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生体吸収性冠動脈ステント「Absorb GT1」本邦でも承認

 アボット ジャパン株式会社は2016年11月7日、Absorb生体吸収性冠動脈ステント(薬剤溶出型)(販売名:Absorb GT1 生体吸収性スキャフォールドシステム、医療機器承認番号:22800BZX00406000)が、厚生労働省より製造販売承認されたことを発表した。 Absorb生体吸収性冠動脈ステント(以下、Absorbステント)は、体内で完全に分解する新しい冠動脈ステント。従来の冠動脈ステントは金属製であるのに対し、アボットのAbsorbステントは生体吸収糸と同様の体内で自然に分解する素材で構成され、狭窄血管の拡張、血管の支持の役割を果たし終えると、血管治癒を進めながら3年程度でゆっくりと体内で分解し消失する。 従来の金属製ステントは血管の治癒後も永久的に血管内に残存するため、血管本来のもつ運動機能の妨げや、将来的な治療選択肢の制限、遠隔期での臨床イベント発生の誘因となる可能性があった。一方、Absorbステントは体内留置後、経時的に分解され消失するため、経過観察時の診察手段として非侵襲性の画像解析検査や医療費を抑えた検査方法を選択できる等の可能性が示唆されている。 Absorbステントは、2010年に欧州でCEマークを取得、現在100ヵ国以上で販売され15万人以上の冠動脈疾患治療に用いられている。 Absorbステントの本邦における適応:対照血管径が2.5mmから3.75mmの範囲にあり、新規の冠動脈病変(病変長24mm以下)を有する症候性虚血性心疾患患者の治療。 本邦での臨床試験ABSORB Japan:国内の38医療機関で冠動脈疾患を患う400例が登録され、アボット社のXIENCE薬剤溶出ステントと比較したAbsorbステントの安全性および有効性において同水準であることが示された。(ケアネット 細田 雅之)関連リンクAbsorbステントに関する情報はこちらアボット ジャパン株式会社のプレスリリースはこちら関連ニュース生体吸収性スキャフォールド2年の結果:ABSORB Japan試験

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複雑なPCI症例ではDAPTを延長すべきか?

 薬剤溶出ステント(DES)留置を行った複雑な経皮的冠動脈形成術(PCI)後、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の最適期間は定まっていない。Gennaro Giustino氏ら研究グループは、PCIの複雑性に応じ、短期間(3~6ヵ月)と長期間(12ヵ月以上)におけるDAPTの有効性および安全性を比較検討した。Journal of the American College of Cardiology誌2016年10月25日号に掲載。6つの無作為化コントロール試験から患者データを抽出 研究グループは、PCI後のDAPTの期間を調査した6つの無作為化コントロール試験に基づく患者データを用いた。複雑なPCIとは、以下に挙げた特徴を少なくとも1つ以上有するものと定義した。すなわち、(1)3つ以上の冠動脈を治療、(2)3つ以上のステント留置、(3)3つ以上の病変を治療、(4)分枝病変で2つのステントの留置、(5)ステントの全長が60mmより長い、(6)慢性完全閉塞、である。1次エンドポイントは心臓死、心筋梗塞、もしくはステント血栓症の複合イベントで定義された主要心血管イベント(MACE)とした。安全性に関する主要評価項目は、大出血イベントとした。主要な解析手法として、Intention-to-treatが用いられた。9,577例の患者データを解析、85%が新世代DES PCIの手技に関する変数が入手可能な患者データ9,577例を解析したところ、1,680例(17.5%)が複雑なPCIを受けていた。全体として、85%の患者が新世代のDESを留置されていた。平均追跡期間の中央値392日(四分位範囲:366~710日)で、複雑なPCIを受けた患者はMACEのリスクが高かった(調整ハザード比[HR]:1.98 、95%信頼区間[CI]:1.50~2.60、p<0.0001)。長期間DAPTで複雑なPCI群においては、MACEを有意に減少させた(調整HR:0.56、95%CI:0.35~0.89)。一方、長期間DAPTで複雑ではないPCI群においては、MACEを有意に減少させなかった(調整HR:1.01、95%CI:0.75~1.35、交互作用のp=0.01*)。*長期間DAPTの使用に関して、複雑なPCIにおいてはMACEの減少につながるということを示している。長期間DAPTのベネフィットは手技の複雑性と比例する 長期間DAPTのベネフィットは、手技の複雑性が増すほど大きくなっていた。また、長期間DAPTは大出血リスクが高かったが、PCIの複雑性にかかわらず同等であった(交互作用のp=0.96)。これまでにわかっている臨床上のリスクに加えて、手技の複雑性もDAPTの継続期間の決定因子として考慮されるべき重要なパラメーターといえる。(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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冠動脈de novo病変に対する「ステントレスPCI」

 薬剤溶出ステント(以下、DES:Drug Eluting Stent)の再狭窄率は低い。しかし、ステント血栓症、ステントフラクチャー、neo-atherosclerosisなどいくつかの問題が残る。一方、バルーン単独の経皮的冠動脈インターベンション「ステントレスPCI」はいまだに根強く、薬物溶出バルーン(DCB:Drug Coated Balloon)の臨床応用により注目されており、その有効性を支持する臨床試験もある。獨協医科大学 循環器内科の西山直希氏らは、de novo冠状動脈狭窄病変の治療におけるDCBの有効性を評価することを目的とした研究を行っている。International Journal of Cardiology誌2016年11月1日号の報告。 2014年5月~15年6月に待機的な経皮的PCIを受けた慢性冠動脈疾患患者から透析患者、再狭窄患者、重度石灰化、左主幹部、慢性完全閉塞病変を除外した60例を登録し、無作為にステントレス群(n=30)とステント群(n=30)に割り付けた。ステントレス群では初期拡張で至適径に拡張できた患者にDCBを施行、拡張できなかった患者にはDESを用いた。ステントレス群の3例はステント留置となり、結果的に、ステントレス群27例、ステント群33例となった。評価項目は8ヵ月後の標的病変再血行再建(TLR:Target Lesion Revascularization)率および晩期内腔損失(Late Lumen Loss)である。 主な結果は以下のとおり。・TLR率は両群で同等であった(ステントレス群:0.0%、ステント群:6.1%、p =0.169)。・PCI直後の最小血管径(MLD:Minimal Lumen Diameter)と初期獲得径(Acute gain)はステントレス群で有意に小さかった(MDLはステントレス群:2.36mm±0.46、DES群:2.64mm±0.37、p=0.011、Acute Gainはステントレス群:1.63±0.41mm、DES群:2.08±0.37mm、p<0.0001)。・しかし、PCI後8ヵ月のMLDおよびLate Lumen Lossについては、両群で有意な差はなかった(MLDは2.12±0.42mm vs. 32±0.52mm、p=0.121、Late Lumen Loss は0.25±0.25mm vs. 0.37±0.40mm、p=0.185)。 ケアネットの取材に対し、西山氏と共著者の小松孝昭氏、田口功氏は以下のように述べた。現在の試験の状況は? 登録数は倍以上となっている。しかしながら、DCBによるステントレスPCI群での再狭窄例は依然としてゼロである。実臨床でステントレスPCIの適応となる割合はどの程度? 透析患者、重度石灰化、左主幹部、慢性完全閉塞病変、病変長30mm以上などの病変は除外しているが、現在ではde novo症例の4割を超えている。初期拡張に用いるバルーンは? NSEバルーンを用いている。スコアリングによりプラークに亀裂を入れることで、解離ができずきれいに拡張できる。また、炎症も少なく再狭窄の予防につながると考えている。ステントレスPCIのメリットはどのようなものか? ステントという異物を入れることで、ステント血栓症や長期的にはステントに起因するneo-atherosclerosis、またステントフラクチャーによるイベントの可能性もある。ステントを入れないで済む患者にはDCBを用いることで、このようなイベントを避けることができると考えられる。また、抗血小板薬の減量または中止が可能であることもステントレスPCIのメリットだと考えられる。 バルーンで拡張し、ステントを留置するというのが現在のPCIの一連の流れであるが、その中にステントを入れないで済む患者が存在する。DES時代の中、これからもステントレスPCIの有用性を評価して臨床応用につなげていくべきであろう。それは、患者さんのQOLおよび予後の改善につながると考えられる、と田口氏は言う。

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TCT 2016注目の演題

2016年10月29日~11月2日、米国ワシントンD.C.でTCT 2016(心臓カテーテル学会)が開催されます。ケアネットでは、聴講スケジュールを立てる際の参考としていただくために、会員医師へ注目演題のアンケートを実施いたしました。その結果を、三井記念病院 循環器内科の矢作 和之氏のコメントとともにご紹介いたします。TCT 2016開催地、ワシントンD.C.のおすすめスポットはこちら※演題名および発表順は、10月14日時点でTCT 2016ウェブサイトに掲載されていたものです。当日までに発表順などが変更となる可能性がございますのでご注意ください。Sunday Oct. 30 9:00 - 10:00、Main Arena IPlenary Session II. Late-breaking Clinical Trials 1: Cosponsored by The LancetModerator: Gregg W. Stone1.ILUMIEN III (OPTIMIZE PCI): A Prospective, Randomized Trial of OCT-Guided vs. IVUS-Guided vs. Angio-Guided Stent Implantation in Patients with Coronary Artery Disease2.BIO-RESORT (TWENTE III): A Prospective, Randomized Three-Arm Trial Comparing Two Different Biodegradable Polymer-Based Drug-Eluting Stents and a Durable Polymer-Based Drug-Eluting Stent in an All-Comers Population of Patients with Coronary Artery Disease3.BIONICS: A Prospective, Randomized Trial of a Ridaforolimus-Eluting Coronary Stent vs. a Zotarolimus-Eluting Stent in a More-Comers Population of Patients with Coronary Artery DiseaseQ. 上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=94)画像を拡大するILUMIEN III:OCT ガイド vs. IVUSガイド vs. 血管造影ガイドILUMIEN III試験に注目が集まっているようです。イメージングが盛んな日本においてOCT ガイドPCI vs. IVUSガイドPCI vs. 血管造影ガイドPCIの比較は非常に関心の高いテーマです。BIO-RESORT試験はcircumferential biodegradable coating stentのORSIRO、abluminal biodegradable coating stentのSYNERGY、durable coating stentのRESOLUTEの1:1:1のランダム化比較試験です。biodegradable polymerとdurable polymerの違いについて何らかの結果は出るのでしょうか。Sunday Oct. 30 12:15- 13:00、Main Arena IPlenary Session VI. First Report Investigations 1: Cosponsored by The LancetModerator: David W.M. Muller1.ABSORB China: Two-Year Clinical Outcomes from a Prospective, Randomized Trial of an Everolimus-Eluting Bioresorbable Vascular Scaffold vs. an Everolimus-Eluting Metallic Stent in Patients with Coronary Artery Disease2.ABSORB II: Three-Year Clinical Outcomes from a Prospective, Randomized Trial of an Everolimus-Eluting Bioresorbable Vascular Scaffold vs. an Everolimus-Eluting Metallic Stent in Patients with Coronary Artery Disease3.LEADERS FREE: Two-Year Clinical and Subgroup Outcomes from a Prospective, Randomized Trial of a Polymer-Free Drug-Coated Stent and a Bare Metal Stent in Patients with Coronary Artery Disease at High Bleeding RiskQ. 上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=94)画像を拡大するABSORB IIの3年時とABSORB Chinaの2年時でのvery late scaffold thrombosisは?このセッションではABSORB試験のうちABSORB IIの3年時とABSORB Chinaの2年時の結果が発表されます。先日ローマで開催されたESC(欧州心臓病学会)ではABSORB Japanでvery late scaffold thrombosisの報告がありましたが、これら2つの試験ではどうかが注目です。Monday Oct. 31 9:00 - 9:45、Main Arena IIPlenary Session II. Late-Breaking Clinical Trials 2Moderator: Martin B. Leon1.EXCEL: A Prospective, Randomized Trial Comparing Everolimus-Eluting Stents and Bypass Graft Surgery in Selected Patients with Left Main Coronary Artery Disease2.NOBLE: A Prospective, Randomized Trial Comparing Biolimus-Eluting Stents and Bypass Graft Surgery in Selected Patients with Left Main Coronary Artery DiseaseQ. 上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=94)画像を拡大するXience、BioMatrix、新世代ステントの大規模臨床試験の成績は?従来、左冠動脈主幹部の病変に対する治療は冠動脈バイパス術が第1選択でしたが、近年の薬剤溶出性ステントの登場により、その有用性を示唆する報告がみられます。このセッションでは新世代ステントにおける左冠動脈主幹部の病変に対する治療成績の発表があります。EXCEL試験、NOBEL試験ともに1,000人を超える大規模な臨床試験で、EXCEL試験はXience、NOBEL試験はBioMatrixという、ともに実績十分のステントとの比較であり、結果が注目されます。Monday Oct. 31 12:00 - 13:00、Main Arena IIPlenary Session VI. First Report Investigations 2Moderator: Patrick W. Serruys1.REVELUTION: 9-Month Clinical, Angiographic, IVUS, and OCT Outcomes with a Polymer-Free Sirolimus-Eluting Drug-Filled Stent2.FANTOM II: 6-Month and 9-Month Clinical, Angiographic and OCT Results with a Radiopaque Desaminotyrosine Polycarbonate-Based Sirolimus-Eluting Bioresorbable Vascular Scaffold in Patients with Coronary Artery Disease3.MeRes-1: 6-Month Clinical, Angiographic, IVUS and OCT Results with a Thin-Strut PLLA-Based Sirolimus-Eluting Bioresorbable Vascular Scaffold in Patients with Coronary Artery Disease4.FORTITUDE: 9-Month Clinical, Angiographic, and OCT Results with an Amorphous PLLA-Based Sirolimus-Eluting Bioresorbable Vascular Scaffold in Patients with Coronary Artery Disease5.FUTURE-I: 6-Month Clinical, Angiographic, IVUS and OCT Results with a Thin-Strut PLLA-Based Sirolimus-Eluting Bioresorbable Vascular Scaffold in Patients with Coronary Artery DiseaseQ. 上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=94)画像を拡大する新世代デバイスのパフォーマンスをOCTで確認このセッションでは新世代の薬剤溶出ステント/スキャフォールドを用いた臨床試験の結果が報告されます。また、興味深いことにすべての試験において、6~9ヵ月のフォローアップをOCTを用いて行っています。新世代デバイスのパフォーマンスに注目です。Tuesday Nov. 1 9:00 - 10:00、Main Arena III,Plenary Session II. Late-breaking Clinical Trials 3: Cosponsored by the Journal of the American Medical AssociationModerator: Gregg W. Stone1.SENTINEL: A Prospective, Randomized Trial Evaluating Cerebral Protection in Patients with Severe Aortic Stenosis Undergoing Transcatheter Aortic Valve Replacement2.PARTNER II QUALITY OF LIFE: Health Status Benefits From a Prospective, Randomized Trial of Transcatheter and Surgical Aortic Valve Replacement in Intermediate Risk Patients with Severe Aortic Stenosis3.PARTNER I FIVE-YEAR ECHO: Long-Term Hemodynamic and Structural Outcomes After Transcatheter Aortic Valve Replacement in High-Risk and Inoperable Patients with Aortic StenosisQ. 上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=94)画像を拡大する今後のTAVRの方向性に示唆を与える研究報告このセッションは経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)関連の臨床試験の報告です。TAVR後の脳卒中は、デバイスの改良や手技の熟練により減少していますが、症例によっては重大な合併症となることがあります。SENTINEL試験ではClaret Medical社のプロテクションデバイスによる脳梗塞の発症予防に関しての報告を予定しています。PARTNER II試験では中等度手術リスク患者へのTAVRの短期の有効性が示されましたが、PARTNER II QUALITY OF LIFEでは中等度手術リスクの患者生活の質に関して、外科的大動脈弁置換術(AVR)と比較しています。今後のTAVRの行方に影響を与える可能性もあります。最後に、現在のTAVRの問題点として、外科的AVRと比較し長期成績のデータが不十分であることが挙げられます。PARTNER I FIVE-YEAR ECHOでは心エコーの指標から5年時点でのTAVRの有効性が報告される予定です。Tuesday Nov. 1 12:15 - 13:15、Main Arena IIIPlenary Session VI. First Report Investigations 3Moderator: Cindy L. Grines1.RESPECT: Final Long-Term Outcomes From a Prospective, Randomized Trial of PFO Closure in Patients with Cryptogenic Stroke2.COLOR: A Prospective, Multicenter Registry Evaluating the Relationship Between Lipid-Rich Plaque and Two-Year Outcomes after Stent Implantation in Patients with Coronary Artery Disease3.PLATINUM DIVERSITY: Outcomes from a Large-Scale, Prospective Registry of Coronary Artery Stent Implantation in Women and Minorities4.ReACT: A Prospective, Randomized Trial of Routine Angiographic Follow-up After Coronary Artery Stent ImplantationQ. 上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=94)画像を拡大する日本発! フォローアップCAGの長期転帰の影響を検討したReACT試験このセッションではRESPECT試験、COLOR試験、ReACT試験が注目されているようです。RESPECT試験は卵円孔開存(PFO)を有する原因不明の脳卒中患者において、Amplatzer PFO閉塞デバイスの有効性をみた研究ですが、今回はその長期の成績が発表されます。COLORレジストリはNIRS(近赤外線分光法)での脂質性プラークとPCI周術期の心筋梗塞発症の関係を調べた研究で、今回は2年フォローアップの報告です。ReACT試験は日本からの報告です。PCI成功例における、フォローアップCAGの長期転帰の影響を検討した試験です。フォローアップCAGをルーチンで行っている施設が多い日本で、今後、カテーテル検査のあり方の見直しにつながる発表です。Wednesday Nov 2 9:00 - 10:00、Main Arena IVPlenary Session VII. Late-breaking Clinical Trials 4Moderator: Martin B. Leon1.ILLUMENATE U.S.: A Prospective, Randomized Trial of a Paclitaxel-Coated Balloon vs. an Uncoated Balloon for Treatment of Diseased Superficial Femoral and Popliteal Arteries2.WATCHMAN US POST-APPROVAL STUDY: Multicenter, Prospective, Registry Results with a Left Atrial Appendage Closure Device for Stroke Prevention in Patients with Atrial Fibrillation3.AMULET OBSERVATIONAL STUDY: Multicenter, Prospective, Registry Results with a Left Atrial Appendage Closure Device for Stroke Prevention in Patients with Atrial FibrillationQ. 上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=94)画像を拡大する左心耳閉鎖の2大デバイス、リアルワールドでの成績は?このセッションは下肢動脈に対するインターベンションの1演題と左心耳閉鎖デバイス関連の2演題です。ILLUMENATE U.S.トライアルは大腿膝窩動脈病変に対するCovidien社のStellarex DCBと従来のバルーン治療のランダム化比較試験です。ILLUMENATE FIH試験において、Stellarex DCBの有効性、安全性が示されており、今回の結果は注目です。心房細動に伴う心原性脳梗塞の脳梗塞予防として左心耳閉鎖術が近年行われるようになっていますが、そのなかで、2大デバイスはBoston Scientific社のWATCHMANデバイスとSt. Jude Medical社のAmplatzerデバイスです。このセッションではこれらのデバイスによる多施設前向きレジストリ研究の結果が発表されます。実際の臨床での成績に注目です。Wednesday, Nov 2 12:15 - 13:15、Main Arena IVPlenary Session VII. First Report Investigations 4Moderator: Manel Sabate1.PRISON IV: A Prospective, Randomized Trial of a Bioresorbable Polymer-Based Sirolimus-Eluting Stent and a Durable Polymer-Based Everolimus-Eluting Stent in Patients with Coronary Artery Chronic Total Occlusions2.TOSCA-5: A Prospective, Randomized Trial Evaluating Collagenase Infusion in Patients with Coronary Artery Chronic Total Occlusions3.TRANSFORM-OCT: A Prospective, Randomized Trial Using OCT Imaging to Evaluate Strut Coverage at 3 Months and Neoatherosclerosis at 18 Months in Bioresorbable Polymer-Based and Durable Polymer-Based Drug-Eluting Stents4.RIBS VI: A Prospective, Multicenter Registry of Bioresorbable Vascular Scaffolds in Patients with Coronary Artery Bare Metal or Drug-Eluting In-Stent Restenosis – 6-9 Month Clinical and Angiographic Follow-up ResultssQ. 上記のうち、注目している演題は?(複数回答可、n=94)画像を拡大するbioresorbable polymer DESとdurable polymer DES、アウトカムに違いはあるのか?現在、明らかにコンセプトの違う2種類のbioresorbable polymer DESとdurable polymer DESの差ははっきりしていません。このセッションでは、この点について2つの試験の発表があります。とくにTRANSFORM-OCT試験では3ヵ月のストラットの被覆化と18ヵ月でのneoatherosclerosisの発生率を調べています。両者に違いはあるのでしょうか?

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NORSTENT試験:人は冠動脈のみにて生くるものにあらず(解説:中川 義久 氏)-594

 「人はパンのみにて生くるものにあらず」という言葉を皆さんは耳にしたことがあると思います。聖書の「マタイによる福音書」の有名な一節です。人は物質的な満足だけを目的として生きるものではなく、精神的なよりどころが必要であるといった意味合いでしょうか。医学界における位置付けは聖書にも近いともされるNEJM誌から、「人は冠動脈のみにて生くるものにあらず」というありがたい教えがもたらされました。 PCIで用いる留置ステントの長期有効性について、冠動脈疾患患者9,013例を対象に、薬剤溶出ステント(DES)とベアメタルステント(BMS)で比較検討しています(NORSTENT試験)。2008年から2011年に、ノルウェーでPCIを受けた全患者が試験対象です。追跡6年時点の主要複合エンドポイント(全死亡、非致死的自然発症心筋梗塞)の発生には有意差はなかったというのが本研究の結論です(DES群16.6%、BMS群17.1%、ハザード比[HR]0.98、95%信頼区間[CI]:0.88~1.09、p=0.66)。項目別にみた場合も有意差はなく、全死亡はそれぞれ7.5% vs.7.4%(HR:1.11、95%CI:0.94~1.32、p=0.21)、非致死的自然発症心筋梗塞も9.8% vs.10.5%(HR:0.89、95%CI:0.77~1.02、p=0.10)でした。冠動脈の狭窄病変を拡張する際に使用するステントがDESかBMSかという小さな差異によって、全死亡という崇高なイベントに影響が及ぶかどうかを検討すること自体に無理があると感じます。生命とはもっと泰然自若としたものなのでしょう。 小生は、PCIの質を少しでも高めようと努力することを否定しているわけではありません。本研究でも、再血行再建術についてはDES群16.5% vs.BMS群19.8%(HR:0.76、95%CI:0.69~0.85、p<0.001)で、ステント血栓症は0.8% vs.1.2%(HR:0.64、95%CI:0.41~1.00、p=0.0498)とDES群で有意に優れていました。このBMSからDESへの進歩は称賛に値するものです。この研究の結果が教えるところは、PCI施行医が患者の生命のカギを握るかのようなおごりを持つことなく、冠動脈だけでなく全人的な視点をもって患者に接することの重要性も示しているように感じるのです。 この一見地味に見える内容がNEJM誌に掲載されるに至った理由を推察してみたいと思います。従来は、DESは有効性(efficacy)に優れるが、安全性(safety)ではBMSのほうが優っているという判断が一般的でした。本研究によって、DESの安全性がBMSに対して劣っていないことが証明されたと考えて良いものと思います。その面では、NEJM誌編集部の判断には、DES使用がBMSに比して生命予後改善効果があることを求めているわけではなく、少なくとも生命予後を毀損していないことが重要であったのでしょう。

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DES vs.BMS、留置から6年時点のアウトカム/NEJM

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)で使用する留置ステントの長期有効性について、薬剤溶出ステント(DES)vs.ベアメタルステント(BMS)を検討した結果、追跡6年時点の複合エンドポイント(全死因死亡・非致死的自然発症心筋梗塞)の発生について有意差は認められなかった。一方で、血行再建術の再施行率は、DES群の有意な減少が認められたという。ノルウェー・トロムソ大学のK.H. Bonaa氏らが同国でPCIを受けた9,013例について行った無作為化試験の結果、明らかにした。NEJM誌オンライン版2016年8月30日号掲載の報告。ノルウェーでPCIを受けた全患者を対象に検討 研究グループは2008年9月15日~2011年2月14日に、ノルウェーでPCIを受けた全患者(2万663例)を対象に試験を行った。安定または不安定冠動脈疾患でPCI施行となり、新世代のDESまたはBMSを埋設された患者9,013例(DES群4,504例、BMS群4,509例)が試験適格基準を満たし無作為化を受けた。DES群では96%が、エベロリムス(82.9%)またはゾタロリムス(13.1%)の溶出ステントの留置を受けていた。 主要アウトカムは、追跡期間中央値5年後の全死因死亡・非致死的自然発症心筋梗塞の複合であった。副次アウトカムは、再血行再建術、ステント血栓症、QOLなどであった。6年時点の主要複合アウトカム発生に有意差なし 6年時点で、主要アウトカムの発生は、DES群16.6%、BMS群17.1%で、両群に有意差はみられなかった(ハザード比[HR]:0.98、95%信頼区間[CI]:0.88~1.09、p=0.66)。 主要アウトカムを項目別にみた場合も、有意差は認められなかった。全死因死亡はそれぞれ7.5% vs.7.4%(HR:1.11、95%CI:0.94~1.32、p=0.21)、非致死的自然発症心筋梗塞は9.8% vs.10.5%(0.89、0.77~1.02、p=0.10)であった。 しかし、6年時点のあらゆる再血行再建術については、DES群16.5% vs.BMS群19.8%であった(HR:0.76、95%CI:0.69~0.85、p<0.001)。また、ステント血栓症は0.8% vs.1.2%であった(0.64、0.41~1.00、p=0.0498)。 QOLの評価については、両群間で有意差はみられなかった。

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EBMと個別化医療の混乱:クロピドグレルとCYP2C19(解説:後藤 信哉 氏)-569

 世の中には科学で推し量れない不思議がある。クロピドグレルは、チクロピジンの安全性を改善する薬剤として世界でヒットした。冠動脈カテーテルインターベンションを行う医師の経験するステント血栓症は、自らが惹起したと感じられる重篤な副作用なので、予防には全力を尽くす。プラビックスが特許を有していた、わずかの昔には、「薬剤溶出ステント後の抗血小板併用療法の持続期間」が話題であった。そのときには、「プラビックスを長期服用していればステント血栓が起こらないが、中止するとステント血栓が起こる」ことを前提として、長期使用の是非を論じていた。総じて、科学への貢献の視点では意味の少ない議論であった。 プラビックスの特許切れとともに「CYP2C19の遺伝子型」による「クロピドグレルの薬効のばらつき」という議論の熱が高まった。議論はファシズムのように集約された。「アジア人ではクロピドグレル活性体の産生速度の遅い遺伝子型が多い」、「活性体産生速度の遅い遺伝子型では心血管イベントリスクが多い」などが、比較的小規模の観察研究、クロピドグレルの薬効標的と直接相関しない血小板凝集率をアウトカムとした試験、クロピドグレルの後継を目指す新規のP2Y12 ADP受容体阻害薬開発試験のサブ解析などの結果として多数発表された。科学的真実にもっとも近いと思われるクロピドグレル活性体による薬効標的P2Y12 ADP受容体の阻害率に基づいた研究はほとんどない。多くのゴミのような論文が、「CYP2C19の遺伝子型」によってクロピドグレルを服用しても十分な「有効性がない」ような気持ちにさせる。2年前を振り返れば、「クロピドグレルを服用していればステント血栓を予防できる」との仮説に立っていた医師が、今は平然と「クロピドグレルを服用しても、遺伝子型によっては有効でない」とおっしゃる。クロピドグレルの本邦での開発では、世界と同じ75mgを採用するにあたって、本邦では用量過剰による出血リスクを考慮して25mgの錠剤を作成した。歴史的経緯を平然と無視して、単一の意見が支配する世界は学問的ではない。 クロピドグレルは、患者集団を均質と考えるEBMに依拠した。プラスグレル、チカグレロールもEBMに依拠する点はクロピドグレルと同じである。薬剤の臨床開発は、患者集団を均一と仮定したランダム化比較試験によった。もし、「CYP2C19の遺伝子型」による薬効のばらつきが真実であるなら、プラスグレル、チカグレロールは「CYP2C19の遺伝子型」のためクロピドグレルの薬効が不十分な小集団において、開発試験をやり直すべきである。多くの症例が安価なクロピドグレル後発品で問題ないことを示せば、高価な新薬を考慮すべき小集団を、遺伝子情報も踏まえて見出すことができるかもしれない。 医師は知的エリートでありたい。現在の前には連綿と続く歴史がある。少し風が吹くと、チリのようにふらつく考えでは頼りない。EBMで考えるのであれば、個別症例の特性以上にランダム化比較試験を構成する症例群の均質性を再考慮すべきである。均質性が確認されなければ、そのランダム化比較試験は失敗と評価すべきである。遺伝子型の相違に基づいた個別化医療を行うのであれば、遺伝子の差異から蛋白の差異、薬剤反応性の差異を構成論的に精緻に理解する演繹的方法か、遺伝子型を用いて新薬が有効性を発揮する小集団を帰納的に見出す方法論を確立すべきである。 本研究は後者の視点に立つ。遺伝子型は誰にも変えようがないので、後付け解析であってもランダム化の無作為性は担保されていると考える。アスピリンとアスピリン/クロピドグレルのランダム化比較試験ではあるが、両群に無作為に機能喪失型CYP2C19が含まれる。脳卒中急性期はもっとも血栓性因子の関与が大きい時期である。ゴミのような論文が多く、現在の方法的限界の中では、本論文はもっとも本当らしいメッセージを送っているようにみえる。一方、本当に有効性がクロピドグレルの薬効の差異に基づいていれば、重篤な出血合併症はCYP2C19が機能してクロピドグレルの薬効の強い併用例では増えるものとも想定される。筆者のような血小板の専門家からみれば、「やはりP2Y12 ADP受容体阻害率」とイベントの関係を示してほしい。

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ESS留置後のDAPT、6ヵ月と12ヵ月の比較

 薬剤溶出ステント(DES)留置後は、ステント血栓症を防ぐため、12ヵ月間の抗血小板薬2剤併用療法(dual antiplatelet therapy:DAPT)が推奨されている。近年の無作為化試験では、新世代のDES留置後のDAPTの3~6ヵ月投与は12ヵ月投与と同等の成績が得られることが報告されており、また新世代DESの死亡、心筋梗塞、ステント血栓症のリスクがベアメタルステントや第1世代のDESと比べて低いことも示唆されている。しかし、新世代のエベロリムス溶出ステント留置後のDAPTの最適な投与期間について、適切に計画、実施された試験は少ない。 今回、韓国の20施設で、エベロリムス溶出ステント(商品名:Xience Prime)留置後のDAPT 6ヵ月投与を12ヵ月投与と比較する医師主導型の前向き無作為化試験が実施され、JACC Cardiovascular Interventions誌オンライン版2016年5月11日号に発表された。主要評価項目に有意差なし 本試験では、2010年10月~2014年7月の間に、エベロリムス溶出ステントを留置した1,400例(平均ステント長45mm超)のうち、699例をDAPT(アスピリン100mg/日とクロピドグレル75mg/日)6ヵ月投与群に、701例を12ヵ月投与群に無作為に割り付けた。 主要評価項目は1年後の心臓関連死亡、心筋梗塞、脳卒中、およびTIMI基準による大出血の複合とし、intention-to-treatを用いて解析を行った。 主要評価項目の発生は、6ヵ月群で15例(2.2%)、12ヵ月群で14例(2.1%)であった(HR:1.07、p=0.854)。definiteもしくはprobableのステント血栓症は6ヵ月群で2例(0.3%)、12ヵ月群でも2例(0.3%)発症した(HR:1.00、p=0.999)。686例の急性冠動脈症候群の患者(両群とも2.4%、HR:1.00、p=0.994)と糖尿病を有する506例(6ヵ月群 2.2% vs. 12ヵ月群 3.3%、HR:0.64、p=0.428)の間で、主要評価項目の有意な差は認められなかった。 2014年にThe New England Journal of Medicine誌に発表された大規模無作為化試験であるDAPT試験では、新世代のDES後でも12ヵ月を超えるDAPTの有用性が示されており、DAPTの最適な使用期間については答えが出ていない。報告者らは、今後、大規模な無作為化試験での1年超の追跡が必要であると結論付けている。(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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Vol. 4 No. 4 DAPTを検証した臨床試験の数々、それらが導いた「答え」とは?

中川 義久 氏天理よろづ相談所病院循環器内科はじめに冠動脈疾患の治療においては、冠動脈血行再建を達成することが本質的に重要である。その手段として経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)が主流を占めている。冠動脈血行再建においてバルーン拡張によるPCIの有効性が報告されてから30年以上になる。バルーン拡張のみでは再狭窄率や再閉塞率が高いことが問題であり、これを解決するために金属製ステント(baremetal stent:BMS)が導入された。BMSを用いたPCIは通常治療として受け入れられるようになったが、それでも長期的には再狭窄によって再血行再建を要することが多く克服すべき問題であった。薬剤溶出性ステント(drug-eluting stent:DES)は、BMSに比較して再狭窄を減少させることが示されている。第1世代DESであるシロリムス溶出性ステント(sirolimus-eluting stent:SES)とパクリタキセル溶出性ステント(paclitaxel-eluting stent:PES)が2004年8月から本邦で保険償還が認可され、実臨床において使用可能となった。これにより冠動脈ステント留置後1年の再狭窄率を10%以下に低下させた。現在のPCIではDES留置が通常である。DESは再狭窄を強く抑制するものの、これが血管内皮の修復反応の遅延をきたし、血栓性閉塞(ステント血栓症)の可能性が高い時期が長期間にわたってつづくことが問題とされる。ステント血栓症の予防のために抗血小板薬の適切な投与が重要となっている。ステント血栓症の予防のためにアスピリンと、チエノピリジン系抗血小板薬の併用投与(dual anti-platelet therapy:DAPT)が主流となっているが、その継続すべき期間については明確な指針はない。第2世代DESが登場し、臨床成績が向上してステント血栓症は減少している。さらに、2015年末からは第3世代のDESも実臨床の現場に登場する。DAPTの期間を短縮しても安全性が保たれるという方向の報告がある一方で、DAPTの期間を延長したほうがよいとの報告もあり、議論がつづいている。DAPTを継続することは出血性合併症を増す危険性があり、血栓症予防と出血性合併症の両者のトレードオフで比較すべき問題である。ステント血栓症の予防のためにDAPTを継続すべき期間について明確な結論はない。DAPTを長期間継続することによる頭蓋内出血などの重大な出血性合併症は患者の不利益ともなり、DAPTの至適施行期間を明らかにすることは、DES留置後の患者にとって大切である。DAPT導入の背景現在は使用頻度が減少しているが、BMSの臨床試験が日本で始まったのは1990年(平成2年)であった。その当時、筆者は小倉記念病院に在籍し、その現場を体験した。当時はDAPTという概念はなく、抗血小板薬としてアスピリンを投与し、さらにワルファリンによる抗凝固療法を行っていた。そのうえ、PCI術後には数日間のヘパリンの持続点滴も加えていた。しかし3%前後という高いステント血栓症の発生率と出血性合併症に悩まされていた。この経験からも明らかなように、抗凝固療法を強化してもステント血栓症を予防できないことはみな痛感していた。チエノピリジン系薬剤とアスピリンによるDAPTをBMS留置後1か月間施行することでステント血栓症の発生を抑制することが示され、ステント留置後の標準治療となった1)。その当時はチエノピリジン系薬剤としてクロピドグレルは存在せずチクロピジンのみであった。STARS研究の結果1)をみると、アスピリン単独や、アスピリンとワルファリンによる抗血栓療法に比べて、DAPTによってステント植込み手技の安全性が高まることがわかる。このデータをもとに、現在のDES時代においてもステント術後のDAPT療法として継承されている。現在では、チエノピリジン系抗血小板薬としては、チクロピジンよりも副作用が少ないクロピドグレルが最も頻用されている。short DAPTとlong DAPTDAPT継続期間については12か月間を基準として、それよりも短い期間(3か月から6か月間)で十分とする意見をshort DAPT派、1年を超えてDAPTを継続したほうがよいという意見をlong DAPT派と総括され、両派による活発な議論がつづいている。しかし、第2世代のDESが普及しステント血栓症は減少し、DAPTの期間は短縮する方向での知見が増加している。抗凝固薬を必要とする患者における抗血小板療法については、DAPTを含む3剤の抗血栓薬は避けたほうがよいとのコンセンサスは得られつつあるが、明確な指針は未だ存在しない。明確な指針はない状況においても各担当医は実臨床の現場で方針を決定しなければならない。DES留置後のDAPT期間、short DAPTで十分か?日本循環器学会のガイドライン2, 3)では、2次予防における抗血小板療法として、禁忌がない患者に対するアスピリン(81~162mg)の永続的投与(レベルA)、DES留置の場合にはDAPTを少なくとも12か月間継続し、出血リスクが高くない患者やステント血栓症の高リスク患者に対する可能な限りの併用療法の継続(レベルB)が推奨されている。本邦でのデータとしてCREDO-Kyoto PCI/CABG Registry Cohort-2に登録されたDES(主としてシロリムス溶出性ステント)留置患者6,309例における4か月のランドマーク解析がある4)。4か月の時点でのチエノピリジン系抗血小板薬継続例と中止例でその後3年までの死亡、心筋梗塞、脳卒中の発症率に差はなく、出血性合併症の発症はチエノピリジン系抗血小板薬継続例で多いことが報告されている。これは、日本人におけるDES留置後の至適なDAPT施行期間は、現在の第2世代DESよりもステント血栓症の頻度が相対的に高かった第1世代DESの時代においてすら、4か月程度で十分である可能性を示唆しているもので貴重なデータである。第2世代DESが登場し、臨床成績が向上しステント血栓症は減少しており、DAPTの期間を短縮しても安全性が担保されるという方向の報告が多い。この至適DAPT期間を検討するために大規模なメタ解析の結果が報告された5)。無作為化試験を選択し、DAPT投与期間が12か月間である試験を標準として、12か月未満のshort DAPT試験と、12か月超のlong DAPT試験の比較を行っている。アウトカムは、心血管死亡・心筋梗塞・ステント血栓症・重大出血・全死因死亡である。10の無作為化試験から32,287例が解析されている。12か月の標準群と比較してshort DAPT群は、有意に重大出血を減少させた(オッズ比:0.58、95%CI:0.36-0.92、p=0.02)。虚血性または血栓性のアウトカムについて有意差はなかった。long DAPT群は、心筋梗塞とステント血栓症は有意に減少させたが、重大出血は有意な増大がみられた。また、全死亡の有意な増大もみられた(オッズ比:1.30、95%CI:1.02-1.66、p= 0.03)。この結果を要約すれば、short DAPTは、虚血性合併症を増大させることなく出血を減らし、ほとんどの患者においてshort DAPTで十分であることが示されたといえる。さらにDAPT期間についてARCTIC-Interruptionという無作為化比較試験の結果が興味深い6)。DESの留置後1年の間に虚血性または出血性イベントを経験しなかった患者において、1年以降のDAPT継続は1剤のみの抗血小板療法と比較し、虚血性イベントの抑制効果は示されず、重症または軽症出血のリスクの上昇が認められた。つまり、留置後1年間でイベントが起きなかった場合、その後のDAPT継続には有益性はなく、むしろ出血イベントのリスクが増大し有害であることが示されたことになる。この試験だけでなく、PRODIGY7)、DES LATE8)、EXCELLENT9)、RESET10)、OPTIMIZE11)などのshort DAPTとlong DAPTを比較した試験でも、長期間のDAPTは心血管イベントを減らすことはなく、出血性合併症を増加させるという結果が一貫性をもって示されている。本邦におけるshort DAPTを示唆する研究:STOPDAPT研究長期間のDAPT施行が抗血小板薬単独治療に比べて出血性合併症を増加させ、長期のDAPT施行をつづけても心血管イベントの発症抑制効果がないのであれば、DAPT施行期間はできるだけ短いほうが望ましいことは明確である。このためのエビデンス構築をめざして、本邦においてはSTOPDAPT研究が行われた。日本心血管インターベンション治療学会2015年学術集会(CVIT2015)においてNatsuakiらによって結果が発表された。この研究は、ステント血栓症の発生リスクが低い第2世代DESを代表するコバルトクロム合金のエベロリムス溶出ステント(CoCr-EES)が留置された患者において、チエノピリジン投与期間を3か月に短縮可能と担当医が判断した連続症例を登録し、ステント留置後3か月の時点でチエノピリジン投与を中止し、ステント留置後12か月の心血管イベント、出血イベントの発生率を評価する研究である。冠動脈にCoCr-EESの留置を受けた3,580人のうち3か月でDAPT中止が可能と判断された患者1,525人が登録された。チエノピリジン投与は4か月までに94.2%で中止され、1年追跡率は99.6%であった。definiteのステント血栓症の発生は皆無であった。選択された患者においてではあるが、CoCr-EES留置後3か月でのDAPT中止の安全性が示唆されたSTOPDAPT研究の意義は大きい。DAPT期間は延長すべき? DAPT試験2014年の第87回米国心臓協会年次集会(AHA2014)でDAPT試験の結果が発表されるまでは、short DAPTの方向に意見は収束しつつあるように思われていた。つまり、DAPT期間を延長することにより出血性合併症の発症リスクは増加し、虚血性イベントの明確な抑制は認められない、というものである。1年間または6か月間のDAPTで十分であり、むしろ論点は3か月間などいっそう短いDAPT期間を模索する方向に推移していた。この方向性を逆転するような結果が「DAPT試験」として報告されたのである12)。DES後の患者で、DAPT期間12か月と30か月というlong DAPTを比較する無作為割り付け試験である。米国食品医薬品局(FDA)の要請により実施された多施設共同ランダム化比較試験であり、冠動脈ステントを製造・販売する企業など8社が資金を提供した大規模研究である。DES後の患者9,961例を対象に、DAPT期間の長短によるリスクとベネフィットが比較検討された。その結果、30か月のlong DAPT群でステント血栓症および主要有害複合エンドポイント(死亡、心筋梗塞、脳卒中)が有意に低く、出血性合併症はlong DAPT群で有意に高かった。long DAPTのベネフィットが報告されたDAPT試験ではあるが、このDAPT試験に内在する問題点についての指摘も多い。本試験のデザインは、DES植込み直後にDAPT期間12か月と30か月に割り付けたわけではなく、植込み当初の1年間のDAPT期間に出血を含めイベントなく経過した患者のみを対象としている。背景にいるDES植込み患者は22,866人おり、そのうちの44%にすぎない9,961人が無作為化試験に参加している。この44%の患者を選択する過程でバイアスが生じている可能性がある。この除外された半数を超える56%の患者に、本試験の結果を敷衍できるのかは不明である。また、この試験の結果では30か月DAPT施行による主要有害複合エンドポイントの抑制は、心筋梗塞イベントの抑制に依存している。心筋梗塞が増えれば死亡が増えることが自然に思えるが、心臓死・非心臓死ともにlong DAPT群において有意差はないが実数として多く発生している。本試験で報告されている心筋梗塞サイズは不明であるが、心筋梗塞イベントが臨床的にもつ意味合いについても考える必要がある。PEGASUS-TIMI 54研究もlong DAPTを支持する結果であった13)。これは、心筋梗塞後1年以上の長期にわたるDAPTが有用か否かを検証する試験で、アスピリン+チカグレロルとアスピリン単独の長期投与を比較した研究である。その結果、有効性はアスピリン+チカグレロル群で有意に優れていたが、安全性(大出血)は有意に高リスクであることが示された。short DAPTかlong DAPTかの問題について決着をつけるには、さらなる研究が必要と思われる。DAPT試験の結果が発表されたあとに、DAPT期間についてのメタ解析がいくつか報告されている。その代表がPalmeriniらによって報告されたものである14)。その論文の結論は明確にDAPT期間の長短を断じたものではなく、患者個別のベネフィットとリスクを考えることを薦めるものであることに注目したい。全患者に均一のDAPT期間を明示することは現実的には困難であり、リスク層別化を考えることが大切と思われる。出血リスクが低く心血管イベントの発生するリスクが極めて高い患者でDAPT期間の延長を考慮することが現実的であろう。文献1)Leon MB et al. A clinical trial comparing three antithrombotic-drug regimens after coronaryartery stenting. Stent Anticoagulation Restenosis Study Investigators. N Engl J Med 1998; 339: 1665-1671.2)日本循環器学会ほか. 安定冠動脈疾患における待機的PCIのガイドライン(2011年改訂版).3)日本循環器学会ほか. ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版).4)Tada T et al. Duration of dual antiplatelet therapy and long-term clinical outcome after coronary drug-eluting stent implantation: landmark analyses from the CREDO-Kyoto PCI/CABG Registry Cohort-2. Circ Cardiovasc Interv 2012; 5: 381-391.5)Navarese EP et al. BMJ 2015; 350: h1618.6)Collet JP et al. Dual-antiplatelet treatment beyond 1 year after drug-eluting stent implantation (ARCTICInterruption): a randomised trial. Lancet 2014; 384: 1577-1585.7)Valgimigli M et al. Randomized comparison of 6-versus 24-month clopidogrel therapy after balancing anti-intimal hyperplasia stent potency in all-comer patients undergoing percutaneous coronary intervention. Design and rationale for the PROlonging Dual-antiplatelet treatment after grading stent-induced Intimal hyperplasia study (PRODIGY). Am Heart J 2010; 160: 804-811.8)Lee CW et al. Optimal duration of dual Antiplatelet therapy after drug-eluting stent implantation: a randomized controlled trial. Circulation 2013; 129: 304-312.9)Gwon HC et al. Six-month versus 12-month dual antiplatelet therapy after implantation of drugeluting stents: the efficacy of Xience/Promus versus cypher to reduce late loss after stenting (EXCELLENT) randomized, multicenter study. Circulation 2012; 125: 505-513.10)Kim BK et al. A new strategy for discontinuation of dual antiplatelet therapy: the RESET trial (REal Safety and Efficacy of 3-month dual antiplatelet Therapy following Endeavor zotarolimus-eluting stent implantation). J Am Coll Cardiol 2012; 60: 1340-1348.11)Feres F et al. Three vs twelve months of dual antiplatelet therapy after zotarolimus-eluting stents: the OPTIMIZE randomized trial. JAMA 2013; 310: 2510-2522.12)Mauri L et al. For the DAPT study investigators: Twelve or 30 months of dual antiplatelet therapy after drug-eluting stents. N Engl J Med 2014; 371: 2155-2166.13)Bonaca MP et al. for the PEGASUS-TIMI 54 steering committee and investigators. Long-term use of ticagrelor in patients with prior myocardial infarction. N Engl J Med 2015; 372: 1791-1800.14)Palmerini T et al. Mortality in patients treated with extended duration dual antiplatelet therapy after drug-eluting stent implantation: a pairwise and Bayesian network meta-analysis of randomised trials. Lancet 2015; 385: 2371-2382.

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Dr.中川の世界のカテまでイッテ究(キュウ) 第1回

静岡県立総合病院 循環器内科 多田朋弥氏:前編今回のゲストは、ドイツ心臓病センターミュンヘン(Deutshes Herzzentrum München)に2011年から留学された、静岡県立総合病院 循環器内科の多田朋弥氏。代役がきっかけとなった留学への道中川:多田先生、本日はありがとうございます。まず、先生の留学の経緯および留学先について教えていただけますか?多田:私は、北海道大学を2004年に卒業しました。その後、平成2007年から京都大学で循環器のトレーニングを受け、卒業から7年経った2011年に留学しました。留学先はドイツのミュンヘン工科大学(Technische Universität München)のドイツ心臓病センター ミュンヘン(Deutshes Herzzentrum München)です。2011年4月から3年間留学していました。中川:多田先生が留学先としてドイツ心臓病センターミュンヘンを選んだのはご自身の希望ですか? それとも、どなたかの紹介ですか?多田:留学の前年、私は京都大学で、後に留学先となるドイツ心臓病センターミュンヘンのAdnan Kastrati教授が主導する国際共同試験「ISAR-SAFE」試験の日本のenrollmentを担当していました。その年、ストックホルムでのESC(欧州心臓病学会)で、当試験の報告会議があり、京都大学の木村教授が参加する予定だったのですが、都合が合わず、私が代役で日本の状況を報告することになりました。中川:それがきっかけとなったのですね。その時の印象はいかがでしたか?多田:報告の際も感触が良かったので、帰国後、木村先生にその旨を伝えると、行きたかったら紹介するということ話になりました。向こうのチームも仲が良さそうで好印象だったということもあり、留学に至りました。中川:木村先生の代役がきっかけで、お互い好印象を抱き留学に至ったわけですね。ところで、ドイツへの留学ではドイツ語の試験に合格するといった規定はないのですか?多田:留学自体は語学試験に合格する必要はありません。診療行為をするのであれば試験に合格することが必要です。それに加えて日本の医師免許があれば診療できます。私は診療をするつもりはなかったので、その手続きは取りませんでした。中川:留学までの期間がかなり短いですね。ESCが10月、決めたのが11月、実際に行ったのが翌年の4月ですので、6ヵ月後ですね。最速コースですね?多田:はい。準備期間は非常に短かったですね。その間に結婚することになり、大変でした。そのようなこともあり、準備期間の間、ドイツ語の学校に通う余裕はありませんでした。語学試験は受けないとはいえ、それ以前にドイツ語と触れ合う機会は、ほとんどなし。不安はありましたが、英語で何とかなるだろうと淡い期待を抱いていました。しかし、この期待は、実際に現地に行き大きな誤算だったとわかるのですが。現地の人間のしたがらない仕事が、ポジション獲得につながった中川 義久氏中川:ドイツでは診療はされなかったわけですが、向こうでの仕事はどのようなものだったのですか?多田: BRS(生体吸収性スキャフォールド)など、向こうで使われているが日本未発売のデバイスに関する臨床試験が主体でした。コアラボでQCA(定量的冠動脈造影法)やフォローアップの手伝いをするのですが、当時、OCT(光干渉断層法)の担当者がいませんでした。私は、コアラボで測定をしながら、OCTを解析するのが仕事でした。もともとOCTを専門にしていたわけではありませんが、現地では細かい測定を嫌がる人が多いし、日本人だからできるだろう、ということで担当になりました。コアラボで測定をしながら、OCT症例があるとカテ室に行き、戻ってきたデータを自分で解析し、論文化するというワークフローです。そうしているうちに、OTCに関するデータは皆、私を経由するようになってきました。これは自分のポジションを見つけていくという意味で非常に良かったと思います。中川:ところで、Kastrati先生との仕事は英語でするのですよね?多田:いいえ。Kastrati先生は英語を話せますが、ドイツ語を使います。先生はアルバニア出身でポジションを得た方ですので、ドイツ語を使ってドイツ人のコミュニティに入っていくということを重視しておられました。そのような状況ですので、多国籍のフェローも皆ドイツ語を使っていました。中川:コアラボのスタッフもドイツ語ですか?多田:そうです。でも、現場の雑談の中での会話で鍛えられました。最初は本当にコミュニケーションを取れませんでしたが、仕事についても1年ちょっとで問題なくなりました。ただ、英語論文の指導もドイツ語で、これは本当に大変でした。中川:英語論文の指導をドイツ語でされ、さらに英語に訳していくとは、これは神業ですね。ドイツで論文は何本くらい発表されましたか?多田:留学中に5本、帰国後1本です。中川:3年間で6本は相当なハイペースですね?多田:最初の1年は生活の環境整備に費やすことがほとんどで、2年目からやっと芽が出始め、3年目に形になってきました。日本とは違い、Studyナースや学生アルバイトなどデータを取ってくれる人が常時いるシステムなので、解析の仕事に特化しやすかったですね。日本人の診療は丁寧なのか?多田 朋弥氏中川:カテ室でドイツの診療を見る機会もあったと思いますが、日本の診療行為との違いはありますか? 日本人は丁寧で、それが良い成績につながっているという意見を聞くことが多いですが、実際はいかがですか?多田:手技については同等だと思います。よく日本が優れているという意見を耳にしますが、差は感じませんでした。ただし、ドイツでは血管内イメージングのルーチンフォローアップはしないですね。自分がいた施設ではフォローアップCAG(冠動脈造影)をしていましたが、やらない施設がほとんどです。また、PCI(経皮的冠動脈インターベンション)のガイドについても、ほぼ100%がアンギオガイドです。後でOCTをやりmalappositionが判明することもありました。これは100%アンギオガイドの限界かも知れません。そういう面では、日本のほうが丁寧だといえるでしょう。中川:PCIの適応で日本との違いは感じますか?多田:ドイツでのPCI適応は、年齢も含め合理的だと思います。病変も日本のように複雑なものではなく、比較的シンプルなものが多いという印象です。CTO(慢性完全閉塞病変)も日本より少なく、最近になり、CTOプログラムが始まって例数が増えてきたという状況です。新たなインターベンション・デバイスの可能性留学先のドイツ心臓病センター ミュンヘンにて中川:BRSなど日本でも早く使いたいと思ったものはありましたか?多田:正直なところ、第2世代DES(薬剤溶出ステント)を大きく上回る成績を上げたものは少ないと思います。生体吸収ポリマーと永久ポリマーステントの試験も数多くありますが、同等です。BRSは、若い人には非常に良いものの、高齢者には目を見張るような結果が出てきていません。中川:今のメタリックステントがすでに完成度が高いという印象ですか?多田:3年というスパンで見ると完成形に近づいていると言えるのではないでしょうか。しかし、neo atherosclerosisなど、そこから先のインパクトについては不明です。第3世代DESやBRSがそういったものを改善すれば、使うメリットが出てくると思います。中川:CAD(冠動脈疾患)へのインターベンションはかなり成熟してきていると思いますが、そのような中、ドイツの施設では、SHD(Structural Heart Disease)に向かって動き出していると感じたことはありますか?多田:内科も外科もTAVI(経カテーテル大動脈弁植込み術)をしていますが、自分がいた時には、大きな変化は感じませんでした。後編へ続く

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deferredステント留置はSTEMIの予後を改善するか/Lancet

 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者の治療において、ステント留置を即座には行わないdeferredステント留置と呼ばれるアプローチは、従来の即時的な経皮的冠動脈インターベンション(PCI)に比べて、死亡や心不全、再発心筋梗塞、再血行再建術を抑制しないことが、デンマーク・ロスキレ病院のHenning Kelbaek氏らが行ったDANAMI 3-DEFER試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2016年4月3日号に掲載された。STEMI患者では、ステント留置を用いたPCIによって責任動脈病変の治療に成功しても、遺残血栓に起因する血栓塞栓症で予後が損なわれる可能性がある。これに対し、梗塞関連動脈の血流が安定した後に行われるdeferredまたはdelayedステント留置は、冠動脈の血流を保持し、血栓塞栓症のリスクを低減することで、臨床転帰の改善をもたらす可能性が示唆され、種々の臨床試験が行われている。deferredステント留置の有用性を無作為試験で評価 DANAMI 3-DEFER試験は、デンマークの4つのPCIセンターが参加する3つのDANAMI 3プログラムの1つで、STEMI患者においてdeferredステント留置と標準的PCIの臨床転帰を比較する非盲検無作為化対照比較試験(デンマーク科学技術革新庁などの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、胸痛発症から12時間以内で、心電図の2つ以上の隣接する誘導で0.1mV以上のST上昇または新規の左脚ブロックの発現がみられる患者であった。 被験者は、deferredステント留置または即時的に標準的なプライマリPCIを施行する群に無作為に割り付けられた。プライマリPCIは薬剤溶出ステント留置が望ましいとされた。 deferred群では、病院到着時の冠動脈造影で梗塞関連動脈の血流が安定化する可能性がある場合は約48時間(最短でも24時間以上、この間にGP IIb/IIIa受容体拮抗薬などを4時間以上静脈内投与)後に再造影を行い、血流の安定化が確認されればステント留置を行わないこととした。 主要評価項目は、2年以内の全死因死亡、心不全による入院、心筋梗塞の再発、予定外の標的血管の血行再建術の複合エンドポイントとした。 2011年3月1日~14年2月28日までに1,215例が登録され、deferred群に603例、標準的PCI群には612例が割り付けられた。予定外の標的血管血行再建術はdeferred群で高頻度 年齢中央値はdeferred群が61歳、標準的PCI群は62歳、男性がそれぞれ76%、74%であった。糖尿病がそれぞれ9%、9%、高血圧が41%、41%、喫煙者が54%、51%、心筋梗塞の既往歴ありが6%、7%含まれた。多枝病変は41%、39%であった。 発症から施術までの期間中央値は両群とも168分であり、フォローアップ期間中央値は42ヵ月(四分位範囲:33~49)だった。 主要エンドポイントの発生率は、deferred群が17%(105/603例)、標準的PCI群は18%(109/612例)であり、両群間に有意な差は認めなかった(ハザード比[HR]:0.99、95%信頼区間[CI]:0.75~1.29、p=0.92)。 主要エンドポイントの個々の項目のうち、全死因死亡(p=0.37)、心不全による入院(p=0.49)、非致死的心筋梗塞の再発(p=0.49)には差がなかったが、予定外の標的血管の血行再建術はdeferred群のほうが有意に多かった(HR:1.70、95%CI:1.04~2.92、p=0.0342)。 また、心臓死(p=0.58)、PCIによる標的血管の血行再建術(p=0.11)、冠動脈バイパス・グラフト術(CABG)による標的血管の血行再建術(p=0.15)にも差はみられなかった。18ヵ月時の左室駆出率は、deferred群がわずかに良好だった(54.8 vs.53.5%、p=0.0431) 手技関連の心筋梗塞、輸血または手術を要する出血、造影剤誘発性腎症、脳卒中を合わせた発生率は、deferred群が4%(27/603例)、標準的PCI群は5%(28/612例)であり、両群間に差を認めず、個々の項目にも差はなかった。 著者は、「現在、類似の3つの臨床試験(MIMI試験、INNOVATION試験、PRIMACY試験)が進行中であり、これらの試験の結果がSTEMIにおけるdeferredステント留置の概念にさらなる光を投げかける可能性がある」としている。

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ニフェジピンによるDES留置後の血管保護効果を確認

 2016年3月19日、宮城県仙台市にて開催された第80回日本循環器学会学術集会の「Late Breaking Clinical Trials/Cohort Studies III」にて、長時間作用型ニフェジピンの薬剤溶出ステント(DES)留置後の冠動脈に対する保護効果を検討した無作為化前向き試験“NOVEL study”の結果が、東北大学 循環器内科学の圓谷 隆治氏より発表された。 同氏の研究グループはこれまでに、第1世代のDESによる冠動脈過収縮反応を、長時間作用型ニフェジピンの慢性投与が抑制することが動物実験で示されたことを報告している。本試験では、現在主に臨床で使用されている第2世代のDESであるエベロリムス溶出ステントを用いて、ヒトにおける同様の効果について検討された。 対象は、左冠動脈へのDES留置を予定している146例の安定狭心症患者であった。被験者を、スタチン、レニン・アンジオテンシン系阻害薬、アスピリン、クロピドグレルによる一般的な薬物治療を実施する対照群と、それらに長時間作用型ニフェジピンを追加投与する群に無作為に割り付けた。ニフェジピン群57例および対照群53例に対し、ステント留置から8~10ヵ月後、冠動脈造影のフォローアップ検査を実施し、アセチルコリン負荷試験による冠動脈の収縮反応の確認が行われた。 その結果、冠動脈過収縮反応は、非治療血管に比べ、ステントの遠位部において顕著であった(p<0.001)。また、対照群と比較して、ニフェジピン投与群においてその反応は有意に抑制された(p<0.01)。さらには、血液検査により、炎症反応に関してもニフェジピン群のみにおいて改善が認められた(p<0.05)。 圓谷氏は、本試験の対象患者は、基礎疾患などのベースライン時の特徴から、比較的高リスクであったことを説明した。そのような患者においては、血管に対するストレスが減少したとされる第2世代のDESを用いた場合でも、血管の異常反応である過収縮が認められ、それに対して長時間作用型のニフェジピンの抗炎症作用が有益な効果に関連していることを述べた。 同発表のコメンテーターである岐阜大学 循環病態学・呼吸病態学・第二内科の西垣 和彦氏は、ニフェジピンの抗炎症作用が「クラスエフェクトとしてほかのカルシウム拮抗薬にもあるのか」、また、「ステントを留置した患者の長期予後へどのような影響を及ぼすのか」、という2点が、今後のさらなる研究で明らかになることに期待を寄せた。

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生体吸収性ステントBVSに対する期待とエビデンスの持つ意味~メタ解析の結果~(解説:上田 恭敬 氏)-502

 新たに開発された生体吸収性ステント(BVS:bioresorbable vascular scaffold)と、現時点で最も優れた臨床成績を示している金属製薬剤溶出性ステント(DES:metallic drug-eluting stent)の1つであるXienceステントを比較した、4つの無作為化比較試験の1年時成績のメタ解析が報告された。症例数の合計は、BVSが2,164症例、Xienceが1,225症例である。 結果は、患者についての複合エンドポイントもデバイス(ステント)についての複合エンドポイントも、群間で有意差を認めなかったというものであった。 論文内でも述べられているが、大規模な長期の臨床試験の結果によって、この新しく開発されたデバイスであるBVSが、従来のDESに比べて本当に優れているか否かを示すには、まだまだ長い時間が必要である。しかし、それまでの間、この新しいデバイスを使い続けるためには、1年時のエビデンスとして、BVSの使用によって患者の予後を悪化させていないことを示す必要があるとの考えから、この解析が行われている。 しかし、1年時の成績から必ずしも長期の予後を予測できないことは、CypherステントとEndeavorステントの比較試験の結果が、1年時と5年時でまったく逆になったことからも明らかである。そのことをわかっていながらも、形だけでもエビデンスと呼べるものをつくらないといけない、現在の過度なエビデンス依存状態がみえる。1年時のBVSの成績がXienceよりも優れていようが劣っていようが、5年あるいはそれ以上の長期の成績において、どちらが優れた結果を示すことになるのかは神のみぞ知る問題である。もし、少しでも長期成績を予測しようと思うのであれば、このような統計データではなく、病理やイメージングを用いた研究の結果を、もっと詳細に議論するべきではないだろうか。 しかも、主なエンドポイントとして設定される複合エンドポイントは、通常、試験の目的(今回の場合「BVSが劣っていないこと」)を示しやすいように工夫されているものである。その主なエンドポイントに差がなかったことを第1に主張している論文の表現法にも、この目的がにじみ出ていると感じる。しかし結果としては、標的血管関連心筋梗塞の発症頻度が有意差をもってBVSで高くなっていて、有意差には至っていないが、ステント血栓症が高頻度となっていることが指摘されている。BVSで手技時間が有意に長く、手技成功率が有意に低くなっていることも重要である。また、無作為化試験のメタ解析でありながら、背景因子にかなりの偏りが存在することも問題と思われる。 本解析の結果から出るメッセージは、「成績に差がなかったからBVSを使い続けることは問題ないですよ」といったお墨付きではなく、「BVSによる心筋梗塞の発症増加が認められ、手技成功率も低いので、広く使われればXienceを使うよりも患者の予後を悪化させる可能性がある」といった、注意喚起の内容とすべきではないだろうか。もちろん、金属が体内に残らないことから生じるメリットも想定される新しい技術であり、長期成績については長期の大規模試験の結果が出るまでは誰にもわからないので、「BVSを使うべきではない」とまではいうべきではないが、その真逆の「1年時点ではまったく劣っていなかった」というのは、やはり違和感を覚える。この解析もいずれ結果の詳細は忘れ去られて、結論のみが独り歩きしてしまうことになるのであろうから、結論にどの結果を強調するかは、非常に重要であると思われる。逆に、さまざまな大規模試験の結論が独り歩きしている中で、その結論のみを鵜呑みにしない態度も重要である。蛇足かもしれないが、COURAGE試験の結論として指摘される「安定狭心症患者には、十分な薬物療法をすれば、必ずしも冠動脈形成術をしなくてもよい」という考えも、鵜呑みにすべきでないエビデンスの1つと著者は考えている。

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末梢血管用ステントZilver PTX、2年目も良好な結果

 2016年3月19日、日本循環器学会学術集会「Late Breaking Clinical Trials/Cohort Studies III」が行われ、福岡山王病院 循環器センター 横井 宏佳氏が、浅大腿動脈用ステントZilver PTXの市販後調査2年目のフォローアップ試験の結果を発表した。 Zilver PTXは、日本が世界に先駆けて発売した浅大腿動脈専用の薬剤溶出ステント(DES)であるが、すでに世界50ヵ国で2,400例以上に使用されている。Zilver PTXは、承認前にはZilver PTX RCT、Zilver PTX SAS試験、市販後にはZilver PTX Japan PMS、Zilver PTX US PAS、EUでの長病変に対するレジストリ研究が行われている。市販後試験の1つ、Zilver PTX Japan PMSの1年の試験結果は、本年のJournal of American College of Cardiology Cardiovascular Intervention誌2016年2月8日号1)で発表されたが、今学会では、その2年フォローアップデータおよび、承認前の2試験(Zilver PTX RCT、Zilver PTX SAS)と比較検討した結果が発表された。 Zilver PTX Japan PMS試験における登録患者の平均年齢は74歳であり、承認前の2試験に比べ高齢であった。また、承認前の2試験に比べ、糖尿病と腎障害を有する例が有意に多く、病変長は14.7mmと有意に長く、完全閉塞が47%、再狭窄への使用が19%と有意に高かった。また、Rutherford 4以上(CLI)も22%含まれており、リアルワールドでは、承認前試験以上に、患者背景が複雑かつ劣悪な患者であることが明らかになった。 この試験では907例、1,075病変をZilver PTXで治療した。2年間のフォローアップ適格患者は741例で、完全フォローアップはそのうち624例である。Thrombosis/Occlusionの発生率は、1年目3%、2年目は3.6%で、1年間で0.6%増加した。これは承認前の2試験や、従来の報告と同等の結果であった。TLR回避率は、1年目91%、2年目は85%で、これも承認前の2試験と同等の結果であった。Primary patency は1年目86.4%、2年は72.3%であり、RCT試験と比べるとやや低いものの、当試験の劣悪な患者背景を考えると、十分容認できるものといえる。 リアルワールドでは、承認前試験と比べ、より複雑な患者・病変背景の中で使われていた。2年目のZilver Japan PMSの結果は、臨床現場においてもこのステントが承認前の成績とほぼ同等の有効性と安全性が得られたことが明らかになった。

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CTO再灌流、生存率改善はみられないものの、バイパス術施行を有意に減らす

 慢性完全閉塞(CTO)に対する経皮的冠動脈形成術(PCI)の成功率は、術者の経験の蓄積、デバイスや手技の改善により向上している。とくに薬剤溶出ステント(DES)の登場によって、ベアメタルステントに比べて再狭窄発生や再灌流療法の再施行が減少し、複雑なCTOに対するPCI施行が容易になった。これまでにも、CTOに対する再灌流療法によって、症状の改善、左室駆出率の改善、バイパス術の減少などが報告されているが、生命予後の改善に関しては一定した結果が得られていない。韓国のグループが、DESのみを用いたPCIによる研究結果をJACC Cardiovascular Interventions 誌オンライン版2016年2月25日号で発表した。CTOレジストリを使用し、nativeの冠動脈に対するCTO患者1,173例を解析 2003~14年に登録された、nativeの冠動脈(血行再建を受けていない)にCTO病変を有する患者1,173例が解析の対象となった。すべてのPCI成功患者においてDESが使用された(1,004例、85.6%)。主要安全性評価項目は、CTO-PCI成功群と非成功群間の全死亡および死亡とQ波心筋梗塞発生の複合。主要有効性評価項目は、標的血管の再灌流とバイパス手術の発生であった。4.6年のフォローアップ、全死亡および死亡と心筋梗塞の発生率もCTO-PCI成功群と不成功群で有意差なし フォローアップ期間の中央値は4.6年で、患者の平均年齢は60歳、82.7%が男性であった。全死亡率および死亡と心筋梗塞の複合発生率いずれにおいても、調整リスクはCTO-PCI成功群と非成功群で同等であった(HR:1.04、95%CI:0.53~2.04、p=0.92とHR:1.05、95%CI:0.56~1.94、p=0.89)。CTO以外の冠動脈への完全再灌流が行われた879例の全死亡および死亡と心筋梗塞発生の複合リスクも、CTO-PCI成功患者と不成功患者とで違いは認められなかった。この結果は、患者がCTOを含めた多枝病変を持っている場合、もしくはCTO単独病変の場合のいずれにおいても同様であった。CTO-PCI不成功群では再灌流、バイパス術の施行率が有意に高い PCI後のフォローアップにおいて、CTO-PCI成功群では95.2%が無症候であったのに対し、CTO-PCI不成功群では半数以上が何らかの狭心症症状を訴えていた。標的血管の再灌流療法とバイパス術の施行率は、CTO-PCI不成功群で有意に高かった(HR:0.15、95%CI :0.10~0.25、p

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第3世代薬剤溶出性ステント「シナジー ステントシステム」の可能性とは?

 ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社は2016年1月12日、新型の薬剤溶出性ステント(Drug Eluting Stent、以下DES)である「シナジー ステントシステム」を新発売。これを受けて2016年1月26日、都内にて説明会が行われた。薬剤溶出性ステントが虚血性心疾患治療の主流 ステントは狭心症・心筋梗塞など虚血性心疾患の治療に広く使われている医療機器である。髪の毛ほどの細さの金属のチューブで、管の内側から圧力をかけることによりステント部分が網状に広がる。これを閉塞している血管に留置することで機械的に血管を支え、血流を確保し閉塞を改善する。従来は薬剤が塗布されていないベアメタルステントが使用されていたが、現在は薬剤溶出性ステントが主流となっている。薬剤溶出性ステントは第1世代・第2世代とさまざまなタイプが登場 薬剤溶出性ステントのステント表面には血管内膜を新生する物質を抑制する薬剤がしみ込んだポリマーがコーティングされている。ポリマーが薬剤の溶出量をコントロールすることで、均一な量の薬剤が、長期間にわたって放出され続ける。しかし、ポリマーによる血管内の炎症反応は動脈硬化を促進し、ステント血栓症などさまざまな反応を引き起こす。そのため、薬剤の放出が終わった残存ポリマーが課題とされていた。 2000年代後半に本邦に薬剤溶出性ステントが登場して以来、第1世代・第2世代とさまざまなタイプのステントが登場したが、この課題は依然として残っており、さらなるステントの改良が望まれてきた。次世代の薬剤溶出性ステントとしてのシナジーステントシステムの改善点 シナジーステントシステムはポリマーの長期残存の低減と血管の早期内皮化・早期治癒を目的として設計された次世代の薬剤溶出性ステントである。 シナジーステントシステムの主な改善点は3点ある。(1)プラットフォーム:ステントの構造をより使用しやすい形へ改良した(2)ステントの薄さ:ステントと血液の間の抵抗が減らし、血栓症リスクを低下させるため従来より薄くした(3)コーティング:生体吸収性ポリマーを血管の壁側に接する部分にのみ塗布する「アブルミナルコーティング」が特徴、ステント内の内皮化を促進させ、血管内炎症を減少させた とくに、薬剤放出後、体内に残存していたポリマーによる血管内炎症という長期的結果への課題は、シナジーステントシステムに採用されている生体吸収性ポリマーによって解決されるという。本ステントに採用されているポリマーは留置後4ヵ月程度で生体内に吸収され、ステントの早期内皮化を促進する。さらに、アブルミナルコーディングにより、ポリマーが塗布されているのは血管壁側のみのため、ポリマーの減量にも成功している。ポリマーの長期残存を低減し永続的な炎症の原因となるポリマーがなくなることで、後期ステント血栓症のリスクを低下させる可能性がある。 また、シナジー ステントシステムのステントの厚さは74μmと非常に薄く、ステント血栓症リスクをさらに減少させる可能性もあるという。新たに開発中のステントが第3世代ステントを治療成績で上回るのかは現時点では不明 新型ステントのエビデンス収集も徐々に進んでおり、現在「EVOLVE Short DAPT試験」が進行しつつある。これは、出血性リスクが高い患者にこのステントを利用し、DAPT投与期間が短縮できるかを検証する目的のグローバル臨床試験である。同試験結果によってはさらにステントの有効性が評価され、出血リスクの高い患者のDAPTの投与期間の大幅な短縮も可能となるかもしれない。 演者の中村 正人氏(東邦大学医療センター大橋病院 循環器内科 教授)は、シナジー ステントシステムについて「DESではかなり完成された形」とした。中村氏は、今回の新型ステントについて、以下の2点の可能性に期待を寄せた。(1)DAPTが短期間で中止できる短期的効果(2)DAPT投与中止後もイベント発生を抑制し、PCIの長期成績を改善する長期的効果 ステントはさらに進化を続けており、現在ポリマーをまったく使用していないステントが開発中である。ポリマーを使用していなければポリマーにより惹起される炎症が減る可能性はあるが、中村氏は、今回発売された第3世代ステントより治療成績が上回るのかについては現時点では不明である、と付け加えた。本サイトも、これからのステントの進化に注目していきたい。

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エベロリムス溶出ステント留置後のDAPT延長、主要心・脳血管イベントは減少せず

 薬剤溶出ステント留置後、アスピリン・チエノピリジン系薬剤を併用する抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を12ヵ月継続することが一般的に推奨されている。ところが、昨年発表されたDAPT試験では、薬剤溶出ステント(DES)留置後、DAPT 12ヵ月群に比べて、30ヵ月継続した群でステント血栓症および主要な心および脳血管イベントが減少し、出血リスクが上昇することが示された。12ヵ月を超えたDAPTによるこれまでの結果と異なり、物議を醸した。DESの安全性と有効性は種類間で異なる。エベロリムス溶出ステントはパクリタキセル溶出ステントに比べて、ステント血栓症が少ないと報告され、使用頻度も高い。 今回の報告では、DAPT試験の患者からエベロリムス溶出ステント留置群のみを抽出し、DAPTの結果がエベロリムスステント留置患者でも当てはまるのかが評価された。結果としては、エベロリムス溶出ステント留置後においてもDAPT 30ヵ月群はステント血栓症と心筋梗塞を減少させたが、DAPT試験と異なり、主要有害心・脳血管イベントにおいて有意差は認められなかった。また、中等度以上の出血を増やすことが示された。JACC Cardiovascular Intervention誌2016年1月25日号の報告。エベロリムス溶出ステント留置後のDAPT投与期間 12ヵ月と30ヵ月で比較。多施設無作為化試験、DAPT試験のPost hoc解析 すべての患者はエベロリムス溶出ステント留置後、オープンラベルでアスピリンとチエノピリジン系薬剤を12ヵ月間投与された。留置後12ヵ月間のDAPTに忍容性を認め、主要有害心・脳血管イベント、再血行再建療法、中等度以上の出血がない患者のみ、アスピリン・プラセボ群とDAPT継続群に無作為化され、18ヵ月後(ステント留置後30ヵ月)のステント血栓症、主要有害心・脳血管イベント(死亡、心筋梗塞、脳卒中)が評価された。安全性の1次エンドポイントはフォローアップ期間中の中等度以上の出血。DAPT試験に登録された25,682例のうち、エベロリムス溶出ステントは11,308例に使用され、4,703例が留置後12ヵ月の時点で無作為化された[DAPT 30ヵ月群:2,345例、プラセボ群(DAPT 12ヵ月):2,358例]。DAPT群でステント血栓症は有意に減少したが、主要な心・脳血管イベントには有意差なし プラセボ群(DAPT 12ヵ月)と比べて、DAPT 30ヵ月群では、ステント血栓症(0.3% vs.0.7%、p=0.04)と心筋梗塞(2.1% vs.3.2%、p=0.01)が有意に減少したが、主要有害心・脳血管イベントには有意差が見られなかった(4.3% vs.4.5%、p=0.42)。また、中等度以上の出血がDAPT 30ヵ月群で有意に増加していた(2.5% vs.1.3%、p=0.01)。出血と関連しない悪性腫瘍による死亡はDAPT 30ヵ月群で増加していた(0.64% vs.0.17%、p=0.01)。 ステント血栓症、心筋梗塞が増加しているにもかかわらず、主要有害心・脳血管イベントに差が認められないということは、心筋梗塞の定義に問題がある可能性がある。心筋酵素の上昇で診断されるような軽微な心筋梗塞の減少は、臨床的な予後の改善に結び付かないとも考えられる。

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生体吸収性スキャフォールドの1年転帰:4つのABSORBメタ解析/Lancet

 留置1年後における生体吸収性エベロリムス溶出スキャフォールド(BVS、Absorb)の有害事象の発現状況は、コバルトクロム合金製エベロリムス溶出ステント(CoCr-EES、Xience)とほぼ同等との研究結果が、米国・コロンビア大学のGregg W Stone氏らによってLancet誌オンライン版2016年1月26日号で報告された。BVSは、薬剤溶出金属製ステントに比べ経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の長期的なアウトカムを改善する可能性が指摘されているが、これらのデバイスの1年後の安全性や有効性は知られていない。4つの直接比較試験のデータを統合解析 研究グループは、留置1年後のBVSの相対的なリスクとベネフィットの特徴を明らかにするために、CoCr-EESと比較した4つの無作為化非劣性試験(ABSORB II、ABSORB Japan、ABSORB China、ABSORB III)のメタ解析を行った(Abbott Vascular社の助成による)。 4試験全体で、北米、欧州、アジア太平洋地域の301施設が参加し、安定冠動脈疾患および安定化した急性冠症候群の3,389例が登録された。BVS群に2,164例、CoCr-EES群には1,225例が割り付けられた。 主要評価項目は、患者指向の複合エンドポイント(全死因死亡、全心筋梗塞、全再血行再建術)およびデバイス指向の標的病変不全の複合エンドポイント(心臓死、標的血管関連心筋梗塞、虚血による標的病変再血行再建術)であった。 年齢中央値は両群とも63歳、男性はBVS群が73%、CoCr-EES群は72%であった。全体で、糖尿病を有する患者が約30%、不安定狭心症または直近の心筋梗塞が約31%にみられ、約3分の2の患者がAHA/ACC分類のB2またはC型、4分の1強が中等度~重度の石灰化、おおよそ3分の1が分枝部の病変だった。2試験のデータを追加しても治療効果に変化なし 3,355例(99%)が、1年間のフォローアップを完遂した。 患者指向複合エンドポイントの発生率は、BVS群が11.9%、CoCr-EES群は10.6%であり、両群間に有意な差はなかった(相対リスク[RR]:1.09、95%信頼区間[CI]:0.89~1.34、p=0.38)。 デバイス指向複合エンドポイントは、BVS群の6.6%、CoCr-EES群の5.2%に発生したが、やはり有意差はみられなかった(RR:1.22、95%CI:0.91~1.64、p=0.17)。 標的血管関連心筋梗塞は、BVS群が5.1%と、CoCr-EES群の3.3%に比べ有意に高頻度であった(RR:1.45、95%CI:1.02~2.07、p=0.04)。これには、BVS群で、有意差はないものの周術期心筋梗塞が多く、デバイス血栓症(definite/probable)の頻度も高い傾向にあったこと(RR:2.09、95%CI:0.92~4.75、p=0.08)が寄与している可能性がある。 全死因死亡(p=0.80)、心臓死(p=0.74)、全心筋梗塞(p=0.08)、虚血による標的病変再血行再建術(p=0.56)、全再血行再建術(p=0.89)のいずれもが、両群間に差を認めなかった。 これらの結果は、ベースラインの背景因子の不均衡を多変量で補正しても同様であり、ほとんどのサブグループで一貫していた。 また、これら4試験に、フォローアップ期間が1年に満たない2つの試験(EVERBIO II[9ヵ月]、TROFI II[6ヵ月、ST上昇心筋梗塞患者のみ登録])のデータを加えて事後的な感度分析を行ったが、治療効果に変化はなかった。 著者は、「BVSの1年後の患者指向およびデバイス指向の有害事象の発現状況は、CoCr-EESと変わらなかった」とまとめ、「第1世代のBVSは、多くの施術者がいまだ最適な留置術の方法を学んでいる最中で、CoCr-EESはステント血栓症が最も少ない薬剤溶出金属製ステントであることから、本研究のエビデンスは全体として、BVSの留置1年後の安全性と有効性を支持するものである」としている。

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EXAMINATION試験:Drug Eluting StentはST上昇型急性心筋梗塞の再灌流療法のスタンダードに!(解説:平山 篤志 氏)-470

 ST上昇型急性心筋梗塞の急性期死亡率は、この20年間で急速に減少し、今や5%程度になった。これは、ひとえにステントにおける確実な再灌流が可能になったことによる。ただ、初期に使用されたベアメタル(BMS)では、急性期に拡張に成功しても慢性期に再狭窄の頻度が高く、再度のインターベンションが必要とされた。 これに代わるステントして、CypherやTAXUSという第1世代の薬剤溶出ステント(Drug Eluting Stent:DES)が開発された。初期の成績は良好であったが、2006年に1年以後に血栓症が発症する(晩期ステント血栓症)が問題となり、再狭窄を予防しても血栓症のリスクの代償をどう考えるかが問題となった。それは、待機的な場合だけでなく、急性心筋梗塞においても1年以内の再狭窄がBMSと比較して低率であり、血栓症も0.2~0.6%であれば低率と考えられたが、やはり血栓症のもたらすリスクは大きく、長期的な使用には安全性の担保が必要であった。 EXAMINATION試験では、第1世代ではなく第2世代といわれるエベロリムスを用いた薬剤溶出ステント(EES)とBMSの比較試験で、すでに2年間のデータでは、主要アウトカムである、全死因死亡・心筋梗塞・血行再建術の複合イベントをEESが有意に減少させることを報告していた。今回の発表では5年間という長期にわたっても、EESの有意性が示された。全死亡がEES群で有意に減少した原因については、今後の詳細な検討が必要である。少なくとも抗血小板使用の頻度もBMSと同等であることを考慮すれば、第3世代のDESが再灌流療法のスタンダードとしての地位を築いているという現状のエビデンスを示したことになる。 これから、現在行われている第2世代と第1世代の比較、あるいはBMSとの比較試験がなされるだろうが、結論が変わることはないであろう。今後開発される生体吸収性スキャフォールドは、ST上昇型急性心筋梗塞に対して本試験における第2世代のDESの成績と同等、あるいはそれ以上のアウトカムの向上が必要とされるであろう。

100.

TUXEDO-India試験:糖尿病患者でも第1世代DESは不要(解説:上田 恭敬 氏)-457

 Taxus Element versus Xience Prime in a Diabetic Population(TUXEDO)-India Trialにおいては、1,830例の糖尿病を持つPCI予定冠動脈疾患患者を、第1世代DESであるTaxus Element(paclitaxel-eluting stent)群と、第2世代のDESで最も優れた臨床成績を示しているDESの1つであるXience Prime(everolimus-eluting stent)群に無作為に割り付け、「心臓死」・「標的血管を責任血管とする心筋梗塞発症」・「虚血を理由とする標的血管再血行再建術施行」の複合エンドポイントの発生頻度を比較している。Taxus Elementの非劣性を示そうとした試験であったが、複合エンドポイントの頻度が5.6% vs.2.9%とTaxus Elementで有意に高い結果となり、Xience Primeが有意に優れていることが示された。 次々と新しいDESが開発され、さまざまな比較が行われてきたが、今回の問題は第1世代のDESであるCypherとTaxusの比較において、層別解析の結果から糖尿病患者での有効性に差があるかもしれないとの議論に始まる。その本質が薬剤の違いからくるとの仮説から、リムス系薬剤(sirolimus analogue)であるeverolimusと抗がん剤でもあるpaclitaxelの比較という試験デザインになっている。しかし、DESは薬剤の種類だけでなく、その量や経時的溶出パターン、プラットホーム、ポリマーなどさまざまな要素によって千差万別のものが考えられ、それぞれ臨床成績も異なる可能性がある。 実際、同じzotarolimus-eluting stentであっても、EndeavorとResoluteはまったく別物であることは有名である。Endeavorは、最もBMSに近いDESともいわれており、新生内膜は比較的厚くなることで早期の再狭窄率は高いものの、非動脈硬化性・線維性の膜であるために病変が安定な状態となり、急性冠症候群症例に使われても安全性が高いとされてきた。これに対して、Resoluteは新生内膜が非常に薄いために再狭窄率が非常に低く、Xienceとほぼ同等の臨床成績が示されている。すなわち、薬の違いによる臨床成績の差を調べようとすれば、ほかの条件を同じにする必要があるうえに、同じ薬でも量や溶出パターンが違えば、それぞれ違う結果になる可能性がある。そのため、今回の結果はあくまでTaxus ElementとXience Primeの比較試験であって、薬の比較とはいえない。 また、Taxusについては、EndeavorのようにLate lossでみた内腔の再狭小化は大きいが、Endeavorのような臨床的な安定性は認められなかったことから、厚い新生内膜ができることが必ずしも良いことではないとの議論があった。しかし、血管内視鏡やOCTといった血管内画像診断による検討結果からは、Taxusの新生内膜は非常に不均一で、黄色プラークや血栓も高頻度に認めるのに対して、Endeavorの新生内膜はBMSに近く白色均一で、黄色プラークも血栓もほとんど認めないことが明らかとなっており、臨床成績の違いはこの結果からまったく合理的なものであることがわかる。すなわち、大規模臨床試験によって示されるイベント頻度や冠動脈造影所見のみを重視して、病理や血管内画像診断から得られる情報を参考程度にしか考えない現状の認識には問題があると思う。 第1世代のDESであるCypherやTaxusは、それまでPCIのアキレス腱とまでいわれてきた再狭窄を、1年の時点で劇的に減少させたことから、非常に期待を持ったことは間違っていないが、同時に示された上記のような血管内画像診断所見を真摯に捉え、もっと注意深く症例を限定して使用し、長期の臨床成績が出るのを待つべきであったのではないだろうか。1年の短期臨床成績に反して、血管内画像診断所見がCypherやTaxusよりEndeavorのほうが優れていることを示唆していたが、実際5年の長期臨床成績でEndeavorが逆転勝ちしたことは、教訓とすべき事実であろう。

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