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アルコール使用障害の治療に関するメタ解析に驚く話(コメンテーター:岡村 毅 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(210)より-

一般的な研修コースを歩んだ精神科医師は、さまざまな症例の経験を経て、順調に行けば卒後5年強で精神保健指定医となる(近年は専門医制度も確立したが、私の頃は整備がなされていなかった)。 指定医になるには、治療論や法的側面などを緻密に書かないと落とされてしまう症例レポートの提出が義務付けられており、「依存症」も課題の一つだった。多くの同僚は、症例に遭遇する確率が高いこともありアルコール依存症でレポートを書いたもので、研修コースにはアルコール病棟のある病院が多く含まれていた。 正直に告白すると、私はアルコール依存症のマネジメントはあまり得意ではなかった。アルコール依存症のレポートでは、意識清明となった患者に対してあらためて断酒意欲を確認し、ピア・サポートなどの助けも借りながらアルコールの有害性を学習し、断酒意欲を強化し、断酒維持に向かって伴走する、というような入院、退院、外来治療の経過を書くことが求められていたと記憶している。そこでは薬物治療の出る幕はあまりなく、あくまで離脱や二次的不眠等の対症療法であった。あるいは抗酒薬(飲酒してしまうと不快感が生じる物質を本人納得のもとに使用する)というものもある。 しかし、そもそもアルコールは日本中どこでも売っていて、いわゆる違法薬物ではない。アルコールで人生が破綻した悲惨なケースをたくさん見てきたし、破綻したからアルコールに走ったというケースも多々あった。そういう人が死ぬ思いで断酒しているのに、数十メートルも歩けば簡単に手に入る状況というのも理不尽にも思えて、真にアルコールの弊害を解決したければ国家として禁酒をしたほうがいいのではないか、などと考えもした。 また、アルコール依存の人は内科治療が必要な割にはずいぶん縁遠い人生を歩むことが多い(真面目に治療を受けなかったりするため)が、人生の最終局面では肝硬変と静脈瘤破裂で一瞬だけ内科の患者さんになっていたりする。「私は無力だ」そう思ったので得意ではなかったのだろう。これを読んでご不快に感じられた依存症の専門家がおられたら、専門外の人間の浅い理解と嗤っていただきたい。 いずれにせよ、アルコール依存症の症例レポートを書くためというのもあり、不思議な穏やかさと仲間意識の混在する梅雨どきのアルコール専門病棟にてしばらく働いたことを思い出した。 なんだかまったりしたエッセイになってしまったが、本論文を読んで、まずは外来でのアルコール使用障害(AUD)治療における薬物治療のメタ解析であることに驚いた。前述のような私の経験(入院中心の心理教育)とは、ずいぶんと距離がある。 本論文の考察において、「米国でもプライマリ・ケア医はAUDの治療には障壁があり専門機関に紹介する傾向があった」、「しかしプライマリ・ケアの段階での治療をすることが望まれる」と書いてあり、すわAUD治療のノーマライゼーションかと驚く。もっともAUDの1/3以下しか治療を受けていない、10%以下しか薬物治療を受けていない、とも記載されているので理念の表明なのだろう。時代の潮流を見極める必要がある。 次に、エビデンスがあるAUDの外来薬物療法が確立したことは素晴らしいことであるが、医学モデルが問題解決に必要十分と早とちりしないことも重要である。 極端な例だが、アルコール問題のあるホームレスの人には、治療を受けるならば居住施設に入ってもらうという姿勢よりも、治療を受ける受けないにかかわらず、まずは住居を提供することで、結果的に生活が安定しアルコールの問題も減るのではないかと考えられないだろうか? 実際、そのような報告がJAMAでなされている(Larimer ME, et al. JAMA. 2009 ;301(13):1349-1357.)。 私は本論文を批判しているのではなく、筆者らはこんなことは当然承知のうえだ。考察では、疫学研究ではさまざまな因子が飲酒に関連することに言及しているし、プライマリ・ケアでAUDの治療をするためにはメンタルヘルスの専門家との連携が鍵となることを公平に記載している。 いずれにしろ、この論文は新しい時代の羅針盤となるべき重要な論文かもしれない。2013年からアカンプロサートは本邦でも発売されている。多くの方が救われることを心から願う。 なお、最新の米国精神医学会の診断マニュアル(DSM-5)からはアルコール依存症と乱用という2分法は消滅してしまい、アルコール使用障害(AUD)という概念が使われている。

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これでC型肝炎を安全に完全に治せる?(コメンテーター:溝上 雅史 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(206)より-

今まで、C型慢性肝炎や肝硬変における根本的治療法としてはインターフェロン(IFN)ベースの治療しかなかったが、その持続的なウイルス消失(sustained virological response:SVR )は約50%で、さらに各種の高率な副作用で十分な治療を施すことができないという問題点があった。そこでHCVを直接叩く薬剤(directly acting antivirals (DAAs))が開発されたが、新規副作用や耐性株の出現があるにも関わらずそのSVRはそれほど改善されなかった。 2013年Gene EJ氏らは、C型肝炎40例に対してソホスブビル(SOF) (核酸型NS5Bポリメラーゼ阻害薬)とRibavirinを一日1回12週飲ませるだけで、副作用がほとんどなくかつSVR 90%以上と報告した。その後、レディパスビル(LDV)(NS5A阻害薬NS5A領域に対するDAA)も追加することで、副作用がなくかつ95%以上の症例でSVRが得られた。この非常に良好な成績を受け、今までIFNベースの治療で無効だった人やすでに肝硬変に進展している人たちの治療をどうするかという問題点が大きくクロースアップされた。 本論文では、この米国における非盲検無作為化第III相試験で、IFNベース治療で無効の440例、内20%の肝硬変を含む、を対象として現在残された問題点に果敢に挑んでいる。 方法は、LDV-SOF(LDV 90mg/SOF 400mg配合薬、1日1回1錠、12週)、LDV-SOF+RBV(12週)、LDV-SOF(24週)、LDV-SOF+RBV(24週)の4つの治療群に無作為に分け、主要評価項目は治療終了後12週時のSVR率である。 結果は、12週時のSVR率は、LDV-SOF 12群が94%、LDV-SOF+RBV 12群は96%、LDV-SOF 24群は99%、LDV-SOF+RBV 24群も99%で、過去の対照例との間に有意な差を認めた(いずれもp<0.001)。さらに12週時にSVRを達成した427例全例が、24週時にもSVRを維持していた。 治療終了後にウイルス学的再燃と判定された患者は440例中11例(2%)で、LDV-SOF 12群が7例(6%)、LDV-SOF+RBV 12群が4例(4%)であった。このうち10例は治療終了後4週までに再燃し、12週以降に再燃した例はなかった。 多変量解析で検出されたベースライン時の予後予測因子は肝硬変の有無のみで、全体のSVR率は非肝硬変例が98%、肝硬変例は92%だった。 各群の有害事象はほとんどが軽度~中等度で、疲労感(21~45%)、頭痛(23~32%)、悪心(6~23%)であった。治療中止例はなかったとしている。 以上の結果を受け、本邦でも同様の治験がすでに開始され、本年2014年夏ごろには最終結果が報告される予定である。今後、この結果からC型肝炎治療は大きく前進し、C型肝炎撲滅の第一歩となると考えられる。

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HCV遺伝型2、3型感染患者へもソホスブビル+リバビリン/NEJM

 C型肝炎ウイルス(HCV)遺伝型2型または3型感染患者への治療として、ソホスブビル+リバビリン治療が、高い持続性ウイルス学的著効(SVR)を達成したことが示された。治療期間は、2型感染患者が12週間、3型感染患者は24週間だったという。ドイツのヨハン・ヴォルフガング・ゲーテ大学医療センターのStefan Zeuzem氏らがヨーロッパ77施設から419例を登録して行った多施設共同の第III相無作為化試験の結果、報告した。NEJM誌オンライン版2014年5月4日号掲載の報告より。2型感染患者には12週間、3型感染患者には24週間で検討 HCV遺伝型6タイプのうち、2型または3型の感染患者は世界中で約30%を占めているという。現状では両者への標準治療は、ペグインターフェロン+リバビリンの24週間治療とされているが、研究グループはこれら患者に対するインターフェロンを用いないソホスブビル+リバビリン治療の有効性について検討を行った。 同治療に関するこれまでの臨床試験では、12週間治療で2型感染患者については高率のSVRが観察されたが、3型感染患者では低率だったことが報告されていた。そこで研究グループは、インターフェロンベース治療の有無を問わずに集めた両患者を対象とした試験を計画した。具体的には2型感染患者91例と3型感染患者328例を4対1の割合で、ソホスブビル+リバビリンまたはプラセボの12週間治療に割り付けて有効性を評価するプラセボ対照無作為化試験であった。 しかし試験開始後、他の第III相試験で、3型感染患者への16週間治療の有効性が報告された(対12週、非盲検試験)。そこで急遽プロトコルを変更し、3型感染患者への治療期間を24週間に延長し、プラセボ治療は中止とした。試験目的は再定義し記述的なものとすることとし仮説(2型感染患者への12週間治療の有効性を確認し、3型感染患者への24週間治療を評価すること)の検定は含まないこととした。 主要エンドポイントは、治療後の12週時点のSVRだった。SVR達成率はそれぞれ93%と85% 試験に登録され治療を受けた419例のうち、21%が肝硬変を有しており、58%にインターフェロンベースの治療歴があった。 結果、SVRの達成率は、12週間治療の2型感染患者では68/73例、93%(95%信頼区間[CI]:85~98%)で、24週間治療の3型感染患者では213/250例、85%(同:80~89%)だった。 3型感染患者について、肝硬変なしの患者では91%、ありの患者では68%だった。 最も頻度が高かった有害事象は、頭痛、疲労感、かゆみだった。

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未治療HCVへのABT-450+リトナビル+ダサブビル、第III相試験/NEJM

 未治療のC型肝炎ウイルス(HCV)遺伝型1型感染患者への治療として、リバビリンを用いないABT-450+リトナビル(ABT-450/r)+ダサブビルの12週治療が、高い持続性ウイルス学的著効(SVR)を達成したことが示された。オーストリア・ウィーン大学医学部のPeter Ferenci氏らが2件の第III相無作為化試験の結果、報告した。また、ウイルス学的失敗の割合は、リバビリンを用いるよりも用いなかったほうが、HCV遺伝型1a型感染患者では高かったが、1b型感染患者では示されなかったという。NEJM誌オンライン版2014年5月4日号掲載の報告より。遺伝子型1a型、1b型患者それぞれを対象に2つの第III相試験 先行研究により、リバビリンの有無にかかわらず、ABT-450/r+オムビタスビル+ダサブビルの非インターフェロン治療は、SVR達成など有効であることが第II相試験で示されている。 研究グループは、肝硬変のない未治療のHCV遺伝子1型感染患者を対象に、同レジメンの有効性と安全性を評価する2件の第III相試験「PEARL-III」「PEARL-IV」を行った。 PEARL-IIIは、遺伝子型1b型のHCV感染患者429例を対象とし、PEARL-IVでは同1a型患者305例を対象とし、それぞれABT-450/r+オムビタスビル(ABT-450 150mg、リトナビル100mg、オムビタスビル25mg)+ダサブビルと、リバビリンを投与または非投与(プラセボ)の群に無作為に割り付けて12週間の治療を行った。具体的には、1b型患者は、+リバビリン群210例、+プラセボ群209例、1a型患者はそれぞれ100例、205例に割り付けられた。 主要有効性エンドポイントは、治療終了後12週間のSVR(HCV RNA値25 IU/mL未満)の達成とした。SVR達成はいずれも高率、リバビリンを用いない1a型患者でSVRの失敗例が顕著 SVRの達成率は、いずれの遺伝子型患者群においても高率であった。1b型患者群では、+リバビリン群99.5%、+プラセボ群99.0%、1a型患者群では97.0%、90.2%であった。 また、1b型患者群では、治療後12週間のウイルス学的失敗は1例、2例についてはデータが入手できなかった。1a型患者では、リバビリンを用いないレジメンのほうが、ウイルス学的失敗が高率だった(7.8%vs. 2.0%)。 2試験ともに、ヘモグロビン値の減少が、リバビリンを受けている患者にいずれも顕著にみられた。2例の患者(0.3%)が有害事象のために試験薬を中断した。最も頻度が高かった有害事象は、疲労、頭痛、悪心であった。

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肝硬変なし未治療のC型肝炎に対するレディパスビル+ソホスブビル/NEJM

 肝硬変が認められない未治療のC型肝炎ウイルス(HCV)感染患者に対するレディパスビル+ソホスブビル治療について、8週間投与が、同12週間投与やリバビリン併用投与と比べ、有効性において非劣性であることが示された。米国・バージニア・メイソン・メディカル・センターのKris V. Kowdley氏らが行った治験(第III相)の結果、明らかにした。NEJM誌オンライン版2014年4月11日号掲載の報告より。レディパスビル+ソホスブビルの8週投与を、12週投与、リバビリン併用と比較 Kowdley氏らは、肝硬変の合併症がなく、未治療のHCV遺伝子1型に感染した患者647例を対象に、オープンラベル無作為化比較試験を行った。被験者を無作為に3群に分け、1群にはレディパスビルとソホスブビルを、別の群にはレディパスビル+ソホスブビルとリバビリンをそれぞれ8週間、もう一群にはレディパスビル+ソホスブビルを12週間投与した。 主要エンドポイントは、治療終了12週後の持続的ウイルス消失(SVR)だった。主要エンドポイント達成率は8週群で94%、その他の群と同等 その結果、主要エンドポイントのSVR達成率は、レディパスビル+ソホスブビル8週群が94%(95%信頼区間:90~97%)、レディパスビル+ソホスブビル+リバビリン群が93%(同:89~96%)、レディパスビル+ソホスブビル12週群が95%(同:92~98%)と、いずれも同等だった。 レディパスビル+ソホスブビル8週群に比べ、レディパスビル+ソホスブビル12週群のSVR達成率は1%ポイント高く(97.5%信頼区間:-4~6%)、レディパスビル+ソホスブビル+リバビリン群は1%ポイント低いのみで(95%信頼区間:-6~4%)、いずれの群に対してもレディパスビル+ソホスブビル8週群の非劣性が示された。 レディパスビル+ソホスブビル8週群の被験者に、有害イベントによる治療中断はなかった。有害イベントは、レディパスビル+ソホスブビル+リバビリン群で最も多くみられた。

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医療裁判では、医師にどんな尋問が行われるのか? 医学部で模擬証人尋問を開催

 4月10日(木)、群馬大学医学部において、病棟実習が始まる同学部の5年生(約100名)を対象に「医療裁判の模擬証人尋問」が行われた。同大の医学教育の一環として、今回初めて開催されたもので、講師として医師資格をもつ3人の弁護士が指導にあたった。 始めに大磯 義一郎氏(浜松医科大学教授)が、今回取り上げる事案である「アルコール性肝硬変の患者が外来通院していたところ、肝細胞がんで死亡した」ケースについて、その概要説明と基本的な民事裁判の流れをレクチャーした。 講義では、ケースの内容について肝細胞がんの発生機序、疫学、検査、診断、標準的な治療法などの臨床的事項や訴訟に至るまでの経過、裁判開始から証人尋問までの裁判のプロセスを詳細に説明した。また、レクチャーの中では、ケースで問題となった点(例として、本人や家族への説明内容やカルテへの記載など)のほか、将来医学生が医師として臨床現場に出た場合、どのような訴訟リスクが想定されるのか(たとえばガイドライン推奨ではない治療の実施やカルテ不記載の責任など)といった、実践的な視点からも解説がなされた。 続いて、医師への模擬証人尋問となり、原告(患者)側代理人として富永 愛氏(富永愛法律事務所)が、被告(病院)の医師役として大磯氏が、被告(病院)側代理人として小島 崇宏氏(大阪A&M法律事務所)が、それぞれ役割を演じ、実際の医事裁判での証人尋問を再現した。 医師への証人尋問は、提出された証拠書面(カルテや陳述書など)に基づいて、原告側が被告側のさまざまな義務違反が今回の結果を招いたことを証明すべく、約1時間にわたり行われた。 今回のケースでの尋問内容は、「肝細胞がんの経過観察」「精密検査義務」「検査結果報告義務」についてであり、被告側がそれぞれの義務違反を行ったか、また行ったとすればその義務違反と患者死亡という結果に因果関係があったかが、尋問にて争われた。 尋問では、被告側代理人が事実の確認と前述の3つの義務違反の存在を払拭するような尋問を行うのに対し、原告側代理人は提出された証拠との食い違いや各義務違反の証明を導くような尋問を医師役に対して投げかけた。実際に医事裁判で医師にどのような内容の質問がなされるのか、と見守る医学生たちの緊張感漂う空気の中、真に迫ったやり取りが繰り広げられた。 証人尋問後には、聴講した医学生に自身が裁判官として判決を下す「判決シート」が配布された。これにより、模擬裁判を聴講して原告、被告どちらを勝訴とするか、そう考える理由が集計され、報告された。講師の講評の後に質疑応答となり、医学生からは「カルテに書いてはいけない内容はあるのか?」との質問に対して、「カルテには、診断の推論過程を除き、原則何でも書いたほうがよい。とくに患者さんやその家族への伝達は後々裁判になった場合、大切な経過証拠となる」などの具体的なアドバイスがなされ、模擬証人尋問を終えた。 同様のレクチャーは、今後も全国各地で医学生、医療機関で開催され、医師・医療従事者への訴訟リスクの教育・啓発が行われる。●ケアネットの医事裁判のコーナー MediLegal リスクマネジメント

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肝硬変患者の経過観察を十分に行わず肝細胞がんを発見できなかったケース

消化器最終判決判例タイムズ 783号180-190頁概要12年以上にわたって開業医のもとに通院し、糖尿病、肝硬変などの治療を受けていた55歳の男性。ここ1年近く、特段の訴えや所見もないために肝機能検査および腫瘍マーカーのチェックはしていなかった。ところが久しぶりに施行した肝機能検査・腫瘍マーカーが異常高値を示し、CT検査を受けたところ肝左葉全体を埋め尽くす肝細胞がんが発見された。急遽入院治療を受けたが、異常に気づいてから3ヵ月後に死亡した。詳細な経過患者情報55歳男性経過1973年 糖尿病にて総合病院に45日間入院。9月3日当該診療所初診。診断は糖尿病、肝不全。1982年5月26日全身倦怠感、体重減少(61→51kg)を主訴に総合病院外来受診。6月1日精査治療目的で入院となり、肝シンチ、腹部エコー、上部消化管造影、血液検査、尿検査などの結果、糖尿病、胆石症、肝硬変、慢性膵炎と診断された。7月10日肝臓の腹腔鏡検査を予定したが、度々無断外出したり、窃盗容疑で逮捕されるなどの問題があり、強制退院となった。9月6日診療所の通院を月1~4回の割合で再開。その間ほぼ継続してキシリトール(商品名:キシリット)、肝庇護薬グリチルリチン・グリシン・システイン(同:ケベラS)、ビタミン複合剤(同:ネオラミン3B)、ビタミンB12などの点滴とフルスルチアミン(同:アリナミンF)、血糖降下薬ゴンダフォン®、ビタミンB12(同:メチコバール、バンコミン)などの投薬を続ける。食事指導(お酒飲んだら命ないで)や生活指導を実施。ただし、肝細胞がんと診断されるまでのカルテには、検査指示および処方の記載のみで、診察内容(腹水の有無、肝臓触知の結果など)の記載はほとんどなく、1982年9月6日から1986年2月19日までの3年5ヵ月にわたって腹部超音波、腹部CT、肝シンチなどの検査は1回も実施せず。1982年~1984年肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)、AFP測定を不定期に行う。1984年9月4日AFP(-):異常高値となるまでの最終検査。1985年 高血糖(379-473)、貧血(Hb 10.5)がみられたが、特段治療せず。1986年2月15日γ-GTP 414と高値を示したため、肝細胞がんをはじめて疑う。2月19日1年5ヵ月ぶりで行ったAFP測定にて638と異常高値のため、総合病院にCT撮影を依頼。腹水があり、肝左葉はほぼ全体が肝細胞がんに置き変わっていた。門脈左枝から本幹に腫瘍血栓があり、予後は非常に不良であるとの所見であった。2月21日家族に対し、「肝細胞がんに罹患しており、長くもっても7ヵ月、早ければ3ヵ月の余命である」ことを告知し、同日以降、抗がん剤であるリフリール®やウロキナーゼを点滴で投与した。2月25日当該診療所を離れ総合病院に入院し、肝細胞がんの治療を受けた。5月17日肝硬変症を原因とする肝細胞がんにより死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張1.早期発見義務違反1982年9月6日から肝硬変の診断のもとに通院を再開し、肝細胞がん併発の危険性が大きかったのに、1986年2月まで長期間検査をしなかった2.説明義務違反1986年に手遅れとなるまで、肝臓の障害について説明せず、適切な治療を受ける機会を喪失させた3.全身状態管理義務違反1985年中の出血を疑わせる兆候や高血糖状態があったのに、これらを看過したこのような義務違反がなければ、死亡することはなかったか、仮に死を免れなかったとしても少なくとも5年間の延命の可能性があった。病院側(被告)の主張過重な仕事と不規則な生活を続け、入院勧告にも応じなかったことが問題である。1985年中に肝細胞がんを発見できたとしても、もはや切除は不可能であったから、死亡は不可避であった。裁判所の判断説明義務違反医師は肝硬変に罹患していたことを説明し、安静を指示していたことが認められるため、その違反はないとした。全身状態管理違反血糖値の変化は生活の乱れによる可能性も高く、必ずしも投薬によって対処しなければならない状況にあったか否かは明らかではないし、出血の点についても、肝硬変の悪化にどのような影響を与えたのか不明であるため、その違反があるとは認められない。早期発見義務肝硬変があり肝細胞がんに移行する可能性の高い症例では、平均的開業医として6ヵ月に1回程度は肝機能検査、AFP検査、腹部超音波検査を実施するべきであったのに、これを怠った早期発見義務違反がある。しかし、肝細胞がんが半年早く発見され、その時点でとりうる治療手段が講じられたとしても、生存可能期間は1~2年程度であったため、医師が検査を怠ったことと死亡との間には因果関係はない。つまり、検査義務違反がなく早期に肝細胞がんに対する治療が実施されていれば、実際の死期よりもさらに相当期間、生命を保持し得たものと推認することができるため、延命利益が侵害されたと判断された。1,000万円の請求に対し、240万円の支払命令考察今回のケースでは、12年以上にわたってある開業医のところへ定期的に通院していた患者さんが、必要な検査が行われず肝細胞がんの発見が遅れたために、「延命利益を侵害された」と判断されました。今までの裁判では、医師の注意義務違反と患者との死亡との因果関係があるような場合に損害賠償(医療過誤)として支払いが命じられていましたが、最近になって、死亡に対して明確に因果関係がないと判断されても、医師の注意義務違反が原因で延命が侵害されたことを理由として、慰謝料という形で医師に支払いを命じるケースが増加しています。本件でも、「平均的開業医」として当然行うべき種々の検査を実施しなかったことによって、肝細胞がんの発見が遅れたことは認めたものの、肝細胞がんという病気の性質上、根治は難しいと判断され、たとえきちんと検査を実施していても死亡は避けられなかったと判断しています。つまり、適切な時期に適切な検査を定期的に実施し、患者の容態を把握しているかという点が問題視されました。肝細胞がんは年々増加してきており、臓器別死亡数でみると男性で第3位、女性で第4位となっています。なかでも肝細胞がんの約93%が肝炎ウイルス(HCV抗体陽性、HBs抗原陽性)を成因としています。また、原発性肝がんの剖検例611例中、84%が肝硬変症を合併していたという報告もあり、肝硬変患者を外来で経過観察する時には、肝細胞がんの発症を常に念頭におきながら、診察、検査を進めなくてはいけません。消化器

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未治療のC型肝炎に対するレディパスビル+ソホスブビル治療の有効性/NEJM

 未治療のC型肝炎ウイルス(HCV)遺伝型1型感染患者の治療として、レディパスビル+ソホスブビル治療はきわめて高い有効性を発揮することが、米国ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのNezam Afdhal氏らが実施したION-1試験で示された。インターフェロンが使用できない患者に対する治療選択肢の確立が求められているが、現時点で米国食品医薬品局(FDA)の承認を得ているインターフェロン・フリーのレジメンは1つしかない。一方、核酸型ポリメラーゼ阻害薬ソホスブビルとNS5A阻害薬レディパスビルの経口配合薬の第II相試験では、高い持続的ウイルス消失(sustained virological response:SVR)率が達成されている。NEJM誌オンライン版2014年4月12日号掲載の報告。治療終了後12週時のSVR率を歴史的対照と比較 ION-1試験は、未治療のHCV遺伝型1型感染患者に対するレディパスビル+ソホスブビル治療(LDV-SOF)の有用性を評価する非盲検無作為化第III相試験である。 参加者は、LDV-SOF(LDV 90mg/SOF 400mg配合薬、1日1回1錠、12週)、LDV-SOF+リバビリン(RBV)(12週)、LDV-SOF(24週)、LDV-SOF+RBV(24週)の4つの治療群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は治療終了後12週時のSVR率とし、歴史的対照の補正SVR率との比較を行った。SVRは、血清HCV RNA量<25IU/mLと定義した。治療期間延長の付加的ベネフィットは不明 本試験には、2012年10月17日~2013年5月17日までに米国および欧州の99施設から865例が登録された。LDV-SOF 12群に214例、LDV-SOF+RBV 12群に217例、LDV-SOF 24群に217例、LDV-SOF+RBV 24群にも217例が割り付けられた。 各群の年齢中央値は52~53歳、男性が55~64%、白人が82~87%、平均BMIは26~27であった。全体の67%が1a型であり、肝硬変例が16%含まれた。 12週時のSVR率は、LDV-SOF 12群が99%、LDV-SOF+RBV 12群は97%、LDV-SOF 24群は98%、LDV-SOF+RBV 24群は99%と高い値を示し、歴史的対照との間に有意な差が認められた(いずれもp<0.001)。 ウイルス学的治療不成功と判定されたのは3例のみで、このうち治療期間中に再燃した患者が1例(LDV-SOF 24群)、治療終了後に再燃した患者は2例(LDV-SOF 12群の1例[4週以内の再燃]、LDV-SOF 24群の1例[4~12週の再燃])であった。 各群の有害事象の発現頻度は79~92%で、そのうち重篤な有害事象はLDV-SOF 12群が1例(<1%)、LDV-SOF+RBV 12群は7例(3%)、LDV-SOF 24群は18例(8%)、LDV-SOF+RBV 24群は7例(3%)に認められた。 治療関連の有害事象による治療中止は、LDV-SOF 24群で4例(2%)、LDV-SOF+RBV 24群で6例(3%)認められたが、12週治療群にはみられなかった。頻度の高い有害事象として、疲労感(21~38%)、頭痛(23~30%)、不眠(8~22%)、悪心(11~17%)が挙げられた。 著者は、「リバビリンの併用や治療期間の24週への延長による付加的なベネフィットは明らかではなかった」としている。

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既治療のC型肝炎に対するレディパスビル+ソホスブビル治療の有効性/NEJM

 インターフェロンベースの治療では持続的なウイルス消失(sustained virological response:SVR)が得られなかったC型肝炎ウイルス(HCV)遺伝型1型感染患者に対し、レディパスビル+ソホスブビル配合薬の1日1回1錠投与による治療が有効であることが、米国・ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのNezam Afdhal氏らが実施したION-2試験で示された。これら2つの薬剤は直接作用型抗ウイルス薬で、ソホスブビルは核酸型NS5Bポリメラーゼ阻害薬、レディパスビルはNS5A阻害薬である。米国のガイドラインでは、既治療の1型感染患者に対しソホスブビル+NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬シメプレビル(±リバビリン)の併用療法が推奨されているが、これは第II相試験の限られたデータに基づくものだという。NEJM誌2014年4月17日号(オンライン版2014年4月11日号)掲載の報告。4つのレジメンを無作為化試験で評価 ION-2試験は、既治療のHCV遺伝型1型感染患者に対するレディパスビル+ソホスブビル治療(LDV-SOF)の有用性を評価する非盲検無作為化第III相試験。ペグインターフェロン+リバビリン(RBV)(±NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬)による治療でSVRが得られなかった1型(1a、1b)感染患者を対象とした。 参加者は、LDV-SOF(LDV 90mg/SOF 400mg配合薬、1日1回1錠、12週)、LDV-SOF+RBV(12週)、LDV-SOF(24週)、LDV-SOF+RBV(24週)の4つの治療群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は治療終了後12週時のSVR率とした。SVRは、血清HCV RNA量<25IU/mLと定義した。12週時SVR達成の427例は24週時もこれを維持 本試験には、2013年1月3日~2月26日までに米国の64施設から440例が登録された。LDV-SOF 12群に109例、LDV-SOF+RBV 12群に111例、LDV-SOF 24群に109例、LDV-SOF+RBV 24群には111例が割り付けられた。 各群の年齢中央値は55~57歳、男性が61~68%、白人が77~85%、平均BMIは28~29であった。全体の79%が1a型であり、20%に肝硬変が見られた。前治療でNS3/4Aプロテアーゼ阻害薬の投与を受けていたのは52%であった。 12週時のSVR率はいずれの治療群も高値を示し、LDV-SOF 12群が94%、LDV-SOF+RBV 12群は96%、LDV-SOF 24群は99%、LDV-SOF+RBV 24群も99%に達しており、歴史的対照との間に有意な差を認めた(いずれもp<0.001)。12週時にSVRを達成した427例全例が、24週時にもSVRを維持していた。 治療終了後にウイルス学的再燃と判定された患者は440例中11例(2%)で、LDV-SOF 12群が7例(6%)、LDV-SOF+RBV 12群が4例(4%)であった。このうち10例は治療終了後4週までに再燃し、12週以降に再燃した例はなかった。 多変量解析で検出されたベースライン時の予後予測因子は肝硬変の有無のみで、全体のSVR率は非肝硬変例が98%、肝硬変例は92%だった。 各群の有害事象の発現頻度は67~90%で、ほとんどが軽度~中等度であった。有害事象に起因する治療中止例は認めなかった。高頻度に見られた有害事象は疲労感(21~45%)、頭痛(23~32%)、悪心(6~23%)であった。 著者は、「本試験で達成されたSVR率は、これまでに報告された1型感染患者を対象とした試験の中で最も高いものの1つである」としている。

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C型慢性肝炎は3ヵ月の経口内服薬で90%以上治癒する時代へ―副作用のないIFNフリー療法が目前に―(コメンテーター:溝上 雅史 氏、是永 匡紹 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(178)より-

C型慢性肝炎に対する最新治療は、週1回のペグインターフェロン(PegIFN)注射とPegIFNの有効性を高めるリバビリン(RBV)に、直接ウイルスに作用する抗ウイルス剤(シメプレビル:SMV)を内服する3剤併用療法である。治療期間は24週間、前治療でウイルスが感度未満にならない(Non-Viral Response:NVR)一部の難治例を除けば、ウイルス排除(Sustained Viral Response:SVR)率は90%を超える。しかし、わが国のC型慢性肝炎患者の多くは65歳以上の高齢者のため、副作用が多いIFN治療そのものが導入できない現状があり、「IFNフリー=副作用が少ない治療」が必要不可欠である。 IFNフリーの経口抗ウイルス剤は、単剤でも一過性にウイルスを減少させるが、すぐに薬剤に抵抗する耐性変異株が出現するため (1) SMVに代表されるNS3 プロテアーゼ阻害剤、(2) NS5A阻害剤、(3) NS5Bポリメラーゼ阻害剤(核酸型・非核酸型)を組み合わせて(多剤併用療法)開発試験が行われている。多剤併用療法であるが、C型肝炎ウイルスに対する治療は一定期間内服すればウイルス排除が可能で、一生内服する必要はない。 2013年11月のアメリカ肝臓学会ではNS3 プロテアーゼ阻害剤アスナプレビル(ASV)を1日2回、NS5A阻害剤ダカルタスビル(DCV)を1日1回24週間併用内服することで、85%のSVR率が得られると本邦から発表されたが、NS5Aに変異株が存在すると治療効果が低下するという問題点がある。一方で、NS5A阻害剤レディパスビル(LDV)と核酸型NS5Bポリメラーゼ阻害剤ソフォスブビル(SOF)の合剤を1日1回、わずか12週間内服するだけで、副作用なく95%のSVR率を達成するという驚くべき報告がなされ、さらに、本治療により耐性株が出現した1例に再度、同合剤とRBVを併用し24週間投与したところSVRに至ったと紹介された。このことは、RBVが多剤併用治療における変異株を抑制できる可能性を示唆している。 本論文は米国における肝硬変を伴わない未治療(naive)またはNVR例に対するNS3プロテアーゼ阻害薬(ABT-450)+ABT-450の効果を高める作用リトナビル(r)をkey drugとして、±非核酸型NS5Bポリメラーゼ阻害剤(ABT-333)±NS5A阻害薬(ABT-267)±RBVを組み合わせた第2b相非盲検無作為化試験である。ABT-450は投与量(100/150/200mg)、さらに投与期間(8/12/24週)の比較も行っており、14の異なった投与方法に20~79例(total:517例)がエントリーしている。  naive例における解析では、ABT-450/r+ABT-333投与でさえSVR率は83%とASV/DCV同様で、さらにABT-267、RBVをそれぞれ加えることでSVR率は89~96%まで上昇した。NS5A阻害剤、RBVの重要性が改めて確認され、ABT-450(150mg)/r+ABT-333+ABT-267+RBVの12週間投与が基本になる。またNVR例でも、本レジメンで93%のSVR率が確認され、副作用は、疲労、頭痛、悪心、不眠が主で、中止したのは8例(1%)と少ない。 本試験は、LDV/SOF合剤同様、副作用も少なく、NVR例でもSVR率は90%を超える結果となった。ABT-450(150mg)/r+ABT-267は合剤となるため、2剤とRBVを内服することになる(LDV/SOFは1剤±RBV)。最近、第3相試験も発表され、NVRでもSVR率は96%、中止3例(1%)と報告されたことも付け加えておく。 高齢者が多く、肝線維化進展例が多いわが国で、どれだけ副作用なく投与できるは今後の課題であるが、HCV排除が、IFNフリー療法で90~95%可能な時代がすぐそこまで来ている。RBV併用により有効率上昇も示唆されており、耐性株出現や再燃しやすい症例を、治療前から予測することも今後の課題である。

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13)夜間のこむら返りで悩んでいる人へのアドバイス【糖尿病患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話患者夜中に「足がつる」ことがあるんですけど、これは糖尿病の合併症ですか?医師こむら返りですね。これは糖尿病や肝臓が悪い人、肝硬変の人ではよく起こることが知られています。患者そうすると、糖尿病が悪くなっているということですか?医師そうですね。・・・もちろん、運動不足もあるかもしれませんが、運動神経に障害が出ると起こりやすいことが知られています。患者どうしたら、よくなりますか?医師まずは血糖コントロールをよくすること、次が運動ですね。患者わかりました。明日から運動してみます。医師とくに、寝る前にやるといいストレッチがありますから、ぜひ、試してみてください。患者どんな方法ですか? 教えてください。(興味津々)●ポイント自覚症状のある「こむら返り」から、運動療法に話が発展するといいですね

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慢性C型肝炎のIFNフリー療法―リバビリンレジメン/NEJM

 未治療またはペグインターフェロン(商品名:ペガシス)+リバビリン(RBV、商品名:コペガスほか)による前治療が無効であった遺伝子型1型感染患者に対し、経口投与のみの直接作用型抗ウイルス薬(2種または3種)+RBVレジメンが、いずれの患者にも有効であることが示された。米国・バージニア・メイソン・メディカル・センターのKris V. Kowdley氏らが、第2b相非盲検無作為化試験にて9レジメン(14サブ治療群)を設けて検討した結果、治療終了後24週時点のSVR(持続性ウイルス学的著効)は、83~100%であったことを報告した。NEJM誌2014年1月16日号掲載の報告より。571例を14の直接作用型抗ウイルス薬+RBVレジメンに割り付けて検討 試験は2011年10月~2012年4月に9ヵ国97施設で1,013例がスクリーニングを受け、肝硬変を伴わない未治療または前治療無効のHCV遺伝子型1型感染患者571例を無作為に14群に割り付けて行われた。 検討された経口抗ウイルス薬は、プロテアーゼ阻害薬ABT-450+リトナビル(同:ノービア)(ABT-450/r:ABT-450投与量100、150、200mg設定)、非ヌクレオシド系ポリメラーゼ阻害薬ABT-333、およびNS5A阻害薬ABT-267。前者の2種は、予備試験でインターフェロンを用いないRBV併用レジメンとして有効性が示されており、ABT-267は、とくに治療困難な患者において有効性が改善する可能性が示唆されていた。 571例を2種または3種複合の8週、12週、24週投与の14の治療群(9群1治療群を除きRBV併用)を設定し検討した。 主要エンドポイントは、治療終了後24週時点のSVRであった。SVRは83~100% 主要有効性解析では、未治療患者への3種複合[ABT-450/r(150mg)+ABT-333+ABT-267]+RBVの8週治療群と、同12週治療群を比較した。結果、治療終了後24週時点のSVRは、8週治療群88%、12週治療群95%であった(両群差:-7ポイント:95%信頼区間[CI]:-19~5、p=0.24)。 すべての治療群のSVRは、83%[未治療、ABT-450/r(150mg)+ABT-333+RBV]から100%にわたった。 最も頻度が高かった有害事象は、疲労、頭痛、悪心、不眠であった。有害事象により試験を中止したのは8例(1%)だった。

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C型肝炎に対するIFN療法著効後に肝細胞がんを発症する患者の特徴とは

 インターフェロン(IFN)療法によりSVR(持続性ウイルス学的著効)を達成したC型慢性肝炎患者において、血清アルブミン低値およびαフェトプロテイン(AFP)高値は、5年以内の肝細胞がん(HCC)発症の独立因子であることが、聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院の佐藤 明氏らによる研究で明らかになった。著者らは「IFN療法後のHCC発症を早期に予防するために、これらの値について慎重な評価が必要である」としたうえで、「IFN治療後 10年以内のHCC発症は珍しいことではなく、リスク因子はいまだ不確定であるため、SVR達成後も長期的なフォローアップとHCCの検査を行うべきである」と述べている。Internal medicine誌2013年52巻24号の報告。 本研究の目的は、IFN療法によるSVR達成後に肝細胞がん(HCC)を発症したC型慢性肝炎患者の臨床的特徴を明らかにすることであった。 対象は、SVRを得た後に肝細胞がんを発症した、19施設の患者130例。その臨床的特徴をレトロスペクティブに検討した。 主な結果は以下のとおり。・全130例のうち、男性は107例(82%)であった。・92例(71%)が60歳以上であった。・IFN療法後にHCCを発症するまでの年数は、76例が5年以内、38例が5~10年、16例が10~16.9年であった。・IFN療法施行前に、92例(71%)が肝硬変と低血小板数(15×104cells/μL以下)の両方、またはどちらかを認めた。・多変量解析の結果、血清アルブミン低値(3.9g/dL以下)およびAFP高値(10ng/mL以上)は、IFN療法後5年以内のHCC発症の独立因子であることが同定された。・SVRを達成した4,542例のうち、5.5年間の追跡期間中にHCCを発症したのは109例(2.4%)であり、性別でみると男性4.6%、女性0.6%であった。

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新規ソホスブビル+レジパスビル合剤、遺伝子1型HCV治療に有望/Lancet

 C型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子型1型の大半の患者は、治療歴や代償性肝硬変の有無にかかわらず、新規合剤[ヌクレオチドポリメラーゼ阻害薬ソホスブビル+HCV NS5A阻害薬レジパスビル(ledipasvir)]単独または+リバビリン併用による治療が有効である可能性が報告された。米国・テキサス大学のEric Lawitz氏らによる、非盲検無作為化第2相試験LONESTARの結果、示された。インターフェロンベースの治療は、精神疾患があったり有害イベントの負荷が高いため、HCV患者の多くについて適していない。研究グループは、インターフェロンを使わない新規開発の合剤の有効性と安全性について評価を行った。Lancet誌オンライン版2013年11月5日号掲載の報告より。患者100例について層別化のうえ、合剤単独、リバビリン併用の5レジメンについて検討 試験は、遺伝子型1型のHCVで未治療またはプロテアーゼ阻害薬レジメンによる治療歴のある患者について、ソホスブビル(400mg)+レジパスビル(90mg)の合剤単独療法およびリバビリン併用療法の有効性と安全性を評価することを目的とし、2012年11月2日~12月21日の間に米国の単施設にて、18歳以上患者100例を登録して行われた。 Aコホートでは、60例の患者(非硬化、未治療)をHCV遺伝子型で層別化したうえで(1a対1b)、合剤単独8週間治療群(第1グループ)、合剤+リバビリン併用8週間治療群(第2グループ)、または合剤単独12週間群(第3グループ)に無作為に割り付けた。 Bコホートでは、40例の患者(既治療失敗、22例[55%]が代償性肝硬変)を遺伝子型および肝硬変有無別に層別化したうえで、合剤単独12週間治療群(第4グループ)、合剤+リバビリン併用12週間治療群(第5グループ)に無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、intention to treat解析による、治療後12週時点の持続性ウイルス学的著効(SVR 12)だった。SVR 12達成率は95~100% Aコホートにおいて、SVR 12達成率は、第1グループ19/20例・95%(95%信頼区間[CI]:75~100)、第2グループ21/21例・100%(同:84~100)、第3グループ18/19例・95%(同:74~100)だった。 Bコホートでは、第4グループ18/19例・95%(同:74~100)、第5グループ21/21例・100%(同:84~100)だった。 ウイルス再燃を呈したのは2例だった。1例の患者は、治療後8週時点でSVR達成をしたのち追跡不能となった。 最も頻度の高い有害事象は、悪心、貧血、上気道感染症、頭痛であった。 第5グループのうち1例の患者が、重篤な有害イベントとして貧血を呈した。リバビリン治療と関連すると思われるものであった。 著者は、さらなる臨床試験にて、治療期間の検討を行うとともに、リバビリン併用の寄与について検討する必要があると述べている。

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2013年11月にC型肝炎治療ガイドラインが大幅改訂―新薬登場で

 2013年10月3日(木)、ヤンセンファーマ株式会社主催のC型慢性肝炎メディアセミナーが開催され、関西労災病院 病院長の林 紀夫氏より、C型慢性肝炎治療の変遷と最新治療について語られた。また、東京肝臓友の会 事務局長の米澤 敦子氏からは、患者が考えるC型肝炎治療の課題について語られた。 林氏は「11月に発売される新規DAAs(direct-acting antiviral agents:直接作用型抗ウイルス薬)シメプレビルの登場により、C型肝炎治療ガイドラインが大幅に改訂される。未治療例はもちろん、高齢者やインターフェロン(IFN)無効例、過去の治療で効果が十分に得られなかった例にも、有効性と安全性が高く、治療期間の短い新たな治療選択肢を提供できる」と述べた。 今後は、シメプレビルのほかにも現在開発中の新薬が続々と登場し、日本のC型肝炎治療に大きな変革がもたらされると考えられる。C型肝炎は肝がんの主な成因 日本における肝がんの死亡者数は、肺がん、胃がんに続いて3番目に多く、年間約3万人が肝がんにより死亡している(厚生労働省調べ)。C型肝炎ウイルスに感染すると、約70%の患者が、慢性肝炎から肝硬変、そして肝細胞がんへ至る。日本肝臓学会の肝がん白書(1999)によると、日本における肝硬変・肝がん患者の79%がC型肝炎ウイルス陽性であるという。つまり、C型肝炎のウイルス排除を進めれば、肝がん患者の減少につながるといえる。これまでのC型肝炎治療 C型肝炎の治療はIFN 単独、IFN+リバビリン(RBV)、ペグインターフェロン(PEG-IFN)+RBVと進化を遂げてきたが、日本人に最も多い遺伝子型1b型にはIFNが効きにくく、PEG-IFN+RBV併用療法を48週行っても、初回治療の著効率は約50%であった。また、米澤氏は「治療期間が長期にわたるため、IFNの副作用である発熱や倦怠感、RBVによる貧血などにも長く悩まされ、治療を続けるために仕事をリタイアせざるを得ないなど、患者の人生を大きく左右させてしまう」という問題点を挙げた。テラプレビル3剤併用療法の問題点 2011年9月に承認されたPEG-IFNα-2b+RBV+テラプレビル(TVR)の3剤併用療法により、ウイルス陰性化率(SVR)が飛躍的に向上し、治療期間も従来の48週から24週に大幅短縮された。しかし、TVRは高い頻度で皮疹や貧血などの副作用を伴うことから、肝臓専門医や皮膚科専門医との連携ができる医療機関に使用が限定された。とくに、副作用が出やすい高齢者には使いにくく、治療を中断せざるを得ないなどの問題点があった。シメプレビルの登場 第2世代のプロテアーゼ阻害剤シメプレビルは、優先審査を経て2013年9月に日本で承認された。C型肝炎治療薬としては初めて、欧米に先駆けて承認された期待の薬剤で、2013年11月にも発売される見込みである(製品名:ソブリアードカプセル)。未治療の遺伝子型1のC型慢性肝炎患者を対象に行われた国内第3相試験(CONCERTO試験)においては、シメプレビル+PEG-IFNα-2a+RBVの3剤併用療法(24週)の投与終了後12週までの持続的ウイルス陰性化率(SVR)が88.6%にのぼった。投与終了後24週までのSVRも再燃例で89.8%、無効例で50.9%と、高い有効性が認められた。また、安全性もPEG-IFN+RBVの2剤併用療法と同等であった(第49回日本肝臓学会総会にて発表)。2013年11月、C型肝炎治療ガイドラインが大幅改訂 現在のC型肝炎治療ガイドラインにおいて、遺伝子型1における治療は原則として「TVR+PEG-IFN+RBV」または「PEG-IFN+RBV」とされているが、シメプレビルの登場により、2013年11月に改訂され、これらは「シメプレビル+PEG-IFN+RBV」に変更となる見込みである。1日1回の服用でTVRよりも有効性と安全性が高いシメプレビルが、今後のC型肝炎治療に大きな変革をもたらすと考えられる。今後も新薬が続々登場 現在、国内で開発されている新規DAAsとPEG-IFN+RBVの3剤併用療法は、シメプレビルのほかにもファルダプレビル、vaniprevir、daclatasvirがあり、いずれも遺伝子型1に対する有効性が80~90%と高く、副作用もTVRと比べて低いという。また、IFNフリー療法も開発されており、近い将来、IFNの副作用を懸念することなくさまざまな症例に使用することができるため、期待されている。現在開発中のレジメンは、asunaprevir+daclatasvir、deleobuvir+ファルダプレビル+RBV、sofosbuvir+RBV、ABT450+ABT267+リトナビルであり、いずれも第2、第3相試験中である。「ただし、IFNフリー療法は、IFNの抗ウイルス効果によって耐性株の増殖を抑制することができないため、裾野が広いからといってむやみに使うと耐性変異を起こす危険がある。将来の治療薬に対しての選択肢を奪うこともある」と林氏は注意を投げかけた。まとめ 今後、IFNを使わない新しい治療が登場するが、患者の高齢化と発がんリスクを鑑みると、将来の治療のために待機せず、まずは専門医が遺伝子検査などでしっかりと治療方針を決定したうえで「今ある最新かつベストな治療」を行うべきである。また、IFNフリー療法という選択肢が増えても、IFNはすでにDAAsへの耐性を持つ症例の治療効果も高めることができるため、重要な薬剤であることに変わりはないと考えられる。シメプレビル登場に始まるC型肝炎治療の進化により、肝がんで命を落とす患者が減ることが期待される。

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重症型アルコール性肝炎の2剤併用療法、予後を改善せず/JAMA

 重症型アルコール性肝炎の治療において、プレドニゾロンにペントキシフィリン(国内未承認)を追加しても予後は改善しないことが、フランス・Hopital HuriezのPhilippe Mathurin氏らの検討で示された。重症型アルコール性肝炎は死亡リスクの高い疾患であり、プレドニゾロンおよびペントキシフィリンはその治療薬として推奨されている。これら2つの薬剤は相乗効果を示す可能性が示唆されていたが、これまで併用療法に関する無作為化試験は行われていなかった。JAMA誌2013年9月11日号掲載の報告。上乗せ効果をプラセボ対照無作為化試験で評価 研究グループは、重症型アルコール性肝炎患者に対するプレドニゾロン+ペントキシフィリン併用療法の有用性を、プレドニゾロン単独療法と比較する二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施した。 対象は、年齢18~70歳の大量飲酒者で、直近3ヵ月以内に黄疸を発症し、Maddrey discriminant functionスコア(プロトロンビン時間と総ビリルビン値から算出)が≧32であることから重症型アルコール性肝炎が疑われ、生検にてこれを証明された患者とした。 被験者は、プレドニゾロン40mg(1日1回)+ペントキシフィリン400mg(1日3回)を投与する群またはプレドニゾロン40mg(1日1回)+プラセボを投与する群に無作為に割り付けられ、28日間の治療が行われた。 6ヵ月生存率を主要評価項目とし、肝腎症候群の発現およびリール・モデルに基づく治療反応性(治療開始から7日目にスコアを算出し、治療反応なしと判定された場合)を副次評価項目とした。肝腎症候群は減少傾向に、ただし検出にはパワー不足の可能性も 2007年12月~2010年3月までに、ベルギーの1施設とフランスの23施設から270例が登録され、併用療法群に133例(平均年齢51.5歳、男性62.4%、生検で証明された肝硬変91.7%)、プラセボ群には137例(51.8歳、58.4%、94.2%)が割り付けられた。 6ヵ月後までに併用群の40例、プラセボ群の42例が死亡し、生存率はそれぞれ69.9%、69.2%であり、両群間に差を認めなかった(ハザード比[HR]:0.98、95%信頼区間[CI]:0.63~1.51、p=0.91)。多変量解析を行ったところ、6ヵ月生存の有意な予測因子は、リール・モデル(p<0.001)と末期肝不全(MELD)スコア(p<0.001)だけであり、治療法、性別、年齢などとは関連がなかった。 7日目のリール・モデルによる治療反応性の評価では、併用群のスコアが0.41、プラセボ群は0.40と両群間に差はなく(p=0.80)、その後に治療に反応する可能性もそれぞれ62.6%、61.9%と差を認めなかった(p=0.91)。 6ヵ月後の肝腎症候群の発症率は、併用群が8.4%と、プラセボ群の15.3%に比べ低い傾向を示したものの有意な差はなかった(p=0.07)。 著者は、「プレドニゾロンへのペントキシフィリンの上乗せ効果は確認できなかった。重症型アルコール性肝炎に対するこれら2剤の併用療法は支持されない」とし、「本試験は、肝腎症候群の差を検出するにはパワー不足であった可能性がある」と指摘している。

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喫煙が死亡に及ぼす影響は、人種差でこんなにも違う/Lancet

 南アフリカにおける喫煙死亡リスクは、白人・黒人の混血“カラード”において最も高く、非喫煙者・元喫煙者との比較でおよそ5割増に上ることが明らかにされた。最もリスクが低いのは黒人で、同2割弱増であった。オーストラリア・Cancer Council NSWのFreddy Sitas氏らが、南アフリカの中高年50万人弱について行ったケースコントロール研究の結果、報告した。Lancet誌2013年8月24日号掲載の報告より。35~74歳で死亡した48万1,640人についてケースコントロール研究 研究グループは、南アフリカで1999~2007年の間に、35~74歳で死亡が確認された48万1,640人について、ケースコントロール研究を行い、カラード、白人、黒人それぞれの喫煙関連死亡率を調べた。被験者の性別、教育レベル、5年前の喫煙の有無、基礎疾患などについて情報を得て分析を行い、喫煙関連の疾患による死亡と、それ以外の原因による死亡を比較した。なお、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染症や肝硬変、外的要因、精神障害が原因の死亡は除外した。喫煙関連死亡率はカラード男性27%、同女性17% その結果、カラードにおける喫煙率は男女共に高く、カラード喫煙者の全死亡率は、非喫煙者・元喫煙者との比較において、男女共に約50%高いことが認められた(男性の相対リスク:1.55、95%信頼区間:1.43~1.67、女性の相対リスク:1.49、同:1.38~1.60)。白人も、男性のリスクはカラードを下回ったが同様の傾向が認められた(男性の相対リスク:1.37、同:1.29~1.46、女性の相対リスク:1.51、同:1.40~1.62)。一方、黒人では、喫煙者の死亡リスクの増大は20%未満だった(男性の相対リスク:1.17、同:1.15~1.19、女性の相対リスク:1.16、同:1.13~1.20)。 喫煙関連死亡率は、男性では、カラード27%(2万767人中5,608人)、白人14%(2万8,951人中3,913人)、黒人8%(26万4,011人中2万398人)、女性では、カラード17%(1万5,593人中2,728人)、白人12%(1万7,899人中2,084人)、黒人2%(20万5,623人中4,038人)だった。 アフリカでは数十年前から喫煙者の存在が認められているが、現状の喫煙パターンがもたらす最大かつ最終的な影響については不明である。今回の検討において、南アフリカ中高年の喫煙パターンと死亡との関連、およびそのリスクの大きさが明らかになったことから、著者は、同様のリスクがアフリカ全体の若い喫煙者にもたらされることが暗示されると結論している。

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慢性C型肝炎、経口薬のみの併用療法に現実味/NEJM

 C型肝炎ウイルス(HCV)の慢性感染に対し、インターフェロンを用いない経口薬だけの併用療法の有効性に関する報告がNEJM誌2013年8月15日号に発表された。ドイツ・ヨハン・ヴォルフガング・ゲーテ大学メディカルセンターのStefan Zeuzem氏らが行った、新規開発中の2剤のC型肝炎治療薬、ファルダプレビル(プロテアーゼ阻害薬)とデレオブビル(非ヌクレオシド系ポリメラーゼ阻害薬)に関する第2b相無作為化非盲検試験の結果で、治療終了後12週時点の持続性ウイルス学的著効(SVR)の達成は39~69%であったという。検討では2剤併用のほか、インターフェロンとの併用にも用いられる抗肝炎ウイルス薬リバビリン(商品名:コペガスほか)を組み合わせたレジメンの検討も行われ、3剤併用療法のほうがSVR達成が高率だったことも示された。経口薬のみの併用療法5群について検討 試験は、ヨーロッパとオーストラリア、ニュージーランドの48施設から被験者を登録して行われた。被験者は、HCV遺伝子1型に感染する未治療の患者で、肝硬変(Metavir分類ステージF4)を有する患者も対象に含まれた。 469例がスクリーニングを受け、362例が次の5群に無作為に割り付けられた。(1)ファルダプレビル120mg 1日1回+デレオブビル600mg1日3回+リバビリンの併用を16週(TID 16W群)、(2)同28週(TID 28W群)、(3)同40週(TID 40週群)、(4)ファルダプレビル120mg 1日1回+デレオブビル600mg1日2回+リバビリンの併用を28週(BID 28W群)、そして(5)ファルダプレビル120mg 1日1回+デレオブビル600mg1日3回でリバビリン併用なしの28週(TID 28W-NR群)であった。 主要エンドポイントは、各群の治療終了後12週時点のSVRだった。3剤併用28週投与のSVRが最も高く69%を達成 結果、TID 16W群59%、TID 28W群59%、TID 40週群52%、BID 28W群69%の達成率を示した。リバビリンを併用しなかったTID 28W-NR群は39%であった。 リバビリンを併用した治療群については、投与量の違いや治療期間の違いによる、治療後12週時点のSVRの達成に有意差はなかった(例:TID 16W群vs. TID 28W群のp=0.86、BID 28W群vs. TID 28W群のp=0.15)。 一方で、TID 28W群のSVRは、リバビリンを併用しなかったTID 28W-NR群よりも有意に高率だった(p=0.03)。 遺伝子型の違いでみると、1b型感染患者56~84%だったのに対して1a型感染患者11~47%であり、IL28B CCを有する患者58~84%に対しCCを有さない患者は33~64%だった。 なお有害事象は、発疹、光線過敏症、悪心、嘔吐、下痢の頻度が高かった。 これら結果を踏まえて著者は、HCV遺伝子1型への経口薬のみの併用療法は有効であり、「リバビリンが経口薬のみの治療に必要であることが判明した。今回の検討では、BID28Wレジメン(ファルダプレビル+デレオブビル+リバビリンを28週)がそのほかのレジメンよりも有効性、安全性プロファイルが良好であった」とまとめている。

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新規sGC刺激薬リオシグアト、肺高血圧症に有効/NEJM

 リオシグアト(本邦では承認申請中)は、肺動脈性肺高血圧症(PAH)患者の運動能を改善し、肺血管抵抗やN末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)などの改善をもたらすことが、ドイツ・ギーセン大学のHossein-Ardeschir Ghofrani氏らが行ったPATENT-1試験で示された。リオシグアトは可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬と呼ばれる新たなクラスの薬剤で、内因性の一酸化窒素(NO)に対するsGCの反応性を高める作用、およびNOの刺激がない状態での直接的なsGC刺激作用という2つの作用機序を持ち、第1相、第2相試験でPAH患者の血行動態や運動能の改善効果が確認されていた。NEJM誌2013年7月25日号掲載の報告。症候性PAHに対する効果をプラセボ対照試験で評価 PATENT-1試験は、症候性PAH患者に対するリオシグアトの有用性を評価する第3相二重盲検無作為化プラセボ対照試験。対象は、肺血管抵抗>肺血管抵抗>300dyne・sec・cm-5、肺動脈圧>25mmHg、6分歩行距離150~450mの症候性PAH(特発性PAH、家族性PAH、結合組織病・先天性心疾患・肝硬変症状のある門脈圧亢進症に伴うPAH、食欲抑制薬やアンフェタミンの使用によるPAH)患者であった。 参加者は、プラセボ群、リオシグアトを最大2.5mg(1日3回、経口投与)まで投与する群、最大1.5mg(同)まで投与する群の3群に無作為に割り付けられた。1.5mg群には探索的検討を目的とする患者が含まれ、有効性の解析からは除外された。PAHに対する治療のみを受けている患者や、エンドセリン受容体拮抗薬、プロスタノイド(非静脈内投与)の投与を受けている患者の参加は可とした。 主要評価項目は、ベースラインから12週までの6分間歩行距離の変化とした。副次的評価項目は、肺血管抵抗、NT-proBNP、WHO肺高血圧症機能分類などであった。6分間歩行距離が30m延長 2008年12月~2012年2月までに443例が登録され、プラセボ群に126例、リオシグアトの最大用量2.5mg群に254例、最大用量1.5mg群には63例が割り付けられた。全体の平均年齢は51歳、女性が79%、特発性PAHが61%と最も多く、WHO機能分類クラスII/IIIが95%を占めた。38例が12週の治療を完遂できなかった。 12週後の6分間歩行距離は2.5mg群が平均30m延長し、プラセボ群は平均6m短縮した(最小二乗平均差:36m、95%信頼区間[CI]:20~52、p<0.001)。リオシグアトにより、PAH以外の治療は受けていない患者や、エンドセリン受容体拮抗薬、プロスタノイドの投与を受けている患者においても、6分間歩行距離が改善された。 肺血管抵抗(p<0.001)、NT-proBNP(p<0.001)、WHO機能分類クラス(p=0.003)、臨床的増悪までの期間(p=0.005)、Borg呼吸困難スコア(p=0.002)も、2.5mg群で有意に改善したが、QOLには有意な差を認めなかった(p=0.07)。 最も頻度の高い重篤な有害事象として、失神がプラセボ群の4%、2.5mg群の1%に認められた。 著者は、「リオシグアトにより、6分間歩行距離や肺血管抵抗のほか、有効性に関する副次評価項目のほとんどが改善された。一方、HIV感染症、住血吸虫症、慢性溶血性貧血に伴うPAHや、ホスホジエステラーゼ5型(PDE5)阻害薬、静脈内プロスタノイドの投与を受けている患者は除外されているため、これらの患者に対する効果は不明である」としている。

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