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緩和ケアはがん患者だけのものではない!ニーズに基づいた提供をするには【非専門医のための緩和ケアTips】第18回

第18回 緩和ケアはがん患者だけのものではない!ニーズに基づいた提供をするには緩和ケアといえば「がん」患者さんのためのもの、というイメージを持つ方は医療者にも多いのですが、近年、緩和ケアの概念はどんどん広がっています。まさに、パラダイムシフトを迎えている緩和ケアについて、少し紹介しましょう。今日の質問最近、末期心不全患者も緩和ケアの対象となり、診療報酬に収載されたと聞きました。以前から、がん患者にばかり緩和ケアが手厚く提供されるのは違和感があったのですが、今後の動きはどうなっていくのでしょうか?ここでいう診療報酬とは、入院時に緩和ケアチームが緩和ケアを提供した際に算定される「緩和ケア診療加算」のことです。長らく、がんとHIV感染症に限って算定可能だったものが、2018年の診療報酬改定で対象疾患が末期心不全にも拡大された、という背景があります。以前から、特定の疾患に限って緩和ケアを提供する制度設計には批判も多く、わが国の緩和ケア提供の課題の一つでした。なので、対象拡大は大きな一歩といえるでしょう。われわれのように現場で緩和ケアを実践する立場からすれば、重篤な疾患を抱えた患者さんやご家族に、疾患の種類を問わず、幅広くケアを提供したいのは当然の思いです。さらに最近のトピックスは、透析患者の透析中止や慢性呼吸器疾患に対する緩和ケアに対する議論が広まっています。日本呼吸器学会は「非がん性呼吸器疾患緩和ケア指針2021」を公開、COPDなど非がん患者の終末期ケアの原則や考え方を提示しました。外来で呼吸器疾患の患者さんを見ているプライマリ・ケア医にとって、待望の指針でしょう。今後もこのような緩和ケアの対象疾患の拡大傾向は続くと思います。このように緩和ケアの概念が広がっていくことは、緩和ケアニーズがある方に広く緩和ケアを届ける、という意味で好ましいことです。そしてそれを実現するためには、外来診療などのプライマリ・ケアの場で緩和ケアを実践する人が増える必要があります。学会や勉強会などでこうした話をすると、「外来診療だけなので、緩和ケアは要らないんですよ」というコメントをいただくことがあります。でも、本当にそうでしょうか? 確かに外来に来られるくらいの患者さんであれば「すぐに対応が必要な症状」や「今日どうしても話し合わなければならない病状」はないかもしれません。しかし、そんな患者さんも、人生の最終段階についての気掛かりがあり、支援を必要としていながら、それを医療者に伝えられていないだけかもしれません。2017年に厚生労働省が行った「人生の最終段階における医療に関する意識調査」では、「人生の最終段階における医療について話し合ったことがない」人の割合が55.1%と半数以上でした。一方で、その理由を尋ねたところ「話し合いたくない」という回答は5.8%にすぎず、「話し合うきっかけがなかった」との回答が最多の56%でした。病状が安定している方が多く、時間も取りにくい外来診療ですが、数年単位で患者さんとのお付き合いができることが強みです。ぜひ、疾患にとらわれない緩和ケアのニーズに目を向けてみてください。今回のTips今回のTips緩和ケアはがん患者だけのものではない。外来にも多くのニーズがあります。

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見逃してはならない“しびれ”とその部位は?【Dr.山中の攻める!問診3step】第9回

第9回 見逃してはならない“しびれ”とその部位は?―Key Point―しびれは重大な疾患の一つの症状のことがあるしびれの分布や部位から原因疾患を絞り込むことができる頻度が高い疾患は、症状の特徴を覚えておくと診断が容易である症例:68歳 女性主訴)右胸痛、呼吸苦現病歴)7日前、突然左指と左口唇がしびれたが数分で改善した。脳MRI検査を受けたが異常なし。昨夕から徐々に右胸痛と右背部痛が出現。体動時と深呼吸時に痛みは増悪。動くと息切れあり。本日、外出時に痛みの増悪を認め来院した。既往歴)COPD薬剤歴)なし社会歴)たばこ:20歳から45歳まで30本/日アルコール:飲まない経過)左指と左口唇のしびれからは視床の病変が連想される(手口感覚症候群)。視床では口唇と手指の感覚領域が近接して存在する息をすると胸が痛むという症状は胸膜に病変が及んでいることを示唆する胸部レントゲン写真で異常陰影を認めたので、胸部CT検査を行い原発性肺がん(S4) と右第7肋骨骨転移の診断となった肺がんのため過凝固となり手口感覚症候群を起こしたと考えられた◆今回おさえておくべき臨床背景はコチラ!高齢者はしびれをよく訴える多発神経障害は臨床で遭遇する頻度が高い多発性単神経障害なら原因疾患を絞り込みやすい【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2-1】見逃してはならないしびれかを考察する1)手口感覚症候群(視床の出血/梗塞)指先がしびれている時には、口もしびれていないか必ず確かめるWallenberg症候群(延髄外側症候群)病側の顔面温痛覚低下(V)+構音障害/嚥下障害(IX、X) + ホルネル症候群 + 小脳失調、反対側の体幹/上下肢の温痛覚低下(外側脊髄視床路)Guillain-Barre症候群数日から数週間で急速に進行する。カンピロバクター感染症による下痢が先行することがある。症状は下肢から始まる左右対称性弛緩麻痺、呼吸筋麻痺、自律神経障害(血圧変動、頻脈、徐脈)。感覚障害はなくてもよい。閉鎖孔ヘルニア患側大腿内側から下腿の痛み/しびれ(Howship-Romberg兆候)、やせ型の高齢女性に多いNumb chin syndrome顎がしびれる。悪性リンパ腫/乳がん/前立腺がんが三叉神経(V3下顎神経)に浸潤【STEP2-2】しびれの分布から考える多発神経障害(polyneuropathy)2)神経線維の長い足底から上方にしびれが進行。左右対称性<主な原因>DANG THERAPIST(ひどい療法士)*以下の各頭文字を表しているDM(糖尿病)Alcohol(飲酒)Nutritional(ビタミンB12、銅欠乏)Guillain-Barre(ギランバレー症候群)Toxic(中毒:重金属、薬剤)Hereditary(Charcot-Marie-Tooth)Renal(尿毒症)Amyloidosis(アミロイドーシス)Porphyria(ポルフィリン症)Infection(感染症:HIV、ライム病)Systemic(全身性:血管炎、サルコイドーシス、シェーグレン症候群)Tumor(腫瘍随伴症候群)多発性単神経障害(mononeuritis multiplex)いろいろな部位の単神経障害が左右非対称に進行糖尿病、血管炎、膠原病(SLE、関節リウマチ)、HIV【STEP3】部位から原因を鑑別する■母指~環指橈側のしびれ(正中神経支配)手根管症候群(最も頻度の高い末梢性絞扼神経障害)夜間に増悪、手を振ると軽快、リスクファクターは手を使う職業、甲状腺機能低下症、糖尿病、関節リウマチ、アミロイドーシス、末端肥大症、妊娠。猿手■環指尺側と小指のしびれ(尺骨神経支配)肘部管症候群変形性関節症、ガングリオン、スポーツ、小児期の骨折による外反肘が原因。鷲手変形■手背母指と示指のしびれ(橈骨神経支配)橈骨神経麻痺飲酒後に肘掛け椅子で寝て上腕内側を圧迫。下垂手■上肢のしびれ…頸椎症による神経障害3)神経根症頸部~肩甲骨部の痛み、デルマトームに沿った根性疼痛(しびれだけなら脊髄症)脊髄症手のしびれで発症し、手指が器用に動かせなくなる。10秒テスト: 手掌を下にしてできるだけ速く、グーとパーを繰り返す。10秒間で正常者では25~30回できる。胸郭出口症候群上肢のしびれ、肩/上肢/肩甲骨周囲の痛み、腕神経叢の障害■大腿外側のしびれ大腿外側皮神経痛体重増加、妊娠、きついベルトが原因。股関節の伸展/深い屈曲で症状増悪■腰痛+殿部や膝より末梢の下肢に放散痛3)椎間板ヘルニアSLR(straight leg raising)test陽性(感度80%、特異度40%)。95%はL5とS1の根が関与。膝蓋腱反射低下(L4)足関節/母趾背屈力低下(L5)アキレス腱反射低下/つま先立ちができない(S1)■下腿外側~足背のしびれ総腓骨神経麻痺右下肢外側腓骨頭での圧迫。外傷やギプス固定が原因。下垂足のため鶏様歩行■足底~つま先のしびれ足根管症候群内果後方の足根管で脛骨神経を圧迫閉塞性動脈硬化症下肢のしびれや痛み、冷感、間欠性跛行(休息で改善)ABI(ankle-brachial index)1.3<治療>原疾患の治療を行う。 <参考文献>1)塩尻俊明.非専門医が診る しびれ. 羊土社. 2018.2)Mansoor AM. Frameworks for Internal Medicine. 2019. p525-539.3)仲田和正. 手・足・腰診療スキルアップ. シービーアール. 2004.

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未診断のCOPDを放置しないで!早期診断・治療に質問票の活用も

 先日、アストラゼネカが「世界COPDデー(11月17日)」にセミナーを開催した。室 繁郎氏(奈良県立医科大学 呼吸器内科学講座 教授)が、要介護の前段階“フレイル”の予防という視点から、COPDの早期診断・治療の重要性についての講演を行った。つづいて、山村 吉由氏(奈良県広陵町町長)が自治体として2014年度から取り組んでいるCOPD対策事業について講演した。また、セミナーの後半では、3年前にTV番組でCOPDの診断を受けた経験のある松嶋 尚美氏をゲストとして、トークセッションが設けられた。COPDによる死亡者は気管支喘息の約14倍 室氏は、はじめに正常肺組織の電子顕微鏡写真を示し、長期の喫煙が正常な肺にどのように影響を及ぼすのかを図示。COPDに生じる肺気腫や慢性気管支炎・細気管支病変などの病態を説明した。正常肺では、肺胞隔壁は弾性繊維を豊富に含み、吸気において肺は横隔膜筋の収縮により主に頭尾方向に伸長し、呼気では肺自身の弾性収縮力により呼気位に戻る。しかし、COPDでは肺の弾力性が失われており、呼気の気道の虚脱も生じるため、「頑張るほど息が吐けない(胸郭内圧が上昇すると気道虚脱を招いて呼出に時間が掛かる)」状態になるという。 また、COPDに罹患すると肺がん、心不全、心筋梗塞・狭心症、高血圧症、骨粗しょう症、糖尿病、不整脈、消化性潰瘍、胃食道逆流症、うつ病などが併存するリスクが上昇することがガイドラインに記載されている。2020年の人口動態統計では、わが国のCOPDによる死亡者数は1万6,125例で、気管支喘息による死亡者の約14倍だった。とくに男性では死亡原因の第10位となっている。 NICE studyで調査された日本のCOPD有病率は、日本人の全人口あたりでは8.6%だが、喫煙歴(過去も含む)のある高齢者を対象としたデータでは、60歳で15~20%、70歳を超えると35~45%がCOPDという報告もある。高齢喫煙者の5人に1人以上がCOPDを発症する一方で、GOLD日本委員会が一般人を対象に実施したCOPD認知度把握調査によると、COPDを「知らない」と答える人は7割を超えている。室氏は「COPDは、主に喫煙によって引き起こされるありふれた疾患であるにも関わらず、(一般社会や患者さんに)あまり認知されていない」と警鐘を鳴らした。COPDもフレイルも進行させないことが重要 続いて、室氏は「COPDは早期診断・早期治療が重要で、放置しておくと“フレイル”に陥ることも考えられるため、社会課題として取り組まなければいけない疾患だ」と説明。COPD患者の呼吸機能(FEV1)の経年低下は、病早期に最も大きいことをグラフで示した。なお、軽症のうちであれば、禁煙することで呼吸機能が回復する余地があるという。COPDの発症年齢の中央値は現喫煙者で55歳、過去喫煙者で65歳という疫学調査データもあるので、日本が長寿社会であることを踏まえると、早めにやめるほど健康上のメリットが大きい。 COPDによる呼吸機能障害は、身体活動性の低下や疲れやすさにつながり、ゆくゆくは筋肉の質・量の低下、栄養障害による体重減少を引き起こすなど、フレイルとの親和性が非常に高く、その進展をくい止めなければならない。室氏は、COPDやフレイルの簡易的なスクリーニングに「COPD-Q」「COPD-PS」「簡易フレイル・インデックス」など、診察室でも使える質問票の活用を勧めた。 COPDの受診勧奨を自治体として行っている山村町長は、「ハイリスクの方と治療中断者を特定し、受診勧奨のはがきを対象者に送付することで、受診率を上げることができた」と、実際の対策事例を紹介。 講演を聞いた松嶋氏は、診断後も本数は減ったものの喫煙は続いており、治療も受けていないことを明かした。「フレイルという言葉を今回初めて知ったので、COPDの治療を早く行うことが大事だと思いました。子供もいて、将来寝たきりになると困るので、すぐに受診します」と語った。また、その場でセルフチェックを行い、COPD-PSで5点だったことを踏まえ、「喫煙経験のある方はぜひ自分でチェックして、COPDの可能性がある場合は受診しましょう!」と呼び掛けた。

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患者さんのための肺がんガイドブック 2021年版

肺がんの正しい知識と最新情報を96のQ&Aで丁寧に解説! 2年ぶりの改訂!患者さんとご家族のさまざまな疑問に対して専門家が丁寧に解説。2年ぶりの改訂となる2021年版では、急速に進歩する肺がん治療について正確な情報を掲載し、生活や仕事に関する不安を解消するためのQ&Aをさらに充実させました。適切な治療を受けるため、そして肺がん治療と上手に付き合うための知識が得られます。肺がんのほか、悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍についても詳しく記載しました。巻末には薬剤一覧・情報窓口一覧の情報も記載。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    患者さんのための肺がんガイドブック 2021年版定価2,420円(税込)判型B5判頁数204頁・カラー図数:64枚発行2021年11月編集日本肺癌学会

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ペムブロリズマブ+レンバチニブによるNSCLC1次治療の成績(LEAP-007)/ESMO-IO 2021

 転移のある非小細胞肺がん(NSCLC)に対するペムブロリズマブとレンバチニブの併用は、Study111 / KEYNOTE-146試験で、抗腫瘍活性を示している。欧州免疫腫瘍学会(ESMO-IO 2021)では、未治療のNSCLC患者に対するペムブロリズマブ+レンバチニブの有用性を評価する第III相LEAP-007試験の結果が報告された。ペムブロリズマブ+レンバチニブ群のPFS中央値6.6ヵ月・対象:未治療のNSCLC(PD-L1≥1%、ECOG PS 0/1)・試験群:ペムブロリズマブ200mg/日 3週ごと+レンバチニブ20mg/日 連日(ペムブロリズマブ+レンバチニブ群)・対照群:ペムブロリズマブ200mg/日 3週ごと+プラセボ(ペムブロリズマブ群) 毒性発現または最大35サイクルまで投与・評価項目:[主要エンドポイント]BICRによる無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS) ペムブロリズマブ+レンバチニブの未治療のNSCLC患者に対する有用性を評価した主な結果は以下のとおり。・623例が1対1で2群に無作為に割付られた。患者の年齢中央値は66歳であった。・OS中央値はペムブロリズマブ+レンバチニブ群14.1ヵ月、ペムブロリズマブ群16.4ヵ月で、事前に指定されたOSの無益基準を満たした(HR:1.10、95%CI:0.87~1.39、p=0.79744)。・PFS中央値は、ペムブロリズマブ+レンバチニブ群6.6ヵ月、ペムブロリズマブ群4.4ヵ月、とペムブロリズマブ+レンバチニブ群で長かった(HR:0.78、95%CI:0.64~0.97、p=0.0064)。・全奏効率はペムブロリズマブ+レンバチニブ群40.5%、ペムブロリズマブ群27.7%、とペムブロリズマブ+レンバチニブ群で良好であった(p=0.00037)。・Grade3〜5の治療関連有害事象(TRAE)は、ペムブロリズマブ+レンバチニブ群の57.9%、ペムブロリズマブ群の27.7%で発現。Grade5のTRAEは、ペムブロリズマブ+レンバチニブ群の5.2%、ペムブロリズマブ群の1.9%で発現した。

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EGFR変異肺がん外科切除例の特徴と予後~肺癌登録合同委員会からの考察/日本肺癌学会

 外科手術の対象となるEGFR変異肺がんの特徴や予後について、肺がん治療例の全国集計を行う肺癌登録合同委員会による2010年手術例を対象とした第7次事業の報告(以下、合同員会報告)からの考察として、第62回日本肺癌学会学術集会において近畿大学の須田健一氏が発表した。 合同委員会報告のデータを用いて、EGFR変異陽性肺がん(2,410例)とEGFR変異陰性肺がん(3,370例)の臨床病理学的因子の比較や予後解析などを行った。 その結果、EGFR変異陽性肺がんは非喫煙者、女性、すりガラス陰影(GGO)、リンパ管や脈管への湿潤のない肺がんが多かった。また、多変量解析からEGFR変異陽性肺がんは変異陰性肺がんに比べて予後が良好であることが示されていた(無増悪生存期間[PFS]ハザード比[HR]:0.894、95%信頼区間:0.814~0.980、p=0.017)。 EGFR変異は主にexon19 deletion(Del 19)と L858R point mutation(L858R)の2種類が存在する。合同委員会報告ではDel 19(983例)はL858R(1,170例)に比べて若年齢(66.1歳 vs.69.0歳)で、腫瘍サイズが大きく(2.33cm vs.2.07cm)、GGO例が多く、また病期が進むほど増える傾向がみられた。L858Rに比べDel 19で予後が悪い傾向が示されたが、予後予測因子としてのインパクトは大きいものではなかった。 EGFR変異陽性肺がん(1,120例)とEGFR変異陰性肺がん(1,550例)の初再発部位を比較したデータからは、EGFR変異陽性肺がんは、脳での再発が15.9%と、陰性の12.2%に比べ高いことが明らかになった。 日本の肺癌診療ガイドライン(2020)では、病変全体径が2cm以上の病理病期IA/IB/IIA期の完全切除腺がんに対しては、デガフール・ウラシル配合剤療法が推奨されている。デガフール・ウラシル配合剤単剤療法は、EGFR変異陰性肺がんでより治療効果が高い可能性を示唆する報告があるが、現行の化学療法の有用性は、今後のより大規模な研究で評価していく必要がある。

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第88回 がんが大変だ! 検診控え依然続き、話題の線虫検査にも疑念報道(前編)

コロナ禍、受診者が激減したがん検診こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。先週は約2年ぶりに人間ドックを受診しました。諸般の事情から、近所の民間病院のドックを受けたのですが、なかなか興味深い体験をしました。そこのドックを選んだ理由の一つは、胃の検査がX線ではなく内視鏡検査であること(未だにバリウムを飲むX線検査だけの医療機関が多い)でした。ただ、実際に行ってみると、人間ドック専用のスペースや検査機器があるわけではなく、受診者は通常の診療を受ける患者の間に入って、さまざまな検査を進めていくシステム(眼底検査は眼科外来に、というように)でした。ドック専門の医療機関ではない病院が、自費の人間ドック受診者を受け入れる際に用いられる手法です。しかし、このコロナ禍の中、健常な一般人(=私)を、患者が診療を待つ各診療科を回らせるのはリスクが高過ぎるのではないでしょうか(そもそも、その病院はまだ面会禁止中でした)。所見があると内視鏡検査に進んで二度手間になるX線検査ではなく内視鏡検査を受けられたのはよかったのですが、コロナ感染の不安を感じた1日でした。ということで、今回はコロナ禍の中、受診者が激減し、大きな問題になっているがん検診について書いてみたいと思います。折も折、週刊文春の12月16日号では、「15種類のがんを判定できる」と鳴り物入りで全国展開中のHIROTSバイオサイエンスの線虫がん検査キット「N-NOSE」が、「『精度86%』は問題だらけ」と報道され、話題となっています。がん検診や、がんの簡易検査でいったい何が起きてきるのでしょう。がん診断件数、胃がん13.4%減、大腸がん10.2%減1ヵ月ほど前の11月4日、日本対がん協会は、2020年に新たに診断されたがんの件数が前年に比べて約1割減った、とする調査結果を発表しました。調査は、同協会とがん関連3学会(日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会)が共同で、全がん協会加盟施設、がん診療連携拠点病院、がん診療病院、大学病院など486施設に対し、今年7月〜8月に行ったものです。回答を得た105施設では、2020年のがん診断件数は8万660件で、2019年の8万8,814件より8,154件(9.2%)少なく、治療数(外科的・鏡視下的)も減ったことがわかりました。最も減少幅が大きかったのは胃がんで13.4%減。続いて大腸がん10.2%減、乳がん8.2%減、肺がん6.4%減、子宮頸がん4.8%減という結果でした。日本対がん協会はこの結果について、「がん診断の減少は早期が顕著なため、進行期の発見の増加が心配されます。さらに治療や予後の悪化、将来的にはがん死亡率の増加するおそれもあります」とコメントしました。調査結果を報道した11月4日付の朝日新聞は、全国から患者が集まる公益財団法人がん研究会有明病院(東京都江東区)の結果も伝えています。それによれば、「紹介されて来る患者が減り、去年の手術数は前年から15%減った。胃がん全体の手術数は32%減だった。進行度を表すステージ別でみると、ほかのステージでは大きな差がないのに、最も早期の『ステージIA』では50%も減っていた」とのことです。院内がん登録全国集計では全登録数が6万409件減少さらに11月25日には、国立がん研究センターが2020年の院内がん登録全国集計報告書を公表しました。この報告書でも日本対がん協会の調査と同様の傾向が見て取れます。同報告書によると、2019年と比較して、院内がん登録病院の約7割に当たる594施設で全登録数が6万409件(施設平均4.6%)減少した、とのことです。全国集計では、20年の1年間にがんの診断や治療を受けた患者の院内情報について、院内がん登録を実施した863施設から集めた104万379例のデータを分析。がん診療連携拠点病院等450施設での5大がんの全登録数の推移を見ると、肝臓がんは男女ともにほぼ横ばいでしたが、男性では胃・大腸がん、女性では乳房・胃がんの減少が大きかった、とのことです。とくに胃がんでは、前年の登録数に比べて男性で11.3%、女性で12.5%も減少していました。また、2016~2020年の院内がん登録全国集計のすべてに参加した735施設を対象に、診断月、発見経緯、病期等の要因別の登録数について、2016~2019年の4年平均と2020年を比較したところ、2020年の全登録数は4年平均と比べて98.6%減少。診断月別では、緊急事態宣言が出ていた5月に登録数の減少が見られ、がん検診発見例、検診以外の発見例ともに減少を認めたそうです。11月25日に開いた記者会見で同センターの担当者は、「自覚症状など検診以外の発見例でも登録数が減少している。新型コロナウイルスの感染拡大により、一定の受診控えが生じていた可能性がある」と説明したとのことです。がん検診受診者数の減少と医療機関の受診・通院控えが影響こうした診断件数の減少の原因の一つが、がん検診受診者数の減少であることは間違いありません。2020年4~5月の緊急事態宣言の際には、自治体などで実施されるがん検診が相次いで中止されました。日本対がん協会の調査では、20年のがん検診の受診者数は前年に比べて約3割減だったそうです。この他、医療機関への受診・通院控えの影響も指摘されています。コロナ禍、医療機関を受診すること自体が感染リスクを高めるため、少々体の具合が悪くても受診を先延ばしにしてしまう人が増えたわけです。この受診控えは、生活習慣病など、慢性疾患の患者にも起きたため、他の病気での通院をきっかけにがんが見つかるケースも減ったとみられています。そもそも低いがん検診の受診率にコロナが追い打ちそもそも日本は、欧米の先進諸国に比べ、がん検診の受診率が極めて低い状況にあります。コロナ禍前の2019年の受診率は、男性の肺がん検診受診率53.4%を最高に、その他の胃がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんは3〜4割台です。この数字は、OECD加盟諸国と比べて極めて低水準で、例えば乳がん検診、子宮頸がん検診の受診率は、米国では80%以上、英国では70%以上です。そんな状況で新型コロナウイルスの感染拡大が起こったわけで、数年後に進行がんの患者が医療機関に殺到する可能性も考えられます。今後、がん検診の受診率をどう上げていくかは、日本のがん医療にとって喫緊の課題と言えそうです。がん検診避け自費の線虫検査に走る人の意識とは日本のがんの早期発見がそのような深刻な状況に置かれた中、週刊文春の12月16日号では、「15種類のがんを判定できる」と全国展開中のHIROTSUバイオサイエンスの線虫がん検査キット「N-NOSE」が、「『精度86%』は問題だらけ」と報道し、医療界に衝撃を与えています。そもそも、死亡率減少のエビデンスが確立している5大がんの検診の受診は控えながら、エビデンス不透明かつ15のがんも発見できると喧伝する保険外の検査に走る人々の意識も謎です。苦しい検査よりラクで手軽な検査に手が伸びてしまうのは、「がんは切らずに治せる」という言葉にすがる人々との意識と、ある意味共通しているのかもしれません。では、線虫がヒトの尿を“嗅ぎ分けて”がんを判定するという「N-NOSE」のいったい何が問題視されているのでしょうか?(この項続く)。

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ニボルマブ・イピリムマブ併用のNSCLC1次治療、4年追跡結果(CheckMate 227)/日本肺癌学会

 進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療としてのニボルマブとイピリムマブの併用療法は、PD-L1の発現状態、非扁平上皮がんまたは扁平上皮がんの組織型にかかわらず、化学療法と比較して長期的な生存効果を示すことがCheckMate 227試験の4年間追跡結果から示された。この結果の概要が、第62回日本肺癌学会学術集会において、がん研究会有明病院の西尾誠人氏によって紹介された。ニボルマブ・イピリムマブ併用群の化学療法群に対するOSのハザード比は0.76・対象:未治療のPD-L1発現1%以上(Part1a)および1%未満(Part1b)のStageIVまたは再発NSCLCの初回治療患者(PS 0~1、組織型問わず)・試験群:ニボルマブ+イピリムマブ併用群(NIVO+IPI群)     ニボルマブ単剤群(TPS1%以上)(NIVO群)     ニボルマブ+化学療法群(TPS1%未満)(NIVO+Chemo群)・対照群:化学療法(組織型により選択)単独(Chemo群)・評価項目:[複合主要評価項目]高TMB(≧10/メガベース)患者におけるNIVO+IPI群対Chemo群の無増悪生存期間(PFS)、PD-L1発現(≧1%)患者におけるNIVO+IPI群対Chemo群の全生存期間(OS)[副次評価項目]高TMB(≧13/メガベース)かつPD-L1発現(TPS1%以上)患者におけるNIVO群対Chemo群のPFS、高TMB(≧10/メガベース)患者におけるNIVO+Chemo群対Chemo群のOS、PD-L1なしまたは低発現(TPS1%未満)患者におけるNIVO+Chemo群対Chemo群のPFS、そのほか奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・PD-L1発現率1%以上の患者集団(1,189例)のOS中央値は、ニボルマブ・イピリムマブ併用群、ニボルマブ単独療法群、化学療法群でそれぞれ17.1ヵ月、15.7ヵ月、14.9ヵ月であり、4年OS率はそれぞれ29%、21%、18%であった。・ニボルマブ・イピリムマブ併用群の化学療法群に対するOSのハザード比(HR)は、0.76(95%信頼区間[CI]:0.65~0.90)であった。・以上の結果は、非扁平上皮がんと扁平上皮がんで層別して解析しても一貫していた。・PD-L1発現率1%未満の患者集団(550例)のOS中央値は、ニボルマブ・イピリムマブ併用群、ニボルマブ/化学療法併用群、化学療法群でそれぞれ17.2ヵ月、15.2ヵ月、12.2ヵ月であり、ニボルマブ・イピリムマブ併用群の化学療法群に対するOSのHRは0.64(95%CI:0.51~0.81)であった。・4年間の長期観察において、安全性に関する新たな懸念は示されなかった。

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DLL3を標的としたBiTE抗体tarlatamabの小細胞肺がんに対する安全性と抗腫瘍効果/日本肺癌学会

 腫瘍組織で多く発現するデルタ様リガンド3(DLL3)は、小細胞肺がん(SCLC)の治療標的として注目されている。このDLL3を標的とする半減期を延長した二重特異性T細胞誘導(BiTE)抗体であるtarlatamab(AMG757)は、がん細胞とT細胞を架橋し、さらにT細胞を活性化させることでがん細胞を攻撃する。進行または再発SCLCを対象とした第I相試験の結果から、tarlatamabの安全性および抗腫瘍効果について、第62回日本肺癌学会学術集会において国立がん研究センター東病院の泉大樹氏が報告した。BiTE抗体tarlatamabをSCLC患者66例に投与・対象:プラチナベースの化学療法後に進行または再発したSCLC患者66例(PS 0~2)・治療薬:tarlatamab 0.003~100mgを週2回投与・評価項目:[主要評価項目]安全性および忍容性、最大耐用量および推奨用量[副次評価項目]PK特性、予備的な抗腫瘍効果 BiTE抗体tarlatamabの安全性および抗腫瘍効果の主な結果は以下のとおり。・66例中56例(85%)に治療関連有害事象(TRAE)が認められ、Grade 3以上のTRAEは18例(27%)に発現した。・頻度の高いTRAEとしてサイトカイン放出症候群(CRS)が17例(44%)に発現したが、Grade 3以上のCRSは1例(2%)のみだった。次いで、発熱17例(26%)、疲労感11例(17%)などがみられた。・TRAEにより3例(5%)の患者が治療を中止した。また、用量制限毒性(DLT)はGrade 5の非感染性肺炎が1例(0.3mg投与)とGrade 3の脳症が1例(100mg投与)にみられた。・BiTE抗体tarlatamabの抗腫瘍効果については、64例中13例(20%)でconfirmed PRを示し、3mg投与例の36%、10mg投与例の30%、100mg投与例の27%がPRであった。SDは17例(27%)、病勢コントロールは37例(47%)に認められた。・確定されたPRが得られるまでの期間の中央値は8.7ヵ月であった なお、本試験は現在でも継続されている。

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抗TROP2抗体薬物複合体Dato-DXd、TN乳がんでの第I相試験最新データ(TROPION-PanTumor01)/SABCS2021

 抗TROP2抗体薬物複合体datopotamab deruxtecan(Dato-DXd、DS-1062)の固形がんを対象とした第I相TROPION-PanTumor01試験のうち、切除不能なトリプルネガティブ(TN)乳がんにおける安全性と有効性に関する最新データについて、米国・Dana-Farber Cancer InstituteのIan Krop氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS 2021)で発表した。本データから、Dato-DXdが管理可能な安全性プロファイルと有望な抗腫瘍活性を示すことが示唆された。 本試験は進行中の多施設非盲検第I相試験で、進行/転移乳がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、その他のがんを対象に安全性と有効性が評価されている。今回、TN乳がんコホートにおける更新結果を発表した。・対象:標準治療後に病勢進行した切除不能なTN乳がん(ECOG PS 0~1)44例・投与スケジュール:42例はDato-DXd 6mg/kgを3週間ごとに静脈内投与、2例は8mg/kgを投与・評価項目:[主要評価項目]安全性、忍容性[副次評価項目]有効性(盲検下独立中央評価[BICR]による奏効率)、薬物動態など 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ(2021年7月30日)時点で、44例中13例(30%)が治療を継続し、30例(68%)が病勢進行、1例(2%)が有害事象により治療を中止していた。・年齢中央値は53歳(範囲:32〜82歳)で、30例(68%)が前治療を2ライン以上受けていた。前治療は、19例(43%)が免疫療法、13例(30%)は別のトポイソメラーゼ阻害薬が結合した抗体薬物複合体(うち10例はsacituzumab govitecan)が投与されていた。・BICRによる奏効率は34%(確定したCR/PR:14例、確定前のCR/PR:1例)で、病勢コントロール率(DCR)は77%だった。・別のトポイソメラーゼI阻害薬が結合した抗体薬物複合体による治療歴のない27例のサブグループ解析において、奏効率は52%(確定したCR/PR:13例、確定前のCR/PR:1例)で、DCRは81%だった。・奏効期間中央値は未到達(範囲:2.7〜7.4+ヵ月)だった。・治療中の有害事象(TEAE)は、全Gradeが98%、Grade3以上が45%に発現し、治療関連TEAEは全Gradeが98%、Grade3以上が23%に発現した。重篤な治療関連TEAEは5%に発現し、死亡例はなかった。・発現の多かった有害事象は、悪心、口内炎、嘔吐、倦怠感、脱毛症で、血液毒性と下痢の頻度は低かった。薬物関連の間質性肺疾患は報告されていない。 なお、本試験におけるHR+/HER2-乳がんコホートについては登録が完了している。ほかにも、TN乳がんに対してDato-DXd+デュルバルマブの有効性と安全性を評価するBEGONIA試験が進行中である。また、HR+/HER2-乳がんに対する第III相TROPION-Breast01試験が開始されており、今後、TN乳がんに対する第III相試験も予定されている。

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医師向けガイドライン改訂に対応した患者ガイドブック2021年版~日本肺癌学会【肺がんインタビュー】 第72回

第72回 医師向けガイドライン改訂に対応した患者ガイドブック2021年版~日本肺癌学会出演:岐阜市民病院 診療局長(がんセンター) 日本肺癌学会患者向けガイドライン小委員会委員長 澤 祥幸氏日本肺癌学会が2019年に作成した患者向けガイドブック。医師向け診療ガイドラインの改定に伴い、最新の情報を反映した2021年版が発刊された。ボリュームはそのまま、内容を充実させた今回の改訂について、作成委員長の澤 祥幸氏に聞いた。参考患者さんのための肺がんガイドブック 2021年版

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多くの医師が必要な「緩和ケア」、効率的に学ぶならこの動画!【非専門医のための緩和ケアTips】第17回

第17回 多くの医師が必要な「緩和ケア」、効率的に学ぶならこの動画!今日の質問私のクリニックでは高齢者が多く、自宅や施設への訪問診療も増えてきました。オピオイドなどの薬の使い方だけでなく、コミュニケーションや多職種アプローチなど、幅広く勉強する必要性を感じます。本などで勉強するべきなのでしょうが、忙しさが言い訳になってなかなか進みません。何か良い方法はないでしょうか?忙しい臨床業務の合間で勉強するのって、本当に大変ですよね。学生時代の「勉強し放題」の環境は二度と戻ってきません。失ってから気付く時間の大切さ…。でも打ちひしがれている時間はありません。過去を悔やまず、今を生きましょう(大げさ)。新しい医学領域である「緩和ケア」。多くの医師が関わる分野であるにもかかわらず、体系立てて学んだことのある方は限られています。若手や開業医の方にお勧めしたい、コスパの良い学習方法を紹介します。さまざまな学び方がある中で、近年はオンデマンド動画や音声でのインプット手段が増えています。とくに他のことをしながらでも活用できる「オーディオブック」は私も重宝しています。緩和ケア分野で最も会員数の多い学術団体に日本緩和医療学会があります。2021年11月1日時点で、1万2,177名の会員がいます。日本緩和医療学会では緩和ケアの教育機会の提供を目的としたセミナーが定期的に開催されています。その中の「教育セミナー」は緩和医療に関する能力の向上と生涯学習を目的に年2回開催され、学会員でなくても受講することができます。以前は各地で開催されていましたが、現在はオンライン開催となっており、費用は1回6,000円(非会員の場合)です。1回のセミナーで45分程度の講演が7本公開されます。執筆時点で直近となる「第31回教育セミナー」の内容は以下の通りでした。1)がん患者の不安・抑うつ・不眠2)緩和ケア病棟における臨床宗教師の活動3)がんゲノム医療における遺伝カウンセリング4)緩和医療における法的・倫理的問題へのアプロー5)ポリファーマシーとの上手な付き合い方6)難渋する痛み―私たちは評価者たりうるのか7)慢性呼吸器疾患の緩和ケアこうしてみると緩和ケアに関してかなり幅広い話題を取り扱っていることがおわかりいただけると思います。緩和ケアを深く学びたい方は、ぜひ学会員になりましょう。その理由は、会員は教育セミナーのアーカイブ動画を見ることができるからです! 私はお昼休憩に、食事をしながらこのアーカイブを見ています。時間的にも45分なのでちょうどいいんですよね。勉強のために新たな時間を捻出するのが難しい方も多いはずですが、こうした「ながら勉強」をうまく活用するのは、1つの方法だと思います。学会員になると年会費が必要ですが、緩和ケアの本を3、4冊買って自分で勉強することを思えば、意外とお得という考え方もできるかと思います。次回の教育セミナーは2022年1月30日(日)に開催予定です。オンラインで開催されますので、まだ参加したことのない方はぜひお試しください。今回のTips今回のTips非専門医が効率的に緩和ケアを学ぶには、日本緩和医療学会の「教育セミナー」がお勧め!

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ICIによる非小細胞肺がんの術前・術後補助療法の有効性を探る(CheckMate 77T試験)/日本肺癌学会

 最近のStageIIAからIIIBの非小細胞肺がん(NSCLC)に対する術後の5年生存率は50%以下であり、その治療効果は十分とはいえず、何らかの追加治療が必要とされてきた。 1990年代から化学療法を用いた術前補助療法が行われてきたが、最近は免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が登場。周術期治療への可能性が期待されている。そこで、化学療法にICIを加えた周術期治療の有用性を検証するCheckMate 77T試験が現在進行しており、その概要が第62回日本肺癌学会学術集会において、神奈川県立がんセンターの伊藤宏之氏から紹介された。 StageIIIAのNSCLC患者46例を対象に、化学療法にニボルマブを併用する術前補助療法の後に手術を施行する第II相試験として、NADIM試験が実施された。その結果、残存するがん細胞の面積ががん組織中に占める割合が 10%以下の症例の割合を表すmajor pathological response(MPR)が83%、病理学的完全奏効(pCR)は59%との良好な成績を示し、18か月後の無増悪生存率は81%、全生存率は91%となっていた。この結果を受け、第III相試験としてCheckMate 77T試験がデザインされた。 CheckMate 77T試験は、切除可能なNSCLC患者を対象に、組織型に基づく化学療法にニボルマブ360mgまたはプラセボを加えた術前補助療法を行い、さらに術後補助療法としてニボルマブ480mgまたはプラセボを1年間投与する無作為化二重盲検第III相試験である。主要評価項目は盲検下独立中央評価委員会(BICR)による無イベント生存期間(EFS)、主な副次評価項目としてBICRによる全生存期間(OS)、pCR、およびMPR、安全性と忍容性などについても評価される。 対象は、切除可能なStage IIAからIIIBのNSCLCで、ECOG PS が0~1の患者。EGFR/ALK変異、脳転移、自己免疫疾患もしくはその疑いがある患者は除外された。 現在、日本を含む21ヵ国から115施設が参加し、2024年9月の修了を目指して試験が進行している。伊藤氏は、これまでICIは内科領域の治療で使われる薬剤であったが、今後は外科領域における周術期治療においても使用されるようになる可能性が高いとの期待を示した。

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高齢がん患者への高齢者機能評価介入、治療毒性を低減/Lancet

 進行がんの高齢患者への介入として、地域の腫瘍医(community oncology practice)に高齢者機能評価の要約を提供すると、これを提供しない場合に比べ、がん治療による重度の毒性作用の発現頻度が抑制され、用量強度の低いレジメンで治療を開始する腫瘍医が増えることが、米国・ロチェスター大学医療センターのSupriya G. Mohile氏らのクラスター無作為化試験「GAP70+試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2021年11月20日号で報告された。米国の40施設のクラスター無作為化試験 本研究は、患者管理上の推奨事項を含む高齢者機能評価の要約を地域の腫瘍医に提供することによる介入は、意思決定の改善をもたらし、高リスクのがん治療による重度の毒性を軽減するとの仮説の検証を目的とするクラスター無作為化試験であり、米国の40の地域腫瘍診療施設が参加し、2014年7月~2019年3月の期間に患者登録が行われた(米国国立がん研究所[NCI]の研究助成を受けた)。 対象は、年齢70歳以上、高齢者機能評価のドメイン(8項目)のうち、ポリファーマシーを除く少なくとも1つの機能障害がみられ、非治癒性の進行固形がんまたはリンパ腫(StageIII/IV)に罹患しており、4週間以内に毒性作用のリスクが高い新たながん治療レジメンを開始する予定の患者であった。 参加施設は、高齢者機能評価による介入群または通常治療群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。介入群の腫瘍医には、Webベースのプラットフォームを用いて作成された個別の高齢者機能評価の要約と患者管理上の推奨事項が提供され、通常治療群の腫瘍医には提供されなかった。 主要アウトカムは、3ヵ月間にGrade3~5の毒性作用(NCIの有害事象共通用語規準[CTCAE]の第4版で判定)が発現した患者の割合とされた。転倒の発生率も低下 40施設(腫瘍医156人)のうち、16施設が介入群、24施設は通常治療群に割り付けられた。患者718例が登録され、349例が介入群、369例は通常治療群であった。全体の平均年齢は77.2(SD 5.4)歳、311例(43%)が女性であった。がん種は、消化器がんが34%、肺がんが25%、泌尿生殖器がんが15%、乳がんが8%で、リンパ腫は6%だった。 ベースラインの高齢者機能評価で機能障害が認められた平均ドメイン数は4.5(SD 1.6)であり、両群間に差はなかった。介入群は通常治療群に比べ、黒人が多く(11%[40/349例]vs.3%[12/369例]、p<0.0001)、化学療法による既治療例の割合が高かった(30%[104/349例]vs.22%[81/369例]、p=0.016)。 新たな治療レジメン開始から3ヵ月以内にGrade3~5の毒性作用が発現した患者の割合は全体で61%(440/718例)であった。このうちGrade5(死亡)は5例(1%)で認められた。 Grade3~5の毒性作用が発現した患者の割合は、介入群が51%(177/349例)と、通常治療群の71%(263/369例)に比べて低く、高齢者機能評価による介入は毒性作用のリスクを有意に低減することが確認された(補正後リスク比[RR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.64~0.86、p=0.0001)。Grade3~5の毒性作用のうち、非血液毒性には有意差が認められたが(補正後RR:0.72、95%CI:0.52~0.99、p=0.045)、血液毒性には差がなかった(0.85、0.70~1.04、p=0.11)。 化学療法は、タキサン系薬剤やプラチナ製剤を含むレジメンが多かった。化学療法のパターンには両群間に差がみられ(p=0.011)、介入群では用量強度の低い併用療法や単剤療法、化学療法+他の薬剤(モノクローナル抗体など)、化学療法以外のレジメンの割合が高い傾向が認められた。通常治療群では、2剤併用化学療法の使用頻度が高かった。 また、介入群では、1サイクル目の用量強度が標準よりも低い治療を受けた患者が多く(49%[170/349例]vs.35%[129/369例]、補正後RR:1.38、95%CI:1.06~1.78、p=0.015)、3ヵ月間に毒性関連で減量が行われた患者は少なかったが有意差はなかった(43%[149/349]vs.58%[213/369例]、0.85、0.68~1.08、p=0.18)。6ヵ月生存率(補正後ハザード比[HR]:1.13、95%CI:0.85~1.50、p=0.39)と1年生存率(1.05、0.85~1.29、p=0.68)には差が認められなかった。 さらに、介入群では、3ヵ月以内の転倒の発生率が低く(12%[35/298例]vs.21%[68/329例]、補正後RR:0.58、95%CI:0.40~0.84、p=0.0035)、がん治療レジメン開始前に中止された薬剤の数が多かった(平均群間差:0.14、95%CI:0.03~0.25、p=0.015)。 著者は、「進行がんや加齢に伴う疾患を有する高齢患者に対し、毒性作用のリスクが高い治療レジメンを新たに開始する場合は、高齢者機能評価とこれに基づく患者管理を、標準治療として考慮すべきである」としている。

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Dr.光冨の肺がんキーワード解説「KRAS」【肺がんインタビュー】 第71回

第71回 Dr.光冨の肺がんキーワード解説「KRAS」肺がんではさまざまなドライバー変異が解明されている。それに伴い、種々の標的治療薬が登場する。それら最新の情報の中から、臨床家が知っておくべき基本情報を近畿大学の光冨 徹哉氏が解説する。

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固形がん患者へのブースター接種、抗体価の変化は?/JAMA Oncol

 積極的な治療を受けている固形がん患者では新型コロナウイルス感染症により予後が悪化するリスクが高く、また、化学療法を受けているがん患者ではBNT162b2 mRNAワクチン(Pfizer/BioNTech)による体液性応答が低下することが報告されている。今回、イスラエル・Hadassah Medical CenterのYakir Rottenberg氏らが、主に化学療法を受けた固形がん患者でのBNT162b2ワクチンの3回目(ブースター)接種後30日未満の体液性応答を調査したところ、ほとんどの症例でブースター接種後早期に抗体反応がみられたことがわかった。JAMA Oncology誌オンライン版2021年11月23日号に掲載。ブースター接種後にほぼすべてのがん患者で高い抗体価 本研究の対象は、Hadassah Medical Centerにおいて化学療法、生物学的製剤、免疫チェックポイント阻害薬、もしくはこれらの組み合わせで治療された固形がん患者で、BNT162b2ワクチンを2回接種していた患者。血液サンプルの採取日の中央値は、ブースター接種後13日(範囲:1~29)で、スパイクタンパク質結合抗体について分析した。 がん患者のブースター接種後の体液性応答を調査した主な結果は以下のとおり。・2021年8月15日~9月5日に37例がブースター接種後に血清学的検査を受けた。2回目接種とブースター接種との間隔の中央値は214日(範囲:172~229)、2回目接種と2回目接種後抗体測定の間隔の中央値は86日(範囲:30~203)だった。・年齢中央値は67歳(範囲:43~88)で、11例(30%)は転移がなく、19例(51%)は化学療法を受けていた。・1例(40代、dose-dense AC療法後パクリタキセル+トラスツズマブ+ペルツズマブによる術後補助療法中)を除いた患者が血清学的検査で陽性だった。さらに、化学療法の有無に関係なく、2回目接種後の反応が中程度または最小だったがん患者で、ほぼすべてのがん患者が高い抗体価を示し、有意に抗体価が増加した。・多重線形回帰の結果、2回目接種後の抗体価(p<0.001)と高齢者(p=0.03)がブースター接種後の高い抗体価と関連した。一方、性別、化学療法の有無、3回目接種と抗体検査の間隔との関連はみられなかった。

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TRK阻害薬ラロトレクチニブ、NTRK陽性肺がんに奏効/日本肺癌学会

 まれな遺伝子変異である神経栄養因子チロシンキナーゼ受容体(NTRK)融合遺伝子を有するがんの治療薬として開発されたTRK阻害薬ラロトレクチニブは、NTRK融合遺伝子を有する肺がん患者にも奏効することが、第62回日本肺癌学会学術集会において名古屋大学の安藤雄一氏により発表された。 NTRK融合遺伝子陽性の固形がん患者159例を対象とした第I相および第II相のバスケット試験において、ラロトレクチニブは79%という高い奏効率(ORR)を示している。今回はこの中から肺がん症例を抽出し、ラロトレクチニブの有効性と安全性についての解析を行った。 解析対象患者20例の平均年齢は48.5歳であり、NTRK融合遺伝子を有する肺がん患者は一般の肺がんよりも若い年齢層である可能性が示唆された。NTRK融合遺伝子の解析には次世代シーケンサーが用いられ、NTRK1が80%、NTRK3が20%を占めていた。また、中枢神経系転移は50%の症例に認められ、50%が外科療法、45%が放射線療法、95%が全身化学療法を受けていた。なお、全体の50%にレジメン以上の全身化学療法歴があり、通常の化学療法が効きにくい症例集団であることが示唆された。 主な結果は以下のとおり。・有効性に関する15例の解析が終了し、主要評価項目のORRは73%で、全ての症例で腫瘍の縮小を認めた(頭蓋内の腫瘍が縮小した症例もあり)。・投与開始3か月以内の早期から良好なレスポンスが得られ、奏効期間(DoR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)の中央値はそれぞれ33.9ヵ月、35.4ヵ月、40.7ヵ月であった。ただし、中枢神経転移のある症例のDoR、PFS、OSは、それぞれ17.4ヵ月、7.2ヵ月、17.2ヵ月となっていた。・治療関連有害事象(TRAE)は16例(80%)に認められ、そのほとんどがGrade1〜2であり、2例(10%)にGrade3のTRAE(筋肉痛、過敏症、体重増加)を認めた。・2例(10%)がGrade2の肝機能障害や好中球減少のためラロトレクチニブを減量したが、有害事象のために治療を中断した症例はなかった。 以上の結果を受け、「中枢神経転移例も含めてNTRK融合遺伝子陽性の肺がんに対して、ラロトレクチニブによる早期からの有効性と長期にわたる安全性が期待される」と安藤氏はまとめた。

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ロルラチニブがALK陽性肺がんの1次治療に追加承認/ファイザー

 ファイザーは、2021年11月25日、第3世代ALK-TKIロルラチニブ(製品名:ローブレナ)が「ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」(以下、ALK陽性肺がん)の治療薬として、医薬品製造販売承認事項一部変更承認申請の承認を取得したと発表。ロルラチニブは米国でも同様の適応症で2021年3月に承認を取得 今回のロルラチニブの承認は、未治療のALK陽性肺がんを対象とした第III相試験CROWN試験の結果に基づくもの。 この承認取得により、ロルラチニブは、ALK陽性肺がんの2次治療以降だけでなく、1次治療薬としても使用することが可能となる。 米国においてもロルラチニブは同様の適応症で2021年3月に承認を取得している。ロルラチニブは、2018年9月に世界に先駆けて日本で「ALKチロシンキナーゼ阻害剤に抵抗性又は不耐容のALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の適応症で承認を取得し、同年11月に発売した。  また、非小細胞肺がん治療におけるロルラチニブのコンパニオン診断薬として「ベンタナ OptiView ALK(D5F3)」が、2021年11月15日に一部変更を承認取得している。

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ニボルマブ単剤が悪性中皮腫の2次治療で良好な成績(CONFIRM)/Lancet Oncol

 プラチナベース化学療法後に進行した胸膜・腹膜悪性中皮腫患者の生存改善を示した第III相試験はなかった。そのような中、ニボルマブの第III相試験が有望な結果を示した。 この試験は、ニボルマブの有効性と安全性を評価するために、多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検で行われたCONFIRM試験。英国の24施設で実施された。・対象:プラチナベース化学療法の1次治療で進行した胸膜または腹膜中皮腫成人患者(18歳以上、PS 0または1)・試験群:ニボルマブ240mg/日 2週間ごと疾患進行または最大12ヵ月まで投与・対照群:プラセボ 2週間ごと疾患進行または最大12ヵ月まで投与・主要評価項目:治験担当医評価の無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS) 主な結果は以下のとおり。・2017年5月10日〜2020年3月30日に、332例の患者が登録され、221例がニボルマブ群に、111例がプラセボ群に無作為に割り付けられた。・追跡期間中央値は11.6ヵ月である。・PFS中央値は、ニボルマブ群3.0ヵ月に対し、プラセボ群は1.8ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.67、95%CI:0.53〜0.85、p=0.0012)。・OS中央値は、ニボルマブ群10.2ヵ月に対し、プラセボ群では6.9ヵ月であった(HR:0.69、95 %CI:0.52〜0,91、p=0.0090)。・重篤な有害事象は、ニボルマブ群の41%、プラセボ群の44%で発現したが、両群とも治療関連死亡はなかった。

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