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超急性期脳卒中、救急車内での降圧治療は有効か?/NEJM

 急性脳卒中が疑われる血圧高値の患者において、病院到着前に救急車内で降圧治療を行っても機能的アウトカムは改善しない。中国・同済大学のGang Li氏らが、同国51施設で実施した無作為化非盲検試験「INTERACT4試験」の結果を報告した。本試験では、病院到着後に対象患者の46.5%が脳出血と診断された。虚血性か出血性か病型判別前の急性脳卒中の治療は困難で、救急車内の超早期血圧コントロールが、未診断の急性脳卒中患者のアウトカムを改善するかどうかは不明であった。NEJM誌オンライン版2024年5月16日号掲載の報告。発症後2時間以内、収縮期血圧150mmHg以上の脳卒中疑い患者を対象に試験 研究グループは、FASTスコア(顔[顔面下垂]、腕[上がらない]、言語[言葉が不明瞭]、時間[救急車を呼ぶまでの時間])が2以上(範囲:0~4、スコアが高いほど症状が強いことを示す)、収縮期血圧150mmHg以上、症状発現後2時間以内の急性脳卒中が疑われる成人患者を、救急車内でただちに降圧治療を行う群(介入群)と、病院到着後に血圧管理を開始する群(通常ケア群)に、地域(中国の東部vs.西部)、年齢(65歳以上vs.65歳未満)、FASTスコア(3点以上vs.2点)を層別因子として無作為に割り付けた。 介入群では、救急車内でウラピジル25mgを1分間でボーラス投与し、収縮期血圧が130~140mmHgに低下しない場合は、5分後に1回のみ同用量を再投与した。 有効性の主要アウトカムは、無作為化後90日時点の修正Rankinスケールスコア(範囲:0[症状なし]~6[死亡])の分布で評価した機能的アウトカムで、ITT集団を解析対象とした。安全性アウトカムは、重篤な有害事象であった。降圧治療の開始、救急車内と病院到着後で全体では機能的アウトカムに差はなし 2020年3月20日~2023年8月31日に計2,425例が無作為化され、同意撤回等を除く2,404例(介入群1,205例、通常ケア群1,199例)がITT集団となった。 患者背景は、平均年齢70歳、発症から無作為化までの時間の中央値は61分(四分位範囲[IQR]:41~93)、無作為化時の平均血圧は178/98mmHgであった。病院到着後に画像検査で脳卒中と確定診断されたのは2,240例で、そのうち1,041例(46.5%)が脳出血(脳内出血1,029例、くも膜下出血12例)、計1,199例(53.5%)が脳梗塞(頭蓋外または頭蓋内のアテローム性または心塞栓症による脳梗塞907例、一過性脳虚血発作53例)であった。また、病院到着時の平均収縮期血圧は、介入群158mmHg、通常ケア群170mmHgであった。 無作為化後90日時点の修正Rankinスケールスコアの分布について、両群間に有意差は認められなかった(機能的アウトカム不良の調整共通オッズ比[OR]:1.00、95%信頼区間[CI]:0.87~1.15)。 サブグループ解析の結果では、機能的アウトカム不良の調整共通ORは脳出血患者では低く(0.75、95%CI:0.60~0.92)、脳梗塞患者では高かった(1.30、1.06~1.60)。ただし同解析は階層的統計解析計画には含まれていなかったため、著者は「これらの関連について結論付けることはできない」としている。 重篤な有害事象の発現率は、介入群27.5%、通常ケア群28.7%であり、両群で同程度であった。

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カリウム吸着薬の必要性を検討して薬剤性便秘を解消【うまくいく!処方提案プラクティス】第60回

 今回は、治療評価がなされずに長期服用していたカリウム吸着薬の副作用と思われる便秘に着目し、中止することで解消した症例を紹介します。患者さんや施設スタッフの負担となっていることを聴取し、服薬契機や治療評価の時期などに注目してみると、現在の治療の必要性を考えやすくなります。薬剤師の視点で考えたことを整理して、医師と意見共有してみましょう。患者情報88歳、男性(施設入居)基礎疾患認知症、脳梗塞、糖尿病、胸部大動脈瘤、大腸がん術後介護度要介護4服薬管理施設職員が管理処方内容1.アスピリン・ランソプラゾール配合錠 1錠 分1 朝食後2.ビソプロロール錠0.625mg 2錠 分1 朝食後3.ポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリー20% 25g 分1 朝食後4.トラゾドン錠25mg 1錠 分1 朝食後5.シタグリプチンリン錠50mg 1錠 分1 朝食後6.酪酸菌配合錠 3錠 分3 毎食後7.酸化マグネシウム錠330mg 3錠 分3 毎食後8.ピコスルファートNa内用液0.75% 10mL 便秘時5〜15滴で調整本症例のポイントこの患者さんは、施設入居から間もなく硬便(ブリストル便形状スケール[BSFS]1〜2)と便秘症状が強くなり、酸化マグネシウムと頓用のピコスルファートを開始して2週間が経過しました。BSFS 2および排便頻度が2〜3日のため、ピコスルファート15滴で調整を続けていましたが、便秘解消がいまひとつで不穏症状も出現していました。介護スタッフから、服薬錠数が増えると介護抵抗なども強くなるので何かよい手立てはないか、と相談がありました。現状の服用薬剤から何か減らすことで工夫はできないかという点から、薬剤性便秘の可能性を探りました。そこで着目したのが、ポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリーでした。ポリスチレンスルホン酸Caは、腸内のカリウムイオンと本剤のカルシウムイオンを交換することで、カリウムを体外に排泄する薬剤(陽イオン交換樹脂)1)ですが、便秘の副作用が多く、重大な副作用として腸管穿孔の報告2)もあります。導入の経緯を診療情報提供書にさかのぼって調査すると、カリウム値が5.6mEq/Lと高カリウム血症を発症した際に、ポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリー50g 分2 朝夕食後の処方が開始となっていました。その3週間後の採血で3.5mEq/Lに低下したことから現在の量に減量となっていました。大腸がん術後でイレウスのリスクもあることと、認知症があることから便秘増悪でせん妄リスクもあることから排便コントロールは重要です。カリウム値をモニタリングしながらポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリーを中止することで、服薬数も減らすことができ、排便コントロールも少なからずポジティブな効果になるのではないだろうかと考えました。医師への相談と経過医師に電話で、下剤調整後の現況を情報共有し、ポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリーによる弊害の可能性について相談しました。医師も、用量は少ないものの副作用報告として多いことを認識しており、中止しようと返答がありました。また、カリウム値については次回の診療で採血をしてフォローすることとなりました。指示を受けた翌日からポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリーが中止となりました。患者さんは、中止して2日後には排便があり(BSFS 3、中等量)、その後も安定して0〜1日の排便(BSFS 2〜3、中等量)で安定して経過しています。さらに、その後のカリウム値の検査結果も4.0mEq/Lと基準値内で推移していました。便秘増悪には環境変化などさまざま要因がありますが、薬剤性のアプローチは薬剤師にとって大事なアクションの1つだと実感した事例です。1)ポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリー20% インタビューフォーム2)「消化器内視鏡」編集委員会編. 大腸疾患アトラスupdate. 東京医学社;2020. p232.

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日本人脳卒中患者では低体重ほど転帰不良/国立循環器病研究センター

 ボディマス指数(BMI)の高い人は、そうでない人に比べ、生活習慣病や心血管病の発症リスクが高い一方で、心血管病発症後の機能回復はむしろ良好であることが報告されている。脳卒中でも、肥満は発症リスク因子となるが、脳卒中発症後の転帰に関する研究結果は一貫していないことから、国立循環器病研究センターの三輪 佳織氏らの研究グループは、BMIが脳卒中後の転帰に影響があるか検証を行った。その結果、BMIが脳卒中病型ごとの転帰に影響を及ぼすことが判明し、とくにBMIが低い人では不良となることがわかった。この研究結果はInternational Journal of Stroke誌オンライン版2024年4月23日号に掲載された。高齢者の健康管理に役立つBMIの数値は 研究グループは、2006年1月~22年12月まで日本脳卒中データバンク(JSDB)に登録された急性期脳卒中例のうち入院時BMIが入力された症例を対象とした。BMIはWHO推奨のアジア人における定義に基づき、18.5未満を低体重、18.5~23.0未満を正常体重、23.0~25.0未満を過体重、25.0~30.0未満をI度肥満、30以上をII度肥満と分類した。脳卒中は、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血に分類し、さらに脳梗塞病型はTOAST分類を用いて、心原性脳塞栓症、アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞、その他の脳梗塞、原因不明脳梗塞に分類した。 評価項目である退院時の転帰(患者自立度)は、国際標準尺度である修正ランキンスケール(0[後遺障害なし]~6[死亡]の7段階の評価法)を用い、同尺度の5~6を転帰不良、0~2を転帰良好と定義した。これらを共変量で調整した後、混合効果ロジスティック回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・急性期の脳卒中5万6,230例のうち、脳梗塞(4万3,668例、平均年齢74±12歳、男性61%)、脳出血(9,741例、平均年齢69±14歳、男性56%)、クモ膜下出血(2,821例、平均年齢63±15歳、男性33%)が今回の研究対象。・BMI18.5未満(低体重)は、脳梗塞と各病型(心原性脳塞栓症、アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞)や脳出血における転帰不良のリスクを約1.4~2.3倍に高めた。・アテローム血栓性脳梗塞では、BMIと転帰不良にU字型の関連を認め、低体重と肥満はいずれも、転帰不良のリスクを高めた。・低体重は、とくに重症の脳梗塞や再灌流療法後における転帰不良と関連した。・BMI23.0~25.0(過体重)や80歳以上の高齢者におけるBMI25.0~30.0(I度肥満)のグループは、脳梗塞後の転帰不良リスクが9~17%低下し、“obesity paradox”を認めた。 研究グループは、今回の研究結果から「高齢者の体重管理の目標値としてBMI25を基準にすることが適切であり、BMIに基づく体重管理は脳卒中の発症予防および重症化予防の実現可能な対策といえる」と考察を行っている。

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CVDの1次予防にバイオマーカー追加は有用か/JAMA

 心血管イベントの1次予防において、5つの心血管バイオマーカーはいずれもアテローム性動脈硬化性心血管疾患の発生と有意に関連するものの、その関連性は小さく、心不全と死亡率についてはより強力な関連を認めるが、確立された従来のリスク因子と心血管バイオマーカーを組み合わせてもアテローム性動脈硬化性心血管疾患のリスク予測能の改善はわずかであることが、ドイツ・University Heart and Vascular Center HamburgのJohannes Tobias Neumann氏らの検討で示された。研究の成果はJAMA誌オンライン版2024年5月13日号で報告された。28件の住民ベースのコホート研究の患者データを解析 研究グループは、日本を含む12ヵ国で行われた28件の住民ベースのコホート研究から得た個々の患者データを用いて、心血管バイオマーカーおよび従来のリスク因子に心血管バイオマーカーを加えた場合の予後予測能の評価を行った(European Union project euCanSHareの助成を受けた)。 これらのコホート研究では、心血管バイオマーカーとして、高感度心筋トロポニンI、高感度心筋トロポニンT、N末端プロ脳性(B型)ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)、脳性(B型)ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、高感度C反応性蛋白(hs CRP)を測定した。追跡期間中央値は11.8年だった。 主要アウトカムは、すべての致死的および非致死的なイベントを含む初発のアテローム性動脈硬化性心血管疾患(冠動脈性心疾患イベント[possibleまたはdefinite]、脳梗塞イベント[同]、冠動脈血行再建、冠動脈性心疾患死、脳梗塞死、分類不能の死亡)の発生とした。全バイオマーカーで有意な関連、全死因死亡、心不全との関連が強い 16万4,054例(年齢中央値53.1歳[四分位範囲[IQR]:42.7~62.9]、女性52.4%)を解析の対象とした。アテローム性動脈硬化性心血管疾患イベントは1万7,211件発生した。 すべてのバイオマーカーで、アテローム性動脈硬化性心血管疾患の発生と有意な関連を認めた。1SDの変化当たりのサブディストリビューション・ハザード比は、高感度心筋トロポニンIが1.13(95%信頼区間[CI]:1.11~1.16)、高感度心筋トロポニンTが1.18(1.12~1.23)、NT-proBNPが1.21(1.18~1.24)、BNPが1.14(1.08~1.22)、hs CRPが1.14(1.12~1.16)であった。 副次アウトカムである全死因死亡、心不全、脳梗塞、心筋梗塞の発生についても、同様の有意な関連がみられた。バイオマーカーと全死因死亡および心不全との関連は、アテローム性動脈硬化性心血管疾患との関連よりも強力であった。バイオマーカーの併用も有望 確立されたリスク因子を含むモデルに、それぞれ単一のバイオマーカーを加えると、C統計量が改善した。 また、高感度心筋トロポニンI、NT-proBNP、hs CRPを併用すると、10年間のアテローム性動脈硬化性心血管疾患発生のC統計量が、65歳未満では0.812(95%CI:0.8021~0.8208)から0.8194(0.8089~0.8277)へ、65歳以上では0.6323(0.5945~0.6570)から0.6602(0.6224~0.6834)へと改善した。 さらに、これらのバイオマーカーを組み合わせると、従来のモデルと比較して、リスクの再分類も改善された。 著者は、「すべてのバイオマーカーはアテローム性動脈硬化性心血管疾患の発生だけでなく、全死因死亡、心不全、脳梗塞、心筋梗塞の予測因子であった。いずれのバイオマーカーも、致死的または非致死的なアテローム性動脈硬化性心血管疾患イベントと比較して、全死因死亡および心不全と強い関連を示すという興味深い知見が得られた」とまとめている。

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ASPECTS 0~5の広範囲脳梗塞にも血管内治療は有効か?/NEJM

 ベースラインでの梗塞サイズの上限を設けずに試験登録した急性期広範囲脳梗塞患者において、血栓除去術+内科的治療は内科的治療単独と比べて、良好な機能的アウトカムをもたらし、死亡率も低下したことが示された。ただし症候性脳出血の発生率は高かった。フランス・Hopital Gui de ChauliacのVincent Costalat氏らLASTE Trial Investigatorsが、多施設共同前向き非盲検無作為化試験「LASTE試験」の結果を報告した。梗塞サイズの上限を設けない急性期広範囲脳梗塞患者における血栓除去術の使用については、これまで十分に検証されていなかった。NEJM誌2024年5月9日号掲載の報告。ASPECTS≦5の急性期脳梗塞患者、血栓除去術併用vs.内科的治療単独を評価 研究グループは、発症後6.5時間以内に、MRIまたはCTで前方循環の近位主幹動脈閉塞による広範囲脳梗塞が認められた18歳以上の患者を対象とした。広範囲脳梗塞の定義は、Alberta Stroke Program Early Computed Tomographic Score(ASPECTS、スコア範囲:0~10、低スコアほど梗塞が広範囲であることを示す)5以下とした。 適格患者を1対1の割合で、血栓除去術+内科的治療を受ける群(血栓除去群)または内科的治療のみを受ける群(対照群)に割り付け追跡評価した。 有効性の主要アウトカムは、90日時点の修正Rankinスケールスコアとした(スコア範囲:0~6、高スコアほど障害が大きいことを示す)。安全性の主要アウトカムは、90日時点の全死因死亡とし、安全性の副次アウトカムは、無作為化後24時間以内の症候性脳出血などとした。90日時点の修正Rankinスケールスコア、4 vs.6で有意差あり 2019年4月~2022年3月に、フランスの24病院とスペインの6病院で、計333例が無作為化された(血栓除去群166例、対照群167例)。このうち9例は同意撤回または法的理由により除外され、324例を対象に解析が行われた(血栓除去群159例、対照群165例)。 両群のベースライン特性は類似しており、年齢中央値74歳、女性47.5%、ASPECTS中央値2(四分位範囲[IQR]:1~3)、ベースラインでの梗塞容積中央値135mL(IQR:106~185)であった。 本試験は、同様の試験で血栓除去群が優れているとの結果が示されため、早期に中止された。なお、本試験では患者の34.9%が血栓溶解療法を受けた。 90日時点の修正Rankinスケールスコア中央値は、血栓除去群4、対照群6であった(一般化オッズ比:1.63、95%信頼区間[CI]:1.29~2.06、p<0.001)。 90日時点の全死因死亡率は、血栓除去群36.1%、対照群55.5%であった(補正後相対リスク:0.65、95%CI:0.50~0.84、p<0.001)。一方で症候性脳出血の発生が、それぞれ9.6%、5.7%報告された(補正後相対リスク:1.73、95%CI:0.78~4.68)。血栓除去群において、手術に関連した合併症が11例報告された。

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2型DMへのGLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬、併用vs.単剤/BMJ

 2型糖尿病患者では、GLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬の併用は、これらの薬剤クラスの単剤投与と比較して、主要有害心血管イベント(MACE)および重篤な腎イベントのリスクを低減することが、英国・バーミンガム大学のNikita Simms-Williams氏らが実施したコホート研究で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年4月25日号に掲載された。英国のコホート研究 本研究では、2013年1月~2020年12月に集積した英国の2型糖尿病患者の2つのコホートのデータを使用した(カナダ保健研究機構[CIHR]の助成を受けた)。 1つは、GLP-1受容体作動薬で治療を開始し、SGLT2阻害薬を追加した6,696例(平均年齢56.7歳、男性54.5%)、もう1つはSGLT2阻害薬で治療を開始し、GLP-1受容体作動薬を追加した8,942例(57.6歳、52.3%)のコホートであった。併用群は、個々の基礎治療薬(GLP-1受容体作動薬またはSGLT2阻害薬の単剤投与)とその投与期間が同じ患者と、傾向スコアでマッチングを行った。 主要アウトカムは、MACE(心筋梗塞、脳梗塞、心血管死)および重篤な腎イベントとし、GLP-1受容体作動薬+SGLT2阻害薬の併用と2つの基礎治療薬単剤をそれぞれ比較した。併用により、単剤に比べMACEリスクが約3割低下 GLP-1受容体作動薬単剤と比較して、GLP-1受容体作動薬+SGLT2阻害薬の併用では、MACEのリスクが30%低下(1,000人年当たりのイベント数:併用群7.0件vs.単剤群10.3件、ハザード比[HR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.49~0.99)し、重篤な腎イベントのリスクは57%減少(2.0件vs.4.6件、0.43、0.23~0.80)した。 また、SGLT2阻害薬単剤に比べ、GLP-1受容体作動薬+SGLT2阻害薬の併用では、MACEのリスクが29%低下(1,000人年当たりのイベント数:併用群7.6件vs.単剤群10.7件、HR:0.71、95%CI:0.52~0.98)したのに対し、重篤な腎イベントのリスクのCIは範囲が広かった(1.4件vs.2.0件、0.67、0.32~1.41)。MACEの各項目には大きな差はない MACEの各項目については、GLP-1受容体作動薬単剤との比較では、心筋梗塞(HR:0.73、95%CI:0.45~1.17)、脳梗塞(0.90、0.48~1.67)に併用群との差はなく、心血管死(0.35、0.15~0.80)は併用群で良好であったもののCIの範囲が広かった。心不全(0.57、0.35~0.91)も併用群で良好だったが、CIの範囲は広く、全死因死亡(0.71、0.49~1.02)には差を認めなかった。 また、SGLT2阻害薬単剤との比較では、併用群で心筋梗塞(HR:0.73、95%CI:0.48~1.12)、脳梗塞(0.86、0.46~1.59)、心血管死(0.54、0.29~1.01)に差はなく、心不全(0.70、0.40~1.23)、全死因死亡(0.73、0.52~1.01)にも差を認めなかった。 著者は、「これらの知見は、2型糖尿病の治療における、心血管イベントおよび腎イベントの予防において、これら2つの有効な薬剤クラスの併用の潜在的な有益性を強調するものである」としている。

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第32回 起きたら麻痺、治療の選択肢は?【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)脳梗塞の治療の選択肢と適応条件を理解しよう!2)Wake-up strokeのマネジメントを理解しよう!【症例】75歳男性。意識障害。普段であれば7時には起床するが、起きて来ないため奥さんが様子を見に行くと反応乏しく、救急要請。●来院時のバイタルサイン意識20/JCS血圧178/96mmHg脈拍89回/分(不整)呼吸20回/分SpO295%(RA)体温36.4℃瞳孔3.5/4 +/+右上下肢の麻痺を認める既往歴高血圧、脂質異常症内服薬定期内服薬なし脳卒中の現状脳卒中には大きく脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血が含まれますが、わが国で最も頻度が高いのは脳梗塞で全体の75%を占めます。この20年間で脳卒中診療は大きく変貌し、その中でも脳梗塞は血栓溶解療法、血栓回収療法の確立によって、症状、予後の劇的な改善を認める症例も珍しくありません。しかし、どちらの治療も時間的制限があるため、早期に脳梗塞を疑い、診断、治療へと繋げる必要があります。脳梗塞の治療の選択血栓溶解療法は、発症後4.5時間以内の脳梗塞が適応であるため、発症後明らかにそれ以上時間が経過している場合は適応外です。これに対し血栓回収療法は、当初発症6時間以内でしたが、いまでは16時間、24時間以内と適応症例の時間が延びています。もちろん、患者の基礎疾患やADLなども加味して治療を選択しますが、以前のように発症から4.5時間以内か否かではなく、血栓回収療法の適応があるか否かも判断できる必要があります。血栓回収療法の適応のある脳梗塞は、以前は内頸動脈や中大脳動脈などの主幹動脈閉塞で、DWI-ASPECTS≧6でしたが、最近では発症6時間以内であればASPECT3~5点の症例や後方循環系の脳梗塞にも拡大しています1-3)。詳細について本稿では割愛しますが、治療適応の症例が拡大傾向にあることを知り、可能な限り治療の選択肢を逃さぬようマネジメントする必要がありますWake-up stroke皆さん1日どれくらい寝ていますか? 8時間程度の睡眠時間を確保したいところですが、実際は6時間程度という方が多いのではないでしょうか。大多数の人が1日の約1/4~1/3を睡眠に費やしています。そのため、脳梗塞も就寝中に起きることは珍しくありません。睡眠中に脳卒中を発症し、起床時にその症状を初めて認識する状態を“wake-up stroke”と言います。Wake-up stroke症例は、血栓溶解療法や血栓回収療法の適応はないのでしょうか? 後者は前述の通り適応があることは理解できると思いますが、血栓溶解療法はどうでしょうか?Wake-up strokeの割合は、脳梗塞全体の14〜27%程度です4,5)。起床時からの症状で最終未発症時刻(最後に普段通りであった時間)が就寝前であれば、4.5時間以上の時間が経過しているため血栓溶解療法の適応はなしかというと、必ずしもそうとは限りません。朝方にトイレに行ったであろう物音を同居の家族が確認している、朝起きてこないため様子を見に行ったときには着替えた状態であったなど、発症からそれ程時間が経っていないことが示唆される場合もあります。このあたりを意識して病歴を確認するようにしましょう。また、最近ではMRI-DWI/FLAIR mismatchを利用し、血栓溶解療法の適応か否かを判断することもあります。MRIの拡散強調像(DWI)では脳梗塞発症30分〜1時間で高信号になりますが、FLAIRでは4〜6時間で陽性となります。この差を利用し、DWIで高信号であるもののFLAIRでは異常所見が確認できない場合には、発症から4.5時間以内と判断し、血栓溶解療法を考慮するわけです6)。冒頭の症例、就寝したのは22時前後のようですが、その後の経過は正確には把握できませんでした。奥さんの話では、トイレに行った音が聞こえたような…と曖昧な返答はあったものの、それのみでは発症時間は不明確ですよね。頭部CTでは特記異常所見を認めず、MRIを撮影し、血栓溶解療法を行うこととなりました。さいごに脳梗塞の治療はめまぐるしく進歩しています。脳卒中専門の施設では、脳梗塞の疑い症例に対して最先端の画像や人員を駆使して対応していることも多いとは思いますが、診療所や救急外来では限られた人数で並行して多くの患者さんを診ていることでしょう。医療者自身の対応の遅れによって、治療の選択を減らさないようにしましょう。1)日本脳卒中学会、ほか. 経皮経管的脳血栓回収用機器適正使用指針 第4版. 2020.2)Yoshimura S, et al. N Engl J Med. 2022;386:1303-1313.3)Xu J, et al. Stroke Vasc Neurol. 2023;8):1-3.4)Fink JN, et al. Stroke. 2002;33:988-993.5)Mackey J, et al. Neurology. 2011;76:1662-1667.6)日本脳卒中学会脳卒中医療向上・社会保険委員会静注血栓溶解療法指針改定部会. 静脈血栓溶解(rt-PA)療法適正治療指針 第3版.2019.

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心房細動の再発に歯周病が関与?

 心房細動のアブレーション治療後の再発に、歯周病が関与していることを示唆するデータが報告された。アブレーション治療のみを受けた人に比べて、歯周病の治療も受けた人では、心房細動の再発が61%少なかったという。広島大学保健管理センターの宮内俊介氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に4月10日掲載された。同氏は、「歯周病の適切な管理は心房細動の予後を改善する可能性があり、その恩恵を受ける人が世界中に多数存在しているのではないか」と述べている。 心房細動は不整脈の一種で、自覚症状として動悸やめまいなどを生じることがある。ただしより重要なのは、心臓の中に血液の塊(血栓)が形成されやすくなるために、その血栓が脳の動脈に運ばれて脳梗塞が起きてしまうリスクが高い点にある。このタイプの脳梗塞は梗塞の範囲が広いことが多く、重症になりやすい。人口の高齢化を背景に心房細動が増加しており、米国では2030年までに患者数が1200万人以上に達すると予測されている。心房細動に対する治療としては、不規則な心拍を引き起こす原因となっている箇所を焼灼する、血管カテーテルを用いたアブレーション治療という手法が普及してきている。 一方、口の中の健康状態が全身の健康状態と関連のあることが知られている。しかしこれまでのところ、歯周病が心房細動のリスク因子の一つとは認識されていない。宮内氏らはこの点について、前向き非無作為化試験により検討した。研究参加者は、アブレーション治療を受けた心房細動患者288人。このうち97人が、アブレーション治療後に歯周病の治療も受けることに同意していた。 アブレーション治療から507±256日の追跡で、70人(24%)が心房細動を再発した。交絡因子を調整後、歯周病の治療を受けた患者群はアブレーション治療のみを受けた患者群に比べて、心房細動の再発リスクが約6割低いことが明らかになった〔ハザード比(HR)0.393(95%信頼区間0.215~0.719)〕。また、心房細動を再発した群は再発しなかった群に比べて、歯周病の重症度が高かった〔炎症のある歯周組織の面積(PISA)が456.8±403.5対277.7±259.0mm2(P=0.001)〕。 この結果について宮内氏は、「歯周病治療が心房細動の再発リスクを大きく下げる可能性が示されたことに驚いた」と語っている。米国心臓協会(AHA)によると、「炎症が起きている歯周組織から、細菌が血液中に侵入して全身に慢性的な炎症が生じる。その結果、2型糖尿病リスクが高まるとともに、心臓や脳の血管の炎症を介して動脈硬化が進行し、心臓発作や脳卒中の発症に至る可能性がある」という。ただし、心房細動のリスクに影響が生じるメカニズムは不明であり、宮内氏らはその点の解明のための研究を進めていることを、AHA発のリリースの中で述べている。また研究者らは、「心房細動の患者に対して歯周病の検査と治療を受けることを推奨すべきだ」と提案している。

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洗脳事件の謎解き【Dr. 中島の 新・徒然草】(527)

五百二十七の段 洗脳事件の謎解き今年はいつもより暑いですね。そろそろ熱中症の患者さんが運ばれてくる時期になりました。何と言っても、自分自身が熱中症にならないよう気を付けなくてはなりません。さて、先日は私が卒業した兵庫県立神戸高等学校の同窓会がありました。われわれの学年は29回生なので、大抵が4月29日の昭和の日にあります。6年前の前回が「まさかの還暦同窓会」というタイトルでしたが、今回は「前期高齢者突入記念同窓会」と名付けられていました。久しぶりに集まった200人だか300人だか。高校時代と変わらぬ顔の人もいれば、言われてもわからないほど変化している人もいます。前期高齢者が揃ったら盛り上がるのは病気談義。心筋梗塞、脳梗塞、労作性狭心症、直腸がん、転移性脳腫瘍と病気のオンパレードです。もはや高血圧や糖尿病などはデフォ扱い。皆にコメントを求められる立場なので、適当に答えておきました。逆に私に対して医学的アドバイスをしてくる人もいましたが、上手に相槌を打つことができたのは日頃の外来修業のおかげかもしれません。さて、面白かったのは小学校、中学校、高等学校と12年間同じ学校に通いながら、初対面としか思えない人がいたことです。普通はどこかに接点がありそうなのですが。本当に知らない顔だったので、仮に彼女の名前を白内 佳織(しらない・かおり)さんとでもしておきましょう。果たして1回もクラスが一緒にならなかったのでしょうか?中島「じゃあちょっと確認してみよう。小学校1年生の時の担任は春山先生」白内「私は夏川先生だから別のクラスね」中島「2年生の時は秋原先生という女の先生だったけど、途中から産休になってピンチヒッターで来たのが誰だったかな」白内「冬谷先生よ。だったら一緒の担任じゃない!」なんと彼女とは私と同じクラスだったことがあるみたいです。それでも思い出せません。中島「3年生は東山先生だけど」白内「私も東山先生よ!」中島「あれえ、同じクラスだったかな?」この調子で12年間を振り返ると、なんと小学校で3回、中学校で1回、同じクラスになっていたことがわかりました。それでも何も思い出さないのです。で、ここからが本番!中島「じゃあ、小学校3年生の時のあの洗脳事件を覚えているか?」白内「もちろんよ、放課後にクラス全員が学級委員長に言われて、教室に残されたやつでしょ!」中島「あれは衝撃やったなあ」白内「人にしゃべってはいけないと思ったから、今まで黙っていたけど……」中島「僕もや。人に言っても信じてもらえなさそうやし」事件といっても、誰かが死んだとか誘拐されたとかいうようなシリアスな話ではありません。席に立たされて学級委員長に言われるがままクラスメートを罵倒したり、それができなくて泣き出したり……今になってみれば「あれは何だったんだ?」としか思えないのですが、当時の小学校3年生にとっては十分に大事件でした。ようやくあの事件を語り合うことのできる相手に出会うことができたわけです。実際に事件の内容を話してみると、彼女と私の記憶はピタリと一致しました。中島「やっぱり同じ時に同じ教室にいたのか。ようやく確信できたぞ!」白内「私は習い事があったから、委員長を突き飛ばして先に帰ったのよ。あの後、どうなったの?」中島「僕はなかなか洗脳が解けなくて、ずっといたけどな」ここに至ってようやく親しみを感じた次第です。もちろん同窓会のことなので、他にも大勢の人と世間話をしました。でも、高校時代の記憶がいろいろとよみがえってきたのは翌日になってから。「あの時あんなことがあったけど覚えているか?」みたいな話をもっとできたら良かったのですが。次の同窓会は、おそらく古希になってから。できれば元気に出席したいものです。ということで最後に1句昭和の日 答え合わせの 同窓会

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コロナ禍以降、自宅での脳卒中・心血管死が急増/日本内科学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行期において、自宅や介護施設での脳卒中や心筋梗塞などの循環器疾患による死亡が増加し、2023年末時点でも循環器疾患による死亡のトレンドが減少していないことが、白十字会白十字病院 脳血管内科の入江 克実氏らの研究グループによる解析で明らかになった。本研究は、4月12~14日に開催された第121回日本内科学会総会・講演会の一般演題プレナリーセッションにて、入江氏が発表した。 入江氏によると、国内での総死亡数の推移データにおいて、2023年末時点でもCOVID-19流行前と比べて超過死亡は増加しているという。COVID-19の5類移行後はピークアウトしつつあるが、2023年では12万人ほどの超過死亡が見込まれ、その主な死因としてCOVID-19や循環器疾患の増加が認められる。しかし、2017~22年度のDPC対象病院における循環器疾患死亡数の推移データによると、死亡数が大きく増加している傾向は認められない。そのため本研究では、同時期の病院外での循環器疾患による死亡の推移を検討した。 本研究では、政府統計e-Stat人口動態統計を用い、死亡場所別に2013~22年の総死亡数と循環器疾患死亡数を抽出した。死亡場所は、病院/診療所、介護施設/老人ホーム、自宅に分類した。主な疾患ごとにCOVID-19拡大前(2013~19年)の死亡数から回帰直線を求め、2020年以降の推計値を算出し、実測値との差分を超過死亡とした。都道府県別にも同様の抽出を行い、COVID-19前後で自宅死亡数とその増減率を比較検討した。 主な結果は以下のとおり。・総死亡の死亡場所について、2013~19年までは病院/診療所、介護施設/老人ホーム、自宅のいずれも±3%内で、死亡数の推移に大きな変化はみられない。しかし、コロナ拡大後、病院外では死亡数が増加し続け、2022年の超過死亡率は、自宅では35%、介護施設/老人ホームでは23%に増加していた。一方、病院/診療所では、2020~21年に-5%まで一過性の減少を示したが、2022年には元のトレンドに戻った。・脳梗塞による死亡では、2013~19年の病院、介護施設、自宅のいずれも±6%内だが、COVID-19拡大後の2022年の超過死亡率は、自宅ではとくに顕著に48%に増加し、介護施設では13%、病院では7%に増加していた。・脳出血による死亡では、2013~19年の病院、介護施設、自宅のいずれも±5%内だが、2022年の超過死亡率は、自宅では13%、介護施設では17%に増加していた。一方、病院では2020~21年では-5%まで減少し、2022年では-2%であった。・心筋梗塞による死亡では、2013~19年の病院、介護施設、自宅のいずれも±3%内だが、2022年の超過死亡率は、病院で16%まで増加し、他の疾患とは異なる傾向が認められた。介護施設では23%、自宅では12%と病院外の死亡も増加している。・心不全による死亡では、2013~19年ではいずれの場所でも±7%内だが、2022年の超過死亡率は、自宅では33%、介護施設では12%に増加していた。病院では2020~21年に一過性の減少を示し、2022年には元のトレンドに戻った。・都道府県別にみた脳卒中による自宅死亡数では、COVID-19前後の変化に地域差が見られ、とくに大阪府(30%増)と群馬県(30%増)での自宅死亡率が増加していた。・都道府県別にみた心疾患による自宅死亡数では、とくに福岡県(61%増)と神奈川県(38%増)での自宅死亡率が増加していた。 入江氏は本結果について、「コロナ流行期における循環器疾患による病院外死亡数の増加は、サージキャパシティの不足によるものなのか、病院との連携による在宅看取りが進んでいるためなのか、地域ごとに医療逼迫の振り返りをする必要がある。なお、本研究は2022年までのデータを示しているが、2023年11月までのデータから推計しても、死亡率はいまだに高いと予想されている。コロナに関連するフレイルへの対応に加えて、脳梗塞に対しては頭打ちとなっているDOAC処方への対策、心筋梗塞に対してはPCI介入の遅れについての検証など、コロナ禍での診療抑制の影響が残っていないか再検討が望ましい」と述べた。

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夜間の屋外照明は脳卒中リスクを高める?

 大都市の明るい光は人々の心をワクワクさせるかもしれないが、脳卒中リスクを高める可能性もあることが、浙江大学(中国)医学部のJian-Bing Wang氏らによる研究で示された。この研究結果は、「Stroke」3月25日号に掲載された。Wang氏らは、夜を明るく照らす屋外の人工光(以下、夜間の人工光)が脳の血流に影響を与えて脳卒中が起こりやすくなるようだとの見方を示している。研究の背景情報によると、人工光の過剰な使用によって、世界人口の5分の4が光害環境で暮らさざるを得ない状況に置かれているという。 Wang氏らは、中国の東海岸の主要な港湾都市で工業都市でもある寧波(人口約820万人)に住む2万8,302人の成人(平均年齢61.51±11.02歳)のデータを分析し、夜間の人工光への曝露と脳血管疾患との関連を検討した。脳血管疾患には、動脈に血栓が詰まって脳への血流が阻害されることで生じる脳卒中〔虚血性脳卒中(脳梗塞)〕や脳の動脈の出血による脳卒中(出血性脳卒中)がある。夜間の人工光への曝露量と大気汚染を、光害をマッピングした衛星画像を用いて評価し、それぞれ4群に分類した。 2015年から2021年までの6年間の追跡期間中に1,278件の脳血管疾患(虚血性脳卒中777件、出血性脳卒中133件)が発生していた。解析の結果、夜間の人工光の曝露量が最も多い群では最も少ない群に比べて、脳血管疾患のリスクが43%高いことが示された。また、大気中の粒子状物質(燃料の燃焼、粉塵、煙など)であるPM2.5やPM10、自動車や発電所などから排出される窒素酸化物の曝露量が最も多い群では最も低い群に比べて脳血管疾患のリスクがそれぞれ41%、50%、31%高いことも判明した。 これらの研究結果に基づきWang氏は、「潜在的に有害な影響から身を守るため、特に都市部に住んでいる人に、夜間の人工光への曝露量を減らすことを考慮するよう助言したい」と米国心臓協会(AHA)のニュースリリースの中で述べている。 Wang氏らの説明によれば、夜間に持続的に明るい光にさらされると睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌が抑制される。また、夜間の人工光によって質の高い睡眠が妨げられることで、脳卒中リスクが高まる可能性が考えられるという。同氏は、「大気汚染だけでなく、光害などの環境要因による疾病負担を軽減するため、より効果的な政策と予防戦略を立てる必要がある。このことは特に、人口密度が高く大気汚染レベルの高い地域に住む人にとって重要だ」と指摘している。

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甘い飲み物の飲み過ぎで心房細動?

 加糖飲料や人工甘味料入りの飲料を飲み過ぎると、心房細動になりやすくなる可能性を示唆するデータが報告された。上海交通大学医学院附属第九人民医院(中国)のNingjian Wang氏らの研究によるもので、詳細は「Circulation: Arrhythmia and Electrophysiology」に3月5日掲載された。 甘味飲料の摂取量が一部の心血管代謝疾患のリスクと関連のあることは知られているが、心房細動との関連はこれまで明らかにされていない。心房細動は不整脈の一種で、自覚症状として動悸やめまいなどを生じることがある。ただしより重要なことは、心房細動では心臓の中に血液の塊(血栓)が形成されやすくなって、その血栓が脳の動脈に運ばれて脳梗塞が起きてしまうリスクが高い点にある。このタイプの脳梗塞は梗塞の範囲が広いことが多く、重症になりやすい。 Wang氏らは、英国の一般住民対象大規模疫学研究「UKバイオバンク」のデータを用いて、加糖飲料(SSB)、人工甘味料入り飲料(ASB)、および果汁100%フルーツジュース(PJ)の摂取量と心房細動のリスクを、遺伝的素因を考慮に入れて検討した。解析対象は、ベースライン時に心房細動がなく、遺伝子関連データがあり、かつ24時間思い出し法による食事摂取アンケートに回答していた20万1,856人。中央値9.9年の追跡期間中に、9,362人が心房細動の診断を受けていた。 交絡因子を調整後、SSBを摂取しない人に比べて週に2リットル超摂取している人は、心房細動のリスクが10%高いことが示された〔ハザード比(HR)1.10(95%信頼区間1.01~1.20)〕。同様に、ASBを摂取しない人に比べて週に2リットル超摂取している人は、心房細動のリスクが20%高かった〔HR1.20(同1.10~1.31)〕。一方、PJを摂取しない人に比べて週に1リットルを超えない範囲で摂取している人は、心房細動のリスクが8%低いことが分かった〔HR0.92(同0.87~0.97)〕。心房細動の遺伝的素因の有無で層別化した解析の結果、有意な交互作用は観察されなかった。 この結果について論文の筆頭著者であるWang氏は、「さまざまな種類の飲料を摂取している人がいて、飲料以外の食事の影響も否定できないことから、ある飲料が別の飲料よりも心房細動のリスクが高いと明確に結論付けることはできない」としている。とは言え、「これらの結果に基づけば、可能な限りSSBやASBの摂取を避けることが推奨される。また、『低糖』や『低カロリー』とうたったASBには、潜在的な健康リスクを引き起こす可能性があり、それらを健康的な飲み物だとは考えないでほしい」と付け加えている。 SSBが心房細動のリスクを高めるメカニズムとしてWang氏は、糖負荷によるインスリン抵抗性の亢進が2型糖尿病発症リスクを高め、その2型糖尿病は心房細動のリスク因子であることを考察として述べている。またASBについては、サッカリンなどの人工甘味料に対して体が特異的に反応する可能性があるという。

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血管内血栓除去療法は大梗塞の長期予後も改善するか?(解説:内山真一郎氏)

 前回は、不可逆的な虚血コアおよび救命しうる虚血部位(ペナンブラ)と、臨床転帰および血管内血栓除去療法(EVT)の治療効果との関係を検討したPROBEデザインによる国際多施設共同介入試験SELECT2の事後解析の成績を紹介したが、今回はSELECT2試験の長期転帰を解析した結果である。これまでは、どの試験も発症後24時間までの大血管閉塞による大梗塞例にEVTが短期(多くは3ヵ月まで)の転帰改善効果があるというエビデンスであったが、長期にわたる転帰改善効果は検討されていなかった。 今回のSELECT2試験の解析により、EVTは大血管閉塞による大梗塞症例の1年後の転帰を改善する効果のあることが証明されたことになる。大梗塞による重症例は脳損傷が重いので回復にはより長期の時間を要するので、真の効果を検討するにはより長期の転帰まで追跡調査する必要があると考えられるが、EVTは短期のみならず長期の転帰も改善する効果が証明されたといえる。とはいえ、1年後の死亡率は対照群の52%より低いものの、EVT群でも45%であり、重症の大梗塞例の予後は全体として不良であることは否定できない。

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脳卒中患者の手術前の頭位が手術成績に影響

 手術を待つ脳卒中患者の病床での頭位が、脳内の血栓を除去する手術の成績に影響する可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。脳主幹動脈閉塞(large vessel occlusion;LVO)による急性期脳梗塞を発症して手術を待つ患者では、病床で頭位を30度挙上させるよりも0度(水平仰臥位)にする方が、術前の安定性が増し、神経学的機能も改善し、術後の転帰も良好になる可能性が示されたのだ。米テネシー大学健康科学センター看護学および神経科学分野教授のAnne Alexandrov氏らによるこの研究結果は、国際脳卒中会議(ISC 2024、2月7〜9日、米フェニックス)で発表された。 LVOでは、閉塞の原因となっている血栓を取り除いて脳内の血流を改善する血栓回収療法が、死亡リスクや脳に恒久的なダメージが及ぶリスクを低下させることが知られている。しかし、LVO患者に対する血栓回収療法は、さまざまな理由で遅れがちである。そのため、手術を待っている間の患者の脳への血流を最適化することは、神経学的な障害や身体的な障害を最小限に抑えるために不可欠である。 血栓回収療法を待つ患者に対しては、病床で頭位を30度以下の角度で挙上させておくことが推奨されている。しかし、Alexandrov氏らによるパイロット研究では、水平仰臥位を保つことで狭窄/閉塞した動脈の血流が20%増加することが示されていた。 今回のランダム化比較試験では、LVO患者を対象に、血栓回収療法を受ける前の患者の頭位を水平仰臥位にした場合と30度に挙上させた場合との間で臨床的安定性と転帰を比較した。患者は水平仰臥位で神経画像検査を受けた直後に、NIHSS(国立衛生研究所脳卒中尺度、0〜42点で評価し、スコアが高いほど重症)での評価を受けた。その後は、ランダム化された頭位(0度または30度)を維持したまま、手術を受けるまで10分ごとにNIHSSの再測定を受けた。 米国の12カ所の包括的脳卒中センターから92人の患者が登録され、中間解析が行われた。その結果、水平仰臥位を保つことで手術前の安定性が増し、および/または臨床的改善が得られることが明らかになった。このような有効性は、データ安全性モニタリング委員会(DSMB)が患者の新規登録を早々に打ち切る決定を下したほど高いものであった。研究グループは、水平仰臥位を保つことが手術後の患者に何らかの利益をもたらすかどうかについても調べた。研究グループは、手術そのものに大きな予後改善効果があるため、水平仰臥位と30度挙上の頭位との間で予後に差が出ることを予想していなかったという。しかし、手術から24時間後と7日後の両時点で、水平仰臥位を保っていた患者は30度挙上の頭位を保っていた患者に比べて、神経学的障害が少ないことが明らかになった。 Alexandrov氏は、「手術から3カ月後までには、両群の間で転帰に差は認められなくなったが、退院時にリハビリテーションを必要とする神経学的障害が生じた患者の数を減らせたのは喜ばしい結果だ」と話している。その上で同氏は、「頭位保持は、脳卒中の治療法ではなく、手術前に脳機能を維持するための方法と考えるべきだ」と主張している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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PCSK9阻害薬の処方継続率は?~国内レセプトデータ

 日本を含む諸外国で行われたさまざまな研究結果から、高コレステロール血症治療薬PCSK9阻害薬の使用は費用対効果が見合わないと結論付けられているが、果たしてそうなのだろうか―。今回、得津 慶氏(産業医科大学公衆衛生学 助教)らはPCSK9阻害薬の処方患者の背景や特徴を把握することを目的に、国内のレセプトデータを用いた後ろ向きコホート研究を行った。その結果、PCSK9阻害薬はエゼチミブと最大耐用量スタチンが併用処方された群と比較し、高リスク患者に使用されている一方で、PCSK9阻害薬を中断した患者割合は約45%と高いことが明らかになった。本研究結果は国立保健医療科学院が発行する保健医療科学誌2023年12月号に掲載された。 本研究は、国内3自治体の国民健康保険および後期高齢者医療制度の2015年4月~2021年3月のレセプトデータを用いて調査を行った。2016年4月~2017年3月の期間にPCSK9阻害薬が未処方で、2017年4月~2020年3月に初めてPCSK9阻害薬が処方された患者群を「PCSK9群」、同様の手法で抽出したエゼチミブと最大耐用量スタチンが併用処方された患者を「エゼチミブ最大耐用量スタチン併用群」とした。PCSK9阻害薬もしくはエゼチミブと最大耐用量スタチンが初めて処方された日を起算日とし、起算日より前12ヵ月間(pre-index期間)、起算日より後ろ12ヵ月間(post-index期間)に観察された生活習慣病(脂質異常症、糖尿病、高血圧症)治療薬の処方、心血管イベント(虚血性心疾患、心筋梗塞、脳梗塞、脳出血)や経皮的冠動脈インターベンション(PCI)および冠動脈バイパス術(CABG)などの実施状況について調査し、両群で比較した。また、post-index期間における3ヵ月以上の処方中断についても調査した。 主な結果は以下のとおり。・対象者はPCSK9群184例(平均年齢:74.0歳、男性:57.1%)、エゼチミブ最大耐用量スタチン併用群1,307例(平均年齢:71.0歳、男性:60.5%)だった。・起算日前後(pre-/post-index期間)の虚血性心疾患の診療・治療状況の変化を両群で比較すると、pre-index期間では有意な差はなかったが、post-index期間では、PCSK9群のほうが割合が高かった(85.3% vs.76.1%、p=0.005)。・PCIの実施割合は、起算日前後の両期間においてPCSK9群のほうがエゼチミブ最大耐用量スタチン併用群より有意に高かった(pre-index期間:40.8% vs.24.0%、p<0.001、post-index期間:13.6% vs.8.1%、p=0.014)。・処方中断率はPCSK9群では44.6%であったが、エゼチミブ最大耐用量スタチン併用群ではみられなかった。 研究者らは「因果関係までは言及できないものの、PCSK9阻害薬による治療が患者側の経済的負担になっていること、医療者側が高価な薬剤を予防目的に使用することを躊躇した可能性が示唆された」としている。

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脳梗塞発症後4.5~24時間のtenecteplase、転帰改善せず/NEJM

 多くの患者が血栓溶解療法後に血栓回収療法を受けていた脳梗塞の集団において、発症から4.5~24時間後のtenecteplaseによる血栓溶解療法はプラセボと比較して、良好な臨床転帰は得られず、症候性頭蓋内出血の発生率は両群で同程度であることが、米国・スタンフォード大学のGregory W. Albers氏が実施した「TIMELESS試験」で示された。tenecteplaseを含む血栓溶解薬は、通常、脳梗塞発症後4.5時間以内に使用される。4.5時間以降のtenecteplaseの投与が有益であるかどうかについての情報は限られていた。研究の詳細は、NEJM誌2024年2月22日号で報告された。北米112施設の無作為化プラセボ対照比較試験 TIMELESS試験は、米国の108施設とカナダの4施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2019年3月~2022年12月の期間に患者の無作為割り付けを行った(Genentechの助成を受けた)。 年齢18歳以上、最終健常確認から4.5~24時間が経過した脳梗塞で、発症前に機能的自立(修正Rankin尺度[mRS、スコア範囲:0~6点、点数が高いほど機能障害が重度で6点は死亡を示す]のスコア0~2点)を保持していた患者を、tenecteplase(0.25mg/kg、最大25mg)を投与する群、またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けた。脳梗塞は、NIHSSスコアが5点以上で、中大脳動脈M1/M2部または内頸動脈の閉塞を有し、灌流画像で救済可能組織を確認した患者であった。 主要アウトカムは、90日後のmRSの順序スコアとした。副次アウトカムの正式な仮説検証は行わず 458例を登録し、tenecteplase群に228例(年齢中央値72歳[四分位範囲[IQR]:62~79]、女性53.5%)、プラセボ群に230例(73例[63~82]、53.5%)を割り付けた。354例(77.3%)が、血栓溶解療法後に血栓回収療法を受けた。最終健常確認から無作為化までの時間中央値は、tenecteplase群が12.3時間(IQR:9.2~15.6)、プラセボ群は12.7時間(8.7~16.5)であった。 90日後の時点でのmRSスコア中央値は、tenecteplase群が3点(IQR:1~5)、プラセボ群も3点(1~4)だった。90日時のプラセボ群に対するtenecteplase群のmRSスコア分布の補正共通オッズ比は1.13(95%信頼区間[CI]:0.82~1.57)であり、両群間に有意な差を認めなかった(p=0.45)。 有効性の主要アウトカムに有意差がなかったことから、副次アウトカムの正式な仮説検証は行わなかったが、90日時の機能的自立(mRSスコア≦2点)の割合は、tenecteplase群が46.0%、プラセボ群は42.4%であり(補正オッズ比:1.18、95%CI:0.80~1.74)、24時間後の再疎通の割合はそれぞれ76.7%および63.9%(1.89、1.21~2.95)、血栓回収療法後の再灌流の割合は89.1%および85.4%(1.42、0.75~2.67)であった。死亡:19.7% vs.18.2%、症候性頭蓋内出血:3.2% vs.2.3% 安全性のアウトカムの解析では、90日時の死亡がtenecteplase群19.7%(43例)、プラセボ群18.2%(39例)、36時間以内の症候性頭蓋内出血はそれぞれ3.2%(7例)および2.3%(5例)で発生した。また、有害事象、重篤な有害事象、有害事象による試験からの脱落の発生にも両群間に差を認めなかった。 著者は、「発症から4.5時間以内のアルテプラーゼ投与について検討したさまざまな試験における静脈内投与から動脈穿刺までの時間中央値は25分であり、本試験では15分と短かったが、血栓回収療法前の再疎通の割合は同程度であった」としている。

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大血管閉塞による急性脳梗塞、血栓除去術へのメチルプレドニゾロン併用は?/JAMA

 大血管閉塞による急性脳梗塞患者において、静脈内血栓溶解療法を含む血管内血栓除去術に低用量メチルプレドニゾロン静注を追加しても、90日後の機能的アウトカムに差はなかったが、死亡率および症候性頭蓋内出血の発生率は低かった。中国・人民解放軍第三軍医大学のQingwu Yang氏らが、中国の82施設で実施した医師主導無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「Methylprednisolone as Adjunctive to Endovascular Treatment for Acute Large Vessel Occlusion trial:MARVEL試験」で示された。JAMA誌オンライン版2024年2月8日号掲載の報告。メチルプレドニゾロン群とプラセボ群に無作為化、90日後のmRSスコア分布を比較 研究グループは、大血管(内頸動脈、中大脳動脈M1またはM2セグメント)閉塞による急性脳梗塞を発症し、発症前は介助なしで日常生活が可能(修正Rankin尺度[mRS]スコア<2、mRSスコア範囲:0[症状なし]~6[死亡])で、無作為化時にNIHSSスコア≧6(範囲:0~42、スコアが高いほど神経学的重症度が高い)の18歳以上の成人患者を、健康状態に問題がなかったことが明らかな直近の時刻から24時間以内に登録し、メチルプレドニゾロン群またはプラセボ群に無作為に割り付け、2mg/kg/日(最大160mgまで)を3日間静脈内投与した。全例、血管内血栓除去術を行い、静脈内血栓溶解療法の前処置も可とされた。 試験薬は、無作為化後できるだけ速やかに、血管内治療のための動脈アクセスを閉鎖する前に投与したが、閉鎖後2時間以内は可とした。 有効性の主要アウトカムは、無作為化90日後のmRSスコア分布(シフト解析)、安全性の主要アウトカムは、90日全死因死亡率および血管内血栓除去術後48時間以内の症候性頭蓋内出血であった。機能的アウトカムに差はないが、メチルプレドニゾロン群で死亡率と頭蓋内出血発生率が低下 2022年2月9日~2023年6月30日の間に1,687例が無作為化され、同意撤回を除く1,680例(年齢中央値69歳、女性727例[43.3%])が解析対象集団に含まれた。このうち、1,673例(99.6%)が試験を完遂した。最終追跡調査日は2023年9月30日であった。 無作為化90日後のmRSスコア中央値は、メチルプレドニゾロン群3点(四分位範囲[IQR]:1~5)、プラセボ群3点(1~6)であった。mRSスコアの分布がメチルプレドニゾロン群で、より良好な方向へ変化する補正後一般化オッズ比は1.10(95%信頼区間[CI]:0.96~1.25)で、両群に有意差はなかった(p=0.17)。 90日全死因死亡率は、メチルプレドニゾロン群23.2%、プラセボ群28.5%であり、メチルプレドニゾロン群で有意に低かった(補正後リスク比:0.84、95%CI:0.71~0.98、p=0.03)。同様に症候性頭蓋内出血の発生率もメチルプレドニゾロン群で有意に低かった(8.6% vs.11.7%、0.74、0.55~0.99、p=0.04)。

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2型糖尿病のNAFLD、CVDや全死因死亡リスク増/BMJ

 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を併発した2型糖尿病(T2DM)患者では、NAFLDが軽症であっても、心血管疾患および全死因死亡のリスクが上昇する可能性があり、非NAFLDとグレード1 NAFLD、非NAFLDとグレード2 NAFLDの間の心血管疾患および全死因死亡のリスク差は、非T2DMよりもT2DMで大きいことが、韓国・CHA Bundang Medical CenterのKyung-Soo Kim氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年2月13日号に掲載された。韓国の縦断的コホート研究 研究グループは、韓国のT2DM患者において、NAFLDが心血管疾患および全死因死亡のリスクに及ぼす影響を評価する目的で、全国規模の人口ベースの縦断的コホート研究を行った(特定の研究助成は受けていない)。 2009年のNational Health Screening Programmeの参加者779万6,763例を、NAFLDの状態に基づき、次の3つの群に分けた。(1)非NAFLD(脂肪肝指数[fatty liver index]<30)、(2)グレード1 NAFLD(30≦脂肪肝指数<60)、(3)グレード2 NAFLD(脂肪肝指数≧60)。 主要アウトカムは、心血管疾患(心筋梗塞、脳梗塞)または全死因死亡の発生とした。グレード1でも5年絶対リスクが上昇 779万6,763例の参加者のうち、6.49%(50万5,763例)がT2DMであった。非T2DM群のうちグレード1 NAFLDは21.20%、グレード2 NAFLDは10.02%であったのに対し、T2DM群ではそれぞれ34.06%および26.73%といずれも高率であった。また、1,000人年当たりの心血管疾患および全死因死亡の発生率は、非NAFLD、グレード1 NAFLD、グレード2 NAFLDの順に増加し、非T2DM群よりT2DM群で高かった。 心血管疾患および全死因死亡の5年絶対リスクは、非T2DM群、T2DM群とも、非NAFLD、グレード1 NAFLD、グレード2 NAFLDの順に増加した。すなわち、非T2DM群では、非NAFLD患者における心血管疾患の5年絶対リスクは1.03(95%信頼区間[CI]:1.02~1.04)、全死因死亡の5年絶対リスクは1.25(1.24~1.26)であり、グレード1 NAFLD患者はそれぞれ1.23(1.22~1.25)および1.50(1.48~1.51)、グレード2 NAFLD患者は1.42(1.40~1.45)および2.09(2.06~2.12)であった。 同様に、T2DM群では、非NAFLD患者における心血管疾患の5年絶対リスクは3.34(3.27~3.41)、全死因死亡の5年絶対リスクは3.68(3.61~3.74)であり、グレード1 NAFLD患者はそれぞれ3.94(3.87~4.02)および4.25(4.18~4.33)、グレード2 NAFLD患者は4.66(4.54~4.78)および5.91(5.78~6.05)だった。T2DMでのNAFLDのスクリーニングと予防により、リスク低減の可能性 このように、非T2DM群のグレード2 NAFLDと比較して、T2DM群の非NAFLDは、心血管疾患および全死因死亡の5年絶対リスクが高かった。また、非T2DM群に比べT2DM群では、非NAFLDとグレード1 NAFLD、非NAFLDとグレード2 NAFLDで、心血管疾患および全死因死亡のリスク差が大きかった。 著者は、「非アルコール性脂肪性肝疾患のスクリーニングと予防により、2型糖尿病患者における心血管疾患および全死因死亡のリスクが低減する可能性がある」としている。

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広範囲脳梗塞への血栓除去術併用、1年後も有効/Lancet

 広範囲脳梗塞患者において、内科的治療のみと比較し血管内血栓除去術の併用は90日時の身体機能を有意に改善することが示されていたが、その有効性は1年後の追跡調査においても維持されていた。米国・ケース・ウエスタン・リザーブ大学のAmrou Sarraj氏らが、「SELECT2試験」の1年アウトカムを報告した。広範囲脳梗塞患者に対する血管内血栓除去術の有効性と安全性は複数の無作為化試験で報告されているが、長期の有効性については不明であった。Lancet誌オンライン版2024年2月9日号掲載の報告。SELECT2試験のITT集団における1年時の機能的アウトカムを評価 SELECT2試験は、米国、カナダ、スペイン、スイス、オーストラリア、ニュージーランドの計31施設で実施された第III相の国際共同無作為化非盲検評価者盲検比較試験である。 研究グループは、内頸動脈または中大脳動脈M1セグメントの閉塞による急性脳梗塞を呈し、非造影CTでASPECTSスコア3~5、またはCT灌流画像あるいはMRI拡散強調画像で虚血コア50mL以上の成人(18~85歳)患者を対象とし、血管内血栓除去術+内科的治療併用群または内科的治療単独群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 本解析の主要アウトカムは、ITT集団における追跡調査1年時の機能的アウトカム(修正Rankin尺度[mRS]スコア:0[無症状]~6[死亡])であった。3ヵ月時の有効性を1年時も維持 本試験は2019年10月11日~2022年9月9日に、計352例が無作為化された後(血管内血栓除去術併用群178例、内科的治療単独群174例)、中間解析(追跡調査90日時のアウトカム)において有効性が認められたため、早期に有効中止となった(ジャーナル四天王(2023/03/01)「広範囲脳梗塞、血栓回収療法の併用で身体機能が改善/NEJM」)。 1年時のmRSスコア中央値は、血管内血栓除去術併用群が5点(四分位範囲[IQR]:3~6)、内科的治療単独群は6点(4~6)で、血管内血栓除去術併用は内科的治療単独と比較してmRSスコア分布を有意に改善した(Wilcoxon-Mann-Whitney検定における優越確率:0.59[95%信頼区間[CI]:0.53~0.64]、p=0.0019、一般化オッズ比:1.43[95%CI:1.14~1.78])。 1年時の全死因死亡率は、血管内血栓除去術併用群45%(77/170例)、内科的治療単独群52%(83/159例)であった(1年死亡相対リスク:0.89、95%CI:0.71~1.11)。

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第183回 新型コロナ公費支援は3月末で終了、通常の医療体制へ/厚労省

<先週の動き>1.新型コロナ公費支援は3月末で終了、通常の医療体制へ/厚労省2.アルコールは少量でも要注意、飲酒ガイドラインを公表/厚労省3.SNSが暴いた入試ミス、PC操作ミスによる不合格判定が発覚/愛知医大4.専攻医の過労自死問題を受け、甲南医療センターを現地調査へ/専門医機構5.医師らの未払い時間外手当、小牧市が8億円支給へ/愛知県6.診療報酬改定で人気往診アプリ『みてねコールドクター』が終了へ/コールドクター1.新型コロナ公費支援は3月末で終了、通常の医療体制へ/厚労省厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する医療費の公費支援を2024年3月末で終了し、4月から通常の医療体制に完全移行する方針を発表した。これまで、COVID-19の治療薬や入院医療費に関しては、患者や医療機関への一部公費支援が継続されていたが、4月からは他の病気と同様に保険診療の負担割合に応じた自己負担が求められるようになる。COVID-19への公費支援は、治療薬の全額公費負担が2021年10月より始まり、昨年10月には縮小された。また、患者は年齢や収入に応じ、3,000~9,000円の自己負担をしていた。4月からは、たとえば重症化予防薬モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)を使用する場合、1日2回5日分の処方で約9万円のうち、3割負担であれば約28,000円を自己負担することになる。また、月最大1万円の入院医療費の公費支援や、コロナ患者用病床を確保した医療機関への病床確保料の支払いも終了する。COVID-19の感染状況は改善傾向にあり、定点医療機関当たりの感染者数が12週ぶりに減少している。これらの背景から、政府は公費支援の全面撤廃と通常の診療体制への移行が可能と判断した。さらに、次の感染症危機に備え、公的医療機関などに入院受け入れなどを義務付ける改正感染症法が4月から施行される。参考1)新型コロナの公費負担、4月から全面撤廃へ…治療薬に自己負担・入院支援も打ち切り(読売新聞)2)新型コロナ公費支援 3月末で終了 4月からは通常の医療体制へ(NHK)3)新型コロナ公費支援、3月末で完全廃止 厚生労働省(日経新聞)2.アルコールは少量でも要注意、飲酒ガイドラインを公表/厚労省厚生労働省は、飲酒による健康リスクを明らかにするため、「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を発表した。初めて作成されたこの指針では、純アルコール量に着目し、疾患別に発症リスクを例示している。大腸がんのリスクは1日20g以上の純アルコール摂取で高まり、高血圧に関しては少量の飲酒でもリスクが上昇すると指摘されている。純アルコール量20gは、ビール中瓶1本、日本酒1合、またはウイスキーのダブル1杯に相当。ガイドラインによると、脳梗塞の発症リスクは、男性で1日40g、女性で11gの純アルコール摂取量で高まる。女性は14gで乳がん、男性は20gで前立腺がんのリスクが増加する。さらに、男性は少量の飲酒でも胃がんや食道がんを発症しやすいと報告されている。とくに女性や高齢者は、体内の水分量が少なくアルコールの影響を受けやすいため、注意が必要。また、女性は少量や短期間の飲酒でもアルコール性肝硬変になるリスクがあり、高齢者では認知症や転倒のリスクが一定量を超えると高まる。ガイドラインでは、不安や不眠を解消するための飲酒を避け、他人への飲酒を強要しないこと、飲酒前や飲酒中の食事の摂取、水分補給、週に数日の断酒日の設定など、健康への配慮としての留意点も挙げている。厚労省の担当者は、「体への影響は個人差があり、ガイドラインを参考に、自分に合った飲酒量を決めることが重要だ」と強調している。参考1)健康に配慮した飲酒に関するガイドライン(厚労省)2)ビールロング缶1日1本で大腸がんの危険、女性は男性より少量・短期間でアルコール性肝硬変も(読売新聞)3)飲酒少量でも高血圧リスク 健康に配慮、留意点も 厚労省が初の指針(東京新聞)3.SNSが暴いた入試ミス、PC操作ミスによる不合格判定が発覚/愛知医大愛知医科大学(愛知県長久手市)は、大学入学共通テストを使用した医学部入学試験の過程で、PC操作ミスにより本来2次試験の受験資格を有していた80人の受験生を誤って不合格としていたことを発表した。この問題は、SNS上で受験生間の投稿を通じて疑問が提起され、その後の大学による確認作業で明らかになった。受験生は、自己採点結果から「自分より点数が低い友人が合格している」といった内容をSNSに投稿していた。操作ミスは、大学入試センターから提供された成績データを学内システムに転記する際に発生したもので、一部受験生の点数が実際よりも低く記録されてしまったことが原因。発覚後、同大学は該当する80人の受験生に対し、予定されていた2次試験への参加資格があることを通知し、さらに受験できない者のために別の日程も設定した。この事態を重くみた大学は、「受験生に混乱を招いたことを深くお詫びする」との声明を発表し、今後のチェック体制の見直しを約束し、2度と同様のミスが発生しないようにするとしている。参考1)令和6年度医学部大学入学共通テスト利用選抜(前期)における 第2次試験受験資格者の判定ミスについて(愛知医大)2)愛知医科大学 医学部入試で80人を誤って不合格に PC操作ミスで(NHK)3)愛知医科大、PC操作ミスで80人誤って不合格…SNSで結果疑う投稿相次ぎ大学が確認し判明(読売新聞)4)「自己採点で自分より低い友人が合格」愛知医科大、判定ミスで80人不合格に(中日新聞)4.専攻医の過労自死問題を受け、甲南医療センターを現地調査へ/専門医機構日本専門医機構は、2024年2月19日の定例記者会見で、2024年度に研修を開始する専攻医の採用予定数が9,496人と発表し、過去最多であることを明らかにした。2023年度の9,325人から増加し、とくに整形外科で93人、救急科で66人の増加がみられる一方、皮膚科では51人、外科では25人の減少が確認された。同機構理事長の渡辺 毅氏は、外科専攻医の減少は問題であると指摘している。専攻医数の増加は、東北医科薬科大学や国際医療福祉大学の医学部新設とその卒業生の専攻医登録が影響しているとされ、とくに医師不足が指摘されている外科は微減傾向にあるものの、救急科では増加が予想されている。また、専攻医の過労自死問題を受け、甲南医療センター(神戸市)でのサイトビジット(現地調査)を実施する予定であり、専攻医の心身の健康維持や時間外勤務の上限明示などの環境整備が適切に行われているかを目的に調査が行われる。渡辺氏は、「得られた知見を将来の専攻医研修プログラムや専門医制度の整備指針の改善に生かしたい」と述べている。専攻医遺族が甲南医療センター側を提訴しているため、訴訟に影響が出ないような日程での実施を目指している。参考1)2024年度専攻医、整形外科や救急科で増加(日経メディカル)2)来年度の専攻医、昨年度比150人増の9,500人(Medical Tribune)5.医師らの未払い時間外手当、小牧市が8億円支給へ/愛知県小牧市民病院(愛知県)が、医師や薬剤師を含む約277人の職員に対して、夜勤や土日祝日の当直業務で適切に支払われていなかった時間外勤務手当の差額約8億円を支給することを発表した。これは、病院の医師の働き方改革を機に勤務や手当の見直しが行われた際に、複数の医師からの指摘を受けて発覚、本来、労働実態に応じて支給されるべき時間外手当が、一律の定額で支給されていたことが問題となったもの。病院側は、2023年4月からこの問題を調査し、約4年分の差額を医師、薬剤師、放射線技師などの職員に支払うことを決定した。また、3月以降は時間外勤務手当を適切に支給する制度に改めることも発表した。これまでの誤った運用は「慣例に従っていた」との理由から起こったとしている。さらに、病院は夜間や休日の手当の見直しも発表し、2020年4月~2024年2月までの間に当直業務に従事した職員に対して、法律で定められた賃金よりも過小だった手当の差額を支給する。病院側はこれまで、労働基準法に基づいた時間外勤務手当の支給が必要な場合、特例措置として「宿日直許可」を労働基準監督署に申請する必要があることを知らなかったと述べている。この措置により、病院は正規の時間外勤務手当とこれまで支給してきた手当との差額を職員に支給し、法律に準拠した形での勤務条件の改善を目指す。差額の支払いについては、市議会定例会に補正予算案を提出し、支払いは5月下旬に行われる予定。参考1)時間外手当、差額8億円支払いへ 医師ら277人に 愛知の市民病院(朝日新聞)2)小牧市民病院、夜間・休日手当見直しへ 20年以降の差額も支給(中日新聞)6.診療報酬改定で人気往診アプリ『みてねコールドクター』が終了へ/コールドクター夜間や休日に医師の往診をWebやアプリから依頼できるサービス「みてねコールドクター」が、診療報酬の改定により条件が厳格化されるため、3月31日をもって終了することが発表された。このサービスは、子供の医療助成制度適用で都内では自己負担0円(交通費別)で利用が可能で、約400人の医師が登録・在籍し、夜間・休日の急病時に最短30分で自宅に医師を派遣し、その場で薬を渡すことができた。2022年にはミクシィとの資本業務提携を経て、サービス名に「みてね」のブランドを冠し、とくに子育て世代から高い評価を得ていた。今回の診療報酬改定では、医療従事者の賃上げなどに充てるための基本報酬の引き上げが注目されていたが、往診サービスについては「普段から訪問診療を受けていない患者」への緊急往診や夜間往診の診療報酬が低下し、この変化に伴い「みてねコールドクター」はサービスの終了を決定した。同社は、今後の市場の変化を見据えての決定であると説明しており、オンライン診療や医療相談サービスは継続する。診療報酬の改定では、救急搬送の不必要な減少や医療現場の負担軽減を期待していたが、実際には小児科領域の往診が主であり、コロナ禍での特殊な状況下では多くの人にとって救いとなった。しかし、保険診療の方向性としては、緊急時のみに駆けつける医師ではなく、日常を支えるかかりつけ医の強化が求められている。参考1)往診のサービス提供終了のお知らせ(コールドクター)2)往診アプリ「みてねコールドクター」往診終了 診療報酬改定で(ITmedia NEWS)3)「みてねコールドクター」の往診サービスが終了に(Impress)4)人気の“往診サービス”が突然の終了、理由は「診療報酬改定」なぜ?(Withnews)

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