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サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)レポート

レポーター紹介2019年12月10日~14日まで5日間にわたり、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)が開催された。乳がんだけを取り扱う世界最大の学会である。1977年より開催されており、90ヵ国を超える国々から研究者や医師、医療従事者が参加する。臨床試験のみならず、トランスレーショナルリサーチや基礎研究の演題も口演として聴講できるのが特徴である。ここ数年は欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で大きな演題が発表されるようになった影響もあり、SABCSでは臨床試験についてはサブグループ解析や追跡調査の結果が取り上げられることが多かったが、2019年は今後の日常臨床に大きく影響を及ぼす演題が複数取り上げられた。とくにHER2陽性転移乳がんの演題は非常に重要なものが2題発表された。後に取り上げるDS-8201aの第II相試験の結果は、国内で開発された薬剤であるということもあり、ほぼ半数の演者が国内の研究者であった。すべての演題が興味深いものであったが、なかでも興味深かった6演題を紹介する。T-DM1既治療HER2陽性乳がんにおけるtrastuzumab deruxtecan(DESTINY-Breast01試験)trastuzumab deruxtecan(DS-8201a、T-DXd)は抗HER2抗体であるトラスツズマブにトポイソメラーゼ阻害薬であるexatecanの誘導体を結合した新しい抗体薬物複合体(antibody-drug conjugate:ADC)製剤である。1抗体当たりおよそ8分子の殺細胞性薬剤が結合しており、高比率に結合されている。すでに第I相試験の結果は発表・論文化されており、高い有効性が示されていて、期待されている薬剤の1つである。本試験はT-DM1既治療のHER2陽性進行乳がんを対象として行われた単群第II相試験である。第I相試験ではDLTを認めなかったものの、毒性の懸念からPART 1では用量の再設定が行われ、5.4mg/kgが至適投与量とされた。主要評価項目は独立中央判定委員会によるRECIST v1.1を用いた奏効率、副次評価項目として病勢制御率や臨床的有用率、無増悪生存期間、全生存期間、安全性などが置かれた。184例が5.4mg/kgで投与され、全員が女性であった。ホルモン受容体陽性が52.7%、HER2ステータスはIHC3+が83.7%、IHC2+または1+でISH陽性が16.3%であった。全例がトラスツズマブおよびT-DM1による治療歴を有した。主要評価項目である独立中央判定委員会による奏効率(objective response rate:ORR)は60.9%と非常に高い効果を示した。病勢制御率(disease control rate:DCR)は97.3%、6ヵ月以上の臨床的有用率(clinical benefit rate:CBR)は76.1%であった。奏効期間の中央値は14.8ヵ月であり、3次治療以降としては非常に長い奏効期間を有した。65.8%がペルツズマブによる治療歴を有し、ペルツズマブ治療歴のない症例でより奏効率が高い傾向を示した。無増悪生存期間(progression-free survival:PFS)の中央値は16.4ヵ月、全生存期間(overall survival:OS)の中央値は未到達であった。有害事象(adverse event:AE)はGrade3以上の治療関連AEが57.1%(薬剤との因果関係ありが48.8%)、SAEが22.8%(同12.5%)、治療関連死は4.9%(同1.1%)であった。とくに注目されているAEである肺障害は全Gradeで13.6%と高頻度に発生していた。多くはGrade1または2であったが、2.2%がGrade5であり、やはり注意が必要なAEであるといえよう。総じて毒性が強く、とくに肺障害に注意が必要なものの、非常に高い奏効率と奏効期間を有する薬剤であるといえる。本試験の結果は同日New England Journal of Medicine(NEJM)誌オンライン版に掲載された。筆者は本薬剤の開発の初期段階から関わってきたが、実際に自分が使って感じている実感と本臨床試験の結果は合致している。米国食品医薬品局(FDA)は本試験の結果をもって、2019年12月20日にT-DXdを迅速承認した。国内でも2019年9月に承認申請がなされており、早期に承認されて日本の患者さんに本薬剤が早く届くことを期待している。HER2陽性乳がんにおけるカペシタビン+トラスツズマブに対するtucatinibもしくはプラセボの上乗せ効果を比較する第III相試験(HER2CLIMB試験)tucatinibは経口チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)でHER2のキナーゼドメインを阻害する。ラパチニブはEGFRも阻害するが、tucatinibはHER2特異性が高い。本試験は、トラスツズマブ、ペルツズマブおよびT-DM1による治療歴を有するHER2陽性転移乳がんを対象とした第III相試験でtucatinibまたはプラセボをカペシタビン+トラスツズマブ療法に併用した。ベースラインでの脳MRIが必須とされており、脳転移があっても治療後で落ち着いている、もしくは早急な局所治療を必要としない場合は登録可能とされた。2対1の割合で割り付けが行われ、tucatinib群に410例、プラセボ群に202例が登録された。主要評価項目は最初に登録された480例における独立中央判定委員会によるPFSで、RECIST v1.1を用いて評価された。副次評価項目としてOS、脳転移のある症例のPFS、測定可能病変を有する症例でのORRとされた。脳転移症例は両群で50%弱の割合であった。主要評価項目評価対象症例におけるPFS中央値は7.8ヵ月vs.5.6ヵ月(ハザード比:0.51、95%CI:0.42~0.71、p<0.00001)でありtucatinib群で有意に良好であった。全登録症例におけるOS中央値は21.9ヵ月vs.17.4ヵ月(ハザード比:0.66、95%CI:0.5~0.88、p=0.0048)であり、こちらもtucatinib群で有意に良好であった。脳転移症例におけるPFS中央値は7.6ヵ月vs.5.4ヵ月(ハザード比:0.48、95%CI:0.34~0.69、p<0.00001)であり、脳転移症例においても同様の有効性を示した。奏効率は41% vs.23%でこちらもtucatinib群で有意に良好であり、すべての副次評価項目でtucatinib群が良好な結果であった。Grade3以上のAEはtucatinib群で55%に対しプラセボ群で49%であり、両群間で大きな差は認められなかった。頻度の高いAEは下痢、手足症候群、悪心、倦怠感、嘔吐などであり、HER2-TKIやカペシタビンでよくみられるAEが多かった。本試験の結果は同日NEJM誌オンライン版に掲載された。本試験はペルツズマブ、T-DM1既治療例を対象として行われた初めてのHER2-TKIの試験である。本試験ではPFSのみならずOSにおいても有意に良好であった。また、脳転移に特化したエンドポイントでも有効性を示しており、HER2陽性乳がんで多い脳転移症例に対しても期待される薬剤である。ただ、残念ながら日本からは本試験には参加していない。アロマターゼ阻害薬で進行したホルモン受容体陽性HER2陰性転移乳がんに対するパルボシクリブ+内分泌療法vs.カペシタビンの第III相試験(PEARL試験)2019年のASCOで韓国のグループより閉経前ホルモン受容体陽性HER2陰性転移乳がんに対するエキセメスタン+パルボシクリブ+LHRHa vs.カペシタビンの第II相試験結果(KCSG-BR 15-10)が発表されたことは記憶に新しい。PEARL試験は閉経後ホルモン受容体陽性HER2陰性転移乳がんの2次治療としてホルモン療法+パルボシクリブをカペシタビンと比較した第III相試験である。ホルモン療法としてはエキセメスタンとフルベストラントが選択され、それぞれ別のコホートとして試験が行われた。コホート1(エキセメスタン)、コホート2(フルベストラント)でそれぞれ300例が1対1の割合でホルモン療法+パルボシクリブもしくはカペシタビンに割り付けられた。主要評価項目はコホート2におけるフルベストラント+パルボシクリブのカペシタビンに対するPFSの優越性(ESR1の変異の有無によらない)、およびESR1変異のない症例におけるホルモン療法(エキセメスタン/フルベストラント)+パルボシクリブのカペシタビンに対するPFSの優越性の2つであった。1つ目の主要評価項目であるフルベストラント+パルボシクリブの優越性については、PFS中央値が7.5ヵ月vs.10ヵ月(ハザード比:1.09、95%CI:0.83~1.44、p=0.537)であり、優越性は示されなかった。2つ目の主要評価項目であるESR1変異のない症例におけるホルモン療法+パルボシクリブの優越性についても、PFS中央値が8.0ヵ月vs.10.6ヵ月(ハザード比:1.08、95%CI:0.85~1.36、p=0.526)であり、優越性は示されなかった。KCSG-BR 15-10試験ではエキセメスタン+パルボシクリブ+LHRHaはカペシタビンに対して良好なPFSを示した。KCSG-BR 15-10試験は第II相試験であるため単純に比較することはできないが、本試験が閉経後かつアロマターゼ阻害薬で進行した症例を対象にしているのに対し、KCSG-BR 15-10試験ではTAMの治療歴がある症例しか含まれておらずホルモン感受性が異なっていると考えられること、1次治療と2次治療の違い、などが結果の違いの原因となっていると考察できる。転移乳がんに対するデュルバルマブvs.化学療法のランダム化第II相試験(SAFIR02-IMMUNO試験)デュルバルマブは免疫チェックポイント阻害薬の1つで、PD-L1を阻害する。局所進行肺がんの化学放射線治療後の維持療法として使用されている。抗PD-L1抗体ではアテゾリズマブがアルブミン結合パクリタキセルとの併用において、PD-L1発現のあるトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の初回治療としての有効性を示し標準治療となっている。本試験ではHER2陰性転移乳がんを対象として化学療法に対する維持療法としてのデュルバルマブの有効性を検討した第II相試験である。3コース目の化学療法前に腫瘍検体を採取し、その後CR/PR/SDを達成した症例が対象となった。腫瘍検体で標的分子が検出されている際には分子標的治療の臨床試験に参加し、検出されなかった症例が本試験の対象となった。主要評価項目はPFSであった。デュルバルマブ維持療法へスイッチする群と、治療を変更せずに化学療法を行う群に199例が2対1の割合で割り付けられた。PD-L1発現についてSP142抗体を用いて評価され、TNBCでは52.4%、ホルモン受容体陽性では14.9%が陽性であった。PFS中央値は2.7ヵ月vs.4.6ヵ月(ハザード比:1.40、95%CI:1.00~1.96、p=0.047)であり、化学療法群で良好な傾向であった。また、サブグループ解析ではホルモン受容体陽性で化学療法群が良好であった。OS期間においては21.7ヵ月vs.17.9ヵ月(ハザード比:0.84、95%CI:0.54~1.29、p=0.42)であり両群間に差を認めなかった。一方、サブグループ解析ではTNBCで21ヵ月 vs.14ヵ月、PD-L1陽性で26ヵ月vs.12ヵ月と、デュルバルマブで良好な傾向を認めた。乳がんに対しても活発に免疫チェックポイント阻害薬の開発が行われており、本試験もその1つである。All comerで行われた試験であったが、今後の開発はホルモン受容体ステータスやPD-L1の発現など、バイオマーカーでの絞り込みが必須と考えられる。また、ホルモン受容体陽性乳がんではこれまで免疫チェックポイント阻害薬の開発は成功しておらず、その生物学的背景の解明も重要である。ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がんの術後ホルモン療法に対するS-1の追加効果を検証した第III相試験(POTENT試験)2017年のSABCSで日本と韓国のグループから術前化学療法で残存腫瘍があった症例に対するカペシタビンの上乗せ効果が示され(CREATE-X試験)、日本の研究者にとって大きな自信につながったことは記憶に新しい。POTENT試験はホルモン受容体陽性HER2陰性乳がんを対象として、低リスク症例を除いた症例群に対してS-1の上乗せ効果をみた第III相試験である。本試験ではStageIからIIIBを対象とし、リンパ節転移陽性もしくはリンパ節転移陰性かつ中間リスクもしくは高リスクの症例を対象とした。1,959例がホルモン療法+S-1群とホルモン療法単独群に1対1の割合で割り付けられた。主要評価項目は無浸潤疾患生存(invasive disease-free survival:IDFS)とされた。5年IDFSにおいて、S-1群で86.9%に対し、ホルモン療法単独群では81.6%(ハザード比:0.63、95%CI:0.49~0.81、p<0.001)であり、S-1群で良好な結果であった。本試験は中間解析で有効性の閾値を超えたため、早期有効中止となっている。AEについては、S-1群で増加傾向にあり、Grade3以上のものとしては好中球減少(7.5%)や下痢(1.9%)に注意が必要であるが、総じてコントロールは可能と考えられた。本試験は先進医療Bとして行われており、今後は保険承認の手続きを目指していくと思われる。2017年にはCREATE-X試験、2018年にはAERAS試験、そして本試験と、ここのところSABCSでは毎年日本から口演が発表されている。日本の研究者として大変誇らしいとともに、少しでも日本からのエビデンス発信に貢献していきたい。APHINITY試験全生存期間の中間解析APHINITY試験はHER2陽性乳がんの術後化学療法におけるトラスツズマブ療法へのペルツズマブの上乗せを検証した第III相試験である。4,805例のHER2陽性乳がん患者が登録され、ペルツズマブ群(2,400例)とプラセボ群(2,405例)に1対1の割合で割り付けられた。主要評価項目はIDFSであり、OSは副次評価項目に含められた。4年IDFSは92.3% vs.90.6%(ハザード比:0.81、95%CI:0.66~1.00、p=0.045)であり、絶対リスク減少は2%に満たないもののペルツズマブ群で良好であった。また、本試験は当初リンパ節転移のない症例も登録されていたが、イベントが少ないことから途中でプロトコールが改訂され、リンパ節転移陽性症例のみが適格となった。今回のOS期間の2回目の中間解析では、6年生存率は94.8% vs.93.9%(ハザード比:0.85、95%CI:0.67~1.07、p=1.07)であり、両群間に差を認めなかった。IDFSのフォローアップデータは、6年IDFSで90.6% vs.87.8%(ハザード比:0.76、95%CI:0.64~0.91)とペルツズマブ群で良好であったが、リンパ節転移の有無(すなわちベースラインリスクの違い)でサブグループ解析を行うと、リンパ節転移陽性では6年IDFSで87.9% vs.83.4%(ハザード比:0.72、95%CI:0.59~0.87)とペルツズマブの上乗せ効果を認めたのに対し、リンパ節転移陰性では95.0% vs.94.9%(ハザード比:1.02、95%CI:0.69~1.53)と上乗せ効果は認めなかった。ホルモン受容体ステータスによらずペルツズマブの上乗せ効果が認められた。トラスツズマブの登場によりHER2陽性乳がんの予後は劇的に改善しており、術後ペルツズマブの追加によりリンパ節転移陽性例に対してはIDFSの改善が期待される。ただし、中間解析時点ではOSの上乗せ効果は認めないため、最終解析の結果が待たれる。リンパ節転移陰性例に対しては原則として術後ペルツズマブの上乗せは不要であろう。

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進展型小細胞肺がんに対するペムブロリズマブ+化学療法の成績(KEYNOTE-604)/Merck

 Merck社は、2020年1月6日、進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)1次治療におけるペムブロリズマブと化学療法併用の第III相KEYNOTE-604試験において、主要評価項目の1つである無増悪生存期間(PFS)を達成したと発表。 同研究では、ペムブロリズマブと化学療法(エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン)併用は、化学療法単独(エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン)と比較して統計的に有意なPFSの改善がもたらした(HR:0.75、95%CI:0.61~0.91)。全生存(OS)についてはペムブロリズマブ併用患者で改善が認められたが、事前に指定された統計学的基準を満たさなかった(HR:0.80 、95%CI:0.64~0.98)。同試験におけるペムブロリズマブの安全性プロファイルは、以前に報告されものと同様であった。試験結果は今後の医学会議で発表され、規制当局と議論するとしている。 KEYNOTE-604試験では、453例が登録され、ペムブロリズマブ+化学療法またはプラセボ+化学療法に無作為に割り付けられた。複合主要評価項目はOSとPFS、副次評価項目は、客観的奏効率、奏効期間、安全性と生活の質(QoL)など。

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FoundationOne CDx、エヌトレクチニブのROS1肺がんコンパニオン診断として承認/中外

 中外製薬は、2019年12月26日、遺伝子変異解析プログラム「FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル」に関し、現在承認申請中であるエヌトレクチニブ(商品名:ロズリートレク)のROS1融合遺伝子陽性の局所進行又は転移性非小細胞肺癌に対するコンパニオン診断としての使用目的の追加について、厚生労働省より承認を取得したと発表。本プログラムは、ROS1融合遺伝子を検出することにより、ロズリートレクの非小細胞肺がんにおける適応判定を補助する。なお、ロズリートレクのROS1融合遺伝子陽性の局所進行又は転移性非小細胞肺癌の適応拡大については、2019年3月15日に承認申請を行っている。 本プログラムは、米国のFoundation Medicine, Inc.により開発された、次世代シークエンサーを用いた包括的ながん関連遺伝子解析システム。患者の固形がん組織から得られたDNAを用いて、324の遺伝子における置換、挿入、欠失、コピー数異常および再編成などの変異等の検出および解析、ならびにバイオマーカーとして、マイクロサテライト不安定性の判定や腫瘍の遺伝子変異量の算出を行う。また、国内既承認の複数の分子標的薬のコンパニオン診断として、適応判定の補助に用いることが可能である。

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ニボルマブ・イピリムマブ併用、非小細胞肺がんに対する国内承認申請/小野・BMS

 小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、2019年12月25日、PD-1モノクローナル抗体ニボルマブ(商品名:オプジーボ)とCTLA-4モノクローナル抗体イピリムマブ(商品名:ヤーボイ)について、切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに対する両剤の併用療法に係る国内製造販売承認事項一部変更承認申請を行ったと発表。 今回の承認申請は、小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブ社が、化学療法未治療のStageⅣまたは再発の非小細胞肺がん患者を対象に実施した国際共同非盲検無作為化第III相臨床試験(CheckMate-227試験)の Part1の結果などに基づいている。本結果において、ニボルマブとイピリムマブの併用療法は、化学療法と比較して、主要評価項目の1つであるPD-L1発現レベルが1%以上の患者における全生存期間の有意な延長を達成している。

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最近の話題:アテゾリズマブ+Chemoの肺がん1次治療、FDAで承認【侍オンコロジスト奮闘記】第85回

第85回:最近の話題:アテゾリズマブ+Chemoの肺がん1次治療、FDAで承認West H, et al. Atezolizumab in combination with carboplatin plus nab-paclitaxel chemotherapy compared with chemotherapy alone as first-line treatment for metastatic non-squamous non-small-cell lung cancer (IMpower130): a multicentre, randomised, open-label, phase 3 trial.Lancet Oncol. 2019;20:924-937.FDA、非扁平上皮NSCLCの初期治療にアテゾリズマブ+化学療法を承認/Roche

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肺がん患者の血栓症の実態を探る大規模前向き試験「Rising-VTE」【肺がんインタビュー】 第30回

第30回 肺がん患者の血栓症の実態を探る大規模前向き試験「Rising-VTE」がん患者では静脈血栓塞栓症(VTE)リスクが高い。がん患者の生命予後の改善に伴い、VTE発症も増加している。しかし、いまだに日本人がん患者におけるVTEの大規模研究はない。そのような中、肺がん患者を対象にした、日本初の大規模前向き観察試験「Rising-VTE」試験が進行中である。試験責任者である島根大学の津端 由佳里氏に試験の背景と狙いを聞いた。「この患者さんが出血で亡くなったら…」データがない日本人がん患者のVTEこの試験を行おうと考えられたきっかけは何ですか。国立がん研究センターでの研修時、両側下肢のVTEの患者さんを診たことがきっかけです。当時、指導医と相談して、その患者さんにワルファリン療法を開始しました。ところが、カンファレンスで「もしこの患者さんが出血で亡くなったらどうするの?」と、当時の上司に指摘されました。がん患者のVTEのデータは海外の研究しかなかったのです。その後、島根大学に戻ると、肺がん患者さんの生命予後の延びに伴ってVTEの患者さんも多くなっていると実感しました。「こういう治療をするなら、津端先生自身が日本人のデータを出さなければいけない」。研修当時の上司の言葉が、ずっと心に残っていました。がん患者さんにVTEが多いのはなぜですか。また、VTEの合併はどの程度ですか。がん患者さんのVTEリスクが高いのは、がん細胞が凝固促進因子を積極的に作り出して凝固傾向を招いているからです。KhoranaのVTEリスクスコア*を用いた海外の報告では、入院がん患者の20%にVTEが存在するとあります。*Khorana VTEリスクスコア:がんの部位、血小板数、ヘモグロビン値、赤血球造血刺激因子製剤の使用、白血球数、BMIをリスク因子とし、合計点からVTE発症を予測するスコアDOACの登場で臨床試験実現この試験ではDOAC(direct oral anticoagulant:直接作用型経口抗凝固薬)をお使いですが、試験の実現に至った経緯との関係はありますか。まず、ワルファリンでの臨床試験を考えましたが、抗がん剤とワルファリンは相性が良くありません。ワルファリンの代謝はCYPに影響されるため、抗がん剤との併用が問題になることが多くあります。さらに、ワルファリンの効果はビタミンなど食事の内容に影響されます。化学療法を受けている患者さんは摂食に障害が出ることも多く、ワルファリンがコントロールしにくいのです。また、がん患者さんは出血リスクも高いため、出血傾向の問題になりえます。このようなことから、ワルファリンで研究するのは難しいと思っていました。そのような中、DOACが下肢VTEに承認されました。DOACであれば、出血リスクも少なく、食事の影響も受けにくいので、がん患者さんのVTE試験ができると思いました。そこで、医師主導で臨床試験をやりたいのでご支援いただけないかと、第一三共株式会社に相談しました。ちょうど同社にも、がん患者さんのデータに対するニーズがあり、ご了承いただき、医師主導臨床試験が実現しました。試験の概要について教えてください。Rising-VTEは多施設前向き観察試験です。国内の35施設から根治的な治療を行わない肺がん患者さんを登録し、診断時にVTE合併の有無を確認します。VTE合併のある患者さんには、エドキサバン(商品名:リクシアナ)の投与を行い、VTEの再発状況と治療の安全性を観察します。VTE合併のない患者さんには通常の治療を行い、2年間観察し、症候性および無症候性のVTEの発症を観察します。“医師の知りたい”に応える試験この試験で注目すべきことは何ですか?日本では、がん患者の血栓塞栓症の大規模な研究はまったくありませんでした。前向きの観察研究として、そして4期の肺がんを対象としたものとしては、初めてかつ最大規模であると考えています。医師主導臨床試験ですので、医師が知りたいと思うことをClinical Questionとして取り上げています。メーカーが考えたプロモーションのための試験ではなく、医師が知りたいと思ったことを提案し、それに関して企業からサポートを受けた試験ですので、日常診療に即した結果を大いに期待していただけると思います。「医師が知りたいと思うこと」とは、どのようなことですか。VTEの診療は、基本的にはASCO(米国臨床腫瘍学会)のガイドラインに準じて行います。この試験により、欧米人との発症の差や日本人としてのリスクをみることができます。また、がんの臨床経過とVTE発症の関係がみられると思います。がん細胞が血栓塞栓因子を出しているため、がんが良くなると血栓塞栓も良くなり、がんが悪くなると血栓塞栓も悪くなります。がんの臨床経過とVTE発症の関係をみることで、VTE治療の開始時期、中断と再開のタイミングなども検討できます。そして、4期の肺がんに特化することで、臨床に有益な細かな情報が得られます。肺がんでは、分子標的治療薬、免疫CP阻害薬、細胞障害性抗がん剤という3種の薬剤を使います。また、遺伝子変異検査を行っています。どの薬剤でどれくらい血栓塞栓が出るか、どの遺伝子変異でどれくらい血栓塞栓が出るか、そのほか、組織型などの患者背景によるリスクが明らかになってくると思います。試験のスケジュールはどのようなものですか。2016年6月から登録を開始し、2018年8月に登録は完了しました。登録症例数は1,000例を目標としましたが、最終的には1,021例の登録を頂きました。経過観察期間である2020年8月まで、VTEがどれだけ発症したか、最初にVTEがあった人の結果はどうだったかを調査します。最終結果は2021年になる予定です。最後に読者の方にメッセージをお願いします。がんとVTEは昔から非常に注目されていましたが、腫瘍を治療する医師と循環器内科医師の連携の機運も高まる中、最近はさらに注目を浴びています。当試験のベースラインのデータでも、肺がん診断時に6.4%の患者さんがVTEを合併し、そのうち80%の方が無症候性でした。目の前の患者さんにもVTE合併の可能性があることを念頭に置いて、積極的なVTEスクリーニングを心掛けていただければと思います。Rising-VTE試験世界肺癌学会(WCLC2019)での発表はこちら

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保険償還NGSパネル検査をどう臨床応用するか/日本肺癌学会

 2019年6月にNGS(次世代シーケンサー)パネル検査が保険収載された。12月に行われた第60回日本肺癌学会学術集会では、収載から半年が経過した現状において、臨床現場で感じる問題点を近畿大学の武田 真幸氏が発表した。問題点1 NGSパネル検査の定義が定まっていない 保険収載されたNGSパネル検査は「NCCオンコパネル」「Foundation One CDx」の2種類で、多数の遺伝子変異を同時に調べて未承認薬につなげる「プロファイル検査」として承認された。一方で、「オンコマインDX」は非小細胞肺がん(NSCLC)の4つの遺伝子変異を調べ、承認薬につなげる「コンパニオン検査」として承認されており、プロファイル検査と比較した場合に、治療開始直後から使える、費用が安価、がんゲノム情報管理センター(C-CAT)への登録が不要、がん診療連携拠点病院以外でも使えるなど、実施条件が大きく異なる。武田氏は「海外では『オンコマインDX』を遺伝子パネル検査として使っている現状がある。肺がんではコンパニオン検査としてオンコマインを使えるため治療戦略が立てやすいが、肺がん以外での固形がん患者では、遺伝子パネル検査での運用となるため、同じようにはいかない」と話した。問題点2 検査を行うタイミングが標準治療後に限定される 武田氏はNGSパネル検査利用の問題点として、「利用が標準治療後に限定されているが、患者さんの状態によってどこまでを標準治療とするかは大きく異なる。1次治療のみに留まる患者さんも相当数いる中で、パネル検査を使うタイミングの判断が難しい」とした。問題点3 再検査ができない NGSパネル検査が保険適用されるのは1回のみ、分析が失敗に終わった場合でも保険適用で再検査が受けられない点は問題だ、と述べた。問題点4 費用が回収できない場合がある NGSパネル検査は保険収載が2分割で設定されており、最初の患者説明・検体提出時には一部費用しか請求できず、エキスパートパネル・C-CAT 登録を経て、検査結果が戻ってきた時点で初めて残りを請求できる。この間に病状が変わることも多く、死亡したために残りの請求ができなかったケースがすでに出ているという。問題点5 検査結果が出るまで時間がかかる 検体提出から結果が出るまでに時間がかかる点も問題点として挙げた。「Foundation One CDx」、「NCCオンコパネル」とも1ヵ月前後かかる。しかしながら、これは費用回収の問題等が解消されれば受け入れられる範囲の問題だとした。問題点6 がんゲノム情報管理センター(C-CAT)の登録が煩雑 「現場における最大の問題は、国が義務付けているC-CATへの登録だ」と述べ、登録における必要な情報の多さと煩雑さが現場の医師を疲弊させていると強調し、入力自動化などの仕組みの導入を求めた。問題点7 腫瘍の不均一性から検査の失敗が多い 腫瘍には、原発巣と転移巣で腫瘍の遺伝子変異の特徴が異なってくる可能性(空間的不均一性)があり、また抗がん剤等の介入による経時的な経過でも腫瘍の特徴に変化(時間的不均一性)が生じる可能性があるが、「現状のNGSパネル検査は分析の失敗も多い中、1回しか受けられないのは問題」とした。しかし、「来年以降リキッドバイオプシーが承認されれば、空間的不均一性についてはある程度は解決する問題ではないか」との見解を述べた。問題点8 実際に効果的な治療につなげていく出口戦略の欠如 最後に、「遺伝子変異が判明しても、その変異に対応する治療薬が限られ、コストをかけて検査しても、結果がその後の治療につながる確率が低い」ことを挙げた。そして、「検査ばかりが注目されているが、治療につながることが重要。ここが一番の問題点だと認識している」とまとめた。

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LOXO-292のRET肺がんに対する有効性(LIBRETTO-001)/日本肺癌学会

 RET融合遺伝子陽性がんは全身のさまざまな臓器で見られる。非小細胞肺がん(NSCLC)においても2%を占めるといわれる。RET融合遺伝子陽性がんでは、半数に脳転移があるとの報告もある。従来のマルチキナーゼ阻害薬によるRET融合遺伝子陽性がん治療では、有効性に限度がみられた。selpercatinib(LOXO-292)は、選択性の高いRET阻害薬であり、幅広いがん種への有効性を示すとともに、CNSへの移行性も良好な薬剤である。 LOXO-292の国際第I/II相試験LIBRETTO-001の結果は本年の世界肺癌学会(WCLC2019)で発表された。第60回日本肺癌学会学術集会では、国立がん研究センター東病院の後藤 功一氏がそのアンコール発表を行った。 今回の発表は、2017年5月の登録開始から2016年6月までの肺がん初回データをまとめたもの。主要評価項目は客観的奏効率(ORR)、副次評価項目は奏効期間(DoR)、無増悪生存期間(PFS)、安全性。登録されたRET融合遺伝子陽性がんの総数は531例、そのうちNSCLCは253例であった。今回の発表では、前治療としてプラチナベース化学療法を実施した患者184例中の105例が解析対象であった。 主な結果は以下のとおり。・患者の年齢中央値は61歳、女性59%、前治療レジメン中央値は3(55%がPD-1/L1阻害薬実施、48%がマルチキナーゼ阻害薬実施)、脳転移は35%に認められた。・ORRは68%(95%信頼区間[CI]:58~76)であった。・CNS奏効率は91%(95%CI:59~100)であった。・DoR中央値は20.3ヵ月(95%CI:13.8~24.0)、PFS中央値は18.4ヵ月(95CI:12.9~24.9)であった。・今回の解析対象ではないが、未治療患者のORRは85%(95%CI:69~95)であった。・頻度の高い治療関連有害事象(TRAE)は口喝(27%)、AST上昇(22%)、ALT上昇(21%)。TRAEによる治療中止は1.7%であった。

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肺がん2019 Wrap Up【肺がんインタビュー】 第31回

第31回 肺がん2019 Wrap Up出演:兵庫県立がんセンター 副院長(医療連携・医療情報担当) 兼 ゲノム医療・臨床試験センター長 呼吸器内科部長 里内 美弥子氏2019年肺がんの重要トピックを兵庫県立がんセンターの里内 美弥子氏が、一挙に解説。これだけ見ておけば、今年の肺がん研究の要点がわかる。

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字体にまでこだわった患者ガイドブック発刊~日本肺癌学会【肺がんインタビュー】 第34回

第34回 字体にまでこだわった患者ガイドブック発刊~日本肺癌学会出演:岐阜市民病院 診療局長(がんセンター) 日本肺癌学会患者向けガイドライン小委員会委員長 澤 祥幸氏日本肺癌学会が患者向けガイドブックを発刊した。肺がんの専門家が蓄積された学術的見解を基に患者目線で作成したその内容とは?作成委員長の澤祥幸氏に聞いた。参考患者さんのための肺がんガイドブック 2019年版 悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍

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非扁平上皮NSCLC、KEYNOTE-189日本人延長試験の結果/日本肺癌学会

 未治療の非小細胞肺がん(非扁平上皮がん)に対してペムブロリズマブ+ペメトレキセド+プラチナ(シスプラチンまたはカルボプラチン)療法とペメトレキセド+プラチナ療法と比較したKEYNOTE-189試験の日本人延長試験の結果が、第60回日本肺癌学会学術集会で発表された。当試験の全集団ではペムブロリズマブ上乗せ群が全生存期間(OS)を有意に改善した(HR:0.49、95%CI:0.38~0.64、p<0.001)が、今回の日本人試験の評価項目は安全性、忍容性である。 主な結果は以下のとおり。・日本人患者は、全試験からの10例、日本人試験からの30例の計40例。ペムブロリズマブ+ペメトレキセド+プラチナ(Pembro/Pem/Plat)群25例、ペメトレキセド+プラチナ(Pem/Plat)群15例に無作為に割り付けられた。・ベースラインの患者背景では脳転移がPem/Plat群に多くみられた(Pem/Plat群33%に対しPembro/Pem/Plat群16%)。・Grade3~4の治療下発現有害事象(TEAE)はPembro/Pem/Plat群の72.0%、Pem/Plat群の60.0%で発現した。これは全集団と同等の結果であった(Pembro/Pem/Plat群71.9%、Pem/Plat群66.8%)。・日本人試験におけるOS中央値は、Pembro/Pem/Plat群では未到達、Pem/Plat群では25.9ヵ月であった(HR:0.29)。・日本人試験における無増悪生存期間中央値は、Pembro/Pem/Plat群では16.5ヵ月、Pem/Plat群では7.1ヵ月であった(HR:0.62)。 発表者である四国がんセンターの野上 尚之氏は、当試験の評価はあくまで安全性であり、効果については参考として考えるべきとの見解を示した。

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デュルバルマブの進展型小細胞肺がん、FDAの優先審査指定に/アストラゼネカ

 アストラゼネカは、2019年11月29日、デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)が治療歴のない進展型小細胞肺がん(SCLC)患者に対する治療薬として、米国食品医薬品局(FDA)から生物製剤承認一部変更申請(sBLA)に対する優先審査指定を受けたことを発表。 このsBLAは、The Lancet誌に掲載された第III相CASPIAN試験の良好な結果に基づいて行われた。CASPIAN試験は、進展型SCLC患者の1次治療を対象とした、無作為化非盲検国際多施設共同第III相試験。同試験では、デュルバルマブと化学療法(エトポシドおよびシスプラチンまたはカルボプラチン)の併用と化学療法単独、および、デュルバルマブ、トレメリムマブ、化学療法の併用と化学療法単独を比較したもの。全生存期間(OS)を主要評価項目とし、米国、欧州、南米、アジア、中東の 23カ国200以上の施設で実施されている。 同試験において、化学療法単独群のOS中央値は10.3ヵ月であったのに対し、デュルバルマブと化学療法併用群はOS中央値13.0ヵ月を示し、統計学的に有意で臨床的に意義のあるOSの延長を示した(ハザード比:0.73)。治療開始後18ヵ月時点で生存している患者の割合は、デュルバルマブ・化学療法併用群では33.9%、化学療法単独群では24.7%と推計され、併用療法によるOS延長のベネフィットが示された。 デュルバルマブの小細胞肺がん治療薬としての適応は本邦では未承認である。

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肺がん治療を変えたものは?医師が選ぶベスト10を発表

 2019年12月6日~8日まで日本肺癌学会学術集会が行われた。60回目という節目を迎えた今回は、特別企画として「肺がん医療のこれまでの60年を振り返り、これからの60年を考える」と題したシンポジウムが行われた。ここでの目玉は、学会員にアンケート形式で聞いた「肺がん治療史ベスト10」。肺がん治療において画期的だったと思われる出来事をランキング形式で挙げるというこの企画、当日発表されたベスト10は以下の通りだった。 1位 遺伝子変異の発見・分子標的薬の登場 2位 免疫療法の発見・承認 3位 低侵襲性手術の導入 4位 CTの開発・導入 5位 ゲノム医療・NGS/プレシジョンメディシン 6位 放射線治療の進歩 7位 気管支鏡検査 8位 シスプラチン(プラチナ製剤)の登場 9位 支持療法の進歩 10位 肺縮小手術の確立 1位の「分子標的薬の登場」は90年代後半、2位の「免疫療法の発見・承認」にいたっては2010年代に入ってからのトピックスであり、肺がん治療のここ数十年での急激な進展を学会員も実感していることが浮き彫りとなった。会場では、会長の光冨 徹哉氏(近畿大学)をはじめ、年代の異なる医師3人と患者連絡会の代表が、それぞれの立場からランキング結果への感想や治療法への思いを述べた。 「肺癌学会に望むこと」を聞いたアンケート結果も発表され、「認定医や専門医制度の発足」「より一層の国際化」「学会に行かなくても教育的講演を聞けるようにしてほしい」などの声が寄せられていた。

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うつ病や統合失調症リスクに対する喫煙の影響

 統合失調症やうつ病の患者では、一般集団と比較し喫煙率が高い。英国・ブリストル大学のRobyn E. Wootton氏らは、ゲノムワイド関連研究(GWAS)で特定された遺伝子変異を使用して、この因果関係を調べることのできるメンデルランダム化(MR)法を用いて検討を行った。Psychological Medicine誌オンライン版2019年11月6日号の報告。 統合失調症およびうつ病に対する喫煙の双方向の影響を調査するため、2つのサンプルにおけるMRを実施した。喫煙行動についてはGSCAN(GWAS and Sequencing Consortium of Alcohol and Nicotine use)コンソーシアムから喫煙開始のGWASを使用し、UK Biobankの46万2,690サンプルより生涯の喫煙行動に関する独自のGWASを実施した。肺がんなどのポジティブコントロールアウトカムを用いて検証した。統合失調症とうつ病には、PGC(Psychiatric Genomics Consortium)のGWASを使用した。 主な結果は以下のとおり。・喫煙は、統合失調症(オッズ比[OR]:2.27、95%信頼区間[CI]:1.67~3.08、p<0.001)とうつ病(OR:1.99、95%CI:1.71~2.32、p<0.001)の両方のリスク因子であることが示唆された。・この結果は、生涯の喫煙と喫煙開始の両方で、一貫して認められた。・うつ病に対する遺伝傾向が喫煙を増加させる可能性が示唆されたが(β=0.091、95%CI:0.027~0.155、p=0.005)、統合失調症では明らかではなく(β=0.022、95%CI:0.005~0.038、p=0.009)、喫煙開始に対する影響は非常に弱かった。 著者らは「喫煙と統合失調症やうつ病の関連性は、少なくとも部分的に、喫煙の因果効果であることが示唆された。このことは、メンタルヘルスに対する喫煙の有害な結果をさらに示すものである」としている。

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患者発案の医師主導治験がスタート【肺がんインタビュー】 第32回

第32回 患者発案の医師主導治験がスタート出演:NPO法人 肺がん患者の会ワンステップ 代表 長谷川 一男氏患者の会が発案し、臨床試験グループに提案した医師主導治験。その実現を目指すNPO法人 『肺がん患者の会ワンステップ』代表 長谷川 一男氏に聞いた。肺がん患者の会ワンステップ ホームページ

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ラムシルマブ+エルロチニブのEGFR陽性肺がん1次治療RELAY試験~日本人サブセット/日本肺癌学会

 EGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)におけるVEGFとEGFRの両シグナルの阻害は、前臨床および臨床試験で抗腫瘍活性が報告されている。EGFR変異陽性NSCLCの1次治療におけるVEGF受容体2阻害薬ラムシルマブとEGFR-TKIエルロチニブ併用の有効性を検証する国際第III相試験RELAYでは、対照群であるエルロチニブ単剤治療に比べ、有意に無増悪生存期間(PFS)を延長した(19.4ヵ月対12.4ヵ月、HR:0.59、p=0.0001)。第60回日本肺癌学会学術集会では、RELAY試験の日本人サブセットの結果が九州がんセンターの瀬戸 貴司氏により報告された。 主な結果は以下のとおり。・日本人患者は211例で、ラムシルマブ・エルロチニブ併用群(RAM+ERL)に106例、エルロチニブ単独群(ERL)に105例、無作為に割り付けられた。・日本人サブセットのPFS中央値は、RAM+ERL群19.4ヵ月、ERL群11.2ヵ月で、有意にRAM+ERL群が良好であった(HR:0.610、95%CI:0.431~0.864、p=0.0050)。・日本人のL858R変異患者のPFSはRAM+ERL群19.4ヵ月、ERL群10.9ヵ月と、RAM+ERL群で良好であった(HR:0.54、95%CI:0.317~0.835)。・日本人サブセットの全奏効率はRAM+ERL群76%、ERL群75%であった。・日本人サブセットの奏効期間はRAM+ERL群18.0ヵ月、ERL群11.0ヵ月であった(HR:0.585)。・日本人サブセットにおける安全性プロファイルは全集団と一貫していた。・Grade3以上の治療関連有害事象(TEAE)発現はRAM+ERL群77%、ERL群61%であった。RAM+ERL群で頻度が高いGrade3以上のTEAEは、ざ瘡様皮膚炎(24%)、高血圧(25%)であった。 RAM+ERLレジメンは、日本人EGFR変異陽性NSCLCの1次治療において、全集団と一貫した効果と安全性を示した。

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転移性脊髄圧迫への放射線療法、単回照射vs.分割照射/JAMA

 固形がん患者のがん転移に伴う脊柱管圧迫に対する放射線療法において、単回照射は5日間分割照射と比較し、主要評価項目である8週時の歩行に関して非劣性基準を満たさなかった。ただし、信頼区間の下限が非劣性マージンと重なっており、単回照射の臨床的重要性の解釈には留意すべき点もあることが示された。英国・Mount Vernon Cancer CentreのPeter J. Hoskin氏らが、多施設共同非劣性無作為化臨床試験「The single-fraction radiotherapy compared to multifraction radiotherapy trial:SCORAD試験」の結果を報告した。がんの骨転移等による脊髄圧迫は、可動性の維持や痛みの軽減のため放射線療法で管理されるが、これまで標準照射レジメンはなかった。JAMA誌2019年12月3日号掲載の報告。約690例を単回照射と5分割照射に無作為化、8週時の歩行状態を比較 研究グループは、英国42施設およびオーストラリア5施設の放射線治療センターにおいて、脊髄または馬尾圧迫を有する転移のあるがん患者で平均余命が8週超あり同部位に放射線治療歴がない686例を、単回照射群(8Gy単回照射、345例)または分割照射群(20Gyを5分割連続5日間照射、341例)に無作為化した。登録期間は2008年2月~2016年4月、最終追跡調査は2017年9月であった。 主要評価項目は、治療後8週時の歩行状態で、4段階のうちGrade1(補助具なしで歩行可能および筋力スケールが5段階のうちGrade5)またはGrade2(補助具ありで歩行可能または筋力スケールがGrade4)とし、群間差の非劣性マージンを-11%に設定した。また、副次評価項目として、1、4および12週時の歩行状態と全生存期間などを評価した。8週時の歩行状態がGrade1/2の割合は69.3% vs.72.7%、非劣性基準を満たさず 無作為化された686例(年齢中央値70歳[四分位範囲:64~77]、男性503例[73%]、前立腺がん44%、肺がん19%、乳がん12%)のうち、主要評価項目の解析対象は342例(49.8%)であった(255例が8週の評価前に死亡)。 8週時に歩行状態がGrade1またはGrade2を達成した患者の割合は、単回照射群69.3%(115/166例)、分割照射群72.7%(128/176例)であった(群間差:-3.5%、片側95%信頼区間[CI]:-11.5~∞、非劣性のp=0.06)。 一方、副次評価項目である各評価時の歩行状態がGrade1またはGrade2を達成した患者の割合は、単回照射群と分割照射群でそれぞれ、1週時63.9% vs.64.3%(群間差−0.4%、片側95%CI:-6.9~∞、非劣性のp=0.004)、4週時66.8% vs.67.6%(群間差−0.7%、片側95%CI:-8.1~∞、非劣性のp=0.01)、12週時71.8% vs.67.7%(群間差4.1%、片側95%CI:-4.6~∞、非劣性のp=0.002)であった。また、12週時の全生存率は単回照射群50%、分割照射群55%であった(層別化ハザード比:1.02、95%CI:0.74~1.41)。 解析された他の副次評価項目は、群間差が有意差なしまたは非劣性基準を満たさなかった。

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FLAURA試験における日本人肺がん患者のOS事後解析/日本肺癌学会

 オシメルチニブによるEGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療を評価するFLAURA試験では、全集団における、無増悪生存期間(PFS)および全生存(OS)の有意な改善(それぞれHR:0.46、p<0.001、HR:0.80、p=0.046)が報告されている。日本人患者においても主要評価項目であるPFSでオシメルチニブに良好な結果が報告されている(HR:0.61、p=0.0456)。2019年12月に開催された、第60回日本肺癌学会学術大会では、副次評価項目であるOSの探索的事後解析の結果が、四国がんセンター野上 尚之氏により報告された。FLAURA試験での日本人患者のOS中央値はオシメルチニブ群39.3ヵ月vs.対照群未達(HR:1.390) 日本人患者の無作為割り付けは、オシメルチニブ群65例、第1世代EGFR-TKI群(以下、対照群、すべてゲフィチニブ)55例であった。患者背景はほぼ同等であったが、PS0の割合、診断時Stage I/IIの患者の割合が対照群に多いなど、事後解析のため一部群間差があった。 FLAURA試験の日本人患者におけるOSの探索的事後解析の主な結果は以下のとおり。・FLAURA試験でのアジア人のOS中央値はオシメルチニブ群37.1ヵ月に対し、対照群35.8ヵ月であった(HR:0.995、95%CI:0.752~1.319)。・日本人を除くアジア人のOS中央値はオシメルチニブ群34.5ヵ月に対し、対照群29.7ヵ月であった(HR:0.89、95%CI:0.64~1.24)。・日本人患者のOS中央値はオシメルチニブ群39.3ヵ月に対し、対照群未達と、対照群で良好であった(HR:1.390、95%CI:0.8259~2.3381)。カプランマイヤー曲線は27ヵ月付近で逆転していた。・FLAURA試験治療継続中の患者はオシメルチニブ群17%、対照群5%であった。・オシメルチニブ群で後治療を受けた患者は62%(そのうち63%が化学療法、35%がオシメルチニブ以外のEGFR-TKI)、対照群で後治療を受けた患者は71%(そのうち49%がオシメルチニブ以外のEGFR-TKI、31%がオシメルチニブ)であり、オシメルチニブ群は後治療でEGFR-TKI関連レジメンの頻度が低かった。・有害事象(AE)により投与中止となった患者の後治療をみると、オシメルチニブ群では46%が化学療法、54%がオシメルチニブ以外のEGFR-TKI、対照群では93%がオシメルチニブ以外のEGFR-TKI、7%がオシメルチニブであった。・病勢進行(PD)により投与中止となった患者の後治療をみると、オシメルチニブ群では73%が化学療法、15%がオシメルチニブ以外のEGFR-TKI、対照群では33%が化学療法、46%がオシメルチニブ、21%がオシメルチニブ以外のEGFR-TKIであった。・日本人患者での安全性プロファイルは従来の報告と一貫していた。Grade3以上のAEはオシメルチニブ群32%、対照群49%で、その頻度は全集団より高かった。

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FDA、非扁平上皮NSCLCの初期治療にアテゾリズマブ+化学療法を承認/Roche

 Roche社は、2019年12月4日、米国食品医薬品局(FDA)が、EGFRまたはALK遺伝子異常を伴わない非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)の初期治療に対して、アテゾリズマブ(商品名:テセントリク)と化学療法(カルボプラチン+nab-パクリタキセル)の併用を承認したことを発表した。 今回の承認は、化学療法未治療のIV期非扁平上皮NSCLC患者を対象に、アテゾリズマブと化学療法(カルボプラチン+nab-パクリタキセル)の併用と化学療法(カルボプラチン+nab-パクリタキセル)単独を比較した第III相IMpower130試験の結果に基づいている。IMpower130試験において、アテゾリズマブと化学療法の併用は、化学療法単独と比較して有意に全生存期間(OS)を延長することが示された(OS中央値:18.6対13.9ヵ月、ハザード比[HR]:0.80、95%CI:0.64~0.99、p=0.0384)。また、無増悪生存(PFS)のリスクも化学療法単独と比較して有意に低減した(PFS中央値:7.2対6.5ヵ月、HR:0.75、95%CI:0.63~0.91、p=0.0024)。 アテゾリズマブと化学療法の併用の安全性は、個々の薬剤の既知の安全性プロファイルと一致しており、併用による新しい安全性シグナルは確認されなかった。Grade3/4の治療関連有害事象は、化学療法単独群では60.3%、アテゾリズマブ・化学療法併用群では73.2%で報告された。

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EGFR変異陽性NSCLCの1次治療、オシメルチニブがOS延長/NEJM

 上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異を有する未治療の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者の治療において、オシメルチニブは他のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)に比べ、全生存(OS)期間を有意に延長することが、米国・エモリー大学のSuresh S. Ramalingam氏らが行った「FLAURA試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年11月21日号に掲載された。第3世代の不可逆的EGFR-TKIであるオシメルチニブは、EGFR活性型変異およびEGFR T790M抵抗性変異の双方を選択的に阻害する。本試験の主要評価項目である無増悪生存(PFS)期間はすでに報告されており、オシメルチニブ群で有意に延長した(18.9ヵ月vs.10.2ヵ月、ハザード比[HR]:0.46、p<0.001)。主な副次評価項目であるOSの結果を報告 本研究は、日本を含む29ヵ国132施設が参加した二重盲検無作為化第III相試験であり、2014年12月~2016年3月の期間に患者の割り付けが行われた(AstraZenecaの助成による)。今回は、主な副次評価項目であるOSの結果が報告された。 対象は、年齢18歳以上(日本は20歳以上)、EGFR変異陽性(エクソン19欠失変異、L858R変異)の局所進行または転移を有する未治療のNSCLC患者であった。中枢神経系への転移が確認または疑われる患者も、神経学的に病態が安定している場合は組み入れられた。 被験者は、オシメルチニブ(80mg、1日1回、経口)または他の経口EGFR-TKI(ゲフィチニブ[250mg、1日1回]、エルロチニブ[150mg、1日1回])を投与する群(比較群)に1対1の割合で無作為に割り付けられた。治療は、病勢進行、許容できない毒性または患者の同意が撤回されるまで継続された。比較群は、病勢が進行した場合、非盲検下にオシメルチニブへのクロスオーバーが許容された。死亡リスクが20%低下、アジア人では有意差なし 556例が登録され、オシメルチニブ群に279例、比較群には277例(ゲフィチニブ183例[66%]、エルロチニブ94例[34%])が割り付けられた。治療期間中央値はオシメルチニブ群20.7ヵ月(範囲:0.1~49.8)、比較群11.5ヵ月(範囲:0.0~50.6)であった。データカットオフの時点で、それぞれ22%、5%の患者が治療を継続していた。 データカットオフ時に321例が死亡していた。OSの追跡期間中央値は、オシメルチニブ群35.8ヵ月、比較群27.0ヵ月であった。OS期間中央値は、オシメルチニブ群が38.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:34.5~41.8)と、比較群の31.8ヵ月(26.6~36.0)と比較して有意に延長した(死亡のHR:0.80、95.05%CI:0.64~1.00、p=0.046)。 1年OS率は、オシメルチニブ群が89%、比較群は83%、2年OS率はそれぞれ74%、59%、3年OS率は54%、44%であった。また、試験薬の投与を継続していた患者の割合は、1年時がオシメルチニブ群70%、比較群47%、2年時はそれぞれ42%、16%、3年時は28%、9%であった。 OSのサブグループ解析では、事前に規定されたサブグループのほとんどで、オシメルチニブ群の利益が一貫して大きかった。アジア人(1.00、95CI:0.75~1.32)と非アジア人(0.54、0.38~0.77)は、HRの差が最も大きかった。 治療中止後の1回目の後治療は、オシメルチニブ群が48%、比較群は65%が受けていた。比較群の治療中止例の47%(85/180例)がオシメルチニブの投与を受けており、これは全体では31%(85/277例)に相当した。 Grade3以上の有害事象の発生率は、オシメルチニブ群が42%、比較群は47%であった。重篤な有害事象は両群とも27%で認められた。駆出率低下がオシメルチニブ群14例(5%)、比較群5例(2%)で、心電図上のQT延長がそれぞれ40例(14%)、14例(5%)で報告された。前回の解析以降に、新たな間質性肺疾患および肺臓炎の報告はなかった。致死的有害事象は、オシメルチニブ群9例(3%)、比較群10例(4%)に認められ、このうち担当医が治療関連と判定したのはそれぞれ0例、2例だった。 著者は、「比較群の約3分の1が、オシメルチニブへクロスオーバーしたにもかかわらず、オシメルチニブ群でOS期間中央値が6.8ヵ月延長し、死亡リスクが20%低下した。また、治療期間はオシメルチニブ群のほうが長かったにもかかわらず、安全性プロファイルは両群でほぼ同等であった」としている。

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