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乳児期のRSV感染が小児喘息発症に関連/Lancet

 正期産の健常児で、生後1年目(乳児期)に重症呼吸器合胞体ウイルス(RSV)に感染していない場合は感染した場合と比較して、5歳時点の小児喘息の発生割合が大幅に低く、乳児期のRSV感染と小児喘息には年齢依存的な関連があることが、米国・ヴァンダービルト大学医療センターのChristian Rosas-Salazar氏らが実施した「INSPIRE試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年4月19日号で報告された。米国テネシー州の大規模な出生コホート研究 INSPIRE試験は、2012年6月~12月または2013年6月~12月に正期産で生まれた非低出生体重の健常児を対象とする大規模な住民ベースの出生コホート研究であり、米国テネシー州中部地域の11の小児科診療所で参加者の募集が行われた(米国国立衛生研究所[NIH]の助成を受けた)。 乳児期のRSV感染状況(感染なし・感染あり)を、受動的サーベイランスと能動的サーベイランスを併用して調査し、分子生物学的手法と血清学的手法によりウイルスを同定した。主要アウトカム(5歳時点の喘息)を前向きにフォローアップし、5年間のフォローアップを完了したすべての子供について解析が行われた。 1,946例(年齢中央値55日[四分位範囲[IQR]:16~78]、女児48%)が登録され、このうち1,741例(89%)で生後1年目のRSV感染状況のデータが得られた。乳児期に944例(54%)がRSVに感染し、797例は感染しなかった。RSV感染回避により、15%で喘息が予防 5歳時点で喘息を発症していた子供の割合は、RSV感染群が21%(139/670例)であったのに対し、RSV未感染群は16%(91/587例)と有意に低かった(p=0.016)。補正後リスク比は0.74(95%信頼区間[CI]:0.58~0.94、p=0.014)であり、乳児期のRSV感染回避によって予防可能な5歳時点の小児喘息の割合は15%(95%CI:2.2~26.8)と推定された。 また、子供の年齢で層別化したモデルでは、喘鳴の年間再発リスクは、1~4歳のいずれの時点においても、RSV感染群に比べRSV未感染群で低かったが、有意差は1歳時(p<0.0001)と2歳時(p=0.043)でのみ認められた。 アトピー型喘息を、5歳時の喘息と3歳時の空中アレルゲン感作で定義した場合、5歳時の非アトピー型喘息の頻度はRSV感染群に比べRSV未感染群で有意に低かった(p=0.010)が、アトピー型喘息との関連はなかった。また、アトピー型喘息を、医師が5歳までにアレルギー性鼻炎またはアトピー性皮膚炎と診断し、親によって報告された場合と定義しても、同様の結果であった。 著者は、「乳児期のRSV感染と小児喘息との因果関係を明確に示すには、初回RSV感染の予防、遅延、重症度の軽減が、喘息に及ぼす影響について検討する必要がある」としている。

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大型連休が明けた【Dr. 中島の 新・徒然草】(476)

四百七十六の段 大型連休が明けた風薫るゴールデンウィーク明け。ありがたいことに、花粉症に悩まされることがなくなりました。あれだけひどかった鼻汁も、今はまったく出ません。新型コロナも5類移行となり、局面が変わりました。病院の中では皆がマスクをしていますが、外ではかなりの人がノーマスク。だからといってコロナが消えたわけではありません。今でも検査で陽性が出る人も、入院が必要な人もいるのは事実です。でも、このまま徐々にコロナが消え去っていくのを願いたいところ。さて、コロナ禍の3年間を振り返ってみると、いろいろなことを感じさせられます。まず、最初の頃は、マスク不足どころかトイレットペーパーまで不足しました。昭和の石油ショックでもトイレットペーパー不足がありましたが、もはやそれを笑うことはできません。なぜか有事にトイレットペーパーが不足するというのは、普遍的な現象のようです。また、私自身はほとんど外食をしなくなりました。女房がいない時でも自炊で結構やれるもんだ、と思った次第です。それに対面の学会や宴会にもほとんど出ていません。どちらもあまり出ないほうだったのですが、それに拍車がかかってしまいました。もっとも学会のほうはオンライン化された分、前より出席率は向上しています。コロナが明けると再び対面ばかりになるので、さてどうしたものか。出席する学会は大阪周辺だけのものになるかもしれません。そして、マスクをするのが癖になりました。むしろコロナ禍以前に院内でマスクをしていなかったのが、今では信じられません。おそらくほかの医師も、診療中のマスクが普通になることと思います。そういえば、救急担当の研修医たちのインフルエンザやノロの流行もほとんどみられなくなりました。おそらくは医師患者双方のマスクの効能でしょう。さらに、これまであまりできていなかった手洗いも、自然にするようになったのは自分でも驚きです。逆に今は手洗いしないと恐ろしいですね。診療中のマスクや手洗いは、コロナが終わっても続けることになりそうです。あと、世間の人々が多少は医療について関心を持ったのも良かったと思います。健康というのは、失って初めてそのありがたさがわかるもの。が、多くの人は普段は当たり前のこととして意識していません。今回のコロナ禍が、健康について真剣に考えるキッカケになってほしいと思います。とはいえ、喉元過ぎれば熱さ忘れる、ということになりそうではありますが。コロナ終焉ムードで世間は浮かれていますが、まだまだ油断大敵。第9波が最大、最悪になる可能性も十分にあります。われわれも引き続き、気を緩めることのないようにするべきかと思います。最後に1句薫風の 連休明けに マスクとる

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喘息診断で注目、タイプ2炎症バイオマーカーの手引き発刊/日本呼吸器学会

 タイプ2炎症は、主に2型ヘルパーT細胞(Th2細胞)や2型自然リンパ球(ILC2)が産生するIL-4、IL-5、IL-13などの2型サイトカインが作用する炎症である。気道・肺疾患と密接な関係にあり、診断や治療に直結する。とくに、生物学的製剤の治療選択や効果予測に重要な役割を果たすことから、近年注目を集めている。そのような背景から、「タイプ2炎症バイオマーカーの手引き」が2023年4月3日に発刊された1)。第63回日本呼吸器学会学術講演会において、本書の編集委員長を務めた松永 和人氏(山口大学大学院医学系研究科呼吸器・感染症内科学講座 教授)が「タイプ2炎症バイオマーカーが切り拓く未来」と題し、主に「喘息の診断と管理効率の向上」「疾患修飾による喘息寛解の展望」について、解説した。タイプ2気道炎症は喘息の診断、管理に有用 喘息の補助診断には、血中好酸球数、呼気NO濃度(FeNO)、IgEが有用である。そこで「タイプ2炎症バイオマーカーの手引き」では、血中好酸球数とFeNOについて、喘息の補助診断に関するカットオフ値が設定された1)。 血中好酸球数については、タイプ2炎症の有無を鑑別するカットオフ値が220cells/μLであったという報告2)、一般住民における75パーセンタイル値が210cells/μLであり、210cells/μL以上では喘息を有する割合が高かったという報告3)などがある。以上などから、喘息を疑う症状のある患者における、喘息の補助診断のカットオフ値は220cells/μL(喘息診断を支持)に設定された1)。詳細は、手引きを参照されたい。 FeNOについては、タイプ2炎症の有無を鑑別するカットオフ値が20ppbであったという報告2)、本邦で喘息患者と非喘息患者を鑑別する際のカットオフ値が22ppb(感度91%、特異度84%)であったという報告4)などがある。ただし、FeNO値22ppbを適用すると非喘息患者の約15%もこの範囲に当てはまってしまう。そこで、FeNO値37ppbを適用すると特異度は99%となる4)。以上などから、吸入ステロイド薬(ICS)未使用の喘息を疑う症状のある患者における、喘息の補助診断のカットオフ値は22ppb(喘息の可能性が高い)、35ppb(喘息診断の目安)に設定された1)。詳細は、手引きを参照されたい。 なお、血中好酸球数、FeNOを補助診断に用いる場合、いずれも最終的な喘息の診断は、治療による反応性、治療効果の再現性などの臨床経過や症状・呼吸機能の変動を含め総合的に判断する。 また、FeNOと血中好酸球数は喘息管理においても有用である。そこで「タイプ2炎症バイオマーカーの手引き」では、喘息管理における解釈に関するカットオフ値も設定された1)。 ICSによる治療前後のFeNOの変化と気流制限、気道過敏性には相関があり、治療効果予測への有用性が指摘されている5)。ICS/長時間作用性β2刺激薬(LABA)による治療中はFeNOが低下し、治療を中止するとFeNOが上昇することが報告されているため、FeNOによる炎症モニタリングは、アドヒアランスやステロイド抵抗性の評価にも有用とされる6)。また、現在の治療ステップにかかわらず、増悪歴やリスク因子(症状、呼吸機能など)に加えて血中好酸球数とFeNOが高値の患者では将来の増悪リスクが高いことが近年報告されている7)。 以上から、喘息管理におけるFeNOのカットオフ値は20ppb、35ppbに設定され、血中好酸球数のカットオフ値は150cells/μL、300cells/μLに設定された。症状がなく、これらに基づくタイプ2炎症が低レベルであれば、抗炎症治療は適切と考えられ、抗炎症薬の減量が考慮可能である。一方、高レベルであれば症状がなくとも、服薬アドヒアランス・吸入手技の不良や、抗炎症薬の減量で症状が悪化する可能性がある。また、現在の治療でも症状が続いており炎症が高レベルであれば、増悪や呼吸機能低下のリスクが高いため、抗炎症治療の強化が考慮される1)。詳細は、手引きを参照されたい。タイプ2炎症への早期介入で疾患修飾・喘息寛解の達成へ タイプ2炎症と気道機能障害は喘息の治療可能な臨床特性(Treatable Traits)であることが、近年提唱されている8)。とくに、タイプ2炎症型の重症喘息では、タイプ2炎症が強いほど喘息が重症化するという知見も得られている。重症喘息はICS抵抗性であることが多いことから、さまざまな生物学的製剤が開発され、使用可能となっている。 同じく複数の生物学的製剤の適応がある関節リウマチの治療戦略では、Bio-free-remission(生物学的製剤での早期介入によりdeep remission[臨床的寛解、機能的寛解、免疫学的寛解のすべて]を達成し、生物学的製剤なし、もしくは投与間隔を長くする)が目指されており、エビデンスも集積されつつある。しかし、重症喘息では生物学的製剤の中止に関する臨床研究のエビデンスが乏しいのが現状である。したがって、松永氏らの研究グループは、まず生物学的製剤による「疾患活動性の抑制」を達成し、「deep remission」を達成した患者ではBio-free-remissionを目指せる可能性を提唱している9)。 松永氏らの研究グループは1年間の生物学的製剤の使用により、喘息の臨床的寛解が69%、deep remissionが32%で達成できたこと、deep remissionが達成された患者の特徴は、早期かつ呼吸機能が保たれている段階での生物学的製剤の使用であったことを2023年4月に報告している10)。そのため、松永氏は「バイオマーカーを活用しながら、呼吸機能が保たれている患者に対して早期に生物学的製剤を導入し、疾患修飾をかけてほしい」と強調した。タイプ2炎症バイオマーカーの手引きはバイオマーカーと疾患を網羅 「タイプ2炎症バイオマーカーの手引き」は、タイプ2炎症のバイオマーカーとそれに関連する疾患を網羅した1冊となっている。松永氏は「さまざまな気道・肺疾患の診断や治療方針の決定に直結するため、タイプ2炎症が注目されている。本書は、実臨床の具体的な状況において簡便に活用できる臨床指針を提供することで、タイプ2炎症評価の適正な普及につなげ、気道・肺疾患のさらなる管理効率の向上を目指して作成したため、ぜひ活用いただきたい」とまとめた。タイプ2炎症バイオマーカーの手引き編集:タイプ2炎症バイオマーカーの手引き作成委員会/日本呼吸器学会肺生理専門委員会定価:3,190円(税込)発行日:2023年4月20日A4変型判・120頁■参考文献1)タイプ2炎症バイオマーカーの手引き作成委員会/日本呼吸器学会肺生理専門委員会編集. タイプ2炎症バイオマーカーの手引き. 南江堂;20232)McGrath KW, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2012;185:612-619.3)Hartl S, et al. Eur Respir J 2020;55:1901874.4)Matsunaga K, et al. Allergol Int. 2011;60:331-337.5)Ichinose M, et al. Eur Respir J. 2000;15:248-253.6)Bardsley G, et al. Respir Res. 2018;19:133.7)Couillard S, et al. Thorax. 2022;77:199-202.8)Shaw DE, et al. Lancet Respir Med. 2021;9:786-794.9)Hamada K, et al. J Asthma Allergy. 2021;14:1463-1471.10)Oishi K, et al. J Clin Med. 2023;12:2900.

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080)皮膚科医がこれ虫かな? と思うとき【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第80回 皮膚科医がこれ虫かな? と思うときゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆春を通り越して夏めいた日差しの日もある今日この頃、ケアネット会員の皆様いかがお過ごしでしょうか?春先からにわかに花粉症で活気づいた皮膚科外来は、ムシムシする梅雨の時期を経て、暑い夏、レジャーの夏に突入します。ヒトが元気になるこの季節、虫たちも活発に活動をはじめ、そして出会った両者のおりなす(?)昆虫皮膚炎が増えてくる季節でもあります。日頃、診察をしていて、これ、虫が原因かな? と思う皮疹の特徴としてあげられるのは、露出部(四肢、顔など)、被覆部(服の中の体の柔らかいところ)などに分布が限定しているそれぞれの皮疹が同じような形でぱらぱらと点在する治療をしていても皮疹の新生が続く(環境に原因)など。ハチ刺されなど、きっかけの明らかな場合を除いては、虫が原因であると断定するのは難しく、問診や診察をしながら探偵のように推察していくことになります。こちらのおじいさんも、露出部である前腕を中心に、同じような形の皮疹が点在し、同居の家族も四肢に同じような症状が生じているとのこと。ペットはいないとのことですが、畳の部屋はあり、室内で柑橘類をいくつも育てているとのこと。また、庭や家のそばには木々があふれているとのことで、原因となりそうなものがいくつか存在するようでした。それら1つずつに対処していき、原因を一緒に探っていくことをご本人にお話ししました。それにしても、柑橘類といえば収穫して食べることにすぐ考えがいってしまいますが、「食べずに愛でる」という楽しみ方もあるのですね。そして室内でいくつも育てているとのこと…?いったいどんな情景なのか?? そもそも室内でも育つのか? 疑問は深まるばかりです。外来は、日々、学びの連続ですね。それでは、また次回に。

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アトピー性皮膚炎、抗IL-13抗体薬lebrikizumabが有効/NEJM

 インターロイキン13(IL-13)を標的とするIgG4モノクローナル抗体lebrikizumabは、中等症~重症アトピー性皮膚炎(AD)の成人・青少年患者を対象とした2つの第III相試験において、16週の導入療法期間での有効性が確認された。米国・ジョージ・ワシントン大学のJonathan I. Silverberg氏らがNEJM誌2023年3月23日号で報告した。 研究グループが実施した「ADvocate1試験」と「ADvocate2試験」は、個別にデザインされた52週の国際共同第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験で、いずれも16週の導入療法期間と36週の維持療法期間で構成された。 中等症~重症ADの成人(18歳以上)および青少年(12歳以上18歳未満、体重40kg以上)を対象とし、lebrikizumab群とプラセボ群に2対1の割合で割り付けた。lebrikizumabの用量は、ベースライン時と2週目に500mgの負荷投与、以降は250mgとし、隔週皮下投与した。 本稿では、16週までに評価された導入療法期間の結果が報告されている。主要アウトカムは、16週時におけるIGA(Investigator's Global Assessment)スコア0または1(皮膚病変の消失またはほとんど消失)かつベースライン時からの2点以上減少とした。副次アウトカムは、16週時におけるEczema Area and Severity Indexスコアの75%改善(EASI-75)、2、4、16週時におけるそう痒NRS(Numerical Rating Scale)、16週時におけるそう痒による睡眠障害などであった。安全性も評価された。 主な結果は以下のとおり。・ADvocate1試験において、主要アウトカムを達成した患者の割合は、lebrikizumab群(283例)が43.1%、プラセボ群(141例)が12.7%であり、有意差が認められた(p<0.001)。EASI-75達成率はそれぞれ58.8%、16.2%であり、有意差が認められた(p<0.001)。・ADvocate2試験において、主要アウトカムを達成した患者の割合は、lebrikizumab群(281例)が33.2%、プラセボ群(146例)が10.8%であり、有意差が認められた(p<0.001)。EASI-75達成率はそれぞれ52.1%、18.1%であり、有意差が認められた(p<0.001)。・そう痒およびそう痒による睡眠障害の評価結果は、lebrikizumab治療による改善を示唆するものであった。・結膜炎の発生率が、プラセボ群(ADvocate1試験:2.8%、ADvocate2試験:2.1%)よりlebrikizumab群(それぞれ7.4%、7.5%)で高率であった。・導入療法期間中にみられた有害事象のほとんどは軽度または中等度で、試験中止に至ったものはなかった。

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第143回 コロナ5類へ移行後、療養期間は5日間に短縮を/厚労省

<先週の動き>1.コロナ5類へ移行後、療養期間は5日間に短縮を/厚労省2.新興感染症対策を加えた第8次医療計画のパブコメ募集/厚労省3.医療・介護人材不足につけ込む悪質な紹介業者へ対策を/規制改革推進会議WG4.出産費用の自己負担ゼロに向けて検討開始へ/岸田総理5.整形外科医の過労死を認定、病院側に賠償金4900万円の判決/群馬県6.花粉症への効果をうたう健康茶からステロイドを検出、販売停止へ/国民生活センター1.コロナ5類へ移行後、療養期間は5日間に短縮を/厚労省厚生労働省は、4月14日に令和5年5月8日以降の感染症法の取扱いに関する事前の情報提供として、各都道府県、保健所設置市などに対して「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付け変更後の療養期間の考え方等について」の事務連絡を発出した。この中で、新型コロナウイルスが感染症法の5類へ移行した後は、感染者の療養の目安を発症翌日から原則5日とするほか、医療体制については、発熱患者に対応する医療機関を約1.5倍の6万4千施設に増やすこと、医療費については高額な治療薬代以外は自己負担が発生するとしている。また、感染者数については5月8日以降、定点把握となり、毎週金曜日の公表となるほか、死亡者数は毎日の公表も中止し、5ヵ月後にまとめる人口動態統計により月単位での公表となる。5類への移行については今月後半に開催される感染症部会で最終確認の上、決定される見込み。(参考)コロナ死者数の公表、5か月後に月単位で…感染者数は毎週金曜日(読売新聞)療養期間やマスク、同居家族の感染は コロナ5類移行後の考え方公表(朝日新聞)コロナ5類移行後、感染者の外出自粛義務はなくなるが、「発症から5日間は外出を控える」などの留意を-厚労省(Gem Med)新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付け変更後の療養期間の考え方等について[令和5年5月8日以降の取扱いに関する事前の情報提供](厚労省)感染症法上の位置づけ変更後の療養に関するQ&A(同)2.新興感染症対策を加えた第8次医療計画のパブコメ募集/厚労省厚生労働省は、4月14日に「医療提供体制の確保に関する基本方針の見直し案」を公表し、同日、パブリックコメントの募集を開始した。去年12月にまとめた「第8次医療計画等に関する意見のとりまとめ」とは別にとりまとめられた「新興感染症発生・まん延時における医療」を含めて、第8次医療計画の「医療計画作成指針」などの策定で、新興感染症の発生・まん延時に、通常医療と両立しながら対応できる体制を確保するため、各都道府県に対して、病床確保について医療機関との協定を締結するよう求めている。パブリックコメントは4月20日まで受付け、適用開始は令和6年4月1日の予定。(参考)新興感染症対応、通常の医療と両立 医療体制確保へ基本方針案、厚労省(CB news)医療提供体制の確保に関する基本方針の一部を改正する件(案)について(概要)(厚労省)第8次医療計画等に関する意見のとりまとめ(同)医療提供体制の確保に関する基本方針の一部を改正する件(案)に関する御意見の募集について(同)3.医療・介護人材不足につけ込む悪質な紹介業者へ対策を/規制改革推進会議WG政府は4月14日に開催した規制改革推進会議のワーキンググループにおいて「医療・介護」の人材紹介業者について、質の向上や適正な競争の促進を図る方針を確認した。医療、介護分野では、人手不足が深刻な中、人材紹介会社が高額な手数料を提示して、介護事業者らの経営を圧迫しており、診療報酬や介護報酬の引き上げが賃上げにつながらないなど批判が上がっていた。今後は、お祝い金制度の提示や斡旋した就職者に対して就職後2年以内に転職勧奨する悪質な人材紹介会社への対策を強化する。(参考)医療・介護で人材紹介会社への対策を検討 政府方針 悪質業者が「悪循環を招いている」(Joint)医療・介護、悪質人材業にメス 許可要件厳格化を検討(日経新聞)2022 年度特別養護老人ホームの人材確保および処遇改善に関する調査について(福祉医療機構[WAM])特養の8割が人材紹介会社に「不満」 大多数が「手数料高い」と回答=WAM調(Joint)4.出産費用の自己負担ゼロに向けて検討開始へ/岸田総理岸田 文雄総理大臣は、4月13日に衆議院の厚生労働委員会で、出産費用に公的医療保険を適用する検討をめぐる議論で、「保険適用する際には原則、自己負担をゼロにする」意向を示した。公明党の吉田 久美子衆院議員の質問に対して、「出産育児一時金を引き上げることによって、平均的な費用をすべて賄えるようにするとしたわけでありますから、保険適用にあたっても、こうした基本的な考え方、これは踏襲していきたい」と答弁した。一方、全国一律の診療報酬となるとサービスの選択の幅を狭めることになるとして、「出産費用の見える化を進め、効果などの検証を行うことが大事だ」と強調した。これを受けて、自民党は13日、政務調査会などの合同会議を開き、財源を含め議論していく方向を確認し、政策に盛り込む議論に着手した。一方、日本産婦人科医会の石渡 勇会長は記者懇談会で、「正常分娩の出産費用への公的医療保険の適用を検討する政府の方針を受けて、保険を適用するなら、全国で分娩を行える体制を維持することが最優先課題だ」と見解を述べた。(参考)出産費用 “保険適用の場合 自己負担生じない制度検討” 首相(NHK)自民 少子化対策の強化 政策の優先順位や予算など議論開始(同)「出産費用の自己負担ゼロ」、岸田首相が実現に意欲 消極姿勢を転換(朝日新聞)出産保険適用、分娩可能な体制維持が最優先 日本産婦人科医会会長(CB news)5.整形外科医の過労死を認定、病院側に賠償金4900万円の判決/群馬県群馬県伊勢崎市の病院で、勤務していた整形外科医(当時46歳)が、手術後の執刀後に意識を消失し、1ヵ月後に心筋梗塞で死亡したのは、過労死だとして、運営していた法人を遺族が約3億円の損害賠償などを求めた訴訟の判決が4月14日に前橋地方裁判所で言い渡された。杉山裁判官は「著しい疲労の蓄積を認識できたのに、人員の補充や業務の軽減を怠った」として、法人側に計約4,900万円の賠償を命じた。同院では、男性医師を含め常勤医2名の体制であったが、もう1人の医師が休職したため、1名での勤務による長時間労働が常態化していた。死亡の直前1ヵ月間の時間外労働は107時間であった。(参考)その日4回目の手術後に倒れ…医師の過労死を認定、病院側に賠償命令(朝日新聞)医師過労死で病院側に4900万円の賠償命令 手術終え心肺停止(毎日新聞)6.花粉症の効果をうたう健康茶からステロイドが検出、販売停止へ/国民生活センター国民生活センターは、健康茶にステロイド成分が混入されていることが判明したと発表した。花粉症に効くとして販売されていた健康茶を飲用し、劇的に花粉症が改善した患者の血液検査で、副腎皮質ホルモンの値が低下するなど異常があったとの報告が、医師からの事故情報に連絡があったことがきっかけ。国民生活センターの調査の結果、お茶1gあたりデキサメタゾンが3μg含まれていたため、医薬品医療機器法違反の恐れがあるため、国民生活センターは厚生労働省と消費者庁に対して、事業者への指導を求めた。また、国民生活センターは飲用している人に対して、医療機関に受診して医師に相談するよう求めている。(参考)花粉症への効果をほのめかした健康茶にステロイドが含有-飲用されている方は、医療機関にご相談を-(国民生活センター)花粉症への効果うたう健康茶からステロイド検出…「血液検査に異常」と報告あり判明(読売新聞)

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乳児期アトピーの“早期治療介入”、鶏卵アレルギーの発症予防に/国立成育医療研究センター

 国立成育医療研究センターの大矢 幸弘氏らの研究グループは、2023年4月10日のプレスリリースで、食物アレルギーの発症リスクが高い、乳児期早期発症のアトピー性皮膚炎の乳児に対する早期の積極的治療が食物アレルギーの発症を予防することを世界で初めて実証したと発表した。 大矢氏らは、食物アレルギー予防のためにアトピー性皮膚炎の乳児に対して早期に治療を行う臨床研究「アトピー性皮膚炎への早期介入による食物アレルギー発症予防研究/多施設共同評価者盲検ランダム化介入平行群間比較試験:PACI(パッチー)Study(スタディ)」を実施し、研究対象となるアトピー性皮膚炎の生後7週~13週の乳児を、標準的な治療を行う群と、ステロイド外用薬などを使った積極的な治療を行う群に分け、生後28週時点で鶏卵アレルギーがあるかどうかを調べた。その結果、積極的な治療を行った群は標準的な治療の群と比較し、鶏卵アレルギーの発症を25%削減できることがわかった。これは、皮膚への早期の治療介入が食物アレルギーの予防につながるという二重抗原曝露仮説を実証する世界で初めての研究成果である。 今回の研究により、乳児期のアトピー性皮膚炎の発症早期からの速やかな治療開始と、湿疹ゼロを目標とした治療強化により、食物アレルギーの発症を予防できること、アトピー性皮膚炎は食物アレルギーとの関連性が高く、食物アレルギー予防のためには乳児期の発症早期からしっかり湿疹を治療し、経皮感作のリスクを低下させることが重要であることが明らかになった。 大矢氏らは、食物アレルギー予防のためには、乳児期のアトピー性皮膚炎の発症早期からしっかり湿疹を治療し、湿疹ゼロを目標にすることが重要だと語った。ただし、実臨床では、患者さんの症状や重症度などに合わせて、適切な強さのステロイド外用薬の選択を行い、個々の患者さんごとに使用期間と減量のスケジュールを組み立てて副作用を回避し、湿疹ゼロの寛解状態を実現・維持していくことが求められる、と述べている。

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英語で「鼻うがい」は?【1分★医療英語】第75回

第75回 英語で「鼻うがい」は?My hay fever(seasonal allergy)is getting worse…(花粉症が悪化してきています)Nasal irrigation might help with your symptoms.(鼻うがいが良いかもしれません)《例文1》Gargling and nasal irrigation may ease sinus inflammation.([喉の]うがいと鼻うがいは、炎症を和らげる効果があります)《例文2》The idea behind nasal irrigation is that it helps flush out the nasal cavity.(鼻うがいは、鼻腔を洗い流す作業です)《解説》「鼻うがい」は“nasal irrigation”や“nasal rinse”と言いますが、うがいは“gargle”と言うので、“nasal gargle”と表現することもあります。日本では「手洗い・うがい」が習慣化されていますが、海外ではあまりうがいの習慣がないため、私が塩水でガラガラとうがいをしていたら、ルームメイトに注目されたこともありました。小規模な研究ですが、「1日2回の鼻うがいが新型コロナの感染後の入院や死亡率を下げる」という報告1)もあり、このときは米国でも鼻うがいが話題に上がりました。鼻孔のことを“nostril”と言います。鼻うがいのやり方の説明としては、“Pour the saline solution slowly into one nostril and let it drain out of the other nostril.”(片方の鼻孔から液体をゆっくり入れ、反対の鼻孔から流し出します)となります。“hay fever”(花粉症)の季節は毎年やってくるので、“personal hygiene”(清潔習慣)の一つである 鼻うがいの説明を覚えておくと、役に立つかもしれません。<参考>1)Baxter AL, et al. Ear Nose Throat J. 2022 Aug 25. [Epub ahead of print]講師紹介

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花見と引っ越し【Dr. 中島の 新・徒然草】(471)

四百七十一の段 花見と引っ越し大阪では桜が満開!私のマンションでは先週末、近所の公園で花見がありました。とはいえ、花粉症の私にとっては難行苦行。でも、自治会役員をしているので行かないわけにはいきません。10年ほど前にも自治会役員として参加しました。その時の参加者は10人ちょっと。全然盛り上がらなかったので、準備も進行も楽でした。でも、今回は予想外。よほどコロナの3年間がフラストレーションだったのでしょうか。なんと62人が参加表明しました。62人ですよ、62人!場所取りも、弁当の準備も、ビールを冷やすのも、何もかもが大掛かりです。中にはキリンじゃなくてアサヒをくれ、と言う人までいて大変。私も抗ヒスタミン薬を飲んで参加しました。幸い薬が効いたのか、桜の下で弁当を広げても問題なし。皆さん、ビールを飲んで楽しんでおられたようです。とはいえ、それだけと言えばそれだけ。前日に行われた近所の自治会の花見は異常に力が入っていました。詩吟だとか、ハワイアンフラだとか、フォークダンスだとか。どう考えても高齢者主体のプログラムですね。ウチの管理組合も自治会も、それぞれ10年ごとくらいに役員が回ってきます。が、住民の高齢化に伴い、体の動かない人も多くなってきました。最近は75歳以上を免除にしようという話があります。でも、そんなことをすると若い人にどんどん回ってくるかもしれません。現役で働きながら役員をするというのも厳しい話です。私も体が動く間だけでも貢献しようと思っているのですが……さて、週明けの月曜日は4月最初の出勤日。異動や定年で去った先生の部屋の前には、不要になった本が山積み。中には本棚とかソファまで廊下に置いていった人もいます。そのうち誰かが片付けてくれるのでしょうか?そういえば、親戚の家を片付けていた女房も、古本を買取屋に持っていったそうです。なぜか『サンタフェ』には値段が付かず『養生訓』が売れました。養生訓を書いたのは貝原 益軒ですが、何かと引用されますね。パッと浮かぶのは、「接して漏らさず」とか「腹八分目」とか。医師であるだけに、健康オタクでもあったようです。試しにChatGPTに「貝原 益軒の『接して漏らさず』を説明して」と尋ねてみました。すると、とんでもない答えが……「人と接する際には、相手の話を注意深く聞き、相手の言葉や気持ちを漏らさずに受け止めることが大切であるという意味が込められています」ほんまかいな!もっともらしい回答に思わず騙されそうになりました。知ったかぶりをしないよう、ChatGPTには説教しておくことにいたしましょう。ということで花見と引っ越し。すっかり年度替わりの風物詩になったようです。最後に1句新年度 異動で残る 本の山

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IL-13を特異的に中和するアトピー性皮膚炎治療薬「アドトラーザ皮下注」【下平博士のDIノート】第117回

IL-13を特異的に中和するアトピー性皮膚炎治療薬「アドトラーザ皮下注」今回は、アトピー性皮膚炎治療薬「トラロキヌマブ(遺伝子組換え)製剤(商品名:アドトラーザ皮下注150mgシリンジ、製造販売元:レオファーマ)」を紹介します。本剤は、アトピー性皮膚炎の増悪に関与するIL-13を特異的に中和するモノクローナル抗体であり、中等症~重症のアトピー性皮膚炎患者の新たな治療選択肢となることが期待されています。<効能・効果>既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎の適応で、2022年12月23日に製造販売承認を取得しました。本剤は、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬などの抗炎症外用薬による適切な治療を一定期間受けても十分な効果が得られず、強い炎症を伴う皮疹が広範囲に及ぶ患者に使用します。<用法・用量>通常、成人にはトラロキヌマブ(遺伝子組換え)として初回に600mgを皮下投与し、その後は1回300mgを2週間隔で皮下投与します。本剤による治療反応は、通常使い始めてから16週までには効果が得られるため、16週までに効果が得られない場合は投与の中止を検討します。<安全性>全身療法が適用となる中等症~重症のアトピー性皮膚炎患者を対象とした臨床試験において、5%以上の頻度で認められた副作用は、上気道感染(上咽頭炎、咽頭炎を含む)、結膜炎、注射部位反応(紅斑、疼痛、腫脹など)でした。重大な副作用として、重篤な過敏症(頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.アトピー性皮膚炎の増悪に関与し、過剰に発現しているインターロイキン-13(IL-13)を特異的に中和するモノクローナル抗体です。2.この薬を投与中も、症状に応じて保湿外用薬などを併用する必要があります。3.寒気、ふらつき、汗をかく、発熱、意識の低下などが生じた場合は、すぐに連絡してください。<Shimo's eyes>本剤は、末梢での炎症を誘導する2型サイトカインであるIL-13を選択的に阻害することで、中等症~重症のアトピー性皮膚炎(AD)に効果を発揮する生物学的製剤です。IL-13は皮膚の炎症反応の増幅、皮膚バリアの破壊、病原体の持続性増強、痒みシグナルの伝達増強などに作用し、IL-13の発現量とADの重症度が相関するとされています。そのため、IL-13を阻害することによって、皮膚のバリア機能を回復させ、炎症や痒み、皮膚肥厚を軽減することが期待されています。現在、ADの薬物療法としては、ステロイド外用薬およびタクロリムス外用薬(商品名:プロトピックほか)が中心的な治療薬として位置付けられています。近年では、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害作用を有するデルゴシチニブ外用薬(同:コレクチム)、ホスホジエステラーゼ(PDE)4阻害作用を有するジファミラスト外用薬(同:モイゼルト)も発売されました。さらに、これらの外用薬でも効果不十分な場合には、ヒト型抗ヒトIL-4/IL-13受容体モノクローナル抗体のデュピルマブ皮下注(遺伝子組換え)(同:デュピクセント)、ヒト化抗ヒトIL-31受容体Aモノクローナル抗体のネモリズマブ皮下注(遺伝子組換え)(同:ミチーガ)、JAK阻害薬のバリシチニブ錠(同:オルミエント)などが発売され、治療選択肢が広がっています。本剤は、医療施設において皮下に注射され、原則として本剤投与時もADの病変部位の状態に応じて抗炎症外用薬を併用します。IL-13を阻害することにより2型免疫応答を減弱させ、寄生虫感染に対する生体防御機能を減弱させる恐れがあるため、本剤を投与する前に寄生虫感染の治療を行います。また、本剤投与中の生ワクチンの接種は、安全性が確認されていないため避けます。臨床効果としては、16週目にEASI75(eczema area and severity index[皮膚炎の重症度指標]が75%改善)を達成した割合は、ステロイド外用薬+プラセボ群では35.7%でしたが、ステロイド外用薬+本剤併用群では56.0%でした。また、32週目のEASI-75達成率は92.5%でした。16週時までのステロイド外用薬の累積使用量はステロイド外用薬+プラセボ群では193.5gでしたが、ステロイド外用薬+本剤併用群では134.9gでした。初期投与期間での主な有害事象はウィルス性上気道感染、結膜炎、頭痛などですが、アナフィラキシーなど重篤な過敏症の可能性があるので十分注意する必要があります。投与は大腿部や腹部、上腕部に行い、腹部へ投与する場合はへその周りを外し、同一箇所へ繰り返しの注射は避けます。遮光のため本剤は外箱に入れたまま、30℃を超えない場所で保存し、14日間以内に使用します。使用しなかった場合は廃棄します。本剤は、海外ではEU諸国、イギリス、カナダ、アラブ首長国連邦、アメリカ、スイスで承認を取得しており、中等度~重度のAD療薬として使用されています(2022年8月現在)。参考1)Silverberg JI. et al. Br J Dermatol. 2021;184:450-463.2)レオファーマ社内資料:アトピー性皮膚炎患者を対象とした国際共同第III相TCS併用投与試験(ECZTRA3試験)

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第151回 マスク脱着による世論分断を防ぐため、知っておきたい人間の特性

政府の方針で3月13日から新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)対策を念頭に置いたマスクの着用は、原則個人の判断が基本となった。この日以降、街中を歩く際はマスク着用の動向を自分なりに眺めているが、確かに着用していない人は若干増えたようだ。もっともパッと見は着用していなくとも、手にマスクをぶら下げているなど様子見のような雰囲気がうかがえることも多い。私個人はというと、信号待ちで人が密集するなどの状況以外、屋外では原則マスクを外し、屋内ではマスクを着用するという元々の方針をほとんど変えていない。が、厳密に言うとむしろ屋外でマスクをするシーンが増えた。というのも、スギ花粉の飛散量が例年よりもかなり多いと言われる今シーズン、どうやら初めて本格的な花粉症を発症したようなのだ。日中、屋外にいる時間が短い場合はほとんど問題ないのだが、ノーマスクのままで数時間経つと、突如くしゃみが止まらなくなる。先日はたぶん人生で初のくしゃみ27連発を経験し(いちいち数えているのもどうかと思われるかもしれないが)、慌ててマスクを着用。それで症状が治まったため、さすがに花粉症なんだろうと思っている。そんなこんなで花粉症対策のマスクのありがたみを実感するとともに、このシーズンが終われば、マスクを外す人はそれなりに増えてくるのだろうと予測している。もっとも私個人は今のところ前述の着用原則を当面変えるつもりはない。新型コロナウイルスがいなくなったわけでもなく、重症化リスクを有する人にとっては相変わらずインフルエンザよりは明らかに恐ろしい感染症であるため、3月13日を「マスク外し記念日」と認識するのは時期尚早と考えるからである。私が屋内外とも全面的にマスクを外すようになるのは、たぶん有効性・抗体価持続期間が現在よりも大幅に改善した新型コロナワクチンが登場した時だろう。さてそんな中、この件に関して厚生労働省が開設した特設ページを見て、モヤモヤした気分になってしまった。書いている内容に間違いはないし、良い意味でお役所らしい「簡にして要」の原則は貫かれている。しかし、良くも悪くも真面目過ぎる。このページを作成した人たちは、おそらく読む人は冒頭から最後まできちっと目を通してくれるはず、あるいは目を通して欲しいと思ったのだろう。だが、メディアという世界に四半世紀以上も身を置いている自分は、多くの場合、そうした期待や願望は幻想に過ぎないという現実を嫌と言うほど経験している。具体例を挙げるならば、記事の見出しだけを見て、すべてをわかった気になっているSNS投稿などがそれだ。では、このページのどこが気になるのか? まず、原則個人の判断ではあるが、“医療機関や高齢者施設、混雑した公共交通機関では従来通りマスク着用が推奨される”というのが訴えたいメッセージのはずである。伝える側の本音として、個人の判断と今後も推奨が続くシーンという情報に本来ならば主従関係などないはずである。ところが、このページの見せ方は完全に主従関係となっている。まず冒頭のやや小さい字のお知らせは「これまで屋外では、マスク着用は原則不要、屋内では原則着用としていましたが令和5年3月13日以降、マスクの着用は、個人の主体的な選択を尊重し、個人の判断が基本となりました。本人の意思に反してマスクの着脱を強いることがないよう、ご配慮をお願いします」とあり、「個人の…基本」にアンダーラインが引いてある。また、後段の図示では「個人の主体的な選択を尊重し、個人の判断が基本となります。感染拡大防止対策として、マスクの着用が効果的である場面などについては、マスクの着用を推奨します」とあり、前文のみがやや大きい赤字フォントで目立つようにしてあり、後半はやや小さい黒字フォントで目立ちにくい。最初に目に入ったものに強く印象付けられるのが人の特性であり、この見せ方では「個人の判断」が及ばない今後も推奨されるシーンが霞んでしまう。「特設ページには前述の着用の推奨が継続するシーンについては大きなイラスト付きで示されているじゃないか」と声を大にしたくなる人もいるかもしれないが、実際こうした部分は良くて流し見、最悪、目すら向けられないことも結構あるのだ。たとえば、単語カードを使って英単語の意味を覚えようとする時、往々にして最初に覚えるのは1枚目のカードだ。1つの単語で複数の意味がある場合も、最初に覚えるのは一番目に表示される意味であることが多い。こうした現象は日常的に少なくないはずだ。ではどうするかというと、こうした人の特性を逆手にとって多少長くとも冒頭から「〇〇や××、あるいは△△のような場面では今後もマスク着用が推奨されますが、それ以外については個人の判断が基本になります」と記載するほうがベターである。また、この「最初に目にしたもの」の原則から気になった点がもう1つある。「本人の意思に反してマスクの着脱を強いることがないよう、ご配慮をお願いします」の「着脱」である。「着脱」は「着けること」と「外すこと」の両方を意味しているし、この使い方そのものは間違いではない。しかし、人は最初の「着」のほうに目が行きがちである。注意深く読まない人やマスクに否定的な人は「着脱」をシンプルに「着けること」のみに解釈しがちである。その結果起こると予想されることが、医療機関などに対して「なんでおたくはマスクを強要するのか」というお門違いのクレームである。その意味ではここでも回りくどくとも、「着けることや外すことを強いることがないよう」と表現するほうがベター。今回の私の指摘を非常に細かい「重箱の隅をつつく」ことと思われる方もいるかもしれない。しかし、少なからぬ国民が3年間のコロナ禍疲れを感じているはずで、原因の1つには、この間に推奨されてきたマスク着用も入っていると考えても差し支えないだろう。その中で今回のマスクに対する推奨の変更は1つの大きな転換点であることは間違いない。とはいえ、新型コロナウイルスがいなくなったわけでもなく、少なくとも日本人の3分の1以上は該当するであろう重症化リスクを有する人たちにとっては、いまだに油断ならない感染症である。だからこそこの局面で理性・論理性に欠くノイジー・マイノリティーのマスク否定派、あるいはそこに影響を受けかねない人たちに都合良く解釈されるかもしれない訴え方は、社会分断への「蟻の一穴」になりかねないものだと危惧している。

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マスクを外して饒舌な患者さん【Dr. 中島の 新・徒然草】(468)

四百六十八の段 マスクを外して饒舌な患者さん2023年3月13日から、マスク着用の義務がなくなりました。とはいえ、相変わらずほとんどの人がマスクをしています。というのも今年は花粉が多いからでしょうか。私も常時、流涙、くしゃみ、鼻水に悩まされております。当院では「引き続き院内ではマスク着用をお願いします」という看板が出ています。いくら国がマスク不要といっても、第9波が来たら対応するのはわれわれ。なので、そう簡単にマスク不要とは言えません。というわけで、外来患者さんも皆マスクを着けてもらっています。ところが先月のこと。マスクなしで診察室に入ってきた人がおられました。私と同年代の女性です。「あらら?」と思ったら、顔面痙攣でボトックス(ボツリヌス毒素)を打っている人でした。顔面痙攣のことを簡単に説明しておきましょう。頭蓋内の顔面神経を動脈が圧迫し、その刺激で眼や口の周囲がピクピクとするものです。以前は手術して動脈を神経から外す微小血管減圧術が主たる治療でした。が、現在はボトックスを痙攣部位に注射するという方法も使えるようになっています。この方法は簡単ですが、効果が一時的なので、3ヵ月ごとに注射しなくてはなりません。そんなわけで、私の外来にはボトックス注射の通院患者さんが何人かおられます。簡単とはいえ顔に注射するわけですから、私なりに工夫しています。1つは、なるべく痛くないように30ゲージの細い針を使うこと。また、何ヵ所も注射しているうちに、針がなまってくるので途中で交換すること。ピクピクが見えにくい場合には、患者さん自身に「ここだ!」と指さしてもらうこと。……などですね。患者さんのほうも、マスクを外している開放感か饒舌になりがちです。この女性の場合、お母さまが亡くなって子供たちで揉めているというお話でした。なんでも「財産は長女に渡すので兄弟で仲良く分けてね」という遺言だったとか。「そんなので上手く行くはずないでしょ。どう思う、先生?」確かに、わざわざ兄弟間に争いを起こさせるような遺言です。「私と妹には10万円ずつで、後は全部お姉ちゃんが持っていこうとしているのよ!」お怒りごもっとも。「痙攣がひどくなったのもストレスのせいかな?」ふむふむ。「お姉ちゃんのところには無職の息子がいてね」なるほど。「部屋に引きこもっていて暴言暴力がひどいのよ」うーん、相槌が難しい!うっかりお姉さんに同情したら怒られるかもしれないし。ともあれ、いろいろ吐き出した後で患者さんは満足して帰っていきました。愚痴に対しては否定せずにウンウンと聞いてあげるのが一番。下手なアドバイスもやめておいたほうが無難ですね。何十年もかかってようやく体得することができました。ということで最後に1句愚痴を聞き 涙を流す 花粉

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花粉症患者はコロナによる嗅覚・味覚障害が悪化しやすい

 花粉症患者では、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染時の嗅覚・味覚障害のリスクが高く、その回復も遅いことが、中国・西安交通大学のJingguo Chen氏らの調査によって明らかになった。Laryngoscope investigative otolaryngology誌2023年2月号掲載の報告。花粉症患者は味覚・嗅覚障害がコロナで悪化した割合が高かった 急な嗅覚障害や味覚障害の発現は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予測因子と考えられている。しかし、慢性副鼻腔炎や喘息、季節性アレルギー、アレルギー性鼻炎などを有する患者では、新型コロナウイルスに感染する前にすでに併存疾患の影響によって嗅覚障害や味覚障害が生じている可能性があり、それらによる評価が効果的ではないことがある。そのため、研究グループは、呼吸器疾患のあるCOVID-19患者の嗅覚・味覚と併存疾患の関連を調査することにした。 研究は、「化学感覚研究のための国際コンソーシアム(Global Consortium for Chemosensory Research:GCCR)」のアンケートデータを用いて行われた。対象者は、新型コロナウイルス感染前と感染後の嗅覚・味覚の程度と、感染前6ヵ月の併存疾患の状態を自己評価した。併存疾患(高血圧、季節性アレルギー/花粉症、肺疾患、副鼻腔炎、糖尿病、神経疾患)によって層別化し、線線形混合モデルを用いて評価した。 最終解析には、呼吸器疾患のある2万6,468例(女性1万8,429例[69.87%]、20~60歳が90%)が組み込まれた。 花粉症などによる併存疾患の有無とコロナ感染後の嗅覚・味覚障害の程度を評価した主な結果は以下のとおり。・最終解析に組み込まれた2万6,468例のうち、花粉症などの併存疾患があるのは1万6,016例、併存疾患がないのは1万452例であった。・年齢、性別、地域を調整した多変量回帰分析の結果、高血圧、肺疾患、副鼻腔疾患、神経疾患の併存疾患がある新型コロナウイルス感染症患者では、嗅覚・味覚障害が悪化した割合が高かった(いずれもp<0.05)が、それらの回復に明らかな差はみられなかった。・季節性アレルギー/花粉症を有する新型コロナウイルス感染症患者では、味覚・嗅覚障害が悪化した割合が高く、回復も遅かった(いずれもp<0.001)。・糖尿病では、味覚・嗅覚障害の悪化にも回復にも明らかな関連はみられなかった。

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花粉症患者の5割が医療機関受診の経験なし/アイスタット

 2023年の春は「10年に1度」と言われるくらい花粉の飛散が予測され、連日、天気予報では大量飛散の注意を伝えている。花粉症関連の市販薬や花粉予防グッズの売り上げが伸びている中で、患者はどのように感じ、備えや治療を行っているのであろうか。株式会社アイスタットは2月8日に「花粉症」に関するアンケートを行った。 アンケート調査は、セルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の首都圏在住の会員20~59歳の300人が対象。■調査概要形式:WEBアンケート方式調査期間:2023年2月8日回答者:セルフ型アンケートツールFreeasyに登録している300人(20~59歳、東京・神奈川・千葉・埼玉居住の会員)■アンケート概要・花粉症の人は5割を超える。そのうち、花粉症歴が「長い」は24%、「中間」は14%、「短い」は14.3%・花粉症の重症度は「重症」が5.7%、「中等症」が47.8%、「軽症」が46.5%・花粉症治療の受診状況は、「医療機関に1度も受診したことがない」が最多で5割近く・医療機関を毎年受診しない理由の第1位は「費用がかかる」、第2位は「面倒」・「花粉症歴が長い」「重症・中等症」の人ほど「花粉が飛び始める1~2ヵ月前」に対策・花粉症の3大症状の「鼻水」「くしゃみ」「目のかゆみ・痛み・涙」は70%以上・花粉症対策として購入しているもの第1位は「市販の飲み薬」、第2位は「市販の目薬」・花粉症の症状は、「遺伝・体質」より「自律神経の乱れ」「生活習慣が不規則」のほうが影響している■花粉症患者が医療機関に行かない理由の第1位は経済的理由 質問1で「花粉症と自覚した時期」(単回答)について聞いたところ、「現在花粉症でない」が47.7%、「長い(20年以上)」が24.0%、「短い(10年未満)」が14.3%、「中間(10年以上~20年未満)」が14.0%の順だった。また、年代別では、「花粉症である」を回答した人は40代で最も多く、「花粉症でない」と回答した人は50代で最も多かった。 質問2で(花粉症未発症、寛解を除いた)花粉症患者157人に「自己診断で花粉症の重症度」(単回答)について聞いたところ、「中等症」が47.8%、「軽症」が46.5%、「重症」が5.7%の順で続いた。また、年代別では「重症」「軽症」と回答した人は「20・30代」で最も多く、「中等症」と回答した人は「50代」で最も多かった。 質問3で質問2で回答した157人に「花粉症の治療のための医療機関受診の有無」(単回答)について聞いたところ、「1度も受診したことがない」が49%、「その年の症状により受診」が35%、「毎年、受診している」が15.9%と続き、約半数の人に受診経験がない結果だった。また、花粉症の重症度別では、「重症・中等症」の人ほど「毎年、受診」「その年の症状により受診」が多く、「軽症」の人ほど「受診したことがない」が多い結果だった。 質問4で質問3で「毎年、受診しない」以外を回答した132人に「花粉症の治療のために医療機関を毎年受診しない理由」(複数回答)について聞いたところ、「費用(診察代)がかかる」が46.2%、「面倒」が34.1%、「市販の薬で十分」が30.3%、「待ち時間が長い、混んでいる」が25.8%の順で回答が多かった。 質問5で「いつ頃から花粉症対策を始めているか」(単回答)について聞いたところ、「特に何も対策していない」が51%、「花粉症が飛び始めてから」が19.7%、「花粉症の症状が出てから」が15%、「花粉症が飛び始める1~2ヵ月前」が10.7%の順で多かった。また、花粉症歴別・重症度別でみると、花粉症歴が長い人および症状が重症・中等症の人ほど「花粉が飛び始める1~2ヵ月前」に花粉症対策を行っていた。 質問6で「花粉症になったことがない」以外を回答した173人に「花粉症対策ですでに試したことのある療法、もしくは花粉症の有無に関わらず今後試してみたい療法」(複数回答)について聞いたところ、「対症療法」が56.6%と1番多かった一方で、「特になし」も34.7%と2番目に多かった。最近、医療機関でなされている「原因療法」は10.4%、「舌下免疫療法」は8.7%だった。 質問7で「花粉症である」と回答した157人に「花粉症の症状」(複数回答)について聞いたところ「鼻水」が80.3%、「くしゃみ」が76.4%、「目のかゆみ・痛み・涙」が72%と多く、いわゆる「花粉症の3大症状」が上位を占めた。また、花粉症の重症度別では、すべての症状で「重症・中等症」の人が多い結果だった。 質問8で「花粉症である」と回答した157人に「花粉症対策として、購入しているもの(処方箋薬は除く)」(複数回答)について聞いたところ、「市販の飲み薬」が45.9%、「市販の目薬」が43.9%、「市販の点鼻薬」が20.4%と多かった。また、上位には「緩和・ケア対策」、下位には「外出対策」の購入品の内容が占めた。 質問9で「花粉症の症状に影響するもの」(複数回答)について聞いたところ、多い順に以下の通りとなった。・1位「家の中・室内の花粉対策をしていない」(24.0%)・2位「親・兄弟が花粉症やアレルギー体質である」(23.7%)・2位「衣類・布団・布製品の花粉症対策をしていない」(23.7%)・4位「外出時の花粉対策をしていない」(19.0%)・5位「花粉症に効果がある食事をしていない」(18.7%) また、症状が「重症・中等症の人(84人)」の中では「過労、ストレスによる自律神経の乱れがある」が29.8%で最も多く、「軽症の人(73人)」の中では「親・兄弟が花粉症やアレルギー体質である」が35.6%で最も多く、「なったことはない人(143人)」の中では「あてはまるものはない」が51%で最も多かった。

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SLEへのバリシチニブ、第III相SLE-BRAVE-I試験の結果/Lancet

 オーストラリア・モナシュ大学のEric F. Morand氏らは、活動性全身性エリテマトーデス(SLE)患者を対象としたバリシチニブの無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「SLE-BRAVE-I試験」の結果、主要エンドポイントは達成されたものの、主要な副次エンドポイントは達成されなかったことを報告した。ヤヌスキナーゼ(JAK)1/JAK2の選択的阻害薬であるバリシチニブは、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎および円形脱毛症の治療薬として承認されている。SLE患者を対象にした24週間の第II相試験では、バリシチニブ4mgはプラセボと比較して、SLEの疾患活動性を有意に改善することが示されていた。Lancet誌オンライン版2023年2月24日号掲載の報告。SLE患者760例をバリシチニブ4mg群、2mg群、プラセボ群に無作為化 SLE-BRAVE-I試験は、アジア、欧州、北米、中米、南米の18ヵ国182施設で実施された。 研究グループは、スクリーニングの24週間以上前にSLEと診断され、標準治療を行うも疾患活動性が認められる18歳以上の患者を、バリシチニブ4mg群、バリシチニブ2mg群またはプラセボ群に1対1対1の割合で無作為に割り付け、標準治療との併用で52週間1日1回投与した。グルココルチコイドの漸減が推奨されたが、プロトコールで必須ではなかった。 主要エンドポイントは、52週時のSLE Responder Index-4(SRI-4)レスポンダーの割合で、ベースラインの疾患活動性、コルチコステロイド量、地域および治療群をモデルに組み込んだロジスティック回帰分析により、バリシチニブ4mg群とプラセボ群を比較した。 有効性解析対象集団は修正intention-to-treat(ITT)集団(無作為化され少なくとも1回治験薬の投与を受けたすべての患者)、安全性解析対象集団は無作為化され少なくとも1回治験薬を投与され、ベースライン後の最初の診察時に追跡調査不能の理由で試験を中止しなかったすべての患者とした。 760例が無作為に割り付けられ、修正ITT集団はバリシチニブ4mg群252例、バリシチニブ2mg群255例、プラセボ群253例であった。52週時のSRI-4レスポンダー率はバリシチニブ4mg群57%、プラセボ群46% 52週時のSRI-4レスポンダー率は、バリシチニブ4mg群57%(142/252例)、プラセボ群46%(116/253例)であり、オッズ比(OR)1.57(95%信頼区間[CI]:1.09~2.27)、群間差10.8(95%CI:2.0~19.6)で有意差が認められた(p=0.016)。バリシチニブ2mg群は50%(126/255例)で、プラセボ群との有意差はなかった(OR:1.14[95%CI:0.79~1.65]、群間差:3.9[95%CI:-4.9~12.6]、p=0.47)。 初回の重度SLE flareが発現するまでの時間やグルココルチコイド漸減など主要副次エンドポイントに関しては、バリシチニブ群のいずれにおいてもプラセボ群と比較して有意差は認められなかった。 重篤な有害事象は、バリシチニブ4mg群で26例(10%)、バリシチニブ2mg群で24例(9%)、プラセボ群で18例(7%)に発現した。SLE患者におけるバリシチニブの安全性プロファイルは、既知の安全性プロファイルと一致していた。

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それぞれの79歳【Dr. 中島の 新・徒然草】(467)

四百六十七の段 それぞれの79歳急に暖かくなったせいか、花粉がひどい!花粉飛散情報によれば、大阪は「非常に多い」になっています。これは4段階で最も悲惨な状況。私自身も花粉に苦しめられています。コロナ禍の3年間は花粉症のことは忘れるくらい何もなかったのに。安心して過ごせるのは空気濾過が行き届いている手術室くらい。後は花粉から逃げ回る毎日です。さて、最近のこと。初診で来た患者さんは79歳の女性でした。中島「あと5年だったらまあいいか」患者「5年ってどういうことですか?」中島「女性の平均寿命が85歳なんで、あと5年くらい生きるかと」何気なく言ったことですが、かなり間違っていることに後で気付きました。まず、日本人女性の平均寿命は小数点以下を四捨五入すると88歳。この方の正確な年齢は79歳なので、その差は9年です。また、すでに79歳まで生きていることを考慮しなくてはなりません。なので平均寿命ではなく、平均余命で考えるべきでしょう。調べてみると、日本人の79歳女性の平均余命は13年でした。最初に私がつぶやいた5年と13年では、ずいぶん大きな差があります。こういう発言は慎重にしなくてはなりませんね。なぜかこの日は79歳前後の女性の外来受診が多かったように感じました。が、皆さんそれぞれに言うことが違っています。ある自営業の女性。明日お迎えが来てもいいけど、できれば気持ち良く行きたい、と。ご主人も「ワシもすぐ追いかけるで」と明るく言っておられるそうです。別の女性は、前年にお店を始めたばかりなので、あと20年は頑張りたいとのこと。「『いつ行ってもいい』とか、それ本音と違うわよ」と仰っていました。さらに別の女性は、ご主人が亡くなったので会社を継いでいるそうです。もともと経理をしていたけど、今は社長と両方しているので大変!「一体、いつまで働くのかな。もう数えで80やのに」と嘆いています。そして、ついに79歳にして再婚した方も!お相手は1つ年下だそうですが、趣味が共通していました。双方とも最初の配偶者とは死別したものの、子供や孫はたくさんいるそうです。財産分与がややこしくならないよう、籍は入れないのだとか。この年齢になると、健康状態も人それぞれ。生きているのがつらい、という方は「そろそろ」と考えることでしょう。一方、心身共に元気いっぱいなら、まだまだこれからです。われわれ医師ができることは、皆さんが機嫌よく暮らすことのお手伝いですね。「明日お迎えが来ても」と言った女性には、トリガーポイント注射をしました。そうすると「楽になった!」と大喜び。私も徳を積んだような気がしてうれしくなりました。最後に1句花粉きて 鼻汁まみれで 徳を積む

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第34回 経鼻インフルワクチン使いますか?

フルミストが承認へ厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は2月27日、第一三共の経鼻弱毒生インフルエンザワクチン「フルミスト点鼻液(以下フルミスト)」の承認を了承しました。3月に承認される見通しです。フルミストは、鼻に噴霧するインフルエンザワクチンです。「これまでにない剤型でナウい!」と思われるかもしれませんが、2003年にアメリカで承認されており、日本は20年遅れの承認となっています。2016年あたりに承認に向けた話し合いが進められたのですが、事務的な手続きやら何やらで、いろいろと後ずれしてしまったそうです。フルミストは、2013/14シーズン以降ワクチン効果の低下を指摘されており、米国疾病予防管理センター(CDC)でも一時推奨リストから取り下げられていました。そのため、現在も「いまいちかも…」と思っている医師は多いかもしれません。A型インフルエンザ(H1N1)の流行時に、小児で有効性が検証されています1)。この研究では、不活化ワクチンに非劣性という結果が得られています。具体的には、調整済みの有効性(VE)が、H1N1に対してフルミスト69%(95%信頼区間[CI]:56~78%)、不活化ワクチン79%(95%CI:70~86%)、H3N2に対してそれぞれ36%(95%CI:14~53%)、43%(95%CI:22~59%)、B型インフルエンザに対してそれぞれ74%(95%CI:62~82%)、56%(95%CI:41~66%)という結果でした。現在CDCはフルミストをインフルエンザワクチンの選択肢の1つとして位置づけています2)。CDCの推奨と接種対象国際的には2~49歳へ接種が可能ですが、日本国内はおそらく2~19歳未満に限定されることになります。ほぼ子供のワクチンと言えるでしょう。2歳未満で喘鳴が増えた経緯があり、接種対象外となっています。上述しましたが、CDCはインフルエンザワクチン全般について、不活化ワクチンとそれ以外のどちらがよいか、断言していません3)。ただ、フルミストについては接種対象が限定されており、それには注意すべきと書いています。生ワクチンなので、喘息発作の既往が1年以内にある人、免疫不全者、妊婦では接種を回避する必要があります。また、自宅に免疫不全者がいる場合も避けるべきとされています。なお、卵アレルギーについてはそこまで懸念しなくてよいとされています2)。CDCの推奨は「卵アレルギーの既往歴があり、蕁麻疹のみを経験したことがある人は、インフルエンザワクチンの接種は可能。蕁麻疹以外の症状(血管浮腫、呼吸困難、ふらつき、再発性嘔吐など)があったり、アドレナリン(エピネフリン)投与を要したりした人についても、年齢や健康状態に応じたワクチン接種を受けることが可能」となっています。インフルエンザワクチンと卵アレルギーの関係については、堀向 健太先生がYahoo!のニュース記事に詳しくまとめられているので、そちらを参考にするとよいでしょう3)。フルミストは弱毒生ワクチンなので、接種後、鼻汁や咳などの症状が出ることがあります。とはいえ、低温馴化された弱毒化されたものを使っていますので、基本的にはそこまで問題にならないでしょう。おそらく国内では、来シーズンから経鼻インフルワクチンが使われることになると予想されます。参考文献・参考サイト1)Buchan SA, et al. Effectiveness of Live Attenuated vs Inactivated Influenza Vaccines in Children During the 2012-2013 Through 2015-2016 Influenza Seasons in Alberta, Canada: A Canadian Immunization Research Network (CIRN) Study. JAMA Pediatr. 2018;172:e181514.2)Grohskopf LA, et al. Prevention and Control of Seasonal Influenza with Vaccines: Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices - United States, 2022-23 Influenza Season. MMWR Recomm Rep. 2022;71:1-28.3)インフルエンザワクチン製造時に鶏卵を使用 卵アレルギーの子どもは予防接種できる?

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紅皮症性アトピー性皮膚炎にもデュピルマブが有効

 紅皮症性アトピー性皮膚炎は、広範な皮膚病変によって定義され、合併症を引き起こし、場合によっては入院に至る重症アトピー性皮膚炎である。米国・ノースウェスタン大学のAmy S. Paller氏らは、デュピルマブの有効性と安全性を検討した6つの無作為化比較試験の事後解析において、紅皮症性AD患者に対するデュピルマブ治療は、全体集団と同様にアトピー性皮膚炎の徴候・症状の迅速かつ持続的な改善をもたらし、安全性は許容できるものであったと報告した。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年2月1日号掲載の報告。紅皮症性アトピー性皮膚炎がデュピルマブで有意に改善 中等症~重症のアトピー性皮膚炎患者を対象にデュピルマブの有効性と安全性を検討した6つの国際共同、多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照比較試験について、事後解析が行われた。対象は、アトピー性皮膚炎の病変が体表面積(BSA)の90%以上かつ全般症状スコア(Global Individual Sign Score)の紅斑のスコアが1以上を満たした患者とした(紅皮症性アトピー性皮膚炎)。 対象患者は、デュピルマブ(週1回または隔週)またはプラセボを、単剤または局所コルチコステロイド(TCS)との併用で投与された。 16週目における有効性(病変のBSAに対する割合、Eczema Area and Severity Index[EASI]スコア、Peak Pruritus Numerical Rating Scale[そう痒NRS]スコア)、血清中バイオマーカー(TARC[thymus and activation-regulated chemokine]、総IgE、LDH[乳酸脱水素酵素])の変化、安全性(有害事象の発現頻度)などを評価した。 データはレジメンごとにプールされ、デュピルマブ単剤投与とTCS併用投与で層別化された。 主な結果は以下のとおり。・無作為化された3,075例中、209例がベースライン時に紅皮症性アトピー性皮膚炎の基準を満たした。・紅皮症性アトピー性皮膚炎患者集団の年齢中央値はデュピルマブ単剤群31歳、TCS併用群39歳で、全体集団(それぞれ34歳、36歳)と類似していた。また、紅皮症性アトピー性皮膚炎患者集団の男性の割合は、デュピルマブ単剤群71.3%(97例)、TCS併用群74.0%(54例)であった(全体集団はそれぞれ58.7%、60.6%)。・紅皮症性アトピー性皮膚炎患者集団において、デュピルマブ投与群(週1回投与、隔週投与)はプラセボ群と比べて、有効性の指標がいずれも有意に改善した。・病変のBSAに対する割合(最小二乗平均変化率[標準誤差[SE]]):デュピルマブ単剤群は週1回投与-42.0% [7.7]、隔週投与-39.9%[6.5]であったのに対し、プラセボ群は-17.2%[11.0]であった(いずれもp=0.03)。TCS併用群は週1回投与-63.2% [6.7]、隔週投与-56.1%[9.1]であったのに対し、プラセボ群は-14.5%[7.3]であった(いずれもp<0.001)。・EASIスコア(最小二乗平均変化率[SE]):デュピルマブ単剤群は週1回投与-58.5% [9.0]、隔週投与-58.3%[7.9]であったのに対し、プラセボ群は-22.3%[12.4]であった(それぞれp=0.004、p=0.003)。TCS併用群は週1回投与-78.9%[7.8]、隔週投与-70.6%[10.1]であったのに対し、プラセボ群は-19.3%[8.2]であった(いずれもp<0.001)。・そう痒NRSスコア(最小二乗平均変化率[SE]):デュピルマブ単剤群は週1回投与-45.9% [7.8]、隔週投与-33.9%[6.6]であったのに対し、プラセボ群は-0.6% [9.4]であった(いずれもp<0.001)。TCS併用群は週1回投与-53.0% [8.1]、隔週投与-55.7%[10.8]であったのに対し、プラセボ群は-26.0%[8.8]であった(それぞれp=0.006、p=0.01)。・名目上の統計学的に有意な改善は、早ければ1週目からみられた(デュピルマブ単剤群のEASIスコアとそう痒NRSスコア[それぞれp<0.05、p<0.001])。・バイオマーカー値はプラセボと比べて有意に低下した(いずれもp<0.001)。・デュピルマブ治療を受けた患者で最もよくみられた有害事象は、注射部位反応、結膜炎、上咽頭炎であった。

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