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急性腎障害の実態は国の事情により大きく異なる~詳細な実態把握と対策が望まれる~(解説:木村 健二郎 氏)-531

 acute kidney injury(AKI:急性腎障害)という言葉が、acute renal failure(急性腎不全)という言葉の代わりに使われるようになった。そのいきさつは、急激に腎機能が低下する病態は、以前いわれていたように決して予後の良いものではないことが明らかになってきたこと、早く診断して治療すれば回復のチャンスがあることなどから、早期診断を可能とする診断基準と評価のための病期分類が必要とされるようになったことによる。 この論文は、国際腎臓学会の中の0by25 acute kidney injury initiativeという組織による、前向きの観察研究の報告である。背景には、現在手に入るAKIの疫学データはほとんどが高所得国(先進国)からのものであるが、世界の人口の85%が住む低~中所得国(発展途上国)におけるAKIの実態がほとんどわかっていない、ということがある。 72ヵ国から322人の医師が参加し、2014年9月29日から12月7日までに発症したAKIの患者データを集めた。AKIの診断は、KDIGO(Kidney Disease:Improving Global Outcomes)の診断基準で行った。KDIGOによるAKIの診断基準では、(1)48時間以内の血清クレアチニン0.3mg/dL以上の上昇、(2)7日以内の血清クレアチニンの1.5 倍以上の上昇、(3)尿量0.5mL/kg/h未満が6時間持続、この3つの病態のうち1つがあればAKIである。 4,018例のAKIが報告されたが、58%は病院外で発症している。病院外発症のAKIは低~中所得国では80%と高いことが示された。低血圧と脱水がAKIの原因としては多かった。しかし、この頻度も国により異なり、高所得国では低血圧が、低~中所得国では脱水が多かった。また、発症7日目の死亡率も低~中所得国では高所得国より高かった(12%対10%)。 患者数が少なく、実態をまだ反映していない可能性はあるが、国によりAKIの発症場所や原因・予後が異なる可能性が示された。Oby25はZero preventable deaths from AKI by 2025で、2025年までに世界から予防可能なAKIによる死亡をなくそうという趣旨で活動している。今後さらなる調査が行われ、予防可能なAKIの発症を抑制する方策につながることを期待したい。

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羊水過多と出生前バーター症候群の遺伝的リスク/NEJM

 羊水過多および一過性の出生前バーター症候群の発症に、変異遺伝子MAGED2が関連していることが明らかにされた。MAGED2は、悪性黒色腫関連抗原D2(MAGE-D2)をコードし、X染色体に位置していた。ドイツ・フィリップ大学マールブルクKamel Laghmani氏らが、重度の羊水過多と早産合併例が一家系の男児3例の妊娠で認められた症例について、その発端家族構成員2人のDNAを解析し明らかにした。NEJM誌2016年5月12日号(オンライン版2016年4月27日号)掲載の報告。多症例の家系家族員のDNAをエクソーム解析 対象となった一家系男児3例の妊娠例では、1例は胎児死亡、残る2例は出生前バーター症候群を想起させる一過性の大量の塩類喪失と多尿がみられた。バーター症候群はX染色体上の遺伝子の異常により生じる。 研究グループは、症例の分子的原因を明らかにするため、発端家族構成員2人のDNAの全エクソーム解析を行った。また、同家系の別の構成員2人と、罹患男児がいる6つの家系についても分析を行った。さらに、男児妊娠で特発性羊水過多を呈した女性集団についても評価。免疫組織化学的解析、ノックダウン・過剰発現の実験、およびタンパク質間相互作用の検討を行った。全例でMAGED2変異を同定 一過性の出生前バーター症候群がみられた新生児13例について、解析の結果、全例でMAGED2変異が同定された。MAGED2は、悪性黒色腫関連抗原D2(MAGE-D2)をコードし、X染色体に位置していた。 また、特発性羊水過多を呈した2つの家系で、異なる2つのMAGED2変異を同定した。 周産期死亡例は4例、生存は11例であった。初発症状は既知のタイプの出生前バーター症候群よりも重症であり、羊水過多および陣痛が早期に発生した。すべての症状は、生存出生児では、フォローアップの間に自然消失した。 研究グループの検討は、MAGE-D2は、Na-Cl共輸送体のNKCC2およびNCC(遠位尿細管の塩類再吸収のキー要素)の発現および機能に影響を及ぼすことを示唆するもので、その機序としておそらく、アデニル酸シクラーゼ、サイクリックAMP(cAMP)シグナル伝達と細胞質内熱ショック蛋白を介することが示唆されたという。 結果を踏まえて著者は、「MAGE-D2は胎児の腎臓での塩類再吸収、羊水の恒常性、妊娠の維持に重要であることが判明した」とまとめている。

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急性腎障害、低所得国ほど市中感染が原因に/Lancet

 急性腎障害(AKI)は、その約6割が市中感染で、低所得国や低中所得国ではその割合は8割と高いことが、米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のRavindra L. Mehta氏らによる、世界72ヵ国、約4,000例のデータを対象に前向きに収集して行った国際横断研究「International Society of Nephrology Global Snapshot」の結果、明らかになった。治療7日目の死亡率は、低所得国・低中所得国では12%と、高所得国や高中所得国より高率だったという。Lancet誌オンライン版2016年4月13日号掲載の報告より。289医療施設、322人の医師が前向きに症例を報告 研究グループは2014年9月29日~12月7日にかけて、72ヵ国、289の医療施設(病院、非病院含む)の322人の医師から前向きに報告された、AKIの確定診断をした4,018例の小児・成人患者データを集めて分析した。報告を受けたのは、初回診察時の徴候や症状、併存疾患、AKIのリスク因子、治療プロセス、また治療7日目、退院時、死亡時のいずれか早い時点における透析の必要性、腎機能回復、死亡率についてだった。 集めたデータを基に、被験者居住国の2014年の1人当たり国民総所得に応じて、「高所得国」「高中所得国」「低中所得国と低所得国」の3群に分類し、AKIの原因やアウトカムを比較した。最も多い原因は低血圧症と脱水 被験者全体のうち、58%(2,337例)が市中感染性AKIだった。その割合について所得国別にみると、低中所得国・低所得国は80%(889/1,118例)、高中所得国は51%(815/1,594例)、高所得国は51%(663/1,241例)だった(高所得国 vs.高中所得国のp=0.33、その他のすべての比較はp<0.0001で有意差あり)。 AKIの原因として、最も多かったのは低血圧症(40%)と脱水(38%)だった。それぞれの原因について所得国別にみると、脱水は低中所得国・低所得国で46%と最も高率で、高中所得国では32%、高所得国では39%だった。一方、低血圧症は、高所得国で45%と最も高率で、高中所得国、低中所得国・低所得国はいずれも38%だった。 治療7日目の全体の死亡率は11%だった。所得国別にみると低中所得国・低所得国が12%と、高所得国の10%、高中所得国の11%に比べ高率だった。 研究グループは、「今回の研究で、国際的に共通する因子を特定した。それはAKI治療の早期発見と治療に関する標準的アプローチにかなうものとなるかもしれない」と述べる一方、試験は被験者が少数であることや低所得での本来のAKIの要因を過小評価している可能性などがあり限定的であると指摘。「地域医療におけるAKI検出のさらなる戦略を、とくに低所得国で開発する必要がある」と述べている。

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フィーバー國松の不明熱コンサルト

第1回 循環器内科「パパッとエコーでわからないもの」 第2回 消化器内科「内視鏡、やってみたけど」 第3回 呼吸器内科「肺は大丈夫だけど、苦しい」 第4回 腎臓内科「腎臓がやられているというだけで…」 第5回 血液内科「骨髄検査は正常です」 第6回 神経内科「答えは脳ではない」 第7回 膠原病内科「それでもスティル病とは言えない」 第8回 感染症内科「ほかに何があるでしょうか?」 循環器、消化器、呼吸器…どんな臓器の専門医でも日々の専門診療のなかでなかなか原因が突き止められない「熱」に直面することがあります。そんな専門医が抱える不明熱を「熱」のスペシャリスト・フィーバー國松が徹底分析。各科で遭遇しやすいキホンの熱から、検査ではわからない困った熱まで、それらの鑑別方法、対処法を詳しく解説します。 国立国際医療研究センター病院で不明熱外来を担う講師は、院内外の各科からさまざまな不明熱のコンサルトを受け、日々、その発熱の原因究明に挑んでいます。本DVDで取り上げるのは、循環器、消化器、呼吸器、腎臓、血液、神経、膠原病、感染症の8領域。「熱」に自信を持って立ち向かえる!発熱診療の強力な手がかりをお届けします!第1回 循環器内科「パパッとエコーでわからないもの」第1回は循環器内科編。循環器内科でみられるキホンの不明熱、検査ですぐにはわからない困った不明熱を解説します。「循環器疾患で来たはずなのに発熱が続いている…」「救命後に下がらない熱…」特に入院中の患者によくみられる不明熱のさまざまな可能性と、原因究明のためのアプローチを、熱のスペシャリスト・國松淳和氏がご紹介します。第2回 消化器内科「内視鏡、やってみたけど」第2回は消化器内科編。自己免疫疾患から機能性疾患まで、幅広くさまざまな疾患を扱う消化器内科医が、しばしば遭遇する不明熱について解説します。内視鏡や生検では診断のつかない、困った熱の原因を探るためのヒントを紹介します。10歳代から20年以上続く発熱と腹痛の原因疾患とは…!?第3回 呼吸器内科「肺は大丈夫だけど、苦しい」第3回は呼吸器内科編。不明熱のコンサルトを受けることも多い呼吸器内科医が、本当に困る不明熱について解説します。呼吸器という限られた臓器のなかで感染症から、まれな悪性疾患まで、さまざまな疾患の可能性がありうる領域です。特に混乱しやすいのが、原因が呼吸器疾患でなかった場合…肺炎と肺炎随伴胸水と考えていた患者が、実は横隔膜下膿瘍だったなど。見落としがちな疾患をリストアップして紹介します。第4回 腎臓内科「腎臓がやられているというだけで…」第4回は腎臓内科編。腎臓内科で不明熱に遭遇した場合、熱源が疑えても「造影剤を使用しにくい」「試験的な投薬をしにくい」という問題があります。腎機能障害患者の不明熱に対して想起すべき鑑別疾患、絶対に行うべき検査について解説します。また、長期透析という特別な背景を持つ患者の不明熱については、どうアプローチすべきなのか!? 國松氏がコンサルトを受けた実際の症例も紹介。 第5回 血液内科「骨髄検査は正常です」第5回は血液内科編。「不明熱と血球減少」は臨床内科医にとって鬼門!そのため血球減少の相談が血液内科の先生に集中しがちです。そんな他科からのコンサルトや、基礎疾患のわからない外来患者を効率よく診断するために、血球減少を来すキホンの疾患リスト、ウイルス性疾患の鑑別点を紹介します。抗体検査はもちろん必要ですが、時として素早い臨床診断も重要です。第6回 神経内科「答えは脳ではない」第6回は神経内科編。”Help me! Help me!” は神経内科医が押さえておきたい熱が出る12病態の頭文字!病態ごとに想起すべき疾患名をリストアップして解説します。また、「循環器内科のまれで重篤な疾患」と勘違いされがちな感染性心内膜炎(IE)についてもレクチャー。心原性脳塞栓症の患者が来たら、まずはIEのハイリスク群からチェックしましょう!よくある疾患でも、その裏に隠れている疾患を見逃さないための注意が必要です。第7回 膠原病内科「それでもスティル病とは言えない」第7回は膠原病科編。発熱のコンサルトに慣れている膠原病科の先生は、その原因疾患が膠原病であれば困ることはありません。困るのはやはり、最大かつ永遠の好敵手であるリンパ腫!SLEや成人スティル病など、臨床診断を行う膠原病科医にとって、病理組織検査でなければ診断できないものこそ難問です。そんな膠原病科の不明熱について、熱のスペシャリスト國松淳和先生が、症例診断も交えて解説します。第8回 感染症内科「ほかに何があるでしょうか?」日頃から不明熱の精査に慣れている感染症内科の先生方が困るのは、感染症を検討し尽くしても診断のつかない不明熱!皮疹、高サイトカイン、菌血症様という代表的な症候から臨床診断するコツや、不明熱精査と同時に始める「不明熱治療」という考え方と方法について解説します。症例検討は、ほぼ無症候で40度以上の発熱を2年間も繰り返す12歳女児。その最終診断とは?

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妊娠高血圧症候群は、周産期を過ぎても心筋症の発症リスクである(解説:神谷 千津子 氏)-510

 周産期(産褥性)心筋症は、「心疾患既往のない女性が、妊娠中から産後5ないし6ヵ月以内に、原因不明の心機能低下と心不全を発症する」と定義される、2次性心筋症の1つである。周産期心筋症患者の4割が、妊娠高血圧症候群を発症した後に心筋症を診断されているため、妊娠高血圧症候群は周産期心筋症の最大危険因子といえる。しかしながら、妊娠高血圧症候群が、周産期を過ぎた後にも心筋症の危険因子となりうるかについては、これまでまったく知られていなかった。今回Behrens氏らは、デンマークの全国コホート研究から、妊娠高血圧症候群が周産期を過ぎても心筋症の発症リスクであると、JAMA誌2016年3月8日号に初めて報告した。 対象は、デンマークで1978~2012年に最低1回は分娩した107万5,763人(既存の心疾患や糖尿病、母体死亡症例や周産期心筋症の患者などを除外)、206万7,633妊娠である。The National Patient Register、the Medical Birth Register、Causes of Death Register with cardiomyopathyから対象者・病名などを抽出し、妊娠高血圧症候群の有無と産後6ヵ月以降の心筋症診断率を検討した。 206万7,633妊娠中、7万6,108妊娠が妊娠高血圧症候群を合併しており、その内訳は、重症妊娠高血圧腎症1万2,974妊娠、軽症妊娠高血圧腎症4万4,711妊娠、妊娠高血圧症1万8,423妊娠であった。妊娠高血圧症候群のなかった女性における産後6ヵ月以降の心筋症診断率は7.7/10万person-yearsであったのに対し、重症妊娠高血圧腎症では15.6/10万person-years、軽症妊娠高血圧腎症では14.6/10万person-years、妊娠高血圧症では17.3/10万person-yearsの診断率であった。妊娠高血圧症候群のない群をreferenceにし、母体年齢・母体出生年・経産回数・多胎妊娠や死産の有無で補正した後のハザード比はそれぞれ2.20、1.89、2.06倍であった。 また、産後5年以降に限定した心筋症診断率の検討において、妊娠高血圧症候群のなかった女性では10.9/10万person-years、重症妊娠高血圧腎症では22.5/10万person-years、軽症妊娠高血圧腎症では19.9/10万person-years、妊娠高血圧症では26.1/10万person-yearsの診断率(各ハザード比2.22、1.86、2.25倍)であり、妊娠高血圧症候群は産後5年以降も心筋症の発症リスクであった。 心筋症の中でも拡張型心筋症に限定した診断率や、虚血性心疾患を合併した女性を除外し、糖尿病で補正した心筋症診断率においても、同様に妊娠高血圧症候群は発症リスクであった。 以上から、妊娠高血圧症候群を発症した女性において、周産期以降に心筋症を発症する率は、決して高くはないが、有意差をもって非発症女性よりも増加していることが判明した。妊娠高血圧症候群と周産期心筋症においては、血管新生障害や血管内皮障害や炎症、循環動態変動の関与が示唆されている。今回明らかになった、妊娠高血圧症候群と周産期以降の心筋症の関連については、今後さらなる研究が期待される。

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妊娠高血圧の心筋症リスク、周産期以降も長期に及ぶ/JAMA

 妊娠高血圧症候群(Hypertensive disorder of pregnancy:HDP)を合併した妊婦は、合併しなかった妊婦と比べ、出産後5ヵ月以降に心筋症を発症するリスクが、わずかであるが統計学的に有意に高いことが示された。デンマーク・Statens Serum Institut社のIda Behrens氏らによる、デンマークの全国レジストリを用いたコホート研究の結果、明らかになった。これまでにHDP、とくに妊娠高血圧腎症の妊婦では、出産前1ヵ月~出産後5ヵ月以内の周産期心筋症のリスクが増加することが報告されていたが、HDPが出産後5ヵ月以降の心筋症とも関連するかどうかについては不明であった。JAMA誌オンライン版2016年3月8日号掲載の報告。約110万人のHDP合併有無と周産期(出産後5ヵ月)以降の心筋症発症を調査 研究グループは、患者登録(National Patient Register)データを用い、1978年~2012年に1回以上妊娠(生児出産または死産)した女性107万5,763人における心筋症発症率を、HDP合併の有無で比較した(追跡調査は2012年12月31日まで)。 HDPは、出産前1ヵ月から出産後7日までの間に診断された妊娠高血圧症、中等症の妊娠高血圧腎症、または重症妊娠高血圧腎症(子癇やHELLP症候群[溶血、肝酵素上昇、血小板減少]を含む)とし、主要評価項目は出産後5ヵ月以降34年7ヵ月時点までの心筋症であった。HDP合併で周産期以降の心筋症リスクが増加 107万5,763人において、基準を満たした妊娠は206万7,633例あり、うち7万6,108例がHDP合併例であった。追跡期間中、心筋症を発症した妊婦は1,577例(心筋症診断時の平均年齢48.5歳、多胎妊娠2.6%)で、うち169例(10.7%)がHDP合併妊婦であった。 正常血圧妊婦と比較し、HDP合併妊婦では心筋症の発症頻度が有意に増加した。 すなわち正常血圧妊婦では、観察1,821万1,603人年において心筋症イベント数は1,408例、発症頻度は7.7例/10万人年(95%信頼区間[CI]:7.3~8.2)であったが、重症妊娠高血圧腎症合併妊婦では17万3,062人年において、イベント数27例、発症頻度15.6例/10万人年(同:10.7~22.7)で、補正後ハザード比(HR)は2.20(95%CI:1.50~3.23)。中等症の妊娠高血圧腎症妊婦では69万7,447人年において102例、14.6例/10万人年(95%CI:12.0~17.8)、補正後HRは1.89(同:1.55~2.23)。妊娠高血圧症合併妊婦では21万3,197人年において40例、17.3例/10万人年(同:12.7~23.6)、補正後HRは2.06(同:1.50~2.82)であった。 これら心筋症発症頻度の増大は、「最後」の出産後5年以降で分析した場合も同様に認められた。 媒介分析の結果、HDPと周産期以降の心筋症との関連が、妊娠後の慢性高血圧症を介した間接的関連であることが示唆されたのは、約50%のみであった。 著者は、「今後さらなる研究で、この関連の因果関係を明らかにする必要がある」とまとめている。

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ネフローゼ症候群〔Nephrotic Syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義ネフローゼ症候群は高度の蛋白尿(3.5g/日以上)と低アルブミン血症(3.0g/dL以下)を示す疾患群であり、腎臓に病変が限局するものを一次性ネフローゼ症候群、糖尿病や全身性エリテマトーデスなど全身疾患の一部として腎糸球体が障害されるものを二次性ネフローゼ症候群と区別する(表1)。ネフローゼ症候群には浮腫が合併し、高コレステロール血症を来すことが多い。ネフローゼ症候群の診断基準を表2に示す。また、治療効果判定基準を表3に示す。画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する■ 疫学新規発症ネフローゼ症候群は、平成20年度の厚生労働省難治性疾患対策進行性腎障害調査研究班の調査では年間3,756~4,578例の新規発症があると推定数が報告されている。日本腎生検レジストリーの中でネフローゼ症候群を示した患者の内訳は図1に示すように、IgA腎症を含めると一次性ネフローゼ症候群が2/3を占める。二次性ネフローゼ症候群では糖尿病が多く、ループス腎炎、アミロイドーシスが続く。ネフローゼ症候群を示す各疾患の発症は、図2に示すように年齢によって異なる。15~65歳ではループス腎炎、40歳以上で糖尿病、アミロイドーシスが増加する。図2に示すように一次性ネフローゼ症候群は、40歳未満では微小変化型(MCNS)が最も多く、60歳以上では膜性腎症(MN)が多くなる。巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)は全年齢を通じて発症する。画像を拡大する画像を拡大する■ 病因ネフローゼ症候群において大量の蛋白尿が出るときには、糸球体上皮細胞(ポドサイト)が障害を受けている。MCNSの場合には、この障害に液性因子が関連している可能性が示唆されているが、その因子はいまだ同定されていない。FSGSは、ポドサイトを構成するいくつかの遺伝子の異常が同定されており、多くは小児期に発症する。特発性のFSGSは成人においても発症するが、原因は不明である。MNの原因の1つに、ホスホリパーゼA2受容体(PLA2R)に対する自己抗体の存在が証明されており、ポドサイトに発現するPLA2Rに結合して抗原抗体複合物を産生することが示されている。MPGNは糸球体基底膜の免疫複合体の沈着位置によってI、II、III型に分類される。I型の原因は、補体の古典的経路による活性化が原因と考えられている。III型も同じ原因との説があるが、まだ明確にはわかっていない。II型は補体成分に対する、後天的な自己抗体が産生されることによるとされている。最近、MPGNはC3腎症として定義され、C3が主として糸球体に沈着する腎症群とする考え方に変わってきた。■ 症状1)浮腫ネフローゼ症候群には浮腫を合併する。浮腫の発症機序を図3に示す。画像を拡大する浮腫の発生には2つの仮説がある。循環血漿量不足説(underfill)と循環血漿量過剰説(overfill)である。underfill仮説は、低アルブミン血症のために、血漿膠質浸透圧が低下するとStarlingの法則に従い水分が血管内から間質へ移動することにより循環血漿量が低下する。その結果、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)や交感神経系が活性化され、二次的にNa再吸収を促進し、さらに浮腫を増悪するとされる。2つ目はoverfill仮説であり、遠位尿細管や集合管におけるNa排泄低下・再吸収の亢進が一次的に生じて、Na貯留により血管内容量が増加した結果、静水圧が高まり浮腫を生じるというものである。この原因に、糸球体から大量に漏れてくるplasminなどの蛋白分解酵素が、遠位尿細管や集合管に存在する上皮Naチャネルの活性化に関連し、Na再吸収が亢進するとの報告もある。低アルブミン血症が徐々に進行する場合には膠質浸透圧勾配はほとんど変化しないこと、ネフローゼ症候群患者では必ずしもRAS活性化がみられないことなど、underfill仮説に反する報告もあり、とくに微小変化型ネフローゼ症候群の患者が寛解する際、血清アルブミン値が上昇する前に浮腫が改善し始めるという臨床的事実は、overfill仮説を支持するものである。浮腫成立の機序は必ずしも単一ではなく、症例ごと、また同じ症例でも病期により2つの機序が異なる比率で存在するものと思われる。2)腎機能低下ネフローゼ症候群では腎機能低下を来すことがある。MCNSでは低アルブミン血症による腎血漿流量の低下から、一過性の腎機能低下はあっても、通常腎機能低下を来すことはない。それ以外の糸球体腎炎では、糸球体障害が進めば腎機能の低下を来す。3)脂質異常症肝臓での合成亢進と分解の低下から、高LDLコレステロール血症を来す。■ 予後MCNS、FSGS、MNの治療後の寛解率を図4に示す。画像を拡大するMCNSは2ヵ月以内に85%が完全寛解する。FSGSは6ヵ月で約45%、1年で約60%が完全寛解する。MNは6ヵ月では30%しか完全寛解しないが、1年で60%が完全寛解する。平成14年度厚生労働省難治性疾患対策進行性腎障害調査研究班の報告で、膜性腎症と巣状糸球体硬化症に関する予後調査の結果が報告されている。膜性腎症1,008例の腎生存率(透析非導入率)は10年で89%、15年で80%、20年で59%であった。巣状糸球体硬化症278例の腎生存率は10年で85%、15年で60%、20年で34%と長期予後は不良であった。2 診断 (病理所見)ネフローゼ症候群の診断自体は尿蛋白の定量と血清アルブミン値、血清総蛋白量を測定することにより行うことができる。しかし、実際の治療に関しては、二次性ネフローゼ症候群を除外した後、腎生検によって診断をする必要がある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 浮腫に対する治療浮腫に対しては、利尿薬を使用する。第1選択薬としてループ利尿薬を使用する。効果がみられない場合には、サイアザイド系利尿薬を追加する。それでも効果のない場合や、低カリウム血症を合併する場合には、スピロノラクトンを使用する。アルブミン製剤は使用しないことが原則であるが、血清アルブミン値2.5g/dL以下で、低血圧、急性腎不全などの発症の恐れがある場合に使用する。しかし、その効果は一過性であり、かつ利尿効果はわずかである。利尿薬に反応しない場合には、体外限外濾過による除水を行う。■ 腎保護を目的とした治療1)低蛋白食ネフローゼ症候群への食事療法の有効性に十分なエビデンスはないが、摂取蛋白量を減少させることにより尿蛋白が減少することが期待できるため、通常以下のように行う。(1)微小変化型ネフローゼ症候群蛋白 1.0~1.1g/kg体重/日、カロリー 35kcal/kg体重/日、塩分 6g/日以下(2)微小変化型ネフローゼ症候群以外蛋白 0.8g/kg体重/日、カロリー 35kcal/kg体重/日、塩分 6g/日以下2)身体活動度ネフローゼの治療において運動制限の有効性を示すエビデンスはない。しかし、身体活動を制限することにより、深部静脈血栓のリスクが増大する。このため、入院中の寛解導入期であっても、ベッド上での絶対安静は避ける。維持治療期においては、適度な運動を勧める。3)レニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬微小変化型ネフローゼ症候群を除き、尿蛋白の減少と腎保護を目的として、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、あるいはアンジオテンシン受容体拮抗薬を使用する。このとき高カリウム血症に注意する。RAS阻害薬を使用することにより、血圧が低下して、臓器障害を起こす可能性がある場合には、中止する。利尿薬との併用は、RAS阻害薬の降圧作用を増強するので注意する。アルドステロン拮抗薬を追加することにより、尿蛋白が減少する。■ 合併症の予防1)感染症の予防ネフローゼ症候群では、IgGや補体成分の低下がみられ、潜在的に液性免疫低下が存在することに加え、T細胞系の免疫抑制もみられるなど、感染症の発症リスクが高い。日和見感染症のモニタリングを行いながら、臨床症候に留意して早期診断に基づく迅速な治療が必要である。肺炎球菌ワクチンの接種を副腎皮質ステロイド治療前に行う。ツベルクリン反応陽性、胸部X線上結核の既往がある者、クオンティフェロン陽性者は、イソニアジド300mgを6ヵ月投与する。副腎皮質ステロイド・免疫抑制薬の治療と並行して投与を行う。1日20mg以上のプレドニゾロンや免疫抑制薬を長期間にわたり使用する場合には、顕著な細胞性免疫低下が生じるため、ニューモシスチス肺炎に対するST合剤の予防的投薬を考慮する。β-Dグルカン値を定期的に測定する。2)血栓症の予防ネフローゼ症候群では、発症から6ヵ月以内に静脈血栓形成のリスクが高く、血清アルブミン値が2.0g/dL未満になればさらに血栓形成のリスクが高まる。過去に静脈血栓症の既往があれば、ワルファリンによる予防的抗凝固療法を考慮する。D-dimer、FDPにて、血栓形成の可能性をモニターする。静脈血栓症由来の肺塞栓症が発症すれば、ただちにヘパリンを投与し、APTTを2.0~2.5倍に延長させて、血栓の状況を確認しながらワルファリン内服に移行し、PT-INRを2.0(1.5~2.5)とするように抗凝固療法を行う。肺塞栓症が発症すれば、ただちにヘパリンを経静脈的に投与し、APTTを2.0~2.5倍に延長させる。また、経口FXa阻害薬を投与する。■ 各組織型別の特徴と治療1)微小変化型(MCNS)小児に好発するが、成人にも多く、わが国の一次性ネフローゼ症候群の40%を占める。発症は急激であり、突然の浮腫を来す。多くは一次性であるが、ウイルス感染、NSAIDs、ホジキンリンパ腫、アレルギーに合併することもある。副腎皮質ステロイドに対する反応は良好である。90%以上が寛解に至る。再発が30~70%で認められる。ステロイド依存型、長期治療依存型になる症例もあり、頻回再発型を示す場合もある。わが国で行われた無作為化比較試験にて、メチルプレドニゾロンを使用したパルス療法は、尿蛋白減少効果において、経口副腎皮質ステロイドと変わらないことが示されている。寛解導入後の治療は、少なくとも1年以上継続して行ったほうが再発が少ない。(1)再発時の治療プレドニゾロン20~30 mg/日もしくは初期投与量を投与する。患者に、検尿試験紙を持たせて、自己診断できるように教育し、再発した場合にすぐに来院できるようにする。(2)頻回再発型、ステロイド依存性、ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群免疫抑制薬(シクロスポリン〔商品名:サンディミュン、ネオーラル〕1.5~3.0 mg/kg/日、またはミゾリビン〔同:ブレディニン〕150 mg/日、または、シクロホスファミド〔同:エンドキサン〕50~100 mg/日など)を追加投与する。シクロスポリンは、中止により再発が起こるリスクが高く、寛解が得られる最小量にて1~2年は治療を継続する。頻回再発を繰り返す症例や難治症例ではリツキサンを500mg/日 1回点滴静注投与することも検討する。2)巣状分節性糸球体硬化症巣状分節性糸球体硬化症(focal segmental glomerulosclerosis:FSGS)は、微小変化型ネフローゼ症候群(minimal change nephrotic syndrome:MCNS)と同じような発症様式・臨床像をとりながら、MCNSと違ってしばしばステロイド抵抗性の経過をとり、最終的に末期腎不全にも至りうる難治性ネフローゼ症候群の代表的疾患である。糸球体上皮細胞の構造膜蛋白であるポドシン(NPHS2)やα-アクチニン4(ACTN4)などの遺伝子変異により発症する、家族性・遺伝性FSGSの存在が報告されている。(1)初期治療プレドニゾロン(PSL)換算1mg/kg標準体重/日(最大60mg/日)相当を、初期投与量としてステロイド治療を行う。重症例ではステロイドパルス療法も考慮する。(2)ステロイド抵抗性4週以上の治療にもかかわらず、完全寛解あるいは不完全寛解I型(尿蛋白1g/日未満)に至らない場合は、ステロイド抵抗性として以下の治療を考慮する。必要に応じてステロイドパルス療法3日間1クールを3クールまで行う。a)ステロイドに併用薬として、シクロスポリン2.0~3.0 mg/kg/日を投与する。朝食前に服用したシクロスポリンの2時間後の血中濃度(C2)が、600~900ng/mLになるように投与量を調整する。副作用がない限り、6ヵ月間同じ量を継続し、その後漸減する。尿蛋白が1g/日未満に減少すれば、1年間は慎重に減量しながら、継続して使用する。b)ミゾリビン 150 mg/日を1回または3回に分割して投与する。c)シクロホスファミド 50~100 mg/日を3ヵ月以内に限って投与する。シクロホスファミドは、骨髄抑制、出血性膀胱炎、間質性肺炎、発がんなどの重篤な副作用を起こす可能性があるため、総投与量は10g以下にする。(3)補助療法高血圧を呈する症例では積極的に降圧薬を使用する。とくに第1選択薬としてACE阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬の使用を考慮する。脂質異常症に対してHMG-CoA還元酵素阻害薬やエゼチミブ(同:ゼチーア)の投与を考慮する。高LDLコレステロール血症を伴う難治性ネフローゼ症候群に対してはLDLアフェレシス療法(3ヵ月間に12回以内)を考慮する。必要に応じ、蛋白尿減少効果と血栓症予防を期待して抗凝固薬や抗血小板薬を併用する。3)膜性腎症膜性腎症は、中高年者においてネフローゼ症候群を呈する疾患の中で、約40%と最も頻度が高く、その多くがステロイド抵抗性を示す。ネフローゼ症候群を呈しても、尿蛋白の増加は、必ずしも急激ではない。特発性膜性腎症の主たる原因抗原は、ポドサイトに発現するPLA2Rであり、その自己抗体がネフローゼ症候群患者の血清に検出される。PLA2R抗体は、寛解の前に消失し、尿蛋白の出現の前に検出される。特発性膜性腎症の抗体はIgG4である。一方、がんを抗原とする場合の抗体はIgG1、IgG2である。約1/3が自然寛解するといわれている。したがって、欧米においては、尿蛋白が8g/日以下であれば、6ヵ月間は腎保護的な治療のみで、経過をみることが一般的である。また、尿蛋白が4g/日以下であれば、副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬は使用しない。わが国における本症の予後は、欧米のそれに比較して良好である。この原因は、尿蛋白量が比較的少ないことによる。このため、ステロイド単独投与により寛解に至る例も少なくない。通常、免疫抑制薬の併用により尿蛋白が減少し、予後の改善が期待できる。(1)初期治療プレドニゾロン(PSL)0.6~0.8mg/kg/日相当を投与する。最初から、シクロスポリンを併用する場合もある。(2)ステロイド抵抗性ステロイドで4週以上治療しても、完全寛解あるいは不完全寛解Ⅰ型(尿蛋白1g/日未満)に至らない場合はステロイド抵抗性として免疫抑制薬、シクロスポリン2.0~3.0 mg/kg/日を1日1回投与する。朝食前に服用したシクロスポリンの2時間後の血中濃度(C2)が、600~900ng/mLになるように投与量を調整する。副作用がない限り、6ヵ月間同じ量を継続し、その後漸減する。尿蛋白1g/日未満に尿蛋白が減少すれば、1年間は慎重に減量しながら、継続して使用する。シクロスポリンが無効の場合には、ミゾリビン 150 mg/日、またはシクロホスファミド 50~100 mg/日の併用を考慮する。リツキサン500mg/日 1回を、点滴静注することにより寛解することが報告されており、難治例では検討する。(3)補助療法a)高血圧(収縮期血圧130mmHg 以上)を呈する症例では、ACE阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬を使用する。b)脂質異常症に対して、HMG-CoA還元酵素阻害薬やエゼチミブの投与を考慮する。c)動静脈血栓の可能性に対してはワルファリンを考慮する。4)膜性増殖性糸球体腎炎膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)はまれな疾患であるが、腎生検の6%を占める。光学顕微鏡所見上、糸球体係蹄壁の肥厚と分葉状(lobular appearance)の細胞増殖病変を呈する。係蹄の肥厚(基底膜二重化)は、mesangial interpositionといわれる糸球体基底膜(GBM)と内皮細胞間へのメサンギウム細胞(あるいは浸潤細胞)の間入の結果である。また、増殖病変は、メサンギウム細胞の増殖とともに局所に浸潤した単球マクロファージによる管内増殖の両者により形成される。確立された治療法はなく、メチルプレドニゾロンパルス療法に加えて、免疫抑制薬(シクロホスファミド)の併用の有効性が、観察研究で報告されている。4 今後の展望ネフローゼ症候群の原因はいまだに不明な点が多い。これらの原因因子を究明することが重要である。膜性腎症の1つの原因因子であるPLA2R自己抗体は、膜性腎症の発見から50年の歳月をかけて発見された。5 主たる診療科腎臓内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本腎臓学会ホームページ エビデンスに基づくネフローゼ症候群診療ガイドライン2014(PDF)(医療従事者向けの情報)日本腎臓学会ホームページ ネフローゼ症候群診療指針(完全版)(医療従事者向けの情報)進行性腎障害に関する調査研究班ホームページ(医療従事者向けの情報)難病情報センターホームページ 一次性ネフローゼ症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)厚生労働省「進行性腎障害に関する調査研究」エビデンスに基づくネフローゼ症候群診療ガイドライン作成分科会. エビデンスに基づくネフローゼ症候群診療ガイドライン2014.日腎誌.2014;56:909-1028.2)厚生労働省難治性疾患克服研究事業進行性腎障害に関する調査研究班難治性ネフローゼ症候群分科会編.松尾清一監修. ネフローゼ症候群診療指針 完全版.東京医学社;2012.3)今井圓裕. 腎臓内科レジデントマニュアル.改訂第7版.診断と治療社;2014.4)Shiiki H, et al. Kidney Int. 2004; 65: 1400-1407.5)Ronco P, et al. Nat Rev Nephrol. 2012; 8: 203-213.6)Beck LH Jr, et al. N Engl J Med. 2009; 361: 11-21.公開履歴初回2013年09月19日更新2016年02月09日

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腎移植後のbelatacept投与、7年時点のアウトカム/NEJM

 腎移植後の維持免疫抑制療法において、belataceptは従来の治療レジメンに比べ、長期的なアウトカムを改善するとの研究成果を、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のFlavio Vincenti氏らが、NEJM誌2016年1月28日号で報告した。免疫抑制療法は腎移植患者の短期的なアウトカムを改善することが知られているが、長期的な移植腎生着への効果を示すデータはほとんどない。belataceptは、ヒトIgG1のFc部分とCTLA-4の細胞外ドメインの融合蛋白で、共刺激の遮断を介してT細胞の活性化を選択的に阻害する(選択的共刺激遮断薬)。本薬は、従来のカルシニューリン阻害薬による有害作用を回避しつつ、高い免疫抑制効果をもたらすことで、腎移植患者の長期アウトカムを改善することを目的に開発されたという。移植後7年時の3群のアウトカムを比較 本研究(BENEFIT試験)は、腎移植患者の維持免疫抑制療法として、belataceptをベースとするレジメンと、シクロスポリンベースのレジメンを比較する無作為化第III相試験である(Bristol-Myers Squibb社の助成による)。 これまでの解析では、患者の生存率と移植腎生着率が同程度で、腎機能はbelataceptで有意に改善することが確認されており、研究グループは今回、本試験の最終結果を報告した。 被験者は、belataceptの治療強度の高いレジメン、治療強度の低いレジメン、シクロスポリンベースレジメンの3群のいずれかに無作為に割り付けられた。無作為化の対象となり、実際に移植を受けた全患者の有効性と安全性を、7年(84ヵ月目)の時点で解析した。 2006年1月13日~2007年6月14日に666例が移植を受け、660例が免疫抑制療法の対象となった(高強度群:219例、低強度群:226例、シクロスポリン群:215例)。このうち84ヵ月のフォローアップを完遂したのは、高強度群が153例、低強度群が163例、シクロスポリン群は131例だった。死亡/移植腎喪失リスクが改善、重篤な有害事象は増加せず 7年時の死亡または移植腎喪失のリスクは、シクロスポリン群に比べ、高強度群(ハザード比[HR]:0.57、95%信頼区間[CI]:0.35~0.95、p=0.02)および低強度群(HR:0.57、95%CI:0.35~0.94、p=0.02)の双方で43%有意に低下した。 死亡率は、シクロスポリン群に比し高強度群が38%(HR:0.62、95%CI:0.33~1.14、p=0.11)、低強度群は45%(HR:0.55、95%CI:0.30~1.04、p=0.06)低下し、いずれも改善の傾向がみられた。 移植腎喪失率はそれぞれ44%(HR:0.56、95%CI:0.25~1.21、p=0.12)、41%(HR:0.59、95%CI:0.28~1.25、p=0.15)低下し、やはり有意差はないものの改善の傾向が認められた。 平均推算糸球体濾過量(eGFR)は、2つのbelatacept群は7年間で増加した(高強度群=12ヵ月:67.0、36ヵ月:68.9、60ヵ月:70.2、84ヵ月:70.4mL/分/1.73m2、低強度群=66.0、68.9、70.3、72.1mL/分/1.73m2)が、シクロスポリン群は低下した(52.5、48.6、46.8、44.9mL/分/1.73m2)。belatacept群全体の腎機能の治療効果は、シクロスポリン群に比べ有意に良好だった(p<0.001)。 84ヵ月時の重篤な有害事象の累積発生率は、高強度群が70.8%、低強度群が68.6%、シクロスポリン群は76.0%であり、3群でほぼ同等であった。重篤な感染症の頻度が最も高く、高強度群の10.6%、低強度群の10.7%、シクロスポリン群の13.3%に認められた。 著者は、「これまでに報告された他剤のアウトカムの検討は移植後5年までであり、7年時の生存ベネフィットが確認されたことの意義は大きいと考えられる」としている。

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カナダ開発の腎不全リスク予測ツール、国際的に有用/JAMA

 カナダで開発された腎不全リスクの予測ツールが、国際的に有用であることを、カナダ・マニトバ大学のNavdeep Tangri氏らが、30ヵ国31コホートの患者集団で検証した結果、報告した。カナダで開発されたのは、年齢、性別、eGFR、ACR濃度を因子としたもので、2集団を対象に開発・検証が行われていた。JAMA誌2016年1月12日号掲載の報告。30ヵ国ステージ3~5の患者72万1,357例のデータを含む31コホートで検証 研究グループは、同ツールについて、他国および腎臓専門医のケアを受けていないCKD集団で検証を行う必要があるとして、地理的に異なる患者集団について、メタ解析データを通じてリスク予測ツールの精度を検証した。 末期腎不全に関するデータをCKD Prognosis Consortiumの参加コホートから収集。対象は31コホート、4大陸30ヵ国から参加したステージ3~5の患者72万1,357例であった。各コホートのデータが集められたのは1982~2014年であった。 収集したデータを2012年7月~15年6月に分析。オリジナルツール(4因子を用いたもの)で各コホートのハザード比を算出し、ランダム効果メタ解析で統合し、新たにプール腎不全リスクツールを生成した。オリジナルツールとプールツールの識別能を比較し、地理的な検定因子の必要性を評価した。 主要評価項目は、腎不全(透析または腎移植治療を要する)とした。優れた識別能を示したが、非北米コホートでは一部で追加因子の必要性も判明 フォローアップ中央値4年の間に、CKD患者72万1,357例のうち、腎不全が認められたのは2万3,829例であった。 31コホートのうち16コホート(61万7,604例)は北米、15コホート(10万3,753例)はアジア、ヨーロッパ、オーストラリアのコホートであった。平均年齢は74歳、eGFRは46mL/分/1.73m2、大半が男性(うち97%が退役軍人)、女性はまれ(うち75%が沖縄の女性)であった。 オリジナルツールは、すべてのコホートにおいて優れた識別能(腎不全を呈した人と呈さなかった人を区別する能力)を示した。全体のC統計値は2年時点で0.90(95%信頼区間[CI]:0.89~0.92、p<0.001)、5年時点でも0.88(0.86~0.90、p<0.001)であった。年齢、人種、糖尿病有無別で評価したサブグループでも同程度の識別能が示された。 これらの識別能はプールツールによっても改善はされなかったが、検定(予測リスクと観察結果との差)の結果、北米コホートには適切だが、非北米コホートではリスクの過大評価が認められるものがあった。これらについては地理的な検定因子の因子で、2年時点でベースラインリスクを32.9%低下、5年時点で16.5%低下し、2年時点で15コホートのうち12コホートで、5年時点では13コホートのうち10コホートで検出能を改善できた(それぞれp=0.04、p=0.02)。 著者は、「カナダ人コホートで開発した腎不全リスクツールは、31の多様なコホートでも高い識別能を示し、十分な検出能があることが示された。ただし一部では地理的な追加因子が必要と思われた」とまとめている。

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ハイリスクIgA腎症への免疫抑制療法の効果は?/NEJM

 ハイリスクIgA腎症の患者に対し、積極的支持療法に加え免疫抑制療法を併用しても、臨床的完全寛解率に有意差はみられなかった。また、推定糸球体濾過量(eGFR)の低下率についても有意差はみられず、一方で、併用群では有害事象の発生が多く観察された。ドイツ・アーヘン工科大学のThomas Rauen氏らが3年にわたる多施設共同の非盲検無作為化比較試験の結果、報告した。IgA腎症患者について、支持療法に免疫抑制療法を併用した場合のアウトカムについては、これまで明らかにされていなかった。NEJM誌2015年12月3日号掲載の報告。単独支持療法または免疫抑制療法併用で3年間治療 試験の対象は、1日の尿蛋白排泄量が0.75g以上の持続性蛋白尿の患者337例。当初6ヵ月は導入期間として、蛋白尿の程度に基づきレニン・アンジオテンシン系阻害薬の投与量などについて調整を行い、支持療法を行った。その後、被験者を無作為に2群に分け、一方には支持療法のみを(支持療法群)、もう一方には支持療法と免疫抑制療法を併用し(併用群)、いずれも3年間継続した。 主要エンドポイントは階層法で順序付けをした2つで、試験終了時の臨床的完全寛解(蛋白とクレアチニンをグラム測定した際の尿蛋白・クレアチニン比が0.2未満、eGFRのベースラインからの低下幅が5mL/分/1.73m2体表面積未満)と、eGFRの15mL/分/1.73m2体表面積以上の低下だった。臨床的完全寛解、eGFR低下率とも両群間の有意差はみられず 被験者のうち、導入期間を終了したのは309例。そのうち1日の尿蛋白排泄量が0.75g未満に減少したのは94例だった。 残る患者のうち、最終的に162例について無作為化を行い、80例を支持療法群、82例を併用群に割り付けた。 結果、試験終了後に臨床的完全寛解が認められたのは、支持療法群4/80例(5%)に対し、併用群は14/82例(17%)で、両群間の有意差は認められなかった(p=0.01)。 また、eGFRの15mL/分/1.73m2以上低下についても、達成患者は支持療法群22例(28%)、併用群21例(26%)で、両群間の有意差はみられなかった(p=0.75)。eGFRの年間低下率についても、有意差はみられなかった。 一方、有害事象は、重度感染症、糖代謝異常、当初1年間の5kg以上の体重増加が、いずれも併用群で支持療法群よりも高率に認められた。また併用群1例で敗血症による死亡が報告された。

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CKDリスクを予測する新たなバイオマーカーの可能性/NEJM

 可溶性ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベータ受容体(suPAR)の上昇は、ベースライン時の腎機能正常者において、慢性腎臓病(CKD)の発症および推定糸球体濾過量(eGFR)の加速度的な低下と有意に関連することが、米国・エモリー大学医学部のSalim S Hayek氏らの検討で示された。血漿中のsuPARの高値は、多様な病態の患者集団において、不良な臨床転帰や巣状分節性糸球体硬化症、糖尿病性腎症と関連することが知られている。これらの知見はまだ検証中であるが、腎臓病におけるsuPARの広範な役割が示唆されている。NEJM誌2015年11月12日号(オンライン版2015年11月5日号)掲載の報告。血漿suPAR値とCKD発症の関連を前向きコホート試験で評価 研究グループは、「血漿suPAR値はCKDの新規発症と関連する」との仮説を検証するために、心血管疾患患者を対象に大規模な前向きコホート試験を実施した(Abraham J and Phyllis Katz Foundationなどの助成による)。 2003~09年に、アトランタ市の3施設で心臓カテーテルを施行され、エモリー心血管バイオバンクに登録された3,683例(平均年齢63±12歳、男性65%、suPAR中央値3,040pg/mL)の血漿suPAR値を測定した。このうち2,292例(62%)で、登録時とフォローアップ期間中の受診時に腎機能の評価を行った。 suPAR値とベースラインのeGFR、eGFRの経時的変化、CKDの発症との関連につき、人口統計学的変量および臨床的変量で補正後に、線形混合モデルとCox回帰を用いて解析を行った。suPAR値の四分位数(Q1~Q4)別に、eGFRの変化およびCKDの発症の比較を行った。CKDは、eGFR<60mL/分/1.73m2と定義した。 ベースラインのsuPAR値が≧3,040pg/mL(中央値)の患者は、<3,040pg/mLの患者に比べ、年齢が高く、女性が多く、喫煙歴、高血圧、糖尿病、蛋白尿、冠動脈疾患、心筋梗塞歴の頻度が高く、高感度CRPが高値で、eGFRは低値であった(いずれもp<0.001)。CKD発症率が、Q3はQ1の2倍、Q4は3倍以上に ベースラインのsuPAR値が高い患者ほど、フォローアップ期間を通じてeGFR低下の程度が大きく、suPAR値が最大四分位群(Q4)の患者のeGFRの年間の変化が-4.2mL/分/1.73m2であったのに対し、最小四分位群(Q1)では-0.9mL/分/1.73m2であった(p<0.001)。 Q4のeGFRの年間の低下は、Q1およびQ2よりも大きく(いずれも、p<0.001)、Q3もQ1およびQ2に比べ年間の低下が大きかった(いずれも、p<0.001)。Q1とQ2、Q3とQ4の間には有意な差はなかった。 suPAR値関連のeGFRの低下は、ベースラインのeGFRが<60mL/分/1.73m2の患者では有意ではなく(-0.1%、95%信頼区間[CI]:-0.9~0.7)、≧60mL/分/1.73m2の患者では有意であり(-1.2%、95%CI:-1.8~-0.6)、これらの間には有意な差が認められた(交互作用検定:p<0.001)。 また、ベースラインのeGFRが低い患者ほどsuPAR値に関連するeGFRの変動が小さく、ベースライン時に正常(90~120mL/分/1.73m2)であった921例のsuPAR値関連eGFRの低下が最も大きかった(交互作用検定:p<0.001)。 一方、ベースラインのeGFRが≧60mL/分/1.73m2の1,335例におけるCKDの発症率は、suPAR値の四分位がQ1からQ4へ1段階ずつ上がるに従って有意に増加し(ハザード比[HR]:1.40、95%CI:1.26~1.55、p<0.001)、≧3,040pg/mLの患者は<3,040pg/mLに比べて約2倍高かった(HR:1.97、95%CI:1.53~2.54、p<0.001)。 また、suPAR値がQ1の患者に比べて、Q3の患者のCKD発症率は2倍(HR:2.00、95%CI:1.38~2.89、p<0.001)、Q4は3倍以上(HR:3.13、95%CI:2.11~4.65、p<0.001)に達し、Q4はQ3の約1.5倍であった(HR:1.51、95%CI:1.11~2.06、p=0.01)。 著者は、「suPAR高値は、ベースライン時の腎機能正常者においてCKDの発症およびeGFRの加速度的な低下とそれぞれ独立の関連を示した」とまとめ、「これらの結果は、suPARが、CKDのバイオマーカーとして不可欠の要件を満たすことを示唆する」と指摘している。

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妊娠高血圧腎症と新生児の先天性心疾患リスク/JAMA

 妊娠高血圧腎症と新生児の先天性心疾患との関連について検証した結果、非重症の心疾患と顕著に関連していること、重症心疾患との関連は妊娠34週以前発症の場合にみられることなどが明らかにされた。カナダ・モントリオール大学のNathalie Auger氏らが、1989~2012年にケベック州の病院で誕生した新生児194万例超を対象とした住民ベースコホート研究の結果、報告した。妊娠高血圧腎症を呈した母親から生まれた新生児の先天性心疾患リスクは十分に解明されていない。今回の結果を踏まえて著者は、「先天性心疾患の絶対リスクは低かった」とまとめている。JAMA誌2015年10月20日号掲載の報告。有病率を、妊娠高血圧腎症曝露群と非曝露群で比較 検討は、1989~2012年のケベック州全住民を対象に行われた。同対象は、カナダの人口の4分の1を占める。分析には、心疾患の有無を問わず同期間にケベック州の病院で新生児を出産した全女性を包含、対象児は194万2,072例であった。 新生児誕生時の重症または非重症の先天性心疾患の有病率を、妊娠高血圧腎症曝露(妊娠34週未満または以後に発症)群と非曝露群で比較し評価した。全有病率比は1.57、重症例の有病率比は1.25、非重症例は1.56 先天性心疾患の絶対有病率は、妊娠高血圧腎症曝露新生児のほうが、非曝露新生児よりも高率であった。全有病率は、前者が16.7/1,000例、後者は8.6/1,000例で、有病率比は1.57(95%信頼区間[CI]:1.48~1.67)、有病率差(新生児10万例当たり)は577.1例(95%CI:483.0~671.1)であった。 重症先天性心疾患の有病率は、曝露群123.7/10万例、非曝露群75.6/10万例で、有病率比は1.25(95%CI:1.00~1.57)、有病率差は23.6例(同:-1.0~48.2)で、曝露群の増大は認められなかった。 一方、非重症の先天性心疾患有病率は、曝露群1,538.8/10万例、非曝露群789.2/10万例で、有病率比は1.56(95%CI:1.47~1.67)、有病率差は521.1例(同:431.1~611.0)で、曝露群の増大がみられた。 特異的疾患別にみた場合、有病率が最も高かったのは中隔欠損症で、曝露群の同有病率は1,090.9/10万例であった。 発症時期で比較した場合、後期(34週以後)発症と比べて早期(34週未満)発症群では、重症先天性心疾患の有病率比は2.78(95%CI:1.71~4.50)、有病率差は249.6例(同:89.7~409.6)であったが、非重症先天性心疾患については、有病率比5.55(同:4.98~6.19)、有病率差6,089.2例(同:5,350.0~6,828.3)であった。

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CLEAN試験:血管内カテーテル挿入時の皮膚消毒はクロルヘキシジン・アルコール(解説:小金丸 博 氏)-440

 カテーテル関連血流感染症(CRBSI)はありふれた医療関連感染であり、死亡率も高いことが知られている。カテーテル挿入時の皮膚消毒は感染予防に重要であり、今までも適切な皮膚消毒薬について議論されてきた。米国疾病予防管理センター(CDC)は、カテーテル挿入時の皮膚消毒に、0.5%を超えるクロルヘキシジンを含むクロルヘキシジン・アルコールを推奨しているが、クロルヘキシジン・アルコールとポビドンヨード・アルコールをhead-to-headで比較した大規模試験は存在しなかった。 本研究は、血管内カテーテル挿入時の皮膚消毒薬として、2%クロルヘキシジン・70%イソプロピルアルコールと5%ポビドンヨード・69%エタノールの有効性を比較した、ランダム化比較試験である。両群をさらに消毒前の皮膚洗浄(scrubbing)の有無で1:1:1:1の4群に割り付けした(2×2要因デザイン)。動脈カテーテル、血液透析カテーテル、中心静脈カテーテルの留置が48時間以上必要な18歳以上の成人2,546例を対象とし、カテーテル関連感染症の発生率を主要評価項目とした。カテーテル関連感染症の定義は、菌血症を伴わないカテーテル関連敗血症、あるいはCRBSI(血液培養が陽性)とした。 カテーテル関連感染症の発生率は、クロルヘキシジン・アルコール群で0.28/1,000カテーテル日、ポビドンヨード・アルコール群で1.77/1,000カテーテル日であり、クロルヘキシジン・アルコール群が有意に低率だった(ハザード比:0.15、95%信頼区間:0.05~0.41、p=0.0002)。CRBSIの発生率もクロルヘキシジン・アルコール群で低率だった(0.28 vs.1.32/1,000カテーテル日)。消毒前の皮膚洗浄の有無では、カテーテル関連感染症、CRBSIの発生率に差はなかった。 また、全身性の有害事象は認めなかったが、クロルヘキシジン・アルコール群で重篤な皮膚反応を多く認めた(3% vs.1%)。 カテーテル挿入部位や手術部位など皮膚の消毒には、クロルヘキシジンの有効性が報告されてきており、本研究でもポビドンヨードと比較してクロルヘキシジンの有効性が示された。過去の研究では、カテーテルコロニゼーション(カテーテルへの菌の定着)を主要評価項目としているものが多く、もともとCRBSIの発生率が低い集団において、カテーテル関連感染症の発生率を大きく低下させることを示した意義は大きい。今後さらに、クロルヘキシジン・アルコールを皮膚消毒に使用する流れが加速するだろう。 現時点で、日本では2%クロルヘキシジン製剤が発売されておらず、使用することはできない。多くの施設では、CDCガイドラインで推奨されている「0.5%を超える濃度のクロルヘキシジン」という文言を参考に、1%クロルヘキシジン・アルコール製剤を使用していると思われる。今後も1%クロルヘキシジン・アルコールを使用するのであれば、1%製剤はポビドンヨードより有効なのか、2%クロルヘキシジン・アルコールと効果は同等なのか、有害事象の発生率に差はないのか、といった疑問を解決してくれるような研究が必要と考える。

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常染色体優性多発性嚢胞腎〔ADPKD : autosomal dominant polycystic kidney disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義PKD1またはPKD2遺伝子の変異により、両側の腎臓に多数の嚢胞が発生・増大する疾患。■ 診断基準ADPKD診断基準(厚生労働省進行性腎障害調査研究班「常染色体優性多発性嚢胞腎ガイドライン(第2版)」)1)家族内発生が確認されている場合(1)超音波断層像で両腎に各々3個以上確認されているもの(2)CT、MRIでは、両腎に嚢胞が各々5個以上確認されているもの2)家族内発生が確認されていない場合(1)15歳以下では、CT、MRIまたは超音波断層像で両腎に各々3個以上嚢胞が確認され、以下の疾患が除外される場合(2)16歳以上では、CT、MRIまたは超音波断層像で両腎に各々5個以上嚢胞が確認され、以下の疾患が除外される場合※除外すべき疾患多発性単純性腎嚢胞(multiple simple renal cyst)腎尿細管性アシドーシス(renal tubular acidosis)多嚢胞腎(multicystic kidney 〔多嚢胞性異形成腎 multicystic dysplastic kidney〕)多房性腎嚢胞(multilocular cysts of the kidney)髄質嚢胞性疾患(medullary cystic disease of the kidney〔若年性ネフロン癆 juvenile nephronophthisis〕)多嚢胞化萎縮腎(後天性嚢胞性腎疾患)(acquired cystic disease of the kidney)常染色体劣性多発性嚢胞腎(autosomal recessive polycystic kidney disease)【Ravineの診断基準】(表)(家族歴がある場合の画像診断基準)画像を拡大する■ 疫学一般人口中に占める多発性嚢胞腎患者数(有病率)は、病院受診者数を基に調査した結果では一般人口3,000~7,000人に1人である。病院患者数に占める多発性嚢胞腎患者数は3,500~5,000人に1人、病院での剖検結果では被剖検患者約400人に1人である。メイヨー病院があるオルムステッド郡(米国)で1年間に新たに診断された患者数(発症率)は、一般人口1,000~1,250人あたり1人である。調査方法、調査年代、調査場所などにより、結果に差異が認められる。今後、治療薬が利用可能になると受療する患者数が増加し、有病率も増える可能性がある。■ 病因(図を参照)画像を拡大するPKD1またはPKD2遺伝子の変異による。PKD1は16p13.3、PKD2は4q21-23に位置する。PKD1とPKD2の遺伝子産物 polycystin 1(PC 1)とPC2はtransient receptor potential channel for polycystin(TRPP)subfamilyで、Caチャネルである。PC1とPC2は腎臓、肝臓、膵臓、乳腺の管上皮細胞、平滑筋と血管内皮細胞、脳の星状細胞に存在する。PCは腎臓上皮細胞、血管内皮細胞、胆管細胞などの繊毛に存在する。尿細管腔の内側に存在する繊毛は、尿細管液の流れに反応して屈曲する。屈曲によるshear stressはPCや繊毛機能に関係する蛋白を活性化し、細胞外と小胞体からCaイオンを細胞質内へ流入させ、細胞質内Ca濃度を高める。繊毛機能に関係する蛋白をコードする遺伝子異常が嚢胞性腎疾患をもたらすことが明らかとなり、繊毛疾患(ciliopathy)として概括されている。PKD細胞ではPC機能異常により、尿細管上皮細胞のCa濃度は低値である。細胞内Ca濃度が低下すると、cyclicAMP(cAMP)分解酵素(PDE)活性が低下し、またcAMPを産生するadenyl cyclase(AC)活性が高まり、細胞内cAMP濃度が高まる。その結果、cAMP依存性protein kinase A(PKA)機能が高まり、種々のシグナル経路(EGF/EGFR、Wnt、Raf/MEK/ERK、JAK/STAT、mTORなど)が活性化され細胞増殖が起きる。繊毛は細胞極性(尿細管構造形成)に関与しており、細胞極性機能を失った細胞増殖が起きる結果、嚢胞が形成される。また、PKAはcystic fibrosis transmembrane conductance regulator(CFTR)を刺激し、嚢胞内へのCl分泌を高める。腎尿細管(集合管)に存在するバソプレシン(AVP)V2受容体は、AVPの作用を受け、ACおよびcAMP、PKAを介して水透過性を高める。この過程でcAMPは嚢胞を増大させる。ソマトスタチンはACを抑制するので、治療薬として期待される。■ 症状多くの患者は30~40代までは無症状で経過する。1)腎機能低下腎機能の低下と総腎容積は相関し、総腎容積が3,000mLを超えると腎不全になる確率が高い。しかし、3,000mLを超えない場合でも腎不全になる場合もある。腎不全による症状(疲労、貧血、食欲低下、皮膚搔痒など)は、他疾患による腎不全症状と同じである。透析導入平均年齢は55歳位であったが、最近では60歳近くになっている。患者全体では70歳で約50%が終末期腎不全になる。2)高血圧血管内皮機能の異常により高血圧を来すと考えられ、腎機能が低下する以前から発症する。60~80%の患者が高血圧に罹患している。高血圧になっている患者では腎臓腫大と腎機能低下の進行が速い。3)圧迫症状腎臓や肝臓の嚢胞(60~80%の患者に嚢胞肝が併存)が腫大するにつれて、腹部膨満感、少し食べるとお腹が張る、前屈が困難になる、背腰部痛、腹部痛などの圧迫症状が出現する。腎嚢胞は平均年5~6%の割合で増大するので、加齢とともに症状は進行する。4)脳血管障害脳出血、くも膜下出血、脳梗塞の発症頻度が高い。脳出血の原因として高血圧がある。脳動脈瘤の発生頻度(約8%)は一般より高い。5)血尿・尿路感染症血管の構築異常により血管が裂け、嚢胞内に出血し、疼痛を引き起こす。出血巣と尿路が交通すると血尿になる。また、変形した尿路のために尿路感染症を起こしやすい。嚢胞感染が起きると抗菌薬が嚢胞内に移行しにくいので難治性になることがある。6)その他尿路結石、鼠径ヘルニア、大腸憩室、心臓弁膜機能異常などの頻度が高い。■ 分類遺伝子の変異部位に応じて、PKD1とPKD2に分かれる。約85%はPKD1である。PKD1の方が症状は強く、腎不全になる平均年齢も若い。■ 予後生命予後に関するデータはない。腎機能に関しては症状の項参照。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断基準に準ずる。家族歴と画像検査(超音波、CT、MRIなど)で比較的正確に診断できるが、中には診断に迷う症例もあり、遺伝子診断が有用な場合もある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)1)トルバプタン(商品名: サムスカ)による治療AVP V2受容体拮抗薬トルバプタンは、ナトリウム利尿をあまり伴わない水利尿作用があり、低ナトリウム血症、体液貯留の治療薬として開発され、わが国では、2010年に心不全による体液貯留、2013年に肝硬変による体液貯留への治療薬として承認を受けている。2003年にモザバプタン(トルバプタンの前段階の薬)が、多発性嚢胞腎モデル動物に有効であると発表され、2007年から多発性嚢胞腎患者1,445名を対象として、トルバプタンの有効性と安全性を検討する国際共同治験が行われた。腎臓容積増大速度を約50%、腎機能低下速度を約30%緩和する結果が2012年秋に発表され、わが国において2014年3月に多発性嚢胞腎治療薬として承認され、臨床使用が始まっている。わが国での投薬適応基準は、総腎容積≧750mL、総腎容積増大速度≧年5%、eGFR≧15 mL/min/1.73m2などである。服用開始時には入院が必要で、その後月1回の血液検査で肝機能(5%程度に肝機能障害が発生する)、血清Na値(飲水不足で高Na血症になる)、尿酸値(上昇する)などのモニターが必要である。また、トルバプタンの処方医はWeb講習を受講し、登録する必要がある。2)高血圧の治療ARBが第1選択薬として推奨される。標準的降圧目標(120/70~130/80)とより低い降圧目標(95/60~110/75)との2群を5年間追跡したところ、より低い降圧群での総腎容積増大速度が低かったことが報告されているので、可能なら収縮期血圧を110未満にコントロールすることが望ましい。3)Na摂取制限Na摂取と腎嚢胞増大速度は相関するので、Na摂取は制限したほうがよい。4)飲水動物実験では飲水によって嚢胞の増大抑制効果が認められているが、人で飲水を奨励した結果では、逆に嚢胞増大速度とeGFR低下速度が増大したことが報告されている。水道水では、消毒用塩素の副産物ジクロロ酢酸に嚢胞増大作用があることが報告されている。多発性嚢胞腎患者では、腎機能が低下するにしたがい血清浸透圧とAVPが高くなることが報告されている。人における飲水効果には疑問があるが、脱水によるAVP上昇は避けるべきである。5)カフェインや抗うつ薬カフェインはPDEを抑制しcAMP濃度を上昇させ、嚢胞増大を促進する可能性がある。SSRI、三環系抗うつ薬などはAVPの放出を促進するため、多発性嚢胞腎では嚢胞増大を促進することが考えられる。6)開発中の薬剤(1)トルバプタン〔AVP V2受容体阻害薬〕は、大規模な臨床試験で腎嚢胞増大と腎機能悪化を抑制する効果が示され1)、わが国では2014年3月、カナダ、ヨーロッパでは2015年3月に認可が下りている。(2)ソマトスタチンアナログは小規模な臨床試験で肝臓と腎臓の嚢胞増大に有効と報告されているが、当局への申請を目的とする大規模な臨床試験は行われていない。(3)mTOR阻害薬であるシロリムスとエベロリムスの臨床試験が行われたが、副作用が強く臨床効果が認められなかった。7)腎動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization: TAE)腎動脈を塞栓し、腎臓を縮小させることで症状の緩和をもたらす。すでに透析が導入され、尿量が1日500mL以下の患者が対象となる。8)腹腔鏡下腎嚢胞開創術、腎摘除術抗菌薬抵抗性または反復感染の原因になっている嚢胞が特定される場合、あるいは数個の嚢胞が特別に大きくなり圧迫症状が強い場合、腹腔鏡下に特定の嚢胞を開窓する手術が適応となる。出血が強い場合や、反復する嚢胞感染がある場合、患者に腎機能の予後をよく説明したうえで同意を前提として腎摘除術(腹腔鏡下腎摘除術も行われる)が選択肢となる。4 今後の展望1)最近の研究では、総腎容積増大速度が5%/年以下でも、腎不全に進行することが示されている。トルバプタン適応基準となった総腎容積増大速度≧5%/年の基準では、これら腎不全に進行する患者を除外することになる。2)トルバプタンの作用として利尿作用があるが、利尿作用を少なくする薬剤が望まれる。3)多発性嚢胞腎の進展機序は、cAMP-PKAを介する経路のみではないので、cAMP-PKA非依存性経路を抑制する薬剤開発が望まれる。4)肝臓嚢胞に有効なソマトスタチンアナログの臨床開発が望まれる。5 主たる診療科腎臓内科、泌尿器科、脳動脈瘤があれば脳外科(多発性嚢胞腎に関心の高い医師の存在)※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報多発性嚢胞腎啓発ウエブサイト(杏林大学多発性嚢胞腎研究講座)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター 多発性嚢胞腎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)常染色体多発性嚢胞腎(順天堂大学医学部泌尿器科)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)ADPKD.JP (~多発性嚢胞腎についてよくわかるサイト~/大塚製薬株式会社)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報PKDの会(患者と患者家族の会)1)Torres VE,et al.N Engl J Med.2012;367:2407-2418.2)東原英二 編著.多発性嚢胞腎~進化する治療最前線~.医薬ジャーナル;2015.3)Irazabal MV, et al. J Am Soc Nephrol.2015;26:160-172.公開履歴初回2013年04月18日更新2015年10月27日

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収縮期血圧20mmHg上昇でPADリスク63%増大/BMJ

 収縮期血圧値が標準よりも20mmHg高いと末梢動脈疾患(PAD)リスクは63%上昇することが、英国・オックスフォード大学のConnor A Emdin氏らによる大規模コホート研究の結果、示された。これまで、血圧上昇とPADリスク増大の関連に関するエビデンスは限定的なものであった。今回、研究グループは、23年間約420万人分の英国プライマリケアの電子カルテ記録を基に分析した。結果を踏まえて著者は、「血圧上昇は幅広い患者群の強いリスク因子である」と結論し、「臨床医は、PADは慢性腎臓病、虚血性心疾患、心不全、心房細動、脳卒中などその他の血管イベントのリスクを増大することを認識しなければならない」と述べている。BMJ誌オンライン版2015年9月29日号掲載の報告。英国プライマリケアデータ420万人分を分析 研究グループは、英国の1990~2013年の電子カルテ記録を基に、標準血圧値とPADリスクの特異的サブグループの関連性、またPADとその他血管疾患の関連性を調べた。 被験者は、30~90歳で、過去1年以内にプライマリケア診療所の受診記録があり、血圧測定を行っていた422万2,459例であった。 主要評価項目は、PAD新規発症を初回診断されたまでの期間、12の異なる血管イベントの初回診断までの期間であった。PAD患者ではCKDが多い 結果、収縮期血圧値が標準よりも20mmHgと、PADリスクは63%上昇することが確認された(ハザード比[HR]:1.63、95%信頼区間[CI]:1.59~1.66)。 この関連の強さは、年齢、BMIの上昇とともに低減する(相互作用のp<0.001)が、性別や喫煙状態による影響はみられなかった。 PADは、虚血性心疾患(HR:1.68、95%CI:1.58~1.79)、心不全(1.63、1.52~1.75)、大動脈瘤(2.10、1.79~2.45)、慢性腎臓病(1.31、1.25~1.38)など11の血管イベントのリスク増大と関連していた。出血性脳卒中については関連していなかった。 PAD患者で最も頻度の高い初発の血管イベントは、慢性腎臓病(初発血管イベントの24.4%)であった。次いで、虚血性心疾患(同18.5%)、心不全(14.7%)、心房細動(13.2%)であった。 今回の検討コホートにおける全推算値は、2件のメタ解析所見をプールした、従来研究の所見と一致していた。

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中高年高血圧症例では足関節上腕血圧比測定を考慮する必要はあるか?(解説:冨山 博史 氏)-429

概要とコメント 本研究は、英国において1990年から2013年までプライマリケアで電子媒体に登録された、30~90歳の成人422万例の医療記録データを、前向き研究(平均観察期間7年)として解析した。前向き研究開始時に、末梢動脈疾患(PAD)非合併例は420万4,190例であり、PAD合併例は1万8,296例であった。前者では、経過中に4万4,239例(1.1%)でPADを発症し、収縮期血圧20mmHg上昇に伴い、PAD発症リスクは63%高まることが示された。 これまで血圧とPADの関係は、断面研究で検討した報告が多く1)、大規模な前向き研究が少ないため、PAD発症に対する血圧上昇のリスクとしての重要性は十分明らかでなかった。422万例を対象とした本前向き研究にて、血圧上昇がPAD発症の独立したリスクであることが示された。高血圧のPAD発症リスクとしての重要性を示す結果である。 一方、PAD合併例(1万8,296例)では、7年の経過観察中に7,760例(42.5%)で心血管イベント発症を認めた。その内訳では、従来の冠動脈疾患、脳卒中に加え、慢性腎臓病(24.4%)、心不全(14.7%)、心房細動(13.2%)の発症が多いことが新たに示された。PADでは、わが国の検討も含め20~40%の症例に腎動脈狭窄を合併することが報告されている2)。今後、こうした腎動脈狭窄のCKD発症への影響を検証する必要がある。また、PADでは血管床全体が硬化しており、中心血行動態異常が生じていると推察される。中心血行動態異常は心不全発症のリスクであり3)、今後、PADで心不全が発症する機序を明確にする必要がある。研究成果の臨床応用と限界 2007年に発表されたTASC IIでは、PAD発症リスクとしての高血圧の相対危険度(オッズ比:1.5~2)は、DM/喫煙(オッズ比:3前後)より弱いと述べている4)。本研究における重要な知見は、血圧上昇に伴うPAD発症のハザード比は70歳以上では1.4であるのに対し、40~69歳では1.8前後と上昇することである。さらに、本研究ではオッズ比は算出していないが、考察においてサブグループ解析の結果より、収縮期血圧20mmHg上昇によるPAD発症のリスクは、喫煙と同等と推察している。 一般に、PAD合併を考慮する(足関節上腕血圧比測定を考慮する)症例として、70歳以上、50~69歳でかつ喫煙または糖尿病を合併する症例が挙げられる4)。2013年、日本循環器学会「血管機能の非侵襲的評価法に関するガイドライン」では、高血圧症例において足関節上腕血圧比測定を考慮する症例として、65歳以上、またはJSH2009脳心血管リスク層別化で高リスクの症例を推奨している5)。しかし、最近のガイドラインを踏まえても6)、どのような病態の高血圧症例で足関節上腕血圧比測定を考慮すべきか、十分に明確ではなかった。本研究の結果は、50~69歳で未治療高血圧例および血圧コントロール不良の症例においてもPAD合併を考慮し、適切な問診、下肢動脈触診を実施し、可能であれば足関節上腕血圧比を測定することの有用性を示唆する。 TASC IIでは、PAD症例は40~50%に冠動脈疾患、20~40%に脳卒中を合併すると報告している4)。本研究では7年の経過観察中に1万8,296例中3,415例(19%)で冠動脈疾患、脳卒中または心不全の発症を認めた。本結果は、PAD診断時にほかの心血管疾患合併のない症例でも、慎重な経過観察が重要であることを支持する。 本研究の限界として以下が挙げられる。 (1)PADの診断は間欠跛行で実施されているが、無症候性PAD(足関節上腕血圧比0.90未満だが無症状)の頻度は間欠跛行を有する症例の3~4倍とされる。近年、わが国を中心に、オシロメトリック法を用いて足関節上腕血圧比が簡便に測定されるようになり、無症候性PADを診断する機会が多くなってきた7)。本研究の結果をこうした無症候性PADに応用できるかは不明であり、また、疾患診断が電子記録媒体での評価であることも研究の限界である。 (2)本研究では、収縮期血圧・拡張期血圧上昇とPAD発症の関連は、正常血圧域から認められた。本研究の著者らは、血圧低下がPAD発症を予防すると推論を述べている。しかし、研究対象症例で降圧薬服用は観察開始時9.9%、終了時28.7%であり、積極的な血圧治療がPAD発症予防に有用であるかは検証できない。参考文献はこちら1)Meijer WT, et al. Arch Intern Med. 2000;160:2934-2938.2)Endo M, et al. Hypertens Res. 2010;33:911-915.3)Chirinos JA, et al. J Am Coll Cardiol. 2012;60:2170-2177.4)Norgren L, et al. Eur J Vasc Endovasc Surg. 2007;33 Suppl 1:S1-75.5)日本循環器学会ほか.循環器病の診断と治療に関するガイドライン2013(2011-2012年度合同研究班報告)血管機能の非侵襲的評価法に関するガイドライン(JCS 2013).6)Vlachopoulos C, et al. Atherosclerosis. 2015;241:507-532.7)Koji Y, et al. Am J Cardiol. 2004;94:868-872.

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カテーテル関連感染症、クロルヘキシジン消毒で大幅減/Lancet

 カテーテル挿入前に、皮膚消毒をクロルヘキシジン・アルコールで行うと、ポビドンヨード・アルコールを使った場合に比べて、カテーテル関連感染症リスクは85%低下することが示された。フランス・CHU de PoitiersのOlivier Mimoz氏らが、2,546例を対象とした無作為化比較試験の結果、報告した。結果を踏まえて著者は、「血管内カテーテル関連感染症予防のためにも全例について、皮膚消毒はクロルヘキシジン・アルコールを用いるべきである」と述べている。Lancet誌オンライン版2015年9月17日号掲載の報告より。皮膚消毒前の洗剤による皮膚洗浄の有無についても比較 研究グループは、2012年10月~14年2月にかけて、フランス国内11ヵ所のICU入室となり、中心静脈カテーテル、血液透析、動脈カテーテルのいずれかを行った18歳以上の患者2,546例を対象に試験を行った。クロルヘキシジン・アルコールまたはポビドンヨード・アルコールによる皮膚消毒の、カテーテル関連の感染症予防効果について比較を行った。 被験者を無作為に4群に分け、2%クロルヘキシジン・70%イソプロピルアルコールまたは5%ポビドンヨード・69%エタノールのいずれかによる皮膚消毒群、および同実施前の洗剤による皮膚洗浄の有無別に割り付けた。 医師、看護師は、割り付けについてマスキングされなかったが、細菌学者およびアウトカム評価者には割り付けをマスキングされた。 主要アウトカムは、カテーテル関連感染症の発生率だった。皮膚洗浄の有無は感染率に有意差みられず クロルヘキシジン・アルコール群は1,181例、そのうち洗剤による皮膚洗浄を行ったのは594例だった。ポビドンヨード・アルコール群は1,168例、うち皮膚洗浄群は580例だった。 カテーテル関連感染症の発生率は、ポビドンヨード・アルコール群が1.77/1,000カテーテル日に対し、クロルヘキシジン・アルコール群は0.28/1,000カテーテル日と有意に低率だった(ハザード比:0.15、95%信頼区間:0.05~0.41、p=0.0002)。 洗剤による皮膚洗浄の有無では、同発生率に有意差はなかった(p=0.3877)。 また、全身性有害事象は認められなかったが、重篤皮膚反応の発生が、ポビドンヨード・アルコール群で1%(7人)に対しクロルヘキシジン・アルコール群では3%(27人)と有意に高率にみられた(p=0.0017)。2例はクロルヘキシジン・アルコール中断となった。

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