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NAFLD、発症年齢が早いほどがんリスク上昇

 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD、欧米では2023年6月より病名と分類法を変更)の発症年齢は低下傾向にあるが、年齢が異なる約6万4,000例を対象としたコホート研究において、NAFLDはがんリスク上昇と関連し、発症年齢が若いほどがんリスクが高いことが示された。中国・首都医科大学のChenan Liu氏らによる本研究の結果はJAMA Network Open誌2023年9月25日号に掲載された。 2006~21年にKailuan Cohort Studyに参加した17万9,328例から、計4万6,100例のNAFLD発症例が同定された。各症例について、年齢および性別でマッチさせた参加者を無作為に選択して新たな研究コホートを作成、NAFLDの発症年齢とさまざまながん種のリスクとの関連を重み付けCox回帰モデルを用いて評価した。異なる年齢におけるNAFLDとがんリスクとの関連を定量化するため、人口寄与割合(Population Attributable Fraction:PAF)を用いた。データ解析は2022年12月~2023年4月に行われた。 主な結果は以下のとおり。・6万3,696例(平均年齢51.37[SD:12.43]歳、男性5万2,764例[82.8%])が組み入れられ、3万1,848例がNAFLD群、同数が対照群となった。・中央値10.16(四分位範囲[IQR]:7.89~11.67)年の追跡期間中に2,415例ががんと診断された。NAFLD発症時の年齢が45歳未満の患者は高いがんリスクを示し(調整ハザード比[aHR]:1.52、95%信頼区間[CI]:1.09~2.12)、NAFLDの発症年齢が高くなるにつれがんリスクは低下した(45~54歳のaHR:1.50、95%CI:1.15~1.97/55~64歳のaHR:1.13、95%CI:0.97~1.33/65歳以上のaHR:0.75、95%CI:0.45~1.27)。・NAFLD発症時の年齢が45歳未満の患者では、発症したがんは主に消化器がんと肺がんで、aHRは2.00(95%CI:1.08~3.47)と2.14(95%CI:1.05~4.36)であった。・NAFLD発症時の年齢が45歳未満の患者では、がんリスクの17.83%(95%CI:4.92~29.86)がNAFLDに起因することが示された。 著者らは、本研究により、早期発症NAFLDががんリスクの上昇と関連していることが明らかになり、NAFLDの進行に適時に介入することが、NAFLD関連がんの発生率の低下および公衆衛生上の負担の軽減と関連する可能性を示唆している、とした。

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お看取り期、家族への上手な説明法は?【非専門医のための緩和ケアTips】第65回

第65回 お看取り期、家族への上手な説明法は?緩和ケアにおいて、患者本人はもちろん、家族への説明も非常に重要な要素です。その重要性は誰もが認めるところでしょうが、実際に取り組むのは難しいものです。何に注意するとよいのでしょうか?今日の質問在宅でお看取りが近い病状の患者さん。ご家族とのやりとりが増えてきました。つらい気持ちが少しでも和らぐようにお話ししたいのですが、どんな点に注意すればよいのでしょうか?お看取りが近くなると、ご家族と毎日のように病状や見通しについて話す必要が出てきます。患者さんの症状が変化するスピードが速いときには、「午前中に話をして、夕方にもう一度話す」と、目まぐるしいこともあります。こうした状況に対する、家族の反応はさまざまです。気が動転して説明があまり伝わらない家族もいれば、「あとどれくらいですか?」「ほかの親族にも連絡したほうがよいでしょうか?」といった具体的な質問をする家族もいます。個別性の高いケアを求められる、難しい場面です。個別の状況においては、好ましいと思われるコミュニケーションを調査した研究もあるのですが、総合的には、ケースごとに医療者が望ましいと考える対話をしているのが実情かと思います。私が看取りの近い家族への説明で、意識しているコツを共有します。最初は、「家族の気掛かりをしっかり聞く」ことを徹底します。先ほど述べたように個別性の高い対応が求められる状況なので、まずは、目の前の家族がどういった心理状況にあるかをしっかりアセスメントします。それらの情報を基に、どういった話をするかを考えます。話を聞いた後にお伝えするのは、「苦痛が和らぐよう、きちんと対応していく」「不安を感じたら、改めて相談してほしい」という点です。今後の見通しについて、「何があってもおかしくありません」といった抽象的な伝え方は、基本的にはしないようにしています。理由としては、あまりにも見通しが立たないと、かえって家族の不安が強まるからです。「医師としての見解をお伝えすると、もしかしたら、今晩にも亡くなるかもしれません。不安にさせたくはありませんが、ご家族の心構えも大切なのでお話しさせていただきました。こうした話を聞かれていかがですか? 不安に感じていることがあれば、一緒に考えたいので教えていただけないでしょうか?」といったように続けます。最後に、「ご家族にできること」をお伝えします。点滴をしている患者さんであれば、むくみが強くなっていないかをご家族にも確認してもらい、ケアに参加してもらうことを提案します。もちろん、強制はしませんが、こうした提案で「家族のおかげでよいケアを提供できている」と伝えやすくなり、家族もそれを実感しやすくなるのです。今回のTips今回のTips終末期の家族への説明、話の順番やケアへの参加を工夫しよう。

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オンコマインDx、METエクソン14スキッピング非小細胞肺がんに対するテポチニブのコンパニオン診断として追加申請/サーモフィッシャー

 サーモフィッシャーサイエンティフィックは、次世代シーケンシング(NGS)技術を用いたコンパニオン診断システム「オンコマイン Dx Target Test マルチ CDxシステム(以下、オンコマインDx)」について、「テポチニブ塩酸塩水和物」のMET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌に対するコンパニオン診断システムとして、2023年12月4日付で厚生労働省に医療機器製造販売承認事項一部変更申請を行ったことを発表した。 上記の一部変更が承認されると、オンコマインDxの判定補助対象は、非小細胞肺がんの7ドライバー遺伝子(BRAF、EGFR、HER2、ALK、ROS1、RET、MET)、甲状腺がんの1ドライバー遺伝子(RET)、甲状腺髄様がんの1ドライバー遺伝子(RET)となる。

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EGFR変異陽性NSCLC脳転移例、ダコミチニブの奏効率97%

 ダコミチニブは第2世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)であり、進行または転移を有するEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、第1世代EGFR-TKIのゲフィチニブと比べて無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)を改善したことが報告されている1,2)。しかし、脳転移を有するNSCLC患者に対するダコミチニブの有用性は明らかになっていない。そこで韓国・成均館大学のHyun Ae Jung氏らの研究グループは脳転移を有するEGFR遺伝子変異陽性進行NSCLC患者におけるダコミチニブの有用性を検討した。その結果、ダコミチニブの頭蓋内奏効率(iORR)およびORRは共に96.7%であり、無増悪生存期間(PFS)中央値も17.5ヵ月と良好であった。本研究結果は、ESMO Open誌2023年11月27日号で報告された。・試験デザイン:単施設海外第II相単群試験・対象:未治療の脳転移(5mm以上)を有するEGFR遺伝子変異陽性(ex19del/L858R)進行NSCLC患者30例・投与方法:ダコミチニブ45mg(1日1回)を病勢進行または許容できない毒性の発現まで(75歳超またはBSA 1.5m2未満の場合は開始用量を30mg[1日1回]とすることを許容)・評価項目[主要評価項目]iORR[副次評価項目]頭蓋内PFS(iPFS)、ORR、PFS、安全性など・データカットオフ日:2023年2月28日 主な結果は以下のとおり。・対象患者のEGFR遺伝子変異の内訳は、ex19delが46.7%、L858Rが53.3%であった。また、65歳以上の割合は36.7%、女性の割合は70%であった。・データカットオフ時点の追跡期間中央値は25.6ヵ月(範囲:8.6~26.1)であった。・iORRは96.7%(CR:19例、PR:10例)であった。・iPFS中央値は未到達で、12ヵ月iPFS率は78.6%、18ヵ月iPFS率は70.4%であった。・ORRは96.7%(CR:1例、PR:28例)であった。・PFS中央値は17.5ヵ月であった。・Grade3の治療関連有害事象が16.7%に認められたが(下痢[10%]、ざ瘡様皮膚炎[6.7%]など)、Grade4以上は認められなかった。ダコミチニブの減量を要した患者の割合は83.3%であったが、ダコミチニブによる治療を完全に中止した患者はいなかった。

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喫煙はがんの抑制に関わる遺伝子の変異と関連

 喫煙ががんの主因であることは周知の事実だが、喫煙によりがんが発生する機序の一端を解き明かす研究結果が、カナダの研究グループにより発表された。この研究によると、喫煙は、DNAのストップゲイン変異と呼ばれる危険な変異と関連しており、この変異が特に、がん抑制遺伝子で多く認められることが明らかになったという。オンタリオがん研究所(OICR、カナダ)のJuri Reimand氏らによるこの研究の詳細は、「Science Advances」に11月3日掲載された。 ストップゲイン変異では、DNA塩基の変異によりアミノ酸をコードする部分がタンパク質合成を終結させる終止コドンと呼ばれるコードに置き換わってしまう。その結果、正常なタンパク質が作られず、そのタンパク質が本来持つはずの機能を発揮できなくなる可能性がある。Reimand氏は、「われわれの研究により、喫煙が、がん抑制遺伝子の変異と関連することが明らかになった。がん抑制因子が作られなければ、細胞の防御機能が働かずに異常な細胞が増殖し続け、がんが発生しやすくなる」とOICRのニュースリリースで説明している。 Reimand氏らは、18の主要な組織に由来する1万2,341件のがんゲノムを解析し、一塩基置換(single-base substitution;SBS)がタンパク質のコーディング領域に及ぼす影響を調べた。その結果、SBSはがん発生において重要な経路や、TP53、FAT1、APCなどのがん抑制遺伝子に頻繁に影響を与えていることが明らかになった。特に肺がんでは、喫煙に起因するストップゲイン変異と喫煙量が強い相関を示し、それが最終的にはがんをより複雑で治療困難なものにする可能性のあることが示された。 Reimand氏は、「喫煙はDNAに大きなダメージを与え、細胞の機能に深刻な影響を与える。われわれの研究は、喫煙が、細胞の基本的な構成要素である重要なタンパク質の働きを阻害し、それが長期的な健康に影響を与え得る可能性を示したものだ」と述べている。 さらに、APOBECと呼ばれる酵素群(DNAやRNAのシトシンをウラシルに置換する機能を持つ)もストップゲイン変異の発生に関わる要素として特定され、特に、乳がん、頭頸部がん、子宮体がん、肺がん、食道がんと強く関連することが示された。このほか、不健康な食生活、飲酒なども同様にDNAにダメージを与える可能性があるが、Reimand氏は、「これらが具体的にどのようにDNAに作用するのかを完全に理解するためには、さらなる情報が必要だ」と述べている。 論文の筆頭著者である、トロント大学(カナダ)のNina Adler氏は、喫煙は世界的に見てもがんの主因の一つであり、本研究結果は、その関連を理解するための重要な手がかりとなり得るとの見方を示す。同氏は、「喫煙ががんの原因となり得ることは広く知られているが、ライフスタイル要因ががんリスクに及ぼす影響を理解するためには、その影響を分子レベルで説明することが重要な一歩となる」と説明している。

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若~中年での高血圧、大腸がん死亡リスクが増加~NIPPON DATA80

 高血圧とがんリスクとの関連についての報告は一貫していない。今回、岡山大学の久松 隆史氏らが、日本人の前向きコホートNIPPON DATA80において、高血圧と胃がん、肺がん、大腸がん、肝がん、膵がんによる死亡リスクとの関連を調査したところ、30~49歳における高血圧は、後年における大腸がん死亡リスクと独立して関連していることがわかった。Hypertension Research誌オンライン版2023年11月22日号に掲載。高血圧は大腸がん死亡リスクと正の関連 研究グループは、NIPPON DATA80(厚生労働省の循環器疾患基礎調査)において、ベースライン時に心血管系疾患や降圧薬服用のなかった8,088人(平均年齢48.2歳、女性56.0%)を2009年まで追跡。喫煙、飲酒、肥満、糖尿病などの交絡因子で調整したFine-Gray競合リスク回帰を用いて、血圧が10mmHg上昇した場合のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。逆の因果関係を考慮し、追跡開始後5年以内の死亡を除外して解析した。 高血圧と胃がん、肺がん、大腸がん、肝がん、膵がんによる死亡リスクとの関連を調査した主な結果は以下のとおり。・29年の追跡期間中に、胃がんで159人(2.0%)、肺がんで159人(2.0%)、大腸がんで89人(1.1%)、肝臓がんで86人(1.1%)、膵臓がんで68人(0.8%)が死亡した。・高血圧は大腸がん死亡リスクと正の関連を認めたが、他のがんによる死亡リスクとは関連を認めなかった。・収縮期および拡張期血圧と大腸がん死亡率の関連は30~49歳で明らかだった(収縮期血圧におけるHR:1.43、95%CI:1.22~1.67、拡張期血圧におけるHR:1.86、95%CI:1.32~2.62)が、50~59歳および60歳以上では認められなかった(収縮期および拡張期血圧における年齢交互作用のp<0.01)。・これらの関連は、喫煙、飲酒、肥満、糖尿病の有無で層別化した解析でも同様にみられた。

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がん遺伝子パネル検査のアノテーションにAIを活用開始

 聖マリアンナ医科大学は、2023年11月13日、同学附属大学病院でのがん遺伝子パネル検査において、ゲノムデータの解析(アノテーション)にAIでデータ解析を行うことができる「MH Guide」を活用する取り組みを開始した。 MH Guideは、ドイツ・Molecular Health社が開発したAIシステムで、遺伝子パネル検査から得られるデータを解釈し、エビデンスに基づいた治療方針決定を支援する解析ソフトウェアである。このソフトウェアは、分子データから臨床的に重要な遺伝子異常を自動的に同定し、患者の分子プロファイルに基づく治療選択肢と、関連する可能性のある進行中の臨床試験を検出することができる。 同学ゲノム医療推進センターでは、欧州ではすでに臨床実装済みのMH Guideが、日本のがんゲノム医療でも使用可能かを検証する臨床試験を開始した(UMIN000052151)。

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米国がん協会、肺がん検診の対象枠を拡大

 米国がん協会(ACS)は、前回の2013年から10年ぶりに改訂された肺がん検診ガイドラインに関するレポートを、「CA: A Cancer Journal for Clinicians」に11月1日発表した。改訂版のガイドラインでは、検診対象者の年齢と喫煙歴の基準が変更され、また、喫煙をやめてからの経過年数にかかわりなく喫煙歴のある全ての人に対する年1回の検診実施が推奨されている。 米国では、肺がんはがんによる死亡原因として最も多く、また、男女ともに、がんの診断件数としても2番目に多い。ACSは、2023年には23万8,340人(男性11万7,550人、女性12万790人)が新たに肺がんと診断され、12万7,070人(男性6万7,160人、女性5万9,910人)が肺がんにより死亡すると予測している。 肺がん検診を受けることが推奨される対象の基準に関して、前回のガイドラインから今回のガイドラインで変更された主な点は以下の通り。・対象年齢:前回の55〜74歳から50〜84歳へ・喫煙歴(パックイヤー):前回の30パックイヤー(1日1箱を30年)以上から20パックイヤー以上へ・禁煙年数:前回の15年以下から、禁煙年数にかかわりなく喫煙歴のある人は全てへ ACSの早期がん発見科学(Early Cancer Detection Science)のシニア・バイス・プレジデントであるRobert Smith氏は、「これまでのガイドラインでは、喫煙歴があっても禁煙から15年が経過すれば肺がんリスクは極めて低くなり、検診の対象から外しても良いと考えられていた。しかし、喫煙歴が極めて長い人では、実際には、肺がんの絶対リスクが継続していることが明らかになった。具体的には、禁煙後に肺がんリスクは多少低下するが、やがて平坦化した後に再び上昇に転じ、最終的にはかなり急増することが示されたのだ。例えば、タバコを1日に20本吸っていた場合には、肺がんリスクは年に約9%ずつ増加していた」と話す。 Smith氏によると、これらの推奨は、基本的には2年前に発表された米国予防医療専門委員会(USPSTF)の推奨と一致する内容であるが、唯一、禁煙年数に関係なく検診を推奨している点が異なるという。そのため、検診にかかる費用が保険でカバーされない患者が出てくるケースも見込まれると同氏は話す。 さらにSmith氏は、肺がん検診の対象となる人の中に健康保険未加入者が多いことを指摘する。同氏は、「検診対象となる現喫煙者や元喫煙者は、低所得者であることが多く、医療制度の中にうまく組み込まれていないため、その恩恵もあまり受けていない。喫煙には多くのスティグマがつきものであり、中でも喫煙が原因で生じる病気としての肺がんに関わるスティグマは多い」と話す。 米ブラウン大学医学部教授で、このガイドラインレポートの付随論評の共著者であるDon Dizon氏は、「喫煙者に対する低線量CTスキャンによる肺がん検診は、肺がんによる死亡を減少させることが示されている」と述べ、肺がん検診の重要性を強調する。その一方で同氏は、「それでも、肺がんリスクを低下させる最善の方法は、非喫煙者はそれを継続し、喫煙者であれば禁煙することだ」と主張する。 Dizon氏は、米国では検診対象者の18〜30%しか検診を受けていないことを指摘し、「禁煙年数を検診の基準から外すことで、検診を受ける人が増えるだろう」と話す。同氏によると、今回の改訂により検診を受ける人は、白人、ヒスパニック系、アジア系では30%、黒人では27%の増加が見込まれているという。 米ノースウェル・ヘルス社の呼吸器専門医であるBrett Bade氏は、「肺がんは今や、検診によりがんを早期発見すれば、新しい治療法によって生存が見込める疾患だ」と述べる。同氏によると、肺がん検診により、肺がんの50%が早期発見される可能性があるという。

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死亡直前の身体的変化【非専門医のための緩和ケアTips】第64回

第64回 死亡直前の身体的変化「お看取り」、緩和ケアでは避けて通れない場面ですが、死亡の際には独特の身体的変化が見られます。こうしたことを、私自身は医学部教育であまり習った記憶がないのですが、最近はどうなのでしょうか? あまり真面目な学生ではなかったので覚えていないだけかもしれませんが…。知っておくべきことが多いと感じる分野です。今日の質問僻地勤務をしており、在宅医療にも関わっています。最近、在宅のお看取りが近いご家族から「少し呼吸の様子が変わってきました。あとどれくらいでしょうか?」と尋ねられました。これまでは「いつ亡くなるかは、誰にもわかりません」と説明していましたが、心配するご家族のためにも、もう少し情報提供ができればと思っています。ご家族からよく尋ねられる質問ですね。かつては自宅で亡くなる方が多数派で、家族を看取る経験も身近でした。しかし、現在では核家族化が進み、かつ多くの方が医療機関で亡くなるため、ご家族も看取りの経験が乏しく、見通しが立たずに不安になるのも当然でしょう。ちなみに、自宅と病院・診療所の死亡数が入れ替わったのは1970年代です。私が生まれる10年前は、まだ自宅で大半の方が亡くなっていた、というのはちょっと想像できません。今とはまったく異なる社会状況だったのです。話を本題に戻しましょう。呼吸の様子などの身体徴候から、亡くなるタイミングを予想することはできるのでしょうか。答えとしては「幅はあるものの、ある程度までの予測は可能」とされています。下顎呼吸になると多くの方が24時間以内に亡くなることがわかっており、それに基づいて「こうした呼吸は、徐々に呼吸をする体力がなくなってきているサインです。多くの方がその日中に亡くなることが多いので、そのような心構えでわれわれもケアをさせていただきます」とお話しします。質問のように、今後の見通しを心配されるご家族もよくお会いします。こうしたことが話題になる時点で、ご家族は死別自体には心構えができていることが多いでしょう。より具体的に情報を求めているのであれば、もう少し詳しい説明をしてもよいかもしれません。こうした状況において、私がよく活用しているのが、こちらのパンフレットです1)。最近は看護師から説明してもらうことも多くなっています。フリーでダウンロード可能ですので、今後の経過について心配されているご家族がいたら、一緒に見てみるとよいでしょう。今回のTips今回のTips死亡直前期の身体的変化は予後予測にも有効。予見される変化を家族とも共有しよう。1)看取りのパンフレット「これからの過ごし方について」/緩和ケア普及のための地域プロジェクト

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「遺伝子パネル検査で治療法が見つからない」は誤解?/日本肺癌学会

 肺がん遺伝子検査は、「コンパニオン診断→標準治療→CGP検査(遺伝子パネル検査)」という流れで行われる。CGP検査は、標準治療が終了あるいは終了見込みとなった段階で保険診療での使用が可能とされている。しかし、検査が受けられる病院が限られていたり、保険適用となるのは生涯で1回のみということもあったりすることから、肺がん患者においては十分に普及しているとは言い難い。そこで、近畿大学病院における肺がん患者のCGP検査の実態が調査された。その結果、非小細胞肺がん(NSCLC)患者では、想定以上にCGP検査後に遺伝子検査結果に基づく次治療へ到達していたことが明らかになった。高濱 隆幸氏(近畿大学医学部腫瘍内科/近畿大学病院ゲノム医療センター)が、本研究の詳細を第64回日本肺癌学会学術集会で報告した。NSCLC患者の約2割がCGP検査で次治療に到達 高濱氏らの研究グループは、2019~22年に近畿大学病院において保険診療でCGP検査を受けた肺がん患者100例(NSCLC 76例[腺がん58例、扁平上皮がん10例、大細胞神経内分泌がん3例、その他5例]、小細胞肺がん[SCLC]24例)を対象として、CGP検査の実態を調査した。CGP検査の検体は92%の患者が組織検体を利用しており、そのうち70%は生検検体であった。 調査の結果、NSCLC患者の17%(13/76例)はCGP検査後にエキスパートパネル推奨に基づく次治療へ到達していた。13例の治療薬の内訳は、承認薬5例、治験薬7例、患者申出療養1例であった。SCLC患者では、次治療へ到達した患者はいなかった。 また、CGP検査でドライバー遺伝子変異が認められた患者のうち、10%以上の患者は次治療に到達できなかった。主な理由は、PS不良、治験の適格基準不適合、患者の意思(治験施設が遠方で不可など)であった。 がんゲノム情報管理センター(C-CAT)の調査では、CGP検査後に次治療へ到達した患者の割合は9.4%(エキスパートパネル推奨に基づく治療薬の提示は44.5%)と報告されている1)。これらのことから、高濱氏は今回の結果について、単施設での調査という限界は存在するものの、NSCLC患者において想定よりも高い割合でCGP検査が次治療に結びついたのではないかとまとめた。どのようにCGP検査を活用すべきか? 肺がんCGP検査は組織型を限定するべきであろうか? これについて、今回の調査で扁平上皮がんや大細胞神経内分泌がんでも次治療に到達した患者がいたこと、生検検体と手術検体では組織型が一致しない場合があること2)、西日本がん研究機構(WJOG)の調査(REVEAL試験)では非腺がんの8.5%にドライバー遺伝子変異を認めたことを例に挙げ、NSCLCについては腺がんだけでなく、非腺がんでもCGP検査の実施を検討する余地があると述べた。 また、マルチコンパニオン診断でドライバー遺伝子変異が認められた患者にCGP検査を行う意義はあるのか、考察されていた。分子標的薬に対する耐性変異の発見に有用な場合があること、コンパニオン診断では報告対象外のバリアントがCGP検査で発見されて次治療につながる可能性があることを高濱氏は指摘した。 とくに、EGFR遺伝子については、マルチ遺伝子検査で検出ができないがCGP検査で検出できるバリアントが多く存在する。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)でも、uncommon変異に対するアファチニブの有用性が報告されており(ACHILLES/TORG1834試験)3)、uncommon変異の検出も今後は重要となっていくものと思われる。いつ、誰にCGP検査を実施すべきか? 最後に、高濱氏はCGP検査をすべき患者と実施タイミングについて以下のとおりまとめた。<対象>・とくに腺がん、ドライバー遺伝子変異がみつかっていない患者・長期生存の患者(過去のバイオマーカー検査が不十分な可能性がある患者)・初回生検検体が不足していた患者、IHCでの検体が不十分な患者、腫瘍マーカーで腺がんの要素が考えられる患者は、非腺がんでも考慮<タイミング>・NGS検査が可能なクオリティー・量の生検検体を最初に採取し、CGP検査が出せるようにしておく・CGP検査には時間がかかるため、1次治療開始時から相談を開始し、標準治療終了「見込み」の時点で検査をオーダーする・がんゲノム医療が提供できる病院以外で治療を受けている患者は、CGP検査が受けられる病院への紹介が必要となるため、早くから主治医の先生と相談していくことが重要

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EGFR陽性NSCLCの1次治療、オシメルチニブ+化学療法は日本人でもPFS改善(FLAURA2)/日本肺癌学会

 EGFR遺伝子変異陽性の進行・転移非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療として、第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬のオシメルチニブと化学療法の併用療法は、オシメルチニブ単剤と比べて無増悪生存期間(PFS)を改善することが、国際共同第III相無作為化比較試験FLAURA2試験で報告されている(治験担当医師評価に基づくPFS中央値は併用群25.5ヵ月、単独群16.7ヵ月、ハザード比[HR]:0.62、95%CI:0.49~0.79)1)。本試験の日本人集団の結果について、小林 国彦氏(埼玉医科大学国際医療センター)が第64回日本肺癌学会学術集会で発表した。試験デザイン:対象:EGFR遺伝子変異陽性(exon19欠失/L858R)のStageIIIB、IIIC、IVの未治療NSCLC成人患者557例(日本人94例)試験群:オシメルチニブ(80mg/日)+化学療法(ペメトレキセド[500mg/m2]+シスプラチン[75mg/m2]またはカルボプラチン[AUC 5]を3週ごと4サイクル)→オシメルチニブ(80mg/日)+ペメトレキセド(500mg/m2)を3週ごと(併用群、279例[日本人47例])対照群:オシメルチニブ(80mg/日)(単独群、278例[日本人47例※])評価項目:[主要評価項目]RECIST 1.1を用いた治験担当医師評価に基づくPFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率など※:1例は治療開始前に死亡 日本人集団における主な結果は以下のとおり。・日本人集団の患者背景は、併用群でEGFR遺伝子L858R変異が多かったが(併用群51%、単独群34%)、それ以外は両群で同様であった。日本人集団はPS 0が多く(全体集団はいずれの群も37%であったのに対し、日本人集団はそれぞれ53%、43%)、腫瘍径が小さかった(平均値は全体集団がそれぞれ65mm、64mmであったのに対し、日本人集団はそれぞれ48mm、51mm)。・治験担当医師評価に基づくPFS中央値は、併用群が24.8ヵ月、単独群が16.4ヵ月であった(HR:0.49、95%CI:0.28~0.86)。・OSはデータカットオフ時点で未成熟(成熟度:29%)であった。参考値ではあるが、データカットオフ時点のOS中央値は、併用群が31.9ヵ月、単独群が未到達であった(HR:0.70、95%CI:0.32~1.54)。・奏効率は、併用群が87%(CRは0例)、単独群が72%(CRは0例)で、奏効期間中央値は、それぞれ23.3ヵ月、13.8ヵ月であった。・Grade3以上の有害事象は併用群に多く発現したが(併用群47%、単独群13%)、治療関連死はいずれの群においても認められなかった。 また、全体集団におけるベースライン時の脳転移の有無別、EGFR遺伝子変異の種類別にみた治験担当医師評価に基づくPFSの結果も報告された。PFS中央値およびHR、95%CIは以下のとおり。・脳転移あり集団:併用群24.9ヵ月、単独群13.8ヵ月(HR:0.47、95%CI:0.33~0.66)。・脳転移なし集団:併用群27.6ヵ月、単独群21.0ヵ月(同:0.75、0.55~1.03)。・exon19欠失変異集団:併用群27.9ヵ月、単独群19.4ヵ月(同:0.60、0.44~0.83)。・L858R変異集団:併用群24.7ヵ月、単独群13.9ヵ月(同:0.63、0.44~0.90)。 本試験結果について、小林氏は「オシメルチニブ+プラチナ製剤+ペメトレキセドは、日本人においてもEGFR遺伝子変異陽性の進行NSCLCに対する1次治療の新たな選択肢となるだろう」とまとめた。

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EGFR陽性NSCLC、オシメルチニブ+化学療法で脳転移巣の病勢進行リスクを42%低下(FLAURA2)/AZ

 アストラゼネカは2023年11月1日付のプレスリリースにて、第III相FLAURA2試験の探索的解析において、オシメルチニブ(商品名:タグリッソ)と化学療法の併用療法はオシメルチニブ単剤療法と比較して、ベースライン時に脳転移を有していたEGFR遺伝子変異陽性の転移のある進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者(本臨床試験に参加した患者の40%)における中枢神経系(CNS)の無増悪生存期間(PFS)を42%改善したと発表した。本結果は、10月21日にスペイン・マドリードで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告された。<FLAURA2試験 探索的解析>・対象:EGFR遺伝子変異陽性(ex19del/L858R)のStageIIIB~IVの未治療NSCLC患者222例・試験群(化学療法併用群):オシメルチニブ80mg/日+化学療法(ペメトレキセド500mg/m2+シスプラチン75mg/m2またはカルボプラチンAUC 5[3週ごと4サイクル])→オシメルチニブ80mg/日+ペメトレキセド500mg/m2(3週ごと)118例・対照群(オシメルチニブ単剤療法群):オシメルチニブ80mg/日 104例・評価項目:[主要評価項目]PFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率など 主な結果は以下のとおり。・盲検下独立中央判定(BICR)の評価では、化学療法併用群は、オシメルチニブ単剤療法群と比較して、2年時点におけるCNSの病勢進行または死亡リスクが42%減少した(ハザード比[HR]:0.58、95%信頼区間[CI]:0.33~1.01)。・2年時点におけるCNSでの病勢進行または死亡が認められなかった患者の割合は、化学療法併用群では74%だったのに対し、オシメルチニブ単剤療法群では54%だった。・CNSでの完全奏効(CR)が認められた患者の割合は、化学療法併用群で59%、オシメルチニブ単剤療法群で43%だった。・化学療法併用群におけるオシメルチニブの安全性プロファイルは、おおむねコントロール可能だった。有害事象は化学療法併用群で発現率が高かったものの、既知のプロファイルと一貫していた。・オシメルチニブの投与中止に至った割合は、化学療法併用群では11%、オシメルチニブ単剤療法群では6%だった。 本試験の治験責任医師でGustave Roussy Institute of Oncologyの胸部腫瘍医David Planchard氏は、「オシメルチニブは血液脳関門を通過することができ、脳転移のない患者よりも予後不良となることが多い中枢神経系への転移を伴う肺がん患者の転帰を改善することが証明されている。FLAURA2試験では、オシメルチニブに化学療法を併用することで、中枢神経系への転移を伴う患者の半数以上でCRおよび脳内の腫瘍消失が認められた」と述べた。 また、AstraZeneca(英国)のオンコロジー研究開発エグゼクティブバイスプレジデントであるSusan Galbraith氏は、「今回の結果から、ベースライン時に脳転移を有していた患者にFLAURA2レジメンを用いたところ意義のある結果が認められ、脳にがんが転移した患者に希望をもたらした」とコメントした。

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ESMO2023 レポート 肺がん

レポーター紹介2023年のESMOはスペインのマドリードで開催されました。昨年・一昨年以上に参加人数が多かったようで、ポストコロナ時代の学会として大変盛況でした。さて、肺がん領域においてはPractice Changeにつながる可能性の高い重要な演題が多く発表されました。とくに、ここ2年間で劇的に進歩した肺がん周術期治療やEGFR・RETなどのdriver mutation陽性の進行例に対する新たな知見が複数報告されております。今回はその中から、7つの演題を取り上げ概括したいと思います。CheckMate77T試験切除可能なIIA~IIIB(N2)期の非小細胞肺がんを対象として、術前の化学療法を標準治療として、術前のニボルマブ+化学療法および術後のニボルマブ療法の優越性を検証した無作為化比較第III相試験である。CheckMate816試験を基に現在保険承認されている術前のニボルマブ+化学療法に術後1年間のニボルマブ療法を加えた、いわゆるサンドイッチレジメンである。主要評価項目は中央判定での無イベント生存期間(EFS)で、副次評価項目は中央判定での病理学的完全奏効(pCR)、中央判定での病理学的奏効(MPR)、全生存期間(OS)、安全性プロファイルが設定されていた。患者背景として、病期やPD-L1発現などはCheckMate816試験と同様であった。主要評価項目の結果としては、CheckMate816試験やほかのサンドイッチレジメンと同様にEFSを有意に延長し(ハザード比:0.58、95%信頼区間[CI]:0.42~0.81)、副次評価項目であるpCRやMPRも化学療法と比較して有意に良好であった(pCR:25.3% vs.4.7%、MPR:35.4% vs.12.1%)。EFSのサブ解析を見ても、おおむねどの集団においてもニボルマブ併用群で良好な結果であった。また、ほかのサンドイッチレジメンと同様にpCRやMPR別でのEFSの解析も行われ、こちらも今までと同様にpCRやMPRの有無でEFSに大きな差が認められた。安全性のデータも報告されたが、目新しい有害事象(AE)の報告はなく、過去の周術期ICIのレジメンと同様であった。本レジメンも将来的に保険承認されると予想されるが、ほかのペムブロリズマブやデュルバルマブなどのサンドイッチレジメンとの差別化が図れるようなデータは今回の報告からは見られなかった。ALINA試験本年のASCOで、EGFR遺伝子変異陽性肺がん完全切除例に対するオシメルチニブによる術後補助療法が、プラセボと比較してOSを有意に延長したことが大きな話題となったが、ESMOではALK遺伝子転座陽性非小細胞肺がんに対するアレクチニブの術後補助療法の有効性が報告された。UICC-7版でのIB~IIIA期のALK陽性非小細胞肺がんが対象で、標準治療であるプラチナ併用化学療法による補助療法に対するアレクチニブを2年間内服する術後補助療法の有効性を検証する無作為化比較第III 相試験である。主要評価項目は無病生存期間(DFS)で、副次評価項目はCNSのDFS、OS、安全性であった。主要評価項目はII~IIIA期で評価された後、ITT集団を対象として階層的に評価されるデザインであった。257例が登録されており、アジア人が約半数でIIIA期が約半数登録された試験であった。主要評価項目であるII~IIIA期DFSは、標準治療と比較してアレクチニブ群のハザード比は0.24(95% CI:0.13~0.45)であり、ITT集団を対象とした解析でもハザード比は0.24(95% CI:0.13~0.43)と、ともに主要評価項目を達成した。サブ解析でもほぼすべての集団でアレクチニブ群のDFSが良好であった。副次評価項目の1つであるCNSのDFSも、アレクチニブ群は標準治療と比較してハザード比は0.22(95%CI:0.08~0.58)と良好であった。再発後の治療はアレクチニブ群の約半数、標準治療群では約75%でALK-TKIが投与されており、今回の発表のデータカットオフ時点ではOSのイベントはわずか6例しか認められなかった。安全性は、Grade3以上は30%で治療関連の死亡は認められなかった。主なAEは、CPK上昇(約40%)、便秘(約40%)、AST上昇・ALT上昇(約40%前後)と、過去のALEX試験やJ-ALEX試験と同様のプロファイルであった。今回、DFSの良好な結果が報告されたが、オシメルチニブと同様にOSの延長にも寄与するかが今後期待される。ただ、ALK陽性肺がんの予後を考えると、数年後まで結果は出てこない可能性が高い。今回の結果からは、今後バイオマーカーの結果によって周術期治療戦略も進行期と同様に細分化されると考えられる。MARIPOSA試験EGFR遺伝子変異陽性の進行・再発非小細胞肺がんに対する1次治療として確立しているオシメルチニブを標準治療とした、無作為化比較第III相試験である。試験治療群はEGFRとMETの二重特異性抗体であるamivantamabと第3世代EGFR-TKIであるlazertinibの2剤併用療法もしくはlazertinib単剤の3群の比較試験で、主要評価項目はamivantamab・lazertinib併用療法のオシメルチニブに対する中央判定によるPFSであった。 1,074例が登録され、amivantamab・lazertinib併用療法、オシメルチニブ療法、lazertinib療法に、それぞれ2:2:1に割り付けられた。EGFR変異の種別はExon19欠失が60%でL858R点変異が40%、約40%が脳転移を有していた。主要評価項目のPFSはamivantamab・lazertinib併用群で中央値23.7ヵ月、オシメルチニブ群で中央値16.6ヵ月、ハザード比0.70(95%CI:0.58~0.85)と、amivantamab・lazertinib併用群のオシメルチニブに対するPFS延長効果が証明され、主要評価項目を達成した。サブ解析では、おおむねどの集団においてもamivantamab・lazertinib併用群で良好な結果であったが、65歳以上の集団ではハザード比1.06であった。奏効率(ORR)は併用群およびオシメルチニブ群ともに約85%で、OSは今回の中間解析時点では2年時点で5%約の差(75% vs.69%)で併用群が良好であった。有効性について有望な結果が得られたamivantamab・lazertinib併用群であったが、AEが強く発現する点に注意する必要がある。Grade3以上のAEは75%で、皮膚障害・粘膜障害についてもGrade3以上がamivantamab・lazertinib併用群で強く発現していた。さらに特筆すべきは静脈血栓症(VTE)で、オシメルチニブ群の9%と比較して併用群では37%と高く、発症時期は中央値で84日と比較的早期に発症することが特徴である。現在実施されているamivantamab・lazertinib併用の治験では、治療開始後4ヵ月間は予防的抗凝固療法が推奨されているとのことであった。今回、オシメルチニブに対するPFS延長を示したamivantamab・lazertinib併用療法であるが、AEが強く発現する点から、個人的には今後オシメルチニブに完全に置き換わるよりは、使い分けが重要となってくると予想する。MARIPOSA-2試験先述したMARIPOSA試験と同じセッションで発表された本試験は、オシメルチニブに対して病勢増悪を来したEGFR遺伝子変異陽性例を対象として、カルボプラチン+ペメトレキセドによる化学療法を標準治療として、amivantamab+lazertinib+化学療法の4剤併用療法もしくはamivantamab+化学療法の3剤併用療法の3群に割り付ける無作為化比較第III相試験で、657例が登録された。主要評価項目は中央判定による4剤併用療法と化学療法を比較するPFSと、3剤併用療法と化学療法を比較したPFSである。登録前のオシメルチニブは、70%が1次治療、30%が2次治療で投与されていた。主要評価項目のPFSの結果は、4剤併用療法群の中央値が8.3ヵ月、3剤併用療法群の中央値が6.3ヵ月、化学療法群の中央値が4.2ヵ月で、それぞれハザード比が0.44(95%CI:0.35~0.56)、0.48(95%CI:0.36~0.64)と、4剤併用療法、3剤併用療法ともに化学療法に対する有意なPFS延長効果を証明した。サブ解析においても、すべての集団でPFSは良好な結果であった。ORRは両群63%程度(化学療法は36%)で頭蓋内のPFSも両群とも良好であった(4剤併用:12.8ヵ月、3剤併用:12.5ヵ月、化学療法:8.3ヵ月)。AEは先述したMARIPOSA試験同様に注意すべき点である。とくにlazertinibを加えた4剤併用療法では、Grade3以上のAEは92%、治療関連死亡は5%に認めた。3剤併用療法はGrade3以上のAEが72%であった。なかでも好中球減少や血小板減少などの血球減少は多く見られ、吐き気や倦怠感、食欲不振といった自覚症状として出てくるAEも4剤併用療法や3剤併用療法で多く認められた。血球減少が多く見られたことから、4剤併用療法のレジメンが見直され、lazertinibはカルボプラチン終了後に開始となるレジメンにmodifyされた。この修正後のレジメンの有効性・安全性データは今後評価予定となっている。今回、オシメルチニブ後の治療として有望な結果が得られたが、効果と安全性のバランスを考えると3剤併用療法がより使いやすい印象はある。先述したMARIPOSA試験と併せて、EGFR遺伝子変異陽性の最適な治療シークエンスが今後検討されることであろう。LIBRETTO-431試験本試験は肺腺がんの1~2%に認められるRET融合遺伝子陽性の非扁平上皮非小細胞肺がんを対象として、RET阻害薬であるセルペルカチニブを試験治療として、カルボプラチン+ペメトレキセド(+ペムブロリズマブ:investigator choice)療法を標準治療とした無作為化比較第III相試験である。標準治療群に割り付けられても病勢増悪後にセルペルカチニブにクロスオーバーが可能な試験である。主要評価項目は中央判定によるPFSであった。PFSはITT集団とITT-pembrolizumab(ITT-P)集団という2つの対象で評価された。261例が2:1に割り付けられた。約20%に脳転移を認め、40%強がPD-L1発現を認めた。主要評価項目であるPFSはITT-P集団でハザード比0.465(95%CI:0.309~0.699)、ITT集団で0.482(95%CI:0.331~0.700)と、規定された2つの集団でセルペルカチニブのPFSの有意な延長効果が証明された。サブ解析ではPD-L1陰性例よりも陽性例で良好な結果であった。セルペルカチニブのORRは83.7%(標準治療群:65.1%)、頭蓋内のORRも82.4%(標準治療群:58.3%)と、ともに良好な結果であった。CNS転移の累積発生率で見ても、12ヵ月時点で標準治療群が約20%であるのに対して、セルペルカチニブ群は5.5%とCNS転移をしっかりと抑えていることが示された。AEについては、セルペルカチニブの承認の元になった第I/II相試験であるLIBRETTO-001試験と同様のプロファイルであった。Grade3以上のAEは約70%に認められ、頻度の高いAEはAST上昇(Grade3以上13%)、ALT上昇(Grade3以上22%)、高血圧(Grade3以20%)、下痢(Grade3以上:1%)であった。約80%の症例でセルペルカチニブの用量変更が必要であったことも特筆すべきことである。今回の第III試験の報告で、RET融合遺伝子陽性例の1次治療としてセルペルカチニブは確立したものとなったと考える。本試験の結果は発表と同時にNew England Journal of Medicine誌にpublishされたことも報告された。TROPION-Lung01試験既治療の進行・再発非小細胞肺がんを対象として、ドセタキセル療法を標準治療としたdatopotamab deruxtecan(Dato-DXd)の優越性を検証する無作為化比較第III相試験である。Dato-DXdはTROP2を標的とした抗体薬物複合体である。EGFRやALKなどのdriver mutationを有する症例について、標的治療およびプラチナ併用化学療法(+ICI)の治療を終えた症例であれば組み込むことは可能であった。主要評価項目は中央判定によるPFSとOSであった。604例が1:1に割り付けられ、非扁平上皮がんが約80%、EGFR遺伝子変異陽性例は約15%登録されていた。主要評価項目のPFSはDato-DXd群で中央値が4.4ヵ月、ドセタキセル群で中央値が3.7ヵ月、ハザード比は0.75(95%CI:0.62~0.91)とDato-DXdの有意なPFS延長効果が示された。ORRはDato-DXd群は26.4%、ドセタキセル群では12.8%と、こちらもDato-DXd群で良好であった。PFSのサブ解析で特筆すべきは組織型での差であった。非扁平上皮がんではDato-DXd群のハザード比が0.63であったのに対して、扁平上皮がんでは1.38と組織型でDato-DXd療法の有効性が異なることが示唆された。今回の中間解析時点でのOSはDato-DXd vs.ドセタキセルで0.90(95%CI:0.72~1.13)であり、今後のフォローアップデータが待たれるところである。治療期間の中央値はDato-DXdが4.2ヵ月、ドセタキセルは2.8ヵ月であった。Dato-DXdのAEについて、Grade3以上のAEは25%、減量を要した症例の割合は20%と、どちらもドセタキセルと比較して低い傾向にあった。頻度の多いAEは口内炎(47%)、吐き気(34%)、脱毛(32%)であった。またDato-DXdに特徴的なAEとしてドライアイや流涙などの眼関連のAEが19%に発生した。また、ILDは8%で、7例(2%)にILDによる治療関連死亡が発生したことも注意すべきAEとして取り上げたい。これらの結果から、既治療の非扁平上皮がんに対してDato-DXdが重要な治療選択肢になりうると結論付けられた。ACHILLES/TORG1834試験最後に、本邦からの重要な第III相試験の報告を紹介する。TORGを中心に全国の臨床試験グループが参加して行われたインターグループスタディであるACHILLES試験の結果が、新潟県立がんセンター新潟病院の三浦 理氏より報告された。本試験は、EGFR遺伝子変異の中でExon19欠失もしくはL858R点変異を除く、いわゆるuncommon変異を有する未治療例を対象として、標準治療をプラチナ+ペメトレキセド、試験治療をアファチニブとして、PFSを主要評価項目に設定した無作為化比較試験である。109例が登録され、標準治療群とアファチニブ群に1:2に割り付けられた。変異の種類としてはG719Xが約40%と最も多く、L861Qが約18%であった。複数のuncommon変異を同時に有するcompound変異は約30%であった。ベースの脳転移は約30%に認めた。主要評価項目のPFSはアファチニブ群の中央値が10.6ヵ月、標準治療群では5.7ヵ月で、ハザード比は0.422(95%CI:0.256~0.694)であり、アファチニブの有意なPFS延長効果が示された。ORRはアファチニブで61.4%、標準治療で47.1%とアファチニブで良好であった。安全性は過去のLUX-Lung試験と同様のプロファイルであった。uncommon変異に対する初めての第III相試験であり、OSの結果が待たれるところであるが、同対象への標準治療としてアファチニブの地位はほかのEGFR-TKIよりリードしたものと考える。終わりに今回のESMOでは、取り上げた演題以外にもMini Oralやポスター発表で非常に興味深い発表が多かったです。今回のレポートが、多くの先生の臨床にお役に立てれば幸いです。

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ESMO2023 レポート 消化器がん

レポーター紹介本年、スペインのマドリードで欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)が、現地時間10月20日~24日にハイブリッド開催で行われた。日本の先生からの演題も多数報告されていたが、今回は消化器がんの注目演題について、いくつか取り上げていきたい。胃がん周術期の免疫チェックポイント阻害薬#LBA74Pembrolizumab plus chemotherapy vs chemotherapy as neoadjuvant and adjuvant therapy in locally-advanced gastric and gastroesophageal junction cancer:The Phase III KEYNOTE-585 study本試験は、T3以上の深達度もしくはリンパ節転移陽性と診断を受けた胃がんもしくは食道胃接合部がんに対する周術期治療として、術前・術後に化学療法+プラセボを3コースずつ行った後にプラセボを3週ごと11コース行う標準治療群と、術前・術後に化学療法+ペムブロリズマブ併用を3コースずつ行った後にペムブロリズマブを3週ごと11コース行う試験治療群を比較するランダム化二重盲検第III相試験である。国立がん研究センター東病院の設楽 紘平先生により結果が報告された。化学療法は、カペシタビン+シスプラチンまたは5-FU+シスプラチンを用いたメインコホートとFLOT療法を用いるFLOTコホートがあり、主要評価項目は全体の病理学的完全奏効(pCR)と無イベント生存期間(EFS)、メインコホートの全生存期間(OS)、FLOTコホートの安全性であった。全体で1,254例が登録され、メインコホートのペムブロリズマブ群402例とプラセボ群402例、FLOTコホートのペムブロリズマブ群100例とプラセボ群103例が登録された。メインコホートではアジアから約50%が登録され、PD-L1のCPS1以上は約75%、MSI-Hが約10%、StageIIIが約75%およびカペシタビン+シスプラチンが約75%であった。メインコホートのpCR率は、ペムブロリズマブ群の12.9%に対しプラセボ群では2.0%と、有意にペムブロリズマブ群で良好であった(p<0.0001)。pCR率のサブグループ解析では、PD-L1のCPS1未満でペムブロリズマブ群のpCR改善率が悪い傾向があり(4.2%の上乗せ)、MSI-H群ではペムブロリズマブ群のpCR率が有意に高かった(37.1%の上乗せ)。EFS中央値はペムブロリズマブ群で44.4ヵ月、プラセボ群で25.3ヵ月であり、事前に設定された統計設定を達成できなかった(HR:0.81、p=0.0198)。OS中央値はペムブロリズマブ群で60.7ヵ月、プラセボ群で58.0ヵ月であった(HR:0.90)。メインコホート+FLOTコホートにおける解析では、EFS中央値がペムブロリズマブ群で45.8ヵ月、プラセボ群で25.7ヵ月(HR:0.81)、OS中央値はペムブロリズマブ群で60.7ヵ月、プラセボ群で58.0ヵ月であった(HR:0.93)。重篤な毒性は全体では両群に有意差はなく、Grade3~4の免疫関連有害事象とインフュージョン・リアクションはペムブロリズマブ群で多い傾向があった。#LBA73Pathological complete response (pCR) to durvalumab plus 5-fluorouracil, leucovorin, oxaliplatin and docetaxel (FLOT) in resectable gastric and gastroesophageal junction cancer (GC/GEJC): interim results of the global, phase III MATTERHORN study本試験は、StageII、IIIおよびIVAの診断を受けた胃がんもしくは食道胃接合部がんに対する周術期治療として、FLOT+プラセボ療法4コース後に手術を行い、術後FLOT+プラセボ4コース施行後プラセボを4週ごと10サイクル追加する標準治療群に対し、術前および術後のFLOT療法に対するデュルバルマブを上乗せし、終了後デュルバルマブを4週ごと行う試験治療群の優越性を検証したランダム化二重盲検第III相試験である。主要評価項目はEFS、副次評価項目は中央判定のpCR率、OSであり、今回は副次評価項目であるpCR率が報告された。日本を含む20ヵ国から948例が登録され、474例がFLOT+デュルバルマブ群に、474例がFLOT+プラセボ群に登録された。デュルバルマブ群では91%で手術が行われ、87%が切除を完遂し86%が術後化学療法を施行、プラセボ群では91%で手術が行われ、85%が切除を完遂し86%が術後化学療法を施行された。患者背景は両群で偏りがなく、胃がんが約70%で食道胃接合部がんは約30%、T1~2/T3/T4が約10%/約65%/約25%、臨床的リンパ節転移陽性が約70%、病理はdiffuse typeが約20%、PD-L1発現(腫瘍における発現)は≦1%が約90%であった。副次評価項目である中央判定pCR率はデュルバルマブ群で19%、プラセボ群で7%と12%の上乗せとなり、統計学的有意差を認めた(オッズ比[OR]:3.08、95%信頼区間[CI]:2.03~4.67、p<0.00001)。pCRとnear pCRを合わせた改善率はデュルバルマブ群で27%、プラセボ群で14%と、13%の上乗せがあり、統計学的に有意な改善を認めた(OR:2.19、95%CI:1.58~3.04、p<0.00001)。サブグループ解析では全体にデュルバルマブ群で良好であったが、PD-L1発現1%未満の群ではpCR率の差が少ない傾向にあった。手術の完遂率・R0切除率・術式・リンパ節郭清の割合は両群で差がなかった。安全性に関しては両群とも新規の有害事象(AE)は認められなかった。周術期のFLOT療法にアテゾリズマブの上乗せを検証するDANTE試験がASCO2022で、中国で行われた周術期capeOX/SOXにtoripalimabの上乗せを検証する試験がASCO2023で報告され、tumor regression grade rate(TRG rate)という病理学的効果を見る指標が改善する可能性が示唆されている。今回、2つの周術期の大規模第III相試験が報告され、術前治療における免疫チェックポイント阻害薬の併用はpCR率を改善することが報告された。しかし、KEYNOTE-585試験では、ほかの主要評価項目であるEFSは統計学的に改善せず、OSもほぼ同等であった。今まで大規模第III相試験で、免疫チェックポイント阻害薬の追加でEFSやOSを改善した報告はなく、胃がん周術期の免疫チェックポイント阻害薬が予後を改善するかはまだ明らかではない。MATTERHORN試験の今後の解析や他研究を含め、PD-L1やMSIを含む、さらなるバイオマーカー研究が待たれる。HER2陽性進行胃がん1次治療へのペムブロリズマブ#1511OPembrolizumab plus trastuzumab and chemotherapy for HER2+ metastatic gastric or gastroesophageal junction (mG/GEJ) adenocarcinoma: Survival results from the phase III, randomized, double-blind, placebo-controlled KEYNOTE-811 studyKEYNOTE-811試験はHER2陽性の切除不能進行胃がんを対象に、標準治療である化学療法+トラスツズマブに対するペムブロリズマブの上乗せを検証する、プラセボ対照ランダム化二重盲検第III相試験である。2021年9月に副次評価項目の1つである奏効率(ORR)に関する報告がNature誌に掲載され、標準治療群の51.9%に対してペムブロリズマブの併用で74.4%と、22.5%の上乗せと統計学的有意差を認めていた。今回、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)とOSについて第3回中間解析(追跡期間中央値:38.5ヵ月)の報告がなされた。698例が、ペムブロリズマブ群350例、ブラセボ群348例に割り付けられた。第2回中間解析における全体集団においてペムブロリズマブ群はプラセボ群に対してPFS(10.0ヵ月vs.8.1ヵ月)に有意な改善を認めた(HR:0.73、p=0.0002)。PD-L1が≦1の症例においては、さらなる改善傾向を認めた(10.9ヵ月vs.7.3ヵ月、HR:0.71)。第3回中間解析の結果が示され、全体集団におけるOSは20.0ヵ月vs.16.8ヵ月(HR:0.84)であったが、統計学的なp値は示されなかった。PD-L1≦1の症例においては、PFSと同様にOSも改善傾向を認めた(20.0ヵ月vs.15.7ヵ月、HR:0.81)。まだイベントが少なく、OSは追加解析中である。ORRは73% vs.60%でありペムブロリズマブ群で13%の上乗せを認めた。今回の検討で、OSは全体集団で統計学的有意な改善を示さなかった。しかし、ORRの改善や、PFSは全体集団で有意な改善を認め、OSもPD-L1≦1症例では良好な結果が報告された。しかし、Lancet誌で論文化された結果を見ると、第2回中間解析でOSの延長は統計学的有意差を示せなかった。またディスカッションで述べられていたが、PD-L1がCPS1未満では、逆にペムブロリズマブ群でOSが不良であったことが示されている。以上よりEUではPD-L1 CPS1以上においてのみペムブロリズマブ併用が承認され、米国FDAも同様の基準に承認が変更されている。本邦ではまだ保険適用外であるが、治療効果が高いレジメンであり、承認されればHER2陽性胃がんの1次治療が大きく変化する。今後、本邦での承認の可否や承認された場合の適応条件を含め注目される。MSI-H胃がん1次治療のイピリブマブ+ニボルマブ#1513MOA Phase II study of Nivolumab plus low dose Ipilimumab as 1st line therapy in patients with advanced gastric or esophago-gastric junction MSI-H tumor:First results of the NO LIMIT study (WJOG13320G/CA209-7W7)本研究は本邦で行われた、MSI-High切除不能進行再発胃がんに対する1次治療としてのイピリムマブ+ニボルマブ(Ipi/Nivo)の有効性と安全性を探索した単群第II相試験である。主要評価項目はORR、副次評価項目は病勢コントロール率(DCR)、PFS、OS、奏効期間(DOR)、安全性であり、今回、主要評価項目であるORRの結果が愛知県がんセンター薬物療法部の室 圭先生より報告された。スクリーニング試験であるWJOG13320GPS試験が並行して行われており、2020年11月~2022年8月の期間に国内75施設から進行胃がん935例がスクリーニングされた。そのうちMSI-Highと診断された症例のうち29例が本試験に登録された。3例が完全奏効、15例が部分奏効を達成し、ORRは62.1%(95%CI:42.3~79.3)で事前の統計学的設定に達し、主要評価項目を達成した。DCRは79.3%、追跡期間中央値9.0ヵ月時点のPFS中央値は13.8ヵ月(95%CI:13.7~未達)、DORとOSは未到達、12ヵ月PFS率は73%、OS率は80%であった。Grade3のAEが11例、Grade4が1例発現したが、治療関連死は認めず、既存の研究と異なるAEは認めなかった。21例で治療が中止され、治療中止の最も多い理由はAE(13例)であった。進行胃がんの中でおよそ5%といわれるMSI-Highを対象にしており、スクリーニング研究を含め、本邦の多くの先生が協力して完遂されたことにまずは拍手を送りたい試験である。既報のCheckMate 649試験でもMSI-High群では免疫チェックポイント阻害薬の併用効果がきわめて高いことが知られており、MSI-Highは胃がん1次治療前の治療選択に重要なバイオマーカーであると考えられる。また、Ipi/Nivoは食道がんにおけるCheckMate 648試験でも長期生存につながる症例が他治療より多い可能性が示唆されており、胃がんにおいてもそのような対象があるかもしれない。もちろんIpi/Nivoは胃がんにおいて本邦では保険適用外であるが、本研究の長期フォローアップの結果やバイオマーカーの解析結果が期待される。RAS/BRAF野生型+左側原発大腸がんのm-FOLFOXIRI+セツキシマブ#555MOModified (m)-FOLFOXIRI plus cetuximab treatment and predictive clinical factors for RAS/BRAF wild-type and left-sided metastatic colorectal cancer (mCRC):The DEEPER trial (JACCRO CC-13)本試験は本邦で行われた大規模なランダム化第II相試験である。主要評価項目であるDpR(最大腫瘍縮小率)はASCO2021で有意な改善が報告されている。今回、聖マリアンナ医科大学腫瘍内科講座の砂川 優先生よりRAS/BRAF野生型かつ左側のサブグループ解析結果が報告された。RAS/BRAF野生型、左側の大腸がんにおいてDpRとPFSはいずれもm-FOLFOXIRI+セツキシマブ群においてm-FOLFOXIRI+ベバシズマブ群より良好であった(DpR中央値: 59.2% vs.47.5%、p=0.0017、PFS:14.5ヵ月vs.11.9ヵ月、HR:0.71、p=0.032)。またPFSにおけるサブグループ解析では男性、R0/1切除ができなかった症例、および肝限局以外の症例においてセツキシマブ群で良好な傾向があった。とくに肝限局転移例ではPFSは両群で有意差を認めなかった(14.5ヵ月vs.15.5ヵ月、HR:0.86、p=0.62)ものの、それ以外ではセツキシマブ群でPFSの改善を認めた(15.1ヵ月vs.11.4ヵ月、HR:0.63、p=0.015)。今回のサブグループ解析は、本邦の実臨床における実際と合致した対象で、期待できる効果が示された。深い奏効が期待できるため、個人的には詳細なゲノム検査が困難な、若いRAS/BRAF野生型大腸がん症例に期待したい治療である。次回のガイドラインの記載が注目される。KRAS G12C変異大腸がんへのソトラシブ+パニツムマブ#LBA10 Sotorasib plus panitumumab versus standard-of-care for chemorefractory KRAS G12C-mutated metastatic colorectal cancer (mCRC):CodeBreak 300 phase III study肺がんなどを中心に、新たに注目されているバイオマーカーであるKRAS G12Cに対する治療開発が進んでいる。大腸がんでは約3%の症例でKRAS G12C変異を認めるといわれており、ソトラシブ+パニツムマブは先行する第I相試験でORRが30%と期待できる結果を示していた。今回、1レジメン以上の治療を受けたKRAS G12C変異陽性切除不能進行再発大腸がんに対して、ソトラシブ+パニツムマブと標準治療(トリフルリジン・チピラシルもしくはレゴラフェニブ)を比較する第III相試験の結果が報告された。主要評価項目はPFS、主な副次評価項目はORRとOSで、160例がソトラシブ960mg/日+パニツムマブ(53例)と、ソトラシブ240mg/日+パニツムマブ(53例)、そして標準治療(54例)に1対1対1で割り付けられた。約90%が2レジメン以上、オキサリプラチン、フッ化ピリミジン、イリノテカン、血管新生阻害薬による治療を受けていた。主要評価項目であるPFSはソトラシブ960mg群、ソトラシブ240mg群、標準治療群でそれぞれ5.6ヵ月(HR:0.49、p=0.006)vs.3.9ヵ月(HR:0.58、p=0.03)vs.2.2ヵ月であり、ソトラシブ群で有意に改善を認めた。ORRはそれぞれ26% vs.6% vs.0%であり、ベースラインよりも腫瘍が縮小した症例の割合は81% vs.57% vs.20%であった。OSはイベント発生数がまだ約40%と未達で、8.1ヵ月vs.7.7ヵ月vs.7.8ヵ月であった。主なGrade3以上の毒性はソトラシブ群でざ瘡様皮疹(960mg群11% vs.240mg群4%)、皮疹(6% vs.2%)、下痢(4% vs.6%)、低マグネシウム血症(6% vs.8%)であり、標準治療群では好中球減少(24%)、貧血(6%)、嘔気(2%)であった。研究者らは、KRAS G12C変異を有する大腸がんに対してソトラシブ960mg/日+パニツムマブが新しい標準治療になる可能性があると結論付け、本結果はNEJM誌にも掲載された。PFSやORRは期待できる結果を示しているが、肺がんではソトラシブ単剤で28.1~37.1%のORRが報告されており、大腸がんではパニツムマブ併用ながら、やや劣る奏効である。またOSはそれほど差がなく、標準治療群でソトラシブをクロスオーバーして使用しているのかなど、後治療の影響があるのかも含めた長期フォローの結果が待たれる。いずれにせよ、希少な対象の薬剤であり、本邦でも早期にKRAS G12C変異陽性大腸がん患者に届けられるようになることが期待される。転移膵がん1次療法、ゲムシタビン+nab-パクリタキセル#1616ONab-paclitaxel plus gemcitabine versus modified FOLFIRINOX or S-IROX in metastatic or recurrent pancreatic cancer (JCOG1611, GENERATE):A multicentred, randomized, open-label, three-arm, phase II/III trial切除不能進行膵がんにおける1次化学療法の標準治療は(modified)FOLFIRINOX療法とゲムシタビン+nab-パクリタキセル(GnP)療法であるが、直接比較した大規模第III相試験はいまだなかった。今回、本邦でmFOLFIRINOX療法とGnP療法およびS-IROX療法(S-1、イリノテカン、オキサリプラチン)を比較する第II/III相試験であるGENERATE試験(JCOG1611)が行われ、国立がん研究センター中央病院の大場 彬博先生より結果が報告された。主要評価項目はOS、副次評価項目はPFS、ORRおよび安全性であった。PS0~1の症例を対象に、2019年4月~2023年3月に国内45施設から527例が登録され、GnP群(176例)、mFOLFIRINOX群(175例)、S-IROX群(176例)に1対1対1で割り付けられた。主要評価項目のOSはGnP群17.1ヵ月、mFOLFIRINOX群14.0ヵ月(HR:1.31、95%CI:0.97~1.77)、S-IROX群13.6ヵ月(HR:1.35、95%CI:1.00~1.82)であった。中間解析にて最終解析における優越性達成予測確率はmFOLFIRINOX群0.73%、S-IROX群0.48%とGnP群を上回る可能性がほとんどないため、本試験は中止となった。PFSはGnP群6.7ヵ月、mFOLFIRINOX群5.8ヵ月(HR:1.15、95%CI:0.91~1.45)、S-IROX群6.7ヵ月(HR:1.07、95%CI:0.84~1.35)、ORRはGnP群35.4%、mFOLFIRINOX群32.4%、S-IROX群42.4%であった。Grade3以上のAEで多かったものは好中球減少症で、GnP群60%、mFOLFIRINOX群52%、S-IROX群39%で認められた。食欲不振(5% vs.23% vs.28%)、下痢(1% vs.9% vs.23%)は、GnP群よりもmFOLFIRINOX群、S-IROX群で多く認められた。本研究は膵がんの実臨床に対する非常に重要な試験であり、今回の結果を鑑みると本邦における切除不能膵がんに対する1次治療の標準治療はGnP療法であると考えられる。本邦の現状では1次治療でGnP療法を行い、2次治療でナノリポソーマルイリノテカン+5-FU+レボホリナートを行うことが推奨されているが、2023年のASCOでナノリポソームイリノテカンを使ったNALIRIFOX療法のGnP療法に対する優越性が報告されている。本邦ではNALIRIFOX療法は保険適用外であるが、今後本邦での承認を含めた状況が注目される。

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外来通院治療中の肺がんにおける悪液質合併、初診時で5割超、治療開始が遅れるとさらに増加/日本肺癌学会

 外来通院中の肺がん患者の5割超が初診時に悪液質を合併しており、その割合は治療開始までの期間が長いほど増加するとの研究結果が示された。関西医科大学の勝島 詩恵氏が第64回日本肺癌学会学術集会で発表した、外来通院肺がん患者における悪液質の後ろ向き観察研究のデータである。 がん悪液質は進行がんの多くに合併し、化学療法の効果を下げ、有害事象の発現を増加させる。また、悪液質は進行すると不可逆的かつ治療抵抗性になるため、早期からの介入が推奨される。しかし、臨床現場における悪液質の病状判断は難しく、必ずしも早期介入が実現しているとは言えない。 同大学では外来通院がん患者に特化した、がんリハビリテーション外来である「フレイル外来」を実施している。勝島氏らは、同外来を2020年11月〜22年11月に受診した肺がん患者を後ろ向きに解析した。 主な結果は以下のとおり。・フレイル外来初診時の肺がん患者(76例)における悪液質の合併は55.3%(42例)であった。・悪液質の発症と関連する項目はMNA(Mini Nutritional Assessment Score、p<0.001)とIPAQ(International Physical Activity Questionnaire、p=0.026)であった。つまり、低活動と低栄養が独立した関連因子であることが明らかになった。<悪液質の有無による比較>・フレイル外来初診時からの生存日数を悪液質の有無で比較すると、悪液質あり群は、なし群に比べ有意に予後不良であった(p=0.012)・悪液質がない状態で治療開始した患者では病勢制御率、初回治療完遂率ともに100%であった。一方、悪液質がある状態で治療開始した患者では、病勢制御率66.7%、初回治療完遂率58.3%であり、悪液質の合併は、治療効果とともに治療完遂率に悪影響を及ぼすことが示された。<初診から治療開始までの期間:早期群[45日未満]と遅延群[45日以上]による比較>・早期群では、初診時と治療開始時の悪液質合併割合に変化はなかったが(初診時61%→治療開始時61%)、遅延群では初診時から治療開始時にかけて増加しており(37%→87%)、初診から治療開始までの時間が長いほど悪液質の発症が高まる傾向にあった。 勝島氏は、がん悪液質の予防、とくに診断から治療開始までの空白期間での介入は、化学療法の有効活用にとっても重要であること、そして、がん悪液質の予防には多職種が有機的に関わって患者の身体活動量や栄養状態を維持することが欠かせないと述べた。

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NSCLCへのニボルマブ+イピリムマブ±化学療法、実臨床の安全性・有効性は?(LIGHT-NING)/日本肺癌学会

 進行・再発非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療として、2020年11月にニボルマブ+イピリムマブ±化学療法が保険適用となり、実臨床でも使用されている。また、国際共同第III相試験CheckMate 9LA試験、CheckMate 227試験の有効性の成績は、非常に少数例ではあるものの日本人集団が全体集団よりも良好な傾向にあった一方、Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)の発現割合は、日本人集団が全体集団よりも高い傾向にあったことが報告されている。そこで、ニボルマブ+イピリムマブ+化学療法(CheckMate 9LAレジメン)、ニボルマブ+イピリムマブ(CheckMate 227レジメン)を使用した患者のリアルワールドデータを収集するLIGHT-NING試験が実施された。本試験の第3回中間解析の結果について、山口 哲平氏(愛知県がんセンター呼吸器内科部)が第64回日本肺癌学会学術集会で発表した。試験デザイン:後ろ向き観察研究対象:未治療の進行・再発NSCLC患者525例試験群1:ニボルマブ(360mgを3週ごと)+イピリムマブ(1mg/kgを6週ごと)+化学療法(3週ごと、2サイクル)(CM 9LA群:308例)試験群2:ニボルマブ(240mgを隔週または360mgを3週ごと)+イピリムマブ(1mg/kgを6週ごと)(CM 227群:217例)評価項目:[主要評価項目]治療状況、全生存期間(OS)、Grade3以上の免疫関連有害事象(irAE)、治療中止に至ったTRAEなど[副次評価項目]irAEの発現時期とirAEに対する治療内容および症状改善までの期間、irAEの有効性への影響など 主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢中央値は70歳、女性が18.7%、PS 0~1/2/3以上が89.1%/6.5%/1.5%、扁平上皮がんが27.0%、PD-L1発現状況が1%未満/1~49%/50%以上/不明は46.5%/34.7%/9.1%/9.7%であった。・治療別にみた年齢中央値はCM 9LA群が67歳、CM 227群が73歳、75歳以上の割合はそれぞれ11.7%、40.1%であり、高齢の患者では化学療法を含まないニボルマブ+イピリムマブが多く選択される傾向にあった。・解析時点において、イピリムマブのみを中止した患者の割合は2.5%、ニボルマブとイピリムマブの両剤を中止した患者の割合は85.3%で、イピリムマブ中止の内訳は病勢進行が43.6%、有害事象が38.3%、その他が5.9%であった。・Grade3/4のTRAEは40.2%(CM 9LA群:49.7%、CM 227群:26.7%)に発現し、いずれかの薬剤の中止に至ったTRAEは37.9%(それぞれ41.9%、32.3%)に発現した。・治療関連死は3.4%(CM 9LA群:3.6%[11例]、CM 227群:3.2%[7例])に認められ、間質性肺疾患(9例)が最も多かった。・OS中央値は、CM 9LA群が24.3ヵ月、CM 227群が21.9ヵ月であり、1年OS率はそれぞれ69.1%、62.8%であった。・無増悪生存期間(PFS)中央値は、CM 9LA群が6.4ヵ月、CM 227群が6.2ヵ月であり、1年PFS率はそれぞれ32.2%、37.5%であった。・医師判定に基づく奏効率は、39.6%(CM 9LA群:40.7%、CM 227群:37.8%)であった。 本結果について、山口氏は「安全性に関する新たなシグナルは観察されず、安全性プロファイルはCheckMate 9LA、227試験と同様であった。治療関連死の原因としては肺臓炎関連が多かった。有効性に関して、CM 9LA群とCM 227群は同様の結果であり、PD-L1発現割合によっても治療効果に大きな差はみられなかった」とまとめた。

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既治療の小細胞肺がんへのtarlatamab、奏効率40%/NEJM

 既治療の小細胞肺がん(SCLC)患者の治療において、tarlatamabは持続的な奏効を伴う抗腫瘍活性を発揮し、生存アウトカムも良好であり、新たな安全性シグナルは確認されなかったことが、韓国・成均館大学校のMyung-Ju Ahn氏らが実施した「DeLLphi-301試験」で示された。tarlatamabは、がん細胞上のδ様リガンド3(DLL3)とT細胞上のCD3を標的とする二重特異性T細胞誘導(BiTE)分子で、DLL3とCD3の両方に結合することでT細胞をがん細胞へと誘導し、がん細胞の溶解をもたらす標的免疫療法である。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年10月20日号で報告された。3つのパートから成る国際的な第II相試験 DeLLphi-301試験は、日本を含む17ヵ国56施設が参加した非盲検第II相試験であり、2021年12月~2023年5月の期間に患者の登録を行った(Amgenの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、SCLCと診断され、プラチナ製剤ベースの治療と少なくとも1つの他の治療を受け、全身状態が良好な患者(ECOG PSのGrade0または1)であった。 本試験は3つのパートで構成された。パート1では176例を登録し、tarlatamab 10mg(88例)または100mg(88例)を静脈内投与する群に無作為に割り付けた。パート2では、事前に規定されたパート1の中間解析の結果に基づいて選択されたtarlatamabの用量に患者を登録した(10mgを選択し12例を登録)。パート3では34例を登録し、tarlatamabの安全性を評価した。 全例に対しサイクル1の1日目にtarlatamab 1mgを、8日目および15日目に10mgまたは100mgを投与し、その後、28日を1サイクルとして病勢が進行するまで各用量を2週ごとに投与した(1サイクルに2回の投与)。 主要評価項目は奏効(完全奏効[CR]+部分奏効[PR])率とし、RECIST version 1.1に基づき、盲検下独立中央判定で評価した。10mg群で奏効率40%、全生存期間中央値14.3ヵ月 全体で220例がtarlatamabの投与を受けた。前治療ライン数の中央値は2であった。抗腫瘍活性と生存の評価の対象となった188例(パート1、2)の追跡期間中央値は、tarlatamab 10mg群(100例、年齢中央値64.0歳、男性72%)が10.6ヵ月、同100mg群(88例、62.0歳、70%)は10.3ヵ月だった。 奏効は、10mg群では100例中40例(40%、97.5%信頼区間[CI]:29~52)、100mg群は88例中28例(32%、21~44)で達成され、CRはそれぞれ1例、7例で得られた。 奏効が達成された68例中40例(59%)で奏効期間は6ヵ月以上に達しており、20例(29%)では9ヵ月以上であった。また、データカットオフ日(2023年6月27日)の時点で、10mg群の40例中22例(55%)、100mg群の28例中16例(57%)で奏効が持続していた。 無増悪生存期間中央値は、10mg群が4.9ヵ月(95%CI:2.9~6.7)、100mg群は3.9ヵ月(2.6~4.4)であった。また、全生存期間中央値は、10mg群が14.3ヵ月(10.8~評価不能[NE])、100mg群はNE(12.4~NE)であり、9ヵ月の時点での推定全生存率はそれぞれ68%、66%だった。 最も頻度の高い有害事象は、サイトカイン放出症候群(10mg群51%、100mg群61%)、食欲減退(29%、44%)、発熱(35%、33%)、便秘(27%、25%)、貧血(26%、25%)であった。サイトカイン放出症候群は、主としてサイクル1の期間中に発現し、ほとんどの患者がGrade1または2であった。Grade3のサイトカイン放出症候群は、100mg群で6%に発生したのに対し、10mg群では1%と頻度が低かった。 免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)とその関連の神経イベントは、10mg群の11例(8%)と100mg群の24例(28%)で発生し、Grade3以上は10mg群では認めず、100mg群では4例(5%)にみられた。治療関連有害事象によるtarlatamabの投与中止の割合は、両群とも3%と低かった。 著者は、「40%という奏効率は、主要評価項目としての既存対照(historical control)の基準である15%をはるかに上回る。現在、SCLCの3次治療以降の治療法は承認されておらず、本試験の結果は、3次治療以降の実臨床研究の観点から好ましいものと考えられる」としている。現在、既治療の進展型SCLC患者において、tarlatamab(10mg、2週ごと)を標準治療と比較する第III相試験(DeLLphi-304試験)が進行中だという。

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早期からの緩和ケアっていつからやればいい?【非専門医のための緩和ケアTips】第63回

第63回 早期からの緩和ケアっていつからやればいい?緩和ケアを含む医療は時代と共に形を変えていくものですが、ここ最近は「いかに早期から緩和ケアを提供するか」という議論が盛んになっています。でも、コンセプトは理解できても、具体的にどうするかとなると、難しく感じる方も多いようです。今日の質問最近、「早期からの緩和ケア」や「診断時点の緩和ケア」という言葉をよく聞きます。終末期だけでなく、緩和ケアをできるだけ早くから提供する、という考え方はよいと思うのですが、具体的にはいつから行えばいいのでしょうか?この質問はよくいただくものですね。確かに、「早期の緩和ケア」といっても、具体的に「いつから、何をするのか」は、なかなか難しい問題です。研究領域においては、「早期からの緩和ケア」とは、「進行がんの診断後早期から専門的緩和ケアサービスが介入すること」を意味します。ただ、緩和ケアの専門家が少ない日本においては、「緩和ケアを専門としているかにかかわらず、その患者に関わる医療者が緩和ケアを提供する」という意味で用いられていることが多いです(「一次緩和ケア」とも呼びます)。早期の緩和ケアにおいては、「包括的アセスメント」が重要です。これは身体症状だけでなく、精神心理的な苦痛や社会的な問題など、幅広く緩和ケアを必要とする状態がないかを評価することです。要は「患者さんが困っていることがあれば、きちんとそれに気付いて対応しましょうね」というだけなので、まあ当たり前ではあります。でも、「本当に、きちんと、できていますか?」と改めて問われると、どうでしょうか?自分から「症状で困っていることはないのですが、今の治療がうまくいかなかったらどうしようと思って不安なんです。最近眠れないこともあって…」なんて言ってくれる患者さんは、そうはいません。よって、医療者側からきちんとアセスメントをすることが必要であり、結果として緩和ケアのニーズがあれば、それに対応します。このアセスメントのために、いくつかのツールが開発されています。有名なのが「生活のしやすさに関する質問票」1)です。こちらはフリーでダウンロードできますので、ぜひ活用してみてください。今回のTips今回のTips早期の緩和ケアとは、早ければいいわけではなく、ニーズに対して行うもの。病状にかかわらず、アセスメントを繰り返すことが大切。1)生活のしやすさに関する質問票/緩和ケア普及のための地域プロジェクト

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CheckMate試験の日本語版プレーン・ランゲージ・サマリーが公開/小野・BMS

 小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、抗PD-1抗体「オプジーボ(一般名:ニボルマブ)点滴静注」の3つの臨床試験結果に関するPlain Language Summary of Publication(PLS)の日本語版がFuture Oncology誌に掲載されたことを発表した。 PLSとは、臨床試験結果や医学論文などの情報を、専門家以外の人でも理解しやすいように平易な言葉で要約した文書で、PLSを受け入れる国際ジャーナルの増加に伴い、近年、世界的にその出版数が増加している。 今回、小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、下記3つの第III相臨床試験に関するPLSの日本語翻訳サポートを行った。・CheckMate 816試験:切除可能な非小細胞肺がん患者を対象に、術前補助療法としてニボルマブと化学療法の併用療法を評価した臨床試験PLS日本語版・CheckMate 649試験:未治療の切除不能な進行・再発の胃がん、胃食道接合部がん、食道腺がん患者を対象に、ニボルマブと化学療法の併用療法を評価した臨床試験PLS日本語版・CheckMate 274試験:根治的切除術を受けた筋層浸潤性尿路上皮がん患者を対象に、術後補助療法としてニボルマブを評価した臨床試験PLS日本語版 掲載されたPLSは、単純に元となった論文を簡素化した内容ではなく、疾患の基礎情報や専門用語の解説、薬の基本的な作用機序などについてもまとめられている。また、文書全体にイラストやピクトグラムを用い、治療の意義や結果の解釈なども含めて、QA形式でわかりやすく解説されている。 いずれもオープンアクセスになっており、専門家以外が情報を確認したり、医療関係者が患者への説明に使用したりすることで、治療の理解や選択に役立つと考えられる。 なお、小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、国際ジャーナルに掲載された主要な第III相臨床試験のPLSについて、今後も日本語翻訳のサポートを行っていくとしている。

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