サイト内検索|page:2

検索結果 合計:159件 表示位置:21 - 40

21.

海外番組「セサミストリート」(続編・その1)【実はこだわりは能力だったの!?だから男の子に多いんだ!(自閉症の機能)】Part 2

なんで自閉症になるの?自閉症は、コミュニケーションがうまくできない、こだわりが強すぎるという症状があることがわかりました。それでは、なぜそうなるのでしょうか?その答えは、胎児期に男性ホルモンが多すぎていたからです。これは、胎児期アンドロゲン仮説と呼ばれる有力な原因仮説です2)。アンドロゲンとは、男性ホルモンの総称です。その代表が、テストステロンです。もともと胎児のデフォルトは女性です。遺伝的に男性の場合は、胎児期に自らのY染色体の発現によって精巣からこの男性ホルモンを分泌して(ホルモンシャワー)、体と心(脳)を男性化させていきます。その量が多すぎるのが自閉症の原因だということです。実際の研究では、妊娠6ヵ月時に採取した羊水中の男性ホルモン濃度が高ければ高いほど、4歳時と8歳時のそれぞれの共感性の指数が低くなり、システム化の指数が高くなるという結果が出ています2)。これは、自閉症形質の発現を意味します。また、薬指の長さに対する人差し指の長さの比較(指比)の研究では、一般女性→一般男性→自閉症の人(男女とも)の順に人差し指が短くなっていくことが確かめられています3)。これは、胎児期の男性ホルモン濃度が高くなっていく順番と同じです。なお、自閉症は男女とも人差し指が同じくらい短くなることから、自閉症の発症には胎児期の男性ホルモンが相当影響していることが示唆されます。実際の臨床でも、胎児期に先天的に男性ホルモン(厳密にはテストステロンではなくデヒドロエピアンドロステロン)濃度が高い病態(先天性副腎過形成症)では、男女ともに顕著に人差し指が短くなっていることが確かめられています。そして、システム化の指数が高くなるという結果が出ています4)逆に、胎児期に男性ホルモン(テストステロン)濃度が低い病態(クラインフェルター症候群、アンドロゲン不応症)の男性は、人差し指が長くなっていることも確かめられています。さらに、自閉症の男性の精通の時期は平均よりも早くなる一方、自閉症の女性の初潮は平均よりも遅くなることもわかっています2)。逆に、自閉症の人はオキシトシン濃度(女性ホルモン)が平均を下回っていることもわかっています2)。オキシトシンは「絆ホルモン」とも呼ばれ、これが少ないと人とのコミュニケーションへの動機づけ(共感性)が低くなります。さらに、脳の画像研究においては、一般的に女性よりも男性の方が脳の非対称性が大きいことがわかっていますが、自閉症の人はその非対称性がさらに大きくなっていることもわかっています5)。以上より、自閉症とは、男性的な脳機能が過剰になった状態、つまり超男性脳とも呼ばれています。そして、だからこそ自閉症は男の子(男性)に多いのです。実際に自閉症の80%は男性です。ちなみに、ジュリアは、女の子の設定になっています。この多様性の時代、発症率が低い女の子(女性)をあえて自閉症のキャラクターにしたのでしょう。定型発達においても、システム化は、明らかに女の子よりも男の子が高いです。たとえば、男の子(男性)は、乗り物、仕組み(ルール)、戦い(スポーツ)、勝ち負けなど、ものや結論(結果)への興味が強いです。そして、成長すると、理屈っぽくなる分、女性ほど察しようとしないです。一方で、共感性は、明らかに男の子よりも女の子が高いです。たとえば、女の子(女性)は、ぬいぐるみ集め、人形遊び、料理、おしゃべりなど、人や関係性(プロセス)への興味が強いです。そして、成長すると、情緒的になる分、男性ほど説明しようとしないです。つまり、システム化とは、とくに男性にもともと備わっている能力であると言えます。そして、その能力が高まりすぎた状態を自閉症と呼んでいると言えます。それでは、システム化が高くなると、なぜ連動して共感性が低くなってしまうのでしょうか? 言い換えれば、なぜ自閉症はコミュニケーションの障害とこだわりはセットなのでしょうか?(次回に続く)1)ザ・パターン・シーカーpp.93-95:サイモン・バロン・コーエン、化学同人、20222)自閉症スペクトラム入門pp.134-135:サイモン・バロン・コーエン、中央法規、20113)指からわかる男の能力と病p.31、pp.100-101:竹内久美子、講談社α新書、20134)共感する女脳、システム化する男脳pp.186-187:サイモン・バロン・コーエン、NHK出版、20055)脳からみた自閉症p.129:大隅典子、講談社、2016自閉症についての関連記事大人の自閉症への対応のコツ結婚できない男【空気を読まない】[改訂版]<< 前のページへ■関連記事海外番組「セサミストリート」【子供をバイリンガルにさせようとして落ちる「落とし穴」とは?(言語障害)】Part 1伝記「ヘレン・ケラー」(前編)【何が奇跡なの? だから子供は言葉を覚えていく!(象徴機能)】Part 2ガリレオ【システム化、共感性】

22.

ビタミンBが影響を及ぼす神経精神疾患〜メタ解析

 最近、食事や栄養が身体的および精神的な健康にどのような影響を及ぼすかが、注目されている。多くの研究において、ビタミンBが神経精神疾患に潜在的な影響を及ぼすことが示唆されているが、ビタミンBと神経精神疾患との関連における因果関係は不明である。中国・Shaoxing Seventh People's HospitalのMengfei Ye氏らは、ビタミンBと神経精神疾患との関連を明らかにするため、メンデルランダム化(MR)メタ解析を実施した。Neuroscience and Biobehavioral Reviews誌2025年3月号の報告。 本MRメタ解析は、これまでのMR研究、UK Biobank、FinnGenのデータを用いて行った。ビタミンB(VB6、VB12、葉酸)と神経精神疾患との関連を調査した。 主な内容は以下のとおり。・MR分析では、複雑かつ多面的な関連性が示唆された。・VB6は、アルツハイマー病の予防に有効であったが、うつ病および心的外傷後ストレス障害(PTSD)のリスク上昇の可能性が示唆された。・VB12は、自閉スペクトラム症(ASD)の予防に有効であったが、双極症リスクを上昇させる可能性が示唆された。・葉酸は、アルツハイマー病および知的障害に対する予防効果が示唆された。・メタ解析では、ビタミンBは、アルツハイマー病やパーキンソン病などの特定の神経精神疾患の予防に有効であるが、不安症や他の精神疾患のリスク因子である可能性が示唆された。・サブグループ解析では、VB6は、てんかんおよび統合失調症の予防に有効であるが、躁病リスク上昇と関連していた。・VB12は、知的障害およびASDの予防に有効であるが、統合失調症および双極症のリスク上昇と関連していた。・葉酸は、統合失調症、アルツハイマー病、知的障害の予防に有効である可能性が示唆された。 著者らは「これらの知見は、ビタミンBのメンタルヘルスに対する影響は複雑であり、さまざまな神経精神疾患に対して異なる影響を及ぼすことが示唆された。このような複雑な関連は、神経精神疾患に対する新たな治療法の開発において、パーソナライズされた治療サプリメントの重要性を示している」と結んでいる。

23.

妊娠可能年齢の女性と妊婦を守るワクチン 後編【今、知っておきたいワクチンの話】総論 第8回

本稿では「妊娠可能年齢の女性と妊婦を守るワクチン」について取り上げる。これらのワクチンは、女性だけが関与するものではなく、その家族を含め、「彼女たちの周りにいる、すべての人たち」にとって重要なワクチンである。なぜなら、妊婦は生ワクチンを接種することができない。そのため、生ワクチンで予防ができる感染症に対する免疫がない場合は、その周りの人たちが免疫を持つことで、妊婦を守る必要があるからである。そして、「胎児」もまた、母体とその周りの人によって守られる存在である。つまり、妊娠可能年齢の女性と妊婦を守るワクチンは、胎児を守るワクチンでもある。VPDs(Vaccine Preventable Diseases:ワクチンで予防ができる病気)は、禁忌がない限り、すべての人にとって接種が望ましいが、今回はとくに妊娠可能年齢の女性と母体を守るという視点で、VPDおよびワクチンについて述べる。今回は、ワクチンで予防できる疾患、生ワクチンの概要の前編に引き続き、不活化ワクチンなどの概要、接種スケジュール、接種で役立つポイントなどを説明する。ワクチンの概要(効果・副反応・不活化・定期または任意・接種方法)妊婦に生ワクチンの接種は禁忌である。そのため妊娠可能年齢の女性には、事前に計画的なワクチン接種が必要となる。しかし、妊娠は予期せず突然やってくることもある。そのため、日常診療やライフステージの変わり目などの機会を利用して、予防接種が必要なVPDについての確認が重要となる。そこで、以下にインフルエンザ、百日咳、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、RSウイルス(生ワクチン以外)の生ワクチン以外のワクチンの概要を述べる。これら生ワクチン以外のワクチン(不活化ワクチン、mRNAワクチンなど)は妊娠中に接種することができる。ただし、添付文書上、妊娠中の接種は有益性投与(予防接種上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ接種が認められていること)と記載されているワクチンもあり注意が必要である。いずれも妊娠中に接種することで、病原体に対する中和抗体が母体の胎盤を通じて胎児へ移行し、出生児を守る効果がある。つまり、妊婦のワクチン接種が母体と出生児の双方へ有益ということになる。(1)インフルエンザ妊婦はインフルエンザの重症化リスク群である。妊婦がインフルエンザに罹患すると、非妊婦に比し入院率が高く、自然流産や早産だけでなく、低出生体重児や胎児死亡の割合が増加する。そのため、インフルエンザ流行期に妊娠中の場合は、妊娠週数に限らず不活化ワクチンによるワクチン接種を推奨する1)。また、妊婦のインフルエンザワクチン接種により、出生児のインフルエンザ罹患率を低減させる効果があることがわかっている。生後6ヵ月未満はインフルエンザワクチンの接種対象外であるが、妊婦がワクチン接種することで、胎盤経由の移行抗体による免疫効果が証明されている1,2)。接種の時期はいつでも問題ないため、インフルエンザ流行期の妊婦には妊娠週数に限らず接種を推奨する。妊娠初期はワクチン接種の有無によらず、自然流産などが起きやすい時期のため、心配な方は妊娠14週以降の接種を検討することも可能である。流行時期や妊娠週数との兼ね合いもあるため、接種時期についてはかかりつけ医と相談することを推奨する。なお、チメロサール含有ワクチンで過去には自閉症との関連性が話題となったが、問題がないことがわかっており、胎児への影響はない2)。そのほか2024年に承認された生ワクチン(経鼻弱毒生インフルエンザワクチン:フルミスト点鼻薬)は妊婦には接種は禁忌である3)。また、経鼻弱毒生インフルエンザワクチンは、飛沫または接触によりワクチンウイルスの水平伝播の可能性があるため、授乳婦には不活化インフルエンザHAワクチンの使用を推奨する4)。(2)百日咳ワクチン百日咳は、成人では致死的となることはまれだが、乳児(とくに生後6ヵ月未満の早期乳児)が感染した場合、呼吸不全を来し、時に命にかかわることがある。一方、百日咳含有ワクチンは生後2ヵ月からしか接種できないため、この間の乳児の感染を予防するために、米国を代表とする諸外国では、妊娠後期の妊婦に対して百日咳含有ワクチン(海外では三種混合ワクチンのTdap[ティーダップ]が代表的)の接種を推奨している5,6)。百日咳ワクチンを接種しても、その効果は数年で低下することから、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は2回目以降の妊娠でも、前回の接種時期にかかわらず妊娠する度に接種することを推奨している。百日咳は2018年から全数調査報告対象疾患となっている。百日咳感染者数は、コロナ禍前の2019年は約1万6千例ほどであったが、コロナ禍以降の2021~22年は、500~700例前後と減っていた。しかし、2023年は966例、2024年(第51週までの報告7))は3,869例と徐々に増加傾向を示している。また、感染者の約半数は、4回の百日咳含有ワクチンの接種歴があり、全感染者のうち6ヵ月~15歳未満の小児が62%を占めている8)。さらに、重症化リスクが高い6ヵ月未満の早期乳児患者(計20例)の感染源は、同胞が最も多く7例(35%)、次いで母親3例(15%)、父親2例(10%)であった9)。このように、百日咳は、小児の感染例が多く、かつ、ワクチン接種歴があっても感染する可能性があることから、感染源となりうる両親のみならず、その兄弟や同居の祖父母にも予防措置としてワクチン接種が検討される。わが国で、小児や成人に対して接種可能な百日咳含有ワクチンは、トリビック(沈降精製百日咳ジフテリア破傷風混合ワクチン)である。本ワクチンは、添付文書上、有益性投与である(妊婦に対しては、予防接種上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ接種が認められている)10)が、上記の理由から、丁寧な説明と同意があれば、接種する意義はあるといえる。(3)RSウイルスワクチン2024年より使用可能となったRSウイルスワクチン(組み換えRSウイルスワクチン 商品名:アブリスボ筋注用)11)は、新生児を含む乳児におけるRSウイルス感染症予防を目的とした妊婦対象のワクチンである(同時期に承認販売開始となった高齢者対象のRSウイルスワクチン[同:アレックスビー筋注用]は、妊婦は対象外)。アブリスボを妊娠中に接種すると、母体からの移行抗体により、出生後の乳児のRSウイルスによる下気道感染を予防する。そのため接種時期は妊娠28~36週が最も効果が高いとされている12)(米国では妊娠32~36週)。また、本ワクチン接種後2週間以内に児が出生した場合は、抗体移行が不十分と考えられ、モノクローナル抗体製剤パリミズマブ(同:シナジス)とニルセビマブ(同:ベイフォータス)の接種の必要性を検討する必要があるため、妊婦へ接種した日時は母子手帳に明記することが大切である13)。乳児に対する重度RSウイルス関連下気道感染症の予防効果は、生後90日以内の乳児では81.8%、生後180日以内では69.4%の有効性が認められている14)。これまで、乳児のRSウイルス感染の予防には、重症化リスクの児が対象となるモノクローナル抗体製剤が利用されていたが、RSウイルス感染症による入院の約9割が、基礎疾患がない児という報告もあり15)、モノクローナル抗体製剤が対象外の児に対しても予防が可能となったという点において意義があるといえる。一方で、長期的な効果は不明であり、わが国で接種を受けた妊婦の安全性モニタリングが不可欠な点や、他のワクチンに比し高額であることから、十分な説明と同意の上での接種が重要である。(4)COVID-19ワクチンこれまでの国内外の多数の研究結果から、妊婦に対するCOVID-19ワクチン接種の安全性は問題ないことがわかっており16,17)、前述の3つの不活化ワクチンと同様に、妊婦に対する接種により胎盤を介した移行抗体により出生後の乳児が守られる。逆にCOVID-19に感染した乳児の多くは、ワクチン未接種の妊婦から産まれている17)。妊婦がCOVID-19に罹患した場合、先天性障害や新生児死亡のリスクが高いとする報告はないが、妊娠中後期の感染では早産リスクやNICU入室率が高い可能性が示唆されている17)。また、酸素需要を要する中等症~重症例の全例がワクチン未接種の妊婦であったというわが国の調査結果もある17)。妊婦のCOVID-19重症化に関連する因子として、妊娠後期、妊婦の年齢(35歳以上)、肥満(診断時点でのBMI30以上)、喫煙者、基礎疾患(高血圧、糖尿病、喘息など)のある者が挙げられており、これらのリスク因子を持つ場合は産科主治医との相談が望ましい。一方で、COVID-19ワクチンはパンデミックを脱したことや、インフルエンザウイルス感染症のように、定期的流行が見込まれることから、2024年度から第5類感染症に変更され、ワクチンも定期接種化された。よって、定期接種対象者である高齢者以外は、妊婦や、基礎疾患のある小児・成人に対しても1回1万5千円~2万円台の高額なワクチンとなった。接種意義に加え、妊婦の基礎疾患や背景情報などを踏まえた総合的・包括的な相談が望ましい。また、COVID-19ワクチンについては、いまだにフェイクニュースに惑わされることも多く、医療者が正確な情報源を提供することが肝要である。接種のスケジュール(小児/成人)妊婦と授乳婦に対するワクチン接種の可否について改めて復習する。ワクチン接種が禁忌となるのは、妊婦に対する生ワクチンのみ(例外あり)であり、それ以外のワクチン接種は、妊婦・授乳婦も含めて禁忌はない(表)。表 非妊婦/妊婦・授乳婦と不活化/生ワクチンの接種可否についてただし、ワクチンを含めた薬剤投与がなくても流産の自然発生率は約15%(母体の年齢上昇により発生率は増加)、先天異常は2~3%と推定されており、臨界期(主要臓器が形成される催奇形性の感受性が最も高い時期)である妊娠4~7週は催奇形性の高い時期である。たとえば、ワクチン接種が原因でなくても後から胎児や妊娠経過に問題があった場合、実際はそうでなくても、あのときのあのワクチンが原因だったかも、と疑われることがあり得る。原因かどうかの証明は非常に困難であるため、妊娠中の薬剤投与と同様に、医療従事者はそのワクチン接種の必要性や緊急性についてしっかり患者と話し、接種する時期や意義について理解してもらえるよう努力すべきである。※その他注意事項生ワクチンの接種後、1~2ヵ月の避妊を推奨する。その一方で、仮に生ワクチン接種後1~2ヵ月以内に妊娠が確認されても、胎児に健康問題が生じた事例はなく、中絶する必要はないことも併せて説明する。日常診療で役立つ接種ポイント1)妊娠可能年齢女性とその周囲の家族について妊孕性(妊娠する可能性)が高い年代は10~20代といわれているが、妊娠可能年齢とは、月経開始から閉経までの平均10代前半~50歳前後を指す。妊娠可能年齢の幅は非常に広いことを再認識することが大切である。また、妊婦や妊娠可能年齢の女性を守るためには、その周囲にいるパートナーや同居する家族のことも考慮する必要があり、その年齢層もまちまちである(同居する祖父母や親戚、兄弟など)。患者の家族構成や背景について、かかりつけ医として把握しておくことは、ワクチンプラクティスにおいて、非常に重要であることを強調したい。2)接種を推奨するタイミング筆者は下記のタイミングでルーチンワクチン(すべての人が免疫を持っておくと良いワクチン)について確認するようにしている。(1)何かしらのワクチン接種で受診時(とくに中高生のHPVワクチン、インフルエンザワクチンなど)(2)定期通院中の患者さんのヘルスメンテナンスとして(3)患者さんのライフステージが変わるタイミング(進学・就職/転職・結婚など)今後の課題・展望妊娠可能年齢の年代は受療行動が比較的低く、基礎疾患がない限りワクチン接種を推奨する機会が限られている。また、妊娠が成立すると、基礎疾患がない限り産科医のみのフォローとなるため、妊娠中に接種が推奨されるワクチンについての情報提供は産科医が頼りとなる。産科医や関連する医療従事者への啓発、学校などでの教育内容への組み込み、成人式などの節目のときに情報提供など、医療現場以外での啓発も重要であると考える。加えて、フェイクニュースやデマ情報が拡散されやすい世の中であり、妊婦や妊娠を考えている女性にとっても重大な誤解を招くリスクとなりうる。医療者が正しい情報源と情報を伝える重要性が高いため、信頼できる情報源の提示を心掛けたい。参考となるサイト(公的助成情報、主要研究グループ、参考となるサイト)妊娠可能年齢の女性と妊婦のワクチン(こどもとおとなのワクチンサイト)妊娠に向けて知っておきたいワクチンのこと(日本産婦人科感染症学会)Pregnancy and Vaccination(CDC)参考文献・参考サイト1)Influenza in Pregnancy. Vol. 143, No.2, Nov 2023. ACOG2)産婦人科診療ガイドライン 産科編 2023. 日本産婦人科学会/日本産婦人科医会. 2023:59-62.3)経鼻弱毒生インフルエンザワクチン フルミスト点鼻液 添付文書4)経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの使用に関する考え方. 日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会(2024年9月2日)5)Tdap vaccine for pregnant women CDC 6)海外の妊婦への百日咳含有ワクチン接種に関する情報(IASR Vol.40 p14-15:2019年1月号)7)感染症発生動向調査(IDWR) 感染症週報 2024年第51週(12月16日~12月22日):通巻第26巻第51号8)2023年第1週から第52週(*)までに 感染症サーベイランスシステムに報告された 百日咳患者のまとめ 国立感染症研究所 実地疫学研究センター 同感染症疫学センター 同細菌第二部 9)全数報告サーベイランスによる国内の百日咳報告患者の疫学(更新情報)2023年疫学週第1週~52週 2025年1月9日10)トリビック添付文書11)医薬品医療機器総合機構. アブリスボ筋注用添付文書(2025年1月9日アクセス)12)Kampmann B, et al. N Engl J Med. 2023;388:1451-1464.13)日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会. 日本におけるニルセビマブの使用に関するコンセンサスガイドライン Q&A(第2版)(2024年9月2日改訂)14)Kobayashi Y, et al. Pediatr Int. 2022;64:e14957.15)妊娠・授乳中の新型コロナウイルス感染症ワクチンの接種について 国立感染症成育医療センター16)COVID-19 Vaccination for Women Who Are Pregnant or Breastfeeding(CDC)17)山口ら. 日本におけるCOVID-19妊婦の現状~妊婦レジストリの解析結果(2023年1月17日付報告)講師紹介

24.

自閉スペクトラム症の易怒性に対するメトホルミン補助療法の有用性

 糖尿病治療薬は、自閉スペクトラム症(ASD)の症状緩和に有効であることが示唆されている。しかし、メトホルミンがASDに伴う易怒性に及ぼす影響についての臨床研究は、不十分である。イラン・テヘラン医科大学のZahra Bazrafshan氏らは、小児ASD患者の易怒性に対するリスペリドン+メトホルミン補助療法の有効性および安全性を評価するため、10週間のランダム化二重盲検プラセボ対照試験を実施した。Journal of Psychopharmacology誌オンライン版2024年12月15日号の報告。 本研究は、2024年3〜5月にイラン・Roozbeh Hospitalの小児自閉症外来で実施した。対象患者は、リスペリドン+メトホルミン(500mg/日)群またはリスペリドン+プラセボ群にランダムに割り付けられた。主要アウトカムは、易怒性とした。aberrant behavior checklist-community scale(ABC-C)を用いて、ベースライン、5週目、10週目に評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・最終分析には、55例を含めた。・メトホルミン群は、プラセボ群と比較し、易怒性の有意な減少が認められた(p=0.008)。・ABC-Cの4つのサブスケールのうち、多動性/ノンコンプライアンススコアは、ベースラインから5週目までに有意な低下を示した(p=0.021)。・メトホルミン群は、プラセボ群と比較し、ベースラインから5週目までの不適切な発言スコアの有意な減少が認められた(p=0.045)。・無気力/社会的引きこもり、常同行動スコアについては、統計学的に有意な差は認められなかった。 著者らは「メトホルミン補助療法は、ASD患者の易怒性軽減に有効であり、この結果は以前の研究と一致していたが、実臨床で推奨するためには、さらなる研究が必要である」と結論付けている。

25.

自閉スペクトラム症の世界的状況、20歳未満の健康負担のトップ10にランク

 自閉スペクトラム症(ASD)の疫学や健康ニーズに関する高品質の推定は、サービス計画者やリソース配分者にとって必要である。米国・Global Burden of Disease Study 2021 Autism Spectrum Collaboratorsは、疫学データと負担推定方法改善後の世界疾病負担研究(GBD)2021より、ASDの世界的な有病率および健康負担を報告した。The Lancet Psychiatry誌オンライン版2024年12月19日号の報告。 GBD 2021では、PubMed、Embase、PsycINFO、Global Health Data Exchangeより検索し、専門家との協議を含むシステマティック文献レビューにより、ASDの疫学に関するデータを特定した。適格データより有病率を推定するため、ベイズメタ回帰ツール(DisMod-MR 2.1)を用いた。モデル化された有病率および障害の重み付けを用いて、致死的でない健康負担(障害生存年数[YLD])および全体的な健康負担(障害調整生存年数[DALY])を推定した。民族別のデータは入手できなかった。本研究のデザイン、準備、解釈、執筆には、ASDの経験を有する人が関わった。 主な結果は以下のとおり。・2021年のASD推定患者数は、世界で6,180万人(95%不確実性区間:52.1〜72.2)、127人に1人であると推定された。・世界の年齢標準化有病率は、全体で10万人当たり788.3人(663.8〜927.2)、男性で10万人当たり1,064.7人(898.5〜1,245.7)、女性で10万人当たり508.1人(424.6〜604.3)。・ASDのDALY率は、1,150万DALY(7.8〜16.3)を占め、世界で10万人(年齢標準化)当たり147.6DALY(100.2〜208.2)相当であった。・地域レベルでの年齢標準化DALY率は、東南アジア、東アジア、オセアニアの10万人当たり126.5(86.0〜178.0)から高所得地域の204.1(140.7〜284.7)の範囲であった。・DALYは生涯を通じて明らかであり、5歳未満でみられ、年齢の増加に伴い減少した。【5歳未満】10万人当たり169.2DALY(115.0〜237.4)【20歳未満】10万人当たり163.4DALY(110.6〜229.8)【20歳以上】10万人当たり137.7DALY(93.9〜194.5)・ASDは、20歳未満の致死的でない健康負担のトップ10にランク付けされた。 著者らは「20歳未満におけるASDの有病率および致死的でない健康負担の高さは、世界におけるASDの早期発見および支援の重要性を強調している。地理的変動をより正確に把握できるよう、疫学データのカバー範囲をより広範囲にすることから始める必要がある。本結果は、今後の研究活動やASD患者のニーズにより適切に対応する医療サービスの決定指針に役立つ可能性がある」としている。

26.

自閉スペクトラム症と統合失調症の鑑別に有用な評価尺度は

 統合失調症と自閉スペクトラム症(ASD)は、別々の疾患として認識されているが、症状の類似性により鑑別診断が困難な場合が少なくない。昭和大学の中村 暖氏らは、統合失調症とASDの症状について類似点と相違点の特定、より有用で客観的な鑑別診断法の確立、統合失調症患者におけるASD特性を明らかにすることを目的に、本研究を実施した。Frontiers in Psychiatry誌2024年12月18日号の報告。 対象は統合失調症患者40例(女性:13例、平均年齢:34±11歳)およびASD患者50例(女性:15例、平均年齢:34±8歳)。自閉症診断観察尺度第2版(ADOS-2)およびその他の臨床尺度を用いて評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・ADOS-2モジュール4および改訂版では、統合失調症とASDの鑑別は困難であったが、A7、A10、B1、B6、B8、B9を組み合わせた予測モデルは、両疾患を鑑別するうえで、優れた精度を示した。・ADOS-2は統合失調症の偽陽性率が高く、統合失調症患者においてADOS-2すべてのドメインおよび合計スコアと陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)の陰性症状スコアとの間に正の相関が認められた。・ADOS-2アルゴリズムにおいて、自閉スペクトラム症のカットオフ値が陽性の患者は、陰性の患者よりも、PANSS陰性症状スコアが有意に高かった。・ロジスティック回帰分析では、ADOS-2アルゴリズム尺度の陽性度は、PANSS陰性症状スコアのみを使用して予測可能なことが明らかとなった。 著者らは「ASDと統合失調症の鑑別には、ADOS-2と複数の項目を組み合わせることにより実現可能であることが示唆された」とし「本知見は、ASDと統合失調症の治療戦略の開発に役立つ可能性がある」と結論付けている。

27.

若年者の健康問題、自閉症がトップ10にランクイン

 2021年の世界での自閉スペクトラム症(以下、自閉症)の患者数は約6200万人に上ったことが、新たな研究で明らかにされた。米ワシントン大学健康指標評価研究所のDamian Santomauro氏らによるこの研究結果は、「The Lancet Psychiatry」に12月19日掲載された。 この研究は、世界疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study;GBD)2021に基づき、自閉症の有病率と健康負担(障害調整生存年〔DALY〕)の最新の世界的な推定値を提示したもの。有病率の推定では、受動的な患者の発見に依存した研究を除外し、新たなシステマティックレビューに基づきデータを更新した。また、障害による重み付けの推定方法も修正された。最終的に、33カ国における自閉症の有病率に関する105件の研究データが統合された。 解析の結果、2021年には世界で約6180万人の人が自閉症であると推定された。これは、127人に1人が自閉症であることを意味するという。世界の年齢調整有病率(10万人当たり)は788.3人で、男性では1,064.7人、女性では508.1人と推定された。自閉症による健康負担は1150万DALYsと推定された。これは、10万人当たり147.6DALYs(年齢調整済)に相当する。地理的枠組み別に見ると、年齢調整済DALY率は、東南アジア・東アジア・オセアニアで10万人当たり126.5DALYsと最も低く、高所得地域で204.1DALYsと最も高かった。またDALY率は年齢とともに減少する傾向が見られ、5歳未満の子どもでは10万人当たり169.2DALYs、20歳未満では163.4DALYs、20歳以上では137.7DALYsと推定された。ただし、こうした健康負担は生涯を通じて認められた。さらに、20歳未満の若年者では、自閉症が非致死的な健康負担のトップ10にランクインすることも確認された。 研究グループは、「これらの数字は、人生の早い段階で自閉症を診断し、生涯を通じて役立つ治療を受けられるようにすることがいかに重要であるかを示している」と述べている。また、「自閉症の子どもや若者のニーズだけでなく、研究やサービス提供の対象として考慮されないことが多い成人のニーズにも対処することが不可欠だ」としている。 ただし、本研究で推定された自閉症の有病率は、米疾病対策センター(CDC)の推定(36人に1人)よりはるかに高い。この点について研究グループは、「この高い有病率は、臨床および教育記録の症例ノートのレビューにより個人が自閉症の診断基準を満たしている可能性が高いかどうかを判断したものであり、集団診断調査で行われるような自閉症の臨床的評価により判断されたものではない。そのため、自閉症の有病率は過大評価されている可能性がある」と述べている。 研究グループは、「世界的な自閉症の健康負担に対処するには、早期発見プログラムへのリソースを優先させる必要がある。特に、ケア、介護者のサポート、および自閉症者の生涯にわたり変化するニーズに合わせたサービスへのアクセスが限られている成人や低・中所得国の人を対象に、診断ツールを改善することが重要だ」とワシントン大学のニュースリリースで結論付けている。

28.

大田原症候群〔OS:Ohtahara syndrome〕

1 疾患概要■ 定義大田原症候群は、1976年に大田原俊輔らが“特異な年齢依存性てんかん性脳症:The Early-Infantile Epileptic Encephalopathy with Suppression-Burst”として日本小児神経学研究会(現 日本小児神経学会)機関誌に報告し1)、2001年に国際抗てんかん連盟(ILAE)によって公式に“Ohtahara syndrome”と称された。乳児早期(多くは新生児期)に発症し、頻回の強直発作もしくはてんかん性スパズムとサプレッション・バーストとよばれる脳波所見を特徴とする。■ 疫学発生頻度は、ウエスト症候群の約1/40以下と推測され、国内の患者数は数百人と考えられる。■ 病因遺伝素因が最も多く、次いで脳形成異常が多い(表)。2007年に介在ニューロンの発生に関与するARX遺伝子の変異が2家系で同定され、その後、STXBP1、KCNQ2、SCN2A、GNAO1など多数の原因遺伝子が同定されている。脳形成異常では、片側巨脳症や限局性皮質異形成、孔脳症などが多い。ミオクロニー発作主体だが、サプレッション・バーストの脳波所見が共通する早期ミオクロニー脳症は、非ケトン性高グリシン血症、ミトコンドリア異常症、ビタミンB6依存性脳症などの代謝障害が多い(後述の分類の項を参照)。表 大田原症候群の病因画像を拡大する■ 症状新生児期にてんかん発作を来し、その後発達遅滞が現れる。てんかん発作は強直発作とてんかん性スパズムが特徴である。てんかん性スパズムは、群発(シリーズ形成)よりも単発が多い。発作は1日に数〜数十回、時に数百回と頻回で、睡眠・覚醒を問わず認められる。焦点性運動発作が1/3から約半数に認められる。ミオクロニー発作はまれであり、早期ミオクロニー脳症との鑑別点になっている。しかし、同一症例でも経過中にスパズム主体の時期とミオクローヌス主体の時期が前後することもあり、時期によって大田原症候群と早期ミオクロニー脳症の併発もあり得る。てんかん発作の他に、知的障害、運動障害を併発することが多い。また、基礎疾患による併発症状を示す。■ 分類2022年にILAEによるてんかん症候群の分類が大幅に改訂された。新生児期にサプレッション・バーストを示し、ミオクロニー発作を主体とする早期ミオクロニー脳症と強直発作を主体とする大田原症候群が統合され、「早期乳児発達性てんかん性脳症:early infantile developmental and epileptic encephalopathy(EIDEE)」と呼ばれる2)。■ 予後てんかん発作は難治であり、乳児期にはてんかん性スパズムの群発傾向が強くなり、脳波はヒプスアリスミアに変容し、約3/4の症例はウエスト症候群(現在の呼称は「乳児てんかん性スパズム症候群」)に移行する。てんかん発作が抑制された場合でも、知的障害を併発することが多く、その程度も一般に重度である。また、自閉症や多動など併発症も多い。重症例では運動障害を呈し、全介助が必要になる。少数ながら正常発達例も報告されている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)検査で最も重要なのは、「サプレッション・バースト」と呼ばれる発作間欠期の脳波パターンである(図)。数秒間のサプレッション(平坦)相と数秒間の150~300μVの不規則な高振幅徐波に棘波が混入するバースト(群発)相が交互に出現する。通常は広汎性であるが、脳梁欠損を伴うアイカルディ症候群などでは左右で非同期性に認められる。ヒプスアリスミアへの移行過程では、平坦相にθ波やδ波が混入し、持続時間が短くなり、ヒプスアリスミアの脱同期desynchronizationと区別が難しくなる。原因検索として頭部MRIと代謝スクリーニングが必須である。代謝異常の鑑別として、ミトコンドリア異常に対する髄液の乳酸/ピルビン酸とグリシン脳症に対する髄液/血漿グリシン濃度比を確認する。MRIと代謝に異常がなければ、遺伝子検査(国内では厚労科研の研究班で実施)が望ましい。図 大田原症候群でみられる脳波のサプレッション・バーストパターン画像を拡大する双極誘導。9秒間の平坦なサプレッション相の前後に3秒間の棘波や徐波のてんかん様放電が群発するバースト相が認められる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)現時点では特定の治療薬はないが、症例によってビタミンB6、フェノバール大量療法、バルプロ酸Na、ケトン食が有効である。片側巨脳症や限局性皮質異形成は、早期に外科手術を考慮する。KCNQ2変異による大田原症候群では、大田原症候群の治療には一般に用いられないカルバマゼピンやフェニトインなどNaチャネルの阻害作用を有する薬剤がてんかん発作の抑制に有効である3)。4 今後の展望原因によって、分子標的治療薬や遺伝子治療、アンチセンスオリゴヌクレオチド治療の開発が行われている4)。5 主たる診療科小児科、神経小児科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 大田原症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)小児慢性特定疾病 大田原症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本小児神経学会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)厚労科研難治性疾患政策研究事業「稀少てんかんの診療指針と包括医療の研究」班 てんかんの難病ガイド(医療従事者向けのまとまった情報)1)大田原俊輔ほか. 脳と発達. 1976;8:270-280.2)Zuberi SM, et al. Epilepsia. 2022;63:1349-1397.3)Kato M, et al. Epilepsia. 2013;54:1282-1287.4)Kato M, et al. Ann Clin Transl Neurol. 2022;9:181-192.公開履歴初回2024年10月24日

29.

COVID-19パンデミック前後の摂食障害患者における発達障害や性同一性障害の併発

 自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如多動症(ADHD)、性同一性障害の発生率は、とくに摂食障害の小児および青年、若年成人において上昇している。COVID-19パンデミック中に摂食障害の有病率は上昇したといわれているが、ASD、ADHD、性同一性障害の併発傾向は、これまで詳細に調査されていなかった。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のTashalee R. Brown氏らは、COVID-19パンデミック前の数年間とパンデミック中における、摂食障害の小児および青年、若年成人のASD、ADHD、性同一性障害の併発率の傾向を調査した。Frontiers in Psychiatry誌2024年8月20日号の報告。 2017〜22年に2回以上摂食障害と診断された5〜26歳の患者4万8,558例を、個人名を匿名化した多国籍電子医療記録データベース(TriNetX)より抽出した。主な予測変数は、各患者の最初の摂食障害診断年とし、2017〜19年と2020〜22年で分類した。主要アウトカム変数は、各患者の最初の摂食障害診断年の翌年におけるASD、ADHD、性同一性障害の併発を認める新規精神医学的診断の割合とした。2017〜19年と2020〜22年の主要アウトカムの比較には、傾向スコアマッチング多変量ロジスティック回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数は、2017〜19年の摂食障害診断患者1万7,445例(ASD:8%、ADHD:13.5%、性同一性障害:1.9%)、2020〜22年の摂食障害診断患者3万1,113例(ASD:8%、ADHD:14.6%、性同一性障害:3.2%)。・1:1の傾向スコアマッチング後、2017〜19年の摂食障害診断患者1万7,202例が、2020〜22年の患者とマッチされた。・2020〜22年の摂食障害診断患者は、2017〜19年の患者と比較し、最初の摂食障害診断後365日以内に、ASD、ADHD、性同一性障害の診断オッズ比の増加が認められた。【ASD】19%増加(aOR:1.19、95%信頼区間[CI]:1.07〜1.33)【ADHD】25%増加(aOR:1.25、95%CI:1.04〜1.49)【性同一性障害】36%増加(aOR:1.36、95%CI:1.07〜1.74) 著者らは「COVID-19パンデミック後、摂食障害患者のASD、ADHD、性同一性障害の併発率は、精神疾患の併発のベースラインレベルを調整した後でも、有意に高いことが示唆された。本結果は、COVID-19が小児から若年成人までにおける摂食障害患者のASD、ADHD、性同一性障害の発症や臨床経過に影響を及ぼした可能性を示しており、現在の理解と大きなギャップがあることが明らかとなった」としている。

30.

AIにより自閉症の早期発見が可能?

 人工知能(AI)モデルにより、自閉症スペクトラム障害(ASD)を発症する可能性が高い小児を見つけ出せる可能性のあることが、カロリンスカ研究所(スウェーデン)女性・小児保健部門のKristiina Tammimies氏らによる研究で明らかになった。Tammimies氏らによると、このAIモデルは、広範な評価や臨床試験をせずに2歳以下の小児から簡単に得られる医療データを用いてASDに特有のパターンを探し出すもの。実際に、1万2,000人弱の小児のデータを用いてテストしたところ、ASD児の約80%を特定できたという。この研究結果は、「JAMA Network Open」に8月19日掲載された。 この研究でTammimies氏らは、Simons Foundation Powering Autism Research for Knowledge(SPARK)データベースの、ASDのある児とない児1万5,330人ずつ(計3万660人、平均月齢106カ月、男児63.5%)のデータセットを用いて、ASDを予測するためのAIモデルを構築した。このモデルは、対象者が24カ月未満時に親が報告した、簡単に得られる情報の中から28個の指標を選び出し、これをもとに4つの機械学習アルゴリズム(ロジスティック回帰、決定木、ランダムフォレスト、XGBoost)を用いて構築された。 テストデータを用いてそれぞれのモデルの予測能を検証したところ、最も優れているのはXGBoostモデルであることが判明した(ROC曲線下面積0.895、感度0.805、特異度0.829、陽性的中率0.897)。Tammimies氏らはこのモデルをAutMedAIと名付けた。また、予測には、児が初めて笑った月齢、初めて短文を話した月齢、偏食の問題の存在の3つの因子が強い影響を及ぼすことも判明した。別の検証コホート1万1,936人を用いて検証したところ、モデルはASD児の78.9%(8,262人)を正確にASDであると判定した。 研究グループは、ASDの早期診断は重要だと強調する。なぜなら、ASDに対する効果的な治療や介入を早く受ければ受けるほど、良好な転帰が望めるからだ。論文の筆頭著者であるカロリンスカ研究所のShyam Rajagopalan氏は、「この研究結果は、比較的限定的で容易に入手できる情報からASDの可能性がある個人を特定できることを示している点で重要だ」と話す。その上で、「この予測モデルにより早期診断と介入の条件が劇的に変化し、最終的には多くの人々とその家族の生活の質が向上する可能性がある」と話している。 研究グループは目下、考慮するパラメーターに遺伝情報を追加する可能性も含め、AIプログラムをさらに改良する作業を進めている。Tammimies氏は、「このモデルが臨床現場に導入できるほど信頼の置けるものであることを保証するためには、厳密な作業と慎重な検証が必要だ。ただし、一つ明確にしておきたいのは、われわれが目指しているのこのモデルを医療にとって価値ある診断ツールにすることであり、ASDの臨床評価に取って代わることを意図したものではないということだ」と話している。

31.

ADHDとASDを鑑別する多遺伝子リスクスコア、統合失調症との関連は?

 統合失調症は、臨床的にも遺伝学的にも特殊な疾患であり、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)とも遺伝的因子が類似している。最近、ADHDとASDを鑑別するゲノムワイド関連研究(GWAS)が実施されている。岐阜大学の蔵満 彩結実氏らは、ASDとADHDを鑑別する多遺伝子リスクスコア(PRS)が、統合失調症患者の認知障害や皮質構造の変化と関連しているかを調査した。European Child & Adolescent Psychiatry誌オンライン版2024年8月7日号の報告。 GWASデータ(ASD:9,315例、ADHD:1万1,964例)に基づき、統合失調症患者168例におけるASDとADHDを鑑別するPRS(ADHD高リスクでASD低リスク)を算出した。言語理解(VC)、知覚統合(PO)、ワーキングメモリー(WM)、処理速度(PS)などの認知機能は、WAIS-IIIを用いて評価した(145例)。34の両側脳領域の表面積および皮質厚は、FreeSurferを用いて調べた(126例)。PRSと統合失調症患者の認知機能および皮質構造との関連性を調査した。 主な結果は以下のとおり。・ADHD高リスクを示す高PRSは、4つの認知領域のうち、WMの障害と関連が認められた(β=−0.21、p=0.012)。・ASD高リスクを示す低PRSは、統合失調症患者の次の脳領域の表面績の減少と関連が認められた。【左内側眼窩前頭皮質】β=0.21、p=0.000829【左嗅内皮質】β=0.21、p=0.025【左中心後回】β=0.18、p=0.00752【右紡錘状皮質】β=0.17、p=0.00664【左紡錘状皮質】β=0.17、p=0.00777・高PRSは、左右の横側頭葉における皮質厚の減少と関連していた(左:β=−0.17、p=0.039、右:β=−0.17、p=0.045)。 著者らは、「ADHDとASDを鑑別するPRSは、統合失調症患者の皮質構造および認知機能と関連していることが明らかとなった。これらの知見は、統合失調症の異質性は、統合失調症以外の神経発達および精神疾患に関連する遺伝的因子が部分的に関与している可能性があることを示唆している」としている。

32.

自閉スペクトラム症のADHD症状に対する薬理学的介入〜メタ解析

 自閉スペクトラム症(ASD)患者における注意欠如多動症(ADHD)症状の治療に対する薬理学的介入の有効性に関するエビデンスを明らかにするため、ブラジル・Public Health School Visconde de SaboiaのPaulo Levi Bezerra Martins氏らは、安全性および有効性を考慮した研究のシステマティックレビューを行った。Progress in Neuro-psychopharmacology & Biological Psychiatry誌2024年7月14日号の報告。 ASDおよびADHDまたはADHD症状を伴うASDの治療に対する薬理学的介入の有効性および/または安全性プロファイルを評価したランダム化比較試験を、PubMed、Cochrane Library、Embaseのデータベースより検索した。主要アウトカムは、臨床尺度で測定したADHD症状とした。追加のアウトカムは、異常行動チェックリスト(ABC)で測定された他の症状、治療の満足度、ピア満足度とした。 主な結果は以下のとおり。・システマティックレビューの包括基準を満たした22件のうち、8件をメタ解析に含めた。・メチルフェニデートと比較した、クロニジン、モダフィニル、bupropionによる治療に関する研究が、いくつか見つかった。・メタ解析では、メチルフェニデートは、多動、易怒性、不注意などの症状に対し、プラセボと比較し、有効であることが示唆された。しかし、定型的症状に対する影響は認められず、メチルフェニデート誘発性の副作用による脱落率が大きな影響を及ぼしていることが、データ定量分析より明らかとなった。・アトモキセチンは、プラセボと比較し、多動および不注意症状に対し有効であることが示唆されたが、定型的症状または易怒性には影響を及ぼさなかった。・さらに、研究からの脱落原因となった副作用に、アトモキセチンは影響を及ぼさないことが明らかとなった。 著者らは「メチルフェニデートは、多動、不注意、易怒性に有効であるが、安全性に懸念がある。一方、アトモキセチンは、多動および不注意に緩やかな有効性を示し、副作用プロファイルは比較的良好であった。グアンファシン、クロニジン、bupropion、モダフィニルなどの薬剤に関する情報は、限定的であった」としている。

33.

神経発達症群(講座 精神疾患の臨床 第9巻)

神経発達症の専門医はもちろん、専門としない精神科医にもお勧め近年の多くの調査では、人口の1割以上において、主要な神経発達症のいずれかに該当することが示唆されている。成人後に初めて診断されるケースも多く、児童や精神発達症を専門としていない精神科医も無視できない状況となっている。本書は、神経発達症群全般における概念や分類の歴史的変遷をはじめ、知的発達症、自閉スペクトラム症、注意欠如多動症、発達学習症を軸に、診断概念、病態、原因、治療・支援に関する現時点での最新知識を概観できるようまとめている。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する神経発達症群(講座 精神疾患の臨床 第9巻)定価19,800円(税込)判型B5判(上製)頁数512頁発行2024年5月担当編集本田秀夫(信州大学教授)監修松下正明(東京大学名誉教授)編集主幹神庭重信(九州大学名誉教授)ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

34.

アトピー性皮膚炎は小児の学習・記憶に影響するか?

 米国で行われた横断研究において、アトピー性皮膚炎を有する小児は、学習障害と記憶障害が報告される割合が高いことが示唆された。ただし、その関連性は、主に注意欠如・多動症(ADHD)や限局性学習症といった神経発達症を併存する子供に限定されることも示された。米国・メリーランド大学医学校のEmily Z. Ma氏らが、JAMA Dermatology誌オンライン版2024年3月6日号で報告した。先行研究でアトピー性皮膚炎は小児の認知機能障害と関連することが示唆されているが、それらの研究では認知機能の評価を、症状ではなく神経発達の診断で代用している。したがって、アトピー性皮膚炎の小児が、認知機能障害のリスクが高いかは不明であった。著者は、「今回の結果から、アトピー性皮膚炎を有する小児の認知機能障害に関するリスク分類を改善できる可能性があり、アトピー性皮膚炎と神経発達症がある小児では認知機能障害の評価を優先すべきであることが示唆された」と述べている。 研究グループは、米国の小児を対象とした横断研究を実施し、アトピー性皮膚炎と認知機能に関する症状(学習障害や記憶障害)との関連性を評価した。また、その関連性が神経発達症の併存(ADHD、発達遅延、限局性学習症)の有無によって異なるか調べた。対象は知的障害または自閉症を有さない17歳以下の小児とし、US National Health Interview Survey 2021のデータを用いた。 アトピー性皮膚炎の定義は、現在診断されているか、以前に医療の専門家によって医学的に確認されたことがある場合とした。学習や記憶の障害は、小児の保護者の報告に基づき評価した。 主な結果は以下のとおり。・加重合計6,973万2,807例のうち、922万3,013例(13.2%)がアトピー性皮膚炎であった。・アトピー性皮膚炎を有する小児は、アトピー性皮膚炎を有さない小児と比べて学習障害(10.8%[95%信頼区間[CI]:7.8~15.8]vs.5.9%[5.1~6.9]、p<0.001)、記憶障害(11.1%[8.0~15.9]vs.5.8%[4.9~6.9]、p<0.001)がより多くみられる傾向があった。・多変量ロジスティック回帰モデル(社会人口学的要因、喘息、食物アレルギー、季節性アレルギーや花粉症で調整)において、アトピー性皮膚炎を有する場合、学習障害(調整オッズ比[aOR]:1.77、95%CI:1.28~2.45)、記憶障害(1.69、1.19~2.41)がみられる割合が高かった。・神経発達症の有無による層別解析では、アトピー性皮膚炎は、何らかの神経発達症がある小児の記憶障害がみられる割合が2~3倍高く(aOR:2.26、95%CI:1.43~3.57)、ADHD(2.90、1.60~5.24)、限局性学習症(2.04、1.04~4.00)がある小児でも記憶障害がみられる割合が高かった。・一方で、神経発達症のない小児においては、アトピー性皮膚炎は学習障害や記憶障害との関連は認められなかった。

35.

「自閉傾向」が高い妊婦ほど、早産などのリスク上昇

 日本全国における8万7,687人の妊婦を対象とする大規模な研究が行われ、自己申告による「自閉傾向」が高いほど、早産や在胎不当過小(small for gestational age;SGA)などのリスクが高いことが明らかとなった。特に、極早産のリスク上昇が顕著だったという。国立国際医療研究センターグローバルヘルス政策研究センターの細澤麻里子氏らによる研究結果であり、詳細は「JAMA Network Open」に1月23日掲載された。 「自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder;ASD)」は一定のスペクトラム(幅)を持つ神経発達障害であり、ASDの診断に至らなくても、一般の集団において「自閉傾向」のある人は連続的に分布しているとされる。ASDは社会的コミュニケーションの障害、限定された行動の繰り返しなどを特徴とするが、自閉傾向の高い人もASDと診断された人と同様に、社会的・心理的な困難を伴うことが報告されている。また過去の研究では、ASDと妊娠・出産の転帰不良との関連についても示されている。 そこで著者らは、一般の集団における妊婦の自閉傾向と出産の転帰との関連を検討するため、2011年1月~2014年3月に「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」に参加した人を対象とするコホート研究を行った。自閉傾向は、妊娠中期・後期に自己申告による「自閉症スペクトラム指数日本語版」(AQ-J-10)で評価した。AQ-J-10は得点が高いほど自閉傾向が高く、7点以上は「臨床域」として、より詳細な評価が必要であることを示す。出産の転帰は、早産およびSGAを診療録より収集した。 8万7,687人(平均年齢31.2±5.0歳)のデータを解析した結果、AQ-J-10の平均点は2.8±1.7であり、AQ-J-10が7点以上の臨床域に該当する人は2,350人(2.7%)だった。ASDと診断を受けていた人は、わずかに18人(0.02%)のみだった。 また、自閉傾向が高い人ほど、早産(妊娠37週未満)、中等度・後期早産(32~36週)、極早産(32週未満)、SGAのリスクが高まることが明らかとなった。具体的には、対象者の背景(出産時の年齢、教育レベル、初産か経産か、妊娠中の喫煙、妊娠前のBMI、既往歴、出生児の性別)や妊娠合併症(妊娠高血圧症、妊娠糖尿病)による影響を調整して解析すると、AQ-J-10の点数が1標準偏差高くなるごとに、早産のリスクは1.06(95%信頼区間1.03~1.09)、中・後期早産は同1.05(1.01~1.08)、極早産は同1.16(1.06~1.26)、SGAは同1.04(1.01~1.06)を示した。さらに、AQ-J-10が7点未満の人と比較すると、7点以上の臨床域の女性における早産のリスクが16%、中・後期早産のリスクが12%、極早産のリスクが49%、SGAのリスクが11%、それぞれ高くなった。 以上から著者らは、「ASDの診断の有無によらず、一般の集団における妊婦の自閉傾向が高いことは、出産の転帰不良、特に極早産のリスク上昇と関連していた」と結論。この背景として、妊娠中の心理的ストレスの影響や食事などの生活習慣の影響、支援やケアへのアクセスの影響などを指摘する。その上で、自閉傾向が高い妊婦、特に自閉傾向が臨床域の得点を示す妊婦に対して、「妊娠中から適切な支援を提供することが必要だ」と述べている。

36.

妊娠後期の抗てんかん薬、薬剤ごとの児への影響は?/NEJM

 出生前に抗てんかん薬に曝露された児は、曝露されていない児より自閉症スペクトラム障害の発生率が高いことが示された。ただし、適応症やその他の交絡因子で調整すると、トピラマートとラモトリギンへの曝露児では実質上その関連がみられなくなったのに対し、バルプロ酸への曝露児ではリスクが高いままであった。米国・ハーバード大学T.H. Chan公衆衛生大学院のSonia Hernandez-Diaz氏らが、米国の2つの医療利用データベースを用いた解析結果を報告した。母親の妊娠中のバルプロ酸使用は、児の神経発達障害のリスク上昇との関連が示されている。一方で母親のトピラマート使用に関連した児の自閉症スペクトラム障害のリスクに関しては、限定的だが相反するデータが示されていた。NEJM誌2024年3月21・28日号掲載の報告。曝露群vs.非曝露群で、自閉症スペクトラム障害のリスクを比較 研究グループは、米国のメディケイド受給者の医療利用に関するデータを含むMedicaid Analytic eXtract-Transformed Medicaid Statistical Information System Analytic Files(MAX-TAF)の2000~18年のデータ、および民間医療保険に関するデータを含むMerative MarketScan Commercial Claims and Encounters Database(MarketScan)の2003~20年のデータを用い、妊婦とその児を同定した。 解析対象は、推定最終月経日の3ヵ月以上前から出産1ヵ月後まで保険に加入していた12~55歳の女性(とその児)を全体集団とし、てんかんと診断されている女性に限定した集団についても解析を行った。 妊娠19週目から出産まで(妊娠後期)にトピラマートの投薬を1回以上受けた妊婦とその児を曝露群(トピラマート群)、最終月経の90日前から出産まで抗てんかん薬の投薬を受けていない妊婦とその児を非曝露群とした。また、トピラマート群の陽性対照としてバルプロ酸、陰性対照としてラモトリギンの投薬を1回以上受けた妊婦とその児を設定した。 主要アウトカムは、児の自閉症スペクトラム障害の臨床診断(自閉症スペクトラム障害のコードが2回以上の受診で記載されていること)で、曝露群の児と非曝露群の児について自閉症スペクトラム障害のリスクを比較した。トピラマート群6.2%、バルプロ酸群10.5%、ラモトリギン群4.1%、非曝露群4.2% 解析対象の全体集団は429万2,539例で、このうち2,469例がトピラマート群、1,392例がバルプロ酸群、8,464例がラモトリギン群、非曝露群が419万9,796例であった。また、てんかんの診断を有する女性の限定集団は2万8,952例で、トピラマート群1,030例、バルプロ酸群800例、ラモトリギン群4,205例、非曝露群8,815例であった。 全体集団において、非曝露群の児(419万9,796例)における8歳時の自閉症スペクトラム障害の推定累積発症率は1.9%(95%信頼区間[CI]:1.87~1.92)であった。 てんかんと診断されている母親の限定集団では、8歳時の自閉症スペクトラム障害の推定累積発症率は、非曝露群4.2%に対して、トピラマート群6.2%、バルプロ酸群10.5%、ラモトリギン群4.1%であった。ベースラインの交絡因子を補正した傾向スコア加重ハザード比は、トピラマート群0.96(95%CI:0.56~1.65)、バルプロ酸群2.67(1.69~4.20)、ラモトリギン群1.00(0.69~1.46)であった。

37.

ADHDと6つの精神疾患リスクとの関連

 注意欠如・多動症(ADHD)とさまざまな精神疾患との合併率の高さは、観察研究や診断基準などから示唆されている。中国・重慶医科大学のYanwei Guo氏らは、ADHDと6つの精神疾患との潜在的な遺伝的関連性を調査するため、メンデルランダム化(MR)研究を実施した。BMC Psychiatry誌2024年2月5日号の報告。 2サンプルのMRデザインを用いて、ADHDと6つの精神疾患のゲノムワイド関連研究(GWAS)に基づき、遺伝的操作変数(IV)をシステマティックにスクリーニングした。主なアプローチとして、逆分散重み付け(IVW)法を用いた。 主な結果は以下のとおり。・IVW MR分析では、ADHDと自閉スペクトラム症リスクとの間に正の相関が認められた(オッズ比[OR]:2.328、95%信頼区間[CI]:1.241~4.368)。・ADHDは、統合失調症のリスク増加に対する正の関連も認められた(OR:1.867、95%CI:1.260~2.767)。・ADHDとチック症、知的障害、気分障害、不安症との関連は認められなかった。 著者らは「ADHDは、自閉スペクトラム症および統合失調症のリスク増加と関連していることが示唆されたことから、ADHD患者では、両疾患との合併をさらに注意し、タイムリーな介入や治療が必要であることが明らかとなった」としている。

38.

膵臓の治療が自閉症の子どもの症状を改善か

 意外に思うかもしれないが、自閉症がある子どもの膵臓に対する治療が、行動面の問題の軽減に有効である可能性が、米テキサス大学(UT)ヘルス・マクガバンメディカルスクールの精神医学および行動科学教授のDeborah Pearson氏らによる研究で示された。この研究結果は、「JAMA Network Open」に2023年11月30日掲載された。 研究グループは、食事からのタンパク質摂取とセロトニンやドーパミンなどの重要な神経伝達物質との関連がこの結果の重要ポイントだと説明している。これらの神経伝達物質がうまく働かないと、子どもの行動に影響が及ぶ。自閉症スペクトラム障害(ASD)のある子どもの多くはパスタやパンなどの炭水化物の多い食品を好む一方、タンパク質の多い食事には抵抗を示す。しかし、神経伝達物質の合成に必要なアミノ酸はタンパク質からしか得ることができない。 そこで研究グループは、膵酵素の補充により膵臓でのアミノ酸の産生量を増加させることが子どもの脳に有用であり、脳の神経伝達物質の不足に関連する問題行動の軽減につながるのではないかと考えた。Pearson氏は、「ASDのある子どもには、しばしば易刺激性(怒りっぽさ)などの不適応行動が併発する。そのような場合に、副作用のリスクが低い介入で対処できるかどうかを明らかにしたかった」と説明する。 研究は、3~6歳のASDがある子ども190人(平均年齢4.5歳、男児79%)を対象に実施された。まず、12週間にわたって実施された第一段階の研究では、ランダムに選ばれた92人の子どもの食事に1日3回、豚由来の高プロテアーゼ膵酵素(900mg、以下、膵酵素)をふりかけた。一方、残る98人の食事には偽の酵素(プラセボ)をふりかけた。この研究期間中、研究者や子どもの親には、どの子に何が与えられているのかは明かされなかった。 その結果、膵酵素を摂取した子どもでは、親の報告に基づいた子どもの易刺激性や多動性、従順性のなさ、不適切な発言が有意に減少したことが明らかになった。これに対し、プラセボを摂取した子どもでは、このような変化は認められなかった。 次の段階の研究では、24週間にわたって全員に毎日膵酵素が投与された。その結果、この期間も、子どもの親の報告に基づいた易刺激性や多動性、不適切な発言が有意に減少したほか、無気力、引きこもりの程度も低下していた。全研究期間を通じて、膵酵素投与と関連/無関連の重大な有害事象は1件も報告されなかった。 Pearson氏は、「今回の研究では、神経伝達物質の合成に必要なアミノ酸の産生を促すと考えられている膵酵素の補充がASDの未就学児の行動面の機能の改善に関連することと、その副作用は極めて少ないことが示された」と説明している。 なお、本研究は、研究で使用された膵酵素補充剤を開発しているCuremark社の資金提供を受けて実施された。

39.

双極性障害患者の原因別死亡率と併存する神経発達障害

 双極性障害患者の早期死亡に関するこれまで研究は、サンプルサイズが小さいため、限界があった。台湾・長庚記念病院のWei-Min Cho氏らは、台湾の人口の約99%を対象に、双極性障害患者の早期死亡および併存する神経発達障害、重度の双極性障害との関係を調査した。その結果、精神科入院頻度の高い双極性障害患者は、自殺死亡リスクが最も高く、自閉スペクトラム症の併存は自然死や偶発的な死亡のリスク増加と関連していることが示唆された。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2023年12月6日号の報告。 対象は、双極性障害患者16万7,515例および性別、年齢により1:4でマッチさせた対照群。データは、台湾の国民死亡台帳データベースとリンクされている国民健康保険データベースより抽出した。原因別死亡率(すべての原因による死亡、自然死、事故または自殺による不自然死)の調査には、時間依存性Cox回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・性別、年齢、収入、居住地、身体的条件で調整した後、双極性障害患者における死亡リスクと最も関連していたのは自殺(ハザード比[HR]:9.15、95%信頼区間[CI]:8.53~9.81)であり、次いで不自然死(HR:4.94、95%CI:4.72~5.17)、偶発的な死亡(HR:2.15、95%CI:1.99~2.32)、自然死(HR:1.02、95%CI:1.00~1.05)であった。・原因別死亡リスクの増加に、注意欠如多動症の併存は影響していなかったが、自閉スペクトラム症を併発すると、とくに自然死(HR:3.00、95%CI:1.85~4.88)、偶発的な死亡(HR:7.47、95%CI:1.80~31.1)のリスクが増加することが示唆された。・原因別死亡率は、精神科入院頻度に応じて線形傾向を示し(各々、p for trend<0.001)、1年間に2回以上入院した双極性障害患者では、自殺死亡リスクが34.63倍(95%CI:26.03~46.07)に増加した。

40.

幼児期初期の自閉症をAIが高精度で診断

 米ルイビル大学の研究グループが、特殊なMRI画像から生後24カ月から48カ月の幼児の自閉症を98.5%の精度で診断する人工知能(AI)システムを開発したと発表した。同大学神経学教授で米ノートン小児自閉症センター所長のGregory N. Barnes氏らによるこの研究結果は、北米放射線学会年次総会(RSNA 2023、11月26〜30日、米シカゴ)で発表された。 この研究グループの一員である同大学のMohamed Khudri氏は、「われわれの開発したアルゴリズムは、自閉症の子どもと正常に発達している子どもの脳のパターンを比べて異なるところを見つけ出すように訓練されており、その結果に基づいて自閉症かどうかを診断するものだ」と述べている。 このAIシステムは、拡散テンソル磁気共鳴イメージング(DT-MRI)と呼ばれる画像診断技術を用いたもの。DT-MRIは、白質路と呼ばれる脳内ネットワークに沿って水分子がどのように移動するのかを検出する特殊な技術である。AIシステムは、DT-MRIスキャンから脳組織画像を分離し、水分子の拡散パターンに基づいて脳領域間の結合レベルを調べる。その後、機械学習アルゴリズムが、その拡散パターンに基づいて自閉症の子どもと正常に発達した子どもの脳を比較するという仕組みだ。Barnes氏は、「自閉症は、主として脳内の神経回路や神経細胞間の不適切な結び付きが原因で生じる。DT-MRIは、自閉症の子どもにしばしば認められる社会的コミュニケーションの障害や反復行動などの症状に関連するこれらの異常な結合を捉えるものだ」と説明している。 Barnes氏らは、Autism Brain Imaging Data Exchange-IIから抽出した、生後24カ月から48カ月の幼児226人の脳のDT-MRI画像を用いて、このAIシステムの診断性能を検証した。対象児のうち100人は正常に発達していたが、126人は自閉症だった。その結果、このAIシステムは、97%の感度と98%の特異度で自閉症児を検出し、全体的な正確度は98.5%であることが示された。このことから、AIシステムが自閉症児と非自閉症児を非常に高い精度で区別できることが明らかになった。 Khudri氏は、「われわれのアプローチは、2歳未満の幼児における自閉症の早期発見に向けた、新たな進歩となるものだ。3歳になる前に治療的介入を行うことで、自閉症児がより高い自立性やIQを達成するなどの転帰改善につながると考えている」と述べている。Barnes氏は、「早期介入の背後にある考え方は、脳の可塑性、つまり治療によって機能を正常化する脳の能力を利用することだ」と説明する。 米疾病対策センター(CDC)が発表した2023年の自閉症に関する報告によると、自閉症児のうち3歳までに発達評価を受けているのは半数以下であり、自閉症の基準を満たす子どもの30%は8歳までに診断を受けていないという。Barnes氏は、自閉症の診断が遅れる理由として、検査センターのリソース不足などを挙げている。Khudri氏は、このAIシステムは、影響を受けている脳経路を特定し、それが及ぼしている影響の程度や介入の指針として利用できる重症度スコアに関するレポートを生成するため、診断の迅速化に役立つ可能性があるとの見方を示す。研究グループは、米食品医薬品局(FDA)からAIソフトウェアの認可を得るために、申請中であるという。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

検索結果 合計:159件 表示位置:21 - 40