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間質性肺炎合併肺癌の薬物療法、改訂GLの推奨は?/日本呼吸器学会

 間質性肺炎(IP)には肺癌が合併することが多く、IP合併肺癌に対する治療は急性増悪を引き起こすことが問題になる。近年、肺癌の薬物療法は免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が主流となり、IP合併肺癌に対する薬物療法について、さまざまな検討がなされている。2023年4月に改訂された特発性肺線維症の治療ガイドライン2023(改訂第2版)では、これらのエビデンスを基に、合併肺癌に関して新たに3つのCQ(クリニカルクエスチョン)が設定され、合計6つとなった。合併肺癌に関するCQと関連するエビデンスについて、岸 一馬氏(東邦大学医学部内科学講座 呼吸器内科学分野 教授)が第63回日本呼吸器学会学術講演会で解説した。改訂GLの合併肺癌に関するCQと推奨 特発性肺線維症の治療ガイドライン2023(改訂第2版)は、慢性期、急性増悪、合併肺癌、肺高血圧症、進行期の5つのセクションで構成され、今回から肺高血圧症と進行期が追加された。合併肺癌に関するCQは3つ追加された(CQ20-1、20-2、21)1)。 IP合併肺癌のCQとポイントは以下のとおり。CQ17:IPF(特発性肺線維症)を含むIP合併肺癌患者に外科治療は推奨されるか? 方向性:行うことを提案(一部の患者には合理的でない可能性がある) 推奨の強さ:2(弱) エビデンスの強さ:C(低) 本邦において、IP合併例肺癌手術例の予後を調べた研究では、StageIAであっても5年生存率が59%にとどまっていたことが報告されている2)。その理由として、術後急性増悪による死亡の多さがある。IP合併肺癌1,763例を対象とした後ろ向き研究では、急性増悪が9.3%に発現し、死亡率は43.9%であった3)。術後急性増悪のリスク因子からリスク予測モデルが作成され、その有用性を検討した前向きコホート研究REVEAL-IP Studyが実施された。その結果、術後急性増悪は1,094例中71例(6.5%)に発現し、そのうち39.4%が死亡したが、後ろ向き研究時よりも改善傾向にあった。CQ18:IPFを含むIP合併肺癌患者に術後急性増悪の予防投薬は推奨されるか? 方向性:行わないことを提案(一部の患者には合理的でない可能性がある) 推奨の強さ:2(弱) エビデンスの強さ:C(低) 本邦において、ステロイドなどの術前予防投薬を行っても術後急性増悪の発現率は低下しないことが報告されている3)。その後、少数例の検討ではあるがピルフェニドンが術後急性増悪の発現リスクを低下させることが報告され、現在IPF合併肺癌患者を対象として周術期ピルフェニドン治療の有用性を検討する無作為化比較試験が実施されている4)。CQ19:IPFを含むIP合併肺癌患者に細胞傷害性抗がん薬は推奨されるか? 方向性:行うことを提案(一部の患者には合理的でない可能性がある) 推奨の強さ:2(弱) エビデンスの強さ:C(低) 本邦において、IP合併非小細胞肺癌(NSCLC)に対する初回化学療法の前向き試験が複数実施されており、急性増悪の頻度は12%以内で、近年は全生存期間中央値(MST)が15ヵ月を超えている。また、2022年12月には、化学療法とBest Supportive Care(BSC)を後ろ向きに比較した研究結果が報告された。傾向スコアマッチングを行っても、化学療法群はBSC群と比較して全生存期間(OS)が有意に延長した5)。CQ20-1:IPFを含むIP合併肺癌患者に血管新生阻害に関与する分子標的治療薬は推奨されるか? 方向性:行うことを提案(一部の患者には合理的でない可能性がある) 推奨の強さ:2 エビデンスの強さ:D(非常に低) エビデンスは少ないものの、化学療法にベバシズマブを上乗せしても急性増悪の発現は増加せず、無増悪生存期間(PFS)を延長する傾向が報告されている。また、推奨の決定に関するシステマティックレビューには含まれなかったが、世界で初めてIPF合併NSCLCを対象にニンテダニブの化学療法への上乗せ効果を検討した国内第III相無作為化比較試験(J-SONIC試験)の結果が本邦から報告された。主要評価項目の無イベント生存率(EFS)について、化学療法+ニンテダニブ群は化学療法群と比較して有意差は認められなかったが、奏効率(ORR)は化学療法群が56.0%であったのに対し、化学療法+ニンテダニブ群は69.0%と有意に高かった(p<0.05)。また、PFSについて、中央値は化学療法群が5.5ヵ月であったのに対し、化学療法+ニンテダニブ群は6.2ヵ月であり、有意に延長した(ハザード比:0.68、95%信頼区間[CI]:0.50~0.92)。OSについては、全体では両群間に有意差はなかったが、非扁平上皮NSCLC、GAP StageIのサブグループにおいて、化学療法+ニンテダニブ群が有意に改善した。急性増悪の頻度は、化学療法群1.6%、化学療法+ニンテダニブ群4.1%、全体でも2.9%と低かった6)。CQ20-2:IPFを含むIP合併肺癌患者にドライバー遺伝子変異に対する分子標的治療薬は推奨されるか? 方向性:行わないことを提案または推奨 推奨の強さ:現段階では結論付けない エビデンスの強さ:D(非常に低) 推奨の強さについて、現段階では結論付けないとされた。これについては、パネル委員の全員が投与しないことを提案または推奨したが、一定の基準に達しなかったため、推奨の強さは決定されなかった。このような推奨となった一因として、日本人の肺癌患者を対象としてゲフィチニブと化学療法を比較した試験において、ゲフィチニブ群で間質性肺疾患(ILD)の頻度が高く(ゲフィチニブ群4.0%、化学療法群2.1%、オッズ比[OR]:3.2)、ILDによる死亡率が30%を超えたことなどが挙げられる7)。CQ21:IPFを含むIP合併肺癌患者に免疫チェックポイント阻害薬は推奨されるか? 方向性:行わないことを提案(一部の患者には合理的でない可能性がある) 推奨の強さ:2 エビデンスの強さ:D(非常に低) IP合併肺癌に対するICIの効果を検討したメタ解析の結果が報告されている。10試験(ILDのある患者179例)が対象となり、そのうち8試験が本邦の報告であった。ORRについて、ILDのある群(34%)はILDのない群(24%)と比較して有意に良好であった(OR:1.99、95%CI:1.31~3.00)。一方、ILDのある群は免疫関連有害事象(irAE)の発現率が有意に高率であった(OR:3.23、95%CI:2.06~5.06)。ICIによる肺臓炎についても、ILDのある群(全Grade:27%、Grade3以上:15%)はILDのない群(同10%、4%)と比較して有意に高率であった(OR:2.91、95%CI:1.47~5.74)8)。また、びまん性肺疾患に関する調査研究班は、IP合併肺癌におけるICIの薬剤性肺障害に関する後ろ向き研究を実施した。その結果、200例が対象となり、薬剤性肺障害は30.5%に認められた(Grade3以上:15.5%、Grade5:4.5%)。多変量解析の結果、重篤な薬剤性肺障害の危険因子として、IPFあり、IP診断時のSP-D(肺サーファクタントプロテインD)値高値、ICI投与前のCRP値高値が同定された。また、irAEが発現した患者はPFSとOSが有意に良好であり、IP非合併NSCLCにおける過去の報告と一致していた。IP合併肺癌に関する現状のまとめ 岸氏は、IP合併肺癌に関する現状について、以下のようにまとめた。・日本からIP合併肺癌に関するステートメントと特発性肺線維症の治療ガイドライン2023(改訂第2版)が発刊された。・IP合併肺癌の発生予防、治療による急性増悪に関して抗線維化薬の有用性が報告された。・IP合併進行NSCLCに対してカルボプラチン+タキサン、小細胞肺癌(SCLC)に対してプラチナ製剤+エトポシドは標準治療と考えられる。・IP合併肺癌に対するICIにより約30%に薬剤性肺障害が生じるが、比較的良好な治療成績が報告されている。・IP合併肺癌の治療は、リスクとベネフィットを慎重に検討し、患者の希望も踏まえて決定することが重要である。特発性肺線維症の治療ガイドライン2023(改訂第2版)編集:「特発性肺線維症の治療ガイドライン」作成委員会定価:3,300円(税込)発行年月:2023年4月判型:A4頁数:140頁■参考文献1)「特発性肺線維症の治療ガイドライン」作成委員会編集. 特発性肺線維症の治療ガイドライン2023(改訂第2版). 南江堂;20232)Sato T, et al. J Thorac Cardiovasc Surg. 2015;149:64-70.3)Sato T, et al. J Thorac Cardiovasc Surg. 2014;147:1604-1611.4)Sakairi Y, et al. J Thorac Dis. 2023;15:1489-1493.5)Miyamoto A, et al. Respir Investig. 2023;61:284-295.6)Otsubo K, et al. Eur Respir J. 2022;60:2200380.7)Kudoh S, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2008;177:1348-1357.8)Zhang M, et al. Chest. 2022;161:1675-1686.

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小細胞肺がんに対するICI+化学療法は、高齢患者でも治療選択肢/日本呼吸器学会

 小細胞肺がん(SCLC)の治療選択肢となっている免疫チェックポイント阻害薬(ICI)+化学療法は、高齢患者においても有効な選択肢である可能性が示された。日本医科大学千葉北総病院の清水 理光氏が第63回日本呼吸器学会学術講演会で発表した。 高齢化が進むわが国では、SCLCにおいても75歳以上の高齢患者が増加している。しかし、これらの患者集団に関する検討は十分ではない。清水氏らは、75歳以上の進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)に対するICI+化学療法の有効性と安全性を検討した。2019年8月〜2023年3月に、同施設で1次治療にICI+化学療法を受けたES-SCLC患者を、後方視的に観察している。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)。75歳以上(n=8)と75歳未満(n=10)に分けて解析した。 主な結果は以下のとおり。・PFS中央値は、75歳以上群で197日、75歳未満群では267日であった(p=0.394、95%信頼区間[CI]:95.7〜420.1)。・全生存期間(OS)中央値は、75歳以上群で500日超、75歳未満群では339日であった(p=0.359、95%CI:294.1〜370.9)。・ICI+化学療法のレジメン別のPFSは、デュルバルマブ+化学療法群で152日、アテゾリズマブ+化学療法群では197日超であった(p=0.812、95%CI:99.2〜294.8)。・奏効率は75歳以上群で50%、75歳未満群では60%であった。・Grade3以上の有害事象は、75歳以上群の50%、75歳未満群では60%に発現した(t-value=0.102)。 75歳以上の高齢者のES-SCLCに対するICI+化学療法は75歳未満と比較して奏効率、安全性ともに統計学的に有意な差はみられなかった。また、少数の解析ではあるがICIレジメン間でのPFSについても差は認められなかった。清水氏は、75歳以上の高齢者のES-SCLCにおいてもICI+化学療法は有効な選択肢となると述べている。

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高齢NSCLCにおけるKEYNOTE-189とIMpower130の比較/日本呼吸器学会

 70歳以上の非小細胞肺がん(NSCLC)における、2つの免疫チェックポイント阻害薬(ICI)+化学療法レジメンは同等の有効性を示すが、安全性プロファイルは異なることが示された。日本医科大学付属病院の戸塚 猛大氏が第63回日本呼吸器学会学術講演会で発表した。 ICI+化学療法はNSCLCの標準治療の1つである。NSCLCでは高齢患者の占める割合が多い。しかし、70歳以上の高齢NSCLCにおける治療の有効性や安全性は十分に検討されているとは言えない。戸塚氏らは同施設において、ICI+化学療法を受けた非扁平上皮NSCLC患者のデータを後ろ向きに収集し、70歳以上のNSCLCにおけるKEYNOTE-189レジメン(n=26)とIMpower130レジメン(n=13)の有効性と安全性を検討した。 主な結果は以下のとおり。・無増悪生存期間(PFS)はKEYNOTE-189レジメンは6.5ヵ月、IMpower130レジメンは8.1ヵ月であった(p=0.531)。・全生存期間(OS)はKEYNOTE-189レジメンは32.9ヵ月、IMpower130レジメンは22.9ヵ月であった(p=0.862)。・安全性プロファイルは両群で違う傾向にあり、Grade2以上の肺臓炎およびGrade2以上の腎障害の発現は、KEYNOTE-189レジメンでみられたが、IMpower130レジメンでは認められなかった。一方、Grade3以上の血液毒性はKEYNOTE-189レジメンに比べIMpower130レジメンで多くみられた。 70歳以上の非扁平上皮NSCLCにおいて、KEYNOTE-189レジメンとIMpower130レジメンの有効性には差は認められなかった。一方、有害事象の内容は異なることから戸塚氏は、安全性プロファイルを考慮して治療選択を行うべきだとの結論を示している。

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AmoyDx肺癌マルチ遺伝子PCRパネル、KRAS G12C、 RET融合遺伝子にも保険適用/理研ジェネシス

 理研ジェネシスは、2023年5月1日、「AmoyDx肺癌マルチ遺伝子PCRパネル」において、2023年3月22日付で7種のドライバー遺伝子(EGFR、ALK、ROS1、BRAF、MET、KRAS、RET)を対象とするマルチプレックス検査として製造販売承認事項一部変更承認を取得し、2023年5月1日付で新たに保険適用されたと発表した。 同製品は、非小細胞肺癌の7種のドライバー遺伝子をカバーする、リアルタイムPCR法を原理としたコンパニオン診断薬である。今回のKRAS遺伝子変異(G12C)ならびにRET融合遺伝子を追加するシリーズ統合承認と、それに伴う新たな保険適用により、2023年5月1日以降、7種のドライバー遺伝子のマルチプレックス検査として、EGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、ROS1融合遺伝子、BRAF V600E変異、MET exon14スキッピング変異、KRAS G12C変異、RET融合遺伝子を1回の測定で同時に検査し、13種の抗がん剤の適応判定の補助とすることへの保険適用が可能となる。●使用目的NSCLC患者への、以下の抗悪性腫瘍剤の適応を判定するための補助に用いる。・EGFR遺伝子変異:ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、オシメルチニブ・ALK融合遺伝子:クリゾチニブ、アレクチニブ、ブリグチニブ・ROS1融合遺伝子:クリゾチニブ、エヌトレクチニブ・BRAF 遺伝子変異(V600E):ダブラフェニブとトラメチニブの併用投与・MET遺伝子 exon14スキッピング変異:テポチニブ・KRAS遺伝子変異(G12C):ソトラシブ・RET融合遺伝子:セルペルカチニブ

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緩和ケアの「質」、どう評価する?【非専門医のための緩和ケアTips】第51回

第51回 緩和ケアの「質」、どう評価する?医療マネジメントにおいて「質の評価」はメジャーな分野ですが、“質の高い緩和ケア”って何なのでしょう? なかなか難しいテーマですが、考えてみたいと思います。今日の質問いろいろな分野で医療の質の重要性が議論されていると思うのですが、緩和ケアの質はどう評価するのでしょうか?「在宅看取りの数」が重要な指標とされているようですが、一概に「在宅で看取ることができたら、緩和ケアの質が高い」とも言えない気がするのです。どのように考えるとよいのでしょうか?今回は難しい質問を頂きました。「緩和ケアの質評価」という研究分野があって、さまざまな取り組みがなされています。一方、緩和ケアを提供する場は、急性期病院から慢性期病院まで、在宅医療でも自宅や施設で過ごす方などさまざまです。このように幅広い緩和ケアの在り方に共通する、唯一の指標はありません。それでもあえて設定するとしたら、緩和ケアは「QOLの向上」を目的としていますので、患者さんおよびその家族のQOLを精密に測定できるのであれば、それが妥当な指標かもしれません。QOLの評価ツールはもちろん存在するのですが、それをすべての患者さんに運用するのも現実的ではないですよね。結果として、現状では代替指標で質を評価し、改善しています。では、ベストでないまでも、現状、ある程度妥当だと思われている緩和ケアの質評価手法には、どのようなものがあるのでしょうか? 日本の緩和ケアの「QI:Quality Indicator(質の評価指標)」に関する論文を見ると、さまざまな切り口のQIが示されています。データベースから抽出するQI診療記録から抽出するQIICUにおける終末期に関するQIナーシングホームにおける医師のケアをパフォーマンスモニタリングするインジケーター地域ベースのQIこれらを見るだけでも、冒頭で述べたように、診療の状況によってさまざまなQIが検討されていることがご理解いただけるかと思います。今回、ご質問いただいた先生は在宅医療に関わっているようですので、ナーシングホームにおける医師のQIを見てみましょう。1)患者の希望や事前指示が記録されているか2)痛みがある場合は、それが医師の記録にあり、疼痛緩和に積極的な試みがなされているか3)呼吸困難がある場合は、それが記録にあり、それを最小限にする試みがなされているか4)痛みがある場合、鎮痛治療の効果が継続評価されて、痛みが緩和されているか5)深い症状が医師の記録にあり、緩和する試みがなされているか6)心理、社会的サポートが記載されているか7)患者が望まない治療処置がされていないか8)衛生状態が医師の記録にあるか(失禁、清潔、褥瘡、尊厳)9)患者・家族が医師のカウンセリングを受けているか10)死別後のケアについて医師から提案・提供されているかいかがでしょう? こういった指標を厳密に運用するのはなかなか大変ですし、現状の課題にマッチしたものではないなど課題もあると思います。それでも、私は時々QIを見返し、現状の改善につながる指標として活用できるものはないかと考える機会を持つようにしています。皆さんも活用方法を考えてみるとよいかもしれませんね。今回のTips今回のTips緩和ケア領域のQI指標を眺めてみよう。宮下光令ほか. Palliat Care Res. 2007;2:401-415.

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肺がん遺伝子検査の実態って?【DtoD ラヂオ ここが聞きたい!肺がん診療Up to Date】第1回

第1回:肺がん遺伝子検査の実態って?パーソナリティ日本鋼管病院 呼吸器内科 部長 田中 希宇人 氏ゲスト近畿大学病院 腫瘍内科 高濱 隆幸 氏関連サイト専門医が厳選した、肺がん論文・ニュース「Doctors'Picks」(医師限定サイト)講師紹介

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非小細胞肺がん免疫併用療法の多施設共同臨床試験に係る現状と重要な注意事項について/国立がん研究センター

 日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)は、全国59施設で実施していた、未治療の進行・再発非小細胞肺がんに対する、化学療法+ペムブロリズマブ療法と化学療法+ニボルマブ+イピリムマブ療法の有効性比較第III相試験(JCOG2007試験、特定臨床研究)において、化学療法+ニボルマブ+イピリムマブ療法患者で、予期範囲を超える約7.4%(148例中11例)の治療関連死亡が認められたため、試験継続困難と判断して2023年3月30日に同試験を中止した、と発表した。 同試験は2021年4月~2022年4月に261例の患者を登録したが、化学療法+ニボルマブ+イピリムマブ療法において、9例(6.9%)に治療関連死亡(肺臓炎3例、サイトカイン放出症候群2例、敗血症1例、心筋炎2例、血球貪食症候群1例)が起きたため登録を一時停止。その後、治療関連死亡患者に多く見られる特徴を見いだし、登録規準を変更したうえで2022年10月3日に登録を再開したが、化学療法+ニボルマブ+イピリムマブ療法患者に新たな治療関連死亡が起きた。安全性を高めた変更後の登録の規準をもってしても防げなかった治療関連死亡と考え、2023年3月30日にこの試験の中止を決定した、としている。 現在、同試験以外でニボルマブ+イピリムマブ併用療法を受けている未治療進行・再発非小細胞肺がんの患者に対しては、治療の効果や副作用を勘案した慎重な判断が必要なため、自己判断で治療を中断せず、必ず主治医と相談するよう勧告している。 詳細は国立がん研究センタープレスリリースを参照

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がんのこと、子供に伝える? 伝えない?【非専門医のための緩和ケアTips】第50回

第50回 がんのこと、子供に伝える? 伝えない?前回お伝えしたAYA世代と呼ばれる若年・子育て世代のがん患者で、必ず問題になるのが、「がんのことを子供にどのように伝えるか」という話題です。非常に難しいことですが、お子さんのこれからにも関わる大切なこととして考えてみましょう。今日の質問基幹病院に通院中の若年がん患者さん。発熱時などの対応を当院の外来で行っています。いろいろ話していると、「子供にがんのことを伝えられなくて…」と気にしている様子。ゆっくりですが病状は進行しており、お子さんに伝えないわけにはいかないと思うのですが、どのようにアドバイスすればよいのでしょうか?まずはこうした繊細な事柄を話し合える場を提供できていることが素晴らしいですね。私の勤務先は診療の主体が基幹病院ですが、患者さんとこうした気掛かりについて、ゆっくり話せていないケースもあります。その点、この方と患者さんはしっかりとした信頼関係が築けているのでしょう。「子供への病状の伝え方」は難しい問題で、「こうすれば大丈夫」という方法はないのですが、一般的なことを少しお話ししましょう。子供に親のがんを伝えるときには、「3つのC」を念頭に置いて話すことが大切だとされています。1)Cancer(がん):がんという病気であること2)Catchy(伝染):伝染はしないこと3)Cause(原因):子供が何かをしたり、しなかったりしたことが、がんになった原因ではないこと私がこの分野を勉強しているときに、とくに印象深かったのは、「3つめのC」です。親の病気を伝えられた幼い子供は、「自分が言うことを聞かなかったから、お母さんは病気になっちゃったの?」と考えてしまうかもしれません。「子供に心配をかけさせたくない」という患者さんの気持ちも当然ですが、こうした繊細な子供の気持ちを考えると、理解できる年齢の子供であれば、体力・気力のあるうちにきちんと伝えることが重要なのではと感じます。この分野にもいくつかの支援団体があり、NPO法人Hope Treeはその一例です。有志の専門職が、親ががんになった子供をサポートするためのさまざまな情報やプログラムを提供しています。こうした活動があるのはありがたいですね。ぜひ、この機会にいろいろ学んでみてください。今回のTips今回のTipsがんになった親を持つ子供のための支援情報をチェックしよう。

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術前デュルバルマブ・NAC併用+術後デュルバルマブによるNSCLCのEFS延長(AEGEAN)/AACR2023

 デュルバルマブを用いた術前・後レジメンが早期非小細胞肺がん(NSCLC)の無イベント生存期間(EFS)を有意に延長した。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのJohn V. Heymatch氏が、米国がん研究協会年次総会(AACR 2023)で発表した、術前化学療法とデュルバルマブの術前・後補助療法の組み合わせを評価する第III相AEGEAN試験の結果である。・対象:手術予定のある未治療の切除可能なStage IIA〜IIIB(AJCC第8版)NSCLC・試験群:デュルバルマブ+プラチナベース化学療法(3週ごと4サイクル)→手術→デュルバルマブ(4週ごと12サイクル)(Dur群)・対照群:プラセボ+プラチナベース化学療法(3週ごと4サイクル)→手術→プラセボ(4週ごと12サイクル)(Chemo単独群)・評価項目:[主要評価項目]盲検化独立中央評価委員会(BICR)評価のEFS、病理学的完全奏効(pCR)[副次評価項目]主要な病理学的奏効(mPR)、BICR評価の無病生存期間、全生存期間 主な結果は以下のとおり。・EFS中央値(追跡期間中央値11.7ヵ月)はDur群未到達、Chemo単独群は25.9ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.68、95%信頼区間[CI]:0.53〜0.88、p=0.003902)。・2年EFS率はDur群63.3%、Chemo単独群52.4%であった。・pCRはDur群の17.2%、Chemo単独群の4.3%で達成した(群間差:13.0%、95%CI:8.7〜17.6、p=0.000036)。・4サイクルの術前化学療法完遂率はDur群84.7%、Chemo単独群87.2%、手術完遂率はDur群77.6%、Chemo単独群76.7%、術後補助療法実施中はDur群23.2%、Chemo単独群23.5%で、いずれも両群で同等だった。・全Gradeの有害事象はDur群96.5%、Chemo単独群94.7%で発現し、全Gradeの免疫関連有害事象(irAE)はDur群の23.5%、Chemo単独群の9.8%で発現した。 発表者であるHeymatch氏は、術前・後のデュルバルマブ+術前化学療法は、切除可能なNSCLCにとって、可能性を有する新たな治療選択肢であると結論を述べている。

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がん治療を続けるための悪液質治療 シリーズがん悪液質(10)【Oncologyインタビュー】第44回

出演:北海道大学病院 腫瘍センター化学療法部 CancerBoard部 小松 嘉人氏がん悪液質イコール終末期、不可逆的。このイメージが変わったと北海道大学の小松 嘉人氏は言う。変わった理由は何だったのか。また、がん治療を継続するために、がん悪液質を治療するという、同氏の考え方について解説いただいた。

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間質性肺疾患の緩和ケア、日本の呼吸器専門医の現状を調査

 間質性肺疾患(ILD)は症状が重く、予後不良の進行性の経過を示すことがある。そのため、ILD患者のQOLを維持するためには、最適な緩和ケアが必要であるが、ILDの緩和ケアに関する全国調査はほとんど行われていない。そこで、びまん性肺疾患に関する調査研究班は、日本呼吸器学会が認定する呼吸器専門医を対象とした調査を実施した。その結果、呼吸器専門医はILD患者に対する緩和ケアの提供に困難を感じていることが明らかになった。本研究結果は、浜松医科大学の藤澤 朋幸氏らによってRespirology誌オンライン版2023年3月22日号で報告された。 日本呼吸器学会が認定する呼吸器専門医のうち、約半数に当たる3,423人を無作為に抽出し、ILDの緩和ケアの現状に関するアンケートを郵送した。アンケートは、「緩和ケアの現状や実施状況(5項目、27問)」「終末期のコミュニケーションの最適なタイミングと実際のタイミング(2問)」「緩和ケアに関するILDと肺がんの比較(6問)」「ILDの緩和ケアにおける障壁(31問)」で構成された。解析はアンケートに回答した医師のうち、過去1年以内にILD患者を診療した医師を対象とした。 主な結果は以下のとおり。・1,332人(回答率38.9%)がアンケートに回答し、そのうち、1,023人が過去1年以内にILD患者を診療していた。・大多数の医師が「ILD患者はしばしば、あるいは常に呼吸困難や咳の症状を訴える」と回答したものの、「緩和ケアチームへ紹介したことがある」と回答した医師は25%にとどまった。・緩和ケアチームへ紹介したことのない医師のうち、48%は「緩和ケアチームを利用できる環境にあるが、紹介したことはない」と回答し、33%は「緩和ケアチームを利用できる環境がなかった」と回答した。・終末期のコミュニケーションについて、実際のタイミングは最適と考えるタイミングよりも遅れる傾向にあった。・ILDの緩和ケアは、症状の緩和や意思決定において肺がんと比較して困難であった。・ILD患者は肺がん患者と比較して、呼吸困難に対してオピオイドが処方される頻度が少なかった。・ILDの緩和ケアに特有の障壁として、「予後を予測できない」「呼吸困難に対する治療法が確立されていない」「心理的・社会的支援が不足している」「患者やその家族がILDの予後の悪さを受け入れるのが難しい」といった意見が挙げられた。

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日本人ALK陽性肺がんにおけるロルラチニブの3年追跡の結果(CROWN)/日本臨床腫瘍学会

 第III相CROWN試験の3年間の追跡において、ロルラチニブは日本人ALK陽性非小細胞肺がんに対しても、全体集団と同様の良好な結果を示した。第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)で、和歌山県立医科大学の寺岡 俊輔氏が発表した。・対象:StageIIIB/IVの未治療のALK陽性肺がん(無症状のCNS転移は許容)・試験群:ロルラチニブ(100mg/日)・対照群:クリゾチニブ(250mg×2/日)・評価項目:[主要評価項目]盲検化独立中央評価委員会(BICR)による無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]治験実施医によるPFS、BICR評価の奏効率(OR)、BICR評価の脳内奏効率(IC-OR)、BICR評価の奏効期間(DoR)、BICR評価の脳内奏効期間(IC-DR)、全生存期間(OS)、安全性 主な結果は以下のとおり。・日本人患者は48例。ロルラチニブ群25例、クリゾチニブ群23例が総合解析の対象となった。・解析時に、ロルラチニブ群の56%、クリゾチニブ群の4.5%が治療を継続していた。・ロルラチニブ群45.9ヵ月、クリゾチニブ群38.9ヵ月の追跡期間における、BICR評価のPFSは、ロルラチニブ群未到達、クリゾチニブ群は11.1ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.36、95%信頼区間[CI]:0.16~0.83)。・治験担当医評価のPFSは、ロルラチニブ群未到達、クリゾチニブ群は9.1ヵ月であった。・ORはロルラチニブ群72.0%、クリゾチニブ群52.2%であった(HR:0.25、95%CI:0.11~0.57)。・頭蓋内の進行までの期間(IC-TTP)は、ロルラチニブ群未到達、クリゾチニブ群は16.6ヵ月であった。・ロルラチニブ群の全例、クリゾチニブ群の24%は、36ヵ月頭蓋内進行がなかった。・Grade3/4のAE発現はロルラチニブ群84%、クリゾチニブ群72.7%であった。 第III相CROWN試験約3年の追跡、日本人サブセットにおいてロルラチニブは頭蓋内含め全体と同様の成績を示した。この結果は、脳転移の有無を問わず、未治療のALK陽性NSCLCにおけるロルラチニブの使用を支持するものだと寺岡氏は結んだ。

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緩和ケア、Remort対in Personほか【侍オンコロジスト奮闘記】第146回

第146回:緩和ケア、Remort対in Personほか参考Temel JS, et al. Early palliative care for patients with metastatic non-small-cell lung cancer.N Engl J Med. 2010;363:733-742.Chua IS, et.al. Early Integrated Telehealth versus In-Person Palliative Care for Patients with Advanced Lung Cancer: A Study Protocol.J Palliat Med. 2019;22:7-19.

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ニボルマブ+化学療法のNSCLCネオアジュバント、3年間の追跡でも持続的ベネフィット示す(CheckMate 816)/BMS

 ブリストル・マイヤーズ スクイブは、2023年3月30日、第III相CheckMate 816試験の3年間の追跡調査の結果を発表した。同結果では、切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者の術前補助療法として、ニボルマブとプラチナを含む化学療法の併用療法の3回投与が持続的な臨床ベネフィットを示した。 中央値41.4ヵ月の追跡調査における3年間の無イベント生存期間(EFS)率は、ニボルマブと化学療法の併用療法群で57%、化学療法単独群では43%であった(ハザード比[HR]:0.68、95%信頼区間[CI]:0.49〜0.93)。また、無作為割付け日から遠隔転移または死亡までの期間(TTDM)において、ニボルマブと化学療法の併用療法群は引き続き良好な結果を示し(HR:0.55、95%CI:0.39~0.78)、3年間のTTDM率は、ニボルマブと化学療法の併用療法群で71%、化学療法単独群では50%であった。 全生存期間(OS)のデータは未完成であったものの、ニボルマブと化学療法の併用療法による術前補助療法は、化学療法単独と比較して、引き続き良好な改善傾向が認められた(HR:0.62、99.34%CI:0.36〜1.05)。3年生存率は、ニボルマブと化学療法の併用療法による術前補助療法で78%、化学療法単独で64%であった。OSの解析は、引き続き実施される。 探索的解析には、外科的アプローチによるEFS、切除範囲または完全性によるEFS、およびベースライン時の腫瘍サンプルのRNAシーケンスに基づく4遺伝子(CD8A、CD274、STAT-1、LAG-3)の炎症シグネチャースコアによるEFSおよび病理学的完全奏効(pCR)が含まれた。ニボルマブと化学療法の併用療法群は、化学療法群と比較して、外科的アプローチや切除範囲にかかわらず、引き続き3年時EFSの改善を示している。ニボルマブと化学療法の併用療法群において、pCRが認められた患者は、認められなかった患者と比較して、ベースライン時の4遺伝子の炎症シグネチャースコアが高かった。また、ベースライン時の炎症スコアが高い患者は、低い患者と比べ、EFSが改善する傾向が見られた。 3年間の追跡調査における、ニボルマブと化学療法の併用療法の新たな安全性シグナルは認められていない。Grade3〜4の治療および手術関連有害事象の発現率は、ニボルマブと化学療法の併用療法群で、それぞれ36%および11%、化学療法群でそれぞれ38%および15%であった。

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「AYA世代」の緩和ケア、特有の難しさって?【非専門医のための緩和ケアTips】第49回

第49回 「AYA世代」の緩和ケア、特有の難しさって?緩和ケアを提供する患者さん、高齢の方が大半、というケースが多いのではないでしょうか。しかし、長く緩和ケアに関わっていると、終末期の若年者をケアする機会も出てきます。こうしたケースでは、高齢者へのケアとは異なる難しさを感じる方も多いのではないかと思います。今日の質問30歳の子宮頸がん患者さんへの訪問診療の依頼がありました。大学病院に通っていたそうですが、病状の進行に伴い訪問診療が必要になったとのこと。まだお子さんが5歳と小さく、多方面の支援が必要になりそうです。こうした若い方への緩和ケアは、どのような観点から考えればよいでしょうか?若年の終末期患者さんに対するケア、支援者自身が負担を感じることも多いでしょう。私も同世代のがん患者さんや、年下の患者さんを受け持った経験があり、今でも時々思い出します。若年患者は、がん領域ではしばしば「AYA(Adolescent and Young Adult:アヤ)世代」と呼ばれ、このカテゴリーで議論されることも多くあります。一般的には思春期の15歳ごろから30代までを指します。日本においては、年間約2万人のAYA世代ががんに罹患するとされ、罹患全体の2%程度を占めています。割合としてはそれほど多くないものの、総数はそれなりになるので、大学病院やがんセンター勤務でなくても、若年のがん患者さんと接する機会のある方は多いでしょう。AYA世代のがんとして多いのは、白血病などの血液腫瘍や生殖細胞から発生する胚細胞腫瘍・性腺腫瘍、脳腫瘍など小児に多い腫瘍や、乳がん・子宮頸がんなどの婦人科腫瘍です。希少がんと呼ばれる悪性腫瘍も含まれます。こうした点から基幹病院の専門医との連携も重要になります。また、今回のご質問のように、患者さんが小さい子供を抱えていたり、収入基盤が脆弱だったりすることもしばしばです。とくに「子供にどう病状を伝えるか」について、誰にも相談できずにいるというケースが多くあります。AYA世代の患者さんは、小さなお子さんを含めた家族や周囲の方との関わり方、仕事や収入の確保、時には通学といった、高齢者ではあまり経験しない幅広い支援が必要になることが特徴です。基幹病院や大学病院であれば、認定看護師や臨床心理士など、経験ある専門職と連携してケアに取り組むことができますが、プライマリ・ケアの現場では現実的に難しいことも多いでしょう。つまり、日常的に対応しない方ほど、この分野についてあらかじめ学んでおく必要があるのです。この機会に国立がん研究センターが運営するサイト「がん情報サービス」を確認するだけでも、とても役立つと思います。今回のTips今回のTipsAYA世代の緩和ケア、日常的に対応しない人ほど勉強が必要。

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