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間質性肺炎合併肺がんの新たな治療を探る「TORG1835/NEXT-SHIP試験」【肺がんインタビュー】 第43回

第43回 間質性肺炎合併肺がんの新たな治療を探る「TORG1835/NEXT-SHIP試験」出演:神奈川県立循環器呼吸器病センター 呼吸器内科/臨床研究室 医長 池田 慧氏肺がんの治療が進む中、いまだに治療に苦慮する間質性肺炎合併肺がん。とくに治療オプションの少ない小細胞肺がんに対する新たな選択肢として、カルボプラチンとエトポシドの併用にマルチキナーゼ阻害薬ニンテダニブを加えた3剤併用療法の第II相「TORG1835/NEXT-SHIP試験」が現在進行中である。研究事務局の神奈川県立循環器呼吸器病センター 池田 慧氏に試験実施の背景と試験の内容について聞いた。TORG1835/NEXT-SHIP試験(jCRT)試験に関する問い合せ神奈川県立循環器呼吸器病センター 呼吸器内科池田 慧氏e-mail:isatoshi0112@gmail.comTel:045-701-8581(内線7213)

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組織でCOVID-19危機に対応するドイツ【空手家心臓外科医、ドイツ武者修行の旅】第7回

かかりつけ医が主役のドイツの体制ドイツでコロナ騒ぎが収まる気配がありません。3月27日現在、ドイツの患者数はうなぎ登りですが、それでも致死率は0.5%前後で食い止められています(図)。イタリア・スペインなどの近隣国と比較し、なぜドイツの医療はうまくいっているのか?最近は日本の知人から聞かれることがしばしばあります。「ドイツは検査をたくさんやっているらしいけど、それがうまくいっているの?」が最も聞かれる質問なのですが…。確かにドイツではひたすらPCR検査を行なっています。早期に感染者を特定していることが功を奏している、と言うのが政府の見解です。ただ、以前このコーナーで書かせてもらったことがあるのですが、ドイツはかかりつけ医制度が確立されています。患者は診察をかかりつけ医の下で受診して、検査のためだけに病院へ行くわけです(数週間前から近所の大学病院ではドライブスルー検査をやっています)。その後、検査結果と全身状態を踏まえた上でかかりつけ医が治療方針を決定します。必要な場合の入院指示も、かかりつけ医が行います。初診を診ることがないために病院に負担がかかりにくいシステムになっています。これはドイツの医療システムに合わせてやっていることなので、一言で「これが正解」と言えるわけではないと思いますが…。図 ドイツでの感染状況私が住む地域はドイツの北東部になり、色は薄目です。ドイツは西部と南部に感染者が多く、現地の友人の話を聞くと、病院はかなり大変な状況です。先頭に立つロベルト・コッホ研究所そもそもドイツも先行きはまだまだわからないし、これから急激に致死率が悪化する可能性も十分にあると思っています。患者数の増加が予想以上に速いので、「イタリアの二の舞になる」と危惧する専門家も多いです。良し悪しは別として、この緊急事態におけるドイツの対応について自分が感じたことを書いてみます。ドイツには、世界に誇るロベルト・コッホ研究所(RKI)と言う感染症研究機関があります。RKIがドイツ国内の各病院で使用すべき感染症対策マニュアルなどを作成し、RKIの決定にしたがって政治家が感染対策の方針を決めるようになっています。私が住んでいるのはドイツの最も田舎の地域で、感染者数はまだかなり少ない状態です。そんな田舎でも、徐々に緊張感が高まってきていることを感じます。3月22日にはドイツ全土で接触制限措置がとられ、レストランも閉鎖されました。パーティなど開けば、警察に取り締まられて罰則が科せられます。ただ家族での散歩は「必要なこと」と認定されていますので、公園周辺では変わらず散歩やランニングする人の姿が見られます。もちろん暗黙の了解で、すれ違うときはお互いにかなりの距離をとるようになっています。地域が1つの医療機関に私の所属する病院は循環器と糖尿病の専門病院なのですが、行政からの指示の下に手術を制限して、1つの病棟を丸々空けることになりました。当院はグライフスヴァルト大学を中心とした医療圏にあって、グライフスヴァルト大学の後方支援の形式で病棟を空けて待っている状態です。その他の近隣の施設の情報も飛び交っています。「〇〇病院は週明けにイタリアからの重症患者を引き受けるらしくて、ICUの空きがほとんどないみたい」とか、「大学病院で手術が回せないから、呼吸器外科の先生がウチで手術することになった。今から肺がんの患者来るから、入院枠取っておいてね」とか。地域の病院全体が1つの施設のように機能しています。病棟を空ける、そのために手術件数を減らす、と言う話をする際に、部長は「行政からの指示で」と言っていました。これも以前書かせてもらったのですが、ドイツでは診療所の数も行政によって定められていて、原則的に新しく開業することはできません。診療科としての心臓外科の数も、日本が600以上あるのに対し、ドイツではわずかに82、それも人口の分布に応じてうまく分散されています。もちろん新しい心臓外科を新設することもできません。つまりドイツの医療は、行政の強いコントロール下にあると言えます(一方で、行政が医師を抑圧しすぎないために医師会や医師の労働組合を通じて、医師は行政と闘うことができるわけなのですが…)。今回も行政がそれぞれの病院に役割を分担させることで、地域の医療資源が最大限に生かせるように工夫していることが感じられます。個人頼りになるのではなく、システムで闘おうとするのは、いかにもドイツらしいな、と感じます。3月18日に、メルケル首相がドイツ国民に対して理解と協力を求める演説を行いました。ゆっくりと、丁寧で、はっきりしたドイツ語で。それは、不安を煽るわけでもなく、ただ今すべきことを伝える内容でした。なぜそうしなければならないのか、メッセージはとてもシンプルで力強いものでした。この演説を聞いて、不安が和らいだ人は大勢いると思います。政治家ってすごいなーと感じました。強いリーダーの下、ドイツも何とか現状を乗り切ろうと頑張っています。日本も大変な状況だと思いますが、お互い頑張っていきましょう!

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固形がんに対するリキッドバイオプシー、「FoundationOne Liquid CDx」の国内申請/中外

 中外製薬は、2020年03月31日、固形がんに関連する包括的ゲノムプロファイリングを提供するリキットバイオプシー検査として、「FoundationOne Liquid CDx(海外製品名)」に対する製造販売承認申請を厚生労働省に行ったと発表。 「FoundationOne Liquid CDx」は米国・ケンブリッジに拠点を置くファウンデーションメディシン社が開発した次世代シークエンサーを用いた包括的ながん関連遺伝子解析システム。進行固形がんの患者を対象とし、血液中の循環腫瘍DNA(ctDNA: circulating tumor DNA)を用いることで、がんの遺伝子変異を検出するリキットバイオプシー検査である。米国では、2018年4月に米国食品医薬品局(FDA)よりBreakthrough Device指定を受けている。

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ニボルマブ+イピリムマブ、化学療法との併用で非小細胞肺がんに承認申請/小野・BMS

 小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、2020年3月26日、抗PD-L1抗体ニボルマブ(商品名:オプジーボ)と抗CTLA-4抗体イピリムマブ(商品名:ヤーボイ)について、切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(NSCLC)に対する、プラチナ製剤を含む 2 剤化学療法(プラチナ・ダブレット)との併用療法に係る国内製造販売承認事項一部変更承認申請を行ったと発表。 今回の承認申請は、小野薬品とブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMS)が、PD-L1発現レベルおよび腫瘍の組織型にかかわらず、化学療法未治療の進行・再発のNSCLC患者を対象に、ニボルマブとイピリムマブの併用療法にプラチナ・ダブレット化学療法を追加した併用療法を、プラチナ・ダブレット化学療法と比較評価した多施設国際共同無作為化非盲検第III相臨床試験(CheckMate-9LA試験)の結果に基づいている。 本試験の中間解析の結果、ニボルマブとイピリムマブにプラチナ・ダブレット化学療法を追加した治療群は、プラチナ・ダブレット化学療法群と比較して、主要評価項目である全生存期間の有意な延長を達成した。本試験における併用療法群の安全性プロファイルは、化学療法未治療のNSCLC治療において免疫療法と化学療法との併用療法でこれまでに認められているものと一貫していた。

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リキッドバイオプシーによるT790M変異のスクリーニングとオシメルチニブの効果(WJOG8815L/LPS)/Cancer

 EGFR陽性肺がんにおけるリキッドバイオプシーは、組織生検不能患者に適用される。しかし、リキッドバイオプシーにより同定されたT790M変異非小細胞肺がん(NSCLC)患者におけるオシメルチニブの有効性についての前向き研究はない。これらの患者集団におけるオシメルチニブの有効性と安全性を前向きに評価する第II相試験が行われた。Cancer誌オンライン版2020年2月5日号掲載の報告。対象:第1/2世代EGFR-TKIで疾患進行後、リキッドバイオプシー(Cobas EGFR Mutation Test v2またはドロップレットデジタルPCR)でEGFR T790M変異が確認された進行再発NSCLC患者介入:オシメルチニブ80mg/日で疾患進行するまで治療継続主要評価項目:Cobasアッセイによる血漿中T790M陽性患者の全奏効率(ORR) 主な結果は以下のとおり。・2016年6月〜2017年11月に、リキッドバイオプシーを用いてスクリーニングされた患者は276例、T790M陽性は74例であった(74例中試験参加は53例)。・ Cobasアッセイによる血漿中T790M陽性患者(49例)のORRは55.1%(95%信頼区間[CI]:40.2〜69.3%)であった。・評価可能な全患者(n=52)の無増悪生存期間中央値は、8.3ヵ月(95%CI:6.9〜12.6)であった。 筆者らは、この結果から、このアッセイを用いた血漿遺伝子型判定は、腫瘍からのサンプリングが不可能な場合の臨床診療における治療選択にとって有益であるとしている。

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テポチニブ、METΔex14変異肺がんに国内承認/メルクバイオファーマ

 メルクバイオファーマは、2020年3月25日、MET遺伝子エクソン14(METex14)スキッピング変異陽性の切除不能な進行・再発非小細胞肺がん(NSCLC)治療薬テポチニブ(商品名:テプミトコ)について、厚生労働省から製造販売承認を取得したと発表。テポチニブの全奏効率は42.4%、奏効期間中央値は12.4ヵ月 今回のテポチニブの承認は、METex14スキッピング変異のあるNSCLCを対象とした国際共同第II相VISION試験の結果に基づくもの。同試験でのテポチニブの全奏効率は独立判定委員会(IRC)による評価で42.4%、奏効期間中央値は12.4ヵ月であった。また、テポチニブの副作用のほとんどはGrade1または2であり、死亡に至った副作用が1例(急性呼吸不全)認められた。Gradeを問わず10%以上の件数が報告された副作用は、末梢浮腫(53.8%)、悪心(23.8%)、下痢(20.8%)、および血中クレアチニン増加(13.8%)、低アルブミン血症(10.8%)、およびアミラーゼ増加(10.0%)であった。 テポチニブのコンパニオン診断薬は、同様に承認となったArcher METコンパニオン診断システムで、血液検体、腫瘍組織検体のどちらでも利用可能。製品概要製品名:テプミトコ錠250mg一般名:テポチニブ塩酸塩水和物効能又は効果:MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌用法及び用量:通常、成人にはテポチニブ塩酸塩水和物として1回500mgを1日1回食後に経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。国内製造販売承認取得日:2020年3月25日製造販売:メルクバイオファーマ株式会社

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高齢NSCLC患者におけるカルボプラチンとペメトレキセドの有用性(JCOG1210/WJOG7813L)/JAMA Oncol

 高齢者の進行非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)の1stライン化学療法の中で、ドセタキセル単剤(DOC)は標準療法の1つである。一方、非高齢者の非扁平上皮NSCLCの1次治療としてはカルボプラチン+ペメトレキセドからペメトレキセドの維持療法(CBDCA/PEM)が、広く使われている。そのような中、進行非扁平上皮NSCLCの高齢患者に関して、CBDCA/PEM療法のドセタキセル単剤療法との非劣性を評価する多施設オープンラベル第III相試験が実施された。JAMA Oncology誌2020年3月12日オンライン版掲載の報告。・対象:化学療法未治療の75歳以上のStageIII/IVまたは再発非扁平上皮NSCLC・試験薬:カルボプラチン(AUC5)+ペメトレキセド(500mg/m2)3週ごと4サイクル→ペメトレキセド(500mg/m2)3週ごと病勢悪化まで(CBDCA/PEM群)・対照薬:ドセタキセル60mg/m2 3週ごと病勢悪化まで(ドセタキセル群)・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効割合(ORR)、症状スコア、有害事象などCBDCA/PEM群の非劣性マージンは、OSハザード比(HR)の95%信頼区間(CI)の上限1.154に設定された。 主な結果は以下のとおり。・登録された433例の年齢中央値は78歳であった。・OS中央値は、ドセタキセル群(217例)15.5ヵ月、CBDCA/PEM群(216例)18.7ヵ月であった(HR:0.850、95%CI:0.684~1.056、非劣性p= 0.003)。・PFSもCBDCA/PEM群で長かった(HR:0.739、95%CI:0.609~0.896)。・Grade3/4の白血球減少および好中球減少症の発現率、発熱性好中球減症の発現率はCBDCA/PEM群で低かった(それぞれ28.0%対68.7%、46.3%対86.0%、4.2%対17.8%)・一方、Grade3/4の血小板減少症および貧血の発現率はCBDCA/PEM群で高かった(それぞれ25.7%対1.4%、29.4%対1.9%)・減量の頻度はCBDCA/PEMで少なかった。 カルボプラチン・ペメトレキセド併用とペメトレキセドの維持療法は、高齢の非扁平上皮NSCLCの1次治療においてドセタキセルとの非劣性が証明された。著者らは、同レジメンはこれらの患者集団への有効な選択肢であるとしている。

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非扁平上皮NSCLC、ペムブロリズマブ+化学療法の1次治療第III相試験アップデート(KEYNOTE-189)/JCO

 転移を有する非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療における、ペムブロリズマブ+化学療法の第III相KEYNOTE-189試験の結果が更新された。Journal of Clinical Oncology誌2020年3月9日号オンライン版掲載の報告。 同試験の対象は、再発・転移のある無治療のStageIV非扁平上皮NSCLC患者616例。登録患者は、ペムブロリズマブ(3週ごと最大35サイクル)+化学療法(カルボプラチンまたはシスプラチン+ペメトレキセドの3週ごと4サイクル後、ペメトレキセド3週ごと)群410例とプラセボ+化学療法(ペムブロリズマブ併用群と同一用法・用量)群206例に無作為に割り付けられた。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は23.1ヵ月であった(2018年9月21日時点)。・全生存期間(OS)中央値は、ペムブロリズマブ+化学療法群22.0ヵ月、化学療法群10.7ヵ月で、ハザード比(HR)は0.56(95%CI:0.45〜0.70)であった。・PD-L1発現別のOS HRは、TPS≧50%では0.59、TPS1~49%では0.62、TPS<1%では0.52であった。・無増悪生存期間(PFS)は、ペムブロリズマブ+化学療法群9.0ヵ月、化学療法群4.9ヵ月で、HRは0.48(95%CI:0.40~0.58)であった。・PD-L1発現別のPFS HRは、TPS≧50%では0.36、TPS1~49%では0.51、TPS<1%では0.64であった。・Grade3〜5の有害事象の発現率は、ペムブロリズマブ+化学療法群では71.9%、化学療法群では66.8%であった。 筆者らは、転移を有する非扁平上皮NSCLC1次治療におけるペムブロリズマブと化学療法併用の生存ベネフィットはPD-L1発現レベル、肝臓/脳転移の有無にかかわらず確認されたとしている。

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小細胞肺がんの1次治療、アテゾリズマブ+化学療法の患者評価(IMpower133)/Ann Oncol

 進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)へのカルボプラチン+エトポシド(CP/ET)+抗PD-L1抗体アテゾリズマブの併用の1次治療に関する「IMpower133試験」の安全性および患者報告アウトカムの評価結果が、米国・メイヨー・クリニックのA.S. Mansfield氏らにより示された。アテゾリズマブ+CP/ETレジメンはプラセボ+CP/ETと安全性プロファイルが同様であり、患者報告の健康関連QOL(HRQoL)に重大な影響は与えないことが示された。結果を踏まえて著者は、「示されたデータは、ES-SCLC 1次治療としてのアテゾリズマブ+CP/ETのベネフィット・リスクプロファイルを明確に示すもので、同レジメンを新たな標準治療として支持することをさらに裏付けるものであった」とまとめている。Annals of Oncology誌2020年2月号掲載の報告。  IMpower133試験において患者は、CP/ETに加えてアテゾリズマブまたはプラセボの21日/サイクルを4サイクル受け(導入期)、その後アテゾリズマブまたはプラセボを、病勢進行またはベネフィットがなくなるまで投与された(維持期)。有害事象(AE)の評価と、治療期間中3週間ごとにEuropean Organisation for the Research and Treatment of Cancer(EORTC)の生活の質に関する質問票(Core 30[QLQ-C30]とQLQ-LC13)を用いた評価が行われた。  主な結果は以下のとおり。 ・全AEおよびGrade3~4のAE、重篤なAEの発現頻度は、両フェーズ(導入期、維持期)ともに、アテゾリズマブ群とプラセボ群で同程度であった。・免疫関連AEの発現頻度は、両フェーズともにアテゾリズマブ群でより高率であった。導入期は28% vs.17%、維持期は26% vs.15%であった。・免疫関連AEで最も発現頻度が高かったのは、発疹(導入期:11% vs.9%、維持期:14% vs.4%)、甲状腺機能低下症(4.0% vs.0%、10% vs.1%)であった。・生活の質低下に関連した患者報告に基づく治療関連症状の変化は、導入期では概して同程度であり、変化のほとんどは維持期で認められた。・患者報告に基づく機能およびHRQoLは、治療開始後に両群で改善したが、アテゾリズマブ群ではHRQoLの改善がより顕著かつ持続的に認められた。

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がん10年生存率57.2%に、80%以上のがん種も/全がん協調査

 国立がん研究センターの研究班は3月17日、全国がんセンター協議会(以下、全がん協)加盟の全国32施設における、全がんおよび部位別の、がん生存率最新データを公表した。前回調査と比較して、全がんの5年相対生存率は0.5ポイント増の68.4%、10年相対生存率は0.8ポイント増の57.2%であった。現在、10年生存率の算出と公開を行っているのは同研究班によるもののみで、部位別生存率において相対生存率(がんによる死亡)のほか、実測生存率(全死亡)も提示していることが特徴。<調査概要>収集症例:1997~2011年までに32施設で診断治療を行った68万9,207症例集計対象:[5年生存率]2009~11年に診断治療を行った症例のうち、以下の条件を満たした14万2,947症例(前回調査は2008~10年症例)[10年生存率]2003~06年に診断治療を行った症例のうち、以下の条件を満たした8万708症例(前回調査は2002~05年症例)集計基準:・15歳未満、95歳以上は除外・良性腫瘍、上皮内がん、0期、転移性腫瘍は除外・自施設診断自施設治療、および他施設診断自施設治療症例(診断のみは解析対象外)・下記の基準を満たした施設のデータのみを集計 臨床病期判明率60%以上 追跡率(予後判明率)90%以上5年相対生存率は前立腺、乳、甲状腺がんで90%以上 部位別(22種)・臨床病期別に、全症例と手術症例の5年生存率が算出された。全部位全臨床病期の5年相対生存率(全症例)は68.4%で、前回調査の67.9%からは0.5ポイント増でほぼ横ばい、初回調査(1997~99年)の61.8%からは徐々に改善傾向がみられている。部位別の5年生存率(相対生存率/実測生存率)について、主な結果は以下の通り:・5年相対生存率90%以上 前立腺(100%/88.6%)、乳(女)(93.7%/91.0%)、甲状腺(92.4%/88.7%)・5年相対生存率70%以上90%未満 子宮体(86.4%/83.9%)、大腸(76.8%/70.3%)、子宮頸(76.8%/75.0%)、胃(74.9%/67.6%)など・5年相対生存率50%以上70%未満 腎臓など(69.4%/63.9%)、膀胱(69.0%/60.6%)、卵巣(66.2%/64.7%)・5年相対生存率30%以上50%未満 食道(46.0%/41.7%)、肺(45.2%/41.2%)、肝(37.0%/33.1%)・5年相対生存率30%未満 胆のう胆道(28.6%/25.6%)、膵(9.9%/9.2%)10年相対生存率は前立腺、乳、甲状腺、子宮体がんで80%以上 部位別(18種)・臨床病期別に、全症例と手術症例の10年生存率が算出された。全部位全臨床病期の10年相対生存率(全症例)は57.2%で、前回調査の56.4%からは0.8ポイント上昇。部位別の10年生存率(相対生存率/実測生存率)について、主な結果は以下の通り:・10年相対生存率90%以上 前立腺(97.8%/72.3%)・10年相対生存率70%以上90%未満 乳(85.9%/80.9%)、甲状腺(84.1%/77.4%)、子宮体(81.2%/76.5%)・10年相対生存率50%以上70%未満 子宮頸(68.8%/65.6%)、大腸(67.8%/56.5%)、胃(65.3%/53.7%)、腎など(64.0%/54.5%)など・10年相対生存率30%以上50%未満 卵巣(45.3%/43.1%)、肺(30.9%/25.8%)、食道(30.9%/25.4%)・10年相対生存率30%未満 胆のう胆道(18.0%/14.8%)、肝(15.6%/12.8%)、膵(5.3%/4.5%) 研究班では、前回調査との比較において、多くの部位で5年および10年の生存率上昇を認める一方、低下している部位も含めて、臨床的に意味のある変化は認められないとしている。

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T1N0肺がん、縮小手術の候補となるのは?

 日本人の早期肺がんの肺葉切除に関するエビデンスが示された。神奈川県立がんセンターの伊藤 宏之氏らは、薄切CTに基づき臨床病期T1N0肺がん患者の肺葉切除後の長期アウトカムを評価し、consolidation tumor ratio(胸部薄切CT上、最大腫瘍径に対する充実性成分の比=C/T比)0.5以下および腫瘍径3cm以下の患者は、予後良好で縮小手術の候補である可能性を示唆した。Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery誌オンライン版2020年1月11日号掲載の報告。 研究グループは、肺葉切除を受けた肺腺がん患者543例の病理データを収集し、C/T比と腫瘍径によって以下の4グループに分類し、10年間の全生存率、無再発生存率を調査した。・グループA:C/T比≦0.5で腫瘍径≦2cm・グループB:C/T比≦0.5で腫瘍径≦3cm・グループC:C/T比>0.5で腫瘍径≦2cm・グループD:C/T比>0.5で腫瘍径2~3cm 主な結果は以下のとおり。・肺葉切除を受けた543例全体の10年全生存率は80.4%、10年無再発生存率は77.1%であった。・グループ別の10年全生存率は、グループAで94.0%、グループBで92.7%、グループCで84.1%、グループDで68.8%であった。・グループ別の10年無再発生存率は、それぞれ94.0%、89.0%、79.7%、66.1%であった。・グループA+Bは、グループC+Dより10年全生存率が良好で(ハザード比[HR]:2.78、95%信頼区間[CI]:1.45~5.06)、10年無再発生存率も良好であった(HR:2.74、1.55~4.88)。・グループAでは、再発は認められなかった。 進行中のJCOGの試験において、区域切除の生存に関する肺葉切除との非劣性が確認されれば、区域切除は標準治療に入るであろうと筆者らは述べている。

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オシメルチニブ、uncommon EGFR変異にも有効か/JCO

 uncommon変異はEGFR変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)患者の約10%にみられる。EGFR変異陽性のNSCLCにおけるオシメルチニブの有用性は広く知られているが、uncommon変異についてはどうか。uncommon EGFR変異を有するNSCLC患者に対するオシメルチニブの有効性と安全性を評価した韓国の多施設単群非盲検第II相試験がJournal of Clinical Oncology誌2019年2月10日号で発表された。対象:exon19 del、L858R、T790M変異以外の転移または再発NSCLC評価項目:[主要評価項目]客観的奏効率(ORR)[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、奏効期間(DoR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・2016年3月~2017年10月に、37例の患者が登録された。・患者のうち、61%が1次治療としてオシメルチニブを投与されていた。・同定された変異は、G719X 53%(n=19)、L861Q 25%(n=9)、S768I 22%(n=8)、その他 11%(n=4)であった。・ORRは50%(18例/36例)であった。・PFS中央値は8.2ヵ月、OS中央値は未達、DoR中央値は11.2ヵ月であった。  オシメルチニブは、uncommonなEGFR変異を有するNSCLC患者においても良好な活性を示した。

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NSCLCの術後補助化学療法、適正レジメンは?(TORG 0503)/Lung Cancer

 日本発の、非小細胞肺がん(NSCLC)術後補助化学療法の適正レジメンが示された。完全切除されたStage IB、IIおよびIIIAのNSCLCでは、術後補助化学療法が標準治療であるが、これまで最適な化学療法レジメンは決定されていない。日本医科大学呼吸器内科の久保田馨氏らは、これらの患者において望ましいプラチナベースの第3世代レジメンを選択する「TORG0503試験」を実施した。その結果、ドセタキセル+シスプラチン併用療法とパクリタキセル+カルボプラチン併用療法が、術後補助化学療法として安全に施行できることが示された。結果を踏まえて著者は、「次の臨床試験では、対照としてドセタキセル+シスプラチン併用療法を選択する」と述べている。Lung Cancer誌オンライン版2019年3月号の掲載報告。 研究グループは、完全切除されたStage IB、IIA、IIB、IIIAのNSCLC患者を、ドセタキセル(60mg/m2)+シスプラチン(80mg/m2)併用療法を3サイクル行う群(A群)と、パクリタキセル(200mg/m2)+カルボプラチン(AUC 6)併用療法を3サイクル行う群(B群)に無作為に割り付けた。 主要評価項目は2年無再発生存割合、主な副次評価項目は全生存期間(OS)、有害事象(忍容性、毒性)などとした。 主な結果は以下のとおり。・111例(A群58例、B群53例)が無作為に割り付けられた。両群の患者背景は類似していた。・3サイクルの化学療法を完遂した患者の割合は、A群で93%(54/58例)、B群で92%(49/53例)であった。・両群で治療に関連した死亡は認められなかった。・2年無再発生存割合は、A群で74.5%(95%信頼区間[CI]:68.6~80.4)、B群で72.0%(95%CI:65.7~78.3)であった。・また、5年無再発生存割合はA群で61.6%、B群で46.0%であった。・2および5年OSは、A群で89.7%および73.9%、B群で86.9%および67.5%であった。

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FDA諮問委員会、ラムシルマブのEGFR変異陽性肺がん1次治療を支持/イーライリリー

 イーライリリー・アンド・カンパニーは、2020年2月26日、米国食品医薬品局(FDA)抗腫瘍薬諮問委員会(ODAC)が、第III相試験(RELAY試験)の結果に基づいたEGFR遺伝子変異陽性を有する未治療の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象としたラムシルマブ+エルロチニブ併用療法の有効性と安全性を検討し、バランスが取れたリスク・ベネフィットが示されたことを支持する投票数が不支持を上回ったこと(支持:6、不支持:5)を発表。 ODACは、FDAで審査中のラムシルマブの生物学的製剤承認一部変更申請(sBLA)に基づき、第III相RELAY試験から得られた安全性および有効性データを審査した。RELAY試験で、ラムシルマブ+エルロチニブ併用療法は、プラセボ+エルロチニブ療法と比較して、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を統計学的に有意に延長した。また、同試験で認められた安全性プロファイルは、ラムシルマブやエルロチニブに関してこれまで得られている安全性プロファイルと一貫していた。プラセボと比較してラムシルマブ群で 5%以上高く発現し、5%以上の発現割合で認められたGrade3以上の有害事象は、高血圧、ざ瘡様皮膚炎(ざ瘡様発疹)、および下痢であった。 EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がん患者の1次治療におけるラムシルマブ+エルロチニブ併用療法は欧州委員会(EC)では2020年1月に承認されている。また、国内でも承認事項一部変更承認申請を行っている。

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局所進行NSCLCに対する化学放射線療法とペムブロリズマブの同時併用/JAMA Oncol

 化学放射線療法後のPD-L1阻害薬による地固め療法は、Stage III非小細胞肺がん(NSCLC)の全生存率と無増悪生存率(PFS)を改善する。一方、化学放射線療法開始時のPD-L1阻害薬導入についての評価は明らかではない。そこで、NSCLCの根治的化学放射線療法とPD-1阻害薬ペムブロリズマブの同時併用の安全性と忍容性を決定する目的で前向き多施設非無作為化比較第I相試験が行われた。・対象:局所進行切除不能StageIII NSCLC(ECOG PS0~1)21例・介入: ペンブロリズマブを化学放射線併用療法(カルボプラチン+パクリタキセル毎週投与+放射線60Gy[2Gy/回])と併用。[コホート1]化学放射線療法後2〜6週からペンブロリズマブ 200mg 3週間ごと。[コホート2]化学放射線療法の29日目からペムブロリズマブ 100mg 3週間ごと。[コホート3]化学放射線療法の29日目からペンブロリズマブ 200mg 3週間ごと。[コホート4]化学放射線療法の1日目からペムブロリズマブ 100mg 3週間ごと。[コホート5]化学放射線療法の1日目からペンブロリズマブ 200mg 3週間ごと。・評価項目:[主要評価項目]化学放射線療法との併用によるPD-1阻害薬の安全性と忍容性[副次評価項目]PFS、肺炎発症割合など。 主な結果 は以下のとおり。・対象患者21例の年齢中央値は69.5歳であった。・コホート5の安全性拡大コホートでGrade5の肺炎が1例発現した。・Grade3以上の免疫関連有害事象が4例の患者で発生した(18%)。・ペンブロリズマブを1回以上投与した患者(21例)のPFS中央値は18.7ヵ月。6ヵ月PFS率は81.0%、12ヵ月PFS率は69.7%であった。・ペンブロリズマブを2回以上投与した患者(19例)のPFS中央値は21.0ヵ月であった。 これらの結果から筆者らは、StageIII NSCLCに対するPD-1阻害薬と化学放射線療法の併用療法は忍容性があり、PFSも有望であることから、さらなる研究が必要であると述べている。

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クローン病〔CD : Crohn’s disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義クローン病(Crohn’s disease: CD)は消化管の慢性肉芽腫性炎症性疾患であり、発症原因は不明であるが、免疫異常などの関与が考えられる。小腸、大腸を中心に浮腫や潰瘍を認め、腸管狭窄や瘻孔など特徴的な病態を生じる。■ 疫学主として若年者(10代後半~30代前半)に好発する。年々増加傾向にあり、わが国のCDの有病率は最近15年間で約4倍に増加、患者数4万人以上と推測され、日本では1.8:1.0の比率で男性に多い。現在も増加していると考えられる。■ 病因原因はいまだ不明であるが、遺伝的素因と食事などの環境因子の両者が関与し、消化管局所の免疫学的異常により、慢性の肉芽腫性炎症が持続する多因子疾患である。喫煙が増悪因子とされている。ほかに長鎖脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、精製糖質の過剰摂取などが増悪因子として想定されている。■ 症状主症状は腹痛(70%)、下痢(80%)、体重減少・発熱(40~70%)である。肛門病変はCD患者の半数以上にみられ、先行する場合も多い(36~81%)。検査値の異常として、炎症所見(白血球数、CRP、血小板数、赤沈)の上昇、低栄養(血清総蛋白、アルブミン、総コレステロール値の低下)、貧血を示す。■ 分類正しい治療を考える上で、病変部位、疾患パターン、活動度・重症度の把握が重要である。病変部位は小腸型、小腸大腸型、大腸型の3つに大きく分類される。日本では小腸型20%、小腸大腸型50%、大腸型30%とされている。疾患パターンとして炎症型、狭窄型、瘻孔形成型の3通りに分類することが国際的に提唱されている。さらに疾患活動性として、症状が軽微もしくは消失する寛解期と、症状のある活動期に分けられる。重症度を客観的に評価するために、CD活動指数CDAI(表1)、IOIBDなどがあるが、日常診療に適した重症度分類は現在のところまだないため、患者の自覚症状、臨床所見、検査所見から総合的に評価する。画像を拡大する■ 予後CDは再燃、寛解を繰り返し慢性に経過する疾患である。病初期は消化管の炎症が中心であるが、徐々に狭窄型・瘻孔型へ移行し、手術が必要となる症例が多い。2000年に提唱されたCDの分類法であるモントリオール分類(表2)では発症時年齢、罹患範囲、病気の性質により分類されている。病型や病態は罹患期間により比率が変化し、Cosnes氏らは診断時に炎症型が85%であっても、20年後には88%が狭窄型から瘻孔型へ移行すると報告している 。累積手術率は発症後経過年数とともに上昇し、生涯手術率は80%以上になるという報告もある。海外での累積手術率は10年で34~71%である。わが国の累積手術率も、10年で70.8%、初回手術後の5年再手術率は16~43%、10年で26~67%と報告されている。とくに瘻孔型では手術率、術後再発率とも高くなっている。死亡率に関しては、Caravanらのメタ解析によるとCDの標準化死亡率は1.5(1.3~1.7)と算出されている。死亡率は過去30年で減少傾向にあるが、CDの死亡率比は一般住民よりやや高いとの報告がある。わが国では、やや高いとする報告と変わらないとする報告があり、死亡因子としては肝胆道疾患、消化管がん、肺がんが挙げられている。画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 診断基準厚生労働省の診断基準(表3)に沿って診断を行う。2018年に改訂した診断基準(案) ではCDAI(Crohn’s disease activitiy index)や合併症、炎症所見、治療反応に基づくECCO(European Crohn’s and colitis organisation )(表4)の分類に準じた重症度分類(軽症、中等症、重症)が記載されている。画像を拡大する■ 診断の実際若年者に、主症状である腹痛(70%)、下痢(80%)、体重減少・発熱(40~70%)が続いた場合CDを念頭に置く。肛門病変はCD患者の半数以上にみられ、先行する場合も多い(36~81%)。血液検査にて炎症所見、低栄養、貧血がみられたら、CDを疑い終末回腸を含めた下部消化管内視鏡検査および生検を行う。診断基準に含まれる特徴的な所見および生検組織にて、非乾酪性類上皮肉芽腫が検出されれば診断が確定できる。病変の範囲、治療方針決定のためにも、上部消化管内視鏡検査、小腸X線造影検査を行うべきである。CDと鑑別を要する疾患として、腸結核、腸型ベーチェット病、単純性潰瘍、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)潰瘍、感染性腸炎、虚血性腸炎、潰瘍性大腸炎などがあるため、服薬歴の確認・便培養・ツベルクリン反応およびクォンティフェロン(QFT)、病理組織検査を確認する。診断のフローチャートを図に示す。画像を拡大する1)画像検査所見(1)下部消化管内視鏡検査、小腸バルーン内視鏡検査検査前に、問診やX線にて強い狭窄症状がないか確認する。60~80%の患者では大腸と終末回腸が罹患する。病変は非連続性または区域性に分布し、偏側性で介在部はほぼ正常である。活動性病変として、縦走潰瘍と敷石像が特徴的な所見である。小病変としてはアフタや不整形潰瘍が認められる。(2)上部消化管内視鏡検査胃では、胃体上部小弯側の竹の節状外観、前庭部のたこいぼびらん・不整形潰瘍が認められる。十二指腸では、球部と下行脚に好発し、多発アフタ、不整形潰瘍、ノッチ様陥凹、結節状隆起が認められる。(3)消化管造影検査(X線検査)病変の大きさや分布、狭窄の程度、瘻孔の有無について簡単に検査ができる。所見の特徴は、縦走潰瘍、敷石像、非連続性病変、瘻孔、非対称性狭窄(偏側性変形)、裂孔、および多発するアフタがある。(4)その他近年、機器の性能向上および撮影技法の開発により、超音波検査、CT、MRIにより腸管自体を詳細に描出することが可能となった。小腸病変の診断に、経口造影剤で腸管内を満たし、造影CT検査を行うCT enterography(CTE)や、MRI撮影を行うMR enterography(MRE)が欧米では広く用いられており、わが国の一部の医療施設でも用いられている。撮影法の工夫により大腸も同時に評価ができるMR enterocolonography(MREC)も一部の施設では行われており、検査が標準化されれば、繰り返し行う場合も侵襲が少なく、内視鏡が到達できない腸管の評価にも有用と考えられる。2)病理検査所見CDには病理診断上、絶対的な基準となるものがなく、種々の所見を組み合わせて診断する。生検診断をするにあたっては、その有無を多数の生検標本で連続切片を作成し検討する。組織学的所見として重要なものは(1)全層性炎症像、(2)非乾酪性類上皮肉芽腫の検出、(3)裂溝、(4)潰瘍である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)CDは発症原因が不明であり、経過中に寛解と再燃を繰り返すことが多い。CDの根治的治療法は現時点ではないため、治療の目標は病勢をコントロールし、炎症を繰り返すことによる患者のQOL低下を予防することにある。そのため薬物療法、栄養療法、外科療法を組み合わせて症状を抑えるとともに、栄養状態を維持し、炎症の再燃や術後の再発を予防することが重要である。■ 内科治療(主に薬物治療として)活動期の治療と寛解期の治療に大別される。活動期CDの治療方針は、疾患の重症度、病変範囲、合併症の有無、患者の社会的背景を考慮して決定する。初発のCDでは、診断および病変範囲、重症度の確定と疾患に関する教育や総合的指導のため、専門医にコンサルトすることが望ましい。また、ステロイド依存や免疫調節薬の投与経験がない場合においても、生物学的製剤の投与に関しては専門医にコンサルトすべきである。わが国における平成30年度 CD治療指針、および各治療法の位置づけ(表5)を示す。画像を拡大する1)5-ASA製剤CDに適応があるのはメサラジン(商品名:ペンタサ)、サラゾスルファピリジン(同:サラゾピリン)の経口薬である。治療指針においては軽症~中等症の活動期の治療、寛解維持療法、術後再発予防のための治療薬として推奨されている。CDの寛解導入効果および寛解維持効果は限定的であるが有害性は低い。腸の病変部に直接作用し炎症を抑えるため、製剤の選択には薬剤の放出機序に注意して病変範囲によって決める必要がある。2)ステロイド(GS)5-ASA製剤無効例、全身症状を有する中等症以上の症例で寛解導入に有効である。関節症状、皮膚症状、眼症状などの腸管外合併症を有する場合や、発熱、CRP高値などの全身症状が著明な場合は、最初からステロイドを使用する。寛解維持効果はないため、副作用の面からも長期投与は避けるべきである。ステロイド依存となった場合は、少量の免疫調節薬(アザチオプリン〔AZA〕、6-メルカプトプリン〔6-MP〕)を併用し、ステロイドからの離脱を図る。軽症あるいは中等症例の回盲部病変の寛解導入には、全身性副作用を軽減し局所に作用するブデソニド(同:ゼンタコート)9mg/日の投与が有効である。3)免疫調節薬(AZA、6-MPなど)免疫調節薬として、AZA(同:イムラン、アザニン)、6-MP(同:ロイケリン)が主なものであり、AZAのみ保険適用となっている。AZAと6-MPは寛解導入、寛解維持に有効であり、ステロイド減量効果を有する。欧米の使用量はAZA 2.0~3.0mg/kg/日、6-MP 50mg/日または1.5mg/kg/日であるが、日本人は代謝酵素の問題から用量依存性の副作用が生じやすく、欧米より少量のAZA(50~100mg/日)、6-MP(20~50mg/日)が投与されることが多い。チオプリン製剤の副作用の中で、服用開始後早期に発現する重度の急性白血球減少と全脱毛がNUDT15遺伝子多型と関連することが明らかとされている。2019年2月よりNUDT15遺伝子多型検査が保険適用となっており、初回チオプリン製剤治療前には本検査を施行し、表6に従ってチオプリン製剤の適応を判断することが推奨される。AZA/6-MPの効果発現は緩徐で2~3ヵ月かかることが多いが、長期に安定した効果が期待できる。適応としてステロイド減量効果、難治例の寛解維持目的、瘻孔病変、術後再燃予防、抗TNF-α抗体製剤を使用する際の相乗効果があげられる。画像を拡大する4)抗体製剤(1)抗TNF-α抗体製剤わが国ではインフリキシマブ(同:レミケード)、アダリムマブ(同:ヒュミラ)が保険適用となっている。抗TNF-α抗体製剤は、CDの寛解導入、寛解維持に有効で外瘻閉鎖維持効果を有する。適応として、中等症~重症のステロイド・栄養療法が無効な症例、重症例で膿瘍や狭窄がない治療抵抗例、抗TNF-α抗体製剤で寛解導入された症例の寛解維持療法、膿瘍がコントロールされた肛門病変が挙げられる。早期に免疫調節薬と併用での導入が治療成績がよいとの報告があるが、副作用と医療費の問題もあり、全例導入は避けるべきである。早期導入を進める症例として、肛門病変を有する症例、穿孔型の症例、若年発症が挙げられる。(2)抗IL12/23p40抗体製剤2017年5月より中等症から重症の寛解導入および維持療法としてウステキヌマブ (同:ステラーラ)が使用可能となっている。導入時のみ点滴静注(体重あたり、55kg以下260㎎、55kgを超えて85kg以下390㎎、85kgを超える場合520㎎)、その後は12週間隔の皮下注射もしくは活動性が高い場合は8週間隔の皮下注射であり、投与間隔が長くてもよいという特徴がある。また、安全性が高いことも特徴である。腸管ダメージの進行があまりない炎症期の症例に有効との報告がある。肛門病変への効果については、まだ統一見解は得られていない。(3)抗α4β7インテグリン抗体製剤2018年11月より中等症から重症の寛解導入および維持療法としてベドリズマブ (同:エンタイビオ)が使用可能となっている。インフリキシマブ同様0週、2週、6週で投与後維持療法として8週間隔の点滴静注 (30分/回)を行う。抗TNF-α抗体製剤failure症例よりもnaive症例で寛解導入および維持効果を示した報告が多い。日本での長期効果の報告に関してはまだ症例数も少なく、今後のデータ集積が必要である。5)栄養療法活動期には腸管の安静を図りつつ、栄養状態を改善するために、低脂肪・低残渣・低刺激・高蛋白・高カロリー食を基本とする。糖質・脂質の多い食事は危険因子とされている。「クローン病診療ガイドライン(2011年)」では、栄養療法はステロイドとともに主として中等症以上が適応となり 、痔瘻や狭窄などの腸管合併症には無効である。1日30kcal/kg以上の成分栄養療法の継続が再発防止に有効であるが、長期にわたる成分栄養療法の継続はアドヒアランスの問題から困難であることも少なくない。総摂取カロリーの半分を成分栄養剤で摂取すれば、寛解維持に有効であることが示されており、1日900kcal以上を摂取するhalf EDが目標となっている。6)抗菌薬メトロニダゾール、シプロフロキサシンなどの抗菌薬は中等度~重症の活動期の治療薬として、肛門部病変の治療薬として有効性が示されている。病変部位別の比較では小腸病変より大腸病変に対して有効性が高いとされる。7)顆粒球・単球吸着療法(granulocyte/monocyte apheresis: GMA)2010年より大腸病変のあるCDに対しGMAが適応拡大となった。GMAは単独治療の適応はなく、既存治療の有効性が乏しい場合に併用療法として考慮すべきである。施行回数は週1回×5回を1クールとして、最大2クールまで施行する。8)内視鏡的バルーン拡張術(endoscopic balloon dilatation: EBD)CDは、経過中に高い確率で外科手術を要する疾患であり、手術適応の半数以上は腸管狭窄である。EBDは手術回避の目的として行われる内視鏡的治療であり、治療指針にも取り上げられている。適応としては、腸閉塞症状を伴う比較的短く(3cm以下)屈曲が少ない良性狭窄で、深い潰瘍や瘻孔を伴わないものである。適応外としては、細径内視鏡が通過する程度の狭窄、強度に屈曲した狭窄、長い狭窄、瘻孔合併例、炎症や潰瘍が合併している狭窄である。■ 外科的治療CDの外科的治療は内科的治療で改善しない病変のみに対して行い、QOLの改善が目的である。腸管病変に対する手術では、原則として切除をなるべく小範囲とし、小腸病変に対しては可能な症例では狭窄形成術を行い、腸管はなるべく温存する。5年再手術率16~43%、10年で32~76%と高く、可能な症例では腹腔鏡下手術が有効である。緊急手術、穿孔、広範囲膿瘍形成、複数回の開腹手術既往、腸管外多臓器への複雑な瘻孔などは開腹手術が選択される。厚生労働省研究班治療指針によるCDの手術適応は表7の通りである。完全な腸閉塞、穿孔、大量出血、中毒性巨大結腸症は緊急に手術を行う。狭窄病変については、活動性病変は内科治療、線維性狭窄で口側拡張の著しいもの、短い範囲に多発するもの、狭窄の範囲が長いもの、瘻孔を伴うもの、狭窄症状を繰り返すものは手術適応となる。肛門病変は、難治性で再発を繰り返す痔瘻・膿瘍が外科的治療の対象となる。治療として、痔瘻根治術、シートン法ドレナージ、人工肛門造設(一時的)、直腸切断術が選択される。治療の目標は症状の軽減と肛門機能の保持となる。画像を拡大する4 今後の展望現在、各種免疫を ターゲットとした治験が行われており、進行中の治験を以下に示す。グセルクマブ(商品名:トレムフィア):抗IL-23p19抗体(点滴静注および皮下注射製剤)Upadacitinib:JAK1阻害薬(経口)E6011:抗フラクタルカイン抗体(静注)Filgotinib:JAK1阻害薬(経口)BMS-986165:TYK2阻害療法(経口)5 主たる診療科消化器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療・研究に関するサイト難病情報センター CD(一般利用者と医療従事者向けの情報)東京医科歯科大学消化器内科 「潰瘍性大腸炎・クローン病先端治療センター」(一般利用者向けの情報)JIMRO IBD情報(一般利用者と医療従事者向けの情報)患者会に関するサイトIBDネットワーク(IBD患者と家族向け)1)日比紀文 監修.クローン病 新しい診断と治療.診断と治療社; 2011.2)難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班プロジェクト研究グループ 日本消化器病学会クローン病診療ガイドライン作成委員会・評価委員会.クローン病診療ガイドライン: 2011.3)NPO法人日本炎症性腸疾患協会(CCFJ)編.潰瘍性大腸炎の診療ガイド. 第2版.文光堂; 2011.4)日比紀文.炎症性腸疾患.医学書院; 2010.5)渡辺守.IBD(炎症性腸疾患を究める). メジカルビュー; 2011.公開履歴初回2013年04月11日更新2020年03月09日

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ICIがすごく効いたら、やめてよいか?再投与は有効か?【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第12回

第12回 ICIがすごく効いたら、やめてよいか?再投与は有効か?1)Warner AB, et al. Long-Term Outcomes and Responses to Retreatment in Patients With Melanoma Treated With PD-1 Blockade. J Clin Oncol. 2020 Feb 13. [Epub ahead of print]われわれは免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の登場によって、従来では考えられない長期生存を経験するようになっている。なかには腫瘍が消失するような症例もあるが、そのような場合にICIは中止可能か、についてはまだまだ情報が少ない。今回、悪性黒色腫において完全奏効(CR)例に対するICIの中止、また再発後の再投与に関して検討した論文を紹介する。試験デザインメモリアル・スローン・ケタリングにおける後方視的研究。2009~18年に抗PD-1抗体単剤を投与された1,325例のうち、途中中止された396例が対象。観察期間中央値は21.1ヵ月。患者背景使用されたのは85%がペムブロリズマブ、残りがニボルマブ。約半数はイピリムマブの治療歴あり。抗PD-1抗体単剤の投与期間中央値は4.8ヵ月・回数中央値は8回。投与中止となった最大の理由は病勢増悪(PD)で約50%。毒性による中止は22%であった。中止症例のうち、CR例の詳細途中中止された396例のうち102例(25.8%)でCRが得られた。CR例の中止理由は「CRと考えたから」が約70%、毒性が24%。途中中止されたCR例の無治療生存期間・全生存期間はいずれも中央値に達しなかった。3年時点での無治療生存割合は72%。この研究は後方視的研究であり、CRは担当医判断である。しかし、これらを(1)放射線科医によって厳密にRECIST CRとされたもの、(2)そうでないもの(RECIST CRではないが担当医判断がCR)、(3)再生検によって病理学的にCRと判断されたものに分けても、無再発期間に有意な差を認めなかった。CRと相関する臨床背景については、病期M1bや組織型、TMB high、LDH上昇が挙げられている。中止かつCR例のうち、再発した症例観察期間中に23例(23%)が再発。一方でCRを1年間維持できた症例では80%以上で2年間以上のCRが維持されていた。CRに至るまでの治療期間と再発率には相関なし。再発後のICI再投与78例が再発後にICIの再投与を受けた。この解析はICI中止までの治療効果を問わず行われている点に注意(37例は最良効果がPDにもかかわらず、再投与されている)。奏効率(ORR)は抗PD-1抗体単剤で15%(34例中5例)であった。抗PD-1抗体+イピリムマブで25%(44例中11例)であった。単剤再投与で奏効した5例のうち、3例は初回ICIの最良効果がPD、2例は毒性により初回ICIが中止されていた。初回CRとなった10例で、再投与後に奏効が得られたものはわずかに2例であった。また、初回と再投与の効果には相関がなかったとされている。再投与期間の中央値はわずかに1.6ヵ月、2年生存割合は37.6%であった。解説本研究の強み・興味深い点CR例に限定した中止後の解析という点。CRとなっても4人に1人は再発している。再投与の有効性はそれほど高くない。また、初回投与と再投与の有効性は必ずしも相関していない。だからといって、実臨床で初回ICIがPDであった場合に再投与するのは勇気がいる気がするが…。本研究の欠点単施設による後方視的研究であること。CR症例のうち、どのような症例で無再発率が高いのか、臨床背景やバイオマーカーの検討はなされていない。その他ICI治療におけるRECISTの判断基準が厳しすぎる可能性を指摘している。

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