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非小細胞肺がん、デュルバルマブ術前補助療法の成績/ESMO2020

 早期非小細胞肺がん(NSCLC)における免疫チェックポイント阻害薬の術前補助療法は、すでに幾つかの試験で検討され、有望な結果が得られている。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)では、デュルバルマブの術前補助療法を評価する第II相多施設共同試験(IFCT-1601 IONESCO)の中間解析の結果を、フランス・Cochin病院のMarie Wislez氏が発表した。・対象:Stage1B(4cm以上)、2、3A(N2除く)の切除可能NSCLC・介入:デュルバルマブ750mg 2週ごと3サイクル投与後2〜14日目に手術・評価項目:[主要評価項目]完全(R0)切除の割合[副次評価項目]術後90日死亡率、安全性、全生存期間(OS)、無病生存期間(DFS)、奏効率、MPR(Major Pathologic Response、生存腫瘍細胞10%以下)、初回投与から手術までの期間 主な結果は以下のとおり。・2017年4月〜2019年8月に50例が登録され、46例がデュルバルマブ投与対象となった。・患者の年齢中央値61.0歳、 男性70%、喫煙者は94%であった。・R0切除割合は89.1%(46例中41例)と、仮説割合の85%を超え、主要評価項目を達成した。・46例中4例はPR、36例がSD、6例がPDで、MPRは43例中8例の18.6%であった。・術後90日の死亡率は9%(4例)。そのため、登録は中止となった。死亡した4例中3例は、心血管系などの併存疾患を有しており、デュルバルマブとの直接の関連はみられなかった。・全Gradeの有害事象(AE)は33.3%、すべてGrade2以下であった。 ・追跡期間23ヵ月におけるOSとDFSの中央値は未達、 1年OS率は89.7%、12ヵ月DFS率は78.2.%であった。

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日本初「患者提案型医師主導治験」開始!舞台裏のストーリー【肺がんインタビュー】 第52回

第52回 日本初「患者提案型医師主導治験」開始!舞台裏のストーリー出演近畿大学医学部内科学 腫瘍内科部門 中川 和彦氏NPO法人 肺がん患者の会ワンステップ 長谷川 一男氏西日本がん研究機構(WJOG)と肺がん患者の会ワンステップが実現した日本初の患者提案型医師主導治験「KISEKI trial」。この試験の開始まであった幾多の難関。その難関を乗り越える力はどこから来ていたのか。試験実現を進めたWJOGの中川和彦氏と肺がん患者の会ワンステップの長谷川一男氏に聞いた。参考A Phase II Study to Assess the Efficacy of Osimertinib in Patients With EGFR Mutation-positive NSCLC Who Developed Isolated CNS Progression (T790M-negative or Unknown) During First- or Second-generation EGFR-TKI or Systemic Disease Progression (T790M-negative) After Treatment With First- or Second-generation EGFR-TKI and Platinum-based Chemotherapy (WJOG12819L)Masayuki Takeda M,et al. Clin Lung Cancer.2021 Jan 25[Epub ahead of print]

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EGFR変異NSCLC1次治療におけるapatinib+ゲフィチニブ第III相試験(ACTIVE)/ESMO2020

 中国・中山大学のLi Zhan氏は進行EGFR変異陽性NSCLCにの1次治療におけるVEGFR2-TKIのapatinibとEGFR-TKIゲフィチニブの併用を評価する無作為化二重盲検第III相試験ACTIVEの結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で発表。apatinib併用群の有意な無増悪生存期間(PFS)を報告した。・対象:未治療のEGFR変異陽性局所進行または転移のあるNSCLC患者313例・試験群:apatinib500mg/日+ゲフィチニブ250mg/日(apatinib併用群、157例)・対照群:プラセボ+ゲフィチニブ(ゲフィチニブ群、156例)・評価項目:[主要評価項目]独立放射線画像評価委員会によるPFS[副次評価項目]研究者評価によるPFS、全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、病勢制御率(DCR)、QOL、安全性 主な結果は以下のとおり。・独立放射線画像評価委員会によるPFS中央値は、apatinib併用群が13.7ヵ月、ゲフィチニブ群が10.2ヵ月で、apatinib併用群で有意な延長が認められた(HR:0.71、95%CI:0.54~0.95、p=0.0189)。・研究者評価によるPFS中央値は、apatinib併用群が13.8ヵ月、ゲフィチニブ群が12.0ヵ月で、apatinib併用群で有意な延長が認められた(HR:0.71、95%CI:0.53~0.95、p=0.0186)。・ORRはapatinib併用群が77.1%、ゲフィチニブ群が73.7%、DCRはApatinib併用群が84.7%、ゲフィチニブ群が87.8%で、いずれも両群間に有意差はなかった。・DoR中央値は、apatinib併用群が12.9ヵ月、ゲフィチニブ群が9.3ヵ月で、apatinib併用群で有意な延長が認められた(HR:0.64、95%CI:0.47~0.88、p=0.005)。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)発現率はapatinib併用群が84.1%、ゲフィチニブ群が37.7%、apatinib併用群の主なTRAEは、下痢、高血圧、AST上昇であった。・EGFR変異種別のPFSのHRでは、exon19del(HR 0.67)、L858R(HR 0.72)でもITT集団と同様のベネフィットが認められた。・TP53 exon8変異の患者では、apatinib併用群で有意にPFSが改善していた(HR:0.24、95%CI:0.06~0.91)。 これらの結果から、Zhan氏は「apatinibとゲフィチニブ併用はEGFR変異陽性NSCLCの新たな1次治療の選択肢として期待できる」との見解を示した。

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PD-L1陽性NSCLC、アテゾリズマブへのベバシズマブ上乗せ効果は?(WJOG@Be)/ESMO2020

 抗PD-1/L1抗体の単剤治療は、高PD-L1発現非小細胞肺がん(NSCLC)における生命予後の改善を示す。一方、抗VEGF抗体ベバジズマブは、前臨床において抗PD-1/L1抗体の活性を強化することが報告されている。九州がんセンター 呼吸器腫瘍科の瀬戸 貴司氏は、未治療のPD-L1高発現NSCLCに対する抗PD-L1抗体アテゾリズマブとベバシズマブの併用療法に関する非盲検単群第II相WJOG@Be試験の結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で発表。同併用療法が高い奏効率を示し、Grade4以上の有害事象はなかったと報告した。・対象:未治療のPD-L1高発現(TPS≧50)非扁平上皮NSCLC(PS 0〜1)40例・介入:アテゾリズマブ1,200mg+ベバシズマブ15mg/kg 3週ごと最大2年間、病勢進行あるいは忍容不能な副作用発現まで投与・評価項目:[主要評価項目]客観的奏効率(ORR)[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効期間(DoR)、全生存期間(OS)、安全性 主な結果は以下のとおり。・ORR は64.1%であった。・PFS中央値は15.9ヵ月、12ヵ月PFS率は54.9%であった。・1年OS率は70.6%であった。・DoR中央値は10.4ヵ月、12ヵ月DoR率は48.2%であった。・Grade3以上の有害事象発現率は38.5%であった。主なものは脳症、大腸炎、胆嚢炎、気管支出血であったが、Grade4以上のものはなかった。 今回の結果を受けて瀬戸氏は「アテゾリズマブとベバシズマブの併用はPD-L1高発現の非扁平上皮NSCLCに対する治療オプションとなりうる」と述べるとともに、「ICI単独治療、ICI+化学療法±ベバシズマブとの第III相試験を行うべき」との見解を示した。

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アテゾリズマブ単剤、NSCLC1次治療でOS延長(IMpower110)/NEJM

 非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療において、アテゾリズマブ単剤はプラチナ製剤ベースの化学療法と比較して、組織型を問わず、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の発現量が多い患者の全生存(OS)期間を延長させることが、米国・イェール大学医学大学院のRoy S. Herbst氏らが行った「IMpower110試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年10月1日号に掲載された。PD-L1発現NSCLCで転移のある患者の1次治療において、抗PD-L1モノクローナル抗体アテゾリズマブはプラチナベースの化学療法と比較して、有効性と安全性が優れるか否かは明らかにされていなかった。PD-L1発現量が多い集団のOS中間解析 研究グループは、EGFRとALKが野生型で転移のあるPD-L1陽性NSCLCにおけるアテゾリズマブの有用性を評価する国際非盲検無作為化第III相試験を実施した(F. Hoffmann-La RocheとGenentechの助成による)。今回は、PD-L1発現量が多い患者におけるOSの中間解析の結果が報告された。 対象は、年齢18歳以上、化学療法歴がなく、SP142による免疫組織化学法でPD-L1の発現が腫瘍細胞の1%以上または腫瘍浸潤免疫細胞の1%以上に認められ、転移のある非扁平上皮または扁平上皮NSCLCで、全身状態(ECOG PS)が0または1の患者であった。 被験者は、アテゾリズマブ(1,200mg、静脈内投与)またはプラチナ製剤ベースの化学療法(4または6サイクル)を3週ごとに投与する群に1対1の割合で割り付けられた。 主要評価項目はOS期間とした。OSの評価は、EGFR変異やALK転座がない野生型の腫瘍を有する患者のintention-to-treat集団において、PD-L1の発現量別に階層的に行った。また、EGFRとALKが野生型の腫瘍を持つ集団の血液中の腫瘍遺伝子変異量に基づくサブグループで、OS期間と無増悪生存(PFS)期間を前向きに評価した。OS期間が7.1ヵ月、PFS期間が3.1ヵ月延長 2015年7月~2018年2月の期間に、日本を含む19ヵ国144施設で、無作為割り付けが行われた。572例が登録され、アテゾリズマブ群に285例、化学療法群には287例が割り付けられた。 EGFRとALKが野生型の腫瘍で、PD-L1発現量が最も多かったサブグループ(205例)では、フォローアップ期間中央値15.7ヵ月の時点におけるOS期間中央値は、アテゾリズマブ群が化学療法群よりも7.1ヵ月長かった(20.2ヵ月vs.13.1ヵ月、ハザード比[HR]:0.59、95%信頼区間[CI]:0.40~0.89、p=0.01)。1年OS率は、アテゾリズマブ群が64.9%、化学療法群は50.6%だった。 EGFRとALKが野生型の腫瘍で、PD-L1発現量が最も多かったサブグループでは、PFS期間もアテゾリズマブ群で良好であった(8.1ヵ月vs.5.0ヵ月、層別HR:0.63、95%CI:0.45~0.88)。この集団における担当医判定による奏効率は、アテゾリズマブ群が38.3%、化学療法群は28.6%であり、このうちデータカットオフ日に、それぞれ68.3%および35.7%で奏効が持続していた。 血液中の腫瘍遺伝子変異量が多いサブグループ(PD-L1発現量は問わない)では、OS期間中央値はアテゾリズマブ群で良好な傾向が認められ(13.9ヵ月 vs.8.5ヵ月、非層別HR:0.75、95%CI:0.41~1.35)、PFS期間中央値はアテゾリズマブ群で優れた(6.8ヵ月vs.4.4ヵ月、0.55、0.33~0.92)。 有害事象は、アテゾリズマブ群が90.2%、化学療法群は94.7%で発現し、Grade3/4の有害事象はそれぞれ30.1%および52.5%で認められた。重篤な有害事象の発現率は、それぞれ28.3%および28.5%で、Grade5の有害事象が11例(3.8%)および11例(4.2%)にみられた。免疫関連有害事象は、それぞれ40.2%および16.7%で発現し、Grade3/4は6.6%および1.5%であった。 著者は、「アテゾリズマブ単剤の安全性プロファイルは、以前の研究で観察されたものと一致していた。転移のあるNSCLC患者におけるがん免疫療法への治療応答性を検出するバイオマーカーとしての腫瘍遺伝子変異量(血液、組織)の役割は不明である」としている。

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METexon14スキッピング変異陽性NSCLCに対するテポチニブの有効性/NEJM

 非小細胞肺がん(NSCLC)では、3~4%の患者に発がんドライバー変異であるMET遺伝子exon14スキッピング変異が認められるという。米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのPaul K. Paik氏らはMETexon14スキッピング変異が確認された進行NSCLC患者における非盲検第II相試験において、MET阻害薬であるテポチニブにより、約半数の患者で部分奏効が得られ、主なGrade3以上の副作用は末梢浮腫であったことを明らかにした。NEJM誌2020年9月3日号掲載の報告。 研究グループは、METexon14スキッピング変異が確認された進行または転移があるNSCLC患者を対象に、テポチニブ500mg/日投与した。 主要評価項目は、9ヵ月間以上追跡調査した患者における独立評価委員会(IRC)判定による奏効率(ORR)とした。 主な結果は以下のとおり。・2020年1月1日時点で、テポチニブ投与例は計152例、9ヵ月以上追跡された患者は99例であった。・血液検体または腫瘍組織検体で変異陽性が確認された全体集団(99例)において、IRC判定による奏効率は46%、奏効期間中央値は11.1ヵ月であった。・奏効率は、血液検体陽性群(66例)で48%、腫瘍組織検体陽性群(60例)で50%であった。・両検体でいずれも変異陽性であった患者は27例であった。・治験担当医判定による奏効率は56%であり、前治療にかかわらず同程度の結果が得られた。・Grade3以上の副作用(治験担当医がテポチニブに関連していると判断した有害事象)は28%の患者で報告され、主なものは末梢浮腫(7%)であった。・テポチニブの永続的な投与中止に至った有害事象は11%に認められた。・ベースラインおよび治療中に血液検体を採取した患者において、循環遊離DNAで測定される分子学的奏効率は67%であった。

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METexon14スキッピング変異、MET増幅肺がんに対するカプマチニブの効果/NEJM

 非小細胞肺がん(NSCLC)では、3~4%の患者にMET遺伝子exon14スキッピング変異が、また1~6%の患者にMET増幅が認められる。ドイツ・ケルン大学のJurgen Wolf氏らGEOMETRY mono-1 Investigatorsは、さまざまなタイプのMET活性がんモデルにおいて作用が認められたカプマチニブについて、METexon14スキッピング変異が認められる進行NSCLC患者を対象とした第II相試験を行い、持続的な抗腫瘍効果が、とくに未治療の患者において示されたことを明らかにした。また、MET増幅進行NSCLCにおける有効性は、腫瘍細胞の遺伝子コピー数が少ない患者よりも多い患者で高かったこと、主な副作用は軽度の末梢浮腫および悪心であったことも示された。NEJM誌2020年9月3日号掲載の報告。 MET増幅進行NSCLC患者におけるカプマチニブの評価は、複数コホート試験にて行われた。 患者は、既治療ラインとMETステータス(MET遺伝子exon14スキッピング変異またはMET増幅)に基づくコホートに割り付けられ、カプマチニブ400mg×2/日を投与された。 主要評価項目は、全奏効率であった。主な副次評価項目は、奏効期間とした。両評価項目は独立審査委員会で評価された。 主な結果は以下のとおり。・合計364例が、コホートに割り付けられた。・MET遺伝子exon14スキッピング変異NSCLC患者において、全奏効率は、1次または2次治療既往の患者(69例)では41%、未治療患者(28例)では68%であった。・奏効期間中央値は、1次または2次治療既往患者群9.7ヵ月、未治療患者群12.6ヵ月であった。・遺伝子コピー数10未満のMET増幅既治療患者における有効性は、限定的であった(全奏効率7~12%)。・遺伝子コピー数10以上のMET増幅患者では、奏効率は既治療群で29%であったが、未治療群は40%であった。・最も頻度の高かった副作用は、末梢浮腫(51%)、悪心(45%)であったが、大半がGrade1/2であった。

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化学療法+アテゾリズマブの1次治療で長期生存した小細胞肺がんの特徴(IMpower133)/ESMO2020

 IMpower133では、進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)の1次治療において、カルボプラチン+エトポシドへのアテゾリズマブの追加は、長期追跡でも持続した全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)の改善を示している。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)では、IMpower133の長期生存者(LTS、無作為化後18ヵ月以上生存)の探索的分析を米国・Lombardi包括的がんセンターのS. V. Liu氏が報告した。・対象:全身治療未実施のES-SCLC患者(無症状の既治療CNS病変を有する患者は許容)・試験群:アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド、21日ごと4サイクル(atezo+CE群、201例)・対照群:プラセボ+カルボプラチン+エトポシド、21日ごと4サイクル(CE群、202例)・評価項目:治験医師評価による無増悪生存期間(PFS)およびOS 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ時(2019年1月24日)の追跡期間中央値は22.9ヵ月であった。・OS中央値は、atezo+CE群51.9ヵ月に対しCE群10.3ヵ月と、atezo+CE群の有意な改善は持続していた(HR:0.76、95%CI:0.60~0.95、p=0.00154)。・373例(182例、191例)が今回の探索的研究の対象となった。・LTS患者の割合は、atezo+CE群33.5%(61/182例)、 CE群20.4%(39/191例)と、atezo+CE群で多かった。・年齢、性別、PS、転移巣の数、腫瘍最長径和などのベースライン状況を問わず、atezo+CE群でLTS患者が多かった。・血漿腫瘍遺伝子変異量、PD-L1発現量とLTSとの関連は見られなかった。

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EGFR変異NSCLCの術後補助療法、オシメルチニブでDFS改善(ADAURA)/NEJM

 EGER変異陽性StageIB~IIIA非小細胞肺がん(NSCLC)の術後補助療法において、オシメルチニブはプラセボと比較して無病生存(DFS)期間を有意に延長した。中国・Guangdong Provincial People's HospitalのYi-Long Wu氏らが、国際共同無作為化二重盲検第III相試験「ADAURA試験」の結果を報告した。オシメルチニブは、未治療のEGER変異陽性進行NSCLCに対する標準治療であるが、術後補助療法としてのオシメルチニブの有効性と安全性については不明であった。NEJM誌オンライン版2020年9月19日号掲載の報告。EGER変異陽性StageIB~IIIAの術後NSCLC、オシメルチニブの有効性を評価 研究グループは、完全切除後のEGER変異陽性StageIB~IIIAのNSCLC患者682例を、オシメルチニブ群(339例)またはプラセボ群(343例)に1対1の割合で無作為に割り付け、1日1回80mgを最大3年間投与した。 主要評価項目は、StageII~IIIA患者集団における治験担当医の評価によるDFS、副次評価項目は全患者集団におけるDFS、全生存期間(OS)、安全性などである。全患者集団およびStageII~IIIA患者集団ともにDFSが有意に延長 24ヵ月時点におけるStageII~IIIA患者のDFS率は、オシメルチニブ群90%(95%信頼区間[CI]:84~93)、プラセボ群44%(37~51)であった(ハザード比[HR]:0.17、99.06%CI:0.11~0.26、p<0.001、層別log-rank検定)。また、全患者集団における24ヵ月DFS率は、オシメルチニブ群89%(95%CI:85~92)、プラセボ群52%(46~58)であった(HR:0.20、99.12%CI:0.14~0.30、p<0.001、層別log-rank検定)。 24ヵ月時点で、オシメルチニブ群の98%(95%CI:95~99)、プラセボ群の85%(80~89)が生存しており、中枢神経系への転移も確認されなかった(HR:0.18、95%CI:0.10~0.33)。 全生存のデータは必要イベント数が不足していたが、死亡は29例(オシメルチニブ群9例、プラセボ群20例)であった。新たな安全性の懸念は確認されなかった。

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ニボルマブ+化学療法の非小細胞肺がん術前補助療法がpCRを向上(CheckMate-816)/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブは、2020年10月7日、切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)を対象とした第III相CheckMate-816試験において、ニボルマブと化学療法の併用療法が主要評価項目である病理学的完全奏効(pCR)を達成したと発表。 同試験において、術前にニボルマブと化学療法の併用療法を受けた患者群では、化学療法を受けた患者群と比較して、切除組織にがん細胞を認めない患者数が有意に多かった。 CheckMate-816試験は、非進行NSCLCの術前補助療法で、免疫チェックポイント阻害薬と化学療法の併用療法がベネフィットを示した初めてかつ唯一の第III相試験となる。 CheckMate-816試験では、現在、もう一つの主要評価項目である無イベント生存期間(EFS)の評価のため盲検下で維持し、主要な副次評価項目も評価するため進行中である。

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ESMO2020レポート 肺がん

レポーター紹介今年はCOVID-19の影響で、ASCOをはじめ多くの学会がvirtual meeting開催となり、ESMO2020も例にもれずvirtual meetingとして、2020年9月16日~21日に開催された。肺がん領域においては注目の演題が多数存在し、Presidential SymposiumにおいてはADAURA試験およびCROWN試験の報告がされた。日本人演者においては、先ほどのADAURA試験において坪井先生、@Be試験の瀬戸先生、WJOG8715L試験の戸井先生がOral Presentationに選出されている。重要な試験のフォローアップの報告を含め、いくつか注目の演題を紹介したい。ADAURA試験ASCO2020で大幅な無病生存期間(DFS)の改善を示したADAURA試験であるが、ESMO2020においては中枢神経系(CNS)を含む再発パターンについて国立がん研究センター東病院の坪井 正博先生によって報告された。ADAURA試験は、StageIB~IIIA期の切除可能な上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異(Del-19/L858R)を有する非小細胞肺がん(NSCLC)を対象に、術後補助療法として第三世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)オシメルチニブとプラセボを比較した第III相試験である。Stage(IB/II/IIIA)、EGFR遺伝子変異(Del-19/L858R)および人種(アジア人/非アジア人)によって層別化され、オシメルチニブ群およびプラセボ群には1:1で割付された。オシメルチニブの投与は3年間または再発まで行われた。今回の報告では、CNSを含む再発パターンについての内容であった。CNS転移再発はEGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者において比較的高頻度に認められる遠隔転移の再発形式の1つであり、予後不良因子である。オシメルチニブは既存のEGFR-TKIに比べ血液脳関門通過性が高いことが報告されており、脳転移への効果が期待された。全体の再発割合はオシメルチニブ群において11%、プラセボ群において46%であり、そのうち遠隔転移再発はオシメルチニブ群で38%、プラセボ群で61%であった。主な再発部位は、オシメルチニブ群では肺が6%、リンパ節が3%、CNSが1%、プラセボ群では肺が18%、リンパ節が14%、続いてCNSが10%となっており、期待されていたとおりオシメルチニブ群におけるCNS再発は低かった。CNS DFS中央値は、プラセボ群の48.2ヵ月(95%CI:NC~NC)に対し、オシメルチニブ群では未到達(NR)(95%CI:39~NC)、ハザード比(HR)0.18(95%CI:0.10~0.33)、p<0.0001と有意な延長が示された。1年/2年/3年CNS DFS率はプラセボ群ではそれぞれ97%/85%/82%と低下傾向を示したのに対し、オシメルチニブ群では100%/98%/98%とほぼ低下は認めなかった。また、試験開始後18ヵ月時のCNS再発率はオシメルチニブ群で1%未満(95%CI:0.2~2.5%)、プラセボ群で9%(95%CI:5.9~12.5%)と、CNS再発率もオシメルチニブ群において低かった。今回の報告より、術後補助療法としてのオシメルチニブを投与することにより、局所および遠隔転移の再発リスクが減少することが示された。術後補助療法の再発予防としてオシメルチニブを使うべきか、術後再発としてオシメルチニブを使用すべきか、今後の全生存期間のさらなるフォローアップの報告が期待される。WJOG8715L試験現在初回治療でオシメルチニブを選択する機会も増えており、2次治療で使用する機会が少なくなってきたが、そもそものオシメルチニブの適応であるEGFR-TKI不応となったT790M陽性NSCLCに対して、オシメルチニブ・ベバシズマブ併用療法とオシメルチニブを比較した第II相試験がWJOG8715L試験である。未治療のEGFR遺伝子変異陽性NSCLCにおいてはエルロチニブ+VEGF阻害薬によりPFSの延長効果が示されており、今回の結果も期待された。主要評価項目はPFS、副次評価項目はORR、治療成功期間(TTF)、OS、安全性であり、当院の戸井 之裕先生によって発表された。PFSは、ベバシズマブ併用群が9.4ヵ月、単剤群が13.5ヵ月、HR 1.44(95%CI:1.00~2.08)、p=0.20でベバシズマブ併用群のほうがむしろ短い結果となった。前治療でVEGF阻害薬の治療歴有無別でのPFSの解析も行われており、VEGF(-)-オシメルチニブ(37例)13.7ヵ月、VEGF(+)-オシメルチニブ(4例)15.1ヵ月、VEGF(-)-ベバシズマブ併用(32例)11.1ヵ月、VEGF(+)-ベバシズマブ併用(8例)4.6ヵ月、とVEGF阻害薬の治療歴のある併用群の成績がとくに短かった。併用群で多く認められたGrade3以上の副作用は蛋白尿および高血圧であり、間質性肺炎は両群で10%程度に認められた。今回の報告では、残念ながらベバシズマブを併用することの意義は示せなかった。PFSが延びなかった理由として、VEGF阻害薬の治療歴のある症例に対する併用群の成績が良くなかったのが影響している可能性があるが、VEGF阻害薬の治療歴のない症例の比較においてもベバシズマブを上乗せする効果はみられていない。オシメルチニブとベバシズマブとの相性の問題か、EGFR-TKI既治療という腫瘍周囲環境がある程度整った状況によるものなのか、議論に尽きない結果となった。未治療EGFR遺伝子変異陽性肺がんを対象にオシメルチニブ・ベバシズマブ併用療法の有効性を検討するWJOG9717L試験、またオシメルチニブ・ラムシルマブ併用療法の有効性を検討するTORG1833試験がそれぞれ登録終了しており、それらの結果と合わせ、オシメルチニブにVEGF阻害薬を併用することの意義が結論付けられることとなるだろう。CROWN試験CROWN試験は未治療のALK転座陽性進行NSCLCを対象に、初回治療としてロルラチニブとクリゾチニブを比較した第III相試験である。EGFR遺伝子変異陽性NSCLCに対しオシメルチニブが初回治療として承認されたように、ALK転座陽性NSCLCに対しての初回治療になるかが期待される。本試験は多くの試験において脳転移症例が除外される中、治療済または症状のない未治療の脳転移を有する患者の登録が認められていた。しかしながら、クロスオーバーは認められていなかった。今回は中間解析の結果が報告された。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)はロルラチニブ群でNE(95%CI:NE~NE)、クリゾチニブ群で9.3ヵ月(95%CI:7.6~11.1)、HR 0.28(95%CI:0.19~0.41)、p<0.001と有意な延長が示された。1年PFS率はロルラチニブ群が78%(95%CI:70~84)、クリゾチニブ群が39%(95%CI:30~48)と大きな開きをみせている。PFSは、脳転移の有無も含めてすべてのサブグループで有意にロルラチニブ群が良かった。奏効率はロルラチニブ群で76%、クリゾチニブ群で58%であった。ロルラチニブは頭蓋内移行性が高く、今回の報告では脳転移に対する効果も検討されている。頭蓋内奏効率は、ベースラインで測定可能または測定不能な脳転移があった患者で、ロルラチニブ群(38例)が66%(95%CI:49~80)、クリゾチニブ群(40例)が20%(95%CI:9~36)とロルラチニブ群での高い奏効が示された。脳転移の増悪までの期間は、ロルラチニブ群(149例)がNE(95%CI:NE~NE)、クリゾチニブ群(147例)が16.6ヵ月(95%CI:11.1~NE)、HR 0.07(95%CI:0.03~0.17)、p<0.001で有意にロルラチニブ群が良かった。OSはインマチュアであり、両群ともに中央値はNEであった。副作用はロルラチニブ群において高脂血症、高TG血症、浮腫、体重減少、末梢神経障害を高頻度に認めている。中間解析の結果ではあるが、PFSは有意な改善が期待できる。ALK肺がんは現時点でも長期のOSが示されているが、ロルラチニブを初回に使うことによってさらなるOSの改善が期待できるのか、今後の報告が気になるところである。WJOG10718L/@Be試験@Be studyはEGFR/ALK/ROS1陰性、PD-L1強陽性(Daco 22C3)の未治療非扁平上皮非小細胞肺がんに対して、アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法の有効性を検証する単群第II相試験である。免疫チェックポイント阻害薬に血管新生阻害薬を上乗せする試験は近年いくつか報告されており、本試験は肺がんにおいてベバシズマブを上乗せする初めての試験である。主要評価項目は奏効率(ORR)、副次的評価項目はPFS、DoR、OS、安全性であり、試験事務局である九州がんセンターの瀬戸 貴司先生により結果が報告された。登録された40例中、39例が適格であり、TPS 50~75%が13例(33.3%)、75~100%が26例(66.7%)であった。主要評価項目であるORRは64.1%(90%CI:49.69~76.83)と統計学的にメットしており、9割以上の症例において腫瘍縮小が認められた。PFSは15.9ヵ月(95%CI:5.65~15.93)、1年PFS率は54.9%(95%CI:35.65~70.60)であり、これまでのPD-L1強陽性に対する報告を上回る結果となり、今後が期待される。副作用は、23件/12例においてGrade3の副作用を認め、Grade4以上は認めなかった。副作用中止は2例に認め、硬化性胆管炎と脳症によるものだった。今後、PD-L1強陽性に対して免疫チェックポイント単剤(IMpower110 or KEYNOTE-024)か免疫チェックポイントに血管新生阻害薬を上乗せする(@Be)か、さらには殺細胞性抗がん剤も併用する(IMpower150)か、第III相試験が興味深いところである。KEYNOTE-024試験KEYNOTE-024試験は、PD-L1強陽性(TPS≧50%)の未治療進行NSCLCに対する初回治療におけるペムブロリズマブ単剤治療と化学療法(プラチナ併用療法)を比較した第III相試験である。化学療法群ではPDを認めた場合にペムブロリズマブ群へのクロスオーバーが認められていた。これまでPFS、OSにおいて有意な延長効果が示されてきたが、今回は5年フォローアップのデータの報告となった。2020年6月1日にデータカットオフされ、追跡期間中央値は59.9ヵ月であった。化学療法群のペムブロリズマブへのクロスオーバーは66.0%であった。OSはペムブロリズマブ群で26.3ヵ月(95%CI:18.3~40.4)、化学療法群で13.4ヵ月(95%CI:9.4~18.3ヵ月)、HR 0.62(95%CI:0.48~0.81)と既報と大きな変わりは認めなかった。3年OS率はペムブロリズマブ群で43.7%、化学療法群で19.8%、5年OS率はペムブロリズマブ群で31.9%、化学療法群で16.3%と、3年以上の症例ではtail-plateauの傾向もみられ、5年たった時点でも生存率は約2倍維持されている。化学療法群において高いクロスオーバーがあったにもかかわらず、ペムブロリズマブ群は5年OS率においても有意な延長効果が示され、初回治療で投与することは重要と考える。さらには、35サイクル(2年間)ペムブロリズマブを投与できた症例(39例)の奏効率は82%と高率であった。多くは治療早期に奏効が得られており、免疫チェックポイント阻害薬においても、縮小効果がある症例においては長期の治療効果が期待できることが示された。現在、PD-L1強陽性に対しては単剤で十分ではないかという議論がされるが、今回の長期フォローアップのデータはそれを裏付ける結果の1つであるといえる。PD-L1強陽性に対する単剤とコンビネーションの比較試験も進行中であり、その結果にも注目したい。CheckMate-9LA試験EGFR/ALK陰性の未治療進行NSCLCを対象に初回治療としてニボルマブ(Nivo)+イピリムマブ(Ipi)に化学療法2サイクルを併用するNivo+Ipi+化学療法群と化学療法群を比較する第III相試験である。ASCO2020において有効性が公表され、すでに米国・オーストラリア・シンガポール・カナダでは承認されており、日本でも承認間近と伺っている。今回は、アジア人サブグループの結果が報告された。9LA登録例のうち、アジア人は日本人患者(50例)と中国人患者(8例)であった。Nivo+Ipi+化学療法群が28例、化学療法群が30例であった。OSは、アジア人サブグループでも全集団と同様の傾向がみられ、Nivo+Ipi+化学療法群でNR(15.4ヵ月~NR)、化学療法群で13.3ヵ月(8.2ヵ月~NR)、HR 0.33(95%CI:0.14~0.80)と併用群で良好な結果が示された。組織型(Sq/non-Sq)、PD-L1発現(≧1%/<1%)でみた解析においても、少数ながらNivo+Ipi+化学療法群において改善傾向が認められた。気になる副作用であるが、アジア人における全体およびGrade3/4の頻度、そして副作用中止の頻度が高い傾向があるが、とくにアジア人集団で新たに認められたものはなかった。今回の報告でもあるように9LAレジメンは副作用が懸念点であり、今後実臨床においてどのように評価されていくのかが気になるところである。さいごに今回のESMO2020もvirtualではあったものの、肺がん領域においてはいくつもの重要な報告があった。日本においてはいくらかCOVID-19の蔓延が落ち着きつつあり、現地とwebのハイブリッド開催が行われるようにもなってきたが、世界的には落ち着いておらず国際学会に行くのはまだまだ先になるだろう。国際学会の刺激は現地でないと味わえないところもあり、一刻も早い現状の改善を期待している。

1053.

Stage3A N2非小細胞肺がんへの術後放射線療法を評価(LungART)/ESMO2020

 Stage IIIA N2の非小細胞肺がん(NSCLC)の完全切除例に対する術後放射線治療(PORT)は議論の残る問題である。Stage IIIA N2のNSCLC完全切除例に対するPORTを評価する初の多施設無作為化第III相比較試験Lung ART試験の結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)にて、フランス・Gustave RoussyのLe Pechoux氏が発表した。・対象:完全切除のN2 Stage3A NSCLC(PS 0-2、術前・後後化学療法許容)・試験群:縦隔PORT(54Gy/27〜30分割)・対照群:PORTなし・評価項目:[主要評価項目]無病生存期間(DFS)[副次評価項目]毒性、局所制御、再発パターン、全生存期間(OS)、二次がん、治療関連毒性など 主な結果は以下のとおり。・2007年8月〜2018年7月、501例が登録され、PORT群252例、非PORT群249例に無作為に割り付けられた。・年齢の中央値は61歳、男性66%、腺がん73%であり、追跡期間中央値は4.8年であった。・DFS中央値は、PORT群30.5ヵ月、非PORT群28.0ヵ月と、PORT群で良好な傾向にあるが、その差は有意ではなかった(HR:0.85、95%CI:0.67〜1.07、p=0.16)。・イベントの内容を見ると、PORT群では死亡(14.6%)、非PORT群では縦隔再発(46.1%)が最も多かった。 ・3年OSはPORT群68.5%、非PORT群66.5%と差はなかった。・死亡はPORT群で39.4%、最も多い原因は心肺毒性(16.2%)、非PORT群では41.5%、最も多い原因は疾患進行または再発(86.1%)であった。・全Gradeの有害事象(AE)はPORT群92.1%、非PORT群では11.3%に発現。Grade3/4のAEはPORT群23.7%、非PORT群15.0%で発現した。 今回の試験の結果から、Pechoux氏は、完全切除Stage3A N2 NCSLCに対するPORTは、すべての症例に一貫したスタンダードとして推奨すべきではないとしている。

1054.

KRASG12C阻害薬sotorasib、進行固形がんに有望/NEJM

 複数の前治療歴のあるKRAS p.G12C変異が認められる進行固形腫瘍の患者に対し、sotorasibは、有望な抗腫瘍活性を示したことが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのDavid S. Hong氏らによる第I相臨床試験の結果、報告された。Grade3または4の治療関連毒性作用の発生は11.6%であった。sotorasibは、開発中のKRASG12Cを選択的・不可逆的に標的とする低分子薬。KRAS変異をターゲットとしたがん治療薬は承認されていないが、KRAS p.G12C変異は、非小細胞肺がん(NSCLC)では13%、大腸がんやその他のがんでは1~3%で発生が報告されているという。NEJM誌2020年9月24日号掲載の報告。sotorasibを1日1回投与し、安全性などを評価 sotorasibの第I相臨床試験は、KRAS p.G12C変異が認められる進行固形腫瘍患者を対象に行われた。被験者は、sotorasibを1日1回経口投与された。 主要評価項目は安全性。主な副次評価項目は、薬物動態および固形がんの治療効果判定のための新ガイドライン(RECISTガイドライン)バージョン1.1で評価した客観的奏効だった。治療関連有害事象は約57%で発生 被験者は計129例(NSCLC 59例、大腸がん42例、その他の腫瘍28例)で、用量漸増および拡大コホートに包含された。被験者の転移がんに対する前治療数の中央値は3(範囲:0~11)だった。 用量制限毒性や治療関連死の有害事象は認められなかった。治療関連有害事象の発生は73例(56.6%)で、そのうちGrade3または4の発生は15例(11.6%)だった。 NSCLCの患者のうち、客観的奏効(完全または部分奏効)が確認されたのは32.2%(19例)で、病勢コントロール(客観的奏効または病勢安定)が認められたのは88.1%(52例)だった。無増悪生存期間の中央値は6.3ヵ月(範囲:0.0+~14.9[+はデータカットオフ時に打ち切られた患者データが含まれていることを示す])だった。 大腸がん患者では、客観的奏効が確認されたのは7.1%(3例)、病勢コントロールは73.8%(31例)、無増悪生存期間の中央値は4.0ヵ月(範囲:0.0+~11.1+)だった。膵がん、子宮内膜がん、虫垂がん、悪性黒色腫の患者においても、奏効が認められた。

1055.

ニボルマブ480mg4週ごと投与、国内承認/小野・BMS

 小野薬品工業と ブリストル・マイヤーズ スクイブは、2020年9月25日、ヒト型抗ヒトprogrammed cell death-1(PD-1)ニボルマブ(商品名:オプジーボ)の単独投与時の用法及び用量に関して、すでに承認を取得している全ての9つのがん腫において、これまでの 1回240mgを2週間間隔で点滴静注する用法及び用量に加え、1 回480mgを4週間間隔で点滴静する用法及び用量が追加になったと発表。  今回の用法及び用量の追加の承認によって、治療選択肢が増えること、患者および医療スタ ッフの利便性の向上に繋がるものと期待しているとしている。

1056.

超音波気管支鏡ガイド下針生検、PD-L1検査の成功率高い/Chest

 適切な治療には、確度の高い情報が得られる検査の実施が重要である。今回、それらが治療の成否の鍵を握ることを再認識する試験結果が示された。イタリア・モリーゼ大学のFabio Perrotta氏らは、一般的に進行がん患者で行われる細胞検体の採取について、超音波気管支鏡ガイド下針生検(EBUS-TBNA)で採取した検体が、非小細胞肺がん(NSCLC)におけるPD-L1検査に適しているかを評価する大規模な多施設共同研究を行った。その結果、EBUS-TBNAはPD-L1検査に適した検体を提供することが示され、進行N期と脳転移はPD-L1高発現と関連することも示されたという。抗PD-1/PD-L1抗体治療を行うに当たっては、がん細胞におけるPD-L1の発現が、患者を選択するための臨床的に重要なバイオマーカーになる。NSCLC患者を対象とした免疫療法の臨床試験では、PD-L1検査の組織学的エビデンスが必要とされており、そうした背景を踏まえて本検討は行われた。Chest誌2020年9月号掲載の報告。 研究グループは2015年1月~2016年12月に、英国の6施設および米国の1施設におけるNSCLCの連続症例から採取した577検体について分析した。 PD-L1検査におけるEBUS-TBNA検体採取の適切性を他の検体採取法と比較するとともに、研究集団における臨床病理学的特徴とPD-L1発現との関連を調べた。 主な結果は以下のとおり。・EBUS-TBNA群(189検体)では、PD-L1検査が成功した患者の割合は94.7%であった。・他の組織採取法の検体と比較し、EBUS-TBNAで採取した検体の適切性に重大な差はなかった。・高齢患者では、PD-L1検査の不成功率が高かった(OR:1.06、p=0.008)。・多変量解析の結果、進行N期(p=0.048)および脳転移の存在(p<0.001)は、PD-L1高発現と関連していた。

1057.

ALK陽性肺がん、ロルラチニブの1次治療が有効性示す、とくに脳転移(CROWN試験)/ESMO2020

 未治療のALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)においてロルラチニブとクリゾチニブを比較する多施設非盲検無作為化第III相CROWN試験の中間解析が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)にて、オーストラリア・Peter MacCallumがんセンターのB. Solomon氏により発表された。・対象:StageIIIB/IVの未治療のALK陽性肺がん(無症状のCNS転移は許容)・試験群:ロルラチニブ(100mg/日)・対照群:クリゾチニブ(250mgx2/日)・評価項目:[主要評価項目]盲検化独立中央評価委員会(BICR)による無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]治験実施医によるPFS、BICR評価の奏効率(OR)、BICR評価の脳内奏効率(IC-OR)、BICR評価の奏効期間(DoR)、BICR評価の脳内奏効期間(IC-DR)、全生存期間(OS)、安全性CROWN試験の結果はALK陽性非小細胞肺がんでのロルラチニブ使用を支持するもの CROWN試験の中間解析の主な結果は以下のとおり。・対象患者296例は、無作為にロルラチニブ群(n=149)とクリゾチニブ群 (n=147)に割り付けられた。・BICR評価のPFSは、ロルラチニブ群NE(推定不能)、クリゾチニブ群9.1ヵ月と、ロルラチニブ群で有意に延長された(HR:0.28、95%CI:0.19〜0.41、p<0.001)。12ヵ月PFS率は80%対35%であった。・治験担当医によるPFSは、ロルラチニブ群NE(推定不能)、クリゾチニブ群9.3ヵ月と、ロルラチニブ群で有意に改善された(HR:0.21、95%CI:0.14〜0.31、p<0.001)12ヵ月PFS率は80%対35%であった。・OSは両群とも中央値未達であった。・BICR評価のORは、ロルラチニブ群76%、クリゾチニブ群58%であった。・BICR評価のIC-ORは、ロルラチニブ群66%、クリゾチニブ群20%、測定可能病変だけ見るとロルラチニブ群71%、クリゾチニブ群8%と、その差はさらに大きかった。・Grade3/4の有害事象(AE)は、ロルラチニブ群では72%、クリゾチニブ群56%であった。そのうちロルラチニブ群で最も頻度の高かった項目は脂質異常であった。AEのため中止に至った割合はロルラチニブ群7%、クリゾチニブ群9%であった。 Solomon氏は、CROWN試験の結果は、ALK陽性非小細胞肺がん1次治療でのロルラチニブ使用を支持するものであると述べた。

1058.

非扁平上皮NSCLC1次治療、化学療法+ベバシズマブ+ニボルマブの4併用がPFS延長(ONO-4538-52/TASUKI-52)/ESMO2020

 ONO-4538-52/TASUKI-52試験は、非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療治療において、プラチナ化学療法とベバシズマブの併用にニボルマブを上乗せした初の無作為化二重盲検第III相試験である。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)では、その初回解析の結果を韓国・ソウル国立大学ブンダン病院のJong Seok Lee氏が発表した。・対象:未治療のStage IIIB/IVの非扁平上皮NSCLC患者(PD-L1発現問わず)・試験群:ニボルマブ(360mg)+カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ(3週間ごと6サイクル)→ニボルマブ+ベバシズマブ(ニボルマブ群)・対象群:プラセボ+カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ→プラセボ+ベバシズマブ(プラセボ群) ニボルマブ/プラセボ+ベバシズマブは、疾患進行または許容できない毒性発現まで継続・評価項目:[主要評価項目]独立放射線審査委員会(IRRC)評価の無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目 ]全生存期間(OS)、全奏効率(ORR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・日本、韓国、台湾の患者550例が1:1で無作為にニボルマブとプラセボに割り付けられた。 ・データカットオフ(2020年2月10日)での最低追跡期間は7.4ヵ月であった。・PFS中央値は二ボルマブ群12.1ヵ月に対しプラセボ群8.1ヵ月と、ニボルマブ群で有意に長かった(HR:0.56、96.37%CI:0.43〜0.71、p<0.0001)。12ヵ月PFS率は二ボルマブ群50.1%、プラセボ群30.2%であった。・PD-L1発現別のPFS HRは、PD-L1<1%で0.55、PD-L1 1〜49%で0.63、PD-L1≧50%で0.55であった。・ OSは評価に達していないが、ニボルマブ群の中央値は25.4ヵ月、プラセボ群24.7ヵ月であった(HR:0.85、95%CI:0.63〜1.14)。・ ORRは、ニボルマブ群61.5%、プラセボ群50.5%であった。・Grade3/4の治療関連有害事象(TRAE)はニボルマブ群で73.6%、プラセボ群で72.0%、治療中止につながるTRAEは二ボルマブ群16.5%、プラセボ群4.4%と、二ボルマブ群で多く観察されたが、治療関連死は二ボルマブ群1.8%、プラセボ群1.5%と同程度であった。 カルボプラチン・パクリタキセルとベバシズマブへのニボルマブの併用はPFSを有意に延長し、その効果はPD-L1発現に関係なく認められた。非扁平上皮NSCLCの1次治療となる可能性が示唆されると、Lee氏は述べた。

1059.

ペムブロリズマブによるNSCLCの脳転移に対する効果/Lancet Oncol

 ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)が非小細胞肺がん(NSCLC)の脳転移に有効である可能性が示された。米国・イェール大学医学大学院のSarah B. Goldberg氏らは、NSCLCまたは悪性黒色腫の患者を対象としたペムブロリズマブの非盲検第II相試験において、脳転移病変に対する抗PD-1抗体の効果を検討しており、これまでに中間解析結果を報告している。今回、同試験のNSCLCコホートを対象とした最新の解析を行い、ペムブロリズマブは、PD-L1発現が1%以上のIV期NSCLC患者における脳転移病変に対して有効であり、安全性も確認されたことを報告した。著者は、「NSCLCによる中枢神経系(CNS)疾患に対する免疫療法のさらなる検討が必要である」とまとめている。Lancet Oncology誌2020年5月号掲載の報告。ペムブロリズマブで脳転移病変の奏効が得られた患者は37例中11例 研究グループは、18歳以上のIV期NSCLCで、1つ以上の脳転移(5~20mm大)を有し、脳転移巣未治療または放射線療法後に増悪した患者を対象に、ペムブロリズマブ10mg/kgを2週間間隔で静脈内投与した。 CNS疾患の評価には、mRECISTを用いた。また、患者をPD-L1発現が1%以上(コホート1)、PD-L1発現が1%未満または評価不能(コホート2)の2つのコホートに分けた。 主要評価項目は、脳転移病変の奏効率(部分奏効または完全奏効を達成した患者の割合)であった。治療を受けたすべての患者を有効性および安全性の解析対象とした。 NSCLC患者を対象としたペムブロリズマブの脳転移病変に対する効果を検討した主な結果は以下のとおり。・2014年3月31日~2018年5月21日までの間に42例が治療を受けた。・追跡期間中央値8.3ヵ月において、ペムブロリズマブで脳転移病変の奏効が得られた患者は、コホート1で37例中11例(奏効率29.7%、95%信頼区間[CI]:15.9~47.0)、コホート2では0例であった。・ペムブロリズマブ投与によるGrade3~4の治療関連有害事象は、肺臓炎が2例、全身症状、大腸炎、副腎機能障害、高血糖および低カリウム血症が各1例であった。・重篤な治療関連有害事象は42例中6例(14%)に発現し、肺臓炎が2例、急性腎障害、大腸炎、低カリウム血症および副腎機能障害が各1例であった。・治療に関連した死亡は認められなかった。

1060.

T790M陽性NSCLCに対するオシメルチニブとベバシズマブの併用(WJOG 8715L)/ESMO2020

 EGFR-TKIに耐性となりT790M陽性が確認された進行肺腺がんに対して、オシメルチニブとベバシズマブの併用は、オシメルチニブ単独に比し、無増悪生存期間(PFS)の延長を示せなかった。日本のWest Japan Oncology Group(WJOG)の試験結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で仙台厚生病院の戸井 之裕氏から発表された。 このWJOG8715L試験は、日本国内で実施されたオープンラベルの無作為化第II相試験である。・対象:EGFR-TKIで進行後T790M変異陽性が確認されたEGFR変異陽性進行肺腺がん81例・試験群:オシメルチニブ+ベバシズマブ(OB群)・対照群:オシメルチニブ(O群)・評価項目[主要評価項目]主治医判定によるPFS[副次評価項目]奏効率(ORR)、治療成功期間(TTF)、全生存期間(OS)、安全性 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値16ヵ月時点でのPFS中央値は、O群13.5ヵ月、OB群9.4ヵ月、HR1.44(95%CI:1.00~2.08)、p=0.20とOB群のほうが短かった。・ORRはO群55.0%、OB群71.8%と、OB群のほうが高かった。・抗VEGF薬投与歴のないO群のPFS中央値は13.7ヵ月、OB群のPFS中央値は11.1ヵ月であったが、抗VEGF薬の投与歴があったO群のPFS中央値は15.1ヵ月で、OB群のPFS中央値は4.6ヵ月と短かった。・TTF中央値はO群11.2ヵ月、OB群8.4ヵ月、HR1.54、p=0.12であった。・OS中央値は、O群22.1ヵ月で、OB群は未到達、HR1.02、p=0.96であった。・有害事象としての蛋白尿と高血圧は、有意にOB群で頻度が高く、貧血は有意にO群で高率であった。OB群に重篤な塞栓症や出血は認められなかった。

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