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血友病Bへのfidanacogene elaparvovec、長期の安全性・有効性/NEJM

 重症または中等症の血友病B成人患者において、fidanacogene elaparvovecの単回静脈内投与は、投与後3~6年間に認められた有害作用はない、あるいはあっても軽度であった。また、アデノ随伴ウイルス(AAV)を用いた治療の中で最も少量である体重1kg当たり5×1011ベクターゲノムの投与で、長期にわたり有効性が維持された。オーストラリア・シドニー大学のJohn E. J. Rasko氏らが、第I/IIa相試験および長期追跡試験の結果を報告した。血友病B治療のために開発された遺伝子組み換えAAVベクターのfidanacogene elaparvovecは、高活性第IX因子変異体(FIX-R338L変異体[FIX-Padua])の持続的な発現が認められているが、長期的な安全性と有効性は不明であった。NEJM誌2025年4月17日号掲載の報告。fidanacogene elaparvovecを単回投与し3~6年間追跡 研究グループは、18歳以上の重症または中等症の血友病B(第IX因子活性が正常値の2%以下)患者に、fidanacogene elaparvovecを体重1kg当たり5×1011ベクターゲノムの用量で単回静脈内投与した。投与1年後、参加者はさらに5年間の長期追跡試験に登録できることとした。 本試験の主要目的は安全性の評価で、有害事象、臨床検査値の変化などが含まれた。副次目的は有効性の評価で、年間出血率、第IX因子活性などであった。 計15例が登録されfidanacogene elaparvovecの投与を受けた。このうち14例が長期追跡試験に参加し、少なくとも3年間の追跡調査を完了した。追跡期間中央値は5.5年(範囲:3~6)で、データカットオフ時点で8例が試験を継続していた。安全性プロファイルは良好、平均年間出血率は1未満を維持 長期追跡試験に参加した14例において、投与1年後以降に治療関連有害事象を報告した患者はいなかった。 追跡期間全体を通じて、4例に計9件の重篤な有害事象が報告された。内訳は、脊柱管狭窄症、事故、関節脱臼、腎挫傷、肝挫傷および肋骨骨折が1例(重複)、虫垂炎、大動脈解離、関節内出血が各1例で、いずれも治療に関連するものではなかった。試験中止や死亡に至った有害事象はなく、血栓性イベントや抗第IX因子抗体も認められなかった。 追跡期間を通じて第IX因子活性平均値は軽症血友病の範囲内に維持されており、年間出血率は平均値1未満、中央値は0で、10例(67%)は治療を要する出血エピソードを一度も経験しなかった。 肝臓のサーベイランス超音波検査では、がんの所見は認められず、体重増加とALT値上昇(最大値77U/L)を伴う4例に脂肪肝がみられた。また、1例で投与後5年時から基礎疾患の肝線維化の進行が認められたが、本症例はBMI値が高く、C型肝炎、B型肝炎およびHIV感染の既往があった。 8例で計13件の外科手術が行われ、そのうち10件で外因性第IX因子が投与されたが、予期しない出血合併症は発生しなかった。

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4月25日 小児がんゴールドリボンの日【今日は何の日?】

【4月25日 小児がんゴールドリボンの日】〔由来〕「し(4)ょうに(2)がん」と「ゴ(5)-ルド」の語呂合わせからゴールドリボン・ネットワークが制定。ゴールドの由来は「子どもは、最も貴重な宝物である」という考えから金(ゴールド)にたとえ、シンボルマークに決定した。この日前後の土曜日には、「ゴールドリボン・ウォーキング」を開催し、小児がん経験者の体験談を通して、がん啓発などが行われている。関連コンテンツ学校がん教育.com部位別がんの5年相対生存率【患者説明用スライド】小児がん、定期的な症状スクリーニングで苦痛な症状が改善/JAMA生殖補助医療で生まれた子供のがんリスクは?小児がんの薬剤開発、何が進んだか、次に何をすべきか/日本小児血液・がん学会

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未治療CLLへのアカラブルチニブ+オビヌツズマブ、6年PFSの結果(ELEVATE-TN)/Blood

 未治療の慢性リンパ性白血病(CLL)に対するアカラブルチニブ単独またはアカラブルチニブとオビヌツズマブ併用の有用性を評価した第III相ELEVATE-TN試験において、追跡期間中央値74.5ヵ月での成績を米国・Willamette Valley Cancer InstituteのJeff P. Sharman氏らが報告した。アカラブルチニブ+オビヌツズマブ群の有効性と安全性は維持され、無増悪生存期間(PFS)は、高リスク患者を含めてchlorambucil+オビヌツズマブ群より延長していた。Blood誌オンライン版2025年4月8日号に掲載。 本試験は、未治療CLLを対象に、アカラブルチニブ単独およびアカラブルチニブ+オビヌツズマブをchlorambucil+オビヌツズマブと比較した無作為化多施設共同非盲検第III相試験である。主要評価項目は、独立判定委員会(IRC)評価によるアカラブルチニブ+オビヌツズマブ群のPFS(vs.chlorambucil+オビヌツズマブ群)、重要な副次評価項目は、IRC評価によるアカラブルチニブ単独群のPFS(vs.chlorambucil+オビヌツズマブ群)で、他の副次評価項目は、全奏効率、次治療までの期間、全生存期間(OS)などであった。 主な結果は以下のとおり。・535例がアカラブルチニブ+オビヌツズマブ群(179例)、アカラブルチニブ単独群(179例)、chlorambucil+オビヌツズマブ群(177例)に無作為化された。・PFS中央値は、アカラブルチニブ+オビヌツズマブ群およびアカラブルチニブ単独で未達、chlorambucil+オビヌツズマブ群では27.8ヵ月であった(いずれもp<0.0001)。推定72ヵ月全PFS率は順に78.0%、61.5%、17.2%であった。・アカラブルチニブ+オビヌツズマブ群はアカラブルチニブ単独群よりPFSを改善した(ハザード比[HR]:0.58、p=0.0229)。IGHV変異なし、17p欠失/TP53変異、Complex karyotypeを有する患者では、アカラブルチニブ単独群、アカラブルチニブ+オビヌツズマブ群はchlorambucil+オビヌツズマブ群より有意にPFSが改善した(アカラブルチニブを含む両群でそれぞれp<0.0001、p≦0.0009、p<0.0001)。・OS中央値は3群とも未達であり、アカラブルチニブ+オビヌツズマブ群はchlorambucil+オビヌツズマブ群より有意にOSが延長した(HR:0.62、p=0.0349)。推定72ヵ月OS率は、アカラブルチニブ+オビヌツズマブ群83.9%、アカラブルチニブ単独群75.5%、chlorambucil+オビヌツズマブ群74.7%であった。・4年経過以降に発現した有害事象はほとんどがGrade1~2で、有害事象、重篤な有害事象、注目すべき事象の発現割合は、アカラブルチニブを含む群で同程度であり、アカラブルチニブおよびオビヌツズマブの既知の安全性プロファイルと一致していた。

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帯状疱疹、有害事象として報告が多い薬剤は

 米国食品医薬品局(FDA)の有害事象報告システム(FAERS)データベースを用いて、帯状疱疹の報告と関連薬剤を評価した後ろ向きpharmacovigilance研究の結果、複数の高リスク薬剤が特定された。さらに、これらの薬剤の中には添付文書に帯状疱疹リスクについての記載がないものがあることも明らかになった。中国・Xuzhou Medical UniversityのJiali Xia氏らによるFrontiers in Pharmacology誌オンライン版2025年3月26日号への報告。 本研究では、2004年第1四半期~2024年第3四半期までのFAERSにおける帯状疱疹に関する報告を解析し、とくに帯状疱疹発症の報告数が多い上位30薬剤を抽出した。また、薬剤と帯状疱疹との潜在的関連を評価するために、不均衡分析(disproportionality analysis)の手法を用いて、比例報告比(PRR)および報告オッズ比(ROR)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・2004~24年の対象期間において、FAERSには帯状疱疹に関する報告が5万164件登録されていた。関連が示唆された薬剤の大部分は免疫抑制剤であった。・発症年齢としては、41~65歳が最も多く(31.11%)、次いで65歳以上(26.05%)、19~41歳(7.46%)、18歳以下(1.33%)の順であった。性別では女性の割合が高く(64.41%)、男性を大きく上回った。・報告件数が最も多かったのはアダリムマブ(3,577件)であり、エタネルセプト(3,380件)、トファシチニブ(2,696件)、インフリキシマブ(2,240件)、レナリドミド(1,639件)が続いた。・報告件数が多かった30薬剤のうち24薬剤は添付文書に帯状疱疹リスクが記載されていたが、残る7薬剤にはその記載がなかった。7薬剤は、セクキヌマブ、インターフェロンβ-1a、ヒト免疫グロブリンG、ゴリムマブ、アレンドロン酸ナトリウム、プレガバリン、イブルチニブであった。・RORが最も高かったのはアニフロルマブ(n=45、ROR:20.97、PRR:19.87)であり、ロザノリキシズマブ(n=7、ROR:16.05、PRR:15.40)、ocrelizumab(n=1,224、ROR:9.64、PRR:9.42)、アレムツズマブ(n=286、ROR:9.34、PRR:9.13)、トファシチニブ(n=2,696、ROR:8.27、PRR:8.11)が続いた。・RORが高かった30薬剤のうち18薬剤は添付文書に帯状疱疹リスクが記載されていたが、残る12薬剤にはその記載がなかった。12薬剤は、ロザノリキシズマブ、トジナメラン、エラペグアデマーゼ、サトラリズマブ、エフガルチギモド アルファ、プララトレキサート、シクレソニド、efalizumab、Ambrosia artemisiifolia pollen、アレンドロン酸ナトリウム、pentoxifylline、anakinraであった。 著者らは、本研究で実施された不均衡分析は因果関係を証明するものではないとし、リスクを定量化し根本的なメカニズムを解明するには、前向き研究が必要としている。そのうえで、これらの薬剤を使用する際に、臨床医は帯状疱疹リスク増加の可能性について考慮する必要があるとまとめている。

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多発性骨髄腫と共に“生きる”選択を―Well-beingから考える

 Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は2025年4月4日、「多発性骨髄腫患者のWell-being向上も考慮した治療目標を」と題したメディアセミナーを開催した。多発性骨髄腫は、根治が難しいものの、治療の進歩により長期生存が可能となってきている疾患である。本セミナーは、患者が「治療と生活を両立」させるために必要な視点として「Well-being」に焦点を当て、医療者と患者双方の視点からその意義を共有することを目的として開催された。 セミナーでは、群馬大学大学院医学系研究科 血液内科学分野の半田 寛氏が「診断から最新治療、そして患者自身ができること」について講演を行い、続いて日本骨髄腫患者の会代表の上甲 恭子氏が登壇し「Well-beingとは“一人一人が今どのように生きたいか”」をテーマに患者の視点から語った。「多発性骨髄腫の治療を諦めず、やりたいことも諦めないために」 多発性骨髄腫の診断・治療は、この20年間で著しい進歩を遂げてきた。新たな薬剤の登場により、生存期間は大幅に延伸し、治療の選択肢も増えている。一方、治療の選択肢の多様化は、治療の複雑化という新たな課題を生んでいる。 こうした状況において、半田氏は「治療の目標は深い奏効、すなわちMRD(微小残存病変)検出感度未満の達成に向かっている。そのうえで、いかに患者のQOL(生活の質)やADL(日常生活動作)を損なわずに治療を継続できるかが今後の大きな課題である」と指摘した。たとえ根治が難しくとも「治療をしながら、自分らしく生きる」ことの両立が、これからの治療においてますます重要になってくるという。 その鍵となるのが「どう生きたいか」という価値観を、患者と医療者が共有する“Shared Decision Making(共同意思決定)”であると半田氏は述べる。治療法を選ぶ際、注射か内服か、治療期間の長短、通院頻度、生活の目標など、個々の患者の価値観に沿って擦り合わせていくことが不可欠であると強調した。「“いい塩梅”の暮らしを支える:患者のWell-beingを考える」 「治療のために生きるのではなく、生きるために治療をする」。多発性骨髄腫の治療が進歩する中で、患者にとって大切なのは「今をどう生きるか」であると、日本骨髄腫患者の会で代表を務める上甲氏は語った。講演では、自身の家族の経験や患者支援の活動を通して見えてきた、多発性骨髄腫患者における「Well-being」の在り方について紹介した。 上甲氏は、Well-beingという概念を「絶妙なバランス、つまり“よい塩梅”」と表現し、患者調査の結果から「長生きしたい」よりも「自分らしく、元気に過ごしたい」と考える傾向が高齢患者に多いことを紹介した。一方で、痛みや不安、外見の変化に苦しむ声も届くことを紹介。ある患者の「病院には薬をもらいに行っているだけ」「主治医との会話にも虚無感がある」といった実情に対し、上甲氏は「医療者との対話の重要性、そして患者自身が正しい知識を持ち、信頼関係を築くこと」の必要性を訴えた。医師と患者、すれ違う“目標”と本音 パネルディスカッションでは、医師と患者それぞれの「治療目標」に関する意識の違いが調査結果を交えて紹介された。 患者が挙げた目標として最も多かったのは「以前と変わらない生活を送りたい」、次いで「好きなことを続けたい」であった。一方、医師は「生存期間の延長」など、科学的エビデンスに基づいた数値を重視していた。 これについて半田氏は、「医師は“提供できるもの”として科学的な指標を挙げているが、患者は“どう生きたいか”を大切にしている」と説明。上甲氏も「“治療目標”という言葉は患者には伝わりにくい。“どんな生活を望んでいるか”と問うことで、初めて本音が語られる」と述べた。日常の充実が、治療を支える 「治療以外の時間の充実」が治療に与える影響についての調査では、医師の92%、患者の96%が「かなり良い影響を与える」または「やや良い影響を与える」と回答した。 上甲氏は「夢中になれることを持っている患者は、生きる力が明らかに違う」と述べ、半田氏も「やりたいことを伝えてもらえれば、それを実現できる治療を一緒に考えられる」と応じた。まとめ 多発性骨髄腫の治療は進歩し続けている。しかし、医学的な成功が必ずしも患者の幸福と一致するとは限らない。治療を続けながらも、自分らしい生活、すなわちWell-beingを実現するためには、医療者と患者が対等な立場で治療目標を共有することが求められる。科学的根拠に基づく治療と、患者が描く人生の在り方。その両輪がかみ合ってこそ、多発性骨髄腫の治療は本当の意味で“前進”していくと考えられる。

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第10回日本がんサポーティブケア学会学術集会 会長インタビュー【Oncologyインタビュー】第49回

出演:和歌山県立医科大学 内科学第三講座(呼吸器内科・腫瘍内科)教授 山本 信之氏2025年5月17日より、第10回日本がんサポーティブケア学会学術集会が開催される。総会のテーマは「最高のがんサポーティブケアを目指して beyond evidence」である。会長の和歌山県立医科大学山本信之氏に学術集会の見どころについて聞いた。参考第10回日本がんサポーティブケア学会学術集会ホームページ

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鉄欠乏症心不全患者に対するカルボキシマルトース第二鉄の静注は、心不全入院と心血管死を有意に減少させなかった:The FAIR-HF2無作為化臨床試験-心不全治療において貧血は難題-(解説:佐田政隆氏)

 心不全では貧血を伴うことが多く、貧血は心不全の重要な予後規定因子である。心不全による貧血の進行の機序としては、慢性炎症、腎機能低下、体液貯留による血液希釈、鉄欠乏などが想定されているが、「心・腎・貧血症候群」として近年、問題視されており、その病態の悪循環を断つためにいろいろな介入方法が試みられているが、特効薬がないのが現状である。 鉄欠乏は心不全患者の半数以上に合併し、心不全症状や運動耐容能の低下、心不全入院、心血管死と関連することが報告されている。鉄欠乏状態を評価するため、2つの指標が用いられている。フェリチンは体内の鉄を貯蔵するタンパク質で、血液中のフェリチンの量を測定することで体内の鉄の貯蔵量を推定することができる。一方、血清鉄は、トランスフェリンというタンパク質に結合して搬送され、血清鉄/総鉄結合能✕100(%)が鉄飽和度(TSAT)と呼ばれ、血液中の鉄と結合しているトランスフェリンの割合を指し、鉄の過不足を判断する指標として用いられる。心不全患者の鉄欠乏の基準として、血清フェリチン<100ng/mL、または血清フェリチン100~300ng/mLかつTSAT<20%と定義されており、このような患者を対象にして鉄補充の有効性と安全性をみる数々の臨床研究が行われてきた。6分間歩行や最大酸素摂取量といったソフトエンドポイントでは有効性を示した報告が多いが、心血管死と心不全入院といったハードエンドポイントでは、有効性を示すことができなかった研究がほとんどである。 今回のFAIR-HF2研究でも、カルボキシマルトース第二鉄の静注は主要評価項目である心血管死+心不全入院を36ヵ月の経過観察期間中に、減らす傾向はあったが有意差を示すことはできなかった。患者のQOLや患者自身による全体的な健康評価の改善に寄与することは確認された。 このような状況下、2025年3月28日発表の日本循環器学会・日本心不全学会の心不全診療ガイドラインにおいて、「鉄欠乏を有するHFrEF/HFmrEF患者に対する心不全症状や運動耐容能改善を目的にした静注鉄剤を考慮する」ことが推奨クラスIIaとされている。しかし、鉄過剰は酸化ストレスの増加をもたらし、脱力感や疲労感を生じさせ、発がん性との関係も報告され、重症の場合は、肝硬変や糖尿病、勃起不全、皮膚色素沈着、糖尿病といったヘモクロマトーシス様の症状を呈する。漫然と鉄剤を投与するのではなく、血清フェリチンやTSATによる細目なモニターが重要である。 心不全患者では慢性炎症のためヘプシジンが上昇しており、フェロポルチンといったマクロファージ中の鉄の有効利用を促進するタンパク質の分解が生じ、鉄利用が障害されている。このため、単なる鉄剤の投与が貧血の改善につながらないことが多い。最近、貧血治療薬として経口のHIF-PH阻害薬が各社から発売され、保存期慢性腎臓病患者と透析患者で、ヘモグロビン上昇作用はESA製剤に非劣性であることが報告されている。HIF-PH阻害薬は、ヘプシジンの低下、鉄の利用促進作用があることも報告されており、今後、心腎貧血症候群の悪循環を断ち切って、心不全患者の予後改善効果のエビデンスがRCTで示されることが期待される。

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未治療多発性骨髄腫の新しい治療選択肢:パラダイムシフトは起こるか

未治療多発性骨髄腫の患者さんへの新しい選択肢 2025年3月27日、サノフィは未治療の多発性骨髄腫の治療薬として、ボルテゾミブ、レナリドミド、デキサメタゾンによるVRd療法にイサツキシマブ(商品名:サークリサ®)を追加する4剤併用療法の適応追加承認を取得したCD38受容体を標的としたイサツキシマブに関するメディアセミナーを開催した。 今回のセミナーでは、イサツキシマブの適応拡大の意義や新たな治療戦略について、芹澤 憲太郎氏(近畿大学 医学部 血液・膠原病内科)と鈴木 憲史氏(日本赤十字社医療センター アミロイドーシスセンター)が解説した。サークリサ®が挑む多発性骨髄腫の治癒への挑戦 多発性骨髄腫の好発年齢の中央値は67歳と高齢者に多く発症する疾患であり、罹患率は年々上昇している。一方、治療の進歩に伴い、2006年以降死亡率は横ばいで推移している。とくに、近年は再発・難治の状態に使用できる新薬が多く登場しており、劇的な進歩を遂げている。 さらに、最近では多発性骨髄腫の治療戦略はPFSの延長だけではなく、微小残存病変/測定可能残存病変(MRD)を陰性化し、長期生存を目指すことが主流となっている。そして、多発性骨髄腫は再発を重ねるごとに奏効期間が短縮するため、初発時により深く、長く奏効する治療が必要とされていた。 イサツキシマブは再発・難治性の患者さんを対象としたIKEMA試験で現行治療法の中で最もMRD陰性化率が高く、CD8+T細胞の活性化や制御性T細胞の抑制効果が報告されており、次治療が必要な場合もその効果を高める可能性が考えられる。そのため、イサツキシマブをより早い段階で使用することがより治療成績を向上させることに寄与するのではないか、と芹澤氏は語った。 イサツキシマブ、ボルテゾミブ、レナリドミド、デキサメタゾンによる治療(IsaVRd療法)の意義としては、サブクローンの駆逐が見込めるだけでなく、イサツキシマブのアポトーシス誘導とボルテゾミブ、レナリドミドのROS産生による細胞傷害の相乗作用が期待できるため、より深く、長い奏効が期待できるレジメンであると考えられる。 今後の治療戦略としては、IsaVRd療法を最初に行うことで、移植適応ではより移植への到達度を高め、移植非適応ではFunctional Cureを目指した治療を考えられる、として芹澤氏は鈴木氏にバトンを渡した。サークリサ®による新たな治療戦略~IsaVRdでFunctional Cureを目指す~ 多発性骨髄腫はこれまで完治できない疾患であったが、新しい治療選択肢が増えた今、MRD陰性が維持できており、無治療でも病態を抑えられている状態、Functional Cureが目指せるパラダイムシフトが起こっている、と鈴木氏は冒頭で語った。 そのために、これからの多発性骨髄腫治療で重要なのは初期治療から再発をさせない治療戦略である。つまり、良好な予後を得るために必要なのはMRD陰性を維持できる治療が必要だ、ということだ。 実際に移植非適応の患者さんを対象にしたIMROZ試験では下記のような結果が示された。・主要評価項目であるPFSはIsaVRd群で中央値未到達、60ヵ月時点のPFSは63.2%・副次評価項目のsCR+CRの割合はIsaVRd群で74.7%・安全性プロファイルはVRd療法と同様であった 今後は年齢でなくnon-frailかFrailで治療を選択し、FrailでなければIsaVRd療法でMRD陰性化とFunctional Cureを目指すという治療戦略が考えられる。 鈴木氏は「多発性骨髄腫の治療は新時代を迎え、今後は治癒や予防を考えられるようになるのではないか。『早く行きたければ1人で行け、遠くにいきたければみんなで行け』という言葉の通り、医療従事者、製薬メーカー、患者さん、みんながより幸せになれる時代が来たと感じている」として講演を締めくくった。

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鉄欠乏心不全、カルボキシマルトース第二鉄vs.プラセボ/JAMA

 鉄欠乏性貧血を伴う心不全患者において、カルボキシマルトース第二鉄はプラセボと比較して、心不全による初回入院または心血管死までの期間を有意に短縮せず、心不全による入院総数も低減しなかった。ドイツ・Deutsches Herzzentrum der ChariteのStefan D. Anker氏らが行った多施設共同無作為化試験「FAIR-HF2 DZHK05試験」で、試験全コホートまたはトランスフェリン飽和度(TSAT)<20%の患者集団いずれにおいても同様の結果が示された。JAMA誌オンライン版2025年3月30日号掲載の報告。欧州6ヵ国の診療施設70ヵ所で試験 研究グループは2017年3月~2023年11月に、欧州6ヵ国の診療施設70ヵ所で、鉄欠乏性貧血(血清フェリチン値<100ng/mLまたはTSAT<20%かつ血清フェリチン値100~299ng/mLと定義)を伴う心不全(左室駆出率≦45%と定義)患者におけるカルボキシマルトース第二鉄の有効性と安全性を評価した。 被験者は、カルボキシマルトース第二鉄の静脈内投与群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。カルボキシマルトース第二鉄群は、当初の受診2回(ベースラインと4週時)に最大2,000mgの投与を受け、その後、投与中止の基準を満たさない限り4ヵ月ごとに500mgの投与を受けた。 主要エンドポイントは、(1)心不全による初回入院または心血管死までの期間、(2)心不全による入院総数、(3)TSAT<20%の患者における心不全による初回入院または心血管死までの期間であった。すべてのエンドポイントは、追跡期間を通して評価された。 エンドポイントの統計学的有意性は、Hochberg法による評価で、次の3つのうち少なくとも1つを満たしている場合とした。(1)3つのエンドポイントすべてでp≦0.05、(2)2つのエンドポイントでp≦0.025、(3)いずれかのエンドポイントでp≦0.0167。3つの主要アウトカムいずれも統計学的有意性を満たさず 1,105例(平均年齢70[SD 12]歳、女性33%)が無作為化された(カルボキシマルトース第二鉄群558例、プラセボ群547例)。追跡期間中央値は16.6ヵ月(四分位範囲:7.9~29.9)であった。 第1主要アウトカム(心不全による初回入院または心血管死)の発生は、カルボキシマルトース第二鉄群141例、プラセボ群166例であった(ハザード比[HR]:0.79[95%信頼区間[CI]:0.63~0.99]、p=0.04)。 第2主要アウトカム(心不全による入院総数)は、カルボキシマルトース第二鉄群264回、プラセボ群320回であった(率比:0.80[95%CI:0.60~1.06]、p=0.12)。 第3主要アウトカム(TSAT<20%の患者における心不全による初回入院または心血管死)の発生は、カルボキシマルトース第二鉄群103例、プラセボ群128例であった(HR:0.79[95%CI:0.61~1.02]、p=0.07)。 1回以上の重篤な有害事象を発現した患者数は、カルボキシマルトース第二鉄群(269例、48.2%)とプラセボ群(273例、49.9%)でほぼ同数であった。

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レンチウイルス抗CD20/抗CD19 CAR-T細胞、再発・難治性マントル細胞リンパ腫で全奏効率100%(第I/II相試験)/JCO

 再発・難治性マントル細胞リンパ腫(MCL)に対する二重特異性レンチウイルス抗CD20/抗CD19(LV20.19)CAR-T療法の第I/II相試験の結果、100%の全奏効率(ORR)を示し、88%で完全奏効(CR)を達成した。米国・Medical College of WisconsinのNirav N. Shah氏らがJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年3月31日号で報告。 本試験は、2ラインの治療に失敗または移植後に再発したMCL患者を対象とし、LV20.19 CAR-T細胞はCliniMACS Prodigyを用いて施設内で製造された。ナイーブT細胞と幹細胞メモリー(SCM)様T細胞を増やし最終CAR-T細胞を最適化するため、8日間もしくは12日間のフレキシブルな工程で製造した。 主な結果は以下のとおり。・再発・難治性MCL患者17例(第I相:3例、第II相:14例)にLV20.19 CAR-T細胞を2.5✕106個/kg単回投与した結果、最良ORRが100%(CR:88%、部分奏効:12%)で、第II相における90日CR率の有効性基準を超えた。・データカットオフ時点で2例が再発したが、追跡期間中央値15.8ヵ月において無増悪生存期間および全生存期間の中央値には達していない。・サイトカイン放出症候群が94%(16例)に発現したが、すべてGrade1または2であった。・免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群が28日間で18%(3例)に発現し、うち2例は可逆的なGrade3であった。・非再発死亡が3例にみられたが、いずれもB細胞無形成の状況だった。・最終のLV20.19 CAR-T細胞はSCM様T細胞/ナイーブT細胞の割合が高く、ほとんどの患者がアフェレーシスから8日以内に投与された。 本試験から、著者らは「施設内でフレキシブルな工程で製造されたLV20.19 CAR-T細胞が、再発・難治性MCLに対して実現可能で安全かつ有効であることを示した」と結論している。

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多発性骨髄腫に対する新たな二重特異性抗体テクリスタマブ/J&J

 ジョンソン・エンド・ジョンソン(法人名:ヤンセンファーマ)は、再発・難治性多発性骨髄腫の治療薬として本邦での製造販売承認を取得したテクリスタマブ(商品名:テクベイリ)を、2025年3月19日に発売した。これを受け、3月25日に記者説明会が開催され、石田 禎夫氏(日本赤十字社医療センター 血液内科部長/骨髄腫アミロイドーシスセンター長)が講演を行った。3剤使用後の患者にも有効なBCMA標的治療 テクリスタマブは、免疫調節薬、プロテアソーム阻害薬、抗CD38抗体を含む少なくとも3つの標準的な治療が無効または治療後再発となった患者、つまりtriple-class exposed(TCE)の患者に使用される。TCE患者の予後は不良であり、後続治療の全奏効率(ORR)は29.8%、無増悪生存期間(PFS)中央値は4.6ヵ月という報告もある1)。近年、TCE患者にも効果が期待できる治療として、B細胞成熟抗原(BCMA)を標的としたCAR-T細胞療法や二重特異性抗体が登場している。テクリスタマブの有効性プール解析と感染症対策 テクリスタマブはBCMAとCD3を標的とする二重特異性抗体で、海外第I/II相MajesTEC-1試験2)と国内第I/II相MMY1002試験3)の結果に基づいて承認された。MajesTEC-1試験のORRは63.0%(95%信頼区間[CI]:55.2~70.4)、PFS中央値は11.3ヵ月(95%CI:8.8~17.1)であった。一方、MMY1002試験のORRは76.9%(95%CI:56.4~91.0)、PFS中央値は未到達であった。 MajesTEC-1試験の患者登録期間は2020~21年であり、大半の患者はCOVID-19のパンデミック期に組み入れられた。患者登録期間が2021年12月以降であった中国人と日本人コホートを追加して実施されたプール解析4)では、追跡期間中央値29.2ヵ月におけるORRは66.4%(95%CI:59.7~72.6)、PFS中央値は15.1ヵ月(95%CI:10.5~19.8)と報告されている。 副作用の1つである感染症の対策として、IgG値を測定したうえでのグロブリン補充療法が推奨される。また、テクリスタマブの継続投与期に奏効が6ヵ月間持続した場合は、投与間隔を1週間から2週間に変更可能であり、2週間間隔のほうがGrade3以上の感染症発症が少なかったという報告もある5)。CAR-Tと二重特異性抗体、複数選択肢をどう使うか 石田氏は、BCMA標的治療後にCAR-T細胞療法を使用すると、有効性の低下や製造不良の増加が危惧されることから6)、個人的な見解として、可能であればCAR-T細胞療法使用を優先すると説明した。また、CAR-T細胞療法後に二重特異性抗体を使用する場合の有効性は、CAR-T細胞療法の奏効期間やT細胞の疲弊状態によって異なることが予想されると述べた。さらに、ほかの二重特異性抗体と比較した場合のテクリスタマブの特徴として、海外で先行承認されたためにさまざまなデータが蓄積されていること、体重当たりの投与量調整が可能なことなどを挙げた。 石田氏は「BCMA標的治療が登場する前はTCE患者への有効な治療がなく、治療選択に悩んでいた。今は悩まず使用できる治療が登場し、患者さんも喜んでいる。今後は、CAR-T細胞療法や二重特異性抗体を使用した後の治療が課題になるだろう」と締めくくった。【製品概要】商品名:テクベイリ皮下注30mg/153mg 一般名:テクリスタマブ(遺伝子組換え) 製造販売承認日:2024年12月27日 薬価基準収載日:2025年3月19日 効能又は効果:再発又は難治性の多発性骨髄腫(標準的な治療が困難な場合に限る) 用法及び用量:通常、成人にはテクリスタマブ(遺伝子組換え)として、漸増期は、1日目に0.06mg/kg、その後は2~4日の間隔で0.3mg/kg、1.5mg/kgの順に皮下投与する。その後の継続投与期は、1.5mg/kgを1週間間隔で皮下投与する。なお、継続投与期において、部分奏効以上の奏効が24週間以上持続している場合には、投与間隔を2週間間隔とすることができる。 製造販売元(輸入):ヤンセンファーマ株式会社■参考文献・参考サイトはこちら1)Mateos MV, et al. Leukemia. 2022;36:1371-1376.2)Moreau P, et al. N Engl J Med. 2022;387:495-505.3)Ishida T, et al. Int J Hematol. 2025;121:222-231.4)Martin TG, Ishida T, et al. ASH 2024.5)Nooka AK, et al. Cancer. 2024;130:886-900.6)Sidana S, et al. Blood. 2025;145:85-97.MajesTEC-1試験第I相(Clinical Trials.gov)MajesTEC-1試験第II相(Clinical Trials.gov)MMY1002試験(Clinical Trials.gov)

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急性GVHDとICANSに対する新たな診断法の開発/日本造血・免疫細胞療法学会

 2025年2月27日~3月1日に第47回日本造血・免疫細胞療法学会総会が開催された。 3月1日に福田 隆浩氏(国立がん研究センター中央病院 造血幹細胞移植科)、谷口 修一氏(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 血液内科)を座長に行われたプレナリーセッションでは、井戸 健太郎氏(大阪公立大学大学院医学研究科 血液腫瘍制御学/臨床検査・医療情報医学)、瀧川 健氏(九州大学大学院 病態修復内科学)、新井 康之氏(京都大学医学部附属病院 血液内科)が講演を行い、急性移植片対宿主病(GVHD)の新たな診断法や免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)の診断において脳脊髄液中のキメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞をFlow cytometryで検出することの有用性などについて議論がなされた。 本稿では、井戸氏と瀧川氏の講演を紹介する。血清エクソソーム内miRNAを用いた急性GVHDの非侵襲的診断法の新たな展開 急性GVHD診断では、侵襲性の高い生検による病理診断に代わる非侵襲的診断法の開発が望まれている。 井戸氏らは、mRNAを認識・分解して翻訳を阻害し、細胞増殖や細胞分化、アポトーシス代謝を調節するmiRNA、とりわけ、体液中で安定して存在し、臓器特異性を有するエクソソーム内miRNAに注目し、血清エクソソーム内miRNAに対して網羅的なmiRNAパネルを使用して測定する急性GVHD研究を行い、全血清と血清エクソソームでのmiRNAプロファイルを比較検討することで、急性GVHDの非侵襲的診断法の開発を目指した。 大阪公立大学で同種造血幹細胞移植を受けた患者199例から移植後14日目と急性GVHD発症時の血液検体を前向きに収集し、全血清と血清エクソソームからmiRNAを抽出、miRNA 2,565種類のマイクロアレイデータを取得した。解析には、サンプルサイズに比して扱う変数が非常に多いデータに適したPrincipal component analysis-based unsupervised feature extraction(PCAUFE)を用いた。 血清エクソソームから抽出したmiRNAに対してPCAUFEを使用した結果、重症消化管aGVHD群(12例)とNo aGVHD群(12例)の判別に有用な22種類のmiRNAの組み合わせ(AUC 0.938、Violin plot p=1.37e-05)と、重症皮膚単独aGVHD群(12例)とNo aGVHD群(12例)の判別に有用な別の22種類のmiRNAの組み合わせ(AUC 0.812、Violin plot p=1.38e-03)を選定することができた。miRNA 2,565種類を測定・解析した結果、そのうち重症消化管急性GVHDと関連のあるものは22種類、重症皮膚単独急性GVHDと関連のあるものは22種類で、共通のものは19種類、うち消化管特異的なものは3種類、皮膚特異的なものは3種類であった。一方、全血清から抽出されたmiRNAからは急性GVHDと関連するmiRNAの組み合わせを選ぶことはできなかった。今回の研究でPCAUFEによって選択されたmiRNAプロファイルに含まれるmiRNAの多くは新規のものであった。 井戸氏は、血清エクソソーム内miRNAから選択されたmiRNAプロファイルは急性GVHDの非侵襲的診断に有用であり、急性GVHDの病態を動的に捉えるバイオマーカーであることが示唆されると述べ、急性GVHDにおける個々のmiRNAの働きについてのさらなる検討が必要であると締めくくった。髄液CAR-T細胞がICANS診断にもたらす有用性 B細胞リンパ腫に対するCAR-T細胞療法は適応が拡大しており、その副作用であるICANSも増加が予測される。ICANSは意識障害などの非特異的な臨床症状に加えて、画像所見も脳卒中様、脳炎様、髄膜炎様と多様で非特異的であり、客観的な指標に基づく診断は困難である。 瀧川氏らは、CAR-T細胞の特徴に注目し、Multi-color flow cytometryによる髄液CAR-T細胞の検出がB細胞リンパ腫におけるICANS診断に有用かを検討した。本研究で瀧川氏らはCAR-T細胞療法後、ICANSを発症した時点の髄液検体をMulti-color flow cytometryを用いて解析した(2021年6月~2025年2月の22検体をICANS群16例とICANS以外の原因が判明した症例や無治療で自然軽快した症例のNo ICANS群6例で比較)。評価項目は、髄液の細胞数、総蛋白、Multi-color flow cytometry、年齢・性別などの臨床情報、ICANS発症と関連があるとされるEASIX scoreといった血管内皮障害の指標などとした。 対象疾患の約9割(14検体)はB細胞リンパ腫で、サイトカイン放出症候群(CRS)のグレードはICANS群で有意に高く(p=0.0311)、神経症状発現中央値は7日(四分位範囲[IQR]:3~38)、グレード3以上の重症ICANSを3例に認めた。臨床検査値に関するバイオマーカーではLDH(289U/L[IQR:219~779]p=0.0323)やCRP(0.86mg/dL[IQR:0.34~1.93]p=0.0424)がICANS群で上昇していた。EASIX scoreや脳波所見では統計学的有意差はなかった。髄液所見では、CD3+T細胞中のCAR-T細胞はNo ICANS群では中央値が3.2%(IQR:1.3~9.6)、ICANS群では41.2%(IQR:17.1~64.8)と統計学的有意差を認めた(p=0.0089)。統計学的有意差のあった項目それぞれについてROC曲線を作成した結果、髄液CAR-T細胞のカットオフを20%としたとき、感度0.75、特異度1.00(AUC 0.88)と最も優れていたことから、Multi-color flow cytometryによる髄液CAR-T細胞の検出はICANS診断に有用と考えられた。 瀧川氏は、「LDH、CRP、CRSのグレードが、ICANS発症の原因と考えられる組織や血中へのサイトカインの放出から血液脳関門の破綻に関連し、髄液CAR-T細胞の増加は透過性が亢進した結果である可能性がある」と述べた。加えて、「Multi-color flow cytometryによるCAR-T細胞の検出はICANS診断に有用であり、原因不明の神経症状の症例に対する治療介入の指標となる」とし、「今後、CAR-T細胞の詳細なフェノタイプ評価を行うことで、ICANSの重症度との関連が明らかになる」と締めくくった。

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兵庫医科大学 呼吸器・血液内科学(血液)【大学医局紹介~がん診療編】

吉原 哲 氏(教授)吉原 享子 氏(臨床講師)寺本 昌弘 氏(助教)熊本 友子 氏(レジデント)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴私たちの医局のモットーは、すべての血液疾患の患者さんに最良の治療を提供することです。血液疾患には、白血病、リンパ腫、骨髄腫といった造血器腫瘍のほか、血友病、凝固異常症といった出血性疾患があります。兵庫医大には、ハプロ移植やCAR-T療法のイメージが強いかもしれませんが、血友病やHIVの診療施設としても関西での重要な拠点となっています。地域のがん診療における医局の役割兵庫県の特徴は、大学の系列などに関係なく、各病院間の血液内科医の横のネットワークが非常に強いことです。その結果として、兵庫県内の多数の病院から移植やCAR-T症例のご紹介をいただいています。また、ハプロ移植やCAR-T療法については、県外からも多数の患者さんをご紹介いただいています。医師の育成方針まずは血液内科医として、どんな疾患でもひととおり診られるようになってもらいたいと考えています。実際、白血病から血友病まで非常に症例数が多いですので、化学療法だけでなく移植やCAR-T療法、そして血友病等の治療についても効率的に研修可能です。その後は専門性を高めていってもらうことになりますが、その際には医師それぞれのライフプランに合わせて無理のない働き方をして欲しいと考えています。子育てをしながら働く女性医師も多いため、女性医師にとって相談しやすい環境だと思います。同医局でのがん診療のやりがい、魅力私たちの医局でのがん診療チームは、白血病、悪性リンパ腫、骨髄腫といった疾患に対し、化学療法のみならず、同種造血幹細胞移植やCAR‐T療法など、最先端の治療法を幅広く実施しています。日々進歩していく血液内科診療の劇的な変化を肌で感じることができ、また大学病院ならではの高度な医療現場で、他院では診断が困難な症例や治療が難しいケースも積極的に受け入れており、その度に多くの発見とやりがいを感じる毎日です。医局の雰囲気少人数制のチーム体制で、アットホームな雰囲気です。タスクシフトを積極的に取り入れ、一人ひとりが豊富な症例経験を積み自らの専門性を高めていけるよう支援しています。さらに、当医局には出産後も現場で活躍している女性医師たちが多数在籍しています。私自身は2人の子育て中でもありますが、自身の経験より家庭と仕事の両立の困難さを誰よりも理解しているつもりです。そのような若手医師たちを支援するため、各医師のライフプランに合わせた柔軟なサポート体制を整えるよう尽力しています。医学部生/初期研修医へのメッセージ医学部生/初期研修医の皆さまが、当医局で最先端の医療技術と充実した臨床経験を学びながら、自身の成長と挑戦を続けていただけることを心より願っております。ぜひ一緒に働きましょう!力を入れている治療/研究テーマ兵庫医科大学病院 血液内科(当科)では血液疾患に対するさまざまな研究に取り組んでいますが、これまでとくに力を入れてきた研究テーマの1つに、血液がんに対する同種造血幹細胞移植(同種移植)があります。私自身はこれまで、同種移植後の副作用を抑えるための、免疫抑制剤の投与方法に関する研究や、同種移植を受けた患者さんの生存率に影響を与えるリスク因子の解析を行ってきました。また、白血病の治療ターゲットとなるような分子標的を見つけるための基礎研究にも取り組み、新しい治療薬の開発を目指しています。さらに、当科ではキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)に関する基礎研究も開始しており、より効果的な細胞療法を実現するために頑張っています。医学生/初期研修医へのメッセージ当科では、同種移植やCAR-T療法を含めた細胞治療の分野はもちろん、血液学に関する臨床研究、基礎研究の両方に挑戦できる環境が整っています。研究に興味がある方は、ぜひ気軽にご相談ください。一緒に新しい治療法を探していきましょう。これまでの経歴もともと2008年に筑波大学を卒業しましたが、その後海外でスポーツ活動に取り組んでいました。海外にいる頃に医師になりたいと奮起、2013年に兵庫医科大学に入学し、2019年に卒業、同大学で初期研修を行い血液内科に入局しました。1年半、外病院で一般内科・一般血液を学び今は大学で血液内科医として日々勉強しています。同医局を選んだ理由学生の頃から血液内科に入局しようと思っていましたが、兵庫医科大学病院は西日本でも有数の移植施設で、今ではCAR-T療法なども含め、大学でしかできない治療がたくさんあることと、腫瘍とは別にHIVや血友病など専門の先生がいることも大きな理由です。また、どんなに忙しくても質問すると上級医の先生は優しく丁寧に教えて下さったことも理由の1つです。最初の頃は勿論、今でも分からないことは沢山ありますし、自分の行為が患者様の命にも関わる仕事ゆえ、どんな些細なことでも気がねなく何でも聞ける医局の雰囲気、指導体制は大事だと思います。現在学んでいることCAR-T療法、臍帯血移植、ハプロ移植など、市中病院ではなかなか経験できない症例をたくさん受け持っております。一方で、市中病院でも診ることの多いITPやリンパ腫の症例も多数あります。血液疾患は新規薬剤やガイドラインについても年々アップデートが必要ですが、症例が多数あるため知識だけではなく実症例として経験することができます。今後のキャリアプラン出産・育児を挟んだこともあり、目の前の目標は内科専門医の取得です。兵庫医科大学 呼吸器・血液内科学(血液)住所〒663-850 兵庫県西宮市武庫川町1-1問い合わせ先ketsueki@hyo-med.ac.jp医局ホームページ兵庫医科大学 血液内科教室専門医取得実績のある学会日本内科学会日本血液学会日本造血・免疫細胞療法学会(認定医)日本輸血・細胞治療学会(認定医)日本再生医療学会(認定医)研修プログラムの特徴(1)造血器腫瘍だけでなく血栓・止血やHIV診療も研修可能(2)子育てなどライフプランに合わせた柔軟なサポート体制を整えている(3)造血細胞移植やCAR-T療法など最新の治療を経験できる

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造血幹細胞移植後のLTFUを支える試み/日本造血・免疫細胞療法学会

 2025年2月27日~3月1日に第47回日本造血・免疫細胞療法学会総会が開催され、2月28日のシンポジウム「未来型LTFU:多彩なサバイバーシップを支える次世代のケア」では、がん領域におけるデジタルセラピューティクス(Digital Therapeutics:DTx)の有用性および造血幹細胞移植治療におけるDTx開発の試みや、移植後長期フォローアップ(Long Term Follow Up:LTFU)の課題解決のためのICT(Information and Communication Technology)活用と遠隔LTFUの取り組み、さらに主に小児・思春期・若年成人(Children, Adolescent and Young Adult:CAYA)世代の造血幹細胞移植における妊孕性温存と温存後生殖補助医療についての話題が紹介された。造血器腫瘍は多彩なサバイバーシップケアの重要性が増しており、次世代ケアの試みが着々と進められている。同種造血幹細胞移植後のDTx DTxは、治療用アプリによるデジタル技術を用いて、個々の患者の病状に見合った情報をリアルタイムで提供し、患者の行動変容を促して医療効果や医療プロセスの改善を得ることである。新たな介入手段であり情報薬ともいわれ、次回の外来受診までの治療空白をアプリの使用によりフォローし、治療効果を狙う考え方である。 DTxアプリの使用は、QOL、全生存期間(OS)の改善効果が多数報告されており、ドイツではヘルスリテラシーや家族の負担軽減などの改善効果も認められれば薬事承認される。日本では2020年ごろからニコチン依存症や高血圧症、アルコール依存症などを対象疾患としたDTxアプリの使用効果が認められ、薬事承認されている。 固形がん領域では患者の健康状態をアンケート方式で電子的に収集するelectronic Patient Reported Outcome(ePRO)アプリの使用が疾患再発の早期発見・治療につながり、QOL・生命予後の改善が複数のランダム化試験で報告されている。欧州臨床腫瘍学会では2022年のガイドラインでePROアプリのがん診療への導入をGrade 1Aで推奨し、重症や悪化症状に対する臨床医への自動アラート機能を有するePROシステムの使用も推奨している。 岡村 浩史氏(大阪公立大学大学院 医学研究科 血液腫瘍制御学/臨床検査・医療情報医学)らは、2021年に移植患者用アプリを開発し、同種造血幹細胞移植(allogeneic Hematopoietic stem Cell Transplantation:allo-HCT)後の外来通院中患者99例にHCTアプリを導入し、和歌山県立医科大学と共にPilot Studyを実施した。その結果、体温、脈拍数、SpO2、体重、修正Leeスコア(ePRO)、およびこれらの最近の悪化傾向などが移植後重症合併症を早期に予測しうる因子であった。移植後合併症での緊急入院例では入院約10日前から脈拍、SpO2、修正Leeスコアが悪化する体調の変化がみられ、早期探知が可能と考えられた。岡村氏らはHCTアプリのsecond stepとして重症化モデルの精度改善を行い、データ入力1週以内の合併症緊急入院予測モデルの開発を構築する多施設移植後見守りアプリ研究(第II相)を行っている(2025年9月まで約200例を登録する見込み)。患者が装着しているスマートウォッチで収集された身体情報およびePRO(22項目・週1回)への入力データと、医療機関からの診療情報(今後マイナポータルから提供の予定)を集約し、患者の同意の下にデータを解析している。 岡村氏は患者入力によるePROに基づき、将来的には個別症状に合わせた生成AIの利用や、電子カルテとの情報連携、地域医療連携ネットワーク(Electronic Health Record:EHR)、パーソナルヘルスレコード(Personal Health Record:PHR)としての情報連携の強化(病診連携や成人移行時の病院間の連携など)も可能であると考えており、「病院診療情報やePRO、ウエアラブルデバイスによる情報を研究利用し、HCT診療の質を向上させる連携を深めたい」と述べた。医療情報連携、PHRを用いた遠隔LTFUの未来 allo-HCT後の長期生存者の増加に伴い、LTFUの重要性が高まっている。しかし移植実施施設への通院や、非移植実施施設の医療スタッフ教育、移植後合併症に対する総合的な診療体制の構築、小児からのトランジションと継続的フォローアップなど課題は多い。ICTアプローチはLTFUの課題解決において不可欠であり、遠隔医療、およびEHR、PHRをいかに活用するかが重要である。 遠隔医療はICTを用いたリアルタイムのオンライン診療を活用した医療であり、Doctor to Doctor(D to D:専門医→主治医)、Doctor to Patient(D to P:主治医→患者)、Doctor to Patient with Nurse(D to P with N:主治医→患者・看護師)、Doctor to Patient with Doctor(D to P with D:専門医→患者・主治医)の4つのカテゴリーがある。 EHRは、患者同意の下に、患者の基本情報、処方・検査・画像データ等を電子的に共有・閲覧できる。病院間での診療情報の共有が可能になれば、近医での検査結果をあらかじめ医療情報連携で参照してもらい、自宅でD to PのオンラインLTFU受診が可能になる。また紹介先の医療機関から移植実施施設の診療情報にアクセスできることで転医や就職で他県に引っ越す場合、成人科へのトランジションでも切れ目のない医療が提供できる。 全県単位の医療情報ネットワークとして、和歌山県では2013年から、きのくに医療連携システム「青洲リンク」を運用している。平時は、参加病院の電子カルテ、参加診療所の検査結果、参加薬局の調剤情報、画像をインターネットで情報共有し診療を支援する。災害時は、県外にバックアップしている共有情報を活用し災害医療を支援する。参加医療機関は2024年12月25日現在、病院11施設、診療所49施設、同意患者数は約2,700例であり、青洲リンクを利用して相互にデータを参照しながら医療連携を取っている。 和歌山県立医科大学では2020年から紀南病院(和歌山県)とテレビ会議システムで接続する遠隔LTFU外来を開始した。患者は、紀南病院(地域基幹病院)で診察を受け、問診票の記入やバイタルサイン測定、各種検査を行い、その結果を診療情報提供書と共に和歌山県立医科大学(移植実施施設)にFAXで送付する。大学病院の医師はFAXの情報、および青洲リンク活用による紀南病院の診療情報(検査結果、処方、画像)を参照したうえで診療を行う。EHRで診療情報を共有するこの形式は、D to P with Dに該当する。連携先にも医師がいることで対面と遜色ない診察ができ、患者満足度も高く、質の高い遠隔LTFU達成が可能となる。 PHRはスマートウォッチなどデバイスから収集できる日常的な医療情報(脈拍、体重、運動量など)と医療機関での診療情報(検査結果、処方、画像など)、および患者自身が入力する健康情報(血圧、食事量など)を一元化し、デジタルデータとして患者が管理するものである。 青洲リンクではEHRに加えPHRの取り組みも進めており、参加医療機関の診療情報を提供し、患者がスマートフォンで病院の検査結果や処方情報をいつでも見ることが可能なアプリを導入した。PHRを利用した情報提供は、スマートフォンにダウンロードした近隣クリニックでの診療データを、移植実施施設への通院時に見てもらうことができ、またオンライン診療でデータを共有することで遠隔LTFUも可能になる。 西川 彰則氏(和歌山県立医科大学附属病院 医療情報部)は今後、自治体の医療情報連携を基盤としたPHR、移植後ePRO、医療情報、バイタル情報を統合的に集約提供するプラットフォームの構築が望ましいと考えており、allo-HCT後の患者にとっては、利便性が高く連続的なLTFUの体制構築が必須であり、ICTの活用は未来のLTFUにつながる可能性があるとした。妊孕性温存から次のステップへ―がん・生殖医療との協働で目指す造血幹細胞移植後の妊娠・出産 造血器腫瘍は小児がんの約40%を占め、AYA世代では約7%と、成人がんの増加に伴い全体の割合が低下する。CAYA世代の造血器腫瘍の生命予後は改善傾向にあり、長期生存例が増えることで、相対的に妊孕性を含むサバイバーシップケアの重要性が増している。 LTFUのテーマでもある晩期合併症(Late effects)としての性腺障害や不妊はAYA世代にとってがん治療中・治療後の大きな課題であり、2023年の「第4期がん対策推進基本計画」では取り組むべき施策として、CAYA世代の妊孕性温存療法を取り上げている。 がん治療前の妊孕性温存については、2022年8月から対象となる患者への情報提供や意思決定支援ががん診療連携拠点病院の必須要件となった。2024年12月に改訂された『小児・AYA世代がん患者等の妊孕性温存に関する診療ガイドライン』でも造血器腫瘍治療前のすべての患者に情報提供・意思決定支援を行うことが推奨され、GnRHアゴニストによる卵巣保護や未授精卵子の体外成熟、移植前処置の全身放射線治療時の卵巣・精巣遮蔽についても記載されている。 妊孕性温存における患者の負担は大きく、2021年・2022年には妊孕性温存・温存後生殖補助医療を対象とする助成金制度が全国で均てん化され、研究助成事業も運用されている。全国レジストリである日本がん・生殖医療登録システム(Japan OncoFertility Registry:JOFR)では、本邦におけるがん生殖医療の有効性や実態を調査する目的で、スマートフォン向け患者用アプリFSリンク(Fertility & Survivorship Linkage)をPatient Reported Outcome(PRO)として用い、パートナーシップの状況や挙児の状況を患者自身に提供・更新してもらっている。ただ、AYA世代は身体的・心理的・社会経済的に未自立であり、温存した生殖子の管理やFSリンクの管理は、子供の成長過程のさまざまなトランジションの一環として、成人を迎える頃合いを見計らい親から子へ移行する必要があり、生殖医療担当医と小児がん治療に携わる医師が協働して移行を支援している。妊孕性温存やFSリンクの周知はYouTubeで解説動画を配信し、AYA世代にはLINEを用いて情報提供を行っている。 がん治療後の妊娠可能時期については、厚生労働省から抗がん剤など遺伝毒性のある医薬品の最終投与後の避妊期間に関してのガイダンスが発出されている。造血幹細胞移植後のさまざまな薬剤も妊娠・出産に関わるため、妊娠可能時期についてがん専門薬剤師と共に症例ごとに情報提供している。 移植後の安全な妊娠・出産を検討する際には、胎児や母体のリスクへの対処として適切なワクチン接種と共に移植片対宿主病(Graft Versus Host Disease:GVHD)の管理が必要である。治療薬や放射線治療による合併症にも注意し、妊娠希望例ではLTFUからプレコンセプションケア(妊娠前相談)外来につなげることが重要である。妊孕性喪失後のケアでは、看護師、心理士など多職種による心理・社会的支援を行う。近年、雄のマウスiPS細胞からの卵子生成、またヒトiPS細胞由来の受精卵作製など、生命倫理学的な課題も含め生殖子生成研究の進展が注目されている。 セクシュアリティとパートナーシップ、性機能障害など、患者のさまざまなニーズや悩みに対応するには、地域や院内で患者・家族と生殖医療をつなぐ窓口の一元化が必要である。大阪国際がんセンターではAYA世代サポートチームが妊孕性温存や温存後生殖補助医療の相談窓口になり、効率的な意思決定の支援を行っている。意思決定支援にたけた医療従事者の配置や育成も必要であり、日本がん・生殖医療学会認定ナビゲーター制度も開始された。多田 雄真氏(大阪国際がんセンター 血液内科・AYA世代サポートチーム)は、「日進月歩の生殖医療や移植を受けたサバイバーのアンメットニーズにつなげるために、生殖医療の医師との連携は血液内科移植医やLTFUの看護師にとって重要であり、全国のがん・生殖医療ネットワークを通して顔の見える関係を構築していきたい」と述べた。 allo-HCTではLTFUが不可欠であり、ICTのアプローチをいかに活用するかが重要である。また、移植を受けたサバイバーのニーズはより高度になり、QOLを保ち生きることを目標とした治療が求められている。

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腸管GVHDの発症・重症化および予防・治療における腸内細菌叢の役割/日本造血・免疫細胞療法学会

 腸管移植片対宿主病(GVHD)は同種造血幹細胞移植における特徴的な合併症で、予後を左右するだけでなく、移植後の生活の質も低下させる。近年、腸管GVHDと腸内細菌叢との関連に注目した研究は増えているが、まだ不明な点も多い。 2025年2月27日~3月1日に開催された第47回日本造血・免疫細胞療法学会総会では、「腸内細菌叢とGVHD:治療への新たな道を切り開く」と題したシンポジウムが行われ、腸内細菌叢とGVHDとの関連についての研究が4名から報告された。急性GVHDのpathobiontの同定とファージ由来酵素を用いた新規治療法 植松 智氏(大阪公立大学大学院 医学研究科 ゲノム免疫学/東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター メタゲノム医学分野)らのグループは同種移植患者46例の腸内細菌叢の16SrRNA解析を行い、30例でEnterococcus属細菌が増加していることを確認した。また、患者糞便由来のE. faecalisを単離し、これが外分泌毒素サイトライシンを産生する強毒株で、バイオフィルム関連遺伝子群を豊富に有する系統と明らかにした。さらに、マウスを用いた実験で患者糞便由来E. faecalisが急性GVHD関連死亡を増加させることを確認した。 植松氏らのグループは以上の結果から、E. faecalisがGVHDの発症と関わるpathobiontであり、前処理で他の細菌が死滅するなか、サイトライシンを産生する強毒株のE. faecalisがバイオフィルムを形成することによって腸管に濃縮し、増殖した後、産生されたサイトライシンによる上皮細胞障害が腸管GVHDの増悪に寄与していると考え、E. faecalisの排除によりGVHD関連死亡を抑えられるのではないかと推測した。 そこで、患者糞便由来E. faecalisのゲノムを網羅的に解析し、E. faecalisに特異的に感染するバクテリオファージ由来のエンドライシン配列を抽出した後、多種類の株で共通に検出されたエンドライシンを合成。このE. faecalis特異的エンドライシンの溶菌効果とバイオフィルム溶解作用をin vitroで確認した後、マウスを用いた実験でGVHD関連死亡率が大幅に改善すること、さらに患者糞便を移植したマウスでもGVHD関連死亡率が大幅に改善することを確認した。 植松氏はこうした結果について、「実臨床でも使えるようなデータが得られたと感じた」と述べ、「今後、E. faecalis特異的エンドライシンは、GVHDの新規治療薬として期待される」とまとめた。造血幹細胞移植患者の移植早期から長期における腸内細菌叢に関する解析結果 福島 健太郎氏(大阪大学大学院 医学系研究科 血液・腫瘍内科学)は、造血幹細胞移植領域で近年行われた腸内細菌叢と予後の関連についての複数の研究に関し、「既報の多くは移植後のある一時点において多様性を評価していて、菌叢を構成する菌成分の違いや経時的な菌叢の変化についてはあまり着目した研究がなかった」と指摘した。 福島氏らのグループは、大阪大学医学部附属病院で造血幹細胞移植を行った患者から糞便を連日採取して16SrRNAメタゲノム解析を行った。その結果、移植前後で腸内細菌叢に変化がなく、多様性が保持された群は予後良好、菌叢に変化があり多様性が失われた群は予後不良であることが明らかになった。「菌叢の安定化が非常に重要である」ことがわかってきたと福島氏は述べ、とくに移植後1ヵ月のEnterococcus増加が予後の悪化に関連すると報告した。 また、移植後長期にわたって生存し、日常生活に戻った患者群の腸内細菌叢は健常人に近づいているという仮説を立てたが、移植後長期生存者の腸内細菌叢を実際に調べたところ、移植後3年未満、3~10年、10年以上のいずれでも、菌叢の多様性が回復しないということがわかったと報告した。 さらに、同種移植後にクローン病様の病変が認められた患者に糞便移植(FMT)を実施し、3ヵ月後に粘膜が正常化した症例を紹介したほか、移植前に腸内においてEnterococcusが優勢であった患者はFMT後1日目にドナーと同様の菌叢になるが、その後にEscherichiaなどが優勢になるという非常に興味深い結果となったと報告した。また、プロバイオティクスにも注目していると述べ、進めている研究について紹介した。 最後に、腸内細菌叢への介入として、先に講演した植松氏のファージについて「非常に魅力的な選択」と述べたほか、「FMT、プロバイオティクスなどさまざまなアプローチの可能性があって、産学連携が重要と考えている」とまとめた。移植前の口腔環境の改善が慢性GVHDの改善につながる可能性 藤原 英晃氏(岡山大学病院 血液・腫瘍内科)らのグループは、自院において2010~15年に造血細胞移植を行った273例を解析し、重症口内炎は慢性GVHDの発症率を上昇させるという関連を認めたほか、PTCyハプロ移植の71例のみの解析でも同様の関連を認めた。さらに、こうした患者の移植前後の口腔粘膜検体31例の解析で、慢性GVHD発症群では移植前から菌叢の多様性が低下し、生着後もそれが継続していたことがわかったと報告した。 そこでマウスによる検討のために、マウスの歯間に糸を留置して口腔内に歯周炎を引き起こすOLPという手法で口腔内dysbiosisを誘発し、骨髄移植を行った。その結果、慢性GVHDに関してはOLPマウスで慢性GVHDスコアが明らかに悪くなり、PTCyを用いたマウスモデルでも同様の結果が認められた。こうしたOLPマウスでは移植後における口腔内細菌叢の多様性が低下し、口腔内および糞便中細菌量の増加が認められ、とくにEnterococcusは移植前から口腔内・糞便中ともに増加していたと述べ、口腔内のEnterococcusが腸管に流れていき、定着するのではないかと指摘した。 また、OLPマウスでは移植前から所属リンパ節(頸部リンパ節)における抗原提示細胞の活性化が認められ、頸部リンパ節の免疫染色および培養検査によりEnterococcusの影響が強いことが明らかになったと述べた。さらに、OLP後にEnterococcusを塗布したマウスで移植後に慢性GVHDが悪化したこと、OLPを除去し歯周炎が改善した状態で移植を行うとOLPを維持した群より重症度が低下したことを示し、OLPの除去による口腔環境の改善が慢性GVHDの改善につながると述べた。なお、抗生剤による口腔炎症の改善で一定の効果が期待できることも実験で明らかになったと報告した。 最後に、「口腔内でdysbiosisが起きる状況にあると局所(頸部リンパ節)での反応が増幅し、それが全身の慢性GVHDに影響する。同様に腸管にも影響することにより長期的な予後に影響するのではないか」とまとめ、「移植前後の徹底した口腔ケアや歯科介入の重要性を確認することができた」と述べた。炎症記憶と腸内細菌によるGVHD重症化のメカニズム 橋本 大吾氏(北海道大学大学院医学研究院 血液内科)は、免疫寛容の破綻後に組織の恒常性を維持するメカニズムとして概念的に提唱されている「組織寛容」について冒頭で紹介し、豊嶋 崇徳氏(北海道大学)らのグループの研究から、腸幹細胞が腸の組織寛容を維持しているシステムではないかと指摘した。一方、GVHD回復後のFlareで腸管GVHDの発症が増加することが示されており、炎症後の組織幹細胞にエピジェネティックな変化が生じて炎症記憶として残るからではないかと考えられている。 そこで橋本氏らのグループは、同系造血細胞移植(syn-HCT)または同種造血幹細胞移植(allo-HCT)後のマウスの陰窩から作成したオルガノイド(「Syn」または「Allo」)のクロマチン構造をATACシーケンスで解析し、アクセシビリティに関してAlloがSynより有意に高い遺伝子457個を特定した。橋本氏は、この中で重要な領域として抗原処理と提示(とくにMHCクラスII[MHC-II])に関与する遺伝子とインターフェロン(IFN)-γに対する反応に関与する遺伝子を挙げ、転写の準備ができているこれらのプロモーター領域が判明したことについて「まさに炎症記憶が本当にできていると知った瞬間だった」と述べた。なお、フローサイトメトリーによるタンパク質レベルでの確認でも、IFN-γ刺激による腸管上皮MHC-II発現が炎症記憶により亢進したうえ、オルガノイドを継代しても記憶が継承されることが明らかになったと述べた。 さらに、小山 幹子氏(米国・フレッド・ハッチンソンがん研究センター)のマウスを用いた研究で、レシピエントの腸管上皮MHC-IIの欠損でGVHDが軽減すること、腸内細菌がIFN-γ産生を誘導し、腸管上皮MHC-IIを発現させること、MHC-II誘導性細菌と抑制性細菌が存在し、抑制性細菌のマウスへの経口投与で上皮MHC-II発現が低下することなどが示されたと紹介した。 最後に、腸管のMHC-II発現は、腸内細菌叢の差により定常状態である程度の差があるうえ、GVHD後には炎症記憶の存在によりIFN-γ刺激によるMHC-II発現がさらに高まり、GVHD Flareにつながると考えられるとまとめた。今後は「組織寛容を上げて急性GVHDや慢性GVHDを起こさないようにし、移植片対白血病/リンパ腫(GVL)効果を誘導するのが究極的な目標」だと述べた。

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