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病院には相当なメリハリが付けられたものの、診療所のメリハリは今ふたつ、みっつこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。急に春めいてきましたね。この週末は久しぶりの足慣らしに高尾山に行ってきました。高尾山口駅から登り始める通常ルートではなく、高尾山の南側、草戸山から大洞山、大垂水峠へと縦走し、城山側から高尾山を目指すという約18キロの周回コースです。天気も良く快適に歩けたのですが、早くも飛散し始めた花粉で目がしょぼしょぼになってしまいました。また、途中には「クマ出没注意」の看板も。エサも少なさそうなこんな低山にもツキノワグマが出ているようです。今シーズンも各地でクマ被害は増えるのでしょうか?改めて心配になってきました。さて、厚生労働省の中央社会保険医療協議会は2月13日の総会で2026年度診療報酬改定案を了承し、上野 賢一郎厚生労働相に答申しました。診療報酬本体の改定率が30年振りに3%を超え3.09%となりましたが、その半分以上は賃上げと物価高への対応に充てられることになります。改定率が決まる前、本連載「第293回 佳境迎える診療報酬改定議論、『本体』引き上げはほぼ既定路線も、最大の焦点は病院と診療所間の『メリハリ』」で、「次期改定で本当の意味での『メリハリ』が付けられるかどうか、今後の議論の行方に注目したい」と書きましたが、病院の診療報酬については相当なメリハリが付けられたものの、日本医師会を意識してか診療所のメリハリは今ひとつどころか今ふたつ、みっつの結果となりました。ということで、今回は個人的に注目した診療報酬改定でのいくつかの項目について書いてみたいと思います。「急性期病院A一般入院料」は「急性期拠点機能」の病院を想定した点数病院に関しては、2027年度からの新たな地域医療構想を見据えて、急性期を担う病院機能の明確化を推し進める内容となったのが注目点です。ポイントは地域ごとの病院単位の急性期機能を確保するため、2区分の急性期病院一般入院基本料(急性期病院Aは看護配置7対1病棟で1日につき1,930点、同Bは看護配置10対1病棟で1日につき1,643点)が新設されたことです。2040年を見据えた新たな地域医療構想では、医療機関機能が「急性期拠点機能」「高齢者救急・地域急性期機能」「在宅医療等連携機能」「専門等機能」の4つに分類されます。このうち、「急性期拠点機能」を有する病院は「人口20万~30万人ごとに1拠点」が目安とされています。新設される2区分の急性期病院一般入院基本料のうち、「急性期病院A一般入院料」はまさにそうした「急性期拠点機能」の病院を想定した点数です。また、入院料の加算である「急性期総合体制加算」と「地域医療体制確保加算2」、手術料の加算である「外科医療確保特別加算」も同趣旨の点数と言えます。「急性期病院A一般入院料」の主な要件は、「救急搬送件数:年2,000件以上」「全身麻酔手術件数:年1,200件以上」などで、入院患者数の10%以上の数の常勤医師の配置が求められます。病院全体として急性期医療への特化が必要で、地域包括医療病棟や地域包括ケア病棟入院料などとのケアミックスは認められません。該当する手術を行うたびに医師に手当が出来高で上乗せされる画期的な「外科医療確保特別加算」関連する加算のうち「急性期総合体制加算」は、現行の「総合入院体制加算」と「急性期充実体制加算」を再編統合した点数で5区分からなり、入院期間14日(7日以内、8~11日以内、12~14日以内の3段階の点数)までの加算です。このうち「急性期総合体制加算1〜4」は、「急性期病院A一般入院料」を算定する病棟を持つ病院に限定されます。ちなみに、「急性期総合体制加算1」の「7日以内の期間」の点数は530点です。「地域医療体制確保加算2」(720点)は入院料への加算で、若手医師が減少する外科系診療科(消化器、心血管、小児、循環器)の医師の勤務環境改善と処遇向上を評価する点数です。そして、「外科医療確保特別加算」は「地域医療体制確保加算2」の届出施設を対象に、胸部(食道)から腹部(胃、腸、肝胆膵)にかけての鏡視下手術を中心に、長時間かつ高難度な手術料への加算です。「当該手術の所定点数の100分の15を加算、当該診療科の医師が行った対象手術件数に応じ、休日手当、時間外手当、深夜手当、当直手当等とは別に、当該加算額の100分の30以上に相当する額を総額とする手当を当該診療科の医師に支給、当該支給額の8割以上を当該診療科に配置されている常勤医師に支給」――などが要件となっており、該当する手術を行うたびに医師に手当が出来高で上乗せされる画期的な仕組みになっています。これらは、いずれも「急性期総合体制加算」または「特定機能病院入院基本料」届出が要件となっており、「急性期拠点機能」の病院の医師(とくに外科医)確保も含めた体制維持を目的とした点数です。「高齢者救急・地域急性期機能」も評価、地域包括医療病棟入院料は大幅見直しこうした将来的に「急性期拠点機能」を担う病院の評価と並行して、「拠点機能」を持った病院が軽度な高齢者救急への対応に煩わされないよう、地域の高齢者救急を受け入れる病院の評価も2024年度改定に続いて行われました。前述の新たな地域医療構想の医療機関機能の中の「高齢者救急・地域急性期機能」の評価です。とくに高齢者救急の主要な受け入れ先となる地域包括医療病棟は、急性期病棟を併設しない場合の「地域包括医療病棟入院料1」(3,117~3,367点)と併設する場合の「同入院料2」(3,066~3,316点)の2類型に分けられます。さらに医療資源投入量に基づいて手術や緊急入院の有無に応じて入院料を3つに細分化して、点数に差を付けられます。改定後は現行の点数より最大317点アップすることになります。加えて施設基準も大きく見直されて緩和されます。改定前は「在院日数」「ADL低下割合」などの基準が高齢患者比率にかかわらず求められ、高齢者救急を多く受け入れる病棟にはハードルが高い面がありましたが、今改定では、急性期病棟併設の有無や緊急入院・手術対応などに応じて6区分に細分化され、85歳以上が多い病棟では在院日数・ADL低下割合の基準が緩和されます。一方、地域包括ケア病棟入院料も、在宅医療や協力対象施設への後方支援機能が高く評価されました。具体的には在宅患者支援病床初期加算の対象患者を緊急入院した患者にまで拡大して報酬が一部引き上げられます。このほか、在宅医療・介護保険施設の後方支援等に一定の体制と実績がある医療機関を評価する「包括期充実体制加算」(80点、14日まで)が新設されます。地域包括医療病棟または地域包括ケア病棟を持つ主に許可病床数200床未満が対象となります。かかりつけ医関連の項目はメリハリ不足、「かかりつけ医機能報告制度」との連動は持ち越しこうした、急性期病院一般入院基本料の新設、中でも「急性期病院A一般入院料」の高評価、地域包括医療病棟、地域包括ケア病棟入院料の施設基準見直しや高評価は、「新たな地域医療構想」を見越して病院の機能分化を一層推し進めるためのもので、まさにメリハリの効いた改定だと言えるでしょう。地域医療構想における調整会議が開かれる前に、地域において役割分担、機能分化を事前に進めてもらいたいという国の意向が透けて見えます。その一方で、かかりつけ医関連の項目はメリハリ不足の感が拭えません。中医協の議論の中で、支払側は2025年4月に始まった「かかりつけ医機能報告制度」と連動させ、かかりつけ医の診療機能に応じた評価体系を導入するよう求めていました。財務省も「秋の建議」においてかかりつけ医機能報告制度上、基本的な機能を有していない診療所の初診料・再診料の減算措置導入や、外来管理加算や特定疾患管理料、生活習慣病管理料などの適正化を求めていました。しかし、今回の改定では、制度開始から間もなく報告が十分集まっていないとの理由から、かかりつけ医機能報告制度のデータを踏まえた評価は導入されず、機能強化加算、生活習慣病管理料、特定疾患療養管理料、地域包括診療料(加算)、時間外対応加算などの施設基準・算定要件の小幅の改正に留まりました。ちょうど3年前、「かかりつけ医機能報告制度」を盛り込んだ法案(通称、全世代型社会保障制度関連法案)が提出された時に、本連載「第150回 かかりつけ医機能の確認めぐりひと悶着、制度化の芽も摘んだ日本医師会の執念」で、「何の強制力も、発展性も、拡張性もない、ただ『制度を作った』という事実を作るためだけの制度」と書きましたが、仮に次回、2028年度の診療報酬改定で、「かかりつけ医機能報告制度」と密に連動した、かかりつけ医関連の報酬体系が導入されないとしたら、現状、患者、地域住民にほとんど役に立たない同制度は形骸化に向かうに違いありません。