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適正年収、実年収プラス200万円が妥当!?/医師1,000人アンケート

 ケアネットでは、2月20日(火)に会員医師1,004人を対象に、インターネットによる「年収に関するアンケート」を行った。その中で、自身の業務内容や仕事量に見合った適正年収について尋ねたところ、最も回答数が多かったのは2,000~2,500万円(15.2%)、次いで3,000万円以上(12.7%)、1,800~2,000万円(12.6%)、1,400~1,600万円(10.9%)と続いた。また、実際の年収が600~1,800万円の範囲において、各年収層の半数以上が実際の年収より高い金額を希望しており、1,600~1,800円層を除く600~1,600万円の層では実年収に200万円程度上乗せした金額を希望していることが明らかになった。年代別の適正年収 各年代が適正と考える年収は、35歳以下は1,200~1,400万円、それ以降の年代はいずれも2,000~2,500万円との回答数が多かった。これをさらに男女別で見ると男性の場合は上記の全体の回答に合致していた。一方で女性の場合、35歳以下では800~1,000万円と男性より低い金額を回答したのに対し、36~55歳では1,200~1,400万円を境に適正年収が二極化、56歳以上では1,600万円未満の回答者が半数以上を占めていた。20床未満3,000万、20床以上2,000~2,500万円が最多 続いて、適正と考える年収を勤務する病床数が20床未満と20床以上で区分した結果では、20床未満の回答者が3,000万円以上(22%)、2,000~2,500万円(10%)、1,400~1,600万円(10%)と続いた。これに対し20床以上では、2,000~2,500万円(17%)、1,800~2,000万円(15%)、3,000万円以上(10%)、1,600~1,800万円(10%)となった。なお、3,000万円以上を最も希望したのは20床以上に勤務する46~55歳(43%)であった。この年代は医局員の指導的立場でありながら所属施設の管理を任されるなど、責任が重くなる時期でもある。その責任に見合う報酬などを求めているのではないだろうか。診療科別の適正年収 以下には、中央値より高い適正年収(1,800万円以上)を希望した上位3診療科を挙げる。・1,800~2,000万円:血液内科(33%)、産婦人科(21%)、泌尿器科(20%)・2,000~2,500万円:血液内科(33%)、循環器内科(25%)、消化器外科(24%)・2,500~3,000万円:消化器外科(20%)、心臓血管外科(18%)、脳神経外科(16%)、循環器内科(16%)・3,000万円以上:腎臓内科(33%)、耳鼻咽喉科(24%)、消化器外科(20%) そのほか、年代ごとの男女別、病床数別、勤務先別などの詳細な年収分布については、以下のページで結果を発表している。医師の年収に関するアンケート2024【第4回】適正年収

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CKD-MBDガイドライン改訂に向けて新たな治療の方向性を議論/日本透析医学会

 日本透析医学会による『慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)の診療ガイドライン』の改訂に向けたポイントについて、2024年6月9日、同学会学術集会・総会のシンポジウム「CKD-MBDガイドライン 新時代」にて発表があった。 講演冒頭に濱野 高行氏(名古屋市立大学病院 腎臓内科・人工透析部)がCKD-MBDガイドライン改訂方針について、「CKD-MBDの個別化医療を目指して、さまざまなデータを解析して検討を積み重ねてきた。新しいガイドラインでは、患者の背景に合わせた診療の実現へつなげるためのユーザーフレンドリーな内容になるよう努めていきたい」とコメント。続いて、6人の医師が今後のCKD-MBDガイドライン改訂のポイントに関して解説した。CKD-MBDガイドライン改訂で実臨床に則したプラクティスポイント作成を目指す 保存期CKD-MBDについて、藤崎 毅一郎氏(飯塚病院 腎臓内科)から低カルシウム血症・高リン血症のプラクティスポイントに関する提案があった。低カルシウム血症では、「まずは補正カルシウム値を確認。その後、低カルシウム血症を誘発する薬剤の確認やintact PTH(iPTH)、リン、マグネシウムを測定し、二次性副甲状腺機能亢進症の確認を行ったうえで、カルシウム製剤または活性型ビタミンD製剤の投与を検討すること」とし、高リン血症に関しても補正カルシウム値の確認を行ったうえで、「低い場合にはカルシウム含有リン吸着薬、正常であれば鉄欠乏の有無を考慮したうえで鉄含有、非含有リン吸着薬の投与を検討すること」とコメントした。最後にガイドラインの改訂に向けて、「実臨床に則したプラクティスポイントの作成を目指して検討を続けていく」と述べた。CKD-MBDへの関心が低い医師でも使えるフローチャートを 血液透析患者における血清カルシウム、リンの管理目標値について、後藤 俊介氏(神戸大学医学部附属病院 腎臓内科 腎・血液浄化センター)から提案があった。理事会へ提出された素案によると、血清カルシウムの下限は8.4mg/dL以上のまま、上限に関しては9.5mg/dL未満、血清リンに関しても下限は3.5mg/dL以上のまま、上限は5.5mg/dL未満が管理目標値として検討されている。同氏は、血清カルシウム、リンの管理について、「カルシミメティクスや骨粗鬆症治療薬によってカルシウムが下がりやすい環境にもあるため、低カルシウム血症には注意すること。血清リンに関しては年齢や栄養状態をよく考慮して検討すること。原疾患が糖尿病、動脈硬化性疾患の既往がある場合には目標値の上限を下げて管理することも検討する必要がある」とコメント。また、「CKD-MBDにそれほど関心がない先生方にとっても、フローチャートなどを使って診療の手助けになるものを示していくことが大切である」と述べた。CKD-MBDガイドライン改訂で患者の背景に応じたリン低下薬選択を支援 前回のCKD-MBDガイドライン以降、多くのリン低下薬が登場し、患者に合わせた薬剤選択の重要性が注目されている。山田 俊輔氏(九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科)からは、患者特性に基づくリン低下薬の選択について提案があった。リン低下薬を選択する際の切り口として、「リン低下だけでなく薬剤による多面的な効果、便秘などの消化器症状、PPIやH2ブロッカーなど胃酸分泌抑制薬による影響、服薬錠数や医療経済など、リン低下薬の特性だけでなく患者背景に合わせて使い分けることが大切である」と改訂に向けたポイントを述べた。プラクティスポイントとして、リン低下薬選択に関するアプローチの仕方を示した「一覧表」の紹介もあった。同氏は一覧表に関して、「基本的には患者と相談してリン低下薬を選択していくことになるが、どうやって患者に合わせて使い分けていくべきか、視覚的にわかりやすいツールがあれば判断しやすいのではないか」とコメントした。PTHの管理・治療の個別化へ向けて 血液透析患者における副甲状腺機能の評価と管理について、駒場 大峰氏(東海大学医学部 腎内分泌代謝内科学)からPTHの管理を中心に提案があった。同氏は、「PTH管理においても治療の個別化が必要である」とし、管理目標値としてiPTH 240pg/mL以下の範囲で症例ごとに個別化すること、とコメントした。具体的には、骨折リスクの高い症例(高齢・女性・低BMI・骨代謝マーカー上昇)では管理目標値を低く設定する、カルシミメティクスを使用する場合にはiPTHの下限値を設けない、活性型ビタミンD製剤を単独で使用する場合は高カルシウム血症を避けるため下限値を60pg/mLとすることなどであった。内科的治療に関しては、PTHが管理目標値より高い場合には、血清カルシウム値や患者背景に基づいて活性型ビタミンD製剤、カルシミメティクスによって管理を検討すること、血清カルシウム値が管理目標値内にあって腫大腺や65歳以上、心血管石灰化、心不全リスク、骨折リスク、高リン血症を有するなど、1つでも該当する場合にはカルシミメティクスの使用や併用をより積極的に考慮することなどを挙げた。また、内科的治療に抵抗する重度の二次性副甲状腺機能亢進症の場合には副甲状腺摘出術の適応となるが、こちらも症例ごとに検討していく必要があると述べた。CKD-MBDにおける骨折リスクの評価・管理のポイントとは CKD-MBDにおける骨折リスクへの介入について、谷口 正智氏(福岡腎臓内科クリニック)からプラクティスポイントに関する解説があった。評価・管理のポイントとして、「脆弱性骨折の有無や骨密度検査および血清ALP値による骨代謝の評価を行い、骨折リスクが高い場合には、運動、転倒防止、栄養状態の改善、禁煙指導を実施したうえで、カルシミメティクスの投与を優先してPTHを低く管理することが重要である」とコメント。同氏は、それでも骨密度の改善が得られない、または骨代謝マーカーの亢進が認められる場合には、骨粗鬆症治療薬の投与を検討するよう提案した。また、透析・保存期CKD患者に対する骨粗鬆症治療薬の選択に関しては、使用制限や投与における注意点が薬剤別にまとめられた表を作成し、CKD患者においてリスクの高い骨粗鬆症治療薬もあるため、ヒートマップを活用する形で警鐘を鳴らしていくことなども必要であると述べた。CKD-MBDガイドライン改訂に向けた管理目標値の提案 腹膜透析患者におけるMBDについて、長谷川 毅氏(昭和大学 統括研究推進センター研究推進部門/医学部内科学講座腎臓内科学部門)からCKD-MBDガイドライン改訂に向けたポイントに関する解説があった。同氏は「リン低下薬に関しては十分なシステマティック・レビュー、メタ解析による報告がないため、血液透析患者での推奨に準拠すること。CKD-MBDの管理目標値に関しては、生命予後の観点から、リン、カルシウムを目標値内でも低めの値、残腎機能保護、血液透析への移行防止のために、リン、PTHを目標値内でも低めの値を目標とすること」と提案。また、プラクティスポイントとして、残腎機能のある症例でカルシミメティクスを使用することでリンの管理が難しくなる可能性があること、腹膜透析液のカルシウム濃度は血清カルシウム値、PTH値をみて選択することを挙げた。

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慢性腎臓病を伴う2型糖尿病に対するセマグルチドの腎保護作用 -FLOW研究から何を学ぶ-(解説:栗山哲氏)

本論文は何が新しいか? GLP-1受容体作動薬は、LEADER/SUSTAIN-6/REWINDなど2型糖尿病の大規模研究において心血管主要アウトカムのリスク軽減が報告されている。一方、これらの研究で腎イベントは副次項目として設定されており、肯定論はあるものの正確な評価はされていない。今回のFLOW研究は、セマグルチドの効果を、腎疾患イベントを主要評価項目として評価した初の腎アウトカム研究である。FLOW試験のデザインと経緯 慢性腎疾患(CKD)を有する2型糖尿病の成人を対象として、腎臓を主要評価項目とした。標準治療の補助療法として追加したセマグルチド1.0mg週1回皮下注とプラセボを比較した、無作為割り付け、二重盲検、並行群間、プラセボ対照試験のデザイン。両群のベースラインeGFRは、47mL/min/1.73m2である。複合主要評価項目は、eGFRのベースラインから持続的50%以上の低下、持続的なeGFR 15mL/min/1.73m2未満の発現、腎代替療法(透析または腎移植)の開始、腎死、心血管死、の5項目。本計画書では、事前に規定した数の主要評価項目イベントが発生した時点で中間解析を行うこととした。試験は2019年に開始、28ヵ国、387の治験実施施設で3,533人が組み入れられた。そして、経過中セマグルチドの腎アウトカムの改善効果が明確になったため、2023年10月独立データモニタリング委員会の勧告に基づき試験の早期終了が決定された。FLOW試験の主たる結果 早期終了勧告の際の中間観察期間は3.4年。主要評価項目において、セマグルチド群でのリスク低下は24%(ハザード比[HR]:0.76、95%信頼区間[CI]:0.66~0.88、p=0.0003)であった。この結果は、主要評価項目の中で腎に特異的な複合項目(HR:0.79、95%CI:0.66~0.94)と心血管死(HR:0.71、95%CI:0.56~0.89)においても同様であった。サブグループ解析において、セマグルチド群のHRが低い要因として、欧州地域、UACRが多い、BMIが大、糖尿病歴が長い、などが挙げられた。以上、本試験から「CKDを有する2型糖尿病患者においてセマグルチドは腎アウトカムを改善し、心血管死を抑制する」、と結論された。GLP-1受容体作動薬による腎保護の想定機序 FLOW試験は、GLP-1受容体作動薬の腎保護の作用機序を議論する研究ではない。しかし、この点は万人にとって興味の的である。GLP-1受容体作動薬には食欲抑制作用がある。その機序には、胃排出遅延作用と中枢における食欲抑制が知られている。食欲抑制は、糖負荷とNa負荷を軽減し、糖代謝や高血圧などを改善し、腎保護に寄与する。さらに腎保護作用のメカニズムには、Na利尿作用、抗酸化作用、抗炎症作用、血管拡張作用など複合的に想定される。腎臓におけるGLP-1受容体は、糸球体、近位尿細管、輸入細動脈、緻密斑(MD)などに分布する。GLP-1受容体作動薬は、近位尿細管でNHE3やNHE3-DPP4複合体の活性化を抑制しNa利尿を亢進させる。GLP-1受容体作動薬が、MDへのNa流入増加から、尿細管・糸球体フィードバック(TGF)を介して糸球体内圧低下を惹起するか否かに関しては、一定の見解は得られていない。本論文の日本での意義付けと注意点 FLOW研究の成果は、糖尿病や腎臓病専門医の日常診療にとってもインパクトは高い。日本糖尿病学会の「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム(第2版)」において、ステップ1でGLP-1受容体作動薬が、ステップ3でCKD合併2型糖尿病ではSGLT2阻害薬と共に選択薬剤として推奨されている。また、ADA/KDIGOにおける糖尿病性腎臓病(DKD)に対する腎保護管理2022の推奨においても、GLP-1受容体作動薬はリスクに応じた追加治療としてARB/ACE阻害薬、SGLT2阻害薬、MRAと共に推奨されている(Kidney Int. 2022;102:S1-S54.)。一方、本論文を直接日本人に外挿できるか、には注意が必要である。FLOW研究は、アジア人が20%と少なく、さらにHRが低下した患者層は、BMI>30でUACR≧300であった。このことは、同剤は肥満度が高い顕性蛋白尿を有するDKDで効果が高い可能性を示唆する。さらに、本試験で使用されたセマグルチドは、注射製剤(オゼンピック)であることも注意すべきである。現在、本邦では経口セマグルチド(リベルサス)も使用可能であるが、両者は薬物動態学/薬力学の面で同一ではない。したがって、注射製剤セマグルチドで得られたFLOW試験の腎保護効果を、経口セマグルチドには直接外挿はできない。心血管イベント抑制や腎アウトカム改善を目標とするなら、経口薬ではなく注射薬を選択すべきであろう。慢性腎臓病を伴う2型糖尿病における腎保護療法の未来展望 近年、心不全治療ではファンタスティックフォー(fantastic four:ARNI、SGLT2阻害薬、β遮断薬、MRA)なる4剤の組み合わせが注目され、臨床現場で実践されている。これに追随しDiabetic Kidney Disease(DKD)治療において推奨される4種類の腎保護薬(RAS阻害薬、SGLT2阻害薬、非ステロイド型・MRA[フィネレノン]、GLP-1受容体作動薬)の組み合わせを、新たに腎臓病ファンタスティックフォー(The DKD fantastic four)とする治療アルゴリズムが一部に提唱されている(Mima A. Adv Ther. 2022;39:3488-3500.)。また、腎臓の酸素化や炎症を評価する試験(TREASURE-CKD[NCT05536804]、REMODEL[NCT04865770])が進行中であり、GLP-1受容体作動薬の作用機序の一部が解明される期待がある。今後、「GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬など早期から使用することにより、さらなる腎予後改善が望めるかもしれない」、との治療上の作業仮説も注目されつつある。この観点に立ち、将来的にはGLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬は、糖尿病性腎臓病の早期から開始する「Foundational drug:基礎薬」となり得るのではとの意見もある(Mark PB, et al. Lancet. 2022.400;1745-1747.)。

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セマグルチド、CKDを伴う2型DMの腎機能低下や心血管死亡を抑制/NEJM

 慢性腎臓病(CKD)を伴う2型糖尿病患者は、腎不全、心血管イベント、死亡のリスクが高いが、GLP-1受容体作動薬セマグルチドによる治療がこれらのリスクを軽減するかは知られていない。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のVlado Perkovic氏らFLOW Trial Committees and Investigatorsは「FLOW試験」において、プラセボと比較してセマグルチドは、主要腎疾患イベントの発生が少なく、腎特異的イベントや心血管死、全死因死亡のリスクを低減することを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年5月24日号に掲載された。28ヵ国387施設の無作為化プラセボ対照試験 FLOW試験は、28ヵ国387施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2019年6月~2021年5月に参加者を募集した(Novo Nordiskの助成を受けた)。 対象は、2型糖尿病とCKDを有する患者とし、推算糸球体濾過量(eGFR)が50~75mL/分/1.73m2で尿中アルブミン-クレアチニン比(アルブミンはミリグラム、クレアチニンはグラムで測定)が>300~<5,000、またはeGFRが25~50mL/分/1.73m2で尿中アルブミン-クレアチニン比が>100~<5,000と定義した。 被験者を、セマグルチド1.0mgを週1回皮下投与する群、またはプラセボ群に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、主要腎疾患イベント(major kidney disease event)であり、腎不全(透析、移植、eGFR<15mL/分/1.73m2)の発生、eGFRのベースラインから50%以上の低下、腎臓関連の原因または心血管関連の原因による死亡の複合と定義した。主要アウトカムの相対リスクが有意に低下 3,533例(平均[±SD]年齢66.6±9.0歳、女性30.3%)を登録し、セマグルチド群に1,767例、プラセボ群に1,766例を割り付けた。中間解析の結果に基づき、独立データ安全性監視委員会は有効性について試験の早期終了を勧告し、試験終了時の追跡期間中央値は3.4年だった。 主要アウトカムのイベント発生の頻度は、セマグルチド群で低く(初回イベント:セマグルチド群331件[5.8/100人年]vs.プラセボ群410件[7.5/100人年])、主要アウトカムの相対リスクはセマグルチド群で24%低かった(ハザード比[HR]:0.76、95%信頼区間[CI]:0.66~0.88、p=0.0003)。 また、主要アウトカムの腎特異的構成要素の複合(HR 0.79、95%CI 0.66~0.94)および心血管死(0.71、0.56~0.89)についても、結果は主要アウトカムと同様であった。eGFR年間変化率の勾配、主な心血管イベント、全死因死亡も良好 3つの確認のための主な副次アウトカムは、いずれもセマグルチド群で良好だった。eGFRの無作為化から試験終了までの平均年間変化率の傾きの程度(eGFR slope)は、プラセボ群に比べセマグルチド群で1.16mL/分/1.73m2(95%CI:0.86~1.47)低く、減少の仕方が緩徐であった(p<0.001)。主な心血管イベント(非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心血管死の複合)のリスクは、セマグルチド群で18%低く(HR:0.82、95%CI:0.68~0.98、p=0.029)、全死因死亡のリスクは20%低かった(0.80、0.67~0.95、p=0.01)。 重篤な有害事象の報告は、プラセボ群に比しセマグルチド群で少なかった(49.6% vs.53.8%)。一方、試験薬の恒久的な投与中止の原因となった有害事象の頻度はセマグルチド群で高かった(13.2% vs.11.9%)。 著者は、「これらの知見に基づくと、2型糖尿病とCKDを有する患者に対するセマグルチドの使用は、腎保護作用とともに、心血管リスクの低減に有効である可能性がある」としている。

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抗ネフリン抗体、ネフローゼ症候群の活動性マーカーの可能性/NEJM

 成人の微小変化型と原発性巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、および小児の特発性ネフローゼ症候群は、ネフローゼ症候群を引き起こす免疫介在性のポドサイト障害(podocytopathy)とされる。ドイツ・ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターのFelicitas E. Hengel氏らは、循環血中の抗ネフリン抗体(自己抗体)は、微小変化型または特発性のネフローゼ症候群の患者に多くみられ、これらの疾患の活動性のマーカーと考えられるとともに、スリット膜でのこの抗体の結合がポドサイト(糸球体上皮細胞[足細胞])の機能障害とネフローゼ症候群を誘発し、これは病態生理学的な意義を示すものであることを明らかにした。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年5月25日号で報告された。抗ネフリン自己抗体を解析する多施設共同研究 研究グループは、糸球体疾患(微小変化型、FSGS、膜性腎症、IgA腎症、抗好中球細胞質抗体[ANCA]関連糸球体腎炎、ループス腎炎など)の成人と特発性ネフローゼ症候群の小児、および対照群において、抗ネフリン自己抗体を解析する目的で多施設共同研究を行った(ドイツ研究振興協会[DFG]などの助成を受けた)。 また、遺伝子組み換えマウスネフリンを用いた能動免疫法により実験的マウスモデルを作製して解析を行った。 539例(成人357例、小児182例)の患者と117例の対照を解析の対象とした。成人微小変化型の44%、原発性FSGSの9%、小児特発性ネフローゼ症候群の52%で検出 成人患者では、微小変化型の105例中46例(44%)、および原発性FSGSの74例中7例(9%)で抗ネフリン自己抗体を検出したが、他の疾患の患者ではまれであった。 また、特発性ネフローゼ症候群の小児患者では、182例中94例(52%)で抗ネフリン自己抗体を検出した。 一方、免疫抑制療法を受けていない活動性の微小変化型および特発性ネフローゼ症候群のサブグループでは、それぞれ69%および90%と高い確率で抗ネフリン自己抗体を認めた。ネフリンを標的とした治療法開発の可能性も 抗ネフリン自己抗体の値は、成人、小児患者とも、試験開始時と追跡期間中に疾患活動性と相関を示した。 実験的な免疫法により、マウスにおいて、ネフローゼ症候群、微小変化型様の表現型、ポドサイトのスリット膜へのIgGの局在、ネフリンのリン酸化、重度の細胞骨格の変化を誘導することが示された。 著者は、「抗ネフリン自己抗体の測定は、微小変化型および特発性ネフローゼ症候群の診断、治療評価、予後予測において有用なツールになると考えられる。また、ネフリンを標的とした治療法の開発にも貢献する可能性がある」としている。

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何はさておき記述統計 その5【「実践的」臨床研究入門】第44回

2群の生存時間曲線を比較する今回は、無料の統計解析ソフトであるEZR(Eazy R)を用いて前回作成したKaplan-Meier曲線と統計解析(Log-rank検定)結果の出力を確認して解説します。まず、Kaplan-Meier曲線(図1)ですが、低たんぱく食厳格遵守群(Treat=1)は赤線で、低たんぱく食非厳格遵守群(Treat=0)は黒線で表示されています。図1デフォルトのオプション設定で指定されているとおり(連載第43回参照)、「打ち切り」は「ヒゲ」で表され(連載第42回参照)、また各時点での観察対象となるat risk集団(連載第35回参照)のサンプル数が"Number at risk”として示されています。生存時間解析の結果の要約とLog-rank検定の結果は、EZRのRコマンダー出力ウィンドウの最後に表示されています(図2)。図2低たんぱく食厳格遵守群(Treat=1)、低たんぱく食非厳格遵守群(Treat=0)のサンプル数はそれぞれ212例、426例で、右端に表されているのが両群間の生存時間曲線の比較検定(Log-rank検定)のp値です。生存期間中央値と95%信頼区間はそれぞれNA(not available)と表示されています。生存期間中央値は、Kaplan-Meier曲線で生存率(イベント非発生率)が50%となる値(期間)です。Kaplan-Meier曲線(図1)をみてわかるように、両群とも観察期間終了時(5年)に50%以上の対象が生存(イベント非発生)しているので、生存時間中央値およびその95%信頼区間は求めることができません。それでは、ここで簡単に統計学的仮説検定とp値の考え方について解説します。統計学的仮説検定は論理学の背理法に基づいて進めて行きます。ここでのわれわれの仮説、「低たんぱく食厳格遵守と低たんぱく食非厳格遵守で、末期腎不全の発症率に差がある」を検証する場合、次のように考えます。まず、検証したい仮説の否定を考え、「低たんぱく食厳格遵守と低たんぱく食非厳格遵守で、末期腎不全の発症率に差がない」、とします。これを帰無仮説(差なし仮説)と言います。p値のpはprobabilityのpでまさに確率であり、0から1の値をとります。p値とは、帰無仮説が正しいと仮定したときに、実際に標本から得られたデータ以上に帰無仮説から離れたデータが得られる確率を表した値、のことです。p値が非常に小さな場合、帰無仮説が誤っている(帰無仮説を棄却)とし、統計学的有意差がある、と判断します。統計学的に有意であると判断する基準を有意水準と言いますが、一般的には0.05(5%)に設定されます。これは5%未満の誤りであれば許容できる、という一般的な感覚から慣習で決められた数値です。統計学的仮説検定の手法は扱うデータ(変数)の型によって異なります。ここで扱う生存時間、生存時間曲線の比較では一般的にLog-rank検定が用いられることが多いです。さて、低たんぱく食厳格遵守群(Treat=1)と低たんぱく食非厳格遵守群(Treat=0)の生存時間曲線の比較検定(Log-rank検定)のp値は0.0657と有意水準0.05を上回っていました。したがって、「低たんぱく食厳格遵守と低たんぱく食非厳格遵守で、末期腎不全の発症率に差がない」という帰無仮説は棄却できません。さらに言うと、統計学的に有意差はないものの、生存時間曲線の見た目からは低たんぱく食厳格遵守群(Treat=1)より低たんぱく食非厳格遵守群(Treat=0)の方が予後が良さそうにも見えます。生存時間曲線の比較検定(Log-rank検定)の結果からは、われわれの仮説に沿った解析結果が得られませんでした。ここで研究は終了(継続断念)でしょうか。次回からは、観察研究においてExposure(曝露要因)とOutcome(アウトカム)の関連や因果関係を歪める「交絡(因子)」について解説します。

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代替エンドポイントの適否は臨床試験でなくても確認できる(解説:折笠秀樹氏)

 評価項目(エンドポイント)には臨床と代替があります。たとえば、高血圧症であれば、臨床は脳心疾患であり、代替は血圧値です。代替である血圧値の低下が立証されれば、新薬の承認を得ることができます。その前提は、血圧値と脳心疾患の間に相関があることです。がんを除く32領域の慢性疾患で使われた37個の代替エンドポイントに対して、臨床エンドポイントとの相関性を調査しました。臨床試験から成るメタアナリシスで確かめられたのは、15個(41%)だけでした。残りの22個(59%)では、そうしたメタアナリシスはなかったようです。よく眺めると、メタアナリシスがないのは希少疾患が多そうでした。 続いて、メタアナリシスがあった15個の代替エンドポイントを調べました。54報のメタアナリシスがあり、109件の臨床試験が含まれていました。両者の相関性を報告していたのは59件(54%)ありましたが、強い相関性を示していたのは10件(17%)にすぎませんでした。このことから、相関性のエビデンスがないのに代替エンドポイントで承認されているのが現実だという報告でした。 この研究の最大の限界は、臨床試験しか調べていないことだと思います。両者の相関性は、疫学研究で確認している例がほとんどだと思います。私自身も新たな代替エンドポイントを使用する際は、必ず疫学データで裏付けできるようにと言ってきました。縦断的な疫学研究によって、代替エンドポイントの悪化と臨床イベント発現の有意な相関性が見られれば、それは十分強固な証拠になるはずです。臨床試験である必要性はないと思います。 臨床エンドポイントで承認するとなると、大規模かつ長期試験が必須となり、新薬が承認されるまで時間がかかります。そうするとドラッグロスが生じ、患者さんにとって不利益が生じます。希少疾患では、いつになっても承認されることがないかもしれません。そこで、代替エンドポイントによる承認は避けられません。疾患の詳しいメカニズムに関する研究が進み、疾患バイオマーカーの開発も伸びています。代替エンドポイントによる早期の新薬承認は、これから必要性を増してくると思われます。そのために、疾患レジストリーや電子カルテ等のRWDの活用も盛んになることでしょう。

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巻貝を食べて救急搬送、何が原因?【これって「食」中毒?】第1回

今回の症例年齢・性別52歳・男性患者情報飲酒や喫煙歴はない。多発性嚢胞腎による末期腎不全で1年前から週3回の維持透析を施行されていた。東北地方の市場で「真ツブ」や「青ツブ」と表示された巻貝を購入し、自宅の台所で殻付きのまま網の上で炭火焼きにして10個ほど食べた。およそ30分後より激しい頭痛や嘔気が出現した。また、めまい、ふらつき、四肢の脱力により座位の保持が困難となった。横になって様子をみていたが、複視や呼吸困難が出現したため、救命救急センターに搬送された。初診時は気道開通、呼吸数16/分、SpO298%(経鼻カニューラ、酸素1L/分)、血圧158/96 mmHg、心拍数64bpm(整)、意識レベルJCS 10、体温36.4℃であった。呼びかけに開眼し、激しい頭痛、嘔気、めまい、複視、呼吸困難を訴えた。四肢の筋力は低下し、下肢の深部腱反射は減弱していた。検査値・画像所見動脈血ガス(経鼻カニューラ、酸素1L/分)ではpH7.32、PaCO2 48.4mmHg、PaO2 88.4mmHgと軽度の呼吸性アシドーシスを認めた。また、COHb2.4%であった。末梢血および生化学検査所見は慢性腎不全に矛盾しないものであった。頭部CTおよびMRIでは急性期病変を認めなかった。問題

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第194回 マイナ保険証を救急搬送に活用開始、全国展開を目指す実証事業/総務省

<先週の動き>1.マイナ保険証を救急搬送に活用開始、全国展開を目指す実証事業/総務省2.高齢者施設の服薬は昼1回に統一で安全性向上を/老年薬学会3.医療機関のサイバーセキュリティ対策チェックリストを改訂/厚労省4.地域医療を支えるため、医学生への修学資金貸与制度の充実を提案/文科省5.紅麹サプリの健康被害受け、機能性表示食品の安全性の強化を/自民党6.介護保険料の地域差拡大、大阪市の介護保険料は全国最高の9,249円に/厚労省1.マイナ保険証を救急搬送に活用開始、全国展開を目指す実証事業/総務省2024年4月、マイナンバーカードを利用した保険証(マイナ保険証)の利用率が過去最高の6.56%に達したが、利用率の低さが依然として課題となっている。5月17日、総務省消防庁はマイナ保険証を活用した救急搬送の実証事業を開始すると発表した。神奈川、兵庫、宮崎の3消防本部で実施され、救急隊員が現場でマイナ保険証を読み取り、患者の情報を迅速に把握し、医療機関へ搬送する。実証結果を踏まえ、2025年度中に全国展開を目指す。厚生労働省は、データと住民基本台帳情報の突合による「紐付け誤り防止」や動画広報、利用率の高い自治体・医療関係団体の表彰などを実施しているほか、さらに医療機関での利用促進に向けた具体策も進められている。マイナ保険証の利用率は病院で13.73%、医科クリニックで5.87%、歯科クリニックで10.91%、調剤薬局で5.71%とされ、さらなるPRと支援が求められている状況。5月15日に開かれた社会保障審議会・医療保険部会では、若年者世代へのPR強化や医療機関での声掛けの強化が提案され、専用レーンの設置や国家公務員の率先利用も呼びかけられている。その一方で、マイナ保険証に対する不信感も問題となっている。過去に他人の情報が紐付けられたり、保険診療の窓口負担の割合が誤って表示されたりするトラブルが相次ぎ、2024年4月までに新たに529件の紐付けミスが確認された。政府の点検作業で発覚した同様のミスは合計で9,000件を超えている。政府は、従来の健康保険証の新規発行を2024年12月2日から停止し、マイナ保険証の利用を基本とする方針を強化している。医療機関での利用促進策とともに、妊産婦支援の強化を目指す会議も設立され、正常分娩への保険適用が検討されている。これにより、マイナ保険証の普及と共に、医療サービスの質の向上が期待される。参考1)マイナ救急実証事業の開始(総務省消防庁)2)マイナ保険証の利用促進等について(厚労省)3)「マイナンバーカードによる医療機関受診」促進策を更に進めよ、正常分娩の保険適用も見据えた検討会設置-社保審・医療保険部会(1)(Gem Med )4)マイナ保険証、救急搬送に活用 23日から実証第1弾 総務省消防庁(時事通信)5)マイナンバーシステム、機能利用進まず 改善求められるデジタル庁(朝日新聞)2.高齢者施設の服薬は昼1回に統一で安全性向上を/老年薬学会5月17日に日本老年薬学会は、高齢者施設における服薬回数の簡素化を推奨する提言を発表した。この提言では、施設の入居者が多くの薬を服用している現状に対し、服薬回数を減らし、なるべく昼1回にまとめることを求めている。目的は、誤薬リスクを減らし、本人や職員の負担を軽減することである。高齢者施設では、認知機能や運動機能が低下した入居者が多く、複数薬を管理することが困難とされている。これに対し、職員数が多い昼間の時間帯に服薬を集約することで、誤薬のリスクを低減し、職員の負担が軽減できるとされる。具体的には、服薬のタイミングを昼に変更できる薬や効き目が長く続く薬に切り替えることが提案されている。提言の作成に関わった薬剤師の丸岡 弘治氏は、「服薬回数を減らすことは医療安全上のメリットにもつながる」と述べている。学会代表理事である秋下 雅弘氏も、「この取り組みはすべての高齢者に必要であり、今後は医療機関や在宅介護にも呼びかけたい」と語る。ただし、すべての薬が昼の服薬に適しているわけではなく、安全性や効果に影響がないかを慎重に確認する必要がある。提言では、医師や薬剤師が協議し、適切な薬を特定することが求められている。また、本人や家族への理解を得ること、療養場所が変わった際の見直しも重要となる。高齢者施設の服薬管理は、職員の勤務シフトに合わせて朝、昼、夕、眠前に行われているが、この提言に基づき、昼1回の服薬に簡素化することで、誤薬リスクの低下と負担軽減が期待されている。なお、提言は、老年薬学会のウェブサイトで公開されている。超高齢社会を迎えるわが国では、多数の併存疾患を抱える高齢者が増加しており、施設のマンパワー不足やポリファーマシーの問題が深刻となっている。服薬簡素化はこれらの課題に対応するための1つの解決策となり得る。今後も、医療・介護・福祉の専門職が協力し、提言の実施を進めることが求められている。参考1)高齢者施設の服薬簡素化提言(老年薬学会)2)高齢者施設での服薬は「昼1回」に 負担軽減へ老年薬学会が提言(毎日新聞)3)高齢者施設での服薬は昼1回に…飲み間違いや飲み忘れ防止、職員の負担減へ老年薬学会提言(読売新聞)3.医療機関のサイバーセキュリティ対策チェックリストを改訂/厚労省厚生労働省は「医療機関におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト」を2024年度版に改訂した。これにより、サーバへのセキュリティパッチ適用など、2023年度版では参考項目としていた事項が正式なチェック項目として追加された。このチェックリストは、厚労省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に基づき、優先的に取り組むべきセキュリティ対策をまとめたもの。2024年度版では、サーバへのセキュリティパッチ適用、端末PCでのアクセス利用権限の設定、インシデント発生時のバックアップと復旧手順の確認などが正式なチェック項目となった。また、サイバー攻撃を想定した事業継続計画(BCP)の策定については、今後、参考資料となる手引きを作成する予定。そのほか、このチェックリストには、医療法第25条第1項に基づく立ち入り検査時に使用されることが明記された。これにより、厚労省への問い合わせが多かった使用用途についての明確化が図られた。また、各チェック項目の末尾には、具体的なチェック内容を解説するマニュアルの章番号が追記されている。今回の改訂により、医療機関はセキュリティ対策の強化を図り、サイバー攻撃からの防御を一層強化することが求められる。厚労省は引き続き、医療機関のセキュリティ対策を支援し、患者情報の保護を進めていく方針。参考1)令和6年度版「医療機関におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト」及び「医療機関におけるサイバーセキュリティ対策チェックリストマニュアル~医療機関・事業者向け~」について(厚労省)2)サイバーセキュリティ対策チェックリスト改訂、厚労省 サーバへのセキュリティパッチ適用を正式な項目に(CB news)4.地域医療を支えるため、医学生への修学資金貸与制度の充実を提案/文科省文部科学省は、5月17日に「医学教育の在り方に関する検討会」を開催し、診療参加型臨床実習の推進と充実を強調する第2次中間取りまとめ案を提示した。この中で、医師の偏在解消を図るための教育上の方策として、地域枠の医学学生に対する修学資金貸与制度の充実が、最も有効であるとする意見が出された。診療参加型臨床実習は、医学生が医師の指導監督の下で実際の医療行為を行うことで、診断・治療に関する思考力や対応力を養うもの。2021年の医師法改正により、一定基準を満たした学生が実習中に医療行為を行うことが可能となり、大学では実習の連続した配属期間を確保する取り組みが進められている。また、医師の地域偏在を解消するため、地域枠の活用が推進されている。特定診療科の範囲を選択する「診療科選定地域枠」や大学特別枠などが導入され、修学資金貸与制度を活用して地域医療への貢献を促すことが有効とされている。奈良県立医科大学の今村 知明教授は、「修学資金貸与制度の充実を求め、地域のニーズに応じた柔軟な運用が必要だ」と指摘するとともに、大学病院の役割として、教育・研究・診療の三役を担うことが強調され、国による後押しが求められている。とくに、大学病院で働く医師の待遇改善やキャリアインセンティブの提供が必要とされ、「大学病院がその役割を果たすためには、文科省や厚労省、自治体の連携が必要だ」と述べる。さらに医学研究の充実も重要な課題とされ、研究医枠の増員や研究環境の整備が求められた。若手研究者のキャリアパスを明確にし、研究を続けるモチベーションを高めるための支援が必要であると指摘されている。文科省は、今回の取りまとめを踏まえて、今後の医学教育に関する施策を進める方針。とくに、医師の地域偏在解消と医学研究の充実を図るため、大学や地域との連携を強化し、持続可能な医療提供体制の確立を目指す。参考1)第10回 今後の医学教育の在り方に関する検討会(文科省)2)第二次中間取りまとめ(案)(同)5.紅麹サプリの健康被害受け、機能性表示食品の安全性の強化を/自民党小林製薬(大阪)の「紅麹」サプリメントによる健康被害を受け、自民党は5月16日に政調、消費者問題調査会・厚生労働部会合同会議を開き、機能性表示食品の安全性を強化する提言案をまとめた。提言案では、健康被害情報の報告ルールの明確化や定期点検の義務化を求めており、安全性強化で消費者保護につなげたいとしている。自民党の消費者問題調査会と厚生労働部会の合同会議で示された提言案には、以下の内容が含まれている。健康被害情報の報告ルールの明確化:行政への報告対象や報告期限を明確にし、企業が報告義務を順守するよう求める。定期点検の義務化:事業者が食品の届け出内容を定期的に点検・自己評価し、その結果を消費者庁に報告しなければ販売できなくすることを提案。GMP認証の義務化:サプリメントの製造において、品質・衛生管理に関する指針「GMP(適正製造規範)」の認証取得を義務付ける。さらに消費者庁の専門家検討会でも、以下の点が議論されている。報告義務の強化:企業が報告の是非を判断せず、症状の重篤度に関わらず健康被害を報告することを義務付ける方向で検討されている。また、情報公開基準を明確にすることで企業の風評被害の懸念を軽減する方策も議論されている。サプリメントの特化規制:成分が濃縮されたサプリメントの安全性を食品と同じ基準で評価できないため、サプリメントに特化した規制を求める声が上がっている。自民党は、この提言案を来週にも政府に提出する予定。これにより、機能性表示食品の安全性が強化され、消費者の健康被害を防ぐ取り組みが進むことが期待される。参考1)届け出後の定期点検義務化 機能性表示食品で自民原案(東京新聞)2)自民 紅麹問題再発防止へ ルール明確化など求め提言案まとめる(NHK)3)機能性表示食品の健康被害情報報告ルールの明確化も議論 消費者庁の検討会の見直しポイント(産経新聞)6.介護保険料の地域差拡大、大阪市の介護保険料は全国最高の9,249円に/厚労省厚生労働省は、各地の自治体など全国1,573の保険者を調査。介護保険の第1号保険料の全国の市町村の動向を取りまとめ、公表した。2024~26年度にかけて65歳以上の高齢者が支払う介護保険料の全国平均は月額6,225円で、最も高いのは大阪市の9,249円、最も低いのは東京都小笠原村の3,374円だった。地域差の原因は、高齢者の割合や介護事業者の参入状況、自治体の財政状況が影響している。大阪市は単身高齢者が多く、保険料が高額な一方、小笠原村は高齢化率が低く、保険料が抑えられている。各自治体は保険料の引き上げを抑えるための対策を講じており、一例として千葉県栄町は、介護予防活動を推進し、保険料を低く抑えている。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2039年には65歳以上の高齢者が3,900万人を超え、介護サービスの需要が高まり、保険料の上昇が予想されている。厚労省は、所得別の負担見直しやケアプランの有料化を検討している。淑徳大学の結城 康博教授は、「抜本的な制度改革がなければ地域間の格差が広がる」と指摘し、介護保険料は2000年の制度開始時の月2,911円から2040年には9,000円程度に達すると見込まれている。介護保険料の地域差は、今後も続くと予想され、国や各自治体は対応策を講じる必要がある。参考1)全国 介護保険料マップ(NHK)2)介護保険料、月6225円 24~26年度全国平均 65歳以上、3.5%増(日経新聞)3)上昇傾向の介護保険料 目立つ地域差 サービス利用減で引き下げも(朝日新聞)4)介護保険料“格差”今後も拡大か 若い世代にも影響(FNN)【動画】5)第9期介護保険事業計画期間における介護保険の第1号保険料及びサービス見込み量等について(厚労省)

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取り過ぎた塩分を出す「排塩コントロール」と具体的な指導方法

 10年ほど前に話題になったDASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食。それが今、塩分を排出させる食事として再注目されているようだ。DASH食とは、飽和脂肪とコレステロールの少ない果物、野菜、ナッツ・豆類、低脂肪乳製品、全粒穀類を豊富に摂取することで降圧効果が期待される“塩分の排出に重点を置いた食事療法”で、米国・国立衛生研究所(NIH)などが考案したのを契機に、国内の高血圧治療ガイドライン2019年版1)でも推奨されている。また、この食事療法に減塩を組み合わせたものはDASH-sodium食と呼ばれ、これまでに十分なエビデンスが報告されている2,3)。 しかし、日本人の食事パターンの観点から、塩分の取り過ぎを抑える“減塩”に重点が置かれる傾向にあり、「排塩を意識した高血圧対策」が進んでいないのが現状である。そこで今回、有馬 久富氏(福岡大学医学部衛生・公衆衛生学 主任教授)が、日本特有の四季折々の食事「和食」(日本人の伝統的な食文化)4)を大切にしながら、旬の食材を用いた排塩コントロールの実践を促すために、塩分の排泄を促すカリウムや食物繊維、血圧調整を担うカルシウム、血圧上昇抑制に影響するマグネシウムなどが豊富に含まれている初夏~夏の食材を紹介した。●カリウム トマト、レタス、なす、ズッキーニ、きゅうり、オクラ、ししとう、新じゃが、ゴーヤ、枝豆、アボカド●カルシウム とうもろこし、オクラ、ししとう、つるむらさき、モロヘイヤ、アジ、アユ●マグネシウム とうもろこし、オクラ、ししとう、ゴーヤ、枝豆、アボカド、わかめ、冷ややっこ●食物繊維 とうもろこし、なす、オクラ、ゴーヤ、セロリ、枝豆、アボカド、くらげ●タンパク質 カツオ(戻りカツオ)、枝豆、そら豆<お薦めの調理方法>・トマト、ズッキーニ、なすなどの夏野菜をトマト缶+少量だしで煮込む(ピザ用チーズや鶏肉を追加してもおいしい)・刻んだきゅうりをもずくに入れて、冷ややっこにかける・オクラ、なす、ししとうをゆがき(電子レンジでチンでも)、めんつゆとおかかで和える・トマトとモッツァレラチーズにオリーブオイルとペッパー/バジルを少しかける・初夏であれば、新じゃがを牛乳で煮込む・生で食べられるトマト、きゅうり、とうもろこしにツナ缶を和える(豆腐を入れても) 調理時の注意点としては、「調味料(だしやしょうゆ、塩など)を入れ過ぎない。夏野菜カレーを作る場合は、ルーを入れ過ぎない。また、ゆでるより電子レンジでチンしたほうがカリウムをそのまま取りやすい。マグネシウムの観点から、きゅうりとわかめの酢の物などで海藻類を取るとよい」と同氏はコメントした。 なお、旬の食材を取り入れた食事について、医師が患者へ啓発する際には以下のように「患者の行動変容のステージングに応じて使い分けるのがよい」とも説明した。無関心期⇒情報提供(例)「食事を見直すことで血圧が下がりますよ。今の季節は○○(レシピ名)を使うと、旬の野菜をおいしく食べながら血圧を下げられますよ」関心期⇒動機付け(例)「どのような食事だと血圧が下がると思いますか? 今の季節は○○(レシピ名)を使うと、旬の野菜をおいしく食べながら血圧を下げられますよ」準備期⇒行動案・目標設定(例)「朝も昼も晩も野菜を取るようにしましょうか。今の季節は○○(レシピ名)を使うと、旬の野菜をおいしく食べながら血圧を下げられますよ」実行期⇒意欲強化(例)「食事に気を付けられているようで素晴らしいですね。今の季節は○○(レシピ名)がお薦めですよ」 また、この排塩による高血圧対策のプレスリリースを配信したCureApp5)は「高血圧患者さんがアプリの利用を開始すると、最初のステップとして、高血圧の知識を学ぶ。アプリ内のキャラクターが減塩や体重管理、運動などさまざまな項目の中のコンテンツを通じ、減塩のコツなどを教えてくれる。さらに、行動の実践と記録として、降圧に関わる具体的な行動をアプリで提示し、患者さんができそうなものを自ら選択・実践してアプリに記録することができ、その中で減塩や排塩に関する行動も提示される。患者さんがアプリで実践した行動は医師の端末で確認でき、指導に役立てることができる」とアプリの役割についてコメントした。

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身体診察【とことん極める!腎盂腎炎】第2回

CVA叩打痛って役に立ちますか?Teaching point(1)CVA叩打痛があっても腎盂腎炎と決めつけない(2)CVA叩打痛がなくても腎盂腎炎を除外しない(3)他の所見や情報を合わせて総合的に判断する1.腎盂腎炎と身体診察腎盂腎炎の身体診察といえば肋骨脊柱角叩打法(costovertebral angel tenderness:CVA tenderness)が浮かぶ方も多いのではないだろうか。発熱、膿尿にCVA叩打痛があれば腎盂腎炎と診断したくなるが、CVA叩打痛は腎臓の周りの臓器にも振動が伝わり、肝胆道や脊椎の痛みを誘発することがあるため、肝胆道系感染症や化膿性脊椎炎を腎盂腎炎だと間違えてしまう場合がある。身体所見やその他の所見と組み合わせて総合的に判断する必要がある。2.CVA叩打痛と腎双手診CVA叩打痛は腎盂腎炎を示唆する身体所見として広く知られている。図1のように、胸椎と第12肋骨で作られる角に手を置き、上から拳で叩打し、左右差や痛みの誘発があるかどうかを観察する。なお腎臓は左の方がやや頭側に位置しているため、肋骨脊柱角の上部・下部とずらして叩打痛の確認をする。もし左右差や痛みがあれば腎盂腎炎を示唆する所見となるが、第1回で紹介したとおり、所見がないからといって腎盂腎炎を否定することはできず、ほかの所見と合わせて診断を考える必要がある。画像を拡大するその他の身体診察として腎双手診がある。腎臓のある側腹部を両手で挟み込み、痛みを生じるかどうかを確かめる診察であり尿管結石でも陽性となり得るが、腎盂腎炎においてCVA叩打痛陰性であっても腎双手診は陽性となる症例も散見される。CVA叩打痛は脊椎の痛みを反映している場合もある一方で腎双手診(図2)は大腸の病変を触れている可能性もある。CVA叩打痛が圧迫骨折などの脊椎の痛みを誘発していないか確かめるために、棘突起を押して圧痛を生じないか確かめることが有用である。棘突起を押して圧痛を生じるようであれば、椎体の病変の可能性が高くなる。画像を拡大するこのように、腎臓の位置は肉眼では把握しづらく、痛みを生じているのが腎臓なのか、その周囲の臓器なのかわかりにくい。裏技のような方法になるが、エコーで腎臓を描出しながらプローブで圧痛が生じるか確認する、いわばsonographic Murphy’s signの腎臓バージョンもある1)。3.自身が体験した非典型的なプレゼンテーション最後に自身が体験した非典型なプレゼンテーションを述べる。糖尿病の既往がある90歳の女性で、転倒後の腰痛で体動困難となり救急搬送された。身体診察・画像検査からは腰椎の圧迫骨折が疑われ、鎮痛目的に総合診療科に入院となった。その夜に39℃台の発熱を生じfever work upを行ったところ、右の双手診で側腹部に圧痛があり、尿検査では細菌尿・膿尿を認めた。圧迫骨折後の尿路感染症として治療を開始し、後日、尿培養と血液培養より感受性の一致したEscherichia coliが検出された。本人によく話を聞くと、転倒した日は朝から調子が悪く、来院前に悪寒戦慄も生じていたとのことだった。ERでは腰痛の診察で脊椎叩打痛があることを確認していたが、その後脊椎を一つひとつ押しても圧痛は誘発されず、腎双手診のみ再現性があった。腰椎圧迫骨折は陳旧性の物であり、急性単純性腎盂腎炎後の転倒挫傷だったのである。転倒後という病歴にとらわれ筋骨格系の疾患とアンカリングしていたが、そもそも転倒したのが体調不良であったから、という病歴を聞き取れれば初診時に尿路感染症を疑えていたかもしれない。この症例から高齢者の腎盂腎炎は転倒など一見関係なさそうな主訴の裏に隠れていること、腰痛の診察の際に腎双手診は脊椎の痛みと区別する際に有用であることを学んだ。4.腎盂腎炎診断の難しさ腎盂腎炎の診断は難しい。それは、腎盂腎炎の診断が非典型的な症状、細菌尿・膿尿の解釈、側腹部痛の身体所見、他疾患の除外など、さまざまな情報を統合して総合的に判断しなければならないからである。正しい診断にこだわることはもちろん重要だが、腎盂腎炎がさまざまな症状を呈し、また、どの身体所見も腎盂腎炎を確定診断・除外できないことを念頭に置き、柔軟に対応することが必要なのではないだろうか。たとえ典型的な症状や所見が揃っていなくても、できる限り他疾患の可能性について考慮したうえで、患者の余力も検討し腎盂腎炎として抗菌薬を開始することが筆者はリーズナブルであると考える。重要なことは治療を始めた後も、経過を観察し、合わない点があれば再度、腎盂腎炎の正当性について吟味することである。多種多様な鑑別疾患と総合的な判断が求められる腎盂腎炎は臨床医の能力が試される疾患である。1)Faust JS, Tsung JW. Crit Ultrasound J. 2017;9:1.

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慢性疾患治療薬のサロゲートマーカーでの効果判定、エビデンスの強さは?/JAMA

 非腫瘍性慢性疾患の治療薬に関して、米国食品医薬品局(FDA)の承認を裏付ける臨床試験の主要エンドポイントとして使用された代替マーカー(サロゲートマーカー)の半数以上が、この代替マーカーを用いて評価した治療効果と臨床アウトカムとの関連を検討したメタ解析が公表されておらず、少なくとも1つのメタ解析を確認したサロゲートマーカーも、その多くが臨床アウトカムとの関連について高い強度のエビデンスを欠いていることが、米国・エモリー大学のJoshua D. Wallach氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年4月22日号で報告された。代替マーカーを用いた臨床試験のメタ解析を系統的に要約 研究グループは、非腫瘍性慢性疾患の治療薬に関して、代替マーカーを用いて評価した治療効果と臨床アウトカムとの関連性の強さを検討した臨床試験のメタ解析(メタ解析、系統的レビューとメタ解析、統合解析)から得られたエビデンスの要約を目的に系統的レビューを行った(Arnold Ventures to the Yale Collaboration for Regulatory Rigor, Integrity, and Transparency[CRRIT]の助成を受けた)。 解析には、FDAの成人代替エンドポイント表(FDA Adult Surrogate Endpoint Table)に掲載され、2023年3月19日の時点でMEDLINEに登録されていた文献から得た32の固有の非腫瘍性慢性疾患の臨床試験で、主要エンドポイントとして使用されていた37の代替マーカーのデータを用いた。 これらの慢性疾患と代替マーカーの組み合わせには、たとえばアルツハイマー病におけるアミロイドβ、喘息における呼気1秒量(FEV1)、慢性腎臓病(CKD)における血清クレアチニン値、HIV-1における血清HIV抗体などが含まれた。59%で、代替マーカーで評価した効果とアウトカムの関連を検討したメタ解析がない 21の慢性疾患の22(59%)の代替マーカーについては、適格なメタ解析が同定できなかった。一方、14の慢性疾患の15(41%)の代替マーカーについては、少なくとも1つのメタ解析を特定した。メタ解析の総数は54件で、1つの代替マーカー当たりのメタ解析数の中央値は2.5件(四分位範囲[IQR]:1.3~6.0)だった。 また、1つのメタ解析に含まれた試験数中央値は18.5件(IQR:12.0~43.0)、患者数中央値は9万56例(2万109~17万14)であった。高い強度のrまたはR2を示したのは17% 54件(14件[26%]は製薬企業による助成を受けた)のメタ解析では、代替マーカーと臨床アウトカムの109件の組み合わせについて報告していた。 このうち少なくとも1つの相関係数(r)または決定係数(R2)の報告が行われていたのは59件(54%)で、少なくとも1つのrまたはR2が高い強度(r≧0.85またはR2≧0.72)に分類されていたのは10件(17%)であった。 これに対し、残りの50件(46%)では、傾き(slope)、効果推定値(effect estimate)、メタ回帰分析(meta-regression analysis)の結果のみを報告しており、このうち少なくとも1つの統計学的に有意な結果を示したのは26件(52%)だった。 著者は、「これらの知見は、FDAによる慢性疾患治療薬の承認に使用される可能性のある代替エンドポイントを支持するエビデンスの要約を、一般に公開することの重要性を強調するものである」としている。

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2024年の医師のコロナワクチン、接種する/しないの二極化進む/医師1,000人アンケート

 新型コロナワクチンの全額公費による接種は2024年3月31日で終了した。令和6年度(2024年度)は、秋冬期に自治体による定期接種が開始される。定期接種の対象となるのは65歳以上、および60~64歳で心臓、腎臓または呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される人、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な人で、対象者の自己負担額は最大で7,000円となっている。なお、定期接種の対象者以外の希望者は、任意接種として全額自費で接種することとなり、2024年3月15日時点の厚生労働省の資料によると、接種費用はワクチン代1万1,600円程度と手技料3,740円で合計1万5,300円程度の見込みとなっている1)。この状況を踏まえ、医師のこれまでのコロナワクチン接種状況と、今後の接種意向を把握するため、主に内科系の会員医師1,011人を対象に『2024年度 医師のコロナワクチン接種に関するアンケート』を4月1日に実施した。 Q1では、コロナの診療に現在携わっているかについて聞いた。「診療している」が79%、「診療していない」が21%だった。年代別で「診療している」と答えた割合は、40代(86%)、60代(83%)、30代(81%)の順に多かった。診療科別では、血液内科(94%)、呼吸器内科(94%)、救急科(92%)、総合診療科(90%)、腎臓内科(88%)、神経内科(88%)、内科(85%)、小児科(83%)、消化器内科(81%)、糖尿病・代謝・内分泌内科(80%)、臨床研修医(80%)の順に多かった。年齢が低い医師ほど、コロナに感染した割合が高い Q2では、これまでの新型コロナの感染歴を聞いた。感染したことがある医師は全体の45%、感染したことがない/感染したかわからない医師は55%であった。感染したことがある医師は年齢が低いほど、感染した割合が高く、20代は60%、30代は55%、40代は51%、50代は44%、60代は35%、70代以上は24%だった。臨床数別では、病床数が多いほうが感染した医師の割合が高く、20床以上で感染したのは49%、0~19床では34%だった。また、コロナ診療状況別では、コロナを診療している医師では47%、診療していない医師では37%に感染歴があった。昨年は20~40代の接種率が50%弱 Q3では、2023年秋冬接種でのXBB.1.5対応ワクチンの接種状況を聞いた。全体では「接種した」が58%、「接種していない」が42%だった。年代別で「接種した」と答えた割合は、多い順に70代以上(77%)、60代(72%)、50代(61%)、20代(50%)となり、30代(45%)と40代(48%)は50%未満であった。コロナ診療状況別の接種率は、診療している医師は62%、診療していない医師は46%であった。前年の傾向を引き継ぎ、接種する人と接種しない人の二極化進む Q4では、2024年度にコロナワクチンを接種する予定かどうかを聞いた。全体では「接種する予定」が33%、「接種する予定はない」が41%、「わからない」が26%となった。年代別では、「接種する予定」と答えた割合が過半数となったのは70代以上(56%)のみで、ほかは多い順に60代(44%)、50代(31%)、40代(28%)、20代(28%)、30代(23%)であった。30代では「接種する予定はない」が54%となり過半数を占めた。2023年コロナワクチン接種状況別で、2023年に接種した人では「2024年度に接種する予定」が53%、「2024年度に接種する予定はない」が16%となった。対して、2023年に接種していない人では、「接種する予定」が6%、「接種する予定はない」が74%となり、今回のアンケートで最も顕著な差が認められ、医師のなかでもコロナワクチンを接種する人と接種しない人の二極化が進んでいることがわかった。 Q5では、自身が受ける2024年度のコロナワクチンの費用は、病院負担か自己負担のどちらになるか、これまでのインフルワクチンなどの対応を踏まえ推測を交えて聞いた。「おそらく全額病院負担」が22%、「おそらく一部自己負担」が22%、「おそらく全額自己負担」が23%、「わからない」が33%となり、全体的に均等な割合となった。2024年度にワクチンを接種する予定の人のうち「全額病院負担」35%、「一部自己負担」29%、「全額自己負担」16%だったのに対し、接種する予定はない人は「全額病院負担」12%、「一部自己負担」20%、「全額自己負担」30%であった。ワクチンの必要性や高額な治療薬について、患者にどう説明するか Q6の自由回答のコメントでは、新型コロナに関して現在困っていることや知りたい情報を聞いた。主な回答は以下のとおり。ワクチンについて・ワクチンで感染予防が成り立たないのは明白。ただし重症予防は十分成り立っていたと思うので、高齢者と持病多い人は無料で受けられるようにしてほしい(40代、循環器内科)・接種の必要性をよく質問されるが、正直な所、自分も勧めてよいのか迷っている(40代、小児科)・今後新たに使用可能となるワクチンの種類とその効果など(60代、内科)・公費負担が終了すると被接種者は減少すると思われるが、今後の流行予測は?(70代以上、内科)・医療従事者のワクチン接種費用について(50代、内科)治療薬について・抗ウイルス薬の値段が高い事の説明をどうするか(60代、内科)・コロナ治療薬の処方が減り、対症療法が増えると思う(70代以上、内科)・抗ウイルス薬の適応と思われる患者さんが、高額のため投薬拒否された時のことを考えると頭が痛い(50代、消化器内科)流行状況、院内対策などについて・現在の感染状況の情報発信が少なくなり、新型コロナ感染症に対する世間の認識が乏しくなり、感染増加を招いていること(40代、呼吸器内科)・感染対策の立場として、職場での接種をどうするか悩んでいる(40代、感染症内科)・発熱外来の体制に悩んでいる(30代、呼吸器内科)・後遺症に関する診断(40代、呼吸器内科)アンケート結果の詳細は以下のページで公開中。2024年度 医師のコロナワクチン接種に関するアンケート

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かゆみが続く慢性搔痒

患者さん、その症状は皮膚瘙痒症ですよ!皮膚瘙痒(そうよう)症とは、「発疹(皮膚病変)がないのにもかかわらず、痒みを訴える」疾患です。以下、該当する項目はありませんか?□皮膚が乾燥している□50歳以上□急に痒みが襲ってくる□治療中の病気(腎疾患、肝疾患、血液疾患、感染症…)がある□薬・サプリメントを服用している□妊娠中◆ かゆみが続く“慢性掻痒”とは…・皮膚のかゆみが6週間以上続く・全身の皮膚がかゆい場合、体の一部にかゆみがある場合がある・慢性掻痒により生活の質(QOL)は著しく下がる・最も多い原因は、「乾皮症」「接触性皮膚炎」「アトピー性皮膚炎」、悪性腫瘍を含む全身疾患が慢性痒疹の原因となることもある出典:日本皮膚科学会ガイドラインー皮膚瘙痒症診療ガイドライン、Yosipovitch G, et al. .N Engl J Med. 2013;368:1625-1634.監修:福島県立医科大学 会津医療センター 総合内科 山中 克郎氏Copyright © 2021 CareNet,Inc. All rights reserved.

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何はさておき記述統計 その4【「実践的」臨床研究入門】第43回

仮想データ・セットを用いてKaplan-Meier曲線を描いてみる前々回は簡単なエクセル関数を使って仮想データ・セットから発生率を計算し、前回は手計算によるKaplan-Meier曲線の描き方を説明しました。今回は、いよいよ仮想データ・セットを用いて実際にKaplan-Meier曲線を描いてみます。今後、実際の統計解析手法については無料の統計解析ソフトであるEZR(Eazy R)の操作手順を交えて解説していきます。まずはEZRの概要とそのインストール方法について簡単に説明します。EZRは自治医科大学附属さいたま医療センター血液科の神田 善伸先生が無料統計解析ソフトRに基づいて開発されました。RはR言語というプログラミング言語(スクリプト)を入力しないと動かせないというのが、統計解析初心者にとって最大の障壁になっています。しかし、EZRではマウスなどのポインティングデバイス操作だけで基本的な統計解析を行うことができるgraphic user interfaceを採用しており、ユーザーフレンドリーな統計解析ソフトです。EZRのダウンロードとインストールについては、自治医科大学附属さいたま医療センター血液科のホームページにアクセスし、説明のとおりに行ってください。それでは、早速仮想データ・セットからEZRを用いてKaplan-Meier曲線を描いてみましょう。仮想データ・セットをダウンロードする※ダウンロードできない場合は、右クリックして「名前をつけてリンク先を保存」を選択してください。まずは、Kaplan-Meier曲線の描出に必要なデータを整理し準備します。必要となるデータは以下の3つになります。比較する群のデータイベント(アウトカム発生)か打ち切りのデータ生存時間(観察期間)のデータこれらは、下記に示した仮想データ・セットのB、C、D列にそれぞれ相当します(連載第41回参照)。A列:IDB列:Treat(1;低たんぱく食厳格遵守群、0;低たんぱく食非厳格遵守群)C列:Censor(1;アウトカム発生、0;打ち切り)D列:Year(at riskな観察期間)次に、インストールしたEZRを起動し、以下の手順で仮想データ・セットを取り込みましょう。「ファイル」→「データのインポート」→「Excelのデータをインポート」仮想データ・セットがインポートできたことを確認したら、下記の手順でKaplan-Meier曲線を作成します。「統計解析」→「生存時間の解析」→「生存曲線の記述と群間の比較(Logrank検定)」を選択。すると、下記のウィンドウが開きますので、以下のとおりにそれぞれ変数を選択します。画像を拡大する観察期間の変数 ⇒ Yearイベント(1)、打ち切り(0)の変数 ⇒ Censor群別する変数を選択 ⇒ Treatその他はとりあえずデフォルト設定のままで結構です。変数選択と設定が完了したら、「OK」ボタンをクリックしましょう。図のようなKaplan-Meier曲線が描けたでしょうか。

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慢性腎臓病の入院抑制を意図した電子記録+診療推進者介入の効果は証明されず(解説:浦信行氏)

 慢性腎臓病(CKD)、2型糖尿病、高血圧は腎不全に至る3大疾患であるが、これらを合併した症例に1年間の電子記録+診療推進者介入が入院を減少させるかを、非盲検クラスター無作為化試験で検討した成績がNEJM誌に報告された。その結果は4月17日公開のジャーナル四天王に詳述されているが、主要アウトカムと副次アウトカムのいずれも通常ケア群に対して有意な効果を示さなかった。 結果は1年という比較的短期間の検討であることが影響した可能性は否定できない。加えて腎機能障害の程度もeGFRで49mL/min程度、HbA1cで7.5%前後、血圧は133/73mmHg前後といずれも比較的コントロールされており、また使用薬剤もRA系阻害薬が68%ほどの症例に使用されており、通常ケア群においても良好な治療がなされていることで差がつきにくかった要素もあると思われる。関与した診療推進者は看護師あるいは薬剤師であった点も介入の限界をうかがわせる。腎機能障害に対する運動療法の効果や栄養摂取バランスの効果も注目されるようになった昨今、介入者がリハビリ職や栄養士であればどうであったか。フレイルやサルコペニア、栄養バランスに介入する試みであれば、違った結果を見られたかもしれない。BMIは33と肥満者が多いが、サルコペニア肥満も機序は異なるが心血管疾患の有意なリスクである。 話は異なるが、腎不全に至る3大疾患としてこの対象を抽出しており、急性腎障害はいずれも10%以上と多いが、アウトカムとしての透析導入は0.6~0.7%と低値にとどまっていた。一方、心血管疾患は20%前後と比較的多く、これら3大疾患は心血管系の重要なリスクであることが改めて確認された。なお、退院後30日以内の再入院が37%と著明な高値であるが、米国とわが国の入院医療の基本的立ち位置の違いが顕著に現れたといえるであろう。

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第207回 消費者がいまだに不安抱える紅麹、医療者による適切な説明は?

小林製薬の紅麹サプリ問題はサプリそのものの服用者だけでなく、紅麹原料を染料に使う食品にまで不安が及んでいるのは周知のことだ。一部の食品会社では消費者からの問い合わせが殺到しているとも聞く。厚生労働省(以下、厚労省)は4月5日付1)で、小林製薬が紅麹原料を直接卸している52社、この当該企業52社などから小林製薬の紅麹原料を入手している173社の計225社について、健康被害の報告はないことを明らかにしている。しかし、やはり消費者の不安は尽きないようで、なぜか私個人にまで知人・友人から問い合わせがくる状況だ。先日はある医療従事者からまで「どう思う?」という連絡をもらった。実はこれらに対して私個人は「現時点ではこれ以上の健康被害が出る可能性は低いのではないか?」と回答している。なぜそう考えるかは過去2回、本連載(第205回、第206回)で触れた3月29日の小林製薬の記者会見で明らかにされた事実関係が「正しい」という前提に立って説明している。ある意味、性善説ではあるが、今はこれしか判断材料がないのが現実である。そこで記者会見で明らかにされた事実関係と、それをベースに私が“可能性が低い”と考える理由について、今回は述べておこうと思う。まず、問題になった紅麹原料について小林製薬が説明した製造過程は、米に水を加えて加熱をし、そこに紅麹菌を加えて培養する。培養終了時点で米、水、紅麹菌の混合物を再加熱し、それを粉砕してから一旦保管。この保管物は培養状態によって有効成分の含有量にバラツキがあるため、保管されたものを複数混合して濃度の均一化を図り、再度、加熱・殺菌し最終段階の紅麹原料が完成する。使う紅麹菌に関しては、親株と言われる菌株からその都度取り分けて培養しているという。この紅麹原料は、▽今回問題になった紅麹コレステヘルプなどに加工・販売(B to C:Business to Consumer)▽食品会社などへの出荷(B to B:Business to Business)、の2つの流通ルートに乗る。小林製薬によると、問題となっている2023年の製造分に関しては、紅麹菌の親株から2度取り分けて別々に培養してから紅麹原料の製造に使用。このうち一方をA株、もう一方をB株と仮定すると、A株からはB to Cが13ロット、B to Bが21ロットの合計34ロット、B株からはB to Bのみ54ロットの紅麹原料がそれぞれ製造され、全ロットのサンプルが残っており、小林製薬側では全サンプルの検査を終了した。この結果、A株のB to Cで4ロット、B to Bで6ロットからプベルル酸と思しき異常な物質が検出されたものの、B株では全サンプルから異常な物質は確認されなかったとしている。これらから、A株で製造された紅麹原料で問題が発生したことは一目瞭然といえる。つまり食品会社などへの販売用だったものはA株由来、B株由来が合計75ロットで、そのうちプベルル酸と思しきものが含まれていたのは6ロットと全体の12分の1未満に過ぎない。さてここで「6ロットもあるのだから健康被害が出る可能性は現時点では低いとは言えないのでは?」という意見もあるだろう。これについては(1)製品の性格上、サプリメントは原料を濃縮するため、有害物質が含まれていた場合はそれらも濃縮される恐れがある/食品用はごく一部を添加するため、含まれる紅麹原料は相対的にサプリメントよりも微量、(2)サプリメントの場合は健康状態の改善を期待して毎日摂取される可能性が高い/一般食品の場合は毎日食べ続ける食品はごく一部、で説明できる。現在、小林製薬から紅麹原料を購入して製品に使っていた食品会社などは、製品の自主回収を進めている。これは厚労省が平成16年に創設した「食品等の自主回収報告制度」に基づくもので、これら企業とその製品は厚労省のHPに一覧が掲載されている。これを見るとわかる通り、主な用途は食品の着色料としてで、毎日必ず摂取する可能性のある食品は少ない。ただし、よく見ると、味噌など食事に毎日使う可能性があるものも含まれている。これについての答えはまさに(1)となる。また、前述の一覧を見るとわかるが、そこには、健康への危険性の程度を示す「CLASS分類」が付記されている。それを見ると、ここに記載された一般食品について、行政側はすべてが「CLASSII(喫食により重篤な健康被害又は死亡の原因となり得る可能性が低い場合)」あるいは「CLASSIII(喫食により健康被害の可能性が、ほとんど無い場合)」と評価している。これはまさに(1)が理由と考えられる。もちろんこの解釈の仕方には異議もあるかもしれない。だが、順当に考えるならばこうなるのではないだろうか。今回の一件、ともすると紅麹全体が悪のように考えられてしまいがちだが、小林製薬以外で製造されている紅麹では今のところ何も問題は指摘されていない。少なくとも私はこれらの点から「紅麹」という言葉を一括りにして過度に警戒しすぎるのは考えものと思っている。参考1)厚生労働省:小林製薬社製の紅麹を含む食品に係る確認結果について(令和6年4月5日)

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新型のリブレ2はスキャン不要で1分ごとに測定/アボットジャパン

 アボットジャパンは、3月28日に糖尿病管理のための持続グルコース測定器「FreeStyleリブレ2」の新発売に合わせて、都内でメディアセミナーを開催した。セミナーでは、本機の新しい機能や特徴の説明、血糖変動の可視化がいかに重要か糖尿病専門医の講演、トークセッションなどが行われた。世界で550万人超が利用しているリブレ FreeStyleリブレは、持続グルコース測定技術を用いたデバイスで、60ヵ国以上、550万人以上の人々に使用されている。 本機は上腕の後ろ側に専用センサーを装着し、スマートフォンあるいは専用リーダーをセンサーにかざすと、その画面に測定値が表示されるもの。また、衣服の上からも読み取ることができ、1つのセンサーで最長14日間24時間グルコースプロファイルを記録することができる。 FreeStyleリブレLinkアプリを使用することで、自身のスマートフォンで迅速にセンサーを読み取ることができるほか、糖尿病患者では自身のグルコースデータについてリブレViewを使用することで医師と共有することができる。 本機の保険適用区分は「C150血糖自己測定器加算」に加え、「特定保険医療材料158 関連技術料D231-2皮下連続式グルコース測定(一連)」が追加されたため、目的に応じて保険診療下で患者が使用できることもメリットとなる。 今回新たに追加された機能は、1分ごとに測定されたグルコース値がリアルタイムに表示され、従来のようにスキャンする必要がなくなった(ただしスマートフォンを使用していない人は従来通りスキャンが必要)。そして、スキャンが途切れた場合は過去8時間分のデータが補完される。また、選べるアラート機能として「低グルコース」「高グルコース」「受信圏外」と3つのアラートを使用者のライフスタイルに合わせて選択し、使用することができ、事前にリスク発生に気付くことができる機能が追加された。グルコースグラフで気付く無自覚性低血糖 基調講演として「『FreeStyleリブレ2』活用による先進的な糖尿病診療について」をテーマに西村 理明氏(東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科 主任教授)が、グルコース値の変動が可視化されることで起こる診療上のメリットやリブレ2の新しい機能について講演を行った。 わが国には2,000万人の糖尿病患者およびその予備群が推定され、6人に1人が糖尿病に関係する。糖尿病の初期は、目にみえる身体症状が乏しく、じわじわと悪化していく疾患であり、とくに合併症の発症阻止に向け、診療ではHbA1cの目標数値が定められている。 糖尿病にはさまざまな合併症があるが、とくに「し(神経障害)・め(目の網膜症)・じ(腎疾患)」に代表される3つの合併症には注意が必要となる。 糖尿病の治療で目安となるHbA1cは、2~3ヵ月の血糖値の平均値であり、合併症予防のための血糖コントロール目標値として7.0未満(65歳以下)にすることが、糖尿病の診療ガイドに明記され、診療の場ではこの目標値に向けて治療が行われている。ただ、HbA1cは、過去数ヵ月の値の平均値であり、点のデータのため生命予後に重大な影響をもたす無自覚性低血糖などの発見には不向きであるとされている。 そこで、持続グルコース測定器リブレのようにリアルタイムに血糖変動が測定できる機器の活用で、線のデータで血糖変動を追うことで、低血糖などのリスクに対応することができる。リブレで血糖変動を測定すると、健康成人ではグルコースグラフがなめらかでアップダウンがないのに対し、糖尿病患者などではグルコースグラフのアップダウンが大きかったり、ギザギザのグラフになったりと可視化により、血糖変動の動きをみることができる。とくに持続測定で特徴的なことは、HbA1cが同じ値の人でもグルコースグラフを比べると、なめらか型とアップダウン型に分かれることがあり、後者では夜間の無自覚性低血糖に気が付き、対応することができるという。 そして、今回発売のリブレ2では、「スキャンが不要となることで使用者のアドヒアランスがよくなると予想されること、アラート機能で危険察知などができること、リブレViewで家族や主治医と血糖データをリアルタイムで共有することで、遠隔での見守りや医師がより細やかな診療ができることなどのメリットが追加され、かなり血糖変動のデータがよくなることが予想される」と語り、セミナーを終えた。 セミナー後半では、先の講師の西村氏とゲストに原 晋氏(青山学院大学 駅伝部 監督)を迎え、スペシャルトークセッションが行われた。 トークセッションでは、運動や食事が血糖値に与える影響やマラソンのラップタイムを血糖値になぞらえた話題などが話し合われた。最後に原氏が、血糖値を穏やかなグラフにすることを「血糖トレンド大作戦」と命名し、セッションを終えた。 同社は「FreeStyleリブレ2の登場により血糖状態をより詳細に示すことで、患者さんの不安解消の支援をしたい。今後も医療従事者と一緒に、糖尿病と共に生きる方のより豊かで健康的な生活に貢献していきたい」と抱負を語っている。

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診療ファシリテーターの介入、CKDや高血圧患者の入院は減少せず/NEJM

 腎機能障害をもたらす3疾患(慢性腎臓病[CKD]、2型糖尿病、高血圧)を有する患者のケアに対し、電子健康記録(electronic health record:EHR)に基づくアルゴリズムと、医療従事者を支援する診療ファシリテーターを導入する介入は、通常ケアと比較して、1年の時点での入院の減少に至らないことが、米国・テキサス大学サウスウェスタン医療センターのMiguel A. Vazquez氏らが実施した「ICD-Pieces試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌2024年4月4日号に掲載された。141のプライマリケア施設の実践的クラスター無作為化試験 ICD-Pieces試験は、米国の4つの大規模な保健システムに参加している141のプライマリケア施設で実施した実践的な非盲検クラスター無作為化試験であり、2016年7月~2019年6月に患者を募集した(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成を受けた)。 対象は、年齢18~85歳のCKD、2型糖尿病、高血圧を有する患者であった。試験参加施設を、介入群または通常ケア群に無作為に割り付けた。介入群には、患者を同定するためのEHRに基づく個別のアルゴリズムと、医療従事者がガイドラインに基づく介入を行えるよう支援する診療ファシリテーターを導入した。 主要アウトカムは、1年後のあらゆる入院であった。副次アウトカムは、救急診療部の受診、再入院、心血管イベント、透析、死亡などとした。副次アウトカムの発生率は同程度 介入群に71施設の5,508例(平均年齢68.1[SD 10.4]歳、男性53.7%)、通常ケア群に70施設の5,492例(68.9[10.3]歳、53.7%)を割り付けた。 1年時の入院率は、介入群が20.7%(95%信頼区間[CI]:19.7~21.8、1,139/5,508例)、通常ケア群は21.1%(20.1~22.2、1,160/5,492例)であり、両群間に有意な差を認めなかった(群間差:0.4ポイント、p=0.58)。 また、救急診療部受診(介入群24.3% vs.通常ケア群22.6%)、初回入院治療後の30日以内の再入院(37.7% vs.37.3%)、心血管イベント(18.5% vs.19.4%)、透析(0.7% vs.0.6%)、全死因死亡(2.3% vs.2.7%)のリスクも両群で同程度であった。有害事象も両群で同程度 有害事象の発生率は両群で同程度だった。最も頻度が高い有害事象は急性腎障害(介入群12.7% vs.通常ケア群11.3%)で、これ以外はいずれもまれであった。 著者は、「医療システム全体にエビデンスに基づくガイドラインを適用してアウトカムを改善するには、臨床意思決定支援などの別の技術が必要となる可能性がある」とし、「このようなツールを、現場での実践(boots on the ground)を行うファシリテーターと組み合わせれば、臨床医と患者がガイドラインに基づく治療を順守できるような支援が可能となるだろう。今後、エビデンスに基づくガイドラインの実践状況を改善し、この患者集団におけるガイドラインの有効性を評価するための研究が必要である」としている。

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