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免疫チェックポイント阻害薬、1次治療は75歳以上の高齢者でも有効

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)について、75歳以上の高齢者にも有効であることが、フランス・ソルボンヌ・パリ・ノール大学のThierry Landre氏らによる無作為化比較試験のメタ解析の結果、示された。ICIの有効性に対する加齢の影響については議論の余地があり、75歳以上の高齢者についてはこれまでほとんど知られていなかった。なお結果について著者は、「生存に対するベネフィットは主に1次治療で観察されたものであり、2次治療については不明なままである」と述べている。Drugs & Aging誌オンライン版2020年7月17日号掲載の報告。 研究グループは、75歳以上の高齢患者におけるICIの有効性を評価するメタ解析を実施した。進行固形がん患者を対象に、ICI(単独療法または併用療法)と標準治療を比較した無作為化比較試験のうち、2010年1月~2020年1月までの間に発表された論文を適格とした。 主要評価項目は、高齢患者(75歳以上)と非高齢患者(75歳未満)で比較した全生存(OS)期間。ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)値を収集・プールして評価。副次評価項目は、1次治療および2次治療別のICI治療の影響とした。 主な結果は以下のとおり。・抗PD-1抗体(ニボルマブ、ペムブロリズマブ)、抗PD-L1抗体(アテゾリズマブ、アベルマブ)、または抗CTLA-4抗体(イピリムマブ)を評価した、15件の第III相臨床試験を解析に組み込んだ。・登録患者は、非小細胞肺がん、腎細胞がん、悪性黒色腫、頭頸部扁平上皮がん、または胃がんであった。・15件のうち、1次治療に関する試験が8件、2次治療に関する試験が7件であった。・患者背景は、年齢中央値64歳、75歳以上が906例(1次治療552例、2次治療354例)、75歳未満が8,741例(1次治療4,992例、2次治療3,749例)であった。・1次治療における死亡HRは、75歳以上群0.78(95%CI:0.61~0.99)、75歳未満群0.84(95%CI:0.71~1.00)であった。・2次治療における死亡HRは、75歳以上群1.02(95%CI:0.77~1.36)、75歳未満群0.68(95%CI:0.61~0.75)であり、サブグループ間で統計学的に有意差が観察された(相互作用のp=0.009)。

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COVID-19流行下、3次医療機関でのがん患者の入院は安全か/JCO

 オーストリア・ウィーンの3次医療機関で、COVID-19に対する政府や施設の感染対策実施後に、入院中のがん患者のSARS-CoV-2感染率を調査したところ、一般集団と同様であり、また、がん以外の患者よりも低かったことが報告された。今回の結果から、人口全体および施設の厳格な感染対策が実施された場合には、大規模な3次医療機関において積極的ながん治療や通院が実現可能で安全であることが示唆された。Medical University of ViennaのAnna S. Berghoff氏らによる報告が、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2020年8月14日号に掲載された。 本研究の対象は、2020年3月21日~5月4日、当院で定期的に鼻腔または咽頭スワブを用いたRT-PCRによりSARS-CoV-2 RNAを検査していたがん患者。このコホートでの結果を、代表的な全国ランダムサンプル研究のコホート(対照コホート1)および当院のがん以外の患者のコホート(対照コホート2)のSARS-CoV-2の感染率と比較した。 主な結果は以下のとおり。・連続した1,016例のがん患者に1,688回のSARS-CoV-2検査を実施した。1,016例中270例(26.6%)がネオアジュバントまたはアジュバント治療を受け、560例(55.1%)が緩和療法を受けていた。・1,016例中53例(5.2%)がCOVID-19の疑われる症状を自己申告し、4例(0.4%)でSARS-CoV-2が検出された。SARS-CoV-2陽性の4例とも当科での検査時には無症状で、2人は症候性COVID-19から回復した患者であった。また4例中3例で、陽性判定から14〜56日後に陰性となった。・がんコホートの対照コホート1に対するSARS-CoV-2感染の推定オッズ比は1.013(95%CI:0.209〜4.272、p=1)、対照コホート2のがんコホートに対する推定オッズ比は18.333(95%CI:6.056〜74.157)であった。 著者らは「無症状のウイルス保有者を発見し、ウイルス蔓延を回避するために、がん患者の定期的なSARS-CoV-2検査が勧められる」としている。

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第22回 大阪大論文不正事件の“ナゾ” NHKスペシャル「人体」でも取り上げられた臨床研究の行方は?

論文5本に捏造・改ざんこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。安倍首相が総理大臣の職を辞する意向を突然表明しました。病気とはいえ、コロナ禍の中、「仕事を投げ出した」感は否めません。退任表明の記者会見で「レガシーは?」と聞かれた首相は「歴史が判断していくのかな」と語っていましたが、数十年後、安倍首相は歴史の教科書にどのように記載されるのでしょうか。気になります。今回は2週間ほど前に発覚した、大阪大学と国立循環器病センター(国循)の論文不正について、考えてみたいと思います。大阪大と国循は8月18日、大阪大学医学部附属病院に以前所属し、国循で室長も務めていた医師が発表した論文5本に捏造・改ざんがあったと発表しました。5本のうちの1本は、心不全の治療に用いられる「hANP(ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド)」に肺がんの転移を抑える効果があるかを調べる大規模な臨床研究の安全性の根拠を示す参考論文になっており、大阪大と国循はこの研究に参加した患者などに謝罪しました。hANPと肺がん再発の関係を明らかにしたスター研究者捏造・改ざんがあったとされるのは、同医師が2013年から2016年にかけて、同医師が筆頭著者や責任著者として発表した、hANPやチオトロピウム、グレリンなどの5本の論文(hANP関連はうち3本)です。各紙の報道によると、5本の論文のうち、調査委員会が、社会的影響がとくに大きいと考えたのは、肺がんの手術の際にhANPを使うと合併症が抑えられるとした2013年の論文とのことです。その後、同医師らは2015年、hANPを投与した患者群で肺がんの再発が有意に少ないことをプロスペクティブな検討で発見した論文1)を筆頭筆者として発表。一連の研究成果をもとに、がんの転移を防ぐ作用を期待して、大規模な臨床研究(「非小細胞肺がん手術適応症例に対する周術期hANP投与の多施設共同ランダム化第II相比較試験(JANP study)」)がスタートしました。問題とされる2013年の論文は、この臨床研究の安全性の根拠を示す参考とされていました。この臨床研究は全国10施設で実施され、患者335人が参加。うち160人にhANPが投与されました。現在は参加者の募集もhANPの投与も終わり、観察期間中です。今のところ安全性に問題は認められていない、とのことです。同医師は「単純なミスだった」として不正を認めていないと報道されていますが、大阪大は8月18日付で懲戒解雇相当の処分を下しています。ちなみに2015年の、hANPが肺がんの再発が有意に少ないことを明らかにした論文は研究者に与えられるさまざまな賞を受賞しており、2017年にNHKで放送されたNHKスペシャル「人体」の中でも「世界初!心臓からの"メッセージ”で『がん転移予防』」として、大規模臨床研究が始まったことも含め、大きく取り上げられています。同医師は、このまま順調に行けば大学教授になっていたかもしれない、スター研究者だった、と言えそうです。2年8ヵ月もの長期にわたった調査さて、今回の論文不正事件、いくつか気になる点があります。大阪大と国循の調査結果概要などによれば、不正発覚の経緯は次のようなものでした。発端は、2017年12月、大阪大と国循に、前述の医師が筆頭著者または責任著者として発表した21本の論文に「ねつ造や改ざんが認められる」とする申し立てが届いたことでした。つまり、同業の研究者とみられる人物からの申し立てによって発覚したわけです。それを受け、大阪大と国循は予備調査を実施。そこでは、同医師がカルテを基に論文執筆に向けてまとめた二次的なデータと論文に記載された数値に矛盾がないことなどが確認されたものの、論文の一部で、患者背景が異なる論文なのに術後の検査数値の変化が同一だったり、コントロールデータの使い回しが疑われたりしたことから、本調査の実施が決定しました。予備調査から数えると、2年8ヵ月という長期の調査が行われ、上述のように5本の論文についてねつ造や改ざんが認定されたのです。前述したように、5本のうち社会的影響が大きいとされたのが、COPD合併肺がん手術症例を対象に、hANPを投与していた患者としていなかった患者を比較し、hANP群で術後合併症が有意に低いとしていた論文です。同論文に掲載されていた、術後合併症(白血球数、CRP)の経時変化を比較した図について、調査委員会がカルテ情報を基に再現したところ、hANP群のグラフを再現できず、論文で認められていた有意差が認められなかった、ということです(対照群は再現できました)。この論文が、hANPの臨床研究の参考論文になっていて、安全性の根拠の1つとされていたため、大々的な報道になったと考えられます。ただ、hANP投与群がコントロール群より白血球やCRPの数値がよくなれば望ましいですが、今回再現されたデータではコントロール群とほとんど変わらないので、安全性そのものに疑義が出るほどのことなのか、そのあたりはなかなか微妙な問題と言えます。有名論文は申し立てに入らず今回不正が認定されたのは、申し立てがあった21本のうち5本。また、「論文中のあらゆる図表が再現できなかった」といったものではないので、STAP細胞のときのような、研究そのものが根底から覆るような不正と比べるとそれほど悪質ではない、と考えることもできそうです。しかし、各メディアは、医師の実名も大きく報じており、今後、同医師がこれまで通り最先端の研究者としてやっていくのは難しそうです。この事件、仮に研究者間の力関係や怨嗟が原因で起きたと考えるならば、一つの大きな“ナゾ”が浮かび上がってきます。同医師の研究成果のうち、世間で大きな話題となった上述のhANPが肺がんの再発が有意に少ないことを明らかにした論文は、申し立ての対象になっていなかったことです。その理由は、申し立てを行った本人に聞かなければ分かりませんが、ともかく同論文は申し立てに入っておらず、現時点では調査は行われていないようです。大規模臨床研究の行方は?大阪大は今後、肺がん手術後のhANPの効果を探るJANP studyについて安全性の観察に重点を置き進めていくようです。同臨床試験の主要評価項目は、術後2年の無増悪生存期間とされています。観察期間を終えてフタを開けてみたら、きわめて有効、という結果が出る可能性も十分あります。この臨床研究をリードしてきた医師は、今回の論文不正でNGの烙印が押されてしまいましたが、将来、もしhANPが肺がんや他のがんの術後の再発を大きく抑える効果が証明されたとしたら、懲戒解雇処分となった同医師の“復権”はあるのでしょうか? あるいは、成果は処分を下した阪大の誰かが持っていってしまうのでしょうか。ところで、調査委員会では追加の調査が行われる、との情報もあります。もし、その調査の結果、2015年の論文にも捏造・改ざんの事実があったとしたら、そちらの方が大事件です。追加調査の結果に加え、この臨床研究の今後がとても気になります。参考1)Nojiri T et al., Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America. 2015 Mar 31;112;4086-91.

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「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン」6年ぶりの改訂

 『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版』が7月22日に発刊された。今回の改訂は2014年版が発刊されてから6年ぶりで、ヒドロモルフォン(商品名:ナルサスほか)、トラマドール塩酸塩の徐放性製剤(商品名:ワントラム)などの新規薬物の発売や新たなエビデンスの公表、ガイドライン(GL)の作成方法の変更などがきっかけとなった。本書の冒頭では日本緩和医療学会理事長の木澤 義之氏が、「分子標的薬ならびに免疫チェックポイント阻害薬をはじめとするがん薬物療法が目覚ましい発展を遂げていることなどを踏まえて改訂した」と述べている。 がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版の主な改訂点については、8月9日~10日にWeb開催された「緩和・支持・心のケア 合同学術大会」での教育講演「『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2020年版)』の概要」でも発表され、馬渡 弘典氏(横浜南共済病院 緩和支持療法科)が解説した。がん疼痛の薬物療法に関するガイドラインとして必要な情報に絞る まず、がん疼痛の薬物療法に関するガイドラインの改訂版は作成方法の変更により計325ページから185ページへと大幅にボリュームダウン。大幅に絞られた臨床疑問は65項目から28項目に絞られ、Appendixには委員会で討論したが根拠が乏しく解説文に記載しなかったこと、現場の臨床疑問・現在までの研究と今後の検討課題が記載された。以前まで取り上げられていた「麻薬に関する法的・制度的知識」「がん疼痛マネジメントを改善するための組織的な取り組み」「薬物療法以外の痛み治療法(放射線療法、神経ブロック、骨セメント)」はがん疼痛の薬物療法に関するガイドラインの枠組みでは扱いづらくなったとのことで2020年版では割愛されたが、「大切な事項なので書籍などで確認を」と述べた。2020年版では突出痛の定義が近年の考えを加味して変更された 馬渡氏はがん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版を作成する際に生じたエビデンスと推奨のギャップについて解説した上で、疼痛強度に応じた鎮痛薬の使用方法を説明した。まず、中等~高度のがん疼痛についてはCQ3~7*を示し、「中等~高度の疼痛がある患者に対して、強オピオイド間の優劣については今回のシステマティックレビューでは認められなかったため、本ガイドラインではどの薬剤を選択しても良いと結論付けられている」と説明。CQ6(がん疼痛のある患者に対して、フェンタニルの投与は推奨されるか?)については、今年6月末にフェンタニルの貼付剤(商品名:フェントステープ)がオピオイド鎮痛剤未使用のがん疼痛患者へ適応となったことにも触れた。また、それ以前に決定稿になったことを断ったうえで、フェンタニルによる初回投与は、『投与後に傾眠、呼吸抑制の重篤な有害作用の有無を継続して観察出来るとき』の条件付き推奨となったことを述べた。さらに、「添付文書にも 増量時の注意事項が書かれているので、注意して経過観察してほしい」と述べた。*CQ3~7は、「がん疼痛のある患者に対して、各薬剤(モルヒネ、ヒドロモルフォン、オキシコドン、フェンタニル、タペンタドール)の投与は推奨されるか?」について記載。 次に、2018年のWHOのガイドライン改訂で、3段階ラダーの表現が本文から付録に相当するANNEXに移ったが、がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版でも中等度のがん疼痛では「強い推奨が弱オピオイドから強オピオイドに変更された」点について説明。CQ8(がん疼痛のある患者に対して、コデインの投与は推奨されるか?)やCQ9(がん疼痛のある患者に対して、トラマドールの投与は推奨されるか?)、CQ23(がん疼痛のある患者に対して、初回投与のオピオイドは、強オピオイドと弱オピオイドのどちらが推奨されるか?)の内容に反映されている。 突出痛については、「突出痛の定義は国際的に決まったものはないが、『持続痛の有無や程度、鎮痛薬治療の有無にかかわらず発生する一過性の痛みの増強』から『定期的に投与されている鎮痛薬で持続痛が良好にコントロールされている場合に生じる、短時間で悪化し自然消失する一過性の痛み』へと、近年の考えを加味して変更された」と解説した。また、がん疼痛の薬物療法に関するガイドラインにおける突出痛に投与するオピオイドの薬剤の用語の統一についても触れ、総称区分を以下のように示した。●速放性製剤:経口モルヒネ、ヒドロモルフォン、オキシコドンなど●経粘膜性フェンタニル:フェンタニル口腔粘膜吸収製剤●レスキュー薬:突出痛に投与するオピオイドの経口薬、注射剤、坐剤すべてがん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版の変更点 このほか、がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版の変更点として、腎機能低下時の投与や便秘時について解説。CQ17(オピオイドが原因で、便秘のあるがん患者に対して、下剤、その他の便秘治療薬の投与は推奨されるか?)やCQ22(がん疼痛のある、高度の腎機能障害患者に対して、特定のオピオイドの投与は推奨されるか?)を示し、「高度の腎機能障害患者にフェンタニルやブプレノルフィンの“注射剤”を推奨していること。コデイン、モルヒネを投与する場合は短期間で少量から投与すること。軽度から中等度の腎障害では減量すればどのオピオイドも投与可能。ただし、ブプレノルフィンは高度の腎機能障害がある時や、ほかの強オピオイドが投与できない時に限定する」と述べた。<今回からがん疼痛の薬物療法に関するガイドラインに追加された主な新規薬剤>・ヒドロモルフォン(商品名:ナルサス、ナルラピド、ナルペイン)・オキシコドン塩酸塩水和物徐放錠(同:オキシコンチンTR錠)[オキシコンチン錠の販売中止に伴う]・トラマドール塩酸塩(同:トラマールOD錠、ワントラム)とアセトアミノフェン配合剤(同:トラムセット)[カプセル剤の販売中止に伴う]・ミロガバリン(同:タリージェ)・ナルデメジン(同:スインプロイク)とその他の便秘治療薬(ポリエチレングリコール製剤、リナクロチド[同:リンゼス]、エロピキシバット[同:グーフィス])<がん疼痛の薬物療法に関するガイドラインから削除された主な薬剤>・モルヒネ製剤の一部(同:カディアン、ピーガード)・エプタゾシン(同:セダペイン)、ジヒドロコデインリン酸塩(同:リン酸ジヒドロコデイン)、ペチジン塩酸塩(同:ペチジン塩酸塩「タケダ」) 今後の予定として、同氏は2020年版のガイドライン作成過程で用いた各種のテンプレートを掲載した詳細資料を作成し、『本ガイドライン作成の経過やより詳細な内容を知りたい読者がインターネット上で閲覧できるようにする』『CQ、ステートメントを英文化し、国際紙に掲載する』などを掲げた。また日本緩和医療学会より一般市民向けに2017年に出版されている「患者さんと家族のためのがんの痛み治療ガイド 増補版」も改訂が必要とされれば速やかに改訂を行うこととすると述べ、「教科書などとうまく使い分けて役立ててもらえれば」と締めくくった。

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METエクソン14スキッピング肺がん治療薬カプマチニブ発売/ノバルティス

 ノバルティス ファーマ、2020年8月26日、MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(NSCLC)治療薬として、カプマチニブ (商品名:タブレクタ)を発売した。 カプマチニブはMETに対する選択的な経口阻害薬で、NSCLCにおける発がんドライバー因子であるMETex14変異に対しても阻害活性を有する。 METex14変異陽性のNSCLCは、肺がんの中でも予後不良な集団で治療選択肢が限られており、METex14を標的とする治療法の開発が望まれていた。METex14変異はNSCLC患者の約3~4%に報告されており、切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌患者数は日本国内では約3,000名程度と推定される。 カプマチニブのの適応判定は、2020年6月25日に厚生労働省より承認を取得しているFoundationOne CDx がんゲノムプロファイルによって行う。 カプマチニブは、米国では2019年9月に画期的治療薬指定、本年2月に優先審査品目指定、5月に承認を取得している。本邦においては2019年5月に「MET遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌」を予定される効能・効果として希少疾病用医薬品指定を受け、 2020年6月29日に製造販売が承認されている。

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ペムブロリズマブ、6週ごと投与の用法・用量を追加/MSD

 MSDは、2020年8月21日、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)のすべての効能・効果における用法・用量について、単剤または併用療法を問わず、これまでの「1回200mgを3週間間隔で30分間かけて点滴静注する」に加えて、「1回400mgを6週間間隔で30分間かけて点滴静注する」が追加となったと発表。 今回の用法・用量追加は、薬物動態シミュレーション、曝露量と有効性または安全性との関係に基づいて検討した結果、新規用法・用量である1回400mgを6週間間隔で投与した場合の有効性または安全性は、既承認の用法・用量である1回200mgを3週間間隔で投与した場合と明確な差異がないと予測され、承認に至ったもの。 ペムブロリズマブは、2017年2月15日に国内で販売を開始した。これまでに「悪性黒色腫」「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」「再発または難治性の古典的ホジキンリンパ腫」「がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮癌」「がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」「根治切除不能又は転移性の腎細胞癌」「再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌」の効能・効果について承認を取得している。また、乳がん、大腸がん、前立腺がん、肝細胞がん、小細胞肺がん、子宮頸がん、進行固形がんなどを対象とした後期臨床試験が進行中である。

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がん治療で心疾患リスクを伴う患者の実態と対策法/日本循環器学会

 第84回日本循環器学会学術集会(2020年7月27日~8月2日)で佐瀬 一洋氏(順天堂大学大学院臨床薬理学 教授/早稲田大学医療レギュラトリーサイエンス研究所)が「腫瘍循環器診療の拡がりとCardio-Oncology Rehabilitation(CORE)」について発表。がんを克服した患者の心血管疾患発症リスクやその予防策について講演した。循環器医がおさえておくべき、がん治療の新たなる概念-サバイバーシップ がん医療の進歩により、がんは不治の病ではなくなりつつある。言い換えるとがん治療の進歩により生命予後が伸びる患者、がんサバイバーが増えているのである。とくに米国ではがんサバイバーの急激な増加が大きな社会問題となっており、2015年時点で1,500万人だった患者は、今後10年でさらに1,000万人の増加が見込まれる。 たとえば小児がんサバイバーの長期予後調査1)では、がん化学療法により悪性リンパ腫を克服したものの、その副作用が原因とされる虚血性心疾患(CAD)や慢性心不全(CHF)を発症して死亡に繋がるなどの心血管疾患が問題として浮き彫りとなった。成人がんサバイバーでも同様の件が問題視されており、長期予後と循環器疾患に関する論文2)によると、乳がん患者の長期予後は大幅に改善したものの「心血管疾患による死亡はその他リスク因子の2倍以上である。乳がん診断時の年齢が66歳未満では乳がんによる累計死亡割合が高かった一方で、66歳以上では心血管疾患(CVD)による死亡割合が増加3)し、循環器疾患の既往があると累計死亡割合はがんとCVDが逆転した」と佐瀬氏はコメントした。心疾患に影響するがん治療を理解する この逆転現象はがん治療関連心血管疾患(CTRCD:Cancer Therapeutics-Related Cardiac Dysfunction)が原因とされ、このような患者は治療薬などが原因で心血管疾患リスクが高くなるため、がんサバイバーのなかでも発症予防のリハビリなどを必要とする。同氏は「がん治療により生命予後が良くなるだけではなく、その後のサバイバーシップに対する循環器ケアの重要性が明らかになってきた」と話し、がんサバイバーに影響を及ぼす心毒性を有する薬を以下のように挙げた。●アントラサイクリン系:蓄積毒性があるため、生涯投与量が体表面積あたり400mg/m2を超えるあたりから指数関数的にCHFリスクが上昇する●分子標的薬:HER2阻害薬はアントラサイクリン系と同時投与することで相乗的に心機能へ影響するため、逐次投与が必要。チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)は世代が新しくなるにつれ血栓症リスクが問題となる●免疫チェックポイント阻害薬:PD-1阻害薬とCTLA-4阻害薬併用による劇症心筋炎の死亡報告4)が報告されている これまでのガイドラインでは、薬剤の影響について各診療科での統一感のなさが問題だったが、2017年のASCOで発表された論文5)を機に変革を迎えつつある。心不全の場合、日本循環器学会が発刊する『腫瘍循環器系の指針および診療ガイドライン』において、がん治療の開始前に危険因子(Stage A)を同定する、ハイリスク患者とハイリスク治療ではバイオマーカーや画像診断で無症候性心機能障害(Stage B)を早期発見・治療する、症候性心不全(Stage C/D)はGLに従って対応するなど整備がされつつある。しかしながら、プロテアソーム阻害薬や免疫チェックポイント阻害薬のような新規薬剤は未対応であり、今後の課題として残されている。循環器医からがんサバイバーへのアプローチが鍵 がん治療が心機能へ影響する限り、これからの循環器医は従来型の虚血性心疾患と並行して新しい危険因子CTRCDを確認するため「がん治療の既往について問診しなければならない」とし、「患者に何かが起こってから対処するのではなく腫瘍科医と連携する体制が必要。そこでCardio-Oncologyが重要性を増している」と述べた。 最後に、Cardio-Oncologyを発展させていくため「病院内でのチームとしてなのか、腫瘍-循環器外来としてなのか、資源が足りない地域では医療連携として行っていくのか、状況に応じた連携の進め方が重要。循環器疾患がボトルネックとなり、がん治療を経た患者については、腫瘍科医からプライマリケア医への引き継ぎ、もしくは心血管疾患リスクが高まると予想される症例は循環器医が引き継いでケアを行っていくことが求められる。これからの循環器医にはがんサバイバーやCTRCDに対するCORE6)を含めた対応が期待されている」と締めくくった。■参考1)Armstrong G, et al. N Engl J Med. 2016;374:833-842.2)Ptnaik JL, et al. Breast Cancer Res. 2011 Jun 20;13:R64.3)Abdel-Qadir H, et al. JAMA Cardiol. 2017;2:88-93.4)Johnson DB, et al. N Engl J Med. 2016;375:1749-1755.5)Almenian SH, et al. J Clin Oncol. 2017;35:893-911.6)Sase K, et al. J Cardiol.2020 Jul 28;S0914-5087(20)30255-0.日本循環器学会:心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2012年改訂版)

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デュルバルマブ、進展型小細胞肺がんに国内適応拡大/アストラゼネカ

 アストラゼネカは、2020年8月21日、デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)について、化学療法(エトポシドおよびカルボプラチンまたはシスプラチン)との併用療法で、進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)を適応症に厚生労働省より承認を取得したと発表。 デュルバルマブに対する今回の承認は、デュルバルマブと化学療法との併用療法が、化学療法単独との比較において、統計学的に有意で臨床的に意義のある全生存期間(OS)の延長を示した第III相CASPIAN試験の結果に基づいている。 2019年6月、CASPIAN試験において、デュルバルマブと化学療法との併用療法は、化学療法単独との比較で主要評価項目であるOSの延長を示し、死亡リスクを27%低下させた(ハザード比:0.73、95%信頼区間:0.59~0.91、p=0.0047)。OS中央値は化学療法単独群の10.3ヵ月に対し、デュルバルマブと化学療法との併用療法群では13.0ヵ月であった。また、デュルバルマブと化学療法との併用療法群では、客観的奏効率(Confirmed)の増加(化学療法単独群58%に対して、デュルバルマブと化学療法との併用療法群68%)が示され、化学療法にデュルバルマブを追加することで、肺がん関連の症状が悪化するまでの期間が延長することが示された。 最新の解析データでは、追跡期間中央値が2年を超えた時点でも、デュルバルマブと化学療法との併用療法による持続的な有効性が示され(OSハザード比:0.75、95%信頼区間:0.62 ~0.91、p=0.0032)、OS中央値は化学療法単独群の10.5ヵ月に対し、デュルバルマブと化学療法との併用療法群では12.9ヵ月であった。デュルバルマブと化学療法との併用療法の安全性および忍容性は、これらの医薬品の既知の安全性プロファイルと一致していた。 デュルバルマブとエトポシドおよびカルボプラチンまたはシスプラチンとの併用療法は、のES-SCLCの1次治療薬として、米国および世界中の数ヵ国で承認されている。

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第22回 老化で溜まる屑ががん細胞を転移しやすくする~血を薄めて若返り?

高齢になるほどがんを生じてがんで死亡することが多くなり、がんによる死亡は主に転移を原因とします。米国・ニューヨーク市のコーネル大学のチームによる新たな研究の結果、食物中のタンパク質等をエネルギーに変える代謝で生じるいわば屑・メチルマロン酸(MMA)が高齢になるほど血液中に蓄積し、上皮間葉転換(EMT)に似た仕組みを経てどうやらがん細胞を転移しやすくすると分かりました1-4)。先立つ研究で、転移し始める細胞のMMAが増えると分かっていました3)。また、高齢者にMMAが多いことも知られていました。それら2つの発見を背景にしてチームはMMAが高齢者と発がんの関連に寄与しているかもしれないと考え、血液中のMMA が多い60歳以上の高齢者30人の血清と25~30歳の若者30人の血清を肺がん細胞や乳がん細胞に投与してどうなるかを検討しました。その結果、若者の血清を投与したがん細胞の特性は多くの場合変化しませんでした。一方、高齢者の血清が投与されたがん細胞は多くの場合EMTに似た仕組みによって転移特性を備え、別の試験でその変化の多くがMMAに起因していると判明しました。それらのがん細胞はたしかに転移誘発作用があり、マウスに注射したところ肺に転移性の腫瘍を生み出しました。MMAは高齢者の血液中に存在する大きな脂肪の粒と恐らく複合体を形成して血管壁を出てがん細胞に運ばれ、SOX4という遺伝子発現を促すことでがん細胞を転移可能な状態にするようです。MMAを運ぶその脂肪粒の特性やMMAがどういう仕組みでSOX4の発現を促すのかは分かっておらず、今後の研究で調べる必要があります。また高齢になるほどMMAが蓄積する理由なども今後の研究で明らかになるでしょう。まだまだ課題はありますが、MMAを減らしてがんによる死亡を防ぐ治療が生み出されることを何よりも望むと研究を率いたコーネル大学教授John Blenis氏は言っています3)。血を薄めて若返りを図る?老化するほど血液に溜まる有害成分はMMAだけではないようで、老化に伴って蓄積する有害タンパク質もどうやら存在し、それらを薄める血漿瀉血(血漿交換)に似た処置で老いたマウスを若返らせうることがカリフォルニア大学バークレー校(UC Berkeley)の最近の研究で示されています5,6)。研究者は老齢マウスの血漿の半分をそれらに含まれるアルブミン相当量添加(アルブミン5%)生理食塩水で置き換えて血漿中のタンパク質を薄めました。すると老化で増える炎症促進タンパク質の数が減り、血管新生などに携わる有益なタンパク質は逆に増え、脳・肝臓・筋肉が若返りました。血漿成分を変える瀉血は種々の自己免疫疾患の治療として米国FDAにすでに承認されています。少し手を加えた瀉血で高齢者の体調を改善できるかどうかや、筋肉減少・神経変性・2型糖尿病・免疫不全などの老化疾患を治療できるかどうかを調べる試験の準備をしていると6月中旬の同大学のニュースで述べられています5)。MMAも薄まるのであればもしかすると瀉血でがん転移も減らせるかもしれません。参考1)Age-induced accumulation of methylmalonic acid promotes tumour progression. Nature. 19 August 20202)Study finds cancer-boosting culprit that multiplies with age / AFP 3)Aging People Accumulate a Molecule that Promotes Cancer and Metastasis / Weill Cornell Medicine4)Molecules in the blood of older people promote cancer spread / Nature 5)Diluting blood plasma rejuvenates tissue, reverses aging in mice / Eurekalert6)Mehdipour M,et al. Aging. 2020 May 31; 12: 8790–8819.

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肺がんNGSコンパニオン診断、有効活用に向けた実臨床での分析【肺がんインタビュー】 第50回

第50回 肺がんNGSコンパニオン診断、有効活用に向けた実臨床での分析肺がんでは、次世代シーケンス(NGS)によるコンパニオン診断が承認され、治療初期からの網羅的な遺伝子診断が可能となった。しかし、実臨床における活用状況や、その成績は明らかになっていない。「西日本がん研究機構(WJOG)」では、これらの現状を明らかにするWJOG13019Lを実施している。研究代表医師である北九州市立医療センター 大坪 孝平氏に聞いた。明らかになっていない、NGSによる肺がん初期遺伝子診断の実態―この試験を実施する背景について教えていただけますか。画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する肺がんには複数のドライバー遺伝子変異があります。なかでもEGFR、ALK、ROS1、BRAFなどの遺伝子変異/転座は分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害薬)が高い有効性を示すため、肺がんでは、初期診断の段階で複数のドライバー遺伝子を同時に測定することが推奨されます。そのような中、46種類遺伝子を同時に検索できる次世代シークエンス(NGS)を用いたコンパニオン診断システム「オンコマインDx Target Test マルチCDxシステム(以下、オンコマインDxTT)」が、2019年6月に保険収載され、上記4つの変異測定に使用できるようになりました。 従来の検査法では、ドライバー遺伝子ごとに別のコンパニオン診断薬が必要でした。その結果、複数の遺伝子変異を同時に測定するためには、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)標本が 、最大で30枚程度必要になります。実臨床でそれだけの組織を採取することは容易ではありません。実際、23.4%の患者さんが検体不足により4つのドライバー遺伝子測定を完遂できなかったとの報告もあります。オンコマインDxTTを用いると、10枚程度の標本で遺伝子変異が測定可能となり、こういった課題も解消されると想定されました。 しかし、実臨床ではオンコマインDxTTを利用しても、検体量不足や検体の質の問題で、測定不能と判定されることがあります。NGSを用いた遺伝子変異測定の成功率はどの程度か、また、どういう採取方法で、どれくらいの検体を採り、どういう病理学的処理をすれば、きちんと遺伝子変異を測定できるのか。当試験は、全国の肺がん治療医が持っている、このような疑問を明らかにするために計画されました。 実臨床での遺伝子変異の実態を明らかにし、治療開始の遅れをなくす―WJOG13019L試験の概要について教えていただけますか。この試験の略称は「DETECT-LC」で、WJOGの若手グループ「WING」が主体となり、サーモフィッシャー社の資金援助を受け、大阪市立大学をデータセンターとして実施しています。 対象は、WINGの施設を主体とした19施設において、2019年6月1日~20年1月31日に、オコマインDxTTによる遺伝子検査が行われた非小細胞肺がんです。登録後、検体情報と臨床情報を収集して、後ろ向きに解析します。主要評価項目は、遺伝子変異測定成功割合(EGFR、ALK、ROS1、BRAFすべての測定が成功した割合)、副次評価項目は検体条件(検体採取方法、腫瘍細胞含有率、固定条件、マイクロダイセクションの有無)による遺伝子変異測定成功割合、測定成功症例における遺伝子変異陽性率(46種類)、検体提出から結果判明までの期間です。わが国の実臨床で、NGSでの各遺伝子の検出頻度や、検体条件による測定成功率の違いなどは明らかになっていなかったので、注目する医師は多いと思います。2020年4月から開始した登録は、同年6月末終了し、2020年7月1日現在、目標の500例を超える533例が集まっています。今後、解析を行い、学会および論文で発表する予定です。―この試験の結果は、臨床にどのように影響を与えるでしょうか。EGFRやALKなど治療ターゲットとなるドライバー遺伝子が「測定不能」として返ってきた場合、別のコンパニオン診断薬を使って測定し直すという時間のロスを生じます。この試験の結果が、非小細胞肺がんの患者さんに対する治療導入の遅れを減らすことにつながれば、大きなメリットになると考えています。また、前述の4つの遺伝子や、KRASなど今後治療ターゲットとなりえるドライバー遺伝子の変異/転座の割合が明らかになることで、今後の治療薬開発につながっていく可能性もあり、非常に重要だと思っています。

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肺がん死亡率低下、NSCLCとSCLCで異なる傾向/NEJM

 米国の非小細胞肺がん(NSCLC)による住民レベルでみた死亡率は、2013年から2016年にかけて、性別や人種を問わず大幅に低下していることが、米国・国立がん研究所のNadia Howlader氏らによる検討で明らかにされた。低下に寄与しているのは診断後の生存率の大幅な改善によるもので、著者は、「治療の進歩による罹患率の低下、とくに同時期に承認された分子標的治療薬の使用が、観察された死亡率の低下に寄与しているであろうことが示唆される」と分析している。肺がんには、NSCLCや小細胞肺がん(SCLC)など異なるサブタイプがある。米国では肺がん全死亡率は低下しているが、住民レベルでみた肺がんのサブタイプ別の死亡傾向については、死亡届にサブタイプまでの情報は記載されないため不明だった。NEJM誌2020年8月13日号掲載の報告。米国がんレジストリのデータから肺がんサブタイプ別の死亡動向を評価 研究グループは、米国住民の28%を網羅するSEER(Surveillance, Epidemiology, and End Results)18レジストリのデータを用いて、SEERがんレジストリにおける肺がん死亡について評価し、肺がん死と罹患例を関連付けることで、特定の肺がんサブタイプに起因する住民レベルの死亡傾向(罹患率ベースでみた死亡率)を評価した。 また、肺がん罹患率と生存率についても、がんサブタイプ別、性別、暦年別に評価を行った。解析は、ジョインポイントソフトウエアを用いて行い、罹患率の変化、罹患率ベース死亡率を評価した。NSCLC死亡率は罹患率よりも早く低下、分子標的薬の承認時期と一致 NSCLC死亡率は、NSCLCの罹患率と比べてより早く低下していた。この低下は、経時的な生存率の大幅な改善と関連しており、分子標的治療薬の承認時期と一致していた。 男性におけるNSCLC罹患率ベース死亡率は、2008~16年は年率3.1%だったが、2013~16年は同6.3%だった。これに対応した男性の肺がん特異生存率は、2001年にNSCLCと診断された男性では26%だったのに対し、2014年には同35%に改善していた。この生存率の改善は、人種や民族にかかわらずみられ、また同様の傾向は女性でも認められた。 一方で、SCLC死亡率は、罹患率の低下とほぼ完全に一致して低下しており、生存率の改善はみられなかった。この傾向は、調査期間中のSCLC治療の進歩が限定的だったことと関連していた。

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ぺムブロリズマブ+化学療法による小細胞肺がん1次治療、PFSを延長(KEYNOTE-604)/JCO

 未治療の進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)に対する、初回治療としての抗PD-1抗体ペムブロリズマブと化学療法(エトポシド+プラチナ:EP)の併用療法について検討した第III相プラセボ対照二重盲検無作為化試験KEYNOTE-604において、ペムブロリズマブ+EPはプラセボ+EPと比較して、無増悪生存(PFS)を有意に延長したことが報告された。ペムブロリズマブ併用群で、想定外の毒性はみられなかったという。米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのCharles M. Rudin氏らによる検討で、著者は「示されたデータは、ES-SCLCにおけるペムブロリズマブの有益性を支持するものである」と述べている。先行研究で、SCLC患者においてペムブロリズマブ単独療法が抗腫瘍活性を示したことが報告されていた。Journal of Clinical Oncology誌2020年7月20日号掲載の報告。 試験では、適格患者を無作為に1対1で割り付け、ペムブロリズマブ200mgを3週ごと(最大35サイクル)+EP(最大4サイクル)またはプラセボ+EP(最大4サイクル)が投与された。 主要評価項目は、PFS(中央レビュー委員会評価)および全生存(OS)で、ITT解析にて評価した。副次評価項目は、客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)であった。事前に規定した有効性のp値(片側検定による)は、PFSがp=0.0048、OSがp=0.0128であった。 主な結果は以下のとおり。・被験者は453例で、228例がペムブロリズマブ+EP群に、225例がプラセボ+EP群に割り付けられた。・ペムブロリズマブ+EP群は、PFSを有意に改善した(ハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.61~0.91、p=0.0023)。12ヵ月時点の推定PFS率は、ペムブロリズマブ+EP群が13.6%、プラセボ+EP群は3.1%であった。・ペムブロリズマブ+EP群はOSを延長したが、有意差は示されなかった(HR:0.80、95%CI:0.64~0.98、p=0.0164)。24ヵ月時点の推定OS率は、ペムブロリズマブ+EP群22.5%、プラセボ+EP群11.2%であった。・ORRは、ペムブロリズマブ+EP群70.6%、プラセボ+EP群は61.8%であった。12ヵ月時点で奏効が持続していたレスポンダーの推定割合は、それぞれ19.3%、3.3%であった。・全要因の有害事象の発現頻度は、Grade3/4がペムブロリズマブ+EP群76.7%、プラセボ+EP群74.9%、Grade5はそれぞれ6.3%、5.4%、あらゆる薬物の中断率は14.8%、6.3%であった。

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コロナ禍、がん診断の遅れで5年後がん死増加の恐れ/Lancet Oncol

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が、がん死に影響するとの報告が英国から寄せられた。同国ではCOVID-19のパンデミックにより2020年3月に全国的なロックダウンが導入されて以降、がん検診は中断、定期的な診断・診療も延期され、緊急性の高い症候性患者のみに対して診断・治療が行われているという。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のCamille Maringe氏らは、診断の遅れが主ながん患者の生存率にどのような影響を及ぼすのかモデリング研究にて検討し、回避可能ながん死が相当数増加すると予想されることを明らかにした。結果を踏まえて著者は、「緊急の政策介入が必要である。とくに、COVID-19パンデミックのがん患者への影響を軽減するため、定期的な診断サービスの確保を管理する必要がある」とまとめている。Lancet Oncology誌オンライン版2020年7月20日号掲載の報告。コロナ禍の診断遅延によるがんの5年間の追加死亡は3,291~3,621例 研究グループは、英国の国民保健サービス(NHS)のがん登録および病院管理データを用い、2010年1月1日~12月31日の間に乳がん、大腸がんまたは食道がんと診断され2014年12月31日までの追跡データがある、または、2012年1月1日~12月31日の間に肺がんと診断され2015年12月31日までの追跡データがある15~84歳の患者を特定し、物理的距離を確保する対策が開始された2020年3月16日から1年間の診断遅延が及ぼす影響について解析した。 診断遅延の生存に対する2次的影響をモデル化するため、通常のスクリーニングと紹介の経路での患者を、診断時の病期がより進行していることと関連する緊急経路に割り当て、最良から最悪まで3つのシナリオについて、診断後1、3、5年時点でのがんに起因する追加死亡および全損失生存年数(YLL)を算出し、パンデミック前のデータと比較した。 コロナ禍の診断遅延による診断後1、3、5年時点でのがんに起因する追加死亡を算出した主な結果は以下のとおり。・乳がん患者3万2,583例、大腸がん患者2万4,975例、食道がん患者6,744例、肺がん患者2万9,305例が解析に組み込まれた。・乳がんでは、診断後5年時までの乳がん死が7.9~9.6%(追加死亡相当で281例[95%信頼区間[CI]:266~295]~344例[329~358])増加すると推定された。・同様に、診断後5年時までの大腸がん死は15.3~16.6%(追加死亡1,445例[95%CI:1,392~1,591]~1,563例[1,534~1,592])、肺がん死は4.8~5.3%(追加死亡1,235例[1,220~1,254]~1,372例[1,343~1,401])、食道がん死は5.8~6.0%(追加死亡330例[324~335]~342例[336~348])、それぞれ増加すると推定された。・これら4種のがんについての5年間の追加死亡は、3つのシナリオ全体で3,291~3,621例であり、追加YLLは5万9,204~6万3,229年と推定された。

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肺がん1次治療における抗PD-1抗体sintilimab+化学療法の成績(ORIENT-11)/WCLC2020

 新たな抗PD-1抗体sintilimabの非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)における有効性は、第Ib相試験で示された。この結果を基に、無作為化二重盲検第III相ORIENT-11試験が行われ、その初回解析の結果を中国・Sun Yat-Sen University Cancer Centreの Zhang Li氏が、世界肺癌学会WCLC2020Virtual Presidential Symposiumで発表した。sintilimabがPFSを有意に延長・対象:未治療の局所進行または転移のあるNSCLC患者・試験群:sintilimab(200mg)+ペメトレキセド(500mg/m2)+シスプラチン(75mg/m2)またはカルボプラチン(AUC5) 3週ごと4サイクル投与→sintilimab+ペメトレキセド維持療法(sintilimab群)・対照群:プラセボ+ペメトレキセド+プラチナ 3週ごと4サイクル投与→ペメトレキセド維持療法(化学療法群) 化学療法群のsintilimab群へのクロスオーバーは許容された。・評価項目: [主要評価項目]独立放射線審査委員会評価の無増悪生存期間(PFS) [副次評価項目]全生存期間(OS)、客観的奏効期間(ORR)、効果発現までの時間、安全性 sintilimabのNSCLCにおける有効性を評価した主な結果は以下のとおり。・対照患者397例はsintilimab群266例、プラセボ群131例に2対1で無作為に割り付けられた。プラセボ群のsintilimabへのクロスオーバーは35例(31.3%)であった。・追跡期間中央値8.9ヵ月でのPFS中央値は、sintilimab群8.9ヵ月、化学療法群5.0ヵ月と、sintilimab群で有意に長かった(HR:0.482、95%CI:0.362〜0.643、p<0.00001)。・OS中央値は、両群とも未達であった(HR:0.609、95CI:0.400〜0.926、p=0.01921)。・ORRは、sintilimab群51.9%、化学療法群で29.8%であった。・Grade3以上の有害事象発現率は、sintilimab併用群61.7%、プラセボ併用群58.8%であった。 Discussantである米国・Karmanos Cancer Canterの長阪 美沙子氏は、当試験が東アジアのデータであることを重要であるとした。また、PFS、OSは他の免疫チェックポイント阻害薬のNSCLC1次治療のデータと匹敵するものだとしながら、PFSの改善がOSの改善に結びつかないこともあることから、長期のフォローアップの必要性を強調した。 この試験の結果は、Journal of Thoracic Oncology誌2020年8月8日オンライン版にも同時掲載された。

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IO+Chemoへのベバシズマブ add onは有用か:APPLE Study【肺がんインタビュー】 第48回

第48回 IO+Chemoへのベバシズマブ add onは有用か:APPLE Study出演:九州大学病院 呼吸器科 白石 祥理氏非小細胞肺がん1次治療において免疫チェックポイント阻害薬と化学療法の併用にベバシズマブを上乗せすることの有効性と安全性を検討するWJOG11218L試験(APPLE Study)が進行中である。この試験の研究事務局の九州大学病院 呼吸器科 白石 祥理氏に試験実施の背景と臨床的意義について聞いた。

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EGFR陽性肺がんに対する抗HER3ADC「U3-1402」とオシメルチニブ併用、臨床試験実施へ/第一三共

 第一三共は、2020年8月7日、U3-1402(HER3に対する抗体薬物複合体)とEGFR‐TKIオシメルチニブ(商品名:タグリッソ)との併用療法を評価する臨床試験の実施に関する契約をアストラゼネカと締結したと発表。 本契約に基づき、同社は、EGFR遺伝子変異を有する進行および転移を有する非小細胞肺がん患者を対象とした、両剤併用のグローバル第I相臨床試験を実施する。 本試験は2つのパートからなり、パート1(用量漸増パート)では、同剤とオシメルチニブの異なる投与量の組み合わせによる安全性と忍容性を評価し、推奨用量を決定する。パート2(用量展開パート)では、両剤併用の推奨用量での有効性と安全性を評価する。 用量漸増パートの主要評価項目は安全性と忍容性で、用量展開パートの主要評価項目は客観的奏効率など。北米、欧州、日本を含むアジアにおいて最大258名の患者を登録する予定。

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ニボルマブ+ベバシズマブ+化学療法、非小細胞肺がん1次治療でPFS延長(ONO-4538-52/TASUKI-52)/小野

 小野薬品工業は、2020年8月3日、抗PD-1抗体ニボルマブ(商品名:オプジーボ)について、化学療法未治療の根治照射不能なIIIBIV期又は再発の非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象に、抗VEGF抗体であるベバシズマブと化学療法の併用療法群(ニボルマブ併用療法群:275例)をプラセボ、ベバシズマブと化学療法の併用療法群(対照併用療法群:275例)と比較評価した第III相臨床試験(ONO-4538-52/TASUKI-52)のトップライン結果を発表。本試験において、予め計画していた中間解析で、オプジーボ併用療法群が、対照併用療法群と比較して、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)で統計学的に有意な延長を示した。本試験におけるニボルマブ併用療法群の安全性プロファイルは、化学療法未治療のNSCLC治療において免疫チェックポイント阻害剤、およびベバシズマブと化学療法の併用療法でこれまでに認められているものと一貫していた。 ONO-4538-52/TASUKI-52試験は、化学療法未治療の根治照射不能なIIIB/IV期又は再発の非扁平上皮NSCLCを対象に、ニボルマブ、ベバシズマブと化学療法の併用療法群(ニボルマブ併用療法群:275例)をプラセボ、ベバシズマブと化学療法の併用療法群(対照併用療法群:275例)と比較評価した多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験(ONO-4538-52/TASUKI-52)。ニボルマブ併用療法群の患者には、ニボルマブ360mg、カルボプラチンAUC6、パクリタキセル200mg/m2およびベバシズマブ15mg/kgを3週間1サイクルとして投与し、対照併用療法群の患者には、プラセボ、カルボプラチンAUC6、パクリタキセル200mg/m2およびベバシズマブ15mg/kgを3週間1サイクルとして投与した。両群ともカルボプラチンおよびパクリタキセルは4サイクルまで投与し、安全に投与を継続することが可能と判断された場合は最大6サイクルまで投与継続可能とした。その後、ニボルマブ併用療法群ではニボルマブおよびベバシズマブの投与を、対照併用療法群ではプラセボおよびベバシズマブの投与を病勢進行又は許容できない毒性が確認されるまで継続した。主要評価項目は、独立画像判定委員会の評価に基づくPFS。副次評価項目は全生存期間(OS)、実施医療機関の医師判定に基づくPFSおよび奏効率(ORR)など。

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