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オンコマイン Dx、非小細胞肺がんHER2遺伝子変異に対するコンパニオン診断として保険適用/サーモフィッシャー

 サーモフィッシャーは2023年8月29日、次世代シーケンシング(NGS)技術を用いたコンパニオン診断システム「オンコマイン Dx Target Test マルチ CDxシステム」に関し、非小細胞肺がんを対象としたHER2遺伝子変異に対するトラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ)の治療適応判定の補助に対して、保険適用されたことを発表した。適応判定補助に対応するがん種ごとの遺伝子変異などと医薬品非小細胞肺がん・BRAF遺伝子V600E変異:ダブラフェニブとトラメチニブの併用投与・EGFR遺伝子変異:ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、オシメルチニブ、ダコミチニブ・HER2遺伝子変異:トラスツズマブ デルクステカン・ALK融合遺伝子:クリゾチニブ、アレクチニブ、ブリグチニブ、ロルラチニブ・ROS1融合遺伝子:クリゾチニブ、エヌトレクチニブ・RET融合遺伝子:セルペルカチニブ甲状腺がん・RET融合遺伝子:セルペルカチニブ甲状腺髄様がん・RET遺伝子変異:セルペルカチニブ

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EGFR変異陽性NSCLCの1次治療、オシメルチニブ+化学療法 vs.オシメルチニブ(FLAURA2)/WCLC2023

 EGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対する、オシメルチニブと化学療法の併用は、オシメルチニブ単独と比較して、統計学的に有意な無増悪生存期間(PFS)の延長を示した。 世界肺癌学会(WCLC2023)で、米国・ダナ・ファーバーがん研究所の Pasi A. Janne氏らが発表した、進行期NSCLCにおけるオシメルチニブと化学療法の併用を評価する第III相FLAURA2試験の結果である。・対象:局所進行および転移のある未治療のEGFR遺伝子変異陽性(ex19del/L858R)NSCLC患者557例・試験群:オシメルチニブ80mg/日+化学療法(ペメトレキセド500mg/m2+シスプラチン75mg/m2またはカルボプラチンAUC 5[3週ごと4サイクル])→オシメルチニブ80mg/日+ペメトレキセド500mg/m2を3週ごと(オシメルチニブ+化学療法群、279例)・対照群:オシメルチニブ80mg/日(オシメルチニブ群、278例)・評価項目:[主要評価項目]RECIST 1.1に基づくPFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率(ORR)など 主な結果は以下のとおり。・治験担当医評価のPFS中央値はオシメルチニブ+化学療法群で25.5ヵ月、オシメルチニブ群で16.7ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.49~0.79、p<0.0001)。・盲検下独立中央判定(BICR)のPFS中央値はオシメルチニブ+化学療法群で29.4ヵ月、オシメルチニブ群で19.9ヵ月(HR:0.62、95%CI:0.48~0.80、p=0.0002)。1年PFS率は併用群で80%、オシメルチニブ群で67%であった。・中枢神経系(CNS)転移患者の治験担当医評価のPFS中央値は併用療法群で24.9ヵ月、オシメルチニブ群で13.8ヵ月だった(HR:0.47、95%CI:0.33〜0.66)。 ・OS中央値は両群とも未到達であった。・治験担当医評価のORRはオシメルチニブ+化学療法群83%、オシメルチニブ群76%、BICR評価のORRはそれぞれ92%と83%であった。・Grade≧3の有害事象は、オシメルチニブ+化学療法群の64% 、オシメルチニブ群の27%で発現した。 Janne氏は、これらの結果から、オシメルチニブと化学療法の併用は、EGFR変異を有する進行NSCLC患者の新たな治療選択肢となり得る、と結論付けた。

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がんサバイバーの心不全発症、医療者の知識不足も原因か/日本腫瘍循環器学会

 9月30日(土)~10月1日(日)の2日間、神戸にて第6回日本腫瘍循環器学会学術集会が開催される(大会長:平田 健一氏[神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 循環器内科学分野])。それに先立ち、大会長による学会の見どころ紹介のほか、実際にがんサバイバーで心不全を発症した女性がつらい胸の内を語った。がん治療を始める前に、病歴にもっと目を向けてほしかった 今回のメディアセミナーに患者代表として参加した女性は、10代で悪性リンパ腫の治療のために抗がん剤を使用。それから十数年以上経過した後に健康診断で乳がんを指摘されて乳房温存手術を受けたが、その後にリンパ節転移を認めたため、抗がん剤(計8コース)を行うことになったという。しかし、あと2コースを残し重症心不全を発症した。幸いにも植込み型補助人工心臓(VAD)の臨床試験に参加し、現在に至る。 この女性は医療機関にかかる際には必ず病歴を申告していたそうだが、治療の際に医療者から“抗がん剤の種類によっては生涯使用できる薬剤量の上限があること”を知らされず、「後になって知った」と話した。今回、過去の治療量が反映されなかったことが原因で心不全を発症したそうだが「乳がん治療のための抗がん剤を始める際は、むくみや動悸については説明があったものの、抗がん剤が心臓に与える影響や病歴について何も触れられなかったことはとても残念だった。5コース目の際に看護師に頻脈を指摘されたがそれ以上のことはなかった。VADは命を救ってくれたが私の人生の救いにはまったくなっていない。日常生活では制約だらけでやりたいことは何もできない」と悔しさをにじませた。「生きるために選択した治療が生きる希望を失う状況を作り出してしまったことは悔しく、残念でならない」とする一方で、「医療者や医療が進歩することを期待している」と医療現場の発展を切に願った。 これに対し小室氏は、医療界における腫瘍循環器の認知度の低さ、がん治療医と循環器医の連携不足が根本原因とし「彼女の訴えは、治療歴の影響を鑑みて別の抗がん剤治療の選択はなかったのか、心保護薬投与の要否を検討したのかなど、われわれにさまざまな問題を提起してくださった。患者さんががん治療を完遂できるよう研究を進めていきたい」とコメントした。 前述の女性のような苦しみを抱える患者を産み出さないために、がん治療医にも循環器医にも治療歴の聴取もさることながら、心毒性に注意が必要な薬剤やその対処法を患者と共有しておくことも求められる。そのような情報のアップデートのためにも4年ぶりの現地開催となる本学術集会が診療科の垣根を越え、多くの医療者の意見交換の場となることを期待する。さまざまな学会と協働し、問題解決に立ち向かう 大会長の平田氏は「今年3月に発刊されたOnco-cardiologyガイドラインについて、今回のガイドラインセッションにて現状のエビデンスや今後の課題について各執筆者による解説が行われる。これに関し、2022年に発表されたESCのCardio-Oncology Guidelineの筆頭著者であるAlexander Lyon氏(英国・Royal Brompton Hospital)にもお越しいただき、循環器のさまざまなお話を伺う予定」と説明した。また、代表理事の小室 一成氏が本学会の注力している活動内容やその将来展望について代表理事講演で触れることについても説明した。 主な見どころは以下のとおり。<代表理事講演>10月1日(日)13:00~13:30「日本腫瘍循環器学会の課題と将来展望」座長:南 博信氏(神戸大学内科学講座 腫瘍・血液内科学分野)演者:小室 一成氏(東京大学大学院医学系研究科 循環器内科学)<ガイドラインセッション>9月30日(土)14:00~15:30座長:向井 幹夫氏(大阪国際がんセンター)   南 博信氏(神戸大学内科学講座 腫瘍・血液内科学分野)演者:矢野 真吾氏(東京慈恵会医科大学 腫瘍血液内科)   山田 博胤氏(徳島大学 循環器内科)   郡司 匡弘氏(東京慈恵会医科大学 腫瘍血液内科)   澤木 正孝氏(愛知県がんセンター 乳腺科)   赤澤 宏氏(東京大学 循環器内科)   朝井 洋晶氏   (邑楽館林医療企業団 公立館林厚生病院 医療部 内科兼血液・腫瘍内科)   庄司 正昭氏   (国立がん研究センター中央病院 総合内科・がん救急科・循環器内科)15:40~17:10座長:泉 知里氏(国立循環器病研究センター)   佐瀬 一洋氏(順天堂大学大学院医学研究科 臨床薬理学)演者:窓岩 清治氏(東京都済生会中央病院 臨床検査科)   山内 寛彦氏(がん研有明病院 血液腫瘍科)   田村 祐大氏(国際医療福祉大学 循環器内科)   坂東 泰子氏(三重大学大学院医学系研究科 基礎系講座分子生理学分野)   下村 昭彦氏(国立国際医療研究センター 乳腺・腫瘍内科)<シンポジウム>9月30日(土)9:00~10:30「腫瘍と循環器疾患を繋ぐ鍵:clonal hematopoiesis」10月1日(日)9:00~10:30「がん患者に起こる心血管イベントの予防と早期発見-チーム医療の役割-」/日本がんサポーティブケア学会共同企画10:40~11:50「腫瘍循環器をメジャーにするために」/広報委員会企画13:40~15:10「免疫チェックポイント阻害薬関連有害事象として心筋炎の最新の理解と対応」15:20~16:50「小児・AYAがんサバイバーにおいてがん治療後出現する晩期心毒性への対応」/AYAがんの医療と支援のあり方研究会共同企画15:20~16:50「第4期がんプロにおける腫瘍循環器学教育」/学術委員会企画<Keynote Lecture>9月30日(土)11:20~12:10「Onco-cardiology and echocardiography (GLS)」Speaker:Eun Kyoung Kim氏(Samsung Medical Center)<ストロークオンコロジー特別企画シンポジウム>10月1日(日)10:50~11:50「がん合併脳卒中の治療をどうするか」 このほか、教育セッションでは双方が学び合い、コミュニケーションをとっていくために必要な知識として、「腫瘍循環器学の基本(1)~循環器専門医からがん専門医へ~」「腫瘍循環器学の基本(2)~がん専門医から循環器専門医へ~」「肺がん治療の現状」「放射線治療と心血管障害」などの講演が行われる。

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がん患者におけるせん妄の診断と評価【非専門医のための緩和ケアTips】第59回

第59回 がん患者におけるせん妄の診断と評価緩和ケアを実践するうえで、非常に多いのが「せん妄」の患者さんです。とくに終末期には、回復困難なせん妄のケースに対応することがあります。今回はそうした場合の対応について考えてみましょう。今日の質問終末期が近いと思われる患者さんの訪問診療を担当しています。意識障害が悪化し、何度も起き上がろうとしたり、つじつまの合わない話をしたりするため、家族も「どうしてこんなことに…」とつらそうです。こうした場合、何に気を付けてケアすればよいでしょうか?緩和ケアを実践していると、せん妄って本当に多い症状なんですよね。それだけ身体状況が悪化した方が多い分野だともいえます。緩和ケア領域において、せん妄は「精神症状」として扱うことが多いですが、身体疾患を契機として発症するものでもあり、緩和ケアに関わる以上は「精神科の先生にお任せ」ではなく、ある程度の対応スキルを持つ必要があります。とはいえ、せん妄は診断するのが難しい症状です。今回のケースのように「つじつまの合わない言動」や「興奮」といった思考障害があれば気付きやすいでしょう。一方、「睡眠覚醒のリズム障害」などは気付きにくい例で、元々寝たきりの高齢の方が日中ボーッとしていても、なかなかせん妄だとは思い至らないでしょう。このように、医療者や家族からみた患者さんの状況の多様さが、せん妄の診断を難しくしている要因の1つです。一般に「終末期」とされる、死が近い状況で発生するせん妄は、原因疾患の改善が見込めず、予後も限定されることが予想されます。こうした「終末期せん妄」と呼ばれる状態には明確な定義があるわけでなく、医療者間でも曖昧な概念のままに議論されていることがよくあります。実際の診療では、「予後が週単位から日単位となった状況で生じているせん妄」であれば、「終末期せん妄」とみなされることが多いでしょう。「終末期せん妄」と診断したら、関係する医療スタッフ、とくに看護師と共有することが重要です。そして、ご家族にも終末期せん妄と、予後が限られる可能性が高いことを共有しましょう。本人の症状緩和やご家族に対する支援体制などについて、お看取りが近いと判断したこのタイミングでしっかりと見直すことが重要です。今回のTips今回のTips不可逆的な病態が基礎にあるせん妄は、終末期せん妄として対応しましょう。

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各固形がんにおけるHER2低発現の割合は/Ann Oncol

 新たに定義されたカテゴリーであるHER2低発現(IHC 2+/ISH-またはIHC 1+)は、多くの固形がんで認められることが明らかになった。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのBurak Uzunparmak氏らによるAnnals of Oncology誌オンライン版2023年8月22日号掲載の報告より。 本研究では、進行または転移を有する固形がん患者4,701例を対象に、IHC法によるHER2発現状態を評価した。また乳房と胃/食道の原発および転移腫瘍のペアサンプルにおいて、IHC法およびISH法によるHER2発現状態を評価した。 主な結果は以下のとおり。・HER2発現(IHC 1~3+)は全体の半数(49.8%)で認められ、HER2低発現は多くのがん種で認められた:乳がん47.1%、胃/食道がん34.6%、唾液腺がん50.0%、肺がん46.9%、子宮内膜がん46.5%、尿路上皮がん46%、胆嚢がん45.5%。・乳がん629例、胃/食道がん25例における原発腫瘍と転移腫瘍のペアサンプルが評価された。・乳がん原発腫瘍でHER2陰性(IHC 0)の34.6%およびHER2低発現の38.1%が、転移腫瘍におけるHER2ステータスの不一致を示した。原発腫瘍でHER2陽性(IHC 3+および/またはISH+)の84.1%は転移腫瘍のHER2ステータスに変化がなかった。・サンプル数が少ないものの、胃/食道がん原発腫瘍でHER2陰性の95.2%は転移腫瘍のHER2ステータスに変化がなかった。・非乳がんおよび非胃/食道がんにおいて、HER2 IHC検査を受けた1,553例のNGSデータが解析され、ERBB2遺伝子増幅は117例(7.5%)で確認された。・ERBB2遺伝子増幅のない1,436例のうち、512例(35.7%)がIHC法でいずれかのレベルのHER2発現を示した。 著者らは、HER2低発現が腫瘍の種類を問わず頻繁に認められることが明らかになったとし、HER2低発現固形がん患者の多くがHER2標的治療から利益を得られる可能性があると結論付けた。

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Guardant360 CDx、HER2変異陽性NSCLCにおけるT‐DXdのコンパニオン診断として承認/ガーダントヘルスジャパン

 ガーダントヘルスジャパンは、がん化学療法後に増悪したHER2遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに対するトラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ、以下 T-DXd)の適応判定補助を目的としたコンパニオン診断として、リキッドバイオプシー「Guardant360 CDx がん遺伝子パネル」(Guardant360 CDx)に対する製造販売承認事項一部変更承認を2023年8月28日付で厚生労働省から取得した。 HER2遺伝子変異は、非小細胞肺がん(NSCLC)の70%を占める、非扁平上皮NSCLCの2〜4%に認められる。 Guardant360 CDxのT-DXdに対するコンパニオン診断の適応は、2022年8月に米国食品医薬品局によって承認されており、日本においても同様に承認されたもの。 Guardant360 CDxはコンパニオン診断薬として、ペムブロリズマブの適応となるMSI-High陽性固形がん患者、ニボルマブの適応となるMSI-High陽性直腸・結腸がん患者、ソトラシブの適応となるKRAS G12C陽性非小細胞肺がん患者にも承認されている。

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検診で寿命が延びるがんは?

 一般的に行われているがん検診により、寿命が延びるのかどうかは不明である。今回、ノルウェー・オスロ大学のMichael Bretthauer氏らが、乳がん検診のマンモグラフィ、大腸がん検診の大腸内視鏡検査・S状結腸鏡検査・便潜血検査、肺がん検診の肺CT検査、前立腺がん検診のPSA検査の6種類の検診について、検診を受けた群と受けなかった群で全生存率と推定寿命を比較した無作為化試験をメタ解析した結果、寿命が有意に増加したのはS状結腸鏡検査による大腸がん検診のみであったことがわかった。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2023年8月28日号に掲載。 一般的に使用されている上記の6種類のがん検診について、検診を受けた群と受けなかった群を9年以上追跡し、全死亡率および推定寿命を比較した無作為化試験の系統的レビューおよびメタ解析を実施した。論文の検索はMEDLINEおよびCochrane libraryデータベースで2022年10月12日まで実施した。検診を受けた群と受けなかった群でみられた生存期間の差を検診による寿命の増加とし、各検診による寿命の増加日数と95%信頼区間(CI)をメタ解析または単一の無作為化試験から算出した。 主な結果は以下のとおり。・計211万1,958人が対象となった。・追跡期間中央値は、CT検査、PSA検査、大腸内視鏡検査で10年、マンモグラフィで13年、S状結腸鏡検査、便潜血検査で15年であった。・検診で寿命に有意な増加がみられたのはS状結腸鏡検査のみであった(110日、95%CI:0~274日)。・マンモグラフィ(0日、95%CI:-190~237日)、PSA検査(37日、95%CI:-37~73日)、大腸内視鏡検査(37日、95%CI:-146~146日)、毎年または隔年の便潜血検査(0日、95%CI:-70.7~70.7日)、肺CT検査(107日、95%CI:-286~430日)において有意差はみられなかった。 著者らは「このメタ解析の結果から、現在のエビデンスでは、S状結腸鏡検査による大腸がん検診を除き、一般的ながん検診による寿命延長を証明できないことが示唆された」としている。

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高齢がん患者、米国における診療の工夫

 マサチューセッツ総合病院緩和老年医療科の樋口 雅也氏がナビゲーターとなり、医師、薬剤師、看護師などさまざまな職種と意見交換をしながら臨床に直結する高齢者診療の知識を学べる「Dr.樋口の老年医学オンラインサロン」。がんと老年医学をテーマにした回では、ゲストとしてダートマス大学腫瘍内科の白井 敬祐氏が参加し、米国における高齢者のがん診療の実際について紹介した。高齢のがん患者とのコミュニケーションにおける工夫は?白井氏:免疫療法などの進化によって、以前であれば予後が厳しかったがん種や進行がんでも、治療効果が見込めるケースが増えてきました。しかし、臨床試験の結果と目の前の患者さんにその薬が効くのかはまったく別問題。患者さんの期待値が上がっていることもあり、そのあたりの説明やコミュニケーションには気を遣っています。とくに高齢の患者さんには、5年生存率の平均値や中央値といった数字をそのまま伝えるだけでなく、自分が診療しているほかの患者さんの例を出して説明するなど、治療やその後の生活を具体的にイメージしやすいように工夫しています。実際の診療で気を付けていることは?白井氏:米国では「Shared Decision Making(SDM)」という考え方が浸透しており、医師は数多くの患者を診てきた専門家として情報提供やアドバイスをしつつ、患者や家族と一緒に意思決定することを目指しています。使う言葉も「Up to you.(あなたが決めてください)」ではなく「Up to us.(一緒に決めましょう)」といった、共同意思決定を促すものを意識して選ぶようにしています。 もう1つの工夫は、「がん以外の生活に目を向ける質問」を挟むことです。外来でフォローしている患者さんに対して「痛みや吐き気はどうですか?」といった診療に必要な質問のほかに、「前回の診察から、何か良いことはありましたか?」といったポジティブな気持ちになる質問をすることで、前向きに治療に臨めるような雰囲気づくりを心掛けています。がんになっても、できるだけ希望に沿った生活を続けられるよう、サポートすることが重要だと考えています。印象に残っている患者さんや事例は?白井氏:91歳でStageIVの肺がん患者の診療に4年近く当たっているのですが、彼は日本人の私に興味を持ってくれ、メジャーリーグの大谷選手が一面に載った新聞を持ってくるなど、診察のたびにいろいろな方法や話題でコミュニケーションをとってくれます。この方から「病気ではなく、その人個人への興味を持つ」ことの大切さを学びました。ほかにも患者さんから教わることは多いです。“Death ends life, but never ends relationship.”(死によって人生が終わっても、関係性はなくならない)という言葉が好きで、毎日それを実感しながら、診療に当たっています。 8月に配信された対談の後編では、米国のがん診療における多職種連携の実際、日本でも使えるチーム医療のコツを紹介している。■詳細は以下の番組(有料・申し込み要)CareNeTVスクール「Dr.樋口の老年医学オンラインサロン(シーズン2)

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divarasib、既治療のKRAS G12C変異固形がんに有望/NEJM

 KRAS G12C変異陽性固形がんに対し、divarasibの単剤療法は持続的な臨床効果をもたらし、有害事象はほとんどがGrade2以下であった。カナダ・トロント大学のAdrian Sacher氏らが、12ヵ国35施設で実施された第I相試験「GO42144試験」の結果を報告した。divarasib(GDC-6036)は共有結合型KRAS G12C阻害薬で、in vitroにおいてソトラシブやadagrasibより高い効力と選択性を示すことが報告されていた。NEJM誌2023年8月24日号掲載の報告。非小細胞肺がん、大腸がん、その他の固形がんを対象に単剤療法の第I相試験を実施 研究グループは2020年7月29日〜2022年10月7日に、KRAS G12C変異を有する既治療の局所進行または転移を有する固形がん患者137例(非小細胞肺がん60例、大腸がん55例、その他の固形がん22例)に、divarasib 50~400mgを1日1回経口投与した。まず、50mgと100mgの単回用量漸増コホートに順次登録した後、3+3デザインを用いて200mgと400mgの用量漸増コホートに追加登録し、さらに400mgの用量拡大コホートに登録した。 試験の主要目的は安全性の評価であり、薬物動態、抗腫瘍効果、奏効および耐性のバイオマーカーについても評価した。忍容性は良好、奏効率は非小細胞肺がんで53%、大腸がんで29% 検討したいずれの用量(50mg、100mg、200mg、400mgを1日1回投与)においても、用量制限毒性および治療に関連した死亡は報告されなかった。 治療関連有害事象(TRAE)は127例(93%)に発現し、主な事象は悪心(74%)、下痢(61%)、嘔吐(58%)であった。Grade3のTRAEは15例(11%)に、Grade4は1例(1%)に発現した。TRAEにより19例(14%)で投与量が減量され、4例(3%)が投与を中止した。 抗腫瘍効果は、非小細胞肺がんで奏効率53.4%(95%信頼区間[CI]:39.9~66.7)、無増悪生存期間(PFS)中央値は13.1ヵ月(95%CI:8.8~推定不能)、大腸がん患者でそれぞれ29.1%(95%CI:17.6~42.9)、5.6ヵ月(95%CI:4.1~8.2)であった。その他の固形がん患者においても、奏効が観察された。 血中循環腫瘍DNAの経時的評価において、奏効に関連するKRAS G12C変異アレル頻度の低下が示され、divarasibに対する耐性に関与する可能性のあるゲノム変化が同定された。

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静脈血栓塞栓症の治療に難渋した肺がんの一例(後編)【見落とさない!がんの心毒性】第24回

※本症例は、患者さんのプライバシーに配慮し一部改変を加えております。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。前回は、深部静脈血栓塞栓症に対する治療選択、がん関連血栓塞栓症のリスクとして注目すべき患者背景について解説を行いました。今回は同じ症例でのDVT治療継続における問題点を考えてみましょう。《今回の症例》年齢・性別30代・男性既往歴なし併存症健康診断で高血圧症、脂質異常症を指摘され経過観察喫煙歴なし現病歴発熱と咳嗽が出現し、かかりつけ医で吸入薬や経口ステロイド剤が処方されたが改善せず。腹痛が出現し、総合病院を紹介され受診した。胸部~骨盤部造影CTで右下葉に結節影と縦隔リンパ節腫大、肝臓に腫瘤影を認めた。肝生検の結果、原発性肺腺がんcT1cN3M1c(肝転移) stage IVB、ALK融合遺伝子陽性と診断した。右下肢の疼痛と浮腫があり下肢静脈エコーを実施したところ両側深部静脈血栓塞栓症(deep vein thrombosis:DVT)を認めた。肺がんに伴う咳嗽以外に呼吸器症状なし、胸部造影CTでも肺塞栓症(pulmonary embolism:PE)は認めなかった。体重65kg、肝・腎機能問題なし、血圧132/84 mmHg、脈拍数82回/min。肺がんに対する一次治療としてアレクチニブの投与を開始した。画像所見を図1に、採血データを表1に示す。(図1)中枢性DVT診断時の画像所見画像を拡大する(表1)診断時の血液検査所見画像を拡大するアレクチニブと直接作用型経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant:DOAC)の内服を継続したが、6ヵ月後に心膜播種・胸膜播種の出現と肝転移・縦隔リンパ節転移の増悪を認めた。ALK阻害薬の効果持続が短期間であったことから、がん治療について、ALK阻害薬から細胞傷害性抗がん薬への変更を提案したが本人が希望しなかった。よって、ALK阻害薬をアレクチニブからロルラチニブへ変更した。深部静脈血栓症(Venous Thromboembolism:VTE)に関しては悪化を認めなかったためDOACは変更せず内服を継続した。その後、肺がんの病勢は小康状態を保っていたが、1ヵ月後に胸部レントゲン写真で左下肺野にすりガラス陰影が出現し、造影CTを実施したところ新規に左下葉肺動脈のPEを認めた(図2)。(図2)PE発症時の画像所見画像を拡大する【問題】DOAC内服中にVTEが増悪した場合、どのような対応を行うか?1)Farge D, et al. Lancet Oncol. 2022;23:e334-e347.講師紹介

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ネオアジュバント/サンドイッチ療法レビュー【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第16回

第16回 ネオアジュバント/サンドイッチ療法レビュー参考John V Heymach JV,et al. Design and Rationale for a Phase III, Double-Blind, Placebo-Controlled Study of Neoadjuvant Durvalumab + Chemotherapy Followed by Adjuvant Durvalumab for the Treatment of Patients With Resectable Stages II and III non-small-cell Lung Cancer: The AEGEAN Trial. Clin Lung Cancer.2022;233:e247-e251. 術前デュルバルマブ・NAC併用+術後デュルバルマブによるNSCLCのEFS延長(AEGEAN)/AACR2023Wakelee H, et.al.Perioperative Pembrolizumab for Early-Stage Non-Small-Cell Lung Cancer. N Engl J Med.2023;389:491-503.NSCLC周術期のペムブロリズマブ、EFS改善が明らかに(KEYNOTE-671)/ASCO2023Patrick M Forde PM,et.al. Neoadjuvant Nivolumab plus Chemotherapy in Resectable Lung Cancer. N Engl J Med.2022;386:1973-1985.NSCLCの術前補助療法、ニボルマブ追加でEFS延長(CheckMate-816)/NEJM周術期非小細胞肺がんに対する化学療法+toripalimabのEFS中間解析(Neotorch)/ASCO2023

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過去10年間、日米間の抗がん剤ドラッグラグはどのくらいか

 抗がん剤の日米間のドラッグラグに関する既存の研究や統計では、ドラッグラグは減少したとするものもあるが、一方で日本では未承認の薬剤が多く残されている。北里大学の立花 慶史氏らは、未承認薬がドラッグラグに与える影響を定量化することを目的とした研究を行い、結果をInternational Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年8月10日号に報告した。 本研究では、2011~22年の間に米国で承認された抗がん剤136品目の情報が収集された。米国での承認日から日本での承認日までの日数として定義される承認ラグをすべての選択された薬剤について算出し、中央値をKaplan-Meier法で算出した。なお、日本で承認されていない医薬品の承認ラグについては、打ち切りデータとして扱った。承認ラグと関連する可能性のある因子を、Cox回帰分析を用いて検討した。 主な結果は以下のとおり。・前半期(2011~16年)と後半期(2017~22年)の承認ラグの中央値は、それぞれ961日(2.6年)と1,547日(4.2年)であった(log-rank検定のp=0.0687)。・国際的なピボタル試験への日本の参加は承認ラグ短縮と関連し、世界的な売上高トップ20にランクインしていない非日系企業の新薬承認申請は承認ラグ延長と関連した。 著者らは結論として日米間の抗がん剤のドラッグラグはこの10年間減少していないとし、米国での承認に関わるピボタル試験における日本の参加割合は増加しており、今後さらに増加が見込まれることに言及。今後は、中小の非日系企業による国際的な臨床開発計画への参加を促す制度が必要なのではないかとしている。

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米国の病院から学んだ急性期緩和ケア【非専門医のための緩和ケアTips】第58回

第58回 米国の病院から学んだ急性期緩和ケア先日、米国・ロサンゼルスにあるCedars-Sinai Medical Center(CSMC)を見学する機会がありました。日本と米国の医療制度は健康保険、職種ごとの権限、運営資源など異なる点も多いものの、共通の課題や参考になる点も多くありました。今日の質問先日、人工呼吸器装着や延命治療の中止に関するニュースを見ました。長く議論されている話題ですが、法整備や現場での運用はどうなっていくのでしょうか?今回は生命維持治療の中止についての質問をいただきました。緩和ケアには「急性期医療」の分野があります。緩和ケアというと「がん患者の終末期ケア」というイメージが根強いですが、急性期医療の分野でも症状緩和や意思決定支援、倫理的な問題を緩和ケアの一環として議論する機会が増えてきました。米国で見学したCSMCは急性期病院で、緩和ケアの対象は非がん疾患の方が多く、集中治療領域における緩和ケアのコンサルテーションにしばしば対応している、とのことでした。今回の質問にある生命維持治療の中止については、米国でもしばしば議論になるそうです。CSMCの緩和ケア医と議論した際、治療中止の際の苦痛緩和や家族へのケアを標準化していることが印象的でした。たとえば、人工呼吸器の装着を終了する際には呼吸困難を和らげる薬剤を準備し、家族に対して状況や見通しを共有する、などに多職種で取り組んでいるそうです。ケースや医療者ごとに対応がバラつきがちな日本と大きく異なる点だと感じました。治癒の見込みのなくなった患者に対する治療の中止は、医学的にはもちろん、倫理的にも難しい判断です。米国では本人の自立性を尊重し、本人の希望に沿って治療の中止を決断できるのでしょうか? 実はここはさまざまで、日本と同様に家族間で意見が異なる場合や、遠方の親族の意見を聞くために時間を要することがあるそうです。ここからは私の意見ですが、日本においても回復の見込みのなくなった患者の生命維持治療の中止をどのように考えるか、というのは今後避けては通れない議論でしょう。無益で患者の望まない治療を適切な時期に中止するため、必要な法的整備や現場での実践についてさらに議論していく必要があるでしょう。米国の病院の急性期緩和ケアを見学し、こんなことを感じました。いろいろな意見がある分野だと思います。皆さんの意見も聞かせてください。今回のTips今回のTips急性期の緩和ケア、延命治療中止に関する議論が求められています。

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HER2変異陽性非小細胞肺がんにトラスツズマブ デルクステカンが国内承認/第一三共

 第一三共は2023年8月23日、抗HER2抗体薬物複合体(ADC)トラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ)が、日本において、「がん化学療法後に増悪したHER2(ERBB2)遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の効能又は効果に係る製造販売承認事項一部変更承認を取得したと発表した。 HER2遺伝子変異陽性非小細胞がんを対象として希少疾病用医薬品指定 同適応は、グローバル第II相臨床試験(DESTINY-Lung02)の結果に基づき、2022年12月に日本における「がん化学療法後に増悪したHER2遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の効能又は効果に係る製造販売承認事項一部変更承認申請を行い、優先審査のもとで承認された。 また、同剤は「HER2遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」を対象として希少疾病用医薬品指定を受けている。 同剤が日本で承認を取得した適応がん種は、乳がん、胃がん、肺がんの3つとなった。

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がんの既往はCVD発症リスク上昇と関連

 がんの既往は、心血管疾患(CVD)の新規発症リスクの上昇と関連しているとの研究結果が、「Heart」に4月18日掲載された。 英ロンドン大学クイーン・メアリー校ウィリアム・ハーベイ研究所のZahra Raisi-Estabragh氏らは、医療記録連携を利用してがんとCVDの診断を確認し、がんの既往のあるUKバイオバンク登録者を対象にCVDの発症と転帰を検討した。がん(乳房、肺、前立腺、大腸、子宮、血液)の既往がある対象者と、がんの既往がない対照者とを、傾向スコアにより血管リスク因子に関してマッチさせた。がんの既往がある対象者1万8,714人のデータが解析に組み入れられ、そのうち1,354人では心血管MRI検査が施行されていた。 解析の結果、がんの既往を有する対象者では、血管リスク因子とCVDによる疾病負荷が大きかった。血液がんは、検討した全てのCVDの発症リスク上昇に関連していた〔部分分布ハザード比(SHR)1.92~3.56〕。さらに、心室容積の増大、駆出率の低下、左室ストレイン低下のリスク上昇にも関連していた。乳がんは、検討したCVDのうち非虚血性心筋症(NICM)、心不全、心膜炎、静脈血栓塞栓症(VTE)のリスク上昇に関連していた(SHR 1.34~2.03)。さらに、心不全またはNICMによる死亡、高血圧性疾患による死亡、駆出率の低下、左室全体機能指数の低下のリスク上昇にも関連していた。肺がんは、心膜炎、心不全、CVDによる死亡のリスク上昇に関連していた。前立腺がんは、VTEのリスク上昇に関連していた。 著者らは「今回の結果は、心血管リスク層別化においてがん特異的曝露を考慮し、この患者集団における修正可能なリスク因子の治療閾値を下げることを支持するものである」と述べている。 なお、1人の著者がCardiovascular Imaging社のコンサルタントを行っていることを開示している。

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米国での誤診による深刻な被害の実態が明らかに

 毎年約79万5,000人の米国人が、誤診により死亡したり永続的な障害を被っていることが、米ジョンズ・ホプキンス大学医学部のDavid Newman-Toker氏らによる研究で示された。この研究結果は、「BMJ Quality & Safety」に7月17日掲載された。 Newman-Toker氏は、「プライマリケア、救急外来などの特定の臨床現場で発生した誤診に焦点を当てた研究はこれまでにも実施されていたが、複数の医療現場にまたがる深刻な被害の総計は調査されておらず、その推定値には年間4万件から400万件の幅があった。われわれの研究では、疾患別の誤診と被害発生率を基に損害の総計を推定した点で注目に値する」と話す。 Newman-Toker氏らは今回、米国内の特定の疾患の発生件数に、その疾患の患者のうち誤診による深刻な被害(死亡、または永続的な障害)が生じた者の割合を掛け合わせることで、その疾患に関して生じた被害の大きさを割り出した。その後、血管イベント、感染症、がんの3つの領域(Big 3領域)の主要な15種類の疾患について同様の計算法を適用し、得られた結果を合計して、国内全体での誤診や被害に関する推定値を算出した。次いで、この測定値の妥当性を検討するために、さまざまな仮定を立てて分析を行い、推定値を出すために選択した手法などの影響を評価し、さらに、独立したデータ源や専門家のレビューとの比較も行った。 その結果、米国では毎年、血管イベントが600万件、感染症が620万件、がんが150万件発生しており、これらの3領域における重み付けされた誤診率は11.1%、被害発生率は4.4%と計算された。疾患全体での誤診率は、心筋梗塞での1.5%から脊椎膿瘍での62%まで、疾患により大きな開きがあった。誤診により生じた深刻な被害が最も多かったのは、脳卒中だった。 Big 3領域以外の全ての疾患に対象を広げると、米国全体で誤診に関連する深刻な被害が年間79万5,000件(推定範囲59万8,000~102万3,000件;死亡37万1,000件、永続的な障害42万4,000件)生じているものと推定され、医療現場全体にわたる深刻な被害状況が浮き彫りになった。この結果は、外来診療所や救急外来、入院治療での誤診に焦点を当てた複数の先行研究において報告されたデータと一致していた。15種類の疾患は全体の深刻な被害の50.7%を占め、深刻な被害が生じる頻度の高い上位5つの疾患(脳卒中、敗血症、肺炎、静脈血栓塞栓症、肺がん)が全体の38.7%を占めていた。 以上の結果を踏まえて研究グループは、「誤診率の高い疾患に最優先で対処すべきだ」と主張する。Newman-Toker氏は、「疾患に焦点を当てたアプローチにより誤診を予防・軽減することで、このような被害を大幅に減らせる可能性がある。脳卒中、敗血症、肺炎、肺塞栓症、肺がんの誤診を半減させることで、後遺障害と死亡の発生件数を年間15万件減らせるはずだ」と話す。 ジョンズ・ホプキンス大学では、すでに脳卒中の見逃しに対処するための解決法を開発して使い始めているという。その解決法とは、第一線の臨床医のスキルを向上させるためのバーチャル患者シミュレーターや、専門医が遠隔操作で臨床医の脳卒中診断を支援するための、ビデオゴーグルや携帯電話を介したポータブル眼球運動計測装置などである。また、診断プロセスの一部を自動化するコンピューターベースのアルゴリズムや、パフォーマンスを測定し、質の向上に関するフィードバックを提供するダッシュボードなども導入されている。 Newman-Toker氏は、「このような取り組みに必要な資金は、いまだ十分でない」と指摘する。同氏は、「われわれが直面している公衆衛生危機の中では、誤診の削減のために投入される資金が最も少ない。高い精度で確実な診断を行い、誤診による予防可能な被害をゼロにすることを目指すのであれば、そのための努力に投資し続ける必要がある」と述べている。

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生活習慣と呼吸器疾患による死亡リスクとの関係が明らかに

 特定健診データを利用した解析から、生活習慣と呼吸器疾患による死亡リスクとの関連が明らかになった。喫煙習慣の有無にかかわらず、身体活動の低下は呼吸器疾患関連死の独立したリスク因子である可能性などが示された。山形大学医学部第一内科の井上純人氏らの研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に5月22日掲載された。 生活習慣と心血管代謝性疾患リスクとの関連については数多くの研究がなされているが、呼吸器疾患については、喫煙と肺がんやCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の関連を除いてほとんど明らかにされていない。これを背景として井上氏らは、2008~2010年の7都道府県の特定健診受診者、66万4,926人のデータを用いた縦断的解析により、生活習慣と呼吸器疾患による死亡リスクとの関連を検討した。 解析対象者の主な特徴は、平均年齢62.3±8.8歳、男性42.76%、BMI23.4±3.5、喫煙者15.56%、習慣的飲酒者46.50%。7年間の追跡で8,051人の死亡が記録されていた。死因のトップは悪性新生物で4,159人(51.66%)であり、呼吸器疾患は437人(5.43%)で4位だった。死因としての呼吸器疾患には、ウイルスまたは細菌感染症(202人)、間質性肺炎(126人)、閉塞性肺疾患(42人)、誤嚥(30人)などが含まれていた。 悪性新生物の中の「気管支及び肺の悪性新生物」による死亡(826人)を加えた計1,263人を「呼吸器疾患による死亡」として、特定健診の健診項目データとの関連を検討すると、単変量解析では、高齢、男性、収縮期血圧高値、喫煙・飲酒習慣などが、オッズ比上昇と有意な関連があり、反対にBMI高値や運動習慣はオッズ比低下と有意な関連が認められた。 単変量解析で有意な関連が認められた因子を説明変数とする多変量解析の結果、呼吸器疾患による死亡リスクに正の独立した関連のある因子とそのハザード比(HR)は、高齢(1歳ごとに1.106)、男性(3.750)、喫煙習慣(1.941)、HbA1c(1%高いごとに1.213)、尿酸(1mg/dL高いごとに1.056)、尿蛋白陽性(1.432)、および脳血管疾患の既往(1.623)となった。反対に、負の独立した関連因子は、BMI(1高いごとに0.915)、運動習慣(0.839)、飲酒習慣(0.617)、歩行速度が速いこと(0.518)、LDL-コレステロール(1mg/dL高いごとに0.995)だった。 次に、「気管支及び肺の悪性新生物による死亡」を除く437人で多変量解析を行うと、高齢(1.141)、男性(3.898)、HbA1c(1.241)、尿酸(1.066)、尿蛋白陽性(1.876)、eGFR(1mL/分/1.73m2高いごとに1.006)および脳血管疾患の既往(2.049)が正の独立した関連因子、BMI(0.831)、運動習慣(0.591)、歩行速度が速いこと(0.274)、LDL-コレステロール(0.995)が負の独立した関連因子として抽出された。喫煙習慣や飲酒習慣は、単変量解析の段階で有意な関連が示されなかった。 続いて、「気管支及び肺の悪性新生物による死亡」の826人のみで多変量解析を行うと、独立した正の関連因子は、高齢(1.096)、男性(3.607)、喫煙習慣(3.287)、HbA1c(1.209)であり、独立した負の関連因子は歩行速度が速いこと(0.629)とヘモグロビン(1g/dL高いごとに0.884)が抽出された。 著者らは、上記3パターンの解析のいずれにおいても、運動習慣を有することや歩行速度が速いことと死亡リスクの低さとの強い関連が認められたことから、「日本人60万人以上を対象とする大規模なサンプルを用いた解析から、喫煙習慣の有無にかかわらず、運動は呼吸器疾患による死亡リスクを抑制するための重要な因子と考えられる」とまとめている。

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NSCLCに対するICI+化学療法、日本人の血栓リスクは?

 がん患者は血栓塞栓症のリスクが高く、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)やプラチナ製剤などの抗がん剤が、血栓塞栓症のリスクを高めるとされている。そこで、祝 千佳子氏(東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻)らの研究グループは、日本の非小細胞肺がん(NSCLC)患者におけるプラチナ製剤を含む化学療法とICIの併用療法の血栓塞栓症リスクについて、プラチナ製剤を含む化学療法と比較した。その結果、プラチナ製剤を含む化学療法とICIの併用療法は、静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクを上昇させたが、動脈血栓塞栓症(ATE)のリスクは上昇させなかった。本研究結果は、Cancer Immunology, Immunotherapy誌オンライン版2023年8月4日号で報告された。 DPCデータを用いて、2010年7月~2021年3月にプラチナ製剤を含む化学療法を開始した進行NSCLC患者7万5,807例を抽出した。対象患者をICI使用の有無で2群に分類し(ICI併用群7,177例、単独療法群6万8,630例)、プラチナ製剤を含む化学療法開始後6ヵ月以内のVTE、ATE、院内死亡の発生率を検討した。背景因子を調整するため、生存時間分析には傾向スコアオーバーラップ重み付け法を用いた。 主な結果は以下のとおり。・VTEの発生率はICI併用群1.3%(96例)、単独療法群0.97%(665例)であった。ATEの発生率はそれぞれ0.52%(38例)、0.51%(351例)であった。院内死亡率はそれぞれ8.7%(626例)、12%(8,211例)であった。・傾向スコアオーバーラップ重み付け法による解析の結果、ICI併用群は単独療法群と比較してVTEリスクが有意に高かったが(部分分布ハザード比[SHR]:1.27、95%信頼区間[CI]:1.01~1.60)、ATEリスクに有意差はみられなかった(同:0.96、0.67~1.36)。・使用したICI別に同様の解析を行った結果、ペムブロリズマブを使用した場合にVTEリスクが有意に高かったが(SHR:1.29、95%CI:1.01~1.64)、アテゾリズマブを使用した場合にはVTEリスクに有意差はみられなかった(同:0.91、0.49~1.66)。・院内死亡リスクはICI併用群が有意に低かった(ハザード比:0.67、95%CI:0.62~0.74)。

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医療者が小学生に「がん教育」を行ううえでの“Tips”

 小学生向けの「がん教育」では、到達目標を“がんについて考える「きっかけづくり」”に置くことが大事だという。また「新聞作り」のようなアウトプット機会の提供も有用であるようだ。 今回は、がん教育のワークショップを例に、医療者が小学生にがん教育を行ううえでの、ヒントとなる内容を紹介する。 2023年8月5日、小学生親子向けの夏休み自由研究応援プログラム『がんと「未来」新聞づくり』ワークショップが、都内にて開催された(主催:武田薬品工業)。【クイズ形式や新聞作成で、対話を大切に】 本プログラムでは、クイズ形式や講演内容からの新聞作り、といったいくつかの工夫が見られた。 冒頭の「医師から学ぼう!がんのこと」と題した、渡邊 清高氏(帝京大学医学部内科学講座 腫瘍内科 病院教授)の講演も小学生向けに構成された平易なスライドに加え、クイズを交えた構成が印象的であった。「日本人の何人にひとりが一生のうち、がんになるでしょう?」「がん検診を受けるタイミングは?」「この中でがんの原因にならないものは?」などのクイズに回答しながら、子供たちは「がん」の知識を自然に得られる。 講演後の取材で渡邊氏は、医療者が小学生向けにがん教育を行う際は、つい正しい知識の伝達ばかりに重きを置きがちだが、一方通行の講義ではなく、子供にがんを知ってもらう「きっかけ」を提供する意識が大事だ、と述べた。子供たちの意見を聞きながら、対話形式で取り組むことが望ましく、可能であれば医師だけでなく、患者さん側の体験を共有する機会を設けると、より身近にがんを意識させることができるという。 なお、必ずしも患者さん側からの講演である必要はなく、医師が患者さんと接した際のエピソードの紹介、といった医師の経験談の共有も有用だという。【軍手を使った、化学療法による副作用体験】 今回は実際に、「がん体験者のお話を聞こう」という形で、桜井 なおみ氏(一般社団法人CSRプロジェクト代表理事)の体験が語られた。演台での講義スタイルではなく、会場を歩きながら子供に語りかけるように話す姿が印象的であった。 講演内では、抗がん剤服用で生じる末梢神経障害などの身体変化を体感してもらう目的で、参加者に軍手をはめてもらい、「ペットボトルを開ける」、「お箸を使って物を運ぶ」、「紙をめくる」、などの作業に挑戦してもらい、その感想を聞いた。 「紙がめくれないとイライラする」と述べる子供に、桜井氏は「もし自分のまわりの人が困っていたら、どんなサポートをしてあげたいかな?」と問いかけた。会場からは「ゆっくりでいいよ、と声をかける」「ドアを開けておいてあげる」 といった意見が挙がったのち、桜井氏は「がん患者はいろいろなつまずきがある。そんなときに手を差し伸べてあげてほしい」と伝え、がん患者の困り事がまとまった参考ウェブサイト「生活の工夫カード」(国立がん研究センター 中央病院)を紹介した。 また、「がんだから仕方ない」と患者さんは思ってしまいがち、との桜井氏のコメントに対し、渡邊氏からは医療者として「何か困っていることはないですか?」とアプローチすることも大事だ、との意見も述べられた。 講演後に行われた新聞作りでは、時間を超過しても残って作業を継続する親子が多く、参加者が主体的にワークに取り組む様子が伺えた。【“新聞作り”というアウトプットで学びを深める】 本プログラムを主催した武田薬品工業の馬目氏(日本オンコロジー事業部 ペイシェントアドボカシー&コミュニケーション部 課長代理)にも企画趣旨を取材した。 今回は、小学生にもわかりやすくがんをより身近に感じてもらう目的で、医師および患者さんの両者の視点から講演をしてもらい、子供たちに楽しみながら意見をアウトプットしてもらえる「新聞作り」という形式を考えたという。 学校がん教育の普及には、現在も都道府県での取り組みに差があることや、外部講師の成り手が少ないといった課題がある。武田薬品工業は、今年度初めて募集をかけ、がん教育プログラムを企画した。 本プログラム参加者は40人(家族16組)。事後アンケートでは「がん」に対する理解力の向上とともに「がん患者さんの気持ちを理解できて良かった、学んだことを身近な人に話したい、将来医師になりたい」という子供からのコメントや、保護者からも「親子で一緒に学び、考える時間を持つことができて良かった、患者さん目線で自分事として感じることができた」など多くの温かい感想が寄せられたようだ。 今回のような取り組みは、親子でのヘルスリテラシー向上にもつながると、期待される。

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