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新型コロナ、病床逼迫の診療現場から~呼吸器科医・倉原優氏が緊急寄稿

 各地で新型コロナ感染症の新規感染者数の増加が止まらない。7~8月にかけてのピーク時を超え、間違いなく現状は「第3波」の真っただ中にある。自治体独自の基準により「非常事態」を宣言している大阪府の状況について、CareNet.com連載執筆者の倉原 優氏(近畿中央呼吸器センター呼吸器内科)が緊急寄稿した。大阪府コロナ第3波の現状 大阪府は、現在コロナ第3波の最終局面であると信じたいくらい新規入院患者数が増えている。指定感染症として診療しているので、必然的に病床が逼迫している。政府は12月17日、向こう1年間は現行の指定感染症扱いを継続するという見通しを発表した。医療者の一部にも、「5類感染症に変えるべき」という意見もある。ただ、COVID-19を5類感染症にすることにより、複数の病院で分散して診療されるようになり、追跡されない水面下で感染者が激増するため、医療崩壊への道をたどることになるのではという懸念がある。 大阪府は現状、重症病床以外を軽症中等症病床という枠組みで運用しているが、医療施設によっては、ほぼ軽症しか診なくなっていたり、当院のようにほぼ中等症病床化していたりする施設もある。普段から高齢者を多く診ている施設には、基礎疾患がある寝たきりの症例を担当してもらい、当院のような急性期病院には少し重症寄りの症例を担当してもらおう、という暗黙の住み分けはあるかもしれない。重症化の予測は可能か パンデミック当初から、重症化指標として、フェリチン・CRP・リンパ球数が報告されていた。軽症例が少ない当院では、6~7人に1人が重症化(高流量鼻カニュラ酸素療法[HFNC] or 気管挿管 or 死亡)しているが、後ろ向きにデータを取ると、いろいろなことが見えてきた(2020年11月までの約120人で検討)。 COVID-19患者のリンパ球絶対数は、おおむね1,000/μL前後で、重症化例で際立って低いという印象はない。圧倒的に差があるのがCRPで、非重症化症例の中央値が3.7mg/dL(IQR:1.0~7.6)、重症化症例の中央値は11.0mg/dL(IQR:7.1~15.3)だった(p<0.001)。フェリチンも、非重症化323.1ng/mL(IQR:114.1~840.8)、重症化787.5ng/mL(IQR:699.9~1407.3)と約2倍の開きがある(p=0.002)。これらが高い患者は、中等症病床から重症病床へ転院する可能性が高いと言える。ASTとALTについては、正常上限を10 IU/Lほど上回っていることが多く、その理由として胆管細胞にACE2があるからという説が有力だという。時に150~200 IU/L近くまで上昇しているケースがあり、そういう場合抗ウイルス薬はなかなか使いづらい印象である。また、呼吸器専門施設ということで、当院ではKL-6を多くの症例で測定しているが、非重症例250U/mL(IQR:190.8~337.8)、重症例333.5U/mL(IQR:261.0~554.1)と、重症例でII型肺胞上皮細胞の傷害が強いことがわかる(p=0.04)。 重症化した患者さんは全例、「両肺全葉」に肺炎像があった。含気が1葉か2葉に残っていれば気管挿管は回避できるかもしれないが、全葉が侵されていると換気する肺胞がなく、呼吸不全から気管挿管に至るということである。「入院時の胸部画像検査を見たとき、医師がゾっとするほど陰影が多い」という現象は、もしかしたら重症化の一番のリスク因子かもしれない。治療と気管挿管 抗ウイルス薬については、軽症~中等症Iでファビピラビル、中等症I~重症でレムデシビルを使うことが多いが、発症早期にこれらを投与して効果があるかどうかは、臨床で実感できない。理論的には効果があると信じているが、現状「投与しない」という選択肢はほぼない状況である(投与していない施設もあると聞くが)。 SpO2が低め(94%未満)あるいはすりガラス陰影(GGO)主体のフレッシュなCOVID-19の肺炎には、デキサメタゾンを積極的に使用しているが、それが急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に進展するのを抑制しているのかどうか、これも実感があるとは言い難い。入院時に広範囲にGGOがあるシビアなARDSでは、ステロイドパルス療法を適用して、早い段階で気管挿管に踏み切っている。エアロゾルボックスの使用は、ハードウェアを介した接触感染のリスクがあるため、いまだ議論の余地がある。また、RSI(rapid sequence induction)の技術を持っている医師が院内に常時いるわけではないので、当院では呼吸器センターの強みを生かした気管支鏡を用いた気管挿管を行うことも多い。咳嗽によって術者に飛沫が飛ばないというメリットがあるが、内視鏡なので洗浄が煩雑である。 気管挿管した場合、大阪府では重症病床に転院することになる。大阪府コロナ重症センターが稼働したとはいえ、実運用ベースでの病床使用率は75%を超えているので、転院してから数日後に抜管され、再び中等症病床に戻ってくるというケースが多くなっている。今後、患者数がさらに増えてくれば、中等症病床においても重症患者を診るケースが増えることを覚悟している。【倉原 優氏プロフィール】2006年滋賀医大卒。洛和会音羽病院を経て、08年より現職。CareNet.comでは、「Dr. 倉原の“おどろき”医学論文」「Dr.倉原の“俺の本棚”」連載掲載中。

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日医・中川会長、Go Toトラベル一時停止を「率直に評価」

 日本医師会・中川 俊男会長は、16日の定例記者会見で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の増加に歯止めがかからない状況を受け、日本医師会の見解を述べた。菅総理と共にCOVID-19に対応する代表的な医療機関の内部を視察 中川氏は、14日に菅 義偉内閣総理大臣と共に新型コロナウイルス感染症対策で中核的な役割を担う国立国際医療研究センター(NCGM)を視察したことを報告した。特殊感染症病棟の病室内でECMOなど重症患者への対応、特殊防護具を着けた挿管訓練、タブレット端末を用いてICU病棟で活動する医療従事者の様子などを見学し、日々尽力いただいていることに感謝を申し伝えたという。 今回の視察は、中川氏が12月1日に菅総理と会談した際、直々にお願いし実現したもの。総理からは「国としてできる限りの支援を行う」との考えが改めて明確に示された。 また、同日(14日)は、Go Toトラベルを全国一斉に停止すると表明された日でもある。当初は新型コロナ流行終息後に実施予定だったGo Toトラベルが前倒しで行われたことに触れ、「国民の生命と健康を守ることが第一であり、徹底した感染防止対策こそが結果的には一番の経済対策になる」との考えを一貫して訴えてきたと説明。中川氏は、「今回、経済対策のバランスに苦慮されながら、菅総理がGo Toトラベル一時停止の結論を英断されたことを率直に評価したい」と述べた。 同氏は、「医療従事者にとって何より今一番の支援は、感染を極力広げないこと。最強の感染拡大防止策は、国民一人ひとりの日常の慎重な行動と所作であり、われわれのお願いが行動の自粛につながっていると実感している」として、来週のクリスマスを前に「今年は静かなクリスマス、Silent Nightで過ごしていただきたい」と国民に呼び掛けた。

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COVID-19による静脈血栓塞栓症のアンケート結果/肺塞栓症研究会

 肺塞栓症研究会と日本静脈学会は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による静脈血栓塞栓症の発症有無に関する緊急アンケートを合同で実施し、総計77施設(1,243例)より回答を得た。その結果、肺塞栓症は5例(0.4%)、静脈血栓塞栓症は7 例(0.6%)に発症していたことが明らかになった。今回のアンケート調査では、COVID-19 症例の中で肺塞栓症を含む静脈血栓塞栓症と診断された症例は欧米に比してかなり少数だった。これを踏まえ、横浜南共済病院の孟 真氏率いる調査事務局の研究者らは、「“発症自体が本当に日本人で少ない”のか、“診断されていないだけ”なのかを判断する事は困難である。しかし、欧米の指針に準拠した予防対応が適切であるか、国内でのコホート/レジストリベース研究を含むさらなる研究を行うことが喫緊の課題」としている。 また、感染症指定医療機関の有無に関わらずCOVID-19症例の入院を受け入れている施設が多いものの、COVID-19症例での血栓症予防に関して、指針やマニュアルが存在する施設が少数であったことも明らかにしている。

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乳幼児診療に感染予防策加算上乗せ、診療科問わず/日医

 厚生労働省は、小児診療の実態や、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の回復後における継続的治療の必要性などの観点から、新型コロナ感染が急速に拡大している間の特例措置として、2020年12月15日付けで事務連絡「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その31)」を発出した。 「外来における小児診療等に係る評価」と「新型コロナウイルス感染症からの回復患者の転院支援」に関する上乗せ加算が軸となっている。これに対し、16日に実施された日本医師会の記者会見で、松本 吉郎常任理事が補足説明を行った。乳幼児への外来診療などに感染予防策加算上乗せ(1)外来における小児診療等に係る評価 今回、感染予防策実施について、より配慮が求められる6歳未満の乳幼児への外来診療などに対する評価として、通常の乳幼児加算に上乗せで医科100点、歯科55点、調剤12点を特例的に算定できることとなった。これは、『小児の外来診療におけるコロナウイルス感染症2019(COVID-19)診療指針』を参考に、感染予防策を講じた上で外来診療などを実施した場合、初診・再診に関わらず算定可能。(2)新型コロナウイルス感染症からの回復患者の転院支援 COVID-19から回復した後、引き続き入院管理が必要な患者を受け入れた医療機関において、必要な感染予防策を講じた上で入院診療を行った場合の評価を3倍に引き上げ、これまでの250点から750点となった(臨時特例二類感染症患者入院診療加算)。 なお、算定に当たっては、患者またはその家族に対して、院内感染予防に留意した対応をしっかり行っている旨を十分に説明し、同意を得る必要がある。松本氏は、「医療現場の皆さまには一定の負担をかけることになるが、口頭で構わないので説明と同意への対応をお願いしたい」と理解を求めた。乳幼児診療への感染予防策加算は小児科に限定されない 記者会見では、補足説明として「両加算は発出時点(12月15日)から算定可能」「乳幼児診療への加算は小児科に限定されず、病院・診療所も問わない」「あらゆる現行の算定に対して上乗せで算定できる」などが示された。松本氏は、「まずは今回の措置をきっかけに、医療機関が継続的に感染予防策に取り組むことで、受診をためらっていた患者・家族に安心を与え、疾病の悪化や健康への悪影響が少しでも軽減されることを期待している」と述べた。 日本医師会は、今回の措置も不可欠だが決して十分ではなく、COVID-19に対応する全国すべての医療機関・医療従事者に対して、精神的ケアと人的・物的サポートが提供され、崩壊が進む医療提供体制の立て直しの一助となるよう、さらなる対応を引き続き要望していくとした。

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Pfizer社の新型コロナワクチンの第III相試験結果/NEJM

 ファイザーとビオンテックによる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン「BNT162b2」について、16歳以上における30μgの2回投与の有効率は95%で、同有効率は年齢や性別、基礎疾患の有無といったサブグループでも同程度であった。また、中央値2ヵ月間の安全性は、その他のウイルスワクチンと類似していた。アルゼンチン・Fundacion INFANTのFernando P. Polack氏らによる、進行中の第II/III相国際共同プラセボ対照観察者盲検化pivotal有効性試験の結果で、NEJM誌オンライン版2020年12月10日号で発表した。BNT162b2は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のfull-lengthスパイクタンパク質をコードする脂質ナノ粒子製剤・修飾ヌクレオシドmRNAワクチンである。第III相試験はコロナワクチンBNT162b2を3週間隔で2回投与 第III相試験は、16歳以上の健康な男女を無作為に2群に分け、一方には新型コロナウイルスワクチンBNT162b2(30μg)を、もう一方にはプラセボを、それぞれ21日間隔で2回投与した。 主要エンドポイントは、検査によって確認されたCOVID-19に対するワクチンの有効性および安全性だった。第III相試験での新型コロナウイルスワクチンの有効率は95% 第III相試験では合計4万3,548例が無作為化を受け、4万3,448例が注射投与を受けた。新型コロナウイルスワクチンのBNT162b2群が2万1,720例、プラセボ群は2万1,728例だった。 2回目投与後7日以降にCOVID-19の発症が確認されたのは、プラセボ群が162例だったのに対し、BNT162b2群は8例で、BNT162b2の有効率は95%だった(95%信用区間[Crl]:90.3~97.6)。 ワクチン有効率は、65~75歳未満で94.7%であり、年齢や性別、人種、民族、ベースラインのBMI、基礎疾患の有無で分類したサブグループにおいて類似していた(概して90~100%)。 安全性プロファイルは、注射部位の短期的な軽度~中等度の疼痛、倦怠感、頭痛で特徴付けられた。重度有害イベントの発現頻度は低く、両群で類似していた。

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COVID-19の後遺症は女性のほうが多い/和歌山県

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、寛解後に後遺症が残ることが知られつつあり、わが国では国立国際医療研究センターから「Long-COVID:専門医が語る新型コロナ後遺症の実態」などの研究・発表が行われている。 地方レベルでは、和歌山県も11月に「新型コロナウイルス感染症の後遺症等のアンケート調査の結果について」の結果を公表している。 本稿では、アンケート内容の概要を記す。アンケート概要目的:和歌山県における新型コロナウイルス感染者の退院後の症状や生活状況等を把握し、啓発や対策に繋げる対象者:新型コロナウイルス感染者で9月14日時点で退院後2週間以上経過している者方法:感染者の管轄保健所からの郵送もしくは聞き取り調査対象者数:216人回答者数:163人(性別 男性97:女性66)回答率:75.5%退院後も「嗅覚障害」は継続してある 有症状者の状況として、症状があると回答した男性は42人(43%)、女性は33人(50%)であり、女性のほうが多かった。年代では、20代が19人と最も多く、50代(17人)、60代(11人)と続いた。 「退院後の症状」として退院後何らかの症状がある75人のうち、症状で最も多かったのは「嗅覚障害」だった。続いて「倦怠感」、「味覚障害」、「呼吸困難感」と多かった。また、無症状で経過した人が退院後に「倦怠感」や「集中力低下」、「記憶障害」、「目の充血」を訴える例もあった。 「退院後の症状」について男女別では、「倦怠感/味覚障害/脱毛」は男女同数だったが、「呼吸困難感」「頭痛」は女性のほうが多く、「嗅覚障害」「集中力低下」「睡眠障害」「記憶障害」は男性のほうに多かった。 「入院中重症度別 後遺症」では、退院後、肺炎以上の重症度のうち約2~3割の人に「倦怠感」や「呼吸困難感」が継続していたほか、「胸痛」も約1割の人にあった。重症者には「関節痛」が約2割と多かった。また、約1割の人において「咽頭痛」が継続していたほか、「食欲不振」も重症者に多い傾向だった。「味覚障害」「嗅覚障害」については重症度に関わらず約2割の人に継続していた。自宅待機は身体面、精神面に影響を与える 退院後の回復状況については、回復しているが119人(76%)で、少し不調30人(19%)、不調7人(5%)であった。また、年齢別では、回復していると回答した回復者の割合が高いのは、20代以下の若い年代と70代以上の高齢者だった。その一方で、30代~60代では、回復者の割合がそれらより低かった。とくに、50代で回復者の割合が60%と最も低かった。 「療養生活中や退院後の生活において困ったこと(重複回答あり)」では、「自宅待機中の生活」(8人)、「体調の回復や健康面への不安」(7人)、「風評被害、誹謗中傷」(7人)、「療養生活での不安やストレス」(6人)の順で多く、精神面での事項を回答する人も多かった。 まとめとして和歌山県では、「今回の調査では、症状の持続期間が正確に捉えることはできなかった」とし、「退院後の症状がどのような機序で起こるのかなど研究成果が待たれる。今後、必要に応じてさらなる調査を行うことを検討する」と今後の調査継続を示唆している。

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第36回 無罪のままのディオバン事件関係者、これからの行方は?

世の中は相変わらず新型コロナウイルス感染症に関する話題で持ちきりだが、先日ふと「もう2年が経ってしまったか」と思った事件がある。一時世間をにぎわした、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)・バルサルタン(商品名:ディオバン)の旧薬機法違反事件の検察による上告の件である。ここで改めて事件を振り返りたい。バルサルタンは日本国内だけで一時年間売上高1,000億円を超えたトップクラスの医薬品。そもそもARBを含む降圧薬は血圧を低下させることで脳心血管疾患の発症を予防することが服用目的だ。このため、降圧薬を擁する製薬各社はプロモーション活動を有利にするため、市販後に心血管疾患の発症予防効果を確認する大規模な臨床研究を行う。ご多分に漏れずバルサルタンでもそうした臨床研究が国内で複数行われ、いずれもバルサルタンでのポジティブな結果だったことから、製造販売するノバルティス社のプロモーション資材などで大々的に紹介された。ところが2012年に当時の京都大学医学部附属病院循環器内科助教の由井 芳樹氏がLancetなど複数の学術誌で、国内で行われたバルサルタンにポジティブな結果を示した臨床研究である、京都府立医科大学による「Kyoto Heart Study」、東京慈恵医科大学による「Jikei Heart Study」、千葉大学による「VART」の統計処理の不自然さを指摘したことをきっかけに問題が顕在化した。そしてこの件に加え、この3つの臨床研究の共同研究者として名を連ねていた大阪市立大学の研究者が実際にはノバルティス社の社員であることが発覚。前述の3研究以外にもこの社員が共同研究者として参加したことが判明した、バルサルタン関連の研究である滋賀医科大学の「SMART」、名古屋大学の「Nagoya Heart Study」にも不自然な点があることも分かった。各大学は調査委員会を設置し、データの人為的な操作がうかがわれる、あるいはデータ管理がずさんという調査結果が公表し、いずれの研究も既に論文は撤回されている。この件については厚生労働省も2013年に検討会を設置して関係者などをヒアリング。2014年1月にはバルサルタンに有利な形に研究データを操作して掲載に至った論文をプロモーションに用いた行為が薬事法(現・薬機法)第66条に基づく誇大記述・広告違反に該当するとしてノバルティス社を東京地検に刑事告発。この結果、同年6月に東京地検は大阪市立大学教官を名乗っていた前述のノバルティス社員を逮捕し、社員と同時に同法第90条に定める法人の監督責任に伴う両罰規定に基づき法人としてのノバルティス社も起訴した。一審で元社員、ノバルティス社はともに一貫して無罪を主張。2016年12月、検察側は元社員に懲役2年6ヵ月、ノバルティス社に罰金400万円を求刑したが、2017年3月16日の一審の判決公判で、東京地裁は両者に無罪の判決を言い渡し、これを不服とする検察側が控訴した。しかし、控訴審判決で、東京高裁は2018年11月19日、一審の無罪判決を支持し、検察側の控訴を棄却。これに対して東京高検は同年11月30日に最高裁に上告していた。それから何の判断も下らず2年が経過したのであるそもそもなぜこの事件では現時点まで無罪という判断が下っているのか?実は一審判決では、起訴事由となった研究論文作成の過程で元社員がバルサルタンに有利になるようなデータ改ざんを行っていたことは認定している。しかし、判決で裁判長は薬事法第66条で言及する「虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布」は、(1)医薬品の購入意欲を喚起・昂進するもの、(2)特定医薬品の商品名の明示、(3)一般人が認知できる状態、の3要件すべてを満たすものと指摘。この件はこのうちの(2)、(3)を満たすものの、(1)については一般的な査読のある学術誌に掲載された研究論文は、「購入意欲を喚起・昂進するもの」との要件を満たしているとは言い難いとして、第66条が規定する「広告」「記述」「流布」のいずれにも当たらず、違法とはならないとの判断だった。法的解釈、あるいは製薬業界内の論理で考えれば、この判決は妥当との判断もできるかもしれない。しかし、一般社会に向けて「保険薬のプロモーションに利用された論文に改ざんはあれども違法ではない」と言われても、にわかには納得しがたいはずだ。一審判決時、裁判長が無罪判決を言い渡した直後、法廷内は数秒間静まり返り、その後「フー」とも「ホー」とも判別できない微かな声が広がった様子をやはり法廷内にいた私は今でも覚えている。顔見知りの記者同士は互いに無言のまま目を大きくして顔を見合わせた。意外だという反応の表れだった。東京地検は即座に控訴するが、その理由の中でノバルティス社側には論文の執筆・投稿に明確な販促の意図があり、査読のある学術誌への掲載という外形的な事実のみで「広告」に当たらないとするのは事実誤認であると主張していた。これに対して控訴審判決では、学術論文は客観的に顧客誘引性を有しておらず、論文を宣伝に用いようとしていた被告らの行為も顧客誘引の準備行為と言えるものの直接的に顧客誘引の意図があったとは認められないとして控訴を棄却した。また、66条の規制に学術論文を認めた場合、論文内に不正確性などがあった場合は、その都度、故意の有無を問わねばならず、「学問の自由」への侵害ともなりかねないと指摘。虚偽の学術論文による宣伝行為に関しては「何らかの対応が必要だが、66条1項での対応は無理があり、新たな立法措置が必要」とした。簡単に言えば、「問題のある行為だが、今の法律では裁けない」ということだ。確かに控訴審の判断まで聞けば、ある意味無罪もやむなしなのかと個人的には思った。しかし、何ともモヤモヤした思いが残る。そして東京高検は上告に踏み切った。当時、東京高検周辺を取材した際に上告理由として浮上してきたのは、「経験則違反」と「著反正義」の2点である。経験則違反は判例などに照らして事実認定すべきものを怠った場合を指し、著反正義は控訴審判決を維持した場合に、著しく社会正義が損なわれるという考え方。東京高検が経験則違反に当たる事実認定をどの部分と考えているかは不明だ。控訴審での検察の主張と判決を照らし合わせると、論文の作成過程に関してノバルティス社が深く関与したにもかかわらず、判決ではあくまで広告の準備段階としてこの行為そのものに顧客誘引性は認定しなかったことを指すと思われる。著反正義はまさに地裁判決で認定された元社員によるデータ改ざんがありながら、罪には問えない点が該当するとみられる。さてそこで上告から2年経つわけだが、そもそも直近のデータでは刑事事件で上告されたケースの8割は上告棄却になり、2割弱は上告が取り下げられる。最高裁が下級審の原判決を破棄して判決を下す「破棄自判」、下級審での裁判のやり直しを命じる「破棄差戻・移送」は極めて稀である。しかも上告棄却の場合は約95%が上告から半年以内に行われる。もちろん今回のバルサルタン事件のように上告から2年以上音沙汰なしだったものが、最終的に上告棄却となったものもあるが、その確率は直近で0.4%。ちなみに最新データによると、上告事件で破棄自判となったものはそれまでに2年超、破棄差戻・移送では1年超が経過している。バルサルタン事件がいずれの判断になるかは分からない。だが、どうなろうとも現時点で極めて異例な事態となっているのだ。そして、もし原判決が覆ることになれば、おそらく「製薬企業の資金支援がある研究論文≒広告」という決着になるだろう。その場合、医療用医薬品情報提供ガイドラインの登場、コロナ禍によるリモートプロモーションの増加と同等あるいはそれ以上のインパクトを製薬業界に与えることは間違いないと思っている。

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コロナ禍初期のがん治療キャンセル・変更患者、3人に1人

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが、がん患者にどれほど影響を与えているか。本稿では、オランダ・Netherlands Comprehensive Cancer Organisation(IKNL)のLonneke V van de Poll-Franse氏らが、コロナ禍において同国がん患者が、がん治療とフォローアップ治療(電話/ビデオ相談を含む)、ならびにウェルビーイングについてどのように認識しているかを調べ、一般健常者と比較評価した。その結果、がん患者の3人に1人がコロナ禍の最初の数週間でがん治療が変化したと報告し、長期アウトカムに関する監視が必要なことが示されたという。一方で、コロナ禍は、がん患者よりも一般健常者においてメンタルヘルスにより大きな影響を与えていることも報告された。JAMA Oncology誌オンライン版2020年11月25日号掲載の報告。 研究グループは2020年4~5月に、オランダのPROFILES(初期治療後の患者報告アウトカムおよび生存の長期評価)レジストリに参加しているがん患者、ならびに一般健常者を対象にオンラインアンケート調査を行った。 がん治療の変更(治療またはフォローアップの予約を延期/キャンセルまたは電話/ビデオ相談に変更)に関連する要因をロジスティック回帰分析により評価するとともに、生活の質、不安/抑うつおよび孤独に関して、患者集団ならびに患者と年齢および性別をマッチさせた健常者集団との差を回帰モデルで比較した。 主な結果は以下のとおり。・オンラインアンケートに回答した患者は4,094例(回答率48.6%)で、回答者の背景は男性が多く(2,493例、60.9%)、平均(±SD)年齢は63.0±11.1歳であった。・回答患者4,094例中、治療を受けたのは886例(21.7%)、フォローアップ治療を受けたのは2,725例(55.6%)であった。・390例(10.8%)が治療またはフォローアップの予約がキャンセルとなり、治療中の886例中160例(18.1%)およびフォローアップ中の2,725例中234例(8.6%)は電話/ビデオ相談に変更された。・全身療法、積極的監視または手術は、治療またはフォローアップの予約のキャンセルと関連していた。・若年齢、女性、併存疾患、転移性がん、SARS-CoV-2感染の懸念、および支持療法を受けることは、電話/ビデオ相談への変更と関連していた。・コロナ禍のため、身体的な愁訴または不安があってもすぐに連絡しなかった(一般開業医あるいは専門医/看護師に)と回答したのは、がん患者では一般開業医に連絡しなかったのが20.9%(852/4,068例)、専門医/看護師に連絡しなかったのが14.4%(585/4,068例)、健常者ではそれぞれ22.3%(218/979例)、14.7%(44/979例)であった。・電話/ビデオ相談を受けた患者のほとんどは対面を好んだが、151/394例(38.3%)は再び電話/ビデオ相談を利用した。・がん患者は健常者よりも、SARS-CoV-2感染を心配している人が多かった(22.4%[917/4,094例]vs.17.9%[175/977例])。・生活の質、不安およびうつは、がん患者と健常者とで類似していたが、孤独を報告する人は健常者が多かった(7.0%[287/4,094例]vs.11.7%[114/977例]、p=0.009)。

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日本人のCOVID-19による血栓症発症率は?

 合同COVID-19関連血栓症アンケート調査チームによる『COVID-19関連血栓症に関するアンケート調査』の結果が12月9日に発表された。それによると、日本人での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連血栓症の発症率は、全体では1.85%であることが明らかになった。 この調査は、COVID-19の病態の重症化に血栓症が深く関わっていることが欧米の研究で指摘されていることを受け、日本人COVID-19関連血栓症の病態及び診療実態を明らかにすることを目的として行われたもの。2020年8月31日までに入院したCOVID-19症例を対象とし、全国の病院399施設のうち109施設からCOVID-19患者6,082例に関する回答が寄せられた。なお、合同調査チームは厚生労働省難治性疾患政策研究事業「血液凝固異常症等に関する研究」班、日本血栓止血学会、日本動脈硬化学会の3組織合同によるもの。 主な調査結果は以下のとおり。・Dダイマーは症例全体の72%で測定され、入院中に基準値の3~8倍の上昇を認めたのはそのうちの9.5%、8倍以上の上昇を認めたのは7.7%と、多くの症例で血栓傾向がみられた。・血栓症は1.85%(血栓症に関する回答のあった5,687例のうち105例)に発症し、発症部位は(重複回答を可として)、症候性脳梗塞22例(血栓症症例の21.0%)、心筋梗塞7例(同6.7%)、深部静脈血栓症41例(同39.0%)、肺血栓塞栓症29例(同27.6%)、その他の血栓症21例(同20.0%)であった。・血栓症は、軽/中等症の症例での発症が31例(軽/中等症症例の0.59%)、人工呼吸器/ECMO使用中の発症が50例(人工呼吸/ECMO症例まで要した重症例の13.2%)であった。・症状悪化時に血栓症を発症したのは64例だったが、回復期にも26例が血栓症を発症していた。・抗凝固療法は、76病院で6,082例のうち880例(14.5%)に実施された。治療法の主な内訳は、未分画ヘパリン591例(880例中の67.2%)、低分子量ヘパリン111例(同13.0%)、ナファモスタット234例(同26.6%)、トロンボモジュリンアルファ42例(同4.8%)、前述の薬剤併用138例(同15.7%)、直接経口抗凝固薬[DOAC]91例(同10.3%)、その他42例(同4.8%)だった。・予防的抗凝固療法の実施について回答した49施設によると、予防的投与を行った患者背景として、Dダイマー高値、NPPV(非侵襲的陽圧換気)/人工呼吸患者、酸素投与患者などが挙げられた。

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新型コロナ感染症におけるIgGモノクローナル抗体治療に対する疑問(解説:山口佳寿博氏)-1326

 新型コロナに対する治療の一環として、Spike蛋白のS1領域に存在する受容体結合領域(RBD)に対するIgGモノクローナル抗体(bamlanivimab[LY-CoV555]、Eli Lilly社)に関する第II相多施設二重盲検ランダム化対照試験(RCT)の結果が発表された(BLAZE-1 trial、Chen P, et al. N Engl J Med. 2020 Oct 28. [Epub ahead of print])。このモノクローナル抗体は、1人の患者の回復期血漿から分離されたS蛋白IgG1抗体の構造解析を基に作成された物質である。BLAZE-1 trialの結果を主たる根拠として、2020年11月9日、米国FDAはbamlanivimabの緊急使用を許可した(本邦:現時点では未承認)。S蛋白に対するモノクローナル抗体カクテル(REGN-COV2、Regeneron Pharmaceuticals社)は、10月初旬にトランプ大統領が新型コロナに感染した時に投与されたことから世間の注目を浴びるようになった。しかしながら、BLAZE-1 trialの結果は、本療法が他の療法に比べとくに有効であると結論できるほどの医学的根拠を示していない。それ故、本論評ではIgGモノクローナル抗体療法の源流である回復期血漿治療までさかのぼり、IgGモノクローナル抗体療法の問題点を整理したい。 患者の回復期に得られた血漿を新たな患者に輸血する方法はエボラ出血熱、SARS、MERS、鳥インフルエンザなど種々の感染症において施行されてきた。新型コロナにあっても、ニューヨーク州Andrew Cuomo知事は回復期血漿を新たな感染者に投与することを表明した(2020年3月24日)。これを受け、米国FDAは回復期血漿の緊急使用を後出しで承認した(3月25日)。米国における動向を受け、本邦の厚労省も回復期血漿投与を保険適用外治療として承認した。非盲検化観察研究では回復期血漿投与を有効とする報告が多いが、RCTによる検討結果は本療法の臨床的効果を必ずしも肯定するものではなかった。 インド39施設におけるRCT(PLACID Trial、中等症の患者が対象、対照群:229例、血漿投与群:235例)では、輸血後7日以内のウイルス陰性化率は血漿投与群で有意に高く臨床所見も改善することが示された(Agarwal A, et al. BMJ. 2020;371:m3939.)。しかしながら、経過観察中の中和抗体価、種々の炎症マーカー(LDH、CRP、D-dimer、Ferritin)、28日以内の重症化率、死亡率は両群間で有意差を認めず、回復期血漿投与の臨床的効果は非常に限られたものであることが示唆された。アルゼンチンの12施設で施行されたRCT(PlasmAr trial、肺炎を認めた中等症患者が対象、対照群:105例、血漿投与群:228例)では、血中のウイルスに対するIgG抗体価は輸血後2日目において血漿投与群で有意に高値であったものの、それ以降では対照群との間で有意差を認めなかった(Simonovich VA, et al. N Engl J Med. 2020 Nov 24. [Epub ahead of print])。輸血30日後の臨床所見、死亡率は両群で差がなく、血漿投与の臨床的に意義ある効果は確認されなかった。PlasmAr trialで得られた興味深い知見は、血漿として1回投与されたIgG抗体は2日前後で分解され長期に血中に残存しないことを示していることである。この結果は、IgGモノクローナル抗体投与時にも成立する事象であり、1回投与されたIgGモノクローナル抗体は2日前後で生体内において分解/処理されると考えなければならず、血漿投与あるいはIgGモノクローナル抗体投与が本当に1回のみでよいかに関して疑問を投げかける。 BLAZE-1 trialは米国41施設で施行された軽症・中等症患者(非入院)を対象としたRCTで、IgG単回投与量の差による臨床効果の差を解析している(対照群:143例、700mgのIgG投与群:101例、2,800mgのIgG投与群:107例、7,000mgのIgG投与群:101例)。試験開始11日目のウイルス量は2,800mgのIgGモノクローナル抗体投与群において対照群より有意に低下していたが、他の用量では対照群と差を認めなかった。2~6日目の臨床所見はIgG投与群全体(3つの投与群を一括)で対照に比べ有意に改善していた。さらに、入院または救急外来を受診した患者の割合は、対照群で6.3%であったのに対してIgG投与群全体では1.6%と少ない傾向を認めた(ただし、統計学的有意差検定の結果は論文中に示されていない)。以上の結果より、BLAZE-1 trialの著者らは、IgGモノクローナル抗体の投与量は2,800mgが至適であると結論した。 BLAZE-1 trialに加えbamlanivimabを用いた治験として、ACTIV-2(非入院の軽症・中等症患者220例を対象)、ACTIV-3(入院中の比較的重症患者300例を対象)、BLAZE-3(介護施設の入居者、職員を対象とした感染予防効果の検証)などが終了、中止、あるいは進行中である。しかしながら、多人数を対象とした第III相試験は計画されていない。以上のような現状であるにもかかわらず、米国FDAはIgGモノクローナル抗体、bamlanivimabの緊急使用を許可した。薬物投与の対象は非入院の軽症・中等症患者(12歳以上)にあって重症化危険因子(たとえば、65歳以上の高齢) を有するものであり、発症後10日以内に可及的速やかにbamlanivimabを700mg単回投与することが推奨された。一方で、入院あるいは酸素投与が必要な患者(重症例)は適用外であり、これらの患者へのIgGモノクローナル抗体投与は病状を逆に悪化させる可能性があるとFDAは警告している。 IgGモノクローナル抗体の緊急使用許可には種々の疑問点が存在する。(1)IgGモノクローナル抗体の単回投与では、おそらく数日以内にIgG抗体は生体内で分解/処理されるはずであり、コロナ感染初期に自然なIgG抗体価が上昇し難い患者に使用対象を絞るべきである(たとえば、免疫不全患者など)。(2)FDAの緊急使用許可の主たる根拠となったBLAZE-1 trialで決定された投与量は2,800mgである。それにもかかわらず許可されたのは700mgであった。この点に関しても十分な説明がなされていない。(3)IgGの生体内残存時間からは単回投与でよいかどうかに関して疑問が残る。初回投与数日後に2回目のIgGモノクローナル抗体を投与した場合の検討が必要と思われる。(4)FDAは重症例への投与によって病状が悪化することを懸念しているが、これは、投与されたIgGモノクローナル抗体によって“抗体依存性感染増強(ADE:Antibody-dependent enhancement of infection)”が発生する可能性を危惧したものと思われる。ADE発生の可能性を検討する目的でT細胞系反応(Th-1サイトカインとTh-2サイトカインのバランス)に関する解析を追加すべきである。 以上のようにIgGモノクローナル抗体療法には不明な要素が多々存在し、費用対効果の面からこのような高額治療を臨床の現場で施行すべきかどうかについて冷静な判断が求められている。

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インフルとの鑑別を追記、COVID-19診療の手引き第4版/厚生労働省

 12月4日、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第4版」を公開した。 同手引きは診療の手引き検討委員会が中心となって作成され、第1版は3月17日に、第2版は5月18日に、第3版は9月4日に公表され、随時最新の内容に更新している。 今回の改訂では、日本産科婦人科学会の協力を得て、臨床像や院内感染対策の更新を図ったほか、検査法、薬物療法などに関する新しい知見や行政対応に関する情報を反映させている。 同委員会では「これまでと同様に医療現場で参考にされ、患者の診療ケアの一助となることを期待する」と述べている。主な改訂点【臨床像】・「臨床像」の画像所見の紹介点数が重症度別に追加された・「重症化のリスク因子」で妊婦が削除された・「合併症」で「二次性細菌・真菌感染症」が追記された・「症状の遷延(いわゆる後遺症)」で日本の知見が追記された・「妊婦例の特徴」が1項目追記された【症例定義・診断・届出】・「抗原検査」の「各種検査の特徴」など図表が刷新された・「インフルエンザとの鑑別」が1項目追記された【薬物療法】・「薬物療法」中の「その他の薬剤例」でアドレノメデュリン、イベルメクチン、バリシチニブが追記された・同じく「薬物療法」中で「回復者血漿など」が1項目追記された【院内感染対策】・「死後のケア」中で「個別の場面における主な関係者」の表が追記された

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第35回 メディアも市民も「新型コロナに有効」研究の餌食に過ぎない?

「またか」と思わずため息が出てしまった。お茶が新型コロナウイルスに有効という、この記事のことだ。まあ、読めばすぐわかるが、試験管内、in vitroの話である。一応、発表した奈良県立医科大学側のリリースによると、3種類のお茶とコントロールの生理食塩水を、一定のウイルス感染価を有する新型コロナウイルス溶液と1:1で混合して静置し、1分後、10分後、30分後にそれぞれの溶液を培養細胞に接種してウイルス感染価を測定したというもの。確かにリリースを見ると、うち1種類のお茶では1分後の時点でウイルス感染価を計算すると99.625%も低下している。これ自体は事実なのだろう。だが、今発信すべき情報なのかという点では大いに疑問がある。こう書くと、「それはメディアが不勉強だから」と言われるのは分かっている。だが、もしそれを前提にするならば、不勉強な相手への発表なのだから、発信する側もそのやり方次第で責任を問われるべきものなのではないかと従来から考えている。実際、日常的に一般紙ではこの手のin vitroの研究やマウス、ラットレベルのin vivoの研究結果を、言い方は悪いが「誇大広告」のごとくに報じているのをよく見かける。これがどのような経緯で生み出されているかの構造は、実はかなり単純である。端的に言えば、ネタが欲しくて仕方がない記者と世間に少しでも成果をアピールしたい研究者・大学の利害が一致した結果だ。ただ、大手紙と地方紙、大都市圏と地方都市などの環境によって利害状況はやや異なる。大手紙の科学部記者などはin vitro、in vivoの研究に無条件に飛びつくことは少ない。だが、専門性のない社会部記者などは科学部記者よりも「読者にインパクトを与える見出しが立つようなネタかどうか?」に、より軸足が置かれる。また、大手紙地方支局や地方紙の場合、大手紙の科学部レベルの専門性がある記者がいないことも多いうえに、日常的に地元大学の研究者や広報部門と面識があれば、半分お付き合いも兼ねて大学発表の記事化に前向きになりがちである。ちなみにこの手の記事は一般的に年度末が近くなると増える傾向がある。新たな予算獲得や既に獲得した予算の成果を大学や研究者も外部にアピールしたいからだ。今回の記事に前述のような事情があるかどうかは定かではない。だが、この記事が出てきた背景により考えを巡らせるなら、さらに2つのファクターが考えられる。まず、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは既に1年近く社会機能をマヒさせ、決定打となる対処法は今のところない。ワクチンはようやくイギリスで緊急承認になったが、全世界に供給されるまでにはまだ時間を要する。感染時に使用できる承認薬は日本国内では抗ウイルス薬のレムデシビルと抗炎症薬のデキサメタゾンのみでいずれも「帯に短し、たすきに長し」である。結局のところAI実用化の現代なのに、今現在できる対策は3密回避、手洗い励行、屋内でのマスク着用という、まるでインテリジェントビルの中で暖を取るのに火打ち石で火を起こして焚火をしているかのごとくである(別に3密対策、手洗い励行、屋内でのマスク着用を馬鹿にしているわけではない)。記者とて医療者とて、この打つ手のなしの状況に何らかの光明を見いだしたい気持ちは同じだろう。そこに今回のお茶のニュースはピタッとはまってしまう。しかも、社会を混乱に陥れているCOVID-19に対抗する「武器」が誰もが身近で手にできるお茶なのだから、不特定多数に発信するメディアにとっても読者にとっても好都合である。やや余談になるが、がんの診療にかかわった経験がある医療従事者の方は、「がんに効く」とのキャッチフレーズにひかれて特定の食品や料理や健康食品にはまるがん患者に遭遇した経験があるだろう。実際、Amazonなどで一般向けのがんに関する書籍の売れ筋ランキングを見ると、上位にはかなりの頻度で「○○を食べたらがんが消えた」という類の本が登場する。特定の食品で発症したがんを治療できないことは医療従事者ならば誰もが承知のこと。しかし、がんに対する三大治療といわれる手術、放射線、抗がん剤はいずれも患者の手の届かないところにある。結局、今現状を何とかしたいと思うがん患者に手が届く対策が食事であり、そこに走ってしまうのはある意味やむを得ないこととも言える。つまり大学・研究者、メディア、一般人の鉄のトライアングルともいえる利害の一致が今回のお茶の記事を生み出していると言える。だが、この中で試験管内での現象がヒトの体内でどれだけ再現できるか、あるいはそれをヒトでより端的に効果を証明するための手法が何かを知っているのは誰だろう? それは間違いなく大学・研究者であるはずだ。だからこそまだまだヒトでの効果を期待するのは程遠い今回のファクトを発表した大学・研究者には疑問どころか軽い怒りさえ覚える。ちなみに9月に柿渋が新型コロナウイルスに有効という情報が一部メディアで流れたことがあるが、これも今回のお茶と同じ奈良県立医科大学で研究者も同じである。ちなみに大学のHPにはその後、柿渋に関して共同研究先を募集する告知が行われている。はっきり言うが、要はメディアもその読者も大学や研究者のアピール、共同研究先開拓の片棒を担がされたに過ぎない。しかも今回のケースでは特定の施設・研究者が繰り返し行っている。この手の一瞬は夢を与える耳障りのいいと情報を連発し、いつの間にか雲散霧消で実用化せずということを繰り返すことは、医学に対する不信感も醸成しかねないと敢えて言っておきたい。

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多発性骨髄腫、selinexor上乗せでPFS改善/Lancet

 1~3ラインの前治療歴を有する多発性骨髄腫(MM)患者において、週1回のselinexor+ボルテゾミブ+デキサメタゾン3剤併用療法は、ボルテゾミブ+デキサメタゾン2剤併用療法と比較して無増悪生存(PFS)期間を有意に延長することが示された。ポーランド・シレジア医科大学のSebastian Grosicki氏らが、21ヵ国123施設で実施した無作為化非盲検第III相試験「BOSTON試験」の結果を報告した。selinexorはエクスポーチン1(XPO1)を阻害する経口投与可能な選択的核外輸送阻害薬で、デキサメタゾンとの併用により既治療のMM患者に対する有効性が示され、第Ib/II相試験ではボルテゾミブ+デキサメタゾンとの3剤併用療法により、ボルテゾミブの用量制限毒性である末梢神経障害の発現は低く、高い奏効率を得ていた。今回の結果を踏まえて著者は、「既治療MM患者において、有効で使いやすい新たな治療選択肢が示された」とまとめている。Lancet誌2020年11月14日号掲載の報告。1~3ラインの前治療歴ありMM患者、3剤併用(SVd)vs.2剤併用(Vd) 研究グループは、プロテアソーム阻害薬を含む1~3ラインの前治療歴のある18歳以上のMM患者を、selinexor(100mg週1回)+ボルテゾミブ(1.3mg/m2週1回)+デキサメタゾン(20mg週2回)3剤併用群(SVd群)、またはボルテゾミブ(1.3mg/m2を最初の24週間は週2回、その後は週1回)+デキサメタゾン(20mgを最初の24週間は週4回、その後は週2回)2剤併用群(Vd群)に、1対1の割合で無作為に割り付けた(層別化因子:プロテアソーム阻害薬による治療歴の有無、治療ライン、MMのステージ)。 主要評価項目は、intention-to-treat集団におけるPFSであった。安全性については、治験薬を少なくとも1回投与された患者を解析対象集団に含んだ。PFSはSVd群13.93ヵ月、Vd群9.46ヵ月 457例がスクリーニングを受け、402例がSVd群(195例、49%)とVd群(207例、51%)に無作為に割り付けられ、2017年6月6日~2019年2月5日に初回投与が行われた。追跡調査期間中央値(四分位範囲)はSVd群13.2ヵ月(6.2~19.8)、Vd群16.5ヵ月(9.4~19.8)であった。 PFS期間中央値はSVd群13.93ヵ月(95%信頼区間[CI]:11.73~評価不能)、Vd群9.46ヵ月(95%CI:8.11~10.78)であった(ハザード比[HR]:0.70、95%CI:0.53~0.93、p=0.0075)。 主なGrade3/4の有害事象は、血小板減少症(SVd群39% vs.Vd群17%)、疲労(13% vs.1%)、貧血(16% vs.10%)、肺炎(11% vs.11%)であった。Grade2以上の末梢神経障害は、SVd群(41例、21%)がVd群(70例、34%)より少なかった(オッズ比:0.50、95%CI:0.32~0.79、p=0.0013)。SVd群で47例(24%)、Vd群で62例(30%)が死亡した。 なお本試験は進行中で、2020年2月20日時点で55例が治療を継続中である。

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新型コロナ、感染6ヵ月後も抗ウイルス抗体・中和抗体を保有/横浜市立大

 『新型コロナウイルス感染症回復患者専用抗体検査PROJECT』を立ち上げていた横浜市立大学の山中 竹春氏率いる研究グループは、12月2日に行った「新型コロナウイルス感染6ヵ月後における抗ウイルス抗体保有および中和抗体保有調査に関する中間報告」の記者会見で、感染症回復者のほとんどが6ヵ月後も抗ウイルス抗体および中和抗体を保有していることを明らかにした。 日本初の国内最大規模の回復者データに基づく本研究は、COVID-19回復者の一定期間後の追跡調査として『コロナ回復者専用抗体検査PROJECT』で参加者を募集。8~9月に617名の参加希望者が集まり、そのうち10月26日までに採血して検体測定を完了した376例のデータを解析した。今回の中間報告では、抗体保有率のほか、COVID-19回復者のうち酸素投与を要した中等症・重症例のほうが軽症例よりも中和活性が高い傾向であることも示唆された。 これまでの海外の報告では「中和抗体の活性が検出限界以下、もしくは非常に低い感染者がいる」「抗ウイルス抗体が早期に消失する」などと言われているが、今回の結果によれば、感染から中長期後の回復者の体内に中和抗体が確認されれば、そうでない場合に比べて再感染する可能性は低くなる。今後、回復者の1年後の状態が調査されるほか、厚生労働省主導の抗体保有率疫学調査が12月19日から東京都、大阪府、愛知県、福岡県の各3,000人を対象に実施されることから、これらの調査結果の報告が待たれる。

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感染経路が不明なCOVID-19症例は診断が遅れやすい/日本での調査

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の診断の大きな遅れ(long diagnostic delays:LDD)は、その後の患者隔離の効果が減少する可能性がある。わが国では当初、軽症の場合は発症から4日間待機という基準が示されたことから、茨城県土浦保健所の緒方 剛氏らは、曝露経路が不明なCOVID-19症例ではLDDが大幅に増加したと想定し、COVID-19症例のLDDの割合と曝露経路検出の関連を調査し報告した。International Journal of Environmental Research and Public Health誌オンライン版2020年11月21日号に掲載。 本研究は、2020年3月22日(第12週の終わり)時点で30例を超えるCOVID-19症例が報告された8都道府県から、曝露経路に関するデータを取得できなかった東京と大阪を除外し、北海道、埼玉、千葉、神奈川、愛知、兵庫を対象とした。これらの道県で、症状発現日が2月24日~3月15日(第9~11週)のCOVID-19症例と、PCR検査で確認されたSARS-CoV-2陽性例のうち、無症候性の症例と症状発現日が欠落している症例を除外した。LDDは、症状発現日からPCR検査によるSARS-CoV-2陽性の確認日までの期間が6日以上とした。 主な結果は以下のとおり。・364例のCOVID-19症例のうち、男性が190例(52%)、60歳以上が196例(54%)だった。曝露経路がわかっていた症例(経路既知例)は209例(57%)、曝露経路不明な症例(経路不明例)は118例(32%)、他国からの輸入症例(輸入例)は37例(10%)だった。・COVID-19患者の診断の遅れは平均6.28日(95%CI:5.8~6.8)で、標準偏差(SD)は4.57日(95%CI:4.1~5.0)だった(bootstrap)。・LDDの割合は、全体で51%、経路既知例で38%、経路不明例で65%、輸入例で73%だった。9週目に症状発現した症例と比較したLDDの調整オッズ比は、10週目に発現した症例で0.31(95%CI:0.170~0.58)、11週目に発現した症例で0.17(95%CI:0.090~0.32)だった。・経路既知例と比較したLDDの調整オッズ比は、経路不明例で2.38(95%CI:1.354~4.21)、輸入例で3.51(95%CI:1.418-8.75)だった。調整オッズ比は、愛知県の症例よりほかの5道県の症例で有意に高かった。 著者らは「曝露経路が不明な患者のLDD割合は65%であり、経路既知例よりも有意に高かった。症状発現から早期のPCR検査とPCR検査実施能力の強化が推奨される。また、COVID-19患者数のその後の増加に対するLDDの影響を検討するために、さらなる調査が必要」と結論している。

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約6割が第3波の原因はGo to関係と回答/アイスタット

 冬の到来を迎え新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は、いわゆる「第3波」への対応が早急に模索されるとともに、全国的な感染患者、陽性者の増加が懸念されている。 株式会社アイスタット(代表取締役社長 志賀 保夫)は、11月24日に「COVID-19 第3波に関するアンケート調査」を行った。 アンケートは、業界最大規模のモニター数を誇るセルフ型アンケートツール“Freeasy”に登録している会員で20歳~69歳、北海道、東京都、大阪府のいずれかの居住者を対象に調査を実施したもの。 同社では今後も毎月定期的に定点調査を行い、その結果を報告するとしている。調査概要形式:WEBアンケート方式期日:2020年11月24日対象:セルフ型アンケートツール“freeasy”の登録者300人(20歳以上)アンケート結果の概要・新型コロナウィルス感染症拡大が「怖い」と回答した割合を経過月でみると、今回の第3波(11月24日)は76.7%で、第1回(3月20日)の69.7%より上回ったものの、第2回(4月20日)の92.0%、第3回(5月20日)の81.0%より低かった。・第3波が起きたと思う理由1位は、「Go to eatやGo to トラベルキャンペーンの開始」と半数(58.0%)以上が回答した。・第3波防止のために自粛要請や緊急事態宣言を出した方が良いと思う割合は55.7%だった。・新型コロナウィルス感染症の予防対策を「実施している」と回答した割合を経過月でみると、今回の第3波(11月24日)は79.7%で、第1回(3月20日)の58.7%より上回ったものの、緊急事態宣言中の第2回(4月20日)の84.7%、第3回(5月20日)の83.0%より低い結果だった。アンケート結果の詳細 「COVID-19の第3波についてどう思うか」という質問(11月24日時点)では、「非常に怖い」が39.7%で最も多く、「非常に怖い」「やや怖い」を足し合わせた「怖い」の割合でみると76.7%で、約8割に近い回答者が「怖い」と思っていることがわかった。属性別でみると「非常に怖い」を回答した割合は「60代・女性・既婚・北海道」で最も多い結果となった。 「COVID-19が拡大し始めた(第3波到来)と思う理由」という質問では、「Go to eatやGo to トラベルキャンペーンの開始」が58.0%で最も多く、次に「空気が乾燥する季節になってきたから」が57.3%、「気候が寒くなってきたから」が49.3%と続いた。「COVID-19(第3波)防止のために、国や自治体が警戒レベルをあげ、自粛要請や緊急事態宣言を出した方が良い思うか」という質問では、「出した方が良いと思う」が34.7%で最も多く、「すぐに出した方が良いと思う」「出した方が良いと思う」を足し合わせた「出した方が良い」の割合でみると55.7%を示し、過半数を越えた。 「COVID-19拡大の収束は、いつぐらいだと思うか」という質問では、「2022年以降」が46.0%で最も多く、約5割弱の人が1年以上は現在の状況が続くという結果だった。 「COVID-19の予防対策を実施しているか」を5段階評価で聞いたところ、「やや対策を実施している」が41.7%で、最も多い結果だった。また、「きちんと実施」「やや実施」を足し合わせた「実施」の割合は79.7%を示し、過半数を超える人が何らかの予防対策を実施していた。 「具体的にCOVID-19の予防対策」としては、「手洗い」が87.7%で最も多く、次に「マスク着用」が86.3%、「アルコール・エタノール消毒の利用」が70.0%と続いた。 「現在のCOVID-19の予防対策の意識は、緊急事態宣言のときと比べてどうか」を5段階評価で聞いたところ、「きちんと予防対策」「やや予防対策」が共に36.0%で、最も多く、「きちんと予防対策」「やや予防対策」を足し合わせた「対策している」の割合は72.0%で、約7割は緊急事態宣言のときと変わらず、意識して予防対策をしている結果だった。 「仮にPCR検査を受けたとき、免疫(陽性)があると思うか」という質問では、「わからない」が49.7%と最も多く、「ないと思う」が39.3%と続いた。

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COVID-19と精神疾患、相互に発症リスク高める

 COVID-19患者において精神疾患の後遺症リスクが高く、また精神疾患がCOVID-19の独立したリスク因子である可能性が、英国・オックスフォード大学のMaxime Taquet氏らによる電子健康記録ネットワークコホート研究で示唆された。Lancet Psychiatry誌オンライン版2020年11月9日号に掲載。 本研究は、米国の54施設の患者6,980万人の電子健康記録から匿名化データを収集しているTriNetX Analytics Networkを使用した。TriNetXには2020年1月20日~8月1日にCOVID-19と診断された6万2,354人のデータが含まれ、COVID-19および他のさまざまなイベントを発症した患者コホートを作成し評価した。傾向スコアマッチングを用いて、COVID-19のリスク因子による交絡と重症度を調整した。COVID-19診断後14〜90日における精神疾患、認知症、不眠症の発症率とハザード比(HR)を調べた。 主な結果は以下のとおり。・精神疾患歴のない場合、COVID-19の発症は他の6イベントと比較して、診断後14~90日における精神疾患の発症率の増加と関連した(すべてp<0.0001)。 - インフルエンザに対するHR:2.1、95%CI:1.8~2.5 - 他の呼吸器感染症に対するHR:1.7、95%CI:1.5~1.9 - 皮膚感染症に対するHR:1.6、95%CI:1.4~1.9 - 胆石症に対するHR:1.6、95%CI:1.3~1.9 - 尿路結石症に対するHR:2.2、95%CI:1.9~2.6 - 大きな骨の骨折に対するHR:2.1、95%CI:1.9~2.5・不安障害、不眠症、認知症のHRが最も高かった。・COVID-19診断後14〜90日における何らかの精神疾患の発症率は18.1%(95%CI:17.6~18.6)、うち新規発症では5.8%(95%CI:5.2~6.4)であった。同期間における認知症の新規発症率は、65歳以上で1.6%(95%CI:1.2~2.1)であった。・前年に精神疾患と診断された人は、COVID-19発症率が高かった(相対リスク:1.65、95%CI:1.59~1.71、p<0.0001)。このリスクはCOVID-19の既知の身体的リスク因子とは独立していたが、社会経済的因子による残留交絡の可能性を排除できない。

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手洗い・マスク着用、一般市民は何割が実施?/感染症に関する意識・実態調査

 日本感染症学会(理事長:舘田 一博)と日本環境感染学会(理事長:吉田 正樹)は、感染症予防連携プロジェクト「FUSEGU2020」の活動として「感染症に関する意識・実態調査」と題し、首都圏に住む20~60代の男女1,000名を対象としたアンケート調査を実施。その結果、感染症予防の基本対策(手洗い、マスクの使用、手の消毒)を多くの人が実施し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行を機にほかの感染症に対する関心が高まった人が6割以上に上ることが明らかとなった。手洗い87.7%、マスク使用87.4%という意識・実態調査の結果 この感染症に関する意識・実態調査は、COVID-19拡大の大きな波を経て手洗いやマスクの使用など感染症予防のための行動が浸透しているか、2~3月に実施した調査結果と比較し実態を把握することとともに、東京オリンピック・パラリンピック開催などに向け、発生・流行する可能性のあるさまざまな感染症に対する意識を調べることを目的に実施された。 手洗いやマスクの使用など、感染症に関する意識・実態調査の主な結果は以下のとおり。・アンケートはWEB調査で、2020年10月9日~12日に実施された。・感染予防策として実施していたのは、手洗いが87.7%、マスクの使用が87.4%、手の消毒が65.9%だった。・感染予防策それぞれについて「大切である」との意識は女性で高く、若い男性で低い傾向だった。・自身に発熱がある場合、「人にうつる病気であることを意識する」人が4.5割から7割に増加した。・COVID-19などの「感染症をうつされるかもしれない」と警戒心が引き締まるのは、同居する家族12.4%、別居している家族25.6%、友人33.9%、職場の同僚 39.6%で、家族間の意識が低い傾向だった。・ほかの感染症に対する関心が高まったという人が6割以上だった。・感染症への関心が高まる一方で、COVID-19以外に対する認知・理解は進んでいなかった。・ワクチン接種を感染症の予防手段の1つとして考えている人は6割以上だった。・実際にワクチン接種を受けたり、検討したりした人は約4割にとどまった。・インフルエンザ以外の感染症については、ほとんどの人がワクチン接種を受けていない、もしくは検討していなかった。

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第32回 新型コロナと向き合う医療従事者を守る制度が発足

<先週の動き>1.新型コロナと向き合う医療従事者を守る制度が発足2.財政制度等審議会、受益者と負担のバランスを求める建議を提出3.政府、後期高齢者の窓口2割負担へ見直しに議論を加速4.経済財政諮問会議で、厚生労働大臣、令和3年度介護報酬改定に向けた方針を発表5.コロナ感染拡大第3波、患者団体から要望書相次ぐ6.医療計画の見直し、新興感染症に対する医療を6事業目に追加1.新型コロナと向き合う医療従事者を守る制度が発足新型コロナウイルス感染に対応する医療機関で働く医療従事者を支援する「新型コロナウイルス感染症対応医療従事者支援制度」が新しく11月より発足した。この制度は、新型コロナウイルスと向き合う医療従事者の支援として寄せられた寄付金を活用して、万が一コロナウイルスに感染した場合でも一定の収入を補償することを目的に、新型コロナウイルス感染症患者に対応した医療従事者が感染し休業した場合の支援制度(医療従事者支援制度)に対する補助を要望して発足したもの。医療機関の開設者・管理者から加入の申し込みによって、政府労災などの認定を受けて4日以上休業した場合、休業補償保険金20万円、死亡すれば死亡補償金最大500万円を受け取れる。保険料は医療従事者1名あたり1,000円/年と負担も軽く、医療資格者以外も補償対象となる。加入できるのは国内の病院や診療所(共に保険医療機関)、介護医療院、助産所、訪問看護ステーションで、募集期間は4期に分かれ、最終締め切りは2021年2月15日。詳細は下記を参照されたい。(参考)日本医療機能評価機構新型コロナウイルス感染症対応医療従事者支援制度特設サイト2.財政制度等審議会、受益者と負担のバランスを求める建議を提出財務省の財政制度等審議会・財政制度分科会は、11月25日に2021年度予算の編成に向けて「秋の建議」をまとめ、麻生財務相に提出した。この中で、社会保障については、2022年に団塊の世代が後期高齢者となることを見据え、給付が高齢者中心・負担は現役世代中心となっている患者負担の仕組みの見直しを求め、後期高齢者の自己負担を、可能な限り広範囲で8割給付(2割負担)の導入と現役世代の拠出金負担の軽減を求めている。また、薬価については2021年度から毎年改定を行うため、初年度にあたっては全品改定の実施を求めている。このほか都道府県医療費適正化計画の見直し、国保の都道府県単位化の趣旨の徹底やデジタル化の推進、医療扶助については、頻回受診や長期入院への対策を求める内容となっている。(参考)令和3年度予算の編成等に関する建議3.政府、後期高齢者の窓口2割負担へ見直しに議論を加速11月24日、菅内閣は全世代型社会保障検討会議を首相官邸で開催し、75歳以上の後期高齢者が医療機関で支払う窓口負担をめぐる問題について議論を行い、1割負担から負担増となる後期高齢者の対象範囲について、菅総理からは「能力に応じた負担」について、年内に取りまとめる最終報告を求めた。日本医師会からは、後期高齢者は1人当たり医療費が高いので、患者負担の割合はすでに十分に高いとし、患者負担の引き上げによって、受診控えや負担増による必要な医療を遠慮する可能性を指摘していた。厚生労働省は11月26日に社会保障審議会医療保険部会を開催し、医療保険制度改革について討論し、現状の75歳以上の後期高齢者医療を支援するために、現役世代の保険料で負担を見直さないままでいると、今年度6兆8,000億円が5年後には8兆2,000億円になるという見通しを示した。会議では、現状の高齢者医療の持続可能とするために、現役世代の負担軽減を図る改革は待ったなしの課題としており、現行の窓口負担1割のままでは現役世代の負担が急増することから先送りは認めない、とする意見も出たものの、コロナ感染拡大の中、国民の不安を増す制度改正について異論が出され、結論は出ないまま引き続き検討を行なうこととなった。(参考)全世代型社会保障検討会議(第11回)配布資料 令和2年11月24日第135回社会保障審議会医療保険部会 資料 令和2年11月26日4.経済財政諮問会議で、厚生労働大臣、令和3年度介護報酬改定に向けた方針を発表11月27日、内閣府は経済財政諮問会議を開催し、この中で田村 憲久厚生労働大臣が医療・介護分野の取り組みを発表した。コロナ感染拡大下でも「地域医療構想」は、基本的な枠組み(病床必要量の推計等)を維持した上で、着実に取り組みを実施し、病床機能再編支援制度等に消費税財源を充当するなどの対応を実施するとした。また令和3年度介護報酬改定については、感染症や災害への対応力強化、地域包括ケアシステムの推進、自立支援・重度化防止の取組の推進、介護人材の確保・介護現場の革新を実現し、制度の安定性・持続可能性の確保を求めるために改訂を行っていくことを明らかにした。このほかオンライン資格確認、オンライン診療、後発薬の使用促進などについて述べた。(参考)第17回経済財政諮問会議  田村臨時議員提出資料 令和2年11月27日 令和3年度予算に向けた社会保障の課題・取組と今後の雇用政策の方向性第17回経済財政諮問会議 令和2年11月27日 会議資料5.コロナ感染拡大第3波、患者団体から要望書相次ぐ急速な新型コロナウイルスの感染拡大により、大学病院などの病床が逼迫しつつあることなどを背景に、がん患者や難病患者の団体は、治療継続が困難にならないよう、国に対策を求める要望書を提出した。2020年11月25日は難病患者の団体である日本難病・疾病団体協議会が、27日には全国がん患者団体連合会が、国に対し「新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急要望書」を提出している。要望書では、感染対策強化と、手術や検査、オンライン診療の実施と拡充を求め、コロナ対策の病床確保のためにがん患者が転院せざるを得ない状況を回避するために、速やかに必要な施策をとることを求める内容となっている。(参考)全国がん患者団体連合会 新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急要望書2020年11月27日日本難病・疾病団体協議会 緊急要望書2020年11月25日6.医療計画の見直し、新興感染症に対する医療を6事業目に追加厚生労働省は11月19日に「医療計画の見直し等に関する検討会」を開催し、現行の医療計画の5疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患.)・5事業(救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児救急医療を含む小児医療)に、新たに「新興感染症等の感染拡大時における医療」への対応を6事業目として加えることで合意した。今後は、医療法の改正し、2024年度に策定する第8次医療計画に盛り込まれることになる。また「外来機能の明確化・連携、かかりつけ医機能の強化等について」も議論され、医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関を明確にするために、各医療機関から都道府県に、外来機能のうち、「医療資源を重点的に活用する外来」(仮称)に関する医療機能の報告(=外来機能報告〈仮称〉)を行うこととし、これにより、地域ごとに、どの医療機関で、どの程度、「医療資源を重点的に活用する外来」が実施されているかの明確化を図ることになる。(参考)第23回 医療計画の見直し等に関する検討会 令和2年11月19日

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新型コロナ、マスク着用率95%で米国死者数は3分の1に?

 米国では、2020年2月初旬に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による初の死亡者が記録されて以来、9月21日までの累計死者数は19万9,213人と報告されている。そんななか、米国ではマスクの着用について今でも論争の的となっており、米国居住者で“常に”公共の場でマスクを着用しているのはわずか49%である。州レベルで見ると、バージニア州、フロリダ州、カリフォルニア州での着用率は60%超の状況である。このように人口全体でのマスク着用率95%の達成および維持は高い閾値のように見えるが、ニューヨーク州のように達成している地域もある。 今回、社会的距離の確保やマスク着用などさまざまな生活規制がどのような効果を生み出すのかを検証するため、米国・IHME* COVID-19 Forecasting Teamの研究員らが独自のCOVID-19死亡数予測モデルを作成した。その結果、米国全土で2021年2月28日までにCOVID-19による累積死亡者数は51万1,373人(46万9,578~57万8,347)にのぼると予測された。*:IHME=Institute for Health Metrics and Evaluation 一方で、マスクの着用が普遍的となれば、2020年9月22日~2021年2月末までの間に12万9,574(8万5,284~17万0,867)の命を救うことができると研究者らは明らかにした。仮にマスク着用率を85%とした場合は、着用率95%よりは少なくなるものの、9万5,814人(6万731~13万3,077)の命を救うことができることから、公共の場でのマスク着用率95%、つまりユニバーサルマスクの達成が多数の州での流行復活の最悪な状況の打開策になることが示された。Nature Medicine誌オンライン版10月23日号掲載の報告。 まず、予測モデルを構築するために研究者らは3つの境界シナリオを確定。1つ目は州が社会的距離の規制を緩和し、人と人との接触の数が増加した場合の結果を予測した。2つ目は、州が再び社会・経済活動を人口100万人あたり8人の死亡率、つまり90パーセンタイルの閾値でロックダウンすると仮定して、パンデミックの進展を予測した。ここでは州が過去に社会的距離の規制を実施したときに観測された分布を分析し、社会的距離の規制が6週間で緩和することを前提とした。さらに、マスクの有効性に関する新たなデータが利用可能になったことから、3つ目にユニバーサルマスク実施時の予測を加えた。ここでの“ユニバーサル”を公共の場でのマスク着用者95%と定義したのは、これまでのCOVID-19パンデミック時の世界(とくにシンガポール)でのマスク着用の報道に基づいている。  このなかで、州が社会的距離の緩和を行ったという予測モデルでは、米国全体の累積死亡者数は2020年9月22日~2021年2月28日までに105万3,206人(75万9,693~145万2,397)に達する可能性があることも明らかにした。その死亡者の約3分の1はカリフォルニア州で14万6,501人(8万4,828~22万1,194)、フロリダ州で6万6,943(4万0,826~9万6,282)、ペンシルベニア州で4万6,943(4万826~9万6,282)と3州で発生することが見込まれていた。 研究者らはユニバーサルマスクや社会的距離の維持を達成すれば、多数の州で経済への損害を最小限に抑えながら多くの命を救える可能性があるとしている。

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