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新規作用機序の蕁麻疹経口薬「ラプシド錠25mg」【最新!DI情報】第66回

新規作用機序の蕁麻疹経口薬「ラプシド錠25mg」今回は、慢性蕁麻疹治療薬「レミブルチニブ(商品名:ラプシド錠25mg、製造販売元:ノバルティスファーマ)」を紹介します。本剤は慢性蕁麻疹の新規経口薬であり、既存治療で効果不十分な慢性蕁麻疹患者にとってより利便性の高い治療選択肢となると期待されています。<効能・効果>特発性の慢性蕁麻疹(既存治療で効果不十分な患者に限る)の適応で、2026年6月19日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人にはレミブルチニブとして1回25mgを1日2回経口投与します。<安全性>副作用として、上気道感染、点状出血(いずれも1~5%未満)、紫斑、挫傷、斑状出血、鼻出血、歯肉出血(いずれも1%未満)、結膜出血(頻度不明)があります。<患者さんへの指導例> 1.この薬は、蕁麻疹の症状を誘発する原因が特定されない蕁麻疹に用いられる治療薬です。ブルトン型チロシンキナーゼを阻害することで、蕁麻疹の症状を引き起こす物質や炎症を起こす物質の放出を抑えて症状を緩和します。 2.抗ヒスタミン薬の増量など適切な治療を行っても、日常生活に支障を来すほどの症状を繰り返して継続的に認められる場合に追加で使用します。 3.妊娠する可能性がある人は、この薬を使用している間および最後に使用してから1週間は、適切な避妊をしてください。 4.この薬を使用している間は生ワクチン(麻しん、おたふくかぜ、風しん、水痘など)の接種はできません。 <ここがポイント!> 慢性特発性蕁麻疹(CSU)は、明確な原因や誘因が特定できない蕁麻疹が6週間以上持続する疾患です。蕁麻疹による紅斑やそう痒、膨疹などの症状は、肥満細胞からヒスタミンなどの炎症性ケミカルメディエーターが放出されることによって引き起こされます。蕁麻疹の治療には、原因や悪化因子の除去・回避が重要となりますが、これらが不明なCSUでは薬物療法が治療の中心となります。薬物療法では、主に第2世代ヒスタミンH1受容体拮抗薬が用いられますが、一部の患者では症状が残存することがあります。第2世代抗ヒスタミン薬で効果不十分な場合には、生物学的製剤であるオマリズマブやデュピルマブが治療の選択肢となります。しかしながら、これらの薬剤はいずれも皮下投与製剤であり、自己注射や通院に伴う身体的・心理的負担が生じる場合があります。レミブルチニブは、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)に対して高い選択性を示すBTK阻害薬です。本剤はIgEまたはIgG自己抗体によりFcイプシロン受容体Iの架橋が誘発されて生じるシグナル伝達を阻害することで、肥満細胞および好塩基球からのヒスタミンなどの炎症性メディエーターの放出を抑制します。本剤は1日2回服用の経口薬であるため、既存の生物学的製剤で必要となる自己注射や定期的な通院に伴う負担はなく、患者にとってより利便性の高い治療選択肢となり得ます。第2世代抗ヒスタミン薬で効果不十分な18歳以上のCSU患者を対象とした国際共同第III相試験(A2301試験、REMIX-1試験)において、主要評価項目である投与12週後の週間蕁麻疹活動性スコア(UAS7)のベースラインからの変化量は、本剤群で-20.02±0.716、プラセボ群で-13.79±0.980でした。本剤群とプラセボ群の群間差は-6.22(95%信頼区間:-8.45~-4.00)であり、本剤群はプラセボ群と比較して蕁麻疹症状(そう痒および膨疹)を統計学的に有意に低減しました(反復測定混合モデル、調整済みp<0.001)。

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病名や薬物治療手順を一部変更、「蕁麻疹診療ガイドライン」改訂/日本皮膚科学会

 国際ガイドラインの改訂や病態解明の進展、新たな生物学的製剤の登場などを背景に、8年ぶりの改訂版となる「蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版)」が2026年4月に公開された。病型分類および病名の一部変更や治療アルゴリズムのアップデートが行われた今回の改訂について、ガイドライン策定委員会の委員長を務めた福永 淳氏(大阪医科薬科大学)が第125回日本皮膚科学会総会で講演した。慢性蕁麻疹→慢性特発性蕁麻疹、アスピリン蕁麻疹→NSAID誘発蕁麻疹へ 蕁麻疹の病型について、特発性の蕁麻疹、刺激誘発型の蕁麻疹、血管性浮腫、蕁麻疹関連疾患という4つの大分類に変更はないが、その下の分類や病名がいくつか変更された。まず、特発性の蕁麻疹は「急性特発性蕁麻疹(発症後6週間以内)」と「慢性特発性蕁麻疹(発症後6週間超)」に、“特発性”という言葉を加える形に病名が変更された。 刺激誘発型の蕁麻疹は、食物依存性運動誘発アナフィラキシーがアレルギー性蕁麻疹の一部であるという考え方に基づき、別分類されていた2018年版から、アレルギー性の蕁麻疹(食物依存性運動誘発アナフィラキシーを含む)という表記に変更された。またアスピリン蕁麻疹は、アスピリンでのみ生じるという誤解を生む可能性があることから、NSAID誘発蕁麻疹と改めた。 血管性浮腫に関しては、「マスト細胞起因性」および「非マスト細胞起因性」という中分類を新たに設け、非マスト細胞起因性の病型の1つとして「メディエーター不明の血管性浮腫」が追加された。 さらに、病態に関する記述も最新の知見をもとに大きくアップデートされた。その中で最大の特徴といえるのが、すべての文言において「肥満細胞」という名称を削除し、「マスト細胞」に統一した点である。「脂肪細胞(肥満に関わる細胞)」と混同することを避けるための配慮であり、疾患の正しい理解を促進する狙いがあるという。日本独自の疫学データを追加、慢性特発性蕁麻疹患者のボリュームゾーンは40〜50代 これまでの日本のガイドラインでは、蕁麻疹に関する詳細な疫学データが不足していたが、今回の改訂では新たに医療情報データベースなどを用いた研究結果が追加された。日本人の慢性特発性蕁麻疹の推定有病率は1.2〜1.6%であり、全国でおよそ200万人の患者が存在すると推測される。新規発症率はおよそ0.7〜0.8%である。 福永氏は、「慢性特発性蕁麻疹の有病率はヨーロッパ諸国と比較して、東アジアでより高い傾向がある。年齢分布を見ると、実は0〜9歳の小児期に新規発症の大きなピークが存在する。しかし、この年代の多くは自然治癒に向かうため、実際に医療機関で継続的な治療を要する患者のボリュームゾーンは40~50代となる。また、男女比は2対3で女性に多いことも明らかになった」と語った。網羅的検査の実施は推奨されない 検査に関しては、2018年版から「原因検索のための網羅的な検査」を推奨しない方向性であることに変更はないが、今回その姿勢をより明確に打ち出している。I型アレルギーの検査実施については、1型アレルギーが疑われる詳細な問診・病歴がある場合にのみ、疑わしい抗原に対して個別の検査を選択的に行うべきとされた(CQ1)。急性特発性蕁麻疹(CQ2)および慢性特発性蕁麻疹(CQ3)に対する検査についても、全例でルーチンに実施する必要はないとしたうえで、推奨文では以下のように記載された。急性特発性蕁麻疹:発熱などの全身症状を伴い,細菌やウイルスの感染が疑われる場合には血算・血清・生化学検査などの一般的な検査を行ってもよい慢性特発性蕁麻疹:非定型的な症例、難治性の症例などで、背景因子、合併症の存在が疑われる場合は抗ヒスタミン薬やオマリズマブの反応性を予測できる可能性があり、それらに応じた検査(血清総IgE値,甲状腺自己抗体,CRPの測定)を行ってもよいPROMs活用を推奨し、治療の第1目標を変更 今回のガイドライン策定委員会で全員一致で推奨に強い合意が得られたのが、UAS7(Urticaria Activity Score over 7 days)や、UCT(Urticaria Control Test)などの患者報告アウトカム尺度(PROMs:Patient-Reported Outcomes Measures)を用いた疾患コントロール状態の客観的評価である。治療の第1目標は、2018年版での「治療により症状が現れない状態」から「治療により生活に支障がない状態」と変更された。またその目安をUCTのスコアで表しており、第1目標(治療により生活に支障がない状態)がUCT12点以上、第2目標(治療により症状が現れない状態)がUCT16点と明記された。福永氏は、「日常診療のアセスメントの際には、ぜひUCTを活用して客観的な評価を行っていただきたい」と呼びかけた。薬物治療はStep 2にオマリズマブまたはデュピルマブ、ステロイドは「急性増悪時のみ」 治療手順については、急性と慢性でアルゴリズムが明確に分けられた。急性は主に救急外来などでの短期間の対応を想定している。薬物治療手順は、慢性特発性蕁麻疹について以下が示された。Step 1:第2世代抗ヒスタミン薬Step 2:Step1に追加してオマリズマブまたはデュピルマブStep 3:Step1に追加してシクロスポリンまたは試行的治療 2018年版でStep 2とされていたH2-拮抗薬、抗ロイコトリエン薬、トラネキサム酸については、国際ガイドラインやエビデンスレベルの低さなどを背景に、Step1の補助的治療としての位置付けに変更された。 また、Step 3に含まれていた副腎皮質ステロイドに関しては、「急性増悪時のみ」とされて、プレドニゾロン換算量0.2mg/kg/日未満で2週間以内の使用に限定することが明記された。

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麻しん・おたふくかぜ・風しんの3種混合生ワクチン「ミムリット皮下注用」【最新!DI情報】第65回

麻しん・おたふくかぜ・風しんの3種混合生ワクチン「ミムリット皮下注用」今回は、「乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチン(商品名:ミムリット皮下注用、製造販売元:第一三共)」を紹介します。乾燥弱毒生麻しん風しん混合ワクチンに、おたふくかぜワクチンを混合することで、接種回数が減少して非接種者の負担軽減につながることが期待されています。<効能・効果>麻しん、おたふくかぜおよび風しんの予防の適応で、2026年5月11日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>本剤を添付の溶剤(日本薬局方注射用水)0.7mLで溶解し、その0.5mLを1回皮下に注射します。生後12月以上の者であれば性、年齢に関係なく接種できます。接種年齢は、学会などの最新の情報を考慮して総合的に判断します。<安全性>重大な副反応として、ショック、アナフィラキシー、免疫性血小板減少症、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、脳炎・脳症、けいれん(熱性けいれんを含む)、無菌性髄膜炎、難聴、精巣炎、急性膵炎(いずれも頻度不明)があります。その他の副反応として、発熱(33.6%)、注射部位の紅斑(22.5%)、腫脹、疼痛(いずれも注射部位、5%以上)、内出血、硬結(いずれも注射部位)、嘔吐、湿疹、発疹、上咽頭炎(いずれも0.5~5%未満)、注射部位のそう痒感、下痢、鼻漏、上気道の炎症、紅斑、丘疹、斑状丘疹状皮疹、蕁麻疹(いずれも0.5%未満)があります。<患者さんへの指導例> 1.このワクチンは、麻しん、おたふくかぜ、風しんの混合ワクチンです。麻しんウイルスとムンプスウイルス、風しんウイルスを弱毒化した生ワクチンで、接種後に体の中でワクチンウイルスが増え、それぞれの抗体ができます。 2.生後12月以上の者であれば性別、年齢に関係なく接種できます。 3.ワクチン接種に伴う副反応として、接種部位が接種直後から数日中に赤くなる、硬くなる、腫れることがありますが、通常、一過性で消失します。 4.妊婦は接種できません。 5.妊娠可能な女性は、あらかじめ約1ヵ月間避妊した後に接種します。また、ワクチン接種後約2ヵ月間は妊娠しないように注意してください。 <ここがポイント!>麻しんは、麻しんウイルスによって引き起こされる感染症で、「はしか」とも呼ばれています。感染後、10〜12日の潜伏期間を経て、38℃前後の発熱、発疹、咳、鼻汁などの症状が現れます。重症化した場合には、肺炎や脳炎を引き起こすこともあります。流行性耳下腺炎は、ムンプスウイルスによって引き起こされる感染症で、「おたふくかぜ」とも呼ばれています。感染後、2〜3週間の潜伏期間を経て、片側または両側の耳下腺部に炎症や疼痛が生じ、発熱、頭痛、倦怠感などの症状が現れます。通常は1~2週間で軽快しますが、合併症として無菌性髄膜炎、精巣炎、卵巣炎、膵炎、難聴などを引き起こすことがあります。とくに難聴は高度となることが多く、発症すると不可逆的な聴覚障害が残ることがあります。従来はまれな合併症とされていましたが、近年では0.1〜0.25%程度の発症率という報告があります。風しんは、風しんウイルスによって引き起こされる感染症です。感染後、2~3週間の潜伏期間を経て、発熱、発疹、リンパ節の腫れなどの症状が現れます。風しんに対する免疫力が不十分な妊婦が感染すると、出生児に心疾患、白内障、感音性難聴、精神運動発達遅延などの先天性異常が認められることがあります。妊娠中は弱毒生ワクチンを接種できないため、抗体を持たない、あるいは抗体価の低い妊婦は、風しん流行時における感染に十分注意することが重要です。ミムリットは、麻しん/おたふくかぜ/風しん(measles/mumps/rubella:MMR)ワクチンであり、麻しん、おたふくかぜおよび風しんの各原因ウイルスを弱毒化した生ウイルスを含む3種混合ワクチンです。本邦では、1989年から4年間にわたってMMRワクチンが小児の予防接種に使用されていましたが、当時のおたふくかぜワクチンの副反応として発熱、嘔吐、けいれんなどを伴う無菌性髄膜炎が高頻度に発生し、大きな社会問題となりました。そのため、MMRワクチンは使用が中止され、以降は麻しんおよび風しんの予防には単独ワクチンまたはMRワクチンの定期接種が、おたふくかぜの予防には単独ワクチンの任意接種が行われてきました。しかし、その結果、国内のおたふくかぜワクチンの接種率は30〜40%程度にとどまり、数年ごとにおたふくかぜの流行が繰り返されてきました。こうした状況を受け、2013年12月に厚生労働省から一般社団法人日本ワクチン産業協会に対して安全性の高いMMRワクチンの開発要請が出されました(健感発1216第1号)。さらに2018年5月には、予防接種推進専門協議会から「おたふくかぜワクチンの定期接種化に関する要望」が厚生労働省健康局(現健康・生活衛生局)に提出されました。このような背景から、MMRワクチンの開発が進められ、弱毒生麻しんウイルス(AIK-C株)、弱毒生風しんウイルス(高橋株)および弱毒生ムンプスウイルス(RIT4385株)を混合した本剤が承認されました。なお、RIT4385株は、無菌性髄膜炎の発現頻度が低いムンプスウイルス株として、海外では小児の定期接種に用いられるMMRワクチンに広く使用されています。 日本人健康小児を対象とした国内第III相臨床試験(VN0102-A-J301試験)において、主要評価項目である治験薬接種42日後の麻しんウイルスに対する抗体保有率は、本剤群99.8%(95%信頼区間[CI]:98.7~100.0)および対照群100.0%(95%CI:99.1~100.0)で、群間差は−0.2%(95%CI:−1.3~0.7)でした。また、風しんウイルスに対する抗体保有率は、本剤群99.5%(95%CI:98.3~99.9)および対照群99.5%(95%CI:98.3~99.9)で、群間差は0.0%(95%CI:−1.3~1.3)でした。麻しんウイルスおよび風しんウイルスに対する抗体保有率は、群間差の95%CIの下限値(いずれも−1.3%)が非劣性マージンである−10%を上回ったことから、本剤の対照薬に対する非劣性が検証されました。一方、ムンプスウイルス(Genotype D)に対する抗体保有率は、本剤群80.6%(95%CI:76.5~84.4)および対照群88.1%(95%CI:84.6~91.0)で、群間差は−7.5%(95%CI:−12.5~−1.9)でした。群間差の95%CIの下限値(−12.5%)が非劣性マージンである−10%を下回ったことから、本剤の対照薬に対する非劣性は検証されませんでした。しかしながら、本剤のムンプスウイルスに対する抗体保有率は80.6%であり、おたふくかぜの発症予防効果が確認されている海外MMRワクチンの試験成績と比較しても遜色のない結果でした。また、J302試験(低力価および高力価製剤の国内第III相臨床試験)およびJ303試験(ワクチンを1回接種したことが明らかな小児を対象とした国内第III相臨床試験)におけるムンプスウイルスに対する抗体保有率はいずれもおおむね95%以上でした。

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遺伝性血管性浮腫の疾患認知はまだ不十分/CSLベーリング

 CSLベーリングは、5月16日の「HAE Day」によせて都内でメディアセミナーを開催した。 遺伝性血管性浮腫(HAE)は、生まれつき血液中にあるタンパク質C1インヒビター(C1-INH)の不足・機能低下が原因で浮腫を生じる疾患。指定難病に認定され、皮膚や腹部(腸)など、全身に浮腫が生じ、とくに咽喉で腫れると呼吸困難に陥り、命に関わるケースもある。わが国には、診断・治療中の患者は430人前後であり、未診療の患者も相当数がいると推定されている。また、海外のデータでは、人口5万人に1人の割合で患者がいるとされる。なお、同社ではHAEの急性発作の発症抑制薬として、ヒト抗活性化第XII因子モノクローナル抗体製剤ガラダシマブ(商品名:アナエブリ)を発売している。 セミナーでは、専門医によるHAEの病態、診療の現状や医療者と患者のコミュニケーションの在り方、患者・患者家族からの声として社会生活上の課題、患者会の活動などが講演された。HAEと診断されても続く患者の苦しみ 「医療者の視点から見た『HAE Dayの意義』と『HAEの現状』」をテーマに秀 道広氏(広島市立病院機構 理事長/広島大学名誉教授)がHAEの病態と診療の概要、患者が抱える課題について講演を行った。 HAEは限局性に浮腫が突然現れ、一定時間(数時間~数日)後に跡形もなく消失する疾患である。似た病態に蕁麻疹があるが、蕁麻疹は皮膚の表層で起こるのに対し、HAEでは血管が拡張することから皮膚の深部で起こる。一見すると鑑別が難しいが、HAEでは蕁麻疹治療薬が無効なケースがほとんどであるために鑑別診断の一助となる。浮腫は、皮膚、粘膜のさまざまな部位に出現し、部位、時間などの規則性はない(ただ夜間、早朝に多いとされている)。皮膚症状のほかには頭痛や倦怠感、悪心・嘔吐、腹痛などの消化器症状、咽喉の浮腫による呼吸困難など生命の危険もある。また、直接的な誘因は不明であり、時間経過とともに自然消失する。 HAEの発症はC1-INH(タンパク分解酵素阻害因子)が欠損することで起こり、確定診断ではC1-INHの活性測定、C4の測定などが行われる。しかし、症状が多様な粘膜症状であり、自然消失する疾患のため医師でも見逃しやすく、誤診しやすい疾患である。また、患者自身も診療を放置しているケースもあり、診療への障壁が高いという。そのためにHAEの診断率は20%(欧米では70%)、医師の認知率は45%であり、確定診断までの期間も平均16年と言われている1)。 HAEの治療では、このC1-INHを補う治療薬での治療が主体となり、発作治療(発作出現後)、短期発作抑制治療(発作リスク前)、長期発作抑制治療(継続的)が行われている。しかし、すべての治療薬が保険適用というわけではない。また、HAE発作ではC1-INH以外の分子によるブラジキニン誘導や修飾もあり、どの治療薬の効果が高いのかは病型・病態により異なる。同時に治療薬への反応性も患者ごとに時期により変化するため、個々の治療計画の立案、調整が必要となる。 秀氏は自験例として33歳・女性の患者を提示。HAE患者では、確定診断後もいつ起こるかわからない発作への不安や頻繁な発作、緊急受診で仕事など社会生活に支障があること、また、専門医療機関以外での診療フォローでも課題があると指摘する。 現在、HAEの治療目標とコンセンサスステートメントがいくつか公表され、そのいずれにも「患者の生活の健全化」や「疾病負荷のない日常生活」と文言が記載されている。診療もこれらを目指し、「医師・医療者も臨床知見の積み上げやデータの蓄積、患者は日常生活での注意点の確認などを双方で情報交換することが重要」と秀氏は提言する。そのために、現在、医師や患者会、製薬企業も加えたコンソーシアムの設立や研究的な組織を立ち上げて活動しているという。 最後に秀氏は「HAEは、診断が始まってからが大切であり、5月16日の全国のライトアップなど大きな取り組みを含めて社会に啓発することで、疾患の理解が進むことを望む」と期待を語り、講演を終えた。医療者と患者がお互いの視点をすり合わせる対話の重要性 「医療社会学者の視点から見た『社会生活における医療者を含めた関係者と患者さんのコミュニケーションの課題とあり方』」をテーマに松繁 卓哉氏(追手門学院大学社会学部 教授)が、医師と患者の対話の重要性や不安の言語化の大切さなどを講演した。松繁氏は、主に医療におけるコミュニケーションを研究し、医療社会学の視点から講演を進めた。 医療社会学における「患者の仕事」は、「病と向き合う仕事」「日常生活の仕事」「自分史の仕事」の3つがあり、これらの仕事は医療者にあまり理解されてこなかったという。 患者は、病により「生きづらさ」や「不安」を抱えているが、これらは容易に言語化することが難しく、医療者や周囲に伝えることができなかった。そこで、「問題解決型」と「対話」でのアプローチが重要となる。 「問題解決型アプローチ」は、患者の問題を特定し、解決へ導く、科学的根拠に基づいた医療の提供によるアプローチである。「対話アプローチ」は、対話そのものが目的であり、一定の結論を導き出すものではない。対話を持続することで多様な声に耳を傾け続けることを目指すものである。患者は対話で語ることで、不安感などの内面の感情などが整理され、医療者と内面の感情を共有することができる。 患者と医療従事者の対話では、着眼点が異なる。医療者は「治癒」「寛解」などに着眼するのに対し、患者は「日々の生活」「仕事」などに着眼する。両者の視点にはずれが生じているため、このずれを融合させるため、対話を行う際に患者は4つのプロセスが必要と松繁氏は提言する。(1)心に余裕のある状態で臨む(2)そのうえで医師の説明を聞く(3)自分が理解したかどうかを確かめる(4)ちゃんと迷って、決断する 最後に松繁氏は、「自己理解とコミュニケーションは、言語化してみることから」と述べ、患者への勧めとして「『わからないこと』『不安なこと』『知りたいこと』『したくないこと』をメモにして、医療者と対話してみることを提案する」とまとめ、講演を終えた。疾患啓発活動で疾患の認知を拡大 「当事者と家族の視点:日々の現状、課題と解決策」をテーマにHAE患者会の代表である松山 真樹子氏(NPO法人HAEJ 理事長)が、自身の経験と患者の状況、患者会の活動を講演した。松山氏自身は、夫をHAEの急性発作による気道閉塞で亡くし、また、子供も同じ疾患だという。 先の講演でもあったようにHAEは確定診断まで時間がかかり、最悪の場合、誤診され不要な手術を受けるケースもあるという。患者会に参加することで、患者や患者家族の孤独感の解消や治療改善への寄与などのメリットがある。患者会の主な活動としては、疾患について社会や医療者への認知拡大に向けた活動、診療率向上に向けた取り組み、国際連携などの活動が行われている。 近年は治療環境が変化し、HAE発作への予防的な治療薬も自宅で投与できるようになり、患者の治療環境が変わる一方で、現在も患者や疾患への偏見などが存在するという。また、疾患への正確な知識の欠如、確定診断までの時間、多面的な疾患情報提供などの課題もあり、今後の対応が急がれている。こうした課題の中で「製薬企業の資材である疾患のハンドブックなどは有用であり、医師とのコミュニケーション不足や診療での地域差解消、正確な疾患知識の啓発に利用できるものとして活用していきたい」と語る。 最後に松山氏は「患者がポジティブな気持ちを持ってしっかりと病気を受け入れ、病気は自分の個性だというふうに思えるように活動していきたい」と抱負を述べ、講演を終えた。 まとめとして同社代表取締役社長の吉田 いづみ氏が「CSLベーリングの取り組み」をテーマに今後の展望を説明した。同社は45年以上HAEに取り組み、ハンドブックなどの作成で疾患啓発と患者の診療利便性向上に貢献してきた。「今後も『HAE Day』などで疾患啓発を社会に行うとともに、患者さんの声や思いを届ける活動を実施することで、孤独な患者さん、ご家族、医療関係者をつなぎ、希少疾患を巡る環境改善に貢献していきたい」と抱負を語った。

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気血水~四君子湯・四物湯・五苓散~【Dr.伊東のストーリーで語る漢方薬】第8回

気血水~四君子湯・四物湯・五苓散~前回は急性熱性疾患の六病位を解説しました。太陽病、少陽病、陽明病、太陰病、少陰病、厥陰病(けっちんびょう)ですね(図1)。図1 六病位画像を拡大する病気が進行する場合には、このようなフレームワークを使えるのですが、病気の進行があまり目立たない慢性疾患の場合に、どのように漢方薬を選んでいくかという話はまだできていません。そのため、今回は気血水を扱いたいと思います。まずは、それぞれの概念から解説していきます。気血水気(き)というのは物質的な裏付けがありません。要するにエネルギーとお考えください。最近は武術だけじゃなくて、漫画やアニメでも「気」という言葉がたくさんでてきます。あのイメージでまったく問題ありません。血(けつ)というのは赤くて循環している液体を指すため、基本的には血液と考えて構いません。実際には血液だけでなく、血液が運んでくる栄養なども血の概念に含まれているため、あまり「血=血液」と考えすぎないほうがスムーズに理解できる事柄もあります。最後の水(すい)は血液以外の体液を指します。気、血、水は互いに独立した概念とまでは言い切れません。たとえば、気は血と水がうまく循環するのに大切なものです。そのため、気血水のどこかに問題が生じると、ほかの要素にも問題が波及するということはよくあります(図2)。図2 気血水画像を拡大する少し哲学的な雰囲気の話になってしまったところもあって、わかりにくい部分もあったかもしれません。そこで、実際の症候で解説しようと思います。気逆、気鬱、気虚まず、気の問題には気逆(きぎゃく)、気鬱(きうつ)、気虚(ききょ)があります(図3)図3 気逆、気鬱、気虚画像を拡大する気逆は、エネルギーが体の下から上に突き上げる現象で、たとえば、吐き気、のぼせがこれに該当します。感冒初期に頭痛がするのも気逆の一種で、葛根湯(かっこんとう)や麻黄湯(まおうとう)、桂枝湯(けいしとう)に含まれる桂皮(けいひ)がこれを治してくれます。げっぷ、しゃっくりも気逆の一種ですね。気鬱は、体のどこかでエネルギーが痞(つか)えることです。たとえば、胸が痞える感じ。女性のヒステリー球などとよく言いますが、恋の病もこれに該当します。あとは、便秘も「お通じが悪い」って言いますよね。エネルギーの通りが悪いのです。こういったものが気鬱です。最後に気虚。これは簡単で、エネルギー不足のことです。もっとも、この気虚、つまりエネルギー不足はさらに大きく2つに分けることができて、先天的な気の不足と後天的な気の不足に分けられます。RPGでも格闘ゲームでもなんでもいいのですが、体力ゲージ、HPゲージをイメージしてください。最大HPに相当するのが先天的な気で、現在のHPに相当するのが後天的な気です。そうすると、「おにぎり」のような体力回復アイテムで回復できるのは、後天的な気の方になります。先天的な気は、生まれながらにして持っているエネルギーですが、これは腎に宿っていると漢方では考えていて、加齢とともに衰えていきます。この衰えをゆっくりにする漢方薬としては、腎気丸(じんきがん)こと八味地黄丸(はちみじおうがん)というものがあります。一方で、後天的な気というのは、食事と呼吸を通じて日常的に補給していくもので、お腹の調子を整えることが大事になってきます。そのため、後天的な気を補って気虚を治す漢方薬には、腸管に優しい生薬が含まれているんですね。人参(にんじん)はその代表格です(図4)。図4 気虚に対する漢方薬画像を拡大するお血、血虚次に血の異常をみていきます。血の循環が滞っている状態をお血(おけつ)といいます。たとえば、動脈硬化症、血栓症、あとは多血症がこれに該当します。皮下出血もそうです。あと、「血=血液」で捉えるとわかりにくいのですが、肉ばかり食べている方は、顔のお肌がガサガサに荒れてシミや吹き出物が出てきたり、赤ら顔になったりするのです。これもお血に含みます。血が足りていない状態を血虚(けっきょ)といいます。単純に貧血と考えていただいて大丈夫ですが、貧血になると目が霞んできたり、鉄欠乏であれば爪が割れてきたりと、いろいろな症状が出てきます(図5)。また、顔が青白い。こういった症状に対しては、造血機能を高めたり、出血していればそれを止めたりするために、漢方薬が用いられるわけです。たとえば、桂枝湯の回で触れた当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)は血虚に対して使えます。図5 お血、血虚画像を拡大する水毒次は水の異常です。簡単に思い浮かぶのは浮腫ですね。もちろん、浮腫も水毒のひとつです。あとは、雨が降ると頭痛がしたり、めまいがしたりする方がいますよね。あれも水毒です。気象関連片頭痛とか、メニエール病の内リンパ水腫をイメージするとわかりやすいかもしれません。花粉症の時に鼻水が出るのも水毒で、関節液が貯留するのも水毒です。胃に水がたまってポチャポチャするのも水毒です(図6)。要は水が絡んでいて、その水が赤くない。つまり血でないのなら、水毒と考えておおむね差し支えありません。そう考えると、結構広い概念ですね。図6 水毒画像を拡大する四君子湯、四物湯、五苓散ここまで、気血水の異常を説明してきました。漢方診察では、目の前の患者が気血水の異常をそれぞれどのくらいの割合で持っているのか、症状や身体所見から考えます。それをもとに、漢方薬を選んでいくという話になってくるわけです。ここで、気血水の異常を治す漢方薬として、絶対に知っておきたい漢方薬を3種類だけ紹介しておきたいと思います。それは四君子湯(しくんしとう)、四物湯(しもつとう)、五苓散(ごれいさん)です。私がナンバーズ3兄弟と呼んでいるものです。四君子湯は気虚、四物湯は血虚、五苓散は水毒を治す漢方薬ですが(図7)、それぞれに含まれている生薬を覚えるだけで、この先に出てくる気血水向きの漢方薬を簡単に理解できるようになります。図7 ナンバーズ3兄弟画像を拡大するまとめ今回の内容をまとめていきます。急性熱性疾患の六病位というフレームワークとは別に、今回は慢性期疾患でも使える気血水を説明しました。気血水の異常には、気逆、気鬱、気虚、お血、血虚、水毒が挙げられます。診察時には、症状や所見からこれらのどれに当てはまるのかを観察してから漢方薬を選びます。本連載はここまでとなります。ここから先は、CareNeTVの「Dr.伊東のストーリーで語る漢方薬」で、ナンバーズ3兄弟の助けを借りながら、気血水の異常を各論で学んでいきます。ぜひ入会してご覧ください。

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タイムアウトマーケットに行ってきた!【Dr. 中島の 新・徒然草】(633)

六百三十三の段 タイムアウトマーケットに行ってきた!良い季節になりましたね。最近は花粉に悩まされることもありません。もうすぐ梅雨の入りですが、大阪では6月上旬~中旬になるとのこと。雨の合間を縫って洗濯物を干す必要があります。さて、今回は梅田の「グラングリーン大阪」というビルの地下にある「タイムアウトマーケット」についてお話ししましょう。というのも、梅田北の再開発エリアで学会が開催されることが多くなったからです。タイムアウトマーケットは海外発のフードコート。アジアでは大阪店が最初にオープンしました。ところが、できたばかりなのに閑古鳥が鳴いているなどとYouTubeなどで揶揄されています。その理由は価格設定が強気すぎるからとのこと。オープンからまだそれほどたっていませんが、すでに撤退した店舗もあるようです。果たしてそんなに閑散としているのか?言われるほど無茶苦茶な値段なのか?平日の昼に梅田に行く用事があったので、その帰りに寄ってみました。時刻は14時30分ごろ。普通のフードコートでも客が少ない時間帯です。で、巨大な空間に自分1人かと思ったら、結構な人数が入っていました。少なめではありますが、まったく人がいないわけではありません。気になる値段のほうは、11~15時までのランチの最低が1,500円くらい。高めとはいえ、昨今の価格設定といったらこんなものでしょう。種類は、肉、メキシコ料理、英国料理、カレー、ハンバーガー、うどん、スイーツなど。なんでも、関西の有名レストランがフードコート形式で出店しているのだとか。さすがに1,500円のうどんはちょっと躊躇しますが、カツカレーなら試してみようかなと思います。フードコートのいいところは、席がいくらでも空いているということ。1人でも全然平気なこと。グループで行って、それぞれに好きな物を注文できること、などです。私は2回行って、それぞれカツカレーとハンバーガーを食べてみました。現金は使えないとのことで、使用したのは交通系ICカードです。確かに1,500円の味はしました。また行きたいとも思います。ただ、タイムアウトマーケットに行くのが難しいのは事実。もともと梅田駅周辺の地下は迷路でしたが、再開発で大変なことになっています。それを楽しもうというのであれば悪くありません。が、日差しや雨を避けて行こうとすると難しいです。正しい経路がわかっていれば、距離的には全然大したことはないのですが。また、このタイムアウトマーケットを取り巻くように、食べ物屋がたくさんありました。同じくらいの値段のする鮨とかお好み焼きとか焼き鳥屋とか。そちらのほうもカジュアルな店構えで結構にぎわっていました。これらの店も探検しなくてはいけませんね。そういえば、内科外来で隣の診察室にいる先生が学会を主催していましたが、その会場がグラングリーン大阪でした。ホームページの会長あいさつには「大阪の新名所を楽しんでください」とありましたが、そのとおりだと思います。学会場を探している先生方、この辺りも有力候補ですよ。ということで、大阪での学会に参加したら、ぜひ時間を見つけて再開発エリアに足を運んでみてください。最後に1句 梅雨入りの ダンジョン歩き 汗をかく

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アトピーは学業成績に影響するか

 アトピー性皮膚炎(AD)は、睡眠障害や併存疾患、あるいは心理社会的影響により学業成績を低下させる可能性があるが、集団ベースの縦断的研究によるエビデンスは限られている。英国・London School of Hygiene & Tropical MedicineのRita J. Iskandar氏らは、デンマークおよび英国の小児約78万人を対象とした並行コホート研究において、ADは学業成績の低下と関連するか、またその関連は疾患表現型や社会経済的背景によって異なるかどうかを検討した。JAMA Dermatology誌オンライン版2026年4月8日号掲載の報告。 本研究は、デンマークおよび英国における、ADを有する小児および有さない小児を対象とした集団ベースの並行コホート研究。デンマークでは、全国的なレジストリから1986~2000年に出生した小児を抽出し、2018年まで追跡調査を行った。英国では、Avon親子縦断研究(ALSPAC)から得られた1991~92年に出生した小児データを、国立生徒データベース(National Pupil Database)と連携させ、2009年まで追跡調査を行った。データ解析は2022年10月~2024年4月に実施された。 ADは、13歳未満での診断(デンマーク)または11.5歳までの母親から2回以上のADの報告(イングランド)と定義した。デンマークの分析では、遺伝的因子を考慮するため、AD罹患状況が異なり両親を同じくする兄弟姉妹を対象とした反復解析を実施した。 主要評価項目は、16歳時の義務教育修了時の全国統一試験における不合格の成績(2値アウトカム;ポアソン回帰による割合比)および平均学業成績スコア(連続アウトカム;線形回帰による平均差)であった。 主な結果は以下のとおり。・両研究を合わせて、計78万2,837人の小児が対象となった。・デンマーク(n=77万6,214人、AD患者1万259人、女児38万6,408人[49.8%])では、AD患者と非AD患者の間で、不合格率(12.0%vs.11.2%、調整割合比[aPR]:1.06、95%信頼区間[CI]:1.01~1.12)および平均学業成績(調整平均差:-0.06ポイント、95%CI:-0.11~-0.01)に差は認められなかった。・活動性AD患者では、非AD患者と比較して不合格率の高さとの関連がみられた(aPR:1.19、95% CI:1.03~1.37)。・兄弟姉妹間における解析でも同様の結果が得られた。・イングランド(n=6,623人、AD患者2,967人、女児3,332人[50.3%])では、AD患者は非AD患者に比べて、不合格率がわずかに低く(37.7%vs.47.4%、aPR:0.88、95%CI:0.83~0.93)、平均学業成績が高かった(調整平均差:10.48ポイント、95%CI:6.49~13.86)。・表現型分析によると、中等度-寛解型(moderate-declining)および中等度-頻発型(moderate-frequent)AD患者の成績が優れることがこれらの結果を主に説明しており、軽度-間欠型(mild-intermittent)または重度-頻発型(severe-frequent)AD患者の成績は、非AD患者または症状のほとんどないAD患者と同程度であった。・全体として、学業成績について、表現型や社会経済的背景による一貫した差異はみられなかった。 著者らは、「2つの大規模コホートにおけるトライアンギュレーション(triangulation)アプローチによる検討と多重解析により、ADは義務教育修了時の全国統一試験における学業成績の著しい低下とは関連がない可能性が高いことが示された」とし、「本結果はADを有する小児やその家族、教員や臨床医にとって安心材料となるもの」とまとめている。

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小児のアトピー性皮膚炎、確実な予防方法はないが治療の選択肢は豊富

 小児のアトピー性皮膚炎の発症を予防するために親ができることは極めて少ないことが、新たなガイドラインで示された。特別な食事療法、入浴を控えること、母乳育児、プロバイオティクスのサプリメントといった広く知られている対策が小児のアトピー性皮膚炎の予防に有効であることを示すエビデンスは見つからなかったという。一方、既にアトピー性皮膚炎を発症している小児には、皮膚のかゆみを和らげるための効果的な治療法が多くあるとしている。米国皮膚科学会(AAD)が作成したこのガイドラインは、「Journal of the American Academy of Dermatology」に4月7日掲載された。 AADによると、これは同学会が発表した初めての小児のアトピー性皮膚炎に関するガイドラインであるという。AAD会長のMurad Alam氏は、「アトピー性皮膚炎に罹患している小児は極めて多いが、症状の現れ方や経過は必ずしも成人と同じではない。アトピー性皮膚炎は小児や家族の生活の質(QOL)を低下させる可能性があるため、最善の治療が確実に行われるようにするためには、小児に特化したガイドラインが必要である」とニュースリリースで述べている。 ガイドラインを作成した研究グループが既存の医学的エビデンスを検討した結果、小児のアトピー性皮膚炎の発症を予防できる真に有効な方法はないとの結論に至った。ただし、保湿剤のみは生後6カ月~3歳の小児のアトピー性皮膚炎の発症を減少させるという目的で「条件付き推奨」の治療法として位置付けられた。条件付き推奨は、その治療法のベネフィットとリスクが拮抗している場合に示される。一方、食事療法や入浴を控えること、ビタミンDやプロバイオティクスのサプリメント、離乳食の早期導入、母乳育児、硬水の軟化、ダニなどのアレルゲンへの曝露を減らすといった他の予防法に関しては、十分なエビデンスがないと結論付けられた。 一方で、小児のアトピー性皮膚炎の治療に関しては、多くの治療法が「強い推奨」として位置付けられた。有効性が明らかにされている治療法には以下が含まれる。・皮膚の乾燥やかゆみの軽減を目的とした保湿剤・再燃時の第一選択薬となるステロイド外用薬・再燃の管理を目的としたカルシニューリン阻害外用薬(pimecrolimus〔国内未承認〕またはタクロリムス軟膏)・かゆみ軽減と再燃頻度の抑制を目的としたホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害薬(crisaborole軟膏、roflumilastクリーム〔いずれも国内未承認〕)・軽症~中等症の患者の乾燥やかゆみの重症度の軽減を目的とした外用ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬(ルキソリチニブクリーム〔日本ではアトピー性皮膚炎に対する適応は未承認〕、タピナロフクリーム)・軽症〜重症患者における炎症軽減、皮膚バリア機能の改善、乾燥やかゆみを伴う皮膚症状の軽減を目的とした局所用アリル炭化水素受容体(AhR)アゴニスト(タピナロフクリーム)・中等症~重症の患者の症状の重症度低下、再燃の減少、かゆみの軽減を目的としたモノクローナル抗体(デュピルマブ、トラロキヌマブ、レブリキズマブ、ネモリズマブ〔外用薬と併用〕)・中等症~重症の患者の症状の重症度低下、かゆみの軽減を目的としたJAK阻害薬(ウパダシチニブ、アブロシチニブ、バリシチニブ) ガイドラインではまた、入浴、ウェットラップ療法、光線療法についても小児のアトピー性皮膚炎の治療法として条件付きで推奨している。一方で、ステロイドの経口薬や注射薬の使用については急激で重度の再燃が見られた患者に限定すべきであり、長期的には使用しないことを強く推奨するとされている。さらに、外用抗菌薬の使用や薬剤と光線療法を組み合わせたPUVA療法についても実施しないことが条件付きで推奨された。 AADのアトピー性皮膚炎ガイドライン作業部会の共同委員長であるDawn Davis氏は、「このガイドラインは、患者やケア提供者、そして医学会を教育し、彼らを支援することで、アトピー性皮膚炎の小児ができる限り最善の治療を受けられるようにするために作成された。早期からの積極的な介入によって、患者やその家族は症状やQOLの改善が期待できる」と述べている。

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若年成人期の過敏性腸症候群のリスク因子を特定

 16歳時に過敏性腸症候群(IBS)を有することは、24歳時にIBSを有することを予測する最も強いリスク因子であり、16歳時にIBSであった人の33.6%は24歳時でも診断基準を満たすとする研究結果が、「Gastroenterology」に1月30日掲載された。 ヨーテボリ大学(スウェーデン)サールグレンスカアカデミーのJessica Sjölund氏らは、1990年代半ばに出生した4,089人を若年成人期まで追跡したスウェーデンのBAMSE出生コホートのデータを用い、24歳時のIBSの有無に関連する思春期のリスク因子、および16歳から24歳にかけてのIBSの持続に関連する因子を検討した。曝露因子の大半は16歳時に評価されていた。 対象者2,539人のデータを解析した結果、24歳時のIBS有病率は10.0%であり、女性であること、知覚ストレスの高値、アトピー性皮膚炎、片頭痛またはうつ病の既往、健康関連QOLの低値がIBSと関連していた。16歳時のIBSは、24歳時のIBSに対する最も強いリスク因子であった。また、機能性腹痛、自己評価による心理的苦痛および全般的な健康状態不良、食物過敏、短い睡眠時間も、成人期のIBSのオッズ上昇と関連していた。16歳時にIBSであった人のうち33.6%が、24歳時においてもIBSの診断基準を満たしていた。IBSの持続と強く関連していた因子は親のIBS症状であり、それ以外の因子は統計学的に有意ではなかった。 Sjölund氏は、「思春期のIBSは固定した状態ではないことが示された」と述べている。 なお、複数の著者がバイオ医薬品企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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診断エラーを防ぐ-小児科の落とし穴

迷いのない診断、日常診療に潜む誤診の回避体験を読んで積み上げる臨床は知識と経験に基づく連続したタスクであり、状況によって変化する。そのため正確な診断には常に誤診のリスクが付きまとう。本書は国立成育医療研究センターの医師60人が総力を挙げて執筆。診断エラーを回避するため、コミュニケーション技術に基づく問診、身体診察、検査、家族説明、鑑別疾患、診断のステップを通して、落とし穴の回避術をシステマティックに展開。収載された、教科書では得られないニアミス症例、ピットフォール症例が心に刻み込まれる。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する診断エラーを防ぐ-小児科の落とし穴定価4,400円(税込)判型A5判(並製)頁数296頁発行2026年3月編集窪田 満(国立成育医療研究センター)/永井 章(国立成育医療研究センター)ご購入はこちらご購入はこちら

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桂枝湯の派生処方 生薬の±で方剤を覚える【Dr.伊東のストーリーで語る漢方薬】第5回

桂枝湯の派生処方 生薬の±で方剤を覚える前回 、桂枝湯(けいしとう)が麻黄湯(まおうとう)や葛根湯(かっこんとう)に比べて虚証向きの漢方薬で、お腹に優しいということを述べました。その理由としては、桂枝湯には麻黄(まおう)が含まれていないこと、代わりに芍薬(しゃくやく)、大棗(たいそう)、生姜(しょうきょう)といった胃腸の調子を整える生薬が含まれていることが関係しているのでした(図1)。今回は、この話を芍薬、あるいは芍薬と甘草(かんぞう)のコンビに着目して掘り下げていこうと思います。図1 桂枝湯の構成生薬画像を拡大する桂枝湯±芍薬芍薬が入っている桂枝湯がお腹に優しいということは、芍薬を「もっと」増やすとお腹にも「もっと」優しくなりそうですよね。では、桂枝湯を芍薬マシマシにしてみましょう。すると、桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)ができあがります。これは、過敏性腸症候群で腹痛と下痢に悩まされている患者に使うといい薬です。しかし、過敏性腸症候群は下痢型だけではありません。便秘型もありますよね。そうしたら、センノシドを含む生薬をブレンドすればいいのです。大黄(だいおう)という生薬がちょうどセンノシドを含むため、桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)を使えばいいという話になるわけです。逆に、桂枝湯から芍薬を抜いてくるとどうなるか。すると、桂枝去芍薬湯(けいしきょしゃくやくとう)という漢方薬になります。これは、お腹への優しさが減る代わりに、胸に優しくなります。感冒の患者の中には、肺炎や痰詰まりがなくても、胸が苦しいという方がたまにいらっしゃいますよね。そういった患者には、桂枝去芍薬湯が効いてきます。もっとも、桂枝去芍薬湯はエキス製剤がないので、実臨床で使うのにはハードルが高いという問題があります。桂枝去芍薬湯のニュアンスを丸ごと含む漢方薬としては、炙甘草湯(しゃかんぞうとう)という漢方薬があって、これはちょうど「東洋の抗不整脈薬」に相当するもので、動悸・息切れに効く漢方薬なんですね。やはり胸に優しいという話になってくるわけです。ここまでを図2にまとめます。図2 桂枝湯±芍薬に派生する漢方薬画像を拡大する建中湯シリーズの派生いったん話題を戻して、桂枝加芍薬湯まで戻ってきましょう。漢方薬の味が苦手だという患者もいると思います。そのような場合は、桂枝加芍薬湯に水飴を加えてやると、子供にも飲みやすい漢方薬ができると思いませんか。そこで、桂枝加芍薬湯に水飴、厳密には膠飴(こうい)という生薬ですが、これを入れてしまいます。そうすると、なんと小建中湯(しょうけんちゅうとう)ができあがります。これは、虚弱体質の小児が体調不良になった時に使う薬です。体調不良でエネルギー不足なので、お腹に優しい漢方薬と飴から得られるエネルギーで消化管から体調をたて直そうというコンセプトの漢方薬です(図3)。図3 小建中湯への派生画像を拡大するさらにさらに! 小建中湯からいわゆる「建中湯」シリーズを派生させることができます。たとえば、小建中湯から飴を抜いて、補血作用のある当帰(とうき)を加えると、当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)になって、消化管だけでなく女性器由来の腹痛にも対応しやすくなります(図4)。図4 当帰建中湯への派生画像を拡大するまた、小建中湯に黄耆(おうぎ)というお肌を引き締めてくれる生薬を加えると、黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)になって、虚弱体質の小児で寝汗がひどい場合や、アトピー性皮膚炎に悩まされている場合に対応できる漢方薬になります(図5)。図5 黄耆建中湯への派生画像を拡大する大建中湯(だいけんちゅうとう)は小建中湯と生薬の組み合わせが大きく異なるため(図6)、そこだけ注意していただきたいのですが、このように、生薬に着目することで建中湯シリーズを一気にたくさんインプットすることができるのです。この勉強法は知っておいて損はないかと思います。図6 小建中湯と大建中湯の構成生薬画像を拡大するまとめ桂枝湯は芍薬など胃腸を整える生薬が複数含まれていて、この部分を強化すると漢方薬の派生形を生み出すことができます。たとえば、胃腸を整える生薬のひとつとして芍薬がありますが、芍薬を桂枝湯に加えることで、いわゆる建中湯と呼ばれる漢方薬のグループを生み出すことができます。生薬を足し引きすることで、漢方薬を芋づる式にインプットする。これも漢方上達の近道だと個人的には考えています。次回は、小柴胡湯を取り上げ、感冒の初期段階が終わった後の漢方治療のお話をします。お楽しみに!

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貧血を伴わない鉄欠乏は、中等度~重度のアトピー性皮膚炎で高頻度に認められる

 中等度~重度のアトピー性皮膚炎(AD)では、貧血を伴わない鉄欠乏が高頻度に認められるとする研究結果が、「Nutrients」に11月28日掲載された。 ヴロツワフ医科大学(ポーランド)のMalgorzata Ponikowska氏らは、AD患者における鉄代謝の状態を評価し、疾患重症度および生活の質(QOL)との関連を検討した。解析対象は、中等症~重症のAD成人患者86人であった。 解析の結果、ヘモグロビン値は概ね正常であるにもかかわらず、鉄欠乏を示す鉄バイオマーカーの異常が、AD患者に多く認められた。具体的には、患者の45%はトランスフェリン飽和度が低く(Tsat 20%未満)、37%はフェリチン値が低く、26%は血清鉄が低値であった。さらに、高感度C反応性蛋白5mg/L超で定義される炎症性活性化が認められる患者では、血清鉄およびTsatの低下、可溶性トランスフェリン受容体の上昇を特徴とするパターンが認められた。多変量解析において、血清鉄の低下は皮膚疾患に関連したQOL評価(Dermatology Life Quality Index;DLQI)のスコア悪化と独立して関連していた。また、トランスフェリン高値は、湿疹面積・重症度指数(Eczema Area and Severity Index;EASI)およびアトピー性皮膚炎重症度評価(SCORing Atopic Dermatitis;SCORAD)で測定した疾患重症度の増大と関連した。 著者らは、「本研究により、鉄代謝の調節異常すなわち鉄欠乏が、ADにおける全身性の特徴として高頻度に認められることが示された。これらの異常は疾患重症度やQOL低下と関連しており、鉄代謝の変化はADの臨床像に関連する修正可能な全身性因子である可能性がある。今後の研究では、鉄欠乏を標的とした介入が患者のアウトカムを改善し得るかどうか検討する必要がある」と述べている。

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ニセ警察からの電話【Dr. 中島の 新・徒然草】(624)

六百二十四の段 ニセ警察からの電話だんだん暖かくなってきましたね。花粉さえなければ最高の季節なんですけど。ChatGPTの厳しい指導のもと、私は毎日6,000歩のウォーキングを続けています。花粉の多い日でも何とかノルマを達成しなくてはなりません。なので、家の中をグルグルと歩いて辻褄を合わせております。さて、先日は外来で患者さん(50代、女性)に驚くべき録音を聞かされました。なんと、ニセ警察からスマホにかかってきた詐欺電話です。早速、診察室で再生してもらいました。 ニセ 「大阪府警ですが静岡県警から捜査協力の要請を受けて○田○子さんにご連絡しております」 患者 「はいはい」 ニセ 「現在静岡県警と合同捜査中の事件に関する内容で、○田さんにお伝えしなくてはならない重要な事項がありますので」 患者 「はい、は~い」 このニセ警察、妙に爽やかです。好青年すぎて逆に違和感しかありません。ホンモノの大阪府警って、もっと馴れ馴れしいオッチャンたちばっかりな気がします。まあ、関西人というのは、私も含めて全体に爽やかさが足りないわけですが。 ニセ 「本人確認書類となる身分証明書をお持ちのうえで、本日ですね、大阪府警の警察本部にお越しいただくことは可能でしょうか」 患者 「はい」 ここでニセ警察にちょっとした戸惑いが感じられました。電話をかけた相手が、まさか大阪に住んでいるとは思っていなかったのかもしれません。詐欺の場合は「そんな遠くは行けません」と言わせておいて、「それではビデオ通話で取り調べを行います」と提案し、ニセの警察手帳や逮捕状を見せて本物と信じ込ませるのが通常の手口なのだとか。さらにやり取りは続きます。 ニセ 「お越しいただくことは可能ですか」 患者 「行きますよ」 ニセ 「何時頃来られますか」 患者 「何時でも」 ニセ 「すぐに来られる、と」 ここで急に患者さんの声が大きくなります。 患者 「どういったご用件ですか」 ニセ 「すぐに来られるということですか」 患者 「どういうご用件ですか。静岡県警の誰ですか!」 「ブチッ」という音とともに電話は切れてしまいました。あまりにも面白いやり取り、そのまま聞き流すのももったいない。そこで診察室でもう一度再生してもらって、自分のスマホで録音しました。自分も詐欺に遭わないためには、何回も聴く必要があります。家に持って帰って、女房にもこの録音を聞かせたところ…… 女房 「この人、何をいきなりキレているわけ?」 中島 「キレてるのかなあ。このくらい平常運転でしょう」 女房 「こんなに怒鳴られたら、ニセ警察もビックリしたと思うわ。いったい何の病気なの?」 中島 「高次脳機能障害やけど」 女房は「やっぱり!」という表情になりました。この患者さんはいつもこんな感じなので、私もすっかり慣れてしまっていました。確かにご本人は「私、腹が立ったら自分でも止められへんねん」と普段から言っています。たまたまこの患者さん、詐欺電話を受けた日にお姉さんが自宅に来ていたとのこと。このお姉さんは以前に警察に勤めていたこともあって、詐欺の手口もよく知っていました。横から「スピーカーにしろ」とか「録音しろ」とか紙に書いて指示されたそうです。さらに、警察からの連絡の場合は電話番号の下4桁が「1234」になるのだとか。言われてみれば、警察署の代表番号は常に「1234」です。詐欺を見破る有力な方法ですが、気が付きませんでした。ただ、最近は詐欺師のやり方も手が込んできて、こちらのディスプレイに表示される番号の下4桁が「1234」となることもあるとのこと。そうなると何が正しいのか、わからなくなってしまいます。が、少なくとも「1234」以外の番号から警察を名乗る電話がかかってきたら、疑ってかかったほうがよさそうですね。詐欺を巡っては、ほかにもいろいろな報道がされています。ニュースによると、最近の警察は「仮想身分捜査」なるものを行っているのだとか。これは捜査員が架空の身分で闇バイトに応募・潜入するもので、2025年には13件実施し、5人を摘発し、7件を未然防止したそうです。「ひょっとして捜査員が紛れ込んでいるかも」と犯罪組織に思わせたら、抑止効果のほうも期待できるかもしれません。ともあれ、読者の皆さんも、ニセ警察からの詐欺電話に引っ掛からないようご注意ください。最後に1句 彼岸過ぎ 詐欺師相手に ブチ切れる

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デュピルマブ、水疱性類天疱瘡の適応追加/サノフィ

 サノフィは2026年3月23日、水疱性類天疱瘡に対するデュピルマブ(商品名:デュピクセント)の製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを発表した。水疱性類天疱瘡は、自己免疫性の表皮下水疱を生じるまれな疾患で、本邦では指定難病とされている。全身に強い痒みや水疱、紅斑、びらん、痛みを伴い、再発を繰り返すため、日常生活に深刻な影響を及ぼす。主に高齢者に発症し、標準治療にはステロイド薬や免疫抑制薬が使用されるが、長期使用による合併症や副作用への影響が指摘されている。 今回の承認は、中等症~重症の成人水疱性類天疱瘡患者106例を対象とした第II/III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験(ADEPT試験)の結果に基づいている。被験者はプラセボ群とデュピルマブ群に1:1で割り付けられ、治療開始時より経口ステロイド薬(OCS)を基礎治療として投与された。治療期間中は、すべての被験者について治験実施計画書で定義したOCS減量レジメンに従い、デュピクセント投与開始後6~16週にかけて疾患活動性が2週間コントロールされていればOCSの漸減を進めた。 主要評価項目である36週時に寛解持続を達成した患者の割合は、デュピルマブ群は18.2%、プラセボ群は4.0%であった(p=0.0250)。寛解持続の達成は、16週までに完全寛解かつOCS漸減を完了し、36週までの投与期間中に再燃が生じることなく、レスキュー療法を必要としないことと定義された。安全性データは、これまでデュピルマブで確立されている安全性プロファイルと同様であった。なお、水疱性類天疱瘡の適応症について、2025年3月にデュピルマブは希少疾病用医薬品に指定されている。<製品概要> ※下線は変更箇所商品名:デュピクセント皮下注300mgペン/同300mgシリンジ、デュピクセント皮下注200mgペン/同200mgシリンジ一般名:デュピルマブ(遺伝子組換え)効能又は効果:<300mgペン、300mgシリンジ>既存治療で効果不十分な下記皮膚疾患・アトピー性皮膚炎注)・結節性痒疹・特発性の慢性蕁麻疹・中等症から重症の水疱性類天疱瘡・気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない重症又は難治の患者に限る)注)・慢性閉塞性肺疾患(既存治療で効果不十分な患者に限る)注)・鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(既存治療で効果不十分な患者に限る)注)<200mgペン、200mgシリンジ>既存治療で効果不十分な下記皮膚疾患・アトピー性皮膚炎注)・特発性の慢性蕁麻疹・気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない重症又は難治の患者に限る)注)注)適使用推進ガイドライン対象用法及び用量(抜粋):〈水疱性類天疱瘡〉通常、成人にはデュピルマブ(遺伝子組換え)として初回に600mgを皮下投与し、その後は1回300mgを2週間隔で皮下投与する。

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忍耐の市役所【Dr. 中島の 新・徒然草】(623)

六百二十三の段 忍耐の市役所花粉がきついです。外来中でも容赦がありません。今日は調子が良いぞと思っても、新たな患者さんが診察室に入ってくると、途端にクシャミが出たりします。「体調のほうはどうで……フ、フ、フ、ブワークショーン!」みたいな感じですね。たぶん、患者さんの服に付いた花粉にやられるのでしょう。クシャミに続いて鼻水と目の痒みも始まって、どうにもなりません。かくして、鼻をかむ合間に話をするという悲惨なことになってしまいます。話は変わって、先日のこと。マイナンバーカード更新の受け取りのために市役所に行ってきました。最近は何でも予約です。だからカードの受け取りも、あらかじめパソコンで予約しておかなくてはなりません。確か午後2時半か、そんなもんだったかな、私の予約は。実際に市役所に行ってみると、ものすごい数の人。予約を取っていても並ばなくてはなりませんでした。たぶんマイナンバーカードだけじゃなく、戸籍とか住民票とかの申請や受け取りも同じ部署が担当していたのでしょう。そのせいか、呼び出し用の受付番号も2000番台とか5000番台とか6000番台とか、いろいろなものが表示されていました。で、言われたとおりに並びます。しばらくして呼ばれて受け付けを済ませ、また別のところで自分の番号が表示されるのを待っていました。椅子も足りないので立ったままです。すると目の前で80代くらいの高齢女性が、職員を捕まえて文句を言っていました。予約を取っているのに、何でこんなに待たされるのか、と。そろいの赤いユニホームを着た職員は、そのお婆さんに謝りながら説明していました。「すみません、皆さんお待ちいただいていますので」「順番にお呼びしています」いくら説明しても、このお婆さんには通じません。私なんか、この人数を見たら待たされるのは仕方がない、と思ってしまうのですが。もっと言うと、こういった文句を言う人がいるから、職員が手を取られて余計に遅くなってしまうわけです。よほど横から言ってやろうかと思ったのですが、高齢者というのはそんなもんだ、と思って黙っていました。まあ、病院の状況も似たり寄ったりではあります。と、後ろからチラッとお婆さんの持っている番号札が見えました。私の2つ前。だったら、そんなに待っていないじゃん!で、そのうちお婆さんの番号が表示されました。でも、彼女は気が付いていません。だから、後ろからトントンと肩を叩いて「呼ばれてますよ」と言ってあげました。とくに私に礼を言うこともなく、お婆さんはヨロヨロとブースのほうに……そのうち私の番号も呼ばれましたが、そのお婆さんの隣のブースでした。担当職員による確認作業がいろいろありましたが、基本的には単純で退屈なものです。なので、隣のブースのやりとりに耳を澄ませてみました。どうやらお婆さんは、持ってくるべきものをいろいろと忘れてきたみたいです。それで一生懸命言い訳をしていました。思わず「それやったら、職員に文句を言ったりしたらアカンがな」と心の中で呟いてしまいます。いやいや、そんな余計なことより「人の振り見てわが振り直せ」と自らに言い聞かせるべきだったのかもしれません。家に帰ってこの話をしたところ、女房が大きくうなずきました。「あそこの市役所の職員は、日本一忍耐強い人たちよ」と。何でそんなことを知っているのか?女房も数ヵ月前にマイナンバーカードを取りに行ったからです。あの人混みと一生懸命に働いてる職員を見ていたので、そんな感想を持ったのでしょう。それにしても大変ですね、市役所職員も。私もその忍耐を見習わなくては、と思った次第です。最後に1句 市役所は 花粉と人で 地獄ぞな

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麻黄湯~麻黄と杏仁の鎮咳去痰作用【Dr.伊東のストーリーで語る漢方薬】第3回

麻黄湯~麻黄と杏仁の鎮咳去痰作用麻黄湯(まおうとう)は、葛根湯(かっこんとう)と同じく感冒初期に使う漢方薬ですが、あくまで体の頑丈な人に使ってほしい薬です。その構成生薬は、麻黄(まおう)、杏仁(きょうにん)、桂皮(けいひ)、甘草(かんぞう)の4種類です。杏仁と聞くと、杏仁豆腐の甘味をイメージされる方が多いのですが、ここでいう杏仁というのは苦い種類のもので、甘いものとは少し種類が異なります。桂皮もシナモンの仲間ですが、これも厳密に言えば別物です。いきなり脇道に逸れてしまいましたが、麻黄湯は構成生薬がたったの4種類というのが重要なポイントです。つまり、効きが早いのです。飲んでから15分もあれば効果が出て、じんわりと汗が出てきます。また、守備範囲が狭いため、葛根湯のように誰にでも使える、どんな症状にでも使えるということはありません。葛根湯医者はいるけれど、麻黄湯医者はいないということで、あくまで体の頑丈な人に使うべき薬です。麻黄とは?今回は、そんな麻黄湯を構成生薬から読み解いていくのですが、まずは名前にも使われている麻黄に注目していきましょう。麻黄の代表的な成分はエフェドリンです。幕末生まれの日本人である長井 長義先生が発見した物質です。どんな物質かというと、α1、β1、β2受容体に作用してアドレナリンに類似した働きをします。麻酔科の先生方のほうがよくご存じかもしれませんが、エフェドリンはいわば「東洋のアドレナリン」と呼べる存在です。エフェドリンを使うと、当然ながら動悸が起こります。これが虚弱体質の人には結構こたえるため、やはり麻黄湯は体の頑丈な人に使いたいのです。もちろん、交感神経刺激作用があるということで、心疾患や排尿障害を有する患者に使うのは避けたほうが無難です。また、スポーツであればドーピングに引っ掛かる可能性があるため要注意です。逆に、麻黄は何の役に立つのか考えてみましょう。鼻閉の患者に対し、耳鼻科では局所血管収縮薬としてアドレナリンを鼻粘膜に吹き掛けますよね。じつはエフェドリンにも同じような効能があって、上気道の粘膜浮腫を和らげる作用があるのです。気管支も拡張するので、鎮咳去痰作用を発揮できるという理屈があります。ここで少し雑談を。いまの心肺蘇生、ACLS(二次救命処置)ではアドレナリンを使いますよね。古代中国の人も心肺停止を当然ながら起こしていたわけですが、じつは蘇生のために彼らはエフェドリンを使っていたのです。「いや、そんな馬鹿な」と思われる方もいると思いますが、じつは「還魂湯(かんこんとう)」という薬があって、麻黄湯から桂皮を抜いただけの漢方薬です。これを使っていたのです。どうやって飲ませていたのかという謎は残りますが、古典を紐解いているとこういった面白い知識に出くわすため、やはり「随証治療」で漢方を勉強するというのはお勧めです。杏仁とは?ここまで麻黄の話ばかりしていましたが、杏仁も麻黄湯には欠かせない生薬です。麻黄とは異なり、西洋医学的な裏付けが得にくいところは許してほしいのですが、杏仁には下気道や胃のまわりの浮腫を軽減する薬能があるとされています。そういうわけで、麻黄と杏仁を組み合わせると、上気道と下気道の浮腫を治すことができるのです。それが鎮咳去痰作用として働いてくると考えてください。麻黄と杏仁の組み合わせは麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)という漢方薬にも含まれていて、これは湿性咳嗽に対する定番薬です。また、花粉症で有名な小青竜湯(しょうせいりゅうとう)にも、杏仁は入っていないですが、麻黄が入っています。麦門冬湯(ばくもんどうとう)も咳止めとして有名ですが、麻黄と杏仁が入っておらず、湿性咳嗽に使う薬ではない点に注意してください。あくまで乾性咳嗽に使う薬です(表1)。表1 咳嗽に対する漢方薬画像を拡大する古典に学ぶ麻黄湯と葛根湯の違いここまでの内容をまとめると、麻黄湯は感冒初期に使う漢方薬で麻黄が入っている関係上、虚弱体質の人には使いにくい、湿性咳嗽に一定の効果があるとご理解いただければと思います。理解をより深めるために、古典の条文も読んでみましょう(図1)。図1 麻黄湯の古典条文画像を拡大する頭痛、発熱、咳だけじゃなくて、節々が痛いんですよ。これは、西洋医学だとどんな病気でしょう。インフルエンザですよね。とくに免疫がしっかりしている若者のインフルエンザだとこういった派手な症状が出てくるわけで、そういった患者さんに麻黄湯が好んで使われます。前回出てきた葛根湯の条文と並べてみるとやはり少し違いますよね(図2)。図2 麻黄湯と葛根湯の古典条文画像を拡大する麻黄湯は節々の痛みが強烈に出ていて、咳もする。葛根湯は首の後ろが凝っている。節々の痛みや咳はあってもいいけれど、そこまで目立たない。その背景として、麻黄湯は構成生薬数が少なくて、麻黄や杏仁が主力として働いている。葛根湯は構成生薬が少し多めで、麻黄の薬能が少し緩和されているという違いがあるわけです。ちなみに、共通点としては、感冒初期であることと、汗がないことの2点です。汗がないというのは体が丈夫であることと関係しているのですが、このあたりは次回触れる予定です。まとめ麻黄湯は体が丈夫な人の感冒初期に使いますが、体の節々の痛みが使用の目安になっているところがあって、結論としてはインフルエンザに使いやすい漢方薬となっています。麻黄湯は湿性咳嗽にもある程度は有効ですが、これは気道の浮腫をやわらげてくれる麻黄と杏仁の組み合わせのおかげです。余裕がある方は、麻黄と杏仁に着目しながら、麻杏甘石湯、小青竜湯、麦門冬湯の違いもインプットしてみるといいかもしれません。麻黄湯にはエフェドリンが含まれていて、その副作用やドーピングには注意する必要があります。次回は、残りの1つである桂枝湯のお話です。楽しみにしていてください!

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子どもの食物アレルギー、原因は遺伝だけではない

 子どもが食物アレルギーを発症するかどうかを決める要因は、遺伝子だけではないようだ。新たな研究で、抗菌薬の使用や他の免疫疾患の存在、アレルゲンとなる食品の導入が遅れることも、子どもの食物アレルギーの発症に関与している可能性のあることが示された。マクマスター大学(カナダ)のDerek Chu氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Pediatrics」に2月9日掲載された。Chu氏は、「われわれの研究結果は、食物アレルギーの傾向を遺伝だけで完全に説明することはできず、遺伝子、皮膚の健康、マイクロバイオーム、環境要因が重なり合って食物アレルギーの発症に関与していることを示している」とニュースリリースで述べている。 この研究では、6歳未満の子どもを対象にした世界40カ国の190件の研究データ(対象者は総計280万人)が分析された。食物経口負荷試験を用いた16件の研究を統合して解析した結果、IgE媒介性アレルギーの6歳までの平均発症率は4.7%と推定された。176件の研究で342種類のリスク因子が特定されていたが、エビデンスの確実性が高く、IgE媒介性アレルギーとの関連が最も強いと判断されたのは、乳児期のアレルギー性疾患の既往であった。具体的には、生後1年以内のアトピー性皮膚炎(オッズ比3.88)、アレルギー性鼻炎(同3.39)、喘鳴(同2.11)が、いずれも大幅なリスク上昇と関連していた。 また、食物アレルギーの家族歴もリスク因子であり、特に、両親(同2.07)やきょうだい(同2.36)にアレルギーがある場合にはリスクが2倍以上に上昇した。さらに、ピーナッツ、ナッツ類、卵などのアレルゲン食品の導入が遅いことも関連因子であり、例えば、1歳を過ぎてからピーナッツを食べた場合にピーナッツアレルギーになるオッズは2倍以上であった(同2.55)。このほか、妊娠中の母親の抗菌薬使用(同1.32)や、生後1カ月以内(4.11)、または1年以内(1.39)の乳児の抗菌薬使用でもリスク上昇が見られた。 一方で、食物アレルギーに関与すると疑われていた多くの要因、例えば低出生体重や予定日超過の出産、母乳育児をしていないこと、母親の妊娠中の食事やストレスとIgE媒介性アレルギーとの間に有意な関連は認められなかった。 研究グループは、「これらの結果は、食物アレルギーのリスクがある乳児を特定し、早期予防に役立つ可能性がある」と述べている。また、Chu氏は、「この結果は、食物アレルギーに対するわれわれの理解を広げるものだ。今後の研究では、同じ主要因子を測定・調整し、より多様な集団を対象とし、食物経口負荷試験をもっと活用すべきだ」と述べている。さらに同氏は、「今回の発見を実際に活かすためには、新たなランダム化臨床試験とガイドラインを早急に更新することが必要だ」と付け加えている。

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鮨が食いてえ!【Dr. 中島の 新・徒然草】(622)

六百二十二の段 鮨が食いてえ!今年の花粉症は例年より早く始まっているみたいです。外来中に何度もクシャミが出て、患者さんにまで「先生も花粉症ですか?」と心配される始末。私の職場でもお互いに薬を処方し合っています。ひどい花粉症に一番効くのは手術室。なんせ手術室の空調には0.3μm以上の微粒子をキャッチするHEPAフィルターが用いられています。一方、スギ花粉のサイズは約20~40μmなので、除去するのは簡単!なので、医療従事者にとっても手術室は「避難所」とか「安息の地」と呼ばれているのだとか。ん?ここまでAIで調べてきて、いきなり不思議な表現が出てきてしまいました。「誰かな、こんなことを言っているのは?」と思ってリンクをたどってみると……なんと、「CareNet.com」経由で「手術室あるある【Dr. 中島の 新・徒然草】(423)」が出てきたではありませんか。この文学的表現、まさか4年前の自分自身が使っていたとは!ということで苦難の外来診療ですが、今回登場するのは70代の高齢女性。抗痙攣薬を処方して終わり、だったはずなのですが…… 患者 「先生、ちょっと相談したいことがありまして」 中島 「何でしょうか?」 患者 「実は事故で顔を打って以来、顎の具合が悪いのです。それで近所の病院の口腔外科で治療してもらって、その後は歯医者さんに診てもらっているのです」 なるほど。 患者 「でも顎の噛み合わせがおかしくて、うまく噛めないんです」 まあ、そういうこともあるでしょう。 患者 「こちらの病院にも口腔外科があると聞いたので、中島先生のほうから紹介してもらえないかと」 ようやく話の全体が見えてきました。 中島 「まず、最初に診てもらった病院の名前を教えてくれますか」 患者 「○○病院です。治療の後に歯医者さんに紹介されたんです」 中島 「なんという名前の歯医者さんですか?」 患者 「△△歯科クリニックです」 なるほど、なるほど。 中島 「その場合はですね、まず△△歯科クリニックの先生に言って紹介状を書いてもらってください。元の○○病院の口腔外科宛てにしてもいいし、当院の口腔外科に宛ててもいいですから。それが正式なルートですよ」 私が院内紹介してもいいですが、必ず今かかっている医療機関のデータを持ってくるように言われるので二度手間です。 患者 「△△先生に失礼なことはないでしょうか」 中島 「ないない。『先生のおかげで歯のほうは快調なのですが、顎のほうの具合が悪くて』と言ったら『顎は俺の専門じゃないしな』という顔をされるので、すかさず『別件でかかっている大阪医療センターの口腔外科に紹介状を書いてもらえませんか?』と言ったらいいですよ」 これこそ受診のノウハウというもの。 患者 「でもお。もう顎がおかしいので、死にたいくらいなんです」 死にたい……って? 中島 「ちょっと何を言っているんですか。死ぬのはまだ早いですよ!」 患者 「ええっ?」 中島 「キチンと言うべきことを言わないと駄目じゃないですか」 患者さんは黙ってしまいましたが、ここは念を押しておきましょう。 中島 「いいですか、自分が何を困ってどうしてほしいのか、それをちゃんと△△先生に伝えてください。モジモジしていてもどうにもなりませんから」 私はいつも患者さんを対等な大人として扱っています。なので「黙っていても察してほしい」というのは通じません。 中島 「人と喋るのは苦手だというのもやめておきましょう。人間、一生勉強、何事も練習です」 ついつい力が入ってしまいました。 中島 「口が開かなくて握り鮨を食べられなったら悲しいし、ひょっとしたら死にたくなるかもしれません。でも、その前にご自分のできる努力はしましょうよ」 患者 「またお鮨を食べることができるでしょうか」 中島 「できます、できます。今の季節だったら鰆(さわら)ですよ。鰆がね、『食ってくれー!』と言って待っていますから」 あまり確信はありませんが、字の中に「春」が入っているくらいだから鰆は旬のはず。 中島 「もし△△先生に頼んだのに『俺は絶対に紹介状を書かんぞ!』と言われてしまったら、その時は私が口腔外科に院内紹介してあげますから」 患者 「ありがとうございます」 中島 「まずは踏むべき手順を踏んでくださいね」 それにしてもいきなり「死ぬ」は無いんじゃないかな。論理の飛躍ってものですよ、そいつは。最後に1句 死ぬよりも 鰆を食べる 算段だ

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怒鳴ってしまって大失敗!【Dr. 中島の 新・徒然草】(621)

六百二十一の段 怒鳴ってしまって大失敗!ようやく確定申告が終わったと思ったら花粉の季節。ティッシュの箱をキーボードの横に置き、鼻をかみながら外来をしています。さて、今回のお話は60代の男性患者さんについてです。10年ほど前に交通事故で頭部を打撲しながらも職場復帰し、見事に定年まで勤め上げました。定年後は障害者雇用で働いています。が、頭部外傷のせいで高次脳機能障害が残っており、時々ボロが出てしまうのが困ったところ。今回の外来では冒頭からその話でした。 患者 「先生、大変なことが起こったんですよ」 椅子に座る間もなく話が始まります。 患者 「今は役所で働いているんですけどね、主任さんと大喧嘩してしまったんです」 いつも早い目に出勤して段取りをするのだけど、その日は何かパソコンを打っていても違和感があったそうです。で、「おかしいな」と思って主任さん(女性)のところに行くと、彼女から「急ぐ書類があったので、私が先にやらせてもらいました」と。ついカッとなって「なんでひとこと言ってくれへんかったのですか!」と怒鳴ってしまったそうです。すると主任さんも反論して大きな声で言い合いになったのだとか。 患者 「後で課長さんに呼ばれてですね、『市民の前で何をやっているんですか』と注意されてしまって」 中島 「ちょっとまずかったですね、それは」 患者 「年度末に契約更改があるんですけど、『これはちょっと考えないといけませんね』と言われたんですよ」 中島 「こちらが先に怒鳴ってしまったんですよね」 患者 「でも、私は障害者雇用ですよ。そのくらい理解してくれてもいいじゃないですか」 中島 「それ、ちょっと難しいでしょう」 障害者雇用だからといって、何でも許されるわけではありません。仕事が遅いことに対しては周囲の理解を期待できるかもしれませんが、いきなり怒鳴ったりしたら相手もびっくり仰天です。 患者 「今年が2回目の契約更改だったんですけど、駄目かもしれないと思って先にハロワに行ってきました」 ハロワでは何と別の役所関係の書類選考が通って、面接試験にまで漕ぎつけたとのこと。 患者 「かなりたくさん採用するみたいなんで、受かるかもしれない、と期待しているんです」 中島 「うまく就職できたらですね、とにかく感情的にならないようにしてください」 患者 「そいつが難しいんですよ。これまで何とか自分を抑えてきたんやけどな」 中島 「まさかライオンに向かって怒鳴ったりしないでしょ」 患者 「そんなん怖いですやん」 中島 「お孫さんに向かって怒鳴ったりしないですよね」 患者 「嫌われたら困りますがな」 中島 「それなら少しは理性が残っているんだから、怒らないように頑張りましょうよ」 患者 「わかりました」 この人、毎回、同じパターンで失敗しています。 中島 「主任さんには謝ったんですか?」 患者 「あれ以来、話をしてくれないんです」 中島 「そりゃそうでしょうね。だったら手紙を書いたらどうですか?」 患者 「手紙ですか」 中島 「きっと手紙だったら読んでくれるでしょう。契約更改してもらおうとか、許してもらおうとか、そういう邪念は無しですよ」 患者 「人として謝るってことですね。わかりました、そうします」 ということでこの患者さん。診察に来たときには暗い顔でしたが、最後は明るい表情で帰って行きました。後でChatGPTに聞いてみると、頭部外傷による高次脳機能障害の人は感情を抑えるブレーキが完全に壊れているわけではない、とのことです。確かに感情のブレーキが壊れていたら、ライオンに対しても怒鳴ってしまうでしょうけど、そこまで極端なことはありません。単に感情を抑えるブレーキの発動が遅くて利きが悪いというだけなのだそうです。しかもこのブレーキ、疲れたりするとますます利かなくなるのだとか。まずは何事も余裕を持って取り組むのが大切なのですが、それに加えて感情のブレーキが利くようになるための薬をいくつか提案されました。場合によってはこういった薬を試してみるのも良いかもしれません。うまくいったら、改めて本欄で報告させていただきたいと思います。最後に1句 花粉舞い 鼻水たらせ 怒鳴るより

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アセトアミノフェンの乳児への処方は安全

 乳児期にアセトアミノフェン(パラセタモール)を使うと、湿疹や喘鳴のリスクが上昇することが、これまでの観察研究で報告されている。こうした中、新たな臨床試験により、アセトアミノフェンとイブプロフェンはいずれも、生後1年以内の乳児にも安全に使えることが示された。これらの市販の鎮痛薬と湿疹や細気管支炎との間に関連は認められなかったという。オークランド大学(ニュージーランド)のStuart Dalziel氏らによるこの研究の詳細は、「The Lancet Child & Adolescent Health」に1月27日掲載された。 アセトアミノフェンと非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は主要な鎮痛薬の一部であり、世界中で小児の発熱や痛みに対して最も頻繁に処方され、市販薬としても広く購入されている。NSAIDsは強い抗炎症作用を持つが胃腸障害を起こしやすい。イブプロフェンはNSAIDsの一種である。一方、アセトアミノフェンには抗炎症作用はほとんどないが、胃腸への負担が少ないという特徴がある。なお、アセトアミノフェンとパラセタモールは、いずれも同じ成分の薬剤だが、国によって呼び名が異なる。 Dalziel氏らは今回、アセトアミノフェンの使用と湿疹や喘鳴のリスク上昇との関連を示した研究結果を踏まえ、ニュージーランドで出生した生後8週間未満の乳児3,908人(女児49.0%)を対象に、アセトアミノフェンとイブプロフェンのどちらを使用した場合に、湿疹や細気管支炎リスクがより高くなるのかを評価した。児は、1歳になるまで必要に応じてアセトアミノフェンのみを使用する群(1,985人)と、イブプロフェンのみを使用する群(1,923人)にランダムに割り付けられた。 その結果、湿疹の発生率は、アセトアミノフェン群で16.2%(322人)、イブプロフェン群で15.4%(296人)であり、両群間に統計学的に有意な差は認められなかった(差0.8%、95%信頼区間−1.5〜3.1)。一方、細気管支炎による入院の発生率は、アセトアミノフェン群で4.9%(98人)、イブプロフェン群で4.3%(82人)であり、同様に有意な差は認められなかった。17人に19件の有害事象が確認されたが(アセトアミノフェン群8人、イブプロフェン群9人)、処方薬剤に関連した事象は認められなかった。 Dalziel氏は、「この結果によって、親も医療従事者も、これらの重要な薬を引き続き安心して使えるようになるだろう」と述べている。 研究グループは、対象とした児童が6歳になるまで追跡し、アセトアミノフェンやイブプロフェンが原因とされてきた他の健康問題が現れないかを確認する予定だとしている。Dalziel氏は、「3歳で喘鳴を呈する小児の3分の2は、6歳時点で喘息を発症していないことが分かっている。そのため、生後1年間におけるアセトアミノフェン使用が喘息を引き起こすかどうかを最終的に判断するには、学齢期まで待つ必要がある」と説明している。さらに、この追跡調査では、自閉症や注意欠如・多動症(ADHD)の発症率についても調べる予定だという。これらの疾患は、ある程度成長してからの方が正確に診断されるためだ。 論文の筆頭著者であるオークランド大学のEunicia Tan氏は、「最終的には、アセトアミノフェンの使用と喘息、湿疹、花粉症、さらには自閉症やADHDといった発達障害との関連について、重要な証拠を提供できるはずだ」とニュースリリースで述べている。

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