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divarasib、既治療のKRAS G12C変異固形がんに有望/NEJM

 KRAS G12C変異陽性固形がんに対し、divarasibの単剤療法は持続的な臨床効果をもたらし、有害事象はほとんどがGrade2以下であった。カナダ・トロント大学のAdrian Sacher氏らが、12ヵ国35施設で実施された第I相試験「GO42144試験」の結果を報告した。divarasib(GDC-6036)は共有結合型KRAS G12C阻害薬で、in vitroにおいてソトラシブやadagrasibより高い効力と選択性を示すことが報告されていた。NEJM誌2023年8月24日号掲載の報告。非小細胞肺がん、大腸がん、その他の固形がんを対象に単剤療法の第I相試験を実施 研究グループは2020年7月29日〜2022年10月7日に、KRAS G12C変異を有する既治療の局所進行または転移を有する固形がん患者137例(非小細胞肺がん60例、大腸がん55例、その他の固形がん22例)に、divarasib 50~400mgを1日1回経口投与した。まず、50mgと100mgの単回用量漸増コホートに順次登録した後、3+3デザインを用いて200mgと400mgの用量漸増コホートに追加登録し、さらに400mgの用量拡大コホートに登録した。 試験の主要目的は安全性の評価であり、薬物動態、抗腫瘍効果、奏効および耐性のバイオマーカーについても評価した。忍容性は良好、奏効率は非小細胞肺がんで53%、大腸がんで29% 検討したいずれの用量(50mg、100mg、200mg、400mgを1日1回投与)においても、用量制限毒性および治療に関連した死亡は報告されなかった。 治療関連有害事象(TRAE)は127例(93%)に発現し、主な事象は悪心(74%)、下痢(61%)、嘔吐(58%)であった。Grade3のTRAEは15例(11%)に、Grade4は1例(1%)に発現した。TRAEにより19例(14%)で投与量が減量され、4例(3%)が投与を中止した。 抗腫瘍効果は、非小細胞肺がんで奏効率53.4%(95%信頼区間[CI]:39.9~66.7)、無増悪生存期間(PFS)中央値は13.1ヵ月(95%CI:8.8~推定不能)、大腸がん患者でそれぞれ29.1%(95%CI:17.6~42.9)、5.6ヵ月(95%CI:4.1~8.2)であった。その他の固形がん患者においても、奏効が観察された。 血中循環腫瘍DNAの経時的評価において、奏効に関連するKRAS G12C変異アレル頻度の低下が示され、divarasibに対する耐性に関与する可能性のあるゲノム変化が同定された。

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静脈血栓塞栓症の治療に難渋した肺がんの一例(後編)【見落とさない!がんの心毒性】第24回

※本症例は、患者さんのプライバシーに配慮し一部改変を加えております。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。前回は、深部静脈血栓塞栓症に対する治療選択、がん関連血栓塞栓症のリスクとして注目すべき患者背景について解説を行いました。今回は同じ症例でのDVT治療継続における問題点を考えてみましょう。《今回の症例》年齢・性別30代・男性既往歴なし併存症健康診断で高血圧症、脂質異常症を指摘され経過観察喫煙歴なし現病歴発熱と咳嗽が出現し、かかりつけ医で吸入薬や経口ステロイド剤が処方されたが改善せず。腹痛が出現し、総合病院を紹介され受診した。胸部~骨盤部造影CTで右下葉に結節影と縦隔リンパ節腫大、肝臓に腫瘤影を認めた。肝生検の結果、原発性肺腺がんcT1cN3M1c(肝転移) stage IVB、ALK融合遺伝子陽性と診断した。右下肢の疼痛と浮腫があり下肢静脈エコーを実施したところ両側深部静脈血栓塞栓症(deep vein thrombosis:DVT)を認めた。肺がんに伴う咳嗽以外に呼吸器症状なし、胸部造影CTでも肺塞栓症(pulmonary embolism:PE)は認めなかった。体重65kg、肝・腎機能問題なし、血圧132/84 mmHg、脈拍数82回/min。肺がんに対する一次治療としてアレクチニブの投与を開始した。画像所見を図1に、採血データを表1に示す。(図1)中枢性DVT診断時の画像所見画像を拡大する(表1)診断時の血液検査所見画像を拡大するアレクチニブと直接作用型経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant:DOAC)の内服を継続したが、6ヵ月後に心膜播種・胸膜播種の出現と肝転移・縦隔リンパ節転移の増悪を認めた。ALK阻害薬の効果持続が短期間であったことから、がん治療について、ALK阻害薬から細胞傷害性抗がん薬への変更を提案したが本人が希望しなかった。よって、ALK阻害薬をアレクチニブからロルラチニブへ変更した。深部静脈血栓症(Venous Thromboembolism:VTE)に関しては悪化を認めなかったためDOACは変更せず内服を継続した。その後、肺がんの病勢は小康状態を保っていたが、1ヵ月後に胸部レントゲン写真で左下肺野にすりガラス陰影が出現し、造影CTを実施したところ新規に左下葉肺動脈のPEを認めた(図2)。(図2)PE発症時の画像所見画像を拡大する【問題】DOAC内服中にVTEが増悪した場合、どのような対応を行うか?1)Farge D, et al. Lancet Oncol. 2022;23:e334-e347.講師紹介

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ネオアジュバント/サンドイッチ療法レビュー【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第16回

第16回 ネオアジュバント/サンドイッチ療法レビュー参考John V Heymach JV,et al. Design and Rationale for a Phase III, Double-Blind, Placebo-Controlled Study of Neoadjuvant Durvalumab + Chemotherapy Followed by Adjuvant Durvalumab for the Treatment of Patients With Resectable Stages II and III non-small-cell Lung Cancer: The AEGEAN Trial. Clin Lung Cancer.2022;233:e247-e251. 術前デュルバルマブ・NAC併用+術後デュルバルマブによるNSCLCのEFS延長(AEGEAN)/AACR2023Wakelee H, et.al.Perioperative Pembrolizumab for Early-Stage Non-Small-Cell Lung Cancer. N Engl J Med.2023;389:491-503.NSCLC周術期のペムブロリズマブ、EFS改善が明らかに(KEYNOTE-671)/ASCO2023Patrick M Forde PM,et.al. Neoadjuvant Nivolumab plus Chemotherapy in Resectable Lung Cancer. N Engl J Med.2022;386:1973-1985.NSCLCの術前補助療法、ニボルマブ追加でEFS延長(CheckMate-816)/NEJM周術期非小細胞肺がんに対する化学療法+toripalimabのEFS中間解析(Neotorch)/ASCO2023

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過去10年間、日米間の抗がん剤ドラッグラグはどのくらいか

 抗がん剤の日米間のドラッグラグに関する既存の研究や統計では、ドラッグラグは減少したとするものもあるが、一方で日本では未承認の薬剤が多く残されている。北里大学の立花 慶史氏らは、未承認薬がドラッグラグに与える影響を定量化することを目的とした研究を行い、結果をInternational Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年8月10日号に報告した。 本研究では、2011~22年の間に米国で承認された抗がん剤136品目の情報が収集された。米国での承認日から日本での承認日までの日数として定義される承認ラグをすべての選択された薬剤について算出し、中央値をKaplan-Meier法で算出した。なお、日本で承認されていない医薬品の承認ラグについては、打ち切りデータとして扱った。承認ラグと関連する可能性のある因子を、Cox回帰分析を用いて検討した。 主な結果は以下のとおり。・前半期(2011~16年)と後半期(2017~22年)の承認ラグの中央値は、それぞれ961日(2.6年)と1,547日(4.2年)であった(log-rank検定のp=0.0687)。・国際的なピボタル試験への日本の参加は承認ラグ短縮と関連し、世界的な売上高トップ20にランクインしていない非日系企業の新薬承認申請は承認ラグ延長と関連した。 著者らは結論として日米間の抗がん剤のドラッグラグはこの10年間減少していないとし、米国での承認に関わるピボタル試験における日本の参加割合は増加しており、今後さらに増加が見込まれることに言及。今後は、中小の非日系企業による国際的な臨床開発計画への参加を促す制度が必要なのではないかとしている。

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米国の病院から学んだ急性期緩和ケア【非専門医のための緩和ケアTips】第58回

第58回 米国の病院から学んだ急性期緩和ケア先日、米国・ロサンゼルスにあるCedars-Sinai Medical Center(CSMC)を見学する機会がありました。日本と米国の医療制度は健康保険、職種ごとの権限、運営資源など異なる点も多いものの、共通の課題や参考になる点も多くありました。今日の質問先日、人工呼吸器装着や延命治療の中止に関するニュースを見ました。長く議論されている話題ですが、法整備や現場での運用はどうなっていくのでしょうか?今回は生命維持治療の中止についての質問をいただきました。緩和ケアには「急性期医療」の分野があります。緩和ケアというと「がん患者の終末期ケア」というイメージが根強いですが、急性期医療の分野でも症状緩和や意思決定支援、倫理的な問題を緩和ケアの一環として議論する機会が増えてきました。米国で見学したCSMCは急性期病院で、緩和ケアの対象は非がん疾患の方が多く、集中治療領域における緩和ケアのコンサルテーションにしばしば対応している、とのことでした。今回の質問にある生命維持治療の中止については、米国でもしばしば議論になるそうです。CSMCの緩和ケア医と議論した際、治療中止の際の苦痛緩和や家族へのケアを標準化していることが印象的でした。たとえば、人工呼吸器の装着を終了する際には呼吸困難を和らげる薬剤を準備し、家族に対して状況や見通しを共有する、などに多職種で取り組んでいるそうです。ケースや医療者ごとに対応がバラつきがちな日本と大きく異なる点だと感じました。治癒の見込みのなくなった患者に対する治療の中止は、医学的にはもちろん、倫理的にも難しい判断です。米国では本人の自立性を尊重し、本人の希望に沿って治療の中止を決断できるのでしょうか? 実はここはさまざまで、日本と同様に家族間で意見が異なる場合や、遠方の親族の意見を聞くために時間を要することがあるそうです。ここからは私の意見ですが、日本においても回復の見込みのなくなった患者の生命維持治療の中止をどのように考えるか、というのは今後避けては通れない議論でしょう。無益で患者の望まない治療を適切な時期に中止するため、必要な法的整備や現場での実践についてさらに議論していく必要があるでしょう。米国の病院の急性期緩和ケアを見学し、こんなことを感じました。いろいろな意見がある分野だと思います。皆さんの意見も聞かせてください。今回のTips今回のTips急性期の緩和ケア、延命治療中止に関する議論が求められています。

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HER2変異陽性非小細胞肺がんにトラスツズマブ デルクステカンが国内承認/第一三共

 第一三共は2023年8月23日、抗HER2抗体薬物複合体(ADC)トラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ)が、日本において、「がん化学療法後に増悪したHER2(ERBB2)遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の効能又は効果に係る製造販売承認事項一部変更承認を取得したと発表した。 HER2遺伝子変異陽性非小細胞がんを対象として希少疾病用医薬品指定 同適応は、グローバル第II相臨床試験(DESTINY-Lung02)の結果に基づき、2022年12月に日本における「がん化学療法後に増悪したHER2遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の効能又は効果に係る製造販売承認事項一部変更承認申請を行い、優先審査のもとで承認された。 また、同剤は「HER2遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」を対象として希少疾病用医薬品指定を受けている。 同剤が日本で承認を取得した適応がん種は、乳がん、胃がん、肺がんの3つとなった。

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NSCLCに対するICI+化学療法、日本人の血栓リスクは?

 がん患者は血栓塞栓症のリスクが高く、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)やプラチナ製剤などの抗がん剤が、血栓塞栓症のリスクを高めるとされている。そこで、祝 千佳子氏(東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻)らの研究グループは、日本の非小細胞肺がん(NSCLC)患者におけるプラチナ製剤を含む化学療法とICIの併用療法の血栓塞栓症リスクについて、プラチナ製剤を含む化学療法と比較した。その結果、プラチナ製剤を含む化学療法とICIの併用療法は、静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクを上昇させたが、動脈血栓塞栓症(ATE)のリスクは上昇させなかった。本研究結果は、Cancer Immunology, Immunotherapy誌オンライン版2023年8月4日号で報告された。 DPCデータを用いて、2010年7月~2021年3月にプラチナ製剤を含む化学療法を開始した進行NSCLC患者7万5,807例を抽出した。対象患者をICI使用の有無で2群に分類し(ICI併用群7,177例、単独療法群6万8,630例)、プラチナ製剤を含む化学療法開始後6ヵ月以内のVTE、ATE、院内死亡の発生率を検討した。背景因子を調整するため、生存時間分析には傾向スコアオーバーラップ重み付け法を用いた。 主な結果は以下のとおり。・VTEの発生率はICI併用群1.3%(96例)、単独療法群0.97%(665例)であった。ATEの発生率はそれぞれ0.52%(38例)、0.51%(351例)であった。院内死亡率はそれぞれ8.7%(626例)、12%(8,211例)であった。・傾向スコアオーバーラップ重み付け法による解析の結果、ICI併用群は単独療法群と比較してVTEリスクが有意に高かったが(部分分布ハザード比[SHR]:1.27、95%信頼区間[CI]:1.01~1.60)、ATEリスクに有意差はみられなかった(同:0.96、0.67~1.36)。・使用したICI別に同様の解析を行った結果、ペムブロリズマブを使用した場合にVTEリスクが有意に高かったが(SHR:1.29、95%CI:1.01~1.64)、アテゾリズマブを使用した場合にはVTEリスクに有意差はみられなかった(同:0.91、0.49~1.66)。・院内死亡リスクはICI併用群が有意に低かった(ハザード比:0.67、95%CI:0.62~0.74)。

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医療者が小学生に「がん教育」を行ううえでの“Tips”

 小学生向けの「がん教育」では、到達目標を“がんについて考える「きっかけづくり」”に置くことが大事だという。また「新聞作り」のようなアウトプット機会の提供も有用であるようだ。 今回は、がん教育のワークショップを例に、医療者が小学生にがん教育を行ううえでの、ヒントとなる内容を紹介する。 2023年8月5日、小学生親子向けの夏休み自由研究応援プログラム『がんと「未来」新聞づくり』ワークショップが、都内にて開催された(主催:武田薬品工業)。【クイズ形式や新聞作成で、対話を大切に】 本プログラムでは、クイズ形式や講演内容からの新聞作り、といったいくつかの工夫が見られた。 冒頭の「医師から学ぼう!がんのこと」と題した、渡邊 清高氏(帝京大学医学部内科学講座 腫瘍内科 病院教授)の講演も小学生向けに構成された平易なスライドに加え、クイズを交えた構成が印象的であった。「日本人の何人にひとりが一生のうち、がんになるでしょう?」「がん検診を受けるタイミングは?」「この中でがんの原因にならないものは?」などのクイズに回答しながら、子供たちは「がん」の知識を自然に得られる。 講演後の取材で渡邊氏は、医療者が小学生向けにがん教育を行う際は、つい正しい知識の伝達ばかりに重きを置きがちだが、一方通行の講義ではなく、子供にがんを知ってもらう「きっかけ」を提供する意識が大事だ、と述べた。子供たちの意見を聞きながら、対話形式で取り組むことが望ましく、可能であれば医師だけでなく、患者さん側の体験を共有する機会を設けると、より身近にがんを意識させることができるという。 なお、必ずしも患者さん側からの講演である必要はなく、医師が患者さんと接した際のエピソードの紹介、といった医師の経験談の共有も有用だという。【軍手を使った、化学療法による副作用体験】 今回は実際に、「がん体験者のお話を聞こう」という形で、桜井 なおみ氏(一般社団法人CSRプロジェクト代表理事)の体験が語られた。演台での講義スタイルではなく、会場を歩きながら子供に語りかけるように話す姿が印象的であった。 講演内では、抗がん剤服用で生じる末梢神経障害などの身体変化を体感してもらう目的で、参加者に軍手をはめてもらい、「ペットボトルを開ける」、「お箸を使って物を運ぶ」、「紙をめくる」、などの作業に挑戦してもらい、その感想を聞いた。 「紙がめくれないとイライラする」と述べる子供に、桜井氏は「もし自分のまわりの人が困っていたら、どんなサポートをしてあげたいかな?」と問いかけた。会場からは「ゆっくりでいいよ、と声をかける」「ドアを開けておいてあげる」 といった意見が挙がったのち、桜井氏は「がん患者はいろいろなつまずきがある。そんなときに手を差し伸べてあげてほしい」と伝え、がん患者の困り事がまとまった参考ウェブサイト「生活の工夫カード」(国立がん研究センター 中央病院)を紹介した。 また、「がんだから仕方ない」と患者さんは思ってしまいがち、との桜井氏のコメントに対し、渡邊氏からは医療者として「何か困っていることはないですか?」とアプローチすることも大事だ、との意見も述べられた。 講演後に行われた新聞作りでは、時間を超過しても残って作業を継続する親子が多く、参加者が主体的にワークに取り組む様子が伺えた。【“新聞作り”というアウトプットで学びを深める】 本プログラムを主催した武田薬品工業の馬目氏(日本オンコロジー事業部 ペイシェントアドボカシー&コミュニケーション部 課長代理)にも企画趣旨を取材した。 今回は、小学生にもわかりやすくがんをより身近に感じてもらう目的で、医師および患者さんの両者の視点から講演をしてもらい、子供たちに楽しみながら意見をアウトプットしてもらえる「新聞作り」という形式を考えたという。 学校がん教育の普及には、現在も都道府県での取り組みに差があることや、外部講師の成り手が少ないといった課題がある。武田薬品工業は、今年度初めて募集をかけ、がん教育プログラムを企画した。 本プログラム参加者は40人(家族16組)。事後アンケートでは「がん」に対する理解力の向上とともに「がん患者さんの気持ちを理解できて良かった、学んだことを身近な人に話したい、将来医師になりたい」という子供からのコメントや、保護者からも「親子で一緒に学び、考える時間を持つことができて良かった、患者さん目線で自分事として感じることができた」など多くの温かい感想が寄せられたようだ。 今回のような取り組みは、親子でのヘルスリテラシー向上にもつながると、期待される。

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「第28回日本緩和医療学会学術大会」が開催されました【非専門医のための緩和ケアTips】第57回

第57回 「第28回日本緩和医療学会学術大会」が開催されましたずいぶん暑くなってきました。6月30日(金)~7月1日(土)に、「第28回日本緩和医療学会学術大会」(緩和ケア学会)が神戸市で開催されました。発表だけでなく、緩和ケアを支える多くの方の学びの機会となるように、私の友人たちは、さまざまな発信をしています。今回は初夏の風物詩となっている緩和ケア学会の内容をご紹介します。今日の質問先日開催された緩和ケア学会に参加し、ほかの学会と違うユニークな雰囲気を感じました。緩和ケアの勉強も兼ねて、今後も参加しようと思います。地方会などもあるのでしょうか?今年の緩和ケア学会は私も現地参加し、いくつかのセッションに登壇させていただきました。今回の参加者は2日間で延べ8,000人を超えたということで、なかなか大きな学会です。質問のとおり緩和ケア学会は、ほかの学会と異なるユニークな雰囲気があります。私が思う特徴を少しご紹介させてください。看護師をはじめ、医師以外の参加者が多い緩和ケアの実践は多職種での連携が大切です。それを象徴するように学会にも医師だけでなく多くの職種が参加しています。とくに看護師の参加が多く、職種を超えてディスカッションできるのが刺激的です。人文学、社会学的なセッションが多い緩和ケアは人生の最終段階に関連した諸問題を考える領域であり、医学以外にも人間や社会のありようにも目を向ける必要があります。そうした観点から、医学以外のテーマ・演者のセッションも多数企画されています。YouTubeなどの豊富な発信日本緩和医療学会ではYouTubeの公式チャンネル1)があり、学会前には大会長や登壇者を招き、学会の見どころや企画に込めた思いを聞くなど、さまざまな動画を発信しています。配信時にリアルタイムで視聴すれば演者の先生に質問もできます。学会の情報だけでなく、緩和ケアの知識習得に役立つ多様な動画を配信しているので、ぜひチャンネル登録をしてください。ほかにもいろいろな特徴があるのですが、とくに印象的なポイントをご紹介しました。そして、「でも、学術大会って1年後ですよね」と思った方にも朗報です。日本緩和医療学会では各地域で支部会が開催されています。支部会の規模は小さいですが、その地域で緩和ケアを実践されている方が一堂に集まりますので、ネットワーキングには非常に有効です。支部学術大会はこちらのサイトから確認できます。ぜひ、皆さんの地域の支部学術大会をチェックしてみてください。今回のTips今回のTips次の日本緩和医療学会学術大会は2024年6月14日~15日に神戸市で開催予定! それまでに各地方で開催される支部会に参加してみましょう!1)日本緩和医療学会YouTubeチャンネル

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聞き流しOK!ASCO2023肺がんトピックスまとめ【DtoD ラヂオ ここが聞きたい!肺がん診療Up to Date】第2回

第2回:聞き流しOK!ASCO2023肺がんトピックスまとめパーソナリティ日本鋼管病院 呼吸器内科 部長 田中 希宇人 氏ゲスト聖マリアンナ医科大学 呼吸器内科 古屋 直樹 氏関連サイト専門医が厳選した、肺がん論文・ニュース「Doctors'Picks」(医師限定サイト)講師紹介

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1日3.4分の高強度の身体活動で、がんリスク17%減

 高強度の身体活動(Vigorous Physical Activity:VPA)は、がん予防のために推奨される身体活動(Physical Activity:PA)を達成するための効率のよい方法であるが、多くの人にとって継続のハードルが高い。「日常生活中の高強度の断続的な身体活動(Vigorous Intermittent Lifestyle Physical Activity:VILPA)」を継続することで、がん発症のリスクを大幅に低下させる可能性があることが、新たな研究で明らかになった。オーストラリア・シドニー大学のEmmanuel Stamatakis氏らによる本研究の結果は、JAMA Oncology誌オンライン版2023年7月27日号に掲載された。 オーストラリア、シドニー大学の研究者らは、英国バイオバンクで「普段運動をしていない」と申告した人を対象にウェアラブルデバイスのデータを収集し、その後6~7年間の健康記録を調べた。参加者は2021年10月30日(死亡および入院)、2021年6月30日(がん登録)まで追跡された。 主要アウトカムは、全がんおよびPA関連がん(低いPAと関連する13のがん部位の複合アウトカム)の発生率だった。ハザード比および95%信頼区間(CI)は、年齢、性別、教育レベル、喫煙、アルコール摂取、睡眠時間、果物および野菜の摂取、両親のがん既往等で調整して推定した。 VILPAの例としては、負荷が高い家事、スーパーでの買い物袋の持ち運び、早足のウォーキング、身体を動かすゲームなどがある。このような活動は一度に行うのではなく、数分ごとに行うことが特徴だ。 主な結果は以下のとおり。・登録された2万2,398例は、平均年齢62.0(SD:7.6)歳、男性1万122例(45.2%)だった。平均追跡期間6.7(SD:1.2)年に2,356例のがんイベントが発生し、うち1,084例がPA関連がんであった。・1日のVILPA持続時間中央値が1分まで(1日当たり4.5分)の場合、VILPAを行わない場合と比較して、全がんのHRは0.80(95%CI:0.69~0.92)、PA関連がんのHRは0.69(95%CI:0.55~0.86)であった。・全がん発生率との関連が認められたVILPAの最小量は1日当たり3.4分(HR:0.83、95%CI:0.73~0.93)、PA関連がんは1日当たり3.7分(HR:0.72、95%CI:0.59~0.88)であった。 最低3.4分のVILPAを毎日行うことで、行わない場合と比較して、全がん発生率の17%減少、1日4.5分で肺がん、腎臓がん、膀胱がん、胃がんなど、PAがんの発生率の31%減少につながることが示された。著者らは「運動ができない集団や意欲のない集団にとって、断続的な短い身体活動の継続が、がん予防の有望な介入になる可能性がある」としている。

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進行NSCLC、治療開始前に遺伝子検査結果があるとOS良好

 進行非小細胞肺がん(NSCLC)と診断された患者において、がん遺伝子検査が推奨されているが、1次治療開始前における遺伝子検査の結果の有無と全生存期間(OS)との関連は明らかになっていない。そこで、米国・ペンシルベニア大学のCharu Aggarwal氏らは、転移を有する非扁平上皮NSCLC患者を対象に、1次治療開始前における遺伝子パネル検査の結果の有無とOSとの関連を検討した。その結果、1次治療開始前に遺伝子パネル検査の結果が得られている患者はOSが良好であり、分子標的薬による治療を受けていない患者集団においても、同様の結果が得られた。本研究結果は、JCO Precision Oncology誌2023年7月27日号で報告された。 転移を有する非扁平上皮NSCLCと新たに診断された患者を対象に、電子カルテを用いた研究を実施した。対象患者を1次治療開始前に、遺伝子パネル検査の結果が得られた患者(検査結果あり群)と結果が得られなかった患者(検査結果なし群)に分け、OSを比較した。また、1次治療開始前における遺伝子パネル検査結果の有無について、組織検体と血漿検体を用いた場合と組織検体のみを用いた場合を比較した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者326例中、1次治療開始前に遺伝子パネル検査の結果が得られたのは80%(261例)、得られなかったのは20%(65例)であった。検査結果が得られなかった65例のうち、5例は遺伝子パネル検査を受けていなかった。・追跡期間中央値14.2ヵ月において、検査結果あり群は検査結果なし群と比較して、OSが有意に長かった(調整ハザード比:0.43、95%信頼区間[CI]:0.30~0.62、p<0.0001)。・分子標的薬による治療を受けていない患者集団においても、検査結果あり群は検査結果なし群と比較して、OSが有意に長かった(p<0.0001、log-rank検定)。・組織検体と血漿検体を用いて遺伝子検査を行った患者は、組織検体のみの患者と比較して、1次治療開始前に遺伝子パネル検査の結果が得られる割合が高かった(調整オッズ比:2.06、95%CI:1.09~3.90、p=0.026)。 本研究結果について、著者らは「1次治療を開始する前に、がんゲノムプロファイリングを完了すべきであることを示すものである」とまとめた。

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新たながんゲノムプロファイリングシステム「GenMineTOP」発売/コニカミノルタ

 コニカミノルタおよびグループ会社であるコニカミノルタREALMは8月1日のプレスリリースにて、GenMineTOPがんゲノムプロファイリングシステム(以下、本システム)の発売を発表した。同日より保険適用され、LSIメディエンスを通じ検査受託を開始している。 本システムは、2019年6月から開始した東京大学、国立がん研究センター研究所およびコニカミノルタの次世代がん遺伝子パネルに関する共同研究開発の成果であり、固形がん患者の腫瘍組織検体から抽出したDNAおよびRNA、ならびに同一患者由来の非腫瘍細胞(がん細胞ではない正常な細胞。本検査では血液を用いる)から抽出したDNAを用いて遺伝子変異情報(データ)を解析するプログラムとして、2022年7月13日に厚生労働省より製造販売承認を取得した。 本システムを用いた包括的ながんゲノムプロファイリング検査では、腫瘍組織由来の塩基配列および非腫瘍細胞由来の塩基配列とのペア解析を行うことにより、がんの診断や治療に関連する737のがん関連遺伝子(DNA)の変異(塩基置換、挿入/欠失、コピー数異常)の検出結果、RNAの変異(融合[455遺伝子]、エクソンスキッピング[5遺伝子])の検出結果およびRNAの発現量(27遺伝子)の情報の一括取得を行うことができる。本システムによる包括的ゲノムプロファイリング検査の出力結果は、固形がん患者の診断および治療方針決定の補助として用いられる。 なお、GenMineTOPがんゲノムプロファイリングシステムは専用のポータルシステム(GenMineTOPポータル)を用いて、検査の依頼から進捗の確認、報告書のダウンロードまでを一貫して行う。検査の受託にはポータルシステムの開設が必須となっている。

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日本人NSCLCへのICI、PPI使用者は化学療法の併用が必要か/京都府立医大ほか

 現在、PD-L1高発現の非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する初回治療の選択肢として、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)単剤療法、複合免疫療法が用いられている。しかし、その使い分けの方法は明らかになっていない。また、プロトンポンプ阻害薬(PPI)、抗菌薬の使用歴があるNSCLC患者は、ICI単剤療法の効果が減弱する可能性が指摘されている1,2)。そこで、京都府立医科大学大学院の河内 勇人氏らは、ペムブロリズマブ単剤療法、複合免疫療法の効果と各薬剤の使用歴の関係について検討した。その結果、PPIの使用歴がある患者は、複合免疫療法の効果がペムブロリズマブ単剤療法と比較して良好であった。一方、PPIの使用歴がない場合は、治療効果に有意差は認められなかった。本研究結果は、JAMA Network Open誌2023年7月11日号で報告された。 国内13施設において、初回治療としてペムブロリズマブ単剤療法(単剤療法群)またはペムブロリズマブと化学療法の併用療法(併用療法群)を受けたPD-L1高発現(TPS≧50%)のNSCLC患者425例を後ろ向きに追跡し、治療開始時の薬剤使用歴(PPI、抗菌薬、ステロイド)を含む患者背景と治療効果の関連を検討した。単剤療法群と併用療法群の比較は、傾向スコアマッチングにより背景因子を揃えて行った。 主な結果は以下のとおり。・単剤療法群は271例(年齢中央値[範囲]:72歳[43~90]、男性:215例)併用療法群は154例(同:69歳[36~86]、男性:121例)が対象となった。・多変量解析の結果、単剤療法群においてPPI使用歴は、無増悪生存期間(PFS)の短縮に有意な関連があった(ハザード比[HR]:1.38、95%信頼区間[CI]:1.00~1.91、p=0.048)。一方、併用療法群では関連が認められなかった(同:0.83、0.48~1.45)。・多変量解析において、単剤療法群と併用療法群のいずれも、抗菌薬使用歴やステロイド使用歴とPFSには有意な関連が認められなかった。・PPI使用歴のある患者集団において、PFS中央値は単独療法群が5.7ヵ月であったのに対し、併用療法群は19.3ヵ月であり、併用療法群は単独療法群と比較してPFSが有意に改善した(HR:0.38、95%CI:0.20~0.72、p=0.002)。・同様に、全生存期間(OS)中央値は単独療法群が18.4ヵ月であったのに対し、併用療法群は未到達であり、併用療法群は単独療法群と比較してOSが有意に改善した(HR:0.43、95%CI:0.20~0.92、p=0.03)。・PPI使用歴のない患者集団において、PFS中央値は単独療法群が10.6ヵ月であったのに対し、併用療法群は18.8ヵ月であったが、併用療法群と単独療法群に有意差は認められなかった(HR:0.81、95%CI:0.56~1.17、p=0.26)。・同様に、OS中央値は単独療法群が29.9ヵ月であったのに対し、併用療法群は未到達であったが、併用療法群と単独療法群に有意差は認められなかった(HR:0.75、95%CI:0.48~1.18、p=0.21)。 著者らは、「PPIの使用歴が、PD-L1高発現のNSCLCに対するペムブロリズマブ単剤療法と複合免疫療法の治療選択の予測因子として、有用であるであることが示唆された。すなわち、いずれの治療選択肢も選択可能な患者では、PPIの使用歴がある場合、複合免疫療法が推奨される治療法であると考えられた」とまとめた。

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未治療の早期NSCLC、定位放射線+ニボルマブが有効/Lancet

 未治療の早期非小細胞肺がん(NSCLC)およびリンパ節転移陰性の孤立性肺実質再発NSCLC患者の治療において、定位放射線治療(SABR)+ニボルマブの併用(I-SABR)はSABR単独と比較して、4年無イベント生存率が有意に優れ、毒性は忍容可能であることが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのJoe Y. Chang氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年7月18日号に掲載された。テキサス州3病院の無作為化第II相試験 本研究は、米国テキサス州の3つの病院で実施された非盲検無作為化第II相試験であり、2017年6月~2022年3月の期間に参加者の無作為化が行われた(Bristol-Myers SquibbとMDアンダーソンがんセンターの提携機関などの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、未治療の早期NSCLC(American Joint Committee on Cancer[AJCC]第8版の病期分類でStageI~II[N0M0])、または孤立性の肺実質再発NSCLC(根治手術または化学放射線療法の施行前にTanyNanyM0)で、全身状態が良好(ECOG PSスコア0~2)な患者であった。 被験者を、I-SABRまたはSABRを受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。I-SABR群では、ニボルマブ(480mg)を4週ごとに静脈内投与した。 主要評価項目は、4年無イベント生存率であった。イベントは、局所、領域、遠隔での再発、2次原発性肺がん、死亡とされた。PP集団とITT集団の双方で良好な結果 無作為化の対象となったのは156例(intention-to-treat[ITT]集団)で、割り付けた治療を実際に受けたのは141例(per-protocol[PP]集団)であった。PP集団では66例(年齢中央値72歳[四分位範囲[IQR]:66~75]、女性70%)がI-SABR群、75例(年齢中央値72歳[IQR:66~78]、女性55%)がSABR群だった。 フォローアップ期間中央値33ヵ月の時点でのPP集団における4年無イベント生存率は、SABR群が53%(95%信頼区間[CI]:42~67)であったのに対し、I-SABR群は77%(66~91)と有意に優れた(ハザード比[HR]:0.38、95%CI:0.19~0.75、p=0.0056)。また、ITT集団でも同様の結果が示された(HR:0.42、95%CI:0.22~0.80、p=0.0080)。 SABR群では、Grade2の有害事象を3例(4%)に認めたのみで、Grade3以上の有害事象は発現しなかった。一方、I-SABR群では、10例(15%)でニボルマブに関連するGrade3の免疫関連有害事象(疲労2例、甲状腺機能亢進症1例など)を認めたが、Grade3の肺臓炎はなく、Grade4以上の毒性の発現もなかった。 著者は、「SABRへの免疫療法の追加により、治療歴のない早期NSCLCおよび孤立性肺実質再発NSCLC患者の転帰が改善することが示唆され、I-SABRはこれらの患者における治療選択肢となる可能性がある。本試験の結果は、現在進行中の第III相試験の重要な先例となるだろう」としている。

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8月1日 肺の日【今日は何の日?】

【8月1日 肺の日】〔由来〕「は(8)い(1)」(肺)と読む語呂合わせから、肺の健康についての理解を深め、呼吸器疾患の早期発見と予防についての知識を普及・啓発することを目的に日本呼吸器学会が1999年に制定し、翌2000年から実施。学会では、肺の病気・治療について全国で一般市民を対象にした講座会や医療相談会を行っている。関連コンテンツ軽症の肺炎は入院適応ではないのか?【救急診療の基礎知識】電子タバコは紙巻きタバコの禁煙には役立たない【患者説明用スライド】抗菌薬の長期使用で肺がんリスクが増加肺炎の予防戦略、改訂中の肺炎診療GLを先取り/日本呼吸器学会軽症の肺炎は入院適応ではないのか?【救急診療の基礎知識】

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包括的がんゲノムプロファイリングリキッドバイオプシーGuardant360 CDx がん遺伝子パネル販売開始

 ガーダントヘルスジャパンは、固形がん患者を対象とした包括的がんゲノムプロファイリング(CGP)用リキッドバイオプシー Guardant360 CDx がん遺伝子パネルについて、2023年7月24日より保険償還が開始され、同日より販売すると発表した。併せて、エスアールエルによる検査の受託が開始される。 Guardant360 CDx がん遺伝子パネルは、血中循環腫瘍DNA (ctDNA) を次世代シークエンサーによって解析するがん遺伝子パネル検査として、2022年3月10日に厚生労働省より承認されている。固形がん患者の血液検体から、がんに関連の74遺伝子を網羅的に調べることが可能。 Guardant360 CDx がん遺伝子パネルは、また、下記のコンパニオン診断としても承認されている。・KRAS G12C:(非小細胞肺がん)ソトラシブ・MSI-High:(結腸・直腸がん)ニボルマブ・MSI-High:(固形がん)ペムブロリズマブ

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静脈血栓塞栓症の治療に難渋した肺がんの一例(前編)【見落とさない!がんの心毒性】第23回

※本症例は、患者さんのプライバシーに配慮し一部改変を加えております。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》年齢・性別30代・男性既往歴なし併存症健康診断で高血圧症、脂質異常症を指摘され経過観察喫煙歴なし現病歴発熱と咳嗽が出現し、かかりつけ医で吸入薬や経口ステロイド剤が処方されたが改善せず。腹痛が出現し、総合病院を紹介され受診した。胸部~骨盤部造影CTで右下葉に結節影と縦隔リンパ節腫大、肝臓に腫瘤影を認めた。肝生検の結果、原発性肺腺がんcT1cN3M1c(肝転移) stage IVB、ALK融合遺伝子陽性と診断した。右下肢の疼痛と浮腫があり下肢静脈エコーを実施したところ両側深部静脈血栓塞栓症(deep vein thrombosis:DVT)を認めた。肺がんに伴う咳嗽以外に呼吸器症状なし、胸部造影CTでも肺塞栓症(pulmonary embolism:PE)は認めなかった。体重65kg、肝・腎機能問題なし、血圧132/84 mmHg、脈拍数82回/min。肺がんに対する一次治療としてアレクチニブの投与を開始した。画像所見を図1に、採血データを表1に示す。(図1)中枢性DVT診断時の画像所見画像を拡大する(表1)診断時の血液検査所見画像を拡大する【問題1】DVTに対し、どのような治療が考えられるか?【問題2】筆者が本症例でがん関連血栓塞栓症のリスクとして注目した患者背景は何か?第24回(VTEの治療継続で生じた問題点とその対応)に続く。1)Dou F, et al. Thromb Res. 2020;186:36-41.2)Al-Samkari H, et al. J Thorac Oncol. 2020;15:1497-1506.3)Wang HY, et al. ESMO Open. 2022;7:100742.4)Qian X, et al. Front Oncol. 2021;11:680191.講師紹介

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心肺持久力が大腸がん・肺がん・前立腺がんの発症と死亡リスクに関連

 約18万人のスウェーデン人男性を平均9.6年間追跡調査したコホート研究の結果、心肺持久力(CRF)が高いと大腸がん罹患リスクが低く、また肺がんおよび前立腺がんによる死亡リスクが低いことが示された。この結果から、これらのがんの罹患リスクおよび死亡リスクの低減に、CRFが潜在的に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。スウェーデン・The Swedish School of Sport and Health SciencesのElin Ekblom-Bak氏らが、JAMA Network Open誌2023年6月29日号に報告。 本研究は、スウェーデンにおいて1982年10月~2019年12月に労働衛生健康プロファイル評価を完了した男性を対象とした前向きコホート研究。CRFは最大下サイクルエルゴメーター試験を用いて推定した最大酸素消費量(mL/分/kg)として評価した。また、がんの罹患率および死亡率のデータは全国登録から取得した。ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)はCox比例ハザード回帰を用いて算出した。さらにCRFを4群(非常に低い:25以下、低:25~35、中等度:35~45、高:45超)に層別化し、非常に低い群を基準としてHRと95%CIを算出した。 主な結果は以下のとおり。・男性17万7,709人(年齢:平均42歳[範囲:18~75歳]、BMI:平均26、平均追跡期間:9.6年)のデータを解析した。・罹患リスクは、CRFが高いほど、大腸がん(HR:0.98、95%CI:0.96~0.98)および肺がん(HR:0.98、95%CI:0.96~0.99)では有意に低く、前立腺がん(HR:1.01、95%CI:1.00~1.01)では高かった。・死亡リスクは、CRFが高いほど、大腸がん(HR:0.98、95%CI:0.96~1.00)、肺がん(HR:0.97、95%CI:0.95~0.99)、前立腺がん(HR:0.95、95%CI:0.93~0.97)ともに低かった。・4群に層別化し完全調整した場合、大腸がん罹患率については、非常に低いCRFに比べ、中等度CRFでのHRが0.72(95%CI:0.53~0.96)、高CRFでのHRが0.63(95%CI:0.41~0.98)と関連が残った。前立腺がん死亡率については、低CRF(HR:0.67、95%CI:0.45~1.00)、中等度CRF(HR:0.57、95%CI:0.34~0.97)、高CRF(HR:0.29、95%CI:0.10~0.86)で関連が残った。肺がん死亡率では、高CRF(HR:0.41、95%CI:0.17~0.99)で有意であった。

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