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4年ぶりの改訂『小児急性中耳炎診療ガイドライン2013年版』発売

 日本耳科学会、日本小児耳鼻咽喉科学会、日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会は、『小児急性中耳炎診療ガイドライン』を4年ぶりに改訂し、同2013年版を7月12日より発売する。 今回の改訂は、急性中耳炎に関連する起炎菌や難治化などの病態の変化、予防を含めた治療法の発展など、多岐にわたる要因を考慮している。 具体的には、起炎菌サーベイランスデータの更新、重症度判定基準・治療アルゴリズムの見直しを行い、さらに肺炎球菌迅速検査キット、肺炎球菌ワクチン、新たな推奨薬剤や漢方補剤による診療、遷延性・難治性中耳炎等に関して、最新のデータに基づいて記述が修正、加筆された。 ガイドラインは、全国の書店、Amazonなどで7月12日より発売。定価は2,415円(本体2,300円+税5%)。詳しくは、金原出版まで

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新種のMERSコロナウイルスの院内ヒト間感染を確認/NEJM

 重篤な肺炎を引き起こす新種の中東呼吸器症候群(Middle East respiratory syndrome; MERS)コロナウイルス(MERS-CoV)の、医療施設内でのヒト間感染の可能性を示唆する調査結果が、サウジアラビア保健省のAbdullah Assiri氏らKSA MERS-CoV調査団により、NEJM誌オンライン版2013年6月19日号で報告された。 2003~2004年のSARSパンデミック以降、呼吸器感染症の原因となる2種類の新規ヒトコロナウイルス(HKU-1、NL-63)が確認されているが、いずれも症状は軽度だった。一方、2012年9月、世界保健機構(WHO)に重篤な市中肺炎を引き起こす新種のヒトコロナウイルス(β型)が報告され、最近、MERS-CoVと命名された。現在、サウジアラビアのほか、カタール、ヨルダン、英国、ドイツ、フランス、チュニジア、イタリアでヒトへの感染が確認されているが、感染源などの詳細は不明とされる。院内アウトブレイクの実態を調査 調査団は、サウジアラビアの医療施設で発生したMERS-CoV感染症の院内アウトブレイクの実態を調査した。 医療記録を精査して臨床的、人口学的情報を収集し、感染者および感染者と接触した可能性のある者を同定して面接調査を行った。潜伏期間および発症間隔(感染者とこの感染者と接触した者の症状発現の時間差)について検討した。 2013年4月1日~5月23日までに、サウジアラビア東部で23例のMERS-CoV感染者が報告された。年齢中央値は56歳(24~94歳)、男性が17例(74%)、50歳以上が17例(74%)、65歳以上が6例(26%)であり、基礎疾患は末期腎疾患が12例(52%)、糖尿病が17例(74%)、心疾患が9例(39%)、喘息を含む肺疾患が10例(43%)に認められた。15例(65%)が死亡、21例(91%)はヒト間感染 症状としては、発熱が20例(87%)、咳嗽が20例(87%)、息切れが11例(48%)、消化管症状が8例(35%)にみられ、腹部または胸部X線画像上の異常所見が20例(87%)に認められた。 6月12日の時点で15例(65%)が死亡し、6例(26%)が回復、2例(9%)は入院中であった。潜伏期間中央値は5.2日、発症間隔は7.6日であった。 23例中21例(91%)が、透析室、集中治療室、病室などの入院施設内でのヒト間感染であった。感染者と接触のあった家族217人(成人120人、小児97人)のうち成人5人(3人は検査で確定)、および感染者と接触のあった200人以上の医療従事者のうち2人(2人とも検査で確定)が感染した。 著者は、「医療施設内におけるMERS-CoVのヒト間感染が示唆され、重大な感染拡大に結びついた可能性がある」と結論している。

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小児てんかん患者、最大の死因は?

 米国・ルリー小児病院(シカゴ)のAnne T. Berg氏らは、小児てんかん患者の死因とリスクについて検討を行った。その結果、神経障害または脳の基礎疾患を有するてんかんの場合は一般人口に比べて死亡率が有意に高いこと、発作関連の死亡よりも、むしろ肺炎または他の呼吸器疾患による死亡のほうが多いことを報告した。Pediatrics誌オンライン版2013年6月10日号の掲載報告。 本研究は、小児てんかん患者の死因とリスク(とくに発作関連)の推定、および発作関連の死亡とその他の主な死因による死亡リスクを比較することを目的とした。新規にてんかんと診断された小児患者4コホートにおける死亡実績を統合した。死亡原因を、発作関連(突然の予期しない死亡:SUDEP)、自然要因、非自然的要因、不明に分けて検討した。また、神経障害または脳の基礎疾患を有する場合を「合併症・基礎疾患あり」とした。 主な結果は以下のとおり。・被験者2,239例について、3万例を超える観察人年において、死亡は79例であった。なお、致死的な神経代謝疾患のある10例は最終的に除外した。・全死因死亡率は、10万人年当たりの228例であった(合併症・基礎疾患あり:743例、なし:36例)。・発作関連の死亡は、13例(SUDEP:10例、その他:3例)で、全死亡の19%であった。・発作関連死亡率は、10万人年当たり43例であった(合併症・基礎疾患あり:122例、なし:14例)。・自然要因による死亡率は、10万人年当たり159例であった(合併症・基礎疾患あり:561例、なし:9例)。・自然要因による死亡48例中37例は、肺炎または他の呼吸器疾患によるものであった。・若年のてんかん患者において、発作関連が最大の死因ではないことが示された。・合併症・基礎疾患のある小児てんかん患者の死亡率は、一般人口に比べ有意に高かった。・SUDEPの割合は、乳幼児突然死症候群と同程度またはそれ以上であった。・合併症・基礎疾患のない若年性てんかん患者におけるSUDEPの割合は、事故、自殺、殺人などその他の原因の場合と同程度またはそれ以上であった。・今回得られた知見を踏まえて著者は、「てんかんの死亡リスクが、ありふれたリスクであるということは、患者や家族とのてんかん発作関連の死亡に関する話し合いを容易なものとするだろう」と述べている。関連医療ニュース てんかん患者の頭痛、その危険因子は?:山梨大学 自閉症、広汎性発達障害の興奮性に非定型抗精神病薬使用は有用か? 抗てんかん薬によりADHD児の行動が改善:山梨大学

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特発性間質性肺炎の経過中に肺がんを見落としたケース

呼吸器最終判決判例タイムズ 1739号124-129頁概要息切れ、呼吸困難を主訴に総合病院を受診し、特発性間質性肺炎、連発型心室性期外収縮などと診断された75歳男性。当初、右肺野に1.5cmの結節陰影がみられたが、炎症瘢痕と診断して外来観察を行っていた。ところが初診から6ヵ月後、特発性間質性肺炎の急性増悪を契機に施行した胸部CTで右肺野の結節陰影が4cmの腫瘤陰影に増大、骨転移を伴う肺小細胞がんでステージIVと診断された。特発性間質性肺炎の急性増悪に対してはステロイドパルス療法などを行ったが、消化管出血などを合併して全身状態は悪化、治療の効果はなく初診から7ヵ月後に死亡した。詳細な経過患者情報75歳男性、1日30本、50年の喫煙歴あり経過1994年3月29日息切れ、呼吸困難、疲れやすいという主訴で某総合病院循環器科を受診。医学部卒業後1年の研修医が担当となる。胸部X線写真:両肺野の微細な網状陰影呼吸機能検査:拘束性換気障害心電図検査:二段脈と不完全右脚ブロック血液検査:肝・胆道系の酵素上昇、腫瘍マーカー陰性4月5日胸部CTスキャン:肺野末梢および肺底部に強い線維性変化、蜂窩状陰影。続発性の肺気腫と嚢胞、右肺の胸膜肥厚。なお、右肺下葉背側(segment 6)に1.0×1.5cmの結節陰影が認められたが、炎症後の瘢痕と読影。慢性型の特発性間質性肺炎と診断した腹部CTスキャン:異常なし4月6日ホルター心電図:連発型の非持続性心室性期外収縮があり、抗不整脈薬を投与開始。以後胸部については追加検査されることはなく、外来通院が続いた11月頃背部痛、腰痛、全身倦怠感を自覚。12月8日息苦しさと著しい全身倦怠感が出現したため入院。胸部X線写真、胸部CTスキャンにより、右肺下葉背側に4.0×3.0cmの腫瘤陰影が確認された(半年前の胸部CTスキャンで炎症瘢痕と診断した部分)。諸検査の結果、特発性間質性肺炎に合併した肺小細胞がん、骨転移を伴うステージIVと診断した。12月20日特発性間質性肺炎が急性増悪し、ステロイドパルス療法施行。ところが消化管出血を合併し、全身状態が急速に悪化。1995年1月13日特発性間質性肺炎の悪化により死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張1.特発性間質性肺炎に罹患したヘビースモーカーの患者に、胸部CTスキャンで結節性陰影がみつかったのであれば、肺がんを念頭においた精密検査を追加するべきであった2.肺がんのような重大な疾患を経験の浅い医師が受け持つのであれば、経験豊かな医師が指導するなど十分なバックアップ体制をとる注意義務があった病院側(被告)の主張1.精密検査ができなかったのは、原告が健康保険に加入していなかったので高い診療費を支払うことができなかったためである2.死因は特発性間質性肺炎の急性増悪であり、肺がんは関係ない。たとえ初診時に肺がんの診断ができていたとしても、延命の可能性は低かった裁判所の判断1.診察当初の胸部CTスキャンで結節性陰影がみつかり、喫煙歴が1日30本、約50年というヘビースモーカーであり、慢性型の特発性間質性肺炎と診断し、肺がんがその後半年間発見されなかったという診断ミスがあった2.直接死因は特発性間質性肺炎の急性増悪であり、肺小細胞がんが直接寄与したとはいえない。しかし、早期に肺小細胞がんの確定診断がつき、化学療法を迅速に行っていれば、たとえ特発性間質性肺炎が急性増悪を来してもステロイドの治療効果や胃潰瘍出血などの副作用も異なった経過をたどり、肺小細胞がんの治療も特発性間質性肺炎の治療も良好に推移したと考えられ、少なくとも約半年長く生存できたはずである。したがって、原告の精神的苦痛に対する慰謝料を支払うべきである原告側2,200万円の請求に対し、550万円の支払命令考察今回の事件は、ある地方の基幹病院で発生しました。ご遺族にとってみれば、信頼できるはずの大病院に半年間も通院していながら、いきなり「がんの末期で治療のしようがない」と宣告されたのですから、裁判を起こそうという気持ちも十分に理解できると思います。それに対し病院側は、たとえ最初からがんと診断しても死亡とは関係はなかった、それよりも、きちんと国民健康保険に加入せず治療費が高いなどと文句をいうので、胸部CTスキャンなどの高額な検査はためらわれた、と反論しましたが、裁判官には受け入れられず「病院側の注意義務違反」として判決は確定しました。あとから振り返ってみると、多くの先生方は「このような肺がんハイリスクの患者であれば、診断を誤ることはない」という印象を持たれたと思いますが、やはり原点に返って、どうすれば最初から適切な診断ができたのか、そして、その後の定期外来通院中になぜ肺がん発見には至らなかったのか、などについて考えてみたいと思います。1. 研修医もしくは若手医師の指導今回当事者となったドクターは、医学部を卒業後1年、そして、当該病院に勤務してから3ヵ月しか経過していない研修医でした。このような若いドクターが医師免許を取得して直ぐに医事紛争に巻き込まれ、裁判所に出廷させられるなどということは、できる限り避けなければなりませんが、今回の背景には、指導医の監督不十分、そして、当事者のドクターにも相当な思い込みがあったのではないかと推測されます。おそらく、当初の胸部CTスキャンで問題となった「右肺下葉背側(segment 6)に1.0×1.5cmの結節陰影」というのは、放射線科医が作成したレポートをこの研修医がそのまま信用し、結節=炎症瘢痕=がんではない、と半ば決めつけていたのだと思います。しかし、通常であれば「要経過観察」といった放射線科医のコメントがつくはずですから、最初につけた診断だけで安心せず、次項に述べるようなきちんとした外来観察計画を立てるべきであったと思います。そして、指導医も、卒後1年しか経過していないドクターを一人前扱いとせずに、新患のケースでその後も経過観察が必要な患者には、治療計画にも必ず関与するようにするべきだと思います。従来までの考え方では、このような苦い経験を踏まえて一人前の医師に育っていくので、最初から責任を負わせるようにしよう、とされていることが多いと思いますし、実際に多忙をきわめる外来診療で、そこまで指導医が配慮するというのも困難かもしれません。しかし、今回のような医師同士のコミュニケーション不足が原因で紛争に発展する事例があるのも厳然たる事実ですから、個人の力だけでは防ぎようのない事故については、組織のあり方を変更して取り組むべきだと思います。2. 定期的な外来観察計画上気道炎の患者さんなど短期間の治療で終了するようなケースを除いて、慢性・進行性疾患、場合によっては生命を脅かすような病態に発展することのある疾患については、初期の段階から外来観察計画を取り決めておく必要があると思います。たとえば、今回のような特発性間質性肺炎であれば(肺がんの合併が約20%と高率なので)胸部X線写真は6ヵ月おきに必ずとる、血液ガス検査は毎月、血算・生化学検査は2ヵ月おきに調べよう、などといった具合です。一度でも入院治療が行われていれば、退院後の外来通院にも配慮することができるのですが、ことに今回の症例のようにすべて外来で診ざるを得なかったり、複数の医師が関わるケースでは、なおさら「どのような治療方針でこの患者を診ていくのか」という意思決定を明確にしておかなければなりません。そして、カルテの見やすいところに外来観察計画をはさんでおくことによって、きちんと患者さんをフォローできるばかりか、たとえ医事紛争に巻き込まれても、「適切な外来管理を行っていた」と判断できる重要な証拠となります。今回の症例は、やりようによっては最初から肺がん合併を念頭においた外来観察をできたばかりか、けっして軽い病気とはいえない特発性間質性肺炎の経過観察を慎重に行うことで、結果が悪くても医事紛争にまでは至らなかった可能性も考えられます。裁判官の判断は、「がんが発見されていれば別の経過(=特発性間質性肺炎の急性増悪も軽くすんだ?)をたどったかもしれない」ことを理由に、たいした根拠もなく「半年間は延命できた」などという判決文を書きました。しかし、一般に特発性間質性肺炎の予後は悪いこと、たとえステロイドを使ったとしても劇的な効果は期待しにくいことなどの医学的事情を考えれば、「半年間は延命できた」とするのはかなり乱暴な考え方です。結局、約半年も通院していながら末期になるまでがんをみつけることができなかったという重大な結果に着目し、精神的慰謝料を支払え、という判断に至ったのだと思います。呼吸器

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重症インフルエンザ患者に対するオセルタミビル2倍量投与の有用性(コメンテーター:小金丸 博 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(108)より-

インフルエンザは急性熱性ウイルス性疾患であり、自然に軽快することが多いが、一部の患者では肺炎などを合併し、重症化することが知られている。重症インフルエンザ患者に対してエビデンスの存在する治療方法はないが、WHOのガイドラインでは、パンデミック2009インフルエンザA(H1N1)ウイルス感染症の重症例や鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルス感染症に対して、オセルタミビル(商品名:タミフル)の高用量投与や治療期間の延長を考慮すべきと述べられている。 本研究は、重症インフルエンザ患者に対するオセルタミビル2倍量投与の有用性を評価するために行った、二重盲検ランダム化比較試験である。迅速検査あるいはRT-PCR検査でインフルエンザと診断された1歳以上の重症入院患者326例を対象とし、オセルタミビルの通常量投与群と2倍量投与群の2群に分けて、治療5日目のRT-PCR陰性率や、死亡率などを比較検討した。重症の定義は、インフルエンザで入院した患者の中で、新たな肺浸潤影、頻呼吸、呼吸困難、低酸素血症のうち1つ以上を有する者とした。また鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルス感染症例は、全例本研究に含めた。 エントリー時のインフルエンザウイルスの内訳は、A型が260例(79.8%)、B型が53例(16.2%)、迅速検査の偽陽性が13例(3.9%)だった。A型のうち、鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルスは17例だった。なお、今回の研究には、2013年に中国で人ヘの感染例が確認された鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスは含まれていない。 治療5日目のRT-PCR陰性率は、2倍量投与群で72.3%(95%信頼区間:64.9~78.7%)、通常量投与群で68.2%(同:60.5~75.0%)であり、有意差を認めなかった(P=0.42)。死亡率は、2倍量投与群で7.3%(同:4.2~12.3%)、通常量投与群で5.6%(同:3.0~10.3%)であり、有意差を認めなかった(P=0.54)。死亡例の71%は、鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルス感染症例であった。 本研究では、重症インフルエンザ患者に対するオセルタミビルの2倍量投与は通常量投与と比べて、ウイルス学的にも臨床的にも有効性に差を認めなった。インフルエンザを治療するうえで大切なのは「症状発現からいかに早く治療を開始できるか」であることがほかの研究で示唆されている。本研究では、症状発現から治療開始まで中央値で5日(鳥インフルエンザA(H5N1)感染症では7日)経過しており、両治療群ともに治療効果が乏しかった可能性がある。 一般的にインフルエンザの重症化因子として、高齢者、慢性肺疾患や心疾患などの基礎疾患を有する者、免疫抑制患者、妊婦などがあげられるが、本研究の対象にはこれらの患者があまり含まれていない。今回の研究対象の75.5%が小児例であることからも、本研究の結果を重症化因子を有する成人にそのまま当てはめることはできないと考える。

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抗菌薬適正使用推進プログラム、広域抗菌薬の適応外使用を改善/JAMA

 小児プライマリ・ケア外来への抗菌薬適正使用推進プログラム(antimicrobial stewardship program)の導入により、細菌性急性気道感染症(ARTI)の診療ガイドライン遵守状況が改善されることが、米国・フィラデルフィア小児病院のJeffrey S. Gerber氏らの検討で示された。米国では小児に処方される薬剤の多くが抗菌薬で、そのほとんどが外来患者であり、約75%がARTIに対するものだという。ウイルス性ARTIへの抗菌薬の不必要な処方は減少しつつあるが、細菌性ARTIでは、とくに狭域抗菌薬が適応の感染症に対する広域抗菌薬の不適切な使用が多いとされる。JAMA誌2013年6月12日号掲載の報告。プライマリ・ケアでのプログラムによる介入の効果を評価 研究グループは、小児プライマリ・ケア医による外来患者への抗菌薬処方における、抗菌薬適正使用推進プログラムに基づく介入の効果を評価するクラスター無作為化試験を行った。 ペンシルベニア州とニュージャージー州の25の小児プライマリ・ケア施設のネットワークから18施設(医師162人)が参加し、介入群に9施設(医師81人)、対照群に9施設(医師81人)が割り付けられた。 介入群の医師は、プログラムに基づき2010年6月に1時間の研修を1回受講し、その後1年間にわたり3ヵ月に1回、細菌性およびウイルス性ARTIに対する処方への監査とフィードバックが行われた。対照群の医師は通常診療を実施した。 主要評価項目は、介入の20ヵ月前から介入後12ヵ月(2008年10月~2011年6月)までの、細菌性ARTIに対する広域抗菌薬の処方(ガイドライン規定外)およびウイルス性ARTIに対する抗菌薬の処方の変化とした。広域抗菌薬処方率が6.7%低下 広域抗菌薬の処方率は、介入群では介入前の26.8%から介入後に14.3%まで低下し(絶対差:12.5%)、対照群は28.4%から22.6%へ低下した(同:5.8%)。両群の絶対差の差(difference of differences:DOD)は6.7%で、介入による処方率の有意な抑制効果が認められた(p=0.01)。 肺炎の小児への広域抗菌薬処方率は、介入群が15.7%から4.2%へ、対照群は17.1%から16.3%へ低下し、介入による有意な抑制効果がみられた(DOD:10.7%、p<0.001)。一方、急性副鼻腔炎への処方率はそれぞれ38.9%から18.8%へ、40.0%から33.9%へと低下した(DOD:14.0%、p=0.12)。 A群レンサ球菌咽頭炎では、ベースラインの広域抗菌薬処方率が低く、介入による変化はほとんどみられなかった(介入群:4.4%から3.4%へ低下、対照群:5.6%から3.5%へ低下、DOD:−1.1%、p=0.82)。ウイルス感染症への抗菌薬処方にも同様の傾向が認められた(介入群:7.9%から7.7%へ低下、対照群:6.4%から4.5%へ低下、DOD:-1.7%、p=0.93)。 著者は、「プライマリ・ケア医の研修と、処方の監査、フィードバックを組み合わせた抗菌薬適正使用推進プログラムにより、小児に一般的な細菌性ARTIの診療ガイドラインの遵守状況が、通常診療に比べて改善された。一方、ウイルス感染症への抗菌薬処方については、介入の影響は認めなかった」とまとめ、「今後、外来における抗菌薬適正使用推進プログラムの有効性の促進要因や、一般化可能性、持続可能性、臨床アウトカムの検証を行う必要がある」と指摘している。

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肺炎随伴性胸水を吸入ステロイドが減少させる?

 これまでCOPD(慢性閉塞性肺疾患)患者に吸入ステロイドを投与することは市中肺炎発症リスクの増加と関連するとされてきた。しかしながら、その一方で、吸入ステロイドは肺の合併症や肺関連死のリスクを減少させるということも報告されている。 スペインの Jacobo Sellares氏らは過去の吸入ステロイド投与の有無が、異なる呼吸器疾患の背景を有する肺炎随伴性胸水にどのような影響を及ぼすのかを調べた結果、吸入ステロイドによる治療を受けた群で肺炎随伴性胸水が減少していたことを報告した。 American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine誌2013年6月1日号の掲載報告。肺炎随伴性胸水が有意に少なかった 市中肺炎と診断された3,612例に対し、臨床的検査、放射線学的検査、胸水生化学検査、微生物学的検査を実施し(単一施設コホート)、過去の吸入ステロイドによる治療の有無で2群に分け、解析した。 過去の吸入ステロイド投与の有無が肺炎随伴性胸水にどのような影響を及ぼすのかの主な結果は以下のとおり。・対象の17%にあたる633例が、肺炎と診断される前に吸入ステロイドによる治療を受けていた(COPD 54%、喘息 13%)。・吸入ステロイドによる治療を受けていた群では、そうでない群に比べ、肺炎随伴性胸水が有意に少なかった(5% vs12%、p<0.001)。・傾向スコアによりマッチングさせた640例においても、同様の傾向が認められた(オッズ比: 0.40、95%信頼区間[CI]0.23~0.69、p=0.001)。・吸入ステロイドによる治療を受けていた群では、胸水中のグルコースとpHが有意に高く(それぞれ、p=0.003、p=0.02)、タンパクと乳酸脱水素酵素(LDH)は有意に低かった(それぞれ、p=0.01、p=0.007)。

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COPDの配合薬治療、肺炎リスクに薬剤クラス内差を確認/BMJ

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対する吸入副腎皮質ステロイド薬/長時間作用型β2刺激薬の配合薬による治療の肺炎リスクは、フルチカゾン/サルメテロール配合薬がブデソニド/ホルモテロール配合薬よりも高いことが、スウェーデン・ウプサラ大学のChrister Janson氏らが行ったPATHOS試験で示された。肺炎はCOPDで高頻度にみられる合併症であり、罹病率や死亡率の上昇、医療費の増大をもたらす。COPDに対する吸入副腎皮質ステロイド薬/長時間作用型β2刺激薬の固定用量配合薬による治療は肺炎のリスクを増加させる可能性があるが、個々の配合薬のリスクの違いは知られていなかった。BMJ誌オンライン版2013年5月29日号掲載の報告。2つの配合薬の肺炎リスクを後ろ向きコホート試験で評価 PATHOS試験は、傾向スコアでマッチさせたコホートを用いたレトロスペクティブな観察コホート試験で、2種類の吸入副腎皮質ステロイド薬/長時間作用型β2刺激薬の配合薬による治療を受けたCOPD患者における肺炎または肺炎関連イベントの発生状況の評価を目的とした。 1999~2009年のスウェーデンの病院、薬剤、死因の登録データと関連づけられたプライマリ・ケア診療記録のデータを用いた。 COPDの診断でブデソニド/ホルモテロール配合薬またはフルチカゾン/サルメテロール配合薬を処方された患者を解析の対象とし、主要評価項目は年間肺炎イベント発症率、肺炎による入院、死亡とした。肺炎発症の率比1.73、入院の率比1.74、肺炎関連死のHR 1.76 9,893例(フルチカゾン/サルメテロール配合薬群:2,738例、ブデソニド/ホルモテロール配合薬群:7,155例)がマッチングの対象となり、マッチさせた2つのコホートはフルチカゾン/サルメテロール配合薬群が2,734例(平均年齢67.6歳、女性53%、喫煙者48%)、ブデソニド/ホルモテロール配合薬群も2,734例(67.6歳、53%、49%)であった。これらの患者のうち、試験期間中に2,115例(39%)に肺炎エピソードが認められた。 肺炎の発症(率比:1.73、95%信頼区間[CI]:1.57~1.90、p<0.001)および入院(同:1.74、1.56~1.94、p<0.001)のリスクは、いずれもフルチカゾン/サルメテロール配合薬群がブデソニド/ホルモテロール配合薬群に比べ有意に高かった。 100人年当たりの肺炎イベント発症率は、フルチカゾン/サルメテロール配合薬群が11.0(95%CI:10.4~11.8)、ブデソニド/ホルモテロール配合薬群は6.4(同:6.0~6.9)であり、入院率はそれぞれ7.4(同:6.9~8.0)、4.3(同:3.9~4.6)であった。 肺炎関連の平均入院期間は両群で同等であったが、肺炎関連死はフルチカゾン/サルメテロール配合薬がブデソニド/ホルモテロール配合薬群よりも有意に多かった(97 vs 52例、ハザード比[HR]:1.76、95%CI:1.22~2.53、p=0.003)。全死因死亡は、両群間に有意な差を認めなかった(HR:1.08、95%CI:0.93~1.14、p=0.59)。 著者は、「COPD患者の治療における肺炎および肺炎関連イベントのリスクに関し、吸入副腎皮質ステロイド薬/長時間作用型β2刺激薬の固定用量配合薬には、薬剤クラス内の差が認められた」と結論し、「フルチカゾン/サルメテロール配合薬の高い肺炎リスクは、ブデソニドとフルチカゾンの免疫抑制能および薬物動態学/薬力学(PK/PD)の違いに関連する可能性がある」と指摘している。

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COPD治療薬による肺炎発症リスクの差があるだろうか?(コメンテーター:小林 英夫 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(106)より-

COPD(慢性閉塞性肺疾患)治療において、吸入ステロイド/長時間作用型β2刺激薬配合剤は標準的治療の1つとして位置づけられ、本邦でも2種の製品が利用可能となっている。本研究(PATHOS)では、そのいずれかで、治療中のCOPD症例において、肺炎発症のリスクと肺炎関連mortalityに差があるかどうかを後方視的に観察している。本論文の評価の大前提として、観察研究の限界を熟知したうえで評価しなければならないことを強調しておきたい。 結果は、フルチカゾン/サルメテロールではブデソニド/ホルモテロールより1.73倍肺炎が多く、肺炎関連死亡も多かった(ハザード比:1.76)。 著者らも考察しているように、COPDや肺炎の診断が専門医によりなされていないなどいくつかの限界は否めないが、背景因子をマッチさせた1群2,734名という大きな集団で、明らかな推計学的有意差が得られたことにはインパクトがある。このような結果となった機序は、フルチカゾンは肺内に高濃度かつ長時間とどまりやすいため、局所の感染防御機構を抑制するのではないかと著者らは推察している。 吸入ステロイド薬は気管支喘息治療薬として普及し始めた当初、易感染性や、骨代謝への悪影響が生じるのではないかと懸念された時期があった。多くの報告がなされたものの、どの薬剤であっても通常用量で大きな問題が生じることはなく、現在まで喘息治療の第一選択として位置づけられている。また、筆者の日常臨床において肺炎合併が高率という経験も有していない。今回のPATHOSがエビデンスとなりえるかどうかは、今後の前向き比較試験を待って判断すべきであろう。

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鳥インフルエンザA(H7N9)患者の約8割がICU、死亡は約3割/NEJM

 中国で2013年春に流行した鳥インフルエンザA(H7N9)の感染者111例について、診療記録を基に行った調査の結果、ICUで治療を受けたのは約77%、死亡は27%であったことを、北京大学のHai-Nv Gao氏らが報告した。また、患者の大半は入院時に肺炎と同様な症状を呈し、患者の年齢中央値は61歳であったという。NEJM誌オンライン版2013年5月22日号掲載の報告より。最も多い症状は発熱と咳、典型的X線所見はGGOと浸潤影 研究グループは、2013年5月10日までにH7N9ウイルス感染が確認された111例について、その臨床的な特徴を調べた。 その結果、111例のうちICUで治療を受けていたのは76.6%で、死亡したのは27.0%だった。 111例の年齢中央値は61歳で、65歳以上は42.3%、女性は31.5%であり、61.3%の患者が1つ以上の基礎疾患があった。 最も多く認められた症状は、発熱と咳だった。入院時に108例(97.3%)が、肺炎と一致する症状が認められた。典型的なX線所見は、両側性スリガラス状陰影(GGO)と浸潤影だった。 リンパ球減少症が認められたのは88.3%、血小板減少症は73.0%だった。共存症があるとARDSリスクが3.4倍に 患者のうち108例(97.3%)に抗ウイルス薬による治療が行われ、治療開始の中央値は発症後7日目だった。 RT-PCR法によって、ウイルス試験の結果が陰性であることが明らかになるまでの日数の中央値は、発症から11日(四分位範囲:9~16)、抗ウイルス薬投与開始から6日(同:4~7)だった。 多変量解析の結果、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)のリスク因子は、共存症のみであったことも明らかになった(オッズ比:3.42、95%信頼区間:1.21~9.70、p=0.02)。

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プライマリ・ケアでの肺炎診断、症状と徴候による診断がベスト/BMJ

 プライマリ・ケアにおいて、急性の咳症状から肺炎を予測するには、軽度あるいは重度の患者では症状と徴候に基づくクリニカルルールが最も適していることが、オランダ・ユトレヒト大学医療センターのSaskia F van Vugt氏らによる検討の結果、示された。また、CRP>30mg/Lの至適カットオフ値の情報は診断情報を改善するが、プロカルシトニン(PCT)値は診断には役立たないことも示された。BMJ誌オンライン版2013年4月30日号掲載の報告。肺炎の診断については症状と徴候の精度を検討した試験はあるが、プライマリ・ケアでの適用のエビデンスは乏しかった。一方で、CRPやPCTの検査値を加味した場合の診断精度は不明であった。炎症マーカーは役立つのか予測診断精度を定量化し検証 研究グループは、症状と徴候に選択的炎症マーカーの情報を加えた場合の肺炎の予測診断精度を定量化することを目的とし、2007~2010年にかけて診断的試験を行った。 被験者は、病歴が確認でき、初回診察日に、身体的診察とCRPおよびPCT検査を受けており7日以内に胸部X線を受けていた急性咳症状で来院した患者とした。試験はヨーロッパ12ヵ国のプライマリ・ケアセンターで行われた。 主要評価項目は、その他の臨床情報については知らされなかった放射線専門医により、X線写真のみで肺炎と診断された場合とした。 試験適格患者は3,106例で、そのうち286例は胸部X線写真が紛失または不鮮明等により除外された。残る2,820例の患者について検討された。CRP>30mg/Lは役立つがプロカルシトニン値は役に立たない 2,820例(平均年齢50歳、男性40%)のうち、肺炎を有していたのは140例(5%)であった。1,675例について胸部X線写真の再評価を行った結果、94%(κ:0.45、95%信頼区間[CI]:0.36~0.54)で結果が一致した。 6つの公表されている“症状と徴候のモデル”によってそれらの識別は異なった[ROC曲線下面積範囲:0.55(95%CI:0.50~0.61)~0.71(同:0.66~0.76)]。 本研究患者から導き出された予測のための最適な組み合わせは、「鼻汁は認めない」「息切れがある」「聴診でのクラックルと呼吸音減弱」「頻脈」「発熱」で、ROC曲線下面積は0.70(95%CI:0.65~0.75)であった。 CRP>30mg/Lのカットオフ値情報を加味した場合、ROC曲線下面積は0.77(95%CI:0.73~0.81)に上昇し、診断分類が改善された(ネット再分類改善率28%)。症状、徴候、CRP>30mg/Lで肺炎の“低リスク”(<2.5%)と分類した1,556例において、肺炎の有病率は2%であった。一方、“高リスク”(>20%)と分類した132例における肺炎の有病率は31%であった。肺炎の低・中・高リスクの陽性尤度比はそれぞれ、0.4、1.2、8.6であった。 PCT値の情報は、付加的な診断情報とはならなかった。 症状、徴候、CRP>30mg/Lに基づく簡略化診断スコアと肺炎が結びついた割合は、低・中・高リスク群においてそれぞれ0.7%、3.8%、18.2%であった。

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中国で見つかった鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染症の疫学調査(コメンテーター:小金丸 博 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(97)より-

2013年3月に中国で鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスの人への感染例が初めて報告されて以降、中国から継続して感染者が発生している。4月には中国帰りの男性が台湾で発症し、中国以外から初めて報告された。本稿執筆時点では日本国内での感染例は報告されていないが、国内発生時に冷静に対応できるよう準備しておく必要がある。  本論文は、4月17日までに確定した鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染症82例の臨床情報と、濃厚接触者の追跡調査をまとめた報告である。 鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスの感染は、リアルタイムRT-PCR法、ウイルス分離、血清学的検査のいずれかで確認した。確定診断された患者の平均年齢は63歳(範囲:2~89歳)で、46%が65歳以上であった。5歳未満は2例のみで、どちらも軽い上気道症状を呈するのみだった。性別は男性が73%と多かった。  情報が得られた77例のうち、4例が家禽を扱う労働者であった。59例で動物との接触歴があり、そのうち45例に鳥との接触歴を認めた。 確定診断された82例のうち、81例は入院加療され、17例がARDSや多臓器不全で死亡した。発症から死亡までの期間の中央値は11日だった。軽症だった4例はすでに退院した。情報が得られた64例のうち、41例でオセルタミビルが投与された。発症から投与開始までの期間の中央値は6日だった。  感染患者との濃厚接触者1,251名を7日間追跡調査した。呼吸器症状を呈した19名(研修医1名を含む)で咽頭スワブ検体を用いてリアルタイムRT-PCR法が行われたが、鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスは1例も検出されなかった。  同一家族内で複数の患者が発生した3事例のうち、調査中の1事例を除く2事例の調査の結果では、鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスのヒト-ヒト感染は否定できなかった。 本論文のポイントの1つは、確定患者に重症例が多いことである。通常の季節性インフルエンザと比較すれば死亡率は高そうである。ただし、もともと原因微生物不明の肺炎患者を対象とした調査であり、重症例が選択的に拾い上げられていた可能性が高い。調査範囲が拡大され、症状の軽い患者も報告されるようになってきており、本当の重症度は今後判明していくだろう。 もう1つのポイントは、濃厚接触者にヒト-ヒト感染が起きていることが確認されなかったことである。現時点では、鳥インフルエンザA(H7N9)はあくまで鳥に感染するインフルエンザである。同一家族内での感染事例が存在し、限定的なヒト-ヒト感染が起こっている可能性は否定できないが、パンデミックを起こす可能性は低いと推測する。 鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染症は、人にとって未知の感染症であり、感染源、感染経路、検査診断、治療法、重症度などは依然として明らかとなっていないため、今後も個々の症例を集積していく必要がある。

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第14回 添付文書 その3:抗がん剤副作用訴訟の最高裁判所判決を読み解く!

■今回のテーマのポイント1.添付文書の記載が適切かを判断する際には、(1)副作用の程度及び頻度、(2)当該医薬品を処方する者の知識、能力、(3)添付文書の記載内容について検討する。また、この3つの要因間には相関関係があると考えられる2.医薬品に対する医療界と司法との認識には、なお相当のギャップがある。今後も積極的かつ持続的な情報公開、相互理解が必要である3.本件最高裁判決は、企業側が勝訴したものの、5名中3名の裁判官が抗がん剤の副作用被害についても副作用被害救済を行うべきと意見している。ドラッグ・ラグの加速や萎縮医療が生じないよう速やかに抗がん剤を対象除外医薬品から外すべきと考えるindex最高裁判決をレビューする各裁判官の補足意見を検討する裁判例のリンク最高裁判決をレビューする第13回で取り扱ったイレッサ(一般名:ゲフィチニブ)訴訟の最高裁判所(以下、最高裁)判決が4月12日に出されました。結果は、裁判官全員一致で製薬企業側の勝訴となりました。ただ、全裁判官から補足意見が出されており、本件問題に対する司法の逡巡が見て取れます。今回は、すこし趣を変えて最高裁判決および補足意見を丁寧にみていきたいと思います。また、同時に法律家がどのように判断していくのかもご理解いただけたらと考えています。まずは、最高裁判決をみてみましょう。「医薬品は、人体にとって本来異物であるという性質上、何らかの有害な副作用が生ずることを避け難い特性があるとされているところであり、副作用の存在をもって直ちに製造物として欠陥があるということはできない。むしろ、その通常想定される使用形態からすれば、引渡し時点で予見し得る副作用について、製造物としての使用のために必要な情報が適切に与えられることにより、通常有すべき安全性が確保される関係にあるのであるから、このような副作用に係る情報が適切に与えられていないことを一つの要素として、当該医薬品に欠陥があると解すべき場合が生ずる。そして、前記事実関係によれば、医療用医薬品については、上記副作用に係る情報は添付文書に適切に記載されているべきものといえるところ、上記添付文書の記載が適切かどうかは、(1)上記副作用の内容ないし程度(その発現頻度を含む)、(2)当該医療用医薬品の効能又は効果から通常想定される処方者ないし使用者の知識及び能力、(3)当該添付文書における副作用に係る記載の形式ないし体裁等の諸般の事情を総合考慮して、上記予見し得る副作用の危険性が上記処方者等に十分明らかにされているといえるか否かという観点から判断すべきものと解するのが相当である」(( )番号は原文なし、筆者による加筆。以下同様)判決はいわゆる法的三段論法によって書かれます。すなわち、まず、抽象的に記載されている法律を具体的事例に対する法規範となるよう解釈します(大前提)(図1)。図1 法的三段論法画像を拡大する本判決では、まず、「製造物責任法2条2項:この法律において「欠陥」とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう」における「欠陥」(当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること)とは、医療用医薬品については、どのように解釈すべきかが示されています。本判決では、医療用医薬品においても製造物責任法(PL法)が適用されることを前提として、医療用医薬品における「欠陥」の一つの類型として、引渡し時点で予見しうる副作用について、(1)副作用の程度及び頻度(2)当該医薬品を処方する者の知識、能力(3)添付文書の記載内容等を総合的に考慮して、医薬品を安全に使用するための情報が処方者に十分明らかにされていないことがあると判示しています。製造物責任法2条2項と見比べていただければ、最高裁が条文に忠実に法解釈をしていることがわかると思います。そして、次にこの大前提に本件事実が該当するか否かを判断します(小前提(あてはめ))。本判決では、下記のように判示し、本事案は欠陥の要件に該当しないことから欠陥があるとはいえない(結論)としました。「前記事実関係によれば、(1)本件輸入承認時点においては、国内の臨床試験において副作用である間質性肺炎による死亡症例はなく、国外の臨床試験及びEAP副作用情報における間質性肺炎発症例のうち死亡症例にイレッサ投与と死亡との因果関係を積極的に肯定することができるものはなかったことから、イレッサには発現頻度及び重篤度において他の抗がん剤と同程度の間質性肺炎の副作用が存在するにとどまるものと認識され、(3)被上告人は、この認識に基づき、本件添付文書第1版において、「警告」欄を設けず、医師等への情報提供目的で設けられている「使用上の注意」欄の「重大な副作用」欄の4番目に間質性肺炎についての記載をしたものということができる。(2)そして、イレッサは、上記時点において、手術不能又は再発非小細胞肺がんを効能・効果として要指示医薬品に指定されるなどしていたのであるから、その通常想定される処方者ないし使用者は上記のような肺がんの治療を行う医師であるところ、前記事実関係によれば、そのような医師は、一般に抗がん剤には間質性肺炎の副作用が存在し、これを発症した場合には致死的となり得ることを認識していたというのである。そうであれば、上記医師が本件添付文書第1版の上記記載を閲読した場合には、イレッサには上記のとおり他の抗がん剤と同程度の間質性肺炎の副作用が存在し、イレッサの適応を有する患者がイレッサ投与により間質性肺炎を発症した場合には致死的となり得ることを認識するのに困難はなかったことは明らかであって、このことは、「重大な副作用」欄における記載の順番や他に記載された副作用の内容、本件輸入承認時点で発表されていた医学雑誌の記述等により影響を受けるものではない。・・・以上によれば、本件添付文書第1版の記載が本件輸入承認時点において予見し得る副作用についてのものとして適切でないということはできない」このように、本件の最高裁判決では、製造物責任法の条文を忠実に解釈した上で、本事案における添付文書の記載に不適切な点はなかったと判示しています。一方、本件地裁判決において原告側が勝訴したのは、法解釈(大前提)においては最高裁判決と相違なかったものの、小前提(あてはめ)において、(2)当該医薬品を処方する者の知識、能力を低く見積もったことから、(3)添付文書の記載内容が詳細に求められることとなり、結果として適切な情報として不足したという判断がなされたからと考えられます。そして、前回紹介した高裁判決及び最高裁判決においては、(2)を高く評価(肺がん専門医または肺がんに係る抗がん剤治療医)したことから、(3)に求められる水準が下がり、結果として、求められる適切な情報が提供されていたと判断されています。このことからわかるように、医療用医薬品の欠陥判断における、(1)~(3)の要件はそれぞれ独立した要件ではなく、(2)が高くなれば(3)は低くてよく、逆に(2)が低ければ、(3)は高く求められるという負の相関関係があると考えられます。また、同様に、(1)と(3)の間には正の相関関係があると考えられます(図2)。図2 医療用医薬品において添付文書に求められる適切な副作用情報に関する各要因間の関係画像を拡大する各裁判官の補足意見を検討する:司法の常識とは!?次に各裁判官の補足意見をみていきましょう。補足意見とは、多数意見に賛成であるが意見を補足したい場合に、判決となった多数意見と別に各裁判官の個別意見を表示するもので、最高裁判決においてのみ認められています(裁判所法11条)。本判決では、裁判長以外全員が補足意見を出しており、結論は同じでも各裁判官の考えに少しずつ相違があることが読み取れます。〔1〕欠陥認定の基準時と事後の知見について「製造物責任法2条に定める「欠陥」は、当該製造物が「通常有すべき安全性を欠いていることをいう」と定義されているところ、その安全性具備の基準時は、あく迄、当該製造物が流通におかれた時点と解すべきものである。製造物が流通におかれた時点においては、社会的にみて、「通常有すべき安全性」を具備していたにも拘ず、事後の知見によってその安全性を欠いていたことが明らかになったからといって、遡及的に流通におかれた時点から「欠陥」を認定すべきことにはならない(事後の知見によって安全性を欠いていることが明らかになった後に流通におくことについては、製造物責任が問われ得るが、それ以前に流通しているものは製造物責任の問題ではなく、回収義務、警告義務等の一般不法行為責任の有無の問題である)」(田原睦夫補足意見)「後に判明した結果を前提に具体的な記載を求めるとすれば被上告人に不可能を強いることになり法の趣旨に反することになろう」(大谷剛彦、大橋正春補足意見)製造物責任法4条1号は、「当該製造物をその製造業者等が引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっては、当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかったこと」の場合には免責すると定め、開発危険の抗弁を認めています。ただし、前回解説したように、「科学又は技術に関する知見」は、入手可能な世界最高の科学技術の水準とされており、非常に限定されています。しかし、開発危険の抗弁が非常に限定的に用いられるべきといっても、後で判明した当時は知る由もなかった知見によって欠陥認定することはさすがに認められないと補足意見は述べています。これは、一見すると当たり前のことのように思われますが、製造物責任法が、無過失責任を求めている以上、製品によって利益を得ている企業がいかなる場合においても責任をとるべきであるという学説は根強く存在しており、この点につき補足意見を述べたこととなります。この欠陥認定の基準時の問題は、順次症例数を増やしながら開発、使用される医薬品にとっては非常に重要な問題であり、この点について意見としてではありますが明確に述べられたことは意義があるといえます。また、裁判は事件が発生した後に行われることから、常に「後知恵バイアス」がかかります。医療訴訟でも2000年代前半には、結果からみて「あの時こうすべきだった」として病院側を敗訴させた判決がいくつか出され、医療界が混乱する原因となりました。医療と司法の相互理解が進む中、「後知恵バイアス」の危険性について、司法は常に意識する必要があるものと考えます。〔2〕医薬品に対する理解「医薬品、殊に医療用医薬品は、身体が日常生活において通常摂取しないものを、その薬効を求めて摂取するものであるから、アレルギー体質による反応等を含めて、一般に何らかの副作用を生じ得るものである。医療用医薬品のうち汎用的に用いられるものについては、その求められる安全性の水準は高く、副作用の発生頻度は非常に低く、又その副作用の症状も極めて軽微なものに止まるべきものであり、かかる要件を満たしている医薬品は、「通常有すべき安全性」が確保されていると言えよう。次に、一般に医療用医薬品は、薬効が強くなれば、それと共に一定程度の割合で副作用が生じ得るものである。当該医薬品の副作用につき、医師等は一定の用法に従うことによりその発生を抑止することができ、あるいは発生した副作用に対し、適切に対応し、またその治療をすることが出来るのであれば、かかる副作用が生じ得ること及びそれに対する適切な対応方法等を添付文書に記載することによって、「通常有すべき安全性」を確保することが出来ると言って差支えないと考える」(田原睦夫補足意見)これは、医療用医薬品の副作用について述べている部分を抜粋したものです。医療界の人ならばギョッとする文章ですが、現時点における最高裁判事の医療への理解はこの水準であることが理解できます。当たり前のことですが、医薬品である以上、風邪薬でも致死的な副作用は生じます。市販薬ですら、年数件の死亡事例があります。(一般用医薬品による重篤な副作用について)行き過ぎた安全神話が2000年代前半の医療バッシングを後押ししたことは記憶に新しいところです。「安全であればいいなあ」が「安全に決まっている」になり、その結果、「悪しき結果が生じた場合には犯人がいるに違いない」とされ、医療崩壊が生じました。しかし、このような認識のギャップは専門領域においては必然的に生じるものであり、その解決策は決して相手を非難することではなく、積極的な情報開示を行い、相互理解を進めることです。医療界には、積極的かつ継続的な情報開示と対話が求められているものと考えます。〔3〕製造物責任法の適用について「しかし、薬効の非常に強い医薬品の場合、如何に慎重かつ適切に使用しても、一定の割合で不可避的に重篤な副作用が生じ得る可能性があることは、一般に認識されているところである。そうであっても、副作用の発生確率と当該医薬品の効果(代替薬等の可能性を含む。)との対比からして、その承認が必要とされることがある。その場合、「慎重投与や不可避的な副作用発生の危険性」については添付文書に詳細に記載すべきものではあるが、その記載がなされていることによって当該医薬品につき「通常有すべき安全性」が確保されていると解することには違和感がある(その記載の不備については、不法行為責任が問われるべきものと考える)。他方、かかる危険性を有する医薬品であっても、その薬効が必要とされる場合があり、その際に、かかる重大な副作用の発生可能性が顕在化したことをもって、当該医薬品の「欠陥」と認めることは相当ではない。上記のように副作用が一定の確率で不可避的に発生し得る場合には、「通常有すべき安全性」の有無の問題ではなく、「許された危険」の問題として捉えるべきものであり、適正に投与したにも拘ず生じた副作用の被害に対しては、薬害被害者救済の問題として考えるべきものではなかろうか」(田原睦夫補足意見)「イレッサが、手術不能又は再発非小細胞肺がんという極めて予後不良の難治がんを効能・効果として、第Ⅱ相の試験結果により厚生労働大臣の承認がなされ、要指示医薬品、医療用医薬品とされた上で輸入販売が開始されたのは、有効な新薬の早期使用についての患者の要求と安全性の確保を考慮した厚生労働大臣の行政判断によるものであり、その判断に合理性がある以上は、その結果について医薬品の輸入・製造者に厳格な責任を負わせることは適当ではない。その一方で、副作用が重篤であり、本件のように承認・輸入販売開始時に潜在的に存在していた危険がその直後に顕在化した場合について、使用した患者にのみ受忍を求めることが相当であるか疑問が残るところである。法の目的が、製造者の責任を規定し、被害者の保護を図り、もって国民生活の向上と国民経済の健全な発展に寄与することにあるならば、有用性がある新規開発の医薬品に伴う副作用のリスクを、製薬業界、医療界、ないし社会的により広く分担し、その中で被害者保護、被害者救済を図ることも考えられてよいと思われる」(大谷剛彦、大橋正春補足意見)前回解説したように、医薬品の副作用被害には、すでに無過失補償制度である医薬品副作用被害救済制度が存在します(表)。しかし、「制度の穴」として抗がん剤や免疫抑制剤等の対象除外医薬品による副作用被害や添付文書違反等があることから、除外対象事由に該当する患者・家族は、泣き寝入りするか訴訟をするしかない状況にあります。表 医薬品副作用被害救済制度除外事由画像を拡大する今回の最高裁判決は、製造物責任法を適用した上で、製薬企業側の勝訴としました。しかし、補足意見の形で、5名中3名の最高裁判事が抗がん剤による副作用被害についても、副作用被害救済制度に組み入れるべきと述べました。第1審敗訴によって「抗がん剤等による健康被害の救済に関する検討会」が立ち上がり、第2審勝訴によって同検討会は、抗がん剤による副作用被害を除外事由から外すことを見送りました。しかし、この最高裁判決により、ボールは今、再び医療界、製薬業界および厚労行政に返ってきました。このまま除外事由として放置した場合には、次に同種の訴訟が起きた際にどう転ぶかはわかりません。一時の勝訴にあぐらをかき、最高裁からのメッセージを見て見ぬふりをすることは、本訴訟の一連の流れの中で懸念してきたドラッグ・ラグの加速や萎縮医療を自らの手で致命的なところまで押しやることになりかねないということを真摯に自覚すべきと考えます。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)最判平成25年4月12日(未収載)

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鳥インフルH7N9型ウイルスの感染源を同定、症状はH5N1型に類似/Lancet

 2013年2月、中国東部地域で鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスのヒトへの感染が発生し、感染者と家禽との接触が確認された。浙江大学医学部(杭州市)のYu Chen氏らは、同定した感染患者4例の感染源が同省の市場の家禽である可能性が高く、臨床症状は高い致死性を示すH5N1型ウイルス感染と類似するとの調査結果を、Lancet誌オンライン版2013年4月25日号で報告した。臨床像の評価とウイルスのゲノム解析 研究グループは、鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染患者の臨床像およびウイルス学的な特徴を検討し、ヒト由来のウイルスと浙江省の市場の家禽由来のウイルスを比較するゲノム解析を行った。 2013年3月7日~4月8日の間に、初発の呼吸器症状を呈し、胸部X線検査で原因不明の肺浸潤影を認め、検査でH7N9型ウイルス感染が確認された入院患者を対象とした。 これらの患者の病歴および種々の検査結果を収集した。咽喉および喀痰のサンプルを採取し、RT-PCR法でM、H7、N9遺伝子の検索を行うとともに、メイディン・ダービー・イヌ腎臓(MDCK)細胞で培養した。重複感染の評価を行い、6つのサイトカインとケモカインの血清濃度をモニタリングした。 疫学的に関連のある市場(6ヵ所)から86羽の鳥(ニワトリ20羽、ウズラ4羽、ハト5羽、アヒル57羽)の排泄腔スワブを採取して、RT-PCR法で分離株の同定と分類を行った。さらに、患者とニワトリのウイルス分離株の8つの遺伝子セグメントを系統発生的に解析した。4例中2例が死亡、ハトとニワトリから近縁ウイルスを検出 4例のH7N9型ウイルス感染患者(39歳、68歳、64歳の男性、51歳の女性)を同定した。4例とも発症前の3~8日に家禽と接触していた。 全例に発熱および抗菌薬が無効で急速に進行する肺炎を認めた。白血球数およびリンパ球数の減少や、肝・腎機能の低下がみられ、血清サイトカインやケモカイン濃度が高度に上昇し、病態の進行に伴って播種性血管内凝固(DIC)をきたした。2例(39歳と64歳の男性)が死亡し、残りの2例は回復した。喀痰サンプルは、咽喉スワブよりもH7N9型ウイルス陽性率が高かった。 2羽(40%)のハトおよび4羽(20%)のニワトリからH7N9型ウイルスが検出された。患者(死亡した64歳の男性)由来のウイルスと、疫学的に関連のある市場のニワトリ由来のウイルスはきわめてよく類似していた。すべてのウイルス遺伝子セグメントが鳥由来であった。 分離されたH7N9型ウイルスのH7は浙江省のアヒル由来のH7N3型ウイルスのH7と最も近縁であり、N9は韓国の野鳥由来のH7N9型ウイルスのN9と近縁だった。 H7の受容体結合部位の解析では、ヒトウイルスのGln226Leuの置換およびヒトとニワトリのウイルスのGly186Valの置換(α-2,6結合シアル酸受容体への親和性の増大に関連)が認められ、ヒトウイルスのPB2のAsp701Asn突然変異(ほ乳類への適応に関連)も確認された。また、M2遺伝子ではアダマンタン(アマンタジンはその誘導体)抵抗性に関連するSer31Asnの突然変異もみつかった。 著者は、「同定された鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染患者の感染源は浙江省の市場の家禽である可能性が示唆された。この新たな再集合体H7N9型ウイルスの種を超えた家禽-ヒト間の伝播は、ヒトに致死的な重度の肺炎および多臓器不全をもたらす。症状はH5N1型ウイルス感染と類似していた」とまとめている。

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新型鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染、82例の疫学的特性/NEJM

 中国疾病予防管理センター(CDC)・公衆衛生緊急センターのQun Li氏らは、2013年4月17日時点で入手できた新型鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染に関する情報を基に解析した疫学的特性についてまとめ、NEJM誌オンライン版2013年4月24日号に予備報告として発表した。その中で著者らは「H7N9ウイルス感染は中国内6地点で確認され、感染確認患者の多くが非常に重篤であった。疫学的な関連性はなかった」と述べたうえで、「ヒト-ヒト感染について2家族集団でルールアウトはできなかったが、7日間の疾患モニタリングで呼吸器症状を呈した患者の濃厚接触者(1.5%)からウイルスは検出されなかった」と報告している。H7N9感染者の疫学情報を分析、患者の濃厚接触者についても7日間モニタリング 新型鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染事例の疫学的特徴をまとめるためのフィールド調査は、H7N9感染が確認された症例(リアルタイムRT-PCR法、ウイルス分離、血清学的検査による)を対象とした。特定された患者の人口統計学的特性、曝露歴、病状変化の情報を入手した。 また、患者の濃厚接触者について7日間にわたり疾患症状についてモニタリングした。症状を発現した人には咽頭スワブを行い、H7N9ウイルスの有無をリアルタイムRT-PCR法にて調べた。入院81例の死亡率は21%、発症から死亡までの中央値は11日 3月25日以降4月17日現在までにH7N9ウイルス感染が確認されたのは82例であった(原因不明の肺炎による入院患者664例のうち)。症例患者は、平均年齢63歳(範囲:2~89)、男性が73%、84%が中心都市の住民だった。 症例が確認されたのは6地点で、上海市(確定31例、疑い1例)、浙江省(確定25)、江蘇省(確定20、疑い1)、安徽省(確定3)、河南省(確定2)、北京市(確定1)であった。 解析データを入手できた77例のうち、4例が鶏肉を扱う労働者であった。また77%(59例)が生きた動物との接触歴があり、そのうち鳥との接触歴があったのは76%(45例)だった。次いでイヌが20%(12例)、ブタは7%(4例)だった。 症例患者の発症から初診までの期間中央値は1日で、入院までは同4.5日だった。 入院例は、小児1例を除く81例で、そのうち4月17日現在、17例(21%)が死亡、発症から死亡までの期間中央値は11日であった。また、60例は予断の許さない状況が続いている。退院例は4例でいずれも症状が軽度であった。2家族集団のヒト-ヒト感染はルールアウトできず 家族集団の検討は4月17日現在、2行政区3家族で行われ、そのうち2家族のデータが解析可能であった。この2家族について、H7N9ウイルスのヒト-ヒト感染はルールアウトできなかった。 一方で、7日間の疾患モニタリングが完了したのは、患者の濃厚接触者1,689例のうち1,251例で、そのうち呼吸器症状の発症がみられたのは19例(1.5%)であったが、H7N9ウイルスは検出されなかった。

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【CASE REPORT】腰椎圧迫骨折後の慢性腰痛症 症例解説

■症例:65歳 女性 腰椎圧迫骨折後の慢性腰痛症腰椎圧迫骨折の急性期に、NSAIDs抵抗性の侵害受容性疼痛に対してオピオイド鎮痛薬を段階的に導入して十分な鎮痛効果が得られ、痛みの緩和だけでなくADLの改善が達成された症例である。高齢者の腰椎圧迫骨折後の5年生存率は30%との報告(Lau E, et al. J Bone Joint Surg Am. 2008; 90: 1479-1486)もあり、腰椎圧迫骨折による疼痛(とくに体動時痛)→安静臥床の遷延→廃用症候群→寝たきり→誤嚥性肺炎→生命危機という経過が考えられる。オピオイド鎮痛薬は最も強力な鎮痛薬であることから、痛みの程度に応じて使用しADLを改善することはきわめて重要な意義を持つ。さらに、オピオイド鎮痛薬の導入にあたっては嘔気や便秘といった副作用対策も予防的に行われており、患者のオピオイド鎮痛薬に対する忍容性も達成されていた。本症例のように腰椎圧迫骨折後に痛みが遷延することは決して珍しくはない。しかしながら、このような遷延する痛みが骨折に伴う侵害受容性疼痛だといえるだろうか。言い換えると、「遷延する痛みが器質的な原因の結果として妥当であるか否か」ということだが、これは必ずしも明確に妥当であるとは言えないことが多い。確かに、本症例では、通常組織傷害が治癒すると考えられる3ヵ月を経過しても、体動とは無関係な持続痛が徐々に増悪・拡大しており、当初の腰椎圧迫骨折だけが痛みの原因とは考えにくい。したがって、われわれは非特異的腰痛症と診断した。このような症例に対して、オピオイド鎮痛薬の効果が明確では無いにもかかわらず、オピオイド鎮痛薬をやみくもに漸増し、さらに頓用薬を併用していたことは不適切であるといわざるを得ない。オピオイド鎮痛薬の使用にあたっては、1. Analgesia (オピオイド鎮痛薬を適切に使用し痛みを緩和させること)、2. Activities of daily living(オピオイド鎮痛薬の使用はADLを改善するためであることを医師が理解し患者に教育すること)、3. Adverse effects(オピオイド鎮痛薬による副作用対策を十分に実施すること)、4. Aberrant drug taking behavior(精神依存や濫用を含む不適切な使用を常に評価し、患者教育を行うこと)の頭文字をとって4Asという注意事項が知られている。本症例は急性期のAnalgesiaとAdverse effectsへの対処は適切であったと考えられるが、腰椎圧迫骨折から3ヵ月が経過した慢性期での対応については検討の余地がある。日本ペインクリニック学会が発行した「非がん性慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬処方ガイドライン」では、オピオイド鎮痛薬の使用目的として、痛みを単に緩和するだけでなくADLを改善するために使用することを推奨している。したがって、組織修復(骨癒合)がある程度進んだであろう時期には、痛みが残存している状況でもオピオイド鎮痛薬を増加させずに運動療法の導入やADL改善の意義について教育すべきであったと考えられる。このことは、慢性腰痛に対して長期安静がred flagとして認識されていることと同義である。よって本症例で慢性期に痛みが残存しておりオピオイド鎮痛薬を増量しても痛みが緩和しないことから、医師が安静を指示していたことは適切であるとは言い難い。また、器質的障害による疼痛(侵害受容性疼痛や神経障害性疼痛)に対してオピオイド鎮痛薬を使用する場合には精神依存や濫用を引き起こしにくいことが基礎研究によって示されているが、この知見は言い換えるとオピオイド鎮痛薬を非器質的な疼痛に対して使用する場合には精神依存を防止し難いことを意味する。また、オピオイド鎮痛薬の血中濃度が乱高下すると精神依存を形成しやすい。したがって、日本ペインクリニック学会の指針でも、オピオイド鎮痛薬は器質的障害が明確な疼痛疾患に対して使用し、その使用時にはオピオイド鎮痛薬の血中濃度を一定にするために徐放製剤(2013年3月現在、非がん性慢性疼痛に対して保険適応を持つ製剤は、デュロテップMTパッチ®、トラムセット®、ノルスパンテープ®である)を使用することが推奨されている。また、このようなオピオイド鎮痛薬を使用する場合にも、非がん性慢性疼痛に対しては一日量として経口モルヒネ製剤120mg換算までにとどめることも推奨されている。これは、鎮痛薬を増量することとQOLの改善効果が必ずしも線形相関にはならず天井効果が現れることがあり、高用量では精神依存や濫用への懸念があるからである。さらに、オピオイド鎮痛薬の使用期間が長くなればなるほど精神依存や濫用、不適切使用が増加することも報告されており、オピオイド鎮痛薬の使用期間は可能な限り短期間にとどめなければならない。このほか、患者自身が鎮痛薬を管理する能力が低下している場合には、家族など患者の介護者にオピオイド鎮痛薬についての知識を教育し、その管理に関与するように指導することも重要である。本症例をまとめると、急性期の腰椎圧迫骨折に対してオピオイド鎮痛薬を早期から導入し、疼痛緩和とADLの改善を達成したことは適切であった。慢性期の腰痛に対して、オピオイド鎮痛薬を増量するとともに頓用させていた点は不適切であった。したがって、オピオイド鎮痛薬の使用にあたっては、治療指針などの推奨事項を十分に理解したうえで適切に使用し、そのことを患者に教育しなければならない。つまり、オピオイド鎮痛薬に対する精神依存や濫用の形成から患者を保護することは医師の義務であると同時に、これらが疑われる患者やオピオイド鎮痛薬の不適切使用が認められる患者に対しては、痛みの重症度にかかわらずオピオイド鎮痛薬を処方しないことは医師の権利であると考えている。

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エキスパートに聞く!「関節リウマチ」Q&A part2

CareNet.comでは4月の関節リウマチ特集を配信するにあたって、事前に会員の先生より関節リウマチ診療に関する質問を募集しました。その中から、とくに多く寄せられた質問に対し、慶應義塾大学 花岡 洋成先生にご回答いただきました。今回は生物学的製剤の投与方法や新規薬剤に関する質問です。生物学的製剤の開始時期について教えてください。また、開始時にルーチンで実施する検査を教えてください。日本リウマチ学会より、関節リウマチに対するTNF阻害薬、トシリズマブ、アバタセプト使用ガイドラインが発行されている。これに基づくと、1.既存の抗リウマチ薬通常量を3ヵ月以上継続して使用してもコントロール不良の関節リウマチ患者(コントロール不良の目安として、圧痛関節数6関節以上、腫脹関節数6関節以上、CRP 2.0mg/dL以上あるいはESR 28mm/hr以上)や、画像検査における進行性の骨びらんを認める患者、DAS28-ESRが3.2(moderate disease activity)以上の患者2.既存の抗リウマチ薬による治療歴のない場合でも、罹病期間が6ヵ月未満の患者では、DAS28-ESRが5.1超(high disease activity)で、さらに予後不良因子(RF陽性、抗CCP抗体陽性または画像検査における骨びらんを認める)を有する患者には、メトトレキサート(MTX)との併用による使用を考慮するとある。開始時のルーチンで施行する検査は、上記ガイドラインに記されている禁忌・要注意事項に該当する患者を除外する目的で、以下の検査を行う。白血球分画を含む末梢血検査、β-Dグルカン、胸部X線、ツベルクリン反応、クォンティフェロン(QFT)、HBs抗原、HBs抗体、HBc抗体また開始後の骨破壊の進展を評価するために、生物学的製剤開始前の関節X線を撮影することが多い。生物学的製剤の休薬や中止の判断基準を教えてください。いくつかの生物学的製剤で、休薬後、寛解や低疾患活動性を維持できるか(バイオフリー)を検証されている。日本発のエビデンスで最初の報告はRRR studyである(Ann Rheum Dis. 2010; 69: 1286-1291)。これはインフリキシマブによって低疾患活動性および寛解を24週間以上維持できた患者を対象に、インフリキシマブを中止し、その1年後の休薬達成率を確認したものである。その結果、55%が休薬を達成し続けた。ここで、休薬を達成し続けられた群は、そうでない群と比較して罹病期間が短く(4.7 vs 8.6年、p=0.02)、mTSS(modified total sharp score)が低値(46.9 vs 97.2、p=0.02)であると報告されている。他の製剤については検証中のものが多く確定的なことは言えないが、早期例で骨破壊が少なく、深い寛解を維持できた症例はバイオフリー寛解を維持しやすいようである。生物学的製剤投与中の感染症の早期発見方法について教えてください。わが国で施行した市販後全例調査の結果、生物学的製剤使用者の1~2%で重篤な細菌性肺炎の報告があった。ただし、早期発見する確実な手段はない。重要なことは感染症のリスクを評価し、リスクが高い症例は注意深く慎重に観察していくことである。さらに、事前の肺炎球菌ワクチンや冬期のインフルエンザワクチン接種を推奨する。生物学的製剤において感染症のリスクとして共通しているのは、ステロイドの内服、既存の肺病変、高齢、長期罹患などである(Arthritis Rheum. 2006; 54: 628-634)。さらに、インフリキシマブでは投与開始20~60日に細菌性肺炎の発症が増加する(Ann Rheum Dis. 2008; 67: 189-194)。よって投与2ヵ月以内は注意しながら診療する。また、トシリズマブ投与例ではCRPは上昇しないことが知られているため、スクリーニングの画像検査を積極的に行うことが望ましい。また、ニューモシスチス肺炎も0.2~0.3%程度報告されている。これについては、β-Dグルカンの測定を定期的に行い、労作時呼吸困難や咳嗽などを訴えた症例は慎重に精査を進めていく。間質性肺炎を合併した関節リウマチ患者に対して、どのように治療したらよいでしょうか?間質性肺疾患合併例ではMTX肺炎を誘発する懸念があるため、MTXを軸とした管理ができないことがある。米国リウマチ学会の治療推奨(Arthritis Care Res. 2012; 64: 625-639)などに基づき治療戦略を決定するが、一般的にわが国では、まず推奨度Aの抗リウマチ薬(ブシラミン、サラゾスルファピリジン、タクロリムスなど)で疾患活動性のコントロールを試みることが多い。これで活動性が抑制できなければ生物学的製剤の適応を考慮する。例外的に、活動性がきわめて高く、予後不良因子を有する症例や短期間で骨破壊が進行する症例などでは、生物学的製剤を積極的に第一選択薬として用いることもある。この場合、MTX併用を必須とするインフリキシマブは投与できない。よって、残りの製剤のどれかを選択することになるが、「既存の肺病変」の存在は生物学的製剤において重篤感染症やニューモシスチス肺炎などのリスク因子になりうる(N Engl J Med. 2007; 357 : 1874-1876)ため、リスクとベネフィットを考慮して治療方針を決定する。JAK阻害薬(トファシチニブ)など、新規薬剤の可能性について教えてください。生物学的製剤の登場によって関節リウマチの診療は大きく変わった。これらは劇的な効果をもたらしたが、無効例も存在することは間違いなく、TNFやIL-6などの阻害だけでは病態を十分制御できないことを示唆している。これを受けて、現在、新規治療薬として1,000kDa以下の低分子化合物の開発が進行しており、なかでもJAK阻害薬の有効性が臨床でも確認されている。FDAが、2012年11月に関節リウマチの治療薬として、JAK1/JAK3阻害薬であるトファシチニブを認可した。承認用量である5mg 1日2回12週間の投与によって、12.5%の寛解率を示した(Arthritis Rheum. 2012; 64: 617-629)。その効果は生物学的製剤に匹敵する。一方、JAK阻害によって多数のサイトカインシグナルが阻害され、炎症と免疫に与える影響は複雑である。高分子化合物である生物学的製剤が細胞外の受容体に作用するのに対して、低分子化合物であるJAK阻害薬は細胞内で作用する。細胞内で作用した同薬剤が、最終的にヒトにおける長期安全性にどのような影響を及ぼすのか、今後の解明が待たれる。

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地方病院閉鎖の対策として開設されたCAH、質的改善が急務/JAMA

 米国では1997年に地方病院閉鎖への対策としてCritical Access Hospitals(CAH)プログラムが策定され、地方に住むメディケア受給者に入院医療を提供する拠点となっている。CAHは25床以下、隣接入院施設と35マイル以上離れていることが開設条件だが、その要件は一部猶予され、コスト償還は101%、国の質改善プログラムも免除されている。しかし、その限られた医療資源、患者が社会的弱者であるといったことから、質の改善に関しては遅れがちとなるリスクが高いと言われていた。ハーバード公衆衛生大学院のKaren E. Joynt氏らは、このCAHと、非CAHで治療を受けた患者の死亡率について調査を行い医療の質を検証した。その結果、CAHでは死亡率が過去10年間で有意に増大していたことを報告した。JAMA誌2013年4月3日号掲載の報告より。2002~2010年のCAHと非CAHにおける3疾患の死亡率の変遷を調べ比較 CAHプログラムは2010年までに全米数百ある病院の多くが採用し、公立病院の4分の1がCAHを設置しているという。 Joynt氏らは、メディケアの診療報酬対象患者のデータを用いて、後ろ向き観察研究を行った。患者のデータは、2002~2010年に米国急性期病院に入院した、急性心筋梗塞(入院190万2,586例)、うっ血性心不全(同448万8,269例)、肺炎(同389万1,074例)であった。 主要評価項目は、CAHと非CAHのリスク補正後30日死亡率の傾向とした。当初は同程度であったが10年後は有意な格差が 解析の結果、患者、病院、地域特性別にみると違いはあるが、3つの疾患について統合したベースラインでの両施設の死亡率は同程度であった[複合死亡率 CAH:12.8%vs. 非CAH:13.0%、格差-0.3%(95%信頼区間[CI]:-0.7~0.2)、p=0.25)。 しかし、2002年から2010年の間に、CAHでは死亡率が0.1%/年の割合で増大していた。一方で非CAHは-0.2%/年ずつ減少していた。そのため、年率0.3%(95%CI:0.2~0.3、p<0.001)の有意な格差が起きていた。 そのため2010年には、CAHのほうが非CAHよりも死亡率が有意に高くなっていた[13.3%vs. 11.4%、格差:1.8%(95%CI:1.4~2.2)、p<0.001]。同様の傾向は、疾患別にみた場合も認められた。またその他の小規模地方病院との比較でも同様の傾向がみられた。 著者は、CAH改善を支援する新たな手立てが必要と思われると指摘している。

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