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コロナ治療用:ステロイド各種の換算表/患者の不安軽減のためのスライド

新型コロナウイルス感染症では、酸素が必要な中等症II以上の患者さんに対し、ステロイド投与が必要になるケースもあります。その際、デキサメタゾンの供給不足や個々の体調に応じて代替処方が予想される場合も。そんな時に「換算表」があればオーダー時の悩みが解決されるのではないでしょうか。 今回の換算表は日本鋼管病院の薬剤部医薬品情報室の方々、田中 希宇人氏(日本鋼管病院 呼吸器内科医長)にご協力いただき、一部改変して公開しています。 また 、自宅療養を余儀なくされる患者さんのステロイドに対する不安軽減には「患者向けスライド」をお役立てください。医師向け患者さん向け参考日本感染症学会:COVID-19に対する薬物治療の考え方 第8版

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ファイザー製ワクチン、3回目接種後の副反応は?

 米国食品医薬品局(FDA)は9月22日、ファイザー/ビオンテック社製COVID-19ワクチン(BNT162b2)の3回目接種(ブースター接種)について、65歳以上や重症化リスクの高い人などを対象に緊急使用許可を承認した1)。この承認に当たり開催されたFDAの諮問委員会でファイザー社が提出した資料2)には、ブースター接種による免疫応答と安全性についてのデータが含まれた。本稿では、安全性データについてまとめる。※なお、9月30日更新の米国疾病予防管理センター(CDC)からの推奨事項では3)、BNT162b2ブースター接種の対象は、65歳以上、18歳以上の介護施設の居住者、基礎疾患のある者、リスクの高い環境で働く者、リスクの高い環境に住む者とされている。対象:phase1試験から12人(65~85歳)、phase2/3試験から306人(18~55歳)試験概要:参加者はBNT162b2 30μgの2回接種の後、phase1試験参加者は約7~9ヵ月後、phase2/3試験参加者は約6ヵ月後にBNT162b2 30μgの3回目接種を受けた。安全性の評価:参加者はブースター接種後1日~7日目まで副反応と解熱鎮痛薬の使用についてe-diaryで報告した。副反応には、接種部位反応(痛み、発赤、腫れ)および全身性反応(発熱、倦怠感、頭痛、悪寒、吐き気、下痢、筋肉痛、関節痛)が含まれる。その他の安全性評価には、各投与後30分以内に発生する副反応、1回目投与からブースター接種後1ヵ月間の非重篤な未確認の副反応、およびブースター接種からデータカットオフ日(phase1:2021年5月13日、phase2/3:2021年6月17日)までの重篤な副反応が含まれた。 dose1(16~55歳、2,899人)、dose2(16~55歳、2,682人)のデータと比較したdose3接種後の副反応報告は以下のとおり。・phase1試験の12人(65~85歳)、phase2/3試験の289人(18~55歳)からe-diaryによる報告が得られた。接種部位反応・痛み:dose1(83.7%)、2(78.3%)、3(18~55歳:83.0%、65~85歳:66.7%)・腫れ:dose1(6.3%)、2(6.8%)、3(18~55歳:8.0%、65~85歳:0.0%)・発赤:dose1(5.4%)、2(5.6%)、3(18~55歳:5.9%、65~85歳:0.0%)全身性反応・倦怠感:dose1(49.4%)、2(61.5%)、3(18~55歳:63.8%、65~85歳:41.7%)・頭痛:dose1(43.5%)、2(54.0%)、3(18~55歳:48.4%、65~85歳:41.7%)・筋肉痛:dose1(22.9%)、2(39.3%)、3(18~55歳:39.1%、65~85歳:33.3%)・悪寒:dose1(16.5%)、2(37.8%)、3(18~55歳:29.1%、65~85歳:16.7%)・関節痛:dose1(11.8%)、2(23.8%)、3(18~55歳:25.3%、65~85歳:16.7%)・下痢:dose1(10.7%)、2(10.0%)、3(18~55歳:8.7%、65~85歳:0.0%)・嘔吐:dose1(1.2%)、2(2.2%)、3(18~55歳:1.7%、65~85歳:0.0%)・発熱(≧38.0℃):dose1(4.1%)、2(16.4%)、3(18~55歳:8.7%、65~85歳:0.0%)・解熱鎮痛薬の使用:dose1(27.8%)、2(45.2%)、3(18~55歳:46.7%、65~85歳:33.3%) ブースター接種から1ヵ月後までのphase2/3試験参加者(306人)において報告された副反応のうち、最も多かったのはリンパ節腫脹(5.2%)で、最初の2回(0.4%)よりも多かった。その他複数の参加者で報告されたのは、悪心(0.7%)、注射部位の痛み(0.7%)、痛み(0.7%)、腰痛(0.7%)、首の痛み(0.7%)、頭痛(0.7%)、 不安感(0.7%)、および接触性皮膚炎(0.7%)だった。 ブースター接種後1ヵ月以上が経過した後のモニタリング期間中に、1件の急性心筋梗塞が重篤な副反応として報告されたが、ファイザー社は因果関係は認められないと評価し、FDAもそれに同意している。その他の重篤な副反応、死亡例は報告されていない。 報告書では、ブースター接種後に報告された副反応の頻度および重症度は、2回目接種後と差がみられなかったとしている。(2021年10月1日 記事内容を一部修正いたしました)

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第76回 総裁選でも気になるコロナ対策、4氏の具体策は現実的?

最近はテレビのニュースの時間になると同じ4人の顔を見ることが増えてきた。言わずと知れた自民党総裁選に出馬した岸田 文雄氏、河野 太郎氏、高市 早苗氏、野田 聖子氏の4人のことである。ちなみにこの順番で表記したのは男尊女卑でも何でもなく、単純に50音順である。総裁選後には任期満了に伴う衆議院選挙が控えているが、現在の衆議院で政権与党の自民党と公明党の占める議席が465議席中304議席(竹下 亘氏の死去による欠員分を除く)であり、現下の情勢では多少議席を減らしたとしても与党側が過半数を大きく割る可能性はほぼないと思われる。つまるところ、この総裁選の勝者が当面の次期総理大臣となることは99%確実である。実は過去の本連載でも取り上げたことがあるが、この総裁選立候補者の政策を新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)対策に限定して俯瞰してみたい。ちなみに4氏のうち野田氏以外は全員が総裁選用の特設サイトを開設している。岸田氏:声をかたちに。信頼ある政治河野氏:日本を前にすすめる。温もりのある国へ高市氏:政策9つの柱これと、各人の著書、具体的には岸田氏の「岸田ビジョン 分断から強調へ」(講談社)、河野氏の「日本を前に進める」(PHP新書)、高市氏の「美しく、強く、成長する国へ。―私の『日本経済強靱化計画』―」(WAC)、野田氏の「みらいを、つかめ 多様なみんなが活躍する時代に」(CCCメディアハウス)や、日本記者クラブでの総裁選候補討論会の動画、テレビ朝日での全員出演動画などを参考に各人の主張を紹介するとともに、そこに若干の論評を加えてみたい。ちなみに予め言っておくと、私がこれら候補に関する主張や報道を読んで、各人の底流に流れる政治思想を「○○主義」と名づけるなら、岸田氏は「協調主義」、河野氏は「合理主義」、高市氏は「国粋主義」、野田氏は「女性活躍主義」と表現する。さてその各人の考える新型コロナ対策だが、実はテレビ朝日への出演では、番組サイドが「何をコロナ対策の一丁目一番地と考えるか?」を尋ねている。岸田氏は「病床・医療人材の確保を徹底」を挙げた。これについてはこれまでの岸田氏の主張やそれにかかわる報道から解説が必要だろう。まず、岸田氏は今後もワクチン接種を推進して行く中で11月には希望者全員のワクチン接種が終了し、経口治療薬の登場までの間隙を縫って第6波が来ることも想定し、そこに向けた対策として病床・人材の確保を主張する。この点は岸田氏の政策集の『コロナ対策 岸田4本柱』にもあるように、重症者は国公立病院のコロナ重点病院化、一般的な発熱患者や新型コロナの自宅療養者は開業医で対応し、この間をつなぐものとして政府による野戦病院的臨時医療施設の開設や借り上げした大規模宿泊施設などを中間設置して第6波に備えるというもの。基本は現状とあまり変わらないが、「病床・医療人材の確保を徹底」とは、要はこの中間施設のハードとソフトの確保を謳っていると思われる。もっとも東京都の例を挙げると、開設を予定した臨時医療施設の一部で稼働が遅れた主な原因が人員確保に手間取ったゆえだった。このことを考えると、それをここ2~3ヵ月で解決するのは容易ではない。そして今回のコロナ禍では第5波まで経験しながら、感染拡大局面で病床がひっ迫することについて世論からは一貫して疑問を呈せられてきた。この点の解決策については日本記者クラブでの記者会見で各人が考えを表明している。「臨時病院の設置も含め非常時の指揮命令系統と権限というのは、これは見直さなければいけない。今回痛切に感じたのは、ベッドはあるけれども高度な治療ができる人材やチームがいないこと。また、重症から回復した人を臨時病院や軽症・中等症の病床に移していくことがうまく動かなかった。そこはやはり国や都道府県の調整をしなければならなかった。国と都道府県、どちらが何をやるのかというのを決めなければいけない」(河野氏)「病床確保については国が総合調整機能を持って調整することになっているが、将来的により強力な調整機能を発揮のために新たなこの工夫が必要になる。一方的に強制すると現場の反発を買ってしまう。平素から診療報酬等の上乗せで優遇を与える『感染症危機中核病院』のようなものを設置し、危機の際には国のコントロールによって 半強制的にこうした病院に病床を提供してもらい、それに応じない場合はペナルティも考えていく仕掛けも必要」(岸田氏)「国民皆保険制度の下である以上、緊急事態では国や地方自治体が医療機関や医療従事者に対して、病床確保等の必要な対応を命令する権限を持つことも含めて法案化を考えたい」(高市氏)「急変時に医療の手が届かないことを考えると自宅療養という仕組みはもう無理。入院できないならば危機的な時だけ国がサブホスピタルを作る必要がある」(野田氏)4氏のコロナ政策、主張あれこれテレビ朝日で「コロナ対策一丁目一番地」として河野氏が主張したのは「政府による製造支援も念頭に置いた、簡易検査キットの低コストでの大量調達と供給。薬局での販売解禁」である。簡易検査はたぶん抗原検査を意味していると思われる。河野氏は「どんどん検査をすることで、見える景色が大きく変わってくると思います」と述べているが、どのような着地点を持ってこの主張をしているかが不明である。第5波では膨大な数の検査陽性者が発生したことで、保健所も医療機関もキャパシティーをオーバーし、半ば機能不全に陥った例もある。実際、河野氏が言う簡易検査を不特定多数に行った場合、かなりの陽性者が判明するはずで、そうした人を自宅待機にするのか、その場合誰がどうフォローアップするのかなど抱えている課題は多い。ちなみに岸田氏も『コロナ対策 岸田4本柱』で「予約不要の無料PCR 検査所の拡大と、簡易な抗原検査など在宅検査手段の普及促進」を謳っているが、PCR検査ともなるとそこにも人材の配置が必要になるため、前述の河野氏のところで指摘した課題に加え、再び人材確保という壁にぶち当たる。一方、高市氏と野田氏がテレビ朝日で第一に主張したのは、ともに感染者の重症化を予防するための「治療薬の確保」。ちなみに高市氏はわざわざ「国産の治療薬」としていたのが、彼女らしいとも言える。日本記者クラブでの討論会では「ワクチンまた治療薬の国産化に向けてとくに生産設備に対するしっかりとした投資(支援)をする」との考えも示している。この点は政策集などで河野氏も「治療薬と国産ワクチンの確保」を主張し、岸田氏も年内の治療薬登場に期待するコメントを日本記者クラブでの会見で述べている。現在、第III相試験中と最も開発が先行しているmolnupiravirは外資系のメルク社のものであり、それも年内中の上市については未知の部分は残されている。そして国産の治療薬、ワクチンに関しては、塩野義製薬のプロテアーゼ阻害薬が第I/II相、第一三共のmRNAワクチン、塩野義製薬の組み換えタンパクワクチン、KMバイオロジクスの不活化ワクチンのいずれもがやはり第I/II相と初期段階に過ぎない。アンジェスのDNAワクチンが第II/III相だが、最近になって高用量での第I/II相を開始したことから考えると、第II/III相まで進行した当初の用量での臨床試験は芳しいものとは言えなかったと見る向きもある。いずれにせよ国産化まではまだ相当時間を要する見通しで、この点は各人ともやや楽観的過ぎるともいえる。なおワクチン接種に関しては各人とも推進の方針。この中で河野氏はワクチン担当相ということもあってか、3回目のブースター接種開始への意欲を示したほか、来年以降に現行のmRNAワクチンが生後6ヵ月以上に適応拡大が進む見通しについて言及。野田氏も現在ワクチン接種対象外の11歳以下の小児に対し、希望者へのワクチン接種推進を訴えている。ちなみに野田氏のこの主張の背景には2010年にアメリカで卵子提供を受け妊娠、2011年1月に出産した障害児の息子を抱えることも念頭にあっての発言だろうと推察される。コロナの先を見据える女性陣その意味ではテレビ朝日での4氏討論の際は次なる感染拡大時のロックダウンの可否について、野田氏だけが否定的な見解を示した。その理由については現時点で法制度上不可能なこと、ワクチン接種、病床確保などそれ以前に行うべきものがあると挙げながら、「人がウイルスを運んでいるようなものですが、人は生きていくために動かなければいけません。とくに子供は動き回らなければいけないので、そこは冷静に判断していかなければいけません」と述べている。やはりここでも「子供」が出てくるところは少子化対策に熱心な野田氏らしい視座とも言える。一方、高市氏と河野氏は、どちらかというとより強力な新興感染症が登場することを念頭に法令上の整備が必要という考え。岸田氏はいわゆる外出禁止やそれに伴う刑事罰などを含めた厳密な意味でのロックダウンは日本に合わないとして、「ワクチン接種証明や陰性証明を組み合わせて、人流抑制をお願いする日本型のロックダウン政策」を述主張する。岸田氏は「電子的なワクチン接種証明の積極活用」も政策として掲げていることから、先日政府が発表した行動制限緩和策の「ワクチン・検査パッケージ」に何らかの法的な位置付けを与えて人流抑制に活用しようというものらしい。菅首相にチクリの男性陣今回の自民党総裁選で菅首相の不出馬というサプライズが起こる前から一番手で立候補に名乗りを上げていただけあって、岸田氏の場合、政策集に書かれていることは実現の可否は別にして充実している。その中で公衆衛生上の危機発生時に国・地方を通じた強い司令塔機能を有する「健康危機管理庁(仮称)」と「臨床医療」「疫学調査」「基礎研究」を一体的に扱う「健康危機管理機構(仮称)」の創設を謳っている。また、菅首相の対応をやんわり批判した発言も目に付く。今回のコロナ対応について岸田氏は「国民への丁寧な説明」と「楽観的な見通し」が課題だったと各所で指摘している。この点について日本記者クラブでの公開討論会では「国民の協力が必要な中では納得感のある説明、(政策決定の)結果だけではなく、そこに至るプロセスなどを丁寧に説明する必要があった」と指摘している。これは菅首相による複数回の緊急事態宣言の発出時のことが念頭にあることは明らかである。同時に別の場所では、楽観的な見通しについて緊急事態宣言解除の時期などを挙げている。もし、岸田氏が自民党総裁となり、その後総理大臣となることがあったら、この点がどの程度実現できるかは注視したいところである。一方、河野氏も国民への説明については自らの政策集で「新型コロナウイルスについて、最新の科学的知見に基づいたわかっていること、わからないこと、できること、できないことをしっかりと国民と共有し、謙虚に、わかりやすい対話をしながら決めていきます」としている。時にはスタンドプレーになりがちな河野氏のことは本連載でも指摘してきたが、一大臣と総理大臣では求められるものの質と許容されることの幅も異なってくる。さてさて最終的にどうなることやら。個人的にはかなり注目しているところである。

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交互接種・コアリング防止など追記、新型コロナ予防接種の手引き/厚労省

 厚生労働省は、2021年9月21日に「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する手引き(4.1版)」を公開した。 この手引きは、2020(令和2)年12月17日に初版が公開され、逐次新しい知見やエビデンスを追加し、ほぼ毎月改訂を重ねてきた。妊婦や交互接種、接種時のコアリングについて追記 今回の主な改訂点は下記の通りである。【第3章 3(10):妊娠中の者等への接種体制の確保について追記】 妊娠中に新型コロナウイルスに感染すると、特に妊娠後期は重症化しやすく、早産のリスクも高まるとされている。妊娠中の者及び配偶者等(以下「妊娠中の者等」という)が希望する場合には、できるだけ早期に、円滑に新型コロナワクチンの接種を受けることができるよう、例えば、予約やキャンセル待ちに当たって妊娠中の者等を可能な範囲で優先する、現時点で妊娠中の者等が年齢等によって必ずしも接種予約の対象となっていない場合には妊娠中の者等を接種予約の対象とする、といった方法により、特段の配慮をすること。【第3章 3(11):交互接種への対応について追記】(交互接種への対応) 新型コロナワクチンについては、原則として同一の者には、同一のワクチンを使用することとしているが、被接種者に対し1回目及び2回目に同一の新型コロナウイルスワクチンを接種することが困難である場合については、1回目に接種した新型コロナワクチンと異なる新型コロナワクチンを2回目に接種すること(以下「交互接種」という)ができる。そのため、やむを得ず交互接種を受ける者に対して、適切に接種機会を提供できるよう予約対応やコールセンターでの対応等に留意すること。【第4章 3(1)ア:新型コロナワクチンの接種液の成分によってアナフィラキシーを呈したことが明らかである者を追記】 予防接種を行うことが不適当な状態にある者※1 明らかな発熱を呈している者とは、通常37.5℃以上の発熱をいう。※2 いずれかの新型コロナワクチンの接種液の成分によってアナフィラキシーを呈したことが明らかである者については、当該者に対し、当該新型コロナワクチンと同一の新型コロナワクチンの接種を行うことができない。※3 アストラゼネカ社ワクチンの接種を行う接種会場では、上記血栓症及び毛細血管漏出症候群の既往歴の有無を確実に確認するために、必ずアストラゼネカ社ワクチン専用の予診票を用いて予診を尽くすこと。【第4章 3(5):コアリングの防止について追記】 コアリング(ゴム栓に対して斜めに針を刺すと、針のあご部でゴム栓が削り取られてしまうこと)を防ぐために、注射針をバイアルに穿刺する際は、ガイドマーク(中心円)の内側に、針を垂直に押し込むこと。また、刺しながら注射針を回転させたり、同じ場所に何度も穿刺したりしないこと。【第6章 4:交互接種について追記】(交互接種) 新型コロナワクチンについては、原則として、同一の者には、同一のワクチンを使用すること。ただし、新型コロナワクチンの接種を受けた後に重篤な副反応を呈したことがある場合や必要がある場合には、1回目に接種した新型コロナワクチンと異なる新型コロナワクチンを2回目に接種すること(交互接種)ができること。「必要がある場合」とは、以下の場合をいう。(1)接種対象者が1回目に接種を受けた新型コロナワクチンの国内の流通の減少や転居等により、当該者が2回目に当該新型コロナワクチンの接種を受けることが困難である場合(2)医師が医学的見地から、接種対象者が1回目に接種を受けた新型コロナワクチンと同一の新型コロナワクチンを2回目に接種することが困難であると判断した場合(接種間隔) 交互接種をする場合においては、1回目の接種から27日以上の間隔をおいて2回目の接種を実施すること。前後に他の予防接種を行う場合においては、原則として13日以上の間隔をおくこととし、他の予防接種を同時に同一の接種対象者に対して行わないこと。 以上のほかにも図の改訂、予診票、16歳未満の接種の保護者の同意なども改訂されているので、一読を願いたい。

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「カドサイラ」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第70回

第70回 「カドサイラ」の名称の由来は?販売名カドサイラ®点滴静注用100mgカドサイラ®点滴静注用160mg一般名(和名[命名法])トラスツズマブ エムタンシン(遺伝子組換え)(JAN)効能又は効果○HER2 陽性の手術不能又は再発乳癌○HER2 陽性の乳癌における術後薬物療法用法及び用量通常、成人にはトラスツズマブ エムタンシン(遺伝子組換え)として1回3.6mg/kg(体重)を3週間間隔で点滴静注する。ただし、術後薬物療法の場合には、投与回数は14回までとする。警告内容とその理由1.本剤を含むがん化学療法は、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤が適切と判断される症例についてのみ実施すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。2.肺臓炎、間質性肺炎等の間質性肺疾患があらわれ、死亡に至る例も報告されているので、 初期症状(呼吸困難、咳嗽、疲労、肺浸潤等)の確認及び胸部 X 線検査の実施等、観察を十分に行うこと。また、異常が認められた場合には、投与中止等の適切な処置を行うこと。禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)1.本剤の成分又はトラスツズマブ(遺伝子組換え)に対し過敏症(過敏症と鑑別困難で死亡につながるおそれのある重篤なInfusion reactionを含む)の既往歴のある患者2.妊婦又は妊娠している可能性のある女性※本内容は2021年9月22日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2021年8月改訂(第11版)医薬品インタビューフォーム「カドサイラ®点滴静注用100mg/160mg」2)PLUS CHUGAI:製品・安全性

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HR0.28、T-DXdがHER2+乳がん2次治療でT-DM1に対しPFS改善(DESTINY-Breast03)/ESMO2021

 トラスツズマブとタキサンによる治療歴のあるHER2陽性の切除不能または転移を有する乳がん(mBC)患者に対し、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)がトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)と比較し無増悪生存期間(PFS)を有意に延長した。スペイン・International Breast Cancer CenterのJavier Cortes氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)でDESTINY-Breast03試験の中間解析結果を発表した。 DESTINY-Breast03試験は、トラスツズマブとタキサンで以前に治療されたHER2+mBC患者におけるT-DXdとT-DM1の有効性と安全性を比較した多施設共同非盲検無作為化第III相試験。・対象:トラスツズマブとタキサンによる治療歴のあるHER2+mBC患者・試験群:以下の2群に1対1の割合で無作為に割り付けT-DXd群:3週間間隔で5.4mg/kg投与 261例T-DM1群:3週間間隔で3.6mg/kg投与 263例・層別化因子:ホルモン受容体の状態、ペルツズマブ治療歴、内臓転移の有無・評価項目:[主要評価項目]盲検化独立中央評価委員会(BICR)による無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]OS、BICRおよび治験実施医師評価による客観的奏効率(ORR)、BICR評価による奏効期間(DOR)、治験実施医師評価によるPFS、安全性 主な結果は以下のとおり。・2021年5月21日までに15ヵ国から524例が無作為化された。・年齢中央値はT-Dxd群54.3歳、T-DM1群54.2歳。両群ともアジア人が約6割を占め、HER2 Statusは3+が約9割、ホルモン受容体陽性の患者は約5割を占めていた。脳転移を有する患者はT-Dxd群23.8%、T-DM1群19.8%。内臓転移を有する患者はT-Dxd群70.5%、T-DM1群70.3%だった。・治療歴については、1ラインがT-Dxd群49.8%、T-DM1群46.8%、2ラインがT-Dxd群21.5%、T-DM1群24.7%。トラスツズマブ治療歴を有する患者が両群とも99.6%、ペルツズマブ治療歴を有する患者がT-Dxd群62.1%、T-DM1群60.1%だった。・観察期間中央値は、T-Dxd群が16.2ヵ月、T-DM1群が15.3ヵ月だった。・主要評価項目のBICR評価によるPFS中央値は、T-Dxd群NR(95%信頼区間[CI]:18.5~NE) vs.T-DM1群6.8ヵ月(95%CI:5.6~8.2)、ハザード比(HR):0.28(95%CI:0.22~0.37、p=7.8×10-22)でT-Dxd群の有意な延長がみられた。12ヵ月時点でのPFS率はT-DM1群34.1%(95%CI:27.7~40.5)に対しT-Dxd群75.8%(95%CI:69.8~80.7)だった。・PFSのサブグループ解析の結果、ホルモン受容体の状態、ペルツズマブ治療歴、治療ラインの数、内臓および脳転移の有無によらず、すべてのグループでT-Dxd群における有意な延長がみられた。・副次評価項目の治験実施医師評価によるPFS中央値は、T-Dxd群25.1ヵ月(95%CI:22.1~NE)vs.T-DM1群7.2ヵ月(95%CI:6.8~8.3)、HR:0.26(95%CI:0.20~0.35、p=6.5×10-24)でT-Dxd群の有意な延長がみられた。・OSデータは未成熟であり、中央値は両群でともにNE、HR:0.56(95%CI:0.36~0.86、p=0.007172)となり事前に設定された有意性水準(p<0.000265)を満たさなかった。・ORRは、T-Dxd群79.7% vs.T-DM1群34.2%でT-Dxd群で有意に高かった(p<0.0001)。CRは16.1% vs.8.7%、PRは63.6% vs.25.5%だった。・治療期間中央値はT-Dxd群14.3ヵ月 vs.T-DM1群6.9ヵ月。Grade3以上の治療関連有害事象はT-Dxd群45.1% vs.T-DM1群39.8%で発現した。T-Dxd群のGrade3以上の治療関連有害事象として多かったのは好中球減少症(19.1%)、血小板減少症(7.0%)、白血球減少症(6.6%)、吐き気(6.6%)だった。・治療中止に関連した有害事象としてT-Dxd群で最も多かったのはILD/肺炎(8.2%)、T-DM1群では血小板減少症(2.7%)だった。ただし、T-Dxd群でGrade4あるいは5のILD/肺炎はみられなかった。Grade2の左室駆出率低下がT-Dxd群で2.3%、T-DM1群で0.4%みられたが、Grade3以上の報告はない。 Cortes氏は、本結果はT-DxdがHER2陽性mBC患者の2次治療における標準治療となることを支持するものと結論付けている。

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第75回 【特集・第6波を防げ!】政治家の目論見?コロナ陰性証明が自腹の怪

希望者全員へのワクチン接種が初冬には完了することを見越した国民の行動制限緩和案として、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部がこのほど発表した「ワクチン接種が進む中における日常生活回復に向けた考え方」。大都市圏を中心に年初からこれまでの期間のほとんどが、新型インフルエンザ等特別措置法に基づく緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が適用されている。出口の見えないコロナ禍に対して蓄積した国民の不満をワクチン接種の進展に応じて少しでも解消したいという思いがあるのだろう。と言えば聞こえがいいが、正直なところ自民党総裁や任期満了に伴う衆議院選を目前にした時期の発表であるため、普段なら陰謀論に対して眉間にしわを寄せがちな私自身もどうしても疑いの目で見てしまう。今回の行動制限緩和の肝となっているのがワクチン接種歴やPCR検査などの陰性結果の証明書を基にした「ワクチン・検査パッケージ」だ。要は感染リスクの少ない国民の都道府県をまたぐ移動やイベント参加、夜間の酒類提供を伴う会食などを解禁することで国民の不満解消や経済浮揚につなげるというもの。同時にこの件では「陰なる意図」というか政権のある種の真意も見え隠れする。ワクチン接種証明に代わる検査での陰性証明に関して「検査費用には、基本的に公費投入はしない」と明記しているからだ。つまり頻回な検査のわずらわしさやそれに伴う費用負担を感じる個人が「しゃあないから、ワクチンを打とう」となる方向へと暗に誘導しているとも受け取れる。私個人はできるだけワクチン接種率が向上することがコロナ禍収束への大前提と考えているので、ワクチン接種へ誘導すること自体を否定はしない。ただ、この種のものはやり方を間違えると、さらなる不信感や陰謀論を招くことになる。今回の措置を実行する際に、ワクチン非接種者のPCR検査必要時の検査費用に公費を投入しない前提ならば、最近までに判明しているワクチン接種で得られるメリット、具体的には高齢者での重症者や医療施設などでのクラスター発生の激減、ブレイクスルー感染者での重症化抑止レベルなどについて、より簡潔かつ分かりやすく発信する必要がある。つまるところ「ワクチン接種が現時点では最善策。ただし接種しない人の選択権は認めるが、すでに説明したように科学的に信頼性のあるデータからメリットは示されているので、もし打ちたくないのであれば、申し訳ないが都度必要になる陰性証明の費用は自己負担でお願いしたい」という趣旨の説明を行うべしということだ。もちろん以前と比べ厚生労働省などはワクチンに関してこれまでにないほど丁寧なQ&Aページなどを用意しており、何もしていないわけではないことは承知している。しかし、これらのページで紹介されている情報は多くが臨床試験段階のものに留まっていて、説明内容も分かりにくい。そして何よりこれまでワクチン接種のメリットの発信は、専門家個人や官公庁や自治体の発信に依存していることが多く、行動制限を決定している側である政治から語られることはほとんどなかった。泥臭い言い方になって恐縮だが、官僚や専門家ももちろんだが、人前に立ちメディアにも報じられることが圧倒的に多い政治の側から生身の声で語られることなしでは、この問題は半歩たりとも前進しないと個人的には感じている。同時にこの際に政治の側からもう一つ発信してほしい情報がある。それは「ワクチン接種を選択しない人が今後自らとその周囲の感染リスクを最小化するためにとるべき行動様式」に関してだ。もちろんこの情報にはほとんど目新しいものはないだろう。だが、国民に対して平等性を重んじるべき政治側には、このことも親身に訴える義務があると考える。同時にこのことは接種しない権利を選択するにあたって国民はどのような責任を持つかという自覚を促すことにもなる。今回の行動制限緩和が単なる選挙用でないならば、政治の側はこうした点でその覚悟を示して欲しいものだ。官僚にゆだねられた空疎な文言を棒読みし、中途半端に経済を横目に見ながら不適切に使われてきた結果、伝家の宝刀から錆びだらけのカッターナイフに落ちぶれた緊急事態宣言の二の舞は、一国民としてもうこりごりである。

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mRNAワクチン後の心筋炎、日本でも10~20代男性で多い傾向/厚労省

 ファイザー社および武田/モデルナ社ワクチン接種後、アナフィラキシーは若年女性で、心筋炎関連事象については若年男性で報告頻度が高いことが示された。9月10日開催の第68回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会(第17回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会と合同開催)の報告より。同会では他に使用の見合わせ・自主回収の対応が行われている該当ロットの武田/モデルナ社ワクチン接種後死亡例についての現時点での評価結果、継続実施中のコホート調査の最新結果も報告された1)。接種後のアナフィラキシー、現在の発生状況 ファイザー社ワクチンについて、製造販売業者からアナフィラキシー疑いとして報告された件数は8月22日までの集計で24件(100万回接種当たり)と、前回報告から変化はなかった(米国では7月22日までの集計で5.0件/100万回、英国では8月25日までの集計で12.1件/100万回)2)。 武田/モデルナ社ワクチンについては、同様に8月22日までの集計で12件(100万回接種当たり)と、前回より2件増加したがほぼ変化はなかった(米国では7月31日までの集計で4.9件/100万回、英国では8月25日までの集計で15.5件/100万回)。 今回公開された年齢・性別別の報告状況をみると、ファイザー社ワクチンは30代女性で30.2件/100万回、武田/モデルナ社ワクチンは20代女性で6.7件/100万回と最も高く、若年女性で多く報告されている。心筋炎は10~20代男性で頻度高い傾向、必要な注意喚起は? 心筋炎関連事象疑いとして報告されたのは、ファイザー社ワクチンが前回より3件増の62件、武田/モデルナ社ワクチンが前回より14件増の27件であった。100万回当たりの件数はファイザー社ワクチンが0.6件、武田/モデルナ社ワクチンが1.6件となっている2)。 年齢・性別別の報告状況をみると、ファイザー社ワクチンが20代男性で7.7件/100万回、武田/モデルナ社ワクチンが10代男性で17.1件/100万回と若年男性で最も高くなっている(ただし、現状10代の推定接種回数は他年代と比較して低い点に留意が必要)。なお、参考資料として提示されたCOVID-19感染者の心筋炎関連事象者数は、15~40歳未満男性で推計834件/100万回となっている。 国内の心筋炎関連事象疑いの報告事例においては、因果関係が疑われている若年男性に係る事例では、引き続きほとんどの事例で軽快または回復が確認されている3)。2回目接種後数日以内に発症する若年の男性での報告が多いこと、典型的な症状としてはワクチン接種後4日程度の間に、胸痛や息切れが出ることが想定されることから、こうした症状が現れた場合は医療機関を受診することを厚労省のWebサイト(Q&A)4)等で注意喚起を行っている。遅延性の皮膚反応はファイザー社ワクチンでも 武田/モデルナ社ワクチン後に報告されていた遅延性の皮膚反応が、ファイザー社ワクチンにおいても1回目接種後0.23%にみられ、40~50代女性に多くみられたことが報告された。継続的に実施されている「新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査(コホート調査)」から、伊藤 澄信氏(順天堂大学)が報告した5)。 ファイザー社ワクチン後に健康観察日誌が回収できた1万9,783人中46人(0.23%)で1回目の接種後に遅延性の皮膚反応が報告され、40代女性で0.52%、50代女性で0.45%と多い傾向がみられた。平均消失日は12.8±2.7日、10日時点の最大径は9cmであった。 なお、同武田/モデルナ社ワクチン接種者への調査では、1万29人中195人(1.94%)で報告されており、平均消失日は12.5±2.3日、10日時点の最大径は30cmであった。該当ロット接種後の死亡例、現時点での評価結果 使用の見合わせ・自主回収の対応が行われている武田/モデルナ社ワクチンの3つのロットのうち、異物混入は報告されていないものの、同時期に同じ設備で製造されたロットの1つ(3004734)において、3例の死亡例が報告されている。うち38歳男性について死因が判明し、致死性不整脈であったと報告された6)。 専門家による因果関係評価ではγ(情報不足等によりワクチンと症状名との因果関係が評価できないもの)とされ、「剖検の結果、急性死が示唆されること、死因に影響を及ぼす損傷を認めず中毒学的にも異常を認めないことから死因は致死性不整脈と考えると報告されており、ワクチンの影響は不明とされている。致死性不整脈は確認されたものではなく除外診断であり、ワクチンと死亡との因果関係については評価不能である。使用ロットに異物混入があったとした場合に異物が本症例の死亡に与えた影響についても同様に評価不能である」とされている。 他2例については剖検結果待ちおよび死因検索中で死因は判明していない。参考文献・参考サイトはこちら1)第68回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和3年度第17回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催) 資料2)資料1-7-1 副反応疑い報告の状況について3)資料1-7-2 副反応疑い報告の状況について(報告症例一覧)4)厚生労働省新型コロナワクチンQ&A「ワクチンを接種すると心筋炎や心膜炎になる人がいるというのは本当ですか。」5)資料2(スライド1~26)新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査(コホート調査)健康観察日誌集計の中間報告(13)6)資料1-6-1 モデルナ筋注使用見合わせロットに係る副反応疑い報告(死亡)の状況

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小児のコロナ入院の多くが軽症例/国立成育医療研究センター・国立国際医療研究センター

 国立成育医療研究センター 感染症科の庄司 健介氏らのグループは、国立国際医療研究センターの研究チームと合同で、小児新型コロナウイルス感染症による入院例の疫学的・臨床的な特徴を分析した。 これは、国立国際医療研究センターが運営している国内最大のCOVID-19入院患者のレジストリ「COVID-19 Registry Japan(COVIREGI-JP)」を利用したもので、本レジストリを使用した小児患者における分析は今回が初めてとなる。 分析の結果、分析対象期間に登録された小児のCOVID-19入院患者の多くは、無症状または軽症であり、酸素投与を必要とした患者は15例、症状のあった患者全体の2.1%だった。また、ほとんどが無症状、または軽症であるにもかかわらず、入院期間の中央値は8日で、2歳未満や13歳以上の患者、基礎疾患のある患者は、何らかの症状が出やすい傾向にあることがわかった。そのほか、38℃以上の熱が出た患者は、症状のあった患者(730例)のうち10.3%(75例)、13~17歳の患者(300例)の約20%に、味覚・嗅覚異常がみられたことが示唆された。 なお、本研究は、デルタ株がまだわが国に存在しない時期に実施されているため、小児に対するデルタ株の影響については評価外となっている。1,038例の小児患者の解析からわかったこと 本研究は、小児のCOVID-19で入院した患者にはどのような症状がみられ、どのくらい入院していたかを明らかにするとともに、「症状がない」患者と「症状がある」患者の、患者背景にどのような違いがあるかについて、小児患者におけるCOVID-19の疫学的・臨床的な特徴の解明を目的とした。【研究概要と結果】・研究対象2020年1月~2021年2月の間にCOVID-19 Registry Japanに登録された18歳未満のCOVID-19患者・研究方法登録患者の細かな症状、入院期間、患者背景などのデータを集計・分析・研究結果(1)期間中に3万6,460例の患者が登録され、そのうち研究対象となった18歳未満の患者は1,038例だった。(2)入院時にまったく症状がなかった患者は308例(29.7%)。これは、隔離目的や、保護者が入院してしまい、子どもの面倒を見る人がいないなどの社会的理由での入院例が多く存在することが示唆された。(3)何らかの症状があった患者(730例)のうち、酸素投与を必要とした患者は15例(2.1%)。また、死亡した患者は0例で、この期間の小児新型コロナウイルス感染症は極めて軽症であったといえる。(4)無症状者と比べると、症状のある患者では、「2歳未満」「13歳以上」「何らかの基礎疾患のある患者」の割合が高くなっていた(ただし、基礎疾患のある患者の割合については統計学的な有意差はなかった)。(5)38℃以上の発熱は、症状のある患者全体の10.3%にしか表れていなかった。一方で、特徴的な症状の1つである味覚・嗅覚異常は13歳以上の小児において20%以上に表れていた。(6)入院期間の中央値は8日で、無症状者、有症状者で変わらなかった。医療的ケアが必要ない無症状の患者に対しても、長期間の入院させていたことがわかった。 庄司氏は、「今回の研究によりわが国の小児新型コロナウイルス感染症の入院症例の実態が明らかになった。今後、小児の入院適応やワクチン接種の対象などを考えていく上で、本研究の結果がその基礎データとして利用されることが期待される。また、今後デルタ株が小児に与えている影響を検討する際の比較対象としても貴重なデータであると考える」と期待を寄せている。

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ワクチンによる入院回避効果、mRNA vs.アデノウイルスベクター/NEJM

 米国で使用されている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン3種、BNT162b2(Pfizer-BioNTech製)、mRNA-1273(Moderna製)、Ad26.COV2.S(Johnson & Johnson-Janssen製)は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染による入院やICU入室、あるいは救急部門や救急クリニック(urgent care clinic)の受診に対し、高い有効性が認められたことを、米国疾病予防管理センター(CDC)のMark G. Thompson氏らが報告した。COVID-19による入院患者約4万2,000例と救急・緊急外来クリニックを受診した約2万2,000例を調べた結果で、これらワクチンの有効性は、SARS-CoV-2感染で受ける影響が不均衡な集団にも認められたという。NEJM誌オンライン版2021年9月8日号掲載の報告。187病院、221ヵ所の救急部門・クリニックを対象に調査 研究グループは2021年1月1日~6月22日に、COVID-19が疑われる症状でSARS-CoV-2分子検査を受けた50歳以上を対象に試験を行い、COVID-19ワクチンの有効性を検証した。被験者は、米国内187の病院に入院した4万1,552例と、221ヵ所の救急部門や救急クリニックを受診した2万1,522例だった。 対象者の予防接種状況を電子健康記録と免疫レジストリの記録を基に確認し、検査陰性デザインを用いて、ワクチン接種者と非接種者のSARS-CoV-2陽性に関するオッズ比を比較し、ワクチン有効性を推定した。ワクチン有効性は、ワクチン接種傾向スコアに基づき重み付けし、また、年齢、住所、暦日(2021年1月1日から各医療機関受診日までの日数)、地域のウイルス流行性で補正を行った。mRNAワクチンの有効性、85歳以上84%、慢性疾患有病者90% COVID-19・mRNAワクチン完全接種(2回目接種から14日以上経過)の、SARS-CoV-2感染検査確定者の入院に対する有効性は89%(95%信頼区間[CI]:87~91)、ICU入室の有効性は90%(85~93)、救急部門・クリニック受診に対する有効性は91%(89~93)だった。 COVID-19関連の入院や救急部門・クリニック受診に関するワクチンの有効性は、BNT162b2とmRNA-1273は同等であり、mRNAワクチン完全接種者の有効率は、85歳以上では84%(95%CI:73~91)、慢性疾患有病者は90%(87~92)、アフリカ系/ヒスパニック系成人は95%(84~98)/81%(70~88)であった。 Ad26.COV2.Sワクチンの有効性は、検査確定SARS-CoV-2感染者の入院に対しては68%(95%CI:50~79)、救急部門・クリニック受診に対しては73%(59~82)だった。

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コロナワクチンの異物混入・併用接種・3回接種に見解/日本ワクチン学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策の切り札として、全国でワクチン接種が行われているが、コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(モデルナ社製)に異物混入が報告され、その健康への被害などにつき不安の声が上がっている。 日本ワクチン学会(理事長:岡田 賢司氏)は、こうした声を受け9月7日に同学会のホームページ上で「新型コロナウイルスに対するワクチンに関連した日本ワクチン学会の見解」を公開し、異物混入の影響、異なる種類のワクチンによる併用接種、3回目の接種の3つの課題に対して学会の見解を発表した。現時点の異物混入ワクチンの評価と今後の対応 ワクチンへの異物混入について、モデルナ社製のワクチン接種後に2件の死亡事例が把握され、製造企業による調査結果を基に、「混入した異物が全身的な症状を起こす可能性は低いこと」「アナフィラキシーの原因となる可能性が低いこと」を示した。 そして、「こうした事態はあってはならない残念な事案」とし、事案発生後の即時使用中止と情報公開が速やかに行われたことを評価すると共に、「今後の再発防止に向けて、製造から接種まですべての過程における安全性確保の徹底のために、本学会として学会員ならびに関係各方面への協力を要請する」と学会の姿勢を示した。 また、「ワクチン接種後の死亡事例に関しては、剖検の結果なども含めて、厚生労働省から因果関係の検討に関する詳細の早期公開を要望する」と記すと共に、「今後類似の事象が起こった場合には、製造・販売企業、厚生労働省などの公的機関による調査結果、およびこれまで積み重ねられてきた知見を基に、科学的・医学的に議論することが重要」と提案している。ワクチンの併用接種については慎重に 英国における臨床研究で、「異なる種類のワクチンを接種することにより、同一のワクチンを接種する場合よりも高い抗体価が獲得される可能性が示された」ことを踏まえ、わが国で異なる種類のワクチンの併用接種の導入が今後検討されていると示した。 その上で、現在、ワクチンの需要が供給を上回ること、異物混入による予定変更で希望者全員に接種されていない場合があることを考慮し、「今後、ワクチンの供給不足により接種の遅滞が生じた場合には、現状の新型コロナウイルス感染症流行が災害級の非常事態であるとの見地から、異なる種類のワクチンの併用接種も選択肢に入れることを提案する」と提言している。 また、「『接種できるワクチンを、種類を選ばず2回接種していく』ことのベネフィット、すなわち接種が停滞することによって生じる個人における感染のリスクと社会全体としての感染拡大のリスクを低減することが、何らかの副反応の生じるリスクを大きく上回る」と示唆している。 そして、異なる種類のワクチンの併用接種につき、日本脳炎ワクチンやポリオワクチンなどを例に、これらは科学的な根拠に基づいてその有効性や安全性が確認された後に、それらの併用接種が認められてきたという経緯を踏まえ、現在わが国で認められている3種のmRNAワクチンは、「ワクチンでは定められた用法・用量にしたがって、同一のワクチンを用いて接種するもので、前述の併用接種に相当する接種方法は、わが国では検証されていない」と注意を喚起している。 今後の課題として「仮にわが国においてこの併用接種を行うのであれば、希望者に接種が行き届くまでの一時的な措置と位置付けると共に、並行してわが国における臨床研究として、たとえ少数例であってもその有効性と安全性の検証を行うことが不可欠」と提言している。※一部で用いられている「交差接種」という用語は、正式な医学用語ではないので注意されたい3回目の接種の前に希望者全員への2回接種を 一般論として、「ワクチン接種後に獲得された抗体価は時間経過と共に減衰していくものであり、低下したそのレベルで効果がもたらされるかどうか、すなわち感染防御や重症化防止の評価・検証が重要となる」と評価・検証の重要性を示した上で、わが国では3回目の検証が行われていないと指摘する。 また、「免疫力をより強く長く維持することを目的とする優れた接種方法の検討は、今後進められていくべき」とことわったうえで、「国民に広く接種が行き渡っていない現状においては、まずは同一のワクチンを用いて2回の接種を対象となる希望者全員に対して可及的速やかに実施することが第一義と考える」と希望者全員への接種を優先すべきと示した。 そして、3回接種を行っている諸外国と異なり、ワクチンの供給を輸入に頼るわが国の独自性について触れ、「国内向けだけではなく世界においてわが国が果たす公衆衛生の観点に立ち、接種可能なワクチンを世界のすべての人々に2回接種する努力を継続することこそ、今回のパンデミックを収束/終息させるために最も有効で、かつ最優先させるべきこと」と考えを示した。 最後に学会では、「ワクチンの基礎臨床研究の推進、および適正な情報の公開・共有と、メディアとの連携を進めていく」と展望を語っている。

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コロナワクチンは高齢者の死亡をどの程度防いだか/厚労省アドバイザリーボード

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対策として定期的に厚生労働省で開催されている「新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード」の第51回(9月8日開催)において、「新型コロナウイルス感染症に対するワクチン等の効果の推定」が報告された。 資料では、65歳以上の高齢者についてワクチンをしなかった場合の推定から実数を比べ、ワクチンの効果を示したもの。COVID-19ワクチンで8,000人以上の高齢者の死亡を抑制した可能性 65歳以上の高齢者の9割近くが2回のワクチン接種を終えた環境下で、ワクチンの効果として、高齢者を中心に感染者数、死亡者数の増加抑制が期待されている。今回、HER-SYSデータを用いてワクチン接種などがなかった場合の推定モデルを作成し、COVID-19陽性者数、死亡者数が、同推定モデルと比較してどの程度抑制されたかを試算した。[試算方法] 2021年1月1日~8月31日までのHER-SYSデータを使用して試算した。(1)4月~8月までの感染陽性者数と年齢区分別の月毎の増加率を算出(2)1月~7月までの高齢者の新型コロナウイルス感染陽性者、死亡者数、致死率を検討(3)(1)で算出した増加率、(2)で算出した致死率を利用し、感染陽性者数と死亡者数の抑制を試算(なおHER-SYSにおける死亡数の入力率は66%程度と試算される点にも留意が必要)【COVID-19感染抑制の推定】 7月と8月で、推定10万人以上の高齢者の感染を抑制した可能性がある。7月:推定モデル感染者数2万7,052、実数5,953、推定との差2万1,0998月:推定モデル感染者数11万778、実数2万4,110、推定との差8万6,668【COVID-19感染死亡数抑制の推定】 7月と8月で、推定8,000人以上の高齢者の死亡を抑制した可能性がある。7月:推定死者数1,768、死亡者実数145、推定との差1,6238月:推定死者数7,544、死亡者実数725、推定との差6,819 なお、参考資料として「2021年1月~7月の新型コロナウイルス感染陽性者の致死率」も示され、2021年1月と7月を比較すると、1月の致死率が90歳以上で15.56%だったものが、7月では同数値が5.64%まで低下していることが示されている。

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グラム染色本の最高峰【Dr.倉原の“俺の本棚”】第46回

【第46回】グラム染色本の最高峰私がグラム染色を一番やっていたのは研修医時代でした。京都府の洛和会音羽病院というところで研修させていただいて、当時、私と一緒に救急部でグラム染色を教えてくれた先生や同僚たちは、皆さんいろいろな分野で活躍しています。『グラム染色診療ドリル〜解いてわかる! 菌推定のためのポイントと抗菌薬選択の根拠』林 俊誠/著. 羊土社. 2021年6月30日発行医学部のときからずっと着ている白衣がクリスタルバイオレットまみれになって、なんか太陽の光を数年間浴びていない地下研究者みたいな恰好をしていました。「さすがにクリスタルバイオレットこぼしすぎやろ」と怒られたのは、もう15年も前の話。そういえば、バイオセーフティキャビネットではなく、救急外来でPPEをつけずに染めていた気がします。また、上手に染色できた肺炎球菌や大腸菌のスライドグラスを永久標本にして、自分のコレクションにしていました。ここらへんが現在では許されるのかどうかはわかりませんが、いずれも時効ということで……。グラム染色の本はいくつか出版されていますが、この本の素晴らしいところは、「至言が至言過ぎる」点です。書かれている全てが医師に心に突き刺さるメッセージ。たとえば緑膿菌の見た目、『「E. coliよりも細い」と気づける感覚を養う』、こりゃあ至言です。緑膿菌ってヒョロっとしているので、太い大腸菌とは違いますよね。その他、『グラム染色鏡検で「見えない」からこそ見えてくるものがある』など、なんかボクの人生をグラム染色してくださいみたいな「至言」がてんこ盛りで、読んでいてテンションが上がってきます。グラム染色に限った本ではなく、臨床における判断についても丁寧に記載されています。例えば、ESBL感染症でカルバペネムを温存しなきゃだめだよ、というICTとしても重要なメッセージも書かれています。グラム染色に偏った本ではないので、感染症診療に従事するすべての医療従事者にとって満足度が高いと思います。何より、安いです。『グラム染色診療ドリル〜解いてわかる! 菌推定のためのポイントと抗菌薬選択の根拠』林 俊誠/著.出版社名羊土社定価本体3,600円+税サイズB5判刊行年2021年

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第74回 ワクチン1回目でアナフィラキシー、日本で「交差接種」はなぜ考慮されない?

先進国内では遅れを取ったと言われる日本の新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)のワクチン接種。9月8日時点の対象人口での接種率は1回目接種完了が60.9%、2回目接種完了が49.0%となり、現在、2回目接種完了者が人口の約53%であるアメリカの背を捉えつつある。そうした中で5月に承認されながら副反応に対する警戒感から公的接種での使用が控えられていたアストラゼネカ社のウイルスベクターワクチン「バキスゼブリア筋注」が8月から40歳以上に限定して公的接種に組み入れられたことは、ここ最近の接種率向上に一役買っているとみられる。ご存じのようにバキスゼブリアについては約10~25万回に1回の頻度で血小板減少症を伴う血栓症が確認され、発症者の5~6人に1人が死亡している。また、50歳未満の若年者の発生頻度は、50歳以上の2倍ほど高い。もっともこの頻度はワクチンの副反応としてはかなり低いもので、私個人は当初公的接種から外したことはナイーブすぎた判断と考えている。さてこのワクチンに関して東京都でちょっとした騒動が勃発している。「都の大規模ワクチン会場、独断で「交差接種」 健康状態に問題なし」(朝日新聞)もう既にほとんどの方がご存じかとは思うが、3月にファイザー製ワクチンの優先接種を受け、アナフィラキシーを起こした医療従事者がかかりつけ医に相談し、2回目接種にバキスゼブリアを選択するようアドバイスを受け、都の接種会場でこのことを申し出た後、そのまま交差接種を受けたという案件である。予診担当の医師も接種担当の看護師も交差接種であることをわかったうえで接種を実施。これに対し都側で不適切だったと申し開きをしたという内容だ。正直、なんともすっきりしない話である。確かに制度上は適切とは言えない。ただ、アナフィラキシーという本人の不可抗力によりワクチン接種完了が叶わなかったこの方は、今のデルタ株流行という環境下で医療従事者として働くことに相当不安を抱いていたはずだ。だからこそ、かかりつけ医に相談してまで、この接種会場に赴いたのだろうと推察する。そう考えるとこの方はもちろんかかりつけ医も現場で判断した予診担当の医師も接種を行った看護師も私は責めることができない。いったいこうした人はどれくらいいるのだろうか?mRNAワクチンの接種によりアナフィラキシーを起こしたと厚生科学審議会の予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会で判定を受けているケースは、8月8日までにファイザー製が405件、モデルナ製が9件ある。もちろん接種のすそ野が広がってくる今後、こうした人は増えてくるだろう。その人たちをこのまま放置して良いのだろうか?ちなみにいわゆる1回目と2回目の接種を違うワクチンで行う交差接種に関しては、最近Lancet誌にオックスフォード大学のグループによる単盲検試験の結果が報告されている。この試験は28日間隔でファイザーワクチン2回接種、アストラゼネカワクチン2回接種、アストラゼネカ1回目/ファイザー2回目、ファイザー1回目/アストラゼネカ2回目の接種を行った4群で新型コロナウイルスの抗スパイクタンパクIgGの幾何平均濃度を比較したもの。結論から言えば幾何平均濃度は高い順からファイザー2回接種、アストラゼネカ1回目/ファイザー2回目、ファイザー1回目/アストラゼネカ2回目、アストラゼネカ2回接種となった。まだプリミティブな結果ではあるものの、この結果からは今回の接種そのものが医学的に問題あるものではないこともほぼ明らかだ。そもそも体内に入ったmRNAの分解されやすさや2回接種完了者での抗体価減少の研究報告なども併せてみれば、この方のようなケースは初回のmRNAワクチンの影響もほぼウォッシュアウトされているかもしれない。その意味ではやや乱暴な言い方かもしれないがバキスゼブリアを2回接種しても良いのではないかとすら思えてくる。いずれにせよ本人に接種の意思がありながら、mRNAワクチンでのアナフィラキシーゆえに接種完了が叶わなかった人たちに、本人の同意取得を前提に補償的措置として臨床研究を兼ねてウイルスベクターワクチンの再接種を検討すべきではないかと考えている。

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アレルギー高リスク者、コロナワクチンによるアレルギー発症率は?

 新型コロナワクチンを接種したいもののアレルギー持ちだと、どうしても躊躇してしまう。とくに副反応が強く出やすい2回目となればなおさらである。今回、イスラエル・Sheba Medical CenterのRonen Shavit氏らは、アレルギーに対し高いリスクを有する患者について、ファイザー製の新型コロナワクチン(BNT162b2)のアレルギー反応/アナフィラキシーの影響について調査を行った。その結果、アレルギー性疾患の病歴を持つほとんどの患者は、医療施設で実装できるさまざまなアルゴリズムを使用すれば安全に接種できることが示唆された。JAMA Network Open誌2021年8月31日号のOriginal Investigationとして掲載。 研究者らは2020年12月27日~2021年2月22日の期間、シェバ医療センターのCOVID-19ワクチンセンターに申請されたアレルギー患者8,102例を対象に前向きコホート研究として、詳細なアンケートを含むアルゴリズムを使用したリスク評価を実施。アレルギーに対し高いリスクを有する患者を「アレルギー性が高い」とし、医学的管理下で接種が行われた。 主な結果は以下のとおり。・アレルギー性が高い患者と定義付けされたのは429例で、そのうち304例(70.9%)は女性、平均年齢±SDは52±16歳だった。・BNT162b2ワクチンの初回投与後、420例(97.9%)に即時型アレルギー反応はなく、6例(1.4%)には軽度のアレルギー反応が、3例(0.7%)にはアナフィラキシーが出現した。・調査期間中、アレルギー性が高い患者218例(50.8%)が2回目のBNT162b2ワクチン接種を受けたところ、214例(98.2%)にはアレルギー反応がなく、4例(1.8%)で軽度のアレルギー反応がみられた。・ほかの即時型および遅延型アレルギーの発現状況について、アレルギー性が高い患者群を一般集団と比較しても同等だった(遅延性のかゆみや発疹の発症は除外)。

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地球温暖化により増加している死亡とは?(解説:有馬久富氏)

 疾患の発生には季節変動があることが知られている。最近も滋賀県全体で行なっている脳卒中登録事業より、脳卒中が気温の低い冬に増加することが報告されている(文献1)。逆に気温の高い夏に増加する疾患もある。このように、寒い気候も暑い気候も特定の疾患の発生に影響を与えうる。 Global Burden of Disease Studyの成績と気象データを結びつけて、寒い気候と暑い気候が死亡に及ぼす影響を検討した結果がLancet誌に掲載された(文献2)。その結果は、寒い気候と暑い気候により、世界で毎年約170万人が死亡しているというものであった。 寒い気候は、肺炎などの呼吸器疾患死亡や脳心血管死亡を引き起こしていたが、過去20年でその影響は減少する傾向にあった。一方、暑い気候は、溺死・自殺など外因死の増加と関連しており、その数は地球温暖化の影響で増加する傾向にあった。地球温暖化は、気候だけでなく、人々の健康にも影響を与えている可能性がある。健康面からも地球温暖化対策は急務といえよう。

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妊婦のケアを厚く追記した改訂COVID-19診療の手引き/厚生労働省

 8月31日、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第5.3版」を公開した。 今回の改訂では、主に以下の5点が追記・修正された。【2 臨床像の「5.小児例の特徴」の重症度、家族内感染率などについて一部追記】 最新(2021年8月時点)の陽性患児の特徴などが追加された。【4 重症度分類とマネジメントの「5.妊産婦の管理」の項を追加】 追加項目では、自宅療養中の妊婦の訪問時の確認事項、妊婦への指導事項のほか、妊婦搬送の判断の注意点、産科的管理以外のバイタルの留意事項、COVID-19患者の妊婦から産まれた新生児への検査が追加された。【同「自宅療養者に対して行う診療プロトコール」「経口ステロイド薬投与における留意点」などについて追記】 自宅療養・宿泊療養を行っている患者で酸素投与の適応となる場合の経口ステロイド薬投与における留意点」として、ステロイド投与を行う際の病状評価および治療適応の判断では、原則として自宅に赴いた往診医や宿泊施設内における担当医師などによる対面診療のもと、処方することを推奨(処方例:デキサメタゾン 6mg 分1 10日間または症状軽快まで)している。また、緊急時対応のために事前処方や内服の目安(例:咳嗽などの呼吸器症状があり、SpO2 93%以下)などが記されている。その際、電話、オンラインなどで医師が指示したり、フォローアップすることが望ましいと詳しい項目が記載されている。【5 薬物療法の各種薬剤の項目(レムデシビル、バリシチニブなど)に一部追記】 レムデシビルの保険適用(2021年8月4日)や「腎機能障害のある患者への投与」が追加され、重度の腎機能障害がある患者には投与は推奨されないが、治療の有益性が上回ると判断される場合のみに投与とされた。また、「バリシチニブ」について、入院患者1,525人を対象とした二重盲検試験(COV-BARRIER)の結果、主要評価項目の人工呼吸管理/死亡に至った割合に差は認められなかったが、治療開始28日以内の死亡はバリシチニブ群で有意に低かった試験結果が追加された。【6の院内感染対策の「表6-1」「1.個人防護具」「5.患者寝具類の洗濯」「8.職員の健康管理」などについて一部追記】 「表6-1 感染防止策」の確定例の感染防止策を実施する期間が大きく改訂され、発症者と人工呼吸器など要した患者に場合分けされ記載された。 「1.個人防護具」では、エアロゾルが発生しやすい状況として、歯科口腔処置、非侵襲的換気、ネーザルハイフロー、生理食塩水を用いた喀痰誘発、下気道検体採取、吸引を伴う上部消化管内視鏡などが追加された。 「5.患者寝具類の洗濯」では、患者が使用したリネン類の洗濯について、具体的かつ詳細な洗濯法が追加された。 「8.職員の健康管理」では、参考として「医療従事者が濃厚接触者となった場合の外出自粛の考え方」が新たに追加された。 なお、本手引きは5月以降、毎月追加改訂がなされているので、下記のリンクなどより確認をいただきたい。

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新型コロナワクチン、6~7月の有効率は95%/感染研

 国立感染症研究所は8月31日、ワクチンを接種して14日以上経過した者は未接種者と比較し感染のオッズが有意に低かったことから、さまざまな変異株が流行する状況においても国内承認ワクチンは有効であることを示唆した。また、ワクチンの接種回数、(短期的には)接種からの期間の長さによって有効率が高くなる傾向も明らかにした。ワクチン有効率を症例対照研究での調整オッズ比から推定 現在、ファイザー社およびモデルナ社のmRNAワクチンの有効性は90%以上、アストラゼネカ社のウイルスベクターワクチンも有効性は70%程度と報告されているが、変異株出現により有効性の低下が指摘されている。そこで、国立感染症研究所は、5つの医療機関の発熱外来など新型コロナウイルス検査を受けた患者を対象として、症例対照研究(test-negative design)を行った。 今回の報告は2021年6月9日~7月31日の暫定結果で、対象者はPCR検査陽性者が症例群、陰性者が対照群に分類された。検査前には基本属性、新型コロナワクチン接種歴などを含むアンケートが実施された。また、発症から14日以内、いずれか1症状のある者(37.5℃以上の発熱、全身倦怠感、寒気、関節痛、頭痛、鼻汁、咳嗽、咽頭痛、呼吸困難感、嘔気・下痢・腹痛、嗅覚味覚障害)に限定して解析が行われた。 ワクチン接種歴については、「未接種」「1回接種のみ」「2回接種」の3つに区分。さらに、接種後の期間を考慮するため「未接種」「1回接種後13日目まで」「1回接種後14日から2回接種後13日目まで(partially vaccinated)」「2回接種後14日以降(fully vaccinated)」の4つのカテゴリーに区分した。ロジスティック回帰モデルを用いてオッズ比と95%信頼区間(CI)を算出。また、ワクチン有効率は多変量解析から得られた調整オッズ比を使用し、(1-オッズ比)×100%で推定した。多変量解析における調整変数としては、先行研究を参照し、年齢、性別、基礎疾患の有無、医療機関、カレンダー週、濃厚接触歴の有無、過去1ヵ月の新型コロナウイルス検査の有無をモデルに組み込んだ。ワクチン有効率、ワクチン2回接種14日以降では95%・都内5医療機関の発熱外来などを受診した成人1,525 例が調査に同意。そのうち除外基準に該当する者を除く1,130例(うち陽性者416例[36.8%])を解析した。・年齢中央値は33歳(範囲:20~83)、男性は546例(48.3%)、女性は584例(51.7%)で、267例(23.6%)が何らかの基礎疾患を有していた。・ワクチン接種歴について、未接種者は914例(83.4%)、1回接種者は141例(12.9%)、2回接種者は41例(3.7%)だった。・調整オッズ比は1回接種者では0.52(95%CI:0.34~0.79)、2回接種者では0.09(同:0.03~0.30)だった。・接種からの期間別の調整オッズ比は、「1回接種13日目まで」が0.83(同:0.51~1.37)、「1回接種14日以降2回接種13日まで(partially vaccinated)」が0.24(同:0.12~0.47) 「2回接種14日以降(fully vaccinated)」では、0.05(同:0.00~0.28)だった。・今回の解析ではワクチン接種歴不明例・接種日不明例を対象から除外したが、未接種として解析に含めた場合も調整オッズ比は同様だった。・ワクチン有効率は「1回接種13日目まで」は17% (同:-37~49%)、「1回接種14日以降2回接種13日まで(partially vaccinated)」では76%(同:53~88%)、「2回接種(接種からの期間を問わない)」では91%(同:70~97%)、「2回接種14日以降(fully vaccinated)」では95%(同:72~100%)だった。 なお、研究者らは留意すべき点として、「ワクチンの有効性は、流行状況、各変異株の割合、感染対策の緩和、ワクチン接種からの期間(免疫減衰の可能性)などの要素が影響している可能性があり、総合的に、経時的に判断すべき。一方で、本報告では1回接種13日目までは有効性が認められず、これは先行研究と一致する結果であった」とし、「本調査はあくまでも迅速な情報提供を目的としている暫定的な解析であり、今後もより詳細な解析を適宜行い、変異株や感染対策の緩和の影響、免疫減衰の可能性などをみていくために、経時的に評価していくことが重要。調査期間においては、アルファ株からデルタ株の置き換わり期であり、デルタ株が大部分を占めるようになった際の有効性についても今後検討していく必要がある」としている。

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新型コロナとインフルのワクチン接種間隔、現時点の考え方/日医

 今冬の季節性インフルエンザワクチンの供給予定量とそれに伴う予約の設定についての留意点、新型コロナウイルスワクチン接種との接種間隔の考え方について、日本医師会の釜萢 敏常任理事は9月1日の定例会見で情報提供を行った。昨シーズンと比較すると供給量減る見込み、予約の組み立てに注意を 今冬の季節性インフルエンザワクチンの供給予定量は、8月時点で約2,567万本から約2,792万本(1mLを1本に換算)の見込みであり、昨シーズンより減る見通しとなっている。同日開催された厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会)において示された1)。とくに接種開始の10月供給量が少なく、供給時期が12月2週目まで続くことから、例年と比較して後ろにずれる見込みという。 昨年は供給量3,342万本に対し使用量は3,274万本と製造効率等がとくに良好だったために供給量が多く、使用量も平成8年以降最大となっていた。しかし一昨年は供給量2,964万本に対し使用量は2,825万本となっており、昨年と比較すると少ないが、例年の使用量に相当する程度は供給される見込みという2)。 釜萢氏は、「11~12月には増えていく見込みとなっているが、接種開始の10月の供給量が少ない。“早く打ちたい”という方への情報提供が重要になる。各医療機関が自分のところに供給されるワクチンの見通しを把握したうえで、希望される方への予約を設定していく必要がある」と説明。とくに小児(13歳未満)の場合は2回接種が推奨されるため、それを踏まえた予約の組み立てをお願いしたいと呼びかけた。新型コロナワクチンは他のワクチンと前後2週間の接種間隔が必要 また、現在接種が進む新型コロナウイルスワクチンとの接種間隔についても留意が必要になる。9月1日時点で、わが国では新型コロナウイルスワクチンは他のワクチンと前後2週間の接種間隔をとることとされている3)。同氏は、「たとえばファイザー社のワクチンは1回目と2回目の間隔が3週間となっており、この間にインフルエンザワクチン接種をスケジュールすることは難しい」とした。 一方、米国疾病予防管理センター(CDC)では、以前は他のワクチンと前後2週間の接種間隔をとることが推奨されていたが、現在では変更され、新型コロナウイルスワクチンを他のワクチンの接種タイミングと関係なく接種することが可能とされている4)。釜萢氏は日本でも今後変更される可能性はあるが、現時点では前後2週間の接種間隔が必要なことに留意が必要とした。

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新学期に向けてCOVID-19感染対策の提言/感染研

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のデルタ株の猛威に社会が混乱している。とくに小児などの低年齢層のCOVID-19感染者数の増加により、新学期を前に学校・塾などの教育機関は、生徒を受け入れるべきか、リモートで授業を行うべきかの判断に悩み、その扱いは全国的に感染の強弱もあり一律ではない。 こうした状況の中で国立感染症研究所は、「乳幼児から大学生までの福祉施設・教育機関(学習塾等を含む)関係者の皆様への提案」を8月26日に公開した。 提案では、教職員の感染予防法の習熟やICTの活用の推進、ワクチン接種、体調確認アプリの活用など具体的な取り組みが示されている。中学生以上では部活などで広がる可能性 はじめに代表的な所見として下記の8つを示している。・10代以下の感染者数が増加傾向にある。保育所・幼稚園において、これまで保育士・教員における感染の検出が主であったが、園児の感染例が増加している・とくに小学生を中心とする授業の場で、教職員を発端とした、比較的規模の大きなクラスターが複数発生した・小学校において、児童を端緒とした、同じクラス内などの規模の小さな感染伝播は多く見受けられたが、児童間の感染伝播が規模の大きなクラスターに至ったケースは確認できなかった・障害児通所支援事業所での感染が各地で散発しており、長期化する場合がある・学習塾における比較的規模の大きなクラスターが散見される・中学生以上では、部活動など・寮生活において、適切なマスク着用や身体的距離の確保などの感染予防策の不十分な生徒・学生間の長時間に渡る交流が、感染伝播に寄与していた。とくに部活動などにおいて、最近は大会や遠征時のクラスターが複数発生した・感染しても無症状・軽症が多く行動範囲も広い大学生は市中で感染が拡大する要因の一部を占める・とくにデルタ株流行後、小児から家庭内に広がるケースが増えている予防は、今までの感染予防策の徹底とワクチン接種の両輪で 次に共通する対策に関する提案として、具体的な事項が示されている。・初等中等段階ではやむを得ず学校に登校できない児童生徒などに対する学びの保障を確保することを主目的として、加えて高等学校・大学ではオンライン(オンデマンド)の促進により、理解をより高める側面を含めて、ICTなどを活用した授業の取組を進める・教職員(塾を含む)それぞれがCOVID-19の感染経路に基づいた適切な予防法、消毒法について習熟し、園児・児童・生徒・学生、保護者、自施設に出入りする関係者に対して正しく指導できるようにする・上記を目的とした、地域の感染管理専門家(感染管理認定看護師など)からの指導・協力を仰ぐ体制を構築する・教職員、園児・児童・生徒・学生は、全員が出勤・登園・登校前の体調の確認、体調不良時のすみやかな欠席連絡および自宅待機時の行動管理をより徹底する。中学生以下の有症時には受診を原則とする・各施設の健康管理責任者は、当該施設の教職員、園児・児童・生徒・学生がCOVID-19の検査対象になった場合の情報を迅速に把握する。対象者の検査結果判明まで、範囲を大きく、たとえばクラス全体として、園児・児童・生徒・学生・教職員などに対して感染予防に関する注意喚起を厳重に行う・対象者が陽性となった場合の施設のスクリーニング検査の実施と施設内の対策は保健所からの指示に従う。流行状況などによって、保健所による迅速な指示が困難な場合には、クラス全体など幅広な自宅待機と健康観察、有症状時の医療機関への相談を基本に対応する。体調確認アプリ(例:N-CHAT)や抗原定性検査の活用は、施設における発生時の自主的な対応として有用である・教室、通学バス(移動時全般)、職員室などにおける良好な換気の徹底に努める。施設内では、効率的な換気を行うための二酸化炭素センサーの活用も推奨される・塾では児童・生徒・学生・講師などの体調管理を徹底した上で、密にならない工夫とともに換気の徹底(とくに入れ替わり時。場合によって二酸化炭素センサーの活用)、リモート授業の活用も検討することが推奨される・人の密集が過度になるリスクが高いイベント(文化祭、学園祭、体育祭など)においては延期や中止を検討し、感染リスクの低い、あるいはリスクを低減できると考えられたイベントについては事前の対策を十分に行う・教職員は、健康上などの明確な理由がなければ、新型コロナワクチン接種を積極的に受ける・部活動については日々の体調の把握や行動管理への注意を基本とした活動を行う一方で、やむを得ず県境をまたいだ遠征が必要な場合には、2週間前から引率者、児童・生徒における上記注意事項の遵守を強化し、出発前3日以内(できるだけ出発当日)を目途に、抗原定量検査あるいはPCR検査を受ける・大会遠征時には教職員を含む引率者や児童・生徒ともに、競技外での他校との交流は部活動の範囲に留める・これまで以上に保健所との連携(報告や相談)を強化する。保健所が多忙を極める場合、とくに発生時の対応については、当センター(感染研)は保健所と連携を取りながら施設へ助言を行うことも可能である

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