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肺癌診療ガイドライン2018(進行再発NSCLC)/日本肺癌学会

 肺癌診療ガイドラインが改訂され、変更ポイントについて第59回日本肺癌学会学術集会で発表された。ここでは、変更点の多かった進行再発非小細胞肺がん(NSCLC)について取り上げる。全領域にGRADE方式を採用 2018年までは一部だったGRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)方式が、本年から全領域の推奨度に適用された。GRADEは「行う」「行わない」という2つの方向性に対する推奨レベルを数字の1と2(推奨する=1、提案する=2)で、エビデンスレベルを英語A~D(A=強、B=中、C=弱、D=とても弱い)で示し、この数字と英語の組み合わせで推奨度を表す。ドライバー遺伝子変異/転座陽性<EGFR遺伝子変異陽性の1次治療> EGFR遺伝子変異陽性の1次治療では、FLAURA、ARCHER1050、NEJ026、NEJ009といった臨床試験が検討された。その結果、PS0~1の場合の1次治療としては下記のようになった(CQ51)。 ・オシメルチニブを行うよう推奨する(1B) ・ダコミチニブを行うよう提案する(2B) ・ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブを行うよう提案する(2A) ・エルロチニブ+ベバシズマブを行うよう提案する(2B) ・ゲフィチニブ+カルボプラチン+ペメトレキセドを行うよう提案する(2B) 樹形図には、従来のEGFR-TKIに替わり、上記の5種の治療法が記載された。<ALK遺伝子転座陽性の2次治療以降> ALK-TKI既治療例に対するロルラチニブの第I/II相試験の結果を踏まえ検討された。その結果、ALK-TKI1次治療耐性または増悪後のPS0〜2に対する治療法として、「ロルラチニブによる治療を行うよう提案する(CQ58、2C)」が新規追加された。<BRAF遺伝子変異陽性> BRAF遺伝子変異陽性例は「ダブラフェニブ+トラメチニブを行うよう推奨する(CQ60、1C)」に変更された。<ドライバー変異/転座陽性例に対する免疫チェックポイント阻害剤> アテゾリズマブのIMpower150試験の結果が検討されたが、最終的には、「ドライバー遺伝子変異/座陽性の患者にプラチナ製剤併用療法と免疫チェックポイント阻害剤の併用療法を行うよう勧めるだけの根拠が明確ではない(CQ49、推奨度決定不能)」という結果となった。ドライバー遺伝子変異/転座陰性もしくは不明…1次治療 ドライバー遺伝子変異/転座陰性の1次治療では、細胞障害性抗がん剤+免疫チェックポイント阻害剤レジメンとして、非扁平上皮がんのKEYNOTE-189、IMpower150、扁平上皮がんのKEYNOTE-407、IMpower131試験が検討された。<PD-L1 50%以上> PS0~1に対する1次治療に対して「プラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1阻害薬を行うよう推奨する(CQ62、1B)」が追加された。PS2においては、「ペムブロリズマブ単剤療法を行うよう提案する(CQ63、2D)」に加え、「細胞障害性抗がん剤を行うよう推奨もしくは提案する(CQ63、単剤 1A、カルボプラチン併用療法 2B)」、「プラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1阻害剤を行うよう推奨するだけの根拠が明確でない(CQ63、推奨度決定不能)」が追加された。 PS0~1の樹形図は、「ペムブロリズマブ単独」と「プラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1阻害剤」の併記、PS2では「細胞障害性抗がん剤」と「ペムブロリズマブ単独」の併記となった。<50%未満もしくは不明> プラチナ製剤併用療法へのPD-1/PD-L1阻害剤の上乗せについては、PS0~1では「プラチナ製剤併用療法にPD-1/PD-L1阻害剤を併用するよう推奨する(CQ67、1B)」、PS2では「プラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1阻害剤を行うよう推奨するだけの根拠がない(CQ67、推奨度決定不能)」という結果となった。 PS0~1の樹形図は、「プラチナ製剤併用療法+PD-1/PD-L1阻害剤」が追加され、75歳未満では「プラチナ製剤併用療法±PD-1/PD-L1阻害剤」、75歳以上では「細胞障害性抗がん剤単剤」と「プラチナ製剤併用療法±PD-1/PD-L1阻害剤」の併記に変更された。ちなみに、PS2は前版と変わらず「プラチナ製剤併用療法」「細胞障害性抗がん剤」の併記。ドライバー遺伝子変異/転座陰性もしくは不明…2次治療以降 ドライバー遺伝子変異/転座陰性もしくは不明の2次治療以降では、新たに免疫チェックポイント阻害剤使用と未使用例に分類された。 免疫チェックポイント阻害剤未使用のPS0~2に対する2次治療においては、「PD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤をよう推奨する(CQ72、1A)」「細胞障害性抗がん剤を行うよう提案する(CQ72、2A)」となった。 免疫チェックポイント阻害剤未使用のPS0~2の樹形図は、「PD-1/PD-L1阻害剤」と「細胞障害性抗がん剤」の併記となった。

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症状からの逆引きによるirAEマニュアル/日本肺癌学会

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、今後肺がん治療の中心になっていくと思われる。それに伴い、ICIによる有害事象(irAE)の対策をさらに整備していく必要がある。滋賀県・市立長浜病院 呼吸器内科 野口 哲男氏は、症状からの逆引きによるirAEマニュアルを作成し、第59回日本肺癌学会学術集会ワークショップ6で紹介した。頻度の高いirAEの主訴8項目から疑われる病名にたどりつける とくに夜間・時間外の救急外来では、患者は症状があって受診する。それはirAEにおいても同様である。あらかじめirAEの種類や症状を知っておくことで、早期発見と対処につながる。とはいえ、irAEの症状は多岐にわたり、発現パターンもさまざまである。問診で患者から診断に結びつく症状を申告するとは限らない。さらに、ICIを用いることのない診療科や研修医がirAEの初診を行うことも考えられる。このようなことから、症状から疑わしい病名を想起させ、その後の対応を調べられる、実際に即したirAEマニュアルが必要となる。 野口氏は、頻度の高いirAEの主訴8項目から疑われる病名にたどりつける『irAE逆引きマニュアル』を作成した。8項目は、発熱、吐き気、意識レベル低下、だるさ(倦怠感)、呼吸困難、腹痛、頭痛、手足の脱力。たとえば、発熱の場合、追加の症状聴取で呼吸困難・空咳があればILD、背部痛があれば膵炎、といったように数個の症状を組み合わせることで、可能性のあるirAEの病名が記載されている。実際、このirAE逆引きマニュアルの効果を前期研修医で検証したところ、いずれの研修医も、マニュアルを用いることで、短時間で病態を把握できることが示された。 この『irAE逆引きマニュアル』を参考に、当直医が初期検査をした上でICI処方科の待機医師に報告を行い、その後はICI処方科から専門科(1型糖尿病なら内分泌内科など)へコンサルトされる。また、電子カルテの付箋機能に「ICI投与中」「気を付ける副作用一覧」を表示するなど、他科医師およびメディカルスタッフとの連携を進めているという。 この「irAE逆引きマニュアル」は野口氏のホームページからダウンロード可能である。■参考「呼吸器ドクターNのHP」irAE逆引きマニュアル

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アテゾリズマブ+CBDCA+nab-PTX、進行肺がん1次治療でPD-L1発現によらずPFS延長(IMpower130)/ESMO2018

 StageIV非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療におけるカルボプラチンとnab-パクリタキセルの併用療法へのPD-L1阻害薬アテゾリズマブの上乗せ効果を検討した第III相IMpower130試験の結果、アテゾリズマブ併用群でPD-L1発現状態にかかわらず、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが発表された。ドイツ・ミュンヘンで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2018)で、AUSL della Romagna-RavennaのFederico Cappuzzo氏が発表した。 IMpower130試験は、化学療法未治療の進行非扁平上皮NSCLC患者を対象とし、カルボプラチンとnab-パクリタキセル併用+アテゾリズマブ→アテゾリズマブ維持療法群(atezo+CnP群)とカルボプラチンとnab-パクリタキセル併用→BSCあるいはペメトレキセドによる維持療法群(CnP群)を比較したオープンラベル多施設共同無作為化第III相試験。患者は、atezo+CnP群とCnP群に2:1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、EGFRまたはALK陽性患者を除くITT解析集団(ITT-WT)における治験担当医評価による無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)。副次評価項目は、全集団におけるPD-L1発現状態に応じたPFSおよびOS、客観的奏効率(ORR)、安全性であった。 主な結果は以下のとおり。・全体で723例(ITT-WT:679例)が登録された。・ITT-WTにおけるatezo+CnP群は451例/CnP群は228例。<65歳:50.3%/50.0%、男性:59.0%/58.8%、登録時点での肝転移有症例:15.3%/13.6%、ECOG PS 0:42.0%/39.9%、PD-L1高発現(TC3またはIC3):19.5%/18.4%、PD-L1低発現(TC1/2またはIC1/2):28.4%/28.5%、PD-L1陰性:52.1%/53.1%。・データカットオフ(2018年3月15日)時点の追跡期間中央値は19.0ヵ月であった。・ITT-WTにおけるPFS中央値は、atezo+CnP群7.0ヵ月に対しCnP群5.5ヵ月と、atezo +CnP群で有意に改善した(ハザード比[HR]:0.64、95%信頼区間[CI]:0.54~0.77、p<0.0001)。・ITT-WTにおけるOS中央値は、atezo+CnP群18.6ヵ月に対しCnP群13.9ヵ月と、atezo +CnP群で有意に改善した(HR:0.79、95%CI:0.64~0.98、p=0.033)。・全集団におけるPFS中央値は、atezo+CnP群7.0ヵ月に対しCnP群5.6ヵ月と、atezo +CnP群で有意に改善した(HR:0.65、95%CI:0.54~0.77、p<0.0001)。・全集団におけるOS中央値は、atezo+CnP群18.1ヵ月に対しCnP群13.9ヵ月と、atezo +CnP群で有意に改善した(HR:0.80、95%CI:0.65~0.99、p=0.039)。・PD-L1発現状態ごとのサブグループ解析では、PD-L1高発現(88例/42例):PFS中央値は6.4ヵ月 vs. 4.6ヵ月(HR:0.51、95%CI:0.34~0.77)、OS中央値は17.3ヵ月 vs. 16.9ヵ月(HR:0.84、95%CI:0.51~1.39)。PD-L1低発現(128例/65例):PFS中央値は8.3ヵ月 vs. 6.0ヵ月(HR:0.61、95%CI:0.43~0.85)、OS中央値は23.7ヵ月 vs. 15.9ヵ月(HR:0.70、95%CI:0.45~1.08)。PD-L1陰性(235例/121例):PFS中央値は6.2ヵ月 vs. 4.7ヵ月(HR:0.72、95%CI:0.56~0.91)、OS中央値は15.2ヵ月 vs. 12.0ヵ月(HR:0.81、95%CI:0.61~1.08)。と、PD-L1発現状態に関わらず、PFS、OSにおけるベネフィットが確認された。・EGFR / ALK陽性患者におけるサブグループ解析では、PFS中央値は7.0ヵ月 vs. 6.0ヵ月(HR:0.75、95%CI:0.36~1.54)、OS中央値は14.4ヵ月 vs. 10.0ヵ月(HR:0.98、95%CI:0.41~2.31)であった。・Grade3/4の治療関連有害事象(TRAE)は、atezo+CnP群で73.2%、CnP群で60.3%の患者に発現した。 ディスカッサントを務めたフランス・Institute of Gustave Roussy のBenjamin Besse氏は、IMpower-150試験の結果とともに本結果を解説し、EGFR / ALK陽性患者を対象とした場合にベバシズマブが役割を果たす可能性があると指摘した。■参考IMpower130試験(Clinical Trials.gov)■関連記事アジア人でより有効、進行肺がんへのプラチナ+ペメトレキセド+アテゾリズマブ(IMpower132)/ESMO2018アテゾリズマブ併用療法、進行肺がん1次治療でPD-L1発現、遺伝子ステータスに関わらずPFSの改善示す(IMpower-150)/AACR2018進行膵がんのnab-PTX+GEM療法、新たな標準治療のエビデンス/NEJMnab-パクリタキセル+アテゾリズマブ、トリプルネガティブ乳がんでPFS延長(IMpassion130)/ESMO 2018※医師限定ASCO2018最新情報ピックアップDoctors’ Picksはこちら

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ESMO2018レポート 肺がん

レポーター紹介ESMO(European Society for Medical Oncology)2018はドイツのミュンヘンで、2018年10月19~23日の期間に行われた。今年は9月に世界肺癌学会がカナダのトロントで行われたこともあり、昨年のESMOと比べると少しトピックスが少ない印象ではあったが、2万8千人が参加し、多くの演題が報告された。肺がん領域でのトピックスをいくつか紹介する。分子標的治療薬のトピックスオシメルチニブの耐性機序EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん患者で、1次治療としてEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)で治療された後、耐性遺伝子の1つであるT790M変異が陽性であった場合に、第3世代EGFR-TKIであるオシメルチニブもしくはプラチナ製剤+ペメトレキセドに割り付けられる第III相試験であるAURA3の試験における、耐性メカニズムについて報告された。ベースラインの血漿サンプルでEGFR遺伝子変異陽性であり、耐性後に血漿検体の評価ができた73例の検討では、49%でT790Mの消失を認め、C797Sが14%で認められた。(Papadimitrakapoulou V, et al, LBA51)また、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん患者で、1次治療として第1世代のEGFR-TKIとオシメルチニブを比較する第III相試験であるFLAURA試験における耐性メカニズムについても報告された。第1世代のEGFR-TKIで治療され、ベースラインの血漿でEGFR遺伝子変異が陽性であった129例の検討では、T790M陽性が47%と最も多く、METの増幅が4%、PIK3CAの変異が3%で認められた。また、オシメルチニブ群で血漿のEGFR遺伝子変異が陽性であった91例の検討では、METの増幅が15%で最も多く、C797X変異が7%、PIK3CA変異が7%で認められた(Ramalingam SS, et al LBA50)。血漿での検討ではあるが、オシメルチニブの耐性メカニズムの検討として重要な報告であったと考える。ALESIAアジアで行われた、ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんの初回治療として、クリゾチニブとアレクチニブを比較する第III相試験の結果が報告された。本試験には187例が登録され、125例がアレクチニブ(600mgを1日2回内服)群に、62例がクリゾチニブ群に割り付けられた。主要評価項目である研究者による評価の無増悪生存期間(PFS)は、アレクチニブ群で有意に良好であった(PFS中央値、アレクチニブ群:未到達、クリゾチニブ群:11.1ヵ月、ハザード比[HR]:0.22、95%信頼区間[CI]:0.13~0.38、p<0.0001)。また、Grde3以上の毒性においても、アレクチニブ群では28.8%でみられたのに対し、クリゾチニブ群で48.8%であり、毒性においてもアレクチニブ群で軽いことが3つ目の第III相試験でも確認された(Zhou C, et al. LBA10)。ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんにおけるアレクチニブの有効性が改めて確認された一方で、日本のみアレクチニブの用量が異なることが、今後のALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんの治療開発において、問題となることが危惧される。免疫チェックポイント阻害薬のトピックスPACIFIC試験の全生存期間に関する探索的検討III期の非小細胞肺がんに対し、化学放射線療法後にデュルバルマブとプラセボを比較する第III相試験であるPACIFIC試験において、SP263で評価したPD-L1の発現によるサブグループ解析の結果が報告された。PFSにおいては、PD-L1が1%以上の集団、PD-L1が1%未満の集団ともにデュルバルマブ群で良好な結果であった。しかし、全生存期間(OS)においては、PD-L1が1%以上の集団ではデュルバルマブ群で良好な結果であったが、PD-L1が1%未満の集団ではプラセボ群で生存曲線が上回る結果であった(Faivre-Finn C, et al. 1363O)。PD-L1の発現評価が可能であったのは全体の60%強であり、またそのうちのサブグループ解析であるため、この結果の解釈には注意が必要であり、この結果をもってPD-L1が1%未満にはデュルバルマブの効果が低いという結論には至らない。しかし、化学放射線療法施行例において、PD-L1発現と予後の結果については今後も検討を行う必要があることが示唆されると考える。IMpower130IV期の非扁平上皮非小細胞肺がんの初回治療として、カルボプラチン+ナブパクリタキセル+アテゾリズマブの3剤併用療法後にアテゾリズマブの維持療法(Atezo+CnP)とカルボプラチン+ナブパクリタキセル併用療法後に支持療法もしくはペメトレキセドの維持療法(CnP)を比較する第III相試験の結果が報告された。主要評価項目の1つである研究者評価のPFS(遺伝子変異陰性患者での)はAtezo+CnPで有意に良好であった(PFS中央値、Atezo+CnP:7.0ヵ月、CnP:5.5ヵ月、HR:0.64[95%CI:0.54~0.77]、p<0.0001)。またもう1つの主要評価項目であるOS(遺伝子変異陰性患者での)においても、Atezo+CnPで有意な改善を認めた(OS中央値、Atezo+CnP:18.6ヵ月、CnP:13.9ヵ月、HR:0.79[95%CI:0.64~0.98]、p=0.033)。EGFRもしくはALK陽性の患者において、PFSとOSともにカルボプラチン+ナブパクリタキセル併用療法に対するアテゾリズマブの上乗せ効果は認められなかった。遺伝子変異陰性の非小細胞肺がんに対する、初回治療としての、プラチナ製剤を含む併用療法に対するアテゾリズマブの上乗せ効果が再確認された結果であった。一方で、遺伝子変異陽性の患者に対する、プラチナ製剤を含む併用療法に対する免疫チェックポイント阻害薬の効果については、いまだ不明のままである。大規模な比較試験の結果が待たれる。(Cappuzzo F, et al. LBA53)B-F1RST局所進行または転移性非小細胞肺がん患者における、アテゾリズマブ単剤の単群第II相試験の結果が報告された。本試験の主解析として、血液検体を用いたtumor mutation burden(bTMB)のカットオフを16とした解析が含まれている。152例のITT集団のうち、バイオマーカーの評価可能でmaximum somatic allele frequency≧1%の患者が119例であり、bTMB≧16の患者は28例であった。bTMB≧16の患者での奏効割合が28.6%に対し、bTMB<16の患者では奏効割合4.4%であった。また、PFSはbTMB≧16群でよい傾向であったものの、統計学的な有意差は認めなかった(PFS中央値、bTMB≧16:4.6ヵ月、bTMB<16:3.7ヵ月、HR:0.66[95%CI:0.42~1.02]、p=0.12)。本試験のみで、bTMBのバイオマーカーとしての有効性の評価は難しいが、高い期待が持てる結果とはいえない。現在、bTMBが高い集団に対する第III相試験が進行中であり、その結果が待たれる。(Kim ES, et al. LBA55)

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TKI→TKIシークエンスの治療戦略は生き残れるか?【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第2回

第2回 TKI→TKIシークエンスの治療戦略は生き残れるか?1)Hochmair MJ, et al. Sequential treatment with afatinib and osimertinib in patients with EGFR mutation-positive non-small-cell lung cancer: an observational study. Future Oncol. 2018 Oct 19.[Epub ahead of print].2)Mok TS, et al. Improvement in Overall Survival in a Randomized Study That Compared Dacomitinib With Gefitinib in Patients With Advanced Non-Small-Cell Lung Cancer and EGFR-Activating Mutations. J Clin Oncol. 2018 Aug 1;36(22):2244-2250.EGFR、ALK陽性例では、すなわち幅広い変異に有効性を示す第3世代のTKIが第1世代TKIに比して大きなPFSの延長を示し、OSも同等かそれ以上の結果が報告されている。一方で第2世代TKIについては、前臨床試験の結果から特定の感受性変異に対して高い有効性が期待されている。実地臨床においてこうした薬剤を1次治療で用いると、耐性変異に特化した腫瘍を誘導でき、2次治療で第3世代TKIを長期間使用できるのではないか、というTKI→TKIの治療戦略に期待が持たれてきた。アファチニブについては、過去の臨床試験に参加した患者を対象に後解析が行われ、アファチニブ後のオシメルチニブでは治療期間中央値が20.2ヵ月、という報告が行われている(Sequist LV, ESMO2017)。今回、この結果を受けて行われた、より大規模なGioTag試験について(ESMO報告ですでにご存じの方もおられるかもしれませんが)解説する。1)についてGioTag試験は、日常臨床におけるアファチニブ→オシメルチニブのシークエンスを検討したもの。アジア・欧米の204例について検討された。患者背景などは特筆すべき事項なし(アジア人は50例[24.5%])。それぞれの治療期間中央値は、アファチニブ11.9ヵ月、オシメルチニブ14.3ヵ月、両薬剤合わせて27.6ヵ月となっている。生存期間については2年生存率79%とのこと。観察期間の問題で中央値は未公表。2)についてARCHER1050のOS論文:dacomitinibとゲフィチニブの第III相試験だが、この中で少数ながら2次治療で第3世代TKIを用いた集団の成績に言及されている。dacomitinib群227例中、22例(9.7%)が第3世代TKIを投与されている。MSTは36.7ヵ月とのこと(ちなみに、全体集団のMSTは34.1ヵ月)。問題点ESMO2017で報告された統合解析から、第2世代→第3世代TKIという治療シークエンスが最強であると考えた人は少なくなかった。しかしながら、より規模を拡大したGioTag試験の結果は、統合解析の報告からは程遠い結果であった。GioTag試験の適格基準の中には「登録時点でオシメルチニブを10ヵ月以上投与しているもの」という項目があり、相当な患者選択がなされているにもかかわらず、である。非常に小規模ではあるが、ARCHER1050のサブセット解析も全体集団とそう変わらない印象がある。GioTag論文のディスカッションでは、アジア人/非アジア人、del19/L858Rなどのサブセット解析もなされているが、そう目を引くものではなかった。ただ今回のPHS 14.3ヵ月についてAURA3における2次治療オシメルチニブのPFS 10.1ヵ月よりはやや長かったので、増悪時サンプルの解析も併せて何らかの特殊な集団を同定できれば興味深かったのだが…。いずれにせよ、本研究結果はTKIシーケンスの治療戦略にとって残念な結果であった。本邦ではALK陽性例に対して初回治療アレクチニブとクリゾチニブを比較する大規模な後方視的研究が登録を完了しており(研究事務局 伊藤 健太郎先生@松阪市民病院)、この結果も待たれるところである。

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ALK陽性肺がんに、第3世代ALK-TKIロルラチニブ発売/ファイザー

 ファイザー株式会社は、2018年11月20日、「ALKチロシンキナーゼ阻害剤に抵抗性又は不耐容のALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の効能・効果で、ロルラチニブ(商品名:ローブレナ錠25mg、同100mg)を発売した。 ALK陽性肺がん治療は2012年のザーコリの発売以降、合計3剤のALK阻害剤が上市され、治療選択肢が広がっている。一方で、遺伝子の耐性変異により既存薬で効果が得られなくなるといった治療上の課題が存在していた。 ロルラチニブは、この耐性メカニズムに注目し創製された第3世代のALK阻害薬で、耐性変異がみられる変異型ALKにも効果が期待される薬剤。臨床試験において、既存のALK阻害剤に抵抗性又は不耐容のALK陽性NSCLCに対する臨床的に意義のある抗腫瘍効果と忍容性が示された。 ロルラチニブは、昨年10月に導入された「医薬品の条件付き早期承認制度」の適用を受け、優先審査の対象として、約8ヵ月間の審査期間を経て、9月21日に世界に先駆けて日本での承認を取得した。製品名:ローブレナ錠25mg/100mg(LORBRENA Tablets 25mg/100mg)一般名:ロルラチニブ(Lorlatinib)効能・効果:ALKチロシンキナーゼ阻害剤に抵抗性又は不耐容のALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌用法・用量:通常、成人にはロルラチニブとして1日1回100mgを経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。製造販売承認取得日:2018年9月21日薬価収載日:2018年11月20日発売日2018年11月20日薬価:25mg:7,216.40円、100mg:25,961.00円製造販売元:ファイザー株式会社

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capmatinib、MET変異NSCLCに良好な結果(GEOMETRY mono-1)/ESMO2018

 METエクソン14スキッピング変異は非小細胞肺がん(NSCLC)の約3〜4%に同定される。この変異はドライバー遺伝子と考えられている。また、深刻な予後不良因子であり、標準治療にも免疫治療にも奏効しにくい。MET阻害薬capmatinib(INC280)は、MET受容体に高い親和性を持つTKIで、最も強力なMETエクソン14スキッピング阻害薬であり、単独およびEGFR-TKIとの併用でMET変異NSCLCに対し、有効性と管理可能な安全性プロファイルを示している。GEOMETRY mono-1は、EGFR野生型、ALK融合遺伝子陰性、MET遺伝子増幅および/またはMETエクソン14スキッピング変異を有する成人NSCLC患者におけるcapmatinib単剤の有効性および安全性を評価する多施設共同非盲検第II相試験。MET増幅患者とMETエクソン14スキッピング変異に分けて解析される。欧州臨床腫瘍学会(ESMO2018)では、METエクソン14スキッピング変異患者の解析結果が、治療歴のある患者群(コホート4)と、未治療の患者群(5B)に分けて発表された。・対象[コホート4]1~2ラインの治療歴を有するMETエクソン14スキッピング変異のあるStageIIIB/IVのNSCLC[コホート5B]治療歴のないMETエクソン14スキッピング変異NSCLCのあるStageIIIB/IVのNSCLC・介入:capmatinib(400mg×2/日)・評価項目[主要評価項目]盲検下独立判定委員会(BIRC)評価による全奏効率(ORR)[副次評価項目]BIRCによる奏効期間(DOR)など。 主な結果は以下のとおり。・コホート4は69例、コホート5Bは28例であった。・有効性は94例(コホート4は69例、コホート5Bは25例)、安全性は302例で評価された。・BIRC評価のORRは、コホート5Bで72.0%(50.6~87.9)、コホート4では39.1%(27.6~51.6)であった。・病勢コントロール率は、コホート5Bで96.0%、コホート4では78.3%であった。・解析時点でのDORは未到達であった。・capmatinibの有害事象の発現率は、全Gradeで83.8%、Grade3/4は33.1%であった。主なものは、末梢浮腫、悪心、嘔吐、および血中クレアチニン値の上昇であった。

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IV期扁平上皮がんへの免疫療法+化学療法併用について(解説:小林英夫氏)-950

 肺がんの組織型は非小細胞がんが多くを占め、とりわけ扁平上皮がんと腺がんが中心となっている。1980年代までは扁平上皮がん、なかでも肺門型(中枢型)の扁平上皮がんが多かったが、その後徐々に腺がんが多数となり、扁平上皮がんを診療する機会が減少していた。ところが近年になり、以前の肺門型扁平上皮がんではなく、肺野末梢に発生する扁平上皮がんを経験する機会が増加してきている。なぜ再増加しているのか理由は定かではない。また、切除不能であるIV期の非小細胞肺がんの治療面では、2000年代以降になり遺伝子変異陽性の腺がんに対しチロシンキナーゼ阻害薬などの分子標的治療薬が急速に普及し、腺がんの標準治療は大きく変化してきた。一方で、IV期扁平上皮がん治療に有効な分子標的薬は導入できておらず、細胞障害性抗腫瘍薬または免疫チェックポイント阻害薬が現時点における治療の主役だが、まだまだ十分な効果は得られていない状況にある。 本論文は、非扁平上皮がんに対する治療としてプラチナ製剤を含む化学療法+ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)が生存期間延長をもたらす可能性が示された既報を受けて、扁平上皮がんへの同併用療法の効果を検証した二重盲検無作為化第III相試験である。全例がカルボプラチンをベースにした化学療法を受け、その半数にペムブロリズマブ、残りの群はプラセボが投与され、両群が比較検討された。主要エンドポイントである全生存期間中央値は、ペムブロリズマブ群15.9ヵ月がプラセボ群11.3ヵ月に比べ有意に延長した。無増悪生存期間中央値もペムブロリズマブ群が6.4ヵ月で、プラセボ群4.8ヵ月に比し良好であった。ペムブロリズマブ群がプラセボ群を上回ることはある程度予想された結果と考えられる。一方、投与薬剤が増えるため有害事象発現も重要課題で、有害事象による治療中止はペムブロリズマブ群が高かった(13.3 vs.6.4%)。治療関連死はそれぞれ3.6%、2.1%にみられた。 2018年ノーベル生理学・医学賞受賞により、がんの免疫療法、チェックポイント阻害薬がますます脚光を浴びている。かつて日本で話題になった丸山ワクチンのような免疫療法と現在の免疫チェックポイント阻害薬はまったく別の機序で作用しており、チェックポイント阻害薬が著効する症例も数多く報告されている。しかし同薬が万能薬ではないことも事実であり、今後、扁平上皮がん治療のキードラッグとしてどのような投与法が最適なのか、まさに研究が進行している。

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「がんだけ診ていればよい時代」は終わった?日本腫瘍循環器学会開催

 2018年11月3~4日、都内にて第1回日本腫瘍循環器学会学術集会が開催され、盛んな議論が行われた。「がんだけ診ていればよい時代」は終わった 日本腫瘍循環器学会理事長の小室 一成氏は、理事長講演で以下のように述べた。 がんと心血管疾患の関係は以前からみられる。近年、がん治療の進歩が生存率も向上をもたらした。そこに、がん患者の増加が加わり、がんと心血管疾患の合併は増加している。さらに、抗がん剤など、がん治療の副作用は、心血管系合併症のリスクを高め、生命予後にも影響することから、がん患者・サバイバーに対する心血管系合併症管理の重要性が増している。実際、乳がん患者の死因は、2010年に、がんそのものによる死亡を抜き、心血管疾患が第1位である。 がん治療において重要な心血管系合併症の1つは心機能障害である。心機能障害を起こす抗がん剤は数多い。アドリアマイシンによる心筋症は予後が悪いことで知られている。また、免疫チェックポイント阻害薬による心筋炎も、発症率は少ないが、いったん発症すると重篤である。もう1つの大きな問題は、がん関連血栓症(cancer associated thrombosis:CAT)として注目されている、血栓塞栓症である。がん患者では血液凝固系が活性化されているが、そこに、抗がん剤による血栓症や内皮細胞傷害のリスクが加わり、がん患者はさらに血栓塞栓症になりやすくなる。また、血栓塞栓症を合併したがん患者の予後は不良である。血栓塞栓症は、がん外来化学療法患者の死亡の10%を占め、死因の第2位となっている。 そのような中、海外では、90年代から、学会の設立、ガイドラインの発行など、さまざまな取り組みが始まっている。わが国では昨年(2017年)10月に日本腫瘍循環器学会が設立された。同学会では、がん患者・サバイバーのために、腫瘍と循環器の専門医が一緒に活動し、疫学・レジストリ研究、基礎研究・臨床研究の推進、診療指針(ガイドライン)の策定、医療体制の整備、教育研修に取り組んでいく。求められる腫瘍および循環器専門医のチームワーク 日本腫瘍循環器学会副理事長で第1回学術集会の会長である畠 清彦氏は、会長講演で以下のように述べた。 がん対策基本法が制定されて、どの地域でも標準治療が受けられるようになり、全体に底上げされて、今までになかったようなサポート体制が出来上がった。一方で、がん患者はどんどん高齢化し、心血管系合併症も増加している。しかし、がん専門施設での循環器内科医不足など、腫瘍循環器の分野は十分とは言えない。多くの薬が登場する中、心臓血管障害の問題があっても、その対策は各施設に任されている状況である。 また、最近の分子標的治療薬をはじめとする抗がん剤は、短期間の観察で承認される。長期的にどのような副作用が出るか報告が必要となる。心血管系の副作用を正確に報告するためにも、循環器と腫瘍の専門家が協調する必要がある。今後、さらに腫瘍専門医と循環器専門医のチームワークが求められるであろう。

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特発性肺線維症〔IPF : idiopathic pulmonary fibrosis〕

特発性肺線維症特発性肺線維症のダイジェスト版はこちら1 疾患概要■ 概念・定義間質性肺炎は、肺の間質と呼ばれる肺胞(隔)壁などに傷害と炎症が生じ、不可逆的な線維化を起こす疾患群である。この間質性肺炎には、薬剤性、膠原病性、大量の粉塵吸入など原因が明らかなものと、原因が不明な特発性間質性肺炎とがある。主な特発性間質性肺炎は7つの病型に分類されているが、そのうち患者数が最も多く、かつ予後不良の中心的疾患が特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)である。IPFは慢性、進行性の疾患であり、高度の線維化が肺底部、肺の末梢領域から肺全体へ広がって、不可逆性の蜂巣肺と呼ばれる病変を形成する、きわめて予後不良の疾患である。IPFの病理組織像はusual interstitial pneumonia (UIP)と呼ばれている所見である。従来、有効な治療法のない疾患であったが、近年、2つの抗線維化薬が治療薬として注目されている。■ 疫学近年まで特発性間質性肺炎、IPFの患者数についての正確な調査は行われておらず、まったく不明であったが、厚生労働省難治性疾患克服研究事業「びまん性肺疾患に関する調査研究班」により2008年以来、北海道において詳細な疫学研究が行われ、実態が明らかにされてきた。これによると、特発性間質性肺炎の有病率は10万人あたり10.0人であり、日本全体では少なくとも約1万3千人の患者数となり、その多くがIPFであることから、少なくみても1万数千人以上のIPF患者が日本には存在すると考えられる。■ 病因定義で述べたように、IPFの原因は不明であるが、リスク・ファクターとして喫煙、職場の粉塵(とくに金属粉塵)、ウィルスなどが考えられている。家族性で遺伝的素因が強くうかがわれる例もある。■ 症状IPFはゆっくりと進行する疾患であるが、個々の患者によって比較的急速に進行する例もある。主な症状は労作時の呼吸困難とさまざまな程度の乾性咳嗽である。労作時の息切れは、来院する6ヵ月~数年前から存在しており、聴診ではほとんどの例で、背部下肺野に捻髪音(fine crackle)を聴取する。半分~1/3の例で「ばち指」を認める。進行し末期に至ると、肺性心、末梢性浮腫、チアノーゼなどがみられてくる。■ 分類背景因子として、粉塵吸入の目立つ例、C型肝炎例、糖尿病合併例、膠原病が疑われる症状のある例、過敏性肺炎との鑑別が難しい例、家族性の例などさまざまなサブタイプの存在するheterogeneousな疾患といえる。近年、欧米からの指摘により日本でも再注目されているのが、上肺に気腫が存在し、下肺に線維化がある「気腫合併肺線維症」(CPFE:combined pulmonary fibrosis and emphysema)である。本病態は喫煙と強い関係があり、呼吸機能上、気腫と線維化が相殺されて、1秒率 (FEV1/FVC)は一見正常に近いが、肺拡散能が低下しているという特徴を有する。本病態では、肺がんの高率合併や症例によっては強い肺高血圧症を合併することからも注意が必要である。分類ではないが、IPFの病態としてきわめて重要なものに「急性増悪」と肺がん合併がある。急性増悪を一旦起こすと、死亡率約80%ともいわれ、きわめて予後不良である。■ 予後IPFはきわめて予後不良の疾患で、わが国のある調査では、初診時を起点とした平均生存期間は約5年であった。また、欧米での診断確定後の平均生存期間は28~52ヵ月とされる。しかしながら、IPFの予後にはきわめて多様性があり、数ヵ月で急性増悪などにより死亡する例から10数年以上生存する例までさまざまである。ただ、全体的にはきわめて予後不良の疾患であることは間違いのないところである。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)IPFの診断については基本的には図1の「IPF診断のフローチャート」に沿って行われる。まず、原因の明らかな他の間質性肺疾患を除外し、つぎにHRCT所見で典型的なUIPパターン(表1)を示す場合には、臨床的にIPFと確定診断される。外科的肺生検が実施された例では、HRCT所見と病理所見の組み合わせで判断していく(表2)。HRCTで典型的なUIPパターンを示さない場合でもpossible UIPパターンで、臨床経過がIPFに合致するような肺機能低下を示す(disease behavior)例ではIPFと臨床診断されることも可能である。こういった診断の際には間質性肺疾患の診断経験を十分に積んだ呼吸器専門医、画像診断医、病理診断医がMDD(multi-disciplinary discussion:多職種による合議)を行い、総合的に判断していくことがIPFの正確な診断に重要とされている。血液検査所見としては、従来LDHのみであったが、近年、新しい間質性肺炎マーカーとしてKL-6、SP-D、SP-Aが導入された。これらは、診断と共に活動度の判定にも有用である。呼吸機能としては、通常肺活量(VC)や全肺気量(TLC)の低下がみられ、拘束性換気障害のパターンを示し、また同時に肺拡散能の低下も認められる。ただし、気腫合併肺線維症ではこの限りではないことは前述した。IPFとの鑑別が必要な主な疾患として、表3のようなものがあげられる。画像を拡大する■MDD(multidisciplinary discussion)の取り扱いMDD:下記のとおり、呼吸器内科医、画像診断医、病理診断医が総合的に診断するMDD-A:画像上他疾患が考えられる場合、気管支鏡検査あるいは外科的肺生検で他疾患が見込まれる場合MDD-B:外科的肺生検は積極的UIP診断の根拠になる場合が多いため、患者のリスクを勘案の上、可能な限り施行するMDD-C:IPF症例で非典型的な画像(蜂巣肺が不鮮明など)を約半数で認めるため、呼吸機能の低下など、進行経過(behavior)を総合して臨床的IPFと判断する症例があるMDD-D:病理検査のない場合の適格性を検討する各MDDにおいて最終診断が変わりうる可能性がある画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する3 治療今まで、IPFの生存率や健康関連QOLに対して明らかな有効性が証明された薬物治療法はなかったが、2008年に新しく上市された抗線維化薬ピルフェニドン(商品名:ピレスパ)、さらに2015年に上市されたニンテダニブ(同:オフェブ)が大きく注目されている。IPFは治癒が期待できない難治性疾患であるため、その治療目標は改善ではなく、むしろ悪化防止(現状維持)が現実的である。予後不良因子である急性増悪の予防(感冒・心不全などの予防、無理をしないなど)、合併症の肺がん、肺高血圧症の早期発見と対応が求められる。後述する薬剤治療に関しても、治療効果と副作用を考えて選択することが重要である。次に、薬剤治療について述べる。1)N-アセチルシステイン(NAC:N-acetylcysteine)は、グルタチオンの前駆物質であり、抗酸化作用を有すると共に、活性酸素のスカベンジャー作用、炎症性サイトカイン産生の抑制作用などがある。IPFの病変部ではグルタチオンが減少し、レドックスバランスの不均衡が生じていることからも、NACの有用性が考えられる。NACの経口薬については欧州を中心とした臨床試験において効果が示されていたが、近年PANTHER試験で経口薬は無効とされた。しかし、日本ではNACはすでに吸入薬の形で去痰薬として長い歴史がある。吸入薬の形によるNACのIPFに対する検証がわが国でも厚生労働省の研究班を中心に行われ、一定の効果が示されている。NACの利点は副作用が少ない点であるが、吸入療法のため、アドヒアランスに欠点がある。吸入薬のNACについては、抗線維化薬との併用を含めさらに検討が必要である。2)抗線維化薬ピルフェニドンピルフェニドンは米国で創薬された薬剤であり、TNF-αなどの炎症性サイトカイン抑制、線維芽細胞のコラーゲン産生抑制といった抗炎症、抗線維化作用を有する薬剤である。わが国において軽症および中等症のIPFを対象とした第II相試験が行われ、歩行時低酸素血症の改善、呼吸機能の悪化抑制が認められた。さらに第III相試験が行われ、%VC悪化の有意な抑制、無増悪生存期間の改善が認められ、2008年12月に世界初の抗線維化薬として市販された。副作用として当初は光線過敏症が注目されていたが、実際に使用してみるとむしろ問題になるのは胃腸障害である。その後の研究でピルフェニドンはIPF患者のVC/FVCの低下を抑制し、無増悪生存期間の延長、6分間歩行距離の低下抑制を示した。とくに軽症例においてVC低下抑制、無増悪生存期間の延長が際立っていた。いくつかのトライアルの統合解析において、ピルフェニドンはIPF患者の全死亡率、疾患関連死亡率の低下を示したという。3)抗線維化薬ニンテダニブニンテダニブは、ベーリンガーインゲルハイム社によって開発された経口薬である。肺の線維化に関係する3つの分子、VEGF受容体、PDGF受容体、FGF受容体を阻害する低分子トリプリチロキンシナーゼ阻害薬である。わが国では2015年に第2の抗線維化薬として承認され市販された。ニンテダニブは全世界的規模のトライアルにおいてIPF患者の呼吸機能の年間低下率を約50%抑制した。主な副作用は下痢であり、その他肝機能障害などがみられる。4)ステロイド、免疫抑制剤これらの抗炎症薬のIPFに対する効果は基本的に否定されているが、IPFの終末期など症例によっては一定の効果をみる場合もある。また、急性増悪の際の治療としては、頻用されている。その他、進行例では在宅酸素療法が行われ、呼吸リハビリテーションも重要である。進行例で基準を満たせば肺移植の適応でもある。4 今後の展望前述の2つの抗線維化薬に対して、今後どのような重症度から投与するのか、長期の安全性、2つの薬の使い分けまたは併用の可能性などの多くの明らかにすべき課題がある。5 主たる診療科呼吸器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 特発性間質性肺炎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本呼吸器学会(医療従事者向けのまとまった情報)1)日本呼吸器学会びまん性肺疾患診断・治療ガイドライン作成委員会編. 特発性間質性肺炎診断と治療の手引き.改訂第3版:南江堂;2016.2)「びまん性肺疾患に関する調査研究」班特発性肺線維症の治療ガイドライン作成委員会編. 特発性肺線維症の治療ガイドライン2017. 南江堂;2017.3)杉山幸比古編.特発性肺線維症(IPF) 改訂版.医薬ジャーナル社;2013.4)杉山幸比古編、特発性間質性肺炎の治療と管理.克誠堂出版;2013.公開履歴初回2013年02月28日更新2018年11月13日

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本庶 佑氏が語るがんと共生する未来

 ノーベル生理学・医学賞受賞が決まった、本庶 佑氏(京都大学高等研究院副院長/特別教授)が、2018年11月1日、都内の日本医師会館で、「驚異の免疫力」と題して特別講演を行った。本講演では、がん免疫療法の現状と課題、そして将来への展望が語られた。PD-1阻害薬への期待と現状の課題 本庶氏が発見した抗PD-1抗体とその応用による「免疫療法」は、ヒト個人の免疫力・体力によってがん細胞を殺す新たな治療法だ。ノーベル賞受賞のきっかけとなったPD-1阻害によるがん免疫治療は、1)すべての種類のがんに効く可能性が高い、2)投与を止めても数年以上有効なので再発が少ない、3)がん細胞を直接攻撃せず、免疫系を活性化するので副作用があっても軽い、という理由から画期的な治療法だと、本庶氏は自信を持って紹介した。 また、今後の展望として「PD-1抗体による治療はこれからのがん治療法の第1選択になるだろう」と期待を語った。免疫療法は、がん治療の初期に使うほうが効果が高く、副作用も少ない可能性があり、従来行われている化学療法・放射線療法・外科手術は、患者の免疫力を弱めてしまうため、導入のタイミングには注意が必要だという。 免疫療法の基礎研究における当面の課題としては、メラノーマなど著効するがん種もあるが、一般的な有効率は30%程度であるため、有効率を向上させることや、有効例・無効例を投与前・直後に判定する方法の開発などが残されている。また、臨床現場の課題としては、がん専門医の免疫分野における知識不足を指摘し、「ときどき重大な副作用を見逃したり、死ななくてもいい患者さんを救えなかったりするという問題が起こる」と、とくに副作用対応プロトコルの充実が急務だと強調した。有効性に対する免疫系の影響と進行中の試験 PD-1阻害療法の有効性予測マーカーとしては、腫瘍遺伝子の変異率が高いことが1つ挙げられるが、必ずしも高いとは限らないという。「最も重要なのは、個人の間の免疫力の違い。しかし、これに関しては非常に幅があり、遺伝子を解析しただけでわかるほど免疫系は単純でない。われわれの知識はまだまだ不足している」と語った。 有効性に関して、「キラーT細胞が腫瘍細胞にどれだけ集まるか、キラーT細胞の活力がどれだけ高いかという2つの問題がある」と課題を呈した。腫瘍細胞に存在するキラーT細胞は、PD-1阻害薬によって活性化され、その結果、腫瘍細胞自身が放出したケモカインに、さらにリンパ節で活性化されたキラーT細胞が引き寄せられる。「PD-1阻害薬は、リンパ節から腫瘍細胞へキラーT細胞が移入することで能力が発揮されるので、リンパ節を取れば取るほどいい、という認識は間違っている」と指摘した。 次に、現在行っている試験として、「低分子薬とPD-1阻害薬を組み合わせると、さらに強力ながん免疫治療の開発が可能になるかもしれない。たとえば、抗体の用量を減らしたり、有効性を向上させたりできるのではないかと考えている」と一部を紹介した。「希望的観測として、現在がん免疫療法の割合は全体からみるとわずかだが、これから次第に免疫療法が増えていき、2024年にはPD-1阻害薬関連の売上高は4兆円を超えるといわれている。将来的に、がん治療の主流になり、がんは完全になくさなくてもよく、自分の体力とのバランスで共存することも、がん治療の1つの目標になるかもしれない」と展望を語った。 現在、PD-1阻害薬との組み合わせによるがん治療は、米国だけで1,000件以上の試験が行われている1)。最も多いのは、CTLA-4抗体と組み合わせたもので、ほかにも、化学療法、放射線療法などと組み合わせた試験が行われている。本庶氏は、「今世紀中にがん死はなくなる可能性が出てきた」と期待を表し、講演を終えた。

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FOLFOXIRI+BV、大腸がん1~2次治療で優越性(TRIBE2)/ESMO2018

 切除不能大腸がんにおいて、1~2次治療でのFOLFOXIRI+ベバシズマブ(BV)の併用療法が、FOLFOX+BV→FOLFIRI+BVの治療シークエンスと比較して良好なアウトカムを示したことが明らかになった。ドイツ・ミュンヘンで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2018)で、イタリア・ピサ大学のChiara Cremolini氏が発表した第III相TRIBE2試験の中間解析結果より。 TRIBE2試験は、切除不能大腸がんの1~2次治療における3剤併用+BVと2剤併用+BVの有効性を比較する非盲検無作為化第III相試験。被験者は、Arm A:FOLFOX+BV→維持療法として5-FU+BV(PDまで)→FOLFIRI+BV→5-FU+BV(PDまで) Arm B:FOLFOXIRI+BV→5-FU+BV(PDまで)→FOLFOXIRI+BV→5-FU+BV(PDまで)に1:1の割合で無作為に割り付けられた(各併用療法はそれぞれ最大8サイクル)。 主要評価項目は、「無作為化から、2次治療のPD(2次治療なし、あるいは1次治療でのPDから3ヵ月以内に2次治療が開始されなかった場合は1次治療のPD)または死亡のいずれかが最初に生じるまでの期間」として定義される無増悪生存期間2(PFS2)。Arm AにおけるPFS2中央値を15ヵ月と推定し、Arm Bとのハザード比(HR)が0.77となるためには、466イベント、654例の患者が必要とされた(両側αエラー:0.05、両側βエラー:0.20)。中間解析は2/3のイベント(303イベント)発生時に計画され、O'Brien Fleming法にしたがって、中間解析では0.0131、最終解析では0.0455の両側αレベルが定義された。 主な結果は以下のとおり。・2015年2月~2017年5月までの間に、イタリアの58施設で、18~75歳、ECOG PS ≦2の679例(Arm A / B:342例/337例)の切除不能大腸がん患者が組み入れられた。年齢中央値:61歳/60歳、ECOG PS 0:86%/87%、右側原発:38%/38%、アジュバント化学療法歴有:2%/2%、肝限局転移:29%/32%、RAS変異型:65%/63%、BRAF 変異型:10%/10%。・追跡期間中央値22.8ヵ月で、547例(286/261)の患者が進行し、423イベント(235 /188)についてPFS2が報告された。・Arm BではArm Aと比較して、1次治療後のPD(PD1)までの期間であるPFS1(9.9ヵ月 vs. 12.0ヵ月、HR:0.73、95%信頼区間[CI]:0.62~0.87、p<0.001)およびRECISTによる奏効率(50% vs.61%、オッズ比[OR]:1.55、95%CI:1.14~2.10、p=0.005)を有意に改善した。・Arm Aで248例(86%)、Arm Bで194例(74%)がPD1後に2次治療を受けた。Arm BではArm Aと比較して、PFS2を有意に延長した(16.2ヵ月 vs. 18.9ヵ月、HR:0.69、95%CI:0.57~0.83、p<0.001)。・1次治療におけるGrade3/4の有害事象のうち、Arm Bで多くみられた項目は、下痢(5% vs.17%、p<0.001)、好中球減少症(21% vs.50%、p<0.001)、発熱性好中球減少症(3% vs.7%、p<0.050)であった。 ■参考TRIBE2試験(Clinical Trials.gov)※医師限定肺がん最新情報ピックアップDoctors’Picksはこちら

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ACE阻害薬と肺がんリスクの関連/BMJ

 ACE阻害薬の使用により、肺がんのリスクが増大し、とくに使用期間が5年を超えるとリスクが高まることが、カナダ・Jewish General HospitalのBlanaid M. Hicks氏らの検討で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2018年10月24日号に掲載された。ACE阻害薬により、ブラジキニンおよびサブスタンスPが肺に蓄積し、肺がんリスクが高まることを示唆するエビデンスがある。この関連を検討した観察研究は限られており、結果は一致していないという。肺がんとの関連をARBと比較するコホート研究 研究グループは、ACE阻害薬の使用が肺がんリスクを高めるかを、ARBと比較する地域住民ベースのコホート研究を行った(Canadian Institutes of Health Researchの助成による)。 United Kingdom Clinical Practice Research Datalinkから、1995年1月1日~2015年12月31日の期間に、新規に降圧薬治療を受けた患者99万2,061例のコホートを同定し、2016年12月31日まで追跡した。 ACE阻害薬の累積使用期間および治療開始からの期間別の肺がんの発生率を、ARBと比較した。Cox比例ハザードモデルを用いて、補正ハザード比(HR)を推算し、95%信頼区間(CI)を算出した。肺がんリスクが14%増加、5年以上の使用で関連が明確に 降圧薬別の患者の割合は、ACE阻害薬使用例が21.0%、ARB使用例が1.6%、その他が77.4%であった。全体の平均年齢は55.6(SD 16.6)歳、男性が46.3%であった。最も多く使用されていたACE阻害薬はramipril(26%)で、次いでリシノプリル(12%)、ペリンドプリル(7%)の順だった。 平均フォローアップ期間は6.4(SD 4.7)年で、この間に7,952例が新たに肺がんと診断された(粗発生率:1.3[95%CI:1.2~1.3]件/1,000人年)。 全体として、ACE阻害薬の使用により、ARBと比較して肺がんリスクが有意に増加した(発生率:1.6件 vs.1.2件/1,000人年、HR:1.14、95%CI:1.01~1.29)。 使用期間が長くなるに従ってHRは徐々に上昇し、5年以降は明確な関連が認められ(HR:1.22、95%CI:1.06~1.40)、10年後にピークに達した(1.31、1.08~1.59)(傾向検定:p<0.001)。 治療開始からの期間についても同様の関連が認められ、期間が長くなるに従ってHRが上昇した(5.1~10年:1.14、95%CI:0.99~1.30、>10年:1.29、1.10~1.51)(傾向検定:p<0.001)。 著者は、「今回、観察された影響はさほど強くないが、小さな作用が結果として多くの患者を生み出す可能性があるため、これらの知見を他の疾患でも確認すべきだろう」と指摘し、「ACE阻害薬が肺がんの発生率に及ぼす影響を、より正確に評価するために、さらに長期のフォローアップを行う必要がある」としている。

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がん悪液質とグレリン様作用薬

 近年、グレリン様作用薬が、がん患者の悪液質症状の改善・軽減効果を示すことが大規模臨床試験で報告され注目を浴びている。そのような中、がん悪液質とグレリンの関係について、日本臨床栄養学会総会・日本臨床栄養協会総会の第16回大連合大会において、国立がん研究センター東病院の光永 修一氏が発表した。がん悪液質とは? がん悪液質は「通常の栄養サポートでは完全に回復することが困難で、進行性の機能障害をもたらし、著しい筋組織の減少を特徴とする複合的な代謝機能障害」(EPCRCガイドライン)と定義される。診断については、「(がん患者における)過去6ヵ月間で5%を超える体重減少がある」「BMI 20未満の患者で2%を超える体重減少がある」または「2%を超える体重減少とサルコペニアを認める」という基準が国際的コンセンサスを得ている。 がん悪液質の頻度は高く、緩和ケアがん患者では46%、進行肺がん初回化学療法前で14%、膵がん診断時では63%との研究結果がある。 がん悪液質患者の予後は悪く、緩和ケア外来、膵がん診断時ともに悪液質があると全生存期間が有意に低下している。また、がん悪液質の増悪と体重減少は相関することが明らかになっており、初回化学療法前のNSCLCの試験では、体重減少が大きいほど悪液質症状が強くなり、治療前および治療中の体重減少が大きいと生命予後が悪くなることが明らかとなっている。がん悪液質の4つの症状と3つの病期 がん悪液質の症状は多様である。そのさまざまな症状が相まって、患者のQOLを悪化させ、予後を悪化させる。がん悪液質の特徴的な症状としては、体重減少(Storage)、食欲不振(Intake)、CRP上昇などの病勢の悪化(Potential)、身体機能の低下(Performance)という4つ(SIPP)がある。 これら症状の程度によって、がん悪液質は「前悪液質」「悪液質」「不応性悪液質」の3段階の病期に分類される。「前悪液質」は、代謝異常は伴うが、体重減少5%以下で比較的症状の軽度な段階。「悪液質」は、過去6ヵ月間で5%超の体重減少、といった前述の定義を満たし、食欲不振や全身炎症を伴う段階。「不応性悪液質」は、異化状態が進み、全身状態が低下し、治療抵抗性に陥っている段階とされる。グレリン様作用薬が悪液質患者の食欲を速やかに改善 がん悪液質は、「前悪液質」段階で治療を開始することで、高い介入効果が期待されている。そのため、悪液質誘導分子、炎症性サイトカイン、食欲に関わる神経内分泌調節不全といった、悪液質の初期段階に関与する標的に焦点を当てた、治療方法の開発が進んでいる。 その中で、グレリンは、食欲とともに、タンパク同化、消化器症状の緩和を促すことから、神経内分泌不全に対する効果が期待されている。また、がん悪液質患者では、内因性グレリンの作用が発揮されにくい可能性が示唆されている。 そのような中、外因性グレリンとしてグレリン様作用薬anamorelinの介入が研究されている。anamorelinは、第II相試験において良好な成績を示し、その後、NSCLCの悪液質患者を対象とした、第III相ROMANA1、ROMANA2試験が行われた。ROMANA1、2ともに500例近い患者が登録され、anamorelin群とプラセボ群で比較検討された。主要評価項目は、除脂肪体重および握力の変化量である。結果、主要評価項目の1つである除脂肪体重は、ROMANA1、2ともにanamorelin群で有意に優れていた。また、その改善は速やかであった。さらに、食欲についてもROMANA1、2ともに速やかに改善し、その後も改善は有意に持続していた。しかし、握力の改善は認められなかった。有害事象については、軽度の消化器症状が若干増加するものの、それ以外はプラセボと大きな違いはなかった。わが国でも、消化器がんと肺がんで第II相試験が行われ、国際的な第III相試験と同様の結果が報告されており、グレリン様作用薬anamorelinはがん悪液質治療の選択肢の1つとして期待されている。〔11月9日 記事の一部を修正しました〕■関連記事日本人肺がんの悪液質に対するanamorelin二重盲検試験の結果(ONO-7643-04)サルコペニア、カヘキシア…心不全リスク因子の最新知識※医師限定肺がん最新情報ピックアップ Doctors’Picksはこちら

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免疫チェックポイント阻害薬の再投与は有効か?【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第1回

第1回 免疫チェックポイント阻害薬の再投与は有効か?免疫チェックポイント阻害剤(ICI)が標準治療の一部となり、今後プラチナ併用療法との3~4剤併用がPD-L1発現レベルにかかわらず検討されるようになる。一方で、根治に導かれる対象はまだまだ少なく、増悪後の治療戦略は今後の検討課題である。前治療で有効性の高い薬剤の再投与はre-challengeと称され、小細胞肺がんにおけるプラチナ併用療法のre-challenge(Inoue A, Lung Cancer 2015)や遺伝子変異陽性例に対するチロシンキナーゼ阻害剤の再投与(Asahina H, Oncology 2010)が第II相試験レベルで行われてきた。ICIについて、先行する悪性黒色腫では単群第II相試験が複数報告され、初回治療と遜色のない効果のみならず安全性も忍容可能であることが報告されているものの、肺がんを含んだ報告はこれまでcase report(Hakozaki T, BMC Cancer 2018)が散見される程度であった。しかしながら2018年に入って徐々に新規の報告が増えてきており、今回その中から2報を取り上げる。1)Fujita K, et al. Retreatment with pembrolizumab in advanced non-small cell lung cancer patients previously treated with nivolumab: emerging reports of 12 cases.Cancer Chemotherapy and Pharmacology.2018;81:1105-1109.2)Bernard-Tessier A, et al. Outcomes of long-term responders to anti-programmed death 1 and anti-programmed death ligand 1 when being rechallenged with the same anti-programmed death 1 and anti-programmed death ligand 1 at progression.Eur J Cancer.2018;101:160-1641)について本邦から、12例の後方視的ケースシリーズニボルマブ(Nivo)既治療例に対するペムブロリズマブ(Pembro)の効果:ORR 8.3%と、やや期待外れではあるものの、約4割で病勢制御が得られている。2例が12ヵ月以上の長期奏効を呈しており、1例は前治療NivoでもPRが得られている一方、2例目は前治療Nivoの最良効果はPDであった。2)についてフランスから、ICI(PD-1/L1阻害剤)の第I相試験に参加した13例に同じICIを再投与したもの(プロトコール規定による前向き研究)。ORRは25%、PFS中央値は12ヵ月。1)、2)いずれも少数例の研究であり、これらをすぐさま実臨床に援用はできない。悪性黒色腫の報告も含めて、現時点では「再投与の安全性は問題なさそう」というのが最も明らかなことと思われる。今後、標準的な細胞障害性化学療法との比較試験が必要になってくると思われるが、下記のようないくつかの議論が必要である。どのような対象で再投与が有効なのか。有効例を対象にした2)の方が再投与の有効性は高いようにもみえるが、1)では初回不応例に再投与が有効性を示している。同じICIがよいのか、もしくはPD-1→PD-L1阻害剤のように変更したほうがよいのか。免疫関連有害事象(以下、irAE)を生じていても再投与は可能なのか。この点については、1)、2)とも詳細が不明である。ICIの再投与については国内外で臨床試験が進行中である(たとえばWJOG9616L:試験事務局 寺岡 俊輔@和歌山県立医科大学)。今後の情報集積が期待される。

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心房細動発症後のがん発症率高い、肺がんは8倍にも

 デンマークの約5万5千人のコホート研究で、心房細動(AF)発症がその後の高いがん発症率に関連し、とくにAF診断後90日以内のがん発症率が高かったことを、デンマーク・Silkeborg Regional HospitalのNicklas Vinter氏らが報告した。Journal of the American Heart Association誌2018年9月4日号に掲載。 本研究は、Danish Diet, Cancer and Health studyにおいてベースライン時にAFおよびがんに罹患していなかった、男性2万6,222人および女性2万8,879人における集団ベースのコホート研究。参加者のAFの発症(Danish National Patient Registry)およびその後のがんの発症(Danish Cancer Registry)を2013年まで追跡した。新規発症したAFを時間依存性曝露としてCox比例ハザードモデルを使用した。 主な結果は以下のとおり。・男性(年齢中央値:56歳)と女性(同:56歳)の追跡期間中央値は、それぞれ16.7年、19.6年であった。・AFはがん全体の高いリスクと関連していた(男性のハザード比[HR]:1.41、95%信頼区間[CI]:1.26~1.58、女性のHR:1.15、95%CI:1.02~1.32)。また男性において、肺がん(HR:1.66、95%CI:1.19~2.30)、大腸がん(HR:1.37、95%CI:1.02~1.85)の高いリスクと関連していた。・AF診断後90日以内のがんリスクはより高かった。HR(95%CI)は以下のとおり。がん全体 男性:2.89(2.10~3.98)  女性:3.72(2.49~5.56)肺がん  男性:7.70(4.34~13.68) 女性:7.98(3.96~16.09)大腸がん 男性:3.35(1.03~10.90) 女性:5.91(2.44~14.29)

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ニボルマブ・イピリムマブ併用、MSI-H/dMMR大腸がん1LでORR60%(CheckMate-142)/ESMO2018

 MSI-H/dMMの転移を有する大腸がん(mCRC)患者の1次治療として、抗PD-1抗体ニボルマブと抗CTLA-4抗体イピリムマブの併用療法が持続的な治療効果を示したことが明らかになった。ドイツ・ミュンヘンで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2018)で、米国・USC Norris Comprehensive Cancer CenterのHeinz-Josef Lenz氏により第II相CheckMate-142試験の新たな解析結果が発表された。 なお、米国では同試験別コホートからのデータに基づき、化学療法歴のある上記患者対象にニボルマブ単剤療法が2017年8月、ニボルマブとイピリムマブの併用療法が2018年7月に、米国食品医薬品局(FDA)からそれぞれ承認されている。 今回結果が発表されたコホートでは、治療歴のないMSI-H/dMMのmCRC患者において、病勢進行、死亡、または忍容できない毒性が認められるまで、ニボルマブ(3mg/kgを2週間間隔)とイピリムマブ(1mg/kgを6週間間隔)が投与された。主要評価項目は治験担当医評価による奏効率(ORR)で、副次評価項目は盲検独立中央委員会(BICR)評価によるORR、病勢コントロール率(DCR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性などであった。 主な結果は以下のとおり。・45例の患者が組み入れられ、51%が男性、年齢中央値は66歳であった。ECOG PSは0(56%)/1(44%)、診断時の臨床病期はI~III期(62%)/IV期(38%)、リンチ症候群の患者が18%含まれ、PD-L1発現率は≧1%(27%)/<1%(58%)/不明(16%)。変異の有無についてはBRAF/KRAS野生型が29%、BRAF変異型が38%、KRAS変異型が22%、その他は不明であった。・追跡期間中央値13.8ヵ月(9~19ヵ月)で、治験担当医評価によるORRは60%、DCRは84%であり、3例(7%)で完全奏功(CR)、24例(53%)で部分奏功(PR)が確認された。PD-L1発現状態やBRAF/KRAS変異、リンチ症候群の有無によらず、奏功が得られていた。・データカットオフ時点で、DOR中央値は未達であった。奏効が得られた患者の82%で効果が持続中であり、74%で6ヵ月以上奏功が持続していた。 ・PFS中央値、OS中央値はともに未達であり、12ヵ月PFS率は77%(95%信頼区間[CI]: 62.0~87.2)、12ヵ月OS率は83%(95%CI:67.6~91.7)であった。・全Gradeの治療関連有害事象(TRAE)は78%の患者で発現し、多くみられた項目は、そう痒症(24%)、甲状腺機能低下症(18%)、無力症(16%)、関節痛(13%)であった。Grade3/4のTRAEは16%の患者で発現したが、治療中止に至ったのは7%と低く、忍容可能と考えられた。■参考CheckMate142試験(Clinical Trials.gov)■関連記事ニボルマブ・イピリムマブ併用、MSI-H/dMMR大腸がんに迅速承認/BMSニボルマブ・イピリムマブ併用、MSI-H大腸がんで有効性/ASCO-GI2018ニボルマブ、MSI-H転移性大腸がんに承認/FDA※医師限定肺がん最新情報ピックアップDoctors’Picksはこちら

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