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METエクソン14スキッピング肺がん治療薬カプマチニブ発売/ノバルティス

 ノバルティス ファーマ、2020年8月26日、MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(NSCLC)治療薬として、カプマチニブ (商品名:タブレクタ)を発売した。 カプマチニブはMETに対する選択的な経口阻害薬で、NSCLCにおける発がんドライバー因子であるMETex14変異に対しても阻害活性を有する。 METex14変異陽性のNSCLCは、肺がんの中でも予後不良な集団で治療選択肢が限られており、METex14を標的とする治療法の開発が望まれていた。METex14変異はNSCLC患者の約3~4%に報告されており、切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌患者数は日本国内では約3,000名程度と推定される。 カプマチニブのの適応判定は、2020年6月25日に厚生労働省より承認を取得しているFoundationOne CDx がんゲノムプロファイルによって行う。 カプマチニブは、米国では2019年9月に画期的治療薬指定、本年2月に優先審査品目指定、5月に承認を取得している。本邦においては2019年5月に「MET遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌」を予定される効能・効果として希少疾病用医薬品指定を受け、 2020年6月29日に製造販売が承認されている。

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ペムブロリズマブ、6週ごと投与の用法・用量を追加/MSD

 MSDは、2020年8月21日、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)のすべての効能・効果における用法・用量について、単剤または併用療法を問わず、これまでの「1回200mgを3週間間隔で30分間かけて点滴静注する」に加えて、「1回400mgを6週間間隔で30分間かけて点滴静注する」が追加となったと発表。 今回の用法・用量追加は、薬物動態シミュレーション、曝露量と有効性または安全性との関係に基づいて検討した結果、新規用法・用量である1回400mgを6週間間隔で投与した場合の有効性または安全性は、既承認の用法・用量である1回200mgを3週間間隔で投与した場合と明確な差異がないと予測され、承認に至ったもの。 ペムブロリズマブは、2017年2月15日に国内で販売を開始した。これまでに「悪性黒色腫」「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」「再発または難治性の古典的ホジキンリンパ腫」「がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮癌」「がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」「根治切除不能又は転移性の腎細胞癌」「再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌」の効能・効果について承認を取得している。また、乳がん、大腸がん、前立腺がん、肝細胞がん、小細胞肺がん、子宮頸がん、進行固形がんなどを対象とした後期臨床試験が進行中である。

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がん治療で心疾患リスクを伴う患者の実態と対策法/日本循環器学会

 第84回日本循環器学会学術集会(2020年7月27日~8月2日)で佐瀬 一洋氏(順天堂大学大学院臨床薬理学 教授/早稲田大学医療レギュラトリーサイエンス研究所)が「腫瘍循環器診療の拡がりとCardio-Oncology Rehabilitation(CORE)」について発表。がんを克服した患者の心血管疾患発症リスクやその予防策について講演した。循環器医がおさえておくべき、がん治療の新たなる概念-サバイバーシップ がん医療の進歩により、がんは不治の病ではなくなりつつある。言い換えるとがん治療の進歩により生命予後が伸びる患者、がんサバイバーが増えているのである。とくに米国ではがんサバイバーの急激な増加が大きな社会問題となっており、2015年時点で1,500万人だった患者は、今後10年でさらに1,000万人の増加が見込まれる。 たとえば小児がんサバイバーの長期予後調査1)では、がん化学療法により悪性リンパ腫を克服したものの、その副作用が原因とされる虚血性心疾患(CAD)や慢性心不全(CHF)を発症して死亡に繋がるなどの心血管疾患が問題として浮き彫りとなった。成人がんサバイバーでも同様の件が問題視されており、長期予後と循環器疾患に関する論文2)によると、乳がん患者の長期予後は大幅に改善したものの「心血管疾患による死亡はその他リスク因子の2倍以上である。乳がん診断時の年齢が66歳未満では乳がんによる累計死亡割合が高かった一方で、66歳以上では心血管疾患(CVD)による死亡割合が増加3)し、循環器疾患の既往があると累計死亡割合はがんとCVDが逆転した」と佐瀬氏はコメントした。心疾患に影響するがん治療を理解する この逆転現象はがん治療関連心血管疾患(CTRCD:Cancer Therapeutics-Related Cardiac Dysfunction)が原因とされ、このような患者は治療薬などが原因で心血管疾患リスクが高くなるため、がんサバイバーのなかでも発症予防のリハビリなどを必要とする。同氏は「がん治療により生命予後が良くなるだけではなく、その後のサバイバーシップに対する循環器ケアの重要性が明らかになってきた」と話し、がんサバイバーに影響を及ぼす心毒性を有する薬を以下のように挙げた。●アントラサイクリン系:蓄積毒性があるため、生涯投与量が体表面積あたり400mg/m2を超えるあたりから指数関数的にCHFリスクが上昇する●分子標的薬:HER2阻害薬はアントラサイクリン系と同時投与することで相乗的に心機能へ影響するため、逐次投与が必要。チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)は世代が新しくなるにつれ血栓症リスクが問題となる●免疫チェックポイント阻害薬:PD-1阻害薬とCTLA-4阻害薬併用による劇症心筋炎の死亡報告4)が報告されている これまでのガイドラインでは、薬剤の影響について各診療科での統一感のなさが問題だったが、2017年のASCOで発表された論文5)を機に変革を迎えつつある。心不全の場合、日本循環器学会が発刊する『腫瘍循環器系の指針および診療ガイドライン』において、がん治療の開始前に危険因子(Stage A)を同定する、ハイリスク患者とハイリスク治療ではバイオマーカーや画像診断で無症候性心機能障害(Stage B)を早期発見・治療する、症候性心不全(Stage C/D)はGLに従って対応するなど整備がされつつある。しかしながら、プロテアソーム阻害薬や免疫チェックポイント阻害薬のような新規薬剤は未対応であり、今後の課題として残されている。循環器医からがんサバイバーへのアプローチが鍵 がん治療が心機能へ影響する限り、これからの循環器医は従来型の虚血性心疾患と並行して新しい危険因子CTRCDを確認するため「がん治療の既往について問診しなければならない」とし、「患者に何かが起こってから対処するのではなく腫瘍科医と連携する体制が必要。そこでCardio-Oncologyが重要性を増している」と述べた。 最後に、Cardio-Oncologyを発展させていくため「病院内でのチームとしてなのか、腫瘍-循環器外来としてなのか、資源が足りない地域では医療連携として行っていくのか、状況に応じた連携の進め方が重要。循環器疾患がボトルネックとなり、がん治療を経た患者については、腫瘍科医からプライマリケア医への引き継ぎ、もしくは心血管疾患リスクが高まると予想される症例は循環器医が引き継いでケアを行っていくことが求められる。これからの循環器医にはがんサバイバーやCTRCDに対するCORE6)を含めた対応が期待されている」と締めくくった。■参考1)Armstrong G, et al. N Engl J Med. 2016;374:833-842.2)Ptnaik JL, et al. Breast Cancer Res. 2011 Jun 20;13:R64.3)Abdel-Qadir H, et al. JAMA Cardiol. 2017;2:88-93.4)Johnson DB, et al. N Engl J Med. 2016;375:1749-1755.5)Almenian SH, et al. J Clin Oncol. 2017;35:893-911.6)Sase K, et al. J Cardiol.2020 Jul 28;S0914-5087(20)30255-0.日本循環器学会:心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2012年改訂版)

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デュルバルマブ、進展型小細胞肺がんに国内適応拡大/アストラゼネカ

 アストラゼネカは、2020年8月21日、デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)について、化学療法(エトポシドおよびカルボプラチンまたはシスプラチン)との併用療法で、進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)を適応症に厚生労働省より承認を取得したと発表。 デュルバルマブに対する今回の承認は、デュルバルマブと化学療法との併用療法が、化学療法単独との比較において、統計学的に有意で臨床的に意義のある全生存期間(OS)の延長を示した第III相CASPIAN試験の結果に基づいている。 2019年6月、CASPIAN試験において、デュルバルマブと化学療法との併用療法は、化学療法単独との比較で主要評価項目であるOSの延長を示し、死亡リスクを27%低下させた(ハザード比:0.73、95%信頼区間:0.59~0.91、p=0.0047)。OS中央値は化学療法単独群の10.3ヵ月に対し、デュルバルマブと化学療法との併用療法群では13.0ヵ月であった。また、デュルバルマブと化学療法との併用療法群では、客観的奏効率(Confirmed)の増加(化学療法単独群58%に対して、デュルバルマブと化学療法との併用療法群68%)が示され、化学療法にデュルバルマブを追加することで、肺がん関連の症状が悪化するまでの期間が延長することが示された。 最新の解析データでは、追跡期間中央値が2年を超えた時点でも、デュルバルマブと化学療法との併用療法による持続的な有効性が示され(OSハザード比:0.75、95%信頼区間:0.62 ~0.91、p=0.0032)、OS中央値は化学療法単独群の10.5ヵ月に対し、デュルバルマブと化学療法との併用療法群では12.9ヵ月であった。デュルバルマブと化学療法との併用療法の安全性および忍容性は、これらの医薬品の既知の安全性プロファイルと一致していた。 デュルバルマブとエトポシドおよびカルボプラチンまたはシスプラチンとの併用療法は、のES-SCLCの1次治療薬として、米国および世界中の数ヵ国で承認されている。

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第22回 老化で溜まる屑ががん細胞を転移しやすくする~血を薄めて若返り?

高齢になるほどがんを生じてがんで死亡することが多くなり、がんによる死亡は主に転移を原因とします。米国・ニューヨーク市のコーネル大学のチームによる新たな研究の結果、食物中のタンパク質等をエネルギーに変える代謝で生じるいわば屑・メチルマロン酸(MMA)が高齢になるほど血液中に蓄積し、上皮間葉転換(EMT)に似た仕組みを経てどうやらがん細胞を転移しやすくすると分かりました1-4)。先立つ研究で、転移し始める細胞のMMAが増えると分かっていました3)。また、高齢者にMMAが多いことも知られていました。それら2つの発見を背景にしてチームはMMAが高齢者と発がんの関連に寄与しているかもしれないと考え、血液中のMMA が多い60歳以上の高齢者30人の血清と25~30歳の若者30人の血清を肺がん細胞や乳がん細胞に投与してどうなるかを検討しました。その結果、若者の血清を投与したがん細胞の特性は多くの場合変化しませんでした。一方、高齢者の血清が投与されたがん細胞は多くの場合EMTに似た仕組みによって転移特性を備え、別の試験でその変化の多くがMMAに起因していると判明しました。それらのがん細胞はたしかに転移誘発作用があり、マウスに注射したところ肺に転移性の腫瘍を生み出しました。MMAは高齢者の血液中に存在する大きな脂肪の粒と恐らく複合体を形成して血管壁を出てがん細胞に運ばれ、SOX4という遺伝子発現を促すことでがん細胞を転移可能な状態にするようです。MMAを運ぶその脂肪粒の特性やMMAがどういう仕組みでSOX4の発現を促すのかは分かっておらず、今後の研究で調べる必要があります。また高齢になるほどMMAが蓄積する理由なども今後の研究で明らかになるでしょう。まだまだ課題はありますが、MMAを減らしてがんによる死亡を防ぐ治療が生み出されることを何よりも望むと研究を率いたコーネル大学教授John Blenis氏は言っています3)。血を薄めて若返りを図る?老化するほど血液に溜まる有害成分はMMAだけではないようで、老化に伴って蓄積する有害タンパク質もどうやら存在し、それらを薄める血漿瀉血(血漿交換)に似た処置で老いたマウスを若返らせうることがカリフォルニア大学バークレー校(UC Berkeley)の最近の研究で示されています5,6)。研究者は老齢マウスの血漿の半分をそれらに含まれるアルブミン相当量添加(アルブミン5%)生理食塩水で置き換えて血漿中のタンパク質を薄めました。すると老化で増える炎症促進タンパク質の数が減り、血管新生などに携わる有益なタンパク質は逆に増え、脳・肝臓・筋肉が若返りました。血漿成分を変える瀉血は種々の自己免疫疾患の治療として米国FDAにすでに承認されています。少し手を加えた瀉血で高齢者の体調を改善できるかどうかや、筋肉減少・神経変性・2型糖尿病・免疫不全などの老化疾患を治療できるかどうかを調べる試験の準備をしていると6月中旬の同大学のニュースで述べられています5)。MMAも薄まるのであればもしかすると瀉血でがん転移も減らせるかもしれません。参考1)Age-induced accumulation of methylmalonic acid promotes tumour progression. Nature. 19 August 20202)Study finds cancer-boosting culprit that multiplies with age / AFP 3)Aging People Accumulate a Molecule that Promotes Cancer and Metastasis / Weill Cornell Medicine4)Molecules in the blood of older people promote cancer spread / Nature 5)Diluting blood plasma rejuvenates tissue, reverses aging in mice / Eurekalert6)Mehdipour M,et al. Aging. 2020 May 31; 12: 8790–8819.

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肺がんNGSコンパニオン診断、有効活用に向けた実臨床での分析【肺がんインタビュー】 第50回

第50回 肺がんNGSコンパニオン診断、有効活用に向けた実臨床での分析肺がんでは、次世代シーケンス(NGS)によるコンパニオン診断が承認され、治療初期からの網羅的な遺伝子診断が可能となった。しかし、実臨床における活用状況や、その成績は明らかになっていない。「西日本がん研究機構(WJOG)」では、これらの現状を明らかにするWJOG13019Lを実施している。研究代表医師である北九州市立医療センター 大坪 孝平氏に聞いた。明らかになっていない、NGSによる肺がん初期遺伝子診断の実態―この試験を実施する背景について教えていただけますか。画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する肺がんには複数のドライバー遺伝子変異があります。なかでもEGFR、ALK、ROS1、BRAFなどの遺伝子変異/転座は分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害薬)が高い有効性を示すため、肺がんでは、初期診断の段階で複数のドライバー遺伝子を同時に測定することが推奨されます。そのような中、46種類遺伝子を同時に検索できる次世代シークエンス(NGS)を用いたコンパニオン診断システム「オンコマインDx Target Test マルチCDxシステム(以下、オンコマインDxTT)」が、2019年6月に保険収載され、上記4つの変異測定に使用できるようになりました。 従来の検査法では、ドライバー遺伝子ごとに別のコンパニオン診断薬が必要でした。その結果、複数の遺伝子変異を同時に測定するためには、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)標本が 、最大で30枚程度必要になります。実臨床でそれだけの組織を採取することは容易ではありません。実際、23.4%の患者さんが検体不足により4つのドライバー遺伝子測定を完遂できなかったとの報告もあります。オンコマインDxTTを用いると、10枚程度の標本で遺伝子変異が測定可能となり、こういった課題も解消されると想定されました。 しかし、実臨床ではオンコマインDxTTを利用しても、検体量不足や検体の質の問題で、測定不能と判定されることがあります。NGSを用いた遺伝子変異測定の成功率はどの程度か、また、どういう採取方法で、どれくらいの検体を採り、どういう病理学的処理をすれば、きちんと遺伝子変異を測定できるのか。当試験は、全国の肺がん治療医が持っている、このような疑問を明らかにするために計画されました。 実臨床での遺伝子変異の実態を明らかにし、治療開始の遅れをなくす―WJOG13019L試験の概要について教えていただけますか。この試験の略称は「DETECT-LC」で、WJOGの若手グループ「WING」が主体となり、サーモフィッシャー社の資金援助を受け、大阪市立大学をデータセンターとして実施しています。 対象は、WINGの施設を主体とした19施設において、2019年6月1日~20年1月31日に、オコマインDxTTによる遺伝子検査が行われた非小細胞肺がんです。登録後、検体情報と臨床情報を収集して、後ろ向きに解析します。主要評価項目は、遺伝子変異測定成功割合(EGFR、ALK、ROS1、BRAFすべての測定が成功した割合)、副次評価項目は検体条件(検体採取方法、腫瘍細胞含有率、固定条件、マイクロダイセクションの有無)による遺伝子変異測定成功割合、測定成功症例における遺伝子変異陽性率(46種類)、検体提出から結果判明までの期間です。わが国の実臨床で、NGSでの各遺伝子の検出頻度や、検体条件による測定成功率の違いなどは明らかになっていなかったので、注目する医師は多いと思います。2020年4月から開始した登録は、同年6月末終了し、2020年7月1日現在、目標の500例を超える533例が集まっています。今後、解析を行い、学会および論文で発表する予定です。―この試験の結果は、臨床にどのように影響を与えるでしょうか。EGFRやALKなど治療ターゲットとなるドライバー遺伝子が「測定不能」として返ってきた場合、別のコンパニオン診断薬を使って測定し直すという時間のロスを生じます。この試験の結果が、非小細胞肺がんの患者さんに対する治療導入の遅れを減らすことにつながれば、大きなメリットになると考えています。また、前述の4つの遺伝子や、KRASなど今後治療ターゲットとなりえるドライバー遺伝子の変異/転座の割合が明らかになることで、今後の治療薬開発につながっていく可能性もあり、非常に重要だと思っています。

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肺がん死亡率低下、NSCLCとSCLCで異なる傾向/NEJM

 米国の非小細胞肺がん(NSCLC)による住民レベルでみた死亡率は、2013年から2016年にかけて、性別や人種を問わず大幅に低下していることが、米国・国立がん研究所のNadia Howlader氏らによる検討で明らかにされた。低下に寄与しているのは診断後の生存率の大幅な改善によるもので、著者は、「治療の進歩による罹患率の低下、とくに同時期に承認された分子標的治療薬の使用が、観察された死亡率の低下に寄与しているであろうことが示唆される」と分析している。肺がんには、NSCLCや小細胞肺がん(SCLC)など異なるサブタイプがある。米国では肺がん全死亡率は低下しているが、住民レベルでみた肺がんのサブタイプ別の死亡傾向については、死亡届にサブタイプまでの情報は記載されないため不明だった。NEJM誌2020年8月13日号掲載の報告。米国がんレジストリのデータから肺がんサブタイプ別の死亡動向を評価 研究グループは、米国住民の28%を網羅するSEER(Surveillance, Epidemiology, and End Results)18レジストリのデータを用いて、SEERがんレジストリにおける肺がん死亡について評価し、肺がん死と罹患例を関連付けることで、特定の肺がんサブタイプに起因する住民レベルの死亡傾向(罹患率ベースでみた死亡率)を評価した。 また、肺がん罹患率と生存率についても、がんサブタイプ別、性別、暦年別に評価を行った。解析は、ジョインポイントソフトウエアを用いて行い、罹患率の変化、罹患率ベース死亡率を評価した。NSCLC死亡率は罹患率よりも早く低下、分子標的薬の承認時期と一致 NSCLC死亡率は、NSCLCの罹患率と比べてより早く低下していた。この低下は、経時的な生存率の大幅な改善と関連しており、分子標的治療薬の承認時期と一致していた。 男性におけるNSCLC罹患率ベース死亡率は、2008~16年は年率3.1%だったが、2013~16年は同6.3%だった。これに対応した男性の肺がん特異生存率は、2001年にNSCLCと診断された男性では26%だったのに対し、2014年には同35%に改善していた。この生存率の改善は、人種や民族にかかわらずみられ、また同様の傾向は女性でも認められた。 一方で、SCLC死亡率は、罹患率の低下とほぼ完全に一致して低下しており、生存率の改善はみられなかった。この傾向は、調査期間中のSCLC治療の進歩が限定的だったことと関連していた。

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ぺムブロリズマブ+化学療法による小細胞肺がん1次治療、PFSを延長(KEYNOTE-604)/JCO

 未治療の進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)に対する、初回治療としての抗PD-1抗体ペムブロリズマブと化学療法(エトポシド+プラチナ:EP)の併用療法について検討した第III相プラセボ対照二重盲検無作為化試験KEYNOTE-604において、ペムブロリズマブ+EPはプラセボ+EPと比較して、無増悪生存(PFS)を有意に延長したことが報告された。ペムブロリズマブ併用群で、想定外の毒性はみられなかったという。米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのCharles M. Rudin氏らによる検討で、著者は「示されたデータは、ES-SCLCにおけるペムブロリズマブの有益性を支持するものである」と述べている。先行研究で、SCLC患者においてペムブロリズマブ単独療法が抗腫瘍活性を示したことが報告されていた。Journal of Clinical Oncology誌2020年7月20日号掲載の報告。 試験では、適格患者を無作為に1対1で割り付け、ペムブロリズマブ200mgを3週ごと(最大35サイクル)+EP(最大4サイクル)またはプラセボ+EP(最大4サイクル)が投与された。 主要評価項目は、PFS(中央レビュー委員会評価)および全生存(OS)で、ITT解析にて評価した。副次評価項目は、客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)であった。事前に規定した有効性のp値(片側検定による)は、PFSがp=0.0048、OSがp=0.0128であった。 主な結果は以下のとおり。・被験者は453例で、228例がペムブロリズマブ+EP群に、225例がプラセボ+EP群に割り付けられた。・ペムブロリズマブ+EP群は、PFSを有意に改善した(ハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.61~0.91、p=0.0023)。12ヵ月時点の推定PFS率は、ペムブロリズマブ+EP群が13.6%、プラセボ+EP群は3.1%であった。・ペムブロリズマブ+EP群はOSを延長したが、有意差は示されなかった(HR:0.80、95%CI:0.64~0.98、p=0.0164)。24ヵ月時点の推定OS率は、ペムブロリズマブ+EP群22.5%、プラセボ+EP群11.2%であった。・ORRは、ペムブロリズマブ+EP群70.6%、プラセボ+EP群は61.8%であった。12ヵ月時点で奏効が持続していたレスポンダーの推定割合は、それぞれ19.3%、3.3%であった。・全要因の有害事象の発現頻度は、Grade3/4がペムブロリズマブ+EP群76.7%、プラセボ+EP群74.9%、Grade5はそれぞれ6.3%、5.4%、あらゆる薬物の中断率は14.8%、6.3%であった。

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コロナ禍、がん診断の遅れで5年後がん死増加の恐れ/Lancet Oncol

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が、がん死に影響するとの報告が英国から寄せられた。同国ではCOVID-19のパンデミックにより2020年3月に全国的なロックダウンが導入されて以降、がん検診は中断、定期的な診断・診療も延期され、緊急性の高い症候性患者のみに対して診断・治療が行われているという。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のCamille Maringe氏らは、診断の遅れが主ながん患者の生存率にどのような影響を及ぼすのかモデリング研究にて検討し、回避可能ながん死が相当数増加すると予想されることを明らかにした。結果を踏まえて著者は、「緊急の政策介入が必要である。とくに、COVID-19パンデミックのがん患者への影響を軽減するため、定期的な診断サービスの確保を管理する必要がある」とまとめている。Lancet Oncology誌オンライン版2020年7月20日号掲載の報告。コロナ禍の診断遅延によるがんの5年間の追加死亡は3,291~3,621例 研究グループは、英国の国民保健サービス(NHS)のがん登録および病院管理データを用い、2010年1月1日~12月31日の間に乳がん、大腸がんまたは食道がんと診断され2014年12月31日までの追跡データがある、または、2012年1月1日~12月31日の間に肺がんと診断され2015年12月31日までの追跡データがある15~84歳の患者を特定し、物理的距離を確保する対策が開始された2020年3月16日から1年間の診断遅延が及ぼす影響について解析した。 診断遅延の生存に対する2次的影響をモデル化するため、通常のスクリーニングと紹介の経路での患者を、診断時の病期がより進行していることと関連する緊急経路に割り当て、最良から最悪まで3つのシナリオについて、診断後1、3、5年時点でのがんに起因する追加死亡および全損失生存年数(YLL)を算出し、パンデミック前のデータと比較した。 コロナ禍の診断遅延による診断後1、3、5年時点でのがんに起因する追加死亡を算出した主な結果は以下のとおり。・乳がん患者3万2,583例、大腸がん患者2万4,975例、食道がん患者6,744例、肺がん患者2万9,305例が解析に組み込まれた。・乳がんでは、診断後5年時までの乳がん死が7.9~9.6%(追加死亡相当で281例[95%信頼区間[CI]:266~295]~344例[329~358])増加すると推定された。・同様に、診断後5年時までの大腸がん死は15.3~16.6%(追加死亡1,445例[95%CI:1,392~1,591]~1,563例[1,534~1,592])、肺がん死は4.8~5.3%(追加死亡1,235例[1,220~1,254]~1,372例[1,343~1,401])、食道がん死は5.8~6.0%(追加死亡330例[324~335]~342例[336~348])、それぞれ増加すると推定された。・これら4種のがんについての5年間の追加死亡は、3つのシナリオ全体で3,291~3,621例であり、追加YLLは5万9,204~6万3,229年と推定された。

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肺がん1次治療における抗PD-1抗体sintilimab+化学療法の成績(ORIENT-11)/WCLC2020

 新たな抗PD-1抗体sintilimabの非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)における有効性は、第Ib相試験で示された。この結果を基に、無作為化二重盲検第III相ORIENT-11試験が行われ、その初回解析の結果を中国・Sun Yat-Sen University Cancer Centreの Zhang Li氏が、世界肺癌学会WCLC2020Virtual Presidential Symposiumで発表した。sintilimabがPFSを有意に延長・対象:未治療の局所進行または転移のあるNSCLC患者・試験群:sintilimab(200mg)+ペメトレキセド(500mg/m2)+シスプラチン(75mg/m2)またはカルボプラチン(AUC5) 3週ごと4サイクル投与→sintilimab+ペメトレキセド維持療法(sintilimab群)・対照群:プラセボ+ペメトレキセド+プラチナ 3週ごと4サイクル投与→ペメトレキセド維持療法(化学療法群) 化学療法群のsintilimab群へのクロスオーバーは許容された。・評価項目: [主要評価項目]独立放射線審査委員会評価の無増悪生存期間(PFS) [副次評価項目]全生存期間(OS)、客観的奏効期間(ORR)、効果発現までの時間、安全性 sintilimabのNSCLCにおける有効性を評価した主な結果は以下のとおり。・対照患者397例はsintilimab群266例、プラセボ群131例に2対1で無作為に割り付けられた。プラセボ群のsintilimabへのクロスオーバーは35例(31.3%)であった。・追跡期間中央値8.9ヵ月でのPFS中央値は、sintilimab群8.9ヵ月、化学療法群5.0ヵ月と、sintilimab群で有意に長かった(HR:0.482、95%CI:0.362〜0.643、p<0.00001)。・OS中央値は、両群とも未達であった(HR:0.609、95CI:0.400〜0.926、p=0.01921)。・ORRは、sintilimab群51.9%、化学療法群で29.8%であった。・Grade3以上の有害事象発現率は、sintilimab併用群61.7%、プラセボ併用群58.8%であった。 Discussantである米国・Karmanos Cancer Canterの長阪 美沙子氏は、当試験が東アジアのデータであることを重要であるとした。また、PFS、OSは他の免疫チェックポイント阻害薬のNSCLC1次治療のデータと匹敵するものだとしながら、PFSの改善がOSの改善に結びつかないこともあることから、長期のフォローアップの必要性を強調した。 この試験の結果は、Journal of Thoracic Oncology誌2020年8月8日オンライン版にも同時掲載された。

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IO+Chemoへのベバシズマブ add onは有用か:APPLE Study【肺がんインタビュー】 第48回

第48回 IO+Chemoへのベバシズマブ add onは有用か:APPLE Study出演:九州大学病院 呼吸器科 白石 祥理氏非小細胞肺がん1次治療において免疫チェックポイント阻害薬と化学療法の併用にベバシズマブを上乗せすることの有効性と安全性を検討するWJOG11218L試験(APPLE Study)が進行中である。この試験の研究事務局の九州大学病院 呼吸器科 白石 祥理氏に試験実施の背景と臨床的意義について聞いた。

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EGFR陽性肺がんに対する抗HER3ADC「U3-1402」とオシメルチニブ併用、臨床試験実施へ/第一三共

 第一三共は、2020年8月7日、U3-1402(HER3に対する抗体薬物複合体)とEGFR‐TKIオシメルチニブ(商品名:タグリッソ)との併用療法を評価する臨床試験の実施に関する契約をアストラゼネカと締結したと発表。 本契約に基づき、同社は、EGFR遺伝子変異を有する進行および転移を有する非小細胞肺がん患者を対象とした、両剤併用のグローバル第I相臨床試験を実施する。 本試験は2つのパートからなり、パート1(用量漸増パート)では、同剤とオシメルチニブの異なる投与量の組み合わせによる安全性と忍容性を評価し、推奨用量を決定する。パート2(用量展開パート)では、両剤併用の推奨用量での有効性と安全性を評価する。 用量漸増パートの主要評価項目は安全性と忍容性で、用量展開パートの主要評価項目は客観的奏効率など。北米、欧州、日本を含むアジアにおいて最大258名の患者を登録する予定。

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ニボルマブ+ベバシズマブ+化学療法、非小細胞肺がん1次治療でPFS延長(ONO-4538-52/TASUKI-52)/小野

 小野薬品工業は、2020年8月3日、抗PD-1抗体ニボルマブ(商品名:オプジーボ)について、化学療法未治療の根治照射不能なIIIBIV期又は再発の非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象に、抗VEGF抗体であるベバシズマブと化学療法の併用療法群(ニボルマブ併用療法群:275例)をプラセボ、ベバシズマブと化学療法の併用療法群(対照併用療法群:275例)と比較評価した第III相臨床試験(ONO-4538-52/TASUKI-52)のトップライン結果を発表。本試験において、予め計画していた中間解析で、オプジーボ併用療法群が、対照併用療法群と比較して、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)で統計学的に有意な延長を示した。本試験におけるニボルマブ併用療法群の安全性プロファイルは、化学療法未治療のNSCLC治療において免疫チェックポイント阻害剤、およびベバシズマブと化学療法の併用療法でこれまでに認められているものと一貫していた。 ONO-4538-52/TASUKI-52試験は、化学療法未治療の根治照射不能なIIIB/IV期又は再発の非扁平上皮NSCLCを対象に、ニボルマブ、ベバシズマブと化学療法の併用療法群(ニボルマブ併用療法群:275例)をプラセボ、ベバシズマブと化学療法の併用療法群(対照併用療法群:275例)と比較評価した多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験(ONO-4538-52/TASUKI-52)。ニボルマブ併用療法群の患者には、ニボルマブ360mg、カルボプラチンAUC6、パクリタキセル200mg/m2およびベバシズマブ15mg/kgを3週間1サイクルとして投与し、対照併用療法群の患者には、プラセボ、カルボプラチンAUC6、パクリタキセル200mg/m2およびベバシズマブ15mg/kgを3週間1サイクルとして投与した。両群ともカルボプラチンおよびパクリタキセルは4サイクルまで投与し、安全に投与を継続することが可能と判断された場合は最大6サイクルまで投与継続可能とした。その後、ニボルマブ併用療法群ではニボルマブおよびベバシズマブの投与を、対照併用療法群ではプラセボおよびベバシズマブの投与を病勢進行又は許容できない毒性が確認されるまで継続した。主要評価項目は、独立画像判定委員会の評価に基づくPFS。副次評価項目は全生存期間(OS)、実施医療機関の医師判定に基づくPFSおよび奏効率(ORR)など。

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FDA、オシメルチニブのEGFR陽性肺がん術後補助療法をブレークスルーセラピー指定/アストラゼネカ

 2020年7月31日、米国食品医薬品局(FDA)は、第3世代EFGR-TKIオシメルチニブ(商品名:タグリッソ)による完全切除後の早期(Stage IB~IIIA)EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)への術後補助療法をブレークスルーセラピーに指定した。 この指定は、米国臨床腫瘍学会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で発表された第III相ADAURA試験のデータに基づくもの。この試験では、オシメルチニブによる術後補助療法は、統計的に有意で臨床的に意味のある無病生存率(DFS)の改善を示した(HR:0.21、95% CI:0.16~0.28; p

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世界肺癌(WCLC)2020Presidential Symposium バーチャル開催【肺がんインタビュー】 第49回

第49回 世界肺癌(WCLC)2020Presidential Symposium バーチャル開催WCLC2020 Presidential Symposiumが8月8日にバーチャル開催。話題のADAURA試験の追加発表も予定されるこのシンポジウムについて、国際肺癌学会Presidentの光冨徹哉氏に紹介いただいた。参考WCLC2020 Virtual Presidential Symposium

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免疫チェックポイント阻害薬の未来―がん免疫療法の耐性とその克服【そこからですか!?のがん免疫講座】最終回

はじめに「がん免疫の基礎を…」ということで始まったこのシリーズは、当初5回くらいで終わる予定でしたが、いろいろ盛り込んで増えてしまい、計7回になりました。まだまだトピックスはありますが、込み入った話はあまりせず、がん免疫療法の将来像を「個人的」な想像(妄想?)も交えてお話しすることで、終わりにしたいと思います(あくまで「個人的」な見解であり、承認されていない薬剤や使用方法についても記載がありますが、ご容赦ください)。ICIはどんどん早い段階で使われるように現在、臨床応用されている免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、抗PD-1/PD-L1抗体と抗CTLA-4抗体です。ご存じのように、これらは当初の適応がん種であった悪性黒色腫や肺がんだけでなく、さまざまながんで効果が証明され、使用が広がっています。免疫応答ががん細胞に対してしっかり起きていれば(とくにT細胞がしっかり攻撃できれば)、がん種に関係なく効く、というわけなのです。「ネオ抗原を反映する体細胞変異数が重要」という話をバイオマーカーの話題の回で紹介しましたが、体細胞変異数が多いMSI highというくくりや、最近では体細胞変異数が多いがんというくくりにおいても、ICIの効果が証明されつつあります。今まで臓器別で承認されてきた抗がん剤ですが、ここに来てがん種横断的な承認・使用ができるようになってきています。似たようなことはゲノム医療が進む分子標的薬の世界でも広がっていますね。そして、遅いラインでの使用よりもファーストラインでの使用、さらには早期がんでの周術期、というように、ICIはどんどん早い段階で使用する方向に向かっています。患者さんの検体を解析していて感じますが、やはり早期の小さいがんほど「(俗っぽい表現ですが)免疫状態がよく」、がん免疫療法もそういった小さな、早期のものほど効く可能性が高いと感じます。マウスの実験でも、小さい腫瘍のほうが明らかによく効きます(図1)1)。とくに最近の術前補助化学療法としてICIを使う効果は特筆すべきものがあり2)、今後「術前ICI」という治療が、いろいろながん種で臨床に入ってくるかもしれません。画像を拡大する今後を占うのは、ICIの「3つの耐性機序」今までの分子標的薬治療の開発史においても、耐性機序を解明することによって次の治療が登場してきました。たとえば、第1世代EGFR-TKIに耐性を示すEGFR T790M変異が見つかったことで第3世代EGFR-TKIが開発されたわけです。ICIについても今後の治療開発には耐性機序が非常に重要ですので、ここでも少し触れたいと思います。今までのデータを見ると、ICIの耐性機序はEGFRのT790M変異のような特定の機序というよりは、さまざまな耐性機序が複雑に絡み合っていると考えられます。このシリーズでは耳にタコができるくらい繰り返しご紹介してきましたが、ICIはT細胞を活性化させる治療ですので、代表的な耐性機序をT細胞活性化の7つのステップに準じてA~Cの3つにまとめました(図2)3)。画像を拡大する A がん抗原の認識に関わる耐性:T細胞活性化は抗原の認識から始まります。たとえば、ネオ抗原がない(≒体細胞変異が少ない)とT細胞も強く活性化できず、ICIは耐性となります。ほかにも、がん抗原を乗せるお皿であるMHCに異常があって抗原を提示することができない場合は、T細胞ががん細胞を認識しようがありませんので、耐性化してしまいます4)。 B T細胞の遊走・浸潤に関わる耐性:活性化したT細胞ががん細胞を攻撃するためには、がん細胞のいる攻撃の場へ遊走・浸潤していく必要があります。しかし、遊走・浸潤に関わるケモカインという物質などが妨害されてしまうと耐性化する、とされます。これはさまざまな機序で起きているとされており、たとえば、がん化に寄与する重要ながん側の因子がケモカイン産生を低下させていることが報告されています5)。 C 細胞傷害に関わる耐性:活性化したT細胞ががん細胞を攻撃する最終段階において、がん細胞を傷害できずに耐性化してしまうこともあります。たとえば、PD-1やCTLA-4以外の免疫チェックポイント分子がT細胞を強く抑制している場合や、免疫を抑制してしまう細胞が関与することなどが報告されています6)。耐性克服のカギはPrecision Medicineこれらの耐性を克服するために抗がん剤や放射線治療との併用や、ほかの免疫チェックポイントに作用する薬剤との併用などが試みられています。とくに、抗がん剤併用は肺がんでは効果が証明され、すでに臨床応用されています7)。また、承認済みのPD-1/PD-L1やCTLA-4を組み合わせるだけでなく、ほかの免疫チェックポイント分子を標的にした抗LAG-3抗体や抗TIGIT抗体などとの併用療法が現在開発されており、その結果が待たれます。しかしながら、開発中のものにはあまり生物学的な根拠がないものもあります。個人的には、もう少し耐性機序を考慮したうえで個々の組み合わせを考えることが必要だと考えています。がん免疫療法もゲノム医療のようにPrecision Medicineに進むべきです。がん細胞に対してT細胞がまったく攻撃している気配がない患者さん(「砂漠」と表現されます)には、どんなに併用をしようともICIの効果は出ないのではないか?ともいわれています。たとえば、MHCの異常で抗原が提示できない場合には、病理学的にもT細胞がまったく見られず(まさに「砂漠」)4)、どんなにT細胞を活性化させようとも、攻撃するT細胞がそこに存在せず、かつ、がん細胞を認識すらできませんので治療効果は期待できません。「砂漠」にも可能性を感じる細胞療法前回は、CAR-T細胞療法の話題を取り上げました8)。まだ血液腫瘍だけではありますが、このような治療が有効というのは非常に興味深く、示唆に富んだ結果だと思っています。「砂漠」に近い患者さんに対しても、外から攻撃するT細胞を入れることで効果が期待できるかもしれません。実際に、前回紹介したTIL療法はICIが効かないような例でも効果が報告されています9)。似たような発想で、がん細胞の表面に出ている分子を認識する抗体と、T細胞を活性化させる刺激抗体をくっつけたBispecific抗体というものがあります。抗体の片方はがん細胞にくっついて、もう片方がT細胞を活性化させます。つまり表現が少し悪いかもしれませんが、「無理やりにでもT細胞をがん細胞に対して攻撃するように仕向ける」ことができるわけです。おわりに2012年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)でのICIの報告から8年が経ち、がん免疫療法はここまで臨床に広がりました。ICI登場まで、(私も含めて)がん免疫を「うさんくさい」と思っていた方が多いかもしれません。ご存じのようにPD-1は日本で見つかり研究が進んだもので10)、こういった基礎研究の成果がここまで臨床応用されていることに非常に感銘を受け、「うさんくさい」と思っていた自分を恥じました。しかしながら、その有効性は不十分で、まだまだ不明な点が多いのも事実です。マウスで進んできた研究ですが、ヒトでの証明が不十分なものも多いのです。今後の新しい治療開発のためにも、実際の患者さんの検体での解析がますます重要になってくるでしょう。こうした成果を積み重ねれば、将来的には進行がんでも「完治」に近い状態を実現できるのではないかと思います。ややこしい内容も多い中、最終回までお付き合いいただき、ありがとうございました。ケアネット編集部の方には理解しにくい部分をいろいろご指摘いただいて、何とか読める内容になったと思います。そして、私にがん免疫の「いろは」をご教授くださった国立がん研究センター/名古屋大学の西川先生にも、併せて深謝申し上げて本シリーズを終わりにしたいと思います。1)Umemoto K,et al.Int Immunol.2020;32:273-281.2)Forde PM, et al. N Engl J Med. 2018;378:1976-1986.3)冨樫庸介.実験医学増刊.2020;38.4)Inozume T, et al. J Invest Dermatol. 2019;139:1490-1496.5)Sugiyama E, et al. Sci Immunol. 2020;5:eaav3937.6)Togashi Y, et al. Nat Rev Clin Oncol. 2019;16:356-371.7)Gandhi L, et al. N Engl J Med. 2018;378:2078-2092.8)Singh AK, et al. Lancet Oncol. 2020;21:e168-e178.9)Zacharakis N, et al. Nat Med. 2018;24:724-730.10)Ishida Y, et al. EMBO J. 1992;11:3887-3895.

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小細胞肺がんの脳転移、定位放射線治療 vs.全脳照射

 小細胞肺がんの脳転移に対する標準治療は全脳照射(WBRT)なのか。ほとんどの限局性脳転移について、定位放射線治療(SRS)が推奨されているが、SRSに関するデータは不足している。米国・コロラド大学のChad G. Rusthoven氏らは、初回治療としてのSRS(WBRT既往なし/予防的全脳照射なし)とWBRTを比較する国際多施設コホート研究「FIRE-SCLC試験」を行い、SRSはWBRTと比較して中枢神経系進行までの時間(TTCP)が短いが、全生存(OS)期間は有意に延長したことなどを明らかにした。著者は、「今回の研究結果は、TTCPが短いがOSは短縮しないなど、初回SRS単独治療の主な一長一短が、SRSに関してすでに観察されていることと同様であることを示すものであった」と述べている。JAMA Oncology誌2020年6月4日号掲載の報告。 FIRE-SCLC(First-line Radiosurgery for Small-Cell Lung Cancer)試験は、欧米および日本の28施設で実施された。研究グループは、小細胞肺がんの脳転移に対する初回治療でのSRSの治療成績をWBRTと比較する目的で、2017年10月26日~2019年8月15日にデータを収集し、2019年8月16日~11月6日に解析した。 主要評価項目は、SRS後のOS、TTCP、および中枢神経系の無増悪生存(CNS-PFS)期間で、これらを評価した後、傾向スコアマッチング法およびPS、脳転移数、同時性、年齢、性別および治療年で補正した多変量解析によりWBRTと比較した。  主な結果は以下のとおり。・解析対象は、1994~2018年にSRSを受けた合計710例(年齢中央値68.5歳、男性531例[74.8%])であった。・OS中央値は8.5ヵ月、TTCP中央値は8.1ヵ月、CNS-PFS中央値は5.0ヵ月であった。・治療が行われた脳転移数別のOS中央値は、1個の場合11.0ヵ月、2~4個8.7ヵ月、5~10個8.0ヵ月、11個以上5.5ヵ月であった。・傾向スコアマッチング法でSRSとWBRTを比較した結果、WBRTはTTCPの改善(ハザード比[HR]:0.38、95%CI:0.26~0.55、p<0.001)が認められた一方、OS(中央値:SRS群6.5ヵ月[95%CI:5.5~8.0]vs.WBRT群5.2ヵ月[95%CI:4.4~6.7]、p=0.003)およびCNS-PFS(中央値:SRS群4.0ヵ月vs.WBRT群3.8ヵ月、p=0.79)の改善は認められなかった。・SRSとWBRTを比較する多変量解析(頭蓋外転移および頭蓋外病勢コントロール状況に関するサブグループ解析を含む)も、同様の結果であった。

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