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新世代ステント、ベアメタルに比べリスクを3~6割減少/BMJ

 エベロリムス溶出性コバルトクロムステントは、ベアメタルステントに比べ、心臓死や心筋梗塞、ステント血栓症などの発生リスクを約3~6割超減少することが明らかにされた。オランダ・エラスムス大学医療センターのMarco Valgimigli氏らが、5件の無作為化比較試験、被験者総数4,896例を組み込んだ患者レベルのメタ解析の結果、報告した。これまでの試験結果では、新世代の薬剤溶出ステントと第一世代溶出ステントを比較したものが大部分で、ベアメタルステントとの比較試験は少なく、両者のアウトカム比較は十分ではなかったという。BMJ誌オンライン版2014年11月4日号掲載の報告より。心臓死率を主要評価項目に検討 研究グループは、Medline、Embase、コクラン比較試験レジストリ(Cochrane Central Register of Controlled Trials)を検索し、エベロリムス溶出性コバルトクロムステントとベアメタルステントについて行った無作為化比較試験について、患者レベルでのメタ解析を行った。 主要評価項目は、心臓死率だった。副次評価項目は、心筋梗塞、確定ステント血栓症、確定または可能性の高いステント血栓症、標的血管再血行再建術、全死因死亡の発生率だった。心臓死リスクは0.67倍、心筋梗塞リスクは0.71倍に 5件の無作為化比較試験、被験者総数4,896例についてメタ解析を行った。追跡期間の中央値は、720日だった。 その結果、エベロリムス溶出性コバルトクロムステントの心臓死リスクは、ベアメタルステント群に比べて約0.67倍に減少した(ハザード比[HR]:0.67、95%信頼区間:0.49~0.91、p=0.01)。 また副次評価項目についても、心筋梗塞(HR:0.71、p=0.01)、確定ステント血栓症(同:0.41、p=0.005)、確定または可能性の高いステント血栓症(同:0.48、p<0.001)、標的血管再血行再建術(同:0.29、p<0.001)のいずれの項目でも、リスクが有意に減少した。なお、全死因死亡の発生率については有意差はみられなかった(同:0.83、p=0.14)。 これらの所見は、臨床的にみられた症状(急性冠症候群vs. 安定冠動脈疾患)や糖尿病、性別(女性)、GP IIb/IIIa受容体拮抗薬、および抗血小板療法期間(1年vs. 長期)で補正後の多変量回帰分析でも変わらなかった。

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FAME2試験:PCIが本当に予後を改善するためにはどのような条件が必要か?(解説:上田 恭敬 氏)-255

臨床的に安定した3枝までの冠動脈疾患(冠動脈造影で確認)で、FFR≦0.80の1つ以上の狭窄を有し、PCIの適応と考えられる患者を対象とし、FFRガイド下PCI+薬物療法を施行する群または薬物療法のみを行う群に無作為に割り付け、2年以内の全死因死亡、非致死的心筋梗塞、緊急血行再建術による入院の複合エンドポイントを主要評価項目として比較した、FAME2試験の結果が報告された。 本試験では第2世代薬剤溶出ステントが使われた。結果は、主要評価項目の発生率がPCI群で8.1%と、薬物療法単独群の19.5%に比べ有意に低かった。だが、PCI群で緊急血行再建術が有意に少なかったものの、全死因死亡および心筋梗塞の発生率には有意な差はなかった。この結果は、ぜひPCIを行うべきと言うには少し弱いエビデンスであろう。 ところが、ランドマーク解析を行ったところ、0~7日の主要評価項目の発生率はむしろPCI群で高い傾向が認められた。しかしながら、8日~2年では主要評価項目のみならず死亡または心筋梗塞の発生率、緊急血行再建術もPCI群で有意に少なかった。 COURAGE試験においてはPCIの有用性が示されなかったのに対して、このFAME2試験では、適応評価にFFRを用いることで、何とかPCIの有用性が示された格好となった。ここで注目したいのが、やはりランドマーク解析である。 PCIの周術期心筋梗塞などの早期イベントがPCI群の足を引っ張る結果となったのは、本試験もCOURAGE試験と同じである。ただし、日本国内で行われた同様の試験であるJ-SAP試験においては、このようなPCI群における早期のイベント発生は明らかでない。 本論文の著者らは、周術期心筋梗塞はあまり長期予後には影響しないとの考えからランドマーク解析を施行しているようであるが、さらには早期イベントの原因としてステント拡張不良などのPCI手技に起因するものが想定される。IVUSをガイドとした日本国内でスタンダードに行われているPCI手技によれば、J-SAP試験の結果のように、その発生頻度は低くなることが期待される。今回のFAME2試験の結果は、この早期イベントを無視すれば、PCIは明らかに予後を改善することを示したことになる。 今後、このような薬物療法に対するPCIの有用性を示す試験を実施する際には、IVUSガイドを全例で導入するなどPCI手技を改善することで、早期イベントの発生を抑制することが、主要エンドポイントにおいて有意差をつけるために重要と思われる。 最後になったが、FFRを用いて心筋虚血の有無をより正確に診断してPCIの適応を決めたことも、PCIの有用性を示すために重要であったことは言うまでもないだろう。FFRでPCIの適応を決めて、IVUSガイドでPCIを行うことによって初めて、PCIの有用性を確実なエビデンスとして示すことができるのではないかと期待している。

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極薄タイプの新型溶出ステントの有用性/Lancet

 経皮的冠血行再建術に用いる薬剤溶出ステントについて、新型の極薄タイプの生分解性ポリマー・シロリムス溶出ステントの安全性、有効性の試験結果が報告された。スイス・ベルン大学病院のThomas Pilgrim氏らによる、耐久性ポリマー・エベロリムス溶出ステントとの比較で検討した無作為化単盲検非劣性試験BIOSCIENCEで、12ヵ月時点の安全性・有効性複合アウトカムは非劣性であることが示された。試験集団は、除外基準最小で、2剤併用抗血小板療法のアドヒアランスが高い(80%超)患者集団であった。また事前規定のサブグループ解析で、ST上昇型心筋梗塞患者における顕著な有益性がみられたが、著者はその点についてはさらなる検討が必要であるとしている。Lancet誌オンライン版2014年9月1日号掲載の報告より。12ヵ月時点の標的病変不全を評価 検討は2012年2月24日~2013年5月22日にスイスの9施設にて、18歳以上の慢性安定冠動脈疾患または急性冠症候群の患者を対象に行われた。被験者は1対1の割合で、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を新型の生分解性ポリマー・シロリムス溶出ステントまたは耐久性ポリマー・エベロリムス溶出ステントで受ける群に割り付けられた。試験に用いられた新型ステントは、「ORSIRO」(スイス、バイオトロニック社製)で、コバルトクロム合金製のストラット厚60μmという特徴を有する。 無作為化は、中央Webベースシステムで行われ、ST上昇型心筋梗塞の有無で層別化もされた。割り付けについて患者とアウトカム評価者には知らされなかったが、治療担当医にはマスキングはされなかった。 主要エンドポイントは、12ヵ月時点の標的病変不全で、心臓死・標的血管心筋梗塞・標的病変血行再建の複合とした。非劣性のマージンは3.5%と定義し、intention to treat分析にて評価した。ST上昇型心筋梗塞患者では有意なアウトカム改善 2,119例(治療病変3,139個)の患者が無作為に、生分解性ポリマー・シロリムス溶出ステント(1,063例、1,594病変)または耐久性ポリマー・エベロリムス溶出ステント(1,056例、1,545病変)に割り付けられた。ST上昇型心筋梗塞患者は407例(19%)であった(各群211例、196例)。 結果、12ヵ月時点の標的病変不全発生について、シロリムス溶出ステント群(69例、6.5%)は、エベロリムス溶出ステント群(70例、6.6%)に非劣性であることが示された(絶対リスク差:-0.14%、95%信頼区間[CI]上限値:1.97%、非劣性のp<0.0004)。 確認されたステント血栓の発生率については、有意差はみられなかった(9例[0.9%]対4例[0.4%]、発生率比[RR]:2.26、95%CI:0.70~7.33、p=0.16)。 事前規定の主要エンドポイントの層別化解析で、ST上昇型心筋梗塞患者のサブグループにおいて、シロリムス溶出ステント群はエベロリムス溶出ステント群よりもアウトカムの改善が認められた(7例[3.3%]対17例[8.7%]、RR:0.38、95%CI:0.16~0.91、p=0.024、相互作用のp=0.014)。

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安定冠動脈疾患のPCI、冠血流予備量比で適応判断~2年後の結果/NEJM

 安定型冠動脈疾患の治療では、冠動脈造影時に冠血流予備量比(fractional flow reserve; FFR)を測定し、心筋虚血の可能性が高いと判定された患者のみに経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と薬物療法を行うアプローチが、薬物療法単独よりも良好な予後をもたらすことが、ベルギー・アールスト心血管センターのBernard De Bruyne氏らが行ったFAME 2試験で示された。血行再建術の成果は心筋虚血の範囲や程度に依存する。FFRが0.80以下(狭窄による最大血流量の20%以上の減少)では、心筋虚血が誘発される可能性が示唆され、このような患者では冠動脈造影のみによる血行再建術よりもFFRガイド下血行再建術のほうが、臨床アウトカムは良好とのデータがあるという。NEJM誌オンライン版2014年9月1日号掲載の報告。FFRガイドの有用性を無作為化試験で評価 FAME 2試験は、安定型冠動脈疾患および狭心症の患者において、FFRガイド下PCI+薬物療法の有用性を評価する非盲検無作為化試験。臨床的に安定した3枝までの冠動脈疾患(冠動脈造影で確認)で、FFR≦0.80の1つ以上の狭窄を有し、PCIの適応と考えられる患者を対象とした。 被験者は、FFRガイド下PCI+薬物療法を施行する群または薬物療法のみを行う群に無作為に割り付けられた。FFRはプレッシャーワイヤを用いて測定し、PCIは第2世代薬剤溶出ステント留置を行った。狭窄のFFRが>0.80の患者には薬物療法のみが行われた。 主要評価項目は、2年以内の全死因死亡、非致死的心筋梗塞、緊急血行再建術による入院の複合エンドポイントとした。主要評価項目:PCI群8.1%、FFR>0.80の薬物療法群9.0% 2010年5月15日~2012年1月15日までに1,220例が登録された。このうちFFR≦0.80は888例で、PCI群に447例、薬物療法単独群には441例が割り付けられた。残りの332例はFFR>0.80だった。 主要評価項目の発生率は、PCI群が8.1%と、薬物療法単独群の19.5%に比べ有意に低かった(ハザード比[HR]:0.39、95%信頼区間[CI]:0.26~0.57、p<0.001)。 PCI群では、緊急血行再建術が有意に少なかった(4.0 vs. 16.3%、HR:0.23、95% CI:0.14~0.38、p<0.001)が、全死因死亡(1.3 vs. 1.8%、0.74、0.26~2.14、p=0.58)および心筋梗塞(5.8 vs. 6.8%、0.85、0.50~1.45、p=0.56)の発生率には有意な差はなかった。また、心筋梗塞または心電図上の虚血変化に起因する緊急血行再建術はPCI群で有意に少なかった(3.4 vs. 7.0%、p=0.01)。 ランドマーク解析を行ったところ、0~7日の主要評価項目の発生率はむしろPCI群で高い傾向が認められた(HR:2.49、95%CI:0.78~8.00)が、8日~2年ではPCI群で有意に低かった(0.29、0.18~0.45)(交互作用検定:p<0.001)。また、8日~2年までの死亡または心筋梗塞の発生率はPCI群で有意に低く(4.6 vs. 8.0%、0.56、0.32~0.97、p=0.04)、緊急血行再建術もPCI群で有意に少なかった(3.6 vs. 15.6%、0.21、0.12~0.37、p<0.001)。 FFRが>0.80で薬物療法のみを受けた患者の主要評価項目の発生率は2年間で9.0%だった。 プロトコルで規定された臨床イベントまたは重篤な有害事象が1つ以上みられた患者は、PCI群が薬物療法単独群よりも少なかった(33.8 vs. 52.6%、p<0.001)。非心血管系の重篤な有害事象の発生率は両群で同等であった(17.2 vs. 17.2%、p=0.98)が、心血管系の重篤な有害事象はPCI群で有意に少なかった(24.6 vs. 46.3%、p<0.001)。 著者は、「冠動脈造影画像上の狭窄の有無にかかわらず、FFR>0.80の患者では、至適な薬物療法の臨床アウトカムが良好であった」としている。

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DES後のDAPT継続期間は短期間をベースに、高リスクの患者では症例ごとのオーダーメイド医療か(解説:中川 義久 氏)-241

 薬剤溶出ステント(DES)留置後の2剤併用抗血小板療法(DAPT)を継続する期間については、いまだ明確な基準はない。今回、この問題に1つエビデンスが加えられた。 フランスのJean-Philippe Colletらが、ARCTIC-Interruptionという無作為化比較試験の結果をLancet誌に報告した。2010年1月から2012年3月の間に、中断群624例と継続群635例に割り付けた。DES留置後1年間にイベントが起きなかった場合に割り付けが行われ、中断群はチエノピリジン系薬剤(クロピドグレル)が中断されアスピリンを継続している。継続群は、アスピリン+チエノピリジン系薬剤の2剤投与である。割り付け後の追跡期間の中央値は17ヵ月である。 その結果では、全死亡、心筋梗塞、脳梗塞や一過性脳虚血性発作、再血行再建術、ステント血栓症で定義される主要エンドポイント発生は、ITTで評価すると中断群4%、継続群4%と差は無かった。 一方、STEEPLE大出血イベントで定義される安全性エンドポイントは、中断群<0.5%、継続群1%と有意差はないものの継続群で頻度が高かった。大出血または小出血イベントでは、中断群1%、継続群2%と継続群で有意に頻度が高かった(p=0.04)。 要約すれば、留置後1年間でイベントが起きなかった場合、その後も継続して行うことに明白な有益性はなく、むしろ出血イベントのリスクが増し有害であることが示された。 この試験だけでなく、PRODIGY、REAL-LATE/ZEST-LATE、DES LATE、EXCELLENT、RESET、OPTIMIZEなどの試験でも、長期間のDAPTは心血管イベントを減らすことはなく、出血性合併症を増加させるという結果が一貫性を持って示されている。 このようなエビデンスがあるものの、日本における日常臨床の現場においては、1年を超えてDAPTが継続されている症例も少なくないのが現状であろう。これらの無作為化試験においては、試験除外基準によりステント血栓症の高リスク症例は解析に加えられていないことに注意が必要である。 また、DESの進化、新規の抗血小板薬剤の登場など現場の変化もある。日常臨床において各担当医が悩むのは、複雑な病変背景や植込み手技の症例、PSSやステント・フラクチャを持つことが既知の症例などである。標準的な症例については、DAPT期間についてガイドラインが今後改訂される可能性はあるが、高リスク症例については明確な基準を提示することは困難であろう。 ステント血栓症の危険因子を解析した報告は多い。これらの因子の集積度について症例毎に配慮して各個人に最適な医療を提供するオーダーメイド医療が求められる分野なのであろう。

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DES1年後のDAPT:継続か?中断か?/Lancet

 薬剤溶出ステント(DES)留置後の2剤併用抗血小板療法(DAPT)の継続について、留置後1年間でイベントが起きなかった場合、その後も継続して行うことに明白な有益性はなく、むしろ出血イベントのリスクが増し有害であることが示された。フランス・INSERMのJean-Philippe Collet氏らが、無作為化試験ARCTIC-Interruptionの結果を分析し報告した。冠動脈ステント留置後のDAPTの至適な継続期間はいまだ明らかになっていない。著者は今回の結果について、「高リスク患者が除外された試験であり、同患者については結論を出すことはできない」としつつ、「同様に中断した試験すべての所見が、冠動脈ステント留置後のDAPTの治療期間について短縮する方向でガイドラインを再検討する必要があることを示唆している」とまとめている。Lancet誌オンライン版2014年7月16日号掲載の報告より。DES留置1年後、DAPT中断群と継続群に割り付け検討 ARCTIC-Interruptionは、既報の無作為化試験ARCTIC-Monitoring(ARCTIC第I相試験、2,440例が参加)で予定されていた延長試験(ARCTIC第II相試験)であった。フランスの38施設でDES埋め込み手術が予定されていた18歳以上の患者が参加して行われた。 ARCTIC-Interruptionは、第I相試験の被験者で追跡1年後、DAPT中断への禁忌(糖尿病、末梢動脈疾患、ADPに対する血小板反応が高いなど)を有さなかった患者を適格とし、コンピュータ無作為化シーケンスにより施設単位で1対1の割合で、中断群と継続群に割り付けて6~18ヵ月治療が行われた。中断群はチエノピリジン系薬(クロピドグレル[商品名:プラビックス])が中断されアスピリンの投与は継続した。 主要エンドポイントは、死亡・心筋梗塞・ステント血栓症・脳卒中・緊急血行再建術の複合で、intention to treat分析にて評価した。主要複合エンドポイント発生は両群で有意差なし、大出血イベントは継続群で多い 2011年1月4日~2012年3月3日の間に、1,259例がARCTIC-Interruption試験の適格基準を満たし、各治療群に無作為に割り付けられた(中断群624例、継続群635例)。 追跡期間中央値は17ヵ月であった(IQR:15~18ヵ月)。その間の主要エンドポイント発生は、中断群27例(4%)、継続群24例(4%)だった(ハザード比[HR]:1.17、95%信頼区間[CI]:0.68~2.03、p=0.58)。 一方、安全性のエンドポイントでは、STEEPLE大出血イベントが、中断群(1例、0.5%未満)と比べて継続群(7例、1%)のほうが発生する頻度が高かった(HR:0.15、95%CI:0.02~1.20、p=0.073)。また、大出血または小出血イベントも、中断群(3例、1%)と比べて継続群(12例、2%)のほうがより頻度が高かった(同:0.26、0.07~0.91、p=0.04)。

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安定冠動脈疾患、CABGが薬物療法より予後改善/BMJ

 安定冠動脈疾患患者に対し冠動脈バイパス術(CABG)は薬物療法と比較して、死亡、心筋梗塞および再血行再建術リスクを低下することが、ネットワークメタ解析の結果、明らかにされた。スイス・ベルン大学病院のStephan Windecker氏らが行った検討によるもの。そしてCABGに次いでステントベースの冠動脈再建術が、種類を問わず薬物療法と比べて血行再建術の必要性を低下したことも示された。ステント術の中では新世代の薬剤溶出ステントの低下が顕著で、著者は、「薬物療法戦略と比較してCABGと新世代の薬剤溶出ステントに、生存改善のエビデンスがあることが示された」とまとめている。BMJ誌オンライン版2104年6月23日号掲載の報告より。血行再建術と薬物療法の予後改善比較についてネットワークメタ解析 安定冠動脈疾患患者において、血行再建術が薬物療法と比較して予後を改善するかを調べる検討は、ベイジアン・ネットワークメタ解析にて行われた。 初期薬物療法戦略と血行再建術(CABGまたはFDA承認の血行再建術)とを比較した試験を適格とした。FDA承認の血行再建術は具体的に、バルーン血管形成術、ベアメタルステントと、初期世代のパクリタキセル溶出ステント、シロリムス溶出ステント、Endeavorゾタロリムス溶出ステント、そして新世代のエベロリムス溶出ステント、Resoluteゾタロリムス溶出ステントであった。 1980~2013年のMedline、Embaseから、両者の比較を行っていた無作為化試験を適格とし検索。主要アウトカムは、全死因死亡とした。再血行再建術リスクは、CABGで顕著に低下 検索により100試験、9万3,553例、26万2,090人年のフォローアップデータを解析に組み込んだ。 結果、CABGは薬物療法と比較して生存ベネフィットがあり、率比で(RR)0.80(95%信頼区間[CI]:0.70~0.91)であった。新世代薬剤溶出ステントの生存ベネフィットは、エベロリムスが0.75(同:0.59~0.96)、ゾタロリムス(Resolute)が0.65(同:0.42~1.00)だった。 バルーン血管形成術(RR:0.85、95%CI:0.68~1.04)、ベアメタルステント(同:0.92、0.79~1.05)、初期世代の薬剤溶出ステント[パクリタキセル(同:0.92、0.75~1.12)、シロリムス(同:0.91、0.75~1.10)、ゾタロリムス(Endeavor)(同:0.88、0.69~1.10)]についても、薬物療法と比較して生存の改善が認められた。 CABGは、心筋梗塞リスクの低下も認められた(同:0.79、0.63~0.99)。エベロリムス溶出ステントも心筋梗塞リスクを低下する傾向が示された(同:0.75、0.55~1.01)。 再血行再建術リスクは、CABGで顕著な低下がみられた(同:0.16、0.13~0.20)。次いで新世代薬剤溶出ステント[ゾタロリムス(Resolute)(同:0.26、0.17~0.40)、エベロリムス(同:0.27、0.21~0.35)]で、初期世代薬剤溶出ステント[ゾタロリムス(Endeavor)(同:0.37、0.28~0.50)、シロリムス(同:0.29、0.24~0.36)、パクリタキセル(同:0.44、0.35~0.54)]、そしてベアメタルステント(同:0.69、0.59~0.81)と続いた。

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薬剤溶出ステントの直接比較、1年と5年では異なる結果に/Lancet

 ゾタロリムス溶出ステントとシロリムス溶出ステントを直接比較した多施設共同オープン無作為化試験SORT OUT IIIの1年時点と5年時点の臨床転帰を検証した結果、1年時点ではシロリムスの優越性が有意であったが、5年時点ではシロリムスの優越性が失われていたことが判明した。薬剤溶出ステントの直接比較試験では、主要エンドポイントの評価は伝統的に9~12ヵ月時点で行われてきたが、この時期での評価が最適なのかについては不明なままであった。デンマーク・オーフス大学病院のMichael Maeng氏らによる報告で、Lancet誌オンライン版2014年3月13日号で発表された。ゾタロリムスvs. シロリムス試験、最長5年追跡 SORT OUT III試験は、2種類の異なる薬剤溶出ステントを留置した患者の臨床転帰について評価することを目的に、デンマーク国内5ヵ所の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)センターで行われた。18歳以上の症候性適格患者2,332例が無作為に2群に割り付けられ、ゾタロリムス溶出エンデバースプリントステント(米国メドトロニック社製)もしくはシロリムス溶出サイファーセレクトプラスステント(米国コーディス ジョンソン&ジョンソン社製)の留置を受けた。 同試験の主要エンドポイントは、9ヵ月時点の主要重大心イベント(心臓死、心筋梗塞、標的血管再血行再建術の複合)であった。 今回の検討では、最長5年間フォローアップし、エンドポイントとして主要重大心イベントとステント血栓症の発生を含め評価した。分析は、intention to treatにて行った。1年時点まではシロリムスが優位だが、1~5年に逆転 被験者は、ゾタロリムス溶出ステント群1,162例、シロリムス溶出ステント群1,170例だった。 結果、追跡5年時点の主要重大心イベントの発生率は、両群間で同程度であった。ゾタロリムス群17.0%(197/1,162例)、シロリムス群15.6%(182/1,170例)で、オッズ比(OR)1.10(95%信頼区間[CI]:0.88~1.37、p=0.40)だった。 この所見の背景には、1年時点ではゾタロリムス群が有意に高率であったが(OR:2.13、95%CI:1.48~3.07、p<0.0001)、1~5年の間の発生が逆転しシロリムス群で発生が有意に高率となっていたことがあった(OR:0.78、95%CI:0.59~1.02、p=0.071)。 ステント血栓症も1年時点では、ゾタロリムス群の発生頻度が有意に高かったが(OR:3.34、95%CI:1.08~10.3、p=0.036)、1~5年の間の発生が逆転していた(OR:0.05、95%CI:0.01~0.36、p=0.003)。標的血管再血行再建術は、1~5年の間に、ゾタロリムス群30%(26/88例)であったのに対しシロリムス群は77%(54/70例)となっていた。 これらの結果を踏まえて著者は、「薬剤溶出ステント留置患者の5年転帰を、伝統的に行われている1年時点の主要エンドポイント評価で予測するには不十分と思われる」とまとめている。

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生分解性ポリマー薬剤溶出ステントの実力/BMJ

 米国・ニューヨーク大学のSripal Bangalore氏らはメタ解析にて、冠動脈疾患に対する生分解性ポリマー薬剤溶出ステントの有効性と安全性について、ベアメタルステント(BMS)および耐久性ポリマー薬剤溶出ステントと比較する検討を行った。その結果、標的血管血行再建術の減少について、生分解性ポリマー薬剤溶出ステントは、初期の耐久性ポリマー薬剤溶出ステントよりも優れるが、新世代の耐久性ポリマー薬剤溶出ステントよりも劣性であることなどを明らかにした。BMJ誌オンライン版2013年11月8日号掲載の報告より。耐久性ポリマー、生分解性ポリマー、BMSの無作為化試験をメタ解析 メタ解析は、PubMed、Embase、Centralをデータソースに、米国食品医薬品局(FDA)の承認を得ている耐久性ポリマー薬剤溶出ステント(シロリムス溶出、パクリタキセル溶出、コバルト・クロミウム・エベロリムス溶出、プラチナ・クロミウム・エベロリムス溶出、ゾタロリムス溶出「Endeavor Sprint」、ゾタロリムス溶出「Resolute Integrity」)、生分解性ポリマー薬剤溶出ステントについて、いずれか同士あるいはBMSと比較している無作為化試験を検索・選定して行われた。 長期有効性(標的血管血行再建術、標的病変血行再建)および安全性(死亡、心筋梗塞、ステント血栓症)について評価した。1年以上のランドマーク解析を評価し、生分解性ポリマー薬剤溶出ステントのほうが長期的ベネフィットがあるかを判定した。 解析には126試験、登録患者10万6,427例、フォローアップ平均2.3年(範囲:0.5~5年)の、合計25万8,544患者・年のデータが組み入れられた。最も有効・安全なのはコバルト・クロミウム・エベロリムス溶出ステント 結果、長期有効性(標的血管血行再建術)について、生分解性ポリマー薬剤溶出ステントは、パクリタキセル溶出ステント(率比:0.66、95%信頼区間[CI]:0.57~0.78)、ゾタロリムス溶出エンデバー(同:0.69、0.56~0.84)よりも優れていたが、新世代の耐久性ポリマー薬剤溶出ステントには優らなかった(例:コバルト・クロミウム・エベロリムス溶出ステントと比較した率比は1.03[95%CI]:0.89~1.21)。 同様に、長期安全性(確認されたステント血栓症)について、パクリタキセル溶出ステントよりも優れていたが(同:0.61、0.37~0.89)、コバルト・クロミウム・エベロリムス溶出ステントよりも劣性だった(同:2.04、1.27~3.35)。 また、ステント血栓症について1年後ランドマーク解析において、生分解性ポリマー薬剤溶出ステントは、シロリムス溶出ステントよりも優れていたが(同:0.29、0.10~0.82)、コバルト・クロミウム・エベロリムス溶出ステントと比べると死亡の増大がみられた(同:1.52、1.02~2.22)。 全タイプのステント全体でみると、新世代耐久性ポリマー薬剤溶出ステント(ゾタロリムス溶出ステント-リゾリュート、コバルト・クロミウム・エベロリムス溶出ステント、プラチナ・クロミウム・エベロリムス溶出ステント)が最も有効な(標的血管血行再建術が最も低い)ステントであった。 また、BMSとの比較で、ステント血栓症(率比:0.35、95%CI:0.21~0.53)、心筋梗塞(同:0.65、0.55~0.75)、死亡(同:0.72、0.58~0.90)が有意に低下し、最も安全であったのは、コバルト・クロミウム・エベロリムス溶出ステントだった。 これらの結果を踏まえて著者は、「生分解性ポリマー薬剤溶出ステントは、標的血管血行再建術の減少について、初期の耐久性ポリマー薬剤溶出ステントよりも優れるが、新世代の耐久性ポリマー薬剤溶出ステントよりも劣性である。また、より新しい耐久性ポリマーステント、とくにコバルト・クロミウム・エベロリムス溶出ステントが、有効性と安全性を最も兼ね備えている」と述べ、「より新しい世代の耐久性ポリマーステントに対して優れた臨床アウトカムを有するのだという生分解性ポリマー薬剤溶出ステントの有用性について、試験を行う必要がある」とまとめている。

130.

最も安全な薬剤溶出ステントが明らかに/BMJ

 薬剤溶出ステント(DES)の安全性と有効性は、種類間で異なり、エベロリムス溶出ステントとResoluteゾタロリムス溶出ステントが他のDESに比べて安全性が高く、現状最も安全なステントであることが明らかになった。ポーランド・ニコラス・コペルニクス大学のEliano P Navarese氏らが、60件の無作為化試験について行ったメタ解析の結果、報告した。BMJ誌オンライン版2013年11月6日号掲載の報告より。被験者総数6万人超について、死亡や心筋梗塞、ステント血栓症リスクなどを比較 冠動脈ステントは、冠動脈疾患患者の治療としてベアメタルステント(BMS)よりも有効なDESを用いて広く行われている。DES間では、第2世代の耐久性ポリマーステントは、第1世代の耐久性ポリマーステントやBMSよりも安全であることが示されているが、生分解性ポリマーステントの有効性と安全性プロファイルについては議論の的となっていた。 そこで研究グループは、種々のDESを試験対象に含む60の無作為化試験(被験者総数6万3,242例)についてメタ解析を行った。解析に組み込まれたDESは、次のとおり。●シロリムス溶出ステント(第1世代耐久性ポリマーステント)●パクリタキセル溶出ステント(第1世代耐久性ポリマーステント)●エベロリムス溶出ステント(第2世代耐久性ポリマーステント)●Endeavor ゾタロリムス溶出ステント(第2世代耐久性ポリマーステント)●Resolute ゾタロリムス溶出ステント(第2世代耐久性ポリマーステント)●バイオリムス溶出ステント(生分解性ポリマーステント) 安定性冠動脈疾患または急性冠症候群でDES留置術を行った患者について、安全性と有効性を比較した。主要アウトカムは、安全性については死亡、心筋梗塞、確定的または可能性の高いステント血栓症のいずれかとした。有効性については、標的病変または標的血管再血行再建術とした。心筋梗塞リスクが少なかったのはResoluteゾタロリムス溶出ステントとエベロリムス溶出ステント 1年後の死亡率は、DESの種類間の格差はなかった。心筋梗塞リスクについては、Resoluteゾタロリムス溶出ステント、 Endeavor ゾタロリムス溶出ステント、エベロリムス溶出ステント、シロリムス溶出ステントが、パクリタキセル溶出ステントに比べ、発症リスクを29~34%減少した。 なかでもResoluteゾタロリムス溶出ステントとエベロリムス溶出ステントの、パクリタキセル溶出ステントに対する心筋梗塞発症に関するオッズ比は、それぞれ0.66(95%信頼区間:0.46~0.91)と0.67(同:0.53~0.81)だった。 さらに心筋梗塞発症リスクについては、生分解性ポリマー使用バイオリムス溶出ステントが、エベロリムス溶出ステントに比べ、29%増大した(オッズ比:1.29、同:1.02~1.69)。 一方で、生分解性ポリマー使用バイオリムス溶出ステントと比較して、Endeavor ゾタロリムス溶出ステントとパクリタキセル溶出ステントは、ステント血栓症のリスクを有意に増大した。 有効性のエンドポイントについては、Endeavor ゾタロリムス溶出ステントとパクリタキセル溶出ステントで、標的病変または標的血管再血行再建術の実施率が増大したが、その他のDESではいずれも同等だった。 安全性については、ベイズ確率曲線による解析の結果、エベロリムス溶出ステントと Resoluteゾタロリムス溶出ステントが、他の溶出ステントに比べ、最も安全性が高いことが明らかになった。

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薬剤溶出ステント:ステントによる差はあるか?/Lancet

 第三世代の薬剤溶出ステントである、ゾタロリムス溶出ステントとエベロリムス溶出ステントについて検討した非劣性試験の結果、両ステントの有効性および安全性は同程度であることが明らかにされた。オランダ・Medisch Spectrum TwenteのClemens von Birgelen氏らによる無作為化単盲検多施設共同非劣性試験「DUTCH PEERS」の結果、示されたもので、著者は「いずれも優れた臨床アウトカムをもたらすものである」と結論している。Lancet誌オンライン版2013年10月31日号掲載の報告より。オランダ4施設で被験者を募り非劣性試験を実施 第三世代の新しい永久ポリマーの薬剤溶出ステントは、前世代ステントよりも柔軟である点が複雑冠動脈病変への薬剤溶出を容易とする可能性があるが、耐久性について懸念されていた。 DUTCH PEERSは、臨床で使用される頻度が高い2つの第三世代ステントの留置を受けた全患者を対象に、安全性と有効性を評価することを目的とした試験であった。検討の対象となったステントはこれまでに比較検討されたことがなく、無作為化試験での評価が行われていなかった。 試験は、薬剤溶出ステント留置を有する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を必要とした18歳以上の患者で、オランダ国内4施設で被験者を募り行われた。 試験に用いられたステントは、コバルトクロム製のゾタロリムス溶出ステント(米国メドトロニック社製「リゾリュートインテグリティ」)と、プラチナクロム製のエベロリムス溶出ステント(米国ボストン・サイエンティフィック社製「プロマス・エレメント」)であった。 被験者は無作為に1対1の割合でいずれかのステント留置を受けるよう割り付けられた。その際、患者と試験結果の分析者は割り付け情報をマスキングされたが、治療の担当医には割り付け情報が知らされていた。 主要エンドポイントは、標的血管障害の12ヵ月時点の安全性(心臓死または標的血管関連の心筋梗塞)と有効性(標的血管再血行術)の複合とした。解析は、intention-to-treatにて行い、非劣性マージンは3.6%だった。ステントの長期変形はエベロリムス群のみで発生 2010年11月25日~2012年5月24日の間に、適格患者1,811例・標的病変2,371個が試験に登録された。試験期間中に、ST上昇型心筋梗塞を呈した患者は370例(20%)、非ST上昇型心筋梗塞例は447例(25%)であった。 ゾタロリムス群(906例)、エベロリムス群(905例)いずれの患者も、割り付けられた試験薬以外の治療が必要となった患者が非常に少なく(ゾタロリムス群6例[1%]vs. エベロリムス群5例[1%]、p=0.22)、ステントデリバリーが良好であることが示された。 12ヵ月のフォローアップのデータは、ゾタロリムス群で割り付け治療の同意を翻した1例分を除く1.810例から入手できた。 主要エンドポイントを呈したのは、ゾタロリムス群55/905例(6%)、エベロリムス群47/905例(5%)で、ゾタロリムス溶出ステントはエベロリムス溶出ステントに非劣性であることが示された(絶対リスク差:0.88%、95%信頼区間:-1.24~3.01%、95%CIの一方の上限値:2.69%、非劣性のp=0.006)。 主要エンドポイントの各要素について、両群間で有意差はみられなかった。また、確認されたステント血栓症は、ゾタロリムス群3例(0.3%)、エベロリムス群6例(0.7%)で有意差はなかった(p=0.34)。 ステントの長期変形は、エベロリムス群でのみ認められ、9/905例(1.0%)、これに対しゾタロリムス群は0/906例で有意差がみられた(p=0.002)。埋込件数でみるとエベロリムス群の発生は9/1,591例(0.6%)だった。ただし、関連するいかなる有害事象も認められなかった。 以上の結果から著者は、「とりわけ急性心筋梗塞の患者数の多さを鑑みると、両ステントは同程度に有効で安全であり、優れた臨床アウトカムをもたらすものであった」と結論している。

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CABGとPCI、健康状態もCABGのほうが良好-糖尿病の多枝冠動脈疾患患者-/JAMA

 糖尿病を有する多枝冠動脈疾患患者の血行再建戦略では、冠動脈バイパス移植術(CABG)のほうが薬剤溶出ステント(DES)を用いた経皮的冠動脈インターベンション(PCI)よりも、中期的な健康状態やQOLが良好なことが、米国Saint Luke’s Mid America Heart InstituteのMouin S Abdallah氏らが行ったFREEDOM試験のサブ解析で示された。本試験ではすでに、CABGはDESによるPCIに比べ死亡率や心筋梗塞の発生率は低いが、脳卒中の頻度が高いことが報告されている。JAMA誌2013年10月16日号掲載の報告。治療法別の全般的な健康状態への影響を評価 FREEDOM試験の研究グループは、今回、CABGおよびDESによるPCIが、糖尿病を合併する多枝冠動脈疾患患者の全般的な健康状態に及ぼす影響について評価を行った。 本無作為化試験には、2005~2010年までに18ヵ国から糖尿病と多枝病変を有する患者1,900例が登録された。初回治療としてCABGを施行する群に947例が、PCIを行う群には953例が割り付けられた。ベースラインの健康状態の評価は1,880例[CABG群935例(平均年齢63.0歳、男性69.8%)、PCI群945例(63.2歳、73.2%)]で行われた。 健康状態については、シアトル狭心症質問票(SAQ)を用いて患者の自己申告による狭心症の頻度、身体機能の制限、QOLの評価を行った(ベースライン、1、6、12ヵ月後、その後は年に1回)。個々の評価スケールは0~100でスコア化した(スコアが高いほど健康状態が良好)。混合効果モデルを用いて治療法の影響を縦断的に解析した。再血行再建術の施行率の差も一因か ベースライン時のSAQ平均スコア(SD)は、CABG群の狭心症頻度が70.9(25.1)、身体機能制限が67.3(24.4)、QOLは47.8(25.0)で、PCI群はそれぞれ71.4(24.7)、69.9(23.2)、49.2(25.7)であった。 2年後のSAQ平均スコア(SD)は、CABG群がそれぞれ96.0(11.9)、87.8(18.7)、82.2(18.9)、PCI群は94.7(14.3)、86.0(19.3)、80.4(19.6)であり、いずれもCABG群で有意に良好であった。平均治療ベネフィット(>0でCABG群が良好)は、狭心症頻度1.3ポイント(95%信頼区間[CI]:0.3~2.2、p=0.01)、身体機能制限4.4ポイント(同:2.7~6.1、p<0.001)QOL:2.2ポイント、95%CI:0.7~3.8、p=0.003)であった(群間の比較のp<0.01)。 2年以降は、2つの血行再建戦略における患者申告によるアウトカムに差はなくなり、全般に同等となった。 著者は、「糖尿病を有する多枝冠動脈疾患患者では、CABG施行例のほうがDESによるPCI施行例よりも中期的な健康状態やQOLが良好であったが、そのベネフィットの程度は小さなもので、2年以降は両群間の差はなくなった」とまとめ、「このような差の原因の1つとして、PCI施行例では再血行再建術の施行率が高かったことが挙げられる」と指摘している。

133.

DES留置後の再内皮化と内皮機能の関係~OCTとAch負荷試験からの検討~

 ZES(ゾタロリムス溶出ステント)は、PES(パクリタキセル溶出ステント)よりも内皮機能が保持されること、および新生内膜によるstent strut被包と内皮機能保持には関係があることが、名古屋ハートセンターの村瀬 傑氏らによって示唆された。Catheterization and Cardiovascular Interventions誌オンライン版7月30日号掲載の報告。 これまで、DES(薬剤溶出ステント)留置後の再内皮化と内皮機能については、報告されていた。しかし、DES留置後の再内皮化と内皮機能との関係については、調べられていなかった。本研究では、DES留置(PES 7病変、ZES 7病変)9ヵ月後に、OCT(optical coherence tomography)による再内皮化の評価およびアセチルコリン負荷試験による内皮機能測定が行われた。 主な結果は、次のとおり。・ZES群、PES群の患者背景に有意な差は認められなかった。・ZES群はPES群に比較し、stent strutsが新生内膜により高度に被包されていた(ZES:0.27±0.14mm vs PES:0.17±0.18mm、p<0.01)。また、不完全密着率も低かった(ZES:0% vs PES:2.7%、p<0.01)。・ZES群はPES群に比較し、アセチルコリン誘発血管収縮が低かった(ZES:28.6% vs PES:57.1%、p<0.01)。・スパズム発生群とスパズム非発生群で比較すると、発生群は、被包率が低かった(スパズム発生:0.21±0.19mm vs スパズム非発生:0.25±0.14mm、p<0.01)。

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女性にも薬剤溶出ステントは有効か?/Lancet

 冠動脈疾患の男性患者だけでなく女性患者においても、薬剤溶出ステント(DES)はベアメタルステント(BMS)に比べ有効性と安全性が優れることが、スイス・ベルン大学病院のGiulio G Stefanini氏らの検討で確認された。冠動脈疾患の治療におけるDESの安全性と有効性はさまざまな無作為化試験で検討されているが、登録患者に占める女性の割合が約25%と低いため、女性におけるDESの有用性を評価する十分なパワーを有する単一の試験はないという。Lancet誌オンライン版2013年9月2日号掲載の報告。日本人女性患者を含む26試験の統合解析 研究グループは、女性におけるDESの有用性を評価するために、2000~2013年に実施された26件のDESに関する無作為化試験に参加した女性のデータを収集し、統合解析を行った。解析には、日本のRESET試験(3,197例、女性23%、2012年)が含まれた。 BMS、旧世代DES[シロリムス溶出ステント(Cypher)、パクリタキセル溶出ステント(Taxus)]、新世代DES[エベロリムス溶出ステント(Xience、Promus)、ゾタロリムス溶出ステント(Endeavor、Resolute)、バイオリムス溶出ステント(Biomatrix、Nobori)、シロリムス溶出ステント(Yukon)]の3群に分けてアウトカムを解析した。 安全性の主要評価項目は、死亡と心筋梗塞の複合エンドポイントとし、副次評価項目は、ステント血栓症(疑い例を含む)であった。有効性の主要評価項目は標的病変再血行再建術の施行とした。死亡/心筋梗塞:12.8 vs 10.9 vs 9.2%、ステント血栓症:1.3 vs 2.1 vs 1.1% 26試験に参加した4万3,904例のうち女性は1万1,557例(26.3%)で、BMS留置例が1,108例(9.6%)、旧世代DES留置例が4,171例(36.1%)、新世代DES留置例は6,278例(54.3%)であった。 全体の平均年齢は67.1歳で、BMI 28.1、糖尿病31.2%、高血圧75.6%、高コレステロール血症67.6%、喫煙者26.7%、冠動脈疾患家族歴39.5%、心筋梗塞の既往19.0%、PCI施行歴20.6%、CABG施行歴5.0%、多枝病変28.8%であった。平均フォローアップ期間は2.9年だった。 留置後3年時の安全性の複合エンドポイントの累積発生率は、BMS留置例が12.8%(132例)、旧世代DES留置例が10.9%(421例)、新世代DES群は9.2%(496例)であった(全体:p=0.001、旧世代と新世代DESの比較:p=0.01)。ステント血栓症の発症率は、BMS留置例が1.3%(13例)、旧世代DES留置例が2.1%(79例)、新世代DES群は1.1%(66例)だった(同:p=0.01、p=0.002)。 3年時の標的病変再血行再建術の施行率は、BMS留置例が18.6%(197例)、旧世代DES留置例が7.8%(294例)、新世代DES群は6.3%(330例)であり、DESの使用により有意に低下した(全体:p<0.0001、旧世代と新世代DESの比較:p=0.005)。これらの結果は、多変量解析にてベースラインの患者背景で調整しても変わらなかった。 著者は、「女性患者では、BMS留置例に比べDES留置例で長期的な有効性と安全性が優れ、新世代DESは旧世代DESに比べ良好な安全性を示した」と結論し、「新世代DESは女性患者における経皮的冠動脈再建術の標準治療とみなされる」と指摘している。

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Vol. 1 No. 1 ACSの治療-2次予防を考えた長期治療

大倉 宏之 氏川崎医科大学循環器内科はじめに急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)の慢性期治療には、責任病変での再発防止と非責任病変の新規発症防止、すなわち2次予防が含まれる。責任病変の再発予防には、薬剤溶出ステント(DES)による再狭窄抑制と、適切な抗血小板療法によるステント血栓症の予防が重要である。一方、非責任病変の新規発症を防ぐには、抗血小板薬を含むさまざまな薬物による長期にわたる2次予防が必要である。ACSの予後:欧米と日本の違いACS患者の予後は不良である。欧米のデータでは、その20%は1年以内に再入院し、男性の18%、40歳以上の女性の23%が死亡するとの報告がある1)。また、心筋梗塞(AMI)後の患者は退院後1年以内にその8~10%がAMIを再発するとも報告されている2)。ただ、その再発率は保有するリスクによって異なる。Finnish studyでは、糖尿病例(年率7.8%)は非糖尿病例(年率3%)と比較して心筋梗塞再発が高率であることが示されている3)。ランダム化試験のデータでは、AMIの再発率は1~5%程度とおおむねレジストリーよりも低めである。AMIに対するDESと金属ステント(BMS)を比較したランダム化試験のメタ解析によると、AMI再発はDES留置例で3.1%、BMS留置例で3.3%であった4)。日本のデータでも非ACS症例と比較すると、ACS例の予後は不良であるが(図:本誌p21参照)5, 6)、ACS発症後のAMI再発率は、日本や韓国では1%以下と欧米と比較すると低率である7, 8)。もともとAMIの発症自体が少ないことに加えて、急性期に速やかに経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)による治療がなされていることと、その後も主治医によるきめ細やかな2次予防が行われていることがその理由かもしれない。至適薬物療法によるACSの2次予防欧米では、ACSの予後は経年的に改善していることが示されている。The Global Registry of Acute Coronary Events(GRACE)レジストリーに登録されたACS患者約4万例のデータ(図:本誌p21参照)において、入院中の死亡や心不全、6か月後のAMI新規発症が2000年から2005年にかけて有意に減少していることが示された9)。これは、エビデンスに基づいた薬物治療の浸透と、急性期のPCI施行率が高くなってきた結果である(図:本誌p22参照)。ACS後の2次予防を目指した薬物療法についてはガイドラインに詳細に述べられており10-15)、β遮断薬、ACE阻害薬(またはARB)、アルドステロン阻害薬、スタチン等の有用性が示されている。これらの薬物療法が、日本の臨床の現場にどの程度浸透しており、その結果、日本人のACS患者の予後が実際に改善しているのかどうかについては今後検証すべき課題である。ACS患者では、非責任病変の血管内超音波所見によって、ハイリスク病変を予測可能との報告がなされている16)。もともとイベント発生率の低い日本人でも、同様の予測が可能であるのかについても明らかにすべきである。抗血小板薬によるACSの2次予防薬物による2次予防のうちでも、特に重要な役割を果たしているのが抗血小板療法である。表に日本、米国、欧州の各ガイドライン10-15)に記載されている抗血栓療法の推奨をまとめた(Class I、Class IIaのみ記載)(表:本誌p23参照)。アスピリンが第1選択である点はすべてのガイドラインに共通である。欧州、米国のガイドラインでは、アスピリンに加えてクロピドグレル(または他のP2Y12阻害薬)を12か月間投与することが推奨されている。日本のガイドラインにはその期間は特定されていない11)。抗血小板薬2剤併用療法の至適期間抗血小板薬2剤併用療法(dual anti-platelet therapy: DAPT)の至適投与期間は、ステントの種類(BMSかDESか)と病型(安定狭心症かACSか)により異なる。一般に、DESの場合は12か月間以上のDAPTが推奨されているが20)、至適期間についてのエビデンスは十分ではない。j-Cypherレジストリーでは、ACS例において6か月以上DAPTを継続していた例と、DAPTを6か月時点で中止していた例との間には、その後2年間のイベント発生率に差を認めなかったことが示されている5)。日本では、患者背景や病変背景を考慮した至適な抗血小板薬療法が行われていることが反映されているのかもしれない。ACSの研究ではないが、韓国からはステント留置後12か月以上イベントのなかった2,701例を、DAPT群とアスピリン単剤群にランダム化した試験が報告されている18)。2年間の観察期間中、両群間に心筋梗塞+心臓死の頻度に差はなく、ステント血栓症にも差はなかった(図:本誌p24参照)。EXCELLENT試験は、CypherもしくはXience/Promusステント留置例1,443例のDAPT期間を、6か月間と12か月間にランダム化したものである19)。12か月後のTVF(target vessel failure)や死亡もしくは心筋梗塞の発生には両群間に差を認めなかったが、ステント血栓症はDAPT6か月間群で多い傾向にあった。ただし、6か月間群のステント血栓症発症例6例中5例は6か月以内の発生であり、DAPTの期間が影響した可能性は低い。Prolonging Dual Antiplatelet Treatment after Grading Stent-induced Intimal Hyperplasia study(PRODIGY)では、ステント留置例約2,000例を対象にランダム化し、DAPTの期間を6か月間と24か月間で比較したものである。2年間の追跡期間中に全死亡+心筋梗塞+脳血管障害+ステント血栓症の頻度は6か月間群と24か月間群は同等であったが(10.0% vs. 10.1%, p=0.91)、出血は6か月間群で少なかったとの結果であった(ESC2011で報告)。The Dual Antiplatelet Therapy(DAPT)study20)は、15,000例のDES留置例と5,400例のBMS留置例を登録し、DAPTの投与期間を12か月間と30か月間にランダム化して両者を比較する大規模臨床試験である。すでに患者登録は終了し、現在フォローアップが進行中である。本邦においても、Optimal Duration of DAPT Following Treatment with Endeavor in Real-world Japanese Patients: A Prospective Multicenter Registry (OPERA) studyやNobori Dual antiplatelet therapy as appropriate duration (NIPPON) studyが現在進行中である。これらの研究にはACSも含まれており、日本人独自のエビデンスが得られるものと期待される。抗血小板薬投与と出血性合併症抗血小板薬投与に関連した問題点には出血性合併症がある。ACSに出血性合併症を発生した場合には、その長期予後は不良である21)。DAPT継続にあたっては、そのベネフィットのみならず出血のリスクも考慮せねばならない。ACSにおいて、出血のリスクが特に問題となるのが心房細動合併例である。欧州心臓病学会の心房細動ガイドライン22)では、心房細動合併例に対するステント留置術後の抗血栓療法は表のごとく推奨されている(Class IIa)(表:本誌p25参照)。注目すべき点は、塞栓症のリスクを有する心房細動例では最後的には抗血小板薬は中止し、ワルファリンのみを一生継続することが推奨されている点である。日本でも、心房細動合併ACS例に対する至適抗血栓療法をいかにすべきかは重要な検討課題である。おわりにACSの予後改善には、急性期治療に加えて、抗血小板薬を中心とした長期にわたる2次予防が重要な役割を演じている。ただし、これら多くは欧米のデータに基づいたものであるため、今後、日本人における検証はぜひとも行われるべきである。文献1)Menzin J et al. 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2012年度10大ニュース~心房細動編~ 第3位

解説者のブログのご紹介『心房細動な日々』国内3位 ダビガトランの使用法に関する知の集積が進む〜このまま安住してよいのか?ダビガトラン(商品名:プラザキサ)は発売から2年近くが経過し、現場での使用経験がある程度蓄積されてきたように思われます。とくに日本では、心臓血管研究所からaPTTがモニタリング(チェック)に有効であるとの論文1)が発表され、施設基準上限の2倍を超えない範囲での使用が浸透されつつあります。またRE-LY試験のサブ解析が数多く発表されるようになり、とくにアジア人を対象としたRE-LY ASIA試験2)では、アジア人のダビガトランによる消化管出血は少ないことが報告されています。このように比較的安全に使用できるようになってきたダビガトランですが、aPTTよりもより施設間のばらつきが少なく、血中濃度との相関がよい指標の登場が望まれます。またダビガトランが使用できない腎機能低下例、高齢者などにおいて、むしろワルファリンのありがたみを実感する場面も多くなりました。抗凝固薬の世界は、ワルファリンの使い方を知って初めて新規抗凝固薬も使いこなすことができる、いわゆる温故知新であると同時に「温新知故」というべき状況でもあると思われます。1)Suzuki S,et al.. Circ J. 2012;76:755-757.2)Hori M, et al. Efficacy and safety of dabigatran versus warfarin in patients with atrial fibrillation: Analysis in Asian population in RE-LY trial. Presented at the 2nd Asia Pacific Stroke Conference, 11 September 2012.海外3位 WOEST試験~トリプルテラピーは避けられるか?抗凝固薬服用中の心房細動患者さんにPCIを施行することになった。あるいは薬剤溶出ステント後、抗血小板薬2剤服用中の方が心房細動になった。このようなケースが年々増えていますが、抗凝固薬+抗血小板薬2剤併用のいわゆるトリプルテラピーは出血合併症が多く、現場での悩みの種でした。「抗血小板薬1剤だけのダブルテラピーでもよいのでは?」といった臨床上の疑問に答えるべくデザインされたWOEST試験1)の結果が最近発表されました。トリプルテラピーの方がクロピドグレルとの併用であるダブルテラピーより出血合併症は有意に多く、塞栓症は同等という結果でした。薬剤溶出ステントに特化したものではなく、オープンラベル試験であるなどの制約はありますが、今後ガイドラインなどに影響を与える試験として注目したいと思います。1)Dewilde WJ, et al. Lancet. 2013 Feb 12. [Epub ahead of print]

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(36)〕 ステント研究の難しさ

臨床手技に全く問題がなかったにもかかわらず、突如ステントが血栓閉塞してしまうステント血栓症はベアメタルステントの時代から、まれではあるが重症な合併症として認知されていた。ただし、ベアメタルステントでは植め込み後2週間以内の発症が多く1ヵ月以降に起こることはまれであることが知られていた。 ところが薬剤溶出ステントの時代となり、30日以降にも合併する遅発性ステント血栓症が注目されるようになった。ことの起こりは2006年のヨーロッパ心臓病学会で、Camenzind氏らが「薬剤溶出ステントを使用するとかえって死亡と心筋梗塞のリスクが増加する」とのメタアナリシスを発表したことである。これにより、一時薬剤溶出ステントの売り上げが4割減少したといわれる。結局は元データを検討し直すことで両群間の差はみられなくなり、論争は一旦収束したが、その後もこの問題を巡ってはさまざまな解析がなされ、遅発性血栓症が薬剤溶出ステントにおける重大な問題であるという点は広く認識されるに至った。 一方、血管内視鏡を用いた研究からシロリムス溶出ステントでは、植め込み後1年たっても内膜が張らず、ステントストラットが露出している例がまれではないことが明らかにされた。そのことから、より緩徐な作用の薬剤を使用することにより、late lossをある程度犠牲にしてでも内膜の自然な修復を促すことで、遅発性血栓症のリスクを減らすことができるのではないかとの仮説が提出された。 この仮説はいかにも説得力を持つが、その後もステント血栓症に特化した大規模臨床試験は行われることはなかった。今回のPROTECTは、この仮説の検定を前面に打ち出した初めての大規模臨床試験である。 一般にある要素の検定を行う場合、それ以外の要素を全て均一にして群間比較をする必要がある。しかし、著者自身が指摘しているように、ステントの性能を規定する因子は使用薬剤だけではなく、溶出プログラム・ポリマーの性質や形態・ステントデザインなど複数あり、それらを均一にすることは不可能である。 また、臨床ステント研究において、完全盲検は特許などの実際的な面からも倫理的な面からも不可能である。したがって、精緻な割り付けを行っても、結局は「製品としてのエンデバーとサイファーの遅発性血栓症という観点からみた性能比較」となり、前述した仮説の直接的な検定にはなり得ない。ここに臨床ステント研究の難しさ、限界がある。 このような限界はあるものの、今回の研究は(著者らの当初のもくろみに反し)製品の違いによる差が明らかでなかったこと、dual antiplatelet therapyの持続期間の方が大きな意味を持つ可能性がある点が示唆されたことで、この仮説に対し、やんわりとではあるが疑義を呈する形となった。 薬剤溶出ステントにおける遅発性血栓症の問題をいかに克服するかについては、薬剤以外の要素も含め、種々の製品開発がなされる過程において、ゆっくりと解決策の合意がなされていくのだろうと予想される。しかし、その際も、この問題の検討が大規模臨床試験という検定法にはそぐわないのではないかとの疑念を、頭の片隅に置いておく必要があると考えるものである。

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【日本癌治療学会2012】わが国における泌尿器内視鏡の発展

 第50回日本癌治療学会学術集会(2012年10月25日~27日)のシンポジウム「泌尿器がん治療の過去と未来」にて、西松寛明氏(東京大学医学部泌尿器科)は、「わが国における泌尿器内視鏡の発展」と題して、日本における泌尿器内視鏡の進歩と今後の展望について講演を行った。●膀胱鏡の進歩 日本で最初に国産の膀胱鏡が開発されたのは1919年であり、1963年にはカラーモニターを備えた膀胱鏡が、1973年にはファイバースコープが導入された。その後、近年の膀胱鏡の開発の方向性は、ハイビジョンによる画像の向上のほか、Photodynamic Diagnosis(PDD)やNarrow Band Imaging(NBI)、STORZ Professional Image Enhancement System(SPIEs)などの診断精度の向上、そして膀胱鏡で観察している部位を明確にするため、磁気チップを用いたマッピングやナビゲーション・システムに焦点があてられている。 PDDとは、がんに親和性のある蛍光試薬を内服し、がん組織に選択的に蓄積させた後、特定波長の光を照射して発せられる蛍光色を観察して、がんの部位を特定する診断方法である。NBIは、血液の中に含まれるヘモグロビンに吸収されやすい2つの波長の光を照射することにより、腫瘍組織の新生血管や粘膜の微細模様を強調して表示する画像強調技術であるが、狭帯域光を用いるため画像が暗いという欠点があった。それに対し、SPIEsでは600nm以上の白色光を照射してコンピューターで解析するため、光量を落とさずに観察ができ、診断能の向上も期待される。 内視鏡手術を行う際のアクセス方法としては、経尿道的、経皮的、腹腔鏡手術のように腹式があり、最近では侵襲性の低い経管腔的内視鏡手術(Natural Orifice Translumenal Endoscopic Surgery: NOTES)が注目を集めている。●腹腔鏡手術の進歩 次いで、西松氏は腹腔鏡手術の進歩について概説した。1983年に虫垂炎の腹腔鏡手術が行われ、主に産婦人科領域で腹腔鏡手術は進歩してきた。1992年にバルーンが開発され、レトロアプローチによる腹腔鏡手術が安全に行えるようになった。日本では、1992年に腹腔鏡による精索静脈瘤切除術が行われ、1997年にはドナー腎摘術が腹腔鏡下で行われた。1998年に海外で前立腺全摘除術が腹腔鏡下で行われ、日本でも広く普及していった。 2001年には海外でda Vinciシステムが承認され、ロボット支援手術が注目を集めた。その後、内視鏡の性能の進歩と相まって、2007年には単孔式腹腔鏡手術(LESS)が行われ、ポート減数手術(RPS)などの低侵襲で整容性に優れた手技が開発されている。 日本でも、2012年にda Vinciシステムが保険承認され、今後、腹腔鏡下のロボット支援手術の普及が予想されるが、医療コストの高騰が懸念されることを西松氏は指摘した。 こうした泌尿器内視鏡学の普及と進歩を反映して、1987年に日本泌尿器内視鏡学会が設立された。●Engineering-based Medicine 最後に、西松氏は東京大学医学部における内視鏡手術の進歩を振り返り、もうひとつのEBMである「Engineering-based Medicine」の考え方を紹介した。 東京大学医学部では、1949年に日本で最初の胃カメラを開発し、また1971年に世界で最初に光ファイバーの腎盂尿管鏡について発表している。これらの成果は、医療機器メーカーの技術者との長年のパートナーシップに基づく技術の進歩によるものであり、こうした医療を西松氏は「Engineering-based Medicine」と称した。 現在もこのEngineering-based Medicineの一環として、東京大学医学部附属病院泌尿器科では、血管や尿管の薬剤溶出ステント(Drug-Eluting Stent: DES)の開発やヘルペスウイルスG47デルタの腫瘍内注入による前立腺がんの遺伝子治療などの研究が進んでいる。また西松氏は、da Vinciシステムを使わずとも腹腔鏡手術ができるよう、2重のベベルギア・ワイヤ機構で自由に動く持針器の開発なども行っていることを紹介した。「他の演題はこちら」

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ステント血栓症、ゾタロリムスとシロリムスの溶出ステントで同等:PROTECT試験

 留置術後3年の時点におけるステント血栓症の発生状況は、ゾタロリムス溶出ステントとシロリムス溶出ステントで有意な差はないことが、スイス・ジュネーブ大学のEdoardo Camenzind氏らが行ったPROTECT試験で示された。複雑な冠動脈病変を含む広範な患者集団において薬剤溶出ステント(DES)の導入が急速に進んでいるが、近年、再狭窄の発生がより少ないDESによる医療コストの抑制効果に対する関心が高まっている。これまでに実施された両ステントの比較試験では、ステント血栓症の評価は行われていなかったという。Lancet誌2012年10月20日号(オンライン版2012年8月27日号)掲載の報告。3年後のステント血栓症の発生を比較 PROTECT(Patient Related OuTcomes with Endeavor versus Cypher stenting Trial)試験は、広範な患者集団と多彩な病変を対象に、異なる細胞増殖抑制薬を用いた2種類のステント・デバイス[エンデバー・ゾタロリムス溶出ステント(E-ZES)、サイファー・シロリムス溶出ステント(C-SES)]の長期的な安全性における優越性の評価を目的とする多施設共同非盲検無作為化対照比較試験。 2007年5月21日~2008年12月22日までに、36ヵ国から8,791例が登録された。自己冠動脈に対し待機的または緊急処置を施行された18歳以上の症例を適格例とした。これらの患者が、E-ZESまたはC-SESを留置する群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。2剤併用抗血小板療法として、アスピリンとクロピドグレルあるいは他のチエノピリジン誘導体が投与された。 主要評価項目は、留置から3年の時点におけるステント血栓症(疑い例を含む)の発現とし、intention-to-treat解析を行った。治療割り付け情報は患者と担当医にも知らされた。3年ステント血栓症発生率:1.4 vs 1.8% 8,791例のうち8,709例が適格と判定され、E-ZES群に4,357例(平均年齢62.3、男性77%、糖尿病27%、高血圧65%、脂質異常症62%、心筋梗塞の既往20%、脳卒中の既往3%)が、C-SES群には4,352例(62.1歳、76%、28%、63%、63%、21%、3%)が割り付けられた。 3年後のステント血栓症の発生率は、E-ZES群が1.4%、C-SES群は1.8%であり、両群間に有意な差は認めなかった[ハザード比(HR):0.81、95%信頼区間(CI):0.58~1.14、p=0.22]。 2剤併用抗血小板療法は、退院時には8,402例(96%)が受けており、1年後の施行率は88%(7,456例)、2年後は37%(3,041例)、3年後は30%(2,364例)だった。 著者は、「疑い例を含めた3年後のステント血栓症の発生について、ゾタロリムス溶出ステントがシロリムス溶出ステントよりも優れるとのエビデンスは得られなかった」と結論し、「時間分析では、両群間のステント血栓症発生の差が経時的に顕在化する傾向がみられるため、ステント血栓症の臨床的関連性を明らかにするには長期的なフォローアップを要する」と指摘している。

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糖尿病患者の冠動脈病変、どのステントが最も有効か?

 冠動脈病変を有する糖尿病患者に対する冠動脈ステント留置術では、現時点で使用可能なすべての薬剤溶出ステントがベアメタルステントよりも有効で、安全性も良好なことが、米国・ニューヨーク大学医学部のSripal Bangalore氏らの検討で示された。糖尿病は経皮的冠動脈インターベンション施行後の転帰を増悪させることが知られている。長期的な有効性や安全性につき、現時点で使用可能な4つの薬剤溶出ステント同士あるいはベアメタルステントとの比較試験が数多く行われているが、どのステントが最も優れるかは明らかでないという。BMJ誌2012年9月22日号(オンライン版2012年8月10日号)掲載の報告。糖尿病患者に対する各種ステントの有効性をメタ解析で評価研究グループは、糖尿病患者の冠動脈病変の治療における現行の薬剤溶出ステントおよびベアメタルステントの有効性と安全性を評価するために、混合治療比較法によるメタ解析を行った。PubMed、Embase、CENTRALを検索し、新規冠動脈病変を対象に4つの恒久的な薬剤溶出ポリマーステント(シロリムス、パクリタキセル、エベロリムス、ゾタロリムスの各溶出ステント)およびベアメタルステントを比較した無作為化臨床試験(2012年4月までに発表、糖尿病患者50例以上を含む)の論文を抽出した。有効性の主要評価項目は標的血管に対する血行再建術の施行とし、安全性の主要評価項目は死亡、心筋梗塞、ステント血栓症の発生とした。エベロリムス溶出ステントが最も有効かつ安全な可能性42試験(2万2,844人・年のフォローアップ)が解析の対象となった。いずれの薬剤溶出ステントも、ベアメタルステントに比べ標的血管血行再建術の施行率を有意に低減したが、各薬剤溶出ステントの有効性には差が認められた。すなわち、ベアメタルステントよりも、シロリムス溶出ステントは血管再建術施行率を62%(率比:0.38、95%信頼区間[CI]:0.29~0.48)、パクリタキセル溶出ステントは53%(同:0.47、0.35~0.61)、エベロリムス溶出ステントは69%(同:0.31、0.19~0.47)、ゾタロリムス溶出ステントは37%(同:0.63、0.42~0.96)抑制した。エベロリムス溶出ステントの有効性が最も高い確率は87%であった。一方、糖尿病患者におけるResoluteゾタロリムス溶出ステントのデータは限定的だった。薬剤溶出ステントは、超遅発性血栓症を含む安全性についても、ベアメタルステントに比べリスクを増大させることはなく、良好だった。ステント血栓症に関する安全性がエベロリムス溶出ステントで最も高い確率は62%に達していた。著者は、「冠動脈病変を有する糖尿病患者に対する冠動脈ステント留置術では、現時点で使用可能なすべての薬剤溶出ステントがベアメタルステントよりも有効で、安全性が劣ることもなかった」と結論し、「エベロリムス溶出ステントが、有効性、安全性のいずれにおいても相対的に優れることが示唆された」としている。

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