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第41回 入院拒否者に50万円以下の過料など、改正感染症法が成立

<先週の動き>1.入院拒否者に50万円以下の過料など、改正感染症法が成立2.緊急提言「定期受診をやめないで」/日医・日本循環器連合3.75歳以上の高齢者、年収200万円以上は窓口負担2割導入へ4.医療従事者に対するいわれなき差別にNO!/日医5.健診データの共有など、民間PHRの利活用を推進6.広がらぬセルフメディケーション、新しく設立された有識者会議1.入院拒否者に50万円以下の過料など、改正感染症法が成立新型コロナウイルス対策を強化する改正特別措置法など関連法が、3日の参院本会議で可決、成立した。改正感染症法では、入院拒否者に50万円以下(疫学調査拒否者に30万円以下)の過料を、改正特措法により、営業時間短縮命令を拒んだ事業者に対して、緊急事態宣言下で30万円以下(まん延防止等重点措置では20万円以下)の過料を科すことになる。当初は刑罰が検討されていたが、政府・与党は早期成立のため、野党との修正協議にて、罰則の軽減がなされた。この法律の施行に伴う関係政令の整備のため募集されたパブリックコメントによると、「まん延防止等重点措置を集中的に実施すべき事態におけるまん延防止のために必要な措置として、従業員に対する検査受診の勧奨、手指の消毒設備の設置や従業員に対する検査受診の勧奨など」が求められている。(参考)手指消毒できない店に過料も 特措法政令案の概要公表(朝日新聞)「新型インフルエンザ等対策特別措置法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令案」に対する意見の募集(パブリックコメント)について(e-GOV)2.緊急提言「定期受診をやめないで」/日医・日本循環器連合日本医師会と日本循環器学会などを中心とする日本循環器連合は、新型コロナウイルス感染拡大下でも受診控えをしないよう、国民に向けて連名で緊急声明を発出した。現在、緊急治療を要する急性心筋梗塞、急性心不全、致死性不整脈、肺塞栓症などの緊急対応ができなくなっている地域や医療機関が増えている一方、治療中断や受診抑制によって、持病の心臓血管病が悪化する患者が増えているという。緊急医療の提供体制を維持するために、より一層新型コロナウイルス感染予防への留意と慎重な行動をするとともに、現在治療中の患者に向けて継続的な受診と治療を呼び掛けている。(参考)新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言下の心血管病診療に関する緊急声明(日本医師会・日本循環器連合)3.75歳以上の高齢者、年収200万円以上は窓口負担2割導入へ菅内閣は5日、75歳以上で年収200万円以上の人は、医療費の窓口負担を2割に引き上げることを閣議決定した。本国会での成立を目指し、2022年の後半に施行される見通し。現在、75歳以上の後期高齢者の窓口負担は原則1割で、年収383万円以上の人は3割負担だが、今回の制度変更により、単身世帯で年収200万円以上、複数人世帯で75歳以上の年収合計が320万円以上であれば負担割合を1割から2割に引き上げられる。75歳以上の2割に当たる約370万人が対象となる見込み。今後の高齢者の医療費増を見据えた動きだが、収入の大半を年金に頼る高齢者にとっては負担増大であり、受診抑制が進む懸念が残る。(参考)年収200万円以上、2割負担に 75歳以上医療費で法案決定―政府(時事通信)令和3年2月5日付大臣会見概要(厚労省)4.医療従事者に対するいわれなき差別にNO!/日医日本医師会は、3日の定例記者会見にて、医療従事者などへの差別や風評被害に関する調査結果を発表した。これによると、寄せられた698件の差別や風評被害のうち、「医師以外の医療従事者」(主に看護師)に対するものが277件(40%)と最多。次が「医療機関」で268件(38%)、「医師または医療従事者の家族」は112件(16%)だった。城守 国斗常任理事は、「今回の調査結果で、医療従事者などに対していわれなき差別が見られたことを問題視し、引き続き公式YouTubeなどで、医療従事者が国民の生命と健康を守るため、過酷な環境下で仕事をしていることに理解を求める動画の配信を行っていくとともに、国に対しても対応を要望する」と明らかにした。(参考)恫喝や暴言も、医療者への風評被害の実態/日医(ケアネット)医療従事者等に対するいわれなき差別の実態について(日医)「近寄らないで」看護師らへの差別698件 医師会発表(朝日新聞)5.健診データの共有など、民間PHRの利活用を推進厚労省の健康・医療・介護情報利活用検討会の健診等情報利活用ワーキンググループ民間利活用作業班が2月3日に開催された。そこで、民間PHR(Personal Health Record)サービスの利用実態や安全性について、個人を対象とした利用者へのアンケート調査結果が公表された。これによると、PHRの知名度は66.7%が「まったく知らない」と回答しており、現在利用されているアプリは、「お薬手帳」「COCOA」「フィットネス」が多かった。サービスの利用者はアプリケーション自体のユーザビリティを高く評価し、また利用による健康意識や安心を実感していることが明らかになった。一方、個人情報の漏えいに対する不安がある人は、利用したことがある人の約半数に上った。今後、マイナンバーの活用とともに、PHRによってデータが利用される場面が広がっていくと考えられ、現場の医療従事者も患者が利用するような主なサービスについて知っておく必要があるだろう。(参考)民間PHRサービス利用者へのアンケート調査結果等民間事業者間の健診情報連携「拡大に努めるべき」事務局が作業班報告書の記載事項案提示(CBnewsマネジメント)6.広がらぬセルフメディケーション、新しく設立された有識者会議厚労省は3日に第1回セルフメディケーション推進に関する有識者検討会の初会合を開催した。昨年12月に閣議決定された政府税制改正大綱においては、セルフメディケーション税制について、対象をより効果的なものに重点化し、手続きを簡素化した上で5年延長することが打ち出されている。このため、対象医薬品について、スイッチOTCから医療費適正化効果が低いと認められるものを除外し、スイッチOTC以外の一般用医薬品などで医療費削減効果が著しく高いと認められるもの(3薬効程度)を対象に加えることとされた。今後、セルフメディケーション税制の対象医薬品の範囲および今後の医療費削減効果などの検証方法を議論することになる。適応範囲によっては、医療の受診動向にも影響が出る可能性がある。(参考)【厚労省検討会】セルフM税制、対象見直しで議論‐鼻炎薬など求める意見多く(薬事日報)資料 第1回セルフメディケーション推進に関する有識者検討会(厚労省)令和3年度税制改正の大綱の概要(令和2年12月21日閣議決定)(総務省)

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COVID-19、半年後も6割強に倦怠感・筋力低下/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で急性症状を呈した入院患者は、退院後6ヵ月時点で、主に倦怠感・筋力低下、睡眠困難、不安・うつに悩まされていることが明らかにされた。中国・Jin Yin-tan病院(武漢市)のChaolin Huang氏らが、1,733例の入院患者についてフォローアップ試験を行い明らかにした。COVID-19の長期的な健康への影響はほとんど明らかになっていないが、今回の検討では、入院中の症状が重症だった患者について、肺の拡散障害および画像所見の異常がより深刻であることも示され、著者は「これらの集団が、長期的な回復介入を必要とする主なターゲット集団である」と述べている。Lancet誌2021年1月8日号掲載の報告。退院後の症状の聞き取り、6分間歩行テスト、血液検査などを実施 研究グループは、COVID-19退院患者の長期的な健康への影響を明らかにし、関連するリスク因子、とくに疾患重症度を調べるため、2020年1月7日~5月29日に武漢市のJin Yin-tan病院から退院したCOVID-19患者を対象に、前後両方向コホート試験を行った。調査から除外されたのは、フォローアップ前に死亡、精神病性障害、認知症、または再入院のためフォローアップが困難、骨関節症で移動が困難、退院前後に脳卒中や肺塞栓症などの疾患により寝たきりの状態、試験参加を拒否、連絡が不可能、武漢市外に居住または介護・福祉施設に入居の患者すべてであった。 全対象患者に対し、退院後の症状、健康関連の生活の質(QOL)などに関する質問と、身体検査、6分間歩行テスト、血液検査を実施。層別任意不均等抽出法を用いて、被験者を入院中の重症度スケール(7段階評価)に応じて規定した3群(スケール3[酸素補給不要]、4[酸素補給を要する]、5~6[5:高流量鼻カニューレ、非侵襲的人工換気を要する、6:体外式膜型人工肺、侵襲的人工換気を要する])に分類し、肺機能検査、胸部高分解能CT、超音波検査を行った。Lopinavir Trial for Suppression of SARS-CoV-2 in China(LOTUS)試験に登録していた患者は、試験期間中にSARS-CoV-2抗体検査を受けていた。 多変量補整線形またはロジスティック回帰モデルを用いて、重症度と長期健康アウトカムの関連を検証した。入院中に重症だと、倦怠感/筋力低下リスクは約2.7倍に 試験期間中に退院した2,469例のうち、1,733例が同試験に参加した。被験者の年齢中央値は57.0歳(IQR:47.0~65.0)、男性は897例(52%)だった。フォローアップ検査は2020年6月16日~9月3日に行われ、症状発症後の追跡期間中央値は186.0日(IQR:175.0~199.0)だった。 最も多くの患者に認められた症状は、倦怠感または筋力低下(63%、1,038/1,655例)、睡眠困難(26%、437/1,655例)だった。不安やうつ症状も23%(367/1,617例)報告された。 6分間歩行テストの結果が正常値の下限を下回った割合は、入院中の症状重症度スケール3群で24%、同4群で22%、5~6群で29%だった。拡散障害はそれぞれ22%、29%、56%で、CTスコア中央値はそれぞれ3.0(IQR:2.0~5.0)、4.0(3.0~5.0)、5.0(4.0~6.0)だった。 多変量補整後、拡散障害発症に関するオッズ比(OR)は、重症度スケール3群に比べて、4群1.61(95%信頼区間[CI]:0.80~3.25)、5~6群4.60(1.85~11.48)だった。不安またはうつ症状のORは、それぞれ0.88(0.66~1.17)、1.77(1.05~2.97)であり、倦怠感または筋力低下のORはそれぞれ0.74(0.58~0.96)、2.69(1.46~4.96)だった。 フォローアップ時に抗体検査を受けていた94例において、血清陽性率(96.2% vs.58.5%)、中和抗体力価の中央値(19.0 vs.10.0)はいずれも急性期と比較して有意に低かった。 また、急性期に腎障害はなかったがeGFR値が90mL/分/1.73m2以上だった患者822例のうち、フォローアップ時のeGFR値が90mL/分/1.73m2以下だった患者は107例だった。

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COPD急性増悪、入院患者の約6%が肺塞栓症/JAMA

 呼吸器症状の急性増悪で入院した慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において、あらかじめ定めた診断アルゴリズムを用いると、5.9%の患者に肺塞栓症が検出された。フランス・Centre Hospitalo-Universitaire de BrestのFrancis Couturaud氏らが、同国内の病院7施設で実施した前向き多施設共同横断研究「prevalence of symptomatic Pulmonary Embolism in Patients With an Acute Exacerbation of Chronic Obstructive Pulmonary Disease study:PEP研究」の結果を報告した。COPDで呼吸器症状が急性増悪した患者における肺塞栓症の有病率はこれまで明らかになっておらず、COPDの急性増悪で入院した患者に対していつどのように肺塞栓症のスクリーニングをするかが課題であった。JAMA誌2021年1月5日号掲載の報告。COPD急性増悪による入院患者を肺塞栓症診断アルゴリズムで評価 研究グループは、2014年1月~2017年5月の間に呼吸器症状の急性増悪のため入院したCOPD患者を対象に、あらかじめ定めた肺塞栓症診断アルゴリズム(改訂ジュネーブスコアによる検査前確率判定、Dダイマー検査、スパイラルCT肺血管造影+下肢圧迫超音波検査)を入院48時間以内に適用し、3ヵ月間追跡調査した(追跡調査最終日は2017年8月22日)。 主要評価項目は、入院48時間以内に診断された肺塞栓症であった。主な副次評価項目は、入院時に静脈血栓塞栓症を有していないとして抗凝固療法を受けなかった患者における3ヵ月間の肺塞栓症とした。その他の評価項目は、入院時および3ヵ月間の静脈血栓塞栓症(肺塞栓症または深部静脈血栓症)、ならびに3ヵ月間の死亡(静脈血栓塞栓症が臨床的に疑われるかどうかにかかわらない)とした。COPD急性増悪で入院後、2日以内に約6%で肺塞栓症が確認 COPD急性増悪のため入院した患者の計740例(平均[±SD]年齢68.2±10.9歳、女性274例[37.0%])が登録された。このうち、入院48時間以内に肺塞栓症が確認されたのは44例(5.9%、95%信頼区間[CI]:4.5~7.9%)であった。 COPD急性増悪による入院時に静脈血栓塞栓症を有していないと判定され抗凝固療法を受けなかった患者670例において、3ヵ月間の追跡期間中に肺塞栓症が確認されたのは5例(0.7%、95%CI:0.3~1.7%)で、このうち3例は肺塞栓症に関連して死亡した。 全例における3ヵ月死亡率は、6.8%であった(50/740例、95%CI:5.2~8.8%)。追跡期間中に死亡した患者の割合は、入院時静脈血栓塞栓症有病者が非有病者と比較して高かった(25.9%[14/54例]vs.5.2%[36/686例]、リスク差:20.7%、95%CI:10.7~33.8%、p<0.001)。 静脈血栓塞栓症の有病率は、肺塞栓症が疑われた患者(299例)で11.7%(95%CI:8.6~15.9%)、肺塞栓症が疑われなかった患者(441例)で4.3%(95%CI:2.8~6.6%)であった。 著者は、研究の限界として、呼吸器症状の急性増悪が軽度であった患者や重度呼吸不全患者は過小評価されている可能性があること、17.6%の患者は肺塞栓症の初回評価を完遂できていないことなどを挙げたうえで、「COPD患者における肺塞栓症の体系的なスクリーニングが果たしうる役割について、さらなる研究により理解する必要がある」とまとめている。

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COVID-19の院内死亡率、10代はインフルの10倍にも

 インフルエンザとCOVID-19は、類似した感染様式を伴う呼吸器疾患である。そのため、インフルエンザの流行モデルは、COVID-19の流行モデルの検証にもなり得ると考えられる。ただし、両者を直接比較するデータはほとんどない。フランス・ディジョンのUniversity of Bourgogne-Franche-Comté(UBFC)のLionel Piroth氏ら研究グループが、国の行政データベース(PMSI)を用いて後ろ向きコホート研究を実施したところ、入院を要するCOVID-19患者と季節性インフルエンザの患者の症状にはかなりの差異があり、11〜17歳におけるCOVID-19の院内死亡率は、インフルエンザの10倍にも上ることが明らかになった。The Lancet Respiratory Medicine誌2020年12月17日付のオンライン版に掲載。 本研究には、2020年3月1日~4月30日にCOVID-19で入院した全患者、および2018年12月1日~2019年2月28日にインフルエンザで入院した全患者が含まれ、年齢層ごとに層別化されたデータを基に、患者間の危険因子、臨床的特徴、および転帰の比較が行われた。 主な調査結果は以下のとおり。・8万9,530例のCOVID-19患者および4万5,819例のインフルエンザ患者が、それぞれの研究期間中にフランス国内で入院した。患者の年齢中央値は、COVID-19で68歳(四分位範囲[IQR]:52~82)、インフルエンザでは71歳(IQR:34~84)だった。 ・COVID-19患者は、インフルエンザ患者よりも肥満または太り過ぎの傾向があり、糖尿病、高血圧および脂質異常症が多く見られたのに対し、インフルエンザ患者は、心不全、慢性呼吸器疾患、肝硬変、および欠乏性貧血が多かった。 ・COVID-19の入院患者では、インフルエンザと比べ急性呼吸不全、肺塞栓症、敗血症性ショック、または出血性脳卒中の発症頻度が高かったが、心筋梗塞や心房細動の発症頻度は低かった。・院内死亡率は、COVID-19患者のほうがインフルエンザ患者よりも高く(1万5,104例[16.9%]/8万9,530例 vs.2,640例[5.8%]/4万5,819例)、相対死亡リスクは2.9(95%信頼区間[CI]:2.8~3.0)、年齢標準化死亡比は2.82であった。・入院患者のうち、18歳未満の小児の割合はインフルエンザよりもCOVID-19のほうが少なかった(1,227例[1.4%] vs.8,942例[19.5%])。・5歳未満では、インフルエンザよりもCOVID-19のほうが集中治療を要する頻度が高かった(14/613例[2.3%] vs.65/6973例[0.9%])。・11〜17歳におけるCOVID-19の院内死亡率は、インフルエンザよりも10倍高かった(5/458例[1.1%] vs.1/804例[0.1%])。 本結果について著者らは、対象患者数が少ないため、限定的な知見ではあるものの、入院を要するCOVID-19患者と季節性インフルエンザ患者の症状にはかなりの差異があること、小児においてはCOVID-19の入院率はインフルエンザよりも低いが、院内死亡率が高いことを指摘。本結果により、COVID-19の適切な感染予防策の重要性およびワクチンや治療の必要性が浮き彫りになったと述べている。

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新型コロナとインフル、死亡率・症状の違いは?/BMJ

 季節性インフルエンザ入院患者と比較して、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者は肺外臓器障害・死亡リスクの上昇(死亡リスクは約5倍)、および医療資源使用(人工呼吸器装着、ICU入室、入院期間など)の増加と関連していることが、米国・VAセントルイス・ヘルスケアシステムのYan Xie氏らによるコホート研究で明らかとなった。研究グループは、先行研究での季節性インフルエンザとCOVID-19の臨床症状や死亡率の比較は、それぞれ異なるデータおよび統計的手法を用いて行われ、「リンゴとリンゴ」での比較ではなかったとして、米国退役軍人省の入院データを用いて評価を行ったという。結果を踏まえて著者は、「本調査結果は、COVID-19と季節性インフルエンザの比較リスクに関する世界的な議論への情報提供になるとともに、COVID-19パンデミックへの継続的な対策に役立つ可能性があるだろう」と述べている。BMJ誌2020年12月15日号掲載の報告。米国退役軍人の医療データを用いて違いを検証 研究グループは、米国退役軍人省の電子医療データベース(1,255のヘルスケア組織[170の医療センター、1,074の外来クリニックなど]を含む)を用いて、コホート研究を行った。 2020年2月1日~6月17日にCOVID-19で入院した患者(3,641例)と、2017~19年に季節性インフルエンザで入院した患者(1万2,676例)に関するデータを用いて、両者の臨床症状と死亡のリスクの違いを比較した。 主要評価項目は、臨床症状、医療資源の使用(人工呼吸器装着、ICU入室、入院期間)、死亡のリスクで、doubly robust法を用いて傾向スコアを構築し、また、共変量を用いてアウトカムモデルを補正して評価を行った。死亡率の違いは、CKDまたは認知症の75歳以上、黒人の肥満、糖尿病、CKDで顕著 季節性インフルエンザ入院患者と比較してCOVID-19入院患者は、急性腎障害(オッズ比[OR]:1.52、95%信頼区間[CI]:1.37~1.69)、腎代替療法(4.11、3.13~5.40)、インスリン使用(1.86、1.62~2.14)、重度の敗血症性ショック(4.04、3.38~4.83)、昇圧薬使用(3.95、3.46~4.51)、肺塞栓症(1.50、1.18~1.90)、深部静脈血栓症(1.50、1.20~1.88)、脳卒中(1.62、1.17~2.24)、急性心筋炎(7.82、3.53~17.36)、不整脈および心突然死(1.76、1.40~2.20)、トロポニン値上昇(1.75、1.50~2.05)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)値上昇(3.16、2.91~3.43)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値上昇(2.65、2.43~2.88)、横紋筋融解症(1.84、1.54~2.18)のリスクが高かった。 季節性インフルエンザ入院患者と比較してCOVID-19入院患者は、死亡(ハザード比[HR]:4.97、95%CI:4.42~5.58)、人工呼吸器の使用(4.01、3.53~4.54)、ICU入室(2.41、2.25~2.59)および入院日数の増加(3.00、2.20~3.80)のリスクも高かった。 COVID-19入院患者と季節性インフルエンザ入院患者100人当たりの死亡率の違いは、慢性腎臓病または認知症の75歳以上の高齢者と、黒人種の肥満、糖尿病または慢性腎臓病で最も顕著だった。

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COVID-19による静脈血栓塞栓症のアンケート結果/肺塞栓症研究会

 肺塞栓症研究会と日本静脈学会は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による静脈血栓塞栓症の発症有無に関する緊急アンケートを合同で実施し、総計77施設(1,243例)より回答を得た。その結果、肺塞栓症は5例(0.4%)、静脈血栓塞栓症は7 例(0.6%)に発症していたことが明らかになった。今回のアンケート調査では、COVID-19 症例の中で肺塞栓症を含む静脈血栓塞栓症と診断された症例は欧米に比してかなり少数だった。これを踏まえ、横浜南共済病院の孟 真氏率いる調査事務局の研究者らは、「“発症自体が本当に日本人で少ない”のか、“診断されていないだけ”なのかを判断する事は困難である。しかし、欧米の指針に準拠した予防対応が適切であるか、国内でのコホート/レジストリベース研究を含むさらなる研究を行うことが喫緊の課題」としている。 また、感染症指定医療機関の有無に関わらずCOVID-19症例の入院を受け入れている施設が多いものの、COVID-19症例での血栓症予防に関して、指針やマニュアルが存在する施設が少数であったことも明らかにしている。

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体験ルポ・新型コロナワクチン接種―米国の日本人医師が緊急寄稿

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンの接種がついに始まった。世界に先駆け、英国で12月8日から、14日からは感染者数世界最多の米国でも医療・介護従事者に対し、優先的に接種が行われている。今回、米国・ワシントンDCの病院に勤務する日本人医師の安川 康介氏が、ワクチン接種の体験についてケアネットに緊急寄稿。日本においても来年には一般接種が開始されるとみられる中、同氏の体験をぜひ参考にしていただきたい。3月から感染者数急増、全員体制でもひっ迫する診療現場 米国FDAが12月11日、Pfizer社とBioNTech社が開発したmRNAワクチン(BNT162b2)の緊急使用を認めた。これを受けて、わたしが勤務するワシントンDCのMedStar Washington Hospital Centerにおいても、12月16日から医療従事者を対象にワクチン接種が始まった。本稿では、COVID-19に関するわたしの経験を振り返ると共に、ワクチン接種に対する個人的な所感について述べたい。 米国では3月以降に新型コロナウイルスの感染が急速に広がり、すでに29万人以上がCOVID-19で亡くなり、1日の死亡者が3,000人を超える日もある(12月13日現在)。わたしの病院でも、3月後半からCOVID-19による入院患者が増え始め、最初の約2週間で100人近い患者が入院し、一時期は常時200人近い患者が入院している状況が続いた。当初は、COVID-19専用病棟として1棟準備していたが、感染者数の増加に伴って専用病棟が次々と増え、ピーク時は約5病棟が感染者専用病棟となり、ICUの大部分も感染患者によって占められる状況であった。人員の再配置(redeployment)も必要になり、集中治療医や内科医の負担を減らすために他科の専門医やナース・プラクティショナーが「助っ人」として駆り出された。ピーク時よりも感染者が減少したものの、今ではCOVID-19診療がすっかり日常となっている。 COVID-19のさまざまな合併症については世界規模の研究で明らかになりつつあるが、3月以降、この感染症がいかに多種多様な症状・合併症を引き起こすかということを、研究論文のみならず実臨床からも多く学んだ。時に、急速に進む呼吸不全はもちろんのこと、消化器症状、肺塞栓症や脳梗塞、肝障害、腎不全など、COVID-19の恐ろしさを、同僚と共に目の当たりにしてきた。病院のスタッフでも、亡くなったり重症化したりする方もいた。深刻な症状を引き起こす一方で、軽症もしくは無症状で済むケースもまた少なくないことは確かであり、ウェブ上のCOVID-19関連の情報や意見はまさに玉石混交。医療のコミュニケーションの難しさについてもずいぶん考えさせられた。ワクチン接種はコロナと格闘してきた9ヵ月越しの「特別な日」 Pfizer/BioNTech社のmRNAワクチンを巡っては、その効果と安全性を検証した論文が12月10日付のNEJM誌に掲載され、その数日前から、FDAによる53ページに及ぶ詳細な報告書が閲覧可能となっていた。それによると、当該ワクチンの2回投与後の感染予防効果は約95%と高く、短期的な局所反応・全身反応を除いて重篤な副反応はまれであるとのことである。とはいえ、mRNAワクチンは今回初めて承認となるため、長期的およびまれな副反応については、注意深くモニタリングしていく必要がある。 さまざまな不確定要素があるが、それでも私が接種を決めた理由はいくつかあり、先述したワクチンの効果・安全性についての臨床試験の情報、自身の置かれている状況(コミュニティーにおける高い感染者数、勤務先でのCOVID-19診療)、自分が感染した場合、家族や患者、同僚への感染拡大を避けるため―などである。 12月16日(現地時間)、私の働く病院にてワクチン接種が開始された。病院は接種を推奨しているが、もちろん強制ではない。ワクチンの数量が現在のところ限られているため、院内職員でも優先順位が設けられ、COVID-19患者がとくに多い、救急科、集中治療、そして内科の医療従事者が先んじて受けることになった。事前に予約していた時間に病院内のワクチン接種会場に行くと、すでに数人の同僚が並んでいた。CDCからワクチン接種のカードが配られ、ワクチンに関する簡単な資料が渡された後、ワクチンの筋肉内注射を受けた。アレルギー反応が出ないか接種者全員が15分会場で観察され(ちなみにわたしにはアレルギー歴はない)、その後通常の仕事に戻った。その時点では、痛みはほとんどなかったが、数時間経つとインフルエンザワクチンを受けた時のような注射部位の痛みが生じた。夜になると、その痛みはやや増加し、翌日(現地時間で12月17日)もその痛みは持続しているものの、倦怠感・発熱・頭痛・悪寒などの全身症状はない。同僚の中には、受けた夜に発熱・発汗が生じた人もいたが、周りで受けた人のほとんどが主に注射部位の痛みがあった程度である。次の数ヵ月で米国では数百万人単位で今回のワクチンを受ける可能性があるので、日本で接種が開始される頃には、安全性についてより知見が蓄積していることだろう。今年3月以降、新型コロナウイルス感染者の方を日常に診療してきた。この9ヵ月を乗り越えてきた自分や同僚にとって、12月16日は特別な日となった。 2回目の接種は、2021年1月4日に予定している。次回、1回目の接種後から2回目の接種についてお伝えする。【安川 康介氏プロフィール】2007年慶應義塾大学医学部卒業。日本赤十字社医療センターにて初期研修を修了後渡米。ミネソタ州ミネソタ大学医学部内科レジデンシー、テキサス州ベイラー医科大学感染症フェローシップ修了。米国内科専門医・感染症専門医。現在は、ワシントンDCのMedStar Washington Hospital Centerにて、ホスピタリストとして勤務。

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大手術時の術中換気、低容量vs.従来換気量/JAMA

 大手術を受ける成人患者において、術中の低容量換気(low-tidal-volume ventilation)は従来の1回換気量と比較し、同一の呼気終末陽圧(PEEP)下では、術後7日以内の肺合併症の有意な減少は認められなかった。オーストラリア・オースティン病院のDharshi Karalapillai氏らが、単施設での評価者盲検無作為化臨床試験の結果を報告した。手術中の人工換気は旧来、超生理学的1回換気量が適用されてきたが、低容量換気に比べ有害で術後合併症を引き起こす懸念が高まっている。しかし、手術中に人工呼吸器を使用する患者における理想的な1回換気量は不明であった。JAMA誌2020年9月1日号掲載の報告。手術予定患者1,236例で手術中の低容量換気と従来の1回換気量の有効性を比較 研究グループは、2015年2月~2019年2月にオーストラリア・メルボルンの三次医療機関において、2時間以上の全身麻酔下で大手術(心臓胸部手術、頭蓋内手術を除く)を受ける予定の40歳以上の患者1,236例を登録し、低容量換気群(1回換気量が予測体重1kg当たり6mL)または従来換気群(1回換気量が予測体重1kg当たり10mL)に無作為に割り付け、2019年2月17日まで追跡調査した。両群とも、すべての患者でPEEPは5cmH2Oとした。 主要評価項目は、肺炎、気管支痙攣、無気肺、肺うっ血、呼吸不全、胸水、気胸、予定外の術後の侵襲的/非侵襲的人工換気などを含む術後7日以内の術後肺合併症である。副次評価項目は、入院中の肺塞栓症、急性呼吸促迫症候群を含む術後肺合併症、全身性炎症反応症候群、敗血症、急性腎障害、創傷感染(表層部/深部)、術中昇圧剤の必要率、予定外の集中治療室(ICU)入室、院内迅速対応チーム呼び出し、ICU在室期間、入院日数、院内死亡率とした。術後7日以内の術後肺合併症の発生は両群とも38~39%で有意差なし 無作為化された患者1,236例のうち、1,206例(低容量換気群614例、従来換気群592例)が試験を完遂した。平均年齢は63.5歳、女性が494例(40.9%)、腹部外科手術が681例(56.4%)であった。 主要評価項目である術後7日以内の術後肺合併症は、低容量換気群で608例中231例(38%)、従来換気群で590例中232例(39%)に発生した(群間差:-1.3%[95%信頼区間[CI]:-6.8~4.2%]、リスク比:0.97[95%CI:0.84~1.11]、p=0.64)。また、いずれの副次評価項目も、両群間に有意差は確認されなかった。 なお、著者は研究の限界として、単施設の試験で、治療の特性上盲検化できなかったこと、両群の患者数がわずかに不均衡であったこと、胸部X線画像が体系的に評価されていないことなどを挙げている。

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双極性障害のうつ症状の適応も有する非定型抗精神病薬「ラツーダ錠20mg/40mg/60mg/80mg」【下平博士のDIノート】第56回

双極性障害のうつ症状の適応も有する非定型抗精神病薬「ラツーダ錠20mg/40mg/60mg/80mg」今回は、抗精神病薬/双極性障害のうつ症状治療薬「ルラシドン塩酸塩(商品名:ラツーダ錠20mg/40mg/60mg/80mg、製造販売元:大日本住友製薬)」を紹介します。本剤は、長期間の治療が必要な統合失調症や双極性障害のうつ症状の患者に対し、忍容性を保ちながら適切な治療効果を維持することが期待されています。<効能・効果>本剤は、統合失調症および双極性障害におけるうつ症状の改善の適応で、2020年3月25日に承認され、2020年6月11日より発売されています。<用法・用量>《統合失調症》通常、成人にはルラシドン塩酸塩として40mgを1日1回、食後に経口投与します。なお、年齢、症状により適宜増減しますが、1日量は80mgを超えることはできません。《双極性障害におけるうつ症状の改善》通常、成人にはルラシドン塩酸塩として20mgから開始し、1日1回、食後に経口投与します。年齢、症状により適宜増減しますが、増量幅は20mgとして、1日量60mgを超えることはできません。<安全性>国内で実施された臨床試験において、安全性評価対象876例中338例(38.6%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、アカシジア75例(8.6%)、悪心40例(4.6%)、統合失調症29例(3.3%)、傾眠28例(3.2%)、頭痛、不眠症各25例(2.9%)などでした(承認時)。なお、重大な副作用として、遅発性ジスキネジア、高血糖、白血球減少(いずれも1%未満)、悪性症候群、痙攣、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡、肺塞栓症、深部静脈血栓症、横紋筋融解症、無顆粒球症(いずれも頻度不明)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、脳内のドパミン、セロトニンなどのバランスを整えることで、幻覚、幻聴、妄想、不安、緊張、意欲低下などの症状を和らげ、また、双極性障害におけるうつ症状を改善します。2.薬の飲み始めや増量した時期に低血圧が起こることがあります。眠気が出たり、注意力・集中力・反射運動能力が低下したりすることもあるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作はしないでください。3.薬を飲み始めてから、じっとしていられない、興奮が強くなる、ちょっとしたことで怒りっぽくなるなど、普段と異なる様子がみられた場合は、医師または薬剤師に相談してください。4.血糖値が上がることがあるので、本剤を服用後に激しい喉の渇きを感じたり、尿の回数や量が増えたりしたら連絡してください。5.動きが遅い、手足の震えやこわばり、呼吸回数の減少、低血圧などが現れたらご相談ください。6.アルコールは薬の効果を強めることがあるので、本剤を服用中は飲酒を控えてください。また、グレープフルーツを含む飲食物によっても、薬の作用が強く現れることがあるので、本剤を服用中は摂取しないよう気を付けてください。<Shimo's eyes>本剤は第2世代の抗精神病薬(非定型抗精神病薬)で、SDA(セロトニン・ドパミン拮抗薬)に分類されます。既存のSDA内服薬としては、リスペリドン(商品名:リスパダール)、ペロスピロン(同:ルーラン)、ブロナンセリン(同:ロナセン)、パリペリドン(同:インヴェガ)の4剤があり、本剤が5番目となります。本剤は、ドパミンD2受容体、セロトニン5-HT2A受容体および5-HT7受容体に対してはアンタゴニスト、5-HT1A受容体に対してはパーシャルアゴニストとして作用する一方で、抗ヒスタミン作用や抗コリン作用は少ないと考えられています。そのため、本剤は既存のSDAにはない、統合失調症における幻聴や妄想といった陽性症状、意欲減退や感情鈍麻といった陰性症状の改善のほか、不安や落ち込みといったうつ症状の改善も期待できます。統合失調症患者もしくは双極I型障害うつ患者を対象とした国際共同第III相試験において、本剤の忍容性に関して大きな問題は認められませんでした。また、長期投与試験において、統合失調症患者の精神症状に対する効果および双極性障害患者のうつ症状に対する効果は、それぞれ52週にわたり維持されたことが確認されています。2020年5月現在、統合失調症治療薬として、欧米を含む47の国と地域で承認されており、また、双極I型障害のうつ症状治療薬としては米国を含む7つの国と地域で承認されています。海外の最新治療ガイドラインでは、体重増加、糖代謝異常などの代謝系副作用が少ないなどの観点から統合失調症に対して推奨され、双極性障害におけるうつ症状では第一選択薬の1つとして推奨されています。処方時の注意点として、中等度以上の腎機能・肝機能障害のある患者では、投与量の制限があるため、投与量を適宜減量し、慎重に投与することとされています。また、本剤は、1日1回食後に服用することで最高血中濃度が引き上げられ、効果が継続するため、食後投与を厳守する必要があります。なお、本剤と同様に「双極性障害におけるうつ症状」の適応を有するクエチアピンフマル酸塩徐放錠(商品名:ビプレッソ)は就寝前投与なので、服用時点を混同しないように注意しましょう。相互作用としては、CYP3A4の基剤であるため、クラリスロマイシン、アゾール系抗真菌薬などのCYP3A4を強く阻害する薬剤や、リファンピシンなどのCYP3A4を強く誘導する薬剤は禁忌です。アルコールやグレープフルーツ含有食品も併用注意になっており、摂取には注意が必要であることを伝えましょう。参考1)PMDA 添付文書 ラツーダ錠20mg/ラツーダ錠40mg/ラツーダ錠60mg/ラツーダ錠80mg

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デクスメデトミジン、心臓手術後の心房細動やせん妄を抑制せず/Lancet

 麻酔導入時から24時間継続するデクスメデトミジンの持続注入は、心臓手術の回復過程にある患者の術後の心房細動やせん妄を減少しないことが明らかになった。米国・クリーブランドクリニックのAlparslan Turan氏らが、多施設共同無作為化プラセボ対照試験「DECADE試験」の結果を報告した。心房細動とせん妄は心臓手術後の一般的な合併症であり、デクスメデトミジンは鎮静剤としてユニークな特性を有しており、これら合併症のリスクを減少させる可能性があった。著者は、「デクスメデトミジンは、心臓手術を受ける患者の心房細動やせん妄の減少のために投与すべきではない」とまとめている。Lancet誌2020年7月18日号掲載の報告。術後の心房細動とせん妄の発生率を、デクスメデトミジンとプラセボで比較 研究グループは、米国の大学病院6施設において、心拍数が50回/分以上で人工心肺を用いた心臓手術を予定している18~85歳の患者を登録し、デクスメデトミジン群またはプラセボ(生理食塩水)群のいずれかに、1対1の割合に施設で層別化し無作為に割り付けた。 患者、看護に携わる者、評価者は治療に関してすべて盲検化され、治験薬は薬局または本試験に参加していない他の研究協力者が準備し、治験責任医師および担当医師は割付について完全に盲検化された。 投与は、0.1μg/kg/時で外科切開前に開始し、人工心肺終了時に0.2μg/kg/時へ増量した後、術後は0.4μg/kg/時で術後24時間まで維持投与とした。 主要評価項目は、集中治療室入室から術後5日または退院のどちらか早いほうまでの期間における心房細動およびせん妄の発生で、intention-to-treat解析を実施した。有意差はないが、心房細動をわずかに減らすもせん妄はわずかに増加 2013年4月17日~2018年12月6日の期間に患者が登録された。予定患者の83%が登録された時点で実施した5回目の中間解析で無益性(futility)が認められたため、本試験は早期中止となった。798例が無作為化を受けたが(デクスメデトミジン群400例、プラセボ群398例)、各群2例が同意を撤回したため解析対象は794例となった。 心房細動の発生率は、デクスメデトミジン群30%(121/397例)、プラセボ群34%(134/395例)であり、有意差はなかった(相対リスク[RR]:0.90、97.8%信頼区間[CI]:0.72~1.15、p=0.34)。また、せん妄の発生率は、プラセボ群12%に対し、デクスメデトミジン群で17%と増加したが、有意差は認められなかった(1.48、0.99~2.23)。 安全性の評価項目は、治療を要する臨床的に重要な徐脈と低血圧症、心筋梗塞、脳卒中、創部感染、肺塞栓症、深部静脈血栓症、および死亡であった。デクスメデトミジン群で394例中21例(5%)、プラセボ群で396例中8例(2%)に重篤な有害事象が報告され、死亡はデクスメデトミジン群1例(<1%)、プラセボ群1例(<1%)であった。

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トラネキサム酸、消化管出血による死亡を抑制せず/Lancet

 急性期消化管出血の治療において、トラネキサム酸はプラセボに比べ死亡を抑制せず、静脈血栓塞栓症イベント(深部静脈血栓症または肺塞栓症)の発生率が有意に高いことが、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のIan Roberts氏らが実施した「HALT-IT試験」で示された。研究の詳細は、Lancet誌2020年6月20日号に掲載された。トラネキサム酸は、外科手術による出血を低減し、外傷患者の出血による死亡を抑制することが知られている。また、本試験開始前のCochraneの系統的レビューとメタ解析(7試験、1,654例)では、消化管出血による死亡を低下させる可能性が示唆されていた(統合リスク比[RR]:0.61、95%信頼区間[CI]:0.42~0.89、p=0.01)。一方、メタ解析に含まれた試験はいずれも小規模でバイアスのリスクがあるため、大規模臨床試験による確証が求められていた。トラネキサム酸の死亡抑制効果を15ヵ国164施設で評価 本研究は、消化管出血の治療におけるトラネキサム酸の死亡抑制効果を評価する国際的な無作為化プラセボ対照比較試験であり、15ヵ国164施設の参加の下、2013年7月~2019年6月の期間に患者登録が行われた(英国国立衛生研究所医療技術評価[NIHR HTA]プログラムの助成による)。 対象は、参加各国の成人の最小年齢(16歳または18歳)以上の上部または下部消化管出血で、臨床的に重篤な出血がみられる患者であった。重篤な出血は、死亡に至るリスクがある出血と定義され、低血圧、頻脈、ショック徴候のある患者、または輸血や緊急内視鏡検査、手術が必要となる可能性が高い患者が含まれた。 被験者は、トラネキサム酸またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。トラネキサム酸は、負荷投与量1gを10分間かけて緩徐に静脈内投与した後、維持用量3gを125mg/時で24時間かけて投与された。 主要アウトカムは、無作為割り付けから5日以内の出血による死亡とした。割り付けられた治療薬の投与を受けなかった患者、および死亡に関するアウトカムデータが得られなかった患者は、トラネキサム酸の死亡抑制効果の解析から除外された。トラネキサム酸群の静脈血栓塞栓症0.8% vs. プラセボ群0.4% 1万2,009例が登録され、トラネキサム酸群に5,994例(平均年齢58.1[SD 17.0]歳、女性36%)、プラセボ群には6,015例(58.1[SD 17.0]歳、35%)が割り付けられた。1万1,952例(99.5%)が、割り付けられた治療薬の1回以上のトラネキサム酸またはプラセボの投与を受けた。 試験期間中に1,112例が死亡し、無作為割り付けから死亡までの期間中央値は55時間(IQR:18.2~161.8)だった。 5日以内に出血によって死亡した患者は、トラネキサム酸群が5,956例中222例(3.7%)、プラセボ群は5,981例中226例(3.8%)であり(RR:0.99、95%CI:0.82~1.18)、両群間に有意な差は認められなかった。ベースラインの共変量を補正した場合(0.98、0.82~1.17)およびper-protocol解析(0.94、0.71~1.23)でも、結果はほぼ同様であった。 24時間以内の出血による死亡(トラネキサム酸群2.1% vs.プラセボ群2.0%、RR:1.04、95%CI:0.81~1.33)および28日以内の出血による死亡(4.2% vs.4.4%、0.97、0.82~1.15)にも、両群間に有意な差はみられなかった。 28日以内の全死因死亡率(9.5% vs.9.2%、RR:1.03、95%CI:0.92~1.16)に有意な差はなく、再出血率(24時間、5日、28日)も両群間でほぼ同等であった。また、手術、放射線治療、血液製剤の輸注を受けた患者の割合にも有意な差はなかった。 合併症については、動脈血栓塞栓イベント(心筋梗塞、脳卒中)の発生率は両群でほぼ同等であった(0.7% vs.0.8%、RR:0.92、95%CI:0.60~1.39)。一方、静脈血栓塞栓症イベントの発生率は、トラネキサム酸群で有意に高かった(0.8% vs.0.4%、1.85、1.15~2.98)。 著者は、「最新のCochraneレビュー(8試験、1,701例)では、トラネキサム酸の消化管出血による死亡の抑制効果が示されている(RR:0.60、95%CI:0.42~0.87)。今回の知見により、小規模試験のメタ解析は、信頼性が低いことが浮き彫りとなった」と指摘し、「静脈血栓塞栓症のリスク増大が明確となったことから、トラネキサム酸は無作為化試験以外では消化管出血の治療に使用すべきではない」としている。

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大腸がん、1次治療からFOLFOXIRI+ベバシズマブで予後良好/Lancet Oncol

 未治療の転移を有する切除不能大腸がん(mCRC)に対する有効な治療法が明らかにされた。1次治療でFOLFOXIRI+ベバシズマブ(BEV)療法を行い2次治療も同療法を再導入する治療法は、1次治療でmFOLFOX+BEV療法→2次治療でFOLFIRI+BEV療法を逐次投与する治療法と比較して、良好な治療成績が得られることが認められたという。イタリア・ピサ大学のChiara Cremolini氏らが、イタリア国内58施設で実施した、無作為化非盲検第III相試験「TRIBE2試験」の最新解析結果を報告した。Lancet Oncology誌2020年4月号掲載の報告。 研究グループは、2015年2月26日~2017年5月15日に未治療mCRC患者679例を、対照群(340例)と試験群(339例)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 対照群では、1次治療でmFOLFOX6+BEV療法(オキサリプラチン[OX]85mg/m2 /ロイコボリン[LV]200mg/m2の2時間静注、フルオロウラシル[5-FU]400mg/m2ボーラス静注、5-FU 2,400mg/m2の48時間持続静注+BEV 5mg/kgの30分静注)→2次治療でFOLFIRI+BEV療法(イリノテカン[IRI]180mg/m2 /LV 200mg/m2の2時間静注、5-FU 400mg/m2のボーラス静注、5-FU 2,400mg/m2の48時間持続静注+BEV 5mg/kgの30分静注)を投与した。 試験群では、1次治療および2次治療ともにFOLFOXIRI+BEV療法(IRI 165mg/m2の1時間静注、OX 85mg/m2 /LV 200mg/m2の2時間静注、5-FU 3,200mg/m2を48時間持続静注+BEV 5mg/kgの30分静注)を投与した。 主要評価項目は、無作為化から2次治療における増悪(PD)または死亡までの期間(無増悪生存期間[PFS]2)とした。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値35.9ヵ月(四分位範囲:30.1~41.4)(データカットオフ日:2019年7月30日)において、PFS2は試験群19.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:17.3~21.4)、対照群16.4ヵ月(95%CI:15.1~17.5)であった(ハザード比:0.74、95%CI:0.63~0.88、p=0.0005)。・1次治療の期間中に認められた主なGrade3/4の有害事象(発現率:試験群vs.対照群)は、下痢(17% vs.5%)、好中球減少症(50% vs.21%)、動脈性高血圧症(7% vs.10%)であった。・重篤な有害事象は、試験群で84例(25%)、対照群で56例(17%)に認められた。・治療関連死亡は試験群で8例(腸閉塞、腸穿孔および敗血症各2例、心筋梗塞および出血各1例)、対照群で4例(閉塞2例、穿孔および肺塞栓症各1例)報告された。・最初の増悪後、神経毒性を除き、対照群と試験群でGrade3/4の有害事象の発現率に差は認められなかった。神経毒性は試験群でのみ報告された(132例中6例、5%)。・増悪後の重篤な有害事象は、試験群で20例(15%)、対照群で25例(12%)に認められた。・最初の増悪後の治療関連死亡は、試験群で3例(腸閉塞2例、敗血症1例)、対照群で4例(腸閉塞、腸穿孔、脳血管イベントおよび敗血症各1例)報告された。

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COVID-19による静脈血栓症、入院前に発症か/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症患者では、Dダイマーと凝固系での凝固促進変化、この感染症に関連する静脈および動脈血栓症の上昇率が報告されている。現時点でのさまざまな論文報告によると、ICUに入室したCOVID-19患者の死亡率は50%と高い。とくに動脈・静脈での血栓イベント発症の報告は多く、末梢静脈血栓塞栓症は27~69%、肺塞栓症は最大23%も発生している。 フランス・CCN(centre cardiologique du nord saint denis)のJulien Nahum氏らが観察研究を行った結果、深部静脈血栓症の発症割合は79%と高く、早期発見と抗凝固療法を迅速に開始することで予後を改善する可能性が示唆された。また、抗凝固薬を予防投与したにもかかわらず、ICU入室後わずか2日で患者の15%が深部静脈血栓症を発症したことから、COVID-19のICU患者すべてにおいて系統的に抗凝固療法を評価する必要があるとしている。JAMA Network Open 2020年5月29日号のリサーチレターに報告した。 研究者らは、2020年3月中旬~4月初旬、フランス・パリ郊外にある病院の集中治療室(ICU)に入室したCOVID-19重症患者(急性呼吸窮迫症候群を起こし、人工呼吸を要した)を対象に深部静脈血栓症の系統的な評価を行う目的で観察研究を実施した。 研究者らは、ICU入室時、過去に炎症マーカー値の上昇を示したデータや入院時の静脈血栓症の発症率が高いことを考慮し、COVID-19患者全症例に対して下肢静脈エコーを実施。入院時の検査値が正常でも48時間後に下肢静脈エコーを行い、COVID-19の全入院患者に抗凝固療薬の予防投与を推奨した。統計分析はグラフパッドプリズム(ver.5.0)とExcel 365(Microsoft Corp)を用い、両側検定を有意水準5%として行った。 主な結果は以下のとおり。・計34例が組み込まれ、平均年齢±SDは62.2±8.6歳で、25例(78%)が男性だった。・COVID-19患者のうち26例(76%)がPCR法で診断された。 ・8例(24%)はPCR法で陰性だったが、CT画像でCOVID-19肺炎の典型的なパターンを示した。・主な併存疾患は、糖尿病(15例[44%])、高血圧症(13例[38%])、肥満(平均BMI±SD:31.4±9.0)で、深部静脈血栓症を最も発症していたのは、糖尿病(12例/15例)、次いで高血圧(9例/13例)だった。・ 26例(76%)は入院時にノルアドレナリンを、16例(47%)は腹臥位管理を、4例(12%)は体外式膜型人工肺(ECMO)を必要とした。・入院前に抗凝固療法を受けていた患者はわずか1例(3%)だった。・深部静脈血栓症は、入院時に22例(65%)、ICU入室48時間後に下肢静脈エコーを行った際5例(15%)で見られ、入院から48時間経過時点で計27例(79%)に認められた。 ・血栓症の発症部位は、両側性が18例(53%)、遠位が23例(68%)で、近位が9例(26%)だった。 ・過去に報告されたデータと比較して、今回の集団ではDダイマー(平均±SD:5.1±5.4μg/mL)、フィブリノーゲン(同:760±170mg/dL)およびCRP(同:22.8±12.9mg/dL)の値が高かった。一方、プロトロンビン活性(同:85±11.4%)と血小板数(同:256×103±107×103/μL)は正常だった。

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FDA、ALK陽性NSCLCの1次治療としてbrigatinib承認

 米国食品医薬品局(FDA)は、2020年5月23日、ALK陽性転移性非小細胞肺がん(NSCLC)患者の1次治療にALK阻害薬brigatinibを承認した。 この承認は、未治療のALK陽性の局所進行または転移のあるNSCLC患者におけるbrigatinibとクリゾチニブの有効性と安全性を比較した第III相ALTA-1L臨床試験の結果に基づくもの。 brigatinibの客観的奏効率(ORR)は74%、クリゾチニブでは62%であった。べースラインで測定可能な脳転移のある患者のORRは78%、クリゾチニブでは26%であった。無病生存率(PFS)中央値は、brigatinib24ヵ月、クリゾチニブ11ヵ月、ハザード比は0.49であった。 brigatinibの一般的な有害事象(AE)は、下痢(53%)、発疹(40%)、咳(35%)、高血圧(32%)、疲労(32%)、悪心(30%)、筋肉痛(28%)、呼吸困難(25%)、腹痛(24%)、頭痛(22%)など。重篤なAEは、肺炎(4.4%)、間質性肺疾患(3.7%)、発熱(2.9%)、呼吸困難(2.2%)、肺塞栓症(2.2%)、無力症(2.2%)であった。

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がん患者のVTE治療、アピキサバンは低分子ヘパリンに非劣性/NEJM

 がん患者の静脈血栓塞栓症(VTE)の治療において、直接経口抗凝固薬(DOAC)アピキサバンは、低分子ヘパリン(LMWH)ダルテパリン皮下投与と比較して、VTE再発に関して非劣性で、消化管の大出血のリスクを増加させないことが、イタリア・ペルージャ大学のGiancarlo Agnelli氏らが行った「Caravaggio試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年3月29日号に掲載された。現行の主要なガイドラインでは、がん患者のVTE治療にはLMWHが推奨され、最近、DOACであるエドキサバンとリバーロキサバンの使用の考慮が追加されたが、これらのDOACは出血のリスクが高いため有益性は限定的だという。LMWHと比較する無作為化非劣性試験 本研究は、がん患者のVTE治療におけるアピキサバンのダルテパリンに対する非劣性を検証する医師主導の非盲検無作為化非劣性試験である(Bristol-Myers SquibbとPfizerの提携組織の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、症候性または急性の近位型深部静脈血栓症(DVT)または肺塞栓症(PE)を有するがん患者であった。これらの患者が、アピキサバン群(10mg[1日2回]、7日間経口投与後、5mg[1日2回]を投与)、またはダルテパリン群(200 IU/kg[1日1回]、1ヵ月皮下投与後、150 IU/kg[1日1回]を投与)に無作為に割り付けられ、6ヵ月の治療が行われた。 有効性の主要アウトカムは、試験期間中に客観的に確定されたVTE再発(症候性のDVTまたはPEの再発)とした。安全性の主要アウトカムは大出血であった。事前に規定された非劣性マージンは、ハザード比(HR)の両側95%信頼区間(CI)上限値2.00とした。VTE再発:5.6% vs.7.9%、大出血:3.8% vs.4.0% 2017年4月~2019年6月までに、欧州9ヵ国、イスラエル、米国の119施設に1,155例が登録された。アピキサバン群が576例(平均年齢67.2[SD 11.3]歳、男性292例[50.7%])、ダルテパリン群は579例(67.2[10.9]歳、276例[47.7%])であった。治療期間中央値は、アピキサバン群が178日(IQR:106~183)、ダルテパリン群は175日(79~183)だった(p=0.15)。 ベースラインのPE±DVTは、アピキサバン群が52.8%、ダルテパリン群は57.7%、DVTはそれぞれ47.2%、42.3%、症候性DVTまたはPEは、79.9%、80.3%であった。また、活動性のがんは、アピキサバン群が97.0%、ダルテパリン群は97.6%、局所進行・再発または転移を有するがんは、それぞれ67.5%、68.4%だった。 VTE再発は、アピキサバン群が576例中32例(5.6%)、ダルテパリン群は579例中46例(7.9%)で認められ、アピキサバン群のダルテパリン群に対する非劣性が確認され、優越性は示されなかった(ハザード比[HR]:0.63、95%信頼区間[CI]:0.37~1.07、非劣性のp<0.001、優越性のp=0.09)。 このうち、DVT再発は、アピキサバン群が576例中13例(2.3%)、ダルテパリン群は579例中15例(2.6%)で発生し(HR:0.87、95%CI:0.34~2.21)、PE再発はそれぞれ576例中19例(3.3%)および579例中32例(5.5%)で発生した(0.54、0.29~1.03)。 大出血は、アピキサバン群が576例中22例(3.8%)、ダルテパリン群は579例中23例(4.0%)で発生し、両群間に有意な差はみられなかった(HR:0.82、95%CI:0.40~1.69、p=0.60)。消化管大出血は、アピキサバン群が576例中11例(1.9%)、ダルテパリン群は579例中10例(1.7%)で発生した(1.05、0.44~2.50)。 また、臨床的に重要な非大出血(アピキサバン群576例中52例[9.0%]vs.ダルテパリン群579例中35例[6.0%]、HR:1.42、95%CI:0.88~2.30)や、全死因死亡(576例中135例[23.4%]vs.579例中153例[26.4%]、0.82、0.62~1.09)の発生にも、両群間に差はなかった。 著者は、「これらのがん患者におけるアピキサバンの良好な安全性プロファイルは、一般集団のVTE治療におけるアピキサバンの無作為化試験の結果と一致する。これらの知見を合わせると、消化器がんを含め、アピキサバンが適応となるVTEを有するがん患者の割合が拡大する可能性がある」と指摘している。

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下肢非大手術後のVTE予防、リバーロキサバンが有効/NEJM

 下肢の整形外科非大手術を受けた患者では、固定期間中の静脈血栓塞栓症イベントの予防において、リバーロキサバンはエノキサパリンに比べ有効性が優れることが、フランス・パリ大学コシャン病院のC. Marc Samama氏らの検討「PRONOMOS試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年3月29日号に掲載された。下肢の整形外科非大手術後は、一過性に移動能力が低下するため、患者には静脈血栓塞栓症のリスクが生じる。直接作用型第Xa因子阻害薬リバーロキサバンは、エノキサパリンと比較して、選択的人工膝関節全置換術または人工股関節全置換術後の症候性静脈血栓塞栓症と全死因死亡の複合のリスクが低いと報告されている。10ヵ国200施設が参加した無作為化非劣性試験 本研究は、欧州9ヵ国とチュニジアの200施設が参加した二重盲検無作為化非劣性試験であり、2015年12月~2018年4月の期間に患者登録が行われた(フランスCentre Hospitalier Universitaire de Saint-EtienneとBayerの助成による)。 対象は、下肢の整形外科非大手術を受け、担当医により静脈血栓塞栓症のリスクがあると判定され、2週間以上の血栓予防治療が可能な成人患者であった。非大手術には、アキレス腱修復、膝の手術、脛骨プラトーや大腿骨の手術、脛骨骨切り術、脛骨粗面転位術などが含まれた。 被験者は、リバーロキサバン(10mgを経口投与)+プラセボ(皮下投与)を受ける群、またはエノキサパリン(40mgを皮下投与)+プラセボ(錠剤を経口投与)を受ける群に無作為に割り付けられた。 有効性の主要アウトカムは、治療期間中の症候性の遠位型/近位型深部静脈血栓症、肺塞栓症、静脈血栓塞栓症関連死と、治療終了時の無症候性近位型深部静脈血栓症の複合とした。リバーロキサバンの非劣性が確定された場合は、優越性の評価が計画された。安全性アウトカムには、大出血(致死的、危機的、臨床的顕性出血、手術部位の介入を要する出血)および臨床的に重要な非大出血が含まれた。 非劣性マージンは、リスク比(RR)の95%信頼区間(CI)上限値1.30に設定した。主要アウトカム:0.2% vs.1.1%、リスクを75%低減 3,604例が登録され、リバーロキサバン群に1,809例(年齢中央値41歳[IQR:29~54]、男性66.0%)、エノキサパリン群には1,795例(41歳[IQR:29~54]、男性64.0%)が割り付けられた。 主要複合アウトカムの発生率は、リバーロキサバン群が0.2%(4/1,661例)、エノキサパリン群は1.1%(18/1,640例)であり、リバーロキサバン群の非劣性とともに優越性が示された(データ補完済みのRR:0.25、95%CI:0.09~0.75、非劣性のp<0.001、優越性のp=0.01)。 主要複合アウトカムの構成要素のうち、リバーロキサバン群では症候性深部静脈血栓症(0.2% vs.0.6%、RR:0.28、95%CI:0.08~1.00)のリスクが低かった。 出血の発生には、両群間に統計学的に有意な差は認められなかった(大出血/臨床的に重要な非大出血:リバーロキサバン群1.1% vs.エノキサパリン群1.0%、大出血:0.6% vs.0.7%、臨床的に重要な非大出血:0.5% vs.0.3%)。 著者は、「リバーロキサバンの優越性は、主に症候性深部静脈血栓症の発生率が低いことによってもたらされた。これは、本試験には、以前の研究に比べリスクが高い患者が含まれることを反映している可能性がある」と指摘している。

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急性期脳梗塞に対する神経保護薬nerinetideの有効性と安全性/Lancet(解説:中川原譲二氏)-1212

 nerinetideは、シナプス後肥厚部タンパク質95(PSD-95)を阻害するエイコサペプチドで、虚血再灌流の前臨床脳梗塞モデルで有効性が確認されている神経保護薬である。この試験では、急性期脳梗塞患者での迅速血管内血栓回収療法(EVT)に随伴する虚血再灌流におけるnerinetideの有効性と安全性を評価する目的で、多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験(ESCAPE-NA1)が行われた。 対象は、年齢18歳以上、脳主幹動脈閉塞後12時間以内の急性期脳梗塞で、無作為割り付け時に機能障害を伴う脳梗塞がみられ、発症前は地域で自立して活動しており、脳卒中早期CTスコア(ASPECTS)が>4点、多相CT血管造影で中等度~良好な側副路充満が示されている患者であった。被験者はすべてEVTを施行され、適応がある場合は通常治療としてアルテプラーゼの静脈内投与よる血栓溶解療法が行われた。次いで、nerinetide 2.6mg/kg(最大270mg)を静脈内に単回投与する群、またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、90日時の良好な機能的アウトカム(mRSスコア:0~2点)とした。副次評価項目は、神経学的障害(NIHSS:0~2点)、日常生活動作の機能的自立(mBI:95~100点)、きわめて良好な機能的アウトカム(mRSスコア:0~1点)、死亡などであった。nerinetideは、急性期脳梗塞のEVT後の転帰を改善せず 2017年3月~2019年8月の期間に、8ヵ国の48の急性期治療病院で1,105例が登録され、nerinetide群に549例(年齢中央値71.5歳、女性48.8%)、プラセボ群には556例(70.3歳、50.5%)が割り付けられた。アルテプラーゼは、nerinetide群が549例中330例(60.1%)、プラセボ群は556例中329例(59.2%)に投与された。 90日時のmRSスコア0~2点は、nerinetide群が549例中337例(61.4%)で、プラセボ群は556例中329例(59.2%)で達成され、両群間に有意な差は認められなかった(補正後RR:1.04、95%CI:0.96~1.14、p=0.350)。NIHSS 0~2点の達成(nerinetide群58.3% vs.プラセボ群57.6%、補正後RR:1.01、95%CI:0.92~1.11)、mBI 95~100点の達成(62.1% vs.60.3%、1.03、0.94~1.12)、mRSスコア0~1点の達成(40.4% vs.40.6%、0.98、0.85~1.12)および死亡(12.2% vs.14.4%、0.84、0.63~1.13)にも、有意な差はなかった。nerinetideは、アルテプラーゼ非投与のEVT施行例で転帰を改善 アルテプラーゼ非投与例での90日mRSスコア0~2点の達成は、nerinetide群が219例中130例(59.3%)と、プラセボ群の227例中113例(49.8%)に比べ有意に良好であった(補正後RR:1.18、95%CI:1.01~1.38)。また、死亡もnerinetide群で有意に少なかった(0.66、0.44~0.99)。一方、アルテプラーゼ投与例では、このような差はみられなかった(90日mRSスコア0~2点達成の補正後RR:0.97[95%CI:0.87~1.08]、死亡の補正後RR:1.08[0.70~1.66])。 重篤な有害事象の発生は両群でほぼ同等であった(nerinetide群33.1% vs.プラセボ群35.7%、RR:0.92、95%CI:0.79~1.09)。また、進行性脳梗塞(stroke-in-evolution)、新規または再発脳梗塞、症候性頭蓋内出血、肺炎、うっ血性心不全、低血圧、尿路感染症、深部静脈血栓症/肺塞栓症、血管性浮腫の発生にも差はなかった。 以上より、nerinetideは、プラセボ群と比較して、急性期脳梗塞患者でのEVT施行後の良好な機能的転帰の達成割合を改善しなかったが、アルテプラーゼによる血栓溶解療法を併用しなかった集団では、これを改善するとともに、死亡を抑制する可能性があることが示された。EVTでは、アルテプラーゼ併用の有無で、nerinetide導入を選別すべきか? 一般に、急性期脳梗塞に対する早期の血流再開と神経保護の併用療法には、相加的・相乗的効果が期待される。しかし、今回のESCAPE-NA1試験では、アルテプラーゼ非併用群においてのみ、この効果が確認されたとされている。EVTでのアルテプラーゼ併用には、機械的な血栓回収時に末梢に飛散する血栓の溶解などにより、組織灌流を改善させる効果が期待されるが、その神経毒性が、nerinetideの神経保護効果を相殺する可能性も考えられる。今後、EVTが選択されたがアルテプラーゼは併用しない脳梗塞患者の治療へのnerinetide導入に関するさらなる知見が待たれる。

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人工骨頭置換術、セメントレスは再置換のリスクが高い/JAMA

 大腿骨近位部骨折患者の人工骨頭置換術では、非セメント固定はセメント固定に比べ、無菌性再置換のリスクが高く、この差の主な原因は非セメント固定で人工関節周囲骨折の頻度が高いためであることが、米国・カイザーパーマネンテ(Hawaii Permanente Medical Group)のKanu Okike氏らの調査で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年3月17日号に掲載された。合意形成に基づくガイドラインや系統的レビューにより、転位型大腿骨頸部骨折の人工骨頭置換術では、セメント固定は非セメント固定よりも有効性が高いとされる。一方、これらの推奨は米国以外で実施された研究に基づくことを考慮すると、これらの知見が米国の経験を反映するかは不確実だという。60歳以上を対象とする米国の後ろ向きコホート研究 本研究は、米国の大規模な統合保健システムのデータを用いた後ろ向きコホート研究である。 対象は、年齢60歳以上、2009年1月1日~2017年12月31日の期間に、米国の大規模HMOカイザーパーマネンテの36の関連病院で、大腿骨近位部骨折の治療として人工骨頭置換術を受けた患者であった。 被験者は、人工骨頭置換術において、セメントを用いて大腿骨ステムの固定を行う群(セメント固定群)、または多孔質加工インプラントへの骨増殖によって大腿骨ステムの固定を行う群(非セメント固定群)に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは無菌性再置換とし、感染以外の原因で既存のインプラントを置換するために、初回手術後に行われた再手術と定義された。副次アウトカムは、死亡(院内、退院後、全体)、90日の時点での内科的合併症(肺炎、急性心筋梗塞、深部静脈血栓症、肺塞栓症など)・救急診療部(ED)受診・予定外の再入院であった。1年後の再置換率、非セメント固定で1.7%高い 1万2,491例が対象となった。このうち、6,449例(51.6%)がセメント固定、6,042例(48.4%)は非セメント固定を受けていた。セメント固定例の割合の推移は経時的にほぼ一定していた。手術は36施設の481人の外科医によって行われた。  ベースラインの全体の年齢中央値は83歳、69.3%が女性で、75.8%は米国麻酔科学会(ASA)分類の3(重篤な全身性疾患)以上であった。粗1年死亡率は20.9%(2,613/12,491例)で、追跡期間中央値は3.8年(範囲:1~9)だった。 潜在的な交絡因子を調整した多変量回帰分析では、手術後1年時の無菌性再置換の累積発生率は非セメント固定群が3.0%と、セメント固定群の1.3%に比べ有意に高率であった(絶対差:1.7%、95%信頼区間[CI]:1.1~2.2、ハザード比[HR]:1.77、95%CI:1.43~2.19、p<0.001)。事後解析では、この差は主に1年後の人工関節周囲骨折(非セメント固定群1.6% vs.セメント固定群0.2%)の頻度の差によるものだった。 事前に規定された6項目の副次アウトカムは、いずれも両群間に有意な差を認めなかった(全死亡:非セメント固定群20.0% vs.セメント固定群22.8%[HR:0.95、95%CI:0.90~1.01、p=0.08]、院内死亡:1.7% vs.2.0%[0.94、0.73~1.21、p=0.61]、退院後死亡:19.4% vs.21.8%[0.96、0.90~1.01、p=0.11]、内科的合併症:14.6% vs.15.9%、[0.93、0.83~1.03、p=0.16]、ED受診:20.9% vs.20.0%[1.05、0.96~1.15、p=0.29]、再入院:19.8% vs.19.1%[1.04、0.94~1.14、p=0.45])。 著者は、「これらの知見により、米国の外科医は、禁忌がない場合、転位型大腿骨頸部骨折の人工骨頭置換術ではセメント固定を考慮すべきと示唆される」としている。

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nerinetide、急性期脳梗塞のEVT後の転帰改善せず/Lancet

 開発中の神経保護薬nerinetideは、急性期脳梗塞患者において、血管内血栓回収療法(EVT)施行後の良好な機能的転帰の達成割合を改善しないが、アルテプラーゼによる血栓溶解療法を併用しなかった集団では、これを改善するとともに、死亡を抑制する可能性があることが、カナダ・カルガリー大学のMichael D. Hill氏らによる「ESCAPE-NA1試験」で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2020年2月20日号に掲載された。nerinetideは、シナプス後肥厚部タンパク質95(PSD-95、disks large homolog 4とも呼ばれる)を阻害するエイコサペプチドで、虚血再灌流の前臨床脳梗塞モデルで有効性が確認されている神経保護薬である。良好な機能的転帰をプラセボと比較する無作為化試験 研究グループは、急性期脳梗塞患者において、迅速EVT施行後の虚血再灌流傷害におけるnerinetideの有効性と安全性を評価する目的で、多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験を行った(カナダ保健研究所[CIHR]などの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、大血管閉塞発症後12時間以内の急性期脳梗塞で、無作為割り付け時に後遺障害を伴う脳梗塞がみられ、発症前は地域で自立して活動しており、アルバータ脳卒中プログラム早期CTスコア(ASPECTS)が>4点、多相CT血管造影で中等度~良好な側副路充満が示されている患者であった。 被験者はすべてEVT(ステント型血栓回収機器、吸引機器)を施行され、適応がある場合は通常治療としてアルテプラーゼの静脈内投与よる血栓溶解療法が行われた。次いで、nerinetide 2.6mg/kg(最大270mg)を静脈内に単回投与する群、またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、90日時の良好な機能的アウトカム(修正Rankinスケール[mRS]のスコア0~2点)とした。副次評価項目は、神経学的障害(NIHSS:0~2点)、日常生活動作の機能的自立(修正Barthelインデックス[mBI]95~100点)、きわめて良好な機能的アウトカム(mRSスコア0~1点)、死亡などであった。アルテプラーゼ非投与のEVT施行例で、さらなる研究の可能性 2017年3月~2019年8月の期間に、8ヵ国の48の急性期治療病院(カナダ14施設、米国19施設、ドイツ5施設など)で1,105例が登録され、nerinetide群に549例(年齢中央値71.5歳[IQR:61.1~79.7]、女性48.8%)、プラセボ群には556例(70.3歳[60.4~80.1]、50.5%)が割り付けられた。アルテプラーゼは、nerinetide群が549例中330例(60.1%)、プラセボ群は556例中329例(59.2%)に投与された。 90日時のmRSスコア0~2点は、nerinetide群が549例中337例(61.4%)で、プラセボ群は556例中329例(59.2%)で達成され、両群間に有意な差は認められなかった(補正後リスク比[RR]:1.04、95%信頼区間[CI]:0.96~1.14、p=0.350)。 NIHSS 0~2点の達成(nerinetide群58.3% vs.プラセボ群57.6%、補正後RR:1.01、95%CI:0.92~1.11)、mBI 95~100点の達成(62.1% vs.60.3%、1.03、0.94~1.12)、mRSスコア0~1点の達成(40.4% vs.40.6%、0.98、0.85~1.12)および死亡(12.2% vs.14.4%、0.84、0.63~1.13)にも、有意な差はなかった。 アルテプラーゼ非投与例での90日mRSスコア0~2点の達成は、nerinetide群が219例中130例(59.3%)と、プラセボ群の227例中113例(49.8%)に比べ有意に良好であった(補正後RR:1.18、95%CI:1.01~1.38)。また、死亡もnerinetide群で有意に少なかった(0.66、0.44~0.99)。一方、アルテプラーゼ投与例では、このような差はみられなかった(90日mRSスコア0~2点達成の補正後RR:0.97[95%CI:0.87~1.08]、死亡の補正後RR:1.08[0.70~1.66])。 重篤な有害事象の発生は両群でほぼ同等であった(nerinetide群33.1% vs.プラセボ群35.7%、RR:0.92、95%CI:0.79~1.09)。また、進行性脳梗塞(stroke-in-evolution)、新規または再発脳梗塞、症候性頭蓋内出血、肺炎、うっ血性心不全、低血圧、尿路感染症、深部静脈血栓症/肺塞栓症、血管性浮腫の発生にも差はなかった。 著者は、「この新たな知見が確証されれば、さらなる研究を行うことで、EVTが選択されたがアルテプラーゼは併用しない脳梗塞患者の治療へのnerinetide導入に関する詳細なデータがもたらされる可能性がある」としている。

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アキレス腱断裂の治療効果、石膏ギプスvs.機能的装具/Lancet

 アキレス腱断裂で保存療法を受ける患者の管理では、早期の荷重負荷(アキレス腱断裂スコア[Achilles tendon rupture score:ATRS]で評価)において、従来の石膏ギプスは機能的装具に優越せず、資源利用の総費用はむしろ高い傾向にあることが、英国・オックスフォード大学のMatthew L. Costa氏らが行った無作為化試験「UKSTAR試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2020年2月8日号に掲載された。保存療法を受けるアキレス腱断裂患者では、従来、数週間にわたり石膏ギプスで腱を固定する治療が行われてきた。機能的装具は、より早期に運動を可能にする非手術的な代替療法であるが、有効性と安全性のエビデンスは十分ではないという。経済的評価を含む無作為化試験 研究グループは、保存療法を受けるアキレス腱断裂患者において、ギプスと機能的装具の機能・QOLアウトカムおよび資源利用の費用を比較する目的で、実用的な無作為化対照比較優越性試験を実施した(英国国立衛生研究所[NIHR]医療技術評価計画の助成による)。 対象は、年齢16歳以上、初発のアキレス腱断裂の患者であった。患者は外科医とともに、標準的な処置として保存療法が適切かを検討し、患者が手術をしないと決めた場合に、試験への参加が可能とされた。 被験者は、ギプスまたは機能的装具による治療を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。介入の期間は8週間だった。 主要アウトカムは、9ヵ月時の患者報告によるATRSとし、修正intention-to-treat(ITT)集団で解析した。ATRSは、アキレス腱関連の症状、身体活動性、疼痛を評価する10項目からなるスコア(0~100点、100点が最も良好)である。安全性アウトカムとして再断裂の評価を行った。また、患者は資源利用質問票に回答し、資源利用の値を費用に変換した。9ヵ月時ATRS:ギプス群74.4点vs.機能的装具群72.8点 2016年8月~2018年5月の期間に540例(平均年齢48.7[SD 13.8]歳、男性79%)が登録され、ギプス群に266例、機能的装具群には274例が割り付けられた。断裂の原因は70%がスポーツ活動であった。527例(98%)が修正ITT集団に含まれた。 受傷後9ヵ月時の平均ATRSは、ギプス群が74.4(SD 19.8)点、機能的装具群は72.8(20.4)点であり、両群間に有意な差は認められなかった(補正後平均群間差:-1.38点、95%信頼区間[CI]:-4.9~2.1、p=0.44)。8週時のATRSは機能的装具群で優れた(ギプス群35.3点vs.機能的装具群40.3点、補正後平均群間差:5.53、95%CI:2.0~9.1、p=0.0024)が、この差に臨床的な意義があるかは不明であった。また、3および6ヵ月時にも有意な差はなかった。 健康関連QOL(EQ-5D-5L)は、ATRSと同様のパターンを示し、受傷後8週時は機能的装具群で有意に良好であったが、それ以降は両群間に差はみられなかった。 合併症(腱再断裂、深部静脈血栓症、肺塞栓症、転倒、踵の痛み、足部周辺の感覚異常、圧迫創傷)の発現にも差はなかった。腱再断裂は、ギプス群が266例中17例(6%)、機能的装具群は274例中13例(5%)で発現した(p=0.40)。 介入の直接費用の平均額は、ギプス群が36ポンドと、機能的装具群の109ポンドに比べ有意に安価であった(平均群間差:73ポンド、95%CI:67~79、p<0.0001)。一方、医療と個別の社会サービスの総費用の平均額は、それぞれ1,181ポンドおよび1,078ポンドであり、機能的装具群でわずかに低いものの有意な差はなかった(平均群間差:103ポンド、95%CI:-289~84)。 著者は、「早期の荷重負荷において、ギプスの安全で費用効果が優れる代替法として、機能的装具を考慮してもよいと考えられる」としている。

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