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急性脳梗塞/TIA、チカグレロル+アスピリン併用で予後改善/NEJM

 軽症~中等症の急性非心原性虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)で、静脈内または血管内血栓溶解療法を受けなかった患者において、チカグレロル+アスピリン併用療法はアスピリン単独療法と比較し、発症後30日時点の脳卒中/死亡の複合アウトカムの発生が低下した。米国・テキサス大学オースティン校のS. Claiborne Johnston氏らが、無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「THALES試験」の結果を報告した。先行研究では、チカグレロルはアスピリンと比較して、脳卒中/TIA後の血管イベントまたは死亡の予防という点で良好な結果は示されておらず、脳卒中予防に対するチカグレロル+アスピリン併用療法の有効性は十分検討されていなかった。NEJM誌2020年7月16日号掲載の報告。虚血性脳卒中/TIA患者約1万1,000例を対象に試験 研究グループは、米国国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)のスコアが5未満(範囲:0~42、スコアが高いほど重症度が高い)の軽症~中等症の急性非心原性虚血性脳卒中、またはTIA患者で、血栓溶解療法または血栓除去を実施していない1万1,016例を、発症後24時間以内にチカグレロル(180mg負荷投与後に90mgを1日2回)+アスピリン(初回投与300~325mg、その後75~100mg/日)併用群、またはプラセボ+アスピリン群に1対1の割合で無作為に割り付け(チカグレロル併用群5,523例、アスピリン単独群5,493例)、それぞれ30日間投与した。 主要評価項目は30日以内の脳卒中または死亡の複合アウトカム、副次評価項目は30日以内の虚血性脳卒中の初回再発および身体障害で、主要安全性評価項目は重度出血(GUSTO出血基準)とし、intention-to-treat解析を実施した。チカグレロル併用により、脳卒中または死亡の複合アウトカムのリスクが低下 主要評価項目のイベントは、チカグレロル併用群で303例(5.5%)、アスピリン単独群で362例(6.6%)発生した(ハザード比[HR]:0.83、95%信頼区間[CI]:0.71~0.96、p=0.02)。虚血性脳卒中は、チカグレロル併用群で276例(5.0%)、アスピリン単独群で345例(6.3%)発生した(HR:0.79、95%CI:0.68~0.93、p=0.004)。障害の発生率については、両群間で有意差は認められなかった。 重度出血は、チカグレロル併用群で28例(0.5%)、アスピリン単独群で7例(0.1%)発生した(p=0.001)。

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第21回 めまい part1:回転性か浮動性かで分類すればいいんでしょ? 【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)前失神か否かをcheck! 2)持続時間を意識し良性発作性頭位めまい症(BPPV)か否かをcheck!
3)安静時に眼振があったらBPPVではない!
【症例】68歳女性。来院当日の起床時からめまいを自覚した。しばらく横になり、その後トイレにいこうと歩き始めたところ、再度症状が出現し、嘔気・嘔吐も伴い救急車を要請した。病院到着時、嘔気の訴えはあるがめまい症状は消失していた。しかし、病院のストレッチャーへ移動すると再びめまいが。。。●受診時のバイタルサイン意識清明血圧158/85mmHg脈拍95回/分(整)呼吸18回/分SpO298%(RA)体温36.1℃瞳孔開眼困難で評価できず既往歴高血圧、脂質異常症、虫垂炎めまいという言葉が含むもの「めまい」は研修医を始め若手の医師の誰もが苦手とする症候の1つでしょう。実際に私が全国の研修医の先生へ「苦手な症候は?」と聞くと、必ずといっていいほど「めまい」と返答があります。それはなぜでしょうか?医学生時代、必ず見るのがめまいを「末梢性」と「中枢性」に分類した表です。回転性めまいならば末梢性、浮動性めまいならば中枢性と習い、それぞれ代表的な疾患がBPPV・前庭神経炎、そして脳梗塞です。しかし、この分類は実際の臨床現場では役に立たないどころかエラーの原因となっていることは、誰もが感じていることでしょう。患者さんが「ぐるぐる回る」と訴えるから回転性と思ったら…、「フラフラ、地に足がついていない感じがする」と訴えるから浮動性と思ったら…、なんてことがよくありますよね。さらに、重症度が潜んでいる可能性のある前失神をめまいと訴えることもあります。患者さんがめまいを訴えて来院した場合には、めまいという言葉を使わないで症状を表現してもらいましょう。血の気が引くような症状であれば前失神、寝返りを打つだけで目の前がグラッと揺れるような症状であればBPPVに代表される回転性めまい、まっすぐ歩けず傾いてしまうのであれば小脳梗塞など中枢性病変が考えられるでしょう。もちろん、これ単独で判断はできませんが、前失神を見逃さないことはできるはずです。ちなみに、完全に意識を失ってしまう失神と比べると、前失神は重篤でないと考えがちですが、そんなことはなくリスクは同等です。前失神であっても、失神と同様の対応が必要となります(失神は第14回の項を確認してください)。めまい患者のアプローチめまいを訴える患者さんを診る場合には、前述の通りめまい以外の言葉で表現してもらい、原因疾患のらしさを見積もりますが、具体的にどのようにアプローチするべきでしょうか。STEP(1):中枢性めまい、前失神を除外頻度が高いのはBPPVなどの末梢性めまいですが、早期に拾い上げたいのはこれらの疾患です。最終診断は検査結果などを確認しなければ判断が難しいことが多いですが、前失神を示唆する病歴に加えて吐下血/血便を認める、貧血を示唆する所見を認める場合や、頭痛や麻痺、注視眼振や垂直性眼振など中枢性病変を示唆する所見を認める場合には、その時点でめまいのフローチャートではなく、消化管出血や脳卒中疑いとして対応する必要があります。STEP(2):BPPVか否かを判断頻度の高い疾患を確実に診断することができれば、前失神や中枢性めまいを過度に心配する必要はありません。BPPVの特徴を理解しズバッと診断、治療してしまいましょう。詳細は後述します。STEP(3):末梢性めまいの鑑別BPPV以外の末梢性めまいで頻度が高いのは、前庭神経炎です。持続するめまいの代表である脳梗塞とともに急性前庭症候群と分類されますが、HINTSやHINTS plusを用いて鑑別を進めましょう。STEP(4):帰宅or入院の判断末梢性めまいであれば帰宅可能と考えがちですが、症状が持続している場合には慎重に対応する必要があります。嘔気・嘔吐を伴うことも多く、食事が摂れない場合には要注意です。また、歩行が難しい場合にも末梢性のように思っても中枢性である場合や、転倒のリスクとなるため入院管理が適切といえるでしょう。BPPVの最大の特徴めまい患者の約50%はBPPVです。BPPVの特徴をきちんと理解しなければ、めまい診療は非常に難しくなります。頭部CTやMRI検査が必要なときもありますが、急性期の脳梗塞は必ずしも画像で陽性所見が認められるわけではなく、画像に依存しすぎるとエラーが生じます。「BPPVの最大の特徴は何か?」。このように研修医に質問すると、「頭を動かしたときに増悪するめまい」と返答があることが多いですが、これは違います! BPPVの正式名称が「良性発作性頭位めまい症」ですから、頭位が最大の特徴と思いがちですがそうではありません。前庭神経炎によるめまい、脳梗塞によるめまい、薬剤に伴うめまいも頭位を変換させれば症状は増悪するでしょう。最大の特徴、それは「持続時間」です。BPPVによるめまいは、安静にしていれば1分以内に治まります。耳石がぐわんぐわんと動いているのが原因ですから、その動きが横になるなど一定の姿勢をとり、止まることで症状も治まります。前庭神経炎や脳梗塞によるめまいは、症状の増悪はあってもゼロになることはありません。最も楽な姿勢をとってもめまいが持続していれば、その時点でBPPVではないのです。持続時間の確認の仕方持続時間はどのように確認するべきでしょうか? 患者さんに「症状はどれぐらい続きますか」と聞いてはいませんか? このように聞くと、たとえBPPVの患者さんであっても、「ずっと続いています」と答えることがあります。なぜだかわかりますか? BPPVは、安静にするとすぐに治まる、しかし動くと潜時を伴って、また、めまいが生じるという経過を辿ります。症状が治まり大丈夫かと思い動いたにも関わらず、再度症状を認めるため、患者さんは症状が続いていると訴えるのです。そのため、1回1回のめまいの持続時間に注目して聞くようにしましょう。「1回1回のめまいは横になるなど一定の姿勢をとると1分以内に治まりますか? そして、動くとまた始まる、そんな感じでしょうか?」と聞くと、BPPVの患者さん達は「そうそう」とよくぞわかってくれたといった反応を示すことが多いでしょう。安静時の所見に注目BPPVは安静時には耳石が動かないため症状も治まっています。眼振も認めません。救急外来でしばしば経験するのは、ストレッチャー上で右側臥位や座位で安静にしているときには、けろっとしている、そんな感じです。たとえ症状が軽そうで、安静にしているにも関わらず症状が持続している場合には、その時点でBPPVではありません。前庭神経炎を事前の感染徴候の有無で判断している場面に時々遭遇しますが、存在するのは50%程度と言われています。前庭神経炎かBPPVかは、めまいが持続しているか否か、特徴的な眼振の存在で判断しなければなりません。次回後編では、めまいの実践的なアプローチに関してお話します。1)坂本壮. 救急外来ただいま診断中. 中外医学社;2015.2)坂本壮. プライマリ・ケア. 2020;5:21-27.

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抗血栓療法受難の時代(解説:後藤信哉氏)-1246

 20世紀の後半からアスピリン、クロピドグレル、DOACsと抗血栓療法が世界の注目を集めた。心筋梗塞、脳梗塞、静脈血栓症などは致死的イベントの代表であった。抗血栓薬にて多少出血が増えても、「心血管死亡」が減るのであれば、メリットが大きいと考えられた。冠動脈ステントなど人工物では血栓性が高いとされ、アスピリン・クロピドグレルの抗血小板薬併用療法も推奨されてきた。血栓イベント予防のために抗凝固薬と抗血小板薬を併用している症例も実臨床では多数見掛けた。 21世紀になって体重コントロール、運動習慣、食事への配慮が普及した。世界的に見れば血栓イベントは重要な死因の1つであるが、教育の行き届いた先進諸国での血栓イベントが目に見えて減少した。体内に入れる医療材料の血栓性も制御されるようになった。抗血栓薬による血栓イベント低下効果よりも、抗血栓薬による出血イベントが注目されるようになった。 本研究では、すでに抗凝固薬を服用中のTAVIの症例が対象となった。本研究の対象症例は326例と多くない。80歳以上で、ほとんどの症例が心房細動を合併したリスクの高い症例である。しかし、心血管死亡・総死亡、虚血性脳卒中いずれもクロピドグレルの追加により減少のサインすらない。出血はクロピドグレル群で多い。重篤な出血には有意差はないが、傾向としてクロピドグレルの追加により増加する。心房細動にてDOACと強いマーケット活動が持続しているが、実臨床ではワルファリン使用が一般的である。本研究の対象も多くはワルファリン治療下である。TAVIでは一般に抗血小板薬併用療法が施行されているが、抗凝固療法施行中の症例に抗血小板薬を追加する必要はない。重篤な出血を惹起する抗血栓薬は使わずに済めば使わないほうがよい。抗血栓薬にとっては受難の時代になった。

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オリゴ転移乳がん、局所併用療法 vs.全身療法(OLIGO-BC1)/ASCO2020

 日本、中国、韓国によるアジア圏での国際後ろ向きコホート研究の結果、オリゴ転移乳がんに対する局所療法と全身療法併用の生存に対するベネフィットが示された。米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で、がん研究会有明病院の上野 貴之氏がOLIGO-BC1試験の結果を発表した。・対象:ABCガイドラインで定義されたオリゴ転移を有する乳がん患者(転移個数が少なく[5個以下]、サイズが小さい、腫瘍量の少ない転移疾患。転移臓器の数は定義されていない)・主な除外基準:脳、胸膜、腹膜への転移、あるいは切除不能な皮膚および胸壁への再発症例/胸水貯留を認めた症例/生理的腹水を超えて腹水貯留を認めた症例/心外膜液貯留を認めた症例/同側乳房内再発症例/他臓器の浸潤がんの既往がある症例/重篤な併存症(心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病、自己免疫疾患など)を有する再発症例・試験群:局所療法(外科的切除、放射線療法、焼灼療法および経カテーテル動脈(化学)焼灼療法など)と全身療法(化学療法、内分泌療法、抗HER2療法など)の併用・対象群:全身療法のみ・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS) ※以前の報告から5年OSを50%、40%とそれぞれ仮定した場合、両側の有意水準で併用療法の優位性を検出するために、少なくとも698例、検定力80%が必要とされた[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、長期的なPFSおよびOSを定義する臨床的、解剖学的および病理学的分析、局所療法に関連する重篤な有害事象 主な結果は以下のとおり。・2018年2月~2019年5月に1,295例が登録され、除外基準に基づき1,200例が分析対象(中国、日本、韓国からそれぞれ573、529、98例)とされた。・HR+HER2-が526例(44%)、HR+HER2+が189例(16%)、HR-HER2+が154例(13%)に、HR-HER2-が166例(14%)、その他は161例(13%)であった。・オリゴ転移数1が578例(48%)、2が289例(24%)、3が154例(13%)、4が102例(9%)、5が77例(6%)であった。・内臓転移のみが387例(32%)、骨転移のみが301例(25%)、局所再発のみが83例(7%)、局所領域再発は25例(2%)、複数部位の転移が404例(34%)であった。・局所療法および全身療法は495例、全身療法は705例で行われた。・追跡期間中央値4.9年における、5年OS率は併用療法59.6%、全身療法41.9%(p<0.01)。調整後のハザード比(HR)は0.60(95%信頼区間[CI]:0.51~0.71)であった。・多変量解析の結果、全身療法の種類(化学療法-内分泌療法:HR0.59[0.44~0.78])、若年(20~39歳:HR0.72[0.59~0.88]、40~49歳:HR0.72[0.60~0.86])、ECOG PS0(HR0.68[0.55~0.86])、ステージI(HR0.72[0.54~0.96])、非トリプルネガティブ乳がん(HR+HER2-:HR0.82[0.64~1.04]、HR+HER2+:HR0.68[0.52~0.90]、HR-HER2+:HR0.76[0.57~1.02])、転移部位の少なさ(1:HR0.71[0.59~0.86]、2:HR0.95[0.78~1.18])、局所再発(HR0.69[0.49~0.97])、無病生存期間の長さ(≦1:HR2.01[1.52~2.68]/4≦:HR1)が、予後良好因子であった。

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血栓溶解療法のドアから針までの時間が短いほど1年後の死亡と再入院は少ない(解説:内山真一郎氏)-1244

 この高齢者向け医療保険制度(Medicare)の受益者を対象とした全米の後方視的コホート研究は、発症後4.5時間以内のtPAの静注療法を行った65歳以上の脳梗塞患者において、病院への到着(ドア)から注射(針)までの時間が短いほど1年後の死亡率と再入院率が低いことを明らかにした。これまでも、ドアから針までの時間が短いほど、院内死亡、出血性梗塞、90日後の転帰不良が少ないことはわかっていたが、1年後という長期の転帰との関係が明らかにされたのは初めてである。 日本脳卒中学会による『脳卒中治療ガイドライン2015[追補2019]』でも、「発症後4.5時間以内であっても、治療開始が早いほど良好な転帰が期待できる。このため、患者が来院した後、少しでも早く(遅くとも1時間以内に)アルテプラーゼ静注療法を始めることが強く勧められる」とされている。ただし、脳主幹動脈閉塞例に関しては、機械的血栓回収療法前の血栓溶解療法はスキップしても転帰は変わらないという成績が中国や日本から発表されている。

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急性脳梗塞へのt-PA治療、door-to-needle timeが短いほど転帰良好/JAMA

 65歳以上の急性虚血性脳卒中の患者に対するt-PA治療について、来院から治療開始までの時間「door-to-needle time」が短いほど、1年後の全死因死亡および全再入院の割合は低いことが明らかにされた。米国・クリーブランドクリニックのShumei Man氏らが、6万例超を対象とした後ろ向きコホート試験の結果を報告した。著者は、「今回の結果は、血栓溶解療法はできるだけ早く開始すべきことを支持するものであった」とまとめている。先行研究で急性虚血性脳卒中の患者に対するt-PA治療の早期開始は、退院までの死亡率を低下し、3ヵ月時点の機能的アウトカムが良好であることを示していたが、治療開始までの時間短縮がより良好な長期的アウトカムにつながるかについては明らかになっていなかった。JAMA誌2020年6月2日号掲載の報告。door-to-needle timeと1年時点の全死因死亡率を比較 研究グループは2006年1月1日~2016年12月31日にかけて、米国で行われている心疾患治療標準化のためのレジストリ「Get With The Guidelines-Stroke(GWTG-脳卒中)」プログラムに参加する病院で、急性虚血性脳卒中を発症しt-PA静脈投与を受けた65歳以上のメディケア受給者を対象に、後ろ向きコホート試験を行った。被験者は、体調が悪化してから4.5時間以内にt-PA静脈投与を受けた患者に限定した。 来院からt-PA治療開始までの時間である「door-to-needle time」と、1年時点の全死因死亡率、全再入院率、全死因死亡・全再入院の複合発生率との関連を検証した。追跡期間は1年間で、2017年12月まで行った。door-to-needle timeが15分延長で全死因死亡リスク1.04倍 4.5時間以内にt-PA治療を受けた患者は6万1,426例で、年齢中央値は80歳、男性が43.5%。来院から治療開始までの時間であるdoor-to-needle timeの中央値は、65分(四分位範囲:49~88)だった。 door-to-needle timeが45分超だった4万8,666例(79.2%)は、45分以内だった被験者と比べて、全死因死亡率が有意に高率だった(35.0% vs.30.8%、補正後ハザード比[HR]:1.13[95%信頼区間[CI]:1.09~1.18]、p<0.001)。また、全再入院率(40.8% vs. 38.4%、1.08[1.05~1.12]、p<0.001)、全死因死亡・全再入院の複合発生率(56.0% vs.52.1%、1.09[1.06~1.12]、p<0.001)も45分超群で有意に高率だった。 door-to-needle timeが60分超だった3万4,367例(55.9%)についても、60分以内だった被験者と比べて、全死因死亡率(35.8% vs.32.1%、補正後HR:1.11[95%CI:1.07~1.14]、p<0.001)、全再入院率(41.3% vs. 39.1%、1.07[1.04~1.10]、p<0.001)、全死因死亡・全再入院の複合発生率(56.8% vs.53.1%、1.08[1.05~1.10]、p<0.001)のいずれも有意に高率だった。 全死因死亡は、door-to-needle timeが15分延長するごとに、病院到着後90分以内では有意に増大することが示された(補正後HR:1.04、95%CI:1.02~1.05、p<0.001)。しかし90分以降では増大は有意ではなかった(1.01、0.99~1.03、p=0.27)。 また、病院到着後90分以内でdoor-to-needle timeが15分延長するごとに、全再入院、全死因死亡・全再入院の複合発生のリスクは、いずれも有意に増大した(いずれもHR:1.02、95%CI:1.01~1.03、p<0.001)。

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嚥下困難患者に簡易懸濁を検討 不可の薬剤の変更を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第21回

 今回は、嚥下が困難な患者さんの内服薬を変更した提案を紹介します。簡易懸濁や粉砕対応を検討する際は、粉砕・懸濁可否のチェックが必要不可欠です。これらの対応が難しい薬剤は、他剤への変更を余儀なくされることがありますが、治療効果や安全性などが同等かどうかも確認しましょう。患者情報78歳、女性(在宅)基礎疾患:高血圧症、骨粗鬆症、脳梗塞、逆流性食道炎訪問診療の間隔:2週間に1回処方内容1.ベニジピン錠4mg 1錠 分1 朝食後2.テルミサルタン錠20mg 1錠 分1 朝食後3.エルデカルシトールカプセル0.75μg 1カプセル 分1 朝食後4.クロピドグレル錠25mg 2錠 分1 朝食後5.ラベプラゾール錠10mg 1錠 分1 朝食後6.プラバスタチン錠5mg 1錠 分1 朝食後本症例のポイントこの患者さんは、脳梗塞による高次機能障害として嚥下機能の低下があり、入院中に服用回数や薬剤数を必要最低限に抑えるための薬剤調整がなされていました。しかし、訪問時に患者さんより、「薬は全部飲みにくいけれど、とくに骨粗鬆症のカプセルはつるつるして飲みにくい」と相談がありました。そこで、粉砕対応または簡易懸濁法による服用法を検討し、変更提案が必要な薬剤を整理してみました。1.エルデカルシトールは懸濁も粉砕も不可エルデカルシトールの中身は液状ですので粉砕は不適です。簡易懸濁法はというと、油性溶剤を使用した薬剤のため水への親和性が低く、水またはお湯に融解した際には薬剤成分が容器やチューブへ付着することが懸念されています。有効成分の含量が非常に微量ですので、その場合は必要量を正確に投与できない可能性があります。さらに、添加物に使用している中鎖脂肪酸トリグリセリドは、一部のプラスチックを劣化・脆化させる恐れがあります。上記から、エルデカルシトールは簡易懸濁および粉砕が不可能な薬剤であり、他剤への変更が必要と考えました。同系統で懸濁や粉砕が可能なアルファカルシドール錠への変更がよいのではないかと考えましたが、エルデカルシトールのほうがアルファカルシドールよりも有意な骨折抑制効果を示しているので判断が難しいところです。今回は、懸濁や粉砕が可能であるという点に重きを置いて、アルファカルシドール錠1μgへの変更を、臨床効果が同等ではないことも添えて医師に相談することにしました。2.腸溶性製剤のPPIから胃酸に安定性の高いボノプラザンへ変更PPIは酸性条件下で不安定ですので腸溶性のコーティングが施されていますが、粉砕や簡易懸濁をするとコーティングが壊れて胃で失活してしまいます。カリウム競合型アシッドブロッカー(P-CAB)のボノプラザンであれば、胃酸に安定ですので簡易懸濁は可能です。なお、光には不安定なためフィルムコーティングがなされていますので、粉砕の場合は遮光する必要があります。強力な胃酸分泌抑制効果を有しているため、副作用リスクを考慮して、常用量の半量のボノプラザン錠10mgへの変更を検討しました。処方提案と経過医師には、電話にて患者さんが服薬を負担に感じており、粉砕対応または簡易懸濁法にて投与する必要性をお伝えし、上記の薬剤変更を提案しました。医師より、入院中に薬剤が調整されていたため、服用に問題がないものばかりだと思っていたと回答がありました。そこで、簡易懸濁法による投与に変更になり、提案のとおりの薬剤にするよう指示があったので、即日対応いたしました。同居のご家族にも服薬指導の際に同席してもらい、投与時の注意点などを説明して理解を得ることができました。処方変更後も胃部不快感などの症状はなく経過しています。藤島一郎監修, 倉田なおみ編集. 内服薬 経管投与ハンドブック 〜簡易懸濁法可能医薬品一覧〜 第3版. じほう;2015.中外製薬ホームページ「よくあるご質問」

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COVID-19診療の手引きの改訂版を公開/厚生労働省

 5月18日、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部は、全国の関係機関ならびに医療機関に「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第 2 版」を事務連絡として発出した。 同手引きの第1版は、3月17日に発出されているが、第2版となる改訂版では、国内外の最新知見を更新し、ページ数も約2倍となるなど、大幅に改訂されている。約3割の患者で嗅覚異常、味覚異常がある 追加された項目として「臨床像」では、「初期症状はインフルエンザや感冒に似ており、この時期にこれらとCOVID-19を区別することは困難である」とし、「嗅覚障害・味覚障害を訴える患者さんが多いことも分かってきた。イタリアからの報告によると約3割の患者で嗅覚異常または味覚異常があり、特に若年者、女性に多い」など追加の症状が述べられている。 「合併症」では、「若年患者であっても脳梗塞を起こした事例が報告されており、血栓症を合併する可能性が指摘されている。また、軽症患者として経過観察中に突然死を起こすことがあり、これも血栓症との関連が示唆される。小児では、川崎病様の症状を呈する事例もあることが欧米から報告されている」と血栓に関する注意も追加された。 「重症化マーカー」では、(1)D ダイマーの上昇、(2)CRP の上昇、(3)LDH の上昇、(4)フェリチンの上昇、(5)リンパ球の低下、(6)クレアチニンの上昇などが挙げられるが、「全体的な臨床像を重視して、臨床判断の一部として活用する必要がある」としている。 「薬物療法」では、「日本国内で入手できる適応薬」としてRNA合成酵素阻害薬 レムデシビル(2020 年5 月7日に特定薬事承認)を示すとともに、「日本国内で入手できる薬剤の適応外使用」として「RNA合成酵素阻害薬 ファビピラビル」「吸入ステロイド薬 シクレソニド」「蛋白質分解酵素阻害剤 ナファモスタット」「ヒト化抗IL-6 受容体モノクローナル抗体 トシリズマブ」「同 サリルマブ」を紹介している。目次 第2版1 病原体・臨床像伝播様式/臨床像/重症化マーカー/画像所見2 症例定義・診断・届出症例定義/病原体診断/抗原検査/抗体検査/届出3 重症度分類とマネジメント重症度分類/軽症/中等症/重症4 薬物療法5 院内感染対策個人防護具/換気/環境整備/廃棄物/患者寝具類の洗濯/食器の取り扱い/死後のケア/職員の健康管理/非常事態におけるN95マスクの例外的取扱い/非常事態におけるサージカルマスク、長袖ガウン、ゴーグルおよびフェイスシールドの例外的取扱い6 退院・生活指導退院等基準/生活指導引用・参考文献 診療の手引き検討委員会・作成班は「はじめに」で、「再流行のリスクもあり、予断を許しません。本手引きが広く医療現場で参考にされ、患者の予後改善と流行の制圧の一助となることを期待します」と活用を呼び掛けている。

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脳内大血管閉塞に対するtenecteplaseの至適用量は?(解説:内山真一郎氏)-1227

 tenecteplaseはアルテプラーゼから遺伝子改変により作成された血栓溶解薬であり、アルテプラーゼより半減期が長く、フィブリン特異性も高い。海外のガイドラインではアルテプラーゼの代用薬として記載されているが、日本では開発も承認もされていない。 オリジナルのEXTEND-IA TNK試験では、0.25mg/kgのtenecteplaseはアルテプラーゼと比べて再灌流と臨床転帰が優れていたという結果が示されている。そこで、このPart 2試験では、脳内大血管閉塞例において血栓回収療法前に投与された0.40mg/kgのtenecteplaseが0.25mg/kgのtenecteplaseより優れているかどうかをPROBE試験により検討したが、0.40mg/kgが0.25mg/kgより有効であるという結果は示されなかったので、tenecteplaseの至適用量は0.25mg/kgであるというのが本試験の結論である。 いずれにせよ、海外では今後アルテプラーゼよりtenecteplaseが主体になると思われ、このままだとまた日本だけが取り残される危惧があるので、何らかの同等性を示す試験を行い、日本でも使用可能になることを期待したい。

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脳内大血管閉塞に対する血栓回収療法に血栓溶解療法の併用は不要か?(解説:内山真一郎氏)-1226

 脳内大血管閉塞による急性虚血性脳卒中に血栓回収療法前のアルテプラーゼ静注療法が有用であるかどうかは確かではなく、大血管閉塞例に関してはアルテプラーゼ静注の併用なしに直接血栓回収療法を行ってもいいのではないかとの意見が以前から存在した。 中国で行われた本試験では、血栓回収療法のみでもアルテプラーゼ後の血栓回収療法と比べて90日後の転帰が劣っていなかったという結果が示された。本年ロサンゼルスで開催されたInternational Stroke Conferenceにおいて日本医大脳神経内科からの同様なデザインで行われたSKIP研究の結果が発表されたが、血栓回収単独療法のアルテプラーゼ併用療法に対する非劣性は本試験より症例数が少なかったためか証明されなかったものの、出血リスクは血栓回収療法単独のほうが有意に少なかった。 これらの結果を併せて考えると、大血管閉塞による虚血性脳卒中に対しては、血栓回収療法が可能な施設ではアルテプラーゼ投与は不要なのかもしれない。

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血管内血栓摘出術前のrt-PA静注、有益かリスクか/NEJM

 大血管閉塞による急性虚血性脳卒中を呈した中国人の患者において、血管内血栓摘出術の単独施行は、症状の発症4.5時間以内にアルテプラーゼ静脈内投与を行ったうえでの血管内血栓摘出術施行と比べて、機能的アウトカムに関して非劣性であることが示された。中国・Naval Medical University Changhai HospitalのPengfei Yang氏らが、同国内41の大学関連医療施設で行った無作為化試験の結果を報告した。急性虚血性脳卒中において、血管内血栓摘出術の前にアルテプラーゼ静脈内投与を行うベネフィットとリスクについては、不確実性があると指摘されている。NEJM誌オンライン版2020年5月6日号掲載の報告。中国41施設で、摘出術単独群vs.併用群、90日時点の修正Rankinスコアを評価 研究グループは、中国国内41の大学関連3次医療施設において、急性虚血性脳卒中患者における血管内血栓摘出術について、アルテプラーゼ静脈内投与の有無を評価する無作為化試験を行った。前方循環系大血管閉塞を来した急性虚血性脳卒中患者を1対1の割合で無作為に2群に割り付け、一方には血管内血栓摘出術のみを(血管内血栓摘出術単独群)、もう一方には血管内血栓摘出術に先行してアルテプラーゼ0.9mg/kg体重を、症状発症から4.5時間以内に静脈内投与した(併用群)。 主要アウトカムは、無作為化後90日時点で評価した修正Rankinスケールスコア(範囲:0[症状なし]~6[死亡])で、血管内血栓摘出術単独群と併用群の差を評価し非劣性について解析した。非劣性の基準は、補正後共通オッズ比の95%信頼区間(CI)の下限値が0.8%以上とした。 また、死亡や虚血部再灌流などさまざまな副次アウトカムの評価も行った。単独群の非劣性を確認、死亡率は17.7% vs.18.8% 2018年2月23日~2019年7月2日に1,586例がスクリーニングを受け、656例が無作為化を受けた(327例が血管内血栓摘出術単独群、329例が併用群)。被験者の年齢中央値は69歳(四分位範囲:61~76)、男性は370例(56.4%)であった。症状発症から無作為化までの時間中央値は単独群167分(四分位範囲:125~206)、併用群177分(126~215)、無作為化から血栓摘出までの時間中央値はそれぞれ31分、36分であった。 主要アウトカムの修正Rankinスケールスコアに関する補正後共通オッズ比は、1.07(95%CI:0.81~1.40、p=0.04)で、単独群の併用群に対する非劣性が認められた。 しかし、血栓摘出術前の再灌流成功率(2.4% vs.7.0%)、全体的な再灌流成功率(79.4% vs.84.5%)は単独群で低かった。90日時点の死亡率は、単独群17.7%、併用群18.8%であった。 結果を踏まえて著者は、「その他の集団で大規模な検討を行う必要がある」と述べている。

332.

虚血性脳卒中の血栓除去術前のtenecteplase、至適用量は/JAMA

 脳主幹動脈閉塞を有する虚血性脳卒中患者では、tenecteplaseの0.40mg/kg投与は0.25mg/kgと比較して、血管内血栓除去術施行前の脳血管再灌流の達成を改善しないことが、オーストラリア・メルボルン大学のBruce C.V. Campbell氏らの検討「EXTEND-IA TNK Part 2試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2020年4月7日号に掲載された。EXTEND-IA TNK試験では、tenecteplase 0.25mg/kgによる静脈内血栓溶解療法は、アルテプラーゼに比べ血管内血栓除去術施行前の脳血管再灌流および臨床アウトカムの改善効果が優れると報告されている。一方、tenecteplaseの最も規模の大きい臨床試験「NOR-TEST試験」では、0.40mg/kgはアルテプラーゼに比べ安全性および有効性が優れないことが示され、ガイドラインによって推奨用量が異なる事態が生じているという。至適用量を決定する無作為化試験 研究グループは、虚血性脳卒中患者における、血管内血栓除去術施行前のtenecteplaseの至適用量を明確にする目的で、医師主導型の非盲検無作為化試験を実施した(オーストラリア国立保健医療研究審議会などの助成による)。 対象は、発症後4.5時間以内、CT血管造影で内頸動脈、中大脳動脈、脳底動脈のいずれかの閉塞による虚血性脳卒中が認められる成人患者であった。被験者は、血管内血栓除去術施行前にtenecteplase 0.40mg/kg(上限40mg)または0.25mg/kg(上限25mg)をボーラス投与する群に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、血栓除去術施行前の虚血領域の50%超での再灌流とし、盲検化された2人の神経放射線科医の合意によって評価された。主な副次アウトカムにも有意差はない 2017年12月~2019年7月の期間に、オーストラリアの27施設とニュージーランドの1施設で300例(平均年齢72.7歳、女性141例[47%])が登録され、0.40mg/kg群に150例、0.25mg/kg群にも150例が割り付けられ、全例が試験を完遂した。 虚血領域の50%超の再灌流を達成した患者は、0.40mg/kg群が150例中29例(19.3%)、0.25mg/kg群も150例中29例(19.3%)であり、両群間に有意差は認められなかった(補正前リスク差:0.0%、95%信頼区間[CI]:-8.9~-8.9、補正後リスク比:1.03、95%CI:0.66~1.61、p=0.89)。 次の6つの副次アウトカムにも有意な差はみられなかった。90日の時点での修正Rankinスケール(mRS)のスコア中央値(0.40mg/kg群2点vs.0.25mg/kg群2点)、機能的独立(mRS 0~2点またはベースラインから90日まで変化なし:59% vs.56%)、障害なし(mRS 0~1点:49% vs.49%)、神経障害の実質的な早期改善(NIHSSスコア[0~42点、点数が高いほど神経障害が重度]のベースラインから3日までの8点以上の低下または3日の時点での0~1点の達成:68% vs.62%)、全死因死亡(17% vs.15%)、症候性頭蓋内出血(4.7% vs.1.3%)。 著者は、「0.40mg/kgに、0.25mg/kgを上回る有益性はないと示唆される」としている。

333.

血栓回収療法前の再灌流に対するtenecteplase増量の効果(解説:中川原譲二氏)-1214

 EXTEND-IA TNK試験において、tenecteplase 0.25mg/kgによる血栓溶解療法は、アルテプラーゼと比較し、脳梗塞患者に対する血栓除去術施行前の再灌流を改善することが示された。これを受けて、EXTEND-IA TNK Part 2試験は、tenecteplase 0.40mg/kgが、0.25mg/kgと比較して、血栓除去術施行前の脳再灌流を改善するかどうか確定することを目的に行われた。tenecteplase 0.40mg/kg vs.0.25mg/kgを比較 本試験は、オーストラリアとニュージーランドの27施設で、2017年12月~2019年7月の期間に登録された患者に対し非盲検下で治療を行い、画像診断および臨床転帰の評価は盲検下で実施した無作為化臨床試験である。対象は、標準的な静脈血栓溶解療法の適格基準である発症後4.5時間未満で内頸動脈/中大脳動脈/脳底動脈の閉塞を有する脳梗塞成人患者300例とした。tenecteplase 0.40mg/kg(最大40mg)群(150例)または0.25mg/kg(最大25mg)群(150例)に無作為化し、それぞれ血管内血栓除去術の前に投与した。 主要評価項目は、当該虚血領域の50%超の再灌流で、盲検下の神経放射線科医2人による合意に基づく評価とした。副次評価項目は、90日後の機能障害(mRSスコア:0~6点)、mRSスコア0~1または90日時点でベースラインからの変化なし(障害なし)、mRSスコア0~2または90日時点でベースラインからの変化なし(機能的自立)、3日後の早期神経学的改善(NIHSSスコアの8点以上の低下または0~1点への改善)、36時間以内の症候性頭蓋内出血および全死因死亡であった。tenecteplaseの投与量の違いで有効性に差はなし 無作為化された全300例(平均年齢72.7歳、女性141例[47%])が試験を完遂した。主要評価項目を達成した患者の割合は、0.40mg/kg群19.3%(29/150例)vs.0.25mg/kg群19.3%(29/150例)であった(補正前リスク差:0.0%[95%CI:-8.9~-8.9]、補正後リスク比:1.03[0.66~1.61]、p=0.89)。6つの副次評価項目についても、0.40mg/kg群と0.25mg/kg群の間で、4つの機能アウトカムのみならず、全死因死亡(26例[17%]vs.22例[15%]、補正前リスク差:2.7%[95%CI:-5.6~11.0])、ならびに症候性頭蓋内出血(7例[4.7%]vs.2例[1.3%]、3.3%[-0.5~7.2])も有意差は認められなかった。 主幹動脈閉塞の脳梗塞患者において、tenecteplaseの投与量0.40mg/kgは同0.25mg/kgと比較し、血栓除去術施行前の脳再灌流を改善しなかった。この結果は、血栓除去術が計画される主幹動脈閉塞の脳梗塞患者において、tenecteplase 0.40mg/kgは、同0.25mg/kgを超える優位性がないことを示唆する。血栓回収療法の導入と血栓溶解療法の位置付け 脳梗塞の急性期治療では、血栓回収療法の有効性が確立し、その導入によって医療現場の対応が劇的に変わりつつある。それに伴い、これまでの血栓溶解療法の位置付けも再考されつつある。血栓溶解療法の併用が、再灌流領域の拡大に寄与したとしても、最終的な転帰の改善をもたらすかどうかは、いまだに確定していない。発症から治療開始までの時間との闘いの中で、血栓回収療法を優先すべきか、血栓回収療法の前に血栓溶解療法の併用を考慮すべきかは、各脳卒中センターにおける脳梗塞緊急治療体制の完成度とその熟練度とも絡んで、個別に実施されているものと思われる。しかし、今後は、それぞれの方法が有用なサブグループを見いだす臨床研究を実施することが必要と推察される。

334.

急性期脳梗塞に対する神経保護薬nerinetideの有効性と安全性/Lancet(解説:中川原譲二氏)-1212

 nerinetideは、シナプス後肥厚部タンパク質95(PSD-95)を阻害するエイコサペプチドで、虚血再灌流の前臨床脳梗塞モデルで有効性が確認されている神経保護薬である。この試験では、急性期脳梗塞患者での迅速血管内血栓回収療法(EVT)に随伴する虚血再灌流におけるnerinetideの有効性と安全性を評価する目的で、多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験(ESCAPE-NA1)が行われた。 対象は、年齢18歳以上、脳主幹動脈閉塞後12時間以内の急性期脳梗塞で、無作為割り付け時に機能障害を伴う脳梗塞がみられ、発症前は地域で自立して活動しており、脳卒中早期CTスコア(ASPECTS)が>4点、多相CT血管造影で中等度~良好な側副路充満が示されている患者であった。被験者はすべてEVTを施行され、適応がある場合は通常治療としてアルテプラーゼの静脈内投与よる血栓溶解療法が行われた。次いで、nerinetide 2.6mg/kg(最大270mg)を静脈内に単回投与する群、またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、90日時の良好な機能的アウトカム(mRSスコア:0~2点)とした。副次評価項目は、神経学的障害(NIHSS:0~2点)、日常生活動作の機能的自立(mBI:95~100点)、きわめて良好な機能的アウトカム(mRSスコア:0~1点)、死亡などであった。nerinetideは、急性期脳梗塞のEVT後の転帰を改善せず 2017年3月~2019年8月の期間に、8ヵ国の48の急性期治療病院で1,105例が登録され、nerinetide群に549例(年齢中央値71.5歳、女性48.8%)、プラセボ群には556例(70.3歳、50.5%)が割り付けられた。アルテプラーゼは、nerinetide群が549例中330例(60.1%)、プラセボ群は556例中329例(59.2%)に投与された。 90日時のmRSスコア0~2点は、nerinetide群が549例中337例(61.4%)で、プラセボ群は556例中329例(59.2%)で達成され、両群間に有意な差は認められなかった(補正後RR:1.04、95%CI:0.96~1.14、p=0.350)。NIHSS 0~2点の達成(nerinetide群58.3% vs.プラセボ群57.6%、補正後RR:1.01、95%CI:0.92~1.11)、mBI 95~100点の達成(62.1% vs.60.3%、1.03、0.94~1.12)、mRSスコア0~1点の達成(40.4% vs.40.6%、0.98、0.85~1.12)および死亡(12.2% vs.14.4%、0.84、0.63~1.13)にも、有意な差はなかった。nerinetideは、アルテプラーゼ非投与のEVT施行例で転帰を改善 アルテプラーゼ非投与例での90日mRSスコア0~2点の達成は、nerinetide群が219例中130例(59.3%)と、プラセボ群の227例中113例(49.8%)に比べ有意に良好であった(補正後RR:1.18、95%CI:1.01~1.38)。また、死亡もnerinetide群で有意に少なかった(0.66、0.44~0.99)。一方、アルテプラーゼ投与例では、このような差はみられなかった(90日mRSスコア0~2点達成の補正後RR:0.97[95%CI:0.87~1.08]、死亡の補正後RR:1.08[0.70~1.66])。 重篤な有害事象の発生は両群でほぼ同等であった(nerinetide群33.1% vs.プラセボ群35.7%、RR:0.92、95%CI:0.79~1.09)。また、進行性脳梗塞(stroke-in-evolution)、新規または再発脳梗塞、症候性頭蓋内出血、肺炎、うっ血性心不全、低血圧、尿路感染症、深部静脈血栓症/肺塞栓症、血管性浮腫の発生にも差はなかった。 以上より、nerinetideは、プラセボ群と比較して、急性期脳梗塞患者でのEVT施行後の良好な機能的転帰の達成割合を改善しなかったが、アルテプラーゼによる血栓溶解療法を併用しなかった集団では、これを改善するとともに、死亡を抑制する可能性があることが示された。EVTでは、アルテプラーゼ併用の有無で、nerinetide導入を選別すべきか? 一般に、急性期脳梗塞に対する早期の血流再開と神経保護の併用療法には、相加的・相乗的効果が期待される。しかし、今回のESCAPE-NA1試験では、アルテプラーゼ非併用群においてのみ、この効果が確認されたとされている。EVTでのアルテプラーゼ併用には、機械的な血栓回収時に末梢に飛散する血栓の溶解などにより、組織灌流を改善させる効果が期待されるが、その神経毒性が、nerinetideの神経保護効果を相殺する可能性も考えられる。今後、EVTが選択されたがアルテプラーゼは併用しない脳梗塞患者の治療へのnerinetide導入に関するさらなる知見が待たれる。

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週5日以上の入浴で脳心血管リスク減少~日本人3万人の前向き調査

 入浴は、血行動態機能を改善することから心血管疾患予防効果があると考えられているが、心血管疾患リスクへの長期的効果を調べた前向き研究はなかった。今回、大阪府立公衆衛生研究所の鵜飼 友彦氏らが中年期の日本人約3万人を追跡調査し、入浴頻度が心血管疾患リスクと逆相関することを報告した。Heart誌オンライン版2020年3月24日号に掲載。 本研究の対象は、心血管疾患またはがんの病歴のない40〜59歳の3万76人で、1990年から2009年まで追跡調査した。参加者を浴槽での入浴の頻度で、0〜2回/週、3〜4回/週、ほぼ毎日の3つに分類した。従来の心血管疾患リスク因子と食事因子を調整後、Cox比例ハザードモデルを用いて心血管疾患発症のハザード比(HR)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間53万8,373人年の間に、冠動脈疾患328例(心筋梗塞275例、心臓突然死53例)と脳卒中1,769例(脳梗塞991例、脳内出血510例、くも膜下出血255例、未分類の脳卒中13例)の計2,097例の心血管疾患を記録した。・ほぼ毎日または毎日の0〜2回/週に対する多変量HR(95%CI)は、心血管疾患では0.72(0.62〜0.84、傾向のp<0.001)、冠動脈疾患では0.65(0.45~0.94、傾向のp=0.065)、脳卒中全体では0.74(0.62〜0.87、傾向のp=0.005)、脳梗塞では0.77(0.62~0.97、傾向のp=0.467)、脳内出血では0.54(0.40〜0.73、傾向のp<0.001)であった。・心臓突然死、くも膜下出血のリスクとの間に関連はみられなかった。

337.

動脈硬化リスクの早期発見、見過ごしがちな値とは/日本動脈硬化学会

 動脈硬化と悪玉コレステロール増加の結びつきをよく知っている患者でも、TG(トリグリセライド、中性脂肪)値の増加は肥満者だけのものと捉えてはいないだろうかー。2020年2月21日、日本動脈硬化学会はプレスセミナー「食後高脂血症と動脈硬化」を開催。増田 大作氏(りんくうウェルネスケア研究センター センター長)が「食後高脂血症」について、矢作 直也氏(筑波大学医学医療系 准教授)が「糖尿病と動脈硬化」について講演した。TG値の増加をリポ蛋白で知る 動脈硬化に影響を及ぼす脂質の値は、健康診断を受ける人にとって気になる項目だ。増田氏によると「企業健診受診者の3分の1になんらかの脂質異常症が存在している」という。この脂質異常症の有無が動脈硬化リスクの判定材料となるわけだが、近年はコレステロール値だけではなくTG値の上昇が心血管疾患の増加因子として問題視されている。実際、将来の冠動脈疾患や脳梗塞発症の死亡予測に重要なことが、日本動脈硬化学会が発表した2017年版動脈硬化性疾患予防ガイドライン1)にも記されている。 TG値は、通常食後3時間程でピークとなり、徐々に低下して6~8時間で空腹時の値へ戻る。しかし、冠動脈疾患患者や糖尿病患者などでは、食後TG値の上昇が緩やかに続きピークが後ろ倒しとなり、8時間経過してもまだ高いことから、空腹時のTG値上昇につながる。この非空腹時(食後)TGが高値な病態は“食後高脂血症”と呼ばれ、動脈硬化を惹起するリポ蛋白の増加にもつながる。これを踏まえ同氏は「食後TG値が高くなるのは、食後にTGの多いレムナントリポ蛋白(とくに小腸からのカイロミクロンレムナント)が残っている証拠」と、話した。また、空腹時のみならず食後TG値にも心血管疾患イベントリスクとの相関が存在し、「空腹時TG値がほぼ正常でも非空腹時TG値が高い人は、レムナントリポ蛋白が蓄積している」と述べた。 次に同氏は動脈硬化リスク評価に有力なレムナントリポ蛋白の測定方法として、1)non-HDL-C、2)レムナントコレステロール3)アポB-48濃度測定の3つを挙げた。同氏はこれらの測定法について、「Non-HDLコレステロール測定はもっとも簡易的な反面、LDLコレステロールの上昇も反映するのでレムナント単独の変動がわかりにくい。レムナントコレステロール測定(RemL-C法など)は直接的定量的な評価が可能だが3ヵ月に1回しか算定ができないなどのデメリットがあり、対象者や測定タイミングに悩む医師が多い。アポB-48濃度測定は空腹時のカイロミクロンレムナントを測定するので、食生活や食材の影響を評価できる可能性があるが、まだ保険収載されていない」とそれぞれの長短について説明した。 最後に食後高脂血症を防ぐ方法として「薬物治療も重要だが、まずはThe Japan Dietのような動脈硬化を抑える食事の導入や定期的な運動が極めて重要」とコメントした。脂質異常症治療は糖尿病患者の血管に恩恵与える 糖尿病は動脈硬化性疾患の重要な危険因子であり、前述のガイドライン1)で動脈硬化性疾患の高リスクに分類されている。さらに、糖尿病患者では発症早期から血糖値のみならず脂質値、血圧値の厳格な管理を包括的に行う必要がある、とも記載されている。これらを踏まえ、矢作氏は糖尿病と動脈硬化の関係について解説した。 代表的な脂質異常症治療薬であるスタチン系薬剤では投与後早期に糖尿病に伴う心血管イベントの抑制が報告されている。一方で、インスリンを含む血糖降下薬の場合、投薬期間が5~10年程度では大血管障害に対する治療効果は乏しい。これについて同氏は「血糖降下薬の場合は、10年以上の長期経過の中でlegacy effectがみられる」と指摘した。 このような糖尿病治療の現況を前提として、同氏は指先検査を活用した糖尿病疑い症例の早期発見に努めている。東京都足立区と徳島県で、2010年10月~2017年9月に総計4,865名(希望者;ただし糖尿病治療中の人は対象外)に対して薬局での指先HbA1c検査(検体測定室)を導入したところ、糖尿病予備群疑い:701名、糖尿病疑い:515名を発見した。同氏はこの検体測定室での検査実績や既知のエビデンスを通し、「糖尿病患者の動脈硬化リスクは耐糖能異常などの前糖尿病状態から既に上昇していることが示されている。動脈硬化を予防するためには、前糖尿病の段階から早期発見、早期介入が必要である」と、締めくくった。

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nerinetide、急性期脳梗塞のEVT後の転帰改善せず/Lancet

 開発中の神経保護薬nerinetideは、急性期脳梗塞患者において、血管内血栓回収療法(EVT)施行後の良好な機能的転帰の達成割合を改善しないが、アルテプラーゼによる血栓溶解療法を併用しなかった集団では、これを改善するとともに、死亡を抑制する可能性があることが、カナダ・カルガリー大学のMichael D. Hill氏らによる「ESCAPE-NA1試験」で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2020年2月20日号に掲載された。nerinetideは、シナプス後肥厚部タンパク質95(PSD-95、disks large homolog 4とも呼ばれる)を阻害するエイコサペプチドで、虚血再灌流の前臨床脳梗塞モデルで有効性が確認されている神経保護薬である。良好な機能的転帰をプラセボと比較する無作為化試験 研究グループは、急性期脳梗塞患者において、迅速EVT施行後の虚血再灌流傷害におけるnerinetideの有効性と安全性を評価する目的で、多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験を行った(カナダ保健研究所[CIHR]などの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、大血管閉塞発症後12時間以内の急性期脳梗塞で、無作為割り付け時に後遺障害を伴う脳梗塞がみられ、発症前は地域で自立して活動しており、アルバータ脳卒中プログラム早期CTスコア(ASPECTS)が>4点、多相CT血管造影で中等度~良好な側副路充満が示されている患者であった。 被験者はすべてEVT(ステント型血栓回収機器、吸引機器)を施行され、適応がある場合は通常治療としてアルテプラーゼの静脈内投与よる血栓溶解療法が行われた。次いで、nerinetide 2.6mg/kg(最大270mg)を静脈内に単回投与する群、またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、90日時の良好な機能的アウトカム(修正Rankinスケール[mRS]のスコア0~2点)とした。副次評価項目は、神経学的障害(NIHSS:0~2点)、日常生活動作の機能的自立(修正Barthelインデックス[mBI]95~100点)、きわめて良好な機能的アウトカム(mRSスコア0~1点)、死亡などであった。アルテプラーゼ非投与のEVT施行例で、さらなる研究の可能性 2017年3月~2019年8月の期間に、8ヵ国の48の急性期治療病院(カナダ14施設、米国19施設、ドイツ5施設など)で1,105例が登録され、nerinetide群に549例(年齢中央値71.5歳[IQR:61.1~79.7]、女性48.8%)、プラセボ群には556例(70.3歳[60.4~80.1]、50.5%)が割り付けられた。アルテプラーゼは、nerinetide群が549例中330例(60.1%)、プラセボ群は556例中329例(59.2%)に投与された。 90日時のmRSスコア0~2点は、nerinetide群が549例中337例(61.4%)で、プラセボ群は556例中329例(59.2%)で達成され、両群間に有意な差は認められなかった(補正後リスク比[RR]:1.04、95%信頼区間[CI]:0.96~1.14、p=0.350)。 NIHSS 0~2点の達成(nerinetide群58.3% vs.プラセボ群57.6%、補正後RR:1.01、95%CI:0.92~1.11)、mBI 95~100点の達成(62.1% vs.60.3%、1.03、0.94~1.12)、mRSスコア0~1点の達成(40.4% vs.40.6%、0.98、0.85~1.12)および死亡(12.2% vs.14.4%、0.84、0.63~1.13)にも、有意な差はなかった。 アルテプラーゼ非投与例での90日mRSスコア0~2点の達成は、nerinetide群が219例中130例(59.3%)と、プラセボ群の227例中113例(49.8%)に比べ有意に良好であった(補正後RR:1.18、95%CI:1.01~1.38)。また、死亡もnerinetide群で有意に少なかった(0.66、0.44~0.99)。一方、アルテプラーゼ投与例では、このような差はみられなかった(90日mRSスコア0~2点達成の補正後RR:0.97[95%CI:0.87~1.08]、死亡の補正後RR:1.08[0.70~1.66])。 重篤な有害事象の発生は両群でほぼ同等であった(nerinetide群33.1% vs.プラセボ群35.7%、RR:0.92、95%CI:0.79~1.09)。また、進行性脳梗塞(stroke-in-evolution)、新規または再発脳梗塞、症候性頭蓋内出血、肺炎、うっ血性心不全、低血圧、尿路感染症、深部静脈血栓症/肺塞栓症、血管性浮腫の発生にも差はなかった。 著者は、「この新たな知見が確証されれば、さらなる研究を行うことで、EVTが選択されたがアルテプラーゼは併用しない脳梗塞患者の治療へのnerinetide導入に関する詳細なデータがもたらされる可能性がある」としている。

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脳梗塞へのtenecteplase、投与量で改善の違いは?/JAMA

 主幹動脈閉塞の脳梗塞患者において、tenecteplaseの投与量0.40mg/kgは同0.25mg/kgと比較し、血栓除去術施行前の脳再灌流を改善しなかった。オーストラリア・メルボルン大学のBruce C. V. Campbell氏らが、同国27施設およびニュージーランドの1施設で実施した多施設共同無作為化臨床試験「EXTEND-IA TNK Part 2試験」の結果を報告した。先行して行われたEXTEND-IA TNK試験において、同様の脳梗塞患者に対するtenecteplaseによる血栓溶解療法はアルテプラーゼと比較し、血栓除去術施行前の再灌流を改善することが示されていた。JAMA誌オンライン版2020年2月20日号掲載の報告。tenecteplase 0.40mg/kgまたは0.25mg/kgに無作為化 EXTEND-IA TNK Part 2試験は、2017年12月~2019年7月の期間に患者を登録し、非盲検下で治療を行い、画像診断および臨床転帰の評価は盲検下で実施した無作為化臨床試験である。対象は、標準的な静脈血栓溶解療法の適格基準である発症後4.5時間未満で内頸動脈/中大脳動脈/脳底動脈の閉塞を有する脳梗塞成人患者300例で、tenecteplase 0.40mg/kg(最大40mg)群(150例)またはtenecteplase 0.25mg/kg(最大25mg)群(150例)に無作為化し、それぞれ血管内血栓除去術の前に投与した(2019年10月まで追跡調査)。 主要評価項目は、当該虚血領域の50%超の再灌流で、盲検下の神経放射線科医2人による合意に基づく評価とした。 副次評価項目は、90日後の機能障害(modified Rankin Scale[mRS]スコア:0~6点)、mRSスコア0~1または90日時点でベースラインから変化なし、mRSスコア0~2または90日時点でベースラインからの変化なし、早期神経学的改善(3日後のNational Institutes of Health Stroke Scale[NIHSS]スコアの8点以上の低下または0~1点への改善)、36時間以内の症候性頭蓋内出血および全死因死亡であった。tenecteplase投与量の違いで有効性に差はなし 無作為化された300例(平均年齢72.7歳、女性141例[47%])が試験を完遂した。 主要評価項目を達成した患者の割合は、tenecteplase 0.40mg/kg群19.3%(29/150例)vs. tenecteplase 0.25mg/kg群19.3%(29/150例)であった(補正前リスク差:0.0%[95%信頼区間[CI]:-8.9~−8.9]、補正後リスク比:1.03[0.66~1.61]、p=0.89)。 6つの副次評価項目についても、tenecteplase 0.40mg/kg群とtenecteplase 0.25mg/kg群の間で、4つの機能アウトカムのみならず、全死因死亡(26例[17%]vs.22例[15%]、補正前リスク差:2.7%[95%CI:-5.6~11.0])、ならびに症候性頭蓋内出血(7例[4.7%]vs.2例[1.3%]、3.3%[-0.5~7.2])も有意差は認められなかった。

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再発性多発軟骨炎〔RP:relapsing polychondritis〕

1 疾患概要■ 概念・定義再発性多発軟骨炎(relapsing polychondritis:RP)は、外耳の腫脹、鼻梁の破壊、発熱、関節炎などを呈し全身の軟骨組織に対して特異的に再発性の炎症を繰り返す疾患である。眼症状、皮膚症状、めまい・難聴など多彩な症状を示すが、呼吸器、心血管系、神経系の病変を持つ場合は、致死的な経過をたどることがまれではない。最近、この病気がいくつかのサブグループに分類することができ、臨床的な特徴に差異があることが知られている。■ 疫学RPの頻度として米国では100万人あたりの症例の推定発生率は3.5人。米国国防総省による有病率調査では100万人あたりの症例の推定罹患率は4.5人。英国ではRPの罹患率は9.0人/年とされている。わが国の全国主要病院に対して行なわれた疫学調査と人口動態を鑑みると、発症年齢は3歳から97歳までと広範囲に及び、平均発症年齢は53歳、男女比はほぼ1で、患者数はおおよそ400~500人と推定された。RPは、平成27年より新しく厚生労働省の指定難病として認められ4~5年程度経過したが、筆者らが疫学調査で推定した患者数とほぼ同等の患者数が実際に医療を受けているものと思われる。生存率は1986年の報告では、10年生存率55%とされていた。その後の報告(1998年)では、8年生存率94%であった。筆者らの調査では、全症例の中の9%が死亡していたことから、90%以上の生存率と推定している。■ 病因RPの病因は不明だが自己免疫の関与が報告されている。病理組織学的には、炎症軟骨に浸潤しているのは主にCD4+Tリンパ球を含むリンパ球、マクロファージ、好中球や形質細胞である。これら炎症細胞、軟骨細胞や産生される炎症メディエーターがマトリックスメタロプロテナーゼ産生や活性酸素種産生をもたらして、最終的に軟骨組織やプロテオグリカンに富む組織の破壊をもたらす。その発症に関する仮説として、初期には軟骨に向けられた自己免疫反応が起こりその後は、非軟骨組織にさらに自己免疫反応が広がるという考えがある。すなわち、病的免疫応答の開始メカニズムとしては軟骨組織の損傷があり、軟骨細胞または細胞外軟骨基質の免疫原性エピトープを露出させることにある。耳介の軟骨部分の穿孔に続いて、あるいはグルコサミンコンドロイチンサプリメントの摂取に続いてRPが発症したとする報告は、この仮説を支持している。II型コラーゲンのラットへの注射は、耳介軟骨炎を引き起こすこと、特定のHLA-DQ分子を有するマウスをII型コラーゲンで免疫すると耳介軟骨炎および多発性関節炎を引き起こすこと、マトリリン-1(気管軟骨に特異的な蛋白の一種)の免疫はラットにRPの呼吸障害を再現するなどの知見から、軟骨に対する自己免疫誘導の抗原は軟骨の成分であると考えられている。多くの自己免疫疾患と同様にRPでも疾患発症に患者の腫瘍組織適合性抗原は関与しており、RPの感受性はHLA-DR4の存在と有意に関連すると報告されている。臨床的にも、軟骨、コラーゲン(主にII型、IX、XおよびXIの他のタイプを含む)、マトリリン-1および軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質(COMP)に対する自己抗体はRP患者で見出されている。いずれの自己抗体もRP患者の一部でしか認められないために、RP診断上の価値は認められていない。多くのRP患者の病態に共通する自己免疫反応は明らかにはなっていない。■ 症状1)基本的な症状RPでは時間経過とともに、あるいは治療によって炎症は次第に治まるが、再発を繰り返し徐々にそれぞれの臓器の機能不全症状が強くなる。軟骨の炎症が基本であるが、必ずしも軟骨細胞が存在しない部位にも炎症が認められる事があり、注意が必要である。特有の症状としては、軟骨に一致した疼痛、発赤、腫脹であり、特に鼻根部(鞍鼻)や耳介の病変は特徴的である。炎症は、耳介、鼻柱、強膜、心臓弁膜部の弾性軟骨、軸骨格関節における線維軟骨、末梢関節および気管の硝子軟骨などのすべての軟骨で起こりうる。軟骨炎は再発を繰り返し、耳介や鼻の変形をもたらす。炎症発作時の症状は、軟骨部の発赤、腫脹、疼痛であるが、重症例では発熱、全身倦怠感、体重減少もみられる。突然の難聴やめまいを起こすこともある。多発関節炎もよく認められる。関節炎は通常、移動性で、左右非対称性で、骨びらんや変形を起こさない。喉頭、気管、気管支の軟骨病変によって嗄声、窒息感、喘鳴、呼吸困難などさまざまな呼吸器症状をもたらす。あるいは気管や気管支の壁の肥厚や狭窄は無症状のこともあり、逆に二次性の気管支炎や肺炎を伴うこともある。わが国のRPにおいてはほぼ半数の症例が気道病変を持ち、重症化の危険性を有する。呼吸器症状は気道狭窄によって上記の症状が引き起こされるが、狭窄にはいくつかの機序が存在する。炎症による気道の肥厚、炎症に引き続く気道線維化、軟骨消失に伴う吸・呼気時の気道虚脱、両側声帯麻痺などである。気道狭窄と粘膜機能の低下はしばしば肺炎を引き起こし、死亡原因となる。炎症時には気道過敏性が亢進していて、気管支喘息との鑑別を要することがある。この場合には、吸引、気管支鏡、気切、気管支生検などの処置はすべて死亡の誘因となるため、気道を刺激する処置は最小限に留めるべきである。一方で、気道閉塞の緊急時には気切および気管チューブによる呼吸管理が必要になる。2)生命予後に関係する症状生命予後に影響する病変として心・血管系症状と中枢神経症状も重要である。心臓血管病変に関しては男性の方が女性より罹患率が高く、また重症化しやすい。これまでの報告ではRPの患者の15~46%に心臓血管病変を認めるとされている。その内訳としては、大動脈弁閉鎖不全症(AR)や僧帽弁閉鎖不全症、心筋炎、心膜炎、不整脈(房室ブロック、上室性頻脈)、虚血性心疾患、大血管の動脈瘤などが挙げられる。RP患者の10年のフォローアップ期間中において、心血管系合併症による死亡率は全体の39%を占めた。筆者らの疫学調査では心血管系合併症を持つRP患者の死亡率は35%であった。心血管病変で最も高頻度で認められるものはARであり、その有病率はRP患者の4~10%である。一般にARはRPと診断されてから平均で7年程度の経過を経てから認められるようになる。大動脈基部の拡張あるいは弁尖の退行がARの主たる成因である。MRに関してはARに比して頻度は低く1.8~3%と言われている。MRの成因に関しては弁輪拡大、弁尖の菲薄化、前尖の逸脱などで生じる。弁膜症の進行に伴い、左房/左室拡大を来し、収縮不全や左心不全を呈する。RP患者は房室伝導障害を合併することがあり、その頻度は4~6%と言われており、1度から3度房室ブロックのいずれもが認められる。高度房室ブロックの症例では一次的ペースメーカが必要となる症例もあり、ステロイド療法により房室伝導の改善に寄与したとの報告もある。RP患者では洞性頻脈をしばしば認めるが、心房細動や心房粗動の報告は洞性頻脈に比べまれである。心臓血管病変に関しては、RPの活動性の高い時期に発症する場合と無症候性時の両方に発症する可能性があり、RP患者の死因の1割以上を心臓血管が担うことを鑑みると、無症候であっても診察ごとの聴診を欠かさず、また定期的な心血管の検査が必要である。脳梗塞、脳出血、脳炎、髄膜炎などの中枢神経障害もわが国では全経過の中では、およそ1割の患者に認める。わが国では中枢神経障害合併症例は男性に有意に多く、これらの死亡率は18%と高いことが明らかになった。眼症状としては、強膜炎、上強膜炎、結膜炎、虹彩炎、角膜炎を伴うことが多い。まれには視神経炎をはじめより重症な眼症状を伴うこともある。皮膚症状には、口内アフタ、結節性紅斑、紫斑などが含まれる。まれに腎障害および骨髄異形成症候群・白血病を認め重症化する。特に60歳を超えた男性RP患者において時に骨髄異形成症候群を合併する傾向がある。全般的な予後は、一般に血液学的疾患に依存し、RPそのものには依存しない。■ RP患者の亜分類一部の患者では気道病変、心血管病変、あるいは中枢神経病変の進展により重症化、あるいは致命的な結果となる場合もまれではない。すなわちRP患者の中から、より重症になり得る患者亜集団の同定が求められている。フランスのDionらは経験した症例に基づいてRPが3つのサブグループに分けられると報告し、分類した。一方で、彼らの症例はわが国の患者群の臨床像とはやや異なる側面がある。そこで、わが国での実態を反映した本邦RP患者群の臨床像に基づいて新規分類について検討した。本邦RP症例の主要10症状(耳軟骨炎、鼻軟骨炎、前庭障害、関節炎、眼病変、気道軟骨炎、皮膚病変、心血管病変、中枢神経障害、腎障害)間の関連検討を行った。その結果、耳軟骨炎と気道軟骨炎の間に負の相関がみられた。すなわち耳軟骨炎と気道軟骨炎は合併しない傾向にある。また、弱いながらも耳軟骨炎と、心血管病変、関節炎、眼病変などに正の相関がみられた。この解析からは本邦RP患者群は2つに分類される可能性を報告した。筆者らの報告は直ちに、Dionらにより検証され、その中で筆者らが指摘した気管気管支病変と耳介病変の間に存在する強い負の相関に関しては確認されている。わが国においても、フランスにおいても、気管気管支病変を持つ患者群はそれを持たない患者群とは異なるサブグループに属していることが確認されている。そして、気管気管支病変を持たない患者群と耳介病変を持つ患者群の多くはオーバーラップしている。すなわち、わが国では気管気管支病変を持つ患者群と耳介病変を持つ患者群の2群が存在していることが示唆された。■ 予後重症度分類(案)(表1)では、致死的になりうる心血管、神経症状、呼吸器症状のあるものは、その時点で重症と考える。腎不全、失明の可能性を持つ網膜血管炎も重症と考えている。それ以外は症状検査所見の総和で重症度を評価する。わが国では、全患者中5%は症状がすべて解消された良好な状態を維持している。67%の患者は、病勢がコントロール下にあり、合計で71%の患者においては治療に対する反応がみられる。その一方、13%の患者においては、治療は限定的効果を示したのみであり、4%の患者では病態悪化または再発が見られている。表1 再発性多発軟骨炎重症度分類画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)現在ではRPの診断にはMcAdamの診断基準(1976年)やDamianiの診断基準(1976年)が用いられる(表2)。実際上は、(1)両側の耳介軟骨炎(2)非びらん性多関節炎(3)鼻軟骨炎(4)結膜炎、強膜炎、ぶどう膜炎などの眼の炎症(5)喉頭・気道軟骨炎(6)感音性難聴、耳鳴り、めまいの蝸牛・前庭機能障害、の6項目の3項目以上を満たす、あるいは1項目以上陽性で、確定的な組織所見が得られる場合に診断される。これらに基づいて厚生労働省の臨床調査個人票も作成されている(表3)。表2 再発性多発軟骨炎の診断基準●マクアダムらの診断基準(McAdam's criteria)(以下の3つ以上が陽性1.両側性の耳介軟骨炎2.非びらん性、血清陰性、炎症性多発性関節炎3.鼻軟骨炎4.眼炎症:結膜炎、角膜炎、強膜炎、上強膜炎、ぶどう膜炎5.気道軟骨炎:喉頭あるいは気管軟骨炎6.蝸牛あるいは前庭機能障害:神経性難聴、耳鳴、めまい生検(耳、鼻、気管)の病理学的診断は、臨床的に診断が明らかであっても基本的には必要である●ダミアニらの診断基準(Damiani's criteria)1.マクアダムらの診断基準で3つ以上が陽性の場合は、必ずしも組織学的な確認は必要ない。2.マクアダムらの診断基準で1つ以上が陽性で、確定的な組織所見が得られる場合3.軟骨炎が解剖学的に離れた2ヵ所以上で認められ、それらがステロイド/ダプソン治療に反応して改善する場合表3 日本語版再発性多発軟骨炎疾患活動性評価票画像を拡大するしかし、一部の患者では、ことに髄膜炎や脳炎、眼の炎症などで初発して、そのあとで全身の軟骨炎の症状が出現するタイプの症例もある。さらには気管支喘息と診断されていたが、その後に軟骨炎が出現してRPと診断されるなど診断の難しい場合があることも事実である。そのために診断を確定する目的で、病変部の生検を行い、組織学的に軟骨組織周囲への炎症細胞浸潤を認めることを確認することが望ましい。生検のタイミングは重要で、軟骨炎の急性期に行うことが必須である。プロテオグリカンの減少およびリンパ球の浸潤に続発する軟骨基質の好塩基性染色の喪失を示し、マクロファージ、好中球および形質細胞が軟骨膜や軟骨に侵入する。これらの浸潤は軟骨をさまざまな程度に破壊する。次に、軟骨は軟骨細胞の変性および希薄化、間質の瘢痕化、線維化によって置き換えられる。軟骨膜輪郭は、細胞性および血管性の炎症性細胞浸潤により置き換えられる。石灰化および骨形成は、肉芽組織内で観察される場合もある。■ 診断と重症度判定に必要な検査RPの診断に特異的な検査は存在しないので、診断基準を基本として臨床所見、血液検査、画像所見、および軟骨病変の生検の総合的な判断によって診断がなされる。生命予後を考慮すると軽症に見えても気道病変、心・血管系症状および中枢神経系の検査は必須である。■ 血液検査所見炎症状態を反映して血沈、CRP、WBCが増加する。一部では抗typeIIコラーゲン抗体陽性、抗核抗体陽性、リウマチ因子陽性、抗好中球細胞質抗体(ANCA)陽性となる。サイトカインであるTREM-1、MCP-1、MIP-1beta、IL-8の上昇が認められる。■ 気道病変の評価呼吸機能検査と胸部CT検査を施行する。1)呼吸機能検査スパイロメトリー、フローボリュームカーブでの呼気気流制限の評価(気道閉塞・虚脱による1秒率低下、ピークフロー低下など)2)胸部CT検査(気道狭窄、気道壁の肥厚、軟骨石灰化など)吸気時のみでなく呼気時にも撮影すると病変のある気管支は狭小化がより明瞭になり、病変のある気管支領域は含気が減少するので、肺野のモザイク・パターンが認められる。3)胸部MRI特にT2強調画像で気道軟骨病変部の質的評価が可能である。MRI検査はCTに比較し、軟骨局所の炎症と線維化や浮腫との区別をよりよく描出できる場合がある。4)気管支鏡検査RP患者は、気道過敏性が亢進しているため、検査中や検査後に症状が急変することも多く、十分な経験を持つ医師が周到な準備をのちに実施することが望ましい。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)全身の検索による臓器病変の程度、組み合わせにより前述の重症度(表2)と活動性評価票の活動性(表3)を判定して適切な治療方針を決定することが必要である。■ 標準治療の手順軽症例で、炎症が軽度で耳介、鼻軟骨に限局する場合は、非ステロイド系抗炎症薬を用いる。効果不十分と考えられる場合は、少量の経口ステロイド剤を追加する。生命予後に影響する臓器症状を認める場合の多くは積極的なステロイド治療を選ぶ。炎症が強く呼吸器、眼、循環器、腎などの臓器障害や血管炎を伴う場合は、経口ステロイド剤の中等~大量を用いる。具体的にはプレドニゾロン錠を30~60mg/日を初期量として2~4週継続し、以降は1~2週ごとに10%程度減量する。これらの効果が不十分の場合にはステロイドパルス療法を考慮する。ステロイド減量で炎症が再燃する場合や単独使用の効果が不十分な場合、免疫抑制剤の併用を考える。■ ステロイド抵抗性の場合Mathianらは次のようなRP治療を提唱している。RPの症状がステロイド抵抗性で免疫抑制剤が必要な場合には、鼻、眼、および気管の病変にはメトトレキサートを処方する。メトトレキサートが奏功しない場合には、アザチオプリン(商品名:イムラン、アザニン)またはミコフェノール酸モフェチル(同:セルセプト)を次に使用する。シクロスポリンAは他の免疫抑制剤が奏功しない場合に腎毒性に注意しながら使用する。従来の免疫抑制剤での治療が失敗した場合には、生物学的製剤の使用を考慮する。現時点では、抗TNF治療は、従来の免疫抑制剤が効かない場合に使用される第1選択の生物学的製剤である。最近では生物学的製剤と同等以上の抗炎症効果を示すJAK阻害薬が関節リウマチで使用されている。今後、高度の炎症を持つ症例で生物学的製剤を含めて既存の治療では対応できない症例については、JAK阻害薬の応用が有用な場合があるかもしれない。今後の検討課題と思われる。心臓弁膜病変や大動脈病変の治療では、ステロイドおよび免疫抑制剤はあまり有効ではない。したがって、大動脈疾患は外科的に治療すべきであるという意見がある。わが国でも心臓弁膜病変や大動脈病変の死亡率が高く、PRの最重症病態の1つと考えられる。大動脈弁病変および近位大動脈の拡張を伴う患者では、通常、大動脈弁置換と上行大動脈の人工血管(composite graft)置換および冠動脈の再移植が行われる。手術後の合併症のリスクは複数あり、それらは術後ステロイド療法(および/または)RPの疾患活動性そのものに関連する。高安動脈炎に類似した血管病変には必要に応じて、動脈のステント留置や手術を行うべきとされる。呼吸困難を伴う症例には気管切開を要する場合がある。ステント留置は致死的な気道閉塞症例では適応であるが、最近、筆者らの施設では気道感染の長期管理という視点からステント留置はその適応を減らしてきている。気管および気管支軟化病変の患者では、夜間のBIPAP(Biphasic positive airway pressure)二相性陽性気道圧または連続陽性気道圧で人工呼吸器の使用が推奨される。日常生活については、治療薬を含めて易感染性があることに留意すること、過労、ストレスを避けること、自覚的な症状の有無にかかわらず定期的な医療機関を受診することが必要である。4 今後の展望RPは慢性に経過する中で、臓器障害の程度は進展、増悪するためにその死亡率はわが国では9%と高かった。わが国では気管気管支病変を持つ患者群と耳介病変を持つ患者群の2群が存在していることが示唆されている。今後の課題は、治療のガイドラインの策定である。中でも予後不良な患者サブグループを明瞭にして、そのサブグループにはintensiveな治療を行い、RPの進展の阻止と予後の改善をはかる必要がある。5 主たる診療科先に行った全国疫学調査でRP患者の受診診療科を調査した。その結果、リウマチ・免疫科、耳鼻咽喉科、皮膚科、呼吸器内科、腎臓内科に受診されている場合が多いことが明らかになった。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 再発性多発軟骨炎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)聖マリアンナ医科大学 再発性多発軟骨炎とは(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報再発性多発軟骨炎患者会ホームページ(患者とその家族および支援者の会)1)McAdam P, et al. Medicine. 1976;55:193-215.2)Damiani JM, et al. Laruygoscope. 1979;89:929-946.3)Shimizu J, et al. Rheumatology. 2016;55:583-584.4)Shimizu J, et al. Arthritis Rheumatol. 2018;70:148-149.5)Shimizu J, et al. Medicine. 2018;97:e12837.公開履歴初回2020年02月24日

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