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CRT後のデュルバルマブ地固めは高齢NSCLCにも有用か?

 切除不能なStageIIIの非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する化学放射線療法(CRT)後のデュルバルマブ地固め療法は、PACIFIC試験で有用性が示され、標準治療となっている。しかし、高齢のNSCLC患者における有効性・安全性は明らかになっていない。そこで、韓国・慶北大学校のJi Eun Park氏らの研究グループは、70歳以上の高齢のNSCLC患者におけるCRT後のデュルバルマブ地固め療法の有用性を検討するため、後ろ向き研究を実施した。その結果、70歳以上のNSCLC患者でも有効性は同様であったが、有害事象は多い傾向にあった。本研究結果は、Clinical Lung Cancer誌オンライン版2024年2月16日号で報告された。 本研究は、CRT後のデュルバルマブ地固め療法を受けた切除不能なStageIIIのNSCLC患者286例を対象とした後ろ向き研究で、2017年9月~2022年9月の期間に実施した。対象患者を年齢(70歳未満、70歳以上)で2群に分類し、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性などを評価した。 主な結果は以下のとおり。・70歳未満群は166例(58.0%)、70歳以上群は120例(42.0%)であった。・PFS中央値は、70歳未満群が19.4ヵ月であったのに対し、70歳以上群は17.7ヵ月であり、有意差は認められなかった。・OS中央値は、70歳未満群が未到達であったのに対し、70歳以上群は35.7ヵ月であり、有意差は認められなかった。・70歳以上群において、ECOG PS0/1のサブグループはPFSが良好で、シスプラチンを用いたCRTを実施したサブグループはOSが良好であった。一方、男性はOSが不良であった。・デュルバルマブ地固め療法を完遂した患者の割合は、70歳未満群が39.2%であったのに対し、70歳以上群は27.5%であり、完遂率は70歳以上群が有意に低かった(p=0.040)。・治療関連有害事象、Grade3/4の有害事象、治療の完全中止、治療関連死は、いずれも70歳以上群で多かった。 本研究結果について、著者らは「デュルバルマブ地固め療法は、70歳以上の高齢患者において70歳未満の患者と同様の有効性を示した。しかし、70歳以上の高齢患者では有害事象が多かった。したがって、患者選択や化学療法の選択は慎重に行うべきであり、注意深い有害事象モニタリングが必要である」とまとめた。

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切除不能肺がんに対する新アプローチ、小規模試験で有望な結果

 局所進行性で切除不能な非小細胞性肺がん(NSCLC)患者に対しては、標準的な化学療法に加え、高線量の放射線をがんに対してピンポイントで照射できる体幹部定位放射線治療(SABR、SBRTとも呼ばれる)を行うことで、患者の生存率向上が望める可能性のあることが、28人のNSCLC患者を対象にした初期段階の小規模試験で明らかになった。 研究論文の共著者である、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)放射線腫瘍学分野のBeth Neilsen氏は、「われわれが得た結果は、化学療法と、患者の腫瘍の位置や形状の治療による変化などを考慮して照射方法などを再検討しながら行うSABRの併用は、患者にとって有益なことを示すものだ」と述べている。詳細は、「JAMA Oncology」に1月11日掲載された。 Neilsen氏らによると、切除不能なNSCLC患者はこれまで、標準的な放射線治療(6週間で30回の照射)と化学療法の併用で治療されてきたが、その生存率は低かったという。同氏らは、低線量の放射線治療を何十回も行う代わりに、高線量の放射線治療を少ない回数で行う方が、腫瘍の根絶と再発防止につながるのではないかと考えた。SABRで鍵となるのが、生存率を向上させつつ健康な組織へのダメージを最小限に抑える理想的な線量を見つけることであった。 そこでNeilsen氏らは、医学的理由や患者の希望で腫瘍の切除が不能なステージIIおよびIIIのNSCLC患者28人(年齢中央値70歳、男性57%)を対象に、化学療法との併用で実施するSABRの線量をどれだけ安全に上げることができるかについての検討を行った。対象者は、化学療法とともに、放射線治療として4Gy/回を10回受けた後に、低線量(総線量25Gy;5Gy×5回照射、10人)、中線量(総線量30Gy;6Gy×5回照射、9人)、高線量(総線量35Gy;7Gy×5回照射、9人)でのSABRを受けた。追跡期間中央値は18.2カ月だった。 その結果、有害事象としてグレード3以上の急性または遅発性の非血液毒性がそれぞれ11%(3人)と7%(2人)の患者に生じたが、中線量群にグレード3以上の有害事象が生じた患者はいなかった。2人が死亡したが、いずれも高線量群の患者だった。2年間の局所制御率は、低線量群、中線量群、および高線量群の順に、74.1%、85.7%、および100.0%であった。また、2年間の全生存率は同順で、30.0%、76.2%、55.6%であった。 研究グループは、「2年間の腫瘍再発率に関しては高線量群が最も良好ではあったが、一方で、この群では副作用がより深刻だった」と述べている。これに対して、中線量群で生じた副作用は、主に疲労感、食道や肺の炎症による咽頭痛や咳などで、重篤な副作用が生じた患者はいなかったという。 研究グループは、本研究は対象者の数が少なかったため、より大規模な研究を実施して長期間の追跡を行う必要があると述べている。それでも、論文の上席著者である、UCLA放射線腫瘍学分野のMichael Steinberg氏は、「この研究が、がん関連死の主因である肺がんの治療を改善するために取り組まれている努力に貢献することは間違いない。SABRと化学療法の統合は、安全性、有効性、患者の転帰の改善という点で有望な新しいアプローチを提供するだけでなく、より効果的で個別化された治療への道も切り開かれることになる」と述べている。

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肺がんコンパクトパネル、細胞診検体の精度は?

 2023年1月26日に遺伝子パネル検査「肺がん コンパクトパネルDxマルチコンパニオン診断システム」(肺がんコンパクトパネル)の一部変更申請が承認された。従来、4遺伝子(EGFR、ALK、ROS1、MET)のマルチコンパニオン診断検査として用いられていたが、今回の承認により3遺伝子(BRAF、KRAS、RET)が追加され、7遺伝子が対象となった。その肺がんコンパクトパネルについて、細胞診検体(液体検体)を用いた遺伝子検査の精度を検討した結果が、國政 啓氏(大阪国際がんセンター 呼吸器内科)らによって、Lung Cancer誌オンライン版2月3日号で報告された。本研究において、気管支生検鉗子洗浄液の検体では、組織検体で検出された遺伝子変異との一致率が94.9%と高率であった。 本研究は、StageIVの非小細胞肺がん患者を対象とした。液体検体として、気管支生検鉗子洗浄液(鉗子洗浄コホート:79例)、胸水(胸水コホート:8例)、髄液(髄液コホート:9例)を用いて、肺がんコンパクトパネルによる遺伝子検査を実施した。組織検体についても遺伝子検査を実施し(オンコマイン Dx Target Test マルチ CDxシステムまたはAmoyDx肺癌マルチ遺伝子PCRパネルを使用)、鉗子洗浄コホートの液体検体の結果と比較した。 主な結果は以下のとおり。・鉗子洗浄コホートでは、組織検体で検出された変異との一致率は94.9%(75/79例)であった。・鉗子洗浄コホートの組織検体と液体検体でみられた相違は以下のとおり(下線部は相違点)。症例1:組織(EGFR L861Q、MET exon14スキッピング)、液体(EGFR L861Q)症例2:組織(KRAS Q61H)、液体(検出なし)症例3:組織(EGFR L858R)、液体(EGFR L858R、KRAS G12C)症例4:組織(EGFR L858R)、液体(EGFR L858R、EGFR A859D)・胸水コホートでは、GM管で8週間冷蔵保存した後でもDNA・RNAの質や量は低下しなかった。・髄液コホートでは、9例中8例で組織検体にドライバー遺伝子変異が認められた。髄液中に腫瘍細胞が認められた患者全例で、髄液検体で認められた変異と組織検体で認められた変異が一致していた。 本研究結果について、著者らは「組織検体の採取が困難な場合、治療につながるドライバー遺伝子変異の検索や治療抵抗性の解析に、細胞診検体を用いた肺がんコンパクトパネルによる遺伝子検査が利用可能と考えられる」とまとめた。

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「進行がんだから仕方がない」は使わない ~外来通院の進行がん患者へのリハビリテーション~【Oncologyインタビュー】第45回

出演:関西医科大学 呼吸器腫瘍内科学講座 勝島 詩恵氏「進行がんだから仕方がない」。がん医療の現場で何げなく使ってしまう言葉ではないだろうか。この言葉を考え直す時期が来ているようだ。外来通院の進行がん患者へのリハビリテーション介入という新たな挑戦が始まっている。関西医科大学の勝島 詩恵氏に聞いた。進行がん患者治療の課題に立ち向かう外来通院がん患者は増加している。その反面、治療に適応するための対策は追いついていないという。外来通院ができるがん患者は、基本的に全身状態(PS)良好で身体機能が維持されているはずだが、実際は問題を抱えているケースが多い。外来通院が可能な状態であっても、進行がん患者である以上、薬物だけで治療は成立しない。患者の栄養状態、身体機能、精神面の安定があってこそ、より良いがん診療ができる。外来通院がん患者に対して、これから始まる、あるいは現在行っている治療に適合させるための介入(リハビリテーション)が必要だと考え、2020年、関西医科大学附属病院は「フレイル外来」を立ち上げた。多職種が連携した介入を実現大学病院などのハイボリュームセンターでは、連日100人を超える外来化学療法患者が受診する施設も珍しくない。そのため、主治医の診察から治療(点滴)開始まで、長い待ち時間が生じ、患者の大きな負担となっている。フレイル外来は、その待ち時間を有効利用する。患者は化学療法外来主治医の診療終了後、フレイル外来を受診する。化学療法レジメンに合わせて、月1~2回の通院が通常である。関西医科大学附属病院のフレイル外来では、腫瘍内科医(勝島氏)が診察を行い、患者の治療内容、副作用や経過などの理解を深める。それ以外にも、食欲不振や体重減少が強い患者には、栄養士への栄養指導の依頼や治療薬に関する主治医への相談を行う。介護保険申請を行っている患者や通院が困難となってきた患者には、デイケアや訪問リハビリテーションの紹介、精神的ケアや症状緩和が必要な患者には緩和ケア科と連携したサポートを行う。フレイル外来には、立ち上げからの3年間で360人の患者が紹介されている。外来の認知度と共に患者は増え、現在は月100人の患者がフレイル外来を受診する。呼吸器、消化器、乳腺などが主体であったが、最近は血液内科から造血幹細胞移植後の患者の紹介も多い。「外来の認知度が上がるにつれ、紹介が増えており、確実なニーズの増加を実感している」と勝島氏は述べる。病勢進行していなくても、半数以上が悪液質を合併していた勝島氏らは、フレイル外来を受診する進行再発肺がん患者の調査を実施した。定期的に外来通院にて化学療法を受ける肺癌患者は基本的にPS良好で、病勢もコントロールされているはずの外来患者だが、フレイル外来初診時、過半数(55.2%)が悪液質を合併していた1)。また、化学療法を受ける進行再発がん患者の悪液質は、低栄養状態、低身体活動が悪液質の臨床的特徴、もしくは、悪液質の特徴として独立した因子として抽出された。低身体活動については、10分以上続けて行う身体活動を評価する「IPAQ*」で評価できたが、従来のPSでは拾い上げられなかった1)。「医師が判断するPSは実際の活動量と乖離している可能性があるため、PSだけで判断すると危険」と勝島氏は言う。*IPAQ(International Physical Activity Questionnaire、国際標準化身体活動質問票):1週間における高強度および中等度の身体活動を行う日数および時間を質問する。治療成績向上、鍵は治療開始までの期間と悪液質の早期予防また、勝島らは、近年肺癌診療において、病期診断、病理診断に一定の時間を要し、その間に身体機能が落ちる患者がいることに着目して調査を行った。初診から治療開始までの期間が長いほど悪液質発症が高まる傾向が明らかになった。初診から治療開始までが45日以上の群では、治療開始までに悪液質発症が増加したが(初診時37%→治療開始時87%)、45日未満の群では増加しなかった(61%→61%)。悪液質の存在は化学療法の効果に悪影響を及ぼすことも示されている。悪液がない患者では、初回化学療法の病勢コントロール率(DCR)は100%、初回治療完遂率も100%であった。一方、悪液質がある患者での初回化学療法のDCRは66.7%、初回治療完遂率は58.7%と、有意差はないものの、悪液質がない患者よりも悪い傾向であった。しかし、悪液質の合併については、医療者も患者も危機意識は低い。勝島氏によれば、がんの確定診断を受けながら、治療開始までの待機期間にPSが悪化し、抗がん剤治療が受けられなくなってしまったケースも少なくないという。悪液質は決してがん終末期の病態ではなく、がん治療の早期にも現れ、抗がん剤治療に悪影響を及ぼす。迅速な診断と介入で、いかに悪液質がない状態で化学療法を実施できるかが、がん治療成功の鍵を握るといえる。これらの研究結果について勝島氏は、「多くの医療者が何となく気付いていたこと。少し全貌が明らかになった」と言う。がんリハビリテーションの質的なメリット進行再発がんリハビリテーションの真のエンドポイントは定まっていない。治療を行ったとしても最終的には病勢が進行する。そのため、体重や身体機能などの量的なエンドポイントは、いずれ達成できなくなってしまう。一方、フレイル外来通院患者の中には、病勢が進行しても受診を希望する患者も多い。そのため、進行再発がん患者へのリハビリテーションは、量的な効果だけでなく、質的な効果を持つのではないかという仮説を立てた。そして、フレイル外来通院患者に、リハビリテーションでの経験について、半構造化面接法によるインタビューを行った。その結果、がんリハビリテーションに取り組むことで、フレイル外来通院患者は「身体機能改善に対する期待感」「変化を客観的に把握できる安心感」「自分の存在意義の再確認」といったポジティブな経験をし、根治不能な進行がんとの付き合い方を見いだしていることがわかった2)。現時点でできることとはいえ、すべての施設で関西医科大学のような取り組みができるわけではない。そのような中、医療者ができることは何だろうか。まず、悪液質に対する危機意識を高めるべきだと勝島氏は強調する。また、医療者と共に患者の理解も重要だ。治療医の言葉は患者に大きな影響を与える。治療医から患者への「どれだけ動けて、痩せずに治療を受けられるか、で抗がん剤の効果も変わってくる」などの一言で、患者の理解も深まるという。多職種連携の最初の一石は医師しか投じられない。モチベーションが高い理学療法士や看護師は多いが、医師からの紹介がないと動くことはできないことも多い。勝島氏は「治療医から発信するがん悪液質診療を形作るべき」と述べる。前向き試験の取り組み前述の先行試験から、悪液質は初回治療前からでも存在し得ること、治療に悪影響を及ぼすことが明らかとなった。勝島氏らは、次の段階として前向き試験を実施し、初回治療前からの運動・栄養療法が進行再発がんにおける悪液質の発症を抑制し、がん治療に良い効果を生み出すか否かを検証する予定である。今回の試験は治療前から介入するため、少なくとも化学療法の影響を受けない。交絡因子として化学療法の影響を受けないことから、がんリハビリテーションの効果をより純粋に評価できる可能性があるという。外来がんリハビリテーションの診療報酬獲得に結び付ける現在は、患者も医療者も、治療中の体重減少や身体機能低下の重要性について認識不足で、介入も遅れがちである。実際、フレイル外来には、痩せきって身体機能が落ちてから紹介されるケースも少なくないという。早期からのリハビリテーションの重要性を医療者が認識することで、治療効果が乏しくなる前に介入できる。勝島氏は、「痩せて筋力もない患者が、化学療法という大きな剣を無理やり持たされている状況が悪液質。それに対し、早期から多職種が介入して、身体機能や栄養状態、精神面を維持してもらうことで、大きな剣をしっかり振りかざすことができる」とし、「われわれの研究によって、運動療法・栄養療法という低コストの介入が、進行がん治療に寄与することが証明できれば、最終的には外来がんリハビリテーションの診療報酬獲得に結び付くかもしれない」と述べた。画像を拡大する画像を拡大する(ケアネット 細田 雅之)参考1)Katsushima U, et al. Jpn J Clin Oncol. 2024 Jan 11. [Epub ahead of print]2)勝島 詩恵ほか. Palliative Care Research.2022;17:127-134.

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がんの企業治験で分散型臨床試験を使用開始/アムジェン・MICIN・聖マリアンナ医大

 アムジェン、MICIN、および聖マリアンナ医科大学病院は、アムジェンが聖マリアンナ医科大学病院で実施するがんの企業治験において、分散型臨床試験(Decentralized Clinical Trial:DCT)のプラットフォーム使用を開始した。DCTプラットフォームはMICIN社が提供する「MiROHA(ミロハ)」である。 同取り組みの対象となるアムジェンの企業治験は、発現頻度が低いバイオマーカーを対象としたものである。患者数が少なく、スクリーニングでの脱落率も高いことが予想されているため、より多くの患者からインフォームド・コンセント(IC)を取得し、患者組み入れを促進する必要がある。 同治験では、治験実施医療機関と関連病院をMiROHAを使用してオンラインでつなぐことによって、遠隔でICを実施する。患者は治験実施医療機関を直接受診することなく、紹介元の病院にいながら治験の説明を受けることができる。 DCTを活用した治験は、居住地域にかかわらず、適切な患者が治験の情報を知り、治験に参加できるようになる可能性がある。さらに、治験登録が速く進み、有効な薬剤をいち早く患者に届けられると期待される。

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FoundationOne CDx、BRCA変異陽性の去勢抵抗性前立腺がんに対するコンパニオン診断として承認/中外

 中外製薬は2024年2月5日、遺伝子変異解析プログラム「FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル」(FoundationOne)について、ファイザーのPARP阻害薬タラゾパリブ(商品名:ターゼナ)のBRCA遺伝子変異陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺がんに対するコンパニオン診断として厚生労働省より承認を取得したと発表。 FoundationOneは、今回の承認で8つのがん種(非小細胞肺がん、悪性黒色腫、乳がん、大腸がん、卵巣がん、前立腺がん、胆道がん、固形がん)、計25薬剤に対するコンパニオン診断機能を保有することになった。

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新規がんは世界で約2,000万例、日本で多いがん種との違いは?/WHO

 2024年2月1日、世界保健機関(WHO)のがんに特化した機関である国際がん研究機関(IARC)は、185ヵ国から収集したがん負担に関する最新の推計を発表した。それによると、2022年には全世界で新たに約2,000万例のがん患者が生じ、約970万例が死亡したと推定される。36のがん種のうち、世界で最も多く発症および死亡したのは肺がんで、日本で最も多く発症したのは大腸がん、最も多く死亡したのは肺がんであった。<全世界> 全世界では、2022年に新たに1,996万5,054例(男性:1,030万6,574例、女性:965万8,480例)ががんに罹患し、死亡は973万6,520例(男性:542万6,895例、女性:430万9,625例)と推定される。 新規発症したがんは、全体では肺がんが最も多く(12.4%[248万308例])、乳がん(11.6%[230万8,931例])、大腸がん(9.6%[192万6,136例])、前立腺がん(7.3%[146万6,718例])、胃がん(4.9%[96万8,365例])と続いた。男女別では、男性では肺がん(15.3%)、前立腺がん(14.2%)、大腸がん(10.4%)、胃がん(6.1%)、肝がん(5.8%)が多く、女性では乳がん(23.8%)、肺がん(9.4%)、大腸がん(8.9%)、子宮がん(6.8%)、甲状腺がん(6.4%)が多かった。 死亡が最も多かったのは、全体では肺がん(18.7%[181万7,131例])で、大腸がん(9.3%[90万3,853例])、肝がん(7.8%[75万7,906例])、乳がん(6.9%[66万9,418例])、胃がん(6.8%[65万9,805例])と続いた。男性では肺がん(22.7%)、肝がん(9.6%)、大腸がん(9.2%)、胃がん(7.9%)、前立腺がん(7.3%)の順に多く、女性では乳がん(15.4%)、肺がん(13.6%)、大腸がん(9.4%)、子宮がん(8.1%)、肝がん(5.5%)の順に多かった。 なお、肺がんは、アジアにおけるタバコの習慣的な使用が関係している可能性が高いと推測されている。<日本> 日本では、2022年に新たに100万5,157例(男性:58万535例、女性:42万4,622例)ががんに罹患し、42万6,278例(男性:24万823例、女性:18万5,455例)が死亡したと推定される。 新規発症したがんは、全体では大腸がん(14.5%[14万5,756例])、肺がん(13.6%[13万6,723例])、胃がん(12.6%[12万6,724例])、前立腺がん(10.4%[10万4,318例])、乳がん(9.1%[9万1,916例])の順に多かった。男女別では、男性では前立腺がん(18.0%[10万4,318例])が最も多く、肺がん(16.5%[9万5,740例])、胃がん(14.5%[8万4,071]、大腸がん(13.9%[8万435例])、肝がん(4.9%[2万8,678])と続いた。女性では乳がん(21.6%[9万1,916例])、大腸がん(15.4%[6万5,321例])、胃がん(10.0%[4万2,653例])、肺がん(9.7%[4万983例])、膵がん(5.7%[2万4,018例])の順に多かった。 死亡が最も多かったのは、全体では肺がん(19.5%[8万3,243例])で、大腸がん(14.2%[6万473例])、胃がん(10.3%[4万3,807例])、膵がん(10.1%[4万3,265例])、肝がん(6.2%[2万6,420例])と続いた。男性では肺がん、大腸がん、胃がんが多く、女性では大腸がん、肺がん、膵がんが多かった。 2050年には新たに3,500万例以上のがん患者が発生すると予測しており、これは2022年の推定2,000万例から77%の増加である。急速に増加する世界的ながん罹患は、人口の高齢化や増加、社会経済的発展に関連する危険因子(タバコ、アルコール、肥満、大気汚染など)への曝露の変化を反映しているとされる。

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第21回日本臨床腫瘍学会の注目演題/JSMO2024

 日本臨床腫瘍学会は2024年1月31日にプレスセミナーを開催し、第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(2024年2月22日~24日)の注目演題などを紹介した。 今回は、国・立場・専門分野・職種・治療手段などのあらゆる障壁をなくし、世界を1つにして皆で語り、議論をして、その先に続く未来を切り拓いていきたいという願いを込め、「Break the Borders and Beyond ~for our patients~」というテーマが設定された。演題数は1,258となり、そのうち海外演題数は511と過去最多になる予定である。プレジデンシャルシンポジウムなどの注目演題 能澤 一樹氏(愛知県がんセンター ゲノム医療センターがんゲノム医療室・乳腺科部 医長)が、本会で企画されているプレジデンシャルシンポジウムを紹介した。プレジデンシャルシンポジウムは8セッション、シンポジウムは30セッション企画されている。プレジデンシャルシンポジウムは以下のとおり。【プレジデンシャルシンポジウム】会長企画シンポジウム1:Real World Data(RWD)活用に向けた基盤整備2月22日(木)9:00~10:20会長企画シンポジウム2:ICIで変わる、周術期治療2月22日(木)10:30~11:30会長企画シンポジウム3:腫瘍内科医に知って欲しい外科治療の進歩2月22日(木)15:30~17:00会長企画シンポジウム4:多学際領域との協働で奏でる臨床腫瘍学の未来2月23日(金)8:20~9:50会長企画シンポジウム5:超高齢社会のがん医療、日本はどうすべきか2月23日(金)9:50~11:20会長企画シンポジウム6:臨床開発や日常診療のためのReal World Data活用を考える2月24日(土)8:20~9:50会長企画シンポジウム7:がん診療は集約化か均てん化か2月24日(土)13:45~15:15会長企画シンポジウム8:新規薬剤開発における新しいドラッグロス2月24日(土)9:50~11:50 また、岩田 広治氏(愛知県がんセンター副院長 兼 乳腺科部長)は、プレジデンシャルセッションが充実していることを強調した。プレジデンシャルセッションで発表されるデータは、過去に国際学会で発表されたものではなく、世界で初めて発表されるデータとなっている。紹介された演題は以下のとおり。【プレジデンシャルセッション】・肺がんグローバル試験の日本人サブセット解析:1演題・肺がんグローバル試験のアジア人サブセット解析:1演題・肺がんグローバル試験の全生存期間アップデート:1演題・消化器がん大規模コホート研究からの新規データ(SCRUM-Japan MONSTAR SCREEN2、GALAXY Trial):3演題・血液がんの新規薬剤第I相試験:1演題・乳がん新規抗体薬物複合体のグローバル試験のアジア人サブセット解析:1演題・乳がん新規グローバル試験のバイオマーカー解析:1演題・日本での新規抗体薬物複合体の第I相試験データ:1演題・消化器がんの日本での第III相試験のバイオマーカー解析:1演題・消化器がんのグローバル試験の日本人サブセット解析:1演題・肝胆膵領域でのJCOG試験の追加解析結果:1演題新規薬剤のドラッグロスへの取り組み 室 圭氏(愛知県がんセンター 薬物療法部 部長)がドラッグロスについて解説した。ドラッグロスは、欧米にて承認されている薬剤が日本では開発されず、使用できないという問題であり、ドラッグロスに該当する抗がん剤は2016年時点で21剤であったのに対し、2020年時点では44剤に増加している。この原因として、海外新興企業が開発する薬剤の増加、臨床試験に日本が組み入れられないことなどが挙げられる。 そこで、わが国が直面する喫緊の問題の解決に向けて、以下のシンポジウムが企画されている。会長企画シンポジウム8:新規薬剤開発における新しいドラッグロス2月24日(土)9:50~11:50リアルワールドデータの活用に向けた諸問題 武藤 学氏(京都大学大学院医学研究科 腫瘍薬物治療学講座 教授)がリアルワールドデータの活用法と現状の課題について紹介した。国際的には、リアルワールドデータを用いて薬剤の承認申請を行うことが検討されており、実際に活用され始めている。日本でもさまざまなデータベースが利用できるようになっているが、アウトカムのデータが存在しない、デジタル化が遅れている、電子カルテメーカーや施設によって情報のコードやデータ構造が異なる、医療者によって記載方法が異なるナラティブデータの取り扱い方が定まっていないなど、課題が山積している。 そこで、リアルワールドデータの活用に向けて、以下のシンポジウムが企画されている。会長企画シンポジウム1:Real World Data(RWD)活用に向けた基盤整備2月22日(木)9:00~10:20会長企画シンポジウム6:臨床開発や日常診療のためのReal World Data活用を考える2月24日(土)8:20~9:50

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ROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がんに対する次世代治療薬repotrectinib(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 ROS1融合遺伝子は非小細胞肺がんの約2%に認められるドライバー遺伝子変異である。現在、本邦でもROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がんに対し、クリゾチニブおよびエヌトレクチニブが承認されている。「PROFILE 1001試験」においてROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がんに対してクリゾチニブはORR 72%、PFS中央値19.2ヵ月、OS中央値51.4ヵ月という有効性を示した(Shaw AT, et al. N Engl J Med. 2014;371:1963-1971. , Shaw AT, et al. Ann Oncol. 2019;30:1121-1126.)。また同じくROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がんに対するエヌトレクチニブ単剤療法を評価した「ALKA-372-001試験」と「STARTRK-1試験」「STARTRK-2試験」の3つの臨床試験の統合解析では、ORR 77%、PFS中央値19.0ヵ月という結果が示された。いずれも『肺癌診療ガイドライン2023年版』では推奨度「1C」という位置付けとなっている。 ただし、現在承認されているROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がんに対する治療薬は、耐性の出現や脳転移での再発の頻度が高いことが知られている。今回紹介するrepotrectinibはROS1のトロポミオシン受容体キナーゼ(TRK)A/B/Cを選択的に阻害する低分子チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)である。repotrectinibは過去の臨床試験において、ROS1 G2032Rなどの耐性変異を含むROS1融合遺伝子陽性肺がんに対する活性が示された次世代のROS1-TKIとされている。 今回行われた「TRIDENT-1試験」の第I相試験の結果に基づき、repotrectinibの推奨用量は160mg、1日1回を14日間投与後、15日目以降は160mg、1日2回投与とされた。ROS1-TKI未治療の拡大コホート1に含まれた71例では、奏効率79%、PFS中央値35.7ヵ月と高い効果が示された。また化学療法治療歴がなくROS1-TKIで1種類の治療歴のある56例の拡大コホート4でも、奏効率38%、PFS中央値9.0ヵ月と期待される結果が示された。ベースラインに脳転移がない症例における、頭蓋内の12ヵ月時点でのPFS率は拡大コホート1で91%、拡大コホート4で82%と高い効果が示された。また、第II相試験の用量で治療された426例のうち、頻度の高い有害事象はめまい、味覚障害、異常感覚であり、Grade3以上の有害事象は29%であったと報告された。治療中止に至った有害事象は3%となっている。 第III相試験が行われたわけではないので、純粋に比べることはできないが、この「TRIDENT-1試験」の結果からは次世代ROS1-TKIであるrepotrectinibは既存の治療薬と並べても、奏効率も無増悪生存期間も期待できることがわかる。とくに拡大コホート4で行われたROS1-TKIが1種類使用された症例群においても奏効率38%、PFS 9.0ヵ月というのは有望である。既存のROS1-TKIでも制御が難しい脳転移に対しても、高い頭蓋内PFS率が示されたことも心強い結果であり、早期の承認が望まれる。 ただ、本研究に使用されたROS1融合遺伝子の検索は「Guardant360 CDx」あるいは「GeneseeqLite circulating tumor DNA-based assays」に基づいている。本邦の医療機関では一般的に扱っていない検査キットであり、今後、このrepotrectinibが実臨床で活用されるためにはコンパニオン診断の問題が出てくるのであろう。

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肺がんコンパクトパネルにBRAF、KRAS、RET追加

 DNAチップ研究所は2024年1月26日、次世代シークエンス技術による遺伝子パネル検査「肺がん コンパクトパネルDxマルチコンパニオン診断システム」(肺がんコンパクトパネル)の承認事項一部変更を発表した。 今回の承認で、2022年12月16日に開示した従来の4遺伝子(EGFR、ALK、ROS1、MET)に加え、3遺伝子(BRAF、KRAS、RET)が新たに承認されたことになる。 肺がんコンパクトパネルは、検体として生検採取のFFPE組織、未固定組織に加え、細胞診も対象となる。

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医療者の体重減少、1年以内のがん罹患リスク高い/JAMA

 過去2年以内に体重減少がみられなかった集団と比較して、この間に体重減少を認めた集団では、その後の12ヵ月間にがんに罹患するリスクが有意に高く、とくに上部消化管のがんのリスク増大が顕著なことが、米国・ハーバード大学医学大学院のQiao-Li Wang氏らの調査で示された。研究の成果は、JAMA誌2024年1月23/30日号に掲載された。米国の医療従事者を対象とする前向きコホート研究 研究グループは、米国のNurses’ Health Study(NHS)に参加した40歳以上の女性看護師(追跡期間1978年6月~2016年6月)と、Health Professionals Follow-Up Study(HPFS)に参加した40歳以上の男性医療従事者(追跡期間1988年1月~2016年1月)のデータを用いた前向きコホート研究を行った(NHSとHPFSは米国国立衛生研究所[NIH]の助成を、今回の解析はSwedish Research Councilなどの助成を受けた)。 体重の変化は、両研究の参加者が2年ごとに報告した体重から算出した。また、減量の意思の強度を、減量促進行動としての身体活動の増強と食事の質の改善の有無で、高(両方の行動あり)、中(いずれか一方の行動あり)、低(両方の行動ともなし)の3つに分類した。10万人年当たりの1年がん罹患率:体重減少群1,362人vs.非減少群869人 15万7,474人(年齢中央値62歳[四分位範囲[IQR]:54~70]、女性11万1,912人[71.1%])を解析の対象とした。164万人年の追跡期間中に1万5,809人のがん罹患を同定した(罹患率964人/10万人年)。平均追跡期間は28(SD 10)年だった。 体重の変化を報告してから12ヵ月間のがん罹患率は、体重減少を認めなかった集団が869人/10万人年であったのに対し、10.0%を超える体重減少がみられた集団では1,362人/10万人年と有意に高かった(群間差493人/10万人年、95%信頼区間[CI]:391~594人/10万人年、p<0.001)。早期がん、進行がんのいずれも体重減少の可能性 減量の意思が低い集団における12ヵ月間のがん罹患率は、体重減少を認めなかった集団が1,220人/10万人年であったのと比較して、10.0%を超える体重減少がみられた集団では2,687人/10万人年であり、有意に高率だった(群間差1,467人/10万人年、95%CI:799~2,135人/10万人年、p<0.001)。 とくに上部消化管(食道、胃、肝臓、胆道、膵臓)のがんが、体重減少を認めた集団で多く、最近の体重減少がない集団では36人/10万人年であったのに対し、10.0%を超える体重減少がみられた集団では173人/10万人年であった(群間差:137人/10万人年、95%CI:101~172人/10万人年、p<0.001)。 著者は、「体重減少が0.1~5.0%および5.1~10.0%の集団でも、がん罹患率が有意に高かったが、10.0%超の減少がみられた集団でより顕著であり、減量の意思が“高”の集団よりも“低”の集団で高い傾向がみられた」と述べるとともに、「乳房、生殖器系、泌尿器のがん、脳腫瘍、悪性黒色腫などは体重減少との関連がなく、10.0%超の体重減少との関連を認めたのは、上部消化管のほか、血液、大腸、肺のがんであった」としている。 また、「体重減少の量は早期がんと進行がんで同程度であり、いずれのがんでも体重減少を認めると示唆された。年齢60歳以上で、体重が10.0%を超えて減少し、減量の意思が低い集団では、その後12ヵ月間にがんと診断される確率は3.2%であった」としている。

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Dr.光冨の肺がんキーワード解説「HER2」【肺がんインタビュー】 第99回

第99回 Dr.光冨の肺がんキーワード解説「HER2」肺がんではさまざまなドライバー変異が解明されている。それに伴い、種々の標的治療薬が登場する。それら最新の情報の中から、臨床家が知っておくべき基本情報を近畿大学の光冨 徹哉氏が解説する。

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切除可能III期NSCLC、toripalimab併用で無イベント生存期間が改善/JAMA

 切除可能なStageIIIの非小細胞肺がん(NSCLC)患者の治療では、周術期の化学療法にtoripalimab(プログラム細胞死タンパク質1のヒト化IgG4Kモノクローナル抗体)を追加すると、化学療法単独と比較して、無イベント生存期間が有意に改善し、安全性プロファイルは管理可能であることが、中国・上海交通大学のShun Lu氏らが実施した「Neotorch試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌2024年1月16日号に掲載された。中国50施設の無作為化プラセボ対照第III相試験 Neotorch試験は、中国の50施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2020年3月12日~2023年6月19日に参加者を登録した(中国・Shanghai Junshi Biosciencesの助成を受けた)。 年齢18~70歳、切除可能なStageII/IIIのNSCLC患者(非扁平上皮がんの場合はEGFRまたはALK遺伝子変異のない患者)を、術前補助療法として担当医が選択したプラチナ製剤ベースの化学療法(3サイクル)との併用で3週ごとにtoripalimab(240mg)またはプラセボを投与し、術後補助療法として同レジメンを1サイクル施行した後、維持療法として3週ごとにtoripalimab(240mg)単独またはプラセボを最長で13サイクル投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。病理学的奏効率も優れる 今回の中間解析(データカットオフ日:2022年11月30日)では、StageIIを除外したStageIIIのNSCLC患者404例(年齢中央値62歳、男性92%)を対象とした(toripalimab群202例、プラセボ群202例)。 主要評価項目である無イベント生存期間中央値は、プラセボ群が15.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:10.6~21.9)であったのに対し、toripalimab群は評価不能(NE)(95%CI:24.4~NE)であったが、統計学的に有意に優れた(ハザード比[HR]:0.40、95%CI:0.28~0.57、p<0.001)。 もう1つの主要評価項目である病理学的奏効(major pathological response、腫瘍床の生存腫瘍細胞が10%以下)の割合は、プラセボ群が8.4%(95%CI:5.0~13.1)であったのに比べ、toripalimab群は48.5%(41.4~55.6)と有意に高率であった(群間差:40.2%、95%CI:32.2~48.1、p<0.001)。予期せぬ治療関連毒性は認めない 副次評価項目である全生存期間中央値(NE vs.30.4ヵ月、HR:0.62、95%CI:0.38~1.00、p=0.05)、独立病理評価委員会の盲検下の判定による病理学的完全奏効(24.8% vs.1.0%、群間差:23.7%、95%CI:17.6~29.8、p<0.001)、担当医判定による手術を受けた患者の無病生存期間中央値(NE vs.19.3ヵ月、HR:0.50、95%CI:0.33~0.76、p<0.001)は、いずれもtoripalimab群で優れた。 試験期間中のGrade3以上の治療関連有害事象(toripalimab群63.4% vs.プラセボ群54.0%)、投与中止をもたらした治療関連有害事象(9.4% vs.7.4%)、致死的な有害事象(3.0% vs.2.0%)の発現率は両群で同程度であった。また、投与中止をもたらした有害事象(28.2% vs.14.4%)、免疫関連有害事象(42.1% vs.22.8%)はtoripalimab群で頻度が高かった。予期せぬ治療関連毒性は認めなかった。 著者は、「併用療法は、根治手術の割合が高く、R0切除率には影響を与えず、手術関連有害事象を増加させなかった」とし、「これらの知見は、切除可能なStageIIIのNSCLCに対する新たな治療選択肢として、toripalimabとプラチナ製剤ベースの化学療法との併用を支持するものである」と指摘している。

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北海道を舞台にマイクロRNA検査を用いた肺がん前向き観察研究を開始/Craif

 遺伝子調整機能を有し、がんの診断マーカーとして期待されるマイクロRNA(miRNA)1)を活用した肺がんのスクリーニング検査が北海道を舞台に始まる。がんの早期発見に対する次世代検査などを開発する名古屋大学発のベンチャー企業Craifが、北海道大学病院と共同研究契約を締結した。 北海道は広大な土地という条件に加え、過疎と高齢化が進むことで、検診率が全国で最も低い2)。とくに寒さの厳しい冬期は検診受診率が下がる。前向き観察研究を行う地域の1つである岩内地区は、北海道の中で、最も肺がん死亡率の高い地域である。死亡率の高さの理由として、同地区における、高い喫煙率と極端に低い検診受診率が考えられている。 このような背景の中、Craifは2023年2月に、北海道の最先端医療機関等と連携して、がん早期発見に向けたコンソーシアム「CRUSH-Cancer(クラッシュキャンサー)」を設立した。コンソーシアム活動の一環として、医療技術協力を受けている北海道大学と地域医療を担う岩内病院と共に新たなプロジェクトを行う。 プロジェクトの主要な取り組みとして、尿中miRNAをAIで分析するがんリスク検査「マイシグナル・スキャン」を用いた、今回の肺がんスクリーニングの前向き観察研究が行われる。研究では、岩内町、余市町の肺がん高リスク住民(喫煙者など)を対象に、肺がんの診断率を評価する。さらに、追跡調査を行い、肺がんの罹患率や予後に関連する因子を特定する予定。 Craifは「マイシグナル・スキャン」を100セット無償提供する。 研究責任医師である北海道大学病院呼吸器外科の加藤 達哉氏は、「尿中miRNAによる検診法は、自宅でも施行できる尿検査であることから、高齢化・過疎化がさらに進む北海道や日本全体においても、検診活動に革命を起こす可能性があると期待している」と述べる。

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つらい咳症状への対応【非専門医のための緩和ケアTips】第68回

第68回 つらい咳症状への対応肺がんや呼吸器疾患などの代表的な症状である咳。ご本人のつらさはもちろん、周りで見ているのもつらい症状です。緩和するために、どういったことができるのでしょうか?今日の質問外来の肺がん終末期患者さん、咳が最もつらい症状のようです。咳込み始めるとなかなか止まらず、眠れないときもあるそうです。一般的な咳止め薬は処方しているのですが、ほかにできることはないでしょうか?緩和ケアの専門家として、もう少し症状の和らぐ薬ができてほしいと思う症状の1つが咳です。私も時々、上気道炎などの後に咳が長引くことがありますが、本当につらいものです。日中の咳は、仕事にまったく集中できなくなってしまいますし、夜間に咳がでると眠れないですよね。慢性の呼吸器疾患や肺がんのような病態による咳の苦しさは、想像もしたくないです。また、咳の難しい点が、ご質問のように咳止め薬を処方しても症状の改善が乏しいところです。細菌性肺炎のような感染症や、心不全のような病態であれば、それぞれに合わせた治療が基本となります。一方、進行した肺がんのように治療が難しい場合は、対症療法としての薬物療法やケアが中心になります。薬物療法は、デキストロメトルファンのような鎮咳薬を用いますが、効果が十分でない場合は、悪性腫瘍が原因であればオピオイドを用いる場合も多いです。コデイン、モルヒネを中心に使っていることが多いと思います。オピオイドの適切な投与量は確立していないものの、呼吸困難に準じて投与するエキスパートが多いでしょう。薬以外の対処としては、呼吸リハビリテーションが1つの選択肢です。気道を刺激しないように呼吸をゆっくり行う練習や、咳き込んだ後の息を整える練習などが効果を発揮する場合があります。そのほか、乾性咳嗽はアメやハチミツなどの甘いものを摂取したり、吸入などで喉などが乾燥しないようにしたりします。「何かをしたらすぐ改善した」というケースはあまりないのですが、いろいろな対処法を知っておくことは重要です。患者や家族にとって、医療者が悩みながら一緒に対処を考えてくれた、ということも大切なのだと思います。私も悩みながら対応しています。難しい症状である咳、皆さんはどのようにされているでしょうか?今回のTips今回のTips咳は難しい症状の1つ。薬が効きにくいので、薬以外の対応も工夫しながら取り組みましょう。

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第198回 吸引して尿を調べるだけの手間いらずな肺がん診断法を開発

吸引して尿を調べるだけの手間いらずな肺がん診断法を開発初期肺がんの検診といえば低線量CT(LDCT)が標準となりつつあり、LDCT検診と肺がん患者の生存改善の関連が臨床試験で裏付けられています。しかしLDCTが普及している低~中所得国は少なく、普及している国であっても誰もが容易にLDCTを受けることができるというわけではありません。それに、本来不要な侵襲的検査を招く偽陽性も少なくはありません。そこで米国・マサチューセッツ工科大学(MIT)のSangeeta N. Bhatia氏らが率いるチームは、LDCTのような大掛かりな装置がなくとも初期肺がんを検出しうる簡便な検査法を開発し、その検査法で初期肺がんを正確に検出しうることをマウスでの検討で裏付けました1)。開発された検査は大きく分けて吸入と尿検査の2つの手順で構成されます。まず微粒子を吸入し、試験紙による尿検査でその微粒子由来の成分を検出します。吸い込む微粒子はポリマーの粒とそれを覆うDNAでできています。肺がんと関連するプロテアーゼによって切り離されたDNAは血中をめぐり、やがては尿中に排泄されて試験紙で検出することができます。初期肺がん(stageIの肺腺がん)と関連するプロテアーゼに対応する20種類の微粒子をヒトのような肺がんを発現するマウスに投与し、得られた測定結果を人工知能技術(機械学習)で解析したところ、最も正確な4種類が同定されました。その4種類の組み合わせの検出感度は84.6%、特異度は100%でした。開発された手段は非侵襲的で体を傷つける必要がなく、まず吸ってもらってしばらくしてから尿を採取するだけで事足ります。センサー役の微粒子は肺全体にくまなく行き届き、吸ってから尿検査までの時間もそれほどかかりません。マウスの検討では投与から2時間後に尿が採取されています。Bhatia氏らのチームはマウスの検討で見つかった4種類の組み合わせがヒトのがんも同様に検出しうるかどうかを、まずはヒトの生検検体を使って調べることを予定しています2)。がんの検出以外の使い道も検討されており、Bhatia氏らは肺炎の原因がウイルス、細菌、真菌のいずれなのかを同技術を利用して識別する取り組みを始めています3)。また、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などのほかの肺疾患の診断にも使えるかもしれません。Bhatia氏らは同技術の臨床試験をやがては実施することを目指していますが、同氏らが開発した似た技術による肝疾患2種・肝がんと非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の診断の検討はすでに臨床試験段階に至っています。ほかでもないBhatia氏を設立者の1人とするSunbird Bio社が第I相試験を実施しています2)。参考1)Zhong Q, et al. Sci Adv. 2024;10:eadj9591.2)Inhalable sensors could enable early lung cancer detection / Eurekalert3)How a Simple Urine Test Could Reveal Early-Stage Lung Cancer / MDedge

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肺がんと悪液質、8,000例超の後ろ向き研究と悪液質合併肺がんの前向き研究【肺がんインタビュー】 第98回

第98回 肺がんと悪液質、8,000例超の後ろ向き研究と悪液質合併肺がんの前向き研究8,000例超の進行肺がんにおける悪液質の疫学、発症危険因子、また悪液質が治療経過におよぼす影響を調べた肺癌登録合同委員会の調査結果が発表された。さらに、悪液質を合併した未治療の非小細胞肺がん患者における、治療レジメンごとの食欲、体重、QOLへの影響を調査した前向き試験の結果が発表された。この2つの臨床研究について、順天堂大学附属順天堂医院の宿谷 威仁氏が解説する。

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