サイト内検索

検索結果 合計:119件 表示位置:1 - 20

1.

【GET!ザ・トレンド】Less is More?β-ラクタマーゼ阻害薬nacubactamが拓くAMR治療の展望

薬剤耐性菌(AMR)は公衆衛生における世界的な社会課題である。なかでもカルバペネム系抗菌薬に耐性を示すカルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)はWHOの細菌優先病原体リストにおいて、クリティカル(最重要)に分類されている。そのCREに対し、Meiji Seikaファルマは新規β-ラクタマーゼ阻害薬nacubactam(OP0595)を承認申請中である。CRE感染症に対する同剤の特徴と効果、さらに新規抗菌薬開発の課題について、同社研究開発本部の加藤誠司氏らに話を聞いた。喫緊の課題カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)AMRついての世界的な調査報告書であるJim O'Neill氏による耐性菌レポートによれば、新規抗菌薬の研究開発等の対策を講じなければ2050年までに年間1,000万人がAMRにより死亡すると報告されている。これを受け、WHOが薬剤耐性に関するグローバル・アクションプランを策定し、それを基に日本を含む世界各国がそれぞれの国の課題に応じたアクションプランを策定し取り組んでいる。抗菌薬に耐性を示す代表的な機序としてβ-ラクタム系抗菌薬の分解酵素であるβ-ラクタマーゼがある。カルバペネマーゼはβ-ラクタマーゼの1種で、その名のとおりカルバペネム系抗菌薬を分解する酵素である。カルバペネム系抗菌薬は重症感染症治療に使用される。最後の砦であるカルバペネム系抗菌薬を無効化するカルバペネマーゼ産生菌による感染症は、患者の重篤化、入院長期化、さらに死亡率の増加を招く。そのためCRE感染は5類感染症として全例報告が義務付けられるなど、日本でも喫緊の課題とされている。nacubactamによるβラクタマーゼへの阻害活性と、エンハンサー効果nacubactamは、Meiji Seikaファルマが自社で創出した新規β-ラクタマーゼ阻害薬である。2025年12月にカルバペネム系薬に耐性のグラム陰性菌による感染症治療薬として国内承認申請された。同剤はβ-ラクタム薬(セフェピム[CFPM]またはアズトレオナム[AZT])との併用で、CREに対するβ-ラクタム薬の分解を阻害するだけでなく、併用するβ-ラクタム薬の抗菌活性を増強させるという従来のβ-ラクタマーゼ阻害薬にはない特性を持っている。具体的には、nacubactamはPBP2の阻害作用を有する。一方、CFPMやAZTといったβ-ラクタム系抗菌薬はPBP3を阻害する。つまり、CFPMおよびAZTとnacubactamの併用により、PBP2とPBP3双方を阻害して抗菌活性・殺菌作用を増強することが可能となる(エンハンサー効果)。β-ラクタマーゼ阻害薬を単味製剤として開発していることも大きな意味を持つ。単味製剤のメリットとして既存抗菌薬との組み合わせ次第で将来出現する細菌にも柔軟に対応できる可能性がある。また、既存の抗菌薬と組み合わせて耐性菌に対応できるため、従来の配合剤のようにそれぞれのβ-ラクタム薬との配合剤を新薬として医療機関で保管する必要がなくなり、薬剤数抑制の観点からもメリットが生まれると考えられる。β-ラクタマーゼはAmbler分類でクラスAからDに分かれている。国や地域によって優勢なクラスや型が異なり、それに応じて有効な薬剤も変わる。画像を拡大するなかでもクラスBに有効な薬剤は限られており、その対策には課題が残る。最新報告によれば、国内のCREは約1,000例で、大部分はクラスBのIMP型だ。また、近年はクラスBのNDM型も増加傾向にある。厚生労働省によるカルバペネム低感受性腸内細菌目細菌株の感性率を見ると、セフェピムおよびnacubactamとの併用(以下、CFPM/NAC)はクラスA、C、Dのβラクタマーゼに高い感性率を示す。また、アズトレオナムおよびnacubactamとの併用(以下、AZT/NAC)はA、C以外にもクラスB(IMP型、NDM型とも)にも高い感性率を示すことが明らかになっている。画像を拡大する2つの第III相国際共同試験nacubactamの臨床開発では、欧州・日本を含むアジアで2つのグローバル第III相臨床試験(Integral-1、Integral-2)が実施された。Integral-1試験は、カルバペネム感受性の複雑性尿路感染症または急性単純性腎盂腎炎患者を対象に、CFPM/NACおよびAZT/NACをカルバペネム系抗菌薬であるイミペネム/シラスタチン(IPM/CS)と比較した二重盲検比較試験である※。IPM/CSに対する主要評価項目(投与終了7日後の総合臨床効果)において、AZT/NACは非劣性を、CFPM/NACは非劣性かつ優越性を証明した。結果は米国の感染症の学会であるIDWeek2025で反響を呼びThe Lancet Infectious Diseases誌による学会のハイライトにも取りあげられ、試験の内容はThe Lancet2026年5月16日号に掲載された。※通常の成人で、セフェピム2g+nacubactam1g、アズトレオナム2g+nacubactam1gまたはIPM1g /CS1g (いずれも1日3回静注)を投与もう1つの第III相試験であるIntegral-2試験は、CRE感染症患者を対象とした試験である。欧州臨床微生物学感染症学会議(ESCMID Global2026)では口頭演題に採択され発表に至っている。ESCMID Global 2026では、nacubactamに関する10演題が発表され、いずれも活発な議論が展開されたという。同剤に対する世界的な注目度の高さが窺える。新たなスタイルで行われたnacubactamの開発新規抗菌薬の開発にはさまざまな困難が伴う。感染症は被験者数が限られているため、臨床開発において症例を集積するには多くの国・施設の協力が不可欠だ。その分、開発コストは莫大になる。一方で、適正使用により患者数が限定されるなか、安定供給のための製造コストも増加しており経済合理性の欠如から、大手製薬メーカーが抗菌薬開発から撤退する負のサイクルに陥っている。nacubactamの開発に当たってはAMEDによる医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)の支援を得ている※。この研究課題では、第I相試験の薬物動態(PK/PD)からシミュレーションした用法用量を、第II相を介さずに第III相試験で検証している。結果は評価項目を達成し、第II相試験を省略して開発することが可能となった。困難な状況の中で「プロジェクトメンバー全員が、CREによる感染症に苦しむ患者さん全員を救うという思いでnacubactamの開発にあたっている」と加藤氏は述べる。※CiCLE研究開発課題「非臨床PK/PD理論を活用した新規β-ラクタマーゼ阻害剤(OP0595)の単味製剤の研究開発」プル型インセンティブの拡大が抗菌薬開発の鍵を握る新規抗菌薬の開発にあたっては、承認取得後の課題も深刻だ。上市後の適正使用を徹底すると使用症例数は絞られ、販売額は縮小する。加藤氏によれば、新薬の上市まで至った会社も事業が維持できず倒産する事例も少なくない。新規抗菌薬の開発を支える仕組みとして、研究開発費を支援するプッシュ型インセンティブと、承認・発売後の採算性を維持・向上させるプル型インセンティブ制度がある。国内ではプル型インセンティブとして抗菌薬確保支援事業が設けられているが、その予算枠では安定供給に資する製造コストを維持するのに課題もあり、今後の抗菌薬開発においてはプル型インセンティブの拡充がより重要になっていくと考えられる。Meiji Seikaファルマとしても、製薬協と連携しながらプル型インセンティブの拡大に向け、国への働きかけを続けている。nacubactamは新たなβ-ラクタマーゼ阻害薬として、β-ラクタム薬との併用で従来にはない強力な抗菌活性を発揮する。また、単味製剤の利点を生かし、新たな組み合わせを開発することで将来的に新たな耐性菌に備えることができる可能性を持つ。第一歩としてCREという最重要耐性菌に立ち向かうnacubactamに注目したい。 参考 1) O'Neill J, Review on Antimicrobial Resistance. Tackling Drug-Resistant Infections Globally: Final Report and Recommendations. Wellcome Trust and HM Government 2) 厚生労働省 薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書(サマリ版) 3) 国立健康危機管理研究機構(JIHS)国際感染症センターカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)感染症に関する一般的事項 4) 国際健康危機管理研究機構(JIHS)カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)感染症, 2024年現在 5) Takahashi S, et al. Lancet.2026;407:1929-1940.

2.

jmedmook104 プライマリ・ケアのギモンに応える 感染症Q&A

現場で生まれた数々の疑問に専門医が応えます!2019年から続く日本プライマリ・ケア連合学会と日本感染症学会のジョイントシンポジウム「感染症専門医はプライマリ・ケア医からの疑問に応えられるのか?」で熱く交わされた質疑応答をもとに、感染症診療に有用なQ&Aをピックアップ。「外来でグラム染色をすべきか」「風邪なのに抗菌薬を欲しがる患者さんにどう対応すべきか」「感受性のない抗菌薬が効いてしまう理由」など、プライマリ・ケアの現場で直面する答えの出ない疑問についてエキスパートが明快に解説します。専門性と総合性の融合、多職種連携の重要性にも光を当てた本書は、地域で感染症診療に携わる医師はもちろん、看護師、薬剤師、介護職の皆さまにもおすすめの一冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大するjmedmook104 プライマリ・ケアのギモンに応える 感染症Q&A定価4,400円(税込)判型B5判頁数130頁発行2026年6月監修日本プライマリ・ケア連合学会感染症委員会/日本感染症学会学際化・国際化委員会ご購入はこちらご購入はこちら

3.

複雑性尿路感染症と腎盂腎炎、nacubactam併用で有効かつ安全な治療法は/Lancet

 グラム陰性菌による複雑性尿路感染症(cUTI)または急性単純性腎盂腎炎(AP)患者において、イミペネム/シラスタチンとの比較により、セフェピム/nacubactamおよびアズトレオナム/nacubactam併用投与の有効性および安全性が確認された。札幌医科大学の高橋 聡氏らが、「Integral-1試験」の結果を報告した。nacubactam(OP0595)は、新たに開発されたジアザビシクロオクタン系β-ラクタマーゼ阻害薬で、セフェピムまたはアズトレオナムとの併用投与により、カルバペネム耐性腸内細菌目細菌および第3世代セファロスポリン耐性腸内細菌目細菌(ESBL産生菌を含む)に対する強力な活性を示すことが確認されていた。Lancet誌2026年5月16日号掲載の報告。nacubactamとセフェピムまたはアズトレオナム併用投与の有効性と安全性をイミペネム/シラスタチンと比較 Integral-1試験は、ブルガリア、中国、チェコ共和国、エストニア、ジョージア、日本、ラトビア、リトアニア、スロバキアの79施設において実施された国際共同第III相無作為化二重盲検実薬対照試験。18歳以上、体重が140kg以下で、少なくとも5日間の注射用抗菌薬による治療が必要とされているcUTIまたはAP患者を対象とした。 研究グループは、対象患者をセフェピム(2g)/nacubactam(1g)群、アズトレオナム(2g)/nacubactam(1g)群、またはイミペネム(1g)/シラスタチン(1g)群に、診断(cUTI、AP)および地理的地域(日本、中国、その他)を層別因子として2対1対1の割合で無作為に割り付け、8時間(±1時間)ごとに60分間(±15分間)かけて、5~10日間、必要に応じて最長14日間、静脈内投与した。 主要エンドポイントは、微生物学的修正intention-to-treat(mITT)集団(無作為化され試験薬の投与を受け、かつベースラインで適格病原体がイミペネムおよびメロペネムに感受性のあるすべての患者)における、投与終了7日後の治癒判定時点での総合臨床効果とした。総合臨床効果は、臨床的成功(治験責任医師評価による臨床効果が治癒と判定)、および微生物学的成功(試験実施施設と中央検査室での検査結果に基づく細菌学的効果が消失と判定)の達成とした。また、試験薬を少なくとも1回投与されたすべての患者において安全性を評価した。 主要エンドポイントの非劣性マージンは、群間差の95%信頼区間(CI)の下限が-15%ポイント、優越性マージンは0%ポイントと事前に規定された。イミペネム/シラスタチンに対するセフェピム/nacubactam併用群の優越性を確認 2023年5月22日~2024年11月26日に、614例が無作為化され、うち微生物学的mITT集団は431例(セフェピム/nacubactam群214例、アズトレオナム/nacubactam群112例、イミペネム/シラスタチン群105例)であった(男性228例[53%]、女性203例[47%])。 主要エンドポイントを達成した患者の割合は、セフェピム/nacubactam群で82%(176/214例)、アズトレオナム/nacubactam群で72%(81/112例)、イミペネム/シラスタチン群で61%(64/105例)であった。イミペネム/シラスタチン群との差は、セフェピム/nacubactam群で21.3%ポイント(95%CI:10.9~32.0)(非劣性かつ優越性)、アズトレオナム/nacubactam群で11.4%ポイント(95%CI:-1.2~23.7)(非劣性)であった。 試験治療下で発現した有害事象は、セフェピム/nacubactam群で306例中100例(33%)、アズトレオナム/nacubactam群で152例中45例(30%)、イミペネム/シラスタチン群で150例中65例(43%)に報告された。治療に関連する死亡は認められなかった。

4.

英語で「膀胱炎」、患者に説明するには?【患者と医療者で!使い分け★英単語】第60回

医学用語紹介:膀胱炎 cystitis「膀胱炎」について説明する際、患者さんにcystitisと言って通じるでしょうか?cystitisは医療者同士のコミュニケーションではごく一般的に用いられますが、患者さんにはなかなか通じにくい用語です。では、何と言い換えればよいでしょうか?講師紹介

5.

女性の単純性尿路感染症、nitrofurantoinが有効/Lancet

 女性の単純性尿路感染症(UTI)に対する治療は、nitrofurantoinが最も有効であり、次いでpivmecillinam、ホスホマイシン2回投与の順で、ホスホマイシン単回投与が最も有効性が低いことが、スペイン・Institute for Primary Health Care Research Jordi Gol i GurinaのCarl Llor氏らが同国のプライマリケア34施設で実施したプラグマティックな第IV相無作為化非盲検臨床試験「SCOUT試験」の結果で示された。ほとんどのガイドラインでは、単純性UTIに対しnitrofurantoin、ホスホマイシン、場合によってはpivmecillinamの投与が推奨されているが、これらの直接比較が求められていた。著者は、「単純性UTIに対する第1選択薬としてのホスホマイシンの役割は再評価されるべきである」とまとめている。Lancet誌2026年4月25日号掲載の報告。UTIに対する4つの治療法の有効性と安全性を比較 研究グループは、UTI特有の症状(排尿痛、尿意切迫感、頻尿、恥骨上部痛)を少なくとも1つ有し、かつ他の原因(性感染症や外陰膣炎を示唆する症状)がなく、尿試験紙法で亜硝酸塩または白血球エステラーゼのいずれかが陽性の18歳以上の女性を、ホスホマイシン3gの単回投与群、ホスホマイシン3gの2回投与群、nitrofurantoin(100mgを1日3回5日間)群、またはpivmecillinam(400mgを1日3回3日間)群のいずれかに、1対1対1対1の割合で無作為に割り付け追跡評価した。 主要アウトカムは、7日時点の臨床的治癒(すべての感染症状の消失と定義)を示した患者の割合であった。有効性はnitrofurantoinが最も高く、ホスホマイシン単回投与が最も低い 2022年4月4日~2024年11月14日に804例がスクリーニングを受け、このうち768例が無作為化された(ホスホマイシン単回投与群191例、ホスホマイシン2回投与群194例、nitrofurantoin群190例、pivmecillinam群193例)。被験者の年齢中央値は48歳(四分位範囲:34~63)で、人種および民族に関するデータは収集されなかった。 主要アウトカムのデータ欠測例を除く720例が主要解析の対象集団となった。 臨床的治癒率が最も低かったのはホスホマイシン単回投与群(109/185例[59%])、最も高かったのはnitrofurantoin群(128/172例[74%])で、群間差は15.5%(95%信頼区間[CI]:5.9~25.1、p=0.0168)であった。 次いで、pivmecillinam群(127/182例[70%]、ホスホマイシン単回投与群との差:10.9%、95%CI:1.1~20.6、p=0.2352)、ホスホマイシン2回投与群(122/181例[67%]、8.5%、-1.4~18.3、p=0.6935)の順であった。 有害事象は、ホスホマイシン単回投与群で191例中38例(19.9%、95%CI:14.9~26.1)、ホスホマイシン2回投与群で194例中51例(26.3%、20.6~32.9)、nitrofurantoin群で190例中51例(26.8%、21.0~33.6)、pivmecillinam群で193例中41例(21.2%、16.1~27.5)に発現した。ほとんどの有害事象は軽度で、主な事象は消化器系の症状であった。重篤な有害事象は4例に認められ、そのうちpivmecillinam群の腎盂腎炎1例が治験薬と関連ありと判定された。

6.

尿路感染症疑いの適切な外来トリアージとは?推奨を発表

 尿路感染症(UTI)疑いの成人患者に対する外来トリアージについて、経験的抗菌薬投与、尿検査および診察方法の妥当性を検討し、推奨事項をまとめたコンセンサス声明が、「JAMA Network Open」に2月2日掲載された。 米退役軍人省(VA)アナーバー医療システムのJennifer Meddings氏らは、UTIが疑われる成人患者に対するトリアージおよび管理方針の妥当性を評価するため、研究論文のスコーピングレビューを実施した。136の臨床シナリオごとに最大9つの管理戦略の妥当性が評価された。 主な推奨事項は以下の通り。腎盂腎炎、複雑性膀胱炎または尿路閉塞が疑われる症状がある場合には、当日中に対面にて評価を行う。下痢や性器分泌物など非尿路症状を伴う場合には診察を行う。膀胱炎症状を伴わず、尿の色調や性状の変化のみを理由とする尿検査や経験的治療は行わない。女性において、排尿痛、頻尿、尿意切迫感、恥骨上部痛といった新規の典型的な膀胱炎症状があり、かつ抗菌薬耐性のリスクがない場合には、検査や診察を行わずに経験的治療を開始する。抗菌薬耐性のリスクを有する女性および全ての男性では、抗菌薬の初回投与前に尿検査および尿培養を実施する。適切なタイミングでの尿検査や診察を受けることが困難な患者には、経験的治療を考慮してよい。 Meddings氏は、「完全オンラインで問診票への回答や医療者とのやり取りが可能となった現在でも、それだけでは正確な診断や適切な治療に十分でない場合があることを、本指針を通じて患者と医療者の双方に認識してもらいたい」と述べている。 なお、1人の著者がミシガン州ブルークロス・ブルーシールドの臨床品質委員会との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

7.

若い女性の膀胱炎治療【日常診療アップグレード】第54回

若い女性の膀胱炎治療問題26歳女性。3日前からの頻尿と残尿感、排尿時痛を訴え来院した。発熱や悪寒、腰痛、帯下の増加はない。決まったパートナーが1人いる。6ヵ月前と2ヵ月前に2回の尿路感染症を経験し、トリメトプリム・スルファメトキサゾールを服用した。性感染症の既往はない。バイタルサインは正常である。恥骨上部に軽度の圧痛がある。CVA叩打痛は認めない。尿検査(尿試験紙)では、尿中白血球と白血球エステラーゼ、亜硝酸塩が陽性である。尿培養は結果待ちである。トリメトプリム・スルファメトキサゾールを投与した。

9.

副腎偶発腫瘍【日常診療アップグレード】第50回

副腎偶発腫瘍問題72歳女性。腎盂腎炎のため救急室を受診した際、CT検査で偶然に内部が均一な直径3cmの左副腎腫瘍が見つかった。単純CT検査でのCT値は8ハンスフィールド単位(Hounsfield Unit: HU)である。既往歴は高血圧、脂質異常症、2型糖尿病。処方薬はアムロジピン、アトルバスタチン、メトホルミン、デュラグルチドである。バイタルサインを含む身体所見は正常である。低用量デキサメタゾン抑制試験および血漿メタネフリン、血漿アルドステロン濃度/血漿レニン活性比の結果は正常であった。追加検査や治療は不要である。

10.

セフトリアキソン【Dr.伊東のストーリーで語る抗菌薬】第7回

セフトリアキソン前回はセファゾリンを勉強しました。そのスペクトラムは「S&S±PEK」です。復習は間に合っていますか? これらは皮膚軟部組織感染症や尿路感染症の起因菌でした。「±PEK」の部分は、厚生労働省のJANISなども参考にするという解説もしました。この知識を踏まえて、今回はセフトリアキソンについて紹介します。皆さんが毎日のように使われている抗菌薬なのではないでしょうか。セフトリアキソンのスペクトラムセフトリアキソンは第3世代セフェム系です。「トリ」がつくので「トリオ」で3。これで覚えてください。スペクトラムは「S&S+HMPEK」です。セファゾリンは「±」となっており、煮え切らない感じでしたが、今回は「+」で示しています。そして、HとMが加わりました。HMPEKは「ヘンペック」と呼んで「雌鶏がついばむ(hen pecks)」です。よくわからない語呂合わせなのですが、感染症科医の間で伝統的に使われている語呂なので覚えて損はないと思います。HはHaemophilus influenzae、MはMoraxella catarrhalisです。両方とも上下気道感染症の起因菌ですね(図1)。図1 セフトリアキソンのスペクトラム画像を拡大するそうすると、セフトリアキソンが皮膚軟部組織感染症、上下気道感染症、尿路感染症の代表的な起因菌を一通りカバーできることになるわけです。蜂窩織炎、肺炎、腎盂腎炎です。少なくとも救急外来でみかける感染症の半分くらいはこういった感染症ですね。残りはお腹の感染症くらいです。そのため、救急外来でよくセフトリアキソンが使われていると思いますが、それで大きな失敗をしない理由もこれでおわかりになるのではないでしょうか。ある意味、セフトリアキソンは救急外来の守護神と呼べてしまうわけです。ただその一方で、あくまで救急外来という点に注意が必要です。入院患者では緑膿菌感染症なども問題になるのですが、そういったところまではセフトリアキソンは対応しきれていません。院内感染症に対応するには、もっと世代の進んだセフェム系が必要になります。インフルエンザ桿菌の薬剤耐性分類HMPEKでHaemophilus influenzae(インフルエンザ桿菌)の話題が出てきたため、少しだけ補足します。インフルエンザ桿菌は、薬剤耐性機構を勉強するモデルとしてとっても使いやすいのです。インフルエンザ桿菌を薬剤耐性で分類すると、BLNAS、BLPAR、BLNARの3つにわかれます。とは言っても、覚えるのが大変なので、便宜的にレベル1、レベル2、レベル3でとりあえず十分です。レベル3のBLNARだけ、余力があれば覚えてください。図2 インフルエンザ桿菌の薬剤耐性分類画像を拡大するレベル1のBLNASタイプは楽勝です。アンピシリンを入れたら鍵穴にはまって簡単にやっつけることができます(図3)。図3 BLNASタイプへのアンピシリン画像を拡大するただし、インフルエンザ桿菌はアンピシリンに対抗すべく、レベル2のBLPARタイプにレベルアップします。これはβラクタマーゼを使ってアンピシリンを打ち落としてくるため、アンピシリンが効きません。そのため、βラクタマーゼ対策として人類側としては、アンピシリン・スルバクタムを使います。こうしてレベル2のBLPARタイプをやっつけることができます(図4)。図4 BLPARタイプへのアンピシリン・スルバクタム画像を拡大するしかし、インフルエンザ桿菌はさらに進化します。レベル3のBLNARでは、ペニシリン結合蛋白を変異させて、鍵穴の形を変えてしまいます。そうすると、アンピシリン・スルバクタムでも鍵穴が合わず太刀打ちできません(図5)。図5 BLNARタイプへのアンピシリン・スルバクタム画像を拡大するそのため、鍵穴の合うセフトリアキソンを持ってこないといけないわけです。これでやっとインフルエンザ桿菌をやっつけることができるわけです(図6)。図6 BLNARタイプへのセフトリアキソン画像を拡大するこのように、薬剤耐性機構を知っていると、抗菌薬をもっと楽しく勉強できると思います。今回出てきたBLNARはよく使う言葉なので、知っておいて損はないと思います。まとめセフトリアキソンは 「S&S+HMPEK」で覚えましょう。蜂窩織炎、肺炎、腎盂腎炎など救急外来でみる感染症の多くに対応しているため、使い勝手の良い抗菌薬です。ただし、あくまで救急外来、つまりは市中感染症に過ぎないわけで、院内感染症に対しては少々スペクトラムが不足している点にも気をつけていただければと思います。

12.

尿検査と尿培養、それぞれの解釈は?【Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー】第12回

Q12 尿検査と尿培養、それぞれの解釈は?高齢者の尿検査で「白血球(+)、潜血(+)」は治療の必要性があるのでしょうか?急性腎盂腎炎において、尿培養検査で「偽陰性」と出ることはよくあることなのでしょうか?

13.

腎盂腎炎のCT検査、その診断精度は?【Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー】第11回

Q11 腎盂腎炎のCT検査、その診断精度は?腎盂腎炎を疑って泌尿器科にコンサルトすることがありますが、CT検査で腎周囲の脂肪織濃度の上昇がないと、尿検査が陽性でも腎盂腎炎ではない、と言われます。実際はどうなのでしょうか。

14.

急性腎盂腎炎、治療推奨は7日間?【Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー】第9回

Q9 急性腎盂腎炎、治療推奨は7日間?急性腎盂腎炎の標準的治療期間は10~14日とされますが、外来診療において単純性であれば治療開始後数日で解熱することが多く、抗菌薬を2週間も継続する必要はないのではと思われる症例が多々あります。実際1週間で治療終了しても再燃しない方がほとんどですが、いかがお考えでしょうか?

15.

尿路感染症へのエコー(3):腎盂腎炎と水腎症【Dr.わへいのポケットエコーのいろは】第3回

尿路感染症へのエコー(3):腎盂腎炎と水腎症前回、ポケットエコーを用いて尿ジェットを観察し、尿路結石を指摘する方法や、カラードプラで腎盂・尿管を描出し、水腎症がわかるようになるための手技について解説しました。今回は、「腎盂腎炎を診断できる」「B modeで水腎症がわかる」という目標を設定してポケットエコーの手技を解説していきます。腎盂腎炎を指摘できる腎臓の圧痛を評価すれば腎盂腎炎の診断に役立ちます。じつは、腎臓は直接触診することができます。身体診察では腎臓の双手診という手法があります。実臨床ではあまり用いられていないかもしれませんが、エコーを併用すれば画面を見ながら安全に圧痛を確認できます。腎臓の圧痛を確認する際は、肋骨脊柱角を叩打される場合がありますが、これは腎臓の圧痛を間接的に判断しているにすぎず、特異度は高くありません。そこで、sonographic Murphy's sign(超音波プローブによる胆嚢圧迫時の疼痛)の腎臓版として、プローブで腎臓を押しながら観察していきます。それでは、実際の手技を動画で見ていきましょう。このように、腎臓をエコーガイド下で触診していくという方法があるのです。B modeで水腎症がわかるつづいて、腎臓を長軸にきれいに描出し、B modeで水腎症を確認する方法を紹介します。実際の手技を見る前に、まずは次の2点を押さえておきましょう。まず1点目は「腎臓は後腹膜に固定されている」ということです。腎臓は後腹膜に固定されていますが、海底に根を張る昆布がゆらゆら揺れるのと同様に、息を吸うとよく動きます。2点目は「腎臓は上極(頭側)から下極(足側)にかけて腹側に傾いている」ということです。このことを意識して、エコーのプローブを斜めに傾けるときれいに断面を見ることができます。それでは、以上を踏まえて動画を見ていきましょう。いかがでしょうか? 「腎臓は断片的にしか見えない」と感じられていた先生もいるのではないでしょうか。しかし、B modeで見ることで腎臓をきれいに描出することができ、大きな情報が得られるのです。それでは、次回からは「胆道系疾患の手技」について紹介していきます。

16.

経尿道的高周波治療が間質性膀胱炎患者の骨盤痛を緩和

 経尿道的高周波治療(transurethral fulguration;TUF)が間質性膀胱炎(IC)患者の骨盤痛緩和に有効であるという研究結果が、「Neurourology and Urodynamics」に4月3日掲載された。 ソウル大学校医科大学(韓国)のHyun Ju Jeong氏らは、2005年10月~2019年12月までのIC管理の結果を分析するため、骨盤痛を主訴として外来受診したIC患者の電子カルテを後ろ向きに解析した。疼痛管理のため、膀胱潰瘍に対するTUFを用いた膀胱鏡手術が行われ、難治性の骨盤痛に対しては膀胱全摘除術が行われていた。 解析の結果、IC患者275人のうち240人が1回目の膀胱鏡手術を受け、中央値21.0カ月の追跡期間中に受けたTUFの回数は、全体として平均1.0回であった。膀胱鏡手術を受けた患者240人のうち71人(29.6%)では、それ以上の外科的治療を必要としなかったが、64人(26.7%)では骨盤痛が再発したため2回目のTUFが必要となった。再発までの期間の中央値は12.0カ月であった。2回目のTUFを受けた64人のうち15人(23.4%)は、中央値12.0カ月後に3回目のTUFを受けた。3回目のTUFを受けた15人のうち5人は、疼痛の再発により4回目のTUFを受けた。1人の患者は7回目のTUFを受けていた。全体として、TUFによる疼痛管理に成功したのはIC患者240人のうち168人(70.0%)であった。18人(7.5%)は膀胱全摘除術を受けた。 著者らは、「本研究の結果により、TUFを用いた膀胱鏡手術は、IC患者の骨盤痛を管理するための効果的な基本治療であることが示された」と述べている。

17.

ST合剤処方の際の5つのポイント【1分間で学べる感染症】第30回

画像を拡大するTake home messageST合剤、特徴的な副作用を理解して、慎重に使用しよう。ST合剤(スルファメトキサゾール・トリメトプリム)は、幅広い抗菌スペクトラムを持つ重要な抗菌薬です。便利な反面、使用方法や副作用について十分理解しておくことが重要です。今回は、ST合剤処方で重要な5つのポイントを一緒に勉強していきましょう。成分ST合剤は、「トリメトプリム80mg」と「スルファメトキサゾール400mg」を含有しています。1対5の固定比率で調整されており、これに基づいて用量を計算します(後述)。スペクトラムメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を含むグラム陽性菌およびグラム陰性桿菌に対して有効です。また、ニューモシスチスやトキソプラズマ、サイクロスポラなどもカバーします。適応疾患ST合剤は、MRSA感染症、膀胱炎、尿路感染症、ニューモシスチス肺炎(予防・治療)などに適応があります。ステロイド長期使用患者ではニューモシスチス肺炎の予防で使用されることも多いため、なじみのある方が多いかもしれません。また、リステリア感染症、ノカルジア症に対する選択肢として検討されることもあります。副作用見掛け上のクレアチニンの上昇が報告されていますが、これは実際の腎機能悪化を反映していない場合もあります。ST合剤の成分のうち、トリメトプリムは尿細管上皮細胞の「有機アニオントランスポーター」を阻害します。これにより尿細管クレアチニンの分泌が阻害され、血清クレアチニンが上昇するといわれています。しかし、ST合剤は真の急性腎障害(AKI)を来すこともあり注意が必要です。機序としては間質性腎炎や急性尿細管壊死などが報告されています。また、カリウムの上昇も認められ、とくにACE阻害薬やARBを併用している患者、重度腎障害がある患者では、高カリウム血症のリスクが高まるために注意が必要です。そのほか、食思不振、皮疹、消化器症状がみられることもあります。用量計算ST合剤の用量はトリメトプリムの含有量を基準に計算されます。感染症の重症度や患者の腎機能に応じて調整が必要です。たとえば、ニューモシスチス肺炎に対する治療として用いる場合、トリメトプリム換算で15~20mg/kgを1日に3~4回に分けて投与するため、体重65kgの患者さんの場合であれば、65kg×15mg=975mg(80mg×12錠=960mg)が必要です。以上、ST合剤は一般的に安全に使用される抗菌薬ですが、副作用を含めた上記のポイントを十分に念頭に置いておく必要があります。1)Gleckman R, et al. Pharmacotherapy. 1981;1:14-20.2)Cockerill FR 3rd, et al. Mayo Clin Proc. 1987;62:921-929.3)Nakada T, et al. Drug Metab Pharmacokinet. 2018;33:103-110.4)Fralick M, et al. BMJ. 2014;349:g6196.5)UpToDate. Trimethoprim-sulfamethoxazole: An overview. (last updated: Apr 25, 2025.)

19.

無症候性細菌尿と尿路感染症の区別はどうする?【とことん極める!腎盂腎炎】第15回

無症候性細菌尿と尿路感染症の区別はどうする?Teaching point(1)無症候性細菌尿を有している患者は意外と多い(2)無症候性細菌尿は一部の例外を除けば治療不要である(3)無症候性細菌尿と真の尿路感染症の区別は難しいため総合内科医/総合診療医の腕の見せ所であるはじめに本連載をここまで読み進めた読者の方は、尿路感染症をマスターしつつあると思うが、そんな「尿路感染症マスター」でも無症候性細菌尿と真の尿路感染症の区別をすることは容易ではない。特殊なセッティングを除けば、そもそも無症状の患者の尿培養を採取することがないため、われわれは一般的に熱源精査の過程で無症候性細菌尿かどうかを判断しなければならないからである。尿路感染症は除外診断(第1回:問診参照)であるため、発熱患者が膿尿や細菌尿を呈していたとしても尿路感染症と安易に診断せず、ほかに熱源がないか病歴・身体所見をもとに検索し、場合によっては血液検査・画像検査を組み合わせて診断することが大切である。このように無症候性細菌尿と尿路感染症の区別は一筋縄ではいかないが、本項で無症候性細菌尿という概念について詳しく知り、その誤解をなくすことで、少しでも区別しやすくなっていただくことを目標とする。1.無症候性細菌尿とは無症候性細菌尿とはその名の通り、「尿路感染症の症状がないにもかかわらず細菌尿を呈している状態」である。米国感染症学会(Infectious Diseases Society of America:IDSA)のガイドライン1)では105CFU/mLの細菌数が尿から検出されることが、細菌尿の条件として挙げられている(厳密にいえば、女性の場合は2回連続で検出されなければならない)。無症候性細菌尿を有している割合(表)は加齢とともに上昇し、女性の場合、閉経前は1〜5%と低値だが、閉経後は2.8〜8.6%、70歳以上に限定すると10.8〜16%、施設入所者に至っては25〜50%と非常に高値となる。男性の場合も同様で、若年の場合は極めてまれであるが、70歳以上に限定すると3.6〜19%、施設入所者では15〜50%となり、女性とほぼ同頻度となることが知られている1)。また糖尿病があると無症候性細菌尿を呈する頻度がさらに上昇するとされている。さらに膀胱留置カテーテルを使用中の場合、細菌尿を呈する割合は1日3〜5%ずつ上昇するため、1ヵ月間留置していると細菌尿はほぼ必発となることも知られている2)。表 無症候性細菌尿を有する頻度画像を拡大するつまり「何も症状はないがもともと細菌尿を有している患者」は意外と多いのである。熱源精査を行う際はこれを踏まえ、「もともと無症候性細菌尿を有していた人が何か別の感染症に罹患している」のか「膀胱刺激徴候やCVA叩打痛のない腎盂腎炎を発症している」のか毎回頭を悩ませなければならない。とくに入院中の高齢者に関しては、尿路感染症と診断されたうちの40%程度が不適切な診断だったという研究3)もあり、ここの区別は総合内科医/総合診療医の腕の見せ所といえる。2.無症候性細菌尿と尿検査結論からいうと、尿検査で無症候性細菌尿と尿路感染症を区別することはできない。「第5回:尿検体の迅速検査」に記載があるように、尿中白血球や尿中亜硝酸塩は尿中に白血球や腸内細菌が存在すれば陽性になるため、無症候性細菌尿であっても、尿路感染症であっても同じ結果になってしまうのである。亜硝酸塩が陽性とならない細菌(腸球菌など)の存在や亜硝酸塩の偽陽性(ビリルビン高値や試験紙の空気への曝露)にも注意が必要である。「膿尿もあれば無症候性細菌尿ではなく尿路感染症を疑う」という誤解も多いが、実際はそんなことはなく、たとえば糖尿病患者では無症候性細菌尿の80%で膿尿も認めていたという報告がある4)。つまり、尿路感染症ではなくとも膿尿や細菌尿を認めることがあり、それが尿路感染症の診断を難しくしているのである。高齢者の発熱で尿中白血球と尿中亜硝酸塩が陽性のため腎盂腎炎として治療開始されたが、総合内科/総合診療科入院後に偽痛風や蜂窩織炎と診断される…というパターンは比較的よく経験する。尿検査所見に飛びつき、思考停止になってしまわないように注意したい。3.無症候性細菌尿の治療の原則無症候性細菌尿の治療は原則として必要ない。抗菌薬適正使用の観点からも「かぜに抗菌薬を投与しない」の次に重要なのが「無症候性細菌尿は治療しない」であると考えられている5)。無症候性細菌尿を治療しても尿路感染症のリスクは減らすことができず、それどころか中長期的には尿路感染症のリスクが上昇するとされている6,7)。また下痢や皮疹などの副作用のリスクは当然上昇し、耐性菌の出現にも関与することが知られている1,7)。不必要どころか害になる可能性があるため、原則として無症候性細菌尿は治療しないということをぜひ覚えていただきたい。4.無症候性細菌尿の例外的な治療適応何事も原則を知ったうえで例外を知ることが大切である。この項では無症候性細菌尿でも治療すべき状況を概説する。<妊婦>妊婦が無症候性細菌尿を有する割合は2〜15%とされており8)、治療を行うことで腎盂腎炎への進展リスクや、低出生体重児のリスクが有意に低下することがわかっている9)。このため妊婦ではスクリーニングで無症候性細菌尿があった場合、例外的に治療をすべきとされている。抗菌薬は検出された菌の感受性をもとに決定すればよいが、ST合剤を避けてアモキシシリンやセファレキシンを選択するのが望ましいと考える。治療期間は4〜7日間が推奨されている1)。治療閾値は無症候性細菌尿の定義通り、尿培養から尿路感染症の起炎菌が105CFU/mL以上検出された場合となっているが、105CFU/mL未満でも治療している施設も往々にしてあると思われるためローカルルールを確認していただきたい。なお米国予防医学専門委員会(U.S. Preventive Services Task Force:USPSTF)は、妊婦の尿培養からGroup B Streptococcus(S. agalactiae)が検出された場合、S. agalactiaeの膣内定着が示唆され、胎児への感染を予防するため例外的に104CFU/mLでも治療適応としていることに注意が必要である10)。<泌尿器科処置前>厳密にいうと、「粘膜の損傷や出血を伴うような泌尿器科処置前」である。これは無症候性細菌尿の治療というより、術前の抗菌薬予防投与と考えたほうがイメージしやすいだろう。経尿道的前立腺切除術や経尿道的膀胱腫瘍切除術などの術前にスクリーニングを行い、無症候性細菌尿がある場合は術後感染症の予防のため治療が推奨されている。抗菌薬は検出された菌の感受性をもとに、できるだけ狭域なものを選択する。治療期間は術後創部感染の予防と同様に、手術の30〜60分前に初回投与し、当日で終了すればよい1)。なお膀胱鏡検査だけの場合や、膀胱がんに対するBCG注入療法のみの場合は粘膜の損傷や出血リスクが低く、感染予防効果が乏しいため無症候性細菌尿の治療は不要と考えられる1,11)。意外かもしれないが無症候性細菌尿の治療適応はこの2つだけである。厳密にいうと「腎移植直後の無症候性細菌尿の治療」などは意見が分かれるところであるが、少なくとも腎移植後2ヵ月以上経過した患者に対する無症候性細菌尿の治療効果はないとされる12)。さすがに腎移植後2ヵ月以内に患者を外来フォローすることはほぼないと思われるため、総合内科医/総合診療医が覚えておくべきなのは上述の2つだけであるといってよいだろう。5.無症候性細菌尿と尿路感染症の区別繰り返しになるが、熱源精査の過程で発見された無症候性細菌尿と真の尿路感染症の区別は一筋縄ではいかない。とくに後期高齢者ではもともと無症候性細菌尿を有している率が高くなり、認知症などがあれば真の尿路感染症のときでも発熱以外に症状が乏しいこともあるため、両者の区別がより一層難しくなる。区別に有用な単一の検査も存在しないため、病歴・身体所見・血液検査所見・画像所見などを組み合わせ総合的な評価を行う必要があるといえる。大切なことは尿路感染症と診断する前にほかの熱源をできるだけ否定するということである。無症候性細菌尿を治療してしまう動機としては以下13)のようなものがあげられている。(1)臨床像を考慮せず検査異常を治療するという誤った考え(2)過剰な不安や警戒心という心理的要因(3)適切な意思決定を妨げる組織文化(2)や(3)に関しては状態悪化時のバックアップ体制などにも左右されると考えられるため、個人でなく科全体や病院全体で取り組んでいかなければならないテーマだといえる。1)Nicolle LE, et al. Clin Infect Dis. 2019;68:1611-1615.2)Hooton TM, et al. Clin Infect Dis. 2010;50:625-663.3)Woodford HJ, George J. J Am Geriatr Soc. 2009;57:107-114.4)Zhanel GG, et al. Clin Infect Dis. 1995;21:316-322.5)Choosing Wisely. Infectious Diseases Society of America : Five Things Physicians and Patients Should Question. 2015.(Last reviewed 2021.)6)Zalmanovici Trestioreanu A, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2015;4:CD009534.7)Cai T, et al. Clin Infect Dis. 55:771-777.8)Smaill FM, Vazquez JC. Cochrane Database Syst Rev. 2019;CD000490.9)Henderson JT, et al. JAMA. 2019;322:1195-1205.10)US Preventive Services Task Force. JAMA. 2019;322:1188-1194.11)Herr HW. BJU Int. 2012;110:E658-660.12)Coussement J, et al. Clin Microbiol Infect. 2021;27:398-405.13)Eyer MM, et al. J Hosp Infect. 2016;93:297-303.

20.

セフトリアキソンで腎盂腎炎を伴う腸内細菌目細菌菌血症を治療できるか

 セフトリアキソン(CTRX)は尿路感染症における選択薬の1つであるが、他のβ-ラクタム系抗菌薬と比較して尿中排泄率が低いという欠点がある。わが国では2023年にセフォチアム(CTM)が不足したことから、尿路感染症に対するCTRXの需要が高まっている。今回、愛知医科大学の柴田 祐一氏らが、腎盂腎炎を伴う腸内細菌目細菌菌血症に対するCTRXと他のβ-ラクタム系抗菌薬の有効性を比較したところ、30日全死亡率は同様であった。Journal of Infection and Chemotherapy誌オンライン版2025年4月9日号に掲載。 本研究では、2014年7月~2024年2月に愛知医科大学病院で血液および尿培養で大腸菌、クレブシエラ属、プロテウス属が検出されたβラクタム系抗菌薬投与患者を後ろ向きに登録した。登録した計123例をCTRX群(CTRXを5日間以上投与)とその他のβ-ラクタム系群(アンピシリン、セファゾリン、CTM、またはセフォタキシムを5日間以上投与)に分け、年齢、チャールソン併存疾患指数、静脈内抗菌薬投与期間、経口抗菌薬への切り替え患者数、アルブミン値、白血球数、C反応性蛋白、体温、ICU入室必要について傾向スコアマッチングした。主要評価項目は、副作用、転帰、30日および90日時点の死亡率だった。 主な結果は以下のとおり。・傾向スコアマッチング後、各群26例が選出された。・30日全死亡率は両群とも3.8%であった。・再感染や腎盂腎炎による再入院は認められなかった。 著者らは「CTRX治療は腎盂腎炎を伴う腸内細菌目細菌菌血症患者の予後に影響を与えなかった。尿中排泄率が低いという理由で尿路感染症に対するCTRXの使用を避ける必要はない」と考察している。

検索結果 合計:119件 表示位置:1 - 20