体による妊孕性温存療法に係る経済的支援を2021年4月に開始した。また、2023年3月に閣議決定された第4期がん対策推進基本計画の「がん医療(1)がん医療提供体制等」の中に「妊孕性温存療法について」が施策の1つとして加えられたことから、2024年版ガイドラインの役割が一層重要になりそうだ。

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高リスクくすぶり型多発性骨髄腫、ダラツムマブ単剤が有効/NEJM

 くすぶり型多発性骨髄腫は、活動性多発性骨髄腫の無症候性の前駆疾患であり、現在の標準治療は経過観察であるが、活動性多発性骨髄腫への進行リスクが高い患者では早期治療が有益な可能性があるとされる。ギリシャ・アテネ大学のMeletios A. DimopoulosらAQUILA Investigatorsは「AQUILA試験」において、高リスクくすぶり型多発性骨髄腫の治療では注意深い経過観察と比較して抗CD38モノクローナル抗体ダラツムマブ皮下注単剤療法が、活動性多発性骨髄腫への進行または死亡のリスクを有意に改善し、全生存率も良好で、予期せぬ安全性に関する懸念も認めないことを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年12月9日号で報告された。23ヵ国の無作為化第III相試験 AQUILA試験は、高リスクくすぶり型多発性骨髄腫の治療におけるダラツムマブの有用性の評価を目的とする非盲検無作為化第III相試験であり、2017年12月~2019年5月に日本を含む23ヵ国124施設で患者を登録した(Janssen Research and Developmentの助成を受けた)。 年齢18歳以上、過去5年以内に国際骨髄腫作業部会(IMWG)の基準でくすぶり型多発性骨髄腫との確定診断を受け、活動性多発性骨髄腫への進行リスクが高く、全身状態の指標であるEastern Cooperative Oncology Group performance-status(ECOG PS、0~5点、点数が高いほど機能障害が重度)のスコアが0または1点の患者を対象とした。 これらの患者を、ダラツムマブの皮下投与を36ヵ月間で39サイクル受けるか、あるいは病勢の進行が確定するまで投与を継続する群、または注意深い経過観察を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。注意深い経過観察群では、疾患特異的治療を受けず、36ヵ月間あるいは病勢が進行するまで観察を継続した。 主要評価項目は無増悪生存(活動性多発性骨髄腫への進行または全死因死亡)とし、IMWG基準に従って独立審査委員会が評価した。完全奏効以上、最良部分奏効以上の割合も良好 390例を登録し、ダラツムマブ群に194例(年齢中央値63.0歳[範囲:31~86]、男性49.0%)、注意深い経過観察群に196例(64.5歳[36~83]、47.4%)を割り付けた。くすぶり型多発性骨髄腫の初回診断から無作為化までの期間中央値は0.72年(範囲:0~5.0)であった。ダラツムマブの投与期間中央値は35.0ヵ月(0~36.1)、サイクル数中央値は38だった。 追跡期間中央値65.2ヵ月の時点で、活動性多発性骨髄腫への進行または全死因死亡に至ったのは、経過観察群が99例(50.5%)であったのに対し、ダラツムマブ群は67例(34.5%)と有意に少なかった(ハザード比[HR]:0.49、95%信頼区間[CI]:0.36~0.67、p<0.001)。5年無増悪生存率は、ダラツムマブ群63.1%、経過観察群40.8%であった。 病勢進行までの期間中央値は、それぞれ44.1ヵ月および17.8ヵ月(HR:0.51、95%CI:0.40~0.66)であり、完全奏効以上(厳格な完全奏効+完全奏効)は、17例(8.8%)および0例(0%)、最良部分奏効以上(厳格な完全奏効+完全奏効+最良部分奏効)は、58例(29.9%)および2例(1.0%)だった。 41例が死亡し、内訳はダラツムマブ群15例(7.7%)、経過観察群26例(13.3%)であった(HR:0.52、95%CI:0.27~0.98)。5年全生存率は、それぞれ93.0%および86.9%だった。重篤な有害事象は29.0%、投与中止は5.7% Grade3または4の有害事象は、ダラツムマブ群40.4%、経過観察群30.1%で発現し、最も頻度が高かったのは高血圧で、それぞれ5.7%および4.6%であった。重篤な有害事象は、29.0%および19.4%で発現し、最も高頻度だったのは肺炎で、3.6%および0.5%だった。ダラツムマブ群では、11例(5.7%)で投与中止に至った有害事象を認めた。 Grade3または4の感染症は、ダラツムマブ群16.1%、経過観察群4.6%で発現した。ダラツムマブ群では、32例(16.6%)で投与に関連した全身反応が報告され(Grade3または4は2例[1.0%])、53例(27.5%)で注射部位の局所反応(Grade3または4はなし)を認めた。ダラツムマブ群の18例(9.3%)および経過観察群の20例(10.2%)で2次原発がんが発生した。ダラツムマブによる新たな安全性に関する懸念は確認されなかった。 著者は、「これらの知見は、ダラツムマブは臓器障害の進行を遅らせるか、あるいは完全に防止し、活動性多発性骨髄腫への進行を抑制する可能性を示唆し、深い寛解を達成しない場合でも臨床的な有益性をもたらす可能性があると考えられる」「ダラツムマブをベースとした併用療法などの治療戦略がより適切かは現時点では不明だが、先行試験と本試験の結果を統合すると、本疾患の治療にダラツムマブ単剤療法を一定期間使用することが支持される」としている。

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高リスクのくすぶり型多発性骨髄腫患者、ダラツムマブ vs.積極的経過観察(AQUILA)/ASH2024

 高リスクのくすぶり型骨髄腫(smoldering multiple myeloma:SMM)に対するダラツムマブ(DARA)導入治療の有用性が示された。 SMMでは治療介入せずに積極的経過観察が推奨されてきたが、症候性の多発性骨髄腫(MM)への進行リスクも懸念されることから、高リスクSMMに対する治療介入の可能性が示唆されている。 CD38標的モノクローナル抗体であるDARAは、再発/難治MM(R/R MM)への有用性が示されている。DARAが積極的経過観察と比較してSMMからMMへの進行を遅らせることができるかを検討した。第III相AQUILA試験の中間解析結果が第66回米国血液学会(ASH2024)で発表された。・対象:診断されてから5年以内の高リスクSMM患者・試験群:ダラツムマブ(サイクル1および2は毎週、サイクル3~6は2週ごと、それ以降は4週ごと)4週1サイクルを39サイクル、36ヵ月または疾患進行まで(DARA群、194例)・対照群:積極的経過観察(196例)・評価項目【主要評価項目】独立審査委員会評価(IRC)評価の無増悪生存期間(PFS)※PFSはIMWGのSLiM-CRAB基準による【副次評価項目】全奏効率(ORR)、MMの1次治療までの期間、MM1次治療におけるPFS(PFS2)、全生存期間(OS)など 主な結果は以下のとおり。・追跡中央値65.2ヵ月のPFS中央値はDARA群未到達に対し、積積極的経過観察は41.5ヵ月で、DARAで有意に改善した(HR:0.49、95% CI:0.36〜0.67、p<0.0001)。推定60ヵ月PFS率はDARA群 63.1%、積極的経過観察40.8%であった。・ORRはDARA群63.4%、積極的経過観察2.0% であった(p<0.0001)。・OS中央値は両群とも未到達、60ヵ月OS割合はDARA群93.0%、積極的経過観察86.9%であった(HR:0.52、95%CI:0.27〜0.98)・死亡はDARA群15例(7.7%)、モニタリング群26例(13.3%)であった。・ランダム化からMM1次治療までの期間中央値は、DARA未到達に対し、積極的経過観察は50.2ヵ月であった(HR:0.46、95%CI:0.33〜0.62、名目p<0.0001)。・Grade3/4 の治療関連有害事象 (TEAE) は、DARA群の40.4%、積極的経過観察群の30.1%に発生した。頻度の高い (≧5%) Grade3/4のTEAEは高血圧 (DARA群5.7%、積極的経過観察群4.6%)であった。・DARA群において投与中止に至ったTEAEの発現は5.7%であった。

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疾患の検出や発症予測、血液検査が一助に?

 定期健診で一般的に行われている血液検査の検体には、検査を受けた人の健康状態について現在医師が得ている情報よりも多くの情報が隠されているようだ。全血球計算(complete blood count;CBC)と呼ばれるルーチンで行われている血液検査が、心疾患や2型糖尿病、骨粗鬆症、腎疾患など数多くの疾患の検出や発症の予測に役立つ可能性のあることが新たな研究で示された。米マサチューセッツ総合病院の病理医であるJohn Higgins氏らによるこの研究は、「Nature」に12月11日掲載された。 CBCでは、全身を循環している血液中の赤血球、白血球、血小板数を測定する。Higgins氏は、「CBCは一般的な検査だ。われわれの研究では、CBCは完全に健康な人であっても個人差が大きく、より個別化されたプレシジョンメディシン(精密医療)のアプローチによって、その人の健康状態や疾患の実態をより詳細に把握できる可能性のあることが示された」と説明する。 Higgins氏らは今回、1万2,407人の健常者から採取された血液を用いて、CBCによって測定される10種類の血液成分について調査し、患者ごとのばらつきを計算した。調査した成分は、赤血球数(RBC)、白血球数(WBC)、血小板数(PLT)、ヘマトクリット値(HCT)、ヘモグロビン濃度(HGB)、平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)、平均血小板容積(MPV)、赤血球分布幅(RDW)である。その結果、性別や人種/民族、年齢の影響を受けることのない、それぞれの患者に固有の「セットポイント(基準値)」が存在することが明らかになった。研究グループは、これらのセットポイントを活用することで、医師は一見健康そうに見える人でも早期の段階で疾患を診断できる可能性があると話す。 次に、セットポイントが推定されてから15年間の追跡データがそろう1万4,371人のデータを用いて、セットポイントと全死亡リスクや主要疾患の発症リスクとの関連を検討した。その結果、多くの指標において、セットポイントの値が高くなるか低くなるにつれ10年間の死亡リスクが上昇することが明らかになった。ただし、HCTとHGBに関しては、セットポイントの値が中間で最もリスクが低く、両極端の値(高過ぎる、低過ぎる)でリスクが上昇することが示された。また、MCHCのセットポイントが低いことは心筋梗塞や脳卒中、心不全(主要心血管イベント〔MACE〕)のリスク上昇と関連し、WBCの高いセットポイントは2型糖尿病、MCVの高いセットポイントは骨粗鬆症、HCTの低いセットポイントは慢性腎臓病、RDWの高いセットポイントは心房細動、RBCの低いセットポイントは骨髄異形成症候群のリスク増加と関連していた。 Higgins氏らは、「セットポイントを調べることで、本研究で対象となった健康な成人の20%以上が、その値の逸脱により、10年間での全死亡や心血管疾患や糖尿病などの早期介入が有効な主要疾患の診断の絶対リスクが2〜5%以上増加することが示唆された」と述べている。 なお、今回の研究の結果は先行研究の結果とも一致しているという。例えば、HGBの低下は心筋梗塞のアウトカムに関連し、MCVは大腿骨近位部骨折に、またWBCは糖尿病に関連していることが示されている。 Higgins氏らは、「これらの関連が生じるメカニズムの解明にはさらなる研究が必要だが、今回の研究では、セットポイントが複数の疾患において、2〜4倍の相対リスクの層別化を可能にすることが示された。これは、家族歴や一部の遺伝子変異を含む一般的な疾患のスクリーニング因子による相対リスクの層別化に匹敵する」と結論付けている。

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おそらく後進国(資源の限られた国)における血友病治療の光となる新たな遺伝子治療(解説:長尾梓氏)

 インドから新たな血友病に対する遺伝子治療の報告である。他の疾患では使われている(と聞いている)レンチウイルスを使った治療は血友病では初めての報告で、NEJM誌に掲載された当日に米国血液学会(ASHといって世界最大の血液学会です)での口頭発表・拍手喝采もあった。筆頭著者のAlok Srivastava氏は筆者の友人でもあり以前からこの活動を聞いていたが、とにかくすごいのはインドと米国の政府による研究資金支援で実施された臨床研究であって、製薬会社が関わっていない点である。彼はさまざまな血友病関連の学会などで役割を担っているのはもちろんのこと、AHAD-APというAPAC領域の血友病学会を数年前に立ち上げて、APACの患者のために尽力している(私もsteering committeeとして参加しています)。すごいバイタリティ!! さて、この論文と同時にNEJM誌にはMahlangu医師(これまたASHから表彰されたことのある)による総説が掲載された。それを参考にこの試験の何がすごいか解説していく。 これまで血友病で開発されてきたのはAAVを使った遺伝子治療である。血友病Aにおいては米国、EUを中心にRoctavian(BioMarin製)がすでに発売されている。しかし、AAV遺伝子治療には複数の課題があり、既存のAAV抗体を持つ患者は使えない、治療効果が個人間で異なり予測もできない、免疫抑制薬が必要となる肝障害が発生する場合があるが誰に起こるか予想ができない、第VIII因子活性が何年持続するか不確実である。BioMarinは2024年のプレスリリースでRoctavianの取り組みを米国、ドイツ、イタリアの3市場に集中すると発表した。売上を伸ばすのに苦労しているとの報道もある。 今回のレンチウイルス遺伝子治療はAAV抗体や肝機能の問題を回避可能で、小児にも使えるかもしれないというメリットがある。効果もしっかりあった。 ただ、安全性の懸念はもちろんあり、第一は発がんリスクを含めた安全性だ。この研究ではより安全な前処置(treosulfan)が使用され、短期間のフォローアップでは安全性の問題は認められなかったとのこと。しかし…今では健康に生涯を生きられる血友病に骨髄移植、移植前処置をするってどうなんでしょう。 よって、本稿のタイトルのとおり、資源の限られた国、経済的な理由で既存の薬剤が定期的に使用できない国での治療としての可能性があるのだろうと思う。

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英国の過去20年の新薬導入、公衆衛生への影響を評価/Lancet

 2000~20年における英国国民保健サービス(NHS)による新薬提供は、公衆衛生にもたらした利益より損失のほうが大きかった。英国・ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのHuseyin Naci氏らが、後ろ向き研究の結果を報告した。英国では、国立医療技術評価機構(NICE)による新薬に関する推奨は、健康増進をもたらす可能性がある一方で、その資金を代替治療やサービスに利用できなくなるため、犠牲となる健康が生じる可能性がある。著者は、「今回の結果は、新薬から直接的な恩恵を受ける人々と、新薬への資源の再配分により健康を諦めることになる人々との間に、トレードオフが存在することを浮き彫りにしている」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年12月12日号掲載の報告。2000~20年の間に承認された183品目について解析 研究グループは、2000~20年にNICEの公開データベースに公表されている、英国における新薬の技術評価を特定した。評価中止、推奨されなかった、またはその後販売を中止した製品、ならびに医療機器、診断または介入手順に関するプログラムの評価は除外した。また、NICEが評価した医薬品については、承認から5年以内の製品を調査対象として、医薬品名、評価された適応症、医薬品およびその評価の特徴に関するデータを収集した。 新薬の費用対効果を増分費用効果比(ICER)で、健康上の利益を質調整生存年(QALY)として算出。また、イングランドで2000年1月1日~2020年12月31日の間に販売された新薬の総量に関する独自のデータを用い、NICEが推奨する新薬を投与された患者数を推定した。 各評価の健康への影響は、NHSで新薬を用いた場合に得られる獲得QALYと、同じ資金を他のNHSサービスや治療に再配分した場合に理論的に得られるQALY推定値の差分から算出した。新薬の増分費用をNHSの支出による健康機会費用で割ることにより、逸失QALY(forgone QALY)を算出した。 NICEは2000~20年に332種類の医薬品を評価し、276品目(83%)が推奨され、このうち207品目(75%)は承認から5年以内に評価された。207品目のうち、適格基準を満たした183品目(88%)が今回の解析に含まれた。新薬で375万QALYを得るも、純損失は125万QALY 339件の評価全体における獲得QALYの中央値は0.49(四分位範囲[IQR]:0.15~1.13)で、これは完全に健康な期間の0.5年に相当した。 新薬の推奨に対するICER中央値は、2000~04年に公表された14件の評価では獲得QALY当たり2万1,545ポンド(IQR:1万4,175~2万6,173)であったが、2015~20年に公表された165件の評価では2万8,555ポンド(1万9,556~3万3,712)に増加した(p=0.014)。ICER中央値は治療領域によって異なり、感染症治療薬12件の評価では6,478ポンド(3,526~1万2,912)であるのに対し、抗がん剤144件の評価では3万ポンド(2万2,395~4万5,870)であった(p<0.0001)。 NICEが推奨した新薬を使用した患者1,982万人において、新薬の使用により推定375万QALYが追加されたが、新薬の使用によるNHSの追加費用は751億ポンドと推定された。同じ資源をNHSの既存サービスに用いた場合、2000~20年の間に500万QALYが追加で得られたと推定された。全体として、NICEが推奨した薬剤による累積的な公衆衛生への影響は負であり、純損失の発生は約125万QALYであった。

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進行期低腫瘍量濾胞性リンパ腫の初回治療、watchful waiting対早期リツキシマブ(JCOG1411/FLORA)/ASH2024

 未治療の進行期低腫瘍量濾胞性リンパ腫(LTB-FL)では、診断後にすぐに治療を行わずに経過を診る、いわゆる無治療経過観察(watchful waiting、WW)が標準治療とされているが、高腫瘍量(HTB)への進行や組織学的形質転換といったリスクが懸念される。 一方、リツキシマブ単剤療法は、LTB-FLに対する初回治療の選択肢としてその有効性が示されているが、同剤を開始する最適な時期は明らかになっていない。そこで、未治療の進行期LTB-FL患者を対象に、WWに対する早期リツキシマブ導入の優越性を検証する無作為化第III相JCOG1411/FLORA試験が行われた。なお、同試験は、2024年6月に事前に計画された2回目の中間解析により、JCOG効果・安全性評価委員会から早期終了が勧告された。同試験の結果を東北大学の福原 規子氏が第66回米国血液学会(ASH2024)で発表した。・試験デザイン:無作為化第III相比較試験・対象:未治療の進行期・超低腫瘍量FL(Grade 1〜3A)※本試験では、GELF規準による低腫瘍量FLを、超低腫瘍量(腫瘍の最大長径が5cm未満、長径3cm以上の腫大リンパ節が2領域以下、胸腹水貯留なし)と、中腫瘍量(最大長径5cm以上7cm未満、長径3cm以上の腫大リンパ節3領域、重篤な胸腹水貯留なし、のうち1つ以上該当)の2つに分け、超低腫瘍量を試験の対象とし、中腫瘍量をリツキシマブ投与規準と定義した。・試験群:リツキシマブ(375mg/m2 day1、8、15、22)(RTX群、144例)・対象群:無治療経過観察 (WW群、148例) 両群とも中腫瘍量に進行した場合はリツキシマブ(375mg/m2 day1、8、15、22)投与・評価項目:【主要評価項目】無イベント生存期間(EFS)(イベント:高腫瘍量(HTB)への進行、細胞傷害性化学療法±放射線療法の開始、組織学的形質転換、または死亡)【副次評価項目】無細胞傷害性化学療法生存期間、無組織学的形質転換生存期間、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、全奏効割合(ORR)、有害事象など 主な結果は以下のとおり。・2016年12月〜2023年3月にJCOGリンパ腫グループ54施設から292例が登録された。・第2回中間解析(データカットオフ2023年12月)の観察期間中央値2.5年時点で、主要評価項目であるEFSにおいて、中央値はRTX群6.9年に対しWW群4.5年であり、有意にRTX群で改善した(HR:0.625、95%CI:0.425~0.918、片側p=0.0078)。・EFSのイベント内訳は、HTBへの進行(RTX群18.8%、WW群32.4%)、組織学的形質転換(RTX群8.3%、WW群12.8%)、化学療法の開始(RTX群11.8%、WW群8.8%)などであった。・PFS中央値はRTX群、WW群とも3.0年で両群間に差はみられなかった(HR:0.911、95%CI:0.666~1.247)。・ORRはRTX群70.8%、WW群3.4%であった。・OS中央値は両群とも未到達、3年OS割合はRTX群97.5%、WW軍98.5%で両群間に差は見られなかった(HR:0.908、95%CI:0.329〜2.506)。・無組織学的形質転換生存期間中央値は両群とも未到達、同3年割合はRTX群91.4%、WW群87.4%であった。・主なGrade2~4の非血液毒性(>5%)はインフュージョンリアクション(RTX群24.1%、WW群8.9%)、上気道感染症(RTX群6.4%、WW群2.1%)、高血圧(RTX群5.7%、WW群1.4%)であり、主なGrade3~4の血液毒性(>5%)はリンパ球減少であった(RTX群11.4%、WW群8.5%)。 以上の結果から福原氏は、未治療の進行期超低腫瘍量FL患者において、リツキシマブ早期介入は高腫瘍量への進行や化学療法の開始時期を遅らせることが示され、OSや組織学的形質転換に関しては長期のフォローアップが必要であるものの、リツキシマブ早期投与は未治療の進行期超低腫瘍量FLの初期治療に推奨されると結んだ。

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重症血友病A、新たな第VIII因子発現遺伝子治療が有望/NEJM

 第VIII因子インヒビターのない重症血友病A患者において、レンチウイルスベクターを用いて遺伝子導入した自己造血幹細胞(HSC)による遺伝子治療は、安定した第VIII因子発現が得られ、第VIII因子活性は末梢血中のベクターのコピー数と相関することが、インド・Christian Medical College VelloreのAlok Srivastava氏らの検討で示された。研究の成果はNEJM誌オンライン版2024年12月9日号に掲載された。5例を対象とするインドの第I相試験 研究グループは、第VIII因子インヒビターのない重症血友病Aにおけるレンチウイルスベクターを用いた自己CD34陽性HSCによる第VIII因子発現遺伝子治療の安全性と有効性の評価を目的に、インドの単施設において第I相試験を行った(インド政府科学技術省などの助成を受けた)。 年齢22~41歳の男性患者5例を対象とした。骨髄指向性CD68プロモーターを有する新規F8導入遺伝子(ET3)を含むレンチウイルスベクター(CD68-ET3-LV)を用いて、自己HSCに導入用エンハンサーなし(第1群、2例)または導入用エンハンサーあり(第2群、3例)のいずれかで形質導入した。患者は、骨髄破壊的前処置後に遺伝子導入HSCの移植を受けた。 治療の安全性については、生着とレジメン関連毒性作用の評価を行い、有効性は第VIII因子活性と年間出血率で評価した。 5例の患者のCD68-ET3-LV導入自己CD34陽性HSCの投与量は、体重1kg当たり5.0×106~6.1×106であった。最終の製剤中のベクターコピー数は、第1群の2例が1細胞当たり1.0および0.6で、第2群の3例は1細胞当たり1.5、0.6、2.2だった。全例で生着、インヒビターの発現はない 予想どおり全例で重度の血球減少が発現し、絶対好中球数の最低値は0.1×109/L未満、血小板数最低値は20×109/L未満であった。一方、全例で生着が得られ、好中球生着までの期間中央値は11日(範囲:10~12)、血小板生着までの期間中央値は15日(12~15)だった。重症好中球減少の期間中央値は8日(7~11)、重症血小板減少の期間中央値は3日(1~7)であった。 移植特性は第1群と第2群で差がなかった。5例のうち4例は、遺伝子治療後1~3ヵ月までには血球数が正常範囲に戻った。残りの1例(第2群)は、治療後14ヵ月には血球数が正常範囲となった。 好中球減少と血小板減少を除き、グレード2以上の有害事象はどの患者にも発現しなかった。最も頻度の高い有害事象は、吐き気(±嘔吐)であった。また、第VIII因子インヒビターは、製剤の投与後にどの患者にも発現しなかった。投与後4~22ヵ月目に行った遺伝子組み込み部位解析では、安全性に関する懸念は認めなかった。 これらのデータは、導入用エンハンサーがこのレンチウイルスベクターの遺伝子組み込みプロファイルに悪影響を及ぼさないことを示している。治療前に年間20件以上の出血が0件に 内因性第VIII因子の発現は、第2群の1例で投与後18日目に早くも観察された。60日目の第VIII因子活性値は、第1群の2例では7.9 IU/dLおよび4.0 IU/dLであり、第2群の3例では28.0 IU/dL、14.2 IU/dL、36.6 IU/dLであった。 第1群の2例では、投与後28日目から最後の追跡調査までの第VIII因子活性の中央値は、5.2 IU/dL(範囲:3.0~8.7)および1.7 IU/dL(1.0~4.0)であり、末梢血ベクターコピー数はそれぞれ0.2および0.1であった。同様に、第2群の3例では、第VIII因子活性中央値は37.1 IU/dL(18.3~73.6)、19.3 IU/dL(6.6~34.5)、39.9 IU/dL(20.6~55.1)であり、末梢血ベクターコピー数はそれぞれ4.4、3.2、4.8だった。 遺伝子治療前に、5例は少なくとも年間20件の出血イベントを報告していたが、治療後の累積追跡期間81ヵ月(追跡期間中央値14ヵ月[範囲:9~27])の時点で、年間出血率は5例ともゼロであった。 著者は、「このfirst-in-human試験の初期結果は、血友病Aの遺伝子治療の新たな可能性を示すものである。すべての患者で、より若い時期に施行可能であり、第VIII因子の持続的発現をもたらすと考えられる。この予測が正しいかは、より多くの患者を対象とした長期の臨床試験で明らかになるだろう」としている。

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ASH2024レポート

レポーター紹介はじめに2024年12月6日(金)~10日(火)の5日間にわたり、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンディエゴにて、第66回米国血液学会(ASH)年次総会が開催されました。ASHは、全世界から約3万人の血液学の専門家が集う世界最大の血液学会のイベントであり、毎年、12月の初旬に開催されます。私は、2019年にフロリダ州オーランドで開催された第61回ASHに参加して以来、5年ぶりの現地参加となりました(2020年からはCOVID-19の世界的流行のため、On lineでの開催となり、以降、現地開催とともにOn lineでの参加が可能となっている)。3年前の2022年から、米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表された血液領域の注目演題のレポートをケアネットのDoctors'Picksのコーナーに寄稿していますが、ASCOにて口演に採択される血液がん関連の演題数は限られており、その中から10演題程度を選ぶ作業は比較的容易ですが、ASHの演題はすべて血液関連であり、口演の演題数だけでも1,000演題程度(ポスターは4,000演題程度)あり、その中から10演題選ぶのは至難の業でした。今回は、私の専門領域のリンパ系腫瘍(悪性リンパ腫と多発性骨髄腫)の演題から独断と偏見で10演題選びました。それでは、どのような演題が発表されたか各演題の概要にお目を通してください。なお、YouTubeチャンネルのEXPERT MINDでも、これらの演題を含む24演題の解説動画を2025年1月中旬から順次アップしておりますので、興味のある方は、そちらもご覧ください。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)Five-Year Analysis of the POLARIX Study: Prolonged Follow-up Confirms Positive Impact of Polatuzumab Vedotin Plus Rituximab, Cyclophosphamide, Doxorubicin, and Prednisone (Pola-R-CHP) on Outcomes. (Abstract #469)POLARIX試験(初発のびまん性大細胞型リンパ腫[DLBCL] に対し、Pola-R-CHP療法とR-CHOP療法を比較したグローバル試験であり、主要評価項目のPFSにおいて、Pola-R-CHPが有意に優った試験)の結果をもとに、2年前から日本でも保険診療でPola-R-CHPが初発DLBCL患者に対し使用可能となっている。今回、そのPOLARIX試験の5年のフォローアップデータが示された。主要評価項目のPFSは、2年時点のHR0.73(95%CI:0.57-0.95)が、5年時点でHR0.77(0.62~0.97)となり、Pola-R-CHPのR-CHOPに対する有意性が維持されていた。副次評価項目のOSについては、2年時点でHR:0.94(0.65-1.37)であったが、5年時点ではHR:0.85(0.63-1.15)とK-M曲線において少し差が開きかけているデータであった。安全性については、両治療にほぼ差を認めず、Pola-R-CHP療法は初発DLBCLの新たな標準療法とみなせるデータが示されたと思われる。本試験はあと2年フォローが継続されるようで、OSにも有意差がみられることが期待される。A Randomized Phase 2, Investigator-Led Trial of Glofitamab-R-CHOP or Glofitamab-Polatuzumab Vedotin-R-CHP (COALITION) in Younger Patients with High Burden, High-Risk Large B-Cell Lymphoma Demonstrates Safety, Uncompromised Chemotherapy Intensity, a High Rate of Durable Remissions, and Unique FDG-PET Response Characteristics. (Abstract #582)IPIや組織型でハイリスクの初発DLBCL患者(IPI≧3あるいはNCCN-IPI≧4あるいはDH/TH)に対し、CD20/CD3二重抗体薬のglofitamab(Glofit)をPola-R-CHPとR-CHOPに併用した第2相ランダム化比較試験(COALITION試験)の結果が報告された。投与法は、Glofitを2サイクル目のDay8、Day15と3~6サイクル目のDay8に投与し、さらに地固めとしてGlofitのみを2サイクル追加した。各群40例ずつの患者がエントリーされた。安全性に関しては、ほぼ同等であり、CRSはどちらも約20%の患者でみられたがG1~2であり、ICANSはゼロであった。最良効果でのCMR率はどちらも98%であり、EOIでのcfDNAを用いたMRD陰性率は88%であった。2年時点のPFSは、どちらの群とも86%と、ハイリスクDLBCL患者に対する良好な治療成績が示された。以上の結果を基に、さらに症例数を増やした試験が実施される予定である。濾胞性リンパ腫(FL) Single-Agent Mosunetuzumab Produces High Complete Response Rates in Patients with Newly Diagnosed Follicular Lymphoma: Primary Analysis of the Mithic-FL1 Trial. (Abstract #340)CD20XCD3二重抗体薬のmosunetuzumab(Mosun)を単剤で初発の濾胞性リンパ腫(FL)患者に投与した第2相Mithic-FL1試験の初めての解析結果が報告された。Mosunは、再発・難治FLに対し、海外ではすでに承認され、日本でも近々承認される薬剤である。特徴は投与スケジュールであり、1サイクル目Day1に5mg、Day8、15に45mg、2サイクル目からはDay1に45mg投与し、8サイクル終了後(6ヵ月間)にCRであればそこで治療を終了し、PRであれば9サイクル追加(約1年間)する固定期間の治療ということである。80例がエントリーされた。効果判定可能な76例のうち、ORRは96%、CRは80%であり、1年のPFSは91%という優れた治療成績が示され、免疫化学療法の成績に劣らなかった。安全性ではCRSが54%にみられ、G2は3%のみであった。初発FLに対して二重抗体薬のみで免疫化学療法と同等の治療効果が得られる可能性が示されたことでFLの今後の治療はケモフリーの方向に進んで行くと思われた。Loncastuximab Tesirine with Rituximab Induces Robust and Durable Complete Metabolic Responses in High-Risk Relapsed/Refractory Follicular Lymphoma.(Abstract #337)抗CD19抗体に抗がん剤のPBD dimer cytotoxinを結合した新規のADC薬のLoncastuximab Tesirine(Lonca)とリツキシマブによる再発・難治FLに対する臨床試験の成績である。Loncaはすでに海外で2ライン以上の治療歴のあるR/R DLBCLに対し単剤での使用が認められており、開発試験の成績では14例に対し、ORR 78.6%、CR 64.3%であった。投与スケジュールは1~2サイクル目にLonca+R、3・4サイクル目にLoncaのみを投与し、PR以上であれば、Lonca+Rを3サイクル追加し(維持療法1)、CRであればRのみ、PRであればLonca+Rを6サイクル追加する(維持療法2)。39例の患者がエントリーされ、POD24の症例は20例であり、3ライン以上の前治療歴のある症例は11例であった。最良治療効果のORR 97.4%、CR 76.9%であり、12ヵ月時点でのPFSは94.6%であった。有害事象もほとんどがG1~2であり、安全性も問題なかった。Lonca+RもR/R FLに対する新たな選択肢となりうる可能性が示された。マントル細胞リンパ腫(MCL)Ibrutinib-rituximab is superior to rituximab-chemotherapy in previously untreated older mantle cell lymphoma patients. Results from the international randomised controlled trial, Enrich.(Abstract #235)マントル細胞リンパ腫(MCL)は、難治性のリンパ腫であり、寛解・再燃を繰り返す。これまでは、初発MCLに対しリツキシマブと抗がん剤を併用する免疫化学療法(CIT)が標準療法として実施されてきたが、BTK阻害薬が登場し治療戦略が変わりつつある。本発表では、高齢の初発MCL患者に対し、BTK阻害薬のイブルチニブとリツキシマブを併用したIR療法と従来のCITを比較した第III相試験(Enrich試験)の結果が報告された。IR群:199例、免疫化学療法群(RBかR-CHOP)198例がエントリーされた。主要評価項目のPFS中央値は、IR群65.3ヵ月、免疫化学療法群42.4ヵ月であり、HRは0.69(0.52~0.90)と有意にIR療法が優れていた。ただし、免疫化学療法の治療法別では、R-CHOPとのHRは0.37(0.22-0.62)であったが、RBとのHRは0.91(0.66~1.25)と差がみられなかった。また、Blastoid-typeのMCLに対してはRBとのHRは2.33(0.83~6.52)とIRの治療成績が劣ることも示されている。IRはケモフリー治療として初発MCL患者に対する1つの選択肢となり得る。Lack of Benefit of Autologous Hematopoietic Cell Transplantation (auto-HCT) in Mantle Cell Lymphoma (MCL) Patients (pts) in First Complete Remission (CR) with Undetectable Minimal Residual Disease (uMRD): Initial Report from the ECOG-ACRIN EA4151 Phase 3 Randomized Trial.(Abstract #LBA6)若年の初発MCL患者に対しては、第一寛解期に自家移植併用大量化学療法(ASCT)が行われることが標準療法とされてきたが、リツキシマブやイブルチニブによる維持療法を追加することで、ASCTが不要となる可能性が示されてきている。本試験でも、寛解導入療法によって微小残存病変(MRD)が陰性となった患者において、リツキシマブによる3年間の維持療法を行うことで、ASCTをスキップ可能かどうかが前向きに検証された。寛解導入治療によって、MRD陰性となった患者をASCT+R-m(A)群とR-m単独(B)群にランダム化し、主要評価項目としてOSが評価された。A群257例、B群259例がエントリーされた。2.7年の追跡期間で、HR 0.984と両群にまったく差がみられず、MIPI-cでHighリスクの症例でも同様であった。このことから、寛解導入療法でMRD陰性となったMCL患者においてはASCTを行う必要はなくなったという結果が示された。これから長期のフォローが必要だが、MCLの治療においてもMRD陰性が治療目標になることが示された。慢性リンパ性白血病(CLL)Fixed-Duration Acalabrutinib Plus Venetoclax with or without Obinutuzumab Versus Chemoimmunotherapy for First-Line Treatment of Chronic Lymphocytic Leukemia: Interim Analysis of the Multicenter, Open-Label, Randomized, Phase 3 AMPLIFY Trial.(Abstract #1009)初発の慢性リンパ性白血病(CLL)に対し、BTK阻害薬アカラブルチニブ+BCL2阻害薬ベネトクラクス±抗CD20抗体薬オビヌツズマブ併用治療(AV±O)を固定期間(14ヵ月)で行う治療と従来の免疫化学療法(FCRかBRのどちらかを選択)を比較した第III相試験(AMPLIFY試験)の中間解析結果が報告された。エントリーされた患者は、AV群291例、AVO群286例、FCR群143例、BR群147例であった。主要評価項目はAV群と免疫化学療法群のPFSの比較であった。結果は、PFS中央値が、AV群未達、免疫化学療法群47.6ヵ月でHR 0.65(0.49~0.87)と有意にAV群が優った。AVO群の免疫化学療法群に対するHRは0.42(0.30~0.59)とさらに良好であり、MRD陰性化率もAVO>免疫化学療法であったが、本試験の実施中にCOVID-19のパンデミックがあり、AVO群でCOVID-19による死亡、治療中止が最も多かったということも示された。固定期間のAVあるいはAVO療法が免疫化学療法よりも有用であることが初めて示された。感染症の観点からはAV>AVOと思われるが、現在日本で使用可能なAOの固定期間治療の有用性は、これから検証する必要がある。多発性骨髄腫(MM)Sustained MRD Negativity for Three Years Can Guide Discontinuation of Lenalidomide Maintenance after ASCT in Multiple Myeloma: Results from a Prospective Cohort Study.(Abstract #361)初発多発性骨髄腫(MM)の治療では、自家移植併用大量化学療法(ASCT)を行い、レナリドミドにて維持療法を行うのが標準療法となっている。また、MRD陰性が持続することが長期のPFSを得るためには必要な条件となっているが、いつまでレナリドミドを投与すべきか、あるいはレナリドミドを中止できる条件などは明らかではない。本試験では、レナリドミドによる維持療法を3年間行い、その期間、MRD陰性を確認できた患者に対し、レナリドミドを一旦中止し、その後のMRDを6ヵ月ごとにフォローする前向き試験の結果が報告された。52例のMM患者がエントリーされた。中央値3年間のフォロー期間で、12例(23%)がMRD陰性⇒MRD陽性となり(中央値27.5ヵ月にて)レナリドミドが再開された。4例(7.6%)がPDとなった。1例がMM以外で死亡された。Treatment-free survivalは、93.9%(@1年)、91.6%(@2年)、75.8%(@3年)であった。また、7年のPFSは90.2%であった。以上より、ASCT後、レナリドミド維持療法による3年間のMRD陰性持続が治療中止の条件として妥当と考えられた。Phase 3 Randomized Study of Daratumumab Monotherapy Versus Active Monitoring in Patients with High-Risk Smoldering Multiple Myeloma: Primary Results of the Aquila Study.(Abstract #773)くすぶり型骨髄腫(MM)に対し、これまでは治療介入せずに注意深く経過観察を行うことが推奨されてきた。本試験(AQUILA試験)では、ハイリスクのくすぶり型MMに対し、ダラツムマブ皮下注単剤治療を導入する群と注意深く経過観察する群に分けて、SLiM-CRABの所見を認めるまでの期間(PFS)を比較している。Dara群:194例、観察群:196例がエントリーされた。有害事象のためDaraが中止となったのは13例(6.7%)であり、Daraが安全な治療薬であることが示された。追跡期間の中央値65.2ヵ月において、主要評価項目のPFSは、Dara群未達、観察群41.5ヵ月であり、HR 0.49(0.36~0.67)と有意にDara群でSLiM-CRABの所見に移行する患者が少なかった。また、骨髄腫の治療が開始されるまでの期間もDara群で有意に長く、さらに、骨髄腫の最初の治療の効果(PFS、OS)は観察群で有意に不良であることも示された。以上の結果から、ハイリスクのくすぶり型MMに対するDaraによる早期の治療介入が、今後の標準治療となることが示された。Previous HDM/ASCT adversely impacts PFS with BCMA-directed CAR-T cell therapy in multiple myeloma.(Abstract #79)多発性骨髄腫(MM)の初期治療は、ASCTを行うかどうかで治療方針が大きく分かれる。通常、65歳以下でPS良好の患者はASCTの適応となる。しかし、多くの患者ではやがて再発がみられ、次の治療が必要となる。再発MMに対しては、CAR-T細胞治療の有効性が示されている。本研究では、ASCT治療歴のあるMM患者に対するCAR-T治療の効果が検証されている。BCMA-CAR-T治療が行われたMM患者で、ASCT治療歴のある81例とASCT治療歴のない77例が比較された。寛解導入療法の治療効果は、両群で差を認めなかったが、CAR-T療法によるPFS中央値は9.9ヵ月(ASCT歴あり)と16.1ヵ月(ASCT歴なし)で、ASCT歴があるとCAR-T療法の効果が有意に悪いことが示された。ただし、OSへの影響は差がなかった。CAR-T療法の種類では、特に、Ide-celの効果が落ちることも示された。この結果のメカニズムの詳細は不明だが、CAR-T療法を行う可能性があるMM患者へのASCTの適応は慎重に考える必要があることが示唆された。おわりに今回、5年ぶりのASHへの現地参加であったが、これまでと変わらない参加者たちの熱気を感じ、on lineでの参加とは違う刺激を受けました。レポートしました10の演題は現地でも注目度が高く、会場が満席で、急遽、別室で中継される事態も発生していました。これらの発表を聞いていると、今後、リンパ系腫瘍の治療は、従来の化学療法剤(ケモ薬)を使用せず、分子標的薬と免疫療法(CAR-TやT細胞エンゲージャー)だけで治療する時代に変わっていくように感じました。ASHの参加費は年々高くなり、さらに円安の影響で学会参加費は、かなり高騰しています。また、アメリカは物価が高く、わずか5泊の滞在でしたが、ホテル代や食費もかなりの出費でした。今後、毎年、ASHに参加するのは難しいと思いましたが、できれば、数年後に、また、現地参加してみたいと思っています。

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完璧なHIV感染予防法にアクセスできるのは?(解説:岡慎一氏)

 年2回の注射で完璧にHIV感染を予防できることは、PURPOSE 1試験にて、最も予防が難しいといわれていたアフリカ女性ですでに証明されている。今回の試験は、PURPOSE 2試験と呼ばれ、男性同性愛者やトランスジェンダーなどその他の感染リスクの高い人すべてを組み入れたHIV感染予防の研究である。結果は、PURPOSE 1試験同様、ほぼ完璧に予防できるという事が示された。 これらの試験で用いられた画期的新薬は、レナカパビルという新しい機序の薬剤であり、多剤耐性ウイルスを持つHIV患者の治療薬としては、すでに認可されている。日本で、この薬剤を治療に用いた場合の医療費は、年間約700万円である。 この薬剤を開発した会社は、6つのGeneric Companyに低・低中所得国の120ヵ国にGeneric薬の供給を認め、18のHIV感染率の高い国に対して、Generic薬が供給されるまでの間の薬剤の提供を約束した。しかし、欧米の国々では、正規品での薬剤使用となるため、この高価な予防薬にアクセスできる人は、かなり限られると予想される。有効な薬剤に対するアクセスの不平等は、1996年強力な多剤併用療法が可能となった時に、南北格差として問題となった。この解決のため、先進国の製薬会社は、途上国でのGeneric薬の使用を認めるようになった。 今回の処置もその一環ともいえる。しかし、今回は、先進国が有効な薬剤にアクセスできないという逆の不平等が問題となっている。この問題がどのように解決されていくのか、日本の現状とも照らし注視していきたい。

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温水洗浄便座を使用する?しない?その理由は/医師1,000人アンケート

 友人同士でも腹を割って話しにくいであろう話題の1つがトイレや排泄に関することではないだろうか。今回、CareNet.comでは医師のトイレ事情として、温水洗浄便座の使用有無や温水洗浄便座が影響する疾患の認知度などを探るべく、『温水洗浄便座の使用について』と題し、会員医師1,021人にアンケートを実施した。その結果、医師の温水洗浄便座の使用率は約8割で、年齢を重ねるほど使用率が高い傾向にあることが明らかになった。6割が自宅・外出先を問わず使用 まず、使用場所について聞いたところ、「自宅・外出先問わずどちらも使用する」は61%、「自宅では使用するが外出先では使用しない」が17%、「自宅では使用しないが外出先では使用する」が1%、「どちらも使用しない」が20%であった。また、年代別にみると50~60代の医師の使用率が高く、「自宅・外出先問わずどちらも使用する」との回答が7割超で、「自宅では使用するが外出先では使用しない」まで合わせると8割強にまでのぼり、温水洗浄便座が生活になくてはならないものになっているようだ。実際に温水洗浄便座の使用に対して以下のようなコメントが寄せられていた。・排便後の清拭習慣はなかなか変えられないため(50代、内科)・排便後の局所の清潔が保たれる。排便後の掻痒がない(50代、外科/乳腺外科)・排便の調子が使うほうが良い(50代、内科)・清潔保持のため(60代、循環器内科/心臓血管外科)・清潔な便座であれば外出時でも使用します(60代、内科)・森林資源の保全に間接的に寄与するかもしれない(60代、神経内科)・痔があるから(60代、消化器科)・外出先ではノズル洗浄をしてから使用する。ノロウイルス感染を危惧はするが、トイレットペーパーの使用回数を減らしたいため(60代、整形外科) 一方で、使用しないと回答した医師の意見には以下のようなものが挙げられた。・尿路感染症などが心配(30代、糖尿病・代謝・内分泌内科)・肛門環境が悪くなるから(40代、内科)・便がお尻に飛び散る気がして心配になるから(40代、腎臓内科)・清潔ではないから(50代、消化器科)・膣炎や膀胱炎のリスクがある(60代、内科)使用者は患者にも勧める?温水洗浄便座が便失禁につながる報告も 温水洗浄便座の使用自体は肛門疾患、とくに裂肛を有する場合に勧められる1)。では実際に、痔の症状を訴える患者に対して勧めるかを聞いたところ、「毎回勧めている」は12%、「症状(裂肛など)や併存疾患を考慮して勧めている」は34%と、約半数の医師が患者に勧めていた。興味深いことに、50代以上の医師で患者に勧めている傾向が大きいことから、自身が利用しその有用性を認めた上で患者に話している可能性が考えられる。 一方で、温水洗浄便座の使用によって引き起こされる疾患も存在し、その1つが便失禁である2,3)。これについての認知度を調査したところ、「知っている」と回答したのは15%で、「聞いたことはあるが詳細は知らない」まで含めると約半数の医師が便失禁リスクになることを認識していた。これに関して、消化器科医の回答割合も同等であり、専門・非専門を問わず詳細まで知っている医師は少ないようだ。なお、温水洗浄便座の頻回使用や長時間使用が肛門のかゆみを引き起こす『温水洗浄便座症候群』の原因にもなることから、TOTO社はウォシュレットの使用説明書4)において「約10~20秒を目安にご使用ください」と注意喚起している。 このほか、温水洗浄便座使用に対する患者へのアドバイス経験の有無、患者や自身のトイレに関するエピソードのアンケート結果を公開している。アンケートの詳細は以下にて公開中『温水洗浄便座、医師の利用率は?』

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BCMA標的CAR-TのICAHTに対する幹細胞ブースト療法の有用性/ASH2024

 免疫エフェクター細胞関連造血毒性(ICAHT)は、CAR-Tをはじめとする免疫療法による血球減少を引き起こし、感染症などのリスクとなる。KarMMa-1試験、CARTITUDE試験といった多発性骨髄腫の国際研究では、CAR-T投与早期(30日以内)に90%前後で好中球減少が発現し、それ以降も50%程度の割合で発現が続くと報告されている。 そのような中、CAR-T細胞療法を受けた再発・難治多発性骨髄腫(R/R MM)におけるICAHTの臨床経過と、ICAHTに対する自己幹細胞ブースト療法の効果を確認する後ろ向き試験が行われた。研究結果が米国・ウィスコンシン医科大学のKiritika Yadav氏により、第66回米国血液学会(ASH)で発表された。 対象はBCMA標的CAR-T細胞療法(ide celまたはcita cel)を受けたR/R MM患である。血球減少の定義は好中球≦1,000/mL、血小板≦50x109/L、ヘモグロビン≦9g/dL。ICAHTはCAR-T細胞投与後21日、3ヵ月、6ヵ月の時点で評価された。評価項目は、血球数回復、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)であった。 主な結果は以下のとおり。・全体で159例が登録された。・患者の年齢中央値は65歳、FISHまたはPET高リスクが77%、自家造血幹細胞移植(ASCT)実施が87%、前治療ライン数中央値は5、髄外病変あり28%、サイトカイン放出症候群(CRS)は85%、ICANSは12%に発現していた。・評価症例154例中89例でICAHTが発現した。・ICAHTの発現は21日後の58%(89例/154例)から3ヵ月後28%、6ヵ月後17%と時間とともに減少した。・ICAHTのリスク因子は、ASCT≧2回、前治療歴≧5ライン(対4ライン p=0.002)、ベースライン時の血小板数≦146×109/L(対194×109 p=0.005)、FISHまたはPET高リスク(p=0.012)、ICANS発現(p=0.006)、トシリズマブ使用(p=0.013)であった。・ICAHT発現82例(自家幹細胞保存症例)のうち、重度の血球減少のため自己幹細胞ブースト療法を受けた患者は22例(27%)であった。・自己幹細胞ブースト療法の投与期間中央値はCAR-T投与後52日間であった。・自己幹細胞ブーストを受けた患者の血球数は早期(CAR-T療法21日後)においては低値であったが、3ヵ月および6ヵ月後にはには受けない患者よりも大きく改善した。 Yadav氏は、重症ICAHT発現患者に対する自己幹細胞ブースト療法の恩恵を明らかにするためには、さらなる研究が必要だと述べた。

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再発・難治濾胞性リンパ腫、レナリドミド+リツキシマブへのtafasitamab上乗せ(inMIND)/ASH2024

 再発/難治(R/R)濾胞性リンパ腫(FL)では、抗CD-20抗体併用療法であるレナリドミド(len)とリツキシマブ(R)が用いられる。 そのような中、R/R FLにおける抗CD-19抗体tafasitamabのlen+Rへの上乗せ効果を評価する第III相inMIND試験が行われている。同試験の初回解析結果を、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のLaurie H. Sehn氏が第66回米国血液学会(ASH2024)で発表した。・試験デザイン:第III相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験・対象:グレード1~3Aの成人R/R FL(または辺縁帯リンパ腫)、抗CD-20抗体療法を含む1ライン以上の前治療歴あり・試験群:tafasitamab(12mg/kg)12サイクル(1~3サイクルは毎週、4~12サイクルは2週ごと)+len(20mg)12サイクル(Day1~21連日)+R(375mg/m2)5サイクル(1サイクルは毎週、2~5サイクルは4週ごと)(TAFA群、273例)・対照群:プラセボ+len+R(PBO群、275例)・評価項目:【主要評価項目】治験医師評価の無増悪生存率(PFS)【副次評価項目】PET-CR率、全生存率(OS)、独立評価委員会(IRC)評価のPFS、全奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、後治療までの期間(TTNT)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・患者の年齢中央値は64歳(75歳以上19.7%)、FLIPI(中等度・高リスク濾胞性リンパ腫国際予後指標)3~5が52.4%、GELF(Groupe d’Etude des Lymphomes Folliculaires)高腫瘍量規準該当が82.8%、POD24(初回化学療法後24ヵ月以内の再発・増悪)は31.6%と比較的高リスクな集団であった。・追跡期間中央値14.1ヵ月時点のPFS中央値はTAFA群22.4ヵ月、PBO群13.9ヵ月(ハザード比[HR]:0.43、95%信頼区間[CI]:0.32~0.58、p<0.0001)と有意にTAFA群で良好であった。・PFSはすべてのサブグループにおいてTAFA群が優れていた。・PET-CR率はTAFA群49.4%、PBO群39.8%(オッズ比[OR]:1.5、95%CI:1.04〜2.13、名目上p=0.0286)と有意にTAFA群で良好であった。・ORRはTAFA群83.5%、PBO群72.4%(OR:2.0、95%CI:1.30〜3.02、名目上p=0.0014)と有意にTAFA群で良好であった。・頻度の高いGrade3/4の試験治療下における有害事象(TEAE)は好中球減少(TAFA群39.8%、PBO群37.5%)、肺炎(それぞれ8.4%、5.1%)などであった。・TEAEによる投与中止は、TAFA群の11%、PBO群の7%にみられた。 inMINDはR/R FLに対して初となる、抗CD19と抗CD20という2つの抗体を併用した試験としても評価される。レナリドミド・リツキシマブ併用へのtafasitamabの上乗せは、R/R FLに対する新しい標準治療としての将来性を示した、とSehn氏は結んだ。

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再発・難治性B細胞性ALLにobe-celが有効/NEJM

 obecabtagene autoleuce(l以下obe-cel)は、自家41BB-ζ抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法であり、毒性作用を軽減してCAR-T細胞の生着と持続性を改善するために、CD19に対する親和性が中等度のCARを使用している。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのClaire Roddie氏らは「FELIX試験」において、再発または難治性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病(ALL)の成人患者の治療として、obe-celは高い割合で持続的奏効をもたらし、Grade3以上の免疫関連毒性作用の発現率が低いことを示した。研究の成果は、NEJM誌2024年12月12日号で報告された。3ヵ国の第Ib/II相試験 FELIX試験は、再発・難治性B細胞性ALLにおけるobe-celの安全性、有効性、拡張性の評価を目的とする第Ib/II相試験であり、3ヵ国(スペイン、英国、米国)の34施設で患者を登録した(Autolus Therapeuticsの助成を受けた)。 年齢18歳以上の再発または難治性のB細胞性ALL患者を対象とし、主要コホートであるコホート2Aは形態学的病変(骨髄芽球≧5%)を有する患者、コホート2Bは測定可能な微小残存病変(MRD)(骨髄芽球<5%)を有する患者とした。 患者は、obe-celを製造するために白血球アフェレーシスを受けた。ブリッジング療法は、担当医の裁量で必要に応じて行われた。obe-celは、リンパ球除去療法後に、骨髄負荷(bone marrow burden)を調整した分割用量で投与した。1回目の投与後に、重篤な毒性作用や未解消の毒性作用がない場合に2回目の投与を行った。 主要エンドポイントは、コホート2Aにおける全寛解(完全寛解[CR]+血球数の回復が不十分な完全寛解[CRi])とし、副次エンドポイントとして無イベント生存、全生存、安全性を評価した。全寛解は77% 153例を登録し、このうち127例(83.0%)が少なくとも1回のobe-celの投与を受け、評価が可能であった。127例の年齢中央値は47歳(範囲:20~81)、女性が61例(48%)で、前治療ライン数中央値は2(範囲:2~6)であり、52.0%が最終の前治療時に難治性であった。56例(44.1%)が同種幹細胞移植を受けており、登録時の骨髄芽球中央値は40%(範囲:0~100)だった。 コホート2A(94例、追跡期間中央値20.3ヵ月)における全寛解の割合は77%(95%信頼区間[CI]:67~85)であり、このうちCRが55%(45~66)、CRiは21%(14~31)であった。事前に規定された帰無仮説は、全寛解(≦40%)および完全寛解(≦20%)のいずれについても棄却された(p<0.001)。 少なくとも1回の投与を受けた127例(追跡期間中央値21.5ヵ月)の無イベント生存期間中央値は11.9ヵ月(95%CI:8.0~22.1)であり、推定6ヵ月無イベント生存率は65.4%、12ヵ月無イベント生存率は49.5%であった。また、全生存期間中央値は15.6ヵ月(12.9~評価不能)で、推定6ヵ月全生存率は80.3%、12ヵ月全生存率は61.1%だった。Grade3以上のICANSは7.1% サイトカイン放出症候群は87例(68.5%)に発現し、このうちGrade3以上は3例(2.4%)であった。また。免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)は29例(22.8%)に、Grade3以上は9例(7.1%)に認めた。 obe-cel投与後60日以内に、発熱性好中球数減少が31例(24.4%)で発生し、5例が感染症で死亡した。obe-celに起因する死亡は2例にみられ、1例はICANSの進行を伴う急性呼吸窮迫症候群、もう1例は好中球減少性敗血症によるものであった。 著者は、「obe-cel投与後の重篤なICANSはリンパ球除去療法前の骨髄負荷が高度(芽球>75%)な患者にほぼ限定されていたことから、骨髄負荷が軽度(芽球<5%)の患者では、obe-celを外来で安全に投与できる可能性が示唆される」「obe-celは、より早期の治療ラインでの地固め療法としても検討に値する」としている。

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レナカパビル年2回投与、男性/ジェンダーダイバースのHIV曝露前予防に有効/NEJM

 男性およびジェンダーダイバースのHIV感染発生率は、レナカパビルの年2回皮下投与により、バックグラウンドおよびエムトリシタビン/テノホビル・ジソプロキシルフマル酸塩(F/TDF)投与と比較して89~96%有意に低下した。米国・エモリー大学のColleen F. Kelley氏らPURPOSE 2 Study Teamが、米国、ブラジル、タイ、南アフリカ、ペルー、アルゼンチンおよびメキシコの計92施設で実施した第III相無作為化二重盲検実薬対照比較試験「PURPOSE 2試験」において示された。年2回のレナカパビル皮下投与は、シスジェンダー女性におけるHIV曝露前予防(PrEP)に有効であることが示されているが、シスジェンダー男性、トランスジェンダー女性、トランスジェンダー男性およびジェンダーノンバイナリーにおけるレナカパビルPrEPの有効性は不明であった。NEJM誌オンライン版2024年11月27日号掲載の報告。16歳以上ジェンダーダイバース3,271例をレナカパビル群、F/TDF群に無作為化 PURPOSE 2試験の対象は、出生時の性別が男性とされたパートナーと性交渉をもつシスジェンダー・バイセクシュアル・その他の男性、トランスジェンダー女性、トランスジェンダー男性、およびノンバイナリージェンダーで、年齢が16歳以上、HIV感染状況が不明、スクリーニング前3ヵ月間にHIV検査またはPrEP使用歴がない人であった。 研究グループは、参加者をスクリーニングし、中央検査でHIV陰性が確認された人を、レナカパビル群(927mgを26週間ごとに2回皮下投与、プラセボ経口投与、ローディングとして1日目および2日目にレナカパビル300mg錠×2錠を経口投与)、またはF/TDF群(エムトリシタビン200mgとTDF 300mgを1日1回経口投与、プラセボを皮下投与およびローディングで経口投与)、2対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、HIV感染の発生であった。有効性の主要解析では、レナカパビル群のHIV感染発生率をバックグラウンドHIV感染発生率(スクリーニングでHIV陽性が確認された集団に基づくHIV感染発生率)と比較した。また副次解析として、レナカパビル群とF/TDF群のHIV感染発生率を比較した。 2021年6月28日~2023年12月12日に、4,807例がスクリーニングを受け、HIV検査の結果が得られた4,634例のうち378例(8.2%)がHIV感染と診断され、そのうち45例(11.9%)が最近の感染であった。バックグラウンドHIV感染発生率は、100人年当たり2.37(95%信頼区間[CI]:1.65~3.42)であった。 4,807例のうちHIV陰性で適格基準を満たした3,271例が、無作為化され試験薬を少なくとも1回投与された。このうち、1日目にHIV感染が判明した症例を除く3,265例が修正ITT集団として有効性の解析対象となった(レナカパビル群2,179例、F/TDF群1,086例)。HIV感染の発生率、レナカパビル群2例vs.F/TDF群9例 解析対象3,265例のうち、11例のHIV感染の発生が観察された。レナカパビル群は2例(発生率0.10/100人年[95%CI:0.01~0.37])、F/TDF群は9例(0.93/100人年[0.43~1.77])であった。 レナカパビル群におけるHIV感染発生率は、バックグラウンドより96%(発生率比:0.04、95%CI:0.01~0.18、p<0.001)、F/TDF群より89%(0.11、0.02~0.51、p=0.002)、いずれも有意に低かった。 安全性に関する懸念は認められなかった。レナカパビル群では2,183例中26例(1.2%)、F/TDF群では1,088例中3例(0.3%)が、注射部位反応により投与を中止した。 著者は研究の限界として、レナカパビルが、治療経験が豊富な多剤耐性HIV患者のみに使用することが承認されており、対象者は限られていたことなどを挙げている。

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第240回 消費者向け「遺伝子検査」を受けて思わず動揺!その分析結果とは

消費者向け(Direct-to-Consumer:DTC)遺伝子検査について目にしたことがある医療者も少なくないだろうと思う。私もこれまでネット上で目にはしていたが、眉唾モノとの印象が強く、完全無視を決め込んでいた。しかし、ある取材でこれを受けなければならなくなった。編集者が「早い・安い」で申し込んだ検査キットが届いたのは、今から約1ヵ月前。検査キットと言っても唾液採取のための容器とその補助装備、さらにID・パスワードが書かれた紙が入っていただけだ。まず、そのID・パスワードで検査会社のウェブサイトにアクセスし、個人情報や生活習慣、飲酒・喫煙歴、両親の出身地、自分と親の既往歴などについての簡単なアンケートに回答する。そのうえで同封されていた容器に自分の唾液を充填し、ポストに投函。翌日には検体が無事届いたとのメールが入り、それから1週間で自分のメールアドレスに検査結果終了の案内メールが届いた。体質分析の結果早速アクセスしてみた。200項目超の体質の項目を見る。大まかな項目は以下のとおり。基礎代謝量…高  肥満リスク…低  筋肉の発達能力…高短距離疾走能力…低  有酸素運動適合性…低  運動による減量効果…高アルコール代謝…普通  酒豪遺伝子(意味不明だが)…普通  二日酔い…低アルコール消費量…多  アルコール依存症リスク…中  ワインの好み…赤肌の光沢…低  肌のしわ…多  AGA発症リスク…低まあ、基礎代謝に関しては高いのかどうかわからないが、かつて幼少期の娘からは「お父さんと一緒に寝ていると、お布団の中がコタツを最強にした感じで、冬でも汗をかく」と言われたことがある。体質では「登山家遺伝子」なる項目もあり、そこは“高所登山家タイプ”となっていた。体質の食習慣に関する評価項目では、なぜか芽キャベツと甘いものは好まないとの評価だった(私は仕事場近くの焼き鳥・焼きとん屋に行き、野菜串焼きに芽キャベツがあると喜んで注文し、ムシャムシャ食べてしまうのだが…)。飲酒については、実生活と明確に異なるのは、私の好みのワインは「白」という点だ。肌については自覚がある。男性型脱毛症(AGA)の発症は確かに今のところその兆しはない。しかし、ここまで来ると、大きなお世話と言いたくもなる。いずれにせよ当たらずとも遠からずというか、当たっていると言えるものもあれば、明らかに違うと言えるものもある。ただ、自分の体のことはわかっているようで、わかっていない部分もあるので何とも言えない。性格分析の結果そして性格についても分析があり、同じ項目について事前アンケートの結果と検査結果が並列で記載がある。こちらもアンケート結果と検査結果がほぼ同一のものもあれば違うものもある。どちらかといえばほぼ同一のものがほとんどである。そして「総合性格タイプ」は、持ち前のタフな精神力で、自分の好奇心に従って未知の世界へどんどん飛び込んでいける“サバイバルYouTuber”タイプとの評価である。まあ、当たっていると言えなくもないが、同時にYouTuberと一緒にされるのもなんだかなという感じである。165疾患のリスク、その結果は…さてこの検査の本丸、というか受ける人の多くが気にするであろうと考えられるのが疾患リスクである。私の受けた検査では、「予防」なる大項目があり、さらに一般疾患と各種がんの合計165疾患についてリスクが表示されている。このリスク表示、疾患ごとにオッズ比のような数値と大、中、小の3段階の定性的表現で発症リスクが示してあった。がんの項目を見ていくと、ほとんど問題はなさそうである。が、後半にスクロールしている手が止まった。多発性骨髄腫の発症リスクが「大」とある。思わず「はあ?」と声が漏れてしまった。一瞬動揺してしまうと同時に、検査結果を見る当事者をそういう心理状況に置く結果通知をラーメン店の券売機にある「小」「並」「大」にも似たざっくりした表現で示された腹立たしさも入り混じった何とも言えない不快感である。さて当然のことながら多発性骨髄腫を知らぬわけはない。化学療法が奏功しやすい血液がんの中でも難治で知られるがんである。少なくとも数年前の5年相対生存率は50%未満だ。ちなみにこれ以外でも一般疾患では、痛風、狭心症、そしてなぜか慢性C型肝炎もリスク大と判定された(というか、C型肝炎に未感染であることはたまたま最近行ったある検査で判明している)。だが、やはり多発性骨髄腫のリスク大のインパクトが一番大きい。発症するとかなりの痛みを伴うことや激烈な化学療法が必要になること、そして治癒もコントロールも難しいことがわかっているからだ。もっともDTC遺伝子検査は、正確に言えば遺伝子そのものを調べているわけではなく、「一塩基多型(SNP、スニップ)」と疾患に関する相関を調べた研究を基にリスク判定しているため、各種固形がんや遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)のような発症や増悪に関与する遺伝子変異の検査に比べれば、当たるも八卦当たらぬも八卦の域であることは私自身も百も承知である。ただ、実はちょっとだけ安堵感もあった。血液内科専門医の皆さんならご存じのように、昨今、この疾患では新薬開発が活発で治療選択肢も増えているからだ。治療法によっては5年相対生存率も60%近くまで伸びている。そんなこんなで日本血液学会の「造血器腫瘍診療ガイドライン2023」に記載された多発性骨髄腫のパートを改めて通読してみた。私にとってこれはこれで改めて知識の整理ができる利点もあった。ただ、ガイドラインで示されている治療の実際は、やはり文字で読んでいるだけでもきつそうである。とはいえ、今後本当に多発性骨髄腫を発症したとしても「あの時、ああいう結果が出てたしな」という感じで受け止められると考えれば、この検査が自分にとって無意味だったとまでは言えない。神社でおみくじを引いて、「凶」と出た直後にケガをしたら、「おみくじは凶だったし」と自分を納得させようとすることとどこか似ている。一部の専門家がDTC遺伝子検査の持つ不確実性を踏まえ、「占い」と評してしまうのはそうしたところにも起因しているのかもしれない。ただし、私のように割り切れる人はどれだけいるだろうか? 気弱な人、生真面目な人ならばそうは簡単に割り切れない危険性は十分にある。そのように考えると、まったく科学的根拠がないわけではないとはいえ、ただ唾液を投函してこのような結果が示されるという今の在り方は、もう少し改善することも必要なのではないかとも考え始めている。

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第239回 「遺伝子治療」を正しく説明できる?~コロナワクチンを遺伝子組み換えと呼ぶなかれ

SNS上では相も変わらず新型コロナウイルス感染症のワクチンに関して、まあどこをどう突けばそんな話が出てくるのかと思うような言説が飛び交っている。その中で結構目立つのがmRNAワクチンを“遺伝子組み換えワクチン”と呼ぶことである。遺伝子組み換えとは、厳密に言えば「ある種の生物から有用な性質を持つ遺伝子を取り出し、植物などの細胞の遺伝子に組み込み、新しい性質をもたせること」ことを指すため、まったく的外れな呼称である。多くの人がご存じのように、遺伝子組み換え技術はすでに食品などで使用されている。これまで農作物などでは人にとって好ましい新品種を交配で作り出してきたが、遺伝子組み換え技術により、新品種を作り出す期間が短縮されたのである。しかし、今でもこうした食品は危険だと主張する人は一部にいる。そして最近公開されたある調査を見て、どうやら人は「遺伝子」という言葉にやや過敏に反応するのではないかと思いつつある。調査とはファイザー社が2024年9月に国内の20代以上の男女(スクリーニング調査1万人、本調査829人)に行った遺伝子治療に関する一般向け意識調査である。結果を要約すると、▽「遺伝子治療」という言葉を聞いたことのない人は30% (n=10,000)▽ 遺伝子治療への「誤解や理解不足がある人」は98.4% (n=829)▽遺伝子治療に対し、「怖い、危険、不安」というネガティブな印象を持つ人は46%(n=829)、というものだ。ちなみ2番目の「誤解や理解不足がある人」とは、アンケートで用意された遺伝子治療に関する質問6つを1つでも正答できなかった、あるいはわからなかった人を指し、これは一般向けにはなかなか厳しいと感じる。むしろ「怖い、危険、不安」が5割弱という結果がやや驚きだった。釈迦に説法は承知で、ここで遺伝子治療について簡単に整理しておきたい。遺伝子治療とは「治療用遺伝子をベクターに乗せて標的細胞内に導入する治療法」だが、概論的な作用機序は(1)治療遺伝子を病的細胞内で働かせて細胞を改変(2)治療用遺伝子が宿主細胞内に取り込まれタンパク質を発現し、それらが分泌・全身を循環して遺伝子の欠損や異常を補完、に大別される。また、この標的細胞の遺伝子導入法は、標的細胞を体外に取り出してベクターで遺伝子を導入し、品質チェックをしながら培養して患者の体内に戻す体外法(ex vivo法)、治療遺伝子を乗せたベクターを直接体内に投与して遺伝子導入を起こさせる体内法(in vivo法)の2つがある。私自身は遺伝子治療に拒否感はないが、記者2年目の1995年にアデノシンアミナーゼ(ADA)欠損症に対して北海道大学が行った日本初の遺伝子治療以降は、昨今のCAR-T細胞療法(商品名:キムリア、イエスカルタ、ブレヤンジ)や脊髄性筋萎縮症(SMA)に対するオナセムノゲンアベパルボベク(商品名:ゾルゲンスマ)まで知識も記憶も抜け落ちている。ということで、日本遺伝子細胞治療学会理事の山形 崇倫氏(栃木県立リハビリテーションセンター 理事長/自治医科大学小児科学講座 客員教授)に遺伝子治療の現在地について聞いてみた。医師でも「遺伝子治療が怖い」と思う理由山形氏は前任の自治医科大学小児科教授時代の2015年、小児神経難病の1種である芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)欠損症を対象にAADCを発現するアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いた遺伝子治療を国内で初めて行った経験を有する。前述のファイザーによる一般向けアンケートの結果に講評も寄せている山形氏だが、正直結果はやや意外だったようで、「十分に情報が伝わっていない現実は否定しがたいと思う。結局は『知らないから怖い』という心理ですね。実際に遺伝子治療が対象になる可能性がある患者やその家族が遺伝子治療の効果を知ると、『ぜひやってほしい』と積極的な姿勢に変わることが多い」と語る。これを裏付けるかのように、遺伝子治療について「怖い、危険、不安」と回答した人(381人)でも、「もしあなたが遺伝子が原因の疾患に罹患して、治療法の選択肢の1つとして遺伝子治療があった場合、遺伝子治療を受けてみたいと思いますか」との問いに、「ぜひ受けてみたい」「やや受けてみたい/受けてみてもよい」の回答合計は3分の1の33.6%に上る。要は背に腹は代えられぬということなのだろう。もっとも山形氏は、1990年代に遺伝子治療が行われた患者では、後に副作用として白血病の発症に至った例があることなどから、医師の中でもその時代の認識で止まっていることも少なくないと考える。「現時点で最先端の遺伝子治療の対象は小児の難病・希少疾患が多く、これらは医師でも診療経験がある人は少ない。結果的に遺伝子治療に関して教科書的な知識はあるものの、それ以上はあまり知らないことも多い。先日、医師向けに遺伝子治療の講演をしたが、反応の大半は『難しそうだね』と。私が示したAADC欠損症患者の治療後の動画を見せたら『すごいな』とは思ったようですが」と同氏はコメントした。昨今の医学部教育ではカリキュラムに組み込まれるようになっているものの、山形氏は「すべての大学がきちんとした講義を行っているかはわからない。基礎医学や病態生理学の一部で触れられる程度のところもある」との認識を示す。さて国立医薬品食品衛生研究所遺伝子治療部がまとめた日本国内での遺伝子治療薬の開発状況1)を見ると、後期開発品はin vivo法ではほぼ単一遺伝子疾患、ex vivo法では血液がんで占められている。これは標的が絞り込みやすいからだと思われる。もっとも、標的が決定しても遺伝子導入方法が今も大きな課題として残る。同氏が取り組んだAADC欠損症の場合は局所投与という形で行ったが、「ほとんどの遺伝性疾患の場合は、全身的な細胞への遺伝子導入が必要になるのが実際」と語った。現時点で明らかになっているウイルスベクターの安全性ここで問題になるのがベクターの効率性と安全性である。ベクターに関しては、使われるウイルスベクターが初期のガンマレトロウイルスからレンチウイルス、さらに現在ではAAVへと変化してきた。そもそもガンマレトロウイルスの場合、マウスで白血病を起こすウイルスということ自体が問題だったが、AAVはヒトでの病原性はないため、かなり安全性は改善されたと言える。ただ、静注での全身投与が必要な場合は要注意だという。同氏は「静注による大量投与では、細胞に取り込まれずに循環するベクターが肝細胞表面や血管内皮に結合し、そこで起きる免疫反応で肝障害・血管内皮障害などの副作用を起こすことがわかり、絶妙な投与量の調節が求められることがわかった」と指摘する。この問題を解決するため、現在では(1)遺伝子治療薬の投与時に免疫抑制薬の併用、(2)肝細胞に結合親和性の低いベクターを開発、(3)免疫発達途上の乳幼児期に発症する疾患ではできるだけ早期に治療開始、が考えられるという。とりわけ(3)は副作用だけではなく、治療効果の面からも重要なファクターだ。たとえば、前述のSMAでのオナセムノゲンアベパルボベクによる治療は、治療開始時期が早いほど健常者との運動機能発達レベルの差が少ないことがわかっている。そこでカギとなるのが、まず現時点で先天代謝異常20疾患が対象となっている新生児マススクリーニングの徹底とその拡大である。現状では新生児の親が支払う費用負担が地域によって異なることが影響してか、受診率に地域格差が存在する。また、新たに治療法が登場したSMAや造血幹細胞移植により治癒の可能性がある重症複合免疫不全症に関しては、2023年からこども家庭庁の旗振りにより国と都道府県・指定都市の折半による全額無料検査の実証事業が決定した。2024年10月時点で27都府県・10政令指定都市が事業に参加したが、「財政基盤の弱い県などは参加を控えている」(山形氏)と、ここでも地域格差が生まれている。同氏は「いっそ新生児に一律でスクリーニングの遺伝子検査をすればいいという意見もあるが、実はそれのみでは発見しにくい疾患もある。その意味ではマススクリーニングの受診率向上、対象疾患の拡大とともに、学会などの協力の下、乳幼児の健診などを担う一般内科医の知識向上に尽力して総出で臨床的な異常を早期に発見していくというアナログな対応も現状では必要」とも語る。一方で遺伝子治療に関しては、日本では必ずしも研究開発が活発ではないとの指摘もある。実際、「The Journal of Gene Medicine」の調べ2)による2023年3月時点での世界各国の遺伝子治療の臨床試験数で日本は世界第6位の55件。1位であるアメリカの2,054件、2位の中国の651件と比較して大きく水をあけられている。山形氏は自身が遺伝子治療に取り組んだ際、「高い基準を満たしたベクター製造が必要かつその費用が非常に高額で、研究費を得るために厚生労働省に何度も足を運んだ」と振り返る。この経験を踏まえ、日本での遺伝子治療の進展のためには、国が旗振り役となり、資金調達を中核としたエコシステムの構築が必要だと主張する。また、「新型コロナワクチンでは変異株対応でmRNA部分以外はプラットフォームとみなして審査を簡略化する措置が常態化しているが、これと同じように遺伝子治療では、対象疾患や導入遺伝子の違いがあってもベクターが同一の場合は、ベクター部分の審査を簡略化する仕組みは導入できるはず」と提言する。新型コロナの治療薬・ワクチンで世界に遅れをとった日本。岸田前政権の末期には日本発の創薬エコシステム確立を声高に掲げ、どうやら石破政権でもこの方針を引き継ぐと言われている。そこを基軸に遺伝子治療分野で勝ち目を見いだせるのだろうか?参考1)国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子医薬部ホームページ:国内企業あるいは日本で臨床開発中の主な遺伝子治療製品(2024年11月20日更新)2)Ginn SL, et al. J Gene Med. 2024;26:e3721.

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