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第121回 「コロナ検査で陽性でも治療方針は変わらない」-NHK党・浜田氏に聞く(前編)

先日の参議院選挙直前に各党の政策をやや斜に構えて紹介(第115回、第116回)したが、その際私が一番驚いたのはNHK党の新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)対策だった。なんせ同党は党首の立花 孝志氏が「NHKをぶっ壊す!」と、いつもながらに標的のNHKの政見放送で叫ぶ強烈さが頭を離れず、どうしてもシングル・イシューの政党のイメージが強かった。その意味でこの公約を読んだ私は、半ば「鳩が豆鉄砲を食らった」ような状態だった。本連載記事では、「誰か新たなブレーンが入ったのだろうか?」と書いていたが、直後に政治界隈に詳しい知り合いから、「あれはたぶん浜田さんが作ったものじゃないか」という情報が入ってきた。同党は2019年参議院選挙の比例代表で初めて1議席を獲得し、立花氏が晴れて国会議員になったが、なんとその3ヵ月後、立花氏は参議院埼玉選挙区の補欠選挙に出馬するとして辞職。その結果、同党からは繰り上げ当選者が発生した。「浜田さん」とは、この時繰り上げ当選者となった浜田 聡氏である。浜田氏の同参議院議員選挙での個人得票は9,308票。参議院比例代表当選者では史上2番目に少ない得票で議員に就任した。その後は同党の政策調査会長に就任している。率直に言うと、私は浜田氏のことはまったくフォローしていなかったが、情報を得た後に調べると東京大学卒業後、京都大学医学部医学科に再受験で入学し、2011年卒業。政治家になる前は放射線科医として働いていたという。前述の政治界隈事情通から浜田氏のことを聞いた直後、同党が毎週金曜日に開催している定例記者会見への参加を模索していた。参議院選投開票の前週金曜日は東京を不在にしていたため、投開票2日前の会見に出席するつもりだった。ところがご存じのようにその前日、奈良県で安倍 晋三元首相が凶弾に倒れる事件があり、そちらへの対応でてんてこ舞になってしまった(一応、医療ジャーナリストを名乗りながらも国際紛争やテロもカバーしているため)。その最中、本連載の担当編集者から、なんと浜田氏から私宛に同党の政策を評価してもらえたことの謝辞メールが届いたことを知った。それによると今回の政策は昨年末の衆議院選挙最中に浜田氏が作成して発表したものを一部改変したもので、たまたま私が同党ホームページを見た時にはなかったのだろうとの説明が記されていた。謝辞メールには浜田氏のメールアドレスも記載してあったが、私は記者根性の一端でやっぱり直撃しようと7月22日の同党定例会見に向かい、そこで初めてこの件について質問した。これは同党が配信するyoutube動画(私の質問は49:38ぐらいから)でも配信されている。もっとも会見という時間の制約がある現場でもあったため、浜田氏の説明は極めて簡潔なもの。そこで改めてインタビューをお願いし、参議院議員会館で話を聞いた。今回と次回の2回に分けて報告したいと思う。NHK党・浜田氏×医療ジャーナリスト・村上氏今回の公約でマスク外しを提唱された背景を教えてください。(インタビューは屋内であるため、浜田氏も私もこの時はマスクを着用)マスク外しに関しては後藤厚労相の発言がありますが、それ以前から厚生労働省は「屋外やリスクの低い環境でマスクを外して良い」と言っていたはずです。しかし、ご存じの通り、現状で外を歩けばそうした人は全然いないと言っても良い状態です。その意味では政治の側からもリスクの低い屋外などで積極的にマスクを外していきましょうという主張があっていいはずです。過去に曲がりなりにも政治の立ち位置からそのような主張をしていたのは、私の知る限り、以前NHK党から参議院選挙に立候補し、その後、国民主権党を自ら設立した平塚 正幸さんぐらいでしょう。彼の主張は周囲から白眼視されていますし、私も若干そういう目で見ていたところはありますが。そうした観点で、公約を発表した昨年衆議院議員選挙時や先日の参議院選挙時は感染状況がかなり落ち着いていたこともあり、公約の中に入れました。炎天下の中、多くの人がマスクを外さず屋外を闊歩する状況を浜田さんはどのように分析されていますか?一度始めた習慣が定着し、マスクを外すという行動に至り難くなっているのではないでしょうか。日本人の特性と言って切って良いかはさまざまな意見があるでしょうが、個人的には良くも悪くも日本人らしいと考えています。政治家が呼びかけることで一般人の行動変容は起こるでしょうか?効果の程は、正直私もわかりかねます。呼びかけの主体が自民党である場合とわれわれNHK党である場合でもかなり状況が異なるとは思います。ただ、最大与党の自民党がそうした呼びかけをしないのなら、リスクの低い局面でのマスク外しをわれわれが主張をする意味はあると思っています。一方、NHK党は「検査の意義を考慮した上で、無駄な検査や害となりうる検査拡充に警鐘を鳴らす」とPCR検査などの検査拡充に異議を唱えています。多くの政党がむしろ検査拡充を訴える中で目を引きました。参議院選挙後に起きた現在の第7波の最中では検査拡充の持つ意味はやや異なってきますが、まず検査について一般の方々の誤解が多いと感じています。医療者の立場からすれば、検査とは必ず白黒がはっきりするものではなく、限界があるというのが当然の認識です。しかし、一般の方々の多くはそのことを知らないのだろうという印象を持っています。私は2011年に医学部を卒業していますが、学部では臨床教育移行時にどのような場合に検査をすべきかについて、いわゆる「ベイズの定理」に基づき、事前確率の高さを基準に検査をすべきとの教育を受けました。ところが最近の国会での議論を見てると、率直に言って医師免許を有する比較的高齢の国会議員の方々がそうしたことを十分に理解されていない点にやや危機感を覚えます。事前確率で絞り込むことなしに闇雲に検査件数を増やせば、間違った検査結果も必然的に増加します。近年の医学教育を受けた自分としては、この点は国政の場でしっかりと伝えていくべきだと思っています。他方、一部の地方首長はこの検査の限界を理解して発言されています。国会で同じ方向で議論が進めば良いと願い、公約に入れさせていただいたのが経緯です。先ほど、第7波突入を念頭に置いた次元の変化に触れましたが、では第7波下の検査のあり方についてはどのようにお考えですか?まず陽性者の受け入れ態勢を一旦脇に置いて考えると、自治体によっては時に検査陽性率90%超というケースも報告されている現在は、理論上から言えば検査件数がまったく足りないことになるので、検査を拡充したほうが良いという判断になるでしょう。しかし、受け入れ態勢を含めて考えるとかなり厄介です。現在主流のオミクロン株(BA.5)の感染では、基本的に自宅療養をすれば良い方がほとんどです。しかし、一般の方は陽性と判定されれば、ほとんどの方が不安を抱えます。その結果、軽症患者が医療機関の外来に殺到しているという悩ましい状況が今現在です。政府は抗原検査キットの無料配布政策まで打ち出しました。一般の方々は興味本位も含め自分の感染有無を知りたい方が多いでしょうし、その気持ちもわかります。その気持ちに配慮した上で行われている政策であることは理解できます。しかし、医師でもある自分の考えは、検査結果次第で治療方針が変わるならば検査の意味はありますが、新型コロナの場合は重症化リスクのある人を除けば、陽性が確定しても特別な治療があるわけではありません。これは検査によって治療方針がほとんど変わらない事例の典型例とも言えます。今回の幅広い層への抗原検査キットや無料検査所の拡大は、こうした医学的視点が反映されていない政策です。私自身はどちらかといえばやらないほうが良いのではと思っています。現在も診療に従事されているとのことですが、その現場で第7波の影響を感じることはありますか?私自身は、放射線科医なので新型コロナの肺炎に至った患者さんのCT画像を見ることはありますが、現状はそうした事例は必ずしも多くはありません。また、勤務先の病院は新型コロナ患者で逼迫しているという状況でもないです。ただ一方で、友人や恩師の医師のSNSの投稿やコメントでは、軽症患者が殺到して混乱に陥っていること、また保健所も大変な状況にあることは認識しています。そうした中で、当事者たちからそろそろ全数把握は止めて、入院患者に限定した患者数把握で良いのではないかとの意見が出ていることも承知しています。私自身もその通りだと考えています。その意味では新型コロナに関しては従来から感染症法上の5類扱いにすべきという意見があります。この論調はデルタ株などに比べ感染力が強いわりに重症化リスクは低いと言われているオミクロン株に入れ替わってから、一般人を中心に勢いを増し、一方でこの点に慎重な医療従事者との溝が深まっている印象も受けます。私自身は新型コロナを感染症法上の5類扱いにするか否かについて、あまり強いこだわりはありません。そもそも5類に分類されている感染症の中でも現実の臨床現場での対応には差がつけられているように感じています。新型コロナについても同様で今後のワクチン接種の進展などに応じてケースバイケースで少しずつ緩やかに設定を進めていけば良いのではないでしょうか。もっとも一般の方々からすると、この5類か否かという議論はある意味わかりやすさもあるのでしょうし、議論すること自体を私は否定しているわけではありません。印象論になってしまいますが、この件に関して、厚生労働省は保健所が過度な負担を抱えていることを認識しているにもかかわらず、あまり現状を動かしたがっていないように感じています。この認識に立つと、厚生労働省の対応は以前から少し不思議ですね。もっともこの点も厚生労働省自体が未曽有のコロナ禍でなかなか身動きがとりにくい状況なのかもしれないと推察しています。次回は日本版CDCや日本版ACIP、ナースプラクティショナー導入を提唱した経緯やワクチン政策などについて浜田氏の考えを取り上げる予定である。

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AIがやって来た!【Dr. 中島の 新・徒然草】(438)

四百三十八の段 AIがやって来た!暑いですね。蝉もうるさいです。ところが、いつの間にか夜は秋の虫が鳴いています。虫の声を聞くと、少し物悲しい気にさせられるのはなぜでしょうか。大した成果もなく1年の半分以上が過ぎてしまった……。そんな後悔の念からくる寂しさかもしれません。さて、ウチの病院にもついにAI、いわゆる人工知能が導入されました。胸部レントゲンを読影してくれるのです。結節影、浸潤影、気胸を見つけては、赤黄緑青などのカラフルな色で表示してくれます。イメージとしては、ちょっと愛想のないSPECTみたいな感じです。これがルーチン的に画像上に表示されるのですが、結構、役に立つ気がします。救急外来での肺炎疑いの場合、「浸潤影かも?」と思うところに色が付いています。実は、私も胸部単純レントゲンの読影にはまったく自信がなかったので、これまでにいろいろな裏ワザを考案してきました。1つは、胸部CTで確認するもの。単純レントゲンで不明瞭でも、胸部CTならクッキリ見えることが多々あります。もう1つは、以前の画像と比較するもの。過去の胸部単純レントゲンがあれば、横に並べて立体視してみます。すると、新たに出現した浸潤影や結節影は浮かび上がって見えるので、この現象を活用してきました。ここにもう1つ加わった新たな裏ワザが、AIです。これで見落としの確率も格段に減るというもの。実際に何例か見たところでは……肺炎初期の浸潤影を指摘した。AIもあまり自信ないのか、緑~紫程度の表示でした。脱水があって不明瞭な段階の浸潤影を、うまく指摘していたと思います。20代の若い女性の結節影を指摘した。AIは自信満々で、赤で表示しました。拡大してみると、直径数ミリの丸いものがあります。年齢からして、肺がんの可能性はあまりないと思うのですが。後で放射線科の先生に確認してみたいと思います。でも、何もなさそう。現時点のAIには、全面的に頼ることはできません。が、徐々に信頼度が上がっていくのだと思います。我々医師も、正しい距離感でAIと付き合っていく必要がありますね。最後に1句暑くても ひたすら働く AIくん

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コロナ感染後の心筋梗塞・脳卒中発生率、ワクチン接種者vs.未接種者/JAMA

 韓国・国民健康保険公団(National Health Insurance Service)のKim Young-Eun氏らが、新型コロナウイルス感染後のワクチン接種状況と急性心筋梗塞(AMI)および虚血性脳卒中との関連を調査した。その結果、新型コロナ感染後の急性心筋梗塞および虚血性脳卒中の発生率の増加は、血栓症のリスク増加に関連しており、ワクチンを完全接種することでワクチン接種が感染後の二次合併症のうちAMIおよび虚血性脳卒中のリスク低下に関連していることが明らかになった。JAMA誌オンライン版2022年7月22日号リサーチレターに掲載。ワクチン接種状況によるコロナ感染後の急性心筋梗塞および虚血性脳卒中の発生率 研究者らはワクチン未接種者とワクチン完全接種者(mRNAワクチンまたはウイルスベクターワクチンを2回接種)の新型コロナ感染後の急性心筋梗塞および虚血性脳卒中の発生率を比較した。研究には韓国の全国新型コロナレジストリ(感染と予防接種に関する)と国民健康保険公団のデータベースが使用された。対象者は2020年7月~2021年12月に無症候性感染を含む新型コロナと診断された18歳以上の成人。主要評価項目は新型コロナの診断から31~120日後に発生した急性心筋梗塞と虚血性脳卒中による入院の複合アウトカムとした。 新型コロナウイルス感染後のワクチン接種状況と急性心筋梗塞および虚血性脳卒中との関連を調査した主な結果は以下のとおり。・研究期間中の新型コロナ患者59万2,719例のうち、23万1,037例が該当した。そのうち6万2,727例はワクチン接種を受けておらず、16万8,310例はワクチン完全接種をしていた。・ワクチン完全接種者は年齢が高く、併存疾患を有する者が多かった。その一方で、新型コロナの重症例はみられなかった。・複合アウトカムの発生は、ワクチン未接種群で31例、ワクチン完全接種群で74例であり、100万人日あたりの発生率はそれぞれ6.18と 5.49だった。また、調整ハザード比[aHR]は0.42(95%信頼区間[CI]:0.29~0.62)とワクチン完全接種群で有意に低かった。・急性心筋梗塞と虚血性脳卒中それぞれのaHRもワクチン完全接種群で有意に低かった(0.48[同:0.25~0.94]vs. 0.40[同:0.26~0.63]。・年齢区分で見た場合、40~64歳のaHRは0.38(同:0.20~0.74)、65歳以上では0.41(同:0.26~0.66)だった。・ただし、ワクチン接種者の転帰イベントリスクは全サブグループで観察されたものの、重症または重篤患者の一部では統計学的有意差が得られなかった。 本調査結果は「心血管疾患の危険因子を持つ人々へのコロナワクチン接種を支持する。しかし、患者の特徴にばらつきがあり、予防接種を受けるかどうかの決定には心血管リスクに関連する可能性のある複数の因子の影響を受ける」としている。コロナワクチン接種と心疾患 7月25日に開催された疾病・障害認定審査会 感染症・予防接種審査分科会でコロナワクチン接種と「死亡」との因果関係が初めて認められた1)。これまでもアナフィラキシーなどが理由で請求が認定されたのは850件にのぼるが、死亡一時金が支払われるのは今回が初めて。認定事例は90代女性で、死因は急性アレルギー反応と急性心筋梗塞。基礎疾患として脳虚血発作、高血圧症、心肥大を有していた。このようなニュースが報道されると心疾患のある方がコロナワクチン接種をためらってしまいそうだが、第7波の爆発的に感染が広がりいつ自分が感染してもおかしくない状況下では、上記の論文を踏まえ、ワクチンの推奨はやはり大切なのかもしれない。

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未接種者とブレークスルー感染者、臨床転帰と免疫の違いは?

 国内における新型コロナ感染流行の第7波においては、ワクチン接種後の感染、いわゆるブレークスルー感染も多数報告されている。ワクチン接種を受けた感染者の大半は軽症か無症状だが、入院を要する者もいる。ワクチン接種者またはワクチン未接種者で新型コロナ感染により重症化した患者について免疫および臨床的特徴を調べたイタリア・フローレンス大学のGiulia Lamacchia氏らの研究がJournal of Clinical Immunology誌2022年7月9日号オンライン版に掲載された。ワクチン未接種の新型コロナ感染者は有意に高い重症度指数を示した 本試験では、2021年11月~12月中旬のデルタ株の流行時に、イタリア・フィレンツェのカレッジ大学病院に入院した新型コロナウイルス感染症患者を、発症からの期間や重症度に関係なく対象とし、臨床データおよび検査データを収集した。ウイルスベクターまたはmRNAワクチンを完全接種した患者36例(うち4例はブースター接種まで完了)、ワクチン未接種者29例だった。最後のワクチン接種から感染までの平均時間は139±63日であった。 ワクチン接種者またはワクチン未接種者で新型コロナ感染により重症化した患者の症状を調べた主な結果は以下のとおり。・ワクチン接種群の平均年齢は73歳、ワクチン非接種群は67歳だった。入院時、ワクチン接種群は併存疾患がワクチン未接種群と比較して有意に多かった(平均4.3 vs. 2.9)。一方で、ワクチン未接種群はワクチン接種群と比較して血清フェリチン値、乳酸脱水素酵素(LDH)が有意に上昇していた。肺機能障害、他の炎症マーカー(反応性タンパク質、IL-6、Dダイマー)レベルについては両群間に有意差はなかった。・ワクチン未接種者群はワクチン接種群に比べ、有意に高い重症度指数を示した。肺炎の発症率はワクチン未接種群93%(27/29)に対し、ワクチン接種群69%(24/36)、死亡率はワクチン未接種群31%(9/29)、ワクチン接種群11%(4/36)であった。・ワクチン接種の有無にかかわらず、生存例(52例)と死亡例(13例)の入院時の抗SARS-CoV-2免疫を比較したところ、抗N IgGおよび抗S IgMは両群間に差がなかったが、抗S IgGおよび中和Igは生存例で有意に高かった(生存例は死亡例よりも高いレベルの抗S IgGとスパイク特異的CD4+T細胞を示した)。・新型コロナ感染入院時、65例中6例(9.2%)が高い抗IFN-α抗体価を示した。6例中の5例が男性で、女性は最年長者(90歳)のみであった。平均年齢は79歳で、他のコホートの平均年齢70歳よりも高かった。高抗IFN-α抗体保有者6例のうち、ワクチン未接種群の3例は死亡し、ワクチン接種群の3例は生存して退院した。 著者らは「ワクチン接種者はワクチン未接種者より入院前の身体状態が不良であったにもかかわらず、転帰は良好であった。抗SARS-CoV-2特異的免疫の迅速な活性化は、感染症の治癒のために不可欠であり、ワクチン接種による事前の免疫獲得は疾患の悪化防止に大きく貢献し、高リスク因子(高齢、合併症、抗IFN-α自己抗体)の存在さえも克服することが可能である」としている。

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コロナ禍で医療資源確保のために国民へのお願い/4学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第7波の流行拡大が深刻な様相を呈している。発熱外来には連日長蛇の受診者がならび診療予約の電話が鳴りやまない。また、救急搬送は大都市圏で稼働率9割を超え、受け入れ先医療機関の不足や長い待機時間などが大きな問題となっている。 こうした事態を鑑み、日本感染症学会(理事長:四柳 宏)、日本救急医学会(代表理事:坂本 哲也)、日本プライマリ・ケア連合学会(理事長:草場 鉄周)、日本臨床救急医学会(代表理事:溝端 康光)の4学会は連名で「限りある医療資源を有効活用するための医療機関受診及び救急車利用に関する4学会声明」を8月2日に急遽発表した。 声明では、COVID-19に罹患したと思われる際の個々人の行動について、軽症で重篤化リスクのない人については、自宅療養を勧めるとともに、救急車を利用する際の指針について示している。COVID-19かなと思ったら?【声明の4つのポイント】1)症状が軽い*場合は、65歳未満で基礎疾患や妊娠がなければ、あわてて検査や受診をする必要はありません。自宅療養を続けられます。この場合、新型コロナウイルス専用の特別な治療は行いません。医療機関での治療は、つらい発熱や痛みを和らげる薬が中心になり、こうした薬は薬局などで購入できます。限りある医療資源を有効活用するためにも、検査や薬のためにあわてて医療機関を受診することは避けてください。 *症状が軽いとは「飲んだり食べたりできる、呼吸が苦しくない、乳幼児で顔色が良い」2)症状が重い**場合や、37.5℃以上の発熱が4日以上続く場合、65歳以上の方や65歳未満でも基礎疾患がある方、妊娠中、ワクチン未接種の方などは、重症になる可能性があります。早めにかかりつけ医に相談してください。高熱が続くなど症状が長引いたり、重くなるようでしたら、かかりつけ医や近隣の医療機関へ必ず相談、受診(オンライン診療を含む)してください。 **症状が重いとは「水分が飲めない、ぐったりして動けない、呼吸が苦しい、呼吸が速い、乳幼児で顔色が悪い、乳幼児で機嫌が悪くあやしてもおさまらない」3)救急車を呼ぶ必要がある症状は、顔色が明らかに悪い、唇が紫色になっている、(表情や外見などが)いつもと違う、様子がおかしい、息が荒くなった、急に息苦しくなった、日常生活で少し動いただけで息苦しい、胸の痛みがある、横になれない、座らないと息ができない、肩で息をしている、意識がおかしい(意識がない)などがあります。このようなときには救急車を呼ぶことをためらわないでください。4)救急車の利用の目安については「救急車利用リーフレット(高齢者版、成人版、子供版)」をご活用ください。 判断に迷う場合には、普段からの体調を把握しているかかりつけ医への相談、各種相談窓口(行政などが設置している発熱相談窓口や♯7119などの救急安心センター・救急相談センター、♯8000)などの活用をしてください。7項目で診療集中の弊害を説明 上記の診療を受ける、救急車を利用する前のポイントを踏まえ、解説として7項目のCOVID-19のとくにオミクロン株に関する疾患情報やリスクの高い場合の対応を記している。以下に抜粋して示す。【オミクロン株にかかったときの自然経過】・オミクロン株への曝露があってから平均3日で急性期症状(発熱・喉の痛み・鼻水・咳・全身のだるさ)が出現するが、そのほとんどが2~4日で軽くなること。・COVID-19の検査を受けることは大切だが、検査を受けることができなくてもあわてないで療養(自宅での静養)することが大切。・重症化する人の割合は数千人に1人程度と推定(厚生労働省資料より)。【COVID-19を疑う症状が出た場合】・COVID-19の症状(発熱・のどの痛み・鼻水・咳・全身のだるさなど)が出た場合は、まず仕事や学校を休んで外出を避け、自宅療養を始める。【症状が軽く65歳未満で基礎疾患がない場合、妊娠中でない場合】・症状が軽く(飲んだり食べたりできて、呼吸が苦しくない、乳幼児で顔色が良い)、基礎疾患がない場合や妊娠がない場合は、検査や薬のためにあわてて医療機関を受診をする必要はない。・COVID-19専用の特別な治療は行わない。つらい発熱や痛みを和らげる薬(アセトアミノフェンなどの解熱鎮痛薬)が治療の中心で、このような薬は薬局など(ドラッグストアやインターネット販売も含む)で購入できる。・限りある医療資源を有効活用するためにも、検査を目的とした医療機関の受診は避ける。・市販の医療用抗原検査キットを使い、症状が出た翌日以降に自分で検査することもできるが、症状が出た当日に検査をすると新型コロナウイルスに感染しているのに陰性になる可能性が高いため、翌日以降の検査をお勧めする。【症状が重い、発熱が4日以上、65歳以上、基礎疾患がある場合、妊娠中の場合】・症状が重い(水分が飲めない、ぐったりして動けない、呼吸が苦しい、呼吸が速い、乳幼児で顔色が悪い、乳幼児で機嫌が悪くあやしても治まらない)場合や、37.5℃以上の発熱が4日以上続いている場合は、医療機関への受診(オンライン診療を含む)が必要。・たとえ症状が軽くても、65歳以上の方、基礎疾患がある方や妊娠中の方、ワクチン未接種の方などは、重症になる可能性があるので、早めにかかりつけ医に相談。・熱が続くなど症状が長引いたり、重くなるようだったら、かかりつけ医や近隣の医療機関に必ず相談、受診(オンライン診療を含む)。・次の主な重症化のリスク因子がある方は受診が必要。〔主な重症化のリスク因子〕65歳以上の高齢者/悪性腫瘍(がん)/慢性呼吸器疾患(COPDなど)/慢性腎臓病/糖尿病/高血圧/脂質異常症/心臓や血管の病気/脳梗塞や脳出血など脳血管の病気/高度肥満(BMIが30以上)/喫煙(ヘビースモーカーの場合)/固形臓器移植後の免疫不全/妊娠後期/免疫抑制・調整薬の使用/HIV感染症(参考:厚生労働省 新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き 第8.0版を改変)【医療機関への受診について】・医療機関に受診が必要な場合は、通常診療中の時間帯(平日の日中など)に、かかりつけ医や近所の医療機関に電話相談してから受診。【救急車の利用の目安について】・COVID-19により救急車を呼ぶ必要がある症状としては、顔色が明らかに悪い、唇が紫色になっている、(表情や外見などが)いつもと違う、様子がおかしい、息が荒くなった、急に息苦しくなった、日常生活で少し動いただけで息苦しい、胸の痛みがある、横になれない、座らないと息ができない、肩で息をしている、意識がおかしい(意識がない)などがある。このようなときには救急車を呼ぶことをためらわない。 以上、国民向けの内容であるが、外来診療などの際に患者さんにお伝えすることで、現在の診療への集中化の緩和につながればと期待する。

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第5回 発熱外来に飛び交う怒号

「何かあったら責任取ってくれるんですか」発熱患者さんが増えているということもあるのですが、「医療」よりも「診断」を求めて発熱外来を受診している人が多く、医学的に本来受診すべき人が満足に受診できない状況があるようです。雇用者が発熱外来の受診を指示したり、職場を休む場合に証明書が必要だったりすることもあり、非医学的な受診を求めるケースが相次いでいます。そのため、無症状や軽症者の受診を控えるよう呼び掛けている自治体もあります。濃厚接触者が自宅待機期間の解除のために発熱外来を利用するというのは、モラルハザードにもほどがあります。もちろん、待機解除を容認した政府や、記事で広めたわれわれのリスクコミュニケーションにも責任はあるかもしれません。しかし、鶴の一声で一気にそういう流れが進むわけではなく、発熱外来を受診できない人や、その待ち時間が長い人から、医療従事者に厳しい言葉が浴びせられています。国民皆保険制度の弊害なのか、自分や自分の家族が優先的に診てもらえないことに対して怒りが収まらず、「何かあったら責任取ってくれるんですか」などの言葉が、多忙な発熱外来ではお決まりのフレーズになってきました。パンデミック初期の頃は、PCR検査が全然普及しておらず、4日以上発熱が続く場合に病院を受診するという施策でした。若年者層ではそこまで肺炎のリスクは変わっていないので、あの時を思い出していただきたいと思います。陽性登録から療養までの仕組みづくりが急務まずは陽性であったときの報告を、感染者自身が行う仕組みを作る必要があります。厚労省は、自らが検査した陽性結果を自治体の健康フォローアップセンター等に登録し、外来受診を経ることなく迅速に療養につなげる仕組みを導入することを勧めるよう通達を出しています1)。実際にこれを導入している千葉県がモデルケースとして紹介されています(図)。画像を拡大する図. 千葉県の健康フォローアップセンター活用例千葉県新型コロナウイルス感染症検査キット配付・陽性者登録センターについて(2022年8月3日最終更新)より引用東京都も、これと似た運用を8月3日から開始しています2)。とはいえ、オンラインに慣れていない年齢層もあるため限界がありますが、My HER-SYS(新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム)から療養証明が取得できることを周知し3,4)、これを企業等が活用することが重要です。解決策はピークアウトを待つことか医療従事者の感染が増えています。発熱外来の医療従事者が感染すると、病棟のスタッフを応援に出す必要があるなど、真綿で首を絞められるような弊害が出てきます。とくに国公立病院は、すでに自治体から発熱外来の拡充を要請されていると思います。なおさら医療従事者としては感染しにくい状況にあり、危機感を持って診療に当たっているところも多いでしょう。8月中に訪れると予想される、いや、むしろそう祈っている流行曲線のピークアウトを待つしかないのかもしれません。早く来てください。参考文献・参考サイト1)千葉県新型コロナウイルス感染症検査キット配付・陽性者登録センターについて2)東京都福祉保健局 東京都陽性者登録センター3)厚生労働省 新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)4)My HER-SYSで療養証明書を表示する場合の方法

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コロナによる嗅覚・味覚障害が長期持続する人の割合~メタ解析/BMJ

 成人の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による嗅覚・味覚障害の長期持続者は、それぞれ5.6%と4.4%に認められ、女性は男性に比べ、両障害ともに回復しにくい傾向がみられるという。180日回復率は、嗅覚障害が95.7%、味覚障害は98.0%だった。シンガポール国立大学のBenjamin Kye Jyn Tan氏らによるシステマティック・レビューとメタ解析の結果で、「COVID-19患者のかなりの割合で、長期にわたり嗅覚や味覚に変化を生じる可能性があり、このことがlong COVID(罹患後症状、いわゆる後遺症)の負荷を増す可能性も示唆された」と述べている。BMJ誌2022年7月27日号掲載の報告。嗅覚と味覚障害を有するCOVID-19患者の観察研究を抽出 検討では、PubMed、Embase、Scopus、Cochrane Library、medRxivを創刊から2021年10月3日まで検索し、18歳以上で嗅覚または味覚障害を有するCOVID-19患者を対象にした観察研究を抽出した。time-to-event曲線を含む記述的予後研究と、予後因子に関する試験を分析対象とした。 データの抽出は2人のレビュアーがそれぞれ行い、試験のバイアスについてはQUIPS(Quality In Prognosis Studies)を、エビデンスの質(確実性)についてはGRADEを用いて評価し、さらにPRISMAとMOOSEの報告ガイドラインに従って解析した。 反復数値アルゴリズムを用いて、個別被験者データ(IPD)のtime-to-eventを再構築・統合し、distribution-free要約生存曲線(生存を維持した被験者の30日間隔で報告された回復率)を取得した。嗅覚・味覚障害持続者の割合を推算するために、プラトー生存曲線のWeibull non-mixture cureモデルからの治癒数をロジット変換し、2段階メタ解析でプールした。また従来の集計データのメタ解析により、予後因子と回復の補正前の関連性を調べた。 主要アウトカムは嗅覚または味覚障害が残る患者の割合、副次アウトカムは嗅覚・味覚の回復に関連する予後変数のオッズ比(OR)だった。嗅覚・味覚障害持続者の割合は5.6%と4.4% 4,180のレコードから18試験(被験者総数3,699例)を抽出し、IPDメタ解析を行った。バイアスリスクは、低~中等度で、エビデンスの質は中等~高度だった。 パラメトリック治癒モデルでは、全患者のうち自己申告による障害持続者の割合は、嗅覚が5.6%(95%信頼区間[CI]:2.7~11.0、I2=70%、τ2=0.756、95%予測区間[PI]:0.7~33.5)、味覚が4.4%(95%CI:1.2~14.6、I2=67%、τ2=0.684、95%PI:0.0~49.0)と推定された。感度分析では、この結果は過小評価である可能性が示唆された。 30日、60日、90日、180日時点の嗅覚回復率は、それぞれ74.1%(95%CI:64.0~81.3)、85.8%(77.6~90.9)、90.0%(83.3~94.0)、95.7%(89.5~98.3)だった(I2=0.0~77.2%、τ2=0.006~0.050)。同様に味覚回復率は、それぞれ78.8%(70.5~84.7)、87.7%(82.0~91.6)、90.3%(83.5~94.3)、98.0%(92.2~95.5)だった(I2=0.0~72.1%、τ2=0.000~0.015)。 女性は男性に比べ、嗅覚・味覚障害が回復しにくい傾向がみられた。嗅覚回復に関するORは0.52(95%CI:0.37~0.72、7試験、I2=20%、τ2=0.0224)、味覚回復に関するORは0.31(95%CI:0.13~0.72、7試験、I2=78%、τ2=0.5121)だった。嗅覚回復を困難にした要因としては、初期障害が重度であったこと(OR:0.48、95%CI:0.31~0.73、5試験、I2=10%、τ2<0.001)、鼻詰まり(0.42、0.18~0.97、3試験、I2=0%、τ2<0.001)が認められた。

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コロナとインフルワクチンの同時接種での副反応、ファイザー製vs.モデルナ製

 日本国内でも先日開催された厚生労働省の厚生科学審議会・予防接種・ワクチン分科会にて、新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種が了承された1)2)。世界ではすでに新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種を行う例もあり、米国・CDC COVID-19 Response TeamのAnne M Hause氏らが同時接種による有害事象の増加有無、ワクチンメーカーによる違いについて調査した結果、新型コロナワクチンのブースター接種とインフルエンザワクチンを同時接種した者は新型コロナワクチンのみを接種した者と比較して、接種後0~7日の全身反応の報告が有意に増加していたことが明らかになった。ただし、それらは軽度~中等度であること、また、同時接種による調整オッズ比[aOR]はファイザー製で1.08、モデルナ製で1.11であったことも示唆された。本研究はJAMA Network Open誌2022年7月15日号に掲載された。コロナとインフルエンザワクチンの同時接種の全身反応は軽度または中等度 研究者らは米国における新型コロナワクチンのブースター接種とインフルエンザワクチンを同時に接種した際の有害事象を評価するため、後ろ向きコホート研究を実施。用いたデータはv-safe*から収集したもので、12歳以上の2021年9月22日~2022年5月1日のワクチン接種後0〜7日目の情報(接種部位反応[注射部位疼痛]と全身反応[倦怠感、頭痛、筋肉痛…]および健康への影響)だった。新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種後7日間の全身反応のオッズ比を性別、年齢、ワクチン接種の週で調整し、新型コロナワクチンのブースター接種単独とインフルエンザワクチンとの同時接種を評価した。*v-safeとは、CDCが新型コロナワクチン接種プログラムのために特別に確立した安全監視システム。ワクチン接種後の個々の健康状態を把握するため、テキストメッセージとWebで調査するためのスマートフォンベースのツール。ワクチン接種後の最初の週に、登録者は局所注射部位と全身反応に関する調査を毎日行う。登録者は、欠勤の有無、日常生活の可否、症状が出現した場合に医療者からケアを受けたかなどを尋ねられる。 コロナワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種による副反応を調査した主な結果は以下のとおり。・v-safeに登録されている12歳以上98万1,099例のうち、9万2,023例(9.4%)が新型コロナワクチンのブースター接種とインフルエンザワクチン接種を同時に行った。女性が5万4,926例(59.7%)、男性が3万6,234例(39.4%)で、性別不明は863例(0.9%)だった。・年齢構成は、12〜49歳が3万7,359例(40.6%)、50〜64歳は2万3,760例(25.8%)、65〜74歳は2万4,855例(27.0%)、75歳以上は6,049例(6.6%)だった。・ワクチン接種翌週の回答によると、ファイザー製コロナワクチンとインフルエンザワクチンを同時接種したうちの3万6,144例(58.9%)と、モデルナ製コロナワクチンとインフルエンザワクチンを同時接種したうちの2万1,027例(68.6%)が全身反応を報告し、ほとんどの反応は軽度または中等度だった。・報告はワクチン接種の翌日が最も多く、その症状は倦怠感、頭痛、筋肉痛だった。ファイザー製コロナワクチンとインフルエンザワクチン同時接種群(6万1,390例)とファイザー製コロナワクチン単独群(46万6,439例)を比較した場合の報告割合は、接種部位反応(注射部位疼痛):62.2% vs.61.1%、疲労:44.2% vs.43.6%、筋肉痛:33.2% vs.33.4%、頭痛:33.7% vs.34.8%だった。一方、モデルナ製コロナワクチン群(3万633例)とインフルエンザワクチン同時接種群(42万2,637例)では、接種部位反応(注射部位疼痛):70.6% vs.67.4%、疲労:52.8 vs.48.9%、筋肉痛:43.6 vs.39.6%、頭痛:43.1 vs.40.3%だった。・コロナワクチンとインフルエンザワクチンを同時接種した場合のファイザー製とモデルナ製でのaORを算出したところ、さまざまな全身反応については、ファイザー製が1.08(95%信頼区間[CI]:1.06~1.10)、モデルナ製が1.11(同:1.08~1)だった。接種部位反応については、ファイザー製が1.10(同:1.08~1.12)、モデルナ製が1.05(1.02~1.08)だった。・さまざまな健康への影響についてはファイザー製が0.99(0.97~1.02)、モデルナ製が1.05(1.02~1.08)だった。そのうち、通学や業務への支障は、ファイザー製が1.04(1.01~1.07)、モデルナ製が1.08(1.04~1.12)だった。 なお、本結果は、第33回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会(令和4年7月22日)における同時接種の有効性・安全性に関する資料1)にも引用されている。

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第110回 コロナ感染拡大の影響で、平均寿命が短く/厚労省

<先週の動き>1.コロナ感染拡大の影響で、平均寿命が短く/厚労省2.解熱鎮痛剤「カロナール」出荷調整、厚労相が買い占めの自粛要請3.全国知事会が新型コロナで緊急提言、岸田総理は第7波の収束後に見直しを表明4.新型コロナ感染の「検査証明書」の取得を求めないよう要請/厚労省5.来年度の概算要求、社会保障の自然増を圧縮、デジタル投資/政府6.診療報酬改定、急性期病院の看護必要度に大きな影響/WAM1.コロナ感染拡大の影響で、平均寿命が短く/厚労省厚生労働省は、7月29日に2021年の日本人の平均寿命を発表した。男性、女性ともに前年度よりそれぞれ、0.09歳、0.14歳短くなり、男性81.47歳、女性87.57歳となり、10年ぶりに前年度を下回った。男女とも悪性新生物、肺炎、交通事故などの死亡率減少が平均寿命を延ばしていたが、新型コロナウイルス感染症の死亡者の増加の影響と見られる。(参考)令和3年簡易生命表の概況コロナ影響で10年ぶり平均寿命縮む…男性が0.09歳、女性0.14歳短く(読売新聞)日本人の平均寿命10年ぶりに前年下回る。コロナ要因の1つか(NHK)2.解熱鎮痛剤「カロナール」出荷調整、厚労相が買い占めの自粛要請新型コロナウイルス感染者の急増に伴って、解熱鎮痛剤の「カロナール」の製造メーカの「あゆみ製薬」は医療機関からの発注に対応が困難難となったため。カロナール主錠剤を出荷調整に乗り出し、一部製品の出荷停止を発表した。このため、後藤茂之厚生労働相は7月29日に一部の病院や薬局が品切れを懸念して、過度な買い占めに走ることがないように自粛を要請した。(参考)解熱鎮痛薬「カロナール」出荷調整へ 新型コロナで需要急増(NHK)カロナール 出荷調整 あゆみ製薬、コロナ感染急増で(日経新聞)解熱剤の買い占め自粛要請 医療機関で不足、厚労相(産経新聞)3.全国知事会が新型コロナで緊急提言、岸田総理は第7波の収束後に見直しを表明7月29日に奈良市で開催された全国知事会は、新型コロナウイルスの感染防止策の緊急提言を行い、感染症法での新型コロナウイルス感染症の取り扱いについて、早期に2類から5類へと見直すことを求めている、一方、岸田総理大臣は7月31日の記者のインタビューに対して、新型コロナ感染症法上の扱いについて、感染拡大が続く現時点では季節性インフルエンザと同等に引き下げることはせず、第7波の収束後に見直しをすると発言した。(参考)コロナ分類見直し「工程提示を」 全国知事会が緊急提言(日経新聞)感染急拡大に対する新たな対策について (全国知事会)コロナ「2類相当」運用、「第7波」収束後に見直しへ…岸田首相「時期見極め丁寧に検討」(読売新聞)岸田首相 コロナの感染症法上の扱い“現時点で引き下げない“(NHK)4.新型コロナ感染の「検査証明書」の取得を求めないよう要請/厚労省政府は新型コロナウイルス感染拡大による、発熱外来の検査目的受診が増えたことに対して、事業所側に検査結果の証明を求めないように要請した。発熱外来を設けている医療機関には、仕事を休む際に発熱外来での検査の証明書を求めるために、検査結果を希望する発熱患者が殺到し、救急患者の受け入れに支障が出ており、このため東京都は8月から検査キットの無料配布を行い、発熱外来を経由しない形で、発生届を代わって提出する「陽性者登録センター」を設置するなど対策を進めている。(参考)「発熱外来での検査証明求めないで」厚労省が事業所などに要請(NHK)東京都 有症状者にも検査キット無料配布へ 来月1日から(同)5.来年度の概算要求、社会保障の自然増を圧縮、デジタル投資/政府政府は、7月29日に2023年度の省庁が要求するルールを定めた概算要求水準を閣議了解した。昨年の基準で例外扱いとなっていた社会保障費について、社会保障費の自然増は、合理化・効率化に最大限に取り組み、22年度の6,100億円から5,600億円に圧縮する一方、GDP比2%の防衛費の実現のために増額を認める方針だ。また、マイナンバーの利活用を促進して医療・介護など公的給付のデジタルトランスフォーメーションを進めるとしている。(参考)社保費自然増5,600億円に圧縮、23年度予算 概算要求基準で、薬価改定が焦点(CB news)医療・介護など公的給付のDX化推進へ 23年度予算の全体像、政府(同)第10回経済財政諮問会議(内閣府)6.診療報酬改定、急性期病院の看護必要度に大きな影響/WAM今年の春の診療報酬改定で、急性期病院へのアンケート調査結果で、「心電図モニターの管理」の項目廃止により、約半数の49.2%の急性期病院で「経営に影響あり」と回答したことが明らかとなった。現在は、経過措置期間であるが、9月末でこれらの措置期間が終了するため、10月以降は一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」のうち、経営にもっとも影響が大きいものとして「心電図モニター管理の項目の廃止」を挙げた病院が49.2%に上っており、今後、急性期病院の収益に影響が出るとみられる。(参考)急性期病院半数に影響、看護必要度心電図モニター削除 WAM調査、急性期一般入院料1から転換は3%程度か(CB news)2022年度診療報酬改定の影響等に関するアンケート調査の結果(WAM:福祉医療機構)

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PD-L1陽性TN乳がん、ペムブロリズマブ追加でOS延長(KEYNOTE-355最終解析)/NEJM

 プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)が陽性で、複合発現スコア(combined positive score:CPS)が10点以上の進行トリプルネガティブ乳がん患者の1次治療において、化学療法に抗PD-1モノクローナル抗体製剤ペムブロリズマブを追加すると、化学療法単独と比較して全生存(OS)期間が約7ヵ月有意に延長することが、スペイン・International Breast Cancer CenterのJavier Cortes氏らが実施した「KEYNOTE-355試験」の最終解析で示された。有効性の複合主要エンドポイントの1つである無増悪生存(PFS)期間は、ペムブロリズマブ+化学療法群で有意に優れることが、2回目の中間解析の結果としてすでに報告されている。研究の成果は、NEJM誌2022年7月21日号に掲載された。国際的な第III試験のOS最終解析 KEYNOTE-355は、PD-L1陽性・CPS 10点以上の進行トリプルネガティブ乳がんの1次治療におけるペムブロリズマブの有用性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2017年1月~2018年6月の期間に、日本を含む29ヵ国209施設で参加者の登録が行われた(MSDの助成を受けた)。 対象は、未治療の切除不能な局所再発または転移を有するトリプルネガティブ(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2がすべて陰性)乳がんで、全身状態の指標であるEastern Cooperative Oncology Group performance-status(ECOG PS)が0または1の成人患者であった。 被験者は、ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+担当医の選択による化学療法(ナノ粒子アルブミン結合[nab]-パクリタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン+カルボプラチンのうちいずれか1つ)、またはプラセボ+化学療法を受ける群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。試験薬の投与は、病勢進行、許容できない毒性作用の発現、あるいは患者が同意を撤回するか、医師が投与中止と判断するまで継続された。 主要エンドポイントは、PD-L1陽性でCPSが10点以上の患者(CPS-10サブグループ)、PD-L1陽性でCPSが1点以上の患者(CPS-1サブグループ)およびintention-to-treat(ITT)集団という3つの集団におけるPFSとOSとされた。CPSは、腫瘍細胞、リンパ球、マクロファージにおけるPD-L1免疫染色陽性細胞の数を、生存腫瘍細胞の総数で除して100を乗じた値と定義された。CPS-1サブグループでは有意差なし 847例(ITT集団)が無作為化の対象となり、ペムブロリズマブ群に566例、プラセボ群に281例が割り付けられた。CPS-10サブグループは323例(38.1%)(ペムブロリズマブ群220例、プラセボ群103例)、CPS-1サブグループは636例(75.1%)(425例、211例)であった。これら6つの群の年齢中央値は52~55歳の範囲に、閉経後女性の割合は64~68%の範囲にわたっていた。追跡期間中央値は44.1ヵ月(範囲:36.1~53.2)。 CPS-10サブグループでは、ペムブロリズマブ群の155例(70.5%)、プラセボ群の84例(81.6%)が死亡した。OS期間中央値は、ペムブロリズマブ群が23.0ヵ月、プラセボ群は16.1ヵ月(死亡のハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.55~0.95)であり、ペムブロリズマブ群で有意に長かった(両側検定のp=0.0185[有意性の基準を満たす])。18ヵ月時のOS率はそれぞれ58.3%および44.7%だった。 CPS-1サブグループのOS期間中央値は、ペムブロリズマブ群が17.6ヵ月、プラセボ群は16.0ヵ月であった(死亡のHR:0.86、95%CI:0.72~1.04、両側検定のp=0.1125[有意性なし])。また、ITT集団のOS期間中央値は、それぞれ17.2ヵ月および15.5ヵ月だった(0.89、0.76~1.05[有意性は検定されなかった])。 PFS期間中央値は、2回目の中間解析とほぼ同様の結果であった。すなわち、CPS-10サブグループでは、ペムブロリズマブ群9.7ヵ月、プラセボ群5.6ヵ月(病勢進行または死亡のHR:0.66、95%CI:0.50~0.88)、CPS-1サブグループでは、それぞれ7.6ヵ月および5.6ヵ月(0.75、0.62~0.91)、ITT集団では、7.5ヵ月および5.6ヵ月(0.82、0.70~0.98)だった。 また、奏効率は、CPS-10サブグループでは、ペムブロリズマブ群52.7%、プラセボ群40.8%、CPS-1サブグループでは、それぞれ44.9%および38.9%、ITT集団では、40.8%および37.0%であった。奏効例では、ペムブロリズマブ群で奏効期間中央値が長く、CPS-10サブグループでは、ペムブロリズマブ群12.8ヵ月およびプラセボ群7.3ヵ月だった。 一方、最も頻度の高い有害事象は、貧血(ペムブロリズマブ群49.1%、プラセボ群45.9%)、好中球減少(41.1%、38.1%)、悪心(39.3%、41.3%)であった。試験レジメン関連のGrade3、4、5の有害事象は、それぞれ68.1%および66.9%で認められ、ペムブロリズマブ群の2例(0.4%)(急性腎障害と肺炎が1例ずつ)が死亡した。ペムブロリズマブ群では、免疫介在性の有害事象が26.5%(甲状腺機能低下症15.8%、甲状腺機能亢進症4.3%、肺臓炎2.5%など)で発現し、このうち5.3%がGrade3または4であった。 著者は、「OS期間の探索的解析では、PD-L1陽性でCPSが10~19点、およびPD-L1陽性でCPSが20点以上の患者においても、ペムブロリズマブ追加による一貫した有益性が認められたことから、『CPS 10点以上』は、ペムブロリズマブ+化学療法による利益が期待される進行トリプルネガティブ乳がん患者集団を定義する適切な基準と考えられる」と指摘している。

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インフルとの鑑別を更新、COVID-19診療の手引き8.0版/厚労省

 7月22日、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第8.0版」を公開し、全国の自治体や関係機関に通知を行った。 今版の主な改訂点は以下の通り。第8版の主な改訂点【1 病原体・疫学】・(1)病原体、(3)国内発生状況、(4)海外発生状況の情報を更新【2 臨床像】・(1)臨床像を更新(とくにオミクロン株の知見、インフルエンザとの鑑別を更新)・(2)重症化リスク因子、(3)胸部画像所見、(4)合併症を更新・(5)小児例の特徴で小児の重症度、小児における家庭内感染率について更新・(5)小児例の特徴で「小児における死亡例」を追加・(6)妊婦例の特徴を更新【3 症例定義・診断・届出】・(1)症例定義を更新・(4)届出を更新【4 重症度分類とマネジメント】・(1)重症度分類、(2)軽症、(3)中等症II 呼吸不全あり、(4)重症の中のECMO、血液浄化療法、血栓症対策、図を更新・「高齢者における療養のあり方について」を追加・「医療提供体制と自宅療養について」を参考から追加【5 薬物療法】・(1)抗ウイルス薬のモルヌピラビルを更新・(2)中和抗体薬のソトロビマブ、カシリビマブ/イムデビマブを更新・(4)妊婦に対する薬物療法で「禁忌」を追加・(参考)の「日本国内で開発中の薬剤」を更新【6 院内感染対策】・序文、換気を(2)環境整備に統合し更新・(4)患者寝具類の洗濯を更新・(7)職員の健康管理を更新・(8)妊婦および新生児への対応を更新・【参考】感染予防策を実施する期間の表を追加【7 退院基準・解除基準】・(1)退院基準を更新

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BA.4/BA.5感染者の症状は?

オミクロン株BA.4/BA.5感染者でみられた症状(BA.1感染者との比較)76%BA.156%58%51%BA.4/BA.558%52%48%51%43%41% 40%38%31%26%18%7%18%12%17%9%17%8%15% 15%9%6%8%2%0%1% 0%1%対象:フランスで2022年4~5月にBA.4/BA.5に感染した288例(年齢中央値:47歳)と2021年11月~2022年1月にBA.1に感染した281例(同:35歳)[フランス公衆衛生局による2022年6月15日発表データより] 倦怠感、せき、発熱、頭痛などが多く報告されています BA.1感染者と比べると、鼻水、吐き気、下痢、味覚・嗅覚障害が多い傾向がみられました 症状が続いた期間はBA.1感染者が4日間(2~7日)だったのに対し、BA.4/BA.5感染者では7日間(3~10日)と長い傾向がみられました 無症状者はBA.1感染者では10.9%だったのに対し、BA.4/BA.5感染者では3%でしたCopyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

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第3回 「新型コロナを5類へ」の声

肺炎を起こしにくいBA.5COVID-19の感染症法上の扱いを見直そう、という声はコロナ禍でメディアで頻繁に取り上げられています。アルファ株、デルタ株と比べてオミクロン株以降は弱毒化が継続しています。現時点では、BA.5は確かに肺炎をほとんど起こしていません。「5類へ」それゆえ、新型コロナを「季節性インフルエンザと同等の5類感染症相当」に引き下げるべき、あるいは完全に「5類感染症」にすべきという議論が高まっています。表は1~5類感染症と新型インフルエンザ等感染症をまとめたものです。なお、「〇:可能」というのは、そういう措置が可能というだけで、そうしなければならないわけではありません。画像を拡大する表.1~5類感染症と新型インフルエンザ等感染症の主な措置(筆者作成)「5類にすべきかどうか」という議論は、医学的にはナンセンスだと思っています。新型コロナは継続的な対応が必要と考えられ、「指定感染症」から「新型インフルエンザ等感染症」の枠組みに移行しました。行政上、さまざまな措置を弾力的に運用しやすい枠組みだったためです。柔軟な骨抜きができるからこそ、この枠組みにしたはずなので、あえて「5類感染症にしましょう」と提言する必要はなさそうです。全数報告が不要であれば、現在の「新型インフルエンザ等感染症」の枠組みの中で把握をやめればよいですし、5類感染症に近づけたいなら、「新型インフルエンザ等感染症の5類相当」を目指せばよいのです。6月にはCOVID-19の発生届を簡素化し、症状や感染経路などを記載するところはなくなりました。また、当初すべての陽性者に入院勧告が行われていた制度はすでに廃止され、現在は自宅療養、ホテル療養が可能です。そして、もう濃厚接触者については各自で把握している現状があります。これほど5類相当まで骨抜きダウングレードが進んでいる中、あえて動きにくい「完全5類感染症」にカテゴライズするメリットは多くありません。「5類感染症」にした場合、高齢者施設クラスターが発生しても、自治体はそこに公費を投下することが難しくなります。また、BA.5の次のウイルスがアルファ株やデルタ株のように厄介な場合、法的なハードルになり、手続きに時間がかかってしまいます。そのため、「新型インフルエンザ等感染症」の枠組みで自由にモディファイするほうが、何かとやりやすいのです。ただ、「もう5類感染症です」と政府がステートメントを出すことによって、国全体のマインドが上向くというのであれば、そういう施策もありかもしれません。しかし、また、どういった分類であっても、手を挙げてくれる医療機関が急増しない限り、おそらく発熱外来は逼迫します。そのため、感染が急拡大している現在の第7波の局面においては、「5類」かどうかという議論よりも、どのように医療逼迫をコントロールしていくかという議論のほうが重要に思います。

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肩関節鏡視、術後90日以内の有害事象は1.2%/BMJ

 肩関節鏡視下手術は、英国で一般的に行われるようになっているが、有害事象のデータはほとんどないという。同国オックスフォード大学のJonathan L. Rees氏らは、待機的な肩関節鏡視下手術に伴う有害事象について調査し、90日以内の重篤な有害事象のリスクは低いものの、再手術(1年以内に26例に1例の割合)などの重篤な合併症のリスクがあることを示した。研究の詳細は、BMJ誌2022年7月6日号に掲載された。英国の約29万件の手術のコホート研究 研究グループは、待機的な肩関節鏡視下手術における重篤な有害事象の正確なリスクを推定し、医師および患者に情報を提供する目的で、地域住民ベースのコホート研究を行った(英国国立健康研究所[NIHR]オックスフォード生物医学研究センター[BRC]の助成による)。 解析には、英国国家統計局の市民登録死亡データを含むイングランド国民保健サービス(NHS)の病院エピソード統計(Hospital Episode Statistics)のデータが用いられた。 対象は、2009年4月1日~2017年3月31日の期間に、16歳以上の26万1,248例に施行された28万8,250件の肩関節鏡視下手術(肩峰下除圧術、腱板修復術、肩鎖関節切除術、肩関節安定化術、凍結肩関節授動術)であった。 主要アウトカムは、術後90日以内の入院治療を要する重篤な有害事象(死亡、肺塞栓症、肺炎、心筋梗塞、急性腎障害、脳卒中、尿路感染症)の割合とされた。深部感染症は腱板修復術で高い 全体の年齢中央値は55歳(IQR:46~64)で、手技別の年齢中央値は、肩関節安定化術の27歳(IQR:22~35)から腱板修復術の61歳(53~68)までの幅が認められた。47.8%が女性であった。試験期間を通じて、肩峰下除圧術の件数は減少したが、これを除く肩関節鏡視下手術の件数は増加していた。 肩関節鏡視下手術後90日以内の有害事象(再手術を含む)の発生率は、1.2%(95%信頼区間[CI]:1.2~1.3)と低く、81例に1例の割合であり、肩関節安定化術の0.6%(95%CI:0.5~0.8)から凍結肩関節授動術の1.7%(1.5~1.8)までの幅が認められた。年齢、併存症、性別で調整すると、手技の種類による影響はみられなくなった。 最も頻度の高い有害事象は肺炎(発生率:0.3%、95%CI:0.3~0.4)で、303例に1例の割合であった。一方、最もまれな有害事象は肺塞栓症(0.1%、0.1~0.1)で、1,428例に1例の割合だった。 1年以内に再手術を要した患者は3.8%(95%CI:3.8~3.9)と比較的高く、26例に1例の割合であり、肩関節安定化術の2.7%(95%CI:2.5~3.0)から凍結肩関節授動術の5.7%(5.4~6.1)までの幅がみられた。 深部感染症に対する追加手術は全体で0.1%(95%CI:0.1~0.1)と低く、1,111例に1例の割合であったが、腱板修復術に伴う深部感染症の発生率は0.2%(0.2~0.2)と高く、526例に1例の割合だった。 著者は、「膝関節鏡視下手術に比べて90日以内の肺炎の発生率が高かった理由は不明であり、今後、その原因の解明と予防法の確立が求められる。また、今後の研究では、腱板修復術に伴う感染症の増加に関連する因子の検討も行うべきであろう」としている。

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第2回 第7波到来―アフターコロナの女神は微笑まない?

6月12日に当院の新型コロナ病床はゼロ床になりました(写真)。軽症中等症病床を担当していますが、これまで1,000人以上のCOVID-19を診療してきました。ほとんどが回復して元気に退院してくれましたが、この病棟の中で亡くなった人も少なくありません。ゼロ床になったとき、「このままアフターコロナを迎えるのかもしれない」という、そんな淡い期待がありました。しかし、そうは問屋が卸さなかった。写真. いったん閉鎖した新型コロナ病棟(国立病院機構近畿中央呼吸器センター、6月12日)期待は必ず裏切られる厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードは6月30日、全国の直近1週間の10万人当たりの新規感染者数が約92人へ増加し、今週先週比は1.17になったことを報告しました1)。また、若者だけでなく、すべての年代で微増となっていることもわかっています。また、6月第5週に、保健所の知り合いからこんな連絡が来ました。「陽性者もじわじわ増えているけど、入院依頼も多そう。近々、そちらにも依頼が行くと思います」と。とはいえ、「増えても1人か2人程度だろう」と予想していましたが、6月第5週の1週間でなんと7人の入院依頼がありました。7月に入り、景色が少しずつ変わってきました。東京都のオミクロン株BA.5の割合は7月7日時点で33.4%に到達しました2)。入院要請数も増えてきて、高齢者だけでなく中高年層の入院も増えてきました。増加比は高く、東京都は4週間後の8月3日には新規感染者数が5万人以上と、第6波を超える可能性があるとしています。アフターコロナの女神は微笑んでくれず、かくも期待は裏切られました。コロナ禍では「こうだといいな」ということとは、たいてい逆のほうに物事が運ぶことが多いです。“Anything that can go wrong will go wrong.”というのはマーフィーの法則の基本理念。人類を、よくもまぁここまで翻弄してくれるな、と思わざるを得ません。オミクロン株の肺炎例は少ない関西では第4波のアルファ株、関東では第5波のアルファ株の下気道親和性が高く、肺炎の罹患率も相当高かったものの、オミクロン株以降では肺炎の頻度は極端に少なくなりました。酸素投与が必要な中等症IIは今のところいません。オミクロン株になってウイルスそのものが弱毒化していることと、ワクチン接種が進んだことの、両方の恩恵を受けていると考えられます。4回目のワクチン接種は重症化予防が主たる目的ですが、毎日COVID-19患者さんと接触機会がある医療従事者は全国にたくさんいます。重症化リスク因子がなくても重症化してしまう事例もありますので、廃棄されているワクチンがあるのなら、医療従事者を接種対象に含めてもよいのではと思います。このまま7月下旬にはBA.5に置き換わる予定です。BA.2との違いは、BA.5はスパイクタンパク質に69/70欠失、L452R、F486V変異を有していることです。しかし、現時点で既存のオミクロン株と比べて、重症度が増すというエビデンスはありません。ただし先日、東京大学医科学研究所から、BA.5は肺で増殖しやすく、BA.2と比較して肺炎が多いというデータが提示されています3)。これが本当ならば、「ただの風邪だから大丈夫だろう」となめてかかるとまずいことになります。「感染者数は多いが、肺炎はそこまで多くない」という状況がダラダラ続くのであれば、医療逼迫はそこまで起こらないかもしれません。しかし、過去最大の死者数を出したのは、直近の第6波です。決して油断できないと考えております。参考文献・参考サイト1)第89回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(2022年6月30日)2)(第92回)東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議(2022年7月7日)3)Kimura I, et al. Virological characteristics of the novel SARS-CoV-2 Omicron variants including BA.2.12.1, BA.4 and BA.5. bioRxiv. 2022 May 26.

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第1回 新型コロナのイベルメクチン「もう使わないで」

いったん下火になっていた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ですが、国内の新規感染者数は6月下旬から増え始め、昨日7月6日は4万5千人を超え、現場は警戒心を持っています。―――とはいえ、BA.2以降、滅多に肺炎を起こすCOVID-19例に遭遇しません。おそらく次の波がやってきたとしても、大きな医療逼迫を招くことはないのでは、と期待しています。「イベルメクチンを処方しない医師は地獄へ落ちろ」さて、私はCOVID-19の診療でいくつかメディア記事を書いたことがあるのですが、当初からイベルメクチンに関してはやや批判的です。疥癬に対してはよい薬だと思っていますが、COVID-19に対しては少なくとも現在上市されている抗ウイルス薬には到底及びません。しかしSNSなどではいまだにイベルメクチン信奉が強く、そういった「派閥」から手紙が届くこともあります。中には、「COVID-19にイベルメクチンを処方しない倉原医師よ、地獄へ落ちろ」といった過激な文面を送ってくる開業医の先生もいました。確かに当初、in vitroでイベルメクチンの有効性が確認されたのは確かです。しかし、かなり初期の段階で、寄生虫で使用するイベルメクチン量の約100倍内服しないと抗ウイルス作用は発揮されないことがわかっており1,2)、副作用のデメリットの方が上回りそうだな…という印象を持っていました。その後の臨床試験の結果が重要だろうと思っていたので、出てくるデータを冷静に見る必要がありました。トップジャーナルでことごとく否定50歳以上で重症化リスクを有するCOVID-19患者への発症7日以内のイベルメクチンの投与を、プラセボと比較したランダム化比較試験があります(I-TECH試験)3)。これによると、重症化リスクのある発症1週間以内のCOVID-19患者に対するイベルメクチンの重症化予防への有効性は示されませんでした。また、1つ以上の重症化リスクを持つCOVID-19患者に対して、イベルメクチンとプラセボの入院率の低下をみたランダム化比較試験があります(TOGETHER試験)4)。この試験でも、入院・臨床的悪化のリスクを減少させませんでした(相対リスク0.90、95%ベイズ確信区間:0.70~1.16)。ITT集団、per protocolのいずれを見ても結果は同じでした。EBMの基本に立ち返って、使用を控えるべき万が一、イベルメクチンの投与量や投与するタイミングを工夫して、何かしら有効性が示せたとして、ではその効果は現在のほかの抗ウイルス薬(表)よりも有効と言えるのでしょうか。塩野義製薬が承認申請中のエンシトレルビルですら、現時点ではウイルス量を減少させる程度の効果しか観察されないということで、緊急承認は見送りとなっています。イベルメクチンについて、まず今後奇跡的なアウトカム達成など、起こらないでしょう。表. 軽症者向け抗ウイルス薬(筆者作成)何より、目の前にしっかりと効果が証明された抗ウイルス薬が複数あるのです。有効な薬剤を敢えて使わずにイベルメクチンを処方するというのは、EBMに背を向けているにすぎません。この行為、場合によっては法的に問われる可能性もあります。現時点では使用を差し控えるべき、と私は考えます。参考文献・参考サイト1)Chaccour C, et al. Ivermectin and COVID-19: Keeping Rigor in Times of Urgency. Am J Trop Med Hyg. 2020;102(6):1156-1157.2)Guzzo CA, et al. Safety, tolerability, and pharmacokinetics of escalating high doses of ivermectin in healthy adult subjects. J Clin Pharmacol. 2002;42(10):1122-1133.3)Lim SCL, et al. Efficacy of Ivermectin Treatment on Disease Progression Among Adults With Mild to Moderate COVID-19 and Comorbidities: The I-TECH Randomized Clinical Trial. JAMA Intern Med. 2022 Apr 1;182(4):426-435.4)Reis G, et al. Effect of Early Treatment with Ivermectin among Patients with Covid-19. N Engl J Med. 2022 May 5;386(18):1721-1731.

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酸素療法を伴う/伴わない中等度のCOVID-19肺炎患者におけるファビピラビル、カモスタット、およびシクレソニドの併用療法 第III相ランダム化比較試験(解説:寺田教彦氏)

オリジナルニュース中等症コロナ肺炎、ファビピラビル+カモスタット+シクレソニドで入院期間短縮/国内第III相試験(2022/06/15掲載) 本研究は中等症のCOVID-19肺炎患者におけるファビピラビル、カモスタット、およびシクレソニドの併用療法を評価した論文であり、2020年11月11日から2021年5月31日までに登録された本邦でのCOVID-19罹患患者を対象としている。登録患者は121人で、56人が単独療法、61人が併用療法だった。 本研究では、経口ファビピラビルにカモスタットとシクレソニドを併用することで安全性の懸念なしに入院期間の短縮ができたことが示されたが、本論文の結果が本邦のCOVID-19治療に与える影響は小さいと考えられる。理由を以下に示す。 まず、執筆時点での中等症のCOVID-19肺炎患者に対する治療とそのエビデンスを確認する。本邦ではCOVID-19に対する薬物治療の考え方 第13.1版等にも記載があるように、抗ウイルス薬としてレムデシビルを投与し、臨床病態によっては(酸素投与がある場合に)抗炎症薬としてデキサメタゾンやバリシチニブの投与が行われている。このうち、デキサメタゾンはRECOVERY 試験(Horby P, et al. N Engl J Med. 2021;384:693-704.)で、世界で初めてCOVID-19患者治療で有意な改善を、バリシチニブもレムデシビルとの併用下で臨床的な改善が報告されている(Kalil A, et al. N Engl J Med. 2021;384:795-807.)。レムデシビルに関しては、中等症のCOVID-19に対する単剤治療での有意な臨床的アウトカムは見いだしがたいが、発症早期の患者に投与することで臨床的なアウトカムや死亡率を低下させた報告があり、抗ウイルス効果は期待されるだろう(Gottlieb RL, et al. N Engl J Med. 2022;386:305-315.)。そして、ステロイドを投与する患者に関しては、先行して抗ウイルス薬を投与したほうが臨床症状の改善が早くなり、重症化率を低下させるという報告がある(Shionoya Y, et al. PLoS One. 2021;16:e0256977.)ことを加味すると、COVID-19の酸素需要がある患者には、ステロイドなどの抗炎症薬の投与が望ましく、レムデシビルも抗炎症薬とともに投与することがよいだろう。 さて、本研究に戻る。本研究が開始された時期は、COVID-19に対する確立された治療薬はなく、各国で有効性が期待される薬剤を探っている状況だった。本研究で対象となった薬剤の、ファビピラビル、カモスタットとシクレソニドについて整理する。 ファビピラビルは本邦で開発され、新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症に対する承認があり備蓄されていた抗ウイルス薬である。COVID-19が流行した初期に期待された治療法の1つであったが、本邦で実施された多施設無作為化オープンラベル試験でも早期のCRP陰性化や解熱傾向は見られたものの、有意差には達しておらず(Doi Y, et al. Antimicrob Agents Chemother. 2020;64:e01897-20.)、現時点でCOVID-19の標準治療に位置づけられてはいない。 シクレソニドもCOVID-19の治療で有効性が期待されていた薬剤である。本研究と患者対象が一致したデータではないが、国内のランダム化比較試験ではシクレソニド投与群で肺炎増悪が多く(https://www.ncgm.go.jp/pressrelease/2020/20201223_1.html)、臨床的な改善を示すことができなかった。カモスタットも臨床的改善までの日数やICU滞在期間の短縮、死亡率などの改善を示すことができず、現時点で臨床的に常用されている薬剤ではない(Gunst JD, et al. EClinicalMedicine. 2021;35:100849)。 本研究は、作用機序の異なる薬剤を組み合わせることで臨床的な効果が向上することを期待していたが、シクレソニドやカモスタットは個々の薬剤としては、明らかなデータの改善を示す研究はなく、併用による相加あるいは相乗効果の薬理学的な背景も記載はない。本文に記載があるように、サンプルサイズも小さく安全性のプロファイルに懸念が残る点、hard clinical primary outcome(臨床的に客観性の高い主要評価項目)が採用されていないという点といった問題があり、これらの併用薬の有効性を示すためには、より大規模の人数で、標準治療群とhard clinical primary outcomeについて比較をすることが望ましいだろう。 本研究結果は、現在のCOVID-19診療に与える影響は小さいと考えるが、本邦における感染症研究という観点からは、同研究が発表された意義は大きいと考える。 パンデミックを起こした感染症の臨床研究は、早期に有効な治療法を見いだすことが望ましく、速やかな臨床研究の実施が望ましいが、臨床研究を実施するには医師だけではなく、多くの職種の協力や適切なモニタリング、参加者の協力などの資金とともに環境整備が必要となる。本研究のようにパンデミック下での前向き研究実施には、労力と研究が遂行できる環境、それらの下準備が求められる。 新規感染症に対する創薬を行う場合は、適切な臨床試験のもとで適正な薬剤の評価が行われることが重要であり、本邦でも新規感染症に対する創薬を行うためには、このような臨床研究ができる環境をさらに整備してゆくべきであろう。 COVID-19診療について振り返ってみると、ワクチン接種や重症化リスクの高い患者に対する治療薬の整備により、重症化率、致死率はこの2年間で大きく減少しているが、未だに終息はしていない。重症化リスクの高くはない患者さんでも、症状の早期緩和、Long COVID罹患率の低下、他者への感染リスクを低下させるなどの社会生活を円滑に進めるための薬剤が期待されており、これらの問題を解決する薬剤が開発されることを期待したい。ただ、本邦ではワクチン接種も進んでおり、オミクロン株流行下でも、重症化率や死亡率は低下し、急性期症状持続期間も短縮していたことを考えると、オミクロン株で抗ウイルス薬の有効性を評価する場合には工夫が必要かもしれない。COVID-19の比較対象にしばしば出されるインフルエンザも抗ウイルス薬があるが、インフルエンザに対する抗ウイルス薬は発症後48時間以内に内服しなければ症状などの有意な改善が望めないように、急性期症状持続期間が短縮しているオミクロン株で治療効果を評価する場合は、速やかな抗ウイルス薬投与ができる環境で評価を行わないと臨床症状の改善で有意差を確認することは難しいかもしれない。 今後は、新型コロナウイルス・オミクロン株に対する抗ウイルス薬の評価が行われることになると考えるが、ウイルスの特徴も踏まえた上で、臨床現場でどのような患者さんに、どのように用いることで、どのような効果を期待するのかを適切に捉えた臨床試験を組み立て、評価を行うことがとくに望まれると考える。

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ASCO2022 レポート 血液腫瘍

レポーター紹介今年のASCO 2022の年次総会も、COVID-19の影響で、昨年のASCO 2021に引き続き、ハイブリッド開催となりました。その恩恵を受けて、昨年と同様に、米国・シカゴまで行かずに、通常の病院業務をしながら、業務の合間に、時差も気にせず、オンデマンドで注目演題を聴講したり、発表スライドを閲覧したりすることができました。それらの演題の中から、今年も10の演題を選んで、発表内容をレポートしたいと思います。以下に、悪性リンパ腫(慢性リンパ性白血病含む)関連5演題、多発性骨髄腫関連3演題、白血病関連2演題を紹介します。悪性リンパ腫(慢性リンパ性白血病含む)関連First-line brentuximab vedotin plus chemotherapy to improve overall survival in patients with stage III/IV classical Hodgkin lymphoma: An updated analysis of ECHELON-1.  (Abstract #7503)ECHELON-1試験は、初発の進行期ホジキンリンパ腫患者を対象に、これまでの標準治療のABVD療法と、ブレンツキシマブベドチンとブレオマイシンを入れ替えたA-AVD療法を比較した第III相比較試験で、これまでの発表にて、A-AVD療法がABVD療法と比較し、PFSの延長効果が示されていた。今回の発表では、追跡期間の中央値が73ヵ月(約6年)の時点で、A-AVD療法の、OSについての優位性も示された(6年時点のOS:[A-AVD療法:93.9%、ABVD療法:89.4%]) (HR:0.590、95%信頼区間[CI]:0.396~0.879、p=0.009)。サブグループ解析では、IPSが4~7の患者、Stage IVの患者、節外病変が2以上の患者など、予後不良と思われる患者において、有意にA-AVD療法がABVD療法よりもOSを延長した。2次がんの発症率も、23例と32例で、A-AVD療法で少なかった。ホジキンリンパ腫については、これまで、ABVD療法に対し、OSでの優位性を示した治療法はなかったが、A-AVD療法が初めてABVD療法にOSで優ったことが示された歴史的試験結果となった。Glofitamab in patients with relapsed/refractory (R/R) diffuse large B-cell lymphoma (DLBCL) and >2 prior therapies: Pivotal phase II expansion results. (Abstract #7500)R/R DLBCL患者に対し、近年、CD19-CAR-T細胞治療やポラツズマブベドチン(ADC)などの新薬が登場し、治療成績は良くなったが、それらの治療にても再発・難治となる場合もあり、さらなる新薬の開発が望まれている。本発表では、CD20とCD3(2対1の比率)に対する二重抗体薬のglofitamabの第II相試験(21日サイクルにて、最大12サイクルまでの固定期間治療であり、サイクル1のDay1には、CRS軽減のため、オビヌツズマブを投与し、Day8に2.5mg、Day15に10mgを投与、サイクル2以降はDay1に30mgを投与する)の結果が報告された。154例の2ライン以上の前治療歴(リツキシマブの治療歴を含む)のあるR/R DLBCL患者が対象となった(59.7%が3ライン以上、33.1%がCAR-T治療を受けていた)。主要評価項目のCR率は39.4%であり、副次評価項目のORRは51.6%であった。また、CAR-T治療歴のある、なしでのCR率は、それぞれ35%と42%であった。CR維持率は12ヵ月時点で77.6%であった。CRSは63%に認めたが、うち59%はG1~2であり、ほとんどがサイクル2までに認められた。glofitamabは、CAR-T既治療例を含むR/R DLBCLに対する新たな治療薬として期待できる。Influence of racial and ethnic identity on overall survival in patients with chronic lymphocytic lymphoma. (Abstract #7508)CLLは、西欧諸国では頻度の多い疾患であるが、アフリカやアジアでは少なく、発症率や予後に、人種差が影響するかどうかは、明らかではなかった。本発表では、National Cancer Databaseに2004~18年に登録されたアメリカのCLL患者を解析している。9万7,804例のうち、8万8,680例(90.7%)が白人、7,391例(7.6%)が黒人、2,478例(2.6%)がヒスパニック、613例(0.6%)がアジア人であった。今回は、この中で、白人と黒人を比較している。黒人の方が、診断時の年齢が66歳(vs.70歳)と若く、合併症を有する割合も27.9%(vs.21.3%)と多かった。さらに、次の項目(女性患者、非保険加入者、低所得者)の割合が黒人で多かった。また、CLLの治療を、診断時すぐに開始された割合も35.9%(vs.23.6%)と多く、OSは短い(中央値:7.00年vs.9.14年)ことがわかった。CLLの病態に人種差がどのように影響しているかは不明だが、経済力の差などが、診断時期や治療法の選択にも影響している可能性もあり、それがOSの差に反映していると思われる。GEMSTONE-201: Preplanned primary analysis of a multicenter, single-arm, phase 2 study of sugemalimab (suge) in patients (pts) with relapsed or refractory extranodal natural killer/T cell lymphoma (R/R ENKTL). (Abstract #7501)R/R ENKTLの予後はきわめて不良である(OS中央値は7ヵ月未満、1年OSは20%未満)。本試験では、R/R ENKTLに対する抗PDL1抗体薬(sugemalimab)の第II相試験(GEMSTONE-201試験)の最初の解析結果が報告された(追跡期間の中央値が13.4ヵ月時点)。対象となった患者は、80例(年齢中央値:48歳、男性:64%、前治療が2ライン以上:49%、前治療に抵抗性:46%)であり、Suge 1,200mgを3週に1回投与し、最長24ヵ月投与した。主要評価項目のORRは、46.2%であった。また、副次評価項目のCR率は、37.2%であり、12ヵ月時点のDORは、86%であった。探索的評価項目の全生存率は、12ヵ月時点で68.6%であった。G3以上の有害事象は39%(治療薬関連は16%、そのうち重篤な有害事象は6.3%)でみられ、最も高頻度にみられたirAEは、甲状腺機能低下症が16%にみられた。R/R ENKTLに対する抗PDL1抗体薬は、その有効性と安全性のバランスから期待できる治療薬と考える。Primary results from the double-blind, placebo-controlled, phase III SHINE study of ibrutinib in combination with bendamustine-rituximab (BR) and R maintenance as a first-line treatment for older patients with mantle cell lymphoma (MCL). Abstract #LBA7502初発の自家移植非適応の高齢MCL患者(65歳以上)に対するBRX6サイクル+R維持療法(2ヵ月ごと2年間)と、その治療に最初からイブルチニブ560mg(or プラセボ)を上乗せし、イブルチニブ(or プラセボ)は、PDあるいは毒性中止となるまで継続する治療を比較した第III相比較試験のSHINE試験の結果がLate break abstractとして報告され、同日のNEJM誌にPublishされた。イブルチニブ群259例とプラセボ群260例が治療を受けた。主要評価項目のPFSの中央値は、80.6と52.9ヵ月であり、HR:0.75(0.59~0.96)と有意にイブルチニブを併用した治療で約2年のPFSの延長がみられた。ハイリスク症例(BlastoidタイプあるいはTP53変異あり)でも、イブルチニブ群でPFSが良い傾向にあったが、症例数が少なく、有意差は認めなかった。TTNTもHR:0.48(0.34~0.66)でイブルチニブ群で延長がみられた。イブルチニブ群では、G3/4の有害事象として、出血(3.5%)、心房細動(3.9%)、高血圧(8.5%)、関節痛(1.2%)を認めた。ただし、OSについては、HR:1.07(0.81~1.40)で差を認めていない。SHINE試験で、初めて、初発の高齢MCL患者に対するイブルチニブの有用性(併用効果)が示され、今後、標準治療の変更が見込まれる結果となった。多発性骨髄腫関連Major risk factors associated with severe COVID-19 outcomes in patients with multiple myeloma: Report from the National COVID-19 Cohort Collaborative (N3C). (Abstract #8008)NCATS’ National COVID Cohort Collaborative (N3C)のデータベースを用い、MM患者におけるCOVID-19の重症化のリスクを解析している。本データベースには、2万6,064例のMM患者が登録(うちCOVID-19 陽性は8,588例)されていた。多変量解析によって、肺疾患、腎疾患の既往は重症化のリスクであったが、糖尿病、高血圧は有意なリスクとはならなかった。喫煙は、むしろリスクが低い傾向があった。造血幹細胞移植、COVID-19ワクチン接種は有意に重症化リスクを下げた。一方、IMiDs、PI、デキサメサゾン治療は死亡リスクを上昇させたが、ダラツムマブ治療はリスクとはならなかった。1.93%のMM患者がCOVID-19感染10日以内に、4.47%のMM患者が30日以内に死亡した。本発表は、世界での最大級のデータベースを解析したものであり、COVID-19流行下のMM診療に役立つと思われる。Teclistamab, a B-cell maturation antigen (BCMA) x CD3 bispecific antibody, in patients with relapsed/refractory multiple myeloma (RRMM): Updated efficacy and safety results from MajesTEC-1. (Abstract #8007)BCMAとCD3に対する二重抗体薬 teclistamabの第I/II相MajesTEC-1試験の最新のデータが発表された。対象となった患者165例(第I相:40例、第II相:125例)は、前治療のライン数が5(2~14)で74%が4ライン以上であった。また、78%がトリプルクラス抵抗性、30%がペンタドラッグ抵抗性であり、90%が最後の治療に抵抗性の状態であった。Tecは、1.5mg/kgを週1回、皮下注で投与する方法が推奨用量であった。有効性の評価では、ORRは63%で、VGPR以上は58.8%、CR以上は39.4%であった。DORの中央値は18.4ヵ月、12ヵ月時点のDORは68.5%であり、CR以上が得られた患者では80.1%であった。PFSの中央値は11.3ヵ月、OSの中央値は18.3ヵ月であった。有害事象については、CRSは、72.1%でみられたが、G3は1例(0.6%)でG4/5はなかった。CRS発現は2日目(1~6)にみられ、2日間(1~9)続いた。治療関連死は5例(COVID-19 2例、肺炎1例、肝不全1例、PML1例)、AEによる減量は1例だけであった(21サイクル目)。BCMAを標的とするCAR-T療法よりは効果が落ちるものの、Off the shelfの薬剤であり、大いに期待される。Daratumumab carfilzomib lenalidomide and dexamethasone as induction therapy in high-risk, transplant-eligible patients with newly diagnosed myeloma: Results of the phase 2 study IFM 2018-04. (Abstract #8002)フランスのグループ(IFM)で実施されたHigh riskの染色体異常(CA)(t[4;14]、 del[17p]、 t[14;16]のいずれか)を有する移植適応のある初発MM患者を対象としたDara-KRD(6サイクル)+Auto(MEL200)+Dara-KRD(4サイクル)+2回目Auto(MEL200)+Dara-Len維持療法(2年)の第II相試験(IFN 2018-04試験)の寛解導入Dara-KRD治療の結果が報告された。50例の患者がエントリーされた。Del(17p)が20例、t(4;14)が26例、t(14;16)が10例、Gain(1q)は25例、前記の2以上のCAを有しているのは34例であった。46例が6サイクル完遂でき、2例はAE(COVID-19感染と腫瘍崩壊症候群)で中止、2例はPD中止となった。6例が2回Auto分のPBSCHに失敗したため、Dara-KRD(3サイクル)後にPBSCHを実施したところ、全例、PBSCHに成功した。ORRは96%、VGPR以上は91%、MRD測定(NGS)を行った37例中、MRD陰性であったのは、62%であった。今後、この治療法は続きがあるが、寛解導入部分の有効性、安全性は評価できると考える。白血病関連Overall survival by IDH2 mutant allele (R140 or R172) in patients with late-stage mutant-IDH2 relapsed or refractory acute myeloid leukemia treated with enasidenib or conventional care regimens in the phase 3 IDHENTIFY trial. (Abstract #7005)AMLにおいて、8~19%の症例で、IDH2遺伝子変異がみられ、IDH2遺伝子変異には、R140Q変異(75%)とR172K変異(25%)がある。変異IDH2阻害剤のenasidenibは、IDH2遺伝子変異を有する高齢R/R AML患者に対し、通常の治療(AZA、CA少量、BSC)と比較しOSの延長は認められなかった(IDHENTIFY試験)。今回の解析では、R140変異とR172変異に分けて解析している。R140と比較し、R172では併存する変異遺伝子の数が、少なかった。また、R140ではSRSF2、FLT3、NPM1、RUNX1遺伝子の変異を伴うのが多かったが、R172では、DNMT3A、TP53の変異が多かった。このことが影響したためか、R140では、OSに差を認めなかったが、R172においては、有意に、enasidenibが、通常治療よりもOSを延長した(14.6ヵ月 vs.7.8ヵ月)。遺伝子変異に基づいた治療法の選択は今後、ますます重要になると思われ、興味深い発表と考える。Efficacy and safety results from ASCEMBL, a phase 3 study of asciminib versus bosutinib (BOS) in patients (pts) with chronic myeloid leukemia in chronic phase (CML-CP) after >2 prior tyrosine kinase inhibitors (TKIs): Week 96 update.  (Abstract #7004)2ライン以上のTKIによる前治療歴があり、それらのTKI治療に抵抗性・不耐容のCML患者に対し、従来のTKIが結合するATP結合サイトとは異なるミリストイルポケットを標的とするasciminibとボスチニブを比較した第III相試験のASCEMBL試験のフォローアップデータが発表された。最初の解析時点から16.5ヵ月経過した2.3年時点での結果である。157例がasciminib、76例がボスチニブに割り付けられ、84例(53.5%)と15例(19.7%)が治療継続しており、治療効果不十分のため中止となった症例は、38例(24.2%)と27例(35.5%)であった。96週時点のMMR率(副次評価項目)は、37.6%と15.8%であり、有意にasciminibが優れていた(主要評価項目の24週時点のMMR率は25.5%と13.2%であった)。内服期間の中央値も23.7ヵ月と7.0ヵ月で、asciminibが長かった。asciminibでボスチニブよりも多くみられたAEは、血小板減少であり、ボスチニブでみられる下痢、嘔気・嘔吐、皮疹、肝障害は、明らかに少なかった。今回の結果から、asciminibは、既存のTKIに抵抗性・不耐容のCML患者の長く継続できる新たな治療薬として、再認識され、現在、日本でも保険適用で使用可能となった。おわりに以上、ASCO 2022で発表された血液腫瘍領域の演題の中から10演題を紹介しました。昨年のASCO 2021でも10演題を紹介いたしましたが、今年も昨年と同様に、どの演題も今後の治療を変えていくような結果であるように思いました。来年以降も現地開催に加えてWEB開催を継続してもらえるならば、ASCO 2023にオンライン参加をしたいと考えています。(でも、もう少し参加費を安くしてほしい、特に、円安の今日この頃(笑))

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6~17歳におけるAZ製ワクチンの安全性と免疫原性/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンChAdOx1 nCoV-19(AZD1222、アストラゼネカ製)は、6~17歳の小児において忍容性と免疫原性が高く、成人を対象とした第III相試験で示された高い有効性と関連する抗体濃度と同程度の抗体を誘導することができ、安全性に関する懸念は認められなかった。英国・チャーチル病院のGrace Li氏らが、英国の4施設で実施した第II相単盲検無作為化比較試験「COV006試験」の結果を報告した。COVID-19ワクチンについては、小児および若年者への接種を推奨している国もあるが、18歳未満におけるCOVID-19ワクチンの免疫反応に関するデータは成人と比較して十分ではなかった。Lancet誌オンライン版2022年6月11日号掲載の報告。2回目接種4週後と12週後(実際は16週後)の2群を設定 研究グループは、慢性呼吸器疾患および検査で確認されたCOVID-19の既往がなく、莢膜B群髄膜炎菌ワクチン(対照)未接種の6~17歳の健康小児を、AZD1222(ウイルス粒子量5×1010)を28日間隔、対照ワクチンを28日間隔、AZD1222を84日間隔、対照ワクチンを84日間隔でそれぞれ2回接種する群に、4対1対4対1の割合で無作為に割り付け筋肉内投与した。 参加者は年齢で層別化され、12~17歳群が6~11歳群より先に登録された。試験期間中に30歳未満へのAZD1222接種制限が導入されたため、28日間隔群に割り付けられた12~17歳の参加者のみが、計画された間隔(28日目)でAZD1222接種を受けた。残りの参加者は112日目に2回目の接種を受けた。 主要評価項目は、安全性解析対象集団(試験薬を少なくとも1回投与されたすべての参加者)における安全性と忍容性であった。副次評価項目は免疫原性で、ベースラインでSARS-CoV-2(ヌクレオカプシドタンパク質)血清陰性者およびワクチン2回接種者を対象に評価した。 2021年2月15日~4月2日の間に、262例がAZD1222群(211例[28日間隔群105例、84日間隔群106例])または対照群(51例[26例、25例])に割り付けられた(12~17歳150例[57%]、6~11歳112例[43%]、英国のワクチン接種方針の変更により予定人数に達する前に低年齢層の募集を終了)。AZD1222の若年層28日間隔群の1例が、初回接種前に同意を取り下げた。2回目接種後抗体価、6~11歳16週後>12~17歳16週後>12~17歳4週後の順で高い AZD1222群において、局所性および全身性の特定有害事象(solicited adverse event)は、初回接種後7日目までで210例中169例(80%)に、2回目接種後で193例中146例(76%)に認められた。 AZD1222接種に関連する重篤な有害事象は、データカットオフ日(2021年10月28日)までに報告されなかった。また、いずれかの接種後28日までの非特定有害事象の発現頻度は40%(83/210例、計128件)であった。 AZD1222の6~11歳群で、初回接種後1日目のGrade4の発熱(40.2℃)が1例報告されたが、24時間以内に消失した。AZD1222接種あるいは対照ワクチン接種でよくみられた有害事象は、疼痛および圧痛であった。 全参加者262例中20例(8%)は血清データを入手できず、血清データのある242例中14例(6%)はベースライン時に血清陽性であった。AZD1222群のベースライン時血清陰性者において、2回目接種後28日目の抗SARS-CoV-2 IgG抗体濃度および中和抗体濃度(IC50)(いずれも幾何平均値)は、投与間隔が長い(112日)12~17歳群ではそれぞれ73,371 AU/mL[95%CI:58,685~91,733]および299[95%CI:230~390])であり、投与間隔が短い(28日)12~17歳群(それぞれ4万3,280 AU/mL[95%CI:3万5,852~5万2,246]および150[95%CI:116~194])と比較して高かった。 2回目接種後の液性免疫応答は同じ投与間隔が長い(112日)群でも、6~11歳群が12~17歳群より高かった(幾何平均比:抗SARS-CoV-2 IgG抗体1.48[95%CI:1.07~2.07]、中和抗体2.96[95%CI:1.89~4.62])。また、細胞性免疫応答(IFN-γ ELISpot法)は、すべての年齢群および間隔群においてAZD1222の1回目接種後にピークに達し、2回目接種後もベースラインより高く維持された。

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mRNAワクチン後の心筋炎/心膜炎リスク、何回目が高いか/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のmRNAワクチン接種後に、稀ではあるが心筋炎または心膜炎のリスク増加が認められ、とくに18~25歳の男性で2回目接種後に最も高いことが、米国食品医薬品局(FDA)のHui-Lee Wong氏らによる後ろ向きコホート研究で示された。米国の医療保険請求データベースを用い、mRNA-1273(モデルナ製)とBNT162b2(ファイザー製)の接種後における心筋炎または心膜炎のリスクを定量的に直接比較した。これまで、いくつかの受動的サーベイランスシステムにより、とくに若年男性において、COVID-19 mRNAワクチン接種後の心筋炎または心膜炎のリスク増加が報告されていた。著者は、「今回の結果は、mRNA-1273とBNT162b2との間に統計学的に有意なリスク差があることを示していないが、差が存在する可能性は除外されるべきではない。また、ベネフィット-リスクプロファイルに従い、いずれかのmRNAワクチンの接種は引き続き支持される」とまとめている。Lancet誌2022年6月11日号掲載の報告。大規模医療保険請求データベースを用いて心筋炎/心膜炎とワクチンとの関連を解析 研究グループは、米国の4つの医療保険請求データベース(Optum、HealthCore、Blue Health Intelligence、CVS Health)を用い、後ろ向きコホート研究を行った。対象は、COVID-19 mRNAワクチン(BNT162b2またはmRNA-1273)を1回以上接種し、初回接種時の年齢が18~64歳のすべての個人で、国際疾病分類(ICD)コードを用いて、ワクチン接種後1~7日に発症した心筋炎または心膜炎を特定した。 心筋炎または心膜炎と各ワクチンとの関連を評価するため、ワクチン接種後の心筋炎または心膜炎の発生率(観察値:O)と、ワクチン非接種時の心筋炎または心膜炎の発生率の代理として、同データベースの過去(ワクチンが提供される1年前の2019年)のコホートから推定された発生率(期待値:E)を比較した。また、多変量ポアソン回帰モデルを用い、ワクチンの製品別の発生率と、mRNA-1273とBNT162b2を比較した発生率比(IRR)を推定し、メタ解析によりデータベースごとの発生率とIRRを統合した。18~25歳の男性で高リスクだが、製品別で心筋炎/心膜炎の発生に有意差なし 2020年12月18日~2021年12月25日の間に、18~64歳の1,514万8,369人がワクチン接種(BNT162b2が1,691万2,716回、mRNA-1273が1,063万1,554回)を受けた。 ワクチン接種後の心筋炎または心膜炎あるいはその両方が、計411例確認された。411例の背景(各データベースにおける割合)は、18~25歳が33~42%、男性が58~73%であった。 18~25歳の男性において、統合発生率は2回目接種後が最も高く、発生率(10万人日当たり)は、BNT162b2で1.71(95%信頼区間[CI]:1.31~2.23)、mRNA-1273で2.17(1.55~3.04)であった。 また、18~25歳の男性において、mRNA-1273のあらゆる接種回数後の心筋炎または心膜炎の発生率は、BNT162b2の同発生率と比較して有意差は認められなかった(統合補正後IRR:1.43、95%CI:0.88~2.34)。BNT162b2接種者と比較したmRNA-1273接種者の心筋炎または心膜炎の過剰リスクは、100万回接種当たり27.80(95%CI:-21.88~77.48)であった。

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