サイト内検索|page:19

検索結果 合計:2007件 表示位置:361 - 380

361.

「第28回日本緩和医療学会学術大会」が開催されました【非専門医のための緩和ケアTips】第57回

第57回 「第28回日本緩和医療学会学術大会」が開催されましたずいぶん暑くなってきました。6月30日(金)~7月1日(土)に、「第28回日本緩和医療学会学術大会」(緩和ケア学会)が神戸市で開催されました。発表だけでなく、緩和ケアを支える多くの方の学びの機会となるように、私の友人たちは、さまざまな発信をしています。今回は初夏の風物詩となっている緩和ケア学会の内容をご紹介します。今日の質問先日開催された緩和ケア学会に参加し、ほかの学会と違うユニークな雰囲気を感じました。緩和ケアの勉強も兼ねて、今後も参加しようと思います。地方会などもあるのでしょうか?今年の緩和ケア学会は私も現地参加し、いくつかのセッションに登壇させていただきました。今回の参加者は2日間で延べ8,000人を超えたということで、なかなか大きな学会です。質問のとおり緩和ケア学会は、ほかの学会と異なるユニークな雰囲気があります。私が思う特徴を少しご紹介させてください。看護師をはじめ、医師以外の参加者が多い緩和ケアの実践は多職種での連携が大切です。それを象徴するように学会にも医師だけでなく多くの職種が参加しています。とくに看護師の参加が多く、職種を超えてディスカッションできるのが刺激的です。人文学、社会学的なセッションが多い緩和ケアは人生の最終段階に関連した諸問題を考える領域であり、医学以外にも人間や社会のありようにも目を向ける必要があります。そうした観点から、医学以外のテーマ・演者のセッションも多数企画されています。YouTubeなどの豊富な発信日本緩和医療学会ではYouTubeの公式チャンネル1)があり、学会前には大会長や登壇者を招き、学会の見どころや企画に込めた思いを聞くなど、さまざまな動画を発信しています。配信時にリアルタイムで視聴すれば演者の先生に質問もできます。学会の情報だけでなく、緩和ケアの知識習得に役立つ多様な動画を配信しているので、ぜひチャンネル登録をしてください。ほかにもいろいろな特徴があるのですが、とくに印象的なポイントをご紹介しました。そして、「でも、学術大会って1年後ですよね」と思った方にも朗報です。日本緩和医療学会では各地域で支部会が開催されています。支部会の規模は小さいですが、その地域で緩和ケアを実践されている方が一堂に集まりますので、ネットワーキングには非常に有効です。支部学術大会はこちらのサイトから確認できます。ぜひ、皆さんの地域の支部学術大会をチェックしてみてください。今回のTips今回のTips次の日本緩和医療学会学術大会は2024年6月14日~15日に神戸市で開催予定! それまでに各地方で開催される支部会に参加してみましょう!1)日本緩和医療学会YouTubeチャンネル

362.

聞き流しOK!ASCO2023肺がんトピックスまとめ【DtoD ラヂオ ここが聞きたい!肺がん診療Up to Date】第2回

第2回:聞き流しOK!ASCO2023肺がんトピックスまとめパーソナリティ日本鋼管病院 呼吸器内科 部長 田中 希宇人 氏ゲスト聖マリアンナ医科大学 呼吸器内科 古屋 直樹 氏関連サイト専門医が厳選した、肺がん論文・ニュース「Doctors'Picks」(医師限定サイト)講師紹介

363.

1日3.4分の高強度の身体活動で、がんリスク17%減

 高強度の身体活動(Vigorous Physical Activity:VPA)は、がん予防のために推奨される身体活動(Physical Activity:PA)を達成するための効率のよい方法であるが、多くの人にとって継続のハードルが高い。「日常生活中の高強度の断続的な身体活動(Vigorous Intermittent Lifestyle Physical Activity:VILPA)」を継続することで、がん発症のリスクを大幅に低下させる可能性があることが、新たな研究で明らかになった。オーストラリア・シドニー大学のEmmanuel Stamatakis氏らによる本研究の結果は、JAMA Oncology誌オンライン版2023年7月27日号に掲載された。 オーストラリア、シドニー大学の研究者らは、英国バイオバンクで「普段運動をしていない」と申告した人を対象にウェアラブルデバイスのデータを収集し、その後6~7年間の健康記録を調べた。参加者は2021年10月30日(死亡および入院)、2021年6月30日(がん登録)まで追跡された。 主要アウトカムは、全がんおよびPA関連がん(低いPAと関連する13のがん部位の複合アウトカム)の発生率だった。ハザード比および95%信頼区間(CI)は、年齢、性別、教育レベル、喫煙、アルコール摂取、睡眠時間、果物および野菜の摂取、両親のがん既往等で調整して推定した。 VILPAの例としては、負荷が高い家事、スーパーでの買い物袋の持ち運び、早足のウォーキング、身体を動かすゲームなどがある。このような活動は一度に行うのではなく、数分ごとに行うことが特徴だ。 主な結果は以下のとおり。・登録された2万2,398例は、平均年齢62.0(SD:7.6)歳、男性1万122例(45.2%)だった。平均追跡期間6.7(SD:1.2)年に2,356例のがんイベントが発生し、うち1,084例がPA関連がんであった。・1日のVILPA持続時間中央値が1分まで(1日当たり4.5分)の場合、VILPAを行わない場合と比較して、全がんのHRは0.80(95%CI:0.69~0.92)、PA関連がんのHRは0.69(95%CI:0.55~0.86)であった。・全がん発生率との関連が認められたVILPAの最小量は1日当たり3.4分(HR:0.83、95%CI:0.73~0.93)、PA関連がんは1日当たり3.7分(HR:0.72、95%CI:0.59~0.88)であった。 最低3.4分のVILPAを毎日行うことで、行わない場合と比較して、全がん発生率の17%減少、1日4.5分で肺がん、腎臓がん、膀胱がん、胃がんなど、PAがんの発生率の31%減少につながることが示された。著者らは「運動ができない集団や意欲のない集団にとって、断続的な短い身体活動の継続が、がん予防の有望な介入になる可能性がある」としている。

364.

進行NSCLC、治療開始前に遺伝子検査結果があるとOS良好

 進行非小細胞肺がん(NSCLC)と診断された患者において、がん遺伝子検査が推奨されているが、1次治療開始前における遺伝子検査の結果の有無と全生存期間(OS)との関連は明らかになっていない。そこで、米国・ペンシルベニア大学のCharu Aggarwal氏らは、転移を有する非扁平上皮NSCLC患者を対象に、1次治療開始前における遺伝子パネル検査の結果の有無とOSとの関連を検討した。その結果、1次治療開始前に遺伝子パネル検査の結果が得られている患者はOSが良好であり、分子標的薬による治療を受けていない患者集団においても、同様の結果が得られた。本研究結果は、JCO Precision Oncology誌2023年7月27日号で報告された。 転移を有する非扁平上皮NSCLCと新たに診断された患者を対象に、電子カルテを用いた研究を実施した。対象患者を1次治療開始前に、遺伝子パネル検査の結果が得られた患者(検査結果あり群)と結果が得られなかった患者(検査結果なし群)に分け、OSを比較した。また、1次治療開始前における遺伝子パネル検査結果の有無について、組織検体と血漿検体を用いた場合と組織検体のみを用いた場合を比較した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者326例中、1次治療開始前に遺伝子パネル検査の結果が得られたのは80%(261例)、得られなかったのは20%(65例)であった。検査結果が得られなかった65例のうち、5例は遺伝子パネル検査を受けていなかった。・追跡期間中央値14.2ヵ月において、検査結果あり群は検査結果なし群と比較して、OSが有意に長かった(調整ハザード比:0.43、95%信頼区間[CI]:0.30~0.62、p<0.0001)。・分子標的薬による治療を受けていない患者集団においても、検査結果あり群は検査結果なし群と比較して、OSが有意に長かった(p<0.0001、log-rank検定)。・組織検体と血漿検体を用いて遺伝子検査を行った患者は、組織検体のみの患者と比較して、1次治療開始前に遺伝子パネル検査の結果が得られる割合が高かった(調整オッズ比:2.06、95%CI:1.09~3.90、p=0.026)。 本研究結果について、著者らは「1次治療を開始する前に、がんゲノムプロファイリングを完了すべきであることを示すものである」とまとめた。

366.

新たながんゲノムプロファイリングシステム「GenMineTOP」発売/コニカミノルタ

 コニカミノルタおよびグループ会社であるコニカミノルタREALMは8月1日のプレスリリースにて、GenMineTOPがんゲノムプロファイリングシステム(以下、本システム)の発売を発表した。同日より保険適用され、LSIメディエンスを通じ検査受託を開始している。 本システムは、2019年6月から開始した東京大学、国立がん研究センター研究所およびコニカミノルタの次世代がん遺伝子パネルに関する共同研究開発の成果であり、固形がん患者の腫瘍組織検体から抽出したDNAおよびRNA、ならびに同一患者由来の非腫瘍細胞(がん細胞ではない正常な細胞。本検査では血液を用いる)から抽出したDNAを用いて遺伝子変異情報(データ)を解析するプログラムとして、2022年7月13日に厚生労働省より製造販売承認を取得した。 本システムを用いた包括的ながんゲノムプロファイリング検査では、腫瘍組織由来の塩基配列および非腫瘍細胞由来の塩基配列とのペア解析を行うことにより、がんの診断や治療に関連する737のがん関連遺伝子(DNA)の変異(塩基置換、挿入/欠失、コピー数異常)の検出結果、RNAの変異(融合[455遺伝子]、エクソンスキッピング[5遺伝子])の検出結果およびRNAの発現量(27遺伝子)の情報の一括取得を行うことができる。本システムによる包括的ゲノムプロファイリング検査の出力結果は、固形がん患者の診断および治療方針決定の補助として用いられる。 なお、GenMineTOPがんゲノムプロファイリングシステムは専用のポータルシステム(GenMineTOPポータル)を用いて、検査の依頼から進捗の確認、報告書のダウンロードまでを一貫して行う。検査の受託にはポータルシステムの開設が必須となっている。

367.

日本人NSCLCへのICI、PPI使用者は化学療法の併用が必要か/京都府立医大ほか

 現在、PD-L1高発現の非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する初回治療の選択肢として、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)単剤療法、複合免疫療法が用いられている。しかし、その使い分けの方法は明らかになっていない。また、プロトンポンプ阻害薬(PPI)、抗菌薬の使用歴があるNSCLC患者は、ICI単剤療法の効果が減弱する可能性が指摘されている1,2)。そこで、京都府立医科大学大学院の河内 勇人氏らは、ペムブロリズマブ単剤療法、複合免疫療法の効果と各薬剤の使用歴の関係について検討した。その結果、PPIの使用歴がある患者は、複合免疫療法の効果がペムブロリズマブ単剤療法と比較して良好であった。一方、PPIの使用歴がない場合は、治療効果に有意差は認められなかった。本研究結果は、JAMA Network Open誌2023年7月11日号で報告された。 国内13施設において、初回治療としてペムブロリズマブ単剤療法(単剤療法群)またはペムブロリズマブと化学療法の併用療法(併用療法群)を受けたPD-L1高発現(TPS≧50%)のNSCLC患者425例を後ろ向きに追跡し、治療開始時の薬剤使用歴(PPI、抗菌薬、ステロイド)を含む患者背景と治療効果の関連を検討した。単剤療法群と併用療法群の比較は、傾向スコアマッチングにより背景因子を揃えて行った。 主な結果は以下のとおり。・単剤療法群は271例(年齢中央値[範囲]:72歳[43~90]、男性:215例)併用療法群は154例(同:69歳[36~86]、男性:121例)が対象となった。・多変量解析の結果、単剤療法群においてPPI使用歴は、無増悪生存期間(PFS)の短縮に有意な関連があった(ハザード比[HR]:1.38、95%信頼区間[CI]:1.00~1.91、p=0.048)。一方、併用療法群では関連が認められなかった(同:0.83、0.48~1.45)。・多変量解析において、単剤療法群と併用療法群のいずれも、抗菌薬使用歴やステロイド使用歴とPFSには有意な関連が認められなかった。・PPI使用歴のある患者集団において、PFS中央値は単独療法群が5.7ヵ月であったのに対し、併用療法群は19.3ヵ月であり、併用療法群は単独療法群と比較してPFSが有意に改善した(HR:0.38、95%CI:0.20~0.72、p=0.002)。・同様に、全生存期間(OS)中央値は単独療法群が18.4ヵ月であったのに対し、併用療法群は未到達であり、併用療法群は単独療法群と比較してOSが有意に改善した(HR:0.43、95%CI:0.20~0.92、p=0.03)。・PPI使用歴のない患者集団において、PFS中央値は単独療法群が10.6ヵ月であったのに対し、併用療法群は18.8ヵ月であったが、併用療法群と単独療法群に有意差は認められなかった(HR:0.81、95%CI:0.56~1.17、p=0.26)。・同様に、OS中央値は単独療法群が29.9ヵ月であったのに対し、併用療法群は未到達であったが、併用療法群と単独療法群に有意差は認められなかった(HR:0.75、95%CI:0.48~1.18、p=0.21)。 著者らは、「PPIの使用歴が、PD-L1高発現のNSCLCに対するペムブロリズマブ単剤療法と複合免疫療法の治療選択の予測因子として、有用であるであることが示唆された。すなわち、いずれの治療選択肢も選択可能な患者では、PPIの使用歴がある場合、複合免疫療法が推奨される治療法であると考えられた」とまとめた。

368.

未治療の早期NSCLC、定位放射線+ニボルマブが有効/Lancet

 未治療の早期非小細胞肺がん(NSCLC)およびリンパ節転移陰性の孤立性肺実質再発NSCLC患者の治療において、定位放射線治療(SABR)+ニボルマブの併用(I-SABR)はSABR単独と比較して、4年無イベント生存率が有意に優れ、毒性は忍容可能であることが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのJoe Y. Chang氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年7月18日号に掲載された。テキサス州3病院の無作為化第II相試験 本研究は、米国テキサス州の3つの病院で実施された非盲検無作為化第II相試験であり、2017年6月~2022年3月の期間に参加者の無作為化が行われた(Bristol-Myers SquibbとMDアンダーソンがんセンターの提携機関などの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、未治療の早期NSCLC(American Joint Committee on Cancer[AJCC]第8版の病期分類でStageI~II[N0M0])、または孤立性の肺実質再発NSCLC(根治手術または化学放射線療法の施行前にTanyNanyM0)で、全身状態が良好(ECOG PSスコア0~2)な患者であった。 被験者を、I-SABRまたはSABRを受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。I-SABR群では、ニボルマブ(480mg)を4週ごとに静脈内投与した。 主要評価項目は、4年無イベント生存率であった。イベントは、局所、領域、遠隔での再発、2次原発性肺がん、死亡とされた。PP集団とITT集団の双方で良好な結果 無作為化の対象となったのは156例(intention-to-treat[ITT]集団)で、割り付けた治療を実際に受けたのは141例(per-protocol[PP]集団)であった。PP集団では66例(年齢中央値72歳[四分位範囲[IQR]:66~75]、女性70%)がI-SABR群、75例(年齢中央値72歳[IQR:66~78]、女性55%)がSABR群だった。 フォローアップ期間中央値33ヵ月の時点でのPP集団における4年無イベント生存率は、SABR群が53%(95%信頼区間[CI]:42~67)であったのに対し、I-SABR群は77%(66~91)と有意に優れた(ハザード比[HR]:0.38、95%CI:0.19~0.75、p=0.0056)。また、ITT集団でも同様の結果が示された(HR:0.42、95%CI:0.22~0.80、p=0.0080)。 SABR群では、Grade2の有害事象を3例(4%)に認めたのみで、Grade3以上の有害事象は発現しなかった。一方、I-SABR群では、10例(15%)でニボルマブに関連するGrade3の免疫関連有害事象(疲労2例、甲状腺機能亢進症1例など)を認めたが、Grade3の肺臓炎はなく、Grade4以上の毒性の発現もなかった。 著者は、「SABRへの免疫療法の追加により、治療歴のない早期NSCLCおよび孤立性肺実質再発NSCLC患者の転帰が改善することが示唆され、I-SABRはこれらの患者における治療選択肢となる可能性がある。本試験の結果は、現在進行中の第III相試験の重要な先例となるだろう」としている。

369.

8月1日 肺の日【今日は何の日?】

【8月1日 肺の日】〔由来〕「は(8)い(1)」(肺)と読む語呂合わせから、肺の健康についての理解を深め、呼吸器疾患の早期発見と予防についての知識を普及・啓発することを目的に日本呼吸器学会が1999年に制定し、翌2000年から実施。学会では、肺の病気・治療について全国で一般市民を対象にした講座会や医療相談会を行っている。関連コンテンツ軽症の肺炎は入院適応ではないのか?【救急診療の基礎知識】電子タバコは紙巻きタバコの禁煙には役立たない【患者説明用スライド】抗菌薬の長期使用で肺がんリスクが増加肺炎の予防戦略、改訂中の肺炎診療GLを先取り/日本呼吸器学会軽症の肺炎は入院適応ではないのか?【救急診療の基礎知識】

370.

包括的がんゲノムプロファイリングリキッドバイオプシーGuardant360 CDx がん遺伝子パネル販売開始

 ガーダントヘルスジャパンは、固形がん患者を対象とした包括的がんゲノムプロファイリング(CGP)用リキッドバイオプシー Guardant360 CDx がん遺伝子パネルについて、2023年7月24日より保険償還が開始され、同日より販売すると発表した。併せて、エスアールエルによる検査の受託が開始される。 Guardant360 CDx がん遺伝子パネルは、血中循環腫瘍DNA (ctDNA) を次世代シークエンサーによって解析するがん遺伝子パネル検査として、2022年3月10日に厚生労働省より承認されている。固形がん患者の血液検体から、がんに関連の74遺伝子を網羅的に調べることが可能。 Guardant360 CDx がん遺伝子パネルは、また、下記のコンパニオン診断としても承認されている。・KRAS G12C:(非小細胞肺がん)ソトラシブ・MSI-High:(結腸・直腸がん)ニボルマブ・MSI-High:(固形がん)ペムブロリズマブ

371.

静脈血栓塞栓症の治療に難渋した肺がんの一例(前編)【見落とさない!がんの心毒性】第23回

※本症例は、患者さんのプライバシーに配慮し一部改変を加えております。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》年齢・性別30代・男性既往歴なし併存症健康診断で高血圧症、脂質異常症を指摘され経過観察喫煙歴なし現病歴発熱と咳嗽が出現し、かかりつけ医で吸入薬や経口ステロイド剤が処方されたが改善せず。腹痛が出現し、総合病院を紹介され受診した。胸部~骨盤部造影CTで右下葉に結節影と縦隔リンパ節腫大、肝臓に腫瘤影を認めた。肝生検の結果、原発性肺腺がんcT1cN3M1c(肝転移) stage IVB、ALK融合遺伝子陽性と診断した。右下肢の疼痛と浮腫があり下肢静脈エコーを実施したところ両側深部静脈血栓塞栓症(deep vein thrombosis:DVT)を認めた。肺がんに伴う咳嗽以外に呼吸器症状なし、胸部造影CTでも肺塞栓症(pulmonary embolism:PE)は認めなかった。体重65kg、肝・腎機能問題なし、血圧132/84 mmHg、脈拍数82回/min。肺がんに対する一次治療としてアレクチニブの投与を開始した。画像所見を図1に、採血データを表1に示す。(図1)中枢性DVT診断時の画像所見画像を拡大する(表1)診断時の血液検査所見画像を拡大する【問題1】DVTに対し、どのような治療が考えられるか?【問題2】筆者が本症例でがん関連血栓塞栓症のリスクとして注目した患者背景は何か?第24回(VTEの治療継続で生じた問題点とその対応)に続く。1)Dou F, et al. Thromb Res. 2020;186:36-41.2)Al-Samkari H, et al. J Thorac Oncol. 2020;15:1497-1506.3)Wang HY, et al. ESMO Open. 2022;7:100742.4)Qian X, et al. Front Oncol. 2021;11:680191.講師紹介

372.

心肺持久力が大腸がん・肺がん・前立腺がんの発症と死亡リスクに関連

 約18万人のスウェーデン人男性を平均9.6年間追跡調査したコホート研究の結果、心肺持久力(CRF)が高いと大腸がん罹患リスクが低く、また肺がんおよび前立腺がんによる死亡リスクが低いことが示された。この結果から、これらのがんの罹患リスクおよび死亡リスクの低減に、CRFが潜在的に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。スウェーデン・The Swedish School of Sport and Health SciencesのElin Ekblom-Bak氏らが、JAMA Network Open誌2023年6月29日号に報告。 本研究は、スウェーデンにおいて1982年10月~2019年12月に労働衛生健康プロファイル評価を完了した男性を対象とした前向きコホート研究。CRFは最大下サイクルエルゴメーター試験を用いて推定した最大酸素消費量(mL/分/kg)として評価した。また、がんの罹患率および死亡率のデータは全国登録から取得した。ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)はCox比例ハザード回帰を用いて算出した。さらにCRFを4群(非常に低い:25以下、低:25~35、中等度:35~45、高:45超)に層別化し、非常に低い群を基準としてHRと95%CIを算出した。 主な結果は以下のとおり。・男性17万7,709人(年齢:平均42歳[範囲:18~75歳]、BMI:平均26、平均追跡期間:9.6年)のデータを解析した。・罹患リスクは、CRFが高いほど、大腸がん(HR:0.98、95%CI:0.96~0.98)および肺がん(HR:0.98、95%CI:0.96~0.99)では有意に低く、前立腺がん(HR:1.01、95%CI:1.00~1.01)では高かった。・死亡リスクは、CRFが高いほど、大腸がん(HR:0.98、95%CI:0.96~1.00)、肺がん(HR:0.97、95%CI:0.95~0.99)、前立腺がん(HR:0.95、95%CI:0.93~0.97)ともに低かった。・4群に層別化し完全調整した場合、大腸がん罹患率については、非常に低いCRFに比べ、中等度CRFでのHRが0.72(95%CI:0.53~0.96)、高CRFでのHRが0.63(95%CI:0.41~0.98)と関連が残った。前立腺がん死亡率については、低CRF(HR:0.67、95%CI:0.45~1.00)、中等度CRF(HR:0.57、95%CI:0.34~0.97)、高CRF(HR:0.29、95%CI:0.10~0.86)で関連が残った。肺がん死亡率では、高CRF(HR:0.41、95%CI:0.17~0.99)で有意であった。

373.

プラチナ不適NSCLCの1次治療、アテゾリズマブがOS改善(IPSOS)/Lancet

 StageIIIB/IVの非小細胞肺がん(NSCLC)でプラチナダブレット化学療法を受ける患者の1次治療として、アテゾリズマブは単剤化学療法と比較し、全生存期間(OS)を改善し、2年生存率を倍増させ、QOLの維持および良好な安全性プロファイルと関連したことが示された。英国・University College London Hospitals NHS Foundation TrustのSiow Ming Lee氏らが、第III相国際多施設共同非盲検無作為化対照試験「IPSOS試験」の結果を報告した。進行または転移のあるNSCLC患者に対する免疫療法の進展にもかかわらず、主な1次治療試験では、対象患者がECOS PS 0~1で年齢中央値65歳以下に限定されていた。IPSOS試験ではプラチナ製剤を含むレジメン不適の患者が対象とされ、アテゾリズマブの有効性と安全性が検討された。著者は、「今回示されたデータは、プラチナをベースとした化学療法が不適の進行NSCLC患者に対して、アテゾリズマブ単剤療法が潜在的な1次治療の選択肢であることを支持するものである」と述べている。Lancet誌オンライン版2023年7月6日号掲載の報告。23ヵ国91施設で試験、単剤化学療法と比較しOSを評価 IPSOS試験は、アジア、欧州、北米および南米の23ヵ国91施設で行われた。StageIIIB/IVのNSCLCでプラチナダブレット化学療法が試験担当医によって不適と判断された患者を、本試験の適格とした。不適の判断理由は、ECOG PSが2または3であること、あるいは、ECOG PSは0~1だが重大な併存疾患を有するかプラチナダブレット化学療法が禁忌で70歳以上であることであった。 被験者は、2対1の割合で置換ブロック法により無作為化され(ブロックサイズ6)、アテゾリズマブ1,200mg 3週ごと静脈内投与または単剤化学療法(ビノレルビン[経口または静脈内投与]またはゲムシタビン[静脈内投与]、試験地の規定用量に準じる)を3週または4週サイクルでそれぞれ受けた。 主要評価項目はOS(intention-to-treat集団で評価)。安全性解析は、アテゾリズマブまたは化学療法のあらゆる任意投与を受けたすべての無作為化された被験者を含む安全性評価集団を対象に行われた。OSは有意に延長、2年生存率は24% vs.12% 2017年9月11日~2019年9月23日に453例が登録・無作為化された(アテゾリズマブ群302例、化学療法群151例)。 アテゾリズマブは化学療法と比べてOSを有意に延長した(OS中央値10.3ヵ月[95%信頼区間[CI]:9.4~11.9]vs.9.2ヵ月[5.9~11.2]、層別ハザード比[HR]:0.78[95%CI:0.63~0.97]、p=0.028)。2年生存率は、アテゾリズマブ群24%(95%CI:19.3~29.4)、化学療法群12%(6.7~18.0)であった。 化学療法と比較してアテゾリズマブは、患者報告の健康関連QOL機能尺度および症状の安定化や改善、Grade3~4の治療関連有害事象(49/300例[16%]vs.49/147例[33%])および治療関連死(3例[1%]vs.4例[3%])の減少と関連していた。

374.

ASCO2023 レポート 肺がん

レポーター紹介2023年のASCOはCOVID-19の影響をまったく感じさせず、ハイブリッド形式とはいえ現地をベースとした印象を強く打ち出した形で実施された。肺がん領域では、ここ数年肺がんの演題がなかったPlenaryでADAURAのOverall survival(OS)が採択されるなど、久しぶりに話題の多い年であったといえる。引き続き周術期の演題が大きな注目を集めているものの、進行肺がんにおいてもAntibody-drug conjugate(ADC)を用いた治療開発がさらに進展、成熟の段階を迎えており、免疫療法や分子標的薬についても新たな取り組みが報告されている。本稿では、その中から重要な知見について解説したい。ADAURA試験EGFR遺伝子変異陽性、完全切除後のStageIB、II、IIIA非小細胞肺がんを対象として、オシメルチニブを試験治療(36ヵ月)とし、プラセボと比較した第III相試験がADAURA試験である。プラチナ併用療法による標準的な術後療法を受けていない患者の登録も許容されており、両群とも約半数が術後療法を受けている。682例の患者が1:1で両群に割り付けられた。主要評価項目はII期、IIIA期の患者における無病生存割合、副次評価項目として全患者集団での無病生存期間(DFS)、全生存期間(OS)等が設定されている。2020年のASCOで、DFSがハザード比0.17、95%信頼区間0.12~0.23という驚異的な結果と共にPlenaryで発表された。従来、試験治療群のDFSが36ヵ月の投与期間後に明らかに悪化していること、CTONG1104やIMPACT試験等の第1、2世代のEGFR-TKIを用いた術後療法の試験がOS延長を示さなかったことなどから、オシメルチニブを用いたADAURAのOS結果への注目が高まる一方であった。3年を経て今年のASCOで、2度目のPlenaryでOSの最終解析の結果が報告された。II期、IIIA期のOSは、ハザード比0.49、95%信頼区間0.33~0.73で有意な延長を示し、5年時点での生存割合は術後オシメルチニブ群で85%、プラセボ群で73%と、12%の上乗せを示している。最も懸念されていた、DFSのような観察期間の後半、とくに36ヵ月を過ぎた後の試験治療群での悪化は今回の解析では明らかではなかったことも、好印象であった。フォローアップ期間は術後オシメルチニブ群で61.7ヵ月、プラセボ群で60.4ヵ月といずれも5年を超えて一見十分のように見えるが、OSのイベントは、オシメルチニブ群で15%、プラセボ群で27%と両群合わせても21%であり、報告された生存曲線を見ても48ヵ月時点以降は打ち切りの表示が多数存在していた。幸いなことに、今回の「最終解析」以降も、OSについてはフォローアップ結果を報告することが触れられていた。DFSで認められたような解析後半での試験治療群の動向を、OSで確認するためにはおそらく7年や8年のフォローアップが必要になる可能性が高いことから、より成熟した解析結果から得られる情報も重要になってくる。従来と同様のサブセット解析結果も同時に報告されており、IB期を加えた全患者で、プラチナベースの術後療法の有無で分けた解析、いずれにおいてもハザード比はほぼ変わらず、いずれの切り口でも術後オシメルチニブの優越性が示されている。発表後に世界中の肺がん専門家の間で、「思ったよりも良かった」OSの結果についてさまざまな議論が巻き起こっている。その中でも最も強く指摘されている点が、プラセボ群での再発後の治療としてのオシメルチニブの実施割合である。後治療の解析において、プラセボ群で再発し後治療が行われた184例中、オシメルチニブが使用されたのは79例(43%)にとどまり、114例(62%)は他のEGFR-TKIで治療されていることが報告された。この点について、批判的な意見として「OSの違いはオシメルチニブを術後に使用したかしなかったかではなく、タイミングによらずオシメルチニブが使用できたか否かを反映しているだけ」という点が提起されている。一方、擁護的な意見として、「オシメルチニブでないにしても何らかのEGFR-TKIがほとんどの患者の後治療で使用されているため大きな問題ではない」という見解も存在する。議論はあるものの、大局的には、術後にEGFR遺伝子変異をチェックし、術後オシメルチニブにアクセスできない国や地域を減らすことが重要と考えられる。KEYNOTE-671試験病理学的に確認された臨床病期II、IIIA、IIIB(N2)期、切除可能非小細胞肺がんを対象として、術前ペムブロリズマブ+プラチナ併用療法最大4サイクル後の切除、術後ペムブロリズマブ(13サイクル)を試験治療とし、術前プラセボ+プラチナ併用療法最大4サイクル後の切除、術後プラセボ(13サイクル)による標準治療と比較する第III相試験がKEYNOTE-671試験である。割付調整因子として、II期vs.III期、PD-L1 50%未満vs.以上、組織型、東アジアかそれ以外か、が設定されている。786例の患者が1:1で両群に割り付けられた。主要評価項目は無イベント生存(EFS)とOSのCo-primaryであり、副次評価項目としてmPR、pCR、安全性等が設定されている。今回発表されたEFSはハザード比0.58、95%信頼区間0.46~0.72でペムブロリズマブによる術前、術後療法を行ったほうが有意に延長するという結果であった。24ヵ月時点のEFSの点推定値は術前術後ペムブロリズマブ群で62.4%、術前術後プラセボ群で40.6%であり、22%程度の上乗せを認めている。OSはまだ未成熟であるものの、ハザード比0.72と術前術後ペムブロリズマブ群が良好な傾向を示している。病理学的な奏効に応じたサブセット解析において、pCRが達成された患者、達成されなかった患者、いずれにおいてもペムブロリズマブを術前術後に上乗せすることでEFSの延長傾向が示されていた。mPRで行われた同様の解析でも、同じ傾向が示されている。24ヵ月時点のEFSの点推定値は、すでに発表され実地診療にも導入されているニボルマブ+プラチナ併用療法を術前に3サイクルのみ実施したCheckMate 816試験において65%と報告されており、術前術後ともにペムブロリズマブを実施したKEYNOTE-671の62.4%という結果は異なる試験、異なる患者集団の比較ではあるもののほぼ同一であった。病理学的な奏効に基づくサブセット解析において、とくにpCRやmPRを達成した患者でもペムブロリズマブの上乗せ効果が存在する可能性がある点は注目に値するものの、標準治療がプラチナ併用療法であることから、術前だけでなく術後にペムブロリズマブを追加することの意義を示すことは、本試験のこの解析だけでは難しいと考えられる。いずれにせよ、まずは初回解析の結果が得られたところであり、今後のアップデートに注目したい。NEOTORCH試験臨床病期II、III期、切除可能非小細胞肺がんを対象として、術前toripalimab+プラチナ併用療法3サイクル後の切除、術後toripalimab+プラチナ併用療法1サイクル、術後toripalimab(13サイクル)を試験治療とし、術前プラセボ+プラチナ併用療法3サイクル後の切除、術後プラセボ+プラチナ併用療法1サイクル、術後プラセボ(13サイクル)による標準治療と比較する第III相試験がNEOTORCH試験である。術前3サイクルだけでなく、術後にもtoripalimabもしくはプラセボとプラチナ併用療法を1サイクル実施した後に、toripalimabもしくはプラセボによる術後療法を実施するという、少し変わったレジメンが設定されている。主要評価項目であるIII期でのEFS、II~III期でのEFS、III期でのmPR、II~III期でのmPRについて、αをリサイクルしながら順に評価するデザインであり、副次評価項目としてOS、pCR、DFS、安全性等が設定されている。500例が1:1に両群に割り付けられている。中国で開発された薬剤を用いた、中国国内で実施された試験であるが、これだけの大規模試験を単一の国で立案し、このスピード感で実施できることは驚くべきことである。実施の背景を反映して、喫煙率が8割以上と非常に高く、扁平上皮がんが8割を占める点が、結果の解釈にも影響するポイントといえる。また、解析方法も変則的であり、今回の初回解析ではIII期のみが対象となっている。III期のEFSは、ハザード比0.40、95%信頼区間0.277~0.565と、有意に試験治療群が良好な結果であり、24ヵ月時点のEFS点推定値は試験治療群で64.7%、標準治療群で38.7%であった。KEYNOTE-671試験同様に、CheckMate 816試験と24ヵ月時点のEFSの点推定値は同等ともいえるが、今回はIII期のみの解析であること、扁平上皮がんの割合が非常に高いことなどが、結果の解釈を複雑にしている。病理学的奏効に基づくサブセット解析も報告されており、mPRとなった集団においてもtoripalimabの上乗せが示されているが、KEYNOTE-671同様、標準治療がプラチナ併用療法であることから術後ICIの意義を検証できるデザインとはなっていない。toripalimabが日本国内で使用可能になる可能性は高いとはいえないものの、他のGlobal trialとは異なる特徴を持った試験として、今後のアップデートに注目したい。KEYNOTE-789試験EGFR-TKIで治療後のEGFR ex19delもしくはL858R遺伝子変異を有する進行非小細胞肺がんを対象として、ペムブロリズマブ+ペメトレキセド+プラチナ併用療法最大4サイクル後のペムブロリズマブ(最大31サイクル)+ペメトレキセド維持療法を試験治療とし、プラセボ+ペメトレキセド+プラチナ併用療法最大4サイクル後のプラセボ(最大31サイクル)+ペメトレキセド維持療法による標準治療と比較する第III相試験がKEYNOTE-789試験である。割付調整因子として、PD-L1 50%未満vs.50%以上、オシメルチニブ投与歴の有無、東アジアかそれ以外か、が設定されている。492例の患者が1:1で両群に割り付けられた。主要評価項目はPFSとOSのCo-primaryであり、副次評価項目として奏効割合、DOR、安全性、PRO等が設定されている。PFSのハザード比は0.80、95%信頼区間は0.65~0.97で、事前に設定された有効性の判断規準であるp=0.0117に対してp=0.0122と、Negativeであったことが報告されている。PFSの中央値も、試験治療群で5.6ヵ月、標準治療群で5.5ヵ月とほぼ一致しており、12ヵ月時点のPFS割合も試験治療群14.0%、標準治療群10.2%と大きな違いはなかった。OSについても同様の結果であり、昨年のESMO Asiaで報告されたCheckMate 722試験と同様Negativeな結果であった。サブグループ解析において、PD-L1が1%以上の群でPFSが良好な傾向が示されているものの、ハザード比は0.77とそれほど大きな違いではなかった。EGFR遺伝子変異陽性肺がんにおける免疫チェックポイント阻害薬の意義については、IMpower150試験のサブセット解析で良好な結果が示されて以来注目されてきたが、検証的な試験では軒並み結果が出せていない。EGFR-TKI耐性化後の治療については、耐性機序に基づく分子標的薬、ADC等による戦略への期待がさらに高まる状況となっている。TROPION-Lung02試験TROP2を標的としたADCであるdatopotamab deruxtecan(Dato-DXd)の第 Ib相試験の中で、Dato-DXdとペムブロリズマブの併用療法にプラチナ併用療法を追加した群(Triplet群)と、追加しなかった群(Doublet群)を評価した試験がTROPION-Lung02試験である。Dato-DXdは4mg/kgもしくは6mg/kg、ペムブロリズマブは200mg 3週おきで実施されている。初回治療の患者において、Doublet群での奏効割合が44%、Triplet群での奏効割合が55%であった。安全性については、Grade3以上の治療関連の有害事象がDoublet群で31%、Triplet群で58%に発生している。試験治療に関連した死亡はなかったものの、Dato-DXdとペムブロリズマブの併用療法でとくに留意すべき口内炎Grade3以上はDoublet群8%、Triplet群6%、間質性肺炎All gradeはDoublet群17%(Grade3以上3%)、Triplet群22%(Grade3以上3%)と報告されている。TROP2に対するADCは、TROP2がNSCLCにおいて幅広く発現する良い標的蛋白であることから注目されているが、分子標的薬とは異なりADCでは細胞障害性抗がん剤の毒性も加味されることから安全性については留意が必要となることが、本試験の結果でも明らかにされている。現在、TROPION-Lung07試験(PD-L1 50%未満でのKEYNOTE-189レジメンと、Doublet、Tripletの3群比較試験)、TROPION-Lung08試験(PD-L1 50%以上でのペムブロリズマブとDoubletの比較試験)が実施されている。sunvozertinibEGFR exon20 insertionに対して開発が進められているsunvozertinib(DZD9008)を用いた、単群WU-KONG6試験の結果が報告された。EGFR exon20 insertion変異が確認され、3ラインまでの前治療歴を有する97例の患者が登録されている。年齢中央値は58歳、女性が59.8%、非喫煙者が67%、変異のタイプは769_ASVが39.2%、770_SVDが17.5%、プラチナ併用療法のほかにEGFR-TKIが26.8%、免疫チェックポイント阻害薬が35.1%で実施されていることが患者背景として報告された。独立評価委員会による奏効割合はPRが60.8%、SDが26.8%であり、exon20 insertion変異のタイプによらず有効性が示されている。主なGrade3以上の毒性は、下痢7.7%、CK上昇17.3%、貧血5.8%などであり、皮疹や爪囲炎等のEGFR wild typeの阻害に基づく有害事象の頻度は比較的低く抑えられている。EGFR exon20 insertionを標的とする薬剤の開発はこのところ過熱しており、EGFR wild type阻害に基づく有害事象を抑制しつつ、高い奏効割合を示す薬剤に期待が集まっている。SCARLET(WJOG14821L)試験SCARLET(WJOG14821L)試験は、KRAS G12C変異を有する、未治療進行非小細胞肺がん患者を対象として、ソトラシブとカルボプラチン+ペメトレキセドを併用する第II相試験である。期待奏効割合を65%、閾値奏効割合を40%と設定し、α0.1、β0.1として30例を必要症例数として実施された。患者背景からは、年齢中央値は70歳、男性/女性25/5、非喫煙/喫煙1/29であり、KRAS G12Cらしい患者集団であることが報告されている。主要評価項目であるBICRによる奏効割合は88.9%、80%信頼区間は76.9~95.8と統計学的にPositiveな結果であった。PFSの中央値はBICRで5.7ヵ月であり、6ヵ月時点のOS割合は87.3%と報告されている。KRAS G12Cに対する、ソトラシブ単剤の奏効割合は30%から35%と報告されており、必ずしも満足できる水準ではないことから、本試験の高い奏効割合は注目を集めている。一方、同じく今年報告された、KontRASt-01試験における新たなKRAS G12C阻害薬であるJDQ443により、Early phaseの試験ではあるものの57.1%という良好な奏効割合も報告されている。さらに、KRASやRASを対象とした薬剤開発は加速しており、Pan-KRAS阻害薬、Pan-RAS阻害薬などが次々と早期臨床試験に入り、有効性の向上が期待されている。

375.

ASCO2023 レポート 老年腫瘍

レポーター紹介ここ数年、ASCO annual conferenceにおいて高齢がん患者に関するpivotal trialが次々と発表され、老年腫瘍の領域を大いに盛り上げている。これに伴い、高齢者機能評価(Geriatric Assessment)という用語が市民権を得てきたように感じる。今年のASCOでは、高齢者機能評価を単に実施するのではなく、その結果をどのように使うべきかを問うような試験が多かったように思う。その中から、興味深い研究を抜粋して紹介する。『高齢者機能評価+脆弱な部分をサポートする診療』の費用対効果分析(THE 5C STUDYの副次的解析: #120121))THE 5C STUDYは、ASCO 2021 annual conferenceで発表されたランダム化比較試験である2)。70歳以上の高齢がん患者を対象として、標準診療である「通常の診療(Standard of Care:SOC)」と比較して、試験診療である「高齢者機能評価を実施し、通常の腫瘍学的な治療に加えて老年医学の訓練を受けたチームによるサポートを行う診療(Geriatric Assessment and Management:GAM)」が、健康関連の生活の質(EORTC QLQ-C30のGlobal health status)において、優越性を示すか否かを検証したランダム化比較試験である。残念ながら、QOLスコアの変化は両群で差がなくnegative trialであった。今回、事前に設定されていた費用対効果分析の結果が公表された。カナダの8つの病院から350例の参加者が登録され、SOC群に177例、GAM群に173例が割り付けられた。EQ-5D-5Lは、登録時、登録6ヵ月後、9ヵ月後、12ヵ月後に評価され、医療費(入院費、救急外来受診費、検査や手技の費用、化学療法や放射線治療の費用、在宅診療の費用、保険外医療費)は患者の医療費用ノートなるものから抽出された。Primary endpointは増分純金銭便益(incremental monetary benefit:INMB)とした(INMB=(λ*ΔQALY)−ΔCosts、閾値は5万ドル)。結果として、患者当たりの総医療費は、SOC群で4万5,342ドル、GAM群で4万8,396ドルであった。全適格患者におけるINMBはマイナス(-3,962ドル、95%CI:-7,117ドル~-794ドル)であり、SOCと比較してGAMの費用対効果は不良という結果であった。サブグループ解析では、根治目的の治療をする集団におけるINMBはプラス(+4,639ドル、95%CI:61ドル~8,607ドル)、緩和目的の治療をする集団におけるINMBはマイナス(−13,307ドル、95%CI:-18,063ドル~-8,264ドル)であった。以上から、根治目的の治療をする集団においては、SOCと比較してGAMの費用対効果は良好であったと結論付けている。「高齢者機能評価+脆弱な部分をサポートする診療」の費用対効果分析を行った初めての試験である。個人的な意見だが、とても勇気のある研究だと思う。これまで、高齢者機能評価+脆弱な部分をサポートする診療の有用性を評価するランダム化比較試験の結果が複数公表されており、NCCNガイドラインなどの老年腫瘍ガイドラインでもこれが推奨されている。つまり、老年腫瘍の領域において、高齢者機能評価を実施すること、また高齢者機能評価+脆弱な部分をサポートする診療を浸透させることは、暗黙の了解であった。しかし、このタイミングでGAMの費用対効果分析を実施するあたり、THE 5C STUDYの研究代表者であるM. Putsは物事を客観的に見ることができる研究者であることがわかる(高齢者機能評価を浸透することに尽力している研究者でもある)。本研究では、根治目的の治療を実施する場合はGAMの費用対効果が悪いこと、緩和目的の治療を実施する場合はGAMの費用対効果が良いことが示された。もちろん費用対効果分析の研究にはlimitationが付き物であり、またサブグループ解析の結果をそのまま受け入れるべきではないが、この結果はある程度は臨床的にも理解可能である。すなわち、根治を目的とする治療ができるような高齢者は早期がんかつ元気であることが想定され、この集団はGAMに鋭敏に反応するかもしれない。たとえば、手術や根治的(化学)放射線治療などの根治を目的とする治療を実施する場合、早期のリハビリ(術前リハビリを含む)や栄養管理などはADLの自立に役立つだろうし、有害事象の予防・早期発見に役立つだろう。一方、緩和を目的とする治療を実施するような高齢者は進行がんかつフレイルな高齢者あることが想定され、この集団はGAMをしても反応が鈍いのかもしれない。GAMには人材や時間という医療資源もかかるため、GAMを導入する場合、優先順位は手術などを受ける患者から、という議論をする際の参考資料になりうる結果である。老年科医によるコーチングの有用性を評価した多施設ランダム化比較試験(G-oncoCOACH study: #120003))明鏡国語辞典によると、「コーチング」とは、「(1)教えること。指導・助言すること。(2)コーチが対話などのコミュニケーションによって対象者から目的達成のために必要となる能力を引き出す指導法。」とある。G-oncoCOACH studyは、「G(Geriatrician、老年科医)」が「oncoCOACH(腫瘍学も含めたコーチング)」することの有用性を検証したランダム化比較試験である。本試験はベルギーの2施設で実施された。主な適格規準は、70歳以上、固形腫瘍の診断を受け、がん薬物治療が予定されており(術前補助化学療法、術後補助化学療法は問わず、また分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬も対象)、余命6ヵ月以上と予測されている集団であった。登録後は、高齢者機能評価によるベースライン評価ができた患者のみが、標準診療群(腫瘍科医が主導して患者指導[コーチング]する診療)と試験診療群(老年科医が主導して患者指導[コーチング]する診療)にランダム化された。具体的には、標準診療群では、登録時に実施された高齢者機能評価の結果と非常に簡素なケアプランが提示されるのみで、それを実践するか否かは腫瘍科医に委ねられていた。一方、試験診療群では、登録時に実施された高齢者機能評価の結果と非常に詳細なケアプランが提示され、また老年科医チームによる集中的な患者指導、綿密なフォローアップにより、ケアプランを診療に実装し、再評価および継続できるようなサポートが徹底された。primary endpointはEORTC QLQ-C30のGlobal health status(GHS)。登録時から登録6ヵ月時点での臨床的に意味のある差を10ポイントと定義し、α5%(両側)、検出力80%とした場合の必要登録患者数は195例。ベースラインからの差として、3ヵ月、6ヵ月のデータを基に、6ヵ月時点の両群の最小二乗平均値を推定し、その群間差をベースラインの因子を含めて調整したうえでprimary endpointが解析された。結果として、背景因子で調整した登録時から登録6ヵ月後のGHSの変化は、標準診療群で-8.2ポイント、試験診療群で+4.5ポイントであり、その差は12.8ポイントであった(95%CI:6.7~18.8、p<0.0001)。この結果から、高齢がん患者の診療において、老年科医が患者指導(コーチング)をする診療を推奨すると結論付けている。いくら高齢者機能評価を実施して、それに対するケアプランを提示しても、それが実践されていなかったり継続的なサポートがなされていなかったりすれば意味がないだろう、という考えの下に行われた研究である。つまり、「腫瘍科医による患者指導(コーチング)」 vs.「老年科医による患者指導(コーチング)」を比較した試験ではあるが、その実、「ケアプランの実践と、その後のサポートを徹底するか否か」を評価している試験である。実際、本試験が実施されたベルギーでは、ケアプランを策定しても、それを日常診療に使用する腫瘍科医は46%程度と低いものだったようである。腫瘍科医に任せると完全にはケアプランが実践されないが、老年科医に任せればケアプランが実践され、継続性もサポートされるだろうということである(筆者が研究代表者から個人的に聞いた内容も含まれる)。結果、高齢者機能評価は単に実施するだけでは十分ではなく、その使い方に精通した医療者(本試験の場合は老年科医)がリーディングするのが良いというものであった。本邦には、がん治療に精通した老年科医が少ないため、現時点では「老年科医による患者指導(コーチング)」を取り入れるのは難しいだろう。しかし、腫瘍科医では想像できないような老年科医の「コツ」なるものがあるのは容易に想像できる。老年腫瘍を発展するために老年科医の存在は必須であり、老年科医らとの協働は引き続き進めてゆくべきであろう。日本発の高齢者機能評価+介入のクラスターランダム化比較試験(ENSURE-GA study: #4094))非小細胞肺がん患者を対象とした、高齢者機能評価+介入の有用性を患者満足度で評価した日本発のクラスターランダム化比較試験*である。*地域や施設を1つのまとまり(クラスター)としてランダム化する研究デザイン主な適格規準は、75歳以上、非小細胞肺がんの診断を受けている、根治的治療ができない、PS 0〜3、初回化学療法未実施、登録時の高齢者機能評価で脆弱性を有するとされた患者であった。本試験は、病床数とがん診療連携拠点病院の指定の有無および施設の所在地域で層別化し、同層の中で「施設」のランダム化が行われた。標準診療群は「通常の診療(高齢者機能評価の結果は医療者に伝えない)」、試験診療群は「高齢者機能評価の結果に基づき脆弱な部分をサポートする診療」である。primary endpointは、治療開始「前」の患者満足度(HCCQ質問指標で評価:35点満点[点数が高いほど満足度が高い])。必要患者登録数は1,020例であった。結果、治療開始「前」の患者満足度は、標準診療群で29.1ポイント、試験診療群で29.9ポイントであった(p<0.003)。米国の老年腫瘍学の大家にS. Mohileがいる。本試験は、彼女が2020年にJAMA oncologyに公表した試験の日本版である(がん種のみ異なる)5)。Mohileらの試験と同じとはいえ、「患者」ではなく「施設」をランダム化(クラスターランダム化)したところが本試験の特徴である。通常のランダム化、すなわち「患者」をランダム化する場合、同じ施設、同じ主治医が、異なる群に割り付けられた患者を診療する可能性がある。薬物療法の試験であれば、またprimary endpointが全生存期間などの客観的な指標であれば、この設定でも問題ないだろう。しかし、本試験のように、高齢者機能評価を実施するか否かを評価するような試験、また、primary endpointが主観的な指標である場合は、この設定だと問題が生じる可能性がある。すなわち、通常の「患者」をランダム化するデザインにすると、ある登録患者で高齢者機能評価の有用性を実感した医療者がいた場合、次の登録患者が標準診療群だとしても臨床的に高齢者機能評価を実施してしまうことはありうる(その逆もありうる)。そうなると、両群で同じことをしていることになり、その群間差は薄まってしまうのである。これを解決するのが「施設」のランダム化、すなわちクラスターランダム化であるが、その方法が煩雑であること、サンプルサイズが増えてしまうことなどから、それほど日本では一般的ではない6)。しかし、本試験では、クラスターランダム化デザインを選択したことにより、その科学性が高まったといえる。一方、primary endpointを治療開始「前」の患者満足度(HCCQ質問指標)としたことについては疑問が残る。Mohileらの試験でもprimary endpointを治療開始「前」の患者満足度にすることの是非は問われたが、老年腫瘍の黎明期でもあり、高齢者機能評価のエビデンスを蓄積するためにやむを得ないと考えていた。しかし、時代は変わり、高齢者機能評価のエビデンスが蓄積されつつある現在で、primary endpointを治療開始「前」の患者満足度にすることの意義は変わってくる。登録から治療開始前までに高齢者機能評価を実施し、それについてサポートを受けられるのであれば、患者の満足度が高いことは自明であろう。また、本試験では、HCCQの群間差は0.8ポイントであるが、この差が臨床的に意味のある差か否かは不明である。さらに、ポスターに掲載されているFigureを見る限り、登録3ヵ月後のHCCQは両群で差がないように見える。しかし、本邦から1,000例を超す老年腫瘍のクラスターランダム化比較試験が発表されたことは称賛に値する。参考1)Cost-utility of geriatric assessment in older adults with cancer: Results from the 5C trial2)Impact of Geriatric Assessment and Management on Quality of Life, Unplanned Hospitalizations, Toxicity, and Survival for Older Adults With Cancer: The Randomized 5C Trial3)A multicenter randomized controlled trial (RCT) for the effectiveness of Comprehensive Geriatric Assessment (CGA) with extensive patient coaching on quality of life (QoL) in older patients with solid tumors receiving systemic therapy: G-oncoCOACH study4)Satisfaction in older patients by geriatric assessment using a novel tablet-based questionnaire system: A cluster-randomized, phase III trial of patients with non-small-cell lung cancer (ENSURE-GA study; NEJ041/CS-Lung001)5)Communication With Older Patients With Cancer Using Geriatric Assessment: A Cluster-Randomized Clinical Trial From the National Cancer Institute Community Oncology Research Program6)小山田 隼佑. “クラスター RCT”. 医学界新聞. 2019-07-01. (参照2023-07-03)

376.

StageIII NSCLC、周術期ニボルマブ上乗せで生存改善(NADIM II)/NEJM

 切除可能なStageIIIA/IIIBの非小細胞肺がん(NSCLC)における術前補助療法について、ニボルマブ+化学療法は化学療法のみの場合と比べ、病理学的完全奏効(CR)の割合は有意に高率(相対リスク5.34)で、生存延長にも結び付くことが示された。スペイン・Puerta de Hierro-Majadahonda大学病院のMariano Provencio氏らが、非盲検第II相無作為化比較試験の結果を報告した。NSCLC患者の約20%がStageIIIを占める。これら患者の最も至適な治療についてコンセンサスが得られていなかった。NEJM誌オンライン版2023年6月28日号掲載の報告。病理学的CR、PFS、OSなどを検証 研究グループは、切除可能なStageIIIA/IIIBのNSCLCの患者を無作為に2群に分け、一方には術前補助療法としてニボルマブ+プラチナ製剤ベースの化学療法(実験群)を、もう一方には、同様の化学療法のみを行い(対照群)、両群ともにその後手術を実施した。実験群でR0切除を受けた被験者に対しては、術後6ヵ月間、ニボルマブ補助療法を行った。 主要評価項目は、病理学的CR(切除した肺・リンパ節残存腫瘍0%)だった。副次評価項目は、24ヵ月時点の無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)で安全性も評価した。2年推定PFSは実験群67.2%、対照群40.9% 86例が無作為化され、実験群は57例、対照群は29例だった。病理学的CRが認められたのは、実験群37%、対照群7%だった(相対リスク:5.34、95%信頼区間[CI]:1.34~21.23、p=0.02)。手術を受けたのは、実験群93%、対照群69%だった(相対リスク:1.35、95%CI:1.05~1.74)。 24ヵ月時点のKaplan-Meier法による推定PFSは、実験群67.2%、対照群40.9%で、実験群で有意に高率だった(病勢進行・再発・死亡ハザード比[HR]:0.47、95%CI:0.25~0.88)。同様のOSは、実験群85.0%、対照群63.6%だった(死亡HR:0.43、95%CI:0.19~0.98)。 Grade3または4の有害事象の発生は、実験群11例(19%、何例かは両グレードを報告)、対照群3例(10%)だった。

377.

進行肺がんに対する免疫療法は2年で十分の可能性

 進行肺がん患者の予後は、免疫チェックポイント阻害薬の登場によって大幅に改善した。しかし、進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対して同薬による治療をどの程度の期間、継続する必要があるのかについては明らかになっていなかった。こうした中、新たな研究で、免疫チェックポイント阻害薬による治療開始から2年後の時点でがんが進行していない安定した状態の患者であれば、同薬の使用を中止しても生存期間に影響しないことが示された。米ペンシルベニア大学血液・腫瘍科学分野のLova Sun氏らによるこの研究結果は、米国臨床腫瘍学会(ASCO 2023、6月3~7日、米シカゴ)で発表され、「JAMA Oncology」に6月4日、同時掲載された。 免疫システムの重要な武器の一つであるT細胞には、がん細胞を死滅させる力がある。しかし、肺がんを発症すると、がん細胞の表面のタンパク質がT細胞の表面の特定のタンパク質を見つけて結合し、T細胞の働きにブレーキをかけてしまう。免疫チェックポイント阻害薬は、この結合を防ぐことでT細胞の活性化抑制を解除する作用を持つ。 Sun氏らは今回、全米の電子医療記録データベースを用いて2016~2020年に進行NSCLCと診断された1万4,406人の患者データを収集し、免疫療法の継続期間と患者の全生存率との関連を、2年で治療を中止した患者とそれ以降も治療を継続した患者との比較で検討した。対象患者は、全例が免疫チェックポイント阻害薬による治療を受け、一部の患者はそれに加えて化学療法を受けていた。 治療開始から700日後の時点で免疫チェックポイント阻害薬による治療を受けており、追跡(760日後以降)が可能だったのは1,039人だった。このうち188人は治療開始から2年後(700〜759日後)に同薬の使用が中止され(治療中止群)、851人は2年後以降も同薬による治療が継続されていた(治療継続群)。最終的に、追跡開始前にがんの進行が認められた患者と、治療中止の同月または翌月に死亡した患者(治療中止群のみ)を除外した、治療中止群113人(年齢中央値69歳、女性54.9%)と治療継続群593人(年齢中央値69歳、女性47.6%)が解析の対象とされた。 解析の結果、追跡開始後2年間の全生存率は、治療中止群で79%、治療継続群で81%であった。治療継続群と比べた治療中止群の死亡の調整ハザード比は1.33(95%信頼区間0.78〜2.25、P=0.29)であり、統計学的な有意差は認められなかった。 この結果について、Sun氏は「かなり魅力的だ」と評する。また、2年後に治療を中止し、その後、がんが進行した患者もわずかにいたが、同じ治療薬の使用を再開することで臨床的なベネフィットを得ることができた点に言及し、「これらの結果は、免疫チェックポイント阻害薬の使用を中止した患者に対しても経過観察を続けるべきであること、また免疫療法の再チャレンジについても考慮すべきことを示すものだ」と付け加えている。 Sun氏は、長期間の免疫療法が大きな毒性のリスクを伴うほか、免疫療法の費用は高額で、治療期間が長くなればなるほど患者の負担額も増える傾向にある点も指摘している。米国立がん研究所(NCI)によると、免疫チェックポイント阻害薬には、皮疹や下痢、倦怠感などさまざまな副作用のリスクがある。まれにではあるが、同薬による治療によって全身に炎症が起こり、臓器の正常な機能が損なわれることもある。 今回の研究には関与していない米ティッシュがん研究所のThomas Marron氏によると、免疫チェックポイント阻害薬の登場により、肺がん患者の平均余命は基本的に2倍延長し、患者の10~30%ではがんが治癒する可能性もあるという。その一方で、居住地域や加入している保険にもよるが、患者にとってはがん治療に伴う経済的な負担による「経済毒性」が大きな問題となり、長期間の治療による副作用も懸念されるべき問題だと同氏は指摘している。 Marron氏は、治療が奏効しているときにその治療を中止することに対してナーバスになる患者や医師がいることを認めた上で、「治療開始から2年の時点で寛解している患者のほとんどは、治療を中止してもその状態が維持されることが多くの研究で示されている」と説明している。

378.

遺伝子パネル検査、4割強の医師がいまだ経験なし/会員医師アンケート

 2019年6月に遺伝子パネル検査が保険収載されてから丸4年が経過した。ケアネットでは、7月19日に配信するセミナー「米国における がんゲノム検査の実態」収録に先立って、がん診療に携わる専門医600人を対象に「遺伝子パネル検査の施設での実施状況や自身の経験」について聞くアンケートを実施した。全体集計のほか、専門であることが見込まれる「肺がん」「乳がん」「消化器がん」「泌尿器がん」別でも集計、比較した。 「Q.これまで、がん遺伝子パネル検査を担当患者さんに行ったこと、もしくは紹介したことがありますか?」との設問には、「ある」56%、「ない」44%という回答となった。回答者の8割近くが200床以上の医療機関に勤務しているが、がん遺伝子パネル検査が実施できるのはがんゲノム医療中核拠点病院(13ヵ所)・拠点病院(32ヵ所)・連携病院(203ヵ所、いずれも2023年6月1日現在)に限られ、国内2,500ヵ所弱ある200床以上の医療機関の1割ほどだ。専門別で見た「ある」の割合としては、分子標的薬の開発、臨床応用がいち早く進んだ肺がんが最多の66%となり、乳がん、消化器がんと続き、泌尿器がんは最小の39%だった。 「Q.『ある』という方は年間およそ何件、実施あるいは紹介していますか?」との設問では、「0件」の回答を除くと、「1~10件」が76%と大半を占め、「11~20件」が9%、「21~30件」が4%、「31~40件」が3%だった。一方で、「41件以上」も5%あった。「41件以上」の回答者の大半を肺がんが占めており、肺がん領域における遺伝子パネル検査の定着ぶりが裏付けられた。 「Q.がん遺伝子パネル検査に意義はあると思いますか?」との設問には、「非常にある」38%、「多少はある」45%と、8割以上の回答者がパネル検査の意義を感じている、との結果となった。4割以上の回答者が検査の実施経験がない状況でも、この検査に意味を感じていることが明らかになった。 意義を感じる・感じない理由については、「意義を感じる」の回答者では「治療に結び付いた患者がいるから」(呼吸器内科・兵庫県・60代・200床以上)、「効果の期待できる薬剤の選択、不要な薬剤の排除等に役立つ」(放射線科・兵庫県・40代・200床以上)といった「実際の治療に役立つ・選択肢が増える・薬剤が選択できる」という声が多数を占めた。ほかにも「今後の医療の発展につながるから」(呼吸器外科・大阪府・50代・200床以上)、「これから症例を増やし、検証されるべき検査」(消化器外科・福島県・50代・200床以上)」など、「現在のベネフィットは少なくても、データを蓄積することに意味がある、今後の開発につながる」といった声も目立った。 「意義を感じない」という回答者では、「治療薬が見つかる確率が低い」(呼吸器内科・静岡県・60代・200床以上)、「なかなか新規治療につながらないから。患者さんもガッカリする」(消化器外科・奈良県・40代・200床以上)という声が多かった。現在、遺伝子パネル検査を受けた患者のうち、何らかの治療や治験につながる割合は1割強とされ(国立がんセンター調べ)、この数字をどう見るか、自身の患者の奏効例を経験したかなどが、意見の違いにつながっているようだ。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中「遺伝子パネル検査」の実施状況アンケート調査<アンケート概要>・タイトル:「遺伝子パネル検査」の実施状況について・内  容:包括的がんゲノムプロファイリング(CGP)検査について、自施設での実施状況や自身の経験について・対  象:ケアネット会員医師600人・実施期間:2023年5月19~21日・調査方法:インターネット―――――――――――――――――――7月19日(水)20時~「日本の5年後の姿?米国における がんゲノム検査の実態」聖マリアンナ医科大学臨床腫瘍学講座 主任教授・砂川 優氏、カリフォルニア大学サンディエゴ校 血液腫瘍科・加藤 秀明氏が、日米それぞれの遺伝子パネル検査の実態と今後のあるべき姿について、本アンケートの結果も交えながら、縦横無尽に語ります。視聴ページはこちら(予約不要)―――――――――――――――――――

379.

IL-6R阻害薬、irAE改善効果とICIの効果への影響

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、広範ながん種において生存率の向上をもたらし、使用が拡大している。しかし、ICIによって生じる免疫関連有害事象(irAE)が治療の中断・中止の原因となるため、その管理が重要である。irAEに対する標準治療は副腎皮質ステロイドであるが、高用量かつ長期間の使用は、抗腫瘍免疫の減弱や有害事象の原因となる可能性がある。そこで、米国・Laura and Isaac Perlmutter Cancer CenterのFaisal Fa'ak氏らは、後ろ向き研究によりIL-6受容体(IL-6R)阻害薬のirAEに対する有効性と、ICIの抗腫瘍効果への影響を検討した。その結果、IL-6R阻害薬は、ICIの抗腫瘍効果を減弱せずにirAEを改善することが示唆された。本研究結果は、Journal for ImmunoTherapy of Cancer誌2023年6月11日号で報告された。 がん治療のためにICIを投与された患者のうち、ICI投与後にirAEが発現または自己免疫疾患が再燃し、IL-6R阻害薬(トシリズマブまたはサリルマブ)が投与された患者92例を対象に、後ろ向き解析を実施した。主要評価項目は、irAEの臨床的改善(irAEや自己免疫疾患の再燃の消失、またはGrade1以下への改善)であった。副次評価項目は、IL-6R阻害薬に関連する有害事象、RECIST v1.1に基づくICIの奏効率(ORR)であった。 主な結果は以下のとおり。・主な患者背景は、ICI投与開始時の年齢中央値61歳、男性63%で、ICIによる治療は抗PD-1抗体薬単剤が69%、抗CTLA-4抗体薬と抗PD-1抗体薬の併用療法が26%であった。主ながん種(5%以上)は、悪性黒色腫(46%)、泌尿生殖器がん(35%)、肺がん(8%)であった。・IL-6R阻害薬投与の理由となった主なirAE(2例以上に発現)は、炎症性関節炎(73%)、胆管炎/肝炎(7%)、筋炎/重症筋無力症/心筋炎(5%)、脳炎(5%)、リウマチ性多発筋痛症(4%)であった。・irAEの発現からIL-6R阻害薬投与開始までの期間の中央値は3ヵ月(範囲:0.03~51.0)であった。対象患者のうち91%は、副腎皮質ステロイドや疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)による十分な治療効果が得られなかったことから、IL-6R阻害薬が投与された。・IL-6R阻害薬によりirAEの臨床的改善に至った患者の割合は73%であり、IL-6R阻害薬による治療開始からirAEの臨床的改善までの期間の中央値は2.0ヵ月(範囲:0.03~23.0)であった。・ICIのORRは、IL-6R阻害薬投与前66%、投与後66%であったが、完全奏効の割合はIL-6R阻害薬投与後が投与前と比較して8%高かった。・IL-6R阻害薬投与後のICIのORRは、50歳超が50歳以下と比較して高かった(調整オッズ比:3.53、95%信頼区間:1.17~10.65、p=0.02)。同様に、IL-6R阻害薬を24週間以上投与した群は24週間未満の群と比較してICIのORRが高かった(同:3.21、1.03~9.96、p=0.04)・評価可能な病変を有する悪性黒色腫患者34例におけるICIのORRは、IL-6R阻害薬投与前56%から投与後68%に上昇した(p=0.04)。・IL-6R阻害薬の投与中止に至った有害事象は6例(7%)に認められた。 著者らは、「IL-6Rを標的としたアプローチは、抗腫瘍免疫を減弱させることなくirAEを効果的に治療することが可能な手法であると考えられる。本研究結果は、抗IL-6R抗体薬トシリズマブとICIの併用の有効性および安全性の評価を目的とした、現在進行中の臨床試験を支持するものである」とまとめた。

380.

周術期非小細胞肺がんに対する化学療法+toripalimabのEFS中間解析(Neotorch)/ASCO2023

 非小細胞肺がん(NSCLC)に対する周術期治療に、抗PD-1抗体toripalimabを追加投与することで、無イベント生存期間(EFS)が延長することが、無作為化二重盲検プラセボ対照第III相Neotorch試験の中間解析から示された。中国・上海市胸科医院のShun Lu氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。・対象:切除可能なStageII/IIIのNSCLC患者404例・試験群:toripalimab+プラチナベース化学療法3週ごと3サイクル→手術→toripalimab+プラチナベース化学療法3週ごと1サイクル→toripalimab 3週ごと最大13サイクル(toripalimab群)202例・対照群:プラセボ+プラチナベース化学療法3週ごと3サイクル→手術→プラセボ+プラチナベース化学療法3週ごと1サイクル→プラセボ3週ごと最大13サイクル(プラセボ群)202例・評価項目:[主要評価項目]治験担当医評価によるStageIII、II/IIIのEFS、盲検下独立病理学審査(BIPR)評価によるStageIII、II/IIIの病理学的奏効(MPR)率[副次評価項目]全生存期間(OS)、BIPR/施設病理医の評価によるStageIII、II/IIIの病理学的完全奏効(pCR)率、独立評価委員会(IRC)評価によるStageIII、II/IIのEFS、無病生存期間(DFS)、安全性と手術の実行性EFS(StageIII)→EFS(StageII/III)→MPR(StageIII)→MPR(StageII/III)→OS(StageIII)→OS(StageII/III)の順番で階層的に検定 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値18.3ヵ月における、治験担当医によるStageIIIのEFS中央値は、toripalimab群が未到達、プラセボ群が15.1ヵ月で、toripalimab群の有意なEFS改善が示された(両側p<0.0001)。・EFSのHRをPD-L1発現別にみると、PD-L1<1%では0.59(95%信頼区間[CI]:0.327〜1.034)、1~49%では0.31(同:0.176〜0.554)、50%≦では0.31(同:0.152〜0.618)と、toripalimab群で良好な傾向であった。・EFSのHRを組織型別にみると、非扁平上皮がんでは0.54(95%CI:0.265〜1.096、p=0.0827)、扁平上皮がんでは0.35(同:0.236〜0.528、p<0.0001)と、toripalimab群で良好な傾向であった。・MPR率はtoripalimab群48.5%、プラセボ群8.4%(p<0.0001)、pCR率はtoripalimab群24.8%、プラセボ群1.0%(p<0.0001)と、いずれもプラセボ群に比べ改善していた。・Grade3以上の治療下発現有害事象(TEAE)は、toripalimab群の63.4%で、プラセボ群の54.0%で発現した。Grade3以上の免疫関連有害事象は、toripalimab群の11.9%で、プラセボ群の3.0%で発現した。 発表者のLu氏は、「従来の研究と合わせ、Neotorch試験の結果は、周術期の抗PD-1抗体と化学療法との併用が、切除可能NSCLCの標準治療となるべきであることを示した」と述べている。

検索結果 合計:2007件 表示位置:361 - 380