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診療科別2024年下半期注目論文5選(呼吸器内科編)

Respiratory syncytial virus (RSV) vaccine effectiveness against RSV-associated hospitalisations and emergency department encounters among adults aged 60 years and older in the USA, October, 2023, to March, 2024: a test-negative design analysisPayne AB, et al. Lancet. 2024;404:1547-1559.<リアルワールドにおけるRSウイルスワクチンの有効性>:RSウイルスワクチンはRSウイルス関連の入院および救急外来受診を予防Test Negativeデザインにより、RSウイルスワクチンの60歳以上の成人におけるリアルワールドでの有効性を評価した初めての研究です。本研究により、リアルワールドにおいても、RSウイルス関連の入院や救急外来受診に対するワクチン予防効果が示されました。Cathepsin C (dipeptidyl peptidase 1) inhibition in adults with bronchiectasis: AIRLEAF®, a Phase II randomised, double-blind, placebo-controlled, dose-finding studyChalmers JD, et al. Eur Respir J. 2024:2401551.<AIRLEAF®試験>:気管支拡張症に対するカテプシンC阻害薬投与は最初の増悪までの時間を減少気管支拡張症の成人を対象に、カテプシンC阻害薬BI 1291583の有効性、安全性、および最適用量を評価した第II相無作為化比較試験です。BI 1291583は、最初の増悪までの時間に基づいて用量依存的にプラセボよりも有意な効果を示しました。今後、この薬剤の第III相試験(AIRTIVITY®)も予定されています。Neoadjuvant pembrolizumab plus chemotherapy followed by adjuvant pembrolizumab compared with neoadjuvant chemotherapy alone in patients with early-stage non-small-cell lung cancer (KEYNOTE-671): a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trialSpicer JD, et al. Lancet. 2024;404:1240-1252.<KEYNOTE-671試験>:NSCLCへの周術期ペムブロリズマブ上乗せでOS改善:KN-671長期成績切除可能な早期非小細胞肺がん患者において、周術期のペムブロリズマブ+化学療法は、プラセボ+化学療法と比較して36ヵ月全生存率(71% vs.64%)および無イベント生存期間中央値(47.2ヵ月 vs.18.3ヵ月)を有意に改善しました。Durvalumab after Chemoradiotherapy in Limited-Stage Small-Cell Lung CancerCheng Y, et al. N Engl J Med. 2024;391:1313-1327.<ADRIATIC試験>:限局型小細胞肺がん、デュルバルマブ地固め療法でOS・PFS改善Efficacy and safety of tezepelumab versus placebo in adults with moderate to very severe chronic obstructive pulmonary disease (COURSE): a randomised, placebo-controlled, phase 2a trialSingh D, et al. Lancet Respir Med. 2024 Dec 6. [Epub ahead of print]<COURSE試験>:トリプル吸入療法使用中のCOPD患者を対象としたtezepelumab投与は増悪を改善せずトリプル吸入療法使用中の中等症から最重症COPD患者を対象としたtezepelumabの第IIa相試験の結果が報告されました。主要評価項目である年間中等度/重度増悪率において、プラセボ群との有意差は認められませんでしたが、好酸球数150cells/μL以上のサブグループでは増悪抑制効果がある可能性が示唆されました。

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既治療の小細胞肺がん、承認取得のタルラタマブのアジア人データ(DeLLphi-301)/ESMO Asia2024

 腫瘍細胞上に発現するDLL3とT細胞上に発現するCD3に対する特異性を有するBiTE(二重特異性T細胞誘導)抗体タルラタマブ。既治療の小細胞肺がん(SCLC)患者を対象とした国際共同第II相試験「DeLLphi-301試験」において、タルラタマブ10mg投与例の奏効率は40%、無増悪生存期間(PFS)中央値は4.9ヵ月、全生存期間(OS)中央値は14.3ヵ月と良好な成績を示した1)。本試験の結果に基づき、本邦では2024年12月27日に「がん化学療法後に増悪した小細胞肺癌」の適応で製造販売承認を取得した。また、『肺癌診療ガイドライン2024年版』では、全身状態が良好(PS0~1)な再発SCLCの3次治療以降にタルラタマブを用いることを弱く推奨することが追加されている2)。欧州臨床腫瘍学会アジア大会(ESMO Asia2024)において、DeLLphi-301試験のアジア人集団のpost-hoc解析結果を、赤松 弘朗氏(和歌山県立医科大学 内科学第三講座 准教授)が発表した。 本試験は3つのパートで構成された。対象は、プラチナダブレットを含む2ライン以上の治療歴を有するSCLC患者とした。パート1(用量探索パート)では176例を登録し、タルラタマブ10mg群(88例)と100mg群(88例)に1対1の割合で無作為に割り付け、投与した。パート2(用量拡大パート)では12例を登録し、パート1の結果に基づいてタルラタマブ10mgを投与した。パート3(reduced inpatient monitoringパート)では34例を登録し、タルラタマブ10mgを投与した。 投与方法は、割り付けられた治療群に基づき1日目にタルラタマブ1mgを投与し、8、15日目に10mgまたは100mgを投与、その後は2週ごとに10mgまたは100mgを投与することとした。評価項目は以下のとおりであった。[主要評価項目]ORR[副次評価項目]病勢コントロール率(DCR)、奏効期間(DOR)、PFS、OS、安全性など 今回はタルラタマブ10mgを投与されたアジア人集団43例(有効性の解析は41例)の結果が報告された。主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢中央値は64.0歳(範囲:43~79)、男性の割合は81%であった。喫煙歴あり/なしの割合は84%/16%で、2ライン/3ライン以上の治療歴を有する割合は65%/35%であった。・ORRは46.3%(全体集団の10mg投与例:40.0%)、DCRは80.5%(同:70.0%)であった。また、DOR中央値は7.2ヵ月で、データカットオフ時点において奏効例の32%(6/19例)が1年以上治療を継続中であった。・PFS中央値は5.4ヵ月であり、6ヵ月PFS率は41.7%、12ヵ月PFS率は21.4%であった。・OS中央値は19.0ヵ月であり、12ヵ月OS率は67.4%、18ヵ月OS率は53.3%であった。・最も多く認められた有害事象は、サイトカイン放出症候群(CRS)で49%に発現したが、全例がGrade1/2であった。CRSのほとんどが1サイクル目に発現した。・免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)は、9.3%に発現したが、全例がGrade1/2であった。ICANSのほとんどが3ヵ月以内に発現した。・治療中止に至った有害事象は認められなかった。 本結果について、赤松氏は「既治療のSCLC患者に対するタルラタマブは、アジア人集団でも新たな安全性に関するシグナルは認められず、持続的な奏効と注目すべき生存成績がみられ、良好なベネフィット/リスクプロファイルを示した」とまとめた。なお、SCLCへのタルラタマブについては、再発SCLC患者を対象としてタルラタマブと化学療法を比較する国際共同第III相試験「DeLLphi-304試験」が進行中である。

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切除不能EGFR変異陽性StageIII非小細胞肺がんに対するCRT後オシメルチニブ:LAURA試験【肺がんインタビュー】第105回

第105回 切除不能EGFR変異陽性StageIII非小細胞肺がんに対するCRT後オシメルチニブ:LAURA試験切除不能EGFR変異陽性StageIII非小細胞肺がん(NSCLC)における化学放射線療法(CRT)後オシメルチニブを評価する第III相LAURA試験の日本人サブセットを含めた結果が発表された。試験概要、主要結果、そして視聴者からの質問に対して共同研究者である神奈川県立がんセンターの加藤 晃史氏に解説いただいた。参考Shun Lu, et al. Osimertinib after Chemoradiotherapy in Stage III EGFR-Mutated NSCLC. N Engl J Med.2024; 391:585-597.

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一部の主要ながんによる死亡回避、予防が治療を上回る

 「1オンスの予防は1ポンドの治療に値する」は、米国の建国の父ベンジャミン・フランクリンの有名な格言の一つだが、がんに関してはそれが間違いなく当てはまるようだ。米国立がん研究所(NCI)がん対策・人口科学部門長のKatrina Goddard氏らによる新たな研究で、過去45年間に、がんの予防とスクリーニングによって子宮頸がんや大腸がんなど5種類のがんによる死亡の多くが回避されていたことが明らかになった。この研究の詳細は、「JAMA Oncology」に12月5日掲載された。 Goddard氏は、「多くの人が、治療法の進歩がこれら5種類のがんによる死亡率低下の主な要因だと考えているかもしれない。しかし、実際には、予防とスクリーニングが死亡率の低下に驚くほど大きく貢献している」と話す。さらに同氏は、「過去45年間に回避されたこれら5種類のがんによる死亡の10件中8件は、予防とスクリーニングの進歩によるものだ」と付け加えている。 この研究でGoddard氏らは、人口レベルのがん死亡率データを用い、Cancer Intervention and Surveillance Modeling Network(CISNET)が開発した既存のモデルを拡張して、1975年から2020年の間に回避された乳がん、子宮頸がん、大腸がん、肺がん、前立腺がんの累積死亡数に対する予防、スクリーニング(前がん病変の除去や早期発見)、および治療の寄与度を定量化した。介入としては、肺がんは喫煙量の削減による一次予防、子宮頸がんと大腸がんは全がん病変の除去を目的としたスクリーニング、乳がん、子宮頸がん、大腸がん、前立腺がんは早期発見、乳がん、大腸がん、肺がん、前立腺がんは治療の寄与度についてそれぞれ評価した。なお、研究グループによると、これら5種類のがんが、新たに診断されるがんと死亡者のほぼ半数を占めているという。 その結果、対象期間中に、予防、スクリーニング、および治療により、これら5種類のがん患者の推定594万人が、がんによる死亡を回避しており、このうちの80%(475万人)は、予防またはスクリーニングによる回避と推定された。介入の寄与度はがん種により異なっていた。乳がんでは、回避された死亡の25%(26万人)はスクリーニング(主にマンモグラフィー)によるものであり、残りの75%(77万人)は治療によるものであった。子宮頸がんでは、回避された死亡の100%(16万人)が、スクリーニング(パップテストやヒトパピローマウイルス〔HPV〕検査)と前がん病変の除去によるものであった。また、大腸がんでは、回避された死亡の79%(74万人)はスクリーニング(大腸内視鏡検査など)による早期発見や前がん性ポリープの除去によるもので、残りの21%(20万人)は治療の進歩によるものであった。さらに、肺がんでは、回避された死亡の98%(339万人)は喫煙量の削減によるものであり、前立腺がんでは、回避された死亡の56%(20万人)はスクリーニング(PSA検査)によるものであった。 こうした結果を受けてGoddard氏は、「これらの調査結果は、検討した全てのがん領域で強力な戦略とアプローチを継続する必要があることを示唆している。がんによる死亡率低下に役立つのは、治療の進歩と予防・スクリーニングの両方なのだ」と話している。研究グループは、HPVワクチン接種による子宮頸がん予防や胸部X線検査による肺がん検診などの新しい戦略により、近年、さらに多くの死亡が回避されている可能性が高いことを指摘している。これらの対策は、本研究期間中は普及していなかった。 研究論文の上席著者であるNCIがん予防部門長のPhilip Castle氏は、「これら5種類のがんの予防およびスクリーニングの普及と利用を最適化し、特に十分な医療を受けられていない人が恩恵を受けられるようにする必要がある。また、膵臓がんや卵巣がんなど、致命的になる可能性の高い他のがんによる死亡を回避するための新たな予防およびスクリーニング方法を開発する必要もある」と述べている。

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第200回日本肺癌学会関東支部学術集会前夜祭【肺がんインタビュー】第104回

第104回 第200回日本肺癌学会関東支部学術集会前夜祭1960年から始まり今回で200回を迎える日本肺癌学会関東支部学術集会。支部会のご厚意により、同学術集会の前夜祭の模様をアーカイブでお届けする。内科、外科のみならず放射線、病理と、あらゆる方向の肺がん最新情報を各領域のスペシャリストが紹介する。出演(講演順)<Opening remarks>国立がん研究センター東病院 坪井 正博氏<座長>国際医療福祉大学 成田病院 吉野 一郎氏<プレゼンター>国立がん研究センター東病院 青景 圭樹氏国際医療福祉大学成田病院 大西 かよ子氏<座長>日本医科大学 清家 正博氏<プレゼンター>がん研有明病院 柳谷 典子氏順天堂大学医学部附属順天堂医院 林 大久生氏国立がん研究センター東病院 善家 義貴氏<Closing remarks>東京医科大学 池田 徳彦氏

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ブータンの緩和ケアを見てきました【非専門医のための緩和ケアTips】第90回

ブータンの緩和ケアを見てきました最近は国際保健に関心のある医学生が増え、学会でも学生時代から海外で活動した発表を目にする機会があります。私自身、国際経験は多くないのですが、今年になってブータンに行く機会があり、この経験を紹介します。今回の質問学生時代にアジアのさまざまな国を旅行するのが趣味でした。訪問診療をする一方で、海外の医療にも関心を持っています。日本のように制度が整っている国ばかりではないと思うのですが、何か経験はありますか?先日、緩和ケアの指導医としてブータンに行ってきました。文化や医療システムがまったく異なる環境でさまざまなことを経験したので、そんな海外の緩和ケア事情をお伝えしたいと思います。まず、ブータンに行った経緯ですが、APHN(Asia Pacific Hospice Palliative Care Network:アジア太平洋ホスピス緩和ケアネットワーク)という団体があり、アジア各国で緩和ケアにおける研究や教育、普及啓発、ネットワーク構築に取り組んでいます。私は数年前からこの団体の活動に参加しています。この団体の取り組みでユニークなものとして、緩和ケアの体制づくりに取り組む国への支援があります。さまざまな国から指導者を派遣し、レクチャーやベッドサイドでの教育を支援するのです。今回、私はこのプログラムに参加するかたちでブータンを訪問しました。ブータンは人口約80万人、九州程度の広さの国です。以前、ブータンの国王が来日した際、「世界一の幸福度の高い国」として話題になりました。そんなブータンにおける緩和ケア事情とは、どのようなものなのでしょうか?ブータンの医療事情は、日本と比較すれば厳しい面が多くあります。心臓カテーテル検査や放射線治療を国内で実施できず、必要な患者は国外の医療機関に紹介する必要があります。実際、私が訪問診療に同行した患者は、インドでPET-CTや放射線治療を受けていました。一方で、緩和ケアについては提供体制を構築中であり、数年前に女性医師がシンガポールに1年間の研修に行き、ブータンに戻ってさまざまな体制をつくろうとしている状況です。私が参加したプログラムもこの部分を支援するためのものでした。今回のプログラムは、月~金曜日の5日間、午前中は講義とグループワークの座学、午後は訪問診療と急性期医療機関でのベッドサイドティーチングというスケジュールでした。会話はすべて英語で、私は「せん妄」と「がんに関連した大量出血の対応」のテーマで講義をしました。40人程度の受講生は医師、看護師、薬剤師などで、皆が真剣に話を聞いてくれました。質疑応答ではお互いの経験に基づく実践的な質問があり、私も日本で経験した大量出血を起こしたがん患者さんの例などをお話ししました。同じ症状や病態に対しても、医療体制や文化が異なるとアプローチが異なるのは興味深いことでした。私の講義中に多くの時間を割いたのが、「倫理的検討」をテーマにしたグループワークでした。実際に訪問診療を行い、その患者の情報を「臨床倫理の4分割」という方法を使って整理し、発表するのです。臨床倫理の4分割は日本でもよく用いられている手法で、倫理的な問題に直面した際、「医学的側面・患者の意向・周辺の状況・QOL」の4つの要素を整理しながら議論します。私たちが担当した患者は、「将来的には生まれ故郷のインドに戻りたい」という思いがありました。それを踏まえ、「家族内で終末期に関する話し合いをどのように促すか」というテーマで議論をしました。こうした複雑な内容の議論を英語で行うのはハードルが高かったのですが、良い経験になりました。ブータンは仏教国で、行政もゾンと呼ばれる寺院で行われます。訪問診療に行った際の患者の自宅でも、ベッドが日本でいうところの仏壇のようなつくりで、まるで祭壇の前に横たわっているようでした。ホテルの前にも有名な寺院があり、早朝から多くの参拝者が熱心に祈りを捧げていました。このように生活の中に宗教が文化として定着している光景は見たことがなく、緩和ケア医である私にとって非常に新鮮で大きな経験となりました。このような日常と異なる環境や文化、人々に触れることは緩和ケア医としてはもちろん、医療者としても非常に大切なことだと思います。ちなみにブータンの方々は英語が非常に堪能で、議論の際は私のほうが拙い英語で申し訳ない思いでした。それでも、お互いの考えを確認し合いながら学びを深めていく作業によって、大変さに見合うだけの絆ができたように感じました。今回のTips今回のTipsそれぞれの国で異なる緩和ケア事情を学んでみるのも楽しいですよ。世界の医療事情・ブータン/外務省

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EGFR陽性NSCLCの1次治療、オシメルチニブ+化学療法のアジア人データ(FLAURA2)/ESMO Asia2024

 2024年6月にオシメルチニブの添付文書が改訂され、EGFR遺伝子変異陽性の進行・再発非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療として、オシメルチニブと化学療法の併用療法が使用可能となった。本改訂は、オシメルチニブと化学療法の併用療法とオシメルチニブ単剤を比較する国際共同第III相無作為化比較試験「FLAURA2試験」1)の結果に基づくものである。欧州臨床腫瘍学会アジア大会(ESMO Asia2024)において、アジア人集団の治療成績が、国立台湾大学病院のJames Chih-Hsin Yang氏により報告された。試験デザイン:国際共同第III相非盲検無作為化比較試験対象:EGFR遺伝子変異陽性(exon19欠失/L858R)でStageIIIB、IIIC、IVの未治療の非扁平上皮NSCLC成人患者557例(アジア人333例)試験群:オシメルチニブ(80mg/日)+化学療法(ペメトレキセド[500mg/m2]+シスプラチン[75mg/m2]またはカルボプラチン[AUC 5]を3週ごと4サイクル)→オシメルチニブ(80mg/日)+ペメトレキセド(500mg/m2を3週ごと)(併用群、279例[アジア人169例])対照群:オシメルチニブ(80mg/日)(単独群、278例[アジア人164例])評価項目:[主要評価項目]RECIST 1.1による治験担当医師評価に基づく無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)など アジア人集団における主な結果は以下のとおり。・併用群、単独群の年齢中央値はいずれの群も61歳で、女性の割合はそれぞれ62%、57%であった。EGFR遺伝子変異の内訳は、exon19欠失変異がそれぞれ53%、61%で、L858R変異がそれぞれ46%、38%であった。中枢神経系(CNS)転移はそれぞれ47%、42%に認められた。・治験担当医師評価に基づくPFS中央値(データカットオフ:2023年4月3日)は、併用群25.5ヵ月(全体集団:25.5ヵ月)、単独群19.4ヵ月(同:16.7ヵ月)であった(ハザード比[HR]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.51~0.94)。・盲検下独立中央判定によるPFS中央値(データカットオフ:2023年4月3日)は、併用群33.2ヵ月(全体集団:29.4ヵ月)、単独群24.7ヵ月(同:19.9ヵ月)であった(HR:0.72、95%CI:0.52~1.01)。・OS中央値(データカットオフ:2024年1月8日)は、併用群40.5ヵ月(全体集団:未到達)、単独群38.3ヵ月(同:36.7ヵ月)であった(HR:0.80、95%CI:0.57~1.12)。・治験担当医師評価に基づくORRは併用群84%(全体集団:83%)、単独群76%(同:75%)であった。・DOR中央値は併用群24.0ヵ月(全体集団24.0ヵ月)、単独群18.0ヵ月(同:15.3ヵ月)であった。・Grade3以上の有害事象は併用群67%、単独群24%に発現した(いずれの群でもGrade4/5の間質性肺疾患/肺臓炎は発現なし)。・オシメルチニブの中止に至った有害事象は、併用群10%、単独群7%に発現した。・アジア人集団において、併用群で最も多くみられた有害事象は貧血であった(アジア人集団:50%、全体集団:12%)・併用群の間質性肺疾患/肺臓炎の発現率は、アジア人集団(4%)と全体集団(3%)で同様であった。 本結果について、Yang氏は「オシメルチニブと化学療法の併用療法は、アジア人においてもEGFR遺伝子変異陽性の進行NSCLCに対する1次治療の選択肢の1つとなることが支持される」とまとめた。

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EGFRエクソン20挿入変異陽性肺がんのアンメットニーズと新たな治療/J&J

 ジョンソン・エンド・ジョンソン(法人名:ヤンセンファーマ)は、「EGFR遺伝子エクソン20挿入変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(NSCLC)」の適応で2024年9月に本邦での製造販売承認を取得したアミバンタマブ(商品名:ライブリバント)を、同年11月20日に発売した。これを受け、11月29日にライブリバント発売記者発表会が開催され、後藤 功一氏(国立がん研究センター東病院 副院長・呼吸器内科長)が講演を行った。EGFRエクソン20挿入変異の特徴 アミバンタマブの対象となる「EGFRエクソン20挿入変異」はEGFR遺伝子変異の中で3番目に多いことが知られており1)、LC-SCRUM-Asiaの報告では、登録者のおよそ1.7%(189/11,397例)に検出されていた2)。また、同報告においては、エクソン19欠失変異やL858R変異と比較して、男性や喫煙者にも検出される割合がやや高かった。 EGFR遺伝子の変異は、リガンド非依存的なATP結合と細胞増殖シグナル伝達を引き起こすが、エクソン20挿入変異があると、ATP結合部位が狭くなり、ATPと競合拮抗するチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の結合が妨げられることが報告されている3,4)。従来のTKIへの感受性は乏しく、アンメット・メディカル・ニーズの高い領域とされている。そこに新たに登場したのが、EGFRとMETを標的とする二重特異性抗体のアミバンタマブである。2024年版ガイドラインにおけるアミバンタマブの位置付け アミバンタマブは、未治療のEGFRエクソン20挿入変異陽性のNSCLC患者を対象とした国際共同非盲検無作為化比較第III相試験「PAPILLON試験」の結果に基づいて承認された。本試験では、アミバンタマブと化学療法の併用群が、化学療法群と比較し、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある無増悪生存期間の改善を示したことが報告されている5)。 これを受けて、2024年10月に公開された『肺癌診療ガイドライン2024年版』6)では、EGFRエクソン20挿入変異の一次治療に関するCQが新設され、アミバンタマブと化学療法の併用療法の推奨が明記された。【肺癌診療ガイドライン2024年版 CQ50】CQ50. エクソン20の挿入変異に対して、一次治療で標的療法が勧められるか?a. エクソン20の挿入変異にはカルボプラチン+ペメトレキセド+アミバンタマブ併用療法を行うよう強く推奨する。(推奨の強さ:1、エビデンスの強さ:B)b. エクソン20の挿入変異にはEGFR-TKI単剤療法を行わないよう強く推奨する。(推奨の強さ:1、エビデンスの強さ:C)【製品概要】商品名:ライブリバント点滴静注350mg一般名:アミバンタマブ(遺伝子組換え)製造販売承認日:2024年9月24日薬価基準収載日:2024年11月20日発売日:2024年11月20日薬価:350mg 7mL 1瓶 160,014円製造販売元(輸入):ヤンセンファーマ株式会社■参考文献・参考サイト1)Arcila ME, et al. Mol Cancer Ther. 2013;12:220-229.2)Okahisa M, et al. Lung Cancer. 2024;191:107798.3)Yasuda H, et al. Sci Transl Med. 2013;5:216ra177.4)Robichaux JP, et al. Nat Med. 2018;24:638-646.5)Zhou C, et al. N Engl J Med. 2023;389:2039-2051.6)日本肺癌学会 編. 肺癌診療ガイドライン―悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む―2024年版【Web版】

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日本人の主な死因、10年間の変化

日本人の主な死因、10年間の変化350悪性新生物(腫瘍)300死亡率(人口10万対)250心疾患(高血圧性を除く)200老衰150100脳血管疾患肺炎誤嚥性肺炎新型コロナ腎不全不慮の事故5002014201520162017201820192020アルツハイマー病202120222023 [年]厚生労働省「人口動態統計」2023年(確定数)保管統計表 死亡(年次)「第5表-11 死因順位別にみた年次別死亡率(人口10万対)」「第5表-13 死因(死因簡単分類)別にみた性・年次別死亡数及び死亡率(人口10万対)」より集計Copyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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第220回 インフルエンザ患者数が前週比2倍以上に増加、年内にも感染ピーク?/厚労省

<先週の動き>1.インフルエンザ患者数が前週比2倍以上に増加、年内にも感染ピーク?/厚労省2.2040年を見据えた新たな地域医療構想、在宅医療強化が必要/厚労省3.移植希望、複数医療機関に登録可能に、体制改革案を公表/厚労省4.医師の働き方改革でガイドラインを改正、時短計画見直しを強化/厚労省5.地方は分娩数減、都市部はコスト増で産科診療所の経営が悪化/日医総研6.担当医が画像診断報告書を見逃し、肺がん診断が1年遅れる医療過誤/神戸大1.インフルエンザ患者数が前週比2倍以上に増加、年内にも感染ピーク?/厚労省インフルエンザの流行が拡大している。厚生労働省によると、11月25日~12月1日の1週間における定点1医療機関当たりの患者報告数は4.86人と、前週の2倍以上に増加した。全国的な流行期に入ってから6週連続の増加で、患者数は2万4,027人に達した。都道府県別では、福岡県が11.43人と最も多く、ついで長野県(9.07人)、千葉県(8.18人)と続いている。専門家は、このペースで患者数が増加すると、年内にも感染のピークを迎える可能性があると指摘している。インフルエンザは、インフルエンザウイルスによる感染症で、発熱、咳、のどの痛み、頭痛、関節痛、筋肉痛などの症状を引き起こす。感染経路は、咳やくしゃみなどの飛沫感染や、ウイルスが付着した手で口や鼻を触ることによる接触感染。厚労省では、手洗い、マスクの着用、咳エチケットなどの感染対策を呼びかけている。また、ワクチンの接種も有効な予防策となる。ワクチンは、接種してから効果が出るまでに約2週間かかるため、流行期前に接種することが推奨されている。参考1)インフルエンザの定点報告数が倍増 感染者数2万人超える(CB news)2)インフルエンザ 感染ピークはいつ?流行期入り後 患者増続く(NHK)2.2040年を見据えた新たな地域医療構想、在宅医療強化が必要/厚労省厚生労働省は、12月6日に「新たな地域医療構想等に関する検討会」を開き、2040年の高齢社会を見据えた新たな地域医療構想案について検討を行った。2040年頃に迎える高齢者人口のピークと医療ニーズの変化に対応するため、入院医療だけでなく在宅医療の強化や医療機関の機能分担を明確化し、地域完結型の医療体制構築を目指す内容となった。2040年には、85歳以上の高齢者が2020年比で42%増加すると予測され、都市部を中心として在宅医療の需要も62%増加する見込みとなっている。新たな構想では、各地域で将来の在宅医療需要を推計し、医療関係者と連携して必要な体制について検討を行っていく。具体的には、医療機関の機能を「急性期拠点機能」「高齢者救急・地域急性期機能」「在宅医療等連携機能」「専門等機能」の4つに分類し、地域での役割分担の明確化を行う。大学病院などには、医師の派遣や医療従事者育成といった広域的な機能を担うことも期待されており、行政は、地域ごとの医療ニーズを踏まえ、医療機関の機能強化を支援する。この構想は、2024年度補正予算案にも反映されており、医療機関の経営支援、医師不足地域への支援、医療DX推進などに1,311億円が計上されている。一方、財政制度等審議会は、医療費総額の伸びを抑制するため、診療報酬の適正化や医師偏在対策などを提言している。医療現場からは、介護ヘルパーなど在宅医療の担い手不足や、診療報酬改定による経営悪化を懸念する声も上がっており、新たな地域医療構想の実現には、医療費抑制と医療提供体制の充実を両立させることが課題となる。今回、討議されなかった医師偏在対策については来週、開催する会議で検討を行い、年末までに関係者の合意を得て、対策パッケージとして取りまとめたい考えだ。参考1)第14回 新たな地域医療構想等に関する検討会(厚労省)2)新たな地域医療構想、取りまとめ案を大筋了承 連携・再編・集約化を28年度までに協議(CB news)3)新「地域医療構想」案を公表 「在宅医療」対応強化など 厚労省(NHK)3.移植希望、複数医療機関に登録可能に、体制改革案を公表/厚労省厚生労働省は12月5日、脳死からの臓器移植の体制を抜本的に見直す改革案をまとめ、有識者委員会に提示した。改革案では、提供者(ドナー)家族への対応や移植希望者の選定、臓器搬送の調整など、これまで日本臓器移植ネットワーク(JOT)に集中していた業務を分割し、あっせん機関を複数化する。具体的には、ドナー家族への対応は地域ごとに新設する法人に移管し、JOTは移植希望者の選定や臓器搬送の調整などに専念する。また、移植希望者が登録できる医療機関を、現在の原則1ヵ所から複数ヵ所に拡大する。これにより、第1希望の医療機関が受け入れを断念した場合でも、他の医療機関で移植を受けられる可能性が高まる。さらに、知的障害などで意思表示が困難な人からの臓器提供についても、本人の意思を丁寧に推定した上で判断できるようにガイドラインを見直す予定。この改革案は、JOTの業務多忙化や人員不足による対応の遅れ、移植実施病院の受け入れ体制不足など、現在の臓器移植体制が抱える課題を解決することを目指している。厚労省は、今後、パブリックコメントなどを経てガイドラインを改正し、新たな体制を構築していく方針。参考1)第70回 厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会(厚労省)2)厚生労働省 脳死からの臓器移植 実施体制の大幅な見直し案示す(NHK)3)臓器あっせん、複数機関で 厚労省改革案 移植増狙い負担軽減(日経新聞)4)移植医療体制の抜本見直し案、厚労省臓器移植委が了承…移植希望者の複数施設登録を可能に(読売新聞)4.医師の働き方改革でガイドライン改正、時短計画見直しを強化/厚労省厚生労働省は、医師の労働時間短縮計画作成ガイドラインを一部改正し、11月28日に都道府県などに通知した。改正のポイントは、計画の年度途中における「年度暫定評価」と次年度開始後に行う「年度最終評価」の2段階評価を導入し、よりきめ細かく計画を見直すことができるようにした。今回の改正は、「医師の働き方改革を推進するための医療法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第49号)に基づくもの。同法では、時間外や休日の労働時間が年960時間を超え、特例水準を適用する医師が勤務する医療機関などに、医師の労働時間短縮計画の作成を義務付けている。ガイドラインでは、計画期間について5年を超えない範囲で設定することとし、4月を計画の開始月とした場合を例に、毎年の見直し方法を解説している。初年度は、第3四半期頃に「年度暫定評価」を実施し、計画の対象となる医師の時間外・休日労働時間数や、タスク・シフト/シェアによる労働時間の短縮に向けた取り組みについて実績を確認する。確認期間は4月からおおむね6~8ヵ月間とした。その結果に基づき、第4四半期頃に計画見直しを検討し、年度末までに2年目の計画の変更を行う。2年目以降は、前年度全体の「年度最終評価」を第1四半期頃に実施し、「年度暫定評価」と同様に実績を確認する。その結果に基づき、2年目の計画の見直しが必要かどうかを検討し、計画を見直す場合は6月末日までに計画の変更を行う。一連の見直しは毎年行い、特定労務管理対象機関は時間外・休日労働時間の実績などを記入する参考資料とともに計画を都道府県に提出する。それ以外の医療機関は医療機関等情報支援システム「G-MIS」に登録する。厚労省は、今回のガイドライン改正により、医療機関における医師の労働時間短縮に向けた取り組みが、より効果的に推進されることを期待している。参考1)医師労働時間短縮計画作成ガイドラインの一部改正について(厚労省2)医師の時短計画、2段階評価で毎年見直し タスクシフト・シェアの状況も確認 厚労省(CB news)5.地方は分娩数減、都市部はコスト増で産科診療所の経営が悪化/日医総研日本医師会総合政策研究機構は、全国の産科診療所の経営状況などを把握するため、9月にアンケート調査を実施した。その結果をワーキングペーパーとしてまとめ公表した。これによると、2023年度の産科診療所の経常利益率は3.0%で、前年度から0.4ポイント悪化し、赤字診療所の割合は42.4%と、前年度から0.5ポイント拡大したことが明らかとなった。調査は、日本産婦人科医会の会員の産婦人科と産科の診療所1,000ヵ所を対象に、ウェブ形式と紙の調査票で実施された。有効回答は449ヵ所(有効回答率44.9%)で、このうち医療法人の産科診療所は191ヵ所だった。2023年度の経常利益率を地域別にみると、大都市は2.9%、中都市は3.0%、小都市・町村は3.0%だった。前年度に比べ、中都市では1.1ポイント上昇したが、小都市・町村で2.8ポイント、大都市では1.5ポイント悪化した。都市部では物価高騰と賃上げなどによるコストの増加が経営悪化につながり、地方では分娩数の減少が経営を圧迫している現状が浮き彫りになった。回答施設の病床利用率は、平均5割を切っており、入院患者数が減少していることがわかる。しかし、24時間対応の医療スタッフを維持する必要があるため、人件費の削減が難しく、経営悪化に拍車をかけている。日医総研は、こうした状況が続けば、医療スタッフを維持するのが困難になり、分娩の取り扱いを止めざるを得ない診療所が増えるとして、国による支援を呼びかけている。参考1)産科診療所の特別調査(日医総研)2)産科診療所の4割超が経常赤字 日医総研 医業利益率は悪化(CB news)6.担当医が画像診断報告書を見逃し、肺がん診断が1年遅れる医療過誤/神戸大神戸大学医学部附属病院は12月6日、医師2人が患者のCT画像診断報告書に記載された肺がんの疑いを見落とし、診断が約1年遅れる医療過誤があったと発表した。患者は70代の女性で、2016年から心臓血管疾患の経過観察のため、同病院で定期的にCT検査を受けていた。2022年10月のCT検査で放射線科医が肺がんの疑いを指摘したが、当時の担当医は報告書の内容を確認しなかった。翌2023年10月にも同様の指摘がされたが、別の担当医もまた見落としていた。同年10月中旬、患者のかかりつけ医が診断報告書を確認し、肺がんの疑いに気付き、同病院の呼吸器内科に紹介したことで、肺がんの診断が確定した。しかし、発見時にはすでに進行がんの状態であり、完治が難しい状態になっていた。同病院は、早期に発見できていれば手術などの治療が可能だった可能性が高いことを認め、「患者とご家族に多大な苦痛をおかけしたことを反省し、謝罪申し上げる」と発表した。再発防止策として、同病院では、報告書の見落としを防ぐシステムの活用や、診療科ごとに診断リポートの重大な指摘を見逃さないよう確認する責任者を置くなどの対策を講じるとしている。参考1)画像診断レポートの確認不足による肺癌の確定診断及び治療の遅延について(神戸大)2)神戸大付属病院で医療ミス、肺がん疑いの患者CT検査結果の確認怠る…発見遅れ完治困難に(読売新聞)3)神戸大病院 肺がん疑いのCT画像報告書を主治医が見落とし 1年放置し「重大な影響」(神戸新聞)4)神戸大病院で肺がんの診断遅れるミス 疑い指摘を担当医2人が見逃す(朝日新聞)

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がん診断後の禁煙、6ヵ月内のスタートで予後改善

 喫煙・禁煙ががんの罹患や予後に関連するとの報告は多いが、がん診断後の禁煙治療の開始時期は予後にどの程度関連するのかについて検討した、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのPaul M. Cinciripini氏らによる研究がJAMA Oncology誌オンライン版2024年10月31日号に掲載された。 研究者らは、テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターのたばこ研究・治療プログラムの参加者を対象とした前向きコホート研究を行った。参加者は、がん診断後に6~8回の個別カウンセリングと10~12週間の薬物療法からなる禁煙治療を受けた。禁煙治療開始から3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月後に自己申告により禁煙の継続を報告した。がん診断から禁煙治療登録までの期間(6ヵ月以内、6ヵ月~5年、5年以上)に基づいて3つのサブグループに分けて解析を行った。治療は2006年1月1日~2022年3月3日、データ分析は2023年9月~24年5月に実施された。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、当時喫煙しており、がん診断後に禁煙治療を受けた患者4,526例(女性2,254例[49.8%]、年齢中央値55[SD 47~62]歳)で、がん種で多かったのは乳がん(17.5%)、肺がん(17.3%)、頭頸部がん(13.0%)、血液がん(8.3%)だった。追跡期間中央値は7.9(SD 3.3~11.8)年だった。・禁煙継続率は、3ヵ月時点で42%(1,900/4,526例)、6ヵ月時点で40%(1,811/4,526例)、9ヵ月時点で36%(1,635/4,526例)であった。・3ヵ月時点の禁煙者は喫煙者(=禁煙に失敗)と比較して、5年および10年時点での生存率が改善した(65%対61%、77%対73%)。・全コホートの生存率の最低百分位数は56%であったため、生存期間中央値は推定できなかった。75パーセンタイルでの生存期間を推定すると、死亡までの期間は、3ヵ月時点の喫煙者では4.4年だったのに対し、禁煙者では5.7年だった。・3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月時点のいずれでも、禁煙者は15年間の生存率が上昇した(3ヵ月時点の調整ハザード比[aHR]:0.75[95%信頼区間[CI]:0.67~0.83]、6ヵ月時点のaHR:0.79[95%CI:0.71~0.88]、9ヵ月時点のaHR:0.85[95%CI:0.76~0.95])。・診断から禁煙治療開始までの期間と生存転帰との関連では、診断から6ヵ月以内に開始した患者では、3ヵ月後の禁煙の有無が5年および10年時点での生存率の改善と関連していた(それぞれ61%対71%、52%対58%)。この有益性は15年まで持続した。同様の関連性は診断から6ヵ月~5年内に開始した患者でも観察されたがその有益性は減少し、5年以上経過して開始した患者では有意な関連性は認められなかった。 著者らは、「治療開始から3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月時点の禁煙継続が、生存率の改善と関連していた。がん診断後早期に禁煙治療を開始することも重要で、6ヵ月以内に治療を開始した患者では生存率が最も良好であった」とし、がん診断後早期にエビデンスに基づく禁煙治療を開始し、継続することの重要性を強調した。

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コンパッション・シティって知っていますか?【非専門医のための緩和ケアTips】第89回

コンパッション・シティって知っていますか?「コンパッション・シティ」って聞いたことがありますか? 私も勉強中だったのですが、学ぶ機会があったのでお話ししたいと思います。今後の緩和ケアを議論するうえで大きな論点になっていくと思われるテーマです。今回の質問最近、学会に参加している際に「コンパッション・シティ」とか、「コンパッション・コミュニティ」という言葉を聞きました。ちょっと聞いただけではよくわからなかったのですが、緩和ケアとどのような関わりがあるのでしょうか?「コンパッション・シティ」という用語、緩和ケア領域で耳にする機会が増えてきました。「コンパッション」は日本語に直訳すると「思いやり」。「思いやりを持った都市」、???って感じですが、もうちょっと詳しくみていきましょう。まず、この「コンパッション」という概念について説明しましょう。医療者であるわれわれには「シティ」よりもこちらのほうが直感的に理解しやすいはずです。高齢化が進み、死や喪失を経験する方が増えています。そこには医療だけではアプローチできない苦悩があり、その苦しみは病院の中では解決できません。緩和医療分野の世界的な権威であるアラン・ケレハー氏は、「苦しみのほとんどは病院の中にあるのではなく、生活の中にある。病院で解決できる苦痛など、せいぜい5%ほどしかない」と、よく仰っています。実は先日、アラン・ケレハー氏が来日され、直接お話を伺う機会があり、私自身、深い学びを得ました。「苦しみは病院ではなく生活の中にある」というのは、まさしくそのとおりだと思いませんか? では、病院にいる私たちは、これにどのように対応すればよいでしょうか。ポイントになるのが、「地域」そして「都市」レベルでの「コンパッション」なのです。皆さんが診療している地域でも、町内会やご近所付き合いの中で支え合いが機能していることがあるでしょう。困っている人がいれば話を聞いたり、ゴミ出しのお手伝いや見守りをしたりなど、家族以外の身近な人たちが、お互いに支え合っている例です。自己犠牲に基づく献身ではなく、お互いができることをできる範囲でやり、支え合うようなコミュニティは多数あります。これが「コンパッション・コミュニティ」なのです。一方、「コンパッション・シティ」では、行政からのアクションも含め、個別のコミュニティだけでなく都市レベルでコンパッションを高めるまちづくりに取り組んでいる例、というのが私の理解です。トップダウンの「コンパッション・シティ」と、ボトムアップの「コンパッション・コミュニティ」と理解するとわかりやすいかもしれません(このあたりは私も勉強中なので、解釈違いなどあればご指摘ください)。緩和ケアに関わる医療者として、医療機関だけでなく地域でケアが提供されるのは本当に大切なことだと思います。また、われわれも含めたケアの提供者も、ケアが受けられる環境であってほしいとも思います。そのヒントが「コンパッション」なのかもしれません。こういった横文字の新しい言葉って、多くの人に理解され、定着するまでが大変ですよね。「アドバンス・ケア・プランニング」(ACP)もその途上にあり、議論の中では誤解も生じやすい言葉だと感じています。一方、うまく日本語に訳すのも難しいため、多くの議論を重ねながら、定着すればと思っています。今回のTips今回のTipsコンパッション・シティは、これからのケアのあり方を考えるうえで重要なコンセプトです。

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日本人の主な死因(2023年)

日本人の主な死因その他食道 2.8%21.0%前立腺 3.5%肺および気管・気管支19.8%大腸(結腸・直腸)13.9%悪性リンパ腫3.8%アルツハイマー病1.6%その他悪性新生物(腫瘍)25.0%24.3%乳房 4.1%膵胃胆のう・胆道 4.5%10.5%10.1%肝・肝内胆管 6.0%n=38万2,504人腎不全 1.9%心疾患新型コロナウイルス感染症 2.4%不慮の事故2.8%誤嚥性肺炎3.8%(高血圧性を除く)心疾患14.7%老衰脳血管疾患 12.1%6.6%肺炎慢性リウマチ性4.8%心筋症 1.5%0.8%慢性非リウマチ性心内膜疾患5.2%くも膜下出血n=157万6,016人10.7%31.3%n=10万4,533人20.6%心不全42.9%急性心筋梗塞13.4% 不整脈および伝導障害15.6%その他 2.9%脳内出血その他n=23万1,148人脳梗塞55.1%厚生労働省「人口動態統計」2023年(確定数)保管統計表 都道府県編 死亡・死因「第4表-00(全国)死亡数,都道府県・保健所・死因(死因簡単分類)・性別」より集計注:死因順位に用いる分類項目(死因簡単分類表から主要な死因を選択したもの)による順位Copyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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オメガ3・6脂肪酸の摂取はがん予防に有効か

 多価不飽和脂肪酸(PUFA)のオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の血中濃度は、がんの発症リスクと関連していることが、新たな研究で示唆された。オメガ3脂肪酸の血中濃度が高いことは、結腸がん、胃がん、肺がん、肝胆道がんの4種類のがんリスクの低下と関連し、オメガ6脂肪酸の血中濃度が高いことは、結腸がん、脳、メラノーマ、膀胱がんなど13種類のがんリスクの低下と関連することが明らかになったという。米ジョージア大学公衆衛生学部のYuchen Zhang氏らによるこの研究の詳細は、「International Journal of Cancer」に10月17日掲載された。Zhang氏は、「これらの結果は、平均的な人が食事からこれらのPUFAの摂取量を増やすことに重点を置くべきことを示唆している」と述べている。 この研究でZhang氏らは、UKバイオバンク研究の参加者25万3,138人のデータを用いて、オメガ3脂肪酸およびオメガ6脂肪酸の血漿濃度とあらゆるがん(以下、全がん)、および部位特異的がんとの関連を検討した。ベースライン調査時(2007〜2010年)に得られた血漿サンプルを用いて、核磁気共鳴法(NMR)によりこれらのPUFAの絶対濃度と総脂肪酸に占める割合(以下、オメガ3脂肪酸の割合をオメガ3%、オメガ6脂肪酸の割合をオメガ6%とする)を評価した。対象としたがんは、頭頸部がん、食道がん、胃がん、結腸がん、直腸がん、肝胆道がん、膵臓がん、肺がん、メラノーマ、軟部組織がん、乳がん、子宮がん、卵巣がん、前立腺がん、腎臓がん、膀胱がん、脳腫瘍、甲状腺がん、リンパ系および造血組織がんの19種類だった。 平均12.9年の追跡期間中に、2万9,838人ががんの診断を受けていた。喫煙状況、BMI、飲酒状況、身体活動量などのがんのリスク因子も考慮して解析した結果、オメガ3脂肪酸およびオメガ6脂肪酸の血漿濃度が上昇すると全がんリスクが低下するという逆相関の関係が認められた。全がんリスクは、オメガ3%が1標準偏差(SD)上昇するごとに1%、オメガ6%が1SD上昇するごとに2%低下していた。がん種別に検討すると、オメガ6%は13種類のがん(食道がん、結腸がん、直腸がん、肝胆道がん、膵臓がん、肺がん、メラノーマ、軟部組織がん、卵巣がん、腎臓がん、膀胱がん、脳腫瘍、甲状腺がん)と負の相関を示した。一方、オメガ3%は4種類のがん(胃がん、結腸がん、肝胆道がん、肺がん)と負の相関を示す一方で、前立腺がんとは正の相関を示すことが明らかになった。 オメガ3脂肪酸やオメガ6脂肪酸は、脂肪分の多い魚やナッツ類、植物由来の食用油に含まれているが、十分な量を摂取するために魚油サプリメントに頼る人も多い。しかし研究グループは、これらのPUFAの効用が全ての人にとって同じように有益になるとは限らないとしている。実際に、本研究では、オメガ3脂肪酸の摂取量が多いと前立腺がんのリスクがわずかに高まる可能性のあることが示された。論文の上席著者であるジョージア大学Franklin College of Arts and SciencesのKaixiong Ye氏は、このことを踏まえ、「女性なら、オメガ3脂肪酸の摂取量を増やすという決断も容易だろう」と同大学のニュースリリースの中で話している。

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EGFR陽性NSCLC、CRT後のオシメルチニブは日本人でも良好(LAURA)/日本肺癌学会

 2024 ASCO Annual Meetingにて、第III相無作為化比較試験「LAURA試験」の結果、切除不能なEGFR遺伝子変異陽性StageIII非小細胞肺がん(NSCLC)における化学放射線療法(CRT)後のオシメルチニブ投与により、無増悪生存期間(PFS)が大幅に改善することが報告された。本試験の日本人集団の結果について、神奈川県立がんセンターの加藤 晃史氏が第65回日本肺癌学会学術集会で発表した。LAURA試験 試験デザインと結果の概要試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験対象:18歳以上(日本は20歳以上)の切除不能なStageIIIのEGFR遺伝子変異(exon19delまたはL858R)陽性NSCLC患者のうち、CRT(同時CRTまたはsequential CRT)後に病勢進行が認められなかった患者216例試験群(オシメルチニブ群):オシメルチニブ(80mg、1日1回)を病勢進行または許容できない毒性、中止基準への合致のいずれかが認められるまで 143例対照群(プラセボ群):プラセボ※ 73例評価項目:[主要評価項目]RECIST v1.1に基づく盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、安全性など※:BICRによる病勢進行が認められた患者は非盲検下でオシメルチニブへのクロスオーバーが許容された。 データカットオフ時点(2024年1月5日)における全体集団のPFSの成熟度は56%、OSの成熟度は20%であり、BICRによるPFS中央値は、オシメルチニブ群39.1ヵ月、プラセボ群5.6ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.16、95%信頼区間[CI]:0.10~0.24、p<0.001)。OS中央値は、オシメルチニブ群54.0ヵ月、プラセボ群未到達であった(HR:0.81、95%CI:0.42~1.56、p=0.530)。プラセボ群で病勢進行が認められた患者の81%が、オシメルチニブへクロスオーバーした。 日本人集団における主な結果は以下のとおり。・全体集団216例のうち、日本人は30例(オシメルチニブ群23例、プラセボ群7例)含まれていた。全体集団と比較して、年齢中央値はやや高く(日本人集団:71歳、全体集団:63歳)、オシメルチニブ群に含まれるPS0の患者の割合も高かった(日本人集団:78%、全体集団:56%)。・BICRによるPFS中央値は、オシメルチニブ群38.4ヵ月、プラセボ群6.4ヵ月であった。データカットオフ時点ではイベントが少なく、HRは算出されていないが、全体集団と同様にオシメルチニブのベネフィットが示された。1年PFS率はそれぞれ74%、29%、2年PFS率はそれぞれ65%、14%であった。・データカットオフ時点で、オシメルチニブ群の26%(6例)、プラセボ群の14%(1例)で死亡が報告された。・安全性プロファイルは全体集団と一致していたが、放射線肺臓炎はオシメルチニブ群で83%(19例)、プラセボ群で57%(4例)と、日本人集団で多く報告されていた(全体集団ではそれぞれ48%、38%)。しかし、Grade3以上の報告はオシメルチニブ群の4%(1例)のみであり、Grade4/5の報告はなかった。また、放射線肺臓炎が原因でオシメルチニブの投与中止に至った症例は1例のみであった。放射線肺臓炎の報告が多かった理由は、日本における集中的な間質性肺疾患(ILD)モニタリングの結果と考察された。 加藤氏は、今回の解析結果はLAURA試験の全体集団の結果と一致しているとし、オシメルチニブのCRT後の使用は日本人に対しても良好なベネフィット・リスクプロファイルを示したとまとめた。 ディスカッサントとして登壇したテキサス大学MDアンダーソンがんセンターのKeunchil Park氏からは、本試験において病勢進行などが認められるまでオシメルチニブを投与継続することの意義などについて指摘があった。Park氏は、24ヵ月以降のオシメルチニブ群とプラセボ群のPFSを比較しながら、StageIIIの患者の治癒の可能性について言及した。また、切除可能/不能いずれの患者も含まれるStageIIIの患者の不均一性も踏まえ、治療戦略を検討する必要があると語った。 これを受けて加藤氏は、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)による治癒の難しさに触れ、各施設の状況を踏まえて、術後補助療法もしくはCRT後というフロントラインでオシメルチニブの使用を検討することが望ましいのではないかと考えを語った。

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海外旅行と医療用麻薬【非専門医のための緩和ケアTips】第88回

海外旅行と医療用麻薬がん疼痛の症状緩和に医療用麻薬が処方されている場面をよく見かけるようになりました。今回は、医療用麻薬が一般的になってきたからこそ出合う状況に関する話題です。今回の質問外来通院中の患者さんで、医療用麻薬を処方している方がいます。幸い、症状緩和ができており、今度、海外旅行に行くそうです。患者さんから、「インターネットで『医療用麻薬は海外に持っていけない』と書いてあったのですが、どうすればよいでしょうか?」と質問がありました。どのようにアドバイスすべきでしょうか?海外旅行時の医療用麻薬の話題ですね。緩和ケア領域でときどき話題になるトピックです。結論からいうと、医療用麻薬を海外に持ち出すことは可能ですが、事前申請が必要になります。「事前」とは、出国日の2週間前までを指すため、早めに対応する必要があります。申請に必要な書類は以下のとおりです。1)医師の診断書…1通(以下の情報を記載)住所、氏名医療用麻薬が必要な理由処方された麻薬の品名・規格、それらの1日量2)麻薬携帯輸出許可証/輸入許可証 各1通申請用紙、記載例は、厚生労働省・地方厚生局・麻薬取締部のサイトからダウンロード可能。3)携帯する医療用麻薬の品名が確認できる資料お薬手帳で対応可能4)返信用封筒(宛先を明記)輸入/輸出許可証(日本語・英語を各1通)の送付用長3用以上の封筒(A4サイズが同封できる封筒)切手を貼付(送料は自己負担)これらの書類を準備し、患者さん自身が申請します。日本在住の方であれば住所地を管轄する厚生労働省・地方厚生局・麻薬取締部が窓口となります。海外在住の方は、入国予定の空港などを管轄する同局に申請します。「麻薬取締部」と聞くと、テレビ番組などで紹介される、空港で人や犬が荷物チェックをしている光景が思い浮かぶのではないでしょうか。医療とはまったく関係ない気がしますが、こうした接点があったのですね。交付された許可証は出国/入国時に税関で提示する必要があるので、そのことも患者さんに伝えておきましょう。このように、海外に医療用麻薬を持ち出す場合には、事前申請が必要となり、外来で急に「来週から海外に行きます」と相談されても、対応が難しくなります。時間がない場合は、医療用麻薬以外のNSAIDsなどで鎮痛できるかを試してみる必要があります。うまくいけばよいのですが、海外で症状が悪化する可能性があるなど、医師としても不安が残ります。まずは普段から患者さんに「海外に行く際は事前に教えてください」と伝え、コミュニケーションを取っておくことが重要です。麻薬取締部のサイトには「時間的余裕がない場合は、直接電話で相談するように」と書かれており、急ぎの相談をする手段はあるようですが、余裕を持った対応が基本です。今回のTips今回のTips医療用麻薬を海外へ持ち出す際は、2週間前までに申請が必要。

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ROS1陽性NSCLCへの新たな選択肢レポトレクチニブ、その特徴は?/BMS

 ブリストル・マイヤーズ スクイブは、ROS1阻害薬レポトレクチニブ(商品名:オータイロ)について、2024年9月24日に「ROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(NSCLC)」の適応で製造販売承認を取得し、同年11月20日に発売した。発売に先立ち、ブリストル・マイヤーズ スクイブは「ROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺癌についてのメディアセミナー」を2024年11月14日に実施した。分子標的薬の登場で大幅に治療成績が改善 「ROS1融合遺伝子陽性肺癌に対する治療戦略」と題し、後藤 功一氏(国立がん研究センター東病院 副院長・呼吸器内科長)がROS1融合遺伝子陽性NSCLCの治療の変遷とレポトレクチニブの特徴について紹介した。 ROS1融合遺伝子は、NSCLCの約1%にみられる。また、65歳未満、女性、喫煙歴なし、腺がんの割合が高いという特徴を有する。ただし、後藤氏は「65歳以上も40%近くを占め、男性にもみられるため、対象を絞らずにNSCLC患者全体に対して遺伝子検査を実施し、ROS1融合遺伝子陽性NSCLCを見つけることが重要である」と強調した。 ROS1融合遺伝子陽性NSCLCに対する治療では、ROS1チロシンキナーゼ阻害薬(ROS1-TKI)として、2017年にクリゾチニブが承認を取得し、2020年にはエヌトレクチニブが承認を取得している。これらの薬剤は高い有効性を示し、奏効割合(ORR)はそれぞれ71.7%1)、67.9%2)、無増悪生存期間(PFS)中央値はそれぞれ15.9ヵ月1)、15.7ヵ月2)と、大幅な治療成績の改善が報告されている。レポトレクチニブは耐性変異や脳転移にも有効 ROS1融合遺伝子陽性NSCLCにおいて、ROS1-TKIは画期的な治療成績の改善をもたらしたが、耐性が生じることも明らかになっている。耐性機序の1つにROS1におけるG2032R変異が挙げられているが、レポトレクチニブはこの耐性変異を克服しうる薬剤として開発された。 レポトレクチニブは、国際共同第I/II相試験「TRIDENT-1試験」3)の結果を基に製造販売承認を取得した。本試験は、ROS1-TKI未治療の集団だけでなく、ROS1-TKI既治療の集団での治療成績も評価されている。今回、後藤氏は「ROS1-TKI未治療集団」「1種類のROS1-TKIのみの前治療歴を有する集団」の治療成績を紹介した。 ROS1-TKI未治療集団において、ORRは78.9%と高く、奏効期間(DOR)中央値は34.1ヵ月、PFS中央値は35.7ヵ月であった。このことから、レポトレクチニブは長期にわたって耐性が生じず、効果が持続することが示された。また、レポトレクチニブの特徴として、後藤氏は中枢移行性が高いことを挙げた。実際に、レポトレクチニブは、脳転移を有する患者9例中8例において奏効が認められた。 1種類のROS1-TKIのみの前治療歴を有する集団においても、レポトレクチニブは有効性を示し、耐性変異にも有効であることが示唆された。本集団において、ORRは37.5%、PFS中央値は9.0ヵ月であった。 安全性について、本試験における重篤な副作用の発現割合は7.4%、投与中止に至った副作用の発現割合は3.7%であった。中枢神経系の副作用としては浮動性めまいが56.5%、味覚不全が48.9%に発現した。これらの結果について、後藤氏は「レポトレクチニブは毒性が軽いという特徴がある。ただし中枢神経系へ移行することから、めまいが多く、味覚不全も起こる」と述べ、レポトレクチニブによる長期の有効性を得るためには、めまいなどの有害事象を減薬や休薬などによってコントロールすることが重要であると強調した。 レポトレクチニブの有効性に関する詳細は以下のとおり。【ROS1-TKI未治療例(71例)】ORR(主要評価項目):78.9%(CR:9.9%、PR:69.0%)奏効までの期間中央値:1.84ヵ月DOR中央値:34.1ヵ月(2年奏効率:73.2%)PFS中央値:35.7ヵ月(18ヵ月PFS率:70.0%)OS中央値:未到達(18ヵ月OS率:87.9%)頭蓋内ORR:88.9%(8/9例)【1種類のROS1-TKI既治療例(56例)】ORR(主要評価項目):37.5%(CR:5.4%、PR:32.1%)DOR中央値:14.8ヵ月(1年奏効率:55.7%)PFS中央値:9.0ヵ月(1年PFS率:41.2%)OS中央値:25.1ヵ月(1年OS率:69.2%)患者が抱える治療選択肢がなくなる不安 続いて、ROS1融合遺伝子陽性NSCLC患者の吉野 振一郎氏が登壇し、自身の治療経験について述べた。吉野氏は、ROS1-TKIによる治療を始める際には、「早く治療を始めることで、耐性も早く出てしまうのではないか」と考え、なかなか治療に踏み切れなかったという。 その後、ROS1-TKIによる治療を始めてから2年半ほど経過した現在も耐性は生じず、1剤目のROS1-TKIを使用しているとのことであるが、吉野氏は「2ヵ月に1回の検査は、耐性が出ているのではないかと非常に不安になる。入学試験の結果を聞きに行くような感じだ」と語った。また、「患者の願いは、使える薬剤や治療がたくさんあることである」と述べ、レポトレクチニブの登場について「耐性が出てしまっても、次の薬剤があると思えるのは安心できる」と期待を述べた。【レポトレクチニブの製品概要】商品名:オータイロカプセル40mg一般名:レポトレクチニブ製造販売承認取得日:2024年9月24日薬価基準収載日:2024年11月20日発売日:2024年11月20日薬価:3,468.30円(40mg 1カプセル)効能又は効果:ROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌用法及び用量:通常、成人にはレポトレクチニブとして1回160mgを1日1回14日間経口投与する。その後、1回160mgを1日2回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。製造販売元:ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社

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