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乳児期の犬への曝露は幼少期のアトピーリスクを低下させる?

 犬を飼っている家庭の乳児は、幼少期にアトピー性皮膚炎(AD)を発症するリスクが、犬を飼っていない家庭の児よりも低い傾向があるようだ。新たな研究で、乳児期に犬に曝露することで、ADの発症に関与する遺伝子の影響が軽減される可能性が示された。英エディンバラ大学皮膚科教授のSara Brown氏らによるこの研究結果は、「Allergy」に6月4日掲載された。 Brown氏は、「遺伝子の組み合わせが小児のAD発症リスクに影響を与えることは分かっていたし、過去の研究でも、犬を飼うことがAD発症の予防に有効な可能性が示されている。しかし、分子レベルでその仕組みを示したのはこの研究が初めてだ」と述べている。 ADは、皮膚のバリア機能が低下することで刺激物やアレルゲンが侵入しやすくなり、それによって免疫反応が引き起こされ、湿疹、かゆみ、炎症などの症状が生じる疾患で、遺伝的要因と環境要因が関与するとされている。研究グループによると、遺伝的にADを発症しやすい人がいることは判明しているものの、遺伝子と環境がどのように相互作用してADリスクを増大させたり低下させたりしているのかは明確になっていないという。 Brown氏らは今回、ヨーロッパで実施された16件の研究データを分析し、ADに関連する既知の24種類の遺伝的バリアントと、母親の妊娠中および児の生後1年間における18種類の環境要因の相互作用を調べた。 その結果、犬の飼育を含む7つの環境要因と少なくとも1つのAD関連遺伝的バリアントとの間に14の相互関係が示唆された。また、25万4,532人を対象とした追加解析から、犬への曝露と第5染色体に位置する遺伝的バリアント「rs10214237」との間に統計学的に有意な相互作用が認められた(相互作用のオッズ比0.91、95%信頼区間0.83〜0.99、P=0.025)。rs10214237は、免疫応答の調節に関与するインターロイキン(IL)-7受容体をコードする遺伝子の近傍に位置する。 次いで、実験室でのテストにより、rs10214237と犬アレルゲン曝露との相互作用がADの発症リスクにどのように影響するのかを検討した。その結果、犬への曝露はこの遺伝的バリアントの影響を変化させて皮膚の炎症を抑え、AD発症リスクを抑制している可能性が示唆された。 研究グループは、今回の研究で得られた結果を確認し、今後の研究で犬が人間の遺伝子に与える影響についての理解を深める必要があるとしている。Brown氏は、「われわれの研究は、臨床の現場で問われる『なぜうちの子はADなのか』『赤ちゃんを守るために何ができるのか』などの最も難しい質問に答えることを目的としている」と話す。同氏はさらに、「さらなる研究が必要だが、本研究結果は、アレルギー疾患の増加に介入し、将来の世代を守るチャンスがあることを意味する」と述べている。

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だ~まにゅ Dermatology Manual

必要なとこだけ、ムダなく最短で診療へ「皮膚科の臨床」67巻6号(2025年5月臨時増刊号)“迷わず使える”皮膚科マニュアル『だ~まにゅ Dermatology Manual』登場! 新薬・治療法の最新情報をキャッチアップできる「治療薬・治療法一覧」、エキスパートによる治療の実践法がわかる「治療実践マニュアル」など、皮膚科診療に必要なエッセンスを疾患ごとにぎゅっと凝縮。治療法に迷ったときや最新情報を確認したいとき、手軽に参照できる診療の即戦力!画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大するだ~まにゅ Dermatology Manual定価8,800円(税込)判型B5判頁数224頁発行2025年6月編集「皮膚科の臨床」編集委員会ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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スマホ画像からAIモデルがアトピー性皮膚炎の重症度を評価

 アトピー性皮膚炎患者は近い将来、スマートフォン(以下、スマホ)のアプリに自分の皮疹の画像を投稿することで、その重症度を知ることができるようになるかもしれない。慶應義塾大学医学部皮膚科学教室・同大学病院アレルギーセンターの足立剛也氏らが、患者が撮影した画像からアトピー性皮膚炎の重症度を評価するAIモデル「AI-TIS」を開発したことを発表した。この研究結果は、「Allergy」に5月19日掲載された。 足立氏は、「多くのアトピー性皮膚炎患者が、自分の皮疹の重症度を評価するのに苦労している。われわれが開発したAIモデルを使えば、スマホだけで疾患をリアルタイムで客観的に追跡することが可能になり、病状管理の改善につながる可能性がある」と慶應大学のニュースリリースで述べている。 研究グループによると、アトピー性皮膚炎は再発を繰り返す傾向があり、長期にわたる監視と治療の調整が必要になる。しかし、患者から報告される皮膚のかゆみや睡眠不足などの症状は、肉眼で見た皮疹の状態と必ずしも一致するわけではないという。 足立氏らは、皮疹の重症度を解析・評価するAIモデルを構築するために、日本のアトピー性皮膚炎患者2万8,000人以上が使用している投稿型アプリに蓄積された5万7,429枚の画像データから、自己申告のかゆみスコアが記録された9,656枚(900人分)の画像を抽出した。まず、身体部位の検出、皮膚病変の検出、および重症度の評価のアルゴリズムを880枚の画像セットで学習させて統合した。このモデルは、全身画像ではなく代表的な皮疹画像を解析対象とするため、紅斑、浮腫/丘疹、ひっかき傷を基に局所的な重症度を0〜9点で評価する3項目重症度(Three Item Severity;TIS)スコアが採用された。次に、別の220枚の画像セットでモデルの性能を評価した。 その結果、このモデルの身体部位の同定率は98%、皮疹部位の同定率は100%であり、重症度評価についても認定皮膚科医やアレルギー専門医によるスコアと強い相関を示した。一方、残る8,556枚の画像を用いて、AIモデルと患者の自己評価によるかゆみスコア(Itch-NRS-5)との関係を検討したところ、相関は低いことが示された。研究グループは、「これは、AI-TISによる皮疹の重症度の客観的評価とItch-NRS-5によるかゆみの主観的評価が、必ずしも一致しないことを示唆する結果である」としている。 足立氏らは今後、より多様なスキンタイプ(肌の色や質)と年齢層のデータに加え、皮疹の他の臨床スコアリングシステムからの追加機能も組み込んで、AIモデルをトレーニングする予定であるという。同氏らは、「本研究で開発されたAIモデルは、アトピー性皮膚炎患者が皮膚の状態を客観的に評価し、適切なタイミングで適切な治療を受けることを促進する可能性を秘めている。本研究は、AIを活用した皮膚評価の今後の進歩の基盤となり、患者ケアと臨床研究の両方を向上させるだろう」と述べている。

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第248回 骨太方針の「OTC類似薬見直し」診療現場や患者からは懸念の声も/政府

<先週の動き> 1.骨太方針の「OTC類似薬見直し」診療現場や患者からは懸念の声も/政府 2.コロナワクチンの接種の遅れ、孤独感や誤情報、公衆衛生の新たな課題/東京科学大など 3.「かかりつけ医機能」の再設計へ、次期改定で評価を見直し/中医協 4.オンライン診療1.3万施設まで増加、精神疾患が主領域に/厚労省 5.病床転換助成、利用率わずか1%台 延長か廃止かで紛糾/厚労省 6.ハイフ施術でやけど多発、違法エステ横行に警鐘/厚労省 1.骨太方針の「OTC類似薬見直し」診療現場や患者からは懸念の声も/政府政府は、医療費削減の一環として「OTC類似薬(市販薬と成分・効果が類似する医療用医薬品)」の保険適用見直しを検討しており、6月13日に閣議決定された「骨太の方針2025」にその方針が盛り込まれた。自民・公明・日本維新の会の3党が合意し、社会保障費抑制と現役世代の保険料軽減を目的としている。見直し対象は、花粉症薬や解熱鎮痛薬、保湿剤、湿布などで、最大で7,000品目とされる。仮に保険給付から除外されれば、患者の自己負担は数千円~数万円単位で跳ね上がる。とくに慢性疾患や難病患者、小児、在宅患者への影響が懸念されている。日本医師会の松本 吉郎会長は18日の記者会見で、「医療提供が可能な都市部と異なり、へき地では市販薬へのアクセスも困難。経済性を優先しすぎれば、患者負担が重くなり、国民皆保険制度の根幹が揺らぐ」と指摘。医療機関での診療や処方の自由度が制限されることにも懸念を示した。また、現場の開業医からも、「処方薬が保険適用外となれば、治療選択肢が狭まり、医師としての判断が制限される」「市販薬への誘導が誤用や副作用を招きかねない」との声が上がっている。とくに皮膚疾患やアレルギー疾患、疼痛管理においては、治療の中核となる薬剤が影響を受けるとされる。6月18日には、難病患者の家族らが約8万5千筆の署名とともに厚生労働省に保険適用継続を要望。厚労省は「具体的な除外品目は未定で、医療への配慮を踏まえて議論する」としているが、今後の制度設計次第で現場への影響は甚大となる可能性がある。次期診療報酬改定との整合性も含め、制度の動向を注視しつつ、患者支援の観点から声を上げていくことが求められる。 参考 1) 経済財政運営と改革の基本方針2025(内閣府) 2) 市販薬と効果似た薬の保険外し、患者に懸念 医療費節約で自公維合意(日経新聞) 3) 日医会長、3党合意のOTC類似薬見直しに懸念 骨太方針は高評価、次期診療報酬改定に期待(CB news) 4) 「命に関わる」保湿剤・抗アレルギー薬などの“OTC類似薬”保険適用の継続を求め…難病患者ら「8.5万筆」署名を厚労省に提出(弁護士JPニュース) 5) 「OTC類似薬」保険適用の継続を 難病患者家族が厚労省に要望書(NHK) 2.コロナワクチンの接種の遅れ、孤独感や誤情報、公衆衛生の新たな課題/東京科学大など新型コロナウイルス感染症におけるワクチン接種の効果と課題が、複数の研究から改めて浮き彫りになっている。東京大学の古瀬 祐気教授らの推計によれば、2021年に国内で行われたワクチン接種がなければ、死者数は実際より2万人以上増えていたとされる。ワクチン接種の開始が3ヵ月遅れた場合、約2万人の追加死亡が生じた可能性があり、接種のタイミングが公衆衛生に与える影響の大きさが示された。一方、接種を妨げた要因として「誤情報」と「孤独感」の影響が注目されている。同チームの調査では、誤情報を信じた未接種者が接種していれば、431人の死亡を回避できたとの推計もなされている。さらに、東京科学大学らの研究では、若年層のワクチン忌避行動に「孤独感」が強く影響していたことが判明した。都内の大学生を対象とした調査では、孤独を感じる学生は、感じない学生と比べてワクチンをためらう傾向が約2倍に上った。社会的孤立(接触頻度)とは異なり、孤独感という主観的要因がワクチン行動に与える心理的影響が独立して存在することが示された。東京都健康長寿医療センターの研究でも、「孤独感」はコロナ重症化リスクを2倍以上高めるとの結果が示されており、孤独感が接種率の低下だけでなく、重症化リスクの増大にも寄与している可能性がある。今後の感染症対策では、誤情報対策だけでなく、心の健康や社会的つながりを強化する施策が、接種率の向上および重症化予防の両面において重要になると考えられる。次のパンデミックに備えるためにも、若年層に対する心理的支援や信頼形成のアプローチが不可欠である。 参考 1) 若年層のワクチン忌避、社会的孤立より“孤独感”が影響(東京科学大学) 2) ワクチン接種をためらう若者 孤独感が影響 東京科学大など調査(毎日新聞) 3) 接種遅れればコロナ死者2万人増 21年、東京大推計(共同通信) 4) 「孤独感」はコロナ感染症の重症化リスクを高める、今後の感染症対策では「心の健康維持・促進策」も重要-都健康長寿医療センター研究所(Gem Med) 3.「かかりつけ医機能」の再設計へ、次期改定で評価を見直し/中医協厚生労働省は、6月18日に中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開き、2026年度の診療報酬改定に向け、「かかりつけ医機能」の診療報酬評価の見直しについて検討した。今年の医療法改正により医療機関機能(高齢者救急・地域急性期機能、在宅医療等連携機能、急性期拠点機能など)報告制度が始まったことを踏まえ、「機能強化加算」や地域包括診療料などの体制評価が現状に即しているかが問われている。厚労省は6月に開かれた「入院・外来医療等の調査・評価分科会」で、医療機関が報告する「介護サービス連携」「服薬の一元管理」などの機能は診療報酬で評価されているが、「一次診療への対応可能疾患」など一部機能は報酬上の裏付けがない点を指摘。これに対し支払側委員からは、既存加算は制度趣旨に適さず、17領域40疾患への対応や時間外診療など実態に即した再評価を求める声が上がった。また、診療側からは、看護師やリハ職の配置要件など「人員基準ありきの報酬」が現場に過度な負担を強いており、患者アウトカムや診療プロセスを評価軸とすべきとの意見も強調された。とりわけリハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算は基準が厳しく、取得率が1割未満に止まっている現状が報告された。今後の改定論議では、「構造(ストラクチャー)」評価から「プロセス」「アウトカム」重視への段階的な移行とともに、新たな地域医療構想や外来機能報告制度との整合性が問われる。かかりつけ医機能の再定義とそれを支える診療報酬のあり方は、地域包括ケア時代における制度の根幹をなす論点となる。 参考 1) 第609回 中央社会保険医療協議会 総会(厚労省) 2) 「かかりつけ医機能」の診療報酬見直しへ 機能強化加算など、法改正や高齢化踏まえ(CB news) 3) 診療側委員「人員配置の要件厳し過ぎ」プロセス・アウトカム重視を主張(同) 4) 2026年度診療報酬改定、「人員配置中心の診療報酬評価」から「プロセス、アウトカムを重視した診療報酬評価」へ段階移行せよ-中医協(Gem Med) 4.オンライン診療1.3万施設まで増加、精神疾患が主領域に/厚労省2025年4月時点でオンライン診療を厚生労働省に届け出た医療機関数が1万3,357施設に達し、前年より2,250件増加したことが厚労省の報告で明らかになった。届け出数は、初診からのオンライン診療が恒久化された2022年以降増加傾向にあり、対面診療全体に占める割合も2022年の0.036%から2023年は0.063%に上昇した。厚労省の分析によれば、オンライン再診では精神疾患の割合が高く、2024年7月の算定データでは「適応障害」が最多で8,003回(9.1%)、次いで高血圧症や気管支喘息、うつ病などが続いた。とくに対面診療が5割未満の施設では、再診での適応障害(22.2%)やうつ病、不眠症など精神科領域の算定が顕著だった。この結果から中央社会保険医療協議会(中医協)の分科会では、「オンラインと対面での診療内容の差異を調査すべき」との指摘もあった。こうした中、日本医師会は6月18日、「公益的なオンライン診療を推進する協議会」を発足。郵便局などを活用した地域支援型の導入モデルを想定し、医療関係4団体や自治体、関係省庁、郵政グループとともに初会合を行った。松本 吉郎会長は「利便性や効率性のみに偏らず、安全性と医療的妥当性を担保した導入が不可欠」と強調し、とくに医療アクセスに困難を抱える地域、在宅医療、災害・感染症時の手段としての有効性に言及した。郵便局のインフラを活用した実証事業も一部地域で始動しており、診療報酬制度の課題、患者負担への配慮、医師会・自治体との連携が今後の焦点となる。 参考 1) オンライン診療に1.3万施設届け出 厚労省調べ、4月時点(日経新聞) 2) オンライン再診、精神疾患の割合が高く 厚労省調べ(CB news) 3) オンライン診療で医産官学の協議会発足 郵便局など活用で連携を強化(同) 5.病床転換助成、利用率わずか1%台 延長か廃止かで紛糾/厚労省厚生労働省は6月19日、医療療養病床から介護施設などへの転換を支援する「病床転換助成事業」の今後の在り方について、社会保障審議会・医療保険部会で実態調査結果を報告した。2008年度に開始され、これまでに7,465床の転換に活用されたが、今後の活用予定医療機関は2025年度末時点で1.4%、2027年度末でも3.0%に止まり、活用実績も病院7.3%、有床診療所3.7%と低迷している。事業延長については委員の間で意見が分かれ、健康保険組合連合会の佐野 雅宏委員らは既存支援策との重複や利用率の低さを理由に廃止を主張。一方、日本医師会の城守 国斗委員は、申請手続きの煩雑さや認可の遅れがネックとなっていると指摘し、当面の延長と支援対象の拡大を提案した。今後、厚労省は部会の意見を整理し、年度内に方針を提示する見通し。地域医療の再編を進める上で、同事業の位置付けと実効性が改めて問われている。 参考 1) 病床転換助成事業について(厚労省) 2) 病床転換の助成事業、活用予定の医療機関1-3% 事業の延長に賛否 医療保険部会(CB news) 6.ハイフ施術でやけど多発、違法エステ横行に警鐘/厚労省痩身やリフトアップ目的で人気を集めるHIFU(高密度焦点式超音波)による美容医療で、違法施術により重篤な被害を受けた事例が再び注目を集めている。2021年に東京都内のエステサロンで医師免許のない施術者からHIFUを受け、重度のやけどを負った女性が損害賠償を求め提訴。2025年6月、エステ側が謝罪し、解決金を支払う形で和解が成立した。厚生労働省は2024年6月、「HIFU施術は医師による医療行為であり、非医師が行うことは医師法違反」と明確化したにもかかわらず、違法施術による健康被害は依然として後を絶たない。美容医療に起因する健康被害の相談件数は2023年度に822件と、5年前の1.7倍に増加。熱傷、重度の形態異常、皮膚壊死などの深刻な合併症が報告されている。こうした背景から、東京・新宿の春山記念病院では、美容医療トラブル専門の救急外来を本格的に開始。美容クリニックと施術情報の事前共有を行うなど、連携体制を整備している。厚労省も、美容医療を提供する医療機関に対し、合併症時の対応マニュアル整備や他院との連携構築、相談窓口の報告を義務化する方向で検討を進めている。医師が美容医療に携わる場合は、医療行為の厳密な定義のもと、適切な説明責任とアフターフォロー体制の構築が不可欠である。また、美容分野に参入する無資格者の排除に加え、トラブル患者の受け皿となる救急医療体制との連携も、今後の制度整備における重要課題となる。 参考 1) 「やせる」美容医療でやけど、エステ店側と和解 被害「氷山の一角」(朝日新聞) 2) 医師以外の「ハイフ施術」でやけど エステサロンと被害女性が和解(毎日新聞) 3) “美容施術 HIFUでやけど” 会社が謝罪し解決金で和解成立(NHK) 4) 美容医療トラブルに特化した救急外来が本格開始 東京 新宿(同)

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マウステーピングは睡眠の質を改善する?

 最近、ソーシャルメディアを席巻しているトレンドの一つであるマウステープの使用について、残念な研究結果が報告された。睡眠時にテープなどで口を閉じた状態にすること(マウステーピング)は、口呼吸を防いで鼻呼吸をサポートし、口腔内の乾燥を防ぎ、いびきや睡眠時の一時的な呼吸停止(睡眠時無呼吸)を防ぐことで睡眠の質を高めるとされている。しかし新たな研究で、マウステーピングが実際に睡眠の質の改善に有効であることを示すエビデンスは限定的であり、場合によっては窒息のリスクを高める可能性のあることが明らかにされた。ロンドン健康科学センター(カナダ)耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野のBrian Rotenberg氏らによるこの研究結果は、「PLOS One」に5月21日掲載された。 女優のグウィネス・パルトローはInstagramでマウステープについて、「これはおそらく最近見つけた中で最高の健康ツールだわ。一晩中、鼻呼吸をすると、体内がアルカリ性に傾き、質の高い睡眠を促すそうよ」と述べたことをUs Weeklyは伝えている。しかしRotenberg氏は、「ソーシャルメディアで大量に喧伝されているマウステーピングの効果はエビデンスに乏しく、重度の鼻詰まりの人には有害な影響さえもたらす可能性がある」と述べている。 この研究では、1999年2月から2024年2月の間に発表されたマウステーピングの効果に関する既存の研究から10件の研究を抽出し、そのレビューが行われた。これらの研究では、サージカルテープやマウスピースなどさまざまな器具を用いたマウステーピングが検討されており、対象者の総計は213人に上った。 その結果、マウステーピングが無呼吸低呼吸指数(AHI)や酸素飽和度低下など睡眠時無呼吸の指標に対して統計学的に有意な改善を示した研究は、10件中わずか2件にとどまることが明らかになった。それ以外の研究では、マウステーピングの効果は何も確認されず、それどころか、鼻づまりがある状態でマウステーピングを行うと窒息のリスクが生じる可能性のあることが示唆されていた。 研究グループは、「例えば、花粉症や風邪、鼻中隔湾曲、扁桃腺肥大などの症状がある人は、鼻から十分な酸素を取り込めないため口呼吸をしている可能性がある」と指摘している。また、マウステーピングにより口が閉じられていると、睡眠中に嘔吐した際に吐瀉物で窒息する危険性もあるとしている。 その上で研究グループは、「マウステーピングは、有名人が推奨することの多い現代的な習慣だが、その効果は必ずしも科学的に証明されたものではない。マウステーピングに適さない人も多く、場合によっては深刻な健康被害のリスクにつながる可能性がある」と警鐘を鳴らしている。 一方で研究グループは、「本研究で対象とした研究は一貫して高品質ではなかったため、さらなる調査が必要だ」とも述べている。

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アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」新薬5剤を含む治療アルゴリズムの考え方は

 近年新規薬剤の発売が相次ぐアトピー性皮膚炎について、2024年10月に3年ぶりの改訂版となる「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」が発表された。外用薬のホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害薬ジファミラスト、注射薬の抗IL-31受容体A抗体ネモリズマブおよび抗IL-13受容体抗体トラロキヌマブ、経口JAK阻害薬ウパダシチニブおよびアブロシチニブの5剤が、今版で新たに掲載されている。ガイドライン策定委員会メンバーである常深 祐一郎氏(埼玉医科大学皮膚科)に、新薬5剤を含めた治療アルゴリズムの考え方について話を聞いた。いかに寛解導入に持っていくか、アトピー治療のPDCAサイクルの回し方 前版である2021年版のガイドラインで、治療アルゴリズムの骨格が大きく変更された。全身療法(注射薬と経口薬)の位置付けについて、寛解維持療法の選択肢に一部が加えられたほか、使用対象がその前の2018年版アルゴリズムの「重症・最重症・難治性状態」から「中等症以上の難治状態」に変更されている。そして各段階で「寛解導入できたか」という問いが加えられ、そのyes/noに応じて治療のPDCAサイクルを回していく構成となっている。この背景には、使用できる薬剤が増えたことが何よりも大きいと常深氏は話し、PDCAサイクルを回してこれらの薬剤を活用し、必ず寛解導入すること(Treat to Target)が重要とした。 アルゴリズムでは診断と重症度評価に続いて、「疾患と治療の目標(ゴール)の説明・共有」を行うことが推奨されており、末尾の“共有”という言葉が2024年版で追記された。常深氏は「説明は医療者から患者さんへの一方的なものだが共有は違う。この言葉が入ったことにはとても大きな意味があり、“とりあえず治療を始めてみましょう”ではなく“どんな状態をゴールとして目指すか”を共有したうえで治療をスタートしてほしい」とこの言葉の意図を説明した。寛解導入のメインはまず“ステロイドの適切な使用”で変わりない ジファミラストを含む非ステロイド系外用薬の選択肢が増えている。寛解導入での位置付けについて常深氏は「軽い皮疹の場合に非ステロイド系で寛解導入もありうるが、メインはやはりステロイド系外用薬」と話し、ランクの選択を含めてステロイドをどう適切に使えるかが非常に重要とした。「顔だから、年齢が低いからという理由で皮疹の重症度に見合わない弱いランクを選んでしまうケースがみられるが、重症度評価に応じたランクのステロイドを自信をもって選択してほしい」とし、落ち着いたらランクを下げるもしくは非ステロイド系に切り替えるといった使い方が望ましいと話した。  一方、ステロイド系外用薬は局所的な副作用が出るなど長期使用には向かないため、寛解維持の外用療法のメインとしては非ステロイド系外用薬が適しているが、常深氏は「非ステロイド系外用薬のなかでどの薬剤をどのタイミングで行うとよいかは明確になっていない」とし、「患者さんごとに使ってみて使いやすいものを選ぶといった考え方もよいのではないか」と柔軟な対応を提案した。全身療法の使いどころ、使い分けは? 全身療法は中等症以上の多くのアトピー性皮膚炎患者に対して推奨されており、「決してしきいの高いもの・最後の切り札ではない」と常深氏。「必ずしもとことん外用療法をやりきってから全身療法という考え方ではなく、患者さんが外用療法に疲れてしまったり時間をかけてQOLが下がってしまったりという状況になる前に、使用ガイダンスで示された条件を満たしたうえで1,2)早めに全身療法に切り替えるのも1つの選択肢」と私見を交えて解説した。 注射薬である抗体製剤(デュピルマブ、トラロキヌマブ、ガイドライン改訂後に登場したレブリキズマブ)の特徴として、常深氏は、投与前後の検査不要で安全性が高いこと、幅広い患者に有効性があることを挙げた。それに対して経口JAK阻害薬(バリシチニブ、ウパダシチニブ、アブロシチニブ)は、使用ガイダンス2)に示されるように投与後も画像を含めた検査が必要であり、効き始めは早いがレスポンダーとノンレスポンダーが分かれる傾向があるという。「経口がやはり楽という患者さんもいるし、数週間おきの注射のほうがむしろ楽という患者さんもいる」とし、上記の特徴も踏まえた選択が重要と話した。 抗体製剤やJAK阻害薬には治療費の問題がある。同氏は治療費がハードルになるケースでは、従来からの全身療法薬であるシクロスポリンをしっかりと使っていくことも大事と指摘。「悪くなりかけた際にシクロスポリンを使うという使い方で、短期の使用であれば副作用の可能性も低い」とした。アトピーはいまや“すごくよくなる”疾患、患者も医療者もイメージを変えていく必要 アトピー性皮膚炎には以前から“なかなか治らない疾患”というイメージが根強くあり、そもそも医療機関にかかっていない患者も多い。しかし有効な薬剤が複数登場し、適切な治療により、アルゴリズムで治療のゴールとして示された「症状がないか、あっても軽微で、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない」状況を実現することができるようになっている。  常深氏は、医師を含む医療者が“アトピーは外用薬しかない”、あるいは“改善の難しい疾患だからあまりよくならなくても仕方がない”と思っていたらそこで治療は止まってしまうとし、「抗体製剤使用のハードルは決して高くなく、要件を満たせば1)クリニックでも使用できる。また自院で使用しなくても、必要性を感じた場合は専門医に積極的につないでほしい」と話した。

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第15回 身近な抗アレルギー薬に思わぬリスク?長期服用後の中止で激しいかゆみ、FDAが警告

花粉症やじんましんなど、アレルギー症状を抑えるために日常的にアレルギーの薬を服用している方は多いでしょう。その中でも広く使われている「セチリジン」(商品名:ジルテック)や「レボセチリジン」(商品名:ザイザル)を含むアレルギー治療薬について、米国食品医薬品局(FDA)が2025年5月16日、重要な安全情報を発表しました1)。長期間にわたってこうした薬を連用した後に突然中止すると、重度の激しいかゆみが発生する可能性があるというのです。これは、処方薬だけでなく、薬局などで購入できる市販薬(OTC医薬品)も対象となる話です。長期間の服用を中止した後に、耐え難い「かゆみ」が?FDAの発表によると、この「かゆみ」は、セチリジンやレボセチリジンを毎日、典型的には数ヵ月から数年にわたって服用していた人が、服用を突然中止した後に報告されています。もともとアレルギー症状の一環としてかゆみがあったわけではなく、薬を飲み始める前にはかゆみがなかった患者さんでも確認されているのが特徴です。報告された症例はまれではあるものの、中には日常生活に大きな支障を来すほど広範囲で激しいかゆみが生じ、医療機関での治療が必要になったケースもあったということです。FDAが2017年4月~2023年7月に確認した209例では、かゆみは薬の中止後、中央値2日(1~5日の範囲)で発生していました。また、報告された深刻なケースには、「深刻なかゆみで寝たきりになる」といった人や、入院、さらには自殺を考える人もいたようです。対象となる薬とFDAの対応セチリジンやレボセチリジンは、アレルギー反応の原因となる体内物質「ヒスタミン」の働きをブロックする抗ヒスタミン薬です。花粉症や通年性のアレルギー性鼻炎、慢性じんましんなどの治療に用いられます。こうした新たな報告を受け、FDAは製造業者に対し、処方薬の添付文書にこのかゆみのリスクに関する新たな警告を記載するよう指示しています。さらに、市販薬についても同様の警告を製品の医薬品情報ラベルに追加するよう要請する方針です。患者さんはどうすれば良い? 自己判断せず専門家への相談をもし、同種の薬を長期間服用していて中止した後に、経験したことのないような激しいかゆみを感じた場合は、速やかに医師や薬剤師などの専門家に相談する必要があります。FDAの調査によると、この副作用を経験した人の多くは、薬の服用を再開することでかゆみの症状が治まったと報告されています。また、再開後に薬の量を徐々に減らしていく「漸減療法」によって症状が改善した人もいたとのことです。これからアレルギーの薬を長期間(数ヵ月以上)にわたって使おうと考えている方、またはすでに内服されている方は、今後の服用のスケジュールについて、かかりつけの医師や薬剤師とよく話し合うことが重要です。また、本薬に限らず、すべての薬にいえることですが、どんなに正しく使用していても副作用は出てしまう可能性があります。また、一部の薬には、慎重に少しずつやめるべきものがあります。今回のFDAの発表は、抗アレルギー薬のような身近な薬でも、副作用や中止の仕方に配慮する必要があり、薬の取り扱いについて患者さんが薬剤師や医師と連携する重要性を改めて示すものといえるのではないでしょうか。参考文献・参考サイト1)FDA requires warning about rare but severe itching after stopping long-term use of oral allergy medicines cetirizine or levocetirizine (Zyrtec, Xyzal, and other trade names). 2025 May 16.

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5月19日 IBDを理解する日【今日は何の日?】

【5月19日 IBDを理解する日】〔由来〕「世界IBDデー」に准じ、クローン病や潰瘍性大腸疾患などの「炎症性腸疾患」(IBD)への理解促進のため、IBDネットワークとアッヴィの共同で2013年に制定。関連コンテンツ第82回「IBD診療ブラッシュアップ」【診療よろず相談TV】アトピー性皮膚炎の成人・小児はIBD高リスク活動期クローン病の導入・維持療法、ミリキズマブが有効/Lancet中等症~重症の潰瘍性大腸炎、グセルクマブは有効かつ安全/Lancet中等症~重症の潰瘍性大腸炎、抗TL1A抗体tulisokibartが有望/NEJM

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HAE患者さんの発作不安を解消するガラダシマブ発売/CSLベーリング

 CSLベーリングは、遺伝性血管性浮腫(HAE)の急性発作の発症抑制にガラダシマブ(商品名:アナエブリ)が4月18日に販売されたことに合わせ、プレスセミナーを都内で開催した。プレスセミナーでは、ガラダシマブの概要やHAE治療の課題と展望などが説明された。HAE患者のニーズに応える治療薬ガラダシマブ 「HAE長期予防のための新たな選択肢『アナエブリ皮下注 200mgペン』の製品概要」をテーマにローズ・フィダ氏(研究開発本部長)が、ガラダシマブの開発の経緯や国際共同第III相試験であるVANGUARD試験の概要について説明した。 HAEは、常染色体顕性遺伝の遺伝性希少疾患であり、腹部や顔面、喉などの部位への浮腫やこれに伴う痛みなどを特徴とする。とくに喉が腫れた場合、呼吸の阻害により生命に関わることもある疾患である。  本症は、発症のタイミング、重症度、浮腫の部位の予測は困難であり、浮腫は通常12~24時間かけて悪化し、2~5日間持続する。 HAEの治療では、病期に応じてオンデマンド治療、短期発作抑制治療、長期発作抑制治療が行われている。とくに長期発作抑制治療では、患者は予測できない発作への不安と従来の治療アクセスへの負荷やコンプライアンスの難しさのため新しい治療薬の要望があり、今回研究・開発されたのがガラダシマブである。 ガラダシマブは、HAEの急性発作の発症抑制を効果効能とした月1回投与のプレフィルドペン製剤であり、通常、成人および12歳以上の小児には初回400mgを皮下投与し、以降は200mgを月1回皮下投与する。ガラダシマブは活性化されたFXIIを阻害することでカリクレイン・キニン系の開始部分を阻害し、それに続くブラジキニンの生成を抑制する。 国際共同第III相試験であるVANGUARD試験は、6ヵ月間の治療期における月間のHAE発作回数を主要評価項目に行われた。ガラダシマブ群39例、プラセボ群25例であった。 その結果、主要評価項目では、1ヵ月当たりのHAE発作回数の中央値(平均値)は、ガラダシマブで0.00回(0.27)に対し、プラセボ群では1.35回(2.01)で有意に低かった(p=0.001、両側Wilcoxon検定)。  副次評価項目である6ヵ月間の治療期のレスポンダー割合(HAE発作回数が50%以上減少した患者)はガラダシマブ群94.9%およびプラセボ群33.3%、治療中に無発作(発作減少率100%)の割合はそれぞれ61.5%および0%だった。 また、探索的項目として患者報告アウトカム質問票(AE-QoL[Angioedema Quality of Life Questionnaire]合計スコア)について、初回投与開始後からQOLの指標となったAE-QoL合計スコアの改善が認められ、その傾向は6ヵ月間持続した。 そのほか、安全性に関して重篤な有害事象、過敏症、アナフィラキシー、血栓症、出血の報告は認められず、注射部位反応はガラダシマブ群、プラセボ群ともに2例だけだった。主な有害事象は、ガラダシマブ群で上気道感染、上咽頭炎、頭痛などがみられた。HAEと確定診断されるまで平均15.6年という課題 「HAE治療における課題と期待、患者さんのQOLの向上を目指して」をテーマに秀 道広氏(広島市立広島市民病院 病院長)が、HAEの病態と診療での課題、今後の展望について説明した。 HAEは、血管中のC1蛋白分解酵素阻害因子(C1-INH)が低下し、ブラジキニンが上昇することで生じる限局性の浮腫で、一定時間(日数)後に跡形なく消失する。症状は蕁麻疹に似ているが、発症の機序は異なるため蕁麻疹の治療薬は効果がない(最近、C1-INH活性が正常なHAE3型というまれな病型も報告されている)。 HAEの診断は『遺伝性血管浮腫(HAE)診断ガイドライン 改訂 2023年版』(日本補体学会編)のアルゴリズムに基づいて行う。HAEを疑った場合、先述のC1-INH活性測定とC4測定の検査から診断を行うことができるが、「医療者などがHAEに気付くことができるか」という点が課題だという。 HAEは出現部位、浮腫の程度、頻度がさまざまであり、気付かれにくい疾患である。実際、わが国の研究で2016~17年に実施されたアンケート調査で121例のHAE患者は確定診断まで平均15.6年を要し、胃腸炎、虫垂炎、血管性浮腫などの他の疾患と診断されていた。また、HAEの症状出現から治療にかかるまでの時間は平均で87.4分という報告がある1)。 発作の出現部位では、胴体が72.4%、消化管が60.3%、四肢が31.0%の順で多く、夕方~早朝に出現が多いことが報告されている2)。 HAEの治療では年々治療薬が進化し、C1-INH点滴から始まり、急性発作時のイカチバント、長期発作抑制治療薬のベロトラルスタット、ラナデルマブとC1-INH皮下注製剤が登場している。 治療の目標は先述のガイドラインには「疾病負荷のない日常生活を可能な限り目指すことである」と記されているが、長期発作抑制治療中のHAE患者へのAE-QoLでは、発作頻度は低くても発作への恐れや恥ずかしさ、うつや不安傾向は変わっていないという報告もある3)。 以上から残された課題として、(1)いつ発作が起こるかわからない(2)発作治療は早いほうが効果的だがすぐに注射できるとは限らない(3)診断の遅れによる適正治療の遅れについて医療、製薬メーカー、患者会などが連携し、解決していく必要がある。

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アトピー性皮膚炎への新規外用薬、既存薬と比較~メタ解析

 アトピー性皮膚炎に対する治療薬として、2020年1月にデルゴシチニブ、2021年9月にジファミラストが新たに承認された。長崎大学の室田 浩之氏らは、これらの薬剤と既存の標準的な外用薬について、臨床的有効性および安全性を評価するためシステマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施し、結果をDermatology and Therapy誌2025年5月号で報告した。 Medline、Embase、Cochrane、ならびに医中誌から対象となる文献を選定し、有効性の評価項目として、Eczema Area and Severity Index(EASI)スコアおよびInvestigator Global Assessment(IGA)スコアを使用した。安全性の評価項目には、重篤な有害事象、ざ瘡、および皮膚感染症が含まれた。 固定効果モデルを用いたベイジアン多重処理ネットワークメタ解析が実施され、アトピー性皮膚炎に対する各種外用薬(プラセボを含む)の転帰を比較するために、オッズ比(OR)および95%信用区間(CrI)が用いられた。 主な結果は以下のとおり。・アトピー性皮膚炎の成人患者(重症度は異なる)を対象とした、11件の無作為化比較試験がネットワークメタ解析に組み入れられた。・システマティックレビューの結果、ジファミラスト0.3%および1%、タクロリムス0.1%においてEASIスコアの改善が認められた。また、ジファミラスト1%、デルゴシチニブ3%、およびタクロリムス0.1%でIGAスコアの改善が認められた。・ネットワークメタ解析の結果、4週時点において、ジファミラスト1%(1日2回投与、BID)はプラセボと比較して、IGAスコアおよびベースラインからのEASIスコア変化率のいずれにおいても有意な改善を示した。一方で、ほかの治療薬との比較においては、点推定値は数値的にはジファミラスト1%に有利であったものの、統計学的な有意差は認められなかった。・ジファミラスト1%(BID)は、デルゴシチニブ0.3%(BID)と比較して、ざ瘡の発生率が有意に低かった。・重篤な有害事象、ざ瘡、および皮膚感染症の発生率において、プラセボやほかの治療薬との間で統計学的に有意な差は認められなかった。

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触覚フィードバックで軽度アトピー性皮膚炎患者における夜間掻痒が軽減

 軽度のアトピー性皮膚炎に対する触覚フィードバックは、患者の夜間掻痒を軽減させる非薬理学的介入として使用できる可能性があるという研究結果が、「JAMA Dermatology」に2月5日掲載された。 米ミシガン大学アナーバー校のAlbert F. Yang氏らは、単アーム2段階コホート試験を実施し、クローズドループ・触覚フィードバックを備えた人工知能(AI)対応ウェアラブルセンサーについて、軽症アトピー性皮膚炎の夜間掻痒症状に対する検出精度および軽減効果を検討した。試験には、中等度~重度の掻痒行動を自己申告した軽症アトピー性皮膚炎患者が対象者として登録された。手に装着したウェアラブルセンサーから送られる触覚フィードバックは、AIアルゴリズムによって夜間掻痒症状が検出されたときに発せられる。対象者は、まず検出機能のみ作動させたセンサーを7日間装着し、その後触覚フィードバックも作動させた状態でセンサーを7日間装着した。 対象者10人について、合計104回、831時間の夜間睡眠がモニタリングされた。追跡期間中に試験から脱落した対象者はいなかった。解析の結果、第2週目に触覚フィードバックを作動させると、1夜当たりの掻痒イベント平均回数が28%有意に減少し(45.6回対32.8回)、睡眠1時間当たりの掻痒平均時間に50%の有意差が認められた(15.8秒対7.9秒)。総睡眠時間の減少はなかった。 著者らは、「この技術は、全身治療の適応でない、あるいはステロイド外用薬の使用を希望しないが掻痒行動が多いと訴える軽症AD患者において、掻痒行動を減少させるための単独、あるいはより現実的には補助的な治療機器として役立つ可能性がある」と述べている。 なお複数の著者が、本研究の一部助成を行い、特許を出願中であるマルホ社と、1人の著者がアッヴィ社との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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気候変動はアレルギー性鼻炎を悪化させる?

 アレルギー性鼻炎を持つ人にとって、春は、涙目、鼻づまり、絶え間ないくしゃみなどの症状に悩まされる季節だが、近年の地球温暖化はこのようなアレルギー性鼻炎を悪化させる可能性があるようだ。新たな研究で、気候変動が進むにつれ、花粉アレルギーのシーズンはいっそう長くなり、アレルギー性鼻炎の症状もより重症化することが予想された。米ジョージ・ワシントン大学医学部のAlisha Pershad氏らによるこの研究結果は、「The Laryngoscope」に4月9日掲載された。 気候変動が健康にもたらす悪影響は、世界的な問題として深刻化している。地球温暖化は炎症性上気道疾患、中でもアレルギー性鼻炎に影響を与えることが示されており、耳鼻咽喉科領域での影響は特に顕著である。このことを踏まえてPershad氏らは、データベースから選出した30件の研究結果のレビューを実施し、気候変動が世界の成人および小児におけるアレルギー性鼻炎にどのような影響を与え得るかを調査した。 30件の研究のうち16件では、気候変動に関連する花粉シーズンの延長と花粉濃度の上昇のいずれか、またはその両方について報告されていた。このうち、米国で実施された研究では、花粉シーズンが最大19日間長くなり、花粉の年間飛散量は16〜40%増加すると予測されていた。 本研究で判明したその他の主な結果は以下の通りである。・ブタクサは、二酸化炭素などの温室効果ガスの影響が大きい都市部では成長と開花が速く、より多くの花粉を生産する傾向にある。・花粉の飛散量の増加に伴い、アレルギー性鼻炎の症例も増加する。・花粉の飛散量の増加に伴い、アレルギー性鼻炎の症状も重くなる。・医師は花粉シーズンに変化が生じていることと、それがアレルギー性鼻炎の増加につながっていることに気付いている。 Pershad氏らは、「アレルギー性鼻炎は不快で煩わしい症状に過ぎないと思われがちだが、実際には医療資源に深刻な負担をかけており、気候変動が進むにつれてその負担は大きくなるばかりだ」と指摘する。同氏らは、具体的な負担額は年間34億ドル(1ドル140円換算で4340億円)に上り、そのほとんどは、処方薬と外来診療にかかる費用だと説明した上で、「医療専門家には十分に理解されていないかもしれないが、この増加傾向にある疾患の経済的負担は過小評価できるものではない」と述べている。 Pershad氏は、「医師は、アレルギー性鼻炎が患者の転帰に与える影響を直接目にする立場にあり、気候変動の激化に合わせて診療を適応させることができる。地域住民から信頼される立場にある者として、医師は最前線での経験を活かし、気候危機への取り組みにおいて意義ある変化を訴えるべきだ」と述べている。

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第261回 なぜ鳥居薬品を?塩野義製薬の買収戦略とは

製薬業界は世界的に見ると、再編が著しい業界である。いわゆる老舗の製薬企業同士の合併・買収という意味では、2020年の米国・アッヴィによるアイルランド・アラガンの買収が近年では最新の動きと言えるだろうが、欧米のメガファーマによるバイオベンチャー買収は日常茶飯事の出来事と言ってよい。これに対し日本の製薬企業でも、上位企業によるメガファーマ同様のバイオベンチャー買収が一昔前と比べて盛んになったことは事実だ。ただ、新薬開発能力のある製薬企業は売上高で4兆円超の武田薬品を筆頭に下は500億円規模まで約30社がひしめく、世界的に見ても稀なほど“過密”な業界でもある。このためアナリストなどからは、1990年代から判で押したように「国内再編が必至」と言われてきた。その中で国内の製薬企業同士の合併や経営統合などが盛んだったのが2005~07年にかけてである。藤沢薬品工業と山之内製薬によるアステラス製薬、第一製薬と三共による第一三共、大日本製薬と住友製薬による大日本住友製薬(現・住友ファーマ)、田辺製薬と三菱ウェルファーマによる田辺三菱製薬はいずれもこの時期に誕生している。上場製薬企業あるいは上場企業の製薬部門の合併で言うと、もっとも直近は2008年の協和発酵キリン(現・協和キリン)だろう。あれから15年間、国内製薬企業は“沈黙”を続けてきたが、それが突如破られた。ゴールデンウイーク明けのつい先日、5月7日に塩野義製薬が「日本たばこ産業(JT)の医薬事業を約1,600億円で買収する」と発表したのだ。JTと鳥居薬品の歴史JTの医薬事業というのはやや複雑な構造をしているが、それを解説する前にJTの沿革について簡単に触れておきたい。JTはかつてタバコ・塩・樟脳(しょうのう)※の専売事業を行っていた旧大蔵省外局の専売局が外郭団体・日本専売公社として分離独立し、それが1985年に民営化されて誕生した。すでに1962年に樟脳の専売制度は廃止され、民営化時点ではタバコと塩の専売事業を引き継いだが、塩の製造販売は1997年に自由化され、すでにJTの手を離れている。※クスノキの根や枝を蒸留して作られ、香料や医薬品、防虫剤、セルロイドなどの原料となる。ただ、民営化直後からたばこ事業の将来性には一定のネガティブな見通しは持っていたのだろう。民営化直後から事業開発本部を設置し、1990年7月までに同本部を改組し、医薬、食品などの事業部を新設。1993年9月には医薬事業の研究体制の充実・強化を目的に医薬総合研究所を設置した。ただ、衆目一致するように医薬、いわゆる製薬事業は自前での研究開発から製品化までのリードタイムは最短で10数年とかなり気の長い事業である。そうしたことも影響してか、1998年に同社は国内中堅製薬企業の鳥居薬品の発行済株式の過半数を、株式公開買付(TOB)により取得し、連結子会社化した。子会社化された鳥居薬品は国内製薬業界では中堅でやや影が薄いと感じる人も少なくないだろうが、1872年創業の老舗である。たぶん私と同世代の医療者は同社の名前から連想するのは膵炎治療薬のナファモスタット(商品名:フサンほか)や痛風・高尿酸血症治療薬のベンズブロマロン(商品名:ユリノームほか)だろうか? 近年では品薄で供給制限が続いているスギ花粉症の減感作療法薬であるシダキュアが有名である。JTによる買収後は、研究開発機能がJT側、製造・販売が鳥居薬品という形で集約化されていた。余談だが、私が専門誌の新人記者だった頃、当時の上司は“鳥居薬品は研究開発力が高く、将来の製薬企業再編のキーになる”ことを予言していた…。塩野義の買収計画さて、今回の塩野義によるJT医薬事業の買収は以下のようなスキームだ。現在、鳥居薬品の株式の54.78%はJTが保有し、残る45.22%が株式市場で売買されている。まず、塩野義はこの45.22%を2025年5月8日~6月18日までの期間、1株6,350円、総額約807億円でTOBする。これが終了した後に鳥居薬品のJT持ち株分を鳥居薬品自身が約700億円で取得し、9月までの完全子会社化を目指す。この後さらに2025年12月までにJT医薬事業は会社分割して54億円で塩野義、JTの米国・子会社のAkros Pharmaを36億円で塩野義の米国・子会社Shionogi Incがそれぞれ買収する。JTの医薬事業は塩野義に吸収されるが、米Akros Pharma社はShionogi Incの完全子会社となる。なぜJTを?今回の買収は、昨年、塩野義からJTに対しオファーがあったことから始まったという。会見後に塩野義製薬代表取締役社長の手代木 功氏にこの点を尋ねたところ、「ここ数年、低分子創薬領域でのメディシナルケミスト(創薬化学者)の確保を念頭に薬学部だけでなく、農学部など幅広い領域への浸透を図り、米国・カリフォルニア州サンディエゴに細菌感染症治療薬の研究開発拠点の開設も目指していた。しかし、昨年買収したキューペックス社でも人材確保が思うように進まなかった」とのこと。そうした中でメディシナルケミストの層が厚いJTグループに注目したのがきっかけだったと話した。また、手代木氏はJT・鳥居の研究開発拠点が横浜市と大阪府高槻市にあり、とくに後者は塩野義の研究開発拠点である大阪府豊中市に近いことも大きな利点だったと語った。実際、会見の中でも手代木氏は「(研究拠点の近さも)大きなリストラなく進められる。研究所勤務者は異動、転勤などに不慣れだが、ここも非常にフィットすると考えた」と強調した。この辺は、研究開発畑出身の手代木氏らしい考えでもある。一方のJT側は「近年、新薬創出のハードルが上昇しているうえに、グローバルメガファーマを中心に国際的な開発競争が激化している。当社グループの事業運営では、医薬事業の中長期的な成長が不透明な状況だった」(JT代表取締役副社長・嶋吉 耕史氏)、「JTプラス鳥居という体制でこのまま事業を継続するよりも、より早く、より大きく、より確実に事業を成長させることができるのではないかと考えられた」(鳥居薬品代表取締役社長・近藤 紳雅氏)と語った。このJTと鳥居薬品側の説明は、ある意味、当然とも言える。現在のメガファーマの年間研究開発費は上位で軽く1兆円を超え、日本トップで世界第14位の武田薬品ですら7,000億円。しかし、JT・鳥居薬品のそれはわずか30億円強である。ちなみに塩野義の年間研究開発費は1,000億円超である。もっともメガファーマとの研究開発費規模の違いは、メガファーマの多くが高分子の抗体医薬品に軸足を置いているのに対し、塩野義や鳥居は低分子化合物が中心であるという事情も考慮しなければならない。とはいえ、JT・鳥居に関しては成長のドライバーとなる新薬を生み出す源泉の規模がここまで異なると、もはや「小さくともキラリと光る」ですらおぼつかないと言っても過言ではないのが実状だろう。今後の成長戦略さて今後は買収をした塩野義側がこれを土台にどう成長していくか? という点に焦点が移る。同社は2023~30年度の中期経営計画「STS2030 Revision」で2030年度の売上高8,000億円を目標に掲げている。現在地は2024年3月期決算での4,351億円である。単純計算すると、今回の買収でここに約1,000億円が上乗せされるが、新薬創出の不確実さを踏まえれば、2030年の目標はかなりハードルが高いと言わざるを得ない。しかも、同社は感染症領域が主軸であるため、どうしても製品群が対象とする感染症そのものの流行に業績が左右される。こうしたこともあってか前述の中期経営計画では「新製品/新規事業拡大」を強調し、既存の感染症領域のみならずアンメッド創薬などポートフォリオ拡大を掲げてきた。今回、JT・鳥居を買収することでアレルゲン領域・皮膚疾患領域へとウイングを広げることは可能になった。国内製薬業界では従来から塩野義の営業力への評価は高いだけに、今回の買収で今後のJT・鳥居の製品群の売上高伸長が予想される。とくに鳥居側には現在需要に供給が追い付かずに出荷制限となっている前述のシダキュアがあり、皮膚領域では2020年に発売されたばかりだが業績が好調なアトピー性皮膚炎治療薬のJAK阻害薬の外用剤・デルゴシチニブ(商品名:コレクチム軟膏)もある。塩野義と言えば、アトピー性皮膚炎治療薬ではある種の定番とも言われるステロイド外用薬のベタメタゾン吉草酸エステル(商品名:リンデロンVクリームほか)を有している企業でもある。実際、手代木氏も会見で「皮膚領域は今でこそそこまで強くないものの、かつてはステロイド外用薬の企業として一世を風靡し、現状でもそれなりの取り扱いはあり、このあたりの営業のフィットも非常に良い」と述べた。とはいえ、現状の両社業績をベースにJT・鳥居の製品群に対する塩野義の営業力強化を折り込んでも今後2~3年先までは売上高6,000億円規模ぐらいが限界ではないだろうか? その意味では同社が8,000億円という目標に到達するには、今後上市される新製品の売上高をかなりポジティブに予想しても、もう一段の再編は必要になるかもしれない。一方、何度も手代木氏が強調した研究開発力の強化では、塩野義の100人プラスアルファというメディシナルケミスト数にJTグループの約80人が組み込まれ、「全盛期の数にもう一度戻れる」(手代木氏)ことを明らかにするとともに、自社の研究開発リソースでは強化が及ばなかった免疫領域・腎領域にも手が届くようになるとも語った。同時に手代木氏が会見の中で語ったのは買収に至るデューディリジェンスでわかったJTのAI創薬と探索研究のレベルの高さである。「AI創薬のプラットフォームは正直に言って当社よりはるかに上で、日本の中でも相当進化している。当社の人間が見させていただいてすぐにでも一緒にやりたいと言ったほど。また、JTはフェーズ2ぐらいでのメガカンパニーへのライセンス・アウトを念頭にどうやったらそれが可能か意識をした前臨床・初期臨床試験を進めている。この点では多分当社より上を行く」以前の本連載でも私自身は日本の製薬業界は低分子創薬の世界ですらもはや後進国になりつつあると指摘したが、今回、手代木氏は“新生”塩野義製薬について「“グローバルでNo.1の低分子創薬力”を有する製薬企業となる」と大きなビジョンを掲げた。今回の件が国内製薬企業の再編へのきっかけと低分子創薬の復権につながるのか? 慎重に見守っていきたいと思う。参考1)JT

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深緑の季節、医学生への助言【Dr. 中島の 新・徒然草】(579)

五百七十九の段 深緑の季節、医学生への助言気持ちのいい毎日。花粉も最近は大したことありません。1年で最も爽やかな季節ですね。こういう日は洗濯日和!私もすっかり主夫になりました。さて、先日のこと。医学生が2人、病院見学にやって来ました。いうまでもなく、夏に行われるマッチング試験に備えてのこと。あちこちの病院を見ておき、どこを受験すべきか。それを考えるためです。面接試験の秘訣を伝授しながら、若者たちと話をするのも面白いもの。中島「面接試験でアピールすべきはガクチカだな」学生1、2「やっぱりガクチカですか!」ガクチカというのは「学生時代にチカラを入れていたこと」の略です。この専門用語が通じるのは、真面目に就職活動をしている証拠。中島「クラブ活動とかボランティアとか。なんならアルバイトでもいいぞ」学生1「僕は帰宅部なんで……」中島「何か他の人と違うことがあるだろう」学生1「強いて言えば、母子家庭ということくらいですかね」中島「それや!」どんなことでもアピール材料になります。中島「仕事から疲れて帰ってくるお母さんのために」学生1「はあ」中島「家事を引き受けているんだろ? 掃除・洗濯・炊事とか」学生1「いえ、掃除を少しやっているくらいですけど」中島「今からでもいいからやったれよ、お母さんのために」学生1「でも、家事はあんまり得意じゃないんで……」中島「面接試験のために3ヵ月間だけ頑張れよ」学生1「そんなインチキしていいんですか」中島「本当に実行したらインチキでも何でもないから」学生1「わかりました!」次は学生2です。中島「クラブ活動でいろいろと人間関係のトラブルがあっただろ」学生2「山ほどありました」中島「そいつをアピールしろ」学生2「トラブルがアピールになるんですか?」中島「それを乗り越えて今の自分があります、みたいに締めくくれ」学生2「なるほど、そうですね!」そもそも面接試験は何のためにあるのか?患者さんや職場の同僚との人間関係を上手く築けるかを見るためです。医学的知識や英語の能力は筆記試験で測定可能。でも、人柄や人間関係のスキルは対面で話してみないとわかりません。親子関係やクラブ活動は社会の縮図。まずは、そこで上手くやっているのか、が基本ですね。さすがに医学生は、一を聞いたら十を知ってくれます。中島「いくら人間関係とはいえ、彼女の話とかは出さないほうが無難だぞ」医学生1「確かに『彼女が5人います』と言ったりしたらマズイですね」中島「何っ、5人もいるのか?」医学生1「いるわけないじゃないですか!」中島「そんなことを言ったら絶対に落とされるからな、注意しろよ」医学生1、2「わかりました!」彼らと話をすると、最近の若者の動向がよくわかります。オンラインゲームに嵌まっていたとか、マラソン大会に出たとか。面接の指導を装って最新知識をアップデートするのもまた一興。夏のマッチング試験、彼らの健闘を祈りたいと思います。最後に1句五月晴れ 未来の医師に アドバイス

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尋常性ざ瘡の短時間接触療法薬「ベピオウォッシュゲル5%」【最新!DI情報】第38回

尋常性ざ瘡の短時間接触療法薬「ベピオウォッシュゲル5%」今回は、尋常性ざ瘡治療薬「過酸化ベンゾイル(商品名:ベピオウォッシュゲル5%、製造販売元:マルホ)」を紹介します。本剤は、わが国初の尋常性ざ瘡の短時間接触療法薬であり、外用薬の患部への接触を短時間にすることで、副作用を軽減しながら治療効果を発揮することが期待されています。<効能・効果>尋常性ざ瘡の適応で、2025年3月27日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>1日1回、洗顔後、患部に適量を塗布し、5~10分後に洗い流します。<安全性>副作用として、紅斑(5%以上)、皮膚剥脱(鱗屑・落屑)、刺激感、そう痒、皮膚炎、接触皮膚炎(アレルギー性接触皮膚炎を含む)、びらん、皮脂欠乏性湿疹、AST増加(いずれも5%未満)、乾燥、湿疹、蕁麻疹、間擦疹、乾皮症、脂腺機能亢進、腫脹、ピリピリ感、灼熱感、汗疹、違和感、皮脂欠乏症、ほてり、浮腫、丘疹、疼痛、水疱、口角炎、眼瞼炎、白血球数減少、白血球数増加、血小板数増加、血中ビリルビン増加、ALT増加、血中コレステロール減少、血中尿素減少、呼吸困難感(いずれも頻度不明)があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、にきび(尋常性ざ瘡)を治療する塗り薬です。2.にきびの原因菌(アクネ菌など)が増えるのを抑え、にきびの原因となる毛穴のつまりを改善します。3.1日1回、洗顔後、患部に塗布し、5~10分後に洗い流してください。眼、口唇、その他の粘膜や傷口は避けてください。4.この薬には漂白作用があるので、髪や衣料などに付着しないように注意してください。5.この薬を使用中は、強い日光に当たるのをなるべく避けるようにしてください。6.過敏反応や強い皮膚刺激症状が現れたときは使用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。<ここがポイント!>尋常性ざ瘡は、一般的に「にきび」として知られる炎症性疾患です。好発部位は顔面や胸背部などの脂漏部位で、思春期以降に発生しやすく、病因にはホルモンバランスの乱れ、皮脂の過剰産生、角化異常、Cutibacterium acnes(C. acnes)などの細菌の増殖が複雑に関与しています。過酸化ベンゾイルは強力な酸化作用を持ち、尋常性ざ瘡の原因菌であるC. acnesなどの細菌に対する抗菌作用と、閉塞した毛漏斗部での角層剥離作用を有しています。国内では2.5%のゲルおよびローション製剤が販売されていますが、1日1回洗顔後に患部に塗布する必要があり、刺激やかぶれなどの副作用に加え、衣類に対する脱色作用に注意が必要です。本剤は、国内初の短時間接触療法(Short contact therapy)用ゲル製剤であり、既承認医薬品のゲル製剤(商品名:ベピオゲル2.5%)の新用量医薬品として開発されました。本剤は過酸化ベンゾイルを5%含有しており、外用薬の患部への接触を短時間にすることで副作用を軽減しながら治療効果を発揮します。商品名に「ウォッシュ」とあるように、1日1回、洗顔後に患部に塗布したのち、5~10分後に洗い流すという用法が特徴です。本剤は、高濃度の主薬成分を含む製剤を塗布部位から手早く除去できるように、洗浄力の高いアニオン性界面活性剤2種類を配合しています。顔面に尋常性ざ瘡を有する患者を対象とした第III相プラセボ対照試験(M605110-05試験)において、主要評価項目である治療開始12週後のベースラインからの総皮疹数の減少率(最小二乗平均値)は、本剤群55.90%(両側95%信頼区間:49.89~61.90)であり、プラセボ群の43.85%(38.06~49.64)と比較して統計学的に有意な差が認められました。この結果により、プラセボ群に対する本剤群の優越性が検証されました。

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アトピー性皮膚炎へのレブリキズマブ、5月1日から在宅自己注射が可能に/リリー

 日本イーライリリーは、アトピー性皮膚炎治療薬の抗ヒトIL-13モノクローナル抗体製剤レブリキズマブ(商品名:イブグリース皮下注250mgオートインジェクター/同シリンジ)について、厚生労働省の告示を受け、2025年5月1日より在宅自己注射の対象薬剤となったことを発表した。 レブリキズマブは2024年5月に発売され、既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎に使用される皮下投与製剤。これまで、初回以降2週間隔(4週以降は患者の状態に応じて4週間隔も可能)で通院のうえ院内での皮下投与が必要であった。在宅自己注射の対象薬剤となったことに伴い、医師が妥当と判断した患者については、十分な説明およびトレーニングを受けたうえで在宅での自己注射が可能となる。

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通院あれこれ【Dr. 中島の 新・徒然草】(578)

五百七十八の段 通院あれこれ大阪では爽やかな日々が続いています。暑からず寒からず、花粉の飛散もみられません。家の外は深緑、青空、白い雲!思わず携帯の待ち受け画面用に写真を撮りました。さて、今日もいろいろな患者さんがやって来る脳外科外来。それぞれに人生ドラマがあり、世の中の広さを感じます。まずは80代の男性患者さん。以前はお一人で通院していたのですが、徐々に足腰が弱り、道に迷うことしきり。そのため、3年ほど前から社会人になったばかりのお孫さんが付き添うようになりました。しかしこの付き添い、双方ともに大変なようです。患者さんご本人は、孫娘にあれこれ指図されるのがどうにも気に入りません。一方でお孫さんも、お祖父さんが言うことを聞いてくれないので、イライラしてしまいます。たとえばこの患者さん、お風呂に入るのを極端に嫌がり、1週間に1度入ればいいほうなのだとか。歯磨きもしないため、外来の前日には、お孫さんにガミガミ言われながら何とか入浴し、当日朝に歯を磨いたそうです。そんな二人を前に、私は真面目な顔で患者さんに言いました。中島「『老いては孫に従え』ですよ。お経にも書いてあるでしょう」この患者さんは熱心な仏教徒です。もちろん、そんなこと、お経のどこにも書かれていません。ただのギャグのつもりでした。しかし、この患者さん、真顔でこう返してきたのです。患者「先生、それは知っています。だから孫娘の言うことはできるだけ守っているんです」するとすかさずお孫さんが「お祖父ちゃん、嘘ばっかり。私の言うことを何も聞かないじゃないの!」と言い、思わず私も笑ってしまいました。とにかく3ヵ月に1度、私の外来に歩いて来ることを目標にしているのだとか。この点については、お二人の意見は一致していました。次に紹介したいのは、超高齢のご夫婦です。なんと、二人の年齢を合わせると194歳!私はいつも「もう少し頑張ったら、夫婦合わせて200歳になりますね!」と励ましています。最近は100歳を超える方も多いそうですが、このご夫婦のように合計200歳近くになっても歩いて外来通院している例は、きわめて珍しいことでしょう。実はこのご夫婦のかかりつけ医である○○先生は、私もよく知っているのです。そのためでしょうか、奥さんがふと言い出しました。奥さん「そうだ、中島先生。○○先生も誘って一緒に食事に行きましょうよ」私は「それもいいですねえ」と適当に受け流していたのですが、奥さんは引き下がりません。奥さん「本気ですよ。○○先生にも都合を聞いておきますからね。近々、行きましょう」ここまで言われたら、もう冗談では済まされません。思わず「確かに……生きているうちに行かないとな」と口にしてしまったのです。すると横にいた看護師さんに「先生、それは洒落になりませんよ」と突っ込まれてしまいました。頭の中で思ったことが全部口から出てしまう私の悪癖、何とかしないといけませんね。そして最後に、60代の男性患者さんのお話です。この方は3ヵ月に一度、薬をもらうために外来に来ることになっていますが、体調が良いときにはほとんど顔を見せません。私は長い間この方を担当していますが、前半はお父さんが代わりに来ていました。「倅は仕事が忙しくて」と言いながら。お父さんが亡くなった後は、奥さんが代理です。「主人は自分の調子が良かったら病院に興味がないみたいなんです」と呆れながら。そんな患者さんが久しぶりに外来に現れたので「これは何かあったな」と思っていたところ、案の定、1週間ほど前に痙攣発作を起こしたとのこと。「先生、薬をサボっていたら痙攣が起こってしまいました。やっぱり飲まないといけませんね」と、今回ばかりは反省している様子です。私はここぞとばかり説教しました。中島「薬を飲んでいるから発作が起きないんです。勝手にやめたらだめですよ」さすがに患者さんは神妙な顔で頷いています。中島「せっかく診察に来たのだから、血液検査もしておきましょう。こればかりは奥さんが代理というわけにいきませんから」ちょうど良い機会なので、抗痙攣薬の血中濃度や副作用の有無をチェックします。それにしてもこの患者さんの場合、ご本人が顔を見せないときは「きっと体調が良いんだな」と好意的に受け止めるしかありませんね。こうしてみると、患者さんの人生は本当にいろいろ。外来診療は健康上の問題解決がメインですが、患者さんたちが明るく楽しく前向きに生きていくためのお手伝い、という側面もあるのではないかと思います。最後に1句深緑の 外来通院 それぞれに

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日本と海外の診療ガイドライン比較を効率化するプロンプト【誰でも使えるChatGPT】第3回

皆さん、こんにちは。近畿大学皮膚科の大塚です。前回は、ChatGPTを「病態把握と鑑別診断」のブレーンストーミング・パートナーとして活用するプロンプトをご紹介しました。患者さんの症状から考えられる疾患をリストアップさせ、見落としを防ぐ一助とする使い方でしたが、診断プロセスを検討する際のお役に立てたでしょうか。さて、シリーズ第3回となる今回は、診断後の「治療方針決定」に関わる場面での活用法です。とくに「日本と海外の診療ガイドラインの違い」を、効率的に把握するためのプロンプトをご紹介します。ご存じのとおり、多くの疾患には国内外で作成された診療ガイドラインが存在します。日本のガイドラインは、国内の保険制度や医療実態、日本人におけるエビデンスに基づいて最適化されていますが、一方で、海外のガイドライン、とくに欧米のものは、新薬の承認状況や治療アルゴリズムの考え方に違いが見られることがあります。最新の国際的な治療動向を把握し、自らの診療の参考にしたり、患者さんへの説明に役立てたりするためには、これらのガイドラインを比較検討することが非常に有益です。しかし、複数の言語で書かれた長大なガイドラインを読み込み、比較点を抽出するのは、多忙な日常診療の中ではなかなか骨の折れる作業ですよね。そこで役立つのが、今回のプロンプトです。関連サイトChatGPT(疾患名)における日本と海外(例:米国、欧州など)の診療ガイドラインを比較し、とくに治療法の推奨に関する主な相違点を解説してください。ここで(疾患名)には、比較したい具体的な疾患名、たとえば「アトピー性皮膚炎」や「尋常性乾癬」などを入力します。必要であれば、比較対象にしたい海外の地域(米国皮膚科学会[AAD]、欧州皮膚科学性病学会[EADV]など)を指定すると、より的確な情報が得られやすくなります。アトピー性皮膚炎における日本皮膚科学会の診療ガイドラインと、欧州皮膚科フォーラム(European Dermatology Forum)のガイドライン(またはAADガイドライン)を比較し、とくに中等症~重症例に対する全身療法の推奨(生物学的製剤やJAK阻害薬の位置付けなど)に関する主な相違点を簡潔に解説してください。ChatGPTからの回答例以下に、日本皮膚科学会(JDA)診療ガイドライン(2021年改訂)と、欧州皮膚科フォーラム(EDF 2022)および米国皮膚科学会(AAD 2023)の中等症~重症アトピー性皮膚炎に対する全身療法の位置付けを比較し、主な相違点を簡潔にまとめます。◆比較の焦点:中等症〜重症アトピー性皮膚炎の全身療法(生物学的製剤・JAK阻害薬)画像を拡大する◆解説・まとめ日本(JDA)は依然としてシクロスポリンを中心にした従来の免疫抑制薬を重視しつつ、デュピルマブやJAK阻害薬は新たな選択肢として位置付ける慎重な姿勢が見られます。欧州(EDF)はdupilumabを最も標準的な治療と認識しており、JAK阻害薬は代替的選択肢にとどまります。米国(AAD)はdupilumabとJAK阻害薬の両方を初回治療の選択肢としており、より柔軟な治療戦略を示しています。ご要望があれば、それぞれのガイドラインの具体的な記述や推奨グレードもご紹介いたします。その際は、お知らせください。このように、ChatGPTに尋ねることで、膨大なガイドラインの中から比較すべきポイントや主な違いを短時間でリストアップさせることが可能です。これにより、「どこに注目して原文を読み込むべきか」という当たりをつけることができます。ただし、今回も重要な注意点があります。1.情報の鮮度と正確性ChatGPTが参照しているガイドラインのバージョンが最新であるとは限りません。必ず、回答で示されたガイドライン名や発行年を確認し、必要であれば最新版の原文を参照してください。2.最終判断は医師自身でAIが示す比較・解説はあくまで「要約」や「たたき台」です。治療方針の最終決定は、必ず一次情報であるガイドライン本文や関連論文を確認し、個々の患者さんの状況に合わせて医師自身が行う必要があります。3.解釈のニュアンスガイドラインの推奨度(強く推奨、条件付き推奨など)の微妙なニュアンスは、AIの要約だけではつかみきれない場合があります。重要な判断に関わる場合は、原文での確認が不可欠です。このプロンプトは、国際的な標準治療や最新の考え方を効率的にキャッチアップし、日々の診療に深みを持たせるための「情報収集アシスタント」として活用できるでしょう。次回は、患者さんへの説明資料作成をサポートするプロンプトなど、また別の角度からの活用法をご紹介できればと考えています。どうぞお楽しみに。

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円形脱毛症の予後に慢性炎症性疾患の併存が影響

 慢性炎症性疾患(CID)の併存が円形脱毛症(AA)の予後に影響を与えるとするリサーチレターが、「Allergy」に1月8日掲載された。 ボン大学(ドイツ)のAnnika Friedrich氏らは、CIDの併存とAAの予後に関する臨床的特徴との関連性について検討するために、主に中央ヨーロッパ系のAA患者2,657人から取得した自己申告データを使用し、包括的な分析を実施した。全体として、AAコホートの患者のうち53.7%が1つ以上のなんらかのCID併存を報告しており、そのうち44.5%がアトピー性CID、17.4%が非アトピー性CIDであった。 解析の結果、アトピー性皮膚炎(AD)、気管支喘息、慢性甲状腺炎(橋本病)のいずれかを併発している患者では、併存CIDを有さない患者と比較して、AAの早期発症、重症化、長期化の報告率が有意に高いことが分かった。鼻炎または白斑を併発している患者では、AAの長期化リスクが有意に上昇した。気管支喘息を併発している患者では、ADまたは鼻炎を併発している患者と比べて、AAの早期発症、重症化、長期化リスクがより高かった。CIDの併存は、AAの発症年齢や重症度よりも、有病期間との関連が顕著であった。早期発症、重症、長期化したAA患者の方が、遅発性、軽症、長期化しないAA患者より、アトピー性併存疾患の報告数が有意に多かった。アトピー性併存疾患が1つ増えるごとに、早期発症、重症化、長期化するオッズがそれぞれ1.179、1.130、1.202上昇した。AAの平均発症年齢は、AD、気管支喘息、鼻炎の全てを有する患者の方が、AAのみを有する患者と比べてほぼ10年早かった。 著者らは、「われわれの研究結果は、異なる併存疾患の組み合わせが、予後の異なるAAのサブタイプを示唆している可能性を示した」と述べている。

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