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第49回 新型コロナ変異株報道が悲劇を生む前に伝えたいこと

最近、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)に関して、ワクチンと並んで報道量が多いのが、変異株関連である。すでに多くの方がご存じのように日本国内では英国型(B.1.1.7系統:VOC 202012/01)、南アフリカ型(B.1.351系統:VOC 501Y.V2)、ブラジル型(P.1系統)が確認されている。これに加え、最近ではフィリピン型、PCR検査で検出しにくいと言われる仏・ブルゴーニュ型などの報告もある。ただ、先日この変異株に関連したある報道を見て、私はかなり違和感を覚えてしまった。その違和感を紹介する前に、これら変異株についての現時点までの情報を改めて整理しておきたい。現在、日本で一定数の感染者が報告されているのは英国型、南アフリカ型、ブラジル型の3つである。いずれもが感染力が増強するN501Y変異、加えて南アフリカ型、ブラジル型では免疫逃避のE484K変異を持っていることがわかっている。感染性については英国型では最大40%、南アフリカ型では最大50%、ブラジル型では1.4~2.2倍、増強していると報告されている。死亡率に関しては英国型で64%上昇するとの報告があるものの、その他の変異株については不明である。厚生労働省の発表では3月16日時点で、26都道府県の399人の変異株感染事例が判明しており、変異株別では英国型が374人、南アフリカ型が8人、ブラジル型が17人。都道府県別の報告数を見ると、多くの都道府県が英国型のみの報告で兵庫県が94人、大阪府が72人、新潟県が32人、京都府が24人、東京都が14人、北海道が13人、広島県が12人など。また埼玉県は57人が報告され、うち英国型が42人、ブラジル型が15人。神奈川県は28人で、うち英国型が24人、南アフリカ型が4人。岐阜県が南アフリカ型のみ4人、山梨県がブラジル型のみ2人となっている。さて私が疑問に思った報道とは、昨今神奈川県が発表した変異株感染者2人の死亡事例に関してである。国内で初の変異株感染者の死亡例であるため、各紙が一斉に報じた。「コロナ変異株で国内初の死者 神奈川の50代と70代」(朝日新聞)「変異ウイルスに感染、初の死亡事例…神奈川の70代と50代男性」(読売新聞)「コロナ変異株で男性2人死亡 国内で初確認 神奈川県が発表」(毎日新聞)「変異株で国内初の死者 神奈川の男性2人」(産経新聞)「変異ウイルス感染の2人死亡 神奈川県、国内初確認」(日本経済新聞)「変異株で国内初の死者、神奈川 70代と50代の男性」(共同通信)いつもと違い共同通信を加えたのは、地方紙各社などがこの記事を掲載することが多いためだ。さて私見で恐縮だが、この中で私が報じ方として不合格と考えるのが読売新聞と毎日新聞であり、一番高く評価できるのは日本経済新聞。この評価の軸は、死亡した感染者の医学的なバックグラウンドをどれだけ丁寧に報じたかどうかにある。より具体的に説明すると、読売新聞、毎日新聞では報じなかった、死亡者の50代男性は高血圧・脂肪肝の基礎疾患あり、70代男性は基礎疾患なし、さらに日本経済新聞で記述している70代男性は新型コロナの症状で入院に至っていたという情報はいずれも極めて重要である。端的に言ってしまえば、この情報からは、そもそもこの2人は野生株での感染でも重症化や死亡のリスクが高い事例と分かるからである。前述のように変異株での致死性に関しては、英国型で高いとのBMJに掲載された報告があるものの、それ以外は目立った報告はなく、現時点でほぼ不明と言わざるを得ない。ところが新聞報道で基礎疾患の有無などの情報がなければ、「変異株に感染したから死亡した=変異株はただただ恐ろしい」という誤解を与えかねない。この誤解が問題なのは、差別・偏見の温床になるからである。新型コロナパンデミックが始まった当初、感染者や感染者に接する医療従事者に対する差別・偏見事例が数多く報告されたことは記憶に新しい。今でも同様の差別・偏見はなくなっていないが、徐々に減っていると私は感じている。その根拠の一つは例えば匿名性の低いSNSのFacebookでは、最近は感染をカミングアウトする人が増えていることである。それだけ市中感染が広がったということでもあり、誰かが新型コロナウイルスに感染したという事実だけならば、かなりの人が慣れ始めている。ところがそうした状況では、新たに登場した異質なものに多くの人はギョッとする。まさに「変異株」はそうした存在である。余談になるが、慣れっこの世界で新たに感じた異質さは時に悲劇を生む。今は一時休業しているが、私は戦争現場の取材もしている。その中でも最も取材期間が長かった「ボスニア内戦」がまさに新たに感じた異質さが生み出した悲劇の典型である。旧ユーゴスラビアの一構成共和国だったボスニア・ヘルツェゴビナは1992年に独立を宣言するが、その直後から国内では血で血を洗うかのような過酷な内戦が始まった。ボスニア国内の民族宗教に基づく人口構成が、イスラム教徒のボスニャック人が5割強、キリスト教正教徒のセルビア人が3割強、カトリック教徒のクロアチア人が1割という民族宗教のモザイク状態であったため、この3民族が三つ巴戦を繰り広げたというのが内戦に関する通説である。この通説は間違いではないが、私の口からより具体的に説明するならば、「独立を巡って権力闘争を繰り広げた政治家たちが、たまたま民族・宗教の違いを持っており、それぞれが自らを有利にさせるためにその違いを利用して自らの勢力確保と敵対勢力への憎悪をあおり、殺し合いが始まった」となる。短くまとめるなら、民族という皮をかぶった政治家同士の権力闘争である。そしてその実相は、従来はとくに民族や宗教の違いなど意識せずに暮らしてきた者同士が、突如互いが違う、しかも相手は怖いやつらだと宣伝され、顔の見える者同士で殺し合った戦争なのである。私はこの戦争の取材を通じて、「違い」の気づき方次第で人は取り返しのつかない結果を招くという現実を学んだ。話を元に戻すと、変異株については感染性が増強していることはほぼ確実視されている。そのことは正確に伝えなければならず、それだけでも今後感染者の中でも変異株感染者を危険視する風潮が起こる可能性は高い。だが、だからこそ致死性に関しては、意図しなかったものだったとしても過剰な印象を与えるような報道をしてはならない。そのことが実態以上に変異株を危険視させ、差別・偏見を助長させる可能性が高いからである。今回紹介したような「変異株感染者が死亡した」というだけの一部の報道は誤報ではない。しかし、時として解釈のない事実のみを報じることは、正確性を欠く典型事例である。自分もこの報道に接して改めて気を引き締め始めている。最後にこの件に関する地元紙・神奈川新聞の報道は、地元紙という特性も影響したのか、かなり丁寧で正確かつ不安を助長させないよう心がけていると感じた。

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COVID-19、英国変異株は死亡リスクが高い/BMJ

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の英国変異株variant of concern 202012/1(VOC-202012/1)は、感染により死亡リスクが増加する可能性が高いことを、英国・エクセター大学のRobert Challen氏らがマッチングコホート研究の結果、明らかにした。VOC-202012/1は、2020年秋にイングランド南東部で初めて検出されたが、これまで流行している変異株より感染力があり、この変異株の出現は病床稼働率の上昇と死亡率の増加に関連することが知られていた。著者は、「今回の結果が他の集団に対して一般化できるなら、これまで流行している変異型と比較して、VOC-202012/1の感染は著明な死亡率増加の原因となる可能性がある」と指摘している。BMJ誌2021年3月9日号掲載の報告。地域住民を対象とした検査において、約10万人について解析 研究グループは、2020年12月に懸念のある変異株(variant of concern)に指定されたSARS-CoV-2の新しい変異株VOC-202012/1への感染が、他のSARS-CoV-2変異株と比較して死亡率に差があるかを検証する目的で、マッチングコホート研究を行った。対象は、2020年10月1日~2021年1月29日の期間に、TaqPathアッセイ(VOC-202012/1感染の代理測定)を使用している地域のCOVID-19検査センターにてSARS-CoV-2陽性が確認されたVOC-202012/1感染者5万4,906例、ならびにVOC-202012/1感染者と年齢、性別、民族性、貧困指標(index of multiple deprivation)、居住地域、検体採取日を一致させた従来株感染者(対照)5万4,906例であった。VOC-202012/1感染群と対照群は、スパイク蛋白遺伝子の検出有無のみが異なっていた。 主要評価項目は、最初にSARS-CoV-2陽性が確認された日から28日以内の死亡で、2021年2月12日まで追跡した。感染確認後28日以内の死亡リスクは英国変異株VOC-202012/1で1.64倍 追跡期間中における感染確認から28日以内の死亡は、全体で0.3%(367/10万9,812例)に発現した。VOC-202012/1感染群の227例に対し、対照群では141例であり、感染確認から28日以内の死亡のハザード比は1.64(95%信頼区間:1.32~2.04)であった。これは、死亡リスクが比較的低い地域住民集団において、1,000人当たりの死亡が2.5例から4.1例に増加することに相当した。 著者は、「今回の結果を受けて、医療供給体制および国内や国際的な感染管理政策はCOVID-19による死亡を減少させるため、さらに厳格な対策をとるべきと考えられる」とまとめている。

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セントラルドグマが崩れたのか(解説:岡村毅氏)-1363

 現代のアルツハイマー型認知症の病理のいわばセントラルドグマであるアミロイド仮説がかなり危なくなってきた。背景から説明したい。 アルツハイマー型認知症で亡くなった方の脳では、アミロイドが蓄積している。もっと詳しく書くと、後頭葉や側頭葉内側面から出現したアミロイドプラークが病気の進行とともに広がっていく(Braakらの研究)。このようにしてできたのが「アミロイド・カスケード仮説」である。この仮説は2005年から2010年にかけて行われたADNI(Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative)によって生きているヒトの脳でも確認された。 なお、アミロイドの後にタウが広がってゆくが、ここでは深入りはしない。 近年の創薬は、アミロイド仮説を基盤にして、アミロイドを抑制するべく試されてきた。しかしながら、認知症になっている人にいくらアミロイドを抑制する薬を投与しても結果は芳しくない。 理由は、もの忘れの症状が出たときには、もうアミロイドは溜まった後だからである。ある著名な神経学者は、何ともワイルドな例えだが、「病気になってからアミロイドを除去するのでは、牛が逃げて行ってしまってから、牛小屋のドアを閉めるようなものだ」と述べている。そこで、アミロイドが溜まり始めているが、まだ症状がない人を対象に研究が進められてきた。プレクリニカル期にアミロイドを止めてしまえば、病気を止めることができるというわけだ。 しかしながら、失敗続きなのはご存じのとおりである。実は専門家たちは、だいぶ前から「アミロイドは原因ではないのではないか」という深刻な疑念を持っていた。確かに病状の進行とともにアミロイドは溜まる。だが、これは本質的な現象ではないのではないかということである。 つまりこういうことだ。肺炎になれば熱が上がる。もし熱が肺炎の原因であれば、熱を下げれば肺炎は治まるだろう。でも現代ではそう考える人はいないだろう。われわれは、細菌などの病原体が原因であると知っているからだ(つまり抗菌薬が必要だ)。アミロイドも、肺炎における熱のようなものだとしたら…(この例えが正鵠を得ているかやや自信がないが、文意を読んでください)。 さて、本論文は非常に賢い戦略をとる。さまざまな薬剤の治験のデータを集約し、アミロイドが除去されていることと、認知機能低下が抑えられたことの関連を見ている。個々の治験を集めて、巨大なデータベースを作ったということだ。各々の治験は、当然その薬剤が効いているかどうかに着目している。しかし治験を集めることで、アミロイドの除去が本当に認知機能低下を抑制しているかどうかを調べる巨大な研究をしたことと同じ解析ができる。 結果は…アミロイドの除去は認知機能に関係がないという結果であった。 本研究の結果から、認知症根本治療薬の開発は無理だ、という陳腐な結論を導くようでは、時代の流れを見失うであろう。良い結果が得られている治験があることも事実であり、またこの研究には組み込まれていない治験もある。冷静に事態を眺めたい。 謎は深まった。神経学者たちの探索は新たな領域に突入した。20世紀末、われわれはアルツハイマー型認知症の根本治療薬が開発されるいわば「夜明け前」にいると皆が信じた。しかし、実際にはまだまだ真夜中にいるようである。おそらく未来のある時点でそれなりの根本治療薬が開発されるだろう。老化や死はともかく、疾病性の強い比較的若年発症のアルツハイマー型認知症は抑制可能になる可能性は大きいと思われる。それが10年後か100年後か、それは誰にもわからないが…。神経学者たちの探求は続き、われわれはそれを大いに支援したい。

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GSK/Vir社の新型コロナ治療薬が入院・死亡リスクを85%低減、変異株にも有効か/第III相試験中間解析

 グラクソ・スミスクライン(本社:英国、以下GSK)は、3月15日、Vir Biotechnology,Inc.(本社:米国、以下Vir社)と共同開発したCOVID-19治療薬VIR-7831/GSK4182136について、第III相試験COMET-ICE(COVID-19 Monoclonal antibody Efficacy Trial-Intent to Care Early)で、入院・死亡リスクを85%低減させたとする中間解析を発表した。両社は今後、米国における緊急使用許可申請と、他国での承認申請を進める予定だ。本結果により十分な有効性が確認されたとして、3月10日、独立データモニタリング委員会が本試験への追加の被験者組み入れを中止するよう勧告した。 VIR-7831/GSK4182136は、COVID-19成人患者への早期治療薬としてGSKとVir社が共同開発したモノクローナル抗体薬。前臨床試験では、正常細胞へのウイルス侵入を防ぐと共に、感染細胞を除去する能力を高める可能性が示唆されている。 単剤療法としてのVIR-7831/GSK4182136を評価するCOMET-ICE第III相臨床試験では、入院していない患者を対象に、VIR-7831/GSK4182136(500mg)もしくはプラセボを単回静脈内投与した場合の安全性と有効性を評価した。今回の結果は、登録された583例のデータの中間解析に基づくもの。VIR-7831/GSK4182136を投与した患者群(291例)において、主要評価項目である入院もしくは死亡リスクが、プラセボ群(292例)に比べ、85%(p=0.002)低減したことが示された。VIR-7831/GSK4182136の忍容性は良好だった。 さらに新たなin vitro試験において、英国型、南アフリカ型およびブラジル型など現在懸念されている変異株に対し、VIR-7831/GSK4182136が活性を維持することが示されたという。この試験結果は、査読前の研究論文サーバー「bioRxiv」に3月10日付で掲載された。

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イベルメクチン、軽症COVID-19の改善効果見られず/JAMA

 軽症COVID-19成人患者において、経口駆虫薬イベルメクチンの投与(5日間コース)はプラセボと比較し、症状改善までの期間を有意に改善しないことが示された。コロンビア・Centro de Estudios en Infectologia PediatricaのEduardo Lopez-Medina氏らが、約400例を対象に行った試験で明らかにした。イベルメクチンは、その臨床的有益性が不確実にもかかわらず、COVID-19の潜在的な治療薬として広く処方されている。著者は、「今回の試験では、軽症COVID-19へのイベルメクチンの使用を支持する所見は認められなかった。さらなる大規模な試験を行い、イベルメクチンの他の臨床関連アウトカムの効果を明らかにする必要があるだろう」と述べている。JAMA誌オンライン版2021年3月4日号掲載の報告。軽症で発症後7日以内の成人を対象に試験 イベルメクチンが軽症COVID-19の有効な治療法であるかを確認するため、コロンビア・カリの1医療機関で二重盲検プラセボ対照無作為化試験を行った。簡易ランダムサンプリング法を用いて、試験期間中に検査で確認された症候性COVID-19患者を州の保健部門の電子データベースから特定し被験者とした。2020年7月15日~11月30日にかけて、計476例の在宅療養または入院中の軽症かつ発症後7日以内の成人を登録し、2020年12月21日まで追跡した。 被験者は2群に分けられ、一方にはイベルメクチン(300μg/kg/日)が、もう一方にはプラセボが、それぞれ5日間投与された。 主要アウトカムは、21日以内で症状が軽快するまでの期間とした。非自発的な有害事象および重篤有害事象も収集した。症状消失までの期間中央値、イベルメクチン群10日、プラセボ群12日で有意差なし 無作為化を受けて主要解析に包含された被験者は400例だった(年齢中央値37[IQR:29~48]歳、女性58%)。そのうち試験を完了した398例(99.5%)について分析を行った。 症状消失までの日数中央値は、イベルメクチン群10日(IQR:9~13)、プラセボ群12日(9~13)で有意差はなかった(ハザード比:1.07、95%信頼区間[CI]:0.87~1.32、log-rank検定のp=0.53)。21日目までに症状が消失した被験者の割合も、それぞれ82%、79%で同等だった。 最も多くみられた非自発的な有害事象は頭痛で、報告例はイベルメクチン群104例(52%)、プラセボ群111例(56%)だった。重篤有害事象で最も多かったのは多臓器不全で、合計4例(各群それぞれ2例)で発生した。 研究グループは、本試験ではイベルメクチンの効果は支持されなかったものの、より大規模な試験を行うことで、イベルメクチンの他の臨床アウトカムについてその効果が判定できるのではないか、とした。

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新型コロナワクチン、無症候性感染者を94%予防か/ファイザー

 米国・Pfizer社、ドイツ・BioNTech社、イスラエル保健省(MoH:Ministry of Health)は、イスラエルでの集積データから同社が製造する新型コロナウイルス感染症のmRNAワクチン(BNT162b2)の新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の発症や入院、死亡を予防する効果は、症候性の場合で少なくとも97%、無症候性の場合で94%だったことを3月11日付けのプレスリリースで発表した。また、今回のデータ解析からワクチン接種を受けていない人は症候性の新型コロナを発症する可能性は44倍高く、新型コロナが原因で死亡する可能性は29倍高いことも示唆されたという。 今回のリリースによると、イスラエルMoHが2021年1月17日~3月6日の匿名化されたデータを使用し、Pfizer社/BioNTech社が製造したワクチンの2回目の接種から2週間後の時点での健康状態を非接種者と比較したという。この当時、イスラエルではB.1.1.7株が流行していた。 ワクチンの有効性は年齢、性別、および検体が収集された週の変動などで調整し、6項目―新型コロナウイルス感染(症状のあり/なし いずれも含む)、無症候性のみ、 症候性のみ、新型コロナによる入院(重度:呼吸困難、毎分30回以上の呼吸、室内空気の酸素飽和度<94%、および/またはP/F比(PaO2/FiO2比)<300mmHg、入院期間の評価(機械的換気、ショック、および/または心臓、肝臓、腎臓機能の障害)、新型コロナによる死亡―から接種者と非接種者に対する予防効果を決定したという。 なお、この内容は現在プレプリント段階であり、近々、査読付き論文として公表予定とのこと。

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新型コロナワクチン接種後の安全性情報をリアルタイム公開/三重県

 国立病院機構三重病院では、三重県予防接種センター事業の一環として、ワクチンの安全性情報をインターネット上でリアルタイム公開するシステムCOV-Safeを開発・運用している。3月15日時点で、約700人の接種7日後までのデータが順次公開されており、発熱は1%未満と稀で、接種当日と翌日に接種部位の痛みを感じる人が比較的多い傾向がみられている。 COV-Safeは、ワクチンを接種し、調査への協力が得られた人が接種後の健康状態についてアプリから入力すると、匿名化されたデータがリアルタイムに集計され、速やかに安全性情報が表示されるシステムとなっている。ホームページで公開されるのは速報版で、今後詳細な解析結果も発表される予定。なお、本調査の一部は国立研究開発法人日本医療研究開発機構 新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業「ワクチンの実地使用下における基礎的・臨床的研究及びワクチンの評価・開発に資する研究」(研究代表者:菅 秀氏)で実施されている。 接種部位の発赤、腫脹、硬結、疼痛、熱感、かゆみのほか、体温(37.5度以上)、頭痛、倦怠感について接種1回目、2回目それぞれの7日後まで各日の報告数が公開されており、性別や年代別の詳細も閲覧することができる。

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新型コロナウイルス感染:米国退役軍人の医療経験から(解説:後藤信哉氏)-1361

 世界最強の米軍を維持するため、米国の退役軍人は手厚く待遇されている。各都市には退役軍人専用のDepartment of Veterans Affairs管理下の病院、クリニックがある。本研究は米国各地の退役軍人専用病院、クリニックにおける新型コロナウイルス感染者の抗血栓療法の実態と生命予後の解析結果である。2020年3月1日から7月30日までに新型コロナウイルス陽性とされた症例が対象となった。この短期間にて退役軍人に限定して4,297例が本研究の対象となった。一般に、血栓イベントリスクの高い西欧人では入院、安静時には静脈血栓予防の抗凝固療法が標準である。ICUに入院する市条例などでは禁忌がなければ全例予防的抗凝固治療を受ける。本研究では、入院24時間以内に抗凝固治療を受けた3,627例(84.4%)と受けなかった症例の予後を比較した。抗凝固療法の圧倒的多数は(3,600例:99%)ヘパリン(低分子ヘパリン)の皮下注であった。 新型コロナウイルスがあらためて恐ろしいのは30日以内に622例が死亡していたことからもわかる。死亡者のうち513例は抗凝固予防を受けていた。622例のうち、510例は入院期間中の死亡であった。一般に入院例、とくに重症例では抗凝固予防が施行される米国にて抗凝固予防例と非予防例の比較に価値があるか否かは難しい。著者らは傾向スコアを用いて標準化を目指した。予防介入を受けた症例の30日の死亡率は14.3%(95% confidence interval [CI]:13.1%~15.5%)にて、抗凝固予防を受けなかった症例の18.7%(15.1%~22.9%)より低いと本研究では報告されている。24時間以内に抗凝固薬を開始すれば死亡はHR 0.73(95%CI:0.66~0.81)にて低く、かつ重篤な出血イベントが多くなったわけではない。 一般に欧米の入院症例では抗凝固予防の価値が大きいことは知られている。新型コロナウイルス感染でも24時間以内にヘパリンなどを開始することにより死亡率低減効果はありそうである。米国の退役軍人のデータなので、米国、欧州にも適応可能と考える。日本でも同じかどうかはわからない。単純な観察研究なので各種の交絡因子により結論には限界がある。しかし、数値は事実である。健康保険の経済データベースの充実している本邦でも単純に、?月?日から??月??日までに新型コロナウイルス感染にて入院した症例は?例、抗凝固薬使用は?%、死亡は30日以内に?例など数値データベースを速やかに解析、公表する体制を作れば、皆で数値に基づいた議論ができると思う。

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高齢者肺炎寿司本【Dr.倉原の“俺の本棚”】第40回

【第40回】高齢者肺炎寿司本おいしそうな寿司が表紙になっているこの本を電車で読んでいて、誰が医学書だと思うでしょうか。よいですね、この装丁。編者のブログ(「南砺の病院家庭医が勉強記録を始めました」)にも書かれていましたが、雑誌『dancyu(ダンチュウ)』みたいです。『終末期の肺炎』大浦 誠/編. 南山堂. 2020年私が医師になった頃は、終末期の肺炎が起こっても、言語聴覚士、栄養士、MSWなどがどんどん現場に入ってくることはなくて、とにかく絶飲食にして抗菌薬を投与するというのが当たり前でした。そもそも口から食べられないのだから、仕方がないと思い込んでいた節もあります。治してもまた肺炎を繰り返す。現場の徒労感。それゆえ、高齢者の肺炎はどうしても医師が主導権を握りがちで、看護師と言語聴覚士が指示を受けてケアしていることが多いです。理想はpatient-orientedな輪っかができることですが、そうなっていないシーンはいまだによく見ます。2017年に成人市中肺炎ガイドラインが刊行され、ようやく終末期の肺炎について記述されました。近年、アドバンスケアプランニング(ACP)が叫ばれるようになり、終末期の肺炎について議論されることが増えてきました。高齢者の肺炎マネジメントの変革期を代表するような本で、個人的には医師以外の職種にも読んでほしいと思っています。編者は決して終末期の肺炎に特化したものではない、あくまで病院で遭遇する肺炎について書いたものだとおっしゃっていますが、誤嚥を繰り返す高齢者に対して打つ手がないと思っている医療従事者は騙されたと思って読んでみてください。この本は、成年後見人が医療行為への同意権がないというところから、じゃあ意思決定はどうすればよいのかというデリケートなところまで踏み込んで書かれています。BATNAやZOPAなど、医学書には出てこないような交渉術の用語も登場してきて、あざます、勉強になります!『終末期の肺炎』大浦 誠 /編出版社名南山堂定価本体3,600円+税サイズB5判刊行年2020年

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第48回 決戦は月曜日?政府の印象操作がにじむ緊急事態宣言解除日

結局、新型インフルエンザ特別措置法に基づく緊急事態宣言は、首都圏の1都3県で3月8日~21日まで2週間の再延長が決定した。そうした中、3月10日の衆議院厚生労働委員会で政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身 茂会長が早くも緊急事態宣言の再々延長の可能性を示唆する発言をしている。実際、延長が決まった8日からの東京都の感染者報告を見ると、月曜日である8日が100人台となり、その後は200~300人台を推移するという前週とほぼ同じ動きを見せ、減少スピードはやや鈍化している。また、1都3県での感染状況の4段階のステージを判断する6つの指標は、東京都、千葉県、埼玉県で「病床使用率」と「10万人当たりの療養者数」が感染急増を示すステージ3、埼玉県と神奈川県で「直近1週間と先週1週間の新規感染者比」がステージ3にある。ちなみに、ステージ3の「直近1週間と先週1週間の新規感染者比」とは比が1.0を超える状態だが、埼玉県は1.11、神奈川県は1.06で増加傾向、さらに東京都は0.99、千葉県は0.93となっている。尾身会長の言葉は抑え気味だが、これらの状況を見れば3月21日での緊急事態宣言解除も絵空事にさえ思えてくる。そしてもしこの解除を判断するならば、もしかしたら政府はある日を決め撃ちしてくるかもしれない。それはずばり週初めの月曜日だ。そう思ったのはある記録を目にしたからである。ある記録とはシンクタンクである一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)によってまとめられた「新型コロナ対応民間臨時調査会 調査・検証報告書」である。報告書はAPIが2020年7月に発足させた新型コロナ対応・民間臨時調査会(小林 喜光委員長)が、当時の安倍 晋三首相、菅 義偉官房長官、加藤 勝信厚生労働相、西村 康稔新型コロナウイルス感染症対策担当相、萩生田 光一文部科学相はじめ政府の責任者など83人を対象に延べ101回のヒアリングとインタビューを実施し、初期の日本の新型コロナウイルス感染症対策を検証したものだ。この報告書では昨年4~5月の緊急事態宣言解除時のことも記載されている。この時は東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、大阪府、兵庫県、福岡県を対象とした4月7日~5月6日までの緊急事態宣言が発出され、その後、4月16日に全国に拡大。解除目前の5月4日にはさらに同月31日までの延長が決定され、5月14日に北海道、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、京都府、大阪府、兵庫県を除く39県、5月21日には京都府、大阪府、兵庫県で解除。そして5月25日には残る北海道と首都圏の1都3県で前倒し解除となった。やや前置きが長くなったが、この解除決定日のうち5月14日と21日は木曜日、5月25日は月曜日である。そしてこの5月25日について前述の報告書では、官邸スタッフの「狙いすまして25日にセットした」との証言を紹介している。これは医療機関の休業などが影響して、新規感染者報告は週前半が少なく、週後半が多いという特性を敢えて利用したということ。報告書の完全なネタバレは避けなければならないので端折ってより具体的に言うと、週前半の少ない数字を強調して専門家たちを押し切って緊急事態宣言の完全解除に持ち込んだということである。なんともえげつない話だが、さもありなんである。どうしても政府は緊急事態宣言発出による経済への影響を無視できないので、完全に専門家の意見だけで政策決定を行わないのは周知のこと。その前提で考えると、経済規模が大きい東京都を含む首都圏3都県で、現在の緊急事態宣言を再々延長することは何としても回避したいだろう。そしてこの3都県の緊急事態宣言の継続は他の道府県にも影響する。実は、私は先週末より出張で北海道の函館市に入り、今はそこから南下して青森県の八戸市にいる。函館と言えば、有名なのが函館朝市だが、今はまさに閑古鳥が鳴いている状態だ。私がたまたま朝市周辺を歩いていた時、観光客向けに海産物を販売している店の中年女性から「ねえ、お兄ちゃん(と言われても50過ぎだが)、何でもいい、ちょっとでもいいから何か買って行って」と哀願された。そして現在函館市では、市の事業として市内の宿泊施設に宿泊した人を対象に1泊当たり2000円のグルメクーポンを配布している。これが市内の主な飲食店で使える。ちなみに私が宿泊したのはなんと1泊2000円のビジネスホテルである。そして函館市でも今滞在している八戸市でもよく耳にするのが「観光客や出張客が増えるかは首都圏から人が来るかどうか。だから緊急事態宣言の継続は、自分たちにとっても他人事ではない」という話である。だからこそ私のような首都圏に住んでいる者はより徹底した感染防止対策が必要であるとも感じる。ただ、感染者急増局面のままでの緊急事態宣言の解除はあってはならないし、私たち全員で政府が安易な判断をしないかを注視する必要もあると思う。その意味で先ほど紹介した姑息とも言える「週前半の緊急事態宣言解除決定」は政府の判断を評価する一つのメルクマークになるかもしれない。

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