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新しい植物由来COVID-19ワクチン、各種変異株に有効:第III相試験/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンCoVLP+AS03(カナダ・Medicago製)は、各種変異株によるCOVID-19の予防に有効で、症候性COVID-19に対する有効率は69.5%、中等症~重症COVID-19に対する有効率は78.8%であったことを、カナダ・MedicagoのKaren J. Hager氏らが第III相無作為化プラセボ対照試験の結果、報告した。CoVLP+AS03ワクチンは、ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)という植物で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイクタンパク質を発現させ形成されたコロナウイルス様粒子(CoVLP)と、アジュバントシステム03(AS03)を組み合わせた、新しい植物由来COVID-19ワクチンである。NEJM誌オンライン版2022年5月4日号掲載の報告。2021年3月~9月、南・北米で約2万4,000人を対象に無作為化プラセボ対照試験 研究グループは、アルゼンチン、ブラジル、カナダ、メキシコ、英国および米国の85施設において、SARS-CoV-2に対するワクチンの接種歴がなく、確認されたCOVID-19の既往もない18歳以上の成人を、CoVLP+AS03ワクチン群またはプラセボ群に1対1の割合に無作為に割り付け、それぞれ21日間隔で2回筋肉内注射した。 主要評価項目は、2回接種後7日以降のRT-PCR法で確認された症候性COVID-19発症に対する有効性である。事後解析として中等症~重症COVID-19に対する有効性なども評価した。 ワクチンの有効性は100×(1-発生率比)で算出し、発生率比はプラセボ群に対するワクチン群のCOVID-19発生率(人年当たり)の比と定義した。 解析は、RT-PCR法で確認されたCOVID-19症例が160例以上認められた後、中央値で2ヵ月以上の安全性追跡調査を経て行った。なお、本試験は2021年3月15日~9月2日に実施され、有効性解析および安全性解析のデータカットオフ日はそれぞれ2021年8月20日および同年10月25日であった。 計2万4,141例が無作為化され、intention-to-treat集団に含まれた(ワクチン群1万2,074例、プラセボ群1万2,067例)。対象の年齢中央値は29歳で、14.8%はベースライン時に血清陽性であった。有効率は69.5%、中等症~重症化の予防効果は78.8% 2021年8月20日時点で、RT-PCR法で確認されたCOVID-19はintention-to-treat集団で165例(ワクチン群40例、プラセボ群125例)であり、全体におけるワクチンの有効率は69.5%(95%信頼区間[CI]:56.7~78.8)であった。165例中122例でウイルスの配列が同定され、デルタ株56例(45.9%)、ガンマ株53例(43.4%)、アルファ株6例(4.9%)、ミュー株4例(3.3%)、ラムダ株3例(2.5%)であった。 事後解析の結果、ベースライン時の血清陰性集団における有効率は74.0%(95%CI:62.1~82.5)であった。また、中等症~重症COVID-19に対する有効率は、intention-to-treat集団で78.8%(55.8~90.8)、血清陰性集団で86.0%(66.2~95.1)であった。 ワクチン群では重症COVID-19は認められず、感染例におけるCOVID-19診断時のウイルス量中央値は、ワクチン群と比較してプラセボ群で100倍以上高かった(ワクチン群3.46 log10コピー/mL、プラセボ群5.65 log10コピー/mL)。 非自発的な有害事象はほとんどが軽度または中等度で、一過性であった。発現率はワクチン群がプラセボ群よりも高かった(局所有害事象:92.3% vs.45.5%、全身性有害事象:87.3% vs.65.0%)。また、自発報告による有害事象の発現率(ワクチン群vs.プラセボ群)は、接種後21日目まで(22.7% vs.20.4%)、ならびに43日目から201日目まで(4.2% vs.4.0%)のいずれも、両群で同程度であった。

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コロナ入院患者にレムデシビルは有益か:WHO最終報告/Lancet

 レムデシビルは、人工換気へと症状が進んだ新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に対して有意な効果をもたらさないことが、またその他の入院患者について、死亡または人工換気(あるいはその両方)への進行に対する効果はわずかであることを、世界保健機関(WHO)の連帯試験コンソーシアム(Solidarity Trial Consortium)が最終結果として報告した。COVID-19患者を対象としたSolidarity試験では、これまでに4つの既存薬に関する中間解析結果が報告されている。このうちロピナビル、ヒドロキシクロロキン、インターフェロン(IFN)-β1aは無益として試験が中止となったが、レムデシビルの無作為化試験は継続されていた。本稿で同コンソーシアムは、これまでに行われたすべての関連試験の死亡率およびメタ解析の最終結果を報告している。Lancet誌オンライン版2022年5月2日号の報告。35ヵ国454病院でCOVID-19入院患者1万4,221例を対象に無作為化試験 Solidarity試験には、医師の見立てで明らかなCOVID-19で最近入院し、いずれの試験薬にも禁忌がなく、その他の患者の特性は問わず同意が得られた成人(18歳以上)患者が登録された。 被験者は、試験地で入手可能であった試験薬に等分になるよう無作為に割り付けられ、その時点で入手可能であった4つの試験薬(ロピナビル、ヒドロキシクロロキン、IFN-β1a、レムデシビル)のいずれかまたは非試験薬(対照)の投与を受けた。また、すべての患者は、試験地の標準治療も受けた。プラセボの投与は行われなかった。 プロトコールで指定されていた主要エンドポイントは、疾患重症度で分類した院内死亡であった。副次エンドポイントは、人工換気への進行(同未実施の場合の)、入院から退院までの期間などであった。 最終的なlog-rank検定およびKaplan-Meier解析はレムデシビルについて行われ、すべての4つの試験薬について追加された。メタ解析は、今回の試験およびその他3つの試験薬の無作為化試験で報告された入院患者における死亡率の加重平均値を評価した。 2020年3月22日~2021年1月29日の間に、WHOに加盟する世界6地域にある35ヵ国454病院から1万4,303例の適格条件を有すると思われる患者が登録された。COVID-19診断が反証されたり、暗号化された同意がデータベースに入力されなかったりした83例(0.6%)を除外後、Solidarity試験には1万4,221例が登録され、うち8,275例がレムデシビル(早期退院とならない限り10日間連日静注投与、4,146例)またはその対照(レムデシビルを入手可能な地域であったが、試験薬に割り当てられなかった、4,129例)を受けるよう無作為に割り付けられた。すでに人工換気を受けていた患者の死亡、レムデシビル群42.1%、対照群38.6% レムデシビル群、対照群ともにコンプライアンス率は高かった。 死亡は、レムデシビル群は4,146例中602例(14.5%)、対照群は4,129例中643例(15.6%)であった(死亡率比[RR]:0.91[95%信頼区間[CI]:0.82~1.02]、p=0.12)。すでに人工換気を受けていた患者の死亡は、レムデシビル群359例中151例(42.1%)、対照群347例中134例(38.6%)であった(RR:1.13[0.89~1.42]、p=0.32)。人工換気は受けていなかったが酸素投与を受けていた患者の死亡は、レムデシビル群14.6%、対照群16.3%であった(RR:0.87[0.76~0.99]、p=0.03)。 当初は酸素投与を受けていなかった患者1,730例の死亡は、レムデシビル群2.9%、対照群3.8%であった(RR:0.76[95%CI:0.46~1.28]、p=0.30)。また、人工換気を受けていなかった全患者の死亡は、レムデシビル群11.9%、対照群13.5%であり(RR:0.86[0.76~0.98]、p=0.02)、人工換気への進行はレムデシビル群14.1%、対照群15.7%であった(RR:0.88[0.77~1.00]、p=0.04)。 死亡/人工換気への進行の複合アウトカムの発生率(事前に規定されていなかった)は、レムデシビル群19.6%、対照群22.5%であった(RR:0.84[95%CI:0.75~0.93]、p=0.001)。 レムデシビルの連日静注投与への割り付け(非盲検対照との比較で)は、10日間の治療期間中の退院を約1日遅らせた。 なお、レムデシビル非使用と比較したレムデシビルのすべての無作為化試験における死亡率のメタ解析では、類似した所見が得られたという。

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新たな患者報告アウトカム評価法がコロナ罹患後症状の評価に有用/BMJ

 最新の心理測定法を用いて開発された包括的な患者報告アウトカムの評価法である「long COVID症状負担質問票(symptom burden questionnaire for long COVID:SBQ-LC)」は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を経験した生存者において、long COVIDによる重要な症状の測定に有用で、介入効果の評価が可能であり、臨床管理における最良の診療法に結び付く有益な情報をもたらす可能性があることが、英国・バーミンガム大学のSarah E. Hughes氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年4月27日号に掲載された。英国の新たなlong COVID評価法の開発と妥当性の検証 研究グループは、long COVIDによる症状負担の患者アウトカム評価法(SBQ-LC[第1版])を新たに開発し、その妥当性を検証する目的で、多段階的な混合研究法を用いた前向き研究を行った(英国国立健康研究所[NIHR]などの助成を受けた)。 2021年4月14日~8月1日の期間に、英国において実地試験のための遠隔データが収集され、ソーシャルメディアのチャンネルで特定されたlong COVID患者の支援グループで、実地試験への参加者の募集が行われた。 自己申告によるlong COVIDの成人(年齢18歳以上)患者13人(20~60歳、女性10人[77%])と臨床医10人により、SBQ-LCの項目内容の妥当性が評価された。次いで、274人(平均年齢45.0歳[範囲:21~70]、女性88%)のlong COVID患者により、質問票の草案が実地に検証された。 SBQ-LCの概念的枠組と初期の項目群は、既報の系統的レビューを参考に作成された。認知デブリーフィング(cognitive debriefing)のための患者へのインタビューとオンラインでの臨床医の調査の記録から主題分析が行われ、内容的妥当性(content validity)が確認された。 また、患者と住民参加型の支援グループによる合意形成のための議論(Therapies for Long COVID in non-hospitalised individuals: From symptoms, patient reported outcomes and immunology to targeted therapies[TLC研究])で、表面的妥当性(face validity)が確定された。 実地試験データのRasch分析により、項目と尺度が改良され、SBQ-LCの測定特性(measurement properties)に関する初期の証拠が提示された。国際的な臨床試験に有用な可能性 SBQ-LC(第1版)は、患者報告アウトカムを測定するモジュール式の評価法であり、有望視されている心理測定特性を有する17の独立の尺度で構成される。回答者は、過去7日間の症状負担を二者択一形式または4点評定尺度を用いて評価する。 各尺度は、異なる症状の領域を対象としており、線形スコア(0~100点)への変換が可能な素点の合計となる。点数が高いほど、症状負担が大きいことを表す。 評定尺度の改良と項目の削減を行ったところ、すべての尺度でRaschモデルの一次元性(unidimensionality)と項目適合度(item fit)の要件が満たされた。また、評定尺度のカテゴリーは、許容範囲内のカテゴリー適合度統計量で順序付けされた。 17の尺度は、person reliability(r≧0.70:許容範囲、r≧0.80:良好、r≧0.90:きわめて良好)の範囲が0.34~0.87、person separation(1.5~2.0:許容範囲、2.0~3.0:良好、≧3.0:きわめて良好)は0.71~2.56、item separationは1.34~13.86、internal consistency reliability(クロンバックα係数≧0.7:許容範囲)は0.56~0.91だった。 著者は、「2021年12月現在、英国で約130万人、世界で1億人以上のlong COVIDまたはpost-COVID-19症候群の患者が存在し、本症はかなりの症状負担を伴い、労働能力や生活の質に悪影響を及ぼす多系統疾患であることが知られている。この新たな質問票は、long COVIDの国際的な臨床試験を行う際に有用と考えられる」としている。

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オミクロン株BA.2などについて更新、COVID-19診療の手引き7.2版/厚労省

 5月9日、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第7.2版」を公開し、全国の自治体や関係機関に通知を行った。 今版の主な改訂点は以下の通り。診療の手引き7.2版の主な改訂点【1 病原体・疫学】・オミクロン株のBA.2系統について更新・懸念される変異株の表を更新・COVID-19死亡者数の図を更新・国内発生状況でオミクロン株のBA.2系統への置き換わりについて更新・海外発生状況で世界の流行株(主にオミクロン株)と今後の公衆衛生措置などを更新【2 臨床像】・罹患後症状について定義付け、症状一覧の図を更新 (「後遺症」という用語を削除)【3 症例定義・診断・届出】・改訂点なし【4 重症度分類とマネジメント・重症度別マネジメントのまとめの図の治療薬の脚注を更新【5 薬物療法】・ソトロビマブ(ゼビュディ点滴静注液500mg)について2022年4月18日の添付文書改訂による、本剤のオミクロン株(B.1.1.529/BA.2系統)への有効性(効果減弱の可能性)について更新・ニルマトレルビル/リトナビルに関する記載について併用薬留意の文言を追加・S-217622に関する記載について開発対象と参考情報を更新【6 院内感染対策】・妊婦および新生児への対応について、帝王切開の分娩方法や感染妊婦の出生児接触の対応について更新

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ファイザー製COVID-19ワクチンのオミクロン株に対する4回目接種の有効性(解説:小金丸博氏)

 ファイザー製COVID-19ワクチン(BNT162b2、商品名:コミナティ筋注)の4回目接種の有効性を検討したイスラエルの研究がNEJM誌オンライン版2022年4月5日号に報告された。本研究は新型コロナウイルスのオミクロン変異株が流行していた2022年1月~3月にかけて行われた試験であり、オミクロン変異株に対する予防効果を評価したものとなっている。イスラエルでは60歳以上の方、ハイリスク患者、医療従事者に対して4回目接種が認可されており、3回目の接種から4ヵ月以上の間隔を空けて接種する。本試験では60歳以上の方を対象として、ワクチンの感染予防効果、重症化予防効果が評価された。 補正前のSARS-CoV-2感染率は、4回接種群が10万人日当たり177だったのに対して、3回接種群では361であり、疑似ポアソン回帰分析の結果、感染率は3回接種群のほうが2.0倍高かった。4回目の追加接種を行うことで一定の感染予防効果を示したが、ワクチン接種後4週間をピークに効果の減弱を認め、ワクチンの感染予防効果は経時的に低下することが示された。 補正前の重症COVID-19発生率は、4回接種群が10万人日当たり1.5だったのに対して、3回接種群では3.9であり、疑似ポアソン回帰分析の結果、重症COVID-19発生率は3回接種群のほうが3.5倍高かった。重症化予防効果に関しては、少なくとも4回目接種後6週間は減弱を認めなかった。ワクチンのブースター接種による重症化予防効果がいつまで維持されるのか、今後の研究結果を待ちたい。 本研究は世界に先駆けてCOVID-19ワクチンの4回目接種を行っているイスラエルの大規模な解析結果であり、4回目接種の議論が行われている本邦でも大変参考になるデータである。現時点では、高齢者(とくに重症化リスク因子となる基礎疾患を有する者)は重症化予防を目的にブースター接種を行うのが妥当と考えるが、4回目接種の対象者(年齢、基礎疾患など)や3回目接種との間隔については各国で意見が分かれており、議論の余地があると考える。 COVID-19ワクチンに関する今後の課題として、新たな変異株に対する有効性の評価や、ブースター接種スケジュールの確立などが挙げられる。本研究はファイザー製ワクチンの試験結果であるが、異なるCOVID-19ワクチンとの組み合わせでの有効性は興味ある点である。予防効果を維持するためにはワクチンのブースター接種は必須と考えられるため、ワクチン接種スケジュールの確立のために、さらなる知見の集積が必要である。

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コロナ罹患後症状マネジメント第1版発表、暫定版を改訂/厚労省

 厚生労働省は、2021年12月に公開した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(暫定版)」を改訂、新たに「新型コロナウイルス感染症(COVID19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(第1版)」を4月28日に発表し、全国の自治体や関係機関などに周知を行った。 今回の改訂では、神経症状と精神症状はそれぞれ別の章とし、皮膚症状の章を新設したほか、各章が共有の小項目の見出しとなった。また、内容としてかかりつけ医などがどの範囲まで対応し経過観察するのか、どのタイミングで専門医・拠点病院の受診を勧めるのかなどについて、各症状(呼吸器、循環器、嗅覚・味覚、神経、精神、痛み、皮膚ごと、また、小児への対応、さまざまな症状に対するリハビリテーション)について記載を行った。 なお、本別冊(第1版)は、2022年4月現在の情報を基に作成しており、今後の知見に応じて、内容に修正が必要となる場合がある。厚生労働省、国立感染症研究所などのホームページから常に最新の情報を得る必要があるとしている。■目次と主な改訂点1)罹患後症状・代表的な罹患後症状の図を追加・今後の課題の内容を大きく改訂2)罹患後症状を訴える患者へのアプローチ・CDCの見解などを追加3)呼吸器症状へのアプローチ※以下の各診療領域のアプローチでは共通項目として「1.はじめに」、「2.科学的知見」、「3.症状へのアプローチ」、「4.フォローアップすべき所見・症状」、「5.プライマリケアのおけるマネジメント」、「6.専門医・拠点病院への紹介の目安・タイミング」、「7.専門医・拠点病院でのマネジメント」に内容が整理され、表記されている。4)循環器症状へのアプローチ5)嗅覚・味覚症状へのアプローチ6)神経症状へのアプローチ・COVID-19罹患後に遷延する症状の表を追加・診療フローチャートの図を追加・難治性症例の追加7)精神症状へのアプローチ8)“痛み”へのアプローチ・SARS-CoV-2感染による疼痛発症機序と考えられるメカニズムを追加・筋痛、関節痛などの症状の変化の図を追加9)皮膚症状へのアプローチ(新設)・診療のフローチャートを掲載・COVID-19関連皮膚症状の臨床的特徴、病理組織学的所見、全身症状の重症度、治療法の選択についてのまとめ一覧を掲載10)小児へのアプローチ・診療のフローチャートを追加11)罹患後症状に対するリハビリテーション・診療のフローチャートを追加12)罹患後症状と産業医学的アプローチ・具体的な事例4つを追加

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第111回 肺マクロファージのNLRP3インフラマソーム絡みの自滅が重症COVID-19に寄与

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の重症化や死に寄与すると思しき肺マクロファージ絡みの度を越した免疫反応がエール大学の研究者を主とするチームによって同定されて天下のNature誌に掲載されました1,2)。SARS-CoV-2の肺感染は悪くするとサイトカインストームとして知られる厄介な過剰免疫反応を引き起こします。エール大学の研究者等はヒトの免疫系を備えるマウスを使ってSARS-CoV-2感染の肺での成り行きを調べました。驚いたことに肺の内面を覆う上皮細胞のみならず免疫細胞にもSARS-CoV-2のRNAが上皮細胞に比肩する量存在していました。とくに肺マクロファージのSARS-CoV-2感染の印は感染の間絶えず強く認められ、SARS-CoV-2がマクロファージに侵入して増えることがやがてマウスに肺炎を招きうると分かりました。CD16とACE2受容体を介したSARS-CoV-2感染に応じてマクロファージは細胞の苦境や感染を認識しうるタンパク質複合体・インフラマソーム3)を活性化し、サイトカイン・IL-1とIL-18を放ち、細胞死の一種ピロトーシスによって自爆します。その自爆は感染を拡大させないための一種の防衛手段ですが、放出されるサイトカインが血液から肺に炎症誘発細胞を招き入れ、それが仇となって肺は過剰な炎症状態に陥ります。そのようなインフラマソーム活性化が肺の炎症の引き金であることは主に4種類あるインフラマソームの一つ・NLRP3インフラマソーム経路の阻害でマウスの肺炎を解消できたことで裏付けられました。NLRP3経路阻害はSARS-CoV-2感染マクロファージを減らしはしないもののその炎症状態を解き、炎症性サイトカインやケモカインを減らして肺炎を解消しました。NLRP3経路は感染マクロファージのいわば自爆装置です。その阻害の副産物として感染マクロファージはもはや死ねなくなり、そしてなんとウイルスをより放出するようになります。よってNLRP3経路阻害によるCOVID-19肺炎治療ではウイルスそのものを狙う抗ウイルス薬の併用が必要かもしれません2)。承認済みのNLPR3経路阻害薬はまだありませんが幾つかの開発が進行中です。臨床試験登記簿Clinicaltrials.govによると、COVID-19サイトカインストームに有益かもしれないインドZydus Lifesciences社(元Cadila Healthcare社)のNLRP3インフラマソーム阻害経口薬ZYIL1の第I相試験2つが完了しています4,5)。参考1)Sefik E, et al. Nature. 2022 Apr 28. [Epub ahead of print]2)Immune system culprit in severe COVID cases found / Eurekalert3)Pan P, et al.Nat Commun. 2021 Aug 2;12:4664.4)A Clinical Study to Evaluate the Safety, Tolerability and Pharmacokinetics and Pharmacodynamics of ZYIL1 Following Oral Administration in Healthy Volunteers. ClinicalTrials.gov Identifier: NCT047313245)Clinical Study to Evaluate the Safety, Tolerability and Pharmacokinetics and Pharmacodynamics of ZYIL1 Following Oral Administration in Healthy Volunteers. ClinicalTrials.gov Identifier: NCT04731324

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新型コロナ自宅死亡例は高齢者が多い/アドバイザリーボード

 4月27日に開催された政府の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで「新型コロナ患者の自宅での死亡事例に関する自治体からの報告について」が公開された。 本報告では、令和4年1月1日~3月31日までの間に自宅で死亡された5態様(例:自宅療養中に死亡、入院調整中などに死亡、死亡後に陽性確認など)の新型コロナウイルス感染症患者について、都道府県を通じ、年齢、基礎疾患、同居の有無、ワクチン接種歴、死亡に至るまでの経過などを調査、集計したもの。【死亡者の概要】対象者:計555人(男性352人、女性203人)1)死亡時の年齢構成:80代(55%)、70代(24%)、60代(10%)2)基礎疾患の有無:あり(64%)、なし(25%)、不明(11%)3)ワクチン接種歴:2回(39%)、不明(38%)、未接種(16%)4)単身・同居などの状況:家族などと同居(46%)、不明(40%)、単身(14%)5)死亡直前の診断時の症状の程度については、軽症・無症状が43.4%、中等症が7.0%、重症が2.2%、不明または死亡後の診断が47.4%6)生前に陽性が判明して自宅療養中に死亡した者は65.8%、死後に陽性が判明した者は34.2%7)発生届の届出日が死亡日よりも前であった事例が36.2%、発生届の届出日が死亡日と同日であった事例が39.8%、発生届の届出日が死亡日以降であった事例が24.0%8)自宅療養の希望ありが20.4%、希望なしが11.5%、不明者および死後に陽性が判明した者が68.1%【具体的な死亡事例について(抜粋)】・陽性が判明したが、本人や家族の意思により自宅療養を希望するケースがあった。・救急搬送の搬入時の検査で陽性が判明するケースがあった。・高齢であることや末期がんであることにより自宅での看取りを希望するケースがあった。・入院調整や宿泊療養の対象となるも、直後に死亡するケースがあった。・本人の意思により医療機関での受診や検査を希望しないケースがあった。 政府は、今後の対応として、保健・医療体制を強化しながら、オミクロン株の特徴を踏まえ、自宅療養者が確実に医療を受けることができる環境整備が重要であり、自宅療養者に対応する医療機関や発熱外来の拡充、重症化リスクのある患者を対象とした経口治療薬や中和抗体薬の迅速な投与体制の確保などの対応を実施していくことで、地域における医療体制の充実に取り組むとしている。【参考:各都道府県の自宅療養への取組事例(抜粋)】(健康観察の重点化)・陽性判明後、当日届出があった患者の携帯電話あてにショートメッセージで夜間などの緊急時連絡先などを知らせるようにした。また、固定電話のみの患者への連絡を優先するようにした。・保健所から電話連絡を取る対象を、重症化リスクの高い対象に重点化するため限定した。1月下旬からは40歳未満で基礎疾患などのない、ワクチン2回接種済みの方以外、2月上旬からは50歳未満で基礎疾患等の無い方以外の方に注力。(外注による休日対応)・自宅療養者と2日間連絡が取れなかった場合、平日のみ消防局職員の協力により自宅を訪問していたが、土日についても、別事業で委託している業者に訪問の協力を依頼することとし、毎日訪問できる体制に改めた。(看取りの対応)・コロナに感染する前から基礎疾患のため終末期で、家族が自宅での看取りを希望した場合には、在宅医、訪問介護と連携し、自宅看取りの対応を行った。

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COVID-19患者のリハビリテーション治療とその効果/厚生労働省

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により入院し、体力が落ちた中で患者のリハビリテーションはいつから開始するべきか、またその効果はどうなのだろう。 日本リハビリテーション医学会(理事長:久保 俊一)では、理事長声明を公開し、「新型コロナウイルス感染症の入院患者さんは狭い病室内への隔離によって運動量や活動量が低下しやすいために、隔離期間中であっても、発症早期から機能維持を目標とした適切なリハビリテーション治療を可能な限り実施していただきますよう、各医療機関での積極的な取り組みをお願いいたします。また、新型コロナウイルス感染症から回復した患者さんを受け入れる後方支援医療機関あるいは介護施設等でのリハビリテーション医療の継続とリハビリテーションマネジメントの実施を決して疎かにされませんようにお願いいたします」と早期からのリハビリテーション導入を推奨している。 また、4月13日に厚生労働省で開催された新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで「COVID-19感染患者に対するリハビリテーション治療」が報告されている。 この報告は、田島 文博氏(日本リハビリテーション医学会副理事長/和歌山県立医科大学リハビリテーション医学講座 教授)が自施設の取り組みも含め発表したものである。新型コロナウイルス感染症患者、リハビリで運動機能維持 COVID-19感染症患者に対するリハビリテーション医療の必要性として、2020年4月に全米保健機構(PAHO)が「COVID-19感染症患者には感染予防を徹底した上で、積極的なリハビリテーション治療が必要である。患者の活動性を低下させず、治療効果を最大限に引き出し、病床の有効利用と社会的資源の活用に繋がる」と提唱したこと、同年5月に日本リハビリテーション医学会の理事長声明で「急性期の集中治療室(ICU)での肺炎患者から回復期の身体・精神機能低下に対するリハビリテーション治療までリハビリテーション医療は不可欠」と提言のあったことを示した。また、2022年2月に、日本リハビリテーション医学会は「感染対策指針(COVID-19含む)」を発表し、さらなる安全なリハビリテーション治療の導入を勧めたほか、上述の理事長声明が4月に出されたことを示した。新型コロナウイルス感染症入院早期からのリハビリで転帰も良好 田島氏の所属する和歌山県立医科大学では、ICUで人工呼吸器にて治療している重症患者に対してもリハビリテーション治療を行っている。重要なことは、「身体を起こすこと」と「運動すること」だという。これは軽症・中等症患者でも同じで、分院では屋外での訓練を含め、運動療法を主体としたリハビリテーション治療も実施している。また、高齢者でもリハビリテーション治療を行えば、隔離期間が終わると同時に退院できると報告している。 中等症・軽症コロナ病棟のリハビリテーション治療実績について、同大学リハビリテーション科では、すべての患者をリハビリテーション科医師が診察し、必要と判断した場合にリハビリテーション治療を処方している。コロナ患者には、感染対策の教育を十分に行った療法士を担当とし、同科医師の指示に基づく、可及的長時間高負荷の運動療法中心を実施している。 実際、オミクロン株流行期におけるリハビリテーション診療に現状について、70歳以上の高齢者では94人が入院し、そのうちの88人(93.6%)にリハビリテーション治療が実施された。88人の転帰では、死亡者はなく、自宅・施設退院は79人(89.8%)、転院は9人(10.2%)だった。なお、院内感染はなかった。新型コロナウイルス感染症患者にリハビリ医療を導入する取り組み 田島氏は新型コロナウイルス感染症患者へのリハビリテーション医療導入のメッセージとして次の3項目を掲げている。1)コロナ医療においても、急性期からリハビリテーション医療を理解した医師が診察し、感染対策を指導された療法士がリハビリテーション治療を行えば、運動機能の低下は防げること。2)コロナ患者に対するリハビリテーション治療では急性期からの座位・立位訓練と運動療法が必須であること。3)コロナ医療において、リハビリテーション治療対応が困難な場合、可及的速やかにリハビリテーション治療可能な医療機関などに転院させること。

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新規抗体カクテル療法のAZD7442、コロナ発症予防にも有効/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防において、AZD7442はプラセボと比較して、有害事象の頻度は同程度でほとんどが軽度~中等度であり、症候性COVID-19の発生割合は有意に低いことが、米国・コロラド大学のMyron J. Levin氏らが実施した「PROVENT試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年4月20日号に掲載された。AZD7442は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染者のB細胞から分離された抗体由来の2つの完全ヒト型SARS-CoV-2中和モノクローナル抗体(tixagevimab、cilgavimab)の併用薬である。欧米5ヵ国の無作為化プラセボ対照比較試験 本研究は、COVID-19の予防におけるAZD7442の安全性と有効性の評価を目的とする進行中の二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2020年11月~2021年3月の期間に、5ヵ国(ベルギー、フランス、スペイン、英国、米国)の87施設で参加者の登録が行われた(英国AstraZenecaと米国政府の助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上で、COVID-19ワクチン接種への反応が不十分であるリスクが高い(年齢60歳以上、肥満、免疫不全状態、うっ血性心不全、慢性閉塞性肺疾患、慢性腎不全、慢性肝疾患など)、またはSARS-CoV-2への曝露リスクが高い地域や環境にある(医療従事者、食肉加工などの工場労働者、軍関係者、寮生活の学生など)、あるいはこれら双方に該当し、スクリーニング時に血清を用いた臨床現場即時検査でSARS-CoV-2陰性の集団であった。 被験者は、1日目にAZD7442 300mgの単回投与(tixagevimabとcilgavimabを別個に連続して筋肉投与)を受ける群またはプラセボ群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。 安全性の主要エンドポイントはAZD7442投与後の有害事象の発生であり、有効性の主要エンドポイントはAZD7442投与後の症候性COVID-19(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法で確定されたSARS-CoV-2感染)とされ、183日間の経過観察が行われた。症状発現までの期間も長い 計5,197例(平均[±SD]年齢53.5±15.0歳、60歳以上43.4%、女性46.1%)が登録され、AZD7442群に3,460例、プラセボ群に1,737例が割り付けられた。ベースラインで、73.3%がCOVID-19ワクチン接種への反応が不十分であるリスクが高く、52.5%がSARS-CoV-2への曝露リスクが高いと判定され、77.5%は重症COVID-19への進展リスクが高い併存疾患を有していた。主解析は、参加者の30%が、自分が割り付けられた治療群を認識した時点で行われた。 少なくとも1件の有害事象を報告した参加者の割合は、AZD7442群が35.3%(1,221/3,461例)、プラセボ群は34.2%(593/1,736例)で、重症度はほとんどが軽度~中等度であった。とくに注目すべき有害事象のうち最も頻度が高かったのは、注射部位反応(AZD7442群2.4%、プラセボ群2.1%)であった。また、重篤な有害事象の発生率は両群で同程度だった(1.4%、1.3%)。 8例(両群4例ずつ)が死亡した。プラセボ群の2例はCOVID-19による死亡とCOVID-19関連の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)による死亡だった。違法薬物の過剰摂取による死亡が両群に2例ずつ含まれ、AZD7442群では心筋梗塞と腎不全による死亡が1例ずつみられた。 一方、症候性COVID-19の発生割合は、AZD7442群が0.2%(8/3,441例)と、プラセボ群の1.0%(17/1,731例)に比べ有意に低かった(相対リスク減少率:76.7%、95%信頼区間[CI]:46.0~90.0、p<0.001)。長期の追跡(中央値で6ヵ月)における相対リスク減少率は82.8%(95%CI:65.8~91.4)であった。 severe/critical(肺炎または低酸素血症がみられ、WHO Clinical Progression Scaleのスコアが5点以上)のCOVID-19は、AZD7442群では認められず、プラセボ群では5例にみられた。 AZD7442の有効性は、すべてのサブグループで一貫して認められた。また、症状発現までの期間は、AZD7442群がプラセボ群よりも長かった(ハザード比:0.17、95%CI:0.08~0.33)。 著者は、「これらのデータは、COVID-19の免疫予防薬としてのAZD7442の使用を支持するものである」とまとめ、「本試験の臨床および薬物動態の評価は少なくとも12ヵ月間継続される見込みである。また、緊急使用許可(EUA)の下で、免疫不全状態の集団における免疫予防薬としての本薬の有効性を評価する試験も進行中である」としている。

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IDH1変異陽性AML、ivosidenib併用でEFS延長/NEJM

 イソクエン酸脱水素酵素1(IDH1)をコードする遺伝子に変異のある急性骨髄性白血病と新たに診断された患者の治療において、ivosidenibとアザシチジンの併用療法はプラセボとアザシチジン併用と比較して、無イベント生存期間(EFS)を有意に延長し、発熱性好中球減少症や感染症の発現頻度は低いものの好中球減少や出血は高いことが、スペイン・Hospital Universitari i Politecnic La FeのPau Montesinos氏らが実施した「AGILE試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2022年4月21日号で報告された。20ヵ国155施設の無作為化プラセボ対照第III相試験 研究グループは、IDH1変異陽性急性骨髄性白血病の治療における、アザシチジン治療へのivosidenib追加の安全性と有効性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験を行い、2018年3月~2021年5月の期間に、20ヵ国155施設で参加者を登録した(Agios PharmaceuticalsとServier Pharmaceuticalsの助成を受けた)。 対象は、18歳以上、新規のIDH1変異陽性急性骨髄性白血病と診断され、強力な導入化学療法が適応とならず、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)performance-statusスコア(0~4点、点数が高いほど機能障害度が高い)が0~2点の患者であった。 被験者は、ivosidenib(500mg、1日1回、経口投与)+アザシチジン(75mg/m2体表面積、28日サイクルで7日間、皮下または静脈内投与)、またはプラセボ+アザシチジンの投与を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントはEFSであり、無作為化の時点から、治療不成功(24週までに完全寛解が達成されない)、寛解後の再発、全死因死亡のいずれかまでの期間と定義された。完全寛解、客観的奏効、IDH1変異消失の割合も良好 146例が登録され、ivosidenib群に72例(年齢中央値76.0歳[範囲:58.0~84.0]、女性42%、二次性25%)、プラセボ群に74例(75.5歳[45.0~94.0]、49%、28%)が割り付けられた。 追跡期間中央値12.4ヵ月の時点におけるEFSは、ivosidenib群がプラセボ群に比べ有意に長かった(治療不成功、寛解後の再発、死亡のハザード比[HR]:0.33、95%信頼区間[CI]:0.16~0.69、p=0.002)。また、無イベント生存割合は、ivosidenib群が6ヵ月時40%、12ヵ月時37%で、プラセボ群はそれぞれ20%および12%と推定された。 追跡期間中央値15.1ヵ月時の全生存期間中央値は、ivosidenib群が24.0ヵ月と、プラセボ群の7.9ヵ月に比し有意に延長した(死亡のHR:0.44、95%CI:0.27~0.73、p=0.001)。 完全寛解の割合は、ivosidenib群が47%(95%CI:35~59)であり、プラセボ群の15%(8~25)よりも高率だった(オッズ比[OR]:4.8、95%CI:2.2~10.5、p<0.001)。また、完全寛解の期間中央値はそれぞれ未到達(95%CI:13.0~評価不能)および11.2ヵ月(95%CI:3.2~評価不能)、12ヵ月時の完全寛解割合は88%および36%、完全寛解までの期間中央値は4.3ヵ月(範囲:1.7~9.2)および3.8ヵ月(1.9~8.5)であった。 客観的奏効(完全寛解、血球数の回復を伴わない完全寛解、部分寛解、形態学的に白血病ではない状態)の割合は、ivosidenib群が62%(95%CI:50~74)と、プラセボ群の19%(95%CI:11~30)に比べ有意に高かった(OR:7.2、95%CI:3.3~15.4、p<0.001)。奏効期間中央値は、それぞれ22.1ヵ月(95%CI:13.0~評価不能)および9.2ヵ月(6.6~14.1)だった。 完全寛解または部分的な血球数の回復を伴う完全寛解の検体におけるIDH1変異消失の割合は、ivosidenib群が52%、プラセボ群は30%であり、骨髄単核細胞からのIDH1変異消失のデータがある患者におけるIDH1変異消失を伴う完全寛解の割合は、それぞれ33%および6%(p=0.009)であった。 全グレードの有害事象は、両群で貧血(ivosidenib群31%、プラセボ群29%)、発熱性好中球減少(28%、34%)、好中球減少(28%、16%)、血小板減少(28%、21%)、悪心(42%、38%)、嘔吐(41%、26%)の頻度が高く、出血イベント(41%、29%)と感染症(28%、49%)も高頻度に認められた。Grade3以上の有害事象では、貧血(25%、26%)、発熱性好中球減少(28%、34%)、好中球減少(27%、16%)、肺炎(23%、29%)、感染症(21%、30%)の頻度が高かった。全グレードの分化症候群は、14%および8%に認められた。 著者は、「ivosidenib+アザシチジン併用療法は、優れたIDH1変異消失割合とともに持続的で深い奏効をもたらし、健康関連QOLや輸血依存離脱も良好であったことから、変異型IDH1蛋白を標的とする治療の有用性が明らかとなった」とまとめ、「今後、ベネトクラクスをベースとする治療との比較や、これらのレジメンの併用を評価する試験が期待される」としている。

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コロナ外来患者に処方される抗菌薬、何が多い?/JAMA

 抗菌薬の使用は新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)を含むウイルスに対し、効果のない治療法であることは自明である。そこで、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)のSharon V Tsay氏らは新型コロナ外来の高齢者に対する抗菌薬の処方状況を調査した。その結果、メディケア被保険者の新型コロナ外来患者の30%に抗菌薬が処方されており、そのうち50.7%がアジスロマイシンであったことも明らかになった。JAMA誌オンライン版2022年4月8日号にリサーチレターとして掲載された。 本研究は医療保険メディケアのキャリアクレームとパートDのイベントファイルを使用し、新型コロナ外来患者の診察とそれに関連して抗菌薬を処方された65歳以上の被保険者を特定。また、年齢、性別、人種、処方場所ごとに、抗菌薬を「処方された」または「処方されなかった」新型コロナ感染した被保険者の分布を比較するために、カイ二乗検定を行った。 主な結果は以下のとおり。・2020年4月~2021年4月の期間、116万9,120例が外来受診し、そのうち34万6,204例(29.6%)に抗菌薬が処方されていた。処方量は月ごとに異なり、新型コロナが感染拡大した2020~21年の冬にはその処方割合は高くなった(範囲:17.5%[2020年5月]~33.3%[2020年10月])。・処方は病院の救急外来が最も高く(33.9%)、次に遠隔診療(28.4%)、Urgent care*(25.8%)、診療所(23.9%)と続いた。・最も頻繁に処方された抗菌薬はアジスロマイシン(50.7%)であり、次にドキシサイクリン(13.0%)、アモキシシリン(9.4%)、レボフロキサシン(6.7%)だった。・アジスロマイシンの処方割合が最も高かったのはUrgent care(60.1%)で、遠隔医療(55.7%)、診療所(51.5%)、病院の救急外来(47.4%)と続いた。・年齢、性別、処方場所にも違いが観察された。・非ヒスパニック系白人患者には、ほかの人種および民族グループ(アメリカインディアン/アラスカ先住民24.1%、アジア/太平洋諸島人26.5%、黒人またはアフリカ系アメリカ人23.2%、ヒスパニック系28.8%)よりも頻繁に新型コロナに対して抗菌薬が処方されていた(30.6%)。*Urgent care:急病診療所。かかりつけの医師やクリニックが閉まっている場合に利用する施設 なお、研究者らは「新型コロナ治療にアジスロマイシンの利点は示されていないうえ、抗菌薬の耐性に影響を及ぼす。また、本研究は米国全人口やメディケア処方薬の適用範囲ではない65歳以上の集団を代表するものではないかもしれないが、外来患者での抗菌薬の処方を適正化し、高齢者集団における新型コロナのようなウイルス感染症に対する不要な抗菌薬の使用を回避することの重要性を強調する」としている。

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第28回 原因は1つとは限らない【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)検査で異常値をみつけたからといって今回の原因とは限らない。2)検査で異常が認められないからといって異常なしとは限らない。3)症状を説明し得るか、結論付ける前に再考を!【症例】81歳男性。意識障害自宅で反応が乏しいところを仕事から帰宅した息子が発見し救急要請。●受診時のバイタルサイン意識20/JCS血圧148/81mmHg脈拍92回/分(整)呼吸18回/分SpO295%(RA)体温36.1℃瞳孔4/3.5 +/+既往歴認知症、高血圧、脂質異常症、便秘、不眠内服薬ドネペジル塩酸塩、トリクロルメチアジド、アトルバスタチンカルシウム水和物、酸化マグネシウム、ゾルピデム酒石酸塩所見顔面の麻痺ははっきりしないが、左上肢の運動障害あり検査の異常が今回の原因とは限らない採血、心電図、X線、CTなどの検査を行い異常がみつかることは、よくあります。特に高齢者の場合にはその頻度は高く、むしろまったく検査に異常が認められないことの方が多いでしょう。しかし、異常を認めるからといって今回の主訴の要因かというとそんなことはありません。腎機能障害、肝機能障害、貧血、電解質異常、中には急を要する場合もありますが、症状とは関係なく検査の異常が認められることはよくあるものです。そのため、検査結果は常に病歴や身体所見、バイタルサインを考慮した結果の解釈が重要です。以前から数値や所見が変わっていなければ、基本的には今回の症状とは関係ないことが多いですよね。慢性腎臓病患者のCr、Hb、心筋梗塞の既往のある患者の心電図など、けっして正常値でありません。急性の変化か否かが、1つのポイントとなりますので、以前の検査結果と比較することを徹底しましょう。検査で異常が認められないから原因ではないとは限らないコロナ禍となり早2年が経過しました。抗原検査、PCRなど何回施行したか覚えていないほど、皆さんも検査の機会があったと思います。抗原陰性だからコロナではない、PCR陰性だからコロナではない、そんなことないことは皆さんもよく理解していると思います。頭痛患者で頭部CTが陰性だからクモ膜下出血ではない、肺炎疑い患者でX線所見陰性だから肺炎ではない、CRPが陰性だから重篤な病気は否定的、CO中毒疑い患者の一酸化炭素ヘモグロビン(CO-Hb)が正常値だからCO中毒ではないなど、例を挙げたらきりがありません。皆さんも自身で施行した検査結果で異常の1つや2つ、経験ありますよね?!原因が1つとは限らない今回の症例の原因、皆さんは何だと思いますか? もちろんこれだけでは原因の特定は難しいかもしれませんが、高齢男性の急性経過の意識障害で麻痺もあるとなると脳梗塞や脳出血などの脳卒中が考えやすいと思います。低血糖や大動脈解離、痙攣なども“stroke mimics”の代表であるため考えますが、例えばMRI検査を実施し、画像所見が光っていたらどうでしょうか? MRIで高信号な部分があるのであれば、「原因は脳梗塞で決まり」。それでよいのでしょうか?脳梗塞の病巣から症状が完全に説明できる場合にはOKですが、「この病巣で意識障害来すかな…」「こんな症状でるのかなぁ…」こんなことってありますよね。このような場合には必ず「こんなこともあるのだろう」と思考停止するのではなく、他に症状を説明し得る原因があるのではないかと再考する必要があります。この患者さんの場合には、脳梗塞に加え低栄養状態に伴うビタミン欠乏、ゾルピデム酒石酸塩による薬剤性などの影響も考えられました。ビタミンB1欠乏に伴うウェルニッケ脳症は他疾患に合併することはけっして珍しくありません1)。また、高齢者の場合には「くすりもりすく」と考え、常に薬剤の影響を考える必要があります。きちんと薬は飲んでいるのに…患者さんが訴える症状が、内服している薬剤によるものであると疑うのは、どんなときでしょうか?新規の薬剤が導入され、その後からの症状であれば疑うことは簡単です。また、用法、用量を誤って内服してしまった場合なども、その情報が得られれば薬剤性を疑うのは容易ですよね。意外と見落とされがちなのが、腎機能や肝機能の悪化に伴う薬効の増強や電解質異常などです。フレイルの高齢者は大抵の場合、食事摂取量が減少しています。数日の単位では大きな変化はなくても、数ヵ月の単位でみると体重も減少し、食事だけでなく水分の摂取も減少していることがほとんどです。そのような場合に、「ご飯は食べてますか?」と聞くだけでは不十分で、具体的に「何をどれだけ食べているのか」「数ヵ月、半年前と比較してどの程度食事摂取量や体重が変化したか」を確認するとよいでしょう。「ご飯は食べてます」という本人や家族の返答をそのまま鵜呑みにするのではなく、具体的に確認することをお勧めします。骨粗鬆症に対するビタミンD製剤による高Ca血症、利尿薬内服に伴う脚気心、眠剤など、ありとあらゆる薬の血中濃度が増加することに伴う、さまざまな症状が引き起こされかねません。薬の変更、追加がなくても「くすりもりすく」を常に意識しておきましょう。最後に高齢者は複数の基礎疾患を併せ持ち、多数の薬剤を内服しています。そのような患者が急性疾患に罹患すると検査の異常は複数存在するでしょう。時には検査が優先される場面もあるとは思いますが、常にその変化がいつからのものなのか、症状を説明しうるものなのか、いちいち考え検査結果を解釈するようにしましょう。1)Leon G. Clinicians Who Miss Wernicke Encephalopathy Are Frequently Called Defendants. Toxicology Rounds. Emergency Medicine News. 2019;41:p.14.

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新型コロナ第6波の年代別・ワクチン接種回数別の重症化率と致死率

新型コロナ第6波における年代別・ワクチン接種回数別の重症化率と致死率010歳未満240.02006810<重症化率>012%210歳未満00010代00020代00030代00000020代00030代0.030040代0.090.05040代0.090.01050代0.500.11050代0.170.02060代70代1~2回接種3回接種0.470.310.9580代90代以上1.942.150.9760代1.7270代3.836.269.7690代以上810%未接種1~2回接種3回接種0.630.220.311.140.6380代7.623.676<致死率>10代未接種42.001.790.976.633.155.959.33協力の得られた石川県・茨城県・広島県のデータを使用し、2022年1月1日~2月28日における新型コロナウイルス感染者11万9,109人を対象に年代別・ワクチン接種回数別に、3月31日時点の状況での重症化率と致死率を暫定版として算出厚生労働省:第80回(令和4年4月13日)新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード事務局提出資料「第6波における重症化率・致死率について(暫定版)」より作図Copyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

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5~11歳への新型コロナワクチンの副反応の頻度は?/厚生労働省

 厚生労働省の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会と薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会は、4月13日に合同会議を開催し、最新のワクチン(新型コロナウイルス感染症[COVID-19]を含む)の動向の報告が行われ、その内容が公表された。 とくにCOVID-19ワクチンの5~11歳への接種では、接種による副反応報告は医療機関からの報告が6件(0.0028%)、製造販売業者からの報告数が2件(0.0009%)だった(推定接種回数:21万5,368接種)。なお、重篤な副反応や死亡の報告はなかった。■副反応疑い報告の状況について・集計期間:2022年2月21日~3月20日・推定接種回数:1回目 21万5,368接種・副反応疑い報告:医療機関報告数 6(0.0028%)製造販売業者報告数 2(0.0009%)・副反応報告について医療機関、製造販売業者合わせて21件あり(4月1日現在)、いずれも軽快、回復している。(重篤度が重い2例)組織球性壊死性リンパ節炎(10歳・女)心筋炎、心膜炎、ウイルス性咽頭炎の所見(7歳・男)(重篤度が重くない症状など)血管迷走神経反射、異常感、嘔吐、苦悶感など 審議会では、上記の報告から小児ワクチン接種に関する論点として次の2点を提起し、今後も検討を行っていく。・小児(5~11歳用)ワクチン接種後の事例についても、国内外における報告状況を注視していくとともに、引き続き評価・分析を行っていく。また、最新の報告状況などを踏まえ、必要に応じ、周知・注意喚起を行っていく。・小児(5~11歳用)ワクチン接種後の報告状況についても、現時点においては、引き続き、ワクチンの接種体制に影響を与える程の重大な懸念は認められないと考えてよいか。※4月13日現在、5~11歳に適応承認がされているCOVID-19ワクチンはBNT162b2(Pfizer-BioNTech製)のみである。

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新型コロナ第6波の重症化率と致死率/厚生労働省

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第6波のピークアウトがあいまいな中で、すでに第7波の気配もみられている。陽性者数が一番多かった新型コロナ第6波では、どれくらいの重症化率、致死率だったのだろう。 4月13日に厚生労働省で開催された新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで「第6波における重症化率・致死率について(暫定版)」が資料として発表された。新型コロナ第6波の重症化率と致死率、11万9,109例を対象に算出 解析は石川県、茨城県、広島県のデータを使用し、2022年1月1日~2月28日の期間における新型コロナ感染者11万9,109人を対象とした。年齢階級別、ワクチン接種歴別に重症化率および致死率を暫定版として算出した。 新型コロナの重症者は、人工呼吸器使用、ECMO使用、ICUなどで治療のいずれかの条件に当てはまる患者と定義し、重症化率は、経過中重症に至ったが死亡とならなかった患者、重症化して死亡した患者、重症化せず死亡した患者の合計を感染者数で割ったもの、死亡者は、新型コロナの陽性者であって、死因を問わず亡くなった者とした。 解析の結果、60代から新型コロナの重症化率と致死率が上昇し、とくにワクチン接種がない場合は、40代からも上昇していた。【全体】(単位は%)10代未満:重症化率0.02 致死率0.0010代:重症化率0.00 致死率0.0020代:重症化率0.02 致死率0.0030代:重症化率0.01 致死率0.0040代:重症化率0.05 致死率0.0250代:重症化率0.12 致死率0.0360代:重症化率0.58 致死率0.2970代:重症化率2.03 致死率1.2380代:重症化率4.25 致死率3.6790代以上:重症化率6.48 致死率6.21【3回ワクチン接種歴あり】10代未満:重症化率0.00 致死率0.0010代:重症化率0.00 致死率0.0020代:重症化率0.00 致死率0.0030代:重症化率0.00 致死率0.0040代:重症化率0.00 致死率0.0050代:重症化率0.00 致死率0.0060代:重症化率0.31 致死率0.3170代:重症化率0.95 致死率0.6380代:重症化率2.15 致死率1.7990代以上:重症化率0.97 致死率0.97【ワクチン接種歴なし】10代未満:重症化率0.02 致死率0.0010代:重症化率0.00 致死率0.0020代:重症化率0.00 致死率0.0030代:重症化率0.03 致死率0.0040代:重症化率0.09 致死率0.0950代:重症化率0.50 致死率0.1760代:重症化率1.72 致死率0.6370代:重症化率3.83 致死率2.0080代:重症化率7.62 致死率6.6390代以上:重症化率9.76 致死率9.33※なお、これらの数字は2022年3月31日時点のステータスに基づき算出されており、今後重症者数や死亡者数は増加する可能性がある点に留意してほしいと注意を促している。

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国内コロナ患者の血栓症合併、実際の抗凝固療法とは/CLOT-COVID Study

 国内において、変異株により感染者数の著しい増加を認めた第4波以降に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患した際の血栓症の合併頻度や予防的抗凝固療法の実態に関するデータが不足している。そこで尼崎総合医療センターの西本 裕二氏らは国内16施設共同で後ろ向きコホート研究を実施した。その結果、とくに重症COVID-19患者で予防的抗凝固療法が高頻度に行われていた。また、血栓症の全体的な発生率は実質的に低いものの、COVID-19が重症化するほどその発生率は増加したことが明らかになった。ただし、画像検査を受けた患者数が少ないため実質的な発生率が低く見積もられた可能性もあるとしている。Journal of Cardiology誌オンライン版2022年4月5日号掲載の報告。 研究者らが実施したCLOT-COVID Study(日本におけるCOVID-19患者での血栓症・抗凝固療法の診療実態を明らかにする研究)は、2021年4~9月に国内16施設でPCR検査によりCOVID-19と診断された入院患者を登録した後ろ向き多施設共同研究で、第4波と第5波でのCOVID-19患者の血栓症の合併頻度や予防的抗凝固療法の実態を把握することなどを目的に実施された。対象者は予防的抗凝固療法の種類と用量に応じて7グループ(予防用量の未分画ヘパリン[UFH]、治療用量のUFH、予防用量の低分子ヘパリン[LMWH]、治療用量のLMWH、直接経口抗凝固薬[DOAC]、ワルファリン、その他)に分類された。 主な結果は以下のとおり。・COVID-19と診断されて入院したのは2,894例で、平均年齢(±SD)は53±18歳、男性は1,885例(65%)であった。また、平均体重(±SD)は68.9±18.5kg、平均BMI(±SD)は25.3±5.4kg/m2であった。・D-ダイマーが測定された患者(2,771例)の中央値は0.8μg/mL(四分位範囲:0.5~1.3)であった。・1,245例(43%)が予防的抗凝固療法を受け、その頻度は軽症9.8%、中等症61%、重症97%とCOVID-19の重症度が高くなるほど増えた。・抗凝固療法に使用された薬剤の種類や投与量は、参加施設間で大きく異なったが、予防用量UFHは55%(685例)、治療用量UFHは13%(161例)、予防用量LMWHは16%(204例)、治療用量LMWHは0%、DOACは13%(164例)、ワルファリンは1.5%(19例)、その他は1.0%(12例)で使用された。・入院中、下肢の超音波検査は38例(1.3%)、下肢の造影CTは126例(4.4%)が受け、55例(1.9%)で血栓症を発症した。そのうち39例(71%)は静脈血栓塞栓症(VTE)で、VTE診断時のD-ダイマーは18.1μg/mL(四分位範囲:6.6~36.5)、入院から発症までの日数の中央値は11日(四分位範囲:4〜19)であった。・血栓症の発生率は、軽症0.2%、中等症1.4%、重症9.5%とCOVID-19が重症化するにつれて増加した。・57例(2.0%)で大出血が発生した。・158例(5.5%)が死亡し、その死因の81%はCOVID-19肺炎による呼吸不全であった。 研究者らは、COVID-19入院患者への予防的抗凝固療法は重症例になるほど高頻度に行われていたが、治療方針が参加施設間で大きく異なっており、各施設の判断や使用可能な薬剤が異なっていた可能性を示唆した。また今後、国内のCOVID-19患者に対する至適な予防的抗凝固療法についてその適応や抗凝固薬の種類、用量を明らかにすべく、さらなる研究が望まれると結んだ。

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ファイザー製ワクチン4回目、オミクロン株への予防効果は/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のB.1.1.529(オミクロン変異株)の流行中に行った新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンのBNT162b2(Pfizer-BioNTech製)の4回目接種は、3回のみ接種と比べて、SARS-CoV-2感染率およびCOVID-19重症化率を低下した。イスラエル・ワイツマン科学研究所のYinon M. Bar-On氏らが、オミクロン変異株流行中に同ワクチン4回目を接種した60歳以上125万人超を対象に行った試験の結果を報告した。イスラエルでは、2022年1月2日に、60歳以上を対象としたBNT162b2ワクチンの4回目接種を開始していた。NEJM誌オンライン版2022年4月5日号掲載の報告。対COVID-19感染・重症化予防効果を疑似ポアソン回帰で分析 研究グループはイスラエル保健省データベースを用いて、オミクロン変異株流行期間中(2022年1月10日~3月2日)にCOVID-19ワクチン4回目接種の対象だった60歳以上125万2,331人に関するデータを抽出・解析した。 感染率と重症COVID-19について、ワクチン4回目接種後8日以上経過した(4回接種)群と、3回のみ接種した(3回接種)群、また4回目接種後3~7日(4回接種早期)群を比較。発生率は疑似ポアソン回帰モデルを用い、年齢、性別、人口統計上の集団、暦日によって補正を行い推算した。重症COVID-19、3回接種群が4回接種群の3.5倍 補正前の重症COVID-19発生率は、4回接種群が1.5/10万人に対し、3回接種群は3.9/10万人、4回接種早期群は4.2/10万人だった。 疑似ポアソン回帰分析の結果、重症COVID-19の補正後発生率は、3回接種群が4回接種後4週経過群と比べて3.5倍(95%信頼区間[CI]:2.7~4.6)高かった。また4回接種早期群は、4回接種後4週経過群と比べて2.3倍(1.7~3.3)高かった。 3回接種群の同発生率は、4回目接種後2週経過群と比べても2.4倍(2.0~2.9)高かった。COVID-19重症化に対するワクチン予防効果は、4回目接種後6週間は減弱がみられなかった。 補正前の感染率は、4回接種群が177/10万人、3回接種群は361/10万人、4回接種早期群は388/10万人だった。補正後感染率は、3回接種群が4回接種後4週経過群と比べて2.0倍(95%CI:1.9~2.1)高く、4回接種早期群は4回接種後4週経過群よりも1.8倍(1.7~1.9)高かった。しかしながら、感染に対するワクチンの予防効果は、ワクチン接種後約4週間でピークに達し、その後は徐々に減弱し、8週後には感染リスクは3回接種群とほぼ同等だった。

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新型コロナ後遺症、多岐にわたる症状と改善時期/東京感染症対策センター

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第7波が懸念される中で新規の陽性患者だけでなく、COVID-19の後遺症の報告も医療機関で上がっている。厚生労働省は、2021年12月に「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(暫定版)」を作成し、全国の医療機関に診療の内容を示したところである。 今回、東京都は、3月24日に開催された東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議で「都立・公社病院の外来を受診した後遺症患者の症例分析」を発表した。これは、都の感染症に関する政策立案、危機管理、調査・分析などの感染症対策を行う東京感染症対策センター(東京iCDC)が取りまとめたもの。 分析の結果、症状では「倦怠感」「息切れ」「頭痛」などの症状が多く、出現時期も2週間未満での発症が多かった。 東京都では、HP上で後遺症の症状、体験談、相談窓口などを紹介する「新型コロナウイルス感染症 後遺症リーフレット」を作成・公開し、後遺症診療の啓発につとめている。調査の概要・対象:都立・公社病院のコロナ後遺症相談窓口から自院の外来受診につながった症例など、都立・公社病院の外来を受診した後遺症が疑われる患者の症例・期間:令和3年5月10日~令和4年1月28日に受診した症例・症例数:230例 年齢:50代、40代、30代の順 性別:男(60%)、女(40%) 重症度:軽症(54%)、不明(28%)、中等症I(8%)の順COVID-19後遺症の主訴の多くが倦怠感、息切れ、頭痛の3つ 次に調査結果の概要を示す。【1.後遺症の症状】・全症状(複数回答)倦怠感(93人)、息切れ(44人)、頭痛(38人)の順で多く、その他が128人・主症状(単一回答)倦怠感(52人)、息切れ(25人)、頭痛(23人)の順で多く、その他が49人・後遺症の症状の数(症例データ)1つ(35%)、2つ(27%)、3つ(27%)の順・訴える症状の数(相談窓口データ)2つ(34%)、1つ(30%)、3つ(19%)の順 症状は上位3つの主訴が多いが、「その他」も多く、多岐にわたる症状が多い。また、全体の65%が2つ以上の症状を訴えていたことが判明した。【2.後遺症の出現時期と改善状況】・後遺症の出現時期[発症からの期間](n=213)2週間未満(116人)、2週間以上1ヵ月未満(46人)、1ヵ月以上3ヵ月未満(40人)の順・直近受診日における改善状況(n=125)改善(68人)、症状継続(54人)、他院紹介(3人)の順 全体の約54%がCOVID-19発症から2週間未満であり、症状が継続していた。また、改善状況では全体の54%が直近受診日において改善していた。【3.治療・検査】 後遺症の治療法は確立されていないが、都立・公社病院では、症状に応じた検査・薬の処方など、対症療法を行っている。(1)倦怠感(n=52)・検査:血液検査(33人)、胸部X線(17人)、脳・頭部MRI(14人)など・治療:漢方薬(23人)、抗うつ薬(5人)、解熱鎮痛薬(4人)など(2)息切れ(n=25)・検査:胸部X線(20人)、血液検査(14人)、心電図(8人)など・治療:漢方薬(4人)、解熱鎮痛薬(4人)、咳止め薬(4人)など(3)頭痛(n=23)・検査:血液検査(16人)、脳・頭部MRI(9人)、心電図、胸部X線(ともに7人)など・治療:解熱鎮痛薬(9人)、漢方薬(4人)など 改善時期では、倦怠感が発症から1~3ヵ月、3~6ヵ月がほぼ同じ割合で多く、息切れは1~3ヵ月、頭痛は3~6ヵ月の回答が多かった。 東京iCDCは、以上の結果から「時間の経過とともに改善がみられる事例がある一方で、コロナ罹患時よりも重い症状となる事例、症状が長期に遷延し、仕事などを休まざるをえない事例もみられた。コロナ発症時から1~2ヵ月以上症状が継続するなど、後遺症が疑われる場合は、無理な活動は避け、かかりつけの医療機関や相談窓口などへ相談をしてほしい」と結んでいる。

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こういうランダム化比較試験は仕方ない?(解説:後藤信哉氏)

 日本ではランダム化比較試験の多くが薬剤の臨床開発の一環としての治験として行われている。治験でないランダム化比較試験には薬を売るためのseeding trial(種まき試験)が多い。企業の利益と臨床試験が直結するため、規制当局による厳格な規制がなければ資本は何をするかわからない。 経済利益と直結する臨床試験と異なり、本研究は新型コロナウイルスという脅威にさらされた人類の治療法探索の一環として施行された研究である。新型コロナウイルス感染は血栓症のリスクを増やす。血栓イベント予防効果のある抗血小板薬は感染症の予後を改善するかもしれないとの仮説が検証された。 筆者は知らなかったが、世界には肺炎の予後改善を目指したREMAP-CAP試験という各種薬剤の効果を検証する継続的なランダム化比較試験の基盤があるらしい。本研究では新型コロナウイルス肺炎にてICU入院あるいは機械的補助循環・呼吸を要した重症例1,557例を対象とした。試験のendpointは登録後21日以内の機械的補助循環・呼吸を外れた日数とした。日数-1は死亡、日数22は無事退院となる。ランダム化はオープンラベルでアスピリン・P2Y12阻害薬使用ないし不使用である。 重篤な出血は増えるようだが、生存できる可能性は抗血小板薬を使ったほうがよい方向に見えるが統計学的に差異はなかった。1,400例以上集めても差がなかったことが示された。論文の著者はREMAP-CAP Writing Committee for the REMAP-CAP Investigatorsで個人ではない。人類のために能力のあるものが臨床試験にて医療のシステム的改善にチャレンジするとのランダム化比較試験のお手本のような例だと筆者は思う。

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