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mobocertinib、EGFR exon20挿入NSCLCに中国で承認/武田

 武田薬品工業は、2023年1月13日、プラチナベース化学療法で進行したEGFR exon20挿入変異陽性(exon20 ins)の進行非小細胞肺がん(NSCLC)治療に対するmobocertinibの適応を、中国国家食品薬品監督管理局(NMPA)が承認したと発表。 mobocertinibは、exon20挿入変異を標的として設計された経口TKIで、NMPAのブレークスルーセラピーとして審査された。 この承認は、プラチナ化学療法既治療のEGFR exon20 ins NSCLCを対象にしたmobocertinibの第I/II相試験の結果に基づいたもの。同試験では、確定奏効率28%、奏効期間中央値15.8ヵ月、全生存期間中央値20.2ヵ月、無増悪生存期間中央値7.3ヵ月を示した。一般的な治療関連有害事象は、下痢(92%)、発疹(46%)、爪周囲炎(38%)、食欲減退(37%)であった。 肺がんは中国で最も多く診断されるがんである。また、exon20 insはEGFR変異NSCLCの10%とされている。

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マクロファージは裏切り者!?肺がんの増殖を促進か/大阪大

 大阪大学大学院医学系研究科の石井 優氏らの研究グループは、肺胞マクロファージが、細胞の増殖および分化の調節、神経細胞の生存など、さまざまな生物活性を有するサイトカイン「アクチビンA」を介して、肺がんの増殖を促進させる悪循環を形成していることを初めて明らかにした。肺胞マクロファージは、正常の肺では最も数の多い免疫細胞の1つで、肺機能の維持に重要な役割を果たしていると考えられている。一方、肺がん細胞と肺胞マクロファージとの詳細な関係については、これまでほとんど解明されていなかった。本研究結果はNature Communications誌2023年1月17日号に掲載された。 肺胞マクロファージは、肺がんの環境において何らかの影響を肺がん細胞に与えている可能性が考えられていた。しかし、肺のみに存在するため、肺がんの環境を詳細に研究できる実験系を構築することが難しいという課題があった。そこで、外科的な手法を使ってマウス生体内に肺がんを構築する「肺がんモデルマウス」を用いて研究を行った。また、肺胞マクロファージのRNA配列を読み取り、遺伝子発現を網羅的に定量する「RNAシークエンス」を行った。 主な結果は以下のとおり。・肺がん患者の組織を調べた結果、肺がん組織では肺胞マクロファージが正常組織と比べて有意に多かった(p=0.0096)。・肺胞マクロファージ上清を添加して肺がん細胞(Lewis lung carcinoma)を培養すると、未添加と比べて細胞数が有意に増加し(p<0.0001)、がん細胞の倍加時間が短縮した。・肺がんモデルマウスの生体内から肺胞マクロファージを枯渇させると、肺胞マクロファージが保たれた場合よりも、肺がんの増殖が緩やかであった。・RNAシークエンスの結果、肺胞マクロファージではインヒビンβAをコードする遺伝子Inhbaの発現が亢進し、インヒビンβAのホモダイマーであるアクチビンAの産生が増加した。アクチビンAを添加して肺がん細胞(Lewis lung carcinoma)を培養すると、未添加と比べて細胞数が有意に増加した(p<0.0001)。・肺がん患者の組織でも、肺胞マクロファージにおいてアクチビンAが多く発現していた。 本研究結果の意義について、「肺胞マクロファージの産生するアクチビンAの阻害が、肺がんの治療候補となることが期待される。また、本研究で解明されたメカニズムは、早期がんの段階から確認されており、肺胞マクロファージとアクチビンAに着目することで、肺がんを早期に診断することにも貢献できると考えられる。さらに、アクチビンAの阻害は、早期がんから進行がんへの進展を抑制することにも有用であると考えられ、肺がんを早期の段階で手術により根治する機会を増やすことにも貢献できると期待される」と、研究グループはまとめている。

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KRAS G12C陽性肺がんの大規模な臨床ゲノムプロファイル:LC-SCRUM-Asia研究より/Lung Cancer

 ターゲット治療薬の開発で、肺がん領域でも注目されているKRAS G12C変異。2022年末、アジア人KRAS G12C陽性非小細胞肺がん(NSCLC)のリアルワールド解析が発表された。 KRAS G12Cは、白色人種のNSCLCでは約14%に発現するとの報告があるが、アジア人ではどの程度なのか。また、同集団に対する免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の有効性が報告されているが、アジア人患者でも効果は示されるのか。さらに、G12C以外の臨床ゲノム特性はどのようなものか。国立がん研究センター東病院・名古屋大学の田宮 裕太郎氏らは、肺がんの大規模前向きゲノムスクリーニングプロジェクト(LC-SCRUM-Asia)のデータベースに基づき、KRAS G12C NSCLCの臨床ゲノム特性とICIの治療成績を評価した。 主な結果は以下のとおり。・2015年3月〜2021年3月にLC-SCRUM-Asiaに登録されたNSCLC1万23例のうち、KRAS変異は14%(1,258例)に認められた。・KRAS変異の内訳は、G12Cが4.0%(376例)、G12Dが3.1%(289例)、G12Vは2.7%(251例)であった。・KRAS G12C陽性は、非G12C変異患者に比べ、男性および喫煙者の割合が高く(男性、喫煙者とも:p<0.001)、腫瘍変異負荷(TMB)が高い症例、PD-L1≧50%の症例が多かった(TMB:p<0.001、PD-L1:p=0.08)。・KRAS G12C陽性患者の全生存期間中央値は24.6ヵ月で、他の変異サブタイプとの差はなかった(G12V:18.2ヵ月、p=0.23、G12D:20.6ヵ月、p=0.65、その他のKRAS変異:18.3ヵ月、p=0.20)。・ICI治療による無増悪生存期間中央値は、KRAS G12Cでは3.4ヵ月で、G12V陽性の4.2ヵ月(p=0.90)と同様だったが、G12Dの2.0ヵ月(p=0.02)と、その他のKRAS変異の2.5ヵ月(p=0.02)に比べ、有意に長かった。 アジア人のNSCLCにおけるKRAS G12Cの頻度は、白人に比べて低かった。また、KRAS G12C NSCLCでは、高TMBやPD-L1高値など、免疫原性が亢進しており、ICIの感受性が高い可能性が示されている。■関連記事2022年の肺がん薬物療法の進歩を振り返る!【Oncology主要トピックス2022 肺がん編】【肺がんインタビュー】 第90回ソトラシブ、KRAS G12C変異陽性NSCLCのPFSを有意に延長(CodeBreaK-200)/ESMO2022KRAS G12C変異陽性NSCLCへのadagrasib、臨床的有効性示す/NEJMDr.光冨の肺がんキーワード解説「KRAS」【肺がんインタビュー】 第71回

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COPDガイドライン改訂―未診断者の早期発見と適切な管理を目指して

 COPDは、日本全体で約500万人を超える患者がいると見積もられており、多くの非専門医が診療している疾患である。そこで、疾患概念や病態、診断、治療について非専門医にもわかりやすく解説する「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第6版」が2022年6月24日に刊行された。本ガイドラインは、2018年版からの4年ぶりの改訂で、大きな変更点としてMindsに準拠した形で安定期COPD治療に関する15のクリニカルクエスチョン(CQ)を設定したことが挙げられる。本ガイドライン作成委員会の委員長を務めた柴田 陽光氏(福島県立医科大学呼吸器内科学講座 教授)に改訂点や日常診療におけるCOPD診断・治療のポイントについて、話を聞いた。未診断のCOPD患者を発見するために COPD患者は、なかなか症状を訴えないことが多いという。柴田氏は、「高齢の方は『歳だから、あるいはタバコを吸っているから仕方がない』と考えていたり、無意識のうちに身体活動レベルを落としていて、息切れを感じなくなっていたりすることもある」と話す。そのような背景から、未診断のままの患者が存在し、診断がつく時点ではかなり進行していることも多い。そこで第6版では、「風邪が治りにくい」「風邪の症状が強い」などの増悪期の症状や、気道感染時の症状で医療機関を受診したときが診断の契機となることなどを強調した。 COPDの確定診断には呼吸機能検査が必要であるが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響や設備の問題で実施が難しい場合も多い。その場合は「長期の喫煙歴と息切れがあり、咳や痰などの慢性的な症状が併存し、他疾患を否定できればCOPDの可能性がかなり高い。病診連携などを活用して画像診断を実施し、肺気腫を発見してほしい」と述べた。また、呼吸機能検査が難しい場合の診断について、日本呼吸器学会では「COVID-19流行期日常診療における慢性閉塞性肺疾患(COPD)の作業診断と管理手順」を公表しており、本ガイドラインにも掲載されているので参照されたい。管理目標と安定期の治療 第6版では、COPDの管理目標に「疾患進行の抑制および健康寿命の延長」が追加された。その背景として、「疾患進行抑制の最大の要素である禁煙の重要性を強調したい」、「何らかの症状を抱えていたり、生活に不自由を感じていたりする患者の多いCOPDでは、健康寿命に影響を及ぼすフレイルに陥らないようにして、健康寿命を延ばすことの重要性を強調したい」という意図があると、柴田氏は述べた。 安定期の治療について、第6版では「安定期COPD管理のアルゴリズム」が喘息病態の合併例と非合併例に分けて記載された。柴田氏は「COPD患者の約4分の1が喘息を合併し、喘息合併例では吸入ステロイド薬(ICS)が治療の基本となるため、治療の入り口を分けた」と解説する。具体的には、日頃からの息切れと慢性的な咳・痰がある場合、喘息非合併例では「長時間作用性抗コリン薬(LAMA)あるいは長時間作用性β2刺激薬(LABA)」、喘息合併例では「ICS+LABAあるいはICS+LAMA」から治療を開始し、症状の悪化あるいは増悪がみられる場合、喘息非合併例では「LAMA+LABA(テオフィリン・喀痰調整薬の追加)」、喘息合併例では「ICS+LABA+LAMA(テオフィリン・喀痰調整薬の追加)」にステップアップする。 喘息非合併例では、頻回の増悪かつ末梢好酸球数増多がみられる患者には「LAMA+LABA+ICS」の使用を考慮する。なお、喘息非合併の安定期COPD治療は、LAMAまたはLABAの単剤で始めなければならないというわけではなく、「CAT(COPDアセスメントテスト)が20点以上やmMRC(modified British Medical Research Council)グレード2以上といった症状の強い患者は、LAMA+LABAで治療を開始しても問題ない。詳細はCQ5を参照してほしい」と述べた。 安定期の治療について、第6版では15個のCQが設定された。その中で「強く推奨する」となったのは、「LAMAによる治療(CQ2)」「禁煙(CQ10)」「肺炎球菌ワクチン(CQ11)」「呼吸リハビリテーション(CQ12)」の4つである。とくに「呼吸リハビリテーション」について、柴田氏は「エビデンスレベルが高く、強く推奨するという結果になったことは、まだまだ普及が進んでいない呼吸リハビリテーションを普及させるという観点から、非常に意義のあることだと考えている」と話した。 COVID-19流行期における注意点として、「COPD患者は新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすいため、感染対策が重要となるが、身体活動性を落とさないよう定期的な運動は続けてほしい。薬物療法については、ICSを使用していてもCOVID-19の重症化リスクは上昇しないため、現在の治療を継続することが重要」とした。診断・治療共に積極的な病診連携の活用を 第6版では、病診連携の項でプライマリケア医と呼吸器専門医の役割を詳細に解説している。柴田氏は、非専門医に期待する役割について「COPD治療の基本である禁煙の徹底、併存症の管理、インフルエンザや新型コロナのワクチンに加えて肺炎球菌ワクチン接種を行ってほしい」と述べた。加えて、「COPD患者の肺がんの年間発生率は2%ともいわれるため、願わくは年1回など定期的な低線量CTを実施してほしい」とも述べた。一方、呼吸器専門医については、「呼吸機能検査を実施して診断の入口となることや、治療をしていても増悪を繰り返すような管理の難しい患者の治療、呼吸リハビリテーションの実施といった役割を期待する」と話し、病診連携を活用して呼吸器専門医に紹介してほしいと強調した。 また、COPDの薬物治療は吸入療法が中心となるため、適切な吸入指導が欠かせない。しかし、吸入薬の取り扱いや指導に不慣れな医師もいるだろう。そこで活用してほしいのが、病薬連携だという。柴田氏は「薬剤服用歴管理指導料吸入薬指導加算が算定できるため、吸入薬の取り扱いに慣れている薬局の薬剤師に、吸入指導を依頼することも可能だ。デバイスについては、患者によって向き・不向きがあり、処方変更が必要になることもあるため、病薬連携が重要となる」と述べた。COPD患者の発見と積極的な介入を 柴田氏は、非専門医の先生方へ「皆さんの思っている以上にCOPD患者は多い。70歳以上の高齢男性では4人に1人が何らかの気流閉塞があることが知られており、高血圧や循環器疾患の3人に1人はCOPDというデータもある。高齢で糖尿病を有し喫煙歴のある患者にもCOPDが多い。このような患者をどんどん発見して、治療介入してほしい。その際、本ガイドラインを活用してほしい」とメッセージを送った。COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第6版定価:4,950円(税込)判型:A4変型判頁数:312頁発行:2022年6月編集:日本呼吸器学会COPDガイドライン第6版作成委員会発行:メディカルレビュー社

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社会的苦痛って何だろう【非専門医のための緩和ケアTips】第43回

第43回 社会的苦痛って何だろう緩和ケアについては、医師でもあまり聞き慣れない言葉や分野が出てくるかと思います。今日のテーマ「社会的苦痛」というのも、わかりにくい例の1つではないでしょうか。今日の質問緩和ケアについて勉強していると必ず出てくる「社会的苦痛」という単語。医療者としては具体的に何をすればよいのでしょうか?「社会的苦痛」、少なくとも私の年代の医学部教育では出てこなかった用語です。しかし、緩和ケアを実践していく中では非常に大切な概念なのです。イメージしやすいよう具体的な例を見ていきましょう。――80歳で骨転移を伴う肺がん患者さん。骨転移部の痛みを訴えます。医師のあなたは外来で診察、評価して鎮痛薬を処方します。腎機能などをチェックした上で、NSAIDsや症状によってはオピオイドも必要になるでしょう。こういった身体症状に対する症状の緩和はイメージしやすいですよね。でも、この患者さんが置かれた状況に対して、薬剤の処方だけで十分な支援が提供できているでしょうか?聞けばこの患者さん、年の近い高齢の奥さんと二人暮らしだそうです。もともと家の中では伝い歩きで生活していましたが、痛みが強くなって排泄のたびに手助けが必要となり、奥さんの負担が急激に重くなっています。ご本人たちは自宅で過ごしたいと考えていますが、介護の負担がさらに大きくなるようなら、在宅療養は諦めざるを得ないでしょう…。こうした状況は、皆さんも日常的に目にするでしょう。このような、「疾患によって引き起こされる、生活や社会活動に対する影響」を「社会的苦痛」と呼んでいます。医師としては介護保険の活用や見直しを勧め、今後の病状変化や介護負担の予測をケアマネジャーと共有することが重要です。今回のような高齢者の場合、社会的苦痛の議論は要介護状態に対する支援や介護者の負担軽減が中心になります。一方、若年者の場合、たとえばまだ幼いお子さんがいる終末期がん患者さんであれば、家事・育児支援やお子さんとのコミュニケーション支援が必要でしょう。一家の稼ぎ手であれば休職や退職による家計の困窮状態を避ける支援が必要です。家計だけでなく、社会とのつながりを保つ意味でも、患者さんの就労支援はとても重視されるようになっています。このように解きほぐしていくと、社会的苦痛に対して医師が担う役割を認識しやすくなります。患者さんごとの状況に合わせ、病気の見通しや注意点を共有することで、さまざまな支援の可能性が見出せます。具体的なケアプラン作成などは介護職が対応してくれるでしょうが、専門職と情報を共有し、しっかり連携することが大切です。「社会的苦痛」の概念を知ると、多職種で取り組むことの必然性も理解できるでしょう。今回のTips今回のTips「社会的苦痛」の概念を理解することで、緩和ケアの実践の幅が広がります。

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EGFR陽性肺がんオシメルチニブ1次治療の肺臓炎、リアルワールド解析の結果(OSI-FACT)/Chest

 オシメルチニブは、進行EGFR変異陽性肺がん患者(NSCLC) の1次治療として位置付けられている。一方、オシメルチニブの潜在的合併症である薬物関連肺臓炎(DRP)については、信頼できるリアルワールドデータが不足している。 リアルワールドにおけるオシメルチニブ1次治療のDRP発現頻度、特徴を評価する多施設後ろ向きコホート研究が行われた。その結果が、2022年11月のChest誌で発表されている。 対象は2018年8月〜2019年12月に、1次治療としてオシメルチニブを投与された進行EGFR変異陽性NSCLC患者。主要評価項目は、独立審査委員会で特定された DRP発現率であった。 主な結果は以下のとおり。・18施設から452例の患者が登録された。・全GradeのDRPは80例(18%) 、Grade3以上は21例(4.6%)に認められた。・DRPの患者のうち、46%が一過性無症候性肺陰影(TAPO)であることが確認された。・多変量解析では、DRPの独立した危険因子として喫煙歴が特定された(ハザード比:1.72、95%信頼区間:1.01〜2.89、p=0.046)。・3ヵ月のランドマーク分析によれば、DRPの存在は治療効果の低さと関連していたが、TAPOの存在は治療効果に悪影響を及ぼさなかった。

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肺臓炎発症例、オシメルチニブのリチャレンジの実施可能性/Eur J Cancer

 軽症肺臓炎を発症したEGFR変異陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)へのオシメルチニブのリチャレンジを検証したリアルワールド試験の結果が発表された。 オシメルチニブは、EGFR変異陽性NSCLCの1次治療の標準だが、治療に影響を及ぼすオシメルチニブの有害事象として、薬剤性肺臓炎が挙げられる。オシメルチニブの適正使用ガイドでは、肺臓炎発症後は全例治療中止が推奨されている。一方、症例報告や後ろ向き試験では、肺臓炎発症後のオシメルチニブリチャレンジの実施可能性や有効性についての報告がある。ただし、リチャレンジの主要評価項目とした多症例の検証はなかった。 和歌山県立医科大学の今地 美帆子氏らは、オシメルチニブの1次治療を受けた患者の多施設共同コホートから、肺臓炎を発症し同剤のリチャレンジを受けた患者を後ろ向きに検討した。主要評価項目は、リチャレンジ後の全Gradeの肺臓炎の発症率、副次評価項目は、オシメルチニブリチャレンジ後の治療効果であった。 主な結果は以下のとおり。・画像データが入手可能であった試験全体の患者452例中、肺臓炎を発症した患者は82例、そのうちオシメルチニブのリチャレンジを受けた患者は33例であった。・上記33例の肺臓炎の内訳はGrade1が26例、2が6例、3が1例であった。・オシメルチニブのリチャレンジ後、15%(33例中5例) が軽度の再発性肺炎を発現した。・上記5例中3例は、初期肺臓炎と再発肺臓炎の画像パターンが類似していた。・オシメルチニブリチャレンジ後の無増悪生存期間中央値は未到達であった。 筆者らはオシメルチニブによる軽症肺臓炎発症患者に対し、オシメルチニブのリチャレンジは治療選択肢となり得る、と述べている。

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悪性新生物の死亡確率、男性3割・女性2割/厚生労働省

 厚生労働省は12月23日、「令和2年都道府県別生命表」を発表した1)。都道府県別生命表は、国勢調査による日本人人口(確定数)と人口動態統計(確定数)による日本における日本人の死亡数、出生数を基に、1965年から5年ごとに作成され、今回が12回目となる。本結果によると、2020年の全国の平均寿命(0歳の平均余命)は、男性が81.49年、女性が87.60年で、2015年よりも男性では0.72年、女性では0.60年延びていた。また、死因別死亡確率では、男女ともに最も多かった死因は、悪性新生物(腫瘍)であり、男性で28.13%、女性で20.05%を占めていた。平均寿命、男女ともに全都道府県で延びる 2020年の全国の平均寿命は、男性が81.49年、女性が87.60年であった。平均寿命を都道府県別にみると、男性では、滋賀が82.73年で最も長く、次いで長野の82.68年、奈良の82.40年の順となっている。女性では、岡山が88.29年で最も長く、次いで滋賀の88.26年、京都の88.25年の順となっている。また、男女ともに青森が最も短くなっており、男性が79.27年、女性が86.33年であった。平均寿命の最も長い都道府県と最も短い都道府県との差は、男性3.46年、女性1.96年となっている。 平均寿命を2015年と2020年で比較すると、男性では0.72年、女性では0.60年延びていた。男女ともに全都道府県で平均寿命が延びていた。大きな延びを示した都道府県は、男性では、鳥取(1.17年)、富山(1.13年)、和歌山(1.09年)の順となっており、女性では、京都(0.89年)、和歌山(0.88年)、兵庫(0.84年)の順となった。 ただし、2022年7月に発表された「令和3年簡易生命表」によると、2021年の日本人の平均寿命は、新型コロナウイルス感染症の影響で男女ともに前年度よりそれぞれ0.09歳、0.14歳短くなり、男性81.47歳、女性87.57歳となり、10年ぶりに前年度を下回っている2)。死因別死亡確率、悪性新生物が男性3割、女性2割 全国の死因別死亡確率では、男性では、悪性新生物(腫瘍)(28.13%)、心疾患(高血圧性を除く)(14.33%)、肺炎(7.21%)、脳血管疾患(7.03%)、老衰(6.92%)、不慮の事故(3.06%)の順に多く、女性では、悪性新生物(腫瘍)(20.05%)、老衰(17.69%)、心疾患(高血圧性を除く)(16.45%)、脳血管疾患(7.78%)、肺炎(5.50%)、不慮の事故(2.31%)の順となった。死因における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、男性で0.53%、女性で0.39%であった。 都道府県別で悪性新生物による死亡確率が高かったのは、男性では、北海道(30.82%)、福岡(29.91%)、鳥取(29.75%)の順となった。女性では、北海道(22.72%)、福岡(21.83%)、青森(21.26%)の順に高かった。 男性において、都道府県別で心疾患による死亡確率が最も高いのは愛媛(16.92%)、肺炎が最も高いのは埼玉(8.89%)だった。女性では、老衰の死亡確率が最も高いのは静岡(23.39%)、心疾患が最も高いのは愛媛(18.85%)だった。

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抗CTLA-4抗体トレメリムマブ+デュルバルマブ、非小細胞肺がん1次治療に承認/AZ

 アストラゼネカは、2022年12月23日、デュルバルマブ(製品名:イミフィンジ)と、新たな抗CTLA-4抗体トレメリムマブ(同:イジュド)の併用療法が、「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の適応症で承認されたと発表した。 今回の承認は、切除不能な進行・再発非小細胞肺がん(NSCLC)を対象に、1次治療として、デュルバルマブ+トレメリムマブ+化学療法、デュルバルマブ+化学療法と化学療法を比較した第III相無作為化非盲検多施設共同国際試験POSEIDONの結果に基づくもの。 ESMO2022のPOSEIDON試験の発表では、長期追跡(36.5ヵ月)においても、トレメリムマブ+デュルバルマブ+化学療法の全生存期間(OS)延長のベネフィットが報告されている。

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ソトラシブ、KRAS p.G12C変異陽性進行膵がんに有望/NEJM

 ソトラシブは、治療歴のあるKRAS p.G12C変異陽性進行膵がん患者に対して抗腫瘍活性を示し、安全性プロファイルは良好であることを、米国・デューク大学医療センターのJohn H. Strickler氏らが、国際共同第I/II相単群非盲検試験「CodeBreaK 100試験」の結果、報告した。ソトラシブは、KRAS G12Cを特異的かつ不可逆的に阻害する低分子化合物で、米国において、少なくとも1回の全身性の治療歴があるKRAS p.G12C変異陽性で局所進行または転移を有する非小細胞肺がんの治療薬として2021年5月に迅速承認された。KRAS p.G12C変異は膵がんの約1~2%に認められるが、治療歴があるKRAS p.G12C変異陽性膵がん患者におけるソトラシブの安全性と有効性はこれまで明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2022年12月21日号掲載の報告。既治療患者を対象にソトラシブの安全性と有効性を検討 研究グループは、少なくとも1回の全身治療歴があるKRAS p.G12C変異陽性の局所進行または転移を有する膵がん成人患者(18歳以上)を対象に、安全性および副作用プロファイルを評価するとともに推奨用量を決定し(第I相試験)、第I相試験で推奨された用法用量(1日1回960mg経口投与)の有効性を評価した(第II相試験)。両試験相とも、増悪、許容できない副作用の発現または同意撤回等までソトラシブの投与を継続した。 本論では、第I相および第II相を併合したソトラシブの安全性および有効性の解析結果が報告されている。 有効性の主要評価項目は、RECIST 1.1に基づく盲検下独立中央画像判定機関(BICR)判定による客観的奏効率(ORR、完全奏効+部分奏効)であった。そのほか、奏効期間、客観的奏効までの期間、病勢コントロール率(客観的奏効+病勢安定)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性について評価された。ORR 21%、PFS 4ヵ月、OS 6.9ヵ月、治療関連有害事象発現率は42% 2019年7月3日~2021年1月25日の間に、7ヵ国25施設において計38例(第I相12例、第II相26例)が登録され、全例にソトラシブ960mgの1日1回経口投与が行われた。患者背景は、男性29例(76%)、年齢中央値65.5歳(範囲:45~81)、21例(55%)が初診時にIV期で、登録時、全例が転移性病変を有しており、治療歴は中央値で2ライン(範囲:1~8)であった。 38例中8例(21%、95%信頼区間[CI]:10~37)で、BICR判定による客観的奏効が確認された。8例全例ともに部分奏効で、完全奏効例はなかった。 PFS中央値は4.0ヵ月(95%CI:2.8~5.6)、追跡期間中央値16.8ヵ月(95%CI:9.5~評価不能)におけるOS中央値は6.9ヵ月(95%CI:5.0~9.1)であった。 治療関連有害事象は、全Gradeで16例(42%)に認められ、6例(16%)はGrade3であった。主なGrade3の治療関連有害事象は、下痢および疲労(各2例[5%])であった。Grade4以上、死亡または投与中止に至る治療関連有害事象は認められなかった。

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EGFR陽性肺がんオシメルチニブ1次治療の有用性、35ヵ月のリアルワールド追跡(OSI-FACT)/日本肺癌学会

 EGFR陽性肺がんの1次治療においてオシメルチニブはスタンダードだが、同レジメンを大規模に観察したリアルワールドデータはない。第63回日本肺癌学会学術集会では、愛知県がんセンターの大矢由子氏により、同治療の有効性と安全性をリアルワールドで評価したOSI-FACT試験の追跡結果が発表された。 対象は、2018年8月〜2019年12月にHanshin Oncology critical Problem Evaluate group(HOPE)を中心に登録された、EGFR変異陽性NCSLC患者538例。これらの患者を後ろ向きに解析した。データカットオフは2022年2月28日で、追跡期間中央値は35.0ヵ月である。 主な結果は以下のとおり。・対象には、グローバル試験の適格基準外となる、ECOG PS≧2(16.2%)、EGFR希少変異(5.5%)、症候性脳転移(6.1%)、髄膜炎(1.1%)。症候性胸水・腹水(9.7%)、間質性肺炎合併例(1.7%)も含まれている。・オシメルチニブ1次治療のPFS中央値は20.2ヵ月であった(観察期間中央値34.4ヵ月)。・OS中央値は未到達であった。・EGFR変異サブタイプによるPFS:exon19delでは26.3ヵ月、L858Rでは16.6ヵ月であった。・PD-L1発現レベル別のPFS:PD-L1<1%では27.89ヵ月、1〜49%では15.61ヵ月、≧50%では10.48ヵ月であった。・奏効率は79.8%、病勢制御率は94.0%であった。・治療中断例は28.1%であった。・肺臓炎の発現は全Gradeで15.7%、Grade3以上は5.2%であった。また、肺臓炎は中長期的にも発現していた。

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IO+Chemoへのベバシズマブ add onの成績(APPLE)/日本肺癌学会

 非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療はIO+化学療法にパラダイムシフトしている。ベバシズマブは化学療法の効果を増強することが報告されているだけでなく、VEGF阻害に伴う免疫抑制の解除による免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の効果増強も期待されている。 そのような中、NSCLCおいて、ICIであるアテゾリズマブ・化学療法併用へのベバシズマブの追加効果を評価するAPPLE試験が行われている。第63回 日本肺癌学会学術集会では、APPLE試験の初回解析結果を九州大学病院の白石 祥理氏が発表した。・ 対象:未治療のStageIII/IVの非扁平上皮NSCLC・試験薬群:アテゾリズマブ+化学療法(CBDCA+ペメトレキセド)+ベバシズマブ 4サイクル→アテゾリズマブ+化学療法+ベバシズマブ PDまで最長2年投与(APPB群)・対照薬群:アテゾリズマブ+化学療法(CBDCA+ペメトレキセド) 4サイクル→アテゾリズマブ+化学療法 PDまで最長2年投与(APP群)・評価項目: [主要評価項目]盲検下独立中央評価委員会(BICR)評価の無増悪生存期間(PFS) PFSのハザード比[HR]は0.727に設定された。 [副次評価項目]治験担当医評価のPFS、全生存期間(OS)、奏効率(RR)、奏効期間、有害事象 主な結果は以下のとおり。・ITT集団のPFS中央値はAPPB群9.6ヵ月、APP群7.7ヵ月で、HRは0.86(95%信頼区間[CI]:0.77~1.07、p=0.92)であり、当初の基準に及ばず、主要評価項目は達成されなかった。・OS中央値はAPPB群29.4月、APP群25.3ヵ月であった(HR:0.86、95%CI:0.65~1.13)。・RRはAPPB群63%、APP群51%であった。・サブグループを見ると、APPB群のPFSが良好であったドライバー遺伝子異常陽性、肝転移であった。・EGFR変異陽性例のPFS中央値はAPPB群9.6ヵ月、APP群5.7ヵ月で、HRは0.70(95%CI:0.46~1.06)であった。・治療関連有害事象はAPPB群2.4%、APP群0.5%に発現した。安全性プロファイルは従来と同様であった。

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ニボルマブのNSCLCネオアジュバント、日本人でも有効(CheckMate 816)/日本肺癌学会

 ニボルマブの非小細胞肺がん(NSCLC)に対する術前補助療法(ネオアジュバント)は、日本人でもグローバルと同様の良好な結果を示した。 この結果はニボルマブのNSCLCネオアジュバントの第III相試験CheckMate 816の日本人サブセットの解析によるもので、第63回日本肺癌学会学術集会で近畿大学の光冨 徹哉氏が発表した。・対象:StageIB~IIIAの切除可能なNSCLC(ECOGPS≦1)・試験薬群:ニボルマブ+プラチナダブレット化学療法 3週ごと3サイクル→手術・対照薬群:プラチナダブレット化学療法 3週ごと3サイクル→手術 根治手術は治療から6週間以内に行われた・評価項目:[主要評価項目]盲検化独立委員会評価の病理学的完全奏効(pCR)および無イベント生存率(EFS)[探索的評価項目]手術実施状況、手術関連有害事象 CheckMate 816試験のグローバルでのEFSハザード比(HR)は0.63(95%信頼区間[CI]:0.43~0.91、p=0.005)、病理学的完全奏効(pCR)率は24.0%(対化学療法のOR:13.94、99%CI:13.49〜55.75)であった。 主な結果は以下のとおり。・日本人はニボルマブ+化学療法群33例、化学療法群25例に無作為に割り付けられた。・上記の中で、手術を受けられた患者はニボルマブ+化学療法群では31例(94%)、化学療法群では29例(83%)と、ニボルマブ+化学療法群で多い傾向だった。・EFS中央値はニボルマブ+化学療法群30.6ヵ月、化学療法群19.6ヵ月で、HRは0.60(95%CI:0.30〜1.24)と、グローバルと同程度であった。2年EFS率は64%と44%であった。・pCR率はニボルマブ+化学療法群30.5%、化学療法群5.7%であった(OR:14.01、95%CI:1.73〜113.22)・Grade3/4の有害事象はニボルマブ+化学療法群62%、化学療法群46%であった。グローバルでのニボルマブ+化学療法群の発現率は41%であり、日本人集団のほうが多い傾向が見られた。日本人の治療関連死は両群ともみられなかった。 光冨氏は、ニボルマブ+化学療法のNSCLCに対するネオアジュバントは、日本人においても有効性を示し、手術の施行も妨なかった。これらの結果はニボルマブ+化学療法のネオアジュバントが日本人NSCLCにおいても治療選択肢になることを支持するものと結論付けた。

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2022年、がん専門医に読まれた記事は?Doctors’Picksランキング

 ケアネットが運営する、オンコロジーを中心とした医療情報キュレーションサイト「Doctors'Picks」は、2022年を通して、がん専門医によく読まれた記事ランキングを発表した。1位は新型コロナに関する話題だったが、その他は肺がん分野の話題が多数ランク入りしたほか、がん横断的なトピックスである新たな免疫療法の開発に関する話題(4位)や、米国臨床腫瘍学会(ASCO2022)でプレナリーセッションに登壇した国立がんセンター東病院 消化管内科長・吉野 孝之氏の演題(6位)も大きな注目を集めた。【1位】3回目接種を受けた医療従事者の新型コロナ感染率は?(1/11)/JAMA 2022年1月10日にJAMA誌に掲載された、イスラエルの医療従事者におけるSARS-CoV-2感染の発生率とBNT162b2ワクチンの3回目接種との関連についての研究。ブースター接種から約1ヵ月間におけるSARS-CoV-2感染のハザード比は、2回接種者と比較して0.07(95%CI:0.02~0.20)と有意に低下することが示された。【2位】PD-L1高発現の1次治療、ICIにChemoを上乗せしてもOSの延長なし?(3/24)/Annals of Oncology PD-L1高発現の非扁平上皮非小細胞肺がん(Nsq-NSCLC)の1次治療において、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)に化学療法を上乗せする効果を見た試験。結果として上乗せ効果は認められなかったという。【3位】小細胞肺がん、アテゾリズマブ+化学療法+tiragolumabの成績/SKYSCRAPER-02(5/28)/ASCO ASCO2022で発表された、進展型小細胞肺がんの標準療法の1つであるアテゾリズマブ+カルボプラチン/エトポシドの併用療法に、抗TIGIT抗体tiragolumab追加併用の有効性を見たSKYSCRAPER-02試験。主要評価項目である全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)の延長は示されなかったという。【4位】PD-1阻害薬を超える!?新たな免疫療法PD1-IL2v開発の基礎(10/4)/nature PD-1を発現しているT細胞特異的に、IL-2R(βとγ)アゴニスト作用を持つ新たな免疫療法として、PD1-IL2vという薬剤が開発されたという報告。PD-1治療抵抗性のメラノーマに対して、PD-1阻害薬と比較しても圧倒的な効果を発揮したという、その作用機序を解説。【5位】おーちゃん先生のASCO2022 肺癌領域・オーラルセッションの予習 9000番台(5/30)/Doctors'Picks ASCO2022で発表される数千の演題の中から注目すべきものをエキスパート医師が事前にピックアップして紹介する恒例企画。肺がん分野は山口 央氏(埼玉医科大学国際医療センター)がオーラルセッションを全解説した。 6~10位は以下のとおり。【6位】国立がんセンター東病院・吉野 孝之氏がプレナリーセッション登壇(6/2)/ASCO【7位】進行NSCLC、PD-1/L1阻害薬PD後のペムブロリズマブ継続の意義(2/7)/Clinical Cancer Research【8位】転移のある大腸がん、原発巣部位とゲノム異常の解析結果(5/9)/Target Oncol【9位】EGFR陽性NSCLCに対するオシメルチニブ/アファチニブ交替療法の有効性(4/13)/Lung Cancer【10位】ctDNAの臨床応用に関するESMOの推奨事項(7/14)/ESMO

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2022年の肺がん薬物療法の進歩を振り返る!【Oncology主要トピックス2022 肺がん編】【肺がんインタビュー】 第90回

1.ソトラシブの承認(CodeBreaK 100試験とCodeBreaK 200試験)KRAS遺伝子変異陽性は、EGFR遺伝子変異に次いで本邦では多い遺伝子変異である。このKRAS遺伝子変異のうち、KRAS G12C遺伝子変異陽性を対象としたソトラシブが2次療法以降での使用で日常臨床に導入された。ソトラシブの重要な試験としては、KRAS G12C遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(126例)を対象としたPhase II試験(CodeBreaK 100試験:Skoulidis F, et al. N Engl J Med. 2021;384:2371-2381.)において、奏効率37.1%、無増悪生存期間(PFS)中央値6.8ヵ月、全生存期間(OS)中央値12.5ヵ月であり、毒性も下痢・悪心・倦怠感・肝障害を認めるものの比較的軽度であった。また、ソトラシブとドセタキセルを比較したPhase III試験(CodeBreaK 200試験:Johnson ML, et al. ESMO 2022.)も報告され、PFS中央値はソトラシブ群が5.6ヵ月、ドセタキセル群が4.5ヵ月で、ハザード比(HR)は0.66(95%信頼区間[CI]:0.51~0.86)であった。奏効率はソトラシブ群が28.1%、ドセタキセル群が13.2%でp<0.001とソトラシブ群が有意に高かった。また、OS中央値はソトラシブ群が10.6ヵ月、ドセタキセル群が11.3ヵ月でHRは1.01(95%CI:0.77~1.33)で有意差は認めなかった(クロスオーバー率26.4%)。2.術前化学療法:ニボルマブ・プラチナ併用療法(CheckMate-816試験)本年度のトピックは周術期治療が中心であったと思われるが、切除可能非小細胞肺がん(腫瘍径≧4cmまたはリンパ節転移陽性)に対するニボルマブ・プラチナ併用療法(3週間ごとに3サイクル)のネオアジュバント療法については、CheckMate-816試験(Forde PM, et al. N Engl J Med. 2022;386:1973-1985.)が報告されている。この試験は、ニボルマブ・プラチナ併用療法とプラチナ併用療法の術前化学療法を比較するPhase III試験で行われ、中間解析におけるイベントフリー生存期間(EFS)中央値は、ニボルマブ・プラチナ併用療法群で31.6ヵ月、プラチナ併用療法群では20.8ヵ月で、ニボルマブ・プラチナ併用療法群で有意に改善した(HR:0.63、97.38%CI:0.43〜0.91、p=0.005)。また、病理学的complete response(pCR)はニボルマブ・プラチナ併用療法群の24%に対し、プラチナ併用療法群は2.2%であった(p<0.0001)。OSのHRは0.57(99.67%CI:0.3〜1.07)とニボルマブ・プラチナ併用療法群で良好だが統計学的有意差は示しておらず、長期フォローアップの結果が待たれるところである。3.術後化学療法:アテゾリズマブ(IMPower010試験)完全切除されたIB-IIIA期(TMS分類第7版)の非小細胞肺がん患者を対象とし、プラチナ併用療法による術後化学療法終了後のアテゾリズマブ療法(3週間ごと、1年投与)が日常臨床に導入された。術後化学療法アテゾリズマブの重要な試験として、完全切除されたIB-IIIA期(TMS分類第7版)の非小細胞肺がん患者を対象とし、アテゾリズマブを支持療法と比較したPhase III試験(IMPower010試験:Felip E, et al. Lancet. 2021;398:1344-1357.)が報告された。その結果、PD-L1陽性のII-IIIA期(882例)における無再発生存期間(DFS)中央値は、アテゾリズマブ群で未到達、支持療法群で35.3ヵ月であり、HRは0.66(95%CI:0.50~0.88)と統計学的に有意に改善した。なお、DFSのHRは、PD-L1 50%以上では0.43(95%CI:0.27~0.68)と良好であったのに対して、PD-L1 1-49%では0.87(95%CI:0.6~1.26)であり、PD-L1の発現で効果が異なる傾向が示された。さらに、先日のWCLC 2022(Felip E, et al. WCLC 2022.)では、フォローアップ期間延長の結果が示され、36ヵ月時点での生存率はそれぞれ82.1%と78.9%であった(HR:0.71、95%CI:0.49~1.03)。4.術後化学療法:オシメルチニブ(ADAURA試験)完全切除されたIB-IIIA期(TMS分類第7版)に対するEGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん患者を対象とし、3年間のオシメルチニブ療法(1日80mg[1錠])が日常臨床に導入された。術後化学療法オシメルチニブの重要な試験として、完全切除されたIB-IIIA期(TMS分類第7版)に対するEGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん患者を対象とし、オシメルチニブをプラセボと比較したPhase III試験(ADAURA試験:Wu YL, et al. N Engl J Med. 2020;383:1711-1723.)(682例)が報告され、EGFR遺伝子変異陽性のII-IIIA期における24ヵ月時点での無再発生存率は、オシメルチニブ群で90%、プラセボ群で44%、HRは0.17(99.06%CI:0.11~0.26)と統計学的に有意に大きく改善した。なお、EGFR遺伝子変異陽性のIB-IIIA期における24ヵ月時点での無再発生存率は、オシメルチニブ群で89%、プラセボ群で52%であり、HRは0.20(99.12%CI:0.14~0.30)で、統計学的に有意に改善した。さらに、先日のESMO 2022(Tsuboi M, et al. ESMO 2022.)では、フォローアップ期間延長の結果が示され、Stage II/IIIAのDFS中央値は、オシメルチニブ群65.8ヵ月、プラセボ群21.9ヵ月で、HRは0.23(95%CI:0.18〜0.30)であった。また、Stage IB-IIIAのDFS中央値はオシメルチニブ群65.8ヵ月、プラセボ群28.1ヵ月で、HRは0.27(95%CI:0.21〜0.34)であった。5.外科の切除 肺葉切除vs.肺区域切除2cm以内の小細胞はいがんにおける肺区域切除と肺葉切除を比較したPhase III試験(JCOG0802/WJOG4607L: Saji H, et al. Lancet 2022:399:1607-1617.)が報告された。登録患者は、無作為割り付けの後、肺葉切除術(554例)または肺区域切除術(552例)(肺区域切除術群では、22例が肺葉切除に変更)が施行されている。5年全生存率は肺区域切除術群で94.3%、肺葉切除術群で91.1%であり、HRは0.663(95%CI:0.474~0.927、非劣性p<0.0001、優位性p=0.0082)と肺区域切除術群が統計学的に有意に良好であった。また、5年無再発生存率は肺区域切除術群で88.0%、肺葉切除術群で87.9%であり、HRは0.998(95%CI:0.753~1.323、p=0.9889)であった。局所再発率は肺区域切除術群で10.5%、肺葉切除術群で5.4%(p=0.0018)であり、肺区域切除術群で高いものの、術後呼吸機能低下については肺区域切除術群のほうが肺葉切除術群より有意に軽いことが報告され、条件がそろった場合の縮小手術の有用性が証明された。6.HER2陽性非小細胞肺がんのトラスツズマブ デルクステカン(ADC)トラスツズマブ デルクステカンは、抗体にトラスツズマブ、薬物がデルクステカンで構成されている。HER2陽性非小細胞肺がんにおけるトラスツズマブ デルクステカンの有効性と安全性を確認したPhase II試験(DESTINY-Lung01試験:Li BT, et al. N Engl J Med. 2022;386:241-251.)が報告された。非小細胞肺がんでは初となる免疫薬物複合体(ADC)の有効性を示した報告である。91例の患者が参加しており、奏効率55%(95%CI:44~65)で、病勢コントロール率は92%(95%CI:85~97)であった。また、治療奏効期間は9.3ヵ月(95%CI:5.7~14.7)、PFS中央値は8.2ヵ月(95%CI:6.0~11.9)、OS中央値は17.8ヵ月(95%CI:13.8~22.1)であった。主な毒性は血液毒性であったが、死亡例も含む肺障害も報告されている。今後、日常臨床への導入が進むと思われるが、毒性にも注意を払う必要があるといえる。7.ICI+Chemo、ICI+ICIの5年生存の発表PD-L1 50%以上のペムブロリズマブの5年生存率が31.9%と報告(Reck M, et al. J Clin Oncol. 2021;39:2339-2349.)され、ドライバー遺伝子変異陰性非小細胞肺がんでも長期生存の期待が高まってきている中、今年はESMO 2022において、扁平上皮がんのPhase III試験であるKEYNOTE-407試験の5年生存率(Nivello S, et al. ESMO2022.)と非扁平上皮がんのPhase III試験であるKEYNOTE-189試験の5年生存率(Garassino MC, et al. ESMO2022.)が報告された。5年生存率は、PD-L1の発現に関わらない全体集団において、KEYNOTE-407試験ではペムブロリズマブ・プラチナ併用療法群で18.4%、KEYNOTE-189試験ではペムブロリズマブ・プラチナ併用療法群で19.4%であった。さらにPD-L1 50%以上、PD-L1 1-49%、PD-L1陰性におけるペムブロリズマブ・プラチナ併用療法群の5年生存率は、KEYNOTE-407試験では、それぞれ23.3%、20.6%、10.7%であり、KEYNOTE-189試験では、それぞれ29.6%、19.8%、9.6%であった。プラチナ併用療法は短期の病勢増悪を防ぐという意味では重要であるが、長期生存への寄与という点では十分でないのかもしれない結果であった。また、同時期にニボルマブ+イピリムマブ療法の5年生存の結果も報告された(Brahmer JR, et al. J Clin Oncol. 2022 Oct 12. [Epub ahead of print])。同試験ではPD-L1陽性の5年生存率は24%であり、その中でもPD-L1 50%以上の5年生存率は32%、PD-L1 1-49%の5年生存率は16%であった。それに対して、PD-L1陰性の5年生存率は19%であった。長期生存の観点からは、ニボルマブ+イピリムマブ療法はPD-L1陰性では良好な生存率を示したのに対し、PD-L1陽性ではイピリムマブの上乗せ効果が限定的である可能性が示されており、イピリムマブの効果を予測するバイオマーカーの開発が待たれるところである。免疫チェックポイント阻害薬の日常臨床導入により、一般臨床においても、ドライバー遺伝子変異陰性非小細胞肺がんでも長期生存が期待できるようになりつつあることは、意義が大きいことである。

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誤嚥性肺炎と緩和ケア【非専門医のための緩和ケアTips】第42回

第42回 誤嚥性肺炎と緩和ケア誤嚥性肺炎は、主に高齢者を中心に誤嚥を契機とした肺炎を繰り返す病態です。プライマリ・ケアや在宅医療では必ず遭遇するでしょう。病院勤務をしていると、繰り返し入院してくる患者さんもいます。こうした誤嚥性肺炎に対する緩和ケアにはどのようなポイントがあるのでしょうか?今日の質問訪問診療で長年診ている患者さん。ここ1年で誤嚥性肺炎を2回発症し、入院しています。ときどき発熱もあり、そうした時に肺炎を起こしていたのかもしれません。すでに90歳、終末期の話し合いが必要かとも感じているのですが、何に注意するとよいでしょうか?球麻痺を来す神経難病や、脳血管障害のようにさまざまな病態が誤嚥性肺炎の原因となります。頭頸部がんや手術の影響で嚥下機能が障害されることもあります。ただ、今回のような訪問診療では、認知症とフレイルが進行した高齢者が、栄養摂取が困難となっている中での誤嚥性肺炎に最も多く遭遇するでしょう。「発熱の度に絶食し、抗菌薬の点滴治療」というのが、よくある対応でしょう。ただ、発熱の度に絶食をしていると栄養状態はどんどん悪化していきます。これは難しい問題ですよね。さて、ここで皆さんに質問です。あなた自身が、「食べたら肺炎を起こすかもしれないので、経口摂取は止めておきましょう」と言われたとしたら、どのように感じますか?「肺炎はつらいので食べるのは我慢します」と言う方もいれば、「いやいや、肺炎は気になるけど、できるだけ口から食べたいです」と言う方もいるでしょう。それはさまざまな経験や状況によっても変わるでしょう。嚥下機能の改善が難しい状況や、終末期を視野に入れた誤嚥性肺炎の緩和ケアでは、こうした「何を目指すか」を考えることが大切です。一言で言えば「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)が大切です」といった感じですが、これってなかなか実践するのが難しいですよね。とくに、在宅医療の現場だと、言語聴覚士などの専門職の意見を参考にすることも難しい場面が多いでしょう。ここでは、急性期病院に入院した際の話し合いを在宅退院する際に共有する、などの工夫が求められます。そうした話し合いの先に、患者さんごとに、「この方の場合は、在宅での点滴加療が最善だろう」と関係者間で共有されます。誤嚥性肺炎の緩和ケアは、増悪を繰り返し、時に入院も要する疾患の特性上、医療機関を超えた地域レベルでの連携が求められる分野なのです。今回のTips今回のTips誤嚥性肺炎の緩和ケアは、複数の医療機関の多職種で連携しながら取り組むことがポイント。

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わが国の非小細胞肺がんの遺伝子検査は本当に普及しているのか?(WJOG15421L/REVEAL)/日本肺癌学会

 わが国の肺がん遺伝子検査、初回治療前のマルチ遺伝子検査が十分行われていない可能性が示唆された。 非小細胞肺がんでは、バイオマーカー検査の結果に基づき治療を選択する。近年、RET、KRAS、NTRK遺伝子が検査項目に加えられ、バイオマーカー検査はシングルプレックスからマルチプレックスに移行しつつある。西日本がん研究機構(WJOG)では、わが国の肺がん約1,500例のバイオマーカー検査の実施状況と治療の実態を調査し、肺がん診療の問題点を可視化することを目的とした後ろ向き調査WJOG15421L(REVEAL)試験を実施している。第63回日本肺癌学会学術集会では、同試験からバイオマーカー検査の実態について鳥取大学の阪本 智宏氏が発表した。 主な結果は以下のとおり。・2020年7月1日〜2021年6月30日に29施設から1,500例が登録され、そのうち1,479例を対象にバイオマーカー検査実施状況を後ろ向きに調査した。・マルチ遺伝子検査実施は1,478例中705例(47.7%)、単一遺伝子検査実施例は848例(57.3%)、そのうちマルチと単一、両方の検査を実施したのは280例(18.9%)であった。・マルチ検査の67.2%(705例中474例)はオンコマインDx Target TestマルチCDx(オンコマインDxTT)であった。・遺伝子別の検査実施率は、EGFR 84.2%、ALK 78.8%、ROS1 72.8%、BRAF 54.3%、MET 54.4%だった。・BRAFとMETの検査実施率は他の3遺伝子に比べて低かったが、ほとんどがマルチ検査であった。・オンコマインDxTTの成功率は、最も低いROS1で91.9%、最も高いALKでは99.1%で、すべて90%を超えていた。・遺伝子異常の陽性率は、EGFR 25.1%、ALK 2.9%、ROS1 1.6%、BRAF 1.1%、MET 1.7%であった。・陽性率を組織別に見ると、EGFRでは腺がん30.4%、非腺がん3.7%、ALKではそれぞれ3.3%と1.9%、ROS1では2.1%と0.3%、BRAFでは1.2%と0.8%で、いずれも腺がんで高かった。一方、METでは、それぞれ1.6%と2.1%で、非腺がんにも見られた。・マルチ遺伝子検査が行われない要素はPS3〜4、扁平上皮がん、合併症ありであった。 マルチ遺伝子検査の実施割合は約半数だった。しかし、扁平上皮がん、合併症有、PS不良例では実施割合が低い傾向にあり、マルチ遺伝子検査が十分に行われていない可能性が示唆されている。

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ペムブロリズマブのNSCLCアジュバント、日本人でも有効(PEARLS/KEYNOTE-091)/日本肺癌学会

 PD-L1陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対するペムブロリマブの術後補助療法は、日本人においても有効で、グローバルと同等の成績を示した。 ペムブロリズマブによるNSCLCの術後補助療法を評価する第III相PEARLS/KEYNOTE-091試験における日本人患者の結果が、第63回日本肺癌学会学術集会で、国立がん研究センター東病院の坪井 正博氏から発表されている。 試験デザインは関連記事参照。 PEARLS/KEYNOTE-091のグローバル第2回中間解析において、ペムブロリズマブの補助療法はプラセボに対し、HR 0.76(p=0.0014)と、無病生存期間(DFS)を延長している。 主な結果は以下のとおり。・日本人の登録は136例で、ペムブロリスマブ群67例とプラセボ群69例に無作為に割り付けられた。・日本人集団のデータカットオフ時(2021年9月20日)における追跡期間中央値は39.1ヵ月であった。・日本人集団のDFS中央値はペムブロリスマブ群40.5ヵ月、プラセボ群は35.0月で、HRは0.75(95%信頼区間[CI]:0.45〜1.24)とペムブロリスマブ群でグローバルと同様の改善を示した。2年DFS率はペムブロリスマブ群66%、プラセボ群55%であった。・PD-L1別の解析は対象数が少ないため評価されていない。・日本人集団における全生存期間は解析対象に至っていない。・Grade≧3の有害事象(AE)は、ペムブロリスマブ群の22.4%、プラセボ群の13.0%で発生した。治療中止に至ったAEはペムブロリスマブ群の16.4%、プラセボ群の7.2%で発現した。免疫関連AEはペムブロリスマブ群の41.8%で発現、一方プラセボ群では10.1%であった。 発表者の坪井氏は、これら日本人集団の結果はグローバルと一致していることから、ペムブロリスマブのNSCLC術後補助療法は日本人においても新たな治療選択肢となる可能性があると述べている。

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ペグフィルグラスチムの自動投与デバイス発売、患者の通院負担軽減に期待/協和キリン

 協和キリンは、持続型G-CSFペグフィルグラスチム(商品名:ジーラスタ)の自動投与デバイスであるジーラスタ皮下注3.6mgボディーポッド(以下、同剤)を12月6日より発売すると発表した。 ペグフィルグラスチムは、がん化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制を適応症として2014年から日本で販売している。通常、がん化学療法剤投与終了後の翌日以降に投与されるが、同剤は約27時間後に薬剤が自動投与される機能を搭載する。 がん化学療法と同日に使用することでペグフィルグラスチム投与のための通院が不要となる。この機能により、化学療法を実施する患者の通院負担の軽減に寄与するという。 同剤はテルモと共同で開発を行い、協和キリンが実施した第I相臨床試験の結果に基づき、2022年7月に承認を取得、2022年11月に薬価収載された。

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アテゾリズマブのNSCLCアジュバント、日本人でも有効(IMpower010)/日本肺癌学会

 非小細胞肺がん(NSCLC)に対するアテゾリズマブの術後補助療法は、日本人においても良好な成績を示した。 第63回日本肺癌学会学術集会で、静岡県立静岡がんセンターの釼持 広知氏が、アテゾリズマブ術後補助療法の第III相試験IMpower010の日本人サブセットを発表している。内容の一部は、Cancer Science誌2022年9月5日号で発表されたものである。・対象:UICC/AJCC第7版定義のStageIB~IIIAのNSCLC、手術後にシスプラチンベースの補助化学療法(最大4サイクル)を受けた1,005例・試験群:アテゾリズマブ1,200mg/日3週ごと16サイクルまたは1年・対照群:BSC・評価項目[主要評価項目]治験医師評価による階層的無病生存期間(DFS):(1)PD-L1 TC≧1% StageII~IIIA集団、(2)StageII~IIIA全集団、(3)ITT(StageIB~IIIA全無作為化)集団[副次評価項目]ITT集団の全生存期間(OS)、PD-L1 TC≧50% StageII~IIIA集団のDFS、全集団の3年・5年DFS 主な結果は以下のとおり。・日本人は149例が登録され、無作為化割り付け対象は117例、そのうちアテゾリズマブ群は59例、BSCは58例であった。・PD-L1≧1%のStageII~IIIAのDFSはアテゾリズマブ群未到達、BSC群31.4ヵ月であり、アテゾリズマブによる改善傾向が観察された(ハザード比[HR]:0.52、95%信頼区間[CI]:0.25〜1.08)。・OS中央値は、アテゾリズマブ群、BSC群ともに未到達で、HRは0.41(95%CI:0.41〜1.04)であった。・データカットオフ日(2021年1月21日)にアテゾリズマブの治療を完遂(3週ごと16サイクル)した患者は59例中35例であった。・アテゾリズマブのGrade3/4治療関連有害事象(TRAE)16%で発現した。頻度の高いアテゾリズマブのTRAEは皮疹、肝炎、肺臓炎などであった。肺臓炎の発現は10.7%、Grade3/4の発現はない。 発表者の釼持氏は、今回の成績を評価しつつも、長期にわたり患者のQOLを下げるirAEの可能性などを考慮し、長期データに注目すべきだと結んだ。

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