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「CGP検査で肺がんの治療法が見つからない」は誤解?/日本肺癌学会

 肺がん遺伝子検査は、「コンパニオン診断→標準治療→CGP検査(遺伝子パネル検査)」という流れで行われる。CGP検査は、標準治療が終了あるいは終了見込みとなった段階で保険診療での使用が可能とされている。しかし、CGP検査が受けられる病院が限られていたり、保険適用となるのは生涯で1回のみということもあったりすることから、肺がん患者においては十分に普及しているとは言い難い。そこで、近畿大学病院における肺がん患者のCGP検査の実態が調査された。その結果、非小細胞肺がん(NSCLC)患者では、想定以上にCGP検査後に遺伝子検査結果に基づく次治療へ到達していたことが明らかになった。高濱 隆幸氏(近畿大学医学部腫瘍内科/近畿大学病院ゲノム医療センター)が、本研究の詳細を第64回日本肺癌学会学術集会で報告した。CGP検査でNSCLC患者の約2割が次治療に到達 高濱氏らの研究グループは、2019~22年に近畿大学病院において保険診療でCGP検査を受けた肺がん患者100例(NSCLC 76例[腺がん58例、扁平上皮がん10例、大細胞神経内分泌がん3例、その他5例]、小細胞肺がん[SCLC]24例)を対象として、CGP検査の実態を調査した。CGP検査の検体は92%の患者が組織検体を利用しており、そのうち70%は生検検体であった。 調査の結果、NSCLC患者の17%(13/76例)はCGP検査後にエキスパートパネル推奨に基づく次治療へ到達していた。13例の治療薬の内訳は、承認薬5例、治験薬7例、患者申出療養1例であった。SCLC患者では、次治療へ到達した患者はいなかった。 また、CGP検査でドライバー遺伝子変異が認められた患者のうち、10%以上の患者は次治療に到達できなかった。主な理由は、PS不良、治験の適格基準不適合、患者の意思(治験施設が遠方で不可など)であった。 がんゲノム情報管理センター(C-CAT)の調査では、CGP検査後に次治療へ到達した患者の割合は9.4%(エキスパートパネル推奨に基づく治療薬の提示は44.5%)と報告されている1)。これらのことから、高濱氏は今回の結果について、単施設での調査という限界は存在するものの、NSCLC患者において想定よりも高い割合でCGP検査が次治療に結びついたのではないかとまとめた。CGP検査をどのように活用すべきか? 肺がんCGP検査は組織型を限定するべきであろうか? これについて、今回の調査で扁平上皮がんや大細胞神経内分泌がんでも次治療に到達した患者がいたこと、生検検体と手術検体では組織型が一致しない場合があること2)、西日本がん研究機構(WJOG)の調査(REVEAL試験)では非腺がんの8.5%にドライバー遺伝子変異を認めたことを例に挙げ、NSCLCについては腺がんだけでなく、非腺がんでもCGP検査の実施を検討する余地があると述べた。 また、マルチコンパニオン診断でドライバー遺伝子変異が認められた患者にCGP検査を行う意義はあるのか、考察されていた。分子標的薬に対する耐性変異の発見に有用な場合があること、コンパニオン診断では報告対象外のバリアントがCGP検査で発見されて次治療につながる可能性があることを高濱氏は指摘した。 とくに、EGFR遺伝子については、マルチ遺伝子検査で検出ができないがCGP検査で検出できるバリアントが多く存在する。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)でも、uncommon変異に対するアファチニブの有用性が報告されており(ACHILLES/TORG1834試験)3)、uncommon変異の検出も今後は重要となっていくものと思われる。CGP検査をいつ、誰に実施すべきか? 最後に、高濱氏はCGP検査をすべき患者と実施タイミングについて以下のとおりまとめた。<対象>・とくに腺がん、ドライバー遺伝子変異がみつかっていない患者・長期生存の患者(過去のバイオマーカー検査が不十分な可能性がある患者)・初回生検検体が不足していた患者、IHCでの検体が不十分な患者、腫瘍マーカーで腺がんの要素が考えられる患者は、非腺がんでも考慮<タイミング>・NGS検査が可能なクオリティー・量の生検検体を最初に採取し、CGP検査が出せるようにしておく・CGP検査には時間がかかるため、1次治療開始時から相談を開始し、標準治療終了「見込み」の時点で検査をオーダーする・がんゲノム医療が提供できる病院以外で治療を受けている患者は、CGP検査が受けられる病院への紹介が必要となるため、早くから主治医の先生と相談していくことが重要。

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EGFR陽性NSCLCの1次治療、オシメルチニブ+化学療法は日本人でもPFS改善(FLAURA2)/日本肺癌学会

 EGFR遺伝子変異陽性の進行・転移非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療として、第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬のオシメルチニブと化学療法の併用療法は、オシメルチニブ単剤と比べて無増悪生存期間(PFS)を改善することが、国際共同第III相無作為化比較試験FLAURA2試験で報告されている(治験担当医師評価に基づくPFS中央値は併用群25.5ヵ月、単独群16.7ヵ月、ハザード比[HR]:0.62、95%CI:0.49~0.79)1)。本試験の日本人集団の結果について、小林 国彦氏(埼玉医科大学国際医療センター)が第64回日本肺癌学会学術集会で発表した。試験デザイン:対象:EGFR遺伝子変異陽性(exon19欠失/L858R)のStageIIIB、IIIC、IVの未治療NSCLC成人患者557例(日本人94例)試験群:オシメルチニブ(80mg/日)+化学療法(ペメトレキセド[500mg/m2]+シスプラチン[75mg/m2]またはカルボプラチン[AUC 5]を3週ごと4サイクル)→オシメルチニブ(80mg/日)+ペメトレキセド(500mg/m2)を3週ごと(併用群、279例[日本人47例])対照群:オシメルチニブ(80mg/日)(単独群、278例[日本人47例※])評価項目:[主要評価項目]RECIST 1.1を用いた治験担当医師評価に基づくPFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率など※:1例は治療開始前に死亡 日本人集団における主な結果は以下のとおり。・日本人集団の患者背景は、併用群でEGFR遺伝子L858R変異が多かったが(併用群51%、単独群34%)、それ以外は両群で同様であった。日本人集団はPS 0が多く(全体集団はいずれの群も37%であったのに対し、日本人集団はそれぞれ53%、43%)、腫瘍径が小さかった(平均値は全体集団がそれぞれ65mm、64mmであったのに対し、日本人集団はそれぞれ48mm、51mm)。・治験担当医師評価に基づくPFS中央値は、併用群が24.8ヵ月、単独群が16.4ヵ月であった(HR:0.49、95%CI:0.28~0.86)。・OSはデータカットオフ時点で未成熟(成熟度:29%)であった。参考値ではあるが、データカットオフ時点のOS中央値は、併用群が31.9ヵ月、単独群が未到達であった(HR:0.70、95%CI:0.32~1.54)。・奏効率は、併用群が87%(CRは0例)、単独群が72%(CRは0例)で、奏効期間中央値は、それぞれ23.3ヵ月、13.8ヵ月であった。・Grade3以上の有害事象は併用群に多く発現したが(併用群47%、単独群13%)、治療関連死はいずれの群においても認められなかった。 また、全体集団におけるベースライン時の脳転移の有無別、EGFR遺伝子変異の種類別にみた治験担当医師評価に基づくPFSの結果も報告された。PFS中央値およびHR、95%CIは以下のとおり。・脳転移あり集団:併用群24.9ヵ月、単独群13.8ヵ月(HR:0.47、95%CI:0.33~0.66)。・脳転移なし集団:併用群27.6ヵ月、単独群21.0ヵ月(同:0.75、0.55~1.03)。・exon19欠失変異集団:併用群27.9ヵ月、単独群19.4ヵ月(同:0.60、0.44~0.83)。・L858R変異集団:併用群24.7ヵ月、単独群13.9ヵ月(同:0.63、0.44~0.90)。 本試験結果について、小林氏は「オシメルチニブ+プラチナ製剤+ペメトレキセドは、日本人においてもEGFR遺伝子変異陽性の進行NSCLCに対する1次治療の新たな選択肢となるだろう」とまとめた。

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EGFR陽性NSCLC、オシメルチニブ+化学療法で脳転移巣の病勢進行リスクを42%低下(FLAURA2)/AZ

 アストラゼネカは2023年11月1日付のプレスリリースにて、第III相FLAURA2試験の探索的解析において、オシメルチニブ(商品名:タグリッソ)と化学療法の併用療法はオシメルチニブ単剤療法と比較して、ベースライン時に脳転移を有していたEGFR遺伝子変異陽性の転移のある進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者(本臨床試験に参加した患者の40%)における中枢神経系(CNS)の無増悪生存期間(PFS)を42%改善したと発表した。本結果は、10月21日にスペイン・マドリードで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告された。<FLAURA2試験 探索的解析>・対象:EGFR遺伝子変異陽性(ex19del/L858R)のStageIIIB~IVの未治療NSCLC患者222例・試験群(化学療法併用群):オシメルチニブ80mg/日+化学療法(ペメトレキセド500mg/m2+シスプラチン75mg/m2またはカルボプラチンAUC 5[3週ごと4サイクル])→オシメルチニブ80mg/日+ペメトレキセド500mg/m2(3週ごと)118例・対照群(オシメルチニブ単剤療法群):オシメルチニブ80mg/日 104例・評価項目:[主要評価項目]PFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率など 主な結果は以下のとおり。・盲検下独立中央判定(BICR)の評価では、化学療法併用群は、オシメルチニブ単剤療法群と比較して、2年時点におけるCNSの病勢進行または死亡リスクが42%減少した(ハザード比[HR]:0.58、95%信頼区間[CI]:0.33~1.01)。・2年時点におけるCNSでの病勢進行または死亡が認められなかった患者の割合は、化学療法併用群では74%だったのに対し、オシメルチニブ単剤療法群では54%だった。・CNSでの完全奏効(CR)が認められた患者の割合は、化学療法併用群で59%、オシメルチニブ単剤療法群で43%だった。・化学療法併用群におけるオシメルチニブの安全性プロファイルは、おおむねコントロール可能だった。有害事象は化学療法併用群で発現率が高かったものの、既知のプロファイルと一貫していた。・オシメルチニブの投与中止に至った割合は、化学療法併用群では11%、オシメルチニブ単剤療法群では6%だった。 本試験の治験責任医師でGustave Roussy Institute of Oncologyの胸部腫瘍医David Planchard氏は、「オシメルチニブは血液脳関門を通過することができ、脳転移のない患者よりも予後不良となることが多い中枢神経系への転移を伴う肺がん患者の転帰を改善することが証明されている。FLAURA2試験では、オシメルチニブに化学療法を併用することで、中枢神経系への転移を伴う患者の半数以上でCRおよび脳内の腫瘍消失が認められた」と述べた。 また、AstraZeneca(英国)のオンコロジー研究開発エグゼクティブバイスプレジデントであるSusan Galbraith氏は、「今回の結果から、ベースライン時に脳転移を有していた患者にFLAURA2レジメンを用いたところ意義のある結果が認められ、脳にがんが転移した患者に希望をもたらした」とコメントした。

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ESMO2023 レポート 肺がん

レポーター紹介2023年のESMOはスペインのマドリードで開催されました。昨年・一昨年以上に参加人数が多かったようで、ポストコロナ時代の学会として大変盛況でした。さて、肺がん領域においてはPractice Changeにつながる可能性の高い重要な演題が多く発表されました。とくに、ここ2年間で劇的に進歩した肺がん周術期治療やEGFR・RETなどのdriver mutation陽性の進行例に対する新たな知見が複数報告されております。今回はその中から、7つの演題を取り上げ概括したいと思います。CheckMate77T試験切除可能なIIA~IIIB(N2)期の非小細胞肺がんを対象として、術前の化学療法を標準治療として、術前のニボルマブ+化学療法および術後のニボルマブ療法の優越性を検証した無作為化比較第III相試験である。CheckMate816試験を基に現在保険承認されている術前のニボルマブ+化学療法に術後1年間のニボルマブ療法を加えた、いわゆるサンドイッチレジメンである。主要評価項目は中央判定での無イベント生存期間(EFS)で、副次評価項目は中央判定での病理学的完全奏効(pCR)、中央判定での病理学的奏効(MPR)、全生存期間(OS)、安全性プロファイルが設定されていた。患者背景として、病期やPD-L1発現などはCheckMate816試験と同様であった。主要評価項目の結果としては、CheckMate816試験やほかのサンドイッチレジメンと同様にEFSを有意に延長し(ハザード比:0.58、95%信頼区間[CI]:0.42~0.81)、副次評価項目であるpCRやMPRも化学療法と比較して有意に良好であった(pCR:25.3% vs.4.7%、MPR:35.4% vs.12.1%)。EFSのサブ解析を見ても、おおむねどの集団においてもニボルマブ併用群で良好な結果であった。また、ほかのサンドイッチレジメンと同様にpCRやMPR別でのEFSの解析も行われ、こちらも今までと同様にpCRやMPRの有無でEFSに大きな差が認められた。安全性のデータも報告されたが、目新しい有害事象(AE)の報告はなく、過去の周術期ICIのレジメンと同様であった。本レジメンも将来的に保険承認されると予想されるが、ほかのペムブロリズマブやデュルバルマブなどのサンドイッチレジメンとの差別化が図れるようなデータは今回の報告からは見られなかった。ALINA試験本年のASCOで、EGFR遺伝子変異陽性肺がん完全切除例に対するオシメルチニブによる術後補助療法が、プラセボと比較してOSを有意に延長したことが大きな話題となったが、ESMOではALK遺伝子転座陽性非小細胞肺がんに対するアレクチニブの術後補助療法の有効性が報告された。UICC-7版でのIB~IIIA期のALK陽性非小細胞肺がんが対象で、標準治療であるプラチナ併用化学療法による補助療法に対するアレクチニブを2年間内服する術後補助療法の有効性を検証する無作為化比較第III 相試験である。主要評価項目は無病生存期間(DFS)で、副次評価項目はCNSのDFS、OS、安全性であった。主要評価項目はII~IIIA期で評価された後、ITT集団を対象として階層的に評価されるデザインであった。257例が登録されており、アジア人が約半数でIIIA期が約半数登録された試験であった。主要評価項目であるII~IIIA期DFSは、標準治療と比較してアレクチニブ群のハザード比は0.24(95% CI:0.13~0.45)であり、ITT集団を対象とした解析でもハザード比は0.24(95% CI:0.13~0.43)と、ともに主要評価項目を達成した。サブ解析でもほぼすべての集団でアレクチニブ群のDFSが良好であった。副次評価項目の1つであるCNSのDFSも、アレクチニブ群は標準治療と比較してハザード比は0.22(95%CI:0.08~0.58)と良好であった。再発後の治療はアレクチニブ群の約半数、標準治療群では約75%でALK-TKIが投与されており、今回の発表のデータカットオフ時点ではOSのイベントはわずか6例しか認められなかった。安全性は、Grade3以上は30%で治療関連の死亡は認められなかった。主なAEは、CPK上昇(約40%)、便秘(約40%)、AST上昇・ALT上昇(約40%前後)と、過去のALEX試験やJ-ALEX試験と同様のプロファイルであった。今回、DFSの良好な結果が報告されたが、オシメルチニブと同様にOSの延長にも寄与するかが今後期待される。ただ、ALK陽性肺がんの予後を考えると、数年後まで結果は出てこない可能性が高い。今回の結果からは、今後バイオマーカーの結果によって周術期治療戦略も進行期と同様に細分化されると考えられる。MARIPOSA試験EGFR遺伝子変異陽性の進行・再発非小細胞肺がんに対する1次治療として確立しているオシメルチニブを標準治療とした、無作為化比較第III相試験である。試験治療群はEGFRとMETの二重特異性抗体であるamivantamabと第3世代EGFR-TKIであるlazertinibの2剤併用療法もしくはlazertinib単剤の3群の比較試験で、主要評価項目はamivantamab・lazertinib併用療法のオシメルチニブに対する中央判定によるPFSであった。 1,074例が登録され、amivantamab・lazertinib併用療法、オシメルチニブ療法、lazertinib療法に、それぞれ2:2:1に割り付けられた。EGFR変異の種別はExon19欠失が60%でL858R点変異が40%、約40%が脳転移を有していた。主要評価項目のPFSはamivantamab・lazertinib併用群で中央値23.7ヵ月、オシメルチニブ群で中央値16.6ヵ月、ハザード比0.70(95%CI:0.58~0.85)と、amivantamab・lazertinib併用群のオシメルチニブに対するPFS延長効果が証明され、主要評価項目を達成した。サブ解析では、おおむねどの集団においてもamivantamab・lazertinib併用群で良好な結果であったが、65歳以上の集団ではハザード比1.06であった。奏効率(ORR)は併用群およびオシメルチニブ群ともに約85%で、OSは今回の中間解析時点では2年時点で5%約の差(75% vs.69%)で併用群が良好であった。有効性について有望な結果が得られたamivantamab・lazertinib併用群であったが、AEが強く発現する点に注意する必要がある。Grade3以上のAEは75%で、皮膚障害・粘膜障害についてもGrade3以上がamivantamab・lazertinib併用群で強く発現していた。さらに特筆すべきは静脈血栓症(VTE)で、オシメルチニブ群の9%と比較して併用群では37%と高く、発症時期は中央値で84日と比較的早期に発症することが特徴である。現在実施されているamivantamab・lazertinib併用の治験では、治療開始後4ヵ月間は予防的抗凝固療法が推奨されているとのことであった。今回、オシメルチニブに対するPFS延長を示したamivantamab・lazertinib併用療法であるが、AEが強く発現する点から、個人的には今後オシメルチニブに完全に置き換わるよりは、使い分けが重要となってくると予想する。MARIPOSA-2試験先述したMARIPOSA試験と同じセッションで発表された本試験は、オシメルチニブに対して病勢増悪を来したEGFR遺伝子変異陽性例を対象として、カルボプラチン+ペメトレキセドによる化学療法を標準治療として、amivantamab+lazertinib+化学療法の4剤併用療法もしくはamivantamab+化学療法の3剤併用療法の3群に割り付ける無作為化比較第III相試験で、657例が登録された。主要評価項目は中央判定による4剤併用療法と化学療法を比較するPFSと、3剤併用療法と化学療法を比較したPFSである。登録前のオシメルチニブは、70%が1次治療、30%が2次治療で投与されていた。主要評価項目のPFSの結果は、4剤併用療法群の中央値が8.3ヵ月、3剤併用療法群の中央値が6.3ヵ月、化学療法群の中央値が4.2ヵ月で、それぞれハザード比が0.44(95%CI:0.35~0.56)、0.48(95%CI:0.36~0.64)と、4剤併用療法、3剤併用療法ともに化学療法に対する有意なPFS延長効果を証明した。サブ解析においても、すべての集団でPFSは良好な結果であった。ORRは両群63%程度(化学療法は36%)で頭蓋内のPFSも両群とも良好であった(4剤併用:12.8ヵ月、3剤併用:12.5ヵ月、化学療法:8.3ヵ月)。AEは先述したMARIPOSA試験同様に注意すべき点である。とくにlazertinibを加えた4剤併用療法では、Grade3以上のAEは92%、治療関連死亡は5%に認めた。3剤併用療法はGrade3以上のAEが72%であった。なかでも好中球減少や血小板減少などの血球減少は多く見られ、吐き気や倦怠感、食欲不振といった自覚症状として出てくるAEも4剤併用療法や3剤併用療法で多く認められた。血球減少が多く見られたことから、4剤併用療法のレジメンが見直され、lazertinibはカルボプラチン終了後に開始となるレジメンにmodifyされた。この修正後のレジメンの有効性・安全性データは今後評価予定となっている。今回、オシメルチニブ後の治療として有望な結果が得られたが、効果と安全性のバランスを考えると3剤併用療法がより使いやすい印象はある。先述したMARIPOSA試験と併せて、EGFR遺伝子変異陽性の最適な治療シークエンスが今後検討されることであろう。LIBRETTO-431試験本試験は肺腺がんの1~2%に認められるRET融合遺伝子陽性の非扁平上皮非小細胞肺がんを対象として、RET阻害薬であるセルペルカチニブを試験治療として、カルボプラチン+ペメトレキセド(+ペムブロリズマブ:investigator choice)療法を標準治療とした無作為化比較第III相試験である。標準治療群に割り付けられても病勢増悪後にセルペルカチニブにクロスオーバーが可能な試験である。主要評価項目は中央判定によるPFSであった。PFSはITT集団とITT-pembrolizumab(ITT-P)集団という2つの対象で評価された。261例が2:1に割り付けられた。約20%に脳転移を認め、40%強がPD-L1発現を認めた。主要評価項目であるPFSはITT-P集団でハザード比0.465(95%CI:0.309~0.699)、ITT集団で0.482(95%CI:0.331~0.700)と、規定された2つの集団でセルペルカチニブのPFSの有意な延長効果が証明された。サブ解析ではPD-L1陰性例よりも陽性例で良好な結果であった。セルペルカチニブのORRは83.7%(標準治療群:65.1%)、頭蓋内のORRも82.4%(標準治療群:58.3%)と、ともに良好な結果であった。CNS転移の累積発生率で見ても、12ヵ月時点で標準治療群が約20%であるのに対して、セルペルカチニブ群は5.5%とCNS転移をしっかりと抑えていることが示された。AEについては、セルペルカチニブの承認の元になった第I/II相試験であるLIBRETTO-001試験と同様のプロファイルであった。Grade3以上のAEは約70%に認められ、頻度の高いAEはAST上昇(Grade3以上13%)、ALT上昇(Grade3以上22%)、高血圧(Grade3以20%)、下痢(Grade3以上:1%)であった。約80%の症例でセルペルカチニブの用量変更が必要であったことも特筆すべきことである。今回の第III試験の報告で、RET融合遺伝子陽性例の1次治療としてセルペルカチニブは確立したものとなったと考える。本試験の結果は発表と同時にNew England Journal of Medicine誌にpublishされたことも報告された。TROPION-Lung01試験既治療の進行・再発非小細胞肺がんを対象として、ドセタキセル療法を標準治療としたdatopotamab deruxtecan(Dato-DXd)の優越性を検証する無作為化比較第III相試験である。Dato-DXdはTROP2を標的とした抗体薬物複合体である。EGFRやALKなどのdriver mutationを有する症例について、標的治療およびプラチナ併用化学療法(+ICI)の治療を終えた症例であれば組み込むことは可能であった。主要評価項目は中央判定によるPFSとOSであった。604例が1:1に割り付けられ、非扁平上皮がんが約80%、EGFR遺伝子変異陽性例は約15%登録されていた。主要評価項目のPFSはDato-DXd群で中央値が4.4ヵ月、ドセタキセル群で中央値が3.7ヵ月、ハザード比は0.75(95%CI:0.62~0.91)とDato-DXdの有意なPFS延長効果が示された。ORRはDato-DXd群は26.4%、ドセタキセル群では12.8%と、こちらもDato-DXd群で良好であった。PFSのサブ解析で特筆すべきは組織型での差であった。非扁平上皮がんではDato-DXd群のハザード比が0.63であったのに対して、扁平上皮がんでは1.38と組織型でDato-DXd療法の有効性が異なることが示唆された。今回の中間解析時点でのOSはDato-DXd vs.ドセタキセルで0.90(95%CI:0.72~1.13)であり、今後のフォローアップデータが待たれるところである。治療期間の中央値はDato-DXdが4.2ヵ月、ドセタキセルは2.8ヵ月であった。Dato-DXdのAEについて、Grade3以上のAEは25%、減量を要した症例の割合は20%と、どちらもドセタキセルと比較して低い傾向にあった。頻度の多いAEは口内炎(47%)、吐き気(34%)、脱毛(32%)であった。またDato-DXdに特徴的なAEとしてドライアイや流涙などの眼関連のAEが19%に発生した。また、ILDは8%で、7例(2%)にILDによる治療関連死亡が発生したことも注意すべきAEとして取り上げたい。これらの結果から、既治療の非扁平上皮がんに対してDato-DXdが重要な治療選択肢になりうると結論付けられた。ACHILLES/TORG1834試験最後に、本邦からの重要な第III相試験の報告を紹介する。TORGを中心に全国の臨床試験グループが参加して行われたインターグループスタディであるACHILLES試験の結果が、新潟県立がんセンター新潟病院の三浦 理氏より報告された。本試験は、EGFR遺伝子変異の中でExon19欠失もしくはL858R点変異を除く、いわゆるuncommon変異を有する未治療例を対象として、標準治療をプラチナ+ペメトレキセド、試験治療をアファチニブとして、PFSを主要評価項目に設定した無作為化比較試験である。109例が登録され、標準治療群とアファチニブ群に1:2に割り付けられた。変異の種類としてはG719Xが約40%と最も多く、L861Qが約18%であった。複数のuncommon変異を同時に有するcompound変異は約30%であった。ベースの脳転移は約30%に認めた。主要評価項目のPFSはアファチニブ群の中央値が10.6ヵ月、標準治療群では5.7ヵ月で、ハザード比は0.422(95%CI:0.256~0.694)であり、アファチニブの有意なPFS延長効果が示された。ORRはアファチニブで61.4%、標準治療で47.1%とアファチニブで良好であった。安全性は過去のLUX-Lung試験と同様のプロファイルであった。uncommon変異に対する初めての第III相試験であり、OSの結果が待たれるところであるが、同対象への標準治療としてアファチニブの地位はほかのEGFR-TKIよりリードしたものと考える。終わりに今回のESMOでは、取り上げた演題以外にもMini Oralやポスター発表で非常に興味深い発表が多かったです。今回のレポートが、多くの先生の臨床にお役に立てれば幸いです。

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ESMO2023 レポート 消化器がん

レポーター紹介本年、スペインのマドリードで欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)が、現地時間10月20日~24日にハイブリッド開催で行われた。日本の先生からの演題も多数報告されていたが、今回は消化器がんの注目演題について、いくつか取り上げていきたい。胃がん周術期の免疫チェックポイント阻害薬#LBA74Pembrolizumab plus chemotherapy vs chemotherapy as neoadjuvant and adjuvant therapy in locally-advanced gastric and gastroesophageal junction cancer:The Phase III KEYNOTE-585 study本試験は、T3以上の深達度もしくはリンパ節転移陽性と診断を受けた胃がんもしくは食道胃接合部がんに対する周術期治療として、術前・術後に化学療法+プラセボを3コースずつ行った後にプラセボを3週ごと11コース行う標準治療群と、術前・術後に化学療法+ペムブロリズマブ併用を3コースずつ行った後にペムブロリズマブを3週ごと11コース行う試験治療群を比較するランダム化二重盲検第III相試験である。国立がん研究センター東病院の設楽 紘平先生により結果が報告された。化学療法は、カペシタビン+シスプラチンまたは5-FU+シスプラチンを用いたメインコホートとFLOT療法を用いるFLOTコホートがあり、主要評価項目は全体の病理学的完全奏効(pCR)と無イベント生存期間(EFS)、メインコホートの全生存期間(OS)、FLOTコホートの安全性であった。全体で1,254例が登録され、メインコホートのペムブロリズマブ群402例とプラセボ群402例、FLOTコホートのペムブロリズマブ群100例とプラセボ群103例が登録された。メインコホートではアジアから約50%が登録され、PD-L1のCPS1以上は約75%、MSI-Hが約10%、StageIIIが約75%およびカペシタビン+シスプラチンが約75%であった。メインコホートのpCR率は、ペムブロリズマブ群の12.9%に対しプラセボ群では2.0%と、有意にペムブロリズマブ群で良好であった(p<0.0001)。pCR率のサブグループ解析では、PD-L1のCPS1未満でペムブロリズマブ群のpCR改善率が悪い傾向があり(4.2%の上乗せ)、MSI-H群ではペムブロリズマブ群のpCR率が有意に高かった(37.1%の上乗せ)。EFS中央値はペムブロリズマブ群で44.4ヵ月、プラセボ群で25.3ヵ月であり、事前に設定された統計設定を達成できなかった(HR:0.81、p=0.0198)。OS中央値はペムブロリズマブ群で60.7ヵ月、プラセボ群で58.0ヵ月であった(HR:0.90)。メインコホート+FLOTコホートにおける解析では、EFS中央値がペムブロリズマブ群で45.8ヵ月、プラセボ群で25.7ヵ月(HR:0.81)、OS中央値はペムブロリズマブ群で60.7ヵ月、プラセボ群で58.0ヵ月であった(HR:0.93)。重篤な毒性は全体では両群に有意差はなく、Grade3~4の免疫関連有害事象とインフュージョン・リアクションはペムブロリズマブ群で多い傾向があった。#LBA73Pathological complete response (pCR) to durvalumab plus 5-fluorouracil, leucovorin, oxaliplatin and docetaxel (FLOT) in resectable gastric and gastroesophageal junction cancer (GC/GEJC): interim results of the global, phase III MATTERHORN study本試験は、StageII、IIIおよびIVAの診断を受けた胃がんもしくは食道胃接合部がんに対する周術期治療として、FLOT+プラセボ療法4コース後に手術を行い、術後FLOT+プラセボ4コース施行後プラセボを4週ごと10サイクル追加する標準治療群に対し、術前および術後のFLOT療法に対するデュルバルマブを上乗せし、終了後デュルバルマブを4週ごと行う試験治療群の優越性を検証したランダム化二重盲検第III相試験である。主要評価項目はEFS、副次評価項目は中央判定のpCR率、OSであり、今回は副次評価項目であるpCR率が報告された。日本を含む20ヵ国から948例が登録され、474例がFLOT+デュルバルマブ群に、474例がFLOT+プラセボ群に登録された。デュルバルマブ群では91%で手術が行われ、87%が切除を完遂し86%が術後化学療法を施行、プラセボ群では91%で手術が行われ、85%が切除を完遂し86%が術後化学療法を施行された。患者背景は両群で偏りがなく、胃がんが約70%で食道胃接合部がんは約30%、T1~2/T3/T4が約10%/約65%/約25%、臨床的リンパ節転移陽性が約70%、病理はdiffuse typeが約20%、PD-L1発現(腫瘍における発現)は≦1%が約90%であった。副次評価項目である中央判定pCR率はデュルバルマブ群で19%、プラセボ群で7%と12%の上乗せとなり、統計学的有意差を認めた(オッズ比[OR]:3.08、95%信頼区間[CI]:2.03~4.67、p<0.00001)。pCRとnear pCRを合わせた改善率はデュルバルマブ群で27%、プラセボ群で14%と、13%の上乗せがあり、統計学的に有意な改善を認めた(OR:2.19、95%CI:1.58~3.04、p<0.00001)。サブグループ解析では全体にデュルバルマブ群で良好であったが、PD-L1発現1%未満の群ではpCR率の差が少ない傾向にあった。手術の完遂率・R0切除率・術式・リンパ節郭清の割合は両群で差がなかった。安全性に関しては両群とも新規の有害事象(AE)は認められなかった。周術期のFLOT療法にアテゾリズマブの上乗せを検証するDANTE試験がASCO2022で、中国で行われた周術期capeOX/SOXにtoripalimabの上乗せを検証する試験がASCO2023で報告され、tumor regression grade rate(TRG rate)という病理学的効果を見る指標が改善する可能性が示唆されている。今回、2つの周術期の大規模第III相試験が報告され、術前治療における免疫チェックポイント阻害薬の併用はpCR率を改善することが報告された。しかし、KEYNOTE-585試験では、ほかの主要評価項目であるEFSは統計学的に改善せず、OSもほぼ同等であった。今まで大規模第III相試験で、免疫チェックポイント阻害薬の追加でEFSやOSを改善した報告はなく、胃がん周術期の免疫チェックポイント阻害薬が予後を改善するかはまだ明らかではない。MATTERHORN試験の今後の解析や他研究を含め、PD-L1やMSIを含む、さらなるバイオマーカー研究が待たれる。HER2陽性進行胃がん1次治療へのペムブロリズマブ#1511OPembrolizumab plus trastuzumab and chemotherapy for HER2+ metastatic gastric or gastroesophageal junction (mG/GEJ) adenocarcinoma: Survival results from the phase III, randomized, double-blind, placebo-controlled KEYNOTE-811 studyKEYNOTE-811試験はHER2陽性の切除不能進行胃がんを対象に、標準治療である化学療法+トラスツズマブに対するペムブロリズマブの上乗せを検証する、プラセボ対照ランダム化二重盲検第III相試験である。2021年9月に副次評価項目の1つである奏効率(ORR)に関する報告がNature誌に掲載され、標準治療群の51.9%に対してペムブロリズマブの併用で74.4%と、22.5%の上乗せと統計学的有意差を認めていた。今回、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)とOSについて第3回中間解析(追跡期間中央値:38.5ヵ月)の報告がなされた。698例が、ペムブロリズマブ群350例、ブラセボ群348例に割り付けられた。第2回中間解析における全体集団においてペムブロリズマブ群はプラセボ群に対してPFS(10.0ヵ月vs.8.1ヵ月)に有意な改善を認めた(HR:0.73、p=0.0002)。PD-L1が≦1の症例においては、さらなる改善傾向を認めた(10.9ヵ月vs.7.3ヵ月、HR:0.71)。第3回中間解析の結果が示され、全体集団におけるOSは20.0ヵ月vs.16.8ヵ月(HR:0.84)であったが、統計学的なp値は示されなかった。PD-L1≦1の症例においては、PFSと同様にOSも改善傾向を認めた(20.0ヵ月vs.15.7ヵ月、HR:0.81)。まだイベントが少なく、OSは追加解析中である。ORRは73% vs.60%でありペムブロリズマブ群で13%の上乗せを認めた。今回の検討で、OSは全体集団で統計学的有意な改善を示さなかった。しかし、ORRの改善や、PFSは全体集団で有意な改善を認め、OSもPD-L1≦1症例では良好な結果が報告された。しかし、Lancet誌で論文化された結果を見ると、第2回中間解析でOSの延長は統計学的有意差を示せなかった。またディスカッションで述べられていたが、PD-L1がCPS1未満では、逆にペムブロリズマブ群でOSが不良であったことが示されている。以上よりEUではPD-L1 CPS1以上においてのみペムブロリズマブ併用が承認され、米国FDAも同様の基準に承認が変更されている。本邦ではまだ保険適用外であるが、治療効果が高いレジメンであり、承認されればHER2陽性胃がんの1次治療が大きく変化する。今後、本邦での承認の可否や承認された場合の適応条件を含め注目される。MSI-H胃がん1次治療のイピリブマブ+ニボルマブ#1513MOA Phase II study of Nivolumab plus low dose Ipilimumab as 1st line therapy in patients with advanced gastric or esophago-gastric junction MSI-H tumor:First results of the NO LIMIT study (WJOG13320G/CA209-7W7)本研究は本邦で行われた、MSI-High切除不能進行再発胃がんに対する1次治療としてのイピリムマブ+ニボルマブ(Ipi/Nivo)の有効性と安全性を探索した単群第II相試験である。主要評価項目はORR、副次評価項目は病勢コントロール率(DCR)、PFS、OS、奏効期間(DOR)、安全性であり、今回、主要評価項目であるORRの結果が愛知県がんセンター薬物療法部の室 圭先生より報告された。スクリーニング試験であるWJOG13320GPS試験が並行して行われており、2020年11月~2022年8月の期間に国内75施設から進行胃がん935例がスクリーニングされた。そのうちMSI-Highと診断された症例のうち29例が本試験に登録された。3例が完全奏効、15例が部分奏効を達成し、ORRは62.1%(95%CI:42.3~79.3)で事前の統計学的設定に達し、主要評価項目を達成した。DCRは79.3%、追跡期間中央値9.0ヵ月時点のPFS中央値は13.8ヵ月(95%CI:13.7~未達)、DORとOSは未到達、12ヵ月PFS率は73%、OS率は80%であった。Grade3のAEが11例、Grade4が1例発現したが、治療関連死は認めず、既存の研究と異なるAEは認めなかった。21例で治療が中止され、治療中止の最も多い理由はAE(13例)であった。進行胃がんの中でおよそ5%といわれるMSI-Highを対象にしており、スクリーニング研究を含め、本邦の多くの先生が協力して完遂されたことにまずは拍手を送りたい試験である。既報のCheckMate 649試験でもMSI-High群では免疫チェックポイント阻害薬の併用効果がきわめて高いことが知られており、MSI-Highは胃がん1次治療前の治療選択に重要なバイオマーカーであると考えられる。また、Ipi/Nivoは食道がんにおけるCheckMate 648試験でも長期生存につながる症例が他治療より多い可能性が示唆されており、胃がんにおいてもそのような対象があるかもしれない。もちろんIpi/Nivoは胃がんにおいて本邦では保険適用外であるが、本研究の長期フォローアップの結果やバイオマーカーの解析結果が期待される。RAS/BRAF野生型+左側原発大腸がんのm-FOLFOXIRI+セツキシマブ#555MOModified (m)-FOLFOXIRI plus cetuximab treatment and predictive clinical factors for RAS/BRAF wild-type and left-sided metastatic colorectal cancer (mCRC):The DEEPER trial (JACCRO CC-13)本試験は本邦で行われた大規模なランダム化第II相試験である。主要評価項目であるDpR(最大腫瘍縮小率)はASCO2021で有意な改善が報告されている。今回、聖マリアンナ医科大学腫瘍内科講座の砂川 優先生よりRAS/BRAF野生型かつ左側のサブグループ解析結果が報告された。RAS/BRAF野生型、左側の大腸がんにおいてDpRとPFSはいずれもm-FOLFOXIRI+セツキシマブ群においてm-FOLFOXIRI+ベバシズマブ群より良好であった(DpR中央値: 59.2% vs.47.5%、p=0.0017、PFS:14.5ヵ月vs.11.9ヵ月、HR:0.71、p=0.032)。またPFSにおけるサブグループ解析では男性、R0/1切除ができなかった症例、および肝限局以外の症例においてセツキシマブ群で良好な傾向があった。とくに肝限局転移例ではPFSは両群で有意差を認めなかった(14.5ヵ月vs.15.5ヵ月、HR:0.86、p=0.62)ものの、それ以外ではセツキシマブ群でPFSの改善を認めた(15.1ヵ月vs.11.4ヵ月、HR:0.63、p=0.015)。今回のサブグループ解析は、本邦の実臨床における実際と合致した対象で、期待できる効果が示された。深い奏効が期待できるため、個人的には詳細なゲノム検査が困難な、若いRAS/BRAF野生型大腸がん症例に期待したい治療である。次回のガイドラインの記載が注目される。KRAS G12C変異大腸がんへのソトラシブ+パニツムマブ#LBA10 Sotorasib plus panitumumab versus standard-of-care for chemorefractory KRAS G12C-mutated metastatic colorectal cancer (mCRC):CodeBreak 300 phase III study肺がんなどを中心に、新たに注目されているバイオマーカーであるKRAS G12Cに対する治療開発が進んでいる。大腸がんでは約3%の症例でKRAS G12C変異を認めるといわれており、ソトラシブ+パニツムマブは先行する第I相試験でORRが30%と期待できる結果を示していた。今回、1レジメン以上の治療を受けたKRAS G12C変異陽性切除不能進行再発大腸がんに対して、ソトラシブ+パニツムマブと標準治療(トリフルリジン・チピラシルもしくはレゴラフェニブ)を比較する第III相試験の結果が報告された。主要評価項目はPFS、主な副次評価項目はORRとOSで、160例がソトラシブ960mg/日+パニツムマブ(53例)と、ソトラシブ240mg/日+パニツムマブ(53例)、そして標準治療(54例)に1対1対1で割り付けられた。約90%が2レジメン以上、オキサリプラチン、フッ化ピリミジン、イリノテカン、血管新生阻害薬による治療を受けていた。主要評価項目であるPFSはソトラシブ960mg群、ソトラシブ240mg群、標準治療群でそれぞれ5.6ヵ月(HR:0.49、p=0.006)vs.3.9ヵ月(HR:0.58、p=0.03)vs.2.2ヵ月であり、ソトラシブ群で有意に改善を認めた。ORRはそれぞれ26% vs.6% vs.0%であり、ベースラインよりも腫瘍が縮小した症例の割合は81% vs.57% vs.20%であった。OSはイベント発生数がまだ約40%と未達で、8.1ヵ月vs.7.7ヵ月vs.7.8ヵ月であった。主なGrade3以上の毒性はソトラシブ群でざ瘡様皮疹(960mg群11% vs.240mg群4%)、皮疹(6% vs.2%)、下痢(4% vs.6%)、低マグネシウム血症(6% vs.8%)であり、標準治療群では好中球減少(24%)、貧血(6%)、嘔気(2%)であった。研究者らは、KRAS G12C変異を有する大腸がんに対してソトラシブ960mg/日+パニツムマブが新しい標準治療になる可能性があると結論付け、本結果はNEJM誌にも掲載された。PFSやORRは期待できる結果を示しているが、肺がんではソトラシブ単剤で28.1~37.1%のORRが報告されており、大腸がんではパニツムマブ併用ながら、やや劣る奏効である。またOSはそれほど差がなく、標準治療群でソトラシブをクロスオーバーして使用しているのかなど、後治療の影響があるのかも含めた長期フォローの結果が待たれる。いずれにせよ、希少な対象の薬剤であり、本邦でも早期にKRAS G12C変異陽性大腸がん患者に届けられるようになることが期待される。転移膵がん1次療法、ゲムシタビン+nab-パクリタキセル#1616ONab-paclitaxel plus gemcitabine versus modified FOLFIRINOX or S-IROX in metastatic or recurrent pancreatic cancer (JCOG1611, GENERATE):A multicentred, randomized, open-label, three-arm, phase II/III trial切除不能進行膵がんにおける1次化学療法の標準治療は(modified)FOLFIRINOX療法とゲムシタビン+nab-パクリタキセル(GnP)療法であるが、直接比較した大規模第III相試験はいまだなかった。今回、本邦でmFOLFIRINOX療法とGnP療法およびS-IROX療法(S-1、イリノテカン、オキサリプラチン)を比較する第II/III相試験であるGENERATE試験(JCOG1611)が行われ、国立がん研究センター中央病院の大場 彬博先生より結果が報告された。主要評価項目はOS、副次評価項目はPFS、ORRおよび安全性であった。PS0~1の症例を対象に、2019年4月~2023年3月に国内45施設から527例が登録され、GnP群(176例)、mFOLFIRINOX群(175例)、S-IROX群(176例)に1対1対1で割り付けられた。主要評価項目のOSはGnP群17.1ヵ月、mFOLFIRINOX群14.0ヵ月(HR:1.31、95%CI:0.97~1.77)、S-IROX群13.6ヵ月(HR:1.35、95%CI:1.00~1.82)であった。中間解析にて最終解析における優越性達成予測確率はmFOLFIRINOX群0.73%、S-IROX群0.48%とGnP群を上回る可能性がほとんどないため、本試験は中止となった。PFSはGnP群6.7ヵ月、mFOLFIRINOX群5.8ヵ月(HR:1.15、95%CI:0.91~1.45)、S-IROX群6.7ヵ月(HR:1.07、95%CI:0.84~1.35)、ORRはGnP群35.4%、mFOLFIRINOX群32.4%、S-IROX群42.4%であった。Grade3以上のAEで多かったものは好中球減少症で、GnP群60%、mFOLFIRINOX群52%、S-IROX群39%で認められた。食欲不振(5% vs.23% vs.28%)、下痢(1% vs.9% vs.23%)は、GnP群よりもmFOLFIRINOX群、S-IROX群で多く認められた。本研究は膵がんの実臨床に対する非常に重要な試験であり、今回の結果を鑑みると本邦における切除不能膵がんに対する1次治療の標準治療はGnP療法であると考えられる。本邦の現状では1次治療でGnP療法を行い、2次治療でナノリポソーマルイリノテカン+5-FU+レボホリナートを行うことが推奨されているが、2023年のASCOでナノリポソームイリノテカンを使ったNALIRIFOX療法のGnP療法に対する優越性が報告されている。本邦ではNALIRIFOX療法は保険適用外であるが、今後本邦での承認を含めた状況が注目される。

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外来通院治療中の肺がんにおける悪液質合併、初診時で5割超、治療開始が遅れるとさらに増加/日本肺癌学会

 外来通院中の肺がん患者の5割超が初診時に悪液質を合併しており、その割合は治療開始までの期間が長いほど増加するとの研究結果が示された。関西医科大学の勝島 詩恵氏が第64回日本肺癌学会学術集会で発表した、外来通院肺がん患者における悪液質の後ろ向き観察研究のデータである。 がん悪液質は進行がんの多くに合併し、化学療法の効果を下げ、有害事象の発現を増加させる。また、悪液質は進行すると不可逆的かつ治療抵抗性になるため、早期からの介入が推奨される。しかし、臨床現場における悪液質の病状判断は難しく、必ずしも早期介入が実現しているとは言えない。 同大学では外来通院がん患者に特化した、がんリハビリテーション外来である「フレイル外来」を実施している。勝島氏らは、同外来を2020年11月〜22年11月に受診した肺がん患者を後ろ向きに解析した。 主な結果は以下のとおり。・フレイル外来初診時の肺がん患者(76例)における悪液質の合併は55.3%(42例)であった。・悪液質の発症と関連する項目はMNA(Mini Nutritional Assessment Score、p<0.001)とIPAQ(International Physical Activity Questionnaire、p=0.026)であった。つまり、低活動と低栄養が独立した関連因子であることが明らかになった。<悪液質の有無による比較>・フレイル外来初診時からの生存日数を悪液質の有無で比較すると、悪液質あり群は、なし群に比べ有意に予後不良であった(p=0.012)・悪液質がない状態で治療開始した患者では病勢制御率、初回治療完遂率ともに100%であった。一方、悪液質がある状態で治療開始した患者では、病勢制御率66.7%、初回治療完遂率58.3%であり、悪液質の合併は、治療効果とともに治療完遂率に悪影響を及ぼすことが示された。<初診から治療開始までの期間:早期群[45日未満]と遅延群[45日以上]による比較>・早期群では、初診時と治療開始時の悪液質合併割合に変化はなかったが(初診時61%→治療開始時61%)、遅延群では初診時から治療開始時にかけて増加しており(37%→87%)、初診から治療開始までの時間が長いほど悪液質の発症が高まる傾向にあった。 勝島氏は、がん悪液質の予防、とくに診断から治療開始までの空白期間での介入は、化学療法の有効活用にとっても重要であること、そして、がん悪液質の予防には多職種が有機的に関わって患者の身体活動量や栄養状態を維持することが欠かせないと述べた。

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NSCLCへのニボルマブ+イピリムマブ±化学療法、実臨床の安全性・有効性は?(LIGHT-NING)/日本肺癌学会

 進行・再発非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療として、2020年11月にニボルマブ+イピリムマブ±化学療法が保険適用となり、実臨床でも使用されている。また、国際共同第III相試験CheckMate 9LA試験、CheckMate 227試験の有効性の成績は、非常に少数例ではあるものの日本人集団が全体集団よりも良好な傾向にあった一方、Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)の発現割合は、日本人集団が全体集団よりも高い傾向にあったことが報告されている。そこで、ニボルマブ+イピリムマブ+化学療法(CheckMate 9LAレジメン)、ニボルマブ+イピリムマブ(CheckMate 227レジメン)を使用した患者のリアルワールドデータを収集するLIGHT-NING試験が実施された。本試験の第3回中間解析の結果について、山口 哲平氏(愛知県がんセンター呼吸器内科部)が第64回日本肺癌学会学術集会で発表した。試験デザイン:後ろ向き観察研究対象:未治療の進行・再発NSCLC患者525例試験群1:ニボルマブ(360mgを3週ごと)+イピリムマブ(1mg/kgを6週ごと)+化学療法(3週ごと、2サイクル)(CM 9LA群:308例)試験群2:ニボルマブ(240mgを隔週または360mgを3週ごと)+イピリムマブ(1mg/kgを6週ごと)(CM 227群:217例)評価項目:[主要評価項目]治療状況、全生存期間(OS)、Grade3以上の免疫関連有害事象(irAE)、治療中止に至ったTRAEなど[副次評価項目]irAEの発現時期とirAEに対する治療内容および症状改善までの期間、irAEの有効性への影響など 主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢中央値は70歳、女性が18.7%、PS 0~1/2/3以上が89.1%/6.5%/1.5%、扁平上皮がんが27.0%、PD-L1発現状況が1%未満/1~49%/50%以上/不明は46.5%/34.7%/9.1%/9.7%であった。・治療別にみた年齢中央値はCM 9LA群が67歳、CM 227群が73歳、75歳以上の割合はそれぞれ11.7%、40.1%であり、高齢の患者では化学療法を含まないニボルマブ+イピリムマブが多く選択される傾向にあった。・解析時点において、イピリムマブのみを中止した患者の割合は2.5%、ニボルマブとイピリムマブの両剤を中止した患者の割合は85.3%で、イピリムマブ中止の内訳は病勢進行が43.6%、有害事象が38.3%、その他が5.9%であった。・Grade3/4のTRAEは40.2%(CM 9LA群:49.7%、CM 227群:26.7%)に発現し、いずれかの薬剤の中止に至ったTRAEは37.9%(それぞれ41.9%、32.3%)に発現した。・治療関連死は3.4%(CM 9LA群:3.6%[11例]、CM 227群:3.2%[7例])に認められ、間質性肺疾患(9例)が最も多かった。・OS中央値は、CM 9LA群が24.3ヵ月、CM 227群が21.9ヵ月であり、1年OS率はそれぞれ69.1%、62.8%であった。・無増悪生存期間(PFS)中央値は、CM 9LA群が6.4ヵ月、CM 227群が6.2ヵ月であり、1年PFS率はそれぞれ32.2%、37.5%であった。・医師判定に基づく奏効率は、39.6%(CM 9LA群:40.7%、CM 227群:37.8%)であった。 本結果について、山口氏は「安全性に関する新たなシグナルは観察されず、安全性プロファイルはCheckMate 9LA、227試験と同様であった。治療関連死の原因としては肺臓炎関連が多かった。有効性に関して、CM 9LA群とCM 227群は同様の結果であり、PD-L1発現割合によっても治療効果に大きな差はみられなかった」とまとめた。

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既治療の小細胞肺がんへのtarlatamab、奏効率40%/NEJM

 既治療の小細胞肺がん(SCLC)患者の治療において、tarlatamabは持続的な奏効を伴う抗腫瘍活性を発揮し、生存アウトカムも良好であり、新たな安全性シグナルは確認されなかったことが、韓国・成均館大学校のMyung-Ju Ahn氏らが実施した「DeLLphi-301試験」で示された。tarlatamabは、がん細胞上のδ様リガンド3(DLL3)とT細胞上のCD3を標的とする二重特異性T細胞誘導(BiTE)分子で、DLL3とCD3の両方に結合することでT細胞をがん細胞へと誘導し、がん細胞の溶解をもたらす標的免疫療法である。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年10月20日号で報告された。3つのパートから成る国際的な第II相試験 DeLLphi-301試験は、日本を含む17ヵ国56施設が参加した非盲検第II相試験であり、2021年12月~2023年5月の期間に患者の登録を行った(Amgenの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、SCLCと診断され、プラチナ製剤ベースの治療と少なくとも1つの他の治療を受け、全身状態が良好な患者(ECOG PSのGrade0または1)であった。 本試験は3つのパートで構成された。パート1では176例を登録し、tarlatamab 10mg(88例)または100mg(88例)を静脈内投与する群に無作為に割り付けた。パート2では、事前に規定されたパート1の中間解析の結果に基づいて選択されたtarlatamabの用量に患者を登録した(10mgを選択し12例を登録)。パート3では34例を登録し、tarlatamabの安全性を評価した。 全例に対しサイクル1の1日目にtarlatamab 1mgを、8日目および15日目に10mgまたは100mgを投与し、その後、28日を1サイクルとして病勢が進行するまで各用量を2週ごとに投与した(1サイクルに2回の投与)。 主要評価項目は奏効(完全奏効[CR]+部分奏効[PR])率とし、RECIST version 1.1に基づき、盲検下独立中央判定で評価した。10mg群で奏効率40%、全生存期間中央値14.3ヵ月 全体で220例がtarlatamabの投与を受けた。前治療ライン数の中央値は2であった。抗腫瘍活性と生存の評価の対象となった188例(パート1、2)の追跡期間中央値は、tarlatamab 10mg群(100例、年齢中央値64.0歳、男性72%)が10.6ヵ月、同100mg群(88例、62.0歳、70%)は10.3ヵ月だった。 奏効は、10mg群では100例中40例(40%、97.5%信頼区間[CI]:29~52)、100mg群は88例中28例(32%、21~44)で達成され、CRはそれぞれ1例、7例で得られた。 奏効が達成された68例中40例(59%)で奏効期間は6ヵ月以上に達しており、20例(29%)では9ヵ月以上であった。また、データカットオフ日(2023年6月27日)の時点で、10mg群の40例中22例(55%)、100mg群の28例中16例(57%)で奏効が持続していた。 無増悪生存期間中央値は、10mg群が4.9ヵ月(95%CI:2.9~6.7)、100mg群は3.9ヵ月(2.6~4.4)であった。また、全生存期間中央値は、10mg群が14.3ヵ月(10.8~評価不能[NE])、100mg群はNE(12.4~NE)であり、9ヵ月の時点での推定全生存率はそれぞれ68%、66%だった。 最も頻度の高い有害事象は、サイトカイン放出症候群(10mg群51%、100mg群61%)、食欲減退(29%、44%)、発熱(35%、33%)、便秘(27%、25%)、貧血(26%、25%)であった。サイトカイン放出症候群は、主としてサイクル1の期間中に発現し、ほとんどの患者がGrade1または2であった。Grade3のサイトカイン放出症候群は、100mg群で6%に発生したのに対し、10mg群では1%と頻度が低かった。 免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)とその関連の神経イベントは、10mg群の11例(8%)と100mg群の24例(28%)で発生し、Grade3以上は10mg群では認めず、100mg群では4例(5%)にみられた。治療関連有害事象によるtarlatamabの投与中止の割合は、両群とも3%と低かった。 著者は、「40%という奏効率は、主要評価項目としての既存対照(historical control)の基準である15%をはるかに上回る。現在、SCLCの3次治療以降の治療法は承認されておらず、本試験の結果は、3次治療以降の実臨床研究の観点から好ましいものと考えられる」としている。現在、既治療の進展型SCLC患者において、tarlatamab(10mg、2週ごと)を標準治療と比較する第III相試験(DeLLphi-304試験)が進行中だという。

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早期からの緩和ケアっていつからやればいい?【非専門医のための緩和ケアTips】第63回

第63回 早期からの緩和ケアっていつからやればいい?緩和ケアを含む医療は時代と共に形を変えていくものですが、ここ最近は「いかに早期から緩和ケアを提供するか」という議論が盛んになっています。でも、コンセプトは理解できても、具体的にどうするかとなると、難しく感じる方も多いようです。今日の質問最近、「早期からの緩和ケア」や「診断時点の緩和ケア」という言葉をよく聞きます。終末期だけでなく、緩和ケアをできるだけ早くから提供する、という考え方はよいと思うのですが、具体的にはいつから行えばいいのでしょうか?この質問はよくいただくものですね。確かに、「早期の緩和ケア」といっても、具体的に「いつから、何をするのか」は、なかなか難しい問題です。研究領域においては、「早期からの緩和ケア」とは、「進行がんの診断後早期から専門的緩和ケアサービスが介入すること」を意味します。ただ、緩和ケアの専門家が少ない日本においては、「緩和ケアを専門としているかにかかわらず、その患者に関わる医療者が緩和ケアを提供する」という意味で用いられていることが多いです(「一次緩和ケア」とも呼びます)。早期の緩和ケアにおいては、「包括的アセスメント」が重要です。これは身体症状だけでなく、精神心理的な苦痛や社会的な問題など、幅広く緩和ケアを必要とする状態がないかを評価することです。要は「患者さんが困っていることがあれば、きちんとそれに気付いて対応しましょうね」というだけなので、まあ当たり前ではあります。でも、「本当に、きちんと、できていますか?」と改めて問われると、どうでしょうか?自分から「症状で困っていることはないのですが、今の治療がうまくいかなかったらどうしようと思って不安なんです。最近眠れないこともあって…」なんて言ってくれる患者さんは、そうはいません。よって、医療者側からきちんとアセスメントをすることが必要であり、結果として緩和ケアのニーズがあれば、それに対応します。このアセスメントのために、いくつかのツールが開発されています。有名なのが「生活のしやすさに関する質問票」1)です。こちらはフリーでダウンロードできますので、ぜひ活用してみてください。今回のTips今回のTips早期の緩和ケアとは、早ければいいわけではなく、ニーズに対して行うもの。病状にかかわらず、アセスメントを繰り返すことが大切。1)生活のしやすさに関する質問票/緩和ケア普及のための地域プロジェクト

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CheckMate試験の日本語版プレーン・ランゲージ・サマリーが公開/小野・BMS

 小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、抗PD-1抗体「オプジーボ(一般名:ニボルマブ)点滴静注」の3つの臨床試験結果に関するPlain Language Summary of Publication(PLS)の日本語版がFuture Oncology誌に掲載されたことを発表した。 PLSとは、臨床試験結果や医学論文などの情報を、専門家以外の人でも理解しやすいように平易な言葉で要約した文書で、PLSを受け入れる国際ジャーナルの増加に伴い、近年、世界的にその出版数が増加している。 今回、小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、下記3つの第III相臨床試験に関するPLSの日本語翻訳サポートを行った。・CheckMate 816試験:切除可能な非小細胞肺がん患者を対象に、術前補助療法としてニボルマブと化学療法の併用療法を評価した臨床試験PLS日本語版・CheckMate 649試験:未治療の切除不能な進行・再発の胃がん、胃食道接合部がん、食道腺がん患者を対象に、ニボルマブと化学療法の併用療法を評価した臨床試験PLS日本語版・CheckMate 274試験:根治的切除術を受けた筋層浸潤性尿路上皮がん患者を対象に、術後補助療法としてニボルマブを評価した臨床試験PLS日本語版 掲載されたPLSは、単純に元となった論文を簡素化した内容ではなく、疾患の基礎情報や専門用語の解説、薬の基本的な作用機序などについてもまとめられている。また、文書全体にイラストやピクトグラムを用い、治療の意義や結果の解釈なども含めて、QA形式でわかりやすく解説されている。 いずれもオープンアクセスになっており、専門家以外が情報を確認したり、医療関係者が患者への説明に使用したりすることで、治療の理解や選択に役立つと考えられる。 なお、小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、国際ジャーナルに掲載された主要な第III相臨床試験のPLSについて、今後も日本語翻訳のサポートを行っていくとしている。

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NSCLCの術前術後デュルバルマブ、pCRとEFS改善(AEGEAN)/NEJM

 未治療の切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、術前化学療法+周術期(術前術後)のデュルバルマブは、術前化学療法単独と比較し、無イベント生存期間(EFS)および病理学的完全奏効(pCR)を有意に改善し、安全性プロファイルは各薬剤の既知のプロファイルと一致していたことが示された。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのJohn V. Heymach氏らが、28ヵ国で実施された国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「AEGEAN試験」の結果を報告した。術前または術後の補助療法としての免疫療法は、切除可能NSCLC患者のアウトカムを改善する可能性が示されており、周術期レジメンは両方の利点が組み合わさり長期アウトカムを改善することが期待されていた。NEJM誌2023年10月23日号掲載の報告。術前化学療法+周術期デュルバルマブvs.術前化学療法+プラセボを比較 研究グループは、未治療の切除可能なStageIIA~IIIB[N2](AJCC Cancer Staging Manual第8版による)のNSCLCで、手術が予定され、ECOG PSが0~1の18歳以上の患者を、病期(IIまたはIII)、PD-L1発現(≧1%または<1%)で層別化して、デュルバルマブ群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。術前にプラチナ製剤ベースの化学療法+デュルバルマブまたはプラセボの静脈内投与を3週ごとに4サイクル、術後にデュルバルマブまたはプラセボの静脈内投与を4週ごとに12サイクル行った。 主要評価項目は、EFS(盲検下独立中央判定)とpCR(中央評価)であった。EFSは、手術の施行または完了が阻害された病勢進行、局所再発または遠隔再発、あるいは全死因死亡のうち最も早く発生したイベントまでの期間と定義した。なお、有効性の解析は、ベースラインでEGFRまたはALK遺伝子変異が確認された患者を除外して行われた(修正ITT集団)。 2019年1月2日~2022年4月19日の間に、計802例がデュルバルマブ群(400例)とプラセボ群(402例)に無作為に割り付けられ、修正ITT集団は計740例(それぞれ366例、374例)であった。デュルバルマブ併用の有益性、病期やPD-L1発現状況にかかわらず確認 修正ITT集団について事前に計画した第1回中間解析(データカットオフ2022年11月10日、無イベント生存者の追跡期間中央値11.7ヵ月[範囲:0.0~46.1])において、EFSは、デュルバルマブ群未到達(NE)、プラセボ群25.9ヵ月であり、デュルバルマブ群で有意な延長を認めた(病勢進行、再発または死亡の層別化ハザード比[HR]:0.68、95%信頼区間[CI]:0.53~0.88、p=0.004)。12ヵ月EFS率は、デュルバルマブ群73.4%(95%CI:67.9~78.1)、プラセボ群64.5%(58.8~69.6)であった。24ヵ月EFS率は、それぞれ63.3%(56.1~69.6)、52.4%(45.4~59.0)であった。 pCRは最終解析(データカットオフ2022年11月10日)において、デュルバルマブ群17.2%(95%CI:13.5~21.5)、プラセボ群4.3%(95%CI:2.5~6.9)で、デュルバルマブ群が有意に高かった(群間差:13.0ポイント、95%CI:8.7~17.6)。この結果は、中間解析の結果(データカットオフ2022年1月14日、402例対象、p<0.001)と一致していた。 EFSおよびpCRに関するデュルバルマブの有益性は、病期およびPD-L1発現状況にかかわらず確認された。 Grade3または4の有害事象の発現率は、デュルバルマブ群42.4%、プラセボ群43.2%であった。

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オンコマインDx、カプマチニブのMETエクソン14スキッピング非小細胞肺がんに対するコンパニオン診断として追加申請/サーモフィッシャー

 サーモフィッシャーは、オンコマインTM Dx Target Test マルチ CDxシステム(以下、オンコマインDx)について、カプマチニブ塩酸塩水和物(以下、カプマチニブ)のMETエクソン14スキッピング変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに対するコンパニオン診断として、2023年11月1日付で厚生労働省に医療機器製造販売承認事項一部変更申請を行ったと発表。 カプマチニブに対するコンパニオン診断システムとしての適応追加の承認が得られれば、オンコマインDxは、非小細胞肺がんの7ドライバー遺伝子(BRAF、EGFR、HER2、ALK、ROS1、RET、MET)、甲状腺がんの1ドライバー遺伝子(RET)、甲状腺髄様がんの1ドライバー遺伝子(RET)を網羅するコンパニオン診断システムとなる。

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セルペルカチニブによるRET陽性NSCLC1次治療、PFSを有意に延長/NEJM

 進行RET融合遺伝子陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)の患者に対し、セルペルカチニブはプラチナベースの化学療法(ペムブロリズマブの併用を問わず)と比較して、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが、中国・同済大学のCaicun Zhou氏らが行った第III相無作為化試験で示された。セルペルカチニブは中枢移行性を有する強力な選択的RET阻害薬で、進行RET融合遺伝子陽性NSCLC患者に対する有効性が、第I・II相の非無作為化試験で示されていた。NEJM誌オンライン版2023年10月21日号掲載の報告。切除不能なRET陽性・非扁平上皮NSCLCで全身性治療未実施の患者を対象に試験 1次治療としてのセルペルカチニブの有効性と安全性を検証した本試験は、病理学的に確認された切除不能なStageIIIB、IIIC、IVのRET融合遺伝子陽性・非扁平上皮NSCLCで、転移後に薬物治療を受けていない18歳以上の患者を対象に行われた。研究グループは被験者を、セルペルカチニブ(160mg、1日2回、21日サイクル)の投与を受ける群、プラチナベースの化学療法を受ける群(対照群)に、無作為に割り付けた。対照群には、治験担当医師の裁量でペムブロリズマブ(200mg)を投与した。試験薬の投与期間中、対照群に盲検下独立中央判定(BICR)で評価された病勢進行が認められた場合は、セルペルカチニブ群へのクロスオーバーが認められた。 主要評価項目は、ITTペムブロリズマブ集団(対照群に割り当てられた場合に医師がペムブロリズマブを投与する予定だった患者を含む)と被験者全体のITT集団の両集団における、BICRで評価したPFSだった。PFS中央値、セルペルカチニブ群24.8ヵ月、対照群11.2ヵ月 2020年3月~2022年8月に、23ヵ国103施設から計261例(全ITT集団)が登録された。 ITTペムブロリズマブ集団は計212例だった(セルペルカチニブ群129例、対照群83例)。被験者は65歳未満、女性、非喫煙者が多かった。 事前計画の中間有効性解析時点(死亡または病勢進行が98イベント後と規定)のPFS中央値は、セルペルカチニブ群24.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:16.9~推定不能)、対照群11.2ヵ月(8.8~16.8)だった(病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.46、95%CI:0.31~0.70、p<0.001)。 奏効を示した患者の割合は、セルペルカチニブ群84%(95%CI:76~90)、対照群65%(54~75)だった。中枢神経系に影響をもたらした病勢進行までの時間に関する原因特異的HRは0.28(95%CI:0.12~0.68)だった。 有効性に関する全ITT集団(261例)の結果は、ITTペムブロリズマブ集団の結果と類似していた。有害事象は、両群ともに既報のものと変わらなかった。

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75歳以上/PS2以上の局所進行NSCLCにもCRT後のデュルバルマブ地固めは有用か?/ESMO2023

 化学放射線療法(CRT)後のデュルバルマブ地固め療法は、切除不能な局所進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する標準治療である。しかし、75歳以上またはperformance status(PS)2以上の切除不能な局所進行NSCLC患者における臨床的意義については明らかになっていない。そこで、この集団におけるCRT後のデュルバルマブ地固め療法の有用性を検討したNEJ039A試験が実施され、その結果を静岡県立静岡がんセンターの高 遼氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表した。試験デザイン:国内第II相単群試験対象:StageIIIの切除不能NSCLC患者のうち、PS 0/1かつ75歳以上の患者73例、PS 2以上かつ75歳未満の患者13例(計86例)試験群:CRT(30分割で合計60Gyを照射。最初の20回は、放射線照射の1時間前に低用量カルボプラチン[30mg/m2]を毎回投与)→デュルバルマブ(10mg/kgを2週ごと、1年間)評価項目:[主要評価項目]デュルバルマブ投与開始から12ヵ月後の無増悪生存(PFS)率※[副次評価項目]PFS、全生存期間(OS)、安全性など※:既報を基に、35%以上であれば臨床的有用性を示すとみなすこととした。 主な結果は以下のとおり。・2019年9月~2021年10月の期間にCRTを受けた患者86例のうち、61例(70.9%)がデュルバルマブ地固め療法を受けた。この61例(男性50例[82%]、年齢中央値78歳[範囲:55~89])が解析対象となった。・解析対象のうち、PS 0は28例(45.9%)、1は27例(44.3%)、2は6例(9.8%)であった。PD-L1発現状況は、50%以上が14例(23.0%)、1~49%が17例(27.9%)、1%未満が17例(27.9%)、不明が13例(21.3%)であった。・デュルバルマブ投与開始から12ヵ月後のPFS率は51.0%(90%信頼区間[CI]:39.9~61.1)であった(参考:同様のレジメンで対象患者がPS 0/1、年齢中央値64歳であったPACIFIC試験1)のPFS率は55.9%)。・PFS中央値は12.3ヵ月、OS中央値は28.1ヵ月であった。・全Gradeの有害事象として、肺臓炎または放射線肺臓炎が80.3%に発現した。Grade3/4の有害事象で最も多かったものは、肺臓炎または放射線肺臓炎(8.2%)であった。Grade5の間質性肺炎により1例が死亡した。 高氏は、本結果について「デュルバルマブ投与開始から12ヵ月後のPFS率は51.0%と高く、主要評価項目を達成した。全Gradeの有害事象として、肺臓炎または放射線肺臓炎の発現率が既報1)よりも高かったが、Grade3以上については10%未満の発現率であり、許容可能と考えられた。本試験の結果から、75歳以上またはPS 2以上などの脆弱な局所進行NSCLC患者に対しても、CRT後のデュルバルマブ地固め療法は効果的かつ適応可能であることが示唆された」とまとめた。

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既治療の進行NSCLC、Dato-DXdがPFS改善(TROPION-Lung01)/ESMO2023

 TROP2を標的とする抗体薬物複合体(ADC)のdatopotamab deruxtecan(Dato-DXd)は、複数のがん種において臨床試験が実施されており、有用性が検討されている。その1つに、前治療歴のある進行・転移非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象とした国際共同第III相比較試験TROPION-Lung01試験があり、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)において、米国・カリフォルニア大学のAaron Lisberg氏が第1回中間解析の結果を報告した。本試験において、Dato-DXdは2次治療の標準治療の1つとされるドセタキセルと比較して、有意に無増悪生存期間(PFS)を改善した。試験デザイン:国際共同第III相無作為化非盲検比較試験対象:前治療歴のあるStageIIIB、IIIC、IV(AJCC第8版に基づく)のNSCLC患者604例(actionable遺伝子変異の有無は問わない)試験群:Dato-DXd(6mg/kg)を3週ごと(Dato-DXd群:299例)対照群:ドセタキセル(75mg/m2)を3週ごと(ドセタキセル群:305例)評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)に基づくPFS、全生存期間(OS)[副次評価項目]BICRに基づく奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢中央値は64歳(範囲:24~88)で、43.1%(260/604例)が2ライン以上の前治療を受けていた。actionable遺伝子変異を有する患者の割合は17%(101/604例)で、多くがEGFR遺伝子変異であった(14%[84/604例])。・治療期間中央値は、Dato-DXd群4.2ヵ月(範囲:0.7~18.3)、ドセタキセル群2.8ヵ月(範囲:0.7~18.9)であった。・BICRに基づくPFS中央値は、Dato-DXd群4.4ヵ月、ドセタキセル群3.7ヵ月であり、Dato-DXd群が有意に改善した(ハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.62~0.91、p=0.004)。12ヵ月PFS率はそれぞれ30.1%、17.8%であった。・PFSに関するサブグループ解析において、扁平上皮がん(HR:1.38)を除いてDato-DXd群が良好な傾向にあった。・非扁平上皮がん(Non-Sq)のサブグループにおけるPFS中央値は、Dato-DXd群5.6ヵ月、ドセタキセル群3.7ヵ月であった(HR:0.63、95%CI:0.51~0.78)。・BICRに基づくORRは、Dato-DXd群26.4%、ドセタキセル群12.8%であり、DOR中央値はそれぞれ7.1ヵ月、5.6ヵ月であった。・OSのデータは未成熟であったが、OS中央値はDato-DXd群12.4ヵ月、ドセタキセル群11.0ヵ月であり、Dato-DXd群が良好な傾向にあった(HR:0.90、95%CI:0.72~1.13)。・Dato-DXd群の主な治療関連有害事象は、口内炎(47%)、悪心(37%)であった。・治療に関連すると判定されたGrade3以上の間質性肺疾患は、Dato-DXd群3.4%、ドセタキセル群1.4%に認められた(Grade5はそれぞれ7例、1例)。 本結果について、Lisberg氏は「前治療歴のある進行・転移NSCLC患者において、Dato-DXdはドセタキセルと比較してPFSを有意に改善した。ただし、PFSの改善は主にNon-Sqの患者でみられた。Grade3以上のTRAEの発現は少なく、新たな安全性シグナルは確認されなかった。しかし、Grade3以上の間質性肺疾患がみられたため、注意深く観察する必要があることが示された。以上から、Dato-DXdは前治療歴のあるNon-Sq NSCLC患者に対する、新たな治療選択肢になる可能性があると考えている」とまとめた。

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EGFR exon20挿入変異にamivantamab+化学療法(PAPILLON)/ESMO2023

 EGFR exon20挿入変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)に対する、EGFR・MET二重特異性抗体amivantamabと化学療法の併用を評価する国際無作為化比較第III相試験PAPILLONの結果を、フランス・キューリー研究所のNicolas Girard氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表した。 未治療のEGFR exon20挿入変異陽性のNSCLCの治療成績は芳しくなく、全生存期間(OS)中央値は16〜24ヵ月である。同バリアントは、従来のEGFR-TKIに対する感受性がなく、免疫チェックポイント阻害薬もベネフィットを示せていない。・対象:未治療のEGFR exon20挿入変異陽性NSCLC・試験群:amivantamab+化学療法(amivantamab群、153例)・対照群:化学療法(化学療法群、155例)・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)評価の無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、OS、PFS2、安全性など 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は14.9ヵ月であった。・BICR評価のPFS中央値はamivantamab群11.4ヵ月、化学療法群6.7ヵ月で、amivantamab群で有意に延長した(ハザード比[HR]:0.395、95%信頼区間[CI]:0.30~0.53、p<0.0001)。12ヵ月PFSはそれぞれ48%と13%、18ヵ月PFSはそれぞれ31%と3%であった。・すべてのPFSサブグループにおいて、amivantamab群が良好であった。・BICR評価のORRはamivantamab群73%、化学療法群47%であった(オッズ比[OR]:3.0、95%CI:1.8〜4.8、p<0.0001)。・DOR中央値はamivantamab群9.7ヵ月、化学療法群4.4ヵ月であった。・PFS2中央値はamivantamab群未到達、化学療法群17.2ヵ月で、amivantamab群で有意に延長した(HR:0.493、95%CI:0.32〜0.76、p=0.001)。・OS中央値は未到達であった(HR:0.675、95%CI:0.42〜1.09、p=0.106)。・OS中央値はamivantamab群未到達、化学療法群24.4ヵ月であった(HR:0.675、95%CI:0.42〜1.09、p=0.106)。 Girard氏は、この試験の結果から、EGFR exon20挿入変異NSCLCに対するamivantamab+化学療法の1次治療は新たな標準治療であることを示した、と述べた。

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オシメルチニブ耐性EGFR陽性肺がんに対するamivantamab含有レジメンの有効性(MARIPOSA-2)/Ann Oncol

 オシメルチニブ耐性を獲得したEGFR陽性肺がんに対し、有望な新治療法が報告された。 現在、EGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療では、主に第3世代EGFR-TKIであるオシメルチニブがである用いられる。しかし、初回治療の奏効にもかかわらず、多くの症例がオシメルチニブ耐性を獲得し、その後は細胞障害性抗がん剤による治療が主流となる。 オシメルチニブの耐性メカニズムは多彩であるが、MET遺伝子異常とEGFR経路の異常が多いとされる。amivantamabはEGFRとMETの二重特異性抗体、lazertinibは第3世代EGFR-TKI である。この両剤と化学療法の併用は、オシメルチニブを含むEGFR-TKI耐性のEGFR変異陽性NSCLCにおける有効性を第I相試験で示している。 MARIPOSA-2試験は、オシメルチニブ耐性のEGFR変異陽性NSCLCに対する、amivantamab+化学療法±lazertinibを評価した国際無作為化第III相試験である。・対象:オシメルチニブ単剤療法耐性のEGFR変異(exon19 delまたはL858R)NSCLC・試験群1:amivantab+lazertinib+化学療法(カルボプラチン+ペメトレキセド)(ALC群、n=263)・試験群2:amivantab+化学療法(同上)(AC群、n=131)・対照群:化学療法(同上)(C群、n=263)・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)評価による無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、全生存期間(OS)、PFS2、安全性など 主な結果は以下のとおり。・PFS中央値はAC群6.3ヵ月、ALC群8.3ヵ月、C群4.2ヵ月で、対化学療法群のハザード比(HR)はそれぞれ0.48(95%CI:0.36~0.64、p<0.001)、0.44(95%信頼区間[CI]:0.35~0.56、p<0.001)であった。・サブ解析においても、すべての集団でamivantamab含有群のPFSが良好な結果であった。・ORRはAC群64%、ALC群63%、C群36%で、対化学療法のオッズ比[OR]はそれぞれ3.10(95%CI:2.00~4.80、p<0.001)、2.97(95%CI:2.08~4.24、p<0.001)であった。・BICR評価による頭蓋内PFSはAC群12.5ヵ月、ALC群12.8ヵ月、C群8.3ヵ月で、対化学療法のHRはそれぞれ0.55(95%CI:0.38~0.79)と0.58(95%CI:0.44~0.78)であった。・DORはAC群6.9ヵ月、ALC群9.4ヵ月、C群5.6ヵ月であった。・Grade3以上の試験治療下における有害事象(TEAE)は、ALC群92%、AC群72%、C群の48%で発現した。・amivantamab含有群で頻度が高かったGrade3以上のTEAEは好中球減少、血小板減少、白血球減少であった。また、インフュージョンリアクション(全Grade)がAC群の58%、ALC群の56%、静脈血栓塞栓症(全Grade)がAC群の10%、ALC群の22%で発現した。

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EGFR陽性肺がん1次治療におけるamivantamab+lazertinibの有効性(MARIPOSA)/ESMO2023

 EGFR陽性肺がんの1次治療に新たな選択肢が示された。 現在、EGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療では標準治療として、第3世代EGFR-TKIであるオシメルチニブが用いられる。オシメルチニブによる1次治療は優れた有効性を示すが、いまだに治療抵抗性や病勢進行例の存在は避けられない。 この治療抵抗性の25〜50%は、EGFRおよびMET遺伝子の2次的な異常である。EGFRとMETの二重特異性抗体であるamivantamabと、新規第3世代EGFR-TKIであるlazertinibの併用は、EGFR変異陽性NSCLC1次治療において、抵抗性を克服し、臨床成績を改善すると期待される。第I相試験CHRYSALISでは、この2剤の併用が未治療のEGFR変異陽性NSCLCに対し持続的な効果を示している。 未治療のEGFR変異陽性NSCLCに対する、amivantamab+lazertinibとオシメルチニブを比較した国際無作為化第III相試験であるMARIPOSA試験が行われている。韓国・延世がんセンターのByoung Chul Cho氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で同試験の主要結果を発表した。・対象:未治療のEGFR変異(exon19 delまたはL858R)陽性NSCLC・試験群1:amivantamab+lazertinib(AL群、n=429)・試験群2:lazertinib(L群、n=216)・対照群:オシメルチニブ(O群、n=429)・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)評価による無増悪生存期間(PFS)(AL群対O群)[副次評価項目]奏効率(ORR)、全生存期間(OS)、奏効期間(DOR)、PFS2、安全性など(AL群対O群) 主な結果は以下のとおり。・PFS中央値はAL群23.7ヵ月、O群16.6ヵ月であり(ハザード比[HR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.58〜0.85、p<0.001)、L群は18.5ヵ月であった。・ORRはAL群86%、O群85%であった。・DORはAL群25.8ヵ月、O群16.8ヵ月であった。・脳転移あり例のPFS中央値はAL群18.3ヵ月、O群13.0ヵ月であった(HR:0.69、95%CI:0.53〜0.92)。・脳転移なし例のPFS中央値はAL群27.5ヵ月、O群19.9ヵ月であった(HR:0.69、95%CI:0.53〜0.89)。・中間解析(追跡期間22.0ヵ月)でのOS中央値は両群とも未到達で、24ヵ月OS率はAL群74%、O群69%であった(HR:0.70、95%CI:0.61〜1.05、p=0.11)。・Grade3以上の有害事象(AE)は、AL群75%、O群43%で発現した。・懸念すべきAEである静脈血栓塞栓症はAL群の37%で発現し、ほとんどはGrade1〜2であった。 Byoung Chul Cho氏は、amivantamabとlazertinib併用は、EGFR変異陽性NSCLの1次治療における新たなスタンダードであると結んだ。

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膵がん治療中に造影CTで偶然肺塞栓を発見!適切な対応は?【見落とさない!がんの心毒性】第25回

※本症例は、実臨床のエピソードに基づく架空のモデル症例です。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》年齢・性別70代・男性主訴なし現病歴既往症はとくになし。背部痛を契機に病院を受診し、腹部エコーで膵頭部腫瘍、多発肝結節を指摘された。経皮的肝生検で膵がん(腺がん)の病理診断となった。造影CTで膵頭部の原発巣および多発肝転移、腹膜播種、腹水貯留を認めた。CA19-9が1,250U/mLと上昇していたほか、血液検査で臨床的に問題となる異常所見は認めなかった。膵がんStageIVの診断で、PS0と全身状態は良好であり、緩和的化学療法を導入する方針となった。ゲムシタビン+ナブパクリタキセル(GEM+nab-PTX)療法(GEM1,000mg/m2 day1,8,15/nab-PTX125mg/m2 day1,8,15/1サイクル=4週)を開始した。3サイクル終了後、がんの病勢評価のために造影CTを実施したところ、両肺動脈に造影欠損域が多発しており、偶発的肺塞栓症(incidental pulmonary embolism:incidental PE)が発覚した。【問題1】当該患者に連絡し、臨時で病院を受診するように指示をした。取り急ぎ確認すべきこと、必要な検査として優先度の低い選択肢を一つ選べ。a.自覚症状の有無(呼吸困難、胸痛など)の確認とバイタルサインb.血液検査 D-dimerc.血液検査 CA19-9d.心臓超音波検査e.下肢超音波検査【問題2】該当患者がPEを発症した原因を鑑別する上で、優先度の低い選択肢を一つ選べ。a.造影CTでがんの病勢確認b.DVTの確認c.GEMやnab-PTXによる薬剤性血栓塞栓症リスクの確認d.プロテインC/プロテインSの確認e.がん以外の合併症や内服薬の確認全体解説Incidental PEは症候性VTEと同様に抗血栓薬での治療を行うことがASCOガイドラインで提案されている3)。韓国で実施された後ろ向き研究で、肺がん患者におけるincidental PEについて評価された。8,014例の肺がん患者が登録されたデータベースにおいて、180例(2.2%)が治療経過の中でPEと診断されており、その内113例(63%)がincidental PEであった。肺がんの診断から3ヵ月以内にPEを発症した場合は予後不良(ハザード比[HR]:1.5)であり、またincidental PEに対する抗血栓療法を行わなかった場合は予後不良(HR:4.1)であったと報告されている4)。本邦からの単施設による後ろ向き研究では、incidental PEのがん患者における発症率は1.3%であり、PE合併がん患者の死亡率は高い(HR:2.26)ことが報告されている5)。incidental PEについて検討した大規模試験は多くないが、日常診療で経験される病態であり、基本的には症候性PEと同様に対応することが望ましい。Incidental PEはその診断経緯から無症候性であることも多い。スペインで実施された前向き観察研究では、PEに起因するうっ血性心不全や右室機能不全、活動性出血などの大きなリスクがないincidental PE患者に対する外来抗血栓療法の安全性が報告されており6)、一部の症例は入院管理を必要としない可能性も示唆されるが、その適応は循環器内科専門医により慎重に判断される必要がある。また、Incidental PEは進行期のがん患者、および化学療法による積極的な治療中のがん患者に発症することが多く、発症数週以内の死亡の可能性もあるため7)、無症状であっても過小評価するべきではない。当科でもincidental PEは年に数件程度の頻度で経験するが、約1/3は膵がん患者である。Incidental PEの発症時期は、がんの診断直後(数ヵ月以内)、化学療法中、原疾患が進行し予後数週と思われる時期、などさまざまである。化学療法中の患者の場合は化学療法を円滑に継続するために腫瘍専門医と循環器内科医の協力が必須である。原疾患が進行し予後が限られている場合は、出血リスクや入院加療による負担などを考慮した上で治療適応を慎重に判断することが求められる。1)Horsted F, et al. PLoS Med. 2012;9:e1001275.2)Campia U, et al. Circulation. 2019;139:e579-e602.3)Key NS, et al. J Clin Oncol. 2023;41:3063-3071. 4)Sun JM, et al. Lung Cancer. 2010;69:330-336.5)Nishikawa T, et al. Circ J. 2021 Feb 17.[Epub ahead of print] 6)Martin AM, et al. Clin Transl Oncol. 2020;22:612-615.7)Olusi SO, et al. Vasc Health Risk Manag. 2011;7:153-158.講師紹介

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進行期肺がんの3割が悪液質を合併!?【DtoD ラヂオ ここが聞きたい!肺がん診療Up to Date】第3回

第3回:進行期肺がんの3割が悪液質を合併!?パーソナリティ日本鋼管病院 呼吸器内科 部長 田中 希宇人 氏ゲスト順天堂大学付属順天堂医院 宿谷 威仁 氏参考1)Shukuya t ,et al. Epidemiology, risk factors and impact of cachexia on patient outcome: Results from the Japanese Lung Cancer Registry Study. J Cachexia Sarcopenia Muscle.2023;14:1274-1285.2)未治療進行非小細胞肺癌における悪液質の合併と化学療法に与える影響の観察研究 NEJ050A試験関連サイト専門医が厳選した、肺がん論文・ニュース「Doctors'Picks」(医師限定サイト)講師紹介

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