サイト内検索|page:30

検索結果 合計:1967件 表示位置:581 - 600

581.

オミクロン株時代における未成年者に対するRNAワクチン接種の意義は?(解説:山口佳寿博氏、田中希宇人氏)

 本邦にあっては、2022年4月1日をもって民法第4条で定められた成人年齢が20歳から18歳に引き下げられる。それ故、2022年4月以降、他の多くの先進国と同様に本邦においても18歳未満を未成年者と定義することになる。未成年者の内訳は複雑で種々の言葉が使用されるが、児童福祉法第4条と旅客及び荷物運送規則第9条の定義に従えば、1歳未満は乳児、1~6歳未満は幼児、6~12歳未満(小学生)は小児、6~18歳未満(小学生、中学生、高校生)は包括的に児童と呼称される。しかしながら、12~18歳未満(中学生、高校生)に該当する名称は定義されていない。未成年者に対するRNAワクチンの海外治験は生後6ヵ月以上の乳児を含めた対象に対して施行されている。これらの海外治験では、本邦の幼児、小児の定義とは少し異なり5歳児は小児として取り扱われている。そこで、本論評では、海外治験の結果を正しく解釈するため、5~12歳未満を小児、12~18歳未満を(狭義の)児童と定義し、オミクロン株時代におけるこれらの世代に対するRNAワクチン2回接種ならびに3回目Booster接種の意義について考察する。小児、児童に対するRNAワクチン2回接種の予防効果 Pfizer社のBNT162b2(コミナティ筋注)の12~16歳未満の児童に対する感染予防効果は米国においてD614G株とAlpha株が混在した時期(2020年10月15日~2021年1月12日)に検証された(Frenck RW Jr, et al. N Engl J Med. 2021;385:239-250.)。接種量、接種間隔は16歳以上の治験の場合と同様に30μg筋注、21日間隔2回接種であった。結果は、2回目ワクチン接種1ヵ月後の中和抗体価が16~25歳の思春期層での値に対して1.76倍であった(非劣性)。感染予防効果も100%と高い値が報告された。 BNT162b2の5~12歳未満の小児に対する治験は米国を中心に世界4ヵ国で施行された(Walter EB, et al. N Engl J Med. 2021 Nov 9. [Epub ahead of print])。治験施行時期は2021年6月7日~9月6日であり背景ウイルスはDelta株が中心の時期であった。ワクチン接種量は12歳以上の場合と異なり1回10μgの筋注(接種間隔は21日)であった。2回目ワクチン接種1ヵ月後の中和抗体価は思春期層で得られた値の1.04倍であった(非劣性)。感染予防効果は90.7%であり、心筋炎、心膜炎などの特異的副反応を認めなかった。 Moderna社のmRNA-1273(スパイクバックス筋注)の12~18歳未満の児童に対する感染/発症予防効果は背景ウイルスとしてAlpha株が主流を占めた2020年12月9日~2021年2月28日の期間に米国で観察された(Teen COVE Trial)(Ali K, et al. N Engl J Med. 2021;385:2241-2251.)。ワクチン接種は成人と同量の100μg筋注が28日間隔で2回接種された。児童の中和抗体価は思春期層の1.08倍であり(非劣性)、有症候性の感染予防効果(発症予防)は93.3%でBNT162b2と同様に非常に高い有効性が示された。 6~12歳未満の小児に対するmRNA-1273の有効性は50μg筋注(成人量の半量)を28日間隔で2回接種する方法で検証された(Kid COVE Trial)。結果は正式論文として発表されていないがModerna社のPress Releaseによるとワクチン2回接種後の小児の中和抗体価は思春期層の1.5倍であった(非劣性)(Moderna Press Release. 2021年10月25日)。 以上の小児、児童におけるワクチン接種による中和抗体価と予防効果は2回目接種後2~3ヵ月以内のものであり、中和抗体価、予防効果の最大値を示すものと考えなければならない。今後、小児、児童にあっても接種後の時間経過によって中和抗体価、予防効果がどのように変化するかを検証しなければならない。オミクロン株感染の疫学、遺伝子変異、臨床的特徴 2021年11月9日に南アフリカ共和国において初めてオミクロン株(B.1.1.529)が検出されて以来、この新型変異株はアフリカ南部の国々を中心に世界的播種が始まっている。WHOは、11月26日、この新たな変異株をVOC(Variants of Concern)の一つに分類し、近い将来、Delta株を凌駕する新たな変異株として警戒を強めている(WHO TAG-VE. 2021年11月26日)。南アフリカ共和国では第1例検出からわずか1ヵ月の間にオミクロン株はDelta株を中心とする従来の変異株を凌駕する勢いで増加している(CoVarints.org and GISAID. 2021年12月10日)。南アフリカ共和国での感染発生初期の感染者数倍加速度(Doubling time)はDelta株で1.9日であったのに対しオミクロン株では1.5日に短縮されていた(Karim SSA, et al. Lancet. 2021;398:2126-2128.)。12月14日、WHOはアフリカ南部、欧州、北米、南米、東アジア、豪州に位置する世界76ヵ国でオミクロン株が検出されていることを報告した(WHO COVID-19 Weekly Epidemiological Update. 2021年12月14日)。米国では、12月1日にオミクロン感染第1例が報告されて以来、海外からの旅行者以外に市中感染例も認めている。米国CDCは12月8日までに集積された43名のオミクロン株感染者の疫学的特徴を報告しているが、感染者のうち20名(46.5%)は米国が承認しているワクチンの2回接種を、14名(32.6%)はワクチンの3回目Booster接種を終了していたという驚愕の事実が浮かび上がっている(CDC. MMWR Early release vol. 70. 2021年12月10日)。すなわち、オミクロン株感染者の79%までがワクチン接種者であり、Breakthrough infection(BI)あるいはDecreased humoral immune response-related infection(DHIRI)が非常に高い確率で発生していることを示唆した。BI、DHIRIは初感染者のみならず再感染者の数を増加させる。この原因は、下述したごとく、オミクロン株が有する高度の液性免疫回避変異のためにワクチン接種後の中和抗体価の上昇が従来の変異株に較べて有意に抑制されているためである。 本邦では、12月15日までに空港検疫において海外渡航者32名にオミクロン株感染が確認されている(国立感染症研究所. 2021年12月15日)。これらの症例のうち入院した16名にあって1歳未満の1名を除く15名全員がワクチン2回接種を終了していた。感染と経済の両立を考えた場合、海外渡航者を永久に締め出すことはできず医療体制が整った所で水際での“鎖国”を緩和していかなければならない。それ故、2022年の冬場から春にかけて欧州、米国などに遅れること数ヵ月で本邦でもオミクロン株の本格的播種が始まるものと覚悟しておかなければならない。この場合、オミクロン株の単独播種以外にDelta株との共存播種の可能性も念頭に置く必要がある。 オミクロン株は今までの変異株に較べ多彩な遺伝子変異を有することが判明しており、ウイルス全長での遺伝子変異は45~52個、S蛋白での遺伝子変異は26~32個と想定されている(WHO Enhancing Readiness for Omicron. 2021年11月28日)。オミクロン株ではウイルスの生体細胞への侵入を規定するS1、S2領域に従来の変異株よりも多い5種類以上の変異が確認されている(N501Y、Q498R、H655Y、N679K、P681Hなど)(米国CDC Science Brief. 2021年12月16日)。これらの変異の結果、オミクロン株の感染性/播種性はDelta株を含めた従来の変異株をはるかに凌駕する。 オミクロン株にあっては、液性免疫回避を惹起するReceptor binding domain(RBD)の複数個の遺伝子変異が報告されており、特に重要な変異はK417N、T478K、E484Aの3つである。417、484位の変異はBeta株、Gamma株にも認められ、478位の変異はDelta株でも確認されているが、Delta株を特徴づける452位の変異はオミクロン株では存在しない。いずれにしろ、従来の変異株よりも多い液性免疫回避変異の結果、オミクロン株はワクチン、Monoclonal抗体薬に対して高い抵抗性を示し、オミクロン株感染におけるBI、DHIRIの発生機序として作用する。 コロナ感染症の重症化(入院/死亡)は主としてCD8-T細胞に由来する細胞性免疫の賦活によって規定される(Karim SSA, et al. Lancet. 2021;398:2126-2128.)。T細胞性免疫の発現に関与するウイルス全長に存在するEpitope(抗原決定基)数は500以上であり(Tarke AT, et al. bioRxiv. 2021;433180.)、遺伝子変異の数が多いオミクロン株(45~52ヵ所)でもCD8-T細胞反応を惹起するEpitopeの78%は維持されている(Pfizer and BioNTech. BUSINESS WIRE 2021年12月8日)。ウイルスに感染した細胞は賦活化されたCD8-T細胞によって処理され、その後の免疫過剰反応の発現を抑制する。細胞性免疫は液性免疫とは異なり変異株の種類によらず少なくとも8ヵ月以上は維持される(Barouch DH, et al. N Engl J Med. 2021;385:951-953.)。それ故、オミクロン株感染においても有意な細胞性免疫回避は発生せず重症化が従来の変異株感染時を大きく上回ることはない。以上の遺伝子学的事実より、オミクロン株時代における現状ワクチンの第一義的接種意義は”感染予防”から”重症化予防”にシフトしていることを理解しておくべきである。オミクロン株時代にあって未成年者全員にワクチン接種は必要か? ワクチン接種後の中和抗体価に代表される液性免疫とそれに規定される感染予防効果が2回接種後の時間経過に伴い低下することが明らかにされた結果(Levin EG, et al. N Engl J Med. 2021;385:e84. , Chemaitelly H, et al. N Engl J Med. 2021;385:e83.)、Delta株抑制を目的としてRNAワクチンの3回目Booster接種が世界各国で開始されている。イスラエルの解析ではBNT162b2の2回接種後に比べ3回目接種後(2回目接種から5ヵ月以上経過)のDelta株に対する感染予防効果は8.3倍、重症化(入院/死亡)予防効果は12.5倍と著明に上昇することが報告された(Barda M, et al. Lancet. 2021;398:2093-2100.)。しかしながら、3回目接種以降の経過観察期間は2ヵ月にも満たず、3回目ワクチン接種の効果がどの程度持続するかは不明である。さらに、これらの観察結果は現在問題となりつつあるオミクロン株を対象としたものでないためReal-Worldでの意義は不明である。 Pfizer社の記者会見によると、BNT162b2の2回接種後のオミクロン株に対する中和抗体価はコロナ原株に対する値の1/25まで低下したものの3回目接種によってオミクロン株に対する中和抗体価はコロナ原株に対する値の1/2まで回復した(Pfizer and BioNTech. BUSINESS WIRE, 2021年12月8日)。一方、英国での暫定的検討によると、BNT162b2の2回接種4~6ヵ月後のオミクロン株に対する発症予防効果は35%と低いが3回目Booster接種2週後には75.5%まで上昇した(UKHSA Technical Briefing 31)。ただし、3回目Booster接種によって底上げされたオミクロン株に対する発症予防効果がどの程度の期間持続するかは解析されていない。また、重症化予防効果についても解析されていない。 米国FDAはDelta株感染の拡大を阻止するために16歳以上の年齢層に対するBNT162b2の3回目Booster接種を認可している(Moderna社のmRNA-1273のBooster接種は18歳以上)。本邦でも18歳以上の成人に対するBNT162b2、mRNA-1273の3回目Booster接種が特例承認され、12月初旬より医療従事者からBNT162b2を用いた3回目Booster接種が開始されている。では、オミクロン株時代に、18歳未満の未成年者(児童、小児、幼児、乳児)に対してはいかなるワクチン政策を導入すべきなのであろうか? 現状では、海外治験によって、オミクロン株ではないが従来の変異株に対する児童、小児におけるワクチン2回接種の効果が報告されている。幼児、乳児におけるワクチン接種に関しては現在Pfizer社、Moderna社主導で治験が進行中である。未成年者におけるコロナ感染症の71%までは家族内感染、幼稚園/保育所/学校/塾での感染が12%と報告されている(日本小児学会 デ-タベ-スを用いた国内発症小児COVID-19症例の臨床経過に関する検討)。未成年者がオミクロン株に感染しても重症化する可能性は低いが児童、小児にあっては家から離れた学校などで感染する機会が存在する。それ故、オミクロン株時代にあっても少なくとも2回のワクチン接種を、また、必要に応じて3回目以降のBooster接種を考慮すべきであろう(米国は、10月29日、5歳以上の小児に対するPfizer社ワクチン10μgの2回接種を認可)。一方、幼児、乳児に関しては、彼らに対する直接的ワクチン接種を考える前に親/年長の家族ならびに保育所職員など大人に対する3回目のBooster接種を含めたオミクロン株感染予防対策を徹底すべきであろう。

582.

医療機関でのブレークスルー感染事例の共通点は/感染研

 国立感染症研究所は、12月16日に同研究所のホームページで「ブレイクスルー感染者を含む医療機関、福祉施設などでのクラスター調査から得られた知見(簡略版)」を公開した。オミクロン株の拡大が懸念されている現在、クラスター抑止の観点からも参考にしていただきたい。11のブレークスルー感染事例で共通した事項とは 今回公開された知見は、2021年8月以降、医療施設や福祉施設などにおいて、ワクチン接種後一定の期間を経過した者のうち、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患する、いわゆるブレークスルー感染者を多数含むクラスターが報告されるようになったことに鑑み、「ブレークスルー感染者を多数含む複数の国内各地で発生したクラスターの各調査結果(計11事例)から得られた、共通すると思われる代表的な所見、および共通する対策に関する提案について、迅速性に重きを置いた形で簡略に紹介する」としている。 また、基となった調査における陽性者の全検体の遺伝子情報は分析されていないが、分析されたウイルスについてはすべてデルタ株であったこと、この11事例全体を通して、2回目の接種日から発症までの週数の中央値は、職員については17.1週(範囲5.1-22.6週)、入所者・入院患者については7.3週(範囲0.1-19.6週)だったことも触れられている。【代表的な所見】・集団として高いワクチン接種率を達成していても、COVID-19陽性者が集団に入り込むと、濃厚な接触を必要とする介護度の高い方、マスク着用、手指衛生などが実施できないご高齢な方、またそのような方たちを介護する職員を中心に感染伝播が起こっていた。・施設におけるブレークスルー感染者を含むクラスターの発生前、発生中にその施設周辺地域においてCOVID-19の流行が認められていた。・ワクチン既接種者が感染した場合の症状は軽度であり、健康観察(特に37.5℃以上の発熱)が十分に行われていても検査に至らなかったケースが多く、事例の探知が遅れた。そのため、真の発端例の特定やウイルスの侵入経路については不明な場合が多かった。・陽性者数が多くても、これまでのクラスターと比較し、収束までの期間が短縮化されていた。・ワクチン接種以前のクラスターでは重症化していたと思われる方たち(高齢者、基礎疾患を有する方など)も比較的軽症で改善していた。ただし、経時的にブレークスルー感染事例における重症度が変動していく可能性はあり、今後も厳重に監視していく必要がある。【共通する対策に関する提案】・職員や患者、入所者のワクチン接種歴を把握し、未接種者に対してはワクチンの効果、安全性、副反応等を十分説明し、接種について再度働きかけていただく。・ワクチン接種の有無にかかわらず、COVID-19の感染経路に基づいた適切な予防法、消毒法について、特に医療従事者や施設職員は正しく実践する。・ブレークスルー感染者の症状は軽症であることが多いため、健康管理(観察と記録)の強化とともに、軽症(発熱なく上気道症状のみなど)でも申告すること、感染リスクの高い行動などを避けること、などCOVID-19予防策について今一度周知徹底していただく。・ブレークスルー感染における重症度の推移については厳重に監視していく。

583.

新型コロナ予防接種実施の手引き(6版)を公開/厚労省

 厚生労働省は、12月17日に全国の市町村に「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する手引き(6版)」を発出するとともに、同省のホームページでも公開した。本手引きは2020年12月17日の初版以来、十数回の更新を行い、その時どきの臨床知見、行政施策を反映した内容に改訂されている。 今回の改訂では、武田/モデルナ社ワクチンに関する記述、他施設へのワクチンの融通、ワクチンの移送に関する記述が大幅に追加された。主な改訂点【第4章2(5)ア(エ) ファイザー社ワクチンをシリンジに充填して移送する場合の留意点について追記】在宅療養患者等に対して在宅において接種を行う場合は、希釈したファイザー社ワクチンをシリンジに充填した状態で移送することを可能としているが、以下の点に留意すること。・シリンジの充填作業は1ヵ所で行うこと。・ワクチンを充填したシリンジは、添付文書の記載に従い、2~30℃で管理し、揺らさないよう慎重に取り扱うとともに、直射日光および紫外線が当たらないようにすること。・希釈後は6時間以内に使用すること。・シリンジに充填した状態のワクチンを他施設へ融通しないこと。【第4章2(5)イ 武田/モデルナ社ワクチンの移送に関する温度の要件等について、修正】【第4章2(6) ワクチンを別の接種施設へ融通する場合の留意事項について、武田/モデルナ社ワクチンを追加】原則、直接配送を受ける接種実施医療機関などにおいて接種を行うこととしているとしながらも、「地域の実情やワクチンの保管期限を踏まえ、ファイザー社ワクチンおよび武田/モデルナ社ワクチンについては、直接配送を受ける接種実施医療機関などから他の医療機関に対してワクチンを分配することができる。さらに、再融通も可能であることから、直接配送を受けない接種実施医療機関などからさらに別の医療機関などに対してワクチンの分配を行うことができる」とした。別接種施設へ融通する場合の留意事項は以下のとおり。・移送先施設は、原則としてワクチンの分配を受ける移送元施設と同一市町村内に所在すること。・ワクチンの管理の観点から、専任の担当者を配置して管理を厳格に行う場合には、1ヵ所の移送元施設に対する移送先施設の箇所数は、地域の実情に応じて定めることができる。それ以外の場合は、1ヵ所の移送元施設に対する移送先施設の箇所数は、数ヵ所までを目安とする。・管理体制とワクチンの効率的使用の両面から、大規模な自治体においては接種施設1ヵか所当たりの人口が数千人を下回らないことが望ましい。ただし、高齢者施設入所者への接種や離島・へき地での接種に必要な場合については、この限りでない。・移送先施設の施設数が増えると、端数になりうるワクチンの総量が増える可能性があるため、必要なタイミングで必要数を送る、配送の頻度を高く保ち使用量が見込みと異なった場合は次回の移送量を調整するなど、移送先でのワクチンの余剰を最小化すること。・移送先施設などは、あらかじめ移送元施設とワクチンの分配について合意すること。・ワクチンの分配を受ける移送元施設を変更することは、一定の条件の下で可能であるが、一時点において、複数の移送元施設からワクチンの分配を受けることはできない。・ワクチンの移送に要する時間は原則3時間以内とし、一定の要件を満たす保冷バッグを用いて移送を行うこと(離島などの特殊な事情がある場合でも12時間を超えることはできない)。なお、国が提供する保冷バッグを用いて、途中で開閉して移送する場合は、離島などの特殊な事情がある場合でも、保冷バッグの仕様上、6時間を超えて移送することはできない。【第4章3(8) 同一医療機関などにおいて複数種類の新型コロナワクチンを取り扱う際の留意点について追記】【第4章3(11)、第5章1(3)、3(4)イ(ウ) コビシールドについて追記】【第4章3(19)、第5章3(3) 接種券が届いていない追加接種対象者に対して接種を実施する場合の例外的な取扱いについて追記】接種券を保有していない者に接種する場合は、例えば、本人確認書類などで、氏名、生年月日、住民票上の住所、連絡先などの情報を記録しておくといった工夫を行う。なお、追加接種において、接種券が届いていない追加接種対象者に対して接種を実施する場合の例外的な取扱いについては、「第5章3(3)ア 接種を実施する際の注意点」を参照すること。【第4章9 予防接種証明書の電子交付が開始になったことに伴い修正】【第5章1(4) 使用するワクチンの種類に武田/モデルナ社ワクチンを追加】【第7章2(2) 武田/モデルナ社ワクチンの追加接種について追記】 詳細は本手引きを参照いただきたい。なお、本手引きの内容は、「今後の検討状況により随時追記していくものであり、内容を変更する可能性もある」と注意を述べている。

584.

意外と身近なODTS、この正式名称は?【知って得する!?医療略語】第2回

第2回 意外と身近なODTS、この正式名称は?先生、「ODTS」を初めてカルテで見ました。この患者さんに共通する特徴はありますか?「ODTS」は日本では、あまり馴染みない疾患概念かもしれませんが、有機粉塵が原因となり、インフルエンザ様の症状が出現します。ODTSの診断の鍵は、ズバリ問診です!やはり問診は大切です。ODTSは発症前イベントや職業情報の重要性を痛感する疾患ですね。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】ODTS【日本語】有機粉塵中毒症候群【英字】organic dust toxic syndrome【分野】呼吸器・アレルギー【診療科】呼吸器内科【関連】有機粉塵過敏性肺炎・職業性過敏性肺炎実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。今回は筆者が過敏性肺炎の調査中に出会った有機粉塵中毒症候群(ODTS)を取り上げたいと思います。近年、過敏性肺炎は症例の集積が進み、原因により細分化が進んでいます。その1つにキノコ栽培者肺があり、同疾患は職業関連過敏性肺炎でもあります。筆者が調べたところ、日本国内では椎茸、なめこ、エリンギ、エノキダケ・シメジなど、私たちの馴染みのあるキノコ栽培者の症例報告があります。キノコ栽培に関連し、2012年に川崎 聡氏らがODTS 22名の集団発生を報告しています。同報告によれば、2004年の新潟県中越地震で被災したエノキダケ栽培工場で、復旧作業に従事したボランティアが、相次いでインフルエンザ様の症状を発症し、ODTSと診断されました。そのうち1名が犠牲となり亡くなりました。この事例はほとんど報道されなかったことから、上述の川崎氏の報告論文は、ODTSの臨床像を知れるだけでなく、過敏性肺炎の病因解明において示唆に富む内容が記録されています。筆者はこの報告は、大変貴重な報告だと思います。ODTSは本邦では耳にする機会の少ない疾患概念ですが、Googleで「Organic dust toxic syndrome」を検索すると6,020万件のヒットがあります。また、WHO国際疾病分類ICD11のCA70とCA80には、それぞれHypersensitivity pneumonitis due to organic dust、Airway disease due to specific organic dustとして有機粉塵に関する気道疾患が明記されています。有機粉塵による疾患は、世界ではより一般的な疾患概念かもしれません。有機粉塵は小麦粉や木粉など、私たちの身近なところに存在します。ODTSは発熱を呈するため、発熱疾患の鑑別の1つでもあります。問診で発症前のイベントや職業を確認することが、素早い診断につながると考えられます。お時間が許せば、下記の原著論文をお読みいただくことをお薦めします。被災したエノキダケ栽培工場の復旧ボランティアに集団発生した organic dust toxic syndrome の臨床的検討川崎 聡ほか. 日本呼吸器学会誌. 2012;1:p287-293.

585.

重症COVID-19患者への高流量酸素療法、気管挿管を低減/JAMA

 重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の治療において、鼻カニューレを用いた高流量酸素療法は従来型の低流量酸素療法と比較して、侵襲的機械換気の必要性を低減し、臨床的回復までの期間を短縮することが、コロンビア・Fundacion Valle del LiliのGustavo A. Ospina-Tascon氏らが実施した「HiFLo-Covid試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌2021年12月7日号に掲載された。コロンビアの3病院の無作為化試験 本研究は、コロンビアの3つの病院の緊急治療室と集中治療室が参加した非盲検無作為化試験であり、2020年8月13日~2021年1月12日の期間に参加者の無作為化が行われ、2021年2月10日に最終的な追跡調査を終了した(Centro de Investigaciones Clinicas, Fundacion Valle del Liliの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染の疑いまたは確定例(鼻咽頭ぬぐい液を用いた逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法による)で、動脈血酸素分圧(PaO2)/吸気酸素濃度(FIO2)比<200の急性呼吸不全が認められ、呼吸窮迫の臨床的徴候を伴う患者であった。 被験者は、高流量鼻カニューレ酸素療法を受ける群または従来型の酸素療法を受ける群に無作為に割り付けられた。 主要複合アウトカムは、無作為化から28日以内における気管挿管の必要性と臨床的回復までの期間とされた。臨床的回復は、修正7段階順序尺度(1[退院し、日常生活動作が完全に回復]~7[死亡])で評価した、ベースラインから2段階以上の改善(低下)と定義された。入院期間や死亡には影響がない 199例(年齢中央値60歳、女性65例[32.7%])が登録され、高流量酸素療法群に99例、従来型酸素療法群に100例が割り付けられた。高流量酸素療法群は中央値で6日間(IQR:3~9)連続の酸素療法を受け、従来型酸素療法群では65.7%(65/99例)が中央値で6日(4~7)までに酸素療法からの離脱に成功した。ステロイド全身性投与はそれぞれ93.9%および92.0%で行われた。 28日以内に気管挿管が行われた患者の割合は、高流量酸素療法群が34.3%(34/99例)と、従来型酸素療法群の51.0%(51/100例)に比べ有意に低かった(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.39~0.96、p=0.03)。また、28日以内の臨床的回復までの期間中央値は、高流量酸素療法群が11日(IQR:9~14)、従来型酸素療法群は14日(11~19)で、臨床的回復の達成割合はそれぞれ77.8%(77/99例)および71.0%(71/100例)であり、有意な差が認められた(HR:1.39、95%CI:1.00~1.92、p=0.047)。 8項目の副次アウトカムのうち、7日以内の気管挿管(高流量酸素療法群31.3% vs.従来型酸素療法群50.0%、HR:0.59、95%CI:0.38~0.94、p=0.03)、14日以内の気管挿管(34.3% vs.51.0%、0.63、0.41~0.97、p=0.04)、28日時点での機械換気なしの日数中央値(28日[IQR:19~28]vs.24日[14~28]、オッズ比:2.08、95%CI:1.18~3.64、p=0.01)は、いずれも高流量酸素療法群で良好であった。一方、腎代替療法なしの日数や入院期間、死亡には、両群間に差はみられなかった。 重篤な有害事象として、心停止が高流量酸素療法群2例(2.0%)、従来型酸素療法群6例(6.0%)で発現した。また、細菌性肺炎の疑い例がそれぞれ13例(13.1%)および17例(17.0%)、菌血症が7例(7.1%)および11例(11.0%)で認められた。 著者は、「HiFLo-Covid試験は、高流量酸素療法の生理学的な効果を前提に構築されたが、呼吸の代謝作用の測定や推定、食道内圧のモニタリング、経肺圧の動的測定、分時換気量の測定、1回換気量の不均一分布の推定は行っていない。したがって、この試験では、高流量酸素療法は肺損傷の進行の防止や呼吸努力の軽減、ガス交換の向上に関与するメカニズムを改善するとの仮定の下で、臨床アウトカムのみが評価されている」としている。

586.

第91回 オミクロン株がより広まりやすいことに寄与しうる特徴

治療で除去されたヒト組織を使った香港大学の研究の結果、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン(Omicron)株は去年2020年のSARS-CoV-2元祖やデルタ株に比べておよそ70倍も早く気管支で増えることができました1)。オミクロン株が人から人により広まりやすいゆえんかもしれません。一方、肺でのオミクロン株の複製はよりゆっくりでSARS-CoV-2元祖の10分の1足らずでした。もしオミクロン株感染がより軽症であるとするなら肺で増え難いことがその一因かもしれません。スパイクタンパク質に無数の変異を有するオミクロン株の感染しやすさが他のSARS-CoV-2を上回ることにはヒト細胞のACE2との相性の良さも寄与しているようです。SARS-CoV-2代理ウイルス(pseudovirus)を使った実験の結果、SARS-CoV-2がヒト細胞に感染するときの足がかりとなる細胞表面受容体であるACE2へのオミクロン株スパイクタンパク質の結合はデルタ株やSARS-CoV-2元祖のどちらにも勝りました2,3)。著者によるとオミクロン株代理ウイルスの感染しやすさは調べた他のSARS-CoV-2変異株のどれをも上回りました。重症度はどうかというと、南アフリカ最大の保険会社の先週14日の発表を含む同国からの一連の報告ではオミクロン株感染入院率がデルタ株に比べて一貫して低く、オミクロン株感染は比較的軽症らしいと示唆されています4)。その保険会社Discovery Healthの解析ではオミクロン株感染が同国で急増した先月11月中旬(15日)から今月12月初旬(7日)のおよそ8万件近くを含む21万件超のSARS-CoV-2感染症(COVID-19)検査情報が扱われ、オミクロン株感染者の入院率は同国での昨年2020年中頃のD614G変異株流行第一波に比べて29%低いことが示されました5,6)。それに、入院した成人がより高度な治療や集中治療室(ICU)に至る傾向も今のところ低く5)、入院後の経過も比較的良好なようです。とはいえ、他国の状況を鑑みるにオミクロン株感染は軽症で済むとまだ断定はできないようです。英国の大学インペリアル・カレッジ・ロンドンの先週16日の報告7,8)によると、同国イングランドでのオミクロン株感染の重症度はデルタ株と異なってはおらず、南アフリカからの報告とは対照的に入院が少なくて済んでいるわけではありません4)。ただしイングランドでの入院データはまだ十分ではありません。いずれにせよオミクロン株感染の重症度はまだ症例数が少なすぎて結論には至っておらず4)、さらなる調査が必要なようです。オミクロン株感染の増加が医療を圧迫する恐れ今後の研究で幸いにしてオミクロン株感染の重症化や死亡のリスクが低いと判明したとしてもその感染数が莫大ならとどのつまり重症例も多くなります。その結果医療への負担は大きくなり、他の病気の治療に差し障るかもしれません4)。たとえば英国バーミンガム大学が率いた研究では、オミクロン株流行で入院が増えることで同国イングランドのこの冬(今年12月~来年4月)の待機手術およそ10万件が手つかずになりうると推定されました9,10)。待機手術を受け入れる余力を残しておく必要があると著者は言っています。参考1)HKUMed finds Omicron SARS-CoV-2 can infect faster and better than Delta in human bronchus but with less severe infection in lung / University of Hong Kong 2)mRNA-based COVID-19 vaccine boosters induce neutralizing immunity against SARS-CoV-2 Omicron variant. medRxiv. December 14, 2021 3)Preliminary laboratory data hint at what makes Omicron the most superspreading variant yet / STAT4)How severe are Omicron infections? / Nature5)Discovery Health, South Africa’s largest private health insurance administrator, releases at-scale, real-world analysis of Omicron outbreak based on 211 000 COVID-19 test results in South Africa, including collaboration with the South Africa / Discovery Health6)Covid-19: Omicron is causing more infections but fewer hospital admissions than delta, South African data show / BMJ7)Report 49 - Growth, population distribution and immune escape of Omicron in England. MRC Centre for Global Infectious Disease Analysis8)[Summary] Report 49 - Growth, population distribution and immune escape of Omicron in England. MRC Centre for Global Infectious Disease Analysis9)COVIDSurg Collaborative.Lancet. December 16, 2021 [Epub ahead of print] 10)Omicron may cause 100,000 cancelled operations in England this winter / Eurekalert

587.

有害事象を追記、COVID-19ワクチンに関する提言(第4版)公開/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏[東京大学医学部教授])は、12月16日に同学会のホームページで「COVID-19ワクチンに関する提言」の第4版を公開した。 今回の提言では、昨今のオミクロン株拡大の懸念を踏まえ「COVID-19ワクチンついて、その有効性と安全性に関する科学的な情報を解説し、接種を判断する際の参考にしていただくために作成いたしました。第3版のあとに明らかになったことや今後の課題について追記し、第4版として公開いたします。COVID-19の終息に向かって、COVID-19ワクチンが正しく理解され、安全性についても慎重に検証しながら、接種がさらに進んでゆくことを願っています」と今後のさらなるCOVID-19の予防に期待を寄せている。第4版の主な改訂点・COVID-19ワクチンの開発状況をアップデート・モデルナのCOVID-19ワクチンモデルナ筋注の臨床試験結果を追記・実社会での有効性をアップデート・変異株とワクチンの効果でデルタ株、オミクロン株を追記・ワクチンの効果の持続性で「ワクチンで誘導される免疫の減衰」と「実社会でのワクチン効果の推移」を追記・ワクチンの安全性で「海外の臨床試験における有害事象」をアップデート・わが国での臨床試験における有害事象の「モデルナのCOVID-19ワクチンモデルナ筋注」、「アストラゼネカのバキスゼブリア筋注」、「mRNAワクチン接種後の心筋炎・心膜炎」、「ウイルスベクターワクチン接種後の血栓塞栓イベント」をアップデート・国内での接種の方向性で「妊婦への接種」、「免疫不全者への接種」、「3回目のブースター接種」、「5~11歳の小児への接種」などを追記

588.

75歳以上のコロナワクチン、心血管イベントに影響なし/JAMA

 仏・French National Agency for Medicines and Health Products SafetyのMarie Joelle Jabagi氏らが75歳以上のフランス人において、BNT162b2mRNAワクチン(以下、ファイザー社ワクチン)接種後の重度心血管イベントの発症について短期リスクを評価。その結果、急性心筋梗塞、脳卒中、および肺塞栓症の発生率の増加は、ワクチン接種14日後に見られなかったことを明らかにした。なお、先行のイスラエルと米国の研究でも、ファイザー社ワクチン接種後42日と21日において、心筋梗塞、肺塞栓症、脳血管イベントのリスクは増加しなかったと報告している。JAMA誌オンライン版2021年11月22日号のリサーチレターに掲載された。 研究者らは、フランスの国民健康データシステムを使用し、75歳以上でかつ2020年12月15日~2021年4月30日に急性心筋梗塞、出血性脳卒中、虚血性脳卒中、肺塞栓症と診断されて入院した患者(ワクチンの接種は問わない)を適格者として検証を行った。調査方法には自己対照ケースシリーズ法を用い、心血管イベントに依存する曝露、ワクチン接種のキャンセルや延期または短期の死亡率を増加させる可能性のある死亡率に関連する高いイベントを調査した。その際、イベントに先行する曝露のみが考慮された。曝露リスクの間隔は2回のワクチン接種後それぞれ1~14日で、曝露リスク間隔はさらに1~7日目と8~14日目に細分化された。ワクチン接種日以外は非リスク期間と見なされた。イベントとワクチン接種の両方のバックグラウンド率の変化を考慮するため、一時的(7日単位)に調整された相対発生率(RI)を計算した。 主な結果は以下のとおり。・2021年4月30日時点で、75歳以上の約390万人がファイザー社ワクチンを1回以上接種し、320万人が2回接種をしていた。・そのうち、観察期間中に1万1,113例が急性心筋梗塞で入院(そのうち1回以上ワクチン接種を受けたのは58.6%)し、1万7,014例が虚血性脳卒中(同54.0%)、4,804例が出血性脳卒中(同42.7.%)、7,221例が肺塞栓症(55.3%)で入院した。・ワクチン1回目、2回目いずれかの接種後14日間に、有意なリスク増加は見られなかった。・心筋梗塞のRIは、 1回目が0.97(95%信頼区間[CI]:0.88~1.06)、2回目が1.04(同:0.93~1.16)だった。虚血性脳卒中では1回目が0.90(同:0.84~0.98)、2回目が0.92(同:0.84~1.02)。出血性脳卒中は1回目が0.90(同:0.78~1.04)および2回目は0.97(同:0.81~1.15)。肺塞栓症は0.85(同:0.75~0.96)、2回目は1.10(同:0.95~1.26)だった。・2つの細分化された曝露間隔(1~7日および8~14日)において、心血管イベントの有意な増加はいずれも観察されなかった。

589.

肺炎球菌ワクチン【今、知っておきたいワクチンの話】各論 第11回

ワクチンで予防できる疾患:肺炎球菌感染症肺炎球菌感染症とは肺炎球菌の感染による疾病の総称であり、肺炎、中耳炎、副鼻腔炎、髄膜炎などが含まれる。肺炎球菌は主に鼻腔粘膜に保菌され、乳幼児では40〜60%と高頻度に、成人ではおよそ3〜5%に保菌されている1)。感染経路は飛沫感染であり、小児の細菌感染症の主な原因菌の1つである。また、成人の市中肺炎の起因菌では38%と最も多い2)。肺炎球菌が髄液や血液などの無菌部位に侵入すると、菌血症を伴う肺炎、髄膜炎、敗血症などの侵襲性肺炎球菌感染症(invasive pneumococcal disease:以下「IPD」)を引き起こす。治療は抗菌薬投与および全身管理であるが、近年は薬剤耐性菌の出現も問題となっている3)。わが国の成人IPDの好発年齢は60~80代で4,5)、基礎疾患があることは発症や重症化のリスクとなる3,6)。65歳以上の成人(以下「高齢者」)の罹患率はおよそ5/10万人・年であり、致命率は6%台と高い1)。成人の肺炎球菌感染症とりわけIPDの発症や重症化の予防には、日常診療における基礎疾患の管理とともに肺炎球菌ワクチンの接種が重要である3,6)。ワクチンの概要肺炎球菌の病原因子の中で最も重要なものは、菌の表層全体を覆う莢膜である。この莢膜は多糖体からなり、97種類の型が報告されている3)。ある莢膜型の肺炎球菌に感染するとその型に対する抗体が獲得され、同じ型には感染しなくなるが、別の型には抗体がないため感染が成立し、発症する7)。そのため肺炎球菌による発症や重症化を予防するには、さまざまな莢膜型の抗体をあらかじめ獲得しておく必要があり7)、肺炎球菌ワクチンは莢膜多糖体を抗原としている。国内では以下の2つのワクチンが承認されているが、それぞれカバーする莢膜型の数や種類、免疫応答の方法などが異なる(表)。以下に2つのワクチンの特徴を述べる。1)23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)〔商品名:ニューモバックスNP〕23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(以下「PPSV23」)は、莢膜多糖体からなる不活化ワクチンで、23種類の莢膜型を有する。PPSV23接種による免疫応答では、T細胞を介さないため免疫記憶は獲得されず、B細胞の活性化によりIgG抗体のみが獲得される。IgG抗体は経年的に減弱し、減弱するとワクチン血清型の菌に対して予防効果は期待できなくなる3)。PPSV23の予防効果としては、接種により高齢者のワクチン血清型のIPDを39%減少させ8)、すべての肺炎球菌による市中肺炎を27.4%、ワクチン血清型の肺炎球菌による市中肺炎を33.5%減少させたと国内より報告されている9)。PPSV23は2006年に販売開始となり、2014年から5年間限定で65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳および100歳になる人を対象に定期接種となった。2019年度以降はさらに5年間の期限で、同年齢を対象に定期接種が継続されている10)。初回接種後の予防効果は3〜5年で低下する11)。再接種による予防効果について明確なエビデンスは報告されていないが、再接種後の免疫原性は初回接種時と同等であり、初回接種時と同等の予防効果が期待されている12)。また、再接種時の局所および全身性の副反応の頻度は初回接種時より高いことに注意が必要だが、いずれも軽度で許容範囲と考えられている12)。以上より症例によっては追加接種を繰り返してもよいと考えられ、接種後5年以上の間隔をおいて再接種することができる12)。2)沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)〔同:プレベナー13水性懸濁注〕沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン(以下「PCV13」)は、莢膜多糖体に無毒化したジフテリア蛋白を結合させた蛋白結合型の不活化ワクチンで、13種類の莢膜型を有する。PCV13接種による免疫応答は、T細胞とB細胞を介している。まず、樹状細胞に抗原が提示されてT細胞の活性化を誘導する(T細胞依存型)。ついで活性したT細胞とB細胞の相互作用によりB細胞が活性化する。その後、形質細胞によるIgG抗体の産生とメモリーB細胞による免疫記憶が獲得される。そのため記憶された莢膜型の菌が侵入すると速やかにIgG抗体産生能が誘導(ブースター効果)され免疫能が高まる3)。小児に対する7価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)は2010年より販売開始となり、同年に接種費用の公費助成が開始された。2013年4月より定期接種となり、同年11月よりPCV13に切り替えられた。予防効果として、PCV7・PCV13の導入により小児のIPD、とくに髄膜炎は87%も激減したと報告されている4)。一方、2014年より高齢者に対しても適応が拡大され、任意接種することが可能となった。PCV13接種により高齢者のワクチン血清型のIPDを47〜57%減少させ、ワクチン血清型の肺炎(非侵襲型)を38〜70%、すべての原因の肺炎を6〜11%減少させたとの予防効果が諸外国より報告されている13)。さらに2020年5月からは、高齢者のみならず全年齢に適応が拡大され、全年齢の「肺炎球菌感染症に罹患するリスクが高い人」に接種が可能となった。また、PCV13接種には集団免疫効果が認められており、小児へのPCV7およびPCV13接種の間接効果(集団免疫)により、成人IPD症例のPCV13血清型(莢膜型)は劇的に減少した3)。その一方で、PCV13に含まれない血清型が増加するなど血清型置換が報告されている3)がこの問題は後述する。表 肺炎球菌ワクチン(PPSV23とPCV13)の比較画像を拡大する接種のスケジュール1)23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)〔商品名:ニューモバックスNP〕【定期接種】これまでにPPSV23を1回も接種したことがなく、以下(1)(2)にあてはまる人は定期接種として1回接種できる。(1)2019年度から2023年度末までの5年間限定で65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳および100歳になる人。なお、2023年度以降は65歳になる年度に定期接種として1回接種できる見込みである。(2)60〜64歳で、心臓、腎臓、呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限されている人。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)で免疫機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な人。【任意接種】2歳以上で上記以外の人。接種後5年以上の間隔をおいて再接種することができる12)。2)沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)〔同:プレベナー13水性懸濁注〕【定期接種】小児(2ヵ月以上5歳未満)以下のように接種開始時の月齢・年齢によって接種間隔・回数が異なることに注意する。(〔1〕1回目、〔2〕2回目、〔3〕3回目、〔4〕4回目)[接種開始が生後2ヵ月~7ヵ月に至るまでの場合(4回接種)]〔1〕〔2〕〔3〕の間は 27 日以上(27~56日)、〔3〕〔4〕の間は 60日以上の間隔をあけて(12~15ヵ月齢で)接種する 。[接種開始が生後7ヵ月~12ヵ月に至るまでの場合(3回接種)]〔1〕〔2〕の間は 27日以上(27~56日)、〔2〕〔3〕の間は 60日以上の間隔をあけて(12ヵ月齢以降で)接種する。[接種開始が12ヵ月~24ヵ月に至るまでの場合(2回接種)]〔1〕〔2〕の間は 60日以上の間隔をあけて接種する。[接種開始が24か月-5歳の誕生日に至るまでの場合(1回接種)]1回のみ接種する。【任意接種】5歳以上の罹患するリスクが高い者:1回1回のみ接種する。日常診療で役立つ接種ポイント1)PPSV23の推奨(1)2歳以上の脾臓を摘出した患者肺炎球菌感染症の発症予防として保険適用されるが、より確実な予防のためには摘出の14日以上前までに接種を済ませておくことが望ましい。(2)2歳以上の脾機能不全(鎌状赤血球など)の患者(3)高齢者(4)心臓や呼吸器の慢性疾患、腎不全、肝機能障害、糖尿病、慢性髄液漏などの基礎疾患がある患者(5)免疫抑制作用がある治療が予定されている患者。治療開始の14日以上前までに接種を済ませておくことが望ましい。2)PCV13の推奨(1)乳幼児(生後2ヵ月~5歳未満:定期接種)IPDは、とくに乳幼児でリスクが高く、5歳未満の致命率はおよそ1%と報告され14)、後遺症を残す危険性もある。そのため乳児であっても、接種が可能となる生後2ヵ月以上ではワクチン接種をされることを強く勧める。(2)基礎疾患がある5〜64歳の人2017年時点のIPDの致命率は、6〜44歳で6.2%、45〜64歳で19.5%と高く、基礎疾患を有することがリスクとなることが報告されている6)。基礎疾患(先天性心疾患、慢性心疾患、慢性肺疾患、慢性腎疾患、慢性肝疾患、糖尿病、自己免疫性疾患、神経疾患、血液・ 腫瘍性疾患、染色体異常、早産低出生体重児、無脾症・脾低形成、脾摘後、臓器移植後、髄液漏、人工内耳、原発性免疫不全症、造血幹細胞移植後など6,15)がある人には、本人・保護者と医師との話し合い(共有意思決定)に基づいてワクチン接種をされることを勧める。詳しくは「6歳から64歳までのハイリスク者に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方」(2021年3月17日)を参照。(3)基礎疾患がある高齢者、高齢者施設の入所者 基礎疾患(慢性的な心疾患、肺疾患、肝疾患、糖尿病、アルコール依存症、喫煙者など)がある高齢者では、本人・家族と医師との話し合い(共有意思決定)に基づいてワクチン接種することを勧める11)。とくに、髄液漏、人工内耳、免疫不全(HIV、無脾症、骨髄腫、固形臓器移植など)の患者には接種を勧める11)。高齢者施設の入所者も医師と相談して接種することを勧める11)。3)高齢者に対するPPSV23とPCV13の接種に関する考え方これまで高齢者に対するPPSV23とPCV13の接種について国内外で議論されてきたが、現時点での日本呼吸器学会・日本感染症学会の合同委員会による「考え方」16)を紹介する。【PPSV23未接種者に対して】(1)まず定期接種としてPPSV23の接種を受けられるようにスケジュールを行う。(2)PPSV23とPCV13の両方の接種をする場合には(1)を考慮しつつPCV13→PPSV23の順番で接種し、PCV13接種後6ヵ月〜4年以内にPPSV23を接種することが適切と考えられている。この順番の利点は、成人ではPCV13接種後に、被接種者に13の血清型の莢膜抗原特異的なメモリーB細胞が誘導され、その後のPPSV23接種により両ワクチンに共通した12の血清型に対する特異抗体のブースター効果が期待されることである。ただし、この連続接種については海外のデータに基づいており、日本人を対象とした有効性、安全性の検討はなされていない。【PPSV23既接種者に対して】PPSV23接種から1年以上あけてからPCV13接種を行う。詳細は以下の図1と「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第3版)」を参照。図1 65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方(2019年10月)(日本感染症学会/日本呼吸器学会 合同委員会)画像を拡大する今後の課題・展望小児へのPCV7およびPCV13接種の間接効果(集団免疫)により、成人IPD症例のPCV13血清型(莢膜型)は劇的に減少したが、一方でPCV13に含まれない血清型が増加し、血清型置換が報告されている3)(図2)。図2 小児へのPCVs導入後のIPD由来株の莢膜型変化画像を拡大する2018年の厚生労働省の予防接種基本方針部会では、国内のIPDや肺炎原因菌の血清型分布などを検討しPCV13を高齢者に対する定期接種に指定しないと結論された17)。また、米国予防接種諮問委員会(ACIP)において、PPSV23はこれまで同様に推奨されたが、小児へのPCV13定期接種の集団免疫効果により高齢者の同ワクチン血清型の感染が劇的に減少したことから費用対効果も考慮し、高齢者へのPCV13の定期接種や一律のPCV13-PPSV23の連続接種は推奨しない方針に変更され、患者背景を考慮してPCV13接種を推奨することとされた13)。PCV13は高齢者の定期接種には指定されていないものの、接種しないことが勧められているわけではなく、その効果や安全性は確認されており13)、患者背景を考慮して接種する必要があることに注意する。とくに基礎疾患がある高齢者、高齢者施設の入所者には積極的に接種を勧めたい。また、2016年時点の高齢者のPPSV23接種率は40%ほど1)に留まっており、接種率のさらなる向上が必要である。基礎疾患を有することはIPDの重症化のリスクであり、日常診療における基礎疾患の管理とともに、適切にPPSV23やPCV13の接種を勧め、被接種者と共有意思決定を行い(shared decision making)、接種を実施し患者や地域住民をIPDから守りたい。わが国では成人IPDの調査・研究に限界があるが、前述の通りIPD症例の莢膜型の変化が報告4)されており、将来的にはさらに多くの血清型をカバーするワクチンやすべての肺炎球菌に共通する抗原をターゲットとした次世代型ワクチンの開発が望まれ、今後の動向にも注目したい3,6,18)。参考となるサイト(公的助成情報、主要研究グループ、参考となるサイト)1)23 価肺炎球菌莢膜ポリサッカライド ワクチン(肺炎球菌ワクチン) ファクトシート. 平成30(2018)年5月14日.国立感染症研究所.2)13価肺炎球菌コンジュゲートワクチン(成人用)に関するファクトシート. 平成27年7月28日.国立感染症研究所. 3)65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第3版 2019-10-30)日本呼吸器学会呼吸器ワクチン検討WG委員会/日本感染症学会ワクチン委員会・合同委員会4)「6歳から64歳までのハイリスク者に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方」(2021年3月17日).日本呼吸器学会呼吸器ワクチン検討委員会/日本感染症学会ワクチン委員会/日本ワクチン学会・合同委員会.5)こどもとおとなのワクチンサイト1)国立感染症研究所. 23 価肺炎球菌莢膜ポリサッカライド ワクチン(肺炎球菌ワクチン) ファクトシート. 平成30(2018)年5月14日. 2018.(2021年8月9日アクセス)2)Yoshii Y, et al. Infectious diseases. 2016;48:782-788.3)生方公子,ほか. 肺炎球菌感染症とワクチン. 2019.(2021年8月10日アクセス)4)Ubukata K, et al. Emerg Infect Dis. 2018;24:2010-2020.5)Ubukata K, et al. J Infect Chemother. 2021;27:211-217.6)Hanada S, et al. J Infect Chemother. 2021;27:1311-1318.7)生方公子, ほか. 肺炎球菌. 重症型のレンサ球菌・肺炎球菌感染症に対するサーベイランスの構築と病因解析、その診断・治療に関する研究.(2021年8月10日アクセス)8)新橋玲子, ほか.成人侵襲性肺炎球菌感染症に対する 23 価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンの有効性. 2018; IASR 39:115-6.(2021年8月10日アクセス) 9)Suzuki M, et al. Lancet Infect Dis. 2017;17:313-321.10)厚生労働省. 第27回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会 資料. 2019.(2021年8月10日アクセス)11)World Health Organization. Releve epidemiologique hebdomadaire. 2008;83(42):373-384.12)肺炎球菌ワクチン再接種問題検討委員会. 肺炎球菌ワクチン再接種のガイダンス(改訂版). 感染症誌. 2017;9;:543-552.(2021年8月10日アクセス)13)Matanock A, et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2019;68:1069-1075.14)国立感染症研究所. 資料3 13価肺炎球菌コンジュゲートワクチン(成人用)に関するファクトシート. 平成27年7月28日. 第1回厚生科学審議会予防接種・ワクチン文科会予防接種基本方針部会ワクチンに関する小委員会資料. 2015.(2021年8月9日アクセス)15)日本呼吸器学会呼吸器ワクチン検討委員会/日本感染症学会ワクチン委員会/日本ワクチン学会・合同委員会. 「6歳から64歳までのハイリスク者に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方」(2021年3月17日). (2021年8月9日アクセス)16)日本呼吸器学会呼吸器ワクチン検討WG委員会/日本感染症学会ワクチン委員会・合同委員会. 65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第3版 2019-10-30). 2019.(2021年8月9日アクセス)17)厚生労働省. 第24回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会 資料 2018.(2021年8月9日アクセス)18)菅 秀, 富樫武弘, 細矢光亮, ほか. 13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)導入後の小児侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の現状. IASR Vol. 39 p112-113. 2018.(2021年8月10日アクセス)講師紹介

590.

コロナ抗原定性検査の種類・活用方法を患者さんに聞かれたら/臨薬協など

 「ワクチン・検査パッケージ」ではPCR検査や抗原定量検査が推奨されているが、抗原定性検査の利用も可能とされ、9月からは薬局での販売も解禁されている。しかし、抗原定性検査は鼻腔ぬぐい液の採取が必要で使用に難しさがある点や、精度と活用方法を理解したうえでの使用が求められる点、未承認のキットも販売されている点など、課題も多い。日本臨床検査薬協会(臨薬協)は11月、抗原定性検査キットの適正な使用を促進し感染制御に資することを目的として、臨床検査振興協議会による一般消費者向けの啓発資料「医療用(体外診断用医薬品)抗原定性検査キットとは?」のウェブサイト掲載を受けて、ホームページ上で抗原定性検査キットの種類を「新型コロナウイルス感染症の医療用抗原簡易キット一覧」で公開している。抗原定性検査の結果=診断ではないことを理解してもらう必要 政府の新型コロナウイルス感染症対策本部では、制度開始にあたり公開した「ワクチン・検査パッケージ制度要綱」の中で、無症状者に対する抗原定性検査は、確定診断としての使用は推奨されないが、無症状者の感染者のうちウイルス量が多いものを発見することにより、事前に PCR 検査等を受検することができない場合にも対応する観点から、場の感染リスクを下げうるとの考え方に基づき、利用可能としている。 また、抗原定性検査の実施方法について詳細・留意点をまとめた「ワクチン・検査パッケージ制度における抗原定性検査の実施要綱」では、飲食店やイベント主催者等が抗原定性検査を実施する際は、担当者の研修受講や陽性者が出た場合の紹介先としての医療機関との連携を求めているほか、結果は、あくまでもワクチン・検査パッケージ制度においてのみ用いられるものであり、受検者が新型コロナ感染者の患者であるかどうかの診断には用いることができないと明記されている。抗原定性検査キットの購入から廃棄までの留意点をQ&Aで説明 臨床検査振興協議会による一般消費者向けの啓発資料「医療用(体外診断用医薬品)抗原定性検査キットとは?」では、キットの購入から検査実施とその後の対応、さらに使用済キットの廃棄までのプロセスにおいて留意すべき点を、イラストを用いながら解説している。設けられている8つのQは以下の通り:Q1医療用の抗原定性検査キットが薬局で買えるようになったと聞いたけど、抗原定性検査キットって何ですか?Q2抗原定性検査ってPCR 検査と何が違うの?Q3薬局には、「研究用」と書いてある検査キットも売っているけど「医療用」とは何が違うの?Q4薬局で普通に買えるの?Q5「医療用」の検査キットを買ってきました。でも、テレビで見たものと違うみたい…大丈夫なのかな?Q6なんだかインフルエンザの時の検査みたいですね。鼻の奥をぐりぐりされて痛かった記憶があるけど、自分で出来るか不安です。Q7結果が出たけど、どうしたらよいの?Q8検査キットは普通に捨ててよいの?抗原定性検査キットで製造販売承認を取得している製品を一覧化 「新型コロナウイルス感染症の医療用抗原簡易キット一覧」では、2021年11月17日時点で製造販売承認を取得している抗原定性検査キット16製品について一覧化して示している。それぞれの抗原定性検査キットで少しずつ使い方が異なっていることから、うちいくつかの製品については、各社のキットの使用上の注意点に関する動画等が閲覧できるサイトへのリンクが貼られている。

591.

DLL3を標的としたBiTE抗体tarlatamabの小細胞肺がんに対する安全性と抗腫瘍効果/日本肺癌学会

 腫瘍組織で多く発現するデルタ様リガンド3(DLL3)は、小細胞肺がん(SCLC)の治療標的として注目されている。このDLL3を標的とする半減期を延長した二重特異性T細胞誘導(BiTE)抗体であるtarlatamab(AMG757)は、がん細胞とT細胞を架橋し、さらにT細胞を活性化させることでがん細胞を攻撃する。進行または再発SCLCを対象とした第I相試験の結果から、tarlatamabの安全性および抗腫瘍効果について、第62回日本肺癌学会学術集会において国立がん研究センター東病院の泉大樹氏が報告した。BiTE抗体tarlatamabをSCLC患者66例に投与・対象:プラチナベースの化学療法後に進行または再発したSCLC患者66例(PS 0~2)・治療薬:tarlatamab 0.003~100mgを週2回投与・評価項目:[主要評価項目]安全性および忍容性、最大耐用量および推奨用量[副次評価項目]PK特性、予備的な抗腫瘍効果 BiTE抗体tarlatamabの安全性および抗腫瘍効果の主な結果は以下のとおり。・66例中56例(85%)に治療関連有害事象(TRAE)が認められ、Grade 3以上のTRAEは18例(27%)に発現した。・頻度の高いTRAEとしてサイトカイン放出症候群(CRS)が17例(44%)に発現したが、Grade 3以上のCRSは1例(2%)のみだった。次いで、発熱17例(26%)、疲労感11例(17%)などがみられた。・TRAEにより3例(5%)の患者が治療を中止した。また、用量制限毒性(DLT)はGrade 5の非感染性肺炎が1例(0.3mg投与)とGrade 3の脳症が1例(100mg投与)にみられた。・BiTE抗体tarlatamabの抗腫瘍効果については、64例中13例(20%)でconfirmed PRを示し、3mg投与例の36%、10mg投与例の30%、100mg投与例の27%がPRであった。SDは17例(27%)、病勢コントロールは37例(47%)に認められた。・確定されたPRが得られるまでの期間の中央値は8.7ヵ月であった なお、本試験は現在でも継続されている。

592.

モノクローナル抗体ianalumab、中等~重症の原発性シェーグレン症候群に有効/Lancet

 原発性シェーグレン症候群(眼球や口腔の乾燥、全身症状、生活の質[QOL]の低下を特徴とする自己免疫疾患)の治療において、B細胞活性化因子(BAFF)受容体を阻害するモノクローナル抗体製剤ianalumab(VAY736)はプラセボと比較して、24週時の疾患活動性が用量依存的に低下し、忍容性や安全性も良好で感染症の増加は認められないことが、英国・バーミンガム大学病院のSimon J. Bowman氏らが実施した「VAY736A2201試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年11月30日号で報告された。19ヵ国の4群を比較する第IIb相用量設定試験 本研究は、中等度~重度の原発性シェーグレン症候群患者におけるianalumabの安全性と有効性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験(第IIb相用量設定試験)であり、2017年6月~2018年12月の期間に、19ヵ国56施設で患者登録が行われた(Novartis社の助成を受けた)。 対象は、年齢18~75歳で、疾患活動性が中等度~重度(欧州リウマチ学会[EULAR]のシェーグレン症候群疾患活動性指標[ESSDAI]スコア≧6点)、症状の重症度が患者の許容範囲を超える(EULARシェーグレン症候群患者報告指数[ESSPRI]スコア≧5点)などの基準を満たす患者であった。 被験者は、3つの用量のianalumab(5mg、50mg、300mg)またはプラセボを4週ごとに24週間皮下投与する群に無作為に割り付けられた。患者と試験関係者には治療割り付け情報が知らされなかった。 主要アウトカムは、24週の時点での無作為化の対象となった全患者におけるベースラインから24週までのESSDAIスコアの変化量とされ、モデル化分析を用いた多重比較法で評価された。安全性の評価は、試験薬の投与を少なくとも1回受けたすべての患者で行われた。今後の臨床試験で、300mgが使用可能 190例が登録され、ianalumab 5mg群に47例、同50mg群に47例、同300mg群に47例、プラセボ群に49例が割り付けられた。各群の平均年齢の幅は47.9~52.5歳で、女性が各群の平均で87~98%を占めた。 検討された5つの用量反応モデルのうち4つで、全体的な疾患活動性(ESSDAIスコア)に関して統計学的に有意な用量反応関係が認められた(4つのモデルはいずれもp<0.025、1つのモデルはp=0.060)。 ESSDAIスコアは、3つの用量のianalumab群のすべてで、ベースラインから経時的に低下したが、用量が高いほど効果が大きく、24週時の効果は300mg群で最も優れた。ESSDAIスコアは、300mg群ではベースラインの13.1点から24週時には4.9点に、プラセボ群では13.0点から7.0点に低下した。300mg群における24週時のベースラインからのESSDAIスコアの変化量の、プラセボ群で補正した最小二乗平均は、-1.92点(95%信頼区間[CI]:-4.15~0.32、p=0.092)だった。 有害事象は、ianalumab 300mg群(94%)が、他の用量群(5mg群85%、50mg群83%)やプラセボ群(84%)よりもわずかに多かった。感染症は、ianalumab群(5mg群53%、50mg群47%、300mg群49%)がプラセボ群(57%)よりも少なかった。治療関連の重篤な有害事象は3例で4件認められた(プラセボ群の1例で肺炎、同群の1例で胃腸炎、50mg群の1例で虫垂炎と卵管卵巣膿瘍)。 著者は、「われわれが知る限り、この研究は主要エンドポイントを達成した初めての原発性シェーグレン症候群の大規模無作為化対照比較試験であり、これらの結果は、本症のメカニズムを探る研究が今後も続けられる可能性があることを意味する」と指摘し、「ianalumab 300mgは、今後の臨床試験で安全かつ有効な用量として使用できる」としている。

593.

第87回 規制緩和を背景に「感染性胃腸炎」が例年並みに増加中

国内でも、新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の感染者が見つかり始めているが、一方で別の感染症による患者数が増えている。ノロウイルスやロタウイルスなどにより腹痛や下痢、嘔吐などの症状が起きる感染性胃腸炎だ。例年は11月から増え始め、12月をピークにいったん減少し、1~3月ごろに再び増える傾向にある。12月のピークはノロウイルス、春のピークはロタウイルスによるもので、冬場に流行する感染性胃腸炎はウイルス性のものが多い。保育園や幼稚園、福祉施設などでの集団発生の多くはこの時期に発生し、少量のウイルスで感染するノロウイルスによるもの(ノロウイルス感染症)と推察される。子どもや高齢者では重症化や、嘔吐物による誤嚥性肺炎、最悪の場合は気道に詰まって窒息死することもある。また、ノロウイルス感染症の患者の糞便や嘔吐物には、大量のノロウイルス(感染者の吐物1g当たり100万個以上)が含まれており、適切な処理を行わないと2次感染も起こりうる。昨シーズンはコロナ禍による外出抑制で患者数は激減ところが、昨シーズンは過去に例がないくらい患者数が少なかった。その背景について東京都健康安全研究センターでは、コロナ禍で会食や外食の機会が減ったことによる影響が大きいのではないかと見ている。主な感染経路は経口感染で、人から人へ感染する場合と、食べ物から感染する場合などがあるからだ。しかし今シーズンは、規制が緩和され、人と会う機会も増えているため、11月から感染者数が増加し、例年並みのペースにまで近付いている。アルコール消毒より流水と石けん手洗いが効果商業施設などの入り口や家庭内でアルコール消毒が行われているが、感染性胃腸炎は通常の新型コロナ対策では防ぎ切れない。ノロウイルスやロタウイルスは、消毒剤への抵抗性が強く、消毒用アルコールはあまり効果がないと言われている。それより有効なのは、従来からの流水と石けんによる手洗いだという。国立感染症研究所によると、手のひら側はしわの多い部分や指の間、手の甲側は親指を中心に全体的に洗い残しが多いという。来院患者さんたちにも、意識してしっかりと洗うよう伝えたい。糞便や嘔吐物の処理には次亜塩素酸ナトリウム前述のように、糞便や嘔吐物を適切に処理することも重要だ。処理者は感染しないように、使い捨ての手袋やマスク、ガウンなどを着用する。また汚染した床は、乾いた嘔吐物が舞うことを防ぐため、乾燥させないよう速やかに、次亜塩素酸ナトリウム(塩素系の消毒剤や家庭用塩素系漂白剤)で汚染場所の外側から中心に向かって浸すように拭くなど、汚染を広げないようにして処理する。じゅうたんなど次亜塩素酸ナトリウムを使いづらい場所で嘔吐した場合は、スチームアイロンによる熱処理が有効だ。ノロウイルスは熱に弱く、85度以上1分間以上の加熱で不活化するという。今の時期、新型コロナウイルスだけがクローズアップされ、その陰に隠れがちだが、経済活動が再び活気を取り戻し、着実に人流が増えている中、気を付けるべき感染症があることを改めて確認し、患者さんにも周知する必要があるだろう。

594.

mRNAコロナワクチンによる心筋炎・心膜炎、「重大な副反応」に追加/厚労省

 厚生労働省は12月3日、新型コロナウイルス感染症のmRNAワクチンに対し『重大な副反応』の項に「心筋炎」と「心膜炎」を追記するよう、使用上の注意の改訂指示を発出した。対象製剤はファイザー社の「コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)」(商品名:コミナティ)とモデルナ社の「コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)」(商品名:(COVID-19ワクチンモデルナ筋注)。 今年7月の時点で重要な基本的注意に追記されていたが、その後の解析で各2回接種後の若年男性(10~20代)で頻度が高いことが示唆された。 このほか、『その他の注意』の項に注射部位反応に関する記載が新設され、「海外において、皮膚充填剤との関連性は不明であるが、皮膚充填剤注入歴のある被接種者において、コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)接種後に、皮膚充填剤注入部位周辺の腫脹(特に顔面腫脹)が報告されている」旨が追記された。

595.

新型コロナ「罹患後症状のマネジメント」を公開/厚労省

 厚生労働省は、12月1日に「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(暫定版)」を公開し、全国の自治体に周知を行った。 本別冊「罹患後症状のマネジメント」は、COVID-19感染・回復後の患者の経過を診ているかかりつけ医などが、自身でそれらの症状に悩む患者に対して、どこまでどのようにアプローチ・フォローアップをすればよいのか、どのタイミングで専門医の受診を勧めるのか、などについて標準的な診療とケアについてまとめることを目的に、それぞれの分野で経験のある専門家が参集し、発刊したもの。「罹患後症状のマネジメント」はさまざまな視点から解説 「罹患後症状のマネジメント」のおもな内容として下記の解説が行われている。・WHOの定義:COVID-19の罹患後症状(いわゆる遷延症状あるいは後遺症)の紹介・現時点の知見などを基にした、かかりつけ医などの医療従事者向けの診療や経過観察のあり方のまとめ・かかりつけ医などがどの範囲まで対応し経過観察するのか、どのタイミングで専門医の受診を勧めるのかなどについて、各症状(呼吸器、循環器、嗅覚・味覚、精神・神経、痛み)ごとに記載・小児へのアプローチや筋力低下などに対するリハビリテーション、および職場などへの復帰に関する産業医学的アプローチも記載別冊「罹患後症状のマネジメント」の目次1)罹患後症状2)罹患後症状を訴える患者へのアプローチ3)呼吸器症状へのアプローチ4)循環器症状へのアプローチ5)嗅覚・味覚症状へのアプローチ6)精神・神経症状へのアプローチ7)“ 痛み”へのアプローチ8)小児へのアプローチ9)罹患後症状に対するリハビリテーション10)罹患後症状と産業医学的アプローチ また、注意点として「罹患後症状のマネジメント」の内容は、2021年11月26日現在の情報を基に作成したもので、今後の知見より内容修正が必要となる場合があること、厚生労働省、国立感染症研究所などのホームページから常に最新の情報を得るようにと注意を喚起している。

596.

第27回 有名だけれども意外と見落とされがちな意識障害の原因は?【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)意識障害の原因は主軸を持って対応を!2)忘れがちな意識障害の原因を把握し対応を!【症例】62歳男性。意識障害仕事場の敷地内で倒れていた。●受診時のバイタルサイン意識20/JCS血圧128/51mmHg脈拍95回/分(整)呼吸20回/分SpO295%(RA)体温36.0℃瞳孔4/4 +/+既往歴高血圧内服薬定期内服薬なし所見麻痺の評価は困難だが、明らかな左右差なし意識障害の原因は?1)救急外来では意識障害患者にしばしば遭遇します。以前に取り上げた意識障害のアプローチに準じて対応しますが、今回の原因は何らしいでしょうか。意識障害というとどうしても頭蓋内疾患を考えがちですが、一般的に頭蓋内疾患が原因の意識障害では血圧は高くなるため、この時点で明らかな麻痺も認めないことから脳卒中は積極的には疑いません。クモ膜下出血の多くは左右差を認めないため、突然発症であった場合には注意が必要ですけどね。それでは原因は何でしょうか?意識障害の原因は多岐に渡り、“AIUEOTIPS”などの語呂合わせで覚えている人も多いのではないでしょうか。急性発症の意識障害であれば、低血糖を除外し、その後頭部CTを検査するというのは一般的な流れかと思います。診療の場において頻度は異なりますが、救急外来を受診する患者では感染症、脳卒中、痙攣、薬剤性、外傷が多く、その他、血糖異常やアルコール、電解質異常などもそれなりに経験します。今回はその中でも見逃しがちな意識障害の原因を見逃される理由と併せて整理しておきましょう。細菌性髄膜炎2)頻度として高くはありませんが、病態として敗血症が考えられる状況においては常に考える必要があります。見逃してしまう理由は、そもそも鑑別に挙げることができない、鑑別に挙げても発熱がない、項部硬直を認めないなどから除外してしまう、その他腰椎穿刺は施行したものの細胞数の上昇を認めなかったため除外してしまったなどが一般的でしょう。ワクチンの普及によって、以前と比較し細菌性髄膜炎は減少傾向にあるものの、毎年私の施設でも数例を経験します。忘れた頃にやってくる疾患といったイメージでしょうか。救急外来では、qSOFA陽性患者では鑑別に挙げ、他のフォーカスが明らかでない場合には積極的に腰椎穿刺を施行し、たとえ細胞数が上昇していなくてもグラム染色所見や培養結果で根拠を持って否定できるまでは、細菌性髄膜炎として対応するようにしています。髄膜刺激徴候は重要ですが、ケルニッヒ徴候やブルジンスキー徴候など特異度が比較的高い所見はあるものの、感度が高い身体所見は存在しないことに注意が必要です(項部硬直は感度46.1%、特異度71.3%)。単一の指標ではなく、総合的な判断が必要であるため、髄膜刺激徴候は1つ1つ確認しますが、結果の解釈を誤らないようにしましょう。細菌性髄膜炎は内科的エマージェンシー疾患であり、安易な除外は禁物です。レジオネラ症(legionellosis)「レジオネラ肺炎」。誰もが聞いたことがある病気ですが、早期に疑い適切な介入を行うことは簡単なようで難しいものです。呼吸困難を主訴に来院し、低酸素血症を認め、X線検査所見では明らかな肺炎像、尿中抗原を提出して陽性、このような状況であれば誰もが考えると思いますが、実臨床はそんなに甘くはありません。肺炎球菌と並んで重症肺炎の代表的な菌であるため、早期発見、早期治療介入が重要ですが、入り口を把握し疑うポイントを知らなければ対応できません。レジオネラ肺炎を見逃してしまう理由もまた同様であり、そもそも鑑別に挙がらない、疑ったものの温泉入浴などの感染経路がなく否定してしまった、尿中抗原陰性を理由に除外してしまったなどが挙げられます。市中肺炎患者に対して肺炎球菌をカバーしない人はいないと思いますが、意外とレジオネラは忘れ去られています。セフトリアキソン(CTRX)やアンピシリン・スルバクタム(ABPC/SBT)などの抗菌薬は、しばしば救急外来で投与されますが、これらはレジオネラに対しては無効ですよね。重症肺炎、喀痰グラム染色で起因菌が見当たらない、紹介症例などでCTRXなどβラクタム系抗菌薬が無効な場合には積極的にレジオネラ肺炎を疑う必要があります。難しいのは入り口が肺炎を示唆する症状ではない場合です。レジオネラ症の初期に認めうる肺外症状を頭に入れておきましょう(表)。これらを認める場合、他に説明しうる原因があれば過度にレジオネラを考える必要はありませんが、そうではない場合、「もしかしてレジオネラ?!」と考え、改めて病歴や身体所見をとるとヒントが隠れているかもしれません。また、意識すれば発熱の割に脈拍の上昇が認められない比較的徐脈にも気付くかもしれません。尿中抗原は診断に多々利用されていますが、これも注意が必要です。特異度は比較的高いとされますが、偽陽性の問題もあります。また、感度は決して高くないため陰性であっても否定できません。(1)重症肺炎、(2)βラクタム系抗菌薬が効かない肺炎、(3)グラム染色で有意な菌が認められない場合、(4)肺外症状を認める場合、(5)比較的徐脈を認める場合、このような場合にはレジオネラを意識して対応するようにしています。表 レジオネラ肺炎の肺外症状画像を拡大するウェルニッケ脳症4)アルコール多飲患者では鑑別に挙げ対応することが多いと思いますが、それ以外の場合には忘れがちです。フレイル患者など低栄養の患者さんでは常に考えるべき疾患であると思います。ウェルニッケ脳症が見逃されがちな5つの誤解があります。それは、「(1)非常にまれである、(2)慢性アルコール患者のみに起こる、(3)3徴(意識障害、眼球運動障害、歩行失調)が揃っていなければならない、(4)チアミンを静注するとアナフィラキシーのリスクが高い、(5)他の診断があれば除外できる」です。正確な頻度は不明であるものの、私たちが行わなければならないのはウェルニッケ脳症を診断すること以上に治療介入のタイミングを逃さないことです。意識障害患者に対するビタミンB1の投与は経静脈的に行いますが、迷ったら投与するようにしましょう。典型的な症状が揃うまで待っていてはいけません。重要なこととして(5)の他の診断があれば除外できるという誤解です。フレイル患者が脳梗塞を起こした場合、肺炎を起こした場合、その場合にビタミンB1が欠乏している(しかけている)ことも考え対応するようにしましょう。意識すると撮影した脳梗塞のMRIに典型的な所見が映っているかもしれませんよ。今回の症例の最終診断は「レジオネラ肺炎」でした。診断へのアプローチは紙面の都合上割愛しますが、意識障害のアプローチは主軸を持ちつつ、そのアプローチで見逃しがちな点を把握し、対応することが重要です。私は重度の意識障害患者に対するアプローチ方法を決め、そこから目の前の患者さんでは必要のない項目を引く形で対応しています。これもあれもと足し算で対応すると忘れたり、後手に回ることがありますからね。1)坂本 壮、安藤 裕貴著. 意識障害。あなたも名医!. 日本医事新報社;2019.2)Akaishi T, et al. J Gen Fam Med. 2019;20:193-198.3)Cunha BA. Infect Dis Clin North Am. 2010;24:73-105.4)坂本 壮 編著. 救急外来、ここだけの話. 医学書院;2021.

598.

ワクチン接種の目的は“次世代の健康”/EFPIA Japan

 EFPIA(欧州製薬団体連合会)Japanは、2021年11月22日に感染症領域のエキスパートである岡部 信彦氏(川崎市健康安全研究所 所長)を講師に迎え、ワクチンに関するオンラインプレスセミナーを開催した。セミナーでは、ワクチンが人類に果たしてきた役割について、その軌跡をたどるとともに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の盾を担うmRNAワクチンにも触れて講演が行われた。ワクチンギャップは解消しつつある日本 岡部氏を講師に「生涯を通じての感染症予防(Life Course Immunization)-COVID-19の経験を含めて-」をテーマにレクチャーが行われた。 はじめに予防接種の歴史について振り返り、天然痘の予防としてわが国では江戸時代末期から種痘が行われたこと、その際に種痘後にお土産を渡すなど予防接種へのインセンティブをもたらす取り組みがこの時代から行われていたことを現代のCOVID-19ワクチン接種の現状と重ねて説明した。 次に戦後のわが国の予防接種制度と社会状況の変化との関連について振り返り、その時代時代と予防接種は強い関係にあると説明した。現在、日本で接種できるワクチンは定時/臨時接種で21種類、任意接種で10種類、計31種類の接種ができ、世界から遅れていたワクチンギャップも解消に向かいつつあるという(2021年9月現在)。また、近年では「院内感染対策としてのワクチンガイドライン」(日本環境感染学会)や「医療関係者のためのワクチンガイドライン」(同学会)も整備され、医療者の感染予防と他者への感染源とならないための予防などの指針も整備されていると解説を行った。子供がかかる感染症に大人がかかるとリスクが上がる 次にCOVID-19を例にとり、現在までのクラスターの発生状況を振り返った上で、「ワクチン接種のターゲットとして、まず医療機関が守られることであり、医療が動くことが重要」と述べ、ワクチンのポリシーとしては「死亡者を出さないことが大事だ」と語った。 次に大人がかかる子供の感染症について解説を行った。 大人がかかるとリスクが高い感染症として、「水ぼうそう」「はしか」「おたふくかぜ」「ポリオ」「手足口病」「伝染性紅斑」「百日咳」などを代表感染症に挙げ、沖縄県で起こった麻疹のクラスター、近年の風疹のクラスターについて解説。いずれもワクチン接種をしていない、接種不明や1回のみ接種などで抗体ができていない大人が感染し、拡大させていたことを報告した。大人でもワクチンを接種しておけばクラスターを予防できた可能性を述べるとともに、社会的事象としておたふくかぜと難聴の関係、大規模災害と破傷風の流行なども示し、ワクチンの重要性を強調した。これからのワクチン接種で大切な“ISRR” 予防接種の目的は、「感染症罹患予防」「個人の健康保持」「次世代の健康を守る」「社会を守る」「感染症の制圧・根絶」「がんの予防」などさまざまな目的があることを示し、とくに「次世代の健康を守る」「社会を守る」ことが重要だと同氏は語る。また、COVID-19ワクチンとして現在広く接種されているmRNAワクチンについても触れ、開発は過去の研究から積み重ねられて製作されたこと、新しいものを含めワクチンの接種では、感染症患者、健康被害者、健康な人のどこに視点をおいて守るかにより接種機会は変わってくることを説明し、ワクチンの接種では、「いつも接種のメリットとデメリットを衡量することが重要」と同氏は指摘した。また、最近ワクチン接種で注目されているトピックスとして、予防接種ストレス関連反応(Immunization stress related response:ISRR)について触れ、「接種時に医療者はISRRも考慮し、丁寧な説明、接種手技、科学的・医学的対応をする必要がある」と警鐘を鳴らした。 最後に同氏は成人のワクチンの課題として、「効果・安全性に関する説明法やその内容、費用の負担、接種への動機付けなどがある」と指摘し、「ワクチンの安全性を高めるためにも医療者も被接種者も『焦らない・慌てない・数を競わない』ようにしてほしい」と結びレクチャーを終えた。

599.

3回目のワクチンは2回目完了から8ヵ月/厚労省

 11月17日、厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンについて、今後のCOVID-19ワクチンの追加接種などに関する自治体向け説明会を開催した。追加接種については11月15日開催のワクチン分科会を踏まえた対応方針をもとに行われる。本稿では資料より抜粋した主要項目を示す。ワクチン追加接種のスケジュール(1)3回目の追加接種について【ワクチンの対象者】・感染拡大防止及び重症化予防の観点から、1回目・2回目の接種が完了していない者への接種機会の提供を継続するとともに、2回接種完了者すべてに対して追加接種の機会を提供する。・18歳以上の者に対する追加接種としてファイザー社ワクチンが薬事承認されたことを踏まえ、まずは18歳以上の者を予防接種法上の特例臨時接種に位置付ける。・重症化リスクの高い者、重症化リスクの高い者と接触の多い者、職業上の理由などによりウイルス曝露リスクの高い者については、とくに追加接種を推奨する。【使用するワクチン】・1回目・2回目に用いたワクチンの種類にかかわらず、mRNAワクチン(ファイザー社ワクチンまたモデルナ社ワクチン)を用いることが適当。(※mRNAワクチン以外のワクチンの使用は科学的知見を踏まえ引き続き検討)・当面は、薬事承認されているファイザー社ワクチンを使用することとし、追加接種にモデルナ社ワクチンを使用することに関しては、薬事審査の結果を待って改めて議論する。【2回目接種完了からの接種間隔】・2回目接種完了から原則8ヵ月以上とする。(2)小児(5~11歳)の新型コロナワクチンの接種について 小児の感染状況、諸外国の対応状況および小児に対するワクチンの有効性・安全性を整理した上で、議論する。(3)特例臨時接種の期間について 現行の期間(令和4年2月28日まで)を延長し、令和4年9月30日までとする。小児への接種では学校集団接種は推奨せず 小児への接種体制については、事前承認前であり、すべて予定の情報である。【小児用(5~11歳用)ファイザー社ワクチンの特性について】 5~11歳用のファイザー社ワクチンは、12歳以上用の(既存の)ファイザー社ワクチンとは濃度や用量が異なる。5~11歳の方には、必ず5~11歳用のワクチンを使用のこと。 とくに希釈が必要(1.3mLの薬液を1.3mLの生理食塩液で希釈)で、1回当たり0.2mLを接種する。小分けルールは12歳以上用の製剤と同様。【基本的な考え方】 小児への接種についても、(1)1機関で複数ワクチンを取り扱うことを許容するほか、(2)12歳以上と同様に小児用ワクチンを取り扱う医療機関間での小分け配送が可能。 また、12歳以上用と小児用で取扱いルールが異なることから、別種類のワクチンとして扱う。複数ワクチンを取り扱う場合には、混同しないような接種体制が必要。 (3)学校集団接種については、「保護者への説明機会が乏しい」「体調不良時の対応の困難性」などの制約から現時点では推奨するものではない。若年に多い副反応報告 アナフィラキシーなどの副反応に関する報告を次のようにまとめている。【アナフィラキシーについて】(1)引き続き国際的な基準(ブライトン分類)に基づく評価を実施。(2)ファイザー社ワクチンのアナフィラキシー疑いとして報告されたものは、接種開始から10月24日までに2,922件(うちブライトン分類で555件がアナフィラキシー)と評価された。(3)武田モデルナ社ワクチンは10月24日までに製造販売業者報告は491件だった(うちブライトン分類に基づく評価においては、アナフィラキシーと評価されたものは50件)。(4)アストラゼネカ社ワクチンは10月24日までに医療機関報告は3件あり、いずれもブライトン分類4だった。(5)年齢、性別別の解析結果では、若年の女性においてアナフィラキシーの報告頻度が多い傾向がみられている。(6)アナフィラキシー疑いとして報告され、転帰が確認されたほとんどの例で軽快したことが判明している。【心筋炎関連事象について】(1)集団としての分析に関し、以下の状況が認められる。・COVID19感染症により心筋炎を合併する確率は、ワクチン接種後に心筋炎を発症する確率と比較して高い。ワクチン接種後の心筋炎については、国内外において、若年男性で2回目接種後4日以内の発症報告が多い。・(ワクチン間の被接種者の属性が異なることに留意が必要として)国内における年齢、性別別の報告頻度に係る集団的な解析で、10歳代および20歳代男性の報告頻度が多く、10歳代および20歳代男性についてファイザー社ワクチンに比べて、モデルナ社ワクチン接種後の報告頻度が高い。・心筋炎関連事象疑い事例の死亡の報告頻度は一般人口と比べて高かったが、若年の年代別の死亡全体の報告頻度は一般人口と比べて低かった。(2)心筋炎関連事象の転帰は、発症しても軽症であることが多いとされている。国内で報告があった若年男性の事例では、死亡例や重症例も報告されているが、引き続き、転帰が確認可能であった多くの事例で、軽快または回復が確認されている。【血小板減少症を伴う血栓症について】 ファイザー社ワクチンについては12件、モデルナ社ワクチンについては2件、アストラゼネカ社ワクチンについては1件が、ブライトン分類に基づき血小板減少症を伴う血栓症と評価された。【年齢・性別に関して】(1)mRNAワクチンにおいては、アナフィラキシーおよび心筋炎関連事象以外の副反応疑い報告全体の報告頻度についても、若年者において報告頻度が多い傾向がみられている。(2)死亡報告については高齢者において報告頻度が多い傾向がみられてれいる。 なお、上記の報告内容は発表時点の内容であり、接種対応などについては、12月1日以降の改正された省令・大臣指示により行われる。

600.

コロナワクチン3回接種、抗体はどのくらい増える?/JAMA

 新型コロナのファイザー製ワクチン(BNT162b2:以下、ワクチン)の60歳以上での抗体価の持続については、まだ不明瞭な点が多い。そこで今回、イスラエル・テルアビブ大学のNoa Eliakim-Raz氏らは、60歳以上を対象に3回目ワクチンの接種前後の抗体価を調査した。その結果、3回目接種が接種10~19日後のIgG抗体価の増加と有意に関連していることが明らかになった。JAMA誌オンライン版11月5日号のリサーチレターに掲載された。ワクチン3回目接種前と接種10~19日後のIgG抗体価をを測定 ワクチンを2回接種した人の免疫応答を年齢で見た場合、65~85歳では18~55歳よりも低いことが明らかになっている。さらに、2回目のワクチンを接種した4,868人の医療従事者でとくに65歳以上では、2回目接種から6ヵ月以内に液性免疫(IgG抗体、中和抗体)の有意な低下が観察されている。また、イスラエルのある研究1)で、3回目接種が新型コロナウイルス感染と重症者の発生率低下との関連性を示唆していたことから、本研究では60歳以上の3回目接種による免疫反応を見るために、血清学的検査データを評価項目として追加した。 イスラエルでのワクチン3回目接種が世界で初めて承認後、Rabin Medical Center(RMC)のワクチン接種センターで60歳以上の研究参加者を募集、97例が適格だった。除外基準は、新型コロナウイルス既感染者と活動性の悪性腫瘍を有する者だった。IgG抗体価を3回目の接種前(2021年8月4~12日)と接種10~19日後(2021年8月16〜24日)にSARS-CoV-2 IgG II Quant assayを用いて測定した。血清陽性は、50任意単位(AU:arbitrary units)/mL以上と定義された。 ワクチン3回目接種前と接種10~19日後の抗体価を調査した主な結果は以下のとおり。・97例の年齢中央値は70歳(四分位数[IQR]:67~74)で、61%が女性だった。・3回目の投与前(最初のワクチン接種後の中央値:221日、IQR:218~225)の段階で、94例(97%)が陽性だった。・IgG抗体価の中央値は、3回目接種後に有意に増加し、440AU/mL(IQR:294~923)から2万5,468AU/mL(IQR:1万4,203~3万6,618、p

検索結果 合計:1967件 表示位置:581 - 600